(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-04
(54)【発明の名称】エチルベンゼン脱水素化触媒、その調製方法、およびその使用
(51)【国際特許分類】
B01J 23/887 20060101AFI20240927BHJP
C07C 15/46 20060101ALI20240927BHJP
C07C 5/333 20060101ALI20240927BHJP
C07B 61/00 20060101ALN20240927BHJP
【FI】
B01J23/887 Z
C07C15/46
C07C5/333
C07B61/00 300
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024521820
(86)(22)【出願日】2022-10-11
(85)【翻訳文提出日】2024-06-04
(86)【国際出願番号】 CN2022124556
(87)【国際公開番号】W WO2023061351
(87)【国際公開日】2023-04-20
(31)【優先権主張番号】202111183786.1
(32)【優先日】2021-10-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】503191287
【氏名又は名称】中国石油化工股▲ふん▼有限公司
(71)【出願人】
【識別番号】509128052
【氏名又は名称】中国石油化工股▲ふん▼有限公司上海石油化工研究院
【氏名又は名称原語表記】SHANGHAI RESEARCH INSTITUTE OF PETROCHEMICAL TECHNOLOGY SINOPEC
【住所又は居所原語表記】NO.1658 PUDONG BEI ROAD,PUDONG NEW AREA,SHANGHAI 201208,CHINA
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】曽鐵強
(72)【発明者】
【氏名】繆長喜
(72)【発明者】
【氏名】宋磊
(72)【発明者】
【氏名】危春玲
(72)【発明者】
【氏名】朱敏
(72)【発明者】
【氏名】張征湃
(72)【発明者】
【氏名】徐永繁
(72)【発明者】
【氏名】査凱文
【テーマコード(参考)】
4G169
4H006
4H039
【Fターム(参考)】
4G169AA02
4G169AA08
4G169BB04B
4G169BC02B
4G169BC03B
4G169BC09B
4G169BC43B
4G169BC50A
4G169BC50B
4G169BC59B
4G169BC66B
4G169CB18
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4G169FB06
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4G169FC02
4G169FC07
4G169FC08
4H006AA02
4H006AC12
4H006BA02
4H006BA06
4H006BA08
4H006BA10
4H006BA14
4H006BA19
4H006BA30
4H006BA81
4H006BA85
4H006BC10
4H006BC11
4H006BC18
4H039CA20
4H039CC10
(57)【要約】
本発明は、エチルベンゼン脱水素化触媒、その調製方法、およびその使用に関する。前記触媒は、Fe2O3、K2O、CeO2、MoO3およびCaOを含み、CeO2(100)における露出結晶面の面積が、CeO2の露出結晶面の総面積の60%以上を占める。本発明の触媒は、低い水比にてエチルベンゼンを脱水素化させることにより、スチレンを調製するための反応に使用され、高い活性および安定性を有する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
組成が酸化物として計算され、Fe
2O
3、K
2O、CeO
2、MoO
3およびCaOを含む触媒であって;
CeO
2(100)における露出結晶面の面積が、CeO
2の露出結晶面の総面積の43%以上、例えば50%以上、好ましくは60%以上、より好ましくは70%以上を占めることを特徴とする、触媒。
【請求項2】
前記触媒の、H
2-TPRにおける主還元ピーク位置が、570℃~620℃、例えば570℃、580℃、585℃、590℃、595℃、600℃、605℃、610℃、615℃、620℃に位置することを特徴とする、請求項1に記載の触媒。
【請求項3】
前記触媒の総質量を基準とする質量分率にて、以下の成分を含むことを特徴とする、請求項1または2に記載の触媒;
(a)60%~85%のFe
2O
3;
(b)6%~14%のK
2O;
(c)6%~14%のCeO
2;
(d)0.5%~5%のMoO
3;
(e)0.3%~7%のCaO。
【請求項4】
前記触媒の総質量を基準とする質量分率にて、0.01%~2.0%のNa
2Oを含むことを特徴とする、請求項3に記載の触媒。
【請求項5】
前記触媒の総質量を基準とする質量分率にて、0.01%~2.0%のNa
2Oを含み、さらに0.01%~2.0%の他の金属酸化物、例えばTiO
2を含むことを特徴とする、請求項3に記載の触媒。
【請求項6】
エチルベンゼン脱水素化、好ましくは、低い蒸気/エチルベンゼン比でのエチルベンゼン脱水素化において使用されることを特徴とする、請求項1~5のいずれか1項に記載の触媒。
【請求項7】
Fe源、Ce源、Mo源、Ca源、任意で第1のK源、および任意で細孔形成剤を均一に混合し、続いてアルカリ溶液を添加して静置反応させ、成形、および焼成して前記触媒を生成する工程を含み;
ここで、前記触媒中のK
2Oは、第1のK源および/またはアルカリ溶液に由来し、例えば、前記触媒中のK
2Oの少なくとも50%はK含有アルカリ溶液に由来し、残りの部分は前記第1のK源に由来するか;あるいは前記触媒中のK
2Oは、前記第1のK源を使用する代わりに、すべてK含有アルカリ溶液に由来することを特徴とする、
請求項1~6のいずれか1項に記載の触媒の調製方法。
【請求項8】
前記アルカリ溶液が、水酸化カリウムおよび/または水酸化ナトリウムの水溶液、好ましくは水酸化ナトリウムおよび水酸化カリウムの水溶液であり、Na
2Oとしての水酸化ナトリウムと、K
2Oとしての水酸化カリウムとの質量比が、好ましくは1:2~23であり;前記アルカリ溶液中のOH基の濃度が1mol/L~8mol/Lであり;
および/または、
前記アルカリ溶液が、水酸化ナトリウムおよび水酸化カリウムの水溶液であり、Na
2Oとしての水酸化ナトリウムと、K
2Oとしての水酸化カリウムとの質量比が、好ましくは1:2~23であることを特徴とする、請求項7に記載の調製方法。
【請求項9】
前記触媒中のK
2Oの少なくとも一部が前記アルカリ溶液に由来し;好ましくは、前記触媒中のK
2Oの少なくとも50%がK含有アルカリ溶液に由来し、残りの部分が前記第1のK源に由来することを特徴とする、請求項7または8に記載の調製方法。
【請求項10】
原料にTi源がさらに含まれ;前記Ti源は、前記Fe源、前記Ce源、前記Mo源、前記Ca源、任意で前記第1のK源、および任意で前記細孔形成剤とともに均一に混合および添加され;前記Ti源は、チタン塩または酸化物の形態で添加され;前記チタン塩は、好ましくは四塩化チタンまたは四臭化チタンのいずれか1つまたは両方であることを特徴とする、請求項7~9のいずれか1項に記載の調製方法。
【請求項11】
前記静置反応の条件が、120~180℃下で12~48時間静置反応させることを含むことを特徴とする、請求項7~10のいずれか1項に記載の調製方法。
【請求項12】
前記焼成は、焼成温度が600~1000℃であり、焼成時間が2~8時間であり;
例えば、これに限定されないが、600~800℃で2~4時間焼成した後、900~1000℃で2~4時間焼成するといった2段階焼成を使用することを特徴とする、請求項7~11のいずれか1項に記載の調製方法。
【請求項13】
前記焼成は、マッフル炉内で行われることを特徴とする、請求項7~12のいずれか1項に記載の調製方法。
【請求項14】
