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特表2024-536649可変遊星キャリアシステム及びそれを備えた遊星式伝動装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-07
(54)【発明の名称】可変遊星キャリアシステム及びそれを備えた遊星式伝動装置
(51)【国際特許分類】
   F16H 1/28 20060101AFI20240930BHJP
   F16H 55/18 20060101ALI20240930BHJP
【FI】
F16H1/28
F16H55/18
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024518259
(86)(22)【出願日】2021-10-18
(85)【翻訳文提出日】2024-03-21
(86)【国際出願番号】 CN2021124464
(87)【国際公開番号】W WO2023065072
(87)【国際公開日】2023-04-27
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521337045
【氏名又は名称】愛磁科技(寧波)有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100130111
【弁理士】
【氏名又は名称】新保 斉
(72)【発明者】
【氏名】凌 子龍
【テーマコード(参考)】
3J027
3J030
【Fターム(参考)】
3J027FA01
3J027FA11
3J027FA37
3J027FB32
3J027GB03
3J027GC13
3J027GC22
3J027GE01
3J027GE26
3J027GE29
3J030AA02
3J030AB04
(57)【要約】
【課題】 可変遊星キャリアシステム及びそれを備えた遊星式伝動装置を提供することを課題とする。
【解決手段】 可変遊星キャリアシステムであって、弾性遊星キャリア(1)、剛性テーパーブッシュ(2)及び剛性テーパーブッシュの軸方向調整機構(3)から構成され、弾性遊星キャリア(1)は側壁側壁の内面の一部がテーパ面に加工された遊星キャリアであり、側壁には弾性遊星キャリアに弾性変形を生じさせるための交互に配置された切り欠き(103)が加工され、剛性テーパーブッシュ(2)は弾性遊星キャリア(1)に内嵌され、外側壁の一部には弾性遊星キャリア(1)の側壁内面のテーパ面に適合するテーパ面が加工され、剛性テーパーブッシュの軸方向調整機構(3)は、弾性遊星キャリア(1)及び/又は剛性テーパーブッシュ(2)の端部に軸方向に取り付けられた調整ボルト/ナット或いは弾性体で、軸方向調整機構(3)を使用して弾性遊星キャリア(1)を膨張して遊星歯車を外側に膨らませることで噛み合う内歯車を押し付け、遊星歯車の公転半径を大きくしてバックラッシュをなくすか、又は遊星歯車と内歯車との間に歯面予圧を加えるために用いられる。可変遊星キャリアシステムを備えた遊星式伝動装置にも関する。
【選択図】 図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
可変遊星キャリアシステムであって、弾性遊星キャリア、剛性テーパーブッシュ及び剛性テーパーブッシュの軸方向調整機構から構成され、
前記弾性遊星キャリアは、側壁の内面の一部がテーパ面に加工された遊星キャリアであり、遊星歯車を収容するための第1空間を有し、各前記第1空間の軸方向の少なくとも一端には前記遊星歯車を取り付けるための軸又は軸穴が設けられ、前記弾性遊星キャリアの前記側壁には、前記第1空間を避けて交互に配置された切り欠きが加工され、前記切り欠きは外力が加えられた際に前記弾性遊星キャリアの前記側壁周長を弾性的に伸ばすことで、前記弾性遊星キャリアに弾性変形を生じさせるために用いられ、
前記剛性テーパーブッシュは、前記弾性遊星キャリアに内嵌され、前記剛性テーパーブッシュの少なくとも一部には前記弾性遊星キャリアの前記側壁内面の前記テーパ面に適合するテーパ面が加工されることで、前記剛性テーパーブッシュの前記テーパ面を加工した外面と前記弾性遊星キャリアの前記テーパ面を加工した前記側壁内面との間を緊合させ、
前記剛性テーパーブッシュの軸方向調整機構は、前記弾性遊星キャリア及び/又は前記剛性テーパーブッシュの端部に軸方向に取り付けられた調整ボルト/ナット或いは弾性体で、前記剛性テーパーブッシュに前記剛性テーパーブッシュの小径部の方向に向ける軸方向力を加えるために用いられ、前記軸方向調整機構を使用して前記剛性テーパーブッシュを軸方向に押して前記弾性遊星キャリアを膨張させ、前記弾性遊星キャリア内に設けられた前記遊星歯車を外側に膨らませることで、噛み合う内歯車を押し付け、前記遊星歯車の公転半径を大きくしてバックラッシュをなくすか、又は前記遊星歯車と前記内歯車との間に歯面予圧を加えるために用いられる
ことを特徴とする、可変遊星キャリアシステム。
【請求項2】
前記テーパ面を設けた前記弾性遊星キャリアの前記側壁には、前記弾性遊星キャリアの軸方向/径方向に沿って少なくとも一対の交互に配置された切り欠きが加工され、2つの前記交互に配置された切り欠きの向きが逆向きになり、一対の前記交互に配置された切り欠きの各々の深さの和は前記弾性遊星キャリアの前記切り欠き位置の切り欠き加工前の肉厚より大きいことを特徴とする、請求項1に記載の可変遊星キャリアシステム。
【請求項3】
