(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-04
(54)【発明の名称】曲げ剛性と引張強度を向上させたハイポチューブ
(51)【国際特許分類】
A61M 25/00 20060101AFI20240927BHJP
A61M 25/01 20060101ALI20240927BHJP
A61M 25/09 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
A61M25/00 632
A61M25/01
A61M25/09
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024523870
(86)(22)【出願日】2023-07-11
(85)【翻訳文提出日】2024-04-22
(86)【国際出願番号】 US2023069963
(87)【国際公開番号】W WO2024044421
(87)【国際公開日】2024-02-29
(32)【優先日】2022-08-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】595148888
【氏名又は名称】ストライカー コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】Stryker Corporation
【住所又は居所原語表記】2825 Airview Boulevard Kalamazoo MI 49002 (US)
(71)【出願人】
【識別番号】521535973
【氏名又は名称】ストライカー ヨーロピアン オペレーションズ リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Stryker European Operations Limited
【住所又は居所原語表記】Anngrove, IDA Business & Technology Park, Carrigtwohill, County Cork, T45HX08 Ireland
(74)【代理人】
【識別番号】110001302
【氏名又は名称】弁理士法人北青山インターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】ノースロップ,クレイ ウィリアム
(72)【発明者】
【氏名】マーフィー,ムルタ エム.
【テーマコード(参考)】
4C267
【Fターム(参考)】
4C267AA01
4C267AA14
4C267AA28
4C267BB02
4C267BB08
4C267BB31
4C267CC08
4C267GG02
(57)【要約】
細長い血管内医療器具に使用するための管状支持構造は、細長い管状体と、細長い管状体内に形成されたパターン付きフレーム構造と、細長い管状体内に軸方向に配置された内腔と、パターン付きフレーム構造に沿って軸方向に間隔をあけて配置された第1組の浮動タブとを具える。第1組の浮動タブはそれぞれ、パターン付きフレーム構造に固着された片持ち梁端部と、管状支持構造が第1の曲げ方向に側方に撓んだときにパターン付きフレーム構造に対して相対的に並進して、次いでパターン付きフレーム構造に係合するように構成された自由端部とを有する。
【選択図】
図23
【特許請求の範囲】
【請求項1】
細長い血管内医療器具に使用するための管状支持構造であって、
細長い管状体と、
前記細長い管状体内に形成されたパターン付きフレーム構造と、
前記細長い管状体内に軸方向に配置された内腔と、
前記パターン付きフレーム構造に沿って軸方向に間隔をおいて配置された第1組の浮動タブとを具え、前記第1組の浮動タブはそれぞれ、前記パターン付きフレーム構造に取り付けられた片持ち梁端部と、前記管状支持構造が第1の曲げ方向に側方偏向されたときに前記パターン付きフレーム構造に対して相対移動し、その後、前記パターン付きフレーム構造に係合するように構成された自由端部とを有することを特徴とする、管状支持構造。
【請求項2】
前記第1組の浮動タブはそれぞれ、前記管状支持構造が一次側方偏向範囲にあるときに前記パターン付きフレーム構造に対して相対移動し、前記管状支持構造が前記一次側方偏向範囲よりも大きい二次側方偏向範囲にあるときに前記パターン付きフレーム構造に係合するように構成されている、請求項1に記載の管状支持構造。
【請求項3】
前記管状支持構造が、前記管状支持構造が前記一次側方偏向範囲にあるときに一次曲げ剛性を有し、前記管状支持構造が前記二次側方偏向範囲にあるときに前記一次曲げ剛性よりも大きい1以上の二次曲げ剛性を有する、請求項2に記載の管状支持構造。
【請求項4】
前記1以上の二次曲げ剛性は、複数の異なる二次曲げ剛性を含む、請求項3に記載の管状支持構造。
【請求項5】
前記1以上の二次曲げ剛性の最高値が、前記一次曲げ剛性の5倍未満である、請求項3に記載の管状支持構造。
【請求項6】
前記1以上の二次曲げ剛性の最高値が、前記一次曲げ剛性の2倍未満である、請求項3に記載の管状支持構造。
【請求項7】
前記一次曲げ剛性が半径方向に等方性であり、前記1以上の二次曲げ剛性の各々が半径方向に異方性であり、各二次曲げ剛性が少なくとも1つの相対的に低い度合の周方向領域と少なくとも1つの相対的に高い度合の周方向領域とを有する、請求項3に記載の管状支持構造。
【請求項8】
前記少なくとも1つの相対的に低い度合の周方向領域の各々の大きさは、前記一次曲げ剛性の大きさに等しい、請求項7に記載の管状支持構造。
【請求項9】
前記少なくとも1つの相対的に低い度合の周方向領域の各々の大きさは、前記一次曲げ剛性の大きさよりも大きい、請求項7に記載の管状支持構造。
【請求項10】
前記一次曲げ剛性が0.0689476Pa(0.00001in
2-lb)より大きい、請求項3に記載の管状支持構造。
【請求項11】
前記管状支持構造が軸方向に伸張されるにつれて、前記第1組の浮動タブの各々の自由端が、前記パターン付きフレーム構造に対して相対的に並進し、次いで、前記パターン付きフレーム構造に係合するように構成されている、請求項1~10のいずれかに記載の管状支持構造。
【請求項12】
前記第1組の浮動タブはそれぞれ、前記管状支持構造が第1の軸方向伸張範囲にあるときに前記パターン付きフレーム構造に対して相対的に並進し、前記管状支持構造が前記第1の軸方向伸張範囲よりも大きい第2の軸方向伸張範囲にあるときに前記パターン付きフレーム構造に係合するように構成されている、請求項11に記載の管状支持構造。
【請求項13】
前記管状支持構造は、当該管状支持構造が前記第1の軸方向伸張範囲にあるときに第1の引張剛性を有し、前記管状支持構造が前記第2の軸方向伸張範囲にあるときに前記第1の引張剛性よりも大きい1以上の第2の引張剛性を有する、請求項12に記載の管状支持構造。
【請求項14】
前記1以上の二次的な引張剛性が、複数の異なる引張剛性を含む、請求項13に記載の管状支持構造。
【請求項15】
前記第1組の浮動タブは、前記パターン付きフレーム構造上で円周方向に整列している、請求項1に記載の管状支持構造。
【請求項16】
前記第1組の浮動タブは、前記パターン付きフレーム構造上で円周方向にオフセットしている、請求項1に記載の管状支持構造。
【請求項17】
前記第1組の浮動タブは、前記管状支持構造が前記第1の曲げ方向に側方に撓むにつれて、前記パターン付きフレーム構造に漸増的に係合するように構成されている、請求項1~10のいずれかに記載の管状支持構造。
【請求項18】
前記浮動タブの少なくとも2つが異なる長さを有する、請求項17に記載の管状支持構造。
【請求項19】
前記パターン付きフレーム構造に沿って軸方向に間隔を隔てて配置され、前記第1組の浮動タブから周方向にオフセットされた第2組の浮動タブをさらに具え、前記第2組の浮動タブはそれぞれ、前記パターン付きフレーム構造に固着された片持ち梁端部と、前記管状支持構造が前記第1の曲げ方向とは異なる第2の曲げ方向に側方に偏向されたときに、前記パターン付きフレーム構造に対して相対的に並進し、次いで前記パターン付きフレーム構造に係合するように構成された自由端部とを有する、請求項1に記載の管状支持構造。
【請求項20】
前記第2組の浮動タブは、前記第1組の浮動タブから周方向に180度オフセットされ、前記第2の曲げ方向は、前記第1の曲げ方向と反対である、請求項19に記載の管状支持構造。
【請求項21】
前記管状支持構造が前記第1の方向に側方に偏向されたときに、前記第1組の浮動タブが前記パターン付きフレーム構造に対して第1の軸方向に相対的に並進するように構成され、前記第2組の浮動タブがフレームに対して前記第1の軸方向とは反対の第2の軸方向に相対的に並進するように構成されている、請求項19に記載の管状支持構造。
【請求項22】
前記第1組の浮動タブは、前記第2組の浮動タブのすべてが前記パターン付きフレーム構造に係合した後、前記パターン付きフレーム構造に対して前記第1の軸方向に並進し続けるように構成され、前記第2組の浮動タブは、前記第1組の浮動タブのすべてが前記パターン付きフレーム構造に係合した後、前記パターン付きフレーム構造に対して前記第2の軸方向に並進し続けるように構成されている、請求項21に記載の管状支持構造。
【請求項23】
前記第1組の浮動タブの各々が、前記パターン付きフレーム構造に沿って軸方向に延びる、請求項1に記載の管状支持構造。
【請求項24】
前記パターン付きフレーム構造が、前記細長い管状体内に少なくとも部分的に配置された複数の実質的に横向きのスロットを有し、前記実質的に横向きのスロットが、前記管状支持構造に沿って軸方向に間隔を置いて配置され、それによって、複数の実質的に横向きの部材と、前記実質的に横向きの部材同士を剛性結合する複数の連結部材とが形成され、前記浮動タブのそれぞれの片持ち梁端部が、前記実質的に横向きの部材のそれぞれの1つに固着されている、請求項1に記載の管状支持構造。
【請求項25】
前記連結部材は、前記パターン付きフレーム構造に沿って軸方向に延びている、請求項24に記載の管状支持構造。
【請求項26】
前記実質的に横向きのスロットが、前記細長い管状体を完全に貫通して配置されている、請求項24に記載の管状支持構造。
【請求項27】
前記第1組の浮動タブはそれぞれ、各タブの片持ち梁端部および自由端部をそれぞれ形成するステム要素および拡大要素を具える、請求項1に記載の管状支持構造。
【請求項28】
前記第1組の浮動タブの各々がT字形である、請求項27に記載の管状支持構造。
【請求項29】
前記パターン付きフレーム構造が、前記細長い管状体内に少なくとも部分的に配置された複数のリテーナ開口部を具え、前記第1組の浮動タブの各々の拡大要素が、前記管状支持構造が第1の曲げ方向に側方に偏向されると、前記リテーナ開口部の各々の1つ内で並進し、次いで前記リテーナ開口部の各々の当接縁部に係合するように構成されている、請求項27に記載の管状支持構造。
【請求項30】
前記リテーナ開口部はそれぞれ、前記実質的に横向きのスロットのそれぞれと同軸であり、前記第1組の浮動タブの各々のステム要素は、前記それぞれの横向きの部材から、前記実質的に横向きのスロットのそれぞれの1つを横切って、前記それぞれのリテーナ開口部内に延びている、請求項29に記載の管状支持構造。
【請求項31】
前記実質的に横向きの部材の隣接する対がそれぞれ、前記リテーナ開口部の1つと前記実質的に横向きのスロットの1つとの間のチャネルを形成する一対の延長部を具え、第1組の浮動タブのそれぞれのステム要素が、前記チャネルの1つの中に納まり、各対の延長部が、それぞれのリテーナ開口部の当接縁部を規定する、請求項30に記載の管状支持構造。
【請求項32】
それぞれの浮動タブの拡大要素がそれぞれのリテーナ開口部の当接縁部に係合したときに、各対の延長部が側方に撓むように構成されている、請求項31に記載の管状支持構造。
【請求項33】
前記管状体がハイポチューブである、請求項1~32のいずれかに記載の管状支持構造。
【請求項34】
細長い血管内医療器具であって、
細長いポリマーチューブと、
前記ポリマーチューブ内に同軸に配置された請求項1に記載の管状支持構造体とを含むことを特徴とする細長い血管内医療器具。
【請求項35】
前記管状支持構造が、前記ポリマーチューブの遠位端に配置される、請求項34に記載の細長い血管内医療器具。
【請求項36】
前記管状支持構造が前記ポリマーチューブの遠位端より近位側に配置されている、請求項34に記載の細長い血管内医療器具。
【請求項37】
細長い血管内医療器具であって、
コアワイヤと、
前記コアワイヤの遠位端上に配置された請求項1に記載の管状支持構造とを含むことを特徴とする細長い血管内医療委器具。
【請求項38】
細長い血管内医療器具であって、
請求項1に記載の管状支持構造と
当該管状支持構造の管状体の内腔内に配置された内側ポリマーライナーとを含むことを特徴とする細長い血管内医療器具。
【請求項39】
細長い血管内医療器具に使用するための管状支持構造であって、
細長い管状体と、
前記細長い管状体内に形成されたパターン付きフレーム構造と、
前記細長い管状体内に軸方向に配置された内腔と、
前記パターン付きフレーム構造に沿って軸方向に間隔を隔てて配置された第1組の機械的特性変調要素であって、前記管状支持構造を第1の曲げ方向に側方に撓ませることに応答して、前記管状支持構造の有限の曲げ剛性を漸増させるように構成された、第1組の機械的特性変調要素とを具えることを特徴とする管状支持構造。
【請求項40】
前記第1組の機械的特性変調要素はそれぞれ、前記パターン付きフレーム構造に固定された片持ち梁端部と、前記管状支持構造が前記第1の曲げ方向に側方に撓むにつれて前記パターン付きフレーム構造に対して相対的に並進し、次いで前記パターン付きフレーム構造に係合するように構成された自由端部とを有する浮動タブを具え、それによって前記管状支持構造の有限の曲げ剛性を増加させる、請求項39に記載の管状支持構造。
【請求項41】
前記第1組の機械的特性変調要素は、前記管状支持構造を軸方向に伸張させることに応答して、前記管状支持構造の有限引張剛性を増加させるようにさらに構成されている、請求項39に記載の管状支持構造。
【請求項42】
前記第1組の機械的特性変調要素は、前記管状支持構造を第1の曲げ方向に側方に撓ませることに応答して、前記管状支持構造の有限曲げ剛性を複数回漸増させるように構成されている、請求項39に記載の管状支持構造。
【請求項43】
前記管状支持構造の有限の曲げ剛性は500%未満増加する、請求項39に記載の管状支持構造。
【請求項44】
前記管状支持構造の有限曲げ剛性は200%未満増加する、請求項39に記載の管状支持構造。
【請求項45】
前記パターン付きの管状支持構造の有限の曲げ剛性が、初期の半径方向に等方性の一次曲げ剛性から半径方向に異方性の二次曲げ剛性へと増大され、前記二次曲げ剛性が、少なくとも1つの相対的に低い度合の周方向領域と少なくとも1つの相対的に高い度合の周方向領域とを有する、請求項39に記載の管状支持構造。
【請求項46】
前記少なくとも1つの相対的に低い度合の周方向領域の各々の大きさは、前記一次曲げ剛性の大きさに等しい、請求項45に記載の管状支持構造。
【請求項47】
前記少なくとも1つの相対的に低い度合の周方向領域の各々の大きさは、前記一次曲げ剛性の大きさよりも大きい、請求項45に記載の管状支持構造。
【請求項48】
前記パターン付の管状支持構造の有限の曲げ剛性は、0.0689476Pa(0.00001in
2-lb)より大きい初期曲げ剛性から増加する、請求項39に記載の管状支持構造。
【請求項49】
前記第1組の機械的特性変調要素は、前記パターン付きフレーム構造上で円周方向に整列している、請求項39に記載の管状支持構造。
【請求項50】
前記第1組の機械的特性変調要素は、前記パターン付きフレーム構造上で円周方向にずれている、請求項39に記載の管状支持構造。
【請求項51】
前記パターン付きフレーム構造に沿って軸方向に間隔を隔てて配置され、前記第1組の機械的特性変調要素から円周方向にオフセットされた第2組の機械的特性変調要素をさらに具え、前記第2組の機械的特性変調要素は、前記第1の曲げ方向とは異なる第2の曲げ方向に前記管状支持構造を側方に撓ませることに応答して、前記管状支持構造の二次曲げ剛性を漸増させるように構成されている、請求項39に記載の管状支持構造。
【請求項52】
前記第2組の機械的特性変調要素は、前記第1組の機械的特性変調要素から円周方向に180度オフセットされ、前記第2の曲げ方向は、前記第1の曲げ方向と反対である、請求項51に記載の管状支持構造。
【請求項53】
前記第2組の機械的特性変調要素は、前記管状支持構造が前記第1の曲げ方向に側方に偏向されたときに前記管状支持構造の一次曲げ剛性の増加に寄与せず、前記第1組の機械的特性変調要素は、前記管状支持構造が前記第2の曲げ方向に側方に偏向されたときに前記管状支持構造の二次曲げ剛性の増加に寄与しない、請求項52に記載の管状支持構造。
【請求項54】
前記パターン付きフレーム構造が、前記細長い管状体内に少なくとも部分的に配置された複数の実質的に横向きのスロットを有し、前記実質的に横向きのスロットが、前記管状支持構造に沿って軸方向に間隔を置いて配置され、それによって、複数の実質的に横向きの部材と、前記実質的に横向きの部材を互いに剛性結合する複数の連結部材とが形成され、前記第1組の機械的特性変調要素の各々が、前記実質的に横向きの部材のそれぞれの1つに固着されている、請求項39に記載の管状支持構造。
【請求項55】
前記連結部材は、前記パターン付きフレーム構造に沿って軸方向に延びている、請求項54に記載の管状支持構造。
【請求項56】
前記実質的に横向きのスロットが細長い管状体を完全に貫通して配置されている、請求項54に記載の管状支持構造。
【請求項57】
管状体がハイポチューブである、請求項39に記載の管状支持構造。
【請求項58】
細長い血管内医療器具であって、
細長いポリマーチューブと、
前記ポリマーチューブ内に同軸に配置された請求項39に記載の管状支持構造体とを含むことを特徴とする細長い血管内医療器具。
【請求項59】
前記管状支持構造が、前記ポリマーチューブの遠位端に配置される、請求項58に記載の細長い血管内医療器具。
【請求項60】
前記管状支持構造が前記ポリマーチューブの遠位端より近位側に配置されている、請求項58に記載の細長い血管内医療器具。
【請求項61】
細長い血管内医療器具であって、
コアワイヤと、
前記コアワイヤの遠位端上に配置された請求項39に記載の管状支持構造とを含むことを特徴とする細長い血管内医療委器具。
【請求項62】
細長い血管内医療器具であって、
請求項39に記載の管状支持構造と
当該管状支持構造の管状体の内腔内に配置された内側ポリマーライナーとを含むことを特徴とする細長い血管内医療器具。
【請求項63】
細長い血管内医療器具に使用するための管状支持構造であって、
細長い管状体と、
前記細長い管状体内に形成されたパターン付きフレーム構造と、
前記細長い管状体内に軸方向に配置された内腔と、
前記パターン付きフレーム構造の周りに周方向に間隔を隔てて配置された第1組の機械的特性変調要素であって、前記管状支持構造を軸方向に伸長させることに応答して、前記管状支持構造の有限の引張剛性を漸増させるように構成された、第1組の機械的特性変調要素とを具えることを特徴とする管状支持構造。
【請求項64】
前記第1組の機械的特性変調要素がそれぞれ、前記パターン付きフレーム構造に固定された片持ち梁端部と、前記管状支持構造が軸方向に伸張されるにつれて前記パターン付きフレーム構造に対して相対的に並進し、次いで前記パターン付きフレーム構造に係合するように構成された自由端部とを有する浮動タブを具え、それによって前記管状支持構造の有限の引張剛性を増加させる、請求項63に記載の管状支持構造。
【請求項65】
前記パターン付きフレーム構造の周囲に円周方向に間隔を隔てて配置され、前記第1組の機械的特性変調要素から軸方向に間隔を隔てて配置された第2組の機械的特性変調要素をさらに具え、前記第2組の機械的特性変調要素は、前記管状支持構造を軸方向に引き伸ばすことに応答して、前記管状支持構造の有限の引張剛性をさらに増加させるように構成されている、請求項63に記載の管状支持構造。
【請求項66】
前記第1および第2の機械的特性変調要素のセットは、前記管状支持構造の軸方向伸張に応答して、前記管状支持構造の有限の引張剛性を複数回漸増させるように構成されている、請求項63に記載の管状支持構造。
【請求項67】
管状支持構造の有限の引張剛性が50%以上増加する、請求項63に記載の管状支持構造。
【請求項68】
管状支持構造の有限の引張剛性が100%以上増加する、請求項63に記載の管状支持構造。
【請求項69】
前記第1組の機械的特性変調要素は、前記パターン付きフレーム構造上で円周方向に整列している、請求項63に記載の管状支持構造。
【請求項70】
前記パターン付きの管状支持構造の有限の引張剛性が、22.67962グラム(0.05ポンド)より大きい初期引張剛性から増加する、請求項63に記載の管状支持構造。
【請求項71】
前記パターン付きフレーム構造が、前記細長い管状体内に少なくとも部分的に配置された複数の実質的に横向きのスロットを有し、前記実質的に横向きのスロットが、前記管状支持構造に沿って軸方向に間隔を置いて配置され、それによって、複数の実質的に横向きの部材と、前記実質的に横向きの部材を互いに剛性結合する複数の連結部材とが形成され、前記第1組の機械的特性変調要素の各々が、前記実質的に横向きの部材のそれぞれの1つに固着されている、請求項63に記載の管状支持構造。
【請求項72】
前記連結部材は、前記パターン付きフレーム構造に沿って軸方向に延びている、請求項71に記載の管状支持構造。
【請求項73】
前記実質的に横向きのスロットが細長い管状体を完全に貫通して配置されている、請求項71に記載の管状支持構造。
【請求項74】
管状体がハイポチューブである、請求項63に記載の管状支持構造。
【請求項75】
前記管状支持構造が、前記有限の引張剛性が漸増するにつれて漸増する有限の曲げ剛性を有する、請求項63に記載の管状支持構造。
【請求項76】
前記第1組の機械的特性変調要素は、前記有限の引張剛性が漸増するにつれて、前記有限の曲げ剛性を漸増させるように構成されている、請求項75に記載の管状支持構造。
【請求項77】
細長い血管内医療器具であって、
細長いポリマーチューブと、
前記ポリマーチューブ内に同軸に配置された請求項63に記載の管状支持構造体とを含むことを特徴とする細長い血管内医療器具。
【請求項78】
前記管状支持構造が、前記ポリマーチューブの遠位端に配置される、請求項63に記載の細長い血管内医療器具。
【請求項79】
前記管状支持構造が前記ポリマーチューブの遠位端より近位側に配置されている、請求項63に記載の細長い血管内医療器具。
【請求項80】
細長い血管内医療器具であって、
コアワイヤと、
前記コアワイヤの遠位端上に配置された請求項63に記載の管状支持構造とを含むことを特徴とする細長い血管内医療委器具。
【請求項81】
細長い血管内医療器具であって、
請求項63に記載の管状支持構造と
当該管状支持構造の管状体の内腔内に配置された内側ポリマーライナーとを含むことを特徴とする細長い血管内医療器具。
【請求項82】
細長い血管内医療器具に使用するための管状支持構造であって、管状支持構造と、
