(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-04
(54)【発明の名称】患者におけるストーマからの流れを制御する装置、システムおよび方法
(51)【国際特許分類】
A61F 5/445 20060101AFI20240927BHJP
【FI】
A61F5/445
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024548522
(86)(22)【出願日】2022-10-20
(85)【翻訳文提出日】2024-06-14
(86)【国際出願番号】 US2022047332
(87)【国際公開番号】W WO2023069659
(87)【国際公開日】2023-04-27
(32)【優先日】2021-10-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2022-06-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524152207
【氏名又は名称】オストバルブ エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】OSTOVALVE LLC
【住所又は居所原語表記】445 Greystone Drive, Richmond, VT 05477 (US)
(74)【代理人】
【識別番号】100136319
【氏名又は名称】北原 宏修
(74)【代理人】
【識別番号】100143498
【氏名又は名称】中西 健
(72)【発明者】
【氏名】ベル ジュニア,ロバート シー.
(72)【発明者】
【氏名】シュロック,ダミアン
(72)【発明者】
【氏名】マーゴリス,ゲイリー
(72)【発明者】
【氏名】アシュリー,ジョン
【テーマコード(参考)】
4C098
【Fターム(参考)】
4C098AA09
4C098CC31
4C098CC40
(57)【要約】
【解決手段】医療器具は、患者のストーマの内壁と共に流体バリアを形成する物質で構成される。これらの構成は、ストーマに挿入するステムを一方の側に有する環状ディスクを含むことができる。物質は、例えば、ステムの少なくとも一部を覆う交換可能な中空管の形態でステム上に存在してもよい。他方、回転可能なスピゴットが切欠きに挿入される。回転可能なスピゴットは、ステムおよび環状ディスクを通る流路を形成して、排泄物をストーマから排泄することを可能にする第1位置を有する。一実施形態では、回転可能なスピゴットは、排泄物を受け取る収集具と結合することができる。患者は、回転可能なスピゴットを第2位置に戻して、排泄物の流れを遮断することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者のストーマを囲むように構成され、内側、皮膚対向側および外側を有する環状支持部材と、
前記環状支持部材の中心に取り外し可能に取り付け可能であり、自体を通ると共に自体の内側に、少なくとも1つの開口をそれぞれ有する第1固液流路および第2気体通気流路を画定する基部材と、
前記基部材に配置されると共に、前記第1流路の流れを制御するように構成されており、流れを可能にする開放位置と、流れを遮断する閉塞位置とを有し、前記開放位置と前記閉塞位置とを前記患者によって操作可能である弁と、
前記本体部材から内側に突出し、前記患者のストーマに受け入れられるように構成される入口および出口を有するステムと、
前記ステムの周囲に存在し、少なくとも1つの第2気体通気流路の開口を覆う気体透過性フィルタシールと
を備え、
前記ステムは、前記基部材が前記環状支持部材に取り付けられて反対側の端部の前記出口が前記基部材の前記第1流路の開口と連通するときに、前記入口を前記ストーマに位置決めするのに前記環状支持部材の中心を通って延びる十分な長さを有し、
前記ストーマからの気体が前記第2流路を通って通気され得る一方で、液体および固体が前記第2流路に入ることが阻止される
ストーマ弁器具。
【請求項2】
前記基部材は、前記環状支持部材の中心を通って突出する患者のストーマを収容するように成形される内向きに面する凹面を有する、請求項1に記載のストーマ弁器具。
【請求項3】
前記環状支持部材を、前記環状支持部材の内側の皮膚対向側に位置する患者の皮膚に固定する手段をさらに備える、請求項1または2に記載のストーマ弁器具。
【請求項4】
前記固定する手段は、接着物質を含む、請求項3に記載のストーマ弁器具。
【請求項5】
前記気体透過性フィルタシールは、異なる細孔サイズを有する複数のフィルタ層を備える、請求項1から4のいずれか一項に記載のストーマ弁器具。
【請求項6】
前記気体透過性フィルタシールは、前記ステムと前記患者との間の前記ストーマ内に延在するように構成される前記ステムを少なくとも部分的に包囲するスリーブを備える、請求項5に記載のストーマ弁器具。
【請求項7】
前記気体透過性フィルタシールは、前記ステムが貫通して延びる環状ディスクフィルタ部材を備える、請求項5に記載のストーマ弁器具。
【請求項8】
前記基部材の気体通気流路は、前記基部材の前記内側の反対側の少なくとも1つの排泄ポートで終端し、前記基部材は、少なくとも1つの内側開口と、少なくとも1つの排泄ポートとの間の前記気体通気流路内に少なくとも1つの濾過空洞を画定する、請求項1から7のいずれか一項に記載のストーマ弁器具。
【請求項9】
少なくとも1つの濾過空洞は、臭気吸収物質を含む、請求項8に記載のストーマ弁器具。
【請求項10】
前記環状支持部材および基部材は、共に押圧されることによって取り付けられる、請求項1から9のいずれかに記載のストーマ弁器具。
【請求項11】
前記環状支持部材および基部材は、それぞれ、共に押圧されたときに前記部材を一緒に係合して固定する対向係合面を有する、請求項10に記載のストーマ弁器具。
【請求項12】
前記対向係合面は、弾性フック形状である、請求項11に記載のストーマ弁器具。
【請求項13】
前記対向係合面は、噛み合うリブおよび溝を備える、請求項11に記載のストーマ弁器具。
【請求項14】
前記環状支持部材および基部材は、ねじ接続によって取り付け可能である、請求項1から9のいずれかに記載のストーマ弁器具。
【請求項15】
内側開口の反対側の前記基部材を通る前記第1流路を終端させる出口ノズルをさらに備える、請求項1から14のいずれか一項に記載のストーマ弁器具。
【請求項16】
排泄物収集袋をさらに備え、
前記排泄物収集袋は、
パウチと、
前記出口ノズルと嵌合して前記出口ノズルから固体および液体を受け取るように構成される開口を有する前記パウチにシールされたコネクタと、
前記コネクタに配置される第1係合手段と、
前記基部材に配置され、前記第1係合手段に係合して、前記出口ノズルがコネクタ開口に嵌合された状態で前記排泄物収集袋を前記基部材に固定するように構成される第2係合手段と
をさらに備える、請求項15に記載のストーマ弁器具。
【請求項17】
前記弁は、ゲート弁である、請求項1から16のいずれかに記載のストーマ弁器具。
【請求項18】
前記ゲート弁は、前記基部材にスライド可能に取り付けられた弁ゲートを備える、請求項17に記載のストーマ弁器具。
【請求項19】
