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特表2024-536517複数の制動手段をコントロールする方法ならびに車両の制動システム
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  • 特表-複数の制動手段をコントロールする方法ならびに車両の制動システム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-04
(54)【発明の名称】複数の制動手段をコントロールする方法ならびに車両の制動システム
(51)【国際特許分類】
   B60L 7/24 20060101AFI20240927BHJP
   B60T 8/17 20060101ALI20240927BHJP
   B60T 8/172 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
B60L7/24
B60T8/17 C
B60T8/172 Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024522457
(86)(22)【出願日】2022-10-14
(85)【翻訳文提出日】2024-04-12
(86)【国際出願番号】 EP2022078637
(87)【国際公開番号】W WO2023062187
(87)【国際公開日】2023-04-20
(31)【優先権主張番号】21203032.4
(32)【優先日】2021-10-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】597007363
【氏名又は名称】クノル-ブレムゼ ジステーメ フューア ヌッツファールツォイゲ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Knorr-Bremse Systeme fuer Nutzfahrzeuge GmbH
【住所又は居所原語表記】Moosacher Strasse 80, D-80809 Muenchen, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】フーバ ネーメト
(72)【発明者】
【氏名】ゾルターン トート
(72)【発明者】
【氏名】タマス ドハーニー
(72)【発明者】
【氏名】アーロン クタス
(72)【発明者】
【氏名】ガーボル リプタク
(72)【発明者】
【氏名】クリスティアン サンドル
【テーマコード(参考)】
3D246
5H125
【Fターム(参考)】
3D246BA08
3D246DA01
3D246DA03
3D246EA05
3D246GB39
3D246GB40
3D246HA28A
3D246HA32A
3D246HA86A
3D246HA98A
3D246JA12
3D246JB41
3D246JB43
5H125AA01
5H125AC12
5H125CB02
5H125CB08
5H125EE27
5H125EE52
(57)【要約】
所望のブレーキパラメータとして定量化された所望のブレーキ機能を生じさせるように車両の複数の制動手段(12,14,16)をコントロールする方法であって、各制動手段(12,14,16)は、上述の所望のブレーキ機能の少なくとも一部を生じさせるようにアクチュエーションパラメータによってコントロール可能であり、この方法は、以降のステップを備えており、すなわち:各制動手段(12,14,16)に対して、制動手段(12,14,16)によって達成可能な最大ブレーキ機能を表すブレーキ能力を決定するステップ;各制動手段(12,14,16)に対して、アクチュエーション優先順位を決定するステップであって、アクチュエーション優先順位を、制動手段(12,14,16)および/または車両の少なくとも1つの所定の動作パラメータから決定する、ステップ;制動手段(12,14,16)の最も高い優先順位から最も低い優先順位へと順に、各制動手段(12,14,16)にアクチュエーションパラメータを割り当てるステップであって、アクチュエーションパラメータを、ブレーキ能力と、他の制動手段(12,14,16)にまだ割り当てられていない所望のブレーキパラメータの量とのいずれか低い方から選択する、ステップを備えている。さらに、上述の方法を実施するように構成されている制動システム。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所望のブレーキパラメータとして定量化された所望のブレーキ機能を生じさせるように車両の複数の制動手段(12,14,16)をコントロールする方法であって、
