(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-04
(54)【発明の名称】迅速挿入型中心静脈カテーテル(RICC)配置システム用のガイドワイヤ安定化システム
(51)【国際特許分類】
A61M 25/09 20060101AFI20240927BHJP
【FI】
A61M25/09 530
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024523608
(86)(22)【出願日】2022-10-20
(85)【翻訳文提出日】2024-06-13
(86)【国際出願番号】 US2022047252
(87)【国際公開番号】W WO2023069600
(87)【国際公開日】2023-04-27
(32)【優先日】2021-10-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】511300891
【氏名又は名称】バード・アクセス・システムズ,インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100107249
【氏名又は名称】中嶋 恭久
(72)【発明者】
【氏名】リンデクゲル、エリック ダブリュ.
(72)【発明者】
【氏名】ブランチャード、ダニエル ビー.
(72)【発明者】
【氏名】ハウエル、グレード エイチ.
(72)【発明者】
【氏名】ソーンリー、カイル ジー.
【テーマコード(参考)】
4C267
【Fターム(参考)】
4C267AA28
4C267AA32
4C267BB20
4C267BB37
4C267CC08
4C267EE01
4C267GG02
4C267GG03
(57)【要約】
カテーテル配置システム(10)用のガイドワイヤ安定化機構(100)は、ガイドワイヤ(30)をロック位置に把持するために使用者によって作動され得るアクチュエータボタン(132)を備えることができる。ガイドワイヤ(30)が安定化機構(100)のハウジングに対してロックされた状態で、使用者はハウジング(110)から針ハブ(28)を分離し、針(20)を近位方向に引き出すことができる。ガイドワイヤ(30)の一部が、針スロット(26)を通過して針(20)をガイドワイヤ(30)から係合解除することができる。安定化機構(100)は、針(20)が引き出される際にガイドワイヤ(30)が脈管構造から移動されることを防止することができる。安定化機構(100)は、ロック位置に向かって若しくはロック解除位置に向かって付勢され得る、ロック位置及びロック解除位置の双方で双安定になり得る、又は針(20)の除去によって作動され得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カテーテル配置システムであって、
長手方向軸線に沿って延び、針ハブによって支持された針であって、前記針は、針ルーメンを画定し、前記針は、前記ハブに近接して前記針の壁を通って延びる開口と、前記開口から前記針の遠位先端部まで延びるスロットとを備える、針と、
前記開口を通って前記針ルーメン内に延びる遠位先端部を有するガイドワイヤと、
ガイドワイヤ安定化システムであって、前記ガイドワイヤ安定化システムは、
前記針ハブに結合され、針チャネルを画定するハウジングであって、前記針チャネルは前記針チャネルを通って配置される前記針の一部を有する、ハウジングと、
ロック位置とロック解除位置との間で移行可能な安定化機構であって、前記針が前記ハウジングの前記針チャネルから近位方向に引き出される際に、前記ロック位置において前記ガイドワイヤの一部を把持して前記ガイドワイヤを前記ハウジングに対して安定させるように構成されている、安定化機構と、
を備える、ガイドワイヤ安定化システムと、
を備える、カテーテル配置システム。
【請求項2】
前記安定化機構は、前記ロック解除位置に向かって付勢されているとともにアクチュエータボタンを備え、前記アクチュエータボタンは、作動され、前記安定化機構を前記ロック解除位置から前記ロック位置に移行させるように構成されている、請求項1に記載のカテーテル配置システム。
【請求項3】
前記アクチュエータボタンは、前記針ハブを前記ハウジングから係合解除するようにさらに構成されている、請求項2に記載のカテーテル配置システム。
【請求項4】
前記安定化機構は、前記ハウジングにそれぞれ枢動可能に結合された第1のレバー及び第2のレバーをさらに備え、前記第1のレバーは第1のアクチュエータボタンを画定し、前記第2のレバーは第2のアクチュエータボタンを画定する、請求項1~3のいずれか一項に記載のカテーテル配置システム。
【請求項5】
前記第1のレバーの第1の把持面及び前記第2のレバーの第2の把持面は、前記ロック位置において前記ガイドワイヤに接し、前記ガイドワイヤの軸線方向の移動を阻止する、請求項4に記載のカテーテル配置システム。
【請求項6】
前記第1の把持面及び前記第2の把持面の一方又は双方は、前記ロック解除位置において前記ガイドワイヤから離間した関係にある、請求項5に記載のカテーテル配置システム。
【請求項7】
前記第1の把持面及び前記第2の把持面の一方又は双方は、前記ロック解除位置において前記ガイドワイヤに係合して、前記ガイドワイヤが第1の位置から第2の位置まで軸線方向に摺動することを許容し、再配置されるまで前記ガイドワイヤを前記第2の位置に維持する、請求項5に記載のカテーテル配置システム。
【請求項8】
前記第1のレバー及び前記第2のレバーの一方又は双方は第1の材料を含み、前記把持面は第2の材料を含み、前記第2の材料は、前記第1の材料とは異なるものであり、且つ前記第1の材料と比較して高い摩擦係数を有する、請求項4~7のいずれか一項に記載のカテーテル配置システム。
【請求項9】
前記第2の材料には、プラスチック、ポリマー、エラストマー、ゴム、又はシリコーンゴムのうちの1つが含まれる、請求項8に記載のカテーテル配置システム。
【請求項10】
前記第1の把持面は、前記第2の把持面に配置された第2の突起又は第2の移動止めのうちの1つに係合するように構成された第1の突起又は第1の移動止めのうちの1つを備える、請求項5~9のいずれか一項に記載のカテーテル配置システム。
【請求項11】
前記安定化機構は、前記ハウジングにヒンジ式に結合された第1のレバーを備え、前記第1のレバーは、前記ロック位置において前記ハウジングのガイドワイヤチャネル内に延びて前記ガイドワイヤに突き当たるように構成された把持面を画定する、請求項1~3のいずれか一項に記載のカテーテル配置システム。
【請求項12】
前記把持面は、前記ロック位置において前記ガイドワイヤの一部を直線形態から非直線形態に偏向させて前記ガイドワイヤの軸線方向の移動を阻止するように構成されている、請求項11に記載のカテーテル配置システム。
【請求項13】
前記把持面は、前記ロック位置において、前記ガイドワイヤの一部を前記ガイドワイヤチャネルの壁に対して圧迫して前記ガイドワイヤの軸線方向の移動を阻止するように構成されている、請求項11に記載のカテーテル配置システム。
【請求項14】
前記安定化機構は、把持面を有するクランプを備え、前記クランプは、前記ロック位置と前記ロック解除位置との間で第1の軸線に沿って前記ハウジングと摺動可能に係合され、前記第1の軸線は、前記ガイドワイヤの第2の軸線に対して垂直に延び、前記把持面は、前記第1の軸線に対して角度をなしている、請求項1~3のいずれか一項に記載のカテーテル配置システム。
【請求項15】
前記把持面は、前記ロック位置において前記ガイドワイヤの一部に係合し、前記ガイドワイヤの前記一部を前記第1の軸線及び前記第2の軸線の双方に対してある角度で延びる第3の軸線に沿ってガイドワイヤチャネルの壁に対して圧迫する、請求項14に記載のカテーテル配置システム。
【請求項16】
前記安定化システムは、前記ロック位置と前記ロック解除位置との間で回転可能なカムを備え、
前記カムは、前記ロック解除位置において前記ガイドワイヤチャネルと整合する第1の切欠きと、前記ロック位置において前記ガイドワイヤチャネルと整合する第2の切欠きとを備え、
前記第2の切欠きは、前記ロック位置において前記ガイドワイヤの一部をガイドワイヤチャネルの壁に対して圧迫して前記ガイドワイヤの軸線方向の移動を阻止するように構成されている、請求項1~3のいずれか一項に記載のカテーテル配置システム。
【請求項17】
前記カムは、前記ロック位置及び前記ロック解除位置の双方において双安定である、請求項16に記載のカテーテル配置システム。
【請求項18】
