(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-04
(54)【発明の名称】胸腺細胞及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
C12N 5/071 20100101AFI20240927BHJP
A61K 35/26 20150101ALI20240927BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240927BHJP
A61P 37/02 20060101ALI20240927BHJP
A61P 37/06 20060101ALI20240927BHJP
A61P 31/00 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
C12N5/071
A61K35/26
A61P35/00
A61P37/02
A61P37/06
A61P31/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024522229
(86)(22)【出願日】2022-10-13
(85)【翻訳文提出日】2024-05-31
(86)【国際出願番号】 US2022046551
(87)【国際公開番号】W WO2023064457
(87)【国際公開日】2023-04-20
(32)【優先日】2021-10-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2022-01-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2022-03-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2022-07-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523483304
【氏名又は名称】サイミューン セラピューティクス インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100188433
【氏名又は名称】梅村 幸輔
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100214396
【氏名又は名称】塩田 真紀
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【氏名又は名称】川本 和弥
(74)【代理人】
【識別番号】100221741
【氏名又は名称】酒井 直子
(74)【代理人】
【識別番号】100114926
【氏名又は名称】枝松 義恵
(72)【発明者】
【氏名】リム ビン
(72)【発明者】
【氏名】ジェラミ-ナイニ ベフザド
(72)【発明者】
【氏名】ドゥ チュウメイ
(72)【発明者】
【氏名】ワン スタン
【テーマコード(参考)】
4B065
4C087
【Fターム(参考)】
4B065AA90X
4B065BC01
4B065BD25
4B065BD50
4B065CA44
4C087AA01
4C087AA02
4C087AA03
4C087BB42
4C087MA55
4C087MA66
4C087MA67
4C087NA05
4C087NA14
4C087ZB07
4C087ZB08
4C087ZB26
4C087ZB32
(57)【要約】
本開示は、多能性幹細胞の分化によって胸腺細胞を生成するための方法を提供する。本明細書では、胸腺細胞を含む細胞集団の組成物及び系統も提供される。本開示の方法は、胸腺細胞を維持する方法、及び本開示の胸腺細胞を使用する治療方法も含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多能性幹細胞を胸腺細胞に分化させる方法であって、
a.前記多能性幹細胞を胚体内胚葉(DE)細胞に分化させるステップと、
b.前記DE細胞を培養し、且つ、前記DE細胞をBMP阻害物質、TGFβ阻害物質、FGF、アスコルビン酸、又はそれらの組み合わせと接触させるか又はインキュベートすることで前記DE細胞を前方前腸内胚葉(AFE)細胞に分化させるステップと、
c.前記AFE細胞を培養し、且つ、前記前方前腸細胞を腹側咽頭内胚葉(VPE)細胞に分化させるステップであって、
i.前記AFE細胞を、アスコルビン酸、レチノイン酸、FGF、TGFβ阻害物質、又はそれらの組み合わせを含む第1 VPE培地中で接触させるか又はインキュベートすることと、
ii.前記AFE細胞を、ノギン、WNT活性化物質、FGF、レチノイン酸、アスコルビン酸、又はそれらの組み合わせを含む第2 VPE培地中で接触させるか又はインキュベートすることと
を含む、
前記ステップと、
d.前記VPE細胞を培養し、且つ、前記VPE細胞をアスコルビン酸、FGF、BMP、WNT活性化物質、又はそれらの組み合わせと接触させるか又はインキュベートすることで前記VPE細胞を胸腺細胞に分化させるステップと
を含み、
前記胸腺細胞が、胸腺上皮前駆(TEP)細胞である、
前記方法。
【請求項2】
前記TEPをインターロイキン、WNT活性化物質、RANKL、FGF、BMP、アスコルビン酸、又はそれらの組み合わせと接触させるか又はインキュベートすることで、前記TEPが更に、胸腺上皮細胞(TEC)に分化する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
DE細胞への多能性幹細胞の分化が、
a.前記多能性幹細胞を第1成長培地中で接触させるか又は培養することであって、前記第1成長培地がアクチビンA、PI-103、CHIR99021、又はそれらの組み合わせを含む、前記接触させるか又は培養することと、
b.前記多能性幹細胞を第2成長培地中で培養して胚体内胚葉細胞を生成することであって、前記第2成長培地がアクチビンA、BMP阻害物質、PI-103、CHIR99021、又はそれらの組み合わせを含む、前記生成することと
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
ステップc.i.での前記第1 VPE培地が、WNT阻害物質を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
ステップc.ii.での前記第2 VPE培地が、BMP阻害物質、SHH阻害物質、又はそれらの組み合わせを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記BMP阻害物質が、LDN193189である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記TGFβ阻害物質が、SB431542である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記FGFが、FGF8b、FGF7、FGF10、FGF1、bFGF、又はそれらの組み合わせである、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記WNT活性化物質が、CHIR99021である、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記BMPが、BMP2、BMP4、又はそれらの組み合わせである、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記インターロイキンが、IL22である、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記WNT阻害物質が、IWR-1である、請求項4に記載の方法。
【請求項13】
前記BMP阻害物質が、LDN193189である、請求項5に記載の方法。
【請求項14】
前記SHH阻害物質が、SANT-1である、請求項5に記載の方法。
【請求項15】
前記多能性幹細胞、前記DE細胞、前記AFE細胞、前記VPE細胞、又は胸腺細胞が、3D培養物中で培養される、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記多能性幹細胞、前記DE細胞、前記AFE細胞、前記VPE細胞、又は胸腺細胞が、懸濁液中で凝集体として培養される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
約15日間~30日間行われる、請求項1から7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
約18日間~25日間行われる、請求項1から8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
前記多能性幹細胞が、約5日間の間に胚体内胚葉細胞に分化する、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
前記DE細胞が、約2日間~3日間の間にAFE細胞に分化する、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
前記AFE細胞が、前記第1 VPE培地中で約2~4日間培養される、請求項1に記載の方法。
【請求項22】
前記AFE細胞が、前記第2 VPE培地中で約2~3日間培養される、請求項1に記載の方法。
【請求項23】
前記VPE細胞が、約3~6日間の間に胸腺細胞に分化する、請求項1に記載の方法。
【請求項24】
前記TEPが、約4日間の間にTECに分化する、請求項2に記載の方法。
【請求項25】
請求項1から24のいずれか1項に記載の方法に従って調製された、胸腺細胞の集団。
【請求項26】
請求項25に記載の胸腺細胞の集団と、少なくとも1つの賦形剤とを含む、医薬組成物。
【請求項27】
対象の状態を治療又は予防する方法であって、前記対象に、請求項26に記載の医薬組成物を投与するステップを含む、前記方法。
【請求項28】
前記状態が、前記対象の胸腺の機能の欠如、低下、若しくは異常、免疫不全、がん、自己免疫疾患、感染症、又は移植片対宿主病(GvHD)、に関連する状態である、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記医薬組成物が、非経口経路を介して前記対象に投与される、請求項27に記載の方法。
【請求項30】
前記医薬組成物が、前記対象の1つ又は複数のリンパ節内に移植又は注射される、請求項27に記載の方法。
【請求項31】
胸腺細胞の集団におけるFOXN1発現を増加させる方法であって、
a.前記胸腺細胞の集団を凍結するステップと、
b.前記胸腺細胞の集団を解凍するステップと、
c.凍結前の前記胸腺細胞の集団におけるFOXN1の発現を測定及び比較し、且つ、前記胸腺細胞の集団を解凍した後のFOXN1発現と比較するステップと
を含む、前記方法。
【請求項32】
前記FOXN1発現が、約10倍~100倍増加する、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記胸腺細胞の集団が、解凍後に懸濁液中で培養される、請求項31に記載の方法。
【請求項34】
前記胸腺細胞の集団が、懸濁液中で凝集体として培養される、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記胸腺細胞が、胸腺上皮前駆細胞(TEP)、胸腺上皮細胞(TEC)、又はそれらの組み合わせを含む、請求項31から34のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、米国特許法第119条(e)に基づき、2021年10月15日に出願した米国特許仮出願第63/256,443号、2022年1月4日に出願した米国特許仮出願第63/296,251号、2022年3月18日に出願した米国特許仮出願第63/321,136号、及び2022年7月12日に出願した米国特許仮出願第63/388,407号の優先権を主張し、それらの全ての内容が参照によって本出願に組み込まれる。
【0002】
政府資金に関する声明
本発明は、米国国立衛生研究所(NIH)アレルギー感染症研究所(NIAID)中小企業イノベーション研究(SBIR)により授与された助成金番号1R44AI170266-01の下で、政府の支援を得てなされたものである。政府は本発明に一定の権利を有する。
【背景技術】
【0003】
背景
胸腺は免疫系において中心的な役割を果たす主要なリンパ器官である。胸腺の微小環境はリンパ球(例えばT細胞)のようなエフェクター細胞の成熟の発達のためのユニークな訓練場を提供する。当分野において周知のように、胸腺細胞とエフェクター細胞の間の複雑な相互作用はエフェクター細胞の表現型及び機能性を決めることができる。一部の胸腺細胞-エフェクター細胞相互作用は、胸腺細胞により発現された因子の認識によってエフェクター細胞の生存が促進されるように、調整される。それと対照的に、他の胸腺細胞-エフェクター細胞相互作用はエフェクター細胞の死を引き起こし得る。このような相互作用を制御することで、胸腺は、自己に対する寛容を確立しながら外来侵入者に対して活性化された免疫応答を開始できるエフェクター細胞のレパートリーを確立する上で極めて重要な役割を果たす。
【0004】
胸腺細胞を生成するための改善された方法、及び機能的な胸腺上皮細胞に分化できる機能的な胸腺細胞が豊富な細胞集団はまだ求められている。
【発明の概要】
【0005】
概要
本開示は、胸腺細胞、胸腺細胞を製造する方法、及び/又は培養物中で胸腺細胞を維持する方法を提供する。
【0006】
本開示は、胸腺細胞への多能性幹細胞の分化を誘導するための方法を提供する。かかる方法は、前記多能性幹細胞を胚体内胚葉細胞に分化させる複数のステップを含み得る。DE細胞は、培養し、且つ、BMP阻害物質、TGFβ阻害物質、FGF、アスコルビン酸、及び/又はそれらの組み合わせと接触させるか又はインキュベートすることで前方前腸内胚葉(AFE)細胞に分化することができる。AFE細胞は、培養し、且つ、第1 VPE培地中、及び/又は第2 VPE培地中で培養することで腹側咽頭内胚葉(VPE)細胞に分化することができる。前記第1 VPE培地は、アスコルビン酸、レチノイン酸、FGF、及び/又はTGFβ阻害物質を含み得る。いくつかの実施形態において、第1 VPE培地はWNT阻害物質を更に含み得る。前記第2 VPE培地は、ノギン、WNT活性化物質、FGF、レチノイン酸、及び/又はアスコルビン酸を含み得る。いくつかの実施形態において、前記第2 VPE培地は、BMP阻害物質、SHH阻害物質、又はそれらの組み合わせを更に含み得る。前記VPE細胞は、アスコルビン酸、FGF、BMP、及び/又はWNT活性化物質と接触させるか又はインキュベートすることで、胸腺上皮前駆細胞(TEP)等の胸腺細胞に更に分化することができる。
【0007】
いくつかの実施形態において、前記胸腺細胞は、胸腺上皮前駆細胞(TEP)及び/又は胸腺上皮細胞(TEC)であり得る。TEPは更に、インターロイキン、WNT活性化物質、RANKL、FGF、BMP、及び/又はアスコルビン酸と培養することで、TECに分化することができる。
【0008】
いくつかの実施形態において、多能性幹細胞は、アクチビンA、PI-103、及び/又はCHIR99021を含有する第1成長培地中で多能性幹細胞を接触させるか又は培養することで、DE細胞に分化することができる。DE細胞への分化は、アクチビンA、BMP阻害物質、PI-103、及び/又はCHIR99021を含有する第2成長培地中で細胞を培養することを更に含み得る。
【0009】
いくつかの実施形態において、BMP阻害物質は、LDN193189であり得る。いくつかの実施形態において、前記TGFβ阻害物質は、SB431542であり得る。いくつかの実施形態において、FGFは、FGF8b、FGF7、FGF10、FGF1、bFGF、又はそれらの組み合わせであり得る。いくつかの実施形態において、前記WNT活性化物質は、CHIR99021であり得る。いくつかの実施形態において、前記BMPは、BMP2、BMP4、又はそれらの組み合わせであり得る。いくつかの実施形態において、前記インターロイキンはIL22であり得る。いくつかの実施形態において、前記WNT阻害物質は、IWR-1であり得る。いくつかの実施形態において、前記BMP阻害物質はLDN193189であり得る。いくつかの実施形態において、前記SHH阻害物質はSANT-1であり得る。
【0010】
本開示の多能性幹細胞、DE細胞、AFE細胞、VPE細胞、又は胸腺細胞は、懸濁液中で培養してもよい。いくつかの実施形態において、前記多能性幹細胞、前記DE細胞、前記AFE細胞、前記VPE細胞、又は胸腺細胞は、懸濁液中で凝集体として培養してもよい。
【0011】
いくつかの実施形態において、前記多能性幹細胞、前記DE細胞、前記AFE細胞、前記VPE細胞、又は胸腺細胞は、固体基質に付着してもよい。いくつかの実施形態において、前記多能性幹細胞、前記DE細胞、前記AFE細胞、前記VPE細胞、又は胸腺細胞は、細胞外マトリックスベースの培地を含む固体基質に付着してもよい。
【0012】
本開示の方法は、約15日間~30日間行ってもよい。いくつかの実施形態において、前記方法は、約18日間~25日間行ってもよい。いくつかの実施形態において、前記多能性幹細胞は、約5日間の間に胚体内胚葉細胞に分化してもよい。いくつかの実施形態において、前記DE細胞は、約2日間~約3日間の間にAFE細胞に分化してもよい。いくつかの実施形態において、前記AFE細胞は、約2~4日間の間に前記第1 VPE培地中でVPE細胞に分化し、約2日間~3日間の間に前記第2 VPE培地中でVPE細胞に分化してもよい。いくつかの実施形態において、前記VPE細胞は、約3日間~12日間の間に胸腺細胞に分化してもよい。
【0013】
本開示は、本明細書に記載の方法によって生成される胸腺細胞、例えば、TEP及びTECも提供する。
【0014】
本明細書では、インビトロで胸腺細胞を培養する方法も提供される。かかる方法は、FGF10、BMP4、FGF8b、CHIR99021、及び/又はアスコルビン酸を含む胸腺細胞培地中で前記胸腺細胞を培養又はインキュベートするステップを含み得る。いくつかの実施形態において、前記胸腺細胞培地は、FGF7及びRANKLを更に含み得る。前記方法は、懸濁液中で胸腺細胞を培養するステップも含み得る。非限定的な例として、前記胸腺細胞は、懸濁液中で凝集体として培養してもよい。
【0015】
いくつかの実施形態において、本開示は、胸腺細胞の集団におけるFOXN1発現を増加させる方法を提供する。かかる方法は、前記胸腺細胞の集団を凍結するステップと、前記胸腺細胞の集団を解凍するステップと、凍結前の前記胸腺細胞の集団におけるFOXN1の発現を測定及び比較し、且つ、前記胸腺細胞の集団を解凍した後のFOXN1発現と比較するステップと、を含み得る。いくつかの実施形態において、FOXN1の発現は、約10倍~100倍増加し得る。前記胸腺細胞の集団は、懸濁液中で凝集体として培養してもよい。
【0016】
本明細書では、本明細書に記載の方法によって調製される胸腺細胞の集団を含む医薬組成物も提供される。本開示は、本開示の医薬組成物を投与することで対象の状態を治療又は予防する方法も提供する。いくつかの実施形態において、前記状態は、対象の胸腺の機能の欠如、低下、若しくは異常に関連する。前記状態は、免疫不全、がん、自己免疫疾患、感染症、又は移植片対宿主病(GvHD)であり得る。いくつかの実施形態において、前記医薬組成物は、非経口的に投与される。例えば、前記組成物は、対象の1つ又は複数のリンパ節内に移植又は注射してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0017】
上記の及び他の目的、特徴及び利点は、添付の図面に示すように、本開示の特定の実施形態の以下の説明から明らかになろう。図面は実物大である必要がなく、代わりに、本開示の様々な実施形態の原理を示すことに重点が置かれる。
【
図1】胚体内胚葉(DE)の主要なバイオマーカー(SOX17及びFOXA2)の発現レベルの頻度が増加する培養群1~4(G1~G4)を示す。
【
図2-1】発生遺伝子の発現に対する成長因子BMP4の効果を示す。
【
図3-1】マトリゲル上へのプレーティング後のTECバイオマーカーの分析を示す。
【
図4-1】凍結解凍サイクル後のTECバイオマーカー分析を示す。
【
図5A】
図5A~5D:
図5Aは、異なる培養条件でのHOXA3発現を示す。
図5Bは、異なる培養条件でのPAX1発現を示す。
図5Cは、異なる培養条件でのPSMB11発現を示す。
図5Dは、異なる培養条件でのFOXN1発現を示す。
【
図6A】
図6A~6B:
図6Aは、ココード領域(左パネル)、非コード領域(中央パネル)を標的とするプライマー、及び外因的に発現されたFOXN1のHAタグ(右パネル)を標的とするプライマーを使用したFOXN1の発現を示す。
図6Bは、トランスフェクション1日後(D1)又は2日後(D2)のモックトランスフェクト細胞又はFOXN1標的細胞における、FOXN1標的遺伝子の発現を示す。
【
図7】iPSC由来胸腺細胞の誘導体におけるFOXN1の発現を示す。
【
図8】実験29及び実験30の、誘導体におけるFOXN1の発現を示す。
【
図9】細胞を凍結解凍した後の、胸腺細胞におけるFOXN1の発現を示す。
【
図10A】
図10A~10E:
図10A及び
図10Bは、胸腺細胞移植を受けたマウスにおけるCD45陽性細胞中のCD8陽性細胞の百分率を示す。
図10C、
図10D及び
図10Eは、それぞれ、胸腺細胞移植を受けたマウスにおける異なる造血細胞の3週目、11~13週目、14~16週目での百分率を示す。
【
図11-1】GAPDHに対する、様々なマーカーについてqPCRによって分析された胸腺細胞の分類された画分を示す。
【
図12A】
図12A~12B:
図12Aは、iPSC由来胸腺細胞の遺伝子発現分布を示す。
図12Bは、FOXN1+細胞、KRT8+細胞及びEPCAM+細胞の百分率の定量化を示す。
【
図13】末梢血中のCD8
+又はCD4
+細胞の頻度を示すヒストグラムである。
【
図14】異なる胸腺細胞集団における様々なレベルのFOXN1発現を示す。
【
図15】VPE段階での、細胞におけるHOXA3及びPax9発現を示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
詳細な説明
I、序論
胸腺上皮細胞はT細胞分化において重要である。本明細書に記載のように調製された胸腺細胞は、胸腺組織及び胸腺細胞の特性、例えば胸腺関連免疫機能の治療用途への利用を可能にすることができる。例えば、加齢に伴う免疫機能の低下は胸腺細胞の構成成分と機能的能力の変化によって引き起こされることが知られている。加えて、アンドロゲン及びエストロゲンを含む性ホルモンの変化により、胸腺自体は萎縮したり老化したりする。胸腺萎縮の発症は思春期の発症と同時に始まる可能性がある。従って、胸腺上皮細胞の再生は加齢に伴う免疫機能の低下を軽減する組成物及び方法を提供することができる。
【0019】
II、組成物
細胞
本開示の細胞は、胸腺細胞、エフェクター細胞、多能性幹細胞、それらの集団及びそれらに由来する細胞を制限なく含み得る。
【0020】
いくつかの実施形態において、本開示の細胞は、特定の個体又は対象に関して、自家性のもの、同種間のもの、同系間のもの又は異種間のものであり得る。いくつかの実施形態において、胸腺細胞はそれらの臨床応用から最終的に恩恵を受ける対象に関して、自家性のもの、同種間のもの、同系間のもの又は異種間のものであり得る。いくつかの実施形態において、本開示の細胞は哺乳動物細胞、特に、ヒト細胞であり得る。細胞は、初代細胞又は不死化細胞系であり得る。いくつかの態様において、本開示の細胞は同系細胞源から調製又は由来し得る。本明細書に記載の任意の細胞は該当する細胞型のための当分野既知のマーカーによって特徴付けられ得る。
【0021】
胸腺細胞
胸腺細胞は、胸腺に由来する細胞又は胸腺の細胞になる予定の細胞と関連付けられた1つ又は複数の表現型又は遺伝子型マーカーを有する細胞であり得る。胸腺は、胚性、胎児/胎仔、又は成人胸腺であり得る。
【0022】
胸腺細胞はTECであり得るか、又はTECに由来し得る。胚発生中、TECはCD45発現について陰性で上皮マーカーEpCAMについて陽性である非造血細胞に由来し得る。TECは皮質胸腺上皮細胞(cTEC)及び/又は髄質胸腺上皮細胞(mTEC)であり得る。mTECはサイトケラチン5(K5)及びサイトケラチン14(K14)発現を特徴とするが、サイトケラチン8(K8)発現のレベルが低いのに対して、cTECはK8及びK18を発現する。いくつかの実施形態において、胸腺細胞はK5及びK8(K5+K8+)の両方とも発現するTECに由来し得る。いくつかの態様において、K5+K8+細胞はmTEC及び/又はcTECの前駆細胞であり得る。mTECは、Ly51ではなく、細胞表面のハリエニシダ凝集素-1(UEA-1)の発現にも陽性(例えば、UEA-1+Ly51-)であり得るが、cTECはUEA-1-Ly51+であり得る。いくつかの実施形態において、胸腺細胞はmTECであり得るか、又はそれに由来し得る。いくつかの実施形態において、mTECは例えばサイトケラチン5、サイトケラチン14、UEA-1、CD80、カテプシンL、及び/又はカテプシンSに限定されない高発現のマーカーを有し得る。いくつかの実施形態において、胸腺細胞は、例えばサイトケラチン8、サイトケラチン18、Ly51、CD205、カテプシンL及び/又は胸腺特異的セリンプロテアーゼに限定されない高発現のマーカーを有するcTECであり得るか又はそれに由来し得る。非限定的な例として、胸腺細胞は、例えばCCL25、及び/又はKRT5のようなマーカーを発現するcTECであり得るか又はそれに由来し得る。mTECは、例えばCCL19、KRT8、及び/又はAIREのようなマーカーを発現し得る。
【0023】
いくつかの実施形態において、胸腺細胞は、例えばFOXN1、PAX9、PAX1、DLIA、ISL1、EYA1、SIX1、IL7、K5、K8及びAIREのような1つ又は複数のマーカーを発現するTECであり得るか又はそれに由来し得る。
【0024】
胸腺細胞は、Park et al. 2020 Science Vol. 367, Issue 6480(その全ての内容は参照によって本明細書に組み込まれる)に記載の任意の細胞型であり得るか又はそれに由来し得る。例えば、胸腺細胞は、例えばMYOD1及びMYOG発現筋様細胞(本明細書ではTEC(myo)という)のような筋様細胞、及び/又はNEUROD1、SYP、CHGA-発現TECS(本明細書ではTEC(neuro)という)に由来し得る。
【0025】
胸腺細胞は、その全ての内容が参照によって本明細書に組み込まれるBautista et al. 2021 Nat Commun 12, 1096に記載の細胞型に由来し得る。胸腺細胞は、Bautista et al. 2021に記載の「cTEC低」細胞であり得、より低いレベルの機能遺伝子(HLAクラスII)及びより多くのKI67+-増殖細胞の含有を特徴とし得る。胸腺細胞は、Bautista et al. 2021に記載の「mTEC低」細胞に由来し得、CLDN4の発現、より低いレベルのHLAクラスII、PSMB11、PRSS16、CCL25の発現、及び高いレベルのケモカインCCL21を特徴とし得る。胸腺細胞は、Bautista et al. 2021に記載の「mTEC高」細胞であり得るか又はそれに由来し得、SPIB、AIRE、FEZF2、より高いレベルのHLAクラスIIの発現を特徴とし得る。胸腺細胞は、Bautista et al. 2021に記載の角質細胞様mTECであり得るか又はそれに由来し得、KRT1、及び/又はIVLの発現を特徴とし得る。いくつかの実施形態において、胸腺細胞は、標準的なTECアイデンティティ遺伝子、例えば、FOXN1、PAX9、SIX1を発現する、Bautista et al. 2021に記載の未成熟TEC(iTEC)であり得るか又はそれに由来し得る。
