(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-04
(54)【発明の名称】ハイブリッド車両用潤滑油組成物
(51)【国際特許分類】
C10M 169/04 20060101AFI20240927BHJP
C10M 129/42 20060101ALN20240927BHJP
C10M 129/34 20060101ALN20240927BHJP
C10M 129/72 20060101ALN20240927BHJP
C10M 129/16 20060101ALN20240927BHJP
C10M 145/26 20060101ALN20240927BHJP
C10N 20/04 20060101ALN20240927BHJP
C10N 30/12 20060101ALN20240927BHJP
C10N 40/25 20060101ALN20240927BHJP
【FI】
C10M169/04
C10M129/42 ZHV
C10M129/34
C10M129/72
C10M129/16
C10M145/26
C10N20:04
C10N30:12
C10N40:25
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024523567
(86)(22)【出願日】2022-10-07
(85)【翻訳文提出日】2024-05-13
(86)【国際出願番号】 IB2022059617
(87)【国際公開番号】W WO2023067429
(87)【国際公開日】2023-04-27
(32)【優先日】2021-10-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】391050525
【氏名又は名称】シェブロンジャパン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】尾之内 久成
(72)【発明者】
【氏名】田中 勲
(72)【発明者】
【氏名】服部 大輝
【テーマコード(参考)】
4H104
【Fターム(参考)】
4H104BA02A
4H104BA07A
4H104BB18C
4H104BB33C
4H104BB41C
4H104CB14C
4H104DA02A
4H104DA06A
4H104EA03C
4H104EB05
4H104EB07
4H104EB08
4H104EB09
4H104LA06
4H104PA41
(57)【要約】
潤滑油組成物は、潤滑粘度の油と、カルボン酸官能基またはエステル官能基を含有する1つ以上の化合物であって、当該化合物は、式(I)によって表され、各R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、及びR
6は、独立して、水素またはヒドロカルビル基であり、R
1、R
2、R
3、及びR
4のうちの少なくとも1つは、ヒドロカルビル基である1つ以上の化合物と、式(II)で表されるポリアルキレングリコールであって、各R
7、R
8、及びR
9は、独立して、水素またはヒドロカルビル基であり、nは、5~1000であるポリアルキレングリコールと、を含む。
【化1】
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃エンジン潤滑油組成物であって、
潤滑粘度の油と、
カルボン酸官能基またはエステル官能基を含む1つ以上の添加剤化合物であって、前記1つ以上の添加剤化合物が、
【化1】
によって表され、式中、各R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、及びR
6が、独立して、水素またはヒドロカルビル基であり、式中、R
1、R
2、R
3、及びR
4のうちの少なくとも1つが、ヒドロカルビル基である、前記1つ以上の添加剤化合物と、
【化2】
で表されるポリアルキレングリコールであって、式中、各R
7、R
8、及びR
9が、独立して、水素またはヒドロカルビルラジカル基であり、式中、nが、5~1000である、前記ポリアルキレングリコールと、を含む、前記内燃エンジン潤滑油組成物。
【請求項2】
前記1つ以上の添加剤化合物が、ジカルボン酸である、請求項1に記載の潤滑油組成物。
【請求項3】
前記1つ以上の添加剤化合物が、モノアルキルコハク酸、モノアルケニルコハク酸、モノアルキニルコハク酸である、請求項1に記載の潤滑油組成物。
【請求項4】
R
1、R
2、R
3、及びR
4のうちの1つが、約3~約20個の炭素を有するヒドロカルビル基である、請求項1に記載の潤滑油。
【請求項5】
前記ポリアルキレングリコールが、400g/mol~10000g/molの分子量を有する、請求項1に記載の潤滑油組成物。
【請求項6】
極性改質剤、分散剤、洗剤、耐摩耗剤、抗酸化剤、摩擦改質剤、粘度改質剤、または流動点降下剤を更に含む、請求項1に記載の潤滑油組成物。
【請求項7】
前記極性改質剤が、ジエステルである、請求項6に記載の潤滑油組成物。
【請求項8】