前記カムは、前記カムから延び、前記カムが前記ロック位置又は前記ロック解除位置のうちの一方にあることを使用者に示すように構成されたレバーをさらに備える、請求項16又は17に記載のカテーテル配置システム。
【請求項19】
前記安定化システムは内側ハウジングをさらに備え、前記内側ハウジングは、前記ハウジングのハウジングチャネルと摺動可能に係合されており、前記針が引き出されると近位方向に促され、前記内側ハウジングのアームを前記ロック解除位置から前記ロック位置へ偏向させて前記ガイドワイヤの軸線方向の移動を阻止するように構成されている、請求項1に記載のカテーテル配置システム。
【請求項20】
前記内側ハウジングは、前記針チャネルの一部を画定し、前記針と干渉嵌合係合で摺動可能に係合して前記針が前記針チャネルから引き出されると前記内側ハウジングを近位方向に促すように構成されている、請求項19に記載のカテーテル配置システム。
【請求項21】
前記内側ハウジングは、テーパ状近位端をさらに備え、前記テーパ状近位端は、前記針が前記針チャネルから引き出されると、前記ハウジングチャネルのテーパ状近位端に係合し、前記アームを前記ロック位置へ偏向させるように構成されている、請求項19又は20に記載のカテーテル配置システム。
【請求項22】
前記内側ハウジングは、第1の把持面を画定する第1のアームと、前記ガイドワイヤの軸線を挟んで前記第1の把持面に対向して配置された第2の把持面を画定する第2のアームとを備え、
前記第1のアーム及び前記第2のアームは、前記ロック位置において内方に偏向して前記ガイドワイヤの一部を前記第1のアームと前記第2のアームとの間に把持するように構成されている、請求項19~21のいずれか一項に記載のカテーテル配置システム。
【請求項23】
前記安定化機構は、前記ロック位置に向かって付勢されており、前記安定化機構は、前記安定化機構の把持面を前記ロック位置から前記ロック解除位置に移行させるように構成されたアクチュエータボタンを備える、請求項1又は3に記載のカテーテル配置システム。
【請求項24】
ロック位置とロック解除位置との間で前記ハウジングと摺動可能に係合されるクランプアームをさらに備え、前記クランプアームの第1の表面は前記アクチュエータボタンを画定し、前記クランプアームの第2の表面は、前記把持面を画定し、前記ロック位置において前記ガイドワイヤの一部をガイドワイヤチャネルの壁に対して圧迫して前記ガイドワイヤの軸線方向の移動を阻止するように構成されている、請求項23に記載のカテーテル配置システム。
【請求項25】
前記クランプアームを前記ロック位置に付勢するように構成された圧縮ばねをさらに備える、請求項24に記載のカテーテル配置システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、迅速挿入型中心静脈カテーテル(RICC)配置システム用のガイドワイヤ安定化システムに関する。
【発明の概要】
【0002】
簡単に要約すると、本明細書で開示される実施形態は、迅速挿入型中心静脈カテーテル(RICC)配置システム用のガイドワイヤ安定化システム及びそれに関連する方法に関する。カテーテル、例えばRICCカテーテル、を配置する場合、静脈穿刺後にできるだけ早く静脈アクセスを得て安定させることが有利になる可能性がある。これを達成するために、ガイドワイヤの遠位先端部は、静脈穿刺中に針ルーメン内に存在し得る。静脈アクセスが確認されたら、ガイドワイヤは、脈管構造内に進められてアクセス部位の開存性を維持することができる。次に針が、好ましくはガイドワイヤを適所に残すように、除去され得る。
【0003】
いくつかのRICC配置システムは、上部に配置されたシースを備えたスロット付き針を用いる。針が近位方向に引き出される際に、ガイドワイヤの遠位先端部は脈管構造内の適所にとどまることができ、ガイドワイヤの一部は針スロットを通過することができる。シースは、スロットを覆い、例えばスロットを通じた流体の漏れを防止するために、針ルーメンの完全性を維持することができる。ガイドワイヤが針スロットを通過する際、ガイドワイヤはシースを引き裂くことができる。しかしながら、ガイドワイヤが針スロットを通過する際、ガイドワイヤに作用する力が、脈管構造内におけるガイドワイヤ遠位先端部の位置を移動させる可能性がある。本明細書で開示される実施形態は、RICCカテーテル配置システムと結合され、針がアクセス部位から近位方向に引き出される際にガイドワイヤを適所で安定させるように構成されたガイドワイヤ安定化システムに関する。
【0004】
本明細書では、カテーテル配置システムが開示され、カテーテル配置システムは、長手方向軸線に沿って延び、針ハブによって支持された針であって、針は、針ルーメンを画定し、ハブに近接して針の壁を通って延びる開口と、開口から針の遠位先端部まで延びるスロットとを備える、針と、開口を通って針ルーメン内に延びる遠位先端部を有するガイドワイヤと、ガイドワイヤ安定化システムであって、ガイドワイヤ安定化システムは、針ハブに結合され、針チャネルを画定するハウジングであって、針チャネルは針チャネルを通って配置される針の一部を有する、ハウジングと、ロック位置とロック解除位置との間で移行可能な安定化機構であって、針がハウジングの針チャネルから近位方向に引き出される際に、ロック位置においてガイドワイヤの一部を把持してガイドワイヤをハウジングに対して安定させるように構成されている安定化機構と、を備えるガイドワイヤ安定化システムと、を備える。
【0005】
いくつかの実施形態において、安定化機構は、ロック解除位置に向かって付勢されているとともにアクチュエータボタンを備え、アクチュエータボタンは、作動され、安定化機構をロック解除位置からロック位置に移行させるように構成されている。いくつかの実施形態において、アクチュエータボタンは、針ハブをハウジングから係合解除するようにさらに構成されている。いくつかの実施形態において、安定化機構は、ハウジングにそれぞれ枢動可能に結合された第1のレバー及び第2のレバーをさらに備え、第1のレバーは第1のアクチュエータボタンを画定し、第2のレバーは第2のアクチュエータボタンを画定する。いくつかの実施形態において、第1のレバーの第1の把持面及び第2のレバーの第2の把持面は、ロック位置においてガイドワイヤに接し、ガイドワイヤの軸線方向の移動を阻止する。
【0006】
いくつかの実施形態において、第1の把持面及び第2の把持面の一方又は双方は、ロック解除位置においてガイドワイヤから離間した関係にある。いくつかの実施形態において、第1の把持面及び第2の把持面の一方又は双方は、ロック解除位置においてガイドワイヤに係合して、ガイドワイヤが第1の位置から第2の位置まで軸線方向に摺動することを許容し、再配置されるまでガイドワイヤを第2の位置に維持する。いくつかの実施形態において、第1のレバー及び第2のレバーの一方又は双方は第1の材料を含み、把持面は第2の材料を含み、第2の材料は、第1の材料とは異なるものであり、且つ第1の材料と比較して高い摩擦係数を有する。
【0007】
いくつかの実施形態において、第2の材料には、プラスチック、ポリマー、エラストマー、ゴム、又はシリコーンゴムのうちの1つが含まれる。いくつかの実施形態において、第1の把持面は、第2の把持面に配置された第2の突起又は第2の移動止めのうちの1つに係合するように構成された第1の突起又は第1の移動止めのうちの1つを備える。いくつかの実施形態において、安定化機構は、ハウジングにヒンジ式に結合された第1のレバーを備え、第1のレバーは、ロック位置においてハウジングのガイドワイヤチャネル内に延びてガイドワイヤに突き当たるように構成された把持面を画定する。いくつかの実施形態において、把持面は、ロック位置においてガイドワイヤの一部を直線形態から非直線形態に偏向させてガイドワイヤの軸線方向の移動を阻止するように構成されている。
【0008】
いくつかの実施形態において、把持面は、ロック位置において、ガイドワイヤの一部をガイドワイヤチャネルの壁に対して圧迫してガイドワイヤの軸線方向の移動を阻止するように構成されている。いくつかの実施形態において、安定化機構は、把持面を有するクランプを備え、クランプは、ロック位置とロック解除位置との間で第1の軸線に沿ってハウジングと摺動可能に係合され、第1の軸線は、ガイドワイヤの第2の軸線に対して垂直に延び、把持面は、第1の軸線に対して角度をなしている。いくつかの実施形態において、把持面は、ロック位置においてガイドワイヤの一部に係合し、ガイドワイヤの一部を第1の軸線及び第2の軸線の双方に対してある角度で延びる第3の軸線に沿ってガイドワイヤチャネルの壁に対して圧迫する。
【0009】
