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特表2024-536467車両内装用装飾フィルム及び飛散防止フィルム
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  • 特表-車両内装用装飾フィルム及び飛散防止フィルム 図1
  • 特表-車両内装用装飾フィルム及び飛散防止フィルム 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-04
(54)【発明の名称】車両内装用装飾フィルム及び飛散防止フィルム
(51)【国際特許分類】
   C09J 7/22 20180101AFI20240927BHJP
   C09J 7/38 20180101ALI20240927BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20240927BHJP
   C09J 133/00 20060101ALI20240927BHJP
   B32B 27/36 20060101ALI20240927BHJP
   B32B 27/30 20060101ALI20240927BHJP
   B32B 27/18 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
C09J7/22
C09J7/38
C09J11/06
C09J133/00
B32B27/36
B32B27/30 A
B32B27/18 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024521827
(86)(22)【出願日】2022-10-10
(85)【翻訳文提出日】2024-04-10
(86)【国際出願番号】 IB2022059701
(87)【国際公開番号】W WO2023062510
(87)【国際公開日】2023-04-20
(31)【優先権主張番号】P 2021169623
(32)【優先日】2021-10-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】505005049
【氏名又は名称】スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100146466
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 正俊
(74)【代理人】
【識別番号】100202418
【弁理士】
【氏名又は名称】河原 肇
(72)【発明者】
【氏名】阿部 秀俊
(72)【発明者】
【氏名】大倉 健
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエル ヨスト
【テーマコード(参考)】
4F100
4J004
4J040
【Fターム(参考)】
4F100AK25B
4F100AK42A
4F100BA02
4F100CA07A
4F100CA13B
4F100CB00B
4F100EH46
4F100EJ38A
4F100EJ86
4F100GB33
4F100HB00B
4F100JJ07
4F100JK01
4F100JK08
4F100JK12A
4F100JL10B
4F100JN01A
4F100YY00A
4J004AA10
4J004AB01
4J004CA03
4J004CA06
4J004CB03
4J004CC02
4J004CD01
4J004CD08
4J004CE01
4J004FA01
4J004FA10
4J040DF011
4J040DF061
4J040DF101
4J040JB09
4J040KA29
4J040KA35
4J040LA06
4J040LA07
4J040MA05
4J040MA10
4J040MB03
4J040MB09
4J040NA16
4J040NA17
4J040PA23
(57)【要約】
一実施態様の車両内装用装飾フィルムは、2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム層と着色接着層とを含み、着色接着層は、カルボキシ基含有(メタ)アクリル系ポリマーと、アミノ基含有(メタ)アクリル系ポリマーと、着色剤とを含み、装飾フィルムの2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム層側の鉛筆硬度がB以上であり、装飾フィルムの2%伸び時引張強さが50N/25mm以上であり、伸びが60%以上であり、ISO5660-1コーンカロリーメータ発熱性試験に準拠して測定される加熱開始後20分間の総発熱量が8MJ/m以下である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム層と着色接着層とを含む車両内装用装飾フィルムであって、
前記着色接着層は、カルボキシ基含有(メタ)アクリル系ポリマーと、アミノ基含有(メタ)アクリル系ポリマーと、着色剤とを含み、
前記装飾フィルムの前記2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム層側の鉛筆硬度がB以上であり、
前記装飾フィルムの2%伸び時引張強さが50N/25mm以上であり、伸びが60%以上であり、ISO5660-1コーンカロリーメータ発熱性試験に準拠して測定される加熱開始後20分間の総発熱量が8MJ/m以下である、車両内装用装飾フィルム。
【請求項2】
前記2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム層が紫外線吸収剤を含む、請求項1に記載の車両内装用装飾フィルム。
【請求項3】
難燃剤を実質的に含まない、請求項1又は2のいずれかに記載の車両内装用装飾フィルム。
【請求項4】
前記2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム層と前記着色接着層とからなる、請求項1~3のいずれか一項に記載の車両内装用装飾フィルム。
【請求項5】
前記2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム層の波長範囲380~780nmにおける全光線透過率が80%以上である、請求項1~4のいずれか一項に記載の車両内装用装飾フィルム。
【請求項6】
前記車両内装用装飾フィルムの厚さが270μm以下である、請求項1~5のいずれか一項に記載の車両内装用装飾フィルム。
【請求項7】
2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム層と着色接着層とを含む飛散防止フィルムであって、
前記着色接着層は、カルボキシ基含有(メタ)アクリル系ポリマーと、アミノ基含有(メタ)アクリル系ポリマーと、着色剤とを含み、
前記飛散防止フィルムの前記2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム層側の鉛筆硬度がB以上であり、
前記飛散防止フィルムの2%伸び時引張強さが50N/25mm以上であり、伸びが60%以上であり、ISO5660-1コーンカロリーメータ発熱性試験に準拠して測定される加熱開始後20分間の総発熱量が8MJ/m以下である、飛散防止フィルム。
【請求項8】
前記2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム層が紫外線吸収剤を含む、請求項7に記載の飛散防止フィルム。
【請求項9】
難燃剤を実質的に含まない、請求項7又は8のいずれかに記載の飛散防止フィルム。
【請求項10】
前記2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム層と前記着色接着層とからなる、請求項7~9のいずれか一項に記載の飛散防止フィルム。
【請求項11】
前記2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム層の波長範囲380~780nmにおける全光線透過率が80%以上である、請求項7~10のいずれか一項に記載の飛散防止フィルム。
