(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-08
(54)【発明の名称】水性ポリウレタン-ウレア分散体
(51)【国際特許分類】
C08G 18/66 20060101AFI20241001BHJP
C09D 175/00 20060101ALI20241001BHJP
C09D 5/02 20060101ALI20241001BHJP
C09D 11/30 20140101ALI20241001BHJP
C09J 175/00 20060101ALI20241001BHJP
C08G 18/65 20060101ALI20241001BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20241001BHJP
【FI】
C08G18/66 033
C09D175/00
C09D5/02
C09D11/30
C09J175/00
C08G18/65 041
C08G18/65 005
C08G18/66 059
B41J2/01 501
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024513704
(86)(22)【出願日】2022-08-26
(85)【翻訳文提出日】2024-04-23
(86)【国際出願番号】 EP2022073752
(87)【国際公開番号】W WO2023031029
(87)【国際公開日】2023-03-09
(31)【優先権主張番号】202111029317.4
(32)【優先日】2021-09-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(32)【優先日】2021-10-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515266223
【氏名又は名称】コベストロ、ドイチュラント、アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】COVESTRO DEUTSCHLAND AG
(74)【代理人】
【識別番号】100114188
【氏名又は名称】小野 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100119253
【氏名又は名称】金山 賢教
(74)【代理人】
【識別番号】100124855
【氏名又は名称】坪倉 道明
(74)【代理人】
【識別番号】100129713
【氏名又は名称】重森 一輝
(74)【代理人】
【識別番号】100137213
【氏名又は名称】安藤 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100183519
【氏名又は名称】櫻田 芳恵
(74)【代理人】
【識別番号】100196483
【氏名又は名称】川嵜 洋祐
(74)【代理人】
【識別番号】100160749
【氏名又は名称】飯野 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100160255
【氏名又は名称】市川 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100216839
【氏名又は名称】大石 敏幸
(74)【代理人】
【識別番号】100146318
【氏名又は名称】岩瀬 吉和
(74)【代理人】
【識別番号】100127812
【氏名又は名称】城山 康文
(72)【発明者】
【氏名】ジュ,イン・ダン
(72)【発明者】
【氏名】イェ,フイミン
(72)【発明者】
【氏名】タン、シフェン
(72)【発明者】
【氏名】ユ,ミンミン
(72)【発明者】
【氏名】リ,ユアン
(72)【発明者】
【氏名】ソン,ホンリアン
(72)【発明者】
【氏名】ジアン,チャンジン
【テーマコード(参考)】
2C056
4J034
4J038
4J039
4J040
【Fターム(参考)】
2C056EA21
2C056FC01
4J034BA08
4J034CA04
4J034CA13
4J034CA22
4J034CB01
4J034CB04
4J034CB08
4J034CD09
4J034DA01
4J034DB04
4J034DB07
4J034DF01
4J034DF02
4J034DF03
4J034HA01
4J034HA07
4J034HC01
4J034HC17
4J034HC22
4J034HC46
4J034HC52
4J034HC61
4J034HC71
4J034HC73
4J034RA07
4J034RA08
4J038DG061
4J038DG071
4J038DG111
4J038DG121
4J038DG261
4J038KA04
4J038KA08
4J038KA10
4J038KA12
4J038MA10
4J038MA15
4J039AE04
4J039BE01
4J039BE02
4J039BE20
4J039BE23
4J039CA06
4J039EA46
4J039GA24
4J040EF061
4J040EF071
4J040EF121
4J040EF281
4J040JA03
(57)【要約】
本発明は、ポリウレタン-ウレアを含む水性ポリウレタン-ウレア分散体、およびその調製方法、ならびに特にコーティング組成物、バインダーまたはインクの分野におけるその使用、ならびに水性ポリウレタン-ウレア分散体でコーティング、接着、シールまたは印刷することによって得られる生成物に関する。ポリウレタン-ウレアを含む水性ポリウレタン-ウレア分散体のポリウレタン-ウレアは、以下の成分:ポリイソシアネート、1.9~2.1のヒドロキシル官能価を有するポリカーボネートポリオール、1.9~2.1のヒドロキシル官能価を有するポリエステルポリオール、アミノ含有化合物、ヒドロキシル含有カルボン酸および中和剤(ここで、ポリカーボネートポリオールとポリエステルポリオールとの重量比は,6:1~20:1である)を含む系の反応によって得られる。本発明の水性ポリウレタン-ウレア分散体は、小さい粒径、狭い粒径分布、良好な演色性、耐加水分解性、摩擦に対する色堅牢度を有し、インクジェットインクのバインダーとして使用することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリウレタン-ウレアを含む水性ポリウレタン-ウレア分散体であって、ポリウレタン-ウレアが、以下の成分:
a. 少なくとも1つのポリイソシアネート;
b. 1.9~2.1のヒドロキシル官能価を有する少なくとも1つのポリカーボネートポリオール;
c. 1.9~2.1のヒドロキシル官能価を有する少なくとも1つのポリエステルポリオールであって、前記ポリエステルポリオールが、芳香族二塩基酸および芳香族酸無水物の少なくとも1つと、二価アルコールとを含む混合物の反応によって得られる、ポリエステルポリオール;
d. アミノ含有カルボン酸、アミノ含有カルボン酸塩、アミノ含有スルホン酸、およびアミノ含有スルホン酸塩の1つ以上である、少なくとも1つのアミノ含有化合物;
e. 少なくとも1つのヒドロキシル含有カルボン酸;
f. 少なくとも1つの中和剤;および
g. 任意に、成分b)~成分e)とは異なり、32g/mol~400g/molの分子量を有する、イソシアネート基に対して反応性である化合物
(ここで、ポリカーボネートポリオールとポリエステルポリオールの重量比は、6:1~20:1である)
を含む系の反応によって得られる、水性ポリウレタン-ウレア分散体。
【請求項2】
水性ポリウレタン-ウレア分散体中の有機溶媒の量が、水性ポリウレタン-ウレア分散体の総重量に対して、1重量%未満であることを特徴とする、請求項1に記載の水性ポリウレタン-ウレア分散体。
【請求項3】
水性ポリウレタン-ウレア分散体が、以下の特性:
10mPa・s~1000mPa・sの粘度(Brookfieldからの粘度計を用いて、規格ISO3219:1994に従って試験した);
30~40重量%の固形分含有量(Mettler Toledoからのハロゲン水分計で試験した);
30nm~75nmのZ-平均粒径(MalvernからのZetasizer Nanoで試験した);および
0~0.3の多分散指数(MalvernからのZetasizer Nanoで試験した)
の少なくとも1つを有することを特徴とする、請求項1または2に記載の水性ポリウレタン-ウレア分散体。
【請求項4】
ポリイソシアネートが、ヘキサメチレンジイソシアネートおよびイソホロンジイソシアネートの1つ以上であることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の水性ポリウレタン-ウレア分散体。
【請求項5】
ポリカーボネートポリオールが、ヘキサンジオールポリカーボネート、ブタンジオールポリカーボネート、ネオペンチルグリコールポリカーボネート、3-メチルペンタンジオールポリカーボネート、および前記ポリカーボネート類のコポリマーの1つ以上であることを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載の水性ポリウレタン-ウレア分散体。
【請求項6】
