(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-04
(54)【発明の名称】船舶用再液化システムのブローダウン方法
(51)【国際特許分類】
B63B 25/16 20060101AFI20240927BHJP
B63H 21/38 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
B63B25/16 D
B63H21/38 C
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024521770
(86)(22)【出願日】2021-12-27
(85)【翻訳文提出日】2024-04-10
(86)【国際出願番号】 KR2021019906
(87)【国際公開番号】W WO2023075025
(87)【国際公開日】2023-05-04
(31)【優先権主張番号】10-2021-0145490
(32)【優先日】2021-10-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517430897
【氏名又は名称】ハンファ オーシャン カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000305
【氏名又は名称】弁理士法人青莪
(72)【発明者】
【氏名】パク,ジュ ウン
(72)【発明者】
【氏名】キム,ソン ジン
(72)【発明者】
【氏名】チェ,ウォン ジェ
(57)【要約】
船舶用再液化システムのブローダウン方法が開示される。本発明のブローダウン方法は、貯蔵タンク内で発生した蒸発ガスを圧縮機で圧縮し、圧縮された圧縮ガスを再液化ラインより熱交換器に供給して冷却し、冷却されて再液化された再液化ガスを気液分離器に供給して分離した後、貯蔵タンクに回収する。再液化ラインの圧縮機より下流側から、熱交換器を迂回して、気液分離器の上部に接続される圧力補償ラインと、圧力補償ラインに窒素ガスを供給する窒素ブランケットラインとが設けられる。再液化システムのトリップ発生時に、窒素ブランケットラインより圧力補償ラインに窒素ガスを供給し、圧力補償ラインに供給された窒素ガスを、圧縮機より下流側に送って、再液化ラインを介して熱交換器に窒素ガスを供給し、熱交換器及び再液化ラインに窒素パージを行うと共に、熱交換器内及び再液化ライン内に滞留する圧縮ガス及び再液化ガスを排出させる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
船舶用再液化システムのブローダウン方法であって、
前記船舶用再液化システムは、船舶の貯蔵タンクに貯蔵される液化ガスから発生した蒸発ガスを圧縮機で圧縮し、蒸発ガスが圧縮された圧縮ガスを再液化ラインより熱交換器に供給して冷却し、冷却されて再液化された再液化ガスを気液分離器に供給して分離した後、前記貯蔵タンクに回収し、
前記船舶用再液化システムに、前記再液化ラインの前記圧縮機より下流側から、前記熱交換器を迂回して、前記気液分離器の上部に接続される圧力補償ラインと、前記圧力補償ラインに窒素ガスを供給する窒素ブランケットラインとが設けられ、
前記再液化システムのトリップ発生時に、前記窒素ブランケットラインより前記圧力補償ラインに窒素ガスを供給し、前記圧力補償ラインに供給された窒素ガスを、前記再液化ラインの前記圧縮機より下流側に送って、前記再液化ラインを介して前記熱交換器に窒素ガスを供給し、前記熱交換器及び前記再液化ラインに窒素パージを行うと共に、前記熱交換器内及び前記再液化ライン内に滞留する圧縮ガス及び再液化ガスを排出させることを特徴とする、
船舶用再液化システムのブローダウン方法。
【請求項2】
前記船舶用再液化システムに、
前記再液化ラインの前記熱交換器より下流側から、前記気液分離器を迂回して前記貯蔵タンクに接続されるバイパスライン;と、
前記再液化ラインの前記バイパスラインの分岐点より下流側に設けられる第1バルブ;と、
前記バイパスラインに設けられる第2バルブ;とが設けられ、
前記熱交換器及び前記再液化ラインから排出される前記圧縮ガス、前記再液化ガス及び前記窒素ガスが、前記バイパスラインより排出されることを特徴とする、
請求項1に記載の船舶用再液化システムのブローダウン方法。