【請求項12】
前記飛散防止フィルムの厚さが270μm以下である、請求項7~11のいずれか一項に記載の飛散防止フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両内装用装飾フィルム及び飛散防止フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車、電車、バスなどの車両、及び建築物の内装において、フィルム基材に接着層が設けられた装飾フィルム又はシートが広く使用されている。また、建築物、車両などの窓ガラスにおいて、ガラス破損時の飛散を防止する目的で、飛散防止フィルムが広く使用されている。飛散防止フィルムの中には装飾機能を兼ね備えるものもある。
【0003】
特許文献1(特開2003-138235号公報)は、「(a)アルキル基の炭素数が1~12の(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体を主成分とする共重合体の樹脂成分100重量部に対して、(b)平均粒径が5~50μm、アスペクト比が50~200である粒子表面が処理されたアルミニウム粉0.1~5重量部、及び(c)酸化チタン5~60重量部を含有してなる隠蔽性を有する粘着剤組成物」及び上記「隠蔽性を有する粘着剤組成物を基材シート上に、塗布、乾燥してなる粘着シート」を記載している。
【0004】
特許文献2(特開2003-183602号公報)は、「全光線透過率が3~80%である着色フィルムの片面に、粘着剤のベースポリマー100重量部に対して3~50重量部の白色顔料、及び白色顔料添加量の0.3~2重量%のアルミ金属片が含有されてなる粘着剤が積層されてなることを特徴とする装飾用粘着シート」を記載している。
【0005】
特許文献3(特開2006-88593号公報)は、「紫外線吸収剤を含み可視光に対する全光線透過率が85%以上のアクリル系樹脂層(A)、アクリル系粘着剤にアルミ金属粉及びパール顔料が含有されてなるメタリック粘着剤層(B)、着色された軟質塩化ビニル樹脂層(C)、アクリル系粘着剤層(D)の順に積層されてなる装飾用メタリック粘着シート」を記載している。
【0006】
特許文献4(特開2008-308646号公報)は、「カルボキシル基含有(メタ)アクリル系ポリマー、顔料または染料、及び芳香族ビニルモノマーを含まないアミノ基含有(メタ)アクリル系ポリマーを含むアクリル系着色粘着剤」及び「ベースフィルム層と、上記アクリル系着色粘着剤からなる粘着剤層とを有するマーキングフィルム」を記載している。
【発明の概要】
【0007】
装飾フィルム又は飛散防止フィルムを建築物の窓ガラスなどのガラス基材の屋内側に施工(内貼り)すると、これらフィルムの構成要素であるフィルム基材(例えばポリ塩化ビニルフィルム)が、太陽光への暴露(特に紫外線への暴露)、及び比較的厚いガラス基材に蓄積される熱によって作り出される継続的な高温環境に起因して、劣化又は収縮する場合がある。
【0008】
電車、バスなどの車両の内装に使用される装飾フィルムには、耐破損性、耐引っかき性、落書き防止性、耐穿刺性などの、外部からの物理的な力又は影響に対する耐久性が要求される。
【0009】
飛散防止フィルムに要求される性能として、引張強さ及び伸びが挙げられる。例えば、JIS A 5759:2016「建築窓ガラス用フィルム」の6.8「引張強さ及び伸び試験」によれば、日射調整フィルム及び低放射フィルムは、引張強さが50N/25mm以上、伸びが60%以上であることが要求され、衝撃破壊対応ガラス飛散防止フィルム及び層間変位破壊対応ガラス飛散防止フィルムは、引張強さが100N/25mm以上、伸びが60%以上であることが要求される。
【0010】
更に、装飾フィルム及び飛散防止フィルムは、車両又は建築物に使用される場合、所定水準の不燃性を有することが望ましい。
【0011】
本開示は、車両の内装及び建築物の窓ガラスなどのガラス基材の飛散防止に使用される、耐久性及び機械特性に優れており不燃性の機能性接着フィルムを提供する。
【0012】
本発明者らは、フィルム基材として2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムに、特定の(メタ)アクリル系ポリマーの組合せ及び着色剤を含む着色接着層を組み合わせることにより、上記課題を解決できることを見出した。
【0013】
一実施態様によれば、2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム層と着色接着層とを含む車両内装用装飾フィルムであって、前記着色接着層は、カルボキシ基含有(メタ)アクリル系ポリマーと、アミノ基含有(メタ)アクリル系ポリマーと、着色剤とを含み、前記装飾フィルムの前記2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム層側の鉛筆硬度がB以上であり、前記装飾フィルムの2%伸び時引張強さが50N/25mm以上であり、伸びが60%以上であり、ISO5660-1コーンカロリーメータ発熱性試験に準拠して測定される加熱開始後20分間の総発熱量が8MJ/m以下である、車両内装用装飾フィルムが提供される。
【0014】
別の実施態様によれば、2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム層と着色接着層とを含む飛散防止フィルムであって、前記着色接着層は、カルボキシ基含有(メタ)アクリル系ポリマーと、アミノ基含有(メタ)アクリル系ポリマーと、着色剤とを含み、前記飛散防止フィルムの前記2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム層側の鉛筆硬度がB以上であり、前記飛散防止フィルムの2%伸び時引張強さが50N/25mm以上であり、伸びが60%以上であり、ISO5660-1コーンカロリーメータ発熱性試験に準拠して測定される加熱開始後20分間の総発熱量が8MJ/m以下である、飛散防止フィルムが提供される。
【0015】
本開示によれば、車両の内装及び建築物の窓ガラスなどのガラス基材の飛散防止に使用される、耐久性及び機械特性に優れており不燃性の機能性接着フィルムが提供される。
【0016】
なお、上述の記載は、本発明の全ての実施態様及び本発明に関する全ての利点を開示したものとみなしてはならない。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】一実施態様の装飾フィルム(車両内装用装飾フィルム及び飛散防止フィルム)の概略断面図である。
図2】例1及び比較例1の装飾フィルムの伸び(%、横軸)と引張強さ(N/25mm、縦軸)の関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の代表的な実施態様を例示する目的で、図面を参照しながらより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施態様に限定されない。
【0019】
本開示において「(メタ)アクリル」とはアクリル又はメタクリルを意味し、「(メタ)アクリレート」とはアクリレート又はメタクリレートを意味する。
【0020】
本開示において「フィルム」には「シート」と呼ばれる物品も包含される。
【0021】
本開示において「感圧接着(性)」とは、使用温度範囲で、例えば0℃以上、50℃以下の範囲において、短時間わずかな圧力を加えただけで様々な表面に接着し、相変化(液体から固体へ)を呈さない材料又は組成物の特性を意味する。本開示において「粘着(性)」は「感圧接着(性)」と相互に交換可能に使用される。
【0022】
本開示において「上に配置される」とは、直接的に上に配置される場合のみならず、間接的に、すなわち他の材料又は層を介して上に配置される場合も含む。
【0023】
一実施態様の車両内装用装飾フィルム及び飛散防止フィルムは、2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム層(以下、本開示において「2軸延伸PETフィルム層」ともいう。)と着色接着層とを含む。以下、本開示において、車両内装用装飾フィルム及び飛散防止フィルムを総称して単に「装飾フィルム」という。