パターン付きフレーム構造および内腔を有する細長い管状体からなる細長い管状体と、
前記パターン付きフレーム構造上に配置された複数の機械的特性変調要素とを具え、当該複数の機械的特性変調要素は、前記パターン付きフレーム構造を1つまたは複数の曲げ方向に側方に撓ませることに応答して、前記管状支持構造の半径方向に等方性の曲げ剛性を変調して、前記管状支持構造が半径方向に異方性の曲げ剛性を有するように構成されることを特徴とする管状支持構造。
【請求項83】
前記複数の機械的特性変調要素の各々が、前記パターン付きフレーム構造に固定された片持ち梁端部と、前記管状支持構造が前記第1の曲げ方向に側方に撓むにつれて前記パターン付きフレーム構造に対して相対的に並進し、次いで前記パターン付きフレーム構造に係合するように構成された自由端部とを有し、それによって前記管状支持構造の半径方向に等方性の曲げ剛性を変調する浮動タブとを具える、請求項82に記載の管状支持構造。
【請求項84】
前記複数の機械的特性変調要素は、1組以上の機械的特性変調要素を具え、当該1組以上の機械的特性変調要素は、前記フレーム構造に沿って軸方向に間隔を置いて配置され、前記1組以上の機械的特性変調要素は、1以上の曲げ方向に前記管状支持構造をそれぞれ側方に撓ませることに応答して、前記管状支持構造の半径方向に等方性の曲げ剛性を変調するように構成される、請求項82に記載の管状支持構造。
【請求項85】
前記1組以上の機械的特性変調要素は、前記パターン付きフレーム構造の周囲で互いに周方向にオフセットされた複数組の機械的特性変調要素を具え、前記1組以上の曲げ方向は、複数の異なる曲げ方向を含む、請求項82に記載の管状支持構造。
【請求項86】
機械的特性変調要素のうちの2組が、円周方向に互いに180度ずれている、請求項85に記載の管状支持構造。
【請求項87】
前記1以上の半径方向に異方性の二次曲げ剛性の各々が、少なくとも1つの相対的に低い度合の周方向領域と少なくとも1つの相対的に高い度合の周方向領域とを有する、請求項86に記載の管状支持構造。
【請求項88】
前記少なくとも1つの相対的に低い度合の周方向領域の各々の大きさは、前記一次曲げ剛性の大きさに等しい、請求項87に記載の管状支持構造。
【請求項89】
前記少なくとも1つの相対的に低い度合の周方向領域の各々の大きさは、前記一次曲げ剛性の大きさよりも大きい、請求項87に記載の管状支持構造。
【請求項90】
前記少なくとも1つの相対的に低い度合の周方向領域はそれぞれ、前記複数の機械的特性変調要素の組が存在しない前記パターン付きフレーム構造の円周方向位置を中心とし、前記少なくとも1つの相対的に高い度合の周方向領域はそれぞれ、前記複数の機械的特性変調要素の組が存在する前記パターン付きフレーム構造の円周方向位置を中心とする、請求項87に記載の管状支持構造。
【請求項91】
前記少なくとも1つの相対的に低い度合の周方向領域はそれぞれ、複数の第1組の機械的特性変調要素が存在するパターン付きフレーム構造の円周方向位置を中心とし、前記少なくとも1つの相対的に高い大きさの周方向領域はそれぞれ、複数の第2組の機械的特性変調要素が存在するパターン付きフレーム構造の円周方向位置を中心とし、前記機械的特性要素の第1組および第2組は、異なる様式でパターン付きフレーム構造を変調する、請求項87に記載の管状支持構造。
【請求項92】
前記パターン付きフレーム構造が、前記細長い管状体内に少なくとも部分的に配置された複数の実質的に横向きのスロットを有し、前記実質的に横向きのスロットが、前記管状支持構造に沿って軸方向に間隔を置いて配置され、それによって、複数の実質的に横向きの部材と、前記実質的に横向きの部材を互いに剛性結合する複数の連結部材とが形成され、前記複数の機械的特性変調要素の各々が、前記実質的に横向きの部材のそれぞれの1つに固着されている、請求項82に記載の管状支持構造。
【請求項93】
前記連結部材が前記細長い管状体に沿って軸方向に延びている、請求項91に記載の管状支持構造。
【請求項94】
前記実質的に横向きのスロットが、前記細長い管状体を完全に貫通して配置されている、請求項93に記載の管状支持構造。
【請求項95】
管状体がハイポチューブである、請求項82に記載の管状支持構造。
【請求項96】
細長い血管内医療器具であって、
細長いポリマーチューブと、
前記ポリマーチューブ内に同軸に配置された請求項82に記載の管状支持構造体とを含むことを特徴とする細長い血管内医療器具。
【請求項97】
管状支持構造がポリマーチューブの遠位端に配置されている、請求項95に記載の細長い血管内医療器具。
【請求項98】
前記管状支持構造が前記ポリマーチューブの遠位端より近位側に配置されている、請求項95に記載の細長い血管内医療器具。
【請求項99】
前記管状支持構造の管状体の内腔内に配置された内側ポリマーライナーをさらに含む、請求項82に記載の細長い血管内医療器具。
【請求項100】
細長い血管内医療器具であって、
細長いポリマーチューブと、
前記ポリマーチューブ内に同軸に配置された請求項82に記載の管状支持構造体とを含むことを特徴とする細長い血管内医療器具。
【請求項101】
管状支持構造がポリマーチューブの遠位端に配置されている、請求項100に記載の細長い血管内医療器具。
【請求項102】
前記管状支持構造が前記ポリマーチューブの遠位端より近位側に配置されている、請求項100に記載の細長い血管内医療器具。
【請求項103】
細長い血管内医療器具であって、
コアワイヤと、
前記コアワイヤの遠位端上に配置された請求項82に記載の管状支持構造とを含むことを特徴とする細長い血管内医療委器具。
【請求項104】
細長い血管内医療器具であって、
請求項82に記載の管状支持構造と
当該管状支持構造の管状体の内腔内に配置された内側ポリマーライナーとを含むことを特徴とする細長い血管内医療器具。
【請求項105】
細長い血管内医療器具を患者の血管系内で遠位方向に進める方法であって、
前記細長い血管内医療器具を患者の血管系内に導入するステップと、
一次曲げ剛性を有する状態で、細長い血管内医療器具の長さ方向部分を、患者の血管系における第1の湾曲部内に遠位方向に進めるステップと、
前記細長い血管内医療器具の長さ方向部分を、患者の血管系内の第2の湾曲部内に遠位方向に進めるステップであって、当該第2の湾曲部は、前記第1の湾曲部の曲率よりも高い曲率を有する、ステップと、
前記第2の湾曲部内における前記細長い血管内医療器具の長さ方向部分の遠位側への前進に応答して、前記細長い血管内医療器具の長さ方向部分の一次曲げ剛性を、当該一次曲げ剛性よりも大きい二次曲げ剛性へと移行させるステップと、
前記細長い血管内医療器具の遠位端が患者の血管系内の標的部位に位置するまで、前記細長い血管内医療器具を患者の血管系内で遠位方向に進めるステップと、を含むことを特徴とする方法。
【請求項106】
前記長さ方向部分は前記細長い血管内医療器具の遠位端である、請求項105に記載の方法。
【請求項107】
前記長さ方向部分は前記細長い血管内医療器具の遠位端より近位側にある、請求項105に記載の方法。
【請求項108】
前記細長い血管内医療器具が、ガイドワイヤ、カテーテル、ガイドシース、および血管内インプラント送達ワイヤのうちの1つである、請求項105に記載の方法。
【請求項109】
前記細長い血管内医療器具の長さ方向部分が、前記細長い血管内医療器具に一次曲げ剛性を与えるパターン付きフレーム構造を有する、請求項105に記載の方法。
【請求項110】
前記細長い血管内医療器具が、前記パターン付きフレーム構造に沿って軸方向に間隔を置いて配置された機械的特性変調要素を有し、前記機械的特性変調要素が、前記第2の湾曲部内での前記細長い血管内医療器具の長さ方向部分の遠位への前進に応答して、前記一次曲げ剛性を前記二次曲げ剛性に移行させるように構成されている、請求項109に記載の方法。
【請求項111】
さらに、前記細長い血管内医療器具の長さ方向部分を患者の血管系内の第3の湾曲部内に遠位方向に前進させるステップであって、前記第3の湾曲部は前記第2の湾曲部の曲率よりも低い曲率を有する、ステップと、
前記第3の湾曲部内での前記細長い血管内医療器具の長さ方向部分の遠位側への前進に応答して、前記細長い血管内医療器具の長さ方向の部分の二次曲げ剛性を、前記一次曲げ剛性に移行させるステップとを含む、請求項105に記載の方法。
【請求項112】
さらに、前記細長い血管内医療器具の長さ方向部分を、患者の血管系内の第4の湾曲部内に遠位方向に前進させるステップであって、前記第4の湾曲部は前記第1の湾曲部の曲率よりも高く、前記第2の湾曲部の曲率とは異なる曲率を有する、ステップと、
前記細長い血管内医療器具の長さ方向部分の前記第4の湾曲部内での遠位側への前進に応答して、前記細長い血管内医療器具の長さ方向部分の一次曲げ剛性を、前記二次曲げ剛性とは異なる別の曲げ剛性へと移行させるステップとを含む、請求項111に記載の方法。
【請求項113】
さらに、前記細長い血管内医療器具を引っ張るステップと、
前記細長い血管内医療器具の引っ張りに応答して、前記細長い血管内医療器具の長さ方向部分の一次引張剛性を、前記一次引張剛性よりも大きい二次引張剛性に移行させるステップとを含む、請求項105に記載の方法。
【請求項114】
前記細長い血管内医療器具の長さ方向部分の二次曲げ剛性は半径方向に異方性であり、当該半径方向に異方性の曲げ剛性は、相対的に低い度合の周方向領域と相対的に高い度合の周方向領域とを有し、前記方法はさらに、前記細長い血管内医療器具をその長手方向軸を中心に回転させるステップであって、回転された血管内医療器具の長さ方向部分が前記第2の湾曲部内を遠位側に進められたときに、前記細長い血管内医療器具の長さ方向部分の半径方向に等方性の曲げ剛性が、半径方向に異方性の曲げ剛性の相対的に高い度合の周方向領域に移行するようにするステップを含む、請求項105に記載の方法。
【請求項115】
前記二次曲げ剛性の相対的に低い度合の周方向領域の大きさは、前記一次曲げ剛性の大きさに等しい、請求項114に記載の方法。
【請求項116】
前記二次曲げ剛性の相対的に低い度合の周方向領域の大きさは、前記一次曲げ剛性の大きさよりも高い、請求項114に記載の方法。
【請求項117】
さらに、前記細長い血管内医療器具をその長手方向軸を中心に回転させるステップの前に、前記細長い血管内医療器具の長さ方向部分が第2の湾曲部を通って遠位側にうまく前進できないように、二次曲げ剛性の相対的に低い度合の周方向領域を有した状態で、前記細長い血管内医療器具の長さ方向部分を第2の湾曲部に遠位側に前進させるステップと、前記細長い血管内医療器具の長さ方向部分を近位側に後退させるステップとを含む、請求項114に記載の方法。
【請求項118】
前記二次曲げ剛性の最高値が前記一次曲げ剛性の500%未満である、請求項105に記載の方法。
【請求項119】
前記二次曲げ剛性の最高値が前記一次曲げ剛性の200%未満である、請求項105に記載の方法。
【請求項120】
前記細長い血管内医療器具を用いて標的部位で追加の医療処置を行うステップをさらに含む、請求項105に記載の方法。
【請求項121】
細長い血管内医療器具を患者の血管系内で遠位方向に進める方法であって、
前記細長い血管内医療器具を患者の血管系内に導入するステップと、
半径方向に等方性の曲げ剛性を有する状態で、細長い血管内医療器具の長さ方向部分を、患者の血管系における第1の湾曲部内に遠位方向に進めるステップと、
前記細長い血管内医療器具の長さ方向部分を、患者の血管系内の第2の湾曲部内に遠位方向に進めるステップであって、当該第2の湾曲部は、前記第1の湾曲部の曲率よりも高い曲率を有する、ステップと、
前記第2の湾曲部内における前記細長い血管内医療器具の長さ方向部分の遠位側への前進に応答して、前記細長い血管内医療器具の長さ方向部分の半径方向に等方性の曲げ剛性を、半径方向に異方性の曲げ剛性へと移行させるステップと、
前記細長い血管内医療器具の遠位端が患者の血管系内の標的部位に位置するまで、前記細長い血管内医療器具を患者の血管系内で遠位方向に進めるステップと、を含むことを特徴とする方法。
【請求項122】
前記長さ方向部分は前記細長い血管内医療器具の遠位端である、請求項121に記載の方法。
【請求項123】
長さ方向部分が細長い血管内医療器具の遠位端の近位にある、請求項121に記載の方法。
【請求項124】
前記細長い血管内医療器具が、ガイドワイヤ、カテーテル、ガイドシース、および血管内インプラント送達ワイヤのうちの1つである、請求項121に記載の方法。
【請求項125】
前記細長い血管内医療器具の長さ方向部分が、前記細長い血管内医療器具に半径方向に等方性の曲げ剛性を与えるパターン付きフレーム構造を有する、請求項121に記載の方法。
【請求項126】
前記細長い血管内医療器具が、前記パターン付きフレーム構造に沿って軸方向に間隔を置いて配置された機械的特性変調要素を有し、前記機械的特性変調要素が、前記第2の湾曲部内での前記細長い血管内医療器具の長さ方向部分の遠位への前進に応答して、前記半径方向に等方性の曲げ剛性を前記半径方向に異方性の曲げ剛性に移行させるように構成されている、請求項125に記載の方法。
【請求項127】
さらに、前記細長い血管内医療器具の長さ方向部分を患者の血管系内の第3の湾曲部内に遠位方向に前進させるステップであって、前記第3の湾曲部は前記第2の湾曲部の曲率よりも低い曲率を有する、ステップと、
前記第3の湾曲部内での前記細長い血管内医療器具の長さ方向部分の遠位側への前進に応答して、前記細長い血管内医療器具の長さ方向の部分の半径方向に異方性の曲げ剛性を、前記半径方向に等方性の曲げ剛性に移行させるステップとを含む、請求項121に記載の方法。
【請求項128】
前記半径方向に異方性の曲げ剛性は、相対的に低い度合の周方向領域と相対的に高い度合の周方向領域とを有し、前記方法はさらに、前記細長い血管内医療器具をその長手方向軸を中心に回転させるステップであって、回転された血管内医療器具の長さ方向部分が前記第2の湾曲部内を遠位側に進められたときに、前記細長い血管内医療器具の長さ方向部分の半径方向に等方性の曲げ剛性が、半径方向に異方性の曲げ剛性の相対的に高い度合の周方向領域に移行するようにするステップを含む、請求項127に記載の方法。
【請求項129】
前記二次曲げ剛性の相対的に低い度合の周方向領域の大きさは、前記一次曲げ剛性の大きさに等しい、請求項128に記載の方法。
【請求項130】
前記二次曲げ剛性の相対的に低い度合の周方向領域の大きさは、前記一次曲げ剛性の大きさよりも高い、請求項128に記載の方法。
【請求項131】
さらに、前記細長い血管内医療器具をその長手方向軸を中心に回転させるステップの前に、前記細長い血管内医療器具の長さ方向部分が第2の湾曲部を通って遠位側にうまく前進できないように、二次曲げ剛性の相対的に低い度合の周方向領域を有した状態で、前記細長い血管内医療器具の長さ方向部分を第2の湾曲部に遠位側に前進させるステップと、前記細長い血管内医療器具の長さ方向部分を近位側に後退させるステップとを含む、請求項128に記載の方法。
【請求項132】
前記細長い血管内医療器具を用いて標的部位で追加の医療処置を行うステップをさらに含む、請求項121に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は一般に医療器具に関し、より詳細には血管内医療器具の支持構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
血管障害などのさまざまな種類の疾患へのアクセスや治療のための血管内医療器具の使用がよく知られている。例えば、適切な血管内カテーテルが患者の血管系に挿入され得る。患者の標的部位にアクセスするために一般的に使用される血管アプリケーションでは、鼠径部近くの大腿動脈を切開してガイドワイヤを挿入し、標的部位に到達するまでガイドワイヤを進める。次に、血管内カテーテルの遠位端が標的部位に配置されるまで、血管内カテーテルのルーメンを介してガイドワイヤ上に血管内カテーテルを前進させる。あるいは、ガイドシースを残してガイドワイヤが引き抜かれた後に血管内カテーテルを患者に導入し、ガイドシース内で血管内カテーテルが患者の血管系内を移動するようにしてもよい。血管障害を治療する場合、血管内カテーテルの遠位端を標的部位に留置すると同時またはその後に、血管内インプラントを送達ワイヤを介してカテーテルの内腔を通して前進させることができる。
【0003】
神経血管治療のような特定の用途では、ガイドワイヤ、カテーテル、ガイドシース、血管内インプラント送達ワイヤのような血管内医療器具は、脳の比較的脆弱な血管内の移動を含む、曲がりくねった複雑な血管系をナビゲートすることが要求され、方向を変えたり、自身の上に折り返されることも多く要求される。したがって、このような血管内医療器具は、脳血管、冠状動脈、末梢血管などの患者の血管系をうまくナビゲートするために、適切な追従性、柔軟性、プッシュ性(軸方向の剛性)、トルク性(回転性)、耐キンク性、プル性(引っ張り強度)を備える必要がある。追従性とは、血管内医療器具が患者の血管系を通過する能力の尺度である。柔軟性とは、血管内医療器具の長さに沿った側方の曲げ剛性の尺度であり、細長い血管内医療器具の追従性に大きく寄与する。プッシュ性とは、血管内医療器具の遠位端に近位側から加えられる軸方向力の伝達性を示す尺度である。トルク性とは、近位から加えられた回転力が血管内医療器具の遠位端に伝達される度合いを示す尺度であり、患者の血管系内の曲がりくねった経路を通過する際のナビゲーションを助ける。耐キンク性とは、血管内医療器具が半径の周りに曲げられたときに、その断面形状、特に内腔(存在する場合)を維持する能力の尺度である。プル性とは、細長い血管内医療器具を塑性変形させたり破断させたりすることなく、軸方向の引張力を伝達する血管内医療器具の能力の尺度である。
【0004】
これらの血管内医療器具の適切な柔軟性と耐キンク性により、比較的小さな追従力で(横方向の力が小さいため)血管系の中程度の湾曲部を通過することができ、また(適切な支持と抵抗を有するため)破損、永久変形、逸脱(prolapse)することなく比較的きつい湾曲部を通過することができる。さらに、これらの血管内医療器具を血管系に押し進めることが望まれるだけでなく、例えば、このような血管内医療器具がスタックした場合(例えば、患者の血管系内を脱出した場合、血管攣縮により捕捉された場合、または別の血管内医療器具との干渉した場合など)、または血管系内の誤った血管または望ましくない血管に位置した場合など、血管系内でこれらの血管内医療器具を引っ張ることが望まれる場合もある。したがって、このような血管内医療器具は、破損したり塑性変形したりしないように、必要な軸方向の引張強度を持つことが重要である。どのような血管内医療器具であっても、安全に使用するためには最低限の引張強度を満たす必要がある。多くの場合、この引張強度を満たすために、細長い血管内医療器具に二次的要素を追加するか、既存の要素を他の方法で必要とされるよりも頑丈に(大きく、または強い材料に)しなければならず、そのため典型的に他の方法で必要とされるよりも硬くなってしまう。さらに、二次的な強化要素や既存の要素の堅牢化によって占有されるスペースが、機器の性能を向上させ得る他の要素のために利用できなくなる。さらに、これらの追加された引張要素やより堅牢な要素は、装置の側方の曲げ剛性を増加させ、追従性などの他の性能特性に悪影響を及ぼす可能性がある。したがって、細長い血管内医療器具内の既存の要素の性能に特化した設計によって、引張強度を向上させることができれば、性能上の利点を得ることができる。このように、プッシュ性、トルク性、プル性、遠位先端部の柔軟性など、必要な性能特性を備えた適切なサイズの血管内医療器具を使用することにより、曲がりくねった脳血管系や末梢血管系内を含め、血管系内の事実上あらゆる標的部位にアクセスすることができる。しかし、これらの性能特性のバランスを取るのは難しいことである。
【0005】
現在、このバランスを達成しようとするハイポチューブを有するマイクロカテーテルやガイドワイヤが数多く設計されている。一般にハイポチューブは、ステンレス鋼、ニッケルチタン合金(ニチノールなど)などの金属または金属合金で形成された細長い薄壁管である。ハイポチューブは多くの場合、その長さ方向に微細加工が施されている。ハイポチューブの遠位端は、患者の血管系を通るハイポチューブのプッシュ性を維持するのに十分な軸方向の剛性を提供する一方で、その柔軟性を高めるスロットパターンを有することもある。場合によっては、ハイポチューブのスロットの外径にポリマージャケットを適用し、密封性を提供するとともに、柔軟性を持たせながらハイポチューブのスロットによる外面の粗さを最小限に抑えることもできる。この外側ジャケットはハイポチューブの開口部やスロットを埋め、ハイポチューブの内面をコーティングすることもある。神経血管治療など、カテーテルによって患者の体腔や空洞に他のさまざまなデバイス、薬剤、流体を通すアプリケーションでは、カテーテルの管腔内面の特性がカテーテルの性能に大きく影響し得る。特に、内面の潤滑性は、カテーテルの内腔を他のデバイス、薬剤、および/または液体が通過する能力に影響を及ぼし得る。潤滑性を高めるために、低摩擦の内側ポリマーライナー(例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE))をカテーテルの内腔を取り巻くようにしてもよい。内側ポリマーライナーは、カテーテルの内腔にガイドワイヤ、ペーシングリード、その他のデバイスを通しやすくするために、潤滑性のある内面を提供することができる。
【0006】
このようなスロット付きハイポチューブの設計は、プッシュ性、プル性、トルク性、耐キンク性、および遠位先端部の柔軟性の間で、一般的によいバランスをとり得るが、このようなスロット付きハイポチューブの設計は、まだ改善の余地がある。例えば、スロット付きハイポチューブの設計は一般に、相対的に低い等方性の曲げ剛性(すなわち、すべての半径方向で同じ曲げ剛性)を有し、細長い医療器具が低い追従力で血管系の低~中程度の湾曲部を容易に前進できるようになっている。しかし、このような血管内医療器具でも、血管系のきつい湾曲部に導入される場合は、逸脱しやすい。さらに、ハイポチューブのスロットパターンにより、典型的に、ハイポチューブの長手方向軸に対して側方または直交するリブまたはストラットが形成される。したがって、このようなスロット付きハイポチューブに引張力が加わると(例えば、細長い医療器具が引っ張られると)、支持構造のリブまたはストラットに側方の曲げ力が加わる。これらの側方の力は通常、高い曲げモーメントを発生させるため、管状構造には局所的に高い応力がかかる。そのため、スロット付きハイポチューブに引張力が加わると、リブやストラットが変形しやすくなり、比較的小さな引張力で細長い医療器具が塑性変形したり破損したりする。さらに、血管内医療器具が、弾性的であれ塑性的であれ、張力によって伸びやすい場合、血管系内でナビゲートできる精度が低下し、性能が低下する。したがって、スロット付きハイポチューブは、柔軟性は高いが強度が低い材料(例えば、ニッケルチタン(ニチノール)などの金属合金)ではなく、比較的強度が高いが比較的硬い材料(例えば、ステンレス鋼などの金属)で構成する必要があるかもしれない。したがって、このようなスロット付きハイポチューブの引張強度と剛性は、一般的に、スロット付きハイポチューブに十分な曲げ柔軟性を与えるために犠牲になる必要があった。
