IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ スペシャルティ オペレーションズ フランスの特許一覧

特表2024-536541アクリル酸アルキル二量体の製造方法
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-04
(54)【発明の名称】アクリル酸アルキル二量体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 67/347 20060101AFI20240927BHJP
   C07C 69/593 20060101ALI20240927BHJP
   C07C 67/303 20060101ALI20240927BHJP
   C07C 69/34 20060101ALI20240927BHJP
   C07C 51/09 20060101ALI20240927BHJP
   C07C 57/13 20060101ALI20240927BHJP
   B01J 31/24 20060101ALI20240927BHJP
   C07F 9/50 20060101ALN20240927BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20240927BHJP
【FI】
C07C67/347
C07C69/593
C07C67/303
C07C69/34
C07C51/09
C07C57/13
B01J31/24 Z
C07F9/50
C07B61/00 300
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024523103
(86)(22)【出願日】2022-10-17
(85)【翻訳文提出日】2024-06-17
(86)【国際出願番号】 EP2022078762
(87)【国際公開番号】W WO2023066829
(87)【国際公開日】2023-04-27
(31)【優先権主張番号】21203092.8
(32)【優先日】2021-10-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523287012
【氏名又は名称】スペシャルティ オペレーションズ フランス
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】バック, オリヴィエ
【テーマコード(参考)】
4G169
4H006
4H039
4H050
【Fターム(参考)】
4G169AA06
4G169BA21B
4G169BD12B
4G169BE01B
4G169BE27B
4G169BE28B
4G169CB46
4G169DA02
4G169FB77
4H006AA02
4H006AC11
4H006AC21
4H006AC46
4H006BA25
4H006BA28
4H006BA36
4H006BA53
4H006BA81
4H006BB11
4H006BB14
4H006BB25
4H006BC10
4H006BC35
4H006BE20
4H006KA31
4H039CA10
4H039CA65
4H039CB10
4H039CE20
4H039CF10
4H039CL11
4H050AA02
4H050AB40
4H050WA15
4H050WA27
(57)【要約】
本発明は、アクリル酸アルキル二量体の製造方法に関する。更に、本発明は、本発明による二量体化プロセスにより得られる水素化アクリル酸アルキル二量体の製造方法に関する。加えて、本発明は、本発明による二量体化プロセスにより得られる加水分解されたアクリル酸アルキル二量体の製造方法に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の反応スキーム:
【化1】
(式中、
Rはアルキル基であり、
とRは、同じであるか又は異なり、各々脂肪族基であるか、又はN原子と一緒にヘテロ脂肪族環を形成しており、
はヒドロカルビル基であり、
は、脂肪族基であるか、又はNRであり、RとRは、同じであるか又は異なり、各々脂肪族基であるか、又はN原子と一緒にヘテロ脂肪族環を形成している)
に従って、式(III)の触媒を使用して式(I)のアクリル酸アルキルを二量体化して式(II)の二量体を得る工程i)を含む、式(II)の二量体を製造するための方法であって、
前記二量体化の工程i)が第三級アルコール又はシラノールである化合物Aの存在下で行われる、方法。
【請求項2】
化合物Aが、tert-ブタノール、tert-アミルアルコール、又はピナコールなどの第三級アルコールであり、より好ましくはtert-ブタノールである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
[化合物A]/[式(I)のアクリル酸アルキル]のモル比が、約4:1~約0.01:1、好ましくは約2:1~約0.1:1、より好ましくは約0.5:1~約0.1:1から選択される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
Rが、C~C18、好ましくはC~Cアルキル、より好ましくはC~Cアルキル、最も好ましくはメチルである、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
とRが、1~6個の炭素原子、好ましくは1~3個の炭素原子を含む同一の直鎖又は分岐のアルキル基であり、最も好ましくはエチルである、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
とRが、N原子と一緒に、3~5個の炭素原子、好ましくは4個の炭素原子を含むヘテロ脂肪族環を形成している、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
が、芳香族基又は脂肪族基のいずれかであり、好ましくは芳香族基であり、より好ましくは、フェニル、トリル、キシリル、メシチル、デュリル、ペンタメチルフェニル、2,6-ジイソプロピルフェニル、tert-ブチルフェニル、ジtert-ブチルフェニル、メトキシフェニル、ジメトキシフェニル、メトキシトリル、メチレンジオキシフェニル、ビフェニル、ニトロフェニル、ハロゲン置換フェニル、トリフルオロメチルフェニル、ナフチル、ピリジル、フリル、ピロリル、チオフェニル、2-インドリル、ベンゾフリル、及び全てのこれらの位置異性体から選択される、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
が、NRであり、R及びRが、同じであるか又は異なり、各々脂肪族基であるか、又はN原子と一緒にヘテロ脂肪族環を形成しており、好ましくは、RとRが、1~6個の炭素原子、より好ましくは1~3個の炭素原子を含む同一の直鎖又は分岐のアルキル基であり、最も好ましくはエチルである、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
がフェニルであり、R及びRがエチルであり、RがNRであり、R及びRがエチルである、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記二量体化の工程i)が、有機溶媒中で、好ましくは非プロトン性溶媒中で、より好ましくはテトラヒドロフラン(THF)、メチル-テトラヒドロフラン(MeTHF)、トルエン、キシレン、アニソール、ジエチルエーテル、tert-ブチルメチルエーテル(MTBE)、ジクロロメタン(DCM)、クロロホルム、ジオキサン、ペンタン、シクロペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ベンゼン、及びアセトニトリルから、更に好ましくはMeTHF及びトルエンから選択される溶媒中で行われる、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記二量体化工程i)が、約20℃~約120℃、好ましくは約20℃~約80℃、より好ましくは約25℃~約60℃の範囲の温度で行われる、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
式(IV)の化合物
【化2】
(式中、
Xは、クロリド、ブロミド、又はヨージドであり、好ましくはクロリドであり、
は、請求項1、7、又は9のいずれか一項に定義されている通りであり、
はX又はRのいずれかであり、Rは、請求項1、8、又は9のいずれか一項に定義されている通りである)
を、
- 式V:RNH(V)(式中、R及びRは、RがRである場合には請求項1、5、6、又は9のいずれか一項に定義されている通りである)のアミン、又は
- 式(V)のアミンと式(V’):RNH(V’)(式中、R及びRは、RがXである場合には請求項1、8、又は9のいずれか一項に定義されている通りである)のアミンの両方、
と反応させることによって式(III)の触媒を調製する最初の工程0)を更に含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
工程0)及び工程i)が、工程0)の後に前記触媒を単離せずに行われる連続した工程である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
請求項1~13のいずれか一項に記載の方法と、それに続く、前記二量体化工程で得られた前記式(II)の二量体を、Hと、Pd系触媒、Ru系触媒、Pt系触媒、Co系触媒、Rh系触媒、Ir系触媒、及びNi系触媒などの水素化触媒とを使用して水素化して、式(VI)
【化3】
(式中、Rは請求項1又は4に記載の通りである)
の化合物を得る工程ii)と、を含む、式(VI)の化合物を製造するための方法。
【請求項15】
請求項1~13のいずれか一項に記載の方法と、それに続く、前記二量体化の工程で得られた前記式(II)の二量体を、ルイス酸又はブレンステッド酸などの酸触媒を使用して加水分解して、式(VII)
【化4】
