(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-04
(54)【発明の名称】食材調理3Dプリンタ
(51)【国際特許分類】
A23P 30/20 20160101AFI20240927BHJP
B33Y 30/00 20150101ALI20240927BHJP
B33Y 10/00 20150101ALI20240927BHJP
A23L 5/00 20160101ALN20240927BHJP
【FI】
A23P30/20
B33Y30/00
B33Y10/00
A23L5/00 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024521368
(86)(22)【出願日】2022-09-21
(85)【翻訳文提出日】2024-05-28
(86)【国際出願番号】 EP2022076216
(87)【国際公開番号】W WO2023057212
(87)【国際公開日】2023-04-13
(32)【優先日】2021-10-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】594034072
【氏名又は名称】セブ ソシエテ アノニム
(71)【出願人】
【識別番号】594184698
【氏名又は名称】アンスティテュ ナシオナル ドゥ ルシェルシュ プール ラグリキュルテュール ラリモンタシオン エ レンビロンヌマン
(71)【出願人】
【識別番号】522237151
【氏名又は名称】アンスティテュート ナシオナル デ シアンス エ アンデュストリ デュ ヴィヴァン エ ド ランヴィロンヌマン
【氏名又は名称原語表記】INSTITUT NATIONAL DES SCIENCES ET INDUSTRIES DU VIVANT ET DE L’ENVIRONNEMENT
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ロイック ブランダン
(72)【発明者】
【氏名】マシュー レニエ
(72)【発明者】
【氏名】カミーユ ミション
(72)【発明者】
【氏名】ジャーナ ピエール
(72)【発明者】
【氏名】ヴァレリー ギュナール ランプロン
(72)【発明者】
【氏名】ローレナ マスベルナ
【テーマコード(参考)】
4B035
4B048
【Fターム(参考)】
4B035LC16
4B035LE07
4B035LP31
4B035LT20
4B048PE03
4B048PE08
4B048PM05
4B048PM14
4B048PS13
(57)【要約】
本発明は、少なくとも1つの食材(5)から食品調製物(52)を製造するための3Dプリンタ(1、2、3)に関し、3Dプリンタ(1、2、3)は、少なくとも1つの食材(5)を収容する少なくとも1つの容器(6)と、印刷表面(82)上に、食材(5)のストランド(51)を堆積させるように構成された、少なくとも1つの押出ノズル(7)とを備え、少なくとも1つの押出ノズル(7)は、ストランド(51)が、印刷表面(82)と接触する前に、ストランド(51)の全部または一部を、加熱することによって調理するように構成された調理要素(71)を備えることを特徴とする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの食材(5)から食品調製物(52)を製造するための三次元プリンタ(1、2、3)であって、前記三次元プリンタ(1、2、3)は、前記少なくとも1つの食材(5)を収容する少なくとも1つの容器(6)と、印刷表面(82)に、前記食材(5)のストランド(51)を堆積させるように構成された少なくとも1つの押出ノズル(7)とを備え、前記少なくとも1つの押出ノズル(7)は、前記ストランド(5)が前記印刷表面(82)に接触する前に、前記ストランド(5)の全部または一部を、熱することによって、調理するように構成された調理要素(71)を含むことを特徴とする三次元プリンタ(1、2、3)。
【請求項2】
請求項1に記載の三次元プリンタ(1、2、3)であって、前記調理要素(71)は、前記ストランド(51)の含水量を減少させて、前記ストランド(51)に所定の粘度を与え、前記ストランド(51)が、前記印刷表面(82)上で、その自重での保持を確実にすることを可能にするように構成されることを特徴とする三次元プリンタ(1、2、3)。
