IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ イエフペ エネルジ ヌヴェルの特許一覧

特表2024-536547ドープされた硫酸化ジルコニウム酸化物を含む触媒
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-04
(54)【発明の名称】ドープされた硫酸化ジルコニウム酸化物を含む触媒
(51)【国際特許分類】
   B01J 27/053 20060101AFI20240927BHJP
【FI】
B01J27/053 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024523133
(86)(22)【出願日】2022-10-11
(85)【翻訳文提出日】2024-06-14
(86)【国際出願番号】 EP2022078205
(87)【国際公開番号】W WO2023066714
(87)【国際公開日】2023-04-27
(31)【優先権主張番号】2111093
(32)【優先日】2021-10-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591007826
【氏名又は名称】イエフペ エネルジ ヌヴェル
【氏名又は名称原語表記】IFP ENERGIES NOUVELLES
(74)【代理人】
【識別番号】100106091
【弁理士】
【氏名又は名称】松村 直都
(74)【代理人】
【識別番号】100199369
【弁理士】
【氏名又は名称】玉井 尚之
(74)【代理人】
【識別番号】100228175
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 充紀
(72)【発明者】
【氏名】ラフィク-クレマン スアド
(72)【発明者】
【氏名】デルプ オリヴィエ
(72)【発明者】
【氏名】ピルングリューバー ゲアハルト
(72)【発明者】
【氏名】コワノー アン-アガト
(72)【発明者】
【氏名】シャル ロバン
【テーマコード(参考)】
4G169
【Fターム(参考)】
4G169AA03
4G169AA08
4G169BA01A
4G169BA01B
4G169BA03A
4G169BA05A
4G169BA05B
4G169BB10A
4G169BB10B
4G169BC16A
4G169BC16B
4G169BC40A
4G169BC40B
4G169BC51A
4G169BC51B
4G169BC69A
4G169BC72A
4G169BC75A
4G169BC75B
4G169BD01A
4G169BD01B
4G169BD02A
4G169BD02B
4G169CA15
4G169CB41
4G169EC03X
4G169EC03Y
(57)【要約】
本発明は、以下のものを含んでいる触媒に関する:(a)アルミニウムドープされた硫酸化ジルコニウム酸化物、ここで、-アルミニウム含有率は、触媒の重量で0.8~3.0重量%であり、-結晶学的相について、正方晶系相のジルコニウム酸化物の割合は、最低80%、特に最低85%または最低90%である、-ジルコニウム酸化物の結晶化度は、最低55%、特に、最低60%、あるいは、最低65%または最低70%である、(b)シリカおよび/またはアルミナから選択される耐火性酸化物、(c)第VIIIB族金属。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下を含んでいる触媒:
(a) アルミニウムによりドープされた硫酸化ジルコニウム酸化物;
- アルミニウムの含有率は、触媒の重量で0.8重量%~3.0重量%であり、
- 結晶学的相について、正方晶系相のジルコニウム酸化物の割合が、最低80%、とりわけ最低85%または最低90%である、
- ジルコニウム酸化物の結晶化度は、最低55%、とりわけ、最低60%、あるいは、最低65%または最低70%である、
(b) シリカおよび/またはアルミナ、好ましくはアルミナまたはアルミナ-シリカ混合物および/またはアルミナから選ばれる耐火性酸化物、
(c) 第VIIIB族金属。
【請求項2】
(a) 硫酸化ジルコニウム酸化物は、イットリウムもドープされ、含有率は、とりわけ触媒の重量で0.5重量%~1.5重量%であることを特徴とする請求項1に記載の触媒。
【請求項3】
Al/Y重量比は、1に少なくとも等しく、とりわけ1超、好ましくは1.5以上であることを特徴とする請求項2に記載の触媒。
【請求項4】
触媒の硫酸塩含有率は、触媒の重量で最低2.5重量%、とりわけ2.5重量%~9重量%または2.5重量%~8重量%であることを特徴とする請求項1~3のいずれか1つに記載の触媒。
【請求項5】
(a)アルミニウムによりドープされた硫酸化ジルコニウム酸化物中の硫酸塩含有率は、前記酸化物の重量で最低5重量%、とりわけ最低7重量%、好ましくは前記酸化物の重量で7重量%~11重量%であることを特徴とする請求項1~4のいずれか1つに記載の触媒。
【請求項6】
ドープされた硫酸化ジルコニウム酸化物の超酸Zr3+サイトの含有率は、(a)ドープされた硫酸化ジルコニウム酸化物および(b)耐火性酸化物の合計の重量(グラム)当たりZr3+少なくとも0.16mmol、とりわけ(a)ドープされた硫酸化ジルコニウム酸化物および(b)耐火性酸化物の合計の重量(グラム)当たりZr3+0.16~0.3mmolであることを特徴とする請求項1~5のいずれか1つに記載の触媒。
【請求項7】
(b)耐火性酸化物、とりわけアルミニウム酸化物の含有率は、触媒の重量で10重量%~40重量%、とりわけ15重量%~25重量%であることを特徴とする請求項1~6のいずれか1つに記載の触媒。
【請求項8】
(c)第VIIIB族金属は、白金族元素、とりわけPtまたはPd、好ましくはPtであり、その含有率は、好ましくは触媒の重量で0.15重量%~0.35重量%であることを特徴とする請求項1~7のいずれか1つに記載の触媒。
【請求項9】
触媒中のドープされた硫酸化ジルコニウム酸化物(a)の重量は、最低60重量%、とりわけ75重量%~85重量%であることを特徴とする請求項1~8のいずれか1つに記載の触媒。
【請求項10】
触媒の比表面積S_BETは、少なくとも130m/g、とりわけ少なくとも150m/g、好ましくは150~180m/gであることを特徴とする請求項1~9のいずれか1つに記載の触媒。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか1つに記載の触媒の調製するための方法であって、以下の工程を含むことを特徴とする方法:
(1) アルミニウムによりドープされ、かつ、場合によっては、イットリウムによってもドープされた硫酸化ジルコニウム酸化物を調製する工程、
(2) 工程(1)において調製されたドープされた硫酸化ジルコニウム酸化物を、シリカおよび/またはアルミナ、好ましくはアルミナまたはアルミナ-シリカ混合物から選ばれる少なくとも1種の耐火性酸化物、あるいは、これらの酸化物のうちの少なくとも1種の前駆体と混合する工程;混合を、とりわけ、溶媒中の粉末を混合することによって実行する、
(3) 工程(2)において得られた混合物を、とりわけ押出によって成形する工程、
(4) 工程(3)において成形された混合物を焼成する工程、
(5) 工程(4)において焼成された混合物に、第VIIIB族金属の前駆体を含浸させる工程、
(6) 工程(5)において含浸させられた混合物を焼成する工程。
【請求項12】
アルミニウムによりドープされた硫酸化ジルコニウム酸化物を調製する工程(1)は、前記酸化物を焼成する副工程(1.2)を含むことを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項13】