前記ジエステルが、ジ(1-エチルプロピル)アジペート、ジ(3-メチルブチル)アジペート、ジ(1,3-メチルブチル)アジペート、ジ(2-エチルヘキシル)アジペート、ジ(イソノニル)アジペート、ジ(イソデシル)アジペート、ジ(ウンデシル)アジペート、ジ(トリデシル)アジペート、ジ(イソテトラデシル)アジペート、ジ(2,2,4-トリメチルペンチル)アジペート、ジ[混合(2-エチルヘキシル、イソノニル)]アジペート、ジ(1-エチルプロピル)アゼレート、ジ(3-メチルブチル)アゼレート、ジ(2-エチルブチル)アゼレート、ジ(2-エチルヘキシル)アゼレート、ジ(イソオクチル)アゼレート、ジ(イソノニル)アゼレート、ジ(イソデシル)アゼレート、ジ(トリデシル)アゼレート、ジ[混合(2-エチルヘキシル、イソノニル)]アゼレート、ジ[混合(2-エチルヘキシル、デシル)アゼレート、ジ[混合(2-エチルヘキシル、イソデシル)]アゼレート、ジ[混合(2-エチルヘキシル、2-プロピルヘプチル)]アゼレート、ジ(n-ブチル)セバケート、ジ(イソブチル)セバケート、ジ(1-エチルプロピル)セバケート、ジ(1,3-メチルブチル)セバケート、ジ(2-メチルブチル)セバケート、ジ(2-エチルヘキシル)セバケート、ジ[2-(2-エチルブトキシ)エチル]セバケート、ジ(2,2,4-トリメチルベンジル)セバケート、ジ(イソノニル)セバケート、ジ(イソデシル)セバケート、ジ(イソウンデシル)セバケート、ジ(トリデシル)セバケート、ジ(イソテトラデシル)セバケート、ジ[混合(2-エチルヘキシル、イソノニル)]セバケート、ジ(2-エチルヘキシル)グルタレート、ジ(イソデシル)グルタレート、またはジ(イソテトラデシル)グルタレートである、請求項7に記載の潤滑油組成物。
【請求項9】
エンジンの性能を改善する方法であって、
潤滑油組成物で前記エンジンを潤滑することであって、
潤滑粘度の油と、
カルボン酸官能基またはエステル官能基を含む1つ以上の添加剤化合物であって、前記1つ以上の添加剤化合物が、
【化3】
によって表され、式中、各R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、及びR
6が、独立して、水素またはヒドロカルビル基であり、式中、R
1、R
2、R
3、及びR
4のうちの少なくとも1つが、ヒドロカルビル基である、前記1つ以上の添加剤化合物と、
【化4】
で表されるポリアルキレングリコールであって、式中、各R
7、R
8、及びR
9が、独立して、水素またはヒドロカルビル基であり、式中、nが、5~1000である、前記ポリアルキレングリコールと、を含む、前記潤滑油組成物で前記エンジンを潤滑することを含む、前記方法。
【請求項10】
前記エンジンが、ハイブリッド車両からのものである、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記1つ以上の添加剤化合物が、ジカルボン酸である、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記1つ以上の添加剤化合物が、モノアルキルコハク酸、モノアルケニルコハク酸、モノアルキニルコハク酸である、請求項9に記載の方法。
【請求項13】
R
1、R
2、R
3、及びR
4のうちの1つが、約3~約20個の炭素を有するヒドロカルビル基である、請求項9に記載の方法。
【請求項14】
前記ポリアルキレングリコールが、400g/mol~10000g/molの分子量を有する、請求項9に記載の方法。
【請求項15】
前記潤滑油組成物が、極性改質剤、分散剤、洗剤、耐摩耗剤、抗酸化剤、摩擦改質剤、粘度改質剤、または流動点降下剤を更に含む、請求項9に記載の方法。
【請求項16】
前記極性改質剤が、ジエステルである、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記ジエステルが、ジ(1-エチルプロピル)アジペート、ジ(3-メチルブチル)アジペート、ジ(1,3-メチルブチル)アジペート、ジ(2-エチルヘキシル)アジペート、ジ(イソノニル)アジペート、ジ(イソデシル)アジペート、ジ(ウンデシル)アジペート、ジ(トリデシル)アジペート、ジ(イソテトラデシル)アジペート、ジ(2,2,4-トリメチルペンチル)アジペート、ジ[混合(2-エチルヘキシル、イソノニル)]アジペート、ジ(1-エチルプロピル)アゼレート、ジ(3-メチルブチル)アゼレート、ジ(2-エチルブチル)アゼレート、ジ(2-エチルヘキシル)アゼレート、ジ(イソオクチル)アゼレート、ジ(イソノニル)アゼレート、ジ(イソデシル)アゼレート、ジ(トリデシル)アゼレート、ジ[混合(2ーエチルヘキシル、イソノニル)]アゼレート、ジ[混合(2-エチルヘキシル、デシル)アゼレート、ジ[混合(2-エチルヘキシル、イソデシル)]アゼレート、ジ[混合(2-エチルヘキシル、2-プロピルヘプチル)]アゼレート、ジ(nーブチル)セバケート、ジ(イソブチル)セバケート、ジ(1-エチルプロピル)セバケート、ジ(1,3ーメチルブチル)セバケート、ジ(2-メチルブチル)セバケート、ジ(2-エチルヘキシル)セバケート、ジ[2-(2-エチルブトキシ)エチル]セバケート、ジ(2,2,4-トリメチルベンジル)セバケート、ジ(イソノニル)セバケート、ジ(イソデシル)セバケート、ジ(イソウンデシル)セバケート、ジ(トリデシル)セバケート、ジ(イソテトラデシル)セバケート、ジ[混合(2-エチルヘキシル、イソノニル)]セバケート、ジ(2-エチルヘキシル)グルタレート、ジ(イソデシル)グルタレート、またはジ(イソテトラデシル)グルタレートである、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
ハイブリッド車両内のエンジンの錆性能を改善する方法であって、
潤滑油組成物で前記エンジンを潤滑することであって、
潤滑粘度の油と、
カルボン酸官能基またはエステル官能基を含む1つ以上の添加剤化合物であって、前記1つ以上の添加剤化合物が、
【化5】
によって表され、式中、各R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、及びR
6が、独立して、水素またはヒドロカルビル基であり、式中、R
1、R
2、R
3、及びR
