(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-04
(54)【発明の名称】肺換気及び灌流勾配を評価するためのシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
A61B 6/03 20060101AFI20240927BHJP
【FI】
A61B6/03 560J
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024522516
(86)(22)【出願日】2022-10-12
(85)【翻訳文提出日】2024-04-15
(86)【国際出願番号】 EP2022078380
(87)【国際公開番号】W WO2023066752
(87)【国際公開日】2023-04-27
(32)【優先日】2021-10-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】590000248
【氏名又は名称】コーニンクレッカ フィリップス エヌ ヴェ
【氏名又は名称原語表記】Koninklijke Philips N.V.
【住所又は居所原語表記】High Tech Campus 52, 5656 AG Eindhoven,Netherlands
(74)【代理人】
【識別番号】110001690
【氏名又は名称】弁理士法人M&Sパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】ウィームカー ラファエル
(72)【発明者】
【氏名】サブシンスキ ヨルグ
(72)【発明者】
【氏名】ヘンドリクス コーネリス ペトルス
【テーマコード(参考)】
4C093
【Fターム(参考)】
4C093AA22
4C093AA26
4C093CA18
4C093CA35
4C093DA03
4C093FF28
4C093FF42
(57)【要約】
被験者の肺の肺換気及び灌流勾配を定量化するためのシステム及び方法である。局所ハウンズフィールド密度ヒストグラムがコンピュータ断層撮影データから生成され、各局所ヒストグラムが複数の異なるシフト値においてグローバルハウンズフィールド密度ヒストグラムと相互相関される。各局所ヒストグラムに関して、最終的シフト値が相互相関により得られた相関値に基づいて決定される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験者の少なくとも1つの肺の肺換気及び灌流勾配を評価するための処理システムであって、
前記被験者の少なくとも1つの肺の表現を含むCT撮像データを受信し、
前記CT撮像データに対しセグメンテーションを実行して、前記被験者の少なくとも1つの肺の表現を識別し、
前記CT撮像データを処理することによりハウンズフィールド密度頻度分布の複数の局所ヒストグラムを生成し、ここで、該複数の局所ヒストグラムの各々は前記CT撮像データに表される前記少なくとも1つの肺の異なる領域を表し、
前記被験者の前記少なくとも1つの肺に関するハウンズフィールド密度頻度分布のグローバルヒストグラムを生成し、
前記複数の局所ヒストグラムの各々について、
各々が前記局所ヒストグラムの異なるシフト値によりシフトされたバージョンである複数のシフトされた局所ヒストグラムを生成し、
各々のシフトされた局所ヒストグラムを前記グローバルヒストグラムと相互相関させて、対応する複数の相関値を生成し、
前記シフト値及び前記相関値を処理して最終的シフト値を生成し、
前記最終的シフト値の大きさの全体範囲が、前記肺換気及び灌流勾配の大きさを表す、処理システム。
【請求項2】
前記複数の局所ヒストグラムの各々の最終的シフト値が当該局所ヒストグラムの複数の相関値のうちの最大値を有する相関値に対応するシフト値である、請求項1に記載の処理システム。
【請求項3】
前記複数の局所ヒストグラムの各々の最終的シフト値が相関加重平均シフト値である、請求項1に記載の処理システム。
【請求項4】
ユーザインターフェースにおいて前記最終的シフト値の視覚化情報を提供する、請求項1から3の何れか一項に記載の処理システム。
【請求項5】
負の最終的シフト値が第1のカラーにより表され、正の最終的シフト値が第2の異なるカラーにより表される、請求項4に記載の処理システム。
【請求項6】
前記最終的シフト値の視覚化情報が、
各局所ヒストグラムについて、当該局所ヒストグラムの最大相関値の視覚化情報を生成し、
該最大相関値の視覚化情報上に前記最終的シフト値を表すオーバーレイを生成する
ことにより生成される、請求項4又は5に記載の処理システム。
【請求項7】
前記シフト値が所定の範囲内、例えば-200ハウンズフィールド単位と+200ハウンズフィールド単位との間の範囲内にある、請求項1から6の何れか一項に記載の処理システム。
【請求項8】
前記複数の局所ヒストグラムが、横方向及び/又は軸方向、すなわち頭尾方向の線的ヒストグラムを含む、請求項1から7の何れか一項に記載の処理システム。
【請求項9】
前記複数の局所ヒストグラムが、冠状面における二次元のパッチ的ヒストグラムを含む、請求項1から7の何れか一項に記載の処理システム。
【請求項10】
前記複数の局所ヒストグラムの各々が、
各々が当該局所ヒストグラムに対応する少なくとも1つの肺の領域の異なる部分領域を表す、複数の部分局所ヒストグラムを生成し、
前記部分局所ヒストグラムを当該局所ヒストグラムへと累積する
ことにより生成される、請求項1から7の何れか一項に記載の処理システム。
