(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-08
(54)【発明の名称】粒子状ハイブリッドスケール繊維マトリックス
(51)【国際特許分類】
A61L 15/26 20060101AFI20241001BHJP
C08L 67/04 20060101ALI20241001BHJP
C08L 101/00 20060101ALI20241001BHJP
A61L 2/232 20060101ALI20241001BHJP
D04H 1/728 20120101ALI20241001BHJP
【FI】
A61L15/26 100
C08L67/04
C08L101/00
A61L2/232
D04H1/728
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024505228
(86)(22)【出願日】2022-07-29
(85)【翻訳文提出日】2024-01-26
(86)【国際出願番号】 IB2022057028
(87)【国際公開番号】W WO2023007443
(87)【国際公開日】2023-02-02
(32)【優先日】2021-07-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524035933
【氏名又は名称】アセラ サージカル インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001379
【氏名又は名称】弁理士法人大島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】マキュアン、マシュー・アール
(72)【発明者】
【氏名】ジェン、リリー
(72)【発明者】
【氏名】ラヒミ、アブドゥルラソル
(72)【発明者】
【氏名】ジャッサル、マニーシャ
(72)【発明者】
【氏名】コヴァーチ、タマーシュ
【テーマコード(参考)】
4C058
4C081
4J002
4L047
【Fターム(参考)】
4C058AA28
4C058JJ30
4C081AA03
4C081AA12
4C081BA12
4C081CA152
4C081CA171
4C081CE02
4C081DA02
4C081DA11
4C081DA12
4C081DC02
4C081EA13
4J002AA001
4J002AA002
4J002BB061
4J002BB062
4J002BC021
4J002BC022
4J002BE031
4J002BE032
4J002BJ001
4J002BJ002
4J002CF061
4J002CF062
4J002CF181
4J002CF182
4J002CF191
4J002CF192
4J002CH021
4J002CH022
4J002CK011
4J002CK012
4J002CK021
4J002CK022
4J002CM001
4J002CM002
4J002CQ011
4J002CQ012
4J002DJ006
4J002GB01
4J002HA03
4L047AA21
4L047AA28
4L047AB02
4L047AB07
4L047AB09
4L047CB10
4L047CC03
4L047EA01
4L047EA22
(57)【要約】
軟組織修復及び創傷管理処置などの特殊な外科的処置に使用するための不織布グラフト材料の粒子、その粉末の製造方法、及びその粉末を使用して神経組織などの組織を修復するための方法が開示される。粒子は、不規則な形状の領域を充填するために有利に使用することができるか、又は不織布グラフト材料と共に使用することができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
創傷治癒を改善するように構成された複数の粒子であって、
前記複数の粒子が、5000μm未満の平均直径を有し、
前記複数の粒子が、ハイブリッドスケール繊維構造を有するエレクトロスパングラフト材料のシートを破壊することによって形成され、かつ、
前記複数の粒子が、前記エレクトロスパングラフト材料の前記ハイブリッドスケール繊維構造を含む、複数の粒子。
【請求項2】
前記複数の粒子が、他の繊維又は非繊維構造と混合されている、請求項1に記載の複数の粒子。
【請求項3】
前記エレクトロスパングラフト材料のシートが、複数のエレクトロスパン繊維を含み、
前記複数のエレクトロスパン繊維が、第1の繊維組成物及び第2の繊維組成物をエレクトロスピニングすることによって形成され、
前記第1の繊維組成物が、ポリ(乳酸-co-グリコール酸)を含み、
前記第2の繊維組成物が、ポリジオキサノンを含む、請求項1に記載の複数の粒子。
【請求項4】
前記エレクトロスパングラフト材料のシートが、複数のエレクトロスパン繊維を含み、
前記複数のエレクトロスパン繊維が、第1の繊維組成物及び第2の繊維組成物をエレクトロスピニングすることによって形成され、
前記第1の繊維組成物が、前記第2の繊維組成物とは異なる、請求項1に記載の複数の粒子。
【請求項5】
前記第1の繊維組成物が、ポリカプロラクトン(ポリ(ε-カプロラクトン)、PCL)、ポリジオキサノン(PDO)、ポリ(グリコール酸)(PGA)、ポリ(L-乳酸)(PLA)、ポリ(ラクチド-co-グリコリド)(PLGA)、ポリ(L-ラクチド)(PLLA)、ポリ(D,L-ラクチド)(P(DLLA))、ポリ(エチレングリコール)(PEG)、モンモリロナイト(MMT)、ポリ(L-ラクチド-co-ε-カプロラクトン)(P(LLA-CL))、ポリ(ε-カプロラクトン-co-エチルエチレンホスフェート)(P(CL-EEP))、ポリ[ビス(p-メチルフェノキシ)ホスファゼン](PNmPh)、ポリ(3-ヒドロキシ酪酸-co-3-ヒドロキシ吉草酸)(PHBV)、ポリ(エステルウレタン)尿素(PEUU)、ポリ(p-ジオキサノン)(PPDO)、ポリウレタン(PU)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリ(エチレン-co-酢酸ビニル)(PEVA)、ポリ(エチレンオキシド)(PEO)、ポリ(ホスファゼン)、ポリ(エチレン-co-ビニルアルコール)、ポリマーナノクレイナノ複合材料、ポリ(エチレンイミン)、ポリ(エチレンオキシド)、ポリビニルピロリドン;ポリスチレン(PS)及びそれらの組み合わせのうちの1つ以上から選択されるポリマー、特に好適には、ポリ(乳酸-co-グリコール酸)、ポリジオキサノン、ポリカプロラクトン、又はそれらの組み合わせを含み、かつ、
前記第2の繊維組成物が、ポリカプロラクトン(ポリ(ε-カプロラクトン)、PCL)、ポリジオキサノン(PDO)、ポリ(グリコール酸)(PGA)、ポリ(L-乳酸)(PLA)、ポリ(ラクチド-co-グリコリド)(PLGA)、ポリ(L-ラクチド)(PLLA)、ポリ(D,L-ラクチド)(P(DLLA))、ポリ(エチレングリコール)(PEG)、モンモリロナイト(MMT)、ポリ(L-ラクチド-co-ε-カプロラクトン)(P(LLA-CL))、ポリ(ε-カプロラクトン-co-エチルエチレンホスフェート)(P(CL-EEP))、ポリ[ビス(p-メチルフェノキシ)ホスファゼン](PNmPh)、ポリ(3-ヒドロキシ酪酸-co-3-ヒドロキシ吉草酸)(PHBV)、ポリ(エステルウレタン)尿素(PEUU)、ポリ(p-ジオキサノン)(PPDO)、ポリウレタン(PU)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリ(エチレン-co-酢酸ビニル)(PEVA)、ポリ(エチレンオキシド)(PEO)、ポリ(ホスファゼン)、ポリ(エチレン-co-ビニルアルコール)、ポリマーナノクレイナノ複合材料、ポリ(エチレンイミン)、ポリ(エチレンオキシド)、ポリビニルピロリドン;ポリスチレン(PS)及びそれらの組み合わせのうちの1つ以上から選択されるポリマー、特に好適には、ポリ(乳酸-co-グリコール酸)、ポリジオキサノン、ポリカプロラクトン、又はそれらの組み合わせを含む、請求項4に記載の複数の粒子。
【請求項6】
前記複数の粒子が、流体と混合されて注射可能な溶液を生成するように構成されている、請求項1に記載の複数の粒子。
【請求項7】
前記複数の粒子が、物理的又は機械的特性に基づいて選別される、請求項1に記載の複数の粒子。
【請求項8】
前記複数の粒子が、表面積、質量、サイズ、形状、密度、注入性、展開性、流動性、電荷、粘度、色、又は反射率のうちの1つ以上に基づいて選別される、請求項1に記載の複数の粒子。
【請求項9】
前記複数の粒子が、創傷部位に直接配置されるように構成されている、請求項1に記載の複数の粒子。
【請求項10】
前記複数の粒子が、ヒドロゲルに組み込まれている、請求項1に記載の複数の粒子。
【請求項11】
前記第1の繊維組成物と前記第2の繊維組成物との比が、約1:10~約10:1の範囲であり得る、請求項4に記載の複数の粒子。
【請求項12】
前記複数の粒子が、骨髄穿刺液、多血小板血漿、他の粉末、他のポリマー、薬物、細胞、成長因子、放射性薬剤、化学薬剤、又は生物活性剤のうちの1つ以上と更に組み合わされる、請求項1に記載の複数の粒子。
