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特表2024-536475操舵システムの操舵センサを較正及び/又は初期化するための方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-04
(54)【発明の名称】操舵システムの操舵センサを較正及び/又は初期化するための方法
(51)【国際特許分類】
   B62D 6/00 20060101AFI20240927BHJP
   B62D 5/04 20060101ALI20240927BHJP
   B62D 119/00 20060101ALN20240927BHJP
   B62D 113/00 20060101ALN20240927BHJP
【FI】
B62D6/00
B62D5/04
B62D119:00
B62D113:00
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024522012
(86)(22)【出願日】2022-09-19
(85)【翻訳文提出日】2024-04-10
(86)【国際出願番号】 EP2022075963
(87)【国際公開番号】W WO2023061702
(87)【国際公開日】2023-04-20
(31)【優先権主張番号】102021211415.6
(32)【優先日】2021-10-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】390023711
【氏名又は名称】ローベルト ボツシユ ゲゼルシヤフト ミツト ベシユレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
【住所又は居所原語表記】Stuttgart, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】クリスティアン ギュンター
【テーマコード(参考)】
3D232
3D333
【Fターム(参考)】
3D232CC33
3D232DA03
3D232DA15
3D232EC37
3D232GG01
3D333CB02
3D333CB30
3D333CB45
3D333CE13
3D333CE31
(57)【要約】
本発明は、操舵システム(12)の操舵センサ(10)を、特に車両(14)内の操舵システム(12)の動作中に、較正及び/又は初期化するための方法であって、操舵システム(12)は、操舵ハンドル(16)と、当該操舵ハンドル(16)に割り当てられたトルクセンサ(18)とを含み、操舵センサ(10)は、操舵ハンドル(16)の変位位置を捕捉するために設けられている、方法を起点とする。ここでは、操舵ハンドル(16)の複数の異なる変位位置について、それぞれ1つのトルクを決定することによってトルク特性量(20)を求め、操舵センサ(10)の較正及び/又は初期化のために基準特性量(22)と比較することが提案される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
操舵システム(12)の操舵センサ(10)を、特に車両(14)内の前記操舵システム(12)の動作中に、較正及び/又は初期化するための方法であって、
前記操舵システム(12)は、操舵ハンドル(16)と、前記操舵ハンドル(16)に割り当てられたトルクセンサ(18)とを含み、
前記操舵センサ(10)は、前記操舵ハンドル(16)の変位位置を捕捉するために設けられている、方法において、
前記操舵ハンドル(16)の複数の異なる変位位置について、それぞれ1つのトルクを決定することによってトルク特性量(20)を求め、前記操舵センサ(10)の較正及び/又は初期化のために基準特性量(22)と比較することを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記操舵ハンドル(16)の少なくとも4つの異なる変位位置について、1つのトルクが求められ、前記変位位置は、前記操舵ハンドル(16)の全ての変位領域にわたって均等に分散されている、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記トルク特性量(20)と前記基準特性量(22)との比較のために、フーリエ変換、特に高速フーリエ変換が使用される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記トルク特性量(20)と前記基準特性量(22)との比較のために、相互相関(24)が使用される、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記相互相関(24)の最大値に基づき、前記トルク特性量(20)と前記基準特性量(22)との間の差分及び/又は偏差が求められ、前記操舵センサ(10)の較正及び/又は初期化のために使用される