ポリエステルポリオールが、ポリヘキシレンフタレート、ポリブチレンフタレート、ポリネオペンチルグリコールフタレート、ポリ(ジエチレングリコール)フタレート、ポリ(3-メチルペンタンジオール)フタレート、ポリヘキシレンイソフタレート、ポリブチレンイソフタレート、ポリネオペンチルグリコールイソフタレート、ポリ(ジエチレングリコール)イソフタレート、ポリ(3-メチルペンタンジオール)イソフタレート、ポリヘキシレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリネオペンチルグリコールテレフタレート、ポリ(ジエチレングリコール)テレフタレートおよびポリ(3-メチルペンタンジオール)テレフタレートの1つ以上であり;最も好ましくはポリヘキシレンフタレート、ポリブチレンフタレート、ポリネオペンチルグリコールフタレート、ポリ(ジエチレングリコール)フタレートおよびポリ(3-メチルペンタンジオール)フタレートの1つ以上であるを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載の水性ポリウレタン-ウレア分散体。
【請求項7】
アミノ含有化合物が、6-アミノカプロエート、リシネート、N-(2-アミノエチル)-β-アラニン一ナトリウム塩、2-[(2-アミノエチル)アミノ]エタンスルホン酸ナトリウムおよび3-(シクロヘキシルアミン)-1-プロパンスルホン酸ナトリウムの1つ以上であることを特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載の水性ポリウレタン-ウレア分散体。
【請求項8】
ヒドロキシル含有カルボン酸が、2,2-ジメチロールプロピオン酸および2,2-ジメチロールブタン酸の1つ以上であることを特徴とする、請求項1~7のいずれか一項に記載の水性ポリウレタン-ウレア分散体。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか一項に記載のポリウレタン-ウレアを含む水性ポリウレタン-ウレア分散体の製造方法であって、以下の工程:
i. 成分a)少なくとも1つのポリイソシアネート、成分b)1.9~2.1のヒドロキシル官能価を有する少なくとも1つのポリカーボネートポリオール、成分c)1.9~2.1のヒドロキシル官能価を有する少なくとも1つのポリエステルポリオール、成分e)少なくとも1つのヒドロキシル含有カルボン酸および成分g)任意に、成分b)~成分e)とは異なり、イソシアネート基に対して反応性である化合物、のいくつかまたは全てを反応させて、プレポリマーを得る工程;
ii. プレポリマー、成分d)少なくとも1つのアミノ含有化合物および成分g)任意に、成分b)~成分e)とは異なり、イソシアネート基に対して反応性である化合物、を反応させて、ポリウレタン-ウレアを得る工程;
iii. 工程iiの前または後に、成分f)少なくとも1つの中和剤、を添加する工程;および
iv. 工程iiの前、間、または後に、水を導入して、水性ポリウレタン-ウレア分散体を得る工程
を含む、方法。
【請求項10】
工程iの間または後に、水と混和性であるがイソシアネート基に対して不活性である有機溶媒を導入する工程v、および水性ポリウレタン-ウレア分散体から有機溶媒を除去する工程をさらに含むことを特徴とする、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
請求項1~8のいずれか一項に記載のポリウレタン-ウレアを含む水性ポリウレタン-ウレア分散体を含む、コーティング組成物、バインダーまたはインク。
【請求項12】
コーティングされた物、接着された物、または印刷された物を調製するための、請求項1~8のいずれか一項に記載のポリウレタン-ウレアを含む水性ポリウレタン-ウレア分散体の使用。
【請求項13】
請求項1~8のいずれか一項に記載のポリウレタン-ウレアを含む水性ポリウレタン-ウレア分散体で、調製、コーティング、接着、シール、または印刷された基材を含む対象物または物品。
【請求項14】
以下の工程:請求項1~8のいずれか一項に記載のポリウレタン-ウレアを含む水性ポリウレタン-ウレア分散体を基材の表面に塗布し、その後硬化させる工程、を含む印刷方法。
【請求項15】
基材および請求項1~8のいずれか一項に記載のポリウレタン-ウレアを含む水性ポリウレタン-ウレア分散体を基材上に塗布することによって形成されたコーティングを含む、印刷物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
本発明は、水性ポリウレタン-ウレア分散体、その製造方法および、特にコーティング組成物、バインダーまたはインクの分野での、その使用に関し、ならびに水性ポリウレタン-ウレア分散体でコーティング、接着、シールまたは印刷することによって得られる物に関する。
【背景技術】
【0002】
先行技術
インクの顔料を織物または皮革などの基材に固定するために、織物または皮革印刷に使用されるインクは、通常、水性樹脂を含有する。現在、インクジェットインク用の配合物における主な問題の1つは、良好な結合性能を有する水性樹脂をいかに見出すかである。
【0003】
第一に、水性樹脂は、通常、インクの摩擦に対する色堅牢度において決定的な役割を果たす。水性樹脂は通常、大きな粒径および大きな多分散指数のために、乳白色の外観を有し、これは、インクの良好な演色性に悪影響を及ぼす。したがって、市場でより高い色レベルを有するインクは通常、より少ない水性樹脂バインダーを含有し、インクのより低い堅牢度をもたらす。逆に、インクが摩擦に対して良好な色堅牢度を有することを確実にするために、インクがある量の水性樹脂を含有することが必要であり、これは、インクが演色のための要件を満たさないことを引き起こす。さらに、インクジェットプリントヘッドの微細ノズルは通常、わずか数ミクロンのサイズであり、水性樹脂は大きな粒径を有し、これは、インクジェットプリントヘッドをブロックする傾向がある。
【0004】
第2に、インク、特にインクジェットインクは、水性樹脂バインダーの粘度に対する要件を有する。樹脂の粘度が高いと、インクジェットインクの粘度が高くなり、インクジェットプリントヘッドから吐出されにくくなる場合がある。
【0005】
最後に、水性樹脂自体の耐加水分解性はまた、長期使用中の印刷物の色堅牢度に著しい影響を及ぼす。耐加水分解性に乏しい水性樹脂で印刷された物体は、数回の洗浄操作の後、その色を失うことがある。
【0006】
したがって、業界では、演色性、摩擦に対する色堅牢度および耐加水分解性を有するインクジェットインクに適した水性樹脂があることが望まれている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
発明の概要
本発明の目的は、水性ポリウレタン-ウレア分散体、その製造方法および、特にコーティング組成物、バインダーまたはインクの分野における、その使用、ならびに水性ポリウレタン-ウレア分散体でコーティング、接着、シールまたは印刷することによって得られる物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によるポリウレタン-ウレアを含む水性ポリウレタン-ウレア分散液において、ポリウレタン-ウレアは、以下の成分:
a. 少なくとも1つのポリイソシアネート;
b. 1.9~2.1のヒドロキシル官能価を有する少なくとも1つのポリカーボネートポリオール;
c. 1.9~2.1のヒドロキシル官能価を有する少なくとも1つのポリエステルポリオールであって、前記ポリエステルポリオールが、芳香族二塩基酸および芳香族酸無水物の少なくとも1つと、二価アルコールとを含む混合物の反応によって得られる、ポリエステルポリオール;
d. アミノ含有カルボン酸、アミノ含有カルボン酸塩、アミノ含有スルホン酸、およびアミノ含有スルホン酸塩の1つ以上である、少なくとも1つのアミノ含有化合物;
e. 少なくとも1つのヒドロキシル含有カルボン酸;
f. 少なくとも1つの中和剤;および
g. 任意に、成分b)~成分e)とは異なり、32g/mol~400g/molの分子量を有する、イソシアネート基に対して反応性である化合物;
(ここで、ポリカーボネートポリオールとポリエステルポリオールの重量比は、6:1~20:1である)
を含む系の反応によって得られる。
【0009】
本発明の一態様は、本発明によるポリウレタン-ウレアを含む水性ポリウレタン-ウレア分散液を調製するための方法であって、以下の工程:
i. 成分a)少なくとも1つのポリイソシアネート、成分b)1.9~2.1のヒドロキシル官能価を有する少なくとも1つのポリカーボネートポリオール、成分c)1.9~2.1のヒドロキシル官能性を有する少なくとも1つのポリエステルポリオール、成分e)少なくとも1つのヒドロキシル含有カルボン酸および成分g)任意に、成分b)~成分e)とは異なり、イソシアネート基に対して反応性である化合物のいくつかまたは全てを反応させて、プレポリマーを得る工程;
ii. プレポリマー、成分d)少なくとも1つのアミノ含有化合物および成分g)任意に、成分b)~成分e)とは異なり、イソシアネート基に対して反応性である化合物を反応させて、ポリウレタン-ウレアを得る工程;
iii. 工程iiの前または後に成分f)少なくとも1つの中和剤を添加する工程;および
iv. 工程iiの前、間、または後に水を導入して、水性ポリウレタン-ウレア分散体を得る工程
を含む、方法を提供することである。
【0010】
本発明の別の態様は、本発明によるポリウレタン-ウレアを含む水性ポリウレタン-ウレア分散体を含むコーティング組成物、バインダーまたはインクを提供することである。
【0011】
本発明のさらに別の態様は、コーティングされた物、接着された物または印刷された物を調製するため、本発明によるポリウレタン-ウレアを含む水性ポリウレタン-ウレア分散体の使用を提供することである。
