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特表2024-536714新たなコロナウイルスワクチンならびにウイルスワクチンをデザインおよび得るための方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-08
(54)【発明の名称】新たなコロナウイルスワクチンならびにウイルスワクチンをデザインおよび得るための方法
(51)【国際特許分類】
   C12P 21/02 20060101AFI20241001BHJP
   C07K 14/165 20060101ALI20241001BHJP
   A61K 39/215 20060101ALI20241001BHJP
   A61K 38/16 20060101ALI20241001BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20241001BHJP
   A61P 37/04 20060101ALI20241001BHJP
   A61P 31/14 20060101ALI20241001BHJP
   C12N 15/50 20060101ALN20241001BHJP
【FI】
C12P21/02 C ZNA
C07K14/165
A61K39/215
A61K38/16
A61K48/00
A61P37/04
A61P31/14
C12N15/50
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024513763
(86)(22)【出願日】2022-08-31
(85)【翻訳文提出日】2024-04-26
(86)【国際出願番号】 EP2022074255
(87)【国際公開番号】W WO2023031306
(87)【国際公開日】2023-03-09
(31)【優先権主張番号】21194414.5
(32)【優先日】2021-09-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】504439274
【氏名又は名称】マックス-デルブリュック-ツェントルム フューア モレキュラーレ メディツィン イン デア ヘルムホルツ-ゲマインシャフト
(71)【出願人】
【識別番号】508374139
【氏名又は名称】エー・テー・ハー・チューリッヒ
【氏名又は名称原語表記】ETH ZUERICH
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100122301
【弁理士】
【氏名又は名称】冨田 憲史
(74)【代理人】
【識別番号】100170520
【弁理士】
【氏名又は名称】笹倉 真奈美
(74)【代理人】
【識別番号】100221545
【弁理士】
【氏名又は名称】白江 雄介
(72)【発明者】
【氏名】デ ラ ロサ,カトリン
(72)【発明者】
【氏名】レベディン,ミハイル
(72)【発明者】
【氏名】ラツヴォール,クリストフ
(72)【発明者】
【氏名】バスケス ガルシア,クララ
(72)【発明者】
【氏名】ジルヴィス,カスパー
(72)【発明者】
【氏名】アイヤー,クラウス
(72)【発明者】
【氏名】シグヴァルダドッティル,インギビョルグ
(72)【発明者】
【氏名】オルソン,シモン
【テーマコード(参考)】
4B064
4C084
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4B064AG31
4B064CA19
4B064CC24
4B064CE12
4B064DA01
4C084AA02
4C084AA13
4C084BA44
4C084CA01
4C084DC50
4C084MA16
4C084MA66
4C084NA14
4C084ZB09
4C084ZB33
4C085AA03
4C085BA71
4C085CC08
4C085EE01
4C085GG01
4H045AA10
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045CA01
4H045DA86
4H045EA20
4H045EA31
4H045FA74
4H045GA26
(57)【要約】
本発明は、コロナウイルスの突然変異受容体結合ドメイン(mRBD)(mRBD-CORONA)またはこの断片、およびCORONA-mRBDまたはこの断片を含むコロナウイルスの突然変異スパイクタンパク質(CORONA-mSpike)またはこの断片に関する。その上、本発明は、mRBD-CORONAもしくはこの断片またはCORONA-mSpikeもしくはこの断片を含むポリペプチドまたはタンパク質、およびmRBD-CORONAもしくはこの断片またはCORONA-mSpikeもしくはこの断片をコードするヌクレオチド配列を含む核酸に関する。その上、本発明は、本発明による、1つもしくは複数のCORONA-mRBDもしくはこの断片、1つもしくは複数のCORONA-mSpike、1つもしくは複数のポリペプチドもしくはタンパク質、および/または1つもしくは複数の核酸を含むワクチン組成物に関する。その上、本発明は、対象においてコロナウイルスにより引き起こされる疾患の予防および/または治療における使用のための、本発明による、1つもしくは複数のCORONA-mRBDもしくはこの断片、1つもしくは複数のCORONA-mSpike、1つもしくは複数のポリペプチドもしくはタンパク質、1つもしくは複数の核酸、および/またはワクチン組成物に関する。その上、本発明は、本発明による、ワクチン組成物用の活性成分をデザインおよび/または得るための方法、ならびにVIRUS-mRBDを得るための方法によってデザインおよび/または得られたVIRUS-mRBDまたはこの断片に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワクチン組成物用の活性成分をデザインおよび/または得るための方法であって、
(i)ウイルスの野生型受容体結合ドメイン(VIRUS-wtRBD)に1つまたは複数の突然変異を含む、ウイルスの突然変異受容体結合ドメイン(VIRUS-mRBD)またはこの断片を用意する工程と、
(ii)VIRUS-mRBDまたはこの断片が
a)VIRUS-wtRBDと比較した、ウイルスの受容体結合ドメインの受容体(RBD受容体)(VIRUS-RBD受容体)に対する結合力の低下
を示すかどうかを決定する工程と、
(iii)a)が満たされるとき、VIRUS-mRBDまたはこの断片を活性成分として選択する工程と
を含む方法。
【請求項2】
(ii)の工程において、VIRUS-mRBDまたはこの断片が、
b)抗VIRUS-wtRBD中和抗体(VIRUS-wtRBD-nAB)に対する結合、ならびに
c)適宜、タンパク質および/またはペプチドの安定性
を示すかどうかを決定することと、
(iii)の工程において、a)およびb)が同時に、ならびに適宜a)、b)、およびc)が同時に満たされるとき、VIRUS-mRBDまたはこの断片を活性成分として選択することと
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
(i)の工程が、それぞれがVIRUS-wtRBDに1つまたは複数の突然変異を含むVIRUS-mRBDまたはこの断片のライブラリーを用意することを含み、ここで、ライブラリーに含まれるVIRUS-mRBDまたはこの断片の突然変異が少なくとも部分的に異なり、
(ii)の工程が、
a)VIRUS-wtRBDと比較した、VIRUS-RBD受容体に対する結合力の低下
を示すVIRUS-mRBDまたはこの断片についてライブラリーをスクリーニングすることにより実施され、
(iii)の工程が、ライブラリーから、a)を満たす1つまたは複数のVIRUS-mRBDまたはこの断片を活性成分として選択することを含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
(ii)の工程が、
a)VIRUS-wtRBDと比較した、VIRUS-RBD受容体に対する結合力の低下、ならびに
b)VIRUS-wtRBD-nABに対する結合、ならびに
c)適宜、タンパク質および/またはペプチドの安定性
を示すVIRUS-mRBDまたはこの断片についてライブラリーをスクリーニングすることにより実施され、
(iii)の工程が、ライブラリーから、a)およびb)を同時に満たし、ならびに適宜、c)を同時に満たす1つまたは複数のVIRUS-mRBDまたはこの断片を活性成分として選択することを含む、請求項1から3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
(iii)の工程が、ライブラリーの1つまたは複数のVIRUS-mRBDまたはこの断片を
a)VIRUS-wtRBDと比較して、VIRUS-RBD受容体に対する結合力を低下させるこれらの能力、ならびに
b)適宜、VIRUS-wtRBD-nABに対して結合するこれらの能力、ならびに
c)さらに適宜、タンパク質および/またはペプチドの安定性を示すこれらの能力
についてスコアリングすることと、
スコアリングに基づいて、ライブラリーから、a)についての最高スコア、またはa)およびb)ならびに適宜c)の組合せについての最高スコアを有する1つまたは複数のVIRUS-mRBDまたはこの断片を活性成分として選択することと
をさらに含む、請求項1から4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
(i)および(ii)の工程をインビトロで実施し、ならびに/または(iii)の工程におけるスコアリングをインシリコで実施する、請求項1から5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
- VIRUS-mRBDが、本発明によるCORONA-mRBD、より好ましくは、本発明によるSARS-mRBDおよび/またはMERS-mRBDであり、
- VIRUS-wtRBDが、本発明によるCORONA-wtRBD、より好ましくは、本発明によるSARS-wtRBD(配列番号1)および/またはMERS-wtRBD(配列番号194)であり、
- VIRUS-RBD受容体が、CORONA-RBD受容体、より好ましくは、ACE2および/またはDPP4であり、
- VIRUS-wtRBD-nABが、本発明によるCORONA-wtRBD-nAB、より好ましくは、本発明によるSARS-wtRBD-nABおよび/またはMERS-wtRBD-nABであり、
- VIRUS-mSpikeが、本発明によるCORONA-mSpike、より好ましくは、本発明によるSARS-mSpikeおよび/またはMERS-mSpikeである、請求項1から6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
請求項のいずれかに記載の方法により活性成分として得られたVIRUS-mRBDまたはこの断片。
【請求項9】
コロナウイルスのRBD受容体(CORONA-RBD受容体)に対する結合力が、コロナウイルスの野生型受容体結合ドメイン(CORONA-wtRBD)と比較して低下した、コロナウイルスの突然変異受容体結合ドメイン(mRBD)(CORONA-mRBD)またはこの断片。
【請求項10】
抗CORONA-wtRBD中和抗体に対する結合を示す、請求項9に記載のCORONA-mRBDまたはこの断片。
【請求項11】
細胞間融合を減少させる、請求項9または10に記載のCORONA-mRBDまたはこの断片。
【請求項12】
細胞性抗原取込みおよび/または受容体内部移行を減少させる、請求項9から11に記載のCORONA-mRBDまたはこの断片。
【請求項13】
(A)コロナウイルスが、SARS-CoV-2(重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2型)であり、
CORONA-mRBDが、SARS-CoV-2の突然変異受容体結合ドメイン(SARS-mRBD)またはこの断片であり、
野生型受容体結合ドメインが、SARS-wtRBD(SARS-CoV-2の野生型受容体結合ドメイン)であり、
RBD受容体が、ACE2(アンジオテンシン変換酵素2)であるか、あるいは
(B)コロナウイルスが、MERS-CoV(中東呼吸器症候群コロナウイルス)であり、
CORONA-mRBDが、MERS-CoVの突然変異受容体結合ドメイン(MERS-mRBD)またはこの断片であり、
野生型受容体結合ドメインが、MERS-wtRBD(MERS-CoVの野生型受容体結合ドメイン)であり、
RBD受容体が、DPP4(ジペプチジルペプチダーゼ4)である、請求項9から12に記載のCORONA-mRBDまたはこの断片。
【請求項14】
(A)SARS-mRBDもしくはこの断片が、配列番号1のSARS-wtRBDのG184、Y187、L137、Y171、F138、Q180、F168、Y131もしくはS55から選択される位置におけるアミノ酸残基の1つもしくは複数の置換を含むアミノ酸配列もしくはこの断片を含み、ここで、SARS-mRBDもしくはこの断片が、置換を除いて、配列番号1に対する85%以上のアミノ酸配列同一性を有し、および/または
(B)MERS-mRBDもしくはこの断片が、配列番号194のMERS-wtRBDのL140、D144、E170、D171もしくはD173から選択される位置におけるアミノ酸残基の1つもしくは複数の置換を含むアミノ酸配列もしくはこの断片を含み、ここで、MERS-mRBDもしくはこの断片が、置換を除いて、配列番号194に対する85%以上のアミノ酸配列同一性を有する、請求項9から13に記載のCORONA-mRBDまたはこの断片。
【請求項15】
(A)SARS-mRBDまたはこの断片では、
- G184の位置におけるアミノ酸残基の置換が、G184A、G184C、G184D、G184E、G184F、G184H、G184I、G184K、G184L、G184M、G184N、G184P、G184Q、G184R、G184S、G184T、G184V、G184WもしくはG184Yから選択され、
- Y187の位置におけるアミノ酸残基の置換が、Y187A、Y187C、Y187D、Y187E、Y187G、Y187I、Y187K、Y187L、Y187M、Y187N、Y187Q、Y187R、Y187S、Y187TもしくはY187Vから選択され、
- L137の位置におけるアミノ酸残基の置換が、L137D、L137E、L137K、L137RもしくはL137Yから選択され、
- Y171の位置におけるアミノ酸残基の置換が、Y171A、Y171C、Y171E、Y171I、Y171K、Y171L、Y171M、Y171N、Y171P、Y171Q、Y171R、Y171S、Y171TもしくはY171Vから選択され、
- F138の位置におけるアミノ酸残基の置換が、F138A、F138C、F138E、F138G、F138I、F138K、F138N、F138Q、F138R、F138S、F138T、F138WもしくはF138Yから選択され、
- Q180の位置におけるアミノ酸残基の置換が、Q180C、Q180D、Q180I、Q180K、Q180LもしくはQ180Vから選択され、
- F168の位置におけるアミノ酸残基の置換が、F168C、F168DもしくはF168Eから選択され、
- Y131の位置におけるアミノ酸残基の置換が、Y131A、Y131C、Y131D、Y131E、Y131F、Y131G、Y131H、Y131I、Y131L、Y131M、Y131N、Y131P、Y131Q、Y131S、Y131T、Y131VもしくはY131Wから選択され、および/または
- S55の位置におけるアミノ酸残基の置換が、S55Nであり、ならびに/あるいは
(B)MERS-mRBDまたはこの断片では、
- L140の位置におけるアミノ酸残基の置換が、L140Aであり、
- D144の位置におけるアミノ酸残基の置換が、D144Aであり、
- E170の位置におけるアミノ酸残基の置換が、E170Rであり、
- D171の位置におけるアミノ酸残基の置換が、D171Kであり、および/または
- D173の位置におけるアミノ酸残基の置換が、D173Kである、請求項9から14のいずれかに記載のCORONA-mRBDまたはこの断片。
【請求項16】
(A)SARS-mRBDもしくはこの断片が、配列番号1のSARS-wtRBDのG184もしくはL137から選択される位置におけるアミノ酸残基の1つの置換を含むアミノ酸配列もしくはこの断片を含み、ここで、
- G184の位置におけるアミノ酸残基の置換が、G184E、G184RもしくはG184Dから選択され、
- L137の位置におけるアミノ酸残基の置換が、L137Rであり、ならびに/または
(B)MERS-mRBDもしくはこの断片が、配列番号194のMERS-wtRBDのD144およびD171から選択される位置におけるアミノ酸残基の1つの置換を含むアミノ酸配列もしくはこの断片を含み、ここで、
- D144の位置におけるアミノ酸残基の置換が、D144Aであり、
- D171の位置におけるアミノ酸残基の置換が、D171Kである、請求項9から15のいずれかに記載のCORONA-mRBDまたはこの断片。
【請求項17】
(A)SARS-mRBDまたはこの断片が、配列番号15、配列番号17、配列番号5、配列番号20、配列番号9、配列番号16、配列番号13、配列番号2、配列番号3、配列番号18、配列番号12、配列番号14、配列番号11、配列番号7または配列番号10、配列番号55または配列番号30から選択されるアミノ酸配列を含み、
(B)MERS-mRBDまたはこの断片が、配列番号195または配列番号196から選択されるアミノ酸配列を含む、請求項9から16のいずれかに記載のCORONA-mRBDまたはこの断片。
【請求項18】
請求項9から17のいずれかに記載のCORONA-mRBDまたはこの断片を含む、コロナウイルスの突然変異スパイクタンパク質(CORONA-mSpike)またはこの断片。
【請求項19】
請求項9から17のいずれかに記載のCORONA-mRBDもしくはこの断片または請求項18に記載のCORONA-mSpikeもしくはこの断片を含むポリペプチドまたはタンパク質。
【請求項20】
- 請求項9から17のいずれかに記載のCORONA-mRBDもしくはこの断片、
- 請求項18に記載のCORONA-mSpikeもしくはこの断片、または
- 請求項19に記載のポリペプチドもしくはタンパク質
をコードするヌクレオチド配列を含む核酸。
【請求項21】
活性成分として、
- 請求項9から17のいずれかに記載の1つもしくは複数のCORONA-mRBDもしくはこの断片、および/または
- 請求項18に記載の1つもしくは複数のCORONA-mSpikeもしくはこの断片、および/または
- 請求項19に記載の1つもしくは複数のポリペプチドもしくはタンパク質、および/または
- 請求項20に記載の1つもしくは複数の核酸
を含むワクチン組成物。
【請求項22】
対象においてコロナウイルスにより引き起こされる疾患の予防および/または治療における使用のための、
請求項9から17のいずれかに記載の1つもしくは複数のCORONA-mRBDもしくはこの断片、および/または
請求項18に記載の1つもしくは複数のCORONA-mSpikeもしくはこの断片、および/または
請求項19に記載の1つもしくは複数のポリペプチドもしくはタンパク質、および/または
請求項20に記載の1つもしくは複数の核酸、および/または
請求項21に記載のワクチン組成物。
【請求項23】
対象においてコロナウイルスにより引き起こされる疾患、好ましくは、SARS-CoV-2により引き起こされるCOVID-19および/またはMERS-CoVにより引き起こされるMERSの予防および/または治療のための方法であって、
請求項9から17に記載の1つもしくは複数のCORONA-mRBDもしくはこの断片、
請求項18に記載の1つもしくは複数のCORONA-mSpikeもしくはこの断片、
請求項19に記載の1つもしくは複数のポリペプチドもしくはタンパク質、
請求項20に記載の1つもしくは複数の核酸、および/または
請求項21に記載のワクチン組成物
を対象に投与することを含む方法。
【請求項24】
対象において、好ましくはコロナウイルス、SARS-CoV-2、MERS-CoVに対する免疫応答を誘導するための方法であって、
請求項9から17に記載の1つもしくは複数のCORONA-mRBDもしくはこの断片、
請求項18に記載の1つもしくは複数のCORONA-mSpikeもしくはこの断片、
請求項19に記載の1つもしくは複数のポリペプチドもしくはタンパク質、
請求項20に記載の1つもしくは複数の核酸、および/または
請求項21に記載のワクチン組成物
を対象に投与することを含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コロナウイルスの突然変異受容体結合ドメイン(mRBD)(mRBD-CORONA)またはこの断片、およびCORONA-mRBDまたはこの断片を含むコロナウイルスの突然変異スパイクタンパク質(CORONA-mSpike)またはこの断片に関する。
【0002】
その上、本発明は、mRBD-CORONAもしくはこの断片またはCORONA-mSpikeもしくはこの断片を含むポリペプチドまたはタンパク質、およびmRBD-CORONAもしくはこの断片またはCORONA-mSpikeもしくはこの断片をコードするヌクレオチド配列を含む核酸に関する。
【0003】
その上、本発明は、本発明による、1つもしくは複数のCORONA-mRBDもしくはこの断片、1つもしくは複数のCORONA-mSpike、1つもしくは複数のポリペプチドもしくはタンパク質、および/または1つもしくは複数の核酸を含むワクチン組成物に関する。
【0004】
その上、本発明は、対象においてコロナウイルスにより引き起こされる疾患の予防および/または治療における使用のための、本発明による、1つもしくは複数のCORONA-mRBDもしくはこの断片、1つもしくは複数のCORONA-mSpike、1つもしくは複数のポリペプチドもしくはタンパク質、1つもしくは複数の核酸、および/またはワクチン組成物に関する。
【0005】
その上、本発明は、本発明による、ワクチン組成物用の活性成分をデザインおよび/または得るための方法、ならびにVIRUS-mRBDを得るための方法によってデザインおよび/または得られたVIRUS-mRBDまたはこの断片に関する。
【背景技術】
【0006】
アンジオテンシン変換酵素2(ACE2)は、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)の細胞への侵入を媒介する受容体として作用する。膜結合型のACE2受容体は、プロテアーゼ、例えば、ADAM17(腫瘍壊死因子アルファコンバターゼ)およびTMPRSS2(膜貫通セリンプロテアーゼ亜型)により切断され、これにより可溶性ACE2(sACE2)の細胞外間隙内への排出が促進される。可溶性ACE2は、酵素的に活性な型(活性ACE2)および酵素的に不活性な型(不活性ACE2)で存在する。
【0007】
重要なことには、ウイルスを中和する血清の能力は、中和抗体(nAB)に依存する。ACE2とスパイクとの相互作用に干渉する抗体の誘導は、免疫応答の中和を生じ、防御免疫を付与するのに重要である。しかし、B細胞の活性化および強力な抗体の親和性成熟は、抗原、すなわち、スパイクタンパク質またはスパイクタンパク質の受容体結合ドメイン(RBD)の利用可能性に強く依存する。
【発明の概要】
【0008】
本発明は、可溶性受容体が免疫原に結合することにより、抗原がマスクされることによって液性免疫が妨害されるという発明者らの発見に基づく(図1)。SARS-CoV-2では、感染および免疫化の間に高濃度のsACE2がSARS-CoV-2スパイクをマスクし、これにより、RBDの受容体結合インターフェースであるSARS-CoV-2受容体結合モチーフ(RBM)への抗体の成熟に結果的に干渉することを示すことができた。高濃度の可溶性受容体および/または高結合親和性により、エピトープのマスキングが増強されることを示すことができた。重要なことには、ACE2の結合を阻止する突然変異の導入により、可溶性ACE2によるマスキングが抑止され、これによって可溶性受容体存在下でのRBM結合抗体の産生が助長されることを示すことができた。ワクチンに対する免疫応答が宿主受容体への結合の阻止によって向上し得るため、この発見はワクチン抗原のデザインに特に重要である。
【0009】
ACE2と同様に、ウイルスの他の受容体、例として、DPP4が排出されることがあり、これはMERS-CoVコロナウイルスの受容体であり、健常なヒト対象の血中に高濃度で存在する。同様に、他のウイルスもウイルス侵入に受容体を使用し、これも免疫応答に干渉し得る濃度の可溶性バージョンで存在する。
【0010】
一方、特定のワクチン接種/免疫/自然感染によってSARS-CoV-2に対する十分な免疫が付与されないことが、個体の5~40%において認められている。さらに、RBDに対して産生される抗体は、ウイルススパイクの他の部分に対する抗体よりも急速に減退する(https://www.cell.com/action/showPdf?pii=S0092-8674%2821%2900706-6)。その上、ワクチン接種後に誘発されるメモリーB細胞により産生される抗体は、自然感染により誘発される抗体と比較して効力が低いことが示されている(https://www.biorxiv.org/content/10.1101/2021.07.29.454333v1.full.pdf)。
【0011】
その上、新たに出現したウイルス変異体は、これらの受容体に対する親和性が向上し得ることが見出されている(図11)。したがって、本発明者らは、これらの高親和性変異体に基づく将来のワクチンは、sACE2によるマスキングに対してさらに感受性であり得ると結論づける。新規の変異体に対する同レベルの防御を達成するために、より高親和性の抗体が必要とされる。したがって、可溶性受容体のマスキングを回避するワクチンは、現行のウイルスの進化によって、より高親和性のウイルス株の出現が引き起こされる場合、なお一層重要となる。
【0012】
上記を考慮すると、上述の問題を克服する改良ワクチンに対する差し迫った必要性が存在する。本発明の主要な目的は、このようなワクチンを得るための方法を提供することである。
【0013】
本発明は、上述の目的のすべてが、受容体に対する結合力が低下したコロナウイルスの受容体結合ドメインを免疫化に使用することによって解決可能であるという驚くべき知見に基づく。
【0014】
本発明は、上述の目的のすべてが、1つまたは複数のアミノ酸の置換を有するコロナウイルスの突然変異受容体結合ドメインの使用によって解決可能であるという驚くべき知見にさらに基づく。
【0015】
その上、本発明は、上述の目的のすべてが、それぞれ異なるアミノ酸の置換を有するコロナウイルスの突然変異受容体結合ドメインの組合せの使用によって解決可能であるという驚くべき知見にさらに基づく。
【0016】
本発明は、上述の目的のすべてが、その受容体に対する結合力が低下した受容体結合ドメインをスクリーニングすることにより、ウイルスの受容体結合ドメインをデザインおよび/または得る方法を使用することによって解決可能であるという驚くべき知見にさらに基づく。
【0017】
したがって、本発明では、コロナウイルスのRBD受容体(CORONA-RBD受容体)に対する結合力がコロナウイルスの野生型受容体結合ドメイン(CORONA-wtRBD)と比較して低下した、コロナウイルスの突然変異受容体結合ドメイン(mRBD)(CORONA-mRBD)またはこの断片を提供する。
【0018】
本発明者らは、一部の個体においてsACE2レベルが増加することを示すことができ、この血中濃度を適切に評価するためのアッセイを開発した。その結果として、sACE2が増加した人は、防御性の低い免疫応答が生じるリスクを有する。sACE2の放出が増加した個体は同定され、上記の改良ワクチンのデザインから利益を得ることができた。加えて、発明者らは、重症患者において、感染直後にsACE2レベルが増加することを示すことができた。したがって、改良ワクチンは、感染前に重要であるだけでなく、感染直後に投与して防御抗体の発生を促進するときにも特に有用であり得る。
【0019】
したがって、本発明の目的は、対象において、高レベルの可溶性受容体存在下でもコロナウイルスに対して、および/またはマスキング作用が増大したコロナウイルス突然変異体に対して高度に効率的な免疫応答の誘発を可能とする、コロナウイルスの突然変異受容体結合ドメイン(mRBD)(CORONAmRBD)を提供することである。本発明のさらなる目的は、このような突然変異受容体結合ドメイン(mRBD)を適時かつ効率的に入手して、ウイルス、特に、新たに出現したウイルス変異体の伝播を阻止し、従来のワクチン接種/免疫および/または自然感染により十分な免疫が付与されていない個体を含む可能な限り多くの個体を防御する方法を提供することである。
【0020】
まとめると、本発明者らは、ヒトおよびマウスの両方において、可溶性ウイルス受容体、特に、可溶性コロナウイルス受容体が、これらの抗原への結合を介して重要なエピトープのマスキングを媒介し、これによって防御抗体応答を障害することを見出した。エピトープマスキングのこの機構は、これまでには抗体についてのみ記載されており、ウイルス受容体については記載されていなかった。
【0021】
本発明者らは、血中のsACE2レベルの増加が重度のCOVID-19疾患と関連することを示すことができた。その上、sACE2レベルが高い患者は、SARS-CoV-2スパイクタンパク質の受容体結合ドメイン(RBD)に特異的な抗体力価の著しい低下を示した。したがって、これらの患者は、ACE2に対するSARS-CoV-2スパイクタンパク質の結合を遮断する能力の著しい低下をも示した。
【0022】
特に、本発明者らは、可溶性受容体が防御免疫応答に干渉するということを初めて示し、機構についての証拠を提供した。
【0023】
その上、本発明者らは、マウスにおいてsACE2が、受容体ACE2に対するウイルスの結合を遮断するRBD特異的抗体を産生するB細胞の生成を著しく低下させることを示すことができた(図1)。マウス血清の解析により、免疫に対する抗体応答がそれほど効率的ではないことが確認された。
【0024】
さらに、本発明者らは、インシリコでの算出により、英国および南アフリカにおいてそれぞれ出現したSARS-CoV-2変異体B.1.1.7および501.V2のような突然変異が、マスキング作用を向上させることを示すことができた(図8)。
【0025】
本発明は、CORONA-mRBDまたはこの断片を含むコロナウイルスの突然変異スパイクタンパク質(CORONA-mSpike)またはこの断片を提供する。
【0026】
その上、本発明は、本発明によるCORONA-mRBDもしくはこの断片または本発明によるCORONA-mSpikeもしくはこの断片を含むポリペプチドまたはタンパク質を提供する。
【0027】
その上、本発明は、
- 本発明によるCORONA-mRBDもしくはこの断片、
- 本発明によるCORONA-mSpikeもしくはこの断片、または
- 本発明によるポリペプチドもしくはタンパク質
をコードするヌクレオチド配列を含む核酸を提供する。
【0028】
その上、本発明は、活性成分として、
- 本発明による1つもしくは複数のCORONA-mRBDもしくはこの断片、および/または
- 本発明による1つもしくは複数のCORONA-mSpikeもしくはこの断片、および/または
- 本発明による1つもしくは複数のポリペプチドもしくはタンパク質、および/または
- 本発明による1つもしくは複数の核酸
を含むワクチン組成物を提供する。
【0029】
その上、本発明は、対象においてコロナウイルスにより引き起こされる疾患の予防および/または治療における使用のための、
本発明による1つもしくは複数のCORONA-mRBDもしくはこの断片、および/または
本発明による1つもしくは複数のCORONA-mSpikeもしくはこの断片、および/または
本発明による1つもしくは複数のポリペプチドもしくはタンパク質、および/または
本発明による1つもしくは複数の核酸、および/または
本発明によるワクチン組成物
を提供する。
【0030】
その上、本発明は、ワクチン組成物用の活性成分をデザインおよび/または得るための方法であって、
(i)ウイルスの野生型受容体結合ドメイン(VIRUS-wtRBD)に1つまたは複数の突然変異を含む、ウイルスの突然変異受容体結合ドメイン(VIRUS-mRBD)またはこの断片を用意する工程と、
(ii)VIRUS-mRBDまたはこの断片が
a)VIRUS-wtRBDと比較した、ウイルスの受容体結合ドメインの受容体(RBD受容体)(VIRUS-RBD受容体)に対する結合力の低下
を示すかどうかを決定する工程と、
(iii)a)が満たされるとき、VIRUS-mRBDまたはこの断片を活性成分として選択する工程と
を含む方法に関する。
【0031】
その上、本発明は、本発明による、ワクチン組成物用の活性成分をデザインおよび/または得るための方法によって、活性成分として得られたVIRUS-mRBDまたはこの断片を提供する。
【0032】
野生型(wt)は、天然に存在する種の典型の表現型である。したがって、本発明では、wtRBDは、天然に存在する病原体、すなわち、集団内に拡散することが観察された病原体の任意のRBDである。これは、感染した個体(ヒトまたは動物)から単離され、シーケンシングによりゲノムが定義された。
【0033】
特に、VIRUS-wtRBDは、天然に存在するウイルスに属し、特に、公式のウイルス変異体としてWHOにより定義されており、注目すべき変異株(Variants-of-interest、VOI)、懸念される変異株(Variants-of-concern、VOC)、ならびに特に懸念されるウイルス(Viruses-of-special concern)を含む。このような天然に存在するウイルス変異体は、最初に出現したWuhan変異体と比較して変異を包含するため、突然変異体と表されることもある。しかし、本発明では、天然に存在するウイルス、特に、ウイルス変異体は、wtRBDを有する。
【0034】
したがって、VIRUS-wtRBDは、疾病管理センターのプラットフォーム上ならびに共通リポジトリ、例えば、https://www.ecdc.europa.eu/en、https://www.cdc.gov、https://www.gisaid.org、https://nextstrain.org、https://cov-lineages.orgまたはhttps://microbiologysociety.org上で入手可能なウイルス配列を含む。
【0035】
突然変異体は、突然変異の発現に起因するかまたは生じる新たな遺伝的形質であり、一般には、生物のゲノムまたは染色体のDNA配列の変化である。したがって、本発明では、VIRUS-mRBDは、上に定義するこのVIRUS-wtRBDと比較して遺伝子修飾されており、この受容体に対する結合力の低下がVIRUS-wtRBDと比較して生じる任意のVIRUS-RBDである。したがって、特に、VIRUS-mRBDは、天然に存在する病原体、特に、上に定義するウイルスには属さない。したがって、VIRUS-mRBDは、VIRUS-wtRBDとは異なる。集団内で増殖するウイルス変異体は、本明細書に定義するVIRUS-mRBDを有し得ない。
【0036】
コロナウイルスの突然変異受容体結合ドメイン(CORONA-mRBD)
本発明は、コロナウイルスの突然変異受容体結合ドメイン(mRBD)(CORONA-mRBD)またはこの断片を提供する。
【0037】
特に、本発明は、コロナウイルスのRBD受容体(CORONA-RBD受容体)に対する結合力がコロナウイルスの野生型受容体結合ドメイン(CORONA-wtRBD)と比較して低下した、CORONA-mRBDまたはこの断片を提供する。
【0038】
好ましくは、CORONA-mRBDまたはこの断片は、コロナウイルススパイクタンパク質の突然変異受容体結合ドメイン(mRBD)(CORONA-mRBD)またはこの断片である。
【0039】
好ましくは、CORONA-mRBDまたはこの断片は、ペプチドまたはタンパク質、好ましくは、タンパク質である。
【0040】
好ましくは、CORONA-mRBDまたはこの断片は、本発明による、ワクチン組成物用の活性成分をデザインおよび/または得るための方法によって、以下に記載する活性成分として得られる。
【0041】
好ましくは、CORONA-RBD受容体は、可溶性型および/または膜結合型のCORONA-RBD受容体、好ましくは、可溶性型のCORONA-RBD受容体(可溶性CORONA-RBD受容体)である。可溶性CORONA-RBD受容体は、活性および不活性型の可溶性CORONA-RBD受容体を含み得る。
【0042】
CORONA-RBD受容体に対するCORONA-mRBDまたはこの断片およびCORONA-wtRBDの結合力は、当業者に公知の任意の方法により測定することができる。例として、結合力は、例えば、CORONA-mRBDもしくはCORONA-wtRBDを細胞表面上に発現する細胞を、フルオロフォアで直接的もしくは間接的に標識したCORONA-RBD受容体で染色して、または反対に、CORONA-RBD受容体を細胞表面上に発現する細胞を、フルオロフォアで直接的もしくは間接的に標識した可溶性CORONA-mRBDもしくは可溶性CORONA-wtRBDで染色して、フローサイトメトリー解析を行い、陽染性細胞を計数することによって決定するか、あるいはCORONA-wtRBDまたはCORONA-mRBDのそれぞれのCORONA-RBD受容体に対するKd(解離定数)またはEC50(最大結合の50%における有効濃度)のELISAの使用による決定によって決定することができる。次いで、結合力の低下が、CORONA-RBD受容体に対するCORONA-wtRBDの結合力を、CORONA-RBD受容体に対するCORONA-mRBDの結合力と比較することにより得られる。
【0043】
好ましくは、結合力は、EC50またはKdを決定することにより測定し、ここで、EC50またはKdが高くなると、結合力が低くなることを示す。または、結合力は、フローサイトメトリー解析により測定し、ここで、陽染性細胞数が減少すると結合力が低くなることを示す。したがって、結合力の低下は、好ましくは、CORONA-wtRBDとCORONA-RBD受容体との結合から生じるEC50、Kd、および/または陽染性細胞数を、CORONA-mRBDとCORONA-RBD受容体との結合から生じるEC50、Kd、および/または陽染性細胞数とそれぞれ比較することによって決定する。CORONA-RBD受容体としてACE2、コロナウイルスとしてSARS-CoV-2、ならびに対応するSARS-CoV-2の野生型および突然変異型RBD(SARS-wtRBDおよびSARS-mRBD)に基づくEC50を決定するための例は、実施例4に提示する。CORONA-RBD受容体としてDPP4、コロナウイルスとしてMERS-CoV、ならびにMERS-CoVの野生型および突然変異型RBD(MERS-wtRBDおよびMERS-mRBD)に基づくEC50を決定するための別の例は、実施例7に提示する。
【0044】
結合力の低下をEC50またはKdの決定により決定する場合、CORONA-RBD受容体に対するCORONA-mRBDの結合力の低下は、好ましくは、EC50および/またはKdの1.5倍以上、より好ましくは2倍以上、さらにより好ましくは10倍以上、なおより好ましくは100倍以上、なおさらにより好ましくは500倍以上、および最も好ましくは1000倍以上の増加によって示す。ワクチン接種による最良の作用を得るために、CORONA-mRBDをワクチンとして使用する場合、CORONA-RBD受容体に対する結合力は、可能な限り低下させなければならない。したがって、好ましくは、CORONA-RBD受容体に対する結合力の低下に関して上限は存在しない。したがって、好ましくは、EC50またはKdの増加に関して上限は存在しない。とは言え、EC50またはKdの増加に関する上限は、500.000倍以下、より好ましくは100.000倍以下、さらにより好ましくは10.000倍以下であり得る。CORONA-RBD受容体としてACE2、コロナウイルスとしてSARS-CoV-2、ならびにSARS-CoV-2の野生型および突然変異型RBD(SARS-wtRBDおよびSARS-mRBD)に基づくEC50を決定するための例は、実施例4に提示する。CORONA-RBD受容体としてDPP4、コロナウイルスとしてMERS-CoV、ならびにMERS-CoVの野生型および突然変異型RBD(MERS-wtRBDおよびMERS-mRBD)に基づくEC50を決定するための別の例は、実施例7に提示する。
