IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ イザール エアロスペース ソシエタス エウロペアの特許一覧

<>
  • 特表-再使用可能ロケットステージ 図1
  • 特表-再使用可能ロケットステージ 図2
  • 特表-再使用可能ロケットステージ 図3
  • 特表-再使用可能ロケットステージ 図4
  • 特表-再使用可能ロケットステージ 図5
  • 特表-再使用可能ロケットステージ 図6
  • 特表-再使用可能ロケットステージ 図7
  • 特表-再使用可能ロケットステージ 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-04
(54)【発明の名称】再使用可能ロケットステージ
(51)【国際特許分類】
   B64G 1/00 20060101AFI20240927BHJP
【FI】
B64G1/00 B
B64G1/00 250
B64G1/00 200
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024521759
(86)(22)【出願日】2022-10-07
(85)【翻訳文提出日】2024-06-07
(86)【国際出願番号】 EP2022077888
(87)【国際公開番号】W WO2023057606
(87)【国際公開日】2023-04-13
(31)【優先権主張番号】21201522.6
(32)【優先日】2021-10-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524133295
【氏名又は名称】イザール エアロスペース ソシエタス エウロペア
【氏名又は名称原語表記】Isar Aerospace SE
(74)【代理人】
【識別番号】100122426
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 清志
(72)【発明者】
【氏名】ダロノー、アレクサンドル
(57)【要約】
本発明は、多段式宇宙打上げロケット(3)のためのロケットステージ(1)に関し、メインエンジン(5)を含み、ロケットステージ(1)が地表に戻るように宇宙打上げロケット(3)の残りの部分からステージ分離するように構成され、ロケットステージ(1)は、圧力タンク(9)からの揚力ガスを保持するための膨張式船体(7)と、膨張ユニット(11)と、ロケットステージ(1)に推力および姿勢制御を与える推進・操舵ユニット(13)と、ステージ分離後に膨張ユニット(11)を制御することによって船体(7)の膨張を開始し、推進・操舵ユニット(13)を制御してロケットステージ(1)を地表の所定の着陸地点まで操縦するように構成された制御ユニット(15)、とを備えている。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多段式宇宙打上げロケット(3)のためのロケットステージ(1)であって、
前記ロケットステージ(1)は、前記宇宙打上げロケット(3)の地表からのリフトオフのための推力を提供するためのメインエンジン(5)を備え、前記ロケットステージ(1)は、前記宇宙打上げロケット(3)が宇宙に向かって飛び続け、前記ロケットステージ(1)が前記地表に戻るように、前記リフトオフ後の上昇中に前記宇宙打上げロケット(3)の残りの部分からステージ分離するように構成され、前記ロケットステージ(1)は、以下:
-前記ロケットステージ(1)に取り付けられた圧力タンク(9)から揚力ガスを受け取り保持するための膨張式船体(7)と、
-前記船体(7)を前記揚力ガスで膨張させる膨張ユニット(11)と、
-前記船体(7)が少なくとも部分的に膨張している間、前記ロケットステージ(1)に推力と姿勢制御を提供する推進・操舵ユニット(13)と、
-前記膨張ユニット(11)および前記推進・操舵ユニット(13)を制御する制御ユニット(15)と、
を備えることを特徴とし、
ここで、前記制御ユニット(15)は、ステージ分離後の所定の条件が満たされたときに、前記膨張ユニット(11)を制御して前記船体(7)の膨張を開始し、前記船体(7)に空気静力学的揚力を発生させるための前記揚力ガスを充填して前記船体(7)の容積を増大させ、前記推進・操舵ユニット(13)を制御して、降下中に前記船体(7)が少なくとも部分的に前記揚力ガスで充填されている間に前記ロケットステージ(1)を前記地表の所定の着陸地点まで降下させるように操縦するように構成されている、前記ロケットステージ(1)。
【請求項2】
前記膨張ユニット(11)は、前記船体(7)によって囲まれた前記容積内で、前記揚力ガスを周囲の大気からの空気と交換するための交換ユニット(17)を備えており、前記制御ユニット(15)は、前記ロケットステージ(1)の高度が低下するにつれて空気と交換される前記揚力ガスの量が増えるように、前記揚力ガスの空気への交換を開始し実行するように前記交換ユニット(17)を制御するように構成されている、
請求項1に記載のロケットステージ(1)。
【請求項3】
前記制御ユニット(15)は、前記船体(7)によって囲まれた前記容積から前記揚力ガスを放出し、前記船体(7)を少なくとも部分的に格納させて前記船体(7)によって囲まれた前記容積を収縮させるように構成されており、前記ロケットステージ(1)の高度が低下するにつれて、前記船体(7)によって囲まれた前記容積が減少する、
請求項1~請求項2のいずれか一項に記載のロケットステージ(1)。
【請求項4】
前記推進・操舵ユニット(13)は、少なくとも1つの操舵可能なプロペラ又はダクト付きファンを備えている、
請求項1~請求項3のいずれか一項に記載のロケットステージ(1)。
【請求項5】
