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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-04
(54)【発明の名称】エッチング組成物
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/308 20060101AFI20240927BHJP
【FI】
H01L21/308 B
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024522414
(86)(22)【出願日】2022-10-06
(85)【翻訳文提出日】2024-06-12
(86)【国際出願番号】 US2022045845
(87)【国際公開番号】W WO2023064145
(87)【国際公開日】2023-04-20
(31)【優先権主張番号】63/254,625
(32)【優先日】2021-10-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】514251329
【氏名又は名称】フジフイルム エレクトロニック マテリアルズ ユー.エス.エー., インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ブジョロパヴリック、ミック
(72)【発明者】
【氏名】バジェステロス、カール
【テーマコード(参考)】
5F043
【Fターム(参考)】
5F043AA07
5F043BB12
5F043DD07
5F043DD13
5F043EE05
(57)【要約】
本開示は、例えば、多段階半導体製造プロセスの中間段階として半導体基板からシリコンゲルマニウム(SiGe)を選択的に除去するのに有用なエッチング組成物に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フッ化水素酸又はヘキサフルオロケイ酸を含む少なくとも1種のフッ素含有酸と、
少なくとも1種の酸化剤と、
少なくとも1種の有機酸又はその無水物であって、前記少なくとも1種の有機酸がギ酸、酢酸、プロピオン酸、又は酪酸を含む、少なくとも1種の有機酸又はその無水物と、
少なくとも1種の重合ナフタレンスルホン酸と、
少なくとも1種のヘキサフルオロケイ酸塩と、
式(I):N-R(式中、Rは、OH又はNHで置換されていてもよいC-Cアルキルであり、Rは、H、又はOHで置換されていてもよいC-Cアルキルであり、Rは、OHで置換されていてもよいC-Cアルキルである)のアミンを含む少なくとも1種のアミンと、
水と、
を含むエッチング組成物。
【請求項2】
前記少なくとも1種の重合ナフタレンスルホン酸は、
【化1】

の構造を有するスルホン酸を含み、
nは3~6である、
請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記少なくとも1種の重合ナフタレンスルホン酸が、前記組成物の約0.005重量%~約0.15重量%の量で存在する、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
式(I)の前記アミンは、ジイソプロピルアミン、N-ブチルジエタノールアミン、N-(3-アミノプロピル)-ジエタノールアミン、N-オクチルグルカミン、N-エチルグルカミン、N-メチルグルカミン、又は1-[ビス(2-ヒドロキシエチル)アミノ]-2-プロパノールである、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記少なくとも1種のアミンが、前記組成物の約0.001重量%~約0.15重量%の量で存在する、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
前記少なくとも1種のフッ素含有酸が、前記組成物の約0.05重量%~約2重量%の量で存在する、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
前記少なくとも1種の酸化剤が、過酸化水素又は過酢酸を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
前記少なくとも1種の酸化剤が、前記組成物の約5重量%~約20重量%の量で存在する、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
前記少なくとも1種の有機酸又はその無水物が、酢酸又は無水酢酸を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
前記少なくとも1種の有機酸又はその無水物が、前記組成物の約30重量%~約90重量%の量で存在する、請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
前記少なくとも1種のヘキサフルオロケイ酸塩は、ヘキサフルオロケイ酸アンモニウム又はヘキサフルオロケイ酸テトラアルキルアンモニウムを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
前記少なくとも1種のヘキサフルオロケイ酸塩が、前記組成物の約0.01重量%~約1重量%の量で存在する、請求項1に記載の組成物。
【請求項13】
前記水が、前記組成物の約10重量%~約75重量%の量で存在する、請求項1に記載の組成物。
【請求項14】
少なくとも1種の有機溶媒を更に含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項15】
前記少なくとも1種の有機溶媒が、アルコール又はアルキレングリコールエーテルを含む、請求項14に記載の組成物。
【請求項16】
前記少なくとも1種の有機溶媒は、プロピレングリコール、ヘキシレングリコール、1,3-プロパンジオール、又はエチレングリコールブチルエーテルを含む、請求項15に記載の組成物。
【請求項17】
前記少なくとも1種の有機溶媒が、前記組成物の約10重量%~約40重量%の量で存在する、請求項14に記載の組成物。
【請求項18】
少なくとも1種の無機酸を更に含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項19】
前記少なくとも1種の無機酸が、硫酸又はホウ酸を含む、請求項18に記載の組成物。
【請求項20】
前記少なくとも1種の無機酸が、前記組成物の約0.1重量%~約5重量%の量で存在する、請求項18に記載の組成物。
【請求項21】
1~3のpHを有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項22】
前記少なくとも1種のフッ素含有酸は、フッ化水素酸を含むとともに、前記組成物の約0.05重量%~約0.5重量%の量で存在し、
前記少なくとも1種の酸化剤が、前記組成物の約5重量%~約10重量%の量で存在し、
前記少なくとも1種の有機酸又はその無水物が、前記組成物の約50重量%~約80重量%の量で存在し、