【0045】
結合力の低下をフローサイトメトリー解析により決定する場合、CORONA-RBD受容体に対するCORONA-mRBDの結合力の低下は、好ましくは、陽染性細胞数の50%以上、より好ましくは80%以上、さらにより好ましくは90%以上、なおより好ましくは95%以上、およびなおさらにより好ましくは98%以上の減少によって示す。ワクチン接種による最良の作用を得るために、CORONA-mRBDをワクチンとして使用する場合、CORONA-RBD受容体に対する結合力は、可能な限り低下させなければならない。したがって、好ましくは、CORONA-RBD受容体に対する結合力の低下に関して上限は存在しない。したがって、好ましくは、陽染性細胞の減少に関して上限は存在せず、この減少は100%でさえあり得る。とは言え、陽染性細胞の減少に関する上限は、100%以下、より好ましくは、99%以下であり得る。
【0046】
その上、CORONA-mRBDまたはこの断片は、好ましくは、抗CORONA-wtRBD中和抗体(抗CORONA-wtRBD-nAB)に対する結合を示す。すなわち、抗CORONA-wtRBD中和抗体(抗CORONA-wtRBD-nAB)に対する結合力は、好ましくは、維持される。すなわち、CORONA-wtRBDと比較して、わずかに中程度に結合力が低下して、結合力が増加するまでの範囲となる。
【0047】
抗CORONA-wtRBD-nABは、クラスI、クラスII、クラスIII、および/もしくはクラスIVのような種々の抗体クラスに属し得、ならびに/またはCORONA-wtRBDの種々のエピトープに特異的であり得る。抗CORONA-wtRBD-nABは、CORONA-wtRBDに対して反応性のモノクローナル抗体および/またはポリクローナル抗体であり得る。モノクローナル抗CORONA-wtRBD-nABは、組換えにより得ることができる。ポリクローナル抗CORONA-wtRBD-nABは、コロナウイルス感染を経験した免疫対象、例えば、回復期対象および/または例えば、ワクチン接種により免疫化した免疫化対象に由来する血漿または血清から得ることができ、ここで、このような免疫対象は、好ましくは、CORONA-wtRBDに免疫学的に反応性である。対象は、好ましくは、脊椎動物、より好ましくは免疫哺乳動物、より好ましくは類人猿、サル、キツネザル、イヌ科動物、例えば、イヌ、オオカミもしくはキツネ、ネコ科動物、例えば、大型もしくは小型のネコ、齧歯動物、例えば、マウス、ラット、モルモット、ハムスターもしくはウサギ、ウシ科動物、例えば、バッファロー、アンテロープ、ヒツジ、ヤギもしくはウシ、シカ、ウマ、ロバ、クマ、テン、コウモリ、および/またはヒトである。なおより好ましくは、免疫対象は、マウス、ラット、ウサギ、ハムスター、ヤギ、ロバ、ウマ、イヌ、ネコ、ヒツジまたはヒト等、最も好ましくは、ヒトである。
【0048】
抗CORONA-wtRBD-nABに対するCORONA-mRBDまたはこの断片およびCORONA-wtRBDの結合力は、当業者に公知の任意の方法により測定することができる。例として、結合力は、例えば、CORONA-mRBDもしくはCORONA-wtRBDを細胞表面上に発現する細胞を、フルオロフォアで直接的もしくは間接的に標識したモノクローナル抗CORONA-wtRBD-nABで染色して、または反対に、モノクローナル抗CORONA-wtRBD-nABを細胞表面上に発現する細胞を、フルオロフォアで直接的もしくは間接的に標識した可溶性CORONA-mRBDもしくは可溶性CORONA-wtRBDで染色して、フローサイトメトリー解析を行い、陽染性細胞を計数することによって決定するか、あるいはモノクローナル抗CORONA-wtRBD-nABに対するCORONA-wtRBDおよびCORONA-mRBDのKd(解離定数)もしくはEC50(最大結合の50%における有効濃度)のELISAの使用による決定、またはコロナウイルス感染を経験した免疫対象、例えば、回復期対象および/もしくは例えば、ワクチン接種により免疫化した免疫化対象由来の血漿もしくは血清のポリクローナル抗体のED50(血清抗体の50%が結合する有効希釈度)の決定によって決定することができ、ここで、このような免疫対象は、好ましくは、CORONA-wtRBDに免疫学的に反応性である。免疫対象は、上に定義するものである。抗CORONA-wtRBD-nABとして抗SARS-CoV-2-wtRBD中和抗体(抗SARS-wtRBD-nAB)、コロナウイルスとしてSARS-CoV-2、ならびにSARS-CoV-2の野生型および突然変異型RBD(SARS-wtRBDおよびSARS-mRBD)に基づくEC50、Kd、およびED50を決定するための例は、実施例4に提示する。抗CORONA-wtRBD-nABとして抗SARS-CoV-2-wtRBD中和抗体(抗SARS-wtRBD-nAB)、コロナウイルスとしてSARS-CoV-2、ならびにSARS-CoV-2の野生型および突然変異型RBD(SARS-wtRBDおよびSARS-mRBD)に基づくEC50を決定するための例は、実施例4に提示する。抗CORONA-wtRBD-nABとして抗MERS-CoV-wtRBD中和抗体(抗MERS-wtRBD-nAB)、コロナウイルスとしてMERS-CoV、ならびにMERS-CoVの野生型および突然変異型RBD(MERS-wtRBDおよびMERS-mRBD)に基づくEC50を決定するための別の例は、実施例7に提示する。
【0049】
抗CORONA-wtRBD-nABの結合力をフローサイトメトリー解析、EC50、および/またはKdにより決定する場合、結合力は、好ましくは、いくつかの異なるモノクローナル抗CORONA-wtRBD-nAB、好ましくは、4つ以上の異なる任意に選択されたモノクローナル抗CORONA-wtRBD-nABの平均結合力である。SARS-CoV-2および抗SARS-wtRBD-nABに関する実施例4について再び例証すると、抗SARS-wtRBD-nABであるCC12.1、P2C-1F11、REGN10933、およびS309の平均EC50を、SARS-wtRBDまたはSARS-mRBDを考慮して決定する。MERS-CoVおよび抗MERS-wtRBD-nABに関する実施例4について再び例証すると、抗MERS-wtRBD-nABである4C2h、D12、LCA60、およびMERS4V2の平均EC50を決定する。
【0050】
次いで、維持結合力、すなわち、わずかに中程度に結合力が低下し、結合力が増加するまでの範囲の結合力が、抗CORONA-wtRBD-nABに対するCORONA-wtRBDの結合力または平均結合力を、抗CORONA-wtRBD-nABに対するCORONA-mRBDの結合力または平均結合力とそれぞれ比較することにより得られる。
【0051】
好ましくは、結合力は、EC50またはKdを決定することにより測定し、ここで、EC50またはKdが高くなると、結合力が低くなることを示す。または、結合力は、フローサイトメトリー解析もしくはED50の決定により測定し、ここで、それぞれ陽染性細胞数が減少するかまたはED50が低下すると、結合力が低くなることを示す。したがって、維持される、すなわち、結合力が、わずかに中程度に結合力が低下し、結合力が増加するまでの範囲であるかどうかは、好ましくは、CORONA-wtRBDと抗CORONA-wtRBD-nABとの結合から生じるEC50、Kd、陽染性細胞数、および/またはED50を、CORONA-mRBDと抗CORONA-wtRBD-nABとの結合力から生じるEC50、Kd、陽染性細胞数、および/またはED50とそれぞれ比較することにより決定する。
【0052】
EC50またはKdの決定により結合力を決定する場合、抗CORONA-wtRBD-nABに対するCORONA-mRBDの結合力におけるわずかに中程度の低下は、好ましくは、EC50および/またはKdにおける3倍以下、さらにより好ましくは2倍以下、なおより好ましくは1.5倍以下、およびなおさらにより好ましくは1.2倍以下の増加によって示す。フローサイトメトリー解析またはED50の決定により結合力を決定する場合、RBD抗CORONA-wtRBD-nABに対するCORONA-mRBDの結合力におけるわずかに中程度の低下は、好ましくは、陽染性細胞数および/またはED50における50%以上、より好ましくは80%以上、およびさらにより好ましくは90%以上の低下によって示す。
【0053】
すでに上述のように、EC50、Kdまたはフローサイトメトリー解析により結合力を決定するとき、結合力は、好ましくは、上に定義するように平均結合力である。したがって、上に定義する結合力のわずかに中程度の低下は、好ましくは、上に定義する平均結合力のわずかに中程度の低下である。
【0054】
ワクチン接種による最良の作用を得るために、CORONA-mRBDをワクチンとして使用する場合、抗CORONA-wtRBD-nABに対する結合力は、可能な限り高くなければならない。したがって、好ましくは、抗CORONA-wtRBD-nABに対する結合力の低下は、可能な限り中程度でなければならず、好ましくは、CORONA-mRBDに対する抗CORONA-wtRBD-nABの結合力は、好ましくは、低下せず、さらには増加もしない。すなわち、EC50およびKdは増加せず、ならびに/または陽染性細胞数およびED50は低下しない。
【0055】
したがって、EC50またはKdの決定により結合力を決定する場合、抗CORONA-wtRBD-nABに対するCORONA-mRBDの結合力の増加は、好ましくは、EC50および/またはKdの10%以上、より好ましくは25%以上、なおさらにより好ましくは50%以上、なおさらにより好ましくは80%以上、および最も好ましくは90%以上の低下によって示す。上述のように、ワクチン接種による最良の作用を得るために、CORONA-mRBDをワクチンとして使用する場合、抗CORONA-wtRBD-nABに対する結合力は、可能な限り高くなければならない。したがって、好ましくは、抗CORONA-wtRBD-nABに対する結合力の増加に関して上限は存在しない。したがって、好ましくは、EC50またはKdの低下に関して上限は存在せず、この低下は、100%でさえあり得る。とは言え、EC50および/またはKdの低下に関する上限は、100%以下、より好ましくは99%以下であり得る。
【0056】
フローサイトメトリー解析またはED50により結合力を決定する場合、抗CORONA-wtRBD-nABに対するCORONA-mRBDの結合力の増加は、好ましくは、陽染性細胞数および/またはED50それぞれの1.1倍以上、より好ましくは1.2倍以上、さらにより好ましくは1.5倍以上、なおさらにより好ましくは2倍以上の増加によって示す。上述のように、ワクチン接種による最良の作用を得るために、CORONA-mRBDをワクチンとして使用する場合、抗CORONA-wtRBD-nABに対する結合力は、可能な限り高くなければならない。したがって、好ましくは、抗CORONA-wtRBD-nABに対する結合力の増加に関して上限は存在しない。したがって、好ましくは、陽染性細胞および/またはED50の増加に関して上限は存在しない。とは言え、陽染性細胞および/またはED50の増加に関する上限は、10.000倍以下、より好ましくは1.000倍以下、およびなおより好ましくは100倍以下であり得る。
【0057】
すでに上述したように、EC50、Kdまたはフローサイトメトリー解析により結合力を決定するとき、結合力は、好ましくは、上に定義するように平均結合力である。したがって、上に定義する結合力の増加は、好ましくは、上に定義する平均結合力の増加である。
【0058】
その上、CORONA-mRBDまたはこの断片は、細胞間融合を減少させる。
【0059】
細胞間融合の減少は、当業者に公知の任意の方法により測定することができる。例として、細胞間融合は、顕微鏡による細胞イメージングを併用する細胞間融合アッセイによって決定することができる。詳細には、CORONA-wtRBDまたはCORONA-mRBDをトランスフェクトしてフルオロフォアで標識した細胞を画像化し、合胞体ならびに核を計数するか、または細胞の直径を比較する。次いで、CORONA-wtRBDの細胞間融合をCORONA-mRBDの細胞間融合と比較する、すなわち、合胞体ならびに核の数または細胞の直径を比較することにより細胞間融合の減少が得られる。
【0060】
特に、細胞間融合は、Huang et al., Signal Transduction and Targeted Therapy, (2022) 7:179 (https://www.nature.com/articles/s41392-022-01037-4)による「A robust reporting system for measurement of SARS-CoV-2 spike fusion efficiency」に記載のルシフェラーゼ活性に基づく細胞融合レポーティング系の手段によって、またはBo Mend et al., Nature, Vol 603, 24 March 2022 (https://www.nature.com/articles/s41586-022-04474-x)による「Altered TMPRSS2 usage by SARS-CoV-2 Omicron impacts infectivity and fusogenicity」に記載のGFP発現融合レポーター細胞のフローサイトメトリーによる解析および蛍光強度分布による定量によって測定することができる。細胞の直径および粒度は、光学顕微鏡、蛍光顕微鏡またはFACS解析によって前方または側方散乱により決定し得る。
【0061】
細胞間融合の減少を決定するための例は、実施例12に提示する。
【0062】
細胞間融合の減少は、好ましくは、1細胞あたりの合胞体および/もしくは核の数の減少、または細胞の直径の減少によって示す。
【0063】
細胞間融合の減少を1細胞あたりの核数の減少により決定する場合、細胞間融合の減少は、好ましくは、1細胞あたり核10個から1細胞あたり核1個の数の減少によって示す。より好ましくは、細胞間融合の減少は、1細胞あたり核10個未満、好ましくは1細胞あたり核5個未満、より好ましくは1細胞あたり核2個未満によって示される。最も好ましくは、すべての細胞は、1細胞あたり唯一の核を有し、細胞間融合を示さない。
【0064】
細胞間融合の減少を細胞の直径の減少により決定する場合、細胞の平均直径を無処理細胞の平均直径と比較する。細胞間融合の減少は、好ましくは、無処理細胞と比較して10倍の直径平均値によって示される。より好ましくは、細胞間融合の減少は、無処理細胞と比較して10倍未満の直径平均値、さらにより好ましくは無処理細胞と比較して5倍未満直径平均値、さらにより好ましくは無処理細胞と比較して2倍未満の直径平均値によって示される。最も好ましくは、すべての細胞が、無処理細胞と同一の直径平均値を有する。融合適格性抗原の表面発現により、COVID-19による組織損傷の要因となる合胞体の形成を介して副作用が引き起こされ得るため、細胞間融合は、可能な限り減少させなければならない。したがって、この減少に対する制限は存在せず、減少は、100%でさえあり得る。すなわち、好ましくは、細胞間融合は、完全に阻止される。
【0065】
その上、CORONA-mRBDまたはこの断片は、細胞性抗原取込みおよび/または受容体内部移行を減少させる。
【0066】
細胞性抗原取込みならびに受容体内部移行の減少は、当業者に公知の任意の方法により測定することができる。例として、細胞性抗原取込みは、生細胞イメージングまたは生細胞による単一分子顕微鏡によって決定することができる。詳細には、細胞にCORONA-wtRBDまたはCORONA-mRBD完全スパイクをトランスフェクトし、細胞およびスパイクをフルオロフォアで標識し、例として、生細胞による生細胞共焦点顕微鏡、FACS解析または単一分子顕微鏡によって、細胞を画像化して抗原、すなわち、スパイクの内部移行を経時的に評価する。
【0067】
特に、細胞性抗原取込みならびに受容体内部移行は、Arnauld Serge et al., Integr Biol (Camb), 2011 Jun;3(6):675-83 (https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/21541374/)による「Quantification of GPCR internalization by single-molecule microscopy in living cells」に記載のように生細胞による単一分子顕微鏡の手段により測定することができる。
【0068】
細胞性抗原取込みの減少ならびに受容体内部移行を決定するための例は、実施例12に提示する。
【0069】
細胞性抗原取込みの減少は、好ましくは、細胞への結合後に内部移行した蛍光標識スパイクの量の減少によって示す。
【0070】
細胞性抗原取込みおよび受容体内部移行の減少を細胞イメージングにより決定する場合、「蛍光強度平均値」(MFI)は、内部移行後に極限の検査条件に対して決定する。このMFIは、陽性対照としてwtRBD/wt-Spike、および陰性対照として無RBD治療または蛍光標識した無関係のタンパク質を用いた治療と比較する。
【0071】
wtRBD/wt-Spike(陽性対照)の内部移行後の極限の検査条件(インキュベーション時間および抗原量)に対するMFIは、100%として表す。無RBD治療または蛍光標識した無関係のタンパク質を用いた治療(陰性対照)によるMFIは、0%として表す。検査条件に対するMFIパーセンテージは、陽性対照および陰性対照に応じて算出する。
【0072】
好ましくは、細胞性抗原取込みおよび受容体内部移行は、50%、より好ましくは80%、およびさらにより好ましくは90%減少する。
【0073】
細胞性抗原取込みおよび受容体内部移行は、可能な限り減少させなければならない。したがって、この減少に対する制限は存在せず、減少は、100%でさえあり得る。すなわち、好ましくは、細胞性抗原取込みは、完全に阻止される。とは言え、細胞性抗原取込みおよび受容体内部移行の減少に関する上限は、100%以下、より好ましくは99%以下であり得る。
【0074】
好ましくは、コロナウイルスは、コロナウイルス科(coronaviridae)、より好ましくは、ベータコロナウイルス(betacoronavirus)属である。
【0075】
さらにより好ましくは、
(A)コロナウイルスは、SARS-CoV-2(重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2型)であり、
CORONA-mRBDは、SARS-CoV-2の突然変異受容体結合ドメイン(SARS-mRBD)またはこの断片であり、
野生型受容体結合ドメインは、SARS-wtRBD(SARS-CoV-2の野生型受容体結合ドメイン)であり、
CORONA-RBD受容体は、ACE2(アンジオテンシン変換酵素2)であり、
好ましくは、抗SARS-wtRBD中和抗体(抗CORONA-wtRBD-nAB)は、抗SARS-wtRBD-nABであり、および/または血漿もしくは血清は、上に定義のように免疫対象、例えば、回復期対象に由来し、ここで、このような免疫対象は、好ましくは、SARS-wtRBDに免疫学的に反応性であるか、あるいは
(B)コロナウイルスは、MERS-CoV(中東呼吸器症候群コロナウイルス)であり、
CORONA-mRBDは、MERS-CoVの突然変異受容体結合ドメイン(MERS-mRBD)またはこの断片であり、
野生型受容体結合ドメインは、MERS-wtRBD(MERS-CoVの野生型受容体結合ドメイン)であり、
CORONA-RBD受容体は、DPP4(ジペプチジルペプチダーゼ4)であり、
好ましくは、抗MERS-wtRBD中和抗体(抗CORONA-wtRBD-nAB)は、抗MERS-wtRBD-nABであり、および/または血漿もしくは血清は、上に定義のように免疫対象、例えば、回復期対象に由来し、ここで、このような免疫対象は、好ましくは、MERS-wtRBDに免疫学的に反応性である。
【0076】
したがって、好ましくは、本発明は、(A)ACE2に対する結合力がSARS-wtRBDと比較して低下したSARS-mRBDもしくはこの断片に関し、および/または本発明は、(B)DDP4に対する結合力がMERS-wtRBDと比較して低下したMERS-mRBDもしくはこの断片に関する。
【0077】
(A)SARS-CoV-2の突然変異受容体結合ドメイン(SARS-mRBD)
上述のように、本発明は、好ましくは、(A)ACE2に対する結合力がSARS-wtRBDと比較して低下したSARS-mRBDまたはこの断片に関する。
【0078】
好ましくは、SARS-mRBD(SARS-CoV-2の突然変異受容体結合ドメイン)は、SARS-CoV-2スパイクタンパク質の突然変異受容体結合ドメイン(mRBD)(SARS-mRBD)またはこの断片である。
【0079】
好ましくは、SARS-mRBDまたはこの断片は、ペプチドまたはタンパク質、好ましくは、タンパク質である。
【0080】
好ましくは、SARS-mRBDまたはこの断片は、本発明による、ワクチン組成物用の活性成分をデザインおよび/または得るための方法によって、以下に記載する活性成分として得られる。
【0081】
好ましくは、ACE2は、可溶性型および/または膜結合型のACE2、好ましくは、可溶性型のACE2(sACE2)である。sACE2は、活性型および不活性型のsACE2を含み得る。
【0082】
SARS-mRBDまたはこの断片およびSARS-wtRBDのACE2に対する結合力は、当業者に公知の任意の方法により測定することができる。例として、結合力は、例えば、SARS-mRBDもしくはSARS-wtRBDを細胞表面上に発現する細胞を、フルオロフォアで直接的もしくは間接的に標識したACE2で染色して、または反対に、ACE2を細胞表面上に発現する細胞を、フルオロフォアで直接的もしくは間接的に標識した可溶性SARS-mRBDもしくは可溶性SARS-wtRBDで染色して、フローサイトメトリー解析を行い、陽染性細胞を計数することによって決定するか、あるいはSARS-wtRBDまたはSARS-mRBDそれぞれのACE2に対するKd(解離定数)またはEC50(最大結合の50%における有効濃度)のELISAの使用による決定によって決定することができる。次いで、結合力の低下が、SARS-wtRBDのACE2に対する結合力を、SARS-mRBDのACE2に対する結合力と比較することにより得られる。
【0083】
好ましくは、結合力は、EC50またはKdを決定することにより測定し、ここで、EC50またはKdが高くなると、結合力が低くなることを示す。または、結合力は、フローサイトメトリー解析により測定し、ここで、陽染性細胞数が減少すると結合力が低くなることを示す。したがって、結合力の低下は、好ましくは、SARS-wtRBDとACE2との結合から生じるEC50、Kd、および/または陽染性細胞数を、SARS-mRBDとACE2との結合から生じるEC50、Kd、および/または陽染性細胞数とそれぞれ比較することによって決定する。好ましくは、ACE2に対するSARS-wtRBDまたはSARS-mRBDのEC50およびKdは、実施例4に記載のように決定する。
【0084】
結合力の低下をEC50またはKdの決定により決定する場合、SARS-mRBDのACE2に対する結合力の低下は、好ましくは、EC50および/またはKdの1.5倍以上、より好ましくは2倍以上、さらにより好ましくは10倍以上、なおより好ましくは100倍以上、なおさらにより好ましくは500倍以上、および最も好ましくは1000倍以上の増加によって示す。ワクチン接種による最良の作用を得るために、SARS-mRBDをワクチンとして使用する場合、ACE2に対する結合力は、可能な限り低下させなければならない。したがって、好ましくは、ACE2に対する結合力の低下に関して上限は存在しない。したがって、好ましくは、EC50またはKdの増加に関して上限は存在しない。とは言え、EC50またはKdの増加に関する上限は、500.000倍以下、より好ましくは100.000倍以下、さらにより好ましくは10.000倍以下あり得る。好ましくは、ACE2に対するSARS-wtRBDまたはSARS-mRBDのEC50およびKdは、実施例4に記載のように決定する。
【0085】
結合力の低下をフローサイトメトリー解析により決定する場合、SARS-mRBDのACE2に対する結合力の低下は、好ましくは、陽染性細胞数の50%以上、より好ましくは80%以上、さらにより好ましくは90%以上、なおより好ましくは95%以上、およびなおさらにより好ましくは98%以上の減少によって示す。ワクチン接種による最良の作用を得るために、SARS-mRBDをワクチンとして使用する場合、ACE2に対する結合力は、可能な限り低下させなければならない。したがって、好ましくは、ACE2に対する結合力の低下に関して上限は存在しない。したがって、好ましくは、陽染性細胞の減少に関して上限は存在せず、この減少は100%でさえあり得る。とは言え、陽染性細胞の減少に関する上限は、100%以下、より好ましくは、99%以下であり得る。
【0086】
その上、SARS-mRBDまたはこの断片は、好ましくは、抗SARS-wtRBD中和抗体(抗SARS-wtRBD-nAB)に対する結合を示す。すなわち、抗SARS-wtRBD中和抗体(抗SARS-wtRBD-nAB)に対する結合力は、好ましくは、維持される。すなわち、SARS-wtRBDと比較して、わずかに中程度に結合力が低下し、結合力が増加するまでの範囲となる。
【0087】
抗SARS-wtRBD-nABは、クラスI、クラスII、クラスIII、および/もしくはクラスIVのような種々の抗体クラスに属し得、ならびに/またはSARS-wtRBDの種々のエピトープに特異的であり得る。抗SARS-wtRBD-nABは、SARS-wtRBDに対して反応性のモノクローナル抗体および/またはポリクローナル抗体であり得る。モノクローナル抗SARS-wtRBD-nABは、組換えにより得ることができる。ポリクローナル抗SARS-wtRBD-nABは、コロナウイルス感染を経験した免疫対象、例えば、回復期対象および/または例えば、ワクチン接種により免疫化した免疫化対象に由来する血漿または血清から得ることができ、ここで、このような免疫対象は、好ましくは、SARS-wtRBDに免疫学的に反応性である。対象は、好ましくは、脊椎動物、より好ましくは免疫哺乳動物、より好ましくは類人猿、サル、キツネザル、イヌ科動物、例えば、イヌ、オオカミもしくはキツネ、ネコ科動物、例えば、大型もしくは小型のネコ、齧歯動物、例えば、マウス、ラット、モルモット、ハムスターもしくはウサギ、ウシ科動物、例えば、バッファロー、アンテロープ、ヒツジ、ヤギもしくはウシ、シカ、ウマ、ロバ、クマ、テン、コウモリ、および/またはヒトである。なおより好ましくは、免疫対象は、マウス、ラット、ウサギ、ハムスター、ヤギ、ロバ、ウマ、イヌ、ネコ、ヒツジまたはヒト等、最も好ましくは、ヒトである。
【0088】
抗SARS-wtRBD-nABに対するSARS-mRBDまたはこの断片およびSARS-wtRBDの結合力は、当業者に公知の任意の方法により測定することができる。例として、結合力は、例えば、SARS-mRBDもしくはSARS-wtRBDを細胞表面上に発現する細胞を、フルオロフォアで直接的もしくは間接的に標識したモノクローナル抗SARS-wtRBD-nABで染色して、または反対に、モノクローナル抗SARS-wtRBD-nABを細胞表面上に発現する細胞を、フルオロフォアで直接的もしくは間接的に標識した可溶性SARS-mRBDもしくは可溶性SARS-wtRBDで染色して、フローサイトメトリー解析を行い、陽染性細胞を計数することによって決定するか、あるいはモノクローナル抗SARS-wtRBD-nABに対するSARS-wtRBDおよびSARS-mRBDのKd(解離定数)もしくはEC50(最大結合の50%における有効濃度)のELISAの使用による決定、またはコロナウイルス感染を経験した免疫対象、例えば、回復期対象および/もしくは例えば、ワクチン接種により免疫化した免疫化対象由来の血漿もしくは血清のポリクローナル抗体のED50(血清抗体の50%が結合する有効希釈度)の決定によって決定することができ、ここで、このような免疫対象は、好ましくは、SARS-wtRBDに免疫学的に反応性である。免疫対象は、上に定義するものである。好ましくは、抗SARS-wtRBD-nABに対するSARS-wtRBDまたはSARS-mRBDのEC50、Kd、およびED50は、実施例4に記載のように決定する。
【0089】
抗SARS-wtRBD-nABの結合力をフローサイトメトリー解析、EC50、および/またはKdにより決定する場合、結合力は、好ましくは、いくつかの異なるモノクローナル抗SARS-wtRBD-nAB、好ましくは、4つ以上の異なる任意に選択されたモノクローナル抗SARS-wtRBD-nABの平均結合力である。好ましくは、4つの異なるモノクローナル抗SARS-wtRBD-nABは、実施例4に記載のようにCC12.1、P2C-1F11、REGN10933、およびS309であり、平均結合力は、CC12.1、P2C-1F11、REGN10933、およびS309それぞれの平均EC50または平均Kdである。
【0090】
次いで、維持結合力、すなわち、わずかに中程度に結合力が低下し、結合力が増加するまでの範囲の結合力が、抗SARS-wtRBD-nABに対するSARS-wtRBDの結合力または平均結合力を、SARS-mRBDの抗SARS-wtRBD-nABに対する結合力または平均結合力とそれぞれ比較することにより得られる。
【0091】
好ましくは、結合力は、EC50またはKdを決定することにより測定し、ここで、EC50またはKdが高くなると、結合力が低くなることを示す。または、結合力は、フローサイトメトリー解析もしくはED50の決定により測定し、ここで、それぞれ陽染性細胞数が減少するかまたはED50が低下すると、結合力が低くなることを示す。したがって、維持される、すなわち、結合力が、わずかに中程度に結合力が低下し、結合力が増加するまでの範囲であるかどうかは、好ましくは、SARS-wtRBDと抗SARS-wtRBD-nABとの結合から生じるEC50、Kd、陽染性細胞数、および/またはED50を、SARS-mRBDと抗SARS-wtRBD-nABとの結合力から生じるEC50、Kd、陽染性細胞数、および/またはED50とそれぞれ比較することにより決定する。
【0092】
EC50またはKdの決定により結合力を決定する場合、抗SARS-wtRBD-nABに対するSARS-mRBDの結合力におけるわずかに中程度の低下は、好ましくは、EC50および/またはKdにおける3倍以下、さらにより好ましくは2倍以下、なおより好ましくは1.5倍以下、およびなおさらにより好ましくは1.2倍以下の増加によって示す。フローサイトメトリー解析またはED50の決定により結合力を決定する場合、RBD抗SARS-wtRBD-nABに対するSARS-mRBDの結合力におけるわずかに中程度の低下は、好ましくは、陽染性細胞数および/またはED50における50%以上、より好ましくは80%以上、およびさらにより好ましくは90%以上の低下によって示す。
【0093】
すでに上述のように、EC50、Kdまたはフローサイトメトリー解析により結合力を決定するとき、結合力は、好ましくは、上に定義するように平均結合力である。したがって、上に定義する結合力のわずかに中程度の低下は、好ましくは、上に定義する平均結合力のわずかに中程度の低下である。
【0094】
ワクチン接種による最良の作用を得るために、SARS-mRBDをワクチンとして使用する場合、抗SARS-wtRBD-nABに対する結合力は、可能な限り高くなければならない。したがって、好ましくは、抗SARS-wtRBD-nABに対する結合力の低下は、可能な限り中程度でなければならず、好ましくは、SARS-mRBDに対する抗SARS-wtRBD-nABの結合力は、好ましくは、低下せず、さらには増加もしない。すなわち、EC50およびKdは増加せず、ならびに/または陽染性細胞数およびED50は低下しない。
【0095】
したがって、EC50またはKdの決定により結合力を決定する場合、抗SARS-wtRBD-nABに対するSARS-mRBDの結合力の増加は、好ましくは、EC50および/またはKdの10%以上、より好ましくは25%以上、なおさらにより好ましくは50%以上、なおさらにより好ましくは80%以上、および最も好ましくは90%以上の低下によって示す。上述のように、ワクチン接種による最良の作用を得るために、SARS-mRBDをワクチンとして使用する場合、抗SARS-wtRBD-nABに対する結合力は、可能な限り高くなければならない。したがって、好ましくは、抗SARS-wtRBD-nABに対する結合力の増加に関して上限は存在しない。したがって、好ましくは、EC50またはKdの低下に関して上限は存在せず、この低下は、100%でさえあり得る。とは言え、EC50および/またはKdの低下に関する上限は、100%以下、より好ましくは99%以下であり得る。
【0096】
フローサイトメトリー解析またはED50により結合力を決定する場合、抗SARS-wtRBD-nABに対するSARS-mRBDの結合力の増加は、好ましくは、陽染性細胞数および/またはED50それぞれの1.1倍以上、より好ましくは1.2倍以上、さらにより好ましくは1.5倍以上、なおさらにより好ましくは2倍以上の増加によって示す。上述のように、ワクチン接種による最良の作用を得るために、SARS-mRBDをワクチンとして使用する場合、抗SARS-wtRBD-nABに対する結合力は、可能な限り高くなければならない。したがって、好ましくは、抗SARS-wtRBD-nABに対する結合力の増加に関して上限は存在しない。したがって、好ましくは、陽染性細胞および/またはED50の増加に関して上限は存在しない。とは言え、陽染性細胞および/またはED50の増加に関する上限は、10.000倍以下、より好ましくは1.000倍以下、およびなおより好ましくは100倍以下であり得る。
【0097】
すでに上述のように、EC50、Kdまたはフローサイトメトリー解析により結合力を決定するとき、結合力は、好ましくは、上に定義するように平均結合力である。したがって、上に定義する結合力の増加は、好ましくは、上に定義する平均結合力の増加である。
【0098】
好ましくは、本発明は、
配列番号1のSARS-wtRBDのG184、Y187、L137、Y171、F138、Q180、F168、Y131またはS55から選択される位置にアミノ酸残基の1つまたは複数、好ましくは1~3つ、より好ましくは1つまたは2つ、さらにより好ましくは1つの置換を含むアミノ酸配列またはこの断片
を含み、より好ましくは、これからなる、SARS-mRBDまたはこの断片であって、この置換を除いて、配列番号1に対する85%以上のアミノ酸配列同一性を有する、SARS-mRBDまたはこの断片に関する。
【0099】
好ましくは、SARS-mRBDまたはこの断片は、置換を除いて、配列番号1に対する90%以上、より好ましくは95%以上、さらにより好ましくは97%以上、なおさらにより好ましくは98%以上、および最も好ましくは100%のアミノ酸配列同一性を有する。
【0100】
配列番号1のSARS-wtRBDは、Wuhan変異体のSARS-wtRBDである。
【0101】
上に定義する配列番号1のSARS-wtRBDに対するSARS-mRBDのアミノ酸配列同一性は、Wuhan変異体である配列番号1以外のSARS-CoV-2変異体のSARS-RBDを依然として包含することにより、この変異体に対して、または配列番号1と比較したとき、このような変異体に含まれる突然変異、例えば、置換、欠失、および挿入の組合せに対して、SARS-mRBDまたはこの断片が適応可能となるように十分低くなければならない。このようなSARS-CoV-2変異体の例は、
K99N、E166K、およびN183Yの置換を含むB1.351(ベータ)、
N183Yの置換を含むB.1.1.7(アルファ、501Y.V1)、
K99T、E166K、およびN183Yの置換を含むP.1(ガンマ、501Y.V3)、ならびに/または
L134RおよびT160Kの置換を含むB.1.617.2(デルタ)
であり、ここで、各置換の位置は、配列番号1のSARS-wtRBDを考慮して示す。
【0102】
好ましくは、アミノ酸残基の1つまたは複数の置換は、G184、L137、Y171またはY187から選択され、より好ましくは配列番号1のSARS-wtRBDのG184、L137またはY187から選択される位置におけるアミノ酸残基の置換の1~3つ、好ましくは1つまたは2つ、最も好ましくは1つである。
【0103】
より好ましくは、アミノ酸残基の1つまたは複数の置換は、G184もしくはY187または配列番号1のSARS-wtRBDのG184もしくはY137から選択される位置におけるアミノ酸残基の一方または両方、好ましくは一方の置換のである。
【0104】
なおより好ましくは、アミノ酸残基の1つまたは複数の置換は、配列番号1のSARS-wtRBDのG184の位置におけるアミノ酸残基の置換である。
【0105】
好ましくは、アミノ酸残基の1つまたは複数の置換は、配列番号194のSARS-wtRBDのG184、Y187、L137、Y171、F138、Q180、F168、Y131またはS55から選択される位置におけるアミノ酸残基の1つまたは複数、好ましくは1~3つ、より好ましくは1つまたは2つ、さらにより好ましくは1つの置換であり、ここで、
- G184の位置におけるアミノ酸残基の置換は、G184A、G184C、G184D、G184E、G184F、G184H、G184I、G184K、G184L、G184M、G184N、G184P、G184Q、G184R、G184S、G184T、G184V、G184WもしくはG184Yから選択され、
- Y187の位置におけるアミノ酸残基の置換は、Y187A、Y187C、Y187D、Y187E、Y187G、Y187I、Y187K、Y187L、Y187M、Y187N、Y187Q、Y187R、Y187S、Y187TもしくはY187Vから選択され、
- L137の位置におけるアミノ酸残基の置換は、L137D、L137E、L137K、L137RおよびL137Yから選択され、
- Y171の位置におけるアミノ酸残基の置換は、Y171A、Y171C、Y171E、Y171I、Y171K、Y171L、Y171M、Y171N、Y171P、Y171Q、Y171R、Y171S、Y171TもしくはY171Vから選択され、
- F138の位置におけるアミノ酸残基の置換は、F138A、F138C、F138E、F138G、F138I、F138K、F138N、F138Q、F138R、F138S、F138T、F138WもしくはF138Yから選択され、
- Q180の位置におけるアミノ酸残基の置換は、Q180C、Q180D、Q180I、Q180K、Q180LもしくはQ180Vから選択され、
- F168の位置におけるアミノ酸残基の置換は、F168C、F168DもしくはF168Eから選択され、
- Y131の位置におけるアミノ酸残基の置換は、Y131A、Y131C、Y131D、Y131E、Y131F、Y131G、Y131H、Y131I、Y131L、Y131M、Y131N、Y131P、Y131Q、Y131S、Y131T、Y131VもしくはY131Wから選択され、ならびに/または
- S55の位置におけるアミノ酸残基の置換は、S55Nである。
【0106】
より好ましくは、アミノ酸残基の1つまたは複数の置換は、配列番号1を有するSARS-wtRBDのG184、L137、Y171またはY187、より好ましくはG184、L137、またはY187から選択される位置におけるアミノ酸残基の置換の1~3つ、好ましくは1つまたは2つ、より好ましくは1つであり、ここで、
- G184の位置におけるアミノ酸残基の置換は、G184R、G184D、G184Y、G184K、G184S、G184P、G184E、G184A、G184V、G184N、G184Q、G184T、G184M、G184HまたはG184Lから選択され、
- L137の位置におけるアミノ酸残基の置換は、L137RまたはL137Eから選択され、
- Y187の位置におけるアミノ酸残基の置換は、Y187NまたはY187Qから選択され、
- Y171の位置におけるアミノ酸残基の置換は、Y171SまたはY171Tから選択される。
【0107】
