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特表2024-536472電動熱分解反応器及び供給物-流出物熱交換器を備えるエチレンプラント
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-04
(54)【発明の名称】電動熱分解反応器及び供給物-流出物熱交換器を備えるエチレンプラント
(51)【国際特許分類】
   C10G 9/24 20060101AFI20240927BHJP
【FI】
C10G9/24
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024521880
(86)(22)【出願日】2022-10-13
(85)【翻訳文提出日】2024-06-05
(86)【国際出願番号】 EP2022078585
(87)【国際公開番号】W WO2023062165
(87)【国際公開日】2023-04-20
(31)【優先権主張番号】21290066.6
(32)【優先日】2021-10-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522294671
【氏名又は名称】テクニップ エナジーズ フランス
(74)【代理人】
【識別番号】110003579
【氏名又は名称】弁理士法人山崎国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100118647
【弁理士】
【氏名又は名称】赤松 利昭
(74)【代理人】
【識別番号】100123892
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 忠雄
(74)【代理人】
【識別番号】100169993
【弁理士】
【氏名又は名称】今井 千裕
(74)【代理人】
【識別番号】110002848
【氏名又は名称】弁理士法人NIP&SBPJ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】オウド、ピーター
【テーマコード(参考)】
4H129
【Fターム(参考)】
4H129AA02
4H129CA02
4H129DA03
4H129FA02
4H129FA11
4H129NA20
4H129NA43
(57)【要約】
本開示は、電動熱分解反応器を備えるエチレンプラント、及びエチレンプラントを使用して熱分解反応器流出物を生成するためのプロセスに関する。熱分解反応器は、炭化水素供給原料-希釈剤混合物のための供給入口と、エチレンを含む熱分解反応器流出物のための出口と、を備える。プラントは、熱分解反応器流出物から熱分解反応器のための供給物に熱を伝達するように構成された熱交換器(90)を更に備える。熱交換器(90)は、熱分解反応器の上流に供給入口及び供給出口を備え、更に熱分解反応器流出物入口及び熱分解反応器流出物出口を備える。供給通路は、熱交換器の供給出口と熱分解反応器の供給入口との間に存在し、更に供給通路は、熱分解反応器の反応器流出物出口と熱交換器の分解ガス入口との間に存在する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動熱分解反応器(91)を備えるエチレンプラントであって、前記電動熱分解反応器(91)が、炭化水素供給原料-希釈剤混合物のための供給入口と、エチレンを含む熱分解反応器流出物のための出口と、を備え、前記エチレンプラントが、前記熱分解反応器流出物から前記熱分解反応器のための供給物に熱を伝達するように構成された熱交換器(90)を更に備え、前記熱交換器(90)が、前記熱分解反応器の上流の供給入口及び供給出口と、更に熱分解反応器流出物入口及び熱分解反応器流出物出口と、を備え、供給通路が、前記熱交換器の前記供給出口と前記熱分解反応器の前記供給入口との間に存在し、更に供給通路が、前記熱分解反応器の前記反応器流出物出口と前記熱交換器の分解ガス入口との間に存在する、エチレンプラント。
【請求項2】
前記プラントが、前記熱分解反応器内で生成された反応器流出物を、高圧蒸気の生成なしで、ほぼ周囲条件に更に冷却するように構成された冷却セクションを更に備え、前記冷却セクションが、前記熱交換器(90)の分解ガス出口の下流にある、請求項1に記載のエチレンプラント。
【請求項3】
前記冷却セクションが、前記反応器流出物を急冷水で更に冷却するように構成された急冷水冷却システム、及び前記反応器流出物を空気で更に冷却するように構成された空気冷却器の群から選択される冷却システム(60)を備える、請求項2に記載のエチレンプラント。
【請求項4】
前記冷却セクションが、前記急冷水冷却システム又は空気冷却器の上流に、反応器流出物を急冷油で更に冷却するように構成された急冷油冷却システム(51)を備える、請求項3に記載のエチレンプラント。
【請求項5】
前記プラントが、前記熱交換器(90)の前記供給入口の上流に加湿器(150)を備え、前記加湿器が、前記炭化水素供給原料を加湿し、それによって炭化水素-希釈剤混合物を提供するように構成されている、請求項1~4のいずれか一項に記載のエチレンプラント。
【請求項6】
前記加湿器(150)内の前記炭化水素供給原料を加湿するための水に前記急冷油から熱を伝達するように構成された熱交換器(153)を備え、前記熱交換器が、急冷油通路及び水通路を備え、
前記急冷油通路が、急冷油を前記急冷油冷却システム(51)から前記熱交換器(153)に移送するように構成された通路を介して前記急冷油冷却システム(51)の急冷油出口に接続された急冷油のための入口と、急冷油リサイクル通路を介して前記急冷油冷却システム(51)の急冷油入口に接続された急冷油出口と、を有し、
前記熱交換器(153)の前記水通路が、前記熱交換器(153)内で加熱される水のための入口と、前記加湿器(150)の水入口に接続された水のための出口と、を有する、請求項4に従属する請求項5に記載のエチレンプラント。
【請求項7】
前記加湿炭化水素供給物を加圧するように構成された圧縮器を備え、前記圧縮器が、前記加湿器(150)の加湿炭化水素供給物のための出口と、前記熱分解反応器からの分解ガスから前記熱分解反応器のための前記供給物に熱を伝達するように構成された前記熱交換器(90)の前記供給入口との間の加湿炭化水素供給通路内に存在する、請求項5又は6に記載のエチレンプラント。
【請求項8】
前記プラントが、希釈蒸気を生成するように構成されたヒートポンプシステムを備える希釈蒸気生成器を備える、請求項1~7のいずれか一項に記載のエチレンプラント。
【請求項9】
前記ヒートポンプシステムが、複数の熱源、複数のシンク、又はその両方を有する、請求項8に記載のエチレンプラント。
【請求項10】
前記プラントが、前記熱分解反応器(91)の上流の前記熱交換器(90)の前記供給入口の上流で前記炭化水素供給原料を予熱するための熱交換器(30、43)を備え、前記熱交換器が、熱分解反応器流出物を冷却するために使用される急冷水、急冷油、及び中間油のうちの1つ以上から熱を受け取るように構成されている、8又は9に記載のエチレンプラント。
【請求項11】
前記炭化水素供給物の蒸発のために急冷油冷却システム(51)において使用される急冷油から熱を受け取るように構成された炭化水素供給物蒸発器(46)を備え、前記急冷油冷却システムが、急冷油で熱分解反応器流出物を更に冷却するように構成されているか、又は前記炭化水素供給物の蒸発のために前記ヒートポンプの蒸気冷媒(48)から凝縮熱を受け取るように構成されている、請求項8~10のいずれか一項に記載のエチレンプラント。
【請求項12】
前記炭化水素供給物蒸発器(44)が、急冷油冷却システム(52)で使用される中間油から前記炭化水素供給物の前記蒸発のための前記熱のうちの少なくとも一部を受け取るように構成されており、前記中間油冷却システムが、熱分解反応器流出物を中間油で更に冷却するように構成されている、請求項11に記載のエチレンプラント。
【請求項13】
前記プラントが、前記電動熱分解反応器に電気を供給するように構成された電力接続を備え、前記電力接続が、再生可能資源から電力を生成するための電力システムへの接続である、請求項1~12のいずれか一項に記載のエチレンプラント。
【請求項14】
請求項1~13のいずれか一項に記載のエチレンプラントを使用して炭化水素供給物からエチレンを含む熱分解反応器流出物を生成するためのプロセスであって、炭化水素供給原料-蒸気混合物を電動熱分解反応器(91)に供給することと、前記エチレンプラントの前記電動熱分解反応器(91)において蒸気の存在下で前記炭化水素供給原料を分解して、エチレンを含む前記熱分解反応器流出物を生成することと、
前記炭化水素供給原料の前記分解の前に、前記熱分解反応器流出物から前記炭化水素供給原料-蒸気混合物に熱を伝達するように構成された熱交換器(90)に前記熱分解反応器流出物を供給することと、前記熱交換器(90)において前記熱分解反応器流出物から前記炭化水素供給原料-蒸気混合物に熱を伝達することと、それによって、前記熱分解反応器流出物を、前記熱交換器(90)の熱分解反応器流出物出口において、500℃未満の温度、好ましくは350℃~450℃の範囲の温度、より好ましくは325℃~425℃の範囲の温度に冷却することと、を含む、プロセス。
【請求項15】
気体炭化水素供給原料が、炭化水素供給物として使用され、前記気体炭化水素供給原料が、前記熱交換器(90)の前記供給入口の上流の加湿器(150)内で加湿され、それによって炭化水素-希釈剤混合物を提供する、請求項14に記載のプロセス。
【請求項16】
液体炭化水素供給原料が、炭化水素供給物として使用され、前記エチレンプラントが、急冷水冷却回路(65)を備えた急冷水冷却システム(60)と、一次分留器(50)と、を備える、冷却セクションを備え、前記一次分留器が、急冷油冷却回路(55)を備えた急冷油冷却システム(51)と、中間油冷却回路(57)を備えた中間油セクション(52)と、を備え、冷却回路が、液体炭化水素供給原料を予熱及び蒸発させ、蒸発した炭化水素供給原料を希釈蒸気と混合し、得られた混合物を前記熱交換器(90)に供給するために使用される、請求項14に記載のプロセス。
【請求項17】
炭化水素供給物として、液体供給原料及び気体炭化水素供給原料の混合物を使用する、請求項14、15又は16に記載のプロセス。
【請求項18】
前記炭化水素-蒸気混合物を、前記熱分解反応器流出物から前記熱分解反応器のための前記供給物に、前記炭化水素-蒸気混合物の水露点を超える温度で、熱を伝達するように構成された、前記熱交換器(90)に、供給することと、
前記熱交換器(90)内の前記熱分解反応器流出物からの廃熱を用いて、前記炭化水素-蒸気混合物を、前記電動熱分解反応器(91)のために適切な入口温度まで加熱することと、
前記加熱された炭化水素-蒸気混合物を、前記熱交換器(90)から前記電気的に加熱された熱分解反応器(91)に供給することあって、前記熱分解反応器は、前記加熱された炭化水素-蒸気混合物を、熱分解反応温度まで更に加熱し、前記熱分解反応器は、前記炭化水素供給物の前記分解生成物への変換のための反応熱を提供し、それによって前記分解生成物を提供する、供給することと、を含む、請求項14~17のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項19】
前記電動熱分解反応器(91)の前記入口温度が、気体炭化水素供給原料については650℃~730℃の範囲であり、又は液体炭化水素供給原料については570℃~650℃の範囲である、請求項18に記載のプロセス。
【請求項20】
前記エチレンプラントの冷凍回路の熱が、希釈蒸気の生成、原料の予熱、及び液体原料の蒸発から選択される少なくとも1つの目的のために、好ましくは希釈蒸気の生成、液体原料の予熱、及び液体原料の蒸発のために使用される、請求項14~19のいずれか一項に記載のプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動熱分解反応器を備えるエチレンプラントに関する。本発明は更に、本発明によるエチレンプラントを用いて炭化水素供給物からエチレンを製造するためのプロセスに関する。
【背景技術】
【0002】
燃焼分解炉を備える従来のエチレンプラントでは、十分な高圧(high pressure、HP)蒸気が生成されて機械を駆動する動力を生成し、更に希釈蒸気を生成して炭化水素分圧を抑制し、生成物選択性を改善し、分解反応器内のベイでのコークス形成を維持する。
【0003】
プラントの高温セクションにおいて、希釈蒸気は、従来、1つ以上の蒸気タービンを介して発電した後にHP蒸気から生成される中圧(medium pressure、MP)蒸気から生成される。更に、液体供給原料を分解するために知られている一次分留器が利用可能である場合、当該一次分留器のポンプアラウンド回路である一次分留器の急冷油回路における炉流出物(分解生成物)の熱回収は、希釈蒸気の生成を助け、より多くのMP蒸気が最大電力生産のためにより低い圧力レベルに下げられることを可能にする。同時に、流出物からの過剰な熱は、急冷水塔において回収され、ポンプアラウンドループを介して低温ユーザに伝達され得る。この低レベルの熱は、例えば、炉供給原料を予熱するために使用される。更なる供給原料の蒸発は、通常、当該従来の分解炉の対流セクションにおける煙道ガスによって行われる。
【0004】
図1は、気体炭化水素供給原料のための従来の燃焼エチレンプラント(の高温部分)のためのスキームの一例を示す。エタン、プロパン又はそれらの混合物などの新鮮な気体供給原料1は、まず、予熱器30において、分解炉1000の外部の急冷水などの低温熱源で予熱されて、周囲条件から分解炉1000に入るのに適した約50℃の温度まで加熱される。供給原料の更なる予熱は、炭化水素供給原料予熱器31によって、炉の対流セクション内の煙道ガスによって達成される。熱分解反応器内の炭化水素分圧を抑制するために、これは生成物収率及びコークス形成の抑制に有益であり、穏やかに過熱された希釈蒸気24が添加される。供給原料及び希釈蒸気は、混合されると、およそ120~130℃である水露点を超える程度に予熱される。蒸気希釈された炭化水素供給原料3の更なる過熱は、煙道ガスを使用して、炉33の対流セクションにおける供給原料過熱器において達成される。一旦適切に過熱されると、蒸気希釈された供給原料は、約650℃~730℃で熱分解反応器34に入る。この反応器は伝統的に、火室内で燃料ガスを燃焼させることによって加熱される。反応器は、オレフィン収率にとって有利であるので、比較的低い圧力及び高い温度で動作する。反応器出口における典型的な操作条件は、800℃~870℃及び1.6~2.2baraの圧力であり、エチレン、プロピレン、ブタジエン、ベンゼン、トルエン及びキシレンのような生成物が得られる。典型的な副生成物は、水素、メタン、ガソリン及び燃料油である。エタン及びプロパンなどの生成物の一部は。反応器にリサイクルされる。反応器流出物4は、これら全ての生成物及び副生成物を含有する。この反応器流出物4は、分解炉セクション1000内で約160℃~220℃に冷却される。350℃を超える流出物からの熱は、従来、約100~125バールの飽和高圧蒸気を生成させることによって、第1の移送ライン交換器35を使用して回収される。より低いレベルの熱は、第2の移送ライン交換器36において回収されて、ボイラ給水を予熱するか又は蒸気希釈供給原料を過熱することができる。
