(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-04
(54)【発明の名称】大粒子径ゾルを含む接触分解触媒およびその用途
(51)【国際特許分類】
B01J 29/40 20060101AFI20240927BHJP
B01J 29/70 20060101ALI20240927BHJP
C07C 11/08 20060101ALI20240927BHJP
C07C 5/333 20060101ALI20240927BHJP
C07B 61/00 20060101ALN20240927BHJP
【FI】
B01J29/40 Z
B01J29/70 Z
C07C11/08
C07C5/333
C07B61/00 300
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024523182
(86)(22)【出願日】2022-10-14
(85)【翻訳文提出日】2024-06-17
(86)【国際出願番号】 CN2022125358
(87)【国際公開番号】W WO2023066153
(87)【国際公開日】2023-04-27
(31)【優先権主張番号】202111208517.6
(32)【優先日】2021-10-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】202111208155.0
(32)【優先日】2021-10-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】503191287
【氏名又は名称】中国石油化工股▲ふん▼有限公司
(71)【出願人】
【識別番号】523143774
【氏名又は名称】中石化石油化工科学研究院有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】于善青
(72)【発明者】
【氏名】厳加松
(72)【発明者】
【氏名】袁帥
(72)【発明者】
【氏名】張傑瀟
(72)【発明者】
【氏名】李家興
【テーマコード(参考)】
4G169
4H006
4H039
【Fターム(参考)】
4G169AA02
4G169AA08
4G169BA01A
4G169BA01B
4G169BA02A
4G169BA02B
4G169BA07A
4G169BA07B
4G169BA10A
4G169BA10B
4G169BC02B
4G169BC10A
4G169BC31A
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4G169BC42A
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4G169BC44A
4G169BC45B
4G169BC50A
4G169BC51A
4G169BC66A
4G169BD02A
4G169BD02B
4G169BD07A
4G169BD07B
4G169CC07
4G169ZA11A
4G169ZA11B
4G169ZA19A
4G169ZA19B
4H006AA02
4H006AB46
4H006AC29
4H006BA71
4H006DA10
4H006DA25
4H039CA29
4H039CC10
(57)【要約】
大粒子径ゾルを含む接触分解触媒およびその製造方法。接触分解触媒は、その総重量を基準にして、15~50重量%のβゼオライト、10~75重量%の粘土、および10~50重量%の大粒子径ゾルを含む。細孔分布は低温窒素吸着法によって測定され、全細孔容積は0.200mL/g以上である。4~50nmのパラメータを有するメソ細孔の細孔容積が全細孔容積の60%以上を占める。大粒子径ゾルは、10~40重量%のAl2O3、50~85重量%のP2O5、および0.2~10重量%のSiO2を含み、P2O5:Al2O3の質量比は(1.5~5.0):1であり、SiO2:Al2O3の質量比は(0.01~0.3):1であり、ゾルの平均粒子径分布は20~50nmに集中する。製造方法は以下の工程を含む:アルミニウム源と脱イオン水とを混合して第1のスラリーを得、第1のスラリーとリン源とを混合して第2のスラリーを得、第2のスラリーにシリカゾルを添加して第3のスラリーを得、第3のスラリーにエージングを施して大粒子径ゾルを得る。大粒子径ゾルを、粘度およびβゼオライトと均一に混合して第4のスラリーを得、第4のスラリーを乾燥し、焼成する。この触媒は接触分解プロセスに適用され、C4オレフィンの収率および選択性を大幅に向上させることができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
大粒子径ゾルの乾燥重量を基準にして、10~40重量%のAl
2O
3、50~85重量%のP
2O
5、および0.2~10重量%のSiO
2を含む大粒子径ゾルであって、P
2O
5:Al
2O
3の質量比は(1.5~5.0):1であり、SiO
2:Al
2O
3の質量比は(0.01~0.3):1であり、大粒子径ゾルの平均粒子径は20~50nmの範囲である、大粒子径ゾル。
【請求項2】
乾燥基準で、15~35重量%のAl
2O
3、55~80重量%のP
2O
5、および0.5~8.0重量%のSiO
2を含み、P
2O
5:Al
2Oの質量比が(2.0~4.5):1、SiO
2:Al
2O
3の質量比が(0.05~0.25):1である、請求項1に記載の大粒子径ゾル。
【請求項3】
3.25~45nmの範囲の平均粒子径分布を有する、請求項1に記載の大粒子径ゾル。
【請求項4】
接触分解に使用される組成物であって、その乾燥重量を基準にして、15~50重量%のβゼオライトおよび/またはZSM-5ゼオライト、10~75重量%の粘土、10~50重量%の請求項1~3のいずれか1項に記載の大粒子径ゾルを含む組成物。
【請求項5】
その乾燥重量を基準にして、20~40重量%のβゼオライト、20~65重量%の粘土、および15~45重量%の大粒子径ゾルを含む、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
前記βゼオライトは、H型βゼオライト、Na型βゼオライト、リンおよび/または金属変性βゼオライト、および金属変性βゼオライトからなる群から選択されるか、またはこれらの任意の組み合わせであり、好ましくはH型βゼオライトであり、βゼオライト中のSiO
2のAl
2O
3に対するモル比は20~50である、請求項4に記載の組成物。
【請求項7】
前記金属変性βゼオライト中の金属は、La、Ce、Pr、Zr、Ti、Fe、Cu、Mgからなる群から選択される1種以上である、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
前記ZSM-5ゼオライトは、HZSM-5ゼオライト、リンおよび/または鉄を含むZSM-5ゼオライト、リンおよび/または希土類を含むZSM-5ゼオライト、および変性ZSM-5ゼオライトからなる群から選択され、前記変性ZSM-5ゼオライトは、Zn、Cu、Mg、Zr、TiまたはB変性ZSM-5ゼオライトからなる群から選択される、請求項4に記載の組成物。
【請求項9】
前記粘土は、カオリン、レクトライト、珪藻土、モンモリロナイト、ベントナイト、およびセピオライトからなる群から選択される1種以上である、請求項4に記載の組成物。
【請求項10】
請求項4~9のいずれか1項に記載の組成物を乾燥および焼成することにより製造される接触分解触媒であって、細孔分布は低温窒素吸着法により決定され、前記接触分解触媒の全細孔容積は0.200mL/g以上であり、4~50nmの細孔径を有するメソ細孔の細孔容積が全細孔容積の60%以上を占める、接触分解触媒。
【請求項11】
細孔分布が低温窒素吸着法により決定され、接触分解触媒の全細孔容積が0.200~0.300mL/gである、請求項10に記載の接触分解触媒。