【0012】
本発明のさらに別の態様は、本発明によるポリウレタン-ウレアを含む水性ポリウレタン-ウレア分散体で調製され、コーティングされ、接着され、シールされ、または印刷された、基材を含む対象物(object)または物品(article)を提供することである。
【0013】
本発明のさらに別の態様は、以下の工程:本発明によるポリウレタン-ウレアを含む水性ポリウレタン-ウレア分散体を基材の表面上に塗布し、次いで硬化させる工程、を含む印刷方法を提供することである。
【0014】
本発明のさらに別の態様は、基材と、本発明によるポリウレタン-ウレアを含む水性ポリウレタン-ウレア分散体を基材上に塗布することによって形成されたコーティングとを含む印刷物を提供することである。
【0015】
本発明の水性ポリウレタン-ウレア分散体は、粘度が低く、インク、特にインクジェットインクのためのバインダーとして非常に適している。また、本発明の水性ポリウレタンウレア分散体は、小さい粒径(75nm未満のZ-平均粒径)、狭い粒径分布(0.3未満のPDI)、半透明の外観という特徴を有する。これにより形成された湿潤膜は、明るい色を呈する。湿潤フィルムを乾燥させた後、乾燥フィルムは、湿潤摩擦に対する高い堅牢性および長いジャングル試験時間(2週間超)を有する。本発明の水性ポリウレタン-ウレア分散体により形成された乾燥フィルムは、良好な演色性、摩擦に対する色堅牢性および耐加水分解性を有する。
【発明を実施するための形態】
【0016】
実施形態
本発明は、以下の成分:
a. 少なくとも1つのポリイソシアネート;
b. 1.9~2.1のヒドロキシル官能価を有する少なくとも1つのポリカーボネートポリオール;
c. 1.9~2.1のヒドロキシル官能価を有する少なくとも1つのポリエステルポリオールであって、前記ポリエステルポリオールが、芳香族二塩基酸および芳香族酸無水物の少なくとも1つと、二価アルコールとを含む混合物の反応によって得られる、ポリエステルポリオール;
d. アミノ含有カルボン酸、アミノ含有カルボン酸塩、アミノ含有スルホン酸、およびアミノ含有スルホン酸塩の1つ以上である、少なくとも1つのアミノ含有化合物;
e. 少なくとも1つのヒドロキシル含有カルボン酸;
f. 少なくとも1つの中和剤;および
g. 任意に、成分b)~成分e)とは異なり、32g/mol~400g/molの分子量を有する、イソシアネート基に対して反応性である化合物
(ここで、ポリカーボネートポリオールとポリエステルポリオールの重量比は、6:1~20:1である)
を含む系の反応によって得られる、ポリウレタン-ウレアを含む水性ポリウレタン-ウレア分散体を提供する。
【0017】
本発明はさらに、水性ポリウレタン-ウレア分散体の調製方法、および、特にコーティング組成物、バインダーまたはインクの分野における、その使用、ならびに水性ポリウレタン-ウレア分散体でコーティング、接着、シールまたは印刷することによって得られる物を提供する。
【0018】
本明細書で使用される「硬化」という用語は、液体物質の液体状態から硬化状態へのプロセスを指す。
【0019】
本明細書で使用される「コーティング組成物」という用語は、強固な接着性および特定の強度を有する連続的な固体コーティング層が形成されるように、様々な塗布プロセスによって対象物の表面上に塗布することができる材料を指す。
【0020】
本明細書で使用される「バインダー」という用語は、コーティング層が対象物自体の表面上または1つの対象物および別の対象物の表面上に形成され、対象物自体の表面または1つの対象物および別の対象物の表面が接着されるように、様々な塗布プロセスによって対象物の表面上に塗布され得る化学物質を指す。それはまた、接着剤および/またはシーラントおよび/またはボンダーの同義語としても使用される。
【0021】
本明細書で使用される用語「ポリウレタン-ウレア」は、ポリウレタンおよび/またはポリウレタンポリウレアおよび/またはポリウレアおよび/またはポリチオウレタンを指す。
【0022】
本明細書で使用するとき、用語「水性ポリウレタン-ウレア分散体」は、水性ポリウレタン分散体および/または水性ポリウレタンポリウレア分散体および/または水性ポリウレア分散体および/または水性ポリチオウレタン分散体を指す。
【0023】
本明細書に記載の水性ポリウレタン-ウレア分散体中のポリウレタン-ウレアの含有量は、水性ポリウレタン-ウレア分散体中の固体成分の含有量と同等である。
【0024】
本明細書で使用するとき、用語「固体成分」は、固体構成要素または有効成分を指す。
【0025】
本明細書において、「イソシアネート基に対して反応性である化合物」とは、イソシアネート基に対して反応性を有する基を含む成分、すなわち、ゼレウィチノフ(zerewitinoff)活性水素を有する基を含む成分をいう。ゼレウィチノフ活性水素の定義は、Rompp’s Chemical Dictionary(Rommp Chemie Lexikon)、第10版、Georg Thieme Verlag Stuttgart、1996を参照している。一般に、ゼレウィチノフ活性水素を有する基は、当技術分野において、水酸基(OH)、アミノ基(NHx)およびチオール基(SH)を意味すると理解される。
【0026】
水性ポリウレタン-ウレア分散体
水性ポリウレタン-ウレア分散体中の有機溶媒の量は、水性ポリウレタン-ウレア分散体の総重量に対して、好ましくは1重量%未満である。
【0027】
水性ポリウレタン-ウレア分散体は、好ましくは以下の特性の少なくとも1つを有する:
10mPa・s~1000mPa・sの粘度(Brookfieldからの粘度計(Brookfield DV-II+ Pro)を用いて、規格ISO3219:1994に従って試験した);
30~40重量%の固形分含有量(Mettler Toledoからのハロゲン水分計(Mettler Toledo Halogen Moisture Analyzer Excellence HS153)で試験した);
30nm~75nmのZ-平均粒径(MalvernからのZetasizer Nano(Malvern Zetasizer Nano ZS)で試験した);および
0~0.3の多分散指数(MalvernからのZetasizer Nano(Malvern Zetasizer Nano ZS)で試験した)。
【0028】
水性ポリウレタン-ウレアの含有量は、水性ポリウレタン-ウレア分散体の総重量に対して、最も好ましくは33~40重量%である。
【0029】
水性ポリウレタン-ウレア分散体の湿潤摩擦に対する色堅牢度は、好ましくは4~5である。
【0030】
水性ポリウレタン-ウレア分散体のジャングル試験の結果は、好ましくは2週間を超える。
【0031】
成分a)ポリイソシアネート
ポリイソシアネートのイソシアネート官能価は、好ましくは2以上、最も好ましくは2~4である。
【0032】
ポリイソシアネートは、好ましくは、脂肪族ポリイソシアネート、脂環式ポリイソシアネート、芳香族ポリイソシアネート、ならびにイミノオキサジアジンジオン、イソシアヌレート、ウレトジオン、カルバメート、アロファネート、ビウレット、ウレア、オキサジアジントリオン、オキサゾリジノン、アシルウレアおよび/またはカルボジイミド基を有するそれらの誘導体の1つ以上である。
【0033】
脂肪族ポリイソシアネートは、好ましくは、ヘキサメチレンジイソシアネート、1,5-ペンタメチレンジイソシアネート、2,2-ジメチルペンタメチレンジイソシアネート、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ブテンジイソシアネート、1,3-ブタジエン-1,4-ジイソシアネート、2,4,4-トリメチル-1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート、1,6,11-ウンデカントリイソシアネート、1,3,6-ヘキサメチレントリイソシアネート、1,8-ジイソシアナト-4-イソシアナトメチルオクタン、ビス(イソシアナトエチル)カーボネート、ビス(イソシアナトエチル)エーテル、メチルリシネートジイソシアネート、リシントリイソシアネート、ビス(イソシアナトメチル)スルフィド、ビス(イソシアナトエチル)スルフィド、ビス(イソシアナトプロピル)スルフィド、ビス(イソシアナトヘキシル)スルフィド、ビス(イソシアナトメチル)スルホン、ビス(イソシアナトメチル)ジスルフィド、ビス(イソシアナトエチル)ジスルフィド、ビス(イソシアナトプロピル)ジスルフィド、ビス(イソシアナトメチルチオ)メタン、ビス(イソシアナトエチルチオ)メタン、ビス(イソシアナトメチルチオ)エタン、ビス(イソシアナトエチルチオ)エタン、1,5-ジイソシアナト-2-イソシアナトメチル-3-チアペンタン、1,2,3-トリス(イソシアナトメチルチオ)プロパン、1,2,3-トリス(イソシアナトエチルチオ)プロパン、3,5-ジチア-1,2,6,7-ヘプタンテトライソシアネート、2,6-ジイソシアナトメチル-3,5-ジチア-1,7-ヘプタンジイソシアネート、2,5-ジイソシアナトメチルチオフェン、イソシアナトエチルチオ-2,6-ジチア-1,8-オクタンジイソシアネート、チオビス(3-イソチオシアナトプロパン)、チオビス(2-イソチオシアナトエタン)およびジチオビス(2-イソチオシアナトエタン)の1つ以上である;最も好ましくはヘキサメチレンジイソシアネートである。
【0034】