前記弁ゲートは、前記弁ゲートを前記閉塞位置にロックするための、前記基部材と係合可能な戻り止めロック機構を含む、請求項18に記載のストーマ弁器具。
【請求項20】
前記戻り止めロック機構は、前記弁ゲートにユーザ操作可能なハンドルを形成する、請求項19に記載のストーマ弁器具。
【請求項21】
前記弁は、ボール弁である、請求項1から16のいずれか一項に記載のストーマ弁器具。
【請求項22】
前記ボール弁は、ボール部材およびノズル部材を備え、前記ボール部材は、前記ノズルが前記基部材に対して位置する閉塞位置から、前記ノズルが前記基部材から外向きに延在する開放位置まで回転するように、前記基部材内の球状切欠き内に回転可能に受容される、請求項21に記載のストーマ弁器具。
【請求項23】
前記ボール弁は、前記閉塞位置にあるときに前記基部材に沿って前記ボール弁ノズル内にスライドして、前記ボール弁の前記開放位置への回転を防止し、前記ノズルから排泄物を押し出すように構成されるロッキングプランジャをさらに備える、請求項22に記載のストーマ弁器具。
【請求項24】
排泄物が前記ストーマから出るのを防止する閉塞位置と、排泄物が前記ストーマから出るのを可能にする開放位置とを有するストーマに通気弁器具を配置することと、
前記患者が、前記ストーマから排泄物を排泄するために、または後の排泄のために前記ストーマ内に排泄物を保持するために、前記開放位置と前記閉塞位置との間で前記弁器具を選択的に移動させることと、
前記開放位置および前記閉塞位置の両方において、前記弁器具を通して前記ストーマから気体を連続的に通気することと、
を備える、ストーマから排泄物を排泄するための患者制御可能な方法。
【請求項25】
前記弁器具が前記閉塞位置にあるときに、前記弁器具に対して排泄物収集容器を取り付けるか、前記弁器具から排泄物収集容器を取り外すことをさらに含む、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記排泄物収集容器を前記弁器具に取り付けた後に、前記弁器具を開くことをさらに備える、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
患者のストーマを囲むように構成され、内側、皮膚対向側および外側を有する環状支持部材と、
前記環状支持部材の内側、皮膚対向側に配置される皮膚接着層と、
前記環状支持部材の中心に取り外し可能に取り付け可能であり、自体を通ると共に自体の内側に開口を有する流路を画定する基部材と、
前記流路の流れを制御するように構成される前記基部材に配置されており、流れを可能にする開放位置と、流れを遮断する閉塞位置とを有し、前記開放位置と前記閉塞位置との間で前記患者によって操作可能である弁と、
前記内側開口の反対側で前記基部材を通る前記第1経路を終端させ、前記開放位置にある前記弁を通る流れを受け入れる出口ノズルと
を備える、ストーマ弁器具。
【請求項28】
排泄物収集パウチと、
前記出口ノズルと嵌合して前記出口ノズルから固体および液体を受け取るように構成される開口を有する前記パウチにシールされたコネクタと、
前記コネクタに配設される第1係合手段と、
前記出口ノズルが前記コネクタ開口に嵌合された状態で、前記排泄物収集パウチを前記基部材に固定するために、前記第1係合手段に係合するように構成される、前記基部材に配置される第2係合手段と
をさらに備える、請求項27に記載のストーマ弁器具。
【請求項29】
前記弁は、前記開放位置と前記閉塞位置との間で前記患者によってスライドさせることができる弁ゲートを含むゲート弁である、請求項27または請求項28に記載のストーマ弁器具。
【請求項30】
前記弁はボール弁であり、前記ボール部材は、前記ノズルが形成されるボール部材を備え、前記ボール部材は、前記ノズルが前記基部材に対して位置する前記閉塞位置から、前記ノズルが前記基部材から外向きに延在する前記開放位置まで回転するように、前記基部材の球状切欠き内に回転可能に受容される、請求項27または28に記載のストーマ弁器具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願データ
本出願は、2021年10月22日に出願された「患者におけるストーマからの流れを制御する装置、システムおよび方法」という名称の米国仮特許出願第63/270,808号の優先権を主張する。また、本出願は、2022年6月22日に出願された米国非仮特許出願第17/846,863号の優先権も主張する。これら2つの同時係属中の特許出願は、その全体が本明細書中に参考として援用される。
【0002】
本開示は、一般的に、骨切り術器具の分野に関する。特に、本開示は、患者におけるストーマからの流れを制御する装置、システムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0003】
外科的手術後、感染を引き起こす可能性のある流体または排泄物を排泄するために、患者の体腔へのアクセスを必要とすることが多い。「ストーマ」は、そのようなタイプの外科的に形成されたアクセスの一例である。1つの一般的な用途では、ストーマは、人工肛門形成術または回腸造瘻術の後に患者の腸からの排泄物が身体から出ることを可能にする開口である。排泄物は、ストーマの周囲に取り付けられるか、排泄管を介してストーマに接続される復路またはパウチのような装置内に集まる。この従来の構成は、排泄を可能にするのに有効であるが、典型的には、排泄管に取り付けられる収集具に不随意に排泄するため、患者は排泄物をほとんど制御することができない。患者は、例えば、(ストーマ内の)栓または(排泄管上の)クランプを用いて排泄通路を閉塞することを選択し得るが、ストーマは、長期間にわたって閉塞を許容することを意図されていないため、不快感を生じ得る。また、排泄管への損傷は、収集具の前で排泄物が漏出することを可能にし得る。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
一実施態様では、本開示は、ストーマ弁器具を対象とする。ストーマ弁器具は、環状支持部材、基部材、弁、ステムおよび気体透過性フィルタシールを含む。環状支持部材は、患者のストーマを取り囲むように構成されると共に内側、皮膚対向側および外側を有する。基部材は、環状支持部材の中心に取り外し可能に取り付け可能である。基部材は、基部材を通る第1固液流路および第2気体通気流路を画定する。各流路は、基部材の内側に少なくとも1つの開口を有する。弁は、基部材に配設されている。基部材は、第1流路の流れを制御するように構成されている。弁は、流れを可能にする開放位置と、流れを遮断する閉塞位置を有する。弁は、患者によって開放位置と閉塞位置の間で操作可能である。ステムは、患者のストーマに受け入れるように構成される本体部材から内側に向かって突出する入口および出口を有する。ステムは、基部材が環状支持部材上に取り付けられ、反対側の端の出口が基部材内の第1流路の開口と連通するときに、入口をストーマ内に位置決めするために環状支持部材の中心を通って延びるのに十分な長さを有する。気体透過性フィルタシールは、少なくとも1つの第2気体通気流路の開口を覆うステムの周りをシールする。それによって、ストーマからの気体が第2流路を通って通気され得る一方で、液体および固体が第2流路に入ることが防止される、
【0005】
