(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-04
(54)【発明の名称】生細胞の代謝平衡および代謝能を決定するための方法およびシステム
(51)【国際特許分類】
C12Q 1/06 20060101AFI20240927BHJP
C12M 1/00 20060101ALI20240927BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20240927BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240927BHJP
A61P 37/02 20060101ALI20240927BHJP
A61K 35/17 20150101ALI20240927BHJP
【FI】
C12Q1/06
C12M1/00 A
C12N5/10
A61P35/00
A61P37/02
A61K35/17
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024521881
(86)(22)【出願日】2022-10-11
(85)【翻訳文提出日】2024-04-10
(86)【国際出願番号】 US2022077884
(87)【国際公開番号】W WO2023064752
(87)【国際公開日】2023-04-20
(32)【優先日】2021-10-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】399117121
【氏名又は名称】アジレント・テクノロジーズ・インク
【氏名又は名称原語表記】AGILENT TECHNOLOGIES, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【氏名又は名称】森本 聡二
(74)【代理人】
【識別番号】100166268
【氏名又は名称】田中 祐
(74)【代理人】
【識別番号】100180231
【氏名又は名称】水島 亜希子
(72)【発明者】
【氏名】フィラルド,マリア・ナタリア・ロメロ
(72)【発明者】
【氏名】ハインズ,ジェイムズ・ナイル
【テーマコード(参考)】
4B029
4B063
4B065
4C087
【Fターム(参考)】
4B029AA07
4B029BB11
4B029CC01
4B029CC02
4B029FA15
4B063QA01
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4B063QR67
4B063QR90
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4B065AA90X
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4B065AB01
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4B065BD25
4B065CA24
4B065CA44
4B065CA60
4C087AA01
4C087AA02
4C087AA03
4C087BB64
4C087BB65
4C087DA32
4C087NA05
4C087ZB07
4C087ZB26
(57)【要約】
生細胞の生体エネルギー平衡および生体エネルギー能を単一のアッセイで評価するための方法およびシステムが本明細書に開示される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞試料の生体エネルギー平衡および生体エネルギー能を評価する方法であって、
酸素消費の参照値(VOC
Ref)を取得するステップと、
プロトン流出の参照値(VPE
Ref)を取得するステップと、
前記細胞試料にATPシンターゼ阻害剤、ミトコンドリア脱共役剤、および電子伝達鎖(ETC)阻害剤を逐次的に、部分的に同時に、または同時に接触させるステップであって、各接触により反応混合物が形成される、ステップと、
各反応混合物についての酸素消費の値(VOC
Mix)を取得するステップと、
各反応混合物についてのプロトン流出の値(VPE
Mix)を取得するステップと
を含み、
それにより、前記細胞試料の生体エネルギー平衡および生体エネルギー能を評価する、方法。
【請求項2】
前記ATPシンターゼ阻害剤を前記細胞試料に接触させた後に酸素消費の値およびプロトン流出の値を取得する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ミトコンドリア脱共役剤を前記細胞試料に接触させた後に酸素消費の値およびプロトン流出の値を取得する、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記ETC阻害剤を前記細胞試料に接触させた後に酸素消費の値およびプロトン流出の値を取得する、請求項1から3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記ATPシンターゼ阻害剤、前記ミトコンドリア脱共役剤、および前記ETC阻害剤を前記細胞試料と逐次的に接触させ、
(i)前記ATPシンターゼ阻害剤を前記細胞試料に接触させた後に酸素消費の値(例えば、第1の値)およびプロトン流出の値(例えば、第1の値)を取得し、
(ii)前記ミトコンドリア脱共役剤を前記細胞試料に接触させた後に酸素消費の値(例えば、第2の値)およびプロトン流出の値(例えば、第2の値)を取得し、
(iii)前記ETC阻害剤を前記細胞試料に接触させた後に酸素消費の値(例えば、第3の値)およびプロトン流出の値(例えば、第3の値)を取得する、
請求項1から4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
酸素消費の決定を密閉システムで行わない、例えば、システムが、前記試料への酸素逆拡散または実質的な酸素逆拡散が可能なものである、請求項1から5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
酸素消費が、前記試料への酸素逆拡散について補正した前記試料中の酸素枯渇である、請求項1から6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
酸素消費が、前記試料への酸素逆拡散について補正していない酸素枯渇である、請求項1から6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記酸素消費を、密閉システム、例えば、前記試料への酸素逆拡散または実質的な酸素逆拡散が可能でないシステムで決定する、請求項1から5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
酸素消費が、前記試料中の酸素枯渇と等しいまたは実質的に等しい、請求項1から9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
酸素消費を直接的または間接的に決定する、例えば、測定された酸素勾配、例えば試験ウェル内のもしくはキャピラリーにわたる測定された酸素勾配から推測する、または予め選択された時点において酸素を測定することによって推測する、請求項1から10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記VOC
Refが、前記細胞試料についての基礎または最初の酸素消費の値、例えば、前記細胞試料について反応混合物の形成前に行われた酸素消費の測定に基づく値を含む、請求項1から11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記酸素消費を酸素消費速度(OCR)によって測定する(例えば、直接的または間接的に)、請求項1から12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
VOC
Refを取得するステップが、前記細胞試料についての基礎または最初のOCRを決定すること(例えば、測定すること)を含む、請求項1から13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記細胞試料についての基礎または最初のOCRを決定するステップ(例えば、測定すること)が、代謝産物(例えば、O
2)、例えば、培地から消費された代謝産物(例えば、O
2)を感知するステップを含む、請求項1から14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記VPE
Refが、前記細胞試料についての基礎または最初のプロトン流出の値、例えば、前記細胞試料について前記反応混合物の形成前に行われたプロトン流出の測定に基づく値を含む、請求項1から15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記プロトン流出をプロトン流出速度(PER)によって測定する(例えば、直接的または間接的に)、請求項1から16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
細胞外酸性化速度(ECAR)を測定してプロトン流出の値を得る、請求項1から17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
VPE
Refを取得するステップが、前記細胞試料についての基礎または最初のPERを決定するステップ(例えば、測定すること)を含む、請求項1から18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
前記細胞試料についての基礎または最初のPERを決定するステップ(例えば、測定すること)が、例えば培地中に配置された、代謝産物または細胞構成物を感知するステップを含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記VOC
Refおよび前記VPE
Refが、互いに10時間以内(例えば、1時間以内、2時間以内、3時間以内、4時間以内、5時間以内、6時間以内、7時間以内、8時間以内、もしくは9時間以内、1分以内、2分以内、5分以内、10分以内、15分以内、30分以内、45分以内、60分以内、80分以内、もしくは90分以内、1秒以内、2秒以内、5秒以内、10秒以内、15秒以内、30秒以内、45秒以内、もしくは60秒以内、または1ミリ秒以内、10ミリ秒以内、50ミリ秒以内、100ミリ秒以内、200ミリ秒以内、400ミリ秒以内、600ミリ秒以内、もしくは800ミリ秒以内)に開始された酸素消費の測定およびプロトン流出の測定に基づくものである、請求項1から20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
前記VOC
Refおよび前記VPE
Refが、迅速な機器データ取得に適した時間内、例えば、1ミリ秒以内、10ミリ秒以内、50ミリ秒以内、100ミリ秒以内、200ミリ秒以内、400ミリ秒以内、600ミリ秒以内、もしくは800ミリ秒以内に開始された酸素消費の測定およびプロトン流出の測定に基づくものである、請求項1から21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
前記VOC
Refおよび前記VPE
Refが、長時間終点測定に適した時間内、例えば、1時間以内、2時間以内、3時間以内、4時間以内、5時間以内、6時間以内、7時間以内、8時間以内、もしくは9時間以内に開始された酸素消費の測定およびプロトン流出の測定に基づくものである、請求項1から21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
前記VOC
Refおよび前記VPE
Refが、逐次的に開始された酸素消費の測定およびプロトン流出の測定に基づくものである、請求項1から23のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
前記VOC
Refおよび前記VPE
Refが、実質的に同時に開始された酸素消費の測定およびプロトン流出の測定に基づくものである、請求項1から23のいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
前記細胞試料に前記ATPシンターゼ阻害剤、前記ミトコンドリア脱共役剤、および前記ETC阻害剤を接触させるステップが、前記ATPシンターゼ阻害剤、前記ミトコンドリア脱共役剤、および前記ETC阻害剤を、逐次的に、部分的に同時に、または同時に、前記細胞試料が配置されたウェルまたはマイクロチャンバー(例えば、マルチウェルプレートの)中に導入するステップ(例えば、例えば前記細胞試料の上に配置された容器(例えば、カートリッジ)のユニット(例えば、ポート)から注入するステップ)を含む、請求項1から25のいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
前記ATPシンターゼ阻害剤、前記ミトコンドリア脱共役剤、および前記ETC阻害剤を前記細胞試料に逐次的に接触させる、請求項1から26のいずれか1項に記載の方法。
【請求項28】
前記ATPシンターゼ阻害剤、前記ミトコンドリア脱共役剤、および前記ETC阻害剤を、前記細胞試料に、
(a)前記ATPシンターゼ阻害剤、前記ミトコンドリア脱共役剤、前記ETC阻害剤;
(b)前記ATPシンターゼ阻害剤、前記ETC阻害剤、前記ミトコンドリア脱共役剤;
(c)前記ミトコンドリア脱共役剤、前記ATPシンターゼ阻害剤、前記ETC阻害剤;
(d)前記ミトコンドリア脱共役剤、前記ETC阻害剤、前記ATPシンターゼ阻害剤;
(e)前記ETC阻害剤、前記ATPシンターゼ阻害剤、前記ミトコンドリア脱共役剤;または
(f)前記ETC阻害剤、前記ミトコンドリア脱共役剤、前記ATPシンターゼ阻害剤
の順序で(最初から最後まで)接触させる、請求項1から27のいずれか1項に記載の方法。
【請求項29】
前記ATPシンターゼ阻害剤、前記ミトコンドリア脱共役剤、および前記ETC阻害剤を前記細胞試料に、前記ATPシンターゼ阻害剤、前記ミトコンドリア脱共役剤、前記ETC阻害剤の順序で(最初から最後まで)接触させる、請求項1から28のいずれか1項に記載の方法。
【請求項30】
前記細胞試料への前記ATPシンターゼ阻害剤の接触、前記ミトコンドリア脱共役剤の接触、および前記ETC阻害剤の接触を、互いに10時間以内(例えば、1時間以内、2時間以内、3時間以内、4時間以内、5時間以内、6時間以内、7時間以内、8時間以内、もしくは9時間以内、1分以内、2分以内、5分以内、10分以内、15分以内、30分以内、45分以内、60分以内、80分以内、もしくは90分以内、1秒以内、2秒以内、5秒以内、10秒以内、15秒以内、30秒以内、45秒以内、もしくは60秒以内、または1ミリ秒以内、10ミリ秒以内、50ミリ秒以内、100ミリ秒以内、200ミリ秒以内、400ミリ秒以内、600ミリ秒以内、もしくは800ミリ秒以内)に行う、請求項1から29のいずれか1項に記載の方法。
【請求項31】
前記細胞試料への前記ATPシンターゼ阻害剤の接触、前記ミトコンドリア脱共役剤の接触、および前記ETC阻害剤の接触を迅速な機器データ取得に適した時間内、例えば、1ミリ秒以内、10ミリ秒以内、50ミリ秒以内、100ミリ秒以内、200ミリ秒以内、400ミリ秒以内、600ミリ秒以内、もしくは800ミリ秒以内に行う、請求項1から30のいずれか1項に記載の方法。
【請求項32】
前記細胞試料への前記ATPシンターゼ阻害剤の接触、前記ミトコンドリア脱共役剤の接触、および前記ETC阻害剤の接触を長時間終点測定に適した時間内、例えば、1時間以内、2時間以内、3時間以内、4時間以内、5時間以内、6時間以内、7時間以内、8時間以内、もしくは9時間以内に行う、請求項1から30のいずれか1項に記載の方法。
【請求項33】
前記ATPシンターゼ阻害剤、前記ミトコンドリア脱共役剤、および前記ETC阻害剤のうちの2つまたは全てを前記細胞試料に同時にまたは部分的に同時に接触させる、請求項1から26のいずれか1項に記載の方法。
【請求項34】
(a)前記ATPシンターゼ阻害剤、前記ミトコンドリア脱共役剤;
(b)前記ATPシンターゼ阻害剤、前記ETC阻害剤;
(c)前記ミトコンドリア脱共役剤、前記ETC阻害剤;または
(d)前記ATPシンターゼ阻害剤、前記ミトコンドリア脱共役剤、前記ETC阻害剤
を前記細胞試料に同時に接触させる、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記反応混合物を形成するステップが、前記ATPシンターゼ阻害剤、前記ミトコンドリア脱共役剤、または前記ETC阻害剤のうちのいずれか2つまたは全てを、前記細胞試料に接触させる前に混合することステップを含む、請求項33または34に記載の方法。
【請求項36】
前記ATPシンターゼ阻害剤が、オリゴマイシンAを含む、請求項1から35のいずれか1項に記載の方法。
【請求項37】
前記ATPシンターゼ阻害剤(例えば、オリゴマイシンA)が、前記反応混合物中、少なくとも1nM、最大で前記ATPシンターゼ阻害剤(例えば、オリゴマイシンA)の溶解限度まで、例えば、1nM~100mM、10nM~10mM、0.1μM~1mM、0.1μM~100μM、0.1μM~10μM、0.2μM~5μM、0.5μM~2μM、0.2μM~4μM、0.2μM~3μM、0.2μM~1μM、0.2μM~0.5μM、4μM~5μM、3μM~5μM、2μM~5μM、1μM~5μM、0.5μM~5μM、1μM~3μM、2μM~4μM、1μM~2μM、0.5μM~2.5μM、例えば、0.2μM、0.5μM、1μM、1.5μM、2μM、2.5μM、3μM、3.5μM、4μM、4.5μM、または5μMの濃度で存在する、請求項1から36のいずれか1項に記載の方法。
【請求項38】
前記ATPシンターゼ阻害剤(例えば、オリゴマイシンA)が、前記反応混合物中、1μM~2μM、例えば、1.5μMの濃度で存在する、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記ミトコンドリア脱共役剤が、BAM15を含む、請求項1から38のいずれか1項に記載の方法。
【請求項40】