【請求項12】
接触分解触媒中の4~50nmの細孔径を有するメソ細孔の細孔容積が、全細孔容積の65~85%を占める、請求項10に記載の接触分解触媒。
【請求項13】
請求項4~9のいずれか1項に記載の組成物を使用する、請求項10~12のいずれか1項に記載の接触分解触媒の製造方法であって、以下の工程を含む方法:
(1)大粒子径ゾルを以下の工程で調製する:
(1a)アルミニウム源と脱イオン水とを混合し、室温で30分以上撹拌して、固形分5~25重量%の第1のスラリーを得る;
(1b)第1のスラリーとリン源とを混合し、60℃以下の温度で30分以上撹拌して、固形分15~50重量%の第2のスラリーを得る;
(1c)第2のスラリーにシリカゾルを添加し、混合し、60℃以下の温度で30分以上撹拌して、固形分15~50重量%の第3のスラリーを得る;
(1d)第3のスラリーを20~60℃で1~72時間静置してエージング処理を行い、大粒子径ゾルを得る;
ここで、アルミニウム源の量に対する、P
2O
5として計算されるリン源の量の質量比は、(1.5~5.0):1であり、Al
2O
3として計算されるアルミニウム源の量に対する、SiO
2として計算されるシリカゾルの量の質量比は(0.01~0.3):1である;
(2)粘土、βゼオライトおよび/またはZSM-5ゼオライト、並びに大粒子径ゾルを均一に混合して、固形分が10~50重量%の第4のスラリーを得る;第4のスラリーを噴霧成形、乾燥、および焼成して前記接触分解触媒を得、乾燥基準の重量で、前記βゼオライト、前記粘土および前記大粒子径ゾルの重量比は、(15~50):(10~75):(10~50)であるか;または乾燥基準の重量で、前記ZSM-5ゼオライト、前記粘土および前記大粒子径ゾルの重量比は、(20~50):(10~70):(10~45)である。
【請求項14】
工程(1a)において、混合および撹拌が30~60分間続く、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
工程(1b)は35~55℃の温度で実施され、混合および撹拌は30~90分間続く、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
工程(1c)は35~55℃の温度で実施され、混合および撹拌は30~90分間続く、請求項13に記載の方法。
【請求項17】
前記アルミニウム源は、擬ベーマイト、アルミナ、ベーマイト、ギブサイト、およびダイアスポアからなる群から選択される1種以上であり;前記リン源は、リン酸、亜リン酸、および次亜リン酸から選択される1種以上であり;前記粘土は、カオリン、レクトライト、珪藻土、モンモリロナイト、ベントナイト、およびセピオライトからなる群から選択される1種以上である、請求項13に記載の方法。
【請求項18】
前記βゼオライトが、H型βゼオライト、Na型βゼオライト、リン変性βゼオライトおよび金属変性βゼオライトからなる群から選択されるか、またはこれらの任意の組み合わせであり、前記βゼオライト中のSiO
2のAl
2O
3に対するモル比が20~50であり;前記ZSM-5ゼオライトは、HZSM-5ゼオライト、リンおよび/または鉄を含むZSM-5ゼオライト、リンおよび/または希土類を含むZSM-5ゼオライト、変性ZSM-5ゼオライトからなる群から選択されるか、またはこれらの任意の組み合わせであり;前記変性ZSM-5ゼオライトは、Zn、Cu、Mg、Zr、TiまたはB変性ZSM-5ゼオライトからなる群から選択される、請求項13に記載の方法。
【請求項19】
乾燥重量を基準にして、10~40重量%のAl
2O
3、50~85重量%のP
2O
5、および0.2~10重量%のSiO
2を含む大粒子径ゾルであって、P
2O
5:Al
2O
3の質量比は(1.5~5.0):1であり、SiO
2:Al
2O
3の質量比は(0.01~0.3):1であり:前記大粒子径ゾルの平均粒子径は20~50nmであり、以下の方法で調製される大粒子径ゾル:
(1a)アルミニウム源と脱イオン水とを混合し、室温で30分以上撹拌して、固形分5~25重量%の第1のスラリーを得る;
(1b)第1のスラリーとリン源とを混合し、60℃以下の温度で30分以上撹拌して、固形分15~50重量%の第2のスラリーを得る;
(1c)第2のスラリーにシリカゾルを添加し、混合し、60℃以下の温度で30分以上撹拌して、固形分15~50重量%の第3のスラリーを得る;
(1d)第3のスラリーを20~60℃で1~72時間静置し、エージング処理を行い、大粒子径ゾルを得る。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
〔技術分野〕
本発明は、精製工業の分野に属するものである。特に、本発明は、大粒子径ゾルを含む接触分解触媒およびその製造方法に関する。
【0002】
〔背景美術〕
精油からオレフィンおよび芳香族などの基礎化学原料への転換が業界の主流となっており、接触分解は原油から低炭素オレフィンを最大限に生産するための重要な技術のひとつである。統計によると、世界のC4オレフィンの70%近くは接触分解装置によるものである。接触分解装置によりC4オレフィン留分を生産する技術は、低投資および低コストという利点があるため、多くの企業が接触分解プロセスからより高いC4オレフィン収率を得ようとしている。接触分解触媒または助剤の使用は、C4オレフィン収率を向上させる最も直接的で経済的な方法である。
【0003】
C4オレフィン収率を向上させるための接触分解触媒または助剤の主な活性成分としては、Y型モレキュラーシーブ、ZSM-5モレキュラーシーブ、およびβゼオライト等が挙げられる。中でもβゼオライトは、その特殊な構造により酸触媒特性と構造選択性とを併せ持つことから、C4オレフィン収率を向上させるための触媒の主な活性成分とされている。バインダーもまた、接触分解触媒または助剤の主成分の一つであり、触媒の耐摩耗性を確保しつつ、活性成分と相乗作用して触媒の活性および水熱安定性を向上させることができる。最も一般的なバインダーには、アルミナゾル、シリカゾル、酸性化擬ベーマイトなどがある。
【0004】
US6355591は、4~20重量%のリン酸アルミニウム、1~40重量%のZSM-5、βゼオライトおよびそれらの混合物、並びに40~90重量%の粘土を含み、液化ガスの収率を高めることができる接触分解添加剤を開示している。
【0005】
CN1055105Cは、イソブチレンおよびイソペンチレンの収率を高めるための分解触媒を開示している。当該分解触媒は、リンおよび希土類を含む5員環ハイシリカゼオライト6~30重量%、USYゼオライト5~20重量%、βゼオライト1~5重量%、粘土30~60重量%、および無機酸化物15~30重量%を含む。この触媒の特徴は、接触分解プロセス条件下でイソブチレンおよびイソペンチレンの収率を向上させ、高オクタン価ガソリンを併産できることである。
【0006】
CN103785456Aは、低炭素オレフィン濃度を高めるための分解助剤を開示しており、当該分解助剤は、変性βモレキュラーシーブ、第一粘土を含むリン-アルミニウム無機バインダー、および第二粘土の有無にかかわらず他の無機バインダーおよびVIII族金属添加剤を含む;第一粘土を含むリン-アルミニウム無機バインダーは、アルミニウム成分、リン成分および第一粘土を含む;リンおよび遷移金属によって変性されたβモレキュラーシーブは、1~10重量%の含有量のリン(P2O5として計算)および0.5~10重量%の含有量の金属(金属酸化物として計算)を含む。前記分解触媒組成物は、石油炭化水素の接触分解に使用され、接触分解された液化ガスの収率を高め、液化ガス中の低炭素オレフィンの濃度、特にイソブチレンの濃度を高めることができ、一方、乾燥ガスに対するエチレンの比率を高め、ガソリンのオクタン価を高めることができる;主触媒の重油転化能力は、大きな割合の助剤を配合しても影響を受けない。
【0007】
