(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-04
(54)【発明の名称】船舶用再液化システムの微少漏洩検知システム
(51)【国際特許分類】
B63B 25/16 20060101AFI20240927BHJP
【FI】
B63B25/16 C
B63B25/16 D
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024521774
(86)(22)【出願日】2021-12-27
(85)【翻訳文提出日】2024-04-10
(86)【国際出願番号】 KR2021019916
(87)【国際公開番号】W WO2023075026
(87)【国際公開日】2023-05-04
(31)【優先権主張番号】10-2021-0147145
(32)【優先日】2021-10-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517430897
【氏名又は名称】ハンファ オーシャン カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000305
【氏名又は名称】弁理士法人青莪
(72)【発明者】
【氏名】ソン,ジフン
(72)【発明者】
【氏名】チェ,ウォン ジェ
(72)【発明者】
【氏名】リー,スン チョル
(57)【要約】
船舶用再液化システムの微少漏洩検知システムが開示される。船舶の貯蔵タンクに貯蔵される液化ガスから発生した蒸発ガスを、熱交換器に供給して冷熱が回収された後に圧縮し、前記熱交換器で冷媒循環ラインを循環する冷媒との熱交換により冷却して再液化させる本発明の船舶用再液化システムの微少漏洩検知システムは、前記船舶用再液化システムが、前記貯蔵タンクから前記熱交換器に供給される蒸発ガスを、熱源との熱交換により加熱するヒーターを備え、前記ヒーターで前記熱源が残留した残液を前記ヒーターから排出させる残液排出口に接続され、前記ヒーターから前記熱源の微少漏洩を検知する微少漏洩検知装置を備えることを特徴とする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
船舶の貯蔵タンクに貯蔵される液化ガスから発生した蒸発ガスを、熱交換器に供給して冷熱が回収された後に圧縮し、前記熱交換器で冷媒循環ラインを循環する冷媒との熱交換により冷却して再液化させる船舶用再液化システムの微少漏洩検知システムであって、
前記船舶用再液化システムは、前記貯蔵タンクから前記熱交換器に供給される蒸発ガスを、熱源との熱交換により加熱するヒーター;を備え、
前記ヒーターで前記熱源が残留した残液を前記ヒーターから排出させる残液排出口に接続されて、前記ヒーターから前記熱源の微少漏洩を検知する微少漏洩検知装置;を備えることを特徴とする、
船舶用再液化システムの微少漏洩検知システム。
【請求項2】
前記微少漏洩検知装置は、
前記残液排出口に締結されて、前記残液排出口より下方に延伸する接続チューブ;と、
前記接続チューブに設けられて、前記残液排出口から排出される前記残液の有無を確認する漏洩検知部:とを備えることを特徴とする、
請求項1に記載の船舶用再液化システムの微少漏洩検知システム。
【請求項3】
前記微少漏洩検知装置は、
前記接続チューブの前記漏洩検知部より入口側に設けられる第1遮断バルブ;と、
前記接続チューブの前記漏洩検知部の出口側に設けられる第2遮断バルブ;と、
前記接続チューブの下端に設けられるチューブプラグ;とをさらに備えることを特徴とする、
請求項2に記載の船舶用再液化システムの微少漏洩検知システム。
【請求項4】
前記微少漏洩検知装置で、前記第1遮断バルブは常開状態で作動し、前記第2遮断バルブは常閉状態で作動し、
前記ヒーターのメンテナンス時に前記第2遮断バルブを開放して、前記ヒーターから前記残液を排出させることを特徴とする、
請求項3に記載の船舶用再液化システムの微少漏洩検知システム。
【請求項5】