【請求項3】
前記船舶用再液化システムに、
前記圧力補償ラインの窒素ブランケットラインとの接続点より上流側に設けられる第3バルブ;と、
前記窒素ブランケットラインに設けられる第4バルブ;と、
前記圧力補償ラインの窒素ブランケットラインとの接続点より下流側に設けられる第5バルブ;とがさらに設けられることを特徴とする、
請求項2に記載の船舶用再液化システムのブローダウン方法。
【請求項4】
前記熱交換器に、冷媒循環ラインを循環する冷媒を、前記圧縮ガスを冷却する冷媒として供給し、
前記貯蔵タンクから排出されて、前記圧縮機に供給される前の非圧縮の蒸発ガスを、前記熱交換器に供給した後、前記圧縮機に供給し、
前記熱交換器で、前記圧縮ガスを、前記冷媒及び前記非圧縮の蒸発ガスとの熱交換により冷却することを特徴とする、
請求項3に記載の船舶用再液化システムのブローダウン方法。
【請求項5】
前記冷媒循環ラインを循環する冷媒は窒素であり、
前記熱交換器はアルミろう付熱交換器であることを特徴とする、
請求項4に記載の船舶用再液化システムのブローダウン方法。
【請求項6】
前記気液分離器に供給される前記再液化ガスから発生するフラッシュガスにより、前記気液分離器内の圧力を維持して、前記気液分離器内の再液化ガスを前記貯蔵タンクに供給し、
前記気液分離器内に供給される再液化ガスが過冷却であり、フラッシュガスにより気液分離器内の圧力を維持できない場合には、前記圧力補償ラインより前記気液分離器に蒸発ガスまたは窒素ガスを供給して、前記気液分離器内の圧力を維持することを特徴とする、
請求項1~5のいずれか1項に記載の船舶用再液化システムのブローダウン方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、船舶用再液化システムのブローダウン方法に関する。より詳細には、船舶に設けられる貯蔵タンクで発生した蒸発ガスを再液化させる蒸発ガスの再液化システムに関し、再液化システムのトリップ発生時、再液化システムが備える熱交換器及び再液化ラインに滞留する圧縮ガス及び再液化ガスを迅速に排出して(blow-down)、熱交換器の損傷を防止する、船舶用再液化システムのブローダウン方法に関する。
【背景技術】
【0002】
天然ガス(Natural gas)は、メタン(Methane)を主成分とし、燃焼時に環境汚染物質を殆ど排出しないことから、環境性に優れた燃料として注目されている。液化天然ガス(LNG; Liquefied Natural Gas)は、天然ガスを常圧(標準大気圧)で約-163℃に冷却して液化させて得られるものである。液化天然ガスは、気体状態の天然ガスと比べて、その体積が約1/600まで減少することから、海上ルートを利用した長距離輸送に非常に適している。このような理由から、天然ガスは、主に貯蔵や輸送に有利なLNGの液体状態で、貯蔵されて輸送される。
【0003】
天然ガスの液化点は常圧で約-163℃と極低温であることから、LNG貯蔵タンクには、通常、LNGを液体状態で維持するための断熱処理が施されるが、LNG貯蔵タンクに断熱処理を施しても、外部熱を完全に遮断することは難しい。このため、外部熱がLNG貯蔵タンクに継続して伝達されることで、LNG輸送の過程でLNG貯蔵タンク内のLNGが自然気化し、蒸発ガス(BOG;Boil-Off Gas、ボイルオフガス)が発生する。
【0004】
LNG貯蔵タンク内で蒸発ガスが継続して発生すると、LNG貯蔵タンク内の圧力が上昇する。そして、貯蔵タンク内の圧力が設定した安全圧力以上になると、タンク破損(Rupture)等の緊急事態が生じる恐れがあるため、安全バルブを利用して蒸発ガスを貯蔵タンクの外部に排出させる必要がある。しかし、蒸発ガスはLNG損失の1つであり、LNGの輸送効率及び燃料効率の点で重要な問題となることから、貯蔵タンクで発生した蒸発ガスを処理する様々な方法が用いられている。
【0005】
近年、船舶のエンジン等の燃料需要先で蒸発ガスを使用する方法、蒸発ガスを再液化させて貯蔵タンクに回収する方法、または、これら2つの方法を組合せて使用する方法等が開発され、用いられている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