【請求項3】
請求項1または2に記載の三次元プリンタ(1、2、3)であって、前記調理要素(71)は、オーム加熱、輻射加熱、熱風加熱、および、伝導加熱のうちから選択された技術を使用することを特徴とする三次元プリンタ(1、2、3)。
【請求項4】
請求項1-3のいずれか一項に記載の三次元プリンタ(1、2、3)であって、前記少なくとも1つの容器(6)は、その初期温度よりも高い温度まで前記食材の温度を上昇させるための少なくとも1つの予熱要素(61)を備え、前記少なくとも1つの食材(5)の押出後の調理時間の減少を可能にすることを特徴とする三次元プリンタ(1、2、3)。
【請求項5】
請求項4に記載の三次元プリンタ(1、2、3)であって、前記予熱要素(61)は、粘度の変化を限定することによって前記食材(5)の含水量を減少させ、前記少なくとも1つの食材(5)の押出しの可能性を保持することができることを特徴とする三次元プリンタ(1、2、3)。
【請求項6】
請求項4または5に記載の三次元プリンタ(1、2、3)であって、前記予熱要素(61)は、オーム加熱、輻射加熱、および、伝導加熱のうちから選択された技術を使用することを特徴とする三次元プリンタ(1、2、3)。
【請求項7】
請求項1-6のいずれか一項に記載の三次元プリンタ(1、2、3)であって、前記三次元プリンタ(1、2、3)は、前記少なくとも1つの調理要素(71)に加えて、前記印刷表面(82)上の前記食品調製物(52)を加熱するように構成された、少なくとも1つの追加の加熱要素(81、81’、81”)を備えることを特徴とする三次元プリンタ(1、2、3)。
【請求項8】
請求項7に記載の三次元プリンタ(1、2、3)であって、前記追加の加熱要素(81、81’、81”)は、伝導加熱、輻射加熱、熱風加熱のうちから選択された技術を使用することを特徴とする三次元プリンタ(1、2、3)。
【請求項9】
請求項7または8に記載の三次元プリンタ(1、2、3)であって、前記追加の加熱要素(81、81’、81”)は、その一つの面が前記印刷表面(82)に対応するトレイ(8)に一体化されるか、前記印刷表面(82)に対向して前記トレイ(8)に対向する側部に配置されることを特徴とする三次元プリンタ(1、2、3)。
【請求項10】
請求項1-9のいずれか一項に記載の三次元プリンタ(1、2、3)であって、前記三次元プリンタ(1、2、3)は、連続した態様で前記食材(5)の前記ストランド(5)を製造するように構成された押出装置(9)を備えることを特徴とする三次元プリンタ(1、2、3)。
【請求項11】
請求項1-10のいずれか一項に記載の三次元プリンタ(1、2、3)であって、前記三次元プリンタ(1、2、3)は、前記印刷表面の少なくとも一部分を含む内部空間を画定する筐体(41)を備え、前記筐体(41)は、前記筐体(41)の前記内部空間の温度の制御を可能にするように構成されることを特徴とする三次元プリンタ(1、2、3)。
【請求項12】
請求項11に記載の三次元プリンタ(1、2、3)であって、前記筐体(41)の前記内部空間は、前記少なくとも1つの押出ノズル(7)の少なくとも一部を含むことを特徴とする三次元プリンタ(1、2、3)。
【請求項13】
請求項1-12のいずれか一項に記載の三次元プリンタ(1、2、3)を実施する、食品調製物(52)の製造方法。
【請求項14】
請求項13に記載の製造方法であって、前記製造方法は、調理要素(71)、および/または、少なくとも1つの追加の予熱要素(81、81’、81”)、および/または、少なくとも1つの予熱要素(61)が、所定の順序に従い、前記少なくとも1つの食材(5)、または、前記食品調製物(52)に、温度勾配を生じさせる加熱工程を備えることを特徴とする製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、三次元プリンタの分野に関し、より具体的には、食品調製物を製造するための三次元プリンタ、および、そのような三次元プリンタを実施して食品調製物を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
食材は、例えば、トマトソース、ケーキ生地、チョコレート、アボカドピューレ、または、ピザ生地のような、特にそれを構成する材料によって特徴づけられる、食用材料を指す。
