(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-04
(54)【発明の名称】電気機械式ブレーキを解除するための方法、電気機械式ブレーキを解除するための可搬式エネルギ貯蔵装置、および可搬式エネルギ貯蔵装置と列車のブレーキシステムとのシステム
(51)【国際特許分類】
B60T 17/18 20060101AFI20240927BHJP
B60T 13/74 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
B60T17/18
B60T13/74 A
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024522456
(86)(22)【出願日】2022-10-11
(85)【翻訳文提出日】2024-04-12
(86)【国際出願番号】 EP2022078241
(87)【国際公開番号】W WO2023062002
(87)【国際公開日】2023-04-20
(32)【優先日】2021-10-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】503159597
【氏名又は名称】クノル-ブレムゼ ジステーメ フューア シーネンファールツォイゲ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Knorr-Bremse Systeme fuer Schienenfahrzeuge GmbH
【住所又は居所原語表記】Moosacher Strasse 80,D-80809 Muenchen,Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ガボール バラット
【テーマコード(参考)】
3D048
3D049
【Fターム(参考)】
3D048AA04
3D048BB02
3D048CC49
3D048HH18
3D048HH51
3D048KK18
3D049AA04
3D049BB02
3D049BB07
3D049CC07
3D049KK18
(57)【要約】
電気機械式ブレーキを解除するための方法および可搬式エネルギ貯蔵装置(2)、ならびに可搬式エネルギ貯蔵装置(2)と列車のブレーキシステム(3)とのシステム(1)が開示される。ブレーキは、それぞれに割り当てられた電気機械式ブレーキアクチュエータ(4)によって解除され、方法は、ブレーキを解除するための電気エネルギを供給する可搬式エネルギ貯蔵装置(2)にブレーキアクチュエータ(4)を順次に接続するステップと、可搬式エネルギ貯蔵装置(2)からのエネルギを使用してブレーキアクチュエータ(4)を作動させることによってブレーキを解除するステップとを含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気機械式ブレーキをそれぞれに割り当てられた電気機械式ブレーキアクチュエータ(4)によって解除するための方法であって、
前記ブレーキを解除するための電気エネルギを供給する可搬式エネルギ貯蔵装置(2)に前記ブレーキアクチュエータ(4)を順次に接続するステップと、
前記可搬式エネルギ貯蔵装置(2)からのエネルギを使用して前記ブレーキアクチュエータ(4)を作動させることによって前記ブレーキを解除するステップと
を含む、方法。
【請求項2】
前記ブレーキアクチュエータ(4)は、前記ブレーキの省エネルギ解除を可能にするために前記ブレーキの解除時間中の前記ブレーキアクチュエータ(4)の全エネルギ消費が最小となるように経験的に決定された速度プロファイルに従って動作される、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記ブレーキアクチュエータ(4)は、複数のブレーキアクチュエータ群(5)へとグループ化され、
前記ブレーキアクチュエータ群(5)への供給は、前記可搬式エネルギ貯蔵装置(2)によって順次にかつ個別に行われる、
請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