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記操舵システム(12)は、前記操舵ハンドル(16)と作用的な接続関係にある少なくとも1つのアクチュエータユニット(26)を含み、前記操舵ハンドル(16)は、前記トルク特性量(20)を求めるために前記アクチュエータユニット(26)の駆動制御によって変位する、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記トルク特性量(20)は、前記操舵ハンドル(16)の接触接続が発生しない及び/又は行われない時点及び/又は状態、特にいわゆるハンドオフ状態において求められる、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか一項に記載の方法を実施するための計算ユニット(30)を備える制御装置(28)。
【請求項9】
操舵ハンドル(16)と、前記操舵ハンドル(16)の変位位置を捕捉するために前記操舵ハンドル(16)に割り当てられた操舵センサ(10)と、トルクを捕捉するために前記操舵ハンドル(16)に割り当てられたトルクセンサ(18)とを含む操舵システム(12)を備えた車両(14)、特に自動車において、
計算ユニット(30)が、前記操舵ハンドル(16)の複数の異なる変位位置について、それぞれ1つのトルクを求め、そこからトルク特性量(20)を生成するために設けられており、
前記計算ユニット(30)は、前記トルク特性量(20)を、前記操舵センサ(10)の較正及び/又は初期化のために基準特性量(22)と比較するために設けられている、
ことを特徴とする車両(14)。
【請求項10】
前記操舵システム(12)は、ステアバイワイヤ式操舵システムである、請求項9に記載の車両(14)。
【請求項11】
前記計算ユニット(30)は、請求項1乃至7のいずれか一項に記載の方法を実施するために設けられている、請求項9又は10に記載の車両(14)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の上位概念に記載の操舵システムの操舵センサを較正及び/又は初期化するための方法と、請求項9の上位概念に記載の車両とを起点とする。また、本発明は、そのような方法を実施するための計算ユニットを備えた制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術からは、例えば、操舵ホイールの形態の操舵ハンドルと、転舵ギヤの形態の車輪転舵角調整器と、操舵ハンドルを車輪転舵角調整器に機械的に接続するための操舵軸とを備えた従来の操舵システムを含む車両が公知である。また、操舵ハンドルと転舵される車両ホイールとの間の直接的で機械的な接続なしで間に合い、操舵ハンドルにおける操舵設定が専ら電気的に転送されるステアバイワイヤ式操舵システムを備えた車両が公知である。後者は、運転者によって操作可能な操作ユニットと、操作ユニットから機械的に分離された少なくとも1つの車輪転舵角調整器とを含む。さらに、この種の操舵システムは、両ケースにおいて、操舵システムの動作を制御するための、例えばトルクセンサ及び/又は操舵角センサのようなセンサを含む。この種の操舵システムは、例えば、独国特許発明第102008037870号明細書及び独国特許出願公開第102018123615号明細書から公知である。
【0003】
さらに、使用されるセンサは、走行動作中のエラーを回避するために、特に正確な較正及び/又は設定が必要とされる重要保安部品である。この場合、対応する較正は、通常は製造中に手動で行われ、又は、工場において例えばレベリング調整具のような専用工具を使用して手動で行われる。しかしながら、例えば、経年劣化及び/又は摩耗作用に基づいて必要になる可能性がある簡単な再較正及び自動化は、公知の較正手法を用いて達成することはできない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】独国特許発明第102008037870号明細書
【特許文献2】独国特許出願公開第102018123615号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
これらのことを起点として、本発明の課題は、特に、操舵センサを較正及び/又は初期化するための方法と、動作信頼性及び/又は機能形態に関して改善された特性を有する車両とを提供することにある。この課題は、請求項1、請求項8及び請求項9の特徴部分によって解決され、それに対して本発明の好適な実施形態及び発展形態は、従属請求項から読み取ることができる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
発明の開示
