(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-04
(54)【発明の名称】神経血管連関を計測するための方法および装置
(51)【国際特許分類】
A61B 8/06 20060101AFI20240927BHJP
【FI】
A61B8/06
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024522098
(86)(22)【出願日】2022-10-12
(85)【翻訳文提出日】2024-04-11
(86)【国際出願番号】 EP2022078398
(87)【国際公開番号】W WO2023062075
(87)【国際公開日】2023-04-20
(32)【優先日】2021-10-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】507002516
【氏名又は名称】アンスティチュート、ナシオナル、ドゥ、ラ、サンテ、エ、ドゥ、ラ、ルシェルシュ、メディカル
【氏名又は名称原語表記】INSTITUT NATIONAL DELA SANTE ET DE LA RECHERCHE MEDICALE
(71)【出願人】
【識別番号】506316557
【氏名又は名称】サントル ナショナル ドゥ ラ ルシェルシュ シアンティフィック
(71)【出願人】
【識別番号】515185843
【氏名又は名称】エコール・シュペリュール・ドゥ・フィシック・エ・ドゥ・シミー・アンデュストリエル・ドゥ・ラ・ヴィル・ドゥ・パリ
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ミカエル・タンター
(72)【発明者】
【氏名】トマ・デフュー
(72)【発明者】
【氏名】フランク・レブラン
(72)【発明者】
【氏名】クレマンティーヌ・モリセット
【テーマコード(参考)】
4C601
【Fターム(参考)】
4C601DD11
4C601DD13
4C601DE04
4C601DE05
4C601EE09
4C601EE10
4C601GB06
4C601HH14
4C601JC37
(57)【要約】
機能イメージング、具体的には機能超音波イメージングが、例えば神経変性疾患などの障害の早期検出のための強力なツールとなりつつある。
本開示は、神経系に対して刺激を送達し、刺激により活性化される神経系の関心領域の機能イメージングを実施することにより関心領域内の血管網の連続的な血液動態ドプラ画像を取得し、連続的な血液動態ドプラ画像から刺激に対する血液動態反応(22)を演算することによって、かかる早期検出を行うための信頼性の高い方法を提案する。血液動態反応の形状が、健康障害の検出のために使用され得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒトまたは動物の神経系における神経血管連関を計測するための方法であり、前記神経系は血管網を有する、方法であって、
(a)前記神経系に対して少なくとも1つの刺激を送達するステップであって、前記刺激は、前記神経系の少なくとも1つの領域において前記神経系を活性化し、それにより前記領域において前記血管網に血液動態反応を生じさせる、ステップと、
(b)少なくとも1つの超音波トランスデューサのアレイ(6)を有する超音波プローブ(4)を用いて前記領域の連続的な少なくとも10回の超音波計測を実施することにより、前記刺激を含む少なくとも10秒間の記録期間の間に前記領域において前記血管網の血液動態ドプラサンプルを取得するステップであって、各ドプラサンプルが、ある特定のドプラ信号を有する、ステップと、
(c)前記連続的な血液動態ドプラ計測から、前記記録期間の間に前記領域内の少なくとも1つの関心領域(20)における前記刺激に対する血液動態反応(22)を演算するステップであって、前記血液動態反応(22)は、前記連続的な血液動態ドプラ計測の前記ドプラサンプルの前記ドプラ信号に基づく前記血管網における少なくとも1つの血液動態パラメータの数値を含む、ステップと
を含む、方法。
【請求項2】
前記関心領域(20)は、
前記刺激に対する前記ドプラ信号の相互関係から推定される前記血管網の活動マップ、
前記ドプラ信号のドプラ強度、
前記神経系が網膜である場合にBモード画像、または
外部ニューロナビゲーションデバイス
のいずれかに基づき自動的に判定される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記超音波計測はドプラ画像であり、前記ドプラサンプルは前記ドプラ画像のピクセルであるか、または前記超音波計測は、前記超音波プローブからの深さ方向への1つまたは複数のラインに対応するかのいずれかである、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記超音波プローブ(4)により送出される呼掛け超音波ビームが、前記領域の少なくとも一部をスキャニングするために計測同士の間で移動される、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記連続的な超音波計測は、1秒あたり少なくとも1つのドプラ画像のレートで実施される、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記血液動態反応は、前記関心領域(20)に関して平均化される、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記ステップ(a)および(b)は、n回のトライアルに対して反復され、前記血液動態反応(22)は、前記n回のトライアルに関して平均化され、nは、10~100の間からなる整数である、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記ステップ(a)および(b)は、n回のトライアルに対して反復され、前記血液動態反応(22)は、前記n回のトライアルに関して再現性パラメータまたはクオリティパラメータの評価を行うために使用され、nは、10~100の間からなる整数である、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記領域は、前記ヒトまたは前記動物の脳か、または前記ヒトまたは前記動物の少なくとも一方の第1の眼の網膜かのいずれかに帰属する、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記領域は、前記脳に帰属し、前記刺激による前記領域の活性化が、頭皮脳波図を用いてモニタリングされるか、または
前記領域は、前記網膜に帰属し、前記刺激による前記領域の活性化が、網膜電図を用いてモニタリングされるかのいずれかである、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記領域は、前記網膜に帰属し、前記超音波計測は、前記第1の眼の目蓋を通して前記超音波プローブにより超音波を送受信することを含む、請求項9または10に記載の方法。
【請求項12】
前記刺激は発光によるものであり、前記光刺激は、前記第1の眼の前記目蓋を通して伝達される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
第2の眼が、開いており、前記超音波プローブの位置決めを目的としておよび/または前記第1の眼の前記網膜の位置が不適切である期間を除外することを目的として、前記第1の眼の前記網膜の位置を評価するためにビデオによりトラッキングされるか、または
ヒト患者の神経系における神経血管連関を計測するために、前記第2の眼が、開いており、前記患者は、前記機能イメージングの間に前記第2の眼を介して視認スポットを注視し、この場合に、前記視認スポットは、前記網膜のスキャニングを行うために、前記第1の眼の制御下運動を誘発するように静止状態または低速運動状態のいずれかにあるか
のいずれかである、請求項11または12に記載の方法。
【請求項14】