成形された試料を焼成する前に、まずは、乾燥温度が50~200℃であって乾燥時間が1~24時間である乾燥工程を経ることを特徴とする、請求項7~13のいずれか1項に記載の調製方法。
【請求項15】
前記反応は、例えば2~20atm(ゲージ圧)の加圧下で行われることを特徴とする、請求項7~14のいずれか1項に記載の調製方法。
【請求項16】
前記Ce源は、セリウム塩の形態で添加され、例えば前記Ce源は、硝酸セリウムであり;
および/または、
前記Fe源は、酸化物Fe
2O
3の形態で添加され、例えば前記Fe源は、好ましくは酸化鉄赤および/または酸化鉄黄から選択され、より好ましくは酸化鉄赤および酸化鉄黄の組成物であり、Fe
2O
3としての酸化鉄赤と、Fe
2O
3としての酸化鉄黄との質量比が1.0~3.5:1であり;
および/または、
前記第1のK源は、カリウム塩の形態で添加され、前記第1のK源は、カリウム塩の形態で添加され;前記カリウム塩は、炭酸カリウム、硝酸カリウム、および炭酸水素カリウムのいずれか1つ以上であり;
および/または、
前記Mo源は、モリブデン塩または酸化物の形態で添加され;前記モリブデン塩はモリブデン酸アンモニウムであり;
および/または、
前記カルシウム源は、酸化物または水酸化物の形態で添加され;
任意に、前記細孔形成剤は、活性炭、グラファイト、カルボキシメチルセルロースナトリウム、およびポリスチレン微小球のいずれか1つ以上であり、且つ前記細孔形成剤は触媒の質量に対して0~5%の量で添加され;
任意に、前記触媒の調製方法において、前記Fe源、前記Ce源、前記Mo源、前記Ca源、前記第1のK源、および前記細孔形成剤のいずれも、固相の粉末の形態で添加される、
ことを特徴とする、請求項7~15のいずれか1項に記載の調製方法。
【請求項17】
エチルベンゼン脱水素化によるスチレン製造における、請求項1~6のいずれか1項に記載の触媒の使用、または請求項7~16のいずれか1項に記載の調製方法により調製される触媒の使用。
【請求項18】
前記触媒は、低い蒸気/エチルベンゼン比でのエチルベンゼン脱水素化に適しており;前記低い蒸気/エチルベンゼン比は、1.3以下、好ましくは0.7~1.3である、ことを特徴とする、請求項17に記載の使用。
【請求項19】
前記触媒は、蒸気/エチルベンゼン比が2.0以下のスチレン製造に適していることを特徴とする、請求項17に記載の使用。
【請求項20】
前記使用は、エチルベンゼンを含む原料ガスを水蒸気の存在下で前記触媒と接触させ、脱水素化反応を行い、スチレン含有生成物を生成する工程を含み;
水は、反応器に入る前に予熱されて水蒸気となり、原料ガスと十分に混合され;
前記脱水素化反応の温度は、570~640℃であり;
前記脱水素化反応の圧力は、20~100kPaの絶対圧であり;
エチルベンゼンの重量空間速度は、0.2~2.0h
-1である、ことを特徴とする請求項17~19のいずれか1項に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
〔技術分野〕
本発明は、エチルベンゼン脱水素化触媒、特に低い蒸気/エチルベンゼン比でエチルベンゼンを脱水素化してスチレンを調製するための触媒およびその調製方法、ならびにその使用に関する。
【0002】
〔背景技術〕
スチレンは、重要なバルク化学原料であり、主に合成ゴムおよびプラスチック工業の重要な原料として使用される。スチレンは幅広い用途を有し、国民経済において重要な地位を占めている。
【0003】
現在、世界では、エチルベンゼンからスチレンを製造するために2つの主なルートがあり:1つは、エチルベンゼンを触媒的に脱水素化して水素ガスおよびスチレンを製造するルートであり、もう1つは、PO/SMを共酸化して共製造するルートである。エチルベンゼンの触媒的脱水素化は、常にスチレン製造の主要な技術ルートであり、その生産能力は全スチレン生産能力の85%超を占めている。
【0004】
エチルベンゼンの脱水素化は、分子数が増加する強力な吸熱可逆反応である。この反応には高温および低圧が適している。工業では通常、目的生成物であるスチレンの製造を容易にするため、大量の高温水蒸気が導入される。水蒸気は、反応に必要な熱を提供すること;エチルベンゼンの分圧を下げ、化学的バランスがスチレンに向かうのを促進すること;水蒸気シフト反応によって触媒表面に堆積した炭素を除去すること;および触媒表面を酸化して触媒活性を維持することなど、反応において多くの重要な役割を果たす。しかしながら、脱水素化媒体として多量の過熱蒸気を使用することは、プロセスにおいて多くのエネルギーを消費させ、大量の凝縮水を発生させ、プロセス設備に多くのコストを生じさせ、生産コストを高くする。したがって、エチルベンゼンの脱水素化プロセスは、より低い水蒸気/エチルベンゼン比(「水比」とも呼ばれ、すなわち供給物中のエチルベンゼンに対する水蒸気の質量比)で、より高いスチレン収率を達成することを目指している。低い蒸気/エチルベンゼン比で運転することは、省エネルギーおよび消費量削減のための重要な方策の一つである。低い蒸気/エチルベンゼン比に適したスチレン触媒を開発し、触媒活性、選択性、および安定性を向上させることにより、スチレン製造設備における省エネルギーおよび消費量削減、および製造コスト削減を実現することが、スチレン企業にとって急務となっている。
【0005】
既存のスチレン触媒のほとんどは、Fe-K酸化物を主触媒、Ceを主促進剤とするFe-K-Ceを主成分とし、さらに構造安定剤および電子助剤としてMg、Mo、W、およびCaの酸化物を含んでいる。これまでに開示されている低い蒸気/エチルベンゼン比のエチルベンゼン脱水素化触媒には、低い蒸気/エチルベンゼン比の条件下での触媒の安定性、活性および選択性を向上させるために、触媒の構造的安定性を向上させる方法、および触媒の表面特性を改質する方法などが主に使用されている。
【0006】
CN106582678Aは、Fe-K-Ce-W触媒をベースに、Ba、Sn、および希土類(Sm、Eu、Gd)の酸化物を導入して、触媒の活性相を安定化させ、低い蒸気/エチルベンゼン比の条件下で触媒の高い活性および高い安定性を実現することを開示している。
【0007】
CN1981929Aは、Fe-K-Ce-W触媒系をベースに、セリウム以外の少なくとも2種の軽希土類酸化物添加剤(La、Pr、Nd、およびSmのうち少なくとも2種)を添加し、同時にCa酸化物、Mg酸化物、Ba酸化物、B酸化物、Sn酸化物、Pb酸化物、Cu酸化物、Zn酸化物、Ti酸化物、Zr酸化物、およびMo酸化物のうち少なくとも1種の金属酸化物を添加することにより、低い蒸気/エチルベンゼン比の条件下での低いK触媒の安定性および活性を向上させることを開示している。
【0008】
今日のスチレン製造技術は、大型設備および総合的なエネルギー利用の方向で発展している。低い蒸気/エチルベンゼン比の条件下での運転に適し、より高い活性と、選択性と、より優れた安定性とを有するエチルベンゼン脱水素化触媒の開発は、常に研究者の努力の方向である。
【0009】
〔発明の概要〕
本発明が解決しようとする技術的問題の1つは、既存のエチルベンゼン脱水素化技術に存在する問題であり、その問題とは触媒が、低い蒸気/エチルベンゼン比の条件下では活性が低く、安定性が悪いことであり、それゆえ、スチレン調製のための新規なエチルベンゼン脱水素化触媒が提供される。この触媒は、低い蒸気/エチルベンゼン比の条件下においてエチルベンゼン脱水素化反応に対して高い活性および高い安定性を有する。
【0010】
本発明が解決しようとする第2の技術的問題は、第1の技術的問題の解決に対応する、スチレンを調製するためのエチルベンゼン脱水素化触媒の調製方法を提供することである。
【0011】
本発明が解決しようとする第3の技術的問題は、低い蒸気/エチルベンゼン比でのエチルベンゼン脱水素化によるスチレンの製造における、第1の技術的問題の解決に対応する、スチレンを調製するためのエチルベンゼン脱水素化触媒の使用を提供することである。
【0012】
上記第1の技術的問題を解決するために、本発明が採用した技術的解決策は以下の通りである:
本発明の第1の態様は、触媒を提供し、当該触媒は、Fe2O3、K2O、CeO2、MoO3およびCaOを含み得;CeO2(100)における露出結晶面の面積が、CeO2の露出結晶面の総面積の60%以上を占める。
【0013】
上記の技術的解決策において、H2-TPRにおける主還元ピーク位置は570~620℃に位置してもよい。
