(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-08
(54)【発明の名称】1つ又は複数の証印を示すセキュリティ機能を製造する方法
(51)【国際特許分類】
B41M 3/14 20060101AFI20241001BHJP
B42D 25/378 20140101ALI20241001BHJP
B41M 1/30 20060101ALI20241001BHJP
B41M 1/10 20060101ALI20241001BHJP
B41M 1/04 20060101ALI20241001BHJP
B41M 1/12 20060101ALI20241001BHJP
C09D 11/101 20140101ALI20241001BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20241001BHJP
【FI】
B41M3/14
B42D25/378
B41M1/30 D
B41M1/30 B
B41M1/10
B41M1/04
B41M1/12
C09D11/101
B41J2/01 123
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024510321
(86)(22)【出願日】2022-08-18
(85)【翻訳文提出日】2024-02-19
(86)【国際出願番号】 EP2022073048
(87)【国際公開番号】W WO2023021128
(87)【国際公開日】2023-02-23
(32)【優先日】2021-08-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】311007051
【氏名又は名称】シクパ ホルディング ソシエテ アノニム
【氏名又は名称原語表記】SICPA HOLDING SA
【住所又は居所原語表記】Avenue de Florissant 41,CH-1008 Prilly, Switzerland
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(72)【発明者】
【氏名】ピットット, エルヴェ
(72)【発明者】
【氏名】ヴェヤ, パトリック
(72)【発明者】
【氏名】マルティーニ, ティボー
(72)【発明者】
【氏名】ルッジェロン, リカルド
【テーマコード(参考)】
2C005
2C056
2H113
4J039
【Fターム(参考)】
2C005HA01
2C005JB11
2C056FC01
2C056HA42
2C056HA44
2H113AA01
2H113AA03
2H113BA00
2H113BA01
2H113BA03
2H113BA09
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2H113BB09
2H113BB10
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2H113CA37
2H113CA39
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2H113DA56
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2H113EA10
2H113FA09
2H113FA43
4J039AD09
4J039AD21
4J039AE05
4J039BA21
4J039BC07
4J039BC15
4J039BC20
4J039BC31
4J039BE01
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4J039BE16
4J039BE27
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4J039EA42
4J039EA46
4J039GA03
4J039GA09
4J039GA10
4J039GA24
(57)【要約】
本発明は、装飾目的だけでなくセキュリティ文書若しくはセキュリティ物品上の偽造防止手段として1つ又は複数の証印を示す人目を引く明白なセキュリティ機能を製造する方法の分野に関する。特に、本発明は、外部デバイス又はツールを使用せずに、ヒトによって簡単に直接的に明確に認証ができる、セキュリティ機能を製造する方法を提供し、前記セキュリティ機能は、硬化UV-Vis放射線カチオン硬化性又はハイブリッド硬化性コーティング組成物及び1つ又は複数の硬化証印を含み、前記組成物は、インクビヒクルと、フレーク形状の非金属性又は金属性基材を含む顔料とを含み、前記非金属性又は金属性基材は、1つ又は複数の少なくとも部分的なコーティング層と、ペルフルオロ化合物をベースとする1つ又は複数の表面改質剤から作製された1つ又は複数の少なくとも部分的な表面処理層とを含む。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材(×20)上に1つ又は複数の証印(×30)を示すセキュリティ機能を製造する方法であって、
UV-Vis放射線硬化性コーティング組成物を基材(×20)表面上に塗布するステップa)であり、前記UV-Vis放射線硬化性コーティング組成物はコーティング層(×10)を形成するために第1の液体状態にある、ステップa);
ステップa)に続いて、非接触流体マイクロディスペンシング技術によってトップコーティング組成物を前記コーティング層(×10)のトップに少なくとも部分的に塗布するステップb)であり、前記トップコーティング組成物は、1つ若しくは複数の証印(×30)の形態で塗布され、前記1つ若しくは複数の証印(×30)は、少なくとも5g/m
2のインク堆積を有する、ステップb);
ステップb)に続いて、1つ若しくは複数の硬化ユニット(×50)を用いて前記コーティング層(×10)及び前記1つ若しくは複数の証印(×30)を硬化するステップc)
を含み、
ステップb)とステップc)の間の時間は30秒未満であり、
前記UV-Vis放射線硬化性コーティング組成物は、
i)25℃で約100~約2000mPasの間の粘度を有するインクビヒクル約75wt%~約99wt%;及び
ii)フレーク形状の非金属性又は金属性基材を含む顔料約1wt%~約25wt%
を含み、
i)及びii)の重量パーセントは、前記UV-Vis放射線硬化性コーティング組成物の総重量に基づいており、
前記インクビヒクルは、
a) a1)1つ若しくは複数の脂環式エポキシド約45wt%~約75wt%、並びにa2)オニウム塩である1つ若しくは複数のカチオン性光開始剤であり、好ましくは、オキソニウム塩、ヨードニウム塩、スルホニウム塩及びそれらの混合物からなる群から選択される、1つ又は複数のカチオン性光開始剤約2wt%~約15wt%、或いは
b) b1)1つ若しくは複数の脂環式エポキシドと、トリ(メタ)アクリレート、テトラ(メタ)アクリレート及びそれらの混合物からなる群から選択される1つ若しくは複数のラジカル硬化性化合物とを含む混合物約45wt%~約75wt%、並びにb2)オニウム塩である1つ若しくは複数のカチオン性光開始剤であり、好ましくは、オキソニウム塩、ヨードニウム塩、スルホニウム塩及びそれらの混合物からなる群から選択される1つ若しくは複数のカチオン性光開始剤と、1つ若しくは複数のフリーラジカル光開始剤であり、好ましくは、α-ヒドロキシケトン、ベンジルケタール、ベンゾインエーテル、ホスフィンオキシド、フェニルグリオキシレート及びそれらの混合物からなる群から選択され、より好ましくはα-ヒドロキシケトンからなる群から選択される、1つ若しくは複数のフリーラジカル光開始剤との混合物約2wt%~約15wt%を含み、
c) a)及びb)の重量パーセントは、前記インクビヒクルの総重量に基づき;
前記非金属性又は金属性基材は、1つ若しくは複数の金属酸化物、1つ若しくは複数の金属酸化物水和物、1つ若しくは複数の金属亜酸化物又はこれらの材料の混合物から独立的に作製された、1つ又は複数の少なくとも部分的なコーティング層を含み;且つ環境に面した少なくとも部分的な表面処理層を含み、前記少なくとも部分的な表面処理層は、前記1つ若しくは複数の少なくとも部分的なコーティング層のトップ層と直接接触し、且つペルフルオロポリエーテルから選択される1つ若しくは複数の表面改質剤で作製され、前記ペルフルオロポリエーテルは、1つ若しくは複数のリン(P)含有基又は1つ若しくは複数のケイ素(Si)含有基で官能化されている、
方法。
【請求項2】
前記インクビヒクルが、c)約20wt%未満の量の1つ若しくは複数のビニルエーテル、又は約30wt%以下の量の1つ若しくは複数のオキセタン、又は1つ若しくは複数のビニルエーテルと1つ若しくは複数のオキセタンと組み合わせを更に含み、前記組み合わせが約15wt%以下の量で存在し、a)、b)及びc)の重量パーセントは、前記インクビヒクルの総重量に基づく、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記インクビヒクルが、1つ又は複数のポリヒドロキシ化合物、好ましくは、2つを超えるヒドロキシル基を含む1つ又は複数のポリヒドロキシ化合物を更に含み、前記1つ又は複数のポリヒドロキシ化合物は、約25wt%以下の量で存在し、重量パーセントは、前記インクビヒクルの総重量に基づく、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記インクビヒクルが、1つ又は複数の光増感剤、好ましくはチオキサントン誘導体を更に含み、前記1つ又は複数の光増感剤は、約0.1wt%~約10wt%の量で存在し、重量パーセントは、前記インクビヒクルの総重量に基づく、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記インクビヒクルが、1つ若しくは複数の脂環式エポキシドと、トリ(メタ)アクリレート、テトラ(メタ)アクリレート及びそれらの混合物からなる群から選択される1つ若しくは複数のラジカル硬化性化合物とを含む混合物45~約75wt%を含み、前記1つ若しくは複数のラジカル硬化性化合物は、35wt%以下、好ましくは30wt%以下の量で存在し、重量パーセントは、前記インクビヒクルの総重量に基づく、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記トップコーティング組成物が、1つ若しくは複数のカチオン硬化性化合物、1つ若しくは複数のハイブリッド硬化性化合物、1つ若しくは複数の溶媒、1つ若しくは複数のラジカル硬化性化合物、又はそれらの混合物を含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記インクビヒクルが、前記1つ又は複数の脂環式エポキシド、好ましくは2つ以上のシクロヘキサンエポキシド基を含む脂環式エポキシド、前記1つ又は複数のビニルエーテル、前記1つ又は複数のオキセタン、請求項3に記載の1つ又は複数のポリヒドロキシ化合物、並びにオニウム塩である前記1つ又は複数のカチオン性光開始剤であり、好ましくは、オキソニウム塩、ヨードニウム塩、スルホニウム塩及びそれらの混合物からなる群から選択される1つ又は複数の塩、好ましくはヨードニウム塩である、1つ又は複数のカチオン性光開始剤、任意選択で請求項4に記載の1つ又は複数の光増感剤、好ましくはチオキサントン誘導体、及び任意選択で1つ又は複数の充填剤を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記トップコーティング組成物が、1つ若しくは複数のカチオン硬化性化合物、1つ若しくは複数のハイブリッド硬化性化合物、1つ若しくは複数の溶媒、1つ若しくは複数のラジカル硬化性化合物と1つ若しくは複数のラジカル光開始剤のブレンド、又はそれらの混合物、を含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記1つ又は複数の脂環式エポキシド、好ましくは2つ以上のシクロヘキサンエポキシド基を含む脂環式エポキシド、前記1つ又は複数のビニルエーテル、前記1つ又は複数のオキセタン、請求項3に記載の1つ又は複数のポリヒドロキシ化合物、オニウム塩である前記1つ又は複数のカチオン性光開始剤であって好ましくはオキソニウム塩、ヨードニウム塩、スルホニウム塩及びそれらの混合物からなる群から選択される1つ又は複数の塩、好ましくはヨードニウム塩である前記1つ又は複数のカチオン性光開始剤、トリ(メタ)アクリレート、テトラ(メタ)アクリレート及びそれらの混合物からなる群から選択される前記1つ若しくは複数のラジカル硬化性化合物、前記1つ若しくは複数のフリーラジカル光開始剤、好ましくはα-ヒドロキシケトン、任意選択で、請求項4に記載の1つ又は複数の光増感剤、好ましくはチオキサントン誘導体、及び任意選択で1つ又は複数の充填剤、である、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記顔料が、1つ又は複数の金属性層を含む多層からなる、好ましくは、ファブリペロー吸収体/誘電体/反射体/誘電体/吸収体の構造を有する薄膜干渉多層からなるフレーク形状の金属性基材を含み、前記顔料は、1つ又は複数の金属酸化物から独立的に作製される、1つ又は複数の少なくとも部分的なコーティングを含むか、又は前記顔料は、天然雲母、合成雲母及びガラスからなる群から選択される1つ若しくは複数の材料から作製されるフレーク形状の非金属性基材を含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記ペルフルオロポリエーテルが、1つ若しくは複数のリン酸含有基又は1つ若しくは複数のシラン含有基によって官能化されている、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
水銀ランプ、UV-LEDランプ及びそれらの系列からなる群から選択される1つ又は複数の硬化ユニット(×50)を用いて、前記コーティング層(×10)及び前記1つ若しくは複数の証印(×30)を硬化する前記ステップc)実行する、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記1つ又は複数の証印が、コード、記号、英数字記号、モチーフ、幾何学パターン、文字、単語、数字、ロゴ、ドローイング、肖像画、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記ステップa)を、輪転グラビアプロセス、フレキソ印刷プロセス及びスクリーン印刷プロセスからなる群から選択される、好ましくはスクリーン印刷プロセスからなる群から選択されるプロセスによって実行し、及び/又は、前記ステップb)を、インクジェット印刷プロセスによって、好ましくはドロップオンデマンドインクジェット印刷プロセスによって実行する、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
請求項1~14のいずれか一項に記載の方法によって製造されたセキュリティ機能。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[発明の分野]
[001]本発明は、基材上、特にセキュリティ文書又は物品上にセキュリティ機能を製造する方法の分野に関する。特に、本発明は、装飾目的だけでなくセキュリティ文書若しくはセキュリティ物品上の偽造防止手段として1つ又は複数の証印を示す人目を引く明白なセキュリティ機能を製造する方法を提供する。
【発明の背景】
【0002】
[002]例えばセキュリティ文書のためのセキュリティ機能は、一方では「隠された」セキュリティ機能に、及び他方では「明白な」セキュリティ機能に一般的に分類することができる。隠されたセキュリティ機能により提供される保護は、そのような機能は検出が困難であり、その検出のために典型的には特殊な機器及び知識が必要であるという概念に依拠し、一方「明白な」セキュリティ機能は、補助なしでのヒトの感覚で容易に検出可能であるという概念に依拠し、例えば、そのような機能は、可視及び/又は触覚により検出可能でありながら、依然として製造及び/又は複写が困難であり得る。しかし、ほとんどのユーザー、特に文書若しくは文書で保護されたアイテムのセキュリティ機能について事前知識を有さないユーザーは、その存在及び性質について実際の知識を有する場合にのみ、前記セキュリティ機能に基づいて実際にセキュリティチェックを実行するため、明白なセキュリティ機能の有効性は、セキュリティ機能としての認識のしやすさに大きく依拠する。
【0003】
[003]明白なセキュリティ機能の例には、反射機能及び光学的可変機能が含まれ、前記セキュリティ機能は、観察角度の変化に応じて、明度及び/又は彩度及び/又は色相の変動によって表される色ずれ又は色変化を示す。典型的には、前記セキュリティ機能は、フレーク形状の多層干渉顔料を含むインクから作製される。
【0004】
[004]国際公開第2019/002046号は、セキュリティ機能を印刷する方法を開示しており、前記方法は、フレックステンショナルインクジェット印刷(flextensional ink jet print)ヘッド構造を使用するインクジェット印刷のステップを含む。この方法により、任意選択で1つ又は複数の証印を備えた明白なセキュリティ機能の製造が可能になる。しかし、フレックステンショナル印刷技術は、煩雑であり、産業環境でセキュリティ機能を高速に印刷するには好適ではないことが知られている。
【0005】
[005]国際公開第2003/020834号は、光学的に可変のセキュリティ機能を製造するためのフレーク形状の多層干渉顔料を含む水系セキュリティインクを開示している。水系インク中の顔料の腐食を回避又は低減する目的で、前記顔料の表面は、例えばフッ素化リン酸有機エステルなどの不動態化剤によって処理される。しかし、水系セキュリティインクは印刷が困難であり、その結果、長い乾燥プロセスが生じる場合がある。
【0006】
[006]国際公開第2006/117271号は、光学的に可変のセキュリティ機能を製造するためのフレーク形状の多層干渉顔料を含む溶媒系セキュリティインクを開示している。しかし、環境問題に対する公衆の感受性の増大、並びにREACH及びGHSなどの環境規制に対する化学産業の必要な応答により、量が著しく低減した有機溶媒(揮発性有機成分、VOC)を含有するインクの配合がもたらされ、前記フレーク形状の顔料を含むUV-Vis硬化性スクリーン印刷インクを開発する動機が産業に与えられた。
【0007】
[007]フレーク形状の顔料を含む反射機能及び光学的可変機能の知覚される光学性質は、基材上の乾燥インク中の前記フレーク形状の顔料の配向に依存することが当技術分野で知られている。フレーク形状の顔料を含む水系又は溶媒系インクの段階的な乾燥プロセスによって、有利には、塗布されたインクの厚さを減少させることができ、フレーク形状の顔料自体を、前記インクが塗布される基材に対して実質的に平行に配向させることができ、したがって、良好な光学性質を示す反射機能及び光学的可変が生じるが、フレーク形状の顔料を含むUV-Vis放射線硬化性インクの瞬間的な硬化プロセス、及び硬化したインク層の厚さが実質的に変化しないことにより、前記顔料の配向がランダムになる場合があり、したがって、反射機能が生じ、光学的に変化し、劣った光学性質を示す場合がある。
【0008】
[008]フレーク形状の顔料をベースとした反射機能及び光学的に可変のセキュリティ機能の顕著な効果及び光学特性を改善することを目的として、前記顔料は、疎水性化合物で表面処理されており、そうして、前記顔料は、前記顔料を含むインクが塗布される基材に対して実質的に平行な平面に、より容易に配置される。表面処理顔料は、文献ではリーフィング顔料と呼ばれている。
【0009】
[009]欧州特許出願公開第1090963号は、フッ素含有ホスフェートで表面処理されたフレーク形状の玉虫色顔料、並びに前記顔料を含むインク、塗料、プラスチック又は化粧品を開示している。欧州特許出願公開第1090963号は、溶媒系グラビア印刷インクを開示している。
【0010】
[010]米国特許出願公開第2002/0096087号は、少なくとも1つの有機疎水性カップリング剤、例としてフッ素含有シランを含有する小板形状の顔料をベースとする小板形状の真珠光沢顔料、並びに塗料、インク、プラスチック、コーティング及び化粧品におけるそれらの使用を開示している。
【0011】
[011]米国特許出願公開第2004/0069187号は、カップリング剤及びペルフルオロアルキル基を有する有機化合物でコーティングされたフレーク形状の顔料、及び印刷インクにおけるそれらの使用を開示している。
【0012】
[012]米国特許出願公開第2015/0166799号は、フルオロアルキル基及び少なくとも1つのシロキサン及び/又は少なくとも1つのシランから構築された親水性基を含有する有機コーティングでコーティングされたフレーク形状の効果顔料、並びに多くの用途におけるそれらの使用、及び塗料、インク、プラスチック、コーティング、及び化粧品におけるそれらの使用を開示した。
【0013】
[013]米国特許出願公開第2016/0207344号は、基材上の少なくとも2つの領域単位からなる印刷画像を開示しており、第1の領域単位は、非金属の無機材料を含む外層を含む第1のフレーク形状の効果顔料を含み、第2の領域単位は、フルオロアルキル基及びアミノアルキル基を含有する有機官能性シロキサンなどの有機表面改質剤を含む外層を含む、第2のフレーク形状の効果顔料を含む。米国特許出願公開第2016/0207344号は、溶媒系のインク又はUV硬化性インクであり得る印刷インクを開示している。
【0014】
[014]米国特許出願公開第2016/130461号は、炭素-炭素多重結合を有する1つ又は複数の官能基を有する少なくとも1つの有機化合物が結合した少なくとも1つの金属酸化物層でコーティングされた効果顔料を含むUV-Vis放射線硬化性組成物を開示している。
【0015】
[015]国際公開第2013/119387号は、リーフィングメタリック顔料フレーク、アクリレートオリゴマー及び/又はアクリレートモノマー、開始剤又は開始剤の混合物、並びに第三級アミンである硬化促進剤を含むUV放射線ラジカル硬化性メタリック装飾組成物を開示している。開示されたリーフィングメタリック顔料フレークは、脂肪酸、リン化合物、シラン又は脂肪族アミンで表面処理されている。開示されたUV-Vis放射線硬化性インクは劣った視覚的外観及び低い彩度を含む劣った光学特性を抱えている。
【0016】
[016]国際公開第2020/169316号は、1つ又は複数の少なくとも部分的なコーティング層と、フルオロ化合物から選択される1つ又は複数の表面改質剤から作製された1つ又は複数の少なくとも部分的な表面処理層とを含むフレーク形状の非金属性又は金属性基材を含む顔料を含むUV-Vis放射線ラジカル硬化性セキュリティインクを開示している。
【0017】
[017]特開2004244562号公報は、前記インクの消泡特性を改善するために、ステアリン酸、カチオン性光開始剤及びヒドロキシル脂肪酸で表面処理されたリーフィングアルミニウム顔料を含むUV放射線カチオン硬化性インクを開示している。しかし、ステアリン酸で表面処理されたアルミニウム顔料を含む組成物にカチオン性光開始剤を使用すると、ステアリン酸がカチオン性光開始剤によって生成される酸に置換され、リーフィング効果が失われ、そこから得られる光学特性が失われることになる。