前記漏洩検知部は、前記残液排出口から排出される前記残液の有無を視覚的に確認できるサイトグラスであることを特徴とする、
請求項3に記載の船舶用再液化システムの微少漏洩検知システム。
【請求項6】
前記漏洩検知部は、前記残液排出口から排出される前記残液を検出する液位検知器であることを特徴とする、
請求項3に記載の船舶用再液化システムの微少漏洩検知システム。
【請求項7】
前記熱交換器は極低温用熱交換器であり、前記ヒーターは多管式熱交換器であることを特徴とする、
請求項1~6のいずれか1項に記載の船舶用再液化システムの微少漏洩検知システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、船舶用再液化システムの微少漏洩検知システムに関する。より詳細には、船舶に設けられる貯蔵タンクで発生する蒸発ガスを再液化させる再液化システムが備える熱交換器の上流側に設けられるヒーター内の微少漏洩を検知して、熱交換器への異物の流入を防止する微少漏洩検知システムに関する。
【背景技術】
【0002】
天然ガス(Natural gas)は、メタン(Methane)を主成分とし、燃焼時に環境汚染物質を殆ど排出しないことから、環境性に優れた燃料として注目されている。液化天然ガス(LNG; Liquefied Natural Gas)は、天然ガスを常圧で約-163℃に冷却して液化させて得られるものであり、気体状態の天然ガスと比べて、その体積が約1/600まで減少することから、海上ルートを利用した長距離輸送に非常に適している。このような理由から、天然ガスは、主に貯蔵や輸送に有利なLNGの液体状態で、貯蔵されて輸送される。
【0003】
天然ガスの液化点は、常圧で約-163℃と極低温であることから、LNG貯蔵タンクには、通常、LNGを液体状態で維持するための断熱処理が施されるが、LNG貯蔵タンクに断熱処理を施しても、外部熱を完全に遮断することは難しい。このため、外部熱がLNG貯蔵タンクに継続して伝達されることで、LNG輸送の過程でLNG貯蔵タンク内のLNGが自然気化し、蒸発ガス(BOG; Boil-Off Gas、ボイルオフガス)が発生する。
【0004】
LNG貯蔵タンク内で蒸発ガスが継続して発生すると、LNG貯蔵タンク内の圧力が上昇する。そして、貯蔵タンク内の圧力が設定した安全圧力以上になると、タンク破損(Rupture)等の緊急事態が生じる恐れがあるため、安全バルブを利用して蒸発ガスを貯蔵タンクの外部に排出させる必要がある。しかし、蒸発ガスはLNG損失の1つであり、LNGの輸送効率や燃料効率の点で重要な問題となることから、貯蔵タンクで発生した蒸発ガスを処理する様々な方法が用いられている。
【0005】
近年、船舶のエンジン等の燃料需要先で蒸発ガスを使用する方法、蒸発ガスを再液化させて貯蔵タンクに回収する方法、または、これら2つの方法を組合せて使用する方法等が開発され、用いられている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
蒸発ガスを再液化させる再液化サイクルを船舶に適用する場合、代表的な再液化サイクルとして、例えばSMRサイクルやC3MRサイクルが知られている。C3MRサイクル(Propane-precooled Mixed Refrigerant Cycle)は、プロパンの単一冷媒を用いて蒸発ガスを冷却した後、混合冷媒を用いて冷却して再液化させ、また、SMRサイクル(Single Mixed Refrigerant Cycle)は、複数の成分から構成される混合冷媒を用いて蒸発ガスを再液化させる。
【0007】
これらSMRサイクルやC3MRサイクルは、混合冷媒が用いられ、液化工程の進行に伴い冷媒が漏洩する。これにより、混合冷媒の組成比が変化することで液化効率が低下するため、混合冷媒の組成比を継続して計測すると共に、不足した冷媒成分を補充することで、冷媒の組成を維持する必要がある。
【0008】
また、再液化サイクルを利用する他の再液化方法として、窒素冷媒が用いられるシングルサイクルの再液化方法が知られている。
【0009】