さらにより好ましくは、アミノ酸残基の1つまたは複数の置換は、配列番号1を有するSARS-wtRBDのG184もしくはY187またはG184もしくはL137、より好ましくはG184もしくはL137から選択される位置におけるアミノ酸残基の一方または両方、なおさらにより好ましくは一方の置換であり、ここで、
- G184の位置におけるアミノ酸残基の置換は、G184R、G184D、G184Y、G184K、G184S、G184P、G184E、G184A、G184V、G184N、G184Q、G184T、G184M、G184HまたはG184Lから選択され、より好ましくはG184R、G502DまたはG184Eであり、最も好ましくはG184RまたはG184Eであり、
- L137の位置におけるアミノ酸残基の置換は、L137Rであり、
- Y187の位置におけるアミノ酸残基の置換は、Y187Nである。
【0108】
なおさらにより好ましくは、アミノ酸残基の1つもしくは複数の置換は、配列番号1を有するSARS-wtRBDのG184の位置におけるアミノ酸残基の1つの置換であり、ここで、置換は、G184R、G184DもしくはG184E、より好ましくはG184RもしくはG184Eであり、および/またはアミノ酸残基の1つもしくは複数の置換は、配列番号1を有するSARS-wtRBDのL137の位置におけるアミノ酸残基の1つの置換であり、ここで、置換はL137Rであり、最も好ましくは、置換はG184RもしくはG184Eである。
【0109】
好ましくは、SARS-mRBDまたはこの断片は、
配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17、配列番号18、配列番号19、配列番号20、配列番号21、配列番号22、配列番号23、配列番号24、配列番号25、配列番号26、配列番号27、配列番号28、配列番号29、配列番号30、配列番号31、配列番号32、配列番号33、配列番号34、配列番号35、配列番号36、配列番号37、配列番号38、配列番号39、配列番号40、配列番号41、配列番号42、配列番号43、配列番号44、配列番号45、配列番号46、配列番号47、配列番号48、配列番号49、配列番号50、配列番号51、配列番号52、配列番号53、配列番号54、配列番号55、配列番号56、配列番号57、配列番号58、配列番号59、配列番号60、配列番号61、配列番号62、配列番号63、配列番号64、配列番号65、配列番号66、配列番号67、配列番号68、配列番号69、配列番号70、配列番号71、配列番号72、配列番号73、配列番号74、配列番号75、配列番号76、配列番号77、配列番号78、配列番号79、配列番号80、配列番号81、配列番号82、配列番号83、配列番号84、配列番号85、配列番号86、配列番号87、配列番号88、配列番号89、配列番号90、配列番号91、配列番号92、配列番号93または配列番号94から選択され、
より好ましくは、
配列番号15、配列番号17、配列番号5、配列番号20、配列番号9、配列番号16、配列番号13、配列番号2、配列番号3、配列番号18、配列番号12、配列番号14、配列番号11、配列番号7、配列番号10、配列番号55、配列番号53、配列番号30、配列番号31、配列番号92または配列番号93から選択され、
さらにより好ましくは、
配列番号15、配列番号17、配列番号5、配列番号20、配列番号9、配列番号16、配列番号13、配列番号2、配列番号3、配列番号18、配列番号12、配列番号14、配列番号11、配列番号7または配列番号10、配列番号55または配列番号30から選択され、
なおより好ましくは、
配列番号15、配列番号5、配列番号2、配列番号55または配列番号30から選択され、
なおさらにより好ましくは、
配列番号15、配列番号5、配列番号2、または配列番号55から選択され、
なおさらにより好ましくは、
配列番号15、配列番号2、または配列番号55から選択されるアミノ酸配列を含み、好ましくは、これからなり、
最も好ましくは、配列番号15または配列番号2のアミノ酸配列を含み、好ましくは、これからなる。
【0110】
(B)MERS-CoVの突然変異受容体結合ドメイン(MERS-mRBD)
上述のように、本発明は、さらに好ましくは、(B)DDP4に対する結合力がMERS-wtRBDと比較して低下したMERS-mRBDまたはこの断片に関する。
【0111】
好ましくは、MERS-mRBD(MERS-CoVの突然変異受容体結合ドメイン)は、MERS-CoVスパイクタンパク質の突然変異受容体結合ドメイン(mRBD)(MERS-mRBD)またはこの断片である。
【0112】
好ましくは、MERS-mRBDまたはこの断片は、ペプチドまたはタンパク質、好ましくは、タンパク質である。
【0113】
好ましくは、MERS-mRBDまたはこの断片は、本発明による、ワクチン組成物用の活性成分をデザインおよび/または得るための方法によって、以下に記載する活性成分として得られる。
【0114】
好ましくは、DPP4は、可溶性型および/または膜結合型のDPP4、好ましくは、可溶性型のDPP4(sDPP4)である。
【0115】
MERS-mRBDまたはこの断片およびMERS-wtRBDのDPP4に対する結合力は、当業者に公知の任意の方法により測定することができる。例として、結合力は、例えば、MERS-mRBDもしくはMERS-wtRBDを細胞表面上に発現する細胞を、フルオロフォアで直接的もしくは間接的に標識したDPP4で染色して、または反対に、DPP4を細胞表面上に発現する細胞を、フルオロフォアで直接的もしくは間接的に標識した可溶性MERS-mRBDもしくは可溶性MERS-wtRBDで染色して、フローサイトメトリー解析を行い、陽染性細胞を計数することによって決定するか、あるいはMERS-wtRBDまたはMERS-mRBDそれぞれのDPP4に対するKd(解離定数)またはEC50(最大結合の50%における有効濃度)のELISAの使用による決定によって決定することができる。次いで、結合力の低下が、MERS-wtRBDのDPP4に対する結合力を、MERS-mRBDのDPP4に対する結合力と比較することにより得られる。
【0116】
好ましくは、結合力は、EC50またはKdを決定することにより測定し、ここで、EC50またはKdが高くなると、結合力が低くなることを示す。または、結合力は、フローサイトメトリー解析により測定し、ここで、陽染性細胞数が減少すると結合力が低くなることを示す。したがって、結合力の低下は、好ましくは、MERS-wtRBDとDPP4との結合から生じるEC50、Kd、および/または陽染性細胞数を、MERS-mRBDとDPP4との結合から生じるEC50、Kd、および/または陽染性細胞数とそれぞれ比較することによって決定する。好ましくは、DPP4に対するMERS-wtRBDまたはMERS-mRBDのEC50は、実施例7に記載のように決定する。
【0117】
結合力の低下をEC50またはKdの決定により決定する場合、MERS-mRBDのDPP4に対する結合力の低下は、好ましくは、EC50および/またはKdの1.5倍以上、より好ましくは2倍以上、さらにより好ましくは10倍以上、なおより好ましくは100倍以上、なおさらにより好ましくは500倍以上、および最も好ましくは1000倍以上の増加によって示す。ワクチン接種による最良の作用を得るために、MERS-mRBDをワクチンとして使用する場合、DPP4に対する結合力は、可能な限り低下させなければならない。したがって、好ましくは、DPP4に対する結合力の低下に関して上限は存在しない。したがって、好ましくは、EC50またはKdの増加に関して上限は存在しない。とは言え、EC50またはKdの増加に関する上限は、500.000倍以下、より好ましくは100.000倍以下、さらにより好ましくは10.000倍以下であり得る。好ましくは、DPP4に対するMERS-wtRBDまたはMERS-mRBDのEC50は、実施例7に記載のように決定する。
【0118】
結合力の低下をフローサイトメトリー解析により決定する場合、MERS-mRBDのDPP4に対する結合力の低下は、好ましくは、陽染性細胞数の50%以上、より好ましくは80%以上、さらにより好ましくは90%以上、なおより好ましくは95%以上、およびなおさらにより好ましくは98%以上の減少によって示す。ワクチン接種による最良の作用を得るために、MERS-mRBDをワクチンとして使用する場合、DPP4に対する結合力は、可能な限り低下させなければならない。したがって、好ましくは、DPP4に対する結合力の低下に関して上限は存在しない。したがって、好ましくは、陽染性細胞の減少に関して上限は存在せず、この減少は100%でさえあり得る。とは言え、陽染性細胞の減少に関する上限は、100%以下、より好ましくは、99%以下であり得る。
【0119】
その上、MERS-mRBDまたはこの断片は、好ましくは、抗MERS-wtRBD中和抗体(抗MERS-wtRBD-nAB)に対する結合を示す。すなわち、抗MERS-wtRBD中和抗体(抗MERS-wtRBD-nAB)に対する結合力は、好ましくは、維持される。すなわち、MERS-wtRBDと比較して、わずかに中程度に結合力が低下し、結合力が増加するまでの範囲となる。
【0120】
抗MERS-wtRBD-nABは、クラスI、クラスII、クラスIII、および/もしくはクラスIVのような種々の抗体クラスに属し得、ならびに/またはMERS-wtRBDの種々のエピトープに特異的であり得る。抗MERS-wtRBD-nABは、MERS-wtRBDに対して反応性のモノクローナル抗体および/またはポリクローナル抗体であり得る。モノクローナル抗MERS-wtRBD-nABは、組換えにより得ることができる。ポリクローナル抗MERS-wtRBD-nABは、コロナウイルス感染を経験した免疫対象、例えば、回復期対象および/または例えば、ワクチン接種により免疫化した免疫化対象に由来する血漿または血清から得ることができ、ここで、このような免疫対象は、好ましくは、MERS-wtRBDに免疫学的に反応性である。対象は、好ましくは、脊椎動物、より好ましくは免疫哺乳動物、より好ましくは類人猿、サル、キツネザル、イヌ科動物、例えば、イヌ、オオカミもしくはキツネ、ネコ科動物、例えば、大型もしくは小型のネコ、齧歯動物、例えば、マウス、ラット、モルモット、ハムスターもしくはウサギ、ウシ科動物、例えば、バッファロー、アンテロープ、ヒツジ、ヤギもしくはウシ、シカ、ウマ、ロバ、クマ、テン、コウモリ、および/またはヒトである。なおより好ましくは、免疫対象は、マウス、ラット、ウサギ、ハムスター、ヤギ、ロバ、ウマ、イヌ、ネコ、ヒツジまたはヒト等、最も好ましくは、ヒトである。
【0121】
抗MERS-wtRBD-nABに対するMERS-mRBDまたはこの断片およびMERS-wtRBDの結合力は、当業者に公知の任意の方法により測定することができる。例として、結合力は、例えば、MERS-mRBDもしくはMERS-wtRBDを細胞表面上に発現する細胞を、フルオロフォアで直接的もしくは間接的に標識したモノクローナル抗MERS-wtRBD-nABで染色して、または反対に、モノクローナル抗MERS-wtRBD-nABを細胞表面上に発現する細胞を、フルオロフォアで直接的もしくは間接的に標識した可溶性MERS-mRBDもしくは可溶性MERS-wtRBDで染色して、フローサイトメトリー解析を行い、陽染性細胞を計数することによって決定するか、あるいはモノクローナル抗MERS-wtRBD-nABに対するMERS-wtRBDおよびMERS-mRBDのKd(解離定数)もしくはEC50(最大結合の50%における有効濃度)のELISAの使用による決定、またはコロナウイルス感染を経験した免疫対象、例えば、回復期対象および/もしくは例えば、ワクチン接種により免疫化した免疫化対象由来の血漿もしくは血清のポリクローナル抗体のED50(血清抗体の50%が結合する有効希釈度)の決定によって決定することができ、ここで、このような免疫対象は、好ましくは、MERS-wtRBDに免疫学的に反応性である。免疫対象は、上に定義するものである。好ましくは、抗MERS-wtRBD-nABに対するMERS-wtRBDまたはMERS-mRBDのEC50は、実施例7に記載のように決定する。
【0122】
抗MERS-wtRBD-nABの結合力をフローサイトメトリー解析、EC50、および/またはKdにより決定する場合、結合力は、好ましくは、いくつかの異なるモノクローナル抗MERS-wtRBD-nAB、好ましくは、4つ以上の異なる任意に選択されたモノクローナル抗MERS-wtRBD-nABの平均結合力である。好ましくは、4つの異なるモノクローナル抗MERS-wtRBD-nABは、実施例9に記載のように4C2h、D12、LCA60、およびMERS4V2であり、平均結合力は、4C2h、D12、LCA60、およびMERS4V2それぞれの平均EC50または平均Kdである。
【0123】
次いで、維持結合力、すなわち、わずかに中程度に結合力が低下し、結合力が増加するまでの範囲の結合力が、抗MERS-wtRBD-nABに対するMERS-wtRBDの結合力または平均結合力を、抗MERS-wtRBD-nABに対するMERS-mRBDの結合力または平均結合力とそれぞれ比較することにより得られる。
【0124】
好ましくは、結合力は、EC50またはKdを決定することにより測定し、ここで、EC50またはKdが高くなると、結合力が低くなることを示す。または、結合力は、フローサイトメトリー解析もしくはED50の決定により測定し、ここで、それぞれ陽染性細胞数が減少するかまたはED50が低下すると、結合力が低くなることを示す。したがって、維持される、すなわち、結合力が、わずかに中程度に結合力が低下し、結合力が増加するまでの範囲であるかどうかは、好ましくは、MERS-wtRBDと抗MERS-wtRBD-nABとの結合から生じるEC50、Kd、陽染性細胞数、および/またはED50を、MERS-mRBDと抗MERS-wtRBD-nABとの結合から生じるEC50、Kd、陽染性細胞数、および/またはED50とそれぞれ比較することにより決定する。
【0125】
EC50またはKdの決定により結合力を決定する場合、抗MERS-wtRBD-nABに対するMERS-mRBDの結合力におけるわずかに中程度の低下は、好ましくは、EC50および/またはKdにおける3倍以下、さらにより好ましくは2倍以下、なおより好ましくは1.5倍以下、およびなおさらにより好ましくは1.2倍以下の増加によって示す。フローサイトメトリー解析またはED50の決定により結合力を決定する場合、RBD抗MERS-wtRBD-nABに対するMERS-mRBDの結合力におけるわずかに中程度の低下は、好ましくは、陽染性細胞数および/またはED50における50%以上、より好ましくは80%以上、およびさらにより好ましくは90%以上の低下によって示す。
【0126】
すでに上述のように、EC50、Kdまたはフローサイトメトリー解析により結合力を決定するとき、結合力は、好ましくは、上に定義するように平均結合力である。したがって、上に定義する結合力のわずかに中程度の低下は、好ましくは、上に定義する平均結合力のわずかに中程度の低下である。
【0127】
ワクチン接種による最良の作用を得るために、MERS-mRBDをワクチンとして使用する場合、抗MERS-wtRBD-nABに対する結合力は、可能な限り高くなければならない。したがって、好ましくは、抗MERS-wtRBD-nABに対する結合力の低下は、可能な限り中程度でなければならず、好ましくは、MERS-mRBDに対する抗MERS-wtRBD-nABの結合力は、好ましくは、低下せず、さらには増加もしない。すなわち、EC50およびKdは増加せず、ならびに/または陽染性細胞数およびED50は低下しない。
【0128】
したがって、EC50またはKdの決定により結合力を決定する場合、抗MERS-wtRBD-nABに対するMERS-mRBDの結合力の増加は、好ましくは、EC50および/またはKdの10%以上、より好ましくは25%以上、なおさらにより好ましくは50%以上、なおさらにより好ましくは80%以上、および最も好ましくは90%以上の低下によって示す。上述のように、ワクチン接種による最良の作用を得るために、MERS-mRBDをワクチンとして使用する場合、抗MERS-wtRBD-nABに対する結合力は、可能な限り高くなければならない。したがって、好ましくは、抗MERS-wtRBD-nABに対する結合力の増加に関して上限は存在しない。したがって、好ましくは、EC50またはKdの低下に関して上限は存在せず、この低下は、100%でさえあり得る。とは言え、EC50および/またはKdの低下に関する上限は、100%以下、より好ましくは99%以下であり得る。
【0129】
フローサイトメトリー解析またはED50により結合力を決定する場合、抗MERS-wtRBD-nABに対するMERS-mRBDの結合力の増加は、好ましくは、陽染性細胞数および/またはED50それぞれの1.1倍以上、より好ましくは1.2倍以上、さらにより好ましくは1.5倍以上、なおさらにより好ましくは2倍以上の増加によって示す。上述のように、ワクチン接種による最良の作用を得るために、MERS-mRBDをワクチンとして使用する場合、抗MERS-wtRBD-nABに対する結合力は、可能な限り高くなければならない。したがって、好ましくは、抗MERS-wtRBD-nABに対する結合力の増加に関して上限は存在しない。したがって、好ましくは、陽染性細胞および/またはED50の増加に関して上限は存在しない。とは言え、陽染性細胞および/またはED50の増加に関する上限は、10.000倍以下、より好ましくは1.000倍以下、およびなおより好ましくは100倍以下であり得る。
【0130】
すでに上述のように、EC50、Kdまたはフローサイトメトリー解析により結合力を決定するとき、結合力は、好ましくは、上に定義するように平均結合力である。したがって、上に定義する結合力の増加は、好ましくは、上に定義する平均結合力の増加である。
【0131】
好ましくは、本発明は、
配列番号194を有するMERS-wtRBDのL140、D144、E170、D171またはD173から選択される位置におけるアミノ酸残基の1つまたは複数、好ましくは1~3つ、または2つ、好ましくは1つまたは2つ、より好ましくは1つの置換を含むアミノ酸配列またはこの断片
を含み、より好ましくは、これからなる、MERS-mRBDまたはこの断片であって、この置換を除いて、配列番号194に対する85%以上のアミノ酸配列同一性を有する、MERS-mRBDまたはこの断片に関する。
【0132】
好ましくは、MERS-mRBDまたはこの断片は、置換を除いて、配列番号194に対する90%以上、より好ましくは95%以上、さらにより好ましくは98%以上、なおさらにより好ましくは99%以上、および最も好ましくは100%のアミノ酸配列同一性を有する。
【0133】
配列番号194のMERS-wtRBDは、例として、AGN70929.1変異体に見出されるMERS-wtRBDである。
【0134】
上に定義する配列番号194のMERS-wtRBDに対するMERS-mRBDのアミノ酸配列同一性は、配列番号194以外のMERS-CoV変異体のMERS-RBDを依然として包含することにより、この変異体に対して、または配列番号194と比較したとき、このような変異体に含まれる突然変異、例えば、置換、欠失、および挿入の組合せに対して、MERS-mRBDまたはこの断片が適応可能となるように十分低くなければならない。このようなMERS-CoV変異体および/または含まれる突然変異の例は、次のとおりである。
- S1サブユニットの受容体結合ドメイン(RBD)では、2/8単離株のT424Iの置換および1/8単離株のS459Tの置換。
- RBD/RBMオーバーラップ(受容体結合モチーフ)領域では、W553Rの置換。2/8単離株のRBD/RBMオーバーラップ(受容体結合モチーフ)領域に見出された。
- 融合ペプチドでは、ヘプタドリピート領域1(HR1)のQ1009Lおよび膜貫通(TM)領域のC1313S(補足表2B、S2サブユニットの置換は、融合ペプチドのS950T、ヘプタドリピート領域1(HR1)のQ1009L、および膜貫通(TM)領域のC1313Sを含んだ)。
- MERS-CoV変異体は、次の表に列挙した(https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC5165220/より検索)。
【0135】
【表1】
【0136】
MERS-CoV変異体のMERS-RBDに関する突然変異は、MERS-Spikeタンパク質内の位置を考慮して示すことに言及する。配列番号194のMERS-wtRBDの配列は、配列番号200のMERS-wtSpikeの367番目の位置から始まる配列に対応する。したがって、アミノ酸366個をMERS-wtSpikeまたはMERS-mSpikeのある特定のアミノ酸位置から除去するとき、この結果はMERS-wtRBDまたはMERS-mRBDのアミノ酸位置にそれぞれ対応することとなる。MERS-wtRBD/MERS-mRBDおよびMERS-wtSpike/MERS-mSpikeにおける対応するアミノ酸位置の選択は、本明細書のさらに下の図の記載の前に提示する表Bに示す。
【0137】
好ましくは、アミノ酸残基の1つまたは複数の置換は、配列番号194のMERS-wtRBDのD173、D144またはD171から選択される位置におけるアミノ酸残基の1~3つ、好ましくは1つまたは2つ、好ましくは1つの置換である。
【0138】
より好ましくは、アミノ酸残基の1つまたは複数の置換は、配列番号194のMERS-wtRBDのD144またはD171から選択される位置におけるアミノ酸残基の一方または両方、好ましくは一方の置換である。
【0139】
好ましくは、アミノ酸残基の1つまたは複数の置換は、配列番号194のSARS-wtRBDのL140、D144、E170、D171またはD173から選択される位置におけるアミノ酸残基の1つまたは複数、好ましくは1~3つ、より好ましくは1つまたは2つ、さらにより好ましくは1つの置換であり、ここで、
- L140の位置におけるアミノ酸残基の置換は、L140Aであり、
- D144の位置におけるアミノ酸残基の置換は、D144Aであり、
- E170の位置におけるアミノ酸残基の置換は、E170Rであり、
- D171の位置におけるアミノ酸残基の置換は、D171Kであり、および/または
- D173の位置におけるアミノ酸残基の置換は、D173Kである。
【0140】
より好ましくは、アミノ酸残基の1つまたは複数の置換は、配列番号194のMERS-wtRBDのD144、D171またはD173から選択される位置におけるアミノ酸残基の1~3つ、好ましくは1つまたは2つ、さらにより好ましくは1つの置換であり、ここで、
- D144の位置におけるアミノ酸残基の置換は、D144Aであり、
- D171の位置におけるアミノ酸残基の置換は、D171Kであり、
- D173の位置におけるアミノ酸残基の置換は、D173Kである。
【0141】
さらにより好ましくは、アミノ酸残基の1つまたは複数の置換は、配列番号194のMERS-wtRBDのD144またはD171またはD173から選択される位置におけるアミノ酸残基の一方または両方、好ましくは一方の置換であり、ここで、
- D144の位置におけるアミノ酸残基の置換は、D144Aであり、
- D171の位置におけるアミノ酸残基の置換は、D171Kである。
【0142】
なおより好ましくは、MERS-mRBDまたはこの断片は、配列番号195、配列番号196、配列番号197、配列番号198または配列番号199から選択され、より好ましくは、配列番号195または配列番号196から選択されるアミノ酸配列を含み、好ましくは、これからなる。
【0143】
コロナウイルスの突然変異スパイクタンパク質(CORONA-mSpike)
本発明は、本発明によるCORONA-mRBDまたはこの断片を含むコロナウイルスの突然変異スパイクタンパク質(CORONA-mSpike)またはこの断片をさらに提供する。
【0144】
好ましくは、CORONA-mRBDまたはこの断片を含むCORONA-mSpikeまたはこの断片は、組換えポリペプチドもしくはタンパク質または化学合成ポリペプチドもしくはタンパク質である。
【0145】
好ましくは、CORONA-mSpikeまたはこの断片は、CORONAスパイクが、本発明によるCORONA-mRBDまたはこの断片を含む、CORONA-mSpikeまたはこの断片を含み、好ましくは、これからなる。
【0146】
好ましくは、CORONA-mSpikeまたはこの断片は、
- (A)SARS-CoV-2の突然変異スパイクタンパク質(SARS-mSpike)もしくはこの断片であり、CORONA-mRBDもしくはこの断片は、本発明によるSARS-mRBDもしくはこの断片であるか、または
- (B)MERS-CoVの突然変異スパイクタンパク質(SARS-mSpike)もしくはこの断片であり、CORONA-mRBDもしくはこの断片は、本発明によるMERS-mRBDもしくはこの断片である。
【0147】
したがって、好ましくは、本発明は、(A)本発明によるSARS-mRBDもしくはこの断片を含むSARS-mSpikeもしくはこの断片に関し、および/または
本発明は、(B)本発明によるMERS-mRBDもしくはこの断片を含むMERS-mSpikeもしくはこの断片に関する。
【0148】
その上、本発明では、CORONA-mRBDまたはこの断片について開示する任意の実施形態は、CORONA-mRBDまたはこの断片に準用して適用可能であることが理解されるはずである。
【0149】
(A)SARS-CoV-2の突然変異スパイクタンパク質(SARS-mSpike)
上述のように、本発明は、好ましくは、本発明によるSARS-mRBDまたはこの断片を含むSARS-mSpikeまたはこの断片に関する。
【0150】
好ましくは、SARS-mRBDまたはこの断片を含むSARS-mSpikeまたはこの断片は、組換えポリペプチドもしくはタンパク質または化学合成ポリペプチドもしくはタンパク質である。
【0151】
好ましくは、SARS-mSpikeまたはこの断片は、SARS-mSpikeが、本発明によるSARS-mRBDまたはこの断片を含む、SARS-mSpikeまたはこの断片を含み、好ましくは、これからなる。
【0152】
好ましくは、SARS-mSpikeまたはこの断片は、本発明によるSARS-mRBDまたはこの断片を含むアミノ酸配列またはこの断片、ならびに好ましくは、2P突然変異および/または無効なフーリン切断部位、より好ましくは、この両方を含み、好ましくは、これからなり、ここで、SARS-mSpikeは、SARS-mRBDまたはこの断片ならびに好ましくは2P突然変異および/または無効なフーリン切断を除いて、配列番号100に対する85%以上のアミノ酸配列同一性を有する。
【0153】
SARS-wtSpikeの2P突然変異は、配列番号100のSARS-wtSpikeのK986PおよびV987Pのアミノ酸残基の置換である。
【0154】
無効なフーリン切断部位は、配列番号100のSARS-wtSpikeのフーリン切断部位682-RRAR-685であり、例として、アミノ酸残基の置換、欠失または挿入による突然変異によって、好ましくは、682-QQAQ-685と置換することによって無効とする。
【0155】
好ましくは、SARS-mSpikeまたはこの断片は、SARS-mRBDまたはこの断片ならびに好ましくは2P突然変異および/または無効なフーリン切断部位を除いて、配列番号100に対する90%以上、より好ましくは95%以上、さらにより好ましくは98%以上、なおさらにより好ましくは99%以上、および最も好ましくは100%のアミノ酸配列同一性を有する。
【0156】
その上、本発明では、SARS-mRBDまたはこの断片について開示する任意の実施形態は、SARS-mSpikeまたはこの断片に準用して適用可能であることが理解されるはずである。
【0157】
好ましくは、SARS-mSpikeまたはこの断片は、
配列番号100のSARS-wtSpikeのG502、Y505、L455、Y489、F456、Q498、F486、Y449またはS373から選択される位置におけるアミノ酸残基の1つまたは複数、好ましくは1~3つ、より好ましくは1つまたは2つ、さらにより好ましくは1つの置換を含むアミノ酸配列またはこの断片、ならびに好ましくは、2P突然変異および/または無効なフーリン切断部位、より好ましくは、この両方
を含み、好ましくは、これからなり、ここで、SARS-mSpikeまたはこの断片は、この置換ならびに好ましくは2P突然変異および/または無効なフーリン切断を除いて、配列番号100に対する85%以上のアミノ酸配列同一性を有する。
【0158】
好ましくは、SARS-mSpikeまたはこの断片は、この置換ならびに好ましくは2P突然変異および/または無効なフーリン切断部位を除いて、配列番号100に対する90%以上、より好ましくは95%以上、さらにより好ましくは98%以上、なおさらにより好ましくは99%以上、および最も好ましくは100%のアミノ酸配列同一性を有する。
【0159】
SARS-mRBDもしくはこの断片ならびに好ましくは2P突然変異および/もしくは無効なフーリン切断部位を除く、配列番号100のSARS-wtSpikeに対するSARS-mSpikeもしくはこの断片のアミノ酸配列同一性、ならびに/または
置換ならびに好ましくは2P突然変異および/または無効なフーリン切断部位を除く、配列番号100のSARS-wtSpikeに対するSARS-mSpikeまたはこの断片のアミノ酸配列同一性は、
Wuhan変異体である配列番号100以外のSARS-CoV-2変異体のSARS-Spikeを依然として包含することにより、配列番号100と比較したとき、このような変異体に含まれる突然変異、例えば、置換、欠失、および挿入の組合せに対して、SARS-mSpikeまたはこの断片が適応可能となるように十分低くなければならない。このようなSARS-CoV-2変異体の例は、
D60A、D215G、L242H、K417N、E484K、N501Y、D614GおよびA701Vの置換を含むB1.351(ベータ)、
N501Y、A570D、D614G、P681H、T716I、S982AおよびD1118Hの置換ならびにH69/V70の欠失および144の欠失を含むB.1.1.7(アルファ、501Y.V1)、
L18F、T20N、P26S、D138Y、R190S、K417T、E484K、N501Y、D614G、H655Y、T1027IおよびV1176Fの置換を含むP.1(ガンマ、501Y.V3)、ならびに/または
T19R、L452R、T478K、D614G、P681RおよびD950Nの置換ならびに157-158の欠失を含むB.1.617.2(デルタ)
であり、ここで、各置換の位置は、配列番号100のSARS-wtSpikeを考慮して示す。
【0160】
下線で示すアミノ酸の置換は、それぞれのSARS-CoV-2変異体のSARS-SpikeのRBDに位置する。
【0161】
本発明をよりよく理解するために、配列番号1のSARS-wtRBDの配列は、配列番号100のSARS-wtSpikeの319番目の位置から始まる配列に対応することに言及する。したがって、アミノ酸318個をSARS-wtSpikeまたはSARS-mSpikeのある特定のアミノ酸位置から除去するとき、この結果はSARS-wtRBDまたはSARS-mRBDのアミノ酸位置にそれぞれ対応することとなる。SARS-wtRBD/SARS-mRBDおよびSARS-wtSpike/SARS-mSpikeにおける対応するアミノ酸位置の選択は、本明細書のさらに下の図の記載の前に提示する表Aに示す。
【0162】
好ましくは、アミノ酸残基の1つまたは複数の置換は、配列番号100のSARS-wtSpikeのG502、L455、Y489またはY505、より好ましくはG502、L455またはY505から選択される位置におけるアミノ酸残基の1~3つ、好ましくは1つまたは2つ、最も好ましくは1つの置換である。
【0163】
より好ましくは、アミノ酸残基の1つまたは複数の置換は、配列番号100のSARS-wtSpikeのG502もしくはY505またはG502もしくはL455から選択される位置におけるアミノ酸残基の一方または両方、より好ましくは一方の置換である。
【0164】
さらにより好ましくは、アミノ酸残基の1つまたは複数の置換は、配列番号100のSARS-wtSpikeのG502の位置におけるアミノ酸残基の置換である。
【0165】
好ましくは、SARS-mSpikeまたはこの断片では、
- G502の位置におけるアミノ酸残基の置換は、G502A、G502C、G502D、G502E、G502F、G502H、G502I、G502K、G502L、G502M、G502N、G502P、G502Q、G502R、G502S、G502T、G502V、G502WもしくはG502Yから選択され、
- Y505の位置におけるアミノ酸残基の置換は、Y505A、Y505C、Y505D、Y505E、Y505G、Y505I、Y505K、Y505L、Y505M、Y505N、Y505Q、Y505R、Y505S、Y505TもしくはY505Vから選択され、
- L455の位置におけるアミノ酸残基の置換は、L455D、L455E、L455K、L455RおよびL455Yから選択され、
- Y489の位置におけるアミノ酸残基の置換は、Y489A、Y489C、Y489E、Y489I、Y489K、Y489L、Y489M、Y489N、Y489P、Y489Q、Y489R、Y489S、Y489TもしくはY489Vから選択され、
- F456の位置におけるアミノ酸残基の置換は、F456A、F456C、F456E、F456G、F456I、F456K、F456N、F456Q、F456R、F456S、F456T、F456WもしくはF456Yから選択され、
- Q498の位置におけるアミノ酸残基の置換は、Q498C、Q498D、Q498I、Q498K、Q498LもしくはQ498Vから選択され、
- F486の位置におけるアミノ酸残基の置換は、F486C、F486DもしくはF486Eから選択され、
- Y449の位置におけるアミノ酸残基の置換は、Y449A、Y449C、Y449D、Y449E、Y449F、Y449G、Y449H、Y449I、Y449L、Y449M、Y449N、Y449P、Y449Q、Y449S、Y449T、Y449VもしくはY449Wから選択され、ならびに/または
- S373の位置におけるアミノ酸残基の置換は、S373Nである。
【0166】
より好ましくは、アミノ酸残基の1つまたは複数の置換は、配列番号100を有するSARS-wtSpikeのG502、L455、Y489またはY505から選択される位置、より好ましくはG502、L455またはY505から選択される位置におけるアミノ酸残基の1つ~すべて、好ましくは1つまたは2つ、より好ましくは1つの置換であり、ここで、
- G502の位置におけるアミノ酸残基の置換は、G502R、G502D、G502Y、G502K、G502S、G502P、G502E、G502V、G402A、G502N、G502Q、G502T、G502M、G502HまたはG502Lから選択され、
- L455の位置におけるアミノ酸残基の置換は、L455RまたはL455Eから選択され、
- Y505の位置におけるアミノ酸残基の置換は、Y505NおよびY505Qから選択され、
- Y489の位置におけるアミノ酸残基の置換は、Y489SおよびY489Tから選択される。
【0167】
さらにより好ましくは、アミノ酸残基の1つまたは複数の置換は、配列番号100を有するSARS-wtSpikeのG502もしくはL505、またはG502もしくはL455、より好ましくはG502もしくはL455から選択される位置におけるアミノ酸残基の一方または両方、好ましくは一方の置換であり、ここで、
- G502の位置におけるアミノ酸残基の置換は、G502R、G502D、G502Y、G502K、G502S、G502P、G502E、G502V、G402A、G502N、G502Q、G502T、G502M、G502HまたはG502Lから選択され、より好ましくはG502R、G502DまたはG502Eであり、最も好ましくはG502RまたはG502Eであり、
- L455の位置におけるアミノ酸残基の置換は、L455Rであり、
- Y505の位置におけるアミノ酸残基の置換は、Y505Nである。
【0168】
なおさらにより好ましくは、アミノ酸残基の1つもしくは複数の置換は、配列番号100を有するSARS-wtSpikeのG502の位置におけるアミノ酸残基の1つの置換であり、ここで、この置換は、G502R、G502DもしくはG502E、より好ましくは、G502RもしくはG502Eであり、および/またはアミノ酸残基の1つまたは複数の置換は、配列番号100を有するSARS-wtRBDのL455の位置におけるアミノ酸残基の1つの置換であり、ここで、この置換は、L455Rであり、最も好ましくは、この置換は、G502RまたはG502Eである。
【0169】
好ましくは、SARS-mSpikeまたはこの断片は、配列番号101、配列番号102、配列番号103、配列番号104、配列番号105、配列番号106、配列番号107、配列番号108、配列番号109、配列番号110、配列番号111、配列番号112、配列番号113、配列番号114、配列番号115、配列番号116、配列番号117、配列番号118、配列番号119、配列番号120、配列番号121、配列番号122、配列番号123、配列番号124、配列番号125、配列番号126、配列番号127、配列番号128、配列番号129、配列番号130、配列番号131、配列番号132、配列番号133、配列番号134、配列番号135、配列番号136、配列番号137、配列番号138、配列番号139、配列番号140、配列番号141、配列番号142、配列番号143、配列番号144、配列番号145、配列番号146、配列番号147、配列番号148、配列番号149、配列番号150、配列番号151、配列番号152、配列番号153、配列番号154、配列番号155、配列番号156、配列番号157、配列番号158、配列番号159、配列番号160、配列番号161、配列番号162、配列番号163、配列番号164、配列番号165、配列番号166、配列番号167、配列番号168、配列番号169、配列番号170、配列番号171、配列番号172、配列番号173、配列番号174、配列番号175、配列番号176、配列番号177、配列番号178、配列番号179、配列番号180、配列番号181、配列番号182、配列番号183、配列番号184、配列番号185、配列番号186、配列番号187、配列番号188、配列番号189、配列番号190、配列番号191、配列番号192、配列番号193または配列番号194
から選択され、
より好ましくは、
配列番号114、配列番号104、配列番号119、配列番号108、配列番号115、配列番号112、配列番号101、配列番号117、配列番号102、配列番号111、配列番号113、配列番号116、配列番号110、配列番号106、配列番号109、配列番号154、配列番号152、配列番号129、配列番号130、配列番号191または配列番号192から選択され、
さらにより好ましくは、
配列番号114、配列番号104、配列番号119、配列番号108、配列番号115、配列番号112、配列番号101、配列番号117、配列番号102、配列番号111、配列番号113、配列番号116、配列番号110、配列番号106、配列番号109、配列番号154または配列番号129から選択され、
なおより好ましくは、
配列番号114、配列番号104、配列番号101、配列番号154または配列番号129から選択され、
なおさらにより好ましくは、
配列番号114、配列番号104、配列番号101または配列番号154から選択され、
なおさらにより好ましくは、
配列番号114、配列番号101または配列番号154
から選択されるアミノ酸配列を含み、好ましくは、これからなり、
最も好ましくは、配列番号114または配列番号101のアミノ酸配列を含み、好ましくは、これからなる。
【0170】
(B)SARS-CoVの突然変異スパイクタンパク質(MERS-mSpike)
上述のように、本発明は、好ましくは、本発明によるMERS-mRBDまたはこの断片を含むMERS-mSpikeまたはこの断片に関する。
【0171】
好ましくは、MERS-mRBDまたはこの断片を含むMERS-mSpikeまたはこの断片は、組換えポリペプチドもしくはタンパク質または化学合成ポリペプチドもしくはタンパク質である。
【0172】
好ましくは、MERS-mSpikeまたはこの断片は、MERSスパイクが、本発明によるMERS-mRBDまたはこの断片を含む、MERS-mSpikeまたはこの断片を含み、好ましくは、これからなる。