既存の接触分解触媒または低炭素オレフィンの生産を高める触媒は、C4オレフィンの生産を高めるという目的をある程度達成することができるが、以下のような問題が残っている:C4オレフィンの収率の増加は主に液化ガスの収率の増加に依存するが、液化ガス中のC4オレフィンの濃度は大きく変化せず、C4オレフィンの選択性は低い;触媒または複数の触媒には、豊富なメソポーラスおよびマクロポーラス構造がない。このことは、接触分解プロセスで発生するC4オレフィンの迅速な拡散を助長せず、C4オレフィンなどの低炭素オレフィンの連続的な二次反応につながり、C4オレフィンの収率と選択率が低下する。
【0008】
したがって、前記の問題を解決するために、本発明の目的は、C4オレフィンの収率および選択性をさらに向上させるように、豊富なメソポーラス構造を有する接触分解触媒/助剤およびその製造方法を提供することである。
【0009】
〔発明の概要〕
一方、本発明は、(乾燥基準で)10~40重量%のAl2O3、50~85重量%のP2O5、および0.2~10重量%のSiO2を含む大粒子径ゾルを提供し、ここで、P2O5:Al2O3の質量比は(1.5~5.0):1であり、SiO2:Al2O3の質量比は(0.01~0.3):1、好ましくは(0.05~0.3):1であり;前記大粒子径ゾルの平均粒子径は20~50nmの範囲であり、例えば20~50nmの平均粒子径分布を有する大粒子径ゾルが総量の60%以上を占める。
【0010】
本発明はさらに、(接触分解触媒の乾燥重量を基準にして)15~50重量%のβゼオライトおよび/またはZSM-5ゼオライト、10~75重量%の粘土、および10~50重量%の前記大粒子径ゾルを含む、低炭素オレフィンの収率を増加させるための大粒子径ゾルを含む接触分解触媒を提供する。細孔分布は、低温窒素吸着法によって決定される。前記接触分解触媒の全細孔容積は0.200mL/g以上であり、細孔径4~50nmのメソ細孔の細孔容積が全細孔容積の60%以上を占める。
【0011】
一実施形態において、本発明による接触分解触媒は、接触分解助剤として使用することができる。
【0012】
一実施形態では、本発明による接触分解触媒は、20~40重量%のβゼオライト、20~65重量%の粘土、および15~45重量%の大粒子径ゾルを含む。
【0013】
一実施形態では、前記接触分解触媒は、20~50重量%のZSM-5ゼオライト、10~70重量%の粘土、および10~45重量%の大粒子径ゾルを含む。
【0014】
一実施形態において、本発明による接触分解触媒は、25~45重量%のZSM-5ゼオライト、20~60重量%の粘土、および15~40重量%の大粒子径ゾルを含む。
【0015】
一実施形態では、大粒子径ゾルは、15~35重量%のAl2O3、55~80重量%のP2O5、および0.5~8.0重量%のSiO2を含み、P2O5:Al2Oの質量比は(2.0~4.5):1であり、SiO2:Al2O3の質量比は(0.05~0.25):1であり、平均粒子径分布が25~45nmの大粒子径ゾルが総量の60%以上を占める。
【0016】
一実施形態では、接触分解触媒の全細孔容積は0.200~0.300mL/gである。
【0017】
一実施形態では、本発明による接触分解触媒において、4~50nmのメソ細孔の細孔容積は、全細孔容積の65~85%を占める。
【0018】
一実施形態では、βゼオライトは、H型βゼオライト、Na型βゼオライト、リン変性βゼオライトおよび金属変性βゼオライトからなる群から選択されるか、またはこれらの任意の組み合わせであり、前記βゼオライト中のSiO2のAl2O3に対するモル比は20~50である。
【0019】
一実施形態では、βゼオライトはH型βゼオライトである。
【0020】
一実施形態では、金属変性βゼオライト中の金属は、La、Ce、Pr、Zr、Ti、Fe、Cu、Mgからなる群から選択される。
【0021】
一実施形態では、ZSM-5ゼオライトは、HZSM-5ゼオライト、リンおよび/または鉄を含むZSM-5ゼオライト、リンおよび/または希土類を含むZSM-5ゼオライト、変性ZSM-5ゼオライトからなる群から選択されるか、またはこれらの任意の組み合わせである。
【0022】
一実施形態では、変性ZSM-5ゼオライトは、Zn、Cu、Mg、Zr、TiまたはB変性ZSM-5ゼオライトからなる群から選択される。
【0023】
一実施形態では、粘土は、カオリン、レクトライト、珪藻土、モンモリロナイト、ベントナイト、セピオライトからなる群から選択されるか、またはこれらの組み合わせである。
【0024】
別の態様において、本発明は、以下の工程を含む、本発明の接触分解触媒の製造方法を提供する:
(1)まず、大粒子径ゾルを以下の手順で調製する:
(1a)アルミニウム源と脱イオン水とを混合し、室温で30分以上撹拌して、固形分5~25重量%の第1のスラリーを得る;
(1b)第1のスラリーとリン源とを混合し、60℃以下の温度で30分以上撹拌して、固形分15~50重量%の第2のスラリーを得る;
(1c)第2のスラリーにシリカゾルを添加し、混合し、60℃以下の温度で30分以上撹拌して、固形分15~50重量%の第3のスラリーを得る;
(1d)第3のスラリーを20~60℃で1~72時間静置してエージング処理を行い、大粒子径ゾルを得る;
ここで、前記アルミニウム源の量に対する前記リン源(P2O5として計算)の量の質量比は、(1.5~5.0):1であり、前記アルミニウム源(Al2O3として計算)の量に対する前記シリカゾル(SiO2として計算)の量の質量比が(0.01~0.3):1である;
(2)次に、粘土、βゼオライトおよび前記大粒子径ゾルを十分かつ均一に混合し、第4のスラリーを得る、
ここで、得られる第4のスラリーの固形分は10~50重量%であり;第4のスラリーを噴霧して成形し、乾燥し、焼成して、前記接触分解触媒を得、ここで、乾燥基準で、前記βゼオライトおよび/またはZSM-5ゼオライト、前記粘土、および前記大粒子径ゾルの重量比は、(15~50):(10~75):(10~50)である。
【0025】
一実施形態では、乾燥基準で、前記ZSM-5ゼオライト、前記粘土、および前記大粒子径ゾルの重量比は、(20~50):(10~70):(10~45)である。
【0026】
一実施形態では、本発明の製造方法によれば、工程(1a)において、混合および撹拌は30~60分間続く。
【0027】
一実施形態において、本発明の製造方法によれば、工程(1b)は35~55℃の温度で実施され、混合および撹拌は30~90分間続く。
【0028】
一実施形態において、本発明の製造方法によれば、工程(1c)は35~55℃の温度で実施され、混合および撹拌は30~90分間続く。
【0029】
一実施形態では、本発明の製造方法によれば、前記アルミニウム源は、擬ベーマイト、アルミナ、ベーマイト、ギブサイト、およびダイアスポアからなる群から選択される1種以上である。
【0030】
一実施形態において、本発明の製造方法によれば、前記リン源は、リン酸、亜リン酸および次亜リン酸から選択される1種以上である。
【0031】
一実施形態において、本発明の製造方法によれば、前記粘土は、カオリン、レクトライト、珪藻土、モンモリロナイト、ベントナイト、およびセピオライトからなる群から選択される1種以上である。
【0032】
一実施形態では、本発明の製造方法によれば、前記βゼオライトは、H型βゼオライト、Na型βゼオライト、リン変性βゼオライトおよび金属変性βゼオライトからなる群から選択されるか、またはこれらの任意の組み合わせであり、前記βゼオライト中のSiO2のAl2O3に対するモル比は20~50である。
【0033】
一実施形態では、本発明の製造方法によれば、前記ZSM-5ゼオライトは、HZSM-5ゼオライト、リンおよび/または鉄を含むZSM-5ゼオライト、リンおよび/または希土類を含むZSM-5ゼオライト、変性ZSM-5ゼオライトからなる群から選択されるか、またはこれらの任意の組み合わせである。