前記ロケットステージ(1)は、地球に対する前記ロケットステージ(1)の速度を減少させるための減速システム(19)を備えており、前記制御ユニット(15)は、ステージ分離中またはステージ分離後であって前記船体(7)の膨張前に前記減速システム(19)の作動を開始するように構成されている、
請求項1~請求項4のいずれか一項に記載のロケットステージ(1)。
【請求項6】
前記減速システム(19)は、空気抵抗を発生させる装置、特にパラシュートで構成されている、
請求項5に記載のロケットステージ(1)。
【請求項7】
前記空気抵抗を発生させる装置が、可変の取付点において前記ロケットステージ(1)に取り付けられており、前記取付点が、前記ロケットステージ(1)の長手方向軸線に沿って移動可能又は再配置可能であり、前記制御ユニット(15)は、前記取付点を、速度ベクトルに対して前記ロケットステージ(1)の後部の初期位置から、前記船体(7)が膨張する前の前記ロケットステージ(1)の重心を構成する前記ロケットステージ(1)の横断面に向かって移動又は再配置するように構成され、前記船体(7)が膨張する前又は膨張している間に、前記ロケットステージ(1)の本体が、前記ロケットステージ(1)の前記長手方向軸線に対して空気力学的迎え角がゼロの姿勢から水平姿勢になるようにする、
請求項6に記載のロケットステージ(1)。
【請求項8】
前記空気抵抗を発生させる装置が、少なくとも2つの力伝達装置を介して取り付けられており、前記船体(7)の膨張が開始されるときの前記ロケットステージ(1)の速度ベクトルに対して、少なくとも2つの前記力伝達装置のうちの第1の力伝達装置は前記ロケットステージ(1)の後端部に取り付けられており、少なくとも2つの前記力伝達装置のうちの第2の力伝達装置は前記ロケットステージ(1)の前端部に取り付けられており、前記力伝達装置は、前記空気抵抗を発生させる装置と前記ロケットステージ(1)の本体との間に抗張力を提供することができ、少なくとも2つの前記力伝達装置のうちの少なくとも前記第2の力伝達装置は、長さを変更することができ、前記制御ユニット(15)は、前記ロケットステージ(1)の本体が、前記船体(7)が膨張する前に前記ロケットステージ(1)の長手方向軸線に対して空気力学的迎え角がゼロの姿勢から水平姿勢になるように、前記少なくとも2つの力伝達装置のうちの前記第2の力伝達装置を格納させるように構成されている、
請求項6に記載のロケットステージ(1)。
【請求項9】
完全に膨張した前記船体(7)は、空気力学的に安定化する尾翼からなる軟式飛行船の形状を有する、
請求項1~請求項8のいずれか一項に記載のロケットステージ(1)。
【請求項10】
少なくとも部分的に膨張した前記船体(7)によって囲まれた前記容積内の前記揚力ガスによって生成される前記空気静力学的揚力が、ある時点において、前記ロケットステージ(1)に作用する重力の力と少なくとも同じ強さであり、前記制御ユニット(15)が、降下前または降下中に、海抜高度が一定または増加する巡航飛行を行うように前記推進・操舵ユニット(13)を制御するように構成されている、
請求項1~請求項9のいずれか一項に記載のロケットステージ(1)。
【請求項11】
少なくとも部分的に膨張した前記船体(7)によって囲まれた前記容積内の前記揚力ガスによって発生する前記空気静力学的揚力は、前記ロケットステージ(1)の降下する高度の少なくとも最初の80%において、前記ロケットステージ(1)に作用する重力の力よりも小さい、
請求項1~請求項9のいずれか一項に記載のロケットステージ(1)。
【請求項12】
前記制御ユニット(15)は、前記ロケットステージ(1)を、メインエンジンカットオフを行うことによってステージ分離後に弾道飛行に誘導し、前記弾道飛行後に減速フェーズに誘導するように構成されており、前記減速システム(19)は、前記弾道飛行中は非アクティブ状態であり、前記減速フェーズ中はアクティブ状態である、
請求項5~請求項11のいずれか一項に記載のロケットステージ(1)。
【請求項13】
前記圧力タンク(9)は、リフトオフ中の前記ロケットステージ(1)の姿勢に関して前記ロケットステージ(1)の上部に配置され、前記ロケットステージ(1)はリバースユニット(23)を備え、前記リバースユニット(23)は、弾道フェーズの間前記ロケットステージ(1)の横軸の周りに前記ロケットステージ(1)を回転させ、前記リバースユニット(23)によって回転させられた後に、前記メインエンジン(5)が速度ベクトルに対して前記ロケットステージ(1)の前部に位置し、前記圧力タンク(9)が速度ベクトルに対して前記ロケットステージ(1)の後部に位置するように構成される、
請求項12に記載のロケットステージ(1)。
【請求項14】
多段式宇宙打上げロケット(3)のロケットステージ(1)を再使用のために地上に誘導する方法であって、前記ロケットステージ(1)は、前記宇宙打上げロケット(3)の地表からのリフトオフのためにメインエンジン(5)で推力を提供し、前記ロケットステージ(1)は、前記宇宙打上げロケット(3)が宇宙に向かって飛び続け、前記ロケットステージ(1)が前記地表に戻るように、前記リフトオフ後の上昇中に前記宇宙打上げロケット(3)の残りの部分から分離され、制御ユニット(15)は、ステージ分離後の所定の条件が満たされたときに前記ロケットステージ(1)に接続された膨張式船体(7)の膨張を開始し、前記船体(7)が、前記ロケットステージ(1)に取り付けられた圧力タンク(9)から、空気静力学的揚力を発生させるために、前記船体(7)の容積を揚力ガスで増加させるための前記揚力ガスを受け入れて保持し、推進・操舵ユニット(13)を制御して、前記ロケットステージ(1)を降下中に前記地表の所定の着陸地点まで操縦することを特徴とし、前記推進・操舵ユニット(13)が、前記船体(7)が少なくとも部分的に膨張している間に推力および姿勢制御を提供し、降下中に前記船体(7)が少なくとも部分的に前記揚力ガスで満たされる、方法。