4のうちの少なくとも1つが、ヒドロカルビル基である、前記1つ以上の添加剤化合物と、
【化6】
で表されるポリアルキレングリコールであって、式中、各R
7、R
8、及びR
9が、独立して、水素またはヒドロカルビル基であり、式中、nが、5~1000である、前記ポリアルキレングリコールと、を含む、前記潤滑油組成物で前記エンジンを潤滑することを含む、前記方法。
【請求項19】
前記1つ以上の添加剤化合物が、ジカルボン酸である、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記1つ以上の添加剤化合物が、モノアルキルコハク酸、モノアルケニルコハク酸、モノアルキニルコハク酸である、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
R
1、R
2、R
3、及びR
4のうちの1つが、約3~約20個の炭素を有するヒドロカルビル基である、請求項18に記載の方法。
【請求項22】
前記ポリアルキレングリコールが、400g/mol~10000g/molの分子量を有する、請求項18に記載の方法。
【請求項23】
前記潤滑油組成物が、極性改質剤、分散剤、洗剤、耐摩耗剤、抗酸化剤、摩擦改質剤、粘度改質剤、または流動点降下剤を更に含む、請求項18に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、潤滑油組成物及び同組成物を使用する方法に関する。より具体的には、潤滑油組成物は、ハイブリッド車両において防錆を提供する。
【背景技術】
【0002】
現代の潤滑油は、多くの場合、元の機器製造元によって設定される厳格な仕様に配合される。これは、多くの場合、慎重に選択された潤滑剤添加剤を潤滑粘度の基油とブレンドする必要がある。潤滑油組成物中に見出される潤滑剤添加剤のクラスまたはタイプとしては、例えば、分散剤、洗剤、抗酸化剤、摩耗阻害剤、防錆剤、腐食阻害剤、発泡阻害剤、及び/または摩擦改質剤が挙げられる。具体的な用途または使用(例えば、ハイブリッド車両)は、典型的には、潤滑油組成物に入る一組の添加剤を管理する。
【0003】
ハイブリッド車両は、内燃エンジン及び電動モータという2つの明確に異なるタイプの動機技術に依存する。内燃エンジンは、主に車両を高速で駆動する。電気モータは、車両を低速で駆動し、また追加の電力が必要なときに内燃エンジンを支援することもできる。ハイブリッド車両は、車両の速度が増加するにつれて、エンジン及びモータからの電力をバランスよく分配することが重要である。
【0004】
ハイブリッド車両は、典型的には、車両が停止したときにエンジンが停止し、車両がモータまたはブレーキによってのみ駆動されるときにエンジン燃料システムが停止するスタート停止システムを特徴とする。その結果、エンジンが水及び燃料を十分に蒸発させることができないため、油中の水及び燃料の蓄積が問題となる。これは、エンジン性能に悪影響を及ぼし、エンジン部品の腐食/錆につながる不安定なエマルジョンの形成をもたらす。
【0005】
ハイブリッド車両と従来の自動車との間の差は、従来のエンジン油がハイブリッド車両における使用に最適化されていないほど著しい。その結果、ハイブリッド車両用に具体的に設計された潤滑油組成物が必要とされる。より具体的には、ハイブリッド車両におけるエンジン部品の腐食/防錆を改善する潤滑油組成物が必要とされている。
【発明の概要】
【0006】
一態様では、潤滑粘度の油と、カルボン酸官能基またはエステル官能基を含む1つ以上の添加剤化合物であって、1つ以上の添加剤化合物が、
【化1】
で表され、式中、各R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、及びR
6は、独立して、水素またはヒドロカルビル基であり、R
1、R
2、R
3、及びR
4のうちの少なくとも1つは、ヒドロカルビル基である、1つ以上の添加剤化合物と、
【化2】
によって表されるポリアルキレングリコールであって、式中、各R
7、R
8、及びR
9は、独立して、水素またはヒドロカルビルラジカル基であり、式中、nは、5~1000である、ポリアルキレングリコールと、を含む、内燃エンジン潤滑油組成物が提供される。
【0007】
別の態様では、エンジンの性能を改善させる方法が提供され、方法は、潤滑粘度の油と、カルボン酸官能基またはエステル官能基を含む1つ以上の添加剤化合物であって、1つ以上の添加剤化合物が、
【化3】
で表され、式中、各R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、及びR
6は、独立して、水素またはヒドロカルビル基であり、R
1、R
2、R
3、及びR
4のうちの少なくとも1つは、ヒドロカルビル基である、1つ以上の添加剤化合物と、
【化4】
で表されるポリアルキレングリコールであって、式中、各R
7、R
8、及びR
9は、独立して、水素またはヒドロカルビル基であり、式中、nは、5~1000である、ポリアルキレングリコールと、を含む、潤滑油組成物でエンジンを潤滑することを含む。
【0008】
更なる態様では、ハイブリッド車両におけるエンジンの錆性能を改善させる方法が提供され、方法は、潤滑粘度の油と、カルボン酸官能基またはエステル官能基を含む1つ以上の添加剤化合物であって、1つ以上の添加剤化合物が、
【化5】
で表され、式中、各R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、及びR
6は、独立して、水素またはヒドロカルビル基であり、R
1、R
2、R
3、及びR
4のうちの少なくとも1つは、ヒドロカルビル基である、1つ以上の添加剤化合物と、