【0005】
炉セクションから、流出物4は、主に水急冷塔60、サワー水ストリッパ70及び希釈蒸気ドラム80からなるプラントの高温分離セクションに送られる。水急冷塔60において、流出物4は、ほぼ周囲条件に更に冷却される。冷却は、ポンプアラウンド回路を使用して行われ、ポンプアラウンド回路は、蓄積された水底部生成物、いわゆる急冷水14を収集し、急冷塔60内の様々なレベルでそれを注入する。急冷水回路は通常2つの段階を有し、急冷水底部冷却回路64は急冷水塔底部セクション61に役立ち、急冷水頂部冷却回路66は急冷水塔頂部セクション62に役立つ。分解ガス9と呼ばれる反応器流出物の冷却された気相である頂部生成物は、下流の分解ガス圧縮セクションに送られ、低温分離ユニットにおいて更に分離される。急冷水底部回路冷却器65は、典型的には、可能な限り多くの急冷水負荷を回収するためのプロセスユーザである。このようなユーザは、例えば供給原料予熱器30である。過剰な熱は、空気冷却又は冷却水冷却によって除去されなければならない。急冷水頂部回路冷却器67は、典型的には、冷却水を使用して過剰な熱を除去する。ポンプアラウンド回路からの冷却された注入水は、急冷水塔内で使用されて、適切な塔内部での直接熱交換によって分解ガスから熱を除去する。この塔の主な役割は、分解ガスの冷却とは別に、希釈蒸気の凝縮及び回収である。凝縮された希釈蒸気は、重質熱分解ガソリン生成物8の少量の流れに加えて、塔の底部からの正味の生成物である。これらは通常、ガソリン/水分離器63を使用して互いに分離される。時には、この分離器は、急冷水回路のために急冷水14も収集する。サワー水20と呼ばれるこの凝縮された希釈蒸気は、サワーガスを含み、サワーガスは、サワー水ストリッパ70においてストリップ蒸気21によってストリッピングされる。これらのサワーガス22は、急冷水塔60に戻される。プロセス水23と呼ばれるストリッピングされた水は、希釈蒸気生成に適している。これは、それを分解炉に送り返すことができるように、約6~7バールのより高い圧力で起こる。希釈蒸気生成は、熱源として中圧蒸気を使用して達成される。プロセス水は、希釈蒸気ドラム80内に収集され、熱サイフォン回路を介して、希釈蒸気24が、希釈蒸気生成器81内の凝縮中圧蒸気から生成される。中圧蒸気中の過熱は、炭化水素供給原料1を希釈するために分解炉1000に戻す前に、希釈蒸気過熱器83中の希釈蒸気を180℃~210℃の温度に穏やかに過熱するために使用される。希釈蒸気ドラム80からのブローダウン26及び当該ドラムへの希釈蒸気システム構成25は、希釈蒸気生成回路におけるファウリング汚染物質の蓄積を防止する。
【0006】
従来のエチレンプラントの統合発電スキームを図2に示す。希釈蒸気生成に必要なMP蒸気は、高圧蒸気システムにおいてボイラ給水から生成される。ボイラ給水は、脱気器120内で脱塩水101から作られ、脱気器ベント103を介してCO及び酸素を除去するためにストリッピング蒸気102によって蒸気ストリッピングされる。生成されたボイラ給水104は、分解炉1000において、ボイラ給水予熱器121によって、分解ガス若しくは煙道ガスのいずれか又は両方によって予熱され、高圧蒸気ドラム122に収集される。移送ライン交換器35と呼ばれる熱サイフォンタイプの熱交換器と自然循環によって接続されている蒸気ドラムは、反応器流出物4から熱を回収し、飽和高圧蒸気105を生成させ、この高圧蒸気は、高圧蒸気過熱器123を使用して炉1000の対流セクション内の煙道ガスによって過熱される。過熱高圧蒸気は、プラントの分解ガス圧縮器領域及び低温分離セクション(明確にするために図示せず)にそれぞれ存在する分解ガス圧縮器及び冷凍圧縮器などのエチレンプラントの分離セクションにおける主機械を駆動するための動力を生成させるために使用される。この目的のために、過熱高圧蒸気107は、背圧蒸気タービンを使用して高圧から中圧に減圧されて電力124を生成し、凝縮タービンを使用して中圧から真空に減圧されて電力125を生成する。蒸気110の大部分は、出力を最大化するために凝縮タービン125の表面凝縮器126内で凝縮されるが、一部の蒸気108は中圧レベルまでしか低減されない。この中圧蒸気108は、希釈蒸気生成のために使用され、利用可能にされる全高圧蒸気流107のかなりの割合を占める。中圧蒸気108は、希釈蒸気過熱器83で過熱低減されて希釈蒸気を過熱し、希釈蒸気生成器81で凝縮されて希釈蒸気24を生成する。生成された中圧凝縮液109並びに真空凝縮液111は組み合わされ、組み合わされた凝縮液112は、ボイラ給水としてリサイクルされるために脱気器に戻される。高圧蒸気ドラムからの小さなブローダウン106は、高圧蒸気回路におけるファウリング汚染物質の蓄積を防止する。
【0007】
液体炭化水素供給原料を利用するプロセスのためのプラントフロースキームの高温セクションを図3に示す。典型的な液体供給原料炉内では、最初に、エチレンプラント1000の外部の急冷水などの低温熱源を用いて予熱器30内で新鮮な液体供給原料2を予熱して、周囲条件から分解炉1000に入るのに適した約50℃の温度まで加熱する。供給原料の更なる予熱及び部分蒸発は、炉の対流セクション内の煙道ガスによって、炭化水素供給原料予熱器31によって、及び炭化水素供給原料蒸発器32によってそれぞれ達成される。熱分解反応器内の炭化水素分圧を抑制するために(これは生成物収率及びコークス形成の抑制に有益である)、高温分離セクションから来る希釈蒸気24は、対流セクション内で煙道ガスを使用して更に過熱される。これは、一度混合された部分的に蒸発した供給原料の完全な蒸発を確実にするために、希釈蒸気過熱器84において行われる。供給原料を蒸発させ、混合物は、およそ130~140℃である水露点よりも十分に高い温度になるまで希釈蒸気を加熱する。蒸気希釈された炭化水素供給原料3の更なる過熱は、煙道ガスを使用して炉の対流セクション33内の供給原料過熱器内で達成される。適切に過熱されると、蒸気希釈された供給原料は、約600℃~640℃で熱分解反応器に入る。この反応器は伝統的に、火室内で燃料ガスを燃焼させることによって加熱される。反応器は、オレフィン収率にとって有利であるので、比較的低い圧力及び高い温度で操作する。反応器出口における典型的な操作条件は、800℃~870℃及び1.6~2.2baraの圧力であり、エチレン、プロピレン、ブタジエン、ベンゼン、トルエン及びキシレンのような生成物が得られる。典型的な副生成物は、水素、メタン、ガソリン及び燃料油である。エタン及びプロパンなどの生成物の一部は。反応器にリサイクルされる。反応器流出物は、全てのこれらの生成物及び副生成物を含有する。
【0008】
この反応器流出物4は、分解炉セクション1000内で約350℃に冷却される。350℃を超える流出物からの熱は、従来、約100~125バールの飽和高圧蒸気を生成させることによって、第1の移送ライン交換器35を使用して回収される。350℃~160℃のより低いレベルの熱は、流出物のファウリング性のために間接熱交換を使用して回収することができないが、中間油ループが利用可能である場合、急冷油注入27及び中間油注入28を使用して、いわゆる急冷油フィッティング37において回収される。炉セクションから、流出物4は、主に一次分留器50、水急冷塔60、サワー水ストリッパ70及び希釈蒸気ドラム80からなるプラントの高温分離セクションに送られる。
【0009】
一次分留器50において、流出物は更に約100℃に冷却され、この塔において水が凝縮しないことを確実にするために、水の露点より高い温度を維持する。流出物は、その後、急冷油及び中間油ポンプアラウンド及びガソリン還流をそれぞれ使用して冷却される。急冷油冷却回路54は、塔の底部に収集された重質燃料油生成物6に由来する。この急冷油10は、急冷油回路冷却器55によって冷却される。その一部は、急冷油フィッティング27に送られ、残りは、中間油全ドローオフトレイの下の塔に再注入される。急冷油回路冷却器55は、通常、希釈蒸気生成器82において希釈蒸気を生成させるために使用される。一次分留器の底部温度が希釈蒸気を生成するのに十分でない場合、代わりに低圧蒸気を生成することができる。急冷油冷却回路54は、中間油冷却回路56が存在する場合には、典型的には170℃~-180℃を超える流出物から全ての熱を回収し、そうでない場合には、流出物から125℃~130℃までの熱を回収する。急冷油冷却回路は、カラムの底部セクションである一次分留器洗浄セクション51に役立つ。
【0010】
中間油冷却回路56は任意選択であり、急冷油回路54よりも低いレベルの熱、典型的には125℃~130℃までの熱を流出物から回収している比較的清浄な/非ファウリング性の中間冷却回路を提供するように意図されている。中間油11は、塔内の洗浄セクション51の上方に位置する一次分留器中間油セクション52の底部のドローオフトレイ上に収集される。中間油還流12は、急冷油負荷を中間油ループにシフトすることができるように、塔の底部の急冷油洗浄セクション51に送られる。更に、中間油流28は、急冷油フィッティング37に送られる。残りは、中間油回路冷却器57によって冷却され、軽質燃料油ドローポイントより下の塔に戻される。中間油冷却回路56は、一次分留器中間油セクション52に役立つ。
【0011】
ガソリン/水分離器63から来るガソリン還流13は、塔の頂部、一次分留器ガソリン還流セクション53における熱の回収を処理しており、回収された負荷を急冷水回路にシフトする。
【0012】
流出物から注入された急冷油、中間油及びガソリン還流に熱を効率的に伝達するために、適切な内部が塔内に設置される。流出物を冷却することに加えて、軽質油及び重質油留分は、一次分留器において凝縮される。重質燃料油6は底部51に集められ、軽質燃料油7は還流セクション53の底部で軽質油ドローオフトレイ上に集められる。これらは、全燃料油生成物5の引火点を制御するために、及び/又は急冷油回路の粘度制御のために、より軽質の急冷油留分を回収するためにストリッピングすることができる。
【0013】
水急冷塔60において、流出物4は、ほぼ周囲条件に更に冷却される。分解ガス9と呼ばれる反応器流出物の冷却された気相である塔頂部生成物は、更なる分離のために下流ユニットに送られる。冷却は、ポンプアラウンド回路を使用して行われ、ポンプアラウンド回路は、蓄積された水底部生成物、いわゆる急冷水14を収集し、急冷塔60内の様々なレベルでそれを注入する。急冷水回路は通常2つの段階を有し、急冷水底部冷却回路64は急冷水塔底部セクション61に役立ち、急冷水頂部冷却回路66は急冷水塔頂部セクション62に役立つ。急冷水底部回路冷却器65は、典型的には、可能な限り多くの急冷水負荷を回収するためのプロセスユーザである。そのようなユーザは、例えば供給原料予熱器30及び/又はプロピレンスプリッタリボイラ(図示せず)である。過剰な熱は、空気冷却又は冷却水冷却によって除去されなければならない。急冷水頂部回路冷却器67は、典型的には、冷却水を使用して過剰な熱を除去する。ポンプアラウンド回路からの冷却された注入水は、急冷水塔内で使用されて、適切な塔内部での直接熱交換によって分解ガスから熱を除去する。この塔の主な役割は、分解ガスの冷却とは別に、希釈蒸気の凝縮及び回収である。凝縮された希釈蒸気は、重質熱分解ガソリン生成物8の少ない蒸気に加えて、塔の底部からの正味の生成物である。これらは通常、ガソリン/水分離器63を使用して互いに分離される。時には、この分離器はまた、急冷水回路のための急冷水を収集する。サワー水20と呼ばれるこの凝縮された希釈蒸気は、サワーガスを含み、サワーガスは、サワー水ストリッパ70においてストリップ蒸気21によってストリッピングされる。これらのサワーガス22は、急冷水塔60に戻される。プロセス水23と呼ばれるストリッピングされた水は、希釈蒸気生成に適している。これは、それを分解炉に戻すことができるように、約6~7バールのより高い圧力で起こる。希釈蒸気の生成は、中圧蒸気を使用して達成される。プロセス水は、希釈蒸気ドラム80内に収集され、熱サイフォン回路を介して、希釈蒸気24が、希釈蒸気生成器81内の凝縮中圧蒸気から、更に希釈蒸気生成器82を使用して急冷油冷却回路から生成される。中圧蒸気中の過熱は、炭化水素供給原料2を希釈するために分解炉1000に戻す前に、希釈蒸気過熱器83中の希釈蒸気を180℃~210℃の温度に穏やかに過熱するために使用される。希釈蒸気ドラム80からのブローダウン26及び当該ドラムへの構成25は、希釈蒸気生成回路におけるファウリング汚染物質の蓄積を防止する。希釈蒸気生成に必要なMP蒸気は、図2に示され、上述された従来の気体エチレンプラントフロースキームと同じ方法で、ボイラ給水から高圧蒸気システムにおいて生成される。
【0014】
二酸化炭素及びメタンの排出などの温室効果ガス排出を削減する必要性を考慮すると、エネルギー要件の削減又は少なくともプラントを運転するために必要な熱を生成させるための化石燃料要件の削減を可能にする、エチレンプラント及びエチレンプラントを運転するためのプロセスを改善することにかなりの関心がある。
【0015】
可能なアプローチは、電気分解によって生成され得る水素によって化石燃料を置換することであり得る。必要とされる電気は、再生可能なエネルギー資源を利用して、又は空気中への放出を防止するために二酸化炭素が効果的に捕捉される発電所において生成され得る。
【0016】
本発明者らは、顕熱(炭化水素-蒸気混合物の温度を上昇させるための熱)の一部及び分解反応のための反応熱を提供するために電気を直接使用することも興味深いことに気付いた。しかしながら、通電熱分解反応器を適用する場合、高温ユーティリティとしての煙道ガスが存在しないので、従来の方法では液体供給原料の予熱及び蒸発を行うことができない。MP蒸気が存在しない場合には、従来の方法で希釈蒸気を生成することもできない。
【0017】
炭化水素からオレフィンを製造するために電気的に加熱された熱分解反応器を使用するという考えは、当該技術分野において知られている。欧州特許第3249028(A1)号は、複数の分解管が使用される、蒸気分解によるオレフィンの製造方法に関する。分解管の少なくとも1つは、燃料の燃焼によって加熱され(すなわち、燃焼分解管)、少なくとも1つの他の分解管は電気的に加熱される。反応器流出物(分解生成物)は、望ましくない副反応を回避するために急速に冷却(急冷)される。分解生成物の分留などの更なる下流処理が記載されている。供給原料の予熱及び希釈蒸気の生成については、ほとんど情報が開示されていない。このプロセスは、燃料燃焼を必要とするので、高温煙道ガスが加熱に利用可能である。分解管に蒸気を直接供給することが述べられており、分解管の内部で蒸気を生成させることが述べられている。