前記ミトコンドリア脱共役剤(例えば、BAM15)が、前記反応混合物中、少なくとも1nM、最大で前記ミトコンドリア脱共役剤(例えば、BAM15)の溶解限度まで、例えば、1nM~100mM、10nM~10mM、0.1μM~1mM、0.1μM~100μM、0.1μM~10μM、0.5μM~10μM、1μM~8μM、2μM~6μM、3μM~4μM、0.5μM~8μM、0.5μM~6μM、0.5μM~4μM、0.5μM~2μM、0.5μM~1μM、8μM~10μM、6μM~10μM、4μM~10μM、2μM~10μM、1μM~10μM、1μM~3μM、2μM~4μM、3μM~5μM、4μM~6μM、5μM~7μM、6μM~8μM、7μM~9μM、2μM~3μM、1μM~4μM、例えば、0.5μM、1μM、1.5μM、2μM、2.5μM、3μM、3.5μM、4μM、5μM、6μM、7μM、8μM、9μM、または10μMの濃度で存在する、請求項1から39のいずれか1項に記載の方法。
【請求項41】
前記ミトコンドリア脱共役剤(例えば、BAM15)が、前記反応混合物中、2μM~3μM、例えば、2.5μMの濃度で存在する、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記ETC阻害剤が、ロテノン、アンチマイシンA、またはこれらの組合せを含み、任意選択で、前記ETC阻害剤が、ロテノンおよびアンチマイシンAを含む、請求項1から41のいずれか1項に記載の方法。
【請求項43】
前記ETC阻害剤(例えば、ロテノン、アンチマイシンA、またはこれらの組合せ)が、前記反応混合物中、少なくとも1nM、最大で前記ETC阻害剤(例えば、ロテノン、アンチマイシンA、またはこれらの組合せ)の溶解限度まで、例えば、1nM~100mM、10nM~10mM、0.1μM~1mM、0.1μM~100μM、0.1μM~10μM、0.1μM~5μM、0.2μM~2μM、0.5μM~1μM、0.1μM~4μM、0.1μM~3μM、0.1μM~2μM、0.1μM~1μM、0.1μM~0.5μM、4μM~5μM、3μM~5μM、2μM~5μM、1μM~5μM、0.5μM~5μM、0.2μM~1μM、0.5μM~2μM、0.2μM~1μM、例えば、0.1μM、0.2μM、0.3μM、0.4μM、0.5μM、0.6μM、0.7μM、0.8μM、0.9μM、1μM、1.5μM、2μM、2.5μM、3μM、4μM、または5μMの濃度で存在し、任意選択で、前記ETC阻害剤が、前記反応混合物中、ロテノンを0.2μM~1μM(例えば、0.5μM)の濃度で含み、アンチマイシンAを0.2μM~1μM(例えば、0.5μM)の濃度で含む、請求項1から42のいずれか1項に記載の方法。
【請求項44】
請求項1から43のいずれか1項に記載の方法、前記反応混合物を形成するステップが、前記細胞試料に、エネルギー需要の増大を誘導する作用剤、例えば、イオノフォア(例えば、モネンシン)を接触させるステップをさらに含む。
【請求項45】
前記イオノフォア(例えば、モネンシン)が、前記反応混合物中、少なくとも1nM、最大で前記イオノフォア(例えば、モネンシン)の溶解限度まで、例えば、1nM~100mM、10nM~10mM、0.1μM~1mM、1μM~100μM、5μM~100μM、10μM~80μM、20μM~60μM、30μM~50μM、5μM~80μM、5μM~60μM、5μM~40μM、5μM~20μM、5μM~10μM、80μM~100μM、60μM~100μM、40μM~100μM、20μM~100μM、10μM~100μM、10μM~40μM、20μM~60μM、40μM~80μM、15μM~25μM、または10μM~30μM、例えば、5μM、10μM、20μM、30μM、40μM、50μM、60μM、70μM、80μM、90μM、または100μMの濃度で存在し、任意選択で、前記イオノフォア(例えば、モネンシン)が、前記反応混合物中、10μM~30μM、例えば、20μMの濃度で存在する請求項44に記載の方法。
【請求項46】
前記イオノフォア(例えば、モネンシン)を、アッセイ培地中、EtOH 10%中200μM~300μM(例えば、240μM)の濃度のストック溶液として調製する、請求項44または45に記載の方法。
【請求項47】
前記VOC
Mixが、前記反応混合物についての酸素消費の値、例えば、前記反応混合物の形成後に行われた前記反応混合物についての酸素消費の測定に基づく値を含む、請求項1から46のいずれか1項に記載の方法。
【請求項48】
前記酸素消費を酸素消費速度(OCR)によって測定する(例えば、直接的または間接的に)、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
前記VOC
Mixを取得するステップが、前記反応混合物についてのOCRを決定すること(例えば、測定すること)を含む、請求項47または48に記載の方法。
【請求項50】
前記反応混合物についてのOCRを決定すること(例えば、測定すること)が、代謝産物(例えば、O
2)、例えば、培地から消費された代謝産物(例えば、O
2)を感知することを含む、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
前記VPE
Mixが、前記反応混合物についてのプロトン流出の値、例えば、前記反応混合物の形成後に行われた前記反応混合物についてのプロトン流出の測定に基づく値を含む、請求項1から50のいずれか1項に記載の方法。
【請求項52】
前記プロトン流出をプロトン流出速度(PER)によって測定する(例えば、直接的または間接的に)、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
細胞外酸性化速度(ECAR)を測定してプロトン流出の値を得る、請求項51または52に記載の方法。
【請求項54】
前記PERを取得するステップが、前記反応混合物についてのPERを決定するステップ(例えば、測定すること)を含む、請求項51から53までに記載の方法。
【請求項55】
前記反応混合物についての前記PERを決定するステップ(例えば、測定すること)が、前記培地中に配置された細胞構成物を感知するステップを含む、請求項54に記載の方法。
【請求項56】
前記VOC
Mixおよび前記VPE
Mixが、互いに10時間以内(例えば、1時間以内、2時間以内、3時間以内、4時間以内、5時間以内、6時間以内、7時間以内、8時間以内、もしくは9時間以内、1分以内、2分以内、5分以内、10分以内、15分以内、30分以内、45分以内、60分以内、80分以内、もしくは90分以内、1秒以内、2秒以内、5秒以内、10秒以内、15秒以内、30秒以内、45秒以内、もしくは60秒以内、または1ミリ秒以内、10ミリ秒以内、50ミリ秒以内、100ミリ秒以内、200ミリ秒以内、400ミリ秒以内、600ミリ秒以内、もしくは800ミリ秒以内)に開始された酸素消費の測定およびプロトン流出の測定に基づくものである、請求項1から55のいずれか1項に記載の方法。
【請求項57】
前記VOC
Mixおよび前記VPE
Mixが、迅速な機器データ取得に適した時間内、例えば、1ミリ秒以内、10ミリ秒以内、50ミリ秒以内、100ミリ秒以内、200ミリ秒以内、400ミリ秒以内、600ミリ秒以内、もしくは800ミリ秒以内に開始された酸素消費の測定およびプロトン流出の測定に基づくものである、請求項56に記載の方法。
【請求項58】
前記VOC
Mixおよび前記VPE
Mixが、長時間終点測定に適した時間内、例えば、1時間以内、2時間以内、3時間以内、4時間以内、5時間以内、6時間以内、7時間以内、8時間以内、もしくは9時間以内に開始された酸素消費の測定およびプロトン流出の測定に基づくものである、請求項56に記載の方法。
【請求項59】
前記VOC
Mixおよび前記VPE
Mixが、逐次的に開始された酸素消費の測定およびプロトン流出の測定に基づくものである、請求項1から58のいずれか1項に記載の方法。
【請求項60】
前記VOC
Mixおよび前記VPE
Mixが、実質的に同時に開始された酸素消費の測定およびプロトン流出の測定に基づくものである、請求項1から58のいずれか1項に記載の方法。
【請求項61】
前記VOC
Ref、前記VPE
Ref、前記VOC
Mix、および前記VPE
Mixをソフトウェアプログラムに供給するステップと、前記ソフトウェアプログラムを使用して、前記細胞試料の前記生体エネルギー平衡および生体エネルギー能を算出する(例えば、OCR値およびPER値に変換する)ステップとをさらに含む、請求項1から60のいずれか1項に記載の方法。
【請求項62】
VOC
RefおよびVPE
Refを取得する前に前記細胞試料をウェルまたはマイクロチャンバー(例えば、マルチウェルプレートの)中に配置するステップをさらに含む、請求項1から61のいずれか1項に記載の方法。
【請求項63】
前記細胞試料をウェルまたはマイクロチャンバー(例えば、マルチウェルプレートの)中に配置するステップの前に、細胞試料を取得するステップをさらに含む、請求項1から62のいずれか1項に記載の方法。
【請求項64】
前記反応混合物についての解糖によるプロトン流出の値(VglycoPE
Mix)を取得するステップをさらに含む、請求項1から63のいずれか1項に記載の方法。
【請求項65】
前記VglycoPE
Mixを解糖によるプロトン流出速度(glycoPER)によって測定する、請求項64に記載の方法。
【請求項66】
前記glycoPERをCO
2の寄与を数学的に除去することによって決定する、請求項65に記載の方法。
【請求項67】
基礎ミトコンドリアATP産生速度の値を取得するステップをさらに含む、請求項1から66のいずれか1項に記載の方法。
【請求項68】
前記基礎ミトコンドリアATP産生速度の値を前記反応混合物の形成前の酸素消費速度(OCR)(基礎のOCR)から最低酸素消費速度(oligo OCR)を引き算し、定数を掛けることによって取得する、請求項67に記載の方法。
【請求項69】
前記oligo OCRが、前記ATP阻害剤(例えば、オリゴマイシン)を前記細胞試料に接触させた後の最低OCRである、請求項68に記載の方法。
【請求項70】
前記定数が、2.75(P/O比と称される)*2(酸素原子を酸素分子に変換するため)である、請求項68または69に記載の方法。
【請求項71】
前記基礎のOCRが、前記ATPシンターゼ、前記脱共役剤、または前記ETC阻害剤のいずれかを最初に接触させる(例えば、注入する)前のOCRの測定値(例えば、任意の以前の測定値、例えば、最後の測定値またはいくつかの測定値の平均値)である、請求項68に記載の方法。
【請求項72】
基礎解糖ATP産生速度の値を取得するステップをさらに含む、請求項1から71のいずれか1項に記載の方法。
【請求項73】
基礎解糖ATP産生速度の値を、前記反応混合物の形成前(例えば、前記細胞試料に前記ATPシンターゼ阻害剤(例えば、オリゴマイシンA)を接触させる前)の細胞外酸性化速度(ECAR)の測定値を使用し、前記プロトン流出速度(PER)に変換して取得する、請求項72に記載の方法。
【請求項74】
前記PERへ変換することが、前記方法に使用される前記培地の緩衝能および前記細胞試料を保持する前記ウェルまたはマイクロチャンバーの容積を考慮に入れること、ならびに、例えば、前記基礎酸素消費速度(OCR)、および前記細胞試料に前記ETC阻害剤(例えば、ロテノン、アンチマイシン、またはこれらの組合せ)を接触させた後、かつ任意の次の接触させるステップ(例えば、注入)の前、例えば、前記細胞試料にイオノフォア(例えば、モネンシン)を接触させる前の最低測定値の測定値から算出される細胞外CO
2産生の寄与を差し引くことを含む、請求項73に記載の方法。
【請求項75】
最低測定値が、前記ETC阻害剤を前記細胞試料に接触させた後の下限範囲の平均値である、請求項74に記載の方法。
【請求項76】
最大呼吸能の値を取得するステップをさらに含む、請求項1から75のいずれか1項に記載の方法。
【請求項77】
前記最大呼吸能の値を、前記細胞に前記脱共役剤(例えば、BAM15)を接触させた後の酸素消費速度(OCR)の最高測定値を使用し、前記細胞試料に前記ETC阻害剤(例えば、ロテノン、アンチマイシン、またはこれらの組合せ)を接触させた後、かつ任意の次の接触させるステップ(例えば、注入)の前、例えば、前記細胞試料にイオノフォア(例えば、モネンシン)を接触させる前の酸素消費速度(OCR)の最低測定値を差し引くことによって取得する、請求項76に記載の方法。
【請求項78】
予備好気呼吸能(予備呼吸能としても公知)の値を取得するステップをさらに含む、請求項1から77のいずれか1項に記載の方法。
【請求項79】
予備好気呼吸能の値を、前記細胞試料に前記脱共役剤(例えば、BAM15)を接触させた後の酸素消費速度(OCR)の最高測定値と、前記細胞試料に前記ATPシンターゼ阻害剤(例えば、オリゴマイシンA)、前記脱共役剤(例えば、BAM15)、または前記ETC阻害剤(例えば、ロテノン、アンチマイシン、またはこれらの組合せ)のうちのいずれか最初のものを接触させる前の最後の酸素消費速度(OCR)の測定値との差異を決定することによって取得する、請求項78に記載の方法。
【請求項80】
予備好気呼吸能の値が、ATP産生速度に係数5.5を掛けた単位で表される、請求項78または79に記載の方法。
【請求項81】
最大ミトコンドリア生体エネルギー能の値を取得するステップをさらに含む、請求項1から80のいずれか1項に記載の方法。
【請求項82】
最大ミトコンドリア生体エネルギー能の値を、前記細胞試料に前記脱共役剤(例えば、BAM15)を接触させた後の酸素消費速度(OCR)の最高測定値を使用し、前記細胞試料に前記ATPシンターゼ(例えば、オリゴマイシンA)を接触させた後、かつ任意の次の接触させる(例えば、注入)ステップの前(例えば、前記ETC阻害剤を接触させる(例えば、注入する)前)の最低測定値を差し引き、5.5を掛けることによって取得する、請求項81に記載の方法。
【請求項83】
代償(または最大解糖能)の値を取得するステップをさらに含む、請求項1から82のいずれか1項に記載の方法。
【請求項84】
前記代償(または最大解糖能)の値を、前記細胞試料に前記ETC阻害剤(例えば、ロテノン、アンチマイシンA、またはこれらの組合せ)を接触させた後、任意選択でさらに前記細胞試料にイオノフォア(例えば、モネンシン)を接触させた後のプロトン流出速度(PER)の最高測定値を使用して取得する、請求項83に記載の方法。
【請求項85】
細胞外酸性化の参照値(VEA
Ref)を取得するステップと、
前記反応混合物についての細胞外酸性化の値(VEA
Mix)を取得するステップと
をさらに含む、請求項1から84のいずれか1項に記載の方法。
【請求項86】
前記細胞試料が、培地中に配置された複数の細胞を含む、請求項1から85のいずれか1項に記載の方法。
【請求項87】
前記細胞試料が、免疫細胞を含む、請求項1から86のいずれか1項に記載の方法。
【請求項88】
前記免疫細胞が、免疫エフェクター細胞である、請求項87に記載の方法。
【請求項89】
前記細胞試料が、T細胞(例えば、CD4+T細胞、CD8+T細胞)を含む、請求項1から88のいずれか1項に記載の方法。
【請求項90】
前記T細胞が、Tヘルパー細胞(T
H細胞またはCD4+T細胞、例えば、Th1、Th2、Th17、Th9、またはTfh)、細胞傷害性T細胞(T
C細胞またはCD8+T細胞)、メモリーT細胞(例えば、セントラルメモリーT細胞(T
CM細胞、CD45RO+CCR7+CD62L+)、エフェクターメモリーT細胞(T
EM細胞、T
EMRA細胞、CD45RO+CCR7-CD62L-)、組織レジデントメモリーT細胞(T
RM、CD103+)、またはバーチャルメモリーT細胞(例えば、CD4バーチャルメモリーT細胞またはCD8バーチャルメモリーT細胞))、調節性T細胞(Treg、例えば、CD4+FOXP3+TregまたはCD4+FOXP3-Treg)、自然免疫様T細胞、ナチュラルキラーT細胞(NKT細胞)、粘膜関連インバリアントT細胞、ガンマデルタT細胞、またはこれらの任意の組合せを含む、請求項89に記載の方法。
【請求項91】
前記細胞試料が、工学的に操作されたT細胞、例えば、CAR-T細胞またはTCRーT細胞を含む、請求項1から90のいずれか1項に記載の方法。
【請求項92】
前記細胞試料が、初代T細胞、例えば、初代ナイーブT細胞(例えば、ヒトまたはマウス初代ナイーブT細胞)を含む、請求項1から91のいずれか1項に記載の方法。
【請求項93】
前記細胞試料が、NK細胞またはCD56+CD3-細胞を含む、請求項1から87のいずれか1項に記載の方法。
【請求項94】
前記NK細胞が、CD56
brightNK細胞、CD56
dimNK細胞、またはこれらの組合せを含む、請求項93に記載の方法。
【請求項95】
前記細胞試料が、工学的に操作されたNK細胞、例えば、CAR-NK細胞またはTCR-NK細胞を含む、請求項93または94に記載の方法。
【請求項96】
前記細胞試料が、CAR-NK細胞を含む、請求項93から95のいずれか1項に記載の方法。
【請求項97】
前記細胞試料が、初代NK細胞、例えば、初代ナイーブNK細胞(例えば、ヒトまたはマウス初代ナイーブNK細胞)を含む、請求項1から88のいずれか1項に記載の方法。
【請求項98】
前記細胞試料が、不死化免疫細胞、例えばTHP1細胞を含む、請求項1から88のいずれか1項に記載の方法。
【請求項99】
前記細胞試料が、浮遊細胞を含む、請求項1から98のいずれか1項に記載の方法。
【請求項100】
前記細胞試料が、平均サイズが例えば直径で15μm未満、例えば、14μm未満、13μm未満、12μm未満、11μm未満、10μm未満、9μm未満、8μm未満、7μm未満、6μm未満、5μm未満、または4μm未満、例えば、直径で4μm~12μm、4μm~10μm、4μm~8μm、5μm~7μm、5μm~6μm、または6μm~7μmの細胞を含む、請求項1から99のいずれか1項に記載の方法。
【請求項101】
前記細胞試料が、細胞治療、例えば養子細胞治療(ACT)に適した細胞を含む、請求項1から100のいずれか1項に記載の方法。
【請求項102】
前記細胞試料が、対象、例えば、障害、例えば、がんまたは免疫障害を有するまたは有するリスクがある対象由来の細胞を含む、請求項1から101のいずれか1項に記載の方法。
【請求項103】
前記細胞試料が、少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、または90%(数で)の免疫細胞(例えば、T細胞またはNK細胞)を含む、請求項1から102のいずれか1項に記載の方法。
【請求項104】
工学的に操作された細胞産物の産生をモニタリングする方法であって、前記工学的に操作された細胞産物の細胞試料の生体エネルギー平衡および生体エネルギー能を請求項1から103のいずれか1項に記載の方法に従って評価するステップを含み、それにより、前記工学的に操作された細胞産物の産生をモニタリングする、方法。
【請求項105】
