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特表2024-536583自閉症スペクトラム障害の治療におけるエダラボンの使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-04
(54)【発明の名称】自閉症スペクトラム障害の治療におけるエダラボンの使用
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/4152 20060101AFI20240927BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20240927BHJP
   A61K 9/10 20060101ALI20240927BHJP
   A61K 47/34 20170101ALI20240927BHJP
   A61K 47/38 20060101ALI20240927BHJP
   A61K 47/36 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
A61K31/4152
A61P25/00
A61K9/10
A61K47/34
A61K47/38
A61K47/36
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024523678
(86)(22)【出願日】2022-10-20
(85)【翻訳文提出日】2024-05-27
(86)【国際出願番号】 CN2022126364
(87)【国際公開番号】W WO2023066330
(87)【国際公開日】2023-04-27
(31)【優先権主張番号】202111232032.0
(32)【優先日】2021-10-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519166051
【氏名又は名称】スーヂョウ アウゾン バイオロジカル テクノロジー カンパニー, リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】チョウ, イー
(72)【発明者】
【氏名】イェ, シン
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA16
4C076BB01
4C076BB02
4C076BB11
4C076BB15
4C076BB17
4C076BB24
4C076BB25
4C076BB26
4C076BB29
4C076BB30
4C076BB31
4C076CC01
4C076EE23
4C076EE32
4C076EE33
4C076EE37
4C076FF68
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC36
4C086MA01
4C086MA03
4C086MA04
4C086MA05
4C086MA34
4C086MA52
4C086MA55
4C086MA58
4C086MA59
4C086MA60
4C086MA63
4C086MA66
4C086NA14
4C086ZA01
(57)【要約】
本発明は自閉症スペクトラム障害の治療におけるエダラボンの使用に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自閉症スペクトラム障害を治療するための医薬の製造における、エダラボン又はその薬学的に許容される塩又は類似体又は誘導体の使用。
【請求項2】
前記医薬が、エダラボン又はその薬学的に許容される塩又は類似体又は誘導体、及び1つ又は複数の薬学的に許容される賦形剤を含む、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
前記医薬の投与方式が、点滴投与、筋肉注射投与、経口投与、経皮投与、舌下投与、経鼻投与、眼内投与、内耳投与、直腸投与、又は膣内経路投与から選択されるものであって、好ましくは経口投与である、請求項2に記載の使用。
【請求項4】
前記医薬の剤形が固体製剤であって、好ましくは固体分散体製剤である、請求項1に記載の使用。
【請求項5】
前記固体分散体製剤が、有効成分としてのエダラボン又はその薬学的に許容される塩又は類似体又は誘導体、ポリマー担体(ソルプラス、ポリエチレングリコール(PEG)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテート(HPMCAS)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)及びキトサンから選択される)、および任意的に選択される表面活性剤TPGS 1000を含む、請求項4に記載の使用。