前記剛性テーパーブッシュの側壁には、前記第1空間に適合し、前記遊星歯車及び/又は太陽歯車を収容するための第2空間が設けられることを特徴とする、請求項1に記載の可変遊星キャリアシステム。
【請求項4】
前記軸方向調整機構は、弾性リードであり、前記弾性リードの外縁が前記弾性遊星キャリアの端面にネジで固定され、前記弾性リードの内縁が前記剛性テーパーブッシュの大径端面に接触され、前記弾性リードの弾性力を利用して前記剛性テーパーブッシュに小径部の方向に向ける圧力を発生させることを特徴とする、請求項1に記載の可変遊星キャリアシステム。
【請求項5】
前記剛性テーパーブッシュと前記弾性遊星キャリアの周方向の相対的な回転を制限するための制限機構をさらに設けることを特徴とする、請求項1に記載の可変遊星キャリアシステム。
【請求項6】
前記剛性テーパーブッシュの大径端面には、制限機構として少なくとも1つの突起又は凹溝が設けられ、前記弾性リードの対応する位置には前記制限機構に対応する凹溝又は突起が設けられ、前記剛性テーパーブッシュの前記突起又は前記凹溝と互いに係止して、前記剛性テーパーブッシュと前記弾性遊星キャリアの周方向の相対的な回転を制限することを特徴とする、請求項4に記載の可変遊星キャリアシステム。
【請求項7】
前記剛性テーパーブッシュのテーパ角度は、セルフロック効果を奏するため、6~12°であることを特徴とする、請求項4に記載の可変遊星キャリアシステム。
【請求項8】
前記軸方向調整機構は、調整ナットであり、前記剛性テーパーブッシュの小径端部には前記調整ナットに適合する雄ネジが加工され、前記調整ナットが前記剛性テーパーブッシュの前記雄ネジにねじ込むことで、前記弾性遊星キャリアの端面を押し付け、前記調整ナットの張力を利用して前記剛性テーパーブッシュに小径部の方向に向ける張力を発生することを特徴とする、請求項1に記載の可変遊星キャリアシステム。
【請求項9】
前記弾性遊星キャリアは、対称的に配置された環状の支持天板と環状の支持底板とを備え、前記支持底板の上面には複数の遊星キャリア支持柱が設けられ、前記遊星キャリア支持柱の頂部には前記環状の支持天板が設けられ、前記支持柱、前記環状の支持天板及び前記環状の支持底板の内面には、それぞれテーパ面が加工され、前記遊星キャリアの各前記支持柱位置には前記弾性遊星キャリアの径方向に沿う一対の交互に配置された切り欠きが加工されることを特徴とする、請求項1に記載の可変遊星キャリアシステム。
【請求項10】
遊星式伝動装置であって、前記遊星式伝動装置内の遊星キャリアは請求項1~9のいずれか一項に記載の可変遊星キャリアシステムであり、前記遊星式伝動装置は3K型遊星式伝動装置であり、前記軸方向調整機構を使用して前記剛性テーパーブッシュを軸方向に押して前記弾性遊星キャリアを膨張させ、前記遊星式伝動装置の前記遊星歯車を外側に膨らませることで、前記遊星式伝動装置の内歯車を押し付け、前記遊星歯車の公転半径を大きくしてバックラッシュをなくすか、又は前記遊星歯車と前記内歯車との間に歯面予圧を加えるために用いられることを特徴とする、遊星式伝動装置。
【請求項11】
遊星式伝動装置であって、前記遊星式伝動装置内の遊星キャリアは請求項1~9のいずれか一項に記載の可変遊星キャリアシステムであり、前記遊星式伝動装置は太陽歯車を省いた3K型遊星式伝動装置であり、前記遊星式伝動装置の前記可変遊星キャリアシステムが入力端となり、前記軸方向調整機構を使用して前記剛性テーパーブッシュを軸方向に押して前記弾性遊星キャリアを膨張させ、前記遊星式伝動装置の前記遊星歯車を外側に膨らませることで、前記遊星式伝動装置の内歯車を押し付け、前記遊星歯車の公転半径を大きくしてバックラッシュをなくすか、又は前記遊星歯車と前記内歯車との間に歯面予圧を加えるために用いられることを特徴とする、遊星式伝動装置。
【請求項12】
遊星式伝動装置であって、前記遊星式伝動装置内の遊星キャリアは請求項1~9のいずれか一項に記載の可変遊星キャリアシステムであり、前記遊星式伝動装置は太陽歯車を省いた3K型遊星式伝動装置を基に、追加の太陽歯車と、少なくとも2つの追加の第3前記遊星歯車とを備え、前記追加の太陽歯車は前記第3前記遊星歯車と噛み合って伝動し、第3前記遊星歯車を自転させ、各前記第3前記遊星歯車と前記遊星式伝動装置の前記遊星歯車の1つは同軸上に配設され、相対的に固定され、前記遊星式伝動装置の前記追加の太陽歯車は入力端となり、前記軸方向調整機構を使用して前記剛性テーパーブッシュを軸方向に押して前記弾性遊星キャリアを膨張させ、前記遊星式伝動装置の前記遊星歯車を外側に膨らませることで、前記遊星式伝動装置の内歯車を押し付け、前記遊星歯車の公転半径を大きくしてバックラッシュをなくすか、又は前記遊星歯車と前記内歯車との間に歯面予圧を加えるために用いられることを特徴とする、遊星式伝動装置。
【請求項13】
遊星式伝動装置であって、前記遊星式伝動装置内の遊星キャリアは請求項1~9のいずれか一項に記載の可変遊星キャリアシステムであり、前記遊星式伝動装置は内歯車を備えた2K-H型遊星式伝動装置であり、前記軸方向調整機構を使用して前記剛性テーパーブッシュを軸方向に押して前記弾性遊星キャリアを膨張させ、前記遊星式伝動装置の前記遊星歯車を外側に膨らませることで、前記遊星式伝動装置の前記内歯車を押し付け、前記遊星歯車の公転半径を大きくしてバックラッシュをなくすか、又は前記遊星歯車と前記内歯車との間に歯面予圧を加えるために用いられることを特徴とする、遊星式伝動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遊星式伝動装置に関し、特に、可変遊星キャリアシステム及びそれを備えた遊星式伝動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
