(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-04
(54)【発明の名称】マイクロカプセル化
(51)【国際特許分類】
A01N 25/28 20060101AFI20240927BHJP
B01J 13/06 20060101ALI20240927BHJP
A01N 53/08 20060101ALI20240927BHJP
A01P 7/04 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
A01N25/28
B01J13/06
A01N53/08 120
A01P7/04
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024521896
(86)(22)【出願日】2022-10-10
(85)【翻訳文提出日】2024-04-10
(86)【国際出願番号】 EP2022078027
(87)【国際公開番号】W WO2023061901
(87)【国際公開日】2023-04-20
(32)【優先日】2021-10-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520222106
【氏名又は名称】シンジェンタ クロップ プロテクション アクチェンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100123766
【氏名又は名称】松田 七重
(74)【代理人】
【識別番号】100212509
【氏名又は名称】太田 知子
(72)【発明者】
【氏名】テイラー フィリップ
(72)【発明者】
【氏名】リンジー クリストファー イアン
【テーマコード(参考)】
4G005
4H011
【Fターム(参考)】
4G005AA01
4G005BA05
4G005DA06W
4G005DA06Y
4G005DC07X
4G005DC22X
4G005DC32X
4G005DC58Y
4G005DC62X
4G005DD37Z
4G005DD38Z
4G005EA02
4H011AC01
4H011BB15
4H011BC16
4H011BC18
4H011DA06
4H011DA15
(57)【要約】
水相と油相との組合せを含むピッカリングエマルジョンを形成する方法であって、前記水相が粘土粒子を含み、前記油相がオルトケイ酸テトラアルキルを含む、方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水相と油相との組合せを含むピッカリングエマルジョンを形成する方法であって、
前記水相が粘土粒子を含み;及び
前記油相がオルトケイ酸テトラアルキルを含む、方法。
【請求項2】
前記油相が、有効成分、好ましくは農薬を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記油相がアルカン酸、好ましくは一級カルボン酸を含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記粘土粒子が、正に帯電した部位の集団を有するように表面改質されている、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記粘土粒子がアミノシランで表面改質されている、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記粘土粒子が、カチオン性界面活性剤の組込みによって表面改質されている、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記水相が電解質を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記オルトケイ酸テトラアルキルのアルキル鎖が、1~4個の炭素、好ましくは3個の炭素を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
3.5~6、好ましくは4~5.5のpHで実施される、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
水相中に1つ以上のマイクロカプセルを含む組成物であって、前記マイクロカプセルが疎水性液体及び無機マイクロカプセル壁を含み、前記マイクロカプセルが請求項1~9のいずれか一項に記載の方法によって形成される、組成物。
【請求項11】
