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  • 特表-基板処理装置の洗浄方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-08
(54)【発明の名称】基板処理装置の洗浄方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/205 20060101AFI20241001BHJP
   H01L 21/3065 20060101ALI20241001BHJP
   C23C 16/44 20060101ALI20241001BHJP
【FI】
H01L21/205
H01L21/302 101H
C23C16/44 J
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024509418
(86)(22)【出願日】2022-09-20
(85)【翻訳文提出日】2024-02-16
(86)【国際出願番号】 KR2022014051
(87)【国際公開番号】W WO2023048455
(87)【国際公開日】2023-03-30
(31)【優先権主張番号】10-2021-0126347
(32)【優先日】2021-09-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】504210651
【氏名又は名称】ジュスン エンジニアリング カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000154
【氏名又は名称】弁理士法人はるか国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヘオ ジョン
(72)【発明者】
【氏名】パク イル ハン
(72)【発明者】
【氏名】オォ ウォン ジュ
(72)【発明者】
【氏名】リ ドン ファン
(72)【発明者】
【氏名】リ ジュン ソク
(72)【発明者】
【氏名】リン ビュン カン
(72)【発明者】
【氏名】チョ セウン ヒュン
(72)【発明者】
【氏名】ファン チュル ジュ
【テーマコード(参考)】
4K030
5F004
5F045
【Fターム(参考)】
4K030AA11
4K030AA14
4K030BA08
4K030BA11
4K030BA16
4K030BA21
4K030BA42
4K030BA47
4K030DA06
4K030EA05
4K030FA03
4K030FA10
4K030HA01
4K030JA10
4K030LA12
4K030LA15
4K030LA18
5F004AA15
5F004BA11
5F004BB13
5F004BB18
5F004BB26
5F004BD04
5F004CA01
5F004DA00
5F004DA10
5F004DB19
5F045AA06
5F045AA08
5F045AA15
5F045AB40
5F045AC00
5F045AC07
5F045AC11
5F045AC15
5F045AC16
5F045AD06
5F045AD07
5F045AD08
5F045AE01
5F045BB15
5F045DP03
5F045DP28
5F045DQ10
5F045EB06
5F045EE17
5F045EF05
5F045EF08
5F045EH12
5F045EK07
(57)【要約】
本発明の実施形態に係る基板処理装置の洗浄方法は、チャンバーの内部に基板を搬入するステップと、前記チャンバーの内部にZn、Ga、In及びSnのうちの少なくとも1種を含有するガスを噴射して、前記基板の上に薄膜を蒸着するステップと、前記チャンバーの外部に基板を搬出するステップと、前記チャンバーの内部にBrを含有する洗浄ガスを噴射するステップと、前記薄膜を蒸着するステップにおいて前記基板以外に前記チャンバーの内部に蒸着された不純物と前記洗浄ガスとが反応して生成された副産物を排気するステップと、を含む。
したがって、本発明の実施形態によれば、従来に比べて低い温度であり、蒸着工程温度に比べて低い温度において、基板処理装置の内部を洗浄することができる。すなわち、基板処理装置の内部に配設された部品又は構造物の表面に蒸着された薄膜状の不純物を低い温度において表面から剥離して洗浄することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
チャンバーの内部に基板を搬入するステップと、
前記チャンバーの内部にZn、Ga、In及びSnのうちの少なくとも1種を含有するガスを噴射して、前記基板の上に薄膜を蒸着するステップと、
前記チャンバーの外部に基板を搬出するステップと、
前記チャンバーの内部にBrを含有する洗浄ガスを噴射するステップと、
前記薄膜を蒸着するステップにおいて前記基板以外に前記チャンバーの内部に蒸着された不純物と前記洗浄ガスとが反応して生成された副産物を排気するステップと、
を含む、基板処理装置の洗浄方法。
【請求項2】
チャンバーの内部に基板を搬入するステップと、
前記チャンバーの内部にガスを噴射して、前記基板の上に薄膜を蒸着するステップと、
前記チャンバーの外部に基板を搬出するステップと、
前記チャンバーの内部にBrを含有する洗浄ガスを噴射するステップと、
前記薄膜を蒸着するステップにおいて前記基板以外に前記チャンバーの内部に蒸着された不純物と前記洗浄ガスとが反応して生成された副産物を排気するステップと、
を含み、
前記洗浄ガスを噴射するステップにおいて、前記洗浄ガスをパルス(pulse)化させて噴射するか、あるいは、
前記洗浄ガスを噴射するステップと前記副産物を排気するステップとを交互に繰り返し行う、基板処理装置の洗浄方法。
【請求項3】
前記チャンバーの内部に前記洗浄ガスを分解する第1の補助ガスを噴射する過程を含む、請求項1に記載の基板処理装置の洗浄方法。
【請求項4】
前記第1の補助ガスとしては、Hガス及びOガスのうちの少なくとも一方を用いる、請求項3に記載の基板処理装置の洗浄方法。
【請求項5】
前記チャンバーの内部にプラズマを生じさせるステップを含む、請求項1に記載の基板処理装置の洗浄方法。
【請求項6】