いくつかの実施形態において、安定化システムは、ロック位置とロック解除位置との間で回転可能なカムを備え、カムは、ロック解除位置においてガイドワイヤチャネルと整合する第1の切欠きと、ロック位置においてガイドワイヤチャネルと整合する第2の切欠きとを備え、第2の切欠きは、ロック位置においてガイドワイヤの一部をガイドワイヤチャネルの壁に対して圧迫してガイドワイヤの軸線方向の移動を阻止するように構成されている。いくつかの実施形態において、カムは、ロック位置及びロック解除位置の双方において双安定である。いくつかの実施形態において、カムは、カムから延び、カムがロック位置又はロック解除位置のうちの一方にあることを使用者に示すように構成されたレバーをさらに備える。
【0010】
いくつかの実施形態において、安定化システムはさらに内側ハウジングを備え、内側ハウジングは、ハウジングのハウジングチャネルと摺動可能に係合されており、針が引き出されると近位方向に促され、内側ハウジングのアームをロック解除位置からロック位置へ偏向させてガイドワイヤの軸線方向の移動を阻止するように構成されている。いくつかの実施形態において、内側ハウジングは、針チャネルの一部を画定し、針と干渉嵌合(interference fit)係合で摺動可能に係合して針が針チャネルから引き出されると内側ハウジングを近位方向に促すように構成されている。いくつかの実施形態において、内側ハウジングは、テーパ状近位端をさらに備え、テーパ状近位端は、針が針チャネルから引き出されると、ハウジングチャネルのテーパ状近位端に係合し、アームをロック位置へ偏向させるように構成されている。
【0011】
いくつかの実施形態において、内側ハウジングは、第1の把持面を画定する第1のアームと、ガイドワイヤの軸線を挟んで第1の把持面に対向して配置された第2の把持面を画定する第2のアームとを備え、第1のアーム及び第2のアームは、ロック位置において内方に偏向してガイドワイヤの一部を第1のアームと第2のアームとの間に把持するように構成されている。いくつかの実施形態において、安定化機構は、ロック位置に向かって付勢されており、安定化機構は、安定化機構の把持面をロック位置からロック解除位置に移行させるように構成されたアクチュエータボタンを備える。
【0012】
いくつかの実施形態において、カテーテル配置システムは、ロック位置とロック解除位置との間でハウジングと摺動可能に係合されるクランプアームをさらに備え、クランプアームの第1の表面はアクチュエータボタンを画定し、クランプアームの第2の表面は、把持面を画定し、ロック位置においてガイドワイヤの一部をガイドワイヤチャネルの壁に対して圧迫してガイドワイヤの軸線方向の移動を阻止するように構成されている。いくつかの実施形態において、カテーテル配置システムは、クランプアームをロック位置に付勢するように構成された圧縮ばねをさらに備える。
【0013】
また、カテーテルの配置中にガイドワイヤを安定させる方法も開示され、本方法は、針ハブによって支持され、針ルーメンを画定する針で、脈管構造にアクセスすることであって、針は、ハブに近接して針の壁を通って延びる開口と、開口から針の遠位先端部まで延びるスロットとを備える、アクセスすることと、針ルーメンを通してガイドワイヤの遠位先端部を脈管構造内に進めることと、ガイドワイヤ安定化システムをロック位置に移行させてガイドワイヤ安定化システムのハウジングに対するガイドワイヤの軸線方向の移動を阻止することと、脈管構造から針を近位方向に引き出すこととを含む。
【0014】
いくつかの実施形態において、本方法は、アクチュエータボタンを作動させてガイドワイヤ安定化システムをロック位置からロック解除位置に移行させることをさらに含み、ガイドワイヤ安定化システムは、ロック解除位置に向かって付勢される。いくつかの実施形態において、本方法は、アクチュエータボタンを作動させて針ハブをハウジングから係合解除することをさらに含む。いくつかの実施形態において、本方法は、対向する力をガイドワイヤの軸線に対して垂直にガイドワイヤ安定化システムに加えて、ガイドワイヤ安定化システムの第1のレバー及び第2のレバーをロック位置に移行させることをさらに含む。
【0015】
いくつかの実施形態において、本方法は、ロック位置において第1のレバーの第1の把持面及び第2のレバーの第2の把持面をガイドワイヤと係合させてガイドワイヤの軸線方向の移動を阻止することをさらに含む。いくつかの実施形態において、第1の把持面及び第2の把持面の一方又は双方は、ロック解除位置においてガイドワイヤに係合して、ガイドワイヤが第1の位置から第2の位置まで軸線方向に摺動することを許容し、再配置されるまでガイドワイヤを第2の位置に維持する。いくつかの実施形態において、本方法は、ガイドワイヤ安定化システムの把持面をガイドワイヤに突き当て、ガイドワイヤの一部をロック解除位置における直線形態からロック位置における非直線形態に偏向させることをさらに含む。
【0016】
いくつかの実施形態において、本方法は、ロック位置において、ガイドワイヤ安定化システムの把持面をガイドワイヤに突き当て、ガイドワイヤの一部をハウジングのガイドワイヤチャネルの壁に対して圧迫することをさらに含む。いくつかの実施形態において、本方法は、把持面を有するクランプをガイドワイヤの第2の軸線に対して垂直に延びる第1の軸線に沿って摺動させ、ガイドワイヤの一部を第1の軸線及び第2の軸線の双方に対してある角度で延びる第3の軸線に沿って偏向させることと、ロック位置においてガイドワイヤの一部をガイドワイヤチャネルの壁に対して把持することとを含み、把持面は、第1の軸線及び第3の軸線に対して角度をなしている。
【0017】
いくつかの実施形態において、本方法は、カムをガイドワイヤの軸線と平行に延びる軸線を中心にロック解除位置とロック位置との間で回転させることであって、カムはカムから延びたレバーを備える、回転させることをさらに含み、カムはロック解除位置及びロック位置において双安定である。いくつかの実施形態において、本方法は、内側ハウジングをハウジングに対して近位方向に摺動させ、内側ハウジングのアームを偏向させて把持面をガイドワイヤと突き当てガイドワイヤの軸線方向の移動を阻止することをさらに含む。いくつかの実施形態において、本方法は、内側ハウジングのテーパ状近位端をハウジングのハウジングチャネルのテーパ状近位端と係合させてアームをロック位置へ内方に偏向させ、ガイドワイヤの軸線方向の移動を阻止することをさらに含む。
【0018】
いくつかの実施形態において、ガイドワイヤ安定化システムをロック位置に移行させることは、付勢部材を用いてクランプアームをロック位置に付勢することを含み、ガイドワイヤ安定化システムをロック解除位置に移行させることは、クランプアームに力を加えて、付勢部材の力に打ち勝ち、クランプアームを摺動させてガイドワイヤとの係合を解除することを含む。
【0019】
本開示のより詳細な説明は、添付図面に示される本開示の具体的な実施形態を参照することによってなされる。これらの図面は、本発明の典型的な実施形態のみを示しており、したがって本発明の範囲を限定するものと見なされるべきではないことが認識される。本発明の例示的な実施形態は、添付図面を用いて、さらに具体的且つ詳細に記載され説明される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1A】本明細書で開示される実施形態による、展開した状態の例示的なRICC配置システムの斜視図。
【
図1B】本明細書で開示される実施形態による、使用準備が完了した折り畳まれた状態の例示的なRICC配置システムの斜視図。
【
図1C】本明細書で開示される実施形態による、使用準備が完了した折り畳まれた状態の例示的なRICC配置システムの平面図。
【
図2A】本明細書で開示される実施形態による、
図1AのRICC配置システムの針、シース及びガイドワイヤのアセンブリの平面図。
【
図2B】本明細書で開示される実施形態による、
図1AのRICC配置システムのスロット付き針の平面図。
【
図3A】本明細書で開示される実施形態による、ガイドワイヤ安定化システムの斜視図。
【
図3B】本明細書で開示される実施形態による、ガイドワイヤ安定化システムの斜視図。
【
図4A】本明細書で開示される実施形態による、ピンチ作動ガイドワイヤ安定化システムの斜視図。
【
図4B】本明細書で開示される実施形態による、ピンチ作動ガイドワイヤ安定化システムの斜視図。
【
図4C】本明細書で開示される実施形態による、
図4Aのピンチ作動ガイドワイヤ安定化システムの拡大詳細図。
【
図4D】本明細書で開示される実施形態による、
図4Aのピンチ作動ガイドワイヤ安定化システムの拡大詳細図。
