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▶ シーアンドシー マテリアルズ カンパニー リミテッドの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-04
(54)【発明の名称】耐食性に優れた多層構造の銅粒子
(51)【国際特許分類】
   H01B 5/00 20060101AFI20240927BHJP
   H01B 13/00 20060101ALI20240927BHJP
   C23C 18/32 20060101ALI20240927BHJP
   C23C 26/00 20060101ALI20240927BHJP
   H05K 1/03 20060101ALN20240927BHJP
【FI】
H01B5/00 C
H01B13/00 501Z
C23C18/32
C23C26/00 B
H05K1/03 610N
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024521356
(86)(22)【出願日】2021-10-08
(85)【翻訳文提出日】2024-04-05
(86)【国際出願番号】 KR2021013909
(87)【国際公開番号】W WO2023058798
(87)【国際公開日】2023-04-13
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524132092
【氏名又は名称】シーアンドシー マテリアルズ カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【弁理士】
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100205659
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 拓也
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【弁理士】
【氏名又は名称】岩池 満
(74)【代理人】
【識別番号】100185269
【弁理士】
【氏名又は名称】小菅 一弘
(72)【発明者】
【氏名】キム サン-ホ
(72)【発明者】
【氏名】チェ スン-ウン
(72)【発明者】
【氏名】チョ ヒュン-グン
(72)【発明者】
【氏名】チェ ユン-ホ
【テーマコード(参考)】
4K022
4K044
5G307
【Fターム(参考)】
4K022AA02
4K022AA35
4K022AA41
4K022BA14
4K022BA16
4K022DA01
4K022DB01
4K022DB02
4K022DB07
4K044AA06
4K044AB01
4K044BA06
4K044BA08
4K044BB03
4K044BB11
4K044BC02
4K044BC05
4K044BC14
4K044CA15
4K044CA21
5G307AA02
(57)【要約】
本発明は、表面に、電気伝導性に優れるとともに、耐食性と銅粒子との結合力に優れたニッケル金属層が形成された銅粒子を提供することを目的とする。上記のような目的を達成するために本発明では、前記第1層上に形成されて、ニッケルを含む第2層を含む、多層構造の銅粒子を提供することができる。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
銅粒子の表面に形成される酸化銀を含む第1層と、
前記第1層上に形成されて、ニッケルを含む第2層と、
を含む、
多層構造の銅粒子。
【請求項2】
前記銅粒子の形状は、球状、板状、デンドライト状、またはこれらの組み合わせからなる群から選択されるいずれかであり、前記銅粒子の粒度は、レーザ散乱方式の粒度分析機で分析するとき、D50が0.1~100μmの範囲である、
請求項1に記載の多層構造の銅粒子。
【請求項3】
前記第1層は、金属銀を更に含み、前記金属銀における銀元素に対する前記酸化銀における銀元素のモル比(Agx+/Ag(0<x≦3))が、10~100の範囲である、
請求項1に記載の多層構造の銅粒子。
【請求項4】
前記第1層は、錫を更に含む、
請求項1に記載の多層構造の銅粒子。
【請求項5】
前記第1層に含まれる銀の含量は、前記耐酸化銅粒子の全体重量の10~1,000ppmである、
請求項1に記載の多層構造の銅粒子。
【請求項6】
前記第2層は、前記ニッケルと共に燐を更に含む、
請求項1に記載の多層構造の銅粒子。
【請求項7】
前記第2層における前記燐は、0.1~13重量%である、