【請求項11】
前記グローバルヒストグラムが、前記局所ヒストグラムを該グローバルヒストグラムへと累積することにより生成される、請求項1から10の何れか一項に記載の処理システム。
【請求項12】
被験者の少なくとも1つの肺を評価するためのシステムであって、
CT撮像データを生成するCTスキャナと、
前記CTスキャナから前記CT撮像データを受信する請求項1から11の何れか一項に記載の処理システムと
を有する、システム。
【請求項13】
前記処理システムは前記最終的シフト値の視覚化情報を生成し、前記システムが、該最終的シフト値の生成された視覚化情報を前記処理システムから受信して表示するユーザインターフェースを更に有する、請求項12に記載のシステム。
【請求項14】
被験者の少なくとも1つの肺の肺換気及び灌流勾配を評価するためのコンピュータ実施方法であって、
前記被験者の少なくとも1つの肺の表現を含むCT撮像データを受信するステップと、
前記CT撮像データに対しセグメンテーションを実行して、前記被験者の少なくとも1つの肺の表現を識別するステップと、
前記CT撮像データを処理することによりハウンズフィールド密度頻度分布の複数の局所ヒストグラムを生成するステップであって、該複数の局所ヒストグラムの各々が前記CT撮像データに表される前記少なくとも1つの肺の異なる領域を表す、ステップと、
前記被験者の前記少なくとも1つの肺のハウンズフィールド密度頻度分布のグローバルヒストグラムを生成するステップと、
前記複数の局所ヒストグラムの各々について、
各々が前記局所ヒストグラムの異なるシフト値によりシフトされたバージョンである複数のシフトされた局所ヒストグラムを生成し、
各々のシフトされた局所ヒストグラムを前記グローバルヒストグラムと相互相関させて、対応する複数の相関値を生成し、
前記シフト値及び前記相関値を処理して、最終的シフト値を生成する
ステップと
を有し、
前記最終的シフト値の大きさの全体範囲が、前記肺換気及び灌流勾配の大きさを表す、コンピュータ実施方法。
【請求項15】
処理システムを有するコンピュータ装置上で実行された場合に、該処理システムに請求項14に記載のコンピュータ実施方法のステップの全てを実行させるコンピュータプログラムコード手段を有する、コンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンピュータ断層撮影(CT)画像を評価する分野に関する。
【背景技術】
【0002】
重力は、特に長期間にわたって横たわっていた被験者の肺において、肺の腹側領域と背側領域との間に肺換気及び灌流勾配を生じさせ得る。
【0003】
この勾配により引き起こされ得る潜在的悪影響は、しばしばCOVID-19等の感染性肺疾患により引き起こされる急性呼吸器症候群(ARDS)の患者を該患者が標準的な仰臥位に加えて腹臥位にある間に機械的人工呼吸を適用することにより治療する場合に、考慮に入れるべきである。
【0004】
しかしながら、重力に起因する勾配の存在及び大きさは、患者の間で大きく変化し得る。幾つかの疾病は、この勾配の大きさを増加させ又は減少させる。例えば、全身性硬化症に関連した血管障害を持つ患者は、肺動脈樹の弾性コンプライアンスの低下により、低い重力依存性減衰効果を示す。幾つかのびまん性肺疾患(例えば、過敏性肺炎、細胞性非特異的間質性肺炎、及び亜急性びまん性肺胞損傷)は、肺減衰の微妙で相対的に均一な増加を示し、これが重力により誘起される勾配と重なり得る。
【0005】
患者における肺換気及び灌流勾配は、胸部CTスキャンの三次元画像において、腹側肺領域と背側肺領域との間の全体的ハウンズフィールド密度の僅かなズレとして見え得る(被験者が仰臥位にある場合、背側領域が高いハウンズフィールド密度を有する状態で)。しかしながら、該効果は客観的に定量化することが困難である。
【0006】
更に、肺実質が通常の解剖学的構造(血管、気管支、リンパ節、心臓等)を取り囲んでいる。肺疾患を持つ患者において、病変、胸水、無気肺、中皮腫及び瘢痕は肺実質内に埋もれ得る。この「解剖学的ノイズ」は、肺のCT画像におけるハウンズフィールド密度に、肺換気及び灌流勾配により引き起こされる変化よりも遙かに大きな変化が存在することを意味する。したがって、局部的平均ハウンズフィールド密度等の簡単な定量的尺度は、腹側-背側重力効果に関する情報を提供するためには使用できない。
【0007】
急性呼吸器症候群の患者に対する治療決定は、しばしば、緊急状体において至急になされることを要するが、このような状況においては、肺換気及び灌流勾配に関する情報を決定するために慎重な手動測定を行うための十分な時間がない。
【0008】
したがって、被験者の肺の腹側領域と背側領域との間の肺換気及び灌流勾配に関する改善された情報が必要とされている。
【0009】
米国特許出願公開第2021/065361号は、肺の画像において高密度の肺実質の領域を決定するための方法及びシステムを開示している。
【0010】
国際特許出願公開第WO2020/231904号は、患者の肺を画像化する方法を開示している。
【0011】
Mulreany,DG他による文献「Volumetric xenon-CT imaging of conventional and high-frequency oscillatory ventilation」,Academic Radiology,16(6):718~725,2009年6月1日は、肺の高解像度容積換気マップを取得する方法を開示している。
【0012】