【請求項15】
ロケットステージ(1)に取り付けられる飛行船モジュール(21)であって、揚力ガスを収容する圧力タンク(9)と、膨張ユニット(11)と、制御ユニット(15)と、膨張式船体(7)を収容するコンパートメントとを備え、前記膨張式船体(7)は、前記圧力タンク(9)から前記揚力ガスを受け取って保持するように構成され、前記膨張ユニット(11)は、前記揚力ガスによる前記船体(7)の膨張を実行するように構成され、前記飛行船モジュール(21)は、前記船体(7)が少なくとも部分的に膨張している間に前記ロケットステージ(1)に推力および姿勢制御を提供するための推進・操舵ユニット(13)をさらに備え、前記制御ユニット(15)は、前記膨張ユニット(11)および前記推進・操舵ユニット(13)を制御するように構成されている、飛行船モジュール(21)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多段式宇宙打上げロケットのロケットステージに関し、さらに、多段式宇宙打上げロケットのロケットステージを再利用するために地球に誘導する方法に関し、さらに、ロケットステージに取り付けるための飛行船モジュールに関する。
【発明の概要】
【0002】
多段式宇宙打上げロケット(略して「多段ロケット」)は、単段ロケットよりも航続距離がはるかに長いため、遠隔軌道に到達したり、地球の重力場から完全に離れたりするのに適していることはよく知られている。通常、1段以上の下段がリフトオフ時の初期推力を提供し、機体を一定の速度まで加速させ、一定の高度まで持ち上げ、1段以上の上段が点火される前に機体の位置エネルギーと運動エネルギーを増大させる。経済的・環境的配慮から、このような宇宙打上げロケットの少なくとも最下段(最初に点火される段であることから「第1段」と呼ばれる)を再利用するというアイデアは、宇宙産業界で関心が高まっている。宇宙打上げロケットの第1段を大きな損傷を受けることなく安全に地球に戻し、別の打上げに再利用できるようにすることは、難しい課題である。というのも、ステージ分離時、すなわち第1段が宇宙打上げロケットの他の部分から分離される時、宇宙打上げロケットは第1段とともに高い高度と速度に達しており、通常、大西洋横断便や太平洋横断便などの民間航空で使用される高度をはるかに超えているからである。
【0003】
アメリカの航空宇宙メーカー、スペース・エクスプロレーション・テクノロジーズ社(Space Exploration Technologies Corp.(略称「SpaceX」))の公知のランチャーシステム「ファルコン9」や「ファルコン・ヘビー・ローンチ・システムズ」は、それぞれサイドブースターなどの推進着陸システムを使って第1段を帰還させている。推進式着陸システムは、第1段のメインエンジンなどの少なくとも1つのスラスタを使用して、リフトオフ時と同様かつ逆方向に、第1段の直立姿勢での着陸を可能にするのに十分な推力を提供する。しかしながら、推進着水システムは、少なくともロケットステージの着水ステージのために追加の燃料を必要とするため、発射システムのペイロード容量に打撃を与える。
【0004】
したがって、本発明の目的は、ロケットステージ、特に宇宙打上げロケットの第1段の回収を改善すること、すなわち、宇宙打上げロケットのロケットステージを安全に、好ましくは地表の所定の位置に戻すことである。
【0005】
本発明の目的は、独立請求項および従属請求項によって記載されるようなさらなる実施形態によって解決される。
【発明を実施するための形態】
【0006】
本発明の第1の態様は、多段式宇宙打上げロケットのためのロケットステージであって、ロケットステージは、宇宙打上げロケットの地表からのリフトオフのための推力を提供するためのメインエンジンを備え、ロケットステージは、宇宙打上げロケットが宇宙に向かって飛び続け、ロケットステージが地表に戻るように、リフトオフ後の上昇中に宇宙打上げロケットの残りの部分からステージ分離するように構成されている、ロケットステージに関するものであり、ロケットステージは、以下:
-ロケットステージに取り付けられた圧力タンクから揚力ガスを受け取り保持するための膨張式船体と、
-船体を揚力ガスで膨張させる膨張ユニットと、
-船体が少なくとも部分的に膨張している間、ロケットステージに推力と姿勢制御を提供する推進・操舵ユニットと、
-膨張ユニットおよび推進・操舵ユニットを制御する制御ユニットと、
を備えることを特徴とし、
制御ユニットは、ステージ分離後の所定の条件が満たされたときに、膨張ユニットを制御して船体の膨張を開始し、船体に空気静力学的揚力を発生させるための揚力ガスを充填して船体の容積を増大させ、推進・操舵ユニットを制御して、降下中に船体が少なくとも部分的に揚力ガスで充填されている間に、ロケットステージを地表の所定の着陸地点まで降下させるように操縦するように構成されている。
【0007】
宇宙打上げロケットは、例えば人工衛星などのペイロードを地球周回軌道に運ぶための輸送機であり得る。特に、新しい衛星の追加や古い衛星の交換、ISS(国際宇宙ステーション)のような宇宙ステーションへの再補給打上げなどの打上げを繰り返し行う場合、宇宙打上げロケットのできるだけ多くの部品、特に第1ロケットステージを再利用することで、コストを大幅に削減することができる。
【0008】
ロケットステージは、リフトオフのための推力を提供するためのメインエンジンを含むため、ロケットステージは典型的には第1段であり、リフトオフの目的で点火され、1つまたは複数の上段のロケットステージを一定の高度まで持ち上げ、1つまたは複数の上段のロケットステージを一定の速度まで加速する。しかし、当該ロケットステージが液体推進剤で作動するか、固体推進剤で作動するか、あるいは、リフトオフのための推力を提供するために1つ以上の第1段だけが並列に点火されるか、リフトオフ後しばらくしてから点火されるかは無関係である。