の化合物を得る工程ii’)と、を含む、式(VII)の化合物を製造するための方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アクリル酸アルキル二量体の製造方法に関する。更に、本発明は、本発明による二量体化プロセスにより得られる水素化アクリル酸アルキル二量体の製造方法に関する。加えて、本発明は、本発明による二量体化プロセスにより得られる加水分解されたアクリル酸アルキル二量体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
Rauhut-Currier反応によるアクリル酸アルキルの二量体化のための触媒として特定のホスフィンを使用することは、先行技術で既に説明されている。
【0003】
米国特許第3074999A号明細書には、3つのアルキル基、3つの脂環式基、又は3つのアリール基を有する第三級ホスフィン、例えばトリブチルホスフィン又はトリフェニルホスフィンによって触媒されるアクリル酸アルキル二量体化反応が記載されている。しかしながら、これらの触媒は二量体化反応において低い活性を示す。開示されたプロセスに関してはそれほど悪くない収率が報告されているが、これは商業生産にとっては大きな欠点である。
【0004】
米国特許第3227745A号明細書には、溶媒としての大量のtert-ブチルアルコールの存在下での、第三級ホスフィンによって触媒されるアクリル酸アルキル二量体化反応が記載されている。開示されている第三級ホスフィンはトリアルキルホスフィンである。しかしながら、記載されているプロセスでは、50%未満の低いアクリル酸エステルの転化率しか達成されず、これは工業生産プロセスには適していない。
【0005】
米国特許第3342853A号明細書には、二量体化反応の前にPClから生成され得るトリアミノホスフィンによって触媒されるアクリル酸エステルの二量体化が記載されている。反応が60~65℃で行われる場合、70~80%のメチレングルタル酸エステル二量体収率が報告されているが、かなりの量の副生成物も生成する。更に、トリアミノホスフィンは一般に有毒であり、CMR試薬(発がん性、変異原性、及び生殖毒性を有する試薬)であり、触媒を系内で生成する場合、非常に危険な化学物質であるPClが前駆体として使用される。これらは、このプロセスの商業化及び工業化にとっては大きな欠点である。
【0006】
米国特許第3342854A号明細書には、モノアミノホスフィン又はビスアミノホスフィンのいずれかによって触媒されるアクリル酸エステル二量体化反応が記載されている。しかしながら、アクリル酸エステル二量体化に対するジフェニルアミノホスフィンの活性が低いため、使用するホスフィン添加量を多くする必要があり、これは商業生産にとって大きな欠点である。このことは、系内で生成したジブチルアミノジフェニルホスフィン触媒又はジエチルアミノジフェニルホスフィン触媒を使用する、二量体収率が10%以下となる本特許出願の2つの実施例で示されている。更に、米国特許第3342854A号明細書によるプロセスを使用すると、かなりの量の副生成物が生じる。
【0007】
Weiping Suらは、“P(RNCHCHN:Catalysts for the Head-to-Tail Dimerization of Methyl Acrylate”J.Org.Chem.2003,68,9499-9501の中で、ホスフィン触媒としてプロアザホスファトランを使用する、THF又はジオキサンを溶媒とする室温でのアクリル酸メチルの二量体化について記載している。1モル%の触媒添加量で最大82%の収率が得られる。しかしながら、この論文に記載されている触媒は非常に複雑で合成が難しく、全体として触媒コストが高価になり、これは工業化の可能性にとって大きな欠点である。更に、低い触媒添加量(1モル%)を使用すると、室温での反応速度が遅くなって反応時間が長くなり(最大24時間)、これも工業生産にとって欠点である。
【発明の概要】
【0008】
本発明の課題は、活性が高く、堅牢であり、再利用可能であり、安価であり、且つ容易に入手可能な触媒を使用する、アクリル酸アルキル二量体を製造するための効率的な方法を提供することであり、この触媒は、毒性が比較的低く、比較的低い触媒添加量で使用することができ、優れた選択性を提供する。
【0009】
具体的には、本発明の課題は、溶媒としての大量の第三級アルコールの使用及び比較的多量の触媒添加量を回避することができる、アクリル酸アルキル二量体の調製方法を提供することである。より具体的には、本発明の課題は、水素化アクリル酸アルキル二量体の効率的な調製方法及び加水分解アクリル酸アルキル二量体の効率的な調製方法を提供することである。
【0010】
今回、これら及び他の課題が、本発明による方法によって解決できることが見出された。本発明は、以下の反応スキーム:
【化1】
(式中、
Rはアルキル基であり、
とRは、同じであるか又は異なり、脂肪族基であるか、又はN原子と一緒になってヘテロ脂肪族環を形成しており、
はヒドロカルビル基であり、
は、脂肪族基であるか、又はNRであり、RとRは、同じであるか又は異なり、脂肪族基であるか、又はN原子と一緒になってヘテロ脂肪族環を形成している)
に従って、式(III)の触媒を使用して式(I)のアクリル酸アルキルを二量体化して式(II)の二量体を得る工程i)を含む、式(II)の二量体を製造するための方法であって、
前記二量体化の工程i)が第三級アルコール又はシラノールである化合物Aの存在下で行われる、方法に関する。
【0011】
更に、本発明は、式(IV)の化合物
【化2】
(式中、
Xは、クロリド、ブロミド、又はヨージドであり、好ましくはクロリドであり、
は上で定義した通りであり、
は、X(Rが上で定義したNRである式(III)の触媒の場合)又はR(Rが脂肪族基である式(III)の触媒の場合)のいずれかである)
を、
- 式(V):RNH(V)(式中、R及びRは、RがRである場合について上で定義した通りである)のアミン、又は
- 式(V)のアミンと式(V’):RNH(V’)(式中、R及びRは、RがXである場合について上で定義した通りである)のアミンの両方、
と反応させることによって式(III)の触媒を調製する最初の工程0)を更に含む、上で定義した方法に関する。
【0012】
更に、本発明は、上で定義した方法と、それに続く、二量体化工程で得られた式(II)の二量体を、Hと水素化触媒とを使用して水素化して、式(VI)
【化3】
(式中、Rは上で定義した通りである)
の化合物を得る工程ii)と、を含む、式(VI)の化合物の製造方法を提供し、ここでの水素化触媒は、例えばPd系触媒、例えばPd/C、Pd/Al、Pd/SiO、Ru系触媒、例えばRu/C、Pt系触媒、例えばPt/C、Ni系触媒、例えば担持ニッケル又はラネーニッケル触媒、Co系触媒、例えば担持コバルト又はラネーコバルト、Rh系触媒、例えばRh/C、Ir系触媒、例えばIr/C、好ましくはPd/C又はラネーニッケル、好ましくはPd/Cである。
【0013】
最後に、本発明は、上で定義した方法と、それに続く、二量体化の工程で得られた式(II)の二量体を、ルイス酸又はブレンステッド酸などの酸触媒、例えば、HCl、HSO、パラトルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、固体酸触媒、例えばAmberlyst樹脂又はゼオライト、Nafionを使用して加水分解して式(VII)
【化4】
の化合物を得る工程ii’)と、を含む、式(VII)の化合物の製造方法に関する。
【0014】
本発明は、活性が高く、堅牢であり、再利用可能であり、安価であり、且つ容易に入手可能な触媒を使用する、アクリル酸アルキル二量体を製造するための効率的な方法が提供されるという認識に基づいている。アクリル酸アルキルの二量体化のための触媒は、毒性が比較的低く、再利用可能であり、比較的低い触媒添加量で使用することができ、且つ優れた選択性を与える式(III)の化合物である。更に、本発明は、式(III)の化合物を触媒として使用する、アクリル酸アルキル二量体を調製するための効率的な方法を提供し、この方法では、アクリル酸アルキルに対して多量の第三級アルコールを使用すること、及び比較的高い触媒添加量を使用することを回避することができる。具体的には、アクリル酸アルキルに対する第三級アルコールの量を0.01:1の比率に減らすことができ、また触媒添加量を0.20モル%に減らすことができる。最後に、本発明は、水素化アクリル酸アルキル二量体を調製するための効率的な方法、及び加水分解アクリル酸アルキル二量体を調製するための効率的な方法を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明によれば、「約」という用語は、指定された数値の±10%、好ましくは±5%、最も好ましくは±2%を意味する。
【0016】
本発明は、以下の反応スキーム:
【化5】
(式中、
Rはアルキル基であり、
とRは、同じであるか又は異なり、脂肪族基であるか、又はN原子と一緒になってヘテロ脂肪族環を形成しており、
はヒドロカルビル基であり、
は、脂肪族基であるか、又はNRであり、RとRは、同じであるか又は異なり、脂肪族基であるか、又はN原子と一緒になってヘテロ脂肪族環を形成している)
に従って、式(III)の触媒を使用して式(I)のアクリル酸アルキルを二量体化して式(II)の二量体を得る工程i)を含む、式(II)の二量体を製造するための方法であって、
前記二量体化の工程i)が第三級アルコール又はシラノールである化合物Aの存在下で行われる、方法に関する。
【0017】
好ましくは、本明細書で定義される式(II)の二量体の製造方法において、化合物Aは、tert-ブタノール、tert-アミルアルコール、又はピナコールなどの第三級アルコールであり、より好ましくはtert-ブタノールである。
【0018】
好ましくは、本明細書で定義される式(II)の二量体の製造方法において、[化合物A]/[式(I)のアクリル酸アルキル]のモル比は、約4:1~約0.01:1、好ましくは約2:1~約0.1:1、より好ましくは約0.5:1~約0.1:1、特には約0.5:1~約0.2:1から選択される。
【0019】
好ましくは、本明細書で定義される式(II)の二量体の製造方法において、Rは、C~C18、より好ましくはC~Cアルキル、更に好ましくはC~Cアルキル、最も好ましくはメチルである。