本発明は、操舵システムの操舵センサを、特に車両内の操舵システムの動作中に、特に自動的に及び/又は自動化して較正及び/又は初期化するための方法、特にコンピュータ実装方法であって、ここで、操舵システムは、操舵ハンドルと、操舵ハンドルに割り当てられたトルクセンサとを含む方法を起点とするものである。トルクセンサは、特に操舵ハンドルに作用するトルクを捕捉するために設けられている。操舵センサは、操舵ハンドルの変位位置を捕捉するために設けられている。「設けられる」とは、特に、専用にプログラミングされ、設計され、及び/又は、装備されることを意味するものと理解されるべきである。対象物が特定の機能のために設けられているとは、特に、この対象物がこの特定の機能を少なくとも1つの用途及び/又は動作状態において満たすこと及び/又は実行することを意味するものと理解されるべきである。
【0007】
ここでは、特にトルクセンサを用いて、操舵ハンドルの複数の異なる変位位置について、特に対応する変位位置に関連付けられたそれぞれ1つのトルクを決定することによって、トルク特性量を求め、操舵センサの特に自動的な及び/又は自動化された較正及び/又は初期化のために基準特性量と比較することが提案される。したがって、トルク特性量は、操舵ハンドルの変位位置と、所属するトルクとからなる複数の値対を含む。基準特性量とは、例えば冗長的なさらなるトルクセンサを用いて求められる、例えばトルク特性量と等価的なさらなるトルク特性量であるものとしてよい。しかしながら、好適には、基準特性量として、トルク特性量について事前に適用されるワーク設定量が使用される。この場合、基準特性量は、例えば事前にテスト測定を用いて、例えば較正された基準システムにおいて求めることができ、車両の動作メモリに格納されているものとしてよい。特に好適には、トルク特性量及び基準特性量はベクトルである。次いで、この比較に基づき、トルク特性量と基準特性量との間の差分及び/又は偏差が求められ、操舵センサの較正及び/又は初期化のために使用される。この実施形態により、動作信頼性を高めることができ、及び/又は、機能形態を改善することができる。とりわけ、特に正確に較正及び/又は設定された操舵センサを提供することができる。また、融通性を高めることができ、変更された動作条件への好適な適合化を達成することができる。
【0008】
好適には、操舵ハンドルの少なくとも4つの異なる変位位置、好適には少なくとも20の異なる変位位置、特に好適には少なくとも30の異なる変位位置について、1つのトルクが求められる。また、好適には、変位位置は、操舵ハンドルの全ての変位領域にわたって均等に分散されている。この場合、操舵ハンドルが操舵ホイールとして構成されているならば、全ての変位領域は、操舵ホイールの完全な一回転と同一である。これにより、操舵センサの特に簡単な及び/又は正確な評価並びに較正及び/又は初期化を達成することができる。
【0009】
さらに、トルク特性量と基準特性量との比較のためにフーリエ変換、特に離散フーリエ変換(DFT)又は好適には高速フーリエ変換(FFT)を使用することが提案される。トルク特性量が正弦波信号に対応している限り、操舵センサの較正及び/又は初期化は、ここでは直接フーリエ変換の結果に基づいて行うことができる。この場合、好適には、フーリエ変換の結果の実際の割合と仮想の割合、特に角度割合に基づいて、トルク特性量と基準特性量との間の差分及び/又は偏差を求め、操舵センサの較正及び/又は初期化のために使用することができる。これにより、とりわけ、特に簡単で、及び/又は、リソースに優しい評価アルゴリズムを達成することができる。
【0010】
その上さらに、トルク特性量と基準特性量との比較のために、相互相関を使用することが提案される。特にこの場合、トルク特性量と基準特性量との間の相互相関が算出される。好適には、これに関連して、相互相関の最大値に基づき、トルク特性量と基準特性量との間の差分及び/又は偏差が求められ、操舵センサの較正及び/又は初期化のために使用される。この種の評価は、トルク特性量が所定の程度にわたって正弦波信号から偏差している場合に特に考えられ得る。これにより、とりわけ、特に正確な評価を達成することができ、それによって、好適には、正確に較正及び/又は設定された操舵センサを提供することができる。
【0011】
操舵ハンドルは、トルク特性量を求めるために、例えば、手動及び/又は手操作で変位させることが可能である。ただし、好適には、操舵システムは、操舵ハンドルと作用的な接続関係にある少なくとも1つの、特に電気的及び/又は電子的なアクチュエータユニットを含み、操舵ハンドルは、トルク特性量を求めるためにアクチュエータユニットの駆動制御によって変位させられることが提案される。特に、操舵ハンドルは、この場合、アクチュエータユニットの駆動制御によって自動的に及び/又は自動化されて変位させられ、ここで、それぞれの変位位置に達した際に、トルクセンサを用いて対応するトルクが求められ、ここで、トルクに対応する値が、対応する変位位置と共に値対として記憶される。次いで、このようにして操舵ハンドルの変位位置と、所属するトルクとから求められた全ての値対の全体がトルク特性量を形成する。さらに、操舵システムは、この場合特に、従来の操舵システムとして、特に電動パワーステアリングとして構成されるものとしてよく、機械的な貫通部を含み得る。