別の実施形態では、本開示は、ストーマからの排泄物を排泄するための患者制御可能な方法を対象とする。この方法は、ストーマから排泄物が排泄されるのを防止する閉塞位置と、ストーマから排泄物が排泄されるのを可能にする開放位置とを有する通気弁器具をストーマに配置することと、患者が開放位置と閉塞位置との間で弁器具を選択的に移動させて、ストーマから排泄物を排泄するか、後の排泄のためにストーマ内に排泄物を保持することと、開放位置および閉塞位置の両方において弁器具を通してストーマから気体を連続的に通気することとを含む。
【0006】
さらに別の実施態様では、本開示は、ストーマ弁器具を対象とする。ストーマ弁器具は、環状支持部材、皮膚接着層、基部材、弁および出口ノズルを含む。環状支持部材は、患者ストーマを取り囲むように構成される。環状支持部材は、内側、皮膚対向側および外側を有する。皮膚接着層は、環状支持部材の内側、皮膚対向側に配置されている。基部材は、環状支持部材の中心に取り外し可能に取り付け可能である。基部材は、基部材を通る流路を画定する。流路は、基部材の内側に開口を有する。弁は、流路を通る流れを制御するように構成される基部材に配置される。弁は、流れを可能にする開放位置と、流れを遮断する閉塞位置を有する。弁は、患者によって開放位置と閉塞位置との間で操作可能である。出口ノズルは、開放位置で弁を通る流れを受け入れる内側の開口の反対側の基部材を通る第1経路を終端させる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
本開示を例示する目的で、図面は、本開示の1つまたは複数の実施形態の態様を示している。しかしながら、本開示は、図面に示される正確な配置および手段に限定されないことを理解されたい。
【0008】
【
図1】患者の所定の位置にある弁器具の例示的な実施形態の概略図である。
【
図2C】
図2Bに示された弁器具の実施形態のA-A断面図である。
【
図3A】
図2Aに示される弁器具の実施形態の分解斜視図である。
【
図4A】
図2Aに示される弁器具の実施形態の閉塞構成における構成要素のいくつかの正面図である。
【
図4B】
図2Aに示される弁器具の実施形態の開放構成における構成要素のいくつかの正面図である。
【
図5】
図4Bの開放構成における
図2Aの弁器具の実施形態の構成要素のいくつかのA’-A’断面図である。
【
図6A】
図2Aに示される弁器具の実施形態と共に用いられる排泄物捕捉装置の正面斜視図である。
【
図6B】
図6Aに示される排泄物捕捉装置の背面斜視図である。
【
図7】
図2Aに示される弁器具の実施形態と組み合わされる
図6Aに示される、排泄物捕捉装置の斜視図である。
【
図8】
図2Aに示される弁器具の実施形態の構成要素のいくつかと組み合わされる、
図6Aに示される排泄物捕捉装置の構成要素のいくつかの斜視図である。
【
図9C】
図9Bに示される弁器具の実施形態のB-B断面図である。
【
図9D】代替的なフィルタシール構成を有する、
図9Aおよび
図9Bに示されるような弁器具の断面図である。
【
図9E】
図9Aに示される実施形態と同様であるが、ステムまたは気体通気路を有さない代替の弁器具の断面図である。
【
図10A】
図9Aに示される弁器具の実施形態の閉塞構成における構成要素のいくつかの正面図である。
【
図10B】
図9Aに示される弁器具の実施形態の開放構成における構成要素のいくつかの正面図である。
【
図11A】代替的な排泄物捕捉装置クリップの背面図である。
【
図12】
図11A~Bに示される代替的な排泄物捕捉装置クリップと組み合わされる、
図9Aに示される弁器具の斜視図である。
【
図13A】弁器具のさらに別の実施形態の斜視図である。
【0009】
適用可能である場合、同様の参照符号は、いくつかの図(特に指示がない限り、一定の縮尺ではない)を通して同一または対応する構成要素およびユニットを示している。本明細書に開示される実施形態は、いくつかの図のうちの1つ以上に、または、いくつかの図の組み合わせに現れる要素を含んでもよい。方法は、例示的なものにすぎず、例えば、個々の段階を再順序付け、追加、除去、および/または変更することによって修正されてもよい。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下の議論では、患者の外科的に形成されたストーマと係合することができる医療器具を説明する。これらの器具は、患者が定期的に、適切な処分のために、排泄物を身体から袋または容器内に排泄することを可能にする。提案された設計は、患者が、ストーマと適切に係合したままで、便利な方法で流れを制御して、漏れまたは他の不注意による排泄物の排泄を最小限にすることを可能にする。
【0011】
図1は、弁器具100の例示的な実施形態の概略図を示している。この実施形態は、患者Pに、典型的には、外科処置後に体腔へのアクセスが必要である患者Pの位置に示されている。この位置は、ストーマまたはポートを有してもよい。ストーマまたはポートは、排泄物が患者Pから出て袋またはパウチ(図示せず)のような収集具に入ることを可能にする。器具100は、スピゴット104を受け入れる支持ユニット102を含むことができる。シールユニット106は、支持ユニット102の一部に存在してストーマの内部と係合してもよい。
【0012】
図2Aおよび
図2Bは、弁器具200の代替実施形態を示している。弁器具200は、患者のストーマと接合して、ストーマを通して患者制御による排泄物の除去を可能にするように構成されている。弁器具200は、接着ウエハ206に取り付けられる基材202から成る。接着ウエハ206は、比較的薄く可撓性の環状ディスクとして形成され得る。接着ウエハ206は、弁器具200を患者の皮膚に固定するために、裏面212に接着剤を有するように構成される。例えば、接着ウエハ206上の接着面258(
図3B)は、接着ウエハ206を皮膚に接合する。接着面258は、コロイド状ヒドロゲル接着剤などの任意のタイプの皮膚適合性接着剤から構成され得る。また、接着ウエハ206は、患者がその皮膚から接着剤裏打ちウエハを除去することを所望するときに患者を補助するために用いられる除去タブ219と、接着ウエハ206が患者の皮膚の不規則な輪郭に密接に一致することを可能にする屈曲接合部203とを含むことができる。基材202は、1つ以上の袋クリップ係合スロット213aおよび213bと、1つ以上の袋クリップ係合タブ217aおよび217bとを有する。袋クリップ係合スロット213aおよび213bならびに袋クリップ係合タブ217aおよび217bは、本明細書で後述するように、袋クリップを保持するように構成される。基材202は、基材202の前面に位置するゲート弁204と係合する。ゲート弁204は、本明細書で後述するように、一端に弁ハンドル205を有しており、患者がゲート弁204を開閉することを可能にしている。ゲート弁204は、弁カバー207によって基材202に拘束される。弁カバー207および基材202は、ゲート弁204を拘束するが、本明細書でさらに説明されるように、ゲート弁204がスライドして開閉することを可能にする。弁カバー207は、弁器具200から離れるように排泄物を案内する出口ノズル226を含む。患者が弁器具200を操作して排泄物を除去しないとき、出口ノズル226は、ノズルキャップ208によって覆われ得る。ノズルキャップ208は、テザー211によって基材202に接続されている。テザー211は、患者が出口ノズル226からノズルキャップ208を取り外すときに、ノズルキャップ208を弁器具200に接続された状態に保つ。