【0014】
上記技術的解決策において、触媒は、当該触媒の総質量を基準とする質量分率にて、以下の成分を含み得る;
(a)60%~85%のFe2O3;
(b)6%~14%のK2O;
(c)6%~14%のCeO2;
(d)0.5%~5%のMoO3;
(e)0.3%~7%のCaO。
【0015】
上記の技術的解決策において、好ましくは、触媒は、質量分率が0.01%~2.0%のNa2Oを含み得る。
【0016】
上記の技術的解決策において、触媒はまた、質量分率が0.01%~2.0%の他の金属酸化物、例えばTiO2を含み得る。
【0017】
上記技術的解決策において、好ましくは、CeO2(100)における露出結晶面の面積は、CeO2の露出結晶面の総面積の70%以上であってもよく;例えば、CeO2の露出結晶面の総面積の70%、75%、80%、85%、87%、90%、92%、95%、97%、99%等であるが、これらに限定されるものではない。
【0018】
上記技術的解決策において、触媒のH2-TPRにおける主還元ピーク位置は、570~620℃に位置してもよく;触媒のH2-TPRにおける主還元ピーク位置は、例えば、570℃、580℃、585℃、590℃、595℃、600℃、605℃、610℃、615℃、620℃等であるが、これらに限定されるものではない。
【0019】
上記第2の技術的問題を解決するために、本発明が採用した技術的解決策は以下の通りである:
本発明の第2の態様は、以下の工程を含む、エチルベンゼン脱水素化触媒を調製する上記の方法を提供する:
Fe源、Ce源、Mo源、Ca源、任意で第1のK源、および任意で細孔形成剤を均一に混合し、続いてアルカリ溶液を添加して静置反応させ、成形、および焼成して触媒を生成する工程であり;
ここで、前記触媒中のK2Oは、第1のK源および/またはアルカリ溶液に由来し得る。
【0020】
上記技術的解決策において、アルカリ溶液は、水酸化カリウムおよび/または水酸化ナトリウムの水溶液、好ましくは水酸化ナトリウムおよび水酸化カリウムの水溶液であり得る。アルカリ溶液が水酸化ナトリウムおよび水酸化カリウムの水溶液である場合、Na2Oとしての水酸化ナトリウムと、K2Oとしての水酸化カリウムとの質量比は、好ましくは1:2~23である。アルカリ溶液中のOH基の濃度は、1mol/L~8mol/Lであり得る。前記触媒の調製方法において、アルカリ溶液は、セリウム源が反応に必要な液相に溶解するのに十分な量で使用される。
【0021】
上記技術的解決策において、触媒中のK2Oは、第1のK源および/またはアルカリ溶液に由来し得、好ましくは、触媒中のK2Oは、少なくとも部分的にアルカリ溶液に由来し得る。好ましくは、触媒中のK2Oの少なくとも50%はK含有アルカリ溶液に由来し得、残りの部分は第1のK源に由来する。触媒中のK2Oは、第1のK源を使用する代わりに、すべてK含有アルカリ溶液に由来することもできる。
【0022】
上記技術的解決策において、Fe源は、酸化物Fe2O3の形態で添加することができる。Fe源は、好ましくは、酸化鉄赤および/または酸化鉄黄から選択され、より好ましくは、酸化鉄赤および酸化鉄黄の組成物であり、Fe2O3としての酸化鉄赤と、Fe2O3としての酸化鉄黄との質量比は、1.0~3.5:1であり得る。第1のK源は、カリウム塩の形態で添加することができ;カリウム塩は、炭酸カリウム、硝酸カリウム、および炭酸水素カリウムのいずれか1つ以上であり得る。Ce源は、セリウム塩の形態で添加することができ;セリウム塩は、硝酸セリウムであり得る。Mo源は、モリブデン塩または酸化物の形態で添加することができ;モリブデン塩は、モリブデン酸アンモニウムであり得る。カルシウム源は、酸化物または水酸化物の形態で添加することができる。細孔形成剤は、活性炭、グラファイト、カルボキシメチルセルロースナトリウム、およびポリスチレン微小球のいずれか1つ以上であり得る。細孔形成剤は、触媒に対して0~5質量%の量で添加することができる。触媒の調製方法において、Fe源、Ce源、Mo源、Ca源、第1のK源、および細孔形成剤は、いずれも固相の粉末の形態で添加することができる。
【0023】
上記技術的解決策において、原料にTi源がさらに含まれ;Ti源は、Fe源、Ce源、Mo源、Ca源、任意で第1のK源、および任意で細孔形成剤とともに、均一に混合および添加することができる。Ti源は、チタン塩または酸化物の形態で添加することができ;チタン塩は、四塩化チタンまたは四臭化チタンのいずれか1つまたは両方であり得る。
【0024】
上記の技術的解決策において、混合は、従来の機械的攪拌方法を用いて行うことができる。
【0025】
上記技術的解決策において、静置反応の条件は、120~180℃下で12~48時間静置反応させることを含み得る。反応に供する容器は、好ましくはオートクレーブである。静置反応させる際の圧力は特に限定されず、例えば、2~20atmである。
【0026】
上記技術的解決策において、成形は押出成形であり得、成形体は直径2~5mm、および長さ3~10mmの粒子であり得る。反応後の材料が成形条件を満たすことができない場合は、蒸発または他の方法により水分の一部を除去するか、成形前に適量の水分を添加することができる。
【0027】
上記の技術的解決策において、焼成温度は600~1000℃とすることができ、焼成時間は2~8時間とすることができる。
【0028】
上記技術的解決策において、好ましい焼成条件としては、2段階焼成が用いられ、例えば、600~800℃で2~4時間焼成した後、900~1000℃で2~4時間焼成することが挙げられるが、これに限定されるものではない。焼成はマッフル炉内で行うことができる。
【0029】
上記の技術的解決策では、成形された試料を焼成する前に、まずは乾燥させることができる。乾燥温度は50~200℃とすることができ、乾燥時間は1~24時間とすることができる。
【0030】
第3の技術的問題を解決するために、本発明の第3の態様は、エチルベンゼン脱水素化によるスチレン製造における上記エチルベンゼン脱水素化触媒の使用を提供する。
【0031】
上記技術的解決策において、スチレン製造におけるエチルベンゼン脱水素化触媒の使用は、蒸気/エチルベンゼン比が2.0以下、好ましくは1.3~2.0のエチルベンゼン脱水素化に適している。
【0032】
上記技術的解決策において、スチレン製造におけるエチルベンゼン脱水素化触媒の使用は、低い蒸気/エチルベンゼン比でのエチルベンゼン脱水素化に適しており;低い蒸気/エチルベンゼン比は、1.3以下、好ましくは0.7~1.3である。
【0033】
前記技術的解決策において、前記使用は、エチルベンゼンを含む原料ガスを水蒸気の存在下で本発明の前述した触媒と接触させ、脱水素化反応を行い、スチレン含有生成物を生成することを含む。
【0034】
上記の技術的解決策では、水は、反応器に入る前に予熱されて水蒸気となり、原料ガスと十分に混合させることができる。
【0035】
上記の技術的解決策において、脱水素化反応の温度は、570~640℃とすることができる。
【0036】
上記の技術的解決策において、脱水素化反応の圧力は、20~100kPaの絶対圧とすることができる。
【0037】
上記の技術的解決策において、エチルベンゼンの重量空間速度は、0.2~2.0h-1とすることができる。
【0038】
さらに、本開示には以下の技術的解決策も含まれる:
1.Fe、K、Ce、MoおよびCa、ならびに任意でNaを含むことを特徴とする触媒であって;CeO2(100)における露出結晶面の面積が、CeO2の露出結晶面の総面積の43%以上、例えば50%以上、好ましくは60%以上、より好ましくは70%以上、例えば70%、75%、80%、85%、87%、90%、92%、95%、97%、99%等を占めることを特徴とする触媒。
【0039】
中でも、高角度散乱暗視野走査透過電子顕微鏡(HAADF-STEM)を用いた特性評価手段により、露出結晶面の面積を測定する。測定装置としては、例えば、FEI社の二重球面収差補正機能付き透過型電子顕微鏡Titan Cubed Themis G2 300が挙げられ;