【請求項13】
前記複数の粒子が、縫合線に適用されるように構成されている、請求項11に記載の複数の粒子。
【請求項14】
創傷治癒を改善するように構成された複数の粒子を形成する方法であって、
ハイブリッドスケール繊維マトリックスの不織シートをエレクトロスピニングするステップと、
前記ハイブリッドスケール繊維マトリックスを破壊して複数の粒子にするステップと、
前記複数の粒子を収集するステップと、を含み、
前記複数の粒子が、前記ハイブリッドスケール繊維マトリックスのナノ構造を含む、方法。
【請求項15】
前記複数の粒子が、1μm~5000μmのD50を有する、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記ハイブリッドスケール繊維マトリックスを破壊して複数の粒子にする前記ステップの前に、前記ハイブリッドスケール繊維マトリックスを凍結することを更に含む、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記複数の粒子を後処理するステップを更に含む、請求項14に記載の方法。
【請求項18】
前記複数の粒子を後処理する前記ステップが、窒素バックフィリング、帯電防止処理、又はサイズ分離のうちの1つ以上を含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記複数の粒子を後処理する前記ステップが、物理的又は機械的特性に基づく前記複数の粒子の分離を含む、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記物理的又は機械的特性が、表面積、質量、サイズ、形状、密度、注入性、展開性、流動性、電荷、粘度、色、又は反射率を含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記ハイブリッドスケール繊維マトリックスを破壊して複数の粒子にする前記ステップが、超音波処理を含む、請求項14に記載の方法。
【請求項22】
前記ハイブリッドスケール繊維マトリックスを破壊して複数の粒子にする前記ステップが、前記不織シートを切断することを含む、請求項14に記載の方法。
【請求項23】
前記不織シートを切断することが、低温切断又は低温粉砕を含む、請求項22に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の実施形態は概して、ナノ繊維及び/又はハイブリッドスケール繊維マトリックスの粒子形態であって、当該マトリックスの構造を有する粒子形態に関する。
【背景技術】
【0002】
数多くの病理学的状態及び外科的処置により、様々な臓器、組織、及び解剖学的構造に実質的な欠陥が生じる。このような症例の大部分では、外科医及び医師は、特殊なタイプの外科用メッシュ、材料、及び/又は足場を利用して、このような欠陥を修復する必要がある。残念ながら、既知の外科用材料の生体内性能は、多くの制限要因によって悪影響を受けている。例えば、既存の合成外科用メッシュは通常、過度の線維化又は傷痕を生じ、組織の統合が不十分になり、術後疼痛のリスクが増加する。同時に、既知の生物学的材料は強い免疫反応及び異常な組織内方成長を誘発し、患者の転帰に悪影響を与える可能性がある。更に、既存の合成外科用メッシュは、傷痕、術後疼痛、可動性の制限、可動域の制限、癒着、感染、びらん、生体力学的特性の低下、及び/又は術中の取り扱いの悪さを引き起こす可能性がある。
【0003】
ナノ加工、ナノ繊維、又はハイブリッドスケール繊維マトリックスは、個々のヒト細胞の数十倍から数千倍小さい吸収性ポリマー繊維で構成されるメッシュ又は材料であり、最近、移植可能な外科用メッシュ及び材料のための独自の基材として提案されている。一般に、既存のナノ繊維材料は、既知の外科用メッシュと比較して準最適な機械的性能を有する傾向がある。既存のナノ繊維材料は、多くの外科的用途又は生体内留置前の基本的な術中の取り扱いに必要な引張強度、引裂抵抗、及び破裂強度を備えていない。この欠陥に対処するために、既知のメッシュは機械的強度を向上させる手段としてより高い繊維密度を使用して形成されている。しかし、このような高密度メッシュを使用すると、メッシュ内への効果的な細胞内方成長が減少し、天然組織とのメッシュの統合が減少し、ポリマーインプラントの生体適合性が低下する可能性がある。その結果、厚さ及び/又は強度が増加し、好ましい細胞及び/又は組織統合並びに生体適合性を備えたナノ繊維又はハイブリッドスケール繊維マトリックス材料も、ナノ繊維又はハイブリッドスケール繊維マトリックス材料を製造する方法も、必要とされている。
【0004】
組織の修復は、問題の天然組織のように作用するポリマー材料又は加工組織を含む、本明細書に記載の1つ以上の材料によって促進され得る。例えば、外傷による又は医療処置中に意図的に生じたものなどの皮膚創傷は、細胞と組織との統合が好適な材料を適用することによって修復できる可能性がある。皮膚創傷の修復を促進するために、臨床現場及び外科現場の両方で包帯及びその他の被覆材が適用され、治癒を促進し、更なる損傷から創傷を保護することがある。一般的な創傷包帯には、滲出液の吸収、異物及び死んだ細胞の壊死組織の清拭、止血、感染からの保護、並びに疼痛の緩和、更に一般的に治癒過程の促進など、様々な目的がある。別の例として、神経外科的修復は、本明細書に記載される1つ以上の材料を使用して達成され得る。
【0005】
擦傷、裂傷、穿刺、破裂、及び貫通創を含むがこれらに限定されない創傷は、皮膚及び下層組織に規則的又は不規則な形の損傷を引き起こす可能性がある。創傷の形状、位置、及び下層組織に応じて、修復を促進し、起こり得る付随合併症を管理するための様々な方法が、臨床現場又は外科現場で利用可能である。創傷の修復を促進するために、医療従事者は、創傷部位を閉塞して異物の侵入を防ぐために被覆材及びその他のバリアを利用することもあれば、医学的監督下で被覆材なしで露出したままにすることもある。
【0006】
更に、細胞マイクロアレイは生物医学研究及び組織工学において有用である可能性があるが、そのような細胞マイクロアレイを製造するための少なくともいくつかの既知の技術は、費用及び時間がかかり、特殊で非常に高度な機器の使用を必要とする場合がある。
【発明の概要】
【0007】
本明細書に記載される様々な実施形態は、とりわけ、微粒子、粉末、粉砕材料、顆粒、モートを含む複数の粒子、及び当該複数の粒子を形成するための方法に関する。特に、いくつかの実施形態では、創傷治癒を改善するように構成された複数の粒子が本明細書に記載されており、この複数の粒子は、1μm~5000μmのD50を含み、複数の粒子は、エレクトロスパングラフト材料のシートを破壊することによって形成され、エレクトロスパングラフト材料は、ハイブリッドスケール繊維マトリックスを有し、複数の粒子は、エレクトロスパングラフト材料のハイブリッドスケール繊維マトリックスを含む。複数の粒子のいくつかの実施形態では、複数の粒子は、他の繊維又は非繊維構造と混合されている。複数の粒子のいくつかの実施形態では、エレクトロスパングラフト材料のシートは、複数のエレクトロスパン繊維を含み、複数のエレクトロスパン繊維は、第1の繊維組成物及び第2の繊維組成物をエレクトロスピニングすることによって形成され、第1の繊維組成物は、ポリ(乳酸-co-グリコール酸)を含み、第2の繊維組成物はポリジオキサノンを含む。複数の粒子のいくつかの実施形態では、エレクトロスパングラフト材料のシートは、複数のエレクトロスパン繊維を含み、複数のエレクトロスパン繊維は、第1の繊維組成物及び第2の繊維組成物をエレクトロスピニングすることによって形成され、第1の繊維組成物は、第2の繊維組成物とは異なる。
【0008】
いくつかの実施形態では、複数の粒子が記載され、ここで、第1の繊維組成物は、ポリカプロラクトン(ポリ(ε-カプロラクトン)、PCL)、ポリジオキサノン(PDO)、ポリ(グリコール酸)(PGA)、ポリ(L-乳酸)(PLA)、ポリ(ラクチド-co-グリコリド)(PLGA)、ポリ(L-ラクチド)(PLLA)、ポリ(D,L-ラクチド)(P(DLLA))、ポリ(エチレングリコール)(PEG)、モンモリロナイト(MMT)、ポリ(L-ラクチド-co-ε-カプロラクトン)(P(LLA-CL))、ポリ(ε-カプロラクトン-co-エチルエチレンホスフェート)(P(CL-EEP))、ポリ[ビス(p-メチルフェノキシ)ホスファゼン](PNmPh)、ポリ(3-ヒドロキシ酪酸-co-3-ヒドロキシ吉草酸)(PHBV)、ポリ(エステルウレタン)尿素(PEUU)、ポリ(p-ジオキサノン)(PPDO)、ポリウレタン(PU)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリ(エチレン-co-酢酸ビニル)(PEVA)、ポリ(エチレンオキシド)(PEO)、ポリ(ホスファゼン)、ポリ(エチレン-co-ビニルアルコール)、ポリマーナノクレイナノ複合材料、ポリ(エチレンイミン)、ポリ(エチレンオキシド)、ポリビニルピロリドン;ポリスチレン(PS);とりわけ、コラーゲン、エラスチン、ラミニン、フィブリンを含む生物由来及び天然材料、並びにそれらの組み合わせのうちの1つ以上から選択されるポリマーを含む。