(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-04
(54)【発明の名称】エクソソームにおけるKL-6タンパク質含有量の検出方法およびその使用
(51)【国際特許分類】
G01N 33/53 20060101AFI20240927BHJP
G01N 33/553 20060101ALI20240927BHJP
G01N 33/543 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
G01N33/53 D
G01N33/53 S
G01N33/553
G01N33/543 515Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024533784
(86)(22)【出願日】2021-12-31
(85)【翻訳文提出日】2024-06-04
(86)【国際出願番号】 CN2021143493
(87)【国際公開番号】W WO2023082452
(87)【国際公開日】2023-05-19
(31)【優先権主張番号】202111319932.9
(32)【優先日】2021-11-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524173235
【氏名又は名称】広州呼吸健康研究院
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】弁理士法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】蘇金
(72)【発明者】
【氏名】李軍旗
(72)【発明者】
【氏名】魏新茹
(72)【発明者】
【氏名】肖雲鵬
(57)【要約】
【課題】エクソソームにおけるKL-6タンパク質含有量の検出方法およびその使用である。
【解決手段】検出方法は、免疫磁気ビーズ捕捉法で磁気ビーズとエクソソームにおけるKL-6タンパク質とを結合させ、化学発光免疫法で系の発光強度を検出し、最後に、検量線法によりエクソソームにおけるKL-6のタンパク質含有量を計算することを含む。エクソソームにおけるKL-6タンパク質含有量の検出方法は、初めて提案され、良好な安定性および実行可能性を持ち、エクソソームに関連する基礎研究等の分野において重要な応用価値を有する。エクソソームにおけるKL-6タンパク質含有量が肺疾患の状況と大きな相関性を有することは、初めて発見され、エクソソームにおけるKL-6タンパク質含有量の参照値を肺疾患の評価標準として提供し、且つ、肺疾患を診断する試薬キットを提供する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
捕捉抗体によって標識された磁気ビーズと被検エクソソームサンプルとを混合させて反応させ、磁気ビーズ-エクソソーム複合体を取得するステップ(1)と、
ステップ(1)で得られた磁気ビーズ-エクソソーム複合体と発光物質によって標識された検出抗体とを混合させて反応させ、磁気ビーズ-エクソソーム-検出抗体複合体を取得するステップ(2)と、
ステップ(2)で得られた磁気ビーズ-エクソソーム-検出抗体複合体と発光基質とを混合させて反応させ、化学発光法で反応系の発光強度を検出するステップ(3)と、
検量線法を用い、ステップ(3)で検出された発光強度から被検エクソソームサンプルのKL-6タンパク質含有量を計算するステップ(4)と、を含む、
エクソソームにおけるKL-6タンパク質含有量の検出方法。
【請求項2】
ステップ(1)に記載の反応の温度は33~40℃であり、前記反応の時間は5~15minである、
請求項1に記載のエクソソームにおけるKL-6タンパク質含有量の検出方法。
【請求項3】
ステップ(2)に記載の反応の温度は33~40℃であり、前記反応の時間は5~15minである、
請求項1に記載のエクソソームにおけるKL-6タンパク質含有量の検出方法。
【請求項4】
ステップ(3)に記載の反応の温度は33~40℃であり、前記反応の時間は5~10minである、
請求項1に記載のエクソソームにおけるKL-6タンパク質含有量の検出方法。
【請求項5】
前記被検エクソソームサンプルは、全血、血漿、血清、気管支肺胞洗浄液、脳脊髄液または尿のいずれか一種の被検サンプルから調製されたものである、
請求項1~4のいずれか1項に記載のエクソソームにおけるKL-6タンパク質含有量の検出方法。
【請求項6】
前記被検エクソソームサンプルの調製方法は、遠心法、限外濾過法、磁気ビーズ免疫法、ポリエチレングリコール沈殿法または試薬キット抽出法のいずれか一種を含み、遠心法であることが好ましく、
好ましくは、前記遠心の回転速度は10000~20000gであり、前記遠心の時間は1~2hである、
請求項1~5のいずれか1項に記載のエクソソームにおけるKL-6タンパク質含有量の検出方法。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載のエクソソームにおけるKL-6タンパク質含有量の検出方法の、肺疾患を診断する試薬キットの製造における使用。
【請求項8】
捕捉抗体によって標識された磁気ビーズ、発光物質によって標識された検出抗体、発光基質、およびKL-6標準品を含む、
肺疾患を診断する試薬キット。
【請求項9】
前記捕捉抗体は8MKL-61を含み、
好ましくは、前記検出抗体は8MKL-62を含む、
請求項8に記載の肺疾患を診断する試薬キット。
【請求項10】
エクソソームにおけるKL-6タンパク質含有量のレベルを検出するために用いられる、
請求項8または9に記載の肺疾患を診断する試薬キット。
【請求項11】
前記捕捉抗体によって標識された磁気ビーズは、
捕捉抗体と活性化後の磁気ビーズとを混合させ、インキュベートし、磁気ビーズをブロッキングして得られるステップを含む調製方法で調製され、
好ましくは、前記インキュベートの温度は15~40℃であり、前記インキュベートの時間は2.5~4hであり、
好ましくは、前記捕捉抗体と磁気ビーズとの質量比は1:(8~12)である、
請求項8~10のいずれか1項に記載の肺疾患を診断する試薬キット。
【請求項12】
前記発光物質によって標識された検出抗体は、
発光物質と被標識検出抗体とを混合させ、遮光下でインキュベートし、抗体をブロッキングして得られるステップを含む調製方法で調製され、
好ましくは、前記インキュベートの温度は15~40℃であり、前記インキュベートの時間は20~60minである、
請求項8~11のいずれか1項に記載の肺疾患を診断する試薬キット。
【請求項13】
前記肺疾患のタイプは肺炎または間質性肺疾患を含む、
請求項8~12のいずれか1項に記載の肺疾患を診断する試薬キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、タンパク質検出の技術分野に属し、エクソソームにおけるKL-6タンパク質含有量の検出方法およびその使用に関し、具体的には、エクソソームにおけるKL-6タンパク質含有量の検出方法および肺疾患を診断する試薬キットに関する。