触媒試料のCeO2の露出結晶面の総面積に対するCeO2(100)における露出結晶面の面積の比率は、HAADF-STEM形態写真および触媒の幾何学的構造特性に基づいて、収集および計算によって求められ、少なくとも100枚のHAADF-STEM形態写真が収集され;各写真について、CeO2の各露出結晶面の面積を取得し、最大露出結晶面の面積を基本基準とし、「0.001×最大露出結晶面の面積」よりも高い「露出結晶面の面積」を有する1以上の結晶面を選択し、前記1つ以上の露出結晶面の総面積をCeO2の露出結晶面の総面積とし、比率を算出し;比率を平均し、触媒試料のCeO2の露出結晶面の総面積に対するCeO2(100)における露出結晶面の面積の比率として使用する。
【0040】
例えば、触媒試料のHAADF-STEM形態写真の一片を観察すると、CeO2(100)は結晶面が最大に露出している。CeO2(100)の他に、CeO2(110)、CeO2(111)、およびCeO2(311)の各々だけが、露出結晶面の面積が[0.001×CeO2(100)の露出結晶面の面積]より大きい露出結晶面の面積を有し、CeO2(100)、CeO2(110)、CeO2(111)、およびCeO2(311)の露出結晶面の面積の合計をCeO2の露出結晶面の総面積とし、その比率を計算して、この形態写真のCeO2の露出結晶面の総面積に対するCeO2(100)の露出結晶面の面積の比率を求め;このようにして、触媒試料のHAADF-STEM形態写真を少なくとも100枚収集して計算し、得られた平均値を、触媒試料のCeO2の露出結晶面の総面積に対するCeO2(100)露出結晶面の面積の比率とする。
【0041】
2.技術的解決策1に記載の触媒であって、FeおよびKが、(K2O)x(Fe2O3)yの形態で存在し、ここで、x:y=1:1~1:11である、触媒。
【0042】
3.触媒の組成が酸化物として計算され、Fe2O3、K2O、CeO2、MoO3、およびCaOを含むことを特徴とする触媒であって;
CeO2(100)における露出結晶面の面積が、CeO2の露出結晶面の総面積の43%以上、例えば50%以上、好ましくは60%以上、より好ましくは70%以上を占めることを特徴とする、触媒。
【0043】
4.前記触媒のH2-TPRにおける主還元ピーク位置が、570℃~620℃、例えば570℃、580℃、585℃、590℃、595℃、600℃、605℃、610℃、615℃、620℃に位置することを特徴とする、前記技術的解決策のいずれか1つに記載の触媒。
【0044】
5.前記触媒の総質量を基準とする質量分率にて、以下の成分を含むことを特徴とする、前記技術的解決策のいずれか1つに記載の触媒:
(a)60%~85%のFe2O3;
(b)6%~14%のK2O;
(c)6%~14%のCeO2;
(d)0.5%~5%のMoO3;
(e)0.3%~7%のCaO。
【0045】
6.前記触媒の総質量を基準とする質量分率にて、0.01%~2.0%のNa2Oを含むことを特徴とする、技術的解決策5に記載の触媒。
【0046】
7.前記触媒の総質量を基準とする質量分率にて、0.01%~2.0%のNa2Oを含み、さらに0.01%~2.0%の他の金属酸化物、例えばTiO2を含むことを特徴とする、技術的解決策5に記載の触媒。
【0047】
8.エチルベンゼン脱水素化、好ましくは、低い蒸気/エチルベンゼン比でのエチルベンゼン脱水素化において使用されることを特徴とする、前記技術的解決策のいずれか1つに記載の触媒。
【0048】
9.以下の工程を含むことを特徴とする、前記技術的解決策のいずれか1つに記載の触媒の調製方法であって:
Fe源、Ce源、Mo源、Ca源、任意で第1のK源、および任意で細孔形成剤を均一に混合し、続いてアルカリ溶液を添加して静置反応させ、成形、および焼成して触媒を生成する工程であり;
ここで、前記触媒中のK2Oは、第1のK源および/またはアルカリ溶液に由来し、例えば、前記触媒中のK2Oの少なくとも50%はK含有アルカリ溶液に由来し、残りの部分は前記第1のK源に由来するか;あるいは前記触媒中のK2Oは、前記第1のK源を使用する代わりに、すべてK含有アルカリ溶液に由来する、工程を含む、方法。
【0049】
10.前記アルカリ溶液が、水酸化カリウムおよび/または水酸化ナトリウムの水溶液、好ましくは水酸化ナトリウムおよび水酸化カリウムの水溶液であり、Na2Oとしての水酸化ナトリウムと、K2Oとしての水酸化カリウムとの質量比が、好ましくは1:2~23であり;前記アルカリ溶液中のOH基の濃度が1mol/L~8mol/Lであり;
および/または、
前記アルカリ溶液が、水酸化ナトリウムおよび水酸化カリウムの水溶液であり、Na2Oとしての水酸化ナトリウムと、K2Oとしての水酸化カリウムとの質量比が、好ましくは1:2~23であることを特徴とする、技術的解決策9に記載の調製方法。
【0050】
11.前記触媒中のK2Oの少なくとも一部が前記アルカリ溶液に由来し;好ましくは、前記触媒中のK2Oの少なくとも50%がK含有アルカリ溶液に由来し、残りの部分が前記第1のK源に由来することを特徴とする、技術的解決策9または10に記載の調製方法。
【0051】
12.原料にTi源がさらに含まれ;前記Ti源は、前記Fe源、前記Ce源、前記Mo源、前記Ca源、任意で前記第1のK源、および任意で前記細孔形成剤とともに均一に混合および添加され;前記Ti源は、チタン塩または酸化物の形態で添加され;前記チタン塩は、好ましくは四塩化チタンまたは四臭化チタンのいずれか1つまたは両方であることを特徴とする、技術的解決策9~11のいずれか1つに記載の調製方法。
【0052】
13.前記静置反応の条件が、120~180℃下で12~48時間静置反応させることを含むことを特徴とする、技術的解決策9~12のいずれか1つに記載の調製方法。
【0053】
14.前記焼成は、焼成温度が600~1000℃であり、焼成時間が2~8時間であり;
例えば、これに限定されないが、600~800℃で2~4時間焼成した後、900~1000℃で2~4時間焼成するといった、例えば2段階焼成を使用することを特徴とする、技術的解決策9~13のいずれか1つに記載の調製方法。
【0054】
15.前記焼成は、マッフル炉内で行われることを特徴とする、技術的解決策9~14のいずれか1つに記載の調製方法。
【0055】
16.成形された試料を焼成する前に、まずは、乾燥温度が50~200℃であって乾燥時間が1~24時間である乾燥工程を経ることを特徴とする、技術的解決策9~15のいずれか1つに記載の調製方法。
【0056】
17.前記反応は、例えば2~20atm(ゲージ圧)の加圧下で行われることを特徴とする、技術的解決策9~16のいずれか1つに記載の調製方法。
【0057】
18.前記Ce源は、セリウム塩の形態で添加され、例えば前記Ce源は、硝酸セリウムであり;
および/または、
前記Fe源は、酸化物Fe2O3の形態で添加され、例えば前記Fe源は、好ましくは酸化鉄赤および/または酸化鉄黄から選択され、より好ましくは酸化鉄赤および酸化鉄黄の組成物であり、Fe2O3としての酸化鉄赤と、Fe2O3としての酸化鉄黄との質量比が1.0~3.5:1であり;
および/または、
前記第1のK源は、カリウム塩の形態で添加され、;前記カリウム塩は、炭酸カリウム、硝酸カリウム、および炭酸水素カリウムのいずれか1つ以上であり;
および/または、
前記Mo源はモリブデン塩または酸化物の形態で添加され;前記モリブデン塩はモリブデン酸アンモニウムであり;
および/または、
前記カルシウム源は酸化物または水酸化物の形態で添加され;
任意に、前記細孔形成剤は、活性炭、グラファイト、カルボキシメチルセルロースナトリウム、およびポリスチレン微小球のいずれか1つ以上であり、かつ、前記細孔形成剤は触媒の質量に対して0~5%の量で添加され;
任意に、触媒を調製する方法において、前記Fe源、前記Ce源、前記Mo源、前記Ca源、前記第1のK源、および前記細孔形成剤のいずれも、固相の粉末の形態で添加される、
ことを特徴とする、技術的解決策9~17のいずれか1つに記載の調製方法。
【0058】
19.エチルベンゼン脱水素化によるスチレン製造における、技術的解決策1~8のいずれか1つに記載の触媒の使用、または技術的解決策9~18のいずれか1つに記載の調製方法により調製される触媒の使用。
【0059】
20.前記触媒は、低い蒸気/エチルベンゼン比でのエチルベンゼン脱水素化に適しており;前記低い蒸気/エチルベンゼン比は、1.3以下、好ましくは0.7~1.3である、ことを特徴とする、技術的解決策19に記載の使用。