窒素冷媒は、混合冷媒を用いる冷凍サイクルと比較して、冷却効率は低いが、窒素冷媒は不活性物質であることから安全性が高く、また冷媒の相変化が生じないことから、船舶に適用し易いという利点がある。
【0010】
再液化システムは、蒸発ガスが供給されて、これを圧縮する圧縮機と、圧縮機で蒸発ガスが圧縮された圧縮ガスを冷媒との熱交換により冷却する熱交換器と、熱交換器で圧縮ガスとの熱交換に用いられる冷媒が循環する冷媒循環部とを備える。また、窒素冷媒を用いる冷凍サイクルが適用される再液化システムの場合、冷媒循環部では、熱交換器での熱交換後に熱交換器から排出された窒素冷媒が圧縮された後、熱交換器に供給されて冷却され、膨張によりさらに冷却された後、熱交換器に再び供給されて、窒素冷媒が循環する。
【0011】
ところで、LNGから発生する蒸発ガスの温度は-100℃程であり、貯蔵タンクの状態によっては、蒸発ガスの温度が-130℃以下になる場合もある。また、窒素冷媒の温度は、蒸発ガスの温度よりも低く、これら蒸発ガスや窒素冷媒が熱交換器に供給される熱交換器には、熱応力(Thermal stress)がかかる。特に、再液化システムの始動時等の熱交換器の温度が室温と同程度である状態や、熱交換器が十分に冷却(Cool-down)されていない状態で、極低温の蒸発ガス等をそのまま熱交換器に流入させる場合や、貯蔵タンクの状態が変化することで、蒸発ガスの温度が変化する場合には、熱交換器と蒸発ガスとの温度差が大きくなり、熱交換器にかかる熱応力が増加することで、熱交換器が損傷する恐れがある。
【0012】
本発明は、このような問題を解決し、熱交換器にかかる熱応力を軽減させると共に、これに伴い追加して設置される装置で発生する微少漏洩及び微少漏洩による熱交換器への異物の流入等の問題を防止する再液化システムを提案する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するため本発明の実施形態では、船舶の貯蔵タンクに貯蔵される液化ガスから発生した蒸発ガスを、熱交換器に供給して冷熱が回収された後に圧縮し、前記熱交換器で冷媒循環ラインを循環する冷媒との熱交換により冷却して再液化させる船舶用再液化システムの微少漏洩検知システムであって、前記船舶用再液化システムは、前記貯蔵タンクから前記熱交換器に供給される蒸発ガスを、熱源との熱交換により加熱するヒーターを備え、前記ヒーターで前記熱源が残留した残液を前記ヒーターから排出させる残液排出口に接続されて、前記ヒーターから前記熱源の微少漏洩を検知する微少漏洩検知装置を備えることを特徴とする、船舶用再液化システムの微少漏洩検知システムが提供される。
【0014】
また、好ましくは、前記微少漏洩検知装置は、前記残液排出口に締結されて、前記残液排出口より下方に延伸する接続チューブと、前記接続チューブに設けられて、前記残液排出口から排出される前記残液の有無を確認する漏洩検知部とを備える。
【0015】
また、好ましくは、前記微少漏洩検知装置は、前記接続チューブの前記漏洩検知部より入口側に設けられる第1遮断バルブと、前記接続チューブの前記漏洩検知部の出口側に設けられる第2遮断バルブと、前記接続チューブの下端に設けられるチューブプラグとをさらに備える。
【0016】
また、好ましくは、前記微少漏洩検知装置で、前記第1遮断バルブは常開状態で作動し、前記第2遮断バルブは常閉状態で作動し、前記ヒーターのメンテナンス時に前記第2遮断バルブを開放して、前記ヒーターから前記残液を排出させる。
【0017】
また、好ましくは、前記漏洩検知部は、前記残液排出口から排出される前記残液の有無を視覚的に確認できるサイトグラスである。
【0018】
また、好ましくは、前記漏洩検知部は、前記残液排出口から排出される前記残液を検出する液位検知器である。
【0019】
また、好ましくは、前記熱交換器は極低温用熱交換器であり、前記ヒーターは多管式熱交換器である。
【発明の効果】
【0020】