【0009】
揚力ガスは、好ましくは水素とヘリウムから選択され、圧力タンクから膨張式船体内に放出される。揚力ガスの密度は、少なくとも海面では空気よりも小さく、大気条件や揚力ガスの選択によっては、海面からある高度までは空気よりも小さいので、揚力ガスを少なくとも部分的に含む膨張した船体は、浮力による空気静力学的揚力をもたらす。このような概念は、布製の船体内に剛性の骨組みを備えた歴史的な「ツェッペリン号」などの飛行船や、揚力ガスを含む船体(または揚力ガスを含むコンテナ)の空気静力学的揚力を同様に利用するが剛性の骨組みが欠け、その代わりに内部の揚力ガスの圧力によって引き起こされる船体の張力に依存している、いわゆる「軟式飛行船」からよく知られている。好ましくは、ロケットステージから解放される船体もまた、アルミニウムトラスのような剛性の骨組みを内部に持たないが、特に対向する船体セグメントにわたって、ある程度の張力に耐えるために、ポリマー繊維のような半剛性または他の柔軟な要素で構成されていてもよい。
【0010】
揚力ガスが充填された船体によって生じる浮力の助けを借りて、ロケットステージはゆっくりと降下するか、あるいは、揚力ガスが充填された船体の体積が船体を含むロケットステージの総質量に比べて十分に大きい場合には、海抜高度を一定に保ちながら巡航飛行ステージに入ることができる。地表の指定された場所、特に打上げ地点に近い着陸地点に到達するために、推進・操舵ユニットは、例えば、地球に対して一定の速度を構築および/または維持するために、ロケットステージに作用する並進力のための推力を提供し、また、例えば、指令された方位角、バンク角およびピッチ角に追従するために、回転ダイナミクスのレベルで姿勢制御を行う。この目的のために、推進・操舵ユニットは、以下のうちの1つ含み得る:
-操舵可能推進ユニットによる力ベクトル制御と、
-姿勢制御スラスタなどの純粋姿勢制御エンジンによる推力ベクトル制御、または、
-空力制御面、または、
-上記の少なくとも2つの組み合わせ。
【0011】
制御ユニットは、プロセッサ、メモリ、および適切な出入力インターフェースを含むコンピュータなどの少なくとも1つのハードウェアユニットを含む。制御ユニットに言及する実施形態は、完全にハードウェアの実施形態、完全にソフトウェアの実施形態、またはハードウェアとソフトウェアの両方の要素を含む実施形態の形態をとることができる。
【0012】
特に、制御ユニットは、膨張した船体を有するロケットステージを、着陸地点、飛行場、空港、トラックの荷台、または船舶の荷台などの地表上の指定された目標位置に戻すための誘導および航行タスクを実行するように構成される。これには、航空管制官からの指示、指令管制地上局からの指令、またはTCASシステム(交通衝突回避システム)の作動による、地元空域内の他の航空交通を周回し、他の航空機との空中衝突を回避するための反応を含むことができる。
【0013】
本発明は、宇宙打上げロケットのロケットステージ、特に第1段を、リフトオフ後に回収し、所定の着陸地点まで安全に誘導して、宇宙打上げロケットの別の打上げのためにロケットステージを再利用できるという利点を提供する。船体内に収容された揚力ガスの浮力を利用してロケットステージを所定の着陸地点に誘導するシステムを提供することによって追加される質量は、降下および着陸のためにロケットステージと共に運搬される追加燃料がほとんどまたは全くないため、従来技術から知られている推進式着陸システムに必要とされる追加質量よりも一般的に小さい。
【0014】
本発明の一実施形態によれば、船体の膨張を開始するためのステージ分離後の所定の条件は、地球に対するロケットステージの速度が所定の閾値以下に低下することである。
【0015】
本発明の別の実施形態によれば、膨張ユニットは、船体によって囲まれた容積内で、揚力ガスを周囲の大気からの空気と交換するための交換ユニットを備え、制御ユニットは、ロケットステージの高度が低下するにつれて揚力ガスの量が空気と交換される量が増加するように、揚力ガスの空気への交換を開始し実行するように交換ユニットを制御するように構成される。
【0016】
揚力ガスの周囲の大気の空気との置き換えは、ロケットステージの高度が下がるにつれて高くなる周囲の大気の密度、温度変化、および揚力ガスの浮力に影響を与えるその他の影響を補償するために、周知の浮力補償装置を実装することによって実現することができる。このようにして、周囲の空気の密度が高いほど、揚力ガス単位体積当たりの浮力が大きくなる効果が補償される。
【0017】
本発明の別の実施形態によれば、制御ユニットは、船体によって囲まれた容積から揚力ガスを放出し、船体を少なくとも部分的に格納させて船体によって囲まれた容積を縮小させるように構成されており、ロケットステージの高度が低下するにつれて、船体によって囲まれた容積が縮小するようになっている。
【0018】
この実施形態は、軟式飛行船として設計された船体に適用されることが好ましい。これは、船体がトラスなどの剛性の支持構造要素を示さず、代わりに揚力ガスの圧力に依存して張力を加え、したがって船体の寸法的に安定した形状を与えることを意味する。船体の格納は、ロケットステージに取り付けられた、または内部に折り畳まれた船体を収納する収納箱から船体を解放したのと同じ方法で、しかし逆方向に行うことができる。特に、降下中のロケットステージが、より長い上昇を実行できるようにする必要がないと想定される場合、周囲の大気中への揚力ガスの損失は許容される。
【0019】