Kircher,Michael他による文献「Regional lung perfusion analysis in experimental ARDS by electrical impedance and computed tomography」,IEEE Transactions on Medical Imaging,40(1):251~261,2020年9月21日は、インジケータ強化電気インピーダンス断層撮影法に基づいて肺拡散能を検出する方法を開示している。
【0013】
Gunnar、Elke他による文献「Quantification of ventilation distribution in regional lung injury by electrical impedance tomography and xenon computed tomography」,Physiological Measurement,34(10):1303~1318,2013年9月11日は、病的状況下での局部的換気の電気インピーダンス断層撮影に基づく評価を開示している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
被験者の肺の腹側領域と背側領域との間の肺換気及び灌流勾配に関する改善された情報が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、請求項により定義される。
【0016】
本発明の一態様にしたがう例によれば、被験者の少なくとも1つの肺の肺換気及び灌流勾配を評価するための処理システムが提供される。
【0017】
該処理システムは:被験者の少なくとも1つの肺の表現を含むCT撮像データを受信し;CT撮像データに対しセグメンテーションを実行して、被験者の少なくとも1つの肺の表現を識別し;CT撮像データを処理することによりハウンズフィールド密度頻度分布(Houndsfield density frequency distribution)の複数の局所ヒストグラムを生成し、ここで、該複数の局所ヒストグラムの各々はCT撮像データに表される少なくとも1つの肺の異なる領域を表し;被験者の少なくとも1つの肺に関するハウンズフィールド密度頻度分布のグローバル(全体的)ヒストグラムを生成し;並びに、複数の局所ヒストグラムの各々について、各々が局所ヒストグラムの異なるシフト値によりシフトされたバージョンである複数のシフトされた局所ヒストグラムを生成し、各々のシフトされた局所ヒストグラムをグローバルヒストグラムと相互相関させて対応する複数の相関値を生成し、及びシフト値及び相関値を処理して最終的シフト値を生成する;ように構成され、最終的シフト値の大きさの全体範囲が肺換気及び灌流勾配の大きさを表す。
【0018】
発明者は、肺換気及び灌流勾配を、相互相関する局所ヒストグラムからのハウンズフィールド単位のシフト値により定量化できることを認識した。より高い密度を有する領域内の局所ヒストグラムは、通常、第1の方向のシフト(すなわち、正のシフト値)に対してグローバルヒストグラムとのより高い相関を有する一方、より低い密度を有する領域内の局所ヒストグラムは、一般的に、第1の方向とは反対の第2の方向のシフト(すなわち、負のシフト値)に対してグローバルヒストグラムとのより高い相関を有する。
【0019】
最終的シフト値の大きさの全体範囲は肺換気及び灌流勾配の大きさを表す一方、最終的シフト値の大きさの範囲が最大である方向は勾配の方向を表す。隣接する領域の最終的シフト値間の大きさの差は、これら領域間の局所的な勾配を表す。
【0020】
当該CT撮像データは、二次元又は三次元の撮像データとすることができる。三次元撮像データは、二次元撮像データよりも改善された精度及び統計的検出力を提供することができる。
【0021】
幾つかの例において、複数の局所ヒストグラムの各々の最終的シフト値は、当該局所ヒストグラムの複数の相関値のうちの最大値を有する相関値に対応するシフト値である。
【0022】
最大のヒストグラム相互相関に対応するシフト値(すなわち、相関値が最大となるシフト値)は、局所ヒストグラムとグローバルヒストグラムとの間の差を最もよく表すと考えることができる。
【0023】
幾つかの例において、複数の局所ヒストグラムの各々の最終的シフト値は相関加重平均シフト値である。
【0024】
最終的シフト値として相関加重平均シフト値を使用すると、ノイズ及び外れ値に対する堅牢性が向上する。
【0025】
幾つかの例において、当該処理システムは、ユーザインターフェースにおいて、最終的シフト値の視覚化情報を提供するように構成される。
【0026】
シフト値の視覚化は、臨床医が肺換気及び灌流勾配の存在、量及び分布を即座に確認することを可能にし、これを臨床医が治療中に考慮に入れることを可能にする。
【0027】
該視覚化は、臨床医が重力というより疾患に起因する減衰差の存在を検出することも可能にする。重力の方向と一致していない局所的な減衰勾配が視覚化で明らかになるからである。
【0028】
負の最終的シフト値は第1のカラーにより表すことができ、正の最終的シフト値は第2の異なるカラーにより表すことができる。
【0029】
正及び負のシフト値に対して異なるカラーを使用すると、勾配の方向が即座に明らかとなる。それがカラーの変化方向であるからである。
【0030】
幾つかの例において、最終的シフト値の視覚化情報は:各局所ヒストグラムについて、当該局所ヒストグラムの最大相関値の視覚化情報を生成し;及び該最大相関値の視覚化情報上に最終的シフト値を表すオーバーレイを生成する;ことにより生成される。
