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特表2024-536667相変化材料領域を改良した人工知能デバイスセル
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-08
(54)【発明の名称】相変化材料領域を改良した人工知能デバイスセル
(51)【国際特許分類】
   H10B 63/10 20230101AFI20241001BHJP
   H10N 70/00 20230101ALI20241001BHJP
【FI】
H10B63/10
H10N70/00 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024501272
(86)(22)【出願日】2022-08-11
(85)【翻訳文提出日】2024-01-10
(86)【国際出願番号】 EP2022072613
(87)【国際公開番号】W WO2023046363
(87)【国際公開日】2023-03-30
(31)【優先権主張番号】17/484,312
(32)【優先日】2021-09-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】390009531
【氏名又は名称】インターナショナル・ビジネス・マシーンズ・コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】INTERNATIONAL BUSINESS MACHINES CORPORATION
【住所又は居所原語表記】New Orchard Road, Armonk, New York 10504, United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】100112690
【弁理士】
【氏名又は名称】太佐 種一
(74)【代理人】
【識別番号】100120710
【弁理士】
【氏名又は名称】片岡 忠彦
(74)【復代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】オク、インジョ
(72)【発明者】
【氏名】ブリュー、ケビン
(72)【発明者】
【氏名】サラフ、イクバル、ラシッド
(72)【発明者】
【氏名】ソルニエ、ニコル
【テーマコード(参考)】
5F083
【Fターム(参考)】
5F083FZ10
5F083GA25
5F083HA06
5F083JA60
(57)【要約】
装置が、ヒータ、相変化材料領域、および上部金属層を含む。相変化材料領域は、ドーピング済みGST層および第1のGST層を含む。第1のGST層は、ドーピング済みGST層およびヒータの間にあり、ドーピング済みGST層には第1のGST層と異なるドーピングがされている。相変化材料領域は、ヒータおよび上部金属層の間に位置している。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒータ;
ドーピング済みゲルマニウム-アンチモン-テルル(GST)層および第1のGST層を有する相変化材料領域、ここで前記第1のGST層が前記ドーピング済みGST層および前記ヒータの間にあり、前記ドーピング済みGST層には前記第1のGST層と異なるドーピングがされている;および
上部金属層、ここで前記相変化材料領域が前記ヒータおよび前記上部金属層の間に位置している
を備える装置。
【請求項2】
前記ヒータの上に位置するライナをさらに備える、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記ライナが前記第1のGST層の中に位置している、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記ドーピング済みGST層が前記第1のGST層より少なくとも10倍厚い、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記相変化材料領域がさらに第2のGST層を有し、前記ドーピング済みGST層が前記第1のGST層および前記第2のGST層の間にあり、前記ドーピング済みGST層には前記第2のGST層と異なるドーピングがされている、請求項1に記載の装置。
【請求項6】
前記相変化材料領域がさらに第2のドーピング済みGST層および第3のGST層を有し、前記第2のドーピング済みGST層が前記第2のGST層および前記第3のGST層の間に位置しており、前記第2のドーピング済みGST層には前記第2のGST層および前記第3のGST層と異なるドーピングがされている、請求項5に記載の装置。
【請求項7】