脂環式ポリイソシアネートは、好ましくは、2,5-ビス(イソシアナトメチル)-ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、2,6-ビス(イソシアナトメチル)-ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、イソホロンジイソシアネート、4,4-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、2,5-ジイソシアナトテトラヒドロチオフェン、2,5-ジイソシアナトメチルテトラヒドロチオフェン、3,4-ジイソシアナトメチルテトラヒドロチオフェン、2,5-ジイソシアナト-1,4-ジチアン、2,5-ジイソシアナトメチル-1,4-ジチアン、4,5-ジイソシアナト-1,3-ジチオラン、4,5-ビス(イソシアナトメチル)-1,3-ジチオラン、4,5-ジイソシアナトメチル-2-メチル-1,3-ジチオラン、ノルボルナンジイソシアネート(NBDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、水素化キシリレンジイソシアネート(H6XDI)、1,4-シクロヘキシルジイソシアネート(H6PPDI)、m-テトラメチルキシリレンジイソシアネート(m-TMXDI)およびシクロヘキサンジイソチオシアネートの1つ以上であり、最も好ましくはイソホロンジイソシアネートおよび4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネートの1つ以上である。
【0035】
芳香族ポリイソシアネートは、好ましくは、1,2-ジイソシアナトベンゼン、1,3-ジイソシアナトベンゼン、1,4-ジイソシアナトベンゼン、2,4-ジイソシアナトトルエン、エチルベンゼンジイソシアネート、イソプロピルベンゼンジイソシアネート、トルエンジイソシアネート、ジエチルベンゼンジイソシアネート、ジイソプロピルベンゼンジイソシアネート、トリメチルベンゼントリイソシアネート、ベンゼントリイソシアネート、ビフェニルジイソシアネート、トルイジンジイソシアネート、4,4’-メチレンビス(フェニルイソシアネート)、4,4’-メチレンビス(2-メチルフェニルイソシアネート)、ビベンジル-4,4’-ジイソシアネート、ビス(イソシアナトフェニル)エチレン、ビス(イソシアナトメチル)ベンゼン、ビス(イソシアナトエチル)ベンゼン、ビス(イソシアナトプロピル)ベンゼン、α,α,α’,α’-テトラメチルキシリレンジイソシアネート、ビス(イソシアナトブチル)ベンゼン、ビス(イソシアナトメチル)ナフタレン、ビス(イソシアナトメチルフェニル)エーテル、ビス(イソシアナトエチル)フタレート、2,6-ビス(イソシアナトメチル)フラン、2-イソシアナトフェニル-4-イソシアナトフェニルスルフィド、ビス(4-イソシアナトフェニル)スルフィド、ビス(4-イソシアナトメチルフェニル)スルフィド、ビス(4-イソシアナトフェニル)ジスルフィド、ビス(2-メチル-5-イソシアナトフェニル)ジスルフィド、ビス(3-メチル-5-イソシアナトフェニル)ジスルフィド、ビス(3-メチル-6-イソシアナトフェニル)ジスルフィド、ビス(4-メチル-5-イソシアナトフェニル)ジスルフィド、ビス(4-メトキシ-3-イソシアナトフェニル)ジスルフィド、1,2-ジイソチオシアナトベンゼン、1,3-ジイソチオシアナトベンゼン、1,4-ジイソチオシアナトベンゼン、2,4-ジイソチオシアナトトルエン、2,5-ジイソチオシアナト-m-キシレン、4,4’-メチレンビス(フェニルイソチオシアネート)、4,4’-メチレンビス(2-メチルフェニルイソチオシアネート)、4,4’-メチレンビス(3-メチルフェニルイソチオシアネート)、4,4’-ジイソチオシアナトベンゾフェノン、4,4’-ジイソチオシアナト-3,3’-ジメチルベンゾフェノン、ビス(4-イソチオシアナトフェニル)エーテル、1-イソチオシアナト-4-[(2-イソチオシアナト)スルホニル]ベンゼン、チオビス(4-イソチオシアナトベンゼン)、スルホニル(4-イソチオシアナトベンゼン)、水素化トルエンジイソシアネート(H6TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネートおよびジチオビス(4-イソチオシアナトベンゼン)の1つ以上であり、最も好ましくは、1,2-ジイソシアナトベンゼン、1,3-ジイソシアナトベンゼン、1,4-ジイソシアナトベンゼン、ジフェニルメタンジイソシアネートおよび2,4-ジイソシアナトトルエンの1つ以上である。
【0036】
他のイソシアネート類は、イソシアネート基およびイソチオシアネート基を有していてもよく、例えば、1-イソシアナト-6-イソチオシアナトヘキサン、1-イソシアナト-4-イソチオシアナトシクロヘキサン、1-イソシアナト-4-イソチオシアナトベンゼン、4-メチル-3-イソシアナト-1-イソチオシアナトベンゼン、2-イソシアナト-4,6-ジイソチオシアナト-1,3,5-トリアジン、4-イソシアナトフェニル-4-イソチオシアナトフェニルスルフィドおよび2-イソシアナトエチル-2-イソチオシアナトエチルジスルフィドである。
【0037】
他のイソシアネート類はまた、上記ポリイソシアネート類のハロゲン置換、例えば塩素置換、臭素置換、アルキル置換、アルコキシ置換、ニトロ置換またはシラン置換、例えばイソシアナトプロピルトリエトキシシランまたはイソシアナトプロピルトリメトキシシランであってもよい。
【0038】
ポリイソシアネートは、さらに好ましくは、ヘキサメチレンジイソシアネートおよびイソホロンジイソシアネートの1つ以上、最も好ましくはヘキサメチレンジイソシアネートおよびイソホロンジイソシアネートの組み合わせである。ヘキサメチレンジイソシアネートとイソホロンジイソシアネートとのモル比は、好ましくは1:2~2:1である。
【0039】
成分a)ポリイソシアネートの量は、ポリウレタン-ウレアの総重量に対して、好ましくは10~50重量%、最も好ましくは15~30重量%である。
【0040】
成分b)1.9~2.1のヒドロキシル官能価を有するポリカーボネートポリオール
ポリカーボネートポリオールは、好ましくは、ヘキサンジオールポリカーボネート、ブタンジオールポリカーボネート、ネオペンチルグリコールポリカーボネート、3-メチルペンタンジオールポリカーボネート、および上記ポリカーボネートのコポリマーの1つ以上である。
【0041】
ポリカーボネートポリオールの数平均分子量は、好ましくは800g/mol~4000g/molである。
【0042】
ポリカーボネートポリオールは、ポリウレタン-ウレアの総重量に対して、好ましくは60重量%~80重量%、最も好ましくは65重量%~75重量%の量である。
【0043】
成分c)1.9~2.1のヒドロキシル官能価を有するポリエステルポリオール
ポリエステルポリオールは、好ましくは直鎖ポリエステルジオールおよびわずかに分岐したポリエステルポリオールの1つ以上である。
【0044】
ポリエステルポリオールは、さらに好ましくはポリヘキシレンフタレート、ポリブチレンフタレート、ポリネオペンチルグリコールフタレート、ポリ(ジエチレングリコール)フタレート、ポリ(3-メチルペンタンジオール)フタレート、ポリヘキシレンイソフタレート、ポリブチレンイソフタレート、ポリネオペンチルグリコールイソフタレート、ポリ(ジエチレングリコール)イソフタレート、ポリ(3-メチルペンタンジオール)イソフタレート、ポリヘキシレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリネオペンチルグリコールテレフタレート、ポリ(ジエチレングリコール)テレフタレートおよびポリ(3-メチルペンタンジオール)テレフタレートの1つ以上であり;最も好ましくは、ポリヘキシレンフタレート、ポリブチレンフタレート、ポリネオペンチルグリコールフタレート、ポリ(ジエチレングリコール)フタレート、およびポリ(3-メチルペンタンジオール)フタレートの1つ以上である。
【0045】
ポリエステルポリオールは、好ましくは以下の成分から調製される:脂肪族、脂環式または芳香族ジ-またはポリカルボン酸、例えばテレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸;無水物、例えば無水フタル酸、無水トリメリット酸またはそれらの混合物;低分子量ポリオール類、例えばエチレングリコール、ジ-、トリ-、テトラ-エチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、ジ-、トリ-、テトラ-プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール、1,4-ジヒドロキシシクロヘキサン、1,4-ジメチロールシクロヘキサン、1,8-オクタンジオール、1,10-デカンジオール、1,12-ドデカンジオールまたはそれらの混合物;ならびに任意に、高官能性ポリオール、例えばトリメチロールプロパン、グリセロールまたはペンタエリスリトール、脂環式および/または芳香族ジヒドロキシおよびポリヒドロキシ化合物。
【0046】
ポリエステルポリオールは、さらに好ましくは芳香族二塩基酸および芳香族酸無水物の少なくとも1つと、二価アルコールとを含む混合物の反応によって得られる。芳香族二塩基酸は、好ましくはテレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸の1つ以上である。芳香族酸無水物は、好ましくは無水フタル酸である。二価アルコールは、好ましくは1,6-ヘキサンジオール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルアルコール、3-メチルペンタンジオール、およびジエチレングリコールの1つ以上である。