【0173】
好ましくは、MERS-mSpikeまたはこの断片は、本発明によるMERS-mRBDまたはこの断片を含むアミノ酸配列またはこの断片、ならびに好ましくは、2P突然変異および/または無効なフーリン切断部位、より好ましくは、この両方を含み、好ましくは、これからなり、ここで、MERS-mSpikeは、MERS-mRBDまたはこの断片ならびに好ましくは2P突然変異および/または無効なフーリン切断を除いて、配列番号200に対する85%以上のアミノ酸配列同一性を有する。
【0174】
MERS-wtSpikeの2P突然変異は、配列番号200のMERS-wtSpikeのV1060PおよびL1061Pのアミノ酸残基の置換である。
【0175】
無効なフーリン切断部位は、配列番号200のMERS-wtSpikeのフーリン切断部位748-RSVR-751であり、例として、アミノ酸残基の置換、欠失または挿入による突然変異によって、好ましくは、748-ASVG-751と置換することによって無効とする。
【0176】
好ましくは、MERS-mSpikeまたはこの断片は、MERS-mSpikeまたはこの断片ならびに好ましくは2P突然変異および/または無効なフーリン切断部位を除いて、配列番号200に対する90%以上、より好ましくは95%以上、さらにより好ましくは98%以上、なおさらにより好ましくは99%以上、および最も好ましくは100%のアミノ酸配列同一性を有する。
【0177】
その上、本発明では、MERS-mRBDまたはこの断片について開示する任意の実施形態は、MERS-mSpikeまたはこの断片に準用して適用可能であることが理解されるはずである。
【0178】
好ましくは、MERS-mSpikeまたはこの断片は、
配列番号200のMERS-wtSpikeのL506、D510、E536、D537またはD539から選択される位置におけるアミノ酸残基の1つまたは複数、好ましくは1~3つ、または2つ、好ましくは1つまたは2つ、より好ましくは1つの置換を含むアミノ酸配列またはこの断片
を含み、好ましくは、これからなり、ここで、MERS-mSpikeまたはこの断片は、この置換を除いて、配列番号200に対する90%以上のアミノ酸配列同一性を有する。
【0179】
好ましくは、MERS-mSpikeまたはこの断片は、この置換を除いて、配列番号200に対する95%以上、より好ましくは98%以上、さらにより好ましくは99%以上、および最も好ましくは100%のアミノ酸配列同一性を有する。
【0180】
MERS-mRBDもしくはこの断片ならびに好ましくは2P突然変異および/もしくは無効なフーリン切断部位を除く、配列番号200のMERS-wtSpikeに対するMERS-mSpikeのアミノ酸配列同一性、ならびに/または
置換ならびに好ましくは2P突然変異および/もしくは無効なフーリン切断部位を除く、配列番号200のMERS-wtSpikeに対するMERS-mSpikeのアミノ酸配列同一性
は、配列番号200以外のMERS-CoV変異体のMERS-Spikeを依然として包含することにより、この変異体に対して、または配列番号200と比較したとき、このような変異体に含まれる突然変異、例えば、置換、欠失、および挿入の組合せに対して、MERS-mSpikeが適応可能となるように十分低くなければならない。このような既存のMERS-CoV変異体および/または含まれる突然変異の例は、次のとおりである。
- S1サブユニットの受容体結合ドメイン(RBD)では、2/8単離株のT424Iの置換および1/8単離株のS459Tの置換。
- RBD/RBMオーバーラップ(受容体結合モチーフ)領域では、W553Rの置換。2/8単離株のRBD/RBMオーバーラップ(受容体結合モチーフ)領域に見出された。
- 融合ペプチドでは、ヘプタドリピート領域1(HR1)のQ1009Lおよび膜貫通(TM)領域のC1313S(補足表2B、S2サブユニットの置換では、融合ペプチドのS950T、ヘプタドリピート領域1(HR1)のQ1009L、および膜貫通(TM)領域のC1313Sを含んだ)。
- MERS-CoV変異体は、次の表に列挙した(https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC5165220/より検索)。
【0181】
【表2】
【0182】
本発明をよりよく理解するために、配列番号194のMERS-wtRBDの配列は、配列番号200のMERS-wtSpikeの367番目の位置から始まる配列に対応することに言及する。したがって、アミノ酸366個をMERS-wtSpikeまたはMERS-mSpikeのある特定のアミノ酸位置から除去するとき、この結果はMERS-wtRBDまたはMERS-mRBDのアミノ酸位置にそれぞれ対応することとなる。MERS-wtRBD/MERS-mRBDおよびMERS-wtSpike/MERS-mSpikeにおける対応するアミノ酸位置の選択は、本明細書のさらに下の図の記載の前に提示する表Bに示す。
【0183】
好ましくは、アミノ酸残基の1つまたは複数の置換は、配列番号200のMERS-wtSpikeのD539、D510またはD537から選択される位置におけるアミノ酸残基の1つ~すべて、好ましくは1つまたは2つ、好ましくは1つの置換である。
【0184】
より好ましくは、アミノ酸残基の1つまたは複数の置換は、配列番号200のMERS-wtSpikeのD510またはD537から選択される位置におけるアミノ酸残基の一方または両方、より好ましくは一方の置換である。
【0185】
好ましくは、アミノ酸残基の1つまたは複数の置換は、配列番号200のMERS-wtSpikeのL506、D510、E536、D537またはD539から選択される位置におけるアミノ酸残基の1つまたは複数、好ましくは1~3つ、より好ましくは1つまたは2つ、さらにより好ましくは1つの置換であり、ここで、
- L506の位置におけるアミノ酸残基の置換は、L506Aであり、
- D510の位置におけるアミノ酸残基の置換は、D510Aであり、
- E536の位置におけるアミノ酸残基の置換は、E536Rであり、
- D537の位置におけるアミノ酸残基の置換は、D537Kであり、および/または
- D539の位置におけるアミノ酸残基の置換は、539Kである。
【0186】
より好ましくは、アミノ酸残基の1つまたは複数の置換は、配列番号200のMERS-wtSpikeのD510、D537またはD539から選択される位置におけるアミノ酸残基の1~3つ、好ましくは1つまたは2つ、さらにより好ましくは1つの置換であり、ここで、
- D510の位置におけるアミノ酸残基の置換は、D510Aであり、
- D537の位置におけるアミノ酸残基の置換は、D537Kであり、
- D539の位置におけるアミノ酸残基の置換は、D539Kである。
【0187】
さらにより好ましくは、アミノ酸残基の1つまたは複数の置換は、配列番号200のMERS-wtSpikeのD510またはD537から選択される位置におけるアミノ酸残基の一方または両方、より好ましくは一方の置換であり、ここで、
- D510の位置におけるアミノ酸残基の置換は、D510Aであり、
- D537の位置におけるアミノ酸残基の置換は、D537Kである。
【0188】
なおより好ましくは、MERS-mSpikeまたはこの断片は、配列番号201、配列番号202、配列番号203、配列番号204または配列番号205から選択され、より好ましくは、配列番号201または配列番号202から選択されるアミノ酸配列を含み、好ましくは、これからなる。
【0189】
CORONA-mRBDまたはCORONA-mSpikeを含むポリペプチドおよびタンパク質
本発明は、本発明によるCORONA-mRBDもしくはこの断片または本発明によるCORONA-mSpikeもしくはこの断片を含むポリペプチドまたはタンパク質にさらに関する。
【0190】
好ましくは、CORONA-mRBDもしくはこの断片またはCORONA-mSpikeもしくはこの断片を含むポリペプチドおよび/またはタンパク質は、組換えポリペプチドもしくはタンパク質、または化学合成ポリペプチドもしくはタンパク質である。
【0191】
ポリペプチドまたはタンパク質は、CORONA-mRBDもしくはこの断片またはCORONA-mSpikeもしくはこの断片以外の1つまたは複数のさらなるアミノ酸配列を含み得る。このようなさらなるアミノ酸配列は、CORONA-mRBDもしくはこの断片および/またはCORONAスパイクもしくはこの断片、局在化シグナル、例えば、分泌シグナル、安定性調節アミノ酸配列、例えば、ポリペプチドまたはタンパク質の能動的および/または受動的分解を促進または阻止する配列、重合ドメイン、例えば、二量体形成または三量体形成ドメイン、スペーサー、リンカー等とは異なるタンパク質のドメインまたは断片であり得る。その上、ポリペプチドまたはタンパク質は、1つまたは複数の修飾を含み得る。
【0192】
好ましくは、CORONA-mRBDまたはこの断片は、(A)本発明によるSARS-mRBDもしくはこの断片または(B)本発明によるMERS-mRBDもしくはこの断片である。
【0193】
したがって、好ましくは、本発明は、(A)本発明によるSARS-mRBDもしくはこの断片または本発明によるSARS-mSpikeもしくはこの断片を含むポリペプチドまたはタンパク質に関する。および/または
本発明は、(B)本発明によるMERS-mRBDもしくはこの断片または本発明によるMERS-mSpikeもしくはこの断片を含むポリペプチドまたはタンパク質に関する。
【0194】
その上、本発明では、CORONA-mRBDもしくはこの断片および/またはCORONA-mSpikeもしくはこの断片について開示する任意の実施形態は、CORONA-mRBDもしくはこの断片またはCORONA-mSpikeもしくはこの断片を含むポリペプチドまたはタンパク質に準用して適用可能であることが理解されるはずである。
【0195】
(A)SARS-mRBDまたはSARS-mSpikeを含むポリペプチドおよびタンパク質
上述のように、本発明は、好ましくは、本発明によるSARS-mRBDもしくはこの断片または本発明によるSARS-mSpikeもしくはこの断片を含むポリペプチドまたはタンパク質に関する。
【0196】
好ましくは、SARS-mRBDもしくはこの断片またはSARS-mSpikeもしくはこの断片を含むポリペプチドおよび/またはタンパク質は、組換えポリペプチドもしくはタンパク質または化学合成ポリペプチドもしくはタンパク質である。
【0197】
ポリペプチドおよびタンパク質は、SARS-mRBDもしくはこの断片またはSARS-mSpikeもしくはこの断片以外の1つまたは複数のさらなるアミノ酸配列を含み得る。このようなさらなるアミノ酸配列は、SARS-mRBDもしくはこの断片および/またはSARSスパイクもしくはこの断片、局在化シグナル、例えば、サイトゾル局在化シグナルまたは分泌シグナル、安定性調節アミノ酸配列、例えば、ポリペプチドまたはタンパク質の能動的および/または受動的分解を促進または阻止する配列、重合ドメイン、例えば、二量体形成または三量体形成ドメイン、スペーサー、リンカー、タグ、例えば、FLAGタグまたはHisタグ等とは異なるタンパク質のドメインまたは断片であり得る。その上、ポリペプチドまたはタンパク質は、1つまたは複数の修飾、例えば、グリコシル化を含み得る。
【0198】
その上、本発明では、SARS-mRBDもしくはこの断片および/またはSARS-mSpikeもしくはこの断片について開示する任意の実施形態は、SARS-mRBDもしくはこの断片またはSARS-mSpikeもしくはこの断片を含むポリペプチドまたはタンパク質に準用して適用可能であることが理解されるはずである。
【0199】
(B)MERS-mRBDまたはMERS-mSpikeを含むポリペプチドおよびタンパク質
上述のように、本発明は、好ましくは、本発明によるMERS-mRBDもしくはこの断片または本発明によるMERS-mSpikeもしくはこの断片を含むポリペプチドまたはタンパク質に関する。
【0200】
好ましくは、MERS-mRBDもしくはこの断片またはMERS-mSpikeもしくはこの断片を含むポリペプチドおよび/またはタンパク質は、組換えポリペプチドもしくはタンパク質または化学合成ポリペプチドもしくはタンパク質である。
【0201】
ポリペプチドおよびタンパク質は、MERS-mRBDもしくはこの断片またはMERS-mSpikeもしくはこの断片以外の1つまたは複数のさらなるアミノ酸配列を含み得る。このようなさらなるアミノ酸配列は、MERS-mRBDもしくはこの断片および/またはMERSスパイクもしくはこの断片、局在化シグナル、例えば、サイトゾル局在化シグナルまたは分泌シグナル、安定性調節アミノ酸配列、例えば、ポリペプチドまたはタンパク質の能動的および/または受動的分解を促進または阻止する配列、重合ドメイン、例えば、二量体形成または三量体形成ドメイン、スペーサー、リンカー、タグ、例えば、FLAGタグまたはHisタグ等とは異なるタンパク質のドメインまたは断片であり得る。その上、ポリペプチドまたはタンパク質は、1つまたは複数の修飾、例えば、グリコシル化を含み得る。
【0202】
その上、本発明では、MERS-mRBDもしくはこの断片および/またはMERS-mSpikeもしくはこの断片について開示する任意の実施形態は、MERS-mRBDもしくはこの断片またはMERS-mSpikeもしくはこの断片を含むポリペプチドまたはタンパク質に準用して適用可能であることが理解されるはずである。
【0203】
核酸
その上、本発明は、
- 本発明によるCORONA-mRBDまたはこの断片、
- 本発明によるCORONA-mSpikeまたはこの断片、あるいは
- 本発明によるCORONA-mRBDもしくはこの断片または本発明によるCORONA-mSpikeもしくはこの断片を含む本発明によるポリペプチドまたはタンパク質
をコードするヌクレオチド配列を含む核酸に関する。
【0204】
好ましくは、核酸は、DNAまたはRNA、例えば、mRNAである。
【0205】
好ましくは、核酸は、組換え核酸または化学合成核酸である。
【0206】
核酸は、をコードするヌクレオチド配列以外の1つまたは複数のさらなるヌクレオチド配列を含み得る。
【0207】
その上、核酸は、本発明によるCORONA-mRBDもしくはこの断片、CORONA-mSpikeもしくはこの断片またはポリペプチドもしくはタンパク質をコードするヌクレオチド配列以外の1つまたは複数のさらなる配列を含み得る。このようなさらなるヌクレオチド配列は、転写調節配列、例えば、プロモーター、エンハンサー、ターミネーター、転写因子結合モチーフまたはDNAポリメラーゼもしくは逆転写酵素結合部位、翻訳調節配列、例えば、リボソーム結合モチーフ、エクソン、イントロン、5’-cap、ポリAテール、局在化シグナル、例えば、コアもしくはサイトゾル局在化シグナル、ハイブリダイゼーションストレッチおよび/または安定性調節配列、例えば、核酸の能動的および/または受動的分解を促進または阻止するヌクレオチド配列、スペーサー、リンカー、タグ、例えば、FLAGタグもしくはHisタグをコードする配列等であり得る。その上、核酸は、修飾、例えば、メチル化を含み得る。
【0208】
より好ましくは、核酸は、好ましくは、
- 本発明によるCORONA-mRBDまたはこの断片、
- 本発明によるCORONA-mSpikeまたはこの断片、あるいは
- 本発明によるCORONA-mRBDもしくはこの断片または本発明によるCORONA-mSpikeもしくはこの断片を含む本発明によるポリペプチドまたはタンパク質
をコードする核酸からなる。
【0209】
好ましくは、CORONA-mRBDもしくはこの断片は、(A)本発明によるSARS-mRBDおよび/もしくは(B)本発明によるMERS-mRBDであり、ならびに/または
好ましくは、CORONA-mSpikeもしくはこの断片は、(A)本発明によるSARS-mSpikeおよび/もしくは(B)本発明によるMERS-mSpikeである。
【0210】
したがって、好ましくは、本発明は、(A)
- 本発明によるSARS-mRBDまたはこの断片、
- 本発明によるSARS-mSpikeまたはこの断片、あるいは
- 本発明によるSARS-mRBDもしくはこの断片または本発明によるSARS-mSpikeもしくはこの断片を含む本発明によるポリペプチドまたはタンパク質
をコードするヌクレオチド配列を含む核酸に関する。および/または
本発明は、(B)
- 本発明によるMERS-mRBDまたはこの断片、
- 本発明によるMERS-mSpikeまたはこの断片、あるいは
- 本発明によるMERS-mRBDもしくはこの断片または本発明によるMERS-mSpikeもしくはこの断片を含む本発明によるポリペプチドまたはタンパク質
をコードするヌクレオチド配列を含む核酸に関する。
【0211】
その上、本発明では、
CORONA-mRBDまたはこの断片、および/あるいは
CORONA-mSpikeまたはこの断片、および/あるいは
CORONA-mRBDもしくはこの断片またはCORONA-mSpikeもしくはこの断片を含むポリペプチドまたはタンパク質
について開示する任意の実施形態は、本発明による核酸に準用して適用可能であることが理解されるはずである。
【0212】
(A)核酸
したがって、本発明は、好ましくは、(A)
- 本発明によるSARS-mRBDまたはこの断片、
- 本発明によるSARS-mSpikeまたはこの断片、あるいは
- 本発明によるSARS-mRBDもしくはこの断片または本発明によるSARS-mSpikeもしくはこの断片を含む本発明によるポリペプチドまたはタンパク質
をコードするヌクレオチド配列を含み、好ましくは、これからなる核酸に関する。
【0213】
好ましくは、核酸は、DNAまたはRNA、例えば、mRNAである。
【0214】
好ましくは、核酸は、組換え核酸または化学合成核酸である。
【0215】
核酸は、をコードするヌクレオチド配列以外の1つまたは複数のさらなるヌクレオチド配列を含み得る。
【0216】
その上、核酸は、本発明によるSARS-mRBDもしくはこの断片、SARS-mSpikeもしくはこの断片またはポリペプチドもしくはタンパク質をコードするヌクレオチド配列以外の1つまたは複数のさらなる配列を含み得る。このようなさらなるヌクレオチド配列は、転写調節配列、例えば、プロモーター、エンハンサー、ターミネーター、転写因子結合モチーフまたはDNAポリメラーゼもしくは逆転写酵素結合部位、翻訳調節配列、例えば、リボソーム結合モチーフ、エクソン、イントロン、5’-cap、ポリAテール、局在化シグナル、例えば、コアもしくはサイトゾル局在化シグナル、ハイブリダイゼーションストレッチおよび/または安定性調節配列、例えば、核酸の能動的および/または受動的分解を促進または阻止するヌクレオチド配列、スペーサー、リンカー、タグ、例えば、FLAGタグもしくはHisタグをコードする配列等であり得る。その上、核酸は、修飾、例えば、メチル化を含み得る。
【0217】
好ましくは、SARS-mRBDをコードするヌクレオチド配列は、配列番号257、配列番号258または配列番号266である。
【0218】
好ましくは、SARS-mSpikeをコードするヌクレオチド配列は、配列番号255、配列番号256または配列番号265である。
【0219】
その上、本発明では、
SARS-mRBDまたはこの断片、および/あるいは
SARS-mSpikeまたはこの断片、および/あるいは
SARS-mRBDもしくはこの断片またはSARS-mSpikeもしくはこの断片を含むポリペプチドまたはタンパク質
について開示する任意の実施形態は、本発明による核酸に準用して適用可能であることが理解されるはずである。
【0220】
(B)核酸
その上、本発明は、好ましくは、(B)
- 本発明によるMERS-mRBDまたはこの断片、
- 本発明によるMERS-mSpikeまたはこの断片、あるいは
- 本発明によるMERS-mRBDもしくはこの断片または本発明によるMERS-mSpikeもしくはこの断片を含む本発明によるポリペプチドまたはタンパク質
をコードするヌクレオチド配列を含み、好ましくは、これからなる核酸に関する。
【0221】
好ましくは、核酸は、DNAまたはRNA、例えば、mRNAである。
【0222】
好ましくは、核酸は、組換え核酸または化学合成核酸である。
【0223】
核酸は、をコードするヌクレオチド配列以外の1つまたは複数のさらなるヌクレオチド配列を含み得る。
【0224】
その上、核酸は、本発明によるMERS-mRBDもしくはこの断片、MERS-mSpikeもしくはこの断片またはポリペプチドもしくはタンパク質をコードするヌクレオチド配列以外の1つまたは複数のさらなる配列を含み得る。このようなさらなるヌクレオチド配列は、転写調節配列、例えば、プロモーター、エンハンサー、ターミネーター、転写因子結合モチーフまたはDNAポリメラーゼもしくは逆転写酵素結合部位、翻訳調節配列、例えば、リボソーム結合モチーフ、エクソン、イントロン、5’-cap、ポリAテール、局在化シグナル、例えば、コアもしくはサイトゾル局在化シグナル、ハイブリダイゼーションストレッチおよび/または安定性調節配列、例えば、核酸の能動的および/または受動的分解を促進または阻止するヌクレオチド配列、スペーサー、リンカー、タグ、例えば、FLAGタグもしくはHisタグをコードする配列等であり得る。その上、核酸は、修飾、例えば、メチル化を含み得る。
【0225】
その上、本発明では、
MERS-mRBDまたはこの断片、および/あるいは
MERS-mSpikeまたはこの断片、および/あるいは
MERS-mRBDもしくはこの断片またはMERS-mSpikeもしくはこの断片を含むポリペプチドまたはタンパク質
について開示する任意の実施形態は、本発明による核酸に準用して適用可能であることが理解されるはずである。
【0226】
ワクチン組成物および医学的使用
本発明は、活性成分として、
- 本発明による1つまたは複数のCORONA-mRBDまたはこの断片、
- 本発明による1つまたは複数のCORONA-mSpikeまたはこの断片、
- 本発明によるCORONA-mRBDもしくはこの断片または本発明によるCORONA-mSpikeもしくはこの断片を含む、本発明による1つまたは複数のポリペプチドまたはタンパク質、および/あるいは
- 1つもしくは複数のCORONA-mRBDもしくはこの断片、1つもしくは複数のCORONA-mSpikeもしくはこの断片または1つもしくは複数のポリペプチドもしくはタンパク質をコードするヌクレオチド配列を含む、本発明による1つまたは複数の核酸
を含み、好ましくは、これからなるワクチン組成物にさらに関する。
【0227】
好ましくは、ワクチン組成物は、薬学的に許容されるアジュバント、例えば、Matrix-M1アジュバント、アルミニウム含有アジュバント、MF59、AS01、AS02、AS03、AS04、ビロソーム、ISA51、CpG ODN、担体、希釈剤、脂質ナノ粒子、および/または賦形剤をさらに含む。
【0228】
好ましくは、本発明による1つまたは複数の核酸はmRNAであり、ワクチンは、脂質ナノ粒子にパッケージングされたmRNAを含む。
【0229】
好ましくは、ワクチンは、核酸、例えば、DNAを送達するためにウイルスベクターを使用する。
【0230】
好ましくは、ワクチン組成物は、有効量の活性成分を含む。
【0231】
好ましくは、ワクチン組成物は、対象においてコロナウイルスに対する免疫応答を誘導することが可能である。好ましくは、コロナウイルスは、SARS-CoV-2であり、および/またはコロナウイルスは、MERS-CoVである。
【0232】
好ましくは、ワクチン組成物は、対象においてコロナウイルスにより引き起こされる疾患の予防および/または治療用のワクチンである。好ましくは、コロナウイルスにより引き起こされる疾患は、SARS-CoV-2により引き起こされるCOVID-19であり、および/またはコロナウイルスにより引き起こされる疾患は、MERS-CoVにより引き起こされるMERSである。
【0233】
その上、本発明は、対象においてコロナウイルスにより引き起こされる疾患の予防および/または治療における使用のための
本発明による1つまたは複数のCORONA-mRBDまたはこの断片、
本発明による1つまたは複数のCORONA-mSpikeまたはこの断片、
本発明によるCORONA-mRBDもしくはこの断片または本発明によるCORONA-mSpikeもしくはこの断片を含む、本発明による1つまたは複数のポリペプチドまたはタンパク質、
1つもしくは複数のCORONA-mRBDもしくはこの断片、1つもしくは複数のCORONA-mSpikeもしくはこの断片または1つもしくは複数のポリペプチドもしくはタンパク質をコードするヌクレオチド配列を含む、本発明による1つまたは複数の核酸、ならびに/あるいは
CORONA-mRBDおよびCORONA-mSpikeを考慮した上記のワクチン組成物に関する。
【0234】
好ましくは、ワクチン組成物ならびに/または予防および/もしくは治療における使用では、1つまたは複数は、1~3つ、より好ましくは、1つまたは2つ、およびさらにより好ましくは、2つである。好ましくは、例えば、2つ、3つ以上のCORONA-mRBDが存在する場合、例として、種々の置換が存在するため、これらの配列において相互に異なる。同じことが、2つ、3つ以上のCORONA-mSpike、ポリペプチドもしくはタンパク質、および/または核酸の存在にも当てはまる。
【0235】
好ましくは、ワクチン組成物ならびに/または予防および/もしくは治療における使用について使用する対象という用語では、対象は、脊椎動物、より好ましくは哺乳動物、さらにより好ましくは類人猿、サル、キツネザル、イヌ科動物、例えば、イヌ、オオカミもしくはキツネ、ネコ科動物、例えば、大型もしくは小型のネコ、齧歯動物、例えば、マウス、ラット、モルモット、ハムスターもしくはウサギ、ウシ科動物、例えば、バッファロー、アンテロープ、ヒツジ、ヤギもしくはウシ、シカ、ウマ、ロバ、クマ、テン、コウモリ、および/またはヒトであり、なおより好ましくは、対象は、ヒトである。
【0236】
好ましくは、ワクチン組成物ならびに/または予防および/もしくは治療における使用では、対象は、コロナウイルスに感染していない、および/またはコロナウイルスに感染している。コロナウイルスに感染していない対象は、それまでにコロナウイルス感染を経験していても、経験していなくてもよい。コロナウイルスに感染している対象は、現在、コロナウイルス感染症にかかっている可能性がある。対象がコロナウイルスに感染していないかまたはコロナウイルスに感染しているかの決定では、当業者に公知の任意の方法を使用し得る。適する方法の例は、PCR検査である。
【0237】
好ましくは、ワクチン組成物ならびに/または予防および/もしくは治療における使用では、コロナウイルスにより引き起こされる疾患は、SARS-CoV-2により引き起こされるCOVID-19であり、および/またはコロナウイルスにより引き起こされる疾患は、MERS-CoVにより引き起こされるMERSである。
【0238】
好ましくは、SARS-CoV-2は、本発明において使用する場合、この任意の変異体、例えば、Wuhan、B.1.1.7(アルファ、英国)、B.1.617.2(デルタ、インド)、B.1.351(ベータ、南アフリカ)、P.1(ガンマ、ブラジリア)、および/またはB.1.1.28.、好ましくは、SARS-CoV-2のWuhan変異体を含む。
【0239】
好ましくは、MERS-CoVは、本発明において使用する場合、この任意の変異体、例えば、AF88936.1、AFY13307.1、AGG22542.1、AGV08379.1、AGV08584.1、AHI48528.1、AHI48733.1、AHC74088.1、AGV08438.1、AID55090.1、AID55095.1、AID55087.1、AKL59401.1、ALB08322.1、ALB08289.1、AHY22545.1、AHL18090.1、AHX00711.1、AHX0072.1、およびAHY22555.1を含む。
【0240】
好ましくは、ワクチン組成物ならびに/または予防および/もしくは治療における使用では、
CORONA-mRBDまたはこの断片は、(A)本発明によるSARS-mRBDもしくはこの断片または(B)本発明によるMERS-mRBDもしくはこの断片であり、および/あるいは
CORONA-mSpikeまたはこの断片は、(A)本発明によるSARS-mSpikeもしくはこの断片または(B)本発明によるMERS-mSpikeもしくはこの断片である。
【0241】
その上、本発明では、CORONA-mRBDもしくはこの断片および/またはCORONA-mSpikeもしくはこの断片、CORONA-mRBDもしくはこの断片またはCORONA-mSpikeを含むポリペプチドもしくはタンパク質、ならびに/あるいはこれらをコードする核酸について開示する任意の実施形態は、ワクチン組成物に準用して適用可能であることが理解されるはずである。
【0242】
(A)ワクチン組成物および医学的使用
好ましくは、本発明は、(A)活性成分として、
- 本発明による1つもしくは複数のSARS-mRBDもしくはこの断片、
- 本発明による1つもしくは複数のSARS-mSpikeもしくはこの断片、
- 本発明によるSARS-mRBDもしくはこの断片または本発明によるSARS-mSpikeもしくはこの断片を含む、本発明による1つもしくは複数のポリペプチドもしくはタンパク質、および/あるいは
- 1つもしくは複数のSARS-mRBDもしくはこの断片、1つもしくは複数のSARS-mSpikeもしくはこの断片または1つもしくは複数のポリペプチドもしくはタンパク質をコードするヌクレオチド配列を含む、本発明による1つもしくは複数の核酸
を含み、好ましくは、これからなるワクチン組成物に関する。
【0243】
好ましくは、ワクチン組成物(A)は、薬学的に許容されるアジュバント、担体、希釈剤、および/または賦形剤をさらに含む。
【0244】
好ましくは、ワクチン組成物(A)は、有効量の活性成分を含む。
【0245】
好ましくは、ワクチン組成物(A)は、SARS-CoV-2に対する免疫応答を誘導することが可能である。
【0246】
好ましくは、ワクチン組成物(A)は、SARS-CoV-2により引き起こされるCOVID-19の予防および/または治療用のワクチンである。
【0247】
その上、本発明は、好ましくは、対象においてSARS-CoV-2により引き起こされるCOVID-19の予防および/または治療における使用(A)のための
- 本発明による1つまたは複数のSARS-mRBDまたはこの断片、
- 本発明による1つまたは複数のSARS-mSpikeまたはこの断片、
- 本発明によるSARS-mRBDもしくはこの断片または本発明によるSARS-mSpikeもしくはこの断片を含む、本発明による1つまたは複数のポリペプチドまたはタンパク質、ならびに/あるいは
- 1つもしくは複数のSARS-mRBDもしくはこの断片、1つもしくは複数のSARS-mSpikeもしくはこの断片または1つもしくは複数のポリペプチドもしくはタンパク質をコードするヌクレオチド配列を含む、本発明による1つまたは複数の核酸、ならびに/あるいは
- SARS-mRBDおよびSARS-mSpikeを考慮した上記のワクチン組成物に関する。
【0248】
好ましくは、ワクチン組成物(A)ならびに/または予防および/もしくは治療における使用(A)では、1つまたは複数は、1~3つ、より好ましくは、1つまたは2つ、およびさらにより好ましくは、2つである。好ましくは、例えば、2つ、3つ以上のSARS-mRBDが存在する場合、例として、種々の置換が存在するため、これらの配列において相互に異なる。同じことが、2つ、3つ以上のSARS-mSpike、ポリペプチドもしくはタンパク質、および/または核酸の存在にも当てはまる。
【0249】
好ましくは、ワクチン組成物(A)ならびに/または予防および/もしくは治療における使用(A)について使用する対象という用語は、脊椎動物、より好ましくは哺乳動物、さらにより好ましくは類人猿、サル、キツネザル、イヌ科動物、例えば、イヌ、オオカミもしくはキツネ、ネコ科動物、例えば、大型もしくは小型のネコ、齧歯動物、例えば、マウス、ラット、モルモット、ハムスターもしくはウサギ、ウシ科動物、例えば、バッファロー、アンテロープ、ヒツジ、ヤギもしくはウシ、シカ、ウマ、ロバ、クマ、テン、コウモリ、および/またはヒトであり、なおより好ましくは、対象は、ヒトである。
【0250】
好ましくは、ワクチン組成物(A)ならびに/または予防および/もしくは治療における使用(A)では、対象は、SARS-CoV-2に感染しておらず、および/またはSARS-CoV-2に感染している。SARS-CoV-2に感染していない対象は、それまでにSARS-CoV-2感染症を経験しているか、または経験していない可能性がある。SARS-CoV-2に感染している対象は、現在、SARS-CoV-2感染症にかかっている可能性がある。対象がSARS-CoV-2に感染していないかまたはSARS-CoV-2に感染しているかどうかの決定では、当業者に公知の任意の方法を使用し得る。適する方法の例は、PCR検査である。
【0251】
好ましくは、SARS-CoV-2は、本発明において使用する場合、この任意の変異体、例えば、Wuhan、B.1.1.7(アルファ、英国)、B.1.617.2(デルタ、インド)、B.1.351(ベータ、南アフリカ)、P.1(ガンマ、ブラジリア)、および/またはB.1.1.28.、好ましくは、SARS-CoV-2のWuhan変異体を含む。
【0252】
好ましくは、1つまたは複数は、2つ以上、より好ましくは1~5つ、さらにより好ましくは2~4つ、およびなおより好ましくは2つである。好ましくは、例えば、2つ以上のSARS-mRBDが存在する場合、これらの置換は異なる。同じことが、2つ、3つ以上のSARS-mSpike、ポリペプチドもしくはタンパク質、および/または核酸の存在にも当てはまる。
【0253】
より好ましくは、1つまたは複数のSARS-mRBDまたはこの断片は、本発明によるSARS-mRBDのいずれか1つまたは任意の組合せである。
【0254】
さらにより好ましくは、1つまたは複数のSARS-mRBDまたはこの断片は、配列番号1のSARS-wtRBDのG184、L137、Y187またはY171、好ましくはG184、L137またはY187、さらにより好ましくはG184またはL137から選択される位置におけるアミノ酸残基の1つの置換を含むアミノ酸配列またはこの断片を含む1つのSARS-mRBDまたはこの断片である。
【0255】
なおより好ましくは、1つまたは複数のSARS-mRBDまたはこの断片は、配列番号1のSARS-wtRBDのG184、L137、Y187またはY171、好ましくはG184、L137またはY187、さらにより好ましくはG184またはL137から選択される位置におけるアミノ酸残基の置換を含むアミノ酸配列またはこの断片のそれぞれを含む2つ以上のSARS-mRBDまたはこの断片の組合せである。
【0256】
好ましくは、
- G184の位置におけるアミノ酸残基の置換は、G184R、G184D、G184Y、G184K、G184S、G184P、G184E、G184A、G184V、G184N、G184Q、G184T、G184M、G184HまたはG184Lから選択され、より好ましくは、G184R、G184DまたはG184E、さらにより好ましくは、G184RまたはG184Eであり、なおより好ましくは、SARS-mRBDまたはこの断片は、配列番号15、配列番号17、配列番号5、配列番号20、配列番号9、配列番号16、配列番号13、配列番号2、配列番号3、配列番号18、配列番号12、配列番号14、配列番号11、配列番号7または配列番号10から選択されるアミノ酸配列を含み、好ましくは、これからなり、より好ましくは、配列番号15、配列番号5または配列番号2を含み、好ましくは、これからなり、最も好ましくは、配列番号15または配列番号2を含み、好ましくは、これからなり、
- L137の位置におけるアミノ酸残基の置換は、L137RまたはL137E、より好ましくはL137Rから選択され、なおより好ましくは、SARS-mRBDまたはこの断片は、配列番号55または配列番号53から選択されるアミノ酸配列を含み、好ましくは、これからなり、最も好ましくは、配列番号55を含み、好ましくは、これからなり、
- Y187の位置におけるアミノ酸残基の置換は、Y187NまたはY187Q、より好ましくはY187Nから選択され、なおより好ましくは、SARS-mRBDまたはこの断片は、配列番号30または配列番号31から選択されるアミノ酸配列を含み、好ましくは、これからなり、最も好ましくは、配列番号30を含み、好ましくは、これからなり、
- Y171の位置におけるアミノ酸残基の置換は、Y171SまたはY171Tから選択され、なおより好ましくは、SARS-mRBDまたはこの断片は、配列番号92または配列番号93から選択されるアミノ酸配列を含み、好ましくは、これからなる。
【0257】
好ましくは、2つ以上のSARS-mRBDまたはこの断片は、これらの置換が異なる。
【0258】
なおより好ましくは、1つまたは複数のSARS-mRBDまたはこの断片は、2つのSARS-mRBDまたはこの断片の組合せであり、ここで、一方は、配列番号1のSARS-wtRBDのG184E、G184DまたはG184R、より好ましくはG184RまたはG184Eの置換を含むアミノ酸配列またはこの断片を含み、他方は、L137Rの置換を含むアミノ酸配列またはこの断片を含む。
【0259】
なおさらにより好ましくは、1つまたは複数のSARS-mRBDまたはこの断片は、2つのSARS-mRBDまたはこの断片の組合せであり、ここで、一方は、配列番号2、配列番号5または配列番号15、より好ましくは配列番号15または配列番号2からなり、他方は、配列番号55からなる。
【0260】
より好ましくは、1つまたは複数のSARS-mSpikeまたはこの断片は、本発明によるSARS-mSpikeのいずれか1つまたは任意の組合せである。
【0261】
さらにより好ましくは、1つまたは複数のSARS-mSpikeまたはこの断片は、配列番号100のSARS-wtSpikeのG502、L455、Y505またはY489、好ましくはG502、L455またはY505、さらにより好ましくはG502またはL455から選択される位置におけるアミノ酸残基の1つの置換を含むアミノ酸配列またはこの断片を含む1つのSARS-mSpikeまたはこの断片である。
【0262】
なおより好ましくは、1つまたは複数のSARS-mSpikeまたはこの断片は、配列番号100のSARS-wtSpikeのG502、L455、Y505またはY489、好ましくはG502、L455またはY505、さらにより好ましくはG502またはL455から選択される位置におけるアミノ酸残基の1つの置換を含むアミノ酸配列またはこの断片のそれぞれを含む2つ以上のSARS-mSpikeまたはこの断片の組合せであり、ここで、好ましくは、位置におけるアミノ酸残基の置換。
【0263】
好ましくは、
- G502の位置におけるアミノ酸残基の置換は、G502R、G502D、G502Y、G502K、G502S、G502P、G502E、G502A、G502V、G502N、G502Q、G502T、G502M、G502HまたはG502L、より好ましくはG502R、G502DまたはG502E、より好ましくはG502RまたはG502Eから選択され、なおより好ましくは、SARS-mSpikeまたはこの断片は、配列番号114、配列番号104、配列番号119、配列番号108、配列番号115、配列番号112、配列番号101、配列番号117、配列番号102、配列番号111、配列番号113、配列番号116、配列番号110、配列番号106または配列番号109から選択されるアミノ酸配列を含み、好ましくは、これからなり、より好ましくは、配列番号114、配列番号104または配列番号101を含み、好ましくは、これからなり、最も好ましくは、配列番号114または配列番号101を含み、好ましくは、これからなり、
- L455の位置におけるアミノ酸残基の置換は、L455RまたはL455E、より好ましくはL455Rから選択され、なおより好ましくは、SARS-mSpikeまたはこの断片は、配列番号154または配列番号152から選択されるアミノ酸配列を含み、好ましくは、これからなり、最も好ましくは、配列番号154を含み、好ましくは、これからなり、
- Y505の位置におけるアミノ酸残基の置換は、Y505NまたはY505Q、より好ましくはY505Nから選択され、なおより好ましくは、SARS-mSpikeまたはこの断片は、配列番号129または配列番号130から選択されるアミノ酸配列を含み、好ましくは、これからなり、より好ましくは、配列番号129を含み、好ましくは、これからなり、