本発明の微少漏洩検知システムを備える再液化システムでは、熱交換器より上流側に設けられるヒーターにより、熱交換器に供給される蒸発ガスの温度を調節することで、再液化システムの始動時(Start-up)や、貯蔵タンクの状態が変化して蒸発ガスの温度が変化する場合でも、熱交換器にかかる熱応力を軽減し、熱交換器の損傷を防止することができる。
【0021】
特に、本発明の微少漏洩検知システムは、圧力センサ等の装置では測定誤差の範囲内であるような、微少な漏洩を検知することができるため、再液化システムに作動流体として不凍液等を使用するヒーターが設けられる場合でも、不凍液等の漏洩により生じる熱交換器への異物の流入を防止して、熱交換器の内部の腐食や装置寿命の短縮を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の実施形態の微少漏洩検知システムが設けられる船舶用再液化システムのヒーターの構造を模式的に示す。
【
図2】本発明の実施形態の船舶用再液化システムの微少漏洩検知システムを模式的に示す。
【
図3】
図2に示す微少漏洩検知システムの微少漏洩検知装置の部分をより詳細に示す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面及び図面に記載した内容を参照して、本発明の動作上の利点及び本発明の実施形態により達成される目的を、本発明の実施形態を例に説明する。
【0024】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態の構成及び作用について説明する。なお、各図面の構成要素に付した参照符号について、同一の構成要素には、他の図面上に表示されるものにも可能な限り同一の符号を表記する。
【0025】
後述する本発明の実施形態の船舶としては、液化ガスを貯蔵する貯蔵タンクが設けられる全種類の船舶であり得る。代表的なものとしては、LNG運搬船(LNG Carrier)、液体水素運搬船、LNG RV(Regasification Vessel)等の自走能力を備える船舶をはじめ、LNG FPSO(Floating Production Storage Offloading)、LNG FSRU(Floating Storage Regasification Unit)等の推進能力を有しない海上浮遊式の海上構造物である。
【0026】
また、本実施形態は、ガスを低温で液化させて輸送でき、貯蔵時に蒸発ガスが発生する全種類の液化ガスの再液化サイクルに適用することができる。このような液化ガスとしては、例えば、LNG(Liquefied Natural Gas)、LEG(Liquefied Ethane Gas)、LPG(Liquefied Petroleum Gas)、液化エチレンガス(Liquefied Ethylene Gas)、液化プロピレンガス(Liquefied Propylene Gas)等の液化ガスがある。なお、後述する実施形態では、代表的な液化ガスの1つであるLNGを例に説明する。
【0027】
本実施形態の微少漏洩検知システムが適用される船舶用再液化システムは、船舶の貯蔵タンクに貯蔵される液化ガスから発生した蒸発ガスを、ベイパーヘッダーから排出して、圧縮機に供給して圧縮し、必要に応じて船内エンジン等に燃料として供給する。そして、燃料として供給されずに残った蒸発ガスは、熱交換器で冷却して再液化させた後、貯蔵タンクに戻される。
【0028】
この再液化システムでは、船舶の貯蔵タンクに貯蔵される液化ガスから発生した蒸発ガスは、ベイパーヘッダーから排出され、ガス供給ラインにより圧縮機に供給される。なお、ガス供給ラインは、貯蔵タンクと圧縮機とを熱交換器を介して接続し、貯蔵タンクCHから排出されて、圧縮機に供給される前の非圧縮の蒸発ガスが、熱交換器に冷熱として供給される。
【0029】
圧縮機で圧縮された蒸発ガスは、熱交換器に再び供給され、ガス供給ラインより供給される非圧縮の蒸発ガスの冷熱により冷却される。
【0030】