【0003】
食材は、また、食感によって特徴づけられる。より具体的には、食材の食感は、その密度、その粘度、および、その均一性を含む、食材の物理的品質に対応する。したがって、同じ食材は、複数の食感を有し得る。例えば、バターは、0℃では硬い食感を、20℃では粘性の食感を有し、ビスケットは焼く前は粘性の、焼いた後はサクサクした食感を有する。
【0004】
最後に、食材は、調理レベルによって特徴づけられる。本明細書において、調理は、一方では、水の少なくとも一部の除去および化学反応によって、材料を改変し、他方では、食材の食感を改変する、食材の加熱に存する。調理レベルは、生から調理済みまでの範囲である。
【0005】
本明細書において、食材は、三次元プリンタによる印刷に適する。したがって、それは、熱間または冷間押出プロセスに適した粘度を有する食感を有する。
【0006】
食品調製物は、その形状での少なくとも1つの食材の提供、および、その調理に対応する。食品調製物は、定義された幾何学的形状と所定の調理レベルを有する。食品調製物は、いくつかの食材を備え得る。もちろん、食品調製物は、また、それを構成する物質、および、食感によって特徴づけられる。
【0007】
本発明は、糊化プロセス後の粘度の増加を可能にするのに十分な量で、水およびデンプンを含む食材に対する特別の用途を見出す。
【0008】
特許文献1に記載されているように、食材を提供するために、三次元プリンタを使用することが知られる。より具体的には、この文献は、食材を収容する容器と、食材のストランドを印刷表面上に堆積させるように構成された押出ノズルとを備える、三次元プリンタを開示する。三次元プリンタは、また、印刷表面上に堆積させられたストランド、したがって、食品調製物の全体を調理することを可能にする装置を備える。
【0009】
この三次元プリンタによって引き起こされる欠点は、印刷表面上への食材のストランドの堆積後に食材を調理することにある。したがって、複雑な三次元形状、すなわち、例えば、別の1つのストランドの上に載っていない1つのストランドを含む、複雑な三次元形状、および、食品調製物の異なる食感を得るために、食材の調理を細かく調節することは不可能である。さらに、印刷表面と接触している食材のストランドは十分に調理されるが、別のストランドの上に堆積させられた食材のストランドは、ほとんど調理されないであろう。したがって、食品調製物の調理は、不均一である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、少なくとも1つの食材から食品調製物を製造する三次元プリンタを提供することによって、上述の欠点の全部または一部を克服することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
三次元プリンタは、少なくとも1つの食材を含む少なくとも1つの容器と、食材のストランドを印刷表面上に堆積させるように構成された、少なくとも1つの押出ノズルとを備え、少なくとも1つの押出ノズルは、ストランドが印刷表面と接触する前に、ストランドの調理の全部または一部を、加熱することによって実行するように構成された調理要素を含む。
【0013】
容器は、食材が配置される密閉された内部容積を備える。例えば、容器は、工業的に事前充填された、または、空の、および、剛性の、または、柔軟な、さまざまな形状を有する、容器またはパッケージであり得る。
【0014】
好ましくは、印刷表面は実質的に平面である。
【0015】
押出ノズルは、食材が、押出ノズルを通って容器から流出することを可能にするように容器に接続される。押出ノズルの長さと直径は、あらかじめ決められ、ストランドの直径を決定する。
【0016】
押出ノズルは、印刷表面と平行に延びる印刷平面内で移動可能である。
【0017】
押出ノズルおよび/または印刷表面は、印刷平面に垂直な軸に沿って移動可能である。
【0018】
調理要素は、主に食材の粘稠度を変更することを可能にする。
【0019】
調理要素は、ストランドが印刷表面上に堆積させられる前に、ストランドの調理の少なくとも一部を、加熱によって実行するように、押出ノズルに配置される。したがって、押し出し前の食材、および、印刷表面上に堆積させられた食材は、同じ調理レベルを有さない。調理要素は、例えば、押出ノズルの構成材料に組み込まれた抵抗線の形態で、押出ノズル内により正確に配置されるか、または、押出ノズルの出口に配置され得る。後者の場合、ストランドは形成されるが、まだ、印刷表面に接触していない。