前記プラズマを生じさせるステップは、Arガスである第2の補助ガスを噴射するステップを含む、請求項5に記載の基板処理装置の洗浄方法。
【請求項7】
前記チャンバーの内部に窒素を含有するガスを噴射するステップを含み、
前記窒素を含有するガスを噴射するステップは、前記洗浄ガスを噴射するステップと前記副産物を排気するステップとの間に行われる、請求項2に記載の基板処理装置の洗浄方法。
【請求項8】
前記洗浄ガスとしては、HBr、KBr、Br、HBrO及びCBrFのうちの少なくとも1種を含有するガスを用いる、請求項1乃至請求項7のいずれか一項に記載の基板処理装置の洗浄方法。
【請求項9】
前記チャンバーの内部の温度が蒸着工程時の温度に比べて低い、請求項1乃至請求項7のいずれか一項に記載の基板処理装置の洗浄方法。



【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板処理装置の洗浄方法に関し、基板処理装置の内部に残留する不純物の量を減少させることのできる基板処理装置の洗浄方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体素子又はディスプレイ装置を製造する工程は、基板の上に薄膜を蒸着する工程を含む。そして、薄膜蒸着工程は、基板処理装置のチャンバーの内部において行われる。
【0003】
一方、基板の上に薄膜を蒸着する蒸着工程を行うとき、基板のみならず、蒸着工程が行われるチャンバーの内部にも蒸着物が堆積される。例えば、チャンバーの内壁、基板を支持する支持台などの表面に薄膜が堆積される。
【0004】
このように、チャンバーの内部に堆積された薄膜は、その膜厚が増加すれば、剥離されてパーティクル(particle)の発生の原因となる。また、パーティクルは、基板の上に形成される薄膜内に入り込んだり、薄膜の表面に付着したりして欠陥の原因として働いて製品の不良率を高める。したがって、このような堆積物が剥離される前に取り除く必要がある。
【0005】
チャンバーの内部の堆積物を取り除く洗浄工程を行うとき、一般に、Clを含むガス又はFを含むガスを用いていた。このとき、Clを含むガス又はFを含むガスが堆積物と反応するためには、チャンバーの内部が高温に保たれなければならない。
【0006】
ところが、堆積物がチャンバーの内部の表面から剥離されるとき、チャンバーの内部の温度が高いが故に、堆積物以外に前記堆積物が堆積されている部品又は構造物の表面が一緒に剥離されてしまう虞がある。この理由から、堆積物以外に不純物として働く汚染物がさらに生じる。したがって、チャンバーの内部に堆積物及び追加の発生汚染物を含む不純物の量が多いため、洗浄工程が終了した後にもチャンバーの内部に不純物が多量に残留してしまうという問題がある。
【0007】
また、チャンバーの内部が高温に保たれることにより、洗浄工程に際してチャンバーの内部において腐食が起こるという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】韓国登録特許第10-1232904号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、低い温度において洗浄することのできる基板処理装置の洗浄方法を提供する。
【0010】
本発明は、薄膜蒸着温度に比べて低い温度において洗浄することのできる基板処理装置の洗浄方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の実施形態に係る基板処理装置の洗浄方法は、チャンバーの内部に基板を搬入するステップと、前記チャンバーの内部にZn、Ga、In及びSnのうちの少なくとも1種を含有するガスを噴射して、前記基板の上に薄膜を蒸着するステップと、前記チャンバーの外部に基板を搬出するステップと、前記チャンバーの内部にBrを含有する洗浄ガスを噴射するステップと、前記薄膜を蒸着するステップにおいて前記基板以外に前記チャンバーの内部に蒸着された不純物と前記洗浄ガスとが反応して生成された副産物を排気するステップと、を含んでいてもよい。
【0012】
本発明の実施形態に係る基板処理装置の洗浄方法は、チャンバーの内部に基板を搬入するステップと、前記チャンバーの内部にガスを噴射して、前記基板の上に薄膜を蒸着するステップと、前記チャンバーの外部に基板を搬出するステップと、前記チャンバーの内部にBrを含有する洗浄ガスを噴射するステップと、前記薄膜を蒸着するステップにおいて前記基板以外に前記チャンバーの内部に蒸着された不純物と前記洗浄ガスとが反応して生成された副産物を排気するステップと、を含み、前記洗浄ガスを噴射するステップにおいて、前記洗浄ガスをパルス(pulse)化させて噴射するか、あるいは、前記洗浄ガスを噴射するステップと前記副産物を排気するステップとを交互に繰り返し行ってもよい。
【0013】
上記の基板処理装置の洗浄方法は、前記チャンバーの内部に前記洗浄ガスを分解する第1の補助ガスを噴射する過程を含んでいてもよい。
【0014】
前記第1の補助ガスとしては、Hガス及びOガスのうちの少なくとも一方を用いてもよい。
【0015】
上記の基板処理装置の洗浄方法は、前記チャンバーの内部にプラズマを生じさせるステップを含んでいてもよい。
【0016】
前記プラズマを生じさせるステップは、Arガスである第2の補助ガスを噴射するステップを含んでいてもよい。
【0017】
上記の基板処理装置の洗浄方法は、前記チャンバーの内部に窒素を含有するガスを噴射するステップを含み、前記窒素を含有するガスを噴射するステップは、前記洗浄ガスを噴射するステップと前記副産物を排気するステップとの間に行われてもよい。
【0018】
前記洗浄ガスとしては、HBr、KBr、Br、HBrO及びCBrFのうちの少なくとも1種を含有するガスを用いてもよい。
【0019】
前記チャンバーの内部の温度が蒸着工程時の温度に比べて低くてもよい。
【発明の効果】
【0020】
本発明の実施形態によれば、従来に比べて低い温度であり、蒸着工程温度に比べて低い温度において基板処理装置の内部を洗浄することができる。すなわち、基板処理装置の内部に配設された部品又は構造物の表面に蒸着された薄膜状の不純物を低い温度において前記表面から剥離して洗浄することができる。