この場合、アクチュエータユニットは、操舵ハンドルに印加される手動モーメントの支援のための操舵アクチュエータとして構成されるものとしてよい。ただし、好適には、操舵システムは、ステアバイワイヤ式操舵システムとして構成され、特に操作ユニットと、当該操作ユニットから機械的に分離され、少なくとも1つの車輪の車輪転舵角を操舵設定に依存して変更するために設けられている少なくとも1つの車輪転舵角調整器とを含む。この場合、アクチュエータユニットは、好適には、操作ユニットの一部であり、操舵ハンドルと機械的に結合されている。特に好適には、アクチュエータユニットは、ここでは、操舵ハンドルへの操舵抵抗及び/又は復元モーメントを生成するためのフィードバックアクチュエータとして構成されている。また、アクチュエータユニットは、好適には、電気的三相交流機として、特に同期機として、特に好適には永久励磁同期機として構成されており、好適には、少なくとも1つの動作状態において、トルクセンサ及び/又は操舵センサの信号を使用して駆動制御される。これにより、好適な自動化を達成することができる。
【0012】
また、好適には、トルク特性量が、操舵ハンドルとの接触接続が発生しない及び/又は行われない時点及び/又は状態、特にいわゆるハンドオフ状態において求められるならば、トルク特性量を正確にかつ外的影響に左右されることなく求めることができる。
【0013】
さらに、本発明は、前述した方法を実施するための計算ユニットを備えた制御装置に関する。「計算ユニット」とは、ここでは特に、情報入力側、情報処理部及び情報出力側を有する電気的ユニット及び/又は電子的ユニットを意味するものと理解されるべきである。好適には、計算ユニットはさらに、少なくとも1つのプロセッサ、少なくとも1つの動作メモリ、少なくとも1つの入力手段及び/又は出力手段、少なくとも1つの動作プログラム、少なくとも1つの開ループ制御ルーチン、少なくとも1つの閉ループ制御ルーチン、少なくとも1つの算定ルーチン、少なくとも1つの計算ルーチン及び/又は少なくとも1つの較正ルーチンを有する。特に、計算ユニットは、トルク特性量を求めるために設けられている。その際、計算ユニットは特に、操舵ハンドルの複数の異なる変位位置について、それぞれ1つのトルクを求め、そこからトルク特性量を生成するために設けられている。さらに、計算ユニットは、特に、トルク特性量を、操舵センサの較正及び/又は初期化のために基準特性量と比較するために設けられている。さらに、計算ユニットは、アクチュエータユニットを駆動制御し、これによって操舵ハンドルが自動的に及び/又は自動化されて変位させられるように設けられるものとしてよい。好適には、計算ユニットは、ここでは車両の制御装置、好適には操舵制御装置として構成された制御装置内に統合されている。これにより、特に、既に上述した利点を達成することができる。
【0014】
その上さらに、車両、特に自動車であって、当該車両は、操舵ハンドルと、当該操舵ハンドルの変位位置を捕捉するために当該操舵ハンドルに割り当てられた操舵センサと、トルクを捕捉するために操舵ハンドルに割り当てられたトルクセンサとを含む操舵システムと、操舵ハンドルの複数の異なる変位位置について、それぞれ1つのトルクを求め、そこからトルク特性量を生成するために設けられた計算ユニットとを備えており、ここで、計算ユニットは、トルク特性量を、操舵センサの較正及び/又は初期化のために基準特性量と比較するために設けられている車両が提案される。操舵システムは、ここでは従来の操舵システムとして、特に電動パワーステアリングとして構成されるものとしてよく、機械的な貫通部を含み得る。ただし、好適には、操舵システムは、ステアバイワイヤ式操舵システムとして構成され、特に操作ユニットと、当該操作ユニットから機械的に分離され、少なくとも1つの車輪の車輪転舵角を操舵設定に依存して変更するために設けられている少なくとも1つの車輪転舵角調整器とを含む。これにより、特に、既に上述した利点を達成することができる。
【0015】
操舵センサを較正及び/又は初期化するための方法、制御装置及び車両は、上述した用途及び実施形態に限定されるべきではない。特に、操舵センサを較正及び/又は初期化するための方法、制御装置及び車両は、本明細書において説明する機能を満たすために、本明細書において挙げられる個々の要素、部品及びユニットの数とは異なる数を有することがあり得る。
【0016】
さらなる利点は、以下の図面の説明から明らかになる。これらの図面には、本発明の実施例が示されている。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1a】例示的にステアバイワイヤ式操舵システムとして構成された操舵システムを備えた車両を示す概略図である。
図1b】例示的にステアバイワイヤ式操舵システムとして構成された操舵システムを備えた車両を示す概略図である。
図2a】操舵システムの操舵センサを較正及び/又は初期化するための様々な信号を示した例示的な線図である。