【0026】
いくつかの実施形態において、胸腺細胞は、例えばKRT5、KRT8、AIRE、PSMB11、及び/又はPRSS16に限定されない1つ又は複数のマーカーを発現するTECであり得るか又はそれに由来し得る。
【0027】
いくつかの実施形態において、胸腺細胞は、例えばAIRE、CK5、CK8、CXCL12、CCL25、DLL4、及び/又はHLA-DRに限定されない1つ又は複数のマーカーを発現するTECであり得るか又はそれに由来し得る。
【0028】
いくつかの実施形態において、胸腺細胞は、胸腺細胞になる予定の細胞から調製され得る。胚発生中、多能性幹細胞は、段階的分化プロセスを通じて分化して胸腺細胞になり得る。インビトロで、胸腺細胞は以下のステップの1つ又は複数によって胸腺幹に分化する多能性幹細胞の分化によって調製される。PSCは胚体内胚葉(DE)に似た細胞に、分化でき、且つ/又は分化するように誘導できる。胚体内胚葉細胞は第3咽頭嚢内胚葉(PPE)に似た細胞に、分化でき、且つ/又は分化するように誘導できる。胚体内胚葉及び/又はPPE細胞は、腹側咽頭内胚葉(AFE)に似た細胞に、分化でき、且つ/又は分化するように誘導できる。AFEは第3咽頭嚢内胚葉(PPE)に似た細胞に、分化でき、且つ/又は分化するように誘導できる。胸腺上皮前駆細胞(TEPC)はPPE細胞から生成できる。TECはTEPCSから由来することができる。本明細書に記載の細胞型の各々は1つ又は複数のマーカーによって特徴付けられ得る。いくつかの実施形態において、多能性幹細胞は例えばOCT4、SOX2、及び/又はNanogに限定されないマーカーの発現増加に関連し得る。いくつかの実施形態において、胚体内胚葉は例えばSOX17、FOXA2、CXCR4、及び/又はCER1に限定されないマーカーの発現増加に関連し得る。いくつかの実施形態において、前方前腸細胞(AFE)は例えばFOXA2、SOX2、及び/又はPAX9に限定されないマーカーの発現増加に関連し得る。いくつかの実施形態において、第3咽頭嚢内胚葉細胞は例えばHOXA3、TBX1、PAX9、EYA1、SIX1、PBX1、及び/又はPAX1に限定されないマーカーの発現増加に関連し得る。いくつかの実施形態において、胸腺上皮前駆細胞は例えばFOXN1、EPCAM、K5、K8、及び/又はHOXA3に限定されないマーカーの発現増加に関連し得る。いくつかの実施形態において、胸腺細胞はDE細胞、第3 PPE細胞、AFE細胞、TEPC、及び/又はTEC細胞に由来し得る。
【0029】
多能性幹細胞(PSC)
いくつかの実施形態において、本開示の細胞は多能性幹細胞に由来し得る。
【0030】
多能性幹細胞は、3つの胚葉:内胚葉、中胚葉、及び外胚葉のいずれかを生じさせる能力を有する。多能性幹細胞は、例えば、胚性幹細胞、核移植由来胚性幹細胞、人工多能性幹細胞(iPSC)等のような幹細胞を含み得る。多能性幹細胞は、(i)自己複製の能力と(ii)多能性とを含む幹細胞表現型を有し得る。多能性関連遺伝子は、Oct-3/4、Sox2、Nanog、GDF3、REXI、FGF4、ESGI、DPPA2、DPPA4、hTERT、及びSSEAIを含み得るが、それらに限定されない。
【0031】
本明細書に記載の細胞は胚性幹細胞に由来し得る。ES細胞は、(a)自己複製し、(b)生物内の全ての細胞型を産生するように分化し、且つ/又は(c)発生中の生物に由来するというような、細胞を含み得る。ES細胞は、発生中の生物の胞胚の内部細胞塊に由来し得る。ES細胞は、発生中の生物の8細胞期から単一割球の除去を含む単一割球生検(SBB)によって生成された割球にも由来し得る。ES細胞は、例えばSSEA-3、SSEA-4、TRA-1-60、TRA-1-81、及び/又はアルカリホスファターゼに限定されないマーカーの発現を特徴とし得る。ES細胞を生成及び特徴決定する方法は当分野で既知であり、例えば、米国特許第7,029,913号、US5,843,780、US6,200,806に見出すことができる(それぞれの全ての内容は参照によって本明細書に組み込まれる)。
【0032】
人工多能性幹細胞(iPSC)は本開示の細胞の生成にも使用され得る。iPSCは、例えば(a)自己複製、(b)生物内の細胞の全てのタイプを産生するように分化する能力、及び/又は(c)体細胞由来、に限定されない1つ又は複数の特性を有する細胞を含み得る。iPSCは、例えばSSEA3、SSEA4、SOX2、OCT3/4、Nanog、TRA160、TRA1818、TDGF1、Dnmt3b、FoxD3、GDF3、Cyp26a1、TERT、Zpf42に限定されないマーカーを発現し得る。iPSC細胞を生成及び特徴決定する方法は、例えば、米国特許公開番号US20090047263、US20090068742、US2009191159、US20090227032、US20090246875、及びUS20090304646に見出すことができる(それぞれの全ての内容は参照によって本明細書に組み込まれる)。いくつかの実施形態において、iPSCは、T細胞もしくは非T細胞、B細胞、あるいは末梢血単核細胞、造血前駆細胞、又は任意の他の体細胞型からの任意の他の細胞に由来し得る。
【0033】
いくつかの実施形態において、多能性幹細胞は成体幹細胞に由来し得る。成体幹細胞は、対象、例えば対象の内耳、骨髄、間葉、皮膚、脂肪、肝臓、筋肉、及び/又は血液から得られ得る。PSCは、胎盤又は臍帯由来の胚性幹細胞と、前駆細胞(例えば、内耳、骨髄、間葉、皮膚、脂肪、肝臓、筋肉、及び/又は血液に由来する前駆細胞)をも含み得る。
【0034】
エフェクター細胞
「エフェクター細胞」は、胸腺細胞に接触又は近接すると、シグナル又は細胞死トリガーを実行、開始又は伝播する能力を獲得する任意の細胞又は細胞型を指す。「接触又は近接」とは、細胞内在性又は細胞外来性(例えば、細胞間)シグナル伝達又は他のコミュニケーション又は相互作用を可能にするのに十分な時空間的接近を指し得る。
【0035】
本明細書に記載のエフェクター細胞は多能性幹細胞に由来し得る。いくつかの実施形態において、エフェクター細胞は、胚性幹細胞、造血幹細胞若しくは前駆細胞、骨髄、臍帯血、末梢血、胸腺から単離された細胞に由来し得、又は、幹細胞若しくは前駆細胞は、インビトロで胚性幹細胞(ESC)又は人工多能性幹細胞(iPSC)から分化していてもよい。一次組織又はESC又はiPSCからの幹細胞若しくは前駆細胞は、起源的に、ヒト又は非ヒト動物(例えば、マウス)由来であり得る。
【0036】
いくつかの実施形態において、エフェクター細胞は造血細胞であり得る。いくつかの実施形態において、エフェクター細胞はリンパ球であり得る。いくつかの実施形態において、リンパ球は、CD45陽性リンパ球であり得る。
【0037】
エフェクター細胞は、CD4+CD8-T細胞、CD4-CD8+T細胞、CD34+CD7+CDla+細胞、CD3+TCRab+細胞、CD3+TCRgd+細胞、CD3+TCRab+CD4+CD8-細胞、CD3+TCRab+CD8+CD4-細胞、CD3+TCRab+CD4+CD8-CD45RO-CD45RA+細胞、CD3+TCRab+CD8+CD4-CD45RO-CD45RA+細胞、CD3+TCRab+CD4+CD8-CD45RO-30 CD45RA+CCR7+細胞、CD3+TCRab+CD8+CD4-CD45RO-CD45RA+CCR7+細胞、CD3+TCRab+CD4+CD8-CD45RO-CD45RA+CD27+細胞、CD3+TCRab+CD8+CD4-CD45ROCD45RA+細胞、CD27+、CD34+CD7+CD1a+細胞、CD34+CD5+CD7+細胞、CD34+CD5+CD7-細胞、ナチュラルキラーT細胞、制御性T細胞、抗原特異的T細胞、上皮内リンパ球T細胞、又は、CD45+、CDI lb+、CDI lb-、CD15+、CD15-、CD24+、CD24-、CDI 14+、CD114-、CD182+、CD182-、CD4+、CD4-、CD14+、CD14-、CDlla+、CDlla-、CD91+、CD91-、CD16+、CD16-、CD3+、CD3-、CD25+、CD25-、Foxp3+、Fox3p-、CD8+、CD8-、CD19+、CD19-、CD20+、CD20-、CD24+、CD24、CD38+、CD38-、CD22+、CD22-、CD61+、CD61-、CD16+、CD16-、CD56+、CD56-、CD3 l+、CD3 l-、CD30+、CD30-、CD38+、及び/若しくはCD38-の細胞、及び/又はそれらの組み合わせについて陽性である細胞であり得る。
【0038】
いくつかの実施形態において、エフェクター細胞はT細胞であり得る。T細胞は、培養されたT細胞、例えば、一次T細胞、又は培養されたT細胞系からのT細胞、例えば、Jurkat、SupTl等、又は哺乳動物から得られたT細胞であり得る。哺乳動物から得られる場合、エフェクター細胞は、血液、骨髄、リンパ節、胸腺、脾臓、又は他の組織若しくは流体に限られない多数の供給源から得られ得る。エフェクター細胞は濃縮又は精製されてもよい。T細胞は、任意のタイプのT細胞であり得、任意の発達段階にあり得、CD4+/CD8+二重陽性T細胞、CD4+ヘルパーT細胞、例えば、Th1及びTh2細胞、CD4+T細胞、CD8+T細胞(例えば、細胞毒性T細胞)、末梢血単核球(PBMC)、末梢血白血球(PBL)、腫瘍浸潤細胞(TIL)、メモリーT細胞、ナイーブT細胞を含むが、それらに限定されない。
【0039】
いくつかの実施形態において、エフェクター細胞は、CCRXA-、CD3+、CD69-、MHC-1+、CD62L+、及び/又はCCR7+であり得る。
【0040】
エフェクター細胞は、ナイーブT細胞(TN)表現型、セントラルメモリーT細胞(TcM)表現型、又はエフェクターメモリーT細胞(TEM)表現型を有し得る。TN、TcM及びTEM細胞の表現型は当分野で既知である。例えば、CCR7及びCD62Lは、TN及びTcM細胞によって発現されるが、TEM細胞によって発現されない。転写因子LEFl、FOXPl及びKLF7は、TN及びTcM細胞によって発現されるが、TEM細胞によって発現されない。CD45RO及びKLRGlはTN細胞によって発現されないが、TEM細胞によって発現される(Gattinoni et al., Nat. Rev. Cancer, 12: 671-84 (2012))。代替的に又は追加的に、TN及びTcM細胞はTEM細胞と比較してテロメアが長いことを特徴とし得る。
【0041】
いくつかの実施形態において、エフェクター細胞は、TCRα+TCRβ+細胞であり得る。TCRα+TCRβ+エフェクター細胞は、アルファ(α)鎖及び/又はベータ(β)鎖を発現する受容体を発現するT細胞であり得る。TCRアルファ及びベータ鎖は、当分野で既知である。
【0042】
エフェクター細胞は更に改変され得る。更なる実施形態において、幹細胞若しくは前駆細胞は、遺伝子改変され得る。例えば、幹細胞若しくは前駆細胞は、外因性T細胞受容体(TCR)又はキメラ抗原受容体(CAR)、又はその両方を発現することができる。更なる実施形態において、幹細胞若しくは前駆細胞は、外因性不変ナチュラルキラーT細胞(iNKT)関連TCRを発現し得る。尚更なる実施形態において、幹細胞若しくは前駆細胞は、外因性抗原特異的TCRを発現するか、又はT細胞の分化、増殖又は機能を調節する遺伝子の外因性遺伝子改変を有する。
【0043】
いくつかの実施形態において、エフェクター細胞は、FOXP3+Tregであり得る。Tregは、mTECのクローン転換によって生成され得、それによってmTECにおけるAireの発現により、表面に提示される(即ち、抗原提示細胞(APC)上の)組織特異的抗原の発現が引き起こされる。組織特異的抗原を認識する自己反応性T細胞は、末梢寛容を媒介できるFOXP3+Tregを生成する(参照によって全体として本明細書に組み込まれるHusebye, Eystein S., Mark S. Anderson, and Olle Kampe. “Autoimmune polyendocrine syndromes.” New England Journal of Medicine 378.12 (2018): 1132-1141を参照)。
【0044】
支持細胞
いくつかの実施形態において、本開示の細胞は、胸腺細胞の生成及び/又は培養物中での胸腺細胞の維持を助ける支持細胞を含み得るか又は該支持細胞と培養され得る。支持細胞の非限定的な例としては、マクロファージ及び樹状細胞(DC)のような造血非T細胞前駆細胞、上皮細胞及び線維芽細胞のような非造血細胞、骨格組織の前駆細胞のような間質細胞、骨、軟骨、造血支持間質、及び脂肪細胞のような構成要素を含む。いくつかの実施形態において、支持細胞は、胸腺細胞の増殖、生存、成熟、又は機能を促進する。いくつかの実施形態において、支持細胞は起源的に間葉系由来であり得る。
【0045】
支持細胞は胸腺微小環境に存在し得る非免疫細胞であり得る。例えば、支持細胞は線維芽細胞、血管平滑筋細胞(VSMC)、内皮細胞、及び/又はリンパ管内皮細胞であり得る。
【0046】
いくつかの実施形態において、支持細胞は、その全ての内容が参照によって本明細書に組み込まれるBautista et al. 2021 Nat Commun 12, 1096 (2021)に記載の神経内分泌細胞(BEX1、NEUROD1を発現)、筋肉様筋様細胞(MYOD1、DESを発現)、及びミエリン陽性上皮細胞(SOX10、MPZを発現)であり得る。いくつかの実施形態において、間葉系細胞は、例えばLAMA2、LAMA4、PDGFRA、PDGFRB、LUM、CSPG4、COL1A2、COL3A1、IGF1、FGF7、FGF10、FST、BMP4、SFRP2、WNT5Aに限定されないマーカーに関連付けられ得る。間葉系細胞は、これらのマーカーの1つ又は複数に対して陽性又は陰性であり得る。いくつかの実施形態において、間葉系細胞は本明細書に記載のいくつかのマーカーについて陽性であり得るが、他のマーカーについて陰性であり得る。
【0047】
いくつかの実施形態において、内皮細胞は、例えばVEGFC、PECAM1、APLNR、PROX1、LYVE1、ACKR1、SELE、SELP、FN1、及び/又はTGFB1に限定されない1つ又は複数のマーカーに関連付けられ得る。内皮細胞はこれらのマーカーの1つ又は複数に対して陽性又は陰性であり得る。いくつかの実施形態において、内皮細胞は本明細書に記載のいくつかのマーカーについて陽性であり得るが、他のマーカーについて陰性であり得る。
【0048】
三次元培養
いくつかの実施形態において、本開示の細胞は、三次元培養(3D)システムで培養できる。3D培養において、細胞は周囲の細胞外フレームワークで三次元的に培養される。多能性幹細胞、DE細胞、AFE細胞、VPE細胞、TEP、及び/又はTECは3Dにおいて培養できる。本開示の細胞は、支持足場の有無に関わらず培養することができる。いくつかの実施形態において、本開示の細胞は、足場のない3D細胞培養物中で培養できる。細胞は、オルガノイド又はスフェロイドとして培養できる。細胞はスフェロイドとして培養できる。スフェロイド培養において、細胞は、細胞の凝集として成長し、三次元構造の丸い細胞クラスターになる。細胞は、丸くて均一な形状であり得る。いくつかの実施形態において、本開示の細胞はオルガノイドとして培養できる。本明細書で使用されるように、オルガノイドという用語は、三次元又は多層構造の生細胞の人工モデルを指し、胸腺細胞以外の細胞、例えば、エフェクター細胞及び支持細胞を含み得る。いくつかの実施形態において、オルガノイドは秩序構造を形成し得る。
【0049】
いくつかの実施形態において、本開示の組成物は、胸腺オルガノイドを含み得る。オルガノイドは、臓器をインビトロで三次元に再現したミニチュアである。胸腺オルガノイドは、ヒト胸腺の生理学及び機能を模倣できる胸腺臓器のインビトロ三次元ミニチュア版であり得る。胸腺オルガノイドの調製方法は、国際特許公開WO2019060336に記載されており、その全ての内容が参照によって本明細書に組み込まれる。
【0050】
いくつかの実施形態において、エフェクター細胞は、PSC又は前駆細胞を胸腺細胞と培養することで多能性幹細胞又は前駆細胞をリンパ球に分化させることによって、調製され得る。いくつかの実施形態において、胸腺細胞は、Notchリガンドを発現できる。いくつかの実施形態において、Notchリガンドはデルタ様1(DLL1)であり得る。いくつかの実施形態において、Notchリガンドはデルタ様4(DLL4)である。いくつかの実施形態において、Notchリガンドは、本明細書に記載の又は当分野の、例えば、その全ての内容が参照によって本明細書に組み込まれる米国特許第7,795,404号に記載のものである。本開示のエフェクター細胞は、胸腺オルガノイド細胞培養システムを使用して調製できる。いくつかの実施形態において、本方法は、共培養された幹細胞若しくは前駆細胞及び間質細胞を、Flt-3リガンド及び/又はIL-7及び/又は幹細胞因子/Kitリガンド及び/又はトロンボポエチンと接触させることを更に含む。いくつかの実施形態において、幹細胞若しくは前駆細胞をT細胞に分化させることは、a)Notchリガンドを内因的に又は外因的に発現する支持細胞の選択された集団と、b)幹細胞若しくは前駆細胞の選択された集団とを含む三次元(3D)細胞凝集体とを、B-27(登録商標)サプリメント、異種不含B-27(登録商標)サプリメント、GS2lTMサプリメント、アスコルビン酸、Flt-3リガンド、IL-7、又はそれらの組み合わせを含む無血清培地と培養することを含む。国際特許公開WO2017075389(その全ての内容が参照によって本明細書に組み込まれる)に記載の幹細胞又は前駆細胞からリンパ球を生成するための方法のいずれも、本開示に有用であり得る。
【0051】
いくつかの実施形態において、胸腺オルガノイドは、Seet CS, et al. Nat Methods. 2017;14(5):521-530(その全ての内容が参照によって本明細書に組み込まれる)に記載の人工胸腺オルガノイドに基づいたものであり得る。胸腺オルガノイドを調製するために、トリプシン処理によって胸腺細胞を採取し、RPMI1640(Corning、マナッサス、VA)、4%B27サプリメント(ThermoFisher Scientific、グランドアイランド、NY)、PBSで再構成された30μMのL-アスコルビン酸2-リン酸セスキマグネシウム塩水和物(Sigma-Aldrich、セントルイス、MO)、1%ペニシリン/ストレプトマイシン(Gemini Bio-Products、ウェスト サクラメント、CA)、1%Glutamax(ThermoFisher Scientific、グランドアイランド、NY)、5ng/mlのrhFLT3L及び5ng/mlのrhIL-7(Peprotech、ロッキーヒル、NJ)を含み得る無血清培養培地(「RB27」)に再懸濁させてもよい。異なる比率の胸腺細胞とエフェクター細胞は、1.5mlエッペンドルフチューブで調製し、スイングバケット遠心機内で4℃にて300gで5分間遠心分離してもよい。上清を注意深く除去し、短時間ボルテックスすることによって細胞ペレットを再懸濁させた。オルガノイドごとに、0.4μmのMillicellトランスウェルインサート(EMD Millipore、ビルリカ、MA。カタログ番号PICM0RG50)を、1ウェル当たり1mlのRB27を含有する6ウェルプレートに配置してもよい。オルガノイドをプレーティングするために、インサートを取り出し、プレートの端に置いて過剰の培地を排出した。細胞スラリーは、1オルガノイド当たり5μlに調整し、20μlピペットチップで吸い上げ、細胞インサート上に穏やかに付着したピペットチップの端に液滴を形成することでプレーティングしてもよい。細胞インサートは、1mLのRB27を含有するウェルに戻してもよい。培地は、細胞インサートの周囲から吸引し、その後新しいRB27/サイトカインを含む1mlに交換することによって、3~4日ごとに完全に交換できる。いくつかの実施形態において、オルガノイドは、この方式で最大10週間、15週間、20週間、25週間、又は30週間培養してもよい。
【0052】
FACS緩衝液(PBS/0.5%ウシ血清アルブミン/2mM EDTA)を各ウェルに添加し、1ml「P1000」ピペットによるピペット操作でオルガノイドを簡単に離解し、その後50μmナイロンストレーナを通過させることによって、指定された時間にオルガノイド細胞を採取した。いくつかの実験において、MS5-hDLL1細胞の単一細胞懸濁液を、オルガノイドで使用する前に、指定線量でγ線照射した。
【0053】
胸腺オルガノイドエフェクター細胞の共培養物は、Seet CS, et al. Nat Methods. 2017;14(5):521-530(その全ての内容が参照によって本明細書に組み込まれる)に記載のように調製され得る。胸腺細胞は、70~80%コンフルエンスを達成するように、使用の1~2日前に、0.1%ゼラチンでコーティングされた12ウェルプレートに播種してもよい。培地は単層から吸引され得、1.5×104FACS精製エフェクター細胞(CD34+CD3-造血細胞)は、MEMα、20%FBS、30μMのL-アスコルビン酸、5ng/mlのrhFLT3L及び5ng/mlのrhIL-7から構成される2mlの培地において胸腺オルガノイドと共にプレーティングされ得る。いくつかの実施形態において、エフェクター細胞は、細胞を採取し、50μmナイロンストレーナで濾過し、新しい培地において再プレーティングすることによって、4~5日ごとに胸腺オルガノイドに移され得る。コンフルエントになったら、細胞を、新鮮な間質層を含有する複数のウェルに分注した。
【0054】
いくつかの実施形態において、本開示の胸腺細胞は、二重陰性の14日目T細胞と組み合わせて、細胞のクラスターを形成することができ、該クラスターはその後「オルガノイド」としてトランスウェルに付着し、気液界面培養条件で維持してもよい。いくつかの実施形態において、細胞は、T細胞の成熟を評価するために、数日ごとに培地から採取してもよい。
【0055】
III、方法
本開示は、多能性幹細胞を胸腺細胞に分化させる方法を提供する。いくつかの実施形態において、本開示は、人工多能性幹細胞を胸腺細胞に分化させる方法を提供する。
【0056】
いくつかの実施形態において、胸腺細胞へのiPSCの分化に含まれるステップの1つ又は複数は、WNTシグナル伝達の活性化を含み得る。非限定的な例として、WNTシグナル伝達の活性化物質はCHIR99021であり得る。
【0057】
いくつかの実施形態において、胸腺細胞へのiPSCの分化に含まれるステップの1つ又は複数は、WNTシグナル伝達の阻害を含み得る。非限定的な例として、WNTシグナル伝達の阻害物質は、IWR1(又はIWR-1)であり得る。
【0058】
いくつかの実施形態において、胸腺細胞へのiPSCの分化に含まれるステップの1つ又は複数は、BMPシグナル伝達の阻害を含み得る。いくつかの実施形態において、BMPシグナル伝達の阻害は、BMP経路阻害物質LDN193189を使用して実現し得る。
【0059】
いくつかの実施形態において、胸腺細胞へのiPSCの分化に含まれるステップの1つ又は複数は、SHHシグナル伝達の阻害を含み得る。いくつかの実施形態において、SHHの阻害は、SHHアンタゴニストのSANT-1を使用して実現される。
【0060】
いくつかの実施形態において、胸腺細胞へのiPSCの分化に含まれるステップの1つ又は複数は、TGFβシグナル伝達の阻害を含み得る。いくつかの実施形態において、TGFβシグナル伝達の阻害は、TGFβ阻害物質SB431542を使用して実現される。
【0061】
いくつかの実施形態において、胸腺細胞へのiPSCの分化に含まれるステップの1つ又は複数は、インスリン-トランスフェリン-セレン(ITS)、ノックアウト血清代替物(KSR)、ペニシリン-ストレプトマイシン(本明細書では「Pen Strep」ともいう)及び非必須アミノ酸(NEAA)を含有する細胞培養培地を含み得る。
【0062】
胸腺細胞の調製と維持
本明細書では、多能性幹細胞を胸腺細胞に分化させる方法を提供する。かかる方法は、多能性幹細胞を第1成長培地中、第2成長培地中、又はそれらの組み合わせ中で培養することを含み得る。いくつかの実施形態において、第1又は第2成長培地は、PI-103(多標的P13K阻害物質)を含み得る。いくつかの実施形態において、第1成長培地は、DMEM-F12、アクチビンA、CHIR99021、インスリン-トランスフェリン-セレン(ITS)及びノックアウト血清代替物(KSR)を含む。いくつかの態様において、第2成長培地は、DMEM-F12、bFGF、アクチビンA、LDN193189、ITS及びKSRを含む。いくつかの実施形態において、細胞は、PI-103の存在下で培養される。PI-103の濃度は、約1nM~1000nMであり得る。1つの実施形態において、PI-103の濃度は50nMであり得る。
【0063】
胚体内胚葉細胞は、更に、培養し、且つ、SB431542、LDN-193189、及びKSRのうちの少なくとも1つと接触させるか又はインキュベートすることで前方前腸細胞に分化することができる。いくつかの実施形態において、前方前腸細胞は、培養し、且つ、EGF、レチノイン酸、FGF8B、及びSHHのうちの少なくとも1つと接触させるか又はインキュベートすることで咽頭内胚葉細胞に分化することができる。いくつかの実施形態において、咽頭内胚葉細胞は、培養し、且つ、BMP4、FGF8b、EGF、SANT、CHIR99021、アスコルビン酸、又はそれらの組み合わせのうちの少なくとも1つと接触させるか又はインキュベートすることで胸腺上皮細胞に分化することができる。いくつかの実施形態において、分化は、約14日間~25日間行われる。例えば、分化は、約18日間、19日間、20日間、21日間、22日間、23日間、24日間、又は25日間行われる。
【0064】
いくつかの実施形態において、本開示は本明細書に記載の1つ又は複数の細胞又は細胞型を調製するための方法を提供する。いくつかの実施形態において、前記細胞は胸腺細胞であり得る。
【0065】
公共データベースに蓄積されている一連のデータは初代ヒト及びマウス胸腺の単一細胞トランスクリプトームを提供する(それぞれの全ての内容が参照によって本明細書に組み込まれる、Bautista et al. 2021 Nat Commun 12, 1096、Kernfeld, et al. Immunity. 2018 Jun 19;48(6):1258-1270.e6、Zeng et al. Immunity. 2019 Nov 19;51(5):930-948.e6を参照)。これは胸腺細胞への本開示の細胞の分化及び/又は成熟を促進する因子を同定するための豊富な材料源を提供する。scRNA配列決定データの分析により、本開示では胸腺細胞表現型を促進及び/又は維持し得る潜在的な因子及び/又は支持細胞を同定する。
【0066】
いくつかの実施形態において、本開示の細胞は生物から単離され得る。いくつかの実施形態において、生物は哺乳動物であり得る。哺乳動物細胞はヒト、齧歯動物、ブタ及び/又はウシの供給源のから単離され得る。本開示の細胞のヒト供給源は自家性又は同種間のものであり得る。いくつかの実施形態において、本開示の細胞を含有する組織は本明細書に記載の用途にそのまま採取及び使用され得る。本開示の細胞は胚性、胎児/胎仔、成体生物から得られ得る。いくつかの態様において、生物は生きているものであってもよく、又は死体生物であってもよい。
【0067】
本明細書に記載の細胞は他の細胞型に由来し得る。非限定的な例として、本開示の細胞は多能性幹細胞(PSC)に由来し得る。いくつかの実施形態において、本開示の細胞は前駆細胞に由来し得る。いくつかの実施形態において、本開示の細胞はPSC及び/又は前駆細胞の分化に由来し得る。
【0068】