蒸発ガスを再液化させる再液化サイクルを船舶に適用する場合、代表的な再液化サイクルとして、例えばSMRサイクルやC3MRサイクルが知られている。C3MRサイクル(Propane-precooled Mixed Refrigerant Cycle)は、プロパンの単一冷媒を用いて蒸発ガスを冷却した後、混合冷媒を用いて冷却して再液化させ、また、SMRサイクル(Single Mixed Refrigerant Cycle)は、複数の成分から構成される混合冷媒を用いて蒸発ガスを再液化させる。
【0007】
これらSMRサイクルやC3MRサイクルは、混合冷媒が用いられ、液化工程の進行に伴い冷媒が漏洩する。これにより、混合冷媒の組成比が変化することで液化効率が低下するため、混合冷媒の組成比を継続して計測すると共に、不足した冷媒成分を補充することで、冷媒の組成を維持する必要がある。
【0008】
また、再液化サイクルを利用する他の再液化方法として、窒素冷媒が用いられるシングルサイクルの再液化方法が知られている。
【0009】
窒素冷媒は、混合冷媒を用いる冷凍サイクルと比較して、冷却効率は低いが、窒素冷媒は不活性物質であることから安全性が高く、また冷媒の相変化が生じないことから、船舶に適用し易いという利点がある。
【0010】
再液化システムは、蒸発ガスが供給されて、供給された蒸発ガスを圧縮する圧縮機と、圧縮機で蒸発ガスが圧縮された圧縮ガスを、冷媒との熱交換により冷却する熱交換器と、熱交換器で圧縮ガスとの熱交換に用いられる冷媒が循環する冷媒循環部とを備える。また、窒素冷媒を用いた冷凍サイクルが適用される再液化システムの場合、冷媒循環部では、熱交換器での熱交換後に熱交換器から排出された窒素冷媒が圧縮された後、熱交換器に供給されて冷却され、膨張によりさらに冷却された後、熱交換器に再び供給されて、窒素冷媒が循環する。
【0011】
ところで、再液化システムの異常運転時、熱交換器に流出入する流体の流れを迅速に制御できない場合には、温度変化に敏感な熱交換器に過大な熱応力がかかることで、疲労破壊等による熱交換器の損傷や熱交換器の装置寿命の短縮につながる恐れがある。
【0012】
本発明は、このような問題を解決し、再液化システムの異常運転時に、熱交換器に流出入する流体を迅速に制御して、熱交換器の損傷を防止する方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するため、本発明の実施形態では、船舶用再液化システムのブローダウン方法であって、前記船舶用再液化システムは、船舶の貯蔵タンクに貯蔵される液化ガスから発生した蒸発ガスを圧縮機で圧縮し、蒸発ガスが圧縮された圧縮ガスを再液化ラインより熱交換器に供給して冷却し、冷却されて再液化された再液化ガスを気液分離器に供給して分離した後、前記貯蔵タンクに回収し、前記船舶用再液化システムに、前記再液化ラインの前記圧縮機より下流側から、前記熱交換器を迂回して、前記気液分離器の上部に接続される圧力補償ラインと、前記圧力補償ラインに窒素ガスを供給する窒素ブランケットラインとが設けられ、前記再液化システムのトリップ発生時に、前記窒素ブランケットラインより前記圧力補償ラインに窒素ガスを供給し、前記圧力補償ラインに供給された窒素ガスを、前記再液化ラインの前記圧縮機より下流側に送って、前記再液化ラインを介して前記熱交換器に窒素ガスを供給し、前記熱交換器及び前記再液化ラインに窒素パージを行うと共に、前記熱交換器内及び前記再液化ライン内に滞留する圧縮ガス及び再液化ガスを排出させることを特徴とする、船舶用再液化システムのブローダウン方法が提供される。
【0014】
また、本発明において、前記船舶用再液化システムに、前記再液化ラインの前記熱交換器より下流側から、前記気液分離器を迂回して、前記貯蔵タンクに接続されるバイパスラインと、前記再液化ラインの前記バイパスラインの分岐点より下流側に設けられる第1バルブと、前記バイパスラインに設けられる第2バルブとが設けられ、前記熱交換器及び前記再液化ラインから排出される前記圧縮ガス、前記再液化ガス及び前記窒素ガスが、前記バイパスラインより排出されることが好ましい。
【0015】
また、本発明において、前記船舶用再液化システムに、前記圧力補償ラインの窒素ブランケットラインとの接続点より上流側に設けられる第3バルブと、前記窒素ブランケットラインに設けられる第4バルブと、前記圧力補償ラインの窒素ブランケットラインとの接続点より下流側に設けられる第5バルブ;とがさらに設けられることが好ましい。