本発明の別の実施形態によれば、推進・操舵ユニットは、少なくとも1つの操舵可能なプロペラまたはダクト付きファンを備える。
【0020】
少なくとも1つの操舵可能なプロペラまたはダクト付きファンは、好ましくは、ロケットステージのピッチ運動を制御し、したがって、より長い時間スケールでの上昇角および高度を制御するために、横方向の水平軸を中心に、すなわち垂直面内で操舵可能であり、および/またはヨー制御を提供するために、垂直軸を中心に操舵可能である。
【0021】
本発明の別の実施形態によれば、少なくとも1つの操舵可能なプロペラまたはダクト付きファンは、電気モータに接続されており、電気モータは、ロケットステージに取り付けられたバッテリによって、または船体の外面に配置されたソーラーパネルからの電力によって電気的に供給される。好ましくは、ソーラーパネルは、船体の外面にシームレスに接触するソーラーパネル膜の形状を有する。
【0022】
本発明の別の実施形態によれば、ロケットステージは、地球に対するロケットステージの速度を低下させる減速システムを備え、制御ユニットは、ステージ分離中または分離後であって船体の膨張前に減速システムの作動を開始するように構成される。
【0023】
減速システムは、ステージ分離時またはステージ分離後の弾道飛行フェーズ後に、ロケットステージをその初速度から減速させる役割を果たす。減速は、ロケットステージを、船体を解放して膨らませるのに安全な速度まで減速させるために必要である。
【0024】
本発明の別の実施形態によれば、減速システムは、空気抵抗を発生させる装置、特にパラシュート、特に極超音速または超音速の空気力学的速度に耐えることができるパラシュートから構成される。上記および下記のパラシュートに相当するものとして、バリュートなどがある。
【0025】
本発明の別の実施形態によれば、パラシュートは、パラシュートの空気抵抗が船体を展開するように船体に接続され、船体とパラシュートとの間の接続は、解除可能なリリースで固定され、制御ユニットは、特に、予め定義された閾値に達するという条件が満たされたときに、リリースを解除するように構成される。
【0026】
好ましくは、パラシュートは、超高分子量ポリエチレン繊維またはアラミド繊維で作られたロープまたはコードなどのポリマーコードまたはスチールケーブルで船体に接続され、パラシュートの空気抵抗を、ロケットステージに取り付けられた、またはロケットステージに組み込まれた収納コンパートメントから船体を解放および展開するための引っ張り力として使用し、収納コンパートメントは、折り畳まれた船体を収納する役割を果たす。
【0027】
本発明の別の実施形態によれば、減速システムは、ロケットステージのメインエンジンの逆噴射によって実現される。これは、好ましくは、少なくとも1つの専用の逆ブースターの作動によって、または推進式の逆ブレーキによって行われ、後者は、リフトオフに使用されたメインエンジンを再点火することによって行われる。
【0028】
パラシュートに加え、またはパラシュートに代え、減速システムは、好ましくは、空気抵抗、特にステージ分離後の弾道飛行中のロケットステージの姿勢制御を発生させる操舵可能なグリッドフィンで構成される。
【0029】
本発明の別の実施形態によれば、空気抵抗を発生させる装置は、ロケットステージの長手方向軸に沿って移動可能または再配置可能(移送可能)である可変取付点を介してロケットステージに取り付けられる。ここで、制御ユニットは、船体が膨張する前に、または船体が膨張する間に、ロケットステージの本体が、ロケットステージの長手方向軸線に対してゼロの空気力学的迎え角を有する姿勢から水平姿勢になるように、船体が膨張する前のロケットステージの重心を構成するロケットステージの横断面に向かって、速度ベクトルに対してロケットステージの後部のその初期位置から取付点を移動または再配置するように構成される。
【0030】
ロケットステージの長手方向軸は、リフトオフ時のロケットステージの運動学的速度ベクトルとほぼ、特に正確に一致(すなわち平行)している。
【0031】
本発明の別の実施形態によれば、空気抵抗を発生させる装置は、少なくとも2つの力伝達装置を介して取り付けられ、船体の膨張が開始される前に、ロケットステージの速度ベクトルに対して、少なくとも2つの力伝達装置のうちの第1のものは、ロケットステージの後端部に取り付けられ、少なくとも2つの力伝達装置のうちの第2のものは、ロケットステージの前端部に取り付けられる。ここで、力伝達装置は、空気抵抗を発生させる装置とロケットステージの本体との間に抗張力のみを提供することができ、少なくとも2つの力伝達装置のうちの少なくとも第2のものは、長さを変更することができ、制御ユニットは、少なくとも2つの力伝達装置のうちの第2のものを、ロケットステージの本体が、船体が膨張する前にロケットステージの長手方向軸に対してゼロの空気力学的迎え角を有する姿勢から水平姿勢になるように、格納するように構成される。力伝達装置は、好ましくは、コード、またはコードと同等に見られるロープ、紐、ケーブルなどである。
【0032】
本発明の別の実施形態によれば、完全に膨張した船体は、空気力学的に安定させる尾翼からなる軟式飛行船の形状を有する。
【0033】
本発明の別の実施形態によれば、少なくとも部分的に膨張した船体によって囲まれた容積内の揚力ガスによって生成される空気静力学的揚力は、ある時点において、ロケットステージに作用する重力の力と少なくとも同じ高さであり、制御ユニットは、降下前または降下中に、海抜高度が一定または増加する巡航飛行を行うように推進・操舵ユニットを制御するように構成される。
【0034】
本発明の別の実施形態によれば、少なくとも部分的に膨張した船体によって囲まれた容積内で揚力ガスによって生成される空気静力学的揚力は、ロケットステージによって降下する高度の少なくとも最初の80%の間、ロケットステージに作用する重力の力よりも小さい。