前記方法が、
前記エネルギ貯蔵装置(2)の第2のエネルギ貯蔵部品(8)に貯蔵されたエネルギによって前記エネルギ貯蔵装置(2)の第1のエネルギ貯蔵部品(7)を充電するステップと、
前記第1のエネルギ貯蔵部品(7)に貯蔵されたエネルギを前記ブレーキアクチュエータ(4)に供給するステップと
を含む、請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
前記第1のエネルギ貯蔵部品(7)はコンデンサによって形成されており、前記第2のエネルギ貯蔵部品(8)はバッテリによって形成されており、前記第1のエネルギ貯蔵部品(7)は、該第1のエネルギ貯蔵部品(7)の充電を制御するチャージャおよびブースタ(9)を介して充電される、
請求項4記載の方法。
【請求項6】
前記ブレーキアクチュエータ(4)への供給は、前記エネルギ貯蔵装置(2)の放電リミッタ(10)を介して行われる、請求項4または5記載の方法。
【請求項7】
電気機械式ブレーキを解除するための電気機械式ブレーキアクチュエータ(4)への供給を行う可搬式エネルギ貯蔵装置(2)であって、
第1のエネルギ貯蔵部品(7)と、
第2のエネルギ貯蔵部品(8)と
を備え、
前記第2のエネルギ貯蔵部品(8)は、前記第1のエネルギ貯蔵部品(7)を充電するように構成されており、
前記第1のエネルギ貯蔵部品(7)は、前記ブレーキアクチュエータ(4)にエネルギを供給するように構成されている、
可搬式エネルギ貯蔵装置(2)。
【請求項8】
前記第1のエネルギ貯蔵部品(7)はコンデンサによって形成されており、
前記第2のエネルギ貯蔵部品(8)はバッテリによって形成されている、
請求項7記載の可搬式エネルギ貯蔵装置(2)。
【請求項9】
前記バッテリは、リチウムイオン蓄電池、NIMH蓄電池および鉛蓄電池のうちの1つによって形成される、
請求項8記載の可搬式エネルギ貯蔵装置(2)。
【請求項10】
前記可搬式エネルギ貯蔵装置(2)は、さらに、
前記第1のエネルギ貯蔵部品(7)の充電を制御するように構成されたチャージャおよびブースタ(9)
を備える、請求項7から9までのいずれか1項記載の可搬式エネルギ貯蔵装置(2)。
【請求項11】
前記可搬式エネルギ貯蔵装置(2)は、さらに、
前記ブレーキアクチュエータ(4)に供給される供給電流を制御するように構成された放電リミッタ(10)
を備える、請求項7から10までのいずれか1項記載の可搬式エネルギ貯蔵装置(2)。
【請求項12】
前記可搬式エネルギ貯蔵装置(2)は持ち運び可能に構成されている、請求項7から11までのいずれか1項記載の可搬式エネルギ貯蔵装置(2)。
【請求項13】
請求項7から12までのいずれか1項記載の可搬式エネルギ貯蔵装置(2)と列車のブレーキシステム(3)とのシステム(1)であって、
該システム(1)が、複数のブレーキアクチュエータ群(5)へとグループ化されたブレーキアクチュエータ(4)を備えた複数の電気機械式ブレーキを備え、
前記ブレーキアクチュエータ群(5)は、該ブレーキアクチュエータ群(5)のうちの1つのブレーキアクチュエータが1つのコネクタ装置によって前記エネルギ貯蔵装置(2)に接続可能であるように構成されている、システム(1)。
【請求項14】
前記ブレーキアクチュエータ(4)は、前記ブレーキアクチュエータ(4)の経験的に決定されて最適化された速度プロファイルによって前記ブレーキの解除中のエネルギ消費が低減されるように構成されている、
請求項13記載のシステム(1)。
【請求項15】
請求項1から6までのいずれか1項記載の方法を実行するための、機械可読担体に格納されたプログラムコードを有する、コンピュータプログラム製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気機械式ブレーキを解除するための方法、電気機械式ブレーキを解除するための特に電気機械式ブレーキアクチュエータへの供給を行う可搬式エネルギ貯蔵装置、および特に列車の電源が故障した場合にブレーキシステムの電気機械式ブレーキを解除するための可搬式エネルギ貯蔵装置と列車のブレーキシステムとのシステムに関する。