【0021】
これにより、不純物が剥離されるとき、基板処理装置の内部の表面が一緒に剥がれ落ちてしまうことを防止もしくは抑止することができる。これにより、チャンバーの内部における追加の汚染物の発生を低減することができ、洗浄工程が終了した後、基板処理装置の内部に残留する不純物の量を減らすことができる。
【0022】
また、高温の熱により基板処理装置が腐食されることを防止もしくは抑止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】蒸着工程の後にインサイチュ(in situ)にて本発明の第1の実施形態に係る方法により洗浄を行うことを示す工程手順図である。
図2】蒸着工程の後にインサイチュ(in situ)にて本発明の第2の実施形態に係る方法により洗浄を行うことを示す工程手順図である。
図3】本発明の実施形態に係る方法により洗浄を行う基板処理装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、添付図面に基づいて、本発明の実施形態をより詳しく説明する。しかしながら、本発明は以下に開示される実施形態に何ら限定されるものではなく、異なる様々な形態に具体化され、単にこれらの実施形態は本発明の開示を完全たるものにし、通常の知識を有する者に発明の範囲を完全に知らせるために提供されるものである。本発明の実施形態を説明するために図面は誇張されてもよく、図中、同じ符号は、同じ構成要素を指し示す。
【0025】
図1は、蒸着工程の後にインサイチュ(in situ)にて本発明の第1の実施形態に係る方法により洗浄を行うことを示す工程手順図である。
【0026】
洗浄工程は、基板処理装置の内部において基板の上に薄膜を蒸着するとき、基板以外に他の部品又は構造物の表面に蒸着又は堆積された薄膜を取り除く工程であってもよい。
【0027】
以下では、説明のしやすさのために、基板処理装置の内部において基板以外に他の部品又は構造物の表面に蒸着又は堆積された薄膜であって、基板処理装置の内部に残留する薄膜を不純物と称する。
【0028】
本発明の実施形態においては、図1に示すように、1台の基板処理装置において蒸着工程(S100)と洗浄工程(S200)をインサイチュ(in situ)にて行う。すなわち、基板処理装置の内部において基板の上に薄膜を蒸着する工程(S100)が終了した後、基板処理装置の内部を洗浄する工程(S200)を行う。このとき、1回の蒸着工程が行われた後に直ちに洗浄工程を行ってもよいし、あるいは、複数回の蒸着工程が行われた後に洗浄工程を行ってもよい。また、蒸着工程の間に選択的に洗浄工程を行ってもよい。
【0029】
図1を参照すると、蒸着工程(S100)は、基板処理装置のチャンバーの内部に基板を搬入する過程(S110)と、基板の片面に薄膜を蒸着する過程(S120)及び薄膜蒸着が終了した基板をチャンバーの外部に搬出する過程(S120)を含む。
【0030】
蒸着過程(S120)において蒸着される薄膜は、基板の上に酸化亜鉛(ZnO:Zinc Oxide)薄膜又は酸化亜鉛(ZnO:Zinc Oxide)にIn(インジウム)、Ga(ガリウム)及びSn(スズ、tin)のうちの少なくとも1種がドープされた薄膜であってもよい。より具体的には、蒸着工程は、基板の上に酸化亜鉛(ZnO:Zinc Oxide)薄膜、酸化亜鉛(ZnO:Zinc Oxide)にIn(インジウム)をドープしたIZO(Indium Zinc Oxide)薄膜、酸化亜鉛(ZnO:Zinc Oxide)にGa(ガリウム)をドープしたガリウム亜鉛酸化物(GZO:Gallium Zinc Oxide)薄膜、酸化亜鉛(ZnO:Zinc Oxide)にIn(インジウム)及びGa(ガリウム)をドープしたインジウムガリウム亜鉛酸化物(IGZO:Indium Gallium Zinc Oxide)薄膜、酸化亜鉛(ZnO:Zinc Oxide)にIn(インジウム)及びSn(スズ、tin)をドープしたインジウムスズ亜鉛酸化物(ITZO:Indium Tin Zinc Oxide)薄膜のうちのいずれか1つを蒸着する工程であってもよい。また、蒸着工程(S100)は、薄膜、例えば、薄膜トランジスターの活性層(active layer)の形成のための工程であってもよい。
【0031】
そして、実施形態に係る洗浄工程の前又は後に行われる蒸着工程は、原子層蒸着(ALD:Atomic Layer Deposition)法により基板の上に薄膜を蒸着する工程であってもよい。
【0032】
また、酸化亜鉛(ZnO:Zinc Oxide)薄膜、インジウム亜鉛酸化物(IZO:Indium Zinc Oxide)薄膜、ガリウム亜鉛酸化物(GZO:Gallium Zinc Oxide)薄膜、インジウムガリウム亜鉛酸化物(IGZO:Indium Gallium Zinc Oxide)薄膜を蒸着するための工程温度は、300℃~350℃(300℃以上、かつ、350℃以下)であってもよい。そして、インジウムスズ亜鉛酸化物(ITZO:Indium Tin Zinc Oxide)薄膜を蒸着するための工程温度は、250℃~400℃(250℃以上、かつ、400℃以下)であってもよい。
【0033】
洗浄工程(S200)は、図1に示されているように、Br(臭素)を含有するガスである洗浄ガスを噴射する過程(S210)と、洗浄ガスを分解又は活性化させるガスである第1の補助ガスを噴射する過程(S220)及び排気する過程(S250)を含む。
【0034】
そして、洗浄工程(S200)は、洗浄ガスと第1の補助ガスが噴射される空間にプラズマを生じさせる過程(S230)を含んでいてもよい。また、洗浄工程(S200)は、洗浄ガス及び第1の補助ガスとは異なる種類のガスである第2の補助ガスを噴射する過程(S240)をさらに含んでいてもよい。このとき、第2の補助ガスは、プラズマの生成効率を向上させるために噴射されるガスであってもよい。
【0035】
蒸着工程が終了してから洗浄工程を行うに際して、蒸着工程のための工程温度に比べて低い温度において洗浄を行う。すなわち、300℃未満(常温以上)の温度又は250℃未満(常温以上)の温度において洗浄を行う。このために、基板の上に薄膜を蒸着するための工程温度に比べて低い温度において分解又は活性化可能なガスを洗浄ガスとして用いる。別の言い方をすれば、300℃未満(常温以上)の温度において分解又は活性化可能なガスを洗浄ガスとして用いる。