遊星歯車機構は、通常、遊星キャリア、太陽歯車、内歯車及び遊星歯車から構成され、前記遊星歯車は太陽歯車及び内歯車と噛み合い、遊星歯車の自転の回転軸は遊星キャリアにより支持される。多くの遊星歯車機構の中には、3K型遊星式伝動装置が含まれる。前記3K型遊星式伝動装置には、単一遊星歯車型及び複合遊星歯車型のI型、II型、III型の3種類があり、3K型遊星式伝動装置の構造、歯車パラメータ設定及び伝達比の計算などについては、遊星歯車伝動分野の一般的な技術知識として多くの論文で紹介され、特にこの50年間、国内外の研究学者は3K型遊星式伝動装置の各種な構造及び歯形などの技術パラメータについて多くの論文で詳細に説明してきた。3つ以上の遊星歯車を備えたトランスミッションでは、遊星キャリアは通常、均等に配置された支柱(連結プレートとも呼ばれる)により連結された2つの環状側板1及び2(又は二重壁)で構成されるスペースフレーム構造である。支柱の数は遊星歯車の数と同じであり、支柱の横方向寸法が遊星歯車のサイズにより決まる。遊星歯車軸受は、一般に遊星歯車の内部に取り付けられるが、伝達比が小さいため遊星歯車の直径が小さい場合があり、遊星歯車軸受の一定の寿命を確保するため、軸受を側板内に配置せざるを得なかった。
【0003】
また従来の遊星伝動装置では、歯車の加工誤差及び組立誤差により、伝達精度が低い、バックラッシが大きい、負荷分散特性が低下するなどの問題が発生する以外に、歯車の使用により歯面が摩耗することで、バックラッシの問題が益々深刻になっていった。
【0004】
このため、歯面摩耗や加工の誤差によるバックラッシの問題を解決し、遊星式伝動装置の寿命と伝達精度を向上させる伝動装置が求められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記欠陥を克服するため本発明は、遊星キャリアの膨らみにより遊星歯車を内歯車に近づかせ、遊星歯車と内歯車との間のバックラッシを圧縮しながら一定の予圧を与えることができ、伝達精度や負荷分散特性の向上に貢献し、また歯車の使用により歯面が摩耗するに伴い、可変遊星キャリアシステムが可変し続けることで、伝動装置の寿命を延ばすことができ、特にロボットなどのバックラッシ要求が高い応用分野では、伝動装置の寿命が大幅に向上する可変遊星キャリアシステム及びそれを備えた遊星式伝動装置を提供する。なお、歯車の経年による摩耗と継続的な可変調整に伴い、遊星歯車と内歯車との間の噛み合い効率がより向上し、使用による摩耗に応じて伝達過程中の振動が徐々に減少する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の目的は、次の技術的手段により達成する。
【0007】
本発明の第1の態様は、弾性遊星キャリア、剛性テーパーブッシュ及び剛性テーパーブッシュの軸方向調整機構から構成された可変遊星キャリアシステムに関するもので、
弾性遊星キャリアは、側壁の内面の一部がテーパ面に加工された遊星キャリアであり、遊星歯車を収容するための第1空間を有し、前記各第1空間の軸方向の少なくとも一端には遊星歯車を取り付けるための軸又は軸穴が設けられ、弾性遊星キャリアの側壁には、第1空間を避けて交互に配置された切り欠きが加工され、前記切り欠きは外力が加えられた際に弾性遊星キャリアの側壁周長を弾性的に伸ばすことで、前記弾性遊星キャリアに弾性変形を生じさせるために用いられ、
前記剛性テーパーブッシュは、前記弾性遊星キャリアに内嵌され、前記剛性テーパーブッシュの少なくとも一部には弾性遊星キャリアの側壁内面のテーパ面に適合するテーパ面が加工されることで、前記剛性テーパーブッシュのテーパ面を加工した外面と前記弾性遊星キャリアのテーパ面を加工した側壁内面との間を緊合させ、
前記剛性テーパーブッシュの軸方向調整機構は、弾性遊星キャリア及び/又は剛性テーパーブッシュの端部に軸方向に取り付けられた調整ボルト/ナット或いは弾性体で、前記剛性テーパーブッシュに剛性テーパーブッシュの小径部の方向に向ける軸方向力を加えるために用いられ、前記軸方向調整機構を使用して前記剛性テーパーブッシュを軸方向に押して前記弾性遊星キャリアを膨張させ、前記弾性遊星キャリア内に設けられた遊星歯車を外側に膨らませることで、噛み合う内歯車を押し付け、前記遊星歯車の公転半径を大きくしてバックラッシュをなくすか、又は遊星歯車と内歯車との間に歯面予圧を加えるために用いられる。
【0008】
また、テーパ面を設けた前記弾性遊星キャリアの側壁には、前記弾性遊星キャリアの軸方向/径方向に沿って少なくとも一対の交互に配置された切り欠きが加工され、2つの交互に配置された切り欠きの向きが逆向きになり、一対の交互に配置された切り欠きの各々の深さの和は前記弾性遊星キャリアの切り欠き位置の切り欠き加工前の肉厚より大きい。
【0009】
また、前記剛性テーパーブッシュの側壁には、第1空間に適合し、遊星歯車及び/又は太陽歯車を収容するための第2空間が設けられる。
【0010】
また、前記剛性テーパーブッシュの軸方向調整機構は、弾性リードであり、前記弾性リードの外縁が前記弾性遊星キャリアの端面にネジで固定され、前記弾性リードの内縁が前記剛性テーパーブッシュの大径端面に接触され、前記弾性リードの弾性力を利用して前記剛性テーパーブッシュに小径部の方向に向ける圧力を発生させる。
【0011】
また、前記剛性テーパーブッシュと前記弾性遊星キャリアの周方向の相対的な回転を制限するための制限機構をさらに設ける。
【0012】