【0031】
このことは、相互相関が最も高くなる相関値が貴重な臨床情報も提供するということを認識している。典型的な実質領域は、グローバルヒストグラムとの相互相関が如何なるシフト値でも低い相関値を生じる罹患領域よりも高い最大相関値を有するであろう。罹患領域は、病変、浸出液、無気肺、中皮腫等を含む。
【0032】
最終的シフト値の表現を最大相関値の視覚化情報上にオーバーレイすることにより、臨床医は単一の画像からこれら全ての情報を得ることができ、臨床医が迅速な治療決定を行うことを可能にする。
【0033】
当該視覚化は、最終的シフト値及び最大相関値を表すために様々な効果を使用できる。例えば、グレー値の視覚化を使用して最大相関値を表し、より明るい陰影がより高い最大相関値を表すようにでき、カラースケールオーバーレイを使用して最終的シフト値を表すことができる。
シフト値は、所定の範囲内、例えば-200ハウンズフィールド単位と+200ハウンズフィールド単位との間の範囲内にあるものとすることができる。
【0034】
複数の局所ヒストグラムは、横方向及び/又は軸方向(すなわち、頭尾方向)の放射線的(線的)ヒストグラム(ray-wise histograms)を含むことができる。
【0035】
腹臥位又は仰臥位の被験者の場合、横方向及び軸方向は重力の方向に対して垂直である。したがって、重力の影響は、これらの方向では一般的に最も低くなる。したがって、横方向又は軸方向の何れかにおける異なるヒストグラム間の系統的な相互シフトを、重力依存の勾配を定量化及び視覚化するために使用できる。
【0036】
結果が矢状概観画像として提示される場合、横方向の線的ヒストグラムを、改善された視覚的解像度及び滑らかさのために当該複数の局所ヒストグラムとして使用できる。
【0037】
肺換気及び灌流勾配を三次元で評価するためには、横方向の線的ヒストグラム及び軸方向の線的ヒストグラムの両方を当該複数の局所ヒストグラムとして使用することができる。例えば、最終的シフト値の三次元視覚化情報を、両方向の線的ヒストグラムをグローバルヒストグラムと相互相関させることにより生成することができる。
【0038】
当該複数の局所ヒストグラムは、冠状面における二次元のパッチ的ヒストグラムを含むことができる。
【0039】
腹臥位又は仰臥位の被験者の場合、冠状面は重力の方向に対して垂直である。冠状面におけるパッチ的ヒストグラムは、冠状ビューで提示される結果にとり最も視覚的に好ましい結果をもたらすことができる。
【0040】
幾つかの例において、複数の局所ヒストグラムの各々は:各々が当該局所ヒストグラムに対応する少なくとも1つの肺の領域の異なる部分領域を表す、複数の部分局所ヒストグラムを生成し;及びこれら部分局所ヒストグラムを当該局所ヒストグラムへと累積する;ことにより生成される。
【0041】
局所ヒストグラムが複数の部分局所ヒストグラムを含む場合、これら部分局所ヒストグラムは局所ヒストグラムよりも精細な解像度を有する。例えば、部分局所ヒストグラムは、線的ヒストグラム(例えば、横方向及び/又は軸方向の)又は二次元パッチヒストグラム(例えば、冠状面の)であり得る。
【0042】
先ず必要なものより精細な解像度(例えば、可能な最も細かい解像度)でヒストグラムを生成し、次いで、これらヒストグラムを所望の解像度を有するヒストグラムへと累積することにより、ユーザの要求に応じて様々な解像度の局所ヒストグラムを効率的に生成できる。
【0043】
例えば、局所ヒストグラムを相互相関することに基づいて生成された視覚化情報の解像度が十分に有用な情報を提供しないとユーザが判断した場合、該ユーザは、異なる解像度における視覚化情報を要求するユーザ入力を供給できる。他の例において、ユーザは、異なる解像度における複数の視覚化情報が有用であることが分かり得る。これらは、必要な解像度に従って部分局所ヒストグラムを新たな局所ヒストグラムへと累積することにより効率的に生成できる。
【0044】
幾つかの例において、グローバルヒストグラムは、局所ヒストグラムをグローバルヒストグラムへと累積することにより生成される。
【0045】
被験者の少なくとも1つの肺を評価するためのシステムも提案される。該システムは:CT撮像データを生成するように構成されたCTスキャナ;及び該CTスキャナからCT撮像データを受信するように構成された上述した処理システム;を有する。
【0046】
上記処理システムは最終的シフト値の視覚化情報を生成するように構成でき、当該システムは、最終的シフト値の生成された視覚化情報を上記処理システムから受信して表示するように構成されたユーザインターフェースを更に有する。
【0047】
本発明の他の態様によれば、被験者の少なくとも1つの肺の肺換気及び灌流勾配を評価するためのコンピュータ実施方法が提供される。該コンピュータ実施方法は:被験者の少なくとも1つの肺の表現を含むCT撮像データを受信するステップ;CT撮像データに対しセグメンテーションを実行して、被験者の少なくとも1つの肺の表現を識別するステップ;CT撮像データを処理することによりハウンズフィールド密度頻度分布の複数の局所ヒストグラムを生成するステップであって、該複数の局所ヒストグラムの各々がCT撮像データに表される少なくとも1つの肺の異なる領域を表すステップ;被験者の少なくとも1つの肺のハウンズフィールド密度頻度分布のグローバルヒストグラムを生成するステップ;並びに、複数の局所ヒストグラムの各々について、各々が局所ヒストグラムの異なるシフト値によりシフトされたバージョンである複数のシフトされた局所ヒストグラムを生成し、各々のシフトされた局所ヒストグラムをグローバルヒストグラムと相互相関させて対応する複数の相関値を生成し、及びシフト値及び相関値を処理して最終的シフト値を生成するステップ;を有し、最終的シフト値の大きさの全体範囲が肺換気及び灌流勾配の大きさを表す。