少なくとも1つの反応パラメータが、前記血液動態反応(22)から演算され、前記少なくとも1つの反応パラメータは、前記血液動態反応(22)のピーク値、前記刺激から前記血液動態反応(22)の前記ピーク値の時間にかけて演算した立ち上がり時間、および前記血液動態反応(22)の前記ピーク値の前記時間から前記ピーク値の後の前記血液動態反応(22)の最小値にかけて演算した立ち下がり時間からなる群より選択される、請求項1から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記少なくとも1つの反応パラメータは、前記血液動態反応(22)に対してマルチパラメータ関数(23)を合わせて調整し、調整後に前記マルチパラメータ関数(23)に基づき前記少なくとも1つの反応パラメータを判定することによって取得される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
ヒトまたは動物の神経系における神経血管連関を計測するための装置(1)であり、前記神経系は血管網を有する、装置であって、
(a)前記神経系に対して少なくとも1つの刺激を送達するように構成された刺激デバイス(7)であって、前記刺激は、前記神経系の少なくとも1つの領域において前記神経系を活性化し、それにより前記領域において前記血管網に血液動態反応を生じさせる、刺激デバイス(7)と、
(b)少なくとも1つの超音波トランスデューサのアレイ(6)を有する超音波プローブ(4)を用いて前記領域の連続的な少なくとも10回の超音波計測を実施することにより、前記刺激を含む少なくとも10秒間の記録期間の間に前記領域において前記血管網の血液動態ドプラサンプルを取得するように構成された超音波計測デバイス(2、4)であって、各ドプラサンプルが、ある特定のドプラ信号を有する、超音波計測デバイス(2、4)と、
(c)前記連続的な血液動態ドプラ計測から、前記記録期間の間に前記領域内の少なくとも1つの関心領域(20)における前記刺激に対する血液動態反応(22)を演算するように構成されたコンピューティングモジュール(3)であって、前記血液動態反応(22)は、前記連続的な血液動態ドプラ計測の前記ドプラサンプルの前記ドプラ信号に基づく前記血管網における少なくとも1つの血液動態パラメータの数値を含む、コンピューティングモジュール(3)と
を備える、装置(1)。
【請求項17】
前記コンピューティングモジュール(3)は、前記血液動態反応(22)が所定の疾患に、具体的には神経変性疾患または心血管疾患に対応するか否かを診断するように構成される、請求項16に記載の装置。
【請求項18】
前記コンピューティングモジュール(3)は、前記血液動態反応(22)に基づき、所定の疾患に対する、具体的には神経変性疾患または心血管疾患に対する医療処置の効率をモニタリングするように構成される、請求項14に記載の装置。
【請求項19】
少なくとも1つの反応パラメータが、前記血液動態反応(22)から演算され、前記少なくとも1つの反応パラメータは、前記血液動態反応(22)のピーク値、前記刺激から前記血液動態反応(22)の前記ピーク値の時間にかけて演算した立ち上がり時間、および前記血液動態反応(22)の前記ピーク値の前記時間から前記ピーク値の後の前記血液動態反応(22)の最小値にかけて演算した立ち下がり時間を含み、前記コンピューティングモジュール(3)は、前記所定の疾患の診断を行うためにまたは前記医療処置の前記効率をモニタリングするために、前記少なくとも1つの反応パラメータを少なくとも1つの閾値と比較するように構成される、請求項17または18に記載の装置。
【請求項20】
前記コンピューティングモジュール(3)は、前記血液動態反応が正常であるか否かを判定するように、および/または前記血液動態反応が所定の疾患に対応するか否かを判定するようにトレーニングされたニューラルネットワークを使用するように構成される、請求項17または18に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ヒトまたは動物の神経系における神経血管連関を計測するための方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
機能イメージングは、神経系における血管網の活動に基づいた前記神経系における神経活動の評価することを可能にする。このイメージングは、神経血管連関の現象に基づいており、すなわち神経系の活性ゾーンがより多くの酸素を必要とするため、前記神経系の血管網において、具体的には血管網の毛細血管、小静脈、および小動脈において血流が局部的に上昇するという現象に基づいている。
【0003】
とりわけその効率性およびコストの面に関連して高い関心を得ている機能イメージングの1つのタイプは、特に超高速超音波イメージングに基づく超音波機能イメージングである。かかる技術は、具体的にはMaceらにより説明されている(E. Mace、G. Montaldo、B. Osmanski、I. Cohen、M. Fink、およびM. Tanter、「Functional ultrasound imaging of the brain: theory and basic principles」、IEEE Transactions on Ultrasonics, Ferroelectrics, and Frequency Control、vol. 60、no. 3、492~506頁、2013年3月)。
【0004】
近年の神経イメージング調査によれば、神経血管連関の評価は、以下の障害を含む、特に心血管障害または神経変性障害の早期スクリーニングおよびモニタリングを可能にする一方法であることが判明している。
- アルツハイマー病(Iadecola, C.、Neurovascular regulation in the normal brain and in Alzheimer’s disease. Nat Rev Neurosci 5、347~360頁(2004))、(Kisler, K.、Nelson, A. R.、Montagne, A.、およびZlokovic, B. V.、Cerebral blood flow regulation and neurovascular dysfunction in Alzheimer disease. Nat Rev Neurosci 18、419~434頁(2017))、(Zlokovic、Neurovascular mechanisms of Alzheimer’s neurodegeneration, Trends Neurosci(2005))、(Kisler, K.、Nelson, A.R.、Montagne, A.、およびZlokovic, B.V.、Cerebral blood flow regulation and neurovascular dysfunction in Alzheimer disease. Nat. Rev. Neurosci. 18、419~434頁(2017))、
- 高血圧(Girouard, H.およびIadecola, C.、Neurovascular coupling in the normal brain and in hypertension, stroke, and Alzheimer disease. Journal of Applied Physiology 100、328~335頁(2006))
- 虚血性発作(del Zoppo、The neurovascular unit in the setting of stroke, J Intern Med 267:156~171頁(2010))
- 筋萎縮性側索硬化症(Murphy, M.J.、Grace, G.M.、Tartaglia, M.C.、Orange, J.B.、Chen, X.、Rowe, A.、Findlater, K.、Kozak, R.I.、Freedman, M.、Lee, T.-Y.、およびStrong, M.J.、(2012)、Widespread cerebral hemodynamics disturbances occur early in amyotrophic lateral sclerosis. Amyotroph. Lateral Scler. 13、202~209頁)
- 肥満症(Tucsek Z、Toth P、Tarantini S、Sosnowska D、Gautam T、Warrington JP、Giles CB、Wren JD、Koller A、Ballabh P、Sonntag WE、Ungvari Z、Csiszar A、(2014)、Aging exacerbates obesity-induced cerebromicrovascular rarefaction, neurovascular uncoupling, and cognitive decline in mice. J Gerontol A Biol Sci Med Sci 69:1339~1352頁)