前記疎水性液体が、有効成分、好ましくは農薬を含む、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
前記無機マイクロカプセル壁が粘土粒子及び/又はケイ酸塩を含む、請求項10又は11に記載の組成物。
【請求項13】
前記粘土粒子が、正に帯電した部位の集団を有するように表面改質されている、請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
前記無機マイクロカプセル壁が有機架橋剤を含有しない、請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
前記マイクロカプセルが前記有効成分の制御放出を示す、請求項11~14のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項16】
植物、有害生物を防除するための農薬組成物及び/又は殺真菌剤としての、請求項11~14のいずれか一項に記載の組成物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロカプセルを製造するための新規な方法及びこの方法によって製造されたマイクロカプセルに関する。本発明はまた、マイクロカプセルの使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
マイクロカプセルは、一般に液体であるカプセル化された材料を取り囲む壁を含む小さなカプセルである。それらは、カプセル化された材料を外部環境、例えば空気又は光による劣化から保護するために使用され得る。それらはまた、マイクロカプセル内の有害物質を隔離して、それらの取り扱い又は使用をより安全にするために使用され得る。マイクロカプセルは、農薬、特にラムダシハロトリンなどの殺虫剤に使用され、それらをUV光による分解から保護し、適用後に制御放出を提供することが知られている。
【0003】
特定の既知のマイクロカプセルは、界面重合によって製造される。そのようなプロセスでは、溶液は、カプセル化される水不溶性液体中で、ポリイソシアネートなどの第1のモノマーから最初に形成される。溶液はまた、生物学的有効成分を含有し得る。次いで、この溶液を界面活性剤と共に水中に分散させてエマルジョンを形成する。ポリアミンなどの適切な第2のモノマーが水に添加され、これがエマルジョン液滴の表面で第1のモノマーと反応して架橋ポリマー、この例ではポリ尿素を形成し、これが液滴の周りにマイクロカプセル壁を形成する。既知の第1及び第2のモノマーはまた、ポリウレタン壁を作製するためのポリイソシアネート及びポリオール、ポリアミド壁を作製するための多官能酸ハライド及びポリアミン、並びにポリエステル壁を作製するための多官能酸ハライド及びポリオールを含む。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、有機モノマー及び/又は架橋剤から形成されたマイクロカプセルの使用は、それらの生分解性の低さ及びマイクロプラスチックとしての分類のために望ましくない。したがって、これらの問題に対処するマイクロカプセル化の方法が緊急に必要とされている。
【図面の簡単な説明】
【0005】
【
図1】20% w/w油相を含有するエマルジョンを50℃の静止条件下で1週間保存した後、試料を顕微鏡スライド上でドライダウンさせ、顕微鏡下で決定した外観を示す。
【
図2】希釈懸濁液中の全含有量に対して放出されたラムダシハロトリンの画分のプロットを構築したグラフを示す。
【
図3】50℃で3日間貯蔵した後の実施例3のドライダウンした試料:(a)10% w/w油相、(b)20%油相、(c)30%油相を示す。
【
図4】50℃で6日間貯蔵され、添加された塩化ナトリウムの非存在下及び存在下で改質及び非改質カオリンによって安定化されたエマルジョンによって形成されたドライダウン構造を示す。
【
図5】添加された電解質の非存在下及び存在下で、改質及び非改質カオリンによって安定化されたカプセル配合物によって形成されたドライダウン構造を示す。
【
図6】非改質及び改質RLO7645のpHの関数としてのゼータ電位を示す。
【
図7】機械的に強いカプセルがドライダウン時に見られ、示されている。
【
図8】乳化前に水相に添加され、50℃で6日間貯蔵されたDTABの存在下で形成された機械的に強いカプセルのドライダウンビューを示す。
【発明を実施するための形態】
【0006】
したがって、本発明の第1の態様では、水相と油相との組合せを含むピッカリングエマルジョンを形成する方法であって、
水相が粘土粒子を含み、
