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特表2024-536494エコー源性組成物および疼痛の治療のためのその使用方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-04
(54)【発明の名称】エコー源性組成物および疼痛の治療のためのその使用方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 9/06 20060101AFI20240927BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20240927BHJP
   A61K 47/36 20060101ALI20240927BHJP
   A61K 47/12 20060101ALI20240927BHJP
   A61K 47/44 20170101ALI20240927BHJP
   A61K 47/14 20170101ALI20240927BHJP
   A61K 47/24 20060101ALI20240927BHJP
   A61K 47/10 20170101ALI20240927BHJP
   A61K 31/445 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
A61K9/06
A61K45/00
A61K47/36
A61K47/12
A61K47/44
A61K47/14
A61K47/24
A61K47/10
A61K31/445
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024522213
(86)(22)【出願日】2022-10-13
(85)【翻訳文提出日】2024-05-30
(86)【国際出願番号】 US2022046624
(87)【国際公開番号】W WO2023064506
(87)【国際公開日】2023-04-20
(31)【優先権主張番号】63/255,335
(32)【優先日】2021-10-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518401546
【氏名又は名称】インシツ バイオロジクス、インク.
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100157923
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴喰 寿孝
(72)【発明者】
【氏名】プフレプセン,ケルシー
(72)【発明者】
【氏名】テイラー,ウィリアム
(72)【発明者】
【氏名】エレス,マーク
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA09
4C076AA94
4C076BB11
4C076CC01
4C076DD38
4C076DD41
4C076DD45
4C076DD46
4C076DD63
4C076EE37P
4C076EE53
4C076EE55
4C076FF31
4C076FF35
4C076FF70
4C084AA17
4C084MA28
4C084MA65
4C084NA12
4C084ZA04
4C084ZA08
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC21
4C086MA03
4C086MA05
4C086MA28
4C086MA65
4C086NA12
4C086ZA04
4C086ZA08
(57)【要約】
概して、調節可能であり、持続放出の医薬剤および/または活性薬剤を送達する能力を有するヒドロゲル脂質微粒子薬物送達マトリックス。ヒドロゲル脂質微粒子薬物送達マトリックスは、エコー源性である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象の疼痛を治療するための方法であって、
エコー源性組成物を対象の標的部位へ投与するステップであって、エコー源性組成物が、
水性担体と;
麻酔剤を含む、水性担体中に分散されている複数の脂質微粒子とを含む、ステップ;ならびに
エコー源性組成物の標的部位への送達を超音波で確認するステップを含む、方法。
【請求項2】
水性担体が、チラミン置換ヒアルロン酸から構成されるヒドロゲルであり、該ヒドロゲルが、ジ-チラミン架橋によって形成され、ヒアルロン酸のヒドロキシル基のチラミン置換度が約0.5%から約3%である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
水性担体と脂質微粒子との間の体積比が、約60~90の水性担体対約40~10の脂質微粒子である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
複数の脂質微粒子が、ラウリン酸、および炭素数がラウリン酸より大きい脂肪酸から構成される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
脂質微粒子がロウであり、ロウがカルナウバロウである、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
脂質微粒子が、ロウ、またはロウおよび脂肪酸の混合物を含み、脂肪酸がC4以上である、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
脂質微粒子が、ステアリン酸およびトリブチル酸エステルを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
ステアリン酸およびトリブチル酸エステルが約0.1%から約30%の比で存在する、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
麻酔剤が、脂質微粒子中に結晶形態で存在する、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
対象の疼痛を治療するための方法であって、
エコー源性組成物を対象の標的部位へ投与するステップであって、エコー源性組成物が、
水性担体と;
水性担体中の液滴中に分散されている脂質相と、脂質相中の未溶解の結晶性麻酔剤とを含む、ステップ;ならびに
エコー源性組成物の標的部位への送達を超音波で確認するステップを含む、方法。
【請求項11】
脂質相がトリグリセリドである、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
トリグリセリドが25℃で液体である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
脂質相液滴の直径が約500nmから約5μmである、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
水相が、約0.1%から約1%の量で存在するヒアルロン酸を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項15】
疼痛の治療のためのエコー源性組成物であって、
乳化剤およびポリオールを含む連続水相と;
トリグリセリドを含む脂質相とを含み、トリグリセリドが25℃で液体であり、未溶解の結晶性麻酔剤がトリグリセリド中にあり、脂質相が連続水相中に乳化している、組成物。
【請求項16】
乳化剤が、約0.15%から約1%の量で存在するヒアルロン酸である、請求項15に記載の組成物。
【請求項17】
脂質相が、脂質相の約0.1%から約2.0%の量で存在するリン脂質をさらに含む、請求項15に記載の組成物。
【請求項18】
脂質相が、組成物の約0.01%から約1%(w/v)の量で存在する酸化防止剤をさらに含む、請求項15に記載の組成物。
【請求項19】
脂質相が、約10%から約40%(w/v)である、請求項15に記載の組成物。
【請求項20】
ポリオールが、グリセロールであり、組成物の約0.25%から約2.5%(w/v)の量で存在する、請求項15に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
[001]本出願は、2021年10月13日に出願されたEchogenic Compositions and Methods Of Use Thereof For The Treatment Of Painと題された米国仮特許出願第63/255,335号に対する米国特許法第119条(e)に基づく利益を主張するものであり、この仮特許出願は、あらゆる目的のために、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
[002]本開示は、疼痛の管理および治療に関する。
【背景技術】
【0003】
[003]リポソーム型ブピバカインは、局所麻酔剤の作用持続時間を延長し、術後疼痛および周術期のオピオイド使用を低減するために、末梢神経ブロックに使用されている。実際には、この調製物は、多くの場面で、手術患者に対するアヘン剤の使用をなくすには至らないことが多い。標的部位での有効性および作用持続時間の限界には、送達システムの薬物動態プロファイルと、組織における局所麻酔剤の移動とが共に寄与している。
【0004】
[004]急性術後疼痛は、少なくとも5~7日間にわたる疼痛緩和が必要であると推定されている。そのため、術後治療レジメンからオピオイドを排除しようとする周術期医学の試みが進んでいるが、しかしながら、今までのところ十分ではない。数々のオピオイドを制限する手法、例えば、くも膜下腔内モルヒネ、医薬品補助剤、ならびに標準および長期放出調製物の局所麻酔剤は、鎮痛効果の持続時間24~48時間に限定された有効性を示す(漸減する鎮痛作用を補うために麻酔薬を必要とすることが多い)。
【0005】
[005]当技術分野では、アヘン剤系医薬を使用することなく持続的な術後疼痛緩和を提供するのに有効な組成物および方法が必要とされている。
【発明の概要】
【0006】
[006]本明細書は、API(例えば、麻酔剤)の対象への送達のためのエコー源性組成物およびその使用方法を開示する。提供される対象の疼痛を治療するための方法は、エコー源性組成物を対象の標的部位へ投与するステップ、ならびにエコー源性組成物の標的部位への送達を超音波で確認するステップを含む。ある特定の実施形態では、エコー源性組成物は、水性担体と、麻酔剤を含む、水性担体中に分散されている複数の脂質微粒子とを含む。ある特定の実施形態では、水性担体は、チラミン置換ヒアルロン酸から構成されるヒドロゲルであり、該ヒドロゲルが、ジ-チラミン架橋によって形成され、ヒアルロン酸のヒドロキシル基のチラミン置換度が約0.5%から約3%である。ある特定の実施形態では、水性担体と脂質微粒子との間の体積比は、約70~80の水性担体対約30~20の脂質微粒子である。