【0020】
調理要素の特定の位置決めは、食材のストランドの一部に局所的な調理を適用することを可能にする。したがって、ストランドに沿って食材の調理レベルを変えることが可能である。例えば、第1の長さのストランドを第1のレベルで調理し、次に、第2の長さのストランドを第2のレベルで調理することが可能であり、第1と第2の調理レベルは異なる。
【0021】
したがって、食材の調理レベルは、特に正確である。これは、その食材が異なる調理レベルを有する食品調製物を得ることの利点を有する。これは、また、本発明で説明されるような調理要素なくしては作製することが不可能であろう、複雑な三次元形状を有する食品調製物を製造することを可能にする。
【0022】
本発明はまた、単独または組み合わせて考慮される、以下の特徴のうちの1つまたは複数を有し得る。
【0023】
一実施形態によれば、調理要素は、ストランドの押出速度に関して、低い慣性を有する。
【0024】
したがって、調理要素は高い反応性を有し、ストランドの局所的な調理を生成する。
【0025】
一実施形態によれば、調理要素は、押出ノズルとともに移動可能である。
【0026】
一実施形態によれば、調理要素は、印刷表面と平行に延びる印刷平面内で押出ノズルの周りで移動可能である。
【0027】
したがって、調理要素は、押出ノズルの変位に従って、適切に位置決めされ得る。言い換えれば、調理要素は、常にストランドの堆積に最も近接して配置される。
【0028】
一実施形態によれば、調理要素は、ストランドの調理を均一化するために押出ノズルの周りに回転する。
【0029】
一実施形態によれば、調理要素は、ストランドの含水量を減少させて、ストランドに所定の粘度を与えるように構成され、所定の粘度は、ストランドが、印刷表面上で、その自重での保持を確実にすることを可能にする。
【0030】
調理要素は、ストランド状に堆積させられた食材を乾燥すること、したがって、調理レベルおよび所定の食感を得ることを可能にする。
【0031】
一実施形態によれば、調理要素は、オーム加熱、輻射加熱、熱風加熱、および、伝導加熱の中から選択される技術を使用する。
【0032】
オーム加熱は、電流を流すことによって食材に熱を生起させることからなる、食材を熱処理するプロセスである。オーム加熱は、食品の電気抵抗特性およびジュール効果に基づく。
【0033】
輻射加熱は、赤外線、レーザー、マイクロ波放射を含む、あらゆる種類の輻射を使用し得る。
【0034】
熱風加熱は、ストランドを熱風で囲むことから成る。
【0035】
伝導加熱は誘導加熱であり得る。
【0036】
一実施形態によれば、少なくとも1つの容器は、食材の温度を、その初期温度よりも高い温度まで上昇させるための、少なくとも1つの予熱要素を備え、少なくとも1つの食材の押出後の調理時間の短縮を可能にする。
【0037】
補足的に、予熱要素は、食材の含水量、したがって、食材の粘度を変更することを可能にする。
【0038】
予熱後、食材は、その押し出しを可能にする食感を有するであろう。
【0039】
予熱要素の特定の位置決めは、容器内の食材の全体的な加熱を適用することを可能にし、調理要素によるより迅速な調理を可能にする。
【0040】
糊化プロセス後に粘度の増加を可能にするのに十分な量で、水とデンプンを含む食材の場合、この積極的な予熱は、材料の変容プロセスの開始の第1の段階を形成する。これは、調理要素によって供給される加熱によって引き起こされる、その後の変容の第2の段階中に起こる、デンプンの糊化プロセスを開始するのに必要とされる、熱動力学を加速することを可能にする。物質の変容プロセスを準備する第1の段階は、印刷表面上でのストランドの良好な保持を確実にするには十分でないが、一方、糊化プロセスが生ずる第2の段階は、印刷表面上での、ストランドのこの良好な保持を可能にする。物質の変容は、食品の物理化学的構造が変更されることを意味する。
【0041】
調理要素および予熱要素は、食品調製物の調理レベルおよび所望の食感を完全に得るために、決定された電力に従って、連続して、または、同時に使用され得る。
【0042】
一実施形態によれば、予熱要素は容器とともに移動可能である。
【0043】