【0016】
また、本発明において、前記熱交換器に、冷媒循環ラインを循環する冷媒を、前記圧縮ガスを冷却する冷媒として供給し、前記貯蔵タンクから排出されて、前記圧縮機に供給される前の非圧縮の蒸発ガスを、前記熱交換器に供給した後、前記圧縮機に供給し、前記熱交換器で、前記圧縮ガスを、前記冷媒及び前記非圧縮の蒸発ガスとの熱交換により冷却することが好ましい。
【0017】
また、本発明において、前記冷媒循環ラインを循環する冷媒は窒素であり、前記熱交換器はアルミろう付熱交換器であることが好ましい。
【0018】
また、本発明において、前記気液分離器に供給される前記再液化ガスから発生するフラッシュガスにより、前記気液分離器内の圧力を維持して、前記気液分離器内の再液化ガスを前記貯蔵タンクに供給し、前記気液分離器内に供給される再液化ガスが過冷却であり、フラッシュガスにより気液分離器内の圧力を維持できない場合には、前記圧力補償ラインより前記気液分離器に蒸発ガスまたは窒素ガスを供給して、前記気液分離器内の圧力を維持することが好ましい。
【発明の効果】
【0019】
本発明は、再液化システムのトリップ発生時等の異常運転時に、熱交換器及び再液化ラインに窒素パージを行うと共に、熱交換器内及び再液化ライン内に滞留する圧縮ガス及び再液化ガスを迅速に排出させることで、熱交換器にかかる熱応力を軽減し、熱交換器の熱疲労(Thermal fatigue)を低減させて、熱交換器の損傷を防止することができる。
【0020】
また、他の設備等を追加して設置することなく、既設の設備を利用することで、再液化システムの設置費用や設置空間を削減できると共に、熱交換器や熱交換器に接続される配管の損傷を防止することで、メンテナンス費用を削減し、また船舶の安全性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の実施形態のブローダウン方法が適用される船舶用再液化システムの気液分離器内の圧力を維持するため、窒素ブランケットラインより窒素ガスを供給する場合の運転例を模式的に示す。
【
図2】
図1で示した再液化システムのトリップ(Trip)発生時に、本発明を適用してブローダウンする場合の運転例を模式的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面及び図面に記載した内容を参照して、本発明の動作上の利点及び本発明の実施形態により達成される目的を、本発明の実施形態を例に説明する。
【0023】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態の構成及び作用について説明する。なお、各図面の構成要素に付した参照符号について、同一の構成要素には、他の図面上に表示されるものにも可能な限り同一の符号を表記する。
【0024】
後述する本発明の実施形態の船舶としては、液化ガスを貯蔵する貯蔵タンクが設けられる全種類の船舶であり得る。代表的なものとしては、LNG運搬船(LNG Carrier)、液体水素運搬船、LNG RV(Regasification Vessel)等の自走能力を備える船舶をはじめ、LNG FPSO(Floating Production Storage Offloading)、LNG FSRU(Floating Storage Regasification Unit)等の推進能力を有しない海上浮遊式の海上構造物である。
【0025】
また、本実施形態は、ガスを低温で液化させて輸送でき、貯蔵時に蒸発ガスが発生する全種類の液化ガスの再液化サイクルに適用することができる。このような液化ガスとしては、例えば、LNG(Liquefied Natural Gas)、LEG(Liquefied Ethane Gas)、LPG(Liquefied Petroleum Gas)、液化エチレンガス(Liquefied Ethylene Gas)、液化プロピレンガス(Liquefied Propylene Gas)等の液化ガスがある。なお、後述する実施形態では、代表的な液化ガスの1つであるLNGを例に説明する。
【0026】
図1は、本発明の実施形態のブローダウン方法が適用される船舶用再液化システムの気液分離器内の圧力を維持するため、窒素ブランケットラインより窒素ガスを供給する場合の運転例を模式的に示す。