【背景技術】
【0002】
KL-6(シアル化糖鎖抗原、Krebs Von den Lungen-6)は、Kohnoが1985年に発見したものであり、ヒト肺腺癌細胞系(VMRC-LCR)免疫マウスを用いて複数のモノクローナル抗体を調製し、そのうちの6番目の抗体によって認識されたシアル化糖鎖抗原をKL-6と命名した。KL-6は、主に増殖、再生されたまたは損傷を受けた肺胞II型上皮細胞により分泌され、正常な肺組織において、KL-6は、II型肺胞上皮細胞、呼吸細気管支上皮細胞および気管支腺漿液細胞で発現する。肺に炎症、特にII型肺胞に関連する肺炎が発生すると、II型肺胞の大量の死亡や再生および肺間質上皮細胞バリアの破損により、KL-6が血液中に大量に放出される。KL-6についての多くの研究によると、それは、間質性肺疾患(Interstitial Lung Diseases、ILDs)の血清学的指標として、積極的な臨床的意義を示すことが表される。従って、末梢血KL-6のレベルの測定は、間質性肺炎の診断および治療指針の決定に使用できる。ここで、血清は、非侵襲的に繰り返し収集できるため、理想的な試験サンプルと考えられるが、その中に含まれる99%以上のタンパク質が無関係なタンパク質(例えば、アルブミン等)であり、検出の観点から考えると、これらのタンパク質は不純物であり、検出の確度に影響を及ぼす。
【0003】
エクソソームとは、複雑なRNAおよびタンパク質を含む小さな膜胞(30~150nm)を指し、現在、特に直径40~100nmの円盤状小胞を指す。1983年、エクソソームは、ヒツジの網赤血球で初めて発見され、1987年、Johnstoneはそれを「exosome」と命名した。様々な細胞は、正常および病理状態でいずれもエクソソームを分泌することができ、且つ、エクソソームは、血液、唾液、尿、脳脊髄液および乳汁のような体液中に天然に存在する。エクソソームは、特異的に分泌される膜胞と見なされ、細胞間通信に関与することができ、近年、人々は、エクソソームの研究への関心は日々高まっている。研究によると、エクソソームには、様々な細胞の生理活動に関連する複数種のタンパク質が含まれているが、エクソソームにおけるKL-6タンパク質の含有量状況およびその機能はまだ不明であり、現在、エクソソームにおけるKL-6タンパク質の検出方法も報告されていない。
【0004】
従って、エクソソームにおけるKL-6タンパク質含有量の検出方法の開発は、エクソソームに関連する研究およびKL-6タンパク質の機能研究等の分野について重要な応用価値を有する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本願は、エクソソームにおけるKL-6タンパク質含有量の検出方法およびその使用を提供し、具体的に、エクソソームにおけるKL-6タンパク質含有量の検出方法および肺疾患を診断する試薬キットを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
態様1において、本願は、
捕捉抗体によって標識された磁気ビーズと被検エクソソームサンプルとを混合させて反応させ、磁気ビーズ-エクソソーム複合体を取得するステップ(1)と、
ステップ(1)で得られた磁気ビーズ-エクソソーム複合体と、発光標識された検出抗体とを混合させて反応させ、磁気ビーズ-エクソソーム-検出抗体複合体を取得するステップ(2)と、
ステップ(2)で得られた磁気ビーズ-エクソソーム-検出抗体複合体と発光基質とを混合させて反応させ、化学発光法で反応系の発光強度を検出するステップ(3)と、
検量線法を用い、ステップ(3)で検出された発光強度から被検エクソソームサンプルのKL-6タンパク質含有量を計算するステップ(4)と、を含む、
エクソソームにおけるKL-6タンパク質含有量の検出方法を提供する。
【0007】
本願は、エクソソームにおけるKL-6タンパク質含有量の検出方法を初めて提案し、検出の原理は、
図1に示す。図中、1は捕捉抗体によって標識された磁気ビーズであり、2はKL-6タンパク質を含むエクソソームであり、3は発光物質によって標識された検出抗体である。捕捉抗体とKL-6タンパク質との特異的結合作用および検出抗体とKL-6タンパク質との特異的結合作用により、磁気ビーズ-エクソソーム-検出抗体複合体を構築し、検出抗体が発光物質に標識されているため、反応系の発光強度を検出することにより、エクソソームにおけるKL-6タンパク質含有量情報を間接的に反映することができる。検量線法によってKL-6タンパク質含有量の具体的な数値を計算することができる。本願に係る検出方法は、良好な安定性を有し、本願に係る検出方法による検出結果は、従来の血清検出による結果と著しく相関し、本願の検出方法が高い確度および実行可能性を持つことを証明し、エクソソームに関連する基礎研究等の分野で重要な応用価値を有する。この検出方法に基づいて、本願は、エクソソームにおけるKL-6タンパク質含有量が肺疾患の状況と大きな相関性を有することを初めて発見し、この発見は、肺疾患のメカニズム研究および臨床診断等の面で重要な意義を持つ。
【0008】
好ましくは、ステップ(1)に記載の反応の温度は33~40℃で、例えば、33℃、34℃、35℃、36℃、37℃、38℃、39℃、40℃等である。前記反応の時間は5~15minで、例えば、5min、6min、7min、8min、9min、10min、11min、12min、13min、14min、15min等である。
【0009】
好ましくは、ステップ(2)に記載の反応の温度は33~40℃で、例えば、33℃、34℃、35℃、36℃、37℃、38℃、39℃、40℃等である。前記反応の時間は5~15minで、例えば、5min、6min、7min、8min、9min、10min、11min、12min、13min、14min、15min等である。
【0010】
好ましくは、ステップ(3)前記反応の温度は33~40℃で、例えば、33℃、34℃、35℃、36℃、37℃、38℃、39℃、40℃等である。前記反応の時間は5~10minで、例えば、5min、6min、7min、8min、9min、10min等である。
【0011】
好ましくは、前記被検エクソソームサンプルは、全血、血漿、血清、気管支肺胞洗浄液、脳脊髄液または尿のいずれか一種の被検サンプルから調製されたものである。
【0012】
好ましくは、前記被検エクソソームサンプルの調製方法は、遠心法、限外濾過法、磁気ビーズ免疫法、ポリエチレングリコール沈殿法または試薬キット抽出法のいずれか一種を含み、遠心法であることが好ましい。
【0013】