混合工程(2)は、成形前の混合物を焼成する副工程で終わり、その際の温度は、好ましくは、成形された混合物を焼成する工程(4)の焼成温度を上回ることを特徴とする請求項11または12に記載の方法。
【請求項14】
ドープされた硫酸化ジルコニウム酸化物を調製する工程(1)は、アルミニウムおよび場合によるイットリウムを、硫酸化ジルコニウム酸化物に組み入れる副工程(1.1)を含み、副工程(1.1)を、該酸化物をアルミニウム前駆体と混合し、かつ、場合によってはイットリウム前駆体も混合することによって行うことを特徴とする請求項11~13のいずれか1つに記載の方法。
【請求項15】
炭化水素供給原料の異性化方法における、請求項1~10のいずれか1つに記載の触媒の使用。
【請求項16】
終点が230℃以下である炭化水素供給原料中に含有される少なくとも1種のアルカンを異性化するための方法であって、蒸気相または液相で触媒により行い、その際の温度は、120℃~190℃であり、その際の圧力は、20~80MPaであり、その際の水素/パラフィン系化合物のモル比は、0.1~10であり、その際の毎時空間速度HSVは、0.05~15h-1であり、該触媒は、以下を含んでいることを特徴とする方法:
(a) アルミニウムによりドープされた硫酸化ジルコニウム酸化物;
- アルミニウムの含有率は、触媒の重量で0.8重量%~3.0重量%、好ましくは触媒の重量で1重量%~2.5重量%であり
- 結晶学的相について、正方晶系相のジルコニウム酸化物の割合は、最低80%、とりわけ最低85%または最低90%である、
- ジルコニウム酸化物の結晶化度は、最低55%、とりわけ、最低60%、あるいは、最低65%または最低70%である、
(b) シリカおよび/またはアルミナから選ばれる耐火性酸化物、
(c) 第VIIIB族金属。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭化水素の転化、とりわけ飽和炭化水素の転化の分野に関する。本発明は、より具体的には、4~12個の炭素原子を有する軽質パラフィンの異性化に関する。本発明は、それ故に、この転化を促進するために用いられる触媒、触媒の製造方法、並びに、異性化方法における触媒の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
鎖式パラフィンの異性化は、ナフサ炭化水素留分のオクタン価を向上させるために幅広く用いられる方法である。このタイプの異性化反応に適した種々の触媒組成物が知られている。
【0003】
そのため、特許文献1には、パラフィン系炭化水素の異性化のための触媒が記載されており、この触媒は、SOの形態の硫酸塩と、少なくとも1種の第VIII族金属とを第IV族および第III族からの金属の酸化物および水酸化物からなる担体上に含む。このタイプの組成物の例としていくつか挙げられているのは、PdSO/ZrO、PtSO/ZrO、あるいは他にはPtSO/SiO-Alタイプの組成物等である。しかしながら、このタイプの組成物は、経時的にみて、それほど活性でなくかつそれほど安定的でない触媒となることが判明した。
【0004】
触媒は、特許文献2からも知られており、第IVB族元素の硫酸化された酸化物または水酸化物から作られた担体を含み、これに、ランタニド族からの元素、とりわけイッテルビウムと、白金とが添加される。イッテルビウムは、レアで高価な元素であり、このタイプの触媒は、高い活性を有しない。
【0005】
GAOらによる刊行物(非特許文献1)から同様に知られているのは、アルミニウムプロモータを含有している硫酸化ジルコニアをベースとする触媒についての研究であり、n-ブタン異性化のための触媒の活性および安定性を、水素の非存在中、低温で増大させる研究において推奨されている。しかしながら、性能試験が、成形後の最終触媒についてではなく粉末に対して行われたこと、および、ブタンより重質の炭化水素についてのそれらの性能は評価されなかったことは、留意されるべきである。
【0006】
本発明の目的のために、提示される種々の実施形態は、単独であるいは互いの組み合わせで用いられてよく、この組合せには、なんら制限はない。
【0007】
本発明の目的のために、所与の工程についてのパラメータの種々の範囲、例えば圧力範囲および温度範囲等は、単独であるいは組み合せで用いられ得る。例えば、本発明の目的のために、圧力数値の好適な範囲は、より好適な温度数値の範囲と組み合わされ得る。
【0008】
本文の残りの部分において、化学元素の族は、CAS分類に従って与えられる(CRC Handbook of Chemistry and Physics、出版元CRC Press、編集長D. R. Lide、第81版、2000-2001)。例えば、CAS分類による第VIII族は、新IUPAC分類による8、9および10列の金属に対応し、第VIB族は、6列からの金属に対応する。
【0009】
以下の本文において、表現「AとBとの間の、またはA~Bの(of between A and B)」および「AとBとの間、またはA~B(between A and B)」は、同等であり、間隔の両限界値(A、B)は、記載された値の範囲に含まれることを意味する。そのようになっていない場合、並びに、両限界値が記載された範囲に含まれない場合、その旨の明示が、本発明によって提供されるものとする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許第5036035号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2003/0050523号明細書
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】GAO Zi、XIA Yongde、HUA Weiming、MIAO Changxi著、“New Catalyst of SO42-/Al2O3-ZrO2of n-butane isomerization. in: Topics in Catalysis”、1998年、第6巻、第1号、p.101106. DOI: 10.1023/A:1019122608037
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0012】
(発明の概要)
本発明の目的は、飽和C4-C12炭化水素の異性化に適したより効率的な新規の触媒を提供することにある。本発明の目的は、とりわけ、安定性および選択性を保持しながら、より活性である、触媒の開発にある。
【0013】
本発明の第1の主題は、以下を含む触媒にある:
(a) アルミニウムによりドープされた硫酸化ジルコニウム酸化物;
- アルミニウムの含有率は、触媒の重量で0.8重量%~3.0重量%であり、
- 結晶学的相について、正方晶系相のジルコニウム酸化物の割合は、最低80%、とりわけ最低85%または最低90%である、
- ジルコニウム酸化物の結晶化度は、最低55%、とりわけ、最低60%、あるいは、最低65%または最低70%である、
(b) シリカおよび/またはアルミナ、好ましくはアルミナまたはアルミナ-シリカ混合物および/またはアルミナから選ばれる耐火性酸化物、
(c) 第VIIIB族金属。
【0014】
この本文全体を通して、以下の通りである:
用語「担体」は、硫酸化ジルコニウム酸化物(a)および少なくともアルミニウムドーパントと、シリカ-アルミナ混合物またはアルミナから好ましくは選ばれ、好ましくは混錬/押出によって成形された耐火性酸化物(b)とからなる混合物、より一般的には酸化物に、1種または複数種の活性金属、例えばここでは白金族金属が次いで添加されたものを指す。
