(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-04
(54)【発明の名称】飲料用ナノエマルジョン
(51)【国際特許分類】
A23L 2/70 20060101AFI20240927BHJP
A23L 2/56 20060101ALI20240927BHJP
C12G 3/06 20060101ALI20240927BHJP
A23L 5/00 20160101ALI20240927BHJP
A23L 29/10 20160101ALI20240927BHJP
【FI】
A23L2/00 K
A23L2/56
C12G3/06
A23L5/00 H
A23L29/10
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024522681
(86)(22)【出願日】2022-10-06
(85)【翻訳文提出日】2024-05-24
(86)【国際出願番号】 GB2022052530
(87)【国際公開番号】W WO2023062341
(87)【国際公開日】2023-04-20
(32)【優先日】2021-10-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】511306099
【氏名又は名称】ディアジオ グレート ブリテン リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110004185
【氏名又は名称】インフォート弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】スーロ アントニオ
(72)【発明者】
【氏名】ホランド ソニア フロレンス
【テーマコード(参考)】
4B035
4B115
4B117
【Fターム(参考)】
4B035LC16
4B035LE03
4B035LG04
4B035LG18
4B035LG54
4B035LK17
4B035LP21
4B035LP55
4B035LP56
4B115MA03
4B117LC09
4B117LK07
4B117LK11
4B117LL01
4B117LL06
4B117LP09
4B117LP20
(57)【要約】
非アルコール飲料用のナノエマルジョン。ナノエマルジョンは、100nm未満のz平均液滴サイズを伴う複数の油滴、水相および界面活性剤系を含む。油滴は、疎水性化合物を含有し、水および共溶媒、例えばグリセロールを含有する水相に分散する。界面活性剤系は、スクロースエステルおよびレシチン、例えばモノパルミチン酸スクロースおよび高度に加水分解されたヒマワリレシチンを含む。希釈可能なナノエマルジョンは、ジンのような蒸留酒飲料の非アルコール版に着香するのに有用であり、その香料成分は、疎水性化合物からなり、典型的に水不溶性である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
100nm未満のz平均液滴サイズを有する複数の油滴;
水を含む水相、ならびに
15より高いHLB値を有する第1の界面活性剤および4~8のHLB値を伴う第2の界面活性剤を含む界面活性剤系、
を含む、pHが低く安定な飲料用ナノエマルジョンであって、
前記油滴の各々が、疎水性化合物を含有し、前記水相で分散される、
ナノエマルジョン。
【請求項2】
界面活性剤系と疎水性化合物との重量比が、0.3:1から1:1の間である、請求項1に記載のナノエマルジョン。
【請求項3】
最大で3:100の比において水で希釈可能である、請求項1または2に記載のナノエマルジョン。
【請求項4】
前記第1の界面活性剤が、スクロースエステル、例えばモノラウリン酸スクロース、モノパルミチン酸スクロースまたはその組合せである、請求項3に記載のナノエマルジョン。
【請求項5】
前記疎水性化合物が、香料(例えばテルペンもしくはテルペンの混合物、例えばピネン、ミルセンおよびリモネン)、または任意の他の疎水性物質を含む、請求項1から4のいずれかに記載のナノエマルジョン。
【請求項6】
前記第2の界面活性剤が、レシチン、例えば高度に加水分解されたヒマワリレシチンである、請求項1から5のいずれかに記載のナノエマルジョン。
【請求項7】
前記第1の界面活性剤と前記第2の界面活性剤との重量比が30:70から80:20の間である、請求項1から6のいずれかに記載のナノエマルジョン。
【請求項8】
前記水相が共溶媒を含む、請求項1から7のいずれかに記載のナノエマルジョン。
【請求項9】