請求項6に記載の多層構造の銅粒子。
【請求項8】
(a)銅粒子の表面に酸化銀をコートする第1層の形成段階と、
(b)前記第1層上にニッケルを無電解めっきして、ニッケルを含む第2層を形成する段階と、
を含む、
多層構造の銅粒子の製造方法。
【請求項9】
上記(a)段階の前に、錫層を形成する段階を更に含む、
請求項8に記載の多層構造の銅粒子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面に、ニッケルコート層を有する多層構造の銅粒子に関し、特に、銅粒子の表面に、先に酸化銀を含む結合層を形成し、その後、緻密性と結合性とが向上したニッケル金属層が表面に形成されることによって、電気伝導性と耐酸化性とが向上した多層構造の銅粒子及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
導電性粒子は、電子材料に非常に広く使用されている。そのうち、銅粒子は、高い導電性を有しており、価格競争力も高いことから、種々の電子部品における電気伝導性を要するフィルム、接着剤、コートスラリーなどに様々に活用されている。
【0003】
ところが、これらの銅粒子は、銀に近い高い電気伝導度を有しており、値段は、銀に比べて非常に低いが、耐酸化性が落ちる問題がある。これらの低い耐酸化性による信頼性が落ちる問題により、銅粒子が適用できる分野は、非常に制限的である。
【0004】
したがって、表面に耐酸化性が高い、かつ、電気伝導性を有する保護コート層を形成することができれば、これらの低い信頼性の問題を解決することができるようになる。これらの保護コート層では、ニッケルまたは銀からなるコート層が適用される。
【0005】
これらのコート層における核心は、ピンホールや低い密度の保護コート層が形成されてはならないことであるが、保護コート層にピンホールがあるか密度が低いと、これにより、コアである銅粒子の急速な酸化が起こり得るからである。
【0006】
したがって、保護コート層を有する銅粒子における重要な点は、緻密な密度かつ欠陷のない保護コート層の形成にある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、表面に、電気伝導性に優れるとともに、耐食性と銅粒子との結合力に優れたニッケル金属層が形成された銅粒子を提供することを目的とする。
【0008】
本発明のさらに他の目的は、銅粒子の表面に、電気伝導性に優れるとともに、耐食性と銅粒子との結合力に優れたニッケル金属層を安価に形成することができる、複合銅粒子の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記のような目的を達成するために本発明では、銅粒子の表面に形成される酸化銀を含む第1層と、前記第1層上に形成されて、ニッケルを含む第2層と、を含む、多層構造の銅粒子を提供することができる。
【0010】
本発明の一実施例において、前記銅粒子の形状は、球状、板状、デンドライト状、またはこれらの組み合わせからなる群から選択されるいずれかであり、前記銅粒子の粒度は、レーザ散乱方式の粒度分析機で分析するとき、D50が0.1~100μmの範囲であってもよい。
【0011】
本発明の一実施例において、前記第1層は、金属銀を更に含み、前記金属銀における銀元素に対する前記酸化銀における銀元素のモル比(Agx+/Ag(0<x≦3))が10~100の範囲であってもよい。
【0012】
本発明の一実施例において、前記第1層は、錫を更に含んでいてもよい。
【0013】
本発明の一実施例において、前記第1層は、前記銅粒子の表面に形成される錫層と、前記錫層上に形成された酸化銀層と、を含んでいてもよい。
【0014】
本発明の一実施例において、前記第1層に含まれる銀の含量は、前記耐酸化銅粒子の全体重量の10~1,000ppmであってもよい。
【0015】
本発明の一実施例において、前記第1層は、前記銅粒子の表面における不連続的な島状であってもよい。
【0016】
本発明の一実施例において、前記第2層は、前記ニッケルと共に燐を更に含んでいてもよく、前記第2層における前記燐は、0.1~13重量%であってもよい。
【0017】
本発明による多層構造の銅粒子の製造方法は、(a)銅粒子の表面に酸化銀をコートする第1層の形成段階と、(b)前記第1層上にニッケルを無電解めっきして、ニッケルを含む第2層を形成する段階と、を含んでいてもよい。
【0018】
また、(a)段階において、常に酸化銀と共に錫をコートすることができる。
【0019】
また、上記(a)段階の前に、錫層を形成する段階を更に含んでいてもよい。
【発明の効果】
【0020】