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】E. Mace、G. Montaldo、B. Osmanski、I. Cohen、M. Fink、およびM. Tanter、「Functional ultrasound imaging of the brain: theory and basic principles」、IEEE Transactions on Ultrasonics, Ferroelectrics, and Frequency Control、vol. 60、no. 3、492~506頁、2013年3月
【非特許文献2】Iadecola, C.、Neurovascular regulation in the normal brain and in Alzheimer’s disease. Nat Rev Neurosci 5、347~360頁(2004)
【非特許文献3】Kisler, K.、Nelson, A. R.、Montagne, A.、およびZlokovic, B. V.、Cerebral blood flow regulation and neurovascular dysfunction in Alzheimer disease. Nat Rev Neurosci 18、419~434頁(2017)
【非特許文献4】Zlokovic、Neurovascular mechanisms of Alzheimer’s neurodegeneration, Trends Neurosci(2005)
【非特許文献5】Kisler, K.、Nelson, A.R.、Montagne, A.、およびZlokovic, B.V.、Cerebral blood flow regulation and neurovascular dysfunction in Alzheimer disease. Nat. Rev. Neurosci. 18、419~434頁(2017)
【非特許文献6】Girouard, H.およびIadecola, C.、Neurovascular coupling in the normal brain and in hypertension, stroke, and Alzheimer disease. Journal of Applied Physiology 100、328~335頁(2006)
【非特許文献7】del Zoppo、The neurovascular unit in the setting of stroke, J Intern Med 267:156~171頁(2010)
【非特許文献8】Murphy, M.J.、Grace, G.M.、Tartaglia, M.C.、Orange, J.B.、Chen, X.、Rowe, A.、Findlater, K.、Kozak, R.I.、Freedman, M.、Lee, T.-Y.、およびStrong, M.J.、(2012)、Widespread cerebral hemodynamics disturbances occur early in amyotrophic lateral sclerosis. Amyotroph. Lateral Scler. 13、202~209頁
【非特許文献9】Tucsek Z、Toth P、Tarantini S、Sosnowska D、Gautam T、Warrington JP、Giles CB、Wren JD、Koller A、Ballabh P、Sonntag WE、Ungvari Z、Csiszar A、(2014)、Aging exacerbates obesity-induced cerebromicrovascular rarefaction, neurovascular uncoupling, and cognitive decline in mice. J Gerontol A Biol Sci Med Sci 69:1339~1352頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本開示の1つの目的は、健康障害に関する、とりわけいくつかの神経変性疾患および心血管疾患に関する高精度および高信頼性のバイオマーカを提供し得る、ヒトまたは動物の神経系における神経血管連関を計測するための方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
これを目的として、本開示は、ヒトまたは動物の神経系における神経血管連関を計測するための方法を提供する。前記神経系は血管網を有する。前記方法は、
(a)前記神経系に対して少なくとも1つの刺激を送達するステップであって、前記刺激は、前記神経系の少なくとも1つの領域において前記神経系を活性化し、それにより前記領域において前記血管網に血液動態反応を生じさせる、ステップと、
(b)少なくとも1つの超音波トランスデューサのアレイを有する超音波プローブを用いて前記領域の連続的な少なくとも10回の超音波計測を実施することにより、前記刺激を含む少なくとも10秒間の記録期間の間に前記領域において前記血管網の血液動態ドプラサンプルを取得するステップであって、各ドプラサンプルが、ある特定のドプラ信号を有する、ステップと、
(c)前記連続的な血液動態ドプラ計測から、前記記録期間の最中に前記領域内の少なくとも1つの関心領域における前記刺激に対する血液動態反応を演算するステップであって、前記血液動態反応は、前記連続的な血液動態ドプラ計測の前記ドプラサンプルの前記ドプラ信号に基づく前記血管網における少なくとも1つの血液動態パラメータの数値を含む、ステップと
を含む。
【0008】
本発明者らは、血液動態反応の形状は特定の健康障害の信頼性の高いバイオマーカとして使用可能であるという結論に達した。したがって、血液動態反応に基づき、神経血管連関が正常であるか否かを高い信頼性において判定することと、例えば特定の神経変性疾患または心血管疾患などの疾患のバイオマーカとしてこの神経血管連関を使用することとが可能である。
【0009】
本方法の実施形態では、以下の特徴を単独でまたは組み合わせて使用することができる。
【0010】
前記関心領域は、前記刺激に対する前記ドプラ信号の相互関係から推定される前記血管網の活動マップに基づき自動的に判定される。
【0011】
前記関心領域は、ドプラ信号のドプラ強度に基づき自動的に判定される。
【0012】
前記関心領域は、前記神経系が網膜である場合にBモード画像に基づき自動的に判定される。
【0013】
前記関心領域は、外部ニューロナビゲーションデバイスに基づき自動的に判定される。
【0014】
前記超音波計測はドプラ画像であり、前記ドプラサンプルは前記ドプラ画像のピクセルである。
【0015】
前記超音波計測は、前記超音波プローブからの深さ方向への1つまたは複数のラインに対応する。
【0016】
超音波プローブにより送出される呼掛け超音波ビームが、前記領域の少なくとも一部をスキャニングするために計測同士の間で移動される。
【0017】
前記連続的な超音波計測は、1秒あたり少なくとも1つのドプラ画像のレートで実施される。
【0018】
前記記録期間の最中に、前記連続的な血液動態超音波計測は、少なくとも50回の超音波計測を含み、特に少なくとも100回の超音波計測を含む。
【0019】
前記記録期間は、前記刺激後の少なくとも5秒間であり、例えば少なくとも7秒間である。
【0020】
前記記録期間は、前記刺激の前後の少なくとも5秒間であり、例えば前記刺激の前後の少なくとも7秒間である。
【0021】
前記記録期間は、前記刺激の前後の最大で20秒間であり、例えば前記刺激の前後の最大で10秒間である。
【0022】
前記血液動態パラメータは、ドプラ信号である。
【0023】
前記血液動態パラメータは、前記ドプラ信号の基線に対する、前記関心領域内におけるドプラ信号の相対変動率である。
【0024】
前記関心領域は、前記領域の既存の機能マップに基づき判定される。
【0025】
前記関心領域は、前記刺激に対して最大相関性を有する少なくとも1つのピクセルを含む。
【0026】
前記関心領域は、最大相関性を有する前記ピクセルと、最大相関性を有する前記ピクセルの周囲の所定個数の追加的なピクセルとにより構成される。
【0027】