【請求項6】
前記エダラボン又はその薬学的に許容される塩又は類似体又は誘導体の単位用量が0.001~1000mgであって、好ましくは0.1~100mg、より好ましくは1~50 mgである、請求項5に記載の使用。
【請求項7】
前記エダラボン又はその薬学的に許容される塩又は類似体又は誘導体の投与量が0.1~100mg/kgであって、好ましくは1~30mg/kgである、請求項1に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
技術分野
本発明は製薬分野に属し、具体的には、エダラボンの新しい使用、特に自閉症スペクトラム障害を治療するための医薬の製造におけるエダラボンの使用に関する。
【0002】
背景技術
自閉症スペクトラム障害(Autism Spectrum Disorders、ASD)は1つ又は複数の要因によって引き起こされる生物学的基盤を有する神経発達障害であるが、現在の医学界において、まだ普遍的に使用できる特効薬はない。ASDは世界中のそれぞれの層に存在し、男児の発症率は女児の3~4倍であり、主に、社会的コミュニケーションの対人障害と、限定された興味及び反復的な常同行動という2つの中核的な症状がある。一般的に、1歳半くらいから親が徐々に他の子どもとの違いに気付くようになり、一般的に3~5歳で診断される。近年、自閉症の発症率の統計結果は年々増加しており、米国疾患管理センターでは2007年と2009年に自閉症患者の検出率をそれぞれ1/150、1/110と発表した。米国の8歳児のデータによれば、2012年から2020年までの自閉症有病率は1/68から1/54に増加している。中国における自閉症児童の推定人数は300万人近くであるが、実際の人数は700万と推定される。自閉症の発症率が普遍的に高めであることから、現在、国内外の学者、教育者、医療従事者などの当分野の専門技術者が自閉症に関する研究を行っている。自閉症は既に癌や心臓病に加えて、人間の生命と健康に影響を与えるキラーの1つとなっている。
【0003】
現在までに自閉症の発病メカニズムはまだ明らかになっていないが、近年の研究により、以下のような様々な要因が関係している可能性があると示されている:1、遺伝的要因(例えば、コピー数変異、単一遺伝子突然変異(Shank3、FMR1など)、マルチローカス遺伝子の累積効果など)。2、エピジェネティックな調節(DNAメチル化、タンパク質修飾を介したクロマチン再構成およびノンコーディングRNAなど)。3、脳内免疫反応異常。4、妊娠中薬物曝露(例えば、バルプロ酸ナトリウム(Valproic acid、VPA))など。自閉症の原因が不明であることから臨床診断や治療が困難となっており、普遍的な治療方法はまだ発見されていない。現在、自閉症の社交情緒障害に対する主な介入手段は非薬物介入方法であり、即ち、社交障害訓練(ゲーム療法、ビデオデモンストレーション法、音楽療法、絵カード交換式コミュニケーションシステム(PECS)など)及び情緒障害訓練(感情認知及び理解訓練、心理理論訓練など)である。しかし統計によれば、3分の2近くのASD児童は成人後も自立した生活ができず、生涯にわたって介護が必要となり、家族に経済的、精神的な重圧をもたらし、また、社会にも大きな負担をもたらしている。そのため、薬物による治療法の確立が急務となっている。
【0004】
エダラボン(Edaravone、EDA)はピラゾロン誘導体の一つであり、その化学名は3-メチル-1-フェニル-2-ピラゾリン-5-オンであり、分子式はC10H10N2Oであり、構造式は以下の通りである:
【化1】
【0005】
EDAの中心構造又は活性中心は2-ピラゾリン-5-オンであり、フリーラジカル排除活性に対して主要な役割を果たしており、置換基は活性にほとんど影響しない(Bioorg. Med. Chem. Lett. 13(2003) 3789-3792)。
【0006】
EDAは含窒素複素環化合物であり、アルカリ性で、酸と容易に反応して塩を形成し、その薬学的に許容される塩としては、当分野で一般的な無機酸塩及び有機酸塩が挙げられ、そのうち、無機酸塩としては、塩酸塩、炭酸塩、リン酸塩などが挙げられ、有機酸塩としては、クエン酸塩、酒石酸塩、酢酸塩、シュウ酸塩、サリチル酸塩、リンゴ酸塩、乳酸塩などが挙げられる。
【0007】
EDA類似体は、ピラゾリン環上の3位のメチル基がエチル、プロピルなどの低級(C1-6)アルキル、又は、例えばメトキシ、エトキシなどの低級アルコキシであってもよい。または3位のメチル基がHで、4位のHが低級アルキル又はアルコキシで置換されてもよい。エダラボンの誘導体は、エステルを含み、即ち、ピラゾリン環の5位のケトンがエノールに変換され(J. Radiat. Res.、 52、 15-23 (2011))、カルボン酸と反応して、例えばメチルエステル、エチルエステルなどのエステルを形成する。前記エステル(前駆体)は体内で加水分解された後にケトンに変換される。この他、フェニル基も任意的に低級アルキル、低級アルコキシ、ニトロ、ハロゲンなどから選択される一つの又は複数の置換基で置換される。