本発明による多層構造の銅粒子は、安値でありながら電気伝導度と耐食性に優れて、電気伝導度を要する種々の電子部品に適用可能であり、表面金属層の結合力に優れて、適用される部品の軽量化と、導電性及び信頼性の向上を達成することができるようになる。
【0021】
また、本発明で提供する多層構造の銅粒子の製造方法により、安価の工程によって導電性及び信頼性に優れた多層構造の銅粒子の大量生産が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明による実施例と比較例による多層構造の銅粒子の走査電子顕微鏡のイメージである。
図2】本発明による一実施例における多層構造の銅粒子に対するX線光電子分光法(X-ray Photoelectron Spectroscopy,XPS)による分析結果を示す図である。
【0023】
発明を実施するため最善の形態
以下では、本発明の実施例について添付の図面を参照して、その構成及び作用を説明することとする。下記では、本発明を説明するにあたって、関連する公知の機能または構成に関する具体的な説明が本発明の要旨を曖昧にすると判断される場合には、その詳細な説明を省略する。また、ある部分がある構成要素を「含む」とするとき、これは、特に逆の記載がない限り、他の構成要素を除くものではなく、他の構成要素を更に含んでいてもよいことを意味する。
【0024】
銅粒子は、様々な形状とサイズの粒子を作ることができる。しかし、材料の特性上、耐酸化性、耐食性、耐化学性などは非常に低いことから、使用環境と時間の経過によって急速に電気伝導性が低下することを防ぐことができない。これを克服するために、表面に保護層として導電性金属層を形成すると、様々な形状とサイズの銅粒子に高い水準の耐酸化性などを付与することができるようになる。これらの保護層としてニッケルや銀が多く使用されるが、銀は、貴金属であって、高価である問題があり、ニッケルを保護層として形成しようとする試みが様々ある。
【0025】
一方、保護層としてニッケルが適用される場合には、ニッケル保護層がピンホールのような欠陷なしに緻密に形成されることが重要であるが、ピンホールのような欠陷があると、これを中心に急速に腐食が行われるからである。
【0026】
このために本発明では、銅粒子の表面に形成される酸化銀を含む第1層と、前記第1層上に形成されて、ニッケルを含む第2層と、を含む多層構造の銅粒子を提供することができる。
【0027】
本発明の発明者らは、ニッケル保護層を形成する前に、酸化銀を含む結合層が形成されると、最終のニッケル保護層の緻密性が向上し、銅粒子との結合力も増加することが分かるようになり、これから銅粒子の表面に直接にニッケルを含む保護層を形成するよりは、その間に酸化銀を含む結合層を形成することによって、ニッケル保護層がピンホールなしに緻密に形成される多層構造の銅粒子を開発することができるようになった。
【0028】
本発明におけるコアになる銅粒子は、様々な形状の粒子であってもよいが、球状、板状、デンドライト状、またはこれらの組み合わせからなる群から選択されるいずれかであってもよい。種々の産業分野で使用される銅粒子は、その適用される分野によって球状、板状、デンドライト状などを用いることができ、これらを互いに混合して用いることもできる。一方、これら粒子のサイズは、レーザ散乱方式の粒度分析機で分析するとき、D50が0.1~100μmの範囲であってもよいが、ここで、D50は、粒子の累積百分率が50%に至るときの当該粒度を意味する。D50を基準に銅粒子の粒度が0.1μm未満であると、粒子間の凝集が過度であり、取り扱いが難しくて、増加する比表面積によって表面へのニッケル層の形成が困難であるようになる。一方、100μmを超えると、粒子の重さが増加して、電子部品などに円滑に適用しにくいことがある。
【0029】
本発明において、酸化銀を含む第1層は、錫を更に含んでいてもよいが、錫は、酸化銀が円滑に銅粒子の表面に付着するように導くために使用される元素であって、水溶液でコーティング作業を行う場合、銀元素の銅粒子の表面への付着を助けるようになる。これらの錫は、酸化銀と共に第1層を構成することもでき、酸化銀を含む第1層と銅粒子の表面との間に形成されていてもよい。
【0030】
本発明において、酸化銀を含む第1層は、酸化銀と共に金属銀を更に含んでいてもよいが、金属銀が更に含まれると、第2層に含まれる金属であるニッケルとの結合をよりさらに強化することができる。酸化銀は、銅との結合を強化し、金属銀は、これらの酸化銀と強く結合されるとともに、同じ金属であるニッケルとの強い結合を提供することで、結果として、ニッケルを含む第2層と銅粒子との結合力をさらに強化させるようになる。