一実施形態によれば、予熱要素は、粘度の変化を制限しながら食材の含水量を減少させ、少なくとも1つの食材を押し出すことの可能性を維持することができるように構成される。
【0044】
したがって、予熱要素は、食材がストランドの形で押し出される前に、食材を乾燥させること、および、食品調製物の調理レベルおよび所定の食感を得ることを可能にする。
【0045】
一実施形態によれば、予熱要素は、オーム加熱、輻射加熱、および、伝導加熱の中から選択される技術を使用する。
【0046】
輻射加熱は、赤外線、レーザー、マイクロ波放射を含む、あらゆる種類の放射を使用し得る。
【0047】
伝導加熱は、食材に接触する、誘導加熱または抵抗線であり得る。
【0048】
一実施形態によれば、少なくとも1つの調理要素に加えて、三次元プリンタは、印刷表面上で、印刷された食品調製物を加熱するように構成された、少なくとも1つの追加の加熱要素を備える。
【0049】
追加の加熱要素は、食品調製物の温度を維持すること、および/または、食品調製物の調理レベル、したがって、その食感を変更することを可能にする。
【0050】
追加の加熱要素は、印刷表面上に堆積させられた食品調製物を加熱するように配置される。したがって、追加の加熱要素は、食品調製物の少なくとも1つの領域に熱を加える。追加の加熱要素は、調理要素よりも目標を定めた作用を有さない。
【0051】
追加の加熱要素は、食品調製物の内部に温度勾配を生じさせることを可能にする。
【0052】
調理要素、予熱要素、および、追加の加熱要素は、食品調製物の調理レベルと望ましい食感を完全に得るために、順番にまたは同時に、および、決定された電力に従って、使用され得る。
【0053】
一実施形態によれば、追加の加熱要素は、伝導加熱、輻射加熱、または、熱風加熱の中から選択される技術を使用する。
【0054】
熱風加熱は、食品調製物の近く、または、食品調製物の上に熱風を吹き付けることからなる。
【0055】
伝導加熱は、誘導加熱から成り得る。
【0056】
一実施形態によれば、追加の加熱要素は、その一つの面が印刷表面に対応するトレイに組み込まれるか、印刷表面に対向して、トレイに対向する側部に配置される。
【0057】
三次元プリンタのトレイは、押出ノズルに面する。ストランド、つまり食品調製物は、押出ノズルとトレイの間で、印刷表面上に堆積させられる。
【0058】
加熱要素がトレイに組み込まれると、加熱は、食品調製物への伝導によって行われる。
【0059】
一実施形態によれば、追加の加熱要素は、押出ノズルとともに移動可能である。
【0060】
一実施形態によれば、追加の加熱要素は、印刷表面と平行に延びる印刷平面内で、押出ノズルの周りを回転する。
【0061】
一実施形態によれば、追加の加熱要素は、印刷表面に対して固定される。
【0062】
一実施形態によれば、調理要素は、追加の加熱要素に対応する。
【0063】
一実施形態によれば、三次元プリンタは、食品のストランドを連続的に作製するように構成された押出装置を備える。
【0064】
押出装置は、食材を容器から押出ノズル内に通過させて、食材の連続ストランドを形成することを可能にする。
【0065】
あるいは、押出装置は、不連続な態様、すなわち、滴状の態様で、食材のストランドを製造するように構成される。
【0066】
押出装置は、プランジャ、ポンプ、ウォームねじ、または、食品を取り出すために変形可能な密閉容器を押すように構成された変形要素であり得る。
【0067】
一実施形態によれば、三次元プリンタは、印刷表面の少なくとも一部を含む内部空間を画定する筐体を備え、筐体は、筐体の内部空間の温度の制御を可能にするように構成される。したがって、筐体は、印刷が実行される特定の温度条件を完全に制御することを可能にする。
【0068】
一実施形態によれば、筐体の内部空間は、少なくとも1つの押出ノズルの少なくとも一部を含む。
【0069】
一実施形態によれば、プリンタは、また、印刷表面上に配置され、少なくとも1つの食品調製部を含む内部空間を画定するベルを備え、ベルは、ベルの内部空間の温度を制御できるように構成される。
【0070】
本発明は、また、本発明による三次元プリンタを実施して、食品調製物を製造する方法に関する。
【0071】
一実施形態によれば、方法は、事前に定義された順序に従って、調理要素、及び/又は、少なくとも1つの追加の加熱要素、及び/又は、少なくとも1つの予熱要素が、少なくとも1つの食材に温度勾配を生成する、加熱工程を備える。