また、前記剛性テーパーブッシュの大径端面には、制限機構として少なくとも1つの突起又は凹溝が設けられ、前記弾性リードの対応する位置には前記制限機構に対応する凹溝又は突起が設けられ、剛性テーパーブッシュの突起又は凹溝と互いに係止して、前記剛性テーパーブッシュと前記弾性遊星キャリアの周方向の相対的な回転を制限する。
【0013】
また、前記剛性テーパーブッシュのテーパ角度は、セルフロック効果を奏するため、16°未満、好ましくは6~12°である。
【0014】
また、前記軸方向調整機構は、調整ナットであり、前記剛性テーパーブッシュの小径端部には前記調整ナットに適合する雄ネジが加工され、前記調整ナットが前記剛性テーパーブッシュの雄ネジにねじ込むことで、前記弾性遊星キャリアの端面を押し付け、前記調整ナットの張力を利用して前記剛性テーパーブッシュに小径部の方向に向ける張力を発生する。
【0015】
また、前記弾性遊星キャリアは、対称的に配置された環状の支持天板と環状の支持底板とを備え、前記支持底板の上面には複数の遊星キャリア支持柱が設けられ、前記遊星キャリア支持柱の頂部には前記環状の支持天板が設けられ、前記支持柱、環状の支持天板及び環状の支持底板の内面には、それぞれ前記テーパ面が加工され、前記弾性遊星キャリアの各前記支持柱位置には前記弾性遊星キャリアの径方向に沿う一対の交互に配置された切り欠きが加工される。
【0016】
本発明の第2の態様は、前記可変遊星キャリアシステムを備えた遊星式伝動装置を開示するものであり、前記遊星式伝動装置は3K型遊星式伝動装置であり、前記軸方向調整機構を使用して前記剛性テーパーブッシュを軸方向に押して前記弾性遊星キャリアを膨張させ、前記遊星式伝動装置の遊星歯車を外側に膨らませることで、前記遊星式伝動装置の内歯車を押し付け、前記遊星歯車の公転半径を大きくしてバックラッシュをなくすか、又は遊星歯車と内歯車との間に歯面予圧を加えるために用いられる。
【0017】
本発明の第3の態様は、前記可変遊星キャリアシステムを備えた遊星式伝動装置を開示するものであり、前記遊星式伝動装置は、太陽歯車を省いた3K型遊星式伝動装置であり、前記遊星式伝動装置の可変遊星キャリアシステムが入力端となり、前記軸方向調整機構を使用して前記剛性テーパーブッシュを軸方向に押して前記弾性遊星キャリアを膨張させ、前記遊星式伝動装置の遊星歯車を外側に膨らませることで、前記遊星式伝動装置の内歯車を押し付け、前記遊星歯車の公転半径を大きくしてバックラッシュをなくすか、又は遊星歯車と内歯車との間に歯面予圧を加えるために用いられる。
【0018】
本発明の第4の態様は、前記可変遊星キャリアシステムを備えた遊星式伝動装置を開示するものであり、前記遊星式伝動装置は太陽歯車を省いた3K型遊星式伝動装置を基に、追加の太陽歯車と、少なくとも2つの追加の第3遊星歯車とを備え、前記追加の太陽歯車は前記第3遊星歯車と噛み合って伝動し、第3遊星歯車を自転させ、各前記第3遊星歯車と前記遊星式伝動装置の遊星歯車の1つは同軸上に配設され、相対的に固定され、前記遊星式伝動装置の追加の太陽歯車は入力端となり、前記軸方向調整機構を使用して前記剛性テーパーブッシュを軸方向に押して前記弾性遊星キャリアを膨張させ、前記遊星式伝動装置の遊星歯車を外側に膨らませることで、前記遊星式伝動装置の内歯車を押し付け、前記遊星歯車の公転半径を大きくしてバックラッシュをなくすか、又は遊星歯車と内歯車との間に歯面予圧を加えるために用いられる。
【0019】
本発明の第5の態様は、前記可変遊星キャリアシステムを備えた遊星式伝動装置を開示するものであり、前記遊星式伝動装置は内歯車を備えた2K-H型遊星式伝動装置であり、前記軸方向調整機構を使用して前記剛性テーパーブッシュを軸方向に押して前記弾性遊星キャリアを膨張させ、前記遊星式伝動装置の遊星歯車を外側に膨らませることで、前記遊星式伝動装置の内歯車を押し付け、前記遊星歯車の公転半径を大きくしてバックラッシュをなくすか、又は遊星歯車と内歯車との間に歯面予圧を加えるために用いられる。
【発明の効果】
【0020】
従来技術と比較して、本発明の技術的手段によりもたらされる有利な効果として、
本発明の可変遊星キャリアシステム及びそれを備えた遊星式伝動装置は、遊星キャリアの膨らみにより遊星歯車を内歯車に近づかせ、遊星歯車と内歯車との間のバックラッシを圧縮しながら一定の予圧を与えることができ、伝達精度や負荷分散特性の向上に貢献し、また歯車の使用により歯面が摩耗するに伴い、可変遊星キャリアシステムが可変し続けることで、伝動装置の寿命を延ばすことができ、特にロボットなどのバックラッシ要求が高い応用分野では、伝動装置の寿命が大幅に向上する。なお、歯車の経年による摩耗と継続的な可変調整に伴い、遊星歯車と内歯車との間の噛み合い効率がより向上し、使用による摩耗に応じて伝達過程中の振動が徐々に減少する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の実施例1に係る可変遊星キャリアシステムの正面図である。
図2】本発明の実施例1に係る可変遊星キャリアシステムの背面図である。
図3】本発明の実施例1に係る可変遊星キャリアシステムの立体図である。
図4】本発明の実施例1に係る可変遊星キャリアシステムの立体分解図である。
図5】本発明の実施例1に係るキー構造を有する可変遊星キャリアシステムの立体分解図である。
図6】本発明の実施例1に係る遊星歯車に組み付けられた可変遊星キャリアシステムの概略構成図である。
図7】本発明の実施例2に係る遊星式伝動装置の構造原理を示す概略図である。
図8】本発明の実施例3に係る遊星式伝動装置の構造原理を示す概略図である。