【0002】
ブレーキをかけるために、電気機械式ブレーキは、ブレーキ力の供給を可能にするためのモータ、センサおよび電子機器を備えた電気機械式ブレーキアクチュエータを備えている。電気機械式ブレーキアクチュエータが使用されているため、列車の電源が故障した場合、ブレーキが作動されると、ロックされてしまい、解除することができなくなる。なぜなら、例えばモータや電子機器などの内部部品が電気なしでは機能しないからである。
【0003】
しかし、例えば列車が救援列車によって牽引されるような救援状況では、ブレーキは解除されるべきある。
【0004】
ブレーキを解除するための1つの選択肢は、個々のブレーキからアクチュエータを1つずつ取り外すことであるが、列車には多数のブレーキが含まれうるため、これには大きな労力を要する。別の選択肢は、ブレーキシステムにエネルギを供給することにより、すべてのアクチュエータを同時に解除することであるが、これには高いピーク電流のエネルギをシステムに大量に供給する必要があり、その結果、大型で重いエネルギ貯蔵装置と列車の車両の複雑な配線とが必要になる。
【0005】
したがって、本発明の基礎とする目的は、上記の欠点を改善し、列車の質量およびコストならびにブレーキを解除するための労力を増大させることなく、列車の電源が故障した場合に電気機械式ブレーキを解除するための適切な可能性を提供することである。
【0006】
目的は、請求項1記載の方法、請求項7記載の可搬式エネルギ貯蔵装置、請求項13記載のシステム、および請求項15記載のコンピュータプログラム製品によって達成される。有利なさらなる発展形態は、各従属請求項に含まれる。
【0007】
本発明の一態様によれば、電気機械式ブレーキをそれぞれに割り当てられた電気機械式ブレーキアクチュエータによって解除するための方法が、ブレーキを解除するための電気エネルギを供給する可搬式エネルギ貯蔵装置にブレーキアクチュエータを順次に接続するステップと、可搬式エネルギ貯蔵装置からのエネルギを使用してブレーキアクチュエータを作動させることによってブレーキを解除するステップとを含む。
【0008】
ブレーキの解除に可搬式エネルギ貯蔵装置を使用する場合、アクチュエータを取り外す必要はなく、列車の追加装備は、可搬式エネルギ貯蔵装置をアクチュエータに接続するためのコネクタ装置に限られ、車両の配線が複雑化したり、大型のエネルギ貯蔵装置を列車に追加したりする必要はない。
【0009】
方法の有利な実施態様では、ブレーキアクチュエータは、ブレーキの省エネルギ解除を可能にするためにブレーキの解除時間中のブレーキアクチュエータの全エネルギ消費が最小となるように経験的に決定された速度プロファイルに従って動作される。
【0010】
この手段により、アクチュエータは、エネルギ消費が最も少ない速度プロファイルに従って動作され、したがって、必要なエネルギ量、ひいてはエネルギ貯蔵装置の充電容量が低減され、エネルギ貯蔵装置の小型軽量化が可能となる。
【0011】
方法のさらに有利な実施態様では、ブレーキアクチュエータは、複数のブレーキアクチュエータ群へとグループ化され、ブレーキアクチュエータ群への供給は、可搬式エネルギ貯蔵装置によって順次にかつ個別に行われる。
【0012】
当該手段により、ブレーキを同時に解除するために動作させるべきブレーキアクチュエータの数が減少するため、ブレーキを解除するために同時に必要なエネルギが低減される。したがって、可搬式エネルギ貯蔵装置の充電容量も低減することができ、その結果、コストが低減され、サイズおよび重量が小さくなるため取り扱いが容易となる。
【0013】
方法のさらに有利な実施態様では、方法は、エネルギ貯蔵装置の第2のエネルギ貯蔵部品に貯蔵されたエネルギによってエネルギ貯蔵装置の第1のエネルギ貯蔵部品を充電するステップと、第1のエネルギ貯蔵部品に貯蔵されたエネルギをブレーキアクチュエータに供給するステップとを含む。
【0014】
2つのエネルギ貯蔵部品が使用される場合、個々のエネルギ貯蔵部品を最適化することができ、すなわち、一方では、多数の解除動作のためのエネルギを供給するための大きなエネルギ容量を備えるために、第2のエネルギ貯蔵装置が使用され、他方では、アクチュエータの要求速度を可能にするための十分な電流ピーク値を供給するために、第1のエネルギ貯蔵装置が使用される。