【0018】
[018]特開2000273399号公報は、アルキル界面活性剤(ステアリン酸)で処理されたアルミニウム粉末を含有するUVカチオン硬化性又はラジカル硬化性膜形成組成物を開示している。このような処理では、工業用印刷速度ではアルミニウムフレークを基材表面に平行に配向させることができず、硬化コーティングの光学性質が劣ってしまう。
【0019】
[019]特開2003261817号公報は、アルミニウム顔料及びアミンを含有するUVカチオン硬化性組成物を開示している。開示された組成物は、高速の工業用印刷プロセスにおいて金属光沢を十分に速く発現させることができず、したがって硬化コーティングの光学特性が劣ってしまう。
【0020】
[020]米国特許第9,914,846号は、変性効果顔料を含む放射線硬化性コーティング組成物を開示しおり、ここで、前記効果顔料は、少なくとも一層の金属酸化物層でコーティングされており、二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、二酸化チタン、酸化鉄、酸化スズ、酸化亜鉛、又はそれらの混合物、及び炭素-炭素多重結合を含む1つ又は複数の官能基を有する少なくとも1つの有機化合物を含む。更に、有機化合物は金属酸化物の層に結合していること、及び好適な変性効果顔料は有機オリゴマー又はポリマーを有さないことが開示されている。米国特許第9,914,846号は、ラジカル重合性バインダーとカチオン重合性バインダーの両方を使用することができる従来のUV硬化性化合物を含むコーティング組成物を開示している。例示された組成物は、SiO2でコーティングされたアルミニウム顔料を含み、メタクリレート官能性シラン化合物を含む、アクリレート系ラジカル硬化性UV印刷インクである。コーティングマトリックスの表面張力が最適化されていないため、工業用印刷速度で効果顔料を十分に高速に配向させることができず、光学性質が比較的劣ってしまう。
【0021】
[021]したがって、特に高い偽造耐性と優れた光学特性を必要とする要求の厳しい用途において、人目を引くカスタマイズされた明白なセキュリティ機能を製造する方法の必要性が依然として残っており、ここで、前記方法は、信頼性が高く、実装が容易であり、高い製造速度で作業できなければならない。特に、フレーク形状の多層干渉顔料に基づいてカスタマイズされた明白なセキュリティ機能を製造し、1つ又は複数の証印を示すための、カチオン硬化性インク又はハイブリッド硬化性インクである、無溶媒又は低VOC含有UV-Vis放射線硬化性セキュリティインクを使用する方法の必要性が存在しており、ここで、前記セキュリティ機能は、容易に認識可能な光学性質を示し、特に、彩度、明度のコントラスト、及び/又は色ずれ特性を示し、したがって、これにより、外部デバイス又はツールを使用せずにヒトによる簡単で直接的であり、明確な認証が可能になる。
【0022】
[発明の概要]
[022]したがって、本発明の目的は、従来技術の欠点を克服することである。これは、基材上に1つ又は複数の証印を示すセキュリティ機能を製造する方法を提供することによって達成され、この方法は以下のステップ:すなわち、
UV-Vis放射線硬化性コーティング組成物を基材(×20)表面上に塗布するステップa)であり、前記UV-Vis放射線硬化性コーティング組成物はコーティング層(×10)を形成するために第1の液体状態にある、ステップa);
ステップa)に続いて、非接触流体マイクロディスペンシング技術によってトップコーティング組成物をコーティング層(×10)のトップに少なくとも部分的に塗布するステップb)であり、前記トップコーティング組成物は、1つ若しくは複数の証印(×30)の形態で塗布され、前記1つ若しくは複数の証印(×30)は、少なくとも5g/m2のインク堆積を有する、ステップb);
ステップb)に続いて、1つ若しくは複数の硬化ユニット(×50)を用いてコーティング層(×10)及び1つ若しくは複数の証印(×30)を硬化するステップc)
を含み、
ステップb)とステップc)の間の時間は30秒未満であり、
前記UV-Vis放射線硬化性コーティング組成物は、
i)25℃で約100~約2000mPasの間の粘度を有するインクビヒクル約75wt%~約99wt%;及び
ii)フレーク形状の非金属性又は金属性基材を含む顔料約1~約25wt%
を含み、
i)及びii)の重量パーセントは、UV-Vis放射線硬化性コーティング組成物の総重量に基づいており、
前記インクビヒクルは、
a) a1)1つ若しくは複数の脂環式エポキシド45wt%~約75wt%、並びにa2)オニウム塩である1つ若しくは複数のカチオン性光開始剤であり、好ましくは、オキソニウム塩、ヨードニウム塩、スルホニウム塩及びそれらの混合物からなる群から選択される、1つ又は複数のカチオン性光開始剤約2wt%~約15wt%、或いは
b) b1)1つ若しくは複数の脂環式エポキシドと、トリ(メタ)アクリレート、テトラ(メタ)アクリレート及びそれらの混合物からなる群から選択される1つ若しくは複数のラジカル硬化性化合物とを含む混合物45wt%~約75wt%、並びにb2)オニウム塩である1つ若しくは複数のカチオン性光開始剤であり、好ましくは、オキソニウム塩、ヨードニウム塩、スルホニウム塩及びそれらの混合物からなる群から選択される、1つ若しくは複数のカチオン性光開始剤と、1つ若しくは複数のフリーラジカル光開始剤であり、好ましくは、α-ヒドロキシケトン、ベンジルケタール、ベンゾインエーテル、ホスフィンオキシド、フェニルグリオキシレート及びそれらの混合物からなる群から選択され、より好ましくはα-ヒドロキシケトンからなる群から選択される、1つ若しくは複数のフリーラジカル光開始剤との混合物約2wt%~約15wt%を含み、
c)前記インクビヒクルは、任意選択で、約20wt%未満の量の1つ又は複数のビニルエーテル、又は約30wt%以下の量の1つ若しくは複数のオキセタン、又は1つ若しくは複数のビニルエーテルと1つ若しくは複数のオキセタンとの、約15wt%以下の量の組み合わせを含み、a)、b)及びc)の重量パーセントは、インクビヒクルの総重量に基づき;
前記非金属性又は金属性基材は、1つ若しくは複数の金属酸化物、1つ若しくは複数の金属酸化物水和物、1つ若しくは複数の金属亜酸化物又はこれらの材料の混合物から独立的に作製された、1つ又は複数の少なくとも部分的なコーティング層を含み;且つ環境に面した少なくとも部分的な表面処理層を含み、少なくとも部分的な表面処理層は、1つ若しくは複数の少なくとも部分的なコーティング層のトップ層と直接接触し、ペルフルオロポリエーテルから選択される1つ若しくは複数の表面改質剤で作製され、前記ペルフルオロポリエーテルは、1つ若しくは複数のリン(P)含有基又は1つ若しくは複数のケイ素(Si)含有基で官能化されている。
【0023】
[023]一実施形態によれば、本明細書に記載のUV-Vis放射線硬化性コーティング組成物は、UV-Vis放射線カチオン硬化性コーティング組成物であり、好ましくは、1つ若しくは複数の脂環式エポキシド(好ましくは2つ以上のシクロヘキサンエポキシド基を含む脂環式エポキシド)約45wt%~約75wt%、1つ若しくは複数のビニルエーテル、1つ若しくは複数のオキセタン、1つ若しくは複数のポリヒドロキシ化合物、並びに約2wt%~約15wt%の1つ若しくは複数のカチオン性光開始剤であって、オニウム塩(好ましくは、オキソニウム塩、ヨードニウム塩、スルホニウム塩及びそれらの混合物からなる群から選択される1つ若しくは複数の塩、好ましくはヨードニウム塩である、)約2wt%~約15wt%、任意選択で1つ若しくは複数の光増感剤(好ましくはチオキサントン誘導体)、並びに任意選択で1つ若しくは複数の充填剤、を含むカチオン硬化性インクビヒクルを含み、本明細書に記載のトップコーティング組成物は、1つ若しくは複数のカチオン硬化性化合物、1つ若しくは複数のハイブリッド硬化性化合物、1つ若しくは複数の溶媒、1つ若しくは複数のラジカル硬化性化合物と1つ若しくは複数のラジカル光開始剤のブレンド、又はそれらの混合物を含む。
【0024】
[024]別の実施形態によれば、本明細書に記載のUV-Vis放射線硬化性コーティング組成物は、UV-Vis放射線ハイブリッド硬化性コーティング組成物であり、好ましくは、1つ若しくは複数の脂環式エポキシドと、トリ(メタ)アクリレート、テトラ(メタ)アクリレート及びそれらの混合物からなる群から選択される1つ若しくは複数のラジカル硬化性化合物とを含む混合物約45~約75wt%、並びにオニウム塩である1つ若しくは複数のカチオン性光開始剤(好ましくは、オキソニウム塩、ヨードニウム塩、スルホニウム塩及びそれらの混合物からなる群から選択される1つ若しくは複数の塩)と、1つ若しくは複数のフリーラジカル光開始剤(好ましくは、α-ヒドロキシケトン、ベンジルケタール、ベンゾインエーテル、ホスフィンオキシド、フェニルグリオキシレート及びそれらの混合物からなる群から選択され、より好ましくは、α-ヒドロキシケトンからなる群から選択される)との混合物約2wt%~約15wt%を含む、ハイブリッド硬化性インクビヒクルを含み、ここで、前記1つ若しくは複数のラジカル硬化性化合物は、35wt%以下、好ましくは30wt%以下の量で存在し、重量パーセントは、インクビヒクルの総重量に基づき;並びにトップコーティング組成物は、1つ若しくは複数のカチオン硬化性化合物、1つ若しくは複数のハイブリッド硬化性化合物、1つ若しくは複数の溶媒、1つ若しくは複数のラジカル硬化性化合物、又はそれらの混合物を含む。
【0025】
[025]好ましい一実施形態では、本明細書に記載のUV-Vis放射線硬化性コーティング組成物を塗布するステップa)は、輪転グラビアプロセス、フレキソ印刷プロセス、及びスクリーン印刷プロセスからなる群から選択される、好ましくはスクリーン印刷プロセスからなる群から選択される印刷プロセスによって実行される。
【0026】
[026]好ましい一実施形態では、トップコーティング組成物を塗布するステップb)は、インクジェット印刷プロセスによって、好ましくはドロップオンデマンドインクジェット印刷プロセスによって実行される。
【0027】
[027]また、本明細書に記載の方法によって製造されるセキュリティ機能、及びセキュリティ文書、並びに本明細書に記載の1つ又は複数のセキュリティ機能を含む装飾要素及び物体を、本明細書に記載する。
【0028】
[028]また、本明細書では、セキュリティ文書又は装飾要素若しくは物品を製造する方法であって、a)セキュリティ文書又は装飾要素若しくは物体を提供するステップ、及びb)本明細書に記載のセキュリティ機能など、特に本明細書に記載の方法によって得られるセキュリティ機能などの1つ又は複数のセキュリティ機能を提供し、セキュリティ文書又は装飾要素若しくは物体上に又はそれらに含まれるようにする、ステップを含む、方法を、本明細書に記載する。
【0029】
[029]本明細書に記載の方法は、2つの組成物を有利に使用し、前記2つの組成物を、ウェット・オン・ウェット状態で互いに塗布し、すなわち、本明細書に記載のトップコーティング組成物を、本明細書に記載の塗布されたUV-Vis放射線硬化性コーティング組成物上に、前記組成物がまだ少なくとも部分的に未重合の状態にある間に、少なくとも部分的に塗布する。特に、本発明による方法によって、多用途の様式で1つ又は複数の証印を示す人目を引く明白なセキュリティ機能の製造が可能になり、本発明による方法は、高い製造速度にて工業規模で容易に実施することができる。本明細書に記載の方法で使用される2つの組成物は、第1の組成物として、UV-Vis放射線硬化性コーティング組成物であって、本明細書に記載の基材上に塗布される、本明細書に記載のフレーク形状の非金属性又は金属性基材を含む顔料(×20)を含むUV-Vis放射線硬化性コーティング組成物、及び、第2の組成物として、本明細書に記載のトップコーティング組成物であって、UV-Vis放射線硬化性コーティング組成物の上部に少なくとも部分的に塗布し、少なくとも部分的に前記組成物と重なり(すなわち、少なくとも1つの領域で重なり)、前記UV-Vis放射線硬化性コーティング組成物がまだ湿った、少なくとも部分的に未重合状態にあるときに、本明細書に記載の1つ若しくは複数の証印の形態で塗布する、トップコーティング組成物、を含む。UV-Vis放射線硬化性コーティング組成物及び1つ若しくは複数の証印(×30)の形状のトップコーティング組成物を硬化して、このようにして得られた明白なセキュリティ機能は、硬化インクジェット印刷証印(×30)を欠いた硬化コーティング層(×10)で作製された第1の領域、及び硬化コーティング層(×10)と硬化インクジェット印刷証印(×30)の組み合わせで作製された第2の領域を含み、前記第1及び第2の領域は、彩度、明度及び/又は色ずれ特性に関して異なる光学特性を示し、したがって、これにより、外部デバイス又はツールを使用せずに、明白なセキュリティ機能の、ヒトによる簡単で直接的であり、明確な認証が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】比較方法で調製されたセキュリティ機能の写真を示しており、前記セキュリティ機能は、角度70°(
図1のA)、45°(
図1のB)及び22.5°(
図1のC)の拡散照明下で観察されている。
【
図2】硬化インクジェット印刷証印(×30:230、330、430)からなる証印(正方形の形状)を示すセキュリティ機能を備える基材(×20:220、320、420)の写真を示し、前記セキュリティ機能は、本発明による方法で調製され、硬化インクジェット印刷証印(×30)を欠いた硬化コーティング層(×10:210、310、410)で作製された第1の領域、及び硬化コーティング層(×10:210、310、410)と硬化インクジェット印刷証印(×30:230、330、430)の組み合わせで作製された第2の領域を含み、角度70°(
図2のA、
図3のA、及び
図4のA)、45°(
図2のB、
図3のB、及び
図4のB)、並びに22.5°(
図2のC、
図3のC、
図4のC)の拡散照明下で観察されている。
【
図3】硬化インクジェット印刷証印(×30:230、330、430)からなる証印(正方形の形状)を示すセキュリティ機能を備える基材(×20:220、320、420)の写真を示し、前記セキュリティ機能は、本発明による方法で調製され、硬化インクジェット印刷証印(×30)を欠いた硬化コーティング層(×10:210、310、410)で作製された第1の領域、及び硬化コーティング層(×10:210、310、410)と硬化インクジェット印刷証印(×30:230、330、430)の組み合わせで作製された第2の領域を含み、角度70°(
図2のA、
図3のA、及び
図4のA)、45°(
図2のB、
図3のB、及び
図4のB)、並びに22.5°(
図2のC、
図3のC、
図4のC)の拡散照明下で観察されている。
【
図4】硬化インクジェット印刷証印(×30:230、330、430)からなる証印(正方形の形状)を示すセキュリティ機能を備える基材(×20:220、320、420)の写真を示し、前記セキュリティ機能は、本発明による方法で調製され、硬化インクジェット印刷証印(×30)を欠いた硬化コーティング層(×10:210、310、410)で作製された第1の領域、及び硬化コーティング層(×10:210、310、410)と硬化インクジェット印刷証印(×30:230、330、430)の組み合わせで作製された第2の領域を含み、角度70°(
図2のA、
図3のA、及び
図4のA)、45°(
図2のB、
図3のB、及び
図4のB)、並びに22.5°(
図2のC、
図3のC、
図4のC)の拡散照明下で観察されている。
【
図5】「SICPA」という名称の形状の証印(530)を示すセキュリティ機能を備える基材(520)の写真を示し、前記セキュリティ機能は、本発明による方法で調製され、硬化インクジェット印刷証印(530)を欠いた硬化コーティング層(510)で作製された第1の領域、及び硬化コーティング層(510)と硬化インクジェット印刷証印(530)の組み合わせで作製された第2の領域を含み、角度70°(
図5のA)、45°(
図5のB)及び22.5°(
図5のC)の拡散照明下で観察されている。
【0031】
詳細な説明
定義
[030]以下の定義は、本明細書で論じられ、特許請求の範囲に列挙された用語の意味を解釈するために使用されるべきである。
【0032】
[031]本明細書で使用される場合、冠詞「a」は、1つ及び2つ以上を示し、指示対象の名詞を必ずしも単数に限定しない。
【0033】
[032]本明細書で使用される場合、「少なくとも1つ」という用語は、1つ又は2つ以上、例えば1つ又は2つ又は3つを定義することを意味する。
【0034】
[033]本明細書で使用される場合、「約」という用語は、問題の量又は値が、指定された値又はそれに近い他の値であり得ることを意味する。一般に、ある特定の値を表す「約」という用語は、その値の±5%以内の範囲を表すことを意図している。一例として、「約100」という語句は、100±5の範囲、すなわち95~105の範囲を表す。好ましくは、「約」という用語によって表される範囲は、値の±3%以内の範囲を示し、より好ましくは±1%以内の範囲を表す。一般に、「約」という用語が使用される場合、示された値の±5%の範囲内で本発明による同様の結果又は効果を得る可能性があることを予測することができる。
【0035】
[034]本明細書で使用される場合、「及び/又は」という用語は、前記群の要素の全て又は1つのみのいずれかが存在し得ることを意味する。例えば、「A及び/又はB」は、「Aのみ、又はBのみ、又はA及びBの両方」を意味するものとする。「Aのみ」の場合、この用語はBが存在しない可能性も包含する、すなわち、「AのみでBは存在しない」ということである。
【0036】
[035]本明細書で使用される「含む(comprising)」という用語は、非排他的かつ非限定的であることを意図している。したがって、例えば、化合物Aを含む溶液は、A以外の他の化合物を含んでもよい。しかし、「含む(comprising)」という用語はまた、その特定の実施形態として、「から本質的になる(consisting essentially of)」及び「からなる(consisting of)」というより限定的な意味も包含し、したがって、例えば、「A、B、及び任意選択でCを含む溶液」は、A及びBから(本質的に)なるか、又はA、B及びCから(本質的に)なる場合もある。
【0037】
[036]「UV-Vis硬化性」及び「UV-Vis硬化」という用語は、UV、又はUV及び電磁スペクトルの可視部分(典型的には100nm~800nm、好ましくは150~600nmの間、より好ましくは200~400nmの間)における波長成分を有する照射の影響下での、光重合による放射線硬化を指す。
【0038】
[037]「コーティング組成物」という用語は、固体基材上に層を形成することができ、好ましくは印刷法によって塗布することができるが、これに限定されない任意の組成物を指す。UV-Vis放射線硬化性コーティング組成物は、本明細書に記載のフレーク形状の非金属性又は金属性基材を含む顔料を含む。「トップコーティング組成物」という用語は、本明細書に記載のフレーク形状の非金属性又は金属性基材を含む顔料を含まない組成物を指す。
【0039】
[038]本発明との関係における「(メタ)アクリレート」という用語は、アクリレート及び対応するメタクリレートを指す。同様に、「ジ(メタ)アクリレート」はジアクリレート及び対応するジメタクリレートを指し、「トリ(メタ)アクリレート」はトリアクリレート及び対応するトリメタクリレートを指す。
【0040】
[039]「セキュリティ文書」という用語は、通常、少なくとも1つのセキュリティ機能によって偽造又は詐欺から保護される文書を指す。セキュリティ文書の例は、限定されるものではないが、価値文書及び価値商品を含む。
【0041】
[040]「セキュリティ機能」という用語は、認証目的に使用することができる画像、パターン又はグラフィック要素を表すために使用される。
【0042】
[041]本明細書が「好ましい」実施形態/特徴に言及する場合、「好ましい」実施形態/特徴の特定の組み合わせが、技術的に意味がある限り、これらの「好ましい」実施形態/特徴の組み合わせも開示されているものと考えられる。
【0043】
[042]本明細書に記載の方法は、本明細書に記載のフレーク形状の非金属性又は金属性基材を含む顔料を含むUV-Vis放射線硬化性コーティング組成物を、本明細書に記載の基材(×20)表面上に塗布して、本明細書に記載のコーティング層(×10)を形成するステップa)であって、前記組成物は、層としての塗布が可能になる第1の液体状態にあり、まだ硬化していない(すなわち、湿った)状態にある、ステップa)を含む。本明細書に記載のUV-Vis放射線硬化性コーティング組成物は、基材(×20)表面上に提供されるため、UV-Vis放射線硬化性コーティング組成物は、少なくとも、本明細書に記載のインクビヒクル及び本明細書に記載のフレーク形状の非金属性又は金属性基材を含む顔料を含み、前記組成物は、所望の印刷又はコーティング装置での処理が可能になる形態である。好ましくは、前記ステップa)は、好ましくはスクリーン印刷プロセス、輪転グラビア印刷プロセス及びフレキソ印刷プロセスからなる群から選択される印刷プロセス、並びにより一層好ましくはスクリーン印刷プロセスによって実行される。したがって、UV-Vis放射線硬化性コーティング組成物は、好ましくは、スクリーン印刷インキ、輪転グラビア印刷インキ及びフレキソ印刷インキからなる群から選択され、より好ましくはスクリーン印刷インキである。
【0044】
[043]当業者には知られているように、輪転グラビアという用語は、例えば、「Handbook of Print Media、Helmut Kipphan、Springer Edition、48頁」に記載されている印刷プロセスを指す。輪転グラビアは、シリンダーの表面に画像要素を彫刻する印刷プロセスである。非画像領域は一定の元のレベルにある。印刷の前に、印刷版全体(非印刷要素及び印刷要素)にインクを付け、インクを満たす。インクは、印刷前にワイパー又はブレードによって非画像から除去され、その結果、インクはセル内にのみ残る。画像は、典型的には2~4バールの範囲の圧力によって、及び基材とインクとの間の粘着力によって、セルから基材に転写される。輪転グラビアという用語は、例えば、異なるタイプのインクに依存する凹版印刷プロセス(当技術分野では、彫刻スチールダイ又は銅板印刷プロセスとも呼ばれる)を含まない。
【0045】
