(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-07
(54)【発明の名称】操作されたTCR複合体及びそれを使用する方法
(51)【国際特許分類】
C12N 15/12 20060101AFI20240930BHJP
C07K 14/725 20060101ALI20240930BHJP
C07K 19/00 20060101ALI20240930BHJP
C12N 15/62 20060101ALI20240930BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20240930BHJP
A61K 35/17 20150101ALI20240930BHJP
A61K 38/16 20060101ALI20240930BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240930BHJP
A61P 35/00 20060101ALN20240930BHJP
【FI】
C12N15/12
C07K14/725 ZNA
C07K19/00
C12N15/62 Z
C12N5/10
A61K35/17
A61K38/16
A61P43/00 121
A61P35/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024507909
(86)(22)【出願日】2022-07-26
(85)【翻訳文提出日】2024-03-25
(86)【国際出願番号】 IB2022056886
(87)【国際公開番号】W WO2023012584
(87)【国際公開日】2023-02-09
(32)【優先日】2021-08-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(32)【優先日】2022-05-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524048483
【氏名又は名称】ジェニシティー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100136629
【氏名又は名称】鎌田 光宜
(74)【代理人】
【識別番号】100080791
【氏名又は名称】高島 一
(74)【代理人】
【識別番号】100125070
【氏名又は名称】土井 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100121212
【氏名又は名称】田村 弥栄子
(74)【代理人】
【識別番号】100174296
【氏名又は名称】當麻 博文
(74)【代理人】
【識別番号】100137729
【氏名又は名称】赤井 厚子
(74)【代理人】
【識別番号】100152308
【氏名又は名称】中 正道
(74)【代理人】
【識別番号】100201558
【氏名又は名称】亀井 恵二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100118371
【氏名又は名称】▲駒▼谷 剛志
(72)【発明者】
【氏名】ヤシン、ムハンマド
(72)【発明者】
【氏名】サワイド、ムニール
【テーマコード(参考)】
4B065
4C084
4C087
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA92X
4B065AA92Y
4B065AA94X
4B065AA94Y
4B065AB01
4B065AC14
4B065AC20
4B065BA01
4B065CA24
4B065CA44
4C084AA02
4C084BA02
4C084NA05
4C084NA14
4C084ZB26
4C084ZC75
4C087AA01
4C087AA02
4C087BB37
4C087BB64
4C087CA12
4C087NA05
4C087NA14
4C087ZB26
4C087ZC75
4H045AA10
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA41
4H045CA40
4H045DA50
4H045EA20
4H045FA74
(57)【要約】
操作されたT細胞受容体(TCR)複合体及びそれを使用する方法が提供される。したがって、TCRαポリペプチド及びTCRβポリペプチドを含むTCRであって、結合ドメインを欠いており、TCRα及びβポリペプチドが、TCRを発現するT細胞の表面上でのTCR複合体としてのTCRの提示を可能にするアミノ酸改変を含む、TCRが提供される。TCRをコードするポリヌクレオチド、TCR複合体を発現するT細胞、及びそれを使用する方法も提供される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒトTCRαポリペプチド及びヒトTCRβポリペプチドを含むT細胞受容体(TCR)であって、前記TCRが、抗原結合ドメイン及び異種細胞外結合ドメインを欠いており、前記TCRα及びβポリペプチドが、前記TCRを発現するT細胞の表面上でのTCR複合体としての前記TCRの提示を可能にするアミノ酸改変を含み、前記改変が、
(i)配列番号9に記載のヒトTCRαポリペプチドに対応するT48Cアミノ酸置換、及び配列番号12に記載のヒトTCRβポリペプチドに対応するS57Cアミノ酸置換を含む、及び/又は
(ii)前記TCRαポリペプチド及び前記TCRβポリペプチドが、キメラヒト及びマウスTCRαポリペプチド並びにキメラヒト及びマウスTCRβポリペプチドを含む、TCR。
【請求項2】
ヒトTCRαポリペプチド及びヒトTCRβポリペプチドを含むT細胞受容体(TCR)であって、前記TCRが、抗原結合ドメインを欠いており、前記TCRα及びβポリペプチドが、前記TCRを発現するT細胞の表面上でのTCR複合体としての前記TCRの提示を可能にするアミノ酸改変を含み、前記改変が、
(i)配列番号9に記載のヒトTCRαポリペプチドに対応するT48C、S116L、G119V、及びF120Lアミノ酸置換、並びに配列番号12に記載のヒトTCRβポリペプチドに対応するS57C突然変異、及び/又は
(ii)配列番号9に記載のヒトTCRαポリペプチドに対応するP91S、E92D、S93V、及びS94Pアミノ酸置換、並びに配列番号12に記載のヒトTCRβポリペプチドに対応するE18K、S22A、F133I、E/V136A、及びQ139Hアミノ酸置換、を含む、TCR。
【請求項3】
(ii)の前記改変が、配列番号9に記載のヒトTCRαポリペプチドに対応するS116L、G119V、及びF120Lアミノ酸置換を更に含む、請求項2に記載のTCR。
【請求項4】
前記改変が、配列番号9に示されるヒトTCRαポリペプチドに対応するS116L、G119V、及びF120Lアミノ酸置換を更に含む、請求項1に記載のTCR。
【請求項5】
(ii)の前記改変が、配列番号9に記載のヒトTCRαポリペプチドに対応するP91S、E92D、S93V、及びS94Pアミノ酸置換、並びに配列番号12に記載のヒトTCRβポリペプチドに対応するE18K、S22A、F133I、E/V136A、及びQ139Hアミノ酸置換を含む、請求項1又は4に記載のTCR。
【請求項6】
前記TCRαポリペプチドが、配列番号14、17、20~23、47、111、114、及び117~120からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、請求項1に記載のTCR。
【請求項7】
前記TCRαポリペプチドが、配列番号14、20~23、47、111、及び117~120からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、請求項1又は2に記載のTCR。
【請求項8】
前記TCRβポリペプチドが、配列番号15~16、18~19、24~25、112~113、115~116、及び121~122からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、請求項1~2及び6~7のいずれか一項に記載のTCR。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか一項に記載のTCRをコードする少なくとも1つのポリヌクレオチド。
【請求項10】
請求項1~8のいずれか一項に記載のTCR又は請求項9に記載の少なくとも1つのポリヌクレオチドを発現させる形質導入細胞。
【請求項11】
請求項1~8のいずれか一項に記載のTCR又は請求項9に記載の少なくとも1つのポリヌクレオチドを発現させる形質導入T細胞。
【請求項12】
TCR発現細胞を作製する方法であって、前記TCRの発現を可能にする条件下で、請求項9に記載の少なくとも1つのポリヌクレオチドを細胞に導入することを含む、方法。
【請求項13】
前記細胞が、内因性TCRを発現しない、請求項10~12のいずれか一項に記載の細胞又は方法。
【請求項14】
前記内因性TCRの発現を下方制御することを更に含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
必要とする対象において病的細胞に関連する疾患を処置する際に使用するための、請求項11又は13に記載のT細胞と、前記病的細胞及び前記TCRを含むTCR複合体に結合することができる治療用組成物。
【請求項16】
必要とする対象において病的細胞に関連する疾患を処置する方法であって、治療有効量の請求項11又は13に記載のT細胞と、前記病的細胞及び前記TCRを含むTCR複合体に結合することができる治療用組成物と、を前記対象に投与し、それによって前記対象における前記疾患を処置することを含む、方法。
【請求項17】
請求項10~11及び13のいずれか一項に記載の細胞と、病的細胞及び前記TCRを含むTCR複合体に結合することができる治療用組成物と、をパッケージングするパッケージング材料を含む製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2021年8月3日に出願された欧州特許出願第21189516.4号及び2022年5月26日に出願された米国仮特許出願第63/345,966号の優先権の利益を主張するものであり、これらの出願の内容は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
配列表の記述
2022年7月21日に作成され、274,432バイトを含み、本出願の出願と同時に提出された93251.xmlという名称のファイルは、参照により本明細書に組み込まれる。
【0003】
本発明は、そのいくつかの実施形態において、操作されたTCR複合体及びそれを使用する方法に関する。
【0004】
細胞ベースの療法、抗体療法、及びサイトカイン療法を含む癌免疫療法は、薬物耐性の遺伝的及び細胞機構を回避し、健康な組織を残しながら腫瘍細胞を標的化するその潜在能力に起因して、様々なタイプの癌を処置するための有望な戦略としてここ数年で出現した。
【0005】
例えば、癌細胞上のMHCクラスI分子と会合して差次的に発現される抗原に特異的なT細胞受容体(TCR)を有するか、又は抗原認識部分[例えば、単鎖可変断片(scFv)]及びT細胞活性化部分を含むキメラ抗原受容体(CAR)を有するT細胞を使用する細胞ベースの療法は、いくつかのタイプの癌、例えば、血液悪性腫瘍において抗腫瘍効果を発揮することが示された。しかしながら、TCRは、それらの認識スペクトル及びMHCクラスにおいて制限されており、加えて、外因性TCRをT細胞に導入する場合、外因性鎖と内因性鎖との間のハイブリダイゼーションのリスクがあり、これは自己抗原の認識を誘導し得る[Van Loenen MMら、Proc Natl Acad Sci USA.2010;107:10972-7]。一方、CART細胞は、それらの利点にもかかわらず、例えば、重度の副作用、腫瘍溶解症候群及びサイトカイン放出症候群をもたらす重い腫瘍負荷の存在下での活発な増殖、治療中に標的抗原を喪失した腫瘍エスケープ変異体の発生などの、臨床治療における技術の完全な利用を可能にするために解決する必要がある重大な欠陥を有する[Morgan RAら(2010年)Mol Ther.18:843-51;Brudno JNら(2016年);Blood.American Society of Hematology;3321~30頁;及びGrupp SAら(2013年)N Engl J Med 368:1509-18]。更に、治療のために同種異系T細胞を使用することは、移植片対宿主病(GVHD)をもたらす自己抗原の有害な認識のリスクをもたらす。
【0006】
モノクローナル抗体、抗体融合タンパク質、及び抗体薬物コンジュゲート(ADC)などの抗体ベースの癌免疫療法は、非癌性細胞と比較して癌細胞上で差次的に発現される細胞表面分子の認識及び/又は免疫チェックポイント遮断に依存する。抗体ベースの免疫療法の癌細胞への結合は、様々な機構、例えば、抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)、補体依存性細胞傷害(CDC)、抗体-薬物コンジュゲート(ADC)からのペイロードの直接的な細胞傷害活性、又は抑制性チェックポイント遮断を介して癌細胞死をもたらし得る。これらの機構の多くは、造血細胞上の特殊化された細胞表面受容体(Fc受容体)への細胞結合抗体のFcドメインの結合を介して開始する。近年、別のタイプの抗体に基づく療法、すなわち、モスネツズマブ、オドロネクスタマブ、及びブリナツモマブなどの抗CD3二重特異性抗体が提案された。これらの二重特異性抗体は、CD3陽性T細胞を腫瘍関連抗原と結合させ、よって、T細胞が腫瘍細胞を攻撃することを促進する。
【0007】
抗体ベースの療法、CAR T細胞及び/又はTCRベースの免疫療法の原理を組み合わせた免疫療法が開示されている[例えば、ChoiBDら(2019年)Nature Publishing Group;37:1049-58;Chandran and Klebanoff(2019年)Immunological Reviews.290:127-147;Benjamin R.(2020年)Lancet 396:1885-94;Liuら(2021年)Sci.Transl.Med.13、eabb5191;Helsen C.Wら(2018年)Nature Communications 9:3049;Baeuerle P.A.ら(2019年)Nature Communications 10:2087を参照されたい]。
【0008】
追加の背景技術は、
国際特許出願公開第WO2019222275号、同第WO2021035170号、及び同第WO2015143224号;
米国特許出願公開第US20190388472号及び同第US20190070248号;
日本国特許第2017514471号;並びに
ロシア特許第RU2725542号を含む。
【発明の概要】
【0009】
本発明のいくつかの実施形態の一態様によれば、TCRαポリペプチド及びTCRβポリペプチドを含むT細胞受容体(TCR)複合体が提供され、TCRは、抗原結合ドメインを欠いており、CD3ポリペプチドは、異種抗原結合ドメインを欠いており、TCR複合体は、TCRを発現するT細胞の表面上に提示することができる。
【0010】
本発明のいくつかの実施形態の一態様によれば、ヒトTCRαポリペプチド及びヒトTCRβポリペプチドを含むT細胞受容体(TCR)が提供され、TCRは、抗原結合ドメインを欠いており、TCRα及びβポリペプチドは、TCRを発現するT細胞の表面上でのTCR複合体としてのTCRの提示を可能にするアミノ酸改変を含む。
【0011】
本発明のいくつかの実施形態によれば、TCRは、異種二量体化部分を含む。
【0012】
本発明のいくつかの実施形態によれば、異種二量体化部分は、TCRαポリペプチド及びTCRβポリペプチドの各々にシステインを含む。
【0013】
本発明のいくつかの実施形態によれば、TCRαポリペプチド及びTCRβポリペプチドは、ヒトTCRαポリペプチド及びヒトTCRβポリペプチドを含む。
【0014】
本発明のいくつかの実施形態によれば、TCRαポリペプチド及びTCRβポリペプチドは、キメラヒト及びマウスTCRαポリペプチド並びにキメラヒト及びマウスTCRβポリペプチドを含む。
【0015】
本発明のいくつかの実施形態の一態様によれば、ヒトTCRαポリペプチド及びヒトTCRβポリペプチドを含むT細胞受容体(TCR)が提供され、TCRは、抗原結合ドメイン及び異種細胞外結合ドメインを欠いており、TCRα及びβポリペプチドは、TCRを発現するT細胞の表面上でTCR複合体としてのTCRの提示を可能にするアミノ酸改変を含み、改変は、
(i)配列番号9に記載のヒトTCRαポリペプチドに対応するT48Cアミノ酸置換、及び配列番号12に記載のヒトTCRβポリペプチドに対応するS57Cアミノ酸置換を含む、及び/又は
(ii)TCRαポリペプチド及びTCRβポリペプチドは、キメラヒト及びマウスTCRαポリペプチド並びにキメラヒト及びマウスTCRβポリペプチドを含む。
【0016】
本発明のいくつかの実施形態の一態様によれば、ヒトTCRαポリペプチド及びヒトTCRβポリペプチドを含むT細胞受容体(TCR)が提供され、TCRは、抗原結合ドメインを欠いており、TCRα及びβポリペプチドは、TCRを発現するT細胞の表面上にTCR複合体としてのTCRの提示を可能にするアミノ酸改変を含み、改変は、
(i)配列番号9に記載のヒトTCRαポリペプチドに対応するT48C、S116L、G119V、及びF120Lアミノ酸置換、並びに配列番号12に記載のヒトTCRβポリペプチドに対応するS57C突然変異、及び/又は
(ii)配列番号9に記載のヒトTCRαポリペプチドに対応するP91S、E92D、S93V、及びS94Pアミノ酸置換、並びに配列番号12に記載のヒトTCRβポリペプチドに対応するE18K、S22A、F133I、E/V136A、及びQ139Hアミノ酸置換、を含む。
【0017】
本発明のいくつかの実施形態によれば、(ii)の改変は、配列番号9に記載のヒトTCRαポリペプチドに対応するS116L、G119V、及びF120Lアミノ酸置換を更に含む。
【0018】
本発明のいくつかの実施形態によれば、改変は、配列番号9に記載のヒトTCRαポリペプチドに対応するS116L、G119V、及びF120Lアミノ酸置換を更に含む。
【0019】
本発明のいくつかの実施形態によれば、(ii)の改変は、配列番号9に記載のヒトTCRαポリペプチドに対応するP91S、E92D、S93V、及びS94Pアミノ酸置換、並びに配列番号12に記載のヒトTCRβポリペプチドに対応するE18K、S22A、F133I、E/V136A、及びQ139Hアミノ酸置換を含む。
【0020】
本発明のいくつかの実施形態によれば、TCRαポリペプチドは、配列番号14、17、20~23、47、111、114、及び117~120からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む。
【0021】
本発明のいくつかの実施形態によれば、TCRαポリペプチドは、配列番号14、20~23、47、111、及び117~120からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む。
【0022】
本発明のいくつかの実施形態によれば、TCRαポリペプチドは、配列番号8、14、17、及び20~23からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む。
【0023】
本発明のいくつかの実施形態によれば、TCRαポリペプチドは、配列番号14、17、及び20~23からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む。
【0024】
本発明のいくつかの実施形態によれば、TCRαポリペプチドは、配列番号14及び20~23からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む。
【0025】
本発明のいくつかの実施形態によれば、TCRβポリペプチドは、配列番号15~16、18~19、24~25、112~113、115~116、及び121~122からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む。
【0026】
本発明のいくつかの実施形態によれば、TCRβポリペプチドは、配列番号10~11、15~16、18~19、及び24~25からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む。
【0027】
本発明のいくつかの実施形態によれば、TCRβポリペプチドは、配列番号15~16、18~19、及び24~25からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む。
【0028】
本発明のいくつかの実施形態の一態様によれば、TCRをコードする少なくとも1つのポリヌクレオチドが提供される。
【0029】
本発明のいくつかの実施形態の一態様によれば、TCR又は少なくとも1つのポリヌクレオチドを発現させる形質導入細胞が提供される。
【0030】
本発明のいくつかの実施形態の一態様によれば、TCR複合体又はTCR又は少なくとも1つのポリヌクレオチドを発現させる形質導入T細胞が提供される。
【0031】
本発明のいくつかの実施形態の一態様によれば、TCR発現細胞を作製する方法が提供され、本方法は、TCRの発現を可能にする条件下で、少なくとも1つのポリヌクレオチドを細胞に導入することを含む。
【0032】
本発明のいくつかの実施形態の一態様によれば、T細胞においてTCRを発現させる方法が提供され、本方法は、TCRの発現を可能にする条件下で、少なくとも1つのポリヌクレオチドをT細胞に導入することを含む。
【0033】
本発明のいくつかの実施形態によれば、導入は、インビトロ又はエクスビボで行われる。
【0034】
本発明のいくつかの実施形態によれば、細胞は、内因性TCRを発現しない。
【0035】
本発明のいくつかの実施形態によれば、T細胞は、内因性TCRを発現しない。
【0036】
本発明のいくつかの実施形態によれば、本方法は、内因性TCRの発現を下方制御することを更に含む。
【0037】
本発明のいくつかの実施形態によれば、本方法は、導入することの前に内因性TCRの発現を下方制御することを更に含む。
【0038】
本発明のいくつかの実施形態の一態様によれば、必要とする対象において病的細胞に関連する疾患を処置する方法が提供され、本方法は、治療有効量のT細胞と、病的細胞及びTCR複合体に結合することができる治療用組成物と、を対象に投与し、それによって対象における疾患を処置することを含む。
【0039】
本発明のいくつかの実施形態の一態様によれば、必要とする対象において病的細胞に関連する疾患を処置する際に使用するための、T細胞と、病的細胞及びTCR複合体に結合することができる治療用組成物と、が提供される。
【0040】
本発明のいくつかの実施形態の一態様によれば、治療を必要とする対象において病的細胞に関連する疾患を処置する方法が提供され、本方法は、治療有効量のT細胞と、病的細胞及びTCRを含むTCR複合体に結合することができる治療用組成物と、を対象に投与し、それによって対象における疾患を処置することを含む。
【0041】
本発明のいくつかの実施形態の一態様によれば、必要とする対象において病的細胞に関連する疾患を処置する際に使用するための、T細胞と、病的細胞及びTCRを含むTCR複合体に結合することができる治療用組成物と、が提供される。
【0042】
本発明のいくつかの実施形態によれば、T細胞は、対象に対して同種異系である。
【0043】
本発明のいくつかの実施形態の一態様によれば、細胞と、病的細胞及びTCRを含むTCR複合体に結合することができる治療用組成物と、をパッケージングするパッケージング材料を含む製品が提供される。
【0044】
本発明のいくつかの実施形態の一態様によれば、T細胞と、病的細胞及びTCR複合体に結合することができる治療用組成物と、をパッケージングするパッケージング材料を含む製品が提供される。
【0045】
本発明のいくつかの実施形態によれば、治療用組成物は、抗CD3抗体を含む。
【0046】
本発明の特定の実施形態で使用することができる抗CD3抗体の非限定的な例としては、L2K、TR66、OKT3、SP34、UCHT1、F6A、ヒト化UCHT1、SK7、及びHIT3Aが挙げられる。
【0047】
本発明のいくつかの実施形態によれば、抗CD3抗体は、L2K、TR66、及びOKT3からなる群から選択される。
【0048】
本発明のいくつかの実施形態によれば、病的細胞はCD19を発現し、治療用組成物はブリナツモマブを含む。
【0049】
本発明のいくつかの実施形態によれば、病的細胞はEpCAMを発現し、治療用組成物はMT110を含む。
【0050】
本発明のいくつかの実施形態によれば、病的細胞は、癌細胞である。
【0051】
本発明のいくつかの実施形態によれば、癌は、リンパ種、白血病、膠芽腫、結腸癌、胃癌、膵臓癌、卵巣癌、肺癌、及び皮膚癌からなる群から選択される。
【0052】
他に定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び/又は科学用語は、本発明が関係する技術分野の当業者によって一般に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書に記載のものと類似又は同等の方法及び材料を、本発明の実施形態の実施又は試験において使用することができるが、例示的な方法及び/又は材料を以下に記載する。矛盾する場合には、定義を含む本特許明細書が適用される。更に、材料、方法、及び実施例は例示に過ぎず、必ずしも限定することを意図するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0053】