【0020】
好ましくは、本明細書で定義される式(II)の二量体の製造方法において、Rは、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、2-エチルヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、t-ドデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基、又はオクタデシル基であり、より好ましくはメチル基、エチル基、イソプロピル基、ブチル基、又は2-エチルヘキシル基であり、更に好ましくはメチル基、エチル基、イソプロピル基、又はブチル基であり、最も好ましくはメチル基である。
【0021】
好ましくは、本明細書で定義される式(II)の二量体の製造方法において、RとRは、1~6個の炭素原子、より好ましくは1~3個の炭素原子を含む同一の直鎖又は分岐のアルキル基であり、最も好ましくはエチルである。
【0022】
好ましくは、本明細書で定義される式(II)の二量体の製造方法において、RとRは、N原子と一緒に、3~5個の炭素原子、好ましくは4個の炭素原子を含むヘテロ脂肪族環を形成している。
【0023】
好ましくは、本明細書で定義される式(II)の二量体の製造方法において、Rは芳香族基又は脂肪族基のいずれかであり、より好ましくは芳香族基であり、更に好ましくは、フェニル、トリル、キシリル、メシチル、デュリル、ペンタメチルフェニル、2,6-ジイソプロピルフェニル、tert-ブチルフェニル、ジtert-ブチルフェニル、メトキシフェニル、ジメトキシフェニル、メトキシトリル、メチレンジオキシフェニル、ビフェニル、ニトロフェニル、ハロゲン置換フェニル、トリフルオロメチルフェニル、ナフチル、ピリジル、フリル、ピロリル、チオフェニル、2-インドリル、ベンゾフリル、及び全てのこれらの位置異性体から選択される。
【0024】
好ましくは、Rは、フェニル;オルト-、メタ-、又はパラ-トリル;全ての位置異性体を含むキシリル、例えば、2,3-ジメチルフェニル、2,4-ジメチルフェニル、2,5-ジメチルフェニル、2,6-ジメチルフェニル、3,4-ジメチルフェニル、及び3,5-ジメチルフェニル;3-メチル-4-メトキシフェニル、2-メチル-4-メトキシフェニル、2-メチル-3-メトキシフェニル、4-メチル-3-メトキシフェニル、5-メチル-3-メトキシフェニル、6-メチル-3-メトキシフェニル、2-メトキシ-3-メチルフェニル、2-メトキシ-4-メチルフェニル、2-メトキシ-5-メチルフェニル、2-メトキシ-6-メチルフェニル;全ての位置異性体を含むメシチル、例えば、2,3,4-トリメチルフェニル、2,3,5-トリメチルフェニル、2,3,6-トリメチルフェニル、2,4,5-トリメチルフェニル、2,4,6-トリメチルフェニル、及び3,4,5-トリメチルフェニル;全ての位置異性体を含むデュリル、例えば、2,3,4,5-テトラメチルフェニル、2,3,4,6-テトラメチルフェニル、及び2,3,5,6-テトラメチルフェニル;ペンタメチルフェニル、2,6-ジイソプロピルフェニル;オルト-、メタ-、若しくはパラ-tert-ブチルフェニル;2,3-ジ-tert-ブチルフェニル、2,4-ジ-tert-ブチルフェニル、2,5-ジ-tert-ブチルフェニル、2,6-ジ-tert-ブチルフェニル、3,4-ジ-tert-ブチルフェニル、及び3,5-ジ-tert-ブチルフェニル;オルト-、メタ-、若しくはパラ-メトキシフェニル;オルト-、メタ-、若しくはパラ-クロロフェニル;2,3-ジメトキシフェニル、2,4-ジメトキシフェニル、2,5-ジメトキシフェニル、2,6-ジメトキシフェニル、3,4-ジメトキシフェニル、及び3,5-ジメトキシフェニル;2,3-メチレンジオキシフェニル、3,4-メチレンジオキシフェニル;オルト-、メタ-、若しくはパラ-ニトロフェニル;オルト-、メタ-、若しくはパラ-ビフェニル;オルト-、メタ-、若しくはパラ-トリフルオロメチルフェニル、オルト-、メタ-、若しくはパラ-フルオロフェニル;1-若しくは2-ナフチル;2-ピリジル、3-ピリジル、若しくは4-ピリジル;2-フリル、3-フリル;1-ピロリル、2-ピロリル、若しくは3-ピロリル;2-チオフェニル、3-チオフェニル;2-インドリル、3-インドリル、2-ベンゾフリル、及び3-ベンゾフリルから;好ましくはフェニル;オルト-、メタ-、若しくはパラ-トリル;又はキシリル及びその位置異性体から選択される。
【0025】
好ましくは、本明細書で定義される式(II)の二量体の製造方法において、Rは、NRであり、R及びRは、同じであるか又は異なり、脂肪族基であるか、又はN原子と一緒にヘテロ脂肪族環を形成しており、より好ましくは、RとRは、1~6個の炭素原子、更に好ましくは1~3個の炭素原子を含む同一の直鎖又は分岐のアルキル基であり、最も好ましくはエチルである。
【0026】
好ましくは、本明細書で定義される式(II)の二量体の製造方法において、Rはフェニルであり、R及びRはエチルであり、RはNRであり、R及びRはエチルである。
【0027】
好ましくは、本明細書で定義される式(II)の二量体の製造方法において、式(III)の触媒は、式(VIII)~(XIV)の化合物:
【化6】
からなる群から選択される化合物である。
【0028】
より好ましくは、本明細書で定義される式(II)の二量体の製造方法において、式(III)の触媒は、式(IX)及び(XI)~(XIV)の化合物からなる群から選択される、更に好ましくは式(XI)、(XII)、及び(XIV)の化合物から選択される、更に好ましくは式(XI)及び(XIV)の化合物からなる群から選択される化合物であり、最も好ましくは、式(III)の触媒は式(XIV)の化合物である。
【0029】
好ましくは、本明細書で定義される式(II)の二量体の製造方法において、二量体化の工程i)は、有機溶媒中で、より好ましくは非プロトン性溶媒中で、更に好ましくはテトラヒドロフラン(THF)、メチル-テトラヒドロフラン(MeTHF)、トルエン、キシレン、アニソール、ジエチルエーテル、tert-ブチルメチルエーテル(MTBE)、ジクロロメタン(DCM)、クロロホルム、ジオキサン、ペンタン、シクロペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ベンゼン、及びアセトニトリルから、更に好ましくはMeTHF、アニソール、及びトルエンから、最も好ましくはMeTHF及びアニソールから選択される溶媒中で行われる。
【0030】
好ましくは、本明細書で定義される式(II)の二量体の製造方法において、二量体化工程i)は、約20℃~約120℃、より好ましくは約20℃~約80℃、更に好ましくは約25℃~約60℃、最も好ましくは約30℃~約60℃の範囲の温度で行われる。
【0031】
好ましくは、本明細書で定義される式(II)の二量体の製造方法において、工程i)における式(III)の触媒は、式(I)のアクリル酸アルキルに対して0.20モル%~1.00モル%、より好ましくは約0.25モル%~約0.90モル%、更に好ましくは約0.30モル%~約0.90モル%、更に好ましくは約0.30モル%~約0.80モル%、更に好ましくは約0.30モル%~約0.70モル%、更に好ましくは約0.30モル%~約0.60モル%、最も好ましくは約0.30モル%~0.50モル%の触媒添加量で使用される。
【0032】
好ましくは、本明細書で定義される式(II)の二量体の製造方法において、二量体化工程i)は、無水条件且つ酸素の不存在下で行われる。
【0033】
好ましくは、本明細書で定義される式(II)の二量体の製造方法は、式(IV)の化合物
【化7】
(式中、
Xは、クロリド、ブロミド、又はヨージドであり、好ましくはクロリドであり、
はヒドロカルビル基であり、
は、X(Rが上で定義したNRある式(III)の触媒の場合)又はR(Rが脂肪族基である式(III)の触媒の場合)のいずれかである)
を、
- 式(V):RNH(V)(式中、R及びRは、RがRである場合について上で定義した通りである)のアミン、又は
- 式(V)のアミンと式(V’):RNH(V’)(式中、R及びRは、RがXである場合について上で定義した通りである)のアミンの両方、
と反応させることによって式(III)の触媒を調製する最初の工程0)を更に含む。
【0034】
好ましくは、本明細書で定義される式(II)の二量体の製造方法において、工程0)及び工程i)は、工程0)の後に触媒を単離せずに行われる連続した工程である。
【0035】
好ましくは、本明細書で定義される式(II)の二量体の製造方法において、RはXである。
【0036】
好ましくは、本明細書で定義される式(II)の二量体の製造方法において、工程0)は、有機溶媒中で、より好ましくは非プロトン性溶媒中で、更に好ましくはテトラヒドロフラン(THF)、メチルテトラヒドロフラン(MeTHF)、トルエン、キシレン、アニソール、ジエチルエーテル、tert-ブチルメチルエーテル(MTBE)、ジクロロメタン(DCM)、クロロホルム、ジオキサン、ペンタン、シクロペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ベンゼン、及びアセトニトリルから、更に好ましくはMeTHF、アニソール、及びトルエンから、最も好ましくはMeTHF及びアニソールから選択される溶媒中で行われる。
【0037】
好ましくは、本明細書で定義される式(II)の二量体の製造方法において、工程0)は、約20℃~約100℃、好ましくは約20℃~80℃、より好ましくは約25℃~60℃、最も好ましくは約40℃の範囲の温度で行われる。
【0038】
好ましくは、本明細書で定義される式(II)の二量体の製造方法において、工程0)は、非プロトン性溶媒中のアミンRNHの溶液に、(IV)の反応物をゆっくりと添加することにより行われ、ここでのアミンは、式(IV)中のRがRであり且つRが脂肪族基である場合には、式(IV)の反応物に対して2当量以上の量で使用される。工程(0)は、非プロトン性溶媒中にアミンRNHとRNHの両方を含む溶液に、式(IV)の反応物をゆっくりと添加することによって行うこともでき、ここでのアミンの合計量は、(IV)中のRcがXである場合には、式(IV)の反応物に対して4当量以上である。