【0048】
コンピュータプログラム製品も提案され、該コンピュータプログラム製品は、処理システムを有するコンピュータ装置上で実行された場合に、該処理システムに上述した方法のステップの全てを実行させるコンピュータプログラムコード手段を有する。
【0049】
本発明の上記及び他の態様は、以下に説明する実施形態から明らかとなり、斯かる実施形態を参照して説明されるであろう。
【0050】
本発明をよりよく理解すると共に、本発明を如何にして実施できるかを一層明確に示すために、例示のみとして添付図面が参照されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態による、被験者の少なくとも1つの肺を評価するためのシステムを示す。
【
図2】
図2は、COVID‐19の被験者の肺のCT撮像データから生成された例示的な画像を示す。
【
図3】
図3は、本発明の一実施形態による、被験者の少なくとも1つの肺を評価するためのコンピュータ実施方法を示す。
【発明を実施するための形態】
【0052】
以下、本発明を、図面を参照して説明する。
【0053】
当該詳細な説明及び具体例は、装置、システム及び方法の例示的実施形態を示すものであるが、解説のみを目的としており、本発明の範囲を限定しようとするものではないと理解すべきである。本発明の装置、システム及び方法のこれら及び他のフィーチャ、態様及び利点は、以下の説明、添付請求項及び添付図面からよりよく理解されるであろう。同一又は同様の部分を示すために、図面全体を通して同一の参照番号が使用されていると理解されたい。
【0054】
本発明の概念によれば、被験者の肺の肺換気及び灌流勾配を定量化するためのシステム及び方法が提案される。局所(ローカル)ハウンズフィールド密度ヒストグラムがコンピュータ断層撮影データから生成され、各局所ヒストグラムが複数の異なるシフト値において全(グローバル)ハウンズフィールド密度ヒストグラムと相互相関される。最終的なシフト値が、各局所ヒストグラムに関して、相互相関により得られた相関値に基づいて決定される。
【0055】
各実施形態は、肺換気及び灌流勾配が、局所ヒストグラムがグローバルヒストグラムと最も密接に相関するハウンズフィールド単位シフト値により表され得るという認識に少なくとも部分的に基づいている。
【0056】
例示的実施形態は、例えば、コンピュータ断層撮影システム、特にPACS及びワークステーション読取モジュール(例えば、Philips Intellispace-Portal、-Pacs及びIllumeno)に、並びに集中治療及び人工呼吸器治療に使用され得る。
【0057】
図1は、本発明の一実施形態による、被験者110の少なくとも1つの肺を評価するためのシステム100を示す。このシステムは、コンピュータ断層撮影(CT)スキャナ120、処理システム130、及び任意選択でユーザインターフェース140を備える。処理システム130自体が本発明の一実施形態である。
【0058】
CTスキャナ120は、任意の適切なCTスキャナであり得る。従来のCTスキャナは、回転可能なガントリ上又はCアーム上に1以上の統合検出器に対向して取り付けられたX線放射発生器を含む。このX線発生器は、該X線発生器と1以上の検出器との間に位置する検査領域の周りを完全に又は部分的に回転し、該検査領域を及び該検査領域内に配置された被験者及び/又は物体を横切る(通常は多色性)放射線を放出する。上記1以上の検出器は、当該検査領域を横切る放射線を検出し、検査領域並びに該検査領域内に配置された被験者及び/又は物体を示す信号(又は投影データ)を生成する。該投影データは、生の検出器データを示すもので、投影サイノグラムを形成するために使用でき、後者は検出器によりキャプチャされた投影データの視覚的表現である。
【0059】
上記投影データを処理して、被験者又は物体のボリューム画像を再構成するために、再構成器が更に使用される。ボリューム画像は複数の断面画像スライスから構成され、これら断面画像スライスは投影データからフィルタ逆投影アルゴリズムの適用等の断層撮影再構成プロセスを介して各々生成される。該再構成された画像データは、事実上、生の投影データの逆ラドン変換である。
【0060】
CTスキャナ120は、被験者110の少なくとも1つの肺の表現を含むCT撮像データ125を取得/生成する。該CT撮像データは、少なくとも1つの肺における重力依存性の肺換気及び灌流勾配を評価できる任意の撮像データであってもよい。幾つかの例において、該CT撮像データは、重力方向の成分を含む二次元撮像データであり得る。被験者が仰臥位又は伏臥位にある場合、重力の方向は前後(y-)方向と平行又はほぼ平行である。したがって、CT撮像データは、被験者の胸部を通る二次元の横方向又は軸方向のスライスを含み得る。他の例において、CT撮像データは三次元(例えば、全胸部スキャン)であってもよい。
【0061】