- Y489の位置におけるアミノ酸残基の置換は、Y489SまたはY489Tから選択され、なおより好ましくは、SARS-mSpikeまたはこの断片は、配列番号191または配列番号192から選択されるアミノ酸配列を含み、好ましくは、これからなる。
【0264】
好ましくは、2つ以上のSARS-mSpikeまたはこの断片は、これらの置換が異なる。
【0265】
なおより好ましくは、1つまたは複数のSARS-mSPIKEまたはこの断片は、2つのSARS-mSPIKEまたはこの断片の組合せであり、ここで、一方は、配列番号1のSARS-wtSPIKEのG502R、G502DまたはG502E、より好ましくはG502RまたはG502Eの置換を含むアミノ酸配列またはこの断片を含み、他方は、L455Rの置換を含むアミノ酸配列またはこの断片を含む。
【0266】
なおさらにより好ましくは、1つまたは複数のSARS-mSPIKEまたはこの断片は、2つのSARS-mSPIKEまたはこの断片の組合せであり、ここで、一方は、配列番号114、配列番号104または配列番号101、より好ましくは配列番号114、より好ましくは配列番号104または配列番号114からなり、他方は、配列番号154からなる。
【0267】
より好ましくは、1つもしくは複数のSARS-mRBDもしくはこの断片、1つもしくは複数のSARS-mSpikeもしくはこの断片または1つもしくは複数のポリペプチドもしくはタンパク質をコードするヌクレオチド配列を含む、本発明による1つまたは複数の核酸は、本発明による核酸のいずれか1つまたは任意の組合せである。
【0268】
さらにより好ましくは、本発明による1つもしくは複数の核酸または1つの核酸は、配列番号255、配列番号256または配列番号266、なおより好ましくは配列番号255および配列番号256の組合せ、または配列番号256および配列番号266の組合せから選択される。
【0269】
その上、本発明では、
SARS-mRBDまたはこの断片、および/あるいは
SARS-mSpikeまたはこの断片、および/あるいは
SARS-mRBDもしくはこの断片またはSARS-mSpikeを含むポリペプチドまたはタンパク質、および/あるいは
これらをコードする核酸
について開示する任意の実施形態は、ワクチン組成物(A)ならびに/または予防および/もしくは治療における使用(A)に準用して適用可能であることが理解されるはずである。
【0270】
(B)ワクチン組成物および医学的使用
好ましくは、本発明は、加えてまたはあるいは、(B)に関する。好ましくは、本発明は、(B)活性成分として、
- 本発明による1つもしくは複数のMERS-mRBDもしくはこの断片、
- 本発明による1つもしくは複数のMERS-mSpikeもしくはこの断片、
- 本発明によるMERS-mRBDもしくはこの断片または本発明によるMERS-mSpikeもしくはこの断片を含む、本発明による1つもしくは複数のポリペプチドもしくはタンパク質、および/あるいは
- 1つもしくは複数のMERS-mRBDもしくはこの断片、1つもしくは複数のMERS-mSpikeもしくはこの断片または1つもしくは複数のポリペプチドもしくはタンパク質をコードするヌクレオチド配列を含む、本発明による1つもしくは複数の核酸
を含み、好ましくは、これからなるワクチン組成物に関する。
【0271】
好ましくは、ワクチン組成物(B)は、薬学的に許容されるアジュバント、担体、希釈剤、および/または賦形剤をさらに含む。
【0272】
好ましくは、ワクチン組成物(B)は、有効量の活性成分を含む。
【0273】
好ましくは、ワクチン組成物(B)は、MERS-CoVに対する免疫応答を誘導することが可能である。
【0274】
好ましくは、ワクチン組成物(B)は、MERS-CoVにより引き起こされるMERSの予防および/または治療用のワクチンである。
【0275】
その上、本発明は、好ましくは、対象においてMERS-CoVにより引き起こされるMERSの予防および/または治療における使用(B)のための
- 本発明による1つまたは複数のMERS-mRBDまたはこの断片、
- 本発明による1つまたは複数のMERS-mSpikeまたはこの断片、
- 本発明によるMERS-mRBDもしくはこの断片または本発明によるMERS-mSpikeもしくはこの断片を含む、本発明による1つまたは複数のポリペプチドまたはタンパク質、ならびに/あるいは
- 1つもしくは複数のMERS-mRBDもしくはこの断片、1つもしくは複数のMERS-mSpikeもしくはこの断片または1つもしくは複数のポリペプチドもしくはタンパク質をコードするヌクレオチド配列を含む、本発明による1つまたは複数の核酸、ならびに/あるいは
- MERS-mRBDおよびMERS-mSpikeを考慮した上記のワクチン組成物に関する。
【0276】
好ましくは、ワクチン組成物(B)ならびに/または予防および/もしくは治療における使用(B)では、1つまたは複数は、2つ以上、より好ましくは1~5つ、さらにより好ましくは2~4つ、およびなおより好ましくは2つである。好ましくは、例えば、2つ以上のMERS-mRBDが存在する場合、例として、種々の置換が存在するため、これらの配列において相互に異なる。同じことが、2つ、3つ以上のMERS-mSpike、ポリペプチドもしくはタンパク質、および/または核酸の存在にも当てはまる。
【0277】
好ましくは、ワクチン組成物(B)ならびに/または予防および/もしくは治療における使用(B)について使用する対象という用語は、脊椎動物、より好ましくは哺乳動物、より好ましくは類人猿、サル、キツネザル、イヌ科動物、例えば、イヌ、オオカミもしくはキツネ、ネコ科動物、例えば、大型もしくは小型のネコ、齧歯動物、例えば、マウス、ラット、モルモット、ハムスターもしくはウサギ、ウシ科動物、例えば、バッファロー、アンテロープ、ヒツジ、ヤギもしくはウシ、シカ、ウマ、ロバ、クマ、テン、コウモリ、および/またはヒトであり、なおより好ましくは、対象は、ヒトである。
【0278】
好ましくは、ワクチン組成物(B)ならびに/または予防および/もしくは治療における使用(B)では、対象は、MERS-CoVに感染していない、および/またはMERS-CoVに感染している。MERS-CoVに感染していない対象は、それまでにMERS-CoV感染症を経験しているか、または経験していない可能性がある。MERS-CoVに感染している対象は、現在、MERS-CoV感染症にかかっている可能性がある。対象がMERS-CoVに感染していないかまたはMERS-CoVに感染しているかどうかの決定では、当業者に公知の任意の方法を使用し得る。適する方法の例は、PCR検査である。
【0279】
好ましくは、MERS-CoVは、本発明において使用する場合、この任意の変異体、例えば、AF88936.1、AFY13307.1、AGG22542.1、AGV08379.1、AGV08584.1、AHI48528.1、AHI48733.1、AHC74088.1、AGV08438.1、AID55090.1、AID55095.1、AID55087.1、AKL59401.1、ALB08322.1、ALB08289.1、AHY22545.1、AHL18090.1、AHX00711.1、AHX0072.1およびAHY22555.1を含む。
【0280】
好ましくは、1つまたは複数は、2つ以上、より好ましくは1~5つ、さらにより好ましくは2~4つ、およびなおより好ましくは2つである。好ましくは、例えば、2つ以上のMERS-mRBDが存在する場合、例として、種々の置換が存在するため、これらの配列において相互に異なる。同じことが、2つ、3つ以上のMERS-mSpike、ポリペプチドもしくはタンパク質、および/または核酸の存在にも当てはまる。
【0281】
より好ましくは、1つまたは複数のMERS-mRBDまたはこの断片は、本発明によるMERS-mRBDのいずれか1つまたは任意の組合せである。
【0282】
さらにより好ましくは、1つまたは複数のMERS-mRBDまたはこの断片は、配列番号194のMERS-wtRBDのD144、D171またはD173、好ましくはD144またはD171から選択される位置におけるアミノ酸残基の1つの置換を含むアミノ酸配列またはこの断片を含む1つのMERS-mRBDまたはこの断片である。
【0283】
なおより好ましくは、1つまたは複数のMERS-mRBDまたはこの断片は、配列番号194のMERS-wtRBDのD144、D171またはD173、好ましくはD144またはD171から選択される位置におけるアミノ酸残基の1つの置換を含むアミノ酸配列またはこの断片のそれぞれを含む2つ以上のMERS-mRBDまたはこの断片の組合せである。
【0284】
好ましくは、
- D144の位置におけるアミノ酸残基の置換は、D144Aであり、より好ましくは、MERS-mRBDまたはこの断片は、配列番号195から選択されるアミノ酸配列を含み、好ましくは、これからなり、
- D171の位置におけるアミノ酸残基の置換は、D171Kであり、より好ましくは、MERS-mRBDまたはこの断片は、配列番号196から選択されるアミノ酸配列を含み、好ましくは、これからなり、
- D173の位置におけるアミノ酸残基の置換は、D173Kであり、より好ましくは、MERS-mRBDまたはこの断片は、配列番号197から選択されるアミノ酸配列を含み、好ましくは、これからなる。
【0285】
好ましくは、2つ以上のMERS-mRBDまたはこの断片は、これらの置換が異なる。
【0286】
より好ましくは、1つまたは複数のMERS-mSpikeまたはこの断片は、本発明によるMERS-mSpikeのいずれか1つまたは任意の組合せである。
【0287】
さらにより好ましくは、1つまたは複数のMERS-mSpikeまたはこの断片は、配列番号200のMERS-wtRBDのD510、D537またはD539、好ましくはD510またはD537から選択される位置におけるアミノ酸残基の1つの置換を含むアミノ酸配列またはこの断片を含む1つのSARS-mSpikeまたはこの断片である。
【0288】
なおより好ましくは、1つまたは複数のMERS-mSpikeまたはこの断片は、配列番号200のMERS-wtRBDのD510、D537またはD539、好ましくはD510またはD537から選択される位置におけるアミノ酸残基の1つの置換を含むアミノ酸配列またはこの断片のそれぞれを含む2つ以上のMERS-mSpikeまたはこの断片の組合せである。
【0289】
好ましくは、
- D510の位置におけるアミノ酸残基の置換は、D510Aであり、より好ましくは、MERS-mSpikeまたはこの断片は、配列番号201から選択されるアミノ酸配列を含み、好ましくは、これからなり、
- D537の位置におけるアミノ酸残基の置換は、D537Kであり、より好ましくは、MERS-mSpikeまたはこの断片は、配列番号202から選択されるアミノ酸配列を含み、好ましくは、これからなり、
- D539の位置におけるアミノ酸残基の置換は、D539Kであり、より好ましくは、MERS-mSpikeまたはこの断片は、配列番号203から選択されるアミノ酸配列を含み、好ましくは、これからなる。
【0290】
好ましくは、2つ以上のMERS-mSpikeまたはこの断片は、これらの置換が異なる。
【0291】
より好ましくは、1つもしくは複数のMERS-mRBDもしくはこの断片、1つもしくは複数のMERS-mSpikeもしくはこの断片または1つもしくは複数のポリペプチドもしくはタンパク質をコードするヌクレオチド配列を含む本発明による1つまたは複数の核酸は、本発明による核酸のいずれか1つまたは任意の組合せである。
【0292】
その上、本発明では、
MERS-mRBDまたはこの断片、および/あるいは
MERS-mSpikeまたはこの断片、および/あるいは
MERS-mRBDもしくはこの断片またはMERS-mSpikeを含むポリペプチドまたはタンパク質、および/あるいは
これらをコードする核酸
について開示する任意の実施形態は、ワクチン組成物(B)ならびに/または予防および/もしくは治療における使用(B)に準用して適用可能であることが理解されるはずである。
【0293】
VIRUS-mRBDまたはこの断片をデザインおよび/または得るための方法
本発明は、ワクチン組成物用の活性成分をデザインおよび/または得るための方法であって、
(i)ウイルスの野生型受容体結合ドメイン(VIRUS-wtRBD)に1つまたは複数の突然変異を含む、ウイルスの突然変異受容体結合ドメイン(VIRUS-mRBD)またはこの断片を用意する工程と、
(ii)VIRUS-mRBDまたはこの断片が
a)VIRUS-wtRBDと比較した、ウイルスの受容体結合ドメインの受容体(RBD受容体)(VIRUS-RBD受容体)に対する結合力の低下
を示すかどうかを決定する工程と、
(iii)a)が満たされるとき、VIRUS-mRBDまたはこの断片を活性成分として選択する工程と
を含む方法にさらに関する。
【0294】
好ましくは、方法は、
(ii)の工程において、(i)の工程において得られたVIRUS-mRBDまたはこの断片が、
b)抗VIRUS-wtRBD中和抗体(VIRUS-wtRBD-nAB)に対する結合、ならびに
c)適宜、タンパク質および/またはペプチドの安定性
を示すかどうかを決定することと、
(iii)の工程において、a)およびb)が同時に、ならびに適宜a)、b)、およびc)が同時に満たされるとき、VIRUS-mRBDまたはこの断片を活性成分として選択することと
をさらに含む。
【0295】
好ましくは、(i)、(ii)、および(iii)の工程は、この順序で行う。
【0296】
好ましくは、VIRUS-mRBDまたはこの断片は、ウイルススパイクタンパク質の突然変異受容体結合ドメイン(mRBD)(VIRUS-mRBD)またはこの断片である。
【0297】
好ましくは、VIRUS-mRBDまたはこの断片は、ペプチドまたはタンパク質、好ましくは、タンパク質である。
【0298】
好ましくは、VIRUS-RBD受容体またはこの断片は、可溶性型および/または膜結合型のVIRUS-RBD受容体、好ましくは、可溶性型のVIRUS-RBD受容体である。
【0299】
好ましくは、突然変異は、アミノ酸残基の置換である。
【0300】
好ましくは、(iii)の工程における選択は、a)またはb)を、a)またはb)のいずれか一方から開始する任意の順序で連続的に行うことにより実施する。より好ましくは、a)およびb)のうち選択を開始する方を満たすVIRUS-mRBDまたはこの断片は、a)およびb)のうちの残りの1つのいずれか1つに供する。次いで、a)またはb)のうちの残りの1つを満たすVIRUS-mRBDまたはこの断片を、a)およびb)を同時に満たすものとして選択する。より好ましくは、(iii)の工程における選択は、a)、b)、およびc)を、a)、b)またはc)のいずれか1つから開始する任意の順序で連続的に行うことにより実施する。さらにより好ましくは、a)、b)またはc)のうち選択を開始する1つを満たすVIRUS-mRBDまたはこの断片は、a)、b)またはc)のうちの残りの2つのいずれか1つに供する。次いで、a)、b)またはc)の残りの2つのうち一方を満たすVIRUS-mRBDまたはこの断片は、a)、b)またはc)のうちの最後の1つに供する。次いで、a)、b)またはc)の最後の1つを満たすVIRUS-mRBDまたはこの断片を、a)、b)、およびc)を同時に満たすものとして選択する。好ましくは、a)、b)、および適宜c)は、a)、b)、および適宜c)、またはb)、a)、および適宜c)の順序、より好ましくはa)、b)、および適宜c)の順序で連続的に行う。
【0301】
好ましくは、(ii)c)の工程は、インビトロで実施する。タンパク質および/またはペプチドの安定性が示されるかどうかのインビトロでの決定は、当業者に公知の任意の方法により行うことができる。例として、ELISAにより、適する標準を使用したタンパク質量の検出ならびにタンパク質折畳みの保存の検出が可能な特異的抗体を用いて、タンパク質および/またはペプチドの安定性を測定する。例として、実施例4に記載のようなHEK293細胞のトランスフェクションにより生成されるタンパク質を、培養上清中に生成および分泌させることにより十分なタンパク質収率を、0.5μg/mlを超える濃度、好ましくは、これよりも高い濃度で得ることができる。同様に、タンパク質安定性は、細胞表面上でのタンパク質の発現、および特異的蛍光標識抗体による検出の後、FACS解析によって測定し得る。本発明では、ディープ突然変異スキャニング実験を、遺伝子型対表現型でカップリングするプラットフォーム上で実施し得る(https://www.nature.com/articles/nmeth.3027.pdf)。
【0302】
好ましくは、
(i)の工程は、それぞれがVIRUS-wtRBDに1つまたは複数の突然変異を含むVIRUS-mRBDまたはこの断片のライブラリーを用意することを含み、好ましくは、これにより実施し、ここで、ライブラリーに含まれるVIRUS-mRBDまたはこの断片の突然変異は、少なくとも部分的に異なり、
(ii)の工程が、
a)VIRUS-wtRBDと比較した、VIRUS-RBD受容体に対する結合力の低下
を示すVIRUS-mRBDまたはこの断片についてライブラリーをスクリーニングすることにより実施され、
(iii)の工程は、このライブラリーから、a)を満たす1つまたは複数のVIRUS-mRBDまたはこの断片を活性成分として選択することを含む。
【0303】
より好ましくは、
(ii)の工程は、
a)VIRUS-wtRBDと比較した、VIRUS-RBD受容体に対する結合力の低下、ならびに
b)VIRUS-wtRBD-nABに対する結合、ならびに
c)適宜、タンパク質および/またはペプチドの安定性
を示すVIRUS-mRBDまたはこの断片についてライブラリーをスクリーニングすることにより実施し、
(iii)の工程は、このライブラリーから、a)およびb)を同時に満たし、ならびに適宜a)、b)、およびc)を同時に満たす1つまたは複数のVIRUS-mRBDまたはこの断片を活性成分として選択することを含む。
【0304】
好ましくは、(iii)の工程における選択は、a)またはb)を、a)またはb)のいずれか一方から開始する任意の順序で連続的に行うことにより実施する。より好ましくは、a)およびb)のうち選択を開始する方を満たす1つまたは複数のVIRUS-mRBDまたはこの断片は、a)およびb)のうちの残りの1つのいずれか1つに供する。次いで、a)またはb)のうちの残りの1つを満たす1つまたは複数のVIRUS-mRBDまたはこの断片を、a)およびb)を同時に満たすものとして選択する。より好ましくは、(iii)の工程における選択は、a)、b)、およびc)を、a)、b)またはc)のいずれか1つから開始する任意の順序で連続的に行うことにより実施する。さらにより好ましくは、a)、b)またはc)のうち選択を開始する1つを満たす1つまたは複数のVIRUS-mRBDまたはこの断片は、a)、b)またはc)のうちの残りの2つのいずれか1つに供する。次いで、a)、b)またはc)の残りの2つのうち一方を満たす1つまたは複数のVIRUS-mRBDまたはこの断片は、a)、b)またはc)のうちの最後の1つに供する。次いで、a)、b)またはc)のうちの最後の1つを満たす1つまたは複数のVIRUS-mRBDまたはこの断片を、a)、b)、およびc)を同時に満たすものとして選択する。好ましくは、a)、b)、および適宜c)は、a)、b)、および適宜c)、またはb)、a)、および適宜c)の順序、より好ましくはa)、b)、および適宜c)の順序で連続的に行う。
【0305】
(ii)c)の工程は、インビトロまたはインシリコで、より好ましくは、インビトロで実施し得る。タンパク質および/またはペプチドの安定性を示すVIRUS-mRBDまたはこの断片についてのインビトロでのライブラリーのスクリーニングは、当業者に公知の任意の方法により行うことができる。例として、安定性は、ディープ突然変異スキャニング実験により測定することができる。例として、ELISAにより、適する標準を使用したタンパク質量の検出ならびにタンパク質折畳みの保存の検出が可能な特異的抗体を用いて、タンパク質および/またはペプチドの安定性を測定する。例として、実施例4に記載のようなHEK293細胞のトランスフェクションにより生成されるタンパク質を、培養上清中に生成および分泌させることにより十分なタンパク質収率を、0.5μg/mlを超える濃度、好ましくは、これよりも高い濃度で得ることができる。同様に、タンパク質安定性は、細胞表面上でのタンパク質の発現、および特異的蛍光標識抗体による検出の後、FACS解析によって測定し得る。本発明では、ディープ突然変異スキャニング実験を、遺伝子型対表現型でカップリングするプラットフォーム上で実施し得る(https://www.nature.com/articles/nmeth.3027.pdf)。
【0306】
好ましくは、(i)、(ii)a)および(ii)b)の工程は、インビトロおよび/またはインシリコで、好ましくは、インビトロで実施する。より好ましくは、(i)、(ii)a)および(ii)b)の工程は、インシリコで実施する。さらにより好ましくは、(i)の工程はインビトロで実施し、(ii)a)および(ii)b)の工程はインシリコで実施する。なおさらにより好ましくは、(i)、(ii)a)および(ii)b)の工程は、インビトロで実施する。詳細は、次に記載する。
【0307】
(i)、(ii)a)および/または(ii)b)の工程をインビトロで実施する場合
VIRUS-wtRBDに1つまたは複数の突然変異を含むVIRUS-mRBDまたはこの断片は、当業者に公知の任意の方法によりインビトロで用意することができる。例として、1つまたは複数の点突然変異を組換えDNA技術によりVIRUS-wtRBDに導入することができ、適する任意の発現系、好ましくは、実施例4に記載のようにHEK293発現系によりVIRUS-mRBDを発現させることができる。ただし、VIRUS-mRBDは細胞表面上で発現し、これによりポリペプチド鎖における膜貫通部分をコードするドメインを含む。
【0308】
VIRUS-RBD受容体に対するVIRUS-mRBDまたはこの断片およびVIRUS-wtRBDの結合力および結合力の低下は、CORONA-RBD受容体に対するCORONA-mRBDまたはこの断片およびCORONA-wtRBDについて記載のように測定および決定することができる。したがって、CORONA-RBD受容体に対するCORONA-mRBDまたはこの断片およびCORONA-wtRBDについて開示する結合力および結合力の低下に関する任意の開示または実施形態は、本発明による、ワクチン組成物用の活性成分をデザインおよび/または得るための方法において、VIRUS-RBD受容体に対するVIRUS-mRBDまたはこの断片およびVIRUS-wtRBDの結合力および結合力の低下の測定に準用して適用可能であることが理解されるはずである。
【0309】
同様に、抗VIRUS-wtRBD-nABに対するVIRUS-mRBDまたはこの断片およびVIRUS-wtRBDの結合は、抗CORONA-wtRBD-nABに対するCORONA-mRBDまたはこの断片およびCORONA-wtRBDについて記載のように測定および決定することができる。したがって、抗CORONA-wtRBD-nABに対するCORONA-mRBDまたはこの断片およびCORONA-wtRBDについて開示する結合に関する任意の開示または実施形態は、本発明による、ワクチン組成物用の活性成分をデザインおよび/または得るための方法において、抗VIRUS-wtRBD-nABに対するVIRUS-mRBDまたはこの断片およびVIRUS-wtRBDの結合の測定に準用して適用可能であることが理解されるはずである。
【0310】
好ましくは、(i)の工程は、それぞれがVIRUS-wtRBDに1つまたは複数の突然変異を含む、VIRUS-mRBDまたはこの断片のライブラリーを用意することを含み、好ましくは、これにより実施し、ここで、ライブラリーに含まれるVIRUS-mRBDまたはこの断片は、突然変異が少なくとも部分的に異なる。このようなVIRUS-mRBDまたはこの断片のライブラリーは、当業者に公知の任意の方法により用意することができる。好ましくは、ライブラリーは、例として、オーバーラップ伸長PCR(https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0022283613004300?via%3Dihub)、エラープローンPCR(https://link.springer.com/protocol/10.1385/1-59259-395-X:3)または化学的突然変異誘発(https://academic.oup.com/nar/article/32/4/1448/1038612?login=true)により、1遺伝子あたり厳密に1つのコドンの突然変異を作出する戦略(https://journals.plos.org/plosone/article?id=10.1371/journal.pone.0052031;https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0003269713005782?casa_token=d5JPaeUuTwYAAAAA:-F2ChRH8nmjiVhQYPsl1BF4JpK-m_E0CoVBibRWGkDKxCPd7D3IVxW7n-f7rRFCxRPGYJc8Q)と同様に生成することができ、ここで、デザインは、1遺伝子あたり複数のコドンの突然変異に適応させて突然変異の平均的作用を調査し(https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4104320/)、プラスミドまたはウイルス、あるいはインビトロによる系、例えば、T7もしくはM13バクテリオファージディスプレイ、リボソームディスプレイ、大腸菌(E.coli)ディスプレイ、または最も好ましくは、哺乳動物細胞ディスプレイによりクローニングおよび発現させ得る。
【0311】
a)を示すVIRUS-mRBDまたはこの断片についてのライブラリーのスクリーニングは、当業者に公知の任意の方法により行うことができる。好ましくは、結合力は、例えば、VIRUS-mRBDもしくはVIRUS-wtRBDを細胞表面上に発現する細胞を、フルオロフォアで直接的もしくは間接的に標識したVIRUS-RBD受容体で染色して、または反対に、VIRUS-RBD受容体を細胞表面上に発現する細胞を、フルオロフォアで直接的もしくは間接的に標識した可溶性VIRUS-mRBDもしくは可溶性VIRUS-wtRBDで染色してフローサイトメトリー解析を行い、染色細胞を計数して正および/または負の選択を行うことによって決定し、ここで、陽染性細胞数の減少は、結合力の低下を示す。次いで、結合力の低下が、VIRUS-RBD受容体に対するVIRUS-wtRBDの結合力を、VIRUS-RBD受容体に対するVIRUS-mRBDの結合力と比較することにより得られる。結合力をフローサイトメトリー解析により決定する場合、結合力の低下は、好ましくは、VIRUS-wtRBDとVIRUS-RBD受容体との結合から生じる陽染性細胞数を、VIRUS-mRBDとVIRUS-RBD受容体との結合から生じる陽染性細胞数と比較することにより決定する。好ましくは、VIRUS-RBD受容体に対するVIRUS-mRBDの結合力の低下は、好ましくは、陽染性細胞数の50%以上、より好ましくは80%以上、さらにより好ましくは90%以上、なおより好ましくは95%以上、およびなおさらにより好ましくは98%以上の減少によって示す。ワクチン接種による最良の作用を得るために、VIRUS-mRBDをワクチンとして使用する場合、VIRUS-RBD受容体に対する結合力は、可能な限り低下させなければならない。したがって、好ましくは、VIRUS-RBD受容体に対する結合力の低下に関して上限は存在しない。したがって、好ましくは、陽染性細胞の減少に関して上限は存在せず、この減少は100%でさえあり得る。とは言え、陽染性細胞の減少に関する上限は、100%以下、より好ましくは、99%以下であり得る。
【0312】
b)を示すVIRUS-mRBDまたはこの断片についてのライブラリーのスクリーニングは、当業者に公知の任意の方法により行うことができる。b)を示すことは、好ましくは、抗VIRUS-wtRBD-nABに対する結合力が維持される、すなわち、VIRUS-wtRBDと比較して、わずかに中程度に結合力が低下し、結合力が増加するまでの範囲となることを意味する。抗VIRUS-wtRBD-nABは、種々の抗体クラスに属していてもよく、抗CORONA-wtRBD-nAB、抗SARS-wtRBD-nAB、および/または抗MERS-wtRBD-nABについて上記のように準用して定義する。
【0313】
抗VIRUS-wtRBD-nABに対するVIRUS-mRBDまたはこの断片およびVIRUS-wtRBDの結合力は、当業者に公知の任意の方法により測定することができる。好ましくは、結合力は、例えば、VIRUS-mRBDもしくはVIRUS-wtRBDを細胞表面上に発現する細胞を、フルオロフォアで直接的もしくは間接的に標識した抗VIRUS-wtRBD-nABで染色して、または反対に、抗VIRUS-wtRBD-nABを細胞表面上に発現する細胞を、フルオロフォアで直接的もしくは間接的に標識した可溶性VIRUS-mRBDもしくは可溶性VIRUS-wtRBDで染色してフローサイトメトリー解析を行い、陽染性細胞を計数することによって決定する。抗VIRUS-wtRBD-nABの結合力をフローサイトメトリー解析により決定する場合、結合力は、好ましくは、いくつかの異なるモノクローナル抗VIRUS-wtRBD-nAB、好ましくは、4つ以上の異なる任意の選択されたモノクローナル抗VIRUS-wtRBD-nABの平均結合力である。
【0314】
次いで、維持結合力、すなわち、わずかに中程度に結合力が低下し、結合力が増加するまでの範囲の結合力が、抗VIRUS-wtRBD-nABに対するVIRUS-wtRBDの結合力または平均結合力を、抗VIRUS-wtRBD-nABに対するVIRUS-mRBDの結合力または平均結合力とそれぞれ比較することにより得られる。
【0315】
好ましくは、結合力は、フローサイトメトリー解析により測定し、ここで、陽染性細胞数が減少すると結合力が低くなることを示す。したがって、維持された、すなわち、結合力が、わずかに中程度に結合力が低下し、結合力が増加するまでの範囲であるかどうかは、好ましくは、VIRUS-wtRBDと抗VIRUS-wtRBD-nABとの結合から生じる陽染性細胞数を、VIRUS-mRBDと抗VIRUS-wtRBD-nABとの結合力から生じる陽染性細胞数とそれぞれ比較することにより決定する。
【0316】
結合力をフローサイトメトリー解析により決定する場合、RBD抗VIRUS-wtRBD-nABに対するVIRUS-mRBDの結合力におけるわずかに中程度の低下は、好ましくは、陽染性細胞数および/またはED50における50%以上、より好ましくは80%以上、およびさらにより好ましくは90%以上の低下によって示す。
【0317】
すでに上述のように、フローサイトメトリー解析により結合力を決定するとき、結合力は、好ましくは、上に定義するように平均結合力である。したがって、上に定義する結合力のわずかに中程度の低下は、好ましくは、上に定義する平均結合力のわずかに中程度の低下である。
【0318】
ワクチン接種による最良の作用を得るために、VIRUSA-mRBDをワクチンとして使用する場合、抗VIRUS-wtRBD-nABに対する結合力は、可能な限り高くなければならない。したがって、好ましくは、抗VIRUS-wtRBD-nABに対する結合力の低下は、可能な限り中程度でなければならず、好ましくは、VIRUS-mRBDに対する抗VIRUS-wtRBD-nABの結合力は、好ましくは、低下せず、さらには増加もしない。すなわち、陽染性細胞数は低下しない。
【0319】
フローサイトメトリー解析により結合力を決定する場合、抗VIRUS-wtRBD-nABに対するVIRUS-mRBDの結合力の増加は、好ましくは、陽染性細胞数の1.1倍以上、より好ましくは1.2倍以上、さらにより好ましくは1.5倍以上、なおさらにより好ましくは2倍以上の増加によって示す。上述のように、ワクチン接種による最良の作用を得るために、VIRUS-mRBDをワクチンとして使用する場合、抗VIRUS-wtRBD-nABに対する結合力は、可能な限り高くなければならない。したがって、好ましくは、抗VIRUS-wtRBD-nABに対する結合力の増加に関して上限は存在しない。したがって、好ましくは、陽染性細胞の増加に関して上限は存在しない。とは言え、陽染性細胞の増加に関する上限は、10.000倍以下、より好ましくは1.000倍以下、およびなおより好ましくは100倍以下であり得る。
【0320】
好ましくは、(i)、(ii)a)および/または(ii)b)の工程は、ディープ突然変異スキャニング実験を使用することにより実施する。
【0321】
好ましくは、(i)、(ii)a)および/または(ii)b)の3つの工程すべてをインビトロで実施する場合、適宜、(ii)c)の工程は、上記のようにインビトロでも実施する。
【0322】
(i)の工程をインビトロまたはインシリコで実施し、(ii)a)および(ii)b)の工程をインシリコで実施する場合
(i)、(ii)a)および/または(ii)b)の3つの工程すべてを、コンピュータを使用することによりインシリコで実施する場合、VIRUS-wtRBDに関するデータをコンピュータに提供して生物情報学的解析により処理し、ここで、好ましくは、コンピュータに提供されるデータは、VIRUS-wtRBDまたはこの断片の結晶構造からのデータである。
【0323】
結晶構造のデータを提供するとき、(i)および(ii)a)の工程は、VIRUS-RBD受容体と複合体形成したVIRUS-wtRBDまたはこの断片の結晶構造のデータを提供すること、およびVIRUS-mRBDもしくはこの断片または好ましくは、VIRUS-mRBDもしくはこの断片のライブラリーのデータをコンピュータに提供し、データを生物情報学的解析により処理して、VIRUS-mRBDもしくはこの断片がa)を示すかどうかを決定するか、またはより好ましくは、a)を示すVIRUS-mRBDもしくはこの断片についてライブラリーのスクリーニングを実施することによって組み合わせる。好ましくは、a)が示されるかどうかの決定は、VIRUS-RBD受容体と複合体形成したVIRUS-wtRBDまたはこの断片の結晶構造に基づいて、VIRUS-RBD受容体に干渉するVIRUS-wtRBDまたはこの断片のアミノ酸残基を同定し、a)を示すものとしてVIRUS-mRBDを、好ましくは、干渉するアミノ酸残基に1つまたは複数の突然変異を含むライブラリーのVIRUS-mRBDを選択することにより行う。
【0324】
好ましくは、VIRUS-wtRBDとVIRUS-RBD受容体との複合体に関する結晶構造のデータは、好ましくは、VIRUS-RBD受容体と複合体形成したVIRUS-wtRBDの1つもしくは複数の実験構造または計算モデル、あるいはVIRUS-mRBDまたはこの断片に結合するVIRUS-RBD受容体の関連ドメインの結晶構造である。
【0325】
同様に、結晶構造のデータを提供するとき、好ましくは、(i)および(ii)b)の工程は、抗VIRUS-wtRBD-nABと複合体形成したVIRUS-wtRBDまたはこの断片の結晶構造のデータをコンピュータに提供すること、およびVIRUS-mRBDもしくはこの断片または好ましくは、VIRUS-mRBDもしくはこの断片のライブラリーのデータを提供し、データを生物情報学的解析により処理して、VIRUS-mRBDもしくはこの断片がb)を示すかどうかを決定するか、またはより好ましくは、b)を示すVIRUS-mRBDもしくはこの断片についてライブラリーのスクリーニングを実施することによって組み合わせる。好ましくは、b)が示されるかどうかの決定は、抗VIRUS-wtRBD-nABと複合体形成したVIRUS-wtRBDまたはこの断片の結晶構造に基づいて、抗VIRUS-wtRBD-nABに干渉しないVIRUS-wtRBDまたはこの断片のアミノ酸残基を同定し、b)を示すものとしてVIRUS-mRBDを、好ましくは、干渉しないアミノ酸残基に1つまたは複数の突然変異を含むライブラリーのVIRUS-mRBDを選択することにより行う。
【0326】
より好ましくは、干渉しないアミノ酸残基は、a)の決定において同定された干渉するアミノ酸残基から選択される。
【0327】
好ましくは、抗VIRUS-wtRBD-nABとの複合体に関する結晶構造のデータは、好ましくは、抗VIRUS-wtRBD-nABと複合体形成したVIRUS-wtRBDの1つもしくは複数の実験構造または計算モデル、あるいはVIRUS-mRBDまたはこの断片に結合する抗VIRUS-wtRBD-nABの関連ドメインの結晶構造である。
【0328】
好ましくは、(i)、(ii)a)および/または(ii)b)の3つの工程すべてを、VIRUS-wtRBDとVIRUS-RBD受容体との複合体に関する結晶構造のデータを提供することによりインシリコで実施する場合、適宜、(ii)c)の工程は、上記のようにインビトロで実施する。
【0329】
(i)の工程をインビトロで実施し、(ii)a)および(ii)b)の工程をインシリコで実施する場合、適宜、(ii)c)の工程もインシリコで実施し、ここで、好ましくは、(i)の工程は、1つまたは複数のディープ突然変異スキャニング実験を使用することによりインビトロで実施する。好ましくは、(ii)a)および(ii)b)の工程ならびに適宜(ii)c)の工程は、コンピュータを使用することによりインシリコで実施し、ここで、VIRUS-mRBDおよびVIRUS-wtRBDに関するデータをコンピュータに提供し、生物情報学的解析により処理し、ここで、コンピュータに提供されるデータは、好ましくは、VIRUS-mRBDまたはこの断片およびVIRUS-wtRBDまたはこの断片の1つまたは複数のディープ突然変異スキャニング実験のデータである。
【0330】
好ましくは、(ii)a)の工程は、1つまたは複数のディープ突然変異スキャニング実験のデータを使用し、VIRUS-mRBDまたはこの断片(クエリ抗原、s)のVIRUS-RBD受容体に対する結合(Rendo(s))を反映する適応度の尺度を用いて実施し、ここで、Rendoは、クエリ抗原sの解離定数Kにおける、例えば、滴定により参照抗原(例えば、野生型)rと比較したlogスケールの差であり、ここで、式は、Log(K(s))-Log(K(r))である。
【0331】
同様に、(ii)b)の工程は、1つまたは複数のディープ突然変異スキャニング実験のデータを使用し、1つまたは複数のVIRUS-wtRBD-nABからのエスケープ(Rnab(s))を反映するVIRUS-mRBDまたはこの断片(s)の適応度の尺度を用いて実施し、ここで、Rnabは、エスケープ率であり、好ましくは、FACSにより定量した場合、総数と比較して結合が低下した数を特定する。
【0332】
好ましくは、(ii)c)の工程をさらに実施する。(ii)c)の工程は、1つまたは複数のディープ突然変異スキャニング実験のデータを使用し、VIRUS-mRBDまたはこの断片(s)の安定性(Rstab(s))を反映する適応度の尺度を用いて実施する。ここで、Rstabは、数cにおける、例えば、蛍光強度により参照抗原rと比較したlogスケールの差であり、ここで、式は、Log(c(s))-Log(c(r))である。
【0333】
さらにより好ましくは、
(iii)の工程は、ライブラリーの1つまたは複数のVIRUS-mRBDまたはこの断片を、
a)VIRUS-RBD受容体に対する結合力を低下させるこれらの能力、ならびに
b)適宜、VIRUS-wtRBD-nABに対して結合するこれらの能力、ならびに
c)さらに適宜、タンパク質および/またはペプチドの安定性を示すこれらの能力
についてスコアリングすることと、
このスコアリングに基づいて、このライブラリーから、a)についての最高スコア、好ましくはa)およびb)の組合せについての最高スコア、ならびにより好ましくはa)、b)、およびc)の組合せについての最高スコアを有する1つまたは複数のVIRUS-mRBDまたはこの断片を活性成分として選択することと
をさらに含む。
【0334】
好ましくは、a)、b)、およびc)はすべて、相互に等しく重みづけし、例えば、a):b):c)=1:1:1である。
【0335】