前記少なくとも1種の重合ナフタレンスルホン酸が、前記組成物の約0.005重量%~約0.1重量%の量で存在し、
前記少なくとも1種のヘキサフルオロケイ酸塩が、前記組成物の約0.01重量%~約1重量%の量で存在し、
前記少なくとも1種のアミンが、前記組成物の約0.001重量%~約0.1重量%の量で存在する、
請求項1に記載の組成物。
【請求項23】
前記少なくとも1種の酸化剤が、前記組成物の約6重量%~約10重量%である、請求項22に記載の組成物。
【請求項24】
前記少なくとも1種の有機酸又はその無水物が、前記組成物の約60重量%~約80重量%である、請求項22記載の組成物。
【請求項25】
前記少なくとも1種の重合ナフタレンスルホン酸が、前記組成物の約0.005重量%~約0.05重量%である、請求項22に記載の組成物。
【請求項26】
前記少なくとも1種のヘキサフルオロケイ酸塩が、前記組成物の約0.05重量%~約0.5重量%である、請求項22に記載の組成物。
【請求項27】
前記少なくとも1種のアミンが、前記組成物の約0.005重量%~約0.05重量%である、請求項22に記載の組成物。
【請求項28】
無機酸を更に含む、請求項22に記載の組成物。
【請求項29】
前記少なくとも1種の無機酸が、硫酸を含む、請求項28に記載の組成物。
【請求項30】
前記少なくとも1種の無機酸が、前記組成物の約0.1重量%~約5重量%の量で存在する、請求項28に記載の組成物。
【請求項31】
フッ化水素酸と、
過酸化水素と、
酢酸と、
【化2】

の構造を有し、nが3~6である、スルホン酸と、
N-(3-アミノプロピル)-ジエタノールアミンと、
硫酸と、
ヘキサフルオロケイ酸アンモニウムと、
水と、
を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項32】
前記組成物の約0.05重量%~約0.5重量%の量のフッ化水素酸と、
前記組成物の約5重量%~約10重量%の量の過酸化水素と、
前記組成物の約50重量%~約80重量%の量の酢酸と、
【化3】

の構造を有し、nが3~6であり、前記組成物の約0.005重量%~約0.1重量%の量で存在する、スルホン酸と、
前記組成物の約0.001重量%~約0.1重量%の量のN-(3-アミノプロピル)-ジエタノールアミンと、
前記組成物の約0.1重量%~約5重量%の量の硫酸と、
前記組成物の約0.01重量%~約1重量%の量のヘキサフルオロケイ酸アンモニウムと、
水と、
を含む、請求項31に記載の組成物。
【請求項33】
SiGe膜を含む半導体基板を請求項1に記載の組成物と接触させて、前記SiGe膜を実質的に除去すること、
を含む、方法。
【請求項34】
前記SiGe膜が、約10重量%~約25重量%のGeを含む、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記接触させることの後に、前記半導体基板をリンス溶媒でリンスすることを更に含む、請求項33に記載の方法。
【請求項36】
前記リンスすることの後に前記半導体基板を乾燥させることを更に含む、請求項33に記載の方法。
【請求項37】
SiN、ポリSi、又はSiCOを実質的に除去しない、請求項33に記載の方法。
【請求項38】
SiGe膜と、ホウ素でドープされたSiGeを含む膜と、を含む半導体基板をエッチング組成物と接触させて、前記SiGe膜を実質的に除去すること、
を含む方法であって、
前記エッチング組成物は、
フッ化水素酸又はヘキサフルオロケイ酸を含む少なくとも1種のフッ素含有酸と、
少なくとも1種の酸化剤と、
少なくとも1種の有機酸又はその無水物であって、前記少なくとも1種の有機酸がギ酸、酢酸、プロピオン酸、又は酪酸を含む、少なくとも1種の有機酸又はその無水物と、
少なくとも1種の重合ナフタレンスルホン酸と、
前記少なくとも1種のフッ素含有酸とは異なる少なくとも1種の無機酸と、
式(I):N-R(式中、Rは、OH又はNHで置換されていてもよいC-Cアルキルであり、Rは、H、又はOHで置換されていてもよいC-Cアルキルであり、Rは、OHで置換されていてもよいC-Cアルキルである)のアミンを含む少なくとも1種のアミンと、
水と、
を含む、
方法。
【請求項39】
ホウ素でドープされたSiGeを含む前記膜を実質的に除去しない、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
ホウ素でドープされたSiGeを含む前記膜を、25℃で約3Å/分以下のエッチング速度で除去する、請求項38に記載の方法。
【請求項41】
前記少なくとも1種の重合ナフタレンスルホン酸は、
【化4】

の構造を有するスルホン酸を含み、
nは3~6である、
請求項38に記載の方法。
【請求項42】
前記少なくとも1種の重合ナフタレンスルホン酸が、前記組成物の約0.005重量%~約0.15重量%の量で存在する、請求項38に記載の方法。
【請求項43】
式(I)の前記アミンは、ジイソプロピルアミン、N-ブチルジエタノールアミン、N-(3-アミノプロピル)-ジエタノールアミン、N-オクチルグルカミン、N-エチルグルカミン、N-メチルグルカミン、又は1-[ビス(2-ヒドロキシエチル)アミノ]-2-プロパノールである、請求項38に記載の方法。
【請求項44】
前記少なくとも1種のアミンが、前記組成物の約0.001重量%~約0.15重量%の量で存在する、請求項38に記載の方法。
【請求項45】
前記少なくとも1種のフッ素含有酸が、前記組成物の約0.1重量%~約2重量%の量で存在する、請求項38に記載の方法。
【請求項46】
前記少なくとも1種の酸化剤が、過酸化水素又は過酢酸を含む、請求項38に記載の方法。
【請求項47】
前記少なくとも1種の酸化剤が、前記組成物の約5重量%~約20重量%の量で存在する、請求項38に記載の方法。
【請求項48】
前記少なくとも1種の有機酸又はその無水物が、酢酸又は無水酢酸を含む、請求項38に記載の方法。
【請求項49】
前記少なくとも1種の有機酸又はその無水物が、前記組成物の約30重量%~約90重量%の量で存在する、請求項38に記載の方法。
【請求項50】
前記水が、前記組成物の約10重量%~約75重量%の量で存在する、請求項38に記載の方法。
【請求項51】
少なくとも1種の有機溶媒を更に含む、請求項38に記載の方法。
【請求項52】
前記少なくとも1種の有機溶媒が、アルコール又はアルキレングリコールエーテルを含む、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
前記少なくとも1種の有機溶媒は、プロピレングリコール、ヘキシレングリコール、1,3-プロパンジオール、又はエチレングリコールブチルエーテルを含む、請求項52に記載の方法。
【請求項54】
前記少なくとも1種の有機溶媒が、前記組成物の約10重量%~約40重量%の量で存在する、請求項51に記載の方法。
【請求項55】
少なくとも1種のボロン酸を更に含む、請求項38に記載の方法。
【請求項56】