【0013】
図2Cは、ウエハクリップ243と係合する基材クリップ241によって、基材202がどのように接着ウエハ206と係合されるかを示している。基材202の基材クリップ241と接着ウエハ206のウエハクリップ243とを用いることにより、2つの部品を接続し、必要に応じて分離することが可能になる。例えば、患者は、標準的な直径の接着ウエハ206よりも皮膚により良好に適合する、より小さい直径の接着ウエハ206に基材202を取り付けることを所望し得る。同様に、患者は、患者の皮膚とより適合性のある異なるタイプの接着剤を有する接着ウエハ206に基材202を取り付けることを望む場合がある。患者の皮膚に対する接着剤の適合性は、弁器具200を新しいものと交換するために弁器具200を取り外す前に、患者が2日以上の間、弁器具200をその皮膚に取り付けたままにするため、弁器具200の非常に重要な特性である。また、接着ウエハ206は環状開口218を備え、基材202はドーム状空洞214を備える。環状開口218およびドーム状空洞214は、患者の皮膚の表面から突出することが多い患者のストーマを、ストーマを圧縮することなく、または、他の形でストーマに影響を与えることなく覆うように構成される。環状開口218とドーム状空洞214とからなる空洞を設けることによって、ストーマを刺激することなくストーマを収容することが重要である。患者のストーマは、時間とともに寸法および形状を変化させることができる。したがって、患者は、異なる寸法および/または接着剤タイプのために接着ウエハ206を交換することが可能になる。あるいは、いくつかの実施形態では、接着ウエハ206は、患者が環状開口を切り取って患者の特定のストーマ寸法および形状に適応することを可能にするように構成されてもよい。同様に、基材202は、ストーマの形状および寸法に最もよく適合するドーム状の空洞214を形成するために、他の基材と交換されてもよい。したがって、本明細書に開示される2ピース構成は、器具全体を交換する必要なく、経時的に形状および接着タイプを制御および変更する能力を有する患者に基づいて、患者快適性においてさらなる利点を提供する。
【0014】
基材クリップ241およびウエハクリップ243は、基材202および接着ウエハ206を取り外し可能に接続するための唯一の可能な構成ではない。1つの代替例では、基材クリップ241およびウエハクリップ243は、基材202および接着ウエハ206が一緒にねじ込まれ、かつ、ねじ込まれて離れることを可能にする、噛み合いねじ山と置き換えられ得る。基材クリップ241およびウエハクリップ243ではなく、ねじ山が用いられる場合、意図されない限りねじ山が分離するのを防止するために、ねじ山に加えて、戻り止め、ラッチ、圧縮ワッシャ、または他の拘束具が必要とされ得る。
図13Dに示され、以下に説明されるように、相互係止リブおよび溝の配列もまた、用いられてもよい。フック・ループ式締結具および他のスナップ式または締まり嵌め具のような他の取り外し可能なコネクタも用いることができる。
【0015】
弁カバー207は、環状シール221を保持するように構成される環状切欠223を備えて構成される。環状シール221は、弁カバー207と弁ゲート204との間で排泄物が漏れないことを確実にするために、弁カバー207および弁ゲート204に対して圧縮される。環状シール221は、Oリングタイプのシールであってもよい。環状シール221は、2つの部品間の流体漏れを防止するために一般的に用いられるような任意の他のタイプのシールであってもよい。環状シール221は、弁カバー207に対して圧縮されるのではなく、弁カバー207に接着されるか、他の方法で接合されてもよい。環状シール221は、弁カバー207上に成形することもできる。
【0016】
弁器具200の背面には、気体透過性フィルタ238によって覆われたステム216が存在する。ステム216の後端は、排泄物が排泄通路228に入ることを可能にする入口ポート230を有する。
図2Cに示されるように、弁204は閉塞位置にあり、排泄通路228を遮断し、排泄通路228に入る排泄物が患者のストーマから出るのを防止する。気体透過性フィルタ238は、ストーマの内径に対して圧縮され、排泄物が気体透過性フィルタ238の外面とストーマとの間から漏れるのを防止するように構成されている。
【0017】
ステム216の前部は、
図3Bに示されるように、スロット270および突出部274からなる。スロット270は、基材202の棚272と接合してステム216を基材202に接続するように構成される。スロット270と棚272との接続は、単純な重なり接続であり得る。また、接続は、スロット270と棚272との間の接着剤または同様の結合を含むことができる。ステム216は、基材202に成形することもできる。突出部274は、ゲート弁204の裏側に対してシールするように構成されており、排泄通路228内の排泄物がゲート弁204の周りに漏れるのを防止する。
【0018】
図3Aを参照すると、弁カバー207は、ノズルキャップ208の反対側のテザー211の端のテザータブ251を受容し、拘束するように構成されるテザースロット253と共に示されている。テザースロット253は、弁カバー207の一部として示されているが、基材202の一部として構成されてもよい。テザースロット253およびテザータブ251は、ノズルキャップ208およびテザー211を、弁器具200の残りの部分に拘束するための1つの可能な方法にすぎない。テザー211は、弁カバー207または基材202に接着または別様に接合され得る。また、テザー211は弁カバー207または基材202に成形され得る。
【0019】
基材202は、排泄通路228と位置合わせされた基材開口231と共に示されている。また、基材開口231は、弁カバー207の出口ノズル226の前端に存在する弁カバー開口232と位置合わせされる。また、ゲート弁204はゲート開口209を有する。入口ポート230、排泄通路228、基材開口231および弁カバー開口232は、全て、排泄物が弁器具100を通って出ることを可能にするように整列される。しかしながら、
図2A~
図2および
図3A~
図3Bに示される構成では、ゲート開口209は、入口ポート230、排泄通路228、基材開口231および弁カバー開口232と位置合わせされず、弁器具200は、ゲート弁204によって閉じられている。
【0020】
弁カバー207およびノズルキャップ208は、弁器具200を開閉する動作の説明を容易にするために、
図4Aおよび
図4Bから取り除かれている。
図4Aでは、ゲート弁204は閉塞位置にあり、基材202と実質的に位置合わせされている。ゲート弁は、アームスロット265aおよび265bによって形成される片持ちアーム263aおよび263bと共に示されている。片持ちアーム263aおよび263bの端は、戻り止め261aおよび261bを有する。戻り止め261aおよび261bは、基材202に形成される閉塞ポケット267aおよび267b内に拘束される。戻り止め261aおよび261b、ならびに閉塞ポケット267aおよび267bは、ゲート弁204を基材202に対して拘束すると共に、ゲート弁204が意図せずにスライドすることを防止し、弁器具200を閉塞したままにするように構成される。患者が弁器具200を開放したいとき、患者は、