【
図4E】本明細書で開示される実施形態による、
図4Aのピンチ作動ガイドワイヤ安定化システムの拡大詳細図。
【
図5A】本明細書で開示される実施形態による、カムガイドワイヤ安定化システムの斜視図。
【
図5B】本明細書で開示される実施形態による、
図5Aのカムガイドワイヤ安定化システムの断面図。
【
図5C】本明細書で開示される実施形態による、
図5Aのカムガイドワイヤ安定化システムの断面図。
【
図6A】本明細書で開示される実施形態による、クリンプガイドワイヤ安定化システムの長手方向断面図。
【
図6B】本明細書で開示される実施形態による、クリンプガイドワイヤ安定化システムの長手方向断面図。
【
図7A】本明細書で開示される実施形態による、圧迫ガイドワイヤ安定化システムの長手方向断面図。
【
図7B】本明細書で開示される実施形態による、圧迫ガイドワイヤ安定化システムの長手方向断面図。
【
図8A】本明細書で開示される実施形態による、クランプガイドワイヤ安定化システムの横方向断面図。
【
図8B】本明細書で開示される実施形態による、クランプガイドワイヤ安定化システムの横方向断面図。
【
図9A】本明細書で開示される実施形態による、針作動ガイドワイヤ安定化システムの平断面図。
【
図9B】本明細書で開示される実施形態による、針作動ガイドワイヤ安定化システムの平断面図。
【
図10A】本明細書で開示される実施形態による、バネ作動ガイドワイヤ安定化システムの横方向断面図。
【
図10B】本明細書で開示される実施形態による、バネ作動ガイドワイヤ安定化システムの横方向断面図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
いくつかの特定の実施形態がより詳細に開示される前に、本明細書に開示される特定の実施形態は、本明細書に提供される概念の範囲を限定しないことを理解されたい。また本明細書に開示される特定の実施形態は、特定の実施形態から容易に分離でき、任意選択で、本明細書に開示される他のいくつかの実施形態のいずれかの特徴と組み合わせるか、又は置換することができる特徴を有し得ることも理解されたい。
【0022】
本明細書で使用される用語に関して、用語は、いくつかの特定の実施形態を説明するためのものであり、用語は、本明細書で提供される概念の範囲を限定しないことも理解されたい。序数(例えば、第1、第2、第3、等)は、一般に、複数の特徴又は複数のステップの群内の異なる特徴又はステップを区別又は識別するために使用され、順番の限定又は数値限定を与えるものではない。例えば、「第1」、「第2」、及び「第3」の特徴又はステップは、必ずしもその順序で現れる必要はなく、そのような特徴又はステップを含む特定の実施形態は、必ずしも3つの特徴又はステップに限定される必要はない。「左」、「右」、「上」、「下」、「前」、「後」、などの表示は、便宜上使用されており、例えば、特定の固定した位置、向き、又は方向を意味するように意図されていない。代わりに、そのような表示は、例えば、相対的な位置、向き、又は方向を反映するために使用される。単数形の「一」、「1つ」、及び「その」は、文脈上特に明記されていない限り、複数形の参照も含む。
【0023】
以下の説明において、本明細書で使用される「又は」及び「及び/又は」という用語は、包括的であるか、又はいずれか1つ若しくは任意の組合せを意味するものと解釈されるべきである。一例として、「A、B又はC」又は「A、B及び/又はC」は、「以下のA、B、C、A及びB、A及びC、B及びC、A、B及びCのいずれか」を意味する。要素、構成要素、機能、ステップ、又は動作の組合せが、何らかの点で本質的に互いに排他的である場合に限り、この定義の例外が生じるであろう。
【0024】
「近位」に関して、例えば、本明細書に開示される針の「近位部分」又は「近位端部分」は、針が患者に使用される場合、臨床医の近くにあることを意図した針の部分を含む。同様に、例えば、針の「近位長さ」は、針が患者に使用される場合、臨床医の近くにあることを意図した針の長さを含む。例えば、針の「近位端」は、針が患者に使用される場合、臨床医の近くにあるように意図された針の端部を含む。針の近位部分、近位端部分、又は近位長さは、針の近位端を含むことができるが、針の近位部分、近位端部分、又は近位長さは、針の近位端を含む必要はない。すなわち、文脈から示唆される場合を除き、針の近位部分、近位端部分、又は近位長さは、針の末端部分又は末端長さではない。
【0025】
「遠位」に関して、例えば、本明細書に開示される針の「遠位部分」又は「遠位端部分」は、針が患者に使用される場合、患者の近くにあるか、又は患者内にあることを意図した針の部分を含む。同様に、例えば、針の「遠位長さ」は、針が患者に使用される場合、患者の近く又は患者内にあることを意図した針の長さを含む。例えば、針の「遠位端」は、針が患者に使用される場合、患者の近く又は患者内にあるように意図された針の端部を含む。針の遠位部分、遠位端部分、又は遠位長さは、針の遠位端を含むことができるが、針の遠位部分、遠位端部分、又は遠位長さは、針の遠位端を含む必要はない。すなわち、文脈から示唆される場合を除き、針の遠位部分、遠位端部分、又は遠位長さは、針の末端部分又は末端長さではない。
【0026】
本明細書に記載される実施形態の説明を支援するために、
図1A~
図1Cに示すように、長手方向軸線は針20の軸線と実質的に平行に延びている。横方向軸線は長手方向軸線に対して垂直に延びており、横断方向軸線は、長手方向軸線及び横方向軸線の双方に対して垂直に延びている。
【0027】
別段の定義がない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語及び科学用語は、当業者によって一般的に理解されているのと同じ意味を有する。
図1A~
図1Cは、針20、ガイドワイヤ30、シリンジシステム40及びRICCカテーテル50を一般に備える例示的な迅速挿入型中心静脈カテーテル(RICC)配置システム(「配置システム」)10の詳細を示す。RICCカテーテル50は、一般に、近位端においてカテーテルハブ(「ハブ」)60によって支持されたカテーテル52を備えることができる。ハブ60は、ハブ60から近位方向に延びる1つ以上の延長脚部62を備えることができる。1つ以上の延長脚部のうちの各延長脚部62は、カテーテル52のルーメンと流体連通し得る。カテーテル52は、遠位に配置され単一のルーメンを画定する第1の部分54と、近位に配置され2つ以上のルーメンを画定する第2の部分56と、第1の部分54と第2の部分56との間に配置された拡張器部分58とを備えることができる。ガイドワイヤ30は、延長脚部62の近位端からRICCカテーテル50のルーメンを通って第1の部分54の遠位先端部へ延びることができる。
【0028】
RICCカテーテル50を配置する例示的な方法では、針20を患者内に遠位方向に押し込み、脈管構造にアクセスさせて、挿入部位を形成することができる。シリンジシステム40又は同様のデバイスは、色及び/又は拍動流を観察し、正しい血管アクセスを確認するために、針ルーメン22を通して流体流を近位方向に引き込むことができる。正しい血管アクセスが確認されたら、次に、ガイドワイヤ30を、針ルーメン22を通して脈管構造内に進めて、挿入部位の開存性を維持することができる。次に、針20及びシリンジシステム40アセンブリを近位方向に引き出すことができる。一実施形態において、ガイドワイヤ30の遠位先端部は、静脈穿刺中に針ルーメン22内に存在することができ、これにより、静脈アクセスが確認されると脈管構造へのアクセスが促進され、挿入部位の開存性が維持され得る。一実施形態において、針20は、本明細書でより詳細に記載するように、ガイドワイヤ30を適所に残したまま、ガイドワイヤ30から針20及びシリンジシステム40を除去することを容易にするように構成されたスロット26を備えることができる。
【0029】