【0034】
一実施形態では、本発明の製造方法によれば、前記変性ZSM-5ゼオライトは、Zn、Cu、Mg、Zr、TiまたはB変性ZSM-5ゼオライトからなる群から選択される。
【0035】
別の態様において、本発明は、その乾燥重量に基づいて、10~40重量%のAl2O3、50~85重量%のP2O5、および0.2~10重量%のSiO2を含む大粒子径ゾルを提供し、ここで、P2O5:Al2O3の質量比は(1.5~5.0):1であり、SiO2:Al2O3の質量比は(0.01~0.3):1であり、平均粒子径は20~50nmであり、好ましくは以下の方法で製造される:
(1a)アルミニウム源と脱イオン水とを混合し、室温で30分以上攪拌して、固形分5~25重量%の第1のスラリーを得る;
(1b)第1のスラリーとリン源とを混合し、60℃以下の温度で30分以上撹拌し、固形分15~50重量%の第2のスラリーを得る;
(1c)第2のスラリーにシリカゾルを加え、混合し、60℃以下の温度で30分以上撹拌して、固形分15~50重量%の第3のスラリーを得る;
(1d)第3のスラリーを20~60℃で1~72時間静置してエージング処理を行い、大粒子径ゾルを得る。
【0036】
前記のように、本発明の方法に従って製造された接触分解触媒は、粒径が大きく粒径が均一に分布したコロイド粒子が集積して形成されたメソポーラス構造に富む大粒子径ゾルを含む。したがって、本発明による大粒子径ゾルを含む接触分解触媒を接触分解プロセスに使用することにより、低炭素オレフィンの収率が比較的高くなる。低炭素オレフィンは、触媒の豊富なメソポーラス構造を通って迅速に拡散することができるので、連続的な二次反応を回避することができ、これにより低炭素オレフィン収率と選択性との向上が達成される。加えて、本発明の接触分解触媒に含まれる大粒子径ゾルは、モレキュラーシーブ上および粘土上に分散しており、これにより、触媒の結合性をさらに向上させ、触媒の耐摩耗性、すなわち強度を向上させることができる。
【0037】
〔図の説明〕
図1は、実施例1に従って製造した接触分解触媒A1のTEM像である。
【0038】
図2は、比較例3に従って製造した接触分解触媒DA3のTEM像である。
【0039】
図3は、実施例および比較例3に従って製造した接触分解触媒の細孔径分布のグラフである。
【0040】
図4は、実施例Z1に従って製造した接触分解触媒ZA1のTEM像である。
【0041】
図5は、実施例Z2および比較例Z3に従って製造した接触分解触媒の細孔径分布のグラフである。
【0042】
〔発明の詳細な説明〕
以下の図および実施例は、本発明を詳細に説明するために使用される。本発明の特徴および利点は、これらの説明を通してより明確になるであろう。
【0043】
さらに、以下に説明する本発明の異なる実施形態に含まれる技術的特徴は、互いに矛盾しない限り、互いに組み合わせることができる。
【0044】
1つの態様において、本発明は、低炭素オレフィンの収率を増加させるための接触分解触媒を提供する。この接触分解触媒は、接触分解触媒の乾燥重量に基づいて、15~50重量%のβゼオライトと、10~75重量%の粘土と、10~40重量%のAl2O3、50~85重量%のP2O5、および0.2~10重量%のSiO2を含む大粒子径ゾル10~50重量%と、を含み、P2O5:Al2Oの質量比は(1.5~5.0):1であり、SiO2:Al2O3の質量比は(0.01~0.3):1であり、20~50nmの範囲の平均粒子径分布を有する大粒子径ゾルが総量の60%以上を占め;細孔分布は低温窒素吸着法により決定され、接触分解触媒の全細孔容積は0.200mL/g以上であり、4~50nmのメソ細孔の細孔容積が全細孔容積の60%以上を占める。この接触分解触媒は、C4オレフィンの収率を高める上で有意な効果を有する。
【0045】
本発明による接触分解触媒は、好ましくは、20~40重量%のβゼオライト、20~65重量%の粘土、および15~45重量%の大粒子径ゾルを含む。前記大粒子径ゾルは、好ましくは15~35重量%のAl2O3、55~80重量%のP2O5、および0.5~8.0重量%のSiO2を含み、P2O5:Al2Oの質量比は好ましくは(2.0~4.5):1であり、SiO2:Al2O3の質量比は、好ましくは(0.05~0.25):1である。25~45nmの範囲の平均粒子径分布を有する大粒子径ゾルは、総量の60%以上を占めることができる。本発明による接触分解触媒の全細孔容積は、0.200~0.300mL/gに達することができ、4~50nmのメソ細孔の細孔容積が全細孔容積の65~85%を占める。
【0046】
本発明の接触分解触媒に含まれる前記βゼオライトは、H型βゼオライト、Na型βゼオライト、リン変性βゼオライトおよび金属変性βゼオライトからなる群から選択されるか、またはこれらの任意の組み合わせであり、好ましくはH型βゼオライトである。本発明の接触分解触媒に含まれる金属変性βゼオライト中の金属は、例えば、La、Ce、Pr、Zr、Ti、Fe、Cu、Mgからなる群から選択される希土類金属等とすることができる。本発明の接触分解触媒中に含まれる粘土は、例えば、カオリン、レクトライト、珪藻土、モンモリロナイト、ベントナイト、セピオライトからなる群から選択されるか、またはこれらの任意の組み合わせであり、当業者に周知の触媒製造に適した種々の粘土であり得る。
【0047】
第2の態様において、本発明は、低炭素オレフィンの収率を増加させるための接触分解触媒を提供する;接触分解触媒の乾燥重量に基づいて、接触分解触媒は、20~50重量%のZSM-5ゼオライト、10~70重量%の粘土、10~45重量%の大粒子径ゾルを含み;前記大粒子径ゾルは、乾燥重量を基準として、10~40重量%のAl2O3、50~85重量%のP2O5および0.2~10重量%のSiO2を含み、P2O5:Al2Oの質量比は(1.5~5.0):1であり、SiO2:Al2O3の質量比は(0.01~0.3):1であり;前記大粒子径ゾル中の平均粒子径が20~50nmの範囲にあるコロイド粒子の数が総量の60%以上を占め;低温窒素吸着法により決定される接触分解触媒の全細孔容積が0.200mL/g以上であり、4~50nmのメソ細孔の細孔容積が全細孔容積の60%以上を占める。この接触分解触媒は、プロピレンの収率を向上させることができる。
【0048】
本発明の第2の態様による接触分解触媒は、好ましくは、25~45重量%のZSM-5ゼオライト、20~60重量%の粘土、および15~40重量%の大粒子径ゾルを含み、前記大粒子径ゾルは、乾燥重量を基準として、15~35重量%のAl2O3、55~80重量%のP2O5、および0.5~8.0重量%のSiO2を含み、P2O5:Al2Oの質量比は、好ましくは(2.0~4.5):1であり、SiO2:Al2O3の質量比は、好ましくは(0.05~0.25):1であり、前記大型ゾル中の25~45nmの範囲の平均粒子径を有するコロイド粒子の数は、総量の60%以上を占め;前記接触分解触媒の全細孔容積は、0.200~0.300mL/gに達することができ、4~50nmのメソ細孔の細孔容積は、全細孔容積の65~85%を占めることができる。
【0049】
本発明の第2の態様による接触分解触媒に含まれるZSM-5ゼオライトは、HZSM-5ゼオライト、リンおよび/または鉄を含むZSM-5ゼオライト、リンおよび/または希土類を含むZSM-5ゼオライト、変性ZSM-5ゼオライトからなる群から選択することができるか、またはこれらの任意の組み合わせであり得、前記変性ZSM-5ゼオライトは、Zn、Cu、Mg、Zr、TiまたはB変性ZSM-5ゼオライトからなる群から選択することができる。本発明による接触分解触媒に含まれる粘土は、例えば、カオリン、レクトライト、珪藻土、モンモリロナイト、ベントナイト、セピオライトからなる群から選択されるか、またはこれらの任意の組み合わせであり、当業者に周知の触媒製造に適した種々の粘土であり得る。