【0047】
ポリエステルポリオールの数平均分子量は、好ましくは800g/mol~4000g/molである。
【0048】
ポリエステルポリオールは、ポリウレタン-ウレアの総重量に対して、好ましくは2重量%~12重量%の量である。
【0049】
成分d)アミノ含有化合物
アミノ含有カルボキシレート塩は、6-アミノカプロエート、リシネート、およびN-(2-アミノエチル)-β-アラニン一ナトリウム塩の1つ以上である。
【0050】
アミノ含有スルホネート塩は、2-[(2-アミノエチル)アミノ]エタンスルホン酸ナトリウムおよび3-(シクロヘキシルアミン)-1-プロパンスルホン酸ナトリウムの1つ以上である。
【0051】
アミノ含有化合物は、6-アミノカプロエート、リシネート、N-(2-アミノエチル)-β-アラニン一ナトリウム塩、2-[(2-アミノエチル)アミノ]エタンスルホン酸ナトリウムおよび3-(シクロヘキシルアミン)-1-プロパンスルホン酸ナトリウムの1つ以上である。
【0052】
成分d)アミノ含有化合物は、ポリウレタン-ウレアの総重量に対して、好ましくは0.5~2重量%、最も好ましくは0.5~1.0重量%の量である。
【0053】
成分e)ヒドロキシル含有カルボン酸
ヒドロキシル含有カルボン酸は、好ましくは2,2-ジメチロールプロピオン酸および2,2-ジメチロールブタン酸の1つ以上である。
【0054】
ヒドロキシル含有カルボン酸は、ポリウレタン-ウレアの総重量に対して、好ましくは1重量%~5重量%、最も好ましくは2重量%~3重量%の量である。
【0055】
成分f)中和剤
中和剤は、好ましくは有機第三級アミンおよび無機塩基の1つ以上であり;最も好ましくはトリエチルアミン、トリエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、エチルジイソプロピルアミン、アンモニア、水酸化ナトリウムおよび水酸化カリウムの1つ以上である。
【0056】
中和剤は、成分e)ヒドロキシル含有カルボン酸のカルボキシル基の総モルに対して、好ましくは65~105mol%の量である。
【0057】
ヒドロキシル含有カルボン酸および中和剤は、ヒドロキシル含有カルボン酸の塩の形態で系中に直接存在してもよい。
【0058】
成分g)イソシアネート基に対して反応性であり、成分b)~成分e)とは異なる化合物
成分g)任意のイソシアネート基に対して反応性であり、成分b)~成分e)とは異なる化合物は、2~3のヒドロキシル官能価を有するポリオール、および2~3のアミノ官能価を有するアミノ化合物の1つ以上であってもよい。
【0059】
2~3のヒドロキシル官能価を有するポリオールは、好ましくは、ジエチレングリコール、プロパンジオール、ブタンジオール、ヘキサンジオール、ペンタンジオール、トリメチロールプロパンおよびグリセリンの1つ以上である。
【0060】
2~3のアミノ官能価を有するアミノ化合物は、好ましくは、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ブタンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、N-(2-ヒドロキシエチル)-エチレンジアミン、イソホロンジアミン、ヒドラジン水和物およびジエチレントリアミンの1つ以上である。
【0061】
成分g)は、ポリウレタン-ウレアの総重量に対して、好ましくは0.5~2.5重量%、最も好ましくは0.5~1重量%の量である。
【0062】
系
系は、当業者によって一般に使用される量で添加される、外部乳化剤、溶媒、反応性希釈剤、および安定剤の1つ以上をさらに含んでもよい。
【0063】
ポリウレタン-ウレアを含む水性ポリウレタン-ウレア分散体の製造方法
好ましくは、工程ivが、工程iiの前に実施されるとき、工程iiiが、工程ivの前に実施される。
【0064】
本方法の工程順序は、好ましくは工程i、工程iii、工程iiおよび工程ivを連続的に行う。
【0065】
調製方法は、好ましくは、工程iの間または後に有機溶媒を導入する、工程vをさらに含む。
【0066】
有機溶媒は、好ましくは水と混和性であるが、イソシアネート基に対して不活性である溶媒であり、さらに好ましくはアセトン、メチルエチルケトン、プロピレングリコールジメチルエーテル、ヒドロキシル官能基を有さない他のエーテル類、およびヒドロキシル官能基を有さないエステル類の1つ以上であり;最も好ましくはアセトンおよびブタノンの1つ以上である。
【0067】
有機溶媒は、好ましくはピロリドン化合物を含まない。
【0068】
調製方法は、好ましくは、工程vで導入された有機溶媒を水性ポリウレタン-ウレア分散体から除去する、工程viをさらに含む。
【0069】
有機溶媒は、蒸留によって除去することができる。溶媒は、工程ivの間または後に除去することができる。
【0070】
水性ポリウレタン-ウレア分散体中に残存する有機溶媒の量は、水性ポリウレタン-ウレア分散体の総重量に対して、好ましくは1.0重量%未満である。
【0071】
工程iの反応を促進するために、プレポリマーを調製するために一般に使用される触媒、例えばトリエチルアミン、1,4-ジアザビシクロ[2,2,2]-オクタン、ジオクタン酸スズまたはジラウリン酸ジブチルスズ、最も好ましくはジラウリン酸ジブチルスズを使用することができる。
【0072】
触媒は,工程iの成分と同時に反応器に入れることができ、または後に添加することができる。
【0073】
工程iの成分の変換度は、成分中のNCO含有量を試験することによって得ることができる。この目的のために、赤外または近赤外分光測定などの分光測定、ならびに屈折率決定または滴定などの化学分析を、抽出された試料に対して同時に実施することができる。
【0074】
プレポリマーは、常温で固体状態または液体状態であってもよい。
【0075】
プレポリマーの中和度は、50mol%~125mol%、好ましくは65mol%~105mol%であり得る。
【0076】
コーティング組成物、バインダーまたはインク
コーティング組成物、バインダーまたはインクは、好ましくは添加剤をさらに含む。添加剤は、好ましくは接着促進剤、潤滑剤、乳化剤、光安定剤、酸化防止剤、充填剤、沈降防止剤、消泡剤、湿潤剤、流動調節剤、帯電防止剤、フィルム形成助剤、反応性希釈剤、可塑剤、触媒、増粘剤、顔料、染料、粘着付与剤およびマット剤の1つ以上である。
【0077】
原則として、添加剤の選択および投与量は当業者に公知であり、容易に決定することができる。
【0078】
本発明の水性ポリウレタン-ウレア分散体はまた、他の水または溶媒含有オリゴマーまたはポリマー、例えば、水または溶媒含有ポリエステル類、ポリウレタン類、ポリウレタン-ポリアクリレート類、ポリアクリレート類、ポリエーテル類、ポリエステル-ポリアクリレート類、アルキド樹脂、付加ポリマー、ポリアミド/-イミドまたはポリエポキシド類と一緒に混合され、使用され得る。そのような混合物の適合性を試験するために、それぞれの場合に単純な予備試験を使用すべきである。
【0079】
本発明の水性ポリウレタン-ウレア分散体は、カルボキシル基、ヒドロキシル基および/またはブロックイソシアネート基などの官能基を含有する他の化合物と一緒に混合され、使用され得る。
【0080】
本発明のコーティング組成物、バインダーまたはインクは、当業者に公知の方法に従って加工することによって得られる。
【0081】
塗装方法、接着物または印刷物
基材は、好ましくは木材、金属、ガラス、繊維、織物、人工皮革、実皮革、紙、プラスチック、ゴム、発泡体、セラミックおよび様々なポリマーコーティングの1つ以上であり、最も好ましくは、織物、プラスチック、セラミック、金属、実皮革、人工皮革および様々なポリマーコーティングの1つ以上である。
【0082】
コーティングは、コーティング組成物、バインダー、またはインクを基材の表面全体に、または基材の表面の1つ以上の部分のみに塗布することによって行うことができる。
【0083】
コーティングは、ブラシコーティング、ディップコーティング、スプレーコーティング、ローラーコーティング、ナイフコーティング、フローコーティング、キャスティング、または印刷であってもよい。
【0084】
印刷方法および印刷物
塗布は、コーティング組成物、バインダー、またはインクを基材の全表面上に、または基材の表面の1つ以上の部分上のみに塗布することによって行うことができる。
【0085】
塗布は、ナイフコーティングまたは印刷の手段によって行うことができる。印刷は、好ましくはインクジェット印刷である。
【実施例】
【0086】
実施例
別途定義されない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語および科学用語は、当業者によって一般に理解されているものと同じ意味を有する。本明細書における用語の定義が、当業者によって一般に理解されている意味と矛盾する場合、本明細書に記載の定義が優先するものとする。
【0087】
特に明記しない限り、本明細書および特許請求の範囲で使用される成分の量、反応条件などを表すすべての数字は、「約」という表現によって修飾されると理解される。したがって、本明細書に記載の数値パラメータは、反対の指示がない限り、得られる所望の特性に応じて変化し得る近似値である。