次に、RICC50をガイドワイヤ30上で脈管構造内へ進めることができる。単一のルーメンのみを有し、相対的に小さな外径を画定するRICC50の第1の部分54が、ガイドワイヤ30上で脈管構造に進入することができる。次に、拡張器部分58が、挿入部位を拡張して、2つ以上のルーメンを画定する相対的に大径の第2の部分56が脈管構造内に進入できるようにし得る。RICC50が配置されたら、ガイドワイヤ30を近位方向に引き出すことができる。例えば、RICCシステム10のさらなる詳細及び実施形態は、米国特許第10,376,675号、米国特許出願公開第2019/0255294号、米国特許出願公開第2021/0069471号、米国特許出願公開第2021/0085927号、米国特許出願公開第2021/0113809号、米国特許出願公開第2021/0113810号、米国特許出願公開第2021/0121661号、米国特許出願公開第2021/0228843号、米国特許出願公開第2021/0283368号、米国特許出願公開第2021/0283381号、米国特許出願公開第2021/0322729号、米国特許出願公開第2021/0330941号、米国特許出願公開第2021/0330942号、米国特許出願公開第2021/0361915号、米国特許出願公開第2021/0379336号、米国特許出願公開第2021/0402142号、米国特許出願公開第2021/0402149号、米国特許出願公開第2021/0402153号、米国特許出願公開第2021/0121667号、米国特許出願公開第2022/0001138号、米国特許出願公開第2022/0032013号、米国特許出願公開第2022/0032014号、米国特許出願公開第2022/0062528号、米国特許出願公開第2022/0126064号、米国特許出願公開第2022/0152368号、米国特許出願公開第2022/0176081号、米国特許出願公開第2022/0176082号、米国特許出願公開第2022/0193376号、米国特許出願公開第2022/0193377号、米国特許出願公開第2022/0193378号、米国特許出願公開第2022/0193379号、及び米国特許出願公開第2022/0296862号に見られ、上記特許文献の各々は、参照によりその全容を本出願に援用される。
【0030】
図2A~
図2Bは、RICCシステム10のスロット付き針20のさらなる詳細を示す。針20は、ルーメン22を画定することができ、近位端において針ハブ28によって支持され得る。針ハブ28は、シリンジシステム40に結合され得、シリンジシステム40と針ルーメン22との間に流体連通を提供することができる。一実施形態において、針20は、針ハブ28に近接して針20の側壁に配置され、針ルーメン22と連通するガイドワイヤ開口24を備えることができる。ガイドワイヤ開口24は、ガイドワイヤ開口24を通って針ルーメン22内に延びるガイドワイヤ30の一部を受け入れるように構成され得る。一実施形態において、ガイドワイヤ30の遠位先端部は、針20が脈管構造にアクセスする際に、針ルーメン22内に配置され得る。針20が脈管構造にアクセスしたら、ガイドワイヤ30の遠位先端部は、針20の遠位先端部の遠位に延びることができる。有利には、これにより、静脈穿刺後直ちに挿入部位の迅速な安定化が可能となり、挿入部位が固定され、配置プロセスが促進される。
【0031】
一実施形態において、針20は、ガイドワイヤ開口24と針20の遠位先端部との間に長手方向に延びる針スロット26をさらに備えることができる。一実施形態において、針スロット26の横方向の幅は、ガイドワイヤ30の直径以上とすることができる。したがって、ガイドワイヤ30の一部が針スロット26を通過して、針20がガイドワイヤ30との係合を解除することを可能にし得る。一実施形態において、針スロット26の横方向の幅は、ガイドワイヤ30の直径以下とすることができる。一実施形態において、針スロット26の第1の端縁は、針20の中央長手方向軸線にわたって第1の端縁に対向した針スロット26の第2の端縁と接してスリットを画定することができる。一実施形態において、針スロット26の第1の端縁及び第2の端縁は、横方向又は半径方向に外方に曲がり、ガイドワイヤ30の一部が針スロット26を通過できるようにして針20のガイドワイヤ30との係合解除を可能にするように構成され得る。
【0032】
一実施形態において、針20は、針20の外面上に配置されたシース70をさらに備えることができる。一実施形態において、シース70は、プラスチック、ポリマー、又は同様の適当な材料から形成され得る。シース70は、スロット26の上で針20のまわりにぴったりと嵌合し、流体がスロット26を通過するのを防止して針ルーメン22の完全性を維持することができる。一実施形態において、シース70は、シース70の近位端に近接してシース70の側壁に配置され、針ガイドワイヤ開口24と整合されて針ルーメン22と連通するシースガイドワイヤ開口74を備えることができる。シースガイドワイヤ開口74は、シースガイドワイヤ開口74を通って針ルーメン22内に延びるガイドワイヤ30の一部を受け入れるように構成され得る。
【0033】
一実施形態において、シース70は、シースガイドワイヤ開口74とシース70の遠位端との間に長手方向に延びる引き裂き線72を備えることができる。引き裂き線72は、ガイドワイヤ30が針スロット26を通るように促される際にシース70がそれに沿って分離できるように構成された溝、切り込み線、ミシン目、レーザーカット線、又は同様の脆弱線を含み得る。一実施形態において、配置システム10は、ガイドワイヤ30を針20から係合解除するのを容易にするためにシース70を引き裂き線72に沿って切断するように構成されたブレードをさらに備えることができる。一実施形態において、配置システム10は、シース70がガイドワイヤ30の上で促される際にガイドワイヤ30の一部を支持するためにガイドワイヤ30の近位に且つ引き裂き線72に近接して配置されるダウエルピン又は同様の支持構造を備えることができる。
【0034】
例示的な使用方法では、本明細書に記載するように、針20及びシース70アセンブリを遠位方向に押し込んで挿入部位を形成することができる。流体流が針22を通って近位方向に流れ得る。スロット26の上に配置されたシース70は、流体がスロット26を通ってルーメン22から漏れるのを防止することができる。一実施形態において、例えばシリンジシステム40によって、真空を針ルーメン22に付与して針ルーメン22を通して流体流を引き込むことができる。有利には、シース70は、流体がスロット26を通して引き込まれるのを防止し、代わりに遠位先端部に近接した針ルーメンの遠位開口部を通して流体を引き込むために、針ルーメン22の完全性を維持することができる。なお、弁又はガスケットをシースガイドワイヤ開口74及び針ガイドワイヤ開口24と整合させて、これらの開口を通じた任意の流体漏れを防止することができる。
【0035】
血管アクセスが確認されたら、針20を近位方向に引き出すことができる。針20が近位方向に引き出される際にガイドワイヤ30が適所にとどまることを可能にするために、ガイドワイヤ30の一部は、ガイドワイヤ開口24から針20の遠位端までスロット26を通過することができる。ガイドワイヤ30がスロット26を通過する際、ガイドワイヤ30は、引き裂き線72に沿ってシース70を引き裂いて、ガイドワイヤ30が針20及びシース70アセンブリから分離することを可能にし得る。認識されるように、ガイドワイヤ30を脈管構造内の適所に残したまま針20を除去する様々な装置及び方法が本発明の範囲内にあると考えられる。そのようなシステムのさらなる詳細及び実施形態は、2022年5月17日出願の米国特許出願番号第17/746,113号、及び2022年8月8日出願の米国特許出願番号第17/883,490号に見られ、上記特許文献の各々は、参照によりその全容を本出願に援用される。
【0036】
一実施形態において、RICC配置システム10は、針20が近位方向に引き出される際に、ガイドワイヤ30を挿入部位に対して安定させるように構成されたガイドワイヤ安定化システム100を備えることができる。有利には、ガイドワイヤ安定化システム100は、脈管構造内におけるガイドワイヤ30の任意の移動を軽減したり、又は脈管構造からのガイドワイヤ30の不注意による除去を防止したりすることができる。
【0037】
一実施形態において、
図3A~
図3Bに示すように、ガイドワイヤ安定化システム100は、一般に、ハウジング110及び安定化機構130を備えることができる。安定化機構130は、1つ以上のアクチュエータボタン(「ボタン」)132を備えることができる。一実施形態において、ボタン132を作動させると、安定化機構130がロック位置に移行してガイドワイヤ30を把持し、ハウジング110に対するガイドワイヤ30の移動を防止することができる。一実施形態において、ボタン132を作動させることで、さらに針ハブ28をハウジング110から解放させることができる。一実施形態において、ボタン132を解放すると、安定化機構130がロック解除位置に移行されて、ガイドワイヤ30がハウジング110に対して摺動することが可能となり得る。一実施形態において、ボタン132を解放することで、さらにハウジング110をガイドワイヤ30から係合解除させることができる。一実施形態において、ボタン132の最初の作動により、安定化機構130をロック解除位置からロック位置に移行させ、ボタン132が使用者によって解放された後にロック位置にとどまらせることができる。一実施形態において、ボタン132の2回目に作動により、安定化機構130をロック位置からロック解除位置に移行させることができる。有利には、これにより、臨床医が、アクチュエータボタン132に対する圧力を維持しなくても、ガイドワイヤ30を把持し続け、軸線方向の移動を防止することが可能となる。一実施形態において、ボタン132の最初の作動により、針ハブ28が解放されることも可能であり、ボタン132の二回目の作動により、ガイドワイヤ30がハウジング110から解放されることも可能である。動作及び作動のこれら及び他の組合せもまた本発明の範囲内にあると考えられる。