処理システム130は、CTスキャナ120からCT撮像データ125を受信し、該CT撮像データにセグメンテーションを実行して、被験者110の少なくとも1つの肺の表現を識別する。少なくとも1つの肺の表現を識別するために、ボクセルベースのセグメンテーション方法、メッシュモデルベース、及びAIベースのセグメンテーション方法(例えば、1以上の畳み込みニューラルネットワーク又は他の機械学習方法を使用する)等の如何なる好適なセグメンテーション方法を使用することもできる。当該セグメンテーションは、被験者の左肺、右肺又は両肺(の境界)の分離/識別を含むことができる。
【0062】
処理システム130は、CT撮像データ125を処理して、ハウンズフィールド密度頻度(度数)分布の複数の局所ヒストグラムを生成する。ヒストグラムは、グループ内の各データ値の頻度を(データ値のグループについて)識別するデータ構造である。現文脈において、データ値のグループは、ハウンズフィールド単位値(例えば、異なるピクセルの)のグループである。
【0063】
複数の局所ヒストグラムの各々は、セグメンテーションの結果に基づいて識別された、CT撮像データに表される少なくとも1つの肺の異なる領域を表す。複数の局所ヒストグラムは、各局所ヒストグラム内のハウンズフィールド密度の変化に対する重力の影響を低減するために、重力方向に垂直な1以上の画像面に対応し得る。
【0064】
三次元撮像データの場合、複数の局所ヒストグラムは、例えば、横(x-)方向の線的ヒストグラムを有し得る。言い換えると、ハウンズフィールド密度頻度分布が、横方向ビューにおける複数のyz点に対して確立され得る。代替的に又は追加的に、複数の局所ヒストグラムは、軸(z-)方向の線的ヒストグラムを有し得る(すなわち、ハウンズフィールド密度頻度分布が、軸方向ビューにおける複数のxy点に対して確立され得る)。
【0065】
他の例において、複数の局所ヒストグラムは、冠状(xz-)面における二次元のパッチ的ヒストグラムを有し得る。
【0066】
幾つかの例において、複数の局所ヒストグラムは、各々、複数の部分局所ヒストグラムを有し得る。言い換えると、各局所ヒストグラムに対して、各々が当該局所ヒストグラムにより表される少なくとも1つの肺の領域の部分領域を表す複数の部分局所ヒストグラムが生成され得る。この場合、特定の局所ヒストグラムに対応する部分局所ヒストグラムは累積されて、局所ヒストグラムを生成し得る。
【0067】
部分局所ヒストグラムは、可能な最も微細な解像度を有し得る。これにより、部分局所ヒストグラムを累積することにより、任意の所望の解像度の局所ヒストグラムを生成できる。
【0068】
例えば、部分局所ヒストグラムは線的ヒストグラム(例えば、横(x-)及び/又は軸(z-)方向の)を含み得る。他の例において、部分局所ヒストグラムは二次元のパッチ的ヒストグラム(例えば冠状面内の)を含み得る。
【0069】
1つの局所ヒストグラムに累積される部分局所ヒストグラムの数は1からNまでの任意の数とすることができ、ここで、Nは少なくとも1つの肺にわたる部分局所ヒストグラムの総数である。幾つかの例において、単一の局所ヒストグラムに累積される部分局所ヒストグラムの数はNの係数とすることができ、各局所ヒストグラムが同数の部分局所ヒストグラムを有し得るようにする。
【0070】
1つの局所ヒストグラムに累積される部分局所ヒストグラムの数は、事前に決定することができ、又は所望の解像度に基づいて決定することもでき、該所望の解像度はユーザ入力により得ることができる。
【0071】
ハウンズフィールド密度ヒストグラムはCT撮像データを処理する際に普通に使用されており、複数の局所又は部分局所ヒストグラムを計算する方法は当業者には明らかであろう。該計算は、超並列処理アプローチを使用して実行することができる。
【0072】
ヒストグラムは、ヒストグラムを結合することにより累積される。例えば、ヒストグラムは、総和演算(例えば、ヒストグラムの和又は加重和)を使用して累積できる。例えば、平均化、乗算、又は加重乗算を使用する等の、ヒストグラムを累積する他の方法も当業者には明らかであろう。幾つかの例において、当該累積が加重和を伴う場合、部分局所ヒストグラムを局所ヒストグラムに累積する際にガウス重み付けを適用することができる(例えば、画像ボリュームのx軸がヒストグラムビンの軸である場合、標準の三次元ガウスフィルタリングを使用する)。他の例では、部分局所ヒストグラムを累積する際に、他のタイプのフィルタリング又は重み付け(例えば、平均フィルタリング、メジアンフィルタリング等)を適用できる。
【0073】
処理システム130は、次いで、被験者110の少なくとも1つの肺のハウンズフィールド密度頻度分布の全体のヒストグラム(グローバルヒストグラム)を生成する。グローバルヒストグラムは、局所ヒストグラムを累積することにより生成され得る。グローバルヒストグラムは単一の肺若しくは両方の肺に関して生成することができ、又は別個のグローバルヒストグラムを各肺に関して生成することができる。
【0074】
幾つかの例において、グローバルヒストグラムは、先ず局所ヒストグラムを領域ヒストグラムへと累積し、次いで、これら領域ヒストグラムをグローバルヒストグラムへと累積することにより生成され得る。領域ヒストグラムは、線的ヒストグラムの方向に対して垂直な方向に延在する複数の近隣ヒストグラムに対応し得る。言い換えると、特定の近隣ヒストグラム内の位置に対応する線的ヒストグラムは、領域ヒストグラムへと累積され得る。例えば、横(x-)方向の線的ヒストグラムはyz-近隣ヒストグラムに対応する領域ヒストグラムへと累積され得、軸(すなわち、頭尾)(z-)方向の線的ヒストグラムはxy-近隣ヒストグラムに対応する領域ヒストグラムへと累積され得る。
【0075】