【化6】
で表されるポリアルキレングリコールであって、式中、各R
7、R
8、及びR
9は、独立して、水素またはヒドロカルビル基であり、式中、nは、5~1000である、ポリアルキレングリコールと、を含む潤滑油組成物でエンジンを潤滑することを含む。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本開示は様々な修正及び代替形態を受け入れるが、その具体的な実施形態が本明細書において詳細に説明される。しかしながら、本明細書における具体的な実施形態の説明は、本開示を開示される特定の形態に限定することを意図するものではなく、逆に、本意図は、添付の特許請求の範囲によって定義されるような本開示の趣旨及び範囲内にある全ての修正、等価物、及び代替物を対象にすることであることを理解されたい。
【0010】
本明細書に開示される主題の理解を容易にするために、本明細書において使用されるいくつかの用語、略語または他の省略表現が以下に定義される。定義されていない任意の用語、略語、または省略表現は、本出願の提出と同時に当業者によって使用される通常の意味を有するものと理解される。
【0011】
本明細書において使用される際、以下の用語は、反して明示的に記載されない限り、以下の意味を有する。
【0012】
「主要量」とは、組成物の50重量%を超えることを意味する。
【0013】
「少量」とは、記載された添加剤に関して、及び組成物中に存在する全ての添加剤の総質量に関して表現され、添加剤または添加剤の有効成分として考慮される、組成物の50重量%未満を意味する。
【0014】
「有効成分」または「活性成分」または「無油」は、希釈剤または溶媒ではない添加剤材料を指す。
【0015】
「油溶性」という用語は、所望のレベルの活性または性能を付与するのに必要な所与の添加剤の量を、潤滑化粘度を有する油に溶解、分散、または懸濁させることにより組み込むことができることを意味する。多くの場合、これは、少なくとも0.001重量%の添加剤を、潤滑油組成物内に組み込むことができることを意味する。「燃料可溶性」という用語は、燃料に溶解、分散、または懸濁した添加剤に対する類似表現である。
【0016】
「エンジン」または「燃焼エンジン」は、燃焼室内での燃料の燃焼が行われる熱エンジンである。「内燃エンジン」は、燃料の燃焼が制限された空間(「燃焼室」)内で行われる熱エンジンである。「火花点火エンジン」は、多くの場合点火プラグからの火花によって燃焼が点火される熱エンジンである。これは、燃料の注入とともに圧縮から発生する熱が、外部火花なしに燃焼を開始するのに十分である「圧縮点火エンジン」、典型的には、ディーゼルエンジンとは対照的である。
【0017】
「ヒドロカルビル」という用語は、飽和及び不飽和炭化水素を含む炭化水素に由来する化学基または部分を指す。ヒドロカルビル基の例としては、アルケニル、アルキル、ポリアルケニル、ポリアルキル、フェニルなどが挙げられる。
【0018】
特に明記しない限り、報告された全てのパーセンテージは、活性成分に基づいて(すなわち、担体または希釈油に関係なく)重量%である。
【0019】
本明細書において言及される全てのASTM基準は、本出願の出願日の時点での最新版である。
【0020】
本発明は、特に腐食及び/または摩耗の影響を受けやすいエンジン(例えば、ハイブリッド車両のエンジン)に有用な潤滑油組成物を提供する。一実施形態では、本発明は、以下:(a)主要量の潤滑粘度の油、(b)カルボン酸官能基またはエステル官能基を含有する1つ以上の添加剤化合物、及び(c)ポリプロピレングリコールを含む潤滑油組成物を提供する。任意選択的に、本発明は、極性改質剤を更に含む。
【0021】
潤滑油添加剤
本発明の潤滑油組成物は、本明細書において説明された潤滑油添加剤を含む。
【0022】
本発明の潤滑油添加剤組成物は、カルボン酸官能基またはエステル官能基を含む添加剤化合物を含み、化合物は、式(I)で表され、
【化7】
式中、各R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、及びR
6は、独立して、水素またはヒドロカルビル基であり、式中、R
1、R
2、R
3、及びR
4のうちの少なくとも1つは、ヒドロカルビル基である。いくつかの実施形態では、本発明の化合物は、ジカルボン酸であり、式中、R
5は、水素であり、R
6は、水素である。
【0023】
いくつかの実施形態では、ヒドロカルビル基は、アルキル基またはアルケニル基であり得る。アルキル基は、直鎖、分岐鎖、環状、あるいは環状、直鎖、及び/または分岐鎖の組み合わせであり得る飽和ヒドロカルビル基を指す。アルケニル基は、直鎖、分岐鎖、環状、あるいは環状、直鎖、及び/または分岐鎖の組み合わせであり得る不飽和ヒドロカルビル基を指す。
【0024】
いくつかの実施形態では、R1、R2、R3、またはR4のヒドロカルビル基は、独立して、1~400個の炭素、例えば、1~300個の炭素原子、1~200個の炭素原子、1~100個の炭素原子、1~50個の炭素原子、1~30個の炭素原子、または1~25個の炭素原子を有する部分である。R1、R2、R3、またはR4の好適な例としては、脂肪酸部分(すなわち、脂肪酸に由来する部分)及びイソ脂肪酸部分(例えば、8-メチルオクタデカン酸に由来する部分)が挙げられる。一実施形態では、R1、R2、R3、及びR4のうちの少なくとも1つは、ドデセニル基である。一実施形態では、R1、R2、R3、及びR4のうちの少なくとも1つは、オクタデセニル基である。一実施形態では、R1、R2、R3、及びR4のうちの少なくとも1つは、テトラプロペニル基である。
【0025】