特に好適なポリマーとしては、ポリ(乳酸-co-グリコール酸)、ポリジオキサノン、ポリカプロラクトン、又はそれらの組み合わせが挙げられ、かつ第2の繊維組成物は、ポリカプロラクトン(ポリ(ε-カプロラクトン)、PCL)、ポリジオキサノン(PDO)、ポリ(グリコール酸)(PGA)、ポリ(L-乳酸)(PLA)、ポリ(ラクチド-co-グリコリド)(PLGA)、ポリ(L-ラクチド)(PLLA)、ポリ(D,L-ラクチド)(P(DLLA))、ポリ(エチレングリコール)(PEG)、モンモリロナイト(MMT)、ポリ(L-ラクチド-co-ε-カプロラクトン)(P(LLA-CL))、ポリ(ε-カプロラクトン-co-エチルエチレンホスフェート)(P(CL-EEP))、ポリ[ビス(p-メチルフェノキシ)ホスファゼン](PNmPh)、ポリ(3-ヒドロキシ酪酸-co-3-ヒドロキシ吉草酸)(PHBV)、ポリ(エステルウレタン)尿素(PEUU)、ポリ(p-ジオキサノン)(PPDO)、ポリウレタン(PU)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリ(エチレン-co-酢酸ビニル)(PEVA)、ポリ(エチレンオキシド)(PEO)、ポリ(ホスファゼン)、ポリ(エチレン-co-ビニルアルコール)、ポリマーナノクレイナノ複合材料、ポリ(エチレンイミン)、ポリ(エチレンオキシド)、ポリビニルピロリドン;ポリスチレン(PS);とりわけ、コラーゲン、エラスチン、ラミニン、フィブリンを含む生物由来及び天然材料、並びにそれらの組み合わせのうちの1つ以上から選択されるポリマーを含む。特に好適なポリマーとしては、ポリ(乳酸-coーグリコール酸)、ポリジオキサノン、ポリカプロラクトン、又はそれらの組み合わせが挙げられる。複数の粒子のいくつかの実施形態では、複数の粒子は、流体と混合されて注射可能な溶液を生成するように構成されている。いくつかの実施形態では、複数の粒子は、物理的又は機械的特性に基づいて選別される。いくつかの実施形態では、複数の粒子は、表面積、質量、サイズ、形状、密度、注入性、展開性、流動性、電荷、粘度、色、又は反射率のうちの1つ以上に基づいて選別される。いくつかの実施形態では、粒子は創傷部位に直接配置されるように構成されている。いくつかの実施形態では、複数の粒子は、ヒドロゲルに組み込まれている。いくつかの実施形態では、第1及び第2の繊維組成物を有する複数の粒子は、第1の繊維組成物と第2の繊維組成物との比が約1:10~約10:1の範囲であり得るように構成される。いくつかの実施形態では、複数の粒子は、骨髄穿刺液、多血小板血漿、他の粉末、エレクトロスパンシートを含む他のポリマー、薬物、細胞、成長因子、放射性薬剤、化学薬剤、又は生物活性剤のうちの1つ以上と更に組み合わされる。いくつかの実施形態では、複数の粒子は、縫合線に適用されるように構成されている。
【0009】
また、創傷治癒を改善するように構成された複数の粒子を形成する方法も記載され、方法は、ハイブリッドスケール繊維マトリックスの不織シートをエレクトロスピニングすることと、ハイブリッドスケール繊維マトリックスを破壊して複数の粒子にすることと、複数の粒子を収集することと、を含み、複数の粒子は、ハイブリッドスケール繊維マトリックスの構造又はナノ構造を含む。いくつかの実施形態では、複数の粒子は、1μm~5000μmのD50を有する。いくつかの実施形態では、方法は、ポリマーを粉砕、破壊、切断、及び/又は一般加工して所望の形状にする前に、ハイブリッドスケール繊維マトリックスを凍結することを更に含む。いくつかの実施形態では、方法は、複数の粒子の後処理を更に含む。いくつかの実施形態では、後処理は、窒素バックフィリング、帯電防止処理、又はサイズ分離のうちの1つ以上を含む。いくつかの実施形態では、後処理は、物理的又は機械的特性に基づく複数の粒子の分離を含む。いくつかの実施形態では、物理的又は機械的特性には、表面積、質量、サイズ、形状、密度、注入性、展開性、流動性、電荷、粘度、色、又は反射率が含まれる。いくつかの実施形態では、破壊は、超音波処理を含む。いくつかの実施形態では、破壊は、不織シートを切断することを含む。いくつかの実施形態では、不織シートを切断することは、低温切断又は低温粉砕、又は他の切断技術を含む。
【0010】
この概要の目的として、本発明の特定の態様、利点、及び新規な特徴を本明細書に記載する。本発明の任意の特定の実施形態に従って必ずしもそのような利点の全てが達成できるわけではないことを理解されたい。したがって、例えば、本発明が、本明細書で教示又は示唆される他の利点を必ずしも達成することなく、本明細書で教示されるような1つの利点又は利点のグループを達成する方法で具体化又は実行され得ることを当業者は認識するであろう。
【0011】
これらの実施形態は全て、本明細書に開示される本発明の範囲内にあることが意図されている。これら及び他の実施形態は、添付図面を参照した以下の詳細な説明から当業者には容易に明らかになるであろうが、本発明は開示された特定の実施形態に限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本開示の不織繊維組成物の実施形態の走査型電子顕微鏡写真を示す。
【
図2】グラフト材料の実施形態の粒子の写真画像を示す。
【
図3】グラフト材料の実施形態の粒子の写真画像を示す。
【
図4】本開示の不織繊維組成物の実施形態の一連の走査型電子顕微鏡写真を示し、異なる倍率での繊維形態を示す。
【
図5】本開示の不織繊維組成物の実施形態の一連の走査型電子顕微鏡写真を示す。
図5Aは、150μm未満の粒子をふるい分けしたSEM画像を示す。
図5Bは、150~355μmの間の粒子をふるい分けしたSEM画像を示す。
図5Cは、355μmを超える粒子をふるい分けしたSEM画像を示す。
図5Dは、ふるい分け前の均質な混合物のSEMを示す。
【
図6】本開示の不織繊維組成物の実施形態の一組の走査型電子顕微鏡写真を示し、繊維が互いに融着しているSEM画像を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本明細書で提供される実施形態は、
図1に示されるような複数の繊維を含む生物医学的パッチ(例えば、グラフト、ハイブリッドスケール繊維マトリックス又は複数のマトリックス、シート)に基づく生物組織の修復又は生物医学的材料の強化を容易にする。このような繊維は、非常に小さな断面直径(例えば、1~3000ナノメートル、1~1000ナノメートル、1ナノメートル~10ミリメートル)を有する場合があり、したがって、ハイブリッドスケール繊維マトリックス及び/又はマイクロ繊維と呼ばれる場合がある。本明細書では生物医学的パッチを硬膜及び外科用メッシュとしての使用に関して説明するが、説明される実施形態は任意の生物組織に適用することができる。更に、生物医学的パッチとして説明されているが、整列した繊維を備えた構造は他の目的に使用することもできる。したがって、説明される実施形態は生物医学的パッチに限定されない。
【0014】
パッチについては、米国特許出願公開第2017/0326270号及び同第2017/0319323号、並びに米国特許10,124,089号に更に詳しく記載され得、これらのそれぞれの全体は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0015】
一般に、本開示は、それぞれが独立した機械的、化学的及び/又は生物学的特性を有する2つ以上の異なるタイプの繊維組成物を含む不織布グラフト材料から形成された粒子を対象とする。例えば、一実施形態では、1つの繊維組成物を含めることにより、得られる不織布グラフト材料を安定化させることができ、一方、他の繊維組成物は、不織布グラフト材料の安定性、自由収縮特性、機械的特性、及び吸収率を改善することができる。
【0016】
本明細書において交換可能に使用される「不織布グラフト材料」及び「不織布グラフトファブリック」は、編物又は織物のように識別可能な方法ではなく、個々の繊維又は糸が間に差し込まれた(interlaid)構造を有する材料を指す。不織布グラフト材料及び不織布グラフトファブリックは、例えば、エレクトロスピニングプロセス、メルトブローイングプロセス、スパンボンドプロセス、メルトスプレーイング及び接着カードウェブプロセス(bonded carded web process)などの多くのプロセスから形成することができる。不織布グラフト材料の坪量は通常、材料のオンス/平方ヤード(osy)又はグラム/平方メートル(gsm)で表され、繊維の直径は通常、ナノメートル及びマイクロメートル(μm)で表される。本開示の不織布グラフト材料の好適な坪量は、約50gsm~約300gsmの範囲であり得る。より好適には、本開示の不織布グラフト材料の坪量は、約70gsm~約140gsmの範囲であり得る。本開示の不織布グラフト材料の引張強度は、約5ニュートン(N)~約50ニュートン(N)の範囲であり得、約1N~約10N~約15Nを含む。本開示の不織布グラフト材料の強度はまた、縫合糸引抜強度の観点から説明することもでき、これは、不織布グラフト材料から縫合糸を引き裂くことができる力を指す。好適な縫合糸の引抜強度は、約1N~約5Nの範囲であり得る。