図9】本発明の実施例4に係る遊星式伝動装置の構造原理を示す概略図である。
図10】本発明の実施例5に係る遊星式伝動装置の構造原理を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の実施形態の目的、技術的手段、有利な効果、及び顕著な進歩性をより明確にさせるため、以下、例中で提供される図面を参照して、本発明の実施形態における技術的手段を詳細かつ完全に説明するが、説明する実施形態は、本発明の一部の実施形態であり、全ての実施形態でないことは言うまでもない。本発明の実施形態によりなされた例示に基づいて、当業者は創造性の活動をしない前提で従来の遊星キャリア形状と従来の3K型遊星式伝動装置及び内歯車を備えた従来の2K-H型遊星式伝動装置から得られた全ての他の実施形態は、いずれも本発明の保護範囲に属する。
【0023】
本発明の明細書及び特許請求の範囲において「第1」、「第2」、「第3」などの用語は、異なる要素を区別するためにのみ使用され、必ずしも特定の順番を記述するために使用されているのではないことに留意されたい。
【0024】
また、以下の具体的実施形態は、互いに組み合わせることができ、その中の同一又は類似の概念或いはプロセスは、一部の実施形態において繰り返して説明されない場合があることにも留意されたい。
【実施例1】
【0025】
図1~3に示すように、可変遊星キャリアシステムであって、前記可変遊星キャリアシステム8は、ロボット又は精密自動化設備に使用される遊星減速機内の可変遊星キャリアシステムであり、伝達の精度を向上させるために用いられ、弾性遊星キャリア1、剛性テーパーブッシュ2及び軸方向調整機構3から成る。前記可変遊星キャリアシステムは、剛性テーパーブッシュが小径部方向の軸方向に移動する際に膨らんで、前記弾性遊星キャリアに設けられた遊星歯車の公転半径を大きくするか、或いは剛性テーパーブッシュが小径部方向に向ける軸方向力を受けた際、遊星歯車に外向きに膨らむ径方向力を加えることを維持するシステムであり、したがって、遊星歯車が噛み合う内歯車を押し付け、遊星歯車と外歯車との間のバックラッシュを低減し、伝達の精度を向上させることができる。本実施例の環状フレーム遊星キャリアは、両側板フレーム構造であるが、省スペース化を図るために単一側板構造も選択可能で、可変遊星キャリアシステムにより遊星歯車又は太陽歯車との干渉が起こらない。
【0026】
前記弾性遊星キャリアは、環状構造で、内壁が環状壁であり、対称的に配置された環状の支持天板105と環状の支持底板102とを備え、前記支持底板102の上面には3つの遊星キャリア支持柱104が設けられ、前記遊星キャリア支持柱104の頂部には前記環状の支持天板105が設けられ、前記支持柱104、環状の支持天板105及び環状の支持底板102の内面にはそれぞれ前記テーパ面が加工され、2つの遊星キャリア支持柱104間にある前記支持底板102には遊星歯車を設置するための3つ遊星軸孔101が設けられ、遊星キャリアの各前記支持柱104の位置には、前記弾性遊星キャリアの軸方向に沿う一対の交互に配置された切り欠きが加工され、2つの交互に配置された切り欠きの向きが逆向きになり、一対の交互に配置された切り欠きの各々の深さの和は前記弾性遊星キャリア1の切り欠き位置の切り欠き加工前の肉厚より大きい。切り欠きを設ける目的は、弾性遊星キャリア1に微小な弾性変形を生じさせて、弾性遊星キャリアの側壁周長を弾性的に伸ばすこと、すなわち遊星キャリア上の遊星歯車の取り付け位置の半径を大きくすることである。上述の説明に加えて、切り欠き103を径方向に加工してもよい。前記弾性遊星キャリア1に微小な弾性変形を生じさせる構造としては様々な構造が考えられるが、上記はあくまで一例であるが、本質は伸ばせる環状の周長であるので、遊星キャリア上の環状は真円ではなく、様々なタイプの切り欠きを加工して周長が伸ばされることができるようにさせなければならない。また、伸ばされることができる切り欠きは、遊星歯車とずらして配置するのが最適である。これにより、遊星歯車間の距離を均等に伸ばすことができ、遊星キャリアの膨らむ過程中に、遊星歯車の配置位相を変えることなく、遊星歯車がよりよく半径方向に移動できるようになる。
【0027】
支持天板105の上面には、前記支持底板上の遊星軸孔の位置に対応する3つの遊星軸孔101及び軸方向調整機構を取り付けるための複数の雌ネジ孔106が設けられる。前記弾性遊星キャリアの2つの遊星キャリア支持柱104間に遊星歯車を収容するための第1空間107が形成される。
【0028】
前記剛性テーパーブッシュ2は、環状構造で、前記弾性遊星キャリア1に内嵌され、前記剛性テーパーブッシュ2の上端部と下端部の外径が異なり、前記上端部の外径が前記下端部の外径より大きく、前記剛性テーパーブッシュ2の下端部は前記弾性遊星キャリア1に挿入され、前記上端部は前記軸方向調整機構3に面する。前記剛性テーパーブッシュ2の外側壁の少なくとも一部には、弾性遊星キャリアの側壁内面のテーパ面に適合するテーパ面が加工されることで、前記剛性テーパーブッシュのテーパ面を加工した外面と前記弾性遊星キャリアのテーパ面を加工した側壁内面との間を緊合させる。前記上端部の上面には制限機構として突起又は凹部が設けられ、前記制限機構は前記軸方向調整機構3上の対応する制限機構により制限されることで、前記剛性テーパーブッシュ2と前記弾性遊星キャリア1の周方向の相対的な回転を制限する。図4図5に示すように、前記上端部の上面には、間隔をあけた突起が設けられ、突起のサイズが前記軸方向調整機構3の内縁302の下面の形状に適合することで、前記軸方向調整機構3と剛性テーパーブッシュ2とを互いに係止させ、前記剛性テーパーブッシュ2と前記弾性遊星キャリア1の周方向の相対的な回転を制限する。任意選択で、前記弾性遊星キャリア1と剛性テーパーブッシュ2との接触面には、周方向の相対的な回転を制限し、剛性テーパーブッシュが回転により遊星歯車との干渉を生じないように、キーによる固定などの簡単な係止構造が設けられる。図5に示すように、前記弾性遊星キャリア1の内壁には、第2キー121が設けられ、前記剛性テーパーブッシュの外壁に適合するキー溝122が設けられ、キーの増設により両者の相対回転を制限し、同時にこのキーによる固定も弾性遊星キャリアのねじり剛性を高めることもできる。