前記少なくとも1種のボロン酸が、フェニルボロン酸又はナフタレン-1-ボロン酸を含む、請求項55に記載の方法。
【請求項57】
前記少なくとも1種のボロン酸が、前記組成物の約0.01重量%~約0.5重量%の量で存在する、請求項55に記載の方法。
【請求項58】
少なくとも1種の無機酸を更に含む、請求項38に記載の方法。
【請求項59】
前記少なくとも1種の無機酸が、硫酸又はホウ酸を含む、請求項58に記載の方法。
【請求項60】
前記少なくとも1種の無機溶媒が、前記組成物の約0.1重量%~約5重量%の量で存在する、請求項58に記載の方法。
【請求項61】
前記組成物が1~3のpHを有する、請求項38に記載の方法。
【請求項62】
前記組成物は、
フッ化水素酸と、
過酸化水素と、
酢酸と、
無水酢酸と、
【化5】

の構造を有し、nが3~6である、スルホン酸と、
N-(3-アミノプロピル)-ジエタノールアミンと、
硫酸と、
水と、
を含む、請求項38に記載の方法。
【請求項63】
前記組成物が、フェニルボロン酸を更に含む、請求項62に記載の方法。
【請求項64】
前記組成物は、
前記組成物の約0.05重量%~約0.5重量%の量のフッ化水素酸と、
前記組成物の約5重量%~約10重量%の量の過酸化水素と、
その総量が前記組成物の約50重量%~約80重量%の量である酢酸及び無水酢酸と、
【化6】

の構造を有し、nが3~6であり、前記組成物の約0.005重量%~約0.1重量%の量で存在する、スルホン酸と、
前記組成物の約0.001重量%~約0.1重量%の量のN-(3-アミノプロピル)-ジエタノールアミンと、
前記組成物の約0.1重量%~約5重量%の量の硫酸と、
水と、
を含む、請求項38に記載の方法。
【請求項65】
前記組成物は、前記組成物の約0.01重量%~約0.5重量%の量のフェニルボロン酸を更に含む、請求項64に記載の方法。
【請求項66】
請求項33に記載の方法によって形成される物品であって、前記物品が半導体デバイスである、物品。
【請求項67】
前記半導体デバイスが集積回路である、請求項66に記載の物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年10月12日に出願された米国仮出願第63/254,625号の優先権を主張し、この米国仮出願の内容は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、エッチング組成物及びエッチング組成物を使用するプロセスに関する。特に、本開示は、金属導体(例えば、銅)、バリア材料、絶縁体材料(例えば、低誘電率誘電材料)などの他の露出した又は下にある材料の存在下でシリコンゲルマニウムを選択的にエッチングすることができるエッチング組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
半導体産業は、マイクロ電子デバイス、シリコンチップ、液晶ディスプレイ、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)、プリント配線板などの電子回路及び電子部品の寸法を急速に縮小し高密度化している。それらの中の集積回路は、各回路層間の絶縁層の厚さが絶えず減少するとともにフィーチャサイズが益々小さくなる状態で層状にされて積み重ねられる。フィーチャサイズが縮小するにつれて、パターンがより小さくなり、デバイス性能パラメータがより緊密且つより堅牢になる。その結果、これまで許容されていた様々な問題が、もはや許容されなくなり、又はより小さいフィーチャサイズに起因して問題が一層大きくなる。
【0004】
高度な集積回路の製造において、高密度に関連する問題を最小限に抑え、性能を最適化するために、高誘電率絶縁体及び低誘電率絶縁体の両方、並びに様々なバリア層材料が使用されてきた。
【0005】
シリコンゲルマニウム(SiGe)は、ナノワイヤ及び/又はナノシートとして、半導体デバイス、液晶ディスプレイ、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)、プリント配線板などの製造に利用することができる。例えば、マルチゲート電界効果トランジスタ(FET)(例えば、全周ゲートFET)などのマルチゲートデバイスのゲート材料として使用することができる。
【発明の概要】
【0006】
半導体デバイスの構築では、シリコンゲルマニウム(SiGe)を頻繁にエッチングする必要がある。SiGeの様々な種類の使用及びデバイス環境では、この材料がエッチングされると同時に、他の層が接触するか又はそうでなければ露出される。これらの他の材料(例えば、金属導体、誘電体、及びハードマスク)の存在下でのSiGeの高度に選択的なエッチングは、一般に、デバイス収率及び長寿命のために必要とされる。SiGeのエッチングプロセスは、プラズマエッチングプロセスであってもよい。しかしながら、SiGe層にプラズマエッチングプロセスを使用すると、ゲート絶縁層及び半導体基板のいずれか又は両方に損傷を引き起こす可能性がある。また、エッチングプロセスは、ゲート電極により露出されたゲート絶縁層をエッチングすることにより、半導体基板の一部を除去し得る。トランジスタの電気的特性が悪影響を受ける可能性がある。そのようなエッチング損傷を回避するために、追加の保護デバイス製造工程を使用することができるが、かなりのコストがかかる。
【0007】
本開示は、半導体デバイス内に存在するハードマスク層、ゲート材料(例えば、SiN、ポリ-Si、又はSiOx)、導電性材料(例えば、ホウ素でドープされたSiGe)、及び低誘電率誘電体層(例えば、SiN、ポリSi、SiOx、炭素ドープ酸化物、又はSiCO)に対してSiGeを選択的にエッチングするための組成物及びプロセスに関する。より具体的には、本開示は、ホウ素でドープされたSiGe又は低誘電率誘電体層に対してSiGeを選択的にエッチングするための組成物及びプロセスに関する。
【0008】
一態様において、本開示は、a)フッ化水素酸又はヘキサフルオロケイ酸を含む少なくとも1種のフッ素含有酸と、b)少なくとも1種の酸化剤と、c)少なくとも1種の有機酸又はその無水物であって、少なくとも1種の有機酸がギ酸、酢酸、プロピオン酸、又は酪酸を含む、少なくとも1種の有機酸又はその無水物と、d)少なくとも1種の重合ナフタレンスルホン酸と、e)少なくとも1種のヘキサフルオロケイ酸塩と、f)式(I):N-R(式中、Rは、OH又はNHで置換されていてもよいC-Cアルキルであり、Rは、H、又はOHで置換されていてもよいC-Cアルキルであり、Rは、OHで置換されていてもよいC-Cアルキルである)のアミンを含む少なくとも1種のアミンと、g)水と、を含むエッチング組成物を特徴とする。
【0009】
他の態様において、本開示は、SiGe膜を含む半導体基板を本明細書に記載のエッチング組成物と接触させてSiGe膜を実質的に除去することを含む方法を特徴とする。
【0010】
