(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-04
(54)【発明の名称】虚血性脳卒中の治療におけるテトラメチルピラジンニトロン誘導体の使用
(51)【国際特許分類】
A61K 31/4965 20060101AFI20240927BHJP
A61P 9/10 20060101ALI20240927BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240927BHJP
A61K 38/49 20060101ALI20240927BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20240927BHJP
A61P 7/02 20060101ALI20240927BHJP
A61K 9/48 20060101ALI20240927BHJP
A61K 9/20 20060101ALI20240927BHJP
A61K 9/02 20060101ALI20240927BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20240927BHJP
A61K 9/107 20060101ALI20240927BHJP
A61K 9/12 20060101ALI20240927BHJP
A61K 9/06 20060101ALI20240927BHJP
A61K 9/72 20060101ALI20240927BHJP
A61K 9/70 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
A61K31/4965
A61P9/10
A61P43/00 121
A61K38/49
A61K45/00
A61P7/02
A61K9/48
A61K9/20
A61K9/02
A61K9/08
A61K9/107
A61K9/12
A61K9/06
A61K9/72
A61K9/70 401
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024522597
(86)(22)【出願日】2022-10-09
(85)【翻訳文提出日】2024-04-15
(86)【国際出願番号】 CN2022000140
(87)【国際公開番号】W WO2023060785
(87)【国際公開日】2023-04-20
(31)【優先権主張番号】202111193840.0
(32)【優先日】2021-10-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】202211214408.X
(32)【優先日】2022-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516359252
【氏名又は名称】グゥアンヂョウ マグパイ ファーマシューティカルズ カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000604
【氏名又は名称】弁理士法人 共立特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ウェイ リウ
(72)【発明者】
【氏名】ジェンボー グー
(72)【発明者】
【氏名】ガン イン
(72)【発明者】
【氏名】ユーチアン ワン
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA01
4C076AA09
4C076AA11
4C076AA14
4C076AA17
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(57)【要約】
本発明は、虚血性脳卒中の治療におけるテトラメチルピラジンニトロン誘導体の使用を提供し、治療有効量のテトラメチルピラジンニトロン誘導体又はその医薬組成物を投与することを含む。臨床実験において、テトラメチルピラジンニトロン+t-PAは、α患者の30日目と90日目の神経機能NIHSSスコアが大幅に改善されることが予想外に判明した。さらに、テトラメチルピラジンニトロン+t-PAは、患者の神経機能mRSスコアを大幅に改善し、完全治癒率(mRS 0点)がt-PA単独投与群よりも大幅に向上された。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
虚血性脳卒中の治療におけるテトラメチルピラジンニトロン誘導体の使用であって、