いくつかの実施形態において、胸腺細胞はPSCから調製され得る。この点については、本方法は多能性幹細胞を胸腺細胞に分化させるのに十分な条件下で多能性幹細胞を一定期間培養することを含み得る。例えば、本方法は胸腺細胞へのPSCの分化を駆動する因子及び/又は阻害物質の存在下で多能性幹細胞を培養することを含み得る。PSCを胸腺細胞に分化させる方法は当分野で既知である。PSCを胸腺細胞に分化させる方法は当分野で既知の分化用の1つ又は複数のパラメーター又はそれらの組み合わせの使用を含み得る。パラメーターは、(i)分化促進因子、(ii)分化促進阻害物質、(iii)分化促進の継続時間、(iv)温度、(v)基質、及び/又は(vi)分化を促進する支持細胞を含むが、それらに限定されない。以下の参考文献に記載のPSCを胸腺細胞に分化させる任意の方法又はパラメーターは本明細書で使用され得、Parent et al. Cell Stem Cell. 2013 Aug 1;13(2):219-29、Soh et al. Stem Cell Rep. 2014 Vol. 2 j 925-937、Sun et al. Cell Stem Cell. 2013 Aug 1;13(2):230-6、Okabe et al. Cell. Reprog. 2015 Vol 17, No. 5、Su et al. Sci.Rep. 2015 5, 9882、Otsuka et al. Sci Rep 2020 10:224、国際特許公開WO2019060336、WO2020205859、WO2020220040、WO2014134213、WO2010143529、WO2011139628、及び中国特許公開CN201110121243を含み、これらそれぞれの全ての内容は参照によって本明細書に組み込まれる。
【0069】
胚体内胚葉細胞の調製と維持
本開示は、後続で胸腺細胞に分化できる胚体内胚葉細胞の調製方法を提供する。いくつかの実施形態において、胚体細胞は、細胞を二次元培養物又は三次元培養物中で培養することで調製され得る。かかる方法は、多能性幹細胞を第1成長培地中、第2成長培地中、又はそれらの組み合わせ中で培養することを含み得る。いくつかの実施形態において、第1又は第2成長培地は、PI-103(多標的P13K阻害物質)を含み得る。いくつかの実施形態において、第1成長培地は、アクチビンA、CHIR99021、インスリン-トランスフェリン-セレン(ITS)、及び/又はノックアウト血清代替物(KSR)を含む。
【0070】
いくつかの態様において、第2成長培地は、塩基性線維芽細胞成長因子(bFGF)、アクチビンA、LDN193189、ITS及びKSRを含む。いくつかの実施形態において、第2成長培地はCHIR99021を含む。
【0071】
いくつかの実施形態において、CHIR99021の濃度は、約0.1μM~100μMである。いくつかの実施形態において、CHIR99021の濃度は約2μM~3μMである。
【0072】
いくつかの実施形態において、細胞はPI-103の存在下で培養される。PI-103の濃度は、約1nM~1000nMであり得る。1つの実施形態において、PI-103の濃度は、50nMであり得る。いくつかの態様において、PI-103の濃度は、25nMであり得る。いくつかの実施形態において、多能性幹細胞は、約3~5日間培養され得る。PI-103は1~2日間添加され得る。多能性幹細胞は胚性幹細胞又は人工多能性幹細胞であり得る。
【0073】
いくつかの実施形態において、多能性幹細胞は、約3~5日間培養され得る。幹細胞は、第1成長培地中で約1~2日間、第2成長培地中で約2~3日間培養され得る。多能性幹細胞は、第1成長培地中で2日間、第2成長培地中で3日間培養され得る。いくつかの実施形態において、アクチビンAの濃度は約100ng/mlであり得る。いくつかの実施形態において、CHIR99021の濃度は2μMであり得る。いくつかの実施形態において、bFGFの濃度は10ng/mlであり得る。いくつかの実施形態において、LDN193189の濃度は200nMであり得る。いくつかの実施形態において、CHIR99021は約1日間にわたって第2成長培地に添加され得る。
【0074】
本明細書では、多能性幹細胞を胸腺細胞に分化させる方法が提供される。かかる方法は、多能性幹細胞を第1成長培地中、第2成長培地中、又はそれらの組み合わせ中で培養することを含み得る。いくつかの実施形態において、第1又は第2成長培地は、PI-103(多標的P13K阻害物質)を含み得る。いくつかの実施形態において、第1成長培地は、DMEM-F12、アクチビンA、CHIR99021、インスリン-トランスフェリン-セレン(ITS)及びノックアウト血清代替物(KSR)を含む。いくつかの態様において、第2成長培地は、DMEM-F12、bFGF、アクチビンA、LDN193189、ITS及びKSRを含む。いくつかの実施形態において、第2成長培地はCHIR99021を含む。いくつかの実施形態において、CHIR99021の濃度は約0.1μM~100μMである。いくつかの実施形態において、CHIR99021の濃度は2μMである。いくつかの実施形態において、細胞はPI-103の存在下で培養される。PI-103の濃度は約1nM~1000nMであり得る。1つの実施形態において、PI-103の濃度は50nMであり得る。
【0075】
前方前腸内胚葉(AFE)細胞の調製
胚体内胚葉細胞は、更に、培養し、且つ、前方前腸細胞に分化することができる。いくつかの実施形態において、AFE細胞は、細胞を二次元培養物又は三次元培養物中で培養することで調製され得る。胚体内胚葉細胞は、BMP阻害物質、TGFβ阻害物質、少なくとも1つのFGF、及び/又はアスコルビン酸と接触させることで、AFE細胞に分化することができる。いくつかの実施形態において、AFE細胞へのDE細胞の分化に利用された細胞培養培地は、N2-サプリメント(GIBCO、ウォルサム、マサチューセッツ州)、イーグル基本培地(BME)、GLUTAMAX(GIBCO、ウォルサム、マサチューセッツ州)、B27(商標)無血清サプリメント、非必須アミノ酸、KSR及び/又はITSを含み得る。
【0076】
いくつかの実施形態において、BMP阻害物質は、LDN193189であり得る。いくつかの実施形態において、LDN193189の濃度は約0.1nM~約1000nMである。いくつかの態様において、LDN193189の濃度は、約100~200nMである。
【0077】
いくつかの実施形態において、TGFβ阻害物質はSB431542であり得る。いくつかの実施形態において、SB431542の濃度は約1μM~約100μMである。非限定的な例として、SB431542の濃度は10μMである。
【0078】
いくつかの実施形態において、FGFは、FGF8であり得る。いくつかの実施形態において、FGF8の濃度は約1ng/ml~約100ng/mlである。非限定的な例として、FGF8bの濃度は約25~50ng/mlである。
【0079】
DE細胞は、約1日間、2日間、3日間、4日間、又は5日間の間にAFE細胞に分化し得る。
【0080】
腹側咽頭内胚葉(VPE)細胞の調製
VPE細胞へのAFEの分化は、単一ステッププロセス又はマルチステッププロセスとして行われる。マルチステッププロセスは2ステッププロセスであり得る。第1ステップで、AFEは、VPE1培地中で培養され、第2ステップで、該細胞はVPE2培地中で培養される。いくつかの実施形態において、VPE細胞は、細胞を二次元培養物又は三次元培養物中で培養することで調製され得る。VPE1ステップは、細胞を約1日間、2日間、3日間、4日間又は5日間培養することを含み得る。VPE2ステップは、細胞を約2日間、3日間、4日間、5日間、又は6日間培養することを含み得る。
【0081】
いくつかの実施形態において、VPE1培地は、レチノイン酸、少なくとも1つのFGF、WNT阻害物質、TGFβ阻害物質、及び/又はアスコルビン酸を含み得る。
【0082】
いくつかの実施形態において、VPE2培地は、ノギン、BMP阻害物質、WNT活性化物質(例えば、CHIR99021)、少なくとも1つのFGF、レチノイン酸、SHHアンタゴニスト、及び/又はアスコルビン酸を含み得る。
【0083】
いくつかの実施形態において、FGFは、FGF8、FGF7、及び/又はFGF10であり得る。いくつかの実施形態において、FGF8の濃度は約1ng/ml~約100ng/mlである。非限定的な例として、FGF8bの濃度は約25~50ng/mlである。
【0084】
いくつかの実施形態において、WNT阻害物質はIWR1である。IWR1の濃度は約0.01~10μMであり得る。非限定的な例として、IWR1の濃度は2.5μMである。
【0085】
いくつかの実施形態において、TGFβ阻害物質はSB431542であり得る。いくつかの実施形態において、SB431542の濃度は約1μM~約100μMである。非限定的な例として、SB431542の濃度は10μMである。
【0086】
いくつかの実施形態において、アスコルビン酸の濃度は約0.1~30μMである。非限定的な例として、アスコルビン酸の濃度は10μMであり得る。
【0087】
いくつかの実施形態において、BMP阻害物質はLDN193189であり得る。いくつかの実施形態において、LDN193189の濃度は約0.1nM~約1000nMである。いくつかの態様において、LDN193189の濃度は約100~200nMである。
【0088】
いくつかの実施形態において、SHH阻害物質はSANT-1であり得る。いくつかの実施形態において、SANT-1の濃度は約0.01μM~約10μMである。非限定的な例として、SANT-1の濃度は0.25μMである。
【0089】
いくつかの実施形態において、前方前腸細胞は、EGF、レチノイン酸、FGF8B、及び/又はSHHのうちの少なくとも1つと接触させるか又はインキュベートすることで、咽頭内胚葉細胞に培養し且つ分化することができる。
【0090】
いくつかの実施形態において、VPE1及び/又はVPE2培地は、N2-サプリメント(GIBCO、ウォルサム、マサチューセッツ州)、イーグル基本培地(BME)、GLUTAMAX(GIBCO、ウォルサム、マサチューセッツ州)、B27(商標)無血清サプリメント(ビタミンA含有又は非含有)、非必須アミノ酸、KSR及び/又はITSを含み得る。
【0091】
胸腺上皮前駆細胞(TEP)細胞の調製
TEP細胞へのVPE細胞の分化は、該細胞をTEP培地中で培養することで行われ得る。いくつかの実施形態において、TEP細胞は、細胞を二次元培養物又は三次元培養物中で培養することで調製され得る。TEPステップは、細胞を約1日間、2日間、3日間、4日間、5日間、又は6日間培養することを含み得る。
【0092】
いくつかの実施形態において、VPE細胞は、BMP(例えば、BMP4、BMP2)、WNT活性化物質、例えば、CHIR99021、少なくとも1つのFGF、及び/又はアスコルビン酸を使用してTEP細胞に分化させることができる。
【0093】
いくつかの実施形態において、TEP培地は、N2-サプリメント(GIBCO、ウォルサム、マサチューセッツ州)、イーグル基本培地(BME)、GLUTAMAX(GIBCO、ウォルサム、マサチューセッツ州)、B27(商標)無血清サプリメント(ビタミンA含有又は非含有)、非必須アミノ酸、KSR及び/又はITSを含み得る。
【0094】
いくつかの実施形態において、BMPはBMP2又はBMP4であり得る。BMPの濃度は1ng/ml~約100ng/mlであり得る。いくつかの態様において、BMPの濃度は50ng/mlであり得る。
【0095】
いくつかの実施形態において、FGFはFGF8、FGF7、FGF1、及び/又はFGF10であり得る。いくつかの実施形態において、FGFの濃度は約1ng/ml~約100ng/mlである。非限定的な例として、FGFの濃度は約25~50ng/mlである。
【0096】
いくつかの実施形態において、咽頭内胚葉細胞は、培養し、且つ、BMP4、FGF8b、EGF、SANT-1(SHHアンタゴニスト)、CHIR99021、アスコルビン酸、又はそれらの組み合わせのうちの少なくとも1つと接触させるか又はインキュベートすることで胸腺上皮細胞に分化することができる。
【0097】
胸腺上皮細胞(TEC)の調製
TEP細胞はインビトロで更にTECに分化することができる。TECへの分化は2D又は3D培養物中で行うことができる。いくつかの実施形態において、TEPの分化は、約2日間、3日間、4日間、5日間又は6日間行われ得る。
【0098】
いくつかの実施形態において、TECへのTEPの分化はTEC培地中で実施される。
【0099】
TEC培地は、RANKL、インターロイキン、例えば(IL22)、少なくとも1つのFGF、少なくとも1つのBMP(例えば、BMP4)、WNT活性化物質、及び/又はアスコルビン酸を含み得る。
【0100】
いくつかの実施形態において、RANKLの濃度は約1ng/ml~約100ng/mlであり得る。いくつかの態様において、RANKLの濃度は約20ng/ml~約50ng/mlであり得る。
【0101】
いくつかの実施形態において、FGFは、FGF8、FGF7、FGF1、及び/又はFGF10であり得る。いくつかの実施形態において、FGFの濃度は約1ng/ml~約100ng/mlである。非限定的な例として、FGFの濃度は約25~50ng/mlである。
【0102】
いくつかの実施形態において、インターロイキンの濃度は約1ng/ml~約100ng/mlである。非限定的な例として、IL22の濃度は約20ng/mlである。
【0103】
TEC培地は、N2-サプリメント(GIBCO、ウォルサム、マサチューセッツ州)、イーグル基本培地(BME)、GLUTAMAX(GIBCO、ウォルサム、マサチューセッツ州)、B27(商標)無血清サプリメント(ビタミンA含有又は非含有)、非必須アミノ酸、KSR及び/又はITSを含み得る。
【0104】
いくつかの実施形態において、分化は、約14日間~17日間行われる。いくつかの実施形態において、本開示の細胞は凝集体として培養され得る。いくつかの態様において、開示細胞は、細胞外マトリックスベースの培地中、例えば、Geltrex中で培養され得る。
【0105】
エフェクター細胞の調製
本明細書では、エフェクター細胞の調製方法も提供される。いくつかの実施形態において、エフェクター細胞はリンパ球であり得る。エフェクター細胞は、哺乳動物又は確立された細胞系からの一次細胞から得られ得る。哺乳動物から得られる場合、エフェクター細胞は、血液、骨髄、リンパ節、胸腺、脾臓、又は他の組織若しくは流体に限定されない多数の供給源から得られ得る。エフェクター細胞は濃縮又は精製されてもよい。いくつかの実施形態において、エフェクター細胞はT細胞であり得る。T細胞は、任意のタイプのT細胞であり得、任意の発達段階にあり得、CD4+/CD8+二重陽性T細胞、CD4+ヘルパーT細胞、例えば、Th1及びTh2細胞、CD4+T細胞、CD8+T細胞(例えば、細胞毒性T細胞)、末梢血単核球(PBMC)、末梢血白血球(PBL)、腫瘍浸潤細胞(TIL)、メモリーT細胞、ナイーブT細胞を含むが、それらに限定されない。リンパ球を単離及び/又は濃縮する方法は当分野で既知である。哺乳動物又はドナーから得られたリンパ球の集団を濃縮する方法は、分離培地(例えば、FICOLL-PAQUE(商標)、ROSETTESEP(商標)HLA総リンパ球濃縮カクテル、又はリンパ球分離培地(LSA)(MP Biomedicalカタログ番号0850494X)等)の使用、濾過若しくは水簸による細胞サイズ、形状又は密度の分離、免疫磁気分離(例えば、磁気活性化細胞選別システム,MACS)、蛍光分離(例えば、蛍光活性化細胞選別システム,FACS)、及び/又はビーズベースのカラム分離に限定されない任意の好適な分離方法によって完了できる。
【0106】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載のエフェクター細胞は、多能性幹細胞に由来し得る。いくつかの実施形態において、エフェクター細胞は、胚性幹細胞、造血幹細胞若しくは前駆細胞、骨髄、臍帯血、末梢血、胸腺から単離された細胞に由来し得、又は幹細胞若しくは前駆細胞は、インビトロで胚性幹細胞(ESC)又は人工多能性幹細胞(iPSC)から分化していてもよい。一次組織又はESC又はiPSCからの幹細胞若しくは前駆細胞は、起源的に、ヒト又は非ヒト動物(例えば、マウス)由来であり得る。
【0107】
いくつかの実施形態において、エフェクター細胞は、PSC又は前駆細胞を、Notchリガンドを異所的に発現する支持細胞と共に培養することで多能性幹細胞又は前駆細胞をリンパ球に分化させることによって、調製され得る。いくつかの実施形態において、支持細胞は、OP9細胞であり得る。いくつかの実施形態において、Notchリガンドはデルタ様1(DLLl)である。いくつかの実施形態において、Notchリガンドはデルタ様4(DLL4)である。いくつかの実施形態において、Notchリガンドは、本明細書に記載の又は当分野の、例えば、その全ての内容が参照によって本明細書に組み込まれる米国特許第7,795,404号に記載のものである。本開示のエフェクター細胞は、OP9-DLL1を異所的に発現する支持細胞を利用する人工胸腺オルガノイド(ATO)細胞培養システムを使用して調製され得る。いくつかの実施形態において、本方法は、共培養された幹細胞若しくは前駆細胞及び間質細胞を、Flt-3リガンド及び/又はIL-7及び/又は幹細胞因子/Kitリガンド及び/又はトロンボポエチンと接触させることを更に含む。いくつかの実施形態において、幹細胞若しくは前駆細胞をT細胞に分化させることは、a)外因性Notchリガンドを発現する支持細胞の選択された集団、b)幹細胞若しくは前駆細胞の選択された集団、を含む三次元(3D)細胞凝集体を、B-27(登録商標)サプリメント、異種不含B-27(登録商標)サプリメント、GS2lTMサプリメント、アスコルビン酸、Flt-3リガンド、IL-7、又はそれらの組み合わせを含む無血清培地と培養することを含む。国際特許公開WO2017075389(その全ての内容が参照によって本明細書に組み込まれる)に記載の幹細胞又は前駆細胞からリンパ球を生成するための方法のいずれも、本開示に有用であり得る。
【0108】
いくつかの実施形態において、エフェクター細胞は、造血細胞であり得るか又はそれに由来し得る。多能性幹細胞から造血細胞を調製する方法は、例えば、米国特許第9,834,754号に記載のように、当分野で既知であり、以下のステップの1つ又は複数を含み得る。(i)ヒト多能性幹細胞の集団における造血分化を誘導し、ここでアクチビン/nodalシグナル伝達は、分化の1日目と4日目の間で阻害され、(ii)CD34及びCD43の発現に基づいて誘導された集団を選別し、且つ/又は(iii)CD34陽性及び/又はCD43陰性の細胞集団の画分を選択し、ここで選別及び細胞画分選択は、分化の約6日目~11日目から選択される日に行われる(米国特許第9,834,754号の全ての内容は参照によって本明細書に組み込まれる)。
【0109】
いくつかの実施形態において、胸腺細胞及び/又はエフェクター細胞は、胸腺細胞及び/又はエフェクター細胞に由来する細胞外小胞(例えば、エキソソーム)の存在下で培養され得る。胸腺細胞のエキソソームの調製方法は、米国特許公開US2020299641(その全ての内容が参照によって本明細書に組み込まれる)に記載されている。いくつかの実施形態において、エキソソームは、DLL1を異所的に発現するように操作された胸腺細胞に由来し得る。
【0110】
いくつかの実施形態において、T細胞等のようなエフェクター細胞は、他の細胞型の分化に由来し得る。T細胞分化は、1)中胚葉誘導(約1~4日目)、2)造血特異化(約4~8日目)、3)造血コミットメント及び増大(約8~10日目)、及び/又は4)Tリンパ球分化の4つの段階を含み得る。PSC(iPSC又はESC)は、中胚葉分化の開始細胞集団として利用できる。これらの細胞は中胚葉細胞に分化できる。中胚葉細胞は、細胞の数が増加し得る造血細胞に更に分化できる。本開示で使用するための細胞培養システムは、中胚葉誘導用の第1細胞培養培地、造血特異化及び増大用の第2細胞培養培地、及びTリンパ球分化用の第3細胞培養培地を含むが、それらに限定されない。第1細胞培養培地は、BMP4(例えば、ヒトBMP4)及びbFGF(例えば、ヒトbFGF)を含み得る。PSC又はESCは、開始細胞集団として使用できる。未分化のPSC又はESCは、低付着プレートに移して胚様体(EB)の形成を可能にすることができる。第1段階中のEBの形成は、hBMP4の存在下で一晩インキュベートすることで促進できる。そして、EBは、中胚葉誘導を可能にするためにBMP4及びbFGFで4日目まで培養してもよい。中胚葉誘導の成否は、例えば、KDR+PDGFR-細胞の百分率を測定することで、試験することができる。第2細胞培養培地はVEGF(例えば、hVEGF)、及び造血サイトカインのカクテルを含み得る。造血サイトカインのカクテルは、造血特異化のための、SCF(例えば、hSCF)、Flt3L(例えば、hFlt3L)、少なくとも1つのサイトカイン、及びbFGFを含み得る。サイトカインは、IL3、IL15、IL7、IL12及びIL21に限定されないTh1サイトカインであり得る。EBは、造血特異化のための第2細胞培養培地中で約10日目まで培養してもよい。EBは、CD34、CD31、CD43、CD45、CD41a、c-kit、Notch1、IL7Raの発現についてFACSよって免疫表現型を分析され得る。いくつかの実施形態において、約日目のEBからのCD34+細胞は、リンパ球分化のための主要な転写因子、例えば、CD127(IL7Ra)及びNotch1を最高レベルで発現する。第3細胞培養培地は、フィーダー細胞及びSCF、Flt3L及び少なくとも1つのサイトカインを含み得る。サイトカインは、IL3、IL15、IL7、IL12及びIL21に限定されないTh1サイトカインであり得る。いくつかの実施形態において、約10日目に、EBは解離でき、造血前駆細胞はフィーダー細胞上に移して、確立された共培養システムにおいてSCF、Flt3L及びTh1サイトカイン(複数可)(例えば、IL-7)の存在下でTリンパ球分化を誘導することができる。いくつかの実施形態において、共培養システムは、胸腺細胞及び/又はフィーダー培養物、例えば、OP9-DL11フィーダー細胞を含み得る。
【0111】
いくつかの実施形態において、共培養は、共培養培地を使用して行われ得る。いくつかの実施形態において、共培養培地は、StemSpan SFEM II及びStemSpan(商標)T Cell Progenitor Maturation Supplementを含み得る。いくつかの実施形態において、共培養培地は、αMEM、4%B27サプリメント、30uMのアスコルビン酸、50ng/mlのIL7、50ng/mlのFLT3L、50ng/mlのTPO、50ng/mlのSCF、及び/又は1X Pen Strepを含み得る。いくつかの実施形態において、共培養培地は、DMEM/F12、ビタミンA非含有1%B27サプリメント、50μMのアスコルビン酸、50ng/mlのFGF8b、50ng/mlのBMP、50ng/mlのFGF10、2uMのCHIR99021、0.1%ITS、0.0025%KSR、0.5X Pen Strep、1x NEAA、1%N2、1%Glutamax、1%β-ME、50ng/mlのIL7、50ng/mlのFLT3L、50ng/mlのTPO、及び/又は50ng/mlのSCFを含み得る。
【0112】
凝集体サイズ
いくつかの実施形態において、本開示の細胞は、3次元培養物中で培養され得る。いくつかの実施形態において、本開示の細胞は、凝集体又はスフェロイドの形態としてもよい。「スフェロイド」という用語は、細胞のクラスター及び/又は細胞コロニーを指す。スフェロイドは、様々な細胞型、例えば、胸腺細胞、多能性細胞、エフェクター細胞、幹細胞、及び/又は支持細胞から形成できる。スフェロイドは、球状又は不規則な形状としてもよい。スフェロイドは、不均一な細胞集団、細胞型、異なる状態の細胞、例えば増殖細胞、静止細胞、及び壊死細胞を含有し得る。
【0113】
いくつかの実施形態において、スフェロイド/凝集体のサイズは、調整され得る。例えば、凝集体のサイズが細胞スフェロイド内の酸素分布を決定でき、それにより酸素供給の降順で外側、中間及び内側スフェロイド領域から構成された、それぞれ増殖、静止生存及びアポトーシスのコア特性を示す離散ゾーンが形成されるため、多能性幹細胞における凝集体のサイズは、増大期間中に重要となる可能性がある(その全ての内容が参照によって本明細書に組み込まれるLangan et al. Plos One. 2016;11(2))。いくつかの実施形態において、凝集体は、約50μm~500μm、約100μm~1000μm、約200μm~2000μm、約250μm~2500μm、約300μm~3000μm、約400μm~4000μmであり得る。実施形態において、スフェロイド/凝集体のサイズは、250μmであり得る。
【0114】
使用方法
本開示は、対象の状態を治療又は予防する方法を提供する。本方法は、本明細書に記載の細胞集団のいずれか、又は本明細書に記載の細胞集団のいずれかを含む医薬組成物を、対象の状態を治療又は予防するのに有効な量で対象に投与することを含む。状態は、がん、免疫不全、自己免疫病状、感染、又は血液病状であり得る。状態は対象の胸腺の機能の欠如、低下若しくは異常に関連し得る。例えば、状態は、ディジョージ症候群、胸腺腫(A型胸腺腫又はB型胸腺腫等)、CHARGE症候群、FOXN1欠損症、PAX1欠損症、TBX1欠損症、胸腺腫瘍、胸腺萎縮(加齢性胸腺萎縮等)、胸腺嚢胞、胸腺過形成、胸腺低形成、胸腺無形成、胸腺異形成、胸腺放射、重症筋無力症、胸腺がん、又は胸腺過形成、胸腺放射、加齢若しくは感染関連の胸腺機能低下であり得る。
【0115】
特定の実施形態において、本明細書に記載の細胞は、胸腺摘出手術を受けることができる対象を治療するために使用できる。特定の実施形態において、対象は、先天性心疾患を有してもよく、開胸手術を受けていてもよく又は開胸手術を受けている。対象は、胸腺に関連する1つ又は複数の適応症、例えば、重症筋無力症又は胸腺腫を治療するための胸腺摘出術を受けることができる。
【0116】
様々ながんは、本開示の医薬組成物で治療できる。がんは、腫瘍又は血液悪性腫瘍であり得、あらゆるタイプのリンパ腫/白血病、がん腫及び肉腫、例えば肛門、膀胱、胆管、骨、脳、乳房、子宮頸部、結腸/直腸、子宮内膜、食道、目、胆嚢、頭頸部、肝臓、腎臓、喉頭、肺、縦隔(胸)、口、卵巣、膵臓、陰茎、前立腺、皮膚、小腸、胃、脊髄、尾骨、睾丸、甲状腺、子宮に見られたがん又は腫瘍を含むが、それらに限定されない。
【0117】
本開示の細胞、組成物及び医薬組成物は、感染症を治療するために使用できる。感染症は、細菌、ウイルス、原生動物、及び/又は真菌等に限定されない生物によって引き起こされ得る。
【0118】
IV、医薬組成物
本開示の医薬組成物は、本明細書に記載の1つ又は複数の細胞、及び1つ又は複数の薬学的に又は生理的に許容される担体、希釈剤又は賦形剤を有する組成物を含み得る。かかる組成物は、中性緩衝食塩水、リン酸緩衝食塩水等のような緩衝液と、グルコース、マンノース、スクロース又はデキストラン、マンニトール等のような炭水化物と、タンパク質と、ポリペプチド又はグリシン等のようなアミノ酸と、抗酸化剤と、EDTA又はグルタチオン等のようなキレート剤と、アジュバント(例えば、水酸化アルミニウム)と、保存剤と、を含み得る。本開示の組成物は、一態様において静脈内投与用に調製される。
【0119】
いくつかの実施形態において、医薬製剤は、例えば、生理食塩水(約0.90%w/vのNaCl水溶液、約300mOsm/LのNaCl水溶液、又は水1リットル当たり約9.0gのNaCl)、NORMOSOL R電解質溶液(Abbott、シカゴ、IL)、PLASMA-LYTE A(Baxter、ディアフィールド、IL)、約5%のデキストロース水溶液、又は乳酸リンゲル液等、任意の等張担体を含み得る。一実施形態において、薬学的に許容される担体は、ヒト血清アルブミンで補充され得る。