【0050】
別の態様において、本発明は、以下の工程を含む、前記接触分解触媒の製造方法を提供する:
(1)まず、大粒子径ゾルを以下の手順で調製する:
(1a)アルミニウム源と脱イオン水とを混合し、室温で30分以上攪拌して、固形分5~25重量%の第1のスラリーを得る;
(1b)第1のスラリーとリン源とを混合し、60℃以下の温度で30分以上撹拌し、固形分15~50重量%の第2のスラリーを得る;
(1c)第2のスラリーにシリカゾルを加え、混合し、60℃以下の温度で30分以上撹拌して、固形分15~50重量%の第3のスラリーを得る;
(1d)第3のスラリーを20~60℃で1~72時間静置してエージング処理を行い、大粒子径ゾルを得る;
ここで、前記アルミニウム源の量に対する前記リン源(P2O5として計算)の量の質量比は、(1.5~5.0):1であり、前記アルミニウム源(Al2O3として計算)の量に対する前記シリカゾル(SiO2として計算)の量の質量比が(0.01~0.3):1である;
(2)次に、粘土、βゼオライトおよび/またはZSM-5ゼオライト、並びに大粒子径ゾルを十分かつ均一に混合して、固形分が10~50重量%の第4のスラリーを得;該第4のスラリーを噴霧して成形し、乾燥および焼成して前記接触分解触媒を得、ここで、乾燥重量に基づけば、前記βゼオライトおよび/またはZSM-5ゼオライト、前記粘土および前記大粒子径ゾルの重量比は、(15~50):(10~75):(10~50)である。
【0051】
本発明の一実施形態によれば、本発明の製造方法において、工程(1a)で使用されるアルミニウム源は、擬ベーマイト、アルミナ、硝酸アルミニウム、アルミニウムイソプロポキシド、ベーマイト、ギブサイトおよびダイアスポアからなる群から選択される1種以上である。前記アルミニウム源と脱イオン水との混合撹拌時間は、好ましくは30~60分の範囲内である。
【0052】
本発明の一実施形態によれば、本発明の製造方法において、工程(1b)で使用されるリン源は、リン酸、亜リン酸、および次亜リン酸からなる群より選択される1種以上である。好ましくは、工程(1a)で調製した第1のスラリーとリン源とを35~55℃の温度で混合撹拌し、混合撹拌時間は好ましくは30~90分である。
【0053】
本発明の一実施形態によれば、本発明の製造方法において、選択されたアルミニウム源は、選択されたリン源と相互作用して、異なる形態のリン酸アルミニウムを形成することができることが好ましい。
【0054】
本発明の一実施形態によれば、本発明の製造方法において、工程(1c)は、好ましくは35~55℃の温度で実施され、工程(1b)で調製された第2のスラリーとシリカゾルとの混合撹拌時間は、好ましくは30~90分である。
【0055】
本発明の一実施形態によれば、本発明の製造方法において、公知の理論に限定されることなく、アルミニウム源の表面のOHがリン酸中のH+を吸収して、正に帯電したコロイド粒子を形成すると考えられる。正に帯電したコロイド粒子は、20~50nmの平均粒子径を有する多数のコロイド粒子の形成につながる。シリカゾル粒子を加えることで、コロイド粒子のさらなる凝集を抑制し、コロイド構造の安定性を向上させることができる。
【0056】
本発明の一実施形態によれば、本発明の製造方法において、工程(2)で使用される粘土およびβゼオライトの選択は、本発明の接触分解触媒について上述した通りである。
【0057】
本発明の一実施形態によれば、本発明の製造方法において、工程(2)で実施される成形および乾燥とは、触媒の造粒および乾燥のことであり、当業者に周知の技術である。接触分解触媒の製造には、一般に噴霧成形および乾燥が用いられ、噴霧排ガスの温度は100~250℃に制御される。焼成処理も当業者にはよく知られており、例えばマッフル炉で行うことができる。焼成は以下の条件で行われる:温度は350~800℃、好ましくは400~650℃、焼成時間は0.5~6時間、好ましくは1~4時間。焼成は、任意の雰囲気、例えば、空気または不活性雰囲気中で実施することができ、不活性雰囲気は、窒素、ヘリウム、アルゴンなどを含む不活性ガスを含む。
【0058】
本発明による接触分解触媒を接触分解プロセスで使用する場合、接触分解触媒は、接触分解反応器に別々に添加するか、または他の接触分解触媒と混合して使用することができる。例えば、本発明による接触分解触媒は、接触分解助剤として使用することができる。本発明による接触分解触媒を他の接触分解触媒と混合して使用する場合、本発明による接触分解触媒および他の接触分解触媒の合計量を基準として、本発明による接触分解触媒の量は、好ましくは1~50重量%、より好ましくは5~40重量%である。他の接触分解触媒としては、例えば、Y型モレキュラーシーブを含む接触分解触媒を挙げることができる。
【0059】
一般に、先行技術と比較して、本発明による接触分解触媒は、本発明の大粒子径ゾルの使用により豊富なメソポーラス構造を有し、4~50nmのメソ細孔の細孔容積が全細孔容積の60%以上を占め、接触分解プロセスに使用した場合、原料分子および生成物分子の拡散能力の向上に有利であり、それにより低炭素オレフィンの収率および選択性が著しく向上する。
【0060】
具体的には、本発明による接触分解触媒の豊富なメソポーラス構造は、主に、その中に含まれる大粒子径ゾルのコロイド粒子の蓄積によって生成される細孔構造に由来する。本発明による接触分解触媒に含まれる大粒子径ゾルは、少なくとも2つの側面において機能を有する:一方では、大粒子径ゾルは、ゼオライトモレキュラーシーブおよび粘土の表面に分散し、結合性を十分に発揮して触媒の強度を高め;他方では、コロイド粒子が集積して細孔構造を形成し、本発明の大粒子径ゾルのコロイド粒子径は20~50nmの範囲に集中しているため、大粒子径粒子の集積により豊富なメソポーラス構造を形成することができる。これに対して、アルミナゾルおよび酸性化擬ベーマイトなどの従来のゾルは、一般的に粒子径が5nmより小さく、これより小さい粒子径の粒子が集積すると、豊富なメソポーラス構造を形成することができず、モレキュラーシーブの細孔構造を詰まらせてしまうことさえある。
【0061】
さらに、
図1、
図2および
図4に示すTEM像および平均粒子径分布によれば、従来技術で調製されたリン酸アルミニウムゾルの粒子径分布は不均一であり、粒子径は小さく、典型的には10nmより小さい。これに対して、本発明の方法で調製した大粒子径ゾルは、粒子径が大きく(20~50nm)、分布が均一であるため、従来のリン酸アルミニウムゾルの粒子径が小さく、分布が不均一であることに起因する触媒のメソポーラス構造が不鮮明であるという問題を解決することができる。
【0062】
本発明は、さらに以下の実施例を通して説明されるが、これは、当業者の、本発明の本質およびもたらされる有利な効果のより良い理解を助けることを意図したものである。しかしながら、実施例は、本発明の適用範囲をいかなる形でも限定するものとして解釈されるべきではない。
【0063】
〔実施例〕
以下の各実施例および各比較例で使用した原料の説明は以下の通りである:
カオリンは、蘇州カオリン公司製で、固形分は76重量%であった;
擬ベーマイトは、山東アルミニウム公司製で、固形分は62重量%であった;
シリカゾルは、固形分27重量%、pH2~3であった;
H型βゼオライトは、固形分75重量%、SiO2/Al2O3モル比=25、Na2O含有量0.15重量%であった;
H型ZSM-5ゼオライトは、SiO2/Al2O3モル比=42、Na2O含有量3.5重量%、固形分80重量%であった;
リン変性ZSM-5ゼオライトは、SiO2/Al2O3モル比=45、Na2O含有量0.12重量%、P2O5含有量2.1重量%、固形分83重量%であった;
リン酸は、北京化学工場製、分析グレード仕様、質量濃度85%であった。
【0064】