治療有効量のテトラメチルピラジンニトロン誘導体又はその医薬組成物を投与し、また、閉塞血管の再開通と併用することを含み、前記テトラメチルピラジンニトロン誘導体は、式(I)の構造を有する、使用。
【化1】
(ここで、R
1、R
2、及びR
3は、それぞれ独立して、C1~C6アルキルであり、R
4は、sec-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、シクロペンチル又はシクロヘキシルである。)
【請求項2】
前記C1~C6アルキルは、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、tert-ブチル又はn-ペンチルである、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
前記テトラメチルピラジンニトロン誘導体は、下記構造を有する、請求項1に記載の使用。
【化2】
【請求項4】
前記閉塞血管の再開通は、機械的血栓除去又は薬物血栓溶解である、請求項1に記載の使用。
【請求項5】
前記閉塞血管の再開通は、薬物血栓溶解であり、前記薬物血栓溶解用の血栓溶解薬は、ストレプトキナーゼ、ウロキナーゼ、アニソイル化プラスミノーゲンストレプトキナーゼ活性化因子複合体、組換えスタピロキナーゼ、組織プラスミノーゲン活性化因子のアルテプラーゼ、プロウロキナーゼ、ナットウキナーゼ、ルンブロキナーゼ、レテプラーゼ、テネクテプラーゼ、モンテプラーゼ、ラノテプラーゼ、デスモテプラーゼ、パミテプラーゼ、テネクテプラーゼ、アンクロッド、フィブロラーゼから選択される1種又は複数種の組み合わせである、請求項4に記載の使用。
【請求項6】
前記血栓溶解薬は、アルテプラーゼである、請求項5に記載の使用。
【請求項7】
前記閉塞血管の再開通は、機械的血栓除去である、請求項4に記載の使用。
【請求項8】
前記虚血性脳卒中は、急性虚血性脳卒中である、請求項1に記載の使用。
【請求項9】
前記治療有効量は、100~3000mg/人/回である、請求項1に記載の使用。
【請求項10】
前記医薬組成物は、治療有効量のテトラメチルピラジンニトロン又はその薬学的に許容される塩と、薬学的に許容される担体と、を含む、請求項1に記載の使用。
【請求項11】
前記医薬組成物の投与経路は、経口、舌下、局所吸入、直腸、筋肉内、皮内、皮下、静脈内投与、又はそれらの組み合わせである、請求項8に記載の使用。
【請求項12】
前記医薬組成物は、薬学的に許容される担体とともに各種の剤形に調製可能であり、前記剤形は、固体、カプセル、丸剤、座薬、液体、油剤、乳剤、スプレー剤、ゲル、エアロゾル、吸入剤、又はパッチ剤である、請求項8に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生物医薬の技術分野に属し、具体的には、虚血性脳卒中の治療及び薬物製造におけるテトラメチルピラジンニトロン誘導体の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
脳卒中は、主な臨床症状として脳虚血又は出血損傷を伴う疾患である。脳卒中は、出血性脳卒中と虚血性脳卒中という2つの種類に分類される。虚血性脳卒中は、出血性脳卒中よりも発生率が高く、脳卒中総数の60~70%を占める。虚血性脳卒中は、主に脳塞栓症と局所血栓の形成によって引き起こされる。アテローム性動脈硬化による血管狭窄や血栓塞栓症、又は心臓からの塞栓は、血液とともに脳に流れ込むことで脳塞栓症を引き起こし、脳血流障害を引き起こし、脳組織の虚血や低酸素状態を引き起こし、脳組織の壊死を引き起こし、最終的には患者に一連の神経学的欠陥や障害を引き起こす。
【0003】
脳卒中は中国における死亡原因の第1位であり、中国の成人の障害の主な原因となっている。脳卒中は、突然発症し重篤な状態になるという特徴があり、発症後の治療の遅れが死亡や障害の根本原因となる。この重篤な疾患には治療期間の厳格な規定があり、発病から治療までの期間が治療の成功率に直接影響する。急性脳梗塞病変は、虚血中心部とその周囲の虚血性周辺部から構成されており、虚血中心部の脳組織損傷は、不可逆的な特徴があり、虚血性周辺部には、可逆状態にある多数のニューロンが存在する。頭蓋内血管閉塞は、塞栓部位の脳組織に虚血と低酸素の状態を引き起こし、脳細胞内で電気化学的カスケード滝状反応を引き起こし、それに伴う損傷した細胞内シグナル伝達経路の活性化を引き起こし、疾患に不可逆的な損傷を与える。しかし、比較的短期間で閉塞血管を開通して虚血性周辺部の血液循環が回復できれば、この領域の神経細胞の生存と機能回復に有益となる。
【0004】
