(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-04
(54)【発明の名称】ポリカーボネートアロイ材料、その調製方法及び使用
(51)【国際特許分類】
C08L 69/00 20060101AFI20240927BHJP
C08L 67/02 20060101ALI20240927BHJP
C08K 3/22 20060101ALI20240927BHJP
C08K 3/04 20060101ALI20240927BHJP
C08L 33/04 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
C08L69/00
C08L67/02
C08K3/22
C08K3/04
C08L33/04
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024526005
(86)(22)【出願日】2022-10-12
(85)【翻訳文提出日】2024-04-26
(86)【国際出願番号】 CN2022124848
(87)【国際公開番号】W WO2023071794
(87)【国際公開日】2023-05-04
(31)【優先権主張番号】202111246802.7
(32)【優先日】2021-10-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】514174729
【氏名又は名称】上海金発科技発展有限公司
(71)【出願人】
【識別番号】524162103
【氏名又は名称】江▲蘇▼金▲発▼科技新材料有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】董 相茂
(72)【発明者】
【氏名】黄 河生
(72)【発明者】
【氏名】▲陳▼ 平▲緒▼
(72)【発明者】
【氏名】叶 南▲ビャオ▼
(72)【発明者】
【氏名】艾 ▲軍▼▲偉▼
(72)【発明者】
【氏名】岑 茵
(72)【発明者】
【氏名】▲張▼ 永
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002BB073
4J002BG063
4J002BG073
4J002BN163
4J002CF06X
4J002CG01W
4J002DA017
4J002DD056
4J002DD066
4J002DE056
4J002DE086
4J002DE126
4J002DE136
4J002EJ028
4J002EJ048
4J002EP018
4J002EV098
4J002EW068
4J002FA067
4J002FD013
4J002FD078
4J002FD107
4J002FD206
4J002GB00
4J002GB04
4J002GG02
(57)【要約】
本発明は、ポリカーボネートアロイ材料を開示し、それは、重量部で、ポリカーボネート40~70部、ポリエチレンテレフタレート20~40部及び金属化合物0.1~2部を含み、前記金属化合物は、金属酸化物、金属塩基又は金属塩のうちの任意の1種から選択され、前記金属は、銅、鉄、マグネシウム、カルシウム、チタン、アンチモン、ナトリウム又はカリウムの任意の1種から選択される。本発明では、ポリカーボネートに一定量のポリエチレンテレフタレートと特定の金属化合物を加えることによって得られたポリカーボネートアロイ材料は、耐化学性に優れただけでなく、高い溶融強度及び低い溶融冷却速度を有し、厚肉で大型の包装容器製品の押出ブロー成形に適しており、特に医薬品包装容器の使用要件を満たすために、包装分野に新しい材料と成形法の選択肢を提供し、ポリカーボネート材料の応用を更に広げる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリカーボネートアロイ材料であって、重量部で、
ポリカーボネート40~70部、
ポリエチレンテレフタレート20~40部、及び
金属化合物0.1~2部を含み、
前記金属化合物は、金属酸化物、金属塩基又は金属塩のうちの任意の1種以上から選択され、前記金属は、銅、鉄、マグネシウム、カルシウム、チタン、アンチモン、ナトリウム又はカリウムの任意の1種以上から選択されることを特徴とする、ポリカーボネートアロイ材料。
【請求項2】
重量部で、
ポリカーボネート50~65部、
ポリエチレンテレフタレート25~35部、及び
金属化合物0.3~1.2部を含むことを特徴とする、請求項1に記載のポリカーボネートアロイ材料。
【請求項3】