【0007】
[007]さらなる実施形態によれば、複数の脂質微粒子は、パラフィン、トリグリセリド、および/またはロウから構成される。ある特定の実施態様では、脂質微粒子はロウであり、ロウがカルナウバロウである。さらなる実施形態では、脂質微粒子は、ロウ、またはロウおよび脂肪酸の混合物を含み、脂肪酸がC4以上である。その上さらなる実施形態では、複数の脂質微粒子は、ステアリン酸およびトリブチル酸エステルを含む。例示的な実施態様では、ステアリン酸およびトリブチル酸エステルは約0.1%から約30%の比で存在する。
【0008】
[008]ある特定の実施態様では、麻酔剤は、脂質微粒子中に結晶形態で存在する。
[009]さらに、本明細書は、水性担体と、水性担体中の液滴中に分散されている脂質相と、脂質相中の未溶解の結晶性麻酔剤とを含む、エコー源性組成物を開示する。ある特定の実施態様では、脂質相は、トリグリセリドである。例示的な実施態様では、トリグリセリドは、25℃で液体である。
【0009】
[010]ある特定の実施形態では、脂質相液滴の直径は約500nmから約100μmである。さらなる実施形態では、脂質相液滴の直径は約500nmから約5μmである。
[011]ある特定の実施形態では、水相はヒアルロン酸を含む。さらなる実施形態では、ヒアルロン酸は、約0.1%から約1%の量で存在する。
【0010】
[012]さらに、本明細書は、疼痛の治療のためのエコー源性組成物であって、乳化剤およびポリオールを含む連続水相と;トリグリセリドを含む脂質相とを含み、トリグリセリドが25℃で液体であり、未溶解の結晶性麻酔剤がトリグリセリド中にあり、脂質相が連続水相中に乳化している、組成物を開示する。
【0011】
[013]ある特定の実施形態によれば、乳化剤はヒアルロン酸である。これらの実施形態の例示的な実施態様では、ヒアルロン酸は、約0.15%から約1%の量で存在する。
[014]さらなる実施形態によれば、脂質相はリン脂質をさらに含む。ある特定の実施態様では、リン脂質は、脂質相の約0.1%から約2.0%の量で存在する。
【0012】
[015]ある特定の実施形態では、脂質相は酸化防止剤をさらに含む。ある特定の実施態様では、酸化防止剤は、組成物の約0.01%から約1%(w/v)の量で存在する。例示的な酸化防止剤は、任意の好適な親油性酸化防止剤を含む。ある特定の実施態様では、酸化防止剤は、トコフェロール(例えば、αトコフェロール)である。
【0013】
[016]ある特定の実施形態では、脂質相は、組成物の約10%から約40%(w/v)である。
[017]さらなる実施形態では、ポリオールはグリセロールである。例示的な実施態様では、グリセロールは、組成物の約0.25%から約2.25%(w/v)の量で存在する。
【0014】
[018]複数の実施形態が開示されるが、本開示のさらなる他の実施形態は、当業者には、本発明の例示的な実施形態を示し、説明する以下の詳細な説明から明らかになるであろう。理解されるように、本開示は、全て本開示の精神および範囲から逸脱することなく、様々な明白な態様において改変できる。したがって、図面および詳細な説明は、本質的に例示的なものとみなされ、限定的なものとはみなされない。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1A】[019]ある特定の実施形態による、エコー源性の針による事前注入を示す超音波画像である。
図1B】[020]ある特定の実施形態による、INSB200(ヒドロゲル脂質微粒子ロピバカインマトリックス)注入による注入を示す超音波画像であり、この画像は、エコー高密度陰影を伴う高密度のエコー源性を例証する。
図2A】[021]ある特定の実施形態による、エコー源性の針による事前注入を示す超音波画像である。
図2B】[022]ある特定の実施形態による、INSB200(ヒドロゲル脂質微粒子ロピバカインマトリックス)注入による注入を示す超音波画像であり、この画像は、高密度のエコー源性を例証する。
図3】[023]対照品のブタの筋肉への浅い注入を示す図である;針が画像視野の右側に見える。
図4】[024]対照試験品(1%ヒアルロン酸用液)の浅い注入後のブタの筋肉を示す図である;針が画像視野の右側に存在する。
図5】[025]対照品のブタの筋肉への深い注入を示す図である;針が画像視野の右側に見える。
図6】[026]対照試験品の深い注入後のブタの筋肉を示す図である;針が右上画像視野に示されている。
図7】[027]0.5%脂質微粒子製剤の浅い注入前のブタの筋肉を示す図である;針が右画像視野にある。
図8】[028]0.5%脂質微粒子製剤の浅い注入後のブタの筋肉を示す図である;針が右画像視野に存在する。
図9】[029]0.5%脂質微粒子製剤の深い注入前のブタの筋肉を示す図である;針が右画像視野に存在する。
図10】[030]0.5%脂質微粒子製剤の深い注入後のブタの筋肉を示す図である;針が右画像視野に存在する。
図11】[031]1%脂質微粒子製剤の浅い注入前のブタの筋肉を示す図である;針が画像右視野に見える。
図12】[032]1%脂質微粒子製剤の浅い注入後のブタの筋肉を示す図である;針が画像右視野に見える。
図13】[033]1%微粒子製剤の深い注入前のブタの筋肉を示す図である;針が画像右側視野に示されている。
図14】[034]1%微粒子製剤の深い注入後のブタの筋肉を示す図である;針が画像右側視野に示されている。
図15】[035]10%脂質微粒子製剤の浅い注入前のブタの筋肉を示す図である;針が右側視野に存在する。
図16】[036]10%脂質微粒子製剤の浅い注入後のブタの筋肉を示す図である。
図17】[037]10%脂質微粒子製剤の深い注入前のブタの筋肉を示す図である;針が右側画像視野に存在する。
図18】[038]10%脂質微粒子の深い注入後のブタの筋肉を示す図である;針が右側視野に存在する。
図19】[039]30%脂質微粒子製剤の浅い注入前のブタの筋肉を示す図である;針が右側画像視野に存在する。
図20】[040]30%脂質微粒子製剤の浅い注入後のブタの筋肉を示す図である;針が画像視野の右上側に存在する。
図21】[041]30%脂質微粒子製剤の深い注入前のブタの筋肉を示す図である;針が右上視野に存在する。
図22】[042]30%微粒子製剤の深い注入後のブタの筋肉を示す図である;針が画像視野の右上四半部に存在する。
図23】[043]10%脂質均質化製剤の浅い注入前のブタの筋肉を示す図である;針が画像視野の右側に見える。
図24】[044]13%ロピバカインを含む10%脂質微粒子製剤の浅い注入後のブタの筋肉を示す図である;針が右側視野に見える。
図25】[045]13%ロピバカインを含む10%均質化脂質微粒子製剤の深い注入前のブタの筋肉を示す図である;針が右側画像視野に示されている。
図26】[046]13%ロピバカインを含む10%均質化脂質微粒子製剤の深い注入後のブタの筋肉を示す図である;針が右側画像視野に見える。
図27】[047]ステアリン酸およびトリブチル酸エステルを含む30%脂質微粒子製剤の浅い注入前のブタの筋肉を示す図である;針が右側画像視野に見える。
図28】[048]ステアリン酸およびトリブチル酸エステルを含む30%脂質微粒子製剤の浅い注入後のブタの筋肉を示す図である;針が画像視野の右端に見える。
図29】[049]ステアリン酸およびトリブチル酸エステルを含む30%微粒子製剤の深い注入前のブタの筋肉を示す図である;針が画像視野の右上から始まる対角線のように示されている。
図30】[050]ステアリン酸およびトリブチル酸エステルを含む30%脂質微粒子製剤の深い注入後のブタの筋肉を示す図である;針が、画像の右上四半部から始まり、試験品の雲に入る対角線のように示されている。
図31】[051]10%ステアリン酸およびトリブチル酸エステル微粒子製剤の浅い注入前のブタの筋肉を示す図である;針が画像視野の右側から入るのが見える。
図32】[052]10%ステアリン酸およびトリブチル酸エステル微粒子製剤の浅い注入後のブタの筋肉を示す図である;針が視野の画像の右側に入るのが見える。
図33】[053]ステアリン酸およびトリブチル酸エステルを含む10%脂質微粒子製剤の深い注入前のブタの筋肉を示す図である;針が右側画像視野に見える。
図34】[054]ステアリン酸およびトリブチル酸エステルを含む10%脂質微粒子製剤の深い注入後のブタの筋肉を示す図である。
図35】[055]10%カプリル酸およびトリステアリン酸エステル製剤の浅い注入前のブタの筋肉を示す図である;針が右側視野に見える。
図36】[056]10%カプリル酸およびトリステアリン酸エステル製剤の浅い注入後のブタの筋肉を示す図である;針が右側視野に見える。
図37】[057]視野の中央に坐骨神経を示す図であり、薬品は注入されていない(用量Aブタ1、ベースライン)。
図38】[058]坐骨神経を完全に包み込む薬品を示す図であり、この薬品は、ブタの筋肉を示す視野の中程の明るい線の下の筋膜内空間内にあることが示されている。(用量Aブタ1、薬品の完全注入)。
図39】[059]視野の中央に坐骨神経を示す図であり、薬品は注入されていない(用量Aブタ2)。
図40】[060]注入手順の終了時のエマルジョン薬品を示す図である。薬品は、坐骨神経を包む雲のように見える。
図41】[061]注入中のエマルジョン薬品の注入を示す図である。薬品の雲は、筋膜面において拡がり始めている。
【発明を実施するための形態】
【0016】
[062]本発明の化合物、組成物、物品、システム、道具、および/または方法は、開示および説明する前に、特に明記されない限り特定の合成方法または特定の試薬に限定されないため、当然変わり得ることを理解されたい。本明細書で使用する用語は、特定の態様のみを記載することを目的としており、限定することを意図するものではないことも理解されたい。本明細書に記載の方法および物質と同様または同等の任意のものを本発明の実施または試験に使用できるが、例示的な方法および物質をここで記載する。
【0017】
[063]本明細書では、範囲は、「約」(1つの特定の値)から、および/または「約」(別の特定の値)までと表現できる。かかる範囲を表現する場合、さらなる態様には、(1つの特定の値)から、および/または(他の特定の値)までが含まれる。同様に、先行詞「約」を使用して値が近似値として表現される場合、特定の値がさらなる態様を形成することが理解されよう。さらに、各範囲の端点は、他の端点との関係においても、また、他の端点と独立しても重要であることが理解されよう。また、本明細書に開示する値は多数あるが、各値はまた、値自体と共に「約」(その特定の値)として本明細書に開示されていることも理解される。例えば、値「10」が開示される場合には、「約10」もまた開示される。また、2つの特定のユニットの間の各ユニットもまた開示されることも理解される。例えば、10および15が開示される場合には、11、12、13、および14もまた開示される。