【0008】
EDA誘導体は、Bioorg.Med. Chem. Lett. 16(2006)の表1-2及び図2に開示された18種類ものEDA誘導体を含み、そのうち、EDAのベンゼン環(R1)、3位(R3)及び4位(R4)がさらに修飾され、類似する酸化電位(Epa)及びヒドロキシフリーラジカル排除活性(IC50)を有する。
【0009】
EDA誘導体は、Bioorg.Med. Chem. Lett. (2015)で証明された21種類のEDA誘導体を含み、同様の抗凝集特性を有する(http://dx.doi.org/10.1016/j.bmcl.2015.11.022)。
【0010】
EDA誘導体はさらに、特許出願No.201710036907.7で開示された式(I)化合物、特に式(Ia)化合物(BE)を含む。当該特許出願書類の内容は参照により全て本明細書に組み込まれる。
【0011】
エダラボンは合成された強力な酸素フリーラジカルスカベンジャーであり、酸化ストレスを軽減し、且つ、非酵素的脂質過酸化及びリポキシゲナーゼ経路を介した脂質過酸化を抑制する抗酸化作用を有する。エダラボンは田辺三菱製薬株式会社(日本大阪)により開発され、急性脳梗塞による神経症状、日常生活動作及び機能障害の改善に使用されており、市販されている剤形は注射剤である。現在、エダラボンは既に急性虚血性脳卒中(AIS)を治療するものとして国内外で広く使用されており、心血管疾患や脳卒中などの過剰な活性酸素種(ROS)関連疾患の治療にも使用されている。
【0012】
CN105816423Bはエダラボンの様々な製剤(例えば固相分散体製剤)及び人間の酸化ストレス関連疾患の効果的な治療における使用を開示している。CN108403691Aはエダラボンが白内障の予防と治療に使用できることを開示している。CN105616405Aはエダラボンが直接Aβに直接作用し、Aβ凝集を阻害し、Aβ繊維の解重合を促進することにより、脳アミロイド血管症(CAA)の進行を阻害又は緩和させることを開示している。CN109431966Aはエダラボン又はその塩およびマンニトールを含むエダラボン医薬組成物及びその舌下製剤を開示している。CN107773545Aはエダラボンと(+)-2-カンフォール(camphol)の舌下医薬組成物を開示している。CN105878171Aはエダラボン経鼻投与製剤を開示している(上記6件の特許出願書類の内容は参照により全て本明細書に組み込まれる)。
【0013】
CN112912072Aは第1の化合物と第2の化合物を共同投与することを含み、第1の化合物と第2の化合物が独立して(a)式(I)化合物、…(c)エダラボン又はリルゾール、…(e)非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)、または(f)抗炎症ペプチドである、必要とする対象におけるニューロン炎症の治療又は進行を緩和させる方法を開示している。さらに、具体的に、第1の化合物がクロモリンナトリウムであり、第2の化合物がNSAIDであり、そのうち、ニューロン炎症がALS、ASD、虚血性脳卒中及びプリオン病であることを開示している。
【0014】
TW201912152Aは個体に対してd-メタドン(methadone)などを投与することを含む、神経系疾患などを治療又は予防するための方法を開示している。また、d-メタドンはエダラボンと併用可能であること、および神経系疾患にはAD、ASDなどを含むことを教示している。
【0015】
しかし、従来技術において、エダラボンを単独で、自閉症スペクトラム障害(ASD)の治療に使用したという報告はない。
【0016】
発明の概要
本発明は、エダラボンの新しい使用、即ち、自閉症スペクトラム障害(ASD)を治療するという新しい使用を提供することを目的とする。
【0017】
まず、本発明は、自閉症スペクトラム障害(ASD)を治療するための医薬の製造における、エダラボン又はその薬学的に許容される塩又は類似体又は誘導体(好ましくは単独で唯一の有効成分として)の使用を提供する。
【0018】
一方、本発明はさらに、エダラボン又はその薬学的に許容される塩又は類似体又は誘導体、および1つ又は複数の薬学的に許容される賦形剤を含む、自閉症スペクトラム障害を治療するための医薬組成物を提供する。
【0019】