【0018】
欧州特許第3730592(A1)号は、熱分解セクションを備えるオレフィン合成プラントに関し、熱分解セクションは、以下:供給物前処理セクション、希釈物の存在下で炭化水素を分解するための1つ以上の熱分解反応器、一次分留及び圧縮セクション、並びに/又は生成物分離セクションのうちの1つ以上を備え、従来のプラントと比較して、そのセクションのプラントによって必要とされるエネルギー及び/又は正味エネルギーのより多くが、非カーボン系エネルギー源によって提供される。欧州特許第3730592(A1)号は、一般に、電気を使用し、供給物を加熱し、使用時に希釈蒸気を生成させるための様々な選択肢を提案している。例えば、プラントは、蒸気分解プロセスのために構成されたプラントであってもよく、例えば、分解反応器の一部又は全部が電気的に加熱され、希釈剤蒸気を作るためのリサイクル水の蒸発のために熱が電気によって生成される。更に、分解反応器への供給物を電気的に予熱することができる。高温生成ガスの冷却から回収された熱の多くを使用して加熱することができるか、又は熱伝達剤(例えば、Dowtherm又は蒸気)を使用して間接的に加熱することができる。いくつかの記載された例が特定の実施形態について提供されているが、例えばプロセス流の熱回収がどのように行われるかを明確にするために、ユニット及びユニット間の蒸気の相対位置を示す図が欠けている。実施例は、流出物から直接希釈蒸気を生成することに依存している。この設計は、より重い供給原料で実行されるプロセスと比較して、流出物のファウリング特性が低いために、エタン供給原料の処理に限定されるようである。
【0019】
本発明の目的は、電動熱分解反応器、それぞれ蒸気分解によってエチレンを生成するための新しいプロセスを含む、新しいエチレンプラントを提供することであり、炭化水素供給物の加熱の一部を電動熱分解反応器に提供するために燃料(メタン又は水素など)の燃焼を使用する必要なく、二酸化炭素排出を低減するのに有効でありながら、供給原料の許容範囲においてロバストである。特に、本発明の目的は、高圧蒸気を希釈蒸気のための源として利用することなく、かつ高圧蒸気を炭化水素供給物の加熱媒体として利用することなく達成されるように、電動熱分解反応器をエチレンプラントに統合することである。
【0020】
当該熱分解反応器の流出物(分解生成物)から十分な熱を回収するために、電気熱分解装置と供給物-流出物熱交換器とを効率的に一体化することが可能であることが見出された。特に、これは、過剰な電力が最小になるように、プラントの下流の高温分離セクションを用いて、熱分解反応器のための供給物(炭化水素供給原料希釈蒸気混合物)を過熱することによって達成される。余剰な電力は、電動熱分解反応器のための所要電力に加えた電力として理解され、供給原料を予熱し、蒸発させ、任意選択で過熱するのに必要な電力、及び希釈蒸気の生成又は供給原料の加湿に必要な電力である。分解ガス圧縮器及び冷却圧縮器などプラントのバックエンドにおける機械を駆動するために必要とされる追加の動力は、欧州特許第3748138(A1)号に教示されているように取り扱うことができる。
【発明の概要】
【0021】
したがって、本発明は、電動熱分解反応器を備えるエチレンプラントに関し、電動熱分解反応器は、炭化水素供給原料-希釈剤混合物のための供給入口と、エチレンを含む熱分解反応器流出物のための出口と、を備え、エチレンプラントは、熱分解反応器流出物から熱分解反応器のための供給物に熱を伝達するように構成された熱交換器を更に備え、熱交換器は、熱分解反応器の上流の供給入口及び供給出口と、更に熱分解反応器流出物入口及び熱分解反応器流出物出口と、を備える。好ましい実施形態において、供給通路は、熱交換器の供給出口と熱分解反応器の供給入口との間に存在し、更に供給通路は、熱分解反応器の反応器流出物出口と熱交換器の分解ガス入口との間に存在する。このようにして、反応器流出物からの熱伝達による高圧蒸気の生成を最小限に抑えることができ、更にはなくすことができ、反応器流出物から伝達された熱から高圧蒸気を生成させることなくプラントを運転することができる。
【0022】
有利には、熱交換器から出てくる熱分解反応器流出物の温度は、超高圧蒸気生成のための範囲をはるかに下回る温度、典型的には500℃をはるかに下回る温度、好ましくは450℃を下回る温度であり得る。
【0023】
別の又は更なる好ましい実施形態において、以下でより詳細に説明されるように、熱は、反応器流出物が更に冷却される下流処理ユニットからの熱を使用して、熱交換器の前に供給物を予熱するために使用され得る。
【0024】
更に、本発明は、本発明によるエチレンプラントを使用して炭化水素供給物からエチレンを含む熱分解反応器流出物を製造するプロセスに関する。本プロセスは、炭化水素供給原料-蒸気混合物を電動熱分解反応器に供給することと、当該エチレンプラントの電動熱分解反応器において、蒸気の存在下で炭化水素供給原料を分解してエチレンを含む熱分解反応器流出物を生成することと、炭化水素供給原料の分解の前に、熱分解反応器流出物から炭化水素供給原料-蒸気混合物に熱を伝達するように構成された熱交換器に熱分解反応器流出物を供給することと、当該熱交換器において、熱分解反応器流出物から炭化水素供給原料-蒸気混合物に熱を伝達することと、それによって熱分解反応器流出物を熱交換器熱分解反応器流出物出口における温度、好ましくは500℃未満、より好ましくは450℃未満の温度、例えば300℃~450℃の範囲、更により好ましくは325℃~425℃の範囲の温度に冷却することと、を含む。
【図面の簡単な説明】
【0025】
本開示の装置、システム、及び方法のこれら及び他の特徴、態様、及び利点は、以下の説明、添付の特許請求の範囲、及び添付の図面からよりよく理解されるであろう。
図1】気体炭化水素供給原料のための従来の燃焼エチレンプラント(の高温部分)のスキームの一例を示す。
図2】従来のエチレンプラントの統合発電スキームを示す。
図3】本発明によるエチレンプラントの高温セクションを概略的に示す。
図4】供給物-流出物熱交換器と組み合わせた電動熱分解反応器の態様を概略的に示す。
図5】本発明によるエチレンプラント/プロセスを概略的に示す。
図6】本発明によるエチレンプラント/プロセスを概略的に示す。
図7】本発明によるエチレンプラント/プロセスを概略的に示す。
図8】本発明によるエチレンプラント/プロセスを概略的に示す。
図9】本発明によるエチレンプラント/プロセスのヒートバンプに関する態様を概略的に示す。
図10】本発明によるエチレンプラント/プロセスを概略的に示す。
図11】本発明によるエチレンプラント/プロセスを概略的に示す。
図12】本発明によるエチレンプラント/プロセスのための冷却に関する態様を概略的に示す。
図13】本発明によるエチレンプラント/プロセスのための冷却に関する態様を概略的に示す。
図14】本発明によるエチレンプラント/プロセスの例示的な飽和器における絶対動作圧の関数としての露点を示す。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明は、特に、高圧蒸気生成システムがなく、煙道ガスが形成される加熱炉がないエチレンプラントを動作させるためのいくつかの代替解決策を提供する。したがって、本発明によるプラント又はプロセスは、煙道ガスを用いた加熱による供給原料の予熱及び蒸発も、希釈蒸気の過熱も利用可能ではない間に運転するのに特に適している。これは、特に、エチレンプラント内の他の熱統合手段を利用することによって達成される。これにより、熱分解反応に使用する電力に加えて余分な電力の必要性を制限することができる。例えば、少なくともいくつかの実施形態において、プラントは、希釈蒸気を生成するために電力を使用することなく、供給原料の電気予熱などを行うことなく、通常運転(定常状態)中に運転することができる。それによって、電力の使用は、温室効果ガス排出を損なうことなく、比較的制限されたままであることができる。これは、特に、例えば気象条件に応じて供給が非常に変動し得る再生可能な電力資源に依存することを望む場合に有利である。
【0027】
当業者は、共通の一般知識及び任意選択的に本明細書に引用される参照文献のうちの1つ以上と組み合わせて本開示を使用して、エチレンプラントの適切な運転ユニットを設計及び運転することができる。本明細書に記載される操作ユニット、通路などに加えて、本発明によるプラントは、1つ以上の更なるユニットを含んでもよい。そのような単位は、当技術分野で一般に知られているか、又は本明細書に引用されている参考文献に記載されている、そのような目的のための単位に基づくことができる。簡潔さを考慮して、従来のものであり得るそのようなユニットについては、詳細に考察しない。特に、供給原料供給物1,2の上流に、供給原料を前処理するように、例えば不純物を除去するように構成された1つ以上のユニットなどの1つ以上のユニットが存在してもよい。特に、高温セクションの下流(図中のライン9の下流)には、分解生成物ガスを精製するため、又はそれから有用な生成物を回収するため、例えば、それから水素又はメタンを回収するために、1つ以上のユニットが存在してもよい。
【0028】
本発明によれば、電動熱分解反応器91は、熱分解反応器流出物4から熱分解反応器供給物3、すなわち炭化水素供給原料と希釈剤(典型的には希釈蒸気)との混合物に、供給物が熱分解反応器に入る前に、熱を伝達するように構成された供給物-流出物熱交換器90と組み合わされる。これは図4に概略的に示される。
【0029】
このような熱交換器は、当技術分野で一般に知られている。それらは、例えば、シェルアンドチューブ設計を有することができる。通常、供給物-流出物熱交換器は向流構成で動作される。したがって、通常、温度交差が存在する、すなわち、低温側の出口温度が高温側の出口温度を超える。原則として、十字流も可能である。供給物-流出物交換器は、典型的には、反応器流出物(分解生成物)のための通路と、供給物(炭化水素-蒸気混合物)のための別個の通路と、を有する。両方の通路は、一方の通路から他方の通路に熱を伝達するように配置された熱伝導隔壁によって分離されている。したがって、反応器流出物からの廃熱は、供給物を加熱するために直接使用され、それによって、反応器流出物負荷のいずれも高圧蒸気生成のために使用されない。したがって、本発明のエチレンプラントは、典型的には、高圧蒸気生成器がなくても作動できるように構成される。供給物-流出物熱交換器90はまた、急冷装置、例えば急冷水塔とは区別され、反応器-流出物は、典型的には、急冷媒体、例えば、急冷水と直接接触させられる。反応器流出物(分解生成物)を更に冷却するように構成された急冷装置が、供給物-流出物交換器90の下流に有利に設けられ、これについては以下でより詳細に考察する。
【0030】
本発明は、熱分解反応のための顕熱又は反応熱を生成させるために炭化水素燃料の燃焼を必要とせずに、気体供給原料、液体供給原料及びそれらの混合物の分解を可能にし、直接CO放出の本質的に完全な回避を可能にし(本質的にプラントにおいてCOが生成されない)、再生可能な電源の導入の準備ができている。希釈蒸気の生成及び気体供給原料の過熱及び/又は液体供給原料の予熱、蒸発が、所要電力の最小限の追加で行われるならば、CO排出を最小限に保つことができる。これは、可能な限り効率的な方法でエチレン産業の正味ゼロの排出目標を容易にするためである。
【0031】
エチレンプラントにおいてオレフィンを製造するための通電熱分解装置は、既知の電気的に加熱された熱分解反応器に基づくことができる。例えば、熱分解反応器は、直接加熱反応器であってもよく、反応器壁(分解コイルの壁など)は、導電体の壁を使用する抵抗加熱によって加熱される。例えば、国際公開第2015/197181(A1)号は、蒸気改質の文脈において、パイプライン(分解反応器管を参照)内の流体を加熱するための装置及び方法を記載している。この原理は、本発明による熱分解反応器に使用することができる。本発明による分解では、熱分解が行われる空間は一般に触媒材料を含まないことに留意すべきである。更に、熱分解が行われる運転圧力は、改質管に存在する10バール~50バールよりもかなり低い。分解コイル(典型的には複数の分解コイル)が存在するハウジングを電気加熱することによる分解コイルの間接抵抗加熱。更に、ロトダイナミック装置(rotodynamic device、RDR)は、特に、静的ロータ及び動的ロータを介して運動エネルギーを上昇させることによって熱分解反応のための感知可能な負荷及び反応負荷を供給するのに非常に適しており、したがって、負荷を反応性混合物に伝達するために機械ドライバの電力を伝達する(例えば、米国特許出願公開第2021/0171836(A1)号を参照)。RDRの既知の供給者は、Coolbrook(Helsinki,Finland)Geleen,the Netherlands)である。
【0032】
適切な熱分解反応器の更に別の例は、米国特許第7,288,690(B2)号(特に請求項8~13を参照)に基づく。供給物-流出物交換器の代わりに、コジェネレータの廃熱ボイラが、希釈された供給原料を予熱するために使用され、交流発電機において生成された電力が、熱分解反応器に電力を供給するために使用される。適切な加熱方法には、ジュール加熱とも呼ばれる直接抵抗加熱、誘導加熱、及び超音波が含まれる。
【0033】
本発明によるエチレンプラントに必要な電気は、プラントの一部である電力システムから取り出すことができるか、又はエチレンプラントは、プラントの外部の電力システムへの電力接続を有することができる。電力の少なくとも実質的な部分、好ましくは本質的に全ての電力は、再生可能資源から受け取られる。これは、CO排出を最小限に抑えるためである。したがって、エチレン部分のエネルギー消費部分、特に熱分解反応器(91)と電力システムとの間の電力接続は、必要な電力の少なくとも一部を供給するためのエチレンプラントの内部電力網への接続であってもよく、又は本発明によるエチレンプラントと同じ電力網に接続された外部(遠隔)発電所への接続であってもよい。
【0034】
再生可能資源から電気を供給する電力システムは、通常、風力システム、太陽エネルギーシステム、水力発電システム、地熱エネルギーシステム及び浸透圧発電システム(青色エネルギーとしても知られる)からなる群から選択される1つ以上の電力システムを含む。あるいは、又は更に、バイオマスから電気を生成するように構成された1つ以上のシステム、及び/又はバイオ再生可能燃料、例えばバイオエタノール又はバイオディーゼルから電気を生成するように構成された1つ以上のシステムを使用することができる。