[044]フレキソ印刷方法は、好ましくは、チャンバー式ドクターブレード、アニロックスローラー及びプレートシリンダーを備えたユニットを使用する。アニロックスローラーは、有利には、体積及び/又は密度がインク又はワニスの塗布速度を決定する小さなセルを有する。チャンバー式ドクターブレードはアニロックスローラーに当てられ、セルを満たし、同時に余分なインク又はワニスを掻き取る。アニロックスローラーはインクをプレートシリンダーに移し、プレートシリンダーは最終的にインクを基材に移す。プレートシリンダーは、ポリマー又はエラストマー材料から作製することができる。ポリマーは主にプレート中のフォトポリマーとして、また時にはスリーブ上の継ぎ目のないコーティングとして使用される。フォトポリマープレートは、紫外線(UV)光によって硬化する感光性ポリマーから作製される。フォトポリマープレートを必要なサイズに切断し、UV露光ユニット内に置く。プレートの一方の側をUV光に完全に露光して、プレートの基部を硬化(harden)又は硬化(cure)させる。次に、プレートを裏返し、ジョブのネガを未硬化側に取り付け、プレートを更にUV光に露光する。これにより、画像領域のプレートが硬化する。次に、プレートを処理して、非画像領域から未硬化のフォトポリマーを除去し、これらの非画像領域のプレート表面を下げる。処理後、プレートを乾燥させ、露光後にUV光を照射してプレート全体を硬化させる。フレキソ印刷用のプレートシリンダーの調製は、Printing Technology、J.M.Adams and P.A.Dolin、Delmar Thomson Learning、第5版、359~360頁に記載されている。
【0046】
[045]スクリーン印刷(当技術分野ではシルクスクリーン印刷とも呼ばれる)は、典型的には、インク遮断ステンシルを支持するために織られたメッシュから作製されたスクリーンを使用する印刷技術である。取り付けられたステンシルは、基材上に鋭いエッジの画像としてインクを転写するメッシュの開口領域を形成する。インクを遮断するステンシルを備えたスクリーン上でスキージを移動させ、開いた領域の織られたメッシュの糸を通過させてインクを押し出す。スクリーン印刷の重要な特徴は、他の印刷技術よりも厚いインクを基材に塗布することができることである。したがって、スクリーン印刷は、他の印刷技術では(容易に)達成することができない約10~50μm以上の間の値の厚さを有するインク堆積物が必要とされる場合にも好ましい。一般に、スクリーンは、例えばアルミニウム又は木材のフレーム上に張られたメッシュと呼ばれる多孔質の微細に織られた布地片から作製されている。現在、ほとんどのメッシュは、合成糸又は鋼糸などの人工材料で作製されている。好ましい合成材料はナイロン糸又はポリエステル糸である。
【0047】
[046]合成糸又は金属糸をベースにした織られたメッシュに基づいて作製されたスクリーンに加えて、スクリーンは、孔の格子を備えた固体金属シートから開発されてきた。このようなスクリーンは、第1の電解槽において、分離剤を備えたマトリックス上にスクリーン骨格を形成することによって金属スクリーンを電解形成すること、形成されたスクリーン骨格をマトリックスから剥離すること、及びスクリーン骨格を第2の電解槽において電解処理して、前記骨格上に金属を堆積させることを含む方法によって調製する。
【0048】
[047]スクリーン印刷機には、フラットベッド、シリンダー、及びロータリースクリーンの3つのタイプがある。フラットベッド及びシリンダースクリーン印刷機は、どちらもフラットスクリーン及び3段階往復プロセスを使用して印刷操作を行う点で類似している。スクリーンを、まず、基材上の所定の位置に移動させ、次に、スキージを、メッシュに対して押しつけて、画像領域上に引き、次に、スクリーンを、基材から持ち上げて、プロセスを完了する。フラットベッドプレスでは、印刷される基材を、通常、スクリーンと平行な水平印刷ベッド上に配置する。シリンダプレスでは、基材をシリンダーに取り付ける。フラットベッド及びシリンダースクリーン印刷プロセスは不連続プロセスであり、したがって、一般にウェブで最大45m/分、又はシート給紙プロセスで3000枚/時の速度に制限される。
【0049】
[048]逆に、ロータリースクリーン印刷機は、連続的な高速印刷用に設計されている。ロータリースクリーンプレスで使用されるスクリーンは、例えば、上述の電鋳法を使用して通常得られるか、又は織られた鋼糸で作製される薄い金属シリンダーである。開放端シリンダーの両端をキャップし、プレスの側面のブロックにはめ込む。印刷中、インクはシリンダーの一端にポンプで送り込まれ、常に新しい供給が維持される。スキージはロータリースクリーン内に固定されており、スキージ圧力が維持及び調整されるため、良好で一定の印刷品質が得られる。ロータリースクリーンプレスの利点は、ウェブで150m/分、シート給紙プロセスで10000枚/時に容易に到達することができる速度である。
【0050】
[049]スクリーン印刷は、例えば、The Printing Ink Manual、R.H.Leach and R.J.Pierce、Springer Edition、第5版、58~62頁、Printing Technology,J.M. Adams and P.A.Dolin,Delmar Thomson Learning、第5版、293~328頁及びHandbook of Print Media、H.Kipphan、Springer、409~422頁及び498~499頁に更に記載されている。
【0051】
[050]一実施形態によれば、本明細書に記載のUV-Vis放射線硬化性コーティング組成物は、UV-Vis放射線カチオンコーティング組成物である。別の実施形態によれば、本明細書に記載のUV-Vis放射線硬化性コーティング組成物は、UV-Vis放射線ハイブリッド硬化性コーティング組成物、すなわち、1つ又は複数のカチオン硬化性化合物及び1つ又は複数のフリーラジカル硬化性化合物を含む組成物である。
【0052】
[051]カチオン硬化性化合物を、酸などのカチオン種を遊離する1つ又は複数の光開始剤のUV-Vis光による活性化からなるカチオン機構によって硬化させ、これにより化合物の重合を開始し、そうして硬化バインダーを形成する。ラジカル硬化性インク又は組成物を、フリーラジカルを遊離させて重合プロセスを開始する、1つ又は複数の光開始剤のUV-Vis光による活性化からなるフリーラジカル機構によって硬化する。任意選択で、1つ又は複数の光増感剤が存在してもよい。光増感剤は、UV-Vis光源から放射される1つ又は複数の波長によって活性化され、励起状態に達する。励起された光増感剤は、1つ若しくは複数の光開始剤(フリーラジカル重合の場合)又は電子(カチオン重合の場合)にエネルギーを移動する。いずれかのプロセスによって、順次、重合プロセスが開始される。
【0053】
[052]本明細書に記載のUV-Vis放射線硬化性コーティング組成物を硬化するために必要な光源は、水銀ランプ(好ましくは中圧水銀ランプ)、UV-LEDランプ及びそれらの系列からなる群から選択される。典型的な手順には、UV-Vis放射線組成物を少なくとも部分的に硬化させるための第1のステップでの1つ又は複数のUV-LEDランプの使用、及び第2のステップでの1つ又は複数の中圧水銀ランプの使用が含まれる。水銀ランプは、UV-A、UV-B、及びUV-C範囲の広範囲の波長で発光するという利点がある。したがって、水銀ランプの発光帯域のうちの少なくとも1つと一致する吸収スペクトルを有する光開始剤、又は光開始剤/光増感剤の組み合わせの幅広い選択が存在する。UV-LEDは、波長範囲がより限定されており、工業用印刷速度では限られた光開始剤又は光開始剤/光増感剤の組み合わせの選択のみが十分に効率的である。一方、UV-LEDは、コストが低く、必要なエネルギーが少なく(特に、要求がはるかに少ない熱放散システムが必要である)、オゾンが形成されにくく、寿命がはるかに長くなる。
【0054】
[053]本明細書に記載のUV-Vis放射線硬化性コーティング組成物は、約75wt%~約99wt%の本明細書に記載のインクビヒクルを含み、ブルックフィールド粘度計(型式「DV-I Prime」、粘度が500~2000mPasの場合は100rpmでスピンドルS27、粘度が500mPas以下の場合は100rpmでスピンドルS21)を使用して、25℃で約100~約2000mPasの間の粘度を有する。
【0055】
[054]好適なUV-Vis放射線コーティング組成物は、同時係属中の特許出願PCT/EP2021/055299に記載されている。
【0056】
[055]一実施形態によれば、本明細書に記載のインクビヒクルは、カチオン硬化性インクビヒクル(すなわち、ラジカル硬化性化合物を含まない完全にカチオン硬化性のインクビヒクル)であり、a1)本明細書に記載の1つ若しくは複数の脂環式エポキシド約45wt%~約75wt%、並びにa2)1つ若しくは複数のカチオン性光開始剤約2wt%~約15wt%を含み、重量パーセントは、インクビヒクルの総重量に基づく。
【0057】
[056]別の実施形態によれば、本明細書に記載のインクビヒクルはハイブリッドインクビヒクルであり、したがって、b1)本明細書に記載の1つ若しくは複数の脂環式エポキシドと、1つ若しくは複数のラジカル硬化性化合物とを含む混合物約45~約75wt%、並びにb2)1つ若しくは複数のカチオン性光開始剤と、1つ若しくは複数のフリーラジカル光開始剤との混合物約2wt%~約15wt%を含み、重量パーセントは、インクビヒクルの総重量に基づく。
【0058】
[057]本明細書に記載の1つ又は複数の脂環式エポキシドは、二官能性又は多官能性であり得る。好ましくは、記載される1つ又は複数の脂環式エポキシドは、独立的に、少なくとも1つのシクロヘキサン基及び少なくとも2つのエポキシド基を含む。
【0059】
[058]好ましい脂環式エポキシドは、2つ以上のシクロヘキサンエポキシド基を含み、構造式(I)を有する。
【化1】
(式中、Xは、単結合及び1つ又は複数の原子を含む二価の基から選択される)。
【0060】
[059]一実施形態によれば、Xは、1~18個の炭素原子を含む直鎖又は分岐鎖のアルキレン基である二価の炭化水素基であり、式中、前記直鎖又は分岐鎖のアルキレン基の例としては、限定されないが、メチレン基、メチルメチレン基、ジメチルメチレン基、エチレン基、プロピレン基、及びトリメチレン基が挙げられる。
【0061】
[060]一実施形態によれば、Xは、二価の脂環式炭化水素基又はシクロアルキデン基、例として、1,2-シクロペンチレン基、1,3-シクロペンチレン基、シクロペンチリデン基、1,2-シクロヘキシレン基、1,3-シクロヘキシレン基、1,4-シクロヘキシレン基、及びシクロヘキシリデン基、である。
【0062】
[061]一実施形態によれば、Xは、-CO-、-O-CO-O-、-COO-、及び-O-である1つ又は複数の酸素含有連結基を含む二価の基である。一実施形態によれば、2つ以上のシクロヘキサンオキシド基を含み、構造式(I)を有する好ましいエポキシ誘導体は(式中、Xは、-CO-、-O-CO-O-、-COO-、及び-O-である1つ又は複数の酸素含有連結基を含む二価の基である)、構造式(II)、(III)又は(IV)を有する。
【化2】
この構造式は、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレートに相当し、式中、R
1~R
9は独立的に、水素、又は1~10個の炭素原子を含有する、好ましくは1~3個の炭素原子を含有する直鎖若しくは分岐鎖のアルキルラジカル(メチル、エチル、n-プロピル、i-プロピル、n-ブチル、i-ブチル、s-ブチル、t-ブチル、ヘキシル、オクチル、及びデシルなど)であり、好ましくは、構造式(II)を有する脂環式エポキシドは、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、3,4-エポキシ-6-メチル-シクロヘキシルメチル-3,4-エポキシ-6-メチルシクロヘキサンカルボキシレート、3,4-エポキシ-2-メチル-シクロヘキシルメチル-3,4-エポキシ-2-メチル-シクロヘキサンカルボキシレート、及び3,4-エポキシ-4-メチル-シクロヘキシルメチル-3,4-エポキシ-4-メチルシクロヘキサンカルボキシレートであり;
【化3】
この構造式は、ジカルボン酸の脂環式ジエポキシドエステルに相当し、式中、R
1~R
9は独立的に、水素、又は1~10個の炭素原子を含有する、好ましくは1~3個の炭素原子を含有する直鎖若しくは分岐鎖のアルキルラジカル(メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、ブチル、ヘキシル、オクチル、及びデシルなど)であり、Aは、原子価結合、又は一般に1~10個の炭素原子を含有する、好ましくは3~8個の炭素原子を含有する直鎖若しくは分岐鎖の二価炭化水素ラジカル、例として、アルキレンラジカル(例えば、トリメチレン、テトラメチレン、ヘキサメチレン及び2-エチルヘキシレンなど)及び脂環式ラジカル(1,4-シクロヘキサン、1,3-シクロヘキサン及び1,2-シクロヘキサンなど)であり;好ましくは、構造式(III)を有するジカルボン酸の脂環式ジエポキシドエステルは、ビス(3,4-エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、ビス(3,4-エポキシ-6-メチルシクロヘキシルメチル)アジペート、ビス(3,4-エポキシシクロヘキシルメチル)オキサレート、ビス(3,4-エポキシシクロヘキシルメチル)ピメレート、ビス(3,4-エポキシシクロヘキシルメチル)セバケートであり;
【化4】
式中、R
1~R
9は独立的に、水素、又は1~3個の炭素原子を含有する、直鎖若しくは分岐鎖の炭化水素ラジカルであり;構造式(IV)を有する脂環式ジエポキシドの好ましい例は、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル-5,5-スピロ-3,4-エポキシ)シクロヘキサン-メタ-ジオキサンである。
【0063】
[062]一実施形態によれば、本明細書に記載の1つ又は複数の脂環式エポキシドは、構造式(V)又は(VI)を有する。
【化5】
【0064】
[063]本明細書に記載の1つ又は複数の脂環式エポキシドは、ヒドロキシ変性又は(メタ)アクリレート変性されていてもよい。例は、Daicel Corp.によりCyclomer A400(CAS:64630-63-3)及びCyclomer M100(CAS:82428-30-6)、又はTetraChem/JiangsuによりTTA15及びTTA16の名称で市販されている。
【0065】
[064]本明細書に記載のインクビヒクルが、カチオン硬化性インクビヒクル(すなわち、ラジカル硬化性化合物を含まない完全にカチオン硬化性のインクビヒクル)である実施形態については、本明細書に記載の前記インクビヒクルは、本明細書に記載のオニウム塩である、約2wt%~約15wt%、好ましくは約3wt%~約12wt%、より好ましくは、約4wt%~約10wt%の、1つ又は複数のカチオン性光開始剤(当技術分野では光酸発生剤とも呼ばれる)を含む。本明細書に記載のオニウム塩は、好ましくは、アゾニウム塩、オキソニウム塩、ヨードニウム塩、スルホニウム塩及びそれらの混合物、からなる群から選択され、より好ましくは、オキソニウム塩、ヨードニウム塩、スルホニウム塩及びそれらの混合物、からなる群から選択され、より一層好ましくは、ヨードニウム塩、スルホニウム塩及びそれらの混合物からなる群から選択される。
【0066】
[065]本明細書に記載の1つ又は複数のヨードニウム塩は、カチオン部分及びアニオン部分を有し、アニオン部分は、好ましくはBF4
-、B(C6F5)4
-、PF6
-、AsF6
-、SbF6
-又はCF3SO3
-、より好ましくはSbF6
-又はPF6
-、より一層好ましくはPF6
-であり、カチオン部分は、好ましくは芳香族ヨードニウムイオン、より好ましくは2つのアリール基を含むヨードニウムイオンであり、2つのアリール基は、独立的に1つ又は複数のアルキル基(例えば、メチル、エチル、イソブチル、tert-ブチル等)、1つ又は複数のアルコキシ基、1つ又は複数のニトロ基、1つ又は複数のハロゲン含有基、1つ又は複数の水酸基、又はそれらの組み合わせによって置換してもよい。本発明のヨードニウム塩の特に好適な例は、IGM ResinsからOmnicat250及び440並びにLambsonからスピードキュア(Speedcure938)という名称で市販されている。
【0067】
[066]本明細書に記載の1つ又は複数のスルホニウム塩は、カチオン部分及びアニオン部分を有し、アニオン部分は、好ましくはBF4
-、B(C6F5)4
-、PF6
-、(PF6-m(CnF2n-1)m)-(式中、mは1~5の整数であり、nは1~4の整数である)、AsF6
-、SbF6
-、CF3SO3
-、CH3C6H4)SO3
-、(C4F9)SO3
-、(CF3)CO2
-、(C4F9)CO2
-、(CF3SO2)3C、又はペンタフルオロヒドロキシアンチモネート、より好ましくはSbF6
-又はPF6
-であり、カチオン部分は、好ましくは芳香族スルホニウムイオン、より好ましくは2つ以上のアリール基を含むスルホニウムイオンであり、2つ以上のアリール基は、独立的に1つ又は複数のアルキル基(例えば、メチル、エチル、イソブチル、tert-ブチル等)、1つ又は複数のアルコキシ基、1つ又は複数のアリールオキシル基、1つ又は複数のハロゲン含有基、1つ又は複数の水酸基、又はそれらの組み合わせによって置換してもよい。
【0068】
[067]2つ以上のアリール基を含むスルホニウムイオンの好適な例としては、限定されないが、トリアリールスルホニウムイオン、例としてジフェニル[4-(フェニルチオ)フェニル]スルホニウムイオン、ビス[4-(ジフェニルスルホニオ)フェニル]スルホニウムイオン、トリフェニルスルホニウムイオン、及びトリス[4-(4-アセチルフェニル)スルファニルフェニル]スルホニウムイオンが挙げられる。
【0069】
[068]有用なカチオン性光開始剤の他の例は、1998年にSITA Technology Limitedと共同でJohn Wiley&Sonsにより発行された、「Chemistry&Technology of UV&EB Formulation for Coatings、Inks&Paints」、第3巻、「Photoinitiators for Free Radical Cationic and Anionic Polymerization」、第2版、J.V.Crivello&K.Dietliker著、G.Bradley編等の標準的教本において見出すことができる。
【0070】
[069]本明細書のUV-Vis放射線硬化性コーティング組成物が、UV-Vis放射線ハイブリッド硬化性コーティング組成物である実施形態では、前記UV-Vis放射線ハイブリッド硬化性コーティング組成物のインクビヒクルは、本明細書に記載の1つ又は複数の脂環式エポキシドと、本明細書に記載の、トリ(メタ)アクリレート、テトラ(メタ)アクリレート及びそれらの混合物からなる群から選択される、好ましくは、テトラ(メタ)アクリレートからなる群から選択される、1つ又は複数のラジカル硬化性化合物とを含み、本明細書に記載の前記1つ又は複数のラジカル硬化性化合物は、好ましくは約30wt%以下の量であり、重量パーセントは、インクビヒクルの総重量に基づく。
【0071】
[070]本明細書に記載の1つ又は複数のラジカル硬化性トリ(メタ)アクリレートは、好ましくは、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、アルコキシ化(特にエトキシ化又はプロポキシ化)トリメチロールプロパントリアクリレート、アルコキシ化(特にエトキシ化又はプロポキシ化)トリメチロールプロパントリメタクリレート、アルコキシ化(特にエトキシ化又はプロポキシ化)グリセロールトリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、アルコキシ化(特にエトキシ化又はプロポキシ化)ペンタエリスリトールトリアクリレート、及びそれらの混合物からなる群から選択され、好ましくはトリメチロールプロパントリアクリレート、アルコキシ化(特にエトキシ化又はプロポキシ化)トリメチロールプロパントリアクリレート、アルコキシ化(特にエトキシ化又はプロポキシ化)グリセロールトリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、及びそれらの混合物からなる群から選択される。
【0072】
[071]本明細書に記載の1つ又は複数のラジカル硬化性テトラ(メタ)アクリレートは、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、アルコキシ化(特にエトキシ化又はプロポキシ化)ペンタエリスリトールテトラアクリレート、及びそれらの混合物からなる群から選択され、好ましくは、アルコキシ化(特にエトキシ化又はプロポキシ化)ペンタエリスリトールテトラアクリレートからなる群から選択される。
【0073】
[072]1つ若しくは複数のフリーラジカル光開始剤は、好ましくは、α-ヒドロキシケトン、ベンジルケタール、ベンゾインエーテル、ホスフィンオキシド、フェニルグリオキシレート及びそれらの混合物、からなる群から選択され、より好ましくは、α-ヒドロキシケトンからなる群から選択される。
【0074】
[073]α-ヒドロキシケトンの好適な例としては、限定されないが、2-ヒドロキシ-4’-ヒドロキシエトキシ-2-メチルプロピオフェノン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン;2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン;2-ヒドロキシ-2-メチル-1-(4-tert-ブチル)フェニルプロパン-1-オン;2-ヒドロキシ-1-[4-[[4-(2-ヒドロキシ-2-メチルプロパノイル)フェニル]メチル]フェニル]-2-メチルプロパン-1-オン;2-ヒドロキシ-1-[4-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチルプロパノイル)フェノキシ]フェニル]-2-メチルプロパン-1-オン;2-ヒドロキシ-1-[1-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチルプロパノイル)フェニル]-1,3,3-トリメチルインダン-5-イル]-2-メチルプロパン-1-オン;ポリ(オキシ-1,2-エタンジイル)、α-(1,1-ジメチル-2-オキソ-2-フェニルエチル)-ω-ヒドロキシ-;及びオリゴ[2-ヒドロキシ-2-メチル-1-[4-(1-メチルビニル)フェニル]プロパノン]が挙げられ、一実施形態によれば、α-ヒドロキシケトンは、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オンである。
【0075】
[074]ベンジルケタールの好適な例としては、限定されないが、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン及び2,2-ジエトキシ-1-フェニル-1-エタノンが挙げられる。
【0076】
[075]ベンゾインエーテルの好適な例としては、限定されないが、2-エトキシ-1,2-ジフェニルエタノン;2-イソプロポキシ-1,2-ジフェニルエタノン;2-イソブトキシ-1,2-ジフェニルエタノン、及び2-ブトキシ-1,2-ジフェニルエタノンが挙げられる。
【0077】