油相が、オルトケイ酸テトラアルキルを含む、方法が提供される。
【0007】
有利には、油相は有効成分を含む。
【0008】
この方法は、ケイ酸テトラアルキルの界面加水分解による粘土-シリカ複合壁の形成によって機械的に強いマイクロカプセルを製造する。「機械的に強い」とは、湿潤系のドライダウン時にカプセルが無傷のままであり、及び/又はカプセル内からの有効成分の制御放出を与えるのに十分に隣接するように、壁が十分に強いことを意味する。
【0009】
ピッカリングエマルジョンは、水中の粘土粒子の水性分散液からなる水性外部相への油相の高剪断組込みによって形成され得る。このプロセスは、好ましくは20~80℃、例えば30~60℃、40~59℃、又は最も好ましくは45~50℃で行われる。
【0010】
好ましくは、油相は、エマルジョンの総質量に基づいて、5~60重量%、より好ましくは10~50重量%、又は15~40重量%の量でエマルジョン中に存在する。
【0011】
マイクロカプセルのコア内にカプセル化された任意の有効成分は、適切には水に可溶で10重量%未満、より適切には水に可溶で1重量%未満;最も適切には、水に可溶で0.1重量%未満である。
【0012】
インク、香料、化粧品、香水、日焼け止め剤、芳香剤、接着剤、シーラント、相変化材料、殺生物剤、油田化学物質(腐食及びスケール抑制剤を含む)、難燃剤、食品添加物(ビタミン、成分、プロバイオティクス及び抗酸化剤を含む)、洗剤に含まれ得る活性剤、布地柔軟剤及び他の家庭用製品(漂白剤、酵素及び界面活性剤など)、布地に含まれ得る活性剤(例えば、防虫剤、抗菌剤、皮膚軟化剤及び医学的に活性な化合物)、コーティングに含まれ得る活性剤(例えば、難燃剤(fire retardant)、難燃剤(flame retardant)、防汚剤、抗菌剤、殺生物剤、耐擦傷性及び耐摩耗性化合物)及び生物学的に活性な化合物(医薬品及び農薬など)を含む広範囲の有効材料(有効成分)がカプセル化され得る。適切には、有効材料は、除草剤、殺真菌剤又は殺虫剤などの農薬である。多くのこのような農薬は公知であり、2006年にBritish Crop Protection Councilによって発行されたThe Pesticide Manual第14版に記載されている。本発明はまた、農薬の固体複合体を、例えば1-MCPとa-シクロデキストリンとの複合体を含む分子錯化剤でカプセル化するのにも適している。本発明は、日光に曝露された場合に分解を受ける農薬、特にデルタメトリン、トラロメトリータ、シフルトリン、アルファメトリン、ゼータ-シペルメトリン、フェンバレレート、エスフェンバレレート、アクリナトリン、アレトリン、ビフェントリン、ビオアレトリン、ビオレスメトリン、シクロプロトリン、ベータ-シフルトリン、シハロトリン、ベータ-シペルメトリン、シフェノトリン、エンペントリン、エトフェンプロックス、フェンプロパトリン、フィウシトリネート、タウ-フルバリネート、フェノトリン、プラレトリン、レスメトリン、テフルトリン、テトラメトリン、ラムダ-シハロトリンなどのピレスロイド殺虫剤;好適にはラムダ-シハロトリンに最も有用である。適切には、本発明のマイクロカプセルは、建築物の壁板又は石膏板に使用することができ、セメント組成物及びセメント質材料を製造するためのプロセスを改善するのに使用することができる。
【0013】
有効成分は、適切には医薬化合物又は農薬であり;最も適切には、農薬である。
【0014】
適切には、農薬は、真菌、昆虫及び雑草などの有害生物を防除又は駆除するために、又は有用植物の成長を制御するために使用される殺真菌剤、殺虫剤、除草剤又は成長調節剤である。農薬はまた、非農業的状況(例えば、公衆衛生及び専門的な製品目的、例えば、テルマイトバリア、モスキートネット及び壁板)で使用され得る。
【0015】
さらに適切な用途には、限定するものではないが、以下が含まれる:
持続放出又は制御放出使用、例えば:医薬品、例えば耐酸性カプセル(胃内の低pHを超える経口送達)、不安定な活性物質の保護、カプセル壁を介した擬似ゼロ次放出及びオストワルド熟成耐性エマルジョン製剤;化粧料;例えばトップノート又は持続放出の蒸発を減速させ、過度の臭気を最小限に抑える香水;セルロースに対する親和性を有し、洗濯中に織物表面に捕捉されるカプセル;酸化を防止するために例えば光安定化された香料;自己修復コーティング、例えば、損傷を修復する樹脂を放出するカプセルバースト;カーボンレスコピー用紙;新規な二重の味及び食感の食品、例えば、口の中で溶解し、新しい味を放出するカプセル;感圧接着剤;シーラント;栄養(例えば、複合分子のバイオアベイラビリティの増加及びビタミン、プロバイオティクス及び他の食品添加物などの感受性分子の保護);感光性又は熱感度を有するトナーインク;例えば透過特性を改善するためのテキスタイルコーティング;防汚コーティング;例えば、耐擦傷性又は耐摩耗性を改善するための表面保護コーティング;及び建築材料、例えば、壁板、石膏ボード及びセメント。