前記金属化合物は、チタン金属酸化物又はアンチモン金属酸化物のうちの任意の1種以上から選択され、好ましくは、前記金属化合物は、アンチモン金属酸化物のうちの任意の1種以上から選択されることを特徴とする、請求項1に記載のポリカーボネートアロイ材料。
【請求項4】
前記チタン金属酸化物は、TiO、TiO
2又はTi
2O
3のうちの1種以上から選択され、前記アンチモン金属酸化物は、Sb
2O
3、Sb
2O
4、Sb
2O
5、Sb
6O
13及びSbOのうちの1種以上から選択されることを特徴とする、請求項3に記載のポリカーボネートアロイ材料。
【請求項5】
前記ポリカーボネートの粘度平均分子量は、10,000~40,000であり、好ましくは、前記ポリカーボネートの粘度平均分子量は、18000~35000であり、より好ましくは、前記ポリカーボネートの粘度平均分子量は、25,000~33,000であり、前記ポリエチレンテレフタレートの固有粘度は、0.65~0.9dl/gであり、好ましくは、前記ポリエチレンテレフタレートの固有粘度は、0.7~0.88dl/gであることを特徴とする、請求項1に記載のポリカーボネートアロイ材料。
【請求項6】
重量部で、帯電防止剤2~10部を更に含み、前記帯電防止剤は、カーボンナノチューブの任意の1種以上から選択され、好ましくは、前記帯電防止剤は、直径1.0~80nm、長さ2~70μmの多層カーボンナノチューブの任意の1種以上から選択され、より好ましくは、前記帯電防止剤は、直径20~60nm、長さ10~25μmの多層カーボンナノチューブの任意の1種以上から選択されることを特徴とする、請求項1に記載のポリカーボネートアロイ材料。
【請求項7】
重量部で、強化剤4~8部を更に含み、前記強化剤は、エチレン-アクリル酸ブチル-メタクリル酸グリシジル共重合体、エチレン-オクテン-グリシジルメタクリレート共重合体、メタクリル酸メチル-ブタジエン-スチレン共重合体、メタクリル酸メチル-アクリル酸共重合体、エチレン-アクリル酸メチル共重合体又はメタクリル酸メチル-アクリル酸エステル-シリコーン共重合体のうちの1種以上から選択され、好ましくは、前記強化剤は、エチレン-アクリル酸ブチル-メタクリル酸グリシジル共重合体とメタクリル酸メチル-ブタジエン-スチレン共重合体を重量比1:2~2:1で配合することによって得られるものであることを特徴とする、請求項1に記載のポリカーボネートアロイ材料。
【請求項8】
重量部で、酸化防止剤0.01~1部を更に含み、前記酸化防止剤は、オクタデシル-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、ビス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、β-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)n-オクタデカノールプロピオネート、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、テトラキス[メチレン(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシヒドロシンナメート)]メタン、ジステアリルチオプロピオネート、ジラウリルチオプロピオネート、トリデシルチオジプロピオネート、ペンタエリスリトール-テトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]又はβ-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)-プロピオン酸アミドのうちの任意の1種以上から選択されることを特徴とする、請求項1に記載のポリカーボネートアロイ材料。
【請求項9】
配合比率に応じて、各成分をミキサーに入れ、均一になるまでブレンドしてプレミックスを得るステップと、次に、プレミックスを二軸押出機に入れて溶融混合し、押出造粒してポリカーボネートアロイ材料を調製するステップを含み、二軸押出機のスクリュー長さ対直径の比は40:1~50:1、スクリューバレル温度は240~260℃、スクリュー回転速度は400~500rpmであることを特徴とする、請求項1~8のいずれか一項に記載のポリカーボネートアロイ材料の調製方法。
【請求項10】
請求項1~8のいずれか一項に記載のポリカーボネートアロイ材料の医薬品包装分野での使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジニアリングプラスチックの技術分野に関し、特にポリカーボネートアロイ材料、その調製方法及び用途に関する。
【背景技術】
【0002】