【0036】
実施形態においては、洗浄ガスとしてBr(臭素)を含有するガスを用いる。より具体例を挙げると、HBr、KBr、Br、HBrO、CBrFのうちの少なくとも1種を含有するガスを洗浄ガスとして用いる。HBr、KBr、Br、HBrO、CBrFのようにBr(臭素)を含有するガスは、300℃未満(常温以上)の温度において分解又は活性化されることが可能である。すなわち、Br(臭素)を含有する洗浄ガスは、薄膜の蒸着のためのガスであるソースガスとリアクタントガスとが反応するのに必要な温度に比べて低い温度において分解可能である。
【0037】
第1の補助ガスは、洗浄ガスと反応して前記洗浄ガスを分解するガスであって、第1の補助ガスとして、Hガス及びOガスのうちの少なくとも一方が使用可能である。このとき、第1の補助ガスは、洗浄ガスとは異なる経路で噴射されてもよい。
【0038】
一方、不純物は、基板処理装置の内部において各種の部品又は構造物の表面に薄膜状に蒸着若しくは堆積されていてもよい。このように、薄膜状の不純物は、各種の部品又は構造物の表面から手軽に剥離もしくは分離されない。
【0039】
しかしながら、Brを含有する洗浄ガスは、薄膜状の不純物又は堆積物と反応して、前記不純物堆積物が表面から剥離されるようにする。また、蒸着の際に工程温度に比べて低い温度において不純物と反応して表面から不純物を剥離することができる。
【0040】
以下、洗浄ガスと第1の補助ガスを用いた洗浄過程について説明する。このとき、洗浄ガスとしてHBrガスを、第1の補助ガスとしてHガスを用いる場合を例にとって説明する。また、基板処理装置の内部において基板の上にZnO薄膜を蒸着する工程を行った後、洗浄工程を行う場合を例にとって説明する。
【0041】
基板処理装置の内部において基板の上にZnO薄膜を蒸着する工程が行われた後には、基板のみならず、各種の部品又は構造物の表面にZnO薄膜が蒸着される可能性がある。このように基板処理装置の内部において基板ではない他の部品又は構造物の表面に蒸着されたZnO薄膜、すなわち、ZnO堆積物は、次回の蒸着工程に際して基板又は薄膜を汚す不純物として働く虞がある。
【0042】
このため、蒸着工程(S100)が終了すると、洗浄工程を行う(S200)。このために、基板処理装置の内部に洗浄ガス及び第1の補助ガスを噴射する。すなわち、洗浄ガスとしてHBrガスを、第1の補助ガスとしてHガスを噴射する。また、基板処理装置の内部の温度を300℃未満の温度に調節する。
【0043】
洗浄ガス(HBrガス)と第1の補助ガス(H)が噴射されれば、第1の補助ガスであるHにより洗浄ガスであるHBrが分解され、洗浄ガスから分解されたBrと不純物であるZnO薄膜との反応が起こる(反応式1参照)。
【反応式1】
【0044】
ZnO+2HBr+H→ZnBr・HO …1
【0045】
すなわち、基板処理装置に残留している堆積物であるZnOが分解され、ZnBr・HOが生成される。別の言い方をすれば、基板処理装置の表面に堆積されているZnO薄膜状の不純物が分解されて微粒子(又は、パーティクル)状になる可能性がある。そして、ZnO薄膜状の不純物が分解されて微粒子状になることにより、堆積されていた表面から剥離される。また、微粒子状の不純物は、排気過程(S250)により基板処理装置の外部に排出され、これにより、基板処理装置の内部が洗浄される。すなわち、基板処理装置に設けられた排気部の吸込力により外部に排出され、これにより、基板処理装置の内部が洗浄される。
【0046】
このように、実施形態においては、工程温度に比べて低い温度において分解可能な洗浄ガスを用いて洗浄工程を行う。すなわち、実施形態によれば、300℃未満の温度において洗浄を行うことができる。
【0047】
一方、洗浄工程に際して、基板処理装置の内部の温度が高ければ高いほど、不純物が表面、例えば、チャンバーの壁から剥離されるとき、前記チャンバーの壁面のうちの一部が剥がれ落ちることが生じてしまう虞がある。すなわち、基板処理装置の内部の表面が損傷される問題が生じてしまう虞がある。これは、蒸着工程の際に生じた堆積物以外に追加の不純物を生じさせる要因となる。このため、洗浄工程が終了した後、基板処理装置の内部に多量の不純物が残留してしまう。また、高い温度によって基板処理装置の内部に腐食が起こる虞がある。
【0048】
しかしながら、実施形態においては、従来に比べて低い温度であり、蒸着工程温度に比べて低い温度において、基板処理装置の表面から不純物を剥離して洗浄することができる。したがって、表面から不純物が剥離されるとき、基板処理装置の内部の表面が一緒に剥がれ落ちてしまうことを防止もしくは低減することができる。このため、洗浄工程が終了した後、基板処理装置の内部に残留する不純物の量を減らすことができる。なお、低い温度において洗浄を行うことにより、高温の熱による腐食の発生を抑止もしくは防止することができる。
【0049】
洗浄ガス及び第1の補助ガスを噴射して(S210、S220)洗浄を行うとき、基板処理装置の内部にプラズマを生じさせてもよい(S230)。すなわち、基板処理装置の内部に洗浄ガス及び第1の補助ガスを噴射するとき、RF電源を供給してもよい。このとき、Nガス、Oガス、Hガスのうちの少なくとも1種の第1の補助ガスが放電されてプラズマが生じてもよい。
【0050】
プラズマが生じると、洗浄ガスの分解又は活性化がさらに手軽に起こることができる。すなわち、基板処理装置の内部に配設されたヒーターのみを動作させて内部を加熱するときに比べて、内部にプラズマを一緒に生じさせる場合に相対的に低めの温度において洗浄ガスが分解又は活性化されることが可能になる。換言すれば、洗浄ガスと第1の補助ガスのみを噴射するときに比べて、プラズマを一緒に生じさせる場合に、さらに低い温度において洗浄ガスを分解することができ、これにより、低い温度において洗浄を行うことができる。
【0051】