前記所定個数の追加的なピクセルは、最大の反応を有する前記ピクセルの周囲の半径方向に1~6個分の範囲内のピクセルからなるものであり、例えば半径方向に2~4個分の範囲内のピクセルからなるものである。
【0028】
前記血液動態反応は、前記関心領域に関して平均化される。
【0029】
前記刺激は、0.05~60秒の間からなる刺激期間を有し、具体的には0.5~1秒の間からなる刺激期間を有し、例えば0.8秒間の刺激期間を有する。
【0030】
前記刺激は、知覚的なものであり、具体的には少なくとも一方の眼を通して伝えられる視覚的刺激、少なくとも一方の耳を通して伝えられる聴覚的刺激、鼻を通して伝えられる嗅覚的刺激、口を通して伝えられる味覚的刺激、とりわけ皮膚を通して伝えられる接触刺激もしくは衝撃刺激または電気的刺激の中の1つである。
【0031】
前記ステップ(a)および(b)は、n回のトライアルに対して反復され、前記血液動態反応は、前記n回のトライアルに関して平均化され、nは、2以上の整数である。
【0032】
前記ステップ(a)および(b)は、n回のトライアルに対して反復され、前記血液動態反応は、前記n回のトライアルに関して再現性パラメータまたはクオリティパラメータの評価を行うために使用され、nは、2以上の整数である。
【0033】
nは、10~100の間からなり、例えば20~60の間からなり、特に20~30の間からなる。
【0034】
前記アレイは、シングルトランスデューサ、数個のトランスデューサ(例えば10個未満)、トランスデューサの線形アレイ(1D行列)、2D行列のトランスデューサ、および疎行列のトランスデューサの中の1つである。
【0035】
前記超音波計測は、500Hz超のパルス反復周波数を用いた超高感度ドプラまたは超高速超音波イメージングに基づく。
【0036】
前記超音波計測は、非集束超音波に基づく。
【0037】
前記超音波計測は、例えばビデオ、EEG、ECG、動物または患者の動作検出器などの少なくとも1つの外部デバイスからの信号によって制御される。
【0038】
前記ドプラサンプルは、標準ドプラ法およびマイクロドプラ法(上記のMace(2013)の論文を参照)の一方により取得される。
【0039】
前記ドプラ信号は、パワードプラ法、カラードプラ法、血管抵抗指数、またはそれらの任意の組合せの中の1つに基づく。
【0040】
前記ドプラ信号は、血流速度に対するドプラ信号の感度を評価するために種々のドプラ周波数帯域に対してフィルタリングされる。
【0041】
前記領域は、前記ヒトまたは前記動物の脳に帰属する。
【0042】
前記領域は、前記ヒトまたは前記動物の脳に帰属し、前記連続的な超音波計測は、側頭窓、後頭穴、頭蓋開口、または頭蓋骨の人為的な薄化の中のいずれか1つを介して行われる。
【0043】
前記領域は、脳に帰属し、前記刺激による前記領域の活性化は、頭皮脳波図を用いてモニタリングされる。
【0044】
前記刺激は音である。
【0045】
前記領域は、前記ヒトまたは前記動物の少なくとも一方の第1の眼の網膜に帰属する。
【0046】
前記領域は、網膜に帰属し、前記刺激による前記領域の活性化は、網膜電図を用いてモニタリングされる。
【0047】
前記超音波計測は、前記第1の眼の目蓋を通して前記超音波プローブにより超音波を送受信することを含む。
【0048】
前記刺激は発光によるものである。
【0049】
前記光刺激は、前記第1の眼の目蓋を通して伝達される。
【0050】
第2の眼は、開いており、超音波プローブの位置決めを目的としておよび/または前記第1の眼の網膜の位置が不適切である期間を除外することを目的として、前記第1の眼の網膜の位置を評価するためにビデオによりトラッキングされる。
【0051】
ヒト患者の神経系における神経血管連関を計測するために、第2の眼は、開いており、患者は、前記機能イメージングの最中に前記第2の眼を介して視認スポットを注視し、この場合に、視認スポットは、網膜のスキャニングを行うために、第1の眼の制御下運動を誘発するように静止状態または低速運動状態のいずれかにある。
【0052】
患者または動物は、前記機能イメージングの最中に麻酔下におかれる。
【0053】
少なくとも1つの反応パラメータが、血液動態反応から演算され、前記少なくとも1つの反応パラメータは、血液動態反応のピーク値、刺激から血液動態反応のピーク値の時間にかけて演算した立ち上がり時間、および血液動態反応のピーク値の時間から前記ピーク値の後の血液動態反応の最小値にかけて演算した立ち下がり時間からなる群より選択される。
【0054】
前記少なくとも1つの反応パラメータは、前記血液動態反応に対してマルチパラメータ関数を合わせて調整し、調整後に前記マルチパラメータ関数に基づき前記少なくとも1つの反応パラメータを判定することによって取得される。
【0055】
本方法は、前記血液動態反応が正常であるか否かを判定するステップをさらに含む。
【0056】
本方法は、前記血液動態反応が所定の疾患に、具体的には例えばアルツハイマー病などの神経変性疾患または心血管疾患に対応するか否かを診断するステップをさらに含む。
【0057】
前記血液動態反応が正常であるか否かを、および/または前記血液動態反応が所定の疾患に対応するか否かを診断するステップは、所定の閾値に対して前記少なくとも1つの反応パラメータを比較する(すなわち複数の反応パラメータの場合には、対応する所定の閾値に対して各反応パラメータの比較をそれぞれ行う)ことを含む。
【0058】
本方法は、血液動態反応が正常であるか否かを判定するように、および/または血液動態反応が所定の疾患に対応するか否かを診断するようにトレーニングされたニューラルネットワークを使用するステップを含む。
【0059】
前記ニューラルネットワークは、前記少なくとも1つの反応パラメータが正常に相当するか否かを判定するように、および/または前記少なくとも1つの反応パラメータが所定の疾患に対応するか否かを診断するようにトレーニングされる。
【0060】
本方法は、前記血液動態反応に基づき、所定の疾患に対する、具体的には神経変性疾患または心血管疾患に対する医療処置の効率をモニタリングするステップをさらに含む。
【0061】
さらに、本開示は、ヒトまたは動物の神経系における神経血管連関を計測するための装置に関する。前記神経系は血管網を有する。前記装置は、
(a)前記神経系に対して少なくとも1つの刺激を送達するように構成された刺激デバイスであって、前記刺激は、前記神経系の少なくとも1つの領域において前記神経系を活性化し、それにより前記領域において前記血管網に血液動態反応を生じさせる、刺激デバイスと、
(b)少なくとも1つの超音波トランスデューサのアレイを有する超音波プローブを用いて前記領域の連続的な少なくとも10回の超音波計測を実施することにより、前記刺激を含む少なくとも10秒間の記録期間の間に前記領域において前記血管網の血液動態ドプラサンプルを取得するように構成された超音波計測デバイスであって、各ドプラサンプルが、ある特定のドプラ信号を有する、超音波計測デバイスと、
(c)前記連続的な血液動態ドプラ計測から、前記記録期間の最中に前記領域内の少なくとも1つの関心領域における前記刺激に対する血液動態反応を演算するように構成されたコンピューティングモジュールであって、前記血液動態反応は、前記連続的な血液動態ドプラ計測の前記ドプラサンプルの前記ドプラ信号に基づく前記血管網における少なくとも1つの血液動態パラメータの数値を含む、コンピューティングモジュールと
を備える。
【0062】
本システムの実施形態では、以下の特徴を単独でまたは組み合わせて使用することができる。
【0063】
前記コンピューティングモジュールは、前記刺激に対する前記ドプラ信号の相互関係から推定される前記血管網の活動マップに基づき自動的に前記関心領域を判定するように構成される。
【0064】
前記コンピューティングモジュールは、ドプラ信号のドプラ強度に基づき自動的に前記関心領域を判定するように構成される。
【0065】
前記コンピューティングモジュールは、前記神経系が網膜である場合にBモード画像に基づき自動的に前記関心領域を判定するように構成される。
【0066】
前記超音波計測はドプラ画像であり、前記ドプラサンプルは前記ドプラ画像のピクセルである。
【0067】
前記超音波計測は、前記超音波プローブからの深さ方向への1つまたは複数のラインに対応する。
【0068】
超音波プローブは、電動化部を備え、前記超音波計測デバイスは、前記領域の少なくとも一部をスキャニングするために計測同士の間において前記アレイを移動するように構成される。