図2b】操舵システムの操舵センサを較正及び/又は初期化するための様々な信号を示した例示的な線図である。
図3】操舵センサを較正及び/又は初期化するための方法の主要な方法ステップを含む例示的なフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
実施例の説明
図1a及び図1bには、複数の車輪32と操舵システム12とを備え例示的に乗用車として構成された車両14が概略図で示されている。この操舵システム12は、車輪32との作用的な接続部を有し、車両14の走行方向に作用するために設けられている。さらに、操舵システム12は、本発明の場合、操舵設定を少なくとも1つの動作状態において電気的に車輪32に転送するステアバイワイヤ式操舵システムとして構成されている。ただし、基本的には、この操舵システムは、従来の操舵システム、特に電動パワーステアリングとして構成されるものとしてもよい。
【0019】
操舵システム12は、それ自体公知の車輪転舵角調整器34を備える。この車輪転舵角調整器34は、例示的に中央調整器として構成されている。車輪転舵角調整器34は、少なくとも2つの車輪32、特に2つの前輪との作用的な接続部を有し、操舵設定を車輪32の転舵運動に変換するために設けられている。この目的のために、車輪転舵角調整器34は、例示的にラックとして構成された転舵調整要素36と、当該転舵調整要素36と協働するアクチュエータユニット38とを含む。このアクチュエータユニット38は、転舵アクチュエータとして、特に電気モータとして構成されており、転舵可能な車輪32の駆動制御のために設けられている。基本的には、操舵システムは、もちろん、特に単輪調整器として構成された複数の車輪転舵角調整器を含むこともあり得る。さらに、アクチュエータユニットは、複数の電気モータを含むこともあり得る。また、車輪転舵角調整器を、基本的に従来の転舵ギヤとして構成し、操舵軸を介して操舵ハンドルと機械的に接続することも可能である。
【0020】
その上さらに、操舵システム12は、特に運転者及び/又は乗員によって操作可能な操作ユニット40を備える。この操作ユニット40は、車輪転舵角調整器34から機械的に分離されて構成されている。操作ユニット40は、車輪転舵角調整器34と純粋に電気的に接続されている。操作ユニット40は、例えば操舵ホイールの形態の操舵ハンドル16と、特に機械的に操舵ハンドル16と結合されたさらなるアクチュエータユニット26とを含む。このさらなるアクチュエータユニット26は、フィードバックアクチュエータとして構成されており、少なくとも操舵ハンドル16への操舵抵抗及び/又はリセットモーメントを生成するために設けられている。この目的のために、さらなるアクチュエータユニット26は、特に永久励磁同期モータとして構成された少なくとも1つの電気モータ(図示せず)を含む。
【0021】
また、操作ユニット40は、少なくとも1つのトーション要素42、本発明の場合においては、特に操舵ハンドル16の運動に依存して回転させるために設けられているトーションバーを含む。代替的に、操舵ハンドルは、ジョイスティック、操縦桿、及び/又は、操縦ボールなどとして構成することも可能である。さらに、さらなるアクチュエータユニットは、複数の電気モータを含むこともあり得る。また、操作ユニットと車輪転舵角調整器とを、例えば、従来の操舵システムのように操舵軸を用いて相互に接続することも考えられる。この場合には、さらなるアクチュエータユニットを省略することが可能である。
【0022】
さらに、操舵システム12は、少なくとも1つのトルクセンサ18を含む。このトルクセンサ18は、本発明の場合、操作ユニット40の一部であり、特にトーション要素42の領域に配置されている。トルクセンサ18は、ここでは操舵ハンドル16に割り当てられている。トルクセンサ18は、操舵ハンドル16によって引き起こされトーション要素42の回転に相関するトルクを捕捉するために設けられている。ただし、基本的には、トルクセンサは、例えば、従来の操舵システムのように、操作ユニットから分離して構成することも可能である。
【0023】
また、操舵システム12は、少なくとも1つの操舵センサ10を含む。この操舵センサ10は、本発明の場合、操作ユニット40の一部である。操舵センサ10は、ここでは、操舵ハンドル16に割り当てられている。操舵センサ10は、操舵ハンドル16の変位位置を捕捉するために設けられている。本発明の場合においては、操舵センサ10は、例示的に操舵角センサとして構成され、操舵角を捕捉するために設けられている。ただし、基本的には、操舵センサは、例えば、従来の操舵システムのように、操作ユニットから分離して構成することも可能である。また、操舵センサを、操舵ハンドルに直接配置することも考えられる。
【0024】