洗浄ガス及び第1の補助ガスを噴射しながら(S210、S220)プラズマを生じさせて(S230)洗浄を行うに際して、第2の補助ガスをさらに噴射してもよい(S240)。第2の補助ガスは、プラズマの生成効率を向上させるためのガスであって、第2の補助ガスは、Arガスであってもよい。すなわち、基板処理装置の内部に洗浄ガス及び第1の補助ガスを噴射し、RF電源を供給してプラズマを生じさせるとき、Arガスである第2の補助ガスをさらに噴射すれば、Arガスによりプラズマの発生効率が向上するという効果がある。
【0052】
したがって、洗浄ガスと第1の補助ガスのみを噴射してプラズマを生じさせるときに比べて、第2の補助ガスであるArガスを一緒に噴射する場合に相対的に低めの温度において洗浄ガスが分解されることが可能になり、これにより、さらに低い温度において洗浄を行うことができる。
【0053】
図2は、蒸着工程の後にインサイチュ(in situ)にて本発明の第2の実施形態に係る方法により洗浄を行うことを示す工程図である。
【0054】
上述した第1の実施形態においては、洗浄工程(S200)においてBrを含む洗浄ガスと第1の補助ガスを噴射することについて説明した。しかしながら、本発明はこれに何ら限定されるものではなく、第1の洗浄ガスのみを噴射してもよい。
【0055】
以下、図2に基づいて、本発明の第2の実施形態に係る洗浄方法について説明する。このとき、第1の実施形態と重複する内容については、省略したり簡略に説明したりする。
【0056】
図2を参照すると、第2の実施形態に係る洗浄工程(S200)は、Br(臭素)を含有するガスである洗浄ガスを噴射する過程(S210)と、洗浄ガスの噴射が中止された後、窒素を含むガスを噴射する過程(S260)及び排気する過程(S270)を含む。
【0057】
洗浄ガスを噴射する過程(S210)を行うに際して、前記洗浄ガスをパルス(pulse)化させて噴射する。すなわち、洗浄ガスの噴射(on)及び噴射中止(off)を交互に行うサイクル(cycle)を複数回繰り返し行う。そして、洗浄ガスの噴射(on)及び噴射中止(off)を交互に行う過程において、洗浄ガスの噴射が中止されたとき、窒素ガス又は窒素を含むガスを噴射する。そして、窒素ガスが噴射された後、排気を行う。そして、「洗浄ガスを噴射する過程(S210)、窒素を含むガスを噴射する過程(S260)、排気する過程(S270)」を1つのサイクルとして複数回繰り返し行う。
【0058】
このように、洗浄ガスの噴射が中止された後に窒素ガスが噴射され、窒素ガスが噴射されるときに洗浄ガスを噴射しないので、洗浄ガス及び窒素ガスのそれぞれをパルス化させて噴射することと説明可能である。
【0059】
このように、洗浄ガスの噴射が中止(off)され、窒素ガスを噴射するとき、排気部の動作により不純物が基板処理装置の外に排出される。すなわち、洗浄ガスが噴射(on)される間に反応した不純物は、洗浄ガスの噴射が中止(off)された後、噴射された窒素ガスが排気部の動作により排出されるとき、前記窒素ガスとともに基板処理装置の外部に排気される。これにより、洗浄ガスの噴射(on)と不純物の排気とが交互に行われると説明することができる。このように、洗浄ガスの噴射が中止されたときに噴射される窒素ガスは、不純物の排気効率を増加させる役割を果たす。すなわち、窒素ガスが排気部に排気される流れにより不純物が一緒に排気されることにより、不純物の排気効率が向上するという効果がある。
【0060】
上記においては、窒素ガスを噴射した後、排気を行うことについて説明したが、本発明はこれに何ら限定されるものではなく、窒素ガスを噴射しながら排気を行ってもよい。
【0061】
図3は、本発明の実施形態に係る方法により洗浄を行う基板処理装置を示す図である。
【0062】
以下、図3に基づいて、本発明の実施形態に係る洗浄工程が行われる基板処理装置について説明する。
【0063】
図3を参照すると、基板処理装置は、チャンバー100と、チャンバー100内に配設されて基板を支持するための支持台200と、支持台200と向かい合うように配置されてチャンバー100の内部にガスを噴射する噴射部300と、噴射部300に蒸着及び洗浄のためのガスを提供するガス供給部400と、互いに異なる経路を有するように噴射部300に接続され、ガス供給部400からのガスを噴射部300に供給する第1及び第2のガス供給管500a、500bと、チャンバー100内にプラズマを生じさせるように電源を供給するRF電源部600と、を備えていてもよい。
【0064】
また、基板処理装置は、支持台200に昇降動作及び回転動作のうちの少なくともどちらか一方の動作を行わせる駆動部700と、チャンバー100に接続されるように配設された排気部800と、をさらに備えていてもよい。
【0065】
チャンバー100は、内部に搬入された基板の上に薄膜を蒸着可能な反応又は工程のための内部空間を備えていてもよい。このとき、チャンバー100の内部空間は、その断面の形状が四角形、五角形、六角形などの形状であってもよい。いうまでもなく、チャンバー100の内部空間の形状は種々に変更可能であり、基板Sの形状と対応するように設けられることが好ましい。
【0066】
支持台200は、噴射部300と向かい合うようにチャンバー100の内部に配設されて、チャンバー100の内部に搬入された基板Sを支持する。このような支持台200の内部には、ヒーター210が設けられ得る。このため、ヒーター210を動作させると、支持台200の上に載置された基板S及びチャンバー100の内部が加熱されることが可能になる。
【0067】
噴射部300は、支持台200の延在方向に並べられて互いに隔設された複数本の孔(以下、孔)311を有し、チャンバー100の内部において支持台200と向かい合うように配置された第1のプレート310と、少なくとも一部が複数本の孔311のそれぞれに嵌入されるように設けられた複数本のノズル320と、チャンバー100の内部において前記チャンバー100内の上部壁と第1のプレート310との間に位置するように配設された第2のプレート330と、を備えていてもよい。
【0068】
また、噴射部300は、第1のプレート310と第2のプレート330との間に位置づけられた絶縁部340をさらに備えていてもよい。
【0069】