本発明によれば、エダラボンはさらに、ASDを治療するための1つ又は複数の他の医薬(例えばクロモリン/塩、NSAID、d-メタドンなど)と組み合わせて(順次に又は同時に)使用することもできる、又はASDを治療するための1つ又は複数の他の医薬(例えばクロモリン/塩、NSAID及びd-メタドンを含むがこれらに限定されない)と共に医薬組成物を構成することもできる。
【0020】
本発明によれば、医薬組成物の投与方式が、点滴投与、筋肉注射投与、経口投与、経皮投与、舌下投与、経鼻投与、眼内投与、内耳投与、直腸投与、又は膣内経路投与であって、好ましくは経口投与である。
【0021】
本発明の1つの実施形態において、前記経口投与の医薬の剤形が固体製剤であり、好ましくは固相分散体製剤である。当該製剤が、有効成分として、エダラボン又はその薬学的に許容される塩、ポリマー担体として、ソルプラス、ポリエチレングリコール(PEG)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテート(HPMCAS)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)及びキトサンから選択されるもの(そのうち、好ましくはソルプラス及び/又はHPMC、より好ましくはソルプラス)、および任意的に選択される表面活性剤TPGS 1000を含む。前記医薬組成物において、エダラボンの単位用量が0.001~1000mg、好ましくは0.01~500mg、より好ましくは0.1~100 mg、最も好ましくは1~50 mgであり、例えば1 mg、2mg、3 mg、4 mg、5 mg、10 mg、15 mg、20 mg、25 mg、30 mg、35 mg、40 mg、45 mg及び50 mgである。
【0022】
本発明は、治療有効量のエダラボン又はその薬学的に許容される塩又は類似体又は誘導体を、必要とする対象に投与することを含む、エダラボン又はその薬学的に許容される塩又は類似体又は誘導体を用いて自閉症スペクトラム障害(ASD)を治療する方法に関する。
【0023】
本発明はさらに、自閉症スペクトラム障害(ASD)を治療するためのエダラボン又はその薬学的に許容される塩又は類似体又は誘導体、または、エダラボン又はその薬学的に許容される塩又は類似体又は誘導体を含む自閉症スペクトラム障害(ASD)を治療するための医薬に関する。
【0024】
本発明は、予想外に、エダラボンが自閉症スペクトラム障害の治療において、非常に良好な治療効果を示し、特に、社交障害、常同行動の改善において、突出した治療効果を示した。
【0025】
定義
技術用語“薬学的に許容される”とは、EMEA(欧洲)及び/又はFDA(US)及び/又は如何なるその他の国の管理機構などの管理機関により、動物、好ましくはヒトでの使用が承認されていることを指す。
【0026】
技術用語“賦形剤”とは、治療薬と一緒に投与される希釈剤、補助剤又は担体を指す。適切な薬学的な賦形剤の実例はE.W. Martin著 “Remington’s 薬学(Remington’s Pharmaceutical Sciences)に記載されている。
【0027】
本発明は自閉症スペクトラム障害の治療に適したエダラボンの投与方式を提供する。投与の利便性を考慮し、患者の服薬コンプライアンスを高めるために、経口投与が好ましい。
【0028】
本発明において、経口投与の製剤の調製方法は当分野における通常の方法を参照して調製できる。特に、CN105816423Bに開示されている方法を参考にしてエダラボン又はその薬学的に許容される塩の経口投与製剤を調製することが好ましい。
【0029】
本発明において、エダラボン又はその薬学的に許容される塩又は類似体又は誘導体は、“エダラボン”と総称されることがあり、互換的に使用される。
【0030】
本発明によれば、エダラボンの投与量は0.1 mg/kg~100 mg/kg である。そのうち、治療の場合、投与量は好ましくは0.1~50 mg/kg、例えば0.1 mg/kg、0.5 mg/kg、1.0 mg/kg、2.0mg/kg、3.0 mg/kg、5.0 mg/kg、10.0 mg/kg、15 mg/kg、20mg/kg、25 mg/kg、30 mg/kg、35 mg/kg、40 mg/kg、45mg/kg又は50 mg/kgなど、1日2回~週2回投与する。
【0031】
本発明製剤の投与量及び投与頻度は患者の病状に応じて変えることができ、疾患の進行が緩和又は終息するまで、好ましくは患者の疾患症状の部分的又は完全な改善を示すまでは、比較的短い間隔、比較的高用量(例えば、5.0-35mg/kg)を必要とする場合がある。本発明の医薬は非経口投与、局所投与、静脉内投与、経口投与、皮下投与、動脈内投与、頭蓋内投与、くも膜下投与、腹腔内投与、経鼻投与又は筋肉内投与方式により投与することができる。他の経路も同様に有効であるが、典型的な投与経路は経口投与であり、その次は筋肉注射であり、このような注射の最も一般的なものは腕又は脚の筋肉注射である。