押出ブロー成形は、中空熱可塑性プラスチック部品の製造に使用されるブロー成形法の最大のカテゴリーであり、その成形プロセスは主に、溶融した管状素材を押出機を通して押出し、熱いうちに開いたブロー金型の中央に置き、金型を閉じて素材をクランプし、そして適時に圧縮空気を導入することで膨張して金型キャビティの内壁に近づけて部品を成形し、冷却固化した後、金型を開いて部品を取り出すことである。押出ブロー成形における最も重要なブロー成形品は、食品、化粧品、医薬品、化学品などの液体や固体粉末を入れる包装容器であり、近年では自動車部品や家庭用品などへの応用も増えている。現在、押出ブロー成形による包装容器製品の多くはHDPEやPPなどの従来のプラスチックを使用しているが、機械的特性が劣るなどの問題がある。
【0003】
エンジニアリングプラスチックのポリカーボネート(PC)は、優れた総合特性、高い機械的強度、靱性を有するが、耐化学性が低く、押出ブロー成形時に高度なプロセス要件を必要とするため、押出ブロー成形包装容器(特に医薬品用包装容器)での応用が制限される。現在、PC材料を押出ブロー成形に使用する関連技術があり、中国特許出願CN106589778Aは、ブロー成形に適した高分子重合体を開示し、PCとABSをブレンドしてアロイを形成することにより、材料の強度と靱性が向上し、中国特許出願CN108164960Aは、ブロー成形PC/ABS複合材料を開示し、溶融促進剤であるスチレン-アクリロニトリル共重合体を材料に加えることにより、材料の溶融強度が増加し、押出ブロー成形性能が向上し、しかし、上述した従来のPC材料は主に小型支持部品や自動車のテールフィンなどに使用されており、耐化学性が改善されておらず、特に医薬品を収容する包装容器には適していない。
【0004】
従って、本発明は、医薬品包装容器の使用要件を満たすことができ、PC材料の応用を広げる上で非常に重要な、押出ブロー成形に適したPC材料を主に研究するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】中国特許出願CN106589778A
【特許文献2】中国特許出願CN108164960A
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記従来技術の不足を克服するために、本発明の目的は、耐化学性に優れただけでなく、高い溶融強度及び低い溶融冷却速度を有し、押出ブロー成形による包装容器の製造に適しており、医薬品の包装にも使用できる、ポリカーボネートアロイ材料を提供することである。
【0007】
本発明の別の目的は、上記ポリカーボネートアロイ材料の調製方法を提供することである。
【0008】
本発明の他の目的は、上記ポリカーボネートアロイ材料の使用を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、以下の技術的解決手段によって実現されるものである。
【0010】
ポリカーボネートアロイ材料であって、重量部で、
ポリカーボネート40~70部、
ポリエチレンテレフタレート20~40部、及び
金属化合物0.1~2部を含み、
上記金属化合物は、金属酸化物、金属塩基又は金属塩のうちの任意の1種以上から選択され、上記金属は、銅、鉄、マグネシウム、カルシウム、チタン、アンチモン、ナトリウム又はカリウムの任意の1種以上から選択される。
【0011】
好ましくは、上記ポリカーボネートアロイ材料は、重量部で、
ポリカーボネート50~65部、
ポリエチレンテレフタレート25~35部、及び
金属化合物0.3~1.2部を含む。
【0012】
本発明の研究から分かるように、ポリカーボネートに一定量のポリエチレンテレフタレートPETと特定の金属化合物を加えると、金属化合物がPCとPETの反応をある程度促進してブロック共重合体を形成し、材料の溶融強度を効果的に向上させ、同時にPET樹脂の結晶化を遅らせ、材料の溶融冷却速度を低下させ、そのため、押出ブロー成形プロセスで材料から押出される溶融した管状素材は安定性が高く、たわみプロセスでも溶融状態を保つことができ、破断することなく上下の直径が近くなり、その結果、ブロー成形による厚肉で大型の包装容器製品の製造が可能となり、更に、結晶化PETは材料の耐化学性を効果的に向上させ、薬物などの化学物質に対する材料の耐性を確保することができる。
【0013】
好ましくは、上記金属化合物は、チタン金属酸化物又はアンチモン金属酸化物のうちの任意の1種以上から選択され、より好ましくは、上記金属化合物は、アンチモン金属酸化物のうちの任意の1種以上から選択される。
【0014】