各前記制動手段(12,14,16)は、前記所望のブレーキ機能の少なくとも一部を生じさせるようにアクチュエーションパラメータによってコントロール可能であり、
前記方法は、以降のステップを備えており、すなわち:
各制動手段(12,14,16)に対して、前記制動手段(12,14,16)によって達成可能な最大ブレーキ機能を表すブレーキ能力を決定するステップ;
各制動手段(12,14,16)に対して、アクチュエーション優先順位を決定するステップであって、前記アクチュエーション優先順位を、前記制動手段(12,14,16)および/または前記車両の少なくとも1つの所定の動作パラメータから決定する、ステップ;
前記制動手段(12,14,16)の最も高い優先順位から最も低い優先順位へと順に、各制動手段(12,14,16)に前記アクチュエーションパラメータを割り当てるステップであって、前記アクチュエーションパラメータを、前記ブレーキ能力と、他の制動手段(12,14,16)にまだ割り当てられていない前記所望のブレーキパラメータの量とのいずれか低い方から選択する、ステップ
を備えている、
方法。
【請求項2】
前記所望のブレーキパラメータ、最大アクチュエーションパラメータおよび/または前記アクチュエーションパラメータをそれぞれ、トルク、力、遅延のうちの1つとして表す、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記アクチュエーション優先順位を決定する際に、非摩擦ブレーキ装置を備える制動手段(14,16)が摩擦ブレーキ装置を備える制動手段(12)よりも高い優先順位を有するように決定する、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
前記アクチュエーション優先順位を決定する際に、回生ブレーキ装置を備える制動手段(16)が散逸ブレーキ装置を備える制動手段(12,14)よりも高い優先順位を有するように決定する、請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
前記アクチュエーション優先順位を決定する際に、制動手段(12,14,16)の回生ブレーキ装置の回生効率が高いほど、その制動手段の優先順位が、回生ブレーキ装置を備える他の制動手段(12,14,16)に対して高くなる、請求項1から4までのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
前記アクチュエーション優先順位を決定する際に、以降のパラメータのうちの1つまたは複数を考慮し、すなわち:前記制動手段(12,14,16)に備えられたブレーキ装置の1つまたは複数の種類、前記制動手段(12,14,16)に備えられた回生ブレーキ装置の効率、前記制動手段(12,14,16)に備えられた回生ブレーキ装置の回生率、現在の車両速度、現在の動的車両状態、トラクションバッテリの充電状態、前記車両の車軸負荷、前記車両の各車軸における個別負荷、ブレーキ装置応答時間、ブレーキ装置応答ブレーキ力、設定可能な優先順位値のうちの1つまたは複数を考慮する、請求項1から5までのいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
1つの制動手段(12,14,16)が複数のブレーキ装置を備え、前記アクチュエーションパラメータを、所定の分配比率および/または計算された分配比率に従って、前記ブレーキ装置間で分配する、請求項1から6までのいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
複数の制動手段(12,14,16)が同じアクチュエーション優先順位を有するように決定された際に、前記割り当てステップにおいて、同じアクチュエーション優先順位を有するように決定された前記複数の制動手段(12,14,16)の前記ブレーキ能力を合成し、前記複数の制動手段(12,14,16)に割り当てられた前記アクチュエーションパラメータを、所定の割り当て比率および/または計算された割り当て比率に従って、前記ブレーキ装置間で分配する、請求項1から7までのいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