【0088】
本明細書で使用される「および/または」という表現は、引用された要素の1つまたはすべてを指す。
【0089】
本明細書で使用される「含む(include)」および「含む(comprise)」という表現は、言及された要素のみが存在する場合、および言及された要素に加えて他の言及されていない要素が存在する場合を包含する。
【0090】
特に明示のない限り、本明細書で使用される「a」、「an」、および「the」という用語は、「少なくとも1つ」または「1つ以上」を含むことを意図する。例えば、「成分」という表現は、1つ以上の成分を意味するので、複数の成分が検討され、実施形態の実施において採用または使用され得る。
【0091】
本発明における全ての百分率は、特に明記しない限り、重量百分率である。
【0092】
本発明における分析および測定は、特に明記しない限り、23±2℃で行われる。
【0093】
ポリマーポリオールの数平均分子量は、ポリスチレン標準試料に対する移動相としてテトラヒドロフランを用いたゲル浸透クロマトグラフィーを用いて、40℃で測定される。
【0094】
原材料および薬剤
Desmophen C2202:Covestro、Germanyから入手可能であり、2.0のヒドロキシル官能価、2000g/molの数平均分子量を有する、ポリカーボネートジオール。
P200H/DS:Covestro、Germanyから入手可能であり、2.0のヒドロキシル官能価、2000g/molの数平均分子量を有する、ポリヘキシレンフタレートジオール。
Desmophen C1200:Covestro、Germanyから入手可能であり、ポリカーボネート:ポリカプロラクトンの比=1.2:1(質量比)、2.0のヒドロキシル官能価、および2000g/molの数平均分子量を有する、ポリカーボネートポリカプロラクトンジオール。
Desmodur(登録商標)H:Covestro、Germanyから入手可能である、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート。
Desmodur(登録商標)I:Covestro、Germanyから入手可能である、イソホロンジイソシアネート。
Desmodur(登録商標)W:Covestro、Germanyから入手可能である、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート。
AAS:Covestro、Germanyから入手可能であり、49%の濃度を有する、N-(2-アミノエチル)アミノエタンスルホン酸ナトリウムNH2-CH2CH2-NH-CH2CH2-SO3Naの水溶液。
ジメチロールプロピオン酸:Sigma Aldrichから入手可能である、ヒドロキシル含有カルボン酸。
SP-9111:Shanghai Xude Fine Chemicals Co.,Ltd.から入手可能であり、赤色の粘性液体であり、鮮やかな赤色のペースト。
BYK349:BYKから入手可能である、シリコーン界面活性剤。
1,2-プロピレングリコール:Shanghai Gaoxin Chemical Glass Instrument Co.,Ltd.から入手可能である、共溶媒。
Tego825:Evonik Specialty Chemicals (Shanghai)Co.,Ltd.から入手可能である、消泡剤。
Borchigel L 75N:Borchers USAから入手可能である、レオロジー添加剤。
Borchigel ALA:Borchers USAから入手可能である、レオロジー添加剤。
Imprafix IO 3025:Covestroから入手可能である、イソシアネート架橋剤。
【0095】
試験方法
水性ポリウレタン-ウレア分散体のZ-平均粒径および多分散指数PDIの試験
1滴の水性ポリウレタン-ウレア分散体を50mlの超純水に添加し、希釈のために穏やかに撹拌した。希釈後、Malvern製のZetasizer Nano(Malvern Zetasizer Nano ZS)で試験した。試験温度は、23.0±0.1℃であった。試験材料の設定:ポリスチレンラテックス(屈折率1.590、吸収値0.010);分散剤の設定:水(温度23.0℃、粘度0.9308cps、屈折率1.330);および平衡時間60秒。試料セルの種類:使い捨て試料セルDTS0012。位置決め方法:自動減衰、位置決めの自動最適化。解析モード:汎用(通常分解能)。テスト角度:173°後方散乱(NIBSデフォルト)。各試料を1ラウンド当たり10回で3ラウンド試験し、各試験の時間は、10秒であった。Z-平均粒径および多分散指数は、それぞれ全ての試験の平均であった。Z-平均粒径は、動的光散乱の原理に従って測定された平均粒径として、規格ISO13321に従って定義された。多分散指数は、粒径の分布を表す。PDIが0に近いほど、粒径分布が狭くなる。
【0096】
75nm未満のZ-平均粒径は、適格であると見なされる。0.3未満の多分散指数PDI(狭い粒径分布)は、適格とみなされる。
【0097】
水性ポリウレタン-ウレア分散体の粘度
粘度は、規格ISO3219:1994に従ってBrookfield粘度計DV-II+ Proで試験した。150gの水性ポリウレタン-ウレア分散体をガラス瓶に秤量した。粘度は、室温(20~25℃)で、回転速度30rpmでS62の数を有するスピンドルを用いて測定した。
【0098】
1000mPa・s未満の粘度を有する水性ポリウレタン-ウレア分散体は、適格であるとみなされる。
【0099】
水性ポリウレタン-ウレア分散体の固形成分の含有量(固形分含有量)
これを、Mettler Toledoからのハロゲン水分計(Mettler Toledo Halogen Moisture Analyzer Excellence HS153)を用いて試験した。ガラス繊維ろ紙片を標準的なアルミニウム秤量皿上に置き、1グラムの水性ポリウレタン-ウレア分散体をガラス繊維ろ紙上に滴下した。標準的な乾燥手順を用いて、120℃の乾燥温度で、停止標準レベル5(1mg/140秒)で乾燥させた。すなわち、試料を120℃に加熱し、連続的に秤量した。試料の重量減少が140秒以内に1mg未満であった場合、試験を停止し、残りの重量パーセントを固形分含有量として記録した。
【0100】
水性ポリウレタン-ウレア分散体の外観の評価方法
50gの水性ポリウレタン-ウレア分散体を、直径3cmの透明ガラス瓶に入れ、黒/白の格子パターンを有する紙カードの前で目視観察した。ガラスの背後の格子パターンがガラス瓶を通して明確に見え、格子パターンの色に明らかな変化がなければ、それは透明であった。ガラスの背後の格子模様がガラス瓶を通してはっきりと見えるが、一方で、格子模様の色が変化する場合、それは半透明であった。ガラス瓶の後ろの格子模様がはっきりと見えない場合、それは不透明であった。
【0101】
水性ポリウレタン-ウレア分散体が外観上半透明または透明である場合、それは適格とみなされた。外観が不透明であれば不適格とした。
【0102】
水性ポリウレタン-ウレア分散体の乾燥フィルムのジャングル試験
工程1:フィルムの調製
99重量%の水性ポリウレタン-ウレア分散体または比較用水性ポリウレタン-ウレア分散体を補給タンク(batching tank)に加えた。次いで、1重量%のBorchigel ALAを添加した。これを完全に撹拌し、粘度を約5000cpsに調整した。A4紙サイズの光沢剥離紙をガラステーブル上に置き、粘着テープでテーブル上に滑らかに固定した。500μmのフィルムアプリケーターを剥離紙の上端に配置した。フィルムアプリケーターを手で両端を保持し、停止することなく一定速度で底部まで引き下げた。完了後、フィルムアプリケーターを洗浄した。得られた試料を取り出し、耐熱板上に置き、50℃のオーブンで30分間乾燥させた。試料を乾燥した後、150℃のオーブンに3分間入れた。試料を取り出し、フィルムの前面をドラフト中でタルク粉末で被覆した。フィルムを剥離紙から取り出し、裏面にタルク粉末を塗布し、室温で24時間放置した。フィルム調製を完了した。
【0103】
フィルムを、標準カッターを用いて、規格DIN53504のS2に従って、ダンベル形状の試験ストリップに切断した。GOTECHからの引張試験機において、試料の初期100%モジュラス、破断点における初期引張伸びおよび初期引張強度を、試験規格DIN53504に従って試験した。
【0104】
工程2:ジャングルエージング試験(Jungle aging test)
調製したフィルムを温度70℃、相対湿度95%の恒温恒湿のチャンバーに入れた。各実施例または比較例について、少なくとも3つの並行サンプルを調製した。
【0105】
7日後にフィルムを取り出し、標準カッターで規格DIN53504のS2に従ってダンベル形状の試験片に切断し、23℃、相対湿度55%で24時間放置後に試験を行った。GOTECHからの引張試験機において、エージング後の100%モジュラス、破断点における引張伸びおよび引張強度を、試験規格DIN53504に従って試験した。
【0106】