細胞設計を最適化する方法であって、前記細胞設計を有する細胞試料の生体エネルギー平衡および生体エネルギー能を請求項1から103のいずれか1項に記載の方法に従って評価するステップを含み、それにより、前記細胞設計を最適化する、方法。
【請求項106】
培養培地を最適化する方法であって、前記培養培地で培養された細胞試料の生体エネルギー平衡および生体エネルギー能を請求項1から103のいずれか1項に記載の方法に従って評価するステップを含み、それにより、前記培養培地を最適化する、方法。
【請求項107】
培養条件を最適化する方法であって、前記培養条件下で培養された細胞試料の生体エネルギー平衡および生体エネルギー能を請求項1から103のいずれか1項に記載の方法に従って評価するステップを含み、それにより、前記培養条件を最適化する、方法。
【請求項108】
細胞調製物の品質を評価する方法であって、前記細胞調製物の細胞試料の生体エネルギー平衡および生体エネルギー能を請求項1から103のいずれか1項に記載の方法に従って評価するステップを含み、それにより、前記細胞調製物の品質を評価する、方法。
【請求項109】
工学的に操作された細胞(例えば、CAR T細胞またはCAR NK細胞)を作製する方法であって、
細胞(例えば、T細胞またはNK細胞)を、目的のタンパク質(例えば、CAR)をコードする導入遺伝子を発現するように改変するステップと、
前記工学的に操作された細胞の細胞試料の生体エネルギー平衡および生体エネルギー能を請求項1から103のいずれか1項に記載の方法に従って評価するステップと
を含み、
それにより、前記工学的に操作された細胞(例えば、CAR T細胞またはCAR NK細胞)を作製する、方法。
【請求項110】
対象における障害を治療する方法であって、
細胞治療用製品の細胞試料の生体エネルギー平衡および生体エネルギー能を請求項1から103のいずれか1項に記載の方法に従って評価するステップと、
前記細胞治療用製品を前記対象に投与するステップと
を含み、
それにより、前記対象における前記障害を治療する、方法。
【請求項111】
生理的に関連性のある条件に対する細胞の代謝応答を評価する方法であって、細胞試料の生体エネルギー平衡および生体エネルギー能を請求項1から103のいずれか1項に記載の方法に従って評価するステップを含み、それにより、前記代謝応答を評価する、方法。
【請求項112】
前記生理的に関連性のある条件が、腫瘍微小環境に関連するもの、例えば、低O
2、代謝基質の減少/変化、低pH、またはこれらの組合せである、請求項111に記載の方法。
【請求項113】
細胞試料の生体エネルギー平衡および生体エネルギー能を評価するためのシステム(例えば、装置)であって、
(i)マルチウェルプレートを支持するように適合させたステージと、
(ii)例えば、前記マルチウェルプレートのウェルまたはマイクロチャンバーにおいて、前記培地から消費されたまたは前記培地中に配置された前記細胞試料に関連する代謝産物または細胞構成物を感知するように適合させたセンサーと、
(iii)前記ウェルまたはマイクロチャンバーに流体を導入するように適合させた分散システムと
を含み、
前記ステージ、センサー、および分散システムが協同して、
前記センサーを使用して前記細胞試料についての酸素消費の参照値(VOC
Ref)およびプロトン流出の参照値(VPE
Ref)を取得し、
前記分散システムを使用して前記細胞試料にATPシンターゼ阻害剤、ミトコンドリア脱共役剤、および電子伝達鎖(ETC)阻害剤を接触させ、それにより、反応混合物を形成し、
前記センサーを使用して前記反応混合物についての酸素消費の値(VOC
Mix)および前記反応混合物についてのプロトン流出の値(VPE
Mix)を取得し、
それにより、前記細胞試料の生体エネルギー平衡および生体エネルギー能を評価する、システム。
【請求項114】
前記分散システムが、前記ウェルまたはマイクロチャンバーの上に配置された少なくとも1つのユニット(例えば、ポート)を含む、請求項113に記載のシステム。
【請求項115】
前記センサーが、光学センサーを含む、請求項113または114に記載のシステム。
【請求項116】
前記センサーが、フルオロフォアを感知するように適合させたものである、請求項115に記載のシステム。
【請求項117】
コンピュータモジュールおよびソフトウェアをさらに含み、コンピュータモジュールおよびソフトウェアが、前記センサーによって前記コンピュータモジュールに伝達された情報に基づいて前記生体エネルギー平衡および生体エネルギー能を算出するように適合させたものである、請求項113から116のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項118】
対象における障害を治療する方法における使用のための細胞治療用製品であって、前記方法が、細胞治療用製品の細胞試料の生体エネルギー平衡および生体エネルギー能を請求項1から103のいずれか1項に記載の方法に従って評価するステップを含む、細胞治療用製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願との相互参照
本出願は、2021年10月12日出願の米国仮出願第63/254,927号の利益を主張するものである。前述の出願の内容は引用することにより本明細書の一部をなすものとする。
【背景技術】
【0002】
解糖プロファイルおよびミトコンドリアプロファイルを含めた代謝適応性について細胞を評価するためには、一般にいくつもの独立したアッセイが必要である。細胞外酸性化速度(ECAR)出力を使用した単一のアッセイによるプロファイリングは定量的ではなく解糖に特異的なものでもない。さらに、ナイーブT細胞(および他のT細胞)のある特定のミトコンドリア脱共役剤に対する応答には頑強性がない。したがって、生体エネルギー平衡と生体エネルギー能の両方を含む完全な生体エネルギープロファイルを単一のアッセイによって定量的に決定する新しい方法およびシステムが必要とされている。
【発明の概要】
【0003】
ある態様では、本開示は、細胞試料の生体エネルギー平衡および生体エネルギー能を評価する方法を提供する。当該方法は、酸素消費の参照値(VOCRef)を取得するステップと、プロトン流出の参照値(VPERef)を取得するステップと、細胞試料にATPシンターゼ阻害剤、ミトコンドリア脱共役剤、および電子伝達鎖(ETC)阻害剤を逐次的に、部分的に同時に、または同時に接触させるステップであって、各接触により反応混合物が形成される、ステップと、各反応混合物についての酸素消費の値(VOCMix)を取得するステップと、各反応混合物についてのプロトン流出の値(VPEMix)を取得するステップとを含み、それにより、細胞試料の生体エネルギー平衡および生体エネルギー能を評価する。
【0004】
ある実施形態では、ATPシンターゼ阻害剤を細胞試料に接触させた後に、反応混合物についての酸素消費の値およびプロトン流出の値を取得する。ある実施形態では、ミトコンドリア脱共役剤を細胞試料に接触させた後に、反応混合物についての酸素消費の値およびプロトン流出の値を取得する。ある実施形態では、ETC阻害剤を細胞試料に接触させた後に、反応混合物についての酸素消費の値およびプロトン流出の値を取得する。
【0005】
ある実施形態では、ATPシンターゼ阻害剤、ミトコンドリア脱共役剤、およびETC阻害剤を細胞試料と逐次的に接触させ、(i)ATPシンターゼ阻害剤を細胞試料に接触させた後に、反応混合物(例えば、第1の反応混合物)についての酸素消費の値(例えば、第1の値)およびプロトン流出の値(例えば、第1の値)を取得し、(ii)ミトコンドリア脱共役剤を細胞試料に接触させた後に、反応混合物(例えば、第2の反応混合物)についての酸素消費の値(例えば、第2の値)およびプロトン流出の値(例えば、第2の値)を取得し、(iii)ETC阻害剤を細胞試料に接触させた後に、反応混合物(例えば、第3の反応混合物)についての酸素消費の値(例えば、第3の値)およびプロトン流出の値(例えば、第3の値)を取得する。
【0006】
ある実施形態では、酸素消費の決定を密閉システムで行わない、例えば、システムは、試料への酸素逆拡散または実質的な酸素逆拡散が可能なものである。ある実施形態では、酸素消費は、試料への酸素逆拡散について補正した試料中の酸素枯渇である。ある実施形態では、酸素消費は、試料への酸素逆拡散について補正していない酸素枯渇である。ある実施形態では、酸素消費は、密閉システム、例えば、試料への酸素逆拡散または実質的な酸素逆拡散が可能でないシステムで決定する。ある実施形態では、酸素消費は、試料中の酸素枯渇と等しいまたは実質的に等しい。
【0007】
ある実施形態では、酸素消費を直接的または間接的に決定する、例えば、測定された酸素勾配、例えば試験ウェル内のもしくはキャピラリーにわたる測定された酸素勾配から推測する、または予め選択された時点において酸素を測定することによって推測する。
【0008】
ある実施形態では、VOCRefは、細胞試料についての基礎または最初の酸素消費の値、例えば、細胞試料について反応混合物の形成前に行われた酸素消費の測定に基づく値を含む。ある実施形態では、酸素消費を酸素消費速度(OCR)によって測定する(例えば、直接的または間接的に)。ある実施形態では、VOCRefを取得するステップは、細胞試料についての基礎または最初のOCRを決定すること(例えば、測定すること)を含む。ある実施形態では、細胞試料についての基礎または最初のOCRを決定すること(例えば、測定すること)は、代謝産物(例えば、O2)、例えば、培地から消費された代謝産物(例えば、O2)を感知することを含む。
【0009】
ある実施形態では、VPERefは、細胞試料についての基礎または最初のプロトン流出の値、例えば、細胞試料について反応混合物の形成前に行われたプロトン流出の測定に基づく値を含む。ある実施形態では、プロトン流出をプロトン流出速度(PER)によって測定する(例えば、直接的または間接的に)。ある実施形態では、細胞外酸性化速度(ECAR)を測定してプロトン流出の値を得る。ある実施形態では、VPERefを取得するステップは、細胞試料についての基礎または最初のPERを決定すること(例えば、測定すること)を含む。ある実施形態では、細胞試料についての基礎または最初のPERを決定すること(例えば、測定すること)は、例えば培地中に配置された、代謝産物または細胞構成物を感知することを含む。
【0010】
ある実施形態では、VOCRefおよびVPERefは、互いに10時間以内(例えば、1時間以内、2時間以内、3時間以内、4時間以内、5時間以内、6時間以内、7時間以内、8時間以内、もしくは9時間以内、1分以内、2分以内、5分以内、10分以内、15分以内、30分以内、45分以内、60分以内、80分以内、もしくは90分以内、1秒以内、2秒以内、5秒以内、10秒以内、15秒以内、30秒以内、45秒以内、もしくは60秒以内、または1ミリ秒以内、10ミリ秒以内、50ミリ秒以内、100ミリ秒以内、200ミリ秒以内、400ミリ秒以内、600ミリ秒以内、もしくは800ミリ秒以内)に開始された酸素消費の測定およびプロトン流出の測定に基づくものである。ある実施形態では、VOCRefおよびVPERefは、迅速な機器データ取得に適した時間内、例えば、1ミリ秒以内、10ミリ秒以内、50ミリ秒以内、100ミリ秒以内、200ミリ秒以内、400ミリ秒以内、600ミリ秒以内、もしくは800ミリ秒以内に開始された酸素消費の測定およびプロトン流出の測定に基づくものである。ある実施形態では、VOCRefおよびVPERefは、長時間終点測定に適した時間内、例えば、1時間以内、2時間以内、3時間以内、4時間以内、5時間以内、6時間以内、7時間以内、8時間以内、もしくは9時間以内に開始された酸素消費の測定およびプロトン流出の測定に基づくものである。
【0011】
ある実施形態では、VOCRefおよびVPERefは、逐次的に開始された酸素消費の測定およびプロトン流出の測定に基づくものである。ある実施形態では、VOCRefおよびVPERefは、実質的に同時に開始された酸素消費の測定およびプロトン流出の測定に基づくものである。
【0012】
ある実施形態では、細胞試料にATPシンターゼ阻害剤、ミトコンドリア脱共役剤、およびETC阻害剤を接触させるステップは、ATPシンターゼ阻害剤、ミトコンドリア脱共役剤、およびETC阻害剤を、逐次的に、部分的に同時に、または同時に、細胞試料が配置されたウェルまたはマイクロチャンバー(例えば、マルチウェルプレートの)中に導入すること(例えば、例えば細胞試料の上に配置された容器(例えば、カートリッジ)のユニット(例えば、ポート)から注入すること)を含む。
【0013】
ある実施形態では、ATPシンターゼ阻害剤、ミトコンドリア脱共役剤、およびETC阻害剤を細胞試料に逐次的に接触させる。
【0014】
ある実施形態では、ATPシンターゼ阻害剤、ミトコンドリア脱共役剤、およびETC阻害剤を、細胞試料に、
(a)ATPシンターゼ阻害剤、ミトコンドリア脱共役剤、ETC阻害剤;
(b)ATPシンターゼ阻害剤、ETC阻害剤、ミトコンドリア脱共役剤;
(c)ミトコンドリア脱共役剤、ATPシンターゼ阻害剤、ETC阻害剤;
(d)ミトコンドリア脱共役剤、ETC阻害剤、ATPシンターゼ阻害剤;
(e)ETC阻害剤、ATPシンターゼ阻害剤、ミトコンドリア脱共役剤;または
(f)ETC阻害剤、ミトコンドリア脱共役剤、ATPシンターゼ阻害剤
の順序で(最初から最後まで)接触させる。
【0015】
ある実施形態では、ATPシンターゼ阻害剤、ミトコンドリア脱共役剤、およびETC阻害剤を細胞試料に、ATPシンターゼ阻害剤、ミトコンドリア脱共役剤、ETC阻害剤の順序で(最初から最後まで)接触させる。
【0016】
ある実施形態では、細胞試料へのATPシンターゼ阻害剤の接触、ミトコンドリア脱共役剤の接触、およびETC阻害剤の接触を互いに10時間以内(例えば、1時間以内、2時間以内、3時間以内、4時間以内、5時間以内、6時間以内、7時間以内、8時間以内、もしくは9時間以内、1分以内、2分以内、5分以内、10分以内、15分以内、30分以内、45分以内、60分以内、80分以内、もしくは90分以内、1秒以内、2秒以内、5秒以内、10秒以内、15秒以内、30秒以内、45秒以内、もしくは60秒以内、または1ミリ秒以内、10ミリ秒以内、50ミリ秒以内、100ミリ秒以内、200ミリ秒以内、400ミリ秒以内、600ミリ秒以内、もしくは800ミリ秒以内)に行う。ある実施形態では、細胞試料へのATPシンターゼ阻害剤の接触、ミトコンドリア脱共役剤の接触、およびETC阻害剤の接触を迅速な機器データ取得に適した時間内、例えば、1ミリ秒以内、10ミリ秒以内、50ミリ秒以内、100ミリ秒以内、200ミリ秒以内、400ミリ秒以内、600ミリ秒以内、もしくは800ミリ秒以内に行う。ある実施形態では、細胞試料へのATPシンターゼ阻害剤の接触、ミトコンドリア脱共役剤の接触、およびETC阻害剤の接触を長時間終点測定に適した時間内、例えば、1時間以内、2時間以内、3時間以内、4時間以内、5時間以内、6時間以内、7時間以内、8時間以内、もしくは9時間以内に行う。
【0017】
ある実施形態では、ATPシンターゼ阻害剤、ミトコンドリア脱共役剤、およびETC阻害剤のうちの2つまたは全てを細胞試料に同時にまたは部分的に同時に接触させる。
【0018】
ある実施形態では、
(a)ATPシンターゼ阻害剤、ミトコンドリア脱共役剤;
(b)ATPシンターゼ阻害剤、ETC阻害剤;
(c)ミトコンドリア脱共役剤、ETC阻害剤;または
(d)ATPシンターゼ阻害剤、ミトコンドリア脱共役剤、ETC阻害剤
を細胞試料に同時に接触させる。
【0019】
ある実施形態では、反応混合物を形成するステップは、ATPシンターゼ阻害剤、ミトコンドリア脱共役剤、またはETC阻害剤のうちのいずれか2つまたは全てを、細胞試料に接触させる前に混合することを含む。
【0020】
ある実施形態では、ATPシンターゼ阻害剤は、オリゴマイシンAを含む。ある実施形態では、ATPシンターゼ阻害剤(例えば、オリゴマイシンA)は、反応混合物中、少なくとも1nM、最大でATPシンターゼ阻害剤(例えば、オリゴマイシンA)の溶解限度まで、例えば、1nM~100mM、10nM~10mM、0.1μM~1mM、0.1μM~100μM、0.1μM~10μM、0.2μM~5μM、0.5μM~2μM、0.2μM~4μM、0.2μM~3μM、0.2μM~1μM、0.2μM~0.5μM、4μM~5μM、3μM~5μM、2μM~5μM、1μM~5μM、0.5μM~5μM、1μM~3μM、2μM~4μM、1μM~2μM、0.5μM~2.5μM、例えば、0.2μM、0.5μM、1μM、1.5μM、2μM、2.5μM、3μM、3.5μM、4μM、4.5μM、または5μMの濃度で存在する。ある実施形態では、ATPシンターゼ阻害剤(例えば、オリゴマイシンA)は、反応混合物中、1μM~2μM、例えば、1.5μMの濃度で存在する。
【0021】
ある実施形態では、ミトコンドリア脱共役剤は、BAM15を含む。ある実施形態では、ミトコンドリア脱共役剤(例えば、BAM15)は、反応混合物中、少なくとも1nM、最大でミトコンドリア脱共役剤(例えば、BAM15)の溶解限度まで、例えば、1nM~100mM、10nM~10mM、0.1μM~1mM、0.1μM~100μM、0.1μM~10μM、0.5μM~10μM、1μM~8μM、2μM~6μM、3μM~4μM、0.5μM~8μM、0.5μM~6μM、0.5μM~4μM、0.5μM~2μM、0.5μM~1μM、8μM~10μM、6μM~10μM、4μM~10μM、2μM~10μM、1μM~10μM、1μM~3μM、2μM~4μM、3μM~5μM、4μM~6μM、5μM~7μM、6μM~8μM、7μM~9μM、2μM~3μM、1μM~4μM、例えば、0.5μM、1μM、1.5μM、2μM、2.5μM、3μM、3.5μM、4μM、5μM、6μM、7μM、8μM、9μM、または10μMの濃度で存在する。ある実施形態では、ミトコンドリア脱共役剤(例えば、BAM15)は、反応混合物中、2μM~3μM、例えば、2.5μMの濃度で存在する。
【0022】
ある実施形態では、ETC阻害剤は、ロテノン、アンチマイシンA、またはこれらの組合せを含み、任意選択で、ETC阻害剤は、ロテノンおよびアンチマイシンAを含む。ある実施形態では、ETC阻害剤(例えば、ロテノン、アンチマイシンA、またはこれらの組合せ)は、反応混合物中、少なくとも1nM、最大でETC阻害剤(例えば、ロテノン、アンチマイシンA、またはこれらの組合せ)の溶解限度まで、例えば、1nM~100mM、10nM~10mM、0.1μM~1mM、0.1μM~100μM、0.1μM~10μM、0.1μM~5μM、0.2μM~2μM、0.5μM~1μM、0.1μM~4μM、0.1μM~3μM、0.1μM~2μM、0.1μM~1μM、0.1μM~0.5μM、4μM~5μM、3μM~5μM、2μM~5μM、1μM~5μM、0.5μM~5μM、0.2μM~1μM、0.5μM~2μM、0.2μM~1μM、例えば、0.1μM、0.2μM、0.3μM、0.4μM、0.5μM、0.6μM、0.7μM、0.8μM、0.9μM、1μM、1.5μM、2μM、2.5μM、3μM、4μM、または5μMの濃度で存在する。ある実施形態では、ETC阻害剤は、反応混合物中、ロテノンを0.2μM~1μM(例えば、0.5μM)の濃度で含み、アンチマイシンAを0.2μM~1μM(例えば、0.5μM)の濃度で含む。