【0038】
一実施形態において、ハウジング110又はボタン132の一方又はこれらの双方は、
図3Bに示すように、シリンジシステム40並びに/又は針20及びシース70アセンブリが近位方向に引き出される間にハウジング110を握り易くするように構成された把持特徴部118を備えることができる。把持特徴部118は、ハウジング110やボタン132の表面に配置されてハウジング110を握り易くする1つ以上の隆起部、リブ、ウィング、ハンドル、移動止め、凹部又は同様の構造を含むことができる。一実施形態において、把持特徴部118は、ハウジング110の第1の材料とは異なるものであり、且つ増大した摩擦係数を与える第2の材料を含むことができる。例示的な第2の材料には、プラスチック、ポリマー、エラストマー、ゴム、シリコーンゴムなどが含まれ得る。
【0039】
使用時、
図3Bに示すように、臨床医は、ハウジング110を握り、第1の手でボタン132を作動させてガイドワイヤ30を把持し、ハウジング110及ガイドワイヤ30アセンブリを挿入部位に対して安定させることができる。臨床医は、次に、シリンジシステム40及び/又は針ハブ28を第2の手で握り、針ハブ28をハウジング110から係合解除し、針20を近位方向に引き出して針20をガイドワイヤ30から係合解除することができる。有利には、ハウジング110及び安定化機構130は、脈管構造に対するガイドワイヤ30の移動を軽減することができる。さらに、安定化システム130は、臨床医が、片手で又は単一動作で、ハウジング110を安定させること、アクチュエータボタン132を作動させること、及び/若しくは針ハブ28をハウジング110から係合解除すること、又はこれらの組合せを可能にすることができる。一実施形態において、安定化機構130は、本明細書でより詳細に記載するように、1つ以上のレバー、カム、突起及び移動止め、付勢部材、歯車、アーム、くさびなどを備えることができ、ガイドワイヤ30の把持に機械的利益を提供することができる。したがって、臨床医が安定化機構130を作動させ、ガイドワイヤ30に把持力を加えるために必要とされる力が小さくなる。これは、ガイドワイヤ30が潤滑性コーティングなどをさらに備える場合に重要になる可能性がある。
【0040】
図4A~
図4Eは、ピンチ作動ガイドワイヤ安定化システム430を備えたガイドワイヤ安定化システム100の実施形態の詳細を示す。一実施形態において、ハウジング110は、針チャネル112と、針チャネル112と連通し、針チャネル112からある角度で延びるガイドワイヤチャネル114とを画定することができる。針チャネル112は、針チャネル112を通る針20の一部を受け入れるように構成され得る。針20がハウジング110と係合されるとき、針20のガイドワイヤ開口24は、ガイドワイヤチャネル114と整合することができる。したがって、ガイドワイヤ30は、ガイドワイヤチャネル114を通り、針20のガイドワイヤ開口24を通って、針ルーメン22内に延びることができる。一実施形態において、ハウジング110の近位端は、干渉嵌合、圧入、スナップ嵌合、又はロッキング嵌合係合で、針ハブ28と解放可能に係合することができる。一実施形態において、ガイドワイヤ安定化システム430を作動させてガイドワイヤ30を把持することは、針ハブ28をハウジング110から係合解除する、又はロック解除することをさらに含む。一実施形態において、針ハブ28の近位端は、圧入、スナップ嵌合、スナップ嵌合、ルアーロック、ねじ式係合、これらの組合せなどで、シリンジシステム40と解放可能に係合することができる。
【0041】
一実施形態において、ピンチ作動安定化システム430は、ハウジングとヒンジ式に結合されロック位置とロック解除位置との間で枢動可能な1つ以上のレバー432を備えることができる。一実施形態において、ピンチ作動安定化システム430は、安定化システム430をロック解除位置に付勢するように構成された付勢部材を備えることができる。一実施形態において、レバー432の表面、例えば第1の表面は、アクチュエータボタン132を画定し得る。一実施形態において、レバー432の表面、例えば第2の表面は、把持特徴部118を備えることができる。
【0042】
一実施形態において、ピンチ作動安定化システム430は、ハウジング110の第1の側に配置された第1のレバー432Aと、長手方向軸線を挟んで第1のレバー432Aに対向した、ハウジング110の第2の側に配置された第2のレバー432Bとを備えることができる。
図4Aに示すように、第1のレバー432A及び第2のレバー432Aは、横方向軸線に沿って配列され得る。しかしながら、第1のレバー432A及び第2のレバー432Aは、横断方向軸線又は第1のレバー432Aと第2のレバー432Aとの間においてある角度で延びる軸線などの他の軸線に沿って配列され得ることが認識されよう。有利には、ピンチ作動ガイドワイヤ安定化システム430は、ロック位置にあるときに、等しい対向する力をガイドワイヤ30に加えて、ガイドワイヤ30の屈曲若しくはよじれ、又は中心軸線からのガイドワイヤ30の逸脱を軽減することができる。
【0043】
一実施形態において、
図4Cに示すように、レバー432は、把持面434、例えば、第1のレバー432Aに配置された第1の把持面434A、及び第2のレバー432Bに配置された第2の把持面434B、を備えることができる。一実施形態において、把持面434は、安定化システム430がロック位置にあるときにガイドワイヤ30に接することができ、ハウジング110に対するガイドワイヤ30の移動を軽減又は阻止することができる。一実施形態において、ロック解除位置では、把持面434は、ガイドワイヤ30から離間した関係にあり、ガイドワイヤ30が例えばガイドワイヤチャネル114を通ってハウジング110に対して自由に摺動することを可能にし得る。
【0044】
一実施形態において、ロック解除位置では、把持面434は、干渉係合でガイドワイヤ30に接して、ガイドワイヤ30が例えばガイドワイヤチャネル114を通ってハウジング110に対して摺動することを許容し得る。しかしながら、ロック解除位置における把持面434とガイドワイヤ30との間の摩擦により、ガイドワイヤ30が自由に摺動することは防止され得る。言い方を変えれば、ロック解除位置において、使用者は、ガイドワイヤ30をハウジング110に対して第1の位置に配置することができ、ガイドワイヤ30は、ピンチ作動安定化システム430を作動させることなく、第2の位置に再配置されるまで第1の位置にとどまることができる。一実施形態において、把持面434は、レバー432及びハウジング110と同じ材料、例えば第1の材料、から形成され得る。第1の材料は、プラスチック、ポリマー、金属、合金、複合物、などとすることができ、実質的に弾力のある、剛性のある、又は高デュロメータ硬さの機械的特性を示し得る。一実施形態において、第1の材料は、ガイドワイヤ30を把持するときに弾性変形をほとんど又はまったく示さない可能性があり、したがって、ピンチ安定化システム430は、ロック位置においてガイドワイヤ30に増大した圧力を与えて確実な把持を保証することができる。
【0045】
一実施形態において、
図4Dに示すように、把持面434は、レバー432又はハウジング110の第1の材料とは異なる第2の材料を含むことができる。第2の材料は、本明細書に記載するように、高い摩擦係数を有し得る。一実施形態において、第2の材料は、第1の材料よりも、柔軟性が高い(more compliant)か、又はデュロメータ硬さが低いものとすることができ、安定化システム430がロック位置にあるときにガイドワイヤ30のまわりで弾性変形することができる。有利には、第2の材料を含む把持面434は、ピンチ作動安定化システム430によって把持されたときにガイドワイヤ30のよじれを防止することができ、且つ把持面434とガイドワイヤ30との間の接触面積の増大をもたらすことができる。