乾燥したカプセルの例としては、例えば、焼成時にセラミックを形成するための様々な鉱物ブレンド;ポリマー又は塗料用の低密度充填剤;絶縁材料;低密度プロパント;例えば木質繊維複合材用の光補強粒子;リサイクル可能な顔料、例えば容易なフローテーション分離を可能にする低密度;エネルギー緩衝剤、例えば、エネルギーの吸着を伴う「衝突バリア」を提供するための球体内の空隙における使用が挙げられる。本発明のカプセルは、新規なサイズ又は形状、例えば、プレート又はロッド形状のカプセルの作製;導電性カプセルをもたらす、又は金属的性質、例えばプラズモン吸光度を有する金属粒子の使用であってもよい。
【0016】
有利には、油相はアルカン酸、好ましくは一級カルボン酸を含む。好ましくは、炭素数4~10、より好ましくは6~8、最も好ましくは8のアルキル鎖を有する一級カルボン酸(すなわち、n-オクタン酸)である。理論に束縛されることを望むものではないが、アルカン酸の存在は、最適な位置でin situでプロトンイオンを有利に送達し、したがってマイクロカプセル壁の形成を促進すると考えられる。
【0017】
好ましくは、アルカン酸は、油相の質量に基づいて油相中に1~20重量%、好ましくは5~15重量%、最も好ましくは9~11重量%(例えば10重量%)の濃度で存在する。
【0018】
有利には、油相は、アルキルスルホン酸及び/又はアルキルアリールスルホン酸を含む。
【0019】
粘土粒子は、カオリン粘土であってもよい。カオリン粘土は、カオリン粘土又は含水カオリンとも呼ばれ、主に鉱物カオリナイト(Al2Si2O5(OH)4)、含水ケイ酸アルミニウム(又はアルミノケイ酸塩)である。好ましくは、粘土粒子は、1~20重量%、より好ましくは2~15重量%の量で水相中に存在する。
【0020】
マイクロカプセルは、好ましくは、レーザー回折によって評価される、0.5~100μm、好ましくは1~50μmのサイズ範囲の体積平均液滴直径を有する。
【0021】
粘土粒子は、適切には、Micromeritics Corporation,USAから入手したSEDIGRAPH(商標)、例えばSEDIGRAPH(商標)5100を使用して、標準希釈水性懸濁液を通して試験中の粒状材料の分散粒子の沈降速度を決定することによって測定される場合、メジアン径(d50)が10μm以下である粒径分布を有する。適切には、粒状無機材料は、5μm以下のd50を有する。より好適には、粒状無機材料は、2μm以下のd50を有する。さらにより好適には、粒状無機材料は、1μm以下のd50を有する。適合性が高まるにつれて、粒状無機材料は、0.9、0.8、0.7、0.6、0.5、0.4、又は0.3μm以下のd50を有する。他の態様では、粒状無機材料は、0.2μm以下、例えば0.15μm以下又は0.12μm以下又は0.1μm以下のd50を有する。
【0022】
一態様では、粒状無機材料の粒子の少なくとも約90重量%は、約2μmより小さく、例えば、少なくとも約95%又は98%は、約2μmより小さい。適切には、粒子の少なくとも約90重量%は約1μmより小さく、例えば、少なくとも約95%又は98%は約1μmより小さい。より適切には、粒子の少なくとも約75重量%は、約0.25μmより小さく、例えば、少なくとも約80%又は82%は、約0.25μmより小さい。別の態様では、粒状無機材料は、(i)約2μm未満の粒子の少なくとも約90%、例えば少なくとも約95%又は98%の粒径分布を有し;(ii)粒子の少なくとも約90重量%、例えば、少なくとも約95%又は98%は約1μm未満であり;(iii)粒子の少なくとも約75重量%、例えば、少なくとも約80%又は82%は、約0.25μm未満であり;そのような粒径分布の粒状無機材料はまた、範囲のより小さい端部にd50値を有してもよく、例えば、粒状無機材料の少なくとも約98重量%は約2μm未満であり、少なくとも約98%は約1μm未満であり、少なくとも約82%は約0.25μm未満であり、粒状無機材料のd50値は0.12μm以下である。
【0023】