虚血性脳卒中の治療では、閉塞血管を再開通させるために機械的血栓除去と薬物血栓溶解が臨床現場で主に使用されている。臨床で一般的に使用される血栓溶解薬には、ストレプトキナーゼ(SK:streptokinase)、ウロキナーゼ(UK:urokinase)、アニソイル化プラスミノーゲンストレプトキナーゼ活性化因子複合体(APSAC)、スタフィロキナーゼ(SAK:staphylokinase)、組織プラスミノーゲン活性化因子のアルテプラーゼ(t-PA:tissue plasminogen activator)、レテプラーゼ、ラノテプラーゼなどがある。フィブリン溶解薬は、血栓をよく溶解することができるが、通常、治療時間が短く、たとえば、組換え組織プラスミノーゲン活性化因子のアルテプラーゼは脳卒中発症後6時間以内に使用する必要がある。さらに、たとえ閉塞血管の再開通が成功したとしても、ほとんどの脳卒中生存者は依然として永続的な神経障害に苦しんでいる(Carmeliet P, Jain RK. Molecular mechanisms and clinical applications of angiogenesis. Nature. 2011; 473(7347):298-307)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来技術の問題を解決するために、本発明は、虚血性脳卒中の治療及び関連する薬物の製造におけるテトラメチルピラジンニトロン誘導体及びその医薬組成物の使用を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の前記テトラメチルピラジンニトロン誘導体は、式(I)の構造を有する。
【化1】
(ここで、R
1、R
2及びR
3は、それぞれ独立して、C1~C6アルキルであり、R
4は、sec-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、シクロペンチル又はシクロヘキシルである。)
【0007】
好ましくは、前記C1~C6アルキルは、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、tert-ブチル又はn-ペンチルである。
【0008】
さらに好ましくは、R
1、R
2、及びR
3は、いずれもメチルであり、R
4は、tert-ブチルであり、それによって、前記テトラメチルピラジンニトロン誘導体は、テトラメチルピラジンニトロン(TBNと略称される)になり、その分子式がC
12H
19N
3Oであり、化学名がシス-2-メチル-N-[(3,5,6-トリメチルピラジン-2-)メチン]2-プロピルアミンオキシドであり、構造が以下の通りである。
【化2】
テトラメチルピラジンニトロン(TBN)
【0009】
本発明は、治療有効量のテトラメチルピラジンニトロン誘導体又はその医薬組成物を投与し、また、閉塞血管の再開通と併用することを含む、虚血性脳卒中の治療における前記テトラメチルピラジンニトロン誘導体及びその医薬組成物の使用を提供する。
【0010】
本発明は、関連する薬物の製造における前記テトラメチルピラジンニトロン誘導体の使用をさらに提供する。
【0011】
本発明の一実施形態によれば、前記閉塞血管の再開通は、機械的血栓除去又は薬物血栓溶解である。
【0012】
前記薬物血栓溶解用の血栓溶解薬は、ストレプトキナーゼ(SK:streptokinase)、ウロキナーゼ(UK:urokinase)、アニソイル化プラスミノーゲンストレプトキナーゼ活性化因子複合体(APSAC)、組換えスタピロキナーゼ(Recombinant Stapylokinase r-Sak)、組織プラスミノーゲン活性化因子のアルテプラーゼ(t-PA:tissue plasminogen activator)、プロウロキナーゼ(prourokinase)、ナットウキナーゼ(NK:nattokinase)、ルンブロキナーゼ(Lumbrukinase)、レテプラーゼ(reteplase)、テネクテプラーゼ(tenecteplase、TNK-tPA)、モンテプラーゼ(monteplase)、ラノテプラーゼ(lanoteplase、NPA)、デスモテプラーゼ(desmoteplase)、パミテプラーゼ(pamiteplase、solinase)、テネクテプラーゼ(TNKase:tenecteplase)、アンクロッド(ancrod)、フィブロラーゼから選択される1種又は複数種の組み合わせである。
【0013】
本発明の一実施形態によれば、本発明の前記血栓溶解薬は、アルテプラーゼ(t-PA)である。
【0014】