コンタクトをさらに備え、前記上部金属層が前記コンタクトおよび前記相変化材料領域の間にある、請求項1に記載の装置。
【請求項8】
前記ヒータが誘電体の中に形成されており、前記相変化材料領域が前記誘電体の上に位置している、請求項1に記載の装置。
【請求項9】
パッドの上にヒータを形成する段階;
前記ヒータの上に相変化材料領域を形成する段階、ここで前記相変化材料領域がドーピング済みGST層および第1のGST層を有し、前記第1のGST層が前記ドーピング済みGST層および前記ヒータの間にあり、前記ドーピング済みGST層には前記第1のGST層と異なるドーピングがされている;および
前記相変化材料領域の上に上部金属層を形成する段階
を備える方法。
【請求項10】
前記相変化材料領域を形成する前に、前記ヒータの上にライナを形成する段階をさらに備える、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記相変化材料領域を形成した後に、前記ライナが前記第1のGST層の中に位置している、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記ドーピング済みGST層が前記第1のGST層より少なくとも10倍厚い、請求項9に記載の方法。
【請求項13】
前記相変化材料領域がさらに第2のGST層を有し、前記ドーピング済みGST層が前記第1のGST層および前記第2のGST層の間にあり、前記ドーピング済みGST層には前記第2のGST層と異なるドーピングがされている、請求項9に記載の方法。
【請求項14】
前記相変化材料領域がさらに第2のドーピング済みGST層および第3のGST層を有し、前記第2のドーピング済みGST層が前記第2のGST層および前記第3のGST層の間に位置しており、前記第2のドーピング済みGST層には前記第2のGST層および前記第3のGST層と異なるドーピングがされている、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
コンタクトを形成する段階をさらに備え、前記上部金属層が前記コンタクトおよび前記相変化材料領域の間にある、請求項9に記載の方法。
【請求項16】
前記ヒータが誘電体の中に形成されており、前記相変化材料領域が前記誘電体の上に位置している、請求項9に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は人工知能に関し、より詳細には、人工知能デバイスセルに関する。人工知能デバイスでは、情報を格納するセルに相変化材料(PCM)を用いる。例えば、人工知能デバイスの格納された状態または情報の変化を表すのに、PCMの相を変えるまたは変更することができる。しかしながら、一部のPCM材料(例えば、ドーピング済みゲルマニウム-アンチモン-テルル(GST))では、セルの他の要素に問題を引き起こすことがある。例えば、ドーピング済みGSTからの酸素が、セル内のヒータまたは上部金属に悪影響を及ぼすことがある。
【発明の概要】
【0002】
一実施形態によれば、装置がヒータ、相変化材料領域、および上部金属層を含む。相変化材料領域は、ドーピング済みGST層および第1のGST層を含む。第1のGST層は、ドーピング済みGST層およびヒータの間にあり、ドーピング済みGST層には第1のGST層と異なるドーピングがされている。相変化材料領域は、ヒータおよび上部金属層の間に位置している。他の実施形態には、本装置を構成するための方法が含まれる。
【0003】
別の実施形態によれば、装置がヒータおよび相変化材料領域を含む。相変化材料領域は、第1のGST層の上に配置されたドーピング済みGST層を含む。第1のGST層は、ドーピング済みGST層およびヒータの間にあり、ドーピング済みGST層には第1のGST層と異なるドーピングがされている。他の実施形態には、本装置を構成するための方法が含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0004】
図1】システムの一例を説明する図である。
【0005】
図2図1のシステムにおけるPCMセルの一例を説明する図である。
【0006】
図3図2のPCMセルにおけるPCM領域の一例を説明する図である。
【0007】
図4図2のPCMセルを形成する方法の一例を示すフローチャートである。
【0008】
図5A図2のPCMセルを形成する一段階を説明する図である。
【0009】
図5B図2のPCMセルを形成する一段階を説明する図である。
【0010】
図5C図2のPCMセルを形成する一段階を説明する図である。
【0011】
図5D図2のPCMセルを形成する一段階を説明する図である。
【0012】
図5E図2のPCMセルを形成する一段階を説明する図である。
【0013】