【0060】
21.前記触媒は、蒸気/エチルベンゼン比が2.0以下のスチレン製造に適していることを特徴とする、技術的解決策19に記載の使用。
【0061】
22.前記使用は、エチルベンゼンを含む原料ガスを水蒸気の存在下で前記触媒と接触させ、脱水素化反応を行い、スチレン含有生成物を生成する工程を含み;
水は、反応器に入る前に予熱されて水蒸気となり、原料ガスと十分に混合され;
前記脱水素反応の温度は、570~640℃であり;
前記脱水素反応の圧力は、20~100kPaの絶対圧であり;
エチルベンゼンの重量空間速度は、0.2~2.0h-1である、ことを特徴とする、技術的解決策19~21のいずれか1つに記載の使用。
【0062】
既存技術と比較して、本発明には大きな利点と優れた効果とがあり、具体的には以下の通りである:
1.エチルベンゼンの脱水素化中、エチルベンゼン分子中にHを取り込んだ後、触媒の表面がHで覆われ、表面が還元される。反応活性を回復させるためには、H2を除去する必要がある。Fe-K-Ce-Mo型触媒の活性相カリウムフェライトは、表面のH2の除去率が低く、触媒の反応活性が制限される。触媒の活性相の表面のHは、水の促進によりCeO2表面に移動して、速やかにH2を形成し、触媒表面から離れることができ、これにより、反応エネルギー障壁が低下し、反応が促進され、触媒の触媒活性が向上する。本発明者らは研究を通じて、Fe-K-Ce-Mo型エチルベンゼン脱水素化触媒の反応性能が、その表面構造に大きく関係していることを見出した。CeO2の露出結晶面が異なると、触媒の脱水素活性および安定性に有意な違いが生じる。さらに研究を進めた結果、本発明者らは、CeO2(100)の露出結晶面の面積の比率が高いほど(特に60%超)、エチルベンゼン脱水素化反応における触媒の活性部位の再酸化が促進され、助剤との協働により触媒の還元温度が上昇し、触媒が良好な活性および良好な安定性を有することを見出した。
【0063】
2.本発明において、本発明者らは、Fe-K-Ce-Mo型エチルベンゼン脱水素化触媒を調製する際に、系のアルカリ度および湿式反応条件を制御することにより、一方では、調製された触媒の表面は、CeO2(100)の露出結晶面の割合が高いことを研究により見出した。他方では、この調製方法は助剤成分と活性成分との相互作用を促進し、触媒中の結晶構造の安定性を向上させる。従来の乾式法と比較して、この調製方法は、エチルベンゼン脱水素化触媒の触媒性能の向上により寄与する。触媒の調製方法は簡単で、得られた触媒は高い活性、高スチレン選択性という利点を有し、触媒の性能は1,000時間の運転後も安定している。
【0064】
3.本発明の触媒は、スチレンを調製するためのエチルベンゼン脱水素化反応に使用される。低い蒸気/エチルベンゼン比から高い蒸気/エチルベンゼン比、特に低い蒸気/エチルベンゼン比の条件下で、高い活性、高い選択性および高い安定性を有し、良好な技術的効果を奏する。
【0065】
本発明の技術的解決策を用い、等温固定床において、絶対圧70kPa、液空間速度1.0h-1、温度620℃、蒸気/エチルベンゼン比0.8(wt)下(通常使用される比2.0(wt)を減少させた)、転化率>75%で、本発明の触媒の活性を評価する。1,000時間の運転後も、触媒活性は安定しており、転化率は大きく変化していない。このことから、本発明の触媒は、スチレンを調製するためのエチルベンゼンの脱水素化反応に使用した場合、特に蒸気/エチルベンゼン比が低い場合に、高い活性および高い安定性を有し、良好な技術的効果を奏することがわかる。
【0066】
〔図面の説明〕
図1は、実施例1の触媒のHAADF-STEM試験における、主な露出結晶面の写真であり;
図2は、比較例1の触媒のHAADF-STEM試験における、主な露出結晶面の写真であり;
図3は、実施例1および比較例1の触媒のH
2-TPR図である。
【0067】
〔詳細な説明〕
以下、実施例を通じて本発明をさらに説明するが、本発明の保護範囲は実施例によって限定されるものではない。
【0068】
本発明において、露出結晶面の面積は、高角度散乱暗視野走査透過電子顕微鏡(HAADF-STEM)を用いた特性評価手段により測定され、測定装置は、FEI社の二重球面収差補正機能付き透過電子顕微鏡Titan Cubed Themis G2 300である。CeO2の露出結晶面の総面積に対するCeO2(100)における露出結晶面の面積の比は、触媒試料のHAADF-STEM形態写真を収集すること、および計算によって得られる。すなわち、前記比は、観察されたCeO2の露出結晶面の総面積に対する、観察されたCeO2(100)における露出結晶面の面積の比率である。CeO2の露出結晶面の総面積は、CeO2(100)、CeO2(110)、CeO2(111)、およびCeO2(311)の露出結晶面の面積の合計である。CeO2(100)の露出結晶面を走査型透過電子顕微鏡で観察すると、[100]の観察方向に垂直な面内に、互いに垂直な2つの方向[020]および[002]が確認でき、それらの面間距離はいずれも260~290pmであることから、露出結晶面がCeO2(100)であることが証明される。
【0069】
本発明では、触媒のH2-TPR実験は、AutoChem II 2920化学吸着装置を用いて行う。0.1gの触媒を秤量し、U字型の石英反応管に入れる。まず30mL/分の高純度Arガスで200℃、2時間パージする。その後、水素ガスを還元ガスとして使用し、アルゴンガスをバランスガスとして使用する。10%H2/Arの混合ガスを30mL/分の速度で導入する。系を10K/分で一定温度まで加熱する。加熱プロセス中のH2の消費量はTCD検出器で記録される。H2-TPR主還元ピーク位置は、スペクトル中のシグナルの最も強いピークに対応する温度位置である。
【0070】
本発明では、等温固定床におけるエチルベンゼンの脱水素化性能について、本発明の触媒を評価する。プロセスを簡単に説明すると以下の通りである:
反応器は内径1’’のステンレス鋼製チューブであり、直径3~10mmの触媒が50~150mL充填されている。脱イオン水およびエチルベンゼンを、それぞれ定量ポンプを通して予熱ミキサーに投入する。これらは反応器に入る前に予熱され、混合されてガス状となる。反応器は電熱線によって加熱され、所定の温度に達する。反応器を出た反応物質は水で凝縮され、ガスクロマトグラフィーで分析される。
【0071】
エチルベンゼン転化率およびスチレン選択性は、以下の式に従って計算される:
エチルベンゼン転化率(%)=[反応前のエチルベンゼン濃度(wt%)-反応後のエチルベンゼン濃度(wt%)]/反応前のエチルベンゼン濃度(wt%)×100%、
スチレン選択性(%)=生成スチレン濃度(wt%)/[反応前のエチルベンゼン濃度(wt%)-反応後のエチルベンゼン濃度(wt%)]×100%。
【0072】
(実施例1)
50.1部のFe2O3に相当する酸化鉄赤、21.4部のFe2O3に相当する酸化鉄黄、10.5部のCeO2に相当する硝酸セリウム、2.8部のMoO3に相当するモリブデン酸アンモニウム、3.2部の酸化カルシウムおよび3.05部のポリスチレン微小球を秤量してミキサーに加え、得られた混合物を均一になるまで2時間撹拌した。次に、0.8部のNa2Oに相当するNaOHと11.2部のK2Oに相当するKOHとの混合水溶液を加え、混合水溶液中のOH濃度は3.2mol/Lであった。この混合液をオートクレーブに入れ、140℃で20時間静置反応させた。次いで、含水率を調整した後、上記混合物を押出し、ペレット化して直径3mmおよび長さ6mmのペレットを得、これをオーブンに入れて80℃で4時間、および150℃で4時間乾燥させた後、マッフル炉に入れて650℃で2時間、および900℃で2時間焼成して完成触媒を得た。触媒の組成を表1に示す。
【0073】
実施例1の触媒中のKおよびFeの存在比は、K1.81Fe10.73O17であり、これは、XRD結晶相分析に基づいて決定された。
【0074】
触媒100mLを反応器に入れ、絶対圧70kPa、液空間速度1.0h-1、温度620℃、および蒸気/エチルベンゼン比0.8(wt)の条件下で性能評価を行った。100時間の反応後の試験結果を表1に、1000時間の反応後の試験結果を表2に示す。
【0075】
(実施例2)