【0039】
好ましくは、本明細書で定義される式(II)の二量体の製造方法において、工程0)は、無水条件且つ酸素の不存在下で行われる。
【0040】
好ましくは、本明細書で定義される式(II)の二量体の製造方法において、工程0)は、工程i)を実施する前に形成された塩化アンモニウムである副生成物を除去するための濾過工程を含む。
【0041】
更に、本発明は、本明細書で定義される式(II)の二量体の製造方法と、それに続く、二量体化工程で得られた式(II)の二量体を、Hと水素化触媒とを使用して水素化して、式(VI)
【化8】
(式中、Rは上で定義した通りである)
の化合物を得る工程ii)と、を含む、式(VI)の化合物の製造方法を提供し、ここでの水素化触媒は、例えばPd系触媒、例えばPd/C、Pd/Al2O3、Pd/SiO2、Ru系触媒、例えばRu/C、Pt系触媒、例えばPt/C、Ni系触媒、例えば担持ニッケル又はラネーニッケル触媒、Co系触媒、例えば担持コバルト又はラネーコバルト、Rh系触媒、例えばRh/C、Ir系触媒、例えばIr/C、好ましくはPd/C又はラネーニッケル、好ましくはPd/Cである。
【0042】
好ましい実施形態では、式(VI)の化合物の製造方法は、工程ii)で得られた式(VI)の水素化二量体を、ルイス酸又はブレンステッド酸などの酸触媒、例えば HCl、HSO、パラトルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、固体酸触媒、例えばAmberlyst樹脂、ゼオライト、又はNafionを使用して加水分解して、式(XV)
【化9】
の化合物を得る工程ii’)を更に含む。
【0043】
最後に、本発明は、上で定義した方法と、それに続く、二量体化の工程で得られた式(II)の二量体を、ルイス酸又はブレンステッド酸などの酸触媒、例えば HCl、HSO、パラトルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、固体酸触媒、例えばAmberlyst樹脂又はゼオライト、Nafionを使用して加水分解して、式(VII)
【化10】
の化合物を得る工程ii’)と、を含む、式(VII)の化合物の製造方法に関する。
【0044】
好ましい実施形態では、式(VII)の化合物の製造方法は、工程ii’)で得られた式(VII)の加水分解二量体を、Hと水素化触媒とを使用して水素化して、式(XV)
【化11】
の化合物を得る工程ii)を更に含み、ここでの水素化触媒は、例えばPd系触媒、例えばPd/C、Pd/Al、Pd/SiO、Ru系触媒、例えばRu/C、Pt系触媒、例えばPt/C、Ni系触媒、例えば担持ニッケル又はラネーニッケル触媒、Co系触媒、例えば担持コバルト又はラネーコバルト、Rh系触媒、例えばRh/C、Ir系触媒、例えばIr/C、好ましくはPd/C又はラネーニッケル、好ましくはPd/Cである。
【実施例
【0045】
1. アミノホスフィン触媒によって触媒されるアクリル酸メチルの二量体化
ホスフィンのスクリーニング調査の基本プロトコル:
a)対称ビスアミノホスフィンによって触媒されるジクロロホスフィンからの二量体化:
全ての反応は、慎重に乾燥させた容器内において不活性アルゴン雰囲気下で行った。各反応の前に、アクリル酸メチル及びtert-ブタノールは4Aモレキュラーシーブを使用して乾燥し、tert-ブタノールはアルゴン下で蒸留した。ジクロロホスフィン及びアミンはそのまま使用した。
【0046】
25mLの二口丸底フラスコに、
・3mLの2-メチルテトラヒドロフラン
・ジクロロホスフィン前駆体(1.8ミリモル、アクリル酸メチルに対して0.01当量)
を添加する。
【0047】
磁気撹拌装置を備えた50mLの三口丸底フラスコに、
・1mLの2-メチルテトラヒドロフラン
・ジクロロホスフィン前駆体に対して4当量(7.2ミリモル)の目的のアミン
を添加した。
【0048】
反応媒体の温度を40℃未満に維持した状態で(発熱反応)、撹拌(1400rpm)しながらジクロロホスフィン溶液を1時間かけてアミン溶液に徐々に添加した。アミン溶液にジクロロホスフィンを添加すると、不溶性の塩化アンモニウム塩である副生成物に対応する白色析出物が形成された。添加終了後、混合物を周囲温度で撹拌し、31P NMRにより反応の進行を追跡した(調査したアミノホスフィンの31Pの化学シフトの結果については以下の表1を参照)。
【0049】
ホスフィンの形成が完了した後(通常、立体障害がないアミンではクロロホスフィンの添加後に室温で1時間、立体障害がより大きいアミンでは2時間の撹拌を要する)、混合物をカニューレで濾過し、マグネチックスターラーと、コンデンサーと、ヒーターと、温度プローブとを備えており且つ溶融tert-ブタノール(アクリル酸メチルに対して2:1 v/v)32mLが入っている100mLの三口丸底フラスコに入れた。その後、混合物を60℃で撹拌した。直ちに15.95mLのアクリル酸メチル(15.15g、0.176モル、1当量)を反応器に1時間かけて注意深く添加し(発熱)、反応の進行をH NMRにより追跡した。反応は、進行が止まるまで、或いは反応開始から1日経過するまで行った。その後、生成物のメチレンプロトンと出発物質のアクリル酸メチル中のメチレンプロトンの積分によって、アクリル酸メチルの転化率をH NMRから推定した。
【0050】
生成物のNMRスペクトル:
H NMR(CDCl,400MHz)δ(ppm):6.03(s,1H),5.46(s,1H),3.60(s,3H),3.51(s,3H),2.48(t,J=7.6Hz,2H),2.37(t,J=7.6Hz,2H).
【0051】
b)モノアミノホスフィンによって触媒されるモノクロロホスフィンからの二量体化:
全ての反応は、慎重に乾燥させた容器内において不活性アルゴン雰囲気下で行った。各反応の前に、アクリル酸メチル及びtert-ブタノールは4Aモレキュラーシーブを使用して乾燥し、tert-ブタノールはアルゴン下で蒸留した。モノクロロホスフィン及びアミンはそのまま使用した。
【0052】
25mLの二口丸底フラスコに、
・3mLの2-メチルテトラヒドロフラン
・モノクロロホスフィン前駆体(1.8ミリモル、アクリル酸メチルに対して0.01当量)
を添加した。
【0053】
磁気撹拌装置を備えた50mLの三口丸底フラスコに、
・1mLの2-メチルテトラヒドロフラン
・モノクロロホスフィン前駆体に対して2当量(3.6ミリモル)の目的のアミン
を添加した。
【0054】
反応媒体の温度を40℃未満に維持した状態で(発熱反応)、撹拌(1400rpm)しながらモノクロロホスフィン溶液を1時間かけてアミン溶液に徐々に添加した。アミン溶液にモノクロロホスフィンを添加すると、不溶性の塩化アンモニウム塩である副生成物に対応する白色析出物が形成された。添加終了後、混合物を周囲温度で撹拌し、31P NMRにより反応の進行を追跡した。
【0055】
ホスフィンの形成が完了した後(通常、立体障害がないアミンではモノクロロホスフィンの添加後に室温で1時間、立体障害がより大きいアミンでは2時間の撹拌を要する)、混合物をカニューレで濾過し、マグネチックスターラーと、コンデンサーと、ヒーターと、温度プローブとを備えており且つ溶融tert-ブタノール(アクリル酸メチルに対して2:1 v/v)32mLが入っている100mLの三口丸底フラスコに入れた。その後、混合物を60℃で撹拌した。直ちに15.95mLのアクリル酸メチル(15.15g、0.176モル、1当量)を反応器に1時間かけて注意深く添加し(発熱)、反応の進行をH NMRにより追跡した。反応は、進行が止まるまで、或いは反応開始から1日経過するまで行った。その後、生成物のメチレンプロトンと出発物質のアクリル酸メチル中のメチレンプロトンの積分によって、アクリル酸メチルの転化率をH NMRから推定した。
【0056】
c)非対称ビスアミノホスフィンによって触媒される、ジクロロホスフィンとジイソプロピルアミンと追加のアミンとからの二量体化:
全ての反応は、慎重に乾燥させた容器内において不活性アルゴン雰囲気下で行った。各反応の前に、アクリル酸メチル及びtert-ブタノールは4Aモレキュラーシーブを使用して乾燥し、tert-ブタノールはアルゴン下で蒸留した。ジクロロホスフィン及びアミンはそのまま使用した。
【0057】
25mLの二口丸底フラスコに、
・3mLの2-メチルテトラヒドロフラン
・ジクロロホスフィン前駆体(1.8ミリモル、アクリル酸メチルに対して0.01当量)
を添加した。
【0058】
磁気撹拌装置を備えた50mLの三口丸底フラスコに、
・1mLの2-メチルテトラヒドロフラン
・ジクロロホスフィン前駆体に対して3当量(5.4ミリモル)のジイソプロピルアミンを添加した。
【0059】
反応媒体の温度を40℃未満に維持した状態で(発熱反応)、撹拌(1400rpm)しながらジクロロホスフィン溶液を1時間かけてアミン溶液に徐々に添加した。アミン溶液にジクロロホスフィンを添加すると、不溶性の塩化アンモニウム塩である副生成物(本発明の場合では塩化ジイソプロピルアンモニウム)に対応する白色析出物が形成された。その後、混合物を周囲温度で撹拌し、31P NMRにより反応の進行を追跡した。中間体であるクロロ(ジイソプロピルアミノ)ホスフィンの形成は、31P NMRによって確認された(例えばクロロフェニル(ジイソプロピルアミノ)ホスフィンについては+132.5ppmで一重線が観察された)。
【0060】
クロロアミノホスフィン中間体の形成が完了した後(通常、ジクロロホスフィンの添加後、室温で1時間の撹拌を要する)、1当量の第2のアミン(1.8ミリモル)を室温で撹拌しながら混合物に添加し、反応塊を室温で撹拌した。室温で更に1時間撹拌した。
【0061】