【0069】
前記連続的な超音波計測は、1秒あたり少なくとも1つのドプラ画像のレートで実施される。
【0070】
前記記録期間の最中に、前記連続的な血液動態超音波計測は、少なくとも50回の超音波計測を含み、特に少なくとも100回の超音波計測を含む。
【0071】
前記記録期間は、前記刺激後の少なくとも5秒間であり、例えば少なくとも7秒間である。
【0072】
前記記録期間は、前記刺激の前後の少なくとも5秒間であり、例えば前記刺激の前後の少なくとも7秒間である。
【0073】
前記記録期間は、前記刺激の前後の最大で20秒間であり、例えば前記刺激の前後の最大で10秒間である。
【0074】
前記血液動態パラメータは、ドプラ信号である。
【0075】
前記血液動態パラメータは、前記ドプラ信号の基線に対する、前記関心領域内におけるドプラ信号の相対変動率である。
【0076】
前記コンピューティングモジュールは、前記領域の既存の機能マップに基づき前記関心領域を判定するように構成される。
【0077】
前記コンピューティングモジュールは、前記関心領域が前記刺激に対して最大相関性を有する少なくとも1つのピクセルを含むように、前記関心領域を判定するように構成される。
【0078】
前記コンピューティングモジュールは、最大相関性を有する前記ピクセルと、最大相関性を有する前記ピクセルの周囲の所定個数の追加的なピクセルとにより構成されるものとして前記関心領域を判定するように構成される。
【0079】
前記所定個数の追加的なピクセルは、最大の反応を有する前記ピクセルの周囲の半径方向に1~6個分の範囲内のピクセルからなるものであり、例えば半径方向に2~4個分の範囲内のピクセルからなるものである。
【0080】
前記コンピューティングモジュールは、前記関心領域に関して前記血液動態反応を平均化するように構成される。
【0081】
前記刺激は、0.05~60秒の間からなる刺激期間を有し、具体的には0.5~1秒の間からなる刺激期間を有し、例えば0.8秒間の刺激期間を有する。
【0082】
前記刺激は、知覚的なものであり、具体的には少なくとも一方の眼を通して伝えられる視覚的刺激、少なくとも一方の耳を通して伝えられる聴覚的刺激、鼻を通して伝えられる嗅覚的刺激、口を通して伝えられる味覚的刺激、とりわけ皮膚を通して伝えられる接触刺激もしくは衝撃刺激または電気的刺激の中の1つである。
【0083】
前記装置は、n回のトライアルに対して前記刺激および前記連続的な超音波計測を反復するように構成され、前記コンピューティングモジュールは、前記n回のトライアルに関して前記血液動態反応を平均化するように構成され、nは、2以上の整数である。
【0084】
前記装置は、n回のトライアルに対して前記刺激および前記連続的な超音波計測を反復するように構成され、前記血液動態反応は、前記n回のトライアルに関して再現性パラメータまたはクオリティパラメータの評価を行うために使用され、nは、2以上の整数である。
【0085】
nは、10~100の間からなり、例えば20~60の間からなり、特に20~30の間からなる。
【0086】
前記アレイは、シングルトランスデューサ、数個のトランスデューサ(例えば10個未満)、トランスデューサの線形アレイ(1D行列)、2D行列のトランスデューサ、および疎行列のトランスデューサの中の1つである。
【0087】
前記超音波計測は、500Hz超のパルス反復周波数を用いた超高感度ドプラまたは超高速超音波イメージングに基づく。
【0088】
前記超音波計測は、非集束超音波に基づく。
【0089】
前記超音波計測デバイスは、例えばビデオ、EEG、ECG、動物または患者の動作検出器などの少なくとも1つの外部デバイスと通信し、前記外部デバイスから受信した信号に基づき前記超音波計測を制御するように構成される。
【0090】
前記ドプラサンプルは、標準ドプラ法およびマイクロドプラ法(上記のMace(2013)の論文を参照)の一方により取得される。
【0091】
前記ドプラ信号は、パワードプラ法、カラードプラ法、血管抵抗指数、またはそれらの任意の組合せに基づく。
【0092】
前記コンピューティングモジュールは、血流速度に対するドプラ信号の感度を評価するために種々のドプラ周波数帯域に対して前記ドプラ信号のフィルタリングを行うように構成される。
【0093】
前記領域は、前記ヒトまたは前記動物の脳に帰属する。
【0094】
前記領域は、前記ヒトまたは前記動物の脳に帰属し、前記連続的な超音波計測は、側頭窓、後頭穴、頭蓋開口、または頭蓋骨の人為的な薄化の中のいずれか1つを介して行われる。
【0095】
前記領域は、脳に帰属し、前記刺激による前記領域の活性化は、頭皮脳波図を用いてモニタリングされる。
【0096】
前記刺激は音である。
【0097】
前記刺激は発光によるものである。
【0098】
前記領域は、前記ヒトまたは前記動物の少なくとも一方の第1の眼の網膜に帰属し、装置は、第2の眼をトラッキングするように構成されたビデオカメラをさらに備える。この装置は、超音波プローブの位置決めを目的としておよび/または前記第1の眼の網膜の位置が不適切である期間を除外することを目的として、前記トラッキングに基づき前記第1の眼の網膜の位置を評価するように構成される。
【0099】
前記領域は、前記ヒトの少なくとも一方の第1の眼の網膜に帰属し、装置は、前記連続的な超音波計測の最中に第2の眼を介して患者が注視し得る視認スポットをさらに備え、この視認スポットは、網膜のスキャニングを行うために、第1の眼の制御下運動を誘発するように静止状態または低速運動状態のいずれかにある。
【0100】
前記コンピューティングモジュールは、血液動態反応から少なくとも1つの反応パラメータを演算するように構成され、前記少なくとも1つの反応パラメータは、血液動態反応のピーク値、刺激から血液動態反応のピーク値の時間にかけて演算した立ち上がり時間、および血液動態反応のピーク値の時間から前記ピーク値の後の血液動態反応の最小値にかけて演算した立ち下がり時間からなる群より選択される。
【0101】
前記コンピューティングモジュールは、前記血液動態反応に対してマルチパラメータ関数を合わせて調整し、調整後に前記マルチパラメータ関数に基づき前記少なくとも1つの反応パラメータを判定することによって、前記少なくとも1つの反応パラメータを取得するように構成される。
【0102】
前記コンピューティングモジュールは、前記血液動態反応が正常であるか否かを判定するように構成される。
【0103】
前記コンピューティングモジュールは、前記血液動態反応が所定の疾患に、具体的には例えばアルツハイマー病などの神経変性疾患または心血管疾患に対応するか否かを診断するように構成される。
【0104】
前記コンピューティングモジュールは、前記血液動態反応が正常であるか否かを、および/または前記血液動態反応が所定の疾患に対応するか否かを診断するように構成され、所定の閾値に対して前記少なくとも1つの反応パラメータを比較するステップを含む(すなわち複数の反応パラメータの場合には、対応する所定の閾値に対して各反応パラメータの比較をそれぞれ行う)。
【0105】
前記コンピューティングモジュールは、血液動態反応が正常であるか否かを判定するように、および/または血液動態反応が所定の疾患に対応するか否かを診断するようにトレーニングされたニューラルネットワークを備える。
【0106】
前記ニューラルネットワークは、前記少なくとも1つの反応パラメータが正常に相当するか否かを判定するように、および/または前記少なくとも1つの反応パラメータが所定の疾患に対応するか否かを診断するようにトレーニングされる。
【0107】
前記コンピューティングモジュールは、前記血液動態反応に基づき、所定の疾患に対する、具体的には神経変性疾患または心血管疾患に対する医療処置の効率をモニタリングするように構成される。
【0108】
少なくとも1つの反応パラメータが、血液動態反応から演算され、前記少なくとも1つの反応パラメータは、血液動態反応のピーク値、刺激から血液動態反応のピーク値の時間にかけて演算した立ち上がり時間、および血液動態反応のピーク値の時間からピーク値の後の血液動態反応の最小値にかけて演算した立ち下がり時間を含み、前記コンピューティングモジュールは、前記所定の疾患の診断を行うためにまたは前記医療処置の効率をモニタリングするために、前記少なくとも1つの反応パラメータを少なくとも1つの閾値と比較するように構成される。