本発明のいくつかの実施形態は、添付の図面を参照して、単なる例として本明細書に記載される。ここで図面を詳細に具体的に参照すると、示される詳細は、例としてであり、本発明の実施形態の例証的議論の目的のためであることが強調される。この点に関して、図面を用いた説明は、本発明の実施形態がどのように実施され得るかを当業者に明らかにする。
【0054】
図面は以下の通りである。
【
図1A】本発明のいくつかの実施形態の操作されたTCR複合体の概略図を示す。
図1Aは、可変α及びβ領域を欠いているTCRα及びβ鎖を含むTCR複合体を実証する。このTCRは、本明細書において「平滑末端切断型TCR(BluT)」と称される。
図1Bは、可変領域を欠く外因性TCRα鎖及びβ鎖と内因性TCRα鎖及びβ鎖とのミスマッチ対合を含むTCR複合体を実証する。
【
図1B】本発明のいくつかの実施形態の操作されたTCR複合体の概略図を示す。
図1Aは、可変α及びβ領域を欠いているTCRα及びβ鎖を含むTCR複合体を実証する。このTCRは、本明細書において「平滑末端切断型TCR(BluT)」と称される。
図1Bは、可変領域を欠く外因性TCRα鎖及びβ鎖と内因性TCRα鎖及びβ鎖とのミスマッチ対合を含むTCR複合体を実証する。
【
図2A-1】本発明のいくつかの実施形態の操作されたTCRの概略図を示す。示される場合、3つの突然変異をα鎖の膜貫通ドメインに導入した:S116L、G119V、及びF120L(LVLと記される)。示される場合、システインをα鎖及びβ鎖の両方に導入した(CYSと表示した):α鎖にT48C及びβ鎖にS57C。示される場合、いくつかの突然変異を、以下のようにα鎖及びβ鎖の細胞外ドメインに導入した。α鎖突然変異P91S、E92D、S93V、S94P;β鎖突然変異:E18K、S22A、F133I、E/V136A、Q139H(mmと表示する)。示される場合、システインは、α鎖及びβ鎖の両方に導入された:α鎖にCL12及びβ鎖にS17C、α鎖にY43Cに及びβ鎖にL63C、α鎖にS61C及びβ鎖にR79C、α鎖にL12C及びβ鎖にF14C、α鎖にV22C及びβ鎖にF14C、α鎖にY10C及びβ鎖にS17C、α鎖にT45C及びβ鎖にD59C、α鎖にL50C及びβ鎖にS57C、α鎖にS61C及びβ鎖にS57C、α鎖にT45C及びβ鎖にS77C、α鎖にS15C及びβ鎖にV13C、又はα鎖にS15C及びβ鎖にE15C。示される場合、いくつかの突然変異を、以下のようにα鎖及びβ鎖に導入した。α鎖突然変異S21F、T32I、A72T及びβ鎖突然変異E18K、H23R、D39P、S54D(Desと記す)。F5P2A-フーリン-V5タグ配列をP2Aと組み合わせた。
【
図2A-2】本発明のいくつかの実施形態の操作されたTCRの概略図を示す。示される場合、3つの突然変異をα鎖の膜貫通ドメインに導入した:S116L、G119V、及びF120L(LVLと記される)。示される場合、システインをα鎖及びβ鎖の両方に導入した(CYSと表示した):α鎖にT48C及びβ鎖にS57C。示される場合、いくつかの突然変異を、以下のようにα鎖及びβ鎖の細胞外ドメインに導入した。α鎖突然変異P91S、E92D、S93V、S94P;β鎖突然変異:E18K、S22A、F133I、E/V136A、Q139H(mmと表示する)。示される場合、システインは、α鎖及びβ鎖の両方に導入された:α鎖にCL12及びβ鎖にS17C、α鎖にY43Cに及びβ鎖にL63C、α鎖にS61C及びβ鎖にR79C、α鎖にL12C及びβ鎖にF14C、α鎖にV22C及びβ鎖にF14C、α鎖にY10C及びβ鎖にS17C、α鎖にT45C及びβ鎖にD59C、α鎖にL50C及びβ鎖にS57C、α鎖にS61C及びβ鎖にS57C、α鎖にT45C及びβ鎖にS77C、α鎖にS15C及びβ鎖にV13C、又はα鎖にS15C及びβ鎖にE15C。示される場合、いくつかの突然変異を、以下のようにα鎖及びβ鎖に導入した。α鎖突然変異S21F、T32I、A72T及びβ鎖突然変異E18K、H23R、D39P、S54D(Desと記す)。F5P2A-フーリン-V5タグ配列をP2Aと組み合わせた。
【
図2B-1】本発明のいくつかの実施形態の操作されたTCRの概略図を示す。示される場合、3つの突然変異をα鎖の膜貫通ドメインに導入した:S116L、G119V、及びF120L(LVLと記される)。示される場合、システインをα鎖及びβ鎖の両方に導入した(CYSと表示した):α鎖にT48C及びβ鎖にS57C。示される場合、いくつかの突然変異を、以下のようにα鎖及びβ鎖の細胞外ドメインに導入した。α鎖突然変異P91S、E92D、S93V、S94P;β鎖突然変異:E18K、S22A、F133I、E/V136A、Q139H(mmと表示する)。示される場合、システインは、α鎖及びβ鎖の両方に導入された:α鎖にCL12及びβ鎖にS17C、α鎖にY43Cに及びβ鎖にL63C、α鎖にS61C及びβ鎖にR79C、α鎖にL12C及びβ鎖にF14C、α鎖にV22C及びβ鎖にF14C、α鎖にY10C及びβ鎖にS17C、α鎖にT45C及びβ鎖にD59C、α鎖にL50C及びβ鎖にS57C、α鎖にS61C及びβ鎖にS57C、α鎖にT45C及びβ鎖にS77C、α鎖にS15C及びβ鎖にV13C、又はα鎖にS15C及びβ鎖にE15C。示される場合、いくつかの突然変異を、以下のようにα鎖及びβ鎖に導入した。α鎖突然変異S21F、T32I、A72T及びβ鎖突然変異E18K、H23R、D39P、S54D(Desと記す)。F5P2A-フーリン-V5タグ配列をP2Aと組み合わせた。
【
図2B-2】本発明のいくつかの実施形態の操作されたTCRの概略図を示す。示される場合、3つの突然変異をα鎖の膜貫通ドメインに導入した:S116L、G119V、及びF120L(LVLと記される)。示される場合、システインをα鎖及びβ鎖の両方に導入した(CYSと表示した):α鎖にT48C及びβ鎖にS57C。示される場合、いくつかの突然変異を、以下のようにα鎖及びβ鎖の細胞外ドメインに導入した。α鎖突然変異P91S、E92D、S93V、S94P;β鎖突然変異:E18K、S22A、F133I、E/V136A、Q139H(mmと表示する)。示される場合、システインは、α鎖及びβ鎖の両方に導入された:α鎖にCL12及びβ鎖にS17C、α鎖にY43Cに及びβ鎖にL63C、α鎖にS61C及びβ鎖にR79C、α鎖にL12C及びβ鎖にF14C、α鎖にV22C及びβ鎖にF14C、α鎖にY10C及びβ鎖にS17C、α鎖にT45C及びβ鎖にD59C、α鎖にL50C及びβ鎖にS57C、α鎖にS61C及びβ鎖にS57C、α鎖にT45C及びβ鎖にS77C、α鎖にS15C及びβ鎖にV13C、又はα鎖にS15C及びβ鎖にE15C。示される場合、いくつかの突然変異を、以下のようにα鎖及びβ鎖に導入した。α鎖突然変異S21F、T32I、A72T及びβ鎖突然変異E18K、H23R、D39P、S54D(Desと記す)。F5P2A-フーリン-V5タグ配列をP2Aと組み合わせた。
【
図3A-1】BluTの発現後の内因性TCR陰性T細胞におけるCD3の再発現を実証する。
図3Aは、TCRα鎖(配列番号1)を標的とするCas9 RNP及びgRNAを用いた電気穿孔によるCD3-/TCR-T細胞の生成、それに続くCD3-/TCR-T細胞の磁気ビーズ精製を示す。
図3Bは、抗CD3OKT3抗体を使用するフローサイトメトリーによって決定される、切断型α鎖(TRAC、配列番号:3)のみをコードする構築物による感染後の発現なしと比較した、追加のシステイン及びいくつかの膜貫通疎水性突然変異を含む切断型α鎖並びに追加のシステインを含む切断型β鎖をコードする構築物、TRAC(Cys,LVL)-P2A-TRBC1(Cys)、配列番号2による感染後の
図3Aに示されるT細胞におけるCD3の再発現を示す。EGFPは、感染のマーカーとして機能する。
【
図3A-2】BluTの発現後の内因性TCR陰性T細胞におけるCD3の再発現を実証する。
図3Aは、TCRα鎖(配列番号1)を標的とするCas9 RNP及びgRNAを用いた電気穿孔によるCD3-/TCR-T細胞の生成、それに続くCD3-/TCR-T細胞の磁気ビーズ精製を示す。
図3Bは、抗CD3OKT3抗体を使用するフローサイトメトリーによって決定される、切断型α鎖(TRAC、配列番号:3)のみをコードする構築物による感染後の発現なしと比較した、追加のシステイン及びいくつかの膜貫通疎水性突然変異を含む切断型α鎖並びに追加のシステインを含む切断型β鎖をコードする構築物、TRAC(Cys,LVL)-P2A-TRBC1(Cys)、配列番号2による感染後の
図3Aに示されるT細胞におけるCD3の再発現を示す。EGFPは、感染のマーカーとして機能する。
【
図3B】BluTの発現後の内因性TCR陰性T細胞におけるCD3の再発現を実証する。
図3Aは、TCRα鎖(配列番号1)を標的とするCas9 RNP及びgRNAを用いた電気穿孔によるCD3-/TCR-T細胞の生成、それに続くCD3-/TCR-T細胞の磁気ビーズ精製を示す。
図3Bは、抗CD3OKT3抗体を使用するフローサイトメトリーによって決定される、切断型α鎖(TRAC、配列番号:3)のみをコードする構築物による感染後の発現なしと比較した、追加のシステイン及びいくつかの膜貫通疎水性突然変異を含む切断型α鎖並びに追加のシステインを含む切断型β鎖をコードする構築物、TRAC(Cys,LVL)-P2A-TRBC1(Cys)、配列番号2による感染後の
図3Aに示されるT細胞におけるCD3の再発現を示す。EGFPは、感染のマーカーとして機能する。
【
図4-1】少なくとも、α鎖にT48C突然変異及びβ鎖にS57C突然変異を含むBluTの発現後の内因性TCR陰性T細胞におけるCD3の再発現を実証する。
図3Aに示される内因性TCR陰性T細胞を、示される構築物に感染させ(各構築物の詳細な説明については
図2Bを参照されたい)、抗CD3OKT3抗体を使用してフローサイトメトリーによって評価した。EGFPは、感染のマーカーとして機能する。
【
図4-2】少なくとも、α鎖にT48C突然変異及びβ鎖にS57C突然変異を含むBluTの発現後の内因性TCR陰性T細胞におけるCD3の再発現を実証する。
図3Aに示される内因性TCR陰性T細胞を、示される構築物に感染させ(各構築物の詳細な説明については
図2Bを参照されたい)、抗CD3OKT3抗体を使用してフローサイトメトリーによって評価した。EGFPは、感染のマーカーとして機能する。
【
図5】α鎖におけるT48C及びLVL突然変異並びにβ鎖におけるS57C突然変異を含むBluTの発現後の、内因性β又はα鎖及びβ鎖を標的化することによって生成された内因性TCR陰性T細胞におけるCD3の再発現を実証する。CD3-/TC-RT細胞を、TCRβ鎖(配列番号45)、又はTCRα鎖及びβ鎖の両方(配列番号1及び45)を標的とするCas9 RNP及びgRNAを用いた電気穿孔と、それに続くCD3-/TCR-T細胞の磁気ビーズ精製によって生成した。続いて、細胞を示された構築物に感染させ(各構築物の詳細な説明については
図2Bを参照されたい)、抗CD3 OKT3抗体を使用してフローサイトメトリーによって評価した。EGFPは、感染のマーカーとして機能する。
【
図6-1】α鎖中のT48C及びβ鎖中のS57C以外のα鎖とβ鎖との間の追加のジスルフィド結合をもたらす突然変異を含むBluTの発現が、CD3の再発現を可能にしないことを実証する。
図3Aに示される内因性TCR陰性T細胞を、示される構築物に感染させ(各構築物の詳細な説明については
図2Bを参照されたい)、抗CD3OKT3抗体を使用してフローサイトメトリーによって評価した。EGFPは、感染のマーカーとして機能する。
【
図6-2】α鎖中のT48C及びβ鎖中のS57C以外のα鎖とβ鎖との間の追加のジスルフィド結合をもたらす突然変異を含むBluTの発現が、CD3の再発現を可能にしないことを実証する。
図3Aに示される内因性TCR陰性T細胞を、示される構築物に感染させ(各構築物の詳細な説明については
図2Bを参照されたい)、抗CD3OKT3抗体を使用してフローサイトメトリーによって評価した。EGFPは、感染のマーカーとして機能する。
【
図7】最小マウスアミノ酸置換を含むBluTの発現後の内因性TCR陰性T細胞におけるCD3の再発現を実証する。
図3Aに示される内因性TCR陰性T細胞を、示される構築物に感染させ(各構築物の詳細な説明については
図2Bを参照されたい)、抗CD3OKT3抗体を使用してフローサイトメトリーによって評価した。EGFPは、感染のマーカーとして機能する。
【
図8A】内因性TCR陰性T細胞におけるCD3の再発現に対する、BluTのα鎖のN末端から6~21アミノ酸を除去することの効果を実証する。
図3Aに示される内因性TCR陰性T細胞を、示される構築物に感染させ(各構築物の詳細な説明については
図2Bを参照されたい)、抗CD3OKT3抗体を使用してフローサイトメトリーによって評価した。EGFPは、感染のマーカーとして機能する。
【
図8B】国際特許出願公開第WO2020138371号によって開示される構築物の発現後、内因性TCR陰性T細胞におけるCD3の発現がないことを示す。
図3Aに示される内因性TCR陰性T細胞を、Ba9(配列番号83/84)又はα6(配列番号81/82)に感染させ、抗CD3 OKT3抗体を使用するフローサイトメトリーによって評価した。EGFPは、感染のマーカーとして機能する。
【
図9】二重特異性T細胞エンゲージャと組み合わせてBluTを発現するT細胞が、有効なインビトロ腫瘍細胞溶解を誘導することを実証する。
図3Aに示される内因性TCR陰性T細胞を、T48C突然変異及びLVL突然変異を含むBluTに感染させ、S57C突然変異(配列番号125/126)を含む切断型β鎖を、ブリナツモマブ(CD19 BiTE)の存在下又は非存在下で、示されたE:T比でRaji-F.Luc CD19+リンパ腫細胞と共にインキュベートし、ホタルルシフェラーゼ活性を測定して細胞毒性を判定した。CD3陰性抗CD19CAR-T細胞(配列番号127/128)及び非改変CD3陽性TCR陽性T細胞を、陽性対照として使用した。示されているのは、無処置のみの腫瘍群RLUに対する試験群RLU(相対光ユニット)を割ることによって計算された相対溶解のパーセンテージである。結果を(%)で示す。
*二元配置分散分析による
***p<0.0001、
***p<0.001
【
図10】二重特異性T細胞エンゲージャと組み合わせてBluTを発現するT細胞が、有効なインビボ抗癌効果を誘導することを実証する。
図3Aに示す内因性TCR陰性T細胞を、T48C突然変異及びLVL突然変異を含むBluT、並びにS57C突然変異(配列番号125/126)を含む切断型β鎖に感染させた。その後、マウスに、BluT形質導入T細胞と組み合わせてCD19+Raji細胞を移植し、示された場合、抗CD19BiTEブリナツモマブで処置した。CD3陰性抗CD19CAR-T細胞(配列番号127/128)及び非改変CD3陽性TCR陽性T細胞を、陽性対照として使用した。生理食塩水処置を陰性対照とした。マウス生存をカプラン-マイヤー曲線として示す。
【発明を実施するための形態】
【0055】
本発明は、いくつかの実施形態では、操作されたTCR及びそれを使用する方法に関する。
【0056】
本発明の少なくとも1つの実施形態を詳細に説明する前に、本発明は、その適用において、以下の説明に記載されるか又は実施例によって例示される詳細に必ずしも限定されないことが理解されるべきである。本発明は、他の実施形態が可能であり、又は様々な方法で実施若しくは実行することが可能である。
【0057】
癌免疫療法は、様々なタイプの癌を処置するための有望な戦略としてここ数年で登場した。例えば、操作されたT細胞受容体(TCR)を有するT細胞又はCART細胞を使用する細胞ベースの療法、抗体ベースの癌免疫療法、及びそれらの組み合わせは、いくつかのタイプの癌において抗腫瘍効果を発揮することが示された。
【0058】
本発明の特定の実施形態を実施に移しているが、本発明者らは、内因性TCRを欠くT細胞の表面上のTCR複合体の一部として提示されたTCRα鎖及びβ鎖の可変領域を欠く切断型TCRを設計及び発現させた(以下の実施例セクションの実施例1)。更に、切断型TCRを発現するT細胞は、インビトロ及びインビボの両方で、TCR及び抗CD3メディエーターの存在下でのみ抗腫瘍効果を有した(以下の実施例のセクションの実施例2~3)。
【0059】
結果として、本教示の特定の実施形態は、病的細胞に関連する疾患(例えば、癌)を処置するために、一方で病的細胞に、他方でTCR複合体(例えば、T細胞エンゲージャ抗体)に結合することができる治療用組成物と組み合わせて、切断型TCRを発現するように遺伝子操作されたT細胞を示唆する。
【0060】
したがって、本発明の一態様によれば、TCRαポリペプチド及びTCRβポリペプチドを含むT細胞受容体(TCR)複合体が提供され、当該TCRは、抗原結合ドメインを欠いており、CD3ポリペプチドは、異種抗原結合ドメインを欠いており、当該TCR複合体は、TCRを発現するT細胞の表面上に提示することができる。
【0061】
本発明の追加の又は代替の態様によれば、ヒトTCRαポリペプチド及びヒトTCRβポリペプチドを含むT細胞受容体(TCR)が提供され、当該TCRは、抗原結合ドメインを欠いており、当該TCRα及びβポリペプチドは、TCRを発現するT細胞の表面上でのTCR複合体としての当該TCRの提示を可能にするアミノ酸改変を含む。
【0062】
本発明の追加の又は代替の態様によれば、ヒトTCRαポリペプチド及びヒトTCRβポリペプチドを含むT細胞受容体(TCR)が提供され、当該TCRは、抗原結合ドメイン及び異種細胞外結合ドメインを欠いており、当該TCRα及びβポリペプチドは、当該TCRを発現するT細胞の表面上でのTCR複合体としての当該TCRの提示を可能にするアミノ酸改変を含み、当該改変は、
(i)配列番号9に記載のヒトTCRαポリペプチドに対応するT48Cアミノ酸置換、及び配列番号12に記載のヒトTCRβポリペプチドに対応するS57Cアミノ酸置換を含む、及び/又は
(ii)当該TCRαポリペプチド及び当該TCRβポリペプチドは、キメラヒト及びマウスTCRαポリペプチド並びにキメラヒト及びマウスTCRβポリペプチドを含む。
【0063】
本発明の追加の又は代替の態様によれば、ヒトTCRαポリペプチド及びヒトTCRβポリペプチドを含むT細胞受容体(TCR)が提供され、当該TCRは、抗原結合ドメインを欠いており、当該TCRα及びβポリペプチドは、TCRを発現するT細胞の表面上でのTCR複合体としての当該TCRの提示を可能にするアミノ酸改変を含み、当該改変は、
(i)配列番号9に記載のヒトTCRαポリペプチドに対応するT48C、S116L、G119V、及びF120Lアミノ酸置換、並びに配列番号12に記載のヒトTCRβポリペプチドに対応するS57Cアミノ酸置換、及び/又は
(ii)配列番号9に記載のヒトTCRαポリペプチドに対応するP91S、E92D、S93V、及びS94Pアミノ酸置換、並びに配列番号12に記載のヒトTCRβポリペプチドに対応するE18K、S22A、F133I、E/V136A、及びQ139Hアミノ酸置換、を含む、TCRが提供される。
【0064】
本明細書で使用される場合、「T細胞受容体(TCR)」という用語は、TCRαポリペプチド及びTCRβポリペプチドのヘテロ二量体を含む受容体であって、TCRを発現するT細胞の表面上にTCR複合体として提示することができる(又は提示可能である)受容体を指す。
【0065】
本明細書で使用される場合、「TCR複合体」という用語は、CD3とTCRとの会合によって形成される複合体を指す。
【0066】
本明細書で使用される場合、「CD3」という用語は、CD3G、CD3D、CD3E、又はCD247遺伝子のポリペプチド発現産物を指し(それぞれ遺伝子ID917、915、916、919)、CD3γ、CD3δ、CD3ε、及びCD3ゼータを含む。特定の実施形態によれば、CD3は、ヒトCD3である。
【0067】
特定の実施形態によれば、CD3は、それが発現される細胞にとって内因性である。
【0068】
特定の実施形態によれば、CD3は、以下のアクセッション番号NP_000064又は配列番号4に提供されるようなヒトCD3γポリペプチドを指す。
【0069】
特定の実施形態によれば、CD3は、以下のアクセッション番号NP_000723、NP_001035741又は配列番号5に提供されるようなヒトCD3δを指す。
【0070】
特定の実施形態によれば、CD3は、以下のアクセッション番号NP_000724又は配列番号6で提供されるようなヒトCD3εを指す。
【0071】
特定の実施形態によれば、CD3ゼータ(CD247)は、以下のアクセッション番号NP_000725、NP_932170、NP_001365444、NP_001365445、又は配列番号7に提供されるようなヒトを指す。
【0072】
本明細書において、「CD3ポリペプチド」又は「CD3鎖」は、完全長CD3又はその断片若しくはホモログを指し、これは、シグナル伝達ドメインを含み、CD3を発現するT細胞の表面上にTCR複合体として提示されるCD3の能力を少なくとも維持する。このようなホモログは、例えば、配列番号4~7に示されるポリペプチドに対して、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は100%同一又は相同であり得る。
【0073】
したがって、例えば、TCR複合体は、CD3γ鎖、CD3δ鎖、2つのCD3ε鎖、CD3ゼータ鎖のホモ二量体、TCRαポリペプチド、及びTCRβポリペプチドから構成され得る。
【0074】
TCR複合体の提示を決定する方法は、当技術分野において周知であり、例えば、フローサイトメトリー又は抗CD3抗体若しくは抗TCRβ抗体を使用する免疫染色を含む。
【0075】
本明細書に開示されるTCRは、抗原結合ドメインを欠いている。
【0076】
特定の実施形態によれば、CD3ポリペプチドは、異種抗原結合ドメインを欠いている。
【0077】
TCRが、それを発現するT細胞の表面上でのTCR複合体としてのTCRの提示を可能にするアミノ酸改変を含むヒトTCRα及びヒトTCRβポリペプチドを含む特定の実施形態によれば、CD3ポリペプチドは、異種抗原結合ドメインを含み得る。
【0078】
本明細書中で使用される場合、「異種」という用語は、少なくとも局在化において、列挙されたアミノ酸配列(例えば、TCRαポリペプチド、TCRβポリペプチド、CD3ポリペプチド)に対してネイティブでないか、又は列挙されたアミノ酸配列のネイティブ配列に完全に存在しないアミノ酸配列又は残基をいう。
【0079】
したがって、特定の実施形態によれば、TCR複合体の全ての成分は、抗原結合ドメインを欠いている。
【0080】
本明細書で使用される場合、「抗原結合ドメイン」という句は、TCR又は抗体の特異的な様式での抗原への結合、すなわち、10-4M以下のKdを付与するアミノ酸配列を含有するドメインを指す。典型的には、本発明の文脈におけるそのようなドメインは、TCRのTCRα鎖及びβ鎖の可変ドメイン、又は抗体の重鎖及び軽鎖の可変ドメインを含む。
【0081】
したがって、TCRは、天然に存在する抗原結合ドメインが切断されている、すなわち、天然に存在するTCRの天然に存在する抗原結合ドメインを欠いている。
【0082】
言い換えれば、本発明のいくつかの実施形態のTCRα及びβポリペプチド、並びにCD3ポリペプチドは、抗原結合ドメイン(複数可)に翻訳的に融合されない。
【0083】
いくつかの実施形態のTCRα及びβポリペプチド又はCD3ポリペプチドは、翻訳融合物(例えば、TCR複合体に対する結合特異性を有する抗原結合ドメインを含む抗体)としてではなく、抗原結合ドメインに結合され得る。
【0084】
他の特定の実施形態によれば、TCRα及び/又はβポリペプチドは、非翻訳的に融合された抗原結合ドメインに結合されない。
【0085】
特定の実施形態によれば、TCR及び/又はCD3ポリペプチドは、例えば、T細胞の標的細胞の細胞表面上に提示される標的に結合することができる結合ドメインを欠いている。言い換えれば、TCRα及びβポリペプチド及び/又はCD3ポリペプチドは、標的に結合することができる異種細胞外結合ドメインに翻訳的に融合されていない。
【0086】
本明細書で使用される場合、「標的に結合することができる細胞外結合ドメイン」という句は、例えば、標的細胞上に提示されている標的などの目的の標的(又は結合対)に対する結合親和性、すなわち、10-4M以下のKdを有するタンパク質性部分を指す。結合ドメインの非限定的な例としては、本明細書中上記で更に記載されるような、受容体の結合ドメイン、リガンドの結合ドメイン、ホルモン(例えば、レプチン)の結合ドメイン、タグ及び抗原結合ドメインが挙げられる。
【0087】
特定の実施形態によれば、TCRは、抗原結合ドメイン及び異種細胞外結合ドメインを欠いている。
【0088】
言い換えれば、特定の実施形態によれば、TCRポリペプチドの細胞外ドメインは、TCRα鎖及びβ鎖の定常ドメイン若しくはその断片若しくはホモログ、又は定常ドメイン及びヒンジドメイン若しくはその断片若しくはホモログからなる。
【0089】
結合を試験するためのアッセイは、当技術分野において周知であり、フローサイトメトリー、免疫染色、バイオレイヤー干渉法Blitz(登録商標)アッセイ、HPLC、表面プラズモン共鳴(例えば、Biacore)を含むが、これらに限定されない。
【0090】