比表面積および細孔容積分析:米国Micromeritics社のASAP 2405N V1.01自動吸着装置を用いて、低温静的窒素吸着容量法により測定する。試料を1.33×10-2Pa、300℃で4時間真空脱気し、吸着媒体としてN2を用い、77.4Kでの試料の吸脱着等温線を測定する。BETの式に従って試料の比表面積を算出し、相対圧力p/p0=0.98で試料が吸着したN2の体積を求める;次に、体積を液体窒素の体積、すなわち全細孔容積に換算し;t-プロット法に従ってミクロ細孔容積を算出する;これら2つの容積の差が2~100nmのメソ細孔とマクロ細孔の容積であり、4~50nmのメソ細孔の細孔容積はピーク・スプリット・フィッティング法により求める。細孔径分布は、BJH脱離細孔径分布のデータを用いて算出する。
【0065】
コロイド粒子径の測定:JEOL(日本電子株式会社)製JEM-2000FX-II透過型電子顕微鏡を用いて分析を行う。コロイド粒子の平均粒子径は、試料のTEM画像中の50個のコロイド粒子の投影を無作為に測定し、最大円周直径の平均値をとることによって決定される。
【0066】
触媒強度:触媒を固定装置に入れ、一定の気流中で5時間送風する。最初の1時間を除き、最後の4時間の平均磨耗率を触媒の磨耗指数(単位:%/時)とする。方法および規格は:エアリフト法Q/SYLS0518-2002である。
【0067】
接触分解触媒の評価:接触分解触媒は、予め固定床エージング装置で800℃、100体積%の水蒸気で17時間エージングした後、ACE装置で評価した。反応原料油の性状は表4に示す通りであり、反応温度は500℃、触媒/油の重量比は6、WHSVは16s-1であり;転化率=ガソリン収率+液化ガス収率+乾留ガス収率+コークス収率、C4オレフィン選択率=C4オレフィン収率/転化率である。
【0068】
以下の実施例1~5は、本発明の方法に従って大粒子径ゾルを調製した例である。
【0069】
〔実施例1〕
まず、493gの擬ベーマイトを1,546gの脱イオン水と混合し、室温(25℃)で60分間撹拌して、固形分15重量%の第1のスラリーを得た。次に、85重量%のリン酸溶液727gを第1のスラリーに添加し、45℃で60分間撹拌して、固形分33重量%の第2のスラリーを得た。次に、283gのシリカゾルを第2のスラリーに添加し、45℃で45分間連続的に撹拌して、固形分33重量%の第3のスラリーを得た。最後に、第3のスラリーを45℃で48時間静置し、本発明の方法による大粒子径ゾルA1を得た。
【0070】
〔実施例2〕
まず、413gの擬ベーマイトを868gの脱イオン水と混合し、室温で90分間撹拌して、固形分15重量%の第1のスラリーを得た。次に、85重量%のリン酸溶液839gを第1のスラリーに添加し、50℃で60分間撹拌して、固形分38重量%の第2のスラリーを得た。次に、114gのシリカゾルを第2のスラリーに添加し、50℃で30分間連続的に撹拌して、固形分38重量%の第3のスラリーを得た。最後に、第3のスラリーを50℃で12時間静置し、本発明の方法に従って大粒子径ゾルA2を得た。
【0071】
〔実施例3〕
まず、363gの擬ベーマイトを1,888gの脱イオン水と混合し、室温で60分間撹拌して、固形分10重量%の第1のスラリーを得た。次に、85重量%のリン酸溶液885gを第1のスラリーに添加し、55℃で60分間撹拌して、固形分31重量%の第2のスラリーを得た。次に、83gのシリカゾルを第2のスラリーに添加し、55℃で60分間連続的に撹拌し、固形分31重量%の第3のスラリーを得た。最後に、第3のスラリーを40℃で24時間静置し、本発明の方法による大粒子径ゾルA3を得た。
【0072】
〔実施例4〕
まず、299gの擬ベーマイトを2,017gの脱イオン水と混合し、室温で45分間撹拌して、固形分8重量%の第1のスラリーを得た。次に、911gの85重量%リン酸溶液を第1のスラリーに添加し、50℃で90分間撹拌して、固形分30重量%の第2のスラリーを得た。次に、151gのシリカゾルを第2のスラリーに添加し、50℃で30分間連続的に撹拌し、固形分30重量%の第3のスラリーを得た。最後に、第3のスラリーを35℃で24時間静置し、本発明の方法に従って大粒子径ゾルA4を得た。
【0073】
〔実施例5〕
まず、268gの擬ベーマイトを3,059gの脱イオン水と混合し、室温で60分間撹拌して、固形分5重量%の第1のスラリーを得た。次に、85重量%のリン酸溶液979gを第1のスラリーに添加し、60℃で90分間撹拌して、固形分23重量%の第2のスラリーを得た。次に、6gのシリカゾルを第2のスラリーに添加し、60℃で30分間連続的に撹拌し、固形分23重量%の第3のスラリーを得た。最後に、第3のスラリーを60℃で12時間静置し、本発明の方法に従って大粒子径ゾルA5を得た。
【0074】
〔比較例1〕
シリカゾルを添加しなかったこと以外は、実施例1の方法に従って比較ゾルを調製した。
【0075】
まず、534gの擬ベーマイトを1,674gの脱イオン水と混合し、室温で60分間撹拌して、固形分15重量%の第1のスラリーを得た。次に、85重量%のリン酸溶液787gを第1のスラリーに添加し、45℃で60分間撹拌して、固形分33重量%の第2のスラリーを得た。この第2のスラリーを45℃で48時間静置し、比較ゾルDA1を得た。
【0076】
〔比較例2〕
エージング処理を行わなかったこと以外は、実施例1の方法に従って比較ゾルを調製した。
【0077】
まず、493gの擬ベーマイトを1,546gの脱イオン水と混合し、室温で60分間撹拌して、固形分15重量%の第1のスラリーを得た。次に、85重量%のリン酸溶液727gを第1のスラリーに添加し、45℃で60分間撹拌して、固形分33重量%の第2のスラリーを得た。次に、シリカゾル283gを第2のスラリーに添加し、45℃で45分間連続的に撹拌し、固形分33重量%の第3のスラリーを得た;その結果、比較ゾルDA2を得た。
【0078】
〔比較例3〕
CN1417296Aの実施例1の方法に従って比較ゾルを調製した。ここで、前記実施例1~5との違いは、シリカゾルを添加せず、エージング処理を行わなかったことである。
【0079】
擬ベーマイト534gを脱イオン水1,674gと混合し、室温で30分間攪拌した後、85重量%リン酸溶液787gを攪拌下でスラリー中に添加した。70℃で45分間攪拌した後、無色透明なリン含有アルミナゾル、すなわち比較ゾルDA3を得た。
【0080】
実施例1~5および比較例1~3で得られたゾルの物理化学的性質を表1に示す。また、実施例1および比較例3で得られたゾルのTEM像を
図1および
図2に示す。
【0081】
【0082】
表1並びに
図1および2からわかるように、比較例と比較して、本発明の製造方法に従って得られたゾルは、ゾル粒子径が大きく、ゾル粒子径の分布が均一である。このことは、メソポーラス構造を形成し、C4オレフィンの収率と選択性とを向上させるのに役立つ。
【0083】
以下の実施例6~10は、本発明による大粒子径ゾルを含む接触分解触媒の製造例である。
【0084】
〔実施例6〕
スラリー化用槽に、カオリン428gおよび脱カチオン水1,604gを添加し、60分間スラリー化し、次いで、H型βゼオライトスラリー286g(ここで、スラリーは、167gのH(水素型)βゼオライトを含み、固形分35重量%であった)を添加し、30分間撹拌し;最後に、前記実施例1で得られた大粒子径ゾル(A1)227gを添加し、15分間攪拌し、固形分19.7重量%のスラリーを得た。次いで、得られたスラリーを噴霧成形および乾燥に供し、500℃で2時間焼成して、本発明による大粒子径ゾルを含む接触分解触媒C1を得た。
【0085】
〔実施例7〕
スラリー化用槽に、カオリン349gおよび脱カチオン水976gを添加し、60分間スラリー化した後、前記実施例2で得られた大粒子径ゾル(A2)289gを添加し、60分間連続的に撹拌し、最後に、H型βゼオライトスラリー329g(ここで、スラリーは、167gのH型βゼオライトを含み、固形分38重量%であった)を添加し、30分間攪拌し、全固形分25.7重量%のスラリーを得た。次いで、得られたスラリーを噴霧成形および乾燥に供し、550℃で1.5時間焼成して、本発明による大粒子径ゾルを含む接触分解触媒C2を得た。