【0120】
ある実施形態において、医薬組成物は、例えば、エンドトキシン、マイコプラズマ、複製コンピテントレンチウイルス(RCL)、p24、VSV-G核酸、HIV gag、残留抗CD3/抗CD28コーティングビーズ、マウス抗体、プールされたヒト血清、ウシ血清アルブミン、ウシ血清、培養培地成分、ベクターパッケージング細胞又はプラスミド成分、細菌及び真菌から選択された混入物を実質的に含まなくてもよく、例えば、検出可能なレベルの混入物がなくてもよい。
【0121】
緩衝液
いくつかの実施形態において、本開示の医薬組成物は、1つ又は複数の緩衝剤で調製される。
【0122】
例示的な緩衝剤としては、クエン酸緩衝溶液、酢酸緩衝溶液、リン酸緩衝溶液、塩化アンモニウム、炭酸カルシウム、塩化カルシウム、クエン酸カルシウム、グルビオン酸カルシウム、グルセプト酸カルシウム、グルコン酸カルシウム、D-グルコン酸、グリセロリン酸カルシウム、乳酸カルシウム、プロパン酸、レブリン酸カルシウム、ペンタン酸、第二リン酸カルシウム、リン酸、第三リン酸カルシウム、水酸化リン酸カルシウム、酢酸カリウム、塩化カリウム、グルコン酸カリウム、カリウム混合物、リン酸二カリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸カリウム混合物、酢酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、塩化ナトリウム、クエン酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、第二リン酸ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸ナトリウム混合物、トロメタミン、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、アルギン酸、発熱物質を含まない水、等張食塩水、リンガー液、エチルアルコール等、及び/又はそれらの組み合わせを含むが、それらに限定されない。
【0123】
非限定的な例は、pH7.4のリン酸緩衝製剤、又はpH6.2のクエン酸緩衝製剤等のような水性製剤、3%マンニトールを含有するpH6.2のクエン酸緩衝製剤、4%マンニトール/1%スクロースを含有するpH6.2のクエン酸緩衝製剤等のような凍結乾燥用製剤、又は、その全ての内容が参照によって本明細書に組み込まれるReddyらによる米国特許第8883737号に開示されているプロセスによって調製される製剤を含む。
【0124】
いくつかの実施形態において、本開示の医薬組成物は、非経口剤形で製剤化される。非経口製剤は、塩、炭水化物及び緩衝剤(例えば、pH3~9)等のような担体又は賦形剤を含有する水溶液、又は滅菌非水溶液、又は滅菌の、発熱物質を含まない水等のような好適なビヒクルと組み合わせて使用できる乾燥形態であり得る。例えば、本開示の治療薬の水溶液は、例えば、その全ての内容が参照によって本明細書に組み込まれるVlahovら(Endocyte)による米国特許第7,910,594号に開示されているように、等張食塩水、5%グルコース又は他の薬学的に許容される液体担体、例えば液体アルコール、グリコール、エステル、及びアミド等を含む。別の例では、本開示の治療薬の水溶液は、その全ての内容が参照によって本明細書に組み込まれるLeamonらによるWO2011014821の実施例23に開示されているような、静脈内投与用のリン酸緩衝製剤(pH7.4)を含む。非経口剤形は、本開示の治療薬の用量を含む再構成可能な凍結乾燥物の形態としてもよい。当分野で既知の任意の長期放出剤形、例えば、その開示が参照によって本明細書に組み込まれる米国特許第4,713,249号、同第5,266,333号、及び同第5,417,982号に記載の生分解性炭水化物マトリックスは利用でき、又は、代替的に、低速ポンプ(例えば、浸透圧ポンプ)を使用できる。
【0125】
栄養素
いくつかの実施形態において、本開示の医薬組成物は、本明細書に記載の細胞の健康、生存、及び/又は増殖を改善する1つ又は複数の栄養素を含む。
【0126】
いくつかの実施形態において、医薬製剤は、ビタミンを含む。いくつかの実施形態において、医薬組成物は、ビオチン、酢酸DLアルファトコフェロール、DLアルファ-トコフェロール、ビタミンA、塩化コリン、パントテン酸カルシウム、パントテン酸、葉酸ニコチンアミド、ピリドキシン、リボフラビン、チアミン、イノシトール、ビタミンB12のうちの1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、若しくは13種(及びそこから導き出せる任意の値域)を含み、あるいは医薬組成物は、それらの組み合わせ若しくはそれらの塩を含む。いくつかの実施形態において、医薬組成物は、ビオチン、酢酸DLアルファトコフェロール、DLアルファ-トコフェロール、ビタミンA、塩化コリン、パントテン酸カルシウム、パントテン酸、葉酸ニコチンアミド、ピリドキシン、リボフラビン、チアミン、イノシトール、及びビタミンB12を含む又はそれらから本質的になる。いくつかの実施形態において、ビタミンは、ビオチン、酢酸DLアルファトコフェロール、DLアルファ-トコフェロール、ビタミンA、又はそれらの組み合わせ若しくは塩を含む又はそれらから本質的になる。
【0127】
いくつかの実施形態において、医薬組成物は、タンパク質を更に含む。いくつかの実施形態において、タンパク質は、アルブミン若しくはウシ血清アルブミン、BSAの画分、カタラーゼ、インスリン、トランスフェリン、スーパーオキシドジスムターゼ、又はそれらの組み合わせを含む。いくつかの実施形態において、医薬組成物は、コルチコステロン、Dガラクトース、エタノールアミン、グルタチオン、L-カルニチン、リノール酸、リノレン酸、プロゲステロン、プトレシン、亜セレン酸ナトリウム、若しくはトリヨード-I-サイロニン、又はそれらの組み合わせのうちの1つ又は複数を含む。
【0128】
いくつかの実施形態において、医薬組成物は、アミノ酸、無機イオン、及び/又は単糖を含む。いくつかの実施形態において、アミノ酸は、アルギニン、シスチン、イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、グルタミン、フェニルアラニン、トレオニン、トリプトファン、ヒスチジン、チロシン、若しくはバリン、又はそれらの組み合わせを含む。いくつかの実施形態において、無機イオンは、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、窒素、若しくはリン、又はそれらの組み合わせ若しくは塩を含む。いくつかの実施形態において、医薬組成物は、モリブデン、バナジウム、鉄、亜鉛、セレン、銅、若しくはマンガン、又はそれらの組み合わせのうちの1つ又は複数を更に含む。いくつかの実施形態において、医薬組成物は、コルチコステロン、D-ガラクトース、エタノールアミン、グルタチオン、L-カルニチン、リノール酸、リノレン酸、プロゲステロン、プトレシン、亜セレン酸ナトリウム、若しくはトリヨード-I-サイロニン、アミノ酸(アルギニン、シスチン、イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、グルタミン、フェニルアラニン、トレオニン、トリプトファン、ヒスチジン、チロシン、又はバリン等)、単糖、無機イオン(ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、窒素、及び/又はリン等)若しくはそれらの塩、及び/又はモリブデン、バナジウム、鉄、亜鉛、セレン、銅、若しくはマンガンのうちの1つ又は複数を更に含む。
【0129】
保存剤
例示的な保存剤としては、抗酸化剤、キレート剤、抗微生物性保存剤、抗真菌性保存剤、アルコール保存剤、酸性保存剤、及び/又は他の保存剤を含み得るが、それらに限定されない。例示的な抗酸化剤としては、αトコフェロール、アスコルビン酸、パルミチン酸アスコルビル、ブチル化ヒドロキシアニソール、ブチル化ヒドロキシトルエン、モノチオグリセロール、メタ重亜硫酸カリウム、プロピオン酸、没食子酸プロピル、アスコルビン酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、及び/又は亜硫酸ナトリウムを含むが、それらに限定されない。例示的なキレート剤としては、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、クエン酸一水和物、エデト酸二ナトリウム、エデト酸二カリウム、エデト酸、フマル酸、リンゴ酸、リン酸、エデト酸ナトリウム、酒石酸、及び/又はエデト酸三ナトリウムを含む。例示的な抗微生物性保存剤としては、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、ベンジルアルコール、ブロノポール、セトリミド、塩化セチルピリジニウム、クロルヘキシジン、クロロブタノール、クロロクレゾール、クロロキシレノール、クレゾール、エチルアルコール、グリセリン、ヘキセチジン、イミドウレア、フェノール、フェノキシエタノール、フェニルエチルアルコール、硝酸フェニル水銀、プロピレングリコール、及び/又はチメロサールを含むが、それらに限定されない。例示的な抗真菌性保存剤としては、ブチルパラベン、メチルパラベン、エチルパラベン、プロピルパラベン、安息香酸、ヒドロキシ安息香酸、安息香酸カリウム、ソルビン酸カリウム、安息香酸ナトリウム、プロピオン酸ナトリウム、及び/又はソルビン酸を含むが、それらに限定されない。例示的なアルコール保存剤としては、エタノール、ポリエチレングリコール、フェノール、フェノール化合物、ビスフェノール、クロロブタノール、ヒドロキシ安息香酸塩、及び/又はフェニルエチルアルコールを含むが、それらに限定されない。例示的な酸性保存剤としては、ビタミンA、ビタミンC、ビタミンE、βカロチン、クエン酸、酢酸、デヒドロ酢酸、アスコルビン酸、ソルビン酸、及び/又はフィチン酸を含むが、それらに限定されない。他の保存剤としては、トコフェロール、酢酸トコフェロール、デテロキシムメシレート、セトリミド、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、ブチル化ヒドロキシトルエン(butylated hydroxytoluened)(BHT)、エチレンジアミン、ラウリル硫酸ナトリウム(SLS)、ラウリルエーテル硫酸ナトリウム(SLES)、亜硫酸水素ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、亜硫酸カリウム、メタ重亜硫酸カリウム、GLYDANT PLUS(登録商標)、PHENONIP(登録商標)、メチルパラベン、GERMALL(登録商標)115、GERMABEN(登録商標)II、NEOLONE(商標)、KATHON(商標)、及び/又はEUXYL(登録商標)を含むが、それらに限定されない。
【0130】
V、用法・用量
上述した本開示の細胞及び医薬組成物は、全身送達又は局所送達の任意の送達経路によって投与でき、それにより、治療上有効な結果がもたらされる。
【0131】
いくつかの実施形態において、胸腺細胞及びエフェクター細胞は、対象の同じ解剖学的位置に共送達され得る。いくつかの実施形態において、胸腺細胞及びエフェクター細胞は、対象の異なる解剖学的位置に送達され得る。
【0132】
いくつかの実施形態において、胸腺細胞及びエフェクター細胞は、同じ送達経路又は異なる送達経路を通じて同時に対象に送達され得る。
【0133】
いくつかの実施形態において、胸腺細胞は、エフェクター細胞の投与前に対象に投与され得る。
【0134】
いくつかの実施形態において、胸腺細胞は、エフェクター細胞の投与後に対象に投与され得る。
【0135】
投与経路の非限定的な例としては、腸内(腸の中へ)、胃腸、硬膜外(硬膜の中へ)、経口(口を介して)、経皮、脳内(脳の中へ)、脳室内(脳室の中へ)、皮膚上(皮膚への塗布)、内皮(皮膚自体の中へ)、皮下(皮膚深部)、鼻投与(鼻を介して)、静脈内(静脈の中へ)、静脈内ボーラス、静脈内持続注入、動脈内(動脈の中へ)、筋肉内(筋肉の中へ)、心臓内(心臓の中へ)、骨内注入(骨髄の中へ)、髄腔内(脊柱管の中へ)、実質内(脳組織の中へ)、腹腔内(腹腔中への注入若しくは注射)、膀胱内注入、硝子体内(眼を介して)、空洞内注射(患部空洞の中へ)、腔内(陰茎基部の中へ)、膣内投与、子宮内、羊膜外投与、経皮(全身分布のためにインタクトな皮膚を介した拡散)、経粘膜(粘膜を介した拡散)、経膣、通気(鼻で吸う)、舌下、口唇下、浣腸、点眼剤(結膜上に)、又は点耳剤、耳介(耳内若しくは耳を介して)、頬(頬に向けて)、結膜、皮膚、歯(1つ又は複数の歯に対して)、電気浸透、子宮頸管内、静脈洞内(endosinusial)、気管内、体外、血液透析、浸潤、間質、腹部内、羊膜内、関節内、胆管内、気管支内、滑液嚢内、軟骨内(軟骨内)、尾側内(馬尾内)、槽内(後小脳延髄槽内)、角膜内(角膜の中で)、歯科、冠内(冠動脈内)、海綿体内(陰茎海綿体の膨張性空間内)、椎間板内(椎間板の中で)、管内(腺管の中で)、十二指腸内(十二指腸の中で)、硬膜内(硬膜の中で若しくは硬膜下)、表皮内(表皮に向けて)、食道内(食道に向けて)、胃内(胃の中で)、歯肉内(歯肉の中で)、回腸内(小腸の末端部の中で)、病変内(局所病変内若しくは病巣への直接導入)、腔内(管腔内)、リンパ管内(リンパ管の中で)、髄質内(骨の髄腔内)、髄膜内(髄膜の中で)、心筋内(心筋の中で)、眼球内(眼内)、卵巣内(卵巣の中で)、心膜内(心膜の中で)、胸膜内(胸膜の中で)、前立腺内(前立腺の中で)、肺内(肺若しくはその気管支内)、洞内(鼻内若しくは眼窩部副鼻腔内)、脊髄内(脊椎の中で)、髄液嚢内(関節の髄液腔内)、腱内(腱の中で)、精巣内(睾丸の中で)、髄腔内(脳脊髄軸の任意のレベルの脳脊髄液内)、胸腔内(胸郭の中で)、細管内(臓器の細管内)、腫瘍内(腫瘍の中で)、鼓室内(中耳内)、脈管内(1つ又は複数の脈管内)、心室内(心室の中で)、イオン導入(電流を用いて、可溶性塩のイオンを身体組織中に移動させる)、洗浄(開放創又は体腔を洗うか、若しくは洗い流す)、喉頭(喉頭の直上)、経鼻胃(鼻を介して胃の中へ)、密封包帯法(包帯で覆い、患部を密封する局所投与)、経眼(外眼部へ)、経口咽頭(口腔及び咽頭に直接)、非経口、経皮、関節周囲、硬膜外、神経周囲、歯周、直腸、呼吸器(局所若しくは全身効果のために口若しくは鼻からの吸入により気道内)、球後(橋の後ろ若しくは眼球の後ろ)、軟部組織、クモ膜下、結膜下、粘膜下、局所的、経胎盤(胎盤を介して、若しくは胎盤を横切って)、経気管(気管の壁を介して)、経鼓室(鼓室を介して、若しくは鼓室を横切って)、尿管(尿管に向けて)、尿道(尿道に向けて)、膣、仙骨ブロック、診断、神経ブロック、胆管灌流、心臓灌流、循環光療法又は脊髄を含む。
【0136】
いくつかの実施形態において、本開示の細胞を含有する医薬組成物は、胸腺内に(胸腺の中へ)送達され得る。
【0137】
いくつかの実施形態において、本開示の細胞を含有する医薬組成物は、対象に外科的に配置され得る。非限定的な例として、細胞は、腎臓被膜又は大腿四頭筋に外科的に配置され得る。
【0138】
いくつかの実施形態において、細胞及び医薬組成物は、肝内投与、脾臓内注射又は門脈内注射を介して投与され得る。
【0139】
本明細書に記載の細胞及び医薬組成物は、骨髄への直接注射(本明細書では骨内注入という)によって対象に提供することができる。骨は、脛骨、腓骨、大腿骨、中足骨、下肢の趾節骨、上腕骨、橈骨、尺骨、中手骨、及び/又は上肢の指節骨等の長骨であり得る。
【0140】
非経口投与及び注射剤投与
いくつかの実施形態において、本明細書に記載の細胞及び医薬組成物は非経口的に投与され得る。
【0141】
注射用調製物、例えば、滅菌注射用水性又は油性懸濁液は、好適な分散剤、湿潤剤、及び/又は懸濁化剤を使用して公知の技術に従って製剤化され得る。滅菌注射用調製物は、例えば、1,3-ブタンジオール中の溶液等、非経口的に許容される非毒性の希釈剤及び/又は溶媒中の滅菌注射用溶液、懸濁液、及び/又はエマルションであり得る。用いられ得る許容されるビヒクル及び溶媒としては、水、リンゲル液、U.S.P.、及び等張塩化ナトリウム溶液が挙げられる。滅菌固定油は、従来から溶媒又は懸濁媒体として用いられている。この目的のために、合成モノグリセリド又は合成ジグリセリドを含めて、任意の無刺激の固定油は用いられ得る。オレイン酸等の脂肪酸は注射剤の調製に使用できる。
【0142】
注射用製剤は、例えば、細菌保持フィルターを通した濾過により、及び/又は使用前に滅菌水若しくは他の滅菌注射用媒体中に溶解又は分散できる滅菌固形組成物の形態の滅菌剤を組み込むことにより、滅菌され得る。
【0143】
有効成分の効果を延長させるために、皮下注射又は筋肉内注射からの薬物の吸収を遅らせることが望ましい場合が多い。これは、難水溶性である結晶性又は非晶質の液体懸濁液を使用することにより達成され得る。活性成分の吸収速度は、溶解速度に依存し、溶解速度は、ひいては、結晶のサイズ及び結晶系に依存し得る。あるいは、非経口投与される薬物形態の遅延吸収は、薬物を油性ビヒクルに溶解又は懸濁させることによって達成される。注射可能なデポー形態は、ポリラクチド-ポリグリコリドのような生分解性ポリマー中で、薬物のマイクロカプセル化マトリックスを形成することにより作製される。薬物放出の速度は、ポリマーに対する薬物の比率、及び用いられる具体的なポリマーの性質に応じて制御され得る。他の生分解性ポリマーの例としては、ポリ(オルトエステル)及びポリ(無水物)を含む。デポー注射用製剤は、身体組織と適合可能であるリポソーム又はマイクロエマルジョン中に薬物を捕捉することによって調製される。
【0144】
リンパ節投与
特定の実施形態において、本開示の胸腺細胞及び/又は医薬組成物は、リンパ節内への生着により、対象体内に送達され得る。いくつかの実施形態において、本開示の胸腺細胞及び/又は医薬組成物は、リンパ節において異所性胸腺組織を形成するのに有効な量で対象に送達され得る。特定の実施形態において、本明細書に記載の方法及び組成物は、本開示の細胞及び/又は医薬組成物を対象のリンパ節内に送達して、胸腺細胞がリンパ節に生着し異所性胸腺を産生できるようにするために使用される。特定の実施形態において、異所性胸腺は、対象の胸腺機能を回復させることができ、例えば、正常健康な胸腺臓器が実行できる1つ又は複数の機能を補足又は増強することができる。例えば、異所性胸腺は、T細胞成長、発達、成熟、選択及び/又は機能を促進することで、身体の免疫調節に関与することができるが、これに限定されない。
【0145】
細胞及び医薬組成物が送達できるリンパ節の非限定的な例としては、空腸、膝窩、腋窩、門脈周囲リンパ節、腹部リンパ節、腹腔リンパ節、傍大動脈リンパ節、脾門リンパ節、肝門部リンパ節、左胃リンパ節、右胃リンパ節、左胃大網(left gastroomental)(左胃網(left gastroepiploic))リンパ節、右胃大網(right gastroomental)(右胃網(right gastroepiploic))リンパ節、後腹膜リンパ節、幽門リンパ節(例えば、幽門上リンパ節、幽門下リンパ節、幽門後リンパ節)、膵臓リンパ節(例えば、上膵リンパ節、下膵リンパ節、脾直系(splenic lineal)リンパ節)、脾リンパ節、肝リンパ節(例えば、嚢胞リンパ節、孔リンパ節、ウインスロー孔)、膵十二指腸リンパ節(例えば、上膵十二指腸リンパ節、下膵十二指腸リンパ節)、上腸間膜リンパ節、回結腸リンパ節、盲腸前リンパ節、盲腸後リンパ節、虫垂リンパ節、結腸間膜リンパ節(例えば、結腸傍リンパ節、左結腸リンパ節、中結腸リンパ節、右結腸リンパ節、下腸間膜リンパ節、S状結腸リンパ節、上直腸リンパ節)、総腸骨リンパ節(例えば、内側総腸骨リンパ節、中間総腸骨リンパ節、外側総腸骨リンパ節、大動脈下リンパ節、岬角総腸骨リンパ節)、及び外腸骨リンパ節(例えば、内側外腸骨リンパ節、中間外腸骨リンパ節、外側外腸骨リンパ節、内側裂孔大腿リンパ節、中間裂孔大腿リンパ節、外側裂孔大腿リンパ節、腸骨動脈間リンパ節、閉鎖-外腸骨閉鎖リンパ節)を含む。
【0146】
非限定的な例として、国際特許公開WO2021026195(その全ての内容が参照によって本明細書に組み込まれる)に記載の胸腺組織をリンパ節内に移植するための方法のいずれも本開示に有用であり得る。
【0147】
デポー投与
本明細書に記載のように、いくつかの実施形態において、本開示の医薬組成物を含む細胞及び組成物は、持続放出のためにデポー剤として製剤化される。一般に、特定の臓器又は組織(「標的組織」)は投与の標的とされる。いくつかの実施形態において、局所放出は、生体適合性デバイスの利用により影響される。例えば、生体適合性デバイスは、対象における細胞の拡散を制限できる。
【0148】
本開示のいくつかの態様において、細胞、組成物及び医薬組成物は、標的組織内又はその近位に空間的に保持される。標的組織(1つ又は複数の標的細胞を含む)と医薬組成物を、それらが実質的に標的組織内に保持される条件下、即ち組成物の少なくとも10、20、30、40、50、60、70、80、85、90、95、96、97、98、99、99.9、99.99、又は99.99%超が標的組織内に保持される条件下で、接触させることによって、哺乳動物対象の標的組織に医薬組成物を提供する方法が提供される。例えば、対象に投与された医薬組成物の少なくとも1%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、99.9%、99.99%、又は99.99%超は、投与後の一定期間存在する。
【0149】
用量及びレジメン
本開示は、本開示に係る細胞、組成物及び医薬組成物を、それを必要とする対象に投与する方法を提供する。記載される細胞を含む医薬組成物は、疾患、障害、及び/又は状態の予防、治療、管理、又は診断に有効な任意の投与量及び任意の投与経路を使用して対象に投与され得る。必要とされる正確な量は、対象の種、年齢、及び全身状態、疾患の重篤度、特定の組成物、その投与方式、その活動方式等に応じて、対象ごとに変動する。対象は、ヒト、哺乳動物、又は動物であり得る。任意の特定の個体に対する具体的な治療上有効な、予防上有効な、又は適切な診断用量レベルは、治療される障害及び障害の重篤度と、用いられる具体的なペイロードの活性と、用いられる具体的な組成物と、患者の年齢、体重、一般健康状態、性別及び食事と、投与時間及び投与経路と、を含む様々な要因に依存する。
【0150】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載の細胞、組成物及び/又は医薬組成物の用量は、約1x106、1.1x106、2x106、3.6x106、5x106、1x107、1.8x107、2x107、5x107、1x108、2x108、3x108、又は5x108細胞/kgであり得る。いくつかの実施形態において、本明細書に記載の細胞、組成物及び/又は医薬組成物の用量は、少なくとも約1x106、2x106、3x106、5x106、1x107、2x107、5x107、1x108、2x108、3x108、又は5x108細胞/kgであり得る。いくつかの実施形態において、本明細書に記載の細胞、組成物及び/又は医薬組成物の用量は、最大約1x106、2x106、3.6x106、5x106、1x107、2x107、5x107、1x108、2x108、3x108、又は5x108細胞/kgであり得る。いくつかの実施形態において、本明細書に記載の細胞、組成物及び/又は医薬組成物の用量は、約1x107、2x107、5x107、1x108、2x108、3x108、5x108、1x109、2x109、又は5x109細胞/kgであり得る。いくつかの実施形態において、本明細書に記載の細胞、組成物及び/又は医薬組成物の用量は、約1x107、2x107、5x107、1x108、2x108、3x108、5x108、1x109、2x109、又は5x109細胞/kgであり得る。いくつかの実施形態において、本明細書に記載の細胞、組成物及び/又は医薬組成物の用量は、約1x107、2x107、5x107、1x108、2x108、3x108、5x108、1x109、2x109、又は5x109細胞/kgであり得る。いくつかの実施形態において、本明細書に記載の細胞、組成物及び/又は医薬組成物の用量は、約1x107、1.5x107、2x107、2.5x107、3x107、3.5x107、4x107、5x107、1x108、1.5x108、2x108、2.5x108、3x108、3.5x108、4x108、5x108、1x109、2x109、又は5x109細胞/kgであり得る。いくつかの実施形態において、本明細書に記載の細胞、組成物及び/又は医薬組成物の用量は、約1~3x107から1~3x108細胞/kgであり得る。
【0151】
特定の実施形態において、本明細書に記載の細胞又は本開示に係る医薬組成物は、約10~600μl/部位、50~約500μl/部位、100~約400μl/部位、120~約300μl/部位、140~約200μl/部位、約160μl/部位で投与され得る。
【0152】
所望の用量は、少なくとも1回、1日3回、1日2回、1日1回、隔日、3日ごと、毎週、隔週、3週間ごと、又は4週間ごとに送達され得る。特定の実施形態において、所望の用量は、複数回投与(例えば、2回、3回、4回、5回、6回、7回、8回、9回、10回、11回、12回、13回、14回、又はそれ以上回数の投与)を使用して送達され得る。
【0153】
本開示の細胞の所望の用量は、1回又は複数回投与できる。細胞、組成物及び医薬製剤は、一定期間にわたって設定された頻度で定期的に投与され得るか、又は「連続フロー」として連続的に投与され得る。1日の総用量、即ち24時間の期間内に投与又は処方される量は、これらの方法のいずれか、又はこれらの方法の組み合わせによって投与され得る。
【0154】
いくつかの実施形態において、細胞の対象への送達により、少なくとも1カ月、2カ月、3カ月、4カ月、5カ月、6カ月、7カ月、8カ月、9カ月、10カ月、11カ月、1年、13カ月、14カ月、15カ月、16カ月、17カ月、18カ月、19カ月、20カ月、20カ月、21カ月、22カ月、23カ月、2年、3年、4年、5年、6年、7年、8年、9年、10年、又は10年超の治療効果がもたらされる。
【0155】
本開示の細胞は、1つ又は複数の他の治療薬、予防薬、研究薬若しくは診断薬、又は医療処置と、連続的に又は同時に併用できる。一般に、各薬剤は、その薬剤について決定された用量及び/又は時間スケジュールで投与される。いくつかの実施形態において、本開示は、生物学的利用能を向上させ、代謝を減少させ且つ/又は改変し、排泄を阻害し、且つ/又は体内での分布を改変することができる薬剤と併用する医薬組成物、予防組成物、研究組成物、若しくは診断組成物の送達を包含する。
【0156】
例えば、本開示の細胞は、治療標的領域における生物学的利用能を向上させるために対象体内での拡散を制限する生体適合性デバイスとして投与される。本開示の細胞は、局所送達によって投与されてもよい。
【0157】
「前処置レジメン」という用語は、患者が幹細胞移植前に受ける療法の過程を指す。例えば、造血幹細胞移植前に、患者は、たとえ幹細胞が該患者に由来したとしても、幹細胞移植の拒絶反応を予防するために、骨髄破壊的療法、非骨髄破壊的療法、又は強度を下げた前処置を受け得る。前処置レジメンは、細胞毒性物質の投与を伴い得る。前処置レジメンは、免疫抑制、抗体、及び照射も含み得る。他の可能な前処置レジメンとしては、抗体媒介性前処置(例えば、Czechowicz et al., 318 (5854) Science 1296-9 (2007)、Palchaudari et al., 34(7) Nature Biotechnology 738-745 (2016)、Chhabra et al., 10:8(351) Science Translational Medicine 351ra105 (2016)を参照)及びCAR-T媒介性前処置(例えば、Arai et al., 26(5) Molecular Therapy 1181-1197 (2018)を参照。それらそれぞれは参照によって全体として本明細書に組み込まれる)を含む。前処置レジメンは、移植細胞が生着及び増殖するための場所を体内に有することを可能にするニッチ「空間」を作り出すようにも設計される。造血幹細胞移植では、例えば、前処置レジメンは、移植造血幹細胞が生着するためのニッチ空間を骨髄中に作り出す。前処置レジメン無しでは、移植造血幹細胞は生着することができない。いくつかの実施形態において、対象には、前処置レジメンに続いて本開示の細胞、組成物及び/又は医薬製剤が投与され得る。