【0015】
用語「触媒」は、事前に規定された担体に、第VIIIB族金属、例えば白金(c)が添加されたものを指す。
【0016】
「結晶化度」は、結晶質相に対応するシグナルについて10°~70°2θで測定された面積対結晶質相と無定形相とを含む合計面積の比によって定義される(この計算は、当業者に知られている計算方法/ソフトウェアによって実行されることが留意されるべきである)。
【0017】
用語「ジルコニア」は、ジルコニウム酸化物と同義であると理解されるべきである。
【0018】
本発明による触媒は、したがって、特定の結晶学的特徴の硫酸化ジルコニアをベースとする活性相の形態にあり、これは、非常に特定的な含有率のアルミニウムによりドープされ、これに、バインダとして機能することとなる耐火性酸化物が添加されて、担体を構成し、かつ、これに、最終的に、第VIIIB族金属、例えば、白金が添加されて、(これら種々の化合物が導入される順序や方法にかかわらず)触媒を構成する。
【0019】
触媒は、有利には、ランタニド族からの元素を含まない。
【0020】
そのような触媒は、C4-C12、とりわけC4-C7、とりわけC5+の軽質パラフィンの異性化に対し高い活性および高い安定性を有することが示されてきた:それは、それ故に、当業者に知られている触媒の活性および安定性と少なくとも同等である活性および安定性を有し、とりわけ、アルミニウムよりもかなりよりレアかつより高価なドーパント、例えば、ランタニド族からの元素を含む。
【0021】
具体的には、本発明のコンテクストにおいて、C4-C7軽質パラフィンの異性化についての触媒性能は、ドーパント含有率と、硫酸塩含有率と、ジルコニア結晶化度と、担体中の正方晶系相の割合との間のバランスと密接に関連しており、触媒の触媒活性に相対する表面酸素空孔の最適な含有率に至ることが示されてきた:特に、効率のよい触媒を得ることが出来たのは、これら4つの特徴について特定の値を選択することによるものである。
【0022】
本発明の変形によると、硫酸化ジルコニウム酸化物は、また、イットリウムにより、とりわけ触媒の重量で0.5重量%~1.5重量%の含有率でドープされてもよい。実際いくつかの場合において、とりわけ用いられるアルミニウム含有率にもよるが、第2のドーパントが好ましくはより低い重量含有率で添加されてよい。好ましくは、添加されるドーピング剤の全量(Al+Y)は、0.8重量%~3重量%である。この変形において、Al/Y重量比は、好ましくは1に少なくとも等しく、とりわけ1超、好ましくは1.5以上である。
【0023】
本発明によると、触媒のSO含有率は、好ましくは触媒の重量で最低2.5重量%、とりわけ2.5重量%~8重量%または2.5重量%~9重量%である。下限含有率を下回ると、触媒活性は低下する場合がある。上限含有率を上回ると、材料中の硫酸塩を安定させることがより困難となる場合がある。
【0024】
本発明によると、アルミニウムによりドープされた硫酸化ジルコニウム酸化物中の硫酸塩含有率は、前記酸化物の重量で最低5重量%、とりわけ最低7重量%、好ましくは前記ジルコニウム酸化物の重量で7重量%~11重量%である。
【0025】
好ましくは、本発明による触媒中の硫酸塩の表面密度は、1.0SO 2-/nm2~6SO 2-/nm2または1.0SO 2-/nm2~5SO 2-/nm2である。
【0026】
有利には、ドープされた硫酸化ジルコニウム酸化物の超酸Zr3+サイトの含有率は、(a)ドープされた硫酸化ジルコニウム酸化物および(b)耐火性酸化物の合計の重量(グラム)当たりZr3+少なくとも0.16mmol、とりわけ2種の酸化物(a)および(b)の重量(グラム)当たりZr3+0.16~0.3mmolである。これら2種の酸化物の合計は、触媒の担体に相当することが留意されることとなる。以下に詳述されるように、この含有率は、ここでは、触媒の担体(a)+(b)、すなわちドープされた硫酸化ジルコニアと耐火性酸化物との組合せに対して行われる測定により得られる。適切な場合には、ドープされた硫酸化ジルコニア(a)の重量(グラム)当たりのZr3+サイトの含有率を推測することが可能である。
【0027】
超酸Zr3+サイト(Zr)の含有率は、以下のようにg因子に関連し、かつ担体の重量(グラム)当たりのZr3+種に相当する、空孔の量を意味するように理解される:
xx=gyy=1.9784およびgzz=1.9288、並びに、
xx=gyy=1.9784およびgzz=1.9060、若しくは、
xx=gyy=1.9768およびgzz=1.9589。
【0028】
空孔の量は、当業者に知られている較正法によって求められる。用いられる基準化合物は、2,2-ジフェニル-1-ピクリルヒドラジル(2,2-DPPH)である。g因子は、以下に説明される。
【0029】
この含有率を求めるために、発明者らは、酸素空孔を特徴付けおよび定量化するための既知方法である電子常磁性共鳴(EPR)を用いた。EPRは、常磁性種、すなわち、不対電子を含有する種に特有の分光法であり、酸素空孔付近のジルコニウム種の場合と同様である。EPRにより、(g因子と呼ばれる)共鳴周波数を測定することにより常磁性種の性質を特定すること、かつ、この種を(同一条件下で分析された基準材料に相対する重量(グラム)当たりのスピンの数について)定量化することが可能となることが当業者に知られている。この技術は、非常に感度が高いという利点を有し、したがって、ppmのオーダーの痕跡量を検出することができる。数多くの刊行物(例えば、Chavez JR, Devine RAB, Koltunski L, J. Appl. Phys., 2001; 90: 4284;Foster AS, Sulimov VB, Gejo FL, Shluger AL, Nieminen RM, Phys. Rev. B, 2001; 64: 224108;Foster AS, Gejo FL, Shluger AL, Nieminen RM, Phys. Rev. B, 2002; 65: 174117)では、ジルコニウム酸化物ZrOについて理論上の計算が実行され、この酸化物の主な欠陥が、酸素空孔と、電荷を捕捉することができる格子間酸素原子であることが示されている。これら同様の文献によると、計算により、これら欠陥のいくつかは不対電子を含有する場合があり、したがって、EPRによって検出可能である場合があることが示されている。この不対電子は、空孔でとどまることはないが、ジルコニウムイオンの4dレベルに存在することとなり、それが酸化状態(III)に還元されることが留意される。それ故に、これら欠陥は、Zr3+の特徴シグナル(signature)を通して間接的に観察される。
【0030】
本発明者らは、驚くべきことに、それらの触媒の良好な性能は、Zr3+サイトの最小含有率0.16mmolにあることに対応することをこうして示してきた:この含有率は、その触媒活性にとって非常に望ましいものである、硫酸化ジルコニウム酸化物中の空孔の量の「言い換え(translation)」であろうと思われる。
【0031】
好ましくは、(b)耐火性酸化物、とりわけアルミニウム酸化物および/またはケイ素酸化物の含有率は、触媒の重量で10重量%~40重量%、大いに好ましくは触媒の重量で15重量%~25重量%である。酸化物がアルミニウム酸化物(アルミナ)を含む場合、それは、好ましくは、ベーマイトの形態で調製されている触媒中に組み入れられる。
【0032】
好ましくは、(c)第VIIIB族金属は、白金族元素、とりわけPtまたはPd、好ましくはPtである。より好ましくは、その含有率は、触媒の重量で0.15重量%~0.35重量%である。
【0033】
有利には、触媒中のドープされた硫酸化ジルコニウム酸化物(a)の重量は、最低60重量%、とりわけ75重量%~85重量%から選ばれる。