【0007】
このように、上述の課題を解決するスロット付きハイポチューブの設計が必要とされている。
【発明の概要】
【0008】
本発明は、細長い血管内医療器具に使用するための管状支持構造を含む。前記管状支持構造は、細長い管状体(例えば、ハイポチューブ)と、当該細長い管状体内に形成されたパターン付きフレーム構造と、前記細長い管状体内に軸方向に配置された内腔とを具える。一実施形態では、パターン付きフレーム構造は、前記細長い管状体内に少なくとも部分的に配置された複数の実質的に横向きのスロットを有し、前記実質的に横向きのスロットは、前記管状支持構造に沿って軸方向に間隔をあけて配置され、それによって、複数の実質的に横向きの部材と、当該実質的に横向きの部材を互いに剛結合する複数の連結部材とを形成する。前記連結部材は、前記パターン付きフレーム構造に沿って軸方向に延び、前記実質的に横向きのスロットは、前記細長い管状体を全体的に貫通して配設され得る。細長い血管内医療器具の一実施形態は、細長いポリマーチューブと、当該ポリマーチューブ内に同軸に配置された前記管状支持構造とを含み得る。この実施形態では、前記管状支持構造は、前記ポリマーチューブの遠位端に配置されてもよいし、前記ポリマーチューブの遠位端より近位に配置されてもよい。細長い血管内医療器具の別の実施形態は、コアワイヤと、当該コアワイヤの遠位端上に配置された前記管状支持構造とを含み得る。細長い血管内医療器具のさらに別の実施形態は、前記管状支持構造と、当該管状支持構造の管状体の内腔内に配置された内側ポリマーライナーとを含み得る。
【0009】
本発明の第1の態様によれば、前記管状支持構造は、前記パターン付きフレーム構造に沿って軸方向に間隔をあけて配置された第1組の浮動タブを具える。前記第1組の浮動タブはそれぞれ、前記パターン付きフレーム構造(例えば、パターン付きフレーム構造の実質的な横向きの部材)に固着された片持ち梁端部と、前記管状支持構造が第1の曲げ方向に側方に撓むにつれて、前記パターン付きフレーム構造に対して相対的に並進し、次いで前記パターン付きフレーム構造に係合するように構成された自由端部とを有する。前記第1組の浮動タブは、例えば、前記パターン付きフレーム構造上で円周方向に整列していてもよいし、前記パターン付きフレーム構造上で円周方向にオフセットしていてもよい。
【0010】
一実施形態では、前記第1組の浮動タブはそれぞれ、前記管状支持構造が一次側方偏向範囲にあるときに前記パターン付きフレーム構造に対して相対的に並進し、前記管状支持構造が一次側方偏向範囲よりも大きい二次側方偏向範囲にあるときに前記パターン付きフレーム構造に係合するように構成される。この実施形態では、前記管状支持構造は、当該管状支持構造が一次側方偏向範囲にあるときに一次曲げ剛性(例えば、0.00001in2-lbより大きい)を有し、前記管状支持構造が二次側方偏向範囲にあるときに前記一次曲げ剛性より大きい1またはそれ以上の二次曲げ剛性を有し得る。前記二次曲げ剛性の最高値は、前記一次曲げ剛性の5倍以下、好ましくは2倍以下であり得る。この実施形態では、前記一次曲げ剛性は半径方向に等方性であり、一方、前記二次曲げ剛性はそれぞれ半径方向に異方性であり、各二次曲げ剛性が少なくとも1つの相対的に低い度合の周方向領域と少なくとも1つの相対的に高い度合の周方向領域とを有することができる。相対的に低い度合の周方向領域のそれぞれの大きさは、前記一次曲げ剛性の大きさに等しいかそれ以上であり得る。
【0011】
別の実施形態では、前記管状支持構造が軸方向に伸張されるにつれて、前記第1組の浮動タブのそれぞれの自由端が、前記パターン付きフレーム構造に対して相対的に並進し、次いで前記パターン付きフレーム構造に係合するように構成される。この実施形態において、前記第1組の浮動タブはそれぞれ、前記管状支持構造が第1の軸方向伸張範囲にあるときに前記パターン付きフレーム構造に対して相対的に並進し、前記管状支持構造が前記第1の軸方向伸張範囲よりも大きい第2の軸方向伸張範囲にあるときに前記パターン付きフレーム構造に係合するように構成され得る。前記管状支持構造は、当該管状支持構造が第1の軸方向伸張範囲にあるときに第1の引張剛性を有し、前記管状支持構造が第2の軸方向伸張範囲にあるときに前記第1の引張剛性よりも大きい1または複数の第2の引張剛性を有し得る。
【0012】
さらに別の実施形態では、前記第1組の浮動タブは、前記管状支持構造が第1の曲げ方向に側方に撓むにつれて、前記パターン付きフレーム構造に漸増的に係合するように構成されている。例えば、前記浮動タブの少なくとも2つは長さが異なっていてもよい。
さらに別の実施形態では、前記管状支持構造は、前記パターン付きフレーム構造に沿って軸方向に間隔を隔てて配置され、前記第1組の浮動タブから周方向にオフセットされた第2組の浮動タブをさらに含む。前記第2組の浮動タブはそれぞれ前記パターン付きフレーム構造(例えば、パターン付きフレーム構造の実質的な横向きの部材)に固定された片持ち梁端部と、前記管状支持構造が第1の曲げ方向とは異なる第2の曲げ方向に側方に撓むにつれて、前記パターン付きフレーム構造に対して相対的に並進し、次いで前記パターン付きフレーム構造に係合するように構成された自由端部とを有し得る。この実施形態では、前記第2組の浮動タブは、前記第1組の浮動タブから円周方向に180度オフセットされ、前記第2の曲げ方向は、前記第1の曲げ方向と反対であり得る。この実施形態において、前記第1組の浮動タブは、前記管状支持構造が第1の方向に側方に撓んだときに前記パターン付きフレーム構造に対して第1の軸方向に相対的に並進するように構成され、前記第2組の浮動タブは、前記フレームに対して前記第1の軸方向とは反対の第2の軸方向に相対的に並進するように構成され得る。例えば、前記第1組の浮動タブは、前記第2組の浮動タブのすべてがパターン付きフレーム構造に係合した後に、前記パターン付きフレーム構造に対して第1の軸方向に並進し続けるように構成され、前記第2組の浮動タブは、前記第1組の浮動タブのすべてが前記パターン付きフレーム構造に係合した後に、前記パターン付きフレーム構造に対して第2の軸方向に並進し続けるように構成され得る。
【0013】
さらに別の実施形態では、前記第1組の浮動タブはそれぞれ、それぞれのタブの片持ち梁端部および自由端部をそれぞれ形成するステム要素および拡大要素とを具える。例えば、前記第1組の浮動タブはそれぞれT字型であり得る。この実施形態において、前記パターン付きフレーム構造は、前記細長い管状体内に少なくとも部分的に配置された複数のリテーナ開口部を具え、前記第1組の浮動タブの各々の拡大部分は、前記管状支持構造が第1の曲げ方向に側方に偏向されるにつれて、前記リテーナ開口部の1つ内に進み、次いで各々のリテーナ開口部の当接縁部に係合するように構成され得る。各リテーナ開口部は、実質的に横向きのスロットのそれぞれの1つと同軸であってもよく、その場合、前記第1組の浮動タブのそれぞれのステム要素は、それぞれの横向きの部材から、前記実質的に横向きのスロットの1つを横切って、それぞれのリテーナ開口部内に延在し得る。隣接する1対の実質的な横向きの部材はそれぞれ、前記リテーナ開口部の1つと前記実質的に横向きのスロットの1つとの間にチャネルを形成する1対の延長部を具え、この場合、前記第1組の浮動タブのそれぞれのステム要素は、チャネルの1つの中に納まり、各対の延長部は、それぞれのリテーナ開口部の当接縁部を規定し得る。各対の延長部は、それぞれの浮動タブの拡大要素がそれぞれのリテーナ開口部の当接縁部に係合したときに側方に撓むように構成され得る。
【0014】
本発明の第2の態様によれば、前記管状支持構造は、前記パターン付きフレーム構造に沿って軸方向に間隔をあけて配置された第1組の機械的特性変調要素を含む。第1組の機械的特性変調要素は、前記管状支持構造が第1の曲げ方向に側方に撓むことに応答して、前記管状支持構造の有限の曲げ剛性(例えば、0.00001in2-lbより大きい)を漸増させるように構成されている。管状支持構造の無限の曲げ剛性は、例えば500%未満、好ましくは200%未満増大され得る。前記第1組の機械的特性変調要素は、例えば、前記パターン付きフレーム構造上で円周方向に整列していてもよいし、前記パターン付きフレーム構造上で円周方向にオフセットしてもよい。
【0015】
一実施形態では、前記第1組の機械的特性変調要素はそれぞれ、前記パターン付きフレーム構造に固定された片持ち梁端部と、前記管状支持構造が第1の曲げ方向に側方に撓むにつれて、前記パターン付きフレーム構造に対して相対的に並進し、次いで前記パターン付きフレーム構造に係合し、それによって前記管状支持構造の有限の曲げ剛性を増加させるように構成された自由端部とを有する浮動タブを具える。
【0016】
別の実施形態では、前記第1組の機械的特性変調要素は、前記管状支持構造の軸方向の伸張に応答して前記管状支持構造の有限の引張剛性を増大させるようにさらに構成される。さらに別の実施形態では、前記第1組の機械的特性変調要素は、前記管状支持構造を第1の曲げ方向に側方に偏向させることに応答して、前記管状支持構造の有限の曲げ剛性を複数回漸増させるように構成される。
【0017】
さらに別の実施形態では、パターン付き管状支持構造の有限の曲げ剛性は、初期の半径方向に等方性の一次曲げ剛性から半径方向に異方性の二次曲げ剛性へと増大し、前記二次曲げ剛性は、少なくとも1つの相対的に低い度合の周方向領域と少なくとも1つの相対的に高い度合の周方向領域とを有する。この実施形態では、相対的に低い度合の周方向領域のそれぞれの大きさは、前記一次曲げ剛性の大きさに等しくてもよいし、前記一次曲げ剛性よりも大きくてもよい。
【0018】
さらに別の実施形態では、前記管状支持構造は、前記パターン付きフレーム構造に沿って軸方向に間隔をあけて配置され、前記第1組の機械的特性変調要素から周方向にオフセットされた第2組の機械的特性変調要素をさらに含む。第2組の機械的特性変調要素は、前記第1の曲げ方向とは異なる第2の曲げ方向に前記管状支持構造を側方に撓ませることに応答して、前記管状支持構造の第2の曲げ剛性を漸増させるように構成される。この実施形態では、前記第2組の機械的特性変調要素は、前記第1組の機械的特性変調要素から円周方向に180度オフセットされており、前記第2の曲げ方向は前記第1の曲げ方向と反対である。この場合、前記第2の機械的特性変調要素は、前記管状支持構造が第1の曲げ方向に側方に偏向されたときに前記管状支持構造の一次曲げ剛性の増加に寄与せず、前記第1の機械的特性変調要素は、前記管状支持構造が第2の曲げ方向に側方に偏向されたときに前記管状支持構造の二次曲げ剛性の増加に寄与しないでよい。
【0019】
本発明の第3の態様によれば、前記管状支持構造は、前記パターン付きフレーム構造の周囲に円周方向に間隔を隔てて配置された第1組の機械的特性変調要素を含む。第1組の機械的特性変調要素は、前記管状支持構造の軸方向伸張に応答して、管状支持構造の有限の引張剛性(例えば、0.05ポンドより大きい)を漸増させるように構成される。前記管状支持構造の有限の引張剛性は、例えば50%以上、好ましくは100%以上増大され得る。前記第1組の機械的特性変調要素は、例えば、前記パターン付きフレーム構造上に円周方向に整列され得る。
【0020】
一実施形態では、前記第1組の機械的特性変調要素はそれぞれ、前記パターン付きフレーム構造に固定された片持ち梁端部と、前記管状支持構造が軸方向に伸張するにつれて、前記パターン付きフレーム構造に対して相対的に並進し、次いで前記パターン付きフレーム構造に係合し、それによって前記管状支持構造の有限の引張剛性を増大させるように構成された自由端部とを有する浮動タブを含む。
【0021】
別の実施形態では、前記管状支持構造は、前記パターン付きフレーム構造の周囲に円周方向に間隔を隔てて配置され、前記第1組の機械的特性変調要素から軸方向に間隔を隔てて配置された第2組の機械的特性変調要素をさらに含む。前記第2の機械的特性変調要素は、前記管状支持構造の軸方向の伸張に応答して、前記管状支持構造の有限の引張剛性をさらに増大させるように構成されている。
【0022】
さらに別の実施形態では、第1組および第2組の機械的特性変調要素は、前記管状支持構造の軸方向の伸張に応答して、前記管状支持構造の有限の引張剛性を複数回漸増させるように構成される。
さらに別の実施形態では、前記管状支持構造は、有限の引張剛性が漸増するにつれて漸増する有限の曲げ剛性を有する。例えば、第1組の機械的特性変調要素は、有限の引張剛性が漸増すると有限の曲げ剛性が漸増するように構成され得る。
【0023】
本発明の第4の態様によると、前記管状支持構造は、前記パターン付きフレーム構造に配置された(例えば、前記パターン付きフレーム構造の実質的に横向きの部材に固定された)複数の機械的特性変調要素を具える。前記複数の機械的特性変調要素は、前記パターン付きフレーム構造を1つまたは複数の曲げ方向に側方に偏向させることに応答して、前記管状支持構造の半径方向に等方性の曲げ剛性を変調するように構成され、その結果前記管状支持構造は半径方向に異方性の曲げ剛性を有する。
【0024】
一実施形態では、前記複数の機械的特性変調要素はそれぞれ、前記パターン付きフレーム構造に固定された片持ち梁端部と、前記管状支持構造が第1の曲げ方向に側方に撓むにつれて、前記パターン付きフレーム構造に対して相対的に並進し、次いで前記パターン付きフレーム構造に係合し、それによって前記管状支持構造の半径方向の等方性の曲げ剛性を変調するように構成された自由端部とを有する浮動タブを具える。
【0025】
別の実施形態では、前記複数の機械的特性変調要素は、1つまたは複数の機械的特性変調要素の組を含む。前記機械的特性変調要素の各組は、前記フレーム構造に沿って軸方向に間隔をあけて配置されており、前記機械的特性変調要素の組は、前記管状支持構造を1つまたは複数の曲げ方向にそれぞれ側方に偏向させることに応答して、前記管状支持構造の半径方向の等方性曲げ剛性を調整するように構成されている。
【0026】
さらに別の実施形態では、機械的特性変調要素のセットは、パターン付きフレーム構造の周囲で互いに周方向にオフセットされた機械的特性変調要素の複数のセットからなり、曲げ方向は、複数の異なる曲げ方向からなる。この実施形態では、複数組の機械的特性変調要素のうち2組は、円周方向に互いに180度オフセットされ得る。この場合、前記半径方向に異方性の二次曲げ剛性はそれぞれ、少なくとも1つの相対的に低い度合の周方向領域と少なくとも1つの相対的に高い度合の周方向領域を有し得る。前記相対的に低い度合の周方向領域のそれぞれの大きさは、前記一次曲げ剛性の大きさと等しくてもよいし、一次曲げ剛性の大きさよりも大きくてもよい。前記相対的に低い度合の周方向領域はそれぞれ、前記機械的特性変調要素の組が存在しない前記パターン付きフレーム構造の周方向位置にあり、前記相対的に高い度合の周方向領域はそれぞれ、前記機械的特性変調要素の組が存在する前記パターン付きフレーム構造の周方向位置を中心としていてもよい。前記相対的に低い度合の周方向領域はそれぞれ、複数のうちの第1組の機械的特性変調要素が存在するパターン付きフレーム構造の周方向位置を中心とし、相対的に高い度合の周方向領域はそれぞれ、複数のうちの第2組の機械的特性変調要素が存在するパターン付きフレーム構造の周方向位置を中心としてもよく、この場合、第1組および第2組の機械的特性要素は、異なる様式で前記パターン付きフレーム構造を変調してもよい。
【0027】
本発明はまた、細長い血管内医療器具(例えば、ガイドワイヤ、カテーテル、ガイドシース、または血管内インプラント送達ワイヤ)を患者の血管系内で遠位方向に前進させる方法を含む。この方法は、前記細長い血管内医療器具を患者の血管系内に導入するステップと、前記細長い血管内医療器具のある長さ方向部分を患者の血管系内の第1の湾曲部内へと遠位方向に前進させるステップとを含む。前記長さ方向部分は、例えば、前記細長い血管内医療器具の遠位端であってもよいし、前記細長い血管内医療器具の遠位端の近位にあってもよい。この方法はさらに、前記細長い血管内医療器具の長さ方向部分を患者の血管系の第2の湾曲部内へと遠位方向に前進させるステップを含む。前記第2の湾曲部は、前記第1の湾曲部の曲率よりも高い曲率を有する。この方法はさらに、前記細長い血管内医療器具の遠位端が患者の血管系内の標的部位に位置するまで、前記細長い血管内医療器具を患者の血管系内で遠位方向に前進させるステップをさらに含む。一つの方法は、前記細長い血管内医療器具を用いて標的部位で追加の医療処置を行うステップをさらに含んでもよい。
【0028】
本発明の第5の態様によると、前記細長い血管内医療器具の長さ方向部分は、患者の血管系内の第1の湾曲部内を遠位側に進められるときに、一次曲げ剛性を有する。この方法はさらに、細長い血管内医療器具の長さ方向部分が第2の湾曲部内で遠位へ前進するのに応答して、前記細長い血管内医療器具の長さ方向部分の一次曲げ剛性を、前記一次曲げ剛性よりも大きい二次曲げ剛性へと移行させることをさらに含む。例えば、前記二次曲げ剛性の最高値は、前記一次曲げ剛性の500%未満、好ましくは200%未満であり得る。
【0029】
1つの方法において、前記細長い血管内医療器具の長さ方向部分は、前記細長い血管内医療器具に前記一次曲げ剛性および前記二次曲げ剛性を提供するパターン付きフレーム構造を有し、前記細長い血管内医療器具は、前記パターン付きフレーム構造に沿って軸方向に間隔を置いて配置された機械的特性変調要素を有する。この場合、前記機械的特性変調要素は、第2の湾曲部内での前記細長い血管内医療器具の長さ方向部分の遠位側への前進に応答して、前記一次曲げ剛性を二次曲げ剛性に移行させるように構成される。
【0030】
別の方法はさらに、前記細長い血管内医療器具の長さ方向部分を患者の血管系の第3の湾曲部内に遠位方向に前進させるステップを含む。前記第3の湾曲部は、前記第2の湾曲部の曲率よりも低い曲率を有し、この場合、この法は、前記第3の湾曲部内での細長い血管内医療器具の長さ方向部分の遠位側への前進に応答して、前記細長い血管内医療器具の長さ方向部分の二次曲げ剛性を前記一次曲げ剛性に移行させるステップをさらに含む。この方法はさらに、前記細長い血管内医療器具の長さ方向部分を患者の血管系の第4の湾曲部内に遠位方向に進めるステップを含み得る。前記第4の湾曲部は、前記第1の湾曲部の曲率よりも高く、前記第2の湾曲部の曲率とは異なる曲率を有し、この場合、この方法は、前記第4の湾曲部を通る前記細長い血管内医療器具の長さ方向部分の遠位への前進に応答して、前記細長い血管内医療器具の長さ方向部分の一次曲げ剛性を、前記二次曲げ剛性とは異なる別の曲げ剛性に移行させるステップをさらに含む。
【0031】
さらに別の方法は、前記細長い血管内医療器具を引っ張るステップと、前記細長い血管内医療器具の引っ張りに応答して、前記細長い血管内医療器具の長さ方向部分の一次引張剛性を当該一次引張剛性よりも大きい二次引張剛性に移行させるステップをさらに含む。
【0032】
さらに別の方法では、前記細長い血管内医療器具の長さ方向部分の二次曲げ剛性は半径方向に異方性であり、前記二次曲げ剛性が相対的に低い度合の周方向領域と相対的に高い度合の周方向領域とを有する。この方法はさらに、前記細長い血管内医療器具をその長さ方向軸を中心に回転させるステップであって、回転された前記血管内医療器具の長さ方向部分が第2の湾曲部内を遠位側に前進したときに、前記細長い血管内医療器具の長さ方向部分の一次曲げ剛性が、二次曲げ剛性の相対的に高い度合の周方向領域に移行するようにするステップを含む。この方法では、前記二次曲げ剛性の相対的に低い度合の周方向領域の度合は、一次曲げ剛性の大きさと等しいか、一次曲げ剛性の大きさよりも大きい。この方法はさらに、前記細長い血管内医療器具をその長手方向軸を中心に回転させるステップの前に、前記細長い血管内医療器具の長さ方向部分が第2の湾曲部を通って遠位側にうまく前進できないように、二次曲げ剛性の相対的に低い度合の周方向領域を有した状態で、前記細長い血管内医療器具の長さ方向部分を第2の湾曲部に遠位側に前進させるステップと、前記細長い血管内医療器具の長さ方向部分を近位側に後退させるステップとを含み得る。
【0033】
本発明の第6の態様によると、前記細長い血管内医療器具の長さ方向部分は、患者の血管系内の第1の湾曲部内で遠位側に進められるときに、半径方向に等方性の曲げ剛性を有する。この方法はさらに、前記細長い血管内医療器具の長さ方向部分が前記第2の湾曲部内で遠位へ前進するのに応答して、前記細長い血管内医療器具の長さ方向部分の半径方向に等方性の曲げ剛性を、半径方向に異方性の曲げ剛性へと移行させるステップを含む。
【0034】
1つの方法において、前記細長い血管内医療器具の長さ方向部分は、前記細長い血管内医療器具に半径方向に等方性の曲げ剛性を与えるパターン付きフレーム構造を有し、前記細長い血管内医療器具は、前記パターン付きフレーム構造に沿って軸方向に間隔を置いて配置された機械的特性変調要素を有する。前記機械的特性変調要素は、第2の湾曲部内での前記細長い血管内医療器具の長さ方向部分の遠位側への前進に応答して、前記半径方向に等方性の曲げ剛性を半径方向に異方性の曲げ剛性に移行させるように構成される。
【0035】
別の方法はさらに、前記細長い血管内医療器具の長さ方向部分を患者の血管系内の第3の湾曲部内に遠位方向に前進させるステップであって、前記第3の湾曲部は前記第2の湾曲部の曲率よりも低い曲率を有するステップと、前記第3の湾曲部内での細長い血管内医療器具の長さ方向部分の遠位側への前進に応じて、前記細長い血管内医療器具の長さ方向部分の半径方向に異方性の曲げ剛性を、半径方向に等方性の曲げ剛性に移行させるステップとを含む。この方法において、前記半径方向に異方性の曲げ剛性は、相対的に低い度合の周方向領域と相対的に高い度合の周方向領域とを有することができ、この場合に前記方法はさらに、前記細長い血管内医療器具をその長手方向軸を中心に回転させるステップであって、回転された血管内医療器具の長さ方向部分が前記第2の湾曲部内を遠位側に進められたときに、前記細長い血管内医療器具の長さ方向部分の半径方向に等方性の曲げ剛性が、半径方向に異方性の曲げ剛性の相対的に高い度合の周方向領域に移行するようにするステップを含む。この方法では、前記二次曲げ剛性の相対的に低い度合の周方向領域の度合は、一次曲げ剛性の大きさと等しいか、一次曲げ剛性の大きさよりも大きい。この方法はさらに、前記細長い血管内医療器具をその長手方向軸を中心に回転させるステップの前に、前記細長い血管内医療器具の長さ方向部分が第2の湾曲部を通って遠位側にうまく前進できないように、二次曲げ剛性の相対的に低い度合の周方向領域を有した状態で、前記細長い血管内医療器具の長さ方向部分を第2の湾曲部に遠位側に前進させるステップと、前記細長い血管内医療器具の長さ方向部分を近位側に後退させるステップとを含み得る。
【0036】