好ましくは、スコアリングは、コンピュータを使用してインシリコで実施する。好ましくは、スコアリングは、
好ましくは、Rendo(s)、適宜Rnab(s)、およびさらには適宜Rstab(s)の正規化データに基づいて、1つまたは複数のVIRUS-mRBDまたはこの断片をスコアリングすることであって、
Stot(s’)=Nendo(s’)であり、
適宜、Stot(s’)=Nnab(s’)-Nendo(s’)であり、
更には適宜、Stot(s’)=Nstab(s’)-Nnab(s’)-Nendo(s’)であり、
式中、
Stot(s’)は、VIRUS-mRBDまたはこの断片の総スコアであり、
Nendo(s’)は、VIRUS-RBD受容体に対するVIRUS-mRBDまたはこの断片(s)の正規化した結合(Rendo(s))であり、
Nnab(s’)は、1つまたは複数のVIRUS-wtRBD-nABからのVIRUS-mRBDまたはこの断片の正規化したエスケープ(Rnab(s))であり、
Nstab(s’)は、VIRUS-mRBDまたはこの断片の安定性(Rstab(s))である、スコアリングすることと、
ライブラリーから、最高スコアStot(s’)を有する活性成分として使用する1つまたは複数のVIRUS-mRBDまたはこの断片を選択することと
を含む。
【0336】
好ましくは、1つまたは複数のVIRUS-mRBDまたはこの断片のスコアリングは、Rendo(s)、Rnab(s)、およびRstab(s)の正規化に基づき、ここで、好ましくは、Rendo(s)およびRstab(s)のデータのスコアリング前にRstab(s)を前選択し、ここで、
VIRUS-mRBDまたはこの断片のRstab(s)は、VIRUS-wtRBDのexp(-アルファ)の少なくとも1つの因数でなければならず、
VIRUS-mRBDまたはこの断片のRendo(s)は、VIRUS-wtRBDのexp(-ベータ)の少なくとも1つの因数でなければならず、
ここで、好ましくは、アルファおよびベータの閾値を設定する。アルファおよびベータの閾値により、スコアリングのために考慮すべきVIRUS-mRBDの脱安定化の程度および結合強度を制御することができる。
【0337】
好ましくは、デザインおよび/または得るための方法は、活性成分を得るための方法である。
【0338】
好ましくは、活性成分をデザインおよび/または得るための方法は、ウイルスに対するワクチン組成物用の活性成分をデザインおよび/または得るための方法である。
【0339】
好ましくは、活性成分として、VIRUS-mRBDもしくはこの断片または1つもしくは複数のVIRUS-mRBDもしくはこの断片は、
- 1つまたは複数のVIRUS-mRBDまたはこの断片、および/あるいは
- VIRUS-mRBDまたはこの断片を含む、ウイルスの1つまたは複数の突然変異スパイクタンパク質(VIRUS-mSpike)またはこの断片、および/あるいは
- VIRUS-mRBDもしくはこの断片またはVIRUS-mSpikeもしくはこの断片を含む、1つまたは複数のポリペプチドまたはタンパク質、および/あるいは
- ・ VIRUS-mRBDもしくはこの断片、
・ VIRUS-mSpikeもしくはこの断片、または
・ ポリペプチドもしくはタンパク質
をコードする1つまたは複数の核酸
として存在し得る。
【0340】
好ましくは、ワクチン組成物用の活性成分をデザインおよび/または得るための方法は、コロナウイルス、より好ましくは、SARS-CoV-2および/またはMERS-CoV、C型肝炎ウイルス(HCV)、ブタ生殖器呼吸器症候群ウイルス(PRRSV)、インフルエンザウイルス、呼吸器合胞体ウイルス(RSV)、デングウイルス、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、黄熱ウイルス、ジカウイルス、西ナイルウイルス(WNV)、日本脳炎ウイルス、ダニ媒介脳炎ウイルス(TBE)、エプスタイン・バーウイルス(EBV)、ならびに/またはサイトメガロウイルス(CMV)から選択されるウイルスに適用可能である。
【0341】
好ましくは、活性成分をデザインおよび/または得るための方法では、
- VIRUS-mRBDは、本発明によるCORONA-mRBD、C型肝炎ウイルスmRBD、ブタ生殖器呼吸器症候群ウイルスmRBD、インフルエンザウイルスmRBD、呼吸器合胞体ウイルスmRBD、デングウイルスmRBD、ヒト免疫不全ウイルスmRBD、黄熱ウイルスmRBD、ジカウイルスmRBD、西ナイルウイルスmRBD、日本脳炎ウイルスmRBD、ダニ媒介脳炎ウイルスmRBD、エプスタイン・バーウイルス(EBV)mRBD、および/またはサイトメガロウイルスmRBDであり、より好ましくは、本発明によるCORONA-mRBDは、本発明によるSARS-mRBDおよび/またはMERS-mRBDであり、
- VIRUS-wtRBDは、本発明によるCORONA-wtRBD、C型肝炎ウイルスwtRBD、ブタ生殖器呼吸器症候群ウイルスwtRBD、インフルエンザウイルスwtRBD、呼吸器合胞体ウイルスwtRBD、デングウイルスwtRBD、ヒト免疫不全ウイルスwtRBD、黄熱ウイルスwtRBD、ジカウイルスwtRBD、西ナイルウイルスwtRBD、日本脳炎ウイルスwtRBD、ダニ媒介脳炎ウイルスwtRBD、エプスタイン・バーウイルス(EBV)wtRBD、および/またはサイトメガロウイルスwtRBDであり、より好ましくは、本発明によるCORONA-wtRBDは、本発明によるSARS-wtRBD(配列番号1)および/またはMERS-wtRBD(配列番号194)であり、
- VIRUS-RBD受容体は、CORONA-RBD受容体、より好ましくはACE2および/またはDPP4、C型肝炎ウイルスRBD受容体、より好ましくはCD81および/またはApoE、ブタ生殖器呼吸器症候群ウイルスRBD受容体、より好ましくはDC163、インフルエンザウイルスRBD受容体、より好ましくはシアル酸、呼吸器合胞体ウイルスRBD受容体、より好ましくはRSV Gタンパク質および/またはRSV Fタンパク質、さらにより好ましくはCX3CR1、ヘパラン硫酸プロテオグリカン(HSPG)、ヌクレオリン、EGFR、IGF1R、ICAM-1および/またはインスリン様増殖因子1受容体(IGF1R)、デングウイルスRBD受容体、より好ましくはマンノース受容体、Fcガンマ受容体、TIM/TAM、ヘパリン硫酸、DC-SIGN、ヒト免疫不全ウイルスRBD受容体、より好ましくはCD4、黄熱ウイルスRBD受容体、より好ましくはヘパラン硫酸プロテオグリカン(HSPG)、ジカウイルスRBD受容体、より好ましくはホスファチジルセリン受容体、さらにより好ましくはT細胞免疫グロブリン(TIM)ならびにTYRO3、AXL、および、MERTK(TAM)、西ナイルウイルスRBD受容体、より好ましくはホスファチジルセリン受容体、さらにより好ましくはT細胞免疫グロブリン(TIM)ならびにTYRO3、AXLおよび、MERTK(TAM)、日本脳炎ウイルスRBD受容体、より好ましくはホスファチジルセリン受容体、さらにより好ましくはT細胞免疫グロブリン(TIM)ならびにTYRO3、AXLおよび、MERTK(TAM)、ダニ媒介脳炎ウイルスRBD受容体、より好ましくはホスファチジルセリン受容体、さらにより好ましくはT細胞免疫グロブリン(TIM)ならびにTYRO3、AXL、およびMERTK(TAM)、エプスタイン・バーウイルス受容体、より好ましくは補体受容体2(CD21)および/またはサイトメガロウイルスRBD受容体、より好ましくは血小板由来増殖因子(PDGF)受容体α(PDGFRα)、ヘパラン硫酸プロテオグリカン(HSPG)、上皮増殖因子受容体(EGFR)、インテグリンであり、
- VIRUS-wtRBD-nABは、本発明によるCORONA-wtRBD-nAB、C型肝炎ウイルスnAB、ブタ生殖器呼吸器症候群ウイルスnAB、インフルエンザウイルスnAB、呼吸器合胞体ウイルスnAB、デングウイルスnAB、ヒト免疫不全ウイルスnAB、黄熱ウイルスnAB、ジカウイルスnAB、西ナイルウイルスnAB、日本脳炎ウイルスnAB、ダニ媒介脳炎ウイルスnAB、エプスタイン・バーウイルスnAb、および/またはサイトメガロウイルスnABであり、より好ましくは、本発明によるCORONA-wtRBD-nABは、本発明によるSARS-wtRBD-nABおよび/またはMERS-wtRBD-nABであり、
- VIRUS-mSpikeは、本発明によるCORONA-mSpike、C型肝炎ウイルスmSpike、ブタ生殖器呼吸器症候群ウイルスmSpike、インフルエンザウイルスmSpike、呼吸器合胞体ウイルスmSpike、デングウイルスmSpike、ヒト免疫不全ウイルスmSpike、黄熱ウイルスmSpike、ジカウイルスmSpike、西ナイルウイルスmSpike、日本脳炎ウイルスmSpike、ダニ媒介脳炎ウイルスmSpike、エプスタイン・バーウイルスmSpike、および/またはサイトメガロウイルスmSpikeであり、より好ましくは、本発明によるCORONA-mSpikeは、本発明によるSARS-mSpikeおよび/またはMERS-mSpikeである。
【0342】
より好ましくは、活性成分をデザインおよび/または得るための方法では、
- VIRUS-mRBDは、本発明によるCORONA-mRBD、より好ましくは、本発明によるSARS-mRBDおよび/またはMERS-mRBDであり、
- VIRUS-wtRBDは、本発明によるCORONA-wtRBD、より好ましくは、本発明によるSARS-wtRBD(配列番号1)および/またはMERS-wtRBD(配列番号194)であり、
- VIRUS-RBD受容体は、CORONA-RBD受容体、より好ましくは、ACE2および/またはDPP4であり、
- VIRUS-wtRBD-nABは、本発明によるCORONA-wtRBD-nAB、より好ましくは、本発明によるSARS-wtRBD-nABおよび/またはMERS-wtRBD-nABであり、
- VIRUS-mSpikeは、本発明によるCORONA-mSpike、より好ましくは、本発明によるSARS-mSpikeおよび/またはMERS-mSpikeである。
【0343】
その上、本発明では、
CORONA-mRBD、SARS-mRBD、および/またはMERS-mRBDまたはこの断片、ならびに/あるいは
CORONA-mSpike、SARS-mSpike、および/またはMERS-mSpikeまたはこの断片、
CORONA-mRBD、SARS-mRBDもしくはMERS-mRBDもしくはこの断片、またはCORONA-mSpike、SARS-mSpikeもしくはMERS-mSpikeを含むポリペプチドまたはタンパク質、
本発明によるこれらをコードする核酸、
本発明によるこれらを含むワクチン組成物、ならびに/あるいは
予防および/または治療における使用
について開示する任意の実施形態は、ワクチン組成物用の活性成分をデザインおよび/または得るための方法に準用して適用可能であることが理解されるはずである。
【0344】
その上、本発明は、本発明による、ワクチン組成物用の活性成分をデザインおよび/または得るための方法によって、活性成分として得られたVIRUS-mRBDまたはこの断片に関する。
【0345】
好ましくは、VIRUS-mRBDは、本発明によるCORONA-mRBD、C型肝炎ウイルスmRBD、ブタ生殖器呼吸器症候群ウイルスmRBD、インフルエンザウイルスmRBD、呼吸器合胞体ウイルスmRBD、デングウイルスmRBD、ヒト免疫不全ウイルスmRBD、黄熱ウイルスmRBD、ジカウイルスmRBD、西ナイルウイルスmRBD、日本脳炎ウイルスmRBD、ダニ媒介脳炎ウイルスmRBD、エプスタイン・バーウイルスmRBD、および/またはサイトメガロウイルスmRBDであり、より好ましくは、本発明によるCORONA-mRBDは、本発明によるSARS-mRBDおよび/またはMERS-mRBDである。
【0346】
より好ましくは、VIRUS-mRBDは、本発明によるCORONA-mRBD、より好ましくは、本発明によるSARS-mRBDおよび/またはMERS-mRBDである。
【0347】
その上、本発明は、対象においてコロナウイルスにより引き起こされる疾患、好ましくは、SARS-CoV-2により引き起こされるCOVID-19および/またはMERS-CoVにより引き起こされるMERSの予防および/または治療のための方法であって、
- 本発明による1つもしくは複数のCORONA-mRBD、好ましくはSARS-mRBDもしくはMERS-mRBD、もしくはこの断片、
- 本発明による1つもしくは複数のCORONA-mSpike、好ましくはSARS-mSpikeもしくはMERS-mSpike、もしくはこの断片、
- 本発明による1つもしくは複数のポリペプチドもしくはタンパク質、
- 本発明による1つもしくは複数の核酸、および/または
- 本発明によるワクチン組成物
を対象に投与することを含む方法に関する。
【0348】
その上、本発明は、対象において、好ましくはコロナウイルス、SARS-CoV-2、MERS-CoVに対する免疫応答を誘導するための方法であって、
- 本発明による1つもしくは複数のCORONA-mRBD、好ましくは、SARS-mRBDもしくはMERS-mRBD、もしくはこの断片、
- 本発明による1つもしくは複数のCORONA-mSpike、好ましくは、SARS-mSpikeもしくはMERS-mSpike、もしくはこの断片、
- 本発明による1つもしくは複数のポリペプチドもしくはタンパク質、
- 本発明による1つもしくは複数の核酸、および/または
- 本発明によるワクチン組成物
を対象に投与することを含む方法に関する。
【0349】
その上、本発明では、CORONA-mRBD/SARS-mRBDおよび/またはMERS-mRBDまたはこの断片、ならびに/あるいはCORONA-mSpike/SARS-mSpikeおよび/もしくはMERS-mSpikeもしくはこの断片、CORONA-mRBD/SARS-mRBDもしくはMERS-mRBDもしくはこの断片、またはCORONA-mSpike/SARS-mSpikeもしくはMERS-mSpikeを含むポリペプチドもしくはタンパク質、これらをコードする核酸、これらを含むワクチン組成物、予防および/または治療における使用、ならびに/あるいはこれらを得るための方法について開示する任意の実施形態は、コロナウイルスにより引き起こされる疾患の予防および/もしくは治療のための方法ならびに/または免疫応答を誘導するための方法に準用して適用可能であることが理解されるはずである。
【0350】
【表3】
【0351】
【表4】
【0352】
本発明は、次の図面および実施例によりさらに例示する。
【図面の簡単な説明】
【0353】
図1図1A~Gは、sACE2がcAb(競合抗体、「nAb」に対して同義語とし使用)を分泌するB細胞の生成に干渉することをインビボで示す。図1Aは、ヒト化残基およびRBDフットプリントを有するモデル化マウスACE2の構造である。図1Bは、DropMap解析の免疫化スケジュールおよび時点の概要である。図1Cは、cAbを分泌するB細胞の出現頻度を示す。図1Dは、RBDに対するACE2の結合遮断のELISAによる評価を示す。図1Eは、図1Cのデータの用量応答解析を示す。図1Fは、免疫化時のcAb分泌の比較解析を示す。図1Gは、mhACE2の有無による完全スパイク免疫化後の脾細胞のDropMap解析を示す。
図2図2A~Cは、ACE2結合が低下したSARS-mRBDおよびSARS-wtRBD特異的nABの結合の保存の、生物情報学的解析の使用によるインシリコでの同定を示す。
図3図3A~Cは、ELISAの使用によりインビトロで決定した、SARS-wtRBDならびに単一、二重、および三重のアミノ酸置換を有する種々のSARS-mRBDに対する、ACE2および種々のモノクローナルnABの結合力を示す。
図4図4A~Fは、ELISAの使用によりインビトロで決定した、SARS-wtRBDおよび種々のSARS-mRBDに対するACE2および種々のモノクローナルnABの結合力を示す。
図5図5は、SARS-wtRBDおよび種々のSARS-mRBDを考慮して種々のモノクローナルnABおよびACE2について決定したEC50値を列挙する。
図6図6は、ELISAの使用によりインビトロで決定した、SARS-wtRBDおよび種々のSARS-mRBDに対するACE2および種々のモノクローナルnABの結合力を示す。
図7図7は、sACE2レベルを制御したマウスモデルを使用してインビボで決定した、SARS-wtRBDまたは種々のSARS-mRBDのいずれかによる免疫化後のB細胞の出現頻度を示す。
図8図8AおよびBは、N501Yの置換を含む新たに出現したSARS-CoV-2変異体についてのsACE2によるエピトープマスキングのインシリコでのモデリングを示す。
図9図9は、ELISAの使用によりインビトロで決定した、MERS-wtRBDまたは種々のMERS-mRBDのいずれかに対するDPP4および種々のモノクローナルnABの結合力を示す。
図10図10は、MERS-wtRBDまたは種々のMERS-mRBDのいずれかの使用による血清由来のヒトDPP4およびウサギDPP4のプルダウンアッセイの結果を示す。
図11図11は、野生型SARS-CoV-2完全スパイクタンパク質のペプチド配列を強調した領域とともに示す。
図12図12は、野生型MERS-CoV完全スパイクタンパク質のペプチド配列を強調した領域とともに示す。
図13A図13は、ELISAの使用によりインビトロで決定した、SARS-wtRBDおよび種々のSARS-mRBDに対するACE2および種々のモノクローナルnABの結合力を示す。
図13B図13は、ELISAの使用によりインビトロで決定した、SARS-wtRBDおよび種々のSARS-mRBDに対するACE2および種々のモノクローナルnABの結合力を示す。
図13C図13は、ELISAの使用によりインビトロで決定した、SARS-wtRBDおよび種々のSARS-mRBDに対するACE2および種々のモノクローナルnABの結合力を示す。
図13D図13は、ELISAの使用によりインビトロで決定した、SARS-wtRBDおよび種々のSARS-mRBDに対するACE2および種々のモノクローナルnABの結合力を示す。
図14A図14は、細胞間融合アッセイにより決定したSARS-mRBDの膜融合能を示す。
図14B図14は、細胞間融合アッセイにより決定したSARS-mRBDの膜融合能を示す。
図14C図14は、細胞間融合アッセイにより決定したSARS-mRBDの膜融合能を示す。
図14D図14は、細胞間融合アッセイにより決定したSARS-mRBDの膜融合能を示す。
【発明を実施するための形態】
【実施例
【0354】
注釈:次の実施例では、一部の場合、RBDのアミノ酸の置換の位置は、Spike内の位置を考慮して示す。この点については、上の表AおよびBを参照してスパイク内の位置をRBD内のそれぞれの位置に割り当てる。
[実施例1]
【0355】
インビボでのマウスモデルにおいてsACE2またはnABによるSARS-wtRBDのマスキングによってB細胞が障害され、抗体が応答する - 図1A~G
図1A~G)可溶性ACE2は、インビボでACE2-RBD相互作用に干渉/競合する抗体(cAb)を分泌するB細胞の生成に干渉する。
【0356】
図1A)ヒト化残基を青、RBDフットプリントを黒で示す、モデル化マウスACE2の構造。
【0357】
図1B)DropMap解析の免疫化スケジュールおよび時点の概要。個々の脾細胞を微小液滴に被包して解析し、分泌抗体のRBDへの結合およびsACE2との競合を蛍光再配置により測定した。
【0358】
図1C)32日目のcAbを分泌するB細胞の出現頻度(IgG分泌細胞のパーセンテージとして)を、マスキング有能nAb(18pmolもしくは86pmol)またはmhACE2(4pmol、37pmolもしくは92pmol)で示されるRBD(3μg/免疫化、120pmol)を使用する免疫化について示す。
【0359】
図1D)32日目にマウス血清を採取し、RBDに対するACE2の結合遮断をELISAにより評価した。相互性血清希釈率に対する光学密度および曲線上面積(AAC)の値を示す。
【0360】
図1E)%RBMマスキングに対して正規化した場合cに示すデータの用量応答傾向。
【0361】
図1F)2回目の免疫化後4日目(32日目)および21日目(49日目)のcAb分泌の比較解析。
【0362】
図1G)mhACE2の有無(0pmol、4pmolまたは92pmol)による完全スパイク免疫化(3μg/免疫化、18pmolによる免疫化)後49日目の脾細胞のDropmap解析。
【0363】
図1に示すすべての実験では、1条件あたりN=3匹のマウスを使用し、両側独立Student t検定により統計学的解析を行った(***p<0.001、**p<0.01、および*p<0.05)。c、e~fのグラフでは、出現頻度平均値+/-SDを示す。
【0364】
この実施例は、実施例5に記載のように実施した。ただし、加えて、ACE2による結合能の遮断をマウス血清について決定した。
【0365】
1%BSA添加PBS中の血清の段階希釈液をRBDコーティングした96ウェルプレートに加えた。組換えRBDを高結合96ウェルELISAプレート(Corning社、#CLS3690)上にPBS(Sigma Aldrich社、米国、MO)中に4μg/mlで+4℃で一晩固定化した。プレートを1時間、PBS中1%のBSA(Thermo Fisher社、Gibco、米国、MA)により室温でブロッキングした。室温でのインキュベーションから1時間後、社内で生成したビオチン化ACE2-hFcg1を加えて、1%BSA添加PBS中の最終有効濃度70(EC70)とした。室温でもう1時間インキュベートした後、プレートをAP共役ストレプトアビジン(Southern Biotech社、#SBA-7100-04)を1%BSA添加PBSで1:500に希釈したものとともにインキュベートして、ビオチン化ACE2-hFcg1を検出した。これは、血清抗体によりRBDへの結合が阻止されなかったものである。50%最大ACE2遮断能(BD50)は、非線形回帰によるS字曲線のフィッティングをR(statsパッケージ)により実施することによって決定した。曲線下面積または曲線上面積は、GraphPadPrismソフトウェアにより決定した。非ビオチン化ACE2-hFcg1対照の上下のプラトーは、参照として作用した。
[実施例2]
【0366】
ACE2結合が低下したSARS-mRBDおよびSARS-wtRBD特異的nABの結合の保存の、生物情報学的解析の使用によるインシリコでの同定 - 図2A、B、およびC
抗原の膜結合受容体または可溶性受容体への結合またはこれによるマスキングがそれぞれ阻止されるため、さらに強力な免疫応答を誘導可能なタンパク質変異抗原またはペプチド抗原を生成するための方法は、特に有用である。その上、抗原は、重要なエピトープが免疫原に特異的な免疫応答の中和を誘発し続けるようにデザインする。
【0367】
「脱マスキング」抗原の生成は、アミノ酸の最小数の交換を抗原に導入して、ヒトまたは動物において発現する受容体に対する結合を阻止する工程を含み、中和抗体または回復期のドナーの血清に対する結合の保存についてスクリーニングする工程を含む。
【0368】
免疫原を選択し、この受容体結合モチーフを、例として、構造的試験または抗原の突然変異誘発により同定する。受容体結合モチーフは、受容体と抗原との直接的結合インターフェースである。適用可能な場合、複数の受容体結合モチーフを同定する。例えば、MERS-CoVは、2つの別個のRBMによりDPP4だけでなくシアル酸も認識する(https://www.pnas.org/content/114/40/E8508)。
【0369】
RBMのディープ突然変異スキャンを、遺伝子型対表現型でカップリングするプラットフォーム上で実施する(https://www.nature.com/articles/nmeth.3027.pdf)。このようなプラットフォームは、細胞に基づくアッセイを含み、ここで、タンパク質は、プラスミドまたはウイルス、あるいはインビトロによる系、例えば、T7もしくはM13バクテリオファージディスプレイ、リボソームディスプレイ、大腸菌ディスプレイ、または最も好ましくは、哺乳動物細胞ディスプレイにより発現させる。抗原の突然変異した変異体の遺伝子ライブラリーは、合成し、適切なプラスミドにクローニングする。突然変異体ライブラリーは、例として、オーバーラップ伸長PCR(https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0022283613004300?via%3Dihub)、エラープローンPCR(https://link.springer.com/protocol/10.1385/1-59259-395-X:3)または化学的突然変異誘発(https://academic.oup.com/nar/article/32/4/1448/1038612?login=true)により生成することができる。一部の戦略により、1遺伝子あたり厳密に1つのコドンの突然変異を作出する(https://journals.plos.org/plosone/article?id=10.1371/journal.pone.0052031 ; https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0003269713005782?casa_token=d5JPaeUuTwYAAAAA:-F2ChRH8nmjiVhQYPsl1BF4JpK-m_E0CoVBibRWGkDKxCPd7D3IVxW7n-f7rRFCxRPGYJc8Q)。このデザインを、1遺伝子あたり複数のコドンの突然変異に適応させて突然変異の平均的作用を調査することができる(https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4104320/)。突然変異誘発は、等しい融解温度を有するプライマーをデザインして、ある特定の突然変異によるバイアスを防ぐことにより強化させることができる(https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S1931312817301968)。SARS-CoV-2RBDでは、RBD突然変異体ライブラリーを酵母において発現させることにより、ディープ突然変異スキャニングを適用した(https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0092867420310035)。酵母発現系は、抗原が受容体結合モチーフ内またはこの付近にグリコシル化を含まない場合に適する。グリコシル化が抗原と宿主受容体との結合に影響する場合、哺乳動物細胞における発現が好ましい。ヒトを対象とするワクチンの生成では、ヒト細胞株が最も好ましい。同様に、ブタを対象とするワクチンの生成では、ブタ細胞株が最も好ましい。
【0370】
ライブラリーのスクリーニングは、突然変異体ライブラリーによる細胞のトランスフェクションまたは形質導入後のフローサイトメトリー細胞選別により実施することができる。抗原を膜発現が可能となる骨格にクローニングし、蛍光レポーター、例えば、GFPによりタグ化して、(i)抗原発現細胞を前選択し、(ii)抗原の発現レベルを決定し得る。トランスフェクション条件は、1細胞あたり単一のコード変異体を得ることが好ましい(https://www.jimmunol.org/content/200/11/3825, https://www.jbc.org/article/S0021-9258(20)35531-9/fulltext, https://science.sciencemag.org/content/369/6508/1261)。FACS選択は、細胞表面上に発現するRBMに結合する可溶性受容体で細胞を染色することにより実施する。可溶性受容体は、フルオロフォアで直接的に標識し得るか、またはストレプトアビジン共役フルオロフォアでビオチン化して染色し得るか、またはhisタグ、strepタグ、もしくはmycタグでタグ化した後、タグを検出する二次薬剤で染色し得るかのいずれかである。好ましくは、タンパク質は、Twin-Strep-Tagでタグ化し、StrepTactin共役フルオロフォアで染色する。さらにより好ましくは、タンパク質は、フルオロフォアで直接的に標識する。第1の工程では、細胞を可溶性受容体で染色し、適する方法、例として、FACS選別により選別する。可溶性受容体の結合は、RBMに融合したレポータータンパク質シグナルからの分離が可能となるフルオロフォアにより検出する。細胞は、蛍光レポーター、例えば、GFPに融合したRBMタンパク質/ペプチドを発現するように正に選択する。その上、細胞は、可溶性受容体に対する結合が消失したものを選択する。
【0371】
可溶性受容体および中和抗体の両方がRBMに結合するため、中和抗体により認識されるエピトープの保存の選択は、好ましくは、可溶性受容体に対する結合が低下したRBM変異体の選択後に実施する。
【0372】
第2の工程では、可溶性受容体に対する結合が低下した選別細胞を、RBMを認識する抗体で染色する。これにより、RBM突然変異体のサブライブラリーを、中和抗体により結合するエピトープの保存について正に選択する。サブライブラリーの細胞は、1つまたは、より好ましくは、複数の組換え中和抗体で染色する。最も好ましくは、別個のRBMエピトープを標的とする一連の中和抗体の等モル混合物を使用する。最適には、中和抗体は、親和性適合させ、さもなければ、異なる結合力を考慮するように抗体混合物を調整する。中和抗体の和は、RBM全体を包含しなければならない。中和抗体は、別個のフルオロフォアまたはビオチンのいずれかで個々に標識して、抗体結合を一括で検出することができる。同様に、抗体結合は、抗体特異的な二次薬剤により検出することができる。組換え中和抗体が入手不可能である場合、スクリーニングは、細胞を回復期のドナー(ヒトまたは免疫化動物)の血清で染色し、結合した抗体を適する二次試薬により検出することによって実施し得る。
【0373】
一過性発現系を使用する場合、別個の組換え中和抗体または回復期血漿の結合は、単回の染色により検査する。安定な発現系を使用する場合、サブライブラリーは、受容体結合の消失について選別後に培養および増殖させ得る。サブライブラリーは、一括でさらに培養し得るか、または例として、単一細胞としてサブクローニングしてモノクローナル細胞株を増殖させ得る。その後、選択されたRBM突然変異体を安定して発現する細胞を、一連の組換え中和抗体または回復期血清で染色し得る。好ましくは、別個の組換え中和抗体による染色は、複数回の個々の染色により実施する。中和抗体の結合を維持する細胞により発現する突然変異体抗原は、正に選択する。最も好ましくは、突然変異RBMに対するすべての選択された中和抗体の結合は、保存される。
【0374】
一過性トランスフェクション後に選択された細胞は、第1の染色後/第2の染色および選別前に培地中に直接的に選別する。第2の選別後、細胞を培地中、またはより好ましくは、直接的に溶解緩衝液中に選別する。突然変異RBMを安定して発現する選択された細胞は、増殖させた後に解析し得る。全gDNAまたはより好ましくは、RNAは、RNA抽出キット(Quiagen社)またはGeneJET RNA精製キット(Thermo Scientific社)のようなキットにより精製する。目的の標的領域は、全突然変異体ライブラリーに及ぶ突然変異領域に及ぶ遺伝子特異的プライマーにより増幅する。RNA抽出では、Transcriptor High Fidelity cDNA Synthesis Kit(Roche社)または高忠実度Accuscript(Agilent社)のような高忠実度キットを使用して特異的プライマーによりcDNAを逆転写させる。RBMの多様化領域は、1つまたは複数の断片を突然変異領域のサイズに応じてPCRにより増幅する。PCRアンプリコンは、シーケンシングプライマー、ユニークなバーコード、およびフローセル結合配列を含む、ハイスループットシーケンシング、例えば、Illuminaシーケンシング用のアダプターと隣接する。アンプリコンは、増幅断片の長さおよび予想突然変異体数に適するように選択されたハイスループットシーケンシングによりシーケンシングする。例として、Illumina社のMiniSeq、MiSeq、NextSeqまたはHiSeq系を使用することができる。
【0375】
転写物におけるRBM突然変異体の変異体の出現頻度を決定し、選択されたライブラリーにおけるこれらの出現頻度をナイーブベクターライブラリーにおけるこれらの出現頻度と比較することにより、データを解析する。これによって、各変異体についてのインプットから選択までの出現頻度の変化は、受容体結合を抑止する能力および中和抗体結合を保存する能力の尺度として作用する。
【0376】
突然変異体ライブラリーのスクリーニングは、宿主受容体に対する結合が最小である突然変異体の選択および中和抗体に対する結合の保存の基底として作用する。突然変異体ライブラリーのスクリーニングにより入手したデータに加えて、これらの解析は、抗原と複合体形成した受容体の構造情報と組み合わせることができる。その上、解析は、抗原と複合体形成した中和抗体の構造情報と組み合わせることができる。これにより拡張した生物情報学的解析が、最も適する突然変異の同定に役立ち、これによって宿主受容体に対する結合が最小化される一方、中和抗体の保存が最大化される。
【0377】
スクリーニングデータにより、タンパク質の発現/安定性(E、発現)、受容体に対する親和性(B、結合)、および中和抗体に対する結合(N、結合)に関して、RBM配列における単一または複数の残基間の関連性がもたらされる。RBM変異体は、Eは最大となるが、Bは最小となり、Nは最大となるように選択される。加えて、選択された残基は、受容体抗原構造の物理的インターフェースが著しく異ならなければならない。その上、選択された残基は、抗原と複合体形成した中和抗体のいかなる構造の物理的インターフェースも著しく異なってはならない。最も最適には、選択された残基は、いかなる公知の中和抗体によっても標的とされず、回復期の個体の血清抗体の標的でもない。
【0378】
最も単純なシナリオでは、突然変異体ライブラリーのスキャニングにより、すべての単一突然変異の帰結が明らかとなる。加えて、ライブラリーは、複数の突然変異の作用を組み合わせて試験するように適応され得る。後者に生物情報学的に取り組むために、配列共変動解析による部位間の進化的カップリングを推定し得る。
【0379】
突然変異体ライブラリーのスクリーニングおよび/または生物情報学的スクリーニングによりRBM突然変異を同定する場合、突然変異体は、ELISA結合、または受容体もしくは中和抗体に対する結合力を適切に決定するための他の任意の方法により選択することができる。
【0380】
例として、KdまたはEC50(最大結合の50%における有効濃度)により測定可能な可溶性受容体に対するRBMの結合力は、KdまたはEC50がそれぞれの可溶性受容体の血清濃度または組織濃度を超えるように低下させなければならない。
【0381】
生物情報学的手法
以下は、抗原の安定な一次配列変異体の選択を優先して、中和抗体に対する結合を保存する一方、特異的結合タンパク質に対する結合を低下させるための手順を記載する。この方法は、ディープ突然変異スキャニング実験によるデータに依拠し、この実験では、標的抗原Aにおける一次配列変異体のライブラリーSについての適応度(特定の選択アッセイにおいて、ここでは結合および安定性)を測定する。
【0382】
手順
実験データの記載
手順は、実験による次のインプットに依拠する。
1)適応度の尺度が抗原安定性(Rstab)を反映する1つまたは複数のディープ突然変異スキャニング実験。
2)適応度の尺度が1つまたは複数の中和抗体からのエスケープ(Rnab)を反映する1つまたは複数のディープ突然変異スキャニング実験。
3)適応度の尺度が内因性の結合パートナーに対する結合(Rendo)を反映する1つまたは複数のディープ突然変異スキャニング実験。
4)中和抗体と複合体形成した抗原の1つもしくは複数の実験構造または計算モデル。
5)内因性のタンパク質パートナーと複合体形成した抗原またはこの抗原に結合する関連ドメインの1つもしくは複数の実験構造または計算モデル。
【0383】
注記:実験1~3の配列ライブラリーは、適用範囲が完全に重複していてもしていなくてもよい。実験4および5は適宜となる。
【0384】
実験1~3:これらのデータにより、それぞれの配列ライブラリーSに対して3つの異なる特性についての適応度の尺度が得られる。それぞれのライブラリーSによる配列s’の適応度をRstab(s)、Rnab(s)、およびRendo(s)と呼ぶ。適応度の単位は、次のとおりである。
1.Rstab-数cにおける、例えば、蛍光強度により参照抗原rと比較したlogスケールの差。式:Log(c(s))-Log(c(r))。
2.Rnab-総数と比較して低下した結合数を特定するエスケープ率。FACSにより定量する。
3.Rendo-解離定数Kにおける、例えば、滴定により参照抗原rと比較したlogスケールの差。式:Log(K(s))-Log(K(r))。
【0385】
実験4~5:これらの実験により、原子位置が3次元配位の形態の中和抗体または内因性結合パートナーに関する抗原の空間的構造についての情報が得られる。抗原の任意のアミノ酸残基である構造インターフェースは、0.5ナノメートル以下の内因性パートナーにおける任意の原子に対してある最短距離を有するものと定義する。中和抗体に対する抗原上のエピトープも同一の方法で定義する。一次および二次エピトープは、次のように定義する:一次エピトープは、構造インターフェースと直接的に重複し、二次エピトープは、間接的に重複し、抗体結合により、排除体積作用によってACE2結合が妨害され得る。図2Aでは、構造情報が所与の他のデータと重複しており、このため適宜となることが観察される。
【0386】
前処理および標準化
次の2つの制約に基づいて、実験1~3からデータを選択する。
1.変異体のRstabは、野生型のexp(-アルファ)の少なくとも1つの因数でなければならない。
2.変異体のRendoは、野生型のexp(-ベータ)の最大で1つの因数でなければならない。
【0387】
アルファおよびベータの閾値により、スコアリングにおいて考慮したい変異体の脱安定化の程度および結合強度を制御する。推奨値は、これらの解釈とともに表1に提示する。
【0388】
【表5】
【0389】
上に概説される制約を満たす変異体の選択後、最初にサンプル適応度平均値を減算し、次いで、サンプル標準偏差で除算することにより正規化適応度のスコアを計算する。すべての適応度の値を浮動小数点の値にゼロ平均値および単位標準偏差によりマッピングする。対応する正規化適応度のスコアをNstab(s)、Nnab(s)、およびNendo(s)と呼ぶ。
【0390】
スコアの計算
あり得る候補変異体を同定して実験的に検査するために、上に抽出した情報に基づいてスコアを集計する。
【0391】
すべての変異体では、定義する場合、実験1および3の測定値により総スコアを計算する一次および二次インターフェースにおいて、総スコアを計算する。
Stot(s’)=Nstab(s’)-Nnab(s’)-Nendo(s’)
【0392】
実験2の欠測値は0に設定する(正規化平均)。一次および二次インターフェースを定義しない場合、上に定義の制約を満たすすべての変異体についてのスコアを計算する。スコアが高ければ、良好と考えられる。
【0393】
ホットスポットの同定
最も高いスコアを有する変異体により座位を選別することによってホットスポットを同定する。負のスコアを有する座位は切り捨てる。ガンマ(範囲0~1)の閾値は、負ではなく最高総スコアを有する座位の除外する割合を表す。ガンマ=0.40に設定する。ガンマ=0.25は、ヒットは多いが特異的ではなく、ガンマ=0.75は、より特異的であるがヒットは少ないことに対応する。
【0394】
変異体ライブラリーの選択
二次検証のための変異体ライブラリーの選択は、2つの戦略:活用および探索により行うことができる。エンドユーザーは、最高ランクを有する座位を十分に探索するか、または上位ランクを有するすべての座位から高いランクの変異体を組み合わせることを決定することができる。
【0395】
最初に探索:各座位から最高ランクの変異体を採用し、次いで活用:その後のライブラリーの各座位に低ランクの変異体を調査することを提案する。
【0396】
インシリコでのコード
import pandas as pd
import numpy as np
import matplotlib as mpl
import matplotlib.pyplot as plt
import matplotlib.patches as patches