より微細な粒状無機材料(例えば、2μm以下のd50を有する)の場合、材料は、重力沈降又は溶出などの方法、任意のタイプのハイドロサイクロン装置の使用、又は例えば、固体ボウルデカンタ遠心分離機若しくはディスクノズル遠心分離機を含む分級で誘導することができる。分級された粒状無機材料は、当技術分野で知られている方法、例えば濾過(フィルタプレスを含む)、遠心分離又は蒸発のうちの1つで脱水し得る。次いで、分級され、脱水された材料を(例えば、噴霧乾燥によって)熱乾燥させることができる。
【0024】
好ましくは、粘土粒子は、正に帯電した部位の集団を有するように表面改質されている。これらの正に帯電した部位は、ケイ酸塩の加水分解中に生成された負イオンを引き付け、したがって複合壁の形成を促進する。非改質粒子に対する正に帯電した部位の付加は、必ずしも材料の全体的な正電荷をもたらすとは限らないが、改質のレベルに応じてそうすることができることに留意されたい。
【0025】
粘土粒子は、アミノシラン、好ましくはトリエトキシケイ酸アミノプロピルで表面改質されてもよい。シラン基は、粘土表面に結合した遊離アミン基を与えるように粘土と反応する。
【0026】
或いは、粘土粒子は、アルキルトリメチルアンモニウムブロミド、最も好ましくはドデシルトリメチルアンモニウムブロミドなどのカチオン性界面活性剤の組込みによって表面改質されてもよい。カチオン性界面活性剤の添加は、油相の乳化の前又は後のいずれかで行うことができる。カチオン性界面活性剤は、0.01~2重量%(例えば、0.05~1重量%)の濃度で存在する。
【0027】
水相は、塩化ナトリウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、塩化マグネシウム又は硫酸マグネシウムなどの電解質を含んでもよい。電解質は、水相の0~25重量%、例えば1~15重量%、2~13重量%の濃度範囲にある。
【0028】
好ましくは、オルトケイ酸テトラアルキルのアルキル鎖は、1~4個の炭素、好ましくは3個の炭素(すなわち、オルトケイ酸テトラプロピル)を含む。オルトケイ酸テトラアルキルは、油相中に1~10重量%、例えば2~9重量%、3~8重量%、又は最も好ましくは4~6重量%(例えば、5重量%)の濃度で存在してもよい。
【0029】
驚くべきことに、カプセル化方法は、3.5~6、好ましくは4~5.5の中間pH範囲で有効である。当技術分野におけるシリカ壁形成は、通常、より極端なpH値(高酸性又は高アルカリ性のいずれか)で行われるが、本明細書に記載の中程度のpHは、マイクロカプセル形成に有効であり、高pH又は低pHに敏感な有効成分の分解を低減し得る。pHは、水相に鉱酸又は塩基を添加することによって調整することができる。
【0030】
本発明の第2の態様では、水相中に1つ以上のマイクロカプセルを含む組成物が提供され、マイクロカプセルは疎水性液体及び無機マイクロカプセル壁を含み、マイクロカプセルは本明細書に記載の方法によって調製される。
【0031】
有利には、疎水性液体は、有効成分、好ましくは農薬を含む。有利には、マイクロカプセルは、有効成分の制御放出を示す。
【0032】
好ましくは、無機マイクロカプセル壁は粘土粒子及び/又はケイ酸塩を含む。有利には、粘土粒子は、正に帯電した部位の集団を有するように表面改質されている。好ましくは、無機マイクロカプセル壁は有機架橋剤を含有しない。
【0033】
本発明の第3の態様では、植物、有害生物を防除するための農薬組成物及び/又は殺真菌剤としての本明細書に記載の組成物の使用が提供される。
【0034】
特に明記しない限り、パーセンテージは総重量によるパーセンテージとして与えられ、すべての実施形態及び好ましい特徴は任意の組合せで組み合わせることができる。
【0035】
本発明は、本発明の範囲を限定することを意図しない以下の実施例によって例示される。
【実施例】
【0036】
実施例1
乳化方法
水(95g、5% w/wの固体濃度が得られる)に必要量の粘土(5g)を添加することによって、水中の粘土粒子の分散液を調製した。混合物を、5%の作業サイクルに設定した高強度プローブを使用して超音波撹拌に供し、1秒間撹拌した後、1秒間静置を合計2分間行った。これにより、粒子が水相に完全に分散することが分かった。
【0037】
油相は、均質な溶液を形成するために必要な成分を一緒に混合することによって調製した。油相を典型的にはそれぞれ10:90g又は20:80の質量比で水相に添加した。混合物を手で振盪して油相を予備混合し、次いで、ロータステータシステム(Ystral(登録商標)、10mmヘッド、15000~20000rpmの速度で5~10分間)を使用して高剪断混合に供して、O/W界面に吸着した粘土粒子によって安定化された油滴のピッカリングエマルジョンを形成した。