【0072】
本発明による方法は、食品調製物の完全に制御された調理を得ることを可能にする。
【0073】
製造方法は、さらに、容器が食材で充填される、充填工程を備える。食材は、使用者によって上流で製造された調製物、または、工業的な調製物であり得る。
【0074】
食材が、糊化プロセス後の粘度の増加を可能にするのに十分な量の、水とデンプンを含む場合、製造方法は、予熱要素によって実行される物質の変容の第1の段階と、調理要素によって実行される、第2の糊化段階とを備える。
【0075】
本発明は、非限定的な例として与えられ、添付の概略図を参照して説明される、本発明によるいくつかの実施形態に関する、以下の説明により、よりよく理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【
図1】第1の実施形態による三次元プリンタの概略図である。
【
図2】第2の実施形態による三次元プリンタの概略図である。
【
図3】第3の実施形態による三次元プリンタの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0077】
以下の説明は、構造的または機能的に同一または類似の要素または部材が同一の参照番号を有する、
図1から
図3を参照して、本発明による装置の3つの実施形態をカバーする。
【0078】
本発明による三次元プリンタ1、2、3は、食材5から食品調製物52を製造するように設計される。各実施形態において、三次元プリンタ1、2、3は、容器6、押出ノズル7、調理要素71、予熱要素61、追加の加熱要素81、81’、81“、押出装置9、および、トレイ8を備える。
【0079】
容器6は、食材5が配置される密閉された内部容積を備える。容器6は、任意のタイプのものであり得る。図では、容器は、事前充填されたシリンダである。
【0080】
トレイ8は、印刷表面82に対応する実質的に平坦な表面を有する。
【0081】
押出ノズル7は、食材5の流れを可能とするように容器6に接続される。押出ノズル7の長さと直径は、予め定められる。押出ノズル7は、食品調製物52を形成するよう、印刷表面82上に、食材5のストランド51を堆積させるように構成される。
【0082】
押出ノズル7は、印刷表面82に平行に延びる印刷平面内で移動可能である。押出ノズル7および/またはトレイ8は、印刷平面および印刷表面82に平行な軸に沿って移動可能である。
【0083】
押出装置9は、食材5を容器6から押出ノズル7内に通過させ、食材5のストランド51を連続的に形成することを可能にする。
【0084】
調理要素71は、オーム加熱、輻射加熱、熱風加熱、または、伝導加熱であり、ストランド51が印刷表面82と接触する前に、ストランド51の調理の全部または一部を、加熱によって調理するように構成される。調理要素71は、ストランド51が印刷表面82上に堆積させられる前に、ストランド51の調理の少なくとも一部を、加熱することによって実行するように、押出ノズル7の出口に配置される。
【0085】
調理要素71は、押出ノズル7とともに移動可能であり、印刷平面内で押出ノズル7の周りを回転し得る。
【0086】
調理要素71は、食材5の水分含有量を減少させてストランド51に所定の粘度を与え、ストランド51が、印刷表面82上での、その自重による保持を確実にすることを可能にする。
【0087】
予熱要素61は、オーム加熱、輻射加熱、熱風加熱、または、伝導加熱であり、これは、総印刷時間を短縮させ得る。実際、予熱要素61は、食材を初期温度から目標予熱温度に移行させ、次いで、食材は、その押出後に、予熱温度から調理温度に移行する。
【0088】
さらに、予熱要素61は、食材の含水量を減少させるように構成され、一方で、少なくとも1つの食材を押出す可能性を維持することができるように、粘度の変化を制限する。
【0089】
予熱要素61は、容器6とともに移動可能である。
【0090】
予熱要素61は、調理要素71よりも多くの熱量を食材に伝達するように配置される。実際、予熱要素61は容器6に取付けられ、容器6は、容器6内に収容される食材全体と交換表面を共有し、この交換表面は、調理要素71と、押出ノズル7への食材の通過で、印刷表面82上に堆積させられるストランド51を形成する、食材の一部のみとの間で共有される交換表面よりもはるかに大きい。