他の態様において、本開示は、SiGe膜と、ホウ素でドープされたSiGeを含む膜と、を含む半導体基板をエッチング組成物と接触させてSiGe膜を実質的に除去することを含む方法であって、エッチング組成物が、a)フッ化水素酸又はヘキサフルオロケイ酸を含む少なくとも1種のフッ素含有酸と、b)少なくとも1種の酸化剤と、c)少なくとも1種の有機酸又はその無水物であって、前記少なくとも1種の有機酸がギ酸、酢酸、プロピオン酸、又は酪酸を含む、少なくとも1種の有機酸又はその無水物と、d)少なくとも1種の重合ナフタレンスルホン酸と、e)前記少なくとも1種のフッ素含有酸とは異なる少なくとも1種の無機酸と、f)式(I):N-R(式中、Rは、OH又はNHで置換されていてもよいC-Cアルキルであり、Rは、H、又はOHで置換されていてもよいC-Cアルキルであり、Rは、OHで置換されていてもよいC-Cアルキルである)のアミンを含む少なくとも1種のアミンと、g)水と、を含む、方法を特徴とする。
【0011】
更に他の態様において、本開示は、本明細書に記載の方法によって形成された物品であって、物品が半導体デバイス(例えば、集積回路)である、物品を特徴とする。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本明細書で定義されるように、特に明記しない限り、表される全ての百分率は、組成物の総重量に対する重量百分率であると理解されるべきである。特に明記しない限り、周囲温度は、約16~約27度(℃)であると定義される。
【0013】
一般に、本開示は、a)フッ化水素酸(HF)又はヘキサフルオロケイ酸(HSiF)を含む少なくとも1種のフッ素含有酸と、b)過酸化水素を含む少なくとも1種の酸化剤と、c)少なくとも1種の有機酸又はその無水物であって、少なくとも1種の有機酸が、ギ酸、酢酸、プロピオン酸又は酪酸を含む、少なくとも1種の有機酸又はその無水物と、d)少なくとも1種の重合ナフタレンスルホン酸と、e)式(I):N-R(式中、Rは、OH又はNHで置換されていてもよいC-Cアルキルであり、Rは、H、又はOHで置換されていてもよいC-Cアルキルであり、Rは、OHで置換されていてもよいC-Cアルキルである)のアミンを含む少なくとも1種のアミンと、f)水と、を含むエッチング組成物(例えば、SiGeを選択的に除去するためのエッチング組成物)を特徴とする。
【0014】
一般に、本開示のエッチング組成物は、少なくとも1種(例えば、2種、3種、又は4種)のフッ素含有酸を含むことができる。本明細書に記載のフッ素含有酸は、HF又はHSiFなどの無機酸であり得る。幾つかの実施形態では、少なくとも1種のフッ素含有酸は、本開示のエッチング組成物の少なくとも約0.05重量%(例えば、少なくとも約0.06重量%、少なくとも約0.07重量%、少なくとも約0.08重量%、少なくとも約0.09重量%、少なくとも約0.1重量%、少なくとも約0.15重量%、少なくとも約0.2重量%、少なくとも約0.4重量%、少なくとも約0.5重量%、少なくとも約0.6重量%、少なくとも約0.8重量%、少なくとも約1重量%、少なくとも約1.2重量%、少なくとも約1.4重量%、又は少なくとも約1.5重量%)~約2重量%以下(例えば、約1.9重量%以下、約1.8重量%以下、約1.7重量%以下、約1.6重量%以下、約1.5重量%以下、約1.2重量%以下、約1重量%以下、約0.5重量%以下、約0.4重量%以下、又は約0.2重量%以下)の量で存在する。理論に束縛されることを望むものではないが、フッ素含有酸は、エッチングプロセス中の半導体基板上のSiGeの除去を促進及び強化することができると考えられる。
【0015】
幾つかの実施形態では、本開示のエッチング組成物は、(例えば、上記のフッ素含有酸に加えて)フッ素含有酸の少なくとも1種(例えば、2種、3種、又は4種)の塩を任意選択で含むことができる。例えば、塩は、フッ化物塩(例えば、フッ化アンモニウム)又はヘキサフルオロケイ酸塩であり得る。ヘキサフルオロケイ酸塩の例としては、ヘキサフルオロケイ酸アンモニウム((NHSiF)又はヘキサフルオロケイ酸テトラアルキルアンモニウム(例えば、C-Cアルキル基を含む化合物)が挙げられる。ヘキサフルオロケイ酸テトラアルキルアンモニウムの例としては、ヘキサフルオロケイ酸テトラメチルアンモニウム、ヘキサフルオロケイ酸テトラエチルアンモニウム、ヘキサフルオロケイ酸テトラプロピルアンモニウム(例えば、テトラ(n-プロピル)アンモニウムヘキサフルオロシリケート又はテトライソプロピルアンモニウムヘキサフルオロシリケート)及びヘキサフルオロケイ酸テトラブチルアンモニウム(例えば、テトラ(n-ブチル)アンモニウムヘキサフルオロシリケート、テトライソブチルアンモニウムヘキサフルオロシリケート、及びテトラ(t-ブチル)アンモニウムヘキサフルオロシリケート)が挙げられる。
【0016】
幾つかの実施形態では、フッ素含有酸の塩は、本開示のエッチング組成物の少なくとも約0.01重量%(例えば、少なくとも約0.02重量%、少なくとも約0.04重量%、少なくとも約0.05重量%、少なくとも約0.06重量%、少なくとも約0.08重量%、少なくとも約0.1重量%、少なくとも約0.12重量%、少なくとも約0.14重量%、又は少なくとも約0.15重量%)~約1重量%以下(例えば、約0.9重量%以下、約0.8重量%以下、約0.7重量%以下、約0.6重量%以下、約0.5重量%以下、約0.4重量%以下、約0.3重量%以下、約0.2重量%以下、又は約0.15%以下)の量で存在し得る。理論に束縛されることを望むものではないが、フッ素含有酸の塩は、エッチングプロセス中の半導体基板上のSiのエッチング又は除去を低減することができると考えられる。
【0017】
本開示のエッチング組成物は、マイクロ電子用途での使用に適した少なくとも1種(例えば、2種、3種、又は4種)の酸化剤を含むことができる。適切な酸化剤の例としては、酸化酸又はその塩(例えば、硝酸、過マンガン酸、又は過マンガン酸カリウム)、過酸化物(例えば、過酸化水素、ジアルキルペルオキシド、尿素過酸化水素)、ペルスルホン酸(例えば、ヘキサフルオロプロパンペルスルホン酸、メタンペルスルホン酸、トリフルオロメタンペルスルホン酸、又はp-トルエンペルスルホン酸)及びその塩、オゾン、ペルオキシカルボン酸(例えば、過酢酸)及びその塩、過リン酸及びその塩、過硫酸及びその塩(例えば、過硫酸アンモニウム又は過硫酸テトラメチルアンモニウム)、過塩素酸及びその塩(例えば、過塩素酸アンモニウム、過塩素酸ナトリウム、又は過塩素酸テトラメチルアンモニウム))、並びに過ヨウ素酸及びその塩(例えば、過ヨウ素酸、過ヨウ素酸アンモニウム又は過ヨウ素酸テトラメチルアンモニウム)が挙げられるが、これらに限定されない。これらの酸化剤は、単独でも又は組み合わせても用いることができる。
【0018】
幾つかの実施形態では、少なくとも1種の酸化剤は、本開示のエッチング組成物の少なくとも約5重量%(例えば、少なくとも約6重量%、少なくとも約7重量%、少なくとも約8重量%、少なくとも約9重量%、少なくとも約10重量%、少なくとも約11重量%、少なくとも約13重量%、又は少なくとも約15重量%)~約20重量%以下(例えば、約18重量%以下、約16重量%以下、約15重量%以下、約14重量%以下、約12重量%以下、又は約10重量%以下)であり得る。理論に束縛されることを望むものではないが、酸化剤は、半導体基板上のSiGeの除去を促進及び強化することができると考えられる。