【図面の簡単な説明】
【0032】
本発明の技術考案をより明確に説明するために、以下に図面と合わせて簡単に説明する。これら図面は、本出願に記載の幾つかの発明を実施するための形態に過ぎないことは言うまでもない。本発明にはこれら図面が含まれるがこれらに限られない。
【0033】
図1図1はモデル化後のVPAモデルグループ及び正常グループのグルーミング時間比較を示す。
図2図2はモデル化後のVPAモデルグループ及び正常グループの3チャンバー社交実験結果を示す。
図3図3は治療14日後、28日後の実験動物の社交指数(social index、SI)の自身の前後比較を示す。
図4図4は治療14日後及び28日後の実験動物の社交指数(SI)グループ間の比較を示す。
図5図5は治療28日後の実験動物のグルーミング時間(grooming time)の自身の前後比較を示す。
図6図6は治療28日後の実験動物のグルーミング時間のグループ間の比較を示す。
図7図7は前頭前野(PFC)のSOD活性の測定結果を示す。
図8図8は小脳(CE)のSOD活性の測定結果を示す。
図9図9は前頭前野(PFC)のGST活性の測定結果を示す。
図10図10は海馬(HIP)のGST活性の測定結果を示す。
図11図11は海馬(HIP)のGSH活性の測定結果を示す。
図12図12は血清中のGSH活性の測定結果を示す。
図13図13は血清中のCys含量の測定結果を示す。
【0034】
発明を実施するための形態
本発明をさらに理解するために、以下に実施例と合わせて、本発明の好ましい実施形態を説明する。これら説明は本発明の技術考案の特徴及び利点を、例を挙げて説明しているに過ぎず、本発明の保護範囲を限定するものではない。
【0035】
実験の目的
バルプロ酸ナトリウム(Valproic acid、VPA)誘発ラット自閉症モデルにおけるエダラボンの治療効果を検証する。
【0036】
自閉症モデルの確立
SD妊娠ラット25匹に対して、12.5日目に、バルプロ酸ナトリウム(VPA)500 mg/kgを単回腹腔注射し、21日目に分娩させ、雄の仔をVPAグループとした。対照グループ妊娠ラット5匹に対して、12.5日目に、生理塩水を等量、単回腹腔注射し、21日目に分娩させ、雄の仔をCONグループとした。
【0037】
仔マウスが25日齢になってから、オープンフィールドテストを実施し、動物の反復的な常同行動を反映するグルーミング時間を観察した。3チャンバー社交実験を実施し、社交指数(Social Index、 SI)を観察した。社交指数=(動物が知らないマウスエリアに入った時間-動物が空のケージエリアに入った時間)÷(動物が知らないマウスエリアに入った時間+動物が空ケージエリアに入った時間)が実験動物の社交能力を反映する。その結果、CONグループと比較して、VPAグループの動物のグルーミング時間は有意に増加した(図1、p<0.005)。3チャンバー社交実験で、CONグループと比較して、VPAグループの動物の社交指数(Social Index、SI)は有意に低下した(図2、p<0.0001)。以上の結果から、VPAグループの動物は明らかな社交障害及び反復的な常同行動を示し、モデル化が成功したことを表す。
【0038】
動物のグループ分け、投与、検査
26日齢になってから、モデルのVPAグループをランダムに以下の6個のグループに分けた:プラセボグループ(n=19、ソルプラス(soluplus) 428 mg/kg)、陽性薬物(クロモリンナトリウム)グループ(n=14、クロモリンナトリウム6.3 mg/kg)、陽性薬物溶媒(NS)グループ(n=12、等量生理塩水)、EDA低用量グループ(n=12、エダラボン3 mg/kg)、EDA中用量グループ(n=12、エダラボン10 mg/kg)及びEDA高用量グループ(n=22、エダラボン30 mg/kg)。また、別途、CONグループ(n=9)を設けた。陽性薬物グループ及び陽性薬物溶媒グループに腹腔内注射を行い、プラセボグループ及びEDA各用量グループには胃内投与を行った。1日1回、28日間連続して行った。投与14日後及び投与28日後に3チャンバー社交実験を行い、投与28日後にオープンフィールド実験を行った。動物を犠牲にした後、プラセボグループ及びEDA各用量グループの各グループからランダムに6匹を選び、前頭前野、海馬、小脳及び血液を採取して酸化ストレス関連指標を検査し、生体の抗酸化能力を検査した。
【0039】
結果
1.3チャンバー社交実験結果