前記共溶媒が、1~800g/Lの濃度のポリオールである、請求項9に記載のナノエマルジョン。
【請求項10】
前記共溶媒が、プロピレングリコールおよび/またはグリセロールである、請求項8または9のいずれかに記載のナノエマルジョン。
【請求項11】
前記pHが3.0~8.0の範囲である、請求項1から10のいずれかに記載のナノエマルジョン。
【請求項12】
前記z平均液滴サイズが70nm未満である、請求項1から11のいずれかに記載のナノエマルジョン。
【請求項13】
請求項1から12のいずれかに記載のナノエマルジョンを含む液体飲料であって、5NTU以下の濁度を有する、液体飲料。
【請求項14】
油滴の濃度が0.01~0.5g/Lである、請求項13に記載の液体飲料。
【請求項15】
アルコールをさらに含む、請求項13または14に記載の液体飲料。
【請求項16】
請求項1に記載のナノエマルジョンを調製する方法であって、以下の工程:
スクロースエステルおよび共溶媒を含有する水相を準備する工程、
疎水性化合物およびレシチンを含有する油相を準備する工程、
前記油相を前記水相に乳化し、それにより前記ナノエマルジョンを得る工程、
を含む、方法。
【請求項17】
前記疎水性化合物が、疎水性芳香化合物であり、例えば、テルペンまたはテルペンの混合物、例えばピネン、ミルセンおよびリモネンを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
合わせたスクロースエステル/レシチンおよび疎水性化合物が0.3:1から1:1の間の比である、請求項16または17に記載の方法。
【請求項19】
前記共溶媒が、1~700g/Lの量で添加したグリセロールである、請求項16から18のいずれかに記載の方法。
【請求項20】
混合が高剪断ミキサーで実施される、請求項16から19のいずれかに記載の方法。
【請求項21】
均質化が、最大500バールで、高圧ホモジナイザーで実施される、請求項16から20のいずれかに記載の方法。
【請求項22】
前記疎水性化合物が、0.01~0.5g/Lに希釈される、請求項16から21のいずれかに記載の方法から得られる飲料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非アルコールまたは低アルコール飲料製品中の着香剤のような疎水性化合物を担持する目的のために、飲料用ナノエマルジョン、特に低いpHでの安定性を伴うナノエマルジョンに関する。
【背景技術】
【0002】
伝統的な蒸留方法で作製されるジンのような飲用蒸留酒の特徴的な植物の香りは、水溶性が低いクラスの化合物(例えば、ジンの場合のテルペン)で提供される。溶解度は、エタノールの濃度(例えば40体積%)がこれらの化合物を可溶化するに十分であるので、完全強度のジンでの問題ではない。
【0003】
しかし、製品の非アルコール版で蒸留酒の味覚および香りを模倣することが望ましい場合、疎水性であるこのような芳香化合物は、上述した不溶性のために直接的な成分として単純に添加され得ない。相が分離するだけである。
【0004】
水中のこのような芳香化合物の溶解限度を克服するための1つの解決策は、界面活性剤により安定化された液滴の形態で芳香化合物を分散させること(エマルジョン)である。しかし、エマルジョンのための公知の配合技術では、得られる液体が濁るので満足のいく結果は生じない。蒸留酒の消費者は透明である製品を期待するので、高レベルの濁度は許容できない。
【0005】
マイクロエマルジョンが、当業者に理解されるように、ナノエマルジョンと明確に異なることは注目に値する。典型的に、ナノエマルジョンは、動的/準安定的であるが、熱力学的に不安定である一方で、マイクロエマルジョンは、熱力学的に安定であり、エネルギー入力を伴わずに形成する。
【0006】
WO2016/064828は、香味油相、水相、ならびに第1および第2のレシチンを有する界面活性剤系を含有する半透明な香料のナノエマルジョンを記載する。得られる配合物は、後述する本発明より約30%高いレシチンを有し、これは最終的な飲料のわずかに黄色がかった色合いに関与する。
【0007】
非アルコール製品の大部分は、2.5から7の間のpHで作製される。当該技術分野では、4未満のものを「pHが低い」と一般に理解される。実際に、飲料の特定の分野では、4未満のものは「pHが低い」とみなされる。
【発明の概要】
【0008】