【0023】
ある実施形態では、反応混合物を形成するステップは、細胞試料に、エネルギー需要の増大を誘導する作用剤、例えば、イオノフォア(例えば、モネンシン)を接触させることをさらに含む。ある実施形態では、イオノフォア(例えば、モネンシン)は、反応混合物中、少なくとも1nM、最大でイオノフォア(例えば、モネンシン)の溶解限度まで、例えば、1nM~100mM、10nM~10mM、0.1μM~1mM、1μM~100μM、5μM~100μM、10μM~80μM、20μM~60μM、30μM~50μM、5μM~80μM、5μM~60μM、5μM~40μM、5μM~20μM、5μM~10μM、80μM~100μM、60μM~100μM、40μM~100μM、20μM~100μM、10μM~100μM、10μM~40μM、20μM~60μM、40μM~80μM、15μM~25μM、または10μM~30μM、例えば、5μM、10μM、20μM、30μM、40μM、50μM、60μM、70μM、80μM、90μM、または100μMの濃度で存在する。ある実施形態では、イオノフォア(例えば、モネンシン)は、反応混合物中、10μM~30μM、例えば、20μMの濃度で存在する。ある実施形態では、イオノフォア(例えば、モネンシン)は、アッセイ培地中、EtOH 10%中200μM~300μM(例えば、240μM)の濃度のストック溶液として調製する。
【0024】
ある実施形態では、VOCMixは、反応混合物についての酸素消費の値、例えば、反応混合物の形成後に行われた反応混合物についての酸素消費の測定に基づく値を含む。ある実施形態では、酸素消費を酸素消費速度(OCR)によって測定する(例えば、直接的または間接的に)。ある実施形態では、VOCMixを取得するステップは、反応混合物についてのOCRを決定すること(例えば、測定すること)を含む。ある実施形態では、反応混合物についてのOCRを決定すること(例えば、測定すること)は、代謝産物(例えば、O2)、例えば、培地から消費された代謝産物(例えば、O2)を感知することを含む。
【0025】
ある実施形態では、VPEMixは、反応混合物についてのプロトン流出の値、例えば、反応混合物の形成後に行われた反応混合物についてのプロトン流出の測定に基づく値を含む。ある実施形態では、プロトン流出をプロトン流出速度(PER)によって測定する(例えば、直接的または間接的に)。ある実施形態では、細胞外酸性化速度(ECAR)を測定してプロトン流出の値を得る。ある実施形態では、PERを取得するステップは、反応混合物についてのPERを決定すること(例えば、測定すること)を含む。ある実施形態では、反応混合物についてのPERを決定すること(例えば、測定すること)は、培地中に配置された細胞構成物を感知することを含む。
【0026】
ある実施形態では、VOCMixおよびVPEMixは、互いに10時間以内(例えば、1時間以内、2時間以内、3時間以内、4時間以内、5時間以内、6時間以内、7時間以内、8時間以内、もしくは9時間以内、1分以内、2分以内、5分以内、10分以内、15分以内、30分以内、45分以内、60分以内、80分以内、もしくは90分以内、1秒以内、2秒以内、5秒以内、10秒以内、15秒以内、30秒以内、45秒以内、もしくは60秒以内、または1ミリ秒以内、10ミリ秒以内、50ミリ秒以内、100ミリ秒以内、200ミリ秒以内、400ミリ秒以内、600ミリ秒以内、もしくは800ミリ秒以内)に開始された酸素消費の測定およびプロトン流出の測定に基づくものである。ある実施形態では、VOCMixおよびVPEMixは、迅速な機器データ取得に適した時間内、例えば、1ミリ秒以内、10ミリ秒以内、50ミリ秒以内、100ミリ秒以内、200ミリ秒以内、400ミリ秒以内、600ミリ秒以内、もしくは800ミリ秒以内に開始された酸素消費の測定およびプロトン流出の測定に基づくものである。ある実施形態では、VOCMixおよびVPEMixは、長時間終点測定に適した時間内、例えば、1時間以内、2時間以内、3時間以内、4時間以内、5時間以内、6時間以内、7時間以内、8時間以内、もしくは9時間以内に開始された酸素消費の測定およびプロトン流出の測定に基づくものである。
【0027】
ある実施形態では、VOCMixおよびVPEMixは、逐次的に開始された酸素消費の測定およびプロトン流出の測定に基づくものである。ある実施形態では、VOCMixおよびVPEMixは、実質的に同時に開始された酸素消費の測定およびプロトン流出の測定に基づくものである。
【0028】
ある実施形態では、方法は、VOCRef、VPERef、VOCMix、およびVPEMixをソフトウェアプログラムに供給するステップと、ソフトウェアプログラムを使用して、細胞試料の生体エネルギー平衡および生体エネルギー能を算出する(例えば、OCR値およびPER値に変換する)ステップとをさらに含む。
【0029】
ある実施形態では、方法は、VOCRefおよびVPERefを取得する前に細胞試料をウェルまたはマイクロチャンバー(例えば、マルチウェルプレートの)中に配置するステップをさらに含む。
【0030】
ある実施形態では、方法は、ウェルまたはマイクロチャンバー(例えば、マルチウェルプレートの)中に配置するステップの前に、細胞試料を取得するステップをさらに含む。
【0031】
ある実施形態では、方法は、反応混合物についての解糖によるプロトン流出の値(VglycoPEMix)を取得するステップをさらに含む。ある実施形態では、VglycoPEMixを解糖によるプロトン流出速度(glycoPER)によって測定する。ある実施形態では、glycoPERをCO2の寄与を数学的に除去することによって決定する。
【0032】
ある実施形態では、方法は、基礎ミトコンドリアATP産生速度の値を取得するステップをさらに含む。ある実施形態では、基礎ミトコンドリアATP産生速度の値は、反応混合物の形成前の酸素消費速度(OCR)(基礎のOCR)から最低酸素消費速度(oligo OCR)を引き算し、定数を掛けることによって取得する。ある実施形態では、oligo OCRは、ATP阻害剤(例えば、オリゴマイシン)を細胞試料に接触させた後の最低OCRである。ある実施形態では、定数は、2.75(P/O比と称される)*2(酸素原子を酸素分子に変換するため)である。
【0033】
ある実施形態では、基礎の(basal)OCRは、ATPシンターゼ、脱共役剤、またはETC阻害剤のいずれかを最初に接触させる(例えば、注入する)前のOCRの測定値(例えば、任意の以前の測定値、例えば、最後の測定値またはいくつかの測定値の平均値)である。
【0034】
ある実施形態では、方法は、基礎解糖ATP産生速度の値を取得するステップをさらに含む。ある実施形態では、基礎解糖ATP産生速度の値を、反応混合物の形成前(例えば、細胞試料にATPシンターゼ阻害剤(例えば、オリゴマイシンA)を接触させる前)の細胞外酸性化速度(ECAR)の測定値を使用し、プロトン流出速度(PER)に変換して取得する。
【0035】
ある実施形態では、PERへの変換は、方法に使用される培地の緩衝能および細胞試料を保持するウェルまたはマイクロチャンバーの容積を考慮に入れること、ならびに、例えば、基礎酸素消費速度(OCR)、および細胞試料にETC阻害剤(例えば、ロテノン、アンチマイシン、またはこれらの組合せ)を接触させた後、かつ任意の次の接触させるステップ(例えば、注入)の前、例えば、細胞試料にイオノフォア(例えば、モネンシン)を接触させる前の最低測定値の測定値から算出される細胞外CO2産生の寄与を差し引くことを含む。ある実施形態では、最低測定値は、ETC阻害剤を細胞試料に接触させた後の下限範囲の平均値である。
【0036】
ある実施形態では、方法は、最大呼吸能の値を取得するステップをさらに含む。ある実施形態では、最大呼吸能の値を、細胞に脱共役剤(例えば、BAM15)を接触させた後の酸素消費速度(OCR)の最高測定値を使用し、細胞試料にETC阻害剤(例えば、ロテノン、アンチマイシン、またはこれらの組合せ)を接触させた後、かつ任意の次の接触させるステップ(例えば、注入)の前、例えば、細胞試料にイオノフォア(例えば、モネンシン)を接触させる前の酸素消費速度(OCR)の最低測定値を差し引くことによって取得する。
【0037】
ある実施形態では、方法は、予備好気呼吸能(reserve aerobic capacity)(予備呼吸能(spare respiratory capacity)としても公知)の値を取得するステップをさらに含む。ある実施形態では、予備好気呼吸能の値は、細胞試料に脱共役剤(例えば、BAM15)を接触させた後の酸素消費速度(OCR)の最高測定値と、細胞試料にATPシンターゼ阻害剤(例えば、オリゴマイシンA)、脱共役剤(例えば、BAM15)、またはETC阻害剤(例えば、ロテノン、アンチマイシン、またはこれらの組合せ)のうちのいずれか最初のものを接触させる前の最後の酸素消費速度(OCR)の測定値との差異を決定することによって取得する。ある実施形態では、予備好気呼吸能の値はATP産生速度に係数5.5を掛けた単位で表される。
【0038】
ある実施形態では、方法は、最大ミトコンドリア生体エネルギー能の値を取得するステップをさらに含む。ある実施形態では、最大ミトコンドリア生体エネルギー能の値を、細胞試料に脱共役剤(例えば、BAM15)を接触させた後の酸素消費速度(OCR)の最高測定値を使用し、細胞試料にATPシンターゼ(例えば、オリゴマイシンA)を接触させた後、かつ任意の次の接触させる(例えば、注入)ステップの前(例えば、ETC阻害剤を接触させる(例えば、注入する)前)の最低測定値を差し引き、5.5を掛けることによって取得する。
【0039】
ある実施形態では、方法は、代償(または最大解糖能)の値を取得するステップをさらに含む。ある実施形態では、代償(または最大解糖能)の値を、細胞試料にETC阻害剤(例えば、ロテノン、アンチマイシンA、またはこれらの組合せ)を接触させた後、さらに任意選択で細胞試料にイオノフォア(例えば、モネンシン)を接触させた後のプロトン流出速度(PER)の最高測定値を使用して取得する。
【0040】
ある実施形態では、方法は、細胞外酸性化の参照値(VEARef)を取得するステップと、反応混合物についての細胞外酸性化の値(VEAMix)を取得するステップとをさらに含む。
【0041】
ある実施形態では、細胞試料は、培地中に配置された複数の細胞を含む。ある実施形態では、細胞試料は免疫細胞を含む。ある実施形態では、免疫細胞は免疫エフェクター細胞である。
【0042】
ある実施形態では、細胞試料は、T細胞(例えば、CD4+T細胞、CD8+T細胞)を含む。ある実施形態では、T細胞は、Tヘルパー細胞(TH細胞またはCD4+T細胞、例えば、Th1、Th2、Th17、Th9、またはTfh)、細胞傷害性T細胞(TC細胞またはCD8+T細胞)、メモリーT細胞(例えば、セントラルメモリーT細胞(TCM細胞、CD45RO+CCR7+CD62L+)、エフェクターメモリーT細胞(TEM細胞、TEMRA細胞、CD45RO+CCR7-CD62L-)、組織レジデントメモリーT細胞(TRM、CD103+)、またはバーチャルメモリーT細胞(例えば、CD4バーチャルメモリーT細胞またはCD8バーチャルメモリーT細胞))、調節性T細胞(Treg、例えば、CD4+FOXP3+TregまたはCD4+FOXP3-Treg)、自然免疫様T細胞、ナチュラルキラーT細胞(NKT細胞)、粘膜関連インバリアントT細胞、ガンマデルタT細胞、またはこれらの任意の組合せを含む。ある実施形態では、細胞試料は、工学的に操作されたT細胞、例えば、CAR-T細胞またはTCRーT細胞を含む。ある実施形態では、細胞試料は、初代T細胞、例えば、初代ナイーブT細胞(例えば、ヒトまたはマウス初代ナイーブT細胞)を含む。
【0043】
ある実施形態では、細胞試料は、NK細胞またはCD56+CD3-細胞を含む。ある実施形態では、NK細胞CD56brightNK細胞、CD56dimNK細胞、またはこれらの組合せを含む。ある実施形態では、細胞試料は、工学的に操作されたNK細胞、例えば、CAR-NK細胞またはTCR-NK細胞を含む。ある実施形態では、細胞試料は、CAR-NK細胞を含む。ある実施形態では、細胞試料は、初代NK細胞、例えば、初代ナイーブNK細胞(例えば、ヒトまたはマウス初代ナイーブNK細胞)を含む。
【0044】
ある実施形態では、細胞試料は、不死化免疫細胞、例えばTHP1細胞を含む。
【0045】
ある実施形態では、細胞試料は、浮遊細胞を含む。ある実施形態では、細胞試料は、平均サイズが例えば直径で15μm未満、例えば、14μm未満、13μm未満、12μm未満、11μm未満、10μm未満、9μm未満、8μm未満、7μm未満、6μm未満、5μm未満、または4μm未満、例えば、直径で4μm~12μm、4μm~10μm、4μm~8μm、5μm~7μm、5μm~6μm、または6μm~7μmの細胞を含む。
【0046】
ある実施形態では、細胞試料は、細胞治療、例えば養子細胞治療(ACT)に適した細胞を含む。ある実施形態では、細胞試料は、障害、例えば、がんまたは免疫障害を有するまたは有するリスクがある対象由来の細胞を含む。
【0047】
ある実施形態では、細胞試料は、少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、または90%(数で)の免疫細胞(例えば、T細胞またはNK細胞)を含む。
【0048】
ある実施形態では、方法を単一のアッセイで実施する。
【0049】
ある態様では、本開示は、工学的に操作された細胞産物の産生をモニタリングする方法であって、工学的に操作された細胞産物の細胞試料の生体エネルギー平衡および生体エネルギー能を本明細書に記載の方法に従って評価するステップを含み、それにより、工学的に操作された細胞産物の産生をモニタリングする、方法を提供する。
【0050】
ある態様では、本開示は、細胞設計を最適化する方法であって、細胞設計を有する細胞試料の生体エネルギー平衡および生体エネルギー能を本明細書に記載の方法に従って評価するステップを含み、それにより、細胞設計を最適化する、方法を提供する。
【0051】
ある態様では、本開示は、培養培地を最適化する方法であって、培養培地で培養された細胞試料の生体エネルギー平衡および生体エネルギー能を本明細書に記載の方法に従って評価するステップを含み、それにより、培養培地を最適化する、方法を提供する。
【0052】
ある態様では、本開示は、培養条件を最適化する方法であって、培養条件下で培養された細胞試料の生体エネルギー平衡および生体エネルギー能を本明細書に記載の方法に従って評価するステップを含み、それにより、培養条件を最適化する、方法を提供する。
【0053】
ある態様では、本開示は、細胞調製物の品質を評価する方法であって、細胞調製物の細胞試料の生体エネルギー平衡および生体エネルギー能を本明細書に記載の方法に従って評価するステップを含み、それにより、細胞調製物の品質を評価する、方法を提供する。
【0054】
ある態様では、本開示は、工学的に操作された細胞(例えば、CAR T細胞またはCAR NK細胞)を作製する方法であって、細胞(例えば、T細胞またはNK細胞)を、目的のタンパク質(例えば、CAR)をコードする導入遺伝子を発現するように改変するステップと、工学的に操作された細胞の細胞試料の生体エネルギー平衡および生体エネルギー能を本明細書に記載の方法に従って評価するステップとを含み、それにより、工学的に操作された細胞(例えば、CAR T細胞またはCAR NK細胞)を作製する、方法を提供する。
【0055】
ある態様では、本開示は、対象における障害を治療する方法であって、細胞治療用製品の細胞試料の生体エネルギー平衡および生体エネルギー能を本明細書に記載の方法に従って評価するステップと、細胞治療用製品を対象に投与するステップとを含み、それにより、対象における障害を治療する、方法を提供する。
【0056】
ある実施形態では、障害は、がんである。ある実施形態では、障害は、固形腫瘍である。ある実施形態では、障害は、血液がんである。
【0057】
ある実施形態では、障害は、自己免疫疾患である。ある実施形態では、障害(またはその障害に対する治療)は、組織置換を含む。ある態様では、本開示は、対象における障害を治療する方法における使用のための細胞治療用製品であって、方法が、細胞治療用製品の細胞試料の生体エネルギー平衡および生体エネルギー能を本明細書に記載の方法に従って評価するステップを含む、細胞治療用製品を提供する。
【0058】
ある態様では、本開示は、生理的に関連性のある条件に対する細胞の代謝応答を評価する方法であって、細胞試料の生体エネルギー平衡および生体エネルギー能を本明細書に記載の方法に従って評価するステップを含み、それにより、代謝応答を評価する、方法を提供する。
【0059】
ある実施形態では、生理的に関連性のある条件は、腫瘍微小環境に関連するもの、例えば、低O2、代謝基質の減少/変化、低pH、またはこれらの組合せである。
【0060】
ある態様では、本開示は、細胞試料の生体エネルギー平衡および生体エネルギー能を評価するためのシステム(例えば、装置)であって、(i)マルチウェルプレートを支持するように適合させたステージと、(ii)例えば、マルチウェルプレートのウェルまたはマイクロチャンバーにおいて、培地から消費されたまたは培地中に配置された細胞試料に関連する代謝産物または細胞構成物を感知するように適合させたセンサーと、(iii)ウェルまたはマイクロチャンバーに流体を導入するように適合させた分散システムとを含み、ステージ、センサー、および分散システムが協同して、センサーを使用して細胞試料についての酸素消費の参照値(VOCRef)およびプロトン流出の参照値(VPERef)を取得し、分散システムを使用して細胞試料にATPシンターゼ阻害剤、ミトコンドリア脱共役剤、および電子伝達鎖(ETC)阻害剤を接触させ、それにより、反応混合物を形成し、センサーを使用して反応混合物についての酸素消費の値(VOCMix)および反応混合物についてのプロトン流出の値(VPEMix)を取得し、それにより、細胞試料の生体エネルギー平衡および生体エネルギー能を評価する、システム(例えば、装置)を提供する。
【0061】