胃内投与治療前、胃内投与治療14日後及び28日後の各グループの動物の社交指数(SI)を表1に示す。治療前と比較して、EDA各用量グループの動物は14日間及び28日間の連続胃内投与治療の後、社交指数は明らかに有意に増加し、且つ28日間の治療効果は14日間の効果より優れていた(図3)。グループ間の比較から見て、治療前、CONグループと比較し、各モデルグループの動物の社交指数は有意に低下した。治療14日後、プラセボグループと比較して、EDA各用量グループ及び陽性薬物(クロモリンナトリウム)グループの動物の社交指数は有意に増加し(p<0.01)、そのうちEDA中用量グループ及び高用量グループの效果がより優れていた(p<0.001、p<0.0001)。治療28日後、プラセボグループと比較して、EDA各用量グループの動物の社交指数は有意に増加し(p<0.05)、EDA高用量グループの效果がより優れていた(p<0.01)。一方、陽性薬物(クロモリンナトリウム)グループ及び陽性薬物溶媒グループに有意差はなかった(図4)。これは、エダラボンがVPA誘発自閉症モデルラットの社交指数を有意に増加させ、その社交障害を改善できることを示している。
【表1】
【0040】
2.治療28日後のオープンフィールドテスト結果
胃内投与治療前及び胃内投与治療28日後の各グループの動物のグルーミング時間を表2に示す。治療前と比較して、28日間連続胃内投与治療した後、EDA各用量グループおよびプラセボグループ及び陽性薬物(クロモリン)グループの動物のグルーミング時間は有意に低下し(p<0.05)、そのうち、EDA低用量グループ及びEDA中用量グループの差はより有意であった(p<0.01)(図5)。グループ間の比較により、 28日間連続胃内投与治療した後、プラセボグループと比較して、EDA各用量グループの動物のグルーミング時間は有意に低下し(p<0.05)、そのうちEDA低用量グループ及びEDA中用量グループの差はより有意であった(p<0.01)。陽性薬物溶媒グループ及び陽性薬物(クロモリンナトリウム)グループに有意差はなかった。陽性薬物(クロモリンナトリウム)グループと比較して、EDA低用量グループ及びEDA中用量グループの動物のグルーミング時間は有意に低下した(図6)。これは、エダラボンが有意にVPA誘発自閉症モデルラットのグルーミング時間を低下させ、その反復的な常同行動を改善できることを示す。
【0041】
【表2】
【0042】
3.酸化ストレス指標
胃内投与治療28日後、前頭前野(PFC)及び小脳(CE)のスーパーオキシドジスムターゼ(SOD)活性の検査結果を表3に示す。その結果、プラセボグループと比較して、EDA中用量グループ及び高用量グループの前頭前野のSOD活性は有意に増加し(p<0.05)、EDA高用量グループの増加はより顕著であった(p<0.001)(図7)。EDA高用量グループ小脳のSOD活性は有意であった(p<0.01)(図8)。
【表3】
【0043】
胃内投与治療28日後、前頭前野(PFC)及び海馬(HIP)におけるグルタチオンS-トランスフェラーゼ(GST)活性の測定結果を表4に示す。その結果、プラセボグループと比較して、EDA高用量グループの前頭前野(PFC)及び海馬(HIP)のGST活性は有意に上昇した(p<0.01)(図9、10)。
【表4】

胃内投与治療28日後、海馬(HIP)及び血清中の還元型グルタチオン(GSH)活性の測定結果を表5に示す。その結果、プラセボグループに比較して、EDA高用量グループの海馬(HIP)のGSH活性は有意に上昇し(p<0.05)(図11)、血清中のGST活性の上昇はより有意であった(p<0.01)(図12)。
【0044】
【表5】
【0045】
胃内投与治療28日後、血清中のシステイン(Cys)含量の測定結果を表6に示す。その結果、治療28日、EDA高用量グループの動物の血液中のCys含量はプラセボグループより有意に高かった(p<0.0001)(図13)。
【表6】
【0046】
酸化ストレス指標の測定結果から、エダラボンはVPA誘発の自閉症モデルラットの抗酸化能力を高められることが示された。
【0047】
以上の発明を実施するための形態の説明は、本発明の中核的な思想の理解を助けるためにのみ用いられる。当業者にとって、本発明の原理を逸脱しない限り、本発明の技術考案に対して幾つかの改良や変更を加えることができるが、これら改良や変更も本発明の特許請求の範囲に含まれると理解されるべきである。
図1
図2
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図5
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図8
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図11
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図13
【国際調査報告】