本発明は、低レベルの濁度を有する、香料系からなり得る、疎水性化合物を含有する飲料用の系を提供することを目的とし、換言すると、これは、pHが低く透明なナノエマルジョンである、または、非アルコールまたは低アルコール飲料製品を配合するのに有用な選択を少なくとも提供する。本文脈のナノエマルジョンは、光学的透明度、安定性を必要とし、消費できる飲料での使用のために濃縮物から希釈可能である。
【0009】
第1の態様では、本発明は、請求項1に記載の飲料用のpHが安定した透明なナノエマルジョンを提供する。本発明は、複数の油滴、水相、および界面活性剤系を含む、pHが低く安定なナノエマルジョンに事実上関し、100nm未満のz平均液滴サイズを有する油滴の各々(すなわち、z平均は、動的光散乱法により測定された強度サイズ分布に由来する値であり、「サイズ」とは最大の横幅を指す)は、疎水性化合物(例えば香料)を含有し、水相で分散し、水相は、水、好ましくは、共溶媒を含有し、界面活性剤系は、スクロースエステルおよびレシチンを含む。あるいは、本発明は、少なくとも1つの疎水性化合物、15より大きい親水性親油性バランス(HLB)値を伴う第1の界面活性剤(好ましくは例えばスクロースエステル)、および4から8の間のHLB値を伴う第2の界面活性剤(例えばレシチン)からなる界面活性剤の混合物、ならびに共溶媒を含有する水相からなる透明な飲料用のpHが低く安定なナノエマルジョンとして記載され得る。界面活性剤のHLB(親水性/親油性/バランス)数は、その相対的な疎水性の経験的尺度である。
【0010】
好ましい形態では、ナノエマルジョンは、動的に安定化され、貯蔵期間中の液滴のサイズ変化または凝集により、安定性に影響を及ぼさずに希釈され得る。希釈する能力は、望ましい味の特徴を有する消費できる飲料に後に希釈することを目的として濃縮物が調製されるので有用である。
【0011】
本発明の文脈では、「pHが低く安定な」の安定(性)とは、成分が溶液から出てこない、または液滴のサイズおよび透明性などが変化しないことを指す。ナノエマルジョンが、pHが低く安定ではない場合、これらの負の特性は、比較的迅速に、例えば1日以内から数週間以内に、pHが低い環境で観察される。低いpHでの安定性は、この性質の製品では1年または複数であり得る殻の寿命全体と混同されるべきではない。
【0012】
特許請求されるナノエマルジョンは、濃縮した調製物およびその希釈した飲用可能な形態の両方を指す(すなわち、いずれもナノエマルジョンとみなされ得る)。本発明によるナノエマルジョンは、希釈の際に安定性を維持する、すなわち液滴サイズに変化はなく、このような液滴サイズを測定して、安定性を確認することができる。すぐに消費できる最終的な液体での油濃度の範囲は、およそ0.01~0.5g/L、好ましくは0.25g/L未満である。濃縮した液体および希釈された/飲用可能な形態の両方におけるこのような範囲での液滴サイズが測定可能である。誤解を避けるために、液体飲料が本明細書で特許請求される。
【0013】
一形態では、香料(すなわち疎水性化合物)は、テルペンもしくはテルペンの混合物(例えばピネン、ミルセンおよびリモネン)、または任意の他の疎水性物質を含み得る。
【0014】
疎水性化合物の分類は、そのlogP値で定義され得る。具体的に、限定的な溶解度である疎水性香料化合物の多く例が存在し、一般に、疎水性は、LogPとしても知られ、水相と親油性相、通常オクタノールおよび水との間の分子の分配係数であるLog Kowとして通常の測定である。LogPは、逆に溶解度に関係するので、多くの場合、疎水性化合物の溶解特性を示すのに使用される。一般に、水中で比較的低い溶解度を伴う疎水性とみなされる化合物は、2より大きいLogP値を有する。したがって、本発明では、疎水性化合物は、2以上のlogP値を有する。
【0015】
本発明の特定の形態および組合せでは、
・界面活性剤系と疎水性化合物との重量比は、0.3:1~1:1であり得る。
・疎水性化合物の濃度は、10~40g/Lの範囲である。
・第1の界面活性剤(例えばスクロースエステル)は、モノラウリン酸スクロース、モノパルミチン酸スクロースまたはその組合せであり得る。
・第2の界面活性剤(例えばレシチン)は、(例えば高度に加水分解された)ヒマワリレシチンであり得る。
・界面活性剤系における第1の界面活性剤と第2の界面活性剤との(スクロースエステルとレシチンとの)重量比は、70:30~20:80であり得る。
・共溶媒は、ポリオール(例えばグリセロール、プロピレングリコールもしくはその両方の混合物または他の等価物)であり得る。ポリオールの濃度は、1~500g/L、例えば100~400g/Lのプロピレングリコールであり得る。