【0091】
糊化プロセス後に粘度の増加を可能にするのに十分な量の水とデンプンを含む食材の場合、容器6内に収容される食材全体に対する予熱要素61の作用は、物質の変容のプロセスを準備する、第1の段階を開始することを可能にする。食材の一般的な予熱のこの第1の段階に、押出ノズル7を通過する食材に含まれるデンプンの糊化を生成する、第2の局所調理段階が続く。したがって、デンプンの糊化プロセスにつながる熱動力学が加速される。一般的な予熱の第1の段階は、十分な粘度を維持しながら、物質の変容プロセスを準備し、容器からの食材の押出しを可能にし、一方、局所的な調理の第2の段階は、押し出されたストランドに機械的特性を与え、それ自身の重み、または、上層の重みによって変形することなく、印刷表面82上に堆積させられることを可能にする、糊化プロセスを開始するであろう。
【0092】
一般に、容器6内で糊化プロセスを開始しないように、予熱温度は、50℃を超えるべきではない。一方、押出ノズル7に位置づけられる第2の調理段階中の調理温度は、食材に含まれるデンプンを完全な糊化を確実にするために、80℃と85℃の間に構成されるべきである。
【0093】
予熱要素61および調理要素71の使用は、組み合わせられて、押出前および押出中に予熱を実行するか、または、押出前のみに予熱を実行し得る。押出前および押出中の予熱は、容器内に収容された食材を、まだ糊化段階に達することのない、材料の変容状態を保存することを可能にする、予熱温度に保ち、押出ノズル7を通る食材の通過時の糊化動力学を最適にするという利点を有する。
【0094】
追加の加熱要素81、81’、81”は、印刷表面82上に印刷された食品調製物52を加熱するように構成される。したがって、追加の加熱要素81、81’、81”は、食品調製物52の少なくとも1つの領域に熱を加える。追加の加熱要素81、81’、81”は、調理要素71よりも目標を定めた作用を有さない。
【0095】
追加の加熱要素81、81’、81”は、食品調製物52の内部に温度勾配を誘導することを可能にする。
【0096】
追加の加熱要素81、81’、81”は、食品調製物52の温度を維持し、および/または、食品調製物52の調理レベル、したがってその食感を変更することを可能にする。
【0097】
さらに、第1の実施形態では、三次元プリンタ1は、また、筐体41と、フレーム4とを備える。
【0098】
筐体41は、印刷表面82の全部または一部を含む内部空間を画定する。筐体41は、筐体41の内部空間の温度を制御することができるように構成される。
【0099】
さらに、筐体41の内部空間は、少なくとも1つの押出ノズル7の少なくとも一部、または容器6の全体を備える。
【0100】
フレーム4は、筐体41、容器6、押出ノズル7、調理要素71、および、トレイ8を支持する。
【0101】
第1の実施形態では、追加の加熱要素81は、トレイ8に組み込まれた、伝導加熱である。
【0102】
第2の実施形態では、追加の加熱要素81’は、押出ノズル7とともに移動可能な、熱風ヒータ811である。
【0103】
第3の実施形態では、追加の加熱要素81”は、押出ノズル7とともに移動可能な、輻射ヒータである。
【0104】
食品調製物52を製造する方法は、本発明による三次元プリンタ1、2、3を実行することにある。
【0105】
製造方法は、さらに、
-容器6が食材5を充填される、充填工程と、
-食材5が押し出され、調理要素71、および/または、追加の加熱要素81、81’、81”、および/または、予熱要素61が、所定の順序に従って、食材5内に温度勾配を誘導する、加熱工程と、を備える。
【0106】
調理要素71、予熱要素61、および、追加の加熱要素81、81’、81”は、調理のレベルおよび食品調製物52の所望の食感を完全に得るために、決定された電力に従って、順番に、または、同時に使用され得る。
【0107】
したがって、食品調製物52の調理レベルは、特に正確であり、その食材が、異なる調理レベルを有する、食品調製物を得ることが可能である。
【0108】
当然のことながら、本発明は、説明され、添付の図面に表された、実施形態に限定されない。本発明の範囲から逸脱することなく、特に様々な要素の構成に関して、または、技術的等価物による置換によって、修正が依然として可能である。
【国際調査報告】