図4Bの矢印「O」によって示される方向に弁ハンドル205を引く。閉塞ポケット267aおよび267bに対する戻り止め261aおよび261bの引張力が十分である場合、片持ちアーム263aおよび263bは、アームスロット255aおよび265b内に曲がり、戻り止め261aおよび261bは、閉塞ポケット267aおよび267bから解放される。次いで、ゲート弁204は、戻り止め261aおよび261bが、基材202に形成される開放ポケット269aおよび269bと係合するまでスライドする。次いで、片持ちアーム263aおよび263bは、戻り止め261aおよび261bを開放ポケット269aおよび269b内に保持するように跳ね返るであろう。この開放構成では、ゲート弁204のゲート開口209は、入口ポート230、排泄通路228、基材開口231および弁カバー開口232と位置合わせされている。その結果、
図5に見られるように、完全な弁通路278が存在する。この構成において、弁器具200は開放されており排泄物が患者の身体から出ることができる。患者が排泄物を除去し終えると、患者は、矢印「O」と反対の方向に弁ハンドル205に力を加えて、ゲート弁204を閉塞位置にスライドさせて戻す。このようにして、患者は、体内から排泄される排泄物のタイミングを制御する。
【0021】
排泄物が弁カバー開口232を出るとき、排泄物は、例えば、
図6Aおよび
図6Bに示されるような排泄物袋280に収集されることが好ましい。排泄物袋280は、排泄物を保持するためのパウチ282と、排泄物袋280を弁器具200などの弁器具に接続するためのクリップ284とから構成されている。クリップ284は、1つ以上のフック286aおよび286bと、1つ以上のタブ287aおよび287bとから構成されている。そして、これらは、排泄物袋280を弁器具200に保持するように構成されている。また、クリップ284は、出口ノズル226から出る排泄物がパウチ282内に入って漏れたりこぼれたりしないことを確実にするために、出口ノズル226と係合するように構成される開口290を含む。また、クリップは、可撓性テザー289によってクリップに接続される袋キャップ(栓)288を含むことができる。袋キャップ288は、排泄物袋280が弁器具200からの排泄物を収集し、排泄物袋280が弁器具200から分離された後に、開口290を封止するために用いられ得る。開口290は、出口ノズル226に対して、または袋キャップ288に対してシールするためのシールを伴って構成され、排泄物がこの接続において漏出しないことを確実にすることができる。
【0022】
図7は、弁器具200に取り付けられる排泄物袋280を示している。ここで、弁器具200は、弁器具200を通して患者から排泄物袋280内へと排泄物を空にするための開放構成にある。
図8では、パウチ282は、クリップ284から除去され、排泄物袋280が弁器具200に接続される方法の詳細を示す。クリップ284の1つ以上のタブ287aおよび287bは、基材202の1つ以上の袋クリップ係合スロット213aおよび213bに挿入され、クリップ284の1つ以上のフック286aおよび286bは、1つ以上の袋クリップ係合タブ217aおよび217b上にスナップ留めされる。これにより、クリップ284および排泄物袋280が弁器具200に固定され、排泄物袋280の開口290が出口ノズル226と係合する。使用時には、患者は、まず、弁ハンドル205を引くことによってゲート弁204を開く前に、弁器具200に排泄物袋280を取り付ける。次いで、排泄物は、開放弁器具200を通って排泄物袋280に流れ込む。患者のストーマを通してすべての排泄物が除去された後、患者は、弁ハンドル205を押してゲート弁204を閉じる。弁器具200が閉じられた後、患者はクリップ284を外して弁器具200から排泄物袋280を除去する。次いで、袋キャップ288を排泄物袋の開口290に配置して、排泄物が漏れるのを防止することができる。ノズルキャップ208は、弁器具200の出口ノズル226に配置することもできる。
【0023】
基材202、ゲート弁204、弁カバー207、および袋クリップ284はすべて、硬質プラスチック樹脂から製造することができる。硬質プラスチック樹脂は、例えば、ポリプロピレン、ABS、ポリカーボネート、およびそのような物質の任意のブレンドなどであるが、これらに限定されない。これらの部品は、アルミニウムまたはステンレス鋼のような金属から製造することもできる。接着ウエハ206の基板部分は、可撓性物質から製造することができる。可撓性物質は、例えば、シリコーン、ポリウレタンフォームまたはフィルム、TPE(熱可塑性エラストマー)、ポリエチレンフォームまたはフィルム、PVCフォーム、ニトリルゴム、およびそのような物質の任意のブレンドなどであるが、これらに限定されない。接着ウエハ206の接着部分は、アクリルまたは合成ゴム親水コロイド接着剤、あるいは皮膚適合性である他の接着剤のいずれかから形成されることができる。ステム216は、限定されないが、シリコーン、ポリウレタン、TPU、TPE、ポリエチレンなどの可撓性物質から製造することができる。ステム216は、剛性または半剛性プラスチック樹脂から製造することができる。剛性または半剛性プラスチック樹脂は、例えば、ポリプロピレン、abs、ポリカーボネート、およびそのような物質の任意のブレンドなどであるが、それらに限定されない。気体透過性フィルタ238は、ポリエステル、レーヨン、アクリル、ポリエチレン、ポリプロピレン、綿、およびそれらの混合物などの物質から製造することができるが、これらに限定されない。これらの物質は、疎水性を有することができ、または、疎水性の性能を達成するために、二官能性ポリシロキサンなどの、しかしこれに限定されないコーティングで処理することができる。環状シール216は、可撓性または半剛性物質から製造することができる。可撓性または半剛性物質は、例えば、シリコーン、ポリウレタン、TPU、TPE、あるいは、他の弾性物質であるが、これらに限定されない。排泄物袋280は、ポリエチレン、LDPE、HDPE、および他の樹脂フィルムなどであるがこれらに限定されない可撓性物質から製造することができる。
【0024】
さらに別の実施形態では、パウチ282の代わりに、上述したようなクリップ284を可撓性の排泄管に設けて、患者が排泄物を直接トイレに導くことができるようにしてもよい。別の代替例では、可撓性の排泄管は、出口ノズル226の内径とのわずかな締まり嵌めのために寸法決めされた外径を一端に備えてもよい。これによって、排泄管は、必要なときに出口ノズル226に確実に挿入されてもよい。あるいは、排泄管の一端の内径が、出口ノズル226の外径とわずかに締まり嵌めするような大きさにされ、排泄管を出口ノズル226に固定して、排泄物をトイレに導く。このタイプの可撓性の排泄管は、患者が適切な排泄物処理施設にアクセスする状況において、患者によってより便利に運ばれ得る。
【0025】
上記の弁器具200の説明は、本開示によって網羅される弁器具200の全ての可能な変形例を包含することを意図していない。次に