【0034】
好ましくは、触媒のS_BET比表面積は、少なくとも130m/g、とりわけ少なくとも150m/g、好ましくは150~180m/gである。具体的には、良好な触媒活性を有するために、触媒がこの比表面積を有することが有利であることが証明されている。
【0035】
本発明の別の主題は、上記記載の触媒を調製するための方法であって、以下の工程を含む方法にある:
(1) アルミニウムによりドープされ、かつ、場合によっては、イットリウムによってもドープされた硫酸化ジルコニウム酸化物を調製する工程、
(2) 工程(1)において調製された、ドープされた硫酸化ジルコニウム酸化物を、シリカおよび/またはアルミナから選ばれる少なくとも1種の耐火性酸化物、あるいは、これらの酸化物のうちの少なくとも1種の前駆体と混合する工程;混合は、とりわけ、溶媒中の粉末を混合することによって実行される、
(3) 工程(2)において得られた混合物を、とりわけ押出によって成形する工程、
(4) 工程(3)において成形された混合物を焼成する工程、
(5) 工程(4)において焼成された混合物に、第VIIIB族金属の前駆体を含浸させる工程、および
(6) 工程(5)において含浸させられた混合物を焼成する工程。
【0036】
本発明の方法の1つの実施形態によると、アルミニウムによりドープされた硫酸化ジルコニウム酸化物を調製する工程(1)は、前記酸化物を焼成する副工程(1.2)を含んでよい。
【0037】
本発明の方法の1つの実施形態によると、混合工程(2)は、成形前の混合物を、好ましくは、成形された混合物を焼成する工程(4)の焼成温度を上回る温度で焼成する副工程で終わる。
【0038】
本発明の方法の1つの実施形態によると、ドープされた硫酸化ジルコニウム酸化物を調製する工程(1)は、アルミニウムおよびイットリウムが触媒中に存在する場合には任意選択にイットリウムを、硫酸化ジルコニウム酸化物中に組み入れる副工程(1.1)を含み、これは、酸化物を、アルミニウム前駆体と、また場合によってはイットリウム前駆体と混合することにより行われる。2種の前駆体は、イットリウムおよびアルミニウムが組み入れられるときと同時に添加され得、あるいは、それらは、一つ一つ、順次添加され得る。
【0039】
本発明の別の主題は、炭化水素供給原料の異性化のための方法における、上記記載の触媒の使用にある。
【0040】
本発明は、終点が230℃以下である炭化水素供給原料中に含有される少なくとも1種のアルカンまたはシクロアルカンを異性化するための方法をも有し、前記方法は、蒸気または液体の相中で、温度120℃~190℃、圧力20~80MPa、水素/炭化水素化合物モル比0.1~10、毎時空間速度HSV0.05~15h-1で上記の触媒により行われ、触媒は、とりわけオキシ硫酸塩の形態にあり、以下を含んでいる:
アルミニウムによりドープされた硫酸化ジルコニウム酸化物、
- アルミニウム含有率は、触媒の重量で0.8重量%~3.0重量%であり、
- 結晶学的相について、正方晶系相のジルコニウム酸化物の割合が、最低80%、とりわけ最低85%または最低90%である、
- ジルコニウム酸化物の結晶化度が、最低55%、とりわけ、最低60%、あるいは、最低65%または最低70%である、
(b) シリカおよび/またはアルミナから選ばれる耐火性酸化物、
(c) 第VIIIB族金属。
【発明を実施するための形態】
【0041】
(実施形態の説明)
以下に、非制限的な実施形態および実施例を用いて、本発明を詳述されることとする。
【0042】
(定義)
重量百分率は、最終複合材料の無水重量に相対して表される。この無水重量は、サンプルを1000℃で2時間にわたって加熱することから生じる重量変化量に相当する前記強熱減量(loss on ignition:LOI)を測定することにより求められる。強熱減量は、固体の重量百分率として表される。
【0043】
本発明による触媒または本発明による触媒の調製に用いられる担体の比表面積は、学会誌「The Journal of American Society」、60、309(1938年)に記載されたBrunauer-Emmett-Teller法から作成されたASTM D 3663-78規格に準拠した窒素吸着によって求められるBET比表面積を意味すると理解される。
【0044】
ジルコニウム酸化物の結晶学的構造は、X線回折(XRD)技術によって求められる。より具体的には、30.2°の2θラインは、正方晶系の結晶学的形態と関連付けられ、28.2°の2θラインは、単斜晶系の結晶学的形態と関連付けられる。正方晶系の結晶学的相の割合は、30.2°2θのラインおよび28.2°2θのラインの強度の測定によって求められ、これは、I/Ic応答係数(RIR、参照強度比、当業者に知られた方法)によって修正される。その割合は、少なくとも0.80である。結晶化度は、結晶質相に相当するシグナルについての10°~70°2θで測定される面積の、結晶質相および無定形相を含む全面積に対する比によって求められる(この計算は、当業者に知られているソフトウェアによって実行される)。本発明によると、結晶化度は、好ましくは最低55%、とりわけ60%以上、あるいはさらには65%以上である。
【0045】
硫酸塩被覆度は、ジルコニウム酸化物の表面のところのSO 2-硫酸塩イオンの密度によって求められる。これは、SO 2-硫酸塩イオンの数と、担体の比表面積との間の比であるとして計算される。
【0046】
超酸Zr3+サイト(Zr)の含有率は、担体の重量(グラム)当たりのZr3+種に相当するg因子に関連付けられる空孔の量を意味すると理解され、例えば、gxx=gyy=1.9784およびgzz=1.9288およびgxx=gyy=1.9784およびgzz=1.9060またはgxx=gyy=1.9768およびgzz=1.9589である。空孔の量は、当業者に周知である較正法により求められる。用いられる基準化合物は、2,2-ジフェニル-1-ピクリルヒドラジル(2,2-DPPH)である。その方法は、上記に詳述されている。
【0047】
本発明は、アルミニウムにより、あるいは、アルミニウムおよびイットリウムの混合物によりドープされた硫酸化ジルコニウム酸化物と、シリカ、アルミナおよびシリカ-アルミナから選ばれる、バインダとして用いられる無機耐火性酸化物と、第VIII族金属とを含む(あるいはこれらのものからなる)オキシ硫酸塩をベースとする触媒に関する。本発明者らは、本発明による触媒が、特許WO97/19752にしたがって調製され、その主な欠点が塩素の使用を伴うこと、および、工業ユニットの腐食の問題に至ることにある塩素化アルミナ基準触媒の活性および安定性と同等の活性および安定性を有することを示してきた。
【0048】
本発明の触媒の活性相は、アルミニウムにより、あるいは、アルミニウムおよびイットリウムによりドープすることにより改変された硫酸化ジルコニウム酸化物からなるオキシ硫酸塩を含む(あるいはそれらからなる)。
【0049】