ある実施形態では、分散システムは、ウェルまたはマイクロチャンバーの上に配置された少なくとも1つのユニット(例えば、ポート)を含む。ある実施形態では、センサーは、光学センサーを含む。ある実施形態では、センサーは、フルオロフォアを感知するように適合させたものである。ある実施形態では、システムは、センサーによってコンピュータモジュールに伝達された情報に基づいて生体エネルギー平衡および生体エネルギー能を算出するように適合させたコンピュータモジュールおよびソフトウェアをさらに含む。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【
図1A】類上皮細胞癌Panc-1細胞(ATCC、CRL-1469)における脱共役呼吸を測定するための、2μMのFCCPを使用した代謝プロファイリングアッセイのグラフである。細胞外酸素レベルが示されている。
【
図1B】類上皮細胞癌Panc-1細胞(ATCC、CRL-1469)における脱共役呼吸を測定するための、2μMのFCCPを使用した代謝プロファイリングアッセイのグラフである。酸素消費速度(OCR)が示されている。
【
図1C】類上皮細胞癌Panc-1細胞(ATCC、CRL-1469)における脱共役呼吸を測定するための、2μMのFCCPを使用した代謝プロファイリングアッセイのグラフである。OCR(時点ごと)が示されている。
【
図1D】マウス筋芽細胞C2C12細胞(ATCC、CRL-1772)における脱共役呼吸を測定するための、0.75μMのFCCPを使用した代謝プロファイリングアッセイのグラフである。細胞外酸素レベルが示されている。
【
図1E】マウス筋芽細胞C2C12細胞(ATCC、CRL-1772)における脱共役呼吸を測定するための、0.75μMのFCCPを使用した代謝プロファイリングアッセイのグラフである。酸素消費速度(OCR)が示されている。
【
図1F】マウス筋芽細胞C2C12細胞(ATCC、CRL-1772)における脱共役呼吸を測定するための、0.75μMのFCCPを使用した代謝プロファイリングアッセイのグラフである。OCR(時点ごと)が示されている。
【
図2A】ヒト末梢血CD4+T細胞(Stem Cell Technologies、Cat番号70026)における脱共役呼吸を測定するための、FCCPを使用した代謝プロファイリングアッセイのグラフである。細胞外酸素レベルが示されている。
【
図2B】ヒト末梢血CD4+T細胞(Stem Cell Technologies、Cat番号70026)における脱共役呼吸を測定するための、FCCPを使用した代謝プロファイリングアッセイのグラフである。OCRが示されている。
【
図2C】ヒト末梢血CD4+T細胞(Stem Cell Technologies、Cat番号70026)における脱共役呼吸を測定するための、FCCPを使用した代謝プロファイリングアッセイのグラフである。OCR(時点ごと)が示されている。
【
図3A】ヒト末梢血CD4+T細胞(Stem Cell Technologies、Cat番号70026)における脱共役呼吸を測定するための、BAM15を使用した代謝プロファイリングアッセイのグラフである。細胞外酸素レベルが示されている。
【
図3B】ヒト末梢血CD4+T細胞(Stem Cell Technologies、Cat番号70026)における脱共役呼吸を測定するための、BAM15を使用した代謝プロファイリングアッセイのグラフである。OCRが示されている。
【
図3C】ヒト末梢血CD4+T細胞(Stem Cell Technologies、Cat番号70026)における脱共役呼吸を測定するための、BAM15を使用した代謝プロファイリングアッセイのグラフである。OCR(時点ごと)が示されている。
【
図4A】ヒト末梢血CD4+T細胞(Stem Cell Technologies、Cat番号70026)およびヒト末梢血CD8+T細胞(Stem Cell Technologies、Cat番号70027)におけるFCCPまたはBAM15の滴定に応じたOCRを測定したグラフである。ヒトPB CD4+T細胞においてFCCPおよびBAM15を0.5μM、1μM、1.5μM、2μM、2.5μM、または3μMの濃度で試験した。
【
図4B】ヒト末梢血CD4+T細胞(Stem Cell Technologies、Cat番号70026)およびヒト末梢血CD8+T細胞(Stem Cell Technologies、Cat番号70027)におけるFCCPまたはBAM15の滴定に応じたOCRを測定したグラフである。ヒトPB CD4+T細胞においてFCCPおよびBAM15を0.5μM、1μM、1.5μM、2μM、2.5μM、または3μMの濃度で試験した。
【
図4C】ヒト末梢血CD4+T細胞(Stem Cell Technologies、Cat番号70026)およびヒト末梢血CD8+T細胞(Stem Cell Technologies、Cat番号70027)におけるFCCPまたはBAM15の滴定に応じたOCRを測定したグラフである。ヒトPB CD4+T細胞においてFCCPおよびBAM15を2.5μMの濃度で試験した。
【
図4D】ヒト末梢血CD4+T細胞(Stem Cell Technologies、Cat番号70026)およびヒト末梢血CD8+T細胞(Stem Cell Technologies、Cat番号70027)におけるFCCPまたはBAM15の滴定に応じたOCRを測定したグラフである。ヒトPB CD8+T細胞においてFCCPおよびBAM15をそれぞれ、3μMおよび2.5μMの濃度で試験した。
【
図5A】対照またはDynabeads(Thermo Fisher、Cat番号11453D)とコンジュゲートしたCD3/CD28抗体を用いて活性化した、脾臓から単離したマウスCD8+T細胞に対して、2.5μMのFCCPまたは2.5μMのBAM15のいずれかを使用して実施した代謝プロファイリングのグラフである。オリゴマイシン、FCCPまたはBAM15、およびロテノン+アンチマイシンAの注入が緑色の線と文字で示されている。OCR値(pmol/分)がy軸に示されている。
【
図5B】対照またはDynabeads(Thermo Fisher、Cat番号11453D)とコンジュゲートしたCD3/CD28抗体を用いて活性化した、脾臓から単離したマウスCD8+T細胞に対して、2.5μMのFCCPまたは2.5μMのBAM15のいずれかを使用して実施した代謝プロファイリングのグラフである。オリゴマイシン、FCCPまたはBAM15、およびロテノン+アンチマイシンAの注入が緑色の線と文字で示されている。ECAR値(mpH/分)がy軸に示されている。
【
図6】OCR値(呼吸)およびECAR値(解糖)を使用した生細胞における基礎生体エネルギー平衡の測定の仕方を例示するグラフである。これらの値を使用して、総ATP産生速度(pmol/分)を算出することができる。
【
図7A】代謝プロファイリングアッセイを使用した予備ミトコンドリアATP産生速度(pmol/分/細胞1×10
5個;y軸)の算出の仕方を例示するグラフである。予備ミトコンドリアATP産生速度を、BAM15注入後の最大OCRと最初の注入前のOCRの最後の測定値との差異として算出することができる。予備好気呼吸能(Aerobic reserve capacity)をATP産生速度にP/O比を掛けたものを単位として表すことができる。
【
図7B】代謝プロファイリングアッセイを使用した予備ミトコンドリアATP産生速度(pmol/分/細胞1×10
5個;y軸)の算出の仕方を例示するグラフである。予備ミトコンドリアATP産生速度を、BAM15注入後の最大OCRと最初の注入前のOCRの最後の測定値との差異として算出することができる。予備好気呼吸能(Aerobic reserve capacity)をATP産生速度にP/O比を掛けたものを単位として表すことができる。
【
図8A】代謝プロファイリングアッセイを使用してどのように解糖速度プロファイルを得、予備解糖ATP産生速度(pmol/分/細胞1×10
5個;y軸)を算出することができるかを例示するグラフである。
【
図8B】代謝プロファイリングアッセイを使用してどのように解糖速度プロファイルを得、予備解糖ATP産生速度(pmol/分/細胞1×10
5個;y軸)を算出することができるかを例示するグラフである。
【
図9A】活性化し、異なる培養培地条件下で7日間拡大させたHuman Peripheral Blood Pan T cell(STEMCELL Technologies、Cat番号200-0170)における基礎ATP産生速度および代謝平衡のグラフである。Human Peripheral Blood Pan T cellをImmunocult XF T Cell Expansion Medium(Stem Cell Technologies、Cat番号10981)中のDynabeadsヒト活性化因子CD3/CD28を用いて活性化し、5%CO
2インキュベーター中、37℃で培養した。活性化の2日後、Dynabeadsを除去し、細胞を4つの群に分割し、IL-2(300U/mL)を補充したImmunocult XF Medium(培地B)、IL-15(10ng/mL)を補充した培地B、2mMのグルタミンおよび10%FBSを補充したRPMI(培地A)およびIL-15(10ng/mL)を補充したIL-2(300U/mL)または培地A中に1mL当たり細胞1×10
6個で再浮遊させた。
【
図9B】活性化し、異なる培養培地条件下で7日間拡大させたHuman Peripheral Blood Pan T cell(STEMCELL Technologies、Cat番号200-0170)における解糖ATP産生速度(解糖による生体エネルギー能)のグラフである。Human Peripheral Blood Pan T cellをImmunocult XF T Cell Expansion Medium(Stem Cell Technologies、Cat番号10981)中のDynabeadsヒト活性化因子CD3/CD28を用いて活性化し、5%CO
2インキュベーター中、37℃で培養した。活性化の2日後、Dynabeadsを除去し、細胞を4つの群に分割し、IL-2(300U/mL)を補充したImmunocult XF Medium(培地B)、IL-15(10ng/mL)を補充した培地B、2mMのグルタミンおよび10%FBSを補充したRPMI(培地A)およびIL-15(10ng/mL)を補充したIL-2(300U/mL)または培地A中に1mL当たり細胞1×10
6個で再浮遊させた。
【
図9C】活性化し、異なる培養培地条件下で7日間拡大させたHuman Peripheral Blood Pan T cell(STEMCELL Technologies、Cat番号200-0170)における総ATP産生速度(生体エネルギー能)のグラフである。Human Peripheral Blood Pan T cellをImmunocult XF T Cell Expansion Medium(Stem Cell Technologies、Cat番号10981)中のDynabeadsヒト活性化因子CD3/CD28を用いて活性化し、5%CO
2インキュベーター中、37℃で培養した。活性化の2日後、Dynabeadsを除去し、細胞を4つの群に分割し、IL-2(300U/mL)を補充したImmunocult XF Medium(培地B)、IL-15(10ng/mL)を補充した培地B、2mMのグルタミンおよび10%FBSを補充したRPMI(培地A)およびIL-15(10ng/mL)を補充したIL-2(300U/mL)または培地A中に1mL当たり細胞1×10
6個で再浮遊させた。
【
図9D】活性化し、異なる培養培地条件下で7日間拡大させたHuman Peripheral Blood Pan T cell(STEMCELL Technologies、Cat番号200-0170)におけるミトコンドリアATP産生速度(ミトコンドリアによる生体エネルギー能)のグラフである。Human Peripheral Blood Pan T cellをImmunocult XF T Cell Expansion Medium(Stem Cell Technologies、Cat番号10981)中のDynabeadsヒト活性化因子CD3/CD28を用いて活性化し、5%CO
2インキュベーター中、37℃で培養した。活性化の2日後、Dynabeadsを除去し、細胞を4つの群に分割し、IL-2(300U/mL)を補充したImmunocult XF Medium(培地B)、IL-15(10ng/mL)を補充した培地B、2mMのグルタミンおよび10%FBSを補充したRPMI(培地A)およびIL-15(10ng/mL)を補充したIL-2(300U/mL)または培地A中に1mL当たり細胞1×10
6個で再浮遊させた。
【
図9E】活性化し、異なる培養培地条件下で7日間拡大させたHuman Peripheral Blood Pan T cell(STEMCELL Technologies、Cat番号200-0170)における予備呼吸能のグラフである。Human Peripheral Blood Pan T cellをImmunocult XF T Cell Expansion Medium(Stem Cell Technologies、Cat番号10981)中のDynabeadsヒト活性化因子CD3/CD28を用いて活性化し、5%CO
2インキュベーター中、37℃で培養した。活性化の2日後、Dynabeadsを除去し、細胞を4つの群に分割し、IL-2(300U/mL)を補充したImmunocult XF Medium(培地B)、IL-15(10ng/mL)を補充した培地B、2mMのグルタミンおよび10%FBSを補充したRPMI(培地A)およびIL-15(10ng/mL)を補充したIL-2(300U/mL)または培地A中に1mL当たり細胞1×10
6個で再浮遊させた。
【
図10】生体エネルギー仕事量、細胞試料の生体エネルギー平衡および生体エネルギー能を決定するための例示的なワークフローを示す図である。
【
図11A】ヒト末梢血NK細胞(Stem Cell Technologies、Cat番号70036)における脱共役呼吸を測定するための、2.5μMのFCCPを使用した代謝プロファイリングアッセイのグラフである。酸素消費速度(OCR)が示されている。
【
図11B】ヒト末梢血NK細胞(Stem Cell Technologies、Cat番号70036)における脱共役呼吸を測定するための、2.5μMのFCCPを使用した代謝プロファイリングアッセイのグラフである。細胞外酸素レベルが示されている。
【
図11C】ヒト末梢血NK細胞(Stem Cell Technologies、Cat番号70036)における脱共役呼吸を測定するための、2.5μMのFCCPを使用した代謝プロファイリングアッセイのグラフである。OCR(時点ごと)が示されている。
【
図12A】FCCPまたはBAM15の滴定に応じたヒト末梢血NK細胞(Stem Cell Technologies、Cat番号70036)におけるOCRを測定したグラフである。Human PB NK cellにおいてFCCPおよびBAM15を1μM、2μM、2.5μM、または3μMの濃度で試験した。
【
図12B】FCCPまたはBAM15の滴定に応じたヒト末梢血NK細胞(Stem Cell Technologies、Cat番号70036)におけるOCRを測定したグラフである。Human PB NK cellにおいてFCCPおよびBAM15を1μM、2μM、2.5μM、または3μMの濃度で試験した。
【
図13A】無刺激の、または刺激し、2mMのグルタミン、10%FBSおよびIL-2(1000U/mL)および10%FBSを補充したRPMI中で14日間拡大させたヒト末梢血NK細胞(Stem Cell Technologies、Cat番号70036)における基礎ATP産生速度および代謝平衡のグラフである。
【
図13B】無刺激の、または刺激し、2mMのグルタミン、10%FBSおよびIL-2(1000U/mL)および10%FBSを補充したRPMI中で14日間拡大させたヒト末梢血NK細胞(Stem Cell Technologies、Cat番号70036)における解糖ATP産生速度(解糖による生体エネルギー能)のグラフである。
【
図13C】無刺激の、または刺激し、2mMのグルタミン、10%FBSおよびIL-2(1000U/mL)および10%FBSを補充したRPMI中で14日間拡大させたヒト末梢血NK細胞(Stem Cell Technologies、Cat番号70036)における、総ATP産生速度(生体エネルギー能)のグラフである。
【
図13D】無刺激の、または刺激し、2mMのグルタミン、10%FBSおよびIL-2(1000U/mL)および10%FBSを補充したRPMI中で14日間拡大させたヒト末梢血NK細胞(Stem Cell Technologies、Cat番号70036)におけるミトコンドリアATP産生速度(ミトコンドリアによる生体エネルギー能)のグラフである。
【
図13E】無刺激の、または刺激し、2mMのグルタミン、10%FBSおよびIL-2(1000U/mL)および10%FBSを補充したRPMI中で14日間拡大させたヒト末梢血NK細胞(Stem Cell Technologies、Cat番号70036)における予備呼吸能のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0063】
T細胞の代謝適応性は、例えば、免疫療法用細胞製品の、抗腫瘍効力の増大のための最適な代謝表現型を記述するために使用される広範な概念である。代謝適応性パラメータとしては、例えば、基礎生体エネルギー表現型(基礎ミトコンドリアATP産生速度+解糖ATP産生速度)、ミトコンドリアによる最大呼吸能、および予備呼吸能を挙げることができる。標準的なSeahorse XF analyzerと既存のキットの組合せでは、これらのパラメータの測定は独立した複数のアッセイによって可能になり、少なくともアッセイ出力の全てを算出するために2倍の量の材料が必要である。さらに、ある特定のミトコンドリア脱共役剤のヒトT細胞およびマウスT細胞における性能は不十分なものであり、その結果、広範囲にわたる滴定後であっても最大呼吸能が過小評価され、解糖ATP産生速度を算出するために必要な、ミトコンドリアによらない呼吸が過大評価される。本明細書に記載の方法およびシステムは、単一のアッセイにより、最小量の生物材料を用い、煩わしい試薬再最適化を伴わずに代謝適応性パラメータの頑強性のある測定値を得ることを可能にするものである。ある実施形態では、本明細書に記載の方法を単一のアッセイで実施する。
【0064】