図9A、
図9Bおよび
図9Cを参照すると、弁器具300の代替実施形態が示されている。この弁器具300は、基材302、弁ゲート304、弁カバー307、シール321、ステム316、および濾過プレート340から構成されている。基材302は、本明細書でさらに説明されるように、1つ以上の袋クリップ係合タブ317aおよび317bと、1つ以上の袋クリップポケット313と、排泄物袋クリップ384に係合するための1つ以上の袋クリップガイド315aおよび315bとを含む。また、基材302は、本明細書でさらに説明されるように、弁器具300を通して気体を排泄するための複数の通気路329を含む。弁カバー307は、排泄物が弁器具300を出ることを可能にする出口ポート332を含む。シール321は、ゲート弁304と弁カバー307との間に配置され、排泄物がゲート弁304と弁カバー307との間で漏れないことを確実にする(
図9Cを参照)。ステム316は、排泄物がステム316の中心を通過する排泄通路328に入ることを可能にする入口ポート330を有する。また、ステム316は、ゲート弁304に対してシールして、排泄物がステム316とゲート弁304との間で漏れないことを確実にすることができる。
【0026】
ステム316は、ストーマの内径に対して圧縮されて、排泄物が一次気体透過性フィルタ338の外面とストーマとの間から漏出するのを防止するように構成される一次気体透過性フィルタ338によって取り囲まれている。ステム316は、ステム316と一次気体透過性フィルタ338との間に挟まれる二次気体透過性フィルタ339によって囲まれてもよい。二次気体透過性フィルタ339は、一次気体透過性フィルタ338よりも細かく濾過するように構成され得る。2つ以上の透過性フィルタを設けることにより、弁器具300は、固体物質およびより高粘性の液体物質を一次気体透過性フィルタ338で遮断し、気体を通過させながら、残りの全ての液体を二次気体透過性フィルタ339で遮断することができる。弁器具300は、2層のフィルタに限定されない。様々な濾過能力の任意の数のフィルタ層が可能である。複数の層の濾過能力を有することにより、液体物質および固体物質がフィルタの第1層を詰まらせることなく、液体物質および固体物質が遮断され、気体が通過することが可能になる。
【0027】
弁器具300は、気体が患者の消化管に蓄積して不快な圧力および感覚を引き起こさないように、気体の通過を可能にすることが重要である。弁器具300が、患者がその排泄物を除去することを選択するまで液体および固体を保持しながら、気体を連続的に放出する能力は、患者が排泄物を除去するために弁器具を操作する頻度を低減することに役立つ。一次気体透過性フィルタ338および二次気体透過性フィルタ339を通過する気体は、濾過プレート340の1つまたは複数の入口ポート342a~bを通って導かれる。濾過プレート340は、基材302の裏側に固定されて、基材302と濾過プレート340との間に濾過キャビティ344を形成する。濾過プレート340は、接着結合、または超音波溶接などの任意の他のタイプの結合によって、基材302に固定することができる。濾過キャビティ344は、臭気吸収物質で充填され得る。臭気吸収物質は、活性炭を含むがこれに限定されない。活性炭は、気体が複数の出口ポート329を通って弁器具300を出る前に、濾過キャビティを通過する気体から臭気を吸収する。このようにして、弁器具300は、不快な臭気を有さないフィルタ気体を連続的に放出することができる。一方、患者は、弁器具300をいつ開閉して液体排泄物および固体排泄物を除去するかを選択することができる。
【0028】
ステム316と患者のストーマとの間のシールおよび気体用フィルタを提供することに加えて、気体透過性フィルタ338は、ストーマと弁器具300との間の柔らかい界面をも提供する。取り外しおよび交換前に数日間、適所に装着することができる弁器具300がストーマを刺激しないことを確実にするために、柔らかい界面が重要である。ステム316、二次気体透過性フィルタ339、および1つまたは複数の入口ポート342a~bを覆うことに加えて、気体透過性フィルタ338は、濾過プレート340の外面も覆うことができる。このようにして、気体透過性フィルタ338は、患者のストーマと接触する弁器具300の全ての表面の間に柔らかい界面を提供することができる。弁器具300と患者のストーマとの間に柔らかい界面を提供するために、気体透過性フィルタ338の代わりに、濾過プレート340の外面を覆うのに、創傷に通常用いられるガーゼ包帯などの代替の柔らかい物質を使用することもできる。
図9Dに示されるさらに別の実施形態では、一次気体透過性フィルタ/シール338は、ステム316の周りに取り付けられる環状ディスクフィルタ/シールとして構成される。環状ディスクフィルタ/シールとして構成される場合、一次フィルタ/シール338は、各層が特定の粒子サイズを濾過するように設計される多層構造であってもよい。例えば、第1内側層338aは、巨視的固体を除去するために、約0.2~1.0ミリメートルの範囲のフィルタ細孔サイズを有してもよく(例示的物質は、ポリウレタンフォーム、金属メッシュ、ビニルメッシュを含む)、第2中間層338bは、微視的固体を捕捉するために、約10~50ミクロンの範囲のフィルタ細孔サイズを有してもよく(例示的物質は、ポリプロピレンまたはレーヨンを含む)、第3外側層338cは、液体が入口ポート342a,bに進入することを防止するために、約0.2~0.5ミクロンの範囲のフィルタ細孔サイズを有してもよい(例示的物質は、PTFEを含む)。このようにして、フィルタの目詰まりを低減することができ、濾過キャビティ344内への液体の漏出に対してシールを継続しながら、気体を通過させることができる。
【0029】
上述のように、弁器具300は、接着ウエハ206等の環状ディスク取付部材を用いて、患者に取り付けられてもよい。この目的のために、基材302は、例えば、
図2Cに示されるように、ウエハクリップ243と係合するように構成される環状基材クリップ341を備えてもよい(ウエハクリップ243は、代替的に、基材202の基材クリップ241と係合する)。上述したような患者取り付けの代替手段も用いることができる。また、基材302は、好ましくは、例えば、
図9Cに示されるように、周囲の皮膚表面から突出し得る患者のストーマを収容するために、内部ドーム形状で形成される。
【0030】
弁カバー307およびシール321は、弁器具300の動作を示すために、
図10Aおよび
図10Bから除去されている。弁ゲート304は、本体360と、本体360の両側のゲートガイド351aおよび351bと、本体360の一端の片持ちアーム363aおよび363bと、片持ちアーム363aおよび363bの端の弁ハンドル305aおよび305bとから構成される。弁ゲート304は、基材302の停止棚367aおよび367bに当接する片持ちアーム363aおよび363bから突出する横方向止め具361aおよび361bによって、基材302に対して閉塞位置に拘束されて保持される。ゲート弁304を開くために、患者は、弁ハンドル305aおよび305bを互いに向かって握り、ゲート弁304を「矢印O」の方向に引く。弁ハンドル305aおよび305bを互いに向かって握り締めることにより、片持ちアーム363aおよび363bが偏向する。これにより、横方向止め具361aおよび361bが停止棚367aおよび367bから自由になるように、横方向止め具361aおよび361bが変位する。ゲートガイド351aおよび351bは、基材スロット350の側面353aおよび353bに対してスライドし、ゲートガイド351aおよび351bがスロット棚355aおよび355bに当接するまで、ゲート弁を矢印O´の方向に移動させ続ける。ゲートガイド351aおよび351bがスロット棚355aおよび355bに当接すると、ゲート弁304を通るゲート開口309は、排泄通路328と位置合わせされ、排泄物は患者から出ることができる。患者は、弁ハンドル305aおよび305bを矢印O´と反対の方向に押して、ゲート弁304を閉塞することができる。