36.2部のFe2O3に相当する酸化鉄赤、26.6部のFe2O3に相当する酸化鉄黄、11.6部のCeO2に相当する硝酸セリウム、4.8部のMoO3に相当するモリブデン酸アンモニウム、5.4部の酸化カルシウム、および2.6部のポリスチレン微小球を秤量してミキサーに加え、得られた混合物を均一になるまで2時間撹拌した。次に、1.8部のNa2Oに相当するNaOHと13.6部のK2Oに相当するKOHとの混合水溶液を加え、混合水溶液中のOH濃度は6.5mol/Lであった。この混合液をオートクレーブに入れ、120℃で48時間静置反応させた。次いで、含水率を調整した後、上記混合物を押出し、ペレット化して直径3mmおよび長さ6mmのペレットを得、これをオーブンに入れて80℃で4時間、および150℃で4時間乾燥させた後、マッフル炉に入れて650℃で2時間、および900℃で2時間焼成して完成触媒を得た。触媒の組成を表1に示す。
【0076】
触媒100mLを反応器に入れ、絶対圧70kPa、液空間速度1.0h-1、温度620℃、蒸気/エチルベンゼン比0.8(wt)の条件下で性能評価を行った。100時間の反応後の試験結果を表1に示す。
【0077】
(実施例3)
45.6部のFe2O3に相当する酸化鉄赤、23.8部のFe2O3に相当する酸化鉄黄、13.8部のCeO2に相当する硝酸セリウム、3.6部のMoO3に相当するモリブデン酸アンモニウム、および1.5部の酸化カルシウムを秤量してミキサーに加え、得られた混合物を均一になるまで2時間撹拌した。次に、0.9部のNa2Oに相当するNaOHと10.8部のK2Oに相当するKOHとの混合水溶液を加え、混合水溶液中のOH濃度は2.5mol/Lであった。この混合液をオートクレーブに入れ、170℃で12時間静置反応させた。次いで、含水率を調整した後、上記混合物を押出し、ペレット化して直径3mmおよび長さ6mmのペレットを得、これをオーブンに入れて80℃で4時間、および150℃で4時間乾燥させた後、マッフル炉に入れて650℃で2時間、および900℃で2時間焼成して完成触媒を得た。触媒の組成を表1に示す。
【0078】
触媒100mLを反応器に入れ、絶対圧70kPa、液空間速度1.0h-1、温度620℃、および蒸気/エチルベンゼン比0.8(wt)の条件下で性能評価を行った。100時間の反応後の試験結果を表1に示す。
【0079】
(実施例4)
48.2部のFe2O3に相当する酸化鉄赤、34.9部のFe2O3に相当する酸化鉄黄、8.3部のCeO2に相当する硝酸セリウム、1.2部のMoO3に相当するモリブデン酸アンモニウム、0.4部の酸化カルシウム、および4.8部のポリスチレン微小球を秤量してミキサーに加え、得られた混合物を均一になるまで2時間撹拌した。次に、0.8部のNa2Oに相当するNaOHと6.2部のK2Oに相当するKOHとの混合水溶液を加え、混合水溶液中のOH濃度は2.0mol/Lであった。この混合液をオートクレーブに入れ、140℃で20時間静置反応させた。次いで、含水率を調整した後、上記混合物を押出し、ペレット化して直径3mmおよび長さ6mmのペレットを得、これをオーブンに入れて80℃で4時間、および150℃で4時間乾燥させた後、マッフル炉に入れて600℃で4時間、および900℃で2時間焼成して完成触媒を得た。触媒の組成を表1に示す。
【0080】
触媒100mLを反応器に入れ、絶対圧70kPa、液空間速度1.0h-1、温度620℃、および蒸気/エチルベンゼン比0.8(wt)の条件下で性能評価を行った。100時間反応後の試験結果を表1に示す。
【0081】
(実施例5)
52.3部のFe2O3に相当する酸化鉄赤、28.0部のFe2O3に相当する酸化鉄黄、8.1部のCeO2に相当する硝酸セリウム、0.6部のMoO3に相当するモリブデン酸アンモニウム、2.6部の酸化カルシウム、および2.5部のポリスチレン微小球を秤量してミキサーに加え、得られた混合物を均一になるまで2時間撹拌した。次に、1.0部のNa2Oに相当するNaOHと7.4部のK2Oに相当するKOHとの混合水溶液を加え、混合水溶液中のOH濃度は2.6mol/Lであった。この混合液をオートクレーブに入れ、140℃で20時間静置反応させた。次いで、含水率を調整した後、上記混合物を押出し、ペレット化して直径3mmおよび長さ6mmのペレットを得、これをオーブンに入れて80℃で4時間、および150℃で4時間乾燥させた後、マッフル炉に入れて750℃で2時間、および900℃で2時間焼成して完成触媒を得た。触媒の組成を表1に示す。
【0082】
触媒100mLを反応器に入れ、絶対圧70kPa、液空間速度1.0h-1、温度620℃、および蒸気/エチルベンゼン比0.8(wt)の条件下で性能評価を行った。100時間反応後の試験結果を表1に示す。
【0083】
(実施例6)
50.6部のFe2O3に相当する酸化鉄赤、20.3部のFe2O3に相当する酸化鉄黄、6.9部のCeO2に相当する硝酸セリウム、3.5部のMoO3に相当するモリブデン酸アンモニウム、6.9部の酸化カルシウム、0.06部の酸化チタン、および2.6部のポリスチレン微小球を秤量してミキサーに加え、得られた混合物を均一になるまで2時間撹拌した。次に、0.6部のNa2Oに相当するNaOHと11.14部のK2Oに相当するKOHとの混合水溶液を加え、混合水溶液中のOH濃度は3.1mol/Lであった。この混合液をオートクレーブに入れ、140℃で20時間静置反応させた。次いで、含水率を調整した後、上記混合物を押出し、ペレット化して直径3mmおよび長さ6mmのペレットを得、これをオーブンに入れて80℃で4時間、および150℃で4時間乾燥させた後、マッフル炉に入れて650℃で2時間、および980℃で2時間焼成して完成触媒を得た。触媒の組成を表1に示す。
【0084】
触媒100mLを反応器に入れ、絶対圧70kPa、液空間速度1.0h-1、温度620℃、および蒸気/エチルベンゼン比0.8(wt)の条件下で性能評価を行った。100時間反応後の試験結果を表1に示す。
【0085】
(実施例7)
54.4部のFe2O3に相当する酸化鉄赤、16.0部のFe2O3に相当する酸化鉄黄、11.2部のCeO2に相当する硝酸セリウム、3.0部のMoO3、3.2部のCaOに相当する炭酸カルシウム、および3.1部のポリスチレン微小球を秤量してミキサーに加え、得られた混合物を均一になるまで2時間撹拌した。次いで、1.6部のNa2Oに相当するNaOHと10.6部のK2Oに相当するKOHとの混合水溶液を加え、混合水溶液中のOH濃度は3.0mol/Lであった。この混合液をオートクレーブに入れ、140℃で20時間静置反応させた。次いで、含水率を調整した後、上記混合物を押出し、ペレット化して直径3mmおよび長さ6mmのペレットを得、これをオーブンに入れて50℃で12時間、および150℃で4時間乾燥させた後、マッフル炉に入れて650℃で2時間、および900℃で2時間焼成して完成触媒を得た。触媒の組成を表1に示す。
【0086】
触媒100mLを反応器に入れ、絶対圧70kPa、液空間速度1.0h-1、温度620℃、および蒸気/エチルベンゼン比0.8(wt)の条件下で性能評価を行った。100時間反応後の試験結果を表1に示す。1000時間反応後の試験結果を表2に示す。
【0087】
(実施例8)
37.5部のFe2O3に相当する酸化鉄赤、35.1部のFe2O3に相当する酸化鉄黄、11.9部のCeO2に相当する硝酸セリウム、2.1部のMoO3に相当するモリブデン酸アンモニウム、3.3部のCaOに相当する炭酸カルシウム、および3.5部の活性炭を秤量してミキサーに加え、得られた混合物を均一になるまで2時間撹拌した。次に、1.5部のNa2Oに相当するNaOHと8.6部のK2Oに相当するKOHとの混合水溶液を加え、混合水溶液中のOH濃度は2.8mol/Lであった。この混合液をオートクレーブに入れ、140℃で20時間静置反応させた。次いで、含水率を調整した後、上記混合物を押出し、ペレット化して直径3mmおよび長さ6mmのペレットを得、これをオーブンに入れて100℃で4時間、および150℃で4時間乾燥させた後、マッフル炉に入れて650℃で2時間、および900℃で2時間焼成して完成触媒を得た。触媒の組成を表1に示す。
【0088】
触媒100mLを反応器に入れ、絶対圧70kPa、液空間速度1.0h-1、温度620℃、および蒸気/エチルベンゼン比0.8(wt)の条件下で性能評価を行った。100時間反応後の試験結果を表1に示す。