細胞試料について代謝/生体エネルギー平衡を評価する伝統的な方法は、一般には、酸素消費速度(OCR)および細胞外酸性化速度(ECAR)の測定に依拠し、これは、解糖活性に関する、特異性の低い手段である。理論に束縛されることを望むものではないが、ある実施形態では、本明細書に記載の方法は、(i)より徹底した生体エネルギーの概念を提供する、(ii)より正確な解糖パラメータを使用する、および/または(iii)伝統的な方法と比較して、免疫細胞の測定により適した脱共役剤を使用するものであると考えられる。ある実施形態では、方法は、例えば、免疫細胞に関して、より徹底した生体エネルギーの概念を提供し、より正確な解糖パラメータを使用するものである。本明細書に記載の方法は、少なくとも一部において、免疫細胞において、ミトコンドリア脱共役剤であるBAM15がFCCPよりも頑強性のある性能を示すという発見に基づき、それが本明細書に記載の方法の伝統的な方法を超える非常に大きな改善に寄与する。
【0065】
ある実施形態では、本明細書に記載の方法は、伝統的な方法と比較してより徹底した生体エネルギーの概念を提供するものである。ある実施形態では、方法は、生体エネルギー仕事量(例えば、細胞によって生成されるATPの量)、生体エネルギー平衡(例えば、酸化的リン酸化に対する、解糖によって生成されるATPの割合)、および生体エネルギー能(例えば、細胞がエネルギー需要の増大に応答して割り当てることができる解糖活性およびミトコンドリア活性の増大のレベル)の測定値を組み合わせる。
【0066】
別の実施形態では、本明細書に記載の方法は、伝統的な方法と比較してより正確な解糖パラメータを使用するものである。ある実施形態では、方法は、細胞外酸性化速度(ECAR)の代わりに、解糖によるプロトン流出速度(解糖ATP産生速度と等価であるglycoPER)を使用するものである。ECARでは、一般には、(i)測定用培地の緩衝能または(ii)好気的に生成されたCO2の、測定される酸性化への寄与が説明されない。本明細書に記載の方法のある実施形態では、緩衝係数で数学的に対応し(PERとして示される)、CO2寄与を除去してglycoPER値をもたらす。例えば、緩衝係数は、一般には、使用されるアッセイ培地に依存し、アッセイにおいて予め設定されており、ECARをPERに変換するために使用される(例えば、PER=ECAR*緩衝係数*測定中の「マイクロチャンバー」の容積)。ある実施形態では、方法は、ECAR/OCRプロットとは対照的に、ATP産生速度をパラメータと使用して代謝活性および平衡を記述するものである。理論に束縛されることを望むものではないが、ある実施形態では、本明細書に記載の方法により、同じウェルから代謝平衡と最大呼吸および/または予備能(好気および/または解糖)の両方を得ることができると考えられる。ある実施形態では、BAM15をミトコンドリア脱共役剤として使用する。ある実施形態では、モネンシン(または同様のイオノフォア)を使用し、最大解糖能も実証する。
【0067】
さらに別の実施形態では、本明細書に記載の方法は、本明細書に記載の細胞(例えば、免疫細胞、例えば、T細胞およびNK細胞)について最大および/または予備能をより正確に推定するために適したミトコンドリア脱共役剤を使用するものである。例えば、ミトコンドリア脱共役剤であるBAM15は、例えばFCCPと比較して、免疫細胞(例えば、T細胞およびNK細胞)に対する毒性が低い。理論に束縛されることを望むものではないが、ある実施形態では、免疫細胞において、BAM15の構造により、機器による測定時間中(例えば、3分間)、ミトコンドリアによる酸素消費の最大速度を維持することが可能になり、また、最適化された濃度で添加した場合、最大および/または予備のミトコンドリアによる生体エネルギー能の過小評価が回避されると考えられる。
【0068】
定義
別段の定義のない限り、本明細書において使用される全ての科学技術用語は、本発明が関する技術分野の当業者に一般に理解されるものと同じ意味を有する。
【0069】
本明細書で使用される場合、「1つの(a)」および「1つの(an)」という冠詞は、1つまたは1つよりも多く(例えば、少なくとも1つ)の、その冠詞の文法上の目的語を指す。
【0070】
「約」および「およそ」は、本明細書で使用される用語として、一般に、測定された数量に関して、測定の性質または精度を考慮して許容される誤差の程度を意味するものとする。例示的な誤差の程度は、20パーセント(%)以内、一般には10%以内であり、より一般には、所与の値または値の範囲の5%以内である。
【0071】
「取得する(aquire)」または「取得すること(aquiring)」は、本明細書で使用される用語として、物理的実体または値を「直接取得すること」または「間接的に取得すること」によって物理的実体または値、例えば数値の所有を得ることを指す。「直接取得すること」は、プロセスを実施して(例えば、合成または分析方法を実施して)、物理的実体または値を得ることを意味する。「間接的に取得すること」は、他者または他の供給源(例えば、物理的実体または値を直接取得した第三者である研究所)から物理的実体または値を受け取ることを指す。物理的実体を直接取得することには、物理的物質、例えば出発材料の物理的変化を含むプロセスを実施することが含まれる。例示的な変化としては、2つ以上の出発材料から物理的実体を作製すること、物質をせん断または分解すること、物質を分離または精製すること、2つ以上の別々の実体を組み合わせて混合物にすること、共有結合または非共有結合の切断または形成を含む化学反応を実施することが挙げられる。値を直接取得することには、試料または別の物質における物理的変化を含むプロセスを実施すること、例えば、物質、例えば、試料、分析物、または試薬の物理的変化を含む分析プロセス(本明細書では「物理的分析」と称される時もある)を実施すること、分析方法、例えば、以下の1つまたは複数を含む方法を実施すること:物質、例えば、分析物、もしくはその断片もしくは他の誘導体を別の物質から分離もしくは精製すること;分析物、もしくは断片もしくは他の誘導体を、別の物質、例えば、緩衝剤、溶媒、もしくは反応物と組み合わせること;または、分析物、もしくは断片もしくは他の誘導体の構造を、例えば、分析物の第1の原子と第2の原子との間の共有結合もしくは非共有結合を切断するもしくは形成させることによって;もしくは試薬、もしくは断片もしくは他の誘導体の構造を、例えば、試薬の第1の原子と第2の原子との間の共有結合もしくは非共有結合を切断するもしくは形成させることによって、変化させることが含まれる。ある実施形態では、直接取得することは、直接測定を包含する。ある実施形態では、間接的に取得することは、推測を包含する。
【0072】
「試料を取得すること」は、本明細書で使用される用語として、試料、例えば本明細書に記載の試料の所有を、試料を「直接取得すること」または「間接的に取得すること」によって得ることを指す。「試料を直接取得すること」とは、プロセスを実施して(例えば、外科的処置または抽出などの物理的方法を実施して)試料を得ることを意味する。「間接的に試料を取得すること」は、他者または他の供給源(例えば、試料を直接取得した第三者である研究所)から試料を受け取ることを指す。試料を直接取得することには、物理的物質、例えば出発材料、例えば組織、例えばヒト患者内の組織または患者から以前に単離された組織の物理的変化を含むプロセスを実施することが含まれる。例示的な変化としては、出発材料から物理的実体を作製すること;組織を解剖するもしくは小片にすること;物質を分離もしくは精製すること;2つもしくはそれよりも多くの別々の実体を組み合わせて混合物にすること;または共有結合もしくは非共有結合の切断もしくは形成を含む化学反応を実施することが挙げられる。
【0073】
「基礎ミトコンドリアATP産生速度」は、本明細書で使用される用語として、細胞試料にATPシンターゼ阻害剤、ミトコンドリア脱共役剤、および電子伝達鎖(ETC)阻害剤を接触させて反応混合物を形成する前の、細胞試料におけるミトコンドリアによるATP産生の速度を指す。ある実施形態では、基礎ミトコンドリアATP産生速度は、細胞試料にATPシンターゼ阻害剤、ミトコンドリア脱共役剤、またはETC阻害剤のいずれかを最初に接触させる前の酸素消費速度(基礎のOCR)の測定値(例えば、最後の測定値、またはいくつかの測定値の平均値)から最低酸素消費速度(oligo OCR)を引き算し、2.45から2.86の間の定数(P/O比と称される)*2(酸素原子を酸素分子に変換するため)を掛けることによって算出される。ある実施形態では、定数は2.75である。
【0074】
「生体エネルギー能」は、本明細書で使用される用語として、細胞が割り当てることができる、利用することができる、および/または誘導することができる解糖および/またはミトコンドリア活性の増大のレベルを指す。ある実施形態では、生体エネルギー能は、エネルギー需要の増大に応答しておよび/またはエネルギー生成の阻害/撹乱に応答して決定される。ある実施形態では、生体エネルギー能は、酸素消費の値(例えば、酸素消費速度(OCR))およびプロトン流出の値(例えば、プロトン流出速度(PER))を含む。ある実施形態では、酸素消費の値(例えば、OCR)はミトコンドリア脱共役に応答する。ある実施形態では、プロトン流出の値(例えば、PER)はATPアーゼ阻害に応答する。ある実施形態では、PERは、CO2の寄与が数学的に除去された、解糖由来PER(glycoPER)である。
【0075】
「基礎解糖ATP産生速度」は、本明細書で使用される用語として、細胞試料にATPシンターゼ阻害剤、ミトコンドリア脱共役剤、および電子伝達鎖(ETC)阻害剤を接触させて反応混合物を形成する前の、細胞試料における解糖による(例えば、グルコースが乳酸に変換された際の)ATP産生の速度を指す。ある実施形態では、基礎解糖ATP産生速度は、細胞試料にATPシンターゼ阻害剤を接触させる前の細胞外酸性化速度(ECAR)の測定値を使用し、アッセイに使用された培地の緩衝能およびマルチウェルプレートのマイクロチャンバーの容積を考慮し、細胞試料にETC阻害剤を接触させる前、および接触させた後の基礎酸素消費の測定値から算出される細胞外CO2産生の寄与を差し引いて、プロトン流出の速度に変換し、測定された酸性化に対するCO2の寄与の情報をもたらす値を導出し、今度はそれをATP産生速度に置き換えることによって算出される。
【0076】
「生体エネルギー平衡」は、本明細書で使用される用語として、好気的エネルギー産生および解糖によるエネルギー産生のバランスを指す。ある実施形態では、生体エネルギー平衡は、解糖または酸化的リン酸化によって生成されるATPの割合を記述するものである。ある実施形態では、生体エネルギー平衡は、ミトコンドリアによって作られたATPおよび解糖によって作られたATP、ミトコンドリアによって作られたATPおよび総ATP産生、解糖によって作られたATPおよび総ATP産生、またはこれらの任意の組合せの関連性、例えば比を含む。
【0077】
「生体エネルギー仕事量」は、本明細書で使用される用語として、細胞によって生成されるATPの量を指す。
【0078】
「がん」および「腫瘍」は、本明細書で互換的に使用される用語として、がんを引き起こす細胞の典型的な特徴、例えば、制御されない増殖、不死性、転移能、急速な成長および増殖速度、ならびにある特定の特徴的な形態学的特色を有する細胞が存在することを指す。がん細胞は、多くの場合に腫瘍の形態であるが、がん細胞は、動物内に単独で存在する場合もあり、白血病細胞などの非腫瘍形成性がん細胞である場合もある。これらの用語は、固形腫瘍、軟部組織腫瘍、または転移性病変を包含する。本明細書で使用される場合、「がん」という用語は、悪性になる前のがん、ならびに悪性のがんを包含する。
【0079】
「CAR NK細胞治療」は、本明細書で使用される用語として、CAR NK細胞を使用する治療を指す。
【0080】
「CAR T細胞療法」は、本明細書で使用される用語として、CAR T細胞を使用する治療を指す。
【0081】
「細胞試料」は、本明細書で使用される用語として、細胞を含む試料を指す。ある実施形態では、細胞試料は、複数の細胞を含む。ある実施形態では、細胞が培地中に配置されている。
【0082】
「キメラ抗原受容体」または「CAR」は、本明細書で使用される用語として、細胞外抗原結合性ドメイン、膜貫通ドメインおよび細胞内シグナル伝達ドメインを含む組換えポリペプチドを指す。キメラ抗原受容体は、免疫細胞を、標的抗原を発現する細胞に向け直すことができるものである。
【0083】
「キメラ抗原受容体NK細胞」または「CAR NK細胞」は、本明細書で使用される用語として、キメラ抗原受容体(CAR)を発現するように遺伝子操作されたNK細胞を指す。
【0084】
「キメラ抗原受容体T細胞」または「CAR T細胞」は、本明細書で使用される用語として、キメラ抗原受容体(CAR)を発現するように遺伝子操作されたT細胞を指す。
【0085】
「代償解糖能」および「最大解糖能」は、本明細書で互換的に使用される用語として、細胞試料の、ミトコンドリアによるATP産生の阻害および/またはエネルギー需要の増大後に解糖によってエネルギー産生を代償する能力を指す。代償解糖能は、基礎解糖に対するパーセンテージとして表すことができる。ある実施形態では、代償解糖能は、細胞試料にETC阻害剤またはイオノフォアを接触させた後のプロトン流出速度(PER)の最高測定値を使用して算出される。
【0086】
「最大呼吸能」は、本明細書で使用される用語として、細胞試料の、酸化的リン酸化によってATPを産生する理論的な能力を指す。ある実施形態では、最大呼吸能は、細胞試料にミトコンドリア脱共役剤を接触させた後の酸素消費速度(OCR)の最高測定値を使用し、細胞試料にETC阻害剤を接触させた後、かつ、あらゆるさらなる注入の前の酸素消費速度(OCR)の最低測定値を差し引くことで算出される。
【0087】
「または(or)」は、本明細書では、文脈によりそうでないことが明らかでない限り、「および/または(and/or)」という用語を意味するように使用され、その用語と互換的に使用される。本明細書のいずれかの箇所での「および/または(and/or)」という用語の使用は、文脈によりそうでないことが明白に示されない限り、「または(or)」という用語の使用が「および/または」という用語と交換可能でないことを意味するものではない。
【0088】
「初代細胞」は、本明細書で使用される用語として、対象、器官、または組織から直接単離または回収された細胞を指す。例えば、初代細胞は、生きている対象から得た血液から単離されたものであってよい。初代細胞は、酵素的または機械的方法を使用して単離または回収することができる。単離または回収したら、初代細胞を、増殖を支持するために必須の栄養素および増殖因子を含有する培地で培養することができる。初代細胞は、成長のために付着を必要としない浮遊細胞(例えば、足場非依存性細胞)であってもよく、成長のために付着を必要とする接着細胞(例えば、足場依存性細胞)であってもよい。
【0089】
「予備好気呼吸能(reserve aerobic capacity)」および「予備呼吸能(spare respiratory capacity)」は、本明細書で使用される用語として、細胞試料の、例えば、急性的にエネルギー需要が増大した場合に追加量のATPを酸化的リン酸化によって産生する能力を指す。ある実施形態では、予備好気呼吸能または予備呼吸能は、細胞試料にミトコンドリア脱共役剤を接触させた後の酸素消費速度(OCR)の最高測定値から、いかなる試薬も注入する前の酸素消費速度の基礎測定値を差し引いた差異から算出され、例えば酸素消費またはATP産生という単位を含めた複数を単位として表すことができる。
【0090】
「予備解糖能」は、本明細書で使用される用語として、細胞試料の、例えば、急性的にエネルギー需要が増大した場合に追加量のATPを解糖によって産生する能力を指す。ある実施形態では、予備の解糖能は、最大解糖能と基礎解糖ATP産生との差異として算出される。
【0091】
「試料」は、本明細書で使用される用語として、目的の供給源から得たまたはそれに由来する生体試料を指す。ある実施形態では、目的の供給源は、動物またはヒトなどの生物体を含む。試料の供給源は、血液または血液構成物;体液;新鮮な、凍結されたおよび/もしくは保存された器官、組織、生検材料、切除物、スメア、もしくは吸引物由来の固形組織;または対象の在胎期間もしくは発育期間の任意の時点からの細胞であってよい。ある実施形態では、試料の供給源は、血液または血液構成物である。ある実施形態では、試料は、一次試料、例えば、任意の適切な手段によって目的の供給源から直接得た試料である。ある実施形態では、試料は、一次試料を処理することによって(例えば、一次試料から1つもしくは複数の構成成分を除去することによって、および/または一次試料に1つもしくは複数の作用剤を添加することによって)得た調製物である。
【0092】
「T細胞受容体NK細胞」または「TCR NK細胞」は、本明細書で使用される用語として、T細胞受容体(TCR)を発現するように遺伝子操作されたNK細胞を指す。
【0093】
「T細胞受容体T細胞」または「TCR T細胞」は、本明細書で使用される用語として、T細胞受容体(TCR)を発現するように遺伝子操作されたT細胞を指す。
【0094】
「TCR NK細胞治療」は、本明細書で使用される用語として、TCR NK細胞を使用する治療を指す。
【0095】
「TCR T細胞療法」は、本明細書で使用される用語として、TCR T細胞を使用する治療を指す。
【0096】
細胞試料
本明細書に記載の方法およびシステムを使用して、種々の細胞試料の生体エネルギー平衡および生体エネルギー能を評価することができる。
【0097】
ある実施形態では、細胞試料は対象から得られるまたは対象に由来するものである。ある実施形態では、対象はヒトである。ある実施形態では、対象は非ヒト動物である。ある実施形態では、対象はマウスである。ある実施形態では、対象は、障害、例えば、本明細書に記載の障害を有する、またはそれを有するリスクがある。
【0098】
ある実施形態では、細胞試料は、初代細胞を含む。ある実施形態では、細胞試料は、生組織または器官から直接単離または回収された細胞を含む。ある実施形態では、細胞試料は、培養された細胞を含む。ある実施形態では、細胞試料は、初代細胞、または生組織もしくは器官から直接単離もしくは回収され、次いで、ex vivoで培養された細胞を含む。ある実施形態では、細胞試料は、不死化細胞を含む。ある実施形態では、細胞試料は、目的の遺伝子の異種発現のために改変された、例えば遺伝子操作された細胞を含む。ある実施形態では、細胞試料は、浮遊細胞を含む。ある実施形態では、細胞試料は、接着細胞を含む。ある実施形態では、細胞試料は、幹細胞を含む。ある実施形態では、細胞試料は、幹細胞に由来する細胞を含む。ある実施形態では、細胞試料は、培地、例えば、培養培地または成長培地を含む。ある実施形態では、細胞は、培地中に配置されたものである。ある実施形態では、細胞試料は、複数の細胞、例えば、本明細書に記載の複数の細胞を含む。