第1のプレート310は、支持台200の延在方向に延設された板状を呈していてもよい。そして、第1のプレート310には複数本の孔311が設けられるが、複数本の孔311のそれぞれは、第1のプレート310を上下方向に貫通するように設けられてもよい。複数本の孔311は、第1のプレート310又は支持台200の延在方向に並べられてもよい。
【0070】
複数本のノズル320のそれぞれは、上下方向に延びた形状を呈していてもよく、その内部にはガスが通過可能な通路が設けられており、上端及び下端が開口された形状を呈していてもよい。そして、複数本のノズル320のそれぞれは、少なくともその下部が第1のプレート310に設けられた孔311に嵌入され、上部は、第2のプレート330と接続されるように配設されてもよい。このため、ノズル320は、第2のプレート330から下部へと突出した形状のものであると説明可能である。
【0071】
ノズル320の外径は、孔311の内径に比べて小さくなるように設けられてもよい。そして、ノズル320が孔311の内部に嵌設されるに際して、ノズル320の外周面が孔311の周りの壁(すなわち、第1のプレート310の内側壁)と離れるように配設されてもよい。このため、孔311の内部は、ノズル320の外側空間と、ノズル320の内側空間と、に分離可能である。
【0072】
孔311の内部空間におけるノズル320内の通路は、第1のガス供給管500aからのガスが移動・噴射される通路である。そして、孔311の内部空間におけるノズル320の外側空間は、第2のガス供給管500bからのガスが移動・噴射される通路である。したがって、以下では、ノズル320内の通路を第1の経路360aと称し、孔311の内部におけるノズル320の外側空間を第2の経路360bと称する。
【0073】
第2のプレート330は、その上部面がチャンバー100内の上部壁と離れるように、かつ、下部面が第1のプレート310と離れるように配設されてもよい。このため、第2のプレート330と第1のプレート310との間及び第2のプレート330とチャンバー100の上部壁との間のそれぞれに空きスペースが設けられることが可能になる。
【0074】
ここで、第2のプレート330の上側空間は、第1のガス供給管500aからのガスが行き渡って移動する空間(以下、拡散空間350)であって、複数本のノズル320の上側開口と連通してもよい。別の言い方をすれば、拡散空間350は、複数本の第1の経路360aと連通している空間である。このため、第1のガス供給管500aを通過したガスは、拡散空間350において第2のプレート330の延在方向に行き渡った後、複数本の第1の経路360aを通過して下側に噴射されることが可能になる。
【0075】
また、第2のプレート330の内部には、ガスが移動する通路である深穴(図示せず)が設けられており、前記深穴は、第2のガス供給管500bと接続され、第2の経路360bと連通するように設けられてもよい。したがって、第2のガス供給管500bからのガスは、第2のプレート330の深穴、第2の経路360bを経て基板Sに向かって噴射されることが可能になる。
【0076】
RF電源部600は、チャンバー100の内部にプラズマを生成する電源を供給する手段である。より具体的には、RF電源部600は、プラズマの生成のためのRF電源を供給する手段であって、噴射部300の第1のプレート310に接続されてもよい。このとき、第2のプレート330及び支持台200は、接地されてもよい。また、RF電源部600は、プラズマの生成のための電源の負荷インピーダンスとソースインピーダンスとを整合させるためのインピーダンスマッチング回路を備えていてもよい。インピーダンスマッチング回路は、可変コンデンサー及び可変インダクターのうちの少なくともどちらか一方から構成される2つのインピーダンス素子を備えていてもよい。
【0077】
ガス供給部400は、薄膜を蒸着するのに必要なガス及び洗浄に必要なガスを噴射部300に提供する。
【0078】
このようなガス供給部400は、薄膜の蒸着のためのソースガスが貯留されたソースガス貯留部410と、ソースガスと反応するガスであるリアクタントガスが貯留されたリアクタントガス貯留部420と、パージガスが貯留されたパージガス貯留部430と、Br(臭素)を含有する洗浄ガスが貯留された洗浄ガス貯留部440と、洗浄工程の際に洗浄ガスと一緒に噴射される第1及び第2の補助ガスがそれぞれ貯留された第1及び第2の補助ガス貯留部450a、450bと、を備えていてもよい。また、ガス供給部は、窒素を含むガスが貯留された窒素ガス貯留部450cを備えていてもよい。
【0079】
そして、ガス供給部400は、ソースガス貯留部410、パージガス貯留部430及び洗浄ガス貯留部440と第1のガス供給管500aとを接続する第1の搬送管470aと、リアクタントガス貯留部420、第1の補助ガス貯留部450a、第2の補助ガス貯留部450b及び窒素ガス貯留部450cと第2のガス供給管500bとを接続する第2の搬送管470bと、を備えていてもよい。
【0080】
そして、ガス供給部400は、ソースガス貯留部410、パージガス貯留部430及び洗浄ガス貯留部440のそれぞれと第1の搬送管470aとを接続する複数本の第1の接続管480aと、複数本の第1の接続管480aのそれぞれに配設された第1の弁490aと、リアクタントガス貯留部420、第1の補助ガス貯留部450a、第2の補助ガス貯留部450b及び窒素ガス貯留部450cのそれぞれと第2の搬送管470bとを接続する複数本の第2の接続管480b及び複数本の第2の接続管480bのそれぞれに配設された第2の弁490bを備えていてもよい。
【0081】
ソースガス貯留部410に貯留されたガスは、薄膜の蒸着のためのガスである。すなわち、ソースガス貯留部410には、亜鉛(Zn)を含有するガス、インジウム(In)を含有するガス、ガリウム(Ga)を含有するガス、スズ(Sn)を含有するガスのうちの少なくともいずれか1種が貯留されてもよい。このとき、ソースガス貯留部410は、複数で設けられ得る。すなわち、亜鉛(Zn)含有ガスが貯留されたソースガス貯留部、インジウム(In)含有ガスが貯留されたソースガス貯留部、ガリウム(Ga)含有ガスが貯留されたソースガス貯留部及びスズ(Sn)含有ガスが貯留されたソースガス貯留部がいずれも配備されてもよい。いうまでもなく、蒸着しようとする薄膜の種類に応じて、亜鉛(Zn)含有ガスが貯留されたソースガス貯留部、インジウム(In)含有ガスが貯留されたソースガス貯留部、ガリウム(Ga)含有ガスが貯留されたソースガス貯留部及びスズ(Sn)含有ガスが貯留されたソースガス貯留部のうちの一部が配備されることもある。