・ナノエマルジョンのpHは、3.0~8.0、好ましくは3.4~7の範囲でなければならない。
・ナノエマルジョンの平均(またはより具体的に、z平均)液滴サイズは、100nm以下、好ましくは、70nm以下でなければならない。
・液体飲料は、好ましくは、透明とみなすために5NTU以下の濁度を有するべきである。しかし、いくらかのばらつき(より高いNTUを含む)は、特に液体が何らかの色を有する場合に可能であり得る。「透明」は、本明細書に開示される場合、ジンのような色のない実質的に透明な飲料、およびウイスキーのような何らかの色/色合いを伴う飲料を包含する。
・ナノエマルジョンが見出される飲料は、アルコールを含み得る。好ましくは、飲料製品は、完全強度の精製蒸留酒と比較して、例えば最大で20%だが、実際にはおそらく15%以下のABVの比較的低いアルコール含有量を有する。
【0016】
本発明のさらなる態様では、例えば請求項1に記載のナノエマルジョンを調製する方法であって、以下の工程:
a)スクロースエステルおよび共溶媒を含有する水相を準備する工程、
b)疎水性化合物(例えば香料)およびレシチンを含有する油相を準備する工程、
c)油相を水相に乳化し、それによりナノエマルジョンを得る工程、
を含む、方法が提供される。
【0017】
本発明の本態様は、全体的に、飲料で使用される疎水性化合物を担持するためのナノエマルジョンを調製する方法であって、
芳香族であり得る、少なくとも1つの疎水性化合物を準備すること、
親水性である第1の界面活性剤、および少なくとも1つの疎水性化合物に対する安定剤として作用する親油性である第2の界面活性剤を準備すること、
ナノエマルジョンを形成するために少なくとも1つの疎水性化合物、第1の界面活性剤および第2の界面活性剤を混合すること、
を含む、方法とみなすことができる。
【0018】
第1の界面活性剤は、15より高いHLB値を有し、第2の界面活性剤は、5~8のHLB値を有する。界面活性剤は、20:80から70:30の間の、より具体的には60:40から40:60の間の比で組み合わされ得る。
【0019】
上述したように、疎水性化合物は、テルペンまたはテルペンの混合物、例えばピネン、ミルセンおよびリモネンのような香りを含み得る。第1の界面活性剤は、スクロースエステル、例えばモノパルミチン酸スクロース(SPM)であり得、第2の界面活性剤は、レシチン、例えばヒマワリレシチン(SL)であり得る。
【0020】
有利な界面活性剤の油に対する比は、低く保持されなければならず、例えば1:3である。しかし、このような比は、最大で1:1、例えば1:2であり得る。
【0021】
濃縮した形態では、製品は、合計体積の1リットル当たり:
200g~980gの量の水、
最大で30g/Lの量の疎水性化合物、および
最大で10g/Lの量の界面活性剤の組合せ、
100~400g/Lの量のプロピレングリコール、
0~600g/Lの量のグリセロール、
を含み得る。
【0022】
方法の一形態では、混合は高剪断ミキサーで実施される。プロピレングリコールは、混合する前に、例えば100~500g/Lの量で水溶液に共溶媒として添加され得る。混合物は、最大400バールで均質化され得る。
【0023】
またさらなる態様では、本発明は、疎水性化合物の担体を含有する飲料、すなわちナノエマルジョンを包含する。
【0024】
疎水性化合物の担体は、すぐに使用できる濃縮物から希釈され得、すなわち、0.05~0.15g/Lへの少なくとも1つの疎水性化合物のさらに効果的な希釈のために濃縮物を得ることができる。
【0025】
最終液体の透明性を維持するために、液滴を、光の散乱を著しく増大させないように十分に小さくする必要がある。一般化した規則として、100nm未満のz平均サイズを伴う液滴は、最終液体の濁度を増加しない。5NTU未満の濁度は、透明性を確実にする実際の閾値とみなされる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1A】LogP3.16の疎水性化合物の混合物に関するプロピレングリコール濃度と界面活性剤の比の関数としての液滴サイズの変化を示す図である。
【
図1B】LogP4.5の疎水性化合物の混合物に関するプロピレングリコール濃度と界面活性剤の比の関数としての液滴サイズの変化を示す図である。
【