図9A~
図10Bに示される弁器具300は、患者が弁器具300を開いて排泄物を除去したいと思うまでゲート弁304をロック状態に保持する1組の側方留め具361a,361bおよび停止棚367a,367bしか有していないが、弁器具304は、患者が弁器具300を閉じたいと思うまでゲート弁300を開いた状態に保持する別の組の止め具および棚で構成されていてもよい。例えば、弁器具200の戻り止め261a-bに係合する閉塞ポケット267a~bおよび開放ポケット269a~bは、ゲート弁200を閉塞位置および開放位置の両方にロックすることを示す。
【0031】
さらなる代替例では、
図9Eに示されるように、本開示による弁器具は、ステムまたは気体通路なしで構成されてもよい。そのような1つの例として、代替の弁器具300Aは、弁器具300と実質的に同じように構成されるが、ステム316もなければ、気体通気路に関連するポート、フィルタ、および通路もない。
【0032】
図11Aおよび
図11Bは、排泄物袋クリップ384の特徴を強調するために、排泄物袋クリップ384に接続されるであろうパウチ282が示されていない、排泄物袋クリップ384の代替実施形態を示している。排泄物袋クリップ384は、排泄物袋クリップ384を弁器具300に保持するように構成される1つまたは複数のフック386aおよび386bと、1つまたは複数のタブ387とからなる。また、排泄物袋クリップ384は、出口ポート332から出てくる排泄物がパウチ282の中に入り、漏出または流出しないことを確実にするように、弁器具300の出口ポート332と係合するように構成される開口390を有する。1つ以上のタブ387は、1つ以上のタブ387を弁器具300の基材302のクリップポケット313と整列させるように構成された1つ以上の案内面389a及び389bを有する(
図9A~
図9Cおよび
図12を参照)。排泄物袋クリップ384を基材302に取り付けるために、排泄物袋クリップ384の1つまたは複数のタブ387が、基材302のクリップポケット313内に配置される。1つ以上のタブ387の案内面389aおよび389bは、クリップポケット313の側面315aおよび315bと接合して、クリップポケット313内への1つ以上のタブ387の配置を容易にする。次いで、排泄物袋クリップ384の1つまたは複数のフック386aおよび386bが基材302の1つまたは複数の袋クリップ係合タブ317aおよび317bを捕捉するまで、排泄物袋クリップ384が基材302に対して押される。いったん排泄物袋クリップ384およびそれとともに排泄物袋28が弁器具300にしっかりと取り付けられると、患者は、弁ゲート304を開放し、身体から排泄物を除去することができる。弁器具300または200は、排泄物を身体から同様の容器のトイレに除去するために、排泄物袋クリップなしで用いられ得るが、排泄物袋280が用いられることにより、患者はその処理をより容易かつより清潔にすることができる。
【0033】
基材302、ゲート弁304、弁カバー307、および袋クリップ384、ならびに濾過プレート340は全て、基材202、ゲート弁204、弁カバー207、および袋クリップ284について本明細書に記載されたものと同様の物質から製造され得る。同様に、ステム316は、ステム216について本明細書に記載されたものと同様の物質から製造され得る。また、この例では、ステム316は、他の実施形態のステム、例えばステム216よりも短く示されているが、開示された実施形態のいずれかと共に、様々な長さのステムを利用してもよく、ステムを利用しなくてもよいことに留意されたい。ステムが含まれる場合、ステムは、基材の内側表面とほぼ同一平面上にある内側端を有することから、様々な実施形態に示されるより長いステムまで、長さが変化してもよい。ステムの長さに影響を及ぼす1つの要因は、患者の快適性である。また、特定の通気設計は、より長いまたはより短いステムを必要とすることがある。
【0034】
図13A~Eは、弁器具400の別の代替実施形態を示している。弁器具400は、基材402、接着ウエハ406、ボール弁434、弁ロック401、およびステム416から成っている。基材402は、前側にボールキャビティ420および管キャビティ422を有するように構成されている。ボールキャビティ420は、2つの側面スロット433a~bを備えるように構成されている。ボールキャビティはボール弁434を受け入れるように構成されており、側面スロット433a~bはボール軸435a~bを受け入れるように構成されている。ボール弁434は、ボール軸435a~bによって形成される軸の周りで基材402に対して枢動する。また、基材は、1つ以上のフィルタキャビティ453a~bを含む。1つ以上のフィルタキャビティ453a~bは、1つ以上のフィルタキャビティカバー452a~bで覆われる。1つ以上のフィルタキャビティカバー452a~bは、1つ以上のフィルタキャビティ453a~bの内部に臭気吸収物質を含む。1つ以上のフィルタキャビティカバー452a~bは、接着剤結合、または、超音波溶接、溶剤結合、インサート成形などを含む任意の他のタイプの結合によって、基材402に取り付けることができる。1つ以上のフィルタキャビティカバー452a~bは、気体が1つ以上のフィルタキャビティ453a~b内の臭気吸収物質を通過して弁器具400から出ることを可能にする複数の開口454を含む。基材402は、基材402を接着ウエハ406にしっかりと取り付けるために、接着ウエハの1つ以上の溝492と界面接触する1つ以上のリブ494を裏面上に有するように構成される。リブ494および溝492は、接着剤結合、または、超音波溶接、溶剤結合、インサート成形などを含む任意の他のタイプの結合で取り付けることができる。
【0035】
接着ウエハ406は、1つ以上の溝427から成る。1つ以上の溝427は、接着ウエハ406の前面または背面のいずれかにあり、より可撓性の接着ウエハ406を提供し、接着ウエハ406の患者の皮膚への適合および接着を最適化することができる。接着ウエハ405の裏面は、弁器具400が数日間患者の皮膚に接着され、患者の皮膚を刺激することなく弁器具400を定位置に保つことを確実にするように、皮膚適合性接着剤から成る。
【0036】
また、ボール弁434は、出口ノズル404を備え、その端部には出口ポート415が存在する。また、ボール弁434は、ノズル通路417(
図14C参照)によって出口ポート516と連通する底ポート418を有する。
【0037】