【0046】
一実施形態において、
図4Eに示すように、把持面434は、突起及び/又は移動止めを備えることができる。例えば、第1の把持面434Aは移動止めを備えることができ、第2の把持面434Bは、ロック位置において移動止めに係合するように構成された突起を備えることができる。しかしながら、突起及び移動止めの他の形状、数及び組合せも本発明の範囲内にあると考えられることが認識されよう。一実施形態において、ガイドワイヤ30は、ニチノールなどのような超弾性材料から形成され得る。ロック位置において、突起及び移動止めは、ガイドワイヤ30を第1の把持面434Aと第2の把持面434Bとの間で非直線形状に弾性変形させ、ガイドワイヤ30に対する確実な把持をもたらすことができる。ロック解除位置において、ガイドワイヤ30は、元の直線形状に戻ることができる。一実施形態において、突起又は移動止めの表面は、本明細書に記載するように、ガイドワイヤ30が自由に摺動するのを防止する一方で臨床医がガイドワイヤ30をハウジング110に対して再配置することも可能にするように構成された干渉嵌合で、ロック解除位置においてガイドワイヤ30に係合することができる。
【0047】
例示的な使用方法において、
図4Bに示すように、臨床医は、対向する「挟持」力をガイドワイヤ30の軸線に対してある角度で延びる軸線に沿って第1のレバー432A及び第2のレバー432Bに加えて安定化システム430を作動させ、ガイドワイヤ30を把持面434Aと把持面434Bとの間で把持することができる。一実施形態において、レバー432A,432Bを作動させると、針ハブ28がハウジング110との係合を解除することができる。臨床医は、次に針20を近位方向に後退させることができる。ガイドワイヤ30を適所に残したまま、針20を除去することができる。有利には、安定化システム430は、臨床医が、片手で又は単一動作で、ハウジング110を安定させること、アクチュエータボタン132を作動させること、及び/若しくは針ハブ28をハウジング110から係合解除すること、又はこれらの組合せを可能にすることができる。一実施形態において、ハウジング110は、ハウジング110の外面、例えば下面、と針チャネル112及びガイドワイヤチャネル114の一方又は双方との間で長手方向に延び、これらの間を連絡するハウジングスロット116を備えることができる。針20が除去されたら、臨床医は、安定化機構430を解放してガイドワイヤ30を解放し、ハウジングスロット116を通してガイドワイヤ30の一部を摺動させることによってハウジング110をガイドワイヤ30から係合解除することができる。
【0048】
図5A~
図5Cは、カムガイドワイヤ安定化システム530の実施形態を示す。一実施形態において、カム安定化システム530は、ロック解除位置(
図5A、
図5B)とロック位置(
図5C)との間でハウジング110と回転可能に係合されるカム532を備えることができる。一実施形態において、カム532は、ガイドワイヤ30の軸線と平行に延びる軸線を中心に回転し得る。しかしながら、カム532は、ガイドワイヤ30の軸線に対してある角度で延びる軸線を中心に回転し得ることが認識されよう。一実施形態において、カム532は、ロック位置及びロック解除位置の一方又は双方において安定し得る。一実施形態において、カム532は、カム532から延び、カム532を回転させるために機械的利益を提供するように構成されたカムレバー534を備えることができる。さらに、ハウジング110に対するカムレバー534の位置は、カムがロック位置にあるか又はロック解除位置にあるかを使用者に示すことができる。一実施形態において、レバー534は、カムがロック位置にあるか又はロック解除位置にあるかを使用者に示すように構成された1つ以上の記号、色、英数字記号などを備えることができる。
【0049】
一実施形態において、カム532は、第1の切欠き536及び第2の切欠き538を備えることができ、これらの切欠き536,538は、長手方向軸線、すなわちガイドワイヤ30又はガイドワイヤチャネル114の軸線と平行に延びる軸線、に沿って、カム532を通ってそれぞれ延びている。ロック解除位置では、第1の切欠き536がガイドワイヤチャネル114及びガイドワイヤ30と整合することができる(
図5B)。ロック位置では、第2の切欠き538がガイドワイヤチャネル114及びガイドワイヤ30と整合することができる(
図5C)。
【0050】
一実施形態において、第1の切欠き536は、第2の切欠き538より大きな直径を画定することができる。ロック解除位置では、第1の切欠き536が、ハウジング110と協働してガイドワイヤチャネル114の一部を画定することができる。一実施形態において、第1の切欠き536及びハウジング110は、ガイドワイヤ30の外径より大きい内径を有するガイドワイヤチャネル114の一部を画定することができる。したがって、ロック解除位置では、ガイドワイヤ30は、第1の切欠き536に摺動可能に係合することができる。ロック位置では、第2の切欠き538が、ハウジング110と協働してガイドワイヤチャネル114の一部を画定することができる。ロック位置では、第2の切欠き528の表面が、ガイドワイヤ30をハウジング110の表面に対して圧迫してガイドワイヤ30を把持し、ガイドワイヤ30の軸線方向の移動を防止することができる。認識されるように、カム安定化システム530は、図示した回転移動を通じて、ロック位置とロック解除位置との間、すなわち第1の切欠き536と第2の切欠き538との間、を移行することができるが、他の運動の経路、例えば直線状、楕円状、若しくは多方向の移動、又は回転の軸線など、或いはこれらの組合せも本発明の範囲内にあると考えられる。
【0051】
図6A~
図6Bは、クリンピング(折り曲げ)安定化機構630の実施形態を示し、ハウジング110にヒンジ式に結合され、ロック解除位置(
図6A)とロック位置(
図6B)の間で移行可能なクリンプレバー632を含み得る。一実施形態において、レバー632は、ロック解除位置に向かって付勢され得る。一実施形態において、レバー632の外面は、作動ボタン132を画定することができる。一実施形態において、レバー632の内面は、ガイドワイヤ30に係合するように構成された把持面634を画定することができる。
【0052】
使用時、臨床医は、作動ボタン132に力を加え、把持面634をガイドワイヤの軸線に対して半径方向内方に摺動させることができる。一実施形態において、把持面634は、ガイドワイヤチャネル114内に延びることができる。一実施形態において、把持面634は、ガイドワイヤ30に突き当たり、ガイドワイヤ30の直線部分をガイドワイヤ30の中心軸線から偏向させて、ガイドワイヤ30の該部分を非直線形態に折り曲げ、ガイドワイヤ30の軸線方向の移動を阻止することができる。臨床医は、作動ボタン132を解放し、レバー632をロック解除位置に戻るように移行させることができる。ガイドワイヤ30は、折り曲げられていない直線形状に戻ることができ、ハウジング110に対して摺動することができる。一実施形態において、非直線形態は、ガイドワイヤ30を曲がった経路内に、屈曲させること、よじれさせること、折り曲げること、ねじること、押し入れること、又はこれらの組合せを含むことができる。有利には、クリンピング安定化機構630は、ガイドワイヤ30がその表面に配置されたコーティング又は同様の潤滑剤を備える場合であってもガイドワイヤ30を固定することができる。
【0053】
図7A~
図7Bは、圧迫安定化機構730の実施形態を示しており、ハウジング110にヒンジ式に結合され、ロック解除位置(
図7A)とロック位置(
図7B)との間で移行可能な単一レバー732を含むことができる。一実施形態において、レバー732は、ロック解除位置に向かって付勢され得る。一実施形態において、レバー732の外面は、作動ボタン132を画定することができる。一実施形態において、レバー732の内面は、ガイドワイヤ30に係合するように構成された把持面734を画定することができる。
【0054】