好ましくは、前記遠心の回転速度は10000~20000gで、例えば、10000g、11000g、12000g、13000g、14000g、15000g、16000g、17000g、18000g、19000g、20000g等である。前記遠心の時間は1~2hで、例えば、1h、1.1h、1.2h、1.3h、1.4h、1.5h、1.6h、1.7h、1.8h、1.9h、2h等である。
【0014】
本願の好ましい一態様として、前記エクソソームにおけるKL-6タンパク質含有量の検出方法は、以下のステップを含む。
【0015】
(1)被検サンプルに0.5~3倍サンプル体積のリン酸塩緩衝液を加えて希釈し、0~4℃において10000~20000gの回転速度で1~2h遠心し、沈殿を収集し、リン酸塩緩衝液を加えて再懸濁し、被検エクソソームサンプルを取得する。
【0016】
0.8~1.2mgの磁気ビーズに400~600μLの平衡液を加えて混合し、液体を取り除き、150~250μLの磁気ビーズ活性化液を加えて混合し、15~40℃で20~60minインキュベートし、液体を取り除き、80~120μgの捕捉抗体を加え、15~40℃で2.5~4hインキュベートし、液体を取り除き、400~600μLのブロッキング液を加え、15~40℃で2~3hブロッキングし、洗浄し、磁気ビーズ保存液を加え、捕捉抗体によって標識された磁気ビーズを取得する。
【0017】
8~12μLの発光物質を無水ジメチルホルムアミドで8~12倍に希釈した後、10~30μLを取って80~120μgの被標識検出抗体と混合し、15~40℃において遮光下で20~60minインキュベートし、10~30μLのブロッキング液を加え、15~40℃において遮光下で20~60minブロッキングし、保存液を加え、発光物質によって標識された検出抗体を取得する。
【0018】
(2)被検エクソソームサンプル8~12μLと捕捉抗体によって標識された磁気ビーズ200~300μLとを混合させ、33~40℃で5~15min反応させ、洗浄し、液体を取り除き、発光物質によって標識された検出抗体200~300μLを加え、33~40℃で5~15min反応させ、洗浄し、液体を取り除き、180~220μLの発光基質を加え、33~40℃で5~10minインキュベートし、477nm波長で反応系の発光強度を検出する。
【0019】
(3)被検エクソソームサンプルと同体積のKL-6標準品を取り、ステップ(2)の操作を繰り返し、標準品の検出された発光強度に準じて検量線をフィッティングし、検量線法により被検サンプル内のKL-6含有量を計算する。
【0020】
上記0.5~3倍の具体的な数値は、0.5倍、0.6倍、0.7倍、0.8倍、0.9倍、1倍、1.2倍、1.5倍、1.7倍、2倍、2.2倍、2.5倍、2.7倍、3倍等であってもよい。
【0021】
上記0.8~1.2mgの具体的な数値は、0.8mg、0.85mg、0.9mg、0.95mg、1mg、1.05mg、1.1mg、1.15mg、1.2mgであってもよい。
【0022】
上記400~600μLの具体的な数値は、400μL、420μL、440μL、450μL、460μL、480μL、500μL、520μL、540μL、550μL、560μL、580μL、600μL等であってもよい。
【0023】
上記150~250μLの具体的な数値は、150μL、160μL、170μL、180μL、190μL、200μL、210μL、220μL、230μL、240μL、250μL等であってもよい。
【0024】
上記80~120μgの具体的な数値は、80μg、85μg、90μg、95μg、100μg、105μg、110μg、115μg、120μg等であってもよい。
【0025】
上記2~3hの具体的な数値は、2h、2.1h、2.2h、2.3h、2.4h、2.5h、2.6h、2.7h、2.8h、2.9h、3h等であってもよい。
【0026】
上記8~12μLの具体的な数値は、8μL、8.5μL、9.5μL、10μL、10.5μL、11μL、11.5μL、12μL等であってもよい。
【0027】
上記8~12倍の具体的な数値は、8倍、8.5倍、9.5倍、10倍、10.5倍、11倍、11.5倍、12倍等であってもよい。
【0028】
上記10~30μLの具体的な数値は、10μL、12μL、15μL、18μL、20μL、22μL、25μL、28μL、30μL等であってもよい。
【0029】
上記80~120μgの具体的な数値は、80μg、85μg、90μg、95μg、100μg、105μg、110μg、115μg、120μg等であってもよい。
【0030】
上記200~300μLの具体的な数値は、200μL、210μL、220μL、230μL、240μL、250μL、260μL、270μL、280μL、290μL、300μL等であってもよい。
【0031】
上記180~220μLの具体的な数値は、180μL、185μL、190μL、195μL、200μL、205μL、210μL、215μL、220μL等であってもよい。
【0032】
態様2において、本願は、態様1に記載のエクソソームにおけるKL-6タンパク質含有量の検出方法の、肺疾患を診断する試薬キットの製造における使用を提供する。
【0033】
態様3において、本願は、
捕捉抗体によって標識された磁気ビーズ、発光物質によって標識された検出抗体、発光基質、およびKL-6標準品を含む、
肺疾患を診断する試薬キットを提供する。
【0034】
本願は、肺疾患を診断する試薬キットを創造的に提供し、検出結果に応じて、健常者のエクソソームにおけるKL-6の濃度の2.1倍に準じてカットオフ値(CUTOFF値)を設定し、即ち50U/mLであり、被検サンプルエクソソームにおけるKL-6の検出結果の陰性・陽性を確定し、且つ、これにより患者の肺疾患状態を確認する。本願に係る試薬キットは、従来の血清検出と比べて肺疾患の診断においてより良い感度を有し、診断結果の偽陰性を減少し、重要な応用価値を有する。
【0035】
好ましくは、前記捕捉抗体は8MKL-61を含む。
【0036】
好ましくは、前記検出抗体は8MKL-62を含む。
【0037】
好ましくは、前記試薬キットは、エクソソームにおけるKL-6タンパク質含有量のレベルを検出するために用いられる。
【0038】
前記捕捉抗体によって標識された磁気ビーズは、
捕捉抗体と活性化後の磁気ビーズとを混合させ、インキュベートし、磁気ビーズをブロッキングして得られるステップを含む調製方法で調製される。
【0039】
好ましくは、前記インキュベートの温度は15~40℃で、例えば、15℃、17℃、20℃、22℃、25℃、27℃、30℃、32℃、35℃、37℃、40℃等である。前記インキュベートの時間は2.5~4hで、例えば、2.5h、2.6h、2.7h、2.8h、2.9h、3h、3.1h、3.2h、3.3h、3.4h、3.5h、3.6h、3.7h、3.8h、3.9h、4h等である。
【0040】