図5F図2のPCMセルを形成する一段階を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本開示は相変化材料(PCM)領域を備えた人工知能デバイスセルを企図しており、この領域は、本セルにおいてドーピング済みゲルマニウム-アンチモン-テルル(GST)層をヒータおよび上部金属から分離するバッファ層を含む。例えば、GST層がドーピング済みGST層とヒータおよび上部金属との間に位置するように、GST層はドーピング済みGST層の上方および下方に形成されてよい。ドーピング済みGST層にはその他のGST層と異なるドーピングがされてよい。例えば、ドーピング済みGST層は二酸化シリコンを用いてドーピングされてよく、その他のGST層はドーピングされていないか、または窒素、もしくは酸素を含まない別のドーパントを用いてドーピングされている。その結果、GST層は、特定の実施形態において、ドーピング済みGST層がヒータおよび上部金属を酸化すること、およびそれらに悪影響を及ぼすことを防止できる。
【0015】
図1では、システム100の一例を説明している。システム100は、プロセッサ102およびメモリ104を含んだコンピューティングシステムとしてよい。プロセッサ102およびメモリ104は、状態または情報を格納するのにPCMを用いる人工知能デバイスを実現することができる。プロセッサ102およびメモリ104は、本明細書で説明するコンピューティングシステムの機能または動作を行う。
【0016】
プロセッサ102は任意の電子回路であり、限定することはないが、メモリ104に通信可能に連結してコンピューティングシステムのオペレーションを制御するマイクロプロセッサ、マイクロコントローラ、特定用途向け集積回路(ASIC)、特定用途向け命令セットプロセッサ(ASIP)、および/またはステートマシンのうちの1つまたはその組み合わせが含まれる。プロセッサ102は、8ビット、16ビット、32ビット、64ビット、または任意の他の好適なアーキテクチャとしてよい。プロセッサ102は、算術演算および論理演算を行うための算術論理演算ユニット(ALU)、オペランドをALUに供給してALU演算の結果を格納するプロセッサレジスタ、および、メモリから命令を取得してALU、レジスタ、および他の要素の連携動作を管理することにより命令を実行する制御ユニットを含んでよい。プロセッサ102は、情報を制御して処理するソフトウェアを動かす他のハードウェアを含んでよい。プロセッサ102は、メモリ104に格納したソフトウェアを実行して、本明細書で説明する機能のいずれかを行う。プロセッサ102は、情報(例えば、メモリ104から受け取る情報)を処理することで、コンピューティングシステムのオペレーションおよび運営を制御する。プロセッサ102は、単一の処理デバイスに限定されることはなく、複数の処理デバイスを包含してもよい。
【0017】
メモリ104は、プロセッサ102のデータ、運用ソフトウェア、または他の情報を恒久的にまたは一時的に格納することができる。メモリ104としては、情報の格納に好適な揮発性または不揮発性のローカルデバイスまたはリモートデバイスのいずれか1つまたはその組み合わせが含まれてよい。例えば、メモリ104としては、ランダムアクセスメモリ(RAM)、リードオンリメモリ(ROM)、磁気ストレージデバイス、光学ストレージデバイス、または任意の他の好適な情報ストレージデバイス、またはこれらのデバイスの組み合わせが含まれてよい。ソフトウェアは、コンピュータ可読記憶媒体で具現化された命令、ロジック、またはコードの任意の好適なセットを表す。例えば、ソフトウェアは、メモリ104、ディスク、CD、またはフラッシュドライブで具現化されてよい。特定の実施形態において、ソフトウェアは、本明細書で説明する機能のうち1つまたは複数をプロセッサ102が行うのに実行可能なアプリケーションを含むことができる。
【0018】
システム100は、(例えば、メモリ104の一部として)PCMセル106を含み、これは相変化メモリセルとも呼ばれることがある。特定の実施形態において、PCMセル106はメモリ104の一部である。PCMセル106は、PCMに印加される熱の量に基づいて(例えば、PCMに接続された加熱素子に電圧または電流を印加することにより)相を変化させるPCMを含む。PCMセル106の相は、人工知能デバイスの状態または情報を表すのに用いることができる。例えば、1つまたは複数のPCMセル106が、ニューラルネットワークの異なる状態を格納するのに用いられてよい。別の例として、1つまたは複数のPCMセル106が、グラフまたはツリーのノードの値を格納するのに用いられてよい。1つまたは複数のPCMセル106の相は、ニューラルネットワーク、グラフ、またはツリーの変化を表すのに調整されてよい。PCMセル106および従来のメモリの間の顕著な相違点とは、PCMセル106では2進状態(例えば、0または1)の格納に限定されなくてもよいということである。正確に言うと、PCMセル106の相は、複数の異なる状態を表すのに用いることができる。