【0035】
再生可能エネルギーの使用が好ましいが、原理的には、電力又はその一部を異なる供給源から回収することができる。そのようなプラントは、改善された熱統合から依然として利益を得る。例えば、蒸気分解炉の反応器流出物は、通常、いくらかのメタン及びいくらかの水素を含有する。これらは、メタンリッチ流及び水素リッチ流として反応器流出物から回収することができる。これらのいずれか又は両方を使用して、それ自体公知の方法で発電することができる。水素については、これはCO排出の増加をもたらさない。メタンがCOの形成下で燃焼される場合、これは、環境への放出を防止するために捕捉され得る。しかしながら、有利な実施形態において、メタン、水素又は両方は、より高い価値の目的のために、例えば、別の化学プロセスのための原料として使用することができる。
【0036】
本発明によるプロセスにおいて、炭化水素供給原料に対する希釈剤ガス(蒸気)の重量対重量比(希釈蒸気(重量)比とも呼ばれる)は、広い範囲内で選択することができる。通常、当該比は、供給原料に応じて、約0.25~約1.0の範囲内、好ましくは約0.35~0.9の範囲内、より好ましくは0.4~0.8の範囲内で選択される。
【0037】
例えば、気体供給原料の場合、希釈蒸気比は一般に比較的低く、典型的には0.3~0.4である。ナフサなどの軽質液体供給原料については、より高い比率が好ましい場合があり、典型的には0.4~0.6の範囲である。より重い供給原料、例えばガス油は、典型的には、0.6~1.0のより高い希釈蒸気比の下で操作される。一般に、より高い希釈蒸気比が可能であるが、経済的に魅力がない。より低い値は、収率の低下及びファウリングを引き起こし得るので、あまり好ましくない。炭化水素供給原料と希釈蒸気3との混合物は、一般に、水露点より高い温度で供給物-流出物熱交換器90に供給される。定量的には、供給物-流出物熱交換器90の入口における炭化水素供給原料と希釈剤との混合物の温度は、一般に、原料に応じて、80℃~230℃の範囲内、好ましくは120℃~180℃の範囲内である。例えば、混合物が加湿器から来る蒸気希釈された気体供給原料である場合、温度は、好ましくは80℃~150℃、より好ましくは90℃~130℃の範囲である。蒸気希釈された気体供給原料を炉入口圧力まで圧縮するために、加湿器に加えて圧縮器が適用される場合、動作温度は、圧縮器のポリトロープ効率及び排出圧力に応じて、一般に60~120℃程度上昇させることができる。蒸気希釈された液体供給原料については、温度は、好ましくは120℃~200℃、より好ましくは130℃~180℃の範囲である。供給物-流出物交換器に入る前に供給物をより高い温度に過熱することとは対照的に、特定の範囲内の温度で希釈された供給入口を提供することは、所要電力を有利に低減する。
【0038】
当該熱交換器において、炭化水素供給原料と希釈剤との混合物は、供給原料に応じて、熱分解反応器流出物からの熱によって、一般に550℃~750℃の範囲、好ましくは570℃~730℃の範囲の熱分解反応器(91)の入口における温度まで加熱される。例えば、混合物がエタン又はプロパンなどの蒸気希釈された気体供給原料である場合、コイル入口温度は、好ましくは630℃~750℃、より好ましくは650℃~730℃の範囲である。液体供給原料は、好ましくは550℃~670℃、より好ましくは570℃~650℃の範囲のコイル入口温度を有する。エタンについては、730℃への予熱が、上流対流セクションのファウリングなしに可能であることが見出された。
【0039】
炭化水素供給原料-蒸気混合物を熱分解が行われる温度まで加熱する必要はない。顕熱の一部は、通常、反応熱も提供する熱分解反応器内の電力を使用して混合物に供給される。供給物-流出物熱交換器90において、混合物は過熱される。熱交換器の入口で供給混合物の温度を比較的低くすることにより、反応器流出物の過剰な熱の大部分を回収することができ、それによって、熱分解反応器内部で供給物を更に加熱するために必要な電力が低減される。
【0040】
熱交換器90の分解生成物入口における反応器流出物(分解生成物)の温度は、反応器内部の滞留時間に依存する。RDRについては、これは比較的低く、従来の放射コイルと比較して比較的高いコイル出口温度をもたらす。また、供給原料も重要な役割を果たす。気体供給原料は、ナフサなどの液体供給原料よりも低い転化率を有し、比較的低いコイル出口温度で分解される。熱交換器90の入口での流出物の温度は、770℃~900℃の範囲であり得る。熱交換器90の分解生成物出口における反応器流出物(分解生成物)は、一般に、供給物-流出物交換器の供給側出口温度よりも少なくとも125℃、好ましくは150℃~250℃高い温度を有する。熱交換器90の分解生成物出口における反応器流出物(分解生成物)は、一般に、供給物-流出物交換器の供給入口における希釈された供給物の温度より少なくとも150℃、好ましくは175℃~275℃高い温度を有する。一般に、熱交換器90の分解生成物出口での反応器流出物の温度は、500℃以下、好ましくは300℃~450℃の範囲、より好ましくは325℃~425℃の範囲である。蒸気希釈された気体供給原料を炉入口圧力まで圧縮するために、加湿器に加えて圧縮器が適用される場合、この動作温度は、圧縮器のポリトロープ効率及び排出圧力に応じて、一般に40~100℃程度上昇させることができる。
【0041】
本発明によるエチレンプラントは、典型的には、分解産物が供給物-流出物熱交換器90を出た後に分解生成物を更に冷却するように構成された冷却セクションを更に備える。冷却セクションは、プラントの高温セクションと呼ぶこともできる。一般的に、本発明のエチレンプラントは、高圧蒸気生成器なしで有利に運転される。したがって、冷却セクションにおいて、熱分解反応器流出物は、実質的な高圧蒸気生成なしに、ほぼ周囲条件(屋外温度)に更に冷却される。熱分解反応器流出物を冷却するのに適した装置は、それ自体当技術分野で知られており、とりわけ、水急冷装置、油急冷装置及び空気冷却器から選択され得る。好ましくは、プラントは、水急冷装置及び油急冷装置からなる群から選択される少なくとも1つの装置を備える。以下で考察するように、このような装置は、冷却に効果的であるだけではない。これらはまた、生成物の精製又は分留において使用され得、これはまた、当該分野で公知の原理に基づき得る。更に、本発明者らは、水急冷、油急冷又はその両方において使用される流れが、高圧蒸気生成の欠如の問題に対処するために、特に希釈蒸気を提供するために使用され得ることを認識した。本発明によれば、炭化水素供給物と混合される(高温)流として希釈蒸気を利用する代わりに、加湿器(この用語は、本明細書では飽和器という用語と互換的に使用される)を利用して、通常運転中に供給原料を水(液体)で加湿すること、特に飽和させることが可能である。水急冷装置から生じる水は、供給原料の加湿のための水源として使用することができる。このような方法は、少なくとも実質的に気体の供給原料を加湿するのに特に有利である。加湿器を使用する場合、希釈蒸気は、通常の運転中には一般に必要とされないが、始動、脱炭素処理、ホットスタンバイ及びバックアップ運転に有用であり得る。したがって、供給原料を加湿するための加湿器を備える/その使用を含む、プラント/プロセスでは、通常、希釈蒸気生成器が設けられる。これは、通常運転中に希釈蒸気が使用されるプラントと比較して、比較的小さい容量を有することができる。特に、希釈蒸気24を供給するために、電気ボイラ85を有する希釈蒸気ドラム80を設けることができる(例えば、図6参照)。これについては、以下で更に考察する。
【0042】
図5は、本発明によるプラント/プロセスを概略的に示しており、分解生成物をほぼ周囲条件に冷却するために水急冷をどのように用いることができるかを示している。更に、それは、サワー水(酸性ガスを含有し、水急冷装置内で分解生成物を冷却及び洗浄する間に回収された凝縮希釈蒸気)が、どのように処理され、高圧蒸気を必要とすることなく、希釈剤を提供するために使用され得るかを示す。
【0043】
炉セクション1001から、供給物-流出物熱交換器90で冷却された熱分解反応器流出物(分解生成物)4は、水急冷塔60、サワー水ストリッパ70及び加湿器(飽和器)150を備えるプラントの高温分離セクションに送られる。
【0044】
水急冷塔60において、流出物4は、ほぼ周囲条件に更に冷却される。これは通常、ポンプアラウンド回路を使用して行われ、ポンプアラウンド回路は、蓄積された水底部生成物、いわゆる急冷水14を収集し、急冷塔60内の様々なレベルでそれを注入する。急冷水回路は通常2つの段階を有し、急冷水底部冷却回路64は急冷水塔底部セクション61に役立ち、急冷水頂部冷却回路66は急冷水塔頂部セクション62に役立つ。急冷水底部回路冷却器65は、典型的には、可能な限り多くの急冷水負荷を回収するためのプロセスユーザである。
【0045】
プラントは、炭化水素供給原料を希釈剤(水/蒸気)と組み合わせる前に、炭化水素供給原料を予熱するように構成された原料予熱器なしで運転することができる。急冷水負荷は、飽和器水回路151を加熱するために使用され、飽和器水回路は、供給原料を予熱し、水で飽和させる。急冷水回路内の過剰な熱は、典型的には空気冷却又は冷却水冷却によって除去される。急冷水頂部回路冷却器67は、典型的には、冷却水を使用して過剰な熱を除去する。ポンプアラウンド回路からの冷却された注入水は、典型的には急冷水塔内で使用されて、適切な塔内部での直接熱交換によって熱分解反応器流出物(分解生成物)から熱を除去する。この塔の主な役割は、分解生成物の冷却とは別に、希釈蒸気の凝縮及び回収である。凝縮された希釈蒸気は、ガソリン生成物の流れに加えて、塔の底部からの正味の生成物である(ガソリン生成物の流れは、気体供給原料については、凝縮された希釈蒸気の流れに比べて一般に小さい)。これらは通常、ガソリン/水分離器63を使用して互いに分離される。この分離器はまた、急冷水回路のための急冷水14を収集するために使用されてもよい。サワー水20と呼ばれるこの凝縮された希釈蒸気は、溶解したサワーガスを含み、これは通常、サワー水ストリッパ70においてストリップ蒸気21によってストリッピングされる。これらのサワーガス22は、急冷水塔60に戻される。プロセス水23と呼ばれるストリッピングされた水は、供給原料の加湿(飽和)に適している。これは、圧縮器を必要とすることなくそれを炉セクション1001に供給するために、水急冷塔及びサワー水ストリッパ中の圧力よりも高い圧力、通常約2~約8バール、特に約4~約6バールで起こる。供給原料の加湿(飽和)は、加熱媒体として急冷水を使用して飽和器水加熱回路151内で達成される。プロセス水は、飽和器150の底部に集められ、飽和器水加熱回路151を介して飽和器の頂部に戻される。水は、急冷水152上で飽和器水回路加熱器を使用して加熱される。新鮮な炭化水素供給原料1は、飽和器の底部に入り、適切な内部を使用して、典型的にはランダム充填物を使用して、塔を下降する高温飽和器水によって飽和される。飽和器の水入口温度を制御することによって、加湿のレベルは、熱分解反応器のための正しい蒸気希釈レベルに達するように制御され得る。蒸気希釈された炭化水素供給原料は、分解炉1001に戻され、直接、供給物-流出物交換器90に戻される。飽和器150からのブローダウン26及び当該飽和器への構成25は、飽和器水加熱回路におけるファウリング汚染物質の蓄積を防止する。急冷水温度レベルは約80℃までに制限されるので、高温飽和器水入口温度は制限される。加湿のレベルは、供給原料が塔内で生成することができる高温飽和器温度及び分圧に依存する。供給原料の沸点が低いほど、高加湿に到達することが容易である。したがって、図5に示す原理は、この実施形態のための少なくとも実質的に気体の供給原料、好ましくは少なくとも実質的にエタン、プロパン又はエタンとプロパンの混合物からなる供給原料に特に有用である。図14では、例示的な飽和器における絶対動作圧力(kg/cm、横軸)の関数としての露点(℃、縦軸)が、0.35の希釈蒸気(重量)比で示されている。長方形のボックス(灰色)は、システムの所望の動作ウィンドウを示す。したがって、80℃の冷却水温度は、0.35の希釈蒸気比に達するために周囲温度で供給原料と組み合わせて使用するには低すぎる。したがって、少なくとも更なる手段なしでは、図5のスキームは、適用可能な圧力及び希釈蒸気比(炭化水素供給原料に対する希釈蒸気の重量比)に関してその制限を有する。可能な手段としては、飽和器に入る前に、急冷水、供給原料又は両方を更に加熱すること、比較的低い希釈剤対供給原料比を使用すること、供給原料-希釈剤混合物を熱分解反応器に比較的低圧で供給すること、が挙げられる。
【0046】
本発明者らは、次に考察するように、図5に関する説明で考察したような制限に対処するのに特に適したいくつかの方法を見出した。
【0047】
好ましい実施形態において、本発明によるエチレンプラントは、熱分解反応器流出物(分解生成物)を更に冷却するように構成されており、供給物-流出物熱交換器90の下流に位置する急冷油冷却システム51を備える。存在する場合、それは通常、急冷水冷却システム60(又は代替的に空気冷却器)と組み合わせて使用され、急冷油冷却システムはその上流に配置される。急冷油冷却回路を備えた急冷油冷却システムを利用することによって、熱回収レベルを実質的により高いレベルに上昇させることができる。これは、全ての希釈蒸気が、炭化水素重量比に対する希釈蒸気として定義される比較的高い蒸気希釈比、例えば約0.35以上の蒸気希釈比でも、流出物からの廃熱を使用して飽和器内で生成されることを可能にする。これはまた、空気冷却、水冷却水、又はその両方の需要などの低温ユーティリティ要件を低減する。本発明によれば、急冷油冷却システムは、気体供給原料(特に、図5に示す上述の飽和器/加湿器と組み合わせて)、液体供給原料、及びそれらの組み合わせに有利である。急冷油冷却システム51は、一次分留器システムであってもよく、又はその一部であってもよく、このシステムは、特に液体供給原料を利用するプラントにおいて、当技術分野で公知である。
【0048】
図5に示されるスキームの欠点を克服する本発明の特定の適切なエチレンプラント及びプロセスが、図6に示される。このプラント/プロセスは、少なくとも実質的に気体の供給原料に特に好ましい。使用において、供給物-流出物交換器90及び熱分解反応器91は、上記のように使用することができる。
【0049】
炉セクション1001から、冷却された流出物4は、急冷油装置50(典型的には、一次分留器51及び急冷油冷却回路55を備える)と、水急冷冷却システム60(典型的には、水急冷塔)と、サワー水ストリッパ70及び加湿器(飽和器)150と、を備える、プラントの高温分離セクションに送られる。
【0050】