【0015】
方法のさらに有利な実施態様では、第1のエネルギ貯蔵部品はコンデンサであり、第2のエネルギ貯蔵部品はバッテリであり、第1のエネルギ貯蔵部品は、第1のエネルギ貯蔵部品の充電を制御するチャージャおよびブースタを介して充電される。
【0016】
バッテリは、充電容量と重量およびサイズとの間の有利な関係をもたらす。チャージャおよびブースタにより、バッテリの放電を、特に第2のエネルギ貯蔵部品の放電時間、ひいてはコンデンサの充電時間に関して、最適化することができる。個々の解除動作間の時間を考慮しながらバッテリを緩慢に放電させれば、より軽量のバッテリを使用することができ、コストが低減され、エネルギ貯蔵部品の取り扱い性が向上する。電圧レベルブースタの形態のブースタは、バッテリから最大限のエネルギを放出し、アクチュエータの最良の動作電圧を達成するために必要である。
【0017】
方法のさらに有利な実施態様では、ブレーキアクチュエータへの供給は、エネルギ貯蔵装置の放電リミッタを介して行われる。
【0018】
放電リミッタを使用することで、第1のエネルギ貯蔵部品の安全な動作範囲が確保されるため、エネルギ貯蔵装置が保護される。
【0019】
本発明のさらなる態様によれば、電気機械式ブレーキを解除するための電気機械式ブレーキアクチュエータへの供給を行う可搬式エネルギ貯蔵装置は、第1のエネルギ貯蔵部品と第2のエネルギ貯蔵部品とを備え、第2のエネルギ貯蔵部品は、第1のエネルギ貯蔵部品を充電するように構成されており、第1のエネルギ貯蔵部品は、ブレーキアクチュエータにエネルギを供給するように構成されている。
【0020】
2つのエネルギ貯蔵部品が使用される場合、個々のエネルギ貯蔵部品を最適化することができ、一方では、複数の解除動作用のエネルギを供給するための大きなエネルギ容量を備蓄するために、第2のエネルギ貯蔵装置が使用され、他方では、アクチュエータの要求速度を可能にする十分な電流ピーク値を供給するために、第1のエネルギ貯蔵装置が使用され、これにより、エネルギ貯蔵装置の寸法および重量を最適化することができる。
【0021】
可搬式エネルギ貯蔵装置の有利な実施態様では、第1のエネルギ貯蔵部品はコンデンサによって形成されており、第2のエネルギ貯蔵部品はバッテリによって形成されている。
【0022】
第1のエネルギ貯蔵部品としてコンデンサを使用し、第2のエネルギ貯蔵部品としてバッテリを使用することにより、エネルギ貯蔵装置の寸法および重量を最適化しつつ、適切なパラメータを有する十分な量のエネルギを供給するという観点から、エネルギ貯蔵部品を最適化することができる。
【0023】
可搬式エネルギ貯蔵装置のさらに有利な実施態様では、バッテリは、リチウムイオン蓄電池、NIMH蓄電池および鉛蓄電池のうちの1つによって形成される。
【0024】
これらのタイプのバッテリ、充電容量とバッテリの重量およびサイズとの間の有利な関係を可能にする。
【0025】
可搬式エネルギ貯蔵装置のさらに有利な実施態様により、装置はさらに、第1のエネルギ貯蔵部品の充電を制御するように構成されたチャージャおよびブースタを備える。
【0026】
チャージャおよびブースタにより、第2のエネルギ貯蔵部品の放電、ひいては第1のエネルギ貯蔵部品の充電を、特に第2のエネルギ貯蔵部品の放電時間に関して最適化することができる。
【0027】
可搬式エネルギ貯蔵装置のさらに有利な実施態様では、装置はさらに、ブレーキアクチュエータに供給される供給電流を制御するように構成された放電リミッタを備える。
【0028】
放電リミッタを備えることで、第1のエネルギ貯蔵部品の安全な動作範囲が確保されるため、エネルギ貯蔵装置が保護される。
【0029】
可搬式エネルギ貯蔵装置のさらに有利な実施態様により、装置は持ち運び可能に構成される。
【0030】
当該特性により、複数のアクチュエータ群が列車に沿って分布する場合、それぞれのブレーキアクチュエータを解除するために、1つのアクチュエータ群から次のアクチュエータ群へ簡単に移動できるため、エネルギ貯蔵装置の使用が容易となる。