【0099】
ある実施形態では、細胞試料は、免疫細胞を含む。ある実施形態では、免疫細胞は、免疫エフェクター細胞である。ある実施形態では、免疫細胞は、初代免疫細胞である。ある実施形態では、免疫細胞は、不死化免疫細胞、例えばTHP1細胞である。ある実施形態では、細胞試料は、複数の免疫細胞を含む。ある実施形態では、免疫細胞は、遺伝子操作された免疫細胞である。ある実施形態では、細胞試料中の細胞の50%以上(例えば、60%、70%、80%、85%、90%、95%、98%、99%、または100%)が免疫細胞である。
【0100】
ある実施形態では、免疫細胞は、T細胞である。例示的なT細胞としては、これだけに限定されないが、Tヘルパー細胞(TH細胞またはCD4+T細胞、例えば、Th1、Th2、Th17、Th9、またはTfh)、細胞傷害性T細胞(TC細胞またはCD8+T細胞)、メモリーT細胞(例えば、セントラルメモリーT細胞(TCM細胞、CD45RO+CCR7+CD62L+)、エフェクターメモリーT細胞(TEM細胞、TEMRA細胞、CD45RO+CCR7-CD62L-)、組織レジデントメモリーT細胞(TRM、CD103+)、またはバーチャルメモリーT細胞(例えば、CD4バーチャルメモリーT細胞またはCD8バーチャルメモリーT細胞))、調節性T細胞(Treg、例えば、CD4+FOXP3+TregまたはCD4+FOXP3-Treg)、自然免疫様T細胞、ナチュラルキラーT細胞(NKT細胞)、粘膜関連インバリアントT細胞、およびガンマデルタT細胞が挙げられる。ある実施形態では、T細胞は、CD4+T細胞である。ある実施形態では、T細胞は、CD8+T細胞である。
【0101】
ある実施形態では、T細胞は、初代T細胞である。ある実施形態では、T細胞は、ナイーブT細胞である。ある実施形態では、T細胞は、初代ナイーブT細胞(例えば、ヒトまたはマウス初代ナイーブT細胞)である。ある実施形態では、T細胞は、遺伝子操作されたT細胞である。ある実施形態では、T細胞は、CAR-T細胞である。ある実施形態では、T細胞は、TCRーT細胞である。ある実施形態では、細胞試料は、複数のT細胞を含む。ある実施形態では、細胞試料中の細胞の50%以上(例えば、60%、70%、80%、85%、90%、95%、98%、99%、または100%)は、T細胞である。
【0102】
ある実施形態では、免疫細胞は、ナチュラルキラー細胞(NK細胞)である。ある実施形態では、免疫細胞は、CD56+CD3-細胞である。ある実施形態では、NK細胞は、CD56brightNK細胞である。ある実施形態では、NK細胞は、CD56dimNK細胞である。
【0103】
ある実施形態では、NK細胞は、初代NK細胞である。ある実施形態では、NK細胞は、ナイーブNK細胞である。ある実施形態では、NK細胞は、初代ナイーブNK細胞(例えば、ヒトまたはマウス初代ナイーブNK細胞)である。ある実施形態では、NK細胞は、遺伝子操作されたNK細胞である。ある実施形態では、NK細胞は、CAR-NK細胞である。ある実施形態では、NK細胞は、TCR-NK細胞である。ある実施形態では、細胞試料は、複数のNK細胞を含む。ある実施形態では、細胞試料中の細胞の50%以上(例えば、60%、70%、80%、85%、90%、95%、98%、99%、または100%)がNK細胞である。
【0104】
ある実施形態では、細胞のサイズは、直径で15μm未満、例えば、14μm未満、13μm未満、12μm未満、11μm未満、10μm未満、9μm未満、8μm未満、7μm未満、6μm未満、5μm未満、または4μm未満、例えば、直径で3μm~15μm、4μm~12μm、4μm~10μm、5μm~10μm、4μm~8μm、5μm~7μm、5μm~6μm、または6μm~7μmである。ある実施形態では、細胞のサイズは、典型的なT細胞またはNK細胞と同じまたは実質的に同じである。
【0105】
ある実施形態では、細胞試料は、複数の細胞を含み、細胞の平均サイズは、直径で15μm未満、例えば、14μm未満、13μm未満、12μm未満、11μm未満、10μm未満、9μm未満、8μm未満、7μm未満、6μm未満、5μm未満、または4μm未満、例えば、直径で3μm~15μm、4μm~12μm、4μm~10μm、5μm~10μm、4μm~8μm、5μm~7μm、5μm~6μm、または6μm~7μmである。ある実施形態では、細胞試料は、複数の細胞を含み、平均で細胞のサイズは典型的なT細胞またはNK細胞と同じまたは実質的に同じである。
【0106】
ある実施形態では、細胞は、対象における障害を処置するための治療における使用に適したものである。ある実施形態では、細胞は、細胞治療、例えば養子細胞治療(ACT)に適したものである。ある実施形態では、細胞は、免疫療法、例えば、がん免疫療法に適したものである。ある実施形態では、免疫療法は、自己免疫療法である。ある実施形態では、免疫療法は、同種免疫療法である。ある実施形態では、障害は、がんである。ある実施形態では、がんは、固形腫瘍である。ある実施形態では、がんは、血液がん、例えば、白血病、リンパ腫、または骨髄腫である。ある実施形態では、細胞を対象から単離または回収する。ある実施形態では、細胞を、目的の遺伝子を発現するようにさらに改変する、例えば遺伝子操作する。
【0107】
本明細書に記載の反応混合物は、ATPシンターゼ阻害剤、ミトコンドリア脱共役剤、またはETC阻害剤のいずれも接触させていない細胞試料に、ATPシンターゼ阻害剤、ミトコンドリア脱共役剤、またはETC阻害剤を接触させることによって形成することができる。本明細書に記載の反応混合物はまた、以前に形成された反応混合物(例えば、ATPシンターゼ阻害剤、ミトコンドリア脱共役剤、またはETC阻害剤を接触させた細胞試料)にATPシンターゼ阻害剤、ミトコンドリア脱共役剤、またはETC阻害剤を接触させることによって形成することもできる。例えば、本明細書に記載の反応混合物を、ATPシンターゼ阻害剤、ミトコンドリア脱共役剤、またはETC阻害剤と接触させていない細胞試料にATPシンターゼ阻害剤を接触させることによって形成することができる。別の例として、本明細書に記載の反応混合物を、ATPシンターゼ阻害剤と接触させた細胞試料にミトコンドリア脱共役剤を接触させることによって形成することができる。さらに別の例として、本明細書に記載の反応混合物を、ATPシンターゼ阻害剤およびミトコンドリア脱共役剤を接触させた細胞試料にETC阻害剤を接触させることによって形成することができる。
【0108】
ある実施形態では、本明細書に記載の方法およびシステムに、ATPシンターゼ阻害剤、ミトコンドリア脱共役剤、またはETC阻害剤を逐次的に接触させた単一細胞試料に由来する複数の反応混合物を使用することができる。ある実施形態では、逐次的な接触させるステップそれぞれにより、本明細書に記載の方法またはシステムに従って使用することができる反応混合物が形成される。
【0109】
ATPシンターゼ阻害剤
ATPシンターゼ阻害剤を本明細書に記載の方法およびシステムに使用することができる。
【0110】
ある実施形態では、ATPシンターゼ阻害剤は、本明細書に記載の細胞、例えば免疫細胞(例えばT細胞またはNK細胞)の測定における使用に適したものである。ATPシンターゼ阻害剤は、事前添加によって導入することもでき、アッセイ中の注入によって導入することもできる。
【0111】
ある実施形態では、ATPシンターゼ阻害剤は、オリゴマイシンまたはその誘導体である。例示的なオリゴマイシンとしては、これだけに限定されないが、オリゴマイシンA、オリゴマイシンB、オリゴマイシンC、オリゴマイシンD、オリゴマイシンE、オリゴマイシンF、ルタマイシンB、44-ホモオリゴマイシンA、および44-ホモオリゴマイシンB、またはこれらの任意の組合せが挙げられる。本明細書に記載の方法およびシステムに使用することができる他のATPシンターゼ阻害剤は、例えば、その全体が引用することにより本明細書の一部をなすものとする、Hong and Pedersen,Microbiol Mol Biol Rev.2008 Dec;72(4):590-641に記載されている。
【0112】
ある実施形態では、オリゴマイシンは、オリゴマイシンAまたはその誘導体である。オリゴマイシンは、状態3(リン酸化)呼吸を阻害し得る。オリゴマイシンAは、ADPのATPへの酸化的リン酸化のために必要なATPシンターゼのプロトンチャネル(FOサブユニット)を遮断することによってATPシンターゼを阻害する。オリゴマイシンAによるATP合成の阻害により、電子伝達鎖を通る電子の流れが有意に低減し得るが、プロトンリークまたはミトコンドリア脱共役として公知のプロセスに起因して、電子の流れは完全には停止しない。
【0113】
ある実施形態では、ATPシンターゼ阻害剤(例えば、オリゴマイシンA)を少なくとも1nM、最大でATPシンターゼ阻害剤(例えば、オリゴマイシンA)の溶解限度までの最終濃度で使用する。ある実施形態では、反応混合物中、ATPシンターゼ阻害剤(例えば、オリゴマイシンA)を1nM~100mM、例えば、10nM~10mM、0.1μM~1mM、0.1μM~100μM、0.1μM~10μM、0.2μM~5μM、0.5μM~2μM、0.2μM~4μM、0.2μM~3μM、0.2μM~1μM、0.2μM~0.5μM、4μM~5μM、3μM~5μM、2μM~5μM、1μM~5μM、0.5μM~5μM、1μM~3μM、2μM~4μM、1μM~2μM、0.5μM~2.5μM、例えば、0.2μM、0.5μM、1μM、1.5μM、2μM、2.5μM、3μM、3.5μM、4μM、4.5μM、または5μMの最終濃度で使用する。ある実施形態では、ATPシンターゼ阻害剤(例えば、オリゴマイシンA)を1μM~2μM、例えば、1.5μMの最終濃度で使用する。
【0114】
ミトコンドリア脱共役剤
ミトコンドリア脱共役剤を本明細書に記載の方法およびシステムに使用することができる。
【0115】
酸化的リン酸化には、栄養素の酸化と、それと同時に起こる、ミトコンドリア内膜を横断するプロトンサイクルによるATP産生のための酸素消費との共役が伴う。ATPシンターゼとは独立してプロトンがマトリックスに再進入することを可能にする何らかの経路により、ATP産生に由来するミトコンドリアによる酸素消費が脱共役される。薬理学的脱共役剤(ミトコンドリア脱共役剤としても公知)は、プロトンの濃度勾配および電気化学ポテンシャルに駆動されるプロトンのミトコンドリアマトリックスへの再進入を可能にする小分子である。薬理学的脱共役剤は、一般に、ミトコンドリアのpH勾配を利用して、内膜空間からミトコンドリアマトリックスにプロトンを折り返し輸送する、プロトノフォア、小分子有機化合物、一般には親油性弱酸である。性能が良い脱共役剤であるには、一般には、原形質膜のコンダクタンスに影響を及ぼすことなくミトコンドリアによる酸素消費を増大させ、ミトコンドリア膜を脱分極させ、また、広範な有効範囲を有する必要がある。ある実施形態では、ミトコンドリア脱共役剤は、ミトコンドリア内膜(IMM)を透過することが可能な作用剤である。
【0116】
ある実施形態では、ミトコンドリア脱共役剤は、本明細書に記載の細胞、例えば免疫細胞(例えばT細胞またはNK細胞)の測定における使用に適したものである。ミトコンドリア脱共役剤は、事前添加によって導入することもでき、アッセイ中の注入によって導入することもできる。
【0117】
ある実施形態では、ミトコンドリア脱共役剤は、BAMファミリーの化合物、例えば、BAM15またはその誘導体である。BAM15、(2-フルオロフェニル)-{6-[(2-フルオロフェニル)アミノ](1,2,5-オキサジアゾロ[3,4-e]ピラジン-5-イル)}アミンは、原形質膜のポテンシャルに影響を及ぼすことなくミトコンドリアによる酸素消費の最大速度を持続させることができる例示的な脱共役剤である。研究により、フラザン環、ピラジン環、およびアニリン環ならびにpKaが、その有効なプロトノフォア活性の維持を担うことが示唆された。BAM15は、例えば、その内容全体が引用することにより本明細書の一部をなすものとする、Kenwood et al.Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters,Volume 25,Issue 21,2015,Pages 4858-4861; Kenwood et al.Volume 3,Issue 2,2014,Pages 114-123;米国特許出願公報第2017/0240563号に記載されている。
【0118】
ある実施形態では、本明細書に記載の方法およびシステムでは、一般に使用される脱共役剤であるFCCPを化合物BAM15で置き換える。ある実施形態では、BAM15をT細胞において使用した場合、最大呼吸能に関してFCCPよりも頑強性のある測定が誘導され、それにより、各試料試験における脱共役剤の滴定が最小限になり、アッセイに必要な生物材料の量が減少し、また、分析器による測定時間3分間のより安定な脱共役応答がもたらされ、それにより、T細胞代謝適応性に関する正確な測定値を取得することが可能になる。ある実施形態では、FCCPの代わりにBAM15を使用することにより、脱共役剤をロテノンおよびアンチマイシンA注入前に注入した場合であっても解糖ATP産生速度および代償解糖活性を算出することが可能になり、単一ウェルから得たデータでT細胞の完全な代謝プロファイルがもたらされる。
【0119】
ある実施形態では、ミトコンドリア脱共役剤(例えば、BAM15)を少なくとも1nM、最大でミトコンドリア脱共役剤(例えば、BAM15)の溶解限度までの最終濃度で使用する。ある実施形態では、ミトコンドリア脱共役剤(例えば、BAM15)を、反応混合物中、1nM~100mM、例えば、10nM~10mM、0.1μM~1mM、0.1μM~100μM、0.1μM~10μM、0.5μM~10μM、1μM~8μM、2μM~6μM、3μM~4μM、0.5μM~8μM、0.5μM~6μM、0.5μM~4μM、0.5μM~2μM、0.5μM~1μM、8μM~10μM、6μM~10μM、4μM~10μM、2μM~10μM、1μM~10μM、1μM~3μM、2μM~4μM、3μM~5μM、4μM~6μM、5μM~7μM、6μM~8μM、7μM~9μM、2μM~3μM、1μM~4μM、例えば、0.5μM、1μM、1.5μM、2μM、2.5μM、3μM、3.5μM、4μM、5μM、6μM、7μM、8μM、9μM、または10μMの最終濃度で使用する。ある実施形態では、ミトコンドリア脱共役剤(例えば、BAM15)を2μM~3μM、例えば、2.5μMの最終濃度で使用する。
【0120】
ある実施形態では、ミトコンドリア脱共役剤(例えば、BAM15)を、機器による測定時間中(例えば、約3分間)、免疫細胞において、ミトコンドリアによる酸素消費の最大速度が維持され、また、最大および/または予備のミトコンドリアによる生体エネルギー能の過小評価が回避される最終濃度で使用する。
【0121】
電子伝達鎖(ETC)阻害剤
電子伝達鎖(ETC)阻害剤を本明細書に記載の方法およびシステムに使用することができる。
【0122】
電子伝達鎖は、酸化還元反応(還元と酸化が同時に起こる)によって電子供与体から電子受容体へ電子を移動させ、この電子伝達をプロトン(H+イオン)の膜を横断する移動と共役させる一連のタンパク質複合体である。酸化還元反応からのエネルギーにより、ATPの合成を駆動する電気化学的プロトン勾配が創出される。電子伝達鎖内の複合体により、電子が低酸化還元電位から高酸化還元電位へ移動する際に起こる酸化還元反応のエネルギーが回収され、それにより電気化学的な勾配が創出され、それにより、ATPシンターゼを用いた酸化的リン酸化との共役によるATPの合成が駆動される。
【0123】
ある実施形態では、ETC阻害剤は、本明細書に記載の細胞、例えば免疫細胞(例えばT細胞またはNK細胞)の測定における使用に適したものである。ETC阻害剤は、事前添加によって導入することもでき、アッセイ中の注入によって導入することもできる。
【0124】
ある実施形態では、ETC阻害剤は、ミトコンドリア複合体I(例えば、ロテノン)を含む。ある実施形態では、ETC阻害剤は、ミトコンドリア複合体III阻害剤(例えば、アンチマイシンA)を含む。ある実施形態では、ETC阻害剤は、ミトコンドリア複合体I(例えば、ロテノン)およびミトコンドリア複合体III阻害剤(例えば、アンチマイシンA)を含む。
【0125】
ある実施形態では、ETC阻害剤は、ロテノン、アンチマイシンA、またはこれらの組合せを含む。ある実施形態では、ETC阻害剤は、ロテノンとアンチマイシンAの両方を含む。
【0126】
ある実施形態では、ETC阻害剤(ロテノン、アンチマイシンA、またはこれらの組合せ)を、反応混合物中、細胞試料における電子伝達鎖の阻害がもたらされる最終濃度で使用する。ある実施形態では、ETC阻害剤(例えば、ロテノン、アンチマイシンA、またはこれらの組合せ)を少なくとも1nM、最大でETC阻害剤(例えば、ロテノン、アンチマイシンA、またはこれらの組合せ)の溶解限度までの最終濃度で使用する。ある実施形態では、ETC阻害剤(例えば、ロテノン、アンチマイシンA、またはこれらの組合せ)を、反応混合物中、1nM~100mM、例えば、10nM~10mM、0.1μM~1mM、0.1μM~100μM、0.1μM~10μM、0.1μM~5μM、例えば、0.2μM~2μM、0.5μM~1μM、0.1μM~4μM、0.1μM~3μM、0.1μM~2μM、0.1μM~1μM、0.1μM~0.5μM、4μM~5μM、3μM~5μM、2μM~5μM、1μM~5μM、0.5μM~5μM、0.2μM~1μM、0.5μM~2μM、0.2μM~1μM、1μM~20μM、1μM~10μM、または5μM~15μM、例えば、0.1μM、0.2μM、0.3μM、0.4μM、0.5μM、0.6μM、0.7μM、0.8μM、0.9μM、1μM、1.5μM、2μM、2.5μM、3μM、4μM、または5μM、6μM、7μM、8μM、9μM、10μM、11μM、12μM、13μM、14μM、15μM、16μM、17μM、18μM、19μM、または20μMの最終濃度で使用する。ある実施形態では、ETC阻害剤は、ロテノンおよびアンチマイシンAを含む。ある実施形態では、ロテノンとアンチマイシンAの比は、1:1、1:2、1:3、1:4、1:5、2:1、3:1、4:1、または5:1である。ある実施形態では、ロテノンとアンチマイシンAの比は1:1である。