供給物-流出物熱交換器90を出た後、分解生成物4(熱分解反応器流出物)は、プラントの高温分離セクションに入る。一次分留器50に入る前に、急冷油は、通常、分解生成物と混合される。典型的には、急冷油は、一次分留器に入る前に、いわゆる急冷油フィッティングに注入される。炉の上流で急冷油を注入することは、一次分留器(塔)の底部温度を制御するために有利に使用することができる。一次分留器50において、熱分解反応器流出物は、例えば約110℃~125℃に更に冷却される。温度は、有利には、この装置において水が凝縮しないことを確実にするために、水の露点(典型的には約75℃~80℃である)よりも近い値まで、例えば露点よりも10~約50℃高い温度まで、好ましくは特に露点よりも20~約45℃高い温度内まで、より具体的には露点よりも30℃~約40℃高い温度まで下げられるが、一般的にはそれよりも高い値まで下げる。本質的に気体の供給原料から得られた分解生成物を分解するための一次分留器は、液体供給原料分解に使用される一次分留器と比較して比較的単純であり得る。一般に、急冷油洗浄セクション51(加えて急冷油冷却回路)は、本質的に気体の供給原料から得られる分解生成物を分解するのに十分である。既知のオレフィン製造プラントでは、一次分留器は、通常、少なくともガソリン還流セクション53及び任意選択的に中間油セクション52(図6には図示せず)を更に備える。これらは、本発明によれば、少なくとも本質的に気体の供給原料から得られる分解生成物の処理のために一次分留器を使用する場合には、必要とされない。本発明は(図5及び図6に示すように)、供給原料と組み合わされた別個の希釈蒸気流を生成することなく、(気体)供給原料の希釈を可能にする。その代わりに、水(すなわち液体形態)が供給原料と接触して供給原料を加湿する飽和器/加湿器を利用することによって、飽和器/加湿器の頂部入口における注入水の温度レベルは非常に低いので、一次分留器の底部における動作温度を希釈蒸気温度レベルの動作温度未満に下げることができる。一次分留器は、飽和器循環水を140℃まで加熱することができるように、150℃で運転することができる。これは、約165℃である希釈蒸気ドラムの動作温度よりもかなり低く、0.35を超える蒸気希釈比を可能にする。気体供給原料エチレンプラントのための一次分留器を有することは通常の特徴ではないことに留意されたい。特に、本発明者らの知る限りでは、供給されるエネルギーの必要性を低減するために純粋に必要とされる加湿器/飽和器と組み合わせた気体供給原料エチレンプラントのための一次分留器の使用は、当技術分野においてこれまで知られていない。
【0051】
熱分解反応器流出物(分解生成物)は、急冷油によって冷却される。有利には、急冷油負荷は、熱分解反応器流出物から回収することができる。急冷油冷却回路54は、一次分留器の底部において液体生成物として収集された重質燃料油生成物6に由来する。この急冷油10は、急冷油回路冷却器55によって冷却される。この液体生成物は、通常約80℃に冷却される。これはまた、急冷油回路冷却器55によって急冷油とともに冷却され、その後、利用可能な別の冷却媒体によって更に冷却され得る。引火点が貯蔵には高すぎる場合、蒸気ストリッパを軽質成分のフラッシュに添加することができる。詳細は図示されていない。使用時には、その一部は、通常、急冷油フィッティング27に送られ、残りは、通常、少量のガソリン還流13とともに塔の頂部に再注入される。従来の液体分解装置における還流と比較して、この流量は比較的小さい。この場合、冷却を行うのは主に急冷油であり、還流は行わない。少量の還流は、そこで燃料成分を送り返すことができる。公知のオレフィン製造プラントでは、急冷油回路冷却器55を使用して、希釈蒸気の少なくとも一部を生成することが一般的である。しかしながら、有利なことに、急冷油回路は、本発明によれば、代わりに、飽和器水回路151を存在する場合に加熱するために使用される(ように構成される)。急冷油冷却回路は、本発明による完全な一次分留器50に役立つことができる。熱分解反応器流出物を冷却することに加えて、重質油留分は、一次分留器において凝縮される。この重質燃料油6は、一次分留器の塔底部生成物である。
【0052】
上述したように(特に図5の説明を参照)、水急冷塔60において、分解生成物4は、ほぼ周囲条件に更に冷却される。供給原料の飽和は、例えば上述したように、加熱媒体として急冷水を使用して飽和器水加熱回路151内で達成される。プロセス水は、飽和器150の底部に集められ、飽和器水加熱回路151を介して飽和器の頂部に戻される。水は、急冷水152上で飽和器水回路加熱器を使用して加熱される。急冷油冷却システムを有さない飽和器/加湿器を備える/その使用を含む、プラント/プロセスに加えて、急冷油冷却システムは、更なる加熱工程:急冷油の加熱を可能にする。プラントが水急冷及び油急冷の両方のために構成される場合、急冷水冷却回路及び急冷油冷却回路は、一般的に以下のように配置される:使用において、飽和器に供給されるプロセス水は、急冷水152上の飽和器水回路加熱器を使用して加熱され、続いて急冷油153上の飽和器水回路加熱器を使用して加熱される。新鮮な(気体)供給原料1のための入口が、飽和器内(典型的には飽和器塔の底部又はその付近)に設けられている。飽和器は、供給原料(典型的には上方に移動する)と、典型的には供給原料よりも高い温度を有し、典型的には飽和器を下方に移動する飽和器水との間の接触を改善する内部を備えている。飽和器の水入口温度を制御することによって、加湿のレベルは、熱分解反応器のための正しい蒸気希釈レベルに達するように制御され得る。蒸気希釈された炭化水素供給原料は、分解炉1001に戻され、直接、供給物-流出物交換器90に戻される。
【0053】
原則として、このスキームは、通常運転(定常状態運転など)中に供給原料の予熱及び蒸気希釈の必要なレベルに達するための負荷の大部分を提供することができる。必要量に近い供給原料を飽和させるのに十分な廃熱が流出物中で利用可能であり、急冷油は必要な温度レベルを提供するのに十分に高温である。しかしながら、いくつかの運転では、希釈蒸気を必要とする。これらは、始動状況、脱炭素処理運転及びホットスタンバイ運転である。これらの場合、供給原料は、個々の炉、例えば、脱炭素処理運転における炉に送られない。この理由のために、電気ボイラ85を有する希釈蒸気ドラム80が、好ましくは、希釈蒸気24を提供するためにフロースキームに設けられる。更に、希釈蒸気を使用して、必要な量のサワー水ストリッピング蒸気及び機器パージ蒸気を供給することができる。このシステムの容量は、通常運転中に希釈蒸気が必要とされる既知のプラントと比較して制限され得る。加えて、ストリッピング蒸気を使用して、サワー水ストリッパの必要量を供給することができる。通常運転の間、ある量の希釈蒸気を飽和器から来る蒸気希釈された供給原料と混合して、必要に応じて少量の過熱を提供することができる。有利には、総希釈蒸気需要に対する電気ボイラ85を有する希釈蒸気ドラム80の寄与は、好ましくは40%未満、より好ましくは30%未満、更により好ましくは20%未満である。スタートアップ、脱炭素処理、ホットスタンバイ及びバックアップ運転のために、希釈蒸気を別々に炉に送ることができる。
【0054】
希釈蒸気ドラム80からのブローダウン26及び当該飽和器水加熱回路への構成25は、飽和器水及び希釈蒸気生成回路におけるファウリング汚染物質の蓄積を防止する。したがって、これらは存在することが好ましい。
【0055】
図6の実施形態によって示されるような)急冷油冷却装置からの熱の使用の代替として、又はそれと組み合わせて、図5に関する説明で考察したような飽和器の使用に対する制限として、特に、最大の実現可能な希釈蒸気対供給原料比に関して、本発明者らは、ほぼ大気圧又は大気圧を上回る比較的低い圧力、すなわち、熱分解反応器が動作するように構成されている圧力を下回る圧力で、飽和器150内で供給原料を加湿し、その後、加湿された供給原料(すなわち、原料-希釈剤混合物)を、それを分解セクションに供給する前に圧縮するとき、水(蒸気)による(本質的に気体の)供給原料のより高い飽和量に達することが可能であることを認識した。加湿された供給原料を圧縮するための圧縮器を備える/その使用を含む、本発明によるエチレンプラント/プロセスが、図7に概略的に示される。
【0056】
スキームは、基本的に図5のスキームと同じであり得る。しかしながら、プラントは、飽和器/加湿器150の下流に圧縮器154を更に含み、飽和器/加湿器は、典型的にはほぼ大気圧で動作するように構成されている。使用中、供給原料は、電動分解炉1001が動作するように構成されている圧力未満の圧力で加湿され、特に本質的に飽和される。通常、従来の放射コイル型熱分解反応器は、1.5~4.0バール、特に1.7~3.0バールの範囲の圧力で動作される。Coolbrookのロトダイナミック装置のような他の設計は、低い圧力を必要とし得る。潜在的に約2バール程度に低く、典型的には約4バールである。加湿されたガスは、加湿された供給原料3を炉セクション1001に供給するために飽和気体供給原料圧縮器154を使用して、典型的には2.0~6バール、特に2.5~4バールの範囲の正確な圧力に圧縮される。図6のスキームとは対照的に、これは、典型的には、供給原料の必要とされるレベルの予熱及び蒸気希釈を提供するためのいかなる追加の(電気)電力も必要とせずに運転を可能にする。このオプションは、圧縮器を駆動するために電力を必要とするが、電気ボイラを使用して希釈蒸気を生成させることと比較して、このオプションは、炉に印加される供給圧力に応じて、依然として40~50%少ない電力しか必要としない。更に、比較的低圧の加湿器と炭化水素供給原料希釈剤混合物を圧縮するための圧縮器との組み合わせは、炭化水素供給原料希釈剤混合物を望ましく高い希釈蒸気比、例えば約0.35の比にすることを可能にする。図6のスキームと同様に、電気ボイラ85を有する希釈蒸気ドラム80が、有利には、希釈蒸気24を供給するために存在する。
【0057】
本質的に気体の供給原料を蒸気分解によって分解するのに特に適しているだけでなく、液体の供給原料又は気体と液体の供給原料の混合物を分解するのにも特に適している更なる実施形態では、エチレンプラントは、希釈蒸気生成器を備え、更に、希釈蒸気を生成させるように構成されたヒートポンプを備える。図8は、ヒートポンプ及び冷媒を適用する本発明による有利なプラント/プロセスを概略的に示す。冷媒は、一般に、0℃~80℃の範囲の標準沸点を有する。この範囲は、実用上の理由から好ましいが、沸点がそれ以外の冷媒を使用してもよいことが理解されよう。図8のフロースキームは、凝縮冷媒86を利用するように構成された希釈蒸気生成器が存在し、飽和器/加湿器の代わりに冷媒を使用する希釈蒸気過熱器87が存在することを除いて、図5のフロースキームとほぼ同じであり得る。使用時に希釈蒸気を生成するための冷媒負荷は、急冷水負荷をより高いレベルに上昇させるためにヒートポンプを使用することによって利用可能にされる。特に適切なヒートポンプの詳細を、図9に示す。中圧冷媒ドラム173からの過冷却された中圧冷媒液190は、液体冷媒減圧弁によって低圧181に減圧され、フラッシング低圧冷媒191を生成する。この冷媒は、低圧冷媒ドラム170内で分離される。液体留分は、自然循環によって熱サイフォン型リボイラ、低圧冷媒気化器171上をリサイクルされ、急冷水回路からの低レベル急冷水負荷を使用して蒸発される。代替的に、低圧冷媒ドラム170及び低圧冷媒気化器171は、冷媒が清浄な流体であるので、ケトル型リボイラ内で組み合わせることもできる。低圧飽和冷媒蒸気192は、低圧から中圧への冷媒圧縮器172において中圧のわずかに過熱された冷媒蒸気195aに圧縮される。
【0058】
冷媒エコノマイザ175からの過冷却された高圧冷媒液193は、液体冷媒減圧弁によって中圧180に減圧され、フラッシング中圧冷媒194を生成する。この冷媒は、中圧冷媒ドラム173内で分離される。液体留分は、急冷水回路からのより高いレベルの急冷水負荷を使用して蒸発させるために、熱サイフォン型リボイラ、中圧冷媒気化器174上で自然循環によってリサイクルされる。代替的に、中圧冷媒ドラム173及び中圧冷媒気化器174は、冷媒が清浄な/流体であるので、ケトル型リボイラ内で組み合わせることもできる。中圧飽和冷媒蒸気195bは、中圧のわずかに過熱された冷媒蒸気195aと組み合わされ、冷媒エコノマイザ175内で過熱されて中圧の過熱冷媒蒸気196となる。中圧から高圧の冷媒圧縮器176において希釈蒸気生成の温度レベルを超える温度レベルまで圧縮された後、冷媒は、高圧冷媒過熱低減器177において飽和希釈蒸気によって脱過熱される。高圧過熱低減冷媒蒸気198は、高圧冷媒凝縮器178内の希釈蒸気ドラムからのプロセス水によって凝縮される。凝縮された高圧冷媒液体199は、冷媒エコノマイザ175内で過冷却される。過冷却された高圧冷媒液体193は、リサイクルされる。
【0059】
この方式では、急冷水回路内で利用可能な過剰な熱を、希釈蒸気を生成するのに十分高い温度レベルにアップグレードすることが可能である。低圧冷媒は、より低い温度レベルの急冷水を供給し、中圧冷媒は、より高い温度レベルの急冷水を供給する。第3の圧力レベルを導入して、2つではなく3つのレベルで急冷水負荷を回収することができる。冷媒圧力及び冷媒自体は、急冷水回路冷却器に適合する様々な温度レベルで液体冷媒を蒸発させることによって急冷水負荷を回収することができ、希釈蒸気生成に適した温度レベルで冷媒蒸気を凝縮することができるように選択される。
【0060】
希釈蒸気の生成のためのヒートポンプシステムを備えるエチレンプラントの使用は、熱分解反応器のための電力に加えて電力を必要とする。しかしながら、所要電力は、電気ボイラを使用して希釈蒸気を生成することと比較して、炉のために使用される供給圧力に応じて、典型的には最大で約50~70%少ない。これは、加湿された供給原料のために加湿器+圧縮器を利用するプラントのものと同様である(例えば、図7参照)。図6又は図7に示されるような飽和器を利用することに対する、例えば図8に示されるようなヒートポンプの使用の利点は、ヒートポンプシステムが、通常運転以外(始動中など)の電気ボイラの役割を引き継ぐこともできることである。更に、ヒートポンプを利用する実施形態は、飽和器を利用するプラント/プロセスと比較して、高い蒸気対炭化水素供給原料比、例えば0.35を超える比のために特に有利であることが想定される。
【0061】