【0019】
一般に、本開示のエッチング組成物は、少なくとも1種(例えば、2種、3種、又は4種)の有機酸又はその無水物を含むことができる。幾つかの実施形態では、有機酸は、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、又は酪酸であり得る。幾つかの実施形態では、有機酸無水物は、無水ギ酸、無水酢酸、無水プロピオン酸又は無水酪酸であり得る。幾つかの実施形態では、少なくとも1種の有機酸又はその無水物(個別に又は組み合わせて)は、本開示のエッチング組成物の少なくとも約30重量%(例えば、少なくとも約35重量%、少なくとも約40重量%、少なくとも約45重量%、少なくとも約50重量%、少なくとも約55重量%、又は少なくとも約60重量%)~約90重量%以下(例えば、約85重量%以下、約80重量%以下、約75重量%以下、約70重量%以下、約65重量%以下、約60重量%以下、約55重量%以下、約50重量%以下、約45重量%以下、又は約40重量%以下)であり得る。理論に束縛されることを望むものではないが、有機酸又はその無水物は、半導体基板上のSiGeの除去を促進及び強化することができると考えられる。
【0020】
本開示のエッチング組成物は、一般に、例えば界面活性剤又は選択的阻害剤として、少なくとも1種の重合ナフタレンスルホン酸(又はポリ(ナフタレンスルホン酸))を含むことができる。幾つかの実施形態では、重合ナフタレンスルホン酸は、以下の化学構造、すなわち、
【化1】

を有するスルホン酸であってよく、
式中、nは3、4、5、又は6である。そのような重合ナフタレンスルホン酸の市販の例としては、Takemoto Oil&Fat Co.,Ltd.から入手可能なタケサーフA-47シリーズ製品が含まれる。幾つかの実施形態では、少なくとも1種の重合ナフタレンスルホン酸は、本開示のエッチング組成物の少なくとも約0.005重量%(例えば、少なくとも約0.006重量%、少なくとも約0.007重量%、少なくとも約0.008重量%、少なくとも約0.009重量%、少なくとも約0.01重量%、少なくとも約0.02重量%、少なくとも約0.03重量%、少なくとも約0.04重量%、少なくとも約0.05重量%、又は少なくとも約0.1重量%)~約0.15重量%以下(例えば、約0.14重量%以下、約0.12重量%以下、約0.1重量%以下、約0.08重量%以下、約0.06重量%以下、約0.05重量%以下、約0.04重量%以下、又は約0.02重量%以下)であり得る。理論に束縛されることを望むものではないが、重合ナフタレンスルホン酸は、本開示のエッチング組成物を使用してSiGeを半導体基板から除去する場合に、SiN、ポリSi、及びSiCOの除去を選択的に阻害することができると考えられる。
【0021】
一般に、本開示のエッチング組成物は、少なくとも1種(例えば、2種、3種、又は4種)のアミンを含むことができる。幾つかの実施形態において、アミンは、式(I):N-Rのアミンであってよく、式中、Rは、OH又はNHで置換されていてもよいC-Cアルキルであり、Rは、H、又はOHで置換されていてもよいC-Cアルキルであり、Rは、OHで置換されていてもよいC-Cアルキルである。式(I)の好適なアミンの例としては、ジイソプロピルアミン、N-ブチルジエタノールアミン、N-(3-アミノプロピル)-ジエタノールアミン、N-オクチルグルカミン、N-エチルグルカミン、N-メチルグルカミン及び1-[ビス(2-ヒドロキシエチル)アミノ]-2-プロパノールが挙げられる。
【0022】
幾つかの実施形態において、少なくとも1種のアミンは、本開示のエッチング組成物の少なくとも約0.001重量%(例えば、少なくとも約0.002重量%、少なくとも約0.004重量%、少なくとも約0.005重量%、少なくとも約0.006重量%、少なくとも約0.008重量%、少なくとも約0.01重量%、少なくとも約0.02重量%、少なくとも約0.05重量%、又は少なくとも約0.1重量%)~約0.15重量%以下(例えば、約0.14重量%以下、約0.12重量%以下、約0.1重量%以下、約0.08重量%以下、約0.06重量%以下、約0.05重量%以下、約0.04重量%以下、又は約0.02重量%以下)であり得る。理論に束縛されることを望むものではないが、アミンは、本開示のエッチング組成物を使用してSiGeが半導体基板から除去される場合に、SiN、ポリSi、及びSiCOの除去を選択的に抑制することができると考えられる。
【0023】
一般に、本開示のエッチング組成物は、溶媒として水を含むことができる。幾つかの実施形態では、水は、脱イオンされ、超純粋であり、有機汚染物質を含まず、約4~約17メガオーム、又は少なくとも約17メガオームの最小抵抗率を有することができる。幾つかの実施形態において、水は、エッチング組成物の少なくとも約10重量%(例えば、少なくとも約12重量%、少なくとも約14重量%、少なくとも約15重量%、少なくとも約16重量%、少なくとも約18重量%、少なくとも約20重量%、少なくとも約25重量%、少なくとも約30重量%、少なくとも約35重量%、少なくとも約40重量%、少なくとも約45重量%、少なくとも約50重量%、少なくとも約55重量%、又は少なくとも約60重量%)~約75重量%以下(例えば、約70重量%以下、約65重量%以下、約60重量%以下、約55重量%以下、約50重量%以下、約45重量%以下、約40重量%以下、約35重量%以下、約30重量%以下、約25重量%以下、又は約20重量%以下)の量で存在する。理論に束縛されることを望むものではないが、水の量が組成物の75重量%を超える場合、SiGeエッチング速度に悪影響を及ぼし、エッチングプロセス中のその除去を減少させると考えられる。一方、理論に束縛されることを望まないが、本開示のエッチング組成物は、他の全ての成分を可溶化したままにし、エッチング性能の低下を回避するために、一定レベルの水(例えば、少なくとも約10重量%)を含むべきであると考えられる。
【0024】
幾つかの実施形態では、本開示のエッチング組成物は、少なくとも1種(例えば、2種、3種、又は4種)の有機溶媒を更に含むことができる。幾つかの実施形態において、少なくとも1種の有機溶媒は、アルコール又はアルキレングリコールエーテルを含むことができる。適切な有機溶媒の例としては、プロピレングリコール、ヘキシレングリコール、1,3-プロパンジオール、エチレングリコールブチルエーテル、及び3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノールが挙げられる。幾つかの実施形態において、少なくとも1種の有機溶媒は、エッチング組成物の少なくとも約10重量%(例えば、少なくとも約15重量%、少なくとも約20重量%、少なくとも約25重量%、少なくとも約30重量%、又は少なくとも約35重量%)~約40重量%以下(例えば、約35重量%以下、約30重量%以下、約25重量%以下、約20重量%以下、又は約15重量%以下)であり得る。