【0029】
図2に示すように、任意選択で、前記弾性遊星キャリア1の前記支持底板の底面には、トルク伝達用の3つの第1キー溝12が追加加工され、遊星キャリアが変形や膨らむことができるため、遊星キャリア上には遊星キャリアが可変した場合でも、周方向のトルクを伝達できるための端面ラジアルキー溝などの類似の構造が設けられる。
【0030】
前記剛性テーパーブッシュ2の外側壁には、前記弾性遊星キャリア1の第1空間107に適合し、遊星歯車及び/又は太陽歯車を収容するための第2空間201が加工され、前記第2空間201は実際のニーズに応じて凹溝又は中空構造であり得、太陽歯車のある減速機に適用する場合、前記第2空間201を中空構造に加工し、太陽歯車のない減速機に適用する場合、前記第2空間201を凹溝又は中空構造に加工することができる前記剛性テーパーブッシュ2の第2空間201を除く外側壁には、弾性遊星キャリア1の内壁のテーパ面に適合するテーパ面が加工されることで、前記剛性テーパーブッシュ2の外面と前記弾性遊星キャリア1の側壁内面との間とを緊合させる。前記剛性テーパーブッシュ2のテーパ角度は、セルフロック効果を奏し、遊星歯車が大きな荷重のラジアル分力を受けた時に遊星キャリアが縮んでバネで軸方向に調整されるテーパーブッシュを押し戻す現象を避けるため、16°未満、好ましくは6~12°である。
【0031】
前記剛性テーパーブッシュの軸方向調整機構3は、弾性遊星キャリア1及び/又は剛性テーパーブッシュ2の端部に軸方向に取り付けられた調整ボルト/ナット或いは弾性体で、前記剛性テーパーブッシュ2に剛性テーパーブッシュ2の小径部の方向に向ける軸方向力を加えるために用いられ、前記軸方向調整機構を使用して前記剛性テーパーブッシュ2を軸方向に押して前記弾性遊星キャリアを膨張させ、前記弾性遊星キャリア内に設けられた遊星歯車を外側に膨らませることで、噛み合う内歯車を押し付け、前記遊星歯車の公転半径を大きくしてバックラッシュをなくすか、又は遊星歯車と内歯車との間に歯面予圧を加えるために用いられる。図4に示すように、前記軸方向調整機構3は、弾性リードであり、前記弾性リードは内縁302と、外縁303とを備え、前記外縁303上に前記雌ネジ孔106に適合する螺合孔が間隔をあけて設けられ、螺合孔は前記ネジ301が螺合孔と雌ネジ孔106を挿通して前記剛性テーパーブッシュの軸方向調整機構3と前記弾性遊星キャリア1とを固定するために用いられる。前記弾性リードの内縁302は、前記剛性テーパーブッシュ2の大径端面に接触され、前記弾性リードの弾性力を利用して前記剛性テーパーブッシュ2に小径部の方向に向ける圧力を発生させる。実際に使用する時、遊星歯車と内歯車を組み付けてから弾性リードを取り付ける。
【0032】
任意選択で、前記剛性テーパーブッシュの軸方向調整機構3は、調整ナット(本実施例の図とは異なる)などのねじ構造を選択することもでき、前記剛性テーパーブッシュ2の小径端部には前記調整ナットに適合する雄ネジが加工され、前記調整ナットが前記剛性テーパーブッシュ2のあらかじめ設けられた雄ネジにねじ込むことで、前記弾性遊星キャリアの端面を押し付け、前記調整ナットの張力を利用して前記剛性テーパーブッシュ2に小径部の方向に向ける張力を発生する。実際に使用する時、事前に膨らんだ遊星キャリアの遊星歯車が内歯車に組み込むことができないように、遊星歯車と内歯車を組み付けてから調整ネジを締め付ける。実際に応用する時、遊星キャリアの膨らむストロークが非常に小さいため、弾性遊星キャリアに対する剛性テーパーブッシュ2の軸方向調整ストロークが非常に小さく、通常、所要の半径の膨らみは遊星歯車の歯車厚の半分を超えないため、テーパーブッシュの調整はネジでもバネでも大きな調整ストロークの設計を必要とせず、遊星式伝動装置の各部品の精度レベルは高い場合において、微小可変遊星キャリアシステムとして設計することも可能であり、この時遊星キャリアに微小弾性変形量を満たすことができる切り欠き103を加工するだけでよい。
【0033】
図6は、本発明の実施例1に係る遊星歯車に組み付けられた可変遊星キャリアシステムの概略構成図である。
【実施例2】
【0034】
図7に示すように、本発明は、可変遊星キャリアシステムを備えた遊星式伝動装置も開示し、可変遊星キャリアシステムを備えた遊星式伝動装置は、第1内歯車6と、第2内歯車7と、複合遊星歯車9、10と、太陽歯車5と、可変遊星キャリアシステム8とを備えた3K型遊星式伝動装置であり、前記可変遊星キャリアシステム8は図4図5に示す弾性遊星キャリア1、剛性テーパーブッシュ2及び剛性テーパーブッシュの軸方向調整機構3で構成され、前記複合遊星歯車は第1遊星歯車9と、第2遊星歯車10とを備える。前記第1内歯車6は、前記第1遊星歯車9と噛み合い、前記第2内歯車7は前記第2遊星歯車10と噛み合う。前記可変遊星キャリアシステム8の構造は、実施例1と同じであるため、ここでその詳細な説明を省略する。任意選択で、前記遊星式伝動装置は、3K-II型遊星式伝動装置であってもよく、この場合複合遊星歯車のパラメータは全く同一であり、1つの歯車に加工することができる。