車両の制動システム(10)であって、
前記制動システム(10)は、少なくとも1つの摩擦ブレーキ装置を備える第1の制動手段(12)と、少なくとも1つの回生ブレーキ装置を備える第2の制動手段(16)と、コントロール装置(18)とを備え、
前記コントロール装置(18)は、請求項1から8までのいずれか1項記載の方法を実装するように構成されている、
制動システム(10)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所望のブレーキ機能を生じさせるために、車両の複数の制動手段をコントロールする方法ならびに車両の制動システムに関する。
【0002】
電気車両に、制動手段として、特に回生ブレーキとして使用可能な複数の駆動モータを装備することができる。回生ブレーキは、運動エネルギから電流を生成し、制動時に、車両の運動エネルギの一部を回収する。
【0003】
このような車両にさらに、散逸・非摩擦ブレーキ、たとえば渦電流ブレーキまたは電気リターダを装備することができる。この種のブレーキは、可動部分に誘導される渦電流からの抵抗損失を使用して、車両から運動エネルギを除去し、それを熱として散逸させることができる。
【0004】
さらに、このような車両に、付加的に摩擦ブレーキも装備することができる。
【0005】
これらのブレーキの各々は、達成可能なトルク、力および/または加速の点で異なる動作能力を有している。さらに、回生ブレーキは、これらがそれぞれ特定の回生効率を有することができるように様々な動作能力を有していてよい。
【0006】
このような多様な制動手段で所望のブレーキ機能を達成しようとする場合には、種々の目標を考慮する必要があるが、それらのうちのいくつかは相反している。たとえば、ステアバイブレーキ(steer-by-brake)状況が回避されるべきである、またはこれらの制動手段のうちの1つが単独で十分なブレーキ機能を提供できない場合がある。
【0007】
これらのブレーキの利用は、車両全体の安定性に影響を与える可能性がある。たとえば、車両の左側のブレーキと右側のブレーキとが制動トルクの乖離を生じさせる場合、これらは車両を一方向に引きずることがある。この作用は、ステアバイブレーキと称され、軌道上を走行する車両の操舵モードの1つであるが、車輪付き車両では、その通常の操舵機構がこの作用によって無効にされるので不利である。
【0008】
上記を考慮して、本発明の課題は、上述のブレーキの利用を改善することであり、これによって、所望のブレーキパラメータ、たとえば制動トルクが生じるだけでなく、電気車両の特定のニーズが考慮される。
【0009】
上述の課題は、請求項1記載の方法および請求項9記載の制動システムによって達成される。
【0010】
上述の課題は、所望のブレーキパラメータとして定量化された所望のブレーキ機能を生じさせるように車両の複数の制動手段をコントロールする方法によって解決され、各制動手段は、上述の所望のブレーキ機能の少なくとも一部を生じさせるようにアクチュエーションパラメータによってコントロール可能であり、この方法は、以降のステップを備えており、すなわち:各制動手段に対して、この制動手段によって達成可能な最大ブレーキ機能を表すブレーキ能力を決定するステップ;各制動手段に対して、アクチュエーション優先順位を決定するステップであって、アクチュエーション優先順位を、制動手段および/または車両の少なくとも1つの所定の動作パラメータから決定する、ステップ;制動手段の最も高い優先順位から最も低い優先順位へと順に、各制動手段にアクチュエーションパラメータを割り当てるステップであって、アクチュエーションパラメータを、ブレーキ能力と、他の制動手段にまだ割り当てられていない所望のブレーキパラメータの量とのいずれか低い方から選択する、ステップを備えている。
【0011】
このようにして、特定の制動状況において使用するためにより望ましいブレーキが、それらが比較的高い優先順位を有するため、優先的に利用される。このようにして、好ましい制動手段を、他の、それほど好ましくない制動手段より前に使用することができる。
【0012】
さらなる実施形態では、所望のブレーキパラメータ、最大アクチュエーションパラメータおよび/またはアクチュエーションパラメータをそれぞれ、トルク、力、遅延のうちの1つとして表す。
【0013】
これらの種類のパラメータは、容易に測定可能であり、制動手段、ブレーキ装置および/またはセンサの入力および/または出力として利用可能である。