実施形態の他のさらなる態様および特徴は、添付の図を考慮した以下の詳細な説明から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図面は、開示された発明の好ましい実施形態の設計および実用性を示すものであり、同様の要素は共通の参照数字で参照されている。図が縮尺通りに描かれていないこと、および同様の構造または機能を持つ要素は、図面全体を通して同様の参照数字で表されていることに留意されたい。また、図面は実施形態の説明を容易にするためを目的とすることに留意されたい。これらは、本発明の網羅的な説明や、本発明の範囲の限定を意図したものではなく、本発明は添付の特許請求の範囲およびその均等物によってのみ定義される。さらに、開示された発明の図示の実施形態は、図示されたすべての態様または利点を有する必要はない。さらに、開示された発明の特定の実施形態に関連して説明された態様または利点は、必ずしもその実施形態に限定されるものではなく、たとえ図示されていなくても、他の実施形態で実施することができる。
【0038】
開示された発明の上記および他の利点や目的がどのようにして得られるかをよりよく理解するために、添付の図面に示される特定の実施形態を参照することにより、上述した開示発明の簡単な説明をより具体的に説明する。これらの図面は、本発明の典型的な実施形態のみを示しており、したがって、その範囲を限定するものではないと理解した上で、本発明を添付の図面を用いてさらに具体的かつ詳細に説明する。
【0039】
【
図1】
図1は、本発明にしたがって構成されたガイドワイヤの一実施形態を示す平面図であり、特に、直線構成のガイドワイヤの遠位部を示す。
【
図2】
図2は、
図1のガイドワイヤの平面図であり、特に、湾曲構成のガイドワイヤの遠位部を示す。
【
図4】
図4は、本発明にしたがって構成されたカテーテルの一実施形態を示す平面図であり、特に、直線構成のカテーテルの遠位部を示す。
【
図5】
図5は
図4のカテーテルの平面図であり、特に、湾曲構成のカテーテルの遠位部を示す。
【
図7】
図7は、
図1~3のガイドワイヤまたは
図4~6の、カテーテルに使用される管状支持構造の一実施形態の側面図であり、特に、機械的特性変調要素の4列の円周方向に整列した組(列)を有している。
【
図8】
図8は、
図7の管状支持構造の側面図であり、特に、管状支持構造の側方の撓みを示す。
【
図9】
図9は、
図7の管状支持構造の側面図であり、特に、軸方向に伸張した構成の管状支持構造を示す。
【
図11】
図11は、
図7の管状支持構造の半径方向に等方性の一次曲げ剛性と半径方向に等方性の二次曲げ剛性を示す平面図である。
【
図12】
図12は、
図1~3のガイドワイヤまたは
図4~6のカテーテルに使用される管状支持構造の別の実施形態の側面図であり、特に、機械的特性変調要素の円周方向にずれた4つの組を有している。
【
図13】
図13は、
図1~3のガイドワイヤまたは
図4~6のカテーテルに使用される管状支持構造のさらに別の実施形態の側面図であり、特に、機械的特性変調要素の円周方向に整列した2つの組(列)を有している。
【
図15】
図15は、
図13の管状支持構造の半径方向に等方性の一次曲げ剛性と半径方向に異方性の二次曲げ剛性を示す平面図である。
【
図16】
図16は、
図1~3のガイドワイヤまたは
図4~6のカテーテルに使用される管状支持構造のさらに別の実施形態の側面図であり、特に、機械的特性変調要素の円周方向に整列した単一の組(列)を有している。
【
図18】
図18は、
図16の管状支持構造の半径方向に等方性の一次曲げ剛性と半径方向に異方性の二次曲げ剛性を示す平面図である。
【
図19】
図19は、
図7の管状支持構造の半径方向に等方性の一次曲げ剛性と半径方向に異方性の二次曲げ剛性を示す平面図である。
【
図20】
図20は、
図7の管状支持構造の横方向の偏向に対してプロットされた均一な(一次)曲げ剛性と漸増的な(二次)曲げ剛性を示す図である。
【
図21】
図21は、
図7の管状支持構造の軸方向の伸張に対してプロットされた均一な(一次)引張剛性と漸増的な(二次)引張剛性を示す図である。
【
図22】
図22Aは、
図7の管状支持構造の機械的特性変調要素とパターン付きフレーム構造の拡大図であり、特に、管状支持構造が弛緩しているときの機械的特性変調要素とパターン付きフレーム構造との位置関係を示す図である。
図22Bは、
図22Aの機械的特性変調要素とパターン付きフレーム構造の拡大図であり、特に、管状支持構造が側方に偏向または軸方向に伸張したときの機械的特性変調要素とパターン付きフレーム構造との位置関係を示す図である。
【
図26】
図26は、
図25の管状支持構造の側面図であり、特に、管状支持構造の側方の撓みを示す図である。
【
図28】
図28Aは、
図23の管状支持構造の機械的特性変調要素の一実施形態の拡大図であり、特に、管状支持構造が弛緩しているときの機械的特性変調要素とパターン付きフレーム構造との位置関係を示す図である。
図28Bは、
図28Aの機械的特性変調要素の拡大図であり、特に、管状支持構造が側方に偏向または軸方向に伸張したときの機械的特性変調要素とパターン付きフレーム構造との位置関係を示す図である。
【
図30】
図30は、
図7の管状支持構造のさらに別の特定の実施形態の斜視図である。
【
図32】
図32は、
図7の管状支持構造のさらに別の特定の実施形態の斜視図である。
【
図33】
図33は、
図7の管状支持構造のさらに別の特定の実施形態の斜視図である。
【
図35】
図35は、
図7の管状支持構造のさらに別の特定の実施形態の斜視図である。
【
図37】
図37Aは、
図23の管状支持構造の機械的特性変調要素の別の実施形態の拡大図であり、特に、管状支持構造が弛緩しているときの機械的特性変調要素とパターン付きフレーム構造との位置関係を示す図である。
図37Bは、
図37Aの機械的特性変調要素の拡大図であり、特に、管状支持構造が側方に偏向または軸方向に一方向に伸張したときの機械的特性変調要素とパターン付きフレーム構造との位置関係を示す図である。
図37Cは、
図37Aの機械的特性変調要素の拡大図であり、特に、管状支持構造が側方に偏向または軸方向に逆方向に伸張したときの機械的特性変調要素とパターン付きフレーム構造との位置関係を示す図である。
【
図38】
図38は、患者の血管系内で
図7の管状支持構造を組み込んだ細長い血管内医療器具を使用する1つの方法を示すフロー図である。
【
図39】
図39A~39Jは、
図38の方法による患者の血管系内での細長い血管内医療器具の使用を示す平面図である。
【
図40】
図40は、患者の血管系内で
図7の管状支持構造を組み込んだ細長い血管内医療器具を使用する別の方法を示すフロー図である。
【
図41】
図41A~41Hは、
図40の方法による患者の血管系内で細長い血管内医療器具を使用する様子を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
本開示は、細長い血管内医療器具(例えば、遠位端、近位端、および/またはその間の任意の領域)に組み込むことができるスロット付きハイポチューブの形態の管状支持構造を記載するものであり、この管状支持構造は、患者の曲がりくねった複雑な血管系を通って移動することができる。この管状支持構造は、ガイドワイヤから作業用または診断用カテーテル、さらにはガイドシースに至るまで、あらゆるサイズの血管内医療器具に組み込むことができる。また、管状支持構造は、血管内インプラント送達ワイヤなど、血管内医療器具の任意の可動部品に組み込むことができる。以下にさらに詳しく説明するように、管状支持構造の機械的特性は、管状支持構造の側方の偏向および/または軸方向の伸張に応じて動的に調節される。このようにして、管状支持構造が組み込まれた血管内医療器具は、管状支持構造の動的に調節された機械的特性を呈することとなる。
【0041】
例えば、管状支持構造の固有の特徴を介して、管状支持構造の曲げ剛性は、管状支持構造が側方に撓むことに応じて増加し、管状支持構造の引張剛性は、管状支持構造が軸方向に伸張することに応じて増加する。したがって、この管状支持構造を組み込んだ血管内医療器具は、患者の血管系内の低から中程度の湾曲部は相対的に低い一次曲げ剛性を有して低い追従力で容易に前進できるとともに、患者の血管系内のきつい湾曲部を進む際には相対的に高い二次曲げ剛性を有して逸脱を防止することができる。
【0042】
さらに、このような管状支持構造の引張剛性、ひいては引張強度は、細長い血管内医療器具が軸方向に伸張するにつれて増加し、それによって、細長い血管内医療器具に大きな引張力が加わっても、細長い血管内医療器具の変形に抵抗する。この管状支持構造は、ストラットの横リブにどの程度の曲げモーメントを加えることができるかについて自己制限することができ、それによって所定の初期曲げ剛性に対する引張強度を高めることができる。したがって、管状支持構造の引張強度を犠牲にすることなく、管状支持構造をより柔軟な材料で構成することができ、この管状支持構造を組み込んだ血管内医療器具は、2つの相反する機械的特性はバランスを取るために妥協しなければならないという考えとは逆に、相対的に高い曲げ柔軟性と相対的に高い引張強度の両方を有することができる。
【0043】
管状支持構造の曲げ剛性は、半径方向に等方性の一次曲げ剛性と半径方向に異方性の二次曲げ剛性を持つように調節することもできる。これによると、この管状支持構造を組み込んだ細長い血管内医療器具の曲げ剛性は、細長い血管内医療器具をその軸を中心に回転させることにより、患者の血管系内の湾曲部を横断する際に選択することができる。例えば、患者の血管系のきつい湾曲部を横断させようとするときには細長い血管内医療器具の低い曲げ剛性を選択することができ、そのような試みが失敗した場合(例えば、逸脱事象が発生した場合)、細長い血管内医療器具を回転させてその曲げ剛性を増加させ、患者の血管系におけるきつい湾曲部を横断する試みを繰り返すことができる。
【0044】
次に
図1~2を参照して、上記の管状支持構造を組み込んだ血管内ガイドワイヤ10の一実施形態について説明する。これらは、例えばカテーテルの形態をとる別の医療機器と組み合わせて、患者内の病状を治療および/または診断するための血管内処置に使用することができる。もちろん、代替的な一例として、ガイドワイヤ10は患者の血管系内で様々な方法のいずれかに使用することができる。例えば、ガイドワイヤ10はインプラント(図示せず)を送達するように構成することができ、その場合、ガイドワイヤ10は送達カテーテルの内腔内に摺動可能に配置された送達ワイヤまたはプッシュワイヤとして機能し得る。別の代替例として、ガイドワイヤ10は患者の血管系の閉塞や狭窄を通すために使用することができる。ガイドワイヤ10は、神経インターベンション、冠動脈インターベンション、末梢インターベンションなどでの使用に適している。
【0045】
ガイドワイヤ10は一般に、近位部14と遠位部16を有する細長いガイドワイヤ本体12を具える。ガイドワイヤ本体12の近位部14の自由端は患者の外部に留まり、オペレータ(例えば、臨床医や医師)がアクセス可能である一方、遠位部16を含むガイドワイヤ本体12の残りの部分は、患者の血管系の離れた場所に到達するためのサイズと寸法を有している。ガイドワイヤ本体12の近位部14の自由端にトルカー18を取り付けて、医療処置中にガイドワイヤ10にトルクを与えることができる。トルカー18は、オペレータの親指と人差し指で人間工学的に把持し、ガイドワイヤ本体12を押したり、引いたり、回転させたりするように操作できる形状になっている。トルカー18は、ガイドワイヤ10が患者の血管系内を進むにつれて、必要に応じて位置を変えることができる。
【0046】
ガイドワイヤ本体12は、血管アクセスポイントから患者内の標的組織部位にアクセスするのに適した長さを有する。標的組織部位は、ガイドワイヤ10が使用される医療処置によって異なる。このように、ガイドワイヤ10のサイズは、任意の介入に対して適切なサイズにすることができる。例えば、ガイドワイヤ10は適切な長さ(例えば、100~450cm)と適切な直径(例えば、1F~3F)を有し得る。一実施形態では、ガイドワイヤ本体12の外径はガイドワイヤ本体12の長さに沿って均一であり得る。別の実施形態では、ガイドワイヤ本体12の外径は、曲がりくねった血管系でのナビゲーションを容易にするために、近位部14における第1の外径から遠位部16における第2の外径へと、徐々にまたは段階的に先細りしてもよい。ガイドワイヤ本体12は、概ね円形の断面形状を有するように描かれているが、例えば楕円形、長方形、三角形、多角形など他の断面形状または形状の組み合わせを含むことができることを理解されたい。
【0047】
ガイドワイヤ本体12は直線構成を有し、室温および/または体温で比較的真っすぐであるが外力を受けると柔軟に曲がり、ガイドワイヤ本体12を患者の血管系を通して前進させることができる。ガイドワイヤ本体12は、患者の血管系系を前進するのに十分なプッシュ性と、遠位部16に回転力を伝達するトルク性を有するように、近位部14における高い剛性から、遠位部16に沿った低い剛性へと徐々に剛性が低下する変化する剛性セクションを有し、直線構成(
図1)と曲線構成(
図2)の間で容易に移行することができる。
【0048】
特に
図3を参照すると、ガイドワイヤ本体12は、近位部22および遠位部24を有するコアワイヤ20と、コアワイヤ20の遠位部24上に固定された管状支持構造26と、管状支持構造26内でコアワイヤ20の遠位部24に固定された放射線不透過性コイル28と、はんだ接合32を介してコアワイヤ20および/または管状支持構造26の遠位先端部30に固定された非外傷性遠位先端部材30とを具える。放射線不透過性コイル28は、適切な放射線不透過性材料、例えば、金、白金、パラジウム、タンタル、タングステン合金、放射線不透過性フィラーを充填したポリマー材料などで構成され得る。遠位先端部材30は、例えば、はんだボールであってもよいし、コアワイヤ20の端部に配置されたポリマーチップの形態であってもよい。
【0049】
管状支持構造26は、ガイドワイヤ本体12の可撓性を高めつつ、適切なトルク伝達特性を確保するように設計されたスロットパターンを有している。図示の実施形態では、スロットパターンは、管状支持構造26の実質的に全長に、および全周に沿って設けられているが、代わりに、スロットパターンは、管状支持構造26の任意の長さ部分または円周部分に沿って設けられてもよい。管状支持構造26は、ガイドワイヤ本体12の遠位部16に配置されるように図示されているが、管状支持構造26は、ガイドワイヤ本体12の機械的特性(特に、曲げ剛性および引張性)を動的な調節が望まれる場合には、ガイドワイヤ本体12の近位部14を含むガイドワイヤ本体12のどこに配置されてもよいことを理解されたい。ガイドワイヤ本体12の管状支持構造26として使用できる管状支持構造の構造および機能の更なる詳細は、以下で更に詳しく説明される。
【0050】
図示の実施形態では、コアワイヤ20は一体型の部材である。コアワイヤ20の遠位部24は、ガイドワイヤ本体12の遠位部16の可撓性が徐々に増加するように、徐々に減少するテーパ部を具える。コアワイヤ20の遠位部24のテーパ部は、多くの異なる技術、例えば、センタレス研削法、スタンピング法等によって形成され得る。コアワイヤ20は、金属、金属合金、ポリマー、金属・ポリマー複合材料などで構成され得る。代替実施形態において、コアワイヤ20の近位部22および遠位部24は、異なる材料で構成されてもよく(例えば、異なる弾性率を有する材料で構成され、可撓性が異なる)、この場合、コネクタ(図示せず)が、溶接、ろう付け、接着剤などを介して、コアワイヤ20の近位部22および遠位部24を結合してもよい。コアワイヤ20の近位部22は、プッシュ性およびトルク性のために比較的硬い材料(例えば、真っすぐな304vステンレス鋼)で構成することができ、一方、コアワイヤ20の遠位部24は、良好な側方の追従性および操縦性のために比較的柔軟な材料(例えば、真っすぐな超弾性合金または線形弾性合金、例えば、ニッケルチタン合金)で構成することができる。
【0051】
図示の実施形態では、ガイドワイヤ本体12は等方性の一次曲げ剛性を有する(すなわち、すべての半径方向で実質的に等しい曲げに対する可撓性を有する)。例えば、コアワイヤ20の遠位部24は円形断面を有し、管状支持構造26は円周方向に均一なスロットパターンを有し得る。代替実施形態では、ガイドワイヤ本体12は、異方性の一次曲げ剛性を実現にする1以上の構造的特徴を含む。例えば、コアワイヤ20の遠位部24の少なくとも一部が平坦であったり、および/または、管状支持構造26が周方向に不均一なスロットパターンを有したりすることができる。このように、ガイドワイヤ本体12は、1以上の好ましい曲げ方向を有することができ、あるいは、ある方向に他の方向よりも容易に曲げることができる。いくつかの実施形態では、好ましい曲げ方向は、ガイドワイヤ本体12の片側に沿った単一の半径方向のみに向けられる。例えば、好ましい曲げ方向が(図示のように)ガイドワイヤ本体12の左側のみに向いている場合、ガイドワイヤ本体12は、左側に曲げるときの方が、他の方向(例えば、好ましい曲げ方向に対して垂直または直交する方向を含む)よりも曲げに柔軟とすることができる。他の実施形態では、好ましい曲げ方向は、ガイドワイヤ本体12の反対側の面に沿って反対側の半径方向に向けられてもよい。例えば、好ましい曲げ方向がガイドワイヤ本体12の左右両方に向いている場合(図示のように)、ガイドワイヤ本体12は、他の方向(例えば、好ましい曲げ方向に垂直または直交する方向を含む)よりも左右への曲げに柔軟性とすることができる。
【0052】
一実施形態では、ガイドワイヤ本体12は、コアワイヤ20および/または管状支持構造26の一部を覆って配置された外側ポリマージャケット(図示せず)をさらに有し、それによってガイドワイヤ10および/または管状支持構造26が概ね平滑な外面を画定する。しかし、他の実施形態では、このような外側ポリマージャケットをガイドワイヤ本体12の全部または一部からなくして、コアワイヤ20および/または管状支持構造26がガイドワイヤ本体12の外面を形成してもよい。いくつかの実施形態では、コアワイヤ20および/または管状支持構造26の外面は、サンドブラスト、ビーズブラスト、炭酸水素ナトリウムブラスト、電解研磨などされてもよい。いくつかの実施形態では、ガイドワイヤ本体12の外面の少なくとも一部(例えば、外側ポリマージャケット(設けられている場合)の外面、またはコアワイヤ20および/または管状支持構造26の他の表面(外側ポリマージャケットが設けられていない場合))は、例えば、インビトロでの血栓形成を抑制する抗血栓性コーティング、抗菌性コーティング、あるいはガイドワイヤ本体12が血管系または別のカテーテル内を前進する際にガイドワイヤ本体12と患者の組織との間の静摩擦または動摩擦を低減する潤滑性コーティング(例えば、親水性コーティング)などの、1つまたは複数のコーティングを有する。
【0053】
管状支持構造26は、ガイドワイヤ本体12の機械的特性を動的に調節する目的で、ガイドワイヤ10の形態の細長い血管内医療器具に組み込まれるものとして説明されているが、管状支持構造26は、装置の機械的特性を動的に調節する目的で、任意の適切な細長い血管内デバイスに組み込まれてもよいことを理解されたい。
【0054】
例えば、
図4~5を参照して、血管内カテーテル50の一実施形態を説明する。図示の実施形態では、血管内カテーテル50は、血管内インプラント52(例えば、ステント、ステントグラフと、フローダイバータ、血管閉塞デバイス、大静脈フィルタなど)(
図6に示す)を患者の血管系内の標的部位に送達するための送達カテーテルとして機能するものであるが、血管内カテーテル50の代替実施形態では、例えば、別のカテーテル、ガイド部材、血栓除去デバイスなど他の医療デバイスを送達してもよい。さらに、血管内カテーテル50の他の代替実施形態は、診断カテーテルまたは別のタイプの治療カテーテル(例えば、アクセスカテーテル、バルーンカテーテル、アテレクトミーカテーテル、薬物送達カテーテルなど)として機能してもよい。
【0055】
血管内カテーテル50は、一般に、近位部56と遠位部58との間で形態上分割された細長いシース本体54と、シース本体54内に延びる内側シース管腔60と、シース管腔60内に摺動可能に配置されたプッシャ部材62と、シース本体54の近位部56の自由端に取り付けられた近位アダプタ64とを具える。
【0056】
内側シース管腔60の直径は、血管内カテーテル50が使用される医療処置に基づいて変えることができ、図示の実施形態では、血管内インプラント52を収容する大きさになっている。内側シース管腔60の直径は、シース本体54の近位部56から遠位部58まで実質的に一定であってもよいし、シース本体54の近位部56における第1の直径からシース本体54の遠位部58における第2の異なる直径へと先細りしてもよい。内側シース管腔60は、シース本体54の遠位部58の端にある遠位ポート66で終端している。
【0057】
プッシャ部材62は血管内インプラント52を担持し、血管内カテーテル50から患者の血管系の標的部位に血管内インプラント52を配備するために、内側シース管腔60内で遠位側に前進させることができる。近位アダプタ64は血管内カテーテル50の近位部56に接着剤、溶接などの適切な手段で固定される。近位アダプタ64は、内側シース内腔60と連通する中央ボア68(点線で図示)を具える。中央ボア68は、プッシャ部材62および血管内インプラント12を血管内カテーテル50に装填できるようにするための近位ポート70で終端している。近位アダプタ64はさらに、プッシャ部材62および血管内インプラント12を水和するために内側シース管腔60に液体を導入するための、中央ボア68と流体連通するサイドポート72を具える。いくつかの実施形態では、血管内カテーテル50の近位部56に、近位カテーテルハブ64に加えて、またはその代わりに、別の構造体(図示せず)を取り付けてもよい。血管内カテーテル50はさらに、遠位ポート66に近接するシース本体54の遠位部58に配置された1つまたは複数の放射線不透過性マーカーバンド74(1つのみ図示)を具え、患者の血管系内における血管内カテーテル50の遠位先端部の位置、あるいは部分的または完全に展開された血管内インプラント12との相対的な位置を、医療用画像技術(例えば、蛍光透視法)を用いて特定することができる。放射線不透過性バンド74は、適切な放射線不透過性材料、例えば、金、白金、パラジウム、タンタル、タングステン合金、放射線不透過性フィラーを充填したポリマー材料などで構成され得る。
【0058】
シース本体54の近位部56の自由端は患者の外部に留まり、オペレータ(例えば、臨床医や医師)がアクセス可能である一方、遠位部58を含むシース本体54の残りの部分は、患者の血管系の遠隔位置に到達するようなサイズおよび寸法を有している。シース本体54は、血管アクセスポイントから患者内の標的組織部位にアクセスするのに適した長さを有する。標的組織部位は、血管内カテーテル50が使用される医療処置によって異なる。例えば、血管内カテーテル50が患者の鼠径部の大腿動脈アクセスポイントから患者の脳内の血管系にアクセスするために使用される場合、シース本体54の全長は125cm~200cmであり得る。シース本体54の外径は3F~10Fの範囲であり得る。一実施形態では、シース本体54の外径はカテーテル本体18の長さに沿って均一であり得る。別の実施形態では、シース本体54の外径は、曲がりくねった血管系でのナビゲーションを容易にするために、近位部56の第1の外径から遠位部58の第2の外径まで、徐々にまたは段階的に先細りしてもよい。概ね円形の断面形状を有するように描かれているが、シース本体54は、例えば、楕円形、長方形、三角形、多角形など他の断面形状または形状の組み合わせを含み得ることを理解されたい。