好ましくは、上記チタン金属酸化物は、TiO、TiO2又はTi2O3のうちの1種以上から選択され得、上記アンチモン金属酸化物は、Sb2O3、Sb2O4、Sb2O5、Sb6O13及びSbOのうちの1種以上から選択され得る。
【0015】
好ましくは、上記ポリカーボネートの粘度平均分子量は、10,000~40,000である。ポリカーボネートの分子量は低すぎると、押出プロセス中にネックが薄くなり、素材の破損が発生しやすくなり、かつ材料が耐食性に劣り、一方、分子量が高すぎると、押出機のスクリューの回転が制限され、押出加工が困難になる。より好ましくは、上記ポリカーボネートの粘度平均分子量は、18000~35000であり、更に好ましくは、前記ポリカーボネートの粘度平均分子量は、25,000~33,000である。
【0016】
上記ポリカーボネートは、芳香族ポリカーボネートのうちの任意の1種以上から選択され得、上記芳香族ポリカーボネートは、ビスフェノールAポリカーボネートから選択され得る。
【0017】
上記ポリエチレンテレフタレートの固有粘度は、0.65~0.88dl/gであり、PETの粘度が低すぎると、耐化学性に劣り、粘度が高すぎると、押出加工が困難になる。好ましくは、上記ポリエチレンテレフタレートの固有粘度は、0.7~0.88dl/gである。ポリエチレンテレフタレートの固有粘度は、標準GT/T1632.5-08を参照して測定され、25℃の溶媒と濃度0.005g/mLのPET溶液がキャピラリから流出するのにかかる時間を測定し、測定時間とサンプルの溶液濃度に基づいてその固有粘度を計算する。
【0018】
本発明に記載のポリカーボネートアロイ材料は、重量部で、帯電防止剤2~10部を更に含み得、前記帯電防止剤は、カーボンナノチューブの任意の1種以上から選択され、好ましくは、前記帯電防止剤は、直径1.0~80nm、長さ2~70μmの多層カーボンナノチューブの任意の1種以上から選択され、より好ましくは、前記帯電防止剤は、直径20~60nm、長さ10~25μmの多層カーボンナノチューブの任意の1種以上から選択される。
【0019】
本発明では、一定量のカーボンナノチューブを加えることにより、材料の溶融強度を更に向上させ、押出ブロー成形プロセス中に押出される溶融した管状素材の安定性を向上させることができ、その結果、材料の押出ブロー成形加工性能を効果的に向上させ、同時に材料に優れた帯電防止性を与える。
【0020】
本発明に記載のポリカーボネートアロイ材料は、重量部で、強化剤4~8部を更に含み得、上記強化剤は、エチレン-アクリル酸ブチル-メタクリル酸グリシジル共重合体、エチレン-オクテン-グリシジルメタクリレート共重合体、メタクリル酸メチル-ブタジエン-スチレン共重合体、メタクリル酸メチル-アクリル酸共重合体、エチレン-アクリル酸メチル共重合体又はメタクリル酸メチル-アクリル酸エステル-シリコーン共重合体のうちの1種以上から選択される。
【0021】
一定量の強化剤を加えることにより、本発明は、材料の低温靱性を効果的に向上させ、材料の耐化学性を更に向上させることができる。好ましくは、上記強化剤は、エチレン-アクリル酸ブチル-メタクリル酸グリシジル共重合体とメタクリル酸メチル-ブタジエン-スチレン共重合体を重量比1:2~2:1で配合することによって得られるものである。
【0022】
材料の性能要件に応じて、本発明に記載のポリカーボネートアロイ材料は、重量部で、酸化防止剤0.01~1部を更に含む。上記酸化防止剤は、オクタデシル-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、ビス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、β-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)n-オクタデカノールプロピオネート、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、テトラキス[メチレン(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシヒドロシンナメート)]メタン、ジステアリルチオプロピオネート、ジラウリルチオプロピオネート、トリデシルチオジプロピオネート、ペンタエリスリトール-テトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]又はβ-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)-プロピオン酸アミドのうちの任意の1種以上から選択される。