いくつかの実施形態では、R5またはR6のヒドロカルビル基は、独立して、1~50個の炭素原子、例えば、1~40個の炭素原子、1~30個の炭素原子、1~25個の炭素原子、または1~20個の炭素原子を有する部分である。
【0026】
本発明の潤滑油添加剤の例としては、テトラプロペニルコハク酸、ペンチルコハク酸、オクチルコハク酸、エチルオクチルコハク酸などが挙げられる。
【0027】
いくつかの実施形態では、本発明の潤滑油組成物は、式(I)によって説明される両方の添加剤を含む。
【0028】
概して、カルボン酸またはエステル官能基を含有する1つ以上の化合物は、潤滑油組成物の総重量に基づいて、約0.15~約5.0重量%の範囲の量で本開示の潤滑油組成物中に存在し得る。
【0029】
一実施形態では、1つ以上の添加剤化合物は、潤滑油組成物の総重量に基づいて、約0.15~約4.0重量%の範囲の量で本開示の潤滑油組成物中に存在し得る。一実施形態では、1つ以上の添加剤化合物は、潤滑油組成物の総重量に基づいて、約0.15~約3.0重量%の範囲の量で本開示の潤滑油組成物中に存在し得る。別の実施形態では、1つ以上の添加剤化合物は、潤滑油組成物の総重量に基づいて、約0.15~約2.0重量%の範囲の量で本開示の潤滑油組成物中に存在し得る。
【0030】
ポリアルキレングリコール
本発明の潤滑油組成物は、ポリアルキレングリコールを含む。一実施形態によれば、ポリアルキレングリコールは、乳化剤として作用し得、式(II)で表される。
【化8】
式中、R
7、R
8、及びR
9は、各々、独立して、水素ラジカルまたはヒドロカルビルラジカルであり、nは、5~1000、例えば、5~500、7~500、5~100、5~75、7~100、7~75などである。いくつかの実施形態では、nは、7~900、20~800、50~750、75~500、100~400、または200~300である。
【0031】
いくつかの実施形態では、ポリプロピレングリコールは、約400g/mol~約4000g/mol、例えば、約500g/mol~3500g/mol、750g/mol~3000g/mol、1000g/mol~2500g/mol、1250g/mol~2250g/mol、1500g/mol~2500g/molなどの分子量(MW)を有する。
【0032】
ポリプロピレンは、潤滑油組成物の総重量に基づいて、約0.15~約5.0重量%の範囲の量で存在し得る。
【0033】
一実施形態では、ポリプロピレングリコールは、潤滑油組成物の総重量に基づいて、約0.15~約4.0重量%の範囲の量で本開示の潤滑油組成物中に存在し得る。一実施形態では、ポリプロピレングリコールは、潤滑油組成物の総重量に基づいて、約0.15~約3.0重量%の範囲の量で本開示の潤滑油組成物中に存在し得る。別の実施形態では、ポリプロピレングリコールは、潤滑油組成物の総重量に基づいて、約0.15~約2.0重量%の範囲の量で本開示の潤滑油組成物中に存在し得る。
【0034】
ジエステル化合物
いくつかの実施形態では、本発明は、ジエステル化合物を含み得る。この任意選択的なジエステルは、極性改質剤として作用することができる。
【0035】
一実施形態では、これらの脂肪族二塩基酸及びアルコールから得ることができるジエステルとしては、例えば、ジ(1-エチルプロピル)アジペート、ジ(3-メチルブチル)アジペート、ジ(1,3-メチルブチル)アジペート、ジ(2ーエチルヘキシル)アジペート、ジ(イソノニル)アジペート、ジ(イソデシル)アジペート、ジ(ウンデシル)アジペート、ジ(トリデシル)アジペート、ジ(イソテトラデシル)アジペート、ジ(2,2,4ートリメチルペンチル)アジペート、ジ[混合(2ーエチルヘキシル、イソノニル)]アジペート、ジ(1ーエチルプロピル)アゼレート、ジ(3ーメチルブチル)アゼレート、ジ(2ーエチルブチル)アゼレート、ジ(2ーエチルヘキシル)アゼレート、ジ(イソオクチル)アゼレート、ジ(イソノニル)アゼレート、ジ(イソデシル)アゼレート、ジ(トリデシル)アゼレート、ジ[混合(2ーエチルヘキシル、イソノニル)]アゼレート、ジ[混合(2ーエチルヘキシル、デシル)アゼレート、ジ[混合(2ーエチルヘキシル、イソデシル)]アゼレート、ジ[混合(2ーエチルヘキシル、2ープロピルヘプチル)]アゼレート、ジ(nーブチル)セバケート、ジ(イソブチル)セバケート、ジ(1ーエチルプロピル)セバケート、ジ(1,3ーメチルブチル)セバケート、ジ(2ーメチルブチル)セバケート、ジ(2ーエチルヘキシル)セバケート、ジ[2ー(2ーエチルブトキシ)エチル]セバケート、ジ(2,2,4ートリメチルベンジル)セバケート、ジ(イソノニル)セバケート、ジ(イソデシル)セバケート、ジ(イソウンデシル)セバケート、ジ(トリデシル)セバケート、ジ(イソテトラデシル)セバケート、ジ[混合(2ーエチルヘキシル、イソノニル)]セバケート、ジ(2ーエチルヘキシル)グルタレート、ジ(イソデシル)グルタレート、及びジ(イソテトラデシル)グルタレートが挙げられる。
【0036】
ジエステルは、潤滑油組成物の総重量に基づいて、0.1重量%超の量で存在し得る。
【0037】
一実施形態では、ジエステルは、潤滑油組成物の総重量に基づいて、約0.15~約4.0重量%の範囲の量で本開示の潤滑油組成物中に存在し得る。
【0038】
潤滑油組成物
潤滑粘度の油材(時として「基材」または「基油」と称される)は、潤滑油の主要な液体成分であり、これに添加剤及び場合によっては他の油材を配合して、例えば最終的な潤滑油(または潤滑油組成物)を製造する。濃縮物を作製するため、及びそこから潤滑油組成物を作製するために有用な基油は、天然(植物性、動物性、または鉱物性)及び合成潤滑油ならびにそれらの混合物から選択され得る。