【0059】
シース本体54は直線構成を有しており、室温および/または体温では比較的真っすぐであるが、外力を受けると柔軟に曲がり、シース本体54を患者の血管系を通して前進させることができる。シース本体54は、患者の血管系系を通って前進するのに十分なプッシュ性と、遠位部58に回転力を伝達するトルク性とを有するように、近位部56における高い剛性から遠位部58に沿った低い剛性へと徐々に剛性が低下する変化する剛性セクションを有し、直線構成(
図4)と湾曲構成(
図5)との間で容易に移行することができる。シース本体54は、任意で、近位部56の相対的に高い曲げ剛性から遠位部58の相対的に低い曲げ剛性へと徐々に移行する中間部(図示せず)を含んでもよい。
【0060】
特に
図6を参照すると、シース本体54は一般に、管状支持構造76と、管状支持構造76内に配置された内側ポリマーライナー78と、管状支持構造76の遠位先端に取り付けられた非外傷性遠位先端部材80とを具える。シース本体54は、内側ポリマーライナー78を管状支持構造76に取り付ける結合層(図示せず)をさらに含んでいてもよい。
【0061】
管状支持構造76は、シース本体54の可撓性を高めつつ、適切なトルク伝達特性を可能にするように設計されたスロットパターンを有する。図示の実施形態では、スロットパターンは、管状支持構造76の実質的に全長に、および全周に沿って設けられているが、代わりに、スロットパターンは、管状支持構造76の任意の長さ部分または円周部分に沿って設けられてもよい。管状支持構造76は、シース本体54の近位部56および遠位部58の両方に沿って配置されて図示されているが、管状支持構造76は、シース本体54の機械的特性(特に、曲げ剛性および引張性)の動的な調節が望まれる場合には、シース本体54の任意の場所、例えば、シース本体54の遠位部58のみに配置されてもよいことを理解されたい。シース本体54の管状支持構造76として使用できる管状支持構造の構造と機能の更なる詳細は、以下で更に詳しく説明される。
【0062】
内側ポリマーライナー78は、内側シース管腔60を取り囲む低摩擦材料(例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、発泡PTFE(ePTFE、例えば、一方向性ePTFEまたは双方向性ePTFE)、フルオロポリマー、パーフルオロアルコキシアルカン(PFA)、フッ素化エチレンポリエチレン(FEP)、ポリエチレン(PE)、またはそれらの任意の組み合わせ)で構成される。したがって、内側ポリマーライナー78は、血管内インプラント52を内側シース管腔60に通しやすくするために、潤滑性のある内面を提供することができる。
【0063】
図示の実施形態では、シース本体54は等方性の一次曲げ剛性を有する(すなわち、すべての半径方向において実質的に等しい曲げに対する可撓性を有する)。例えば、管状支持構造76は、円周方向に均一なスロットパターンを有し得る。代替実施形態では、、シース本体54は、異方性の一次曲げ剛性を実現する1以上の構造的特徴を含む。このように、シース本体54は、1以上の好ましい曲げ方向を有することができ、あるいは、ある方向に他の方向よりも容易に曲げることができる。いくつかの実施形態では、好ましい曲げ方向は、シース本体54の片側に沿った単一の半径方向のみに向けられる。例えば、好ましい曲げ方向が(図示のように)シース本体54の左側のみに向いている場合、シース本体54は、左側に曲げるときの方が、他の方向(例えば、好ましい曲げ方向に垂直たは直交する方向を含む)よりも曲げに柔軟とすることができる。他の実施形態では、好ましい曲げ方向は、シース本体54の反対側の面に沿って反対側の半径方向に向けられてもよい。例えば、好ましい曲げ方向が(図示のように)シース本体54の左右両方に向いている場合、シース本体54は、他の方向(例えば、好ましい曲げ方向に垂直または直交する方向を含む)よりも左右への曲げにり柔軟性とすることができる。
【0064】
一実施形態では、シース本体54はさらに、管状支持構造76全体またはその一部を覆って配置された外側ポリマージャケット(図示せず)を有し、それによって管状支持構造76が概ね平滑な外面を画定する。しかし、他の実施形態では、そのような外側ポリマージャケットをシース本体54の一部または全部からなくして、管状支持構造76がシース本体54の外面を形成するようにしてもよい。外側ポリマージャケットがシース本体54の近位部56上に設けられる場合、シース本体54は、シース本体54のプッシュ性を高めるために、編組層またはコイル層などの補強層をさらに含んでもよい。いくつかの実施形態では、管状支持構造76の外面は、サンドブラスト、ビーズブラスト、炭酸水素ナトリウムブラスト、電解研磨などされてもよい。いくつかの実施形態では、シース本体54の外面の少なくとも一部(例えば、外側ポリマージャケット(設けられている場合)の外面、または管状支持構造76の他の表面(外側ポリマージャケットが設けられていない場合))は、例えば、インビトロでの血栓形成を抑制する抗血栓性コーティング、抗菌性コーティング、あるいはシース本体54がガイドワイヤ上を血管系またはガイドシースを通って前進する際にシース本体54と患者の組織との間の静摩擦または動摩擦を低減する潤滑性コーティング(例えば、親水性コーティング)などの、1つまたは複数のコーティングを有する。遠位先端部材80は、コアワイヤ20の先端に配置されたポリマーチップの形態であってもよい。
【0065】
次に、
図7~
図10を参照して、
図1~
図3に示す血管内ガイドワイヤ10の管状支持構造26または
図4~
図6に示す血管内カテーテル50の管状支持構造76に用いることができる管状支持構造100の一実施形態について説明する。
【0066】
管状支持構造100は一般に、長手方向軸104を有する細長い管状体102と、管状体102に形成されたパターン付きフレーム構造106と、管状体102の長手方向軸104に沿って軸方向に配置された内腔108と、パターン付きフレーム構造106に沿って軸方向に間隔をあけて配置され、パターン付きフレーム構造106の周囲に円周方向に間隔をあけて配置された複数の機械的特性変調要素110とを具える。
【0067】
管状体102は、任意の様々な適切な材料、例えば、剛性であるが管状体102の壁のような極端に薄い構造を形成するために使用される場合にはある程度の可撓性を有する材料で構成され得る。図示の実施形態では、管状体102は、金属または金属合金(例えば、304ステンレス鋼、316ステンレス鋼、316Lステンレス鋼、ニッケルクロム(NiCr)鋼、ニッケルチタン合金(例えば、ニチノール)、コバルト/クロム)などで構成されるハイポチューブの形態をとる。あるいは、管状支持構造100は、硬質ポリマー(例えば、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK))で構成されてもよい。管状体102の寸法は、
図1~3のガイドワイヤ10や
図4~6の血管内カテーテル50のような細長い医療器具の1つまたは複数の所望の用途に適することができる。例として、管状体44の外径は0.005~0.150インチの範囲であり得る。管状体44の内径(すなわち、内腔108の直径)は、例えば、0.002~0.145インチの範囲内であり得る。
【0068】
パターン付きフレーム構造106は、管状支持構造100の可撓性を高め、曲げ力に応答して、側方偏向範囲114(α)内で、弛緩構成(この場合、直線構成)(
図7)から湾曲構成(
図8)まで、曲げ方向112に側方に偏向できるようにする。管状支持構造100の弛緩構成は直線構成として図示されているが、代替実施形態では、管状支持構造100は、その弛緩構成が湾曲構成となるように予め成形されてもよい。この代替例では、管状支持構造100は、曲げ力に応答して、弛緩した湾曲構成から増大した(すなわち、弛緩した湾曲構成の曲率半径よりも小さい曲率半径を有する)湾曲構成までの側方偏向範囲内で曲げ方向に偏向することができる。いずれにせよ、管状支持構造100の可撓性の向上に伴い、パターン付きフレーム構造106は引張力116に応答して、軸方向の伸張範囲118(l
Δ)内で、弛緩した長さl
0(
図7)から増大した長さl
1(
図9)まで、軸方向116に本質的に伸張する。
【0069】
パターン付きフレーム構造106は開口部122と部材124の任意の組み合わせを含み、これらが管状支持構造100に所望の一次(または初期)曲げ剛性を提供する。例えば、
図20に示すように、管状支持構造100は例示的な一次曲げ剛性200(破線で示す)を有し、これは、パターン付きフレーム構造106の側方の偏向量(横軸)に正比例して直線的に変化する(または曲率半径の量に逆相関する)曲げ力(縦軸)を規定する。したがって、
図20からわかるように、一次曲げ剛性200は、変調がなければ概ね一様である。一次曲げ剛性200は有限であることが好ましい(すなわち、一次曲げ剛性200は実質的にゼロより大きいことが好ましい)。例えば、一次曲げ剛性200は、0.00001in
2-lbより大きくあり得る。以下でさらに詳細に説明するように、変調要素110は、管状支持構造100が1つまたは複数の二次曲げ剛性202、したがって漸増的な曲げ剛性を有するように、パターン付きフレーム構造106を変調する。
【0070】
図示の実施形態では、管状支持構造100は、半径方向に等方性の一次曲げ剛性200を有する。本明細書の目的上、一次曲げ剛性200が少なくとも4つの等間隔に離間した半径方向で同じである場合に、管状支持構造100は半径方向に等方的な一次曲げ剛性200を有する。管状支持構造100は、パターン付きフレーム構造106全体の周囲で開口部122および部材124のパターンを周方向に繰り返すことにより、等方性の一次曲げ剛性200を達成することができる。代替の実施形態では、管状支持構造100は、異方性の一次曲げ剛性200を有する。例えば、管状支持構造100の一次曲げ剛性200は、第1の2つの正反対の半径方向(例えば、半径方向120a、120c)において、当該第1の2つの正反対の半径方向(例えば、半径方向120a~120b)から90゜回転した第2の2つの正反対の半径方向(例えば、半径方向120b、120d)における管状支持構造100の一次曲げ剛性200より低くすることができる。
【0071】
重要なことに、変調要素110は、管状支持構造100を少なくとも1つの曲げ方向に側方に撓ませることに応答して、管状支持構造100の一次曲げ剛性200が、
図20に図示するように、1つ以上の高い二次曲げ剛性202へと遷移するように、管状支持構造100の曲げ剛性を変調させ、特に漸増させるように構成されている。特に、管状支持構造100を特定の曲げ方向に側方に撓ませることに応答した、管状支持構造100の曲げ剛性の変調は、一次側方偏向範囲内の一次曲げ剛性200と、当該一次側方偏向範囲よりも大きい二次側方偏向範囲内の1または複数の二次曲げ剛性202との間、この場合は2つの二次曲げ剛性202a、202bとの間の遷移を規定する1または複数の変曲点204を生成する。各変曲点204において、特定の曲げ方向に対する管状支持構造100の曲げ剛性が増加する。したがって、管状支持構造100の一次曲げ剛性200は、(破線で示すように)無変調で続くのではなく、二次曲げ剛性202に移行し、この場合、曲げ剛性202aへ、その後に曲げ剛性202bへと移行する。管状支持構造100の一次曲げ剛性200は、1つの二次曲げ剛性202のみ、または2以上の二次曲げ剛性202を含む、任意の数の二次曲げ剛性202に移行し得ることを理解されたい。
【0072】
管状支持構造100の曲げ剛性は、患者の血管系を通る管状支持構造100の追従性が維持されるように、初期の曲げ剛性(この場合、一次曲げ剛性200)から最大曲げ剛性(この場合、最大の二次曲げ剛性202)まで500%未満、好ましくは200%未満増加され得る。さらに、曲げ剛性を調整する(すなわち、漸増させる)のではなく、非常に高い値まで急激に変化させると、細長い血管内医療器具の操縦性が著しく損なわれ、硬くなりすぎて患者の血管系内を安全に進められなくなる。管状支持構造100の曲げ剛性は可逆的であり、管状支持構造100が直線構成に戻ると、二次曲げ剛性202bは二次曲げ剛性202aに戻り、その後一次曲げ剛性200に戻ることを理解されたい。
【0073】
図示の実施形態では、変調要素110は、組110a~110d(
図10に最もよく示す)として、この場合、4つの周方向に整列された組(すなわち、列)として配置され、列110a~110dの各変調要素110は、パターン付きフレーム構造106に沿って互いに軸方向に間隔をあけて配置され、変調要素列110a~110dは、互いに90°だけ周方向に間隔をあけて配置されている。このようにして、管状支持構造100の曲げ剛性は、90°離れた4つの異なる半径方向で調節することができる。
【0074】
図示の実施形態では、それぞれの変調要素列の方向に側方に偏向されたときに管状支持構造100の曲げ剛性の変調を担うのは、単一の変調要素列(すなわち、湾曲の外縁にある変調要素列(この場合、
図8に示す変調要素列110a))のみである(すなわち、単一の変調要素列がアクティブになり、他の3つの変調要素列は非アクティブになる)。
【0075】
代替の実施形態では、管状支持構造100の曲げ剛性を変調させる役割を担う単一の変調要素列は、管状支持構造100が側方に偏向する方向とは反対側にある(すなわち、湾曲の内縁にある変調要素列(この場合、
図8に示す変調要素列110c))。他の代替実施形態では、直径方向に対向する2つの変調要素列(すなわち、湾曲の外縁および内縁にある変調要素列(この場合、
図8に示す変調要素列110a、110c))が、2つのそれぞれの変調要素列のうちの一方の方向に側方に偏向されたときに、管状支持構造100の曲げ剛性を変調させる役割をともに担う。管状支持構造100が隣接する一対の変調要素列(例えば、変調要素列110aと変調要素列110b)の間の方向に側方に偏向される場合、それぞれの対の変調要素列が、管状支持構造100の一次曲げ剛性の変調に寄与し得ることを理解されたい。
【0076】
変調要素列110a~110dは、パターン付きフレーム構造106の周囲で互いに90°円周方向に離間しているため、変調要素列110a~110dが同じと仮定すると、変調要素110は管状支持構造100の曲げ剛性を、初期の半径方向に等方性の一次曲げ剛性200から1以上の半径方向に等方性の二次曲げ剛性202へと増加させるように構成され得ることを理解されたい。したがって、変調要素列110a~110dは、管状支持構造100が半径方向に等方的の二次曲げ剛性202を有するように、管状支持構造100の曲げ剛性を周方向に実質的に均一に変調する。本明細書の目的上、管状支持構造100は、二次曲げ剛性202が、等間隔に離間した少なくとも4つの半径方向(例えば、
図10に図示されているように、90°離間した4つの半径方向120a~120d)で同じである場合、半径方向に等方性の二次曲げ剛性202を有する。その結果、二次曲げ剛性202は、
図11に示すように、4つの変調要素列110a~110dをそれぞれ中心とする4つの90°の周方向領域208を有し得る。
【0077】
図7~
図10では、変調要素110は、パターン付きフレーム構造106上に円周方向で整列した組に配置されるように図示されているが、
図12に示すように、管状支持構造100’の代替実施形態では、変調要素110は、パターン付きフレーム構造106上に円周方向にずれた4つの組(組110a’~110c’のみ図示)に配置されてもよい。パターン付きフレーム構造106上の変調要素110を軸方向でずらすことにより、管状支持構造100’の二次曲げ剛性202は、より半径方向に等方性となり得る。すなわち、パターン付きフレーム構造106に変調要素の各組110’内の変調要素を周方向に間隔をあけて配置することにより、二次側方偏向範囲内にあるときの管状支持構造100’の優先的な曲げ方向が平滑化され、この曲げ方向はさもなくば変調要素の周方向に整列した列または管状支持構造100’の製造工程内の公差から生じてしまう。
【0078】
代替実施形態では、変調要素110は、管状支持構造100の曲げ剛性を、初期の半径方向に等方性の一次曲げ剛性から半径方向に異方性の二次曲げ剛性へと増加させるように構成されてもよい。
例えば、
図13~14に示すように、管状支持構造100’’の代替実施形態は、パターン付きフレーム構造106上に配置された2つの直径方向に対向する変調要素列110a、110cのみを有し得る。このようにして、管状支持構造100’’は、対向する変調要素列110a、110cのいずれかに向かう曲げ方向に側方に偏向された場合には二次曲げ剛性202を有し、対向する変調要素列110a、110cから90°側方に偏向された場合には二次曲げ剛性202が減少するかゼロになる。この実施形態では、二次曲げ剛性202は、
図15に示すように、パターン付きフレーム構造106において変調要素列が存在しない(すなわち、変調要素列110b、110dが省略された)円周方向位置を中心とする2つの直径方向に対向する相対的に小さい90゜の周方向領域208aを有するとともに、パターン付きフレーム構造106において変調要素列が存在する(すなわち、変調要素列110a、110cが存在する)円周方向位置を中心とする2つの直径方向に対向する相対的に小さい90゜の周方向領域208bを有する。二次曲げ剛性202の相対的に低い度合の周方向領域208aの大きさの最小値は、一次曲げ剛性200の大きさに等しい。
【0079】
別の例として、
図16~17に示すように、管状支持構造100’’’の別の代替実施形態は、パターン付きフレーム構造106に配置された単一の変調要素列110bを有してもよい。これによると、管状支持構造100’’’は、変調要素列110bに向かう(あるいは離れる)曲げ方向に側方に偏向された場合に1以上の二次曲げ剛性202を有するとともに、変調要素列110bから離れる(あるいは向かう)側方に偏向された場合に二次曲げ剛性202が減少するかゼロになる。この実施形態では、二次曲げ剛性202は、
図18に示すように、パターン付きフレーム構造106において変調要素列が存在しない(すなわち、変調要素列110bが省略された)円周方向位置を中心とする、相対的に低い度合の270゜の周方向領域208aを1つ有するとともに、パターン付きフレーム構造106において変調要素列が存在する(すなわち、変調要素列110bが存在する)円周方向位置を中心とする、相対的に低い度合の90゜の周方向領域208bを1つ有し得る。二次曲げ剛性202の相対的に低い度合の周方向領域208aの大きさの最小値は、一次曲げ剛性200の大きさに等しい。
【0080】
図13~14および
図16~17に示す管状支持構造100’’および100’’’の半径方向に等方性の一次曲げ剛性200のパターン付きフレーム構造106は、変調要素110の1つまたは複数の列を省略することによって半径方向に異方性の二次曲げ剛性202へと増大するように構成されているが、
図7~10に示す管状支持構造100は、変調要素110の列のすべてがパターン付きフレーム構造の周囲に周方向に均等に間隔を空けて配置されており、半径方向に等方性の一次曲げ剛性200を半径方向に異方性の曲げ剛性202へと増加させるように設計され得る。例えば、二次曲げ剛性202は、
図19に示すように、変調要素列110b、110dを中心とする直径方向に対向する2つの相対的に低い度合の90゜の周方向領域208aと、変調要素列110a、110cを中心とする直径方向に対向する2つの相対的に低い度合の90゜の周方向領域208bとを有し得る。二次曲げ剛性202の相対的に低い度合の周方向領域208aの大きさの最小値は、一次曲げ剛性200の大きさよりも大きい。
【0081】
管状支持構造100の二次曲げ剛性202に半径方向の異方性を与えるために、変調要素110の列の少なくとも2つは、異なる様式で二次曲げ剛性202を変調するように設計され、それによって二次曲げ剛性202のそれぞれが半径方向に異方性を有するようになる。例えば、列110a~110dのうちの1つの列110a~110dの変調要素110のすべてが、1つの半径方向における特定の側方の撓みに対して管状支持構造100の曲げ剛性を変調し、一方で列110a~110dのうちの異なる1つの列110a~110dの変調要素110は、異なる半径方向における同じ側方の撓みに対して管状支持構造体100の曲げ剛性を変調しないか、あるいは一部のみが変調するようにしてもよい(例えば、異なる列110a~110dの機械的調整要素110の長さが互いに異なることができる)。この場合、
図19に示される二次曲げ剛性202は、その輪郭が管状支持構造100の側方の撓みの大きさの関数として変化するという点で、動的な性質を有し得る。あるいは、変調要素列110a~110dのすべてが、すべての半径方向において同じ特定の側方の撓みに対して、管状支持構造100の曲げ剛性を変調してもよい。しかしながら、変調要素列110a~110dの少なくとも2つが、管状支持構造100の曲げ剛性を異なる度合で変調してもよい(例えば、変調要素列110a~110dの異なるものに関連する延長部172の対の長さが互いに異なってもよい)。
【0082】
曲げ剛性と同様に、開口部122と部材124の組み合わせにより、管状支持構造100に所望の一次(または初期)引張剛性が与えられる。例えば、
図21に示すように、管状支持構造100は、管状支持構造100の軸方向の伸張量(横軸)に正比例して直線的に変化する引張剛性(縦軸)を規定する例示的な一次引張剛性250を有する。したがって、
図21からわかるように、一次引張剛性250は、変調がなければ概ね均一である。一次引張剛性250は、好ましくは有限である(すなわち、一次引張剛性250は、好ましくは実質的にゼロより大きい)。例えば、一次引張剛性200は、0.05ポンドより大きくてもよい。
【0083】
重要なことに、変調要素110はまた、管状支持構造100の軸方向伸張に応答して、管状支持構造100の一次引張剛性250が、
図21に示すように、1つまたは複数のより高い二次引張剛性252へと遷移するように、管状支持構造100の引張剛性250を変調させ、特に漸増させるように構成されている。特に、管状支持構造100を特定の曲げ方向に側方に撓ませることに応答した管状支持構造100の曲げ剛性の変調が、
図20に示すように、一次曲げ剛性200と二次曲げ剛性202との間の遷移を規定する1つまたは複数の変曲点204を作り出すのと同様に、管状支持構造100を軸方向に伸張させることに応答した管状支持構造100の引張剛性の変調が、一次曲げ剛性200と二次曲げ剛性202との間の遷移を規定する1つまたは複数の変曲点254を作り出し、これが、一次軸方向伸張範囲内の一次引張剛性250と、一次軸方向伸張範囲よりも大きい二次軸方向伸張範囲内の1つまたは複数の二次引張剛性252、この場合は2つの二次引張剛性252a、252bとの間の遷移を規定する1つまたは複数の変曲点254が形成される。各変曲点254において、管状支持構造100の引張剛性が増加する。したがって、管状支持構造100の一次引張剛性250は、(破線で示すように)無変調で続くのではなく、二次引張剛性252に移行し、この場合は引張剛性252a、その後に引張剛性252bへと移行する。したがって、最初の軸方向伸張(この間、管状支持構造100は一次引張剛性250を有する)の後、変調要素110は純粋な張力で引張荷重を受ける(この間、管状支持構造100は二次引張剛性252を有する)。管状支持構造100の一次引張剛性250は、1つの二次引張剛性252のみ、または2以上の二次引張剛性252を含む、任意の数の二次引張剛性252に移行し得ることを理解されたい。重要なことは、管状支持構造100の引張剛性を増加させることにより、調整要素110が、管状支持構造100の一次曲げ剛性200と同じ側方の曲げ剛性を有する典型的なスロット付き管状支持構造の引張強度よりも、管状支持構造100の引張強度を効果的に増加させることである。