【0019】
プロセッサ102およびメモリ104は、PCMセル106を用いる機械学習モデル108を実装する。例えば、機械学習モデル108は、PCMセル106を用いて状態情報を格納することができる。状態情報が(例えば、機械学習モデル108の訓練中に)変化すると、PCMセル106の相は状態情報の変化を表すように調整される。十分なPCMセル106を用いて、PCMセル106は機械学習モデル108を格納することができる。
【0020】
図2では、図1のシステム100におけるPCMセル106の一例を説明している。PCMセル106のPCM領域218には、PCMセル106の中にある他の要素を酸化から保護する別の層が含まれる。その結果、PCMセル106は、特定の実施形態において、熱安定性が向上し、抵抗ドリフトが改善され、酸化が抑制される。さらに、PCMセル106は湿害を受けない可能性がある。
【0021】
PCMセル106は、PCMセル106の土台として機能する基板202を含む。基板202としては、任意の好適な材料(例えば、シリコン、金属酸化物、またはガリウムヒ素)が含まれてよい。パッド204、206、および208は、基板202の中に形成されている。パッド204、206、および208は、任意の好適な導体材料を含んでよい。パッド204、206、および208は、パッド204、206、および208に接続されたPCMセル106の他の要素との間で電流を伝導する。基板202の上には誘電体209が配置されている。誘電体209としては、任意の好適な絶縁材料(例えば、窒化シリコン)が含まれてよい。誘電体209は、基板202およびパッド204、206、および208を被覆してよい。
【0022】
誘電体209には、1つまたは複数のヒータが形成されている。図2の例では、誘電体209にはヒータ210および212が形成されており、ヒータ210および212はそれぞれ、誘電体209を貫いてパッド206および208まで延びている。ヒータ210および212がパッド206および208に接続しているので、パッド206および208からヒータ210および212へと電流を伝導することができる。ヒータ210および212は、複数層の抵抗材料を含んでよい。例えば、ヒータ210および212は、窒化チタンおよび窒化タンタルが交互に積み重なった層を含んでよい。一部の実施形態において、ヒータ210および212は、低抵抗材料および高抵抗材料が交互に積み重なった層を含んでよい。ヒータ210および212は、パッド206および208からヒータ210および212に電流が印加されると熱を発生する。ヒータ210および212に印加される電流の量を調整することにより、ヒータ210および212により生み出される熱の量が調整される。例えば、ヒータ210および212に印加される電流を増加させると、ヒータ210および212により生み出される熱の量が増加する。別の例として、ヒータ210および212に印加される電流を減少させると、ヒータ210および212により生み出される熱が減少する。一部の実施形態において、ヒータ210および212の幅は、40ナノメートルより小さいまたはこれと等しい。
【0023】
一部の実施形態では、ヒータ210および212の上に(例えば、堆積法で)ライナ214および216が形成されている。ライナ214および216は、PCMセル106の抵抗ドリフトを改善する抵抗材料を含んでよい。ライナ214および216は任意選択であり、PCMセル106の一部の実施形態ではライナ214および216が含まれていない。
【0024】
誘電体209およびヒータ210および212の上に、PCM領域218が形成されている。PCM領域218は、PCMおよび保護層を含む。図2の例において、PCM領域218は、誘電体209の上に(例えば、堆積法で)形成されたGST層220を含む。ライナ214および216を含む実施形態において、GST層220は、ライナ214および216がGST層220の中にあるように形成されている。PCM領域218は、GST層220の上に(例えば、堆積法で)形成されたドーピング済みGST層222も含む。ドーピング済みGST層222としては、二酸化シリコンなどの任意の好適な材料を用いてドーピングされているGSTが含まれてよい。さらに、ドーピング済みGST層222の上に(例えば、堆積法で)別のGST層224が形成されている。ドーピング済みGST層222には、GST層220および224と異なるドーピングがされてよい。例えば、ドーピング済みGST層222は二酸化シリコンを用いてドーピングされてよく、GST層220および224はドーピングされていないか、または窒素、もしくは酸素を含まない別のドーパントを用いてドーピングされている。その結果、GST層220および224は、PCMセル106の他の要素をドーピング済みGST層222(例えば、ドーピング済みGST層222の堆積)によって生じる酸化から保護している。一部の実施形態において、GST層220および224、およびドーピング済みGST層222は、製造工程中に1つのチャンバ内で形成される。