[076]ホスフィンオキシドの好適な例としては、限定されないが、2,3,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド;エチル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィネート;エチルフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィネート;フェニルビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド;ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチルペンチルホスフィンオキシド;並びにオリゴマーホスフィンオキシド、例としてα,α’,α”-1,2,3-プロパントリイルトリス[ω-[[フェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィニル]オキシ]-ポリ(オキシ-1,2-エタンジイル)、及びα-[ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィニル]-ω-メトキシ-ポリ(オキシ-1,2-エタンジイルが挙げられる。
【0078】
[077]フェニルグリオキシレートの好適な例としては、限定されないが、2-オキソ-2-フェニル酢酸メチルエステル(メチルベンゾイルホルメート)、2-[2-オキソ-2-フェニル-アセトキシ-エトキシ]エチル2-オキソ-2-フェニルアセテート、α-(2-オキソ-2-フェニルアセチル)-ω-[(2-オキソ-2-フェニルアセチル)オキシ]-ポリ(オキシ-1,4-ブタンジイル)、及び2-(2-ヒドロキシエトキシ)エチル2-オキソ-2-フェニルアセテート、が挙げられる。
【0079】
[078](例えば、固体光開始剤を液体ブレンドに置き換えることによって)反応性を高めるため及び/又は取り扱いを改善するために、本明細書に記載のフリーラジカル光開始剤の任意のブレンドを使用することができ、ここで、前記ブレンドには、例えば以下が含まれる:2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシドと2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オンのブレンドであって、例えば、IGM Resinsより、商品名オムニラド(Omnirad)4265で販売されているもの;フェニルビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド、エチル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィネート及び2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオフェノンのブレンドであって、例えば、IGM Resinsより、商品名オムニラド2022で販売されているもの;エチル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィネートとフェニルビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシドとのブレンドであって、例えば、IGM Resinsより、商品名オムニラド2100で販売されているもの;2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオフェノンと1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンのブレンドであって、例えば、IGM Resinsより、商品名オムニラド1000で販売されているもの;並びにオリゴ[2-ヒドロキシ-2-メチル-1-[4-(1-メチルビニル)フェニル]プロパノン]と2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオフェノンのブレンドであって、例えば、IGM Resinsより、商品名Esacure KIP100Fで販売されているもの;2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオフェノン)、エチル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィネートとオリゴ[2-ヒドロキシ-2-メチル-1-[4-(1-メチルビニル)フェニル]プロパノン]のブレンドであって、例えば、IGM Resinsより、商品名オムニラドBL723で販売されているもの;並びに2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオフェノン、オリゴ[2-ヒドロキシ-2-メチル-1-[4-(1-メチルビニル)フェニル]プロパノン]、エチル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)及び2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オンのブレンドであって、IGM Resinsより、商品名オムニラドBL724で販売されているもの。
【0080】
[079]本明細書で言及される一実施形態によれば、本明細書に記載のUV-Vis放射線硬化性コーティング組成物は、UV-Vis放射線ハイブリッド硬化性コーティング組成物であり(すなわち、前記UV-Vis放射線硬化性コーティング組成物のインクビヒクルは、本明細書に記載の脂環式エポキシド、本明細書に記載のオニウム塩である1つ又は複数のカチオン性光開始剤、本明細書に記載の1つ又は複数のラジカル硬化性化合物、及び本明細書に記載の1つ又は複数のフリーラジカル光開始剤を含む)、オニウム塩である1つ又は複数のカチオン性光開始剤と1つ又は複数のフリーラジカル光開始剤の総量は、約2wt%~約15wt%の間、好ましくは約3wt%~約12wt%の間、より好ましくは、約4wt%~約10wt%の間であり、重量パーセントは、インクビヒクルの総重量に基づく。好ましくは、オニウム塩である1つ又は複数のカチオン性光開始剤は、約1wt%~約10wt%との間の量で存在し、1つ又は複数のフリーラジカル光開始剤は、約1wt%~約5wt%の間の量で存在し、重量パーセントは、インクビヒクルの総重量に基づいており、ただし、オニウム塩である1つ又は複数のカチオン性光開始剤と1つ又は複数のフリーラジカル光開始剤の総量は、約2wt%~約15wt%の間、好ましくは約3wt%~約12wt%の間、より好ましくは、約4wt%~約10wt%の間であり、重量パーセントは、インクビヒクルの総重量に基づく。
【0081】
[080]本明細書に記載のUV-Vis放射線硬化性コーティング組成物のインクビヒクル(UV-Vis放射線カチオン硬化性コーティング組成物のインクビヒクル及びUV-Vis放射線ハイブリッド硬化性コーティング組成物のインクビヒクル)は、c1)1つ若しくは複数のビニルエーテル、又はc2)1つ若しくは複数のオキセタン、又はc3)1つ若しくは複数のビニルエーテルと1つ若しくは複数のオキセタンの組み合わせを更に含む。
【0082】
[081]一実施形態によれば、本明細書に記載のUV-Vis放射線硬化性コーティング組成物(UV-Vis放射線カチオン硬化性コーティング組成物のインクビヒクル及びUV-Vis放射線ハイブリッド硬化性コーティング組成物のインクビヒクル)は、1つ又は複数のビニルエーテルを更に含んでもよい。本明細書に記載のUV-Vis放射線硬化性コーティング組成物のインクビヒクルが、本明細書に記載の1つ又は複数のオキセタンを含まずに、本明細書に記載の1つ又は複数のビニルエーテルを含む実施形態では、前記1つ又は複数のビニルエーテルは、約20wt%未満の量、好ましくは約5.0wt%以上かつ約15wt%以下の量で存在し、重量パーセントは、インクビヒクルの総重量に基づく。
【0083】
[082]ビニルエーテルは、硬化を促進し、粘着性を低減するため、印刷及び硬化直後に印刷シートを重ねたときのブロッキング及び裏移りの危険性を限定することが、当技術分野で知られている。また、ビニルエーテルは、印刷されたセキュリティ要素の物理的及び化学的耐性を改善し、印刷及び硬化されたインク層の柔軟性を向上させるが、このことは、本発明のコーティング組成物をプラスチック又はポリマー基材上に印刷する際に有利であり得る。また、ビニルエーテルは、インクビヒクルと強力に共重合しながら、組成物/インクの粘度を低減するのにも役立つ。
【0084】
[083]好適なビニルエーテルの例としては、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n-プロピルビニルエーテル、n-ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、エチルヘキシルビニルエーテル、オクタデシルビニルエーテル、ドデシルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、tert-ブチルビニルエーテル、tert-アミルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールモノビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、4-(ビニルオキシメチル)シクロヘキシルメチルベンゾエート、フェニルビニルエーテル、メチルフェニルビニルエーテル、メトキシフェニルビニルエーテル、2-クロロエチルビニルエーテル、2-ヒドロキシエチルビニルエーテル、4-ヒドロキシブチルビニルエーテル、1,6-ヘキサンジオールモノビニルエーテル、エチレングリコールジビニルエーテル、エチレングリコールモノビニルエーテル、1,4-ブタンジオールジビニルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジビニルエーテル、4-(ビニルオキシ)ブチルベンゾエート、ビス[4-(ビニルオキシ)ブチル]アジペート、ビス[4-(ビニルオキシ)ブチル]スクシネート、ビス[4-(ビニルオキシメチル)シクロヘキシルメチル]グルタレート、4-(ビニルオキシ)ブチルステアレート、トリメチロールプロパントリビニルエーテル、炭酸プロピレンのプロペニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、エチレングリコールブチルビニルエーテル、ジプロピレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールメチルビニルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルビニルエーテル、テトラエチレングリコールジビニルエーテル、ポリ(テトラヒドロフラン)ジビニルエーテル、ポリエチレングリコール-520メチルビニルエーテル、pluriol-E200ジビニルエーテル、トリス[4-(ビニルオキシ)ブチル]トリメリテート、1,4-ビス(2-ビニルオキシエトキシ)ベンゼン、2,2-ビス(4-ビニルオキシエトキシフェニル)プロパン、ビス[4-(ビニルオキシ)メチル]シクロヘキシル]メチル]テレフタレート、ビス[4-(ビニルオキシ)メチル]シクロヘキシル]メチル]イソフタレートが挙げられる。好適なビルエーテルは、EVE、IBVE、DDVE、ODVE、BDDVE、DVE-2、DVE-3、CHVE、CHDM-di、HBVEという呼称でBASFから市販されている。本明細書に記載の1つ又は複数のビニルエーテルは、ヒドロキシ変性又は(メタ)アクリレート変性)されていてもよい(例えば、Nippon Shokubai製のVEEA、2-(2-ビニルオキシエトキシ)エチルアクリレート)。
【0085】
[084]別の実施形態によれば、本明細書に記載のUV-Vis放射線硬化性コーティング組成物のインクビヒクル(UV-Vis放射線カチオン硬化性コーティング組成物のインクビヒクル及びUV-Vis放射線ハイブリッド硬化性コーティング組成物のインクビヒクル)は、本明細書に記載の1つ又は複数のオキセタンを含む。本明細書に記載のUV-Vis放射線硬化性コーティング組成物のインクビヒクルが、本明細書に記載の1つ又は複数のビニルエーテルを含まずに、本明細書に記載の1つ又は複数のオキセタンを含む実施形態では、前記1つ又は複数のオキセタンは、約30wt%以下、好ましくは約5wt%以上かつ約25wt%以下の量で存在し、重量パーセントは、インクビヒクルの総重量に基づく。
【0086】
[085]オキセタン化合物は、硬化を促進し、粘着性を低減するため、印刷及び硬化直後に印刷シートを重ねたときのブロッキング及び裏移りの危険性を限定することが、当技術分野で知られている。また、オキセタン化合物は、インクビヒクルと強力に共重合しながら、組成物/インクの粘度を低減するのにも役立つ。
【0087】
[086]オキセタンの例としては、限定されないが、酸化トリメチレン、3,3-ジメチルオキセタン、3-エチル-3-ヒドロキシメチルオキセタン、3-エチル-3-[(2-エチルヘキシルオキシ)メチル]オキセタン、3-エチル-3-フェノキシメチルオキセタン、ビス([1-エチル(3-オキセタニル)]メチル)エーテル、1,4-ビス[3-エチル-3-オキセタニルメトキシ)メチル]ベンゼン、3,3-ジメチル-2(4-メトキシ-フェニル)-オキセタン、4,4-ビス(3-エチル-3-オキセタニル)メトキシメチル]ビフェニル、及び(3-エチル-3-オキセタニル)メチルメタクリレートが挙げられる。好ましいオキセタンは、3-エチル-3-ヒドロキシメチルオキセタン、ビス([1-エチル(3-オキセタニル)]メチル)エーテル、3-エチル-3-フェノキシメチルオキセタン、1,4-ビス[3-エチル-3-オキセタニルメトキシ)メチル]ベンゼン、4,4-ビス(3-エチル-3-オキセタニル)メトキシメチル]ビフェニル及び(3-エチル-3-オキセタニル)メチルメタクリレートであり;好ましい例は、3-エチル-3-[(2-エチルヘキシルオキシ)メチル]オキセタンである。
【0088】
[087]別の実施形態によれば、本明細書に記載のUV-Vis放射線硬化性コーティング組成物のインクビヒクル(UV-Vis放射線カチオン硬化性コーティング組成物のインクビヒクル及びUV-Vis放射線ハイブリッド硬化性コーティング組成物のインクビヒクル)は、本明細書に記載の1つ又は複数のビニルエーテル及び本明細書に記載の1つ又は複数のオキセタンを含む。本明細書に記載のUV-Vis放射線硬化性コーティング組成物のインクビヒクルが、本明細書に記載の1つ又は複数のビニルエーテル及び本明細書に記載の1つ又は複数のオキセタンの組み合わせを含む実施形態では、前記組み合わせは、約15wt%以下、好ましくは約10wt%以下の量で存在し、重量パーセントは、インクビヒクルの総重量に基づく。
【0089】
[088]本明細書に記載の1つ又は複数のビニルエーテルと本明細書に記載の1つ又は複数のオキセタンとのバランスを特定の範囲内で良好に選択することは、本発明のコーティング組成物から作製されるセキュリティ要素の所望の特性、特に容易な加工性(最適な粘度、速い硬化、裏移りなし、ブロッキングなし)及び強力な化学的及び物理的耐性を最適化するのに役立つ。更に、ビニルエーテル及びオキセタンは通常、脂環式エポキシド化合物よりも安価であるため、費用対効果の向上にも役立つ。
【0090】
[089]本明細書に記載のUV-Vis放射線硬化性コーティング組成物のインクビヒクル(UV-Vis放射線カチオン硬化性コーティング組成物のインクビヒクル及びUV-Vis放射線ハイブリッド硬化性コーティング組成物のインクビヒクル)は、1つ又は複数のポリヒドロキシ化合物を更に含んでもよく、前記1つ又は複数のポリヒドロキシ化合物は、好ましくは約25wt%以下の量で存在し、重量パーセントは、インクビヒクルの総重量に基づく。
【0091】
[090]ポリヒドロキシ化合物は、セキュリティ文書、特に紙幣の分野でますます普及しているプラスチック又はポリマー基材など、接着特性が劣ることが知られている基材への接着を改善することが当技術分野で知られている。
【0092】
[091]本明細書に記載の1つ又は複数のポリヒドロキシ化合物は、好ましくは2つを超えるヒドロキシル基を含み、直鎖状、分岐鎖状又は超分岐状(当技術分野では樹枝状とも呼ばれる)であってもよい。好ましくは、本明細書に記載の1つ又は複数のポリヒドロキシ化合物は、三官能性、四官能性化合物、六官能性化合物、又は多官能性化合物である。
【0093】
[092]本明細書に記載の1つ又は複数のポリヒドロキシ化合物は、好ましくは、脂肪族又は芳香族ポリエーテルのポリヒドロキシ誘導体、ポリエステルのポリヒドロキシ誘導体、ポリカーボネートのポリヒドロキシ誘導体、グリセロール、トリメチロールプロパン、ジトリメチロールプロパン、ペンタエリトリスール、ジペンタエリスリトール、及びそれらの混合物からなる群から選択される。
【0094】
[093]本明細書に記載の1つ又は複数のポリヒドロキシ化合物は、少なくとも部分的にアルコキシ化されていてもよい。したがって、本明細書に記載の1つ又は複数のポリヒドロキシ化合物は、アルコキシ化単位、好ましくはエトキシ化及び/又はプロポキシ化単位を有してもよい。
【0095】
[094]1つの実施形態によれば、本明細書に記載の1つ又は複数のポリヒドロキシ化合物は、脂肪族又は芳香族ポリエーテルのポリヒドロキシ誘導体である。脂肪族又は芳香族ポリエーテルのポリヒドロキシ誘導体の例としては、例えばポリエチレングリコール及びポリプロピレングリコール等のポリオキシアルキレンポリオール及びポリアルコキシ化ポリオールが挙げられる。
【0096】
[095]実施形態によれば、本明細書に記載の1つ又は複数のポリヒドロキシ化合物は、三官能性化合物、好ましくはグリセロール及びトリメチロールプロパン、四官能性化合物、好ましくはジ-トリメチロールプロパン及びペンタエリスリトール、六官能性化合物、好ましくはジペンタエリスリトール、及びそれらの混合物からなる群から選択され、前記化合物、好ましくは前記トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール及びジペンタエリスリトールは、アルコキシ化(エトキシ化及び/又はプロポキシ化)されていてもよい。
【0097】
[096]アルコキシ化ポリヒドロキシ化合物の好適な例としては、Polyol 3165、3380、3610、3611、3940、3990、R3215、R3430、R3530、R3600、4290、4360、4525、4640、4800、R4630、R4631、R4650、及びR6405という呼称でPerstorpから販売され、ここで最初の数字は1分子当たりのヒドロキシ基の数を示し、続く3つの数字はヒドロキシ数を示す。
【0098】
[097]実施形態によれば、本明細書に記載の1つ又は複数のポリヒドロキシ化合物は、ポリカプロラクトンジオール、トリオール、及びテトラオール等のポリエステルのポリヒドロキシ(polyydroxy)誘導体である。このような化合物は、例えばDaicel Corp.からPLACCEL 200 Series、PLACCEL 300 Series、PLACCEL 400 Series、ポリグリセリン6、ポリグリセリン10、ポリグリセリン40として販売されている。
【0099】
[098]実施形態によれば、本明細書に記載の1つ又は複数のポリヒドロキシ化合物は、ポリエステルの超分岐ポリヒドロキシ誘導体である。本明細書で使用される場合「超分岐ポリマー」という用語は、樹状ポリマー、高分岐ポリマー、樹状巨大分子、又は樹枝状ポリマーであって、樹木状の構造を有し、1つ又は複数の分岐コモノマー単位を含む3次元高分岐分子であるもの、としても知られている。分岐コモノマー単位は、分岐層、1つ又は複数の間隔層、及び/又は鎖終端分子の層、及びコアとしても知られる任意選択の核を含む。分岐層の複製を続けることにより、他の分子と比較して、分岐多重度、分岐密度を増加させ、末端官能基の数を増加させる。例えば米国特許第5,418,301号に記載されているように、ポリエステルの超分岐ポリヒドロキシ誘導体は、続く1つ又は複数のステップにおいて、適切な等量数のジメチロールプロピオン酸を用いて、中心成核分子として機能するポリヒドロキシ化合物(例えばトリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等)の管理されたエステル化により得られる。ポリエステルの樹状ポリヒドロキシ誘導体であるポリヒドロキシ化合物の好適な例は、ボルトルン(Boltorn)(商標)H20、ボルトルン(商標)H2004、ボルトルン(商標)H311、ボルトルン(商標)P1000、及びボルトルン(商標)P500という呼称でPerstorpから販売されている。
【0100】
[099]本明細書に記載の1つ又は複数のポリヒドロキシ化合物は、好ましくは、100~1000mgKOH/gの間のヒドロキシ数を有する。
【0101】
[0100]本明細書に記載のUV-Vis放射線硬化性コーティング組成物のインクビヒクル(UV-Vis放射線カチオン硬化性コーティング組成物のインクビヒクル及びUV-Vis放射線ハイブリッド硬化性コーティング組成物のインクビヒクル)は、好ましくは、炭素繊維、タルク、雲母(白雲母)、珪灰石、焼成粘土、陶土、カオリン、炭酸塩(例えば炭酸カルシウム、炭酸ナトリウムアルミニウム)、ケイ酸塩(例えば、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸アルミニウム)、硫酸塩(例えば硫酸マグネシウム、硫酸バリウム)、チタン酸塩(例えばチタン酸カリウム)、水和アルミナ、シリカ、フュームドシリカ、モンモリロナイト、グラファイト、アナターゼ、ルチル、ベントナイト、バーミキュライト、亜鉛白、硫化亜鉛、木粉、石英粉、天然繊維、合成繊維、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、1つ又は複数の充填剤又は増量剤を更に含んでもよい。存在する場合、1つ又は複数の充填剤又は増量剤は、好ましくは約0.1wt%~約20wt%の量、より好ましくは約0.1wt%~約10wt%の量で存在し、重量パーセントは、インクビヒクルの総重量に基づく。
【0102】
[0101]本明細書に記載のUV-Vis放射線硬化性コーティング組成物のインクビヒクル(UV-Vis放射線カチオン硬化性コーティング組成物のインクビヒクル及びUV-Vis放射線ハイブリッド硬化性コーティング組成物のインクビヒクル)は、効率的な硬化を達成するために、本明細書に記載の1つ又は複数の光開始剤と共に1つ又は複数の光増感剤を更に含んでもよい。光増感剤の好適な例は、当業者に知られている(例えばIndustrial Photoinitiators、W.A.Green、CRC Press、2010年、表8.1、170頁)。本明細書に記載の1つ又は複数の増感剤は、好ましくは、チオキサントン誘導体、アントラセン誘導体、及びベンゾフェノン誘導体からなる群から選択される。より好ましくは、光増感剤は、チオキサントン誘導体及びアントラセン誘導体など、UV-LED光源で効率的かつ迅速な硬化を達成できるものである(例えばAnthracure UVS-1101として販売されている9,10-ジエトキシアントラセン及びAnthracure UVS-1331として販売されている9,10-ジブチルオキシアントラセン、両者ともKawasaki Kasei Chemicals Ltdから販売)。イソプロピル-チオキサントン(ITX)、1-クロロ-2-プロポキシ-チオキサントン(CPTX)、2-クロロ-チオキサントン(CTX)、及び2,4-ジエチル-チオキサントン(DETX)、及びそれらの混合物を含むがこれらに限定されないチオキサントン誘導体が特に好適である。或いは、チオキサントン光増感剤は、オリゴマー若しくはポリマーの形態(IGM Resinsから販売されているOmnipol TX、Rahnから販売されているGenopol* TX-2、又はLambsonから販売されているSpeedcure7010など)、又は重合可能な形態(IGM Resinsから販売されているOmnipol 3TXなど)で使用してもよい。存在する場合、1つ又は複数の光増感剤は、好ましくは約0.1wt%~約10wt%、より好ましくは約0.1wt%~約5wt%、より一層好ましくは約0.2wt%~約1wt%の量で存在し、重量パーセントは、インクビヒクルの総重量に基づく。