本発明の一実施形態によれば、本発明の前記機械的血栓除去は、テトラメチルピラジンニトロン誘導体と併用される。
【0015】
本発明に記載の血栓溶解薬の用量は、疾患の重症度、疾患の反応、治療に関連した任意の毒性、患者の年齢、患者の体重や健康状態に応じて、血栓溶解際に臨床医によって決定され、具体的な投与方法及び投与回数は、この分野の従来の方法に従うことができる。
【0016】
本発明に記載のテトラメチルピラジンニトロン誘導体の治療有効量は、100~3000mg/人/回である。具体的な投与量は、疾患の重症度、疾患の反応、治療に関連した任意の毒性、患者の年齢や健康状態によって決定され得る。具体的な投与方法及び投与回数は、テトラメチルピラジンニトロン誘導体の従来の投与方法に従うことができ、例えば、1日1回又は複数回投与することができる。
【0017】
いくつかの実施形態では、閉塞血管の再開通とテトラメチルピラジンニトロン誘導体の投与は、同時に又は時間的に前後してもよい。特定の実施形態では、両方は同時に患者に施される。特定の実施形態では、閉塞血管の再開通は、テトラメチルピラジンニトロン誘導体の投与前に患者に施される。特定の実施形態では、閉塞血管の再開通は、テトラメチルピラジンニトロン誘導体の投与後に患者に施される。特定の実施形態では、閉塞血管の再開通とテトラメチルピラジンニトロン誘導体の投与との間の時間差は24時間を超えず、特定のより具体的な実施形態では、閉塞血管の再開通とテトラメチルピラジンニトロン誘導体の投与との間の時間差は12時間を超えない。
【0018】
本発明の一実施形態によれば、本発明に記載される虚血性脳卒中は、急性虚血性脳卒中である。
【0019】
本発明の一実施形態によれば、活性医薬成分としてのテトラメチルピラジンニトロン誘導体は、薬学的に許容される担体を使用して医薬組成物に調製される。前記医薬組成物は、経口、舌下、局所吸入(鼻スプレー)、直腸、筋肉内、皮内、皮下又は静脈内投与に適した任意の形態である。治療に必要な本発明の組成物の量は、投与経路、治療される症状の性質、患者の年齢や健康状態に応じて変化し、最終的には参加する臨床医によって決定される。必要な用量は、単回投与又は分割投与(適切な間隔で)してもよく、例えば、治療を実現又は達成する需要に応じて、1日2回、3回、又はそれ以上で提供されてもよい。
【0020】
本発明で使用される「薬学的に許容される担体」という用語は、テトラメチルピラジンニトロン誘導体の生理作用を妨げず、人を含む哺乳動物に対して無毒な物質を指す。本発明のテトラメチルピラジンニトロン誘導体の医薬組成物は、テトラメチルピラジンニトロン誘導体と薬学的に許容される担体を用いて、当業者に周知の方法により調製される。これらの組成物には、固体、カプセル、丸剤、座薬、液体(例えば注射剤)、油、乳剤、スプレー、ゲル、エアロゾル、吸入剤、及びパッチ剤が含まれるが、これらに限定されない。
【0021】
アルテプラーゼ(t-PA)などの血栓溶解薬は、虚血性脳卒中の血栓溶解治療に臨床で一般的に使用されているが、血栓溶解治療後も脳卒中生存者のほとんどは依然として永続的な神経障害に悩まされている(Carmeliet P, Jain RK. Molecular mechanisms and clinical applications of angiogenesis.Nature. 2011;473(7347): 298-307)。
【0022】
臨床試験では、テトラメチルピラジンニトロン+t-PAの併用により、患者の14日目と90日目の神経機能NIHSSスコアが顕著に改善されることが予想外に判明した。さらに、テトラメチルピラジンニトロン+t-PAの併用により、患者の神経機能mRSスコアが顕著に改善され、完全治癒率(mRS 0点)はt-PA単独投与群よりも大幅に向上し、テトラメチルピラジンニトロン+t-PAの併用により、予後(mRS 0~2点)は、t-PA単独投与群よりも顕著に向上した。臨床試験の結果から、テトラメチルピラジンニトロン+t-PAの併用治療後の90日の有効性は30日の有効性よりもはるかに優れていたが、t-PA単独での治療後30日と90日の有効性の間には大きな差異はない。また、テトラメチルピラジンニトロンは臨床試験において優れた安全性と耐性を備える。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】t-PA群及び併用投与群におけるNHISSスコアが0~1の患者の割合を示す結果図である。
【
図2】t-PA群及び併用投与群におけるmRS=0点の患者の割合を示す結果図である。
【