本明細書において、「TCRαポリペプチド」は、抗原結合ドメインを欠く(すなわち、可変ドメインを欠く)細胞外ドメイン、膜貫通ドメイン、及び任意選択で細胞内ドメインを含む、TCRα鎖又はその相同体の断片であって、少なくとも、TCRα鎖が、それを発現するT細胞の表面上でTCR複合体として提示される能力を維持する断片を指す。
【0091】
本明細書で使用される場合、「TCRα」又は「TCRα鎖」は、TRA遺伝子(ヒト遺伝子ID6955に対応する)又はその相同体のポリペプチド発現産物を指す。特定の実施形態によれば、TCRαは、ヒトTCRαを指す。特定の実施形態によれば、TCRαは、マウスTCRαを指す。
【0092】
特定の実施形態によれば、TCRαポリペプチドは、TCRα定常ドメイン又はその断片若しくは相同体、TCRαヒンジ領域、TCRα膜貫通ドメイン、及びTCRα細胞内ドメインのアミノ酸配列を含む。
【0093】
特定の実施形態によれば、TCRαポリペプチドは、170未満、160未満、155未満、又は152未満のアミノ酸長であり、各可能性は、本発明の別個の実施形態を表す。
【0094】
特定の実施形態によれば、TCRαポリペプチドは、少なくとも120、少なくとも125、少なくとも130、少なくとも135、少なくとも140、又は少なくとも150アミノ酸長であり、各可能性は、本発明の別個の実施形態を表す。
【0095】
特定の実施形態によれば、TCRαポリペプチドは、135~151アミノ酸長である。
【0096】
特定の実施形態によれば、TCRαポリペプチドは、約135アミノ酸長である。
【0097】
特定の実施形態によれば、TCRαポリペプチドは、140~151アミノ酸長である。
【0098】
特定の実施形態によれば、TCRαポリペプチドは、約141アミノ酸長である。
【0099】
特定の実施形態によれば、TCRαポリペプチドは、約151アミノ酸長である。
【0100】
特定の実施形態によれば、TCRαポリペプチドは、約145アミノ酸長である。
【0101】
特定の実施形態によれば、TCRαポリペプチドは、約150アミノ酸長である。
【0102】
特定の実施形態によれば、TCRαポリペプチドのTCRα定常ドメインは、少なくとも84、少なくとも85、少なくとも86、少なくとも87、少なくとも88、少なくとも89、少なくとも90アミノ酸長である。
【0103】
特定の実施形態によれば、TCRαポリペプチドのTCRα定常ドメインは、少なくとも84アミノ酸長である。
【0104】
特定の実施形態によれば、TCRαポリペプチドのTCRα定常ドメインは、少なくとも88アミノ酸長である。
【0105】
特定の実施形態によれば、TCRαポリペプチドのTCRα定常ドメインは、94アミノ酸長である。
【0106】
特定の実施形態によれば、TCRαポリペプチドのTCRα定常ドメインは、少なくとも配列番号9のアミノ酸11~配列番号9のアミノ酸94の配列であるが、配列番号9の相同配列及び配列改変は、本明細書の上記及び下記に更に記載されるように更に企図される。
【0107】
特定の実施形態によれば、TCRαポリペプチドのTCRα定常ドメインは、少なくとも、配列番号9のアミノ酸7から配列番号9のアミノ酸94の間の配列であるが、配列番号9の相同配列及び配列改変は、上記及び下記に更に記載されるように更に企図される。
【0108】
特定の実施形態によれば、TCRαペプチドは、TCRαの定常ドメイン全体を含む。
【0109】
特定の実施形態によれば、TCRαポリペプチドは、マウスTCRαポリペプチドを含む。
【0110】
本発明の特定の実施形態で使用することができるマウスTCRαポリペプチドの非限定的な例は、Uniprot ID A0A075B662(配列番号8)で提供される。
【0111】
特定の実施形態によれば、TCRαポリペプチドは、ヒトTCRαポリペプチドを含む。
【0112】
可変ドメインを欠くヒトTCRαポリペプチドの非限定的な例は、Uniprot ID P01848(配列番号9)で提供されている。
【0113】
本明細書において、「TCRβポリペプチド」は、抗原結合ドメインを欠く(すなわち、可変ドメインを欠く)細胞外ドメイン、膜貫通ドメイン、及び任意選択で細胞内ドメインを含む、TCRβ鎖又はその相同体の断片であって、少なくとも、TCRβ鎖が、それを発現するT細胞の表面上でTCR複合体として提示される能力を維持する断片を指す。
【0114】
本明細書で使用される場合、「TCRβ」又は「TCRβ鎖」は、TRB遺伝子(ヒト遺伝子ID6957に対応する)又はその相同体のポリペプチド発現産物を指し、TRBC1(ヒト遺伝子ID28639に対応する)及びTRBC2(ヒト遺伝子ID28638に対応する)又はその相同体を含む。
【0115】
特定の実施形態によれば、TCRβは、TRBC1を指す。
【0116】
特定の実施形態によれば、TCRβは、TRBC2を指す。
【0117】
特定の実施形態によれば、TCRβは、ヒトTCRβを指す。
【0118】
特定の実施形態によれば、TCRβは、マウスTCRβを指す。
【0119】
特定の実施形態によれば、TCRβポリペプチドは、TCRβ定常ドメイン又はその断片若しくはホモログ、TCRβヒンジ領域、TCRβ膜貫通ドメイン、及びTCRβ細胞内ドメインのアミノ酸配列を含む。
【0120】
特定の実施形態によれば、TCRβポリペプチドは、250未満、200未満、190未満、又は188未満のアミノ酸長であり、各可能性は、本発明の別個の実施形態を表す。
【0121】
特定の実施形態によれば、TCRβポリペプチドは、少なくとも140、少なくとも150、少なくとも160、少なくとも170、少なくとも180、又は少なくとも185アミノ酸長であり、各可能性は、本発明の別個の実施形態を表す。
【0122】
特定の実施形態によれば、TCRβポリペプチドは、170~187アミノ酸長である。
【0123】
特定の実施形態によれば、TCRβポリペプチドは、約172アミノ酸長である。
【0124】
特定の実施形態によれば、TCRβポリペプチドは、約178アミノ酸長である。
【0125】
特定の実施形態によれば、TCRβポリペプチドは、約183アミノ酸長である。
【0126】
特定の実施形態によれば、TCRβポリペプチドは、約187アミノ酸長である。
【0127】
特定の実施形態によれば、TCRβポリペプチドのTCRβ定常ドメインは、少なくとも100、少なくとも110、少なくとも120、少なくとも125アミノ酸長である。
【0128】
特定の実施形態によれば、TCRβポリペプチドのTCRβ定常ドメインは、130アミノ酸長である。
【0129】
特定の実施形態によれば、TCRβペプチドは、TCRβの定常ドメイン全体を含む。
【0130】
特定の実施形態によれば、TCRβポリペプチドは、マウスTCRβポリペプチドを含む。
【0131】
本発明の特定の実施形態と共に使用され得るマウスTCRβポリペプチドの非限定的な例は、配列番号10~11に提供される。
【0132】
特定の実施形態によれば、TCRβポリペプチドは、ヒトTCRβポリペプチドを含む。
【0133】
可変ドメインを欠くヒトTCRβポリペプチドの非限定的な例は、配列番号12~13に提供される。
【0134】
結合ドメイン(抗原結合ドメイン、異種細胞外結合ドメイン)を欠くヒトTCRα及びβポリペプチドを有するTCRの提示を可能にするために、本発明者らは、ヒトTCRα及びβポリペプチドの配列における改変を想定した。このような改変の非限定的な例としては、異種二量体化部分の挿入及び最小マウスアミノ酸配列の挿入が挙げられる。
【0135】
したがって、特定の実施形態によれば、TCRαポリペプチド及び/又はTCRβポリペプチドは、キメラヒト及びマウスTCRαポリペプチド及び/又はTCRβポリペプチドを含む。したがって、例えば、TCRα及び/又はβポリペプチドは、短い(例えば、3~20)マウスアミノ酸配列を含むヒトTCRα及び/又はβに基づき得る。そのような配列は当技術分野で公知であり、例えば、Sommermeyer Dら、J Immunol.2010年;Bialer Gら、J Immunol.2010に記載されており、その内容は参照により本明細書に完全に組み込まれる。
【0136】
したがって、特定の実施形態によれば、TCRαポリペプチドは、配列番号9に記載のTCRαアミノ酸配列に対応するアミノ酸置換(又は変化、又は突然変異)P91S、E92D、S93V、及びS94Pを含むヒトTCRαポリペプチドを含む。
【0137】
特定の実施形態によれば、TCRβポリペプチドは、配列番号12に記載のTCRβアミノ酸配列に対応するアミノ酸置換(又は変化若しくは突然変異)E18K、S22A、F133I、E/V136A、Q139Hを含むヒトTCRβポリペプチドを含む。
【0138】
本明細書中で使用される場合、「配列番号9に対応する」という句は、任意の他のTCRαアミノ酸配列に対する対応するアミノ酸残基を含むことが意図される。
【0139】
本明細書中で使用される場合、句「配列番号12に対応する」という句は、任意の他のTCRβアミノ酸配列に対する対応するアミノ酸残基を含むことが意図される。
【0140】
したがって、特定の実施形態によれば、TCRαポリペプチドは配列番号14を含み、TCRβポリペプチドは配列番号15又は16を含む。
【0141】
特定の実施形態によれば、TCRαポリペプチドは配列番号111を含み、TCRβポリペプチドは配列番号112又は113を含む。
【0142】
特定の実施形態によれば、TCRα及び/又はβポリペプチドは、それぞれマウスTCRα及び/又はβのヒンジ領域を含むヒトTCRα及び/又はβに基づき得る。
【0143】
特定の実施形態によれば、TCRα及び/又はβポリペプチドは、それぞれヒトTCRα及び/又はβの膜貫通ドメイン及び任意選択で細胞内ドメイン、並びにそれぞれマウスTCRα及び/又はβの細胞外ドメインを含み得る。
【0144】
特定の実施形態によれば、TCRは、異種二量体化部分を含む。
【0145】
特定の実施形態によれば、異種二量体化部分は、TCRの細胞外ドメインに位置する。
【0146】
特定の実施形態によれば、異種二量体化部分は、TCRの定常ドメインに位置する。
【0147】
特定の実施形態によれば、異種二量体化部分は、TCRのヒンジドメインに位置する。
【0148】
本明細書で使用される場合、「二量体化部分」という用語は、TCRαポリペプチド-TCRβポリペプチドヘテロ二量体を形成することができる異種アミノ酸配列を指す。このようなアミノ酸は、例えば、少なくとも2つのシステイン残基(1つはTCRαポリペプチド中にあり、第2のシステイン残基はTCRβポリペプチド中にある)を含むアミノ酸配列を含み、チオール基間のジスルフィド結合の形成を可能にする。別の例は、二量体化ドメイン又は二量体の立体的形成を可能にするアミノ酸配列である。このような配列は、当業者に公知である。二量体化を決定する方法は、当技術分野において公知であり、免疫沈降、サイズ排除クロマトグラフィー、高速タンパク質液体クロマトグラフィー(FPLC)、多角度光散乱(SEC-MALS)分析、SDS-PAGE分析、ナノDSF、酵母ツーハイブリッドシステム(例えば、RRS)、及びフローサイトメトリーが挙げられるが、これらに限定されない。
【0149】
当技術分野で公知の任意の公知の二量体化部分を、本発明の特定の実施形態で使用することができる。本発明の特定の実施形態と共に使用され得る二量体化部分の非限定的な例としては、TCRαポリペプチド及びTCRβポリペプチドの各々における異種システイン残基、抗体のFcドメイン(抗体抗原結合ドメインを含まない)、ヘテロダイマーを形成し得るマウスアミノ酸配列、例えば、本明細書中上記で記載される短いマウスアミノ酸配列、FRB-FKBP、ロイシンジッパーが挙げられる。
【0150】
特定の実施形態によれば、TCRα及びβポリペプチドの各々は、少なくとも1つの異種システインを含む。
【0151】
特定の実施形態によれば、異種システインは、TCRα及びβポリペプチドの各々の細胞外ドメインに位置する。
【0152】
特定の実施形態によれば、異種システインは、TCRα及びβポリペプチドの各々のヒンジ又は定常ドメインに位置する。
【0153】
特定の実施形態によれば、TCRαポリペプチドは、配列番号9に記載のTCRαアミノ酸配列に対応するT48Cアミノ酸置換を含み、TCRβポリペプチドは、配列番号12に記載のTCRβアミノ酸配列に対応するS57Cアミノ酸置換を含む。
【0154】
したがって、特定の実施形態によれば、TCRαポリペプチドは配列番号17を含み、TCRβポリペプチドは配列番号18又は19を含む。
【0155】
特定の実施形態によれば、TCRαポリペプチドは配列番号114を含み、TCRβポリペプチドは配列番号115又は116を含む。
【0156】
TCRα及びβポリペプチドの各々は、αポリペプチドとβポリペプチドとの間に単一のジスルフィド結合を形成するポリペプチドのヒンジ領域に位置する内因性システインを含むので、少なくとも1つの異種システインの付加は、TCRαポリペプチドとTCRβポリペプチドとの間の少なくとも2つのジスルフィド結合の形成を可能にするTCRα及びβポリペプチドの各々における少なくとも2つのシステイン残基の存在をもたらす。
【0157】
したがって、特定の実施形態によれば、TCRα及びβポリペプチドの各々は、αポリペプチドとβポリペプチドとの間に少なくとも2つのジスルフィド結合を形成することができる少なくとも2つのシステイン残基を含む。
【0158】
特定の実施形態によれば、少なくとも2つのシステイン残基は、TCRα及びβポリペプチドの各々の細胞外ドメインに位置する。
【0159】
特定の実施形態によれば、少なくとも1つのシステイン残基は、TCRα及びβポリペプチドの各々のヒンジ領域に位置し、少なくとも1つのシステイン残基は、TCRα及びβポリペプチドの各々のヒンジ又は定常ドメインに位置する。
【0160】
「TCRαポリペプチド」及び「TCRβポリペプチド」という用語はまた、所望の活性を示す(すなわち、それを発現するT細胞の表面上にTCR複合体として提示される)機能的相同体(天然に存在する、又は合成的/組換え的に産生される)を包含する。このような相同体は、例えば、TCRαについては配列番号8、9、14、17、111、又は114に示されるポリペプチド、及びTCRβについては配列番号10~13、15~16、18~19、112~113、又は115~116に示されるポリペプチドに対して、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は100%同一又は相同であり得る(以下に更に記載されるように)。
【0161】
配列同一性又は相同性は、Blast、ClustalW、及びMUSCLEなどの任意のタンパク質又は核酸配列アラインメントアルゴリズムを使用して判定することができる。
【0162】
相同体はまた、以下に更に記載されるように、オルソログ、欠失、挿入、又はアミノ酸置換を含む置換改変体を指し得る。
【0163】
特定の実施形態によれば、TCRαポリペプチド及び/又はTCRβポリペプチドは、保存的及び/又は非保存的アミノ酸置換を含み得る。そのような置換の非限定的な例は、当技術分野において公知であり、例えば、Haga-Friedman Aら、J Immunol.2012年;188:5538-46;Froning Kら、Nat Commun[インターネット].Springer US;2020年;11:1-14;Boulter JMら、Protein Eng.2003年;16:707-11に記載されており、その内容は参照により本明細書に完全に組み込まれる。
【0164】
特定の実施形態によれば、TCRαポリペプチド及び/又はTCRβポリペプチドは、内因性システイン残基、例えば、TCRα及びβのそれぞれのヒンジ領域に位置する内因性システイン残基に保存的及び/又は非保存的アミノ酸置換を含まない。
【0165】
本明細書で使用される「保存的置換」という用語は、ペプチド中の天然配列中に存在するアミノ酸の、天然若しくは非天然のアミノ又は同様の立体特性を有するペプチド模倣体による置換を指す。置換される天然アミノ酸の側鎖が、極性又は疎水性のいずれかである場合、保存的置換は、天然に存在するアミノ酸、天然に存在しないアミノ酸、又は(置換されたアミノ酸の側鎖と同じ立体特性を有することに加えて)極性又は疎水性であるペプチド模倣物部分によるものであるべきである。
【0166】
天然に存在するアミノ酸は、典型的には、それらの特性に従って分類されるので、天然に存在するアミノ酸による保存的置換は、本発明に従って、立体的に類似した非荷電アミノ酸による荷電アミノ酸の置換が保存的置換とみなされるという事実を考慮して、容易に決定することができる。
【0167】
天然に存在しないアミノ酸による保存的置換を生成するために、当該分野で周知のアミノ酸アナログ(合成アミノ酸)を使用することもまた可能である。天然に存在するアミノ酸のペプチド模倣物は、当業者に公知の文献に十分に記載されている。
【0168】
保存的置換に影響を及ぼす場合、置換アミノ酸は、元のアミノ酸と同じ又は類似の官能基を側鎖に有するべきである。
【0169】
「非保存的置換」という句は、本明細書で使用される場合、親配列中に存在するアミノ酸の、異なる電気化学的及び/又は立体的特性を有する別の天然又は非天然アミノ酸による置換を指す。したがって、置換アミノ酸の側鎖は、置換される天然アミノ酸の側鎖よりも有意に大きく(又は小さく)することができる、及び/又は置換されるアミノ酸とは有意に異なる電子特性を有する官能基を有することができる。このタイプの非保存的置換の例としては、アラニンに対するフェニルアラニン若しくはシクロヘキシルメチルグリシンの置換、グリシンに対するイソロイシンの置換、又はアスパラギン酸に対する-NH-CH[(-CH2)5-COOH]-COの置換が挙げられる。本発明の範囲に入るこれらの非保存的置換は、神経保護特性を有するペプチドをなお構成するものである。
【0170】
したがって、特定の実施形態によれば、TCRαにおける1つ以上のアミノ酸置換(又は変化若しくは突然変異)は、配列番号9に記載のTCRαアミノ酸配列に対応するS116L、G119V、及びF120Lからなる群から選択される。
【0171】
特定の実施形態によれば、TCRαポリペプチドは、配列番号9に示されるヒトTCRαポリペプチドに対応するアミノ酸置換S116L、G119V、及びF120Lを含む。
【0172】
特定の実施形態によれば、TCRαポリペプチドは、配列番号9に記載のヒトTCRαポリペプチドに対応するアミノ酸置換T48C、S116L、G119V、及びF120Lを含み、TCRβポリペプチドは、配列番号12に記載のヒトTCRβポリペプチドに対応するアミノ酸置換S57Cを含む。
【0173】
特定の実施形態によれば、TCRαポリペプチド及びTCRβポリペプチドは、キメラヒト及びマウスTCRαポリペプチド並びにキメラヒト及びマウスTCRβポリペプチドを含み、更に、TCRαポリペプチドは、配列番号9に記載のヒトTCRαポリペプチドに対応するアミノ酸置換T48Cを含み、TCRβポリペプチドは、配列番号12に記載のヒトTCRβポリペプチドに対応するアミノ酸置換S57Cを含む。
【0174】
特定の実施形態によれば、TCRαにおける1つ以上のアミノ酸変化は、配列番号9に記載のTCRαアミノ酸配列に対応するS21F、T32I、A72Tからなる群から選択される。
【0175】
他の特定の実施形態によれば、TCRαポリペプチドは、配列番号9に記載のTCRαアミノ酸配列に対応するS21F、T32I、A72Tからなる群から選択される1つ以上のアミノ酸変化を含まない。
【0176】
特定の実施形態によれば、TCRβにおける1つ以上のアミノ酸変化は、配列番号12に記載のTCRβアミノ酸配列に対応するE18K、H23R、D39P、S54Dからなる群から選択される。
【0177】
他の特定の実施形態によれば、TCRβポリペプチドは、配列番号12に記載のTCRβアミノ酸配列に対応するE18K、H23R、D39P、S54Dからなる群から選択される1つ以上のアミノ酸変化を含まない。
【0178】
特定の実施形態によれば、TCRαポリペプチドは、配列番号8、14、17、20~23、47、111、114、及び117~120からなる群から選択されるアミノ酸配列に対して少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は100%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、各可能性は、本発明の別個の実施形態を表す。
【0179】
特定の実施形態によれば、TCRαポリペプチドは、配列番号8、14、17、20~23、47、111、114、及び117~120からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む。
【0180】
特定の実施形態によれば、TCRαポリペプチドは、配列番号8、14、17、及び20~23からなる群から選択されるアミノ酸配列に対して少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は100%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、各可能性は、本発明の別個の実施形態を表す。
【0181】
特定の実施形態によれば、TCRαポリペプチドは、配列番号8、14、17、及び20~23からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む。
【0182】
特定の実施形態によれば、TCRαポリペプチドは、配列番号14、17、20~23、47、111、114、及び117~120からなる群から選択されるアミノ酸配列に対して少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は100%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、各可能性は、本発明の別個の実施形態を表す。
【0183】
特定の実施形態によれば、TCRαポリペプチドは、配列番号14、17、20~23、47、111、114、及び117~120からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む。
【0184】
特定の実施形態によれば、TCRαポリペプチドは、配列番号14、17、及び20~23からなる群から選択されるアミノ酸配列に対して少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は100%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、各可能性は、本発明の別個の実施形態を表す。
【0185】
特定の実施形態によれば、TCRαポリペプチドは、配列番号14、17、及び20~23からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む。
【0186】
特定の実施形態によれば、TCRαポリペプチドは、配列番号14及び20~23からなる群から選択されるアミノ酸配列に対して少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は100%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、各可能性は、本発明の別個の実施形態を表す。
【0187】
特定の実施形態によれば、TCRαポリペプチドは、配列番号14及び20~23からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む。
【0188】
特定の実施形態によれば、TCRβポリペプチドは、配列番号10~11、15~16、18~19、24~25、112~113、115~116、及び121~122からなる群から選択されるアミノ酸に対して少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は100%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、各可能性は、本発明の別個の実施形態を表す。
【0189】
特定の実施形態によれば、TCRβポリペプチドは、配列番号10~11、15~16、18~19、24~25、112~113、115~116、及び121~122からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む。
【0190】
特定の実施形態によれば、TCRβポリペプチドは、配列番号10~11、15~16、18~19、及び24~25からなる群から選択されるアミノ酸に対して少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は100%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、各可能性は、本発明の別個の実施形態を表す。
【0191】
特定の実施形態によれば、TCRβポリペプチドは、配列番号10~11、15~16、18~19、及び24~25からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む。
【0192】
特定の実施形態によれば、TCRβポリペプチドは、配列番号15~16、18~19、24~25、112~113、115~116、及び121~122からなる群から選択されるアミノ酸に対して少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は100%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、各可能性は、本発明の別個の実施形態を表す。