【0031】
本発明の別の態様によれば、可搬式エネルギ貯蔵装置と列車のブレーキシステムとのシステムは、複数のブレーキアクチュエータ群へとグループ化されたブレーキアクチュエータを備えた複数の電気機械式ブレーキを備え、ブレーキアクチュエータ群は、ブレーキアクチュエータ群のうちの1つのブレーキのブレーキアクチュエータが1つのコネクタ装置によってエネルギ貯蔵装置に接続可能であるように構成されている。
【0032】
このようなシステムでは、アクチュエータを取り外す必要はなく、列車の追加装備は、可搬式エネルギ貯蔵装置をアクチュエータに接続するためのコネクタ装置に限られ、車両の配線が複雑化したり大型のエネルギ貯蔵装置を列車に追加したりする必要はない。
【0033】
システムの有利な実施態様では、ブレーキアクチュエータは、ブレーキアクチュエータの経験的に決定されて最適化された速度プロファイルによってブレーキの解除中のエネルギ消費が低減されるように構成されている。
【0034】
最適化された速度プロファイルにより、アクチュエータは、エネルギ消費が最も少ない速度プロファイルに従って動作されるため、必要なエネルギ量、ひいてはエネルギ貯蔵装置の充電容量が低減され、エネルギ貯蔵装置の小型軽量化が可能となり、その結果、コストが低減され、取り扱いが容易となる。
【0035】
本発明のさらなる態様によれば、方法を実行するための、機械可読担体に格納されたプログラムコードを有するコンピュータプログラム製品が提供される。
【0036】
以下では、添付図面を参照しながら、実施形態によって本発明を説明する。特に、図には次のことが示されている。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【
図1】エネルギ貯蔵装置とブレーキアクチュエータ群が設けられた列車のブレーキシステムとを含むシステムを示す図である。
【
図2】アクチュエータの低速時の速度プロファイルおよびエネルギ消費を示す図である。
【
図3】アクチュエータの最適化された速度時の速度プロファイルおよびエネルギ消費を示す図である。
【
図4】列車の電気機械式ブレーキを解除するための方法のフローチャートである。
【0038】
図1は、可搬式エネルギ貯蔵装置2と列車のブレーキシステム3とを含むシステム1を示す図である。ブレーキシステム3は、電気機械式ブレーキ(図示せず)と、それぞれの電気機械式ブレーキに割り当てられたブレーキアクチュエータ4とを備える。
【0039】
本実施形態では、4つのブレーキアクチュエータ4がブレーキアクチュエータ群5へとグループ化されている。ブレーキアクチュエータ群5のブレーキアクチュエータ4は、ケーブル6およびコネクタ装置(図示せず)によってエネルギ貯蔵装置2に接続可能である。代替実施形態では、別の数のブレーキアクチュエータ4がブレーキアクチュエータ群5へとグループ化されるか、またはブレーキアクチュエータ4がブレーキアクチュエータ群5へはグループ化されず、可搬式エネルギ貯蔵装置2に個別に接続される。
【0040】
ブレーキアクチュエータ4のエネルギ消費は、ブレーキアクチュエータ4の最適化された速度プロファイルを決定することによって低減される。
【0041】
図2には、低速時のブレーキアクチュエータ4のうちの1つの速度プロファイルおよびエネルギ消費が示されている。図の横軸に経過時間が[s]で示されており、縦軸に、速度が[rad/s]で、消費エネルギが[J]で示されている。
図3は、最適化された速度時のブレーキアクチュエータ4のうちの1つの速度プロファイルおよびエネルギ消費を示す図である。この図でも、図の横軸に経過時間が[s]で示されており、縦軸に、速度が[rad/s]で、エネルギ消費が[J]で示されている。
【0042】
図2から見て取れるように、アクチュエータ4の最大速度は20rad/sであり、1回の解除手順の持続時間は約3sである。この場合、1回の解除手順について、エネルギ消費は260Jとなる。
図3では、アクチュエータ4の最大速度が50rad/sであり、1回の解除手順の持続時間が約1.4sである場合、1回の解除手順について、アクチュエータ4のエネルギ消費が155Jとなることが示されている。