【0017】
本明細書で使用される「マイクロ繊維」という用語は、75μm以下の平均直径を有する小径繊維、例えば、約0.5μm~約50μmの平均直径を有する小径繊維、又はより具体的には、約2μm~約40μmの平均直径を有するマイクロ繊維を指す。繊維直径のもう1つの頻繁に使用される表現はデニールである。例えば、μm単位で与えられるポリプロピレン繊維の直径は、二乗してその結果に0.00629を掛けることでデニールに変換でき、したがって、15μmのポリプロピレン繊維のデニールは約1.42(152×0.00629=1.415)になる。
【0018】
本明細書で使用される場合、「ナノサイズ繊維」又は「ナノ繊維」という用語は、平均直径が2000ナノメートル以下、1000ナノメートル以下、好適には1500ナノメートル(nm)以下である非常に小径の繊維を指す。ナノ繊維は一般に、約10~約1500nm、より具体的には約10~約1000nm、より具体的には約20~約500nm、最も具体的には約20~約400nmの範囲の繊維直径を有すると理解されている。他の例示的な範囲には、約50~約500nm、約100~500nm、又は約40~約200nmが含まれる。
【0019】
本明細書で使用される「スパンボンド繊維」という用語は、紡糸口金の複数の細い、通常は円形の毛細管から溶融した熱可塑性材料をフィラメントとして押し出すことによって形成される小径の繊維を指し、押し出されたフィラメントの直径は、例えば、Appel et al.の米国特許第4,340,563号、並びにDorschner et al.の米国特許第3,692,618号、Matsuki et al.の米国特許第3,802,817号、Kinneyの米国特許第3,338,992号及び同第3,341,394号、Levyの米国特許第3,502,763号及び同第3,909,009号、並びにDobo et al.の米国特許第3,542,615号に記載されるように急速に縮小され、これらのそれぞれの全体は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0020】
本明細書で使用される場合、「メルトブローン繊維」という用語は、溶融した熱可塑性材料を複数の細い、通常は円形のダイキャピラリを通して、溶融糸又はフィラメントとして、収束する高速ガス(例えば、空気)流中に押し出す(これにより、溶融した熱可塑性材料のフィラメントを細くして、直径を小さくし、マイクロ繊維の直径となり得る)ことによって形成される、繊維である。その後、メルトブローン繊維は高速ガス流によって運ばれ、収集表面上に堆積して、ランダムに分散されたメルトブローン繊維を形成する。このようなプロセスは、例えば、米国特許第3,849,241号に開示されており、この特許は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。メルトブローン繊維は、連続又は不連続であり得るマイクロ繊維であり、一般に直径が10μm未満である。
【0021】
本明細書で使用される場合、「エレクトロスピニング」という用語は、流体力学と帯電表面との間の相互作用を使用して、溶液からエレクトロスパン繊維と呼ばれるナノサイズの繊維を生成する技術を指す。一般に、エレクトロスパン繊維の形成には、電圧源と電気的に連通している本体のオリフィスに溶液を提供することが含まれ、電気力は、接地されるか、又は本体よりも低い電圧であり得る表面上に堆積される微細繊維の形成を助ける。エレクトロスピニングでは、1つ以上の針、スロット、又はその他のオリフィスから提供されるポリマー溶液又は溶融物が、収集グリッドに対して高電圧に充電される。電気力が表面張力に打ち勝ち、ポリマー溶液又は溶融物の微細な噴流が、接地された又は逆に帯電した収集グリッドに向かって移動する。噴流はターゲットに到達する前に更に細かい繊維の流れに広がり得、相互接続された小さな繊維として収集される。具体的には、(溶媒を使用するプロセスで)溶媒が蒸発するにつれて、この液体噴流は元の長さの何倍にも引き伸ばされて、連続した極細のポリマー繊維が生成される。乾燥又は固化した繊維は、約40nm、又は約10~約100nmの直径を有することができるが、100~500nmの繊維が一般的に観察される。エレクトロスパンナノ繊維又はハイブリッドスケール繊維マトリックスの様々な形態には、分岐ナノ繊維又はハイブリッドスケール繊維マトリックス、チューブ、リボン及び分割ナノ繊維又はハイブリッドスケール繊維マトリックス、ナノ繊維又はハイブリッドスケール繊維マトリックス糸、表面コーティングされたナノ繊維又はハイブリッドスケール繊維マトリックス(例えば、炭素、金属などによる)、真空中で製造されたナノ繊維又はハイブリッドスケール繊維マトリックスなどが含まれる。エレクトロスパン繊維の製造は、例えば、P.W.Gibson et al.,"Electrospun Fiber Mats: Transport Properties,"AIChE Journal,45(1): 190-195(January 1999)を含む多くの刊行物及び特許に示されており、それらは、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0022】
本明細書で使用される場合、「タイプ」という用語は、「異なるタイプの繊維」又は「別個のタイプの繊維」を指す場合など、「平均直径」、又はその他の「サイズ」の違いの範囲外で、測定可能な異なる特性を有する「実質的に異なる全体の材料組成」を有する繊維を指す。すなわち、2つの繊維は、本明細書で定義される同じ「タイプ」であっても、異なる「平均直径」又は「平均直径範囲」を有することができる。繊維全体の材料組成が実質的に異なる場合、繊維は異なる「タイプ」になるが、それでも1つ以上の共通の構成要素を有することができる。例えば、少なくとも10重量%のレベルで存在する第1のポリマー構成要素を有するポリマーブレンドから作製されたエレクトロスパン繊維は、第1のポリマー構成要素を実質的に含まないポリマーブレンドから作製されたエレクトロスパン繊維と比較して、異なる繊維タイプとみなされるであろう。異なる「タイプ」の繊維は、完全に異なる内容物を有することもでき、例えば、それぞれが異なるポリマーから作製されている場合、又は一方がポリマー繊維でもう一方がチタニア繊維から作製されている、又はセラミック繊維及びチタニア繊維であるなどが挙げられる。
【0023】
本明細書で使用される用語「ポリマー」には、一般に、ホモポリマー、コポリマー、例えば、ブロック、グラフト、ランダム及び交互コポリマー、ターポリマーなど、並びにそれらのブレンド及び変性物が含まれるが、これらに限定されない。更に、特に限定しない限り、「ポリマー」という用語は、材料のあらゆる可能な幾何学的立体配置を含むものとする。これらの立体配置には、アイソタクチック対称性及びアタクチック対称性が含まれるが、これらに限定されない。
【0024】
ハイブリッドスケール繊維マトリックスグラフト材料
【0025】
本開示の不織布グラフト材料は、典型的には、それぞれが独立した機械的、化学的及び/又は生物学的特性を有する少なくとも2つの異なるタイプの繊維組成物を含む。しかしながら、いくつかの実施形態では、繊維は同じであってもよい。繊維組成物は、合成吸収性ポリマー材料から好適に作製される。本明細書で使用される場合、「吸収性ポリマー材料」という用語は、吸収性(「生体吸収性」とも呼ばれる)ポリマーから形成された材料を指し、すなわち、ポリマーは、材料が術後の部位に存在する典型的な条件に曝されたときに破壊されて分解生成物を生成する特性を備えており、この分解生成物は術後治癒の期間とほぼ一致する期間内にその部位から除去することができる。このような分解生成物は患者の体内に吸収され得る。術後治癒の期間は、本開示の不織布グラフト材料の適用から術後部位が実質的に治癒するまでの期間であると理解されるべきである。この期間は、外科手術の侵襲性及び特定の個人の治癒速度に応じて、数日から数か月の範囲に及び得る。主題の不織布グラフト材料は、不織布グラフト材料の吸収に必要な時間を、治癒又は組織の再形成及び再生に必要な時間と一致するように制御できるように調製できることが意図されている。例えば、本開示のいくつかの不織布グラフト材料では、繊維組成物は約1週間の期間以内に分解するように選択されるが、他の不織布グラフト材料では、組成物は3年の期間以内、又は必要に応じて更に長く分解するように選択される。
【0026】