複数の局所ヒストグラムの各々について、処理システム130は、複数のシフトされた(ずらされた)局所ヒストグラムを生成し、各シフトされた局所ヒストグラムをグローバルヒストグラムと相互相関させる。複数のシフトされた局所ヒストグラムの各々は、当該局所ヒストグラムの異なるシフト値により(ハウンズフィールド密度軸に沿って)シフトされたバージョンである。局所ヒストグラムがシフトされるシフト値は、所定の範囲内に入り得る。例えば、シフト値は-200ハウンズフィールド単位と+200ハウンズフィールド単位との間の範囲内であり得る。
【0076】
相互相関は、2つのヒストグラム間の類似性を決定するための画像処理の分野で良く知られた技術であり、適合度の高感度かつ堅牢な推定を提供する。例えば、Wu及びHudsonによる文献「An image-clustering method based on cross-correlation of color histograms」,Proc.SPIE5682,Storage and Retrieval Methods and Applications for Multimedia 2005、及びGuthier他による文献「Parallel implementation of a real-time high dynamic range video system」,Integrated Computer-Aided Engineering,21(2):189~202を参照されたい。
【0077】
複数のシフトされた局所ヒストグラムの各々とグローバルヒストグラムとの相互相関は、対応する複数の相関値を生じる。処理システム130は、次いで、シフト値及び相関値を処理して、複数の局所ヒストグラムの各々に関する最終的シフト値を生成する。
局所ヒストグラムの最終的シフト値は、例えば、該局所ヒストグラムの複数の相関値のうちの最大値を有する相関値に対応するシフト値とすることができる。
【0078】
他の例として、ノイズ及び外れ値の影響を低減するために、相関加重平均シフト値を最終的シフト値として使用することもできる。相関値は最大の相関に対応する「真の」シフト値に近づく際に略滑らかに増加するであろうと予想される。したがって、「真の」ピークシフト値は、ピーク位置がノイズにより影響を受ける場合でも、相関加重平均シフトとして推定できる。相関加重平均シフトは:
【数1】
として計算でき、ここで、c
iはシフト値s
iにおいて生成される相関値である。
【0079】
幾つかの例において、処理システム130は、更に、複数の局所ヒストグラムに関する最終的シフト値の視覚化情報を生成し、該生成された視覚化情報をユーザインターフェース140に出力するように構成され得る。肺換気及び灌流勾配は、このような視覚化情報ではハウンズフィールド密度の視覚化情報と比較して一層明らかとなり、臨床医が重力依存性勾配の存在及び大きさを特定し、それに応じて被験者に対する治療選択を決定することを可能にする。最終的シフト値の視覚化は、局所的勾配が重力の方向と一致していない領域を臨床医が特定することも可能にし、このことは、特定の肺疾患の診断を支援し得る。
【0080】
当該視覚化では、最終的シフト値を表すための如何なる適切なスケールも使用できる。幾つかの例において、負の最終的シフト値は第1のカラーにより表すことができ、正の最終的シフト値は第2の異なるカラーで表すことができる。最終的シフト値の大きさは、第1又は第2のカラーの強度により表すことができる。
【0081】
幾つかの例において、最終的シフト値の視覚化情報は、最大相関値(又は相関加重平均シフト値)の視覚化情報に重ねることができる。例えば、処理システム130は、複数の局所ヒストグラムに関する最大相関値のグレースケール視覚化情報を生成し、該最大相関値の視覚化情報上に最終的シフト値を表すカラーオーバーレイを生成することができる。
【0082】
典型的な実質組織領域に対応する局所ヒストグラムは、最大相関値に対応するシフト値でグローバルヒストグラムと高度に相関するが、疾患領域は一般的に非常に低い最大相関値を有する。
【0083】
最終的シフト値の視覚化情報を最大相関値の視覚化情報と組み合わせることにより、肺換気及び灌流(拡散)勾配の局部的な存在、量及び分布を疾患のある実質組織領域と一緒に示す「キー画像」を生成することができる。
【0084】
幾つかの例において、CT撮像データ125が三次元撮像データである場合、肺換気及び灌流勾配を表す三次元視覚化情報を生成できる。例えば、処理システム130は、横方向(x-)方向の第1の複数の線的ヒストグラムを生成すると共に軸方向(z-)方向の第2の複数の線的ヒストグラムを生成し、これらヒストグラムの各々を上述したようにグローバルヒストグラムと相互相関させて、最終的シフト値の三次元視覚化情報を生成することができる。
【0085】
三次元の視覚化情報は、二次元視覚化情報からは明らかでない腹側-背側重力効果の局所的変化、特に冠状(xz-)面における変化を示すことができる。
【0086】
他の例では、冠状面ビューの二次元視覚化情報を、横方向及び/又は軸方向ビューの二次元視覚化情報に加えて生成でき、軸方向(z-)及び横方向(x-)における変化が観察され得るようにする。この視覚化情報は、前述したように、例えば前後(y-)方向の線的ヒストグラムを局所ヒストグラムとして使用して生成することができる。
【0087】
図2は、COVID-19に感染した被験者の肺のCT撮像データから生成された例示的画像を示している。
【0088】
画像210は、矢状ビューにおける単一スライスの標準ハウンズフィールド値を示す。
【0089】