【0018】
[064]本明細書で使用する場合、単語「置換される」は、有機化合物の全ての許容される置換基を含むことが企図される。幅広い態様では、許容される置換基は、有機化合物の非環式および環式、分枝および非分枝、炭素環式および複素環式、ならびに芳香族および非芳香族の置換基を含む。例示的な置換基としては、例えば、以下に記載されるものが挙げられる。許容される置換基は、適切な有機化合物に対して、1つまたは複数であり得、また、同じでも異なっていてもよい。本開示の目的のために、ヘテロ原子、例えば、窒素は、水素置換基を有し、および/またはヘテロ原子の原子価を満たす、本明細書に記載の有機化合物の任意の許容される置換基を有することができる。本開示は、いかなる形であっても有機化合物の許容される置換基によって限定されることを意図するものではない。また、単語「置換」または「によって置換される」は、かかる置換が置換原子および置換基の許容される原子価に従うという暗黙の条件と、該置換が安定な化合物、例えば、転位、環化、脱離などによる変換が自然におこらない化合物をもたらすという暗黙の条件とを含む。また、ある特定の態様では、明確に反対の指示がない限り、個々の置換基は、さらに任意で置換され得る(すなわち、さらに置換されるか、または置換されない)ことも企図される。
【0019】
[065]本明細書に開示するある特定の物質、化合物、組成物、および成分は、商業的に入手し得るか、または当業者に一般的に公知の手法を使用して容易に合成され得る。例えば、開示される化合物および組成物を調製するのに使用される出発物質および試薬は、商業供給者、例えば、Aldrich Chemical Co.(Milwaukee、Wis.)、Acros Organics(Morris Plains、N.J.)、Fisher Scientific(Pittsburgh、Pa.)、またはSigma(St.Louis、Mo.)から入手し得、または参考文献、例えば、Fieser and Fieser’s Reagents for Organic Synthesis、1~17巻(John Wiley and Sons、1991);Rodd’s Chemistry of Carbon Compounds、1~5巻および補遺(Elsevier Science Publishers、1989);Organic Reactions、1~40巻(John Wiley and Sons、1991);March’s Advanced Organic Chemistry(John Wiley and Sons、第4版);およびLarock’s Comprehensive Organic Transformations(VCH Publishers Inc.、1989)に記載されている手順に従って当業者に公知の方法によって調製する。
【0020】
[066]本発明の組成物を調製するのに使用される成分、および本明細書に開示する方法で使用される組成物自体が開示される。これらおよび他の物質は本明細書に開示され、これらの物質の組み合わせ、サブセット、相互作用、グループなどを開示するとき、これらの化合物の、それぞれの様々な個々のおよび集合的な組み合わせおよび順列への具体的な言及を明示的に開示することはできないが、各々は、具体的に企図され、本明細書に記載されることが理解される。例えば、特定の化合物が開示および論考され、該化合物を含む多数の分子に対して行い得る多数の改変が論考される場合、特に反対のことが示されない限り、化合物のあらゆる組み合わせおよび順列、ならびに可能な改変が具体的に企図される。したがって、分子A、B、およびCのクラスが開示され、分子D、E、およびFのクラスが開示され、分子A-Dの組み合わせの例が開示される場合、各々は、個々に列挙されていなくても、個別的かつ集合的に、A-E、A-F、B-D、B-E、B-F、C-D、C-E、およびC-Fの組み合わせが開示されているとみなされることを意味することが企図される。同様に、これらの任意のサブセットまたは組み合わせも開示される。したがって、例えば、A-E、B-F、およびC-Eのサブグループは開示されているとみなされる。この概念は、本発明の組成物の製造方法および使用方法におけるステップを含むが、これらに限定されない本出願の全ての態様に適用される。したがって、実施可能な様々な追加のステップが存在する場合、これらの追加のステップはそれぞれ、本発明の方法の実施形態の任意の特定の実施形態または組み合わせで実施可能であることが理解される。
【0021】
[067]本明細書で使用する場合、単語「対象」は、投与標的、例えば、投与対象を指す。したがって、本明細書に開示する方法の対象は、脊椎動物、例えば、哺乳類、魚類、鳥類、爬虫類、または両生類であり得る。あるいは、本明細書に開示する方法の対象は、ヒト、非ヒト霊長類、ウマ、ブタ、ウサギ、イヌ、ヒツジ、ヤギ、ウシ、ネコ、モルモットまたはげっ歯類であってもよい。単語は、特定の年齢または性別を示すものではない。したがって、雌雄を問わず、成人および新生児対象、ならびに胎児を対象とすることが意図される。一態様では、対象は、哺乳類である。患者は、疾患または障害に罹患している対象を指す。単語「患者」は、ヒトおよび獣医学的対象を含む。
【0022】
[068]本明細書で使用する場合、「エコー源性組成物」は、超音波の反射を生じさせ、よって標準的な超音波イメージング手法を使用して検出可能となる組成物を意味する。
[069]本明細書で使用する場合、単語「治療する」、および「予防する」ならびにそれらから派生する語は、必ずしも100%または完全な治療または予防を意味しない。むしろ、当業者が潜在的な利益または治療効果を有すると認識する様々な程度の治療または予防が存在する。この点で、本発明の方法は、哺乳類における疾患または医学的状態を、任意の量で任意のレベルにて治療または予防できる。さらに、本方法によって提供する治療または予防は、疾患または医学的状態の1つまたは複数の病態または症状を治療または予防することを含み得る。例えば、疼痛の治療方法に関して、いくつかの実施形態における方法は、対象における疼痛の減少または除去を達成する。また、本明細書の目的において、「予防」は、疾患の発症、またはその症状もしくは病態を遅延させることを包含し得る。単語「治療する」は、特定の障害もしくは病態の防止、または特定の障害もしくは病態に関連する症状の緩和、および/または上記症状の予防もしくは除去を含む。例えば、本明細書で使用する場合、単語「術後疼痛」は、手術からの回復に関連する疼痛を減少または緩和することに一般に関係する。
【0023】
[070]本明細書で使用する場合、単語「実質的に」は、完全またはほぼ完全な範囲または程度の作用、特質、特性、状態、構造、項目、または結果を指す。例えば、「実質的に」囲まれている物体は、物体が、完全に囲まれているか、またはほぼ完全に囲まれていることを意味する。絶対的な完全性からの逸脱の正確な許容度は、場合によっては、特定の文脈に依存することがある。しかし、一般的に言えば、完全な状態に近づくと、あたかも絶対的で全くの完全な状態が得られたかのように、同じ全体的な結果が得られるようになる。「実質的に」の使用は、作用、特質、特性、状態、構造、項目、または結果を完全またはほぼ完全に欠くことを指す否定的な意味合いで使用する場合にも同様に適用可能である。例えば、「実質的に粒子を含まない」組成物は、粒子を完全に欠くか、または粒子をほぼ完全に欠いているので、効果が粒子を完全に欠いているのと同じとなるかのいずれかである。言い換えれば、「実質的に成分または要素を含まない」組成物は、かかる項目を、その測定可能な効果がない限り、依然として実際には含む可能性がある。
【0024】
[071]本明細書で使用する場合、単語「有効量」および「有効な量」は、望ましい結果を達成するのに十分である量、または望ましくない状態に対して効果を有するのに十分である量を指す。例えば、「治療的有効量」は、望ましい治療結果を達成するのに十分である量、または望ましくない症状に対して効果を有するのに十分であるが、しかし、一般に、有害な副作用を引き起こすには不足している量を指す。任意の特定の患者専用の治療的有効用量レベルは、以下を含む様々な要因に依存する:治療する障害および障害の重症度;用いる特定の組成物;患者の年齢、体重、全般的な健康状態、性別および食事;投与の時間;投与経路;用いる特定の化合物の排出速度;治療期間;用いる特定の化合物と併用または同時に使用する薬物ならびに医療分野で周知の同様の要因。例えば、化合物の用量を、望ましい治療効果を達成するのに必要なレベルより低いレベルから開始し、投与量を、望ましい効果が達成されるまで徐々に増加することは十分に当技術分野の技量の範囲内である。所望により、有効1日用量は、投与目的に応じて複数用量に分けることができる。したがって、単一用量組成物は、1日用量を構成するための、かかる量またはその約数を含むことができる。投与量は、禁忌がある場合には、個々の医師によって調整できる。投与量は様々であり、1日1回または複数回の用量で1日または数日間投与できる。所定のクラスの医薬製品の適切な投与量については、ガイダンスを印刷物に見出すことができる。さらなる様々な態様では、調製物を、「防止有効量」、すなわち、疾患または病態の予防に有効な量で投与できる。
【0025】
[072]有効投与量は、最初にインビトロアッセイから推定できる。例えば、動物に使用するための初期投与量は、インビトロアッセイで測定された特定の化合物のIC50以上の活性化合物の循環血中濃度または血清中濃度を達成するために処方され得る。特定の活性薬剤のバイオアベイラビリティを考慮して、かかる循環血中濃度または血清中濃度を達成するための投与量を計算することは、十分に当業者の能力の範囲内である。ガイダンスとして、Goodman and Gilman’s The Pharmaceutical Basis of Therapeutics、1章、1~46ページ、最新版、Pergamagon Press中のFingl & Woodbury、「General Principles」を参照されたい(その全体およびそこに引用されている参考文献が参照により本明細書に組み込まれる)。
【0026】
[073]本明細書は、対象の体内で医薬品有効成分(API)の制御放出および/または持続放出を提供するためのエコー源性組成物を開示する。
[074]本明細書は、API(例えば、麻酔剤)の対象への局所送達のためのエコー源性組成物およびその使用方法を開示する。提供される対象の疼痛を治療するための方法は、エコー源性組成物を対象の標的部位へ投与するステップ、ならびにエコー源性組成物の標的部位への送達を超音波で確認するステップを含む。