【0082】
亜鉛(Zn)を含有するガスとしてジエチル亜鉛(Diethyl Zinc; Zn(C)(DEZ)及びジメチル亜鉛(Dimethyl Zinc; Zn(CH)(DMZ)のうちの少なくとも一方が使用可能であり、インジウム(In)を含有するガスとしてトリメチルインジウム(Trimethyl Indium; In(CH)(TMIn)及びジエチルアミノプロピルジメチルインジウム(Diethylamino Propyl Dimethyl Indium)(DADI)のうちの少なくとも一方が使用可能であり、ガリウム(Ga)を含有する原料ガスとしてトリメチルガリウム(Trimethyl Gallium; Ga(CH)(TMGa)が使用可能である。また、スズ(Sn)を含有するガスとしてテトラメチルスズ[tetramehtyltin; Sn(Me)]が使用可能である。
【0083】
リアクタントガス貯留部420には、薄膜の蒸着のためのガスでありながら、ソースガスと反応するガスが貯留される。リアクタントガスは、酸素(O)を含むガスであってもよい。より具体的には、リアクタントガスとして純粋な酸素(O)、亜酸化窒素(NO)及びオゾン(O)のうちの少なくとも1種が使用可能である。
【0084】
パージガス貯留部430に貯留されたパージガスは、例えば、Nガス又はArガスであってもよい。
【0085】
洗浄ガス貯留部440に貯留された洗浄ガスは、Br(臭素)を含有する。より具体例を挙げると、洗浄ガス貯留部440には、HBr、KBr、Br、HBrO、CBrFのうちの少なくとも1種を含有するガスが貯留されてもよい。
【0086】
第1の補助ガス貯留部450aに貯留されたガスは、洗浄ガスと反応して前記洗浄ガスを分解する役割を果たす第1の補助ガスである。このとき、第1の補助ガスとしてNガス、Oガス、Hガスのうちの少なくとも1種が使用可能である。
【0087】
第2の補助ガス貯留部450bには、プラズマの生成効率を向上させるためのガスである第2の補助ガスが貯留される。このとき、第2の補助ガスは、Arガスであってもよい。
【0088】
以上においては、リアクタントガス貯留部と第1の補助ガス貯留部とが別途に設けられることについて説明した。しかしながら、リアクタントガス及び第1の補助ガスとして同じガスを用いる場合、リアクタントガス貯留部及び第1の補助ガス貯留部のうちのどちらか一方のみが設けられてもよい。例えば、薄膜の蒸着に際してリアクタントガスとしてOを用い、洗浄工程に際して第1の補助ガスとしてOを用いる場合、リアクタントガス貯留部と第1の補助ガス貯留部のうちのどちらか一方のみが設けられてもよい。
【0089】
また、以上においては、パージガス貯留部と第2の補助ガス貯留部が別途に設けられることについて説明した。しかしながら、パージガス及び第2の補助ガスとして同じガスを用いる場合、パージガス貯留部及び第2の補助ガス貯留部のうちのどちらか一方のみが設けられてもよい。例えば、薄膜蒸着に際してパージガスとしてArを用い、洗浄工程に際して第2の補助ガスとしてArを用いる場合、パージガス貯留部と第2の補助ガス貯留部のうちのどちらか一方のみが設けられてもよい。
【0090】
以下、図1及び図3に基づいて、基板処理装置を用いた蒸着工程及び第1の実施形態に係る洗浄工程について説明する。
【0091】
まず、蒸着工程(S100)について説明する。このとき、基板の上にZnO薄膜を形成することを例にとって説明する。
【0092】
基板10をチャンバー100の内部に搬入して支持台200の上に載置する。そして、ヒーター210を動作させて支持台200に載置された基板Sを300℃~350℃に加熱する。いうまでもなく、支持台200を300℃~350℃に加熱した後、支持台200の上に基板Sを載置してもよい。
【0093】
次いで、基板Sの上にZnO薄膜を蒸着する。すなわち、ソースガスの噴射、パージガスの噴射(1次パージ)、リアクタントガスの噴射、パージガスの噴射(2次パージ)の順に行われる原子層蒸着法により基板Sの上にZnO薄膜を形成する。
【0094】
噴射部300及びガス供給部400を用いてチャンバー100の内部にガスを噴射してZnO薄膜を形成する方法について簡略に説明すれば、下記の通りである。
【0095】
まず、ソースガス貯留部410に貯留されているソースガス、すなわち、Zn含有ガスを第1の搬送管470aに供給する。第1の搬送管470aに供給されたソースガスは、第1のガス供給管500aを経て噴射部300内の拡散空間350に流れ込む。そして、ソースガスは、拡散空間350内において行き渡った後、複数本のノズル320、すなわち、複数本の第1の経路360aを通過して基板Sに向かって噴射される。
【0096】
ソースガスの噴射が中断又は終了すれば、パージガス貯留部430を介してパージガスを提供してチャンバー100の内部にパージガスを噴射する(1次パージ)。このとき、パージガス貯留部430から排出されたパージガスは、第1の搬送管470a及び第1のガス供給管500aを経た後、第1の経路360aを介して下側に噴射されてもよい。そして、第1の経路360aを介してチャンバー100の内部に噴射されたパージガスが排気部800側に排気されるとき、基板Sに吸着できなかったソースガスなどの副産物又は不純物の少なくとも一部が一緒に排気されてもよい。
【0097】
次いで、リアクタントガス貯留部420からリアクタントガス、例えば、Oガスの提供を受けてチャンバー100の内部に噴射する。このとき、リアクタントガスは、ソースガスとは異なる経路を介してチャンバー100の内部に噴射されてもよい。すなわち、リアクタントガスは、第2の搬送管470b及び第2のガス供給管500bを経た後、第2の経路360bを介して下側に噴射されてもよい。そして、リアクタントガスが噴射されるとき、RF電源部600を動作させてチャンバー100の内部にプラズマを生じさせてもよい。リアクタントガスが噴射されれば、基板Sの上に吸着されているソースガスと前記リアクタントガスとの反応が起きて反応物、すなわち、ZnOが生成可能である。そして、この反応物が基板Sの上に堆積又は蒸着され、このため、基板Sの上にZnO薄膜が蒸着される。