【0109】
前記コンピューティングモジュールは、血液動態反応が正常であるか否かを判定するように、および/または血液動態反応が所定の疾患に対応するか否かを判定するようにトレーニングされたニューラルネットワークを使用するように構成される。
【0110】
以下の詳細な説明および図面において、他の特徴、詳細、および利点を示す。
【図面の簡単な説明】
【0111】
【
図1】本開示による装置の一実施形態を示すブロック図である。
【
図2】
図1の装置を用いて連続的なドプラ画像を取得する可能な一方法を示す図である。
【
図3】網膜がイメージングされる特定の一実施形態における、使用時の装置の一部を示す図である。
【
図4】特定の一実施形態における刺激信号を示す図である。
【
図5】眼に対して光刺激を与えた後の、本開示の方法により取得されたラットの網膜のドプラ画像の一例を示す図である。
【
図6】少なくとも1つの関心領域を選択することを可能にする網膜の相関カートグラフィの一例を示す図である。
【
図7】n回のトライアルの最中の重畳刺激信号による関心領域におけるドプラ信号を示す図である。
【
図8】n回のトライアルの最中の重畳刺激信号による、n回のトライアルに関するドプラ信号の平均を示す図である。
【
図9】ドプラ信号に合わせて調整されたマルチパラメータ関数の一例を示す図である。
【
図10】健常ラットおよびアルツハイマー病をモデル化したトランスジェニックラットのそれぞれの網膜に関して計測したドプラ信号を示す図である。
【
図11】眼に対して光刺激を与えた後のラットの脳のドプラ画像および相関カートグラフィを示す図である。
【
図12】健常ラットおよびアルツハイマー病をモデル化したトランスジェニックラットのそれぞれに関する、上丘および視覚皮質におけるドプラ信号を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0112】
これらの図面において、同一の参照符号は、同等または同様の要素を示す。
【0113】
本開示は、神経系に対して刺激を送達しつつ前記神経系の血管網の機能イメージングを行うことにより、ヒトまたは動物の神経系における神経血管連関を計測するための方法および装置を提案する。この刺激は、前記神経系をその少なくとも1つの領域において活性化し、それによりさらに前記領域において前記血管網に血液動態反応が生じる。機能イメージングは、刺激に対する前記領域の血液動態反応を提示する、神経系の前記領域における血管網の連続血液動態学的ドプラ画像の取得を可能にする。
【0114】
機能イメージングは、例えば網膜または脳などに対して実施されてもよく、その場合には、前記領域は網膜または脳の少なくとも一部となる。
【0115】
より詳細には、本開示は、機能超音波イメージングに関し、特に機能超音波超高速イメージング(上記のMace(2013)の論文を参照)に関する。この後者は、特に関心の対象となる。
【0116】
図1では、本開示による方法を実施するために使用可能な神経血管連関を計測するための装置1(NC APP)の一例を示す。
【0117】
装置1は、例えばコンピュータもしくはコンピュータ群を、場合によってはサーバを含むコンピュータ群を制御する専用信号処理デバイスなどの、プロセッサ2(PROC)を備え得る。
【0118】
プロセッサ2は、コンピューティングモジュール3(COMP)を備えてもよく、このコンピューティングモジュール3の動作は、以降において説明する。
【0119】
プロセッサ2は、プローブ4(PRB)および刺激デバイス7(STIM)を制御し得る。
【0120】
プローブ4は、本明細書において考慮対象となる例では例えば超音波プローブであってもよい。
【0121】
プローブ4は、超音波トランスデューサのアレイ6(ARR)を備え得る。このアレイは、撮像対象となる領域の2Dスライス画像を生成するように構成された線形アレイであってもよく、またはこの領域の3D画像を生成するように構成された2Dアレイであってもよい。アレイが2Dアレイである場合に、この2Dアレイは、当技術において既知であるように疎行列のトランスデューサであってもよい。
【0122】
トランスデューサの典型的なアレイは、数百個から数千個のトランスデューサからなり得る。また、いくつかの例では、このアレイは、トランスデューサから深さ方向においてこの領域の1つのみのラインを撮像するように構成された1つのシングルトランスデューサか、またはトランスデューサから深さ方向においてこの領域の各ラインを撮像するように構成された数個のトランスデューサに限定され得る。
【0123】
以下の詳細な説明は、線形アレイまたは2Dアレイの場合に関してなされる。したがって、この装置は、ピクセル(より一般的にはドプラサンプル)を有するドプラ画像を生成する(より一般的には超音波計測)。アレイが1つのみのトランスデューサまたは数個のトランスデューサからなる場合には、装置は、深さ方向における1つのラインに限定された画像(超音波計測)または数個のラインに限定された画像を生成し、これらのラインは、ピクセル(ドプラサンプル)を有する。このプロセスは、種々の傾斜角度を有する傾斜平面波を必要としない超音波計測値を生成する点を除いては、同様である。
【0124】
トランスデューサは、例えば0.5~100MHzの間からなる、例えば1~20MHzの間からなる中心周波数を有する超音波を送受信するように構成され得る。使用可能な中心周波数の一例は、15MHzである。
【0125】
いくつかの実施形態では、プローブ4は、アレイ6を位置決めするように構成された電動化部5(MOT)をさらに備え得る。
【0126】
次に、
図2に関連して、当技術において既知であり例えば上記のMace(2013)の論文などにおいて説明されている機能超音波超高速イメージングの一例の方法を説明する。
【0127】
トランスデューサのアレイ6は、撮像対象の領域において平面超音波を送信するように、および例えば5.5kHzなどのレート(パルス反復周波数PRF)で、すなわち毎18msごとに結果的に得られた後方散乱超音波を受信するように、プロセッサ2によって制御され得る。より一般的には、パルス反復周波数PRFは、500Hz超であってもよい。これらの受信信号は、送信される各平面超音波ごとの未加工データセットとして記録される。送信される一連の平面波は、撮像対象の領域における深さ方向に対して、すなわちアレイ6に対する法線方向に対して連続可変角度からなる傾斜した伝搬方向を有する。この領域の各画像ごとに、N個の平面超音波が、それぞれ異なる角度で連続的に送信され、N個の未加工データセットがコヒーレント加算されて、この領域の前記画像が合成される。この画像は、上記のMace(2013)の論文などにおいて説明されるように複合画像である。例えば、Nは、11であってもよく、角度は、-10度~+10度の間において2度ごとに変動する。したがって、N=11およびPRF=5.5kHzの場合には、この領域の複合画像のレート(フレームレート)は500Hzとなる。Nは11以外であってもよく、その場合には、複合画像のフレームレートは異なるものとなる。例えば、N=5が使用されてもよい。
【0128】
次いで、この領域の連続複合画像に基づき、前記領域における血管網の血液動態ドプラ画像が、コンピューティングモジュール3により演算される。
図2の例では、200個の連続複合画像が、各血液動態ドプラ画像に対して使用され、そのため2つの連続する血液動態ドプラ画像は、400msの間隔となる。したがって、血液動態ドプラ画像のレートは、
図2の例では2.5Hzである。異なる個数の連続複合画像が、各血液動態ドプラ画像に対して使用されてもよく、その場合には、血液動態ドプラ画像のレートは異なるものとなる。例えば、50個の連続複合画像が、各血液動態ドプラ画像に対して使用されることが可能であり、その場合には、血液動態ドプラ画像のレートは、本明細書において考慮対象となる例においては10Hzとなる。一般的に、血液動態ドプラ画像のレートは、少なくとも2Hzである。
【0129】
血液動態ドプラ画像は、Demeneら(Demene, C.、Robin, J.、およびDizeux, A.、Transcranial ultrafast ultrasound localization microscopy of brain vasculature in patients. Nat. Biomed. Eng. 5、219~228頁(2021年))により説明されているように、例えば特異値分解(SVD)などにより演算され得る。