【0193】
特定の実施形態によれば、TCRβポリペプチドは、配列番号15~16、18~19、24~25、112~113、115~116、及び121~122からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む。
【0194】
特定の実施形態によれば、TCRβポリペプチドは、配列番号15~16、18~19、及び24~25からなる群から選択されるアミノ酸に対して少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は100%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、各可能性は、本発明の別個の実施形態を表す。
【0195】
特定の実施形態によれば、TCRβポリペプチドは、配列番号15~16、18~19及び24~25からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む。
【0196】
特定の実施形態によれば、TCRαポリペプチドは配列番号8を含み、TCRβポリペプチドは配列番号10又は11を含む。
【0197】
特定の実施形態によれば、TCRαポリペプチドは配列番号14を含み、TCRβポリペプチドは配列番号15又は16を含む。
【0198】
特定の実施形態によれば、TCRαポリペプチドは配列番号111を含み、TCRβポリペプチドは配列番号112又は113を含む。
【0199】
特定の実施形態によれば、TCRαポリペプチドは配列番号17又は20を含み、TCRβポリペプチドは配列番号18又は19を含む。
【0200】
特定の実施形態によれば、TCRαポリペプチドは、配列番号114又は117を含み、TCRβポリペプチドは、配列番号115又は116を含む。
【0201】
特定の実施形態によれば、TCRαポリペプチドは配列番号21又は23を含み、TCRβポリペプチドは配列番号24又は25を含む。
【0202】
特定の実施形態によれば、TCRαポリペプチドは、配列番号118又は120を含み、TCRβポリペプチドは、配列番号121又は122を含む。
【0203】
特定の実施形態によれば、TCRαポリペプチドは配列番号22を含み、TCRβポリペプチドは配列番号15又は16を含む。
【0204】
特定の実施形態によれば、TCRαポリペプチドは配列番号119を含み、TCRβポリペプチドは配列番号112又は113を含む。
【0205】
特定の実施形態によれば、TCRαポリペプチドは配列番号47を含み、TCRβポリペプチドは配列番号18又は19を含む。
【0206】
特定の実施形態によれば、TCRαポリペプチドは配列番号47を含み、TCRβポリペプチドは配列番号115又は116を含む。
【0207】
特定の実施形態によれば、TCRは、本明細書で定義されるTCRα及びβポリペプチドに対して異種の細胞外ドメインを欠いている。
【0208】
しかしながら、特定の実施形態によれば、TCRは、細胞外ドメイン(例えば、細胞外結合ドメイン)でない限り、TCRα及び/又はβポリペプチドに翻訳的に融合された異種アミノ酸配列を含み得る。そのような異種配列の非限定的な例は、輸送配列(例えば、配列番号42に提供されるようなCD8膜輸送ペプチド)、タグなどの細胞内ドメイン、シグナル伝達ドメインなどのアミノ酸配列を含み得る。
【0209】
特定の実施形態によれば、TCRは、それが抗原結合ドメインでない限り、TCRα及び/又はβポリペプチドに翻訳的に融合された異種アミノ酸配列を含み得る。そのような異種配列の非限定的な例は、輸送配列(例えば、配列番号42に提供されるようなCD8膜輸送ペプチド)、受容体、リガンド又はホルモン、シグナル伝達ドメインのアミノ酸配列を含み得る。
【0210】
特定の実施形態によれば、TCRは、受容体又はリガンドの異種ドメインを含む。このような受容体の非限定的な例としては、EGFR、HER2、VEGFR1、VEGFR2、EpoR、FGFR1、FGFR2、FGFR3、FGFR4、MPL、CSF3R、CSF2RA、FLT3、CD117、PD1、CTLA4、CD28、設計アンキリンリピートタンパク(DARPin)が挙げられる。このようなリガンドの非限定的な例としては、TPO、IL2、IL15、IL18、SCFが挙げられる。
【0211】
特定の実施形態によれば、TCRは、受容体又はリガンドの異種ドメインを欠いている。
【0212】
特定の実施形態によれば、TCRは、活性化又は阻害シグナル伝達ドメインであり得る異種シグナル伝達ドメインを含む。
【0213】
本明細書中で使用される場合、「活性化シグナル」という句は、T細胞増殖、成熟、サイトカイン産生及び/又は調節機能若しくはエフェクター機能の誘導を生じる一次刺激シグナル又は共刺激シグナルを伝達し得るアミノ酸配列を指す。典型的には、活性化一次刺激シグナルドメインはITAMドメインを含み、共刺激シグナルドメインはITAMドメインを含まない。
【0214】
任意の公知の活性化シグナルドメインを、本発明の特定の実施形態で使用することができる。活性化シグナル伝達ドメインの非限定的な例としては、タンパク質CD3ゼータ、FcRガンマ、FcRβ、CD5、CD22、CD79a、CD79b、CD66d、4-1BB、CD28、OX40、ICOS、CD27、ICOS、GITR、HVEM、TIM1、LFA1(CD11a)、CD2、CD40L、LIGHT、CD30、Fc受容体、DAP10、及びDAP12の細胞内シグナル伝達ドメインが挙げられる。
【0215】
本明細書中で使用される場合、「阻害シグナル」という句は、T細胞増殖の抑制、成熟、サイトカイン産生及び/又は調節機能若しくはエフェクター機能の誘導を生じる一次又は二次阻害シグナルを伝達し得るアミノ酸配列を指す。特定の実施形態によれば、阻害シグナルドメインは、ITIMドメインを含む細胞内ドメインである。
【0216】
任意の公知の阻害シグナルドメインを、本発明の特定の実施形態で使用することができる。阻害性シグナル伝達ドメインの非限定的な例としては、タンパク質PD1、CTLA4、LAG3、TIM3、BTLA、TIGIT、2B4、CD300LF、PECAM、LY9、SIRPA、及びCD244の細胞内シグナル伝達ドメインが挙げられる。
【0217】
T細胞における活性化又は阻害シグナルのシグナル伝達を判定する方法は、当技術分野において周知であり、例えば、BiaCore、HPLC、又はフローサイトメトリーを使用する結合アッセイ、キナーゼ活性アッセイなどの酵素活性アッセイ、並びに例えば、PCR、ウェスタンブロット、免疫沈降及び免疫組織化学を使用するシグナル伝達カスケードに関与する分子の発現が挙げられるが、これらに限定されない。追加的に又は代替的に、シグナルの伝達を判定することは、T細胞活性化又は機能を評価することによって達成することができる。T細胞活性化又は機能を評価する方法は、当技術分野において周知であり、BRDU及びチミジン取り込みなどの増殖アッセイ、クロム放出などの細胞傷害性アッセイ、細胞内サイトカイン染色ELISPOT及びELISAなどのサイトカイン分泌アッセイ、フローサイトメトリーを使用するCD25、CD69、及びCD69などの活性化マーカーの発現を含むが、これらに限定されない。
【0218】
他の特定の実施形態によれば、TCRは、異種シグナル伝達ドメインを欠いている。
【0219】
特定の実施形態によれば、TCRは、異種タグを含むか、又はタグに結合している。
【0220】
特定の実施形態によれば、タグは、検出可能な部分である。
【0221】
本発明において使用され得る検出可能な部分の例としては、放射性同位体(例えば、[125]ヨウ素)、リン光化学発光又は蛍光化学物質及び酵素[例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HPR)、β-ガラクトシダーゼ、及びアルカリホスファターゼ(AP)]が挙げられるが、これらに限定されない。検出可能な部分の更なる例としては、陽電子放出断層撮影法(PET)及び磁気共鳴映像法(MRI)によって検出可能なものが挙げられ、これらは全て当業者に周知である。
【0222】
特定の実施形態で使用することができるタグの非限定的な例としては、キチン結合タンパク質(CBP)タグ、マルトース結合タンパク質(MBP)タグ、グルタチオン-S-トランスフェラーゼ(GST)タグ、ポリ(His)タグ、FLAGタグ、ビオチン、ヒスチジン、エピトープタグ、例えば、V5タグ、c-mycタグ、及びHAタグ、並びに蛍光タグ、例えば、緑色蛍光タンパク質(GFP又はEGFP)、赤色蛍光タンパク質(RFP)、黄色蛍光タンパク質(YFP)、青色蛍光タンパク質(BFP)、及びシアン蛍光タンパク質(CFP)、並びにこれらのタグの誘導体、又は当技術分野で公知の任意のタグが挙げられる。
【0223】
本発明のいくつかの実施形態のTCRの非限定的な概略図及び配列は、
図2A~B並びに配列番号2、26~32、46、49、63~68、及び125に提供される。
【0224】
典型的には、本明細書に開示されるTCRは、組換えDNA技術によって産生される。
【0225】
したがって、本発明の一態様によれば、TCR又はTCR複合体をコードする少なくとも1つのポリヌクレオチドが提供される。
【0226】
本明細書で使用される場合、「ポリヌクレオチド」という用語は、単離され、RNA配列、相補的ポリヌクレオチド配列(cDNA)、ゲノムポリヌクレオチド配列、及び/又は複合ポリヌクレオチド配列(例えば、上記の組合せ)の形態で提供される一本鎖又は二本鎖核酸配列を指す。
【0227】
特定の実施形態によれば、少なくとも1つのポリヌクレオチドは、TCRαポリペプチドをコードする核酸配列、及びTCRβポリペプチドをコードする核酸配列を含む。
【0228】
特定の実施形態によれば、TCRα及びβポリペプチドは、単一のポリヌクレオチドによってコードされる。単一のポリヌクレオチドからの複数のポリペプチドの発現についての更なる説明を以下に提供する。
【0229】
したがって、特定の実施形態によれば、少なくとも1つのポリヌクレオチドは、1つのポリヌクレオチドである。
【0230】
他の特定の実施形態によれば、別個のポリヌクレオチドが、TCRα及びβポリペプチドをコードするために使用される。
【0231】
したがって、特定の実施形態によれば、少なくとも1つのポリヌクレオチドは、少なくとも2つのポリヌクレオチドである。
【0232】
特定の実施形態によれば、少なくとも1つのポリヌクレオチドは、2つのポリヌクレオチドである。
【0233】
特定の実施形態によれば、少なくとも1つのポリヌクレオチドは、CD3ポリペプチドをコードする核酸配列を更に含む。
【0234】
開示されたポリペプチドのいずれかを細胞内で発現させるために、ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列は、好ましくは、細胞発現に適した核酸構築物に連結される。このような核酸構築物は、核酸配列の発現を指示するための少なくとも1つのシス作用性調節エレメントを含む。シス作用性調節配列には、ヌクレオチド配列の構成的発現を指示するもの、並びに特定の条件下でのみヌクレオチド配列の誘導性発現を指示するものが含まれる。したがって、例えば、構成的又は誘導性の様式で細胞においてポリヌクレオチド配列の転写を指示するためのプロモーター配列が、核酸構築物に含まれる。
【0235】
本発明のいくつかの実施形態の核酸構築物(本明細書では「発現ベクター」とも呼ばれる)は、このベクターを複製及び組み込みに適したものにする更なる配列(例えば、シャトルベクター)を含む。更に、典型的なクローニングベクターはまた、転写及び翻訳開始配列、転写及び翻訳ターミネーター、並びにポリアデニル化シグナルを含み得る。例として、このような構築物は、典型的には、5’LTR、tRNA結合部位、パッケージングシグナル、第2鎖DNA合成の起点、及び3’LTR又はその一部を含む。
【0236】
本発明のいくつかの実施形態の核酸構築物は、典型的には、ポリペプチドを細胞表面に標的化するためのシグナル配列を含むか、又はコードする。特定の実施形態によれば、この目的のためのシグナル配列は、哺乳動物シグナル配列又は本発明のいくつかの実施形態のポリペプチド変異体のシグナル配列である。
【0237】
真核生物プロモーターは、代表的に、2つの型の認識配列であるTATAボックス及び上流プロモーターエレメントを含む。転写開始部位の25~30塩基対上流に位置するTATAボックスは、RNAポリメラーゼにRNA合成を開始させることに関与すると考えられている。他の上流プロモーターエレメントは、転写が開始される速度を決定する。
【0238】
好ましくは、本発明のいくつかの実施形態の核酸構築物によって利用されるプロモーターは、形質転換された特定の細胞集団、すなわちT細胞において活性である。T細胞特異的プロモーターの例としては、リンパ系特異的プロモーター[Calameら(1988年)Adv.Immunol.43:235-275];特に、T細胞受容体のプロモーター[Winotoら(1989年)EMBO J.8:729-733]を含む。
【0239】
エンハンサーエレメントは、連結された同種又は異種プロモーターから1,000倍まで転写を刺激することができる。エンハンサーは、転写開始部位から下流又は上流に配置された場合に活性である。ウイルスに由来する多くのエンハンサーエレメントは、広い宿主範囲を有し、種々の組織において活性である。例えば、SV40初期遺伝子エンハンサーは、多くの細胞型に適している。本発明のいくつかの実施形態に適した他のエンハンサー/プロモーターの組み合わせとしては、ポリオーマウイルス、ヒト又はマウスサイトメガロウイルス(CMV)、種々のレトロウイルス(例えば、マウス白血病ウイルス、マウス又はラウス肉腫ウイルス及びHIV)由来の末端反復配列に由来するものが挙げられる。引用により本明細書に組み込まれた、Enhancer and Eukaryotic Expression、Cold Spring Harbor Press、Cold Spring Harbor、ニューヨーク、1983年を参照されたい。
【0240】
発現ベクターの構築において、プロモーターは、好ましくは、その天然の設定における転写開始部位からの距離とほぼ同じ、異種転写開始部位からの距離に位置する。しかし、当該分野で公知であるように、この距離におけるいくらかの変動は、プロモーター機能の損失なしに適応させることができる。
【0241】
ポリアデニル化配列もまた、mRNA翻訳の効率を増加させるために発現ベクターに付加され得る。2つの別個の配列エレメントであるリアデニル化部位から下流に位置するGU又はUリッチ配列、及び11~30ヌクレオチド上流に位置する6ヌクレオチドの高度に保存された配列AAUAAAが、正確かつ効率的なポリアデニル化のために必要とされる。本発明のいくつかの実施形態に適した終結シグナル及びポリアデニル化シグナルとしては、SV40に由来するものが挙げられる。
【0242】
既に記載されたエレメントに加えて、本発明のいくつかの実施形態の発現ベクターは、典型的には、クローン化された核酸の発現のレベルを増加させること、又は組換えDNAを保有する細胞の同定を容易にすることが意図される他の特殊化されたエレメントを含み得る。例えば、多くの動物ウイルスは、許容細胞型におけるウイルスゲノムの染色体外複製を促進するDNA配列を含む。これらのウイルスレプリコンを保有するプラスミドは、適切な因子がプラスミド上に保有されるか、又は宿主細胞のゲノムと共に保有される遺伝子によって提供される限り、エピソーム状に複製される。
【0243】
ベクターは、真核生物レプリコンを含んでも含まなくてもよい。真核生物レプリコンが存在する場合、ベクターは、適切な選択マーカーを使用して真核生物細胞において増幅可能である。ベクターが真核生物レプリコンを含まない場合、エピソーム増幅は不可能である。代わりに、組換えDNAは、操作された細胞のゲノムに組み込まれ、ここで、プロモーターは、所望の核酸の発現を指向する。
【0244】
本発明のいくつかの実施形態の発現ベクターは、例えば、単一のmRNAからのいくつかのタンパク質の翻訳を可能にする追加のポリヌクレオチド配列、例えば、内部リボソーム進入部位(IRES)又は自己切断可能ペプチド、例えば、スペーサ及び/又はプロテアーゼ、例えば、フーリン切断部位を伴い得る2Aペプチド(例えば、P2A、T2A、E2A)(例えば、Yangら、Gene Ther.2008年;15(21):1411-1423を参照されたい);及びゲノム組み込みのための配列を更に含むことができる。
【0245】
発現ベクター中に含まれる個々のエレメントは、種々の構成で配置され得ることが理解される。例えば、エンハンサーエレメント、プロモーターなど、及びポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列(複数可)でさえ、「頭-尾」配置で配置され得、逆方向補体として、又は逆平行鎖として相補的構成で存在し得る。このような種々の構成は、発現ベクターの非コードエレメントで生じる可能性がより高いが、発現ベクター内のコード配列の代替的な構成も想定される。
【0246】
哺乳動物発現ベクターの例としては、Invitrogenから入手可能なpcDNA3、pcDNA3.1(+/-)、pGL3、pZeoSV2(+/-)、pSecTag2、pDisplay、pEF/myc/cyto、pCMV/myc/cyto、pCR3.1、pSinRep5、DH26S、DHBB、pNMT1、pNMT41、pNMT81、Promegaから入手可能なpCI、Strategeneから入手可能なpMbac、pPbac、pBK-RSV及びpBK-CMV、Clontechから入手可能なpTRES、並びにそれらの誘導体が挙げられるが、これらに限定されない。
【0247】
真核生物ウイルス(例えば、レトロウイルス)由来の調節エレメントを含む発現ベクターも使用することができる。SV40ベクターは、pSVT7及びpMT2を含む。ウシパピローマウイルス由来のベクターにはpBV-1MTHAが含まれ、エプスタインバーウイルス由来のベクターにはpHEBO及びp2O5が含まれる。他の例示的なベクターとしては、pMSG、pAV009/A+、pMTO10/A+、pMAMneo-5、バキュロウイルスpDSVE、及びSV-40初期プロモーター、SV-40後期プロモーター、メタロチオネインプロモーター、マウス乳癌ウイルスプロモーター、ラウス肉腫ウイルスプロモーター、ポリヘドリンプロモーター、又は真核生物細胞における発現に有効であることが示されている他のプロモーターの指示下でタンパク質の発現を可能にする任意の他のベクターが挙げられる。
【0248】
上記のように、ウイルスは、多くの場合、宿主防御機構を逃れるために進化してきた非常に特殊化した感染性因子である。典型的には、ウイルスは特定の細胞型に感染し、増殖する。ウイルスベクターの標的特異性は、予め決定された細胞型を特異的に標的とし、それによって組換え遺伝子を感染細胞に導入するその天然の特異性を利用する。T細胞を形質転換するための適切なベクターを選択する能力は、十分に当業者の能力の範囲内であり、したがって、選択の考慮の一般的な説明は、本明細書中に提供されない。
【0249】
組換えウイルスベクターは、側方感染及び標的特異性などの利点を提供するので、ポリペプチドのインビボ発現に有用である。側方感染は、例えばレトロウイルスの生活環に固有であり、単一の感染細胞が、出芽して隣接細胞に感染する多くの子孫ビリオンを産生するプロセスである。その結果、大きな領域が急速に感染し、その大部分は最初は元のウイルス粒子に感染しなかった。これは、感染因子が娘子孫を介してのみ広がる垂直型の感染とは対照的である。側方に広がることができないウイルスベクターも作製することができる。この特徴は、所望の目的が局在化された数の標的細胞のみに特定の遺伝子を導入することである場合に有用であり得る。
【0250】
様々な方法を使用して、本発明のいくつかの実施形態の発現ベクターを細胞に導入することができる。このような方法は、Sambrookら、Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Cold Springs Harbor Laboratory、ニューヨーク(1989年、1992年)、Ausubelら、Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley and Sons、メリーランド州ボルチモア(1989年)、Changら、Somatic Gene Therapy,CRC Press,Ann Arbor,MI(1995年)、Vegaら、Gene Targeting,CRC Press、ミシガン州アンアーバー(1995年)、Vectors:A Survey of Molecular Cloning Vectors and Their Uses,Butterworths,Boston Mass.(1988年)、及びGilboaら[Biotechniques 4(6):504-512,1986]に一般的に記載されており、例えば、安定又は一過性トランスフェクション、リポフェクション、電気穿孔、及び組換えウイルスベクターによる感染を含む。更に、正-負選択法については、米国特許第5,464,764号及び同第5,487,992号を参照されたい。
【0251】
ウイルス感染による核酸の導入は、ウイルスの感染性のためにより高いトランスフェクション効率を得ることができるので、リポフェクション及び電気穿孔などの他の方法よりもいくつかの利点を提供する。
【0252】
現在好ましいインビボ核酸移入技術としては、ウイルス構築物又は非ウイルス構築物(例えば、アデノウイルス、レンチウイルス、単純ヘルペスIウイルス、又はアデノ随伴ウイルス(AAV)及び脂質ベースの系)でのトランスフェクションが挙げられる。遺伝子の脂質媒介移入に有用な脂質は、例えば、DOTMA、DOPE、及びDC-Cholである[Tonkinsonら、Cancer Investigation,14(1):54-65(1996年)]。遺伝子治療における使用のための最も好ましい構築物はウイルスであり、最も好ましくはアデノウイルス、AAV、レンチウイルス、又はレトロウイルスである。レトロウイルス構築物のようなウイルス構築物は、少なくとも1つの転写プロモーター/エンハンサー又は遺伝子座規定エレメント、あるいは選択的スプライシング、核RNA輸送、又はメッセンジャーの翻訳後修飾のような他の手段によって遺伝子発現を制御する他のエレメントを含む。このようなベクター構築物はまた、パッケージングシグナル、末端反復配列(LTR)又はその一部、並びにウイルス構築物中に既に存在しない限り、使用されるウイルスに適切なプラス鎖プライマー結合部位及びマイナス鎖プライマー結合部位を含む。更に、このような構築物は、代表的には、ポリペプチドを細胞中の所望の部位に標的化するためのシグナル配列を含む。特定の実施形態によれば、シグナル配列は、膜輸送配列を含む。このような配列は、当該分野で公知である。このような配列の非限定的な例は、配列番号43に提供されるようなCD8シグナルペプチドである。必要に応じて、この構築物はまた、ポリアデニル化を指向するシグナル、並びに1つ以上の制限部位及び翻訳終結配列を含み得る。例として、このような構築物は、典型的には、5’LTR、tRNA結合部位、パッケージングシグナル、第2鎖DNA合成の起点、及び3’LTR又はその一部を含む。非ウイルス性である他のベクター(例えば、カチオン性脂質、ポリリジン、及びデンドリマー)を使用することができる。
【0253】
特定の実施形態によれば、ポリヌクレオチドは、例えば内因性TCRをノックアウトしながら(すなわち、ノックイン/ノックアウト)、細胞において発現される。そのような方法は、当技術分野において公知であり[例えば、Menke D.Genesis(2013)51:-618;Capecchi,Science(1989)244:1288-1292;Santiagoら、Proc Natl Acad Sci USA(2008年)105:5809-5814;国際特許出願第WO2014085593号、同第WO2009071334号、及び第WO2011146121号;米国特許第8771945号、同第8586526号、同第6774279号、及び米国特許出願公開第20030232410号、同第20050026157号、同第20060014264号;その内容は参照によりその全体が組み込まれる]、標的化相同組換え、部位特異的リコンビナーゼ、PBトランスポザーゼ、並びに操作されたヌクレアーゼ(例えば、メガヌクレアーゼ、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)及びCRISPR/Cas系)によるゲノム編集を含む。
【0254】
本発明のいくつかの実施形態のTCRをコードする非限定的な概略図及び核酸構築物を、
図2A~B並びに配列番号33~40、53、73~79、及び126に提供する。
【0255】
本発明の特定の実施形態はまた、本明細書に記載されるTCR又はTCR複合体を含む細胞、例えばT細胞、及びそれを生成する方法を企図する。
【0256】
したがって、本発明の一態様によれば、TCR複合体又はTCR若しくはそれをコードする少なくとも1つのポリヌクレオチドを発現させる形質導入細胞が提供される。
【0257】
本発明の一態様によれば、TCR複合体又はTCR若しくはそれをコードする少なくとも1つのポリヌクレオチドを発現させる形質導入T細胞が提供される。
【0258】