【0086】
〔実施例8〕
カオリン296g、前記実施例3で得られた大粒子径ゾル(A3)403g、および脱カチオン水647gを混合してスラリー化し、90分間撹拌した。次いで、前述のスラリーに、H-βゼオライトスラリー(ここで、スラリーは、200gのH-βゼオライトを含み、固形分30重量%であった)500gを添加し、60分間撹拌し、全固形分32.3重量%のスラリーを得た。次いで、得られたスラリーを噴霧成形および乾燥に供し、600℃で1.0時間焼成して、本発明による大粒子径ゾルを含む接触分解触媒C3を得た。
【0087】
〔実施例9〕
βゼオライトスラリー543g(ここで、スラリーは253gのH-βゼオライトを含み、固形分35重量%であった)と、前記実施例4で得られた大粒子径ゾル(A4)500gとを混合し、60分間撹拌した。次いで、前記スラリー中にカオリンスラリー800g(ここで、スラリーは、211gのカオリンを含み、固形分20重量%であった)を添加し、60分間連続的に攪拌し、固形分27.1重量%のスラリーを得た。次いで、得られたスラリーを噴霧成形および乾燥に供し、500℃で2.0時間焼成して、本発明による大粒子径ゾルを含む接触分解触媒C4を得た。
【0088】
〔実施例10〕
カオリン99gおよび脱カチオン水276gをスラリー化用槽に添加し、60分間スラリー化した後、H-βゼオライトスラリー643g(ここで、スラリーは300gのH-βゼオライトを含み、固形分35重量%であった)を添加し、30分間撹拌し、最後に、前記実施例5で得られた大粒子径ゾル(A5)870gを添加し、30分間攪拌して、固形分26.5重量%のスラリーを得た。次いで、得られたスラリーを噴霧成形および乾燥に供し、450℃で2時間焼成して、本発明による大粒子径ゾルを含む接触分解触媒C5を得た。
【0089】
〔比較例4~6〕
比較例4~6において、実施例6で用いた実施例1で調製した大粒子径ゾル(A1)に代えて、比較例1で調製したゾル(DA1)、比較例2で調製したゾル(DA2)、比較例3で調製したゾル(DA3)を用いたこと以外は、実施例6の方法に従って接触分解触媒を製造し、接触分解触媒DC1~DC3を得た。
【0090】
実施例6~10および比較例4~6で得られた触媒の物理化学的性質を表2に示す。また、触媒の細孔径分布を
図3に示す。
【0091】
【0092】
表2および
図3からわかるように、比較例と比較して、本発明の方法に従って製造された大粒子径ゾルを含む接触分解触媒は、全細孔容積が有意に増加し、すなわち豊富な細孔構造を有し、4~50nmのメソ細孔の割合が有意に増加し、全細孔容積の60%以上に達している。
【0093】
〔実施例11~15および比較例7~9〕
以下の実施例11~15および比較例7~9は、それぞれ本発明の大粒子径ゾルを含む触媒および比較触媒の接触分解性能およびC4オレフィン収率向上能を評価した。
【0094】
本発明の方法に従って製造した大粒子径ゾルを含む触媒C1~C5および比較例で製造した触媒DC1~DC3をそれぞれ工業用触媒(商品名HSC、Sinopec Catalyst Co.Ltd.Qilu支店提供、主な性質を表3に示す)と2:8の質量比で混合し、触媒混合物を得た。この触媒混合物を固定床エージング装置で800℃、100%水蒸気中で17時間エージングした。その後、ACE装置で評価を行った。評価に使用した原料油の性質を表4に示す。反応温度、触媒/油比、重量空間速度、および評価結果を表5に示す。ここで、転化率=ガソリン収率+液化ガス収率+ドライガス収率+コークス収率;C4オレフィン選択率=C4オレフィン収率/転化率である。
【0095】
【0096】
【0097】
【0098】
表5からわかるように、比較例と比較して、本発明の実施例で製造した大粒子径ゾルを含む接触分解触媒を炭化水素油の接触分解反応に使用した場合、接触分解反応生成物中のC4オレフィンの収率が向上し、C4オレフィン選択率が有意に向上する。
【0099】
〔実施例Z1〕
まず、483gの擬ベーマイトと1,514gの脱イオン水とを混合し、室温で60分間撹拌して、固形分15重量%の第1のスラリーを得た。次に、85重量%のリン酸溶液736gを第1のスラリーに添加し、45℃で60分間撹拌して、固形分34重量%の第2のスラリーを得た。次に、277gのシリカゾルを第2のスラリーに添加し、45℃で45分間連続的に撹拌し、固形分33重量%の第3のスラリーを得た。最後に、第3のスラリーを45℃で24時間静置し、本発明の方法に従って調製した大粒子径ゾルZA1を得た。
【0100】
〔実施例Z2〕
まず、399gの擬ベーマイトと1,250gの脱イオン水とを混合し、室温で90分間撹拌して、固形分15重量%の第1のスラリーを得た。次に、85重量%のリン酸溶液851gを第1のスラリーに添加し、50℃で60分間撹拌して、固形分39重量%の第2のスラリーを得た。次に、110gのシリカゾルを第2のスラリーに添加し、50℃で60分間連続的に撹拌し、固形分38重量%の第3のスラリーを得た。最後に、第3のスラリーを50℃で24時間静置し、本発明の方法に従って調製した大粒子径ゾルZA2を得た。
【0101】
〔実施例Z3〕
まず、擬ベーマイト352gと脱イオン水1,831gとを混合し、室温で60分間撹拌して、固形分10重量%の第1のスラリーを得た。次に、85重量%のリン酸溶液894gを第1のスラリーに添加し、55℃で60分間撹拌して、固形分31重量%の第2のスラリーを得た。次に、81gのシリカゾルを第2のスラリーに添加し、55℃で60分間連続的に撹拌し、固形分31重量%の第3のスラリーを得た。最後に、第3のスラリーを40℃で24時間静置し、本発明の方法に従って調製した大粒子径ゾルZA3を得た。
【0102】
〔実施例Z4〕
まず、擬ベーマイト291gと脱イオン水1,967gとを混合し、室温で45分間撹拌して、固形分8重量%の第1のスラリーを得た。次に、85重量%のリン酸溶液917gを第1のスラリーに添加し、50℃で90分間撹拌して、固形分30重量%の第2のスラリーを得た。次に、147gのシリカゾルを第2のスラリーに添加し、50℃で30分間連続的に撹拌し、固形分30重量%の第3のスラリーを得た。最後に、第3のスラリーを35℃で48時間静置し、本発明の方法に従って調製した大粒子径ゾルZA4を得た。
【0103】
〔実施例Z5〕
まず、擬ベーマイト277gと脱イオン水3,163gとを混合し、室温で60分間撹拌して、固形分5重量%の第1のスラリーを得た。次に、85重量%のリン酸溶液972gを第1のスラリーに添加し、60℃で90分間撹拌して、固形分23重量%の第2のスラリーを得た。次に、6gのシリカゾルを第2のスラリーに添加し、60℃で30分間連続的に撹拌し、固形分23重量%の第3のスラリーを得た。最後に、第3のスラリーを60℃で12時間静置し、本発明の方法に従って調製した大粒子径ゾルZA5を得た。
【0104】
〔比較例Z1〕
シリカゾルを添加しなかったこと以外は、実施例Z2の方法に従って比較ゾルを調製した。
【0105】
まず、擬ベーマイト411gと脱イオン水1,288gとを混合し、室温で60分間撹拌して、固形分15重量%の第1のスラリーを得た。次に、85重量%のリン酸溶液877gを第1のスラリーに添加し、45℃で60分間撹拌して、固形分39重量%の第2のスラリーを得た。この第2のスラリーを45℃で48時間静置し、比較ゾルDZA1を得た。
【0106】
〔比較例Z2〕
エージング処理を行わなかったこと以外は、実施例Z2の方法に従って比較ゾルを調製した。
【0107】