図2は、
図1で示した再液化システムのトリップ(Trip)発生時に、本発明を適用してブローダウンする場合の運転例を模式的に示す。
【0027】
まず、本実施形態が適用される船舶用の再液化システムは、船舶の貯蔵タンクCHに貯蔵される液化ガスから発生した蒸発ガスを、ベイパーヘッダーから排出して、圧縮機に供給して圧縮し、必要に応じて船内エンジン等に燃料として供給する。そして、燃料として供給されずに残った蒸発ガスは、再液化ラインRLより熱交換器100に供給され、熱交換器100で冷却して再液化させた後、再液化された再液化ガスが貯蔵タンクCHに戻される。
【0028】
この再液化システムでは、船舶の貯蔵タンクCHに貯蔵される液化ガスから発生した蒸発ガスは、ベイパーヘッダー(図示せず)から排出され、ガス供給ライン(図示せず)より圧縮機(図示せず)に供給される。なお、ガス供給ラインは、貯蔵タンクCHと圧縮機とを熱交換器を介して接続し、貯蔵タンクCHから排出されて、圧縮機に供給される前の非圧縮の蒸発ガスが、熱交換器に冷媒として供給される。
【0029】
圧縮機で圧縮された蒸発ガスは、熱交換器100に再び供給され、ガス供給ラインより供給される非圧縮の蒸発ガスの冷熱により冷却される。
【0030】
熱交換器100には、非圧縮の蒸発ガス以外に、冷媒循環ライン(図示せず)を循環する他の冷媒を供給することもできる。このような冷媒循環ラインを循環する冷媒としては、例えば窒素(N2)が用いられる。また、冷媒循環ラインには、窒素冷媒を圧縮する冷媒圧縮機と、冷媒圧縮機で圧縮された窒素冷媒を膨張させる冷媒膨張機とが設けられる。冷媒循環ラインの窒素冷媒は、冷媒圧縮機で圧縮され、熱交換器100に供給されて冷却された後、冷媒膨張機で膨張させて冷却されて、熱交換器100に冷媒として再び供給され、冷媒循環ラインを循環する。これにより、熱交換器100では、圧縮機で圧縮された蒸発ガス、圧縮機に供給される前の非圧縮の蒸発ガス、冷媒膨張機で膨張により冷却された冷媒及び、冷媒圧縮機で圧縮された冷媒の4つの流れが熱交換される。
【0031】
また、熱交換器100は、極低温のLNGから発生した蒸発ガス及び窒素冷媒の冷凍サイクルに応じて、極低温用熱交換器(Cryogenic Heat Exchanger)が用いられ、例えば、アルミろう付熱交換器(BAHE; Brazed Aluminium Heat Exchanger)が用いられる。
【0032】
熱交換器100で冷却された蒸発ガスは、気液分離器200に供給されて気液分離され、分離された再液化ガスが貯蔵タンクCHに回収される。また、再液化ラインRLの熱交換器100より下流側で再液化ラインRLから分岐し、気液分離器200を迂回して、貯蔵タンクCHに接続されるバイパスラインBLが設けられている。バイパスラインBLにより、熱交換器100で冷却された再液化ガスを、貯蔵タンクCHに直接供給することもできる。また、再液化ラインRLのバイパスラインBLの分岐点より下流側には、第1バルブV1が設けられている。また、バイパスラインBLには、バイパスラインBLの開閉を行う第2バルブV2が設けられている。
【0033】
ところで、気液分離器200で分離された再液化ガスを貯蔵タンクCHに供給するために、気液分離器200の下流に設けられるバルブLVを開放すると、気液分離器200内の圧力が変化する。このような場合でも、気液分離器200内に供給された再液化ガスから発生するフラッシュガス(すなわち、オフガス)により、気液分離器200内の圧力を維持することで、気液分離器200内の再液化ガスを貯蔵タンクCHに供給することができる。
【0034】
しかし、窒素冷媒との熱交換により冷却された液化ガスが、過冷却となって気液分離器200内に供給される場合、オフガスが殆ど発生せず、気液分離器200の下流のバルブLVを開放すると、気液分離器200内の圧力が急激に低下する恐れがある。このような気液分離器200内の圧力を補償して、気液分離器200内の圧力を維持できるよう、本実施形態が適用される再液化システムには、再液化ラインRLの圧縮機より下流側で再液化ラインRLから分岐して、気液分離器200の上部に接続される圧力補償ラインPLと、圧力補償ラインPLに窒素ガスを供給する窒素ブランケットラインNBLとが設けられている。これにより、気液分離器200内の再液化ガスを貯蔵タンクCHに供給する場合でも、圧力補償ラインPLより蒸発ガスまたは窒素ガスを気液分離器200に供給することで、気液分離器200内の圧力を維持することができる。