【0038】
次いで、油滴の液滴サイズ分布を、レーザー回折(Malvern 2000 Laser Diffraction Particle Sizer)を使用して決定し、体積平均直径(VMD)を得た。
【0039】
実施例2
20% w/w油相を含有するエマルジョンを、実施例1に記載したように調製した:
油相:40% Solvesso 200nd(Exxon)、40%ラムダシハロトリン、10%オルトケイ酸テトラプロピル、10% n-オクタン酸;
水相:5%アミノプロピル改質カオリン(RLO 7645、例えば、Imerys)。
【0040】
エマルジョンを50℃の静止条件下で保存した。1週間保存した後、試料を顕微鏡スライド上でドライダウンさせ、顕微鏡下で外観を決定した。外観は
図1に示されており、機械的に強い複合シリカ/カオリン壁が形成されたことを実証している。
【0041】
試料からのラムダシハロトリンの放出速度(VMD 14.8μm)を、カプセル懸濁液を水で希釈することによって決定し、この懸濁液をn-ヘキサンと接触させ、圧延した。適切な時間間隔で、n-ヘキサン相をサブサンプリングし、ラムダシハロトリンについて分析した。これを、速放性(Warrior CS、VMD 2.8μm)製剤及び徐放性(Demand CS(VMD 15.8μm))製剤と呼ばれる2つの市販のラムダシハロトリン製剤について繰り返した。
【0042】
(希釈懸濁液中の全含有量に対して)放出されたラムダシハロトリンの画分のプロットを構築し、
図2に示す。カオリン/シリカカプセルは、指定された速放性製剤と徐放性製剤との中間の放出プロファイルを示し、組成物が現在の市販の製剤に匹敵する放出速度を与えることができることを示した。
【0043】
実施例3
最適な油相含有量を特定するために、油相含有量を10~30% w/wまで変化させた実施例1に記載の方法を使用して、3つのエマルジョンを調製した。
油相:70% Solvesso 200nd、10%フタル酸ジメチル、10%オルトケイ酸テトラプロピル、10% n-オクタン酸
水相:油含有量がそれぞれ30、20及び10% w/wの場合、6%、5%及び4% w/wのアミノプロピル改質カオリン(RLO 7645、例えば、Imerys)。
【0044】
3つのエマルジョン(10、20及び30%の有機相を含有する)のpHをpH4.5~5に調整し、次いで、静止条件下で50℃で3日間保存し、顕微鏡スライド上でのドライダウン時のそれらの機械的強度を顕微鏡下で評価した。
【0045】
図3は、50℃で3日間貯蔵した後の実施例3のドライダウンした試料:(a)10% w/w油相、(b)20%油相、(c)30%油相を示す。
【0046】
20及び30%の油相を含有する試料は、ドライダウン時に破壊されずに残った改善された機械的強度を有するカプセルを示した。
【0047】
実施例4
これらの実験は、ラムダシハロトリンを含有する系について、塩化ナトリウムを添加した存在下でのカプセル形成の改善されたロバスト性を実証した。
【0048】
Solvesso 200nd中に10%のn-オクタン酸及び10%のオルトケイ酸テトラプロピル、40%のラムダシハロトリンを含む20% w/w油相を含有するエマルジョンを実施例1に記載のように調製した。
【0049】
水相は、それぞれ0及び1500mM塩化ナトリウムを含む5%アミノプロピル改質カオリン(RLO 7645、例えば、Imerys)又は5% w/wカオリナイト(例えば、Sigma Aldrich)を含んでいた。エマルジョン系を評価前に50℃で6日間保存した。塩化ナトリウムの組込みは、改質及び非改質カオリンの両方を含む機械的に強いカプセルの形成を改善した。
【0050】
図4は、50℃で6日間貯蔵され、添加された塩化ナトリウムの非存在下及び存在下で改質及び非改質カオリンによって安定化されたエマルジョンによって形成されたドライダウン構造を示す。図は、塩化ナトリウムの組込みが機械的に強い構造の形成をさらに改善したことを実証している。
【0051】
実施例5
これらの実験は、ラムダシハロトリンを含有する系のためのさらなる添加電解質の存在下でのカプセル形成の改善されたロバスト性を実証した。
【0052】
Solvesso 200nd中に10%のn-オクタン酸及び10%のオルトケイ酸テトラプロピル、40%のラムダシハロトリンを含む20% w/w油相を含有するエマルジョンを実施例1に記載したように調製した。
【0053】