図2】本発明によるナノエマルジョンを生成するための例示的なプロセスを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下の説明は、例示的な実施形態を提示し、図面と共に、本発明の原理を説明するのに役立つ。しかし、変形が当業者に明らかであり、説明により網羅されるとも考えられるので、本発明の範囲は、実施形態の正確な詳細を限定することを意図していない。本明細書で使用される配合物成分のための用語は、等価の機能および特徴を伴う化合物/成分も包含するという広い解釈が与えられるべきである。一部の場合では、代替物を示唆することができるが、網羅的であることを意図していない。
【0028】
記述用語はまた、広範な解釈が与えられるべきであり、例えば、用語「含むこと(comprising)」とは、本明細書で使用される場合、用語「含むこと」を含む本明細書での各記述を解釈することで、用語が前置きされるもの以外の特徴も存在し得るように、「から少なくとも部分的になること」を意味する。「含む(comprise)」および「含む(comprises)」のような関連する用語は、同じ様式で解釈されるべきである。
【0029】
本発明の概要として、濃縮ナノエマルジョン(例えば10g/Lの疎水性化合物、ただし30~50g/Lのようにより高い可能性がある)を、400バールで高圧ホモジナイザーを使用して生成した。第1に親水性(例えばモノパルミチン酸スクロース、SMP)であり、第2に親油性(例えば高度に加水分解されたレシチン)である、2つの異なる種類の界面活性剤を、安定性ならびに小さい液滴サイズをもたらす特異的な比で選択した。
【0030】
図1Aは、液滴サイズD90(すなわち体積サイズ分布に由来し、サンプル体積の90%が存在する以下の最大粒径を表す)での変化を示す。D90を(z平均の代わりに)選択して、試験を行い、最適な範囲を検討した。しかし、最適な範囲内で、全てのエマルジョンは、100未満のZ平均を有する。また、最終製品の液滴サイズを測定するために、Z平均が最も便利である。
【0031】
特に、
図1Aおよび1Bは、界面活性剤とプロピレングリコール濃度との比に応じた液滴サイズの3Dの表面のプロット、例えば、SMP/レシチン比およびプロピレングリコールの関数として液滴サイズの変化を図示する。
図1Aは、pH7で3.16の加重平均logPを有する疎水性芳香化合物の混合物のエマルジョン濃縮物の結果を示し、
図1Bは、pH7で4.35のlogPを有する香料化合物の混合物のエマルジョン濃縮物の結果を示す。
【0032】
3.16のlogPを伴う香料を含有するエマルジョンが、約30:70から60:40の間のSMP/レシチン比、および0から400g/Lの間のプロピレングリコール濃度に対して液滴サイズの最小値を示すことを観察することができる。最小の液滴サイズは、55:45の界面活性剤比および250g/Lのプロピレングリコール濃度で得られる。
【0033】
図1Bによる4.35のlogPを伴う香料を含有するエマルジョン濃縮物は、50:50と30:70の間のSMP/レシチン比、および250と450g/Lの間のプロピレングリコール濃度に対して最小の液滴サイズを示す。最小の液滴サイズは、35:65の界面活性剤比および400g/Lのプロピレングリコール濃度で得られる。
【0034】
本発明の性質を理解するためのさらなる背景として、検査結果を、3つの異なる香料系を利用して、以下に概説する。モノパルミチン酸スクロース(SPM)およびヒマワリレシチン(SL)を界面活性剤として選択した。
【0035】
サンプルを、60℃で油相にSLを分散させることにより、例えば
図2のプロセスにより調製したが、SMPを、一定の剪断下、85℃で2時間、水相において水和させた。次いで、2相を、プロピレングリコールと共に、高剪断ミキサーを使用して2分間混合した後、400バールで均質化した(3回)。
【実施例1】
【0036】
【実施例2】
【0037】
【実施例3】
【0038】
【実施例4】
【0039】
【0040】
このような濃縮物は、20℃で3か月間貯蔵した後、不安定性のいかなる兆候も示さなかった。実際には、次いで、濃縮物を100倍に希釈して、最終製品に必要であるおよそ0.1g/Lの濃度を得る。最終液体の濁度は、5NTU未満である。
以下の表1は、各ナノエマルジョン配合物の0.1g/Lの油を含有するpH3.4の溶液の濁度を示す。
【0041】
【0042】
以下の表2は、希釈後の経時的な安定性を示す。サンプルを、ナノエマルジョン(10g/Lの油;30/70スクロースモノエステル/レシチン比)を、0.33g/Lのクエン酸三ナトリウムおよびpHを3.5に低下させるのに必要な量のクエン酸を含有する水に希釈することにより調製した。
低いpHでの安定性は、本カテゴリーの飲料(例えば非アルコール性ジン)での液体の大部分が、試験したあたりのpH、すなわち3.5を有するので、特に重要である。