【0158】
VI、定義
発現:本明細書で使用されるように、「発現」及びその文法上の等価物は、マーカーの文脈において、マーカーの産生、及びマーカーのレベル又は量を指す。例えば、細胞におけるマーカーの発現又はマーカーの存在又は細胞がマーカーに対して陽性であるとは、陽性対照レベルと同様のレベルでのマーカーの発現を指す。陽性対照レベルは、マーカーと関連する細胞運命を有することが知られている細胞によって発現されるマーカーのレベルによって決定され得る。同様に、マーカーの発現がない、又は細胞がマーカーに対して陰性であるとは、陰性対照レベルと同様のレベルでのマーカーの発現を指す。陰性対照レベルは、マーカーと関連する細胞運命を持たないことが知られている細胞によって発現されるマーカーのレベルによって決定され得る。そのため、マーカーが存在しないということは、マーカーの発現が検出不可のレベルであることを単に意味するものではなく、特定の場合において、細胞がマーカーを発現している可能性があるが、その発現が陽性対照と比較して低いか、又は陰性対照のそれに類似したレベルであり得る。
【0159】
エフェクター細胞:本明細書で使用されるように、「エフェクター細胞」は、胸腺細胞に接触又は近接すると、シグナル又は細胞細胞死トリガーを実行、開始又は伝播する能力を獲得する任意の細胞又は細胞型を指す。「接触又は近接」とは、細胞内在性又は細胞外来性(例えば、細胞間)シグナル伝達又は他のコミュニケーション又は相互作用を可能にするのに十分な時空間的接近を指す。
【0160】
リンパ球:本明細書で使用されるように、「リンパ球」は、当業者がこの用語を理解するであろう意味及び使用を包含し、更に、リンパ組織又は血液中に存在する、骨髄に由来する1種の免疫細胞を指す。いくつかの実施形態において、リンパ球は胸腺内で成熟する。
【0161】
陰性:本明細書で使用されるように、用語「陰性」(「-」と略す場合がある)は、示された細胞マーカーの発現に関して本明細書で使用される場合、細胞が示された細胞マーカーを検出可能なレベルで発現しないことを意味する。
【0162】
陽性:本明細書で使用されるように、用語「陽性」(「+」と略す場合がある)は、示された細胞マーカーの発現に関して本明細書で使用される場合、細胞が示された細胞マーカーを検出可能なレベルで発現することを意味し、例えば、低い(ただし検出可能)レベルでの発現及び高い(高)レベルでの発現を含み得る。
【0163】
プレT細胞:本明細書で使用されるように、「プレT細胞」とは、T細胞に成熟又は分化できるリンパ球を指す。
【0164】
可溶性因子:本明細書で使用されるように、「可溶性因子」とは細胞表面分子に結合できる又は細胞に取り込むことができる任意のタンパク質又はペプチドを指す。細胞による取り込みは受動拡散、トランスポーター、及び/又はエンドサイトーシスによって行われ得る。
【0165】
胸腺細胞又は起源又は系統:本明細書で使用されるように、「胸腺細胞又は胸腺起源又は胸腺系統」とは、胸腺由来の細胞又は胸腺の細胞になる予定の細胞に関連付けられた1つ又は複数の表現型又は遺伝子型マーカーを有する細胞を指す。本明細書で使用されるように、胸腺は胚性、胎児/胎仔、又は成体胸腺であり得る。
【0166】
変異体:生体分子(例えば、訓練因子又は最終因子)に関して使用される用語「変異体」とは、親分子に関連する又は親分子に由来する生体分子を指す。変異体は、例えば、親分子の改変型、切断型、突然変異型、相同型、又は他の変更型であってもよい。用語変異体はポリヌクレオチド又はポリペプチドのいずれかを説明するために使用できる。
【0167】
本開示の1つ又は複数の実施形態の詳細は以下の添付の説明に記載される。本明細書に記載のものと類似又は同等の任意の材料及び方法は本開示の実施又は試験に用いることができるが、好ましい材料及び方法をここに記載する。本開示の他の特徴、目的、及び利点は、本説明から明らかになろう。本説明において、単数形は、文脈が特に示さない限り、複数形も含む。他に定義されない限り、本説明で使用する全ての技術用語及び科学用語は、本開示が属する技術分野の当業者によって一般に理解されるものと同じ意味を有する。矛盾する場合には、本説明が統制する。
【0168】
本開示を以下の非限定的な例によって更に説明する。
【実施例】
【0169】
実施例1 多能性幹細胞の調製
1日目に、250万の単一iPSCを1日目の懸濁液に入れ、ROCK阻害物質Y27632(10μM)を添加した。細胞を70RPMでのシェーカー上に置いた。2~3日目に、分化を継続し、2日目及び3日目に培地の半分を毎日新しい培地に交換した。この時点で、スフェロイドの直径は約250μmであった。細胞を70RPMでのシェーカー上に置いた。4日目に、上清をスフェロイドと一緒に15mlコニカルチューブ内に移した。スフェロイドを室温にて250gで5分間遠心分離し、上清を吸引した。
【0170】
スフェロイドをPBSで洗浄し、250gで5分間遠心分離し、PBSを(フード内に)吸引した。3~4mlの予め加温したAccutaseを15mlコニカルチューブ内に添加した。チューブをタッピングして凝集体を撹拌し、チューブをインキュベーター内に5~7分間置いた。スフェロイドを15mlチューブ内で2~3分間ごとに撹拌した。5分間後、1000μlのピペットを使用して凝集体を穏やかに撹拌して、スフェロイドを単一細胞に変化させた。7~8mlのDMEM-F12培地を各15mlチューブに添加し、スフェロイドを室温にて250gで5分間遠心分離し、上清を吸引した。
【0171】
実施例2 多能性幹細胞からの胚体内胚葉の生成
2日目に、iPSCは4つの異なる群に分けられ、異なる条件について試験される。表1及び表2は、利用される培養培地を示し、表3は試験される様々な培養条件を示す。
【0172】
【0173】
【0174】
【0175】
実施例3 多能性幹細胞からの胸腺細胞の生成
胚体内胚葉(DE)へのiPSCの分化
DEへのiPSCの分化には、小分子及び成長因子を適切なタイミングで導入する必要がある。分化を実施例2に記載のように又は以下のように行った。1日目に、スフェロイド内のPSCを、アクチビンA(100ng/mL)、2μMのCHIR99021、KSR(0.05%)、Pen strep(100X)、PI-103(25nM)を含有する培地A/A50%/50%(Stem Scale及びDMEM-F12)中で培養した。2日目及び3日目に、細胞を、アクチビンA(100ng/mL)、2μMのCHIR99021、ITS(1:1000)、KSR(0.05%)、Pen strep(100X)、PI-103(25nM)、非必須アミノ酸(NEAA)(100X)を含有するDMEM-F12中で培養した。4~5日目に、細胞を、アクチビンA(100ng/mL)、LDN193189(100nM)、インスリン-トランスフェリン-セレン(ITS-G)(1:1000)、KSR(0.05%)、Pen strep(100X)、NEAA(100x)を含有するDMEM-F12中で培養した。
【0176】
前方前腸内胚葉(AFE)への胚体内胚葉(DE)の分化を以下のように行った。6~7日目に、細胞を、SB431542(10μM)、LDN193189(0.1μM)、インスリン-トランスフェリン-セレン(ITS-G)(1:1000)、KSR(0.05%)、ペニシリン-ストレプトマイシン(100X)、NEAA(100X)をDMEM-F12に添加することで調製されたAFE培地中で培養した。
【0177】
腹側咽頭内胚葉(VPE)への前方前腸内胚葉(AFE)の分化を以下のように行った。8~13日目から、細胞を、レチノイン酸(0.1μM)、FGF8b(50ng/ml)、SHH(SAG)(100ng/ml)、EGF(50ng/ml)、インスリン-トランスフェリン-セレン(ITS-G)(1:1000)、KSR(0.05%)、ペニシリン-ストレプトマイシン(100X)及びNEAA(100X)をDMEM-F12に添加することで調製されたVPE培地中で培養した。
【0178】
胸腺上皮前駆細胞への腹側咽頭内胚葉(VPE)の分化を2つのプロトコルのうちの1つを使用して行った。プロトコル1で、14~16日目から、細胞を、BMP4(50ng/ml)、FGF8b(50ng/ml)、EGF(50ng/ml)、SANT-1(0.25μM)、)、CHIR99021(2μM)、アスコルビン酸(30μM)、インスリン-トランスフェリン-セレン(ITS-G)(1:1000)、KSR(0.05%)、Pen strep(100X)、NEAA(100X)を含有するDMEM-F12中で培養した。第2プロトコルで、14~16日目に、細胞を、ノギン(50ng/ml)、FGF8b(50ng/ml)、EGF(50ng/ml)、CHIR99021(2μM)、アスコルビン酸(30μM)、インスリン-トランスフェリン-セレン(ITS-G)(1:1000)、KSR(0.05%)、Pen strep(100X)、NEAA(100X)を含有するDMEM F12中で培養した。17~21日目に、細胞を、BMP4(50ng/ml)、FGF8b(50ng/ml)、EGF(50ng/ml)、SANT-1(0.25μM)、CHIR99021(2μM)、アスコルビン酸(30μM)、インスリン-トランスフェリン-セレン(ITS-G)(1:1000)、KSR(0.05%)、Pen strep(100X)、NEAA(100X)を含有するDMEM-F12中で培養した。
【0179】
培地を毎日完全に交換した。細胞を収集し、層流フード内に静置させた。上清を吸引し、新しく調製された培地を添加した。加えて、分化段階間で、細胞をDMEM-F12で洗浄し、5分間静置させた。
【0180】
実施例4 細胞系の3D懸濁培養
分化プロトコルを最適化するために使用される3つの多能性細胞系、即ちヒトES FOXN1-GFPレポーター系、ヒトiPSC系(A15849 GIBCO)、及びGMPグレードの治療用iPSC細胞系からの研究グレードのiPSC系を、確立した。3つの細胞系全てを、マトリゲル使用のインビトロ3D培養に適合させた。これら細胞系の多能性を、幹細胞マーカーTRA-1-60及びSSEA-4の発現についてのフローサイトメトリー分析によって分析した。95%超の多能性幹細胞はTRA-1及びSSEA-4を発現することが判明した。
【0181】
実施例5 DE細胞の特徴決定
実施例2に記載の4つの異なる培養条件からG1~G4として得られた胚体内胚葉(DE)細胞を、DE細胞のマーカー、即ちSOX17及びFOXA2について分析した。培養群1(G1)~4(G4)は、DEの主要なバイオマーカー(SOX17及びFoxA2)の発現レベルが相対的に増加した(
図1を参照)。
【0182】
細胞は、DE細胞に関連するマーカー、即ちEPCAM及びSOX17の発現にも陽性であった。G1、G2、G3及びG4の二重陽性細胞の数は、それぞれ、18.2%、16.2%、54.3%、及び69.6%であった。この試験では、G4は最も多くの陽性細胞を産生した。
【0183】
スフェロイドの開始サイズを操作したところ、DE細胞の頻度が95%超に増加した。
【0184】
実施例6 様々な成長因子の効果
胸腺細胞へのDE細胞の分化は、DEから胸腺への分化に重要であると知られている因子を添加することで促進できる。第3咽頭嚢からの胸腺前駆細胞の発達及び成熟に重要であると知られているBMPが、その一例である。BMPの添加タイミングの影響を調べた(
図2)。スフェロイドを、iPSC状態からTEPへと分化誘導し、BMPの添加タイミングを変更した。異なる段階(DE、AFE、VPE、早期及び後期TEP)でスフェロイドを収集し、異なる段階に関連するバイオマーカーについて分析した。早期及び後期TEP段階でBMPの有無による条件を比較した。BMPはPAX1及びPAX9を抑制したが、TBX1及びHOXA3を上方制御した。
【0185】
実施例7 インビトロからインビボへの移行の同等性
本明細書に記載の方法によって生成された胸腺細胞が、インビボ移植で、mTEC及びcTECに分化すると予想される。3Dのスフェロイドがインビボで上皮シートに広がるか否かを試験するために、スフェロイドをマトリゲル上に接着させ、更に2-Dにおいて分化させた。マトリゲル上で4~5日間培養した後、TECに関連する遺伝子の発現を調査した。
図3に示すように、DLL4及びCK8発現が下方制御されたが、FOXN1発現が上方制御された。FOXN1は胸腺分化の重要な制御因子である。
【0186】
実施例8 TEP表現型に対する凍結及び解凍の効果
TEPは、様々な臨床用途において凍結、解凍、及び再培養が必要である場合がある。胸腺細胞に関連するマーカーの発現を凍結及び解凍後に調査した。
【0187】
3D培養物中で凍結され、解凍され、及び再懸濁されたTEPは、約3~4日間でスフェロイドを再形成できた。後期TEP段階に関連する遺伝子の発現を、凍結前、及び解凍後スフェロイド形成後に、比較した。遺伝子、即ちHOXA3、PAX9、EPCAM、CXCL12の発現レベルは、凍結前及び解凍後で同様であることから、TEPが移植のために凍結、解凍及び再培養できることが分かった(
図4を参照)。
【0188】
実施例9 胸腺細胞バイオマーカー
いくつかの推定マーカーは、TEP細胞と関連付けられている。それらは、CD205(Mohtashami M et al 2013 Int Immunol 25:601及びCampinoti S et al 2020 Nat Comm 11:1)、EPCAM(Parent et al 2013 Cell Stem Cell 13:219)、及びクローディン3及び4(Hamazaki Y et al 2016 Immunol Reviews 271:38)を含む。
【0189】
二重陽性CD205+/EPCAM+細胞は、胸腺中の前駆細胞の定量化に使用されている(Campinoti S et al 2020 Nat Comm 11:1)。このマーカーの組み合わせは、表現型TEPを特徴決定するために使用された。
【0190】
CD205/EPCAM二重染色を使用して分化の早期及び後期段階のTEPを分析したところ、CD205+/EPCAM+細胞の頻度が<1%から>25%に増加したことが見出された。これらのデータは、CD205+/EPCAM+がTEP細胞のマーカーとして使用できることを示す。
【0191】
実施例10 T細胞分化のインビトロアッセイ
iPSC-TEPのインビトロ機能を、インビボ移植後に観察された機能的出力と比較し且つ相関させるために、T細胞をCD34+HSCから分化させるインビトロアッセイを開発した。陽性対照として、StemSpan T-細胞キット(StemCell Technology)を使用してCD34+HSCから二重陽性(DN)プロ-T細胞を生成し、その後二重陽性CD4及びCD8 T細胞に成熟させた。21日目に、CD4+/CD8+細胞の百分率は5.3%であり、28日目に細胞の49.4%に増加し、35日目に53.2%に増加し、42日目に86.8%に増加した。
【0192】
実施例11 多能性幹細胞からの胸腺細胞の調製
多能性幹細胞から胸腺細胞を調製するためのプロトコルを最適化した。
【0193】
実験16A及び16B
この実験において、実験16培地A/Aを、実験16培地Aの添加の有用性を2日前に追加した。実験16Aでは、スフェロイドをDE誘導段階で2D培養培地中のGeltrexに播種したが、実験16Bでは、単一細胞懸濁液をGeltrex上への播種前に調製した。
【0194】
1日目に、250万の単一iPSCを1日目の懸濁液に入れ、ROCK阻害物質Y27632(10μM)を添加した。シェーカーを70RPMに設定した。2日目に、上清をスフェロイドと一緒に15mlコニカルチューブ内に移した。スフェロイドを室温にて250gで5分間遠心分離し、上清を吸引した。スフェロイドをPBSで洗浄し、再び遠心分離した。上清を除去し、1mlの培地を、6ウェルの低接着プレートの各ウェルに添加した。6ウェルプレートの各ウェルに1ml添加する前に、6mlの実験16培地Aを1日経過したiPSC凝集体に添加し、穏やかに混合した。
【0195】
胚体内胚葉(DE)へのiPSCの分化
DEへのiPSCの分化には、小分子及び成長因子を適切なタイミングで導入する必要がある。1日目に、細胞を、50%/50%(Stem Scale及びDMEM-F12)を含み且つ因子/小分子のアクチビンA(100ng/mL)、CHIR99021(2μM)、KSR(0.05%)、ペニシリン-ストレプトマイシン(100X)、PI-103(25nM)を有する実験16培地A/Aで処理した。2~3日目に、DMEM-F12、アクチビンA(100ng/mL)、2μMのCHIR99021、ITS(1:1000)、KSR(0.05%)、ペニシリン-ストレプトマイシン(100X)、PI-103(25nM)、及びNEAA(100X)を含む実験16培地Aを添加した。4~5日目に、DMEM-F12、アクチビンA(100ng/mL)、LDN193189(100nM)、インスリン-トランスフェリン-セレン(ITS-G)(1:1000)、KSR(0.05%)、ペニシリン-ストレプトマイシン(100X)及びNEAA(100x)を含む実験16培地Bを添加した。
【0196】
前方前腸内胚葉(AFE)への胚体内胚葉(DE)の分化
6~7日目に、DMEM-F12を含み且つ因子/小分子のSB431542(10μM)、LDN193189(0.1μM)、インスリン-トランスフェリン-セレン(ITS-G)(1:1000)、KSR(0.0025%)、ペニシリン-ストレプトマイシン(100X)、ビタミンA(VIT A)非含有B27(0.5X)、及びNEAA(100X)を有する実験16 AFE培地を添加した。7日目に、培地を半分のみ交換した。
【0197】
腹側咽頭内胚葉(VPE)への前方前腸内胚葉(AFE)の分化
8~9日目に、DMEM-F12を含み且つ因子/小分子のSB431542(10uM/ml)、レチノイン酸(0.1μM)、FGF8b(50ng/ml)、レチノイン酸(0.1μM)、インスリン-トランスフェリン-セレン(ITS-G)(1:1000)、KSR(0.0025%)、ペニシリン-ストレプトマイシン(100X)、NEAA(100X)及びVIT A非含有B27(0.5X)を有する実験16 VPE1培地を添加した。9日目に、培地を半分のみ交換した。10~11日目に、DMEM-F12、レチノイン酸(0.1μM)、FGF8b(50ng/ml)、ノギン(50ng/ml)、CHIR99021(2μM)、アスコルビン酸(30μM)、インスリン-トランスフェリン-セレン(ITS-G)(1:1000)、KSR(0.0025%)、ペニシリン-ストレプトマイシン(100X)、NEAA(100X)、及びVIT A非含有B27(0.5X)を含有するVPE2培地を添加した。11日目に、培地を半分のみ交換した。
【0198】
胸腺上皮前駆細胞(TEP)への腹側咽頭内胚葉(VPE)の分化
12~14日目に、DMEM-F12を含有し且つ因子/小分子のFGF8b(50ng/ml)、BMP4(50ng/ml)、CHIRR99(2μM)、アスコルビン酸(30μM)、インスリン-トランスフェリン-セレン(ITS-G)(1:1000)、KSR(0.0025%)、ペニシリン-ストレプトマイシン(100X)、NEAA(100X)を有する実験16 TEP培地を添加した。13及び14日目に、培地を半分のみ交換した。14~15日目に、DMEM-F12、BMP4(50ng/ml)、FGF8b(50ng/ml)、アスコルビン酸(30μM)、レチノイン酸(0.1μM)、インスリン-トランスフェリン-セレン(ITS-G)(1:1000)、KSR(0.0025%)、Pen strep(100X)、及びNEAA(100X)を含有するTEC1培地を添加した。16日目に、細胞を凝集体(実験16A)又は単一細胞(実験16B)として、Geltrexでコーティングされた24ウェルプレート上に播種した。16~27日目に、DMEM-F12、BMP4(50ng/ml)、FGF8b(50ng/ml)、アスコルビン酸(30μM)、レチノイン酸(0.1μM)、インスリン-トランスフェリン-セレン(ITS-G)(1:1000)、KSR(0.0025%)、Pen strep(100X)、NEAA(100X)、VIT A非含有B27(0.5X)、N2(100X)、Glutamax(100X)、及びBME(100X)を含有するTEC2培地を添加した。培地を毎日全部交換した。
【0199】
DE分化の改善は観察されなかった。凝集体を2Dに播種することで、細胞が2Dでより良好に成長し、分化がより強力に誘導された。
【0200】
実験18
この実験では、VPE段階で細胞を2D培養に移すことを試験した。
【0201】
懸濁培養におけるiPSC系の増大
1日目に、250万の単一iPSCを1日目の懸濁液に入れ、ROCK阻害物質Y27632(10μM)を添加した。シェーカーを70RPMに設定した。2日目に、上清をスフェロイドと一緒に15mlコニカルチューブ内に移した。スフェロイドを室温にて250gで5分間遠心分離し、上清を吸引した。スフェロイドをPBSで洗浄し、再び遠心分離した。上清を除去し、1mlの培地を6ウェルの低接着プレートの各ウェルに添加した。6ウェルプレートの各ウェルに1ml添加する前に、6mlの実験18培地Aを1日経過したiPSC凝集体に添加し、穏やかに混合した。
【0202】
胚体内胚葉(DE)へのiPSCの分化
DEへのiPSCの分化には、小分子及び成長因子を適切なタイミングで導入する必要がある。1日目に、50%/50%(Stem Scale及びDMEM-F12)を含む実験18培地A/Aを添加した。2~3日目に、DMEM-F12を含み且つ因子/小分子のアクチビンA(100ng/mL)、2μMのCHIR99021、ITS(1:1000)、KSR(0.05%)、Pen strep(100X)、PI-103(25nM)、NEAA(100X)を有する実験18培地Aを添加した。4~5日目に、DMEM-F12を含み且つ因子/小分子のアクチビンA(100ng/mL)、LDN193189(100nM)、インスリン-トランスフェリン-セレン(ITS-G)(1:1000)、KSR(0.05%)、Pen strep(100X)、及びNEAA(100x)を有する実験18培地Bを添加した。
【0203】
前方前腸内胚葉(AFE)への胚体内胚葉(DE)の分化
6~7日目に、DMEM-F12を含み且つ因子/小分子のSB431542(10μM)、LDN193189(0.1μM)、インスリン-トランスフェリン-セレン(ITS-G)(1:1000)、KSR(0.0025%)、Pen Strep(100X)、VIT A非含有B27(0.5X)及びNEAA(100X)を有する実験18 AFE培地を添加した。7日目に、培地を半分のみ交換した。
【0204】
腹側咽頭内胚葉(VPE)への前方前腸内胚葉(AFE)の分化
8日目に、凝集体を、Geltrexでコーティングされた24ウェルプレート上に播種した。8~9日目に、細胞を、DMEM-F12を含み且つ因子/小分子のSB431542(10uM/ml)、レチノイン酸(0.1μM)、FGF8b(50ng/ml)、レチノイン酸(0.1μM)、インスリン-トランスフェリン-セレン(ITS-G)(1:1000)、KSR(0.0025%)、Pen strep(100X)、NEAA(100X)、VIT A非含有B27(0.5X)を有する実験18 VPE1培地に移した。9日目に、培地を半分のみ交換した。
【0205】
10~11日目に、DMEM-F12を含み且つ因子/小分子のレチノイン酸(0.1μM)、FGF8b(50ng/ml)、ノギン(50ng/ml)、CHIR99021(2μM)、アスコルビン酸(30μM)、インスリン-トランスフェリン-セレン(ITS-G)(1:1000)、KSR(0.0025%)、Pen strep(100X)、NEAA(100X)、VIT A非含有B27(0.5X)を有する実験18 VPE2培地を添加した。11日目に、培地を半分のみ交換した。
【0206】
胸腺上皮前駆細胞(TEP)への腹側咽頭内胚葉(VPE)の分化
12~14日目に、DMEM-F12を含有し且つ因子/小分子のFGF8b(50ng/ml)、BMP4(50ng/ml)、CHIRR99(2μM)、アスコルビン酸(30μM)、インスリン-トランスフェリン-セレン(ITS-G)(1:1000)、KSR(0.0025%)、Pen strep(100X)、及びNEAA(100X)を有する実験18 TEP培地を添加した。13及び14日目に、培地を半分のみ交換した。15~20日目に、DMEM-F12を含み且つ因子/小分子のBMP4(50ng/ml)、FGF8b(50ng/ml)、アスコルビン酸(30μM)、レチノイン酸(0.1μM)、インスリン-トランスフェリン-セレン(ITS-G)(1:1000)、KSR(0.0025%)、Pen strep(100X)及びNEAA(100X)を有する実験18 TEC1培地を添加した。
【0207】
21~22日目に、DMEM-F12を含有し且つBMP4(50ng/ml)、CHIRR9901(2μM)、FGF8b(50ng/ml)、アスコルビン酸(30μM)、インスリン-トランスフェリン-セレン(ITS-G)(1:1000)、KSR(0.0025%)、Pen strep(100X)、NEAA(100X)、VIT A非含有B27(0.5X)、N2(100X)、Glutamax(100X)及びBME(100X)を有する実験18 TEC2培地を添加した。培地を毎日全部交換した。
【0208】
この実験で生成されたTEPは良好なFOXN1発現を示した。
【0209】
実験21及び実験22
この実験では、PI-103を実験21/22培地Bに添加する効果を試験した。AFE段階で2D培養へ移行する効果も試験した。
【0210】
懸濁培養におけるiPSC系の増大
1日目に、250万の単一iPSCを1日目の懸濁液に入れ、ROCK阻害物質Y27632(10μM)を添加した。シェーカーを70RPMに設定した。2日目に、上清をスフェロイドと一緒に15mlコニカルチューブ内に移した。スフェロイドを室温にて250gで5分間遠心分離し、上清を吸引した。スフェロイドをPBSで洗浄し、再び遠心分離した。上清を除去し、1mlの培地を6ウェルの低接着プレートの各ウェルに添加した。6ウェルプレートの各ウェルに1ml添加する前に、6mlの実験21/22培地Aを1日経過したiPSC凝集体に添加し、穏やかに混合した。
【0211】
胚体内胚葉(DE)へのiPSCの分化
DEへのiPSCの分化には、小分子及び成長因子を適切なタイミングで導入する必要がある。1~2日目に、DMEM-F12、及び因子/小分子のアクチビンA(100ng/mL)、2μMのCHIR99021、ITS(1:1000)、KSR(0.05%)、Pen strep(100X)、PI-103(25nM)及びNEAA(100X)を含む実験21/22培地Aを添加した。3~5日目に、DMEM-F12、及び因子/小分子のアクチビンA(100ng/mL)、LDN193189(200nM)、PI-103(25nM)、インスリン-トランスフェリン-セレン(ITS-G)(1:1000)、KSR(0.05%)、Pen strep(100X)及びNEAA(100x)を含む実験21/22培地Bを添加した。実験22では、PI-103(25nM)が除外された。
【0212】
前方前腸内胚葉(AFE)への胚体内胚葉(DE)の分化