硫酸化ジルコニウム酸化物は、例えば、硫酸化ジルコニウム水酸化物から調製される。Luxfer MEL Technologies、Flemington, NJにより販売されている硫酸化ジルコニウム水酸化物が、本発明のコンテクストにおいて用いられてよい。あるいは、ジルコニウム水酸化物は、濃アンモニア溶液を添加することによって、ジルコニウム塩、例えば、ZrOCl・8HO、ZrCl、ZrONHの水溶液を沈殿させることによって調製され得る。ジルコニウム水酸化物の硫酸化工程は、文献において周知なプロトコルに従って硫酸化剤、例えば、HSO、(NHSO、HS、SO、CSによって液相またはガス相中で行われ得る。言及がとりわけなされてよいのは、以下の出版物である:TICHIT, D.; Coq, B.; Armendariz, H.; Figueras, F. (1996) One-step sol-gel synthesis of sulfated-zirconia catalysts. in: Catalysis Letters, vol. 38, no. 1-2, p. 109-113. DOI: 10.1007/BF00806908, TICHIT, D.;ELALAMI, D.; Figueras, F. (1996) Preparation and anion exchange properties of zirconia. in: Applied Catalysis A: General, vol. 145, no. 1-2, p. 195-210. DOI: 10.1016/0926-860X(96)00171-8, Li, X.;Nagaoka, K.; Olindo, R.; Lercher, J. A. (2006) Synthesis of highly active sulfated zirconia by sulfation with SO 3. in: Journal of Catalysis, vol. 238, no. 1, p. 39-45. DOI: 10.1016/j.jcat.2005.11.039。
【0050】
硫酸化ジルコニウム水酸化物は、アルミニウムにより、あるいは、アルミニウムおよびイットリウムによりドープする工程の前またはその後に乾燥させられ得、その性能の改変を伴わず、揮発性の種の蒸発を可能とする温度で行われる。XRD技術では、28.2°および30.2°の2θラインは示されず、これは、単斜晶系および正方晶系のジルコニウム酸化物の特徴である(焼成後の正方晶系相のジルコニア形成)。
【0051】
アルミニウムは、本発明の触媒の別の重要な成分である。アルミニウムは、高温焼成処理の前に、硫酸化ジルコニウム水酸化物に添加され、これにより、結晶質のジルコニウム酸化物の形態を得ることが可能となる。アルミニウムは、イオンの形態Al3+で導入される。好ましくは、アルミニウム前駆体は、硝酸塩、炭酸塩、酢酸塩、塩化物、水酸化物、ヒドロキシ炭酸塩、シュウ酸塩、硫酸塩またはギ酸塩の形態、あるいは、ポリ酸または酸アルコールによって形成される錯体の形態にある。
【0052】
本発明によると、アルミナによりドープされた硫酸化ジルコニウム酸化物中のAlドーパントの含有率は、前記酸化物の重量で0.8重量%~3重量%、好ましくは前記酸化物の重量で1重量%~2.5重量%である。
【0053】
さらには、場合により、イットリウム元素が、硫酸化ジルコニウム酸化物に相対して0.5重量%~1.5重量%の範囲内で存在してよく、Al/Y比は、1超であり、かつ、好ましくはAl/Y比は、1.5未満であり、ドーピング剤Al+Yの全量は、触媒の重量で0.8重量%~3重量%または触媒の重量で1重量%~2.5重量%である。
【0054】
イットリウムは、Y3+の形態で導入される。好ましくは、イットリウム前駆体は、硝酸塩、炭酸塩、酢酸塩、塩化物、水酸化物、ヒドロキシ炭酸塩、シュウ酸塩、硫酸塩またはギ酸塩の形態、あるいは、ポリ酸または酸アルコールによって形成された錯体の形態である。
【0055】
ドーパント(アルミニウムと、場合によってはイットリウムも)は、硫酸化の前またはその後に、当業者に知られている任意の方法(乾式含浸または過剰含浸、共沈等)によって、ジルコニウム水酸化物中に組み入れられる。
【0056】
イットリウムの添加は、アルミニウムの添加と同時にまたはアルミニウムの添加の後に行われ得るが、有利には、触媒活性のために、高温焼成処理の前に行われる。
【0057】
予め得られた、ドープされた硫酸化ジルコニウム水酸化物またはドープされ硫酸化ジルコニウム酸化物の成形は、例えばビーズまたは押出物の形態に、シリカ、ベーマイト、アルミナおよびシリカ-アルミナから選ばれる耐火性無機バインダの存在中で行われる。好ましくは、選ばれるバインダは、ベーマイトである。
【0058】
硫酸化ジルコニウム酸化物を正方晶系の形態で得るために、高温熱処理が行われるべきである。この高温熱処理は、成形の前またはその後に行われ得る。成形の前にそれが行われるならば、温度は、優先的には650℃~750℃、優先的には670℃~725℃である。温度が調節されることにより、XRD特徴付けによれば、正方晶系の結晶学的形態のジルコニウム酸化物が最低80%の割合で得られる。
【0059】
硫酸化ジルコニウム酸化物中のアルミニウム元素の含有率は、0.8重量%~3重量%である。硫酸化ジルコニウム酸化物の結晶学的構造中のアルミニウムの存在は、高温焼成処理の後に、EPRによって検証される。
【0060】
硫酸化ジルコニウムの水酸化物または酸化物の比表面積は、80m2/g~400m2/g、大いに好ましくは100m2/g~300m2/gである。
【0061】
本発明によると、アルミニウムによりドープされた硫酸化ジルコニウム酸化物中の硫酸塩含有率は、前記酸化物の重量で最低5重量%、とりわけ最低7重量%、好ましくは前記酸化物の重量で7重量%~11重量%である。
【0062】
担体のZr3+サイトの含有率は、担体(a)+(b)の重量(グラム)当たりZr3+0.160~0.300mmolである。
【0063】
構造欠陥および表面欠陥の密度は、以下のように計算される:最適な取得条件(すなわち、検出器の直線性の範囲内)を定めた後、検量直線(calibration straight line)が、DPPH(2,2-ジフェニル-1-ピクリルヒドラジル)の種々の溶液を用いて生じさせられ、そのスピン濃度は知られている。これを行うために、これらの溶液は、ZrOの場合と同一の取得条件の下に記録され、結果として得られたシグナルが二重積分される。この数学的プロセスは、当業者に知られている数多くのソフトウェアプログラムによって行われ得る。次に、ジルコニウム酸化物のEPRスペクトルは、ベースラインから減算されて二重積分される。面積が、次いで検量直線上にプロットされ、これにより、サンプルの重量(グラム)当たりのスピンの数を抽出することが可能となる。この数は、次いで空孔量に変換される。なぜなら、欠陥当たりスピンの数は1つしかないからである。
【0064】
触媒の配合に有機補助剤が含まれてもよい。それは、有利には、セルロース誘導体、ポリエチレングリコール、脂肪族モノカルボン酸、アルキル化芳香族化合物、脂肪酸、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、ポリアクリラート、ポリメタクリラート、多糖類タイプのポリマー(キサンタンガム等)等から選ばれ、これらは単独であるいは混合物として用いられる。
【0065】
この有機補助剤は、当業者に知られている任意の添加剤から選ばれてもよい。硝酸(10M)が添加されて、これによりベーマイトの効果的な解膠を確実なものとすることができる。効果的な混錬と組み合わされた硝酸は、ナノスケールで凝集体を分解し、それらを分散させる効果を有する。この分散により、ドープされた硫酸化ジルコニウム水酸化物またはドープされた硫酸化ジルコニウム酸化物の形態で予め得られた材料と、ベーマイトとの間で、より均質な混合物を達成することが可能となる。触媒の調製の間に、とりわけ1回または複数回の焼成工程を伴う場合は、この補助剤は消失し、したがって最終触媒中には、補助剤として、もはや存在することはない。
【0066】
成形のために選ばれる形状は、一般的にはビーズまたは押出物であり、このような形状は、本発明による触媒の性能または特徴に影響を及ぼすことはない。ドープされた硫酸化ジルコニウム水酸化物またはドープされた硫酸化ジルコニウム酸化物は、文献中に記載された通常の手段によると、ビーズ、押出物またはタブレットの形態にある。