【0025】
ドーピング済みGST層222の厚みは、GST層220および224の厚みより大きくしてよい。例えば、ドーピング済みGST層222は80ナノメートルの厚みがあってよく、GST層220および224はそれぞれ1~5ナノメートルの厚みがあってよい。一部の実施形態において、ドーピング済みGST層222は、GST層220および224より少なくとも10倍厚い。したがって、GST層220および224は、ドーピング済みGST層222からの酸素を遮断するほど厚いが、ドーピング済みGST層222の抵抗に影響を及ぼすほど厚くはない。
【0026】
パッド206および208がヒータ210および212に電流を印加すると、ヒータ210および212は熱を発生する。熱はPCM領域218に伝わり、ドーピング済みGST層222の相が変化することになる。ヒータ210および212に印加される電流を調整することにより、ドーピング済みGST層222に印加される熱の量が調整される。したがって、ドーピング済みGST層222の相が変化し、制御される。GST層220および224は、ヒータ210および212、(存在するならば)ライナ214および216、および上部金属226をドーピング済みGST層222により引き起こされる酸化から保護している。
【0027】
GST層224の上には(例えば、堆積法により)上部金属層226が形成されている。さらに、上部金属226の上には(例えば、堆積法により)マスク228が形成されている。ドーピング済みGST層222にはGST層220および224と異なるドーピングがされているので、GST層220および224は、ヒータ210および212、および上部金属226をドーピング済みGST層222により引き起こされる酸化から保護している。
【0028】
PCMセル106には、パッド204および上部金属226およびマスク228に対して電気的接続を行うことができるように、コンタクト230および232が形成されている。図2の例では、コンタクト230がPCMセル106の最上部からマスク228まで形成されている。コンタクト230により、マスク228および上部金属226に対して電気的接続を行うことが可能になる。コンタクト232がPCMセル106の最上部からパッド204まで形成されている。コンタクト232により、パッド204に対して電気的接続を行うことが可能になる。一部の実施形態では、コンタクト230および232は誘電体209とは別の層間誘電体を貫いて形成されている。層間誘電体としては、任意の好適な絶縁材料が含まれる。
【0029】
PCMセル106の一部の実施形態には、PCM領域218の異なる構造体が含まれる。図3では、図2のPCMセル106に実装され得るPCM領域302の一例を説明している。図3に見られるように、PCM領域302はGSTおよびドーピング済みGSTが交互に積み重なった複数の層を含む。図2の例と同様に、ドーピング済みGST層にはその他のGST層と異なるドーピングがされている。例えば、ドーピング済みGST層は二酸化シリコンでドーピングされてよく、その他のGST層はドーピングされていないか、または窒素、もしくは酸素を含まない別のドーパントでドーピングされている。PCM領域302は、PCM領域302の最下部にGST層304を含む。GST層304の上には、ドーピング済みGST層306が形成されている。ドーピング済みGST層306の上には、別のGST層308が形成されている。GST層308の上には、別のドーピング済みGST層310が形成されている。ドーピング済みGST層310の上には、GST層312が形成されている。GST層312の上には、さらに別のドーピング済みGST層314が形成されており、ドーピング済みGST層314の上には、GST層316が形成されている。PCM領域302は、任意の好適な数のGSTおよびドーピング済みGSTの層を含むことができる。
【0030】
図4は、図2のPCMセル106を形成する方法400の一例を示すフローチャートである。特定の実施形態では、半導体製造機械または作業者が方法400を行う。方法400を行うことにより、保護層を含むPCMセル106が形成される。
【0031】