【0043】
したがって、ブレーキの解除中のエネルギ消費を低減するために、最適化された速度プロファイルを経験的な試験によって決定すべきである。本調査の結果によると、ブレーキアクチュエータ4の動作時間を短縮するために、ブレーキアクチュエータ4の速度が高くなるよう、速度プロファイルを設計すべきである。電流が大きいが動作時間が短縮されるため、低速で動作時間が長いブレーキアクチュエータ4に比べて、ブレーキを解除するために消費されるエネルギが低減される。
【0044】
エネルギ貯蔵装置2は、列車の電源が故障した場合に列車のブレーキを解除するために、電気機械式ブレーキアクチュエータを作動させるためのエネルギを供給する。
【0045】
図1に示されている可搬式エネルギ貯蔵装置2は、第1のエネルギ貯蔵部品7および第2のエネルギ貯蔵部品8を備えている。第2のエネルギ貯蔵部品8は第1のエネルギ貯蔵部品7を充電するように構成されており、次いで、第1のエネルギ貯蔵部品がブレーキアクチュエータ4にエネルギを供給するように構成されている。可搬式エネルギ貯蔵装置2は持ち運び可能に構成されているが、代替実施形態では、例えば移動可能であるようにキャスタを備える。
【0046】
第1のエネルギ貯蔵部品7は、コンデンサ、特に第1のエネルギ貯蔵部品7の重量を大幅に低減するスーパー/ウルトラキャパシタ技術を使用するコンデンサバンクによって形成されている。代替実施形態では、第1のエネルギ貯蔵部品7は、適切な動作特性をもたらす別の種類のエネルギ貯蔵部品によって形成することもできる。
【0047】
第2のエネルギ貯蔵部品8は、バッテリ、特にリチウムイオン蓄電池によって形成されている。代替実施形態では、第2のエネルギ貯蔵部品8は、NIMH蓄電池、鉛蓄電池、または別の適切な種類のバッテリで形成することができる。
【0048】
第1のエネルギ貯蔵部品7であるコンデンサバンクと第2のエネルギ貯蔵部品8であるバッテリは、以下の利点をもたらす。バッテリは、充電容量と重量およびサイズとの間の有利な関係を有するので、可搬式エネルギ貯蔵装置のサイズおよび重量を過度に増大させることなく、複数の解除手順のためのより多くのエネルギを貯蔵することができる。しかし、バッテリは、アクチュエータ4の高速化を達成するために必要な高いピーク電流を供給することができない。したがって、充電容量が小さいが1回の解除手順のために十分であるコンデンサバンクは、各解除手順の後にバッテリによって充電できるため、大きな充電容量を必要とせずに、高いピーク電流を供給するために使用される。
【0049】
可搬式エネルギ貯蔵装置2はさらに、チャージャおよびブースタ9および放電リミッタ10を備えている。
【0050】
チャージャおよびブースタ9は、第1のエネルギ貯蔵部品7の充電を制御する。チャージャおよびブースタ9は、最適化された方法で第2のエネルギ貯蔵部品8を放電することにより、第1のエネルギ貯蔵部品7にエネルギを充電することを可能にする。第2のエネルギ貯蔵部品8の放電は、より軽量のバッテリを使用できるように可能な限り緩慢に行われるが、それにもかかわらず、第1のエネルギ貯蔵部品7は、最後のアクチュエータ群5から切り離された後、次のアクチュエータ群5に接続される前に完全に充電されるべきであることが念頭に置かれる。特に、ブースタは、バッテリから最大エネルギを放電し、アクチュエータ4のための最良の動作電圧を達成することができる。
【0051】
放電リミッタ10は、ブレーキアクチュエータ4に供給される供給電流を制御および制限するように構成されている。したがって、放電リミッタ10は、コンデンサバンクの安全な動作範囲を確保し、したがってエネルギ貯蔵装置2を保護する。
【0052】
図4には、列車のブレーキシステム3の電気機械式ブレーキを解除するための方法のフローチャートが示されている。
【0053】
使用中、列車の電源に障害が発生したが、列車を例えば次の駅に移動させなければならない場合、列車のブレーキシステム3の電気機械式ブレーキは、それぞれに割り当てられたブレーキアクチュエータ4によって解除されなければならない。以下の手順は、第2のエネルギ貯蔵部品8が十分に充電されていることを前提に実行することができる。