【0027】
[075]ある特定の実施形態では、エコー源性組成物は、水性担体と、API(例えば、麻酔剤)を含む、水性担体中に分散されている複数の脂質微粒子とを含む。ある特定の実施形態では、水性担体は、チラミン置換ヒアルロン酸から構成されるヒドロゲルであり、該ヒドロゲルが、ジ-チラミン架橋によって形成され、ヒアルロン酸のヒドロキシル基のチラミン置換度が約0.5%から約3%である。ある特定の実施形態では、水性担体と脂質微粒子との間の体積比は、約70~80の水性担体対約30~20の脂質微粒子である。
【0028】
[076]さらなる実施形態によれば、複数の脂質微粒子は、パラフィン、トリグリセリド、および/またはロウから構成される。ある特定の実施態様では、脂質微粒子はロウであり、ロウがカルナウバロウである。さらなる実施形態では、脂質微粒子は、ロウ、またはロウおよび脂肪酸の混合物を含み、脂肪酸がC4以上である。その上さらなる実施形態では、複数の脂質微粒子は、ステアリン酸およびトリブチル酸エステルを含む。例示的な実施態様では、ステアリン酸およびトリブチル酸エステルは約0.1%から約30%の比で存在する。他の可能な脂質微粒子および/または脂質相の組成は、以下でさらに説明する。
【0029】
[077]ある特定の実施態様では、麻酔剤は、脂質微粒子中に結晶形態で存在する。さらなる実施態様では、麻酔剤は、脂質微粒子に溶解している。
[078]さらに、本明細書は、水性担体と、水性担体中の液滴中に分散されている脂質相と、脂質相中の未溶解の結晶性麻酔剤とを含む、エコー源性組成物を開示する。ある特定の実施態様では、脂質相は、トリグリセリドである。例示的な実施態様では、トリグリセリドは、25℃で液体である。当業者には理解されるように、上記のエコー源性組成物とは対照的に、これらの実施形態では、脂質相は、固体微粒子の形態ではなく、液体微小液滴の形態および/または水性担体相中に乳化している形態である。
【0030】
[079]ある特定の実施形態では、脂質相液滴の直径は約500nmから約100μmである。さらなる実施形態では、脂質相液滴の直径は約500nmから約5μmである。ある特定の実施形態では、固体結晶化APIの周囲に形成される脂質相液滴は、約5μm未満である。
【0031】
[080]ある特定の実施形態では、水相はヒアルロン酸を含む。さらなる実施形態では、ヒアルロン酸は、約0.1%から約1%の量で存在する。これらの実施形態でのHAは、ヒドロゲルを形成するために架橋されていてもいなくてもよい。ヒドロゲルが形成されない実施形態では、HAは非置換であってよい(例えば、以下に記載されるようにチラミン置換を欠いている)。
【0032】
[081]さらに、本明細書は、疼痛の治療のためのエコー源性組成物であって、乳化剤およびポリオールを含む連続水相と;トリグリセリドを含む脂質相とを含み、トリグリセリドが25℃で液体であり、未溶解の結晶性麻酔剤がトリグリセリド中にあり、脂質相が連続水相中に乳化している、組成物を開示する。
【0033】
[082]ある特定の実施形態によれば、乳化剤はヒアルロン酸である。これらの実施形態の例示的な実施態様では、ヒアルロン酸は、約0.15%から約1%の量で存在する。さらなる実施形態によれば、好適な乳化剤としては、リン脂質、およびポリソルベート(tween界面活性剤)が挙げられるが、これらに限定されない。さらなる実施形態では、脂肪酸(0.1%~2%)は、乳化剤として機能し得る。
【0034】
[083]さらなる実施形態によれば、脂質相はリン脂質をさらに含む。リン脂質は、追加の乳化剤として機能し、安定化した乳化エコー源性組成物を提供する。ある特定の実施態様では、リン脂質は、脂質相の約0.1%から約2.0%の量で存在する。例示的なリン脂質としては、レシチンが挙げられるが、これらに限定されない。好適なレシチンとしては、植物性レシチン、例えば、ダイズレシチン、トウモロコシ胚芽油レシチン、キャノーラ、ノハラガラシおよびその他のナタネ変種および雑種に由来するレシチンを含むナタネレシチン、米油レシチン、ヒマワリレシチン、綿実レシチン、ラッカセイレシチン、パーム油レシチン、魚油レシチン、バイオマスレシチン、ならびにそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。また、卵黄レシチン、および/または乳レシチンならびにそれらの混合物を含むが、これらに限定されないある特定の動物性レシチンも適している。
【0035】
[084]ある特定の実施形態では、脂質相は酸化防止剤をさらに含む。ある特定の実施態様では、酸化防止剤は、組成物の約0.01%から約1%(w/v)の量で存在する。例示的な酸化防止剤は、任意の好適な親油性酸化防止剤を含む。ある特定の実施態様では、酸化防止剤は、トコフェロール(例えば、αトコフェロール)である。他の親油性酸化防止剤(例えば、リコペンおよびβカロテン)もまた適している。
【0036】
[085]ある特定の実施形態では、脂質相は、組成物の約10%から約40%(w/v)である。
[086]さらなる実施形態では、ポリオールはグリセロールである。例示的な実施態様では、グリセロールは、組成物の約0.25%から約2.25%(w/v)の量で存在する。
【0037】
[087]ある特定の実施形態では、本明細書の組成物および方法は、選択された患者における周術期のオピオイド使用の必要性を除去し得る。
[088]開示するエコー源性組成物は、公知の麻酔用調製物を超える独特の特質を有する。様々な実施形態では、開示するエコー源性組成物は、注入でのエコー源性を示す。さらなる実施形態では、開示するエコー源性組成物は、他の水性局所麻酔用調製物と比較して、標的部位へ送達された後の組織での拡がりが顕著ではない。水性局所麻酔剤の超音波特質は、顕著な組織内移動を伴う非エコー源性薬剤沈着を示す。開示するエコー源性組成物を注入すると、エコー源性薬剤ポケットが生じ、このポケットは、組織での拡がりが認識できるほどではなく、注入部位に留まる(図1Aおよび1B)。
【0038】
[089]開示するエコー源性組成物のこれらの2つの特性は、他の薬剤とは異なり、臨床上の利点を提供する。第一に、開示するエコー源性組成物は、局所麻酔薬マトリックスの正確な非移動性投与を可能とし、これらの実施形態では、ある特定の非平面末梢神経ブロック(例えば、坐骨神経叢、大腿動脈神経叢、および腕神経叢)において有益であり得、上肢の場合、横隔神経ブロックの発生率を減少し得る。さらなる実施形態では、局所的な非移動性麻酔剤送達は、より正確な長期の鎮痛作用をより低い薬剤量で可能とし得る。
【0039】
[090]さらなる実施形態では、開示するエコー源性組成物は、局所麻酔手法中に医薬の配置を確認するのを助けるエコー源性特性を有する。より深い超音波ガイド下注入は、水性製剤の可視化がしばしば不十分となるが、以上の利点はこの場合でも当てはまる。
【0040】
[091]ある特定の実施形態では、開示するエコー源性組成物は、臨床医が、局所麻酔剤を投入するときにより正確に行うことを可能とし、また、医薬の配置を確実に識別して処置を確認することを可能とする。様々な実施形態では、効果的に、医薬は配置された場所に留まり、より少ない医薬の使用で最大6日間以上の疼痛緩和効果が得られる。
【0041】
[092]またさらなる実施形態では、開示するエコー源性組成物は、超音波ガイド下で他の医薬(抗炎症剤、化学療法剤、および抗生剤)を送達するのに使用され得る。かかる場合では、エコー源性特性は、注入部位を高感度で確実に識別することに留意している処置医および麻酔医が、医薬の投与を正確に行うことを助け得る。
【0042】
[093]ある特定の実施態様によれば、開示するエコー源性組成物は、水相(「担体相」とも呼ばれることがある)と、生体系に目標とする治療期間放出される医薬品有効成分(API)を含む脂質相と、を含み、適切な標的配置を超音波イメージングによって検証することを可能とする。これに関連して、担体相の主たる機能は、薬物リザーバ粒子(薬物担持成分)を分散して安定な均一な塊を作製し、ある用量を、送達道具、例えば、シリンジを使用して容器から吸い上げて、標的組織に送達すること、すなわち、非経口注入、血管内注入、創傷への注入、創傷パッキングまたは組織表面の塊形成もしくはコーティングを可能とすることであり、また、送達の適切な標的化を、組成物のエコー源性信号の超音波イメージングによって検証する能力を提供することである。薬物リザーバ/脂質相は、別の物理相、いくつかの実施形態では、粒子の集合体であり、これは、担体相に含まれるが、しかし、担体相と区別できないわけではない。脂質相は、脂質物質に溶解している活性医薬剤を含み、不飽和、飽和、過飽和、または純粋な製薬用相物質(低分子では結晶)で飽和された状態であってもよい。いくつかの形態では、担体はまた、リザーバとは異なる形態、例えば、水性担体中のAPI塩、および脂質相中の塩基形態APIでAPIも含み得る。システムは、水相/疎水性相のみに設定されるのではなく、反対または別の物理相(ポリマー)であってもよい。
【0043】
[094]ある特定の実施形態では、水相がヒドロゲルである。単語「ヒドロゲル」は、本明細書で使用する場合、大量の水を取り込むことができる3次元の親水性または両親媒性のポリマーネットワークを指す。ネットワークは、ホモポリマーまたはコポリマー(本明細書ではポリマー骨格と呼ぶこともある)から構成され、共有結合性の化学的または物理的(イオン性、疎水性相互作用、からみあい)架橋の存在によって不溶性である。架橋は、網目構造および物理的完全性を提供する。ヒドロゲルは、水との熱力学的相溶性を示し、これにより水性媒体中で膨潤できる。
【0044】
[095]ある特定の実施態様では、ヒドロゲルは、ジ-チラミン連結によって架橋されたチラミン置換ヒアルロン酸(THA)から構成される。THAの調製は米国特許第6,982,298号に記載されており、これはその全体が参照により本明細書に組み込まれる。チラミン置換度は、得られるヒドロゲルの特性に顕著な影響を及ぼす。本開示全体を通じて、チラミン置換度は、チラミンによって置換された全HAカルボキシル基のパーセンテージを指す。例えば、2%置換THAでは、全HAカルボキシル基の2%がチラミンによって置換されている。各THA調製物中のチラミン置換パーセントは、以下を測定することによって計算される:1)275nmでのチラミンの固有のUV吸収特性に基づいて分光光度法で定量された調製物に存在するチラミンの濃度;および2)標準的なヘキスロン酸アッセイによって分光光度法で定量されたHA調製物中の全カルボキシル基の濃度。
【0045】