【0039】
本開示における基材及び基油の定義は、American Petroleum Institute(API)Publication 1509 Annex E(“API Base Oil Interchangeability Guidelines for Passenger Car Motor Oils and Diesel Engine Oils、”December 2016)において見出されるものと同じである。グループIのベースストックは、表E-1に定める試験方法を使用して、90%未満の飽和分及び/または0.03%を超える硫黄を含有し、80以上120未満の粘度指数を有する。グループIIのベースストックは、表E-1に定める試験方法を使用して、90%以上の飽和硫黄及び0.03%以下の硫黄を含有し、80以上120未満の粘度指数を有する。グループIIIのベースストックは、表E-1に定める試験方法を使用して、90%以上の飽和分及び0.03%以下の硫黄を含有し、120以上の粘度指数を有する。グループIVのベースストックは、ポリアルファオレフィン(PAO)である。グループVのベースストックには、グループI、II、III、またはIVに含まれない全ての他のベースストックが含まれる。
【0040】
天然油は、動物油、植物油(例えば、ひまし油及びラード油)、ならびに鉱物油を含む。好ましい熱酸化安定性を有する動物油及び植物油を使用することができる。天然油のうち、鉱油が好ましい。鉱物油は、例えば、パラフィン系か、ナフテン系か、パラフィン系とナフテン系との混合系か、など、それらの粗製品源に応じて大きく異なる。石炭または頁岩由来の油も有用である。天然油はまた、それらの生成及び精製に使用される方法、例えば、それらの蒸留範囲、ならびにそれらが直留であるか、分解されているか、水素精製されているか、または溶媒で抽出されているかによっても異なる。
【0041】
合成油は炭化水素油を含む。炭化水素油としては、重合及び共重合化オレフィン(例えば、ポリブチレン、ポリプロピレン、プロピレンイソブチレンコポリマー、エチレン-オレフィンコポリマー及びエチレン-アルファオレフィンコポリマー)などの油が挙げられる。ポリα-オレフィン(PAO)油基材が、一般的に使用される合成炭化水素油材である。一例として、C8-C14オレフィン、例えばC8、C10、C12、C14オレフィン、またはそれらの混合物から誘導されるPAOが利用される場合がある。
【0042】
基油として使用するための他の有用な流体には、高性能特性を提供するために処理された(好ましくは触媒的に)、または合成された非従来型(non-conventional)、または異色の(unconventional)基材が含まれる。
【0043】
非従来型または異色の基材/基油には、1つ以上のガス液化(Gas-to-Liquids)(GTL)材料に由来する基材(複数可)の1つ以上の混合物、ならびに天然ワックスまたはワックス状原料由来の異性体/イソ脱ろう体基材(複数可)、スラックワックスなどの鉱物油及び/または非鉱物油のワックス状原料、天然ワックス、及びガスオイルなどのワックス状基材、ワックス状燃料水素添加分解装置の底留分、ワックス状ラフィネート、水素添加分解物、熱分解物、または他の鉱物、鉱物油、または石炭液化物もしくはシェールオイルから得られるワックス状材料のような非石油由来ワックス状材料さえも、及びそのような基材の混合物が含まれる。
【0044】
本開示の潤滑油組成物において使用するための基油は、APIグループI、グループII、グループIII、グループIV、及びグループVの油材、ならびにそれらの混合物に対応する様々な油材のいずれかであり、好ましくはAPIグループII、グループIII、グループIV、及びグループVの油材、ならびにそれらの混合物であり、より好ましくは、その卓越した揮発性、安定性、粘度及び清浄性の特徴により、グループIIIからグループVの基油である。
【0045】
典型的には、基油は、100℃で、2.5~20mm2/s(例えば、3~12mm2/s、4~10mm2/s、または4.5~8mm2/s)の範囲内にある動粘度(ASTM D445)を有する。
【0046】
本潤滑油組成物はまた、補助機能を付与するための従来の潤滑剤添加剤を含有して、これらの添加剤が分散または溶解される完成した潤滑油組成物を得られ得る。例えば、潤滑油組成物は、抗酸化剤、無灰分散剤、対摩耗剤、金属洗剤などの洗剤、防錆剤、脱臭剤、解乳化剤、摩擦改質剤、金属非活性化剤、注入点抑制剤、粘度改質剤、消泡剤、共溶媒、パッケージ適合剤、腐食抑制剤、染料、極圧剤など、及びそれらの混合物とブレンドすることができる。様々な添加剤が既知であり、商業的に利用可能である。これらの添加剤またはその類似化合物は、通常の配合手順により、本発明の潤滑油組成物の調製に使用することができる。
【0047】
前述の各添加剤は、使用される場合、潤滑剤に所望の特性を付与するために機能的に有効な量で使用される。したがって、例えば、添加剤が無灰分散剤である場合、この無灰分散剤の機能的に有効な量は、潤滑剤に所望の分散特徴を付与するのに十分な量である。一般に、これらの添加剤の各々の濃度は、別段の指定がない限り、約0.001~約20重量%、例えば、約0.01~約10重量%の範囲であり得る。
【0048】
追加の潤滑油添加剤