【0035】
従来の3K型遊星式伝動装置の多くは、両側板を備えたフレーム型遊星キャリアを使用しているが、本発明は従来の3K型遊星式伝動装置の遊星キャリアを上記可変遊星キャリアシステム8に置き換え、遊星歯車9、10を取り付け後遊星キャリア1の膨らみに伴って2つの内歯車6、7に押し付け、この遊星歯車の公転半径を大きくする方法はバックラッシュを効果的に除去するとともに遊星歯車と内歯車との間に一定の歯面予圧を加え、遊星歯車9、10又は内歯車6、7の歯面が摩耗した場合も遊星キャリアの膨らみを調整して歯面接触及び歯面予圧を維持することができる。2つの内歯車は、一組の遊星歯車と遊星キャリアを共有しているため、本発明の可変遊星キャリアシステム8を使用して遊星歯車を内歯車に外向きに押し付けて、生み出すバックラッシュの除去及び振動減の効果はより顕著であり、3K型遊星式伝動装置の遊星キャリアと内歯車との間に高い伝達比があるため、太陽歯車5と遊星歯車9との間のバックラッシュが本発明の遊星式伝動装置を減速機として使用する場合に出力バックラッシュに与える影響は少ない。
【0036】
本発明の遊星式伝動装置をロボット又は精密自動化設備に使用される遊星減速機としての応用において、前記出力内歯車7は出力軸16に連結され、太陽歯車5を伝動の高速端とし、前記入力軸15は前記太陽歯車5を駆動して遊星歯車を内歯車6、7に噛み合いながら転がらせることで、可変遊星キャリアシステム8を回転させ、前記出力内歯車7を回転させて出力軸16を回転駆動する。実際の組み立て時まず前記遊星歯車9、10及び前記可変遊星キャリアシステム8を前記内歯車6、7に組み込んだ後、実際のニーズに応じて前記剛性テーパーブッシュの軸方向調整機構3を調整して遊星歯車が外向きに膨らんだ後に太陽歯車5を組み込み、これにより遊星歯車とよりよく適合する太陽歯車5を選択することができ、太陽歯車5と遊星歯車9との間のバックラッシュを低減するのに役立つ。好ましくは、太陽歯車5及び入力軸などの部品をあらかじめ組み立て、又は一体物に加工してから前記遊星式伝動装置に組み込むことができる。従来の3K型遊星減速機において、遊星キャリアを本発明が提案する前記可変遊星キャリアシステムに置き換えることにより、伝達の精度などの性能を大幅に向上させることができ、これには従来技術における3K-I型、3K-II型及び3K-III型を含むが、これらに限定されない。
【実施例3】
【0037】
図8に示すように、本発明は、前記可変遊星キャリアシステムを備えた遊星式伝動装置も開示し、前記遊星式伝動装置は太陽歯車を省いた3K遊星式伝動装置であり、第1内歯車6と、第2内歯車7と、複合遊星歯車9、10と、太陽歯車5と、可変遊星キャリアシステム8とを備え、前記可変遊星キャリアシステム8は図4図5に示す弾性遊星キャリア1、剛性テーパーブッシュ2及び剛性テーパーブッシュの軸方向調整機構3で構成され、前記複合遊星歯車は第1遊星歯車9と、第2遊星歯車10とを備える。前記第1内歯車6は、前記第1遊星歯車9と噛み合い、前記第2内歯車7は前記第2遊星歯車10と噛み合う。
【0038】
従来の3K遊星式伝動装置と比較して、前記遊星式伝動装置は太陽歯車5を省き、本発明は従来の3K型遊星式伝動装置の遊星キャリアを上記可変遊星キャリアシステム8に置き換えた。前記可変遊星キャリアシステム8の構造は、実施例1と同じであるため、ここでその詳細な説明を省略する。任意選択で、前記遊星式伝動装置の前記複合遊星歯車は、複合遊星歯車のパラメータが全く同じであるため、1つの歯車に加工することができる。
【0039】
本実施例の遊星式伝動装置をロボット又は精密自動化設備に使用される遊星減速機としての応用において、遊星歯車9、10を取り付け後前記可変遊星キャリアシステム8の膨らみに伴って2つの内歯車6、7に押し付け、この遊星歯車の公転半径を大きくする方法はバックラッシュを効果的に除去するとともに遊星歯車と内歯車との間に一定の歯面予圧を加え、遊星歯車9、10又は内歯車6、7の歯面が摩耗した場合も遊星キャリアの膨らみを調整して歯面接触及び歯面予圧を維持することができる。可変遊星キャリアシステム8を伝動の高速端とし、すなわち入力軸15は前記可変遊星キャリアシステム8を直接駆動するため、前記可変遊星キャリアシステム8に連結され、前記可変遊星キャリアシステム8からトルクを入力して可変遊星キャリアシステム8を回転させ、遊星歯車9、10を内歯車6、7に噛み合いながら転がらせ、前記出力内歯車7は出力軸に連結される。前記第1遊星歯車9、第2遊星歯車10は、可変遊星キャリアシステム8上に取り付けられた同期回転の複合歯車であるため、前記第2遊星歯車10が前記出力内歯車7を駆動して出力軸16を回転駆動する。
【0040】
本実施例は、太陽歯車を省くため、太陽歯車5と遊星歯車9、10との間の噛み合いに起因する伝動バックラッシュ及び引き起こす振動を避けることができる。弾性遊星キャリア1の外壁には、入力軸15とトルクを伝達するための端面キー溝が設けられ、前記可変遊星キャリアシステム8が変形や膨らむことができるため、前記弾性遊星キャリア1上には遊星キャリアが可変した場合でも、軸方向のトルクを伝達できるための端面ラジアルキー溝などの構造が設けられる。
【実施例4】
【0041】