【0024】
2軸延伸PETフィルム層と着色接着層は直接接触していてもよく、これらの層の間に他の層、例えば着色層、印刷層、バルク層などが介在してもよい。2軸延伸PETフィルム層の上に他の層、例えば、着色層、印刷層、バルク層、表面保護層などが配置されていてもよい。
【0025】
一実施態様では、装飾フィルムは、2軸延伸PETフィルム層と着色接着層とからなる。「2軸延伸PETフィルム層と着色接着層とからなる」とは、装飾フィルムが、2軸延伸PETフィルム層及び着色接着層、並びに使用時に除去されるライナー以外の層を含まないことを意味する。
【0026】
図1に一実施態様の装飾フィルム(車両内装用フィルム及び飛散防止フィルム)の概略断面図を示す。装飾フィルム10は、2軸延伸PETフィルム層12と、着色接着層14とを含む。図1の装飾フィルム10は、更に、任意の構成要素としてライナー16を有する。ライナー16は、被着体への装飾フィルム10の貼り付け前に除去される。
【0027】
本発明者らは、2軸延伸PETフィルムが、装飾フィルムに一般に使用されるアクリル樹脂フィルムよりも、外部からの機械的な力に対する耐久性、強度及び不燃性(燃焼時の酸素消費量)について優れており、アクリル樹脂フィルムと同様、装飾フィルムに一般に使用されるポリ塩化ビニルフィルムよりも高温環境下で熱収縮しにくいことを見出した上で、本開示の装飾フィルムのフィルム基材として2軸延伸PETフィルムを採用した。これらの2軸延伸PETフィルムの特性により、2軸延伸PETフィルムの厚さを薄くしても車両内装用装飾フィルム又は飛散防止フィルムとしての使用に要求される耐久性及び機械特性を満足することができ、更にそのように薄くすることでより優れた不燃性を得ることができる。
【0028】
2軸延伸PETフィルム層は、樹脂成分として、ポリエチレンテレフタレートのみを含んでもよく、ポリエチレンテレフタレートと他の樹脂、例えばポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)などのポリエステル、ポリカーボネート、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン、アクリル系樹脂、ポリスチレン、ポリアミド、若しくはポリウレタン、又はこれらの2種以上を含んでもよい。透明性及び機械特性の観点から、2軸延伸PETフィルム層は樹脂成分としてポリエチレンテレフタレートを主成分として50質量%超含むことが好ましく、ポリエチレンテレフタレートのみを含むことがより好ましい。
【0029】
2軸延伸PETフィルム層の延伸比は、用途に応じて様々であってよく、例えば、MD(Machine Direction:樹脂の流れ方向)/TD(Transverse Direction:樹脂の幅方向)が約0.1以上、約0.2以上、又は約0.5以上、約10以下、約5以下、又は約2以下とすることができる。
【0030】
2軸延伸PETフィルム層の厚さは様々であってよく、例えば、約10μm以上、約12μm以上、又は約15μm以上、約200μm以下、約150μm以下、又は約100μm以下とすることができる。装飾フィルムの伸び及び不燃性の観点からは、2軸延伸PETフィルム層の厚さは約80μm以下であることが好ましく、約50μm以下であることがより好ましい。
【0031】
2軸延伸PETフィルム層は、無色透明であるか、2軸延伸PETフィルム層を通して着色接着層の色の存在が視認できる程度の透明度を有することが好ましい。一実施態様では、2軸延伸PETフィルム層の波長範囲380~780nmにおける全光線透過率は約80%以上、約85%以上、又は約90%以上、100%以下である。本開示において全光線透過率は、JIS A 5759:2008に準拠して測定される。
【0032】
一実施態様では、2軸延伸PETフィルム層は紫外線吸収剤を含む。紫外線吸収剤としては、例えば、ベンゾトリアゾール化合物、ヒドロキシフェニルトリアジン化合物、及びシアノアクリレート化合物が挙げられ、具体的な製品名としては、Tinuvin(登録商標)99-2、Tinuvin(登録商標)928、Tinuvin(登録商標)P、Tinuvin(登録商標)479、及びTinuvin(登録商標)1130(全てBASFジャパン株式会社、日本国東京都中央区)が挙げられる。紫外線吸収剤の含有量は、2軸延伸PETフィルム層の質量を基準として、約0.5質量%以上、又は約1質量%以上、約10質量%以下、又は約5質量%以下とすることができる。
【0033】
2軸延伸PETフィルム層は、紫外線吸収剤に代えて又は加えて、Tinuvin(登録商標)292、Tinuvin(登録商標)123、Tinuvin(登録商標)622SF、Tinuvin(登録商標)770(全てBASFジャパン株式会社、日本国東京都中央区)などのヒンダードアミン光安定化剤(HALS)を含んでもよい。
【0034】
着色接着層と接する2軸延伸PETフィルム層の表面に、プライマー処理、コロナ処理、プラズマ処理などの表面処理が施されていてもよい。プライマー処理としては、例えば、カルボジイミド化合物、アミン化合物、又はエポキシ化合物を含有するプライマー剤を用いた処理が挙げられる。
【0035】
2軸延伸PETフィルム層は、顔料、染料などの着色剤で着色されていてもよい。2軸延伸PETフィルム層は、その表面に絵柄、模様、文字などを含む印刷層を有してもよい。2軸延伸PETフィルム層は、着色接着層とは反対側のその表面に、マット又はクリアなハードコート層、親水コート層、疎水コート層、透明オーバーラミネートフィルム層等を有してもよい。これらの印刷層等と接する2軸延伸PETフィルム層の表面に、プライマー処理、コロナ処理、プラズマ処理などの表面処理が施されていてもよい。
【0036】
着色接着層は、カルボキシ基含有(メタ)アクリル系ポリマーと、アミノ基含有(メタ)アクリル系ポリマーと、着色剤とを含む。着色接着層がカルボキシ基含有(メタ)アクリル系ポリマー及びアミノ基含有(メタ)アクリル系ポリマーを含むことにより、着色剤とカルボキシ基又はアミノ基との相互作用を利用して、着色接着層に着色剤を高濃度かつ均一に分散した状態で含有させることができる。そのため、着色接着層を比較的薄くしても、様々な彩度及び明度を有する装飾フィルムを提供することができる。また、着色接着層を薄くできることは、不燃性の観点からも有利である。
【0037】
カルボキシ基含有(メタ)アクリル系ポリマーは、カルボキシ基の存在により着色接着層の凝集力を高めて接着力を向上させることができる。カルボキシ基含有(メタ)アクリル系ポリマーは、2軸延伸PETフィルム層と着色接着層との密着性を高めることができる場合もある。
【0038】
カルボキシ基含有(メタ)アクリル系ポリマーは、(メタ)アクリル系モノマーと、カルボキシ基含有モノマーと、必要に応じてその他のモノエチレン性不飽和基を有するモノマーを含む重合性組成物を共重合することにより得ることができる。本開示において、(メタ)アクリル系モノマー、カルボキシ基含有モノマー、アミノ基含有モノマー、及びその他のモノエチレン性不飽和基を有するモノマーを合わせて重合性成分という。(メタ)アクリル系モノマー、カルボキシ基含有モノマー、及びその他のモノエチレン性不飽和基を有するモノマーは、それぞれ単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0039】