【0031】
このとき、第1層における金属銀の銀元素に対する酸化銀における銀元素のモル比(Agx+/Ag(0<x≦3))は、10~100の範囲であるのが好ましい。
【0032】
上述したように、金属銀を含むことが、酸化銀を含む第1層とニッケルを含む第2層との結合を強化するが、酸化銀における銀元素に比べて、金属銀における銀元素の割合が高すぎると、その分、酸化銀による第1層の銅粒子の表面との結合力が低下するため、好ましくない。よって、酸化銀の銀元素に対する金属銀における銀元素のモル比は、酸化銀における銀元素の割合がさらに高いように、10~100であるのが好ましい。これらのモル比の測定は、X線光電子分光法(X-ray Photoelectron Spectroscopy,XPS)で測定することができる。
【0033】
ここで、酸化銀における銀の酸化数は、+1~+3まで可能であり、非晶質相では、酸化数が定数でなくてもよいため、酸化銀における銀の酸化数は、0超かつ3以下であってもよい。
【0034】
また、第1層に含まれる銀の含量は、前記多層構造の銅粒子の全体重量の10~1,000ppmであってもよい。
【0035】
第1層に形成される金属銀または酸化銀は、一定含量以上であってこそ、第2層に満足できる程に結合力を提供することができ、多すぎると、工程コストが高くなるため、好ましくないからである。より好ましくは、10~500ppmであってもよい。
【0036】
また、本発明における第1層は、銅粒子の表面に不連続的に形成される島状であってもよい。第1層は、耐酸化性を付与する第2層にコアである銅粒子との結合力を強化させる層であって、不連続的な島状であるとしても、第2層に結合力を十分提供することができる。
【0037】
一方、第1層は、連続的なフィルム状であってもよいが、この場合、第1層は、銅粒子の表面積の最小50%以上を占めるようになる。連続的なフィルム状である場合にも、少なくとも粒子の表面積の50%以上であってこそ、十分な結合力を第2層に提供することができるからである。
【0038】
酸化銀を含む第1層上には、耐酸化性に優れた金属であるニッケルを含む第2層が形成される。ニッケルは、耐酸化性、耐化学性に優れるとともに、比較的に高い電気伝導性を有するため、多層構造の銅粒子に優れた電気伝導性と信頼性とを同時に有するようにする。
【0039】
これらのニッケルを含む第2層は、ニッケルだけでなく、燐を更に含んでいてもよいが、燐が含まれることで、電気伝導度は、やや低下するが、耐化学性と耐酸化性とが向上するため、信頼性が重要とされる部品に使用される場合には、第2層にニッケルと共に燐を含むのが好ましい。燐を含む場合、第2層における燐の含量は、0.1~13.0重量%であるのが好ましいが、低すぎると、所望の耐化学性と耐酸化性とが向上せず、13重量%を越える燐を含むと、十分な電気伝導性を得ることができないからである。
【0040】
一方、電気伝導性の側面からは、燐の含量は、低いのが有利であるため、電気伝導性が重要とされる分野では、ニッケル層における燐の含量は、0.1~6重量%であるのが好ましい。
【0041】
また、本発明では、(a)銅粒子の表面に酸化銀をコートする第1層の形成段階と、(b)前記第1層上にニッケルを無電解めっきする第2層の形成段階と、を含む多層構造の銅粒子の製造方法を提供することができる。
【0042】
銅粒子の表面には酸化銀を含む第1層を形成するが、酸化銀と共に錫を併せてコートすることができる。錫は、銅粒子の表面における酸化銀の結合力を高めることができるようになる。
【0043】
また、より精密な制御のため、銅粒子の表面に錫層を先に形成した後、酸化銀を含む第1層を形成することができる。
【0044】
酸化銀を含む第1層の形成は、pH8以上のアルカリ水溶液で行うことができる。酸化銀は、pH8以上のアルカリ雰囲気で良く形成されるからである。より好ましくは、pH8~10の範囲の水溶液で行うことができる。
【0045】
また、多層構造の銅粒子の製造方法において、(a)段階の後、(b)段階の前に、pH8~11であり、温度20~80℃である水溶液で前記酸化銀を含む第1層が形成された銅粒子を撹拌して、前記酸化銀の量を調節する後処理段階を更に含んでいてもよい。
【0046】
水溶液中で第1層を形成する場合、水溶液中の銀イオンが還元して、酸化銀でない金属銀として銅粒子の表面に付着していてもよい。これらの金属銀の割合が高すぎると、銅粒子と第2層との結合力が低くなり得るため、好ましくない。よって、酸化銀の含量を所望の水準に高めるために、適宜な温度のアルカリ水溶液で処理することによって、酸化銀の量を調節することができる。
【0047】