さらに車両14は、制御装置28を有する。この制御装置28は、本発明の場合、例示的に中央操舵制御装置として構成されており、したがって、操舵システム12の一部である。制御装置28は、車輪転舵角調整器34との電気的な接続部を有する。制御装置28はさらに、操作ユニット40、特にトルクセンサ18及び操舵センサ10との電気的な接続部を有する。制御装置28は、操舵システム12の動作を制御するために設けられている。制御装置28は、本発明においては、アクチュエータユニット38を、操作ユニット40の信号に依存して、例えば操舵設定及び/又は手動モーメントに依存して駆動制御するために設けられている。さらに制御装置28は、さらなるアクチュエータユニット26を、車輪転舵角調整器34の信号に依存して駆動制御するために設けられている。
【0025】
この目的のために、制御装置28は、計算ユニット30を含む。この計算ユニット30は、例えばマイクロプロセッサの形態の少なくとも1つのプロセッサ(図示せず)と、少なくとも1つの動作メモリ(図示せず)とを含む。また、計算ユニット30は、少なくとも1つの制御ルーチン、少なくとも1つの算定ルーチン、少なくとも1つの計算ルーチン、及び、少なくとも1つの較正ルーチンを有する、動作メモリに格納された少なくとも1つの動作プログラムを含む。基本的には、車両が複数の制御装置を含むこともあり得る。その場合には、少なくとも1つの第1の計算ユニットを有する第1の制御装置が操作ユニットに割り当てられ、それに対して、少なくとも1つの第2の計算ユニットを有する第2の制御装置は、車輪転舵角調整器に割り当てられる。この場合には、第1の制御装置と第2の制御装置とが相互に電気的に通信することが可能である。さらに、一方の制御装置を、操舵システムとは異なる例えば車両の中央制御装置として構成することも可能である。
【0026】
使用されるセンサは、基本的には重要保安部品である。したがって、走行動作中のエラーを回避するために、トルクセンサ18及び操舵センサ10は、特に正確に較正及び/又は設定する必要がある。以下の説明は、ここでは、操舵センサ10の較正及び/又は初期化に焦点を当てる。
【0027】
それゆえ、以下においては、動作信頼性を高めるために、及び/又は、機能形態を改善するために、操舵センサ10を較正及び/又は初期化するための方法を説明する。この方法は、ここでは特に、操舵システム12の動作中、したがって、車両14内の操舵センサ10の動作中に実施され、すなわち、好適には、車両14の停止状態において実施される。操舵センサ10の較正及び/又は初期化を実施するために、車両14は、例えば、車両14の運転者及び/又は乗員によって、又は、サービス担当者によって、例えば車載コンピュータを用いてアクティブ化することができる特別なサービス動作モードを含み得る。本方法の実行は、ここでは基本的に、規則的な時間間隔で、又は、状況に依存して、例えば各システム開始時に、又は、必要に応じて、繰り返すことができる。本発明の場合、特に計算ユニット30は、本方法を実行するために設けられており、この目的のために、特に対応するプログラムコード手段を有するコンピュータプログラムを含む。しかしながら、代替的に、本方法を実施するために、第1の制御装置の、操作ユニットに割り当てられた第1の計算ユニットを設けることも可能である。さらに、本方法は、代替的又は付加的に、車両14の走行モード中に、例えば自動化された走行モード中に実施することも可能である。
【0028】
本発明においては、操舵センサ10の較正及び/又は初期化のために、トルクセンサ18を用いて、操舵ハンドル16の複数の異なる変位位置について、それぞれ1つのトルクを決定することによりトルク特性量20が求められる。本発明においては、その際、操舵ハンドル16の少なくとも30の異なる変位位置について、対応するトルクが求められ、この場合、これらの変位位置は、操舵ハンドル16の全ての変位領域にわたって、すなわち、本発明の場合においては、操舵ホイールとして構成された操舵ハンドル16の完全な一回転にわたって、均等に分散されている。この目的のために、操舵ハンドル16は、さらなるアクチュエータユニット26の駆動制御によって自動的に及び/又は自動化されて変位させられ、この場合、それぞれの変位位置に達した際に、トルクセンサ18を用いて対応するトルクが求められる。また、トルクに対応する値は、対応する変位位置と共に値対として、例えば計算ユニット30の動作メモリに記憶される。したがって、トルク特性量20は、操舵ハンドル16の変位位置と、所属するトルクとからなる複数の値対を含む。好適には、トルク特性量20は、ここではベクトルとして存在する。さらに、トルク特性量20は、これを外的影響に左右されることなく求めることができるようにするために、操舵ハンドル16との接触接続が発生しない及び/又は行われない時点及び/又は状態、特にいわゆるハンドオフ状態において求められる。
【0029】