熱交換器には、非圧縮の蒸発ガス以外に、冷媒循環ライン(図示せず)を循環する他の冷媒を供給することもできる。このような冷媒循環ラインを循環する冷媒としては、例えば窒素冷媒(N2)が用いられる。また、冷媒循環ラインには、窒素冷媒を圧縮する冷媒圧縮機と、冷媒圧縮機で圧縮された窒素冷媒を膨張させる冷媒膨張機とが設けられる。冷媒循環ラインの窒素冷媒は、冷媒圧縮機で圧縮され、熱交換器に供給されて冷却された後、冷媒膨張機で膨張させて冷却され、熱交換器に冷媒として再び供給されて、冷媒循環ラインを循環する。これにより、熱交換器では、圧縮機で圧縮された蒸発ガス、圧縮機に供給される前の非圧縮の蒸発ガス、冷媒膨張機で膨張により冷却された冷媒及び、冷媒圧縮機で圧縮された冷媒の4つの流れが熱交換される。
【0031】
熱交換器で冷却された蒸発ガスは、気液分離され、分離された再液化ガスが貯蔵タンクに回収される。
【0032】
ところで、このように蒸発ガスを熱交換器で冷却して再液化させる場合、再液化システムの始動時(Start-up)や、貯蔵タンクの状況が変化して蒸発ガスの温度が変化したときに、熱交換器に蒸発ガスが供給されると、熱交換器にかかる熱応力(Thermal stress)が増加することがある。
【0033】
通常、貯蔵タンクから排出されて熱交換器に供給される蒸発ガスの温度は、-100℃程であり、貯蔵タンクの状態によっては、-130℃以下の温度になる場合もある。このようなLNGから発生した極低温の蒸発ガスや、冷凍サイクルの窒素冷媒に対応できるように、熱交換器として、プレートフィン(Plate-fin)型の極低温用熱交換器(CRYOGENIC HEAT EXCHANGER,CHE)等の極低温用熱交換器が設けられるが、蒸発ガスの温度によっては、熱交換器に過大な熱応力がかかる。特に、再液化システムの再始動直後の熱交換器(即ち、熱交換器の温度が室温と同程度であり、十分に冷却されていない状態の熱交換器)に、極低温の蒸発ガスがそのまま供給される場合等、熱交換器の温度と蒸発ガスの温度との温度差が大きい程、熱交換器にかかる熱応力(Thermal stress)も大きくなるため、疲労破壊等による熱交換器の損傷や熱交換器の装置寿命が短くなるといった問題を招来する恐れがある。
【0034】
本実施形態の微少漏洩検知システムが設けられる再液化システムは、このような問題を解決するため、熱交換器の上流側でガス供給ラインから分岐して、熱交換器に供給される蒸発ガスの全部または一部を加熱するヒーティングラインが設けられている。ヒーティングラインで加熱された蒸発ガスが、熱交換器の上流側(すなわち、ガス供給ラインの熱交換器の上流側で分岐するヒーティングラインの分岐点と、熱交換器との間)に供給される。また、ヒーティングラインには、蒸発ガスを加熱するヒーターが設けられる。ヒーターとしては、多管式熱交換器(Shell-Tube Heat Exchanger)を用いることができ、また、ヒーターの熱源(作動流体)としては、不凍液やグリコールウォーターを用いることができる。
【0035】
図1には、本実施形態の微少漏洩検知システムが適用される船舶用再液化システムに設けられるヒーターの構造を模式的に示す。
【0036】
図1に示すように、蒸発ガスBOGは、ヒーター100を通過することで加熱された後、ヒーター100から排出される。ヒーター100には、蒸発ガスを加熱する熱源として不凍液GWが供給される。そして、ヒーター100で蒸発ガスに熱量を供給することで冷却された不凍液GWが、ヒーター100の外部に排出される。ヒーター100の底部には、ヒーター100のメンテナンス時に、ヒーター100に残留する不凍液GWを、ヒーター100の外部に排出するための残液排出口110が設けられている。
【0037】
このように貯蔵タンクから供給される蒸発ガスの一部(または全部)をヒーター100で加熱し、ヒーター100で加熱された蒸発ガスの流れと、ヒーター100を通過させず加熱されなかった蒸発ガスの流れと合流させて、熱交換器に供給することで、熱交換器に供給される蒸発ガスの温度を調節することができる。これにより、熱交換器にかかる熱応力を軽減し、熱交換器の熱疲労(Thermal fatigue)を低減させ、熱交換器の損傷を防止することができる。
【0038】