エージング後の100%モジュラス、破断点における引張伸び、および引張強度が、初期の100%モジュラス、破断点における引張伸び、および引張強度から50%以下減少した場合、試料は試験に合格したとみなされた。再度、温度70℃、相対湿度95%の恒温恒湿のチャンバーに試料を入れた。7日後、エージング後の100%モジュラス、破断点における引張伸び、および引張強度についての試験のために、サンプルを再び取り出した。試料の形態が著しくエージングした場合(例えば、粘着性となり、変形し、または孔などを有する場合)、またはエージング後の100%モジュラス、破断点における引張伸び、および引張強度が、初期の100%モジュラス、破断点における引張伸び、および引張強度から50%を超えて低下した場合、試料は試験に不合格であるとみなされた。エージング試験を終了し、試料のジャングルエージング試験の結果として、一定の温度および湿度で試料フィルムをチャンバ内に保存した時間(週)を記録した。エージング後の100%モジュラス、破断点における引張伸び、および引張強度が、初期の100%モジュラス、破断点における引張伸び、および引張強度から50%以下減少した場合、試料は試験に合格したとみなされた。再度、温度70℃、相対湿度95%の恒温恒湿のチャンバーに試料を入れた。試料を7日後に分析のために再度取り出し、以下同様に行った。
【0107】
より長い貯蔵時間は、試料のより良好な耐加水分解性を示す。2週間を超えるジャングルエージング試験の時間は、適格とみなされた。
【0108】
試験に使用する機器
GOTECHからの引張試験機:GOTECH Testing Machines Inc.から入手可能である、GOTECH/AI-3000のモデル。
フィルムアプリケータ:Shanghai Modern Environmental Engineering Technology Co.,Ltd.から入手可能である、ISO-500μmのモデル。
恒温恒湿のチャンバー:Guangzhou Wusuo Environmental Instrument Co.,Ltd.から入手可能である、GWS EW0440。
膜厚計:TECLOCK Co.,Ltd.から入手可能である、SM-114のモデル。
【0109】
湿潤摩擦に対する色堅牢度試験
工程1:以下の成分を混合し、印刷ペーストを調製した:82重量%の水性ポリウレタン-ウレア分散体または比較用水性ポリウレタン-ウレア分散体、10重量%のSP9111、3重量%の1,2-プロピレングリコール、0.5重量%のTego825、0.5重量%のBYK349、1重量%のBorchigel L75Nおよび3重量%のImprafix IO 3025。
【0110】
工程2:印刷された資料の調製および試験
1.上記で調製された印刷ペーストは、120メッシュのナイロンスクリーン印刷版を用いて印刷され、基材は、水性ポリウレタンで調製された白色皮革であり、スパチュラで6回塗布された。
2.印刷された試料を25℃、相対湿度50%の条件で72時間置き、自然乾燥させた。
3.湿潤摩擦に対する色堅牢度を、規格AATCC-8-2016に従って、クロックメーター(GT-7034-A, GOTECH Testing Machines Inc.)で試験した。染色は、規格CTAに従って評価され、グレースケールを使用して、合計1~5レベルのスコアリングが行われた。スコアが高いほど、湿潤摩擦に対する色堅牢度はより良好である。スコアが4以上の湿潤摩擦に対する色堅牢度は、適格とみなされる。
【0111】
試験に使用する機器
分散機:Shanghai Modern Environmental Engineering Technology Co.,Ltd.から入手可能である、SFJ400のモデル。
電子天びん:Sartorius Groupから入手可能である、BSA4202S Max 4200g、d=0.01gのモデル。
【0112】
水性ポリウレタン-ウレア分散体の調製
水性ポリウレタン-ウレア分散体1
225.14gのDesmophen C2202および34.11gのP200H/DSを100℃および100mbarで1時間脱水した。混合物を70℃に冷却した後、9.03gのジメチロールプロピオン酸を加え、均一に分散するまで撹拌した。5.99gのDesmodur(登録商標)Hと61.01gのDesmodur(登録商標)Iを65℃で加え、100℃でイソシアネート含量が2.84%になるまで反応させた。その後、596gのアセトンに溶解し、40℃に冷却して反応液を得た。次いで、6.68gのトリエチルアミンを加え、10分間激しく撹拌した。5.26gのN-(2-アミノエチル)アミノエタンスルホン酸ナトリウム溶液および33.32gの水中の2.9gのエチレンジアミンの溶液を加え、10分間激しく撹拌した。次に、597gの水を加えて混合物を分散させた。続いて、蒸留によりアセトンを分離し、35.8重量%の固形分含有量を有する水性ポリウレタン-ウレア分散体1を得た。
【0113】
水性ポリウレタン-ウレア分散体2
246.37gのDesmophen C2202および12.88gのP200H/DSを100℃および100mbarで1時間脱水した。混合物を70℃に冷却した後、9.03gのジメチロールプロピオン酸を加え、均一に分散するまで撹拌した。5.99gのDesmodur(登録商標)Hと61.01gのDesmodur(登録商標)Iを65℃で加え、100℃でイソシアネート含量が2.84%になるまで反応させた。その後、596gのアセトンに溶解し、40℃に冷却して反応液を得た。次いで、6.68gのトリエチルアミンを加え、10分間激しく撹拌した。5.26gのN-(2-アミノエチル)アミノエタンスルホン酸ナトリウム溶液および33.32gの水中の2.9gのエチレンジアミンの溶液を加え、10分間激しく撹拌した。次に、596gの水を加えて混合物を分散させた。続いて、蒸留によりアセトンを分離し、36.5重量%の固形分含有量を有する水性ポリウレタン-ウレア分散体2を得た。
【0114】
比較用水性ポリウレタン-ウレア分散体1
259.26gのDesmophen C2202を100℃および100mbarで1時間脱水した。70℃に冷却後、9.03gのジメチロールプロピオン酸を加え、均一に分散するまで撹拌した。5.99gのDesmodur(登録商標)Hと61.01gのDesmodur(登録商標)Iを65℃で加え、100℃でイソシアネート含量が2.84%になるまで反応させた。その後、596gのアセトンに溶解し、40℃に冷却して反応液を得た。次いで、6.68gのトリエチルアミンを加え、10分間激しく撹拌した。5.26gのN-(2-アミノエチル)アミノエタンスルホン酸ナトリウム溶液および60.67gの水中の7.06gのn-ブチルアミンの溶液を加え、10分間激しく撹拌した。次に、577gの水を加えて混合物を分散させた。続いて、蒸留によりアセトンを分離し、36.4重量%の固形分含有量を有する比較用水性ポリウレタン-ウレア分散体1を得た。
【0115】
比較用水性ポリウレタン-ウレア分散体2
259.26gのDesmophen C2202を100℃および100mbarで1時間脱水した。70℃に冷却後、9.03gのジメチロールプロピオン酸を加え、均一に分散するまで撹拌した。68.93gのDesmodur(登録商標)Iを65℃で加え、100℃でイソシアネート含量2.83%に達するまで反応させた。その後、599gのアセトンに溶解し、40℃に冷却して反応液を得た。次いで、6.68gのトリエチルアミンを加え、10分間激しく撹拌した。5.26gのN-(2-アミノエチル)アミノエタンスルホン酸ナトリウム溶液および33.32gの水中の2.9gのエチレンジアミンの溶液を加え、10分間激しく撹拌した。次いで、600gの水を加えて混合物を分散させた。続いて、蒸留によりアセトンを分離し、36.8重量%の固形分含有量を有する比較用水性ポリウレタン-ウレア分散体2を得た。
【0116】
比較用水性ポリウレタン-ウレア分散体3
216.05gのDesmophen C2202および43.21gのP200H/DSを100℃および100mbarで1時間脱水した。混合物を70℃に冷却した後、9.03gのジメチロールプロピオン酸を加え、均一に分散するまで撹拌した。5.99gのDesmodur(登録商標)Hと61.01gのDesmodur(登録商標)Iを65℃で加え、100℃でイソシアネート含量が2.84%になるまで反応させた。次いで、これを596gのアセトンに溶解し、40℃に冷却して反応溶液を得る。次いで、6.68gのトリエチルアミンを加え、10分間激しく撹拌した。5.26gのN-(2-アミノエチル)アミノエタンスルホン酸ナトリウム溶液および33.32gの水中の2.9gのエチレンジアミンの溶液を加え、10分間激しく撹拌した。次に、596gの水を加えて混合物を分散させた。続いて、蒸留によりアセトンを分離し、35.5重量%の固形分含有量を有する比較用水性ポリウレタン-ウレア分散体3を得た。
【0117】
比較用水性ポリウレタン-ウレア分散体4
420gのDesmophen C1200を100℃および100mbarで1時間脱水した。70℃に冷却後、20.54gのジメチロールプロピオン酸を加え、均一に分散するまで撹拌した。25.74gのDesmodur(登録商標)Wと108.22gのDesmodur(登録商標)Iを65℃で加え、100℃でイソシアネート含量が3.24%になるまで反応させた。その後、1021gのアセトンに溶解し、40℃に冷却して反応液を得た。次に、15.21gのトリエチルアミンを加え、10分間激しく撹拌した。13.81gのN-(2-アミノエチル)アミノエタンスルホン酸ナトリウム溶液および103.83gの水中の9.6gのエチレンジアミンの溶液を加え、10分間激しく撹拌した。次に、968gの水を加えて混合物を分散させた。次いで、蒸留によりアセトンを分離し、30.7重量%の固形分含有量を有する比較用水性ポリウレタン-ウレア分散体4を得た。
【0118】
比較用水性ポリウレタン-ウレア分散体5