少なくとも実質的に液体の供給原料又は液体及び気体の供給原料の混合物の分解のために、供給原料を加熱し、それぞれ急冷水及び急冷油から回収された熱によってそれを蒸発させるように構成されたシステムを利用することが特に好ましい。また、中間油から回収した熱を利用することが好ましい。希釈蒸気は、有利には、上述したように、好ましくは図9を考察した際に説明したような冷媒スキームを使用して、ヒートポンプされた急冷水負荷から生成される。これらの手段を含む本発明のエチレンプラント又はプロセスの利点は、供給原料を煙道ガスの助けなしに蒸発させることができ、希釈蒸気をMP蒸気の使用なしに蒸発させることができることである。MP蒸気を生成するためにヒートポンプを使用することによって、電力は、このサービスのために電気MPボイラを使用することと比較して50%を超えて低減され得る。これにより、追加の所要電力が大幅に低減される。そのような有利なプロセスは、図10に更に示される。一般に、図10に示すように、使用時に、原料2、好ましくは液化ブタン、ペンタン若しくはナフサ又はそれらの混合物などの液体供給原料は、まず予熱器30において、炉1001の外部の急冷水などの低温熱源で予熱されて、周囲条件から、急冷水回路における最高温度などの低温熱源の最高温度に近い温度まで、典型的には最高温度の5~10℃以内の温度まで加熱される。約75~80℃の最も高い急冷水温度では、70~75℃まで予熱することが可能である。
【0062】
供給原料の更なる予熱及び部分蒸発は、中間油43による炭化水素供給原料予熱器及び炉の外部の中間油44による炭化水素部分供給原料蒸発器において中間油によって達成される。部分的に蒸発した供給原料は、炭化水素供給原料ドラム45内で分離される。液体留分は、自然循環回路からの急冷油負荷を使用して蒸発させるために、急冷油気化器46によって、熱サイフォン型リボイラ、炭化水素供給原料蒸発器上を自然循環によってリサイクルされる。完全に蒸発した供給原料は、電動分解炉1001の供給物-流出物交換器90に送られる。急冷油負荷が利用可能であり、温度レベルが十分に高い場合、供給原料は急冷油によってわずかに過熱され得、炭化水素供給原料過熱器では急冷油47によってわずかに過熱され得る。
【0063】
熱分解反応器内の炭化水素分圧を抑制するために(これは、生成物収率及びコークス形成の抑制に有益である)、高温分離セクションから来る過熱希釈蒸気24(典型的には、冷媒圧縮器効率に応じて30~50℃過熱される)も、分解炉セクション1001内の電動熱分解反応器91に供給される前に、供給物-流出物交換器90に送られる。
【0064】
炭化水素供給原料と希釈蒸気3との混合物は、水露点を超えて供給物-流出物交換器90に入り、供給物-流出物交換器90によって排出液からの廃熱で、電動熱分解反応器91に適した入口温度まで加熱される。当該熱分解反応器91は、原料を生成物に変換するために、顕熱及び反応熱を蒸気希釈された炭化水素供給原料3に供給する。反応器流出物4からの廃熱は、供給物-流出物交換器90によって回収される。
【0065】
次に、中間油ループが利用可能である場合には、急冷油注入27及び中間油注入28を使用して、急冷油フィッティング37において流出物を冷却する。炉セクションから、流出物4は、主に一次分留器50、水急冷塔60、サワー水ストリッパ70及び希釈蒸気ドラム80からなるプラントの高温分離セクションに送られる。
【0066】
一次分留器50において、熱分解反応器流出物(分解生成物)は更に冷却され、この塔において水が凝縮しないことを確実にするために、温度を水の露点より高く、好ましくは露点より5℃高く、より好ましくは露点より5℃~40℃高く維持する。例えば、約90℃の露点の場合、動作温度は、還流の注入を制御することによって、95~110℃の範囲内、例えば約100℃まで制御することができる。流出物は、その後、急冷油及び中間油ポンプアラウンド及びガソリン還流をそれぞれ使用して冷却される。急冷油冷却回路54は、塔の底部に収集された重質燃料油生成物6に由来する。この急冷油10は、急冷油回路冷却器55によって冷却される。その一部は、急冷油フィッティング27に送られ、残りは、中間油全ドローオフトレイの下の塔に再注入される。急冷油回路冷却器55は、この場合、急冷油気化器46によって炭化水素供給原料蒸発器内の原料を蒸発させるために使用される。一次分留器の底部温度は、これを可能にするような温度レベルに調節することができる。当業者は、共通の一般知識及び本開示の内容に基づいて、例えば、急冷油フィッティングに注入される急冷油の量を制御することによって、これを行うことができるであろう。急冷油冷却回路は、カラムの底部セクションである一次分留器洗浄セクション51に役立つ。
【0067】
中間油冷却回路56が存在することが、好ましい。それは、急冷油回路54よりも低いレベルの熱を流出物から回収している比較的清浄な//非ファウリング中間冷却回路を提供する。中間油11は、塔内の洗浄セクション51の上方に位置する一次分留器中間油セクション52の底部のドローオフトレイ上に収集される。中間油還流12は、急冷油負荷を中間油ループにシフトすることができるように、塔の底部の急冷油洗浄セクション51に送られる。更に、中間油流は、急冷油フィッティング28に送られる。残りは、中間油回路冷却器57によって冷却され、軽質燃料油ドローポイントより下の塔に戻される。中間油冷却回路56は、一次分留器中間油セクション52に役立つ。この場合、中間油は、中間油43による炭化水素供給原料予熱器及び中間油44による炭化水素部分供給原料蒸発器において炭化水素供給原料を予熱し、部分的に蒸発させるために使用することができる。任意選択で、この目的のために急冷油を使用することができる。
【0068】
ガソリン/水分離器63から来るガソリン還流13は、塔の頂部、一次分留器ガソリン還流セクション53における熱の回収を処理しており、回収された負荷を急冷水回路にシフトする。流出物から注入された急冷油、中間油及びガソリン還流に熱を効率的に伝達するために、適切な内部が塔内に設置される。流出物を冷却することに加えて、軽質油及び重質油留分は、一次分留器において凝縮される。重質燃料油6は底部51に集められ、軽質燃料油7は還流セクション53の底部で軽質油部分ドローオフトレイ上に集められる。これらの生成物をストリッピングして、全燃料油生成物5の引火点を制御することができ、及び/又は急冷油回路の粘度制御のためにより軽質の急冷油留分を回収することができる。更に、それらは同様に冷却され得る。これらの詳細は、本出願に関しては無関係であるため、示されていない。
【0069】
水急冷塔60において、流出物4は、ほぼ周囲条件に更に冷却される。これは、ポンプアラウンド回路を使用して行われ、ポンプアラウンド回路は、蓄積された水底部生成物、いわゆる急冷水14を収集し、急冷塔60内の様々なレベルでそれを注入する。急冷水回路は通常2つの段階を有し、急冷水底部冷却回路64は急冷水塔底部セクション61に役立ち、急冷水頂部冷却回路66は急冷水塔頂部セクション62に役立つ。急冷水底部回路冷却器65は、典型的には、可能な限り多くの急冷水負荷を回収するためのプロセスユーザである。そのようなユーザは、例えば供給原料予熱器30及び/又はプロピレンスプリッタリボイラ(図示せず)である。この場合、負荷は、供給原料予熱器30を使用する供給原料予熱のため、並びに図9の冷媒回路の中圧冷媒気化器174及び/又は低圧冷媒気化器171を使用する冷媒蒸発のために使用される。過剰な熱は、通常、空気冷却又は冷却水冷却によって除去されなければならない。冷媒ループは、これらの低温ユーティリティを減少させ、希釈蒸気を生成させるのに適したレベルまで急冷水負荷を伝達する。ポンプアラウンド回路からの冷却された注入水は、急冷水塔内で使用されて、適切な塔内部での直接熱交換によって分解ガスから熱を除去する。この塔の主な役割は、分解ガスの冷却とは別に、希釈蒸気の凝縮及び回収である。凝縮された希釈蒸気は、ガソリン生成物の少量の流れに加えて、塔の底部からの正味の生成物である。これらは通常、ガソリン/水分離器63を使用して互いに分離される。時には、この分離器はまた、急冷水回路のための急冷水を収集する。サワー水20と呼ばれるこの凝縮された希釈蒸気は、サワーガスを含み、サワーガスは、サワー水ストリッパ70においてストリップ蒸気21によってストリッピングされる。これらのサワーガス22は、急冷水塔60に戻される。プロセス水23と呼ばれるストリッピングされた水は、希釈蒸気生成に適している。これは、炉セクション1001に供給するために、急冷水塔及びサワー水ストリッパ内よりも高い圧力、通常約2~約7バール、特に約4~約6バールで起こる。希釈蒸気の生成は、冷媒を用いて達成される。プロセス水は、希釈蒸気ドラム80内に収集され、熱サイフォン回路を介して、希釈蒸気24が、凝縮冷媒86を使用して希釈蒸気生成器内の凝縮冷媒から生成される。冷媒中の過熱を用いて、希釈蒸気過熱器87内の希釈蒸気を180℃~210℃の温度まで穏やかに過熱した後、それを電動分解炉1001に戻して炭化水素供給原料1を希釈する。希釈蒸気ドラム80からのブローダウン26及び当該ドラムへの希釈蒸気システム構成25は、希釈蒸気生成回路におけるファウリング汚染物質の蓄積を防止する。
【0070】
発明による代替プラント/プロセスは、図11に示される熱統合スキームに基づく。このスキームは、熱統合を除いて、図10のスキームと同様である。それはまた、液体供給原料並びに液体及び気体供給原料の混合物の分解に特に有用である。
【0071】
図11のスキームに基づく本発明によるプロセス又はプラントでは、急冷油負荷は、供給原料蒸発に使用されず(使用されるように構成され)、急冷油82を使用する希釈蒸気生成器による希釈蒸気生成に使用される。使用中、供給原料の蒸発は、この場合、冷媒48を凝縮することによって炭化水素供給原料蒸発器内の冷媒によって行われ、冷媒49による炭化水素供給原料過熱器によって過熱される。
【0072】
図10又は図11に基づくプロセス又はプラントの性能は、これら2つのスキームについて非常に類似している。図11のスキームでは、冷凍回路は、供給原料蒸発器49にも熱を供給するように調整される必要がある。供給原料に応じて、これは、希釈蒸気生成の温度レベルよりも高い又は低い温度レベルであり得る。別個の圧縮器を設置してこの役割を果たすことができ、又は2つの圧縮器を直列に配置することができる。
【0073】
図12及び図13は、本発明によるプロセス又はプラントで使用することができる冷凍圧縮器システムを示す。これらの冷凍圧縮器は、単一のシャフト上に設置することができ、また必要に応じて単一のケーシング内に設置することもできる。冷凍圧縮器システムは、電力の要求を更に低減するために使用することができる。
【0074】
図12は、並列の2つの別個の高圧ループ、高圧冷凍回路分岐1010及び高圧-高圧の冷凍回路分岐1011を示す。これら2つの分岐の各々は、希釈蒸気生成及び供給原料蒸発の温度レベルに最もよく適合するように、異なる圧力及び対応する動作温度で動作される。これにより、電力の要求が最も低くなる。一方の分岐は、冷媒48を凝縮することによって炭化水素供給原料蒸発器を介して供給原料蒸発を処理し、他方の分岐は、凝縮冷媒86を使用して希釈蒸気生成器を介して希釈蒸気生成を処理する。炭化水素供給原料蒸発器の動作温度が希釈蒸気生成器の動作温度より高い場合、炭化水素供給原料蒸発器は高圧-高圧の分岐1011によって動作され、希釈蒸気生成器は高圧分岐1010によって動作される。炭化水素供給原料蒸発器の動作温度が希釈蒸気生成器の動作温度よりも低い場合、炭化水素供給原料蒸発器は高圧分岐1010によって動作し、希釈蒸気生成器は高圧分岐1011によって動作する。
【0075】
中圧冷媒ドラム174からの過冷却された中圧冷媒液190は、液体冷媒減圧弁によって低圧181に減圧され、フラッシング低圧冷媒191を生成する。この冷媒は、低圧冷媒ドラム170内で分離される。液体留分は、自然循環によって熱サイフォン型リボイラ、低圧冷媒気化器171上をリサイクルされ、急冷水回路からの低レベル急冷水負荷を使用して蒸発させることができる。代替的に、低圧冷媒ドラム170及び低圧冷媒気化器171は、冷媒が清浄な/流体であるので、ケトル型リボイラにおいて組み合わせることができる。低圧飽和冷媒蒸気192は、低圧から中圧への冷媒圧縮器172において中圧のわずかに過熱された冷媒蒸気195aに圧縮される。
【0076】
高圧-高圧の冷媒エコノマイザ182からの過冷却された高圧冷媒液206及び高圧冷媒エコノマイザ175からの過冷却された高圧冷媒液193は、液体冷媒減圧弁によって中圧180に減圧されて、フラッシング中圧冷媒194を生成する。この冷媒は、中圧冷媒ドラム173内で分離される。液体留分は、急冷水回路からのより高いレベルの急冷水負荷を使用して蒸発させるために、熱サイフォン型リボイラ、中圧冷媒気化器174上で自然循環によってリサイクルさせることができる。代替的に、中圧冷媒ドラム173及び中圧冷媒気化器174は、冷媒が清浄な流体であるので、ケトル型リボイラ内で組み合わせることもできる。中圧の飽和冷媒蒸気195bは、中圧のわずかに過熱された冷媒蒸気195aと混合される。
【0077】
この時点で、組み合わされた流れ195a及び195bは、2つの並列冷凍回路分岐1010及び1011に送られる。
【0078】
高圧分岐1010に送られた部分は、高圧冷媒エコノマイザ175で過熱されて中圧過熱冷媒蒸気196となる。希釈蒸気生成又は炭化水素供給原料蒸発の温度レベルを超える温度レベルまで低圧から中圧から高圧の冷媒圧縮器176において圧縮された後、2つのうちのいずれかが、温度レベルが低い。冷媒は、高圧冷媒過熱低減器177において、冷媒87を用いた希釈蒸気過熱器又は冷媒49による炭化水素供給原料過熱器を用いて、飽和希釈蒸気又は炭化水素供給原料によって過熱低減される。高圧過熱低減冷媒蒸気198は、それぞれ、凝縮冷媒86を使用する希釈蒸気生成器又は凝縮冷媒48による炭化水素供給原料蒸発器を使用する高圧冷媒凝縮器178において、希釈蒸気ドラム又は炭化水素供給原料からのプロセス水によって凝縮される。凝縮された高圧冷媒液体199は、高圧冷媒エコノマイザ175内で過冷却される。過冷却された高圧冷媒液体193は、リサイクルされる。
【0079】
高圧-高圧の分岐1011に送られた部分は、高圧-高圧の冷媒エコノマイザ182で過熱されて、中圧過熱冷媒蒸気196になる。希釈蒸気生成又は炭化水素供給原料蒸発の温度レベルを超える温度レベルまで中圧から高圧-高圧の冷媒圧縮器183において圧縮された後、2つのうちのいずれかが、温度レベルが高い。冷媒は、それぞれ冷媒87を使用する希釈蒸気過熱器又は冷媒49による炭化水素供給原料過熱器を使用して、高圧-高圧の冷媒過熱低減器185において飽和希釈蒸気又は炭化水素供給原料によって過熱低減される。高圧-高圧の過熱低減冷媒蒸気186は、それぞれ、凝縮冷媒86を使用する希釈蒸気生成器又は凝縮冷媒48による炭化水素供給原料蒸発器を使用する高圧-高圧の冷媒凝縮器187において、希釈蒸気ドラム又は炭化水素供給原料からのプロセス水によって凝縮される。凝縮された高圧-高圧の冷媒液体205は、高圧-高圧の冷媒エコノマイザ182において過冷却される。過冷却された高圧-高圧の冷媒液体206はリサイクルされる。
【0080】