【0067】
好ましくは、本発明による最終触媒を製造するための出発成分/反応物質は、以下の特徴/割合を有してよい:
- 硫酸化されかつドープされたジルコニウム水酸化物または硫酸化されかつドープされたジルコニウム酸化物:1重量%~99重量%、好ましくは5重量%~99重量%、好ましくは10重量%~99重量%、大いに好ましくは10重量%~80重量%、
- ベーマイト:1重量%~99重量%、好ましくは1重量%~50重量%、好ましくは10重量%~40重量%、大いに好ましくは15重量%~25重量%、
- 硝酸(濃度範囲10M):0重量%~40重量%、好ましくは0重量%~25重量%、大いに好ましくは3重量%~15重量%、
- 少なくとも1種の有機補助剤:0重量%~20重量%、好ましくは0重量%~10重量%、大いに好ましくは0重量%~7重量%、
重量百分率は、前記材料の全重量に相対して表されており、前記材料の化合物のそれぞれの含有率の合計は、100%に等しい。
【0068】
本発明による触媒を調製するための方法は、1つの実施形態によると、好ましくは以下の2つの工程を少なくとも含む:
a) ドープされた硫酸化ジルコニウム水酸化物またはドープされた硫酸化ジルコニウム酸化物の粉末を、ベーマイトタイプのバインダの粉末および少なくとも1種の溶媒と混合する工程;混合物を得る、および
b) 工程a)の終結の際に得られた混合物を成形する工程。
【0069】
(工程a))
工程a)は、ドープされた硫酸化ジルコニウム水酸化物またはドープされた硫酸化ジルコニウム酸化物の粉末を、ベーマイトタイプのバインダの粉末および少なくとも1種の溶媒と混合することからなり、混合物を得る。
【0070】
好ましくは、ベーマイト源および場合による有機補助剤も、工程a)の間に混合される。
【0071】
好ましくは、ベーマイト源および場合による少なくとも1種の有機補助剤は、粉末の形態で、あるいは、前記溶媒の溶液中で混合されてよい。前記溶媒は、好ましくは、水である。
【0072】
少なくとも、ドープされた硫酸化ジルコニウム水酸化物またはドープされた硫酸化ジルコニウム酸化物、耐火性無機バインダ、および場合による少なくとも1種の有機補助剤(それらが粉末の形態で混合される場合)の粉末の、少なくとも1種の溶媒との混合が行われる順序は、重要でない。
【0073】
前記粉末および前記溶媒の混合は、有利には、全て一度に行われ得る。粉末および溶媒の添加は、有利には、交互に行われてもよい。
【0074】
好ましくは、少なくとも1種のドープされた硫酸化ジルコニウム水酸化物またはドープされた硫酸化ジルコニウム酸化物、耐火性の無機バインダ、および場合による少なくとも1種の有機補助剤の前記粉末は、これらのものが粉末の形態で混合される場合、まず乾式で予備混合された後に、溶媒の導入が、場合によっては、硝酸の存在中で行われる。
【0075】
前記予備混合された粉末は、次いで、有利には、前記溶媒と、場合によっては硝酸の存在中で接触させられる。前記溶媒と接触配置することにより、混合物が生じるに至り、これは、次いで、混錬される。
【0076】
好ましくは、前記混合工程a)は、バッチ式または連続式の混錬によって実行される。前記工程a)がバッチ式で実行される場合、前記工程a)は、有利には、ニーダ、好ましくはZ形アームを備えたニーダ、またはカムミキサにおいて、あるいは任意の他のタイプの知られたミキサにおいて実行される。前記混合工程a)により、粉末状成分の均質な混合物を得ることが可能となる。
【0077】
好ましくは、前記工程a)は、5~60分、好ましくは10~50分の期間にわたって実行される。ニーダのアームの回転速度は、有利には10~75rpm、好ましくは25~50rpmである。上記に列挙された出発化合物/反応物質は、工程a)において導入される。
【0078】
(工程b))
工程b)は、混合工程a)の終結の際に得られた混合物を成形することからなる。
【0079】
好ましくは、混合工程a)の終結の際に得られた混合物は、有利には、押出により成形される。工程b)は、有利には、ラム押出機、単軸押出機または二軸押出機において行われる。
【0080】
この場合、有機補助剤が、場合によっては、混合工程a)に添加されてよい。前記有機補助剤の存在により、押出による成形が促進される。前記有機補助剤は、前記記載のものであり、上記に示された割合で工程a)において導入される。
【0081】
前記調製方法が連続的に実行される場合、前記混合工程a)は、同一の設備における押出による成形の工程b)とつなげられてよい。この実施形態によると、「混錬されたペースト」とも呼ばれる混合物の押出は、例えば二軸連続式ニーダーの終端部において直接的に押し出すか、あるいは、1機または複数機のバッチ式ニーダを押出機につなげるかのいずれかによって行われ得る。ダイの幾何学的形状は、押出物にそれらの形状を与えるものであり、当業者に周知であるダイから選ばれ得る。それらは、そのため、例えば、円柱状、多葉状、溝付きまたは溝孔付きの形状のものであり得る。
【0082】
工程b)の間に、混合工程a)において添加された溶媒の量は、この工程の終結の際に、実施される変形にかかわらず、流れ落ちないがまた乾燥しすぎてもいない混合物またはペーストを得、当業者に周知である適切な圧力条件下に、用いられる押出設備に応じた押出が可能となるように調節される。
【0083】
好ましくは、押出により成形する前記工程b)が実行される際の押出圧力は、1MPa超、好ましくは3MPa~10MPaである。
【0084】
(工程c))
前記材料を調製するための方法は、工程b)の終結の際に得られた成形された材料を乾燥させる工程c)も含む。前記乾燥工程は、有利には、温度0℃~300℃、好ましくは20℃~200℃、好ましくは20℃~150℃で、1分~72時間、好ましくは30分~72時間、好ましくは1時間~48時間、より好ましくは1~24時間の期間にわたって実行される。
【0085】
(工程d))
工程c)の終わりに得られた材料(これは、したがって担体を構成することとなる)は、工程d)において、600℃~800℃、好ましくは650℃~750℃の温度で、空気中、1時間~6時間、好ましくは1時間~2時間の期間にわたって焼成され得る。
【0086】
ドープされた硫酸化ジルコニウム水酸化物またはドープされた硫酸化ジルコニウム酸化物が成形前に焼成されて、担体を得るようにする変形において、材料に対して行われる焼成は、上記に示された650-700℃の温度を下回る温度で実行される:焼成は、好ましくは、450℃~600℃または450℃~550℃の温度で、空気中、1時間~6時間、または1時間~2時間の期間にわたって実行される。
【0087】
複合生成物の焼成の温度および継続期間は、最終触媒において、正方晶系の結晶学的相のジルコニウム酸化物の割合:最低80%を得るように調節される。結晶相の割合は、XRDによってモニタリングされ、28.2°および30.2°の2θラインは、それぞれに、単斜晶系および正方晶系のジルコニウム酸化物相の特徴である。
【0088】
比表面積および硫酸塩含有率は、当業者に周知の特性評価方法(例えば、それぞれ、窒素物理吸着およびCHNS分析)にしたがってモニタリングされる。
【0089】
第VIII族元素、好ましくはPtは、文献において知られている任意の手段(乾式含浸または過剰含浸)によって添加される。最終触媒は、400℃~500℃で焼成される。第VIII族元素、好ましくはPtの含有率は、最終触媒に相対して0.15重量%~0.35重量%である。
【0090】