[096]以下にさらに記載するように、ヒドロゲルは、特定の浸透圧、物理的特性、API溶出速度または組織応答を有するように、チラミン置換ポリマー骨格の濃度、ポリマー骨格上のチラミンの置換度、ポリマー骨格の分子量、ポリマー骨格の疎水性、ポリマー骨格の種類、およびヒドロゲル中に含まれる標的分子、塩、バッファーまたは薬物デポ(リザーバ)粒子の濃度を調整することによって調節できる。
【0046】
[097]ヒドロゲル物理的特性は、チラミン置換ポリマー骨格の濃度を変化することによって調整できる。ある特定の実施形態では、液体様ヒドロゲルは、チラミン置換ポリマー骨格を、1.5%置換ゲルのための水性担体相の0.35%未満に維持することによって作製する。液体様ヒドロゲルは、血管内注入、くも膜下注入、あるいは血管または組織構造の閉塞または塞がりを許容できない他の組織部位により適している。高密度ヒドロゲル粒子は、ポリマー骨格上のチラミン置換を増加することにより形成し得る。5%以上の置換度では、低濃度で固体様ヒドロゲル粒子を形成し、7%以上の濃度で非常に高密度な粒子を形成する。高密度な粒子は、創傷部位への注入により適している。ある特定の実施態様では、高密度ヒドロゲル粒子は、生体分子および極性APIを送達するために使用される。対照的に、APIが疎水性である実施態様では、脂質微粒子が適している。
【0047】
[098]ヒドロゲル物理的特性はまた、ポリマー骨格の種類を変化することによって調整できる。例えば、コラーゲンは、ポリマー骨格として使用できるが、糖類系ポリマー骨格よりも親水性がはるかに低い。コラーゲンゲルは、多糖ゲルと同じようには膨張せず、分子量および濃度がはるかに低い。ポリマー骨格を変化させて単一ポリマーの物理的および化学的特質を利用できること、またはいくつかの種類を、ゲルの物理的および化学的特性を変化させ、身体がゲルと相互作用するように、コポリマーまたはブロックコポリマーへと組み合わせることができることが想定され得る。いくつかのポリマーは、APIに対する親和性の度合いが高く、APIに対する結合親和性が高いポリマーまたはポリマーの一部を選択した場合、API溶出速度に影響を与える。また、APIの骨格ポリマーに対する結合親和性がpHまたは温度に依存しているポリマー/APIの組み合わせを使用することにより、ゲル製剤は、T=0での結合を最大化し、その後、標的組織に曝露された後に、pHおよび温度が生理的条件に近づくに従ってより多くのAPIを放出するように調整され得ることも想定される。さらなる実施態様では、APIの拡散速度は、液体-液体界面(脂質微粒子の融解時に達成される)拡散流が固体-液体界面のものより高いことで、拡散の増強を達成できるため、脂質微粒子の融点の変化(以下でさらに説明する)によって影響を受ける。
【0048】
[099]ヒドロゲルの浸透圧はまた、チラミン置換度、および濃度によっても調節され得る。濃縮高置換ヒドロゲルはそれ自体では水を排出するか、または離漿するが、しかし、ヒアルロン酸の例ではポリマー骨格の濃度を増加することによって、または塩、バッファーおよび/またはAPI物質を製剤に添加することによって、ゲルを浸透圧的に中立とするか、またはわずかに膨潤させることができる。例えば、5.5%置換ゲルは、骨格ポリマー濃度を1.5%に設定すると膨張するものを作製できる。ゲルは、浸透圧がバッファー、塩およびAPI成分を添加することによって増加するにつれてさらに膨潤するものを作製できることが想定される。ある特定の態様では、ヒドロゲルはチラミン置換ヒアルロン酸から構成される。ある特定の実施態様によれば、ヒドロゲルは、ジ-チラミン架橋によって形成される。
【0049】
[0100]骨格ポリマー濃度および置換度を制御する利点は、生物学的応答を引き出すのに使用することもできる。1.5%の置換度および0.5%の濃度を有するゲルを使用すると、ヒドロゲルインプラントの周囲の組織からの体液が吸収される。毛細血管床は、収縮し、外傷性創傷部位などのいくつかの場合では、創傷面の出血を減少または止血したりする。埋入物の近傍の組織における血流が減少すると、埋め込み部位からの溶出APIの除去も遅れる。灌流が減少することで損傷を受ける可能性のある組織、例えば、軟骨または関節腔は、浸透圧的に中立となるように調節したヒドロゲルを用いて、灌流が減少することによる負の影響を避けることができる。肝臓などの血管の多い出血面からの出血を止めることが望ましい臨床適用では、乾燥しているか、またはほとんど乾燥しているように見える高濃縮ヒドロゲルは、血清および滲出液を非常に迅速に吸収し、創傷部位を脱水させる。凝血促進剤、例えば、フィブリン、トラネキサム酸、アミノカプロン酸またはフィブリンなどの場合では、ヒドロゲルは、2つの経路、毛細血管床の収縮および血液凝固を用いて創傷部位での凝固を促進できる。
【0050】
[0101]ヒドロゲルの密度を使用して、ゲルから標的組織へのAPIの溶出速度を制御できる。1%ヒドロゲルは、72hrs超の間、APIを溶出するが、しかし、10%ゲルは、溶出時間を100hrs超に延長する。APIまたは生体物質の大きさ、および水相成分に対する親和性に応じて、溶出速度は、ヒドロゲルが薬物リザーバとして数日間機能できる望ましい溶出速度に調節できる。
【0051】
[0102]ある特定の態様では、ヒアルロン酸のヒドロキシル基のチラミン置換度は、約0.25%から約8%の範囲である。さらなる態様では、ヒアルロン酸のヒドロキシル基のチラミン置換度は、約0.5%から約3%である。
【0052】
[0103]またさらなる態様では、チラミン置換ヒアルロン酸は、約0.1%から約4%で水相中に存在する。
[0104]ある特定の実施態様では、チラミン置換ヒアルロン酸は、約0.1%から約1%で水相中に存在する。さらなる実施態様では、チラミン置換ヒアルロン酸は、約0.25%で水相中に存在する。
【0053】
[0105]ある特定の実施態様では、担体相は、ヒドロゲルではない水性担体相である。これらの実施形態のある特定の実施態様では、水性担体相は、チラミン置換されておらず、水相の架橋およびヒドロゲル形成を他の方法で提供しないヒアルロン酸(例えば、0.15%~1%)を含む。これらの実施形態では、HAは、脂質および水性担体相の安定な乳化を促進する乳化剤として機能し得る。
脂質相
[0106]ある特定の実施形態では、脂質相は、水相中に分散されている脂質微粒子の形態で存在する。さらなる実施形態では、脂質相は、室温/体温で液体であり、微小液滴は、水相全体に分散しているか、または水相中に乳化している。
【0054】
[0107]ある特定の実施形態によれば、開示するエコー源性組成物の脂質相は、1つまたは複数の脂肪酸から構成される。ある特定の実施態様では、1つまたは複数の脂肪酸は、偶数の炭素を有する。ある特定の実施態様では、脂肪酸が、ステアリン酸、オレイン酸、ミリスチン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、パルミチン酸、アラキジン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、および前述の混合物から選択される。
【0055】
[0108]ある特定の例示的な実施態様では、脂肪酸微粒子が、脂肪酸の混合物から構成される場合、脂肪酸は、特定の比で存在する。例えば、ある特定の実施態様では、脂肪酸の混合物は、ステリン酸対オレイン酸の比90:10を含む。
【0056】
[0109]様々な炭素長の脂肪酸は、生物界に広く存在しており、細胞膜の一部として、エネルギー貯蔵庫として、また、熱調節のために動物に利用されている。脂肪酸は、脂肪族炭素鎖に結合したカルボキシル酸から構成される。一般に、脂肪酸は、水に溶けないが、しかし、炭素鎖長が短くなるにつれて酸性度が増加する。脂肪酸は、飽和の場合もあれば、または炭素-炭素二重結合を含まない場合もある。あるいは、脂肪酸は、脂肪族炭素鎖に1つまたは複数の炭素-炭素二重結合を含み、不飽和の場合もある。哺乳類生物は、偶数炭素鎖を有する脂肪酸を処理し、作製することができる。奇数脂肪酸は、一部の細菌によって産生され、また、反芻動物の乳に見出されるが、しかし、ほとんどの場合、2つの炭素を一度に鎖に付加する代謝過程により偶数となる。表1には、植物および動物で典型的に見出される脂肪酸が列挙されている。脂質番号には、脂肪族鎖の炭素数、続けて二重結合の数が記載されている。いくつかの一覧表では、二重結合の位置が、脂質番号に含まれている。ほとんどの場合、脂肪酸は、通常、最大3つの同じまたは異なる炭素長の脂肪酸を含み得るトリグリセリド分子の一部である。
【0057】
[0110]ある特定の実施態様では、偶数炭素脂肪酸が選択される。脂肪酸の混合物を、微粒子の融点を調整するために作ることができる。ある特定の実施態様では、90%ステアリン酸の10%オレイン酸との混合物が使用される。これにより、35℃(95°F)で融解する微粒子が作製される。同様の融点は、12%ミリスチン酸、32%パルミチン酸、10%ステアリン酸、および10%オレイン酸を混合することにより達成される。さらなる実施形態によれば、FA微粒子は、ラウリン酸、カプリル酸、およびカプロン酸の混合物から形成される。微粒子製剤を選択するときの重要な要因は、融点および主成分の脂肪酸へのAPI溶解度である。融点は、生理学的体温に近い粒子が液体または柔らかい半固体となり、拡散速度(液体-液体界面を横切る)が増加するという点で重要である。これは、特定の用途によって望ましい場合もあれば、または望ましくない場合もある。ある特定の実施形態では、低融点および高融点微粒子(例えば、37℃未満および37℃超)の組み合わせが組み合わされる。API溶解度は、脂肪酸鎖長および微粒子の配合により変化し、API濃度、および主要な微粒子脂肪酸成分に対する親和性を調整することが望ましい場合もある。いくつかの製剤では、脂肪酸の分子量および鎖長を増加すると、部分的に極性なAPIの溶解度が反直感的に変化する。ある特定の実施形態では、FA微粒子中の麻酔剤の濃度は、約1~25重量%である。
【0058】
[0111]ある特定の代替の実施形態によれば、奇数脂肪酸は、製剤における代替の脂肪酸として使用される。モノ不飽和脂肪酸、例えば、オレイン酸は、同様に、単独で、または他の脂肪酸と組み合わせて使用することができる。ある特定の実施態様では、ポリ不飽和脂肪酸は、使用可能であるが、しかしながら、容易に酸化され、配合によっては重合する場合があるため、好ましくない。シス配置であるモノ不飽和脂肪酸(ほとんどの植物由来)が好ましい。
【0059】
[0112]ある特定の代替の実施形態によれば、脂質微粒子は、1つまたは複数のトリグリセリドまたはトリグリセリドの混合物を含み、脂質微粒子は、1つまたは複数のトリグリセリドまたはトリグリセリドの混合物を含む。さらなる代替の実施形態では、脂質微粒子は、パラフィン、および/またはロウを含む。
【0060】
【表1-1】
【0061】
【表1-2】
【0062】
【表1-3】
【0063】
【表2】
【0064】