【0014】
さらなる実施形態では、アクチュエーション優先順位を決定する際に、非摩擦ブレーキ装置を備える制動手段が摩擦ブレーキ装置を備える制動手段よりも高い優先順位を有するように決定する。
【0015】
非摩擦ブレーキ装置を優先させることによって、摩擦ブレーキ装置の寿命をより長くすることができる。なぜなら、この種類のブレーキ装置は、使用を通じて劣化するからである。
【0016】
さらなる実施形態では、アクチュエーション優先順位を決定する際に、回生ブレーキ装置を備える制動手段が散逸ブレーキ装置を備える制動手段よりも高い優先順位を有するように決定する。
【0017】
特に電気車両の場合、制動アクションからいくらかの電気エネルギを回生することによって、電気車両は、再充電を必要とする前に、より長い距離をカバーできるようになる。
【0018】
さらなる実施形態では、アクチュエーション優先順位を決定する際に、制動手段の回生ブレーキ装置の回生効率が高いほど、その制動手段の優先順位が、回生ブレーキ装置を備える他の制動手段に対して高くなる。
【0019】
このようにして、制動手段の回生効率が高いほど、その制動手段が優先的に使用されるようになる。
【0020】
さらなる実施形態では、アクチュエーション優先順位を決定する際に、以降のパラメータのうちの1つまたは複数を考慮し、すなわち:制動手段に備えられたブレーキ装置の1つまたは複数の種類、制動手段に備えられた回生ブレーキ装置の効率、制動手段に備えられた回生ブレーキ装置の回生率、現在の車両速度、現在の動的車両状態、トラクションバッテリの充電状態、車両の車軸負荷、車両の各車軸における個別負荷、ブレーキ装置応答時間、ブレーキ装置応答ブレーキ力、設定可能な優先順位値のうちの1つまたは複数を考慮する。
【0021】
これらのパラメータによって、適切な制動手段および/または好ましい制動手段への制動機能の分配を、特定の、特に閉ループコントロール目標を念頭において行うことができる。
【0022】
さらなる実施形態では、1つの制動手段が複数のブレーキ装置を備え、アクチュエーションパラメータを、所定の分配比率および/または計算された分配比率に従って、これらのブレーキ装置間で分配する。
【0023】
このような比率は、たとえば、ブレーキ装置間の構造上の差を考慮し得る、または単に等しい分配をもたらし得る。
【0024】
さらなる実施形態では、複数の制動手段が同じアクチュエーション優先順位を有するように決定された際に、割り当てステップにおいて、同じアクチュエーション優先順位を有するように決定された複数の制動手段のブレーキ能力を合成し、これら複数の制動手段に割り当てられたアクチュエーションパラメータを、所定の割り当て比率および/または計算された割り当て比率に従って、ブレーキ装置に分配する。
【0025】
このような比率は、たとえば、制動手段間の構造上の差または制動手段のポジショニング、たとえば車両の異なる側でのポジショニングを考慮し得る。
【0026】
上述の課題は、車両の制動システムによっても解決され、この制動システムは、少なくとも1つの摩擦ブレーキ装置を備える第1の制動手段と、少なくとも1つの回生ブレーキ装置を備える第2の制動手段と、コントロール装置とを備え、コントロール装置は、上述の実施形態のいずれかに従って方法を実装するように構成されている。
【0027】
このような制動システムは、特に電気車両のメンテナンス間隔および範囲を改善する。
【0028】
次に、本開示の実施形態について詳細に説明する。図面を参照すると、同様の番号は図全体を通して同様の部品を示している。本明細書の説明および特許請求の範囲を通して使用される場合、以降の用語は、文脈が明らかに他のことを指示しない限り、本明細書において明示的に関連付けられた意味を取る:「a」、「an」および「the」の意味は複数形の言及を含み、「in」の意味は「in」および「on」を含む。第1および第2、上および下等の関係性を表す用語は、単に、あるエンティティまたはアクションを、別のエンティティまたはアクションから区別するために使用され得る。この際に、このようなエンティティまたはアクション間のあらゆる実際のこのような関係または順序は必ずしも要求されない、または暗示されない。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】本発明の実施形態に従った車両の制動システムを概略的に示す図である。
【0030】