【0084】
管状支持構造100の引張剛性は、管状支持構造100が大きな引張力を受けても塑性変形しないように、初期の引張剛性(この場合、一次引張剛性250)から最大引張剛性(この場合、最大の二次引張剛性252)まで50%以上、好ましくは100%以上増加され得る。管状支持構造100の引張剛性は可逆的であり、管状支持構造100が軸方向に弛緩すると、二次引張剛性252bは二次引張剛性252aに戻り、その後一次引張剛性250に戻ることを理解されたい。
【0085】
図22Aおよび
図22Bに示す一実施形態では、各変調要素110は、パターン付きフレーム構造106(特に、部材124のうちの1つ以上)に固定された片持ち梁端部126と、パターン付きフレーム構造106が側方に偏向または軸方向に伸張されるとパターン付きフレーム構造106に対して相対的に(例えば、方向129に)移動するように構成された自由端部128とを有する浮動タブの形態をとる。特に、
図22Aに示すように、浮動タブ110の片持ち梁端部126は、パターン付きフレーム構造106の部材124aに固定され得る一方、浮動タブ110の自由端部128は部材124b~124fに対して浮動する。
図22Bに示すように、管状支持構造100が側方に偏向または軸方向に伸長すると、部材124間の間隔が広がる。浮動タブ110の片持ち梁端部126は部材124aに固定されたままであり、したがって部材124aと共に移動するが、部材124b~124fは浮動タブ110の自由端128に対して相対的に移動する。パターン付きフレーム構造106がさらに側方に偏向または軸方向に伸張されると、浮動タブ110の自由端128は、部材124のうちの1つまたは複数(例えば、部材124b~124d)に係合(engage)し、その時点で、浮動タブ110の自由端128は、浮動タブ110の自由端128が係合している部材124と共に移動し、それによってパターン付きフレーム構造106が変調され、特に、管状支持構造100の曲げ剛性および引張剛性が増大する。特定の浮動タブ110は、その自由端116がパターン付きフレーム構造106に係合しているときにアクティブまたは作動していると考えられ、その自由端116がパターン付きフレーム構造106に対して相対移動しているか、さもなければ係合していないときに非アクティブまたは非作動と考えられ得る。パターン付きフレーム構造106および浮動タブ110の一実施形態に関するさらなる詳細については後述する。
【0086】
浮動タブ110の作動は、
図20に示す変曲点204に対応する。管状支持構造100が一次側方偏向範囲内で最初に側方に撓むとき、すべての浮動タブ110は非アクティブであり、管状支持構造100の曲げ剛性は変調されず、したがって、この一次側方偏向範囲内において一次曲げ剛性200を有する。しかしながら、その後に管状支持構造100が二次側方偏向範囲内で側方に撓むと、浮動タブ110の1つ以上が作動し、管状支持構造100の曲げ剛性が調節され(すなわち、増大し)、したがって、二次側方偏向範囲内で一次曲げ剛性200よりも大きい1つ以上の二次曲げ剛性202を有するようになる。
【0087】
管状支持構造100が各曲げ方向に対して1つの二次曲げ剛性202のみを有する場合、管状支持構造100が一次側方偏向範囲から二次側方偏向範囲へと側方に撓んだときに、それぞれの曲げ方向に対して管状支持構造100の曲げ剛性を変調する役割を担う浮動タブ110のすべて(例えば、変調要素列110a~110dのうちの1つ)がアクティブとなる。しかし、管状支持構造100が曲げ方向のそれぞれに対して複数の二次曲げ剛性202を有する場合、管状支持構造100の曲げ剛性の変調を担う浮動タブ110の異なる組(例えば、変調要素列110a~110dのうちの1つ内の浮動タブ110の2つの組)が、管状支持構造100の曲げ剛性が二次側方偏向範囲内で側方に撓むにつれて漸進的にアクティブとなる。すなわち、管状支持構造100の曲げ剛性が二次側方偏向範囲内の第1の度合で側方に撓んだときに第1組の浮動タブ110がアクティブとなり、次いで、管状支持構造100の曲げ剛性が二次側方偏向範囲内の第2の高い度合でさらに側方に撓んだときに(第1組の浮動タブ110はアクティブのままで)第2組の浮動タブ110がアクティブとなる。
【0088】
管状支持構造100が二次側方偏向範囲から一次側方偏向範囲に戻るように側方偏向すると、すべての浮動タブ110が非アクティブとなり、管状支持構造100の曲げ剛性が変調されず、したがって、この一次側方偏向範囲内で再び一次曲げ剛性200を有することを理解されたい。
【0089】
浮動タブ110の作動は、
図21に示す変曲点254にも対応している。管状支持構造100が一次側方偏向範囲内で最初に軸方向に伸張されるとき、すべての浮動タブ110は非アクティブであり、管状支持構造100の引張剛性は変調されず、したがって、この一次側方偏向範囲内で一次引張剛性250を有することになる。しかしながら、その後に管状支持構造100が二次軸方向伸張範囲内で軸方向に伸張されると、1以上の浮動タブ110がアクティブとなり、管状支持構造100の引張剛性が調節され(すなわち、増大され)、その結果、二次軸方向伸張範囲内において一次引張剛性250よりも大きい1以上の二次引張剛性252を有することになる。
【0090】
管状支持構造100が1つの二次引張剛性252のみを有する場合、管状支持構造100が一次軸方向伸張範囲から二次軸方向伸張範囲へと軸方向に伸張されると、すべての浮動タブ110がアクティブとなる。しかしながら、管状支持構造100が複数の二次引張剛性252を有する場合、管状支持構造100が二次軸方向伸張範囲内で軸方向に伸張されるにつれて、浮動タブ110の異なる組(例えば、円周方向に配置された浮動タブ110の組を構成する各変調要素列110a~110d内の1以上の浮動タブ110)が漸進的にアクティブとなる。すなわち、管状支持構造100が二次軸方向伸張範囲内の第1の度合で軸方向に伸張されると、第1組の浮動タブ110(例えば、周方向に配置された第1組の浮動タブ110)がアクティブとなり、次いで、管状支持構造100が二次軸方向伸張範囲内の第2の高い度合でさらに軸方向に伸張されると、(第1組の浮動タブ110はアクティブのままで)第2組の浮動タブ110がアクティブとなる。
【0091】
管状支持構造100が二次軸方向伸張範囲から一次軸方向伸張範囲に軸方向に弛緩すると、すべての浮動タブ110が非アクティブとなり、管状支持構造100の引張剛性が変調されず、したがって、この一次軸方向伸張範囲内で再び一次引張剛性250を有することを理解されたい。特に、図示の実施形態では、管状支持構造100の引張剛性を変調するための浮動タブ110の作動の順序は、管状支持構造100の曲げ剛性を変調するための浮動タブ110の作動の順序と同じである。このように、変曲点254および二次引張剛性252の数は、パターン付きフレーム構造106の変曲点204および二次引張剛性202の数に追従する。
【0092】
次に
図23~27を参照して、管状支持構造150aの具体的な実施形態を説明する。管状支持構造150aは説明のために比較的短い長さで示されているが、管状支持構造150aは、カテーテルまたはガイドワイヤの全長にわたって延びることを含め、任意の適切な長さを有し得ることを理解されたい。
【0093】
管状支持構造150aは、一般に、長手方向軸154を有する細長い管状体152と、管状体152に形成されたパターン付きフレーム構造156aと、管状体152の長手方向軸154に沿って軸方向に配置された内腔158と、パターン付きフレーム構造156に沿って軸方向に間隔をあけて配置され、パターン付きフレーム構造156の周囲に周方向に間隔をあけて配置された複数の機械的特性変調要素160(この場合、浮動タブ160)とを具える。
【0094】
パターン付きフレーム構造156は、浮動タブ160とともに、レーザー切断、エッチング、ウォータージェット切断、放電加工、研削、フライス加工、鋳造、成形などの方法を含む任意の適切なプロセスを用いて管状体152に形成され得る。パターン付きフレーム構造156aは、管状体152の実質的に全長および全周に沿って延在するように図示されているが、パターン付きフレーム構造156aは、管状体152の近位部分のみを含む管状体152の長さ方向部分、または管状体152の遠位部分のみを含む管状体152の長さ方向部分に沿って、または例えば180°や90°のみといった管状体152の周方向部分(パターン付きフレーム構造156aが半径方向に異方性の一次曲げ剛性を有することが望ましい場合)に延在してもよい。
【0095】
パターン付きフレーム構造156aは、パターン付きフレーム構造156aの曲げ剛性を低下させて、少なくとも1つの曲げ方向において一次曲げ剛性を作り出すように構成された複数の曲げ柔軟性向上開口162を有する。図示の実施形態では、開口162は、管状支持構造150aの内腔158が開口162を通して露出するように、管状体152を完全に貫通して形成されているが、代替実施形態で開口162は、管状支持構造150aの内腔158が開口162を通して露出しないように、管状体152に部分的に形成される。
【0096】
図示の実施形態では、開口162は162a~162hの各組として構成され、そしてこの場合はパターン付きフレーム構造156aの周りに周方向に互いに間隔をあけて一様に配置された、周方向に整列した組(すなわち、列)として配置され、列162a~162hの各々の開口162は、パターン付きフレーム構造156aに沿って軸方向に互いに間隔をあけて一様に配置されている。図示の実施形態では、開口162は、円周方向に互いに45°離間した8つの列162a~162hに配置され、開口の列162a~162hはそれぞれ4つの開口162を有する。開口162は、任意の適切な数の列に配置されてもよく、開口の列162a~162hはそれぞれ任意の適切な数の開口162を有し得ることを理解されたい。
【0097】
図示の実施形態では、管状支持構造150aは、半径方向に等方性の一次曲げ剛性を有するが、代替実施形態では、管状支持構造150aは、半径方向に異方性の一次曲げ剛性を有し得る。例えば、代替実施形態では、管状支持構造150aは直径方向に対向する2つの開口列(例えば、開口列162aと162e)のみを有していてもよく、このような場合、パターン付きフレーム構造体156aの一次曲げ剛性の度合は、開口列162a、162eのいずれかに向かう曲げ方向に側方偏向されたときには等しく、対向する開口列162から90°側方に偏向されたときに増大する。別の例として、パターン付きフレーム構造156aは、単一の開口列(例えば、開口列162c)を有してもよく、このような場合、単一の開口列162cに向かう曲げ方向に側方偏向されるときの管状支持構造150aの一次曲げ剛性の度合は、単一の開口列162cから離れた曲げ方向に側方偏向されるときの管状支持構造150aの一次曲げ剛性の度合よりも小さくなる。他の実施形態において、パターン付きフレーム構造156aは、
図23に示すのと同数の開口列162を有してもよいが、開口列162のうちのいくつかは、浮動タブ160、ステム要素172、または延長部172が無く、これにより、管状支持構造150aが側方に曲げられたときに、これらの要素の相互作用によって剛性が変化しなくてもよい。
【0098】
図示の実施形態において、各開口162は、横向きのスロット164と、リテーナ開口部166と、軸方向チャネル168とを具える。横向きのスロット164はリテーナ開口部166と同一の広がりを有し(coextensive)、特に軸方向チャネル168は横向きのスロット164とリテーナ開口部166を接続している。スロット164は概ね長方形として図示されているが、スロット164は楕円形や楕円形などの他の細長い形状を有してもよい。さらに、代替実施形態では、スロット164ではなく、スリット(図示せず)が管状体152内に形成されてもよい。図示の実施形態では、各リテーナ開口部166は矩形状であるが、代替実施形態では、リテーナ開口部166は異なる幾何学的形状を有してもよい。ただし、リテーナ開口部166は、以下にさらに詳しく説明するように、その中で浮動タブ160の軸方向移動が容易である形状であることが好ましい。
【0099】
図示の実施形態において、開口列162a~162hはそれぞれ、それぞれの開口列の横向きのスロット164がそれぞれの開口列162a~162hの両側の開口列の横向きのスロット164と交互に配置されるように、最も隣接する2つの開口列から軸方向にオフセットされる(例えば、
図23に示す開口列162bの横向きのスロット164は開口列162a、162cの横向きのスロット164と交互に配置され、または
図24に示す開口列162gの横向きのスロット164は開口列162f、162hの横向きのスロット164と交互に配置される)。さらに、開口列162a~162hの各々の横向きのスロット164は、最も隣接する2つの開口列のリテーナ開口部166と周方向に整列されている(例えば、
図23に示す開口列162bの横向きのスロット164は開口列162a、162cのリテーナ開口部166と周方向に整列され、または
図24に示す開口列162gの横向きのスロット164は開口列162f、162hのリテーナ開口部166と周方向に整列される)。
【0100】
実質的な横向きの部材170が、隣接する開口列162a~162hの交互に配置された横向きのスロット164の間に形成されており、それにより横向きの部材170の周方向に整列した組(すなわち、列)がパターン付きフレーム構造156の周りに周方向に間隔をあけて配置され、横向きの部材170の各列の横向きの部材170が、パターン付きフレーム構造156に沿って互いに軸方向に間隔をあけて配置される。横向きの部材170はそれぞれ、最も隣接する2つの開口列のリテーナ開口部166と軸方向チャネル168の間に延びており、それぞれの軸方向チャネル168に隣接する横向きの部材170の端部は、それぞれの軸方向チャネル168に突き当たる延長部172を形成している。以下でさらに詳細に説明されるように、各浮動タブ160は、横向きの部材170のうちの少なくとも1つ(この場合、周方向に整列された一対の横向きの部材170)に機械的に結合されており、パターン付きフレーム構造156を側方に偏向または軸方向に伸長することに応答して横向きの部材170が撓むと、浮動タブ160が軸方向に移動するようになっている。延長部172は、それぞれの軸方向チャネル168と連通するリテーナ開口部166に関連づけられた浮動タブ160に対する当接部として機能する。特に、2つの隣接する周方向に整列した横向きの部材170の各対の延長部172が軸方向チャネル168を画定し、それぞれの軸方向チャネル168と連通するリテーナ開口部166に関連する浮動タブ160のための当接部として機能する。対の延長部172は、浮動タブ160がそこに係合すると側方に撓み、それによって管状支持構造150aの二次曲げ剛性を緩和するように構成されている。
【0101】
軸方向接続部材174が、横向きの部材170の各列の横向きの部材170を剛結合している。特に、各接続部材174は、軸方向に隣接する2つの横向きの部材170の端部を交互に剛結合し、各列の横向きの部材170および接続部材174がパターン付きフレーム構造156に沿って軸方向に延びるジグザグパターンを形成するようになっている。
【0102】
横向きのスロット164および横向きの部材170は、管状体152の長手方向軸154に対して垂直に延び、完全に横方向であるように図示されているが、横向きのスロット164および横向きの部材170は、完全に横方向でなくてもよい。例えば、スロット164および/または部材170は、管状体152の長手方向軸154に対して垂直な方向から±10°の角度範囲内で延びる程度に、実質的に側方であってもよい。さらに、チャネル168および接続部材174は、管状体152の長手方向軸154に平行に延延在し、パターン付きフレーム構造156aに沿って軸方向に延びるように図示されているが、チャネル168および接続部材174は、完全な軸方向でなくてもよい。例えば、チャネル168および接続部材174は、管状体152の長手方向軸154から±10°の角度範囲内で延びる程度に、実質的に軸方向であってもよい。また、スロット164、横向きの部材170、チャネル168、および/または接続部材174は、管状体152の長手方向軸154に対して斜めに、例えば管状体152の長手方向軸154に対して45゜に配置されてもよいことを理解されたい。
【0103】
図示の実施形態では、開口162は管状体152の厚さ全体を通して同じ形状を維持するが、代替実施形態では、開口162の形状は管状体152の厚さを横切るにつれて変化してもよい。さらに、開口162には、円形や、三角形、正方形、長方形、平行四辺形、ひし形、台形などの多角形を含む、多数の他の形状が考えられることを理解されたい。開口162は互いに重ならないようにパターン付きフレーム構造156に配置されているが、代替的に、開口162の少なくとも一部が互いに重なっていてもよい。
【0104】
パターン付きフレーム構造156aは規則的(すなわち、予測可能に繰り返すパターン)で図示されているが、パターン付きフレーム構造156aは不規則(すなわち、予測不能に繰り返すパターン)であってもよい。さらに、スロット164と部材170、174は等しいサイズで図示されているが、スロット164と部材170、174のサイズは互いに異なっていてもよい。さらに、このパターン付きフレーム構造156aは管状体152の長さに沿って均一であるが、パターン付きフレーム構造156aの一次曲げ剛性を管状体152の長さに沿って変化させるために、開口162および部材170、174のサイズ、形状、および/または角度を管状体152の長さに沿って変化させてもよい。
【0105】
浮動タブ160は、パターン付きフレーム構造156の曲げ剛性と引張剛性を(増加させることによって)変調する。図示の実施形態では、浮動タブ160はパターン付きフレーム構造156と一体的に形成されている。
図7~
図10に示す変調要素110と同様に、
図23~
図27に図示の実施形態における浮動タブ160は組160a~160hとして、この場合はパターン付きフレーム構造156aの周囲に周方向に互いに間隔をあけて一様に配置された組(すなわち、列)として配置され、列160a~160hの各々の浮動タブ160は、パターン付きフレーム構造156aに沿って軸方向に一様に間隔をあけて配置されている。図示の実施形態では、浮動タブ160は、円周方向に互いに45°離間した8つの列160a~160hに配置され、浮動タブの列160a~160hはそれぞれ、4つの浮動タブ160を有する。したがって、管状支持構造150aの曲げ剛性は、45°隔てた8つの異なる半径方向で変調することができる。浮動タブ160は、任意の適切な数の列に配置することができ、浮動タブの列160a~160hはそれぞれ、任意の適切な数の浮動タブ160を有してもよいことを理解されたい。
【0106】
この実施形態では、浮動タブの列160a~160hは同一であり、したがって、浮動タブ160は、管状支持構造150aの曲げ剛性を、初期の半径方向に等方性の一次曲げ剛性から、1以上の半径方向に等方性の二次曲げ剛性に増加させるように構成される。代替実施形態では、浮動タブ160は管状支持構造150aの曲げ剛性を、初期の半径方向に等方性の一次曲げ剛性から、1以上の半径方向に異方性の二次曲げ剛性に増加させるように構成されてもよい。例えば、浮動タブの列160a~160hは同一でなくてもよく、あるいは管状支持構造150aは、パターン付きフレーム構造156上に配置された浮動タブ160の2つの直径方向に対向する列のみ(例えば、
図12~13に示す変調要素110の配置と同様)を有してもよく、あるいはパターン付きフレーム構造156上に配置された浮動タブ160の単一の列(例えば、
図15~16に示す変調要素110の配置と同様)を有してもよい。浮動タブ160は、周方向に整列した組で配置されているように
図23~27に示されているが、管状支持構造150bの代替実施形態は、
図12に示す変調要素110の配置と同様に、周方向にオフセットされた、周方向にずれた8つの組(組160a’~160d’のみを図示する)で配置された浮動タブ160を有するパターン付きフレーム構造156bとともに、
図29に示すように、周方向にオフセットされた、周方向にずれた8つの組(セット162a’~162d’のみを図示する)に配置された関連する開口162として配置されてもよい。
【0107】
浮動タブ160は、任意の適切な数の列で配置されてもよく、浮動タブの列はそれぞれ、任意の適切な数の開口と浮動タブ160を有してもよいことを理解されたい。
【0108】
例えば、
図30~31に示す管状支持構造150cの代替実施形態のパターン付きフレーム構造156cは、周方向に整列した4つの組(列)160a~160dに配置された浮動タブ160と、周方向に整列した組(列)に配置された関連する4つの開口162とを有する。特に、管状支持構造150cの直径は、
図23~27に示す管状支持構造150aの直径よりも小さく、4列の開口162が管状支持構造150cに半径方向に等方性の一次曲げ剛性を与えるのに十分である一方、4列の浮動タブが管状支持構造150cに半径方向等方性の二次曲げ剛性を与えるのに十分であるようになっている。
【0109】
別の例として、
図32に示す管状支持構造150dの代替実施形態は、
図30~31に示す管状支持構造150cと同様であるが、浮動タブの列の各々が2つの浮動タブ160のみを有し、関連する開口列がそれぞれ2つの開口162のみを有する点が異なる。その結果、得られる管状支持構造150dの横向きの部材170の各々の幅は、
図30~31に示す管状支持構造150cの横向きの部材170の各々の幅よりも大きくなり、したがって管状支持構造150dの一次曲げ剛性が管状支持構造150cの一次曲げ剛性よりも大きくなる。
【0110】
図23~27を参照すると、浮動タブ160はそれぞれ、ステム要素176の形態の片持ち梁端部と、拡大要素178の形態の自由端部とを具える。図示の実施形態では、浮動タブ160はそれぞれT字形であり、ステム要素176が「T」の基部を形成し、拡大要素178が「T」の十字を形成している。図示の実施形態では、拡大要素178の対向する端部は概ね直線状であるが、代替実施形態では、拡大要素178の対向する端部は丸みを帯びてもよい。ステム要素176は、それぞれの軸方向チャンネル168内にあり、それぞれの周方向に整列した横向きの部材170の対から、それぞれの横向きのスロット164を横切って、それぞれのリテーナ開口部166内に軸方向に延びる。このように、ステム要素176はそれぞれの横向きの部材170に固定されたまま、したがって、それぞれの横向きの部材170とともに移動する。