【0025】
幾つかの実施形態では、本開示のエッチング組成物は、少なくとも1種(例えば、2種、3種、又は4種)の糖アルコール(例えば、マンニトール又はソルビトール)を更に含むことができる。幾つかの実施形態において、少なくとも1種の糖アルコールは、エッチング組成物の少なくとも約0.001重量%(例えば、少なくとも約0.002重量%、少なくとも約0.005重量%、少なくとも約0.01重量%、少なくとも約0.02重量%、又は少なくとも約0.05重量%)~約0.1重量%以下(例えば、約0.08重量%以下、約0.06重量%以下、約0.05重量%以下、約0.04重量%以下、約0.02重量%以下、又は約0.01重量%以下)であり得る。理論に束縛されることを望むものではないが、本開示のエッチング組成物中に糖アルコールを含めることにより、ポリシリコンエッチング速度を抑制することができると考えられる。
【0026】
幾つかの実施形態では、本開示のエッチング組成物は、少なくとも1種(例えば、2種、3種、又は4種)のボロン酸を更に含むことができる。例えば、ボロン酸は、以下の式:R-B(OH)から成ることができ、式中、Rは、C-C10アルキル、アリール又はヘテロアリールであり、アリール又はヘテロアリールは、任意選択で、1~6個(例えば、1、2、3、4、5、又は6個)のC-C10アルキルで置換され得る。好適なボロン酸の例としては、フェニルボロン酸及びナフタレン-1-ボロン酸が挙げられる。
【0027】
幾つかの実施形態において、少なくとも1種のボロン酸は、エッチング組成物の少なくとも約0.01重量%(例えば、少なくとも約0.02重量%、少なくとも約0.03重量%、少なくとも約0.04重量%、少なくとも約0.05重量%、少なくとも約0.1重量%、少なくとも約0.2重量%、又は少なくとも約0.3重量%)~約0.5重量%以下(例えば、約0.4重量%以下、約0.3重量%以下、約0.2重量%以下、約0.1重量%以下、約0.08重量%以下、又は約0.05重量%以下)であり得る。理論に束縛されることを望むものではないが、本開示のエッチング組成物中にボロン酸を含めることにより、SiOxエッチング速度を阻害することができると考えられる。
【0028】
幾つかの実施形態では、本開示のエッチング組成物は、少なくとも1種(例えば、2種、3種、又は4種)の無機酸(例えば、鉱酸)を更に含むことができる。適切な無機酸の例としては、硫酸及びホウ酸が挙げられる。一般に、ボロン酸は有機酸と見なされるため、本明細書に記載の無機酸はボロン酸ではない。
【0029】
幾つかの実施形態では、少なくとも1種の無機酸は、エッチング組成物の少なくとも約0.1重量%(例えば、少なくとも約0.2重量%、少なくとも約0.3重量%、少なくとも約0.4重量%、少なくとも約0.5重量%、少なくとも約0.6重量%、少なくとも約0.7重量%、少なくとも約0.8重量%、少なくとも約0.9重量%、少なくとも約1重量%、少なくとも約2重量%、又は少なくとも約3重量%)~約5重量%以下(例えば、約4.5重量%以下、約4重量%以下、約3.5重量%以下、約3重量%以下、約2.5重量%以下、約2重量%以下、約1.5重量%以下、又は約1重量%以下)であり得る。
【0030】
幾つかの実施形態では、本開示のエッチング組成物は、少なくとも約1(例えば、少なくとも約1.2、少なくとも約1.4、少なくとも約1.5、少なくとも約1.6、少なくとも約1.8、少なくとも約2、少なくとも約2.2、少なくとも約2.4、又は少なくとも約2.5)及び/又は約3以下(例えば、約2.8以下、約2.6以下、約2.5以下、約2.4以下、約2.2以下、約2以下、又は約1.5以下)のpHを有することができる。理論に束縛されることを望むものではないが、3より高いpHを有するエッチング組成物は、そのようなエッチング組成物が著しく増加した低誘電率誘電材料エッチング速度を有し得るので、低誘電率誘電材料(例えば、SiOx)に対して十分なSiGe選択性を有さないと考えられる。更に、pHが1より低いエッチング組成物は、強い酸性のために組成物中の特定の成分を分解し得ると考えられる。
【0031】
更に、幾つかの実施形態では、本開示のエッチング組成物は、pH調整剤、腐食防止剤、界面活性剤、追加の有機溶媒、殺生物剤、及び消泡剤などの添加剤を任意の成分として含有してもよい。適切な添加剤の例としては、アルコール(例えば、ポリビニルアルコール)及び有機酸(例えば、イミニド酢酸、マロン酸、シュウ酸、コハク酸及びリンゴ酸)が挙げられる。適切な消泡剤の例としては、ポリシロキサン消泡剤(例えば、ポリジメチルシロキサン)、ポリエチレングリコールメチルエーテルポリマー、エチレンオキシド/プロピレンオキシドコポリマー、及びグリシジルエーテル封鎖アセチレンジオールエトキシレート(例えば、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第6,717,019号明細書に記載されているものなど)が挙げられる。適切な界面活性剤の例は、カチオン性、アニオン性、非イオン性又は両性であり得る。
【0032】
一般に、本開示のエッチング組成物は、比較的高いSiGe/誘電体材料(例えば、SiN、ポリシリコン、又はSiCO)エッチング選択性を有することができる(すなわち、エッチング速度が同じ条件下で測定される場合、誘電体材料エッチング速度に対するSiGeエッチング速度の比が大きい)。幾つかの実施形態では、エッチング組成物は、少なくとも約2(例えば、少なくとも約3、少なくとも約4、少なくとも約5、少なくとも約6、少なくとも約7、少なくとも約8、少なくとも約9、少なくとも約10、少なくとも約15、少なくとも約20、少なくとも約30、少なくとも約40、又は少なくとも約50)及び/又は約500以下(例えば、約100以下)のSiGe/誘電体材料エッチング選択性を有することができる。
【0033】
幾つかの実施形態では、本開示のエッチング組成物は、ホウ素でドープされたSiGeを含む膜(すなわち、SiGe:B)を除去するための比較的低いエッチング速度を有することができる。例えば、エッチング組成物は、25℃で約3Å/分以下(例えば、約2.5Å/分以下、約2Å/分以下、約1.5Å/分以下、約1Å/分以下又は約0.5Å/分以下)~0Å/分のSiGe:Bエッチング速度を有することができる。
【0034】