6日目に、凝集体を、Geltrexでコーティングされた24ウェルプレート上に播種した。6日目に、細胞を、DMEM-F12を含む実験21/22AFE培地*中で培養し、且つ因子/小分子のSB431542(10μM)、LDN193189(200nM)、アスコルビン酸(30μM)、Pen Strep(100X)、N2(100X)、Glutamax(100X)、BME(100X)、及びBSA(0.05%)を添加した。
【0213】
腹側咽頭内胚葉(VPE)への前方前腸内胚葉(AFE)の分化
9~10日目に、DMEM-F12、及び因子/小分子のSB431542(10uM/ml)、レチノイン酸(0.1μM)、FGF8b(50ng/ml)、アスコルビン酸(30μM)、インスリン-トランスフェリン-セレン(ITS-G)(1:1000)、KSR(0.0025%)、Pen strep(100X)、NEAA(100X)、VIT A非含有B27(0.5X)、Glutamax(100X)、BME(100X)及びN2(100X)を含む実験21/22 VPE1培地を添加した。10日目に、培地を半分のみ交換した。11~12日目に、DMEM-F12、及び因子/小分子のレチノイン酸(0.1μM)、FGF8b(50ng/ml)、ノギン(50ng/ml)、CHIR99021(2μM)、アスコルビン酸(30μM)、インスリン-トランスフェリン-セレン(ITS-G)(1:1000)、KSR(0.0025%)、Pen strep(100X)、NEAA(100X)、VIT A非含有B27(0.5X)、Glutamax(100X)、BME(100X)及びN2(100X)を含有するVPE2培地を添加した。12日目に、培地を半分のみ交換した。
【0214】
胸腺上皮前駆細胞(TEP)への腹側咽頭内胚葉(VPE)の分化
12~14日目に、DMEM-F12、及び因子/小分子のFGF8b(50ng/ml)、FGF10(50ng/ml)、BMP4(50ng/ml)、CHIRR99(2μM)、アスコルビン酸(30μM)、インスリン-トランスフェリン-セレン(ITS-G)(1:1000)、KSR(0.0025%)、Pen strep(100X)、NEAA(100X)、VIT A非含有B27(0.5X)、Glutamax(100X)、BME(100X)及びN2(100X)を含有する実験21/22 TEP培地を添加した。14及び15日目に、培地を半分のみ交換した。
【0215】
16~18日目に、DMEM-F12、及び因子/小分子のBMP4(50ng/ml)、FGF8b(50ng/ml)、アスコルビン酸(30μM)、レチノイン酸(0.1μM)、インスリン-トランスフェリン-セレン(ITS-G)(1:1000)、KSR(0.0025%)、Pen strep(100X)、NEAA(100X)、VIT A非含有B27(0.5X)、N2(100X)、Glutamax(100X)及びBME(100X)を含有する実験21/22 TEC培地を添加した。培地を毎日全部交換した。
【0216】
PI-103を実験21/22培地Bに添加することで、DE分化が強化された。AFE段階での2D培養への移行により、実験18と比較してFOXN1発現がより少なくなった。
【0217】
実験23
VPE段階で3D培養から2D培養へ移行する効果を試験した。実験23培地BへのCHIR99021添加の影響を試験した。
【0218】
懸濁培養におけるiPSC系の増大
1日目に、250万の単一iPSCを1日目の懸濁液に入れ、ROCK阻害物質Y27632(10μM)を添加した。シェーカーを70RPMに設定した。2日目に、上清をスフェロイドと一緒に15mlコニカルチューブ内に移した。スフェロイドを室温にて250gで5分間遠心分離し、上清を吸引した。スフェロイドをPBSで洗浄し、再び遠心分離した。上清を除去し、1mlの培地を、6ウェルの低接着プレートの各ウェルに添加した。6ウェルプレートの各ウェルに1ml添加する前に、6mlの実験23培地Aを1日経過したiPSC凝集体に添加し、穏やかに混合した。
【0219】
胚体内胚葉(DE)へのiPSCの分化
DEへのiPSCの分化には、小分子及び成長因子を適切なタイミングで導入する必要がある。1~2日目に、細胞を、DMEM-F12、及び小分子/因子のアクチビンA(100ng/mL)、2μMのCHIR99021、ITS(1:1000)、KSR(0.05%)、Pen strep(100X)、PI-103(25nM)及びNEAA(100X)を含む実験23培地A中で培養した。3~4日目に、DMEM-F12、及び小分子/因子のアクチビンA(100ng/mL)、CHIRR9901(2μM)、LDN193189(200nM)、PI-103(25nM)、インスリン-トランスフェリン-セレン(ITS-G)(1:1000)、KSR(0.05%)、Pen strep(100X)及びNEAA(100x)を含有する実験23培地Bを添加した。
【0220】
5日目に、DMEM-F12、及び小分子/因子のアクチビンA(100ng/mL)、LDN193189(200nM)、PI-103(25nM)、インスリン-トランスフェリン-セレン(ITS-G)(1:1000)、KSR(0.05%)、Pen strep(100X)、NEAA(100x)を含有する実験23培地Bを添加した。
【0221】
前方前腸内胚葉(AFE)への胚体内胚葉(DE)の分化
6日目に、凝集体を、Geltrexでコーティングされた24ウェルプレート上に播種した。6~8日目に、DMEM-F12、及び小分子/因子のSB431542(10μM)、LDN193189(200nM)、Pen Strep(100X)、インスリン-トランスフェリン-セレン(ITS-G)(1:1000)、KSR(0.05%)、NEAA(100x)、VIT A非含有B27(0.5X)、BME(100X)を含有する実験23 AFE培地*を添加した。
【0222】
腹側咽頭内胚葉(VPE)への前方前腸内胚葉(AFE)の分化
9日目に、凝集体を、Geltrexでコーティングされた24ウェルプレート上に播種した。9~10日目に、DMEM-F12、及び小分子/因子のSB431542(10uM/ml)、レチノイン酸(0.1μM)、FGF8b(50ng/ml)、インスリン-トランスフェリン-セレン(ITS-G)(1:1000)、KSR(0.0025%)、Pen strep(100X)、NEAA(100X)、VIT A非含有B27(0.5X)、及びBME(100X)を含有する実験23 VPE1培地を添加した。10日目に、培地を半分のみ添加した。11~12日目に、DMEM-F12、及び小分子/因子のレチノイン酸(0.1μM)、FGF8b(50ng/ml)、ノギン(50ng/ml)、CHIR99021(2μM)、アスコルビン酸(30μM)、インスリン-トランスフェリン-セレン(ITS-G)(1:1000)、KSR(0.0025%)、Pen strep(100X)、NEAA(100X)、VIT A非含有B27(0.5X)、Glutamax(100X)、BME(100X)及びN2(100X)を含有する実験23 VPE2培地を添加した。
【0223】
胸腺上皮前駆細胞(TEP)への腹側咽頭内胚葉(VPE)の分化
13~16日目に、DMEM-F12、及び小分子/因子のFGF8b(50ng/ml)、FGF10(50ng/ml)、BMP4(50ng/ml)、CHIRR99(2μM)、アスコルビン酸(30μM)、インスリン-トランスフェリン-セレン(ITS-G)(1:1000)、KSR(0.0025%)、Pen strep(100X)、NEAA(100X)、VIT A非含有B27(0.5X)、Glutamax(100X)、BME(100X)及びN2(100X)を含有する実験23 TEP培地を添加した。14、15及び16日目に、培地を半分のみ交換した。17~20日目に、DMEM-F12、及び小分子/因子のBMP4(50ng/ml)、FGF8b(50ng/ml)、アスコルビン酸(30μM)、レチノイン酸(0.1μM)、インスリン-トランスフェリン-セレン(ITS-G)(1:1000)、KSR(0.0025%)、Pen strep(100X)、NEAA(100X)、VIT A非含有B27(0.5X)、N2(100X)、Glutamax(100X)及びBME(100X)を含有するTEC培地を添加した。培地を毎日全部交換した。
【0224】
実験23培地BへのCHIRR99の添加は分化を強化することが判明した。
【0225】
実施例12 DE分化の最適化
実施例11に記載の実験21及び実験23は、DEへの3D分化の最適条件を同定するために設計された。実験23で分化培地にWnt活性化物質を含めることで、DEへの分化効率は、実験21及び実験22でWnt活性化物質を含めない場合と比較して、増加した。実験23ではSox17/FoxA2二重陽性細胞がより多かった一方、実験21及び実験22ではSox17/FoxA2陰性細胞がより多かった。
【0226】
より高いEPCAM/FoxA2二重陽性細胞の発現は、実験23でより高かった。同様に、SOX2/Tra1-60発現は、Tra1-60/SOX2二重陰性細胞のレベルでより高かった一方、Tra1-60/Sox2二重陽性細胞の小集団は、実験21/22で持続的に観察された(未分化iPSC細胞と思われる)。
【0227】
CXCR4発現は、実験21及び実験22と比較して、実験23ではより低かった。
【0228】
まとめると、多能性状態のiPSCの分化は実験23ではより完全であることが判明した。
【0229】
実施例13 TEPの2D培養
スフェロイド(本明細書では「3D培養物」ともいう)を、3D条件でiPSCからDE及びAFEに分化するように誘導した。後続の2D培養ステップ(即ち、細胞をGeltrex中で培養)は、最終のFoxN1陽性TEP細胞への誘導に重要であることが判明した。iPSCからTEPへの分化に関連するマーカーの発現を、実施例11に記載の様々な分化プロトコルについて分化の進行段階で測定した。重要な発生遺伝子をマーカーとして使用したところ、いくつかの条件が重要であると判明した。3DでのAFE誘導による2Dへの移行のタイミングと2DでのAFE誘導の比較は、VPE1段階での重要なVPEマーカーHOXA3(
図5A)、Pax1(
図5B)及びPSMB11(
図5C)の上方制御によってマークされたように、iPSCのTEPへの更なる分化に関して3DでのAFE誘導が2DでのAFE誘導を上回ることを示した。3Dの実験23条件でのAFEは、実験18の2D培養でのAFEと比較して、VPE1段階までのHOXA3、PAX1、及びPSMB11の有意に高い発現を示した。
【0230】
FoxN1+TEPへの誘導を2D条件、即ち、培地を含有するGeltrexでの培養下で観察した(
図5D)。スフェロイドをGeltrexに接着させるか又はスフェロイドを単一細胞に解離しGeltrex上に再プレーティングすることによって、スフェロイドから2D培養への移行を実施した。この分析は、スフェロイドをGeltrexに接着させることにより、FOXN1+TEPへのより強力で一貫した分化がもたらされることを示した(
図5D)。FOXN1+TEP/TECの高発現は、2D培養条件下でのみ観察された。実験16では、TEPの3D培養は、実験18のTEPの2D培養と比較して、FOXN1発現をもたらさなかった。実験16でTEPを3D培養から2D培養に移行したところ、FOXN1発現の誘導が示された。実験16では、スフェロイドをGeltrexに接着させるか(実験16A)又はスフェロイドを単一細胞に解離してからGeltrex上に再プレーティングする(実験16B)ことによって、3Dスフェロイドを2D培養条件に移した。
図5Dに示すように、実験16Aの条件では、FOXN1陽性TEPの強力で一貫した分化がもたらされた。
【0231】
実施例14 FOXN1の異所性発現
TEP分化に対するFOXN1の異所性発現の効果を試験した。TEPをFOXN1でトランスフェクトした。FOXN1の発現を、FOXN1のコード領域を標的とするプライマーを使用して測定した。
図6Aに示すように、FOXN1 mRNAのトランスフェクションにより、外因性及び内因性mRNA分子を含む高レベルのFOXN1 mRNAが生成された。3’UTRを持つmRNAのみを標的とするプライマーを使用したところ、外因的に発現されたmRNAによって誘導された内因性FOXN1 mRNAの強力な発現が観察された。外因性mRNAに付加されたHAタグを標的とするプライマーを使用したところ、TEPにおける外因性mRNAの発現が確認された(
図6A)。
【0232】
外因性及び内因性FOXN1 mRNAの高発現により、FoxN1の直接標的、例えば、CCL25、DLL4が強力に誘導された(
図6B)。
【0233】
実施例15 胸腺細胞へのiPSCの分化
実験27
懸濁培養におけるiPSC系の増大
分化プロトコルを開始する前に、iPSCを、直径が約300~400マイクロメートルに達するまで、懸濁液中で3~4日間培養した。次に、Accutaseを使用してiPSCを継代して凝集体を単一細胞に変化させた。250万の単一iPSC細胞を6ウェル超低接着プレート中の懸濁液に入れた。iPSCを、10μMのROCK阻害物質Y27632を含有するstem scale培地中で37℃にて培養した。
【0234】
1mlの上清をプレートから取り出し、1mlの予め加温したstem scale培地を培養物に添加した。2日目に、上清をスフェロイドと一緒に15mlコニカルチューブ内に移し、250Gで5分間遠心分離した。スフェロイドをPBSで洗浄し、6ウェル低接着プレートの各ウェルにおいて1mlの培地Aに再懸濁させた。
【0235】
胚体内胚葉(DE)へのiPSCの分化
DEへのiPSCの分化には、小分子及び成長因子を適切なタイミングで導入する必要がある。1~2日目に、iPSCを、PI-103(25nM)を添加した培地A(基本培地:DMEM-F12、アクチビンA(100ng/mL)、2μMのCHIR99021、インスリン-トランスフェリン-セレン(ITS-G)(1:1000)、KSR(0.05%)、Pen strep(1:100)、NEAA(1:400))中で培養した。2日目に、1mlの培地を除去し、1mlの新しく調製した培地A+PI-103を添加した。3~5日目に、培地B(DMEM-F12、アクチビンA(100ng/mL)、LDN193189(200nM)、インスリン-トランスフェリン-セレン(ITS-G)(1:1000)、KSR(0.05%)、Pen strep(1:200)、NEAA(1:400))及びPI-103(25nM)を添加した。3日目に、CHIRR9901(2μm)を培地Bに添加した。3~5日目に、1mlの培地を除去し、1mlの新しく調製した培地を添加した。
【0236】
前方前腸内胚葉(AFE)への胚体内胚葉(DE)の分化
6日目に、上清をスフェロイドと一緒に15mlコニカルチューブ内に移した。スフェロイドを室温にて250Gで5分間遠心分離し、上清を除去した。スフェロイドをPBSで洗浄し、DMEM-F12、及びFGF8b(50ng/ml)に加えて、因子/小分子のSB431542(10μM)、LDN193189(200nM)、アスコルビン酸(10μM)、ペニシリン-ストレプトマイシン(1:200)、N2(1:100)、Glutamax(1:100)、BME(1:100)、インスリン-トランスフェリン-セレン(ITS-G)(1:1000)、KSR(0.05%)、NEAA(100X)、B27(RA非含有)(1:200)を含むAFE培地-2を含有する6ウェル低接着プレート中にプレーティングした。
【0237】
腹側咽頭内胚葉(VPE)への前方前腸内胚葉(AFE)の分化
8日目に、上清をスフェロイドと一緒に15mlコニカルチューブ内に移した。スフェロイドを250Gで5分間遠心分離し、上清を吸引した。スフェロイドをPBSで洗浄し、DMEM-F12を含み且つ因子/小分子のSB431542(10uM/ml)、レチノイン酸(0.1μM)、FGF8b(50ng/ml)、レチノイン酸(0.1μM)、インスリン-トランスフェリン-セレン(ITS-G)(1:1000)、KSR(0.0025%)、ペニシリン-ストレプトマイシン(1:200)、NEAA(100X)及びVIT A非含有B27(0.5X)、アスコルビン酸(10μM)、Glutamax(1:100)、BME(1:100)、N2(1:100)及びNEAA(1:400)を有する50μlのVPE1a培地中に再懸濁させた。そして、スフェロイドをGeltrex(1:100)でコーティングされた24ウェルプレートに添加した。
【0238】
9日目に、培地を半分のみ交換した。10~11日目に、DMEM-F12、レチノイン酸(0.1μM)、FGF8b(50ng/ml)、ノギン(50ng/ml)、CHIR99021(2μM)、アスコルビン酸(10μM)、インスリン-トランスフェリン-セレン(ITS-G)(1:1000)、KSR(0.0025%)、ペニシリン-ストレプトマイシン(100X)、NEAA(100X)、VIT A非含有B27(0.5X)、Glutamax(1:100)、BME(1:100)及びN2(1:100)を含有するVPE2b培地を添加した。10及び11日目に、等量の新しく作製したVPE2b培地(500ul)を、凝集体を妨げることなく穏やかに添加した。
【0239】
胸腺上皮前駆細胞及び(TEP)及び胸腺上皮細胞(TEC)への腹側咽頭内胚葉(VPE)の分化
この分化ステップについて、VPE細胞を、胸腺細胞培地中、例えば、TEP培地又はTEC培地中で培養した。12~19日目に、DMEM-F12を含有し且つ因子/小分子のFGF10(50ng/ml)、B27(VIT A非含有)(1:200)、Glutamax(1:100)BME(1:100)、N2(1:100)に加えて、FGF8b(50ng/ml)、BMP4(50ng/ml)、CHIRR99(2μM)、アスコルビン酸(10μM)、インスリン-トランスフェリン-セレン(ITS-G)(1:1000)、KSR(0.0025%)、ペニシリン-ストレプトマイシン(1:200)、NEAA(100X)を有する実験27 TEP培地を細胞に添加した。
【0240】
12日目に、等量の新しく作製したTEP培地を、凝集体を妨げることなく穏やかに添加した。13~19日目に、50%の上清を除去し、新しく調製した実験27 TEP培地を添加した。
【0241】
20~23日目にわたって、細胞を、DMEM-F12、及びFGF10(50ng/ml)、FGF7/KGF(50ng/ml)、RANKL/TRANCE(50ng/ml)、CHIRR99(2μM)に加えて、BMP4(50ng/ml)、FGF8b(50ng/ml)、アスコルビン酸(10μM)、インスリン-トランスフェリン-セレン(ITS-G)(1:1000)、KSR(0.0025%)、Pen strep(100X)、VIT A非含有B27(0.5X)、N2(100X)、Glutamax(100X)、BME(100X)及びNEAA(100X)を含有する実験27 TEC培地に再懸濁させた。
【0242】
実験29
懸濁培養におけるiPSC系の増大
分化プロトコルを開始する前に、iPSCを、直径が約300~400マイクロメートルに達するまで、懸濁液中で3~4日間培養した。次に、Accutaseを使用してiPSCを継代して、凝集体を単一細胞に変化させた。250万の単一iPSC細胞を、6ウェル超低接着プレート中の懸濁液に入れた。iPSCを、10μMのROCK阻害物質Y27632を含有するstem scale培地中で37℃にて培養した。
【0243】
1mlの上清をプレートから取り出し、1mlの予め加温したstem scale培地を培養物に添加した。2日目に、上清をスフェロイドと一緒に15mlコニカルチューブ内に移し、250Gで5分間遠心分離した。スフェロイドをPBSで洗浄し、6ウェル低接着プレートの各ウェルにおいて1mlの培地Aに再懸濁させた。
【0244】
胚体内胚葉(DE)へのiPSCの分化
DEへのiPSCの分化には、小分子及び成長因子を適切なタイミングで導入する必要がある。1~2日目に、iPSCを培地A(基本培地:DMEM-F12、アクチビンA(100ng/mL)、2μMのCHIR99021、インスリン-トランスフェリン-セレン(ITS-G)(1:1000)、KSR(0.05%)、Pen strep(1:100)、PI-103(25nM)、NEAA(1:400))中で培養した。2日目に、1mlの培地を除去し、1mlの新しく調製した培地を添加した。3~5日目に、細胞を培地B(DMEM-F12、アクチビンA(100ng/mL)、LDN193189(200nM)、PI-103(25nM)、インスリン-トランスフェリン-セレン(ITS-G)(1:1000)、KSR(0.05%)、Pen strep(1:200),及びNEAA(1:400)でインキュベートした。4~5日目に、1mlの培地Bを除去し、1mlの新しく調製した培地Bを添加した。
【0245】
前方前腸内胚葉(AFE)への胚体内胚葉(DE)の分化
6日目に、上清をスフェロイドと一緒に15mlコニカルチューブ内に移した。スフェロイドを室温にて250Gで5分間遠心分離し、上清を除去した。スフェロイドをPBSで洗浄し、AFE培地-2を含有する6ウェル低接着プレート(実験29A)又はGeltrexでコーティングされたプレート(実験29B)中にプレーティングした。実験に利用されたAFE培地は、基本培地:DMEM-F12、LDN193189(200nM)、SB431542(10μM)、FGF8b(50ng/ml)、アスコルビン酸(10μM)、インスリン-トランスフェリン-セレン(ITS-G)(1:1000)、Pen Strep(1:200)、B27(RA非含有)(1:200)、N2(1:100)、Glutamax(1:100)、BME(1:100)及びNEAA(1:400)を含有した。7及び8日目に、1mlのAFE培地を除去し、1mlの新しく調製した培地を添加した。
【0246】
腹側咽頭内胚葉(VPE)への前方前腸内胚葉(AFE)の分化
9日目に、実験29Aについて、上清をスフェロイドと一緒に15mlコニカルチューブ内に移した。スフェロイドを室温にて250Gで5分間遠心分離し、上清を吸引した。スフェロイドをPBSで洗浄し、VPE1培地に再懸濁させ、Geltrex(1:100)でコーティングされた24ウェルプレート上にプレーティングした。実験29A及び29Bの両方の細胞とも、9~10日目から、基本培地:DMEM-F12、SB431542(10uM)、FGF8b(50ng/ml)、レチノイン酸(0.1μM)、アスコルビン酸(10μM)、インスリン-トランスフェリン-セレン(ITS-G)(1:1000)、KSR(0.05%)、Pen strep(1:200)、B27(VIT A非含有)(1:200)、Glutamax(1:100)、BME(1:100)、N2(1:100)及びNEAA(1:400)を含むVPE1培地中で培養した。9日目に、等量の新しく作製したVPE1培地(500ul)を、凝集体を妨げることなく穏やかに添加した。
【0247】
10日目に、50%の上清を除去し、新しく調製したVPE1培地(500ul)をウェルごとに添加した。11~12日目に、培地を、基本培地:DMEM-F12、ノギン(50ng/ml)、CHIR99021(2μM)、FGF8b(50ng/ml)、レチノイン酸(0.1μM)、アスコルビン酸(10μM)、インスリン-トランスフェリン-セレン(ITS-G)(1:1000)、KSR(0.0025%)、Pen strep(1:200)、NEAA(1:400)、B27(VIT A非含有)(1:200)、Glutamax(1:100)、BME(1:100)、及びN2(1:100)を含有するVPE2培地で置き換えた。11及び12日目に、等量の新しく作製したVPE2培地(500ul)を、凝集体を妨げることなく穏やかに添加した。
【0248】
胸腺上皮前駆細胞(TEP)への腹側咽頭内胚葉(VPE)の分化
この分化ステップについて、VPE細胞を、胸腺細胞培地、例えば、TEP培地又はTEC培地中で培養した。13~18日目に、培地を、基本培地:DMEM-F12、FGF10(50ng/ml)、BMP4(50ng/ml)、FGF8b(50ng/ml)、CHIRR99(2μM)、アスコルビン酸(10μM)、インスリン-トランスフェリン-セレン(ITS-G)(1:1000)、KSR(0.0025%)、Pen strep(1:200)、B27(VIT A非含有)(1:200)、Glutamax(1:100)、BME(1:100)、N2(1:100)、及びNEAA(1:400)を含有する実験29 TEP培地に置き換えた。13日目に、等量の新しく作製したTEP培地(500ul)を、凝集体を妨げることなく穏やかに添加した。14~18日目に、50%の上清を除去し、新しく調製したTEP培地(500ul)をウェルごとに添加した。19~22日目に、培地を、基本培地:DMEM-F12、FGF10(50ng/ml)、FGF7/KGF(50ng/ml)、RANKL/TRANCE(50ng/ml)、BMP4(50ng/ml)、FGF8b(50ng/ml)、CHIRR99(2μM)、アスコルビン酸(10μM)、インスリン-トランスフェリン-セレン(ITS-G)(1:1000)、KSR(0.0025%)、Pen strep(1:200)、B27(VIT A非含有)(1:200)、Glutamax(1:100)、BME(1:100)、N2(1:100)、NEAA(1:400)、Glutamax(100X)、及びBME(100X)を含有するTEC培地で置き換えた。20~22日目に、50%の上清を除去し、新しく調製したTEC培地(500ul)をウェルごとに添加した。22日目に、実験29B細胞を、単一細胞として、懸濁液(3D)中及びGeltrexでコーティングされたプレート(2D)上に再播種した。残りの細胞を凍結した。凍結した実験29B細胞を懸濁液中で解凍し、TEC培地中で維持した。
【0249】
実験30
懸濁培養におけるiPSC系の増大
分化プロトコルを開始する前に、iPSCを、直径が約300~400マイクロメートルに達するまで、懸濁液中で3~4日間培養した。次に、Accutaseを使用してiPSCを継代して、凝集体を単一細胞に変化させた。250万の単一iPSC細胞を、6ウェル超低接着プレート中の懸濁液に入れた。iPSCを、10μMのROCK阻害物質Y27632を含有するstem scale培地中で37℃にて培養した。
【0250】
1mlの上清をプレートから取り出し、1mlの予め加温したstem scale培地を培養物に添加した。2日目に、上清をスフェロイドと一緒に15mlコニカルチューブ内に移し、250Gで5分間遠心分離した。スフェロイドをPBSで洗浄し、6ウェル低接着プレートの各ウェルにおいて1mlの培地Aに再懸濁させた。
【0251】
胚体内胚葉(DE)へのiPSCの分化
DEへのiPSCの分化には、小分子及び成長因子を適切なタイミングで導入する必要がある。1~2日目に、iPSCを培地A(基本培地:DMEM-F12、アクチビンA(100ng/mL)、2μMのCHIR99021、インスリン-トランスフェリン-セレン(ITS-G)(1:1000)、KSR(0.05%)、Pen strep(1:100)、PI-103(25nM)、及びNEAA(1:400))中で培養した。3~5日目に、細胞を、基本培地:DMEM-F12、アクチビンA(100ng/mL)、LDN193189(200nM)、PI-103(25nM)、インスリン-トランスフェリン-セレン(ITS-G)(1:1000)、KSR(0.05%)、Pen strep(1:200)及びNEAA(1:400)を含有する培地Bで処理した。
【0252】
前方前腸内胚葉(AFE)への胚体内胚葉(DE)の分化
6日目に、上清をスフェロイドと一緒に15mlコニカルチューブ内に移した。スフェロイドを室温にて250Gで5分間遠心分離し、上清を除去した。スフェロイドをPBSで洗浄し、DMEM-F12、及びFGF8b(50ng/ml)に加えて、因子/小分子のSB431542(10μM)、LDN193189(200nM)、アスコルビン酸(10μM)、ペニシリン-ストレプトマイシン(1:200)、N2(1:100)、Glutamax(1:100)、BME(1:100)、NEAA(100X)、B27(RA非含有)(1:200)を含むAFE培地-2を含有する6ウェル低接着プレート中にプレーティングした。