図9に示すように、可変遊星キャリアシステムを備えた遊星式伝動装置であって、前記遊星式伝動装置は、実施例3と構造が類似であり、太陽歯車を省いた3K型遊星式伝動装置を基に、第1内歯車6と、第2内歯車7と、第1遊星歯車9と、第2遊星歯車10と、可変遊星キャリアシステム8とを備える。実施例3と同一の構造であるため、ここでその詳細な説明を省略し、以下では相違点のみを説明する。前記遊星式伝動装置は、追加の第3遊星歯車14と、追加の太陽歯車55とを備え、前記追加の太陽歯車55は前記第3遊星歯車14と噛み合いながら伝動し、前記第3遊星歯車14と第1遊星歯車9は同軸上に配設され、相対的に固定され、前記遊星式伝動装置の追加の太陽歯車が入力端となる。
【0042】
本実施例の遊星式伝動装置をロボット又は精密自動化設備に使用される遊星減速機としての応用において、追加の太陽歯車55が高速入力端となり、前記入力軸15が前記追加の太陽歯車55を駆動し、追加の太陽歯車55は前記第3遊星歯車14と噛み合って伝動し、第3遊星歯車14を自転させる。前記第3遊星歯車14は、前記第1遊星歯車9と同軸かつ周方向に固定されたため、前記第1遊星歯車9を自転させながら前記可変遊星キャリアシステム8を公転させて、内歯車7を駆動して出力軸16を回転させることで、前記減速機は従来の3K型遊星式伝動と類似の伝動経路を実現する。従来の3K型遊星式伝動構造において、遊星歯車が内歯車及び太陽歯車の両方に噛み合っているため、各歯車のパラメータが相互に高い相関にあり、歯車の設計とマッチングが困難になる。本実施例から提案された従来の3K型遊星式伝動装置の太陽歯車を除去し、遊星歯車に追加の遊星歯車と追加の太陽歯車55との噛み合い構造を設けることにより、歯車パラメータ設計の要求が低下され、伝動装置のトルク負荷、減速比、振動及びバックラッシュなどの性能を最大限に最適化設計することに役立つ。任意選択で、全ての遊星歯車に追加の遊星歯車があるわけではなく、例えば6つの遊星歯車のうち、3つ又は2つで十分であり、バックラッシュをより良く排除し、滑らかさを向上させるため、内歯車と噛み合う遊星歯車よりも小さなモジュールで追加の太陽歯車及び追加の遊星歯車を設計することができる。
【実施例5】
【0043】
図10に示すように、可変遊星キャリアシステムを備えた遊星式伝動装置であって、前記遊星式伝動装置は、内歯車を有する2K-H型遊星式伝動装置であり、内歯車11と、遊星車4と、太陽歯車5と、可変遊星キャリアシステム8とを備え、可変遊星キャリアシステム8は図4図5に示す弾性遊星キャリア1、剛性テーパーブッシュ2及び剛性テーパーブッシュの軸方向調整機構3で構成される。前記可変遊星キャリアシステム8の構造は、実施例1と同じであるため、ここでその詳細な説明を省略する。前記遊星車4は、太陽歯車5及び内歯車11と噛み合い、前記可変遊星キャリアシステム8に取り付けられる。上記2K-H型遊星式伝動装置において、実施例1に記載の可変遊星キャリアシステムを採用したことによる技術的効果は、3K型ほど明らかではないが、遊星歯車と内歯車のバックラッシュを低減し、遊星車4と内歯車11との間に一定の予圧を与え、伝達の精度及び滑らかさを向上させる。
【0044】
本発明の遊星式伝動装置をロボット又は精密自動化設備に使用される遊星減速機としての応用において、前記内歯車11が固定され、前記入力軸15は前記太陽歯車5を駆動して遊星車4を内歯車11に噛み合いながら回転させることで、可変遊星キャリアシステム8を回転させ、前記可変遊星キャリアシステム8及び出力軸16は出力トルクを周方向に固定する。実際の組み立て時まず遊星車4及び可変遊星キャリアシステム8を内歯車11に組み込み、可変遊星キャリアシステム8の剛性テーパーブッシュの軸方向調整機構3を調整し、最後に太陽歯車を組み込み、これにより遊星歯車が外向きに膨らんだ後、よりよく適合する太陽歯車を選択することができ、太陽歯車と遊星歯車との間のバックラッシュを低減するのに役立ち、さらに太陽歯車及び入力軸などの部品をあらかじめ組み立て、又は一体物に加工してから減速機に組み込むこともできる。
【0045】
本発明の遊星式伝動装置は、加速器としても応用することができ、構造は減速機と同じであるため、ここでその詳細な説明を省略する。
【0046】
上述の実施例は、本発明の技術的手段を説明するためにのみ.用いられているものであり、本発明を限定する意図で用いられるものではない。本発明は、上述の各実施例を参照して詳細に説明されたが、前述の各実施例に記載された技術的手段を修正するか、或いは技術的特徴の一部又は全部を均等範囲で置き換えることができ、かかる修正或いは置換は、対応する技術的手段の本質を本発明の各実施例の技術的手段の範囲から逸脱させることはないことは、当業者には明白であろう。当業者が本明細書の内容に基づいて行われる本質的でない改良及び調整、若しくは置換は、本発明が求める保護範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0047】
10 第2遊星歯車
101 遊星軸孔
102 第1キー溝
103 切り欠き
104 遊星キャリア支持柱
105 支持天板
106 雌ネジ孔
107 第1空間
1 弾性遊星キャリア
11 内歯車
12 第1キー溝
121 第2キー
122 第2キー溝
14 第3遊星歯車
15 入力軸
16 出力軸
2 剛性テーパーブッシュ
201 第2空間
3 軸方向調整機構
301 ネジ
302 内縁
303 外縁
4 遊星歯車
5 太陽歯車
55 追加の太陽歯車
6 第1内歯車
7 第2内歯車
8 可変遊星キャリアシステム
9 第1遊星歯車
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
【国際調査報告】