本開示で使用される繊維組成物は、それらの基準が上述されるように、その材料の基準を満たす任意の吸収性材料から製造することができる。繊維組成物は、乳酸及びグリコール酸のポリマー、乳酸及びグリコール酸のコポリマー、ポリ(エーテル-co-エステル)、ポリ(ヒドロキシ酪酸)、ポリカプロラクトン、乳酸及びε-アミノカプロン酸のコポリマー、ラクチドポリマー、ポリ(ヒドロキシ酪酸)及び3-ヒドロキシ吉草酸のコポリマー、コハク酸のポリエステル、ポリ(N-アセチル-D-グルコサミン)、ポリジオキサノン、架橋ヒアルロン酸、架橋コラーゲンなど、及びそれらの組み合わせなどの(ただしこれらに限定されない)吸収性ポリマーから形成することができる。好適な合成ポリマーは、例えば、ポリカプロラクトン(ポリ(ε-カプロラクトン)、PCL)、ポリジオキサノン(PDO)、ポリ(グリコール酸)(PGA)、ポリ(L-乳酸)(PLA)、ポリ(ラクチド-co-グリコリド)(PLGA)、ポリ(L-ラクチド)(PLLA)、ポリ(D,L-ラクチド)(P(DLLA))、ポリ(エチレングリコール)(PEG)、モンモリロナイト(MMT)、ポリ(L-ラクチド-co-ε-カプロラクトン)(P(LLA-CL))、ポリ(ε-カプロラクトン-co-エチルエチレンホスフェート)(P(CL-EEP))、ポリ[ビス(p-メチルフェノキシ)ホスファゼン](PNmPh)、ポリ(3-ヒドロキシ酪酸-co-3-ヒドロキシ吉草酸)(PHBV)、ポリ(エステルウレタン)尿素(PEUU)、ポリ(p-ジオキサノン)(PPDO)、ポリウレタン(PU)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリ(エチレン-co-酢酸ビニル)(PEVA)、ポリ(エチレンオキシド)(PEO)、ポリ(ホスファゼン)、ポリ(エチレン-co-ビニルアルコール)、ポリマーナノクレイナノ複合材料、ポリ(エチレンイミン)、ポリ(エチレンオキシド)、ポリビニルピロリドン;ポリスチレン(PS)及びそれらの組み合わせであり得る。特に好適なポリマーとしては、ポリ(乳酸-co-グリコール酸)、ポリジオキサノン、ポリカプロラクトン、及びそれらの組み合わせが挙げられる。
【0027】
ハイブリッドスケール繊維マトリックス繊維を含む繊維組成物用の繊維は、不織布グラフト材料の最終目的に当業者によって好適とみなされる様々なサイズであり得る。典型的には、繊維は、5μm未満の平均繊維直径を有し、2μm未満、1.5μm未満、及び1.0μm未満を含む。例えば、いくつかの実施形態では、繊維は、約10nm~約5μm、より具体的には約10nm~約1.0μm、更により具体的には約20nm~約500nm、最も具体的には約20nm~約400nmの範囲の平均繊維直径を有することができる。他の例示的な範囲には、約50nm~約500nm、約100nm~約500nm、及び約40nm~約200nmが含まれる。
【0028】
不織布グラフト材料をもたらす第1の繊維組成物対第2の繊維組成物の好適な比は、約10対1~約1対10の範囲であり得る。
【0029】
いくつかの実施形態では、不織布グラフト材料は、ポリ(乳酸-co-グリコール酸)から調製される第1の不織繊維組成物と、ポリジオキサノンから調製される第2の不織繊維組成物から作製される。得られた不織布グラフト材料は、局所的な炎症を軽減して創傷治癒及び組織再生を改善しながら、最適な強度、取り扱い、及び縫合性を提供するように設計された非生物学的組織代替品である。例示的な実施形態では、不織布グラフト材料は、グリコリド及びL-ラクチドのコポリマーを含む第1の繊維組成物と、ポリジオキサノン(100モル%)を含む第2の繊維組成物とをエレクトロスピニングすることによって合成して、天然の細胞外マトリックスを思わせる構造を作り出すことができる。グリコリドのモル%対L-ラクチドのモル%は、約100モル%のグリコリド対0モル%のL-ラクチド~0モル%のグリコリド対約100モル%のL-ラクチドの範囲であり得る。特に好適な不織布グラフト材料は、90モル%のグリコリドと10モル%のL-ラクチドとのグリコリドモル%対L-ラクチドモル%比を有するグリコリド及びL-ラクチドのコポリマーを含む、第1の繊維組成物を含む。この合成方法により、天然組織の外観及び感触を提供しながら、機械的に強い材料が作成される。この非生物学的グラフト材料の構造は、炎症を最小限に抑えながら組織の内方成長及び新生硬膜化(neoduralization)を更にサポートする。
【0030】
不織布グラフト材料は、典型的には、様々なサイズ、形状、及び厚さのいずれかになるように調製することができる。湿潤及び乾燥不織布グラフト材料は、任意の所望のサイズ及び形状に好適に切断及びトリミングすることができる。特に好適な実施形態では、不織布グラフト材料は、直径約0.55インチのディスク、0.5インチ×1インチ、2.5cm×2.5cm(1インチ×1インチ)から約25.5cm×50cm(10インチ×20インチ)までの範囲のサイズを有し、例えば、約2.5cm×2.5cm(1インチ×1インチ)から、約5.0cm×5.0cm(2インチ×2インチ)から、約7.5cm×7.5cm(3インチ×3インチ)から、約12.5cm×17.5cm(5インチ×7インチ)からを含み、約10cm×12.5cm(4インチ×5インチ)を含む。
【0031】
不織布グラフト材料は、典型的には、約0.1mm~約5mmの範囲の厚さを有し、約0.3mm~約0.8mm、約0.3mm~約0.7mm、及び約0.3mm~約0.5mmを含む。
【0032】
不織布グラフト材料は、典型的には多孔質であり、約10μm2~約10,000μm2の範囲の孔径を有する相互接続した孔を有する。特に好適な実施形態は、300μm2未満の孔径を有する。このサイズ範囲の細孔は細胞の侵入に対応でき、細胞の成長及び増殖、その後の血管新生及び組織の発達をサポートできると考えられている。
【0033】
いくつかの態様では、不織布グラフト材料は、ヒアルロン酸、コラーゲン、ラミニン、フィブロネクチン、成長因子、インテグリンペプチド(Arg-Gly-Asp、すなわちRGDペプチド)などの生体分子(ただしこれらに限定されない)により、又はヒアルロン酸ナトリウム及び/若しくはキトサンナイアシンアミドアスコルビン酸塩によって表面修飾することができ、これらは、細胞の遊走及び増殖、又はそれらの組み合わせを促進すると考えられている。
【0034】
材料には、これらの生物活性剤及び他の生物活性剤、例えば薬物、ビタミン、成長因子、治療用ペプチドなどを含浸させることもできる。更に、疼痛を軽減する薬物が材料に組み込まれることもある。
【0035】
別の態様では、本開示は、不織布グラフト材料を含む積層体を対象とし、不織布グラフト材料は、第1の不織繊維組成物及び第2の不織繊維組成物を含む。
【0036】
いくつかの実施形態では、積層体の不織布グラフト材料は、本明細書に記載されるように、ポリ(乳酸-co-グリコール酸)を含む第1の不織繊維組成物と、ポリジオキサノンを含む第2の不織繊維組成物とを含む。
【0037】
いくつかの実施形態では、不織布グラフト材料には、不織布グラフト材料の表面から生じる少なくとも1つの突起を含めることができる。突起は、不織布グラフト材料の表面から生じる突出又は隆起である。突起は、不織布グラフト材料の上面、不織布グラフト材料の底面、並びに不織布グラフト材料の上面及び底面から生じ得る。突起は、例えば、円形、球形、正方形、長方形、菱形、星形、不規則形、及びそれらの組み合わせなど、任意の所望の形状とすることができる。突起は、材料の表面から突起の頂部まで測定した任意の所望の高さにすることができる。一実施形態では、突起は、材料の表面から実質的に均一な高さを有することができる。別の実施形態では、突起は更に、材料の表面から突起の測定可能な最も高い表面まで徐々に形成することができる。いくつかの実施形態では、不織布グラフト材料の表面は複数の突出を含む。複数の突出は、不織布グラフト材料の表面上にパターン化するか、又はランダムに分布させることができる。別の実施形態では、この方法は、不織布グラフト材料の表面に少なくとも1つのくぼみを形成することを含む。くぼみは、不織布グラフト材料の表面の凹所又は陥凹である。くぼみは、不織布グラフト材料の上面、不織布グラフト材料の底面、並びに不織布グラフト材料の上面及び底面に形成され得る。くぼみは、例えば、円形、球形、正方形、長方形、菱形、星形、不規則形、及びそれらの組み合わせなど、任意の所望の形状とすることができる。くぼみは、材料の表面からくぼみの底部まで測定した任意の所望の深さにすることができる。一実施形態では、くぼみは、材料の表面からくぼみの最も深い深さまで実質的に均一な深さを有することができる。別の実施形態では、くぼみは更に、材料の表面からくぼみの最も深い深さまで徐々に形成することができる。いくつかの実施形態では、不織布グラフト材料の表面は複数のくぼみを含む。複数のくぼみは、不織布グラフト材料の表面上にパターン化するか、又はランダムに分布させることができる。別の実施形態では、不織布グラフト材料は、不織布グラフト材料の表面から生じる少なくとも1つの突起と、不織布グラフト材料の表面の少なくとも1つのくぼみとを含むことができる。別の実施形態では、不織布グラフト材料は、不織布グラフト材料の上面から生じる少なくとも1つの突起と、不織布グラフト材料の上面の少なくとも1つのくぼみとを含むことができる。別の実施形態では、不織布グラフト材料は、不織布グラフト材料の底面から生じる少なくとも1つの突起と、不織布グラフト材料の底面の少なくとも1つのくぼみとを含むことができる。別の実施形態では、不織布グラフト材料は、不織布グラフト材料の上面から生じる少なくとも1つの突起、不織布グラフト材料の底面から生じる少なくとも1つの突起、不織布グラフト材料の上面には少なくとも1つのくぼみ、不織布グラフト材料の底面には少なくとも1つのくぼみを含むことができる。複数のくぼみは、不織布グラフト材料の表面上にパターン化するか、又はランダムに分布させることができる。突起及びくぼみを形成するための好適な方法としては、プレス、スタンピング、及び当業者に知られている他の方法が挙げられる。