(メタ)アクリル系モノマーは、一般にアルキル(メタ)アクリレートを含む。アルキル(メタ)アクリレートのアルキル基の炭素原子数は1~12であってよい。アルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、2-メチルブチル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、n-ヘキシル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n-ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、n-デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、n-ドデシル(メタ)アクリレートなどの直鎖又は分岐アルキル(メタ)アクリレート;及びシクロヘキシル(メタ)アクリレート、4-t-ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレートなどの脂環式(メタ)アクリレートが挙げられる。アルキル(メタ)アクリレートは、メチル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、又はそれらの組み合わせを含むことが好ましい。
【0040】
アルキル(メタ)アクリレートは、カルボキシ基含有(メタ)アクリル系ポリマーの主成分を構成する。一実施態様では、カルボキシ基含有(メタ)アクリル系ポリマーは、アルキル(メタ)アクリレートを、重合性成分の質量を基準として、約50質量%以上、約70質量%以上、又は約80質量%以上、約99.5質量%以下、約99質量%以下、又は約98質量%以下の量で含む重合性組成物を共重合して得られたものであり、アルキル(メタ)アクリレートに由来する構成単位を上記質量比で含む。
【0041】
(メタ)アクリル系モノマーは、フェニル(メタ)アクリレート、p-トリル(メタ)アクリレートなどの芳香族(メタ)アクリレート;フェノキシエチル(メタ)アクリレートなどのフェノキシアルキル(メタ)アクリレート;メトキシプロピル(メタ)アクリレート、2-メトキシブチル(メタ)アクリレートなどのアルコキシアルキル(メタ)アクリレート;又はグリシジル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレートなどの環状エーテル含有(メタ)アクリレートを含んでもよい。
【0042】
カルボキシ基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、フタル酸モノヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、β-カルボキシエチル(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルコハク酸、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸、クロトン酸、イタコン酸、フマル酸、シトラコン酸、及びマレイン酸が挙げられる。カルボキシ基含有モノマーは(メタ)アクリル酸であることが好ましい。本開示において、(メタ)アクリル系モノマーとカルボキシ基含有モノマーのいずれにも該当するもの、例えば(メタ)アクリル酸などは、カルボキシ基含有モノマーとして取り扱う。
【0043】
一実施態様では、カルボキシ基含有(メタ)アクリル系ポリマーは、カルボキシ基含有モノマーを、重合性成分の質量を基準として、約0.5質量%以上、約1質量%以上、又は約2質量%以上、約15質量%以下、約10質量%以下、又は約8質量%以下の量で含む重合性組成物を共重合して得られたものであり、カルボキシ基含有モノマーに由来する構成単位を上記質量比で含む。
【0044】
(メタ)アクリル系モノマー又はその他のモノエチレン性不飽和基を有するモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリルアミド、N-ビニルピロリドン、N-ビニルカプロラクタムなどのアミド基含有モノマー;2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートなどの水酸基含有モノマー;(メタ)アクリロニトリルなどの不飽和ニトリル;スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエンなどの芳香族ビニルモノマー;及び酢酸ビニルなどのビニルエステルも挙げられる。
【0045】
カルボキシ基含有(メタ)アクリル系ポリマーの共重合は、ラジカル重合により行なうことができる。ラジカル重合として、溶液重合、懸濁重合、乳化重合、塊状重合などの公知の重合方法を用いることができる。高分子量のポリマーを容易に合成することができる溶液重合を用いることが有利である。重合開始剤として、例えば、過酸化ベンゾイル、ラウロイルペルオキシド、ビス(4-tert-ブチルシクロヘキシル)ペルオキシジカーボネートなどの有機過酸化物;又は2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、ジメチル-2,2-アゾビス(2-メチルプロピオネート)、4,4’-アゾビス(4-シアノバレリアン酸)、2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオン酸)ジメチル、アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)(AVN)などのアゾ系重合開始剤を用いることができる。重合開始剤の使用量は、重合性成分100質量部に対して、一般に約0.01質量部以上、又は約0.05質量部以上、約5質量部以下、又は約3質量部以下である。
【0046】
アミノ基含有(メタ)アクリル系ポリマーは、カルボキシ基含有(メタ)アクリル系ポリマーとの相互作用により、着色接着層の凝集力を高めて、着色接着層の接着特性を向上させることができる。アミノ基含有(メタ)アクリル系ポリマーは、被着体となるガラスに含まれる微量の金属イオン、例えば鉄イオンをアミノ基で捕捉する能力を有する。これにより、装飾フィルムがガラス基材に適用されたときに、高温環境下、太陽光に含まれる紫外線により活性化された金属イオンによって触媒され得る(メタ)アクリル系ポリマーの解重合反応を抑制して、着色接着層の接着力を所望のレベルに維持することができる。
【0047】
アミノ基含有(メタ)アクリル系ポリマーは、(メタ)アクリル系モノマーと、アミノ基含有モノマーと、必要に応じてその他のモノエチレン性不飽和基を有するモノマーを含む重合性組成物を共重合することにより得ることができる。(メタ)アクリル系モノマー、アミノ基含有モノマー、及びその他のモノエチレン性不飽和基を有するモノマーは、それぞれ単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0048】
(メタ)アクリル系モノマー及びその他のモノエチレン性不飽和基を有するモノマーについては、カルボキシ基含有(メタ)アクリル系ポリマーについて説明したものと同様のものを使用することができる。
【0049】
アルキル(メタ)アクリレートは、アミノ基含有(メタ)アクリル系ポリマーの主成分を構成する。一実施態様では、アミノ基含有(メタ)アクリル系ポリマーは、アルキル(メタ)アクリレートを、重合性成分の質量を基準として、約50質量%以上、約70質量%以上、又は約80質量%以上、約99.5質量%以下、約99質量%以下、又は約98質量%以下の量で含む重合性組成物を共重合して得られたものであり、アルキル(メタ)アクリレートに由来する構成単位を上記質量比で含む。
【0050】
アミノ基含有モノマーとしては、例えば、アミノエチル(メタ)アクリレートなどのアミノアルキル(メタ)アクリレート;ブチルアミノエチル(メタ)アクリレートなどのモノアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート;N,N-ジメチルアミノエチルアクリレート(DMAEA)、N,N-ジメチルアミノエチルメタクリレート(DMAEMA)などのジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート;N,N-ジメチルアミノプロピルアクリルアミド(DMAPAA)、N,N-ジメチルアミノプロピルメタクリルアミドなどのジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリルアミド;及びN,N-ジメチルアミノエチルビニルエーテル、N,N-ジエチルアミノエチルビニルエーテルなどのジアルキルアミノアルキルビニルエーテルが挙げられる。アミノ基含有モノマーは、N,N-ジメチルアミノエチルアクリレート(DMAEA)、N,N-ジメチルアミノエチルメタクリレート(DMAEMA)などのジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレートであることが好ましい。本開示において、(メタ)アクリル系モノマーとアミノ基含有モノマーのいずれにも該当するもの、例えばアミノエチル(メタ)アクリレートなどは、アミノ基含有モノマーとして取り扱う。