#Load data
DMS = pd.read_csv("Deep_Mutational_Scan_RBD_stability_ACE2binding.csv")
dms2 = pd.read_csv("Tableofmutation_antibody-escape_fraction_scores.csv")

# Identify missing sites
missing_sites = np.setdiff1d(np.unique(DMS['site_SARS2'].to_numpy()), np.unique(dms2['site'].to_numpy()), )
print(f"Number of sites missing nAb data, {len(missing_sites)}: "+ str(missing_sites))

missing_sites2 = np.setdiff1d(np.unique(dms2['site'].to_numpy()), np.unique(DMS['site_SARS2'].to_numpy()) )
print(f"Number of sites missing ACE2 data, {len(missing_sites2)}: "+ str(missing_sites2))
# Primary and secondary interfaces determined based on nAb RBD crystal structures:
# 6XC2, 6XCN,6XDG, 6XE1, 6XKQ,7CDI, 7CDJ, 7JMO, 7JMP,7JMW,7JV2,7JV6,7JVA,7JW0,7K90,7LX5.

from itertools import chain
interface_residues = [(443, 463), (469, 507)]
secondary_interface_residues = [(403, 410), (417, 423)]
total_interface_range = list(chain(*[range(*r) for r in interface_residues+secondary_interface_residues]))