電気車両の制動システム10は、第1の制動手段12と、第2の制動手段14と、第3の制動手段16とを備えている。制動システム10は、制動手段12,14,16をコントロールするように構成されたコントロール装置18をさらに備えている。
【0031】
第1の制動手段12は、摩擦ブレーキ装置を備えている。第2の制動手段14は、非摩擦・散逸ブレーキ装置を備えている。第3の制動手段16は、非摩擦・回生ブレーキ装置を備えている。
【0032】
さらなる実施形態では、各制動手段12,14,16が1つまたは複数のブレーキ装置を備えていてよい。
【0033】
制動手段12,14,16の各々は、アクチュエーションパラメータによってコントロール可能であり、アクチュエーションパラメータは、たとえば、機械的(たとえば、変位、ブレーキペダル)、電気的(たとえば、電圧として)または電子的(たとえば、通信バスを介してデジタルに、または直接的な接続によって)に伝達されてよい。コントロール装置18は、これらの制動手段12,14,16が協働して所望のブレーキ機能を生じさせるようにアクチュエーションパラメータを制動手段12,14,16に提供するように構成されている。
【0034】
車両がブレーキを必要とする場合、コントロール装置18は、所望のブレーキ機能を生じさせるために複数の制動手段12,14,16をコントロールする方法を実施する。所望のブレーキ機能は、概して、コントロールされるべき所望の制動パラメータの表現としてコントロール装置18に伝えられる。このような所望の制動パラメータの例は、たとえば、所望の制動力、所望の制動トルクまたは所望の制動遅延/加速であってよい。
【0035】
各制動手段12,14,16はブレーキ能力を有する。このようなブレーキ能力は、制動手段によって達成可能な最大ブレーキ機能を表す。この最大ブレーキ機能を、たとえば、最大ブレーキトルクとして表すことができる。各制動手段の最大ブレーキトルクは、車両の動的状態、特に車両の速度に関連し得る。コントロール装置18は、第1のステップにおいて、各制動手段12,14,16に対して、上述の制動手段12,14,16によって達成可能な最大ブレーキ機能を表すブレーキ能力を決定する。
【0036】
さらなる実施形態では、ブレーキ能力は、たとえば、車両の測定された動的状態、たとえば車輪のスリップ、許容されるスリップもしくはスリップ剛性および/または車両のトラクションバッテリの充電状態によっても決定され得る。これは、ABSの活動および/またはトラクションバッテリの過充電を回避するのに役立ち得る。
【0037】
第2のステップでは、コントロール装置18は、各制動手段12,14,16に対してアクチュエーション優先順位を決定し、アクチュエーション優先順位は、制動手段12,14,16および/または車両の少なくとも1つの所定の動作パラメータから決定される。
【0038】
さらなる実施形態では、所定の動作パラメータは、たとえば、制動手段に備えられているブレーキ装置の種類であってよい。たとえば、電気車両の場合、制動手段16に備えられているような回生ブレーキ装置を使用して、できるだけ多くの所望のブレーキパラメータを達成することが好都合であり得る。さらに、制動手段14,16に備えられているような非摩擦ブレーキ装置を使用して、できるだけ多くの所望のブレーキパラメータを達成することが好都合であり得る。
【0039】
これらの考慮は、その特定のケースでは、最も高い優先順位を有する制動手段16と、2番目に高い優先順位を有する制動手段14と、3番目に高い優先順位を有する制動手段12とをもたらす。
【0040】
次いで、コントロール装置18は、第3のステップにおいて、最も高い優先順位から最も低い優先順位へと順に制動手段12,14,16を通過し、アクチュエーションパラメータを各制動手段12,14,16に割り当てる。各アクチュエーションパラメータは、各制動手段12,14,16によって生じるべき所望のブレーキ機能の一部を表している。各制動手段12,14,16に対するアクチュエーションパラメータは、ブレーキ能力間で選択される。なぜなら、これは、各制動手段12,14,16によって影響を受ける可能性がある最大ブレーキ機能と、他の制動手段に割り当てられていない所望のブレーキパラメータの量とのいずれか低い方を表すからである。
【0041】
この方法をさらに詳しく説明するために、この方法から生じる以降の例示的な計算を示す。これらの例の各々は、実際の測定に基づくのではなく、どのようにしてこの方法を実施するのかをより良好に示すためだけに構成されている。本明細書に挙げられた値も、測定されたものではなく、単に例示を目的として挙げられている。