ビスアミノホスフィンの完了後、混合物をカニューレで濾過し、マグネチックスターラーと、コンデンサーと、ヒーターと、温度プローブとを備えており且つ溶融tert-ブタノール(アクリル酸メチルに対して2:1 v/v)32mLが入っている100mLの三口丸底フラスコに入れた。その後、混合物を60℃で撹拌した。直ちに15.95mLのアクリル酸メチル(15.15g、0.176モル、1当量)を反応器に1時間かけて注意深く添加し(発熱)、反応の進行をH NMRにより追跡した。反応は、進行が止まるまで、或いは反応開始から1日経過するまで行った。その後、生成物のメチレンプロトンと出発物質のアクリル酸メチル中のメチレンプロトンの積分によって、アクリル酸メチルの転化率をH NMRから推定した。
【0062】
目的の触媒の合成に成功したことを確認するために、31P NMRを使用して粗製反応媒体を分析した。実際、このパラメータ(31P NMRの化学シフト)は合成されたアミノホスフィンに特徴的であり、ピーク下の面積は溶液中のアミノホスフィンのモル濃度に比例していた。31P NMRスペクトルは、Bruker Avance 400MHz分光計を使用して記録した。
【0063】
更に、
- 二量体化反応器に移す前にMe-THF溶液で記録された31P NMRスペクトルのピーク面積から推定される、アミノホスフィン合成反応のモル選択性に対応するホスフィンのNMR収率(%);
- 表1に示したいくつかの試験におけるアクリル酸エステル二量体化中の最大転化率(H NMRから測定されるアクリル酸メチルの最大転化率に相当する);
を測定した。
【0064】
t-BuOH:アクリル酸エステルのv:v(及びmol/mol)の比率も示した。
【0065】
Inv4.4では、0.5モル%の初期ジクロロフェニルホスフィン添加量で反応を開始し、続いて20時間の反応時間後に追加量のアクリル酸メチル(0.33モル%の初期ジクロロフェニルホスフィン添加量に到達するまで0.5当量)を添加した。
【0066】
全ての結果が以下の表1にまとめられている:
【0067】
【表1】
【0068】
全てのホスフィンを合成した。
【0069】
クロロジフェニルホスフィン前駆体は、ジイソプロピルアミンとの反応でアミノホスフィンをあまり高くない収率でしか得られず(Comp1)、良好な触媒活性は得られなかった。クロロジフェニルホスフィン前駆体はピロリジンと反応したが(Comp2)、これも良好な触媒活性は得られなかった。その一方で、本発明によるアミノホスフィン(Inv1~7)は、非常に良好な触媒活性を提供した。
【0070】
最も優れた性能を示した最も優れた系は、ジイソプロピルアミノ-ピロリジノ-フェニルホスフィン(Inv4.1~4.4)であった。ジイソプロピルアミノ-ピロリジノ-フェニルホスフィン(Inv4.4)を用いると、わずか0.33モル%の初期ジクロロホスフィン添加量で91%のアクリル酸エステル転化率に到達したことは、非常に驚くべきことであった。加えて、このホスフィンは非常に堅牢であるため、取り扱いやすく、更には複数回のバッチにわたってリサイクル可能であることが確認された。
【0071】
二量体化反応中にtert-ブチルアルコールを存在させることで、期待される二量体に対する反応の選択性を向上させることができた。驚くべきことに、ホスフィンの触媒活性を損なうことなく、t-BuOHと非常に少量の塩基性アミノホスフィンとを使用することを可能にし、且つ良好な選択性が得られる適切な条件を更に見出すことができた。
【0072】
d)二量体化反応の最適化:ビス(ジエチルアミノ)フェニルホスフィンによって触媒される(アクリル酸メチルに対して初期量0.7モル%のジクロロフェニルホスフィン前駆体)t-ブタノール中でのアクリル酸メチルの二量体化(1:4 v/vのt-BuOH:アクリル酸メチル=0.24モル(t-BuOH)/モル(アクリル酸メチル))、45℃。
全ての反応は、慎重に乾燥させた容器内において不活性アルゴン雰囲気下で行った。各反応の前に、アクリル酸メチル及びtert-ブタノールは4Aモレキュラーシーブを使用して乾燥し、tert-ブタノールはアルゴン下で蒸留した。ジクロロフェニルホスフィン及びジエチルアミンはそのまま使用した。
【0073】
50mLの二口丸底フラスコに、
・15mLの2-メチルテトラヒドロフラン
・4.2mLのジクロロフェニルホスフィン(5.57g、0.031モル、0.007当量)
を添加した。
【0074】
磁気撹拌装置を備えた100mLの三口丸底フラスコに、
・20mLの2-メチルテトラヒドロフラン
・12.9mLのジエチルアミン(9.1g、0.124モル、0.028当量)(ジクロロフェニルホスフィンに対して4当量)を添加した。
【0075】
反応媒体の温度を40℃未満に維持した状態で(発熱反応)、撹拌(1400rpm)しながら、2-メチルテトラヒドロフラン中のジクロロフェニルホスフィンの溶液を1時間かけてアミン溶液に徐々に添加した。ジクロロフェニルホスフィンを添加すると、塩化アンモニウム塩である副生成物(この場合は塩化ジエチルアンモニウム)に対応する白色析出物が形成された。添加終了後、混合物を周囲温度で撹拌し、NMRにより反応の進行を追跡した。
【0076】
ジクロロフェニルホスフィンの添加後に室温で1時間の撹拌を要するビス-(ジエチルアミノ)フェニルホスフィンの形成が完了した後、混合物をカニューレで濾過し、温度プローブと、コンデンサーと、メカニカルスターラー(4つの傾斜したプラウを備えたプロペラ)とを備えており且つ
・100mLの蒸留したtert-ブタノール(1:4 v/vのtert-ブタノール:アクリル酸メチル)
・400mLのアクリル酸メチル(380.8g、4.42モル、1当量)
が入っている45℃に維持された500mLの二重ジャケット付き反応器に入れた。
【0077】
次いで、混合物を19時間にわたって45℃で攪拌した。反応の進行はH NMRにより追跡した。生成物のメチレンプロトンと出発物質のアクリル酸メチル中のメチレンプロトンの積分によって、アクリル酸メチルの転化率をH NMRから推定した。NMRによれば、出発物質であるアクリル酸メチルの転化率は約92モル%であった。
【0078】
反応の終わりに、揮発性物質(t-BuOH、Me-THF、及び未変換のアクリル酸メチル)を留去し、31gの未反応アクリル酸メチルを回収した。その後、目的生成物(2-メチレングルタル酸ジメチル)を真空蒸留(160℃、15mbar)することで、283gの分析的に純粋な生成物を得た(単離収率=75%)。蒸留容器内に残った高沸点副生成物(アクリル酸メチルオリゴマー)は約57g(15%)を占めていた。
【0079】
HNMR(CDCl,400MHz)δ(ppm):6.03(s,1H),5.46(s,1H),3.60(s,3H),3.51(s,3H),2.48(t,J=7.6Hz,2H),2.37(t,J=7.6Hz,2H).
【0080】
13C NMR(CDCl,101MHz)δ(ppm):172.73,166.75,138.76,125.56,51.59,51.26,32.66,及び27.17.
【0081】
e)ビス(ジエチルアミノ)フェニルホスフィンによって触媒される(アクリル酸メチルに対して0.7モル%のジクロロフェニルホスフィン前駆体)tert-ブタノール中でのアクリル酸メチルの二量体化(1:8 v/vのt-BuOH:アクリル酸メチル=0.12モル(t-BuOH)/モル(アクリル酸メチル))、45℃。
全ての反応は、慎重に乾燥させた容器内において不活性アルゴン雰囲気下で行った。各反応の前に、アクリル酸メチル及びtert-ブタノールは4Aモレキュラーシーブを使用して乾燥し、tert-ブタノールはアルゴン下で蒸留した。ジクロロフェニルホスフィン及びジエチルアミンはそのまま使用した。
【0082】
50mLの二口丸底フラスコに、
・15mLの2-メチルテトラヒドロフラン
・4.2mLのジクロロフェニルホスフィン(5.57g、0.031モル、0.007当量)
を添加する。
【0083】
磁気撹拌装置を備えた100mLの三口丸底フラスコに、
・20mLの2-メチルテトラヒドロフラン
・12.9mLのジエチルアミン(9.1g、0.124モル、0.028当量)(ジクロロフェニルホスフィンに対して4当量)を添加した。
【0084】
反応媒体の温度を40℃未満に維持した状態で(発熱反応)、撹拌(1400rpm)しながら、2-メチルテトラヒドロフラン中のジクロロフェニルホスフィンの溶液を1時間かけてジエチルアミン溶液に徐々に添加した。ジクロロフェニルホスフィンを添加すると、塩化アンモニウム塩である副生成物(この場合は塩化ジエチルアンモニウム)に対応する白色析出物が形成された。ジクロロホスフィンの添加終了後、混合物を周囲温度で撹拌し、NMRにより反応の進行を追跡した。
【0085】
ジクロロフェニルホスフィンの添加後に室温で1時間の撹拌を要するビス-(ジエチルアミノ)フェニルホスフィンの形成が完了した後、混合物をカニューレで濾過し、温度プローブと、コンデンサーと、メカニカルスターラー(4つの傾斜したプラウを備えたプロペラ)とを備えており且つ
・50mLの蒸留したtert-ブタノール(1:8 v/vのtert-ブタノール:アクリル酸メチル)
・400mLのアクリル酸メチル(380.8g、4.42モル、1当量)
が入っている45℃に維持された500mLの二重ジャケット付き反応器に入れた。
【0086】
次いで、混合物を19時間にわたって45℃で攪拌した。反応の進行はH NMRにより追跡した。生成物のメチレンプロトンと出発物質のアクリル酸メチル中のメチレンプロトンの積分によって、アクリル酸メチルの転化率をH NMRから推定した。NMRによれば、出発物質であるアクリル酸メチルの転化率は約88モル%であった。反応の終わりに、揮発性物質(t-BuOH、Me-THF、及び未変換のアクリル酸メチル)を留去し、44gの未反応アクリル酸メチルを回収した。
【0087】
その後、目的生成物(2-メチレングルタル酸ジメチル)を真空蒸留(160℃、15mbar)することで、271gの分析的に純粋な生成物を得た(単離収率=71%)。蒸留容器内に残った高沸点副生成物(アクリル酸メチルオリゴマー)は約59g(16%)を占めていた。
【0088】
H NMR(CDCl,400MHz)δ(ppm):6.03(s,1H),5.46(s,1H),3.60(s,3H),3.51(s,3H),2.48(t,J=7.6Hz,2H),2.37(t,J=7.6Hz,2H).