好ましくは、前記捕捉抗体と磁気ビーズとの質量比は1:(8~12)で、例えば、1:8、1:8.5、1:9、1:9.5、1:10、1:10.5、1:11、1:11.5、1:12等である。
【0041】
好ましくは、前記発光物質によって標識された検出抗体は、
発光物質と被標識検出抗体とを混合させ、遮光下でインキュベートし、抗体をブロッキングして得られるステップを含む調製方法で調製される。
【0042】
好ましくは、前記インキュベートの温度は15~40℃で、例えば、15℃、17℃、20℃、22℃、25℃、27℃、30℃、32℃、35℃、37℃、40℃等である。前記インキュベートの時間は20~60minで、例えば、20min、25min、30min、35min、40min、45min、50min、55min、60min等である。
【0043】
好ましくは、前記肺疾患のタイプは肺炎または間質性肺疾患を含む。
【0044】
態様4において、本願は、
捕捉抗体によって標識された磁気ビーズと被検エクソソームサンプルとを混合させて反応させ、磁気ビーズ-エクソソーム複合体を取得するステップ(1)と、
ステップ(1)で得られた磁気ビーズ-エクソソーム複合体と発光物質によって標識された検出抗体とを混合させて反応させ、磁気ビーズ-エクソソーム-検出抗体複合体を取得するステップ(2)と、
ステップ(2)で得られた磁気ビーズ-エクソソーム-検出抗体複合体と発光基質とを混合させて反応させ、化学発光法で反応系の発光強度を検出するステップ(3)と、
KL-6標準品を用い、検量線法により、ステップ(3)で検出された発光強度から被検エクソソームサンプルのKL-6タンパク質含有量を計算するステップ(4)と、を含む、
態様3に記載の肺疾患を診断する試薬キットの使用方法を提供する。
【0045】
好ましくは、ステップ(1)に記載の反応の温度は33~40℃であり、前記反応の時間は5~15minである。
【0046】
好ましくは、ステップ(2)に記載の反応の温度は33~40℃であり、前記反応の時間は5~15minである。
【0047】
好ましくは、ステップ(3)前記反応の温度は33~40℃であり、前記反応の時間は5~10minである。
【0048】
好ましくは、前記被検エクソソームサンプルは、全血、血漿、血清、気管支肺胞洗浄液、脳脊髄液または尿のいずれか一種の被検サンプルから調製される。
【0049】
好ましくは、前記被検エクソソームサンプルの調製方法は、遠心法、限外濾過法、磁気ビーズ免疫法、ポリエチレングリコール沈殿法または試薬キット抽出法のいずれか一種を含み、遠心法であることが好ましい。
【0050】
好ましくは、前記遠心の回転速度は10000~20000gであり、前記遠心の時間は1~2hである。
【0051】
本願の好ましい一態様として、前記肺疾患を診断する試薬キットの使用方法は、以下のステップを含む。
【0052】
(1)被検サンプルに0.5~3倍サンプル体積のリン酸塩緩衝液を加えて希釈し、0~4℃において10000~20000gの回転速度で1~2h遠心し、沈殿を収集し、リン酸塩緩衝液を加えて再懸濁し、被検エクソソームサンプルを取得する。
【0053】
0.8~1.2mgの磁気ビーズに400~600μLの平衡液を加えて混合し、液体を取り除き、150~250μLの磁気ビーズ活性化液を加えて混合し、15~40℃で20~60minインキュベートし、液体を取り除き、80~120μgの捕捉抗体を加え、15~40℃で2.5~4hインキュベートし、液体を取り除き、400~600μLのブロッキング液を加え、15~40℃で2~3hブロッキングし、洗浄し、磁気ビーズ保存液を加え、捕捉抗体によって標識された磁気ビーズを取得する。
【0054】
8~12μLの発光物質を無水ジメチルホルムアミドで8~12倍に希釈した後、10~30μLを取って80~120μgの被標識検出抗体と混合し、15~40℃において遮光下で20~60minインキュベートし、10~30μLのブロッキング液を加え、15~40℃において遮光下で20~60minブロッキングし、保存液を加え、発光物質によって標識された検出抗体を取得する。
【0055】
(2)被検エクソソームサンプル8~12μLと捕捉抗体によって標識された磁気ビーズ200~300μLとを混合させ、33~40℃で5~15min反応させ、洗浄し、液体を取り除き、発光物質によって標識された検出抗体200~300μLを加え、33~40℃で5~15min反応させ、洗浄し、液体を取り除き、180~220μLの発光基質を加え、33~40℃で5~10minインキュベートし、477nm波長で反応系の発光強度を検出する。
【0056】
(3)被検エクソソームサンプルと同体積のKL-6標準品を取り、ステップ(2)の操作を繰り返し、標準品の検出された発光強度に準じて検量線をフィッティングし、検量線法により被検サンプル内のKL-6含有量を計算する。
【発明の効果】
【0057】
従来技術に対し、本願は、以下の有益な効果を備える。
【0058】
本願は、エクソソームにおけるKL-6タンパク質含有量の検出方法を初めて提案し、血清サンプルの検出に適用し、検出方法は高い安定性を有する。本願に係る検出方法に基づいて得られた検出結果は、従来の血清検出による結果と著しく相関し、本願の検出方法が高い確度および実行可能性を持つことを証明する。本願に係るエクソソームにおけるKL-6タンパク質含有量の検出方法は、エクソソームに関連する基礎研究等の分野で重要な応用価値を有する。本願は、更にエクソソームにおけるKL-6タンパク質含有量が肺疾患の状況と大きな相関性を有することを初めて発見し、この発見は、肺疾患のメカニズム研究および臨床診断等の面で重要な意義を持つ。本願は、肺疾患を診断する試薬キットを更に提供し、検出結果に応じて、健常者のエクソソームにおけるKL-6の濃度の2.1倍に準じてカットオフ値(CUTOFF値)を設定し、即ち50U/mLであり、被検サンプルエクソソームにおけるKL-6の検出結果の陰性・陽性を確定し、且つ、これにより患者の肺疾患状態を確認する。本願に係る試薬キットは、従来の血清検出と比べて肺疾患の診断においてより良い感度を有し、診断結果の偽陰性を減少し、重要な応用価値を有する。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【
図1】
図1は、エクソソームにおけるKL-6タンパク質含有量の検出方法の検出原理図である。
【
図2】
図2は、実施例1においてステップ(1)で調製されたエクソソームの形態的特徴づけの図である。
【
図3】
図3は、健常者のサンプルとILDs患者のサンプルの検出結果の比較図である。
【
図4】
図4は、実施例1の検出結果と従来の血清検出結果との相関性の分析図である。
【
図5】
図5は、血清におけるKL-6の臨床参照値と本願のエクソソームにおけるKL-6のカットオフ値との比較分析図である。
【符号の説明】
【0060】