このスキームにより、急冷水回路において利用可能な過剰な熱を、冷凍システムの2つの別個の分岐において希釈蒸気を生成し、炭化水素供給原料を蒸発させるのに十分高い温度レベルにアップグレードすることが可能である。
【0081】
図13の方式は、図12の方式と同様であるが、2つの分岐間のスプリットが中圧から高圧の圧縮器176の下流であり、分岐1010及び1011内の圧縮器が並列ではなく直列であるように、中圧から高圧の圧縮器183が高圧-高圧の圧縮器183によって置き換えられている点が異なる。
【0082】
本明細書で使用される場合、単数形「a」、「an」及び「the」は、複数形も含むことが意図され、例えば、「分解炉(a cracking furnace)」は「分解炉(cracking furnaces)」を含む。「バーナ(a burner)」は、文脈が他の意味に解すべき場合を除き、「複数のバーナ(a plurality of burner)」等を含む。「又は(or)」という用語は、文脈が明らかにそうでないことを示さない限り(例えば、「...いずれか一方の(either...or)」構成が使用される場合)、関連する列挙された項目のうちの1つ以上のありとあらゆる組み合わせを含む。「含む(comprises)」及び「含んでいる(comprising)」という用語は、述べられた特徴の存在を特定するが、1つ以上の他の特徴の存在又は追加を排除しないことが理解されよう。方法の特定の工程が別の工程に続いて言及される場合、別段の指定がない限り、それは当該別の工程に直接続くことができ、又は1つ以上の中間工程が特定の工程を実行する前に実行されてもよいことが更に理解されるであろう。同様に、構造又は構成要素間の接続が説明されるとき、この接続は、別段の指定がない限り、直接、又は中間構造若しくは構成要素を介して確立され得ることが理解されるであろう。
【0083】
本出願の文脈において、「約」という用語は、特に、所与の値からの10%以下、より特に5%、より特に3%以下の偏差を含む。
【0084】
「(少なくとも)実質的な」又は「(少なくとも)必須の」という用語は、本明細書では、指定されたものの一般的な特徴又は機能を有することを示すために一般的に使用される。定量化可能な特徴に言及する場合、この用語は特に、その特徴の最大値の少なくとも75%、より具体的には90%以上、更により具体的には95%以上であることを示すために使用される。「本質的に含まない」という用語は、本明細書では一般に、物質が存在しない(有効出願日に利用可能な分析技術で達成可能な検出限界未満)か、又は当該物質を本質的に含まない製品の特性に有意に影響を及ぼさないような少量で存在することを示すために使用される。
【0085】
用語「高圧蒸気」(HP蒸気)は、当技術分野において周知である。経験則として、HP蒸気の圧力は、通常、少なくとも約40バール、例えば80バール以上、例えば約100バール~約130バール、例えば100~125バールである。
【0086】
用語「中圧蒸気」(MP蒸気)は、40バールの圧力上限を有する蒸気に関する。本明細書で使用される場合、MPという用語は、通常、約6~約20バールの範囲、より具体的には7~13バールの範囲である。
【0087】
「低圧蒸気」という用語は、MP蒸気圧より低い圧力を有する蒸気に関する。
【0088】
本発明は、本発明の実施形態が示される添付の図面を参照して、本明細書においてより完全に説明される。図面において、システム、構成要素、層、及び領域の絶対的及び相対的な大きさは、明確にするために誇張され得る。実施形態は、本発明の可能な限り理想化された実施形態及び中間構造の概略図及び/又は断面図を参照して説明され得る。説明及び図面において、同様の番号は、全体を通して同様の要素を指す。相対的な用語並びにそれらの派生語は、そのときに説明されるような、又は考察中の図面に示されるような方向を指すと解釈されるべきである。これらの相対的な用語は、説明の便宜上のものであり、特に明記しない限り、システムが特定の向きで構築又は動作されることを必要としない。
【0089】
明確さ及び簡潔な説明の目的のために、特徴は、同一又は別個の実施形態の一部として本明細書に説明されるが、本発明の範囲は、説明される特徴の全て又はいくつかの組み合わせを有する実施形態を含み得ることが理解されるであろう。
【実施例
【0090】
本発明を以下の非限定的な実施例に従って説明する。
【0091】
本発明がどのように適用され得るかを実証するために、いくつかの実施例を、気体供給原料分解装置のために準備した:比較のための基本ケースとして役立つ図1による従来のフロースキームを有する比較例1、図6による一次分留器及び加湿器/飽和器を含むフローシートを有する実施例2、図7による低圧加湿器/飽和器及び希釈供給原料圧縮器を含むフローシートを有する実施例3、並びに図9によるヒートポンプを含む図8によるフローシートを有する実施例4。
【0092】
基本ケースとして、1500キロトン/年(kta)のエタン分解装置を選択した。未転化エタン及びプロパンは、リサイクルガスとして炉セクションにリサイクルして戻され、新鮮な気体供給原料と混合される。この組み合わされた供給原料は、全ての実施例について分解炉において取り扱われる。
【0093】
比較のための基本ケースである実施例1は、359.8t/hの気体供給原料、233.5t/hの新鮮なエタン供給原料及び126.3t/hのリサイクルガス、主にリサイクルエタンを有する。これは20℃で供給され、炭化水素供給原料予熱器30において55℃まで加熱される。炉の対流セクションにおいて、供給原料は、炭化水素供給原料予熱器31において225℃まで更に加熱される。180℃の希釈蒸気を添加して供給原料を希釈する。希釈された供給原料は、蒸気希釈された炭化水素供給原料過熱器33において703℃まで加熱される。4バールで、希釈ガスは、臨界流ベンチュリを介して、分解炉内の多数の平行な放射コイル、燃料燃焼炉の火室34内の熱分解反応器に供給され、そこで855℃まで加熱される。反応器の出口における圧力は、1.8バールである。このプロセスの間、供給原料は、生成物に変換される。転化は、反応器の出口で停止せず、移送ライン交換器35への通路及びこの移送ライン交換器自体において継続する。コイルから移送ライン交換器への通路において、温度は吸熱反応のために840℃の温度に低下する。移送ライン交換器において、熱分解反応器流出物4(分解生成物とも呼ばれる)は、350℃に冷却され、高圧蒸気を生成する。次に、流出物は、ボイラ給水を加熱しながら、第2の移送ライン交換器36において180℃まで更に冷却される。
【0094】
流出物は、急冷水塔60において30℃まで更に冷却されて、分解ガス生成物9を生じる。このプロセスの間、希釈蒸気は、少量のガソリン8とともに凝縮される。ガソリン/サワー水混合物は、80℃でガソリン水分離器において分離される。サワー水20は、サワー水ストリッパ70にポンプ輸送され、そこでストリッピングされて、溶解したサワーガス22を1.7バールで除去する。浄化されたプロセス水23は、希釈蒸気ドラム80にポンプ輸送され、希釈蒸気24が、凝縮MP蒸気から6バール及び160℃で生成される。希釈蒸気は、過熱MP蒸気によって過熱器83内で180℃に過熱される。過熱された希釈蒸気は、気体供給原料1を希釈するために炉に送られる。生成された希釈蒸気の量は、125.9t/hである。これは、蒸気希釈比が0.35(125.9t/h/359.8t/h供給原料)であることを意味する。更に、12.5t/hのサワー水ストリップ蒸気21が、サワー水をストリッピングするために生成される。
【0095】
実施例2は、359.8t/hの同じ気体供給原料を使用する。これは、6バールで動作する飽和器150の底部において20℃で供給される。飽和器内で、ガスは、飽和器の頂部から入る140℃の循環飽和器水と接触する。これは、飽和器循環水151を加熱する150℃の急冷油及び77℃の急冷水で実際に可能な温度である。
【0096】
プロセス水の一部(103t/h)を循環する飽和器水と混合する。これは、飽和器内で蒸発した水の量を補う量である。プロセス水の残りは、電気ボイラ80を有する希釈蒸気ドラム80に送られて、6バール及び160℃で生成される22.8t/hの希釈蒸気を生成し、全蒸気希釈を125.9t/hに上昇させ、対応する蒸気希釈比は、0.35(125.9t/h/359.8t/h供給原料)である。更に、12.5t/hのサワー水ストリップ蒸気21が、サワー水をストリッピングするために生成される。
【0097】
飽和した蒸気希釈されたエタン3は、123℃の温度で電動分解炉セクション1001内の供給物-流出物交換器90に送られ、電動熱分解反応器91に入る前に703℃まで加熱される。熱分解反応器において、希釈された供給原料は、855℃まで加熱される。反応器の出口における圧力は、1.8バールである。反応器から供給物-流出物交換器への通路において、温度は吸熱反応のために840℃の温度に低下する。供給物-流出物交換器において、熱分解反応器流出物4(分解生成物とも呼ばれる)は、希釈された炭化水素供給原料3に対して330℃に冷却される。
【0098】
流出物は、急冷油フィッティング37において170℃に、一次分留器50において循環急冷油54を使用して120℃に更に冷却される。少量の液体重質燃料油6は、一次分留器で凝縮される。一次分留器の底部を150℃で運転して、150℃の急冷油流を生成することができる。この急冷油を110℃に冷却して、一次分留器塔頂部温度を120℃に制御する。この急冷油は、既に上述したように、急冷油回路冷却器55を使用して(急冷油負荷153上の飽和器水回路加熱器を介して)飽和器循環水151を140℃に加熱するために完全に使用される。
【0099】
最後に、流出物は、循環する急冷水64及び66を使用して急冷水塔60において30℃に冷却されて、分解ガス生成物9を生じる。塔は、露点のすぐ下の77℃で運転される。(急冷水152上の飽和器水回路加熱器を介した)急冷水底部回路冷却器65は、飽和器循環水151を、急冷油負荷153上の飽和器水回路加熱器に入る前に、72℃に加熱するために使用される。
【0100】
急冷水塔において、希釈蒸気は、少量のガソリン8とともに凝縮される。ガソリン/サワー水混合物は、80℃でガソリン水分離器において分離される。サワー水20は、サワー水ストリッパ70にポンプ輸送され、そこでストリッピングされて、溶解したサワーガス22を1.7バールで除去する。浄化されたプロセス水は、飽和器150及び希釈蒸気ドラム80にポンプで送られる。
【0101】
実施例3は、359.8t/hの同じ気体供給原料を有する。これは、飽和器150の底部で、20℃で供給される。前の例とは対照的に、この塔は、6バールではなく、1.1バールで運転されている。飽和器内で、ガスは、飽和器の頂部から入る75℃の循環飽和器水と接触する。これは、飽和器循環水151を加熱する80℃の急冷水で実際に可能な温度である。
【0102】
プロセス水の一部(125.9t/h)を循環する飽和器水と混合する。これは、飽和器内で蒸発した水の量を補う量である。これは、0.35の蒸気希釈比(125.9t/h/359.8t/h供給原料)に相当する。残りのプロセス水は、12.5t/hのサワー水ストリップ蒸気を生成するために、電気ボイラ80を有する希釈蒸気ドラム80に送られる。
【0103】
蒸気希釈されたエタン3は、飽和気体供給原料圧縮器154において6バールに圧縮され、温度を74℃から214℃に上昇させる。圧縮ガスは、電動分解炉セクション1001内の供給物-流出物交換器90に送られ、そこで703℃まで加熱された後、電動熱分解反応器91に入る。熱分解反応器において、希釈された供給原料は、855℃まで加熱される。反応器の出口における圧力は、1.8バールである。反応器から供給物-流出物交換器への通路において、温度は吸熱反応のために840℃の温度に低下する。供給物-流出物交換器において、熱分解反応器流出物4(分解生成物とも呼ばれる)は、希釈された炭化水素供給原料3に対して400℃に冷却される。
【0104】
流出物は、循環する急冷水64及び66を使用して急冷水塔60において30℃に更に冷却されて、分解ガス生成物9を生じる。塔は、80℃で運転される。(急冷水152上の飽和器水回路加熱器を介した)急冷水底部回路冷却器65は、飽和器循環水151を75℃に加熱するために使用される。
【0105】
急冷水塔において、希釈蒸気は、少量のガソリン8とともに凝縮される。ガソリン/サワー水混合物は、80℃でガソリン水分離器において分離される。サワー水20は、サワー水ストリッパ70にポンプ輸送され、そこでストリッピングされて、溶解したサワーガス22を1.7バールで除去する。浄化されたプロセス水は、飽和器150及び希釈蒸気ドラム80にポンプで送られる。
【0106】
実施例4は、他の場合と同じ359.8t/hの気体供給原料を有する。これは20℃で供給され、炭化水素供給原料予熱器30において75℃まで加熱される。200℃の希釈蒸気を添加して供給原料を希釈する。希釈された供給原料は、電動分解炉セクション1001内の供給物-流出物交換器90に送られ、電動熱分解反応器91に入る前に703℃まで加熱される。熱分解反応器において、希釈された供給原料は、855℃まで加熱される。反応器の出口における圧力は、1.8バールである。反応器から供給物-流出物交換器への通路において、温度は吸熱反応のために840℃の温度に低下する。供給物-流出物交換器において、熱分解反応器流出物4(分解生成物とも呼ばれる)は、希釈された炭化水素供給原料3に対して316℃に冷却される。
【0107】
流出物は、循環する急冷水64及び66を使用して急冷水塔60において30℃に更に冷却されて、分解ガス生成物9を生じる。塔は、80℃で運転される。(急冷水152上の飽和器水回路加熱器を介した)急冷水底部回路冷却器65は、飽和器循環水151を75℃に加熱するために使用される。
【0108】
急冷水塔において、希釈蒸気は、少量のガソリン8とともに凝縮される。ガソリン/サワー水混合物は、80℃でガソリン水分離器において分離される。サワー水20は、サワー水ストリッパ70にポンプ輸送され、そこでストリッピングされて、溶解したサワーガス22を1.7バールで除去する。浄化されたプロセス水は、0.35(125.9t/h/359.8t/h供給原料)に対応する希釈蒸気比を有するために必要とされる、6バール及び160℃で生成される125.9t/h希釈蒸気を生成するために、凝縮冷媒86を使用する希釈蒸気生成器を用いて希釈蒸気ドラム80に圧送される。更に、12.5t/hのサワー水ストリップ蒸気21が、サワー水をストリッピングするために生成される。希釈蒸気は、過熱冷媒を用いて希釈蒸気過熱器87内で過熱される。
【0109】