【0089】
13C NMR(CDCl,101MHz)δ(ppm):172.73,166.75,138.76,125.56,51.59,51.26,32.66,及び27.17.
【0090】
f)ビス(ジエチルアミノ)フェニルホスフィンによって触媒される(アクリル酸メチルに対して0.7モル%のジクロロフェニルホスフィン前駆体)tert-ブタノール中でのアクリル酸メチルの二量体化(1:8 v/vのt-BuOH:アクリル酸メチル=0.12モル(t-BuOH)/モル(アクリル酸メチル))、60℃、2バッチの平均。
全ての反応は、慎重に乾燥させた容器内において不活性アルゴン雰囲気下で行った。各反応の前に、アクリル酸メチル及びtert-ブタノールは4Aモレキュラーシーブを使用して乾燥し、tert-ブタノールはアルゴン下で蒸留した。ジクロロフェニルホスフィン及びジエチルアミンはそのまま使用した。
【0091】
25mLの二口丸底フラスコに、
・8mLの2-メチルテトラヒドロフラン
・2.1mLのジクロロフェニルホスフィン(2.79g、0.0155モル、0.007当量)
を添加した。
【0092】
磁気撹拌装置を備えた50mLの三口丸底フラスコに、
・10mLの2-メチルテトラヒドロフラン
・6.5mLのジエチルアミン(4.6g、0.062モル、0.028当量)(ジクロロフェニルホスフィンに対して4当量)を添加した。
【0093】
反応媒体の温度を40℃未満に維持した状態で(発熱反応)、撹拌(1400rpm)しながら、2-メチルテトラヒドロフラン中のジクロロフェニルホスフィンの溶液を1時間かけてジエチルアミン溶液に徐々に添加した。ジクロロフェニルホスフィンを添加すると、塩化ジエチルアンモニウム塩である副生成物に対応する白色析出物が形成された。その後、混合物を周囲温度で撹拌し、NMRにより反応の進行を追跡した。
【0094】
ジクロロフェニルホスフィンの添加後に室温で1時間の撹拌を要するビス-(ジエチルアミノ)フェニルホスフィンの形成が完了した後、混合物をカニューレで濾過し、温度プローブと、コンデンサーと、メカニカルスターラー(4つの傾斜したプラウを備えたプロペラ)とを備えており且つ
・25mLの蒸留したtert-ブタノール(1:8 v/vのtert-ブタノール:アクリル酸メチル)
・200mLのアクリル酸メチル(190g、2.21モル、1当量)
が入っている60℃に維持された500mLの二重ジャケット付き反応器に入れた。
【0095】
次いで、混合物を20時間にわたって60℃で攪拌した。反応の進行はH NMRにより追跡した。生成物のメチレンプロトンと出発物質のアクリル酸メチル中のメチレンプロトンの積分によって、アクリル酸メチルの転化率をH NMRから推定した。NMRによれば、出発物質であるアクリル酸メチルの転化率は約95モル%(2バッチの平均)であった。反応の終わりに、揮発性物質(t-BuOH、Me-THF、及び未変換のアクリル酸メチル)を留去した。
【0096】
その後、目的生成物(2-メチレングルタル酸ジメチル)を真空蒸留(140℃、5mbar)することで、137gの分析的に純粋な生成物を得た(2バッチの平均、単離収率=72%)。蒸留容器内に残った高沸点副生成物(主にアクリル酸メチルオリゴマー)は約40g(21%、2バッチの平均)を占めていた。
【0097】
g)ビス(ジエチルアミノ)フェニルホスフィンによって触媒される(アクリル酸メチルに対して0.9モル%のジクロロフェニルホスフィン前駆体)tert-ブタノール中でのアクリル酸メチルの二量体化(1:4 v/vのt-BuOH:アクリル酸メチル=0.24モル(t-BuOH)/モル(アクリル酸メチル))、30℃。
全ての反応は、慎重に乾燥させた容器内において不活性アルゴン雰囲気下で行った。各反応の前に、アクリル酸メチル及びtert-ブタノールは4Aモレキュラーシーブを使用して乾燥し、tert-ブタノールはアルゴン下で蒸留した。ジクロロフェニルホスフィン及びジエチルアミンはそのまま使用した。
【0098】
50mLの二口丸底フラスコに、
・20mLの2-メチルテトラヒドロフラン
・5.43mLのジクロロフェニルホスフィン(7.17g、0.04モル、0.009当量)
を添加する。
【0099】
磁気撹拌装置を備えた100mLの三口丸底フラスコに、
・20mLの2-メチルテトラヒドロフラン
・16.6mLのジエチルアミン(11.7g、0.16モル、0.036当量)(ジクロロフェニルホスフィンに対して4当量)を添加する。
【0100】
反応媒体の温度を40℃未満に維持した状態で(発熱反応)、撹拌(1400rpm)しながら、2-メチルテトラヒドロフラン中のジクロロフェニルホスフィンの溶液を1時間かけてアミン溶液に徐々に添加した。ジクロロフェニルホスフィンを添加すると、塩化ジエチルアンモニウム塩である副生成物に対応する白色析出物が形成された。ジクロロホスフィンの添加終了後、混合物を周囲温度で撹拌し、NMRにより反応の進行を追跡した。
【0101】
ジクロロフェニルホスフィンの添加後に室温で1時間の撹拌を要するビス-(ジエチルアミノ)フェニルホスフィンの形成が完了した後、混合物をカニューレで濾過し、温度プローブと、コンデンサーと、メカニカルスターラー(4つの傾斜したプラウを備えたプロペラ)とを備えており且つ
・100mLの蒸留したtert-ブタノール(1:4 v/vのtert-ブタノール:アクリル酸メチル)
・400mLのアクリル酸メチル(380.8g、4.42モル、1当量)
が入っている30℃に維持された500mLの二重ジャケット付き反応器に入れた。
【0102】
次いで、混合物を20時間にわたって30℃で攪拌した。反応の進行はH NMRにより追跡した。この段階で、アクリル酸メチルの転化レベルは、H NMRにより93%であると推定された。その後、揮発性物質(2-メチルテトラヒドロフラン、t-BuOH、及び残存アクリル酸メチル)を真空下で除去して、27gのアクリル酸メチルを回収した。その後、目的の2-メチレングルタル酸ジメチルを真空蒸留(160℃、15mbar)することで、75%の単離精製収率に相当する284gの分析的に純粋な生成物を回収した。蒸留容器内に残った高沸点副生成物(主にアクリル酸メチルオリゴマー)は49g(13%)を占めていた。
【0103】
h)ビス(ジエチルアミノ)フェニルホスフィンによって触媒される(アクリル酸メチルに対して0.9モル%のジクロロフェニルホスフィン前駆体)tert-ブタノール中でのアクリル酸メチルの二量体化(1:4 v/vのt-BuOH:アクリル酸メチル=0.24モル(t-BuOH)/モル(アクリル酸メチル))、30℃、アクリル酸メチルを徐々に添加。
全ての反応は、慎重に乾燥させた容器内において不活性アルゴン雰囲気下で行った。各反応の前に、アクリル酸メチル、tert-ブタノール、及びジエチルアミンは4Aモレキュラーシーブを使用して乾燥し、tert-ブタノールはアルゴン下で蒸留した。ジクロロフェニルホスフィンはそのまま使用した。
【0104】
50mLの二口丸底フラスコに、
・20mLの2-メチルテトラヒドロフラン
・5.43mLのジクロロフェニルホスフィン(7.17g、0.04モル、0.009当量)
を添加する。
【0105】
磁気撹拌装置を備えた100mLの三口丸底フラスコに、
・20mLの2-メチルテトラヒドロフラン
・16.6mLのジエチルアミン(11.7g、0.16モル、0.036当量)(ジクロロフェニルホスフィンに対して4当量)を添加した。
【0106】
反応媒体の温度を40℃未満に維持した状態で(発熱反応)、撹拌(1400rpm)しながら、2-メチルテトラヒドロフラン中のジクロロフェニルホスフィンの溶液を1時間かけてジエチルアミン溶液に徐々に添加した。ジクロロフェニルホスフィンを添加すると、塩化ジエチルアンモニウム塩である副生成物に対応する白色析出物が形成された。ジクロロホスフィンの添加終了後、混合物を周囲温度で撹拌し、NMRにより反応の進行を追跡した。
【0107】
ジクロロフェニルホスフィンの添加後に室温で1時間の撹拌を要するビス-(ジエチルアミノ)フェニルホスフィンの形成が完了した後、混合物をカニューレで濾過し、温度プローブと、コンデンサーと、メカニカルスターラー(4つの傾斜したプラウを備えたプロペラ)とを備えており且つ
・100mLの蒸留したtert-ブタノール(1:4 v/vのtert-ブタノール:アクリル酸メチル)
・100mLのアクリル酸メチル(95.2g、1.105モル、0.25当量)
が入っている30℃に維持された500mLの二重ジャケット付き反応器に入れた。
【0108】
次いで、300mLのアクリル酸メチル(285.6g、3.315モル、0.75当量)を4時間かけて反応器に徐々に添加した。添加終了後、混合物を30℃で16時間撹拌した。反応の進行はH NMRにより追跡した。この段階で、アクリル酸メチルの転化レベルは、H NMRにより92%であると推定された。
【0109】
その後、揮発性物質(2-メチルテトラヒドロフラン、t-BuOH、及び残存アクリル酸メチル)を真空下で除去することで、29gのアクリル酸メチルを回収した。その後、目的の2-メチレングルタル酸ジメチルを真空蒸留(160℃、15mbar)することで、76%の単離精製収率に相当する288gの分析的に純粋な生成物を回収した。蒸留容器内に残った高沸点副生成物(アクリル酸メチルオリゴマー)は49g(13%)を占めていた。