【0051】
一実施態様では、アミノ基含有(メタ)アクリル系ポリマーは、アミノ基含有モノマーを、重合性成分の質量を基準として、約0.5質量%以上、約1質量%以上、又は約2質量%以上、約20質量%以下、約15質量%以下、又は約10質量%以下の量で含む重合性組成物を共重合して得られたものであり、アミノ基含有モノマーに由来する構成単位を上記質量比で含む。
【0052】
アミノ基含有(メタ)アクリル系ポリマーは、芳香族ビニルモノマーに由来するモノマー単位を含まないアミノ基含有(メタ)アクリル系ポリマー(以下、本開示において「アミノ基含有非芳香族(メタ)アクリル系ポリマー」ともいう。)であることが好ましい。アミノ基含有非芳香族(メタ)アクリル系ポリマーは、カルボキシ基含有(メタ)アクリル系ポリマーとの相溶性に優れていることから、カルボキシ基含有(メタ)アクリル系ポリマーとの上記相互作用をより効果的なものにすることができる。
【0053】
アミノ基含有非芳香族(メタ)アクリル系ポリマーは、芳香族ビニルモノマーに由来する構成単位を含まない。芳香族ビニルモノマーとしては、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、ビニルナフタレン、ビニルアントラセン、ビニルアントラキノン、芳香族アミンの(メタ)アクリルアミド、及び水酸基含有芳香族化合物の(メタ)アクリレートが挙げられる。芳香族アミンとしては、例えば、アニリン、ベンジルアミン、ナフチルアミン、アミノアントラセン、アミノアントラキノン、及びこれらの誘導体が挙げられる。水酸基含有芳香族化合物としては、例えば、上記芳香族アミンに対応する水酸基含有化合物が挙げられる。
【0054】
アミノ基含有(メタ)アクリル系ポリマーの共重合も、カルボキシ基含有(メタ)アクリル系ポリマーの共重合と同様に、ラジカル重合により行なうことができる。重合方法、重合開始剤及びその使用量は、カルボキシ基含有(メタ)アクリル系ポリマーの共重合について説明したものと同様である。
【0055】
着色接着層において、カルボキシ基含有(メタ)アクリル系ポリマー及びアミノ基含有(メタ)アクリル系ポリマーの少なくとも一方は、アクリル系粘着性ポリマーとして機能する。アクリル系粘着性ポリマーは、使用温度(例えば5℃~35℃)で着色接着層に感圧接着性を付与する。
【0056】
アクリル系粘着性ポリマーのガラス転移温度(Tg)は、約-70℃~約-20℃とすることができる。一実施態様では、アクリル系粘着性ポリマーのガラス転移温度は、約-65℃以上、又は約-60℃以上、約-25℃以下、又は約-30℃以下である。アクリル系粘着性ポリマーのガラス転移温度を約-70℃以上とすることにより、接着力及び保持力を着色接着層に付与することができる。アクリル系粘着性ポリマーのガラス転移温度を約-20℃以下とすることにより、初期接着性(タック)を着色接着層に効果的に付与することができる。
【0057】
アクリル系粘着性ポリマーのガラス転移温度(Tg)は、各ポリマーがn種類のモノマーから共重合されているとして、下記のFOXの式(Fox, T. G., Bull. Am. Phys. Soc., 1 (1956), p. 123)
【数1】
を用いて計算ガラス転移温度として求めることができる。式中、Tgは成分iのホモポリマーのガラス転移温度(℃)、Xは重合の際に添加した成分iのモノマーの質量分率をそれぞれ示し、iは1~nの自然数であり、
【数2】
である。
【0058】
一実施態様において、アクリル系粘着性ポリマーの重量平均分子量(Mw)は、約150,000以上、約200,000以上、又は約250,000以上、約2,000,000以下、約1,500,000以下、又は約1,000,000以下である。本開示において「重量平均分子量」とは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法による標準ポリスチレンで換算した分子量を意味する。
【0059】
カルボキシ基含有(メタ)アクリル系ポリマーとアミノ基含有(メタ)アクリル系ポリマーの質量比は、100:約0.1~50、100:約1~40、若しくは100:約2~30(カルボキシ基含有(メタ)アクリル系ポリマーがアクリル系粘着性ポリマーとして機能する場合)、又は約0.1~50:100、約1~40:100、若しくは約2~30:100(アミノ基含有(メタ)アクリル系ポリマーがアクリル系粘着性ポリマーとして機能する場合)とすることができる。
【0060】
車両又は建築物の窓ガラスなどのガラス基材の車内側又は屋内側に一般的な装飾フィルムを施工(内貼り)すると、装飾フィルムを構成する接着層に含まれる接着剤が劣化する場合がある。接着剤の劣化は、具体的には接着剤の主成分である粘着性ポリマー、例えばアクリル系粘着性ポリマーの分解であり、ガラス基材を透過する太陽光への暴露(特に紫外線への暴露)、及び比較的厚いガラス基材に蓄積される熱によって作り出される継続的な高温環境が主な要因であると考えられる。装飾フィルムのフィルム基材に紫外線吸収剤を含有させることにより装飾フィルムの耐候性を高めることは一般的に知られている。しかし、内貼りの場合、太陽光に対してフィルム基材が接着層の背面に位置するため、フィルム基材に含まれる紫外線吸収剤は接着層に入射する紫外線量を低減することには直接的に寄与しない。このように、装飾フィルムにおける接着剤の劣化は、外貼り(装飾フィルムをガラス基材の車外側又は屋外側に施工)よりもむしろ内貼りにおいて問題となる。接着剤が劣化すると、接着剤の凝集力が低下し、施工時に生じたフィルム基材の内部応力が接着剤の凝集力に打ち克って装飾フィルムが収縮する、あるいは装飾フィルムとガラス基材との間に気泡が発生する場合がある。
【0061】
一実施態様において、アクリル系粘着性ポリマーとして機能する(メタ)アクリル系ポリマーとは別の(メタ)アクリル系ポリマーが、アクリル系ポリマー添加剤として機能してもよい。すなわち、カルボキシ基含有(メタ)アクリル系ポリマーがアクリル系粘着性ポリマーとして機能する場合、アミノ基含有(メタ)アクリル系ポリマーがアクリル系ポリマー添加剤として機能してもよく、アミノ基含有(メタ)アクリル系ポリマーがアクリル系粘着性ポリマーとして機能する場合、カルボキシ基含有(メタ)アクリル系ポリマーがアクリル系ポリマー添加剤として機能してもよい。アクリル系ポリマー添加剤は、アクリル系粘着性ポリマーとの酸(カルボキシ基)-塩基(アミノ基)相互作用を介して、太陽光への暴露などにより生じるアクリル系粘着性ポリマーの解重合に起因する凝集力の低下を抑制して、接着力を所望のレベルに維持することができる。
【0062】
一実施態様では、カルボキシ基含有(メタ)アクリル系ポリマーがアクリル系粘着性ポリマーであり、アミノ基含有(メタ)アクリル系ポリマーがアクリル系ポリマー添加剤である。
【0063】
アクリル系ポリマー添加剤のガラス転移温度(Tg)は、約20℃~約120℃とすることができる。一実施態様では、アクリル系ポリマー添加剤のガラス転移温度は、約30℃以上、又は約45℃以上、約100℃以下、又は約80℃以下である。アクリル系ポリマー添加剤のガラス転移温度を約20℃以上とすることにより、太陽光への暴露などにより生じるアクリル系粘着性ポリマーの解重合に起因する凝集力の低下を抑制して、接着力を所望のレベルに維持することができる。アクリル系ポリマー添加剤のガラス転移温度を約100℃以下とすることにより、常温域での接着性を担保することができる。アクリル系ポリマー添加剤のガラス転移温度は、アクリル系粘着性ポリマーと同様にFOXの式を用いて決定することができる。