本発明による触媒は、4~12個の炭素原子を含有している炭化水素供給原料、好ましくは、4~7個の炭素原子を含有している炭化水素供給原料、より優先的には、4~7個の炭素原子を有しているパラフィンと5~7個の炭素原子を有しているシクロアルカンとの混合物からなる供給原料中に含有される少なくとも1種のアルカンを異性化するための方法において用いられ得る。優先的には、供給原料は、最低50重量%の鎖式パラフィンを含有する。供給原料は、オレフィン類および芳香族類を、一般に15重量%未満で含有してもよい。
【0091】
4~8個の炭素原子を有しているパラフィンと5~8個の炭素原子を有しているシクロアルカンの混合物からなる炭化水素供給原料を異性化するための方法は、蒸気相または液相中で行われ、その際の温度は、100℃~250℃、好ましくは130℃~190℃、より優先的には150℃~180℃であり、その際の圧力は、20~80MPaであり、その際の水素/(異性化されるべきパラフィン系化合物)のモル比は、0.1~10であり、その際の毎時空間速度H.S.V.は、0.05~15h-1である。
【0092】
場合によっては、触媒を乾燥させる工程は、一旦それが生じたところで、250℃を下回る温度で行われる。
【0093】
有利には、触媒の熱処理の工程は、一旦それが生じたところで、250℃を下回る温度で、還元ガスの存在中で行われ、好ましくは、還元ガスは、二原子水素(dihydrogen)である。好ましくは、水素流量は、L/時間/グラム触媒前駆体で表されて、0.01~100L/時間/グラム触媒である。
【0094】
(実施例)
(実施例1:触媒A(Pt/S-Zr-Al)の調製(比較例))
触媒Aの調製を、市販の硫酸化ジルコニウム水酸化物S-Zr(OH)(供給元Luxfer MEL Technologies、Flemington、NJ、品番XZO1247)から行った。
【0095】
担体Aの調製を、市販の硫酸化ジルコニウム水酸化物S-Zr(OH)と、酸性水溶液中に懸濁させたベーマイトとを共混錬し、次いで、これを押し出し、120℃で乾燥させ、次いで700℃で2時間にわたって焼成することにより行う。担体AにPt(NH)NOの溶液を乾式含浸させ、450℃での焼成することにより、最終触媒Aを得る。含浸溶液の容積は、細孔容積に等しい。この実施例が比較例であるのは、硫酸化されたジルコニアにアルミニウムをドープしていないためである。
【0096】
以下の表1に、触媒Aの配合および特徴を詳述する。
【0097】
【表1】
【0098】
(実施例2:触媒B(Pt/Al-SZr-Al)の調製(本発明に合致))
触媒Bの調製を、市販の硫酸化ジルコニウム水酸化物S-Zr(OH)(供給元Luxfer MEL Technologies、Flemington、NJ、品番XZO1247)から行い、硝酸アルミニウム溶液によりドープした。
【0099】
担体Bの調製を、市販の硫酸化ジルコニウム水酸化物S-Zr(OH)に硝酸アルミニウム溶液を乾式含浸させることによって行う。含浸溶液中のアルミニウムの濃度の調節を、触媒B中のアルミニウム1重量%に到達するように行う。硝酸アルミニウム溶液の容積は、細孔容積に等しい。アルミニウムによりドープされた硫酸化ジルコニウム水酸化物Al-SZr(OH)を、酸性水溶液中に懸濁させたベーマイトと共混錬し、次いで、これを押し出し、120℃で乾燥させ、次いで650℃で2時間にわたって焼成する。担体BにPt(NH)NOの溶液を乾式含浸させ、450℃で焼成することにより、本発明に合致する最終触媒Bを得る。含浸溶液の容積は、細孔容積に等しい。以下の表2に、触媒Bの配合および特徴を詳述する。
【0100】
【表2】
【0101】
(実施例3:触媒C(Pt/Al0.5-SZr(OH)-Al)の調製(本発明に合致))
触媒Cの調製を、市販の硫酸化ジルコニウム水酸化物S-Zr(OH)(供給元Luxfer MEL Technologies、Flemington、NJ、品番XZO1247)から行い、硝酸アルミニウムおよび硝酸イットリウムの溶液によりドープした。
【0102】
担体Cの調製を、市販の硫酸化ジルコニウム水酸化物S-Zr(OH)に硝酸アルミニウムおよび硝酸イットリウムの溶液を乾式含浸させることによって行う。含浸溶液中のアルミニウムおよびイットリウムの濃度の調節を、触媒C中のアルミニウム1重量%およびイットリウム0.5重量%に到達するように行う。硝酸アルミニウムおよび硝酸イットリウムの溶液の容積は、細孔容積に等しい。アルミニウムおよびイットリウムによりドープされた硫酸化ジルコニウム水酸化物Al0.5-SZr(OH)を、酸性水溶液中に懸濁させたベーマイトと共混錬し、次いで、これを押し出し、120℃で乾燥させ、次いで650℃で2時間にわたって焼成する。担体CにPt(NH)NOの溶液を乾式含浸させ、450℃で焼成することにより、本発明に合致する最終触媒Cを得る。含浸溶液の容積は、細孔容積に等しい。以下の表3に、触媒Cの配合および特徴を詳述する。
【0103】
【表3】
【0104】
(実施例4:触媒D(Pt/Al2.5-SZr-Al)の調製(本発明に合致))
触媒Dの調製を、市販の硫酸化ジルコニウム水酸化物S-Zr(OH)(供給元Luxfer MEL Technologies、Flemington、NJ、品番XZO1247)から行い、硝酸アルミニウム溶液によりドープした。
【0105】
担体Dの調製を、市販の硫酸化ジルコニウム水酸化物S-Zr(OH)と、酸性水溶液中に懸濁させたベーマイトとを共混錬し、次いで、これを押し出し、120℃で乾燥させ、硝酸アルミニウム溶液を乾式含浸させ、次いで700℃で2時間にわたって焼成することにより行う。含浸溶液中のアルミニウムの濃度を調節して、触媒D中のアルミニウム2.5重量%に到達するようにする。担体DにPt(NH)NOの溶液を乾式含浸させ、450℃で焼成することにより、最終触媒Dを得る。含浸溶液の容積は、細孔容積に等しい。以下の表4に、触媒Dの配合および特徴を詳述する。
【0106】
【表4】
【0107】
(実施例5:触媒E(Pt/Al0.5-SZr-Al)の調製(比較例))
触媒Eの調製を、市販の硫酸化ジルコニウム水酸化物S-Zr(OH)(供給元Luxfer MEL Technologies、Flemington、NJ、品番XZO1247)から行い、硝酸アルミニウム溶液によりドープした。
【0108】
担体Eの調製を、市販の硫酸化ジルコニウム水酸化物S-Zr(OH)に硝酸アルミニウム溶液を乾式含浸させることによって行う。含浸溶液中のアルミニウムの濃度の調節を、触媒E中のアルミニウムの重量で0.5重量%に到達するように行う。硝酸アルミニウム溶液の容積は、細孔容積に等しい。アルミニウムによりドープされた硫酸化ジルコニウム水酸化物Al0.5-SZr(OH)を、酸性水溶液中に懸濁させたベーマイトと共混錬し、次いで、これを押し出し、120℃で乾燥させ、次いで650℃で2時間にわたって焼成する。担体EにPt(NH)NOの溶液を乾式含浸させ、450℃で焼成することにより、本発明に合致する最終触媒Eを得る。含浸溶液の容積は、細孔容積に等しい。この実施例が比較例であるのは、不十分なアミニウム含有率をそれが有し(かつ、Zr3+サイトの含有率も少なすぎる)ためである。
【0109】
以下の表5に、触媒Eの配合および特徴を詳述する。
【0110】
【表5】
【0111】
(実施例6:触媒F(Pt/Al2.5-SZr-Al)の調製(本発明に合致))
触媒Fの調製を、市販の硫酸化ジルコニウム水酸化物S-Zr(OH)(供給元Luxfer MEL Technologies、Flemington、NJ、品番XZO1247)から行い、実施例Dのプロトコルにしたがって硝酸アルミニウム溶液によりドープした。
【0112】