1:捕捉抗体によって標識された磁気ビーズ;2:KL-6タンパク質を含むエクソソーム;3:発光物質によって標識された検出抗体。
【発明を実施するための形態】
【0061】
以下、具体的な実施形態により本願の技術案について更に説明する。当業者であれば、前記実施例は、本願を理解するためのものに過ぎず、本願の具体的な制限と見なされるべきではないことを理解すべきである。
【0062】
以下の実施例に係る健常者の血清サンプルは健常ボランティアに由来し、ILDs患者の血清サンプルは広州医科大学付属第一病院に由来し、全ての被験者は、サンプリング前に本実験のインフォームドコンセントを受け、血清サンプルの採取は、病院の基準に準ずる。
【実施例1】
【0063】
本実施例は、エクソソームにおけるKL-6タンパク質含有量の検出方法を提供し、以下のステップを含む。
【0064】
(1)エクソソームの分離抽出
サンプルの前処理:血清サンプル(1mL)を4℃において10000gの回転速度で10min遠心し、サンプル内の不純物を除去し、遠心後の上清を新しい遠心管に移した。
上清の前処理:不純物を除去した上清に4倍サンプル体積の予冷された0.01MのPBSを加え、混合液を4℃に置いて2h静置した。
エクソソームの分離:混合液を4℃において10000gの回転速度で1h遠心し、上清を捨て、沈殿を収集し、1/2サンプル体積の予冷された0.01MのPBSを加え、ピペッティングして均一に混合し、被検エクソソームサンプルを取得した。
【0065】
(2)捕捉抗体によって標識された磁気ビーズの調製
磁気ビーズの前処理:1mgの磁気ビーズに500μLの平衡液(0.01MのPBS)を加え、ボルテックス振とうして均一に混合し、マグネットラックで液体を取り除いた。200μLの磁気ビーズ活性化Buffer(10mg/mLのEDC、10mg/mLのNHS)を加え、ボルテックスで均一に混合し、ボルテックスミキサーを用いて25℃で30min振とうしてインキュベートした。
抗体のカップリング:マグネットラックで磁気ビーズ活性化Bufferを取り除き、捕捉抗体(100μgの8MKL-61)を加え、ボルテックスで均一に混合し、ボルテックスミキサーを用いて25℃で3h振とうしてインキュベートした。
磁気ビーズのブロッキング:マグネットラックでカップリングされていない抗体を取り除き、500μLのブロッキング液(0.01MのPBSで調製された5%BSA)を加え、ボルテックスで均一に混合し、垂直ミキサーを用いて25℃で逆さまにして2hブロッキングした。洗浄後、1mLの磁気ビーズ保存液(0.01MのPBSで調製された3%BSA)を加え、4℃で保存して予備された。
【0066】
(3)発光物質によって標識された検出抗体の調製
10μLのAP(アルカリホスファターゼ)を取り、90μLの無水DMF(無水ジメチルホルムアミド)を加え、均一に混合した後、20μL~100μLを取って被標識検出抗体(8MKL-62)に入れ、均一に混合した後、振とう器を用いて25℃において遮光下で30minインキュベートした。
抗体のブロッキング:20μLのブロッキング液(5%リジン)を取ってインキュベート済みのAPによって標識された検出抗体に入れ、均一に混合した後、振とう器を用いて25℃において遮光下で30min振とうしてブロッキングした。透析し、1mLのAP保存液(0.01MのPBS)を加えて再懸濁し、4℃で保存して予備された。
【0067】
(4)被検エクソソームサンプル内のKL-6含有量の検出および計算
10μLのステップ(1)で調製された被検エクソソームサンプルと、180μLのサンプル希釈液(0.01MのPBS、0.05%ツイーン-20)とを混合させ、十分に均一に混合させ、被検サンプル試験液を取得した。10μLの標準品(濃度が知られているKL-6組換えタンパク質)と180μLのサンプル希釈液とを混合させ、十分に均一に混合させ、標準品試験液を取得した。10μLのキャリブレータ(440U/mlのKL-6)と180μLのサンプル希釈液とを混合させ、十分に均一に混合させ、低い値のキャリブレータ試験液を取得した。10μLのキャリブレータ(1040U/mlのKL-6)と180μLのサンプル希釈液とを混合させ、十分に均一に混合させ、高い値のキャリブレータ試験液を取得した。被検サンプル試験液、標準品試験液(6種の濃度のKL-6組換えタンパク質についてそれぞれ操作した)、低い値のキャリブレータ試験液および高い値のキャリブレータ試験液のそれぞれに対して以下の操作を行った。
【0068】
ステップ(2)で調製された捕捉抗体によって標識された磁気ビーズ250μLを取り、10μLの試験液を加え、十分に均一に混合した後、37℃で10minインキュベートした。繰り返し洗浄して反応液を除去し、エクソソームを捕捉した磁気ビーズを取得した。
【0069】
ステップ(3)で調製されたAPによって標識された抗体250μLと、エクソソームを捕捉した磁気ビーズとを混合させ、十分に均一に混合させた後、37℃で10minインキュベートした。繰り返し洗浄して反応液を除去し、抗体と結合した磁気ビーズ複合体を取得した。その中に200μLのAMPPD基質液を加え、十分に均一に混合した後、37℃で5min反応した。477nm波長で反応系の発光強度を検出した。
【0070】
標準品の検出された発光強度に準じて検量線をフィッティングし、検量線により被検サンプル内のKL-6含有量を計算した。
【実施例2】
【0071】
本実施例は、エクソソームにおけるKL-6タンパク質含有量の検出方法を提供し、以下のステップを含む。
【0072】
(1)エクソソームの分離抽出
サンプルの前処理:血清サンプル(1mL)を4℃において10000gの回転速度で10min遠心し、サンプル内の不純物を除去し、遠心後の上清を新しい遠心管に移した。
上清の前処理:不純物を除去した上清に1倍サンプル体積の予冷されたPBS(濃度0.01M)を加え、混合液を取得した。
エクソソームの分離:混合液を4℃において20000gの回転速度で1h遠心し、上清を捨て、沈殿を収集し、1倍サンプル体積の予冷されたPBSを加え、ピペッティングして均一に混合し、被検エクソソームサンプルを取得した。
【0073】
(2)捕捉抗体によって標識された磁気ビーズの調製
磁気ビーズの前処理:0.9mgの磁気ビーズに400μLの平衡液(0.01MのPBS)を加え、ボルテックス振とうして均一に混合し、マグネットラックで液体を取り除いた。160μLの磁気ビーズ活性化Buffer(10mg/mLのEDC、10mg/mLのNHS)を加え、ボルテックスで均一に混合し、ボルテックスミキサーを用いて25℃で50min振とうしてインキュベートした。
抗体のカップリング:マグネットラックで磁気ビーズ活性化Bufferを取り除き、捕捉抗体(100μgの8MKL-61)を加え、ボルテックスで均一に混合し、ボルテックスミキサーを用いて25℃で2.5h振とうしてインキュベートした。