【0042】
摩擦ブレーキ装置を備える第1の制動手段12は、たとえば、車両が移動している速度に関連して、15000Nm~17000Nmの最大ブレーキトルクを有していてよい。
【0043】
第2の制動手段14は、たとえば、4000Nmの最大ブレーキトルクを有していてよい。第3の制動手段16は、たとえば、2500Nmの最大ブレーキトルクを有することができる。
【0044】
第1の例では、車両の運転者は、所望のブレーキトルクが3000Nmになるようにブレーキペダルを踏んでよい。
【0045】
コントロール装置18は、最も高い優先順位を有する制動手段が第3の回生制動手段16であり、2番目に高い優先順位を有する制動手段が第2の散逸制動手段14であり、3番目に高い優先順位を有する制動手段が第1の摩擦制動手段12であると決定した。コントロール装置18は、たとえば、制動手段12,14,16の優先順位に関する情報を、順序付けられたリストとしてメモリに保持していてよい。
【0046】
第3の(回生)制動手段16が最も高い優先順位を有しているため、コントロール装置18は、第3の制動手段16にアクチュエーションパラメータを割り当てることから始める。第3の制動手段16の最大ブレーキトルクは2500Nmであり、これは、所望のブレーキトルクである3000Nmよりも小さい。コントロール装置18は、2500Nmの最大値を第3の制動手段16に割り当てる。
【0047】
次いで、コントロール装置18は、アクチュエーションパラメータとして500Nmの残りの所望のブレーキトルクを第2の制動手段14に割り当てる。第2の制動手段14は、次に低い優先順位を有する制動手段であり、割り当てられた500Nmの所望のブレーキトルクは、第2の制動手段14の最大ブレーキトルクより低い。
【0048】
次に低い優先順位を有する制動手段は、第1の摩擦制動手段12であり、第1の摩擦制動手段12には、この例では、0を表すアクチュエーションパラメータが割り当てられている。なぜなら、所望のブレーキトルクの全てが既に、より優先順位の高い制動手段14,16に割り当てられているからである。したがって、このケースでは、所望のブレーキ機能を達成するために、既に割り当てられているブレーキ機能を超えるさらなるブレーキ機能は必要ない。
【0049】
次いで、制動手段12,14,16は、制動手段12,14,16に伝達されたアクチュエーションパラメータに従って、制動トルクを生じさせる。
【0050】
別の例では、所望の制動トルクが2500Nm以下である場合、第3の回生制動手段16にのみ割り当てが行われ、0より大きな制動トルクを表すアクチュエーションパラメータを受け取る。
【0051】
さらに別の例では、所望の制動トルクが、第2の制動手段14および第3の制動手段16の組み合わされた最大制動トルクを超える場合、残りの制動トルクが、第1の摩擦制動手段12に割り当てられる。
【0052】
さらなる実施形態では、複数の第1の回生制動手段16が存在していてよい。これらの第1の制動手段16は、異なる効率を有していてよい。制動手段12,14,16のアクチュエーション優先順位を決定すると、コントロール装置18は、効率がより高い第1の制動手段16が、効率がより低い他の第1の制動手段16よりも高い優先順位を有するように決定する。
【0053】
さらなる実施形態では、複数の制動手段12,14,16が存在する場合、これらの制動手段12,14,16は、車両の異なる車軸に配置されていてよい。この状況において、制動手段12,14,16のいずれかが同じ優先順位を有する場合、コントロール装置18は、たとえば、各車軸に存在する負荷に従ってアクチュエーションパラメータを割り当てる。特に、コントロール装置18は、たとえば、より高い負荷を有する車軸に配置された制動手段12,14,16に、より多くのアクチュエーションパラメータを割り当てる。
【0054】