このように、酸化銀の量を調節した後、耐酸化性に優れたニッケルを含む第2層を形成することによって、導電性を付与するとともに、信頼性の高い多層構造の銅粒子を提供することができるようになる。
【発明を実施するための形態】
【0048】
以下では、本発明を十分理解するために、本発明の好ましい実施例を添付の図面を参照して説明する。
【0049】
本発明の実施例は、当該技術分野における通常の知識を有する者にとって本発明をより完全に説明するために提供されるものであり、下記の実施例は、様々な異なる形態に変形し得、本発明の範囲は、下記の実施例に限定されるものではない。返って、これら実施例は、本開示をさらに充実かつ完全にして、当業者に本発明の思想を完全に伝達するために提供されるものである。
【0050】
[実施例1]
脱イオン水100gに脱脂剤(製品名エースクリーン、日本オクノケミカル社)を20g投入して、60℃に昇温した。ここに、D50が20μmである球状の銅粒子を20g投入して、撹拌しながら30分間、銅粒子の表面に付着した有機物と不純物を除去する前処理を施した。その後、銅粒子を回収して、更に脱イオン水100gで撹拌して、3回洗浄した後に回収した。
【0051】
回収した銅粒子を脱イオン水100gに窒酸銀(AgNO)0.15gを溶解した窒酸銀溶液に投入して、撹拌した。このとき、28%濃度のアンモニア水を点滴方式で投入して、pHを9.1に調節した。
【0052】
温度は、40℃に維持して、1時間撹拌し、酸化銀層を形成した。1時間後、濾過回収した後、脱イオン水200gで撹拌して、3回洗浄した後に回収した。酸化銀層が形成された粉末を一部採取して、X線光電子分光法(X-ray Photoelectron Spectroscopy,XPS)による表面分析を施した。
【0053】
酸化銀層まで形成された粉末を回収し、無電解めっき法を用いてニッケルコート層を形成した。脱イオン水溶液300gに塩化ニッケル(NiCl・6HO)20g、酢酸ナトリウム(sodium acetate)10g、マレイン酸(Maleic acid)5g、還元剤である次亜リン酸ナトリウム(sodium hypophosphite)30g、酢酸鉛(lead acetate)3mlを含めて組成したニッケルめっき液に、酸化銀層まで形成された粉末を投入して撹拌し、70~90℃で、2時間、無電解めっきした。
【0054】
[実施例2]
銅粒子の表面に付着した有機物や不純物を除去する前処理は、実施例1と同様に行っており、その後、錫層を形成した。錫層は、銅粒子を、脱イオン水100gに塩化第一錫(SnCl・2HO)1.5gと塩酸(HCl35%溶液)1mlとを溶かした水溶液に投入して、30分間撹拌し、形成した。水溶液の温度を35℃に維持した。その後、酸化銀を含む第1層とニッケルを含む第2層の形成は、実施例1と同様に施した。
【0055】
[実施例3]
前処理と第1層の形成は、実施例1と同様に行った。その後、ニッケル層の形成は、脱イオン水溶液300gに塩化ニッケル(NiCl・6HO)20g、酢酸ナトリウム(sodium acetate)10g、アンモニア水3g、還元剤である次亜リン酸ナトリウム(sodium hypophosphite)10gとヒドラジン(Hydrazine)10g、酢酸鉛(lead acetate)1mlを含めて組成したニッケルめっき液に、酸化銀層まで形成された粉末を投入して撹拌し、40~60℃で、1時間、無電解めっきした。
【0056】
[比較例1]
実施例1と同様に銅粒子を前処理した。その後、酸化銀層を形成することなく、すぐに無電解めっきを施して、ニッケルを含む第2層を形成した。ニッケルの無電解めっきは、実施例1と同様に行った。
【0057】
[比較例2]
実施例1と同様、銅粒子の表面に酸化銀を含む第1層まで形成した。その後、水溶液にアスコルビン酸(Ascorbic acid)を投入して、表面にある酸化銀を金属銀状態に作り、その後、無電解めっきを施して、ニッケルを含む第2層を形成した。ニッケルの無電解めっきは、実施例1と同様に行った。
【0058】
このように作られた多層構造の銅粒子に対して、第1層を形成した後、酸化銀と金属銀との銀元素の割合の分析、ニッケルの含量及び燐の含量の分析、そして、走査電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope,SEM)によるコーティング状態の観察を行った。銀元素の割合は、第1層を形成した後、サンプルを採取して、XPSによって分析した。ニッケルの含量及び燐の含量は、誘導結合プラズマ質量分析法(Inductively Coupled Plasma Mass Spectrometer,ICP)による分析を行った。