【0130】
より一般的には、血液動態ドプラ画像は、パワードプラ法、マイクロドプラ法(上記のMace(2013)の論文などにおいて説明されるような)を含む任意のドプラ技術により演算され得る。前記血液動態ドプラ画像を構成するドプラ信号は、例えばパワードプラ法、カラードプラ法、血管抵抗指数、またはそれらの任意の組合せなどであってもよい。前記ドプラ信号は、血流速度に対するドプラ信号の感度を評価するために種々のドプラ周波数帯域に対してフィルタリングされ得る。
【0131】
図3は、1つの眼8の網膜10の機能超音波イメージングに対してこの装置がどのように使用され得るかを示す。眼8は、とりわけ目蓋15により覆われ得る角膜9を備える。機能超音波イメージングは、閉じられた目蓋15を通して実施され得る。網膜10は、眼底に帰属し、この眼底はさらに脈絡膜11および強膜12を備える。視神経13は、脳に対して網膜10を連結する。眼底は、神経血管連関により網膜に対して結合される血管網14を備える。
【0132】
神経血管アレイ6は、目蓋15を覆う幾分かのゲル16により眼に対して結合される。
【0133】
機能超音波イメージングの最中に、眼の動きをキャンセリングするまたは制限することが適切である。
【0134】
ヒトイメージングの場合に眼の動きのキャンセリングまたは制限を実現する1つの方法は、第2の眼を開いた状態に留め、プロセッサ2と通信状態にあるビデオカメラ(図示せず)によりこの第2の眼をトラッキングすることである。そうすることにより、プロセッサ2は、機能超音波イメージングにより検査される第1の眼の網膜の位置を評価し得る。したがって、プロセッサ2は、支持部17に対してアレイ6を連結する電動化部5を介してアレイ6の位置決めを行うことによって、同一視野を維持する、および/または前記第1の眼の網膜位置が不適切となる期間を除外することができる。
【0135】
ヒトイメージングの場合に眼の動きのキャンセリングまたは制限を実現するもう1つの方法は、第2の眼を開いた状態に留め、前記機能イメージングの最中に患者に前記第2の眼を介して視認スポットを注視させることである。この視認スポットは、網膜のスキャニングを行うために、第1の眼の制御下運動を誘発するように静止状態または低速運動状態のいずれかであり得る。
【0136】
ヒトイメージングまたは動物イメージングの場合に眼の動きのキャンセリングまたは制限を実現するさらなる方法は、前記機能イメージングの最中に患者または動物を麻酔下におくことである。
【0137】
さらに、散瞳および毛様体筋麻痺を誘発させるために機能超音波イメージングの前に例えばトロピカミドなどの点眼製品を患者または動物に点眼することが有用となり得る。
【0138】
トランスデューサのアレイ6が線形である場合には、電動化部5は、隣接し合う平面内において連続平面画像を正確に取得するのをさらに補助する。さらに、プロセッサ2は、アレイ6の位置決めを確認するために、およびより具体的には平面画像が撮像対象の領域または撮像対象の領域のある特定部分を含むことを確認するために、超音波計測同士の間において時折電動化部5を介してアレイ6を前後方向に若干移動させることができる。より一般的には、これは、神経系のより広い領域のスキャニングを補助する。一変形例では、アレイにより送出される呼掛け超音波ビームが方向操作可能である場合に、プロセッサ2は、計測同士の間で前記超音波ビームを動かすことにより神経系のより広い領域をスキャニングすることができる。
【0139】
刺激デバイス7は、任意の既知のタイプのものであってもよい。例えば、この刺激は知覚的なものであり、具体的には少なくとも一方の眼を通して伝えられる視覚的刺激、少なくとも一方の耳を通して伝えられる聴覚的刺激、鼻を通して伝えられる嗅覚的刺激、口を通して伝えられる味覚的刺激、とりわけ皮膚を通して伝えられる接触刺激もしくは衝撃刺激または電気的刺激の中の1つである。例えば、刺激デバイス7は、
図3に示すように、患者または動物の少なくとも一方の眼の網膜を照射するように構成されたLEDであってもよい。発光される光色は例えば白であり得る。光刺激は、機能超音波イメージングにより撮像される眼の閉じられた目蓋を通して網膜に伝えられ得る。
【0140】
刺激は、視覚的刺激の場合における刺激信号18の一例を示す
図4に示すように、0.5~1秒の間からなる、例えば0.8秒などの刺激期間を有し得る。他の実施形態では、刺激は、例えば最大で60秒などさらに長くてもよい。
【0141】
コンピューティングモジュール3は、刺激を含む少なくとも10秒間の記録期間の最中に、領域における前記血管網の少なくとも10個の血液動態ドプラ画像を演算および記録し得る。
【0142】
前記記録期間は、前記刺激後の少なくとも5秒であってもよく、例えば少なくとも7秒であってもよい。
【0143】
さらに、刺激前の血液動態ドプラ画像を記録することが有利である場合がある。その場合には、前記記録期間は、前記刺激の前後の少なくとも5秒であってもよく、例えば前記刺激の前後の少なくとも7秒であってもよい。
【0144】
記録期間は、前記刺激の前後の最大で20秒であってもよく、例えば前記刺激の前後の最大で10秒であってもよい。
【0145】
図4の例では、記録期間は30秒であり、これは刺激の前後15秒からなる。1つの刺激(すなわち1回のトライアル)について演算および記録される血液動態ドプラ画像の数は、記録期間および血液動態ドプラ画像のレートにより決定される。例えば、30sの記録期間Tおよび2.5Hzの血液動態ドプラ画像のレートfの場合には、血液動態ドプラ画像の数は、T.f=75となる。
【0146】
刺激は、機能イメージングが血液動態ドプラ画像を演算している間に定期的に反復され得る。
図4の例では、n回のトライアルは例えば50回であってもよいが、異なる回数であってもよい。より一般的には、nは、10~100の間からなるものであってもよく、例えば20~60の間からなるものであってもよく、具体的には20~30の間からなるものであってもよい。例えば、トライアル回数は25回に減らすことができる。
【0147】
図4の例では、一連のトライアルは、例えば45sなどの無刺激の初期期間が先行し、例えば75sなどの無刺激の最終期間が後に続き得る。
【0148】
図5は、光刺激による活性化後にコンピューティングモジュール3により演算された、ラットの網膜の血液動態ドプラ画像の一例を示す。このドプラ画像は、ドプラ信号に基づく血液動態パラメータを示す。
【0149】
ドプラ画像内の各ピクセルの信号は、ドプラ信号自体であってもよく、またはより一般的には前記ドプラ信号に基づく信号であってもよい。
【0150】
図5の場合に、ドプラ画像上に示される血液動態パラメータは、相対網膜血液量rRBVである。機能超音波イメージングから直接的に得られるドプラ信号は、網膜血液量に、すなわち所定の閾値(例えば4mm/s)を上回る軸方向速度を有する血液量に対応する。相対血液量は、基線BLと比較した場合の網膜血液量RBVの相対変動%に対応する(すなわちrRBV=(RBV-BL)/BL)。ここで、BLは、無刺激時の血液量である。
【0151】
図5では、光刺激による活性後の網膜の血管網14における神経血管連関が高い領域19を明確に見ることができる。
【0152】
コンピューティングモジュール3は、神経血管連関が最大である関心領域を選択するように構成される。
【0153】
この関心領域は、前記刺激と前記ドプラ信号との相互関連から推定される前記血管網の活動マップに基づき、コンピューティングモジュール3により自動的に判定され得る(すなわち前記関心領域は、ドプラ信号が刺激と十分に相互関連するピクセルセットとして判定される)。
【0154】
例えば、関心領域は、刺激により相互関連が最大となるピクセルを少なくとも含み得る。特に、前記関心領域は、相互関連が最大となる前記ピクセルと、相互関連が最大となる前記ピクセルの周囲の所定個数の追加のピクセルとによって構成され得る。
【0155】
前記所定個数の追加のピクセルは、最大の反応を有する前記ピクセルの周囲の半径方向に1~6個分の範囲内のピクセルからなるものであってもよく、例えば半径方向に2~4個分の範囲内のピクセルからなるものであってもよい。
図6は、相互関連マッピングから判定されたかかる関心領域20を示す。
図6で使用される相互関連パラメータは、とりわけ機能MRIの分野において広く使用される既知のグローバル線形モデル(GLM)にしたがって演算されたzスコアと呼ばれる。