【0023】
本発明は、上記ポリカーボネートアロイ材料の調製方法を更に提供し、該方法は、配合比率に応じて、各成分をミキサーに入れ、均一になるまでブレンドしてプレミックスを得るステップと、次に、プレミックスを二軸押出機に入れて溶融混合し、押出造粒してポリカーボネートアロイ材料を調製するステップを含み、二軸押出機のスクリュー長さ対直径の比は40:1~50:1、スクリューバレル温度は240~260℃、スクリュー回転速度は400~500rpmである。
【0024】
本発明は、上記ポリカーボネートアロイ材料の医薬品包装分野での使用を更に提供する。具体的には、押出ブロー成形を使用して医薬品包装容器を製造することができる。
【発明の効果】
【0025】
従来技術に比べて、本発明は、以下の効果を有する。
【0026】
本発明では、ポリカーボネートに一定量のポリエチレンテレフタレートと特定の金属化合物を加えることによって得られたポリカーボネートアロイ材料は、耐化学性に優れただけでなく、高い溶融強度及び低い溶融冷却速度を有し、厚肉・大型の包装容器製品の押出ブロー成形に適しており、特に医薬品包装容器の使用要件を満たすために、包装分野に新しい材料と成形法の選択肢を提供し、ポリカーボネート材料の応用を更に広げる。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下では、具体的な実施例を参照しながら本発明を詳細に説明する。以下の実施例は、当業者が本発明を更に理解するのに役立つが、いかなる形態においても本発明を限定するものではない。指摘すべきものは、当業者にとって、本発明の概念から逸脱することなく、いくつかの変形及び改善を行うことができることである。それらはいずれも本発明の保護範囲に属する。
【0028】
以下では、本発明の実施例及び比較例で使用した原料を示すが、これらに限定されない。
ポリカーボネート1:粘度平均分子量28000、PC E-2000F、日本三菱、
ポリカーボネート2:粘度平均分子量23000、PC S-3000F、日本三菱、
ポリカーボネート3:粘度平均分子量16000、PC H-4000F、日本三菱、
ポリカーボネート4:粘度平均分子量35000、PC E-1000F、日本三菱、
ポリカーボネート5:粘度平均分子量40000、PC K-1000F、日本三菱、
ポリエチレンテレフタレート1:固有粘度0.8dl/g、PET BG80、儀徴化繊、
ポリエチレンテレフタレート1:固有粘度0.65dl/g、PET FG600、儀徴化繊、
ポリブチレンテレフタレート:PBT GX112、儀徴化学、
アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体:ABS PA-757、奇美、
アンチモン金属酸化物1:Sb2O3、Sb2O3-99.8、湖南華星、
アンチモン金属酸化物2:Sb2O4、シグマアルドリッチ、
アンチモン金属酸化物3:Sb2O5、シグマアルドリッチ、
チタン金属酸化物:TiO2、シグマアルドリッチ、
銅金属酸化物:CuO、WSD-T201、呉江市威士達銅業、
鉄金属酸化物:Fe2O3、宏武新材料、
アンチモン金属塩基:Sb(OH)3、シグマアルドリッチ、
アンチモン金属塩:SbCl3、シグマアルドリッチ、
ナトリウム金属塩:NaCl、合肥盈恒化学、
カルシウム金属塩:CaCl2、94%無水粉末、東信新材料、
マグネシウム金属塩基:Mg(OH)2、上海巨納、
カリウム金属塩基:KOH、山東飛碩化工、
帯電防止剤1:多層カーボンナノチューブ、直径30~50nm、長さ10~20μm、CNT106、北京徳科島金科技、
帯電防止剤2:多層カーボンナノチューブ、直径1.4~8nm、長さ10~30μm、CNT102、北京徳科島金科技、
帯電防止剤3:単層カーボンナノチューブ、直径1.4~2.2nm、長さ5~30μm、OCSIAL、
帯電防止剤4:カーボンブラック、250G、イメリス、
強化剤1:エチレン-アクリル酸ブチル-メタクリル酸グリシジル共重合体、市販、
強化剤2:メタクリル酸メチル-ブタジエン-スチレン共重合体、市販、
酸化防止剤:β-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)n-オクタデカノールプロピオネート、市販。
【0029】
実施例及び比較例の調製方法
配合比率に応じて、各成分をミキサーに入れ、均一になるまでブレンドしてプレミックスを得るステップと、次に、プレミックスを二軸押出機に入れて溶融混合し、押出造粒してポリカーボネートアロイ材料を調製するステップを含み、二軸押出機のスクリュー長さ対直径の比は45:1、スクリューバレル温度は240~260℃、スクリュー回転速度は500rpmである。