[0113]ある特定の実施形態では、ポリ不飽和脂肪酸は、単独でまたは他の脂肪酸との混合物として微粒子を作製するのに使用される。多価不飽和脂肪は、典型的には、同等の炭素数の飽和脂肪酸類似体よりも低い融点を有する。2つの必須脂肪酸の例は、リノール酸(C18:2)およびα-リノール酸(C18:3)である。人体は、これらの脂肪酸を作ることができないが、しかし、これらを必要とし、食事から得る必要がある。人体は、これらを代謝できるため、微粒子薬物リザーバを作成するのに使用することができるが、しかし、これらは、容易に酸化する二重結合を複数有し、一部のAPIと反応する可能性がある。
【0065】
【表3】
【0066】
【表4】
【0067】
[0114]共役脂肪酸はまた、単独で、または他の脂肪酸との混合物で使用して、望ましいAPI溶解度/親和性および物理的特性を有する微粒子薬物リザーバを作製することもできる。
【0068】
【表5】
【0069】
[0115]脂質相薬物リザーバ微粒子はまた、動物エステルロウ、例えば、ミツロウ、植物ロウ、ラノリンおよび誘導体から作製することもできる。動物エステルロウは、典型的には、トリアコンタニルパリテート(palitate)、およびパルチミン酸エステル、パルミトレイン酸エステル、オレイン酸エステル、トリグリセリドおよび脂肪族アルコールの混合物を含む。添加剤、例えば、コレステロール、トリグリセリドおよび脂肪族アルコールは、脂質相の物理的特性、APIの溶解度および脂質相に対する親和性を変化させ、APIが脂質相から拡散するのを助ける担体分子として機能するために添加され得る。
【0070】
[0116]鉱ロウ、鉱油およびラノリン誘導体は、脂質相の物理的および化学的特性を変化させるために添加することができる。
[0117]植物由来ロウを使用して脂質相を作製することもできる。植物ロウは、環境条件を制御するのが容易であり、同じ生物(ヤシまたは植物)であるためバッチ間の変動が少ないという動物ロウに優る利点がある。好適な動物および植物ロウを、表8に示す。ある特定の実施形態では、脂質相は、カルナウバロウから構成される。さらなる実施形態では、脂肪酸微粒子は、カルナウバロウおよび脂肪酸の組み合わせから構成される。脂肪酸の添加は、非固体脂質相が望ましい実施形態で、カルナウバを希釈する効果を有する。例示的な実施態様では、混合物は、カルナウバロウならびにオレイン酸、カプロン酸、カプリル酸、および/または前述したものの混合物である。
【0071】
【表6】
【0072】
【表7】
【0073】
【表8】
【0074】
[0118]トリグリセリドは、純粋な脂肪酸の代替品となる。これらは、純粋な対応物と同様な物理的特性および同様な麻酔剤の溶解度を有する。トリグリセリドは、全身に見出され、脂質を吸収および代謝する代謝経路が存在するため、より良好な耐容性を示す。表9には、脂質薬物リザーバ粒子として脂肪酸を置換し得るトリグリセリドが列挙されている。一般に、偶数脂肪酸成分が選択されるのは、偶数脂肪酸が組織により多く存在するためである。体内で利用されるいくつかの奇数脂肪酸トリグリセリド、例えば、乳に見出されるトリヘプタノインが存在し、これらも適している。不飽和脂肪酸系トリグリセリド、例えば、トリオレインは、脂質粒子を柔らかくしたり、または多相製剤が望ましい場合は、エマルジョン液滴を作製したりするのに使用できる。不飽和トリグリセリド、例えば、哺乳類の脂肪の主成分であるトリパルミトレインは、全身に見出される。既に体内で見出されるトリグリセリドを利用することで、耐容能が向上し、および/または有害反応の可能性が減少する。ある特定の実施形態では、トリグリセリド微粒子中の麻酔剤の濃度は、約1~約25重量%である。
【0075】
【表9-1】
【0076】
【表9-2】
【0077】
【表9-3】
【0078】
[0119]ある特定の実施形態では、開示するエコー源性組成物は、脂質組成、大きさ、および/またはAPI濃度に関して様々な特質を有する複数の脂質微粒子を含む。これらの実施態様では、脂質微粒子の混合物は、薬物の溶出速度を改善するのに使用され、粒子からの安定した一次放出をもたらすように溶出を調節するのに使用される。粒子体積対担体相体積の比を調整することで、APIの放出時間が延長される。
【0079】
[0120]例示的な実施態様では、脂質微粒子は、リポソームではない。
[0121]ある特定の実施形態では、脂質微粒子は、対象に埋め込むときに固体であるように製剤化される(例えば、約37℃の温度)。さらなる実施形態では、脂質微粒子は、対象に埋め込むときに液体であるように製剤化され、その効果として、かかる液体微粒子からの溶出速度が、同様の濃度の麻酔剤を有する固体微粒子と比較して増加する。またさらなる実施形態では、組成物は、前述の微粒子の両方を含むので、対象へ埋め込むと、微粒子の一部は固体のままであるが、一部は液体となる。2種類の微粒子の相対的なバランスは、望ましい溶出特質を達成するように調整できる。
【0080】
[0122]脂質微粒子の大きさは、ある特定の実施態様では、約1μmから約20μmの大きさの範囲である。さらなる実施形態では、脂質微粒子の大きさは、約5μmから約15μmの範囲である。ある特定の例示の実施形態では、脂質微粒子は、約7μmである。
【0081】
[0123]ある特定の実施態様では、開示するエコー源性組成物の溶出特性は、組成物中の水相対脂質相の体積比によって影響される。ある特定の実施形態によれば、水相対脂質相の比は、約50体積%~80体積%水相対約20体積%~50体積%脂質相である。さらなる実施形態によれば、水相対脂質相の比は、約60体積%~80体積%水相対約20体積%~40体積%脂質相である。またさらなる実施形態によれば、水相対脂質相の比は、約70体積%水相対約30体積%脂質相である。
【0082】
[0124]ある特定のさらなる実施形態によれば、エコー源性組成物は、水性担体相中に2つ以上の脂質相を含む。これらの実施形態のある特定の実施態様では、水相中に分布するのは、先に記載したように、脂質微粒子相、および水相中のエマルジョンまたはAPIが一次脂質微粒子相よりも速い速度で溶出する複数の脂質微粒子の形態を取り得る二次脂質相である。水相の効果は、微粒子および二次脂質相を担持すること、および製剤全体でこれらの成分を均一に保つことである。これは、正確な用量を所望の組織部位に送達できるようにボリュームをもたらし、麻酔剤、これらの例ではロピバカインの塩形態を含み得る。麻酔剤の塩形態は、同様な用量の麻酔剤の生理食塩水形態に相当する薬物の初期バーストを送達する。一次脂質相、または薬物リザーバ微粒子は、塩基形態で最大量の麻酔剤を含み、初期バーストが薬品から周辺組織へと溶出した後に、緩やかに水相中に薬物成分を溶出する。物質移動は、水性担体相における塩基形態の溶解度および微粒子の親水性親油性バランス(HLB)比により限界が存在する。塩基形態は、脂質相に対する高い親和性を有し、薬物の脂質相に対する親和性のために、いくらかの麻酔剤は溶出が完了した後も脂質相に常に存在する。麻酔剤は、二次脂質相、またはエマルジョン相(一部の製剤では、これは第2の種類の固体粒子である場合がある)が、固体相微粒子よりも速い速度で送達し、それらが一緒になって中間相での溶出速度を高める。目標とする期間が達成されると、溶出速度は、ゼロに減少し、薬学的有効用量を下回る。ある特定の実施形態では、組成物は、上記のようなエマルジョン相を含むが、しかし複数の固体微粒子は含まない。
【0083】
[0125]第2の脂質エマルジョン相に適した脂質は、37℃で液体である任意の脂質または脂質の混合物である。例としては、ステアリン酸、オレイン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、パルミチン酸、アラキジン酸、リグノセリン酸、セロチン酸が挙げられるが、これらに限定されない。ある特定の実施形態では、ステアリン酸およびオレイン酸の混合物は、脂質エマルジョン相中の脂質である。さらなる実施形態では、トリグリセリド(例えば、トリオレイン酸エステルまたはトリパルチミンおよびトリオレイン酸エステル)は、第2の脂質エマルジョン相を形成する。ある特定の実施形態によれば、乳化剤は、エマルジョンを安定化するのに使用される。乳化剤、例えば、TWEEN(登録商標)または当技術分野で公知の他の乳化剤が適している。
【0084】
[0126]ある特定の実施態様では、開示する組成物の麻酔剤溶出特性は、2つ以上の脂質相の体積比によって影響される。ある特定の実施形態によれば、固体微粒子脂質相対エマルジョン脂質相の比は、約50体積%~75体積%固体相対約25体積%~50体積%エマルジョン相である。ある特定の実施形態によれば、固体微粒子脂質相対エマルジョン脂質相の比は、約66体積%固体相対約34体積%エマルジョン相である。
脂質微粒子のヒドロゲル組成物の製剤化方法
[0127]ある特定の実施形態によれば、脂質微粒子は、APIを含む脂肪酸相の溶液をはるかに体積の大きな水相中で撹拌することによって作成される。好ましい水相対脂質相の比は、95%~99.5%水相対0.5%~5%脂質相である。水相は、脂質相中に存在するAPIで飽和されていることが好ましい。ある特定の実施形態では、25mmol超の濃度の塩は、水相中に、好ましくは25と150mmolとの間、より好ましくは45と65mmolとの間で存在する。チラミン置換ヒアルロン酸は、水相中に、0.1%から4%、好ましくは0.1から1%の間、特に0.25%の濃度で存在する。2相混合物は、撹拌し、微粒子が作成されるまで冷却する。粒子は、遠心分離機、フィルターまたは沈降槽を使用して濃縮し、水相をデカンテーションして、微粒子を後に残す。遊離した粒子は、30%脂質相対70%水相の体積比で、チラミン置換ヒアルロン酸および西洋ワサビペルオキシダーゼを含む追加の水相を添加し、この溶液中で懸濁する。ヒドロゲルは、過酸化水素の添加により形成される。ヒドロゲルは、粒子の分離を維持し、シリンジ経由での容易な送達を可能とする。
【0085】
[0128]ある特定の実施形態によれば、2つ以上の脂質相(例えば、脂質微粒子およびエマルジョン)を有する製剤は、先行する段落と同様に調製することができるが、ただし、微粒子の水相への添加の前に、麻酔剤は、液体脂質相(ある特定の実施形態では、ステアリン酸およびオレイン酸の混合物)に溶解し、エマルジョンが形成されるまで水相と激しく混合する。エマルジョン形成後、脂質微粒子は先に記載したように添加する。
【0086】
[0129]理論に束縛されることを望むものではないが、ゼータ電位が塩(例えば、NaCl)を水相に添加することによって増加して、表面電荷が増加し、粒子を互いに反発させ、より小径の粒子の形成を可能とし、凝固の前に粒子が合一してより大きな粒子を形成するのを防止すると考えられる。ある特定の実施態様では、ヒドロゲルは、10mMと約70mMとの間の塩を含む。さらなる実施態様では、塩濃度は、約25mM塩と約50mM塩との間である。さらなる実施態様では、ヒドロゲルは、少なくとも約50mMの塩を含む。ある特定の態様では、塩はNaClである。当業者には理解されるように、他の塩でもよい。