【0035】
本発明の別の実施形態によれば、制御ユニットは、メインエンジンカットオフを実行することによって、ステージ分離後にロケットステージを弾道飛行に誘導し、弾道飛行後に減速フェーズに誘導するように構成され、減速システムは、弾道飛行中は非アクティブであり、減速フェーズ中はアクティブである。
【0036】
本発明の別の実施形態によれば、圧力タンクは、リフトオフ中のロケットステージの姿勢に対してロケットステージの上部に配置され、ロケットステージはリバースユニットを備え、リバースユニットは、リバースユニットによって回転させられた後、メインエンジンが、速度ベクトルに対してロケットステージの前部に位置し、圧力タンクが、速度ベクトルに対してロケットステージの後部に位置するように、弾道フェーズの間、ロケットステージをロケットステージの横軸を中心に回転させるように構成される。
【0037】
本発明の別の態様は、多段式宇宙打上げロケットのロケットステージを再利用のために地球に帰還させる誘導方法であり、ロケットステージは、地表からの宇宙打上げロケットのリフトオフのためにメインエンジンで推力を提供し、ロケットステージは、宇宙打上げロケットが宇宙に向かって飛び続け、ロケットステージが地表に帰還するように、リフトオフ後の上昇中に宇宙打上げロケットの残りの部分から分離され、制御ユニットは、ステージ分離後の所定の条件が満たされたときに、ロケットステージに接続された膨張式船体の膨張を開始し、船体が、空気静力学的揚力を発生させるために船体の容積を揚力ガスで増加させるために、ロケットステージに取り付けられた圧力タンクから揚力ガスを受け入れて保持し、および、推進・操舵ユニットを制御して、ロケットステージを降下中に地表の所定の着陸地点まで操縦することを特徴とし、推進・操舵ユニットは、船体が少なくとも部分的に膨張している間に推力および姿勢制御を提供し、降下中に船体が少なくとも部分的に揚力ガスで満たされる。
【0038】
本発明方法の利点および好ましい実施形態は、本発明ロケットステージに関連して示された明細書の特徴を準用することによって導き出すことができる。
【0039】
本発明の別の態様は、ロケットステージに取り付けられることを目的とする飛行船モジュールであって、揚力ガスを収容するための圧力タンクと、膨張ユニットと、制御ユニットと、膨張式船体を収容するコンパートメントとを備え、膨張式船体は、圧力タンクから揚力ガスを受け取って保持するように構成され、膨張ユニットは、揚力ガスによる船体の膨張を実行するように構成され、飛行船モジュールは、船体が少なくとも部分的に膨張している間、ロケットステージに推力および姿勢制御を提供する推進・操舵ユニットをさらに備え、制御ユニットは、膨張ユニットおよび推進・操舵ユニットを制御するように構成される。
【0040】
本発明飛行船モジュールの利点および好ましい実施形態は、本発明ロケットステージに関連して示された明細書の特徴を準用することによって導き出すことができる。
【0041】
本明細書における説明、特に以下の図面に関する説明は、例示および理解の目的で提示されたものであり、開示された形態の本発明を網羅的または限定的に説明することを意図したものではない。様々な修正および変形が当業者には明らかであろう。特に図面に関する実施形態は、本発明の原理、実際の適用を最もよく説明するため、および当業者が特定の企図された用途に適した様々な変更を伴う様々な実施形態について本発明を理解できるようにするために選択され、説明される。
【図面の簡単な説明】
【0042】
図1図1は、ロケットステージのリフトオフ時とリフトオフ後の様々なフェーズである。
図2図2は、本発明の実施形態によるロケットステージの減速フェーズと船体の膨張フェーズである。
図3図3は、本発明の実施形態によるステージ分離後の具体的手順である。
図4図4は、本発明の実施形態によるロケットステージのパラシュートと膨張式船体との具体的な接続である。
図5図5は、本発明の実施形態による、コードによるパラシュートとロケットステージの具体的な接続である。
図6図6は、本発明の実施形態による、コードによるパラシュートとロケットステージとの具体的な接続である。
図7図7は、本発明の実施形態による、膨張した船体を備えたロケットステージである。
図8図8は、本発明の実施形態による飛行船モジュールを取り付けたロケットステージの構成要素である。
【0043】
[図面の詳細な説明]
図は概略図であり、縮尺どおりではない。
【0044】
図1は、状態(A)で示すリフトオフからフェーズ(C)のステージ分離までの宇宙打上げロケット3を示している。リフトオフ(A)では、下段の第1ロケットステージ1は、2段式の宇宙打上げロケット3の上段にしっかりと連結されている。ロケットステージ1は、宇宙打上げロケット3を地上で一定の高度・速度まで上昇させるための最初のステージである。このため、ロケットステージ1は、宇宙打上げロケット3の地上からのリフトオフに必要な推力を供給するためのメインエンジン5(図7参照)から構成されている。リフトオフ(A)から約5分後、宇宙打上げロケットは高度70kmに達し、図1のフェーズ(B)に示すように、地球を周回する軌道に入る準備のため、垂直リフトオフ位置から傾く。ステージ分離(C)は、ロケットステージ1がリフトオフ後の上昇中に宇宙打上げロケット3の上部から分離されるように行われる。ペイロードを搭載した宇宙打上げロケット3は、その上段を点火することによって、地球を周回する目標軌道に向かって飛び続けるが、ロケットステージ1は弾道飛行で再突入操縦を実行し、図2図7に示した様々な実施形態の助けを借りて説明したように、地表に戻る。
【0045】