【0156】
他の変形例では、前記所定個数の追加のピクセルは、例えば7*7個のピクセルなどの正方形に並んだピクセルなどであってもよい。
【0157】
相互関係に基づく関心領域の判定は、n回のトライアルにおける相互関係マップの平均化の後に、または通常はn回のトライアルから得られたデータセットを使用することにより実施され得る。
【0158】
他の実施形態では、コンピューティングモジュール3は、ドプラ信号のドプラ強度に基づき前記関心領域を自動的に判定するように構成され、したがって血流が最大の領域を標的とする。
【0159】
他の実施形態では、コンピューティングモジュール3は、Bモード画像に基づき前記関心領域を自動的に判定するように構成される。これは、前記神経系が網膜である場合には十分なものとなり得る。
【0160】
他の実施形態では、コンピューティングモジュール3は、外部ニューロナビゲーションデバイスに基づき前記関心領域を自動的に判定するように構成される。
【0161】
さらに他の変形例では、関心領域の選択は、撮像対象の領域の既存の機能カートグラフィをさらに考慮することにより、いずれの神経系領域が所与の刺激により活性化されたかを示唆することができる。このアプローチは、例えば既知の脳地図などを使用した脳の機能イメージングに対してより有用となり得る。かかるマップは、ヒトの脳および例えばラットなどの動物の脳に対して利用可能である。
【0162】
関心領域が判定されると、コンピューティングモジュールは、関心領域の血液動態信号を平均化し、したがってn回のトライアルを介して
図7に示す血液動態反応曲線21を取得する。
図7に示す血液動態パラメータは、網膜血液量RBVであるが、前述のようなrRBVまたは別のパラメータであることも可能である。
【0163】
次いで、血液動態反応は、n回のトライアルに対して平均化され、それにより血液動態パラメータがrRBVである場合に
図8に示すような平均曲線22が取得され得る。
【0164】
また、n回のトライアルに対する血液動態反応22の演算を利用することにより、例えば平方偏差または標準偏差などの統計パラメータを演算することなどによって、前記n回のトライアルに対する血液動態パラメータ推定の再現性またはクオリティを評価することができる。
【0165】
とりわけn回のトライアルの平均化後における血液動態反応の形状(
図8の曲線22)は、特定の健康障害に関する信頼性の高いバイオマーカとして使用され得る。したがって、血液動態反応に基づき、神経血管連関が正常であるか否かを高い信頼性で判定することが可能となり、例えばアルツハイマー病などの、特定の神経変性疾患または心血管疾患などの疾患のバイオマーカとして神経血管連関を使用することが可能となる。
【0166】
これを目的として、コンピューティングモジュール3は、血液動態反応から少なくとも1つの反応パラメータを演算するように構成され得る。前記少なくとも1つのパラメータは、
- 血液動態反応の最大値、
- 刺激から血液動態反応の最大値の時間にかけて演算した立ち上がり時間、
- 血液動態反応の最大値の時間から前記最大値の後の血液動態反応の最小値にかけて演算した立ち下がり時間
からなる群より選択される。
【0167】
これらのパラメータは、前記血液動態反応に対してマルチパラメータ関数を合わせて調整し、この調整後に前記マルチパラメータ関数に基づき前記少なくとも1つのパラメータを判定することによって、前記コンピューティングモジュールにより演算され得る。例えば、
図9においてnで示すように、マルチパラメータ関数は、4つの半期間余弦関数により構成され得る。
図9は、血液動態反応の最大値rRA、立ち上がり時間RT、および立ち下がり時間FTが、調整されたマルチパラメータ関数に基づきどのように判定されるかを示す。
【0168】
血液動態反応が正常であるか否か、および/または血液動態反応が所定の疾患に対応するか否かを判定するために、コンピューティングモジュール3は所定の閾値に対して前記パラメータの比較を行い得る。
【0169】
一変形例では、血液動態反応が正常であるか否か、および/または血液動態反応が所定の疾患に対応するかを判定するために、コンピューティングモジュール3は、血液動態反応が正常であるか否かを判定するように、および/または血液動態反応が所定の疾患に対応するか否かを判定するようにトレーニングされた、ニューラルネットワークを使用し得る。ニューラルネットワークによるこの判定は、血液動態反応の平均曲線22、調整されたマルチパラメータ関数、または上述のようなパラメータに直接的に基づいて実施され得る。
【0170】
上述の網膜における神経血管連関を計測するためのものは、眼の機能イメージングに特化した方法および装置の特徴を除いては、脳における計測に対しても適用可能である。脳の機能超音波イメージングの場合には、側頭窓、後頭穴、頭蓋開口、または頭蓋骨の人為的な薄化の中のいずれか1つにより超音波を送受信することが有用である。脳の機能超音波イメージングの場合には、有利には刺激は音であり得る。
【0171】
また、上述のような装置は、血液動態反応に基づき、所定の疾患、とりわけ神経変性疾患または心血管疾患に対する医療処置の効率をモニタリングするためにも使用され得る。これを目的として、医療処置により神経血管連関の改善がなされるか否かを判定するために、血液動態反応は、場合によっては医療処置の最中を含む少なくとも医療処置の前後の種々の時点において計測され得る。また、このモニタリングは、上述のように少なくとも1つの閾値に対する前記少なくとも1つの反応パラメータの比較を行うことにより、またはニューラルネットワークを使用することにより行われ得る。
【0172】
いずれの実施形態においても、機能イメージングは、例えばビデオ、EEG、ECG、動物または患者の動作検出器などの外部デバイスからの信号によって制御され得る。
【0173】
神経系の撮像領域の実際の活動および活動レベルは、例えば脳の場合には頭皮脳波図により、および網膜の場合には網膜電図によりモニタリングされ得る。
【0174】
次に、ラットの網膜および脳における神経血管連関の計測を行うことにより正常なラットと、アルツハイマー病を模した優れたネズミモデルである遺伝子操作されたTgF344-ADラットとの比較を行うアルツハイマー病検出の具体例に基づき、具体例を示す。
【0175】
網膜における血液動態反応の判定を、上述のように6匹の正常なラットと6匹のTgF344-ADラットとにおいて実施した。
図10は、6匹の正常なラットに基づき平均化した(実線)および6匹のTgF344-ADラットに基づき平均化した(破線)、50回のトライアルに基づく平均血液動態反応22および調整されたマルチパラメータ関数23を示す。
図10は、最大値rRAがTgF344-ADラットにおいては実質的に上昇されたことを示しており、したがってこの例においてアルツハイマー病のバイオマーカとしてrRAを使用することが可能であることが確認できる。
【0176】
2匹の正常なラットおよび3匹のTgF344-ADラットに対して、判定対象となる脳における血液動態反応の同様の調査を実施した。頭蓋骨の薄い部分を介して機能超音波イメージングを行った。より具体的には、上丘および仮想皮質における血液動態反応を演算した。
【0177】
図11は、上丘および仮想皮質における、血液動態反応(相対脳血液量-rCBV)および相互関係パラメータ(zスコア)のそれぞれの画像を示す。
【0178】
図12は、それぞれ正常なラットについて平均化された(WT)およびTgF344-ADラットについて平均化された(Alz)、上丘(実線)におけるおよび仮想皮質における(破線)50回のトライアルに基づく平均血液動態反応22を示す。
図12は、rCBVの最大値がTgF344-ADラットに関して実質的に上昇されたことを示しており、したがってここでもやはりこの例においてアルツハイマー病のバイオマーカとして最大値rRAを使用することが可能であることが確認できる。
【符号の説明】
【0179】
1 装置
2 プロセッサ
3 コンピューティングモジュール
4 プローブ
5 電動化部
6 アレイ
7 刺激デバイス
8 眼
9 角膜
10 網膜
11 脈絡膜
12 強膜
13 視神経
14 血管網
15 目蓋
16 ゲル
17 支持部
18 刺激信号
19 神経血管連関が高い領域
20 関心領域
21 血液動態反応曲線
22 平均曲線、血液動態反応、平均血液動態反応
23 マルチパラメータ関数
【国際調査報告】