さらなる実施形態では、より一般的に、複数の制動手段12,14,16が車両の異なる側に配置されている場合、たとえばいくつかの制動手段12,14,16が車両の左側に配置され、他の制動手段12,14,16が車両の右側に配置されている場合、コントロール装置18は、たとえば、車両の各側の制動パラメータのバランスが取れるようにアクチュエーションパラメータを割り当てる。このようにして、アンバランスな制動によって車両が特定方向に操舵される状況が回避される。これらの実施形態では、アクチュエーションパラメータは、たとえば、所定の分配比率もしくは計算された分配比率および/または所定の割り当て比率もしくは計算された割り当て比率に従って、ブレーキ装置および/または制動手段12,14,16間で分配されてよい。たとえば、車両が現在、カーブを走行している場合、分配比率または割り当て比率を計算して、車両の一方の側に制動トルク(制動パラメータ)の60%を分配する、または割り当てることができ、車両の他方の側に制動トルク(制動パラメータ)の40%を分配することができる、または割り当てることができる。
【0055】
さらなる実施形態では、たとえば、同じ車軸に配置されているが車両の異なる側に配置されている同じ種類の制動手段12,14,16が、同じ優先順位を有するように決定される。このケースでは、アクチュエーションパラメータ、したがって、生じさせられるべきブレーキパラメータが、たとえば、同じ車軸に配置された制動手段12,14,16間で均等に分配されてよい。
【0056】
制動手段12,14,16のこの記載された優先順位付けに基づいて、たとえば、所望のブレーキパラメータが小さい場合、制動手段12,14,16のうちの1つの制動手段だけが利用される。たとえば、所望のブレーキパラメータが、上述の1つの制動手段12,14,16の能力を超える場合、別の制動手段12,14,16も利用されることになる。たとえば、所望のブレーキパラメータがさらに上昇すると、さらなる制動手段12,14,16が必要に応じて利用される。
【0057】
実施形態は、たとえば、車両の範囲を拡大し、あらゆるメンテナンス間隔を延長するために、非摩擦回生ブレーキに対してより高い優先順位を決定して、非摩擦回生ブレーキを優先し得る。第1の摩擦制動手段12は、たとえば、全ての他の制動手段14,16のブレーキ能力が、所望のブレーキパラメータを生じさせるのに十分でない場合にのみ利用されてよい。
【0058】
「最も高い優先順位」という用語は、優先順位がどのように表されるかに従って、異なる表現を有し得る。優先順位が、たとえば数として表される場合、最も高い優先順位は、たとえば、最も高い数によって表されてもよいし、たとえば、最も低い数によって表されてもよい。
【0059】
「動作能力」という用語は、たとえば、ブレーキ装置によって達成可能な制動パラメータの最大値、たとえば最大トルクおよび/または最大力および/または最大加速度を指してよい。
【0060】
アクチュエーションパラメータ、所望のブレーキパラメータおよび/または最大ブレーキ機能を、任意の適切な様式で表すことができる。種々の実施形態では、それらは、たとえばトルク値、基準値のパーセンテージ、整数または浮動小数点数として表され得る。
【0061】
上述の方法は、適切にプログラミングされた汎用コンピュータ単独でまたは専用コンピュータに接続して実施可能である。このような処理を、単一のプラットフォームによって、または分散されている処理プラットフォームによって実行することができる。さらに、このような処理および機能性は、専用ハードウェアの形態で、または汎用プロセッサもしくはネットワークプロセッサによって実行されるソフトウェアもしくはファームウェアの形態で実装可能である。このような処理において取り扱われるデータまたはこのような処理の結果として生成されるデータを、従来技術における任意のメモリに格納することができる。たとえば、このようなデータを、所与のコンピュータシステムまたはサブシステムのRAM等の一時的なメモリに格納することができる。付加的にまたは択一的に、このようなデータを、より長期の記憶装置、たとえば磁気ディスク、書き換え可能な光ディスク、ソリッドステートドライブ等に格納することができる。本明細書では開示のために、コンピュータ可読媒体は、このような既存のメモリ技術ならびにこのような構造およびこのようなデータのハードウェアまたは回路表現を含んでいる、任意の形態のデータ記憶機構を備えていてよい。
【0062】
たとえば「整数」、「浮動小数点数」、「リスト」、「辞書」、「アレイ」等のデータ構造に関する上述のあらゆる言及は、上述のデータ構造のコンセプトを指し、コンピューティング装置および/または記憶装置内の上述の構造のいかなる特定の実装または物理的表現にも限定されないことを理解されたい。
【符号の説明】
【0063】
10 制動システム
12 (摩擦/第1の)制動手段
14 (散逸/第2の)制動手段
16 (回生/第3の)制動手段