本開示の潤滑油組成物はまた、これらの添加剤が分散もしくは溶解される潤滑油組成物に望ましい特性を付与するか、またはそれらを改善することができる他の従来の添加剤を含有し得る。当業者に既知の任意の添加剤が、本明細書に開示される潤滑油組成物において使用され得る。いくつかの好適な添加剤は、Mortier et al.,“Chemistry and Technology of Lubricants”,2nd Edition,London,Springer,(1996)、及びLeslie R. Rudnick,“Lubricant Additives:Chemistry and Applications“,New York,Marcel Dekker(2003)において説明されており、これらのいずれも参照により本明細書に組み込まれる。例えば、潤滑油組成物は、酸化防止剤(例えば、アルキル化ジフェニルアミン、フェノール酸化防止剤)、耐摩耗剤、金属洗剤などの洗剤、防錆剤、かぶれ防止剤、脱乳化剤、金属不活性化剤、摩擦改質剤(例えば、エステル系摩擦改質剤)、粘度改質剤(例えば、オレフィンコポリマー)、流動点降下剤、消泡剤(例えば、シリコン系フォーム阻害剤)、共溶媒、腐食防止剤、分散剤、多機能剤、染料、極圧剤など、及びそれらの混合物とブレンドすることができる。様々な添加剤が既知であり、商業的に利用可能である。これらの添加剤、またはそれらの類似化合物は、通常のブレンディング手順によって本開示の潤滑油組成物の調製のために用いられ得る。
【0049】
潤滑油配合物の調製において、炭化水素油、例えば、鉱物性潤滑油、または他の好適な溶媒中に10~100重量%の活性成分濃縮物の形態で添加剤を導入することが一般的である。
【0050】
多くの場合、これらの濃縮物は、完成した潤滑剤、例えば、クランク室モータ油の形成において、1重量部の添加剤パッケージ当たり3~100、例えば、5~40重量部の潤滑油により希釈され得る。当然のことながら、濃縮物の目的は、様々な材料の取り扱いの困難及び厄介を少なくすること、ならびに最終的なブレンドにおける溶解または分散を容易にすることである。
【0051】
前述の各添加剤は、使用される場合、潤滑剤に所望の特性を付与するために機能的に有効な量で使用される。このため、例えば、添加剤が摩擦改質剤である場合、この摩擦改質剤の機能的に有効な量は、潤滑剤に所望の摩擦改質特徴を付与するのに十分な量である。
【0052】
概して、潤滑油組成物中の添加剤の各々の濃度は、使用される場合、潤滑油組成物の総重量に基づいて、約0.001重量%~約20重量%、約0.01重量%~約15重量%、または約0.1重量%~約10重量%、約0.005重量%~約5重量%、または約0.1重量%~約2.5重量%の範囲であり得る。更に、潤滑油組成物中の添加剤の総量は、潤滑油組成物の総重量に基づいて、約0.001重量%~約20重量%、約0.01重量%~約10重量%、または約0.1重量%~約5重量%の範囲であり得る。
【0053】
以下の実施例は、本開示の実施形態を例示するために提示されるが、本開示を記載される具体的な実施形態に限定することを意図するものではない。反対に示されない限り、全ての部及びパーセンテージは、重量によるものである。全ての数値は、近似値である。数値範囲が与えられるとき、記載された範囲外の実施形態が依然として本開示の範囲に含まれ得ることを理解されたい。各実施例において説明される具体的な詳細は、本開示の必要な特徴として解釈されるべきではない。
【0054】
本明細書で開示される実施形態に様々な修正が行われ得ることを理解されよう。したがって、上記説明は、限定するとして解釈されるべきではないが、好ましい実施形態の例示としてのみ解釈されるべきである。例えば、上に説明される、本開示を動作させるための最良の態様として実装される機能は、例解目的のみのためである。他の配置及び方法は、本開示の範囲及び趣旨から逸脱することなく、当業者によって実装され得る。その上、当業者は、他の修正が添付の請求項の範囲及び趣旨内にあることを想定するであろう。
【実施例】
【0055】
以下の実施例は、例解目的のみを意図しており、決して、本開示の範囲を限定しない。
【0056】
潤滑油を、ハイブリッド車潤滑剤のためにわずかに修正した日本工業規格(JIS)K2246試験によって評価した。
【0057】
JIS K2246試験では、試験片サンプルに試験油をコーティングし、試験サンプルの錆びを確認する。修正されたJIS K2246試験において、試験片サンプルを、試験油及び蒸留水を含有する混合物によりコーティングする。表2は、JIS K2246の試験結果をまとめたものである。
【0058】
試験片サンプルを、49℃で95%超の相対湿度(RH)の湿度キャビネット中に置き、72時間放置する。試験は、油が、主に鉄及び鋼からなる金属材料または金属製品上での錆を防止する能力を査定するものである。ASTM D1748試験(湿度キャビネット錆試験)は、同様の様式で実行される。錆率が低いほど、より良好な耐腐食性能を示す。10以下の評価は、合格評価を示す。
【0059】
試験油及び蒸留水を含有する混合物を、以下のステップに従って調製した。
1.30mlの蒸留水と270mlの試験油をプラスチック容器内で混合する。
2.試験油と蒸留水の混合物を、500mlの容器に移す。
3.JIS K2246試験当日、試験油及び蒸留水を含有する混合物を撹拌し、30秒間ハンドシェークする。
4.試験油を70℃の対流オーブン内で30分間加熱する。
5.30分後、試験油をオーブンから取り出し、試験油を室温まで冷却する。
6.試験サンプルを試験油に浸す直前に、試験油を再度30秒間ハンドシェークする。
7.JIS K2246試験を開始する。
【0060】
ベースライン配合物
主要量の潤滑粘度のグループIIIの基油及び以下の添加剤を含有する潤滑油組成物を調製して、0W~20SAE粘度等級を有する完成油を提供した:
1.ホウ酸化スクシンイミド分散剤及び非ホウ酸化スクシンイミド分散剤の混合物、
2.過塩基性カルシウム洗剤のカルシウム含有量に関しては1240ppm、