担体Fの調製を、市販の硫酸化ジルコニウム水酸化物に2.5重量%のアルミニウムによりドープし、700℃で焼成したものAl-S-Zr(OH)と、酸性水溶液中に懸濁させたベーマイトとを共混錬し、次いで、これを押し出し、120℃で乾燥させ、次いで550℃で2時間にわたって焼成することにより行う。担体FにPt(NH)NOの溶液を乾式含浸させ、450℃で焼成することにより、最終触媒Fを得る。含浸溶液の容積は、細孔容積に等しい。以下の表6に、触媒Fの配合および特徴を詳述する。
【0113】
【表6】
【0114】
(実施例7:触媒G(Pt/Al-SZr-Al)の調製(比較例))
触媒Gの調製を、市販の硫酸化ジルコニウム水酸化物S-Zr(OH)(供給元Luxfer MEL Technologies、Flemington、NJ、品番XZO1247)から行い、硝酸アルミニウム溶液によりドープした。
【0115】
担体Gの調製を、市販の硫酸化ジルコニウム水酸化物S-Zr(OH)と、酸性水溶液中に懸濁させたベーマイトとを共混錬し、次いで、これを押し出し、120℃で乾燥させ、次いで700℃で2時間にわたって焼成することにより行う。次いで、担体Gに硝酸アルミニウム溶液を乾式含浸させる。含浸溶液中のアルミニウムの濃度の調節を、触媒E中のアルミニウムの1mol%に到達するように行う。担体GにPt(NH)NOの溶液を乾式含浸させ、450℃で焼成することにより、最終触媒Gを得る。含浸溶液の容積は、細孔容積に等しい。この実施例が比較例であるのは、とりわけ、あまりに低い正方晶系相のZrOのZr百分率%を有しているためである。以下の表7に、触媒Gの配合および特徴を詳述する。
【0116】
【表7】
【0117】
(実施例8:触媒H(Pt/Al2.5-SZr-Al)の調製(比較例))
触媒Hの調製を、市販の硫酸化ジルコニウム水酸化物S-Zr(OH)(供給元Luxfer MEL Technologies、Flemington、NJ、品番XZO1247)から行い、実施例Dのプロトコルにしたがって硝酸アルミニウム溶液によりドープした。
【0118】
担体Hの調製を、2.5重量%のアルミニウムによりドープした市販の硫酸化ジルコニウム水酸化物Al-S-Zr(OH)を650℃で焼成したものと、酸性水溶液中に懸濁させたベーマイトとを共混錬し、次いで、これを押し出し、120℃で乾燥させ、次いで550℃で2時間にわたって焼成することにより行う。担体HにPt(NH)NOの溶液を乾式含浸させ、次いで、450℃で焼成することにより、最終触媒Hを得る。含浸溶液の容積は、細孔容積に等しい。この実施例が比較例であるのは、Zr3+サイトの含有率と同様に、ジルコニアの結晶化度50%は、Zr3+サイトの含有率と同様に低すぎるためである。
【0119】
以下の表8に、触媒Hの配合および特徴を詳述する。
【0120】
【表8】
【0121】
(実施例9:触媒I(Pt/Al2.5-SZr-Al)の調製(比較例))
触媒Iの調製を、市販の硫酸化ジルコニウム水酸化物S-Zr(OH)(入手元Luxfer MEL Technologies、Flemington、NJ、品番XZO1247)から行い、実施例Dのプロトコルにしたがって硝酸アルミニウム溶液によりドープした。
【0122】
担体Iの調製を、2.5重量%のアルミニウムによりドープした市販の硫酸化ジルコニウム水酸化物Al-S-Zr(OH)を800℃で焼成したものと、酸性水溶液中に懸濁させたベーマイトとを共混錬し、次いで、これを押し出し、120℃で乾燥させ、次いで550℃で2時間にわたって焼成することにより行う。担体IにPt(NH)NOの溶液を乾式含浸させ、次いで、450℃で焼成することにより、最終触媒Iを得る。含浸溶液の容積は、細孔容積に等しい。
【0123】
この実施例が比較例であるのは、残留硫黄含有率が低すぎるためである。
【0124】
以下の表9に、この触媒の配合および特徴を詳述する。
【0125】
【表9】
【0126】
(実施例10:触媒J(Pt/Al2.5-SZr-Al)の調製(比較例))
触媒Jの調製を、市販の硫酸化ジルコニウム水酸化物S-Zr(OH)(入手元Luxfer MEL Technologies、Flemington、NJ、品番XZO1247)から行い、実施例Dのプロトコルにしたがって硝酸アルミニウム溶液によりドープした。
【0127】
担体Jの調製を、2.5重量%のアルミニウムによりドープした市販の硫酸化ジルコニウム水酸化物Al-S-Zr(OH)を700℃で焼成したものと、酸性水溶液中に懸濁させたベーマイトとを共混錬し、次いで、これを押し出し、120℃で乾燥させ、次いで700℃で2時間にわたって焼成することにより行う。この実施例において、したがって、担体に対して以下のことを実行する:前焼成(粉末に対して)、成形(押出)、乾燥およびそれに次ぐ後焼成。
【0128】
担体JにPt(NH)NOの溶液を乾式含浸させ、次いで、450℃で焼成することにより、最終触媒Jを得る。含浸溶液の容積は、細孔容積に等しい。
【0129】
この実施例が比較例であるのは、残留硫黄含有率が低すぎるためであり、この含有率の低さは、担体の高温焼成を2回行うこと、より具体的には、高すぎる温度で後焼成(押出および乾燥の後)を行うことに関連することが分かっている。したがって、2回の焼成の場合、2回目の焼成には、1回目の焼成よりも低い温度を選ぶことが好ましい。
【0130】
以下の表10に、この触媒の配合および特徴を詳述する。
【0131】
【表10】
【0132】
(実施例11:C5/C6/C7留分の異性化)
調製した触媒A~Jおよそ20gを、固定床反応器に装填する。触媒を、窒素の流れの下400℃で乾燥させ、次いで、供給原料を、反応器内のグローブボックスに装填する。触媒を、Hの流れの下、160℃で2時間にわたって還元する。
【0133】
40bar、温度160℃、H/炭化水素のモル比4で試験を行う。供給原料は、29.5重量%のn-ペンタン、33.9重量%のn-ヘキサン、5.6重量%のn-ヘプタン、5.5重量%のC5ナフテン、25.2重量%のC6ナフテンを含有している混合物である。質量流量は、供給原料1.3g(g触媒)-1-1である。
【0134】
以下の表11に、触媒A~Hに対応する実施例1~8の触媒活性の結果をまとめた。触媒活性を、以下のように表す:
- %iC5/C5:イソペンタン対全ペンタンの合計の重量比(iC5/C5)
- %22DMB/C6:2,2-ジメチルブタン対6個の炭素原子を有するパラフィンの合計の比(22DMB/C6);設定された操作条件での、固定床における合成供給原料の転化率において得られる。
【0135】
これらの比の増大は、オクタン価(RONまたはResearch Octane Number(リサーチ法オクタン価)としても知られる)の増大を表している。
【0136】
iC5/C5比の測定の精度は、iC5/C5=65%において±2%(絶対値)であり、iC5/C5=45%で±4%であることが留意されるべきである。
【0137】
触媒の安定性を評価するために、これら2つの比を、5時間後および160時間後、供給原料の下に比較する。触媒が安定であるならば、これら2つの比は、経時的にほとんど減少しない。
【0138】
【表11】
【0139】
これらの結果からわかるのは、5時間での%iC5/C5についての結果は、少なくとも61.5(本発明に合致する触媒D)から75.3(本発明に合致する触媒C)までである一方で、これらの同様の結果は、最大53(比較例の触媒G)であることである:本発明により、したがって、触媒の活性を最低23%向上させることが可能となる。
【0140】
5時間での%(22DMB/C6)について表される結果も同様の傾向にある。
【0141】
本発明に合致する実施例の%(iC5/C5)および%(22DMB/C6)値の顕著な安定性は、160時間で測定された値が5時間で測定された値と相対して実質的に変化していないこととともに、留意されるべきである。
【国際調査報告】