225.14gのDesmophen C2202および34.11gのP200H/DSを100℃および100mbarで1時間脱水した。混合物を70℃に冷却した後、9.03gのジメチロールプロピオン酸を加え、均一に分散するまで撹拌した。5.99gのDesmodur(登録商標)Hと61.01gのDesmodur(登録商標)Iを65℃で加え、100℃でイソシアネート含量が2.84%になるまで反応させた。その後、596gのアセトンに溶解し、40℃に冷却して反応液を得た。次いで、6.68gのトリエチルアミンを加え、10分間激しく撹拌した。24.43gの水中の3.72gのエチレンジアミンの溶液を加え、10分間激しく撹拌した。次に、605gの水を加えて混合物を分散させた。続いて、蒸留によりアセトンを分離し、35.2重量%の固形分含有量を有する比較用水性ポリウレタン-ウレア分散体5を得た。
【0119】
比較用水性ポリウレタン-ウレア分散体6
225.14gのDesmophen C2202および34.11gのP200H/DSを100℃および100mbarで1時間脱水した。4.96gのDesmodur(登録商標)Hと50.51gのDesmodur(登録商標)Iを65℃で加え、100℃でイソシアネート含量が3.40%になるまで反応させた。その後、559gのアセトンに溶解し、40℃に冷却して反応液を得た。次に、17.34gのN-(2-アミノエチル)アミノエタンスルホン酸ナトリウム溶液と62.76gの水中の2.4gのエチレンジアミンの溶液を加え、10分間激しく攪拌した。次に、533gの水を加えて混合物を分散させた。次いで、蒸留によりアセトンを分離し、34.9重量%の固形分含有量を有する比較用水性ポリウレタン-ウレア分散体6を得た。
【0120】
表1は、本発明の実施例および比較例の水性ポリウレタン-ウレア分散体の粘度、Z-平均粒径、多分散指数(PDI)、湿潤摩擦に対する色堅牢度、ジャングル試験および外観の評価結果を示す。 表1 水性ポリウレタン-ウレア分散体の評価
【0121】
【0122】
備考:
* 湿潤摩擦に対する色堅牢度は、ジャングル試験の不適格な結果のために試験しなかった;
** ジャングル試験は、湿潤摩擦に対する色堅牢度の不適格な試験結果のために実施しなかった;
*** 水性ポリウレタン-ウレア分散体の不適格なZ-平均粒径のため、湿潤摩擦に対する色堅牢度試験およびジャングル試験は実施しなかった。
【0123】
本特許出願の実施例の水性ポリウレタン-ウレア分散体は、小さい粒径、狭い粒径分布および半透明性の特性を有していた。したがって、本発明の水性ポリウレタン-ウレア分散体によって形成された湿潤フィルムは、明るい色を有していた。本特許出願の水性ポリウレタン-ウレア分散体のペイントフィルムは、湿潤摩擦に対する高い色堅牢度および乾燥フィルムのジャングル試験における長い試験時間を有していた。したがって、それによって形成された乾燥フィルムは、摩擦に対する良好な色堅牢度および耐加水分解性を有した。本特許出願の水性ポリウレタン-ウレア分散体は、粘度が低く、インクジェット印刷用のインク配合物のための樹脂バインダー成分として特に適していた。
【0124】
比較例1および2の水性ポリウレタン-ウレア分散体の系は、芳香族ポリエステルポリオールを含まず、水性ポリウレタン-ウレア分散体は、良好なジャングル試験時間および良好な湿潤摩擦に対する色堅牢度の両方を有することができなかった。さらに、比較例1の水性ポリウレタン-ウレア分散体の外観は、不透明であった。すなわち、それによって形成されたフィルムは、演色性が悪く、色は明るくなかった。
【0125】
比較例3の水性ポリウレタン-ウレア分散体の系におけるポリカーボネートポリオールと芳香族ポリエステルポリオールとの重量比は、6:1未満であり、水性ポリウレタン-ウレア分散体のジャングル試験時間は、短かった。
【0126】
比較例4の水性ポリウレタン-ウレア分散体の系におけるポリカーボネートポリオールと脂肪族ポリエステルポリオールとの重量比は、20:1より大きく、水性ポリウレタン-ウレア分散体は、高い粘度および短いジャングル試験時間を有していた。
【0127】
比較例5の水性ポリウレタン-ウレア分散体の系は、アミノ基含有化合物を含まず、水性ポリウレタン-ウレア分散体は、大きいZ-平均粒径、低い湿潤摩擦に対する色堅牢度、不透明な外観を有していた。
【0128】
比較例6の水性ポリウレタン-ウレア分散体の系は、ヒドロキシル含有カルボン酸を含まず、水性ポリウレタン-ウレア分散体は、大きいZ-平均粒径、大きい多分散指数、不透明な外観を有していた。
【0129】
当業者は、本発明が前述の詳細に限定されず、本発明の精神または主な特徴から逸脱することなく他の特定の形態で実施され得ることを容易に理解するのであろう。したがって、実施例はいかなる観点からも限定的ではなく例示的であるとみなされるべきであり、したがって、本発明の範囲は、前述の説明ではなく、特許請求の範囲によって例示される。したがって、いかなる変更も、それが特許請求の範囲の均等物の意味および範囲に入る限り、本発明に属するものとみなされるべきである。
【手続補正書】
【提出日】2024-05-01
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリウレタン-ウレアを含む水性ポリウレタン-ウレア分散体であって、ポリウレタン-ウレアが、以下の成分:
a. 少なくとも1つのポリイソシアネート;
b. 1.9~2.1のヒドロキシル官能価を有する少なくとも1つのポリカーボネートポリオール;
c. 1.9~2.1のヒドロキシル官能価を有する少なくとも1つのポリエステルポリオールであって、前記ポリエステルポリオールが、芳香族二塩基酸および芳香族酸無水物の少なくとも1つと、二価アルコールとを含む混合物の反応によって得られる、ポリエステルポリオール;
d. アミノ含有カルボン酸、アミノ含有カルボン酸塩、アミノ含有スルホン酸、およびアミノ含有スルホン酸塩の1つ以上である、少なくとも1つのアミノ含有化合物;
e. 少なくとも1つのヒドロキシル含有カルボン酸;
f. 少なくとも1つの中和剤;および
g. 任意に、成分b)~成分e)とは異なり、32g/mol~400g/molの分子量を有する、イソシアネート基に対して反応性である化合物
(ここで、ポリカーボネートポリオールとポリエステルポリオールの重量比は、6:1~20:1である)
を含む系の反応によって得られる、水性ポリウレタン-ウレア分散体。
【請求項2】
水性ポリウレタン-ウレア分散体中の有機溶媒の量が、水性ポリウレタン-ウレア分散体の総重量に対して、1重量%未満であることを特徴とする、請求項1に記載の水性ポリウレタン-ウレア分散体。
【請求項3】
水性ポリウレタン-ウレア分散体が、以下の特性:
10mPa・s~1000mPa・sの粘度(Brookfieldからの粘度計を用いて、規格ISO3219:1994に従って試験した);
30~40重量%の固形分含有量(Mettler Toledoからのハロゲン水分計で試験した);
30nm~75nmのZ-平均粒径(MalvernからのZetasizer Nanoで試験した);および
0~0.3の多分散指数(MalvernからのZetasizer Nanoで試験した)
の少なくとも1つを有することを特徴とする、請求項1または2に記載の水性ポリウレタン-ウレア分散体。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載のポリウレタン-ウレアを含む水性ポリウレタン-ウレア分散体の製造方法であって、以下の工程:
i. 成分a)少なくとも1つのポリイソシアネート、成分b)1.9~2.1のヒドロキシル官能価を有する少なくとも1つのポリカーボネートポリオール、成分c)1.9~2.1のヒドロキシル官能価を有する少なくとも1つのポリエステルポリオール、成分e)少なくとも1つのヒドロキシル含有カルボン酸および成分g)任意に、成分b)~成分e)とは異なり、イソシアネート基に対して反応性である化合物、のいくつかまたは全てを反応させて、プレポリマーを得る工程;
ii. プレポリマー、成分d)少なくとも1つのアミノ含有化合物および成分g)任意に、成分b)~成分e)とは異なり、イソシアネート基に対して反応性である化合物、を反応させて、ポリウレタン-ウレアを得る工程;
iii. 工程iiの前または後に、成分f)少なくとも1つの中和剤、を添加する工程;および
iv. 工程iiの前、間、または後に、水を導入して、水性ポリウレタン-ウレア分散体を得る工程
を含む、方法。
【請求項5】
請求項1~3のいずれか一項に記載のポリウレタン-ウレアを含む水性ポリウレタン-ウレア分散体を含む、コーティング組成物、バインダーまたはインク。
【請求項6】
コーティングされた物、接着された物、または印刷された物を調製するための、請求項1~3のいずれか一項に記載のポリウレタン-ウレアを含む水性ポリウレタン-ウレア分散体の使用。
【請求項7】
請求項1~3のいずれか一項に記載のポリウレタン-ウレアを含む水性ポリウレタン-ウレア分散体で、調製、コーティング、接着、シール、または印刷された基材を含む対象物または物品。
【請求項8】
以下の工程:請求項1~3のいずれか一項に記載のポリウレタン-ウレアを含む水性ポリウレタン-ウレア分散体を基材の表面に塗布し、その後硬化させる工程、を含む印刷方法。
【請求項9】
基材および請求項1~3のいずれか一項に記載のポリウレタン-ウレアを含む水性ポリウレタン-ウレア分散体を基材上に塗布することによって形成されたコーティングを含む、印刷物。
【国際調査報告】