ブロック402では、パッド206の上にヒータ210が形成される。パッド206は、PCMセル106の土台として機能する基板202の中に形成されてよい。ヒータ210は、複数層の抵抗材料を含んでよい。ヒータ210に熱を発生させるために、パッド206からヒータ210に電流が印加されてよい。
【0032】
ブロック404では、ヒータ210の上にGST層220が形成される。例えば、GST層220はヒータ210の上に堆積してよい。一部の実施形態では、ヒータ210の上にGST層220を形成する前に、ヒータ210の上にライナ214が形成される。これらの実施形態では、ヒータ210の上にGST層220が形成された後に、ライナ214がGST層220の中に位置している。
【0033】
ブロック406では、GST層220の上にドーピング済みGST層222が形成される。例えば、ドーピング済みGST層222はGST層220の上に堆積してよい。ドーピング済みGST層222としては、任意の好適な材料(例えば、二酸化シリコンまたは窒素)でドーピングされているGSTが含まれてよい。次いで、ブロック408では、ドーピング済みGST層222の上に別のGST層224が形成される。特定の実施形態では、GST層220、ドーピング済みGST層222、およびGST層224を全て、半導体製造工程の1つのチャンバで堆積させることができる。
【0034】
ブロック410では、GST層224の上に上部金属226が形成される。一部の実施形態では、次いで上部金属226の上にマスク228が形成される。ブロック412では、上部金属226の上方にコンタクト230が形成される。一部の実施形態では、上部金属226の上に形成されたマスク228の上に、コンタクト230が形成される。コンタクト230により、上部金属226に対して電気的接続を行うことが可能になる。
【0035】
一部の実施形態では、ドーピング済みGST層222がGST層220および224より著しく厚い。例えばドーピング済みGST層222は80ナノメートルの厚みがあってよく、GST層220および224は1~5ナノメートルの厚みである。一部の実施形態において、ドーピング済みGST層222は、GST層220および224より少なくとも10倍厚い。その結果、GST層220および224は、ヒータ210および上部金属226をドーピング済みGST層222により引き起こされる酸化から保護している。さらに、GST層220および224は、ドーピング済みGST層222の抵抗に著しく影響を及ぼすことがない。
【0036】
図5A図5Fでは、図2のPCMセル106を形成する段階を説明している。図5Aに見られるように、基板202の上に誘電体209が形成される。基板202の中には、パッド204、206、および208が形成される。基板202としては、シリコン、金属酸化物、またはガリウムヒ素などの任意の好適な材料が含まれてよい。誘電体209としては、任意の好適な絶縁材料が含まれてよい。一部の実施形態では、誘電体209の厚みが約50ナノメートルである。
【0037】
次いで、ヒータ210および212が誘電体209を貫いて形成される。図5Bに見られるように、ヒータ210および212はそれぞれ、誘電体209を貫いてパッド206および208へと形成される。ヒータ210および212は、抵抗材料が交互に積み重なった層を含んでよい。パッド206および208を通じてヒータ210および212に電流を印加すると、ヒータ210および212は熱を発生する。次いで図5Cに見られるように、ヒータ210および212の上にライナ214および216が形成される。ライナ214および216は、ヒータ210および212の上に堆積してよい。さらに、ライナ214および216は誘電体209の上に形成される。ライナ214および216は任意選択であり、一部の実施形態ではライナ214および216が含まれていない。
【0038】
次いで、誘電体209の上にPCM領域218が形成される。図5Dに見られるように、ヒータ210および212の上方、誘電体209の上にPCM領域218が形成される。ライナ214および216を含む実施形態では、PCM領域218が形成された後に、ライナ214および216がPCM領域218の中に位置している。さらに、PCM領域218は、誘電体209の上に(例えば、堆積法により)形成されたGST層220を含む。GST層220の上には(例えば、堆積法により)ドーピング済みGST層222が形成され、ドーピング済みGST層222の上には(例えば、堆積法により)GST層224が形成される。ドーピング済みGST層222の厚みは、GST層220および224の厚みより大幅に大きくしてよい。一部の実施形態において、ドーピング済みGST層222は、GST層220および224より少なくとも10倍厚い。ヒータ210および212が熱を発生するようにヒータ210および212に電流を印加すると、熱によってドーピング済みGST層222の相が変化することになる。ヒータ210および212により生み出される熱の量は、ドーピング済みGST層222の相を調整するように調整されてよい。