使用時、臨床医は、作動ボタン132に力を加え、把持面734をガイドワイヤ30の軸線に対して半径方向内方に摺動させることができる。一実施形態において、把持面734は、ガイドワイヤチャネル114内に延びることができる。一実施形態において、把持面734は、ガイドワイヤ30の一部に突き当たることができ、ガイドワイヤ30の一部をガイドワイヤチャネル114の対向壁に対して圧迫することができる。一実施形態において、圧迫安定化機構730は、ガイドワイヤ30を屈曲させたり、よじれさせたりすることなく、つまりロック位置においてガイドワイヤ30の実質的に直線状の形態を維持して、ハウジング110に対するガイドワイヤ30の軸線方向の移動を阻止することができる。ガイドワイヤ30の一部を圧迫するレバー732により、ガイドワイヤ30がハウジング110に対して軸線方向に摺動することが防止され得る。臨床医は、作動ボタン132を解放し、レバー732がロック解除位置に戻るように移行できるようにし得る。その後、ガイドワイヤ30は、ハウジング110に対して摺動することができる。
【0055】
図8A~
図8Bは、クランプ安定化機構830の実施形態を示しており、第1の軸線、例えばガイドワイヤチャネル114の軸線に対してある角度で延びる軸線、に沿ってハウジング110と摺動可能に係合されるクランプアーム832を含むことができる。一実施形態において、ガイドワイヤ30は、実質的に長手方向に延びることができ、クランプアーム832は、実質的に横方向軸線に沿ってハウジング110に摺動可能に係合することができる。クランプアーム832は、ロック解除位置(
図8A)とロック位置(
図8B)との間で移行可能であり得る。一実施形態において、クランプアーム832は、付勢部材を備えることができ、ロック解除位置に向かって付勢され得る。一実施形態において、クランプアーム832の外面は、作動ボタン132を画定することができる。一実施形態において、クランプアーム832の内面は、ガイドワイヤ30に係合するように構成された把持面834を画定することができる。一実施形態において、把持面834は、くさび状の断面形状を与えるように、第1の軸線に対して、例えば横方向軸線に対して、角度をなすことができる。
【0056】
使用時、臨床医は、作動ボタン132に力を加えて、クランプアーム832を長手方向軸線に対して実質的に垂直な第1の軸線に沿ってハウジング110内に押し込むことができる。一実施形態において、把持面734は、ガイドワイヤチャネル114内に延びることができる。くさび状の把持面834は、クランプアームの第1の軸線(横方向軸線)及びガイドワイヤ30の第2の軸線(長手方向)の双方に対してある角度で延びる第3の軸線、例えば横断方向軸線、に沿ってガイドワイヤ30の一部を押し付けることができる。把持面は、ガイドワイヤ30の一部をガイドワイヤチャネル114の壁に対して押し付けて、ガイドワイヤ30を上記壁に締め付け、ハウジング110に対するガイドワイヤ30の軸線方向の移動を防止することができる。臨床医は、作動ボタン132を解放し、クランプアーム832がロック解除位置に戻るように移行できるようにして、ガイドワイヤ30を解放し、ガイドワイヤ30がハウジング110に対して摺動することを可能にし得る。
【0057】
図9A~
図9Bは、針作動安定化機構930の実施形態を示す。一実施形態において、臨床医は、針ハブ28をハウジング110から分離し、針20を針チャネル112から引き出すことができる。針20が近位方向に引き出されると、針20は、内側針ハウジング910と係合することができ、針作動安定化機構930をロック位置に移行させることができる。針20が完全にハウジング110との係合を解除したら、内側ハウジング910は、ロック解除位置に戻るように移行して、ガイドワイヤ30を解放し、ハウジング110がガイドワイヤ30との係合を解除することを可能にし得る。
【0058】
一実施形態において、針作動安定化機構930は、ハウジング110、例えば外側ハウジング110、と摺動可能に係合された内側ハウジング910を備えることができる。外側ハウジング110は、内側ハウジング910を内部に受け入れるように構成されたチャネル912を画定することができ、チャネル912は、テーパ状近位端を画定する。内側ハウジング910は、針チャネル112の一部を画定することができ、第1のアーム932A及び第2のアーム932Bを備えることができる。内側ハウジング910は、弾力性のある材料から形成され得る。したがって、第1のアーム932A及び第2のアーム932Bは、可撓性であり、ロック解除位置(
図9A)からロック位置(
図9B)へ半径方向内方に弾性変形することができる。各アーム932は、把持面934、例えば第1の把持面934A及び第2の把持面934B、を画定することができる。さらに、アーム932の近位端は、外側ハウジング110のテーパ状近位端に係合するように構成されたテーパ面を画定することができる。
【0059】
一実施形態において、針チャネル112の一部を画定する内側ハウジング910の一部は、針20と干渉嵌合で係合し得る。したがって、針20が針チャネル112を通って近位方向に促されると、内側ハウジング910は、針20と係合することができ、近位方向に促され得る。内側ハウジング910のテーパ状近位端は、ハウジングチャネル912のテーパ状近位端に係合することができ、把持面934が針20のガイドワイヤ開口24から延びるガイドワイヤ30の一部に係合できるようにアーム932を半径方向内方へ偏向させて、外側ハウジング110に対するガイドワイヤ30の軸線方向の移動を防止することができる。針20は引き続き近位方向に促され、それによりガイドワイヤ30の一部が、本明細書に記載するように、針スロット26を通るように促され得る。針20が外側ハウジング110から除去されると、内側ハウジング910は、遠位方向に自由に移動でき、ハウジングチャネル912の近位端との係合を解除し、アーム932が偏向していないロック解除位置に戻ることを可能にし、ガイドワイヤ30を解放する。
【0060】
図9A~
図9Bに示すように、針作動安定化機構930は、ハウジング110に対する針20の直線移動によって作動され得る。一実施形態において、針作動安定化機構930はまた、回転、らせん状、多方向、横方向、横断方向、又は長手方向軸線に対して垂直、又はこれらの組み合わせなどの針の移動の他の軸線又は方向によって作動させることもでき、本発明の範囲内に含まれると考えられる。
【0061】
図10A~
図10Bに示すように、ばね作動安定化システム1030は、ガイドワイヤ30の軸線に対してある角度で延びる軸線に沿って、ロック位置とロック解除位置との間でハウジング110と摺動可能に係合されるクランプアーム1032を備えることができる。一実施形態において、クランプアーム1032は、横方向軸線に沿ってハウジング110に摺動可能に係合することができる。クランプアーム1032の外面は、アクチュエータボタン132を画定することができる。クランプアーム1032の内面は、把持面1034を画定することができる。一実施形態において、ばね作動安定化システム1030は、ロック位置に向かって付勢され得る。例えば、ばね作動安定化システム1030は、ハウジング110とクランプアーム1032の表面との間に配置され、クランプアーム1032をロック位置に向かって付勢するように構成された圧縮ばね1040を備えることができる。付勢部材1040の他の種類及び形態も本発明の範囲内にあると考えられることが認識されよう。ロック位置では、把持面1034は、ガイドワイヤに突き当たることができ、ガイドワイヤ30の一部をガイドワイヤチャネル114の壁に対して圧迫することができる。ロック解除位置では、把持面1034は、ガイドワイヤ30との係合を解除して、ガイドワイヤ30が軸線方向に摺動することを可能にし得る。
【0062】
使用時、ばね作動安定化システム1030は、ガイドワイヤ30に係合し、ハウジング110に対してガイドワイヤ30の位置をロックすることができる。脈管構造にアクセスしたら、臨床医は、作動ボタン132に力を加えて、付勢部材1040の力に打ち勝ち、クランプアーム1032をロック位置からロック解除位置に移行させることができる。臨床医は、ガイドワイヤ30を標的位置まで進め、次いでアクチュエータボタン132を解放して付勢部材1040によってクランプアーム1032をロック位置に移行させることができる。有利には、臨床医は、その後、本明細書に記載するように、針20が近位方向に引き出される間、ボタン132に対する圧力を維持しなくても、ハウジング110を安定させることができる。
【0063】
いくつかの特定の実施形態が本明細書で開示されており、特定の実施形態が若干詳細に開示されているが、特定の実施形態が本明細書で提供される概念の範囲を限定することは意図されていない。付加的な適応及び/又は変更は当業者には明らかであり、より広い態様において、これらの適応及び/又は変更は同様に包含される。したがって、本明細書で提供される概念の範囲から逸脱することなく、本明細書で開示される特定の実施形態から発展させることができる。
【国際調査報告】