低圧冷媒気化器171及び中圧174を使用して、冷媒蒸気は、2つの急冷水底部回路冷却器65によって、それぞれ62.5℃及び70℃で生成される。急冷水を80℃から75℃に1回冷却し、更に67℃に1回冷却する。低圧から中圧及び中圧から高圧への圧縮器172、176をそれぞれ使用して、216℃の高圧過熱冷媒蒸気が生成される。これは、(高圧冷媒過熱低減器177を介して)希釈蒸気過熱器87内で希釈蒸気を過熱するために、及び(高圧冷媒凝縮器178を介して)凝縮冷媒86を使用して希釈蒸気生成器内で希釈蒸気自体を生成させるために使用される。
【0110】
表1は、関連する圧縮器の出力とともに、様々な実施例の負荷の概要を示す。
【0111】
【表1】
【0112】
表2は、供給原料を希釈するための電力需要を、実施例1について計算された従来の方法での希釈蒸気生成に必要な電力需要、すなわちMP蒸気が存在しない場合の90.3MWと比較した場合の、様々な実施例についての電力需要及び上記で定義された過剰電力の潜在的な低減を示す。それは、図6のフローシート(実施例2)が最も高い還元電位73%を有することを示す。図7のフローシート(実施例3)は、減少値45%を有する。図8及び図9(実施例4)のフローシートは、60%で中間レベルを有する。
【0113】
【表2】
燃料燃焼によって供給される熱
【0114】
図のための凡例
1.炭化水素供給原料(気体)
2.炭化水素供給原料(液体)
3.蒸気希釈された炭化水素供給原料
4.熱分解反応器流出物(分解生成物とも呼ばれる)
5.全燃料油生成物
6.重質燃料油生成物
7.軽質燃料油生成物
8.重質熱分解ガソリン
9.分解ガス生成物(高温セクションを出て、冷却/洗浄される)
10.急冷油
11.中間油
12.中間油還流
13.ガソリン還流
14.急冷水
20.サワー水
21.ストリッピング蒸気
22.サワーガス
23.プロセス水
24.希釈蒸気
25.希釈蒸気システムの構成
26.ブローダウン
27.急冷フィッティングのための急冷油
28.中間油-急冷フィッティング
30.炉外部の炭化水素供給原料予熱器
31.炉対流セクションにおける炭化水素供給原料予熱器
32.炉対流セクションにおける炭化水素供給原料蒸発器
33.炉対流セクションにおける蒸気希釈された炭化水素供給原料過熱器
34.燃料燃焼炉の火室内の熱分解反応器
35.高圧蒸気を生成する移送ライン交換器
36.第2の移送ライン交換器
37.急冷油フィッティング
43.中間油による炭化水素供給原料予熱器
44.中間油による炭化水素部分供給原料蒸発器
45.炭化水素供給原料ドラム
46.急冷油による炭化水素供給原料蒸発器
47.急冷油による炭化水素供給原料過熱器
48.冷媒を凝縮することによる炭化水素供給原料蒸発器
49.冷媒による炭化水素供給原料過熱器
50.一次分留器
51.一次分留器洗浄セクション
52.一次分留器中間油セクション
53.一次分留器ガソリン還流セクション
54.急冷油冷却回路
55.急冷油回路冷却器
56.中間油冷却回路
57.中間油回路冷却器
60.急冷水塔
61.急冷水塔底部セクション
62.急冷水塔頂部セクション
63.ガソリン/水分離器
64.急冷水底部冷却回路
65.急冷水底部回路冷却器
66.急冷水頂部冷却回路
67.急冷水頂部回路冷却器
70.サワー水ストリッパ
80.希釈蒸気ドラム
81.MP蒸気を用いた希釈蒸気生成器
82.急冷油を用いた希釈蒸気生成器
83.炉の外部の希釈蒸気過熱器
84.炉対流セクションにおける希釈蒸気過熱器
85.電気ボイラ
86.凝縮冷媒を用いた希釈蒸気生成器
87.冷媒を用いた希釈蒸気過熱器
90.供給物-流出物交換器
91.電動熱分解反応器
101.Demin水補充
102.ストリップ蒸気
103.脱気器ベント
104.ボイラ給水
105.飽和高圧蒸気
106.蒸気ドラムのブローダウン
107.過熱高圧蒸気
108.中圧蒸気
109.中圧凝縮液
110.真空で蒸気を凝縮する方法
111.真空凝縮液
112.組み合わせた凝縮液
120.脱気器
121.ボイラ給水予熱器
122.高圧蒸気ドラム
123.高圧蒸気過熱器
124.高圧から中圧への背圧蒸気タービン
125.蒸気タービン中圧の真空への凝縮
126.凝縮蒸気タービン表面凝縮器
150.飽和器
151.飽和器水加熱回路
152.急冷水の飽和器水回路加熱器
153.急冷油負荷時の飽和器水回路加熱器
154.飽和気体原料圧縮器
170.低圧冷媒ドラム
171.低圧冷媒気化器
172.低圧から中圧への冷媒圧縮器
173.中圧冷媒ドラム
174.中圧冷媒気化器
175.高圧冷媒エコノマイザ
176.中圧から高圧への冷媒圧縮器
177.高圧冷媒過熱低減器
178.高圧冷媒凝縮器
179.高圧凝縮冷媒ドラム
180.中圧への液体冷媒減圧弁
181.低圧への液体冷媒減圧弁
182.高圧-高圧の冷媒エコノマイザ
183.中圧から高圧-高圧への冷媒圧縮器
184.高圧から高圧-高圧への冷媒圧縮器
185.高圧-高圧の冷媒過熱低減器
186.高圧-高圧の冷媒凝縮器
187.高圧-高圧の凝縮冷媒ドラム
190.飽和中圧冷媒液体
191.フラッシング低圧冷媒
192.低圧飽和冷媒蒸気
193.中圧のわずかに過熱された冷媒蒸気
194.中圧飽和冷媒蒸気
195a.中圧のわずかに過熱された冷媒蒸気
195b.中圧飽和冷媒蒸気
196.中圧過熱冷媒蒸気
197.高圧過熱冷媒蒸気
198.高圧過熱低減冷媒蒸気
199.凝縮した高圧冷媒液体
200.飽和高圧冷媒液体
201.高圧過熱冷媒蒸気
202.高圧過熱冷媒蒸気
203.高圧-高圧の過熱低減冷媒蒸気
204.凝縮された高圧-高圧の冷媒液体
205.飽和した高圧-高圧の冷媒液体
1000.燃焼分解炉
1001.電動分解炉セクション
1010.高圧冷凍回路分岐
1011.高圧-高圧の冷凍回路分岐
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
【手続補正書】
【提出日】2024-06-05
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動熱分解反応器(91)を備えるエチレンプラントであって、前記電動熱分解反応器(91)が、炭化水素供給原料-希釈剤混合物のための供給入口と、エチレンを含む熱分解反応器流出物のための出口と、を備え、前記エチレンプラントが、前記熱分解反応器流出物から前記熱分解反応器のための供給物に熱を伝達するように構成された熱交換器(90)を更に備え、前記熱交換器(90)が、前記熱分解反応器の上流の供給入口及び供給出口と、更に熱分解反応器流出物入口及び熱分解反応器流出物出口と、を備え、供給通路が、前記熱交換器の前記供給出口と前記熱分解反応器の前記供給入口との間に存在し、更に供給通路が、前記熱分解反応器の前記反応器流出物出口と前記熱交換器の分解ガス入口との間に存在する、エチレンプラント。
【請求項2】
前記プラントが、前記熱分解反応器内で生成された反応器流出物を、高圧蒸気の生成なしで、ほぼ周囲条件に更に冷却するように構成された冷却セクションを更に備え、前記冷却セクションが、前記熱交換器(90)の分解ガス出口の下流にある、請求項1に記載のエチレンプラント。
【請求項3】
前記冷却セクションが、前記反応器流出物を急冷水で更に冷却するように構成された急冷水冷却システム、及び前記反応器流出物を空気で更に冷却するように構成された空気冷却器の群から選択される冷却システム(60)を備え、任意選択的に、前記冷却セクションが、前記急冷水冷却システム又は空気冷却器の上流に、反応器流出物を急冷油で更に冷却するように構成された急冷油冷却システム(51)を備える、請求項2に記載のエチレンプラント。
【請求項4】
前記プラントが、前記熱交換器(90)の前記供給入口の上流に加湿器(150)を備え、前記加湿器が、前記炭化水素供給原料を加湿し、それによって炭化水素-希釈剤混合物を提供するように構成されており、任意選択的に、前記プラントが、前記加湿炭化水素供給物を加圧するように構成された圧縮器を備え、前記圧縮器が、前記加湿器(150)の加湿炭化水素供給物のための出口と、前記熱分解反応器からの分解ガスから前記熱分解反応器のための前記供給物に熱を伝達するように構成された前記熱交換器(90)の前記供給入口との間の加湿炭化水素供給通路内に存在する、請求項1に記載のエチレンプラント。
【請求項5】
前記プラントが、前記熱分解反応器内で生成された反応器流出物を、高圧蒸気の生成なしで、ほぼ周囲条件に更に冷却するように構成された冷却セクションを更に備え、前記冷却セクションが、前記熱交換器(90の分解ガス出口の下流にあり、
前記冷却セクションが、前記反応器流出物を急冷水で更に冷却するように構成された急冷水冷却システム、及び前記反応器流出物を空気で更に冷却するように構成された空気冷却器の群から選択される冷却システム(60)を備え、
前記冷却セクションが、前記急冷水冷却システム又は空気冷却器の上流に、反応器流出物を急冷油で更に冷却するように構成された急冷油冷却システム(51)を備え、
前記プラントが、前記加湿器(150)内の前記炭化水素供給原料を加湿するための水に前記急冷油から熱を伝達するように構成された熱交換器(153)を更に備え、前記熱交換器が、急冷油通路及び水通路を備え、
前記急冷油通路が、急冷油を前記急冷油冷却システム(51)から前記熱交換器(153)に移送するように構成された通路を介して前記急冷油冷却システム(51)の急冷油出口に接続された急冷油のための入口と、急冷油リサイクル通路を介して前記急冷油冷却システム(51)の急冷油入口に接続された急冷油出口と、を有し、
前記熱交換器(153)の前記水通路が、前記熱交換器(153)内で加熱される水のための入口と、前記加湿器(150)の水入口に接続された水のための出口と、を有する、請求項4に記載のエチレンプラント。
【請求項6】
前記プラントが、希釈蒸気を生成するように構成されたヒートポンプシステムを備える希釈蒸気生成器を備え、任意選択的に、前記ヒートポンプシステムが、複数の熱源、複数のシンク、又はその両方を有し、更に任意選択的に、前記プラントが、前記熱分解反応器(91)の上流の前記熱交換器(90)の前記供給入口の上流で前記炭化水素供給原料を予熱するための熱交換器(30、43)を備え、前記熱交換器が、熱分解反応器流出物を冷却するために使用される急冷水、急冷油、及び中間油のうちの1つ以上から熱を受け取るように構成されている、請求項1に記載のエチレンプラント。
【請求項7】
前記炭化水素供給物の蒸発のために急冷油冷却システム(51)において使用される急冷油から熱を受け取るように構成された炭化水素供給物蒸発器(46)を備え、前記急冷油冷却システムが、急冷油で熱分解反応器流出物を更に冷却するように構成されているか、又は前記炭化水素供給物の蒸発のために前記ヒートポンプの蒸気冷媒(48)から凝縮熱を受け取るように構成されている、請求項6に記載のエチレンプラント。
【請求項8】
前記炭化水素供給物蒸発器(44)が、急冷油冷却システム(52)で使用される中間油から前記炭化水素供給物の前記蒸発のための前記熱のうちの少なくとも一部を受け取るように構成されており、前記中間油冷却システムが、熱分解反応器流出物を中間油で更に冷却するように構成されている、請求項7に記載のエチレンプラント。
【請求項9】
前記プラントが、前記電動熱分解反応器に電気を供給するように構成された電力接続を備え、前記電力接続が、再生可能資源から電力を生成するための電力システムへの接続である、請求項1に記載のエチレンプラント。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか一項に記載のエチレンプラントを使用して炭化水素供給物からエチレンを含む熱分解反応器流出物を生成するためのプロセスであって、炭化水素供給原料-蒸気混合物を電動熱分解反応器(91)に供給することと、前記エチレンプラントの前記電動熱分解反応器(91)において蒸気の存在下で前記炭化水素供給原料を分解して、エチレンを含む前記熱分解反応器流出物を生成することと、
前記炭化水素供給原料の前記分解の前に、前記熱分解反応器流出物から前記炭化水素供給原料-蒸気混合物に熱を伝達するように構成された熱交換器(90)に前記熱分解反応器流出物を供給することと、前記熱交換器(90)において前記熱分解反応器流出物から前記炭化水素供給原料-蒸気混合物に熱を伝達することと、それによって、前記熱分解反応器流出物を、前記熱交換器(90)の熱分解反応器流出物出口において、500℃未満の温度、好ましくは350℃~450℃の範囲の温度、より好ましくは325℃~425℃の範囲の温度に冷却することと、を含む、プロセス。
【請求項11】
気体炭化水素供給原料が、炭化水素供給物として使用され、前記気体炭化水素供給原料が、前記熱交換器(90)の前記供給入口の上流の加湿器(150)内で加湿され、それによって炭化水素-希釈剤混合物を提供する、請求項10に記載のプロセス。
【請求項12】
液体炭化水素供給原料が、炭化水素供給物として使用され、前記エチレンプラントが、急冷水冷却回路(65)を備えた急冷水冷却システム(60)と、一次分留器(50)と、を備える、冷却セクションを備え、前記一次分留器が、急冷油冷却回路(55)を備えた急冷油冷却システム(51)と、中間油冷却回路(57)を備えた中間油セクション(52)と、を備え、冷却回路が、液体炭化水素供給原料を予熱及び蒸発させ、蒸発した炭化水素供給原料を希釈蒸気と混合し、得られた混合物を前記熱交換器(90)に供給するために使用される、請求項10に記載のプロセス。
【請求項13】
炭化水素供給物として、液体供給原料及び気体炭化水素供給原料の混合物を使用する、請求項10に記載のプロセス。
【請求項14】
前記炭化水素-蒸気混合物を、前記熱分解反応器流出物から前記熱分解反応器のための前記供給物に、前記炭化水素-蒸気混合物の水露点を超える温度で、熱を伝達するように構成された、前記熱交換器(90)に、供給することと、
前記熱交換器(90)内の前記熱分解反応器流出物からの廃熱を用いて、前記炭化水素-蒸気混合物を、前記電動熱分解反応器(91)のために適切な入口温度まで加熱することと、
前記加熱された炭化水素-蒸気混合物を、前記熱交換器(90)から前記電気的に加熱された熱分解反応器(91)に供給することあって、前記熱分解反応器は、前記加熱された炭化水素-蒸気混合物を、熱分解反応温度まで更に加熱し、前記熱分解反応器は、前記炭化水素供給物の前記分解生成物への変換のための反応熱を提供し、それによって前記分解生成物を提供する、供給することと、を含み、任意選択的に、前記電動熱分解反応器(91)の前記入口温度が、気体炭化水素供給原料については650℃~730℃の範囲であり、液体炭化水素供給原料については570℃~650℃の範囲である、請求項10に記載のプロセス。
【請求項15】
前記エチレンプラントの冷凍回路の熱が、希釈蒸気の生成、原料の予熱、及び液体原料の蒸発から選択される少なくとも1つの目的のために、好ましくは希釈蒸気の生成、液体原料の予熱、及び液体原料の蒸発のために使用される、請求項10に記載のプロセス。
【国際調査報告】