図2は、図1のステージ分離(C)に続く2つの例示的なステージを示している。まず、弾道フェーズを実施した後に開始される減速フェーズ(D)である。ロケットステージ1は、地球に対するロケットステージ1の速度を低下させるために、パラシュートを備えた減速システム19を備えている。制御ユニット15は、ステージ分離中または分離後、およびフェーズ(E)における船体7の膨張の前に、減速システム19を作動させる。船体7を揚力ガスで膨張させる間に、パラシュートが投棄される。膨張圧力と投棄前のパラシュートの空気抵抗は、船体7を展開し、ロケットステージ1の内部に配置された収納コンパートメントから船体7を解放するのに役立つ。膨張した船体7は、ロケットステージ1の重心上方の抗力によってロケットステージ1を水平姿勢にし、ピッチアップモーメントを発生させる。船体は、フェーズ(E)の後も膨張を続け、ロケットステージ1が下に垂れ下がった船体7の軟式飛行船構成となる。船体7の軟式飛行船形状の詳細については、図6を参照されたい。
【0046】
図3は、図1のフェーズ(C)に続く、図2に概略を示した手順の代替手順を示している。図3では、ロケットステージ1の重心の軌道が破線の曲線で描かれている。制御ユニット15は、ステージ分離後(図1のフェーズ(C))、メインエンジンカットオフを行うことで、ロケットステージ1を弾道飛行に誘導する。図3のフェーズ(D)が図1のフェーズ(C)と異なるのは、ロケットステージが弾道飛行後に減速フェーズに誘導される前に、姿勢制御スラスタからなるリバースユニット23が作動する点である。この弾道飛行の間、減速システム19は依然として非アクティブであり、減速フェーズの間だけアクティブになる。さらに、弾道飛行の間、リバースユニット23は、ロケットステージ1の重心の外側に推力を供給し、ロケットステージ1にモーメントを作用させ、ロケットステージ1を、横軸を中心に回転させる。図3のフェーズ(D)で回転が開始される間、ロケットステージ1は、可能な限り短い回転方向に回転され、回転を介して(フェーズ(E)を参照)逆方向に到達する。リフトオフの間、メインエンジン5は、ロケットステージ1の速度ベクトルに対して、ロケットステージ1の後部を向いているが、リバースユニット23によって実行される回転が終了した後、メインエンジン5は、ロケットステージ1の速度ベクトルに対して、ロケットステージ1の前部を向く。リバースユニット23は、ロケットステージ1の本体の長手方向軸に対して空気力学的迎え角がゼロまたはゼロに近くなるように、ロケットステージ1を回転させる。リフトオフ中、水素のような可燃性揚力ガスを収容した圧力タンク9が、ロケットステージ1の姿勢に対して、ロケットステージ1の上部に配置されている場合、圧力タンク9は、ロケットステージ1がリバースユニット23によって回転された後、速度ベクトルに対して摩擦及び周囲の空気の高い動圧の影響を受ける、地球の大気圏への再突入のためのより長い時間の弾道飛行であるフェーズ(F)の間、ロケットステージ1の後部に配置される。このようにして、圧力タンク9は、動圧と発熱の影響が最も大きいロケットステージ1の前部の高温にさらされることがはるかに少なくなる。大気圏への再突入のために飛行を継続した後、超音速気流に耐えることができるパラシュートからなる減速システム19が展開され、地球に対するロケットステージ1の速度を低下される。パラシュートは、空気抵抗を発生させ、可動取付点でロケットステージ1に取り付けられており、取付点は、ロケットステージ1の長手方向軸に沿って可動である。初期状態では、取付点は、ある所定の速度に達するまで、ロケットステージ1の速度ベクトルに対して、ロケットステージ1の後端に位置する(フェーズ(G)参照)。フェーズ(H)は、ロケットステージ1の本体の予測可能な空気力学的安定特性を維持するために、亜音速飛行領域でのみ開始される。このフェーズ(H)の間、取付点はロケットステージ1の中心に向かって移動し、したがってロケットステージ1の重心位置に向かってさらに移動し、したがってロケットステージ1の本体は水平姿勢に向かって徐々に回転する。この操縦におけるロケットステージ1の本体は、平均海抜20kmの高度で船体7が膨張する前に、ロケットステージ1の長手方向軸に対する空気力学的迎え角がゼロに近い姿勢から水平姿勢になる(フェーズ(I)参照)。したがって、船体7は、膨張時に縦方向の空気の流れをほとんど経験せず、ロケットステージ1の本体内または表面に位置する収納コンパートメントから船体の開口部を支える縦方向の流れのみを経験する。
【0047】
図4は、図3のフェーズ(I)で示されたものの代替構成を示す。後者では、船体7は、パラシュート19のコードに影響を与えることなく収納コンパートメントから展開され、パラシュート19は、船体7を展開して膨張させるあるステージで投棄されるが、これに対し図4は、パラシュート19が、ロケットステージ1の本体の空気抵抗よりも大きいパラシュートの空気抵抗によって発生する引っ張り力を介して、船体7を収納コンパートメントから展開するのを積極的に助けるという点で、代替方法を示している。しかし、この実施形態でも、パラシュート19は、船体7を展開して膨張させるあるステージで投棄される。
【0048】
図5は、図3に関連して説明したパラシュート19の可動式取付点の代替案を示している。図5の実施形態では、パラシュート19は、ロケットステージ1の後端と前端に取り付けられた2本のアラミドコードを介して取り付けられている。図5では、固定長「a」の後部コードと、可変長「b」の前部コードが示されている。図3のフェーズ(G)の間、長さbは、パラシュート19がロケットステージ1の本体の後方に引きずられるように、長さaとロケットステージ1の本体の長さの和に等しいか、それよりも長く、長さbのコードは、ロケットステージ1の本体に対するパラシュート19の位置に影響を与えない。次に、長さbは(図3フェーズ(H)参照)aとbが等しくなるまで短くされ、ロケットステージ1の本体は水平姿勢にされ、長さaとbのコードは、船体7が膨張する前に、ロケットステージ1の本体の重力のほぼ同じ荷重を負担する。