磁気ビーズのブロッキング:マグネットラックでカップリングされていない抗体を取り除き、450μLのブロッキング液(0.01MのPBSで調製された5%BSA)を加え、ボルテックスで均一に混合し、垂直ミキサーを用いて25℃で逆さまにして3hブロッキングした。洗浄後、1mLの磁気ビーズ保存液(0.01MのPBSで調製された3%BSA)を加え、4℃で保存して予備された。
【0074】
(3)発光物質によって標識された検出抗体の調製
10μLのAE(アクリジニウムエステル)を取り、90μLの無水DMF(無水ジメチルホルムアミド)を加え、均一に混合した後、20μL~100μLを取って被標識検出抗体(8MKL-62)に入れ、均一に混合した後、振とう器を用いて25℃において遮光下で40minインキュベートした。
抗体のブロッキング:20μLのブロッキング液(5%リジン)を取ってインキュベート済みのAEによって標識された検出抗体に入れ、均一に混合した後、振とう器を用いて25℃において遮光下で40min振とうしてブロッキングした。透析し、1mLのAE保存液(0.01MのPBS、pH7.4)を加えて再懸濁し、4℃で保存して予備された。
【0075】
(4)被検エクソソームサンプル内のKL-6含有量の検出および計算
ステップ(1)で調製された被検エクソソームサンプル10μLと、サンプル希釈液(0.01MのPBS、0.05%ツイーン-20)180μLとを混合させ、十分に均一に混合させ、被検サンプル試験液を取得した。10μLの標準品(濃度が知られているKL-6組換えタンパク質)と180μLのサンプル希釈液とを混合させ、十分に均一に混合させ、標準品試験液を取得した。10μLのキャリブレータ(440U/mlのKL-6)と180μLのサンプル希釈液とを混合させ、十分に均一に混合させ、低い値のキャリブレータ試験液を取得した。10μLのキャリブレータ(1040U/mlのKL-6)と180μLのサンプル希釈液とを混合させ、十分に均一に混合させ、高い値のキャリブレータ試験液を取得した。被検サンプル試験液、標準品試験液(6種の濃度のKL-6組換えタンパク質についてそれぞれ操作した)、低い値のキャリブレータ試験液および高い値のキャリブレータ試験液のそれぞれに対して以下の操作を行った。
ステップ(2)で調製された捕捉抗体によって標識された磁気ビーズ200μLを取り、10μLの試験液を加え、十分に均一に混合した後、37℃で15minインキュベートした。繰り返し洗浄して反応液を除去し、エクソソームを捕捉した磁気ビーズを取得した。
【0076】
ステップ(3)で調製されたAEによって標識された抗体200μLと、エクソソームを捕捉した磁気ビーズとを混合させ、十分に均一に混合させた後、35℃で8minインキュベートした。繰り返し洗浄して反応液を除去し、抗体と結合した磁気ビーズ複合体を取得した。その中に100μLのAE予備励起溶液を加えた直後に、100μLの励起溶液を加え、十分に均一に混合した後、最大発光強度を測定した。標準品の検出された発光強度に準じて検量線をフィッティングし、検量線により被検サンプル内のKL-6含有量を計算した。
【実施例3】
【0077】
本実施例は、エクソソームにおけるKL-6タンパク質含有量の検出方法を提供し、以下のステップを含む。
【0078】
(1)エクソソームの分離抽出
サンプルの前処理:血清サンプル(1mL)を4℃において10000gの回転速度で10min遠心し、サンプル内の不純物を除去し、遠心後の上清を新しい遠心管に移した。
上清の前処理:不純物を除去した上清に2倍サンプル体積の予冷されたPBS(濃度0.01M)を加え、混合液を取得した。
エクソソームの分離:混合液を4℃において12000gの回転速度で2h遠心し、上清を捨て、沈殿を収集し、1/2サンプル体積の予冷されたPBSを加え、ピペッティングして均一に混合し、被検エクソソームサンプルを取得した。
【0079】
(2)捕捉抗体によって標識された磁気ビーズの調製
磁気ビーズの前処理:1.1mgの磁気ビーズに600μLの平衡液(0.01MのPBS)を加え、ボルテックス振とうして均一に混合し、マグネットラックで液体を取り除いた。300μLの磁気ビーズ活性化Buffer(10mg/mLのEDC、10mg/mLのNHS)を加え、ボルテックスで均一に混合し、ボルテックスミキサーを用いて25℃で20min振とうしてインキュベートした。
抗体のカップリング:マグネットラックで磁気ビーズ活性化Bufferを取り除き、捕捉抗体(100μgの8MKL-61)を加え、ボルテックスで均一に混合し、ボルテックスミキサーを用いて25℃で3h振とうしてインキュベートした。
磁気ビーズのブロッキング:マグネットラックでカップリングされていない抗体を取り除き、600μLのブロッキング液(0.01MのPBSで調製された5%BSA)を加え、ボルテックスで均一に混合し、垂直ミキサーを用いて25℃で逆さまにして2.5hブロッキングした。洗浄後、1mLの磁気ビーズ保存液(0.01MのPBSで調製された3%BSA)を加え、4℃で保存して予備された。
【0080】
(3)発光物質によって標識された検出抗体の調製
10μLのAP(アルカリホスファターゼ)を取り、100μLの無水DMF(無水ジメチルホルムアミド)を加え、均一に混合した後、20μL~100μLを取って被標識検出抗体(8MKL-62)に入れ、均一に混合した後、振とう器を用いて25℃において遮光下で20minインキュベートした。
抗体のブロッキング:25μLのブロッキング液(5%リジン)を取ってインキュベート済みのAPによって標識された検出抗体に入れ、均一に混合した後、振とう器を用いて25℃において遮光下で20min振とうしてブロッキングした。AP保存液で透析済みのAPによって標識された抗体を再懸濁し、4℃で保存して予備された。
【0081】
(4)被検エクソソームサンプル内のKL-6含有量の検出および計算
【0082】
ステップ(1)で調製された被検エクソソームサンプル10μLと、サンプル希釈液(0.01MのPBS、0.05%ツイーン-20)180μLとを混合させ、十分に均一に混合させ、被検サンプル試験液を取得した。10μLの標準品(濃度が知られているKL-6組換えタンパク質)と180μLのサンプル希釈液とを混合させ、十分に均一に混合させ、標準品試験液を取得した。10μLのキャリブレータ(440U/mlのKL-6)と180μLのサンプル希釈液とを混合させ、十分に均一に混合させ、低い値のキャリブレータ試験液を取得した。10μLのキャリブレータ(1040U/mlのKL-6)と180μLのサンプル希釈液とを混合させ、十分に均一に混合させ、高い値のキャリブレータ試験液を取得した。被検サンプル試験液、標準品試験液(6種の濃度のKL-6組換えタンパク質をそれぞれ操作した)、低い値のキャリブレータ試験液および高い値のキャリブレータ試験液のそれぞれに対して以下の操作を行った。
【0083】