【0030】
関連性能試験方法
(1)押出ブロー成形性能試験:華泰機械の押出成形機、HT-110、スクリュー直径110mm、スクリュー長さ対直径比25/1、モータ出力4.5KW、モータ最大速度1500m。5段階の押出温度はいずれも280℃、スクリュー回転数は80r/分に設定される。ブロー成形品は肉厚4mm、直径300mm、高さ500mmのドラムで、エア源圧力は0.7MPa、型締力は500knである。
【0031】
A.溶融温度:素材押出が安定した場合、ダイヘッド下400mの素材表面温度(赤外線温度計)を試験し、試験温度が高いほど、ブロー成形の相対歩留まりが高くなり、
【0032】
B.たわんだ素材の安定性:肉眼で素材が500mmたわむと、素材全体がたるんだ状態であり、管状素材全体の上部と下部の直径が近くなるほど、溶融強度が高く、ブロー成形が容易になり、管状素材の上方のネックが細くなるほど、溶融強度が低下し、ブロー成形がより困難になる。「*」は、素材のたわみ状態を示し、「*」の数が少ないほど、管状素材全体の上部と下部の直径が近くなり、「*」の数が多いほど、上方のネックが細くなることを意味し、ここで、「*****」は、ネックが細くて折れて地面に落ちることを意味する。
【0033】
(2)耐化学性試験:厚さ3mmの成形角板を23℃、湿度50%で24時間調湿した後、その表面にトルエン2mlを滴下し、10分間静置後、表面割れの発生状況を観察し、以下の基準に基づいて評価し、
◎:表面の外観には変化がない。
○:表面にわずかな割れが見られる。
△:表面に割れが多く見られる。
×:表面に重大な割れ又は貫割れ裂が存在する。
【0034】
(3)帯電防止性能試験:表面抵抗率を使用して、材料の帯電防止特性を特徴付け、厚さ3mmの成形角板を23℃、湿度50%で24時間調湿した後、ASTM D257-93に従って角板の表面抵抗率を試験し、材料の表面抵抗率が106ohm/sq~109ohm/sqの範囲にある場合、材料はより優れた帯電防止特性を示す。
【0035】
(4)低温靱性試験:ブロー成形によって得られたドラムを24時間放置した後、中に11kgの砂利を入れ、-30℃の環境に24時間放置し、高さ1mから自由落下させ、それを3回繰り返し、底面のひび割れを観察する。
【0036】
以下の基準に基づいて評価し、
◎:底面の外観には変化がない。
○:底面にわずかな割れが見られる。
△:底面に割れが多く見られる。
×:底面に重大な割れ又は貫割れ裂が存在する。
【0037】
【0038】
上記実施例及び比較例から分かるように、本発明では、ポリカーボネートに一定量のポリエチレンテレフタレートと特定の金属化合物が加えられるため、材料は、耐化学性に優れただけでなく、高い溶融強度及び低い溶融冷却速度を有し、押出ブロー成形プロセス中に押出される溶融したたわんだ素材の安定性が高くなり、ブロー成形に役立つ。
【0039】
比較例1/2では、金属化合物を加えないか、添加量が少なすぎるため、材料の溶融物の冷却速度が早く、強度が低く、たわんだ素材の安定性が低くなる。
【0040】
比較例3では、金属化合物の添加量が多すぎると、溶融物の冷却速度が早くなり、溶融物の強度が低く、材料の耐化学性も低くなる。
【0041】
【0042】
実施例9~17を実施例1と比較すると、好ましくは、金属化合物は、チタン金属酸化物又はアンチモン金属酸化物である。
【0043】
【0044】
比較例4では、ポリブチレンテレフタレートPBTを加えると、材料の溶融物の冷却速度が早く、強度が低く、たわんだ素材の安定性が低くなる。
【0045】
比較例5では、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体ABSを加えると、材料の耐化学性が低く、溶融物の冷却速度が早くなり、溶融物の強度が低く、たわんだ素材の安定性も低くなる。
【0046】
【0047】
実施例23~28から分かるように、本発明では、一定量の帯電防止剤カーボンナノチューブと強化剤を加えることができ、材料の帯電防止特性と低温靱性を効果的に向上させると同時に、材料の耐化学性を確保することもでき、そのため、材料は、低い溶融冷却速及び高い溶融強度を有し、その結果、押出ブロー成形を効果的に実現し、医薬品包装容器の使用要件を満たすことができる。
【0048】
比較例6では、カーボンブラックの使用は、材料の帯電防止特性の改善にあまり効果がなく、材料の溶融強度が低く、たわんだ素材の安定性が低くなり、材料の低温靱性も劣る。
【国際調査報告】