本発明の追加の又は代替の態様によれば、TCR又はTCR複合体発現細胞を作製する方法が提供され、本方法は、TCR又はTCR複合体の発現を可能にする条件下で、本明細書に開示されるTCRをコードする少なくとも1つのポリヌクレオチドを細胞に導入することを含む。
【0259】
本発明の追加の又は代替の態様によれば、TCR又はTCR複合体発現T細胞を作製する方法が提供され、本方法は、TCR又はTCR複合体の発現を可能にする条件下で、本明細書に開示されるTCRをコードする少なくとも1つのポリヌクレオチドをT細胞に導入することを含む。
【0260】
本発明の追加の又は代替の態様によれば、T細胞においてTCR又はTCR複合体を発現させる方法が提供され、本方法は、TCR又はTCR複合体の発現を可能にする条件下で、本明細書に開示されるTCRをコードする少なくとも1つのポリヌクレオチドをT細胞に導入することを含む。
【0261】
そのような条件は、例えば、適切な温度(例えば、37℃)、雰囲気(例えば、空気+5%CO2)、pH、光、培地、サプリメントなどが挙げられる。
【0262】
他の特定の実施形態によれば、導入は、インビボで行われる。
【0263】
特定の実施形態によれば、導入は、インビトロ又はエクスビボで行われる。
【0264】
ポリヌクレオチドが導入される細胞の非限定的な例としては、免疫細胞、例えば、T細胞、多能性幹細胞、造血幹細胞、及び前駆細胞などが挙げられる。
【0265】
本発明の特定の実施形態で使用することができる幹細胞の非限定的な例としては、胚幹(ES)細胞、生殖系列幹細胞(GS細胞)、胚生殖細胞(EG細胞)、人工多能性幹(iPS)細胞、臍帯血由来多能性幹細胞、骨髄由来幹細胞などが挙げられる。
【0266】
特定の実施形態によれば、ポリヌクレオチドが導入される細胞は、iPS細胞である。
【0267】
特定の実施形態によれば、幹細胞又は前駆細胞は、導入後に例えばT細胞に更に分化させ、それによって本明細書に開示されるTCRを発現するT細胞を得ることができる。幹細胞又は前駆細胞をT細胞に分化させる方法は、当技術分野において公知であり、例えば、Blood,105(4):1431-1439,2005;及び国際特許出願公開第WO2016/076415号、同第WO2017/221975号に開示されている。
【0268】
特定の実施形態によれば、ポリヌクレオチドが導入される細胞は、T細胞である。
【0269】
本明細書で使用される場合、「T細胞」という用語は、CD3を発現する分化したリンパ球を指し、CD4+細胞、CD8+細胞、及びNKT細胞を含む。
【0270】
特定の実施形態によれば、T細胞は、エフェクター細胞である。
【0271】
本明細書で使用される場合、「エフェクターT細胞」という用語は、例えばサイトカインを産生することによって他の免疫細胞を活性化若しくは指向するか、又は細胞傷害活性を有するT細胞、例えば、CD4+、Th1/Th2、CD8+細胞傷害性Tリンパ球を指す。
【0272】
特定の実施形態によれば、T細胞は、調節性細胞である。
【0273】
本明細書で使用される場合、「調節性T細胞」又は「Treg」という用語は、エフェクターT細胞、並びに自然免疫系細胞を含む他のT細胞の活性化を負に制御するT細胞を指す。Treg細胞は、エフェクターT細胞応答の持続的な抑制を特徴とする。特定の実施形態によれば、Tregは、CD4+CD25+Foxp3+T細胞である。
【0274】
特定の実施形態によれば、T細胞は、CD4+T細胞である。
【0275】
他の具体的な実施形態によれば、T細胞は、CD8+T細胞である。
【0276】
特定の実施形態によれば、T細胞は、ナイーブT細胞である。
【0277】
特定の実施形態によれば、T細胞は、メモリーT細胞である。メモリーT細胞の非限定的な例としては、CD3+/CD4+/CD45RA-/CCR7-表現型を有するエフェクターメモリーCD4+T細胞、CD3+/CD4+/CD45RA-/CCR7+表現型を有するセントラルメモリーCD4+T細胞、CD3+/CD8+CD45RA-/CCR7-表現型を有するエフェクターメモリーCD8+T細胞、及びCD3+/CD8+CD45RA-/CCR7+表現型を有するセントラルメモリーCD8+T細胞が挙げられる。
【0278】
特定の実施形態によれば、T細胞は、NKT細胞である。
【0279】
本明細書で使用される場合、「NKT細胞」という用語は、NK1.1などのNK細胞に典型的に関連する様々な分子マーカーを発現する特殊なT細胞を指す。NKT細胞は、NK1.1+及びNK1.1-、並びにCD4+、CD4-、CD8+、及びCD8-細胞を含む。
【0280】
他の特定の実施形態によれば、T細胞は、NKT細胞ではない。
【0281】
T細胞を取得する方法は、当技術分野で周知である。したがって、例えば、PBMCは、対象から全血を採取し、抗凝固剤(例えば、ヘパリン又はクエン酸塩)を含有する容器への収集;及びアフェレーシスによって単離することができる。他の特定の実施形態によれば、T細胞は、病態に関連する細胞を含む組織から得られる。対象から組織試料を得るための方法は、当技術分野において周知であり、例えば、生検、手術又は剖検、及びその単一細胞懸濁液の調製を含む。続いて、特定の実施形態によれば、T細胞は、末梢血又は単一細胞懸濁液から濃縮又は精製される。白血球アフェレーシス、沈降、密度勾配遠心分離(例えばフィコール)、遠心水簸、分画、例えば赤血球の化学的溶解(例えばACKによる)、細胞表面マーカーを使用するT細胞の選択(例えばFACSソーター、又は例えばInvitrogen、Stemcell Technologies、Cellpro、Advanced Magnetics、又はMiltenyi Biotecから市販されているような磁気細胞分離技術を使用する)、及び特異的抗体による根絶(例えば死滅)などの方法による、又は陰性選択に基づく親和性ベースの精製(例えば磁気細胞分離技術、FACSソーター及び/又は捕捉ELISA標識を使用する)による他の細胞型の枯渇などの、T細胞を精製するための当業者に公知のいくつかの方法及び試薬がある。このような方法は、例えば、THE HANDBOOK OF EXPERIMENTAL IMMUNOLOGY、1-4巻(D.N.Weir編)及びFLOW CYTOMETRY AND CELL SORTING(A.Radbruch編、Springer Verlag、2000年)に記載されている。
【0282】
特定の実施形態によれば、細胞、例えばT細胞は、哺乳動物細胞である。
【0283】
特定の実施形態によれば、細胞、例えばT細胞は、ヒト細胞である。
【0284】
特定の実施形態によれば、細胞、例えばT細胞は、健康な対象のものである。
【0285】
特定の実施形態によれば、細胞、例えばT細胞は、病態(例えば、癌)に罹患している対象のものである。
【0286】
具体的な実施形態によれば、細胞、例えばT細胞は、内因性CD3を発現する。
【0287】
特定の実施形態によれば、細胞、例えばT細胞は、外因性CD3を発現する。
【0288】
細胞、例えば、本発明のいくつかの実施形態のT細胞は、目的の遺伝子(例えば、内因性TCR、PD1、TGFBR1、B2M、CTLA4)の発現を上方制御又は下方制御するように改変される(又は操作若しくは形質導入される)。
【0289】
具体的な実施形態によれば、細胞、例えばT細胞は、内因性TCRを発現しない。
【0290】
したがって、特定の実施形態によれば、本方法は、内因性TCRの発現を下方制御することを更に含む。内因性TCRの下方制御は、本明細書に開示されるTCRをコードする少なくとも1つのポリヌクレオチドを細胞に導入する前又は後に行われ得る。
【0291】
具体的な実施形態によれば、本方法は、細胞、例えば、T細胞に、本明細書に開示されるTCRをコードする少なくとも1つのポリヌクレオチドを導入する前に、内因性TCRの発現を下方制御することを更に含む。
【0292】
目的の遺伝子、例えば内因性TCRの発現を下方制御する方法は、当該技術分野において周知であり[例えば、国際公開第2019222275号、国際公開第2015143224号、米国特許第20190388472号(その内容は参照により全体が組み込まれる)を参照されたい]、これらには、標的化相同組換え、部位特異的リコンビナーゼ、PBトランスポザーゼ及び操作されたヌクレアーゼによるゲノム編集[ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、CRISPR/Cas系、及び定常shRNA]が含まれる。TCRに核酸改変を導入するための薬剤は、公的に入手可能な供給源から設計することができる、又はTransposagen、Addgene、及びSangamo Biosciencesから商業的に入手することができる。内因性TCRを下方制御する方法の非限定的な例は、以下の実施例のセクションにおいて詳細に記載される。
【0293】
細胞、例えば、本発明のいくつかの実施形態のT細胞は、キメラ受容体、例えば、キメラ抗原受容体(CAR)を発現するように改変(又は操作若しくは形質導入)される。
【0294】
本明細書で使用される場合、「CARで形質導入された」又は「CARを発現するように遺伝子操作された」という句は、キメラ抗原受容体(CAR)をコードする核酸配列のクローニングを指し、ここで、CARは、抗体の抗原認識部分及びT細胞活性化部分を含む。キメラ抗原受容体(CAR)は、T細胞シグナル伝達ドメイン又はT細胞活性化ドメインに連結された抗体の抗原結合ドメイン(例えば、単鎖可変断片(scFv))を含有する人工的に構築されたハイブリッドタンパク質又はポリペプチドである。CARで形質導入する方法は当技術分野で公知であり、例えば、Davilaら、Oncoimmunology.2012年12月1日;1(9):1577~1583;Wang and Riviere Cancer Gene Ther.2015年3月;22(2):85-94);Mausら、Blood.2014年4月24日;123(17):2625-35;Porter DL The New England journal of medicine.2011,365(8):725-733;Jackson HJ、Nat Rev Clin Oncol.2016年;13(6):370-383;及びGloberson-Levinら、Mol Ther.2014年;22(5):1029-1038に開示されている。特定の実施形態によれば、抗原認識部分は、病的細胞に特異的である。
【0295】
他の具体的な実施形態によれば、細胞は、CARを形質導入されていない(すなわち、発現しない)。
【0296】
具体的な実施形態によれば、細胞、例えば、T細胞は、新たに単離され、将来の使用のために長期間(例えば、数ヶ月、数年)にわたって任意の段階で例えば液体窒素温度で保存、例えば、凍結保存(すなわち、凍結)され得る、及び細胞系統。
【0297】
凍結保存の方法は、当業者に一般的に知られており、例えば、国際特許出願公開第WO2007054160号及び第WO2001039594号並びに米国特許出願公開第US20120149108号に開示されている。
【0298】
特定の実施形態によれば、細胞、例えばT細胞は、細胞バンク又は保管場所若しくは貯蔵施設に貯蔵することができる。
【0299】
結果として、本教示は更に、限定されないが、養子細胞療法のための供給源としての、本明細書に開示される細胞、例えばT細胞及び方法の使用を示唆する。
【0300】
したがって、本発明の一態様によれば、本明細書に開示される細胞、例えばT細胞は、養子細胞療法において使用するためのものである。
【0301】
本発明の特定の実施形態に従って使用される細胞、例えばT細胞は、自己由来であっても非自己由来であってもよい。それらは、対象に対して同系又は非同系:同種又は異種であり得る。各可能性は、本発明の別個の実施形態を表す。
【0302】
特定の実施形態によれば、細胞は、対象に対して自己由来である。
【0303】
特定の実施形態によれば、細胞は、対象に対して非自己由来である。
【0304】
特定の実施形態によれば、細胞は、対象に対して同種異系である。
【0305】
いくつかの実施形態のT細胞は、内因性TCRを発現せず、結合ドメイン(抗原結合ドメイン、異種細胞外結合ドメイン)を欠くTCR又はTCR複合体を発現するので、いくつかの実施形態のT細胞は、非自己対象において移植片対宿主病を刺激しない。
【0306】
具体的な実施形態によれば、本明細書に記載されるT細胞は、対象への投与の前にエクスビボで培養され、増殖され、及び/又は活性化される。
【0307】
T細胞を培養、増殖、及び活性化する方法は、当業者に周知である。例えば、いくつかの実施形態のT細胞は、IL-2の存在下又は非存在下で、抗CD3抗体、抗CD28抗体、抗CD3、及び抗CD28コーティングビーズ(Miltenyi Biotecから入手されるCD3CD28 MACSi Beadなど)の存在下でエクスビボで増殖させることができる。
【0308】
本明細書に開示されるTCR又はTCR複合体は、結合ドメイン(抗原結合ドメイン、異種細胞外結合ドメイン)を欠いているので、本発明のいくつかの実施形態のT細胞は、一方では標的細胞(例えば、病的細胞)に結合し、他方ではTCR複合体に結合することを対象とする治療用組成物と組み合わせて対象に投与され、それによってT細胞を標的細胞に対して活性化することができる。
【0309】
したがって、本発明の一態様によれば、必要とする対象において病的細胞に関連する疾患を処置する方法が提供され、本方法は、治療有効量の本明細書に開示されるT細胞と、病的細胞及びTCR複合体に結合することができる治療用組成物と、対象に投与し、それによって対象における疾患を処置することを含む。
【0310】
本発明の追加の又は代替の態様によれば、必要とする対象において病的細胞に関連する疾患を処置する際に使用するための、本明細書に開示されるT細胞と、病的細胞及びTCR複合体に結合することができる治療用組成物と、が提供される。
【0311】
本明細書中で使用される場合、「対象」という用語は、哺乳動物、好ましくは任意の年齢及び任意の性別のヒトを含む。特定の実施形態によれば、「対象」という用語は、病態(疾患、障害、又は医学的状態)に罹患している対象を指す。特定の実施形態によれば、この用語は、病態を発症するリスクがある個体を包含する。
【0312】
本明細書で使用される場合、「処置する」という用語は、疾患又は障害(例えば、癌)の有害作用を治癒、逆転、減弱、緩和、最小化、抑制、又は停止させることを指す。当業者は、種々の方法論及びアッセイが、病理の発生を評価するために使用され得、同様に、種々の方法論及びアッセイが、以下に議論されるように、病理(例えば、悪性腫瘍)の減少、寛解、又は退行を評価するために使用され得ることを理解するであろう。
【0313】
本明細書で使用される場合、「予防する」という用語は、疾患のリスクがあり得るが、疾患を有するとまだ診断されていない対象において、疾患、障害、又は状態が発生しないようにすることを指す。
【0314】
本明細書で使用される場合、「病的細胞に関連する疾患」という語句は、病的細胞が疾患の発症及び/又は進行を推進することを意味する。
【0315】
特定の実施形態によれば、疾患は、免疫細胞を調節することから利益を得ることができる。
【0316】
本明細書中で使用される場合、「免疫細胞を調節することから利益を得ることができる疾患」という句とは、対象の免疫応答活性が、疾患の症状を少なくとも改善するか、又は症状の発症を遅延させるのに十分であり得るが、何らかの理由で、そうする際の対象の免疫応答の活性が最適未満である疾患をいう。
【0317】
特定の実施形態によれば、疾患は、免疫細胞を活性化することから利益を得ることができる。
【0318】
免疫細胞を活性化することから利益を得ることができる疾患の非限定的な例としては、過剰増殖性疾患、免疫抑制に関連する疾患、投薬(例えば、mTOR阻害剤、カルシニューリン阻害剤、ステロイド)によって引き起こされる免疫抑制、及び感染症が挙げられる。
【0319】
特定の実施形態によれば、疾患は、感染症を含む。
【0320】
本明細書で使用される場合、「感染症」又は「感染性疾患」という用語は、病原体によって誘導される疾患を指す。病原体の具体例としては、ウイルス病原体、細菌病原体、例えば、細胞内マイコバクテリア病原体(例えば、結核菌(Mycobacterium tuberculosis)など)、細胞内細菌性病原体(例えば、リステリア・モノサイトゲネス(Listeria monocytogenes)など)、又は細胞内原生動物病原体(例えば、リーシュマニア(Leishmania)及びトリパノソーマ(Trypanosoma)など)が挙げられる。
【0321】
感染性疾患を引き起こすウイルス病原体の特定の型としては、レトロウイルス、シルコウイルス、パルボウイルス、パポバウイルス、アデノウイルス、ヘルペスウイルス、イリドウイルス、ポックスウイルス、ヘパドナウイルス、ピコルナウイルス、カリシウイルス、トガウイルス、フラビウイルス、レオウイルス、オルソミクソウイルス、パラミクソウイルス、ラブドウイルス、ブニヤウイルス、コロナウイルス、アレナウイルス、及びフィロウイルスが挙げられるが、これらに限定されない。
【0322】
本発明の特定の実施形態に従って処置され得るウイルス感染の特定の例としては、ヒト免疫不全症ウイルス(HIV)誘導性後天性免疫不全症候群(AIDS)、インフルエンザ、ライノウイルス感染、ウイルス性髄膜炎、エプスタインバルウイルス(EBV)感染、A型、B型、又はC型肝炎ウイルス感染、麻疹、乳頭腫ウイルス感染/疣贅、サイトメガロウイルス(CMV)感染、単純疱疹ウイルス感染、黄熱病、エボラウイルス感染、狂犬病ウイルス感染などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0323】
特定の実施形態によれば、疾患は、過剰増殖性疾患を含む。
【0324】
特定の実施形態によれば、過剰増殖病は、硬化症、線維症、特発性肺線維症、乾癬、全身性硬化症/硬皮症、原発性胆汁性胆管炎、原発性硬化性胆管炎、肝線維症、放射線誘発性肺線維症の予防、骨髄線維症、又は後腹膜線維症を含む。
【0325】
他の特定の実施形態によれば、過剰増殖性疾患は、癌を含む。
【0326】
したがって、特定の実施形態によれば、病的細胞は、癌性細胞である。
【0327】
本発明のいくつかの実施形態によって処置され得る癌は、任意の固形腫瘍又は非固形腫瘍、癌転移、及び/又は前癌であり得る。
【0328】
特定の実施形態によれば、癌は、悪性癌である。
【0329】
癌の例としては、癌腫、芽細胞腫、肉腫、及びリンパ腫が挙げられるが、これらに限定されない。このような癌のより具体的な例としては、胃腸管の腫瘍(結腸癌、直腸癌、結腸直腸癌、結腸直腸癌、結腸直腸腺腫、遺伝性非ポリポーシス1型、遺伝性非ポリポーシス2型、遺伝性非ポリポーシス3型、遺伝性非ポリポーシス6型);結腸直腸癌、遺伝性非ポリポーシス7型、小及び/又は大腸癌、食道癌、食道癌を伴う肥厚化、胃癌、膵臓癌、膵内分泌腫瘍)、子宮内膜癌、隆起性皮膚線維肉腫、胆嚢癌、胆道腫瘍、前立腺癌、前立腺腺癌、腎臓癌(例えば、ウィルムス腫瘍2型又は1型)、肝臓癌(例えば、肝芽腫、肝細胞癌、肝細胞癌)、膀胱癌、胎児性横紋筋肉腫、胚細胞性腫瘍、トロホブラスト腫瘍、精巣生殖細胞腫瘍、卵巣の未熟奇形腫、子宮癌、上皮性卵巣癌、仙尾骨腫瘍、絨毛癌、胎盤部位トロホブラスト腫瘍、上皮性成人腫瘍、卵巣癌、漿液性卵巣癌、卵巣性脊髄腫瘍、子宮頸癌、子宮頸部癌、小細胞及び非小細胞肺癌、鼻咽頭癌、乳癌(例えば、乳管癌、浸潤性乳管癌、散発性、乳癌、乳癌感受性、4型乳癌、1型乳癌、3型乳癌;胸部-卵巣癌)、扁平上皮癌(例えば、頭部及び頸部の癌)、神経原性腫瘍、星状細胞腫、神経節芽細胞腫、神経芽細胞種、リンパ腫(例えば、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫、B細胞、バーキット、皮膚T細胞、組織球性、リンパ芽球、T細胞、胸腺)、神経膠腫、腺癌、副腎腫瘍、遺伝性副腎皮質癌、脳悪性病変(腫瘍)、様々な他の癌(例えば、気管支原性大細胞、管、エールリッヒ腹水、類表皮、大細胞、ルイス肺、髄様、粘膜類表皮、燕麦細胞、小細胞、紡錘細胞、有棘細胞、移行細胞、未分化、癌肉腫、絨毛癌、嚢胞腺癌)、上衣芽細胞腫、上皮腫、赤白血病(例えば、フレンド病、リンパ芽球)、線維肉腫、巨細胞腫、グリア腫瘍、グリア芽細胞腫(例えば、多形性、星状細胞腫)、神経膠腫肝癌、ヘテロハイブリドーマ、ヘテロ骨髄腫、組織球腫、ハイブリドーマ(例えば、B細胞)、副腎腫、インスリノーマ、膵島腫瘍、角化腫、上皮様平滑筋腫、平滑筋肉腫、白血病(例えば、急性リンパ性、急性リンパ芽球、前駆B細胞急性リンパ性、T細胞急性リンパ芽球性、急性巨核芽球、単球性、急性骨髄性、急性ミエロイド、好酸球増加急性ミエロイド、B細胞、好塩基性、慢性ミエロイド、慢性、B細胞、好酸性、フレンド、顆粒球性又は骨髄球性、毛様細胞、リンパ球性、巨核芽球性、単球、単球マクロファージ、骨髄芽球性、ミエロイド、骨髄単球性、形質細胞、前B細胞、前骨髄球性、亜急性、T細胞、リンパ系腫瘍、骨髄性悪性腫瘍の素因、急性非リンパ性白血病)、リンパ肉腫、メラノーマ、乳癌、肥満細胞腫、髄芽細胞腫、中皮腫、転移性腫瘍、単球腫瘍、多発骨髄腫、脊髄形成異常性症候群、骨髄腫、腎芽細胞腫、神経組織グリア腫瘍、神経組織神経細胞腫瘍、神経鞘腫、神経芽細胞腫、乏枝神経膠腫、骨軟骨腫、骨内骨髄腫、骨肉腫(例えば、ユーイング)、乳頭腫、移行細胞、褐色細胞腫、下垂体腫瘍(侵襲性)、プラスマ細胞腫、網膜芽腫、横紋筋肉腫、肉腫(例えば、ユーイング、組織球細胞、イエンセン、骨原性、細網細胞)、神経線維腫、皮下腫瘍、奇形癌(例えば、多能性)、奇形腫、睾丸腫瘍、胸腺腫及び毛様上皮腫、胃癌、線維肉腫、未分化星状細胞腫;多発性グロムス腫瘍、リー-フラウメニ症候群、脂肪肉腫、リンチ癌ファミリー症候群II、男性胚細胞性腫瘍、肥満細胞性白血病、甲状腺髄様、多発性髄膜腫、内分泌腫瘍粘液肉腫、傍神経節腫、家族性非クロム親和性、毛母腫、乳頭状、家族性及び孤発性、ラブドイド素因症候群、家族性ラブドイド腫瘍、軟部組織肉腫、並びに膠芽腫を伴うターコット症候群が挙げられるが、これらに限定されない。
【0330】
特定の実施形態によれば、癌は、前悪性癌である。
【0331】
前癌は、十分に特徴付けられており、当技術分野において公知である(例えば、Berman JJ.及びHenson DE、2003年、Classifying the pre-cancers:a metadata approach.BMC Med Inform Decis Mak.3:8を参照されたい)。前癌の例としては、後天性小前癌、核異型を伴う後天性大病変、癌に進行する遺伝的過形成症候群を伴って生じる前駆病変、並びに後天性びまん性過形成、及びまん性化生が挙げられるが、これらに限定されない。小前癌状態の非限定的な例としては、HGSIL(子宮頸部の高悪性度扁平上皮内病変)、AIN(肛門上皮内腫瘍)、声帯の異形成、(結腸の)異常陰窩、PIN(前立腺上皮内腫瘍)が挙げられる。
【0332】
核異型を伴う後天性大病変の非限定的な例としては、管状腺腫、AILD(タンパク異常血症を伴う血管免疫芽球性リンパ節症)、非定型髄膜腫、胃ポリープ、大プラーク類乾癬、骨髄異形成、乳頭状移行上皮癌、芽球増加型不応性貧血、及びシュナイダー乳頭腫が挙げられる。癌に進行する遺伝性過形成症候群と共に生じる前駆病変の非限定的な例としては、非定型黒子症候群、C細胞腺腫症、及びMEAが挙げられる。後天性びまん性過形成及びびまん性化生の非限定的な例としては、骨のパジェット病及び潰瘍性大腸炎が挙げられる。
【0333】
特定の実施形態によれば、癌は、リンパ腫、白血病、膠芽腫、結腸癌、胃癌、膵臓癌、卵巣癌、肺癌、及び皮膚癌からなる群から選択される。
【0334】
特定の実施形態によれば、疾患は、免疫細胞を阻害することから利益を得ることができる。
【0335】
特定の実施形態によれば、疾患は、自己免疫疾患である。このような自己免疫疾患としては、心血管疾患、リウマチ性疾患、腺疾患、胃腸疾患、皮膚疾患、肝疾患、神経疾患、筋疾患、腎疾患、生殖に関連する疾患、結合組織疾患、及び全身性疾患が挙げられるが、これらに限定されない。
【0336】
自己免疫心血管疾患の例としては、アテローム性動脈硬化症(Matsuura Eら、Lupus.1998年;7 Suppl 2:S135)、心筋梗塞(Vaarala O、Lupus.1998年;7 Suppl 2:S132)、血栓症(Tincani Aら、Lupus 1998年;7 Suppl 2:S107-9)、ウェゲナー肉芽腫症、高安動脈炎、川崎病(Praprotnik S.ら、Wien Klin Wochenschr 2000年8月25日;112(15-16):660)、抗第VIII因子自己免疫性疾患(Lacroix-Desmazes S.ら、Semin Thromb Hemost.2000年;26(2):157)、壊死性小血管炎、顕微鏡的多発性血管炎、チャーグ・ストラウス症候群、自己免疫性限局性壊死性及び半月体糸球体腎炎(Noel LH.Ann Med Interne(Paris).2000年5月;151(3):178)、抗リン脂質症候群(Flamholz R.ら、J Clin Apheresis 1999年;14(4):171)、抗体誘発性心不全(Wallukat G.ら、Am J Cardiol.1999年6月17日;83(12A):75H)、血小板減少性紫斑病(Moccia F.Ann Ital Med Int.1999年4月~6月;14(2):114;Semple JW.ら、Blood.1996年5月15日;87(10):4245)、自己免疫性溶血性貧血(Efremov DG.ら、Leuk Lymphoma 1998年1月;28(3-4):285;Sallah S.ら、Ann Hematol.1997年3月;74(3):139)、シャーガス病における心臓自己免疫(Cunha-Neto E.ら、J Clin Invest 1996年10月15日;98(8):1709)、及び抗ヘルパーTリンパ球自己免疫(Caporossi AP.ら、Viral Immunol 1998年;11(1):9)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0337】