ステップ(2)で調製された捕捉抗体によって標識された磁気ビーズ280μLを取り、10μLの試験液を加え、十分に均一に混合した後、37℃で10minインキュベートした。繰り返し洗浄して反応液を除去し、エクソソームを捕捉した磁気ビーズを取得した。
【0084】
ステップ(3)で調製されたAPによって標識された抗体280μLと、エクソソームを捕捉した磁気ビーズとを混合させ、十分に均一に混合させた後、38℃で6minインキュベートした。繰り返し洗浄して反応液を除去し、抗体と結合した磁気ビーズ複合体を取得した。その中に200μLのAMPPD基質液を加え、十分に均一に混合した後、36℃で5min反応した。477nm波長で反応系の発光強度を検出した。
【0085】
標準品の検出された発光強度に準じて検量線をフィッティングし、検量線により被検サンプル内のKL-6含有量を計算した。
【0086】
[試験例1]
エクソソームの形態的特徴づけ
透過型電子顕微鏡を用いて実施例1のステップ(1)で調製された被検エクソソームサンプルに対して形態的特徴づけ、結果は
図2に示すとおりであった。図に示すように、抽出されたエクソソームは、典型的な小胞状構造を有し、且つ、粒径分布が40~100nmにあり、関連文献の報告結果と一致し、エクソソームの抽出に成功したことが証明された。
【0087】
[試験例2]
方法の安定性
健常ボランティアの血清サンプルを12例、各例に3mL取り、それぞれ実施例1~3に係る検出方法によりエクソソームにおけるKL-6タンパク質含有量の検出(サンプル量がいずれも1mLであった)を行い、3種の検出方法による検出結果は表1に示すとおりであった。
【0088】
【0089】
結果によると、実施例1~3の検出方法は、同じサンプルに対する検出結果がよく一致し、標準誤差が小さいことが示され、本願に係る検出方法は安定性が高く、一定の応用価値を有することを表す。
【0090】
[試験例3]
健常者サンプルとILDs患者サンプルの検出結果の比較
ILDs患者の血清サンプルを12例取り、実施例1に係る検出方法によりエクソソームにおけるKL-6タンパク質含有量の検出(サンプル量がいずれも1mLであった)を行い、検出結果は表2に示し、試験例2において実施例1の検出方法により得られた12例の健常者サンプルの検出結果も表2に示して比較した。
【0091】
【0092】
結果によると、全体的には、ILDs患者のエクソソームにおけるKL-6タンパク質含有量が健常ボランティアサンプルのエクソソームにおけるKL-6タンパク質含有量よりも著しく高いことが示され、表におけるデータを箱ひげ図(
図3を参照)に描くと、この現象が更に明らかに見られた。各サンプルのエクソソームにおけるKL-6の濃度に個体差があり、そのうち、健常者サンプルのエクソソームにおけるKL-6の濃度範囲は9~51U/mLであり、平均値が24であった。ILDs患者のエクソソームにおけるKL-6の濃度範囲は51~10000U/mLであり、平均値が1147であった。健常者のエクソソームにおけるKL-6の濃度の2.1倍に準じてカットオフ値(CUTOFF値)を設定し、即ち50U/mLであり、このCUTOFF値に準じて被検サンプルエクソソームにおけるKL-6の検出結果の陰性・陽性を確定し、且つ、これにより患者の肺疾患状態を確認することができる。
【0093】
[試験例4]
本願の検出方法(即ち、試薬キット検出)と従来の血清検出方法の結果比較
従来の血清におけるKL-6含有量の検出方法により試験例2における12例のILDs患者の血清サンプルを検出し、その検出結果を本願の方法による検出結果と比較し、相関性分析を行い、
図4に示すとおりであった。結果によると、2種の方法で得られた検出結果が著しく相関し、相関係数は0.9349で、P<0.0001であったことが示される。本検出方法の確度および実行可能性を示した。
【0094】
現在、従来の血清におけるKL-6含有量の検出方法により肺疾患状況の陰性・陽性を判定する場合、臨床的に与えられた参照値は500U/mLである。
図5に示すように、図中の縦点線は、血清におけるKL-6の検出値が500U/mLであることを表し、図中の横点線は、本願に係るエクソソームにおけるKL-6の検出のカットオフ値が50U/mLであることを表す。図中の矢印で指された4例の患者の血清におけるKL-6値が500U/mLより低いため、もし従来の血清におけるKL-6含有量の検出方法によれば、彼らが陰性であると判定すべきであるが、この4例の患者はエクソソームにおけるKL-6値が本願に係るカットオフ値50U/mLより高いため、本願に係る試薬キット検出によれば、彼らが陽性であると判定すべきである。この結果により、本願に係る肺疾患検出試薬キットは、従来の血清検出と比べて、肺疾患の診断においてより良い感度を有し、診断結果の偽陰性を減少し、重要な応用価値を有することが示される。
【0095】
以上をまとめ、本願は、エクソソームにおけるKL-6タンパク質含有量の検出方法を初めて提案し、血清サンプルの検出に適用し、検出方法は高い安定性を有する。本願に係る検出方法による検出結果は、従来の血清検出による結果と著しく相関し、本願の検出方法が高い確度および実行可能性を持つことを証明する。本願に係るエクソソームにおけるKL-6タンパク質含有量の検出方法は、エクソソームに関連する基礎研究等の分野で重要な応用価値を有する。本願は、更にエクソソームにおけるKL-6タンパク質含有量が肺疾患の状況と大きな相関性を有することを初めて発見し、この発見は、肺疾患のメカニズム研究および臨床診断等の面について重要な意義を持つ。本願は、肺疾患を診断する試薬キットを更に提供し、検出結果に応じて、健常者のエクソソームにおけるKL-6の濃度の2.1倍に準じてカットオフ値(CUTOFF値)を設定し、即ち50U/mLであり、被検サンプルエクソソームにおけるKL-6の検出結果の陰性・陽性を確定し、且つ、これにより患者の肺疾患状態を確認する。本願に係る試薬キットは、従来の血清検出と比べて肺疾患の診断においてより良い感度を有し、診断結果の偽陰性を減少し、重要な応用価値を有する。
【0096】
本願は、上記実施例により本願のエクソソームにおけるKL-6タンパク質含有量の検出方法およびその使用を説明したが、本願は上記実施例に限定するものではなく、すなわち、本願は上記実施例に依存して実施しなければならないことを意味するものではないことを、出願人より声明する。当業者であれば、本願に対するいかなる改良、本願の製品の各原料に対する等価的な置換および補助成分の追加、具体的な形態の選択等は、全て本願の保護範囲および開示範囲内に含まれることを理解すべきである。
【0097】
以上、本願の好ましい実施形態を詳細に説明したが、本願は上記実施形態における具体的な内容に限定されるものではなく、本願の技術的思想の範囲内で、本願の技術案に対して様々な簡単な変形を行うことができ、これらの簡単な変形は全て本願の特許請求の範囲に属している。