【0103】
[0102]本明細書に記載のUV-Vis放射線硬化性コーティング組成物のインクビヒクル(UV-Vis放射線カチオン硬化性コーティング組成物のインクビヒクル及びUV-Vis放射線ハイブリッド硬化性コーティング組成物のインクビヒクル)は、本明細書に記載のUV-Vis放射線硬化性コーティング組成物の粘度を微調整するための1つ又は複数の溶媒を更に含んでもよい。好ましい溶媒は、炭酸エステルなどの高沸点を示す極性非プロトン性溶媒である。好ましい炭酸エステルは、炭酸アルキレン(例えば炭酸エチレン、炭酸プロピレン、及び炭酸ブチレン)である。高沸点及び好ましい生態毒性プロファイルを有する炭酸プロピレンが特に好ましい。好ましくは、インクビヒクル中の1つ又は複数の溶媒の量は、約5wt%未満、より好ましくは約2wt%未満であり、重量パーセントは、インクビヒクルの総重量に基づく。
【0104】
[0103]本明細書に記載のUV-Vis放射線硬化性コーティング組成物のインクビヒクルがハイブリッド硬化性インクビヒクルである実施形態では、前記インクビヒクルは、モノ(メタ)アクリレート、ジ(メタ)アクリレート及びそれらの混合物からなる群から選択されるラジカル硬化性モノマーである1つ又は複数の反応性希釈剤を更に含んでもよい。
【0105】
[0104]本明細書に記載のUV-Vis放射線硬化性コーティング組成物のインクビヒクル(UV-Vis放射線カチオン硬化性コーティング組成物のインクビヒクル及びUV-Vis放射線ハイブリッド硬化性コーティング組成物のインクビヒクル)は、当技術分野で公知の磁性材料、当技術分野で公知の発光材料及びエレクトロルミネッセント材料、当技術分野で公知の導電性材料、当技術分野で公知の赤外線吸収材料、及び当技術分野で公知の(表面増強)ラマン活性化合物からなる群から選択される、法医学的マーカー及び/又は法医学的タガント及び/又は1つ又は複数の機械可読材料を含む1つ又は複数のマーカー物質及び/又はタガントを更に含んでもよい。本明細書で使用される場合、「機械可読材料」という用語は、肉眼で知覚できない少なくとも1つの特徴的性質を示し、層に含むことにより、認証のための特定の機器の使用により前記層又は前記層を備える物品を認証する手法を与えることができる材料を指す。1つ又は複数の機械可読材料は、本明細書に記載のUV-Vis放射線硬化性コーティング組成物を用いて作製されたセキュリティ機能における機械可読材料の検出が、前記セキュリティ機能に含有されるフレーク形状の非金属性又は金属性基材を含む顔料によって損なわれないように選択されるべきである。前記インクに含有されるフレーク形状の非金属性又は金属性基材を含む顔料の既知の特性を考慮して、セキュリティインクに使用され得る機械可読材料を選択することは、インク配合の当業者の共通一般知識の範囲内である。本明細書に記載のUV-Vis放射線硬化性コーティング組成物であって、顔料はフレーク形状の非金属性基材を含み、インクビヒクルは、当技術分野で公知の磁性材料、当技術分野で公知の発光材料及びエレクトロルミネッセント材料、当技術分野で公知の導電性材料、当技術分野で公知の赤外線吸収材料、及び当技術分野で公知の(表面増強)ラマン活性化合物からなる群から選択され、好ましくは、当技術分野で公知の磁性材料及び当技術分野で公知の赤外線吸収材料からなる群から選択され、より好ましくは、当技術分野で公知の磁性材料からなる群から選択される、1つ又は複数の機械可読材料を含む、UV-Vis放射線硬化性コーティング組成物が好ましい。また、本明細書に記載のUV-Vis放射線硬化性コーティング組成物であって、顔料はフレーク形状の金属性基材を含み、インクビヒクルは、当技術分野で公知の磁性材料、当技術分野で公知の発光材料及びエレクトロルミネッセント材料、当技術分野で公知の導電性材料、及び当技術分野で公知の(表面増強)ラマン活性化合物からなる群から選択され、好ましくは、当技術分野で公知の磁性材料からなる群から選択される、1つ又は複数の機械可読材料を含む、UV-Vis放射線硬化性コーティング組成物も好ましい。フレーク形状の非金属性基材を含む顔料を含有する、本明細書に記載のUV-Vis放射線硬化性コーティング組成物に好適な赤外線吸収材料の非限定的な例は、国際公開第2007/060133号及び国際公開第2019/219250号に記載されている。本明細書に記載のUV-Vis放射線硬化性コーティング組成物に好適な磁性材料の非限定的な例としては、国際公開第2008/148201、同第2010/115986号、同第2017/129666号及び同第2016/005158号に記載のコアシェル磁性粒子が挙げられる。
【0106】
[0105]本明細書に記載のUV-Vis放射線硬化性コーティング組成物のインクビヒクル(UV-Vis放射線カチオン硬化性コーティング組成物のインクビヒクル及びUV-Vis放射線ハイブリッド硬化性コーティング組成物のインクビヒクル)は、有機顔料粒子、無機顔料粒子、有機染料、及びそれらの混合物からなる群から選択される1つ又は複数の着色成分、及び/又は1つ又は複数の添加剤を更に含んでもよい。後者には、限定されないが、UV-Vis放射線硬化性コーティング組成物、好ましくは、本明細書に記載のUV-Vis放射線硬化性スクリーン印刷コーティング組成物の物理的、レオロジー的及び化学的パラメーター、例として、コンシステンシー(例えば、沈降防止剤及び可塑剤)、起泡特性(例えば、消泡剤及び脱泡剤)、潤滑特性(ワックス)などを調整するために使用される化合物及び材料が含まれる。本明細書に記載の添加剤は、本明細書に記載のインクビヒクル又はUV-Vis放射線硬化性コーティング組成物中に、添加剤の寸法の少なくとも1つが1~1000nmの範囲であるいわゆるナノ材料の形態を含む、当技術分野で公知の量及び形態で存在してもよい。
【0107】
[0106]一実施形態によれば、本明細書に記載のUV-Vis放射線硬化性コーティング組成物のインクビヒクルは、UV-Vis放射線カチオン硬化性コーティング組成物であり、本明細書に記載の1つ若しくは複数の脂環式エポキシド(特に、脂環式エポキシドは、2つ以上のシクロヘキサンエポキシド基を含み、構造式(II)を有する)、本明細書に記載の1つ若しくは複数のビニルエーテルと1つ若しくは複数のオキセタンとの組み合わせ、本明細書に記載の1つ若しくは複数のポリヒドロキシ化合物、オニウム塩である1つ若しくは複数のカチオン性光開始剤(特に、オキソニウム塩、ヨードニウム塩、スルホニウム塩及びそれらの混合物からなる群から選択される1つ若しくは複数の塩、好ましくは本明細書に記載のヨードニウム塩)、任意選択で、本明細書に記載の1つ若しくは複数の光増感剤(特に、本明細書に記載のものなどのチオキサントン誘導体)、任意選択で、好ましくは本明細書に記載の量の本明細書に記載の1つ若しくは複数の充填剤、を含む。
【0108】
[0107]一実施形態によれば、本明細書に記載のUV-Vis放射線硬化性コーティング組成物のインクビヒクルは、UV-Vis放射線ハイブリッド硬化性コーティング組成物であり、本明細書に記載の1つ若しくは複数の脂環式エポキシド(特に、脂環式エポキシドは、2つ以上のシクロヘキサンエポキシド基を含み、構造式(I)又は(II)を有する)、本明細書に記載の1つ若しくは複数のビニルエーテルと1つ若しくは複数のオキセタンとの組み合わせ、本明細書に記載の1つ若しくは複数のポリヒドロキシ化合物、オニウム塩である1つ若しくは複数のカチオン性光開始剤(特に、オキソニウム塩、ヨードニウム塩、スルホニウム塩及びそれらの混合物、からなる群から選択される1つ若しくは複数の塩、好ましくは本明細書に記載のヨードニウム塩)、本明細書に記載のトリ(メタ)アクリレート、テトラ(メタ)アクリレート(特に、本明細書に記載のものなどのテトラ(メタ)アクリレート)、及びそれらの混合物からなる群から選択される1つ又は複数のラジカル硬化性化合物、本明細書に記載の1つ又は複数のフリーラジカル光開始剤(特に、本明細書に記載されるα-ヒドロキシケトン)、任意選択で、本明細書に記載の1つ若しくは複数の光増感剤(特に、本明細書に記載のものなどのチオキサントン誘導体)、任意選択で、好ましくは本明細書に記載の量の本明細書に記載の1つ若しくは複数の充填剤、を含む。
【0109】
[0108]本明細書に記載のUV-Vis放射線硬化性コーティング組成物は、約1wt%~約25wt%、好ましくは約5wt%~約20wt%、より好ましくは、約10wt%~約20wt%の、本明細書に記載のフレーク形状の非金属性又は金属性基材を含む顔料を含み、前記フレーク形状の非金属性又は金属性基材は、本明細書に記載の1つ又は複数の少なくとも部分的なコーティング層で少なくとも部分的にコーティングされており、環境に面し、本明細書に記載の1つ若しくは複数の表面改質剤で作製された少なくとも部分的な表面処理層を含む。「環境に面する」とは、前記表面処理層が顔料のトップ層であり、外層として作用することを意味する。少なくとも部分的な表面処理層は、本明細書に記載の1つ又は複数の少なくとも部分的なコーティング層の上層と直接接触している。
【0110】
[0109]本明細書に記載の顔料のフレーク形状の非金属性又は金属性基材は、1つ若しくは複数の金属酸化物、1つ若しくは複数の金属酸化物水和物、1つもしく複数の金属亜酸化物、又はこれらの材料の混合物から独立的に作製された、1つ若しくは複数の少なくとも部分的なコーティングを含む;換言すれば、本明細書に記載の非金属又は金属フレークは、1つ若しくは複数の金属酸化物、1つ若しくは複数の金属酸化物水和物、1つもしく複数の金属亜酸化物、又はこれらの材料の混合物から作製された1つ若しくは複数の層で、少なくとも部分的にコーティングされる。金属酸化物、金属酸化物水和物、金属亜酸化物又はそれらの混合物の厚さは、通常5~1000nm、好ましくは10~800nm、特に20~600nmである。
【0111】
[0110]当業者には知られているように、1つ又は複数の少なくとも部分的なコーティングは、沈殿法、湿式化学法、ゾルゲル法、物理蒸着(PVD)プロセス、又は化学蒸着(CVD)プロセスによりフレーク形状の非金属性又は金属性基材に塗布してもよく、前記方法は基材材料及びコーティング材料に応じて選択される。或いは、金属酸化物及び/又は水和酸化物で作製された1つ又は複数の少なくとも部分的なコーティングは、金属表面の化学酸化(例えば、過マンガン酸塩又はその他の強酸化剤による)又は空気中又は制御された雰囲気中(例えば酸素及び/又は水蒸気に富む)でのフレーク形状の金属顔料の加熱を高温で所与の時間行うことにより、フレーク形状の金属性基材上に得ることができ、時間、温度、及び雰囲気組成は、金属及び少なくとも部分的なコーティングの所望の厚さに依存する。例えば、フレーク形状金属顔料は、金属酸化物及び/又は金属水和物で作製された少なくとも部分的なコーティングを入手するために、オーブン内、乾燥空気中で300℃にて30分間焼成してもよい。
【0112】
[0111]本明細書で記載され使用される、d50値で表される顔料のサイズは、好ましくは約1μm~約100μm(ミクロン)、好ましくは約5μm~約50μm(ミクロン)の範囲である。顔料の厚さは、通常約0.1μm~約5μm(ミクロン)の間、好ましくは約0.2μm~約4μm(ミクロン)の間である。
【0113】
[0112]一実施形態によれば、本明細書に記載の顔料のフレーク形状の非金属性基材は、好ましくは、天然雲母、合成雲母、タルク、グラファイト、ホウケイ酸塩(例えばガラス)、及びカオリンからなる群から選択され、より好ましくは、天然雲母、合成雲母、及びガラスからなる群から選択され、更に好ましくは天然雲母及び合成雲母からなる群から選択される1つ又は複数の材料で作製される。
【0114】
[0113]本明細書に記載のフレーク形状の非金属性基材は、1つ若しくは複数の金属酸化物、1つ若しくは複数の金属酸化物水和物、1つもしく複数の金属亜酸化物、又はこれらの材料の混合物、好ましくは、1つ若しくは複数の金属酸化物及び/又は1つ若しくは複数の金属酸化物水和物から独立的に作製され、より好ましくは1つ又は複数の金属酸化物を含む、1つ又は複数の少なくとも部分的なコーティングを含む。好適な金属酸化物としては、限定されないが、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化鉄、酸化スズ、酸化セリウム、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、酸化クロム、酸化チタン、及びそれらのあらゆる混合物が挙げられる。好ましくは、本明細書に記載の非金属性基材は、好ましくは天然雲母又は合成雲母から作製され、二酸化チタン、酸化スズ、酸化鉄、酸化クロム、及びそれらの混合物からなる群から選択される1つ又は複数の金属酸化物から独立的に作製される1つ又は複数の少なくとも部分的なコーティングを含む非金属性基材からなる。本明細書に記載の顔料用の特に好ましいフレーク形状の非金属性基材は、2つ以上の少なくとも部分的なコーティングを含む天然又は合成雲母のみならず、二酸化チタン(すなわちフレーク形状の雲母基材+TiO2)又は二酸化チタンを含む混合物から独立的に作製される1つ又は複数の少なくとも部分的なコーティングを含む天然雲母又は合成雲母からなり、前記1つ又は複数の少なくとも部分的なコーティングのうち1つは二酸化チタンから作製され、前記1つ又は複数の少なくとも部分的なコーティングのうち別の1つは酸化スズ(すなわちフレーク形状の雲母基材+SnO2+TiO2又はフレーク形状の雲母基材+TiO2+SnO2)から作製される。
【0115】
[0114]一実施形態によれば、本明細書に記載の顔料のフレーク形状の金属性基材は、好ましくは、アルミニウム、銅、亜鉛、スズ、真鍮、鉄、チタン、クロム、ニッケル、銀、金、鋼鉄、それらの合金、及びそれらの混合物からなる群から選択される、好ましくはアルミニウム、鉄、及び真鍮からなる群から選択される、1つ又は複数の金属から作製される単層からなる。本明細書に記載のフレーク形状の金属性基材は、1つ若しくは複数の金属酸化物、1つ若しくは複数の金属酸化物水和物、1つもしく複数の金属亜酸化物、又はこれらの材料の混合物、好ましくは、1つ若しくは複数の金属酸化物及び/又は1つ若しくは複数の金属酸化物水和物から独立的に作製され、より好ましくは1つ又は複数の金属酸化物を含む、1つ又は複数の少なくとも部分的なコーティングを含む。好適な金属酸化物としては、限定されないが、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化鉄、酸化スズ、酸化セリウム、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、酸化クロム、及び酸化チタンが挙げられる。
【0116】
[0115]一実施形態によれば、本明細書に記載の顔料のフレーク形状の金属性基材は、本明細書に記載の金属から選択される1つ又は複数の金属性層及び任意選択で1つ又は複数の非金属性層を含む多層からなる。
【0117】
[0116]1つの好ましい実施形態によれば、本明細書に記載の顔料のフレーク形状の金属性基材は、1つ又は複数の金属性層及び任意選択で1つ又は複数の非金属性層であって、米国特許第4,705,300号、米国特許第4,705,356号、米国特許第4,721,271号、米国特許第5,084,351号、米国特許第5,214,530号、米国特許第5,281,480号、米国特許第5,383,995号、米国特許第5,569,535号、米国特許第5,571624号、及びそれらの関連文書に開示されるようなファブリペロー反射体/誘電体/吸収体多層構造を含む薄膜干渉多層である、1つ又は複数の非金属性層を含む多層からなる。好ましくは、本明細書に記載の1つ又は複数の金属性層を含む多層は、ファブリペロー吸収体/誘電体/反射体/誘電体/吸収体多層構造を含む薄膜干渉顔料であり、入射光を、吸収体層は部分的に透過させて部分的に反射し、誘電体層は透過させ、反射層は反射する。好ましくは、反射体層は、金属、金属合金、及びそれらの組み合わせからなる群から選択され、好ましくは、反射金属、反射金属合金、及びそれらの組み合わせからなる群から選択され、より好ましくは、アルミニウム、クロム、ニッケル、及びそれらの混合物からなる群から選択され、更に好ましくはアルミニウムである。好ましくは、誘電体層は、フッ化マグネシウム、二酸化ケイ素、及びそれらの混合物からなる群から独立的に選択され、より好ましくはフッ化マグネシウムである。好ましくは、吸収体層は、クロム、ニッケル、金属性合金、及びそれらの混合物からなる群から独立的に選択され、より好ましくはクロムである。特に好ましい薄膜干渉多層は、Cr/MgF2/Al/MgF2/Cr多層構造を含むファブリペロー吸収体/誘電体/反射体/誘電体/吸収体多層構造を含む。薄膜干渉多層からなる本明細書に記載の顔料のフレーク形状の金属性基材は、1つ又は複数の金属酸化物、1つ又は複数の金属酸化物水和物、1つ又は複数の金属亜酸化物、1つ又は複数の金属フッ化物、又はこれらの材料の混合物、好ましくは1つ又は複数の金属酸化物及び/又は1つ又は複数の金属酸化物水和物から作製された、より好ましくは1つ又は複数の金属酸化物を含む少なくとも部分的なコーティングを更に含む。好適な金属酸化物は、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化鉄、酸化スズ、酸化セリウム、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、酸化クロム、及び酸化チタン、好ましくは酸化クロム及びそれらの混合物である。
【0118】
[0117]フレーク形状の非金属性又は金属性基材は本明細書に記載の少なくとも部分的な表面処理層を更に含み、前記表面処理層は環境に面し、1つ又は複数の少なくとも部分的なコーティング層のトップ層と直接接触している。換言すれば、本明細書に記載の少なくとも部分的な表面処理層は、1つ又は複数の少なくとも部分的なコーティングのコーティングトップ層上に存在する。本明細書に記載の少なくとも部分的な表面処理層は、ペルフルオロポリエーテルから選択される1つ又は複数の表面改質剤から作製され、前記ペルフルオロポリエーテルは、1つ若しくは複数のリン(P)含有化合物又は1つ若しくは複数のケイ素(Si)含有化合物で官能化されている。本明細書に記載の官能化ペルフルオロポリエーテルは、好ましくは1つ若しくは複数のリン酸含有基、1つ若しくは複数のシラン含有基、又は1つ若しくは複数のシロキサン含有基によって官能化されている。
【0119】
[0118]表面改質は、様々な方法で行うことができる。例えば、本明細書に記載の1つ又は複数の表面改質剤は、有機溶媒及び/又は水に溶解してもよく、その後に本明細書に記載の1つ又は複数の少なくとも部分的なコーティング層を含むフレーク形状の非金属性又は金属性基材に混合によって塗布し、そのようにして得られた顔料をその後に乾燥させる。或いは、1つ又は複数の表面改質剤による表面処理は、フレーク形状の非金属性又は金属性基材がワンポットプロセスにより本明細書に記載の1つ又は複数の少なくとも部分的なコーティング層で少なくとも部分的にコーティングされた直後に行われてもよい。任意選択の焼成ステップは、表面処理の前に、本明細書に記載の1つ又は複数の少なくとも部分的なコーティング層を含むフレーク形状の非金属性又は金属性基材に対して行われてもよい。
【0120】
[0119]本明細書に記載の1つ又は複数の表面改質剤は、好ましくは本明細書に記載の方法による測定で約2000g/mol eq PS未満の重量平均分子量を有する。
【0121】
[0120]一実施形態によれば、本明細書に記載の1つ又は複数の表面改質剤は、1つ若しくは複数のリン(P)含有基又は1つ若しくは複数のケイ素(Si)含有基で官能化されたペルフルオロポリエーテル(すなわち-CH2O-(CF2)m-(CF2-CF2-O)n-CF2-構造を含む)、特に1つ若しくは複数のリン酸基を有するペルフルオロポリエーテル又は1つ若しくは複数のシランを有するペルフルオロポリエーテル化合物である。
【0122】
[0121]一実施形態によれば、本明細書に記載の1つ又は複数の表面改質剤は、1つ又は複数のリン酸基、好ましくはリン酸若しくはホスホン酸エステル基で単官能化又は二官能化されたペルフルオロポリエーテル、より好ましくはリン酸基、好ましくはリン酸若しくはホスホン酸エステル基を有するアルコキシ化ペルフルオロポリエーテル化合物誘導体からなる。好ましくは、本明細書に記載の1つ又は複数の表面改質剤は、以下の式(VII)のペルフルオロポリエーテルである:
(OH)2(O)P-[(OCH2CH2)p-OCH2-Rf-CH2O-(CH2CH2O)pP(O)OH]qOH
(VII)
(式中、p=1~2、q=1~4であり、RfはCH2O-(CF2)m-(CF2-CF2-O)n-CF2である)。本発明の表面改質剤の特に好適な例は、Solvayからフルオロリンク(Fluorolink)(商標)P54という名称で市販されている。
【0123】
[0122]別の実施形態によれば、本明細書に記載の1つ又は複数の表面改質剤は、1つ又は複数のシラン基、好ましくはアルコキシ化シラン基で官能化されたペルフルオロポリエーテルである。好ましくは、本明細書に記載の1つ又は複数の表面改質剤は、以下の式(VIII)のペルフルオロポリエーテルからなる:
(OH)3-n-(RIIO)nSi-RI-NH-C(O)-CF2O-(CF2-CF2-O)p-(CF2O)q-CF2-C(O)-NH-RI-Si(ORII)n(OH)3-n
(VIII)
(式中、RIは、炭素原子1~10個、好ましくは炭素原子1~5個、更に好ましくは炭素原子2~4個のアルキレンであり;RIIは、炭素原子1~4個、好ましくは炭素原子1~3個の直鎖又は分岐鎖のアルキル基であり;nは、0~3の整数、好ましくは3であり;p及びqは、q/p比が0.2~4の間となるような数であり;pは0とは異なる)。好ましくは、本明細書に記載の1つ又は複数の表面改質剤は、シラン基で官能化された以下の式(IX)のペルフルオロポリエーテルである:
(EtO)3-Si-RI-NH-C(O)-CF2O-(CF2-CF2-O)p-(CF2O)q-CF2-C(O)-NH-RI-Si(OEt)3
(IX)
(式中、RIは、炭素原子1~10個、好ましくは炭素原子1~5個、更に好ましくは炭素原子2~4個のアルキレンであり;p及びqは、q/p比が0.2~4の間となるような数であり;pは0とは異なる)。本発明の表面改質剤の特に好適な例は、Solvayから、以下の式(X)を有するフルオロリンク(商標)S10という名称で市販されている:
(EtO)3-Si-CH2CH2CH2-NH-C(O)-CF2O-(CF2-CF2-O)p-(CF2O)q-CF2-C(O)-NH-CH2CH2CH2-Si(OEt)3
(X)
(式中、p=2~6、q=2~4である)。
【0124】
[0123]本発明は、本明細書に記載のUV-Vis放射線硬化性インクを製造するための方法、及びそれから得られるインクを更に提供する。本明細書に記載のUV-Vis放射線硬化性インクは、本明細書に記載のインクビヒクルの成分、すなわち1つ又は複数の脂環式エポキシド、存在する場合は1つ又は複数のラジカル硬化性化合物、オニウム塩であるカチオン光開始剤、存在する場合は1つ又は複数のフリーラジカル光開始剤、及び本明細書に記載の任意選択の添加剤と、本明細書に記載の顔料とを分散又は混合することにより調製することができ、前記化合物は全て単一のステップで分散若しくは混合してもよく、又はインクビヒクルをまず調製し、次に本明細書に記載の顔料を加え、そうして得られた混合物を分散又は混合する。本明細書に記載の1つ若しくは複数の光開始剤は、他の全ての成分の分散若しくは混合ステップのいずれかにおいて加えてもよく、又は後の段階、すなわちインク形成後に加えてもよい。
【0125】
[0124]本明細書に記載の方法は、本明細書に記載のステップa)に続いて、本明細書に記載のトップコーティング組成物を、本明細書に記載のコーティング層(×10)のトップに少なくとも部分的に塗布するステップb)を更に含む。本明細書に記載のトップコーティング組成物は、本明細書に記載の1つ又は複数の証印(×30)の形態で塗布され、本明細書に記載のコーティング層(×10)と部分的に重なり(すなわち、少なくとも1つの領域で重なり)、コーティング層(×10)の本明細書に記載のフレーク形状の非金属性又は金属性基材を含む顔料を含むUV-Vis放射線硬化性コーティング組成物は、依然として湿潤かつ未重合状態にある。
【0126】
[0125]本明細書で使用される場合、「証印」という用語は、識別可能なマーキング又は標識又はパターンからなる、連続層及び不連続層を意味するものとする。好ましくは、本明細書に記載の1つ又は複数の証印(×30)は、コード、記号、英数字記号、モチーフ、幾何学パターン(例えば、円、三角形、及び正多角形又は不規則多角形)、文字、単語、数字、ロゴ、ドローイング、肖像画、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。コードの例としては、コード化された英数字データ、一次元バーコード、二次元バーコード、QRコード、データマトリックス、及びIR読み取りコードなどのコード化されたマークが挙げられる。本明細書に記載の1つ又は複数の証印(×30)は、ソリッド証印及び/又はラスター証印であってもよい。
【0127】
[0126]本明細書に記載のトップコーティング組成物は、塗布プロセス、好ましくは非接触流体マイクロディスペンシングプロセスによって、好ましくは、スプレーコーティング、エアロゾルジェット印刷、電気流体力学印刷、スロットダイコーティング及びインクジェット印刷からなる群から選択されるプロセス、より好ましくはインクジェット印刷プロセスによって、本明細書に記載の1つ又は複数の証印(×30)の形態で塗布され、前記非接触流体マイクロディスペンス印刷プロセスは、本明細書に記載のセキュリティ機能上又はセキュリティ機能内に1つ又は複数の証印(×30)を独自に製造することが可能になる可変情報印刷方法である。塗布プロセスは、製造される1つ又は複数の証印のデザイン及び解像度に応じて選択される。
【0128】
[0127]本明細書に記載のトップコーティング組成物は、本明細書に記載のように、少なくとも約5g/m2、好ましくは少なくとも約6g/m2、より好ましくは少なくとも約9g/m2のインク堆積で塗布し、g/m2単位のインク堆積は、以下の実験の部で説明するように測定する(すなわち、ステップb)の後に得られた重量(スクリーン印刷層(×10)及びインクジェット印刷証印(×30)を担持する基材(×20))から、ステップa)の後に得られた重量(スクリーン印刷層(×10)を担持する基材(×20)を減算することによって)。一実施形態によれば、本明細書に記載のトップコーティング組成物は、本明細書に記載のように、約5g/m2~約20g/m2の間、好ましくは約6g/m2~約20g/m2の間、より好ましくは約9g/m2~約20g/m2の間のインク堆積で塗布し、g/m2単位のインク堆積は、以下の実験の部で説明するように測定する(すなわち、ステップb)の後に得られた重量(スクリーン印刷層(×10)及びインクジェット印刷証印(×30)を担持する基材(×20))から、ステップa)の後に得られた重量(スクリーン印刷層(×10)を担持する基材(×20)を減算することによって)。
【0129】
[0128]インクジェット印刷は、可変ハーフトーンを含む本明細書に記載の1つ又は複数の証印を示すセキュリティ機能を製造するために有利に使用することができる。インクジェットハーフトーン印刷は、可変のインク堆積又は坪量を適用することによって、無限の色又はグレーで構成される連続階調画像をシミュレートする複製技術である。
【0130】
[0129]スプレーコーティングは、ノズルに通して組成物を押し出すことを伴う技術であり、それによって微細なエアロゾルが形成される。印刷され得る表面にエアロゾルを向けるのを助けるために、キャリアガス及び静電気の帯電が関与する場合がある。スプレー印刷では、点や線を印刷することができる。スプレー印刷に好適な組成物は、典型的には約10mPa.s~約1Pa.sの間の粘度(上述のように25℃、1000s-1)を有する。スプレーコーティング印刷の解像度は、ミリメートル範囲である。スプレー印刷については、例えば、F.C.Krebs、Solar Energy Materials & Solar Cells(2009)、93,407ページに記載されている。
【0131】
[0130]エアロゾルジェット印刷(AJP)は、広範囲の基材上に微細な機能を製造することを目的とした新興の非接触直接書き込みアプローチである。AJPは、幅広い材料範囲及びフリーフォーム堆積と適合し、配向の独立性に加えて、比較的大きなスタンドオフ距離(例えば、1~5mm)と組み合わせた高解像度(約10マイクロメートルのオーダーで)が可能である。この技術には、超音波噴霧器又は空気圧噴霧器のいずれかを使用して、典型的には約1mPa.s~約1Pa.sの間の粘度(上述のように25℃、1000s-1)を有する組成物からエアロゾルを生成するエアロゾル生成を伴う。エアロゾルジェット印刷は、例えば、N.J.Wilkinsonら、The International Journal of Advanced Manufacturing Technology(2019)105:4599~4619に記載されている。
【0132】
[0131]電気流体力学インクジェット印刷は、高解像度インクジェット印刷技術である。電気流体力学インクジェット印刷技術は、外部から印加される電場を利用して液滴サイズ、吐出周波数、及び基材上の配置を操作し、高い製造速度を維持しながら、従来のインクジェット印刷よりも高い解像度を実現する。電気流体力学インクジェット印刷の解像度は、従来のインクジェット印刷技術よりも約2桁高く;したがって、ナノスケール及びマイクロスケールのパターンの配向に使用することができる。電気流体力学インクジェット印刷は、DODモード又は連続モードの両方で使用することができる。電気流体力学インクジェット印刷用の組成物は、典型的には1mPa.s~約1Pa.sの間の粘度(上述のように25℃、1000s-1)を有する。電気流体力学インクジェット印刷技術は、例えば、P.V.Raje and N.C.Murmu,International Journal of Emerging Technology and Advanced Engineering、(2014)、4(5)、174~183頁に記載されている。
【0133】
[0132]スロットダイコーティングは、一次元コーティング技術である。スロットダイコーティングでは、材料のストライプをコーティングでき、これは、異なる材料のストライプを互いに重ね合わせた多層コーティングを作製するのに適している。パターンの位置合わせは、コーティングヘッドがウェブの移動方向に垂直な方向に沿って平行移動することによって行われる。スロットダイコーティングヘッドは、スロットダイコーティングインクを分散させるコーティングヘッドのスロットを画定するマスクを備える。スロットダイコーティングヘッドの例は、F.C.Krebs,Solar Energy Materials & Solar Cells(2009)、93、405~406頁に示されている。スロットダイコーティングに好適な組成物は、典型的には1mPa.s~約20mPa.sの間の粘度(上述のように25℃、1000s-1)を有する。
【0134】
[0133]一実施形態によれば、本明細書に記載のトップコーティング組成物は、インクジェット印刷プロセス、好ましくは連続インクジェット(CI)印刷プロセス又はドロップ-オン-デマンド(DOD)インクジェット印刷プロセス、より好ましくはドロップ-オン-デマンド(DOD)インクジェット印刷プロセスによって、本明細書に記載の1つ又は複数の証印(×30)の形態で印刷される。ドロップオンデマンド(DOD)印刷は非接触印刷プロセスであり、印刷に必要な場合にのみ液滴が生成され、一般に、噴射物を不安定化するのではなく噴射機構によって液滴を生成する。液滴を生成するためにプリントヘッドで使用される機構に応じて、DOD印刷はピエゾインパルス、サーマルジェット、バルブジェット(1mPa.s~約50mPa.sの間の粘度(上述のように25℃、1000s-1))、及び静電プロセスに分けられる。
【0135】
[0134]好ましい実施形態によれば、本明細書に記載のトップコーティング組成物は、TA Instruments製の円錐面形状及び直径40mmを有する回転粘度計DHR-2を使用して、25℃、1000s-1にて、好ましくは約50mPa.s未満の粘度、より好ましくは約0.5mPa.s~約40mPa.sの間の粘度、より一層好ましくは約0.5mPa.s~約30mPa.sの間の粘度を有するDODトップコーティング組成物である。
【0136】
[0135]本明細書に記載のUV-Vis放射線カチオン硬化性コーティング組成物のインクビヒクルの一実施形態によれば、本明細書に記載のトップコーティング組成物は、1つ若しくは複数のカチオン硬化性化合物、1つ若しくは複数のハイブリッド硬化性化合物、1つ若しくは複数の溶媒、1つ若しくは複数のラジカル硬化性化合物と1つ若しくは複数のラジカル光開始剤のブレンド、又はそれらの混合物、を含んでもよく;
ここで、1つ又は複数のカチオン硬化性化合物は、本明細書に記載のUV-Vis放射線硬化性コーティング組成物に関して本明細書に記載されるものであってもよく、好ましくは、本明細書に記載のものなどの、ビニルエーテル、プロペニルエーテル、エポキシド、グリシジルエーテル、オキセタン、及びテトラヒドロフランなど、並びにそれらの混合物からなる群から選択され、より好ましくは、本明細書に記載のものなどの、ビニルエーテル、エポキシド、グリシジルエーテル、オキセタンなどの環状エーテル、及びそれらの混合物からなる群から選択され;ここで、グリシジルエーテルは、以下からなる群から選択され:モノグリシジルエーテル(例えば、アルキル(例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、tertブチル、2-エチルヘキシル及びC8~C18(単独又はそれらの混合物で使用される)など)を含む)モノグリシジルエーテル、シクロアルキル(例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル及びシクロヘキシルなど)モノグリシジルエーテル、アルケニル(例えば、アリル及びクロチルなど)モノグリシジルエーテル、アルキニル(例えば、プロパルギルなど)モノグリシジルエーテル、フェニル(例えば、フェニル、クレシル、tertブチルフェニル及びノニルフェニル)モノグリシジルエーテル)及びフルフリルモノグリシジルエーテル)、ジグリシジルエーテル(例えば、ジグリシジルエーテル、1,2-プロパンジオールジグリシジルエーテル、1,3-プロパンジオールジグリシジルエーテル、1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテルを含む)、4,4’-ジヒドロキシフェニル-2,2-プロパンジグリシジルエーテル、レゾルシノールジグリシジルエーテル、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル及びポリグリコールジグリシジルエーテルを含む)、トリグリシジルエーテル(例えば、グリセロールトリグリシジルエーテル、トリメチロールエタントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、トリフェニロールメタントリグリシジル、エーテルヒマシ油トリグリシジルエーテル、プロポキシル化グリセリントリグリシジルエーテルを含む)、テトラグリシジルエーテル(例えば、ペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテル及び1,1,2,2-テトラキス(ヒドロキシフェニル)エタンテトラグリシジルエーテルを含む)、ポリグリシジルエーテル(例えば、ソルビトールポリグリシジルエーテル及びポリフェノールポリグリシジルエーテルを含む)、並びにそれらの混合物;1つ又は複数のグリシジルエーテルの粘度がインクジェット印刷に好適ではない場合、本明細書に記載のトップコーティング組成物は、粘度を低下させるために、前記1つ又は複数のグリシジルエーテルを、1つ又は複数のモノグリシジルエーテル及び/又は1つ又は複数のジグリシジルエーテル及び/又は1つ又は複数の溶媒と組み合わせて含み;ここで、1つ又は複数のハイブリッド硬化性化合物は、ヒドロキシ変性又は(メタ)アクリレート変性ビニルエーテル、特に、Nippon Shokubai製のVEEA、2-(2-ビニルオキシエトキシ)エチルアクリレート、及びメチル2-((アリルオキシ)メチル)アクリレート(AOMA(商標))であり;
ここで、1つ以上の溶媒は、以下からなる群から選択され:アルコール(特にエタノール)、ケトン(特にシクロペンタノン及びシクロヘキサノンなどの環状ケトン)、グリコール、グリコールエーテル(特にジプロピレングリコールメチルエーテル)、エーテルエステル(特にエチル3-エトキシプロピオネート)、グリコールエーテルエステル(特にプロピレングリコールメチルエーテルアセテート)、炭酸アルキレン(特に炭酸プロピレン)及びそれらの混合物;
ここで、1つ又は複数のラジカル硬化性化合物は、以下からなる群から選択され:本明細書に記載のものなどの、モノ(メタ)アクリレート、ジ(メタ)アクリレート、トリ(メタ)アクリレート、テトラ(メタ)アクリレート、及びそれらの混合物、並びに本明細書に記載のものなどの1つ又は複数のフリーラジカル光開始剤(特に、本明細書に記載のものなどのα-ヒドロキシケトン)、ここで、好適なモノ(メタ)アクリレートは、以下からなる群から選択され得:アルキル(メタ)アクリレート、シクロアルキル(メタ)アクリレート(例えば、3,3,5-トリメチルシクロヘキシルアクリレート及びイソボルニルアクリレートなど)、ベンジル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート(フェノキシエチルアクリレートなどのフェノキシアルキル(メタ)アクリレートを含む)、環状トリメチロールプロパンホルマールアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、脂肪族ウレタン(メタ)アクリレート及びそれらのアルコキシル化(特にエトキシル化又はプロポキシル化)化合物、並びに好適なジ(メタ)アクリレートとしては、エチレングリコールジアクリレート、グリコールジメタクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、2-メチル-1,3-プロパンジオールジアクリレート、3-メチル-1,5-ペンタンジオールジアクリレート、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオールジアクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10-デカアンジオール(1,10-decaanediol)ジ(メタ)アクリレート、アルコキシル化(特にエトキシル化及びプロポキシル化)1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、プロポキシル化ネオペンチルグリコールジアクリレート、エトキシル化2-メチル-1,3-プロパンジオールジアクリレート、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート及びポリエチレングリコール200/400/600ジ(メタ)アクリレートが挙げられ、ここで、ラジカル光開始剤は、ヒドロキシケトン(例えば、α-ヒドロキシケトン)、ベンジルケタール、ベンゾインエーテル、ホスフィンオキシド、フェニルグリオキシレート及びそれらの混合物からなる群から選択され、より好ましくは、ホスフィンオキシド、ヒドロキシケトン、フェニルグリオキシレート及びそれらの混合物からなる群から選択され、より一層好ましくは、ヒドロキシケトン(例えば、α-ヒドロキシケトン)である。
【0137】
[0136]任意選択で、本明細書に記載のUV-Vis放射線カチオン硬化性コーティング組成物のインクビヒクルの硬化効率を改善する目的で、本明細書に記載のトップコーティング組成物は、1つ又は複数のカチオン硬化性光開始剤を更に含んでもよい。
【0138】
[0137]本明細書に記載のUV-Vis放射線ハイブリッド硬化性コーティング組成物のインクビヒクルの一実施形態によれば、本明細書に記載のトップコーティング組成物は、1つ若しくは複数のカチオン硬化性化合物、1つ若しくは複数のハイブリッド硬化性化合物、1つ若しくは複数の溶媒、1つ若しくは複数のラジカル硬化性化合物、又はそれらの混合物、を含んでもよく;
ここで、1つ又は複数のカチオン硬化性化合物は、本明細書に記載のUV-Vis放射線硬化性コーティング組成物に関して本明細書に記載されるものであってもよく、好ましくは、本明細書に記載のものなどの、ビニルエーテル、プロペニルエーテル、エポキシド、グリシジルエーテル、オキセタン及びテトラヒドロフランなどの環状エーテル、並びにそれらの混合物からなる群から選択され、より好ましくは、本明細書に記載のものなどの、ビニルエーテル、グリシジルエーテル、オキセタン、及びそれらの混合物、からなる群から選択され;
ここで、1つ又は複数のハイブリッド硬化性化合物は、ヒドロキシ変性又は(メタ)アクリレート変性ビニルエーテル、特に、Nippon Shokubai製のVEEA、2-(2-ビニルオキシエトキシ)エチルアクリレート、及びメチル2-((アリルオキシ)メチル)アクリレート(AOMA(商標))であり;
ここで、1つ以上の溶媒は、以下からなる群から選択され:アルコール(特にエタノール)、ケトン(特にシクロペンタノン及びシクロヘキサノンなどの環状ケトン)、グリコール、グリコールエーテル(特にジプロピレングリコールメチルエーテル)、エーテルエステル(特にエチル3-エトキシプロピオネート)、グリコールエーテルエステル(特にプロピレングリコールメチルエーテルアセテート)、炭酸アルキレン(特に炭酸プロピレン)及びそれらの混合物;
ここで、1つ又は複数のラジカル硬化性化合物は、以下からなる群から選択される:本明細書に記載のものなどのモノ(メタ)アクリレート、本明細書に記載のものなどのジ(メタ)アクリレート、本明細書に記載のものなどのトリ(メタ)アクリレート、本明細書に記載のものなどのテトラ(メタ)アクリレート、及びそれらの混合物。
【0139】
[0138]任意選択で、本明細書に記載のUV-Vis放射線ハイブリッド硬化性コーティング組成物のインクビヒクルの硬化効率を改善する目的で、本明細書に記載のトップコーティング組成物は、本明細書に記載のものなどの1つ若しくは複数のカチオン硬化性光開始剤及び/又は1つ若しくは複数のラジカル硬化性光開始剤を更に含むことができる。
【0140】
[0139]トップコーティング組成物がインクジェット印刷プロセスによって塗布される実施形態にでは、前記トップコーティング組成物は、例えば、放射線硬化性インクジェットの分野で使用される反応性希釈剤、湿潤剤、消泡剤、界面活性剤及びそれらの混合物などの従来の添加剤及び成分を更に含んでもよい。
【0141】
[0140]本明細書に記載のトップコーティング組成物は、1つ又は複数のマーカー物質若しくはタガント、及び/又は本明細書に記載のフレーク形状の非金属性又は金属性基材を含む顔料を含むUV-Vis放射線硬化性コーティング組成物について記載されるもののような、1つ又は複数の機械可読材料を更に含んでもよく、ただし、前記物質、タガント、又は機械可読材料のサイズが、本明細書に記載の適用プロセスに好適であることが条件である。
【0142】
[0141]本明細書に記載の方法は、ステップb)に続いて、1つ若しくは複数の硬化ユニット(×50)を用いてコーティング層(×10)及び1つ若しくは複数の証印(×30)を硬化するステップc)を更に含む。好ましくは、本明細書に記載の硬化ステップc)は、水銀ランプ(好ましくは中圧水銀ランプ)、UV-LEDランプ及びそれらの系列からなる群から選択される1つ又は複数の硬化ユニット(×50)を用いて実行する。電磁スペクトルのUV-A、UV-B、及びUV-C領域に放射帯域を有する中圧水銀ランプとは対照的に、UV-LEDランプはUV-A領域(365~405nm)の放射線を放射する。本明細書で言及されるように、典型的な手順には、UV-Vis放射線組成物を部分的に硬化させるための第1のステップでの1つ又は複数のUV-LEDランプの使用、及び第2のステップでの1つ又は複数の中圧水銀ランプの使用が含まれる。水銀ランプは、UV-A、UV-B、及びUV-C範囲の広範囲の波長で発光するという利点がある。
【0143】
[0142]本明細書に記載のステップb)と本明細書に記載のステップc)の間の時間は、約30秒未満、好ましくは10秒未満、好ましくは約3秒未満、より好ましくは約1秒未満である。
【0144】
[0143]本発明は、本明細書に記載の基材(×20)上に1つ又は複数の証印(×30)を示すセキュリティ機能を製造するための、本明細書に記載の方法、及びそれから得られる1つ又は複数のセキュリティ機能を含む基材(×20)、及び本明細書に記載の1つ又は複数の証印(×30)を示し、本明細書に記載の方法によって製造されるセキュリティ機能を提供する。本明細書で説明されるセキュリティ機能の形状は、連続的であっても不連続であってもよい。一実施形態によれば、コーティング層(×10)の形状は、1つ又は複数の証印、点及び/又は線を表し、前記証印は、本明細書に記載されたトップコーティング組成物から作製された1つ又は複数の証印(×30)と同じ形状を有してもよく、或いは、異なる形状を有していてもよい。