【0038】
エレクトロスピニング
【0039】
いくつかの実施形態では、本開示は、不織布グラフト材料を調製する方法を対象とする。この方法は一般に、上述のポリマーの水溶液を調製することを含む。特に、別々のポリマー溶液から得られる繊維を、エレクトロスピニング、エレクトロスプレーイング、メルトブローイング、スパンボンドなどの1つ以上のプロセスを使用して一緒に接触させて、不織布グラフト材料を形成し、不織布グラフト材料を乾燥させることができる。
【0040】
不織布グラフト材料を乾燥させて、ポリマー水溶液を調製するために使用された溶媒を除去する。乾燥は、ヤンキードライヤー、真空オーブン、真空チャンバー、及び通気ドライヤーを含むがこれらに限定されない、当技術分野で一般に知られている方法を使用して行うことができる。好ましくは、不織布グラフト材料のかさ又は厚さを保持する傾向がある非圧縮乾燥方法が採用される。好適な完全乾燥装置(through-drying apparatus)及び完全乾燥ファブリック(through-drying fabric)は従来のものであり、よく知られている。当業者であれば、特定の完全乾燥操作に対する最適な乾燥ガス温度及び滞留時間を容易に決定することができる。
【0041】
いくつかの実施形態では、第1のポリマー水溶液から得られる第1の繊維組成物と、第2のポリマー水溶液から得られる第2の繊維組成物とをブレンドして、上述のエレクトロスピニングプロセスを使用して不織布グラフト材料を形成する。エレクトロスピニングプロセスは、一般に、高電圧(例えば、エレクトロスピニング装置の構成に応じて、約3kV~約80kVを含む、約1kV~約100kV)をポリマー繊維溶液に印加して、ポリマー噴流を生成することを含む。噴流が空気中を移動すると、噴流は静電力の反発を受けて引き伸ばされ、ポリマー繊維溶液からナノ繊維又はハイブリッドスケール繊維マトリックス繊維が生成される。高電圧は、接地された表面(又は逆に帯電した表面)とポリマー繊維溶液が注射される導電性キャピラリーの間に印加される。キャピラリーがガラスピペットなどの不導体の場合、高電圧を溶液に印加したり、ワイヤーを介して溶かしたりすることもできる。最初に、キャピラリーの開いた先端にある溶液は、電気力及び表面張力の相互作用によって円錐形(いわゆる「テイラーコーン」)に引っ張られる。特定の電圧範囲では、ポリマー繊維溶液の微細な噴流がテイラーコーンの先端で形成され、ターゲットに向かって発射される。電場からの力が噴流を加速し、引き延ばす。この引き延ばし及び溶媒分子の蒸発により、噴流の直径がより小さくなる。噴流の直径が減少するにつれて、電荷密度が、ポリマー内の静電力が噴流を保持する凝集力(例えば、表面張力)に打ち勝つまで増加し、噴流が分裂又は「広がり」、ポリマーナノ繊維のマルチフィラメント又はハイブリッドスケール繊維マトリックス繊維になる。繊維はコレクターに到達するまで広がり続け、そこで不織布ナノ繊維又はハイブリッドスケール繊維マトリックス繊維として収集され、必要に応じて乾燥される。
【0042】
ポリマー水溶液を調製するための好適な溶媒としては、例えば、ヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP)、ジクロロメタン(DCM)、ジメチルホルムアミド(DMF)、アセトン、及びエタノールが挙げられる。
【0043】
いくつかの実施形態では、方法は、不織布グラフト材料の表面から生じる少なくとも1つの突起を形成すること、不織布グラフト材料の表面に少なくとも1つのくぼみを形成すること、及びそれらの組み合わせを更に含むことができる。突起は、不織布グラフト材料の表面から生じる突出又は隆起である。突起は、不織布グラフト材料の上面、不織布グラフト材料の底面、並びに不織布グラフト材料の上面及び底面から生じ得る。突起は、例えば、円形、球形、正方形、長方形、菱形、星形、不規則形、及びそれらの組み合わせなど、任意の所望の形状とすることができる。突起は、材料の表面から突起の頂部まで測定した任意の所望の高さにすることができる。一実施形態では、突起は、材料の表面から実質的に均一な高さを有することができる。別の実施形態では、突起は更に、材料の表面から突起の測定可能な最も高い表面まで徐々に形成することができる。いくつかの実施形態では、不織布グラフト材料の表面は複数の突出を含む。複数の突出は、不織布グラフト材料の表面上にパターン化するか、又はランダムに分布させることができる。別の実施形態では、この方法は、不織布グラフト材料の表面に少なくとも1つのくぼみを形成することを含む。くぼみは、不織布グラフト材料の表面の凹所又は陥凹である。くぼみは、不織布グラフト材料の上面、不織布グラフト材料の底面、並びに不織布グラフト材料の上面及び底面に形成され得る。くぼみは、例えば、円形、球形、正方形、長方形、菱形、星形、不規則形、及びそれらの組み合わせなど、任意の所望の形状とすることができる。くぼみは、材料の表面からくぼみの底部まで測定した任意の所望の深さにすることができる。一実施形態では、くぼみは、材料の表面からくぼみの最も深い深さまで実質的に均一な深さを有することができる。別の実施形態では、くぼみは更に、材料の表面からくぼみの最も深い深さまで徐々に形成することができる。いくつかの実施形態では、不織布グラフト材料の表面は複数のくぼみを含む。複数のくぼみは、不織布グラフト材料の表面上にパターン化するか、又はランダムに分布させることができる。別の実施形態では、不織布グラフト材料は、不織布グラフト材料の表面から生じる少なくとも1つの突起と、不織布グラフト材料の表面の少なくとも1つのくぼみとを含むことができる。別の実施形態では、不織布グラフト材料は、不織布グラフト材料の上面から生じる少なくとも1つの突起と、不織布グラフト材料の上面の少なくとも1つのくぼみとを含むことができる。別の実施形態では、不織布グラフト材料は、不織布グラフト材料の底面から生じる少なくとも1つの突起と、不織布グラフト材料の底面の少なくとも1つのくぼみとを含むことができる。別の実施形態では、不織布グラフト材料は、不織布グラフト材料の上面から生じる少なくとも1つの突起、不織布グラフト材料の底面から生じる少なくとも1つの突起、不織布グラフト材料の上面には少なくとも1つのくぼみ、不織布グラフト材料の底面には少なくとも1つのくぼみを含むことができる。複数の突起及び複数のくぼみは、不織布グラフト材料の表面上にパターン化するか又はランダムに分布させることができる。突起及びくぼみを形成するための好適な方法としては、プレス、スタンピング、及び当業者に知られている他の方法が挙げられる。
【0044】
粒子
【0045】
グラフト材料(例えば、エレクトロスパンシート)が、本明細書で議論されるナノ構造又はハイブリッドスケール繊維マトリックスで形成されると、グラフト材料は、
図2及び
図3に示すような、マイクロ又はナノスケールの小さな構成要素(例えば、ハイブリッドスケール繊維マトリックスを構成する粒子、粉末、ボール)に破壊することができる。有利なことに、小さなナノ繊維又はハイブリッドスケール繊維マトリックス構成要素は、元のグラフト材料の繊維全体のハイブリッドスケール繊維構造を維持することができ、粒子は親繊維の形態を保持し、これは、倍率を上げて粒子を画像化することによって証明できる(例えば、
図4A~4E)。いくつかの実施形態では、マイクロスケール又はナノスケールのハイブリッドスケール繊維マトリックス構成要素は、破壊すると、ベースのグラフト材料シートと同じ繊維直径及び孔径仕様を維持する。
【0046】
グラフト材料は様々な方法で破壊でき、特定の方法に限定されるものではない。例えば、グラフト材料は、機械的細砕又は粉砕などによって粉末にすり砕くことができる。いくつかの実施形態では、細砕又は低温粉砕の前に、液体窒素などの極低温剤を使用するなどして、材料を凍結させることができるが、他の実施形態では凍結は使用されない。いくつかの実施形態では、他の切断又はメッシュ化方法の中でもレーザー切断又は低温切断を含む、切断又はメッシュ化方法を採用してグラフト材料を破壊することができる。他の方法には、材料をより小さな構成要素に破壊する超音波処理が含まれる。
【0047】
前処理又は後処理を含む、破壊又は別のマイクロスケール又はナノスケールのハイブリッドスケール繊維マトリックス構成要素を製造するプロセス中又はその後のいつでも、ハイブリッドスケール繊維マトリックス構成要素に多くの処理及びプロセスを適用できる。これらには、表面積、サイズ、形状、質量、密度、注入性、展開性、流動性、電荷、粘度、色、又は反射率を含む、得られるマイクロスケール又はナノスケールのハイブリッドスケール繊維マトリックス構成要素の物理的特性に基づくふるい分け又は粒子選別が含まれるが、これらに限定されない。