自己免疫性リウマチ疾患の例としては、関節リウマチ(Krenn V.ら、Histol Histopathol、2000年7月;15(3):791;Tisch R、McDevitt HO.Proc Natl Acad Sci units S A.1994年1月18日;91(2):437)、及び強直性脊椎炎(Jan Voswinkelら、Arthritis Res 2001年;3(3):189)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0338】
自己免疫腺疾患の例としては、膵臓疾患、I型糖尿病、甲状腺疾患、グレーブス病、甲状腺炎、自発性自己免疫甲状腺炎、橋本甲状腺炎、突発性粘液水腫、卵巣自己免疫、自己免疫抗精子不妊症、自己免疫前立腺炎、及びI型自己免疫多腺性症候群が挙げられる。自己免疫疾患としては、自己免疫疾患、1型糖尿病(Castano L.及びEisenbarth GS.Ann.Rev.Immunol.8:647;Zimmet P.Diabetes Res Clin Pract 1996年10月;34 Suppl:S125)、自己免疫甲状腺疾患、グレーブス病(Orgiazzi J.Endocrinol Metab Clin North Am 2000年6月;29(2):339;Sakata S.ら、Mol Cell Endocrinol 1993年3月;92(1):77)、自発性自己免疫甲状腺炎(Braley-Mullen H.及びYu S、J Immunol 2000年12月15日;165(12):7262年)、橋本甲状腺炎(Toyoda N.ら、Nippon Rinsho 1999年8月;57(8):1810)、突発性粘液水腫(Mitsuma T.Nippon Rinsho.1999年8月;57(8):1759)、卵巣自己免疫(Garza KM.ら、J Reprod Immunol 1998年2月;37(2):87)、自己免疫性抗精子不妊症(Diekman AB.ら、Am J Reprod Immunol.2000年3月;43(3):134)、自己免疫性前立腺炎(Alexander RB.ら、Urology 1997年12月;50(6):893)、及びI型自己免疫多腺性症候群(Hara T.ら、Blood.1991年3月1日;77(5):1127)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0339】
自己免疫胃腸疾患の例としては、慢性炎症性腸疾患(Garcia Herola A.ら、Gastroenterol Hepatol.2000年1月;23(1):16)、セリアック病(Landau YE.及びShoenfeld Y、2000年1月16日;138(2):122)、大腸炎、回腸炎、及びクローン病が挙げられるが、これらに限定されない。
【0340】
自己免疫皮膚疾患の例としては、自己免疫水疱性皮膚疾患、例えば、尋常性天疱瘡、水疱性類天疱瘡、及び落葉状天疱瘡が挙げられるが、これらに限定されない。
【0341】
自己免疫肝疾患の例としては、肝炎、自己免疫慢性活動性肝炎(Franco A.ら、Clin Immunol Immunopathol 1990年3月;54(3):382)、原発性胆汁性肝硬変(Jones DE.Clin Sci(Colch)1996年11月;91(5):551;Strassburg CP.ら、Eur J Gastroenterol Hepatol.1999年6月;11(6):595)、及び自己免疫性肝炎(Manns MP.J Hepatol 2000年8月;33(2):326)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0342】
自己免疫性神経疾患の例としては、多発性硬化症(Cross AH.ら、J Neuroimmunol 2001年1月1日;112(1-2):1)、アルツハイマー病(Oron L.ら、J Neural Transm Suppl.1997年;49:77)、重症筋無力症(Infante AJ.及びKraig E、Int Rev Immunol 1999年;18(1-2):83;Oshima M.ら、Eur J Immunol 1990年12月;20(12):2563)、神経障害、運動神経障害(Kornberg AJ.J Clin Neurosci.2000年5月;7(3):191);ギラン・バレー症候群及び自己免疫神経障害(Kusunoki S.、Am J Med Sci.2000年4月;319(4):234)、筋無力症、ランバート・イートン筋無力症候群(Takamori M.Am J Med Sci.2000年4月;319(4):204);腫瘍随伴性神経疾患、小脳萎縮、腫瘍随伴性小脳萎縮、及びスティッフマン症候群(Hiemstra HS.ら、Proc Natl Acad Sci units S A 2001年3月27日;98(7):3988);非腫瘍随伴性スティッフマン症候群、進行性小脳萎縮症、脳炎、ラスムッセン脳炎、筋萎縮性側索硬化症、シデナム舞踏病、ジル・ド・ラ・トゥレット症候群、及び自己免疫多発性内分泌障害(Antoine JC.及びHonnorat J.Rev Neurol(Paris)2000年1月;156(1):23);免疫性神経障害(Nobile-Orazio E.ら、Electroencephalogr Clin Neurophysiol Suppl 1999年;50:419);アイザックス症候群、先天性多発性関節拘縮症(Vincent A.ら、Ann N Y Acad Sci.1998年5月13日;841:482)、神経炎、視神経炎(Soderstrom M.ら、J Neurol Neurosurg Psychiatry 1994年5月;57(5):544)、及び神経変性疾患が挙げられるが、これらに限定されない。
【0343】
自己免疫性筋疾患の例としては、筋炎、自己免疫性筋炎、及び原発性シェーグレン症候群(Feist E.ら、Int Arch Allergy Immunol 2000年9月;123(1):92)、及び平滑筋自己免疫障害(Zauli D.ら、Biomed Pharmacother 1999年6月;53(5-6):234)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0344】
自己免疫腎疾患の例としては、腎炎及び自己免疫間質性腎炎(Kelly CJ.J Am Soc Nephrol 1990年8月;1(2):140)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0345】
生殖に関連する自己免疫疾患の例としては、反復胎児喪失(Tincani A.ら、Lupus 1998年;7 Suppl 2:S107-9)が挙げられるが、これに限定されない。
【0346】
自己免疫性結合組織疾患の例としては、耳疾患、自己免疫性耳疾患(Yoo TJ.ら、Cell Immunol 1994年8月;157(1):249年)、及び内耳の自己免疫疾患(Gloddek B.ら、Ann N Y Acad Sci 1997年12月29日;830:266)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0347】
自己免疫全身性疾患の例としては、全身性紅斑性狼瘡(Erikson J.ら、Immunol Res1998年;17(1-2):49)及び全身性硬化症(Renaudineau Y.ら、Clin Diagn Lab Immunol.1999年3月;6(2):156);Chan OT.ら、Immunol Rev 1999年6月;169:107)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0348】
特定の実施形態によれば、疾患は、移植片拒絶疾患である。
【0349】
移植片の移植に関連する疾患の例としては、移植片拒絶、慢性移植片拒絶、亜急性移植片拒絶、超急性移植片拒絶、急性移植片拒絶、及び移植片対宿主病が挙げられるが、これらに限定されない。
【0350】
特定の実施形態によれば、疾患は、アレルギー性疾患である。
【0351】
アレルギー性疾患の例としては、喘息、発疹、蕁麻疹、花粉アレルギー、チリダニアレルギー、毒液アレルギー、化粧品アレルギー、ラテックスアレルギー、化学アレルギー、薬アレルギー、刺虫症アレルギー、動物性鱗屑アレルギー、刺痛感植物アレルギー、ツタウルシアレルギー、及び食物アレルギーが挙げられるが、これらに限定されない。
【0352】
上述したように、特定の実施形態によれば、T細胞は、一方では[例えば、非病的細胞と比較して病的(例えば、癌性)細胞によって過剰発現又は単独発現される抗原に結合する]病的細胞に特異的であり、他方ではTCR複合体に結合することができる治療用組成物と組み合わせて対象に投与される。
【0353】
特定の実施形態によれば、治療用組成物は、CD3に結合する。
【0354】
特定の実施形態によれば、治療用組成物は、TCRの定常領域又はヒンジ領域に結合する。
【0355】
特定の実施形態によれば、治療用組成物は、TCR複合体に融合した異種タグ又はTCR複合体に結合したタグに結合する。このようなタグの非限定的な例は、当該分野で公知であり、そして本明細書中、上記で更に詳細に記載される。
【0356】
T細胞の投与及び治療用組成物の投与は、同じ経路又は別々の経路で行うことができる。
【0357】
T細胞の投与は、治療薬の前であっても、治療薬の後であっても、治療薬と同時であってもよい。
【0358】
T細胞及び/又は治療用組成物の複数回の投与を行うことができる。
【0359】
特定の実施形態によれば、病的細胞に特異的であり(例えば、異なる抗原を標的とする)、TCR複合体に結合することができる複数の別個の治療用組成物が、対象に提供される。
【0360】
病的細胞及びTCR複合体に結合することができる治療用組成物は、当技術分野において公知であり、二重特異性抗体及び三重特異性抗体などの抗体を含むが、これらに限定されない。
【0361】
本明細書で使用される「抗体」という用語は、インタクトな分子並びにその機能的断片(抗原のエピトープに結合することができる)を含む。
【0362】
本明細書で使用される場合、「エピトープ」という用語は、抗体のパラトープが結合する抗原上の任意の抗原決定基を指す。エピトープ決定基は、通常、アミノ酸又は炭水化物側鎖などの分子の化学的に活性な表面基からなり、通常、特異的な三次元構造特性並びに特異的な電荷特性を有する。
【0363】
特定の実施形態によれば、抗体断片は、単鎖、Fab、Fab’、及びF(ab’)2断片、Fd、Fcab、Fv、dsFv、scFvs、ダイアボディ、ミニボディ、ナノボディ、Fab発現ライブラリー、又はHLA拘束様式で抗原のエピトープに結合することができるVH及びVLなどの単一ドメイン分子を含むが、これらに限定されない。
【0364】
特定の実施形態によれば、治療用組成物は、少なくとも二重特異性抗体である。
【0365】
本明細書で使用される場合、「二重特異性抗体」という用語は、2つの異なる抗原結合部分を有し、第1の結合部分がTCR複合体に対する親和性を有し、第2の結合部分がTCR複合体とは異なる抗原に対する親和性を有する、抗体を指す。特定の実施形態によれば、二重特異性抗体は、一方でTCR複合体に結合し、他方で病的細胞(例えば、癌細胞)によって発現される抗原に結合する。
【0366】
二重特異性抗体を産生する方法は、当技術分野で公知であり、例えば、米国特許第4,474,893号、第5,959,084号、米国及び第7,235,641号、第7,183,076号、米国公開第20080219980号、並びに国際公開第WO2010/115589号、第WO2013150043号、及び第WO2012118903号に開示されており、これらは全て、その全体が本明細書に組み込まれ、例えば、化学架橋(Brennanら、Science 229,81(1985年);Rasoら、J.BioI.Chern.272,27623(1997年))、ジスルフィド交換、ハイブリッド-ハイブリドーマ(クアドローマ)の産生など、二重特異性抗体を具現化する単一ポリペプチド鎖を産生するための転写及び翻訳による、又は二重特異性抗体を産生するために共有結合的に会合することができる2つ以上のポリペプチド鎖を産生するための転写及び翻訳による方法が挙げられる。企図される二重特異性抗体は、完全に化学合成によって作製することもできる。
【0367】
したがって、特定の実施形態によれば、治療用抗体は、病的細胞によって過剰発現又は単独で発現される抗原に結合する少なくとも1つのアームと、TCR複合体に結合する抗体部分を含む1つのアームと、を含む。
【0368】
使用される治療用抗体の選択は、十分に当業者の能力の範囲内であり、疾患のタイプ及び病理に関連する病的細胞によって発現される抗原に依存する。
【0369】
特定の実施形態によれば、治療用組成物は、抗CD3抗体を含む。
【0370】
特定の実施形態によれば、抗CD3抗体部分は、L2K、TR66、OKT3UCHT1、ヒト化UHCT1、F6A、SP34、及びI2Cからなる群から選択される抗体のものである。
【0371】
特定の実施形態によれば、抗CD3抗体部分は、L2K、TR66、及びOKT3からなる群から選択される抗体のものである。
【0372】
特定の実施形態によれば、抗CD3抗体部分は、L2K、SP34、及びUCHT1からなる群から選択される抗体のものである。
【0373】
特定の実施形態によれば、治療用抗体は、癌性細胞によって発現される抗原に結合する。そのような抗原の非限定的な例としては、CD19、EGFR、HER2、MUC-1、CA-125、メソテリン、ROR1、GPC3、PSCA、CD133、CD70、EpCAM、CEA、CAIX、CD171、GD2、Tn-MUC1、EGFRvIII、ADGRE2、CD33、CD123、CCR1、CLEC12A、LILRB2、BCMA、CD138、gp100、及びQ Heら(2019年)J Hematol Oncol 12,99に記載されており、その内容は参照により本明細書に完全に組み込まれる。
【0374】
本発明のいくつかの実施形態によれば、ブリナツモマブ、AMG330、AMG701、Orlotamab、AMG420、CC-93269、APVO436、JNJ-63709178、AMG757、MT110、テベンタフスプ、オドロネクスタマブ、RG6007、RG6194、RG6232、RG7828、テクリスタマブ、モスネツズマブ、RG7802シビサタマブ、セボスタマブ、グロフィタマブ、及びIMMTAC(例えば、RG6290)からなる群から選択される。
【0375】
特定の実施形態によれば、病的細胞はCD19を発現し、治療用組成物はブリナツモマブを含む。
【0376】
特定の実施形態によれば、病的細胞はEpCAMを発現し、当該治療用組成物はMT110を含む。
【0377】
特定の実施形態によれば、病的細胞はCD20を発現し、当該治療用組成物はオドロネクスタマブを含む。
【0378】
特定の実施形態によれば、病的細胞はCD20を発現し、当該治療用組成物はモスネツズマブを含む。
【0379】
特定の実施形態によれば、病的細胞はHLA-A2-WT1を発現し、当該治療用組成物はRG6007を含む。
【0380】
特定の実施形態によれば、病的細胞はHER2を発現し、当該治療用組成物はRG6194を含む。
【0381】
特定の実施形態によれば、病的細胞はTYRP1を発現し、当該治療用組成物はRG6232を含む。
【0382】
特定の実施形態によれば、病的細胞はMAGE-A4を発現し、当該治療用組成物はRG6290を含む。
【0383】
特定の実施形態によれば、治療用組成物は、抗TCR抗体を含む。
【0384】
特定の実施形態によれば、抗TCR抗体部分は、IP26、WT31、T10B9、BW242/41、8A3、3A8、Jovi-1からなる群から選択される抗体クローンのものである。
【0385】
特定の実施形態によれば、T細胞並びに病的細胞及びTCR複合体に結合することができる治療用組成物は、病的細胞(例えば、癌)に関連する疾患を処置するための他の確立された又は実験的な治療レジメン(鎮痛剤、化学療法剤、放射線療法剤、細胞傷害性療法(コンディショニング)、ホルモン療法及び当技術分野で周知の他の治療レジメン(例えば、手術)が挙げられるが、これらに限定されない)と組み合わせて対象に投与することができる。
【0386】
本明細書に開示されるT細胞、及び/又は病的細胞及び本明細書に開示されるTCR複合体に結合することができる治療用組成物は、対象自体に、又は適切な担体若しくは賦形剤と混合された医薬組成物で投与することができる。
【0387】
本明細書で使用される場合、「薬学的組成物」とは、本明細書中に記載される活性成分のうちの1つ以上と、他の化学成分(例えば、生理学的に適切なキャリア及び賦形剤)との調製物をいう。医薬組成物の目的は、生物への化合物の投与を容易にすることである。
【0388】
本明細書において、「活性成分」という用語は、病的細胞に結合することができるT細胞及び/又は治療用組成物、並びに生物学的効果の原因となるTCR複合体を指す。
【0389】
したがって、特定の実施形態によれば、T細胞は、製剤中の活性成分である。
【0390】
以下、互換的に使用され得る「生理学的に許容される担体」及び「薬学的に許容される担体」という語句は、生物に著しい刺激を引き起こさず、投与された化合物の生物学的活性及び特性を無効にしない担体又は希釈剤を指す。アジュバントは、これらの句に含まれる。
【0391】
本明細書において、「賦形剤」という用語は、活性成分の投与を更に容易にするために医薬組成物に添加される不活性物質を指す。賦形剤の非限定的な例としては、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、種々の糖及び種々のタイプのデンプン、セルロース誘導体、ゼラチン、植物油、及びポリエチレングリコールが挙げられる。
【0392】
薬物の処方及び投与のための技術は、「Remington’s Pharmaceutical Sciences」、Mack Publishing Co.、ペンシルバニア州イーストンの最新版に見出され得、これは、本明細書中に参考として組み込まれる。
【0393】
適切な投与経路としては、例えば、経口送達、直腸送達、経粘膜送達、特に経鼻送達、腸管送達又は非経口送達(筋肉内注射、皮内注射、皮下注射及び髄内注射、並びに髄腔内注射、直接脳室内注射、心臓内注射(例えば、右心室腔若しくは左心室腔への注射、総冠状動脈への注射)、静脈内注射、腹腔内注射、鼻腔内注射、又は眼内注射が挙げられ得る。
【0394】
中枢神経系(CNS)への薬物送達のための従来のアプローチとしては、神経外科的戦略(例えば、脳内注射又は脳室内注入);BBBの内因性輸送経路の1つを利用しようとする、薬剤の分子操作(例えば、それ自体がBBBを通過することができない薬剤と組み合わせて、内皮細胞表面分子に対して親和性を有する輸送ペプチドを含むキメラ融合タンパク質の産生);薬剤の脂溶性を増加させるように設計された薬理学的戦略(例えば、水溶性薬剤の脂質又はコレステロール担体へのコンジュゲーション);及び高浸透圧破壊(頚動脈内へのマンニトール溶液の注入又はアンジオテンシンペプチドなどの生物学的活性剤の使用に起因する)によるBBBの完全性の一時的破壊、が挙げられる。しかしながら、これらの戦略の各々は、侵襲的外科的処置に関連する固有のリスク、内因性輸送系に固有の制限によって課されるサイズ制限、CNSの外側で活性であり得る担体モチーフから構成されるキメラ分子の全身投与に関連する潜在的に望ましくない生物学的副作用、及びBBBが破壊される脳の領域内での脳損傷の可能性のあるリスクなどの制限を有し、それにより最適以下の送達方法となる。
【0395】
代替的に、例えば、患者の組織領域に医薬組成物を直接注射することによって、全身的ではなく局所的に医薬組成物を投与し得る。
【0396】
特定の実施形態によれば、本発明のT細胞又はそれを含む医薬組成物は、IV経路を介して投与される。
【0397】
本発明のいくつかの実施形態の薬学的組成物は、当該分野で周知のプロセスによって、例えば、従来の混合プロセス、溶解プロセス、顆粒化プロセス、糖衣錠作製プロセス、粉末化プロセス、乳化プロセス、カプセル化プロセス、捕捉プロセス、又は凍結乾燥プロセスによって製造され得る。
【0398】
したがって、本発明のいくつかの実施形態により使用するための医薬組成物は、薬学的に使用することができる調製物への活性成分の加工を容易にする賦形剤及び助剤を含む1つ以上の生理学的に許容される担体を使用して、従来の様式で製剤化され得る。適切な製剤は、選択される投与経路に依存する。
【0399】
注射のために、薬学的組成物の活性成分は、水溶液、好ましくは生理学的に適合性の緩衝液(例えば、ハンクス液、リンガー液、又は生理学的塩緩衝液)中で処方され得る。経粘膜投与のためには、透過すべき障壁に適した浸透剤が、製剤中に使用される。そのような浸透剤は、当技術分野で一般に知られている。
【0400】
経口投与の場合、医薬組成物は、活性化合物を当技術分野で周知の薬学的に許容される担体と組み合わせることによって容易に製剤化することができる。そのような担体は、医薬組成物が、患者による経口摂取のための錠剤、丸剤、糖衣錠、カプセル剤、液剤、ゲル剤、シロップ剤、スラリー剤、懸濁剤などとして製剤化されることを可能にする。経口使用のための薬理学的調製物は、固体賦形剤を使用して作製され得、任意選択で、得られた混合物を粉砕し、所望される場合、適切な補助剤を添加した後、顆粒の混合物を加工して、錠剤又は糖衣錠コアを得る。適切な賦形剤は、特に、ラクトース、スクロース、マンニトール、又はソルビトールを含む糖などの充填剤;セルロース調製物、例えば、トウモロコシデンプン、コムギデンプン、コメデンプン、ジャガイモデンプン、ゼラチン、トラガカントゴム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボメチルセルロースナトリウムなど;及び/又はポリビニルピロリドン(PVP)などの生理学的に許容されるポリマーである。所望であれば、架橋ポリビニルピロリドン、寒天、又はアルギン酸若しくはその塩(例えば、アルギン酸ナトリウム)などの崩壊剤が添加され得る。
【0401】
糖衣錠コアは、適切なコーティングと共に提供される。この目的のために、濃縮糖溶液が使用され得、これは、任意選択で、アラビアゴム、タルク、ポリビニルピロリドン、カルボポールゲル、ポリエチレングリコール、二酸化チタン、ラッカー溶液、及び適切な有機溶媒又は溶媒混合物を含み得る。識別のため、又は活性化合物用量の異なる組合せを特徴付けるために、染料又は顔料を錠剤又は糖衣錠コーティングに添加してもよい。
【0402】
経口的に使用され得る薬学的組成物としては、ゼラチンから作製されるプッシュフィットカプセル、並びにゼラチン及び可塑剤(例えば、グリセロール又はソルビトール)から作製される軟質密封カプセルが挙げられる。プッシュフィットカプセルは、ラクトースなどの充填剤、デンプンなどの結合剤、タルク又はステアリン酸マグネシウムなどの潤滑剤、及び任意選択で安定剤と混合した活性成分を含有し得る。軟質カプセルにおいて、活性成分は、脂肪油、液体パラフィン、又は液体ポリエチレングリコールなどの適切な液体に溶解又は懸濁され得る。更に、安定剤が添加され得る。経口投与のための全ての製剤は、選択された投与経路に適した投与量であるべきである。
【0403】
口腔投与のために、組成物は、従来の様式で製剤化された錠剤又は薬用ドロップの形態をとり得る。
【0404】
鼻吸入による投与のために、本発明のいくつかの実施形態による使用のための活性成分は、適切な噴射剤、例えば、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、又は二酸化炭素を使用して、加圧パック又はネブライザーからのエアロゾルスプレー提示の形態で都合よく送達される。加圧エアロゾルの場合、投薬単位は、計量された量を送達するためのバルブを提供することによって決定され得る。化合物とラクトース又はデンプンなどの適切な粉末基剤との粉末混合物を含有する、ディスペンサで使用するための例えばゼラチンのカプセル及びカートリッジが製剤化され得る。
【0405】
本明細書に記載の医薬組成物は、例えばボーラス注射又は持続注入による非経口投与用に製剤化され得る。注射用製剤は、単位剤形で、例えば、アンプルで、又は任意選択で保存剤を添加した複数回用量容器で提供され得る。組成物は、油性又は水性ビヒクル中の懸濁液、溶液、又はエマルジョンであり得、懸濁化剤、安定化剤、及び/又は分散剤などの製剤化剤を含有し得る。
【0406】
非経口投与用の医薬組成物は、水溶性形態の活性調製物の水溶液を含む。更に、活性成分の懸濁液は、適切な油性又は水性注射懸濁液として調製され得る。適切な親油性溶媒又はビヒクルとしては、ゴマ油などの脂肪油、又はオレイン酸エチル、トリグリセリド、若しくはリポソームなどの合成脂肪酸エステルが挙げられる。水性注射懸濁液は、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ソルビトール、又はデキストランなどの懸濁液の粘度を増加させる物質を含有し得る。必要に応じて、懸濁液はまた、適切な安定剤又は活性成分の溶解度を増加させて、高濃縮溶液の調製を可能にする薬剤を含み得る。