【0035】
圧力補償ラインPLの窒素ブランケットラインNBLとの接続点より上流側には、第3バルブV3が設けられている。また、窒素ブランケットラインNBLには、第4バルブV4が設けられている。また、圧力補償ラインPLの窒素ブランケットラインNBLとの接続点より下流側には、第5バルブV5が設けられている。
【0036】
図1に示すように、本実施形態が適用される再液化システムで、気液分離器200内の圧力を維持するために、窒素ブランケットラインNBLより窒素ガスが供給される場合の運転例では、第3バルブV3を閉鎖し、第4バルブV4及び第5バルブV5を開放して、窒素ブランケットラインNBLより気液分離器200の上部に窒素ガスを供給する。このように窒素ガスを気液分離器200の上部に供給して、気液分離器200内の圧力を維持することで、気液分離器200内の再液化ガスを貯蔵タンクCHへ円滑に供給することができる。
【0037】
ここで、通常、貯蔵タンクCHから排出されて熱交換器100に供給される蒸発ガスの温度は、-100℃程であり、貯蔵タンクCHの状態によっては、-130℃以下になる場合もある。例えば再液化システムの初期起動時等、蒸発ガスの温度が急激に変化する場合や、熱交換器100の温度と蒸発ガスの温度との温度差が大きい場合には、熱交換器100に過大な熱応力(Thermal stress)がかかる恐れがある。特に、再液化システムの異常運転時に、熱交換器100に流出入する流体の流れを迅速に制御できない場合には、熱交換器100に過大な熱応力がかかることで、疲労破壊等による熱交換器100の損傷や熱交換器100の装置寿命の短縮につながる恐れがある。このような熱交換器100の損傷を防止するため、本実施形態では、再液化システムの異常運転時に、熱交換器100内や熱交換器100に接続される配管内に滞留する圧縮ガス及び再液化ガスを迅速に排出させる(blow-down)。
【0038】
図2は、本実施形態のブローダウン方法により、再液化システムの異常運転時、特にトリップ(Trip)発生時に、ブローダウンする場合の運転例を模式的に示す。
【0039】
本実施形態では、気液分離器200内の圧力を維持するために設けられる圧力補償ラインPLと窒素ブランケットラインNBLとを利用して、熱交換器100及び再液化ラインRLに窒素パージを行うと共に、熱交換器100内及び再液化ラインRL内に滞留する圧縮ガス及び再液化ガスを排出させる。
【0040】
すなわち、再液化システムのトリップ(Trip)発生時には、第4バルブV4及び第3バルブV3を開放して、窒素ブランケットラインNBLより圧力補償ラインPLに窒素ガスを供給し、圧力補償ラインPLに供給された窒素ガスを、再液化ラインRLの圧縮機より下流側に送って、再液化ラインRLを介して熱交換器100に窒素ガスを供給する。また、熱交換器100及び再液化ラインRLに窒素パージ(N2 purging)を行うと共に、気液分離器200の上流に設けられる第1バルブV1を閉鎖し、バイパスラインBLに設けられる第2バルブV2を開放して、熱交換器100内及び再液化ラインRL内に滞留する圧縮ガス及び再液化ガスを、バイパスラインBLより排出させる(blow-down)。
【0041】
以上のように、再液化システムの異常運転時に、熱交換器100及び再液化ラインRLに窒素パージを行うと共に、熱交換器100内及び再液化ラインRL内に滞留する圧縮ガス及び再液化ガスを迅速に排出させることで、熱交換器100にかかる熱応力を軽減し、熱交換器100の熱疲労を低減させて、熱交換器100の破損を防止することができる。
【0042】
特に、他の設備等を追加して設置する必要がなく、既設の設備を利用することで、再液化システムの設置費用や設置空間を削減できると共に、熱交換器100や熱交換器100に接続される配管の損傷を防止することで、メンテナンス費用を削減し、また船舶の安全性を向上させることができる。
【0043】
本発明は、上記実施形態に限定されず、本発明の技術的要旨を超えない範囲内で様々な変更または変形ができることは、本発明の属する技術分野の当業者にとって自明である。
【国際調査報告】