【0098】
なお、上記具体的な実施形態に説明した各具体的な技術的特徴は、矛盾なき限り、いかなる適切な形態で組み合わせることができ、必要がない重複を回避するために、本願では様々な可能な組み合わせの形態については特に説明しない。
【手続補正書】
【提出日】2024-06-04
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
血清エクソソームにおけるKL-6タンパク質含有量の検出方法の、間質性肺疾患を診断する試薬キットの製造における使用であって、
前記血清エクソソームにおけるKL-6タンパク質含有量の検出方法は、
捕捉抗体によって標識された磁気ビーズと被検エクソソームサンプルとを混合させて反応させ、磁気ビーズ-エクソソーム複合体を取得するステップ(1)と、
ステップ(1)で得られた磁気ビーズ-エクソソーム複合体と発光物質によって標識された検出抗体とを混合させて反応させ、磁気ビーズ-エクソソーム-検出抗体複合体を取得するステップ(2)と、
ステップ(2)で得られた磁気ビーズ-エクソソーム-検出抗体複合体と発光基質とを混合させて反応させ、化学発光法で反応系の発光強度を検出するステップ(3)と、
検量線法を用い、ステップ(3)で検出された発光強度から被検エクソソームサンプルのKL-6タンパク質含有量を計算するステップ(4)と、を含む、
ことを特徴とする使用。
【請求項2】
ステップ(1)に記載の反応の温度は33~40℃であり、前記反応の時間は5~15minである、
請求項1に記載の
使用。
【請求項3】
ステップ(2)に記載の反応の温度は33~40℃であり、前記反応の時間は5~15minである、
請求項1に記載の
使用。
【請求項4】
ステップ(3)に記載の反応の温度は33~40℃であり、前記反応の時間は5~10minである、
請求項1に記載の
使用。
【請求項5】
前記被検
血清エクソソームサンプルの調製方法は、遠心法、限外濾過法、磁気ビーズ免疫法、ポリエチレングリコール沈殿法または試薬キット抽出法
から選ばれるいずれか一種である、
ことを特徴とする請求項1に記載の使用。
【請求項6】
前記被検血清エクソソームサンプルの調製方法は遠心法である、
ことを特徴とする請求項5に記載の使用。
【請求項7】
前記遠心の回転速度は10000~20000gであり、前記遠心の時間は1~2hである、
ことを特徴とする請求項6に記載の使用。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0098
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0098】
なお、上記具体的な実施形態に説明した各具体的な技術的特徴は、矛盾なき限り、いかなる適切な形態で組み合わせることができ、必要がない重複を回避するために、本願では様々な可能な組み合わせの形態については特に説明しない。
以下に、本願出願の当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
[1]
捕捉抗体によって標識された磁気ビーズと被検エクソソームサンプルとを混合させて反応させ、磁気ビーズ-エクソソーム複合体を取得するステップ(1)と、
ステップ(1)で得られた磁気ビーズ-エクソソーム複合体と発光物質によって標識された検出抗体とを混合させて反応させ、磁気ビーズ-エクソソーム-検出抗体複合体を取得するステップ(2)と、
ステップ(2)で得られた磁気ビーズ-エクソソーム-検出抗体複合体と発光基質とを混合させて反応させ、化学発光法で反応系の発光強度を検出するステップ(3)と、
検量線法を用い、ステップ(3)で検出された発光強度から被検エクソソームサンプルのKL-6タンパク質含有量を計算するステップ(4)と、を含む、
エクソソームにおけるKL-6タンパク質含有量の検出方法。
[2]
ステップ(1)に記載の反応の温度は33~40℃であり、前記反応の時間は5~15minである、
[1]のエクソソームにおけるKL-6タンパク質含有量の検出方法。
[3]
ステップ(2)に記載の反応の温度は33~40℃であり、前記反応の時間は5~15minである、
[1]のエクソソームにおけるKL-6タンパク質含有量の検出方法。
[4]
ステップ(3)に記載の反応の温度は33~40℃であり、前記反応の時間は5~10minである、
[1]のエクソソームにおけるKL-6タンパク質含有量の検出方法。
[5]
前記被検エクソソームサンプルは、全血、血漿、血清、気管支肺胞洗浄液、脳脊髄液または尿のいずれか一種の被検サンプルから調製されたものである、
[1]~[4]のいずれか1つに記載のエクソソームにおけるKL-6タンパク質含有量の検出方法。
[6]
前記被検エクソソームサンプルの調製方法は、遠心法、限外濾過法、磁気ビーズ免疫法、ポリエチレングリコール沈殿法または試薬キット抽出法のいずれか一種を含み、遠心法であることが好ましく、
好ましくは、前記遠心の回転速度は10000~20000gであり、前記遠心の時間は1~2hである、
[1]~[5]のいずれか1つに記載のエクソソームにおけるKL-6タンパク質含有量の検出方法。
[7]
[1]~[6]のいずれか1つに記載のエクソソームにおけるKL-6タンパク質含有量の検出方法の、肺疾患を診断する試薬キットの製造における使用。
[8]
捕捉抗体によって標識された磁気ビーズ、発光物質によって標識された検出抗体、発光基質、およびKL-6標準品を含む、
肺疾患を診断する試薬キット。
[9]
前記捕捉抗体は8MKL-61を含み、
好ましくは、前記検出抗体は8MKL-62を含む、
[8]の肺疾患を診断する試薬キット。
[10]
エクソソームにおけるKL-6タンパク質含有量のレベルを検出するために用いられる、
[8]または[9]の肺疾患を診断する試薬キット。
[11]
前記捕捉抗体によって標識された磁気ビーズは、
捕捉抗体と活性化後の磁気ビーズとを混合させ、インキュベートし、磁気ビーズをブロッキングして得られるステップを含む調製方法で調製され、
好ましくは、前記インキュベートの温度は15~40℃であり、前記インキュベートの時間は2.5~4hであり、
好ましくは、前記捕捉抗体と磁気ビーズとの質量比は1:(8~12)である、
[8]~[10]のいずれか1つに記載の肺疾患を診断する試薬キット。
[12]
前記発光物質によって標識された検出抗体は、
発光物質と被標識検出抗体とを混合させ、遮光下でインキュベートし、抗体をブロッキングして得られるステップを含む調製方法で調製され、
好ましくは、前記インキュベートの温度は15~40℃であり、前記インキュベートの時間は20~60minである、
[8]~[11]のいずれか1つに記載の肺疾患を診断する試薬キット。
[13]
前記肺疾患のタイプは肺炎または間質性肺疾患を含む、
[8]~[12]のいずれか1つに記載の肺疾患を診断する試薬キット。
【国際調査報告】