弁ロック401は、一端に端面413を有し、他端にロックハンドル405を有する細長い棒体403からなる。また、弁ロック401は、端面413に隣接する拭き取り端425を有する。細長い棒体403は、ボール弁434のノズル通路417に嵌合し、拭き取り端425は出口ノズル404を越えて延びる。拭き取り端425の外径は、ノズル通路417の内径よりも大きく、ボール弁434の内側に弁ロック401を保持する。弁ロック401は、ボール弁434が回転するのを防止して、ボール弁434をロックし、弁器具400を閉じたままにする。弁ロック401は、端面413の近傍にガイド止め具414を備えたガイドチャネル410も有する。ガイドチャネルは、基材402の停止ボス412をスライドするように構成される。本明細書でさらに説明するように、弁ロック401が作動されると、停止ボス412は、弁ロック401が回転するのを防止し、ガイド止め具414は、弁ロック401が弁器具400から分離されるのを防止する。
【0038】
ステム416は、基材402に取り付けられると共に、気体透過性フィルタ438によって覆われる。ステム416の後端は、排泄物が排泄通路428に入ることを可能にする入口ポート430を有する。ステム416の前端は、ボール弁434に対して圧縮され、弁器具400がロック位置にあるときに、排泄物がステムから漏れるのを防止する。気体透過性フィルタ438は、基材402のスロット440を通過して1つ以上のフィルタキャビティ453a~bに至る1つ以上の芯439から構成される。
【0039】
図14A、
図14B、および
図14Cは、開放位置にある弁器具400を示す。弁器具400を開くために、患者は、まず、ロックハンドル405を保持し、弁ロック401を矢印O´の方向にスライドさせる。この動作は、拭き取り端425を出口ポート415内に引き込んで、ボール弁434のノズル通路417を通過させる。弁ロック401がボール弁434から完全に引き出されると、ガイド止め具414は、基材402の停止ボス412に接触して、弁ロック401のさらなる並進を防止する。次いで、患者は、ボール弁434の出口ノズル404を保持し、ボール軸435a~bによって形成される軸の周りでボール弁434を枢動させる。これにより、ボール弁434は、水平ロック位置から垂直開放位置に移動する。この開放位置では、ステム416の端の入口ポート430から始まり、ステム416の排泄通路428を通って、ボール弁434の底ポート418に至り、出口ノズル404のノズル通路417を通って、出口ポート415で終わる連続的な開口が形成される。このようにして、排泄物は、入口ポート430を通って弁器具400に入り、出口ポート415を通って出ることができ、患者は、排泄物を身体から除去することができる。
【0040】
患者は、全ての排泄物を除去した後、ボール弁434を回転させて水平位置に戻し、弁器具400を閉塞することができる。次いで、患者は、弁ロック401をボール弁434内にスライドさせて戻すことができる。拭き取り端425は、出口ノズル404のノズル通路417を通って、底ポート418に押し込まれ、出口ポート415から出る。端面413の近傍の拭き取り端425を有する弁ロック401のこの動作は、ノズル通路417内に依然として存在し得るあらゆる排泄物を一掃する。その結果、患者が次に弁器具400を作動させて開放したいときまで、ボール弁434は清浄である。
【0041】
基材402、ボール弁404、キャビティカバー452a~b、および弁ロック401はすべて、基材202、ゲート弁204、および弁カバー207について本明細書で説明したのと同様の物質から製造することができる。同様に、ウエハ406、ステム416、気体透過性フィルタ438、および拭き取り端425は、それぞれ、ウエハ206およびステム216、気体透過性フィルタ238、および環状シール221について本明細書に記載されたものと同様の物質から製造することができる。
【0042】
さらなる代替実施形態では、弁器具は、実質的に上記のように構成され得るが、気体通気路が存在しない。場合によっては、気体抜きの必要性は、排便の頻度および食事などの患者の個人的習慣と相関し得る。したがって、気体通気を必要としない患者は、通気機能なしの弁器具によって与えられ得るより優れた制御を好む場合がある。さらに、いくつかの実施形態では、ステム構成要素を含まないことが好ましい場合があるが、そうでなければ、本明細書に説明される実施形態による弁器具の実施形態を構成する。一部の患者のためにステム部品を除去することにより、器具の快適性を向上させ得る。さらに、いくつかの実施形態におけるステムの1つの目的は、気体排泄物対液体/固体排泄物の排泄のための機能的に別個の経路を形成することであるため、通気機能がない実施形態ではステム部品を省略することが望ましい場合がある。
【0043】
上記を考慮して、本明細書で議論される改良は、ストーマからの排泄物の排泄を促進することができる。実施形態では、患者の体内の表面と自己シールする物質が採用される。この特徴は、排泄物がストーマから不注意に排泄されることを可能にし得る漏れまたは他の潜在的な間違いを回避するように、患者がデバイスを適所に適切に固定するために器具と相互作用する必要性を排除する。
【0044】
上記は、本開示の例示的な実施形態の詳細な説明である。本明細書および添付の特許請求の範囲において、「X、YおよびZの少なくとも1つ」および「X、YおよびZの1つまたは複数」という句で用いられるような接続的な言語は、特に明記または指示がない限り、接続的なリストの各項目が、リストの他のすべての項目を除く任意の数で、または接続的なリストの任意のもしくはすべての他の項目と組み合わせた任意の数で存在することができ、そのそれぞれも任意の数で存在し得ることを意味すると解釈されるものとすることに留意されたい。この一般的な規則を適用すると、接続リストがX、Y、およびZからなる前述の例における接続句は、それぞれ、1つまたは複数のX、1つまたは複数のY、1つまたは複数のZ、1つまたは複数のXおよび1つまたは複数のY、1つまたは複数のYおよび1つまたは複数のZ、1つまたは複数のXおよび1つまたは複数のZ、ならびに1つまたは複数のX、1つまたは複数のYおよび1つまたは複数のZを包含するものとする。
【0045】
本開示の精神および範囲から逸脱することなく、様々な修正および追加を行うことができる。上述の様々な実施形態のそれぞれの特徴は、関連する新しい実施形態において多数の特徴の組み合わせを提供するために、必要に応じて、他の記載された実施形態の特徴と組み合わされてもよい。さらに、上記は、いくつかの別個の実施形態を説明しているが、本明細書に説明されているものは、本開示の原理の適用の単なる例示である。さらに、本明細書における特定の方法は、特定の順序で実行されるものとして例示および/または説明され得るが、順序付けは、本開示の態様を達成するために、当業者の範囲内で非常に可変である。したがって、この説明は、例としてのみ解釈されることを意図しており、本開示の範囲を限定することを意図していない。
【0046】
例示的な実施形態が、上記で開示され、添付の図面に示されている。本開示の精神および範囲から逸脱することなく、本明細書に具体的に開示されたものに対して様々な変更、省略および追加がなされ得ることが当業者によって理解されるであろう。
【国際調査報告】