【0253】
腹側咽頭内胚葉(VPE)への前方前腸内胚葉(AFE)の分化
9日目に、上清をスフェロイドと一緒に15mlコニカルチューブ内に移した。スフェロイドを室温にて250Gで5分間遠心分離し、上清を吸引した。スフェロイドをPBSで洗浄し、VPE1培地に再懸濁させ、Geltrex(1:100)でコーティングされた24ウェルプレート上にプレーティングした。細胞を、9~11日目から、基本培地:DMEM-F12、SB431542(10uM)、FGF8b(50ng/ml)、レチノイン酸(0.1μM)、アスコルビン酸(10μM)、インスリン-トランスフェリン-セレン(ITS-G)(1:1000)、KSR(0.05%)、Pen strep(1:200)、B27(VIT A非含有)(1:200)、Glutamax(1:100)、BME(1:100)、N2(1:100)、NEAA(1:400)を含むVPE1培地中で培養した。10日目に、等量の新しく作製したVPE1培地(500μl)を、凝集体を妨げることなく穏やかに添加した。11日目に、50%の上清を除去し、新しく調製したVPE1培地(500ul)をウェルごとに添加した。12~13日目に、培地を除去し、基本培地:DMEM-F12、ノギン(50ng/ml)、CHIR99021(2μM)、FGF8b(50ng/ml)、レチノイン酸(0.1μM)、アスコルビン酸(10μM)、インスリン-トランスフェリン-セレン(ITS-G)(1:1000)、KSR(0.0025%)、Pen strep(1:200)、NEAA(1:400)、B27(VIT A非含有)(1:200)、Glutamax(1:100)、BME(1:100)、及び2(1:100)を含有するVPE2培地で置き換えた。
【0254】
13日目に、等量の新しく作製したVPE2培地(500μl)を、凝集体を妨げることなく穏やかに添加した。
【0255】
胸腺上皮前駆細胞(TEP)への腹側咽頭内胚葉(VPE)の分化
この分化ステップについて、VPE細胞を、胸腺細胞培地、例えば、TEP培地又はTEC培地中で培養した。14~16日目に、細胞を、DMEM-F12、FGF10(50ng/ml)、FGF7/KGF(50ng/ml)、RANKL/TRANCE(50ng/ml)、BMP4(50ng/ml)、FGF8b(50ng/ml)、CHIRR99(2μM)、アスコルビン酸(10μM)、インスリン-トランスフェリン-セレン(ITS-G)(1:1000)、KSR(0.0025%)、Pen strep(1:200)、B27(VIT A非含有)(1:200)、Glutamax(1:100)、BME(1:100)、N2(1:100)、及びNEAA(1:400)を含む実験30 TEP培地で処理した。15及び16日目に、新しいTEP培地を細胞に添加した。17~22日目から、細胞を、DMEM-F12、FGF10(50ng/ml)、FGF7/KGF(50ng/ml)、RANKL/TRANCE(50ng/ml)、BMP4(50ng/ml)、FGF8b(50ng/ml)、CHIRR99(2μM)、アスコルビン酸(10μM)、インスリン-トランスフェリン-セレン(ITS-G)(1:1000)、KSR、(0.0025%)、Pen strep(1:200)、B27(VIT A非含有)(1:200)、Glutamax(1:100)、BME(1:100)、N2(1:100)、NEAA(1:400)、Glutamax(100X)、及びBME(100X)を含有するTEC培地で処理した。
【0256】
17~22日目に、50%の上清を除去し、新しく調製したTEC培地(500μl)をウェルごとに添加した。22日目に、細胞をAccutaseで処理して単一細胞を調製し、マウスに移植した。
【0257】
実施例16 iPSC由来胸腺細胞におけるFOXN1発現
2Dでの細胞培養と懸濁液中の3D凝集体での細胞培養の比較は、iPSCから最適な胸腺細胞集団を得るために調整する必要がある更に別の変数である。他の変数は、異なる段階で培養に利用される成長因子及び小分子を含む。腹側咽頭内胚葉(VPE)段階での、3D凝集体から2Dでの培養への移行により、HOXA3、PAX9、PAX1等のマーカーの発現を促進することができる。iPSC由来胸腺細胞は、異なる誘導体で胸腺細胞マーカーFOXN1を発現することが一貫して判明した(
図7)。GAPDHに対して正規化された0.000025~0.0001のレベルでFOXN1を発現するTEPは、試験された全ての実験で観察された。よって、16~18日のプロトコルは、30日と長くなり得る他のプロトコルと比較して、FOXN1陽性細胞の生成が可能である。
【0258】
実施例17 成長因子及び培養条件の最適化
実験16~23では、TEP分化の5日目までのFOXN1の発現及び他のマーカーの発現。これらの実験では、TEPを更に1週間培養することで、FOXN1の下方制御が起こる。FGF7(KGF)、FGF10及びRANKL等の成長因子は、TEPからTECへの後期成熟に重要であることが記載されている。5日を超えたTEP培養をサポートするためにTEP培地にFGF7、FGF10、KGF及びRANKLを添加することを試験した。実験29及び実験30でTEP培地をFGF7、FGF10及びRANKLで補充することで、FOXN1の発現を維持していながらTEPの培養を5日超えて2週間まで延長した。iPSC由来胸腺細胞産物のスケールアップ製造を促進するために、完全に3D懸濁液での分化プロトコルを確立できることが重要である。3D懸濁培養物中でTEPを維持する実現可能性もこれらの実験において調べた。TEP段階で、単一細胞を培養プレートから採取し、3Dへの凝集体としてTEP培地に再懸濁させた。異なる実験からのTEPにおけるFOXN1発現レベルは
図8に示す。Exp29-TEPでは、FOXN1発現をTEP段階の1週目で検出した。TEPを2D培養物に再播種した場合、1週間後にFOXN1発現が検出されなかったが、2週目までにFOXN1が培養物中で検出された。単一細胞TEPが3D-凝集体培養物に再懸濁したExp29B-TEP2-3Dでは、FOXN1発現は1週間までに既に検出されており、2週目までに更に高くなった。実験30では、2D又は3Dでの延長培養前でも、同等のFOXN1発現が検出された。
【0259】
実施例18 TEPを凍結及び解凍する効果
iPSC-TEPを凍結、解凍、回復させる能力は、iPSC-TEPの使用と臨床現場への配送をサポートする上で重大なロジスティクス価値を提供する。iPSC-TEPを凍結及び解凍する実現可能性。実験29B TEP1細胞の単一細胞懸濁液を凍結し、その後TEP培地中で3D懸濁液として解凍した。1日目に凝集体を観察したところ、そのサイズ及び緻密度が増加した。8日目まで、凝集体の直径は200~300μmに達した。異なる培養条件下のExp29B TEPのFOXN1発現は
図9に示す。3D凝集体での凍結解凍「Exp29B-FT-TEP」細胞は、解凍後8日目にヒト胸腺と同等のレベルでFOXN1を発現した。Exp29B-FT-TEPを3週間の3Dでの29B-TEPと比較した。
【0260】
実施例19 胸腺細胞集団のインビボ移植
1~4x10
6のiPSC由来TEPを、25μLのGeltrexに懸濁させ、6週齢のヌードマウスの腎被膜下に注射した。3匹の動物には実験18からのiPSC由来胸腺細胞を移植し、8匹の動物には実験21/22からの細胞を移植した。3週目、11週目及び13週目に移植マウスから血液サンプルを採取し、iPSC-TEP移植後マウスの造血細胞数を胎仔胸腺移植マウス及び対照の非移植動物と比較した。
図10Aに示すように、TEPを移植したマウスのCD45細胞のCD8+%の百分率は、3週目から13週目及び16週目まで増加した。全体的に、CD8+細胞の百分率は、実験18で16週目に、実験21/22で14週目に、対照より高かった。指摘すべきことは、実験21/22でCD8+細胞を示す
図10Bに示すマウスの一部には、技術的理由により移植細胞を組み込まなかった2匹のマウスが含まれた点である。CD45+細胞のCD8+%とは対照的に、CD4+細胞、B220+及びNK1.1+細胞を含む他の造血細胞集団は、対照と比較して、実験18及び実験21/22で3週目から11~13週目及び14~16週目まで百分率の数値が増加しなかった(
図10C、
図10D及び
図10E)。これらのデータは併せて、本明細書に記載のiPSC由来胸腺細胞がリンパ球新生を促進できることを示す。
【0261】
実施例20 FOXNを発現するiPSC由来TEPの特徴決定
実験31によって生成されたTEPを、抗EPCAM抗体を使用して4つの異なる画分:EPCAM高、中、低、及び陰性に分類した。分類された画分を、示された様々なマーカーについてqPCRによって分析した(
図11)。FOXN1はほぼEPCAM高の集団に限られて発現された。PAX9、SIX1、及びクローディン4を含む、TEP発達及び成熟に関与する遺伝子も、EPCAM高の集団で発現された。HOXA3、TBX1及びDLL4は、優先的にEPCAM低~陰性画分で発現された。
【0262】
実施例21 胸腺上皮細胞におけるマーカーの頻度
単一細胞RNA-seqを、本明細書に記載の分化プロトコルを使用して調製されたiPSC由来TEPについて行った。実験7(A~C)、21、22、23、27、29、及び30からのデータを分析した。実験21及び実験23について、技術的再現性を評価するためにサンプルの複製も試験した。実験29及び実験30について、3Dから2Dへのプロトコルバリエーションに加えて、TEPの凍結解凍(FT)効果、及び2Dへの再プレーティング(Exp30FT-2D)の効果と3Dへの再プレーティング(Exp30FT-3D)の効果との比較を試験した。実験29では、2Dへの播種(Exp29B-2D)と3Dでの凍結解凍後の再プレーティング(29BFT-3D)の比較を含めて、Exp29Aと29Bの比較を、様々な条件で試験した。これらの実験のうち、移植されたサンプルは、FOXN1高(Exp29BFT-3D)、FOXN1低(Exp30、Exp30FT-3D)、及びFOXN1-(Exp30FT-2D)であった。
【0263】
16個のiPSC由来TECサンプル(14個の異なる実験)からの122,436細胞の単一細胞トランスクリプトームをHarmonyによって統合し、バッチ効果の除去を確保するためにUMAP分析を行った。次に、TEC(EPCAM、KRT8、FOXN1、IVL等)、及び多能性(POU5F1、NANOG)について選択された遺伝子の遺伝子発現分布をプロットした。結果は
図12Aに示す。EPCAM及びKrt-8は殆どの実験で高い百分率で広く発現されたが、その他は、実験全体を通じて異なる頻度で発現される。バイオリンプロットから、FOXN1がExp29BFT-3DのTECでより高度に発現され、最も高いqPCR発現データと一致することが観察された。Exp29BFT-3D細胞も、mTEC細胞及び角化様mTEC細胞に特異的な遺伝子であるマーカーKRT5及びインボルクリン(IVL)の最も高い発現を示した。Exp30FT-2D及びExp30FT-3Dは、mTEC細胞に特異的なマーカーであるCCL21を発現する細胞が検出された唯一の実験であった。最後に、指摘すべきことは、別のmTECマーカーFEZF2も、胸腺リンパ球新生活性を持つものを含むiPSC-TEPの一部で高度に発現される点である。
【0264】
図12Bは、iPSC分化胸腺細胞及び胸腺組織サンプルにおけるFOXN1+、KRT8+及びEPCAM+細胞の百分率の定量化を示す。バイオリンプロット分析と一致して、サンプルExp29BFT-3Dは、FOXN1+細胞の頻度が最も高かった。指摘すべきことは、ヒト胸腺において、FOXN1+細胞のレベルが出生前及び新生児時に最も高く(10~15%)、25歳までに該頻度が2~3%に大幅に減少する点である。
【0265】
実施例22 未分化多能性幹細胞の検出限界
Exp29B3Dサンプル中の多能性遺伝子制御ネットワークの状態を公平に評価するために、このサンプルから分析された7166細胞の単一細胞トランスクリプトームを、高品質のバルクRNA-seq由来の多能性遺伝子管理ネットワーク(胚性幹細胞、escと呼ばれる)及びパネルに示す13個の他の細胞型の高品質のバルクRNA-seqデータを含むCellNet訓練データセットを使用して、分類した。分析によると、cTEC及びmTEC細胞以外に、iPSC-TEPにおける他の主な細胞型は神経内分泌細胞であった。これらのデータは、多能性幹細胞シグネチャを有する細胞を検出するこのアプローチの感度の程度が非常に高いことを示す。加えて、胚性幹細胞ネットワークの活性化状態はiPSC細胞において非常に低いようであり、多能性プログラムの全体的な下方制御を示唆している。
【0266】
OCT4(POU5F1)及びNanog陽性細胞の百分率を、対数正規化された発現レベルがゼロより高い全ての細胞に基づいて定量化した。全体的に、POU5F1及びNANOGの発現は、iPSC-TEPサンプルからの細胞の2%未満であった。
【0267】
実施例23 インビボ胸腺リンパ球新生活性と移植iPSC由来TEPのFOXN1レベルとの相関
3群のiPSC由来TEP細胞を、Geltrexと共に腎被膜下腔内に移植した:高FOXN1(GAPDHに対して18~20倍、x10
4)を有する細胞、低FOXN1(GAPDHに対して5~8倍、x10
4)を有する細胞、及びFOXN1について陰性の細胞。対照動物にはGeltrexのみを偽移植した。胸腺リンパ球新生の回復の証拠を、末梢循環における単一陽性CD4
+及びCD8
+細胞の出現を追跡することによって測定した。
図13は、移植後の異なる時点での動物の末梢血中のCD8
+又はCD4
+細胞の頻度を示すヒストグラムである。FOXN1
高iPSC-TEP及びより低い程度のFOXN1
低iPSC-TEPを移植した動物において、対照動物を大幅に上回るレベルでCD4及びCD8細胞が観察された。FOXN1陰性iPSC由来TEPは、胸腺リンパ球新生の証拠を示さなかった。よって、データは、iPSC由来TEPにおける高レベルのFOXN1発現と胸腺リンパ球新生を回復する能力との間の正相関を示す。
【0268】
実施例24 一次ヒト胸腺と比較したiPSC由来TECの亜集団の同一性及び頻度
16個のiPSC由来TECサンプル(14個の異なる実験)からの122,436細胞の単一細胞トランスクリプトームをHarmonyによって統合し、バッチ効果の除去を確保するためにUMAP分析を行った。そして、全てのiPSC由来TEPサンプルからのiPSC単一細胞トランスクリプトミクスを、Bautistaら(Bautista, J.L., et al. Nat Commun 12, 1096 (2021))によって生成されたヒト胸腺細胞の参照単一細胞アトラスに参照マッピングした。Symphonyによって計算された平均分類スコアを、細胞型ごとに計算した。異なる実験からのサンプル全体にわたってSymphony予測細胞型の全体的な保存が観察された。例えば、Exp29BFT-3Dは、サンプル実験30及びExp30FT-3DからのiPSC由来胸腺細胞と共に、角質細胞様mTECとしての分類スコアが高い細胞を、含有する。
【0269】
次に、サンプル全体にわたってSymphony予測細胞型の百分率を計算した。一般に、全てのサンプルで見つかった最も頻繁な細胞はcTEC高、cTEC低、及び神経内分泌細胞であった。ヒト胸腺における最も頻繁な細胞も、cTEC高及びcTEC低細胞である。
【0270】
実施例25 iPSC由来TEP移植マウスにおけるリンパ球新生
胎仔胸腺断片又はiPSC由来のTEPを6週齢の胸腺欠損ヌードマウスの腎被膜下腔内に移植した。1~4x10
6のiPSC由来TEPを、15μlのGeltrexに懸濁させ、6週齢のヌードマウスの腎被膜下に導入した。胎仔胸腺について、E13.5胎仔葉を2DGで5日間培養してT前駆細胞を枯渇させた。動物の1群において、3つの胎仔葉を断片として各腎被膜に移植した。別の群において、単一細胞懸濁液を2DG処理胎仔胸腺から調製し、細胞懸濁液として移植した。移植後の異なる時点で、T、B及びNK細胞を含む造血細胞のフローサイトメトリー分析のために動物から採血した。ここで、CD4+及びCD8+T細胞のデータのみに注目する。胸腺リンパ球新生を再構成できるiPSC-TEPのベンチマークを確立するために、異なるレベルのFOXN1を発現するiPSC-TEP(
図14)を試験した。移植されたマウス胎仔胸腺細胞懸濁液は、6週目に検出可能なTリンパ球新生を回復したが、胎仔胸腺断片と比較してCD8+及びCD4+細胞のレベルが僅かに低かった。FOXN1が高いiPSC-TEPは、6週目あたりから対照動物の1%レベルを上回るCD8及びCD4細胞を示した。CD8レベルの範囲(2~4%)はCD4(1~2%)より高い。FOXN1低の動物は、バックグラウンドを上回る一定レベルのCD4及びCD8細胞を有するようであった。FOXN1が低いiPSC-TEPによる新規胸腺リンパ球新生は、Geltrex対照動物における外れ値のため決定できなかった。B細胞(B220)及びNK細胞(NK1.1)等のような他の造血細胞の頻度は、ヌード対照とiPSC-TEP移植動物の間で同様であった。
【0271】
移植iPSC-TEPの胸腺リンパ球新生から生成されたT細胞の機能的応答を評価するために、脾細胞を屠殺した動物から採取し、サイトカイン放出試験に備えた。細胞をPMA/イオノマイシンで刺激し、T細胞活性化シグナルに応答して産生されたサイトカインをフロー染色によって分析した。非刺激条件下で、移植マウスからの脾細胞でバックグラウンド染色レベルが観察された。Geltrex移植からの活性化された脾細胞は、3.63%の低いレベルでIFNγ+TNFα+産生細胞を示した。対照的に、iPSC由来TEC及び胎仔胸腺移植からのCD4+細胞は、それぞれ、12.3%及び5.8%のIFNγ+TNFα+産生細胞を示した。CD8集団におけるIFNγ又はTNF発現細胞も、Geltrex移植と比較してiPSC-TEC及び胎仔胸腺移植の両方でより高かった。結論として、PMA/イオノマイシン刺激により、対照脾細胞と比較してサイトカインIFNγ及びTNFαがより多く放出された。
【0272】
実施例26 胸腺細胞へのiPSC細胞の分化(実験31)
懸濁培養におけるiPSC系の増大
0日目に、培養された成熟iPSC(懸濁液中で3~4日間(3D)、直径300~400マイクロメートル)を、予め加温したAccutaseで処理して凝集体を単一細胞に変化させた。3百万の単一iPSCをROCK阻害物質Y27632(10μM)と共に、Stem scale培地における6ウェル超低接着プレート中の懸濁液にプレーティングした。1日目に、予め加温したstem scale培地を培養物に添加した。2日目に、上清及びスフェロイドを15mlコニカルチューブ内に移した。スフェロイドを室温にて250Gで5分間遠心分離し、上清を吸引した。1mlの培地Aを6ウェル低接着プレートの各ウェルに添加し、プレートを37℃のインキュベーターでインキュベートした。培地Aは、基本培地:DMEM-F12、アクチビンA(100ng/mL)、2μMのCHIR99021、インスリン-トランスフェリン-セレン(ITS-G)(1:1000)、KSR(0.05%)、ペニシリン-ストレプトマイシン(1:100)、PI-103(25nM)、及びNEAA(1:400)を含むように調製された。
【0273】
胚体内胚葉(DE)へのiPSCの分化
細胞を1~2日目に培地A中で培養し、3~5日目に培地B中で培養した。培地Aは、基本培地:DMEM-F12、アクチビンA(100ng/mL)、2μMのCHIR99021、インスリン-トランスフェリン-セレン(ITS-G)(1:1000)、KSR(0.05%)、ペニシリン-ストレプトマイシン(1:100)、PI-103(25nM)、及びNEAA(1:400)を含むように調製された。培地Bは、基本培地:DMEM-F12、アクチビンA(100ng/mL)、LDN193189(200nM)、PI-103(25nM)、インスリン-トランスフェリン-セレン(ITS-G)(1:1000)、KSR(0.05%)、Pen strep(1:200)、NEAA(1:400)を含むように調製された。
【0274】
前方前腸内胚葉(AFE)への胚体内胚葉(DE)の分化
6日目に、上清及びスフェロイドを15mlコニカルチューブ内に移した。スフェロイドを室温にて250Gで5分間遠心分離し、上清を吸引した。スフェロイドをPBSで洗浄し、1mlのAFE培地に再懸濁させ、6ウェル低接着プレート上にプレーティングした。この実験では細胞が凝集体として懸濁液中で保持された。AFE培地は、基本培地:DMEM-F12、LDN193189(200nM)、SB431542(10μM)、FGF8b(50ng/ml)、アスコルビン酸(10μM)、Pen Strep(1:200)、B27(RA非含有)(1:200)、N2(1:100)、Glutamax(1:100)、BME(1:100)、NEAA(1:400)、ITS36(1:1000)、KSR(0.05%)を含むように調製された。
【0275】
腹側咽頭内胚葉(VPE)への前方前腸内胚葉(AFE)の分化
24ウェルプレートを、室温にて1時間放置したGeltrex(1:100)でコーティングした。9日目に、上清をスフェロイドと一緒に15mlコニカルチューブ内に移した。スフェロイドを室温にて250Gで5分間遠心分離し、上清を吸引した。スフェロイドをPBS中で洗浄した。250μlのVPE1培地を、Geltrexでコーティングされた各ウェルに添加した。VPE1培地は、基本培地:DMEM-F12、SB431542(10uM)、FGF8b(50ng/ml)、レチノイン酸(0.1μM)、アスコルビン酸(10μM)、インスリン-トランスフェリン-セレン(ITS-G)(1:1000)、KSR(0.05%)、Pen strep(1:200)、B27(VIT A非含有)(1:200)、Glutamax(1:100)、BME(1:100)、N2(1:100)、及びNEAA(1:400)を含むように調製された。10日目に、等量の新しく作製したVPE1培地(500ul)を、凝集体を妨げることなく穏やかに添加した。11日目に、50%の上清を除去し、新しく調製したVPE1培地(500ul)をウェルごとに添加した。
【0276】
12~13日目に、VPE2培地を添加した。VPE2培地は、基本培地:DMEM-F12、ノギン(50ng/ml)、CHIR99021(2μM)、FGF8b(50ng/ml)、レチノイン酸(0.1μM)、アスコルビン酸(10μM)、インスリン-トランスフェリン-セレン(ITS-G)(1:1000)、KSR(0.0025%)、Pen strep(1:200)、NEAA(1:400)、B27(VIT A非含有)(1:200)、Glutamax(1:100)、BME(1:100)、及びN2(1:100)を含むように調製された。13日目に、等量の新しく作製したVPE2培地(500ul)を、凝集体を妨げることなく穏やかに添加した。
【0277】
胸腺上皮前駆細胞(TEP)への腹側咽頭内胚葉(VPE)の分化
14~17日目に、細胞をTEP培地中で培養した。TEP培地は、基本培地:DMEM-F12、FGF10(50ng/ml)、BMP4(50ng/ml)、FGF8b(50ng/ml)、CHIRR99(2μM)、アスコルビン酸(10μM)、インスリン-トランスフェリン-セレン(ITS-G)(1:1000)、KSR(0.0025%)、Pen strep(1:200)、B27(VIT A非含有)(1:200)、Glutamax(1:100)、BME(1:100)、N2(1:100)、及びNEAA(1:400)を含むように調製された。
【0278】
15日目に、等量の新しく作製したTEP培地(500μl)を、凝集体を妨げることなく穏やかに添加した。16及び17日目に、50%の上清を除去し、新しく調製したTEP培地(500μl)をウェルごとに添加した。
【0279】
細胞を更に胸腺上皮細胞(TEC)に分化させるために、上清を除去し、細胞を、基本培地:DMEM-F12、FGF10(50ng/ml)、BMP4(50ng/ml)、FGF8b(50ng/ml)、CHIRR99(2μM)、アスコルビン酸(10μM)、インスリン-トランスフェリン-セレン(ITS-G)(1:1000)、KSR(0.0025%)、Pen strep(1:200)、B27(VIT A非含有)(1:200)、Glutamax(1:100)、BME(1:100)、N2(1:100)、NEAA(1:400)、Glutamax(100X)、及びBME(100X)を含有するTEC1培地中で培養した。18及び19日目に、50%の上清を除去し、新しく調製したTEC1培地(500ul)をウェルごとに添加した。20~22日目に、RANKLを含有するTEC2培地を添加した。TEC2培地は、基本培地:DMEM-F12、FGF10(50ng/ml)、FGF7/KGF(50ng/ml)、RANKL/TRANCE(50ng/ml)、BMP4(50ng/ml)、FGF8b(50ng/ml)、CHIRR99(2μM)、アスコルビン酸(10μM)、インスリン-トランスフェリン-セレン(ITS-G)(1:1000)、KSR(0.0025%)、Pen strep(1:200)、B27(VIT A非含有)(1:200)、Glutamax(1:100)、BME(1:100)、N2(1:100)、NEAA(1:400)、Glutamax(100X)、及びBME(100X)を含むように調製された。
【0280】
23日目に、細胞をAccutaseで処理し、Hypothermosol-FRS培地を使用して凍結した。
【0281】
実施例27 胸腺細胞へのiPSC細胞の分化(実験33)
懸濁培養におけるiPSC系の増大
0日目に、成熟Fuji iPS-106細胞(懸濁液中で3~4日間、直径300~400マイクロメートル)をAccutaseで処理して、凝集体を単一細胞に変化させた。250万の単一iPSCを6ウェル超低接着プレート中の懸濁液に入れ、Stem scale培地をロック阻害物質Y27632(10μM)と一緒に使用して培養した。1日目に、1mlの上清をプレートから除去し、1mlの予め加温したstem scale培地を添加した。2日目に、上清をスフェロイドと一緒に15mlコニカルチューブ内に移した。スフェロイドを室温にて250Gで5分間遠心分離し、上清を吸引した。スフェロイドをPBSで洗浄し、培地Aに再懸濁させ、培地Aは、基本培地:DMEM-F12、アクチビンA(100ng/mL)、2μMのCHIR99021、インスリン-トランスフェリン-セレン(ITS-G)(1:1000)、KSR(0.05%)、Pen strep(1:100)、PI-103(25nM)、及びNEAA(1:400)を含むように調製された。
【0282】
胚体内胚葉(DE)へのiPSCの分化
1~2日目に、細胞を、基本培地:DMEM-F12、アクチビンA(100ng/mL)、2μMのCHIR99021、インスリン-トランスフェリン-セレン(ITS-G)(1:1000)、KSR(0.05%)、Pen strep(1:100)、PI-103(25nM)、及びNEAA(1:400)を含有する培地A中で培養した。2日目に、各ウェルからの1mlの上清を1mlの新しく調製した培地Aで置き換えた。
【0283】
3日目に、細胞を洗浄し、基本培地:DMEM-F12、アクチビンA(100ng/mL)、CHIRR9901(2μM)、LDN193189(200nM)、PI-103(25nM)、インスリン-トランスフェリン-セレン(ITS-G)(1:1000)、KSR(0.05%)、Pen strep(1:200)、NEAA(1:400)を含むように調製された培地Bに再懸濁させた。4~5日目に、各ウェルからの1mlの上清を1mlの新しく調製した培地B’で置き換えた。培地B’は、基本培地:DMEM-F12、アクチビンA(100ng/mL)、LDN193189(200nM)、PI-103(25nM)、インスリン-トランスフェリン-セレン(ITS-G)(1:1000)、KSR(0.05%)、Pen strep(1:200)及びNEAA(1:400)を含むように調製された。