3.過塩基性マグネシウム洗剤のマグネシウム含有量に関しては450ppm、
4.およそ2:1の混合物の一次対二次亜鉛ジアルキルジチオホスフェートのリン含有量に関しては660ppm、
5.モリブデンスクシンイミド複合体のモリブデンに関しては270ppm、
6.アルキル化ジフェニルアミン酸化防止剤、
7.エステル系摩擦改質剤、
8.少量のシリコン系発泡阻害剤、オレフィンコポリマー(OCP)粘度改質剤、及び流動点降下剤。
【0061】
以下の表1は、試験した化合物をまとめたものである。
【表1】
【0062】
本発明の実施例1~4及び比較実施例1~11を、表2に指定された量の化合物A~Gを添加することによって配合した。
【表2】
【表3】
【0063】
実施例1及び2は、カルボキシレート(化合物A)及びポリプロピレングリコール(化合物F)の組み合わせが、腐食を低減させるための良好な相乗的性能を示すことを示す。ジエステル系極性改質剤(化合物G)を添加するとき、錆性能が更に向上する。
【0064】
カルボキシレート及びポリアルキレングリコールの組み合わせを含有しない、または低用量の添加剤をそれぞれ含有する比較実施例1及び2は、錆性能が悪いことを示す。比較実施例3及び4は、化合物Aも化合物Fも、単独では効果的に機能しないことを実証する。
【0065】
比較実施例5~8は、エトキシル化フェノール添加剤(化合物E)が、錆を抑制する組成物として化合物Aと組み合わせて化合物Fほど効果的ではないことを示す。同様に、比較実施例9~10は、様々な他のカルボキシレート(化合物B~D)が、化合物Aと化合物Fとの組み合わせでは、防錆組成物として効果的ではないことを示す。
【0066】
本明細書に記載の全ての文書は、参照により本明細書に組み込まれ、これは、本文と矛盾しない限り、任意の優先権文書及び/または試験手順を含む。前述の一般的な説明及び具体的な実施形態から明らかであるとおり、本開示の複数の形態を例解及び説明してきたものの、様々な修正を、本開示の精神と範囲から逸脱することなしに加えることができる。したがって、本開示がそれにより限定されることは意図されていない。
【0067】
簡潔にするため、本明細書では特定の範囲のみを明示的に開示する。しかしながら、任意の下限値からの範囲を任意の上限値と組み合わせて、明示的に記述されていない範囲を列挙する場合があり、同様に、任意の下限値からの範囲を他の任意の下限値と組み合わせて、明示的に記述されていない範囲を列挙する場合があり、同様に、任意の上限値からの範囲を他の任意の上限値と組み合わせて、明示的に記述されていない範囲を列挙する場合がある。追加的に、範囲内には、明示的に列挙されていなくても、その端点間の全ての点または個々の値が含まれる。このため、全ての点または個々の値は、任意の他の点もしくは個々の値、または任意の他の下限値もしくは上限値と組み合わされて、それ自体の下限値または上限値として機能して、明示的に記述されていない範囲を列挙する場合がある。
【0068】
同様に、「を含む(comprising)」という用語は、「を含む(including)」という用語と同義であると見なされる。同様に、組成物、要素、または要素群の前に「を含む(comprising)」という移行句がある場合は常に、組成物、要素、または要素群の記述の前に「から本質的になる」、「からなる」、「からなる群から選択される」、または「である」という移行句が、ある同じ組成物または要素群も想定していると理解され、逆もまた同様である。
【0069】
本明細書で使用される「a」及び「the」という用語は、単数形だけでなく複数形も包含すると理解される。
【0070】
様々な用語が上記で定義されている。請求項で使用される用語が上記で定義されていない範囲では、少なくとも1つの印刷刊行物または発行済み特許に反映されているように、関連技術分野の専門家がその用語に与えている最も広い定義が与えられるべきである。更に、本出願において引用された全ての特許、試験方法、及び他の文書は、かかる開示が本出願と矛盾しない限りにおいて、またかかる組み込みが許可されている全ての法域において、参照により完全に組み込まれるものとする。
【0071】
以上の本開示の説明は、本開示を例解及び説明するものである。追加的に、本開示は、好ましい実施形態のみを示し、説明するが、上で挙げられたように、本開示は、様々な他の組み合わせ、修正、及び環境で使用することが可能であり、本明細書で表現される概念の範囲内で、上記の教示及び/または関連技術の技能もしくは知識に見合った変更または修正が可能であることを理解されたい。前述は、本開示の実施形態を対象とするが、本開示の他の及び更なる実施形態は、その基本的な範囲から逸脱することなく考案され得、その範囲は、以下の特許請求の範囲によって決定される。
【0072】
要素の組み合わせ、サブセット、グループなど(例えば、組成物中の構成成分の組み合わせ、または方法中のステップの組み合わせ)が開示される場合、これらの要素の様々な個々の及び集合的な組み合わせならびに順列の各々の具体的な参照が、明示的に開示されていないことがあるが、各々が具体的に企図され、本明細書において説明されると理解される。
【0073】
本明細書において上で説明される実施形態は更に、本発明を実施するために既知の最良の形態を更に説明するよう、かつ他の当業者が、そのような、または他の実施形態において、特定の用途または使用に必要な様々な修正を伴って、本開示を利用することを可能にするよう意図されている。したがって、説明は、本明細書で開示する形態に限定することを意図するものではない。また、添付の特許請求の範囲が代替の実施形態を包含するよう解釈されることが意図されている。
【国際調査報告】