【0407】
代替的に、活性成分は、使用前に、適切なビヒクル、例えば、滅菌された発熱物質を含まない水ベースの溶液で構成するための粉末形態であり得る。
【0408】
本発明のいくつかの実施形態の医薬組成物は、例えば、カカオ脂又は他のグリセリドなどの従来の坐剤基剤を使用して、坐剤又は停留浣腸などの直腸用組成物に製剤化され得る。
【0409】
代替的な実施形態は、当該技術分野において周知であるように、対象における活性成分の活性の持続放出又は延長された持続時間を提供するデポー製剤を含む。
【0410】
本発明のいくつかの実施形態の文脈における使用に適した医薬組成物は、活性成分が意図された目的を達成するのに有効な量で含有される組成物を含む。より具体的には、治療有効量は、障害(例えば、癌)の症状を予防、緩和、若しくは改善するか、又は処置される対象の生存を延長するのに有効な活性成分の量を意味する。
【0411】
治療有効量の決定は、特に本明細書に提供される詳細な開示に照らして、当業者の能力の十分に範囲内である。
【0412】
本発明の方法において使用される任意の調製物について、治療有効量又は用量は、インビトロアッセイ及び細胞培養アッセイから最初に推定され得る。例えば、用量を動物モデルにおいて処方して、所望の濃度又は力価を達成することができる。このような情報は、ヒトにおいて有用な用量をより正確に決定するために使用することができる。
【0413】
本明細書に記載される活性成分の毒性及び治療有効性は、インビトロ、細胞培養、又は実験動物における標準的な薬学的手順によって判定することができる。これらのインビトロアッセイ及び細胞培養アッセイ並びに動物研究から得られたデータは、ヒトにおける使用のための投薬量の範囲を処方する際に使用することができる。投与量は、使用される剤形及び利用される投与経路に依存して変化し得る。正確な製剤、投与経路、及び投与量は、患者の状態を考慮して個々の医師が選択することができる。(例えば、Finglら、1975年、「The Pharmacological Basis of Therapeutics」、Ch.1、1頁を参照されたい)。
【0414】
投与量及び間隔は、生物学的効果を誘導又は抑制するのに十分な活性成分のレベル(最小有効濃度MEC)を提供するように個々に調整され得る。MECは、各調製物について変化するが、インビトロデータから推定することができる。MECを達成するために必要な投与量は、個々の特徴及び投与経路に依存する。検出アッセイを使用して、血漿濃度を判定することができる。
【0415】
処置される状態の重篤度及び応答性に依存して、投薬は、単回又は複数回の投与であり得、処置の過程は、数日から数週間まで、又は治癒がもたらされるまで、又は疾患状態の軽減が達成されるまで続く。
【0416】
投与される組成物の量は、もちろん、処置される対象、苦痛の重症度、投与様式、処方する医師の判断などに依存する。
【0417】
本発明のいくつかの実施形態の組成物は、必要に応じて、有効成分を含有する1つ以上の単位剤形を含有し得る、FDA承認キットなどのパック又はディスペンサ装置で提供され得る。パックは、例えば、ブリスターパックなどの金属箔又はプラスチック箔を含み得る。パック又はディスペンサ装置には、投与のための説明書が添付されていてもよい。パック又はディスペンサはまた、医薬品の製造、使用、又は販売を規制する政府機関によって規定された形態で容器に付随する通知によって収容され得、この通知は、組成物の形態又はヒト若しくは動物への投与の機関による承認を反映する。そのような通知は、例えば、処方薬について米国食品医薬品局によって承認されたラベルであってもよく、又は承認された製品挿入物であってもよい。適合性の薬学的キャリア中に処方された本発明の調製物を含む組成物はまた、上記で更に詳述されるように、調製され、適切な容器に入れられ、示された状態の処置のためにラベル付けされ得る。
【0418】
本発明の別の態様によれば、本明細書に開示されるT細胞と、病的細胞及びTCR複合体に結合することができる治療用組成物と、をパッケージングするパッケージング材料を含む製品が提供される。
【0419】
特定の実施形態によれば、製品は、病的細胞に関連する疾患(例えば、癌)の処置のために特定される。
【0420】
特定の実施形態によれば、T細胞及び治療用組成物は、別々の容器にパッケージングされる。
【0421】
特定の実施形態によれば、T細胞及び治療用組成物は、共製剤中にパッケージングされる。
【0422】
本明細書で使用される場合、「約」という用語は、±10%を指す。
【0423】
「含む(comprises)」、「含んでいる(comprising)」、「含む(includes)」、「含んでいる(including)」、「有する(having)」という用語及びそれらの活用形は、「含むが、これに限定されない」ことを意味する。
【0424】
「~からなる」という用語は、「~を含み、~に限定される」ことを意味する。
【0425】
「から本質的になる」という用語は、組成物、方法、又は構造が、追加の組成物、工程、及び/又は部分を含んでもよいが、追加の組成物、工程、及び/又は部分が、特許請求される成分、方法、又は構造の基本的かつ新規な特徴を実質的に変更しない場合に限ることを意味する。
【0426】
本明細書で使用される場合、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」及び「その(the)」は、別途文脈で明確に示されない限り、複数の言及を含む。例えば、「化合物」又は「少なくとも1つの化合物」という用語は、複数の化合物(それらの混合物を含む)を含み得る。
【0427】
本出願を通して、本発明の様々な実施形態は、範囲形式で提示され得る。範囲形式での記載は、単に便宜上及び簡潔さのためであり、本発明の範囲に対する柔軟性のない限定として解釈されるべきではないことが理解されるべきである。したがって、範囲の記載は、具体的に開示された全ての可能な部分範囲並びにその範囲内の個々の数値を有すると考えられるべきである。例えば、1~6などの範囲の記載は、1~3、1~4、1~5、2~4、2~6、3~6などの部分範囲、並びにその範囲内の個々の数、例えば、1、2、3、4、5、及び6を具体的に開示しているとみなされるべきである。これは、範囲の幅に関係なく適用される。
【0428】
数値範囲が本明細書で示されるときはいつでも、示された範囲内の任意の引用された数字(分数又は整数)を含むことを意味する。第1の指示数と第2の指示数と「の間の範囲/範囲」、並びに第1の指示数「から」第2の指示数「までの範囲/範囲(ranging/ranges」という句は、本明細書において互換的に使用され、第1及び第2の指示数、並びにそれらの間の全ての分数及び整数を含むことを意味する。
【0429】
本明細書中で使用される場合、「方法」という用語は、所定のタスクを達成するための様式、手段、技術、及び手順をいい、これらとしては、化学分野、薬学分野、生物学分野、生化学分野、及び医学分野の実施者に公知であるか、又はこれらから容易に開発される様式、手段、技術、及び手順が挙げられるが、これらに限定されない。
【0430】
特定の配列表を参照する場合、このような参照はまた、例えば、配列決定エラー、クローニングエラー、又は塩基置換、塩基欠失若しくは塩基付加を生じる他の変化から生じるわずかな配列変動を含むとして、その相補的配列に実質的に対応する配列を包含すると理解されるべきであるが、ただし、このような変動の頻度は、50ヌクレオチド中1未満、あるいは100ヌクレオチド中1未満、あるいは200ヌクレオチド中1未満、あるいは500ヌクレオチド中1未満、あるいは1000ヌクレオチド中1未満、あるいは5000ヌクレオチド中1未満、あるいは10,000ヌクレオチド中1未満である。
【0431】
明確にするために別々の実施形態の文脈で説明される本発明の特定の特徴は、単一の実施形態において組み合わせて提供されてもよいことが理解される。逆に、簡潔にするために単一の実施形態の文脈で記載されている本発明の様々な特徴はまた、別々に、又は任意の適切な部分的組み合わせで、又は本発明の任意の他の記載された実施形態において適切に提供され得る。様々な実施形態の文脈で説明される特定の特徴は、実施形態がそれらの要素なしで動作しない場合を除き、それらの実施形態の本質的な特徴とみなされるべきではない。
【0432】
上記で説明され、以下の特許請求の範囲の項で請求される本発明の様々な実施形態及び態様は、以下の実施例において実験的な裏付けを見出す。
【0433】
実施例
ここで以下の実施例を参照するが、これらの実施例は、上記の説明と共に、本発明のいくつかの実施形態を非限定的に例示するものである。
【0434】
一般に、本明細書中で使用される命名法及び本発明において利用される実験手順は、分子技術、生化学技術、微生物学的技術、及び組換えDNA技術を含む。このような技術は、文献において十分に説明されている。例えば、「Molecular Cloning:Alaboratory Manual」、Sambrookら(1989);「Current Protocols in Molecular Biology」、I-III巻、Ausubel,R.M.編(1994年);Ausubelら、「Current Protocols in Molecular Biology」、John Wiley and Sons、メリーランド州バルチモア(1989年);Perbal、「A Practical Guide to Molecular Cloning」、John Wiley & Sons、ニューヨーク(1988年);Watsonら、「Recombinant DNA」、Scientific American Books、ニューヨーク;Birrenら(編)「Genome Analysis:A Laboratory Manual Series」、1-4巻、Cold Spring Harbor Laboratory Press、ニューヨーク(1998年);米国特許第4,666,828号;同第4,683,202号;同第4,801,531号;同第5,192,659号、及び同第5,272,057号に記載されている方法;「Cell Biology:A Laboratory Handbook」、I-III巻、Cellis,J.E.編(1994年);「Culture of Animal Cells-A Manual of Basic Technique」Freshney、Wiley-Liss、ニューヨーク(1994年)、第3版:「Current Protocols in Immunology」、I-III巻、Coligan J.E.編(1994年);Stitesら(編)、「Basic and Clinical Immunology」(第8版)、Appleton & Lange、カリフォルニア州ノーウォーク(1994年);Mishell及びShiigi(編)、「Selected Methods in Cellular Immunology」、W.H.Freeman and Co.、ニューヨーク(1980年)を参照されたい。利用可能なイムノアッセイは、特許及び科学文献に広く記載されており、例えば、米国特許第3,791,932号;同第3,839,153号;同第3,850,752号;同第3,850,578号;同第3,853,987号;同第3,867,517号;同第3,879,262号;同第3,901,654号;同第3,935,074号;同第3,984,533号;同第3,996,345号;同第4,034,074号;同第4,098,876号;同第4,879,219号;同第5,011,771号、及び同第5,281,521号;「Oligonucleotide Synthesis」、Gait,M.J.編(1984年);「Nucleic Acid Hybridization」、Hames,B.D.及びHiggins S.J.編(1985年);「Transcription and Translation」、Hames,B.D.及びHiggins S.J.編(1984年);「Animal Cell Culture」、Freshney,R.I.編(1986年);「Immobilized Cells and Enzymes」、IRL Press(1986年);「A Practical Guide to Molecular Cloning」、Perbal,B.(1984年)及び「Methods in Enzymology」、1-317巻、Academic Press;「PCR Protocols:A Guide To Methods And Applications」、Academic Press、カリフォルニア州サンディエゴ(1990年);Marshakら、「Strategies for Protein Purification and Characterization-A Laboratory Course Manual」、CSHL Press(1996年)を参照されたい。これらは全て、参照により本明細書に完全に記載されているかのように組み込まれる。他の一般的な参考文献は、本文献全体を通じて提供される。その中の手順は、当該技術分野において周知であると考えられ、読者の便宜のために提供される。そこに含まれる全ての情報は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0435】
材料及び方法
細胞培養及び試薬-K562、Raji、及び293T細胞株(JCRB)を、供給業者によって推奨されるように培養した。全ての細胞株を、PowerPlex16 HSキット(Promega)を使用してショートタンデムリピート(STR)プロファイリングによって認証した。細胞数及び生存率を、それぞれ血球計数器及びトリパンブルー排除アッセイを使用して推定した。研究グレードのブリナツモマブ及びMT110は、Oak BioSciences,Inc(米国カリフォルニア州)から購入した。
【0436】
内因性TCR陰性T細胞の生成-ヒト末梢血単核細胞(PBMC)細胞を、フィコール-ハイパック密度勾配遠心分離を使用して、健常ドナーの末梢血試料から精製した。抽出したPBMCを活性化し、OKT3(Biolegend、カタログ番号317301)を用いて、500U/mLのIL-2(Peprotech、200-02)及び抗生物質を補充した4Cell(登録商標)Nutri-T Media(Sartorius、05-11F2001-1K)中の24ウェル懸濁液プレート中で増殖させた。活性化の72時間後に、細胞を、AMAXA Nucleofector(Lonza)を使用して、Alt-RCRISPR-Cas9システムを使用するSpCas9 RNP及びヒト定常α領域(配列番号1)又はヒト定常β領域(配列番号45)(IDT、Coralville)を標的とするsgRNAで電気穿孔した。電気穿孔された細胞を、500U/mLのIL-2及び抗生物質を補充した4Cell(登録商標)Nutri-T培地中で培養した。電気穿孔の3日後、ほとんどの細胞は、抗CD3フロー抗体(PE-Cy7OKT3 Biolegend、カタログ番号317333)によって決定される定常α又はβ鎖に対して陰性であった(>85%)。陰性細胞は、95%~99.9%のCD3-/TCRcellsに達するように、製造者の指示に従って、磁気抗CD3ビーズ(Miltenyi Biotec、カタログ番号130-050-101)によって更に濃縮された(
図3A)。α鎖及びβ鎖の両方をノックアウトするために、細胞を、α鎖(配列番号1)を標的とするgRNAでまず電気穿孔し、磁気ビーズによって負に選択し、次いで、β領域(配列番号45)を標的とするsgRNAで更に電気穿孔し、その後、CD3-/TCR-T細胞の磁気ビーズ精製を行った。
【0437】
DNA構築物及びクローニング-RTV-020レトロウイルスベクター(Cell Biolabs Inc.、カリフォルニア州サンディエゴ)を使用した。各構築物について、アミノ酸配列を最適化し(IDT、Coralville)、各配列を、示されるように、異なるTCRα及び/又はβポリペプチド、V5-フーリン-P2A配列(SYangら、2008年)及びEGFP又は切断型NGFR(ΔNGFR)をコードするポリペプチドを発現するように設計した。設計された構築物の概略図を
図2A~Bに示し、アミノ酸配列は配列番号2~3、26~32、46、48~52、57、59、61~69、109、123、125、及び127に提供され、核酸配列は、配列番号33~41、53~56、58、60、70~80、110、124、126、及び128に提供される。最終配列をgBlocks(登録商標)(IDT,Coralville)として注文した。gBlocks(登録商標)を、適切なプライマー及びHigh fidelity PrimeSTAR GXL DNAポリメラーゼ(カタログ番号R050B、TAKARA)を使用して増幅し、次いでBamHI-HF及びXhoI(NEB)で消化し、レトロウイルスベクターに連結した。示される場合、3つの突然変異をα鎖の膜貫通ドメインに導入した:S116L、G119V、及びF120L(LVLと記される)。示される場合、システインは、α鎖及びβ鎖(Cys)の両方に導入された:α鎖にT48C及びβ鎖にS57C、α鎖にL12C及びβ鎖にS17C、α鎖にY43C及びβ鎖にL63C、α鎖にS61C及びβ鎖にR79C、α鎖にL12C及びβ鎖にF14C、α鎖にV22C及びβ鎖にF14C、α鎖にY10C及びβ鎖にS17C、α鎖にT45C及びβ鎖にD59C、α鎖にL50C及びβ鎖にS57C、α鎖にS61C及びβ鎖にS57C、α鎖にT45C及びβ鎖にS77C、α鎖にS15C及びβ鎖にV13C、又はα鎖にS15C及びβ鎖にE15C。示されている場合(mmと記されている)、いくつかの突然変異を、以下のように、α鎖及びβ鎖の細胞外ドメインに導入した。α鎖突然変異P91S、E92D、S93V、S94P;β鎖突然変異:E18K、S22A、F133I、E/V136A、Q139H。示した場合(Desと記す)、いくつかの突然変異を以下のようにα鎖及びβ鎖に導入した。α鎖突然変異S21F、T32I、A72T及びβ鎖突然変異E18K、H23R、D39P、S54D。サンガー配列決定を使用して、クローニングされたベクターを検証した。同様に、国際特許出願公開第WO2020138371号によって開示されるBa9(配列番号:83-84)及びα6(配列番号:81-82)構築物を設計し、クローニングした。
【0438】
ウイルス調製及び形質導入手順-ウイルス粒子を、CMV-gagPol及びCMV-VSVG(Cell Biolabs,Inc.)を使用して、収縮したレトロウイルスベクターによる293T細胞の一過性トランスフェクションによって生成した。CRISPR編集されたTCR陰性T細胞を、Retronectin(TaKaRa Bio)でコーティングした組織培養プレート上に播種し、濃縮したウイルス粒子を添加した。細胞をウイルス調製物と共に7時間インキュベートし、次いで、培地を、500U/mLのIL-2及び抗生物質を補充した4Cell(登録商標)Nutri-T培地と交換した。
【0439】
フローサイトメトリー分析-製造業者の指示に従って、細胞をOKT3抗CD3-APC(Biolegend)で染色した。結果は、Gallios(商標)及びCytoflex Flow Cytometers(Beckman Coulter,Inc.)を使用して得た。フローサイトメトリーの結果を、FlowJo v10ソフトウェアを使用して分析した。
【0440】
インビトロ抗腫瘍効果-内因性TCR陰性T細胞を、T48C突然変異及びLVL突然変異を含むBluT、並びにS57C突然変異(配列番号125~126)を含む切断型β鎖に感染させ、ΔNGFRマーカーを使用して磁気ビーズで選択した。続いて、細胞を、Raji-F.Luc CD19+リンパ腫細胞(カタログ番号IFO50046JCRB)と共に、様々なE:T比で、500μg/mLのブリナツモマブ(CD19 BiTE)の存在下又は非存在下で、37℃で24時間インキュベートし、ホタルルシフェラーゼ活性をGloMax(登録商標)Discover Microplate Readerによって測定して細胞傷害性を判定した。抗CD19CAR-T細胞は、内因性TCR陰性T細胞に抗CD19(FMC63)-CD28z(配列番号127~128)を感染させ、ΔNGFRマーカーを用いて磁気ビーズで選択し、非改変CD3陽性TCR陽性T細胞を陽性対照として使用した。
【0441】
インビボ抗腫瘍効果-2×106Raji-F.Lucを、107個のT細胞(T48C突然変異及びLVL突然変異を含む切断型α鎖並びにS57Cを含む切断型β鎖(配列番号125~126)をコードするベクターで感染させ、ΔNGFRマーカーを使用して磁気ビーズで選択した内因性TCR陰性T細胞)(n=10);抗CD19(FMC63)-CD28zに感染させ、ΔNGFRマーカーを使用して磁気ビーズで選択した内因性TCR陰性抗CD19 CAR-T細胞(n=8);又は非改変CD3陽性TCR陽性T細胞(n=16)、を有する(n=34)又は有さない(n=8)NSGマウスに皮下注射した。注射の24時間後、示された群を5μg/マウスのブリナトムマブで5日間連続して静脈内処置した。生物発光イメージング(IVIS(登録商標)Lumina X5、PerkElmer)を60日目まで週1回実施して、腫瘍増殖を追跡した。
【0442】
実施例1
切断型T細胞受容体(TCR)の生成
本発明者らは、TCRα鎖及びβ鎖の可変領域を欠いている新規の操作されたTCRを考案した。本明細書において「平滑末端切断型TCR(BluT)」と称されるこのTCRは、細胞表面上のTCR複合体の一部として提示され(
図1A)、MHC機構を介していかなる抗原も認識しないTCRとして機能することができ、したがって、内因性TCRα鎖又はβ鎖とのミスマッチ対合の場合であってもGvHDの誘導を防止する(
図1B)。
【0443】
この目的のために、それらの可変領域を欠くヒトTCRα鎖及び/又はβ鎖をコードするいくつかの構築物を設計し(
図2A~B、アミノ酸配列は配列番号2~3及び26~32、46~52、57、59、61~69、81、83、109、123、125、及び127に提供され、核酸配列は配列番号33~41、53~56、58、60、70、80、82、84、124、126、及び128に提供される)、レトロウイルスにパッケージングし、TCR陰性T細胞(TCRα鎖のCRISPRターゲティングによって形成される)に感染させるために使用した(
図3A~B)。EGFPを、安定感染のマーカーとして使用した。
図3B及び4A並びに以下の表1に示されるように、切断型α鎖のみ又は切断型β鎖のみをコードするベクターの導入は、細胞表面上のTCR複合体の提示をもたらさなかった(表面上のCD3の発現がないことによって明示される)。更に、切断型α鎖及びβ鎖(TRBC1鎖又はTRBC2鎖のいずれか)をコードするベクターの導入は、細胞表面上のTCR複合体の提示をもたらさなかった。
【0444】
この問題を解決するために、本発明者らは、切断型TCRを安定化させる改変を探索した(
図3B~8B及び以下の表1)。
【0445】
安定化突然変異S116L、G119V、及びF120L(LVLとして示される)を含む切断型α鎖をコードするベクター、及び切断型β鎖をコードするベクター;又はコンピュータにより設計された安定化突然変異、すなわち、α鎖にS21F、T32I、A72T及びβ鎖にE18K、H23R、D39P、S54D(Desと記す)を含む切断型α鎖及びβ鎖をコードするベクターの導入は、細胞表面上でのTCR複合体の提示をもたらさなかった(
図4及び7)。更に、内因性α鎖を発現しない初代T細胞において発現させることを試みると、国際特許出願公開第WO2020138371号に開示されている。単独又は完全定常β鎖を有する最も高くランク付けされた切断型α鎖は、CD3再発現をもたらさなかった(
図8B)。
【0446】
しかしながら、T48C突然変異を含む切断型α鎖及びS57Cを含む切断型β鎖をコードするベクターを導入して、α鎖とβ鎖との間に更なるジスルフィド結合を形成させると、細胞表面上にTCR複合体が提示された(表面上でのCD3の再発現によって明示される)(
図3B及び4)。更に、T48/S57システイン突然変異へのLVL突然変異の付加は、細胞表面上のCD3再発現を改善した(
図4)。重要なことに、他の適用可能なシステイン部位においてα鎖とβ鎖との間に更なるジスルフィド結合をもたらす突然変異を導入すること(配列番号85~108;例えば、Boulterら、2003年を参照)、CD3再発現を可能にしなかった(
図6)。更に、α鎖の定常ドメインのN末端からの11個以上のアミノ酸の除去は、複合体を不安定化し、CD3発現を防止することが見出された(
図8A)。
【0447】
加えて、α鎖中に最小マウスアミノ酸置換(mmとして表示される)、すなわち、P91S、E92D、S93V、S94Pを、及びβ鎖中にE18K、S22A、F133I、E/V136A、Q139Hを含む切断型α鎖及びβ鎖をコードするベクターの導入もまた、細胞表面上でのTCR複合体の提示をもたらした(表面上でのCD3の再発現によって明らかにされる)(
図7)。システイン突然変異と同様に、mm修飾にLVL修飾を付加することにより、CD3再発現が更に増強された。
【0448】
これらの結果が、内因性α鎖をノックアウトして内因性TCRの細胞表面発現を防止する場合に排他的に有効ではないことを示すために、SpCas9 RNPを使用して内因性β鎖を標的化した(
図5)。同様に、切断型α鎖及びβ鎖をコードするベクターを導入しても、細胞表面上にTCR複合体が提示されなかったが、T48C突然変異を含む切断型α鎖及びS57C突然変異を含む切断型β鎖をコードするベクターを導入することにより、細胞表面上にTCR複合体が提示された(表面上のCD3の再発現によって現れる)。α及びβ内因性鎖の両方のノックアウトは、更なる効果を有さなかった。