一方、このようなヒーター100を熱交換器の上流側に設置すると、ヒーター100との接続部やヒーター100の配管内で不凍液等の漏洩が発生した場合、この不凍液等が蒸発ガスに混入して熱交換器内に流入すると、熱交換器の内部の腐食や装置寿命の短縮、熱交換器の破損等が生じる恐れがある。
【0039】
これを防止するため、熱交換器の上流側や下流側に圧力センサを設け、蒸発ガスの状態や流量の変化を検知して、圧力センサで異常が検知されると、再液化システムの制御部が、警報を発したり、非常停止等の制御を自動的に実施する。
【0040】
しかし、不凍液等の漏洩が、圧力センサの測定誤差の範囲内であるような、微少な漏洩(Small leakage,fine leakage)である場合、圧力センサで漏洩を検知することができず、蒸発ガス中に不凍液等の異物が継続して混入することで、最終的には、熱交換器の内部の腐食や装置寿命の短縮の原因となり、また、再液性能が低下する恐れがある。
【0041】
本実施形態の微少漏洩検知システムは、このようなヒーター100での微少漏洩を検知できる構成とする。
【0042】
図2には、本発明の実施形態の船舶用再液化システムの微少漏洩検知システムを示す。また、
図3には、
図2に示す微少漏洩検知システムの微少漏洩検知装置の部分をより詳細に示している。
【0043】
図2及び
図3を参照して、ヒーター100内に残留する残液(不凍液GW)を排出(Drain)させる残液排出口110には、ヒーター100内の微少漏洩を検知するための微少漏洩検知装置200が接続されている。
【0044】
微少漏洩検知装置200は、残液排出口110に締結されて、残液排出口110から下方に延伸する接続チューブDTが設けられている。また、接続チューブDTには、残液排出口110から排出される残液の有無を検知する漏洩検知部220と、接続チューブDTの漏洩検知部220の入口側(漏洩検知部220より上方側)に設けられる第1遮断バルブ210と、接続チューブDTの漏洩検知部220より出口側(漏洩検知部220より下方側)に設けられる第2遮断バルブ230と、接続チューブDTの下端に設けられるチューブプラグ240とが設けられている。
【0045】
漏洩検知部220としては、例えば、
図3に示すように、残液排出口110から排出される残液の有無を視覚的に確認できるサイトグラス(Sight glass)を用いることができる。また、漏洩検知部220として、残液排出口110から排出される液体を、検知または測定する液位検知器を用いることもできる。なお、漏洩検知部220は、これらに限定されず、微少漏洩を検知できる装置を適宜用いてもよい。
【0046】
本実施形態の微少漏洩検知システムに設けられる微少漏洩検知装置200では、ヒーター100の微少漏洩によって残液排出口110から排出される不凍液の有無を継続して監視できるように、第1遮断バルブ210は常開状態で作動する。
【0047】
また、ヒーター100で微少漏洩が発生した場合に、漏洩検知部220に不凍液GWが充填されるように、第2遮断バルブ230を常閉状態にする。ただし、ヒーター100のメンテナンス時等、ヒーター100の残液排出口110よりヒーター100に残留する残液を全て排出させる場合には、第2遮断バルブ230及びチューブプラグ240を開放して、ヒーター100の残液排出口110を介して接続チューブDTから残液を排出させる。
【0048】
以上、本実施例の微少漏洩検知システムでは、熱交換器の上流側や下流側に設けられる圧力センサでは測定誤差の範囲内であるような、微少漏洩を継続して検知することで、熱交換器に不凍液等の異物が流入することを防止して、熱交換器の内部の腐食や装置寿命の短縮を防ぐことができる。これにより、再液化工程での熱交換器の性能を安定して維持することができ、装置異常や再液化性能の低下による再液化システム全体のメンテナンス頻度を削減することができる。
【0049】
本発明は、上記実施形態に限定されず、本発明の技術的要旨を超えない範囲内で様々な変更または変形ができることは、本発明が属する技術分野の当業者にとって自明である。
【国際調査報告】