【0064】
一実施態様において、アクリル系ポリマー添加剤の重量平均分子量(Mw)は、約1,000以上、約5,000以上、又は約10,000以上、約200,000以下、約100,000以下、又は約80,000以下である。
【0065】
一実施態様では、アクリル系粘着性ポリマーとして機能するカルボキシ基含有(メタ)アクリル系ポリマー又はアミノ基含有(メタ)アクリル系ポリマーのガラス転移温度が約-70℃~約-20℃であり、アクリル系ポリマー添加剤として機能するカルボキシ基含有(メタ)アクリル系ポリマー又はアミノ基含有(メタ)アクリル系ポリマーのガラス転移温度が20℃~120℃であり、着色接着層中のアクリル系ポリマー添加剤の含有量が、アクリル系粘着性ポリマー100質量部を基準として約11質量部~約40質量部である。アクリル系ポリマー添加剤の含有量は、アクリル系粘着性ポリマー100質量部を基準として、約12質量部以上、又は約15質量部以上であることが好ましく、約30質量部以下、又は約25質量部以下であることが好ましい。アクリル系ポリマー添加剤の含有量を、アクリル系粘着性ポリマー100質量部を基準として、約11質量部以上とすることにより、20℃~120℃と高いガラス転移温度を有するアクリル系ポリマー添加剤が、太陽光への暴露によって引き起こされるアクリル系粘着性ポリマーの凝集力の低下を抑制し、着色接着層の接着力を所望のレベルに維持することができる。アクリル系ポリマー添加剤の含有量を、アクリル系粘着性ポリマー100質量部を基準として、約40質量部以下とすることにより、低温でも接着性を担保することができる。
【0066】
着色剤としては、顔料及び染料が挙げられる。顔料及び染料はそれぞれ、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。顔料及び染料の形態は特に限定されず、分散処理が施されていてもよい。
【0067】
顔料としては、例えば、炭酸亜鉛、酸化亜鉛、硫化亜鉛、タルク、カオリン、炭酸カルシウム、酸化チタン、カーボンブラック、黄鉛、黄色酸化鉄、ベンガラ、赤色酸化鉄、硫酸バリウム、アルミナ、ジルコニア、酸化鉄系顔料、水酸化鉄系顔料、酸化クロム系顔料、スピネル型焼成系顔料、クロム酸系顔料、クロムバーミリオン系顔料、紺青系顔料、アルミニウム粉末系顔料、ブロンズ粉末系顔料、リン酸カルシウムなどの無機顔料;及びフタロシアニンブルー、フタロシアニングリーンなどのフタロシアニン系顔料、アゾ系顔料、縮合アゾ系顔料、アゾレーキ系顔料、アントラキノン系顔料、インジゴ系顔料、チオインジゴ系顔料、イソインドリノン系顔料、アゾメチンアゾ系顔料、アニリンブラック系顔料、トリフェニルメタン系顔料、ペリノン系顔料、ペリレン系顔料、キノフタロン系顔料、ジオキサジン系顔料、キナクリドンレッドなどのキナクリドン系顔料などの有機顔料が挙げられる。
【0068】
染料としては、例えば、アゾ系染料、アントラキノン系染料、キノンフタロン系染料、スチリル系染料、ジフェニルメタン系染料、トリフェニルメタン系染料、オキサジン系染料、トリアジン系染料、キサンタン系染料、アゾメチン系染料、アクリジン系染料、及びジアジン系染料が挙げられる。
【0069】
着色剤の含有量は、カルボキシ基含有(メタ)アクリル系ポリマー及びアミノ基含有(メタ)アクリル系ポリマーの合計100質量部を基準として、約0.1質量部以上、約0.5質量部以上、又は約1質量部以上、約100質量部以下、約75質量部以下、又は約50質量部以下とすることができる。
【0070】
カルボキシ基含有(メタ)アクリル系ポリマー及びアミノ基含有(メタ)アクリル系ポリマーの少なくとも一方が、着色剤の分散剤として機能してもよい。この実施態様において、着色剤と、分散剤として機能する(メタ)アクリル系ポリマーとを混合してプレミックス(ミルベースともいう。)を調製し、得られたプレミックスを、着色接着層の形成に使用される着色接着剤組成物の他の成分と混合してもよい。これにより、多量の着色剤を着色接着層中に安定に分散させることができる。また、複数の着色剤についてそれぞれプレミックスを調製し、これらのプレミックスを適宜混合することにより、調色を容易に行うことができる。
【0071】
分散剤として機能するカルボキシ基含有(メタ)アクリル系ポリマー又はアミノ基含有(メタ)アクリル系ポリマーは、アクリル系粘着性ポリマー又はアクリル系ポリマー添加剤として機能するものと同じであってもよく、異なっていてもよい。後者の場合、着色接着層は、2種以上のカルボキシ基含有(メタ)アクリル系ポリマー又はアミノ基含有(メタ)アクリル系ポリマー、すなわち分散剤として機能するカルボキシ基含有(メタ)アクリル系ポリマー又はアミノ基含有(メタ)アクリル系ポリマーと、アクリル系粘着性ポリマー又はアクリル系ポリマー添加剤として機能するカルボキシ基含有(メタ)アクリル系ポリマー又はアミノ基含有(メタ)アクリル系ポリマーとを含む。
【0072】
分散剤として機能するカルボキシ基含有(メタ)アクリル系ポリマー又はアミノ基含有(メタ)アクリル系ポリマーの重量平均分子量(Mw)は、一般に、約1,000以上、又は約10,000以上、約1,500,000以下、又は約800,000以下とすることができる。
【0073】
着色接着層は、カルボキシ基含有(メタ)アクリル系ポリマー、アミノ基含有(メタ)アクリル系ポリマー、及び着色剤、並びに必要に応じて架橋剤、溶剤、及び/又はその他の添加剤を含む着色接着剤組成物を用いて、2軸延伸PETフィルム層又はライナーの上に形成することができる。
【0074】
着色接着剤組成物の調製前に、着色剤と、分散剤として機能するカルボキシ基含有(メタ)アクリル系ポリマー又はアミノ基含有(メタ)アクリル系ポリマーとを混合してプレミックスを調製してもよい。混合は、例えば、ペイントシェイカー、サンドグラインドミル、ボールミル、アトライターミル、又は3本ロールミルを用いて行うことができる。混合時に、必要に応じて水系溶媒又は有機溶媒を加えてもよい。得られたプレミックスを、着色接着剤組成物の他の成分と混合することにより、着色接着剤組成物を調製することができる。複数の着色剤を用いる場合、着色剤ごとにプレミックスを調製し、これらのプレミックスを適宜混合することにより調色した後、プレミックス混合物を着色接着剤組成物の他の成分と混合してもよい。
【0075】
着色剤と分散剤との質量比は、約1~100:約5~1000、約1~100:約10~700、又は約1~100:約10~500とすることができる。分散剤は、全量がプレミックスの調製時に使用されてもよく、一部がプレミックスの調製時に使用され、残りが着色接着剤組成物の調製時に使用されてもよい。
【0076】
架橋剤としては、カルボキシ基含有(メタ)アクリル系ポリマー、又はアミノ基含有(メタ)アクリル系ポリマーのポリマー鎖間に架橋を形成することができるものであれば特に限定されない。例えば、カルボキシ基含有(メタ)アクリル系ポリマーの架橋剤として、エポキシ系架橋剤、ビスアミド系架橋剤、アジリジン系架橋剤、カルボジイミド系架橋剤、イソシアネート系架橋剤などを使用することができる。
【0077】
エポキシ系架橋剤としては、例えば、N,N,N’,N’-テトラグリシジル-1,3-ベンゼンジ(メタンアミン)(商品名として、TETRAD-X(三菱ガス化学株式会社、日本国東京都千代田区)、E-AX及びE-5XM(いずれも綜研化学株式会社、日本国東京都豊島区))、及びN,N’-(シクロヘキサン-1,3-ジイルビスメチレン)ビス(ジグリシジルアミン)(商品名として、TETRAD-C(三菱ガス化学株式会社、日本国東京都千代田区)、及びE-5C(綜研化学株式会社、日本国東京都豊島区))が挙げられる。
【0078】
ビスアミド系架橋剤としては、例えば、1,1’-イソフタロイル-ビス(2-メチルアジリジン)、1,4-ビス(エチレンイミノカルボニルアミノ)ベンゼン、4,4’-ビス(エチレンイミノカルボニルアミノ)ジフェニルメタン、及び1,8-ビス(エチレンイミノカルボニルアミノ)オクタンが挙げられる。
【0079】