幾つかの実施形態では、本開示のエッチング組成物は、1種又は複数種の添加剤成分を、2種以上であれば、任意の組み合わせで、特に除外することができる。そのような成分は、有機溶媒、pH調整剤、ポリマー、酸素捕捉剤、第4級アンモニウム化合物(第4級アンモニウム水酸化物(TMAHなど)及び塩を含む)、アミン、アルカリ塩基(NaOH、KOH、LiOH等)、消泡剤以外の界面活性剤、消泡剤、フッ素含有化合物(例えば、フッ化物化合物又はフッ素化化合物(例えば、ポリマー/界面活性剤))、研磨剤(例えば、シリカ/セリア研磨剤、非イオン性研磨剤、表面改質研磨剤、又は負/正に帯電した研磨剤)、ケイ素含有化合物(例えば、ケイ酸塩又はシラン(例えば、アルコキシシラン))、界面活性剤(例えば、カチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、又は非イオン性界面活性剤)、可塑剤、ヒドロキシカルボン酸(例えば、2つを超えるヒドロキシル基を含有するもの)、アミノ基を欠くカルボン酸及びポリカルボン酸、環状化合物(例えば、アゾール(例えば、ジアゾール、トリアゾール又はテトラゾール)、トリアジン、及び少なくとも2つの環を含む環状化合物、例えば置換若しくは非置換ナフタレン、又は置換若しくは非置換ビフェニルエーテル)、緩衝剤、非アゾール腐食防止剤、及び金属塩(例えば、金属ハロゲン化物)から成るグループから選択される。
【0035】
本開示のエッチング組成物は、成分を単に混合することによって調製することができ、又は、キット中の2つの組成物をブレンドすることによって調製することができる。キット中の第1の組成物は、酸化剤(例えば、H)の水溶液であり得る。キット中の第2の組成物は、2つの組成物のブレンドが本開示の所望のエッチング組成物をもたらすように、本開示のエッチング組成物の残りの成分を所定の比率で濃縮形態で含有することができる。
【0036】
幾つかの実施形態では、本開示は、少なくとも1つのSiGe膜を含む半導体基板をエッチングする方法を特徴とする。方法は、少なくとも1つのSiGe膜を含む半導体基板を本開示のエッチング組成物と接触させてSiGe膜を除去することを含むことができる。方法は、接触させる工程の後に半導体基板をリンス溶媒でリンスすること、及び/又はリンスする工程の後に半導体基板を乾燥させることを更に含むことができる。幾つかの実施形態では、方法は、半導体基板内の金属導体(例えば、Cu)又は誘電体材料(例えば、SiN、ポリシリコン、又はSiCO)を実質的に除去しない。例えば、方法は、半導体基板中の約5重量%超(例えば、約3重量%超又は約1重量%超)の金属導体又は誘電体材料を除去しない。
【0037】
幾つかの実施形態において、半導体基板内のSiGe膜は、SiGe膜中に少なくとも約10重量%(例えば、少なくとも約12重量%、少なくとも約14重量%、少なくとも約15重量%、少なくとも約16重量%、少なくとも約18重量%、又は少なくとも約20重量%)及び/又は約35重量%以下(例えば、約34重量%以下、約32重量%以下、約30重量%以下、約28重量%以下、約26重量%以下、約25重量%以下、約24重量%以下、約22重量%以下、約20重量%以下、約18重量%以下、約16重量%以下、又は約15重量%以下)のGeを含むことができる。理論に束縛されることを望むものではないが、約10重量%~約35重量%のGeを含有するSiGe膜は、35重量%を超える又は10重量%未満のGeを含有する膜と比較して、エッチング組成物によって半導体基板からより容易に除去することができると考えられる。
【0038】
幾つかの実施形態において、エッチング方法は、
(A)SiGe膜を含む半導体基板を準備する工程と、
(B)半導体基板を本明細書に記載のエッチング組成物と接触させる工程と、
(C)1又は複数の適切なリンス溶媒で半導体基板をリンスする工程と、
(D)任意選択で、半導体基板を(例えば、リンス溶媒を除去して半導体基板の完全性を損なわない任意の適切な手段によって)乾燥させる工程と、
を含む。
【0039】
幾つかの実施形態において、本開示は、SiGe膜と、ホウ素でドープされたSiGeを含む膜と、を含む半導体基板をエッチングする方法も特徴とする。方法は、半導体基板を本開示のエッチング組成物と接触させてSiGe膜を除去することを含むことができる。幾つかの実施形態において、方法は、ホウ素でドープされたSiGeを含む膜を実質的に除去しない。
【0040】
この方法でエッチングされるSiGeを含む半導体基板は、有機残留物及び有機金属残留物、並びにある範囲の金属酸化物を含むことができ、それらの一部又は全部もエッチングプロセス中に除去され得る。
【0041】
本明細書に記載の半導体基板(例えば、ウェハ)は、一般に、シリコン、シリコンゲルマニウム、GaAsなどのIII-V族化合物、又はそれらの任意の組み合わせから構成される。半導体基板は、相互接続機構(例えば、金属ライン及び誘電材料)などの露出した集積回路構造を更に含むことができる。相互接続機構に使用される金属及び金属合金としては、アルミニウム、銅と合金化されたアルミニウム、銅、チタン、タンタル、コバルト、ケイ素、窒化チタン、窒化タンタル、及びタングステンが挙げられるが、これらに限定されない。また、半導体基板は、層間誘電体、ポリシリコン、酸化ケイ素、窒化ケイ素、炭化ケイ素、酸化チタン、及び炭素ドープ酸化ケイ素の層を含んでもよい。
【0042】
半導体基板は、エッチング組成物をタンクに入れて半導体基板をエッチング組成物に浸漬及び/又は浸漬すること、エッチング組成物を半導体基板に噴霧すること、エッチング組成物を半導体基板上に流し込むこと、又はそれらの任意の組み合わせなどの任意の適切な方法によってエッチング組成物と接触させることができる。
【0043】
本開示のエッチング組成物は、約85℃(例えば、約20℃~約80℃、約55℃~約65℃、又は約60℃~約65℃)の温度までで有効に使用することができる。SiGeのエッチング速度はこの範囲で温度と共に増加するため、より高い温度でのプロセスをより短い時間実行することができる。逆に、より低いエッチング温度は、典型的には、より長いエッチング時間を必要とする。
【0044】
エッチング時間は、使用される特定のエッチング方法、厚さ、及び温度に応じて広範囲にわたって変化し得る。浸漬バッチ式プロセスでエッチングする場合、適切な時間範囲は、例えば、最大約10分(例えば、約1分~約7分、約1分~約5分、又は約2分~約4分)である。単一ウェハプロセスのエッチング時間は、約30秒~約5分(例えば、約30秒~約4分、約1分~約3分、又は約1分~約2分)の範囲であり得る。
【0045】
本開示のエッチング組成物のエッチング能力を更に促進するために、機械的撹拌手段を使用することができる。適切な撹拌手段の例としては、基板上のエッチング組成物の循環、基板上のエッチング組成物のストリーミング又はスプレー、及びエッチングプロセス中の超音波又はメガソニック撹拌が挙げられる。グランドに対する半導体基板の向きは、任意の角度とすることができる。水平方向又は垂直方向が好ましい。
【0046】