18 コントロール装置
図1
【手続補正書】
【提出日】2024-04-12
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所望のブレーキパラメータとして定量化された所望のブレーキ機能を生じさせるように車両の複数の制動手段(12,14,16)をコントロールする方法であって、
各前記制動手段(12,14,16)は、前記所望のブレーキ機能の少なくとも一部を生じさせるようにアクチュエーションパラメータによってコントロール可能であり、
前記方法は、以降のステップを備えており、すなわち:
各制動手段(12,14,16)に対して、前記制動手段(12,14,16)によって達成可能な最大ブレーキ機能を表すブレーキ能力を決定するステップ;
各制動手段(12,14,16)に対して、アクチュエーション優先順位を決定するステップであって、前記アクチュエーション優先順位を、前記制動手段(12,14,16)および/または前記車両の少なくとも1つの所定の動作パラメータから決定する、ステップ;
前記制動手段(12,14,16)の最も高い優先順位から最も低い優先順位へと順に、各制動手段(12,14,16)に前記アクチュエーションパラメータを割り当てるステップであって、前記アクチュエーションパラメータを、前記ブレーキ能力と、他の制動手段(12,14,16)にまだ割り当てられていない前記所望のブレーキパラメータの量とのいずれか低い方から選択する、ステップ
を備えている、
方法。
【請求項2】
前記所望のブレーキパラメータ、最大アクチュエーションパラメータおよび/または前記アクチュエーションパラメータをそれぞれ、トルク、力、遅延のうちの1つとして表す、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記アクチュエーション優先順位を決定する際に、非摩擦ブレーキ装置を備える制動手段(14,16)が摩擦ブレーキ装置を備える制動手段(12)よりも高い優先順位を有するように決定する、請求項記載の方法。
【請求項4】
前記アクチュエーション優先順位を決定する際に、回生ブレーキ装置を備える制動手段(16)が散逸ブレーキ装置を備える制動手段(12,14)よりも高い優先順位を有するように決定する、請求項記載の方法。
【請求項5】
前記アクチュエーション優先順位を決定する際に、制動手段(12,14,16)の回生ブレーキ装置の回生効率が高いほど、その制動手段の優先順位が、回生ブレーキ装置を備える他の制動手段(12,14,16)に対して高くなる、請求項記載の方法。
【請求項6】
前記アクチュエーション優先順位を決定する際に、以降のパラメータのうちの1つまたは複数を考慮し、すなわち:前記制動手段(12,14,16)に備えられたブレーキ装置の1つまたは複数の種類、前記制動手段(12,14,16)に備えられた回生ブレーキ装置の効率、前記制動手段(12,14,16)に備えられた回生ブレーキ装置の回生率、現在の車両速度、現在の動的車両状態、トラクションバッテリの充電状態、前記車両の車軸負荷、前記車両の各車軸における個別負荷、ブレーキ装置応答時間、ブレーキ装置応答ブレーキ力、設定可能な優先順位値のうちの1つまたは複数を考慮する、請求項記載の方法。
【請求項7】
1つの制動手段(12,14,16)が複数のブレーキ装置を備え、前記アクチュエーションパラメータを、所定の分配比率および/または計算された分配比率に従って、前記ブレーキ装置間で分配する、請求項記載の方法。
【請求項8】
複数の制動手段(12,14,16)が同じアクチュエーション優先順位を有するように決定された際に、前記割り当てステップにおいて、同じアクチュエーション優先順位を有するように決定された前記複数の制動手段(12,14,16)の前記ブレーキ能力を合成し、前記複数の制動手段(12,14,16)に割り当てられた前記アクチュエーションパラメータを、所定の割り当て比率および/または計算された割り当て比率に従って、前記ブレーキ装置間で分配する、請求項記載の方法。
【請求項9】
車両の制動システム(10)であって、
前記制動システム(10)は、少なくとも1つの摩擦ブレーキ装置を備える第1の制動手段(12)と、少なくとも1つの回生ブレーキ装置を備える第2の制動手段(16)と、コントロール装置(18)とを備え、
前記コントロール装置(18)は、請求項1から8までのいずれか1項記載の方法を実装するように構成されている、
制動システム(10)。
【国際調査報告】