【0110】
i)(ジイソプロピルアミノ)ピロリジノフェニルホスフィンによって触媒される(アクリル酸メチルに対して0.4モル%のジクロロフェニルホスフィン前駆体)tert-ブタノール中でのアクリル酸メチルの二量体化(1:8 v/vのt-BuOH:アクリル酸メチル=0.12モル(t-BuOH)/モル(アクリル酸メチル))、60℃、触媒リサイクルあり。
全ての反応は、慎重に乾燥させた容器内において不活性アルゴン雰囲気下で行った。各反応の前に、アクリル酸メチル及びtert-ブタノールは4Aモレキュラーシーブを使用して乾燥し、tert-ブタノールはアルゴン下で蒸留した。ジクロロフェニルホスフィン、ジイソプロピルアミン、及びピロリジンはそのまま使用した。
【0111】
50mLの二口丸底フラスコに、
・20mLの2-メチルテトラヒドロフラン
・3.6mLのジクロロフェニルホスフィン(4.77g、0.027モル、0.012当量)
を添加した。
【0112】
磁気撹拌装置を備えた100mLの三口丸底フラスコに、
・20mLの2-メチルテトラヒドロフラン
・11.15mLのジエチルアミン(8.05g、0.08モル、0.036当量)(ジクロロフェニルホスフィンに対して3当量)を添加した。
【0113】
反応媒体の温度を40℃未満に維持した状態で(発熱反応)、撹拌(1400rpm)しながら、2-メチルテトラヒドロフラン中のジクロロフェニルホスフィンの溶液を1時間かけてジイソプロピルアミン溶液に徐々に添加した。混合物を室温で撹拌し、1当量(0.027モル、1.92g)のピロリジンを反応混合物に添加し、これを室温で更に1時間撹拌してビス-(アミノ)ホスフィンの形成を完了させた。
【0114】
反応混合物をカニューレで濾過し、温度プローブと、コンデンサーと、メカニカルスターラー(4つの傾斜したプラウを備えたプロペラ)とを備えており且つ
・25mLの蒸留したtert-ブタノール(1:8 v/vのtert-ブタノール:アクリル酸メチル)
・200mLのアクリル酸メチル(190.1g、2.2モル、1当量)
が入っている500mLの二重ジャケット付き反応器に入れた。
【0115】
次いで、混合物を19時間にわたって60℃で攪拌した。反応の進行はH NMRにより追跡した。 NMRによると、出発物質であるアクリル酸メチルの転化率は約86モル%であった。
【0116】
揮発性物質(t-BuOH、Me-THF、及び未変換のアクリル酸メチル)を留去し、20gのアクリル酸メチルを回収する。
【0117】
次いで、目的生成物(2-メチレングルタル酸ジメチル)を真空蒸留(125℃、7mbar)することで、103gの分析的に純粋な生成物が得られる。
【0118】
その後、190gのアクリル酸メチル(2.2モル、1当量)を、まだ活性ホスフィン触媒を含む残渣に添加し、続いて20gのtert-ブタノールを添加する。混合物を60℃で更に16時間撹拌して、アクリル酸メチルの第2のバッチの変換を行う。揮発性物質を留去して37gのアクリル酸メチルを回収し、生成物を真空蒸留(125℃、8mbar)することで、126gの分析的に純粋な生成物が得られる。
【0119】
最後に、追加の190gのアクリル酸メチル(2.2モル、1当量)を、まだ活性ホスフィンを含む残渣に添加し、混合物を70℃で20時間再度撹拌する。反応終了後、揮発性物質を真空下で除去して44gのアクリル酸メチルを回収し、生成物を真空蒸留して91gの純粋な生成物を得る。
【0120】
合計で56%の全体の単離精製収率に相当する320gの2-メチレングルタル酸ジメチル生成物が回収される。
【0121】
これは、アクリル酸エステル二量体化反応後にリサイクル可能なアミノホスフィン触媒の最初の例である。
【0122】
j)t-BuOHの有無による影響
全ての反応は、慎重に乾燥させた容器内において不活性アルゴン雰囲気下で行った。アクリル酸メチルは4Aモレキュラーシーブを使用して乾燥した。ジクロロホスフィン及びアミンはそのまま使用した。
【0123】
25mLの二口丸底フラスコに、
・18mLの2-メチルテトラヒドロフラン
・ジクロロホスフィン前駆体(10.5ミリモル、アクリル酸メチルに対して0.005当量)
を添加した。
【0124】
磁気撹拌装置を備えた50mLの三口丸底フラスコに、
・6mLの2-メチルテトラヒドロフラン
・ジクロロフェニルホスフィン前駆体に対して3当量のジイソプロピルアミン(31.4ミリモル)
を添加した。
【0125】
反応媒体の温度を40℃未満に維持した状態で(発熱反応)、撹拌(1400rpm)しながらジクロロホスフィン溶液を1時間かけてアミン溶液に徐々に添加した。アミン溶液にジクロロホスフィンを添加すると、不溶性の塩化ジイソプロピルアンモニウムである副生成物に対応する白色析出物が形成された。その後、混合物を周囲温度で撹拌し、31P NMRにより反応の進行を追跡した。中間体であるクロロ(ジイソプロピルアミノ)ホスフィンの形成は、31P NMRによって確認された(例えばクロロフェニル(ジイソプロピルアミノ)ホスフィンについては+132.5ppmで一重線が観察された)。
【0126】
クロロアミノホスフィン中間体の形成が完了した後(通常ジクロロホスフィンの添加後、室温で1時間の撹拌を要する)、1当量のピロリジン(10.5ミリモル)を室温で撹拌しながら混合物に添加し、反応塊を室温で更に1時間撹拌した。
【0127】
ビスアミノホスフィンの完了後、混合物をカニューレで濾過し、メカニカルスターラー(4つの傾斜したプラウを備えたプロペラ)と、コンデンサーと、ヒーターと、温度プローブとを備えており且つ190mLのアクリル酸メチル(180g、2.1モル)が入っている500mLの二重ジャケット付き反応器に入れた。次いで、混合物を20時間にわたって60℃で攪拌した。その後、生成物のメチレンプロトンと出発物質のアクリル酸メチル中のメチレンプロトンの積分によって、アクリル酸メチルの転化率をH NMRから推定した。66%のアクリル酸メチル転化率では、H NMRによって決定される二量体に対する選択率は78モル%であると推定された。
【0128】
これに対し、反応中にt-BuOHが存在した場合(1:1 v/vのtert-BuOH:アクリル酸メチル)、0.5モル%のジクロロフェニルホスフィンの初期添加量、60℃(Inv4.3に対応)、同様の転化レベル(66%)で、二量体に対する選択率は87%であり、反応選択性に対するt-BuOHのプラスの影響が明確に示された。
【0129】
k)アクリル酸メチルの二量体化に対する添加量の影響
反応は、慎重に乾燥させた容器内において不活性アルゴン雰囲気下で行われる。
tert-ブタノール溶媒は反応前にアルゴン下でフラッシュ蒸留し、アニソールは反応前に活性化モレキュラーシーブ4Aで一晩乾燥させた。反応物であるジエチルアミンとアクリル酸メチルも、反応前に活性化モレキュラーシーブ4Aで一晩乾燥させた。
【0130】
K1)温度プローブと、メカニカルスターラー(4つの傾斜プラウを備えたプロペラ)と、バッフルとを備えた250mLの二重ジャケット付き反応器に、室温で
・40gのアニソール、
・18.4mLのジエチルアミン(12.98g、177ミリモル)、
を添加する。
【0131】
アニソール中のジクロロフェニルホスフィン(DCPP)の溶液(純度97%のDCCP(8.14g、44ミリモル)6.17mLをアニソール30gで希釈することにより予め調製)を、室温で撹拌(500rpm)しながら、アニソール中のジエチルアミンの溶液に1時間かけて徐々に添加する(発熱)。
【0132】
添加の過程で析出物(NHEtCl)が形成され、ゲル状の溶液になる。添加の終了後に、懸濁液の粘度を下げるために追加量のアニソール30gを混合物に添加し、反応媒体を室温で1時間30分撹拌する。31P NMR分析により、この段階でDCPPが目的のビス(ジエチルアミノ)フェニルホスフィンに完全に変換されたことが確認される。
【0133】
その後、懸濁液は、アルゴン下で6μmの濾布を使用して、濾過セル内で容易に濾過される。固体を追加の60gのアニソールで洗浄する。全体で138.4gの透明な黄色い溶液が濾液として得られる。内部プローブとしてリン酸トリエチルを使用した溶液の定量的31P NMR分析により、溶液中のアミノホスフィン触媒の濃度を決定することができる:4.6重量%は6.3gの触媒(25ミリモル)に相当し、これはアクリル酸メチルに対してわずか0.28モル%の触媒添加量に相当する。
【0134】
コンデンサーと、温度プローブと、メカニカルスターラー(4つの傾斜したプラウを備えたプロペラ)と、バッフルとを備えた1.5Lの二重ジャケット付き反応器に、157.8gのtert-ブタノール(200mL)を添加し、続いて前に調製したアニソール中の触媒の溶液(138.4g)を添加する。次いで、溶液を40℃(500rpm)で撹拌し、760gのアクリル酸メチル(8.828モル)を4時間かけて徐々に溶液に添加する(発熱)。アクリル酸メチルの添加終了後、反応混合物を40℃で一晩撹拌し、定量的GCクロマトグラフィーにより反応の進行を追跡する。
【0135】