続いて、トルク特性量20が、操舵センサ10の較正及び/又は初期化のために基準特性量22と比較される。この基準特性量22も同様に好適にはベクトルとして存在する。次いで、この比較に基づき、トルク特性量20と基準特性量22との間の差分及び/又は偏差が求められ、操舵センサ10の較正及び/又は初期化のために使用される。基準特性量22として、本発明においては、トルク特性量20について適用されるワーク設定量が用いられ、これは、特に事前にテスト測定を用いて求められ、例えば計算ユニット30の動作メモリに格納されているものとしてよい。
【0030】
さらに、トルク特性量20と基準特性量22との比較のために、フーリエ変換、本発明の場合、特に高速フーリエ変換(FFT)が使用される。トルク特性量20がほぼ完全な正弦波信号に対応している限り、操舵センサ10の較正及び/又は初期化は、フーリエ変換の結果に基づいて直接行うことができる。この場合、フーリエ変換の結果の実際の割合と仮想の割合、特に角度割合に基づいて、トルク特性量20と基準特性量22との間の差分及び/又は偏差を求めて、操舵センサ10の較正及び/又は初期化のために使用することができる。ただし、通常は、例えば、システム内在の偏差又は対応する誤差に基づいて、トルク特性量20は、対応する正弦波信号から多かれ少なかれ大きく偏差する。この場合には、偏差した評価が考えられ得る。ここでは、トルク特性量20と基準特性量22との比較のために、相互相関24が使用される。この目的のために、トルク特性量20と基準特性量22との間の相互相関24が算出され、この相互相関24の最大値に基づいて、トルク特性量20と基準特性量22との間の差分及び/又は偏差が求められる。次いで、そのように求められた差分及び/又はそのように求められた偏差は、操舵センサ10の較正及び/又は初期化のために使用することができる。操舵ハンドル16の全ての変位領域にわたって周期的に反復するトルク特性量20の特性は、この関連において、高速フーリエ変換(FFT)及び高速フーリエ変換に対する逆関数(IFFT)を使用した相互相関の計算を可能にする。相互相関24については相互相関関数kを用いて以下の関係式:
k=IFFT(FFT(基準特性量)・FFT(トルク特性量))
が成り立つ。
【0031】
図2a及び図2bは、操舵センサ10の較正及び/又は初期化のための様々な信号の例示的な線図を示す。
【0032】
図2aにおいては、縦軸44にトルクが[Nm]でプロットされている。横軸46には、操舵ハンドル16の変位が、本発明においては特に操舵角の形態で、[°]により示されている。図2aは、ここでは特に、操舵ハンドル16の全ての変位領域を示している。特性曲線48は、トルク特性量20の経過を示している。特性曲線50は、トルク特性量20に対応する基準特性量22の経過を示している。
【0033】
トルク特性量20の経過に基づけば、トルクセンサ18を用いて求められたトルクが、操舵ハンドル16の変位位置に依存して変動することを認識することができる。この理由から、操舵ハンドル16の異なる多数の変位位置についてのトルクが求められる。また、これらの変位位置は、ここでは、それらが操舵ハンドル16の全ての変位領域にわたって均等に分散されるように選択される。さらに、トルク特性量20及び基準特性量22の経過は、図示の場合においては、正弦波信号から比較的大きく偏差しているので、トルク特性量20と基準特性量22との比較については、この場合、相互相関24が使用される。
【0034】
図2bにおいては、縦軸52が変数軸として構成されているのに対し、横軸54には、ここでも操舵ハンドル16の変位が、本発明においては特に操舵角の形態で、[°]でプロットされている。特性曲線56は、この場合、トルク特性量20と基準特性量22とから算出された相互相関24を示す。
【0035】
図示の相互相関24に基づいて、特に相互相関24の最大値に基づいて、トルク特性量20と基準特性量22との間の差分及び/又は偏差を容易に求めることができる。次いで、そのように求められた差分及び/又はそのように求められた偏差は、操舵センサ10の較正及び/又は初期化のために使用することができる。
【0036】
最後に、図3には、操舵センサ10の較正及び/又は初期化のための方法の主要な方法ステップを含む、例示的なフローチャートが示されている。
【0037】
方法ステップ60は、トルク特性量20が求められる算定ステップに対応する。この場合、まず、サービス動作モードがアクティブ化され、これに続いて、トルクセンサ18を用いてトルク特性量20を求めるために、操舵ハンドル16の複数の異なる変位位置について、それぞれ1つのトルクが決定される。この目的のために、操舵ハンドル16は、好適には、さらなるアクチュエータユニット26の駆動制御によって変位され、ここで、それぞれの変位位置に達した際に、トルクセンサ18を用いて対応するトルクが求められる。また、トルクに対応する値が、対応する変位位置と共に値対として例えば計算ユニット30の動作メモリに記憶される。
【0038】