【0089】
(実施例9)
40.0部のFe2O3に相当する酸化鉄赤、32.5部のFe2O3に相当する酸化鉄黄、10.6部のCeO2に相当する硝酸セリウム、2.1部のMoO3に相当するモリブデン酸アンモニウム、2.9部のCaOに相当する炭酸カルシウム、および3.2部の黒鉛を秤量してミキサーに加え、得られた混合物を均一になるまで2時間撹拌した。次に、0.5部のNa2Oに相当するNaOHと11.4部のK2Oに相当するKOHとの混合水溶液を加え、混合水溶液中のOH濃度は3.5mol/Lであった。この混合液をオートクレーブに入れ、140℃で20時間静置反応させた。次いで、含水率を調整した後、上記混合物を押出し、ペレット化し、直径3mmおよび長さ6mmのペレットを得、これをオーブンに入れて120℃で4時間、および150℃で4時間乾燥させた後、マッフル炉に入れて650℃で2時間、および900℃で2時間焼成して完成触媒を得た。触媒の組成を表1に示す。
【0090】
触媒100mLを反応器に入れ、絶対圧70kPa、液空間速度1.0h-1、温度620℃、および蒸気/エチルベンゼン比0.8(wt)の条件下で性能評価を行った。100時間反応後の試験結果を表1に示す。
【0091】
(実施例10)
50.5部のFe2O3に相当する酸化鉄赤、19.7部のFe2O3に相当する酸化鉄黄、12.0部のCeO2に相当する硝酸セリウム、2.6部のMoO3、3.5部の酸化カルシウム、および3.2部のヒドロキシメチルセルロースを秤量し、ミキサーに加え、得られた混合物を均一になるまで2時間撹拌した。次に、1.1部のNa2Oに相当するNaOHと10.6部のK2Oに相当するKOHとの混合水溶液を加え、混合水溶液中のOH濃度は3.4mol/Lであった。この混合液をオートクレーブに入れ、140℃で20時間静置反応させた。次いで、含水率を調整した後、上記混合物を押出し、ペレット化して直径3mmおよび長さ6mmのペレットを得、これをオーブンに入れて80℃で4時間、および180℃で4時間乾燥させた後、マッフル炉に入れて650℃で2時間、および900℃で2時間焼成して完成触媒を得た。触媒の組成を表1に示す。
【0092】
触媒100mLを反応器に入れ、絶対圧70kPa、液空間速度1.0h-1、温度620℃、および蒸気/エチルベンゼン比0.8(wt)の条件下で性能評価を行った。100時間反応後の試験結果を表1に示す。
【0093】
(実施例11)
50.9部のFe2O3に相当する酸化鉄赤、23.4部のFe2O3に相当する酸化鉄黄、11.2部のCeO2に相当する硝酸セリウム、1.8部のMoO3に相当するモリブデン酸アンモニウム、2.7部のCaOに相当する炭酸カルシウム、および3.2部の黒鉛を秤量してミキサーに加え、得られた混合物を均一になるまで2時間撹拌した。次に、0.5部のNa2Oに相当するNaOHと9.5部のK2Oに相当するKOHとの混合水溶液を加え、混合水溶液中のOH濃度は2.9mol/Lであった。この混合液をオートクレーブに入れ、140℃で20時間静置反応させた。次いで、含水率を調整した後、上記混合物を押出し、ペレット化して直径3mmおよび長さ6mmのペレットを得、これをオーブンに入れて80℃で4時間、および200℃で2時間乾燥させた後、マッフル炉に入れて650℃で2時間、および900℃で2時間焼成して完成触媒を得た。触媒の組成を表1に示す。
【0094】
触媒100mLを反応器に入れ、絶対圧70kPa、液空間速度1.0h-1、温度620℃、および蒸気/エチルベンゼン比0.8(wt)の条件下で性能評価を行った。100時間反応後の試験結果を表1に示す。
【0095】
(実施例12)
50.1部のFe2O3に相当する酸化鉄赤、21.4部のFe2O3に相当する酸化鉄黄、10.5部のCeO2に相当する硝酸セリウム、9.6部のK2Oに相当する硝酸カリウム、2.8部のMoO3に相当するモリブデン酸アンモニウム、3.2部の酸化カルシウム、および3.05部のポリスチレン微小球を秤量してミキサーに加え、得られた混合物を均一になるまで2時間撹拌した。次に、0.8部のNa2Oに相当するNaOHと1.6部のK2Oに相当するKOHとの混合水溶液を加え、混合水溶液中のOH濃度は3.2mol/Lであった。この混合液をオートクレーブに入れ、140℃で20時間静置反応させた。次いで、含水率を調整した後、上記混合物を押出し、ペレット化して直径3mmおよび長さ6mmのペレットを得、これをオーブンに入れて80℃で4時間、および150℃で4時間乾燥させた後、マッフル炉に入れて650℃で2時間、および900℃で2時間焼成して完成触媒を得た。触媒の組成を表1に示す。
【0096】
触媒100mLを反応器に入れ、絶対圧70kPa、液空間速度1.0h-1、温度620℃、および蒸気/エチルベンゼン比0.8(wt)の条件下で性能評価を行った。100時間反応後の試験結果を表1に示す。1000時間反応後の試験結果を表2に示す。
【0097】
(実施例13)
50.1部のFe2O3に相当する酸化鉄赤、21.4部のFe2O3に相当する酸化鉄黄、10.5部のCeO2に相当する硝酸セリウム、11.2部のK2Oに相当する炭酸カリウム、2.8部のMoO3に相当するモリブデン酸アンモニウム、3.2部の酸化カルシウム、および3.05部のポリスチレン微小球を秤量してミキサーに加え、得られた混合物を均一になるまで2時間撹拌した。その後、0.8部のNa2Oに相当するNaOH水溶液を加え、水溶液中のOH濃度は3.2mol/Lであった。この混合物をオートクレーブに入れ、140℃で20時間静置反応させた。次いで、含水率を調整した後、上記混合物を押出し、ペレット化して直径3mmおよび長さ6mmのペレットを得、これをオーブンに入れて80℃で4時間、および150℃で4時間乾燥させた後、マッフル炉に入れて650℃で2時間、および900℃で2時間焼成して完成触媒を得た。触媒の組成を表1に示す。
【0098】
触媒100mLを反応器に入れ、絶対圧70kPa、液空間速度1.0h-1、温度620℃、および蒸気/エチルベンゼン比0.8(wt)の条件下で性能評価を行った。100時間反応後の試験結果を表1に示す。
【0099】
(実施例14)
50.1部のFe2O3に相当する酸化鉄赤、21.4部のFe2O3に相当する酸化鉄黄、10.5部のCeO2に相当する硝酸セリウム、2.8部のMoO3に相当するモリブデン酸アンモニウム、3.2部の酸化カルシウム、0.8部のNa2Oに相当する硝酸ナトリウム、および3.05部のポリスチレン微小球を秤量してミキサーに加え、得られた混合物を均一になるまで2時間撹拌した。その後、11.2部のK2Oに相当するKOH水溶液を加え、水溶液中のOH濃度は3.2mol/Lであった。この混合物をオートクレーブに入れ、140℃で20時間静置反応させた。次いで、含水率を調整した後、上記混合物を押出し、ペレット化して直径3mmおよび長さ6mmのペレットを得、これをオーブンに入れて80℃で4時間、および150℃で4時間乾燥させた後、マッフル炉に入れて650℃で2時間、および900℃で2時間焼成して完成触媒を得た。触媒の組成を表1に示す。
【0100】
触媒100mLを反応器に入れ、絶対圧70kPa、液空間速度1.0h-1、温度620℃、および蒸気/エチルベンゼン比0.8(wt)の条件下で性能評価を行った。100時間反応後の試験結果を表1に示し、1000時間反応後の試験結果を表2に示す。
【0101】
(実施例15)
50.1部のFe2O3に相当する酸化鉄赤、21.4部のFe2O3に相当する酸化鉄黄、10.5部のCeO2に相当する硝酸セリウム、2.8部のMoO3に相当するモリブデン酸アンモニウム、3.2部の酸化カルシウム、および3.05部のポリスチレン微小球を秤量してミキサーに加え、得られた混合物を均一になるまで2時間撹拌した。その後、11.2部のK2Oに相当するKOH水溶液を加え、水溶液中のOH濃度を3.2mol/Lとした。この混合物をオートクレーブに入れ、140℃で20時間静置反応させた。次いで、含水率を調整した後、上記混合物を押出し、ペレット化して直径3mmおよび長さ6mmのペレットを得、これをオーブンに入れて80℃で4時間、および150℃で4時間乾燥させた後、マッフル炉に入れて650℃で2時間、および900℃で2時間焼成して完成触媒を得た。触媒の組成を表1に示す。