水相は、添加された電解質の非存在下及び以下の電解質の存在下の両方で、5%アミノプロピル改質カオリン(RLO7645、例えばImerys)又は5% w/wカオリナイト(例えば、Sigma Aldrich)を含んでいた。エマルジョン系のpHは4.5~5の範囲であった。
【0054】
以下の電解質を使用した:
500mM硫酸カリウム
500mM硫酸ナトリウム
375mM硫酸マグネシウム
500mM塩化マグネシウム。
【0055】
添加された電解質の存在は、測定された液滴サイズ(表1に示す体積平均直径)に対する影響が概して小さく、系が塩によって著しく凝集していないことを示している。
【0056】
【0057】
エマルジョンを10日間静置保存し、追加の電解質の非存在下で、アミノプロピルシラン改質(RLO7645)及び非改質カオリンの両方から形成された系は、ドライダウン時に液滴の破壊を示した。
【0058】
電解質の組込みにより、改質カオリン及び非改質カオリンの両方を含む顕微鏡スライド上のドライダウン時に機械的に強いカプセルが生成された。
図5は、添加された電解質の非存在下及び存在下で、改質及び非改質カオリンによって安定化されたカプセル配合物によって形成されたドライダウン構造を示す。この画像は、電解質の組込みがプロセスを改善し、50℃で10日間貯蔵した後の顕微鏡スライド上のドライダウン時に機械的に強い構造を与えたことを示す。
【0059】
実施例6
この実験は、表面アミノ化のレベルを保証することによって堅牢なカプセルをロバストに製造できることを示している。
【0060】
以前に改質されていないカオリン(例えば、Sigma Aldrich)及び改質カオリン(RLO7645)の両方をアミノプロピルトリエトキシシラン(APTES)でさらにアミノ化した。2つのカオリン試料の両方を、20gのカオリンを100gのAPTESのジクロロメタン中5%溶液に入れることによってさらに改質した初期実験では、表面が過剰に改質され、エマルジョン形成はpHに対して相対的であることが分かった。改質度は、DCM中のAPTESの濃度を低下させることによって低下させた。20gのカオリンを100gのDCM中0.5、1及び2.5 w/w APTESに添加することによって、RLO7645を処理した。1日後、過剰な液体をデカントし、粘土を乾燥させた。
【0061】
カオリンの改質は、Malvern Zetasizerを使用してpHの関数として粘土のゼータ電位を決定することによって実証された。RLO7645の処理は、等電点(ゼータ電位が0であるpH)をpH4.4~5.3を超えるpHまで増加させ、5% APTES処理によってpH9.4の等電点が得られた。
【0062】
図6は、非改質及び改質RLO7645のpHの関数としてのゼータ電位を示す。
【0063】
Solvesso 200nd担体中に10% n-オクタン酸、10%オルトケイ酸テトラプロピル、40%ラムダシハロトリンを含む20% w/w油相を含むエマルジョンを実施例1に記載のように調製し、50℃で保存した。水相は、5% w/wの0.5、1及び2.5% APTES改質RLO 7645を含んでいた。
【0064】
機械的に強いカプセルがドライダウン時に見られ、
図7に示されている。顕微鏡スライド上の製剤はアミノ化のレベルが安定なカプセル製剤の形成における重要なパラメータであることを実証している。
【0065】
実施例7
これらの実験は、油を水相に乳化する前、又は乳化後の後添加として、カチオン性界面活性剤を水相に添加することの利点を示す。
【0066】
40% w/wのラムダシハロトリン、10% w/wのn-オクタン酸、10% w/wのオルトケイ酸テトラプロピルで構成される有機相を用いて、実施例1で概説した一般的な方法に従って2つのエマルジョンを調製した。
【0067】
第1のエマルジョンでは、水相は5% w/wのRLO7645を含み、エマルジョンが形成された後、ドデシルトリメチルアンモニウムブロミドを添加して水相に0.2%の濃度を得た。
【0068】
第2では、水は、乳化前に5% w/wのRLO7645及び0.2% w/wの界面活性剤ドデシルトリメチルアンモニウムブロミドを含んでいた。
【0069】
2つの系を50℃で6日間保存し、顕微鏡スライド上でドライダウンさせることによってカプセルの機械的強度について評価した。両方の系は、DTABの存在下で乾燥すると機械的に強いカプセルを生成し、DTABは粘土表面に吸着し、表面の正電荷を増加させた。
【0070】
図8は、乳化前に水相に添加され、50℃で6日間貯蔵されたDTABの存在下で形成された機械的に強いカプセルのドライダウンビューを示す。
【0071】
本発明は、特許請求の範囲によって定義される。
【国際調査報告】