図5A~5Dに示すように、ハイブリッドスケール繊維マトリックス構成要素の均質な混合物は、サイズに基づいて分離することができる。
図5Aは、150μm未満のふるい分けに基づくSEM画像を示す。
図5Bは、150~355μmのふるい分けに基づくSEM画像を示す。
図5Cは、355μmを超えるふるい分けに基づくSEM画像を示す。最後に、
図5Dは、ふるい分け前の粒子の均質な混合物に基づくSEM画像を示す。いくつかの実施形態では、後処理ステップは、帯電防止効果を達成するために潜在電荷を除去することからなってもよい。いくつかの実施形態では、ハイブリッドスケール繊維マトリックス構成要素に、窒素バックフィリングを含む、水分を変化させる後処理(post-processing)処理(treatment)を採用する場合がある。いくつかの実施形態では、プラズマ又は他の化学処理を利用して、ハイブリッドスケール繊維マトリックス構成要素の得られる表面を改質することができる。
【0048】
粉末自体は、1mm未満(又は約1mm未満)のD50直径を有し得る。いくつかの実施形態では、粉末のD50は、およそ1μm(又は約1μm)であり得る。いくつかの実施形態では、粉末のD50は、5mm(5000μm)未満であり得る。いくつかの実施形態では、粉末は、1μm~2000μm(又は約1μm~約2000μm)の範囲のD50を有し得る。いくつかの実施形態では、粉末は、1μm~5000μm(又は約1μm~約5000μm)の範囲のD50を有し得る。更に、いくつかの実施形態では、粉末のD50直径は、1~100μm、30~60μm、100~250μm、250~500μm、500~1000μm、1000~2000μm、又は2000~5000μmであり得る。いくつかの実施形態では、粉末は、約1μm、約5μm、約10μm、約100μm、約500μm、約1000μm、約1500μm、約2000μm、約3000μm、約4000μm、約5000μmのd50を有することができ、かつ/又は前述の値のうちの2つによって定義される範囲内のd50値を含むことができる。
【0049】
いくつかの実施形態では、粒子の少なくとも1、10、20、30、40、50、60、70、80、85、90、95、又は99%(又は少なくとも約1、約10、約20、約30、約40、約50、約60、約70、約80、約85、約90、約95、又は約99%)は、元のグラフト材料のハイブリッドスケール繊維マトリックス構造を含み得る。いくつかの実施形態では、
図6に示すように、粒子に固有の繊維構造は、他の繊維又は非繊維構造と混合又は融合されていてもよい。いくつかの実施形態では、混合又は融合した繊維が固体表面を形成していてもよい。いくつかの実施形態では、粒子の全て(又はほぼ全て)が、元のグラフト材料のハイブリッドスケール繊維マトリックス構造を含むことができる。例えば、粒子は、グラフト材料の元の構造に応じて、平行又はランダムな繊維配向を含むことができる。いくつかの実施形態では、ハイブリッドスケール繊維マトリックス構造は、全体の粒子サイズよりも小さく、粒子の生成中に維持することができる。いくつかの実施形態では、ハイブリッドスケール繊維マトリックス構造は、繊維間の相互作用によって維持される。
【0050】
いくつかの実施形態では、グラフト材料の前駆体は、上で論じたようにすり砕く又は粉砕することができる。いくつかの実施形態では、粒子は、表面積、サイズ、形状、質量、密度、注入性、展開性、流動性、電荷、粘度、色、又は反射率を含むがこれらに限定されない物理的及び機械的パラメータに基づいて選別され得る。
【0051】
いくつかの実施形態では、粒子をヒドロゲルに組み込むことができる。ヒドロゲルは、例えば、任意の架橋親水性ポリマーであり得る。いくつかの実施形態では、粒子は、異なる物理的又は機械的特性を有する粒子からなる他の粉末集団と混合されてもよい。
【0052】
いくつかの実施形態では、粒子を流体と混合して、注射可能な溶液を作成することができる。液体は、例えば、水、リン酸緩衝生理食塩水、ヒアルロン酸、多血小板血漿、ゲル、コラーゲンベースの溶液、骨髄穿刺液、注射可能性及び治癒応答を高めるための他の化学物質及び薬物、並びにそれらの組み合わせであり得る。いくつかの実施形態では、粒子は、溶液に混合すると、粒子の結合を可能にするか又は促進することができる。いくつかの実施形態では、粒子の使用中、粒子は自然な身体再形成以外では相互結合しない。
【0053】
組織修復
【0054】
いくつかの実施形態では、本開示は、組織修復を必要とする個体における組織修復の方法を対象とする。この方法は、不織布グラフト材料を手術野に適用することを含むことができ、不織布グラフト材料は第1の繊維組成物及び第2の繊維組成物を含む。この方法は、不織布グラフト材料又はハイブリッドスケール繊維マトリックスを手術野に適用することを更に含むことができ、不織布グラフト材料は、第1の繊維組成物及び第2の繊維組成物を含み、不織布グラフト材料又はハイブリッドスケール繊維マトリックスが、組織上に詰め込まれ、広げられ、又はその他の方法で散布される。この方法は、例えば、硬膜、心膜、小腸粘膜下層、真皮、表皮、腱、気管、心臓弁尖、胃腸管、及び心臓組織などの組織を修復するのに特に適している。好適な組織修復処置としては、例えば、硬膜修復などの神経外科手術、皮膚移植、気管修復、胃腸管修復(例えば、腹部ヘルニア修復、潰瘍修復)、心臓欠陥修復、頭頸部手術、骨折への適用、及び火傷修復が挙げられる。
【0055】
好適には、不織布グラフト材料は、第1の繊維組成物を含み、第1の繊維組成物は、ポリカプロラクトン(ポリ(ε-カプロラクトン)、PCL)、ポリジオキサノン(PDO)、ポリ(グリコール酸)(PGA)、ポリ(L-乳酸)(PLA)、ポリ(ラクチド-co-グリコリド)(PLGA)、ポリ(L-ラクチド)(PLLA)、ポリ(D,L-ラクチド)(P(DLLA))、ポリ(エチレングリコール)(PEG)、モンモリロナイト(MMT)、ポリ(L-ラクチド-co-ε-カプロラクトン)(P(LLA-CL))、ポリ(ε-カプロラクトン-co-エチルエチレンホスフェート)(P(CL-EEP))、ポリ[ビス(p-メチルフェノキシ)ホスファゼン](PNmPh)、ポリ(3-ヒドロキシ酪酸-co-3-ヒドロキシ吉草酸)(PHBV)、ポリ(エステルウレタン)尿素(PEUU)、ポリ(p-ジオキサノン)(PPDO)、ポリウレタン(PU)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリ(エチレン-co-酢酸ビニル)(PEVA)、ポリ(エチレンオキシド)(PEO)、ポリ(ホスファゼン)、ポリ(エチレン-co-ビニルアルコール)、ポリマーナノクレイナノ複合材料、ポリ(エチレンイミン)、ポリ(エチレンオキシド)、ポリビニルピロリドン;ポリスチレン(PS)及びそれらの組み合わせから選択されるポリマーを含む。特に好適なポリマーとしては、ポリ(乳酸-co-グリコール酸)、ポリジオキサノン、ポリカプロラクトン、及びそれらの組み合わせが挙げられる。
【0056】
好適には、不織布グラフト材料は、第2の繊維組成物を含み、第2の繊維組成物は、ポリカプロラクトン(ポリ(ε-カプロラクトン)、PCL)、ポリジオキサノン(PDO)、ポリ(グリコール酸)(PGA)、ポリ(L-乳酸)(PLA)、ポリ(ラクチド-co-グリコリド)(PLGA)、ポリ(L-ラクチド)(PLLA)、ポリ(D,L-ラクチド)(P(DLLA))、ポリ(エチレングリコール)(PEG)、モンモリロナイト(MMT)、ポリ(L-ラクチド-co-ε-カプロラクトン)(P(LLA-CL))、ポリ(ε-カプロラクトン-co-エチルエチレンホスフェート)(P(CL-EEP))、ポリ[ビス(p-メチルフェノキシ)ホスファゼン](PNmPh)、ポリ(3-ヒドロキシ酪酸-co-3-ヒドロキシ吉草酸)(PHBV)、ポリ(エステルウレタン)尿素(PEUU)、ポリ(p-ジオキサノン)(PPDO)、ポリウレタン(PU)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリ(エチレン-co-酢酸ビニル)(PEVA)、ポリ(エチレンオキシド)(PEO)、ポリ(ホスファゼン)、ポリ(エチレン-co-ビニルアルコール)、ポリマーナノクレイナノ複合材料、ポリ(エチレンイミン)、ポリ(エチレンオキシド)、ポリビニルピロリドン;ポリスチレン(PS)及びそれらの組み合わせから選択されるポリマーを含む。特に好適なポリマーとしては、ポリ(乳酸-co-グリコール酸)、ポリジオキサノン、ポリカプロラクトン、及びそれらの組み合わせが挙げられる。
【0057】
特に好適な実施形態では、不織布グラフト材料は、ポリ(乳酸-co-グリコール酸)を含む第1の繊維組成物と、ポリジオキサノンを含む第2の繊維組成物と、を含む。
【0058】
本明細書で使用する場合、「それを必要とする個体」とは、組織欠損、組織損傷、損傷又は除去により失われた組織、及び切開によって損傷した組織を有する個体を指す。この方法は、硬膜の修復を必要とする硬膜欠損を有する個体又は個体のサブセットでの使用に特に適している。硬膜欠損を有する個体は、硬膜に穿孔がある個体、硬膜が除去された個体、硬膜が損傷した個体、及び硬膜が外科的切開を受けた個体であり得る。それを必要とする個体は、成人個体、子供、及び小児個体であり得る。特に好適な個体は、ヒトであり得る。他の特に好適な個体は、霊長類、ブタ、イヌ、ネコ、ウサギ、げっ歯類(例えば、マウス及びラット)などの動物であり得る。