アジリジン系架橋剤としては、例えば、2,2-ビスヒドロキシメチルブタノール-トリス[3-(1-アジリジニル)プロピオネート(商品名として、ケミタイト(登録商標)PZ-33(株式会社日本触媒(日本国大阪府大阪市))、及びCrosslinker CX-100(DSM Coating Resins B.V.(オランダ王国ズヴォレ))が挙げられる。
【0080】
カルボジイミド系架橋剤としては、例えば、カルボジライトV-03、V-05、及びV-07(いずれも日清紡ケミカル株式会社(日本国東京都中央区))が挙げられる。
【0081】
イソシアネート系架橋剤としては、例えば、コロネートL、及びコロネートHK(いずれも東ソー株式会社(日本国東京都港区))が挙げられる。
【0082】
架橋剤は、アクリル系粘着性ポリマーとして機能するカルボキシ基含有(メタ)アクリル系ポリマー又はアミノ基含有(メタ)アクリル系ポリマー100質量部を基準として、約0.01質量部以上、約0.02質量部以上、又は約0.05質量部以上、約0.5質量部以下、約0.4質量部以下、又は約0.3質量部以下の量で使用することができる。
【0083】
溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、ヘキサン、ヘプタン、トルエン、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、酢酸エチル、酢酸ブチルなど又はこれらの混合溶剤が挙げられる。
【0084】
その他の添加剤としては、例えば、紫外線吸収剤、酸化防止剤、熱安定剤、充填材、粘着付与剤などが挙げられる。
【0085】
着色接着層の厚さは様々であってよく、例えば、約5μm以上、約10μm以上、又は約20μm以上、約200μm以下、約100μm以下、又は約80μm以下とすることができる。装飾フィルムの不燃性の観点からは、着色接着層の厚さは約50μm以下であることが好ましく、約30μm以下であることがより好ましい。
【0086】
装飾フィルムは公知の方法によって製造することができる。例えば、着色接着剤組成物を、ナイフコート、バーコートなどによりライナー上に塗布し乾燥して、着色接着層を形成する。任意成分の架橋剤を反応させるために、乾燥時に熱風、オーブンなどを用いて着色接着層を加熱してもよい。得られた着色接着層の上に2軸延伸PETフィルム層をドライラミネートなどの方法により積層して、装飾フィルムを製造することができる。2軸延伸PETフィルム層の上に直接着色接着剤組成物を塗布し乾燥して、装飾フィルムを製造することもできる。
【0087】
装飾フィルムは、2軸延伸PETフィルム層とは反対側の着色接着層の表面にライナーを有していてもよい。任意の構成要素であるライナーとして、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、酢酸セルロースなどのプラスチック材料、紙、及び前記プラスチック材料のラミネート紙などを挙げることができる。これらのライナーは、シリコーンなどにより剥離処理した表面を有してもよい。ライナーの厚さは、通常約10μm以上、又は約25μm以上、約500μm以下、又は約200μm以下とすることができる。
【0088】
着色接着層は中実であってもよく、多孔質又は発泡体であってもよい。着色接着層の接着面は平坦であってもよく、凹凸を有してもよい。凹凸接着面には、着色接着層の接着面に、着色接着剤組成物の固形分又は反応物の固形分を含む凸部と、その凸部の周りを取り囲んだ凹部とが形成され、被着体に接着された状態で被着体の表面と接着面との間に凹部が画する外部と連通した連通路が形成される接着面を含む。凹凸接着面を形成する方法の一例を以下説明する。
【0089】
所定の凹凸構造を有する剥離面を持つライナーを用意する。このライナーの剥離面に、着色接着剤組成物を塗布し、必要に応じて加熱して、着色接着層を形成する。これにより、着色接着層のライナーと接する面(これが装飾フィルムにおける接着面となる。)に、ライナーの凹凸構造(ネガ構造)を転写し、接着面に所定の構造(ポジ構造)を有する凹凸接着面を形成する。接着面の凹凸は、前述したように、被着体に凸部が接着した際に連通路が形成可能な溝を含むように予め設計される。
【0090】
着色接着層の溝は、一定形状の溝を規則的パターンに沿って接着面に配置することにより規則的パターンの溝を形成してもよく、不定形の溝を配置することにより不規則なパターンの溝を形成してもよい。複数の溝が互いに略平行に配置されるように形成される場合、溝の配置間隔は約10μm以上、又は約100μm以上、約2000μm以下、又は約1000μm以下であることが好ましい。溝の深さ(接着面から2軸延伸PETフィルム層の方向に向かって測定した溝の底までの距離)は、通常約10μm以上、約100μm以下である。溝の形状も、本発明の効果を損なわない限り特に限定されない。例えば、溝の形状を、接着面に垂直な方向の溝の断面において、略矩形(台形を含む)、略半円形、又は略半楕円形とすることができる。
【0091】
一実施態様では、ライナーを除く装飾フィルムの厚さは、約270μm以下、約200μm以下、又は約100μm以下である。ライナーを除く装飾フィルムの厚さは、約30μm以上、約40μm以上、又は約50μm以上とすることができる。
【0092】
一実施態様では、ライナーを除く装飾フィルムの可視光線透過率は、約10%以上、約30%以上、又は約50%以上、約99%以下、約97%以下、又は約95%以下である。
【0093】
装飾フィルムの2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム層側の鉛筆硬度はB以上である。前記鉛筆硬度は、H以上であることが好ましく、2H以上であることがより好ましい。
【0094】
装飾フィルムの2%伸び時引張強さは約50N/25mm以上である。前記2%伸び時引張強さは、約60N/25mm以上であることが好ましく、約75N/25mm以上であることがより好ましい。
【0095】
装飾フィルムの伸びは約60%以上である。前記伸びは、約70%以上であることが好ましく、約80%以上であることがより好ましい。
【0096】
上記鉛筆硬度、2%伸び時引張強さ及び伸びは、実施例に記載の手順で決定される。
【0097】
装飾フィルムのISO5660-1コーンカロリーメータ発熱性試験に準拠して測定される加熱開始後20分間の総発熱量は8MJ/m以下である。一実施態様では、前記総発熱量は、約7MJ/m以下、又は6MJ/m以下である。前記総発熱量が8MJ/m以下である場合、装飾フィルムは不燃性であると判定される。
【0098】
飛散防止フィルムは透明であることが好ましい。透明とは、波長範囲380~780nmにおける全光線透過率が約80%以上であることを意味する。
【0099】
一実施態様では、装飾フィルムは難燃剤を実質的に含まない。ここで「実質的に含まない」とは、装飾フィルムの質量を基準として、難燃剤の含有量が約1質量%未満、約0.5質量%未満、又は約0.2質量%未満であることを意味する。難燃剤としては、例えば、臭素系難燃剤、リン系難燃剤、塩素系難燃剤などの有機系難燃剤、及びアンチモン化合物、金属水酸化物、窒素化合物、ホウ素化合物などの無機系難燃剤が挙げられる。難燃剤を添加することによって装飾フィルムの接着性が低下するおそれがあるため、難燃剤を含まないことで装飾フィルムの接着性を担保することができる。また、難燃剤を添加することによって装飾フィルムの伸び特性が低下するおそれもある。
【0100】
本開示の装飾フィルムは、車両内装用装飾フィルムとして車両の内装目的に、及び飛散防止フィルムとして車両、建築物等の窓ガラスに、それぞれ好適に使用することができる。
【実施例
【0101】
以下の実施例において、本開示の具体的な実施態様を例示するが、本発明はこれに限定されるものではない。部及びパーセントは全て、特に明記しない限り質量による。
【0102】
装飾フィルムの作製に使用した材料を表1に示す。
【0103】
【表1】
【0104】
装飾フィルムの作製に使用した顔料1~4を表2に示す。
【0105】
【表2】
【0106】
装飾フィルムの作製に使用したミルベース1~4(プレミックス)の配合を表3に示す。
【0107】
【表3】
【0108】