【0043】
【0044】
液滴サイズおよび濁度の両方が経時的に低下することを観察することができる。したがって、本発明は、経時的にその有用な特性を失わない希釈可能な配合物として使用するのに特に適している。
【0045】
結論として、モノパルミチン酸スクロースとヒマワリレシチンとの混合物を用いたpH安定なナノエマルジョン濃縮物(およそ1%の油)の開発に成功した。概説すると、ナノエマルジョンは、例えば直径70nm未満の複数の油滴、水相および界面活性剤系を含む。油滴は、疎水性化合物(香料)を含有し、水および共溶媒、例えばグリセロールを含有する水相に分散する。界面活性剤系は、スクロースエステルおよびレシチン、例えばモノパルミチン酸スクロースおよび高度に加水分解されたヒマワリレシチンを含む。ナノエマルジョンは、ジンのような蒸留酒飲料の非アルコール版に着香するのに有用であり、その香料成分は、典型的に水不溶性である。
【手続補正書】
【提出日】2024-07-22
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルコールを含まない、又は、アルコール濃度が、液体飲料中、15%ABV以下である液体飲料であって、
100nm未満のz平均液滴サイズを有する複数の油滴;
水
と、プロピレングリコール、及び/又は、グリセロールからなる共溶媒と、からなる水相、ならびに
15より高いHLB値を有する第1の界面活性剤および4~8のHLB値を伴う第2の界面活性剤を含む
2つの界面活性剤系、
からなるpHが低く安定な飲料用ナノエマルジョン
を含み、
前記油滴の各々が
、前記水相で分散され
たLogP値が2以上の疎水性香料化合物を含み、
前記界面活性剤系と、前記疎水性香料化合物との重量比が、0.3:1から1:1の間であり、
前記第1の界面活性剤が、モノラウリン酸スクロース、又は、モノパルミチン酸スクロースかなる群から選択され、
前記第2の界面活性剤が、高度に加水分解されたヒマワリレシチンである、
液体飲料。
【請求項2】
最大で3:100の比において水で希釈可能である、請求項
1に記載の
液体飲料。
【請求項3】
前記疎水性
香料化合物が、
テルペンもしくは
、ピネン、ミルセンおよびリモネンから選択されるテルペンの混合物
である、請求項
1に記載の
液体飲料。
【請求項4】
前記第1の界面活性剤と前記第2の界面活性剤との重量比が30:70から80:20の間である、請求項
1に記載の
液体飲料。
【請求項5】
前記共溶媒が、1~800g/Lの濃度のポリオールである、請求項
1に記載の
液体飲料。
【請求項6】
前記z平均液滴サイズが70nm未満である、請求項
1に記載の
液体飲料。
【請求項7】
5NTU以下の濁度を有する、
請求項1に記載の液体飲料。
【請求項8】
油滴の濃度が0.01~0.5g/Lである、請求項
7に記載の液体飲料。
【請求項9】
請求項1に記載の
液体飲料用のナノエマルジョンを調製する方法であって、以下の工程:
水と、モノラウリン酸スクロース、又は、モノパルミチン酸スクロースと、プロピレングリコール、及び/又は、グリセロールからなる共溶媒を含有する水相を準備する工程、
LogP値が2以上の疎水性香料化合物及び高度に加水分解されたヒマワリレシチンを含有する油相を準備する工程、
前記油相を前記水相に乳化し、それにより
z平均液滴サイズが100nm未満の複数の油滴からなる前記ナノエマルジョンを得る工程、
を含む、方法。
【請求項10】
前記ナノエマルジョンのpHが、3.0~8.0の範囲である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記疎水性
香料化合物が、
テルペンまたは
、ピネン、ミルセンおよびリモネンを含むテルペンの混合物
である、請求項
9に記載の方法。
【請求項12】
モノラウリン酸スクロース、又は、モノパルミチン酸スクロースとレシチンの混合物と、前記疎水性香料化合物との重量比が0.3:1から1:1の間
である、請求項
9に記載の方法。
【請求項13】
前記共溶媒が、1~700g/Lの量で添加したグリセロールである、請求項
9に記載の方法。
【請求項14】
混合が高剪断ミキサーで実施される、請求項
9に記載の方法。
【請求項15】
均質化が、最大500バールで、高圧ホモジナイザーで実施される、請求項
9に記載の方法。
【請求項16】
前記疎水性
香料化合物が、0.01~0.5g/Lに希釈される、請求項
9に記載の方法から得られる飲料。
【国際調査報告】