エッチングに続いて、半導体基板は、撹拌手段の有無にかかわらず、約5秒間から約5分間まで、適切なリンス溶媒でリンスすることができる。異なるリンス溶媒を使用する複数のリンス工程を使用することができる。適切なリンス溶媒の例としては、脱イオン(DI)水、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、N-メチルピロリジノン、γ-ブチロラクトン、ジメチルスルホキシド、乳酸エチル及びプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートが挙げられるが、これらに限定されない。これに代えて又は加えて、pH>8の水性リンス(希水酸化アンモニウム水溶液など)を使用することができる。リンス溶媒の例としては、希水酸化アンモニウム水溶液、DI水、メタノール、エタノール、及びイソプロピルアルコールが挙げられるが、これらに限定されない。リンス溶媒は、本明細書に記載のエッチング組成物を塗布する際に使用される手段と同様の手段を使用して塗布することができる。エッチング組成物は、リンスする工程の開始前に半導体基板から除去されていてもよく、又はリンスする工程の開始時に依然として半導体基板と接触していてもよい。幾つかの実施形態において、リンスする工程で使用される温度は、16℃~27℃である。
【0047】
任意選択で、半導体基板は、リンスする工程後に乾燥される。当技術分野で公知の任意の適切な乾燥手段を使用することができる。適切な乾燥手段の例としては、スピン乾燥、半導体基板全体に乾燥ガスを流すこと、又はホットプレート若しくは赤外線ランプなどの加熱手段で半導体基板を加熱すること、マラゴニ乾燥、ロタゴニ乾燥、IPA乾燥、又はそれらの任意の組み合わせが挙げられる。乾燥時間は、使用される具体的な方法に依存するが、典型的には30秒から数分程度である。
【0048】
幾つかの実施形態では、本明細書に記載のエッチング方法は、前述の方法によって得られた半導体基板から半導体デバイス(例えば、半導体チップなどの集積回路デバイス)を形成することを更に含む。
【0049】
本開示は、以下の実施例を参照してより詳細に説明されるが、これらは例示を目的とするものであり、本開示の範囲を限定するものと解釈されるべきではない。
【実施例
【0050】
特に明記しない限り、列挙したパーセンテージは重量(重量%)による。特に明記しない限り、試験中の制御された撹拌は、250rpmで1インチの撹拌バーを用いて行った。
【0051】
一般手順1
配合物混合
エッチング組成物のサンプルは、撹拌しながら、計算された量の溶媒に配合物の残りの成分を添加することによって調製した。均一な溶液が得られた後、使用する場合は任意選択の添加剤を添加した。
【0052】
一般手順2
材料及び方法
評価のために0.5インチ×1.0インチの試験クーポンにダイシングされた市販のパターン化されていない直径300mmのウェハを使用して、膜のブランケットフィルムエッチング速度測定を行った。試験に使用される一次ブランケットフィルム材料は、1)シリコン基板上に堆積された約500Åの厚さを有するSiGe膜、2)シリコン基板上に堆積された約600Åの厚さを有するSiN膜、3)シリコン基板上に堆積された約1000Åの厚さを有するポリシリコン膜;4)シリコン基板上に堆積された約200Åの厚さを有するSiCO膜、5)シリコン基板上に堆積された約1200Åの厚さを有するSiOx膜、及び6)シリコン基板上に堆積された約250Åの厚さを有するホウ素でドープされたSiGe膜を含む。
【0053】
ブランケットフィルム試験クーポンを、処理前及び処理後の厚さについて測定して、ブランケットフィルムのエッチング速度を決定した。SiGe、SiOx及びポリシリコンブランケットフィルムについて、膜厚は、Woollam VASEを使用してエリプソメトリーによって処理前及び処理後に測定した。
【0054】
一般手順3
ビーカー試験によるエッチング評価
全てのブランケットフィルムエッチング試験は、250rpmで連続的に撹拌しながら100gの試料溶液を含有する125mLのPFAボトル内の温度制御された水バッチ(25℃)で、蒸発損失を最小限に抑えるために常にPFAスクリューを所定の位置に置いて実施した。サンプル溶液の片側に露出したブランケット誘電体膜を有する全てのブランケット試験クーポンを、ビーカースケール試験のために、ダイヤモンドスクライブによって0.5インチ×1.0インチの正方形試験クーポンサイズにダイシングした。各個々の試験クーポンを、単一の長さ4インチのロッキングプラスチックピンセットクリップを使用して所定の位置に保持した。ロッキングピンセットクリップによって一方の端部を保持された試験クーポンを125mLのPFAボトル内につるし、溶液を25℃で250rpmで連続的に撹拌しながら100gの試験溶液に浸漬した。処理時間(一般手順3Aに記載)が経過するまで、試験クーポンを撹拌溶液中で静置した。試験溶液中での処理時間が経過した後、試料クーポンを125mLのPFAボトルから直ちに取り出し、一般手順3Aに従ってリンスした。最終IPAリンス工程の後、全ての試験クーポンを、手持ち式窒素ガスブロワを用いて濾過窒素ガスブローオフ工程に供し、これにより全ての微量のIPAを強制的に除去して、試験測定のための最終乾燥試料を得た。
【0055】
一般手順3A(ブランケット試験クーポン)
一般手順3に従って2~10分の処理時間の直後に、クーポンを300mL容量の超高純度脱イオン(DI)水に15秒間穏やかに撹拌しながら浸漬し、続いて300mLのイソプロピルアルコール(IPA)に穏やかに撹拌しながら15秒間浸漬し、最後に300mLのIPA中で穏やかに撹拌しながら15秒間リンスした。一般手順3に従ってプロセスを完了した。
【0056】
例1
配合物例1~8(FE-1~FE-8)を一般手順1に従って調製し、一般手順2、3及び3Aに従って評価した。具体的には、各被試験基板について、エッチング組成物を250rpmで撹拌しながら、25℃で2分間エッチング試験を行った。配合物及び試験結果を以下の表1に要約する。
【表1】
【0057】
表1に示すように、FE-1~FE-3は全て、比較的高いSiGe25/SiGe:B、SiGe25/ポリSi、SiGe25/SiCO、SiGe25/SiOx、及びSiGe25/SiNエッチング選択性を示した。特に、FE-2(無水酢酸を含む)は、驚くべきことに、FE-1(無水酢酸を含まない)と比較して、SiGe:Bエッチング速度の顕著な低下を示した。更に、FE-3(フェニルボロン酸を含む)は、驚くべきことに、FE-2(フェニルボロン酸を含まない)と比較してSiGe:Bエッチング速度を更に低下させた。
【0058】
例2
配合物例4~6(FE-4~FE-6)を一般手順1に従って調製し、一般手順2、3及び3Aに従って評価した。各試験基板について、エッチング組成物を250rpmで撹拌しながら24℃でエッチング試験を行った。エッチング時間は、SiGe21では60秒、SiOxでは10分、シリコンでは90秒であった。配合物及び試験結果を以下の表2に要約する。
【表2】
【0059】
表2に示すように、FE-4~FE-6は、いずれも比較的高いSiGe21/SiOxエッチング選択性を示した。一方、FE-5及びFE-6(ヘキサフルオロケイ酸アンモニウムを含む)は、驚くべきことに、FE-4(ヘキサフルオロケイ酸アンモニウムを含まない)と比較して、Si損失が著しく減少した。
【0060】
本発明をその特定の実施形態を参照して詳細に説明してきたが、修正及び変形は、説明及び特許請求されるものの精神及び範囲内にあることが理解され得る。
【国際調査報告】