【0111】
特に
図28A~28Bを参照すると、ステム要素176は、ブリッジ部材180を介して、円周方向に整列した横向きの部材170のそれぞれの対の間に機械的に結合されている。拡大要素178は、リテーナ開口部166と幾何学的に類似するが、リテーナ開口部166よりもサイズが小さく、その結果として拡大要素178はリテーナ開口部166内で軸方向に自由に移動して、それぞれのリテーナ開口部166の当接縁部182(特に、それぞれの横向きの部材170に関連する開口列に対して最も隣接する2つの開口列に関連する横向きの部材170の対の延長部172)に交互に係合または係合解除するようになっている。
【0112】
したがって、各浮動タブ160の各拡大要素178は、パターン付きフレーム構造156aが浮動タブ160に向かう曲げ方向に側方偏向されるか、または軸方向に伸張されると、それぞれのリテーナ開口部166内で一方の軸方向184aに並進し、それによって各リテーナ開口部166の当接縁部182と係合するように構成されている(
図28Bに最もよく示す)。この時点で、それぞれの浮動タブ160はアクティブまたは作動したと考えることができる。特に、それぞれの浮動タブ160のステム要素176が取り付けられている各ブリッジ部材180が撓み、それぞれの浮動タブ160の拡大要素178が軸方向184aに並進して、それぞれのリテーナ開口部166の当接縁部182と係合する。
【0113】
反対に、各浮動タブ160の拡大要素178は、パターン付きフレーム構造156aが真っ直ぐにされ、および/または軸方向に弛緩されたら、それぞれのリテーナ開口部166内で反対の軸方向184bに軸方向並進し、それによってそれぞれのリテーナ開口部166の当接縁部182との係合を解除するように構成される(
図28Aに最もよく示す)。この時点で、それぞれの浮動タブ160は非アクティブまたは非作動と考えることができる。特に、それぞれの浮動タブ160のステム要素176が取り付けられている各ブリッジ部材180が弛緩して、それぞれの浮動タブ160の拡大要素178が軸方向184bに軸方向並進し、それぞれのリテーナ開口部166の当接縁部182との係合を解除する。
【0114】
リテーナ開口部166および関連する浮動タブ160はすべて同じ軸方向に配向され、パターン付きフレーム構造156aが側方に偏向または軸方向に伸張されたときに、拡大要素178のすべてがリテーナ開口部166の当接縁部182に係合するように、同じ軸方向184aに軸方向並進するように構成され、パターン付きフレーム構造156aが真っ直ぐにされたときおよび/または軸方向に弛緩されたときに、拡大要素178のすべてがリテーナ開口部166の当接縁部182との係合を解除するように、同じ軸方向184bに軸方向並進するように構成されているが、リテーナ開口部166および関連する浮動タブ160のうちの幾つかを、関連するリテーナ開口部166および関連する浮動タブ160のうちの他のものに対して軸方向に反対向きにして、パターン付きフレーム構造156aが側方に偏向または軸方向に伸張されたときに、このような第1組の拡大要素178が軸方向184aに軸方向並進し、第2組の拡大要素178が軸方向184bに軸方向並進して、リテーナ開口部166の当接縁部182に係合するように構成し、パターン付きフレーム構造156aが真っ直ぐにされたときおよび/または軸方向に弛緩されたときに、第1組の拡大要素176が軸方向184bに軸方向並進し、第2組の拡大要素178が軸方向184aに軸方向並進するように構成され、リテーナ開口部166の当接縁部182と係合解除するように構成してもよいことを理解されたい。
【0115】
図7~
図10に示す浮動タブ110と同様に、浮動タブ160の作動は、
図20~
図21に示す管状支持構造150aの曲げ剛性および引張剛性の変曲点204、254に対応し得ることを理解されたい。したがって、管状支持構造150aが一次側方偏向範囲内で最初に側方偏向され、または一次軸方向伸張範囲内で軸方向に伸張されると、浮動タブ160のすべてが非作動状態となり、管状支持構造150aの曲げ剛性または引張剛性は変調せず、したがって、この一次側方偏向範囲内の一次曲げ剛性200(
図20に示す)またはこの一次軸方向伸張範囲内の一次引張剛性250(
図21に示す)を有することになる。しかしながら、その後、管状支持構造150aが二次側方偏向範囲内で側方偏向され、または二次軸方向伸張範囲内で軸方向に伸張されると、浮動タブ160のうちの1つ以上が作動し、管状支持構造150aの曲げ剛性または引張剛性が変調され(すなわち、増大され)、したがって、二次側方偏向範囲内で一次曲げ剛性200よりも大きい1または複数の二次曲げ剛性202(
図20に示す)、または二次側方偏向範囲内で一次引張剛性250よりも大きい1または複数の二次引張剛性252(
図21に示す)を有するようになる。
【0116】
特に、浮動タブ160の長さ、特に浮動タブ160のステム要素176の長さは、管状支持構造150aの曲げ剛性の変曲点204および引張剛性の変曲点254の位置および数を選択するように設計され得る。特に、各ステム要素176の長さは、それぞれの浮動タブ160の拡大要素178とそれぞれのリテーナ開口部166の当接縁部182との間のクリアランスを規定し、それによって管状支持構造150aの曲げ剛性の変曲点204と引張剛性の変曲点254の位置を規定する。すなわち、特定のステム要素176の長さが増加すると、それぞれの浮動タブ160の拡大要素178とそれぞれのリテーナ開口部166の当接縁部182との間のクリアランスがそれに応じて大きくなり、それによって特定の変曲点204が発生する側方偏向の度合が大きくなる(すなわち、変曲点204が
図20に示すx軸上で右に移動する)か、または特定の変曲点254が発生する軸方向伸長の度合が大きくなる(すなわち、変曲点254が
図21に示すx軸上で右に移動する)。反対に、特定のステム要素176の長さが短くなると、それぞれの浮動タブ160の拡大要素178とそれぞれのリテーナ開口部166の当接縁部182との間のクリアランスが減少し、それによって特定の変曲点204が発生する側方偏向の度合が減少し(すなわち、変曲点204が
図20に示すx軸上で左に移動する)、または特定の変曲点254が発生する軸方向の伸張の度合が減少する(すなわち、変曲点254が
図21に示すx軸上で左に移動する)。
【0117】
管状支持構造の曲げ剛性の変曲点204の数、およびそれに対応して管状支持構造の引張剛性の変曲点254の数は、異なる組の浮動タブ160のステム要素176間の長さを適宜変えることによって選択することができる。
【0118】
例えば、
図23~32に示す管状支持構造150a~150dのすべての浮動タブ160のステム要素176の長さは均一であり、浮動タブ160のすべてがそれぞれのパターン付きフレーム構造156a~156d(
図28A~28Bに図示)の当接縁部182に同時に係合する(したがって、すべてが作動する)ようになっている。その結果、管状支持構造150a~150dのそれぞれの曲げ剛性は、一次曲げ剛性200と二次曲げ剛性202との間の境界を規定する単一の変曲点204aと、一次引張剛性250と二次引張剛性252との間の境界を規定する単一の変曲点254aとを有する。
【0119】
対照的に、
図33~34に示す管状支持構造150eの浮動タブ160のステム要素176の長さは不均一である。特に、各浮動タブの列(列160a~160dのみ図示)において、第1組の浮動タブ160’のステム要素176の長さは、異なる第2組の浮動タブ160’’のステム要素176よりも長く、その結果2つの組の浮動タブ160が2つの異なるタイミングでパターン付きフレーム構造156eの当接縁部182に係合する(したがって、作動する)。その結果、管状支持構造150eの曲げ剛性は、
図20に示すように、2つの変曲点204a、204b、すなわち、一次曲げ剛性200と二次曲げ剛性202aとの間の境界を規定する1つの変曲点204aと、2つの二次曲げ剛性202a、202bとの間の境界を規定する第2の変曲点204bとを有することとなる。そして、管状支持構造150eの引張剛性は、
図21に示すように、2つの変曲点254a、254b、すなわち一次引張剛性250と二次引張剛性252aとの間の境界を規定する1つの変曲点254aと、2つの二次引張剛性252a、252bの間の境界を規定する第2の変曲点254bとを有することとなる。
【0120】
浮動タブの第1組および第2組160’、160’’は交互に配置され、各浮動タブの列の数が等しいが、代替実施形態では、浮動タブの第1組および第2組160’、160’’のそれぞれの浮動タブの数が異なってもよく(例えば、1つの浮動タブが第1組の浮動タブ160’に提供され、3つの浮動タブが第2組の浮動タブ160’’に提供されてもよい)、あるいは第1組および第2組の浮動タブ160’、160’’の異なる順序または配列が提供されてもよい(例えば、2つのすぐ隣接する浮動タブ160’が浮動タブ列の一端に設けられ、2つのすぐ隣接する浮動タブ160’’が浮動タブ列の他端に設けられてもよい)。
【0121】
2より多い浮動タブ160のステム要素176の長さが互いに異なり、その結果2以上の浮動タブ160の組が2以上の異なるタイミングでリテーナ開口部166の当接縁部182に係合する(したがって、作動する)ようにしてもよいことを理解されたい。その結果、管状支持構造の曲げ剛性は、2より多い変曲点202、すなわち、一次曲げ剛性200と二次曲げ剛性202aとの間の境界を規定する1つの変曲点204aと、3以上の二次曲げ剛性202a、202b等の間の境界を規定する2以上の変曲点204b等を有することとなる。そして、管状支持構造の引張剛性は、2より多いの変曲点252、すなわち一次引張剛性250と二次引張剛性252aとの間の境界を規定する1つの変曲点254aと、少なくとも3つの二次引張剛性202a、202b等の間の境界を規定する2以上の変曲点254b等とを有することとなる。
【0122】
特に、対の延長部172の長さは、二次曲げ剛性202a、202bまたは二次曲げ剛性202a(
図20に示す)、あるいは二次引張剛性252a、252bまたは引張剛性252a(
図21に示す)の大きさを選択するように設計され得る。特に、各対の延長部172の長さは、それぞれのリテーナ開口部166の当接縁部182の可撓性を規定する。すなわち、特定の対の延長部172の長さが増加すると、それぞれのリテーナ開口部166の当接縁部182の可撓性が増加し、それによって二次曲げ剛性202a(プロファイル202a、202b)または二次引張剛性252a(またはプロファイル252a、252b)の度合が減少する。対照的に、特定の対の延長部172の長さが減少すると、それぞれのリテーナ開口部166の当接縁部182の可撓性が減少し、それによって二次曲げ剛性202a(またはプロファイル202a、202b)または二次引張剛性252a(またはプロファイル252a、252b)の度合が増加する。
【0123】
例えば、
図23~
図34に示す管状支持構造150a~150eの対の延長部172の長さは比較的短い。これにより、パターン付きフレーム構造156a~156eの各リテーナ開口部166の当接縁部182の可撓性は比較的低くなり、したがって、管状支持構造150a~150eの二次曲げ剛性202a(プロファイル202a、202b)または二次引張剛性252a(またはプロファイル252a、252b)の度合は比較的高くなる。対照的に、
図35~
図36に示す管状支持構造150fにおける対の延長部172の長さは比較的長い。これにより、パターン付きフレーム構造156fの各リテーナ開口部166の当接縁部182の可撓性は比較的高くなり、したがって、管状支持構造150fの二次曲げ剛性202a(プロファイル202a、202b)または二次引張剛性252a(またはプロファイル252a、252b)の度合は比較的低くなる。
図35~
図36のパターン付きフレーム構造156fのリテーナ開口部166の横方向の寸法は、
図23~
図34のパターン付きフレーム構造156a~156eのリテーナ開口部166の横方向の寸法よりも大きく、より長い対の延長部172を収容できることに留意されたい。
【0124】
図示の実施形態では、浮動タブ列のうちの単一の列のみが、それぞれの浮動タブ列に向かう曲げ方向に側方偏向されたときに、管状支持構造150a~150fのいずれかの曲げ剛性を変調する役割を担う(例えば、
図26に示す管状支持構造150aに関しては、湾曲の外縁にある浮動タブ列160bがアクティブになり、残りの7つの浮動タブ列160a、160c~160hは非アクティブになる)。この目的のために、(
図28A~28Bに示すように)各パターン付きフレーム構造156a~156fの各リテーナ開口部166および関連する浮動タブ160は、浮動タブ160と、当接縁部182とは反対側の各リテーナ開口部166の縁部186との間に十分なクリアランスがあるように配置されており、その結果、パターン付きフレーム構造156aが、湾曲の外縁の単一の浮動タブ列から90°以上離れた一次および二次側方偏向範囲内の曲げ方向に側方に撓んだとき、他の各浮動タブ列の浮動タブ160が、軸方向184bに軸方向並進したときに(
図28Aに最もよく示すように)各リテーナ開口部166の縁部186に係合せず、したがって、管状支持構造150a~150fの曲げ剛性に寄与しない。
【0125】
代替実施形態では、
図37A~37Cに示すように、直径方向に対向する浮動タブ列のうちの1つに向かう曲げ方向に側方偏向されたときに、直径方向に対向する対の浮動タブが、管状支持構造150a~150fのいずれかの曲げ剛性を変調する役割をともに担う(例えば、
図26に示すパターン付きフレーム構造156aに関して、湾曲の外縁にある浮動タブ列160bおよび湾曲の内縁にある浮動タブ列160fがアクティブとなり、一方、残りの6つの浮動タブ列160a、160c~160e、および160g~160hは非アクティブになる)。
【0126】
この場合、
図37B~
図37Cに示すように、各リテーナ開口部166に2対の延長部172を設け、リテーナ開口部166の対向する端部に当接縁部182、186を形成し、それぞれの拡大要素178が両方向184a、184bに軸方向に並進したときに当接縁部182、186のいずれかと係合するようにすることが好ましい。したがって、
図37Bに示すように、各浮動タブ160の拡大要素178は、管状支持構造が浮動タブ160に向かう曲げ方向に側方に偏向されるか、軸方向に伸張されると、それぞれのリテーナ開口部166内で一方の軸方向184aに並進し、それによってそれぞれのリテーナ開口部166の当接縁部182に係合するように構成されている。この時点で、それぞれの浮動タブ160はアクティブまたは作動したと考えることができる。特に、それぞれの浮動タブ160のステム要素176が取り付けられている各ブリッジ部材180が撓み、それぞれの浮動タブ160の拡大要素178が軸方向184aに並進して、それぞれのリテーナ開口部166の当接縁部182と係合する。
【0127】
反対に、
図37Aに示すように、各浮動タブ160の拡大要素178は、管状支持構造が真っ直ぐにされ、および/または軸方向に弛緩されたら、それぞれのリテーナ開口部166内で反対の軸方向184bに軸方向並進し、それによってそれぞれのリテーナ開口部166の当接縁部182との係合を解除するように構成される。この時点で、それぞれの浮動タブ160は非アクティブまたは非作動と考えることができる。特に、それぞれの浮動タブ160のステム要素176が取り付けられている各ブリッジ部材180が弛緩して、それぞれの浮動タブ160の拡大要素178が軸方向184bに軸方向並進し、それぞれのリテーナ開口部166の当接縁部182との係合を解除する。
【0128】
図37Cに示すように、各浮動タブ160の拡大要素178は、管状支持構造が浮動タブ160から離れる曲げ方向に側方に偏向されると、それぞれのリテーナ開口部166内で軸方向184bにさらに並進し、それによってそれぞれのリテーナ開口部166の当接縁部186に係合するように構成されている。この時点で、それぞれの浮動タブ160はアクティブまたは作動したと考えることができる。特に、それぞれの浮動タブ160のステム要素176が取り付けられている各ブリッジ部材180が撓み、それぞれの浮動タブ160の拡大要素178が軸方向184bに並進して、それぞれのリテーナ開口部166の当接縁部186と係合する。
【0129】
リテーナ開口部166は、パターン付きフレーム構造156aが、2つの対向する浮動タブ列の一方に向かう曲げ方向に側方偏向されたときに、直径方向に対向する浮動タブ列の浮動タブ160の少なくとも一部がそれぞれのリテーナ開口部166に同時に係合するように(二次曲げ剛性を作り出すために)、または異なるタイミングで係合するように設計することができる(2つの二次曲げ剛性を作り出すためであって、第1の曲げ剛性は最初に対応するリテーナ開口部166に係合する直径方向に対向する浮動タブ列の一方の浮動タブによって生じ、第2の曲げ剛性は直径方向に対向する他方の第2の曲げ剛性の浮動タブによって生じる)。
【0130】
上記に拘わらず、管状支持構造150a~150fのいずれかが、隣接する対の浮動タブ列(例えば、
図26に示す管状支持構造150aの浮動タブ列160aおよび浮動タブ列160b)の間で曲げ方向に側方偏向される場合、浮動タブ列のそれぞれの対が、管状支持構造150a~150fの曲げ剛性の変調に寄与し得ることを理解されたい。この場合、隣接する対の浮動タブ列の浮動タブ160は、同じ方向に軸方向に並進してそれぞれのリテーナ開口部166に係合する。
【0131】
様々な細長い血管内医療器具の機能および構造について説明したが、次に、細長い血管内医療器具300(例えば、
図1~3に示すガイドワイヤ10、
図4~6に示すカテーテル50、または、例えば、ガイドシースもしくは血管内インプラント送達ワイヤのような任意の他の細長い血管内医療器具)を使用する1つの方法350を、
図38および
図39A~39Hに関して説明する。
【0132】
この実施形態では、細長い血管内医療器具300は、管状支持構造306(例えば、
図7~
図10に示す管状支持構造100、あるいは、
図11に示す管状支持構造100’)を含む長さ方向部分304を有し、これは、一次曲げ剛性から1つまたは複数の半径方向に等方性の二次曲げ剛性(この実施形態では、2つの二次曲げ剛性のうちの1つ)(例えば、一次曲げ剛性200から、
図20に示す低い二次曲げ剛性202aまたは高い二次曲げ剛性202bのうちの1つ)へ遷移可能であり、および対応して、一次引張剛性から1つまたは複数の二次引張剛性(この実施形態では、2つの二次引張剛性のうちの1つ)(例えば、一次引張剛性250から、
図21に示す低い二次引張剛性252aまたは高い二次引張剛性252bの1つ)へ遷移可能である。図示の実施形態では、細長い血管内医療器具300の長さ方向部分304は細長い血管内医療器具300の遠位端を構成するが、別の方法では、細長い血管内医療器具300の長さ方向部分304は、細長い血管内医療器具300の遠位端より近位側に位置していてもよい。図示の実施形態では、管状支持構造306に沿って軸方向に間隔をあけて配置された機械的特性変調要素308が作動して、一次曲げ剛性を二次曲げ剛性に移行させる。
【0133】
従来の方法で、まず細長い血管内医療器具300を患者の血管系302に、例えば患者の鼠径部付近の大腿動脈を介して導入する(ステップ352)(
図39A参照)。
【0134】
次に、細長い血管内医療器具300の長さ方向部分304を、患者の血管系302の第1の湾曲部310を通して遠位側に進める(ステップ354)(
図39B参照)。細長い血管内医療器具300の長さ方向部分304が第1の湾曲部310内で遠位側に前進している間、管状支持構造306、したがって細長い血管内医療器具300の長さ方向部分304は、一次曲げ剛性(例えば、
図20に示す一次曲げ剛性200)を有する。すなわち、第1の湾曲部310は比較的緩やかであり、したがって管状支持構造306ひいては細長い血管内医療器具300の長さ方向部分304は一次側方偏向範囲内で側方に撓み、したがって一次曲げ剛性を維持する。このように、細長い血管内医療器具300の長さ方向部分304は、(横方向の力が小さいため)比較的小さな追従力で第1の湾曲部310を通過することができる。
【0135】
次に、細長い血管内医療器具300の長さ方向部分304を、第1の湾曲部310の曲率よりも高い曲率を有する第2の湾曲部312内を遠位側に前進させる(ステップ356)(
図39C参照)。本明細書の目的上、特定の湾曲部の最小曲率半径が他の湾曲部の最小曲率半径より小さい場合、当該特定の湾曲部は患者の血管系における他の湾曲部の曲率より高い曲率を有し、特定の湾曲部の最小曲率半径が他の湾曲部の最小曲率半径より大きい場合、当該特定の湾曲部は患者の血管系における他の湾曲部の曲率より低い曲率を有する。
【0136】
管状支持構造306の一次曲げ剛性、したがって細長い血管内医療器具300の長さ方向部分304の一次曲げ剛性は、第2の湾曲部312内での細長い血管内医療器具300の長さ方向部分304の遠位方向への前進に応答して、2つの二次曲げ剛性のうちの一方(例えば、
図20に示す低い二次曲げ剛性200aまたは高い二次曲げ剛性200b)に移行する(ステップ358)。すなわち、第2の湾曲部312は比較的きつく、管状支持構造306ひいては細長い血管内医療器具300の長さ方向部分304が二次側方偏向範囲内で側方に撓み、このため二次曲げ剛性へと移行する。これにより、細長い血管内医療器具300の長さ方向部分304は、(管状支持構造306による支持が強化されるため)第2の湾曲部312を通して導入されるときに逸脱しにくくなる。特に、第2の湾曲部312がそれほどきつくない場合、細長い血管内医療器具300の長さ方向部分304が第2の湾曲部312内で遠位側に前進したときに、管状支持構造306ひいては細長い血管内医療器具300の長さ方向部分304は二次側方偏向範囲の下側領域内で側方に撓み、これにより低い曲げ剛性202aに移行する。あるいは、第2の湾曲部312が十分にきつい場合、細長い血管内医療器具300の長さ方向部分304が第2の湾曲部312内で遠位側に前進したときに、管状支持構造306ひいては細長い血管内医療器具300の長さ方向部分304は二次側方偏向範囲の上側領域内で側方に撓み、これにより高い曲げ剛性202bに移行する。
【0137】
次に、細長い血管内医療器具300の長さ方向部分304を、第2の湾曲部312の曲率よりも小さい曲率を有する第3の湾曲部314内を遠位側に前進させる(ステップ360)(
図39D参照)。管状支持構造306の二次曲げ剛性、したがって細長い血管内医療器具300の長さ方向部分304の二次曲げ剛性は、第3の湾曲部314内での細長い血管内医療器具300の長さ方向部分304の遠位への前進に応答して、一次曲げ剛性(例えば、
図20に示す一次曲げ剛性202)に戻るように移行する(ステップ362)。すなわち、第3の湾曲部314は低い曲率を有し、したがって管状支持構造306ひいては細長い血管内医療器具300の長さ方向部分304は一次側方偏向範囲内で側方に撓み、したがって一次曲げ剛性に戻る。このように、細長い血管内医療器具300の長さ方向部分304は、(横方向の力が小さいため)比較的小さな追従力で第3の湾曲部314を通過することができる。