【0145】
[0144]本明細書に記載の基材は、好ましくは、紙又は他の繊維性材料(織繊維及び不織繊維性材料を含む)、例として、セルロース、紙含有材料、ガラス、金属、セラミック、プラスチック及びポリマー、金属化プラスチック又はポリマー、複合材料、並びにそれらの2つ以上の混合物又は組み合わせからなる群から選択される。典型的な紙、紙様又は他の繊維性材料は、限定されないが、アバカ、綿、リネン、木材パルプ、及びそれらのブレンドを含む様々な繊維から作製される。当業者には周知のように、綿及び綿/リネンブレンドは、紙幣に好ましく、一方木材パルプは、紙幣以外のセキュリティ文書において一般的に使用される。プラスチック及びポリマーの典型的な例は、ポリオレフィン、例としてポリエチレン(PE)及び二軸配向ポリプロピレン(BOPP)を含むポリプロピレン(PP)、ポリアミド、ポリエステル、例としてポリ(エチレンテレフタレート)(PET)、ポリ(1,4-ブチレンテレフタレート)(PBT)、ポリ(エチレン2,6-ナフトエート)(PEN)、並びにポリ塩化ビニル(PVC)を含む。スパンボンドオレフィン繊維、例えばタイベック(Tyvek)(登録商標)の商標で販売されているものもまた、基材として使用することができる。金属化プラスチック又はポリマーの典型的な例は、表面に連続的に又は不連続に配置された金属を有する、上で記載されたプラスチック又はポリマー材料を含む。金属の典型的な例は、限定されないが、アルミニウム、クロム、銅、金、銀、それらの合金、及び上述の金属の2つ以上の組み合わせを含む。上で記載されたプラスチック又はポリマー材料の金属化は、電着プロセス、高真空コーティングプロセスにより、又はスパッタリングプロセスにより行われてもよい。複合材料の典型的な例は、限定されないが、紙及び上で記載されたもの等の少なくとも1つのプラスチック又はポリマー材料の多層構造若しくはラミネート、並びに上で記載されたもの等の紙様又は繊維性材料中に組み込まれたプラスチック及び/又はポリマー繊維を含む。当然ながら、基材は、例として充填剤、サイズ剤、増白剤、加工助剤、補強又は湿潤強化剤等の当業者に公知の更なる添加剤を含んでもよい。
【0146】
[0145]所望する場合、ステップa)の前にプライマー層を基材に塗布してもよい。これにより、本明細書に記載のセキュリティ機能の品質が向上し、及び/又は接着が促進される場合がある。このようなプライマー層の例は、国際公開第2010/058026A2号パンフレットに見出すことができる。
【0147】
[0146]また、本明細書では、セキュリティ文書又は装飾要素若しくは物品を製造する方法であって、a)セキュリティ文書又は装飾要素若しくは物体を用意するステップ、及びb)本明細書に記載の1つ又は複数のセキュリティ機能、特に、例として本明細書に記載の方法によって得られるセキュリティ機能を提供し、セキュリティ文書又は装飾要素若しくは物体に含まれるようにするステップを含む、方法を、本明細書に記載する。
【0148】
[0147]本発明は、本明細書に記載の基材、及び本明細書に記載のセキュリティ機能を含むセキュリティ文書又は本明細書に記載のセキュリティ機能の2つ以上を含むセキュリティ文書を更に提供する。セキュリティ文書は、限定されるものではないが、価値文書及び価値商品を含む。価値文書の典型的な例は、限定されるものではないが、紙幣、証書、チケット、小切手、バウチャー、収入印紙及び税金ラベル、契約書等、身分証明書、例としてパスポート、IDカード、ビザ、運転免許証、銀行カード、クレジットカード、取引カード、アクセス文書若しくはカード、入場券、公共交通機関の切符又は証書等を含む。「価値商品」という用語は、例えば本物の薬物のような包装の内容を保証するために、偽造及び/又は違法な複製から保護することができる、特に医薬品、化粧品、電子機器又は食品産業用の包装材料を指す。これらの包装材料の例は、限定されるものではないが、認証ブランドラベル、不正開封防止ラベル及びシールなどのラベルを含む。好ましくは、本明細書に記載のセキュリティ文書は、紙幣、身分証明書、権利付与文書、運転免許証、クレジットカード、アクセスカード、乗車証(transportation titles)、バウチャー、及び保護された製品ラベルからなる群から選択される。或いは、本明細書に記載のセキュリティ機能は、例えば、セキュリティスレッド、セキュリティストライプ、箔、デカール、窓、又はラベルなどの補助基材上に製造され、その結果、別のステップでセキュリティ文書に転写してもよい。
【0149】
[0148]セキュリティレベル及びセキュリティ文書の偽造及び不法な複製に対する耐性を更に向上させる目的で、本明細書に記載の基材は、印刷された、コーティングされた、又はレーザでマークされた、又はレーザで穿孔された証印、透かし、セキュリティスレッド、繊維、プランシェット、発光化合物、窓、箔、デカール、プライマー、及びこれらの2つ以上の組み合わせを含有することができる。
【0150】
[0149]汚れによる耐久性又は耐化学性及び清浄度を向上させ、したがって、セキュリティ文書の循環寿命を向上させる目的で、又はその美的外観(例えば光学的光沢)を改変する目的で、本明細書に記載のセキュリティ機能又はセキュリティ文書のトップに1つ又は複数の保護層を塗布することができる。存在する場合、1つ又は複数の保護層は、典型的には、透明であっても、わずかに着色されていても、又は着色されていてもよく、多かれ少なかれ光沢のある保護ワニスで作製される。保護ワニスは、放射線硬化性組成物、熱乾燥組成物又はそれらの任意の組み合わせであり得る。好ましくは、1つ又は複数の保護層は、放射線硬化性であるものから作製されている。より好ましくは、UV-Vis硬化性組成物。
【0151】
[0150]本明細書に記載の1つ以上の証印(×30)を示すセキュリティ機能は、(紙幣の用途などのために)永久に残る基材上に直接設けることができる。或いは、製造目的のために仮基材上にセキュリティ機能を提供し、そのセキュリティ機能をその後そこから除去することもできる。その後、セキュリティ機能を製造するために本明細書に記載のUV-Vis放射線硬化性コーティング組成物の硬化/硬化後、仮基材をセキュリティ機能から除去することができる。
【0152】
[0151]或いは、別の実施形態では、接着層はセキュリティ機能上に存在してもよく、又は前記セキュリティ機能を備える基材上に存在してもよく、前記接着層は、セキュリティ機能が設けられる側とは反対側の基材の側に、又は、セキュリティ機能と同じ側でセキュリティ機能のトップにある。したがって、接着層は、セキュリティ機能又は基材に塗布してもよく、前記接着層は硬化ステップが完了した後に塗布する。そのような物品は、印刷又は機械を伴うその他のプロセスを使用せず、かなりの労力を用いることなく、あらゆる種類の文書又は他の物品若しくはアイテムに取り付けることができる。或いは、本明細書に記載のセキュリティ機能を含む本明細書に記載の基材は、別個の転写ステップで文書又は物品に適用することができる転写箔の形態であってもよい。この目的のために、基材には剥離コーティングが施され、その上に本明細書に記載のようにセキュリティ機能を製造する。1つ又は複数の接着層を、そのようにして製造されたセキュリティ機能の上に適用することができる。
【0153】
[0152]また、2つ以上、すなわち、2つ、3つ、4つ等の本明細書に記載のセキュリティ機能を含む基材、セキュリティ文書、装飾要素及び物品も本明細書に記載される。また、本明細書に記載のセキュリティ機能を備える物品、特にセキュリティ文書、装飾要素又は物体も本明細書に記載される。
【0154】
[0153]上述したように、本明細書に記載のセキュリティ機能は、セキュリティ文書又は装飾要素を保護及び認証するために使用することができる。
【0155】
[0154]装飾要素又は物体の典型的な例は、限定されるものではないが、高級品、化粧品包装、自動車部品、電子/電気機器、家具及びネイル物品を含む。
【0156】
[0155]セキュリティ文書は、限定されるものではないが、価値文書及び価値商品を含む。価値文書の典型的な例は、限定されるものではないが、紙幣、証書、チケット、小切手、バウチャー、収入印紙及び税金ラベル、契約書等、身分証明書、例としてパスポート、IDカード、ビザ、運転免許証、銀行カード、クレジットカード、取引カード、アクセス文書若しくはカード、入場券、公共交通機関の切符、学業証明書又は肩書等、好ましくは紙幣、身分証明書、権利付与文書、運転免許証及びクレジットカードを含む。「価値商品」という用語は、特に、化粧品、栄養補給品、医薬品、アルコール、タバコ物品、飲料又は食品、電気/電子製品、織物又は宝石、すなわち、本物の薬物のような包装の内容を保証するために、偽造及び/又は違法な複製から保護するべきである物品のための包装材料を指す。これらの包装材料の例は、限定されるものではないが、認証ブランドラベル、不正開封防止ラベル及びシールなどのラベルを含む。開示された基材、価値文書及び価値商品は、本発明の範囲を限定することなく、例示目的のためにのみ与えられていることが指摘される。
【実施例】
【0157】
[0156]ここで、非限定的な実施例を参照して、本発明をより詳細に説明する。以下の実施例は、表面処理された顔料(SP1~SP4)を含む、UV-Vis放射線カチオン硬化性又はハイブリッド硬化性スクリーン印刷インクで作製された層(×10)上に、証印(×30)の形状のトップコーティングインクジェットインク(IJ1~IJ16)を塗布すること、並びに前記証印(×30)及び前記層(×10)を硬化ユニット(×50)で硬化することによって得られるセキュリティ機能の調製についての更なる詳細を提供する。
【0158】
[0157]全ての実施例で使用したUV-Vis放射線カチオン硬化性又はハイブリッド硬化性スクリーン印刷用インクは、フレーク形状の非金属性又は金属性基材を含む顔料(P1/P2)を含み、前記顔料の表面は独立的に、1つ又は複数のリン(P)含有基で官能化されているペルフルオロポリエーテルである、表面改質剤で処理されている。表1は、フレーク形状の非金属性又は金属性基材を含む顔料(P1/P2)の説明を提供し、前記顔料の表面は独立的に、1つ又は複数のリン(P)含有基で官能化されているペルフルオロポリエーテルである、表面改質剤で処理されている。
【0159】
[0158]表2A及び2Bは、使用されるUV-Vis放射線カチオン硬化性又はハイブリッド硬化性スクリーン印刷用インクの説明を提供する。
【0160】
[0159]表3A及び3Bは、証印(正方形又は名称SICPA)の形状のスクリーン印刷インクから作製された層(×10)上に塗布されるトップコーティングインクジェットインク(IJ1~IJ16)の説明を提供する。
【0161】
[0160]表4A及び4Bは、本発明のプロセス(実施例E1~E27)及び比較プロセス(C1~C9)によって得られたセキュリティ機能の光学特性を提供し、トップコーティングインクジェットインクは、異なるインク堆積値(g/m2)で塗布されており、UV-Vis放射線カチオン硬化性又はハイブリッド硬化性スクリーン印刷用インクは、第1のタイプの顔料(P1)を含んでいた。
【0162】
[0161]表5は、層(×10)のトップに部分的に証印(×30)の形状のトップコーティングインクジェットインクを塗布してから、前記証印(×30)及び前記層(×10)が硬化するまでの時間を変更した場合の、本発明のプロセス(実施例E28~E33)及び比較プロセス(C10~C11)によって得られたセキュリティ機能の光学特性を提供し、ここでは、UV-Vis放射線カチオン硬化性又はハイブリッド硬化性スクリーン印刷用インクは、第1のタイプの顔料(P1)を含んでいた。
【0163】
[0162]表6A及び6Bは、本発明のプロセスによって得られたセキュリティ機能の光学特性を提供し(実施例E34~E58)、ここでは、トップコーティングインクジェットインクの組成を変更し、UV-Vis放射線カチオン硬化性又はハイブリッド硬化性スクリーン印刷用インクは、第1のタイプの顔料(P1)を含んでいた。
【0164】
[0163]表7A及び7Bは、本発明のプロセスによって得られたセキュリティ機能の光学特性を提供し(実施例E59~E63)、ここでは、UV-Vis放射線カチオン硬化性又はハイブリッド硬化性スクリーン印刷用インクは、第2のタイプの顔料(P2)を含んでいた。
【0165】
[0164]表8は、異なる基材(信用綿基材、表9に記載のプライマーを含む信用綿基材、及びポリマー基材)を用いた本発明の方法(実施例E64~E66)によって得られたセキュリティ機能の光学特性を提供する。
【0166】
A.フレーク形状の非金属性又は金属性基材を含む表面処理顔料の調製(P1~P2)
【表1】
顔料フレークを上記のように表面処理した。
【0167】
方法1(フレークPyrisma(登録商標)黄色T30-20(Merck)を処理するためのフルオロリンク(登録商標)P54)
[0165]50mLポリプロピレン試験管内で、2gの顔料フレークを17.2gのイソプロパノール(Brenntag-Schweizer、99%)に室温で加えた。0.8gのフルオロリンク(登録商標)P54の10wt%溶液(手順は方法1a)に記載)を加え、チューブを2分間激しく振盪させた。顔料フレークが沈降した後、溶媒のトップ層を注射器で除去し、続いて、顔料フレークを20gのイソプロパノール(Brenntag-Schweizer、99%)で2回洗浄し、20gのアセトン(Brenntag-Schweizer、99%)で1回洗浄した。このようにして得られた表面処理顔料フレークを濾紙上で室温にて30分間乾燥させた。
【0168】
方法2(フレーククロマフレア(ChromaFlair)(登録商標)(Viavi Solutions)を処理するためのフルオロリンク(登録商標)P54)
[0166]フルオロリンク(登録商標)P54(Solvay、水中20wt%)を等量のイソプロパノール(Brenntag-Schweizer、99%)に溶解して10wt%溶液を得た。
【0169】
[0167]1Lポリプロピレンビーカー内で、50gの顔料フレークを440gのイソプロパノール(Brenntag-Schweizer、99%)に加え、Dispermat(LC220-12)を使用して600rpmで10分間室温にて分散させた。10gの前記フルオロリンク(登録商標)P54の10wt%溶液を分散液に加え、室温で15分間、600rpmで更に分散させた。得られた分散物を、真空下で濾紙を備えたブフナー漏斗(水ポンプ)に注ぎ、200gのイソプロピルアルコール(Brenntag-Schweizer、99%)で3回洗浄し、最後に200gのアセトン(Brenntag-Schweizer、99%)で1回洗浄した。最後に、表面処理顔料フレークを真空下で5分間乾燥させた。
【0170】
B.UV-Vis放射線硬化性スクリーン印刷用インク(SP1~SP4)及びトップコーティングインクジェットインク(IJ1~IJ16)の調製
B1.UV-Vis放射線カチオン又はハイブリッド硬化性スクリーン印刷用インク(SP1~SP4)
【表2A】
【表2B】
【0171】
[0168]表2Bに記載されている顔料を除く全ての成分(すなわち、インクビヒクルの成分)を、Dispermat(型式CV-3)を1000~1500rpmで15分間使用して、室温で混合し、分散させ、各インクビヒクル100gを得た。粘度値は、ブルックフィールド粘度計(型式「DV-IPrime」、スピンドルS27、100rpm)により、25℃で約15gのインクビヒクルについて独立的に測定し、そのようにして得られた値は、SP1~SP2及びSP3~SP4についてそれぞれ633mPas及び526mPasであった。
【0172】
[0169]17wt%の顔料(P1/P2)を83wt%のそれぞれのインクビヒクルに独立的に加え、Dispermat(型式CV-3)を800~1000rpmで5分間使用して、室温で分散させ、UV-Vis放射線カチオン硬化性又はハイブリッド硬化性スクリーン印刷用インク(SP1~SP4)のそれぞれ20gを得た。
【0173】
B2.トップコーティングインクジェットインク(IJ1~IJ16)の調製
【表3A】
【表3B】
【0174】
[0170]2つ以上の成分(IJ5、IJ10、IJ11及びIJ16)を含むトップコーティングインクジェットインクは、Dispermat CV-3を使用して、室温及び1000rpmで10分間、成分を混合することによって独立的に調製した。トップコーティングインクジェットインクの粘度は、円錐面形状及び直径40mmを有する回転粘度計DHR-2(TA Instruments)を使用して、1000s-1及び25℃で測定した。
【0175】
[0171]実施例では、以下の基材を使用した、すなわち、
実施例E1~E63及びE66、比較例C1~C11:ポリマーBOPP(CCLSecure製のガーディアン(Guardian)(登録商標));
実施例E64:信用紙(Louisenthal BNP100g/m2);
実施例E65:表9に記載されているプライマー層を備えた信用紙(Louisenthal BNP100g/m2)。
【0176】
C.セキュリティ機能の調製及び評価
C-1.セキュリティ機能の調製(E1~E66、C1~C11)
[0172]ステップa):UV-Vis放射線カチオン硬化性又はハイブリッド硬化性スクリーン印刷インク(SP1~SP4)を、90T(230メッシュ)スクリーンを使用して60mm×60mmの寸法を有する、上記の基材片(×20)上に独立的に手動で塗布し、厚さ約20μmを有し、以下の寸法:40mm×40mm、を有する正方形を形成するスクリーン印刷層(×10)を得た。
【0177】
[0173]ステップa)、ステップb)に続いて、KM1024インクジェットヘッド(Konica Minolta)を使用するDOD(ドロップ-オン-デマンド)インクジェット印刷プロセスによって、トップコーティングインクジェットインク(IJ1~IJ16)を、スクリーン印刷層(×10)上に独立的に塗布して、以下の寸法:25mm×25mmを有する正方形の形状を有する証印を得て、前記証印は、ステップa)の後に得られるスクリーン印刷層(×10)によって形成される正方形のほぼ中心にある。
【0178】
[0174]ステップb)に続いて、ステップc):ステップa)の後に得られたスクリーン印刷層(×10)及びステップb)の後に得られたインクジェット印刷証印(×30)を、約0.5秒間Phoseon製のUV-LEDランプに露光することによって硬化させた(タイプFireLine 125×20mm、395nm、8W/cm2)。
【0179】
[0175]このプロセスにより、硬化インクジェット印刷証印(×30)を欠いた硬化コーティング層(×10)で作製された第1の領域、及びクリーン印刷層(×10)と硬化インクジェット印刷証印(×30)の組み合わせで作製された第2の領域を含むセキュリティ機能の製造が可能になった。
図1のA~C、
図2のA~C、
図3のA~C、及び
図4のA~Cに示すように、第1の領域は、セキュリティ機能の幅約7.5mmの周囲ゾーンに対応し、第2の領域は、セキュリティ機能の以下の寸法:25mm×25mmの中央ゾーンに対応する。
【0180】
[0176]トップコーティングインクジェットインクを、独立的に、スクリーン印刷層(×10)のトップに部分的に証印(正方形)の形状で塗布して、比較プロセスに従って調製された実施例(C1~C9)、及びステップb)とステップc)の間の時間を0.5秒に固定しながら、約3~約17g/m2の範囲で変化する可変インク堆積値を用いて、本発明に従って調製された実施例(E1~E27)を製造した。
【0181】
[0177]第2の領域上に塗布されたトップコーティングインクジェットインクから作製された証印のインク堆積の決定を、比較プロセスに従って調製された実施例(C2)及び本発明に従って調製された実施例(E4~E6)について本明細書に記載されるように実行した。各実施例について、決定は3つの試料から行い、インク堆積は、前記3つの試料の平均として計算した。手順は以下の通りであった。
【0182】
UV-Vis放射線ハイブリッド硬化性スクリーン印刷インクSP1を、ステップa)で上述したようにポリマー基材(×20)上に塗布して、スクリーン印刷層(×10)を製造し、次いで、前記スクリーン印刷層(×10)を含むポリマー基材(×20)のそれぞれを、化学天秤(メトラートレド(Mettler Toledo)XS64)を使用して独立的に秤量し、
トップコーティングインクジェットインクIJ2を、ステップb)に従って、4つの異なるインク堆積及び前記スクリーン印刷層(×10)を含むポリマー基材(×20)を用い、前記スクリーン印刷層(×10)のトップに部分的に証印の形状で塗布し、インクジェット印刷証印(×30)を、化学天秤を使用して独立的に計量した。
【0183】
絶対トップコーティングインクジェットインク堆積を、ステップb)の後に得られた重量(スクリーン印刷層(×10)及びインクジェット印刷証印(×30)を担持する基材(×20))から、ステップa)の後に得られた重量(スクリーン印刷層(×10)を担持する基材(×20)を減算することによって、各試料について計算し、
実施例E4~E6及び比較例C2について表4Aに提供されているように、インクジェットインク堆積[g/m2]は、絶対インクジェットインク堆積を既知の印刷面積(25×25mm、又は0.000625m2)で割ることによって得られた。
【0184】
[0178]他の全ての実施例のインク堆積は、実施例E4~E6及び比較例C2について上で説明した手順によって得られた結果から直接得た(各インク堆積について固定印刷設定を使用する)。
【0185】
[0179]ステップb)とステップc)の間の時間を約0.5秒~約60秒の間で変化させ、一方、インクジェットインク堆積を約9.4g/m2に固定したこと以外は、上に記載したのと同じ方法を使用して、比較例C10~C11及び実施例E28~E33を調製した。
【0186】
[0180]上述と同じ方法を使用して、インク堆積値約9.4g/m2を用い、一方、ステップb)とステップc)の間の時間を0.5秒に固定して、実施例E34~E63を調製した。
【0187】
[0181]基材を変更したこと(信用綿紙(E56)、プライマーでコーティングされた信用綿紙(E65)及びポリマー基材の透明窓(E66))を除いて、上記と同じ方法を使用して、実施例E64~E66を調製した。
【0188】
C-2.光学特性の評価
[0182]このようにして得られたセキュリティ機能の光学特性は、目視評価するだけでなく、ゴニオスペクトロメーター(Phyma GmbH AustriaからのゴニオスペクトロメーターコーデックWI-10 5&5)を使用して評価した。目視評価は、路上の平均的な人々がセキュリティ機能を観察する方法を再現することを目的としており、一方、ゴニオスペクトロメーターを使用した評価は、専用デバイス(高速選別機など)を使用した機械検出をよく再現している。
【0189】
[0183]目視評価は、以下のように実行した:
コントラストは、拡散照明下(直射日光のない窓から差し込む光など)で観察し、セキュリティ機能を担持した基材(×20)を、拡散光源に対して垂直に保持し、画角を、拡散光が観察者の頭によって遮られないように選択する(約70°~約20°の間の垂直角を意味する)。観察者は、コントラストが約70°~約45°の間で増加し、約45°~約20°の間で再び減少する様子を報告した。以下のスケールを使用した:優れた、良好、十分、不十分で、コントラストが不十分とは、観察者がセキュリティ機能として不適切であると容易に評価できないセキュリティ機能を指す。
【0190】
[0184]ゴニオスペクトロメーターを使用した評価は、以下のように実行した:
参照試料(表4~8でR1~R4として示される)は、上記のステップa)及びc)におけるのと同じプロセスを使用して(すなわち、インクジェット印刷のステップb)を省略する)、UV-Vis放射線カチオン硬化性又はハイブリッド硬化性スクリーン印刷インク(SP1~SP4)のそれぞれについて取得した。換言すれば、各参照試料(R1~R4)は、上に提供された寸法を有する硬化スクリーン印刷層(×10)を含み、インクジェット印刷証印(×30)を欠いている上記の基材(×20)から構成されていた。
【0191】
参照試料(R1~R4)のL*a*b*値は、45°で照明し、法線に対して45°で測定した(表では45°/45°として示す)。C*(彩度(chroma)又は色の飽和度(color saturation))値は、CIELAB(1976)色空間に従ってa*値とb*値から計算した。
【数1】
参照試料(R1~R4)の提供されたC*値は、硬化スクリーン印刷層(×10)で作製された第1の領域の彩度に対応する(表ではC*(第1の領域)と呼ばれる)。比較プロセスに従って調製された比較例(C1~C11)及び本発明に従って調製された実施例(E1~E66)の提供されたC*値は、スクリーン印刷層(×10)と硬化インクジェット印刷証印(×30)の組み合わせから作製された第2の領域の彩度に対応する(表ではC*(第2の領域)と呼ばれる);
両方のC*値から、%単位のコントラスト値(表ではコントラスト[%]と呼ばれる)を以下の式に従って導出した:
【数2】
式中、約5%のコントラストは専用デバイスによって検出可能であることが知られているため、セキュリティ用途のしきい値に対応する。したがって、セキュリティ機能の機械検出には、約5%~約15%の間のコントラストが十分であると考えられ、約15%~約30%のコントラストが良好であると考えられ、30%を超えるコントラストが優れていると考えられてきた。
【0192】
D.結果
D1.インクジェットインク堆積の変動(C1~C9及びE1~E27)
【表4A】
【表4B】
【0193】
[0185]表4A~Bに示すように、本発明によるプロセスは、UV-Vis放射線カチオン硬化性又はハイブリッド硬化性スクリーン印刷用インクについて、第1の領域と第2の領域との間の十分なコントラストを得るために、約5g/m2の最小量のインクジェットインク堆積を必要とする(前記コントラストは目視で、及び/又はゴニオスペクトロメーターを使用して評価される)(E1~E27)。表4A~Bに示すように、少なくとも約9g/m2の量(E2、E3、E5、E6、E8、E9、E11、E12、E14、E15、E17、E18、E20、E21、E23、E24、E26及びE27)により、目視でもゴニオスペクトロメーターを使用しても、良好又は優れたコントラストを示すセキュリティ機能を製造することができた。
【0194】
[0186]
図1のA~Cに示される写真(角度70°(
図1のA)、45°(
図1のB)及び22.5°(
図1のC)の拡散照明下で観察されたセキュリティ機能の写真)によって示されるように、比較プロセスC7で作製されたセキュリティ機能のコントラストは、70°では肉眼で観察することができず、45°ではかろうじて増加し、22.5°では再び観察することができなくなる、したがって、比較プロセスで得られたセキュリティ機能C7は、セキュリティ用途にとって不安定になる。
【0195】
[0187]
図2のA~C、
図3のA~C、及び
図4のA~Cに示される写真(角度70°(
図2~4のA)、45°(
図2~4のB及び22.5°(
図2~4のC)の拡散照明下で観察されたセキュリティ機能の写真)によって示されるように、
図1のA-Cに示す比較例C7とは対照的に、本発明によるプロセスで作られたセキュリティ機能E19のコントラストは、70°では肉眼では観察することができず、45°で増加し、22.5°ではかろうじて観察することができる、したがって、本発明によるプロセスで作製されたセキュリティ機能E19はセキュリティ用途に十分なものとなる。本発明によるプロセスで作られたセキュリティ機能E20のコントラストは、70°では肉眼では観察することができず、45°で増加し、22.5°では観察することができる、したがって、本発明によるプロセスで得られたセキュリティ機能E20はセキュリティ用途に良好なものとなる。本発明によるプロセスで作られたセキュリティ機能E21のコントラストは、70°では肉眼では観察することができず、45°で大幅に増加し、22.5°では観察することができる、したがって、本発明によるプロセスで得られたセキュリティ機能E21はセキュリティ用途に優れたものとなる。
【0196】
D2.ステップb)とステップc)の間の時間(秒)の変動(C10~C11及びE28~E33)
【表5】
【0197】
[0188]表5に示すように、UV-Vis放射線カチオン硬化性又はハイブリッド硬化性スクリーン印刷用インクを使用する本発明による方法によって得られるセキュリティ機能のコントラストは、ステップb)とc)の間の時間が増加すると、低下する。シート給紙プロセスのロータリースクリーンプレスを備えた工業用印刷機を使用するプロセスでは、ステップb)とステップc)の間の1秒の時間は約3000枚/時間に相当し、0.5秒の時間は約6000枚/分に相当し、0.3秒の時間は約9000枚/分に相当する。したがって、これらの時間は、高速印刷産業環境の厳しい要件に完全に適合する。
【0198】
D3.トップコーティングインクジェットインクの組成の変動(E34~E58)
【表6A】
【0199】
[0189]表6Aに示すように、本明細書に記載の方法では、本明細書に記載のUV-Vis放射線カチオン硬化性スクリーン印刷インクを使用し、前記UV-Vis放射線硬化性スクリーン印刷インクの粘度は、25℃で約100~約2000mPasの間であり(本明細書に記載の方法で測定した場合)、インクジェットインク堆積は、少なくとも約5g/m
2、好ましくは少なくとも約6g/m
2、より好ましくは少なくとも約9g/m
2であり(本明細書に記載の方法で測定した場合)、トップコーティング組成物の粘度は、1000s
-1、及び25℃で約30mPas未満、であり、ステップb)とc)の間の時間は、約30秒未満、好ましくは10秒未満、好ましくは約3秒未満、より好ましくは約1秒未満であり、これにより、1つ又は複数の証印を示し、かつカチオン硬化性トップコーティング組成物(IJ1~IJ5、トップコーティング組成物は、1つ若しくは複数のグリシジルエーテル、1つ若しくは複数のビニルエーテル、1つ若しくは複数の脂環式エポキシド、又はそれらの混合物を含む)、ハイブリッド硬化性トップコーティング組成物(IJ6、トップコーティング組成物は1つ若しくは複数のヒドロキシ変性又は(メタ)アクリレート変性ビニルエーテルを含む)、溶剤系トップコーティング組成物(IJ13-15、トップコーティング組成物は1つ又は複数のアルコール(特にエタノール)、エーテルエステル(特に、エチル3-エトキシプロピオネート)、炭酸アルキレン(特に炭酸プロピレン))及び1つ又は複数のフリーラジカル光開始剤(IJ16)を更に含むラジカル硬化性トップコーティング組成物であって、トップコーティング組成物は、1つ又は複数の(メタ)アクリレート化合物(特にモノアクリレート)及び1つ又は複数のフリーラジカル光開始剤(IJ16)(特にα-ヒドロキシケトン)を含む、ラジカル硬化性トップコーティング組成物)からなる群から選択されるトップコーティング組成物を使用することにより、セキュリティ用途に十分なコントラストを示すセキュリティ機能の製造が可能になる。
【表6B】
【0200】
[0190]表6Bに示すように、本明細書に記載の方法では、本明細書に記載のUV-Vis放射線ハイブリッド硬化性スクリーン印刷インクを使用し、前記UV-Vis放射線硬化性スクリーン印刷インクの粘度は、25℃で約100~約2000mPasの間であり(本明細書に記載の方法で測定した場合)、インクジェットインク堆積は、少なくとも約5g/m2、好ましくは少なくとも約6g/m2、より好ましくは少なくとも約9g/m2であり(本明細書に記載の方法で測定した場合)、トップコーティング組成物の粘度は、1000s-1、及び25℃で約30mPas未満、であり、ステップb)とc)の間の時間は、約30秒未満、好ましくは10秒未満、好ましくは約3秒未満、より好ましくは約1秒未満であり、これにより、1つ又は複数の証印を示し、かつカチオン硬化性トップコーティング組成物(IJ1~IJ5、トップコーティング組成物は、1つ若しくは複数のグリシジルエーテル、1つ若しくは複数のビニルエーテル、1つ若しくは複数の脂環式エポキシド、又はそれらの混合物を含む)、ハイブリッド硬化性トップコーティング組成物(IJ6、トップコーティング組成物は1つ若しくは複数のヒドロキシ変性又は(メタ)アクリレート変性ビニルエーテルを含む)、溶剤系トップコーティング組成物(IJ12-15、トップコーティング組成物は1つ又は複数のアルコール(特にエタノール)、エーテル(特に、ジプロピレングリコールメチルエーテル)、エーテルエステル(特に、エチル3-エトキシプロピオネート)、炭酸アルキレン(特に炭酸プロピレン))及びラジカル硬化性トップコーティング組成物(IJ7~IJ11、トップコーティング組成物は、1つ若しくは複数の(メタ)アクリレート化合物(特に、モノアクリレート、ジアクリレート、又はそれらとトリアクリレート及び/若しくはテトラアクリレートとの混合物を含む)からなる群から選択されるトップコーティング組成物を使用することにより、セキュリティ用途に十分なコントラストを示すセキュリティ機能の製造が可能になる。
【0201】
D4.表面処理顔料フレークの変動(E59~E63)
【表7A】
【表7B】
【0202】
[0191]前の表及び表7A~Bに示すように、本明細書に記載の方法では、本明細書に記載のUV-Vis放射線カチオン硬化性又はハイブリッド硬化性スクリーン印刷インクを使用し、前記UV-Vis放射線硬化性スクリーン印刷インクの粘度は、25℃で約100~約2000mPasの間であり(本明細書に記載の方法で測定した場合)、インクジェットインク堆積は、少なくとも約5g/m2、好ましくは少なくとも約6g/m2、より好ましくは少なくとも約9g/m2であり(本明細書に記載の方法で測定した場合)、トップコーティング組成物の粘度は、1000s-1、及び25℃で約30mPas未満、であり、ステップb)とc)の間の時間は、約30秒未満、好ましくは10秒未満、好ましくは約3秒未満、より好ましくは約1秒未満であり、これにより、1つ又は複数の証印を示し、かつセキュリティ用途に十分なコントラストを示すセキュリティ機能の製造が可能になり、表面処理顔料は、フレーク形状の非金属性基材(P1)又は多層基材(P2)を含む。
【0203】
D5.基材の変動(E64~E66)
【表8】
【表9】
【0204】
[0192]表8に示すように、本発明によるプロセスによってセキュリティ機能を製造するために、UV-Vis放射線ハイブリッド硬化性スクリーン印刷インク及びトップコーティングインクジェットインクが塗布される異なる基材は、ゴニオスペクトロメーターで測定したように、コントラストに重大な影響を及ぼさない。目視で、実施例E65~66のセキュリティ機能はより滑らかに見え、コントラストがより観察しやすい。
【0205】
[0193]更なる実施例が調製され、
図5のA~Cに示されており(角度70°(
図5のA)、45°(
図5のB)及び22.5°(
図5のC)の拡散照明下で観察されたセキュリティ機能の写真)、ここで、前記セキュリティ機能は、90T(230メッシュ)スクリーンを使用して、UV-Vis放射線ハイブリッド硬化性スクリーン印刷インクSP1を、基材(CCL Secure製のポリマーBOPPガーディアン(登録商標)、寸法:70mm×90mm)(520)上に手作業で塗布して、厚さ約20μmを有し、以下の寸法:50mm×50mmを有する正方形を形成するスクリーン印刷層(510)を得ることによって、スクリーン印刷層(510)上で、KM1024iインクジェットヘッド(Konica Minolta、インク堆積:9.4g/m
2)を使用するDOD(ドロップオンデマンド)インクジェット印刷プロセスにより、スクリーン印刷層(510)のトップにトップコーティングインクジェットインクIJ5を塗布して、「SICPA」という名の形状を有する証印(530(サイズ:37.5mm×10mm))を得ることによって、調製する。前記インクジェットステップに続いて、スクリーン印刷層(510)及びインクジェット印刷証印(530)を、Phoseon製のUV-LEDランプ(タイプFireLine 125×20mm、395nm、8W/cm
2)に約0.5秒間露光することによって硬化させ、一方、インクジェット印刷ステップと硬化ステップの間の時間は0.5秒に固定した。
図5に示すように、本発明によるプロセスで作製されたセキュリティ機能のコントラストは、70°では肉眼ではかろうじて観察され、45°で大幅に増加し、22.5°では観察することができる、したがって、本発明によるプロセスで得られた前記セキュリティ機能はセキュリティ用途に優れたものとなる。
【手続補正書】
【提出日】2024-02-26
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材(×20)上に1つ又は複数の証印(×30)を示すセキュリティ機能を製造する方法であって、
UV-Vis放射線硬化性コーティング組成物を基材(×20)表面上に塗布するステップa)であり、前記UV-Vis放射線硬化性コーティング組成物はコーティング層(×10)を形成するために第1の液体状態にある、ステップa);
ステップa)に続いて、非接触流体マイクロディスペンシング技術によってトップコーティング組成物を前記コーティング層(×10)のトップに少なくとも部分的に塗布するステップb)であり、前記トップコーティング組成物は、1つ若しくは複数の証印(×30)の形態で塗布され、前記1つ若しくは複数の証印(×30)は、少なくとも5g/m
2のインク堆積を有する、ステップb);
ステップb)に続いて、1つ若しくは複数の硬化ユニット(×50)を用いて前記コーティング層(×10)及び前記1つ若しくは複数の証印(×30)を硬化するステップc)
を含み、
ステップb)とステップc)の間の時間は30秒未満であり、
前記UV-Vis放射線硬化性コーティング組成物は、
i)25℃で約100~約2000mPasの間の粘度を有するインクビヒクル約75wt%~約99wt%;及び
ii)フレーク形状の非金属性又は金属性基材を含む顔料約1wt%~約25wt%
を含み、
i)及びii)の重量パーセントは、前記UV-Vis放射線硬化性コーティング組成物の総重量に基づいており、
前記インクビヒクルは、
a) a1)1つ若しくは複数の脂環式エポキシド約45wt%~約75wt%、並びにa2)オニウム塩である1つ若しくは複数のカチオン性光開始剤であり、好ましくは、オキソニウム塩、ヨードニウム塩、スルホニウム塩及びそれらの混合物からなる群から選択される、1つ又は複数のカチオン性光開始剤約2wt%~約15wt%、或いは
b) b1)1つ若しくは複数の脂環式エポキシドと、トリ(メタ)アクリレート、テトラ(メタ)アクリレート及びそれらの混合物からなる群から選択される1つ若しくは複数のラジカル硬化性化合物とを含む混合物約45wt%~約75wt%、並びにb2)オニウム塩である1つ若しくは複数のカチオン性光開始剤であり、好ましくは、オキソニウム塩、ヨードニウム塩、スルホニウム塩及びそれらの混合物からなる群から選択される1つ若しくは複数のカチオン性光開始剤と、1つ若しくは複数のフリーラジカル光開始剤であり、好ましくは、α-ヒドロキシケトン、ベンジルケタール、ベンゾインエーテル、ホスフィンオキシド、フェニルグリオキシレート及びそれらの混合物からなる群から選択され、より好ましくはα-ヒドロキシケトンからなる群から選択される、1つ若しくは複数のフリーラジカル光開始剤との混合物約2wt%~約15wt%を含み、
c) a)及びb)の重量パーセントは、前記インクビヒクルの総重量に基づき;
前記非金属性又は金属性基材は、1つ若しくは複数の金属酸化物、1つ若しくは複数の金属酸化物水和物、1つ若しくは複数の金属亜酸化物又はこれらの材料の混合物から独立的に作製された、1つ又は複数の少なくとも部分的なコーティング層を含み;且つ環境に面した少なくとも部分的な表面処理層を含み、前記少なくとも部分的な表面処理層は、前記1つ若しくは複数の少なくとも部分的なコーティング層のトップ層と直接接触し、且つペルフルオロポリエーテルから選択される1つ若しくは複数の表面改質剤で作製され、前記ペルフルオロポリエーテルは、1つ若しくは複数のリン(P)含有基又は1つ若しくは複数のケイ素(Si)含有基で官能化されている、
方法。
【請求項2】
前記インクビヒクルが、c)約20wt%未満の量の1つ若しくは複数のビニルエーテル、又は約30wt%以下の量の1つ若しくは複数のオキセタン、又は1つ若しくは複数のビニルエーテルと1つ若しくは複数のオキセタンと組み合わせを更に含み、前記組み合わせが約15wt%以下の量で存在し、a)、b)及びc)の重量パーセントは、前記インクビヒクルの総重量に基づく、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記インクビヒクルが、1つ又は複数のポリヒドロキシ化合物、好ましくは、2つを超えるヒドロキシル基を含む1つ又は複数のポリヒドロキシ化合物を更に含み、前記1つ又は複数のポリヒドロキシ化合物は、約25wt%以下の量で存在し、重量パーセントは、前記インクビヒクルの総重量に基づく、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記インクビヒクルが、1つ又は複数の光増感剤、好ましくはチオキサントン誘導体を更に含み、前記1つ又は複数の光増感剤は、約0.1wt%~約10wt%の量で存在し、重量パーセントは、前記インクビヒクルの総重量に基づく、請求項1
又は2に記載の方法。
【請求項5】
前記インクビヒクルが、1つ若しくは複数の脂環式エポキシドと、トリ(メタ)アクリレート、テトラ(メタ)アクリレート及びそれらの混合物からなる群から選択される1つ若しくは複数のラジカル硬化性化合物とを含む混合物45~約75wt%を含み、前記1つ若しくは複数のラジカル硬化性化合物は、35wt%以下、好ましくは30wt%以下の量で存在し、重量パーセントは、前記インクビヒクルの総重量に基づく、請求項1
又は2に記載の方法。
【請求項6】
前記トップコーティング組成物が、1つ若しくは複数のカチオン硬化性化合物、1つ若しくは複数のハイブリッド硬化性化合物、1つ若しくは複数の溶媒、1つ若しくは複数のラジカル硬化性化合物、又はそれらの混合物を含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記インクビヒクルが、前記1つ又は複数の脂環式エポキシド、好ましくは2つ以上のシクロヘキサンエポキシド基を含む脂環式エポキシド、前記1つ又は複数のビニルエーテル、前記1つ又は複数のオキセタン、請求項3に記載の1つ又は複数のポリヒドロキシ化合物、並びにオニウム塩である前記1つ又は複数のカチオン性光開始剤であり、好ましくは、オキソニウム塩、ヨードニウム塩、スルホニウム塩及びそれらの混合物からなる群から選択される1つ又は複数の塩、好ましくはヨードニウム塩である、1つ又は複数のカチオン性光開始剤、任意選択で請求項4に記載の1つ又は複数の光増感剤、好ましくはチオキサントン誘導体、及び任意選択で1つ又は複数の充填剤を含む、請求項1
又は2に記載の方法。
【請求項8】
前記トップコーティング組成物が、1つ若しくは複数のカチオン硬化性化合物、1つ若しくは複数のハイブリッド硬化性化合物、1つ若しくは複数の溶媒、1つ若しくは複数のラジカル硬化性化合物と1つ若しくは複数のラジカル光開始剤のブレンド、又はそれらの混合物、を含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記インクビヒクルが、前記1つ又は複数の脂環式エポキシド、好ましくは2つ以上のシクロヘキサンエポキシド基を含む脂環式エポキシド、前記1つ又は複数のビニルエーテル、前記1つ又は複数のオキセタン、請求項3に記載の1つ又は複数のポリヒドロキシ化合物、オニウム塩である前記1つ又は複数のカチオン性光開始剤であって好ましくはオキソニウム塩、ヨードニウム塩、スルホニウム塩及びそれらの混合物からなる群から選択される1つ又は複数の塩、好ましくはヨードニウム塩である前記1つ又は複数のカチオン性光開始剤、トリ(メタ)アクリレート、テトラ(メタ)アクリレート及びそれらの混合物からなる群から選択される前記1つ若しくは複数のラジカル硬化性化合物、前記1つ若しくは複数のフリーラジカル光開始剤、好ましくはα-ヒドロキシケトン、任意選択で、請求項4に記載の1つ又は複数の光増感剤、好ましくはチオキサントン誘導体、及び任意選択で1つ又は複数の充填剤
を含む、請求項1
又は2に記載の方法。
【請求項10】
前記顔料が、1つ又は複数の金属性層を含む多層からなる、好ましくは、ファブリペロー吸収体/誘電体/反射体/誘電体/吸収体の構造を有する薄膜干渉多層からなるフレーク形状の金属性基材を含み、前記顔料は、1つ又は複数の金属酸化物から独立的に作製される、1つ又は複数の少なくとも部分的なコーティングを含むか、又は前記顔料は、天然雲母、合成雲母及びガラスからなる群から選択される1つ若しくは複数の材料から作製されるフレーク形状の非金属性基材を含む、請求項1
又は2に記載の方法。
【請求項11】
前記ペルフルオロポリエーテルが、1つ若しくは複数のリン酸含有基又は1つ若しくは複数のシラン含有基によって官能化されている、請求項1
又は2に記載の方法。
【請求項12】
水銀ランプ、UV-LEDランプ及びそれらの系列からなる群から選択される1つ又は複数の硬化ユニット(×50)を用いて、前記コーティング層(×10)及び前記1つ若しくは複数の証印(×30)を硬化する前記ステップc)実行する、請求項1
又は2に記載の方法。
【請求項13】
前記1つ又は複数の証印が、コード、記号、英数字記号、モチーフ、幾何学パターン、文字、単語、数字、ロゴ、ドローイング、肖像画、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1
又は2に記載の方法。
【請求項14】
前記ステップa)を、輪転グラビアプロセス、フレキソ印刷プロセス及びスクリーン印刷プロセスからなる群から選択される、好ましくはスクリーン印刷プロセスからなる群から選択されるプロセスによって実行し、及び/又は、前記ステップb)を、インクジェット印刷プロセスによって、好ましくはドロップオンデマンドインクジェット印刷プロセスによって実行する、請求項1
又は2に記載の方法。
【請求項15】
請求項1
又は2に記載の方法によって製造されたセキュリティ機能。
【国際調査報告】