【0127】
ある実施形態では、ETC阻害剤(ロテノン、アンチマイシンA、またはこれらの組合せ)を0.1μM~1μM、例えば、0.5μMの最終濃度で使用する。ある実施形態では、ロテノンを0.1μM~1μM、例えば、0.5μMの最終濃度で使用する。ある実施形態では、アンチマイシンAを0.1μM~1μM、例えば、0.5μMの最終濃度で使用する。ある実施形態では、ロテノンとアンチマイシンAの組合せを0.2μM~2μM、例えば、1μM(例えば、0.5μM)の最終濃度で使用する。
【0128】
材料
1.本開示の実施形態に従って分析を実施するために適した分析ツールは、例えば、以下の機器のいずれかであり得る:
a.Agilent Seahorse XFp Analyzer
b.Agilent Seahorse XF HS Mini Analyzer
c.Agilent Seahorse XFe96 Analyzer
d.Agilent Seahorse XFPro Analyzer。
【0129】
これらの機器はそれぞれ、特殊化されたマルチウェルプレートのウェル中の細胞試料の酸素消費速度および細胞外酸性化速度を決定することを可能にするものである。当該機器は、(i)マルチウェルプレートを支持するように適合させたステージと、(ii)マルチウェルプレートのウェル中の細胞試料の代謝活性に関連する、細胞培地の酸素レベルおよびpH(プロトン濃度)の変化を感知するように適合させたセンサーと、(iii)ウェル中に流体を導入するように適合させた分散システムとを含む。装置の構成要素は、例えば、米国特許第7,276,351号および同第8,658,349号に記載されている。以下に考察するように、ステージ、センサー、および分散システムが協同して、センサーを使用して細胞試料の最初の酸素消費速度および最初の細胞外酸性化速度を同時に測定する。その後、分散システムを使用して、細胞試料に、ミトコンドリアによるATPシンターゼ阻害剤(オリゴマイシンA)、ミトコンドリア脱共役剤BAM15、ならびにミトコンドリア複合体I阻害剤と複合体III阻害剤(それぞれロテノンとアンチマイシンA)の混合物を逐次的に投与し、その後、それぞれの分散後にセンサーを使用して酸素消費速度と細胞外酸性化速度を同時に測定する。記載の試薬を分散させる前に追加的なモジュレーター試薬を任意選択で分散させることもでき、あるいはロテノン/アンチマイシンAを細胞に注入した後に細胞外膜イオノフォアであるモネンシンを注入することもでき、いずれの場合でも、各分散後に酸素消費速度および細胞外酸性化速度に関する同じ測定を実施する。
【0130】
2.細胞培養培地。免疫細胞に関しては、一般にはImmunocult XF T cell expansion media(Stem Cell Technologies)が使用されるが、細胞型による推奨に応じて、Gibcoから入手可能なRPMIのような他の細胞培養培地に10%FBS、10mMのグルコース、2mMのグルタミンおよび1mMのピルビン酸塩を補充したものを使用することもできる。
【0131】
3.アッセイ培地、一般には、1mMのHEPES緩衝剤が補充されているが、炭酸水素ナトリウムが除かれて浸透濃度が等しいNaClで置き換えられたpH7.4のRPMI(Agilent Seahorse XF RPMI pH7.4として入手可能)に10mMのグルコース、2mMのグルタミン、および1mMのピルビン酸塩を補充したものを使用する。
【0132】
4.使用する機器に適したアッセイカートリッジ、例えば、XFe96 FluxPak。
【0133】
5.培養下の細胞(一般には免疫哺乳動物T細胞またはナチュラルキラー細胞(NK細胞)であるがこれに限定されない)。必要な細胞数は使用する機器、マルチウェルプレートの型および細胞型に応じて変動する。一般には、細胞数はウェル当たり30,000個から200,000個の間である。
【0134】
6.試薬
Agilent Seahorse XF T cell Metabolic Profiling KitまたはAgilent Seahorse XFp T cell Metabolic Profiling Kitの一部として水溶性試剤として入手可能なオリゴマイシンA、BAM15、およびロテノン+アンチマイシンA混合物。モネンシン粉末(Sigmaから入手可能)。
【0135】
例示的なプロトコール
1)T細胞のような免疫細胞の凍結ストックを予め温めたImmunocult XF T Cell Expansion mediumに入れて解凍し、同じ培地に1mL当たり100万個の細胞密度で再浮遊させ、T75培養フラスコに移し、CO2インキュベーター中で一晩インキュベートする。あるいは、T細胞または他の免疫細胞をヒト血液またはマウス脾臓などの組織から新たに単離する。単離された細胞をXF T Cell Expansion mediumに1mL当たり細胞1~300万個の密度で再浮遊させ、少なくとも1時間置く。
【0136】
2)培養培地中でのインキュベーション時間後、細胞を遠心分離し、アッセイ培地中、30~50μLの体積中に所望の細胞数を播種することが可能になる密度で再浮遊させ、PDLまたはCell Takを予めコーティングしたマルチウェルプレートに播種する。マルチウェルプレートを遠心分離し、アッセイ培地を特定のプレート型に対する推奨体積(一般には200μL)に達するまで添加し、CO2インキュベーターでないインキュベーター中、37℃で45分間インキュベートする。
【0137】
3)適切な機器を、例えば、ウェル中の細胞試料の上に配置されたカートリッジのポートから溶液を逐次的に注入し、各注入後に3回の測定を行う、3回の測定を実行するようにコマンド指示を用いてプログラムする。
【0138】
4)オリゴマイシンAストック溶液をアッセイ培地中、13.5μMの作用濃度に調製する。BAM15ストック溶液を最適化された濃度(一般に、ヒトT細胞およびマウスT細胞に対して25μM)に調製し、ロテノン+アンチマイシンAミックスストック溶液をそれぞれ5.5μMの作用濃度に調製する。モネンシンストック溶液をアッセイ培地中、EtOH 10%中240μMのストックとして調製する。
【0139】
5)十分な体積の作用溶液をアッセイカートリッジに、作用溶液が注入されるとアッセイ培地中、所望の最終濃度に希釈されるように添加する。例えば、ヒトT細胞に関しては、所望の最終濃度は1.5μMのオリゴマイシンA、2.5μMのBAM15および0.5μMのロテノン+アンチマイシンA混合物および20μMのモネンシンである。これらの濃度は、最適な効果のための滴定によって決定されたものである。
【0140】
6)示されている試薬を含有する含水アッセイカートリッジを機器にローディングする。
【0141】
7)細胞試料の代謝プロファイルを、以下を算出することによって決定することができる:
i)基礎ミトコンドリアATP産生速度、オリゴマイシンAの注入後かつ他のあらゆる注入の前の最低酸素消費速度(oligo OCR)を試薬の最初の注入前の酸素消費速度の測定値(例えば、最後の測定値、またはいくつかの測定値の平均値)(基礎のOCR)から引き算し、2.45から2.86の間の定数、例えば定数2.75(平均P/O比、すなわち、ATPの収量/消費されたOと称される)*2(酸素原子を酸素分子に変換するため)を掛けることによって算出する;
ii)基礎解糖ATP産生速度を、オリゴマイシン注入前の細胞外酸性化速度の測定値を使用し、プロトン流出の速度(アッセイに使用される培地の緩衝能およびマルチウェルプレートのマイクロチャンバーの容積を考慮に入れる)に変換し、酸素消費速度の基礎速度およびロテノン/アンチマイシンAの注入後かつその後のあらゆる注入の前の最低測定値の測定値から算出される細胞外CO2産生の寄与を差し引くことで算出する;
iii)最大呼吸能を、BAM15注入後の酸素消費速度の最高測定値を使用し、ロテノン/アンチマイシンAの注入後かつその後のあらゆる注入の前の酸素消費速度の最低測定値を差し引くことで算出する;
iv)予備好気呼吸能(Reserve Aerobic Capacity)(予備呼吸能(Spare Respiratory Capacity)としても公知)を、BAM15注入後の酸素消費速度の最高測定値と最初の注入前の酸素消費速度の測定値(例えば、最後の測定値、またはいくつかの測定値の平均値)との差異として算出する。予備好気呼吸能(Aerobic Reserve Capacity)はATP産生の速度にP/O比*2を掛けた単位として表される;
v)最大ミトコンドリア生体エネルギー能を、BAM15注入後の酸素消費速度の最高測定値を使用し、オリゴマイシンAの注入後かつその後のあらゆる注入の前の最低測定値を差し引き、P/O比*2を掛けることで算出する;
vi)代償(または最大解糖能)を、ロテノン+アンチマイシン注入後(またはモネンシン注入後)のPERの最高測定値を使用して算出する。
vii)解糖予備能。最大解糖能と基礎glycoPERとの差異として算出する。
【実施例】
【0142】
[実施例1]
免疫細胞におけるミトコンドリア脱共役剤の性能
接着細胞である類上皮細胞癌Panc-1細胞(ATCC、CRL-1469)において、FCCPを用いて脱共役呼吸測定値を測定した。細胞を、10%FBSを補充したダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)中、供給者の情報に従い、5%CO
2インキュベーター中、37℃で培養した。アッセイの前日に、細胞を、トリプシン-EDTA溶液を使用して剥離し、XFe96細胞培養ミニプレート(Agilent)にウェル当たり細胞10.000個で播種した。細胞を5%CO
2インキュベーター中、37℃で18時間インキュベートした。OCRを測定するために、細胞を洗浄し、細胞培養培地を、10mMのグルコース、2mMのグルタミンおよび1mMのピルビン酸塩を補充したXF DMEMpH7.4に置き換えた。アッセイ試料にFCCPを添加したところ、Panc-1細胞は酸素消費の頑強性のある増加を示した(
図1A~1C)。試験した複数の初代細胞および不死化細胞において同様の応答が観察される。例えば、マウス筋芽細胞C2C12細胞(ATCC、CRL-1772)に関する結果が
図1D~1Fに示されている。免疫細胞(例えば、T細胞)を含むアッセイ試料にFCCPを添加した場合、細胞は3分間の測定中、一貫しない脱共役呼吸を示し(
図2A、2C)、ロテノン+アンチマイシンA注入後のOCRが過大評価された(
図2B)。
【0143】
免疫細胞においてOCRを測定する場合のFCCPに対する可能性のある代替としてBAM15を試験した。オリゴマイシン、FCCPまたはBAM15のいずれか、およびロテノン+アンチマイシンAを用いてT細胞の代謝プロファイリングを測定した。FCCPまたはBAM15のいずれかを添加して最大呼吸をアッセイしたところ、BAM15により、より頑強性のある測定値が誘導され、3分間の測定時間中、より安定した脱共役応答がもたらされ(
図3A、3C)、Rot/AA注入後のOCRの過大評価は軽微であった(
図3B)。
【0144】
ナイーブCD4T細胞およびCD8T細胞における最大呼吸もBAM15およびFCCPを用いて試験した。FCCPまたはBAM15濃度を種々の濃度として試験した。アッセイを0.5μM、1μM、1.5μM、2μM、2.5μM、または3μMのFCCPまたはBAM15を用い、ナイーブCD4+T細胞に対して実施した。FCCPを用いて試験したT細胞では、BAM15で認められた(
図4B)ような最大呼吸の頑強性も用量依存的な増大も認められなかった(
図4A)。次に、ナイーブCD4+T細胞のアッセイをFCCPまたはBAM15のいずれかを2.5μMの濃度で使用して行い、ナイーブCD8+T細胞のアッセイを3.0μMの濃度のFCCPおよび2.5μMの濃度のBAM15のいずれかを使用して行った。ナイーブCD4+T細胞およびCD8+T細胞のどちらにおいても、BAM15を用いた場合により一貫した、より頑強性のある最大呼吸が測定された(
図4C~4D)。
【0145】
次に、CD3/CD28を用いて刺激したナイーブマウスCD8+T細胞の代謝プロファイルを、予め最適化した濃度のFCCPおよびBAM15(この場合それぞれ2μMおよび2.5μM)を用いてアッセイした(n=3)。OCRおよびECARをプロットしたところ、対照T細胞および刺激したT細胞のどちらにおける最大呼吸も、BAM15の添加後に、FCCPをアッセイに添加した場合と比較して頑強性が大きかった(
図5A~5B)。これらの試験から、BAM15でもまた、各試料の試験における脱共役剤の滴定を行う必要性が最小化されることが実証された。
【0146】
[実施例2]
単一のアッセイからの完全な生体エネルギープロファイルの算出
生細胞完全な生体エネルギープロファイル(細胞によって生成されるATPの量)を、生体エネルギー平衡(
図6)および生体エネルギー予備能(
図7および8)を測定することによって算出する。生体エネルギー平衡を、解糖によって生成されたATPの酸化的リン酸化によって生成されたATPに対する割合として算出し、一方、生体エネルギー予備能または生体エネルギー能を、細胞がエネルギー需要の増大に応答して割り当てることができる解糖活性およびミトコンドリア活性の増大のレベルとして算出する。
【0147】
予備好気呼吸能を生細胞において測定し、「理論的最大値」を得ることができる。これは、脱共役条件での酸素当たりのATP収量が共役条件と比較して同じであると仮定するものである。予備好気呼吸能を、BAM15注入後の酸素消費速度の最高測定値と基礎呼吸との差異として算出する。この場合、P/O比2.75を使用し、ATP産生の速度として表す(
図7A~7B)。
【0148】
代償解糖能または予備解糖速度は、ミトコンドリア活性が遮断された場合の解糖速度である。代償解糖能または予備解糖速度は、利用可能な「予備」解糖活性を示すものである。一部の場合では、代償解糖能または予備解糖速度がより高い可能性があり、モネンシンの添加により、最大解糖能測定値の確認をもたらすことができる(
図8A~8B)。
【0149】
拡大させたヒトPan-T細胞の総生体エネルギー能を本明細書に記載の通り測定した。ヒトPan T細胞を2つの異なる培養培地(培地AまたはB)に、異なるT細胞表現型を誘導することが報告されている2つの異なるインターロイキン、IL-2(300U/mL)またはIL-15(10ng/mL)を補充したもの(培地A:11mMのグルコースを含有し、2mMのグルタミンおよび10%FBSを補充したRPMI;培地B:Immunocult XF T Cell Expansion Medium、Stem Cell Technologies、Cat番号10981)で拡大させた。10mMのグルコース、2mMのグルタミンおよび1mMのピルビン酸塩を補充したXF RPMI、pH7.4に再浮遊させた1×10
5個のPan-T細胞を、PDLをコーティングしたプレートにプレーティングし、オリゴマイシンA(1.5μM)、BAM15(2.5μM)およびロテノン/アンチマイシンA(各0.5μM)の逐次的な注入の前後にOCRおよびPERを測定することにより、ATP産生速度、解糖ATP産生速度、ミトコンドリアATP産生速度、予備解糖ATP産生速度、予備呼吸能、および総生体エネルギー能を算出した(
図9A~9E)。
【0150】
[実施例3]
NK細胞におけるミトコンドリア脱共役剤の性能および完全な生体エネルギープロファイルの算出
本実施例では、ヒト末梢血NK細胞におけるミトコンドリア脱共役剤であるFCCPおよびBAM15の性能を評価した。これは、FCCPまたはBAM15を添加し、酸素消費速度(OCR)、細胞外酸素レベル、および実験の経過にわたる種々の時点における時点ごとのOCRを測定することによってアッセイされる。NK細胞を本明細書に記載の通り(例えば、実施例1において)培養した。NK細胞をFCCPまたはBAM15で処理し、次いで、本明細書に記載の方法に従って上記の通り(例えば、実施例1において)アッセイした。
【0151】
BAM15を用いた処理により、FCCPを用いた処理と比較して有意に大きなOCRの増大がもたらされた(
図11A)。BAM15ではまた、より頑強性のある測定値が誘導され、3分間の測定中のより安定な脱共役応答がもたらされた(
図11B~11C)。最大呼吸も種々のFCCP濃度およびBAM15濃度で試験した。アッセイを1.5μM、2μM、2.5μM、または3μMのFCCPまたはBAM15を用いて実施した。FCCPを用いて得られた最大呼吸はBAM15を用いて得られたものほど頑強性のあるものではなく(
図12Aおよび12B)、BAM15により、より高い最大呼吸がもたらされ、各試料の試験において脱共役剤の滴定を行う必要性も最小化されることが示される。
【0152】
IL-2を用いて刺激し、細胞培養培地で14日間拡大させたものと同じドナー由来の無刺激ヒト末梢血NK細胞またはNK細胞の生体エネルギープロファイルも決定した。実施例2に記載の通り、生体エネルギー平衡を、解糖によって生成されたATPの酸化的リン酸化によって生成されたATPに対する割合として算出し、一方、予備能または生体エネルギー能を、細胞がエネルギー需要の増大に応答して割り当てることができる解糖活性およびミトコンドリア活性の増大のレベルとして算出した。
【0153】
無刺激または拡大させたヒト末梢血NK細胞(Stem Cell Technologies、Cat番号70036)の総生体エネルギー能を本明細書に記載の通り測定した。NK細胞を解凍し、1mL当たり細胞1×10
6個で再浮遊させ、2mMのグルタミン、10%FBSを補充したRPMI中、5%CO
2インキュベーター中、37℃で一晩インキュベートしたか、またはIL-2(1000U/mL)で刺激し、3日ごとに細胞密度を1mL当たり細胞1×10
6個に調整しながら14日間培養した。示されているインキュベーション期間後、細胞を洗浄し、10mMのグルコース、2mMのグルタミン、および1mMのピルビン酸塩を補充したXF RPMI Assay Medium(Agilent Technologies、Cat番号103576-100)に再浮遊させ、細胞をSeahorse XF Analyzerでアッセイした。基礎ATP産生速度、代償解糖能、総生体エネルギー能、ミトコンドリアによる生体エネルギー能、および予備呼吸能を算出した。これらの試験から、14日間の拡大後、NK細胞が、ミトコンドリアによるATP産生および予備呼吸能の増大によって主に持続する、より高い基礎ATP産生および生体エネルギー能を示すことが実証された(
図13A~13E)。
【0154】
これらの結果から、拡大条件の免疫細胞の代謝プロファイルに対する影響、および、より効率的な免疫細胞治療の作出の設計および検証のための潜在的な有用性が実証される。
【国際調査報告】