図3】t-PA群及び併用投与群におけるmRS≦2点の患者の割合を示す結果図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、具体的な実施例によって本発明を具体的に説明するが、本明細書では、以下の実施例が本発明のさらなる説明のためにのみ使用され、本発明の保護範囲を限定するものと理解することはできない。特に断らない限り、本発明に記載される部数は重量部であり、記載される百分率は質量百分率である。
【0025】
本発明は、マルチサイト、ランダム、二重盲検、並行治験臨床研究デザインを採用する。臨床試験センターが受け付けた急性虚血性脳卒中患者を被験者とし(全員がインフォームドコンセントフォームに署名)、非血栓溶解群と血栓溶解群に分けた。非血栓溶解群は生理食塩水(saline)群とテトラメチルピラジンニトロン群であった。血栓溶解群は、t-PA群及びテトラメチルピラジンニトロン+t-PA併用投与群とした。
【0026】
研究対象は、「中国急性虚血性脳卒中診断と治療ガイドライン(2018年)」を診断基準として、臨床試験センターによってスクリーニングされた急性虚血性脳卒中と診断された患者である。
【0027】
投与方法は次のとおりである。薬物であるテトラメチルピラジンニトロン1400mgを塩化ナトリウム注射バッグ(仕様:100mL)に溶解し、30minかけて静脈内注射投与した。t-PA用量:0.9mg/Kg/回;使用法:生理食塩水に加え、用量の10%を1~2分以内に直ちに静脈内注射し、残りの90%を60分以内に静脈内注射する。t-PAは急性虚血性脳卒中の初日に1回のみ投与された。テトラメチルピラジンニトロンの投薬スケジュールは、D1~D7、1日2回、12h間隔、連続7日間である。
【0028】
結果
(一)非血栓溶解群では、生理食塩水群と比較して、テトラメチルピラジンニトロン群は、患者の30日目と90日目に神経機能を顕著に改善し、mRSが0~1点の患者の百分率は、Saline対照群と比較してそれぞれ6.6%、及び3.3%増加した。
(二)血栓溶解群では、t-PA単独投与群と比較して、テトラメチルピラジンニトロン+t-PA併用投与群では、患者の14日目と90日目の神経機能NIHSSスコアが顕著に改善されており、その具体的な結果は
図1に示され、このうち、NIHSSが0~1点のものは、t-PA群と比較して、それぞれ12.57%及び34.54%向上した(P=0.023)。テトラメチルピラジンニトロン+t-PA併用投与群では、患者の30日目と90日目の神経機能mRSスコアが顕著に改善されており、完全治癒率(mRS 0点)の結果は
図2に示され、t-PA群と比較して、それぞれ33.80%、65.73%向上した(P=0.044)。良好な機能的予後(mRS 0~2点)の結果は
図3に示され、90日後、併用投与群では、t-PA群と比較して10.50%向上した。
(三)試験終了後(90日目)、テトラメチルピラジンニトロン+t-PA併用投与群のLsmeans mRS(1.12)は、t-PA群のLsmeans mRS(1.61)と比較して0.49点改善し、すなわち、2人ずつ1点改善した。治療後、t-PA群では10人の患者が自分自身の世話をすることができなかったのに対し、併用投与後は、5人の患者のみが自分の世話をすることができず、5人の患者は自分の世話をすることができ、この5人の患者の生活の質が大幅に改善されたことが分かった。
(四)安全性について、テトラメチルピラジンニトロン誘導体は、優れた安全性と耐性を備える。
【0029】
試験の結果、虚血性脳卒中の治療においてテトラメチルピラジンニトロンを単独投与する場合、患者の神経機能を改善できる一方、テトラメチルピラジンニトロン+t-PAを併用投与する場合、患者の神経機能の改善により優れた効果があることが判明した。テトラメチルピラジンニトロン+t-PA併用投与後30日目と90日目の神経機能NIHSSスコアがt-PA群と比較して顕著に改善され、また、研究した結果、テトラメチルピラジンニトロンによる治療後90日目における有効性が治療後30日目よりもはるかに優れていたが、t-PAによる治療後30日目と90日目の間に大きな差異は無かった。
【0030】
本発明者は、研究を通じて、血栓溶解がテトラメチルピラジンニトロン誘導体の病変部位への到達をより促進し、病変部位における神経細胞の生存及び神経機能の回復をより促進することが分かった。この発見に基づいて、虚血性脳卒中の治療において、機械的血栓除去又は他の血栓溶解薬投与の後により多くのテトラメチルピラジンニトロン誘導体が病変部位に到達し、これも病変部位における神経細胞の生存及び機能回復に有利である。
【国際調査報告】