【0284】
前方前腸内胚葉(AFE)への胚体内胚葉(DE)の分化
6日目に、24ウェルプレートを、室温にて1時間放置したGeltrex(1:100)でコーティングした。上清をスフェロイドと一緒に15mlコニカルチューブ内に移した。スフェロイドを室温にて250Gで5分間遠心分離し、上清を吸引した。スフェロイドをPBSで洗浄し、AFE培地に再懸濁させ、Geltrexでコーティングされたプレートに移した。AFE培地は、基本培地:DMEM-F12、LDN193189(200nM)、SB431542(10μM)、FGF8b(50ng/ml)、アスコルビン酸(10μM)、Pen Strep(1:200)、B27(RA非含有)(1:200)、N2(1:100)、Glutamax(1:100)、BME(1:100)、及びNEAA(1:400)を含むように調製された。
【0285】
7日目に、等量の新しく調製したAFE培地(500ul)をウェルごとに添加した。8日目に、50%の上清を除去し、新しく調製したAFE培地(500ul)をウェルごとに添加した。
【0286】
腹側咽頭内胚葉(VPE)への前方前腸内胚葉(AFE)の分化
9~10日目に、細胞を、基本培地:DMEM-F12、SB431542(10uM)、FGF8b(50ng/ml)、レチノイン酸(0.1μM)、アスコルビン酸(10μM)、インスリン-トランスフェリン-セレン(ITS-G)(1:1000)、KSR(0.05%)、Pen strep(1:200)、B27(VIT A非含有)(1:200)、Glutamax(1:100)、BME(1:100)、N2(1:100)、NEAA(1:400)を含有するVPE1培地に再懸濁させた。9日目に、等量の新しく作製したVPE1培地(500ul)を、凝集体を妨げることなく穏やかに交換した。10日目に、等量の新しく調製したVPE1培地(500ul)をウェルごとに添加した。
【0287】
12日目に、等量の新しく作製したVPE2培地(500ul)を、凝集体を妨げることなく穏やかに交換した。VPE2培地は、基本培地:DMEM-F12、ノギン(50ng/ml)、CHIR99021(2μM)、FGF8b(50ng/ml)、レチノイン酸(0.1μM)、アスコルビン酸(10μM)、インスリン-トランスフェリン-セレン(ITS-G)(1:1000)、KSR(0.0025%)、Pen strep(1:200)、NEAA(1:400)、B27(VIT A非含有)(1:200)、Glutamax(1:100)、BME(1:100)、N2(1:100)を含むように調製された。13日目に、等量の新しく調製したVPE2培地(500ul)をウェルごとに添加した。
【0288】
胸腺上皮前駆細胞(TEP)への腹側咽頭内胚葉(VPE)の分化
14日目に、等量の新しく作製したTEP培地(500ul)を、凝集体を妨げることなく穏やかに添加した。TEP培地は、基本培地:DMEM-F12、FGF10(50ng/ml)、BMP4(50ng/ml)、FGF8b(50ng/ml)、CHIRR99(2μM)、アスコルビン酸(10μM)、インスリン-トランスフェリン-セレン(ITS-G)(1:1000)、KSR(0.0025%)、Pen strep(1:200)、B27(VIT A非含有)(1:200)、Glutamax(1:100)、BME(1:100)、N2(1:100)、及びNEAA(1:400)を含有するように調製された。
【0289】
15日目に、等量の新しく調製したTEP培地(500μl)をウェルごとに添加した。16~18日目に、50%の上清を除去し、新しく調製したTEP培地(500ul)をウェルごとに添加した。
【0290】
19~22日目に、TEC培地を添加した。TEC培地は、基本培地:DMEM-F12、FGF10(50ng/ml)、FGF7/KGF(50ng/ml)、RANKL/TRANCE(50ng/ml)、BMP4(50ng/ml)、FGF8b(50ng/ml)、CHIRR99(2μM)、アスコルビン酸(10μM)、インスリン-トランスフェリン-セレン(ITS-G)(1:1000)、KSR(0.0025%)、Pen strep(1:200)、B27(VIT A非含有)(1:200)、Glutamax(1:100)、BME(1:100)、N2(1:100)、NEAA(1:400)、Glutamax(100X)及びBME(100X)を含むように調製された。
【0291】
22日目に、細胞をAccutaseで処理し、Hypothermosol-FRS培地を使用して凍結した。細胞集団をいくつかの実験条件に応じて分けた。33FT1(7.5M/プレート)では細胞を3Dで解凍し、TEC培地中で6日間維持した(1日目にはY27-10uM)。サバイビン阻害物質(YM155)の様々な濃度及びパルスを評価した。33FT2(7.8M/プレート)では、細胞を3Dで解凍し、TEC培地中で6日間維持した(1日目にはY27-10uM)。サバイビン阻害物質(YM155)の様々な濃度及びパルスを評価した。6日目に、群3及び群4の細胞を選択して5匹の動物に移植した。33FT3(5M/プレート)では、細胞を2D(Geltrexでコーティングされた24ウェルプレート)で解凍し、TEC培地中で5日間維持した(1日目にはY27-10uM)。Plurisin#1の様々な濃度及びパルスを評価した。5日目に、それらを3Dに再懸濁させ、TEC培地中で5日間維持した。5日目に、それらを20μMのPlurisin#1で処理した。33FT4(7.6M/プレート)では、細胞を3Dで解凍し、TEC培地中で5日間維持した(1日目にはY27-10uM)。5日目に、1つの群を20nMのYM155で処理し、別の群をPlurisin#1で処理した。33FT6(8M/プレート)では、細胞を3Dで解凍し、TEC培地中で6日間維持した(1日目にはY27-10uM)。6日目に、それらを20μMのPlurisin#1で処理し(36時間)、7日目に5匹の動物に移植した。33FT7(7.8M/プレート)では、細胞を3Dで解凍し、TEC培地中で6日間維持した(1日目にはY27-10uM)。6日目に、それらを20μMのPlurisin#1で処理し(24時間)、7日目に2匹の動物に移植した。
【0292】
実施例28 胸腺細胞へのiPSC細胞の分化(実験37)
懸濁培養におけるiPSC系の増大
0日目に、Accutaseを使用して成熟iPSC系18945(懸濁液中で3~4日間、直径300~400マイクロメートル)を処理して凝集体から単一細胞を調製した。3百万の単一iPSCをROCK阻害物質Y27632(10μM)と一緒に、Stem scale培地における6ウェル超低接着プレート中の懸濁液に入れた。初日に、1mlの上清をプレートから除去し、1mlの予め加温したStem scale培地を添加した。2日目に、上清をスフェロイドと一緒に15mlコニカルチューブ内に移し、6ウェル低接着プレート中の培地Aに再懸濁させた。
【0293】
胚体内胚葉(DE)へのiPSCの分化
1日目に、細胞をPBSで洗浄し、培地Aに再懸濁させた。培地Aは、基本培地:DMEM-F12、アクチビンA(100ng/mL)、2μMのCHIR99021、インスリン-トランスフェリン-セレン(ITS-G)(1:1000)、KSR(0.05%)、Pen strep(1:100)、PI-103(25nM)、及びNEAA(1:400)を含むように調製された。2日目に、各ウェルからの1mlの上清を1mlの新しく調製した培地Aで置き換えた。
【0294】
3日目に、細胞をPBSで洗浄し、培地Bに再懸濁させた。培地Bは、基本培地:DMEM-F12、アクチビンA(100ng/mL)、CHIRR9901(2μM)、LDN193189(200nM)、PI-103(25nM)、インスリン-トランスフェリン-セレン(ITS-G)(1:1000)、KSR(0.05%)、Pen strep(1:200)、及びNEAA(1:400)を含むように調製された。
【0295】
4~5日目に、各ウェルからの1mlの上清を1mlの新しく調製した培地Bで置き換えた。培地Bは、基本培地:DMEM-F12、アクチビンA(100ng/mL)、LDN193189(200nM)、PI-103(25nM)、インスリン-トランスフェリン-セレン(ITS-G)(1:1000)、KSR(0.05%)、Pen strep(1:200)、及びNEAA(1:400)を含むように調製された。
【0296】
前方前腸内胚葉(AFE)への胚体内胚葉(DE)の分化
24ウェルプレートを、室温にて1時間放置したGeltrex(1:100)でコーティングした。6日目に、上清をスフェロイドと一緒に15mlコニカルチューブ内に移した。スフェロイドを室温にて250Gで5分間遠心分離し、上清を吸引した。スフェロイドをPBSで洗浄し、AFE培地に再懸濁させ、6~8日目から培養した。AFE培地は、基本培地:DMEM-F12、LDN193189(200nM)、SB431542(10μM)、FGF8b(50ng/ml)、アスコルビン酸(10μM)、Pen Strep(1:200)、B27(RA非含有)(1:200)、N2(1:100)、Glutamax(1:100)、BME(1:100)、及びNEAA(1:400)を含むように調製された。
【0297】
7日目に、等量の新しく調製したAFE培地(500μl)をウェルごとに添加した。8日目に、50%の上清を除去し、新しく調製したAFE培地(500μl)をウェルごとに添加した。
【0298】
腹側咽頭内胚葉(VPE)への前方前腸内胚葉(AFE)の分化
9日目に、等量の新しく作製したVPE1培地(500ul)を、凝集体を妨げることなく穏やかに交換した。VPE1は、基本培地:DMEM-F12、SB431542(10uM)、FGF8b(50ng/ml)、レチノイン酸(0.1μM)、アスコルビン酸(10μM)、インスリン-トランスフェリン-セレン(ITS-G)(1:1000)、KSR(0.05%)、Pen strep(1:200)、B27(VIT A非含有)(1:200)、Glutamax(1:100)、BME(1:100)、N2(1:100)及びNEAA(1:400)を含むように調製された。10日目に、等量の新しく調製したVPE1培地(500μl)をウェルごとに添加した。
【0299】
12日目に、等量の新しく作製したVPE2培地(500ul)を、凝集体を妨げることなく穏やかに交換した。VPE2培地は、基本培地:DMEM-F12、ノギン(50ng/ml)、CHIR99021(2μM)、FGF8b(50ng/ml)、レチノイン酸(0.1μM)、アスコルビン酸(10μM)、インスリン-トランスフェリン-セレン(ITS-G)(1:1000)、KSR(0.0025%)、Pen strep(1:200)、NEAA(1:400)、B27(VIT A非含有)(1:200)、Glutamax(1:100)、BME(1:100)、N2(1:100)を含むように調製された。
【0300】
13日目に、等量の新しく調製したVPE2培地(500μl)をウェルごとに添加した。
【0301】
胸腺上皮前駆細胞(TEP)への腹側咽頭内胚葉(VPE)の分化
14日目に、等量の新しく作製したTEP培地(500μl)を、凝集体を妨げることなく穏やかに交換した。細胞をTEP培地中で14~18日目から培養した。TEP培地は、基本培地:DMEM-F12、FGF10(50ng/ml)、BMP4(50ng/ml)、FGF8b(50ng/ml)、CHIRR99(2μM)、アスコルビン酸(10μM)、インスリン-トランスフェリン-セレン(ITS-G)(1:1000)、KSR(0.0025%)、Pen strep(1:200)、B27(VIT A非含有)(1:200)、Glutamax(1:100)、BME(1:100)、N2(1:100)、及びNEAA(1:400)を含むように調製された。15日目に、等量の新しく調製したTEP培地(500ul)をウェルごとに添加した。16~18日目に、50%の上清を除去し、新しく調製したTEP培地(500ul)をウェルごとに添加した。
【0302】
19~22日目に、細胞をTEC培地中で培養した。19日目に、等量の新しく作製したTEC培地(500μl)を、凝集体を妨げることなく穏やかに交換した。TEC培地は、基本培地:DMEM-F12、FGF10(50ng/ml)、IL-22(20ng/ml)、FGF7/KGF(50ng/ml)、RANKL/TRANCE(50ng/ml)、BMP4(50ng/ml)、FGF8b(50ng/ml)、CHIRR99(2μM)、アスコルビン酸(10μM)、インスリン-トランスフェリン-セレン(ITS-G)(1:1000)、KSR(0.0025%)、Pen strep(1:200)、B27(VIT A非含有)(1:200)、Glutamax(1:100)、BME(1:100)、N2(1:100)、NEAA(1:400)、Glutamax(100X)、及びBME(100X)を含むように調製された。20日目に、等量の新しく調製したTEC培地(500ul)をPlurisin#1(20μM)と一緒に添加した(未処理及び処理群)。21日目に、等量の新しく作製したTEC培地(500ul)を、凝集体を妨げることなく穏やかに交換した。22日目に、細胞をAccutaseで処理し、Hypothermosol-FRS培地を使用して凍結した。細胞を実験に応じて以下の群に分けた。群37FT1(8.85M処理及び9.5M未処理群)を3Dで解凍し、TEC培地中で6日間維持した(1日目にはY27-10uM)。6日目に、細胞を20μMのPlurisin#1で処理し(24時間)、7日目に4匹の動物に移植した。群37FT2(8.85M/プレート)を3Dで凍結し、TEC培地中で6日間維持した(1日目にはY27-10uM)。6日目に、細胞を20μMのPlurisin#1で処理し(24時間)、7日目に8匹の動物に移植した。
【0303】
実施例29 胸腺細胞へのiPSC細胞の分化(実験40A、40B及び41)
iPSCを以下に記載のように胸腺細胞に分化させた。
【0304】
懸濁培養におけるiPS18945系の増大
0日目に、成熟iPSC細胞(懸濁液中で3~4日間、直径300~400マイクロメートル)をAccutaseで処理して凝集体を単一細胞に変化させた。3百万の単一iPSC細胞をROCK阻害物質Y27632(10μM)と一緒に、Stem Scale培地における6ウェル超低接着プレート中の懸濁液に入れた。プレートを70RPM、37℃のシェーカー上に置いた。1日目に、1mlの上清をプレートから除去し、1mlの予め加温したStem Scale培地を添加した。2日目に、上清をスフェロイドと一緒に15mlコニカルチューブ内に移した。スフェロイドを室温にて250Gで5分間遠心分離し、上清を吸引した。スフェロイドをPBSで洗浄し、250Gで5分間遠心分離し、PBSを吸引した。培地Aは、基本培地:DMEM-F12、アクチビンA(100ng/mL)、CHIR99021、(2μM)、インスリン-トランスフェリン-セレン(ITS-G)(1:1000)、KSR(0.05%)、Pen strep(1:100)、PI-103(25nM)、及びNEAA(1:400)を含むように調製された。1mlの培地Aを6ウェル低接着プレートの各ウェルに添加した。
【0305】
胚体内胚葉(DE)へのiPSCの分化
DEへのiPSCの分化には、小分子及び成長因子を適切なタイミングで導入する必要がある。1~2日目に、培地Aを添加した(培地Aは、基本培地:DMEM-F12、アクチビンA(100ng/mL)、CHIR99021(2μM)、インスリン-トランスフェリン-セレン(ITS-G)(1:1000)、KSR(0.05%)、Pen strep(1:100)、PI-103(25nM)、及びNEAA(1:400)を含むように調製された)。3日目に、培地Bを添加した(培地Bは、基本培地:DMEM-F12、アクチビンA(100ng/mL)、2μMのCHIRR99021、LDN193189(200nM)、PI-103(25nM)、インスリン-トランスフェリン-セレン(ITS-G)(1:500)、KSR(0.05%)、Pen strep(1:200)、NEAA(1:400)を含むように調製された)。4~5日目に、培地B’を添加した(培地B’は、基本培地:DMEM-F12、アクチビンA(100ng/mL)、LDN193189(200nM)、PI-103(25nM)、インスリン-トランスフェリン-セレン(ITS-G)(1:500)、KSR(0.05%)、Pen strep(1:200)、及びNEAA(1:400)を含むように調製された)。
【0306】
前方前腸内胚葉(AFE)への胚体内胚葉(DE)の分化
6日目に、上清をスフェロイドと一緒に15mlコニカルチューブ内に移した。スフェロイドを室温にて250Gで5分間遠心分離し、上清を吸引した。スフェロイドをPBSで洗浄し、250Gで5分間遠心分離し、PBSを吸引した。250ulのAFE培地を、室温にて1時間放置したGeltrex(1:100)でコーティングされた24ウェルプレートの各ウェルに添加した。AFE培地は、基本培地:DMEM-F12、LDN193189(200nM)、SB431542(10μM)、FGF8b(50ng/ml)、アスコルビン酸(10μM)、インスリン-トランスフェリン-セレン(ITS-G)(1:500)、KSR(0.05%)、Pen Strep(1:200)、B27(RA非含有)(1:200)、N2(1:100)、Glutamax(1:100)、BME(1:100)、及びNEAA(1:400)を含むように調製された。6mlのAFE培地をDE-凝集体に添加した。凝集体を穏やかに混合し、250ulを、AFE培地を含有する24ウェルプレートの各ウェルに添加した。6日目に、培地を新しいAFE培地で置き換えた。7日目に、500μLのAFE’培地を添加した。AFE’培地は、基本培地:DMEM-F12、LDN193189(200nM)、SB431542(10μM)、FGF8b(50ng/ml)、アスコルビン酸(10μM)、インスリン-トランスフェリン-セレン(ITS-G)(1:500)、KSR(0.05%)、Pen Strep(1:200)、B27(RA非含有)(1:200)、N2(1:100)、Glutamax(1:100)、BME(1:100),及びNEAA(1:400)を含むように調製された。実験40A及び40BではAFE’培地中で2日間培養したが、実験40Bでは、細胞をAFE培地中で3日間培養した。
【0307】
腹側咽頭内胚葉(VPE)への前方前腸内胚葉(AFE)の分化
その後、細胞を表4に示すVPE1培地中で培養した。
【0308】
【0309】
10日目に、実験40A及び実験40Bについて、等量の新しく作製したVPE1培地(500μl)を、凝集体を妨げることなく穏やかに添加した。
【0310】
実験41では、10日目に、500μlの新しく調製したVPE1培地を凝集体に添加した。
【0311】
実験41について、VPE1培地は、基本培地:DMEM-F12、オールトランスレチノイン酸(0.1μM)、SB431542(10μM)、FGF8b(50ng/ml)、アスコルビン酸(10μM)、インスリン-トランスフェリン-セレン(ITS-G)(1:500)、KSR(0.05%)、Pen Strep(1:200)、B27(RA非含有)(1:200)、N2(1:100)、Glutamax(1:100)、BME(1:100)、NEAA(1:400)を含むように調製された。
【0312】
VPE2培地を表5に示すように各実験で細胞に添加した。
【0313】
(表5)実験40A、実験40B及び実験41用のVPE2培地
【0314】
VPE段階の終了時のHOXA3及びPAX9発現を測定した。
図15は、実験41と比較して実験40A及び実験40Bがより高レベルのHOXA3及びPax9をもたらしたことを示す。
【0315】
胸腺上皮前駆細胞(TEP)への腹側咽頭内胚葉(VPE)の分化
実験41について、表6に示すTEP培地を13~17日目に添加した。14日目に、等量の新しく作製したTEP培地(500μl)を、凝集体を妨げることなく穏やかに添加した。15~17日目に、50%の上清を除去し、新しく調製したTEP培地(500μl)をウェルごとに添加した。
【0316】
(表6)実験40A、実験40B及び実験41用のTEP培地
【0317】
16日目に、等量の新しく調製したTEP培地(500μl)を、凝集体を妨げることなく穏やかに添加した。17日目に、50%の上清を除去し、新しく調製したTEP培地(500μl)をウェルごとに添加した。
【0318】
18日目に、凝集体をTEC培地に移した。TEC培地は、基本培地:DMEM-F12、FGF10(50ng/ml)、FGF7/KGF(50ng/ml)、RANKL/TRANCE(50ng/ml)、BMP4(50ng/ml)、FGF8b(50ng/ml)、CHIRR99021(2μM)、IL-22(20nM)、アスコルビン酸(10μM)、インスリン-トランスフェリン-セレン(ITS-G)(1:1000)、KSR(0.0025%)、Pen strep(1:200)、B27(ビタミンA非含有)(1:200)、Glutamax(1:100)、BME(1:100)、N2(1:100)、NEAA(1:400)、Glutamax(100X)、BME(100X)を含むように調製された。
【0319】
19日目に、50%の上清を除去し、新しく調製したTEC培地(500μl)をウェルごとに添加した。20日目に、20μMのPluriSIn-1(ステアロイルCoAデサチュラーゼ阻害物質)を、新しく調製した培地に添加した。21日目に、PluriSIn-1非含有TEC培地を添加した。22日目に、細胞を酵素Accutaseで処理して、更なる試験及び実験前に凍結された単一細胞を生成した。
【0320】
実施例30 胸腺細胞分化プロトコルの再現性
実験37で分化プロトコルを使用して新たなiPSC系を試験した。実験ごとに、iPSC由来TEPにおけるFOXN1発現を、分化の終了時の細胞凍結前に、及び細胞の3D凝集体への解凍5日後に、測定した。iPSC由来胸腺細胞の凍結前のFOXN1発現と比較して、解凍された細胞においてFOXN1発現の著しい増加が観察された。この実験は、分化プロトコルがiPSC細胞系全体にわたって容易に伝達され、凍結/解凍プロセスによりFOXN1発現を一貫して上方制御できることを実証する。
【0321】
実施例31 TEP集団から未分化多能性幹細胞の除去
最終的に未分化多能性細胞が残留する可能性があることは、iPSC由来細胞治療製品において解決すべき重要な安全性問題である。製品中のかかるiPSCは奇形腫を引き起こし得る。残留iPSCを根絶するために、多能性幹細胞を選択的に標的とすると示されている小分子を利用した。サバイビン阻害物質YM155及び、ステアロイルCoAデサチュラーゼ阻害物質PluriSIn-1を試験した。移植前にYM155で処理したTEP集団は、YM155で処理しなかったTEPを移植した動物と比較して、インビボで引き起こす奇形種がより小さかった。
【0322】
PluriSIn-1による処理(凝集体における凍結前の1つの24時間パルス及び凍結後の1つの24時間パルス)により、TEP集団のOct4及びNanog発現は、1パルスのPluriSIn-1で処理した集団と比較して、より低かった。しかし、PluriSIn-1の1用量のみでの治療は、別のiPSC細胞系がTEPの生成に用いられた場合に、Oct4及びNanog発現を低下させるのに十分であった。
【0323】
実験29Bからの凍結細胞を5日間にわたって凝集体に解凍し、2週間前にhuCD34+細胞を移植したNSG dKOマウスの腎被膜下に移植する前にYM155で24時間処理した。動物を追跡し、3週間ごとに採血し、ヒト造血細胞(CD45)、B細胞(CD19)、骨髄細胞(CD19)、T細胞(CD3/CD4及びCD3/CD8)及び成熟T細胞受容体(TCRα及びβ)についてフローサイトメトリーによって末梢血単核球を分析した。全ての動物は、移植5週間後までにヒトCD45+造血細胞によるPBMCの強力な再増殖を示した。CD3及びCD4又はCD8に二重染色を使用して、末梢血循環における単一陽性T細胞を測定した。胎仔胸腺を移植した2匹の動物のうちの1匹は、8~9週目の細胞によってCD4及びCD8 T細胞を発生した。iPSC由来TEPを移植した6匹の動物のうちの1匹は、9週目までにT細胞を発生し、CD4のレベルがCD8より僅かに高かった。これらの実験におけるT細胞は、成熟α及びβ T細胞受容体も発現した。対照の偽移植動物は、13週目でもT細胞の基本レベルが1%を下回っていることを示し続けている。
【0324】
同等物と範囲
当業者は、本明細書に記載された本開示による具体的な実施形態に対する多くの同等物を、通常の実験のみを使用して認識するか、又は確認することができる。本開示の範囲は、上記の説明に限定されるものではなく、添付の特許請求の範囲に記載されている通りである。
【0325】
特許請求の範囲において、「1つの(a)」、「1つの(an)」、及び「その(the)」等の冠詞は、特に反対の記載がない限り、又は文脈から明らかでない限り、1つ又は1つ超を意味する場合がある。グループの1つ又は複数のメンバー間の「又は」を含む請求項又は説明は、特に反対の記載がない限り、又は文脈から明らかでない限り、グループメンバーの1つ、1つ超、又は全てが所与の産物又はプロセスに存在するか、用いられているか、又は関連する場合に満たされると考えられる。本開示は、正確にグループの1つのメンバーが所与の産物又はプロセスに存在するか、用いられるか、又は関連する実施形態を含む。本開示は、複数の、又はグループメンバー全体が、所与の産物又はプロセスに存在するか、用いられるか、又は関連する実施形態を含む。
【0326】
「含む」という用語は、オープンであることを意図しており、追加の要素又はステップを許容するが含める必要はないことにも留意されたい。従って、「含む」という用語が本明細書で使用される場合、「からなる」という用語も包含され、開示される。
【0327】
範囲が指定されている場合は、エンドポイントが含まれる。更に、別段の指示がない限り、又は文脈及び当業者の理解から明らかでない限り、範囲として表される値は、文脈が明らかにそうでないとする場合を除いて、本開示の異なる実施形態において記載された範囲内の任意の特定の値又は下位範囲を範囲の下限の単位の10分の1まで想定することができることを理解されたい。
【0328】
更に、従来技術の範囲内にある本開示の任意の特定の実施形態は、請求項の任意の1つ又は複数から明示的に除外され得ることが理解される。そのような実施形態は、当業者に知られていると見なされるので、除外が本明細書に明示的に記載されていなくても、それらは除外され得る。本開示の組成物の任意の特定の実施形態(例えば、任意の抗生物質、治療又は活性成分、任意の製造方法、任意の使用方法等)は、理由の如何を問わず、従来技術の存在に関連するか否かに関わらず、任意の1つ又は複数の請求項から除外することができる。
【0329】
使用されている用語は、限定ではなく説明の用語であり、添付の特許請求の範囲内で、より広い側面における本開示の真の範囲及び精神から逸脱することなく変更を加えることができることが理解される。
【0330】
本開示は、いくつかの記載された実施形態に関して、いくらか詳細に、またある程度詳細に説明されてきたが、本開示は、そのような詳細又は実施形態、又は特定の実施形態に限定されるべきではなく、先行技術を考慮してそのような特許請求の範囲の可能な限り広い解釈を提供し、それによって本開示の意図された範囲を効果的に包含するように、添付の特許請求の範囲に対して解釈されるべきである。
【国際調査報告】