【0054】
ステップS1では、ブレーキアクチュエータ4、特にアクチュエータ群5へグループ化されている場合のアクチュエータ群5が、ブレーキを解除するための電気エネルギを供給する可搬式エネルギ貯蔵装置2に順次に接続される。当該接続手順は、2つのコネクタ部品を有するコネクタ装置を接続することによって行われ、一方は可搬式エネルギ貯蔵装置2に結合され、他方はブレーキアクチュエータ4に結合される。
【0055】
ステップS2では、可搬式エネルギ貯蔵装置2からエネルギが供給されたブレーキアクチュエータ4が作動され、これにより、可搬式エネルギ貯蔵装置の第1のエネルギ貯蔵部品7に貯蔵されたエネルギがブレーキアクチュエータ4に供給されるので、ロック状態にあるブレーキが解除される。ブレーキアクチュエータ4は、可搬式エネルギ貯蔵装置2に含まれたスイッチによって作動される。代替的に、スイッチは、ブレーキアクチュエータ4に割り当てられる。
【0056】
これら2つのステップS1およびステップS2は、列車のブレーキシステム3のブレーキがすべて解除されるまで繰り返され、ブレーキシステム3のブレーキがすべて解除されると、列車を移動させることができる。
【0057】
ステップS3では、エネルギ貯蔵装置2の第1のエネルギ貯蔵部品7すなわちコンデンサバンクが、エネルギ貯蔵装置2の第2のエネルギ貯蔵部品8すなわちリチウムイオン蓄電池に貯蔵されたエネルギによって充電される。エネルギ貯蔵装置2が別の構造を有する場合、ブレーキアクチュエータ4にエネルギを供給するエネルギ貯蔵部品は、十分な量のエネルギが利用可能である限り、別の方式で充電することができる。
【0058】
コンデンサバンクは、第1のエネルギ貯蔵部品7の充電がチャージャおよびブースタ9によって制御されるように、チャージャおよびブースタ9を介して充電される。代替実施形態では、チャージャおよびブースタ9が利用できない場合、第1のエネルギ貯蔵部品7の充電は、別の電子機器によって制御される。
【0059】
ブレーキアクチュエータ4への供給は、エネルギ貯蔵装置2の放電リミッタ10を介して行われ、これにより、放電リミッタ10は、コンデンサバンクの安全な動作範囲を確保することによって、エネルギ貯蔵装置2を保護する。代替実施形態において放電リミッタ10が利用できない場合には、エネルギ貯蔵装置2が別の方法で保護されるか、または保護が省略される。
【0060】
方法は、機械可読担体に格納されたコンピュータプログラム製品によって行われる。あるいは、方法は、別の適切な方法、例えばハードワイヤード装置によって行われる。
【0061】
本発明をその特定の特徴および実施形態を参照して説明してきたが、本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく、様々な変更および組み合わせが可能であることは明らかである。したがって、明細書および図面は添付の特許請求の範囲によって定義される本発明の単なる例示とみなされ、本発明の範囲内に入るあらゆる変更、変形、組み合わせまたは等価物をカバーすることが企図されている。
【符号の説明】
【0062】
1 システム
2 可搬式エネルギ貯蔵装置
3 ブレーキシステム
4 ブレーキアクチュエータ
5 ブレーキアクチュエータ群
6 ケーブル
7 第1のエネルギ貯蔵部品
8 第2のエネルギ貯蔵部品
9 チャージャおよびブースタ
10 放電リミッタ
【手続補正書】
【提出日】2024-04-12
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気機械式ブレーキをそれぞれに割り当てられた電気機械式ブレーキアクチュエータ(4)によって解除するための方法であって、
前記ブレーキを解除するための電気エネルギを供給する可搬式エネルギ貯蔵装置(2)に前記ブレーキアクチュエータ(4)を順次に接続するステップと、
前記可搬式エネルギ貯蔵装置(2)からのエネルギを使用して前記ブレーキアクチュエータ(4)を作動させることによって前記ブレーキを解除するステップと
を含む、方法。
【請求項2】