【0059】
信頼性は、実施例と比較例によって作られた銅粒子をアクリルバインダーと一定量混合して、ポリイミドフィルム上に塗布し、乾燥した後、これを溶融した鉛上で30秒間維持した後、伝導度を測定するリフロー(reflow)テストによって評価した。
【0060】
その結果は、下記の表1に示した。ここで、ニッケルの含量は、全体の多層構造の銅粒子を基準にニッケル元素が占める重量%を示したものであり、燐の含量は、ニッケルを含む第2層における含量を重量%と示した。
【0061】
【表1】
【0062】
図1では、実施例による多層構造の銅粒子の走査電子顕微鏡のイメージを示す。図1(a)及び(b)は、それぞれ実施例1と実施例2によるサンプルの走査電子顕微鏡のイメージであり、図1(c)及び(d)は、比較例1及び比較例2によるサンプルの走査電子顕微鏡のイメージである。
【0063】
実施例1及び2によるサンプルは、いずれも緻密なコート層が形成されたものを示すが、中間酸化銀層のない比較例1の場合、緻密でないニッケル層が形成されていることが分かる。また、金属銀がほとんどである第1層が形成された場合、ニッケル層の形成が安定的に行われているが、その間にピンホールがあることが分かる。
【0064】
図2は、実施例2によるサンプルにおける第1層の酸化銀と金属銀との銀元素の割合を測定した結果である。XPSの結果、還元した状態の銀の割合と、酸化状態の銀の割合とのピークの割合によって測定することができるようになる。実施例2におけるこれらモル比(Agx+/Ag)は、92.4であった。
【0065】
一方、表1に示したように、耐食性は、リフローテストによって評価しているが、実施例1~3では、リフローテストの後にも、多層構造の銅粒子を用いたフィルムの抵抗は、良好であったが、コート層の形成が不安定である比較例1及び2では、抵抗が大きく増加し、保護層のない一般の銅粒子を用いたフィルムでは、抵抗が高すぎて、測定不可能であった。
図1(a)】
図1(b)】
図1(c)】
図1(d)】
図2
【手続補正書】
【提出日】2024-04-05
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
銅粒子の表面に形成される酸化銀を含む第1層と、
前記第1層上に形成されて、ニッケルを含む第2層と、
を含む、
多層構造の銅粒子。
【請求項2】
前記銅粒子の形状は、球状、板状、デンドライト状、またはこれらの組み合わせからなる群から選択されるいずれかであり、前記銅粒子の粒度は、レーザ散乱方式の粒度分析機で分析するとき、D50が0.1~100μmの範囲である、
請求項1に記載の多層構造の銅粒子。
【請求項3】
前記第1層は、金属銀を更に含み、前記金属銀における銀元素に対する前記酸化銀における銀元素のモル比(Agx+/Ag(0<x≦3))が、10~100の範囲である、
請求項1に記載の多層構造の銅粒子。
【請求項4】
前記第1層は、錫を更に含む、
請求項1に記載の多層構造の銅粒子。
【請求項5】
前記第層に含まれる銀の含量は、前記耐酸化銅粒子の全体重量の10~1,000ppmである、
請求項1に記載の多層構造の銅粒子。
【請求項6】
前記第2層は、前記ニッケルと共に燐を更に含む、
請求項1に記載の多層構造の銅粒子。
【請求項7】
前記第2層における前記燐は、0.1~13重量%である、
請求項6に記載の多層構造の銅粒子。
【請求項8】
(a)銅粒子の表面に酸化銀をコートする第1層の形成段階と、
(b)前記第1層上にニッケルを無電解めっきして、ニッケルを含む第2層を形成する段階と、
を含む、
多層構造の銅粒子の製造方法。
【請求項9】
上記(a)段階の前に、錫層を形成する段階を更に含む、
請求項8に記載の多層構造の銅粒子の製造方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図1
【補正方法】変更
【補正の内容】
図1
【手続補正3】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図2
【補正方法】変更
【補正の内容】
図2
【手続補正書】
【提出日】2024-08-28
【手続補正1】
【補正対象書類名】手続補正書
【補正対象項目名】手続補正2
【補正方法】変更
【補正の内容】
【手続補正2】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】全図
【補正方法】変更
【補正の内容】
図1
図2
【手続補正2】
【補正対象書類名】手続補正書
【補正対象項目名】手続補正3
【補正方法】削除
【補正の内容】
【国際調査報告】