【0039】
次いで図5Eに見られるように、GST層224の上に上部金属226が形成される。次いで、上部金属226の上にマスク228が形成される。特定の実施形態では、GST層220および224が、ヒータ210および212,および上部金属226をドーピング済みGST層222によって生じる酸化から保護している。別の言い方をすれば、GST層220および224は、ドーピング済みGST層222の中にある酸素がヒータ210および212、および上部金属226に伝わるのを防いでいる。その結果、特定の実施形態では、GST層220および224がヒータ210および212、および上部金属226への悪影響を防いでいる。次いで図5Fに見られるように、コンタクト230および232が形成される。コンタクト230によってマスク228および上部金属226に対して電気的接続を行うことが可能になるように、コンタクト230はマスク228に対して形成される。コンタクト232によってパッド204に対して電気的接続を行うことが可能になるように、コンタクト232はパッド204に対して形成される。
【0040】
要約すると、人工知能デバイスセルにはバッファ層を含んだPCM領域218が含まれ、バッファ層によってドーピング済みGST層222がヒータ210および上部金属226から分離されている。例えば、GST層220および224がドーピング済みGST層222とヒータ210および上部金属226との間に位置するように、GST層220および224は、ドーピング済みGST層222の上方および下方に形成されてよい。その結果、GST層220および224は、特定の実施形態において、ドーピング済みGST層222がヒータ210および上部金属226を酸化すること、およびそれらに悪影響を及ぼすことを防止できる。
【0041】
本発明の様々な実施形態の説明は例示を目的として提示されており、その説明が包括的であることも、または開示された実施形態に限定されることも意図されてはいない。本発明の範囲から逸脱しない多くの変更および変形が当業者には明らかとなるであろう。本明細書で用いられた専門用語は、本発明の原理、実際の応用、または市場で見られる科学技術における技術的改善を最も適切に説明するように、または本明細書で開示された実施形態を当業者が理解できるように選択されたものである。
【0042】
前述において、本開示で提示された実施形態に言及した。しかしながら、本発明の範囲は、説明された特定の実施形態に限定されるものではない。代わりに、これらの特徴および要素の任意の組み合わせが、異なる実施形態に関連するのか、またはしないのかにかかわらず、企図した実施形態を実現し実施するために企図されている。さらに、本明細書で開示した実施形態は他の可能性のある解決手段または先行技術に勝る利点を実現する可能性があるが、特定の利点が所与の実施形態によって実現されるのか否かは、本発明の範囲を限定するものではない。したがって、本明細書で説明した態様、特徴、実施形態、および利点は単なる例示であり、請求項に明示的に詳述されている場合を除いて、添付した特許請求の範囲の要素または限定とみなされるものではない。同様に、「本発明」への言及は、本明細書で開示された発明主題のいずれかの一般化と解釈してはならず、請求項に明示的に詳述されている場合を除いて、添付した特許請求の範囲の要素または限定とみなしてはならない。
【0043】
前述したことは本発明の実施形態を対象としているが、他の実施形態が本発明の基本範囲から逸脱することなく考え出されてもよく、本発明の範囲は以下に続く特許請求の範囲によって決定される。
【0044】
以上に説明した本発明の好ましい実施形態では、ヒータ;および第1のGST層の上に配置されたドーピング済みGST層、を含んだ相変化材料領域を備えた装置が提供されている。ここで、第1のGST層はドーピング済みGST層およびヒータの間にあり、ドーピング済みGST層には第1のGST層と異なるドーピングがされている。本装置はさらにヒータの上に位置するライナを備えるのが好ましい。相変化材料領域はさらに第2のGST層を備えるのが好ましい。ここで、ドーピング済みGST層は第1のGST層および第2のGST層の間にあり、ドーピング済みGST層には第2のGST層と異なるドーピングがされている。相変化材料領域はさらに、第2のドーピング済みGST層および第3のGST層を有してよく、ここで、第2のドーピング済みGST層は第2のGST層および第3のGST層の間に位置しており、第2のドーピング済みGST層には第2および第3のGST層と異なるドーピングがされている。