【0102】
触媒100mLを反応器に入れ、絶対圧70kPa、液空間速度1.0h-1、温度620℃、および蒸気/エチルベンゼン比0.8(wt)の条件下で性能評価を行った。100時間反応後の試験結果を表1に示す。
【0103】
(比較例1)
50.1部のFe2O3に相当する酸化鉄赤、21.4部のFe2O3に相当する酸化鉄黄、10.5部のCeO2に相当する硝酸セリウム、11.2部のK2Oに相当する炭酸カリウム、2.8部のMoO3に相当するモリブデン酸アンモニウム、4.0部の酸化カルシウム、および3.05部のポリスチレン微小球を秤量し、実施例1と同量の水とともにミキサーに加え、得られた混合物を均一になるまで2時間撹拌した。混合水溶液中のヒドロキシ基濃度は0.3mol/Lであった。この混合物をオートクレーブに入れ、140℃で20時間静置させた。次いで、上記混合物を押出し、ペレット化して直径3mmおよび長さ6mmのペレットを得、これをオーブンに入れて80℃で4時間、および150℃で4時間乾燥させた後、マッフル炉に入れて650℃で2時間、および900℃で2時間焼成して完成触媒を得た。触媒の評価方法は実施例1と同じであった。試験結果および触媒組成を表1および表2に示す。
【0104】
(比較例2)
39.6部のFe2O3に相当する酸化鉄赤、21.4部のFe2O3に相当する酸化鉄黄、21.0部のCeO2に相当する硝酸セリウム、2.8部のMoO3に相当するモリブデン酸アンモニウム、3.2部の酸化カルシウム、および3.05部のポリスチレン微小球を秤量してミキサーに加え、得られた混合物を均一になるまで2時間撹拌した。次に、0.8部のNa2Oに相当するNaOHと11.2部のK2Oに相当するKOHとの混合水溶液を加え、混合水溶液中のOH濃度は3.2mol/Lであった。この混合液をオートクレーブに入れ、140℃で20時間静置反応させた。次いで、含水率を調整した後、上記混合物を押出し、ペレット化して直径3mmおよび長さ6mmのペレットを得、これをオーブンに入れて80℃で4時間、および150℃で4時間乾燥させた後、マッフル炉に入れて650℃で2時間、および900℃で2時間焼成して完成触媒を得た。触媒の組成を表1に示す。
【0105】
触媒100mLを反応器に入れ、絶対圧70kPa、液空間速度1.0h-1、温度620℃、蒸気/エチルベンゼン比0.8(wt)の条件下で性能評価を行った。100時間反応後の試験結果を表1に示し、1000時間反応後の試験結果を表2に示す。
【0106】
(比較例3)
71.5部のFe2O3に相当する酸化鉄黄を秤量し、10.5部のCeO2に相当する硝酸セリウムの水溶液と混合した後、11.2部のK2Oに相当するKOH水溶液と混合し、混合水溶液中のOH濃度は1.5mol/Lであった。得られたペーストを150℃で2時間乾燥させた後、850℃で2時間焼成した。
【0107】
この焼成物を粉砕し、2.8部のMoO3、3.2部の酸化カルシウム、0.8部のNa2Oに相当する炭酸ナトリウム、および3.05部のポリスチレン微小球の水性懸濁液と混合し、短冊状に押し出し、ペレット化して直径3mmおよび長さ6mmのペレットを得、これをオーブンに入れて80℃で4時間、および150℃で4時間乾燥させた後、マッフル炉に入れて650℃で2時間、および900℃で2時間焼成して完成触媒を得た。触媒の組成を表1に示す。
【0108】
触媒100mLを反応器に入れ、絶対圧70kPa、液空間速度1.0h-1、温度620℃、および蒸気/エチルベンゼン比0.8(wt)の条件下で性能評価を行った。100時間反応後の試験結果を表1に示し、1000時間反応後の試験結果を表2に示す。
【0109】
(比較例4)
50.1部のFe2O3に相当する酸化鉄赤、21.4部のFe2O3に相当する酸化鉄黄、10.5部のCeO2に相当する硝酸セリウム、10.64部のK2Oに相当する炭酸カリウム、0.8部のNa2Oに相当するNaOH、2.8部のMoO3に相当するモリブデン酸アンモニウム、3.2部の酸化カルシウム、および3.05部のポリスチレン微小球を秤量してミキサーに加え、得られた混合物を均一に混合されるまで2時間撹拌した。次に、脱イオン水を加え、得られた混合物をさらに0.5時間撹拌し、押し出してペレット化し、直径3mmおよび長さ6mmのペレットを得、これをオーブンに入れて80℃で4時間、および150℃で4時間乾燥させた後、マッフル炉に入れて800℃で4時間焼成して半完成触媒を製造した。次に、0.56部のK2Oに相当する炭酸カリウムを水に溶解し、OH濃度0.1mol/Lのこの溶液に前記半完成触媒を2時間含浸させた後、オーブンに入れて80℃で4時間、および150℃で4時間乾燥させ、マッフル炉に入れて650℃で2時間、および900℃で2時間焼成して完成触媒を得た。触媒の組成を表1に示す。
【0110】
触媒100mLを反応器に入れ、絶対圧70kPa、液空間速度1.0h-1、温度620℃、および蒸気/エチルベンゼン比0.8(wt)の条件下で性能評価を行った。100時間反応後の試験結果を表1に示し、1000時間反応後の試験結果を表2に示す。
【0111】
(比較例5)
47.1部のFe2O3に相当する酸化鉄赤、21.4部のFe2O3に相当する酸化鉄黄、10.5部のCeO2に相当する硝酸セリウム、3.0部のPr2O3に相当する硝酸プラセオジム、2.8部のMoO3に相当するモリブデン酸アンモニウム、3.2部の酸化カルシウム、および3.05部のポリスチレン微小球を秤量してミキサーに加え、得られた混合物を均一になるまで2時間撹拌した。次に、0.8部のNa2Oに相当するNaOHと11.2部のK2Oに相当するKOHとの混合水溶液を加え、混合水溶液中のOH濃度は3.2mol/Lであった。この混合液をオートクレーブに入れ、140℃で20時間静置反応させた。次いで、含水率を調整した後、上記混合物を押出し、ペレット化して直径3mmおよび長さ6mmのペレットを得、これをオーブンに入れて80℃で4時間、および150℃で4時間乾燥させた後、マッフル炉に入れて650℃で2時間、および900℃で2時間焼成して完成触媒を得た。触媒の組成を表1に示す。
【0112】
触媒100mLを反応器に入れ、絶対圧70kPa、液空間速度1.0h-1、温度620℃、蒸気/エチルベンゼン比0.8(wt)の条件下で性能評価を行った。100時間反応後の試験結果を表1に示し、1000時間反応後の試験結果を表2に示す。
【0113】
【0114】
【0115】
触媒100mLを反応器に入れ、絶対圧70kPa、液空間速度1.0h-1、温度620℃、および蒸気/エチルベンゼン比2(wt)の条件下で性能評価を行った。100時間反応後の試験結果を表3に示す。
【0116】
【0117】
図1、
図2および
図3から、実施例1の触媒におけるCeO
2の主な露出結晶面は、CeO
2(100)結晶面であることがわかる。比較例1の触媒におけるCeO
2の主な露出結晶面は、CeO
2(111)結晶面であり、CeO
2(111)結晶面はCeO
2の露出結晶面の総面積の52%を占めていた。実施例1の触媒のH
2-TPRにおける主還元ピーク位置は576℃であり、比較例1の触媒のH
2-TPRにおける主還元ピーク位置の545℃より有意に高い。表1および表2の結果を組み合わせると、本発明の触媒は高い活性と良好な安定性を有することがわかる。また、脱水素化反応を1000時間の長時間実施した後も、エチルベンゼン転化率は有意には低下しなかった。
【0118】
以上、本発明の好ましい実施形態について詳細に説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。本発明の技術的思想の範囲内において、本発明の技術的解決策に対して、様々な技術的特徴を他の適切な方法で組み合わせることを含め、様々な簡単な変更を加えることができる。これらの簡単な変更および組み合わせも本発明の開示内容とみなされるべきであり、すべて本発明の保護範囲に属する。
【図面の簡単な説明】
【0119】
【
図1】
図1は、実施例1の触媒のHAADF-STEM試験における、主な露出結晶面の写真である。
【
図2】
図2は、比較例1の触媒のHAADF-STEM試験における、主な露出結晶面の写真である。
【
図3】
図3は、実施例1および比較例1の触媒のH
2-TPR図である。
【国際調査報告】