まず、擬ベーマイト386gと脱イオン水1,211gとを混合し、室温で60分間撹拌して、固形分15重量%の第1のスラリーを得た。次に、85重量%のリン酸溶液824gを第1のスラリーに添加し、45℃で60分間撹拌して、固形分39重量%の第2のスラリーを得た。次に、222gのシリカゾルを第2のスラリーに添加し、45℃で45分間連続的に撹拌し、固形分38重量%の第3のスラリーを得た。このようにして、比較ゾルDZA2を得た。
【0108】
〔比較例Z3〕
前記比較例3の調製方法を参照し、CN1417296Aの実施例1の方法に従って、比較ゾルを調製した。前記実施例Z1~Z5と異なる点は、シリカゾルを添加せず、エージング処理を行わなかったことである。
【0109】
擬ベーマイト534gと脱イオン水1,674gとを混合し、室温で30分間撹拌した。攪拌下、85重量%リン酸溶液787gをスラリー中に添加した。70℃で45分間攪拌した後、固形分33%の無色透明なリン含有アルミナゾルを得、比較ゾルDZA3とした。
【0110】
実施例Z1~Z5および比較例Z1~Z3で得られたゾルの物理化学的性質を表Z1に示す。実施例Z1および比較例Z3で得られたゾルのTEM画像をそれぞれ
図4および
図2に示す。
【0111】
【0112】
表Z1、
図4および
図2からわかるように、比較例と比較して、本発明の調製方法に従って得られたゾルは、粒子径が大きく、粒子径分布が均一である。このことは、メソポーラス構造の形成に役立ち、モレキュラーシーブの流路を塞ぎにくいため、プロピレンが速やかに拡散し、二次反応を回避することができ、それゆえ、プロピレンの収率と選択性が向上する。
【0113】
以下の実施例Z6~Z10は、本発明による大粒子径ゾルを含む接触分解触媒の製造例である。
【0114】
〔実施例Z6〕
カオリン355gおよび脱カチオン水1,145gをスラリー化用槽に添加し、60分間スラリー化した後、HZSM-5ゼオライトスラリー400g(ここで、スラリーはHZSM-5ゼオライト175gを含み、固形分35重量%であった)を添加し、30分間撹拌し、最後に、前記実施例Z1で得られた大粒子径ゾル(ZA1)273gを添加し、15分間撹拌した。得られたスラリーの固形分は23.0重量%であった。次いで、得られたスラリーを噴霧成形および乾燥に供し、500℃で2時間焼成して、本発明による大粒子径ゾルを含む接触分解触媒ZC1を得た。
【0115】
〔実施例Z7〕
カオリン237gおよび脱イオン水888gをスラリー化用槽に添加し、60分間スラリー化し、次いで、前記実施例Z2で得られた大粒子径ゾル(ZA2)368gを添加し、60分間連続的に撹拌し、最後に、HZSM-5ゼオライトスラリー474g(ここで、スラリーは、HZSM-5ゼオライト225gを含み、固形分38重量%であった)を添加し、30分間撹拌した。得られたスラリーの全固形分は25.4重量%であった。次いで、得られたスラリーを噴霧成形および乾燥に供し、550℃で1.5時間焼成して、本発明による大粒子径ゾルを含む接触分解触媒ZC2を得た。
【0116】
〔実施例Z8〕
カオリン197gと、前記実施例Z3で得られた大粒子径ゾル(ZA3)469gと、脱イオン水683とを混合し、スラリー化し、90分間撹拌した。次いで、リン変性ZSM-5ゼオライトスラリー667g(ここで、スラリーは、241gのリン変性ZSM-5ゼオライトを含み、固形分30重量%であった)を前記スラリーに添加し、60分間撹拌した。得られたスラリーの全固形分は31.4重量%であった。次いで、得られたスラリーを噴霧成形および乾燥に供し、600℃で1.0時間焼成して、本発明による大粒子径ゾルを含む接触分解触媒ZC3を得た。
【0117】
〔実施例Z9〕
リン変性ZSM-5ゼオライトスラリー643g(ここで、スラリーはリン変性ZSM-5ゼオライト271gを含み、固形分35重量%であった)、前記実施例Z4で得られた大粒子径ゾル(ZA4)583gを混合し、60分間撹拌した。次いで、カオリンスラリー500g(ここで、スラリーは、132gのカオリンを含み、固形分20重量%であった)を前記スラリーに添加し、60分間連続的に撹拌した。得られたスラリーの固形分は29.0重量%であった。次いで、得られたスラリーを噴霧成形および乾燥に供し、500℃で2時間焼成して、本発明による大粒子径ゾルを含む接触分解触媒ZC4を得た。
【0118】
〔実施例Z10〕
カオリン66gおよび脱イオン水247gをスラリー化用槽に添加し、60分間スラリー化した;次いで、ZSM-5ゼオライトスラリー714g(ここで、スラリーはZSM-5ゼオライトを313g含み、固形分35重量%であった)を添加し、30分間撹拌した;最後に、前記実施例Z5で得られた大粒子径ゾル(ZA5)870gを添加し、30分間撹拌した。得られたスラリーの固形分は26.5重量%であった。次いで、得られたスラリーを噴霧成形および乾燥に供し、450℃で2時間焼成して、本発明による大粒子径ゾルを含む接触分解触媒ZC5を得た。
【0119】
〔比較例Z4~比較例Z6〕
実施例Z7で用いた大粒子ゾル(ZA2)(実施例Z2で調製)に代えて、比較例Z4~Z6では、それぞれ比較例Z1で調製したゾル(DZA1)、比較例Z2で調製したゾル(DZA2)、および比較例Z3で調製したゾル(DZA3)を用いたこと以外は、実施例Z7の方法に従って接触分解触媒を製造した。これにより、比較接触分解触媒DZC1~DZC3を得た。
【0120】
実施例Z6~Z10および比較例Z4~Z6で得られた触媒の物理化学的性質を表Z2に示す。触媒の細孔径分布を
図5に示す。
【0121】
【0122】
表Z2および
図5からわかるように、比較例と比較して、本発明の方法に従って製造された大粒子径ゾルを含む接触分解触媒は、全細孔容積が有意に増加し、すなわち、豊富な細孔構造を有し、4~50nmのメソ細孔の割合が有意に増加し、全細孔容積の60%以上に達した。
【0123】
〔実施例Z11~Z15および比較例Z7~Z9〕
以下の実施例Z11~Z15および比較例Z7~Z9はそれぞれ、本発明による大粒子径ゾルを含む触媒および比較触媒の接触分解性能およびプロピレン収率増加能を評価した。
【0124】
本発明の方法に従って調製した大粒子径ゾルを含む触媒ZC1~ZC5および比較例で製造した触媒DZC1~DZC3を、それぞれHSC工業用触媒(Sinopec Catalyst Co. Ltd.のQilu支店提供、主な性質を表Z3に示す)と5:95の質量比で混合し、触媒混合物を得た。この触媒混合物を固定床エージング装置で800℃、100%水蒸気中で17時間エージングした。次に、ACE装置で評価を行った。評価に使用した原料油の性質を表Z4に示す。反応温度、触媒/油比および評価結果を表Z5に示す。ここで、転化率=ガソリン収率+液化ガス収率+ドライガス収率+コークス収率;プロピレン選択率=プロピレン収率/転化率である。
【0125】
【0126】
【0127】
【0128】
表Z5からわかるように、比較例と比較して、本発明の実施例で製造された大粒子径ゾルを含む接触分解触媒を炭化水素油の接触分解反応に使用した場合、接触分解反応生成物中のプロピレン収率が有意に増加し、プロピレン選択率が有意に増加する。
【0129】
本発明は、前記のような好ましい実施形態と組み合わせて例示されている。これらの実施形態は例示的かつ説明に役立つものに過ぎない。これに基づき、本出願に対して様々な置換や改良を加えることが可能であり、それらは全て本発明の保護範囲に含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0130】
【
図1】
図1は、実施例1に従って製造した接触分解触媒A1のTEM像である。
【
図2】
図2は、比較例3に従って製造した接触分解触媒DA3のTEM像である。
【
図3】
図3は、実施例および比較例3に従って製造した接触分解触媒の細孔径分布のグラフである。
【
図4】
図4は、実施例Z1に従って製造した接触分解触媒ZA1のTEM像である。
【
図5】
図5は、実施例Z2および比較例Z3に従って製造した接触分解触媒の細孔径分布のグラフである。
【国際調査報告】