【0049】
図6は、図3に関して説明したパラシュート19の可変取付点の代替案を示しており、これは、図5に関して説明した解決策の代替案としても機能する。図6に描かれているようなこの代替案では、ロケットステージ1に対するパラシュート19の有効な取付点の位置は、第1取付点と第2取付点とを有する1本のコードが使用されるという点で可変である。第1取付点は、ロケットステージ1の端部に位置し、論理的にはコードを上部xと下部yに分離しているが、ロケットステージ1から解放することができる。コードの第2取付点は、ロケットステージ1の本体の重心を含むロケットステージ1の断面内またはその近傍に位置する。第1取付点の解放前は、コードの上部xのみに張力がかかっており、下部yはロケットステージ1の内部または表面に緩く収納されている。第1取付点の解放後、コードにはxとyの両論理部分を含む全長にわたって張力をかけられる。図6では、パラシュート19は、コードを介してロケットステージ1の本体に力(本来は空気抵抗によるもの)を加えている。第1取付点を解放した直後、ロケットステージ1の重力に抗する力を加える空気抵抗は、コードをその全長にわたって張力下に置き、第2取付点の位置により、ロケットステージ1の本体の長手方向軸が時間と共に水平姿勢に回転されるようにする。第1取付点を解放することは、ロケットステージ1の解放機構を、例えば火工的に作動させることによって行うことができる。
【0050】
図7は、ロケットステージ1に取り付けられた圧力タンク9からの揚力ガスで膨張式船体7が完全に膨張した状態のロケットステージ1を示している(詳細は図8参照)。推進・操舵ユニット13は、ロケットステージ1の左側と右側に1つずつ取り付けられている。これは、船体7が少なくとも部分的に膨張している間、ロケットステージ1に推力と姿勢制御を提供する。船体7は、完全に膨らんだ状態で、空気力学的に安定させる尾翼からなる軟式飛行船の形状を有している。各推進・操舵ユニット13は、ピッチモーメントを与えるために横軸周りに傾けることができる1つのダクト付きファンで構成されている。ヨー制御は、上下の垂直尾翼を垂直軸周りに回転させることで行われる。ダクト付きファンは電気モータによって駆動され、電気モータはロケットステージ1に取り付けられたバッテリから電気的に供給される。船体7自体は、ロケットステージ1の本体に堅固に接続され、特に、緩んだコードなどがなく、軟式飛行船のゴンドラとしての機能を有するロケットステージ1が、船体7とロケットステージ1の本体との間の運動を可能にするために自由度なく接続されている。このように、ロケットステージ1の本体は、完全に膨張した船体7に接続されており、船体7とロケットステージ1の本体との間の相対運動が防止されている。さらに、ロケットステージ1の本体は、船体7に接触しており、すなわち、船体7とロケットステージ1の本体とは、隙間なく接触している。
【0051】
図8は、飛行船モジュール21を搭載したロケットステージ1を通る断面図であるが、図8の(I)部では船体7を示さず、図8の(II)部では取り付け可能な飛行船モジュール21のみを示している。飛行船モジュール21は、(II)部に示すように、既存の下部ロケットステージ1にこのような飛行船モジュール21を取り付けることによって、再突入および回収能力を装備するのに役立つ。この目的のために、取り付け可能な飛行船モジュール21は、揚力ガスを収容するための圧力タンク9と、膨張ユニット11と、制御ユニット15と、膨張式船体7を収容するコンパートメントとを備え、膨張式船体7は、圧力タンク9から揚力ガスを受け取って保持するように構成され、膨張ユニット11は、揚力ガスによる船体7の膨張を実行するように構成される。飛行船モジュール21は、船体7が少なくとも部分的に膨張している間にロケットステージ1に推力および姿勢制御を提供するための推進・操舵ユニット13をさらに備え、制御ユニット15が、膨張ユニット11および推進・操舵ユニット13を制御するように構成されている。バルブを備えた膨張ユニット11は、船体7を膨張ガスで膨張させる役割を果たす。膨張ユニット11に接続された交換ユニット17は、船体7によって囲まれた容積内で、周囲の大気からの空気と揚力ガスを交換するためのものであり、制御ユニット15は、ロケットステージ1の高度が低くなるにつれて揚力ガスの量が空気と交換されるように、空気と揚力ガスの交換を開始し、実行するように交換ユニット17を制御するように構成されている。制御ユニット15は、膨張ユニット11および推進・操舵ユニット13(図3参照)を制御する役割も果たす。また、ステージ分離後の所定の条件が満たされたときに膨張ユニット11を制御して船体7の膨張を開始し、船体7に空気静力学的揚力を発生させるために揚力ガスを充填して船体7の容積を増大させるとともに、推進・操舵ユニット13を制御して、フェリーバック飛行と呼ばれる降下中に船体7が少なくとも部分的に揚力ガスで充填された状態で、ロケットステージ1を地表の所定の着陸地点まで降下させる操縦を行う。ロケットステージ1のさらなる構成要素を、図8の(I)部を用いて説明する。メインエンジン5は、その下端に少なくとも1つの液体推進剤スラスタを備えている。
【符号の説明】
【0052】
1:ロケットステージ
3:宇宙打上げロケット
5:メインエンジン
7:膨張式船体
9:圧力タンク
11:膨張ユニット
13:推進・操舵ユニット
15:制御ユニット
17:交換ユニット
19:減速システム
21:飛行船モジュール
23:リバースユニット
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【国際調査報告】