装飾フィルムの作製に使用した着色接着剤組成物CA1~CA3及びCA6の配合を表4に示す。
【0109】
【表4】
【0110】
例1
着色接着剤組成物CA1に架橋剤1(CL1)を混合した。CA1中の粘着性ポリマー2(ADH2)とCL1の質量比は不揮発分基準で100:0.05であった。得られた着色接着剤組成物を構造化表面を有するライナー(SCW860DNL、スリーエムジャパン株式会社、日本国東京都港区)上にナイフコーターを用いて塗工し、95℃で3分間乾燥した。乾燥後に厚さ25μmの着色接着層が得られた。着色接着層とフィルム1(FL1)と貼り合わせて例1の装飾フィルムを得た。
【0111】
例2及び例3
着色接着剤組成物を表5に示すとおり変更した以外は、例1と同様の手順で装飾フィルムを得た。
【0112】
例4
白色顔料である顔料1(PG1)、(メタ)アクリル系ポリマー1(AP1)及びメチルエチルケトン(MEK)を含む白色顔料プレミックスを調製した。PG1とAP1の質量比は不揮発分基準で5:1であった。白色顔料プレミックスの固形分は約66質量%であった。白色顔料プレミックス及び粘着性ポリマー1(ADH1)を含む着色接着剤組成物CA4を調製した。ADH1、PG1及びAP1の質量比は不揮発分基準で100:50:10であった。CL1をCA4に混合して白色接着剤組成物を得た。ADH1とCL1の質量比は不揮発分基準で100:0.2であった。白色接着剤組成物の固形分は約35質量%であった。
【0113】
白色接着剤組成物をシリコーン被覆ポリエチレンラミネート紙ライナーの上にナイフコーターを用いて塗工し、95℃で5分間乾燥した。乾燥後に厚さ30μmの白色接着層が得られた。白色接着層とFL1とを貼り合わせて例4の装飾フィルムを得た。
【0114】
例5
例4と同様の手順で白色顔料プレミックスを調製した。その後、白色顔料プレミックス及びADH2を含む着色接着剤組成物CA5を調製した。ADH2、PG1及びAP1の質量比は不揮発分基準で100:40:8であった。CL2をCA5に混合して白色接着剤組成物を得た。ADH2とCL2の質量比は不揮発分基準で100:0.05であった。白色接着剤組成物の固形分は約38質量%であった。
【0115】
白色接着剤組成物をシリコーン被覆ポリエチレンラミネート紙ライナーの上にナイフコーターを用いて塗工し、95℃で5分間乾燥した。乾燥後に厚さ40μmの白色接着層が得られた。白色接着層とFL1とを貼り合わせて例5の装飾フィルムを得た。
【0116】
例6
着色接着剤組成物CA6にCL1を混合した。CA6中のADH1とCL1の質量比は不揮発分基準で100:0.2であった。得られた着色接着剤組成物をシリコーン被覆ポリエチレンラミネート紙ライナーの上にナイフコーターを用いて塗工し、95℃で3分間乾燥した。乾燥後に厚さ21μmの着色接着層が得られた。着色接着層とFL2と貼り合わせて例6の装飾フィルムを得た。
【0117】
例7
FL2をFL3に変更した以外は、例6と同様の手順で装飾フィルムを得た。
【0118】
比較例1
比較例1の装飾フィルムとして、3M(登録商標)Scotchtint(登録商標)ウィンドウフィルム SH2CLAR-R5(スリーエムジャパン株式会社、日本国東京都港区)を使用した。
【0119】
比較例2
比較例2の装飾フィルムとして、3M(登録商標)Scotchcal(登録商標)ペイントフィルム PF121AP(スリーエムジャパン株式会社、日本国東京都港区)を使用した。
【0120】
例8
FL1をFL4に変更した以外は、例3と同様の手順で装飾フィルムを得た。
【0121】
例9
FL1をFL5に変更した以外は、例3と同様の手順で装飾フィルムを得た。
【0122】
例10
白色接着層の乾燥後の厚さを80μmに変更した以外は、例5と同様の手順で装飾フィルムを得た。
【0123】
装飾フィルムを以下の項目について評価した。
【0124】
1.2%伸び時引張強さ
装飾フィルムを幅25mm×長さ150mmに切断して試験片を作製した。引張試験機(テンシロン(登録商標)万能試験機、型番:RTC-1210A、株式会社エー・アンド・デイ、日本国東京都豊島区)を用いて、温度20℃における2%伸び時の応力を2%引張強さとして記録した。引張速度は300mm/分、チャック間隔は100mmであった。
【0125】
2.降伏時引張強さ
装飾フィルムを幅25mm×長さ150mmに切断して試験片を作製した。引張試験機(テンシロン(登録商標)万能試験機、型番:RTC-1210A、株式会社エー・アンド・デイ、日本国東京都豊島区)を用いて、温度20℃における降伏点での応力を降伏時引張強さとして記録した。引張速度は300mm/分、チャック間隔は100mmであった。
【0126】
3.破断強度及び伸び
装飾フィルムを幅25mm×長さ150mmに切断して試験片を作製した。引張試験機(テンシロン(登録商標)万能試験機、型番:RTC-1210A、株式会社エー・アンド・デイ、日本国東京都豊島区)を用いて、試験片が破断したときの強度及び伸び(=(破断時の試験片の長さ-試験前の試験片の長さ)/試験前の試験片の長さ)をそれぞれ破断強度及び伸びとして記録した。引張速度は300mm/分、チャック間隔は100mmであった。
【0127】
4.接着力
装飾フィルムを幅25mm×長さ150mmに切断して試験片を作製した。試験片をメラミン塗装板(株式会社パルテック、日本国神奈川県平塚市)、A5052Pアルミニウムパネル、SUS304BAパネル(株式会社パルテック、日本国神奈川県平塚市)、又は厚さ3mmのフロートガラスパネル(AGC株式会社、日本国東京都千代田区)の上に20℃で貼り付けた。貼り付け方法はJIS Z 0237:2009 8.2.3に準拠した。試験片を20℃で48時間放置した。引張試験機(テンシロン(登録商標)万能試験機、型番:RTC-1210A、株式会社エー・アンド・デイ、日本国東京都豊島区)を用いて温度20℃、剥離速度300mm/分で180度剥離を行ったときの接着力(N/25mm)を測定した。
【0128】
5.熱収縮性
装飾フィルムを幅50mm×長さ100mmに切断して試験片を作製した。23℃の環境下で試験片をA5052Pアルミニウムパネルの上にローラーで貼り付けて、23℃の環境下、24時間放置した。試験片にカッターで十字に切り込みを入れた。その後、試験片を65℃で48時間加熱した。加熱エージング後、顕微鏡でフィルムの収縮量(mm)を測定し、最大値を記録した。
【0129】
6.鉛筆硬度(耐引っかき性)
JIS K5600-5-4(ISO/DIN 15184)に従い試験を行った。傷跡を生じなかった最も硬い鉛筆の硬度を引っかき硬度とする。4H以上の場合「A」、Bから3Hの場合「B」、2B以下の場合「C」と評価した。A、Bを合格と判断した。
【0130】
7.不燃性試験
亜鉛メッキ鋼板(厚さ0.27mm)上に装飾フィルムを貼り付けた。ISO5660-1コーンカロリーメータ発熱性試験に準拠して試験を行った。パラメータとして発熱速度(kW/m)及び総発熱量(MJ/m)をコーンカロリーメータ(株式会社東洋精機製作所製)を用いて測定した。加熱開始後20分間の総発熱量が8MJ/m以下でありかつ200kW/mを超える発熱速度を示した時間が合計で10秒以下である場合を合格、それ以外の場合を不合格と判定した。
【0131】
例1~例10、比較例1及び比較例2の装飾フィルムの構成及び評価結果を表5及び表6にそれぞれ示す。
【0132】
【表5】
【0133】
【表6】
【0134】
図2に例1及び比較例1の装飾フィルムの伸び(%、横軸)と引張強さ(N/25mm、縦軸)の関係をグラフで示す。
【0135】
本発明の基本的な原理から逸脱することなく、上記の実施態様及び実施例が様々に変更可能であることは当業者に明らかである。また、本発明の様々な改良及び変更が本発明の趣旨及び範囲から逸脱せずに実施できることも当業者には明らかである。
【符号の説明】
【0136】
10 装飾フィルム(車両内装用装飾フィルム及び飛散防止フィルム)
12 2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム層
14 着色接着層
16 ライナー
図1
図2
【国際調査報告】