【0449】
まとめると、可変ドメインを欠くヒトTCRα鎖及びβ鎖を含むTCR複合体をT細胞の表面上で発現させるためには、ヒトTCR野生型配列に対する改変を導入しなければならない。以下の可能かつ十分な改変が同定された:α鎖のT48及びβ鎖のS57をシステイン残基で置換すること、及び/又は両方の鎖におけるいくつかの残基をそれらのマウス対応物で置換すること。α鎖におけるLVL突然変異の更なる導入は、細胞表面発現を改善する。
【0450】
【0451】
実施例2
二重特異性T細胞エンゲージャと組み合わせてBluTTCRを発現するT細胞は、有効なインビトロ腫瘍細胞溶解を誘導する。
いくつかの実施形態の治療戦略は、BluTを発現するT細胞を、一方でTCR複合体(例えば、CD3)に結合し、他方で癌抗原に結合する二重特異性抗体と共に対象に注入することに基づくので、形質導入されたT細胞の細胞傷害活性は、例えば、抗CD19二重特異性T細胞エンゲージャ(BiTE)ブリナツモマブ及び/又は抗EPCAM BiTE-MT110と組み合わせて、例えばCD19+Raji細胞及び/又はEGFR+K562細胞上でインビトロで評価することができる。T細胞活性化は、例えば、CD107の発現及びIFNγ、TNFα、IL-2などのサイトカインの分泌によって判定することができる。細胞傷害活性は、例えば、非処置対照と比較したRLUの変化、CD19又はEGFRパーセンテージの減少によって判定することができる。BluTによる形質導入されたT細胞の正の選択のために、(
図2A~B及び上記の実施例1に記載されるEGFPの代わりに)ΔNGFRが選択マーカーとして使用され得る。
【0452】
この目的のために、T48C突然変異及びLVL突然変異を含む切断型α鎖並びにS57Cを含む切断型β鎖を発現する内因性TCR陰性T細胞を、ブリナツモマブ(CD19 BiTE)の存在下又は非存在下で、様々なE:T比でRaji-F.Luc CD19陽性リンパ腫株と共に24時間インキュベートし、ホタルルシフェラーゼ活性を測定して、細胞傷害性を判定した(
図9)。内因性TCR陰性抗CD19CAR-T細胞及び非改変CD3陽性TCR陽性T細胞を、陽性対照として使用した。
【0453】
完全内因性TCR(MHC-TCR機構を介して腫瘍細胞を認識することができ、その結果、BiTEを添加することなく標的細胞に対する細胞傷害活性を有する)を含有する非改変T細胞とは異なり、改変切断型TCRを含むT細胞は、抗CD3メディエーターの存在下でのみ抗腫瘍活性を有する。更に、改変切断型TCRを含むT細胞は、非改変T細胞又は抗CD19CAR-T細胞と比較して、有意により細胞毒性であった。
【0454】
実施例3
二重特異性T細胞エンゲージャと組み合わせてBluT TCRを発現するT細胞を有効なインビボ抗腫瘍EFFECRを誘導する。
いくつかの実施形態の治療戦略は、BluTを発現するT細胞を、一方でTCR複合体(例えば、CD3)に結合し、他方で癌抗原に結合する二重特異性抗体と共に対象に注入することに基づくので、T48C突然変異及びLVL突然変異を含む切断型α鎖並びにS57Cを含む切断型β鎖を発現する内因性TCR陰性T細胞の細胞傷害活性を、抗CD19BiTEブリナツモマブと組み合わせてCD19+Raji細胞を移植したマウスにおいてインビボで評価した。内因性TCR陰性抗CD19CAR-T細胞及び非改変CD3陽性TCR陽性T細胞を、陽性対照として使用した。
【0455】
図10に示すように、改変切断型TCRを含むT細胞は、抗CD3メディエーターの存在下でのみ抗腫瘍活性を有する。
【0456】
本発明をその特定の実施形態に関連して説明してきたが、多くの代替例、修正例、及び変形例が当業者には明らかであることは明白である。したがって、添付の特許請求の範囲の精神及び広い範囲内に入る全てのそのような代替例、修正例、及び変形例を包含することが意図される。
【0457】
本明細書で言及される全ての刊行物、特許及び特許出願は、あたかも個々の刊行物、特許又は特許出願が参照されたときに参照により本明細書に組み込まれるべきであると具体的かつ個別に記載されているかのように、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれるべきであることが出願人の意図である。加えて、本出願における任意の参考文献の引用又は特定は、そのような参考文献が本発明に対する先行技術として利用可能であることの承認として解釈されるべきではない。セクションの見出しが使用される限りにおいて、それらは必ずしも限定するものとして解釈されるべきではない。加えて、本出願の任意の優先権書類(複数可)は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0458】
参考文献
(他の参考文献は、本出願全体を通じて引用される)。
1.MacKay M、Afshinnekoo E、Rub J、Hassan C、Khunte M、Baskaran Nら。The therapeutic landscape for cells engineered with chimeric antigen receptors.Nat Biotechnol[インターネット].2020[2020年1月20日に引用];www(dot)ncbi(dot)nlm(dot)nih(dot)gov/pubmed/31907405から入手可能。
2.Sadelain M、Riddell S。Therapeutic T cell engineering.Nature[インターネット].Nature Publishing Group;2017年;545:423-31。dx(dot)doi(dot)org/10(dot)1038/nature22395から入手可能。
3.Fesnak AD、June CH、Levine BL。Engineered T cells:The promise and challenges of cancer immunotherapy.Nat Rev Cancer[インターネット].Nature Publishing Group;2016年;16:566-81。dx(dot)doi(dot)org/10(dot)1038/nrc(dot)2016(dot)97から入手可能。
4.Kershaw MH、Westwood JA、Darcy PK。Gene-engineered T cells for cancer therapy.Nat Rev Cancer[インターネット].Nature Publishing Group;2013年;13:525-41。dx(dot)doi(dot)org/10(dot)1038/nrc3565から入手可能。
5.Safarzadeh Kozani P、Safarzadeh Kozani P、Rahbarizadeh F、Khoshtinat Nikkhoi S。Strategies for Dodging the Obstacles in CAR T Cell Therapy[インターネット]。Front.Oncol.Frontiers Media S.A.;2021[2021年5月27日に引用]924頁。www(dot)frontiersin(dot)orgから入手可能。
6.Goebeler ME、Bargou RC.T cell-engaging therapies-BiTEs and beyond.Nat Rev Clin Oncol[インターネット]。Springer US;2020年;17:418-34。dx(dot)doi(dot)org/10(dot)1038/s41571-020-0347-5から入手可能。
7.Rajat Bannerji,MD,PhD,John N.Allan,MD,Jon E.Arnason,MD,Jennifer R.Brown,MD,PhD,Ranjana Advani,MD,Stephen M.Ansell,MD,PhD,Susan M.O’Brien,MD,Johannes Duell,MD,Peter Martin,FRCPC,MD,MS,Robin M.Joyce,MD,Jingjin Li,PhD,Dina M.M.Odronextamab(REGN1979),a Human CD20 x CD3 Bispecific Antibody,Induces Durable,Complete Responses in Patients with Highly Refractory B-Cell Non-Hodgkin Lymphoma,Including Patients Refractory to CAR T Therapy.2020年。ash(dot)confex(dot)com/ash/2020/webprogram/Paper136659(dot)htmlから入手可能。
8.Ahamadi-Fesharaki R、Fateh A、Vaziri F、Solgi G、Siadat SD、Mahboudi Fら。Single-Chain Variable Fragment-Based Bispecific Antibodies:Hitting Two Targets with One Sophisticated Arrow.Mol Ther-Oncolytics[インターネット].Elsevier Ltd.2019年;14:38-56。doi(dot)org/10(dot)1016/j(dot)omto(dot)2019(dot)02(dot)004から入手可能。
9.Garber K.Driving T-cell immunotherapy to solid tumors.Nat Biotechnol.Nature Publishing Group;2018年;36:215-9。
10.Slaney CY、Wang P、Darcy PK、Kershaw MH。CARs versus biTEs:A comparison between T cell-redirection strategies for cancer treatment[インターネット]。Cancer Discov.American Association for Cancer Research Inc.;2018[2021年5月27日に引用]。924-34頁。www(dot)aacrjournals(dot)orgから入手可能。
11.Chandran SS、Klebanoff CA。T cell receptor-based cancer immunotherapy:Emerging efficacy and pathways of resistance.Immunol Rev.2019年;290:127-47。
12.Gudipati V、Rydzek J、Doel-Perez I、Goncalves VDR、Scharf L、Koenigsberger Sら。Inefficient CAR-proximal signaling blunts antigen sensitivity。Nat Immunol.2020年;21:848-56。
13.Helsen CW、Hammill JA、Lau VWC、Mwawasi KA、Afsahi A、Bezverbnaya Kら。The chimeric TAC receptor co-opts the T cell receptor yielding robust anti-tumor activity without toxicity.Nat Commun[インターネット].Springer US;2018年;9:1-13。dx(dot)doi(dot)org/10(dot)1038/s41467-018-05395-yから入手可能。
14.Baeuerle PA、Ding J、Patel E、Thorausch N、Horton H、Gierut Jら、Synthetic TRuC receptors engaging the complete T cell receptor for potent anti-tumor response.Nat Commun[インターネット].Springer US;2019年;10:1-12。dx(dot)doi(dot)org/10(dot)1038/s41467-019-10097-0から入手可能。
15.Lee YG、Chu H、Lu Y、Leamon CP、Srinivasarao M、Putt KSら。Regulation of CAR T cell-mediated cytokine release syndrome-like toxicity using low molecular weight adapters.Nat Commun[インターネット].Springer US;2019年;10:1-11。dx(dot)doi(dot)org/10(dot)1038/s41467-019-10565-7から入手可能。
16.Ghorashian S、Kramer AM、Onuoha S、Wright G、Bartram J、Richardson Rら。Enhanced CAR T cell expansion and prolonged persistence in pediatric patients with ALL treated with a low-affinity CD19 CAR.Nat.Med.Nature Publishing Group;2019年。1408-14頁。
17.Benjamin R、Graham C、Yallop D、Jozwik A、Mirci-Danicar OC、Lucchini Gら。Genome-edited,donor-derived allogeneic anti-CD19 chimeric antigen receptor T cells in paediatric and adult B-cell acute lymphoblastic leukaemia:results of two phase 1 studies.Lancet.2020年;396:1885-94。
18.Alderton GK.Immunotherapy:Engineered T cells for all.Nat.Rev.Cancer.Nature Publishing Group;2017年、206-7頁。
19.Van Loenen MM、De Boer R、Amir AL、Hagedoorn RS、Volbeda GL、Willemze Rら。Mixed T cell receptor dimers harbor potentially harmful neoreactivity.Proc Natl Acad Sci USA。2010年;107:10972-7。
20.Mack M、Gruber R、Schmidt S、Riethmuller G、Kufer P。Biologic properties of a bispecific single-chain antibody directed against 17-1A(EpCAM)and CD3:tumor cell-dependent T cell stimulation and cytotoxic activity.J Immunol.1997年;158。
21.Exley M、Terhorst C、Wileman T。Structure,assembly and intracellular transport of the T cell receptor for antigen.Semin Immunol.1991年;3:283-97。
22.Garfall AL、Dancy EK、Cohen AD、Hwang WT、Fraietta JA、Davis MMら。T-cell phenotypes associated with effective CAR T-cell therapy in postinduction vs relapsed multiple myeloma.Blood Adv.2019年;3:2812-5。
23.Lamers CHJ、Sleijfer S、Vulto AG、Kruit WHJ、Kliffen M、Debets Rら。Treatment of metastatic renal cell carcinoma with autologous T-lymphocytes genetically retargeted against carbonic anhydrase IX:first clinical experience.J Clin Oncol[インターネット].2006年[2020年1月20日に引用];24:e20-2。www(dot)ncbi(dot)nlm(dot)nih(dot)gov/pubmed/16648493から入手可能。
24.Morgan RA、Yang JC、Kitano M、Dudley ME、Laurencot CM、Rosenberg SA.Case report of a serious adverse event following the administration of t cells transduced with a chimeric antigen receptor recognizing ERBB2.Mol Ther.2010年;18:843-51。
25.Linette GP、Stadtmauer EA、Maus M V.、Rapoport AP、Levine BL、Emery Lら、Cardiovascular toxicity and titin cross-reactivity of affinity-enhanced T cells in myeloma and melanoma.Blood.2013年;122:863-71。
26.Morgan RA、Chinnasamy N、Abate-Daga D、Gros A、Robbins PF、Zheng Z,ら。Cancer regression and neurological toxicity following anti-MAGE-A3 TCR gene therapy.J.Immunother.2013年;36:133-51。
27.Brudno JN、Kochenderfer JN。Toxicities of chimeric antigen receptor T cells:Recognition and management.Blood.American Society of Hematology;2016年;3321-30頁。
28.Maude SL、Barrett D、Teachey DT、Grupp SA。Managing cytokine release syndrome associated with novel T cell-engaging therapies.Cancer J.(米国)。Lippincott Williams and Wilkins;2014年.119-22頁。
29.Grupp SA、Kalos M、Barrett D、Aplenc R、Porter DL、Rheingold SRら。Chimeric Antigen Receptor-Modified T Cells for Acute Lymphoid Leukemia.N Engl J Med[インターネット].2013年[2020年1月20日に引用];368:1509-18。www(dot)nejm(dot)org/doi/10(dot)1056/NEJMoa1215134から入手可能。
30.Fry TJ、Shah NN、Orentas RJ、Stetler-Stevenson M、Yuan CM、Ramakrishna Sら。CD22-targeted CAR T cells induce remission in B-ALL that is naive or resistant to CD19-targeted CAR immunotherapy.Nat Med.Nature Publishing Group;2018年;24:20-8。
31.Choi BD、Yu X、Castano AP、Bouffard AA、Schmidts A、Larson RCら。CAR-T cells secreting BiTEs circumvent antigen escape without detectable toxicity.Nat Biotechnol.Nature Publishing Group;2019年;37:1049-58。
32.Liu Y、Liu G、Wang J、Zheng ZY、Jia L、Rui Wら。Chimeric STAR receptors using TCR machinery mediate robust responses against solid tumors.Sci Transl Med.2021年;13。
33.Yang S、Cohen CJ、Peng PD、Zhao Y、Cassard L、Yu Zら。Development of optimal bicistronic lentiviral vectors facilitates high-level TCR gene expression and robust tumor cell recognition.Gene Ther[インターネット].Nature Publishing Group;2008年[2021年5月28日引用];15:1411-23。www(dot)nature(dot)com/gtから入手可能。
34.Haga-Friedman A、Horovitz-Fried M、Cohen CJ。Incorporation of Transmembrane Hydrophobic Mutations in the TCR Enhance Its Surface Expression and T Cell Functional Avidity.J Immunol.2012年;188:5538-46。
35.Jin BY、Campbell TE、Draper LM、Stevanovic S、Weissbrich B、Yu Z,ら。Engineered T cells targeting E7 mediate regression of human papillomavirus cancers in a murine model.JCI insight.2018年;3。
36.Kuball J、Hauptrock B、Malina V、Antunes E、Voss RH、Wolfl Mら。Increasing functional avidity of TCR- Redirected T cells by removing defined N- glycosylation sites in the TCR constant domain.J Exp Med.2009年;206:463-75。
37.Cohen CJ、Li YF、El-Gamil M、Robbins PF、Rosenberg SA、Morgan RA。Enhanced antitumor activity of T cells engineered to express T-cell receptors with a second disulfide bond.Cancer Res.2007年;67:3898-903。
38.Boulter JM、Glick M、Todorov PT、Baston E、Sami M、Rizkallah Pら。Stable,soluble T-cell receptor molecules for crystallization and therapeutics.Protein Eng.2003年;16:707-11。
39.Kuball J、Dossett ML、Wolfl M、Ho WY、Voss RH、Fowler Cら。Facilitating matched pairing and expression of TCR chains introduced into human T cells.Blood.2007年;109:2331-8。
40.Froning K、Maguire J、Sereno A、Huang F、Chang S、Weichert Kら。Computational stabilization of T cell receptors allows pairing with antibodies to form bispecifics.Nat Commun[インターネット].Springer US;2020年;11:1-14。dx(dot)doi(dot)org/10(dot)1038/s41467-020-16231-7から入手可能。
41.Sommermeyer D、Uckert W。Minimal Amino Acid Exchange in Human TCR Constant Regions Fosters Improved Function of TCR Gene-Modified T Cells.J Immunol.2010年;184:6223-31。
42.Brischwein K、Schlereth B、Guller B、Steiger C、Wolf A、Lutterbuese Rら。MT110:A novel bispecific single-chain antibody construct with high efficacy in eradicating established tumors.Mol Immunol[インターネット].Mol Immunol;2006年[2021年5月30日引用];43:1129-43。pubmed(dot)ncbi(dot)nlm(dot)nih(dot)gov/16139892/から入手可能。
【配列表】