【0059】
いくつかの実施形態では、不織布グラフト材料は、例えば不織布グラフト材料を手術野に縫合することによって手術野に固定される。他の実施形態では、不織布グラフト材料は、外科用接着剤などによって手術野に固定される。いくつかの実施形態では、不織布グラフト材料又はハイブリッドスケール繊維マトリックスは、手術野に固定又は適用され、不織布グラフト材料は、第1の繊維組成物及び第2の繊維組成物を含み、不織布グラフト材料又はハイブリッドスケール繊維マトリックスは、組織上に詰め込まれ、広げられ、又はその他の方法で散布される。いくつかの実施形態では、不織布グラフト材料又はハイブリッドスケール繊維マトリックスは創傷部位に適用され、不織布グラフト材料又はハイブリッドスケール繊維マトリックスは創傷部位上に詰め込まれ、広げられ、又はその他の方法で散布される。
【0060】
いくつかの実施形態では、粉末は様々な形態で送達され得る。これらの形態は限定的ではないが、純粋な粉末として送達すること、溶液に混合すること、ヒドロゲルに組み込むこと、針で注射すること、又は表面創傷に直接注ぐことを含み得る。いくつかの実施形態では、異なる物理的、機械的、又は化学的組成を有するハイブリッドスケール繊維マトリックス構成要素からなる複数の粉末集団を、様々な割合で組み合わせることができる。いくつかの実施形態では、複数の粉末集団の混合物が上記のように投与され得る。
【0061】
上で論じたように、粒子は、上で論じたグラフト材料シートの代わりに、又はそれと組み合わせて使用することができる。特に、粒子は、完全なシートグラフト材料では覆うことが難しい不規則な形状を有する創傷などの皮膚創傷の管理に使用することができる。ナノ繊維又はハイブリッドスケール繊維マトリックスのシートと比較して、ナノ繊維又はハイブリッドスケール繊維マトリックス構成要素の粒子では、到達しにくい領域及び間隙を有する不規則な形状の創傷を含む、創傷の適合性及びパッキングの向上を可能にする可能性がある。更に、単一のシートと比較して個々の粒子の表面積対体積比がより高いため、粒子は、創傷内に蓄積する水分及び滲出液を吸収する能力が向上する可能性がある。いくつかの実施形態では、粒子は更に、流体の吸収又は通過を可能にするために、巨視的に見える高い多孔性を示すこともある。いくつかの実施形態では、粉末は、注射可能であるか、又はそれ以外の場合は、低侵襲性技術を使用して採用され得る。いくつかの実施形態では、複数の粒子を創傷上に注いで部分的又は完全に充填することができ、創傷を部分的又は完全に複数の粒子で「詰め込む」ことができる。いくつかの実施形態では、創傷上に詰め込まれた粒子の1つ以上の層の厚さは、100μm~1cmの間であり得る。いくつかの実施形態では、創傷上に詰められた粒子の1つ以上の層の厚さは、100μm~5cmの間であり得る。いくつかの実施形態では、創傷上に詰められた粒子の1つ以上の層の厚さは、100μm~10cmの間であり得る。いくつかの実施形態では、創傷上に詰められた粒子の1つ以上の層の厚さは、約100μm、約200μm、約300μm、約500μm、約700μm、約1000μm、約3000μm、約5000μm、約7000μm、約10000μm、約50,000μm、約100,000μmであり得、かつ/又は前述の値のうちの2つによって定義される範囲内の厚さを含み得る。更に、粒子の実施形態は、形成手術及び再建手術などの軟組織充填材として使用することができる。いくつかの実施形態では、粒子は、創傷に詰め込み、広げ、散布し、振り入れ、又は注ぎ込むことができる。
【0062】
有利には、粒子の実施形態は、単独で、又はとりわけ創傷マトリックス適用及び皮膚移植などの他の創傷療法と組み合わせて使用することができる。例えば、粒子の層を創傷の中に配置し、その上に移植片を取り付けることができる。いくつかの実施形態では、粒子は、移植片が覆うことができない領域を充填することができる。いくつかの実施形態では、粒子は、骨髄穿刺液又は多血小板血漿などの他の治療療法と混合され、その後、創傷に適用され得る。いくつかの実施形態では、粒子は、他の粉末、他のポリマー、薬物、細胞、成長因子、又は生物活性剤と任意の割合で組み合わせることができる。
【0063】
いくつかの実施形態では、粒子を縫合線に適用することができ、これは生物学的反応をサポートし、治癒を促進するのに役立ち得る。
【0064】
前述の説明から、本発明のナノ繊維マトリックス及び製造方法及び使用方法が開示されていることが理解されるであろう。いくつかの構成要素、技術、及び態様をある程度詳細に説明してきたが、本開示の趣旨及び範囲から逸脱することなく、本明細書の上記の特定の設計、構造、及び方法論に多くの変更を加えることができることは明らかである。
【0065】
別個の実装の文脈で本開示で説明される特定の特徴は、単一の実装で組み合わせて実装することもできる。逆に、単一の実装の文脈で説明されている様々な特徴は、複数の実装で個別に、又は好適なサブコンビネーションで実装することもできる。更に、特徴は特定の組み合わせで作用するものとして上記に説明されているが、場合によっては、請求項に係る組み合わせからの1つ以上の特徴をその組み合わせから削除することができ、その組み合わせは、任意のサブコンビネーション又は任意のサブコンビネーションの変形として請求項に記載され得る。
【0066】
更に、方法は特定の順序で図面に示されたり、明細書に記載されたりすることがあるが、このような方法は、望ましい結果を達成するために、示された特定の順序又は連続した順序で実行される必要はなく、全ての方法が実行される必要はない。図示又は説明されていない他の方法を、例示的な方法及びプロセスに組み込むことができる。例えば、1つ以上の追加の方法を、記載された方法のいずれかの前、後、同時に、又はそれらの間に実行することができる。更に、他の実装では、方法を再配置又は再順序付けすることができる。また、上で説明した実装における様々なシステム構成要素の分離は、全ての実装でそのような分離が必要であると理解されるべきではなく、説明された構成要素及びシステムは一般に、単一の製品に一緒に統合されることも、複数の製品にパッケージ化されることもできることを理解すべきである。更に、他の実装も本開示の範囲内にある。
【0067】
「できる(can)」、「できる(could)」、「してもよい(might)」、又は「場合がある(may)」などの条件付きの言語は、特に別段の記載がない限り、又は使用される文脈内で別の方法で理解されない限り、一般に、特定の実施形態が特定の特徴、要素、及び/又はステップを含む、又は含まないことを伝えることを意図している。したがって、このような条件付きの文言は、一般に、何らかの形で特徴、要素、及び/又はステップが1つ以上の実施形態に必要であることを示唆することを意図したものではない。
【0068】
「X、Y、及びZのうちの少なくとも1つ」という語句などの接続詞は、特に別段の記載がない限り、項目、用語などがX、Y、又はZのいずれかであることを伝えるために一般に使用される文脈で理解される。したがって、このような接続詞は、一般に、特定の実施形態が、Xのうちの少なくとも1つ、Yのうちの少なくとも1つ、及びZのうちの少なくとも1つの存在を必要とすることを暗示することを意図したものではない。
【0069】
本明細書で使用される用語「およそ」、「約」、「一般的に」、及び「実質的に」など、本明細書で使用される程度を表す言語は、依然として所望の機能を実行する又は所望の結果を達成する、記載された値、量、又は特性に近い、値、量、又は特性を表す。例えば、「およそ」、「約」、「一般的に」、「実質的に」という用語は、記載された量の10%以下、5%以下、1%以下、0.1%以下、及び0.01%以下の範囲内の量を指し得る。記載された量が0(例えば、なし、有しない)の場合、上記の範囲は特定の範囲とすることができ、値の特定の%以内ではない。例えば、記載された量の、10重量/体積%以下の範囲内、5重量/体積%以下の範囲内、1重量/体積%以下の範囲内、0.1重量/体積%以下の範囲内、及び0.01重量/体積%以下の範囲内である。更に、本開示内の表の全ての値は、記載された値であるか、あるいは記載された値に近いものであると理解される。
【0070】
様々な実施形態に関連した任意の特定の特徴、態様、方法、特性、特徴、品質、属性、要素などの本明細書での開示は、本明細書に記載の他の全ての実施形態で使用することができる。更に、本明細書に記載される任意の方法は、列挙されたステップを実行するのに適した任意のデバイスを使用して実施され得ることが認識されるであろう。
【0071】
多くの実施形態及びその変形例を詳細に説明してきたが、他の変形例及びその使用方法は当業者には明らかであろう。したがって、本明細書の独自の発明の開示又は特許請求の範囲から逸脱することなく、均等物から様々な応用、修正、材料、及び置換を行うことができることを理解されたい。
【国際調査報告】