前記ブレーキアクチュエータ(4)は、前記ブレーキの省エネルギ解除を可能にするために前記ブレーキの解除時間中の前記ブレーキアクチュエータ(4)の全エネルギ消費が最小となるように経験的に決定された速度プロファイルに従って動作される、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記ブレーキアクチュエータ(4)は、複数のブレーキアクチュエータ群(5)へとグループ化され、
前記ブレーキアクチュエータ群(5)への供給は、前記可搬式エネルギ貯蔵装置(2)によって順次にかつ個別に行われる、
請求項
1記載の方法。
【請求項4】
前記方法が、
前記エネルギ貯蔵装置(2)の第2のエネルギ貯蔵部品(8)に貯蔵されたエネルギによって前記エネルギ貯蔵装置(2)の第1のエネルギ貯蔵部品(7)を充電するステップと、
前記第1のエネルギ貯蔵部品(7)に貯蔵されたエネルギを前記ブレーキアクチュエータ(4)に供給するステップと
を含む、請求項
1記載の方法。
【請求項5】
前記第1のエネルギ貯蔵部品(7)はコンデンサによって形成されており、前記第2のエネルギ貯蔵部品(8)はバッテリによって形成されており、前記第1のエネルギ貯蔵部品(7)は、該第1のエネルギ貯蔵部品(7)の充電を制御するチャージャおよびブースタ(9)を介して充電される、
請求項4記載の方法。
【請求項6】
前記ブレーキアクチュエータ(4)への供給は、前記エネルギ貯蔵装置(2)の放電リミッタ(10)を介して行われる、請求項
4記載の方法。
【請求項7】
電気機械式ブレーキを解除するための電気機械式ブレーキアクチュエータ(4)への供給を行う可搬式エネルギ貯蔵装置(2)であって、
第1のエネルギ貯蔵部品(7)と、
第2のエネルギ貯蔵部品(8)と
を備え、
前記第2のエネルギ貯蔵部品(8)は、前記第1のエネルギ貯蔵部品(7)を充電するように構成されており、
前記第1のエネルギ貯蔵部品(7)は、前記ブレーキアクチュエータ(4)にエネルギを供給するように構成されている、
可搬式エネルギ貯蔵装置(2)。
【請求項8】
前記第1のエネルギ貯蔵部品(7)はコンデンサによって形成されており、
前記第2のエネルギ貯蔵部品(8)はバッテリによって形成されている、
請求項7記載の可搬式エネルギ貯蔵装置(2)。
【請求項9】
前記バッテリは、リチウムイオン蓄電池、NIMH蓄電池および鉛蓄電池のうちの1つによって形成される、
請求項8記載の可搬式エネルギ貯蔵装置(2)。
【請求項10】
前記可搬式エネルギ貯蔵装置(2)は、さらに、
前記第1のエネルギ貯蔵部品(7)の充電を制御するように構成されたチャージャおよびブースタ(9)
を備える、請求項
7記載の可搬式エネルギ貯蔵装置(2)。
【請求項11】
前記可搬式エネルギ貯蔵装置(2)は、さらに、
前記ブレーキアクチュエータ(4)に供給される供給電流を制御するように構成された放電リミッタ(10)
を備える、請求項
7記載の可搬式エネルギ貯蔵装置(2)。
【請求項12】
前記可搬式エネルギ貯蔵装置(2)は持ち運び可能に構成されている、請求項
7記載の可搬式エネルギ貯蔵装置(2)。
【請求項13】
請求項7から12までのいずれか1項記載の可搬式エネルギ貯蔵装置(2)と列車のブレーキシステム(3)とのシステム(1)であって、
該システム(1)が、複数のブレーキアクチュエータ群(5)へとグループ化されたブレーキアクチュエータ(4)を備えた複数の電気機械式ブレーキを備え、
前記ブレーキアクチュエータ群(5)は、該ブレーキアクチュエータ群(5)のうちの1つのブレーキアクチュエータが1つのコネクタ装置によって前記エネルギ貯蔵装置(2)に接続可能であるように構成されている、システム(1)。
【請求項14】
前記ブレーキアクチュエータ(4)は、前記ブレーキアクチュエータ(4)の経験的に決定されて最適化された速度プロファイルによって前記ブレーキの解除中のエネルギ消費が低減されるように構成されている、
請求項13記載のシステム(1)。
【請求項15】
請求項1から6までのいずれか1項記載の方法を実行するための、機械可読担体に格納されたプログラムコードを有する、コンピュータプログラム製品。
【国際調査報告】