【0087】
[0130]開示する組成物のある特定の実施態様では、麻酔剤は、ロピバカインを含む。例示の態様では、ロピバカインは、約1から約25%の量で脂質微粒子中に存在する。さらなる実施形態では、脂質微粒子はトリグリセリドから構成される。
【0088】
[0131]ある特定の代替の実施形態によれば、複数の脂質微粒子によって結合されていない麻酔剤は、ヒドロゲル全体に分散している。これらの実施形態によれば、ヒドロゲル全体に分散しているAPIは即時バースト用量を提供し、一方、脂質微粒子中に結合したAPIは長期的持続放出を提供する。
【0089】
[0132]ある特定の実施態様では、組成物は放射線不透過性造影剤をさらに含む。
[0133]さらに、本明細書は、それを必要とする対象の術後疼痛の治療方法であって、開示するエコー源性組成物の有効量を対象に投与するステップを含む、方法を開示する。ある特定の実施態様では、非混和性担体相が、ヒドロゲル、粘稠液体、安定なエマルジョン、またはクリームである。
【0090】
[0134]例示的な実施態様では、非混和性担体相は、ヒドロゲル(例えば、ヒドロゲルはチラミン置換ヒアルロン酸から構成される)である。
[0135]ある特定の実施形態では、麻酔剤は、以下から選択される:アンブカイン、アモラノン、アミルカイン、ベノキシネート、ベンゾカイン、ベトキシカイン、ビフェナミン、ブピバカイン、ブタカイン、ブタムベン、ブタニリカイン、ブテタミン、ブトキシカイン、カルチカイン、クロロプロカイン、コカエチレン、コカイン、シクロメチカイン、ジブカイン、ジメチソキン、ジメトカイン、ジペロドン、ジクロニン、エコゴニジン(ecogonidine)、エコゴニン(ecogonine)、ユープロシン、フェナルコミン、ホルモカイン、ヘキシルカイン、ヒドロキシテテラカイン(hydroxyteteracaine)、p-アミノ安息香酸イソブチル、ロイシノカイン、レボキサドロール、リドカイン、メピバカイン、メプリルカイン、メタブトキシカイン、塩化メチル、ミルテカイン、ネーパイン、オクタカイン、オルトカイン、オキセサゼイン、パレントキシカイン(parenthoxycaine)、フェナカイン、フェノール、ピペロカイン、ピリドカイン(piridocaine)、ポリドカノール、プラモキシン、プリロカイン、プロカイン、プロパノカイン、プロパラカイン、プロピポカイン(propipocaine)、プロポキシカイン、シュードコカイン、ピロカイン、ロピバカイン、サリチルアルコール、テトラカイン、トリカイン、トリメカイン、ゾラミン、もしくはその薬学的に許容される塩、またはそれらの混合物。ある特定の実施態様では、麻酔剤は、ロピバカインである。ある特定の代替の実施形態では、麻酔剤は、ブピバカインである。
【0091】
[0136]開示する方法のある特定の実施態様では、エコー源性組成物は、対象に投与され、対象の神経または神経束の近傍に送達される。次に、超音波を使用して対象の神経束に近接していることを確認する。例示の実施形態では、神経または神経束は、対象の外科的切開領域を神経支配する。組成物は、シリンジまたは皮下注射器、当技術分野で公知の他の送達方法によって送達され得る。開示する方法の例示的な実施態様では、本明細書に記載の組成物の投与は、約72時間以上の疼痛緩和をもたらす。
【0092】
[0137]ある特定の実施形態では、開示するエコー源性組成物は、化学療法剤を含み得、該組成物は、腫瘍の近傍の部位に送達される。次に、超音波を使用して組成物が腫瘍に近接していることを確認する。さらなる実施形態では、開示する方法は、API標的化送達の局所化が有用であるか決め得る任意の疾患または病態を治療するのに使用される。
【0093】
[0138]本明細書はまた、開示される化合物または組成物を含む医薬製剤のキットを提供する。キットは、単一の製剤または製剤の組み合わせを示すように構成され得る。組成物は、適切な量の化合物を含むように細分してもよい。単位投与量は、包装された組成物、例えば、分包散剤、バイアル、アンプル、充填済みシリンジまたは液体を含むサッシェとすることができる。
【0094】
[0139]本明細書に記載の化合物または組成物は、単一用量であってもよく、または連続または定期的な不連続投与用であってもよい。連続投与の場合、キットは、各投与量単位で化合物を含み得る。定期的な中止の場合、キットは、化合物が送達されない期間、プラセボを含み得る。組成物の濃度、組成物の成分、または組成物中の化合物もしくは他の薬剤の相対比を、経時的に変えることが望ましい場合、キットは、一連の投与量単位を含み得る。
【0095】
[0140]キットは、望ましい送達経路用に製剤化された化合物を有する包装または容器を含み得る。キットはまた、投与説明書、化合物に関連した添付文書、化合物の循環レベルをモニターするための説明書、またはこれらの組み合わせを含み得る。化合物の使用を実施するためのものが、さらに含まれていてもよく、これらには、試薬、ウェルプレート、容器、およびマーカーまたはラベルなどが挙げられるが、これらに限定されない。かかるキットは、所望の適応症の治療に適した方法で包装される。当業者には、かかるキットに含まれる他の好適な成分は、所望の適応症および送達経路を考慮すれば容易に明らかであろう。キットはまた、対象の体内に化合物を注入/投与または配置するのを補助する器具も含み得るか、またはこれと同梱され得る。かかる器具には、シリンジ、ピペット、鉗子、計量スプーン、点眼器または任意のかかる医学的に承認された送達手段が挙げられるが、これらに限定されない。他の器具としては、インビトロでの反応の読み取りまたはモニタリングを可能にする道具を挙げることができる。
【0096】
[0141]これらのキットの化合物または組成物はまた、乾燥、凍結乾燥、または液体形態で提供され得る。試薬または成分が乾燥形態として提供される場合、再構成は一般に溶媒の添加によって行われる。溶媒は、別の包装手段で提供されてもよく、当業者によって選択され得る。
【0097】
[0142]医薬剤を分注するための多くのパッケージまたはキットが当業者に公知である。一実施形態では、パッケージは、ラベル付きブリスターパッケージ、ダイヤル式分注器パッケージ、またはボトルである。
【実施例
【0098】
[0143]以下の実施例は、当業者に、本明細書で特許請求される化合物、組成物、物品、道具および/または方法がどのように作成および評価されるかを完全に開示および説明するために記載され、本発明の純粋に例示的なものであることが意図されており、本発明者らが本発明とみなしているものの範囲を限定することを意図するものではない。しかし、当業者は、本開示に照らして、開示される特定の実施形態に多くの変更を加えることができ、それでもなお、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、同等または同様の結果を得ることができることを理解する。
【0099】
実施例1
[0144]この研究では、INSB200の超音波検査特質を試験し、その結果を一般的に使用されている水相局所麻酔用調製物の結果と比較した。
材料および方法
[0145]室温死亡ブタ(解体されたモモ肉および肝臓)モデルで、一般的に使用されている局所麻酔剤:ロピバカイン(0.5%)、ブピバカイン(0.5%)、およびリポソーム型ブピバカイン(Exparel)を順次注入した。さらに、2つの異なるヒドロゲル脂質微粒子マトリックスロピバカイン調製物(27mg/mLおよび38mg/mL)を注入した。薬剤の試験媒体への投入は、各サンプルについて、21ゲージ-50mm針によって約2.5cmの深さにて超音波ガイド下(Sonosite PXおよび15~4MHzプローブ)で実施した。各調製物は、注入前後の画像(図1A~2B)を収集し、サンプルのエコー源性および組織浸出を評価した。
結果
[0146]一般的に使用されている水相ロピバカイン0.5%、ブピバカイン0.5%、およびリポソーム型ブピバカイン調製物の超音波特質は、臨床的実践と一致しており、顕著な組織での拡がりを伴う組織面への薬剤の非エコー源性移動を示す。対照的に、両INSB200調製物を注入すると、顕著な組織での拡がりを伴わないエコー源性薬剤ポケットがもたらされた(図1Bおよび2B)。
【0100】
実施例2
[0147]9つの試験品を作製して、ブタの筋肉へ注入した薬品のエコー不透過性(echopacity)を決めた。この例は、開示する薬品を末梢神経ブロック剤または持続放出薬品製剤として使用する場合をモデル化したものである。試験品の全体積に対する粒子体積、微粒子相の組成、注入の深さ、および製剤の調製方法がエコー不透過性に及ぼす影響を試験した。
試験品
[0148]試験品は、水溶液に1重量%のヒアルロン酸を添加して作製した。この溶液は、浅いインプラントとして、また、より深い注入物としても注入した。図3~6に示すように、対照品はエコー不透過性を有しない(周辺の筋肉組織と比較)。図2では、注入された溶液は、周辺組織と区別できない。図4では、対照品と、周辺組織との間に顕著な区別はない。対照品は、鎮痛製剤の水溶液と類似している。筋肉への注入の深さは、対照試験品のエコー不透過性に影響を与えなかった。
0.5%脂質微粒子
[0149]バイオワックス(カルナウバロウ)の脂質微粒子を含む希釈溶液は、1%ヒアルロン酸溶液に、カルナウバロウ微粒子を0.5体積%添加することによって調製した。微粒子濃度を調整して、エコー不透過性の程度を調整できる。浅い注入および深い注入を実施して、エコー不透過性がプローブからの距離によって変化するか決めた。試験品は、周辺組織と区別できるような画像を形成しなかった。図7および8は浅い注入を示し、図9および10はより深い注入を示す。図8では、試験品は、針先でエコー不透過性を示さなかった。図10では、試験品は、画像をもたらさなかった。
1.0%脂質微粒子
[0150]バイオワックス(カルナウバロウ)の脂質微粒子を含む希釈溶液は、1%ヒアルロン酸溶液に、カルナウバロウ微粒子を1.0体積%添加することによって調製した。微粒子濃度を調整して、エコー不透過性の程度を調整できる。浅い注入および深い注入を実施して、エコー不透過性がプローブからの距離によって変化するか決めた。試験品は淡い透明な雲の画像を形成した。図11および12は浅い注入を示し、図13および14はより深い注入を示す。図12は、針先で作成された淡い透明な雲を示す。図14に示すように、試験品の雲は、より深い注入の場合、より淡く、周辺組織との区別がよりつきにくくなる。注入の深さは、1%脂質微粒子製剤のエコー不透過性に影響する。
10%脂質微粒子