【0098】
リアクタントガスの噴射が中断されれば、パージガス貯留部430を介してパージガスを提供してチャンバー100の内部にパージガスを噴射する(2次パージ)。このとき、2次パージによりソースガスとリアクタントガスとの反応による副産物などがチャンバー100の外部に排出されることが可能になる。
【0099】
上述したような「ソースガスの噴射、パージガスの噴射(1次パージ)、リアクタントガスの噴射、パージガスの噴射(2次パージ)」の順に行われる工程サイクルは、複数回繰り返し行われてもよい。そして、目標とする膜厚に応じて、工程サイクルを行うべき回数を決定してもよい。
【0100】
基板Sの上に目標とする膜厚のZnO薄膜が形成されれば、基板10をチャンバー100の外部に搬出する。
【0101】
この後、チャンバー100の内部を洗浄する(S200)。すなわち、基板Sの上にZnO薄膜を蒸着する工程に際して、基板S以外にチャンバー100の内部に配設されたチャンバーの内壁、支持台の表面などに蒸着された薄膜である不純物を取り除く洗浄を行う。
【0102】
このために、洗浄ガス貯留部440及び第1の補助ガス貯留部450aのそれぞれから洗浄ガス及び第1の補助ガスを排出する。洗浄ガスは、第1の搬送管470a及び第1のガス供給管500aを経て噴射部300の第1の経路360aを介してチャンバー100の内部に噴射される(S210)。そして、第1の補助ガスは、第2の搬送管470b及び第2のガス供給管500bを経て噴射部300の第2の経路360bを介してチャンバー100の内部に噴射される(S220)。このとき、洗浄ガスは、例えば、HBrガスであってもよく、第1の補助ガスは、Hガスであってもよい。また、このとき、ヒーター210を用いてチャンバー100の内部を300℃未満の温度に調節する。
【0103】
洗浄ガス(HBrガス)及び第1の補助ガス(H)が噴射されれば、洗浄ガスが第1の補助ガスにより分解される。すなわち、HBrガスのHとBrが分解される。そして、洗浄ガスから分解されたBrとチャンバー100の内部に残留している不純物、すなわち、ZnO薄膜との反応が起きる(反応式1参照)。すなわち、チャンバー100の内部において各種の部品又は構造物の表面に蒸着されている薄膜状のZnO不純物が洗浄ガスのBrと反応し、この反応によりZnBr・HOが生成可能である。このように薄膜状のZnO不純物と洗浄ガスのBrとの反応によりZnBr・HOが生成されるとき、薄膜状のZnO不純物が微粒子化することが可能になる。また、薄膜状の不純物が微粒子化することにより、前記不純物と表面との結合力又は付着力が弱くなり、このため、微粒子の状態の不純物が蒸着の表面から剥離されることが可能になる。
【0104】
また、このとき、チャンバー100の内部には、排気部800の動作により吸込力が発生している。このため、微粒子化した不純物又は剥離された不純物が吸込力により排気部800を介してチャンバー100の外部に排出されることができ、これにより、チャンバー100の内部が洗浄される。
【0105】
そして、このように、チャンバー100の内部に洗浄ガス及び第1の補助ガスを噴射するとき、RF電源部600を動作させてチャンバー100の内部にプラズマを生じさせてもよい(S230)。すなわち、RF電源部600を動作させると、第1の補助ガス、例えば、Oガスが放電されてプラズマが生じ得る。このようにしてプラズマを生じさせる場合、そうではない場合に比べて、低温下で洗浄を行うことができる。すなわち、ヒーター210のみを動作させてチャンバー100の内部を加熱するときに比べて、チャンバー100の内部にプラズマを一緒に生じさせる場合に相対的に低めの温度において洗浄ガスを分解することができて、さらに低い温度においてチャンバー100の内部を洗浄することができる。
【0106】
また、チャンバー100の内部に洗浄ガス及び第1の補助ガスを噴射し、RF電源部600を動作させるとき、第2の補助ガス、すなわち、Arガスをさらに噴射してもよい(S240)。そして、第2の補助ガスを噴射する場合、プラズマの発生効率が向上することができる。このため、チャンバー100の内部に洗浄ガスと第1の補助ガスのみを噴射してプラズマを生じさせるときに比べて、第2の補助ガスであるArガスを一緒に噴射する場合に相対的に低めの温度において洗浄ガスを分解することができて、低い温度においてチャンバーの内部を洗浄することができる。
【0107】
このように、本発明の実施形態によれば、従来に比べて低い温度であり、蒸着工程温度に比べて低い温度において基板処理装置の内部を洗浄することができる。すなわち、チャンバー100の内部に配設された部品又は構造物の表面に堆積された薄膜状の不純物を300℃未満の低い温度において分解して微粒子化させることができ、このため、前記表面から不純物を剥離することができる。これにより、蒸着温度に比べて低い温度においてチャンバー100の内部を洗浄することができる。
【0108】
そして、このように低い温度において洗浄されることにより、表面から不純物が剥離されるとき、基板処理装置の内部の表面が一緒に剥がれ落ちてしまうことを防止もしくは低減することができる。このため、洗浄工程が終了した後に、基板処理装置の内部に残留する不純物の量を減らすことができる。また、低い温度において洗浄を行うことにより、高温の熱による腐食の発生を抑止もしくは防止することができる。
【産業上の利用可能性】
【0109】
本発明の実施形態によれば、従来に比べて低い温度であり、蒸着工程温度に比べて低い温度において基板処理装置の内部を洗浄することができる。すなわち、基板処理装置の内部に配設された部品又は構造物の表面に蒸着された薄膜状の不純物を低い温度において前記表面から剥離して洗浄することができる。これにより、不純物が剥離されるとき、基板処理装置の内部の表面が一緒に剥がれ落ちてしまうことを防止もしくは抑止することができる。これにより、チャンバーの内部における追加汚染物の発生を低減することができ、洗浄工程が終了した後、基板処理装置の内部に残留する不純物の量を減らすことができる。

図1
図2
図3
【国際調査報告】