画像220は、上述したようにヒストグラムを相互相関させることにより生成された最大相関値の視覚化情報を示す。画像220においては、グローバルヒストグラムとの相互相関に使用される局所ヒストグラムが、横方向線的ヒストグラムを有する部分局所ヒストグラムを矢状面における9ピクセルのガウス加重近傍半径で累積することにより生成された。
【0090】
画像230は、最大の相互相関に達したシフト値の視覚化情報を、負のシフトが一層暗い陰影により表され、正のシフトが一層明るい陰影で表されるようにして示している。この視覚化では、肺換気及び灌流勾配が明瞭に見られる。
【0091】
画像240は画像220及び230の合成画像を示したもので、肺換気及び灌流勾配並びに肺の罹患領域(この場合、最大相関値の視覚化情報において欠損として現れる背側のCOVID‐19病変)の両方を示している。画像240はグレースケール画像であるが、肺換気及び灌流勾配は、当該視覚化情報の一方又は両方にカラーを使用することにより疾病に起因する変化から一層容易に区別できる。
【0092】
図3は、本発明の一実施形態による、被験者の少なくとも1つの肺を評価するためのコンピュータ実施方法300を示す。
【0093】
該方法はステップ310で開始し、該ステップにおいては、被験者の少なくとも1つの肺の表現を含むCT撮像データが取得される。
【0094】
ステップ320では、CT撮像データに対してセグメンテーションが実行され、被験者の少なくとも1つの肺の表現を識別する。
【0095】
ステップ330では、CT撮像データを処理することにより、ハウンズフィールド密度頻度分布の複数の局所ヒストグラムが生成される。該複数の局所ヒストグラムの各々は、CT撮像データにおいて表される少なくとも1つの肺の異なる領域を表す。
【0096】
ステップ340では、被験者の少なくとも1つの肺に関するハウンズフィールド密度頻度分布のグローバルヒストグラムが生成される。
【0097】
ステップ350では、複数の局所ヒストグラムの各々について、複数のシフトされた局所ヒストグラムが生成される。各シフトされた局所ヒストグラムは、局所ヒストグラムの異なるシフト値によりシフトされたバージョンである。
【0098】
ステップ360では、複数の局所ヒストグラムの各々について、各シフトされた局所ヒストグラムがグローバルヒストグラムと相互相関され、対応する複数の相関値を生成する。
【0099】
ステップ370では、複数の局所ヒストグラムの各々について、シフト値及び相関値が処理されて、最終的シフト値を生成する。
【0100】
開示された方法はコンピュータで実行される方法であることが理解されよう。したがって、処理システム上で実行された場合に、記載された何れかの方法を実施するためのコード手段を備えるコンピュータプログラムの概念も提案される。
【0101】
前述したように、当該システムはプロセッサを利用してデータ処理を実行する。プロセッサは、必要な様々な機能を実行するために、ソフトウェア及び/又はハードウェアを使用して様々な方法で実装できる。プロセッサは、通常、必要な機能を実行するためにソフトウェア(例えば、マイクロコード)を使用してプログラムされ得る1以上のマイクロプロセッサを採用する。プロセッサは、幾つかの機能を実行するための専用ハードウェアと、他の機能を実行するための1以上のプログラムされたマイクロプロセッサ及び関連回路との組み合わせとして実装され得る。
【0102】
本開示の様々な実施形態で使用され得る回路の例は、これらに限定されるものではないが、従来のマイクロプロセッサ、特定用途向け集積回路(ASIC)、及びフィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)を含む。
【0103】
様々な実装において、当該プロセッサは、RAM、PROM、EPROM及びEEPROM(登録商標)のような揮発性及び不揮発性コンピュータメモリ等の1以上の記憶媒体と関連付けられ得る。該記憶媒体は、1以上のプロセッサ及び/又はコントローラ上で実行された場合に、必要な機能を実行する1以上のプログラムでエンコードされ得る。種々の記憶媒体は、プロセッサ又はコントローラ内に固定することができ、又は記憶されている1以上のプログラムをプロセッサにロードできるように持ち運び可能とすることもできる。
【0104】
開示された実施形態の変形は、当業者によれば、請求項に記載された発明を実施する際に、図面、本開示及び添付請求項を精査することにより、理解し実施することができる。請求項おいて、「有する(含む)」という文言は他の要素又はステップを排除するものではなく、単数形は複数を排除するものではない。単一のプロセッサ又は他のユニットは、請求項に記載されている幾つかの項目の機能を果たすことができる。特定の手段が相互に異なる従属請求項に記載されているという単なる事実は、これらの手段の組み合わせが有利に使用できないことを示すものではない。コンピュータプログラムは、他のハードウェアと一緒に又は他のハードウェアの一部として供給される光記憶媒体又はソリッドステート媒体等の適切な媒体により記憶/配布することができるのみならず、インターネット又は他の有線若しくは無線通信システムを介して等のように、他の形態で配布することもできる。「適合され」という用語が請求項又は説明で使用される場合、該「適合され」という用語は「構成され」という用語と同等であることを意図していることに留意されたい。請求項における如何なる参照符号も、当該範囲を限定するものと解釈されるべきではない。
【国際調査報告】