[0151]バイオワックス(カルナウバロウ)の脂質微粒子を含む希釈溶液は、1%ヒアルロン酸溶液に、カルナウバロウ微粒子を10.0体積%添加することによって調製した。微粒子の粒子サイズ分布は、直径500nmから約100μmであった。微粒子濃度を調整して、エコー不透過性の程度を調整できる。浅い注入および深い注入を実施して、エコー不透過性がプローブからの距離によって変化するか決めた。試験品は雲の画像を形成した。図15および16は浅い注入を示し、図17および18はより深い注入を示す。図16では、試験品の雲は、不明瞭で針を覆い隠し始めている。試験品の雲は、より深い注入の場合、より淡く、周辺組織との区別がよりつきにくくなる。図18では、試験品は、周辺組織よりも顕著に明るい明瞭な雲の画像を形成している。注入の深さは、10%脂質微粒子製剤のエコー不透過性に影響する。試験品は、明るい近位表面を有し、プローブの遠位に陰影を作る。
30%脂質微粒子
[0152]バイオワックス(カルナウバロウ)の脂質微粒子を含む希釈溶液は、1%ヒアルロン酸溶液に、カルナウバロウ微粒子を30.0体積%添加することによって調製した。微粒子の粒子サイズ分布は、直径500nmから約100μmであった。微粒子濃度を調整して、エコー不透過性の程度を調整できる。浅い注入および深い注入を実施して、エコー不透過性がプローブからの距離によって変化するか決めた。試験品は明るい雲の画像を形成した。図19および20は浅い注入を示し、図21および22はより深い注入を示す。図20では、試験品は、明るい上面の反射を生じ、下に陰影のある淡い反射を有する;筋膜面が試験品の下にあり覆い隠されている。図22では、試験品の雲は、画像の中央に存在し、明るい反射が生じるが、しかし依然としてより深い組織のイメージングが可能である。試験品の雲は、より深い注入の場合、より淡く、周辺組織との区別がよりつきにくくなる。注入の深さは、30%脂質微粒子製剤のエコー不透過性に影響する。試験品は、明るい近位表面を有し、プローブから離れたところに陰影を作る。深い注入では、試験品の近位表面で明るい反射があっても、遠位の組織画像が依然として見える。
10%脂質微粒子-脂質相中に13%ロピバカインAPIを有し、均質化されている
[0153]バイオワックス(カルナウバロウ)の脂質微粒子を含む希釈溶液は、1%ヒアルロン酸溶液に、13%ロピバカインを含むカルナウバロウ微粒子を10.0体積%添加することによって調製した。サンプルは、粒子の凝集を解消するためにローター-ステーターホモジナイザーによって均質化した。均質化は、粒子サイズを変化させないように見えたが、しかし、凝集した粒子の塊形成を解消した。微粒子の粒子サイズ分布は、直径約500nmから約100μmであった。微粒子濃度を調整して、エコー不透過性の程度を調整できる。浅い注入および深い注入を実施して、エコー不透過性がプローブからの距離によって変化するか決めた。試験品は明るい雲の画像を形成した。図23および24は浅い注入を示し、図25および26はより深い注入を示す。図24では、試験品は、針の上部および先端に見える;試験品は、この製剤の場合、浅い深さではあまり見えない。図26では、試験品は、画面の中央に示すように、明るい高反射な表面を有する雲と、針先までの軌跡とを生じる。試験品の雲は、明るく、反射がより高い。注入の深さは、10%脂質微粒子均質化製剤のエコー不透過性に影響しないように見える。試験品は、明るい近位表面を有し、プローブから離れたところに陰影を作る。深い注入では、試験品の近位表面で明るい反射があっても、遠位の組織画像が依然として見える。小粒子の分布をより良好にし、脂質相中に固相API結晶を添加することにより、よりエコー源性な薬品が作製された。
【0101】
ステアリン酸およびトリブチル酸エステルを含む30%脂質微粒子
脂肪酸およびトリグリセリドの脂質微粒子を含む希釈溶液は、30.0体積%のステアリン酸/トリブチル酸エステル(10%トリブチル酸エステル)微粒子を1%ヒアルロン酸担体溶液に添加することによって調製した。微粒子の粒子サイズ分布は、直径約500nmから約100μmであった。微粒子濃度を調整して、エコー不透過性の程度を変更できる。浅い注入および深い注入を実施して、エコー不透過性がプローブからの距離によって変化するか決めた。試験品は明るい雲の画像を形成した。図27および28は浅い注入を示し、図29および30はより深い注入を示す。図28では、試験品は、浅い注入の場合、プローブの遠位の組織の特徴を覆い隠す明るい反射面をもたらす。図30は、近位側で明るい反射をもたらし、試験品の下の組織の特徴を遮蔽する試験品を示す。試験品の雲が明るく、はっきりと見える。注入の深さは、30%脂質微粒子製剤のエコー不透過性に影響する。試験品は、明るい近位表面を有し、プローブから離れたところに陰影を作る。深い注入では、試験品の近位表面で明るい反射があっても、遠位の組織画像が依然として見える。
ステアリン酸およびトリブチル酸エステルを含む10%脂質微粒子
[0154]図31および32は浅い注入を示し、図33および34はより深い注入を示す。図32では、試験品が視野の中央にはっきりと見える。図34では、試験品は、下の組織の特徴を覆い隠している可能性があった。微粒子を10%負荷すると、図32に示す浅い注入では明るい可視雲がもたらされる。図31は、注入前の組織を示す。図33は、注入前の組織を示し、針が画像の右側に入るのが見える。図34は、試験品が深い注入で明るい雲をもたらすことを示す。10%脂質微粒子を負荷すると、望ましい試験品の可視性がもたらされる。
カプリル酸およびトリステアリン酸エステルを含む10%脂質微粒子
[0155]図35および36は浅い注入を示す。試験品が、針の先端に見える。組成物をトリステアリン酸エステル中のカプリル酸ベースに変えても、依然として明るい画像が得られた。固相粒子は、明るい画像をもたらす。試験品の雲は、針先の下に見える。図36では、試験品の下に組織の特徴が見える。この製剤は、インプラントの下の組織の特徴を遮蔽しない。
【0102】
実施例3
新規製剤およびエコー源性データ
[0156]この実施例では、3相エマルジョン製剤を調製し、この製剤が、ロピバカインのような低分子に対して優れた持続放出機能を提供するが、しかし、7日後には体内に薬品が残存しないという利点があることを見出した。神経組織に対しては、このことは、この製剤が隣接する筋肉を動かすときに神経または周辺組織に刺激または圧迫を引き起こさないので利点となる。以下は、3相製剤の一例である。
INSB200の製造、成分、および仕様
30mLサンプル製造:
[0157]ダイズ油を0.2μm真空フィルターを使用して滅菌ろ過する。水を0.2μm真空フィルターを使用して滅菌ろ過する。0.15重量%ヒアルロン酸ナトリウム溶液を作製し、清潔なガラスビーカー中で以下を組み合わせる:(a)100mL滅菌水および(b)0.15gヒアルロン酸ナトリウム。ガラスビーカーを密封し、ヒアルロン酸ナトリウム溶液を冷蔵庫(2~8℃)で一晩放置する。11gのろ過滅菌したダイズ油を40mLのアセトンに添加し、液体が均一になるまで混合する。0.75gのレシチンをアセトン/ダイズ油混合物に添加する。1.43gのロピバカイン塩基をアセトンおよびダイズ油混合物に添加する。液体は、全てのロピバカインが液相に溶解するまで混合した。得られた液体は、0.2ミクロンフィルターを通して滅菌ろ過して溶液を滅菌し、真空に接続した滅菌混合機および冷却器を備える滅菌容器に移した。容器に適度な真空をかけ、液体を激しく混合しながら沸騰させた。結晶が形成され始めた。ダイズ油相中でのロピバカインの結晶化は、冷却器で液化するアセトンがなくなるまで続けた。滅菌窒素気体を、ダイズ油およびロピバカイン結晶スラリーに通気して、アセトンが除去されなくなるまでアセトンをダイズ油から取り除いた。ヒアルロン酸溶液は、0.51gのグリセロールを添加し、液体が均一になるまで混合した。溶液は、滅菌ろ過し、ダイズ油、レシチンおよびロピバカイン塩基溶液を含む容器に移した。主混合容器中の2相は、ロピバカイン塩基結晶を含む安定なエマルジョンが得られるまで均質化した。
【0103】
[0158]製剤成分:
ダイズ油:40%(v/v)
グリセロール:1.7%(w/v
ダイズ由来のレシチン:2.5%(w/v
ロピバカイン塩基:130mg/gダイズ油
0.15%ヒアルロン酸ナトリウム溶液(pH=8):約60%(v/v)、全体積まで注ぐ
ダイズ油(40%(v/v))
製品名:ダイズ油
CAS-No:8001-22-7
グリセロール(1.7%(w/v))
製品名:グリセロール
CAS No:56-81-5
レシチン(2.5%(w/v))
製品名:レシチン(植物性/実験用)
CAS No:8002-43-5
0.15%ヒアルロン酸ナトリウム溶液(約60%(v/v))
製品説明:ヒアルロン酸ナトリウム
CAS-No:9067-32-7
ロピバカイン(130mg/gダイズ油
CAS-No:84057-95-4
[0159]得られた溶液は、坐骨神経で末梢神経ブロックを生じさせるようにブタの後肢へ注入した。ブタは、130mg/gダイズ油の用量で完全な運動ブロックを48hrs有することが観察され、3日以内に完全に回復した。剖検により、薬品が注入部位から完全になくなっていることが分かった。この製剤は、エコー源性であることが見出され、標的神経に正しく投与されたことが示されて望ましい運動および疼痛ブロックがもたらされるように改良された様式になった。図37は、注入前のブタの坐骨神経を示す。図38は、注入後に薬品に完全に覆われた坐骨神経を示す。注入は、超音波プローブの遠位で開始し、その後の注入では該プローブの近位で終了した。図38では、この薬品は、視野の中程の明るい線の下の筋膜内空間内に示されている。これで、医師は薬品を可視化し、薬品が正しい神経を標的化していることを確認できる。20mLの用量をブタへ注入し、70Kgのヒトへの30mL用量に正規化した。
【0104】
[0160]図39は、注入前の第2のブタの坐骨神経を示す。
[0161]図40および41は、注入途中(図42)と、坐骨神経に隣接し、それを包む筋膜面における薬品の最終的な配置(図41)とを示す。
【0105】
[0162]3相安定エマルジョンを含むエコー源性製剤は、20mLシリンジを使用して、45.72cm(18インチ)長ルアーロック・ピグテール・チューブに取り付けた10.16cm(4インチ)長21G針を通して注入できる。この製剤は、0%~1.0%ヒアルロン酸(ヒアルロン酸ナトリウム、ヒアルロナン);0%~2.25%グリセロール;0%~2.5%ダイズまたは卵レシチン;0%~60%ダイズ油;0%~30%混合トリグリセリド;40mg~280mgロピバカイン塩基/gダイズ油;および水からなり得る。
図1A
図1B
図2A
図2B
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【国際調査報告】