【0138】
次に、細長い血管内医療器具300の長さ方向部分304を、第1の湾曲部310の曲率よりも高いが第2の湾曲部312の曲率とは異なる曲率を有する第4の湾曲部316内で遠位側に前進させる(ステップ364)(
図39E参照)。管状支持構造306の一次曲げ剛性、したがって細長い血管内医療器具300の長さ方向部分304の一次曲げ剛性は、第4の湾曲部316内での細長い血管内医療器具300の長さ方向部分304の遠位への前進に応答して、2つの二次曲げ剛性の他方に移行する(ステップ366)。すなわち、第4の湾曲部316は比較的きつく、管状支持構造306ひいては細長い血管内医療器具300の長さ方向部分304が二次側方偏向範囲内で側方に撓み、このため二次曲げ剛性へと移行する。これにより、細長い血管内医療器具300の長さ方向部分304は、(管状支持構造306による支持が強化されるため)第4の湾曲部316内を導入されるときに逸脱しにくくなる。
【0139】
第4の湾曲部316の曲率が第2の湾曲部312の曲率よりも高い場合、第4の湾曲部316内での細長い血管内医療器具300の長さ方向部分304の遠位側への前進に応答して、細長い血管内医療器具300の長さ方向部分304の一次曲げ剛性が移行する二次曲げ剛性は、
図20に示す高い二次剛性202bとなり得る。一方、第2の湾曲部312内での細長い血管内医療器具300の長さ方向部分304の遠位側への前進に応答して、細長い血管内医療器具300の長さ方向部分304の一次曲げ剛性が移行する二次曲げ剛性は、
図20に示す低い二次剛性202aであってもよい。
【0140】
これに対して、第4の湾曲部316の曲率が第2の湾曲部312の曲率よりも低い場合、第4の湾曲部316内での細長い血管内医療器具300の長さ方向部分304の遠位側への前進に応答して、細長い血管内医療器具300の長さ方向部分304の一次曲げ剛性が移行する二次曲げ剛性は、
図20に示す低い二次剛性202aとなり得る。一方、第2の湾曲部312内での細長い血管内医療器具300の長さ方向部分304の遠位側への前進に応答して、細長い血管内医療器具300の長さ方向部分304の一次曲げ剛性が移行する二次曲げ剛性は、
図20に示す高い二次剛性202bであってもよい。
【0141】
もちろん、代替的な実施形態では、第2の湾曲部312および第4の湾曲部316のそれぞれの曲率は、患者の血管系302内のそれぞれの第2の湾曲部312または第4の湾曲部316内での細長い血管内医療器具300の長さ方向部分304の遠位への前進に応答して、異なる二次的な曲げ剛性をもたらすほど異なっていなくてもよい。
【0142】
細長い血管内医療器具300は、細長い血管内医療器具300の遠位端が標的部位318に位置するまで患者の血管系302内で遠位方向に進められ(ステップ368)(
図39F参照)、標的部位318で追加の医療処置(治療および/または診断)が行われる(ステップ370)。例えば、細長い血管内医療器具300がガイドワイヤである場合、追加のカテーテルをガイドワイヤ上で標的部位318まで遠位方向に進め、標的部位318で治療および/または診断処置を行うように操作することができる。細長い血管内医療器具300がカテーテルである場合、標的部位318でカテーテルによって治療および/または診断処置を行うことができる。細長い血管内医療器具300がガイドシースである場合、追加のカテーテルをガイドシースを通して標的部位194まで遠位方向に進め、標的部位194で治療および/または診断処置を行うために操作することができる。細長い血管内医療器具300が血管インプラント送達ワイヤである場合、細長い血管内医療器具300は、標的部位318に血管インプラントを配備するために血管インプラント送達カテーテルと連動して操作することができる。
【0143】
細長い血管内医療器具300が患者の血管系302内で遠位側に前進している間、管状支持構造306、したがって細長い血管内医療器具300の長さ方向部分304は、一次引張剛性(例えば、
図21に示す一次引張剛性250)を有する。しかしながら、特定の状況(例えば、細長い血管内医療器具300の遠位端が患者の血管系302の望ましくない部分内を遠位方向に前進した場合(
図39G参照)、または細長い血管内医療器具300を近位方向に移動させてその遠位端の固着を解除することが望まれる場合(例えば、患者の血管系302内で逸脱した場合、血管攣縮や別の血管内医療器具との干渉によってトラップされた場合など)、その遠位端の向きを変えたり、標的部位に対する位置を変えたり、細長い血管内医療器具300から血管内インプラントを展開したりするために、細長い血管内医療器具300が引っ張られる(矢印320で示す)(
図39Hを参照)。管状支持構造306、したがって細長い血管内医療器具300の長さ方向部分304の一次引張剛性は、細長い血管内医療器具300の引っ張りに応答して、2つの二次引張剛性(例えば、
図20に示す低い二次引張剛性252aまたは高い二次引張剛性252b)のうちの1つに移行する(ステップ374)。すなわち、細長い血管内医療器具300は、管状支持構造306ひいては細長い血管内医療器具300の長さ方向部分304が、軸方向の二次伸張範囲内で軸方向に伸張され、したがって二次引張剛性へと移行する。これにより、細長い血管内医療器具300の長さ方向部分304は、塑性変形や損傷を受けにくくなる。細長い血管内医療器具300の遠位端が問題を改善するために血管系内の適切な位置(例えば、分岐313の近位)につけると(
図39I参照)、細長い血管内医療器具300は次に弛緩される(ステップ376)(
図39J参照)。管状支持構造306、したがって細長い血管内医療器具300の長さ方向部分304の二次引張剛性は、細長い血管内医療器具300の弛緩に応じて、一次引張剛性(例えば、
図20に示す一次引張剛性250)に戻るように移行する(ステップ378)。その後、細長い血管内医療器具300の長さ方向部分304は、例えば、第1の湾曲部310(
図39C参照)の曲率よりも高い曲率を有する第2の湾曲部312内を遠位側に前進させることができる。
【0144】
ステップ352~378は、任意の順序および任意の回数で実行することができ、これは、細長い血管内医療器具300の患者の血管系302への最初の導入から細長い血管内医療器具300の遠位端が標的部位318に位置するまでの間に、細長い血管内医療器具300が遭遇する湾曲の順序および回数の性質に大きく依存することを理解されたい。
【0145】
次に、
図40および
図41A~41Iを参照して、細長い血管内医療器具300’(例えば、
図1~3に示すガイドワイヤ10、
図4~6に示すカテーテル50、または、例えばガイドシースや血管内インプラント送達ワイヤなど任意の他の細長い血管内医療器具)を使用する別の方法400について説明する。
【0146】
この実施形態では、細長い血管内医療器具300’は、管状支持構造306’(例えば、
図12~13に示す管状支持構造100’、あるいは、
図15~16に示す管状支持構造100’’’)を含む長手方向部分304’を有し、これは半径方向に等方性の曲げ剛性(例えば、
図20に示す一次曲げ剛性200)から、(例えば、
図15および
図18~19に示す)少なくとも1つの低い度合の周方向領域208aおよび少なくとも1つの高い度合の周方向領域208bを有する半径方向に異方性の曲げ剛性(例えば、
図20に示す二次曲げ剛性202a、202bのいずれか)に移行可能である。図示の実施形態では、細長い血管内医療器具300’の長さ方向部分304’は細長い血管内医療器具300’の遠位端を構成するが、別の方法では、細長い血管内医療器具300’の長さ方向部分304’は、細長い血管内医療器具300’の遠位端より近位側に位置していてもよい。図示の実施形態では、管状支持構造306’に沿って軸方向に間隔をあけて配置された機械的特性変調要素308が作動して、細長い血管内医療器具300’の長さ方向部分304’の曲げ剛性を変調する。
【0147】
方法400が
図38に関して上述した方法350と主に異なる点は、患者の血管系302の湾曲部に入る前に、細長い血管内医療器具300’をその長手方向軸を中心に回転させて、細長い血管内医療器具300’の長さ方向部分304’を患者の血管系302の湾曲部内で遠位側に前進させる際に、細長い血管内医療器具300’の長さ方向部分304’の半径方向に等方性の曲げ剛性を、半径方向に異方性の曲げ剛性のうちの相対的に低い度合の周方向領域208aに移行させるか、あるいは相対的に高い度合の周方向領域208bのいずれかに移行させることを選択できるようにした点である。
【0148】
ステップ352および354に関して上述した同じ方法で、まず細長い血管内医療器具300’が患者の血管系302に、例えば患者の鼠径部付近の大腿動脈を介して導入され(ステップ402)(
図41A参照)、細長い血管内医療器具300’の長さ方向部分304’は、半径方向に等方的な曲げ剛性を有する状態で、第1の湾曲部310内を遠位側に進められる(ステップ404)(
図41B参照)。第1の湾曲部310の曲率は、細長い血管内医療器具300’の長さ方向部分304’の半径方向に等方性の曲げ剛性を半径方向に異方性の曲げ剛性に移行させるのに十分なほど高くないため、細長い血管内医療器具300’は、細長い血管内医療器具300’の長さ方向部分304’の半径方向に等方性の曲げ剛性を、半径方向に異方性の曲げ剛性の相対的に低い度合の周方向領域208aまたは相対的に高い度合の周方向領域208bへと移行させるかどうかを選択するために、第1の湾曲部310に入る前に細長い血管内医療器具300’をその長手方向軸を中心に回転させる必要はない。
【0149】
次に、細長い血管内医療器具300’の長さ方向部分304’を、第2の湾曲部312内を遠位側に前進させる(ステップ406)(
図41C参照)。第2の湾曲部312の曲率は、細長い血管内医療器具300’の長さ方向部分304’の半径方向に等方性の曲げ剛性を半径方向に異方性の曲げ剛性へと移行させるのに十分なほど高い。特に、二次曲げ剛性の半径方向異方性の性質により、医師が、細長い血管内医療器具300’の長さ方向部分304’を第2の湾曲部312の曲率に方向付けまたは回転させると、管状支持構造306’、したがって細長い血管内医療器具300’の長さ方向部分304’の半径方向に異方性の曲げ剛性202の相対的に低い度合の周方向領域208a(
図15、
図18、
図19に示す)(すなわち、細長い血管内医療器具300’の長さ方向部分304’の最も柔軟な曲げ方向)が、第2の湾曲部312の曲率と揃うので、細長い血管内医療器具300’の遠位先端が、第2の湾曲部312に沿って遠位方向に分岐部313を過ぎて前進し続けることができ、分岐部313を過ぎて血管系302の直線部分315へと誤誘導されることがない(
図41Dを参照)(ステップ408)。このようにして、細長い血管内医療器具300’の遠位先端部
【0150】
細長い血管内医療器具300’の長さ方向部分304’が第2の湾曲部312を通って遠位側にうまく前進できない場合(例えば、細長い血管内医療器具300’の長さ方向部分304’が第2の湾曲部312内で逸脱した場合)(
図41E参照))(ステップ410)、細長い血管内医療器具300’の長さ方向部分304’をわずかに後退させることによって(矢印320で示す)(ステップ412)、細長い血管内医療器具300’の遠位先端を血管系302内の分岐部のすぐ先に再配置することができる。次に、細長い血管内医療器具300’を長手方向軸(矢印322で示す)を中心に回転させて、管状支持構造306’の半径方向異方性の曲げ剛性202の相対的に高い度合の周方向領域208b(
図15、
図18、または
図19に示す)、したがって細長い血管内医療器具300’の長さ方向部分304’(すなわち、細長い血管内医療器具300’の長さ方向部分304’の最も可撓性の低い曲げ方向)が、第2の湾曲部312の曲率と揃うようにする(ステップ414)。例えば、図示のケースでは、細長い血管内医療器具300’は、第2の湾曲部312の曲率が機械的特性変調要素308のいずれかの組と整列するまで、その長手方向軸を中心に回転させることができる(
図41F参照)。あるいは、管状支持構造306’が変調要素列110a~110dの4つすべてを含み、変調要素列110a~110dの少なくとも2つが管状支持構造306’を変調させる場合、細長い血管内医療器具300’は、第2の湾曲部312の曲率が半径方向異方性の曲げ剛性202の高い度合の周方向領域208bに対応する機械的特性変調要素308の組の1つに整列するまで、その長手方向軸を中心に回転させることができる。その結果、管状支持構造306’、したがって細長い血管内医療器具300’の長さ方向部分304’の半径方向に等方性の曲げ剛性が、半径方向に異方性の曲げ剛性の相対的に高い度合の周方向領域(例えば、
図20に示す二次曲げ剛性202a、202bのいずれか)に移行し、したがって、第2の湾曲部312内で遠位側に進められる。
【0151】
次に、細長い血管内医療器具300’の長さ方向部分304’を、第2の湾曲部312を通して遠位側に前進させる(ステップ416)。次に、
図38のステップ360に関して上述した方法で、細長い血管内医療器具300’の長さ方向部分304’が第3の湾曲部314内を遠位側に進められ(ステップ418)(
図41H参照)、第3の湾曲部314内での細長い血管内医療器具300’の長さ方向部分304’の遠位側への前進に応答して、管状支持構造306’、したがって細長い血管内医療器具300’の長さ方向部分304’の半径方向に異方性の曲げ剛性が、半径方向に等方性の曲げ剛性(例えば、
図20に示す一次曲げ剛性202)に戻る(ステップ420)。第3の湾曲部314の曲率は、細長い血管内医療器具300’の長さ方向部分304’の半径方向に等方性の曲げ剛性を半径方向に異方性の曲げ剛性に移行させるのに十分なほど高くないため、細長い血管内医療器具300’の長さ方向部分304’を、半径方向に異方性の曲げ剛性の相対的に低い度合の周方向領域または相対的に高い度合の周方向領域へと移行すべきかを選択するために、第3の湾曲部314に入る前に細長い血管内医療器具300’をその長手方向軸を中心に回転させる必要はない。
【0152】
次に、細長い血管内医療器具300’の長さ方向部分304’が、細長い血管内医療器具300’がステップ406~414に関して説明した第2の湾曲部312を通って遠位側に進められるのと同じ方法で、第4の湾曲部316内を遠位側に進められる。ステップ368および370に関して上述したのと同じ方法で、次に、細長い血管内医療器具300’の遠位端が標的部位318に位置するまで細長い血管内医療器具300’が患者の血管系302内で遠位方向に進められ(ステップ422)(
図41I参照)、その後、さらなる医療(治療および/または診断)処置が標的部位318で行われる(ステップ424)。
【0153】
ステップ402~424は、任意の順序および任意の回数で実行することができ、これは、細長い血管内医療器具300’の患者の血管系302への最初の導入から細長い血管内医療器具300’の遠位端が標的部位318に位置するまでの間に、細長い血管内医療器具300’が遭遇する湾曲の順序および回数の性質に大きく依存することを理解されたい。
【0154】
特定の実施形態を本明細書に示し記載したが、それらは開示の発明の限定を意図するものではないことが当業者には理解され、添付の特許請求の範囲およびそれらの均等物によってのみ定義される開示された発明の範囲から逸脱することなく、様々な変更、置換、および修正(例えば、様々な部品の寸法、部品の組み合わせ)を行ってもよいことが当業者には明らかであろう。したがって、本明細書および図面は、限定的な意味ではなく例示的な意味で見なされるべきである。本明細書に示され説明された様々な実施形態は、開示された発明の代替物、修正物、および均等物をカバーすることを意図しており、これらは添付の特許請求の範囲に含まれる。
【手続補正書】
【提出日】2024-04-22
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
細長い血管内医療器具に使用するための管状支持構造であって、
細長い管状体と、
前記細長い管状体内に形成されたパターン付きフレーム構造と、
前記細長い管状体内に軸方向に配置された内腔と、
前記パターン付きフレーム構造に沿って軸方向に間隔をおいて配置された第1組の浮動タブとを具え、前記第1組の浮動タブはそれぞれ、前記パターン付きフレーム構造に取り付けられた片持ち梁端部と、前記管状支持構造が第1の曲げ方向に側方偏向されたときに前記パターン付きフレーム構造に対して相対移動し、その後、前記パターン付きフレーム構造に係合するように構成された自由端部とを有することを特徴とする、管状支持構造。
【請求項2】
前記第1組の浮動タブはそれぞれ、前記管状支持構造が一次側方偏向範囲にあるときに前記パターン付きフレーム構造に対して相対移動し、前記管状支持構造が前記一次側方偏向範囲よりも大きい二次側方偏向範囲にあるときに前記パターン付きフレーム構造に係合するように構成されている、請求項1に記載の管状支持構造。
【請求項3】
前記管状支持構造が軸方向に伸張されるにつれて、前記第1組の浮動タブの各々の自由端が、前記パターン付きフレーム構造に対して相対的に並進し、次いで、前記パターン付きフレーム構造に係合するように構成されている、
請求項1に記載の管状支持構造。
【請求項4】
前記第1組の浮動タブはそれぞれ、前記管状支持構造が第1の軸方向伸張範囲にあるときに前記パターン付きフレーム構造に対して相対的に並進し、前記管状支持構造が前記第1の軸方向伸張範囲よりも大きい第2の軸方向伸張範囲にあるときに前記パターン付きフレーム構造に係合するように構成されている、
請求項3に記載の管状支持構造。
【請求項5】
前記第1組の浮動タブは、前記管状支持構造が前記第1の曲げ方向に側方に撓むにつれて、前記パターン付きフレーム構造に漸増的に係合するように構成されている、
請求項1に記載の管状支持構造。
【請求項6】
前記浮動タブの少なくとも2つが異なる長さを有する、請求項5に記載の管状支持構造。
【請求項7】
前記パターン付きフレーム構造に沿って軸方向に間隔を隔てて配置され、前記第1組の浮動タブから周方向にオフセットされた第2組の浮動タブをさらに具え、前記第2組の浮動タブはそれぞれ、前記パターン付きフレーム構造に固着された片持ち梁端部と、前記管状支持構造が前記第1の曲げ方向とは異なる第2の曲げ方向に側方に偏向されたときに、前記パターン付きフレーム構造に対して相対的に並進し、次いで前記パターン付きフレーム構造に係合するように構成された自由端部とを有する、請求項1に記載の管状支持構造。
【請求項8】
前記第2組の浮動タブは、前記第1組の浮動タブから周方向に180度オフセットされ、前記第2の曲げ方向は、前記第1の曲げ方向と反対である、
請求項7に記載の管状支持構造。
【請求項9】
前記管状支持構造が前記第1の方向に側方に偏向されたときに、前記第1組の浮動タブが前記パターン付きフレーム構造に対して第1の軸方向に相対的に並進するように構成され、前記第2組の浮動タブがフレームに対して前記第1の軸方向とは反対の第2の軸方向に相対的に並進するように構成されている、
請求項7に記載の管状支持構造。
【請求項10】
前記第1組の浮動タブは、前記第2組の浮動タブのすべてが前記パターン付きフレーム構造に係合した後、前記パターン付きフレーム構造に対して前記第1の軸方向に並進し続けるように構成され、前記第2組の浮動タブは、前記第1組の浮動タブのすべてが前記パターン付きフレーム構造に係合した後、前記パターン付きフレーム構造に対して前記第2の軸方向に並進し続けるように構成されている、
請求項9に記載の管状支持構造。
【請求項11】
前記第1組の浮動タブの各々が、前記パターン付きフレーム構造に沿って軸方向に延びる、請求項1に記載の管状支持構造。
【請求項12】
前記パターン付きフレーム構造が、前記細長い管状体内に少なくとも部分的に配置された複数の実質的に横向きのスロットを有し、前記実質的に横向きのスロットが、前記管状支持構造に沿って軸方向に間隔を置いて配置され、それによって、複数の実質的に横向きの部材と、前記実質的に横向きの部材同士を剛性結合する複数の連結部材とが形成され、前記浮動タブのそれぞれの片持ち梁端部が、前記実質的に横向きの部材のそれぞれの1つに固着されている、請求項1に記載の管状支持構造。
【請求項13】
前記連結部材は、前記パターン付きフレーム構造に沿って軸方向に延びている、
請求項12に記載の管状支持構造。
【請求項14】
前記実質的に横向きのスロットが、前記細長い管状体を完全に貫通して配置されている、
請求項12に記載の管状支持構造。
【請求項15】
前記第1組の浮動タブはそれぞれ、各タブの片持ち梁端部および自由端部をそれぞれ形成するステム要素および拡大要素を具える、請求項1に記載の管状支持構造。
【請求項16】
前記第1組の浮動タブの各々がT字形である、
請求項15に記載の管状支持構造。
【請求項17】
前記パターン付きフレーム構造が、前記細長い管状体内に少なくとも部分的に配置された複数のリテーナ開口部を具え、前記第1組の浮動タブの各々の拡大要素が、前記管状支持構造が第1の曲げ方向に側方に偏向されると、前記リテーナ開口部の各々の1つ内で並進し、次いで前記リテーナ開口部の各々の当接縁部に係合するように構成されている、
請求項15に記載の管状支持構造。
【請求項18】
前記リテーナ開口部はそれぞれ、前記実質的に横向きのスロットのそれぞれと同軸であり、前記第1組の浮動タブの各々のステム要素は、前記それぞれの横向きの部材から、前記実質的に横向きのスロットのそれぞれの1つを横切って、前記それぞれのリテーナ開口部内に延びている、
請求項17に記載の管状支持構造。
【請求項19】
前記実質的に横向きの部材の隣接する対がそれぞれ、前記リテーナ開口部の1つと前記実質的に横向きのスロットの1つとの間のチャネルを形成する一対の延長部を具え、第1組の浮動タブのそれぞれのステム要素が、前記チャネルの1つの中に納まり、各対の延長部が、それぞれのリテーナ開口部の当接縁部を規定する、
請求項18に記載の管状支持構造。
【請求項20】
それぞれの浮動タブの拡大要素がそれぞれのリテーナ開口部の当接縁部に係合したときに、各対の延長部が側方に撓むように構成されている、請求項19に記載の管状支持構造。
【請求項21】
細長い血管内医療器具であって、
細長いポリマーチューブと、
前記ポリマーチューブ内に同軸に配置された請求項1に記載の管状支持構造体とを含むことを特徴とする細長い血管内医療器具。
【請求項22】
前記管状支持構造が、前記ポリマーチューブの遠位端に配置される、
請求項21に記載の細長い血管内医療器具。
【請求項23】
前記管状支持構造が前記ポリマーチューブの遠位端より近位側に配置されている、
請求項21に記載の細長い血管内医療器具。
【請求項24】
細長い血管内医療器具であって、
コアワイヤと、
前記コアワイヤの遠位端上に配置された請求項1に記載の管状支持構造とを含むことを特徴とする細長い血管内医療委器具。
【請求項25】
細長い血管内医療器具であって、
請求項1に記載の管状支持構造と
当該管状支持構造の管状体の内腔内に配置された内側ポリマーライナーとを含むことを特徴とする細長い血管内医療器具。
【国際調査報告】