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図5C
図5D
図5E
図5F
【手続補正書】
【提出日】2024-04-10
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒータ;
ドーピング済みゲルマニウム-アンチモン-テルル(GST)層および第1のGST層を有する相変化材料領域、ここで前記第1のGST層が前記ドーピング済みGST層および前記ヒータの間にあり、前記ドーピング済みGST層には前記第1のGST層と異なるドーピングがされている;および
上部金属層、ここで前記相変化材料領域が前記ヒータおよび前記上部金属層の間に位置している
を備える装置。
【請求項2】
前記ヒータの上に位置するライナをさらに備える、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記ライナが前記第1のGST層の中に位置している、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記ドーピング済みGST層が前記第1のGST層より少なくとも10倍厚い、請求項1から3のいずれか一項に記載の装置。
【請求項5】
前記相変化材料領域がさらに第2のGST層を有し、前記ドーピング済みGST層が前記第1のGST層および前記第2のGST層の間にあり、前記ドーピング済みGST層には前記第2のGST層と異なるドーピングがされている、請求項1から3のいずれか一項に記載の装置。
【請求項6】
前記相変化材料領域がさらに第2のドーピング済みGST層および第3のGST層を有し、前記第2のドーピング済みGST層が前記第2のGST層および前記第3のGST層の間に位置しており、前記第2のドーピング済みGST層には前記第2のGST層および前記第3のGST層と異なるドーピングがされている、請求項5に記載の装置。
【請求項7】
コンタクトをさらに備え、前記上部金属層が前記コンタクトおよび前記相変化材料領域の間にある、請求項1から3のいずれか一項に記載の装置。
【請求項8】
前記ヒータが誘電体の中に形成されており、前記相変化材料領域が前記誘電体の上に位置している、請求項1から3のいずれか一項に記載の装置。
【請求項9】
パッドの上にヒータを形成する段階;
前記ヒータの上に相変化材料領域を形成する段階、ここで前記相変化材料領域がドーピング済みGST層および第1のGST層を有し、前記第1のGST層が前記ドーピング済みGST層および前記ヒータの間にあり、前記ドーピング済みGST層には前記第1のGST層と異なるドーピングがされている;および
前記相変化材料領域の上に上部金属層を形成する段階
を備える方法。
【請求項10】
前記相変化材料領域を形成する前に、前記ヒータの上にライナを形成する段階をさらに備える、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記相変化材料領域を形成した後に、前記ライナが前記第1のGST層の中に位置している、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記ドーピング済みGST層が前記第1のGST層より少なくとも10倍厚い、請求項9から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記相変化材料領域がさらに第2のGST層を有し、前記ドーピング済みGST層が前記第1のGST層および前記第2のGST層の間にあり、前記ドーピング済みGST層には前記第2のGST層と異なるドーピングがされている、請求項9から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記相変化材料領域がさらに第2のドーピング済みGST層および第3のGST層を有し、前記第2のドーピング済みGST層が前記第2のGST層および前記第3のGST層の間に位置しており、前記第2のドーピング済みGST層には前記第2のGST層および前記第3のGST層と異なるドーピングがされている、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
コンタクトを形成する段階をさらに備え、前記上部金属層が前記コンタクトおよび前記相変化材料領域の間にある、請求項9から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記ヒータが誘電体の中に形成されており、前記相変化材料領域が前記誘電体の上に位置している、請求項9から11のいずれか一項に記載の方法。
【国際調査報告】