方法ステップ62は、比較ステップに対応し、この比較ステップにおいては、事前に求められたトルク特性量20が、操舵センサ10の較正及び/又は初期化のために基準特性量22と比較される。トルク特性量20と基準特性量22との比較のために、ここでは、フーリエ変換、本発明の場合、特に高速フーリエ変換(FFT)が使用される。さらに好適には、トルク特性量20と基準特性量22との間の相互相関24が算出され、この相互相関24の最大値に基づいて、トルク特性量20と基準特性量22との間の差分及び/又は偏差が求められる。
【0039】
方法ステップ64は、操舵センサ10が較正及び/又は初期化される較正ステップ及び/又は初期化ステップに対応する。ここでは、事前に例えば高速フーリエ変換(FFT)及び/又は相互相関24を用いて求められた差分、及び/又は、事前に例えば高速フーリエ変換(FFT)及び/又は相互相関24を用いて求められた偏差が、操舵センサ10の較正及び/又は初期化のために使用される。
【0040】
図3の例示的なフローチャートは、操舵センサ10を較正及び/又は初期化するための方法を例示的に説明したものに過ぎない。特に、個々の方法ステップは、変更することも可能であり、又は、付加的な方法ステップを追加することも可能である。この関連においては、例えば、本方法を、従来の操舵システム、特に電動パワーステアリングに相応に適用することも考えられ、その際には、アクチュエータユニットとして、この場合に操舵ハンドルに印加される手動モーメントを支援するための操舵アクチュエータが使用される。
図1a-1b】
図2a
図2b
図3
【手続補正書】
【提出日】2024-04-10
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
操舵システム(12)の操舵センサ(10)を、特に車両(14)内の前記操舵システム(12)の動作中に、較正及び/又は初期化するための方法であって、
前記操舵システム(12)は、操舵ハンドル(16)と、前記操舵ハンドル(16)に割り当てられたトルクセンサ(18)とを含み、
前記操舵センサ(10)は、前記操舵ハンドル(16)の変位位置を捕捉するために設けられている、方法において、
前記操舵ハンドル(16)の複数の異なる変位位置について、それぞれ1つのトルクを決定することによってトルク特性量(20)を求め、前記操舵センサ(10)の較正及び/又は初期化のために基準特性量(22)と比較することを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記操舵ハンドル(16)の少なくとも4つの異なる変位位置について、1つのトルクが求められ、前記変位位置は、前記操舵ハンドル(16)の全ての変位領域にわたって均等に分散されている、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記トルク特性量(20)と前記基準特性量(22)との比較のために、フーリエ変換、特に高速フーリエ変換が使用される、請求項に記載の方法。
【請求項4】
前記トルク特性量(20)と前記基準特性量(22)との比較のために、相互相関(24)が使用される、請求項に記載の方法。
【請求項5】
前記相互相関(24)の最大値に基づき、前記トルク特性量(20)と前記基準特性量(22)との間の差分及び/又は偏差が求められ、前記操舵センサ(10)の較正及び/又は初期化のために使用される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記操舵システム(12)は、前記操舵ハンドル(16)と作用的な接続関係にある少なくとも1つのアクチュエータユニット(26)を含み、前記操舵ハンドル(16)は、前記トルク特性量(20)を求めるために前記アクチュエータユニット(26)の駆動制御によって変位する、請求項に記載の方法。
【請求項7】
前記トルク特性量(20)は、前記操舵ハンドル(16)の接触接続が発生しない及び/又は行われない時点及び/又は状態、特にいわゆるハンドオフ状態において求められる、請求項に記載の方法。
【請求項8】
請求項に記載の方法を実施するための計算ユニット(30)を備える制御装置(28)。
【請求項9】
操舵ハンドル(16)と、前記操舵ハンドル(16)の変位位置を捕捉するために前記操舵ハンドル(16)に割り当てられた操舵センサ(10)と、トルクを捕捉するために前記操舵ハンドル(16)に割り当てられたトルクセンサ(18)とを含む操舵システム(12)を備えた車両(14)、特に自動車において、
計算ユニット(30)が、前記操舵ハンドル(16)の複数の異なる変位位置について、それぞれ1つのトルクを求め、そこからトルク特性量(20)を生成するために設けられており、
前記計算ユニット(30)は、前記トルク特性量(20)を、前記操舵センサ(10)の較正及び/又は初期化のために基準特性量(22)と比較するために設けられている、
ことを特徴とする車両(14)。
【請求項10】
前記操舵システム(12)は、ステアバイワイヤ式操舵システムである、請求項9に記載の車両(14)。
【請求項11】
前記計算ユニット(30)は、請求項に記載の方法を実施するために設けられている、請求項に記載の車両(14)。
【国際調査報告】