アクリル酸メチルの転化率を経時的に追跡し(二量体収率も同様)、反応速度曲線を以下のグラフに示す(左:経時的なアクリル酸メチル転化率、右:経時的な二量体収率)。以下のグラフ(黒色の曲線)から分かるように、わずか0.28モル%の触媒添加量で、40℃で24時間後に66%の最終転化率が得られ、これは58%の二量体収率に相当する。
【0136】
K2)温度プローブと、メカニカルスターラー(4つの傾斜プラウを備えたプロペラ)と、バッフルとを備えた250mLの二重ジャケット付き反応器に、室温で
・40gのアニソール、
・25.7mLのジエチルアミン(18.17g、247ミリモル)、
を添加する。
【0137】
アニソール中のジクロロフェニルホスフィン(DCPP)の溶液(純度99%のDCCP(11.13g、62ミリモル)8.44mLをアニソール30gで希釈することにより予め調製)を、室温で撹拌(500rpm)しながら、ジエチルアミン溶液に1時間かけて徐々に添加する(発熱)。
【0138】
添加の過程で析出物(NHEtCl)が形成され、ゲル状の溶液になる。添加の終了後に、反応媒体を40℃で30分撹拌する。31P NMR分析により、この段階でDCPPが目的のビス(ジエチルアミノ)フェニルホスフィンに完全に変換されたことが確認される。
【0139】
次いで、カニューレを介して懸濁液を中間フラスコの中に濾過し、固体を追加のアニソール90gで洗浄する。全体で153.7gの透明な黄色い溶液が得られる。内部プローブとしてリン酸トリエチルを使用した溶液の定量的31P NMR分析により、溶液中のアミノホスフィン触媒の濃度を決定することができる:8.6重量%は13.2gの触媒(52ミリモル)に相当し、これはアクリル酸メチルに対してわずか0.6モル%の触媒添加量に相当する。
【0140】
コンデンサーと、温度プローブと、メカニカルスターラー(4つの傾斜したプラウを備えたプロペラ)と、バッフルとを備えた1.5Lの二重ジャケット付き反応器に、157.8gのtert-ブタノール(200mL)を添加し、続いて前に調製したアニソール中の触媒の溶液(153.7g)を添加する。次いで、溶液を40℃(500rpm)で撹拌し、760gのアクリル酸メチル(8.828モル)を4時間かけて徐々に溶液に添加する(発熱)。アクリル酸メチルの添加の終了後、反応混合物を40℃で一晩撹拌し、定量的GCクロマトグラフィーにより反応の進行を追跡する。
【0141】
経時的なアクリル酸メチルの転化率(及び二量体収率)及び反応速度曲線を観察すると、40℃で25時間後にわずか0.6モル%の触媒添加量で99%を超える最終転化率が得られる(82%の二量体収率に相当)ことが分かる。
【0142】
K3)温度プローブと、メカニカルスターラー(4つの傾斜プラウを備えたプロペラ)と、バッフルとを備えた250mLの二重ジャケット付き反応器に、室温で
・40gのアニソール、
・25.7mLのジエチルアミン(18.17g、247ミリモル)、
を添加する。
【0143】
アニソール中のジクロロフェニルホスフィン(DCPP)の溶液(純度99%のDCCP(11.13g、62ミリモル)8.44mLをアニソール30gで希釈することにより予め調製)を、室温で撹拌(500rpm)しながら、ジエチルアミン溶液に1時間かけて徐々に添加する(発熱)。
【0144】
添加の過程で析出物(NHEtCl)が形成され、ゲル状の溶液になる。添加の終了後に、反応媒体を40℃で30分撹拌する。31P NMR分析により、この段階でDCPPが目的のビス(ジエチルアミノ)フェニルホスフィンに完全に変換されたことが確認される。
【0145】
次いで、懸濁液をカニューレを介して中間フラスコに濾過し、固体を追加のアニソール90gで洗浄する。全体で142.0gの透明な黄色い溶液が得られる。内部プローブとしてリン酸トリエチルを使用した溶液の定量的31P NMR分析により、溶液中のアミノホスフィン触媒の濃度を決定することができる:7.2重量%は10.22gの触媒(41ミリモル)に相当し、これはアクリル酸メチルに対してわずか0.46モル%の触媒添加量に相当する。
【0146】
コンデンサーと、温度プローブと、メカニカルスターラー(4つの傾斜したプラウを備えたプロペラ)と、バッフルとを備えた1.5Lの二重ジャケット付き反応器に、157.8gのtert-ブタノール(200mL)を添加し、続いて760gのアクリル酸メチル(8.828モル)を添加する。次いで、撹拌しながら、前に調製したアニソール中の触媒の溶液(142.0g)を溶液に添加する(500rpm、発熱)。次いで、溶液を40℃で一晩撹拌し、定量的GCクロマトグラフィーにより反応の進行を追跡する。
【0147】
アクリル酸メチルの転化率(及び二量体収率)及び反応速度曲線を経時的に追跡すると、40℃で48時間後に、わずか0.46モル%の触媒添加量で87%の最終転化率が得られる(76%の二量体収率に相当)ことが示される。
【0148】
2. 2-メチレングルタル酸ジメチルから2-メチルグルタル酸ジメチルへの接触水素化
上記二量体化反応(Inv4.4)に従って得られた基質である2-メチレングルタル酸ジメチル(50g、0.29モル)を、最初にメカニカルスターラー(Rushtonタービン)を備えた100mLのオートクレーブ反応器に入れ、続いてPd/C(3%)触媒(粉末、含水率51%、ウェット1g、ドライ0.49gに相当、基質に対して1重量%)を添加した。次いで、反応器を密閉し、20barの窒素で3回、続いて5barの水素で3回パージした。反応混合物を1400rpmで撹拌し、次いで反応混合物の温度を40℃に設定した。その後、反応媒体を40℃、5barの水素圧(1400rpm)で6時間撹拌し、水素消費を経時的に追跡した。
【0149】
水素の消費がないことで確認された反応終了時に、反応混合物を室温で冷却し、撹拌を停止し、オートクレーブを減圧した。反応器を窒素でパージし、粗生成物を反応器から取り出し、触媒を濾過によって除去した。触媒を濾過した後、生成物である2-メチルグルタル酸ジメチルを透明な液体として得た(50g、収率99%に相当)。これをそのまま使用した。
【0150】
3. 2-メチレンペンタン二酸ジメチルからの2-メチレンペンタン二酸の合成
【化12】
メカニカルスターラー(4つの傾斜したプラウを備えたプロペラ)と、バッフルと、温度プローブと、レシーバーに接続された蒸留塔とを備えた2Lの二重ジャケット付き反応器に、
・700g(4.07モル、1当量)の2-メチレンペンタン二酸ジメチル、
・879mLの水(48.8モル、12当量)、
・95%硫酸(9mL、16.6g、0.163モル、2-メチレンペンタン二酸ジメチルに対して4モル%、滴下漏斗から室温で反応混合物に滴下)
を添加する。
【0151】
その後、混合物を120℃で撹拌し、反応の進行をH NMR分析で追跡する。反応の過程で、反応平衡を目的のメチレングルタル酸に向けるために、生成されたメタノールを反応媒体から留去する。
【0152】
120℃で2時間30分撹拌した後、H NMR分析から、ジエステルから二酸への遅い変換が示されたため、反応速度を上げるために追加量の硫酸(2.26mL(0.04モル、1モル%))を反応混合物に添加する。混合物の温度は130℃まで上昇する。
【0153】
しかしながら、130℃で更に2時間撹拌しても、ジエステルの変換は依然として遅すぎるため、2.26mL(0.04モル、1モル%)のHSOを反応塊に再度添加する。
【0154】
130℃で11時間30分撹拌した後、1060mLの水/MeOH混合物を留去し、50mLの新たな水を反応容器に添加する。
【0155】
130℃で16時間30分撹拌した後、H NMR分析からは、約10モル%の未加水分解エステル官能基が残存しており、ポリマー副生成物がかなり生成していることが示される。
【0156】
この段階で、回収された蒸留物の質量は、不溶性の出発ジエステル6gを含む1195gである。
【0157】
反応媒体の温度を80℃に下げ、35重量%のNaOH水溶液36mL(HSO)に対して2当量)を容器にゆっくりと添加して触媒を中和する(発熱)。
【0158】
80℃に維持した反応器の内容物を絶えず撹拌しながらビーカーの中に出す。混合物は冷却すると固化して徐々に固い白色ペーストになる。
【0159】
濾過可能な液体ペーストを得るために147mLの水をペーストに添加し、混合物を室温で放冷して二酸生成物の析出を完了させる。
【0160】
その後、生成物を焼結フィルターを通して濾過すると、非常に粘稠な濾液が得られる。
【0161】
ケーキを80mLの水で4回、次いで70mLの水で6回洗浄する。各濾過の前に混合物をよく振とうする。
【0162】
室温で一晩析出させた得られた水性濾液を濾過し、20mLの水で10回再洗浄して追加の生成物を回収する。
【0163】
固体フラクションを集め、生成物を50℃(10mbar)で2時間真空乾燥すると、98重量%を超える有機純度を有し、3重量%の水を含む286gの白色粉末(48%の単離収率に相当)が得られる。
【0164】
NMRスペクトル:
H NMR(MeOD-d,400MHz)δ(ppm):6.16(s,1H),5.63(s,1H),2.6-2.56(t,J=7.6Hz,2H),2.51-2.47(t,J=7.6Hz,2H).
13C NMR(MeOD-d,101MHz)δ(ppm):176.7,170.12,141.16,126.38,34.07,28.52.
【国際調査報告】