# pre-proccessing
antibody_condition, mutation, escape = (dms2['condition'].to_numpy(),dms2['wildtype'].to_numpy()+dms2['site'].to_numpy().astype('str')+dms2['mutation'].to_numpy(), dms2['mut_escape'].to_numpy())
unique_abc = np.unique(antibody_condition)
all_mutations = DMS['mutation'].to_numpy()
all_expression = np.zeros(len(all_mutations)*len(unique_abc))
all_ace_binding = np.zeros(len(all_mutations)*len(unique_abc))
all_escape = np.zeros(len(all_mutations)*len(unique_abc))

j=0
for abc in unique_abc:
idx_condition = antibody_condition==abc
for i,m in enumerate(all_mutations):
candidate=DMS.loc[np.where(DMS['mutation'].to_numpy()==m)[0]]
all_expression[i+j*len(all_mutations)] = candidate['expr_avg'].to_numpy()
all_ace_binding[i+j*len(all_mutations)] = candidate['bind_avg'].to_numpy()
condition_selection = np.where(((mutation==m)*(idx_condition)))[0]
if len(condition_selection)>0:
all_escape[i+j*len(all_mutations)] = escape[condition_selection[0]]
else:
all_escape[i+j*len(all_mutations)] = np.nan

j=j+1

finite_values = ~(~np.isfinite(all_expression)+~np.isfinite(all_ace_binding))

all_expression = all_expression[finite_values]
all_ace_binding = all_ace_binding[finite_values]
all_mutations = np.tile(all_mutations, len(unique_abc))[finite_values]
all_resid = np.array([int(a[1:-1]) for a in all_mutations])
all_escape = all_escape[finite_values]
_all_mutations = DMS['mutation'].to_numpy()
all_conditions = np.concatenate([np.tile(abc, len(_all_mutations)) for abc in unique_abc ])[finite_values]

def standardize(x):
xhat=(x-x[np.isfinite(x)].mean())
return xhat/xhat[np.isfinite(xhat)].std()

def compute_score(expression, escape, binding):
escape_finite = np.isfinite(escape)
escape_impute = np.array(escape)
escape_impute[~escape_finite] = 0.
return expression - binding - escape_impute

#enforce constraints
alpha=0.5
beta=1.0
constraints_fulfilled = ((all_expression>-alpha).astype(int)*(all_ace_binding<-beta).astype(int)).astype(bool)

#compute score on data fulfilling constraints
tot_score=compute_score(standardize(all_expression[constraints_fulfilled]), standardize(all_escape[constraints_fulfilled]), standardize(all_ace_binding[constraints_fulfilled]))

#identify hotspots
mutation_hotspots = {}
for i in np.argsort(tot_score)[::-1]:
y = all_mutations[constraints_fulfilled][i]
resi = all_resid[constraints_fulfilled][i]
if int(y[1:-1]) in total_interface_range:
if mutation_hotspots.get(resi):
mutation_hotspots[resi].append([y, all_expression[constraints_fulfilled][i], all_ace_binding[constraints_fulfilled][i], tot_score[i]])
else:
mutation_hotspots[resi]=[[y, all_expression[constraints_fulfilled][i], all_ace_binding[constraints_fulfilled][i], tot_score[i]]]

# Filtering of low-scoring variants
max_total_scores = np.array([np.max([l[-1] for l in mutation_hotspots[key]]) for key in mutation_hotspots])
argsort_total_scores = np.argsort(max_total_scores)[::-1] # decending scores by index
positive_max_total_scores = max_total_scores[argsort_total_scores]>0.
scores_positive_and_sorted = max_total_scores[argsort_total_scores][positive_max_total_scores]
gamma = 0.40

bisect_res = 1000

score_thres = np.linspace(0,scores_positive_and_sorted[0],bisect_res)[np.argmin([(gamma-np.mean(threshold>scores_positive_and_sorted))**2. for threshold in np.linspace(0,scores_positive_and_sorted[0],bisect_res)])]

print(f"score threshold for gamma={gamma}: ", )

# Diagnostic plot
plt.plot(np.linspace(0,scores_positive_and_sorted[0],bisect_res), [np.mean(threshold>scores_positive_and_sorted) for threshold in np.linspace(0,scores_positive_and_sorted[0],bisect_res)])
plt.vlines([score_thres],ymin=0, ymax=[gamma],color='k')
plt.hlines([gamma],xmin=0, xmax=[score_thres],color='k')
plt.xlabel("score threshold")
plt.ylabel(r"$\gamma$")

def stringify_top_mutants(mutation_hotspots, key, site_variant_scores):
sorted_hits = np.argsort(site_variants_scores)[::-1]
hits, counts = np.unique([mutation_hotspots[key][yy][0] for yy in sorted_hits], return_counts=True)
return ', '.join([hit+f"({count})" for hit,count in zip(hits,counts) ])

top_mutants=[]
for i,key in enumerate(mutation_hotspots.keys()):
if max_total_scores[i]>score_thres:
site_variants_scores = [variant[-1] for variant in mutation_hotspots[key]]
print(key,'\t', stringify_top_mutants(mutation_hotspots, key, site_variants_scores),'\t', np.round(max_total_scores[i],2))
top_mutants.append(mutation_hotspots[key][np.argmax(site_variants_scores)][0])
# generate plot summarizing selected variants in the context of all data and constraints.
fig, ax = plt.subplots(4,1, figsize=(4,12), gridspec_kw={'height_ratios': [2,2,1, 1]},constrained_layout=True )
ax[0].scatter(dms2['site'].to_numpy(), dms2['site_max_escape'].to_numpy(), marker='.',alpha=0.1, label="Site for escape mutations")
for i,ir in enumerate(interface_residues):
if i==0:
ax[0].hlines(1.05, *ir, color='k', lw=5, label="primary nAb interface")
else:
ax[0].hlines(1.05, *ir, color='k', lw=5)
for i,ir in enumerate(secondary_interface_residues):
if i==0:
ax[0].hlines(1.05, *ir, color='r', lw=5, label="secondary nAb interface")
else:
ax[0].hlines(1.05, *ir, color='r', lw=5)

ax[0].vlines(missing_sites, ymin=-0.08, ymax=0.0, color='r',lw=0.7, label="missing site" )

ax[0].set_xlabel("RBD position")
ax[0].set_ylabel("Maximum Escape")
ax[0].legend()
ax[1].scatter(DMS['expr_avg'].to_numpy(),
DMS['bind_avg'].to_numpy(),marker='.',c='k',alpha=0.5)

ax[1].scatter(all_expression[constraints_fulfilled][np.isin(all_mutations[constraints_fulfilled], top_mutants)], all_ace_binding[constraints_fulfilled][np.isin(all_mutations[constraints_fulfilled], top_mutants)],marker='o',c='r',alpha=0.8)

ax[1].set_xlabel("Expression")
ax[1].set_ylabel("ACE2 binding")
rect = patches.Rectangle((-0.5, -5), 1.5, 4.00, linewidth=0, edgecolor='none', facecolor='y', alpha=0.2)

ax[1].add_patch(rect)

ax[3].scatter(DMS['expr_avg'].to_numpy(),
DMS['bind_avg'].to_numpy(),marker='.',c='k',alpha=0.5)

ax[3].scatter(all_expression[constraints_fulfilled][np.isin(all_mutations[constraints_fulfilled], top_mutants)],
all_ace_binding[constraints_fulfilled][np.isin(all_mutations[constraints_fulfilled], top_mutants)],marker='o',c='r',alpha=0.8)
ax[2].scatter(DMS['expr_avg'].to_numpy(),
DMS['bind_avg'].to_numpy(),marker='.',c='k',alpha=0.5)

ax[2].scatter(all_expression[constraints_fulfilled][np.isin(all_mutations[constraints_fulfilled], top_mutants)], all_ace_binding[constraints_fulfilled][np.isin(all_mutations[constraints_fulfilled], top_mutants)],marker='o',c='r',alpha=0.8)
ax[2].set_xlim(-0.5,1)
ax[2].set_ylim(-2.1,-1.2)
ax[2].set_xticklabels([])

ax[3].set_xlim(-0.5,1)
ax[3].set_ylim(-4.85,-4.6)
ax[3].set_xlabel("Expression")
ax[3].set_ylabel("ACE2 binding")
ax[2].set_ylabel("ACE2 binding")

for bm in top_mutants:
_idx = (DMS['mutation']==str(bm)).to_numpy().argmax()
ax[2].annotate(str(bm), (DMS['expr_avg'][_idx], DMS['bind_avg'][_idx] ), va='center', ha='center')

for bm in top_mutants:
_idx = (DMS['mutation']==str(bm)).to_numpy().argmax()
ax[3].annotate(str(bm), (DMS['expr_avg'][_idx], DMS['bind_avg'][_idx] ), va='center', ha='center')

for _,let in zip(ax, ["A","B","C"]):
_.text(-0.2,1.05, let, fontsize=16, transform=_.transAxes)
#plt.tight_layout()
plt.savefig("nAb_RBD_ACE2_DMS_Bloom.pdf")

RBD_WT_AA_Seq=''.join(DMS['wildtype'].to_numpy().reshape(-1,21)[:,0])

# algorithms and functions to generate csv of top-ranked variants

dna2aa = {
'ATA':'I', 'ATC':'I', 'ATT':'I', 'ATG':'M',
'ACA':'T', 'ACC':'T', 'ACG':'T', 'ACT':'T',
'AAC':'N', 'AAT':'N', 'AAA':'K', 'AAG':'K',
'AGC':'S', 'AGT':'S', 'AGA':'R', 'AGG':'R',
'CTA':'L', 'CTC':'L', 'CTG':'L', 'CTT':'L',
'CCA':'P', 'CCC':'P', 'CCG':'P', 'CCT':'P',
'CAC':'H', 'CAT':'H', 'CAA':'Q', 'CAG':'Q',
'CGA':'R', 'CGC':'R', 'CGG':'R', 'CGT':'R',
'GTA':'V', 'GTC':'V', 'GTG':'V', 'GTT':'V',
'GCA':'A', 'GCC':'A', 'GCG':'A', 'GCT':'A',
'GAC':'D', 'GAT':'D', 'GAA':'E', 'GAG':'E',
'GGA':'G', 'GGC':'G', 'GGG':'G', 'GGT':'G',
'TCA':'S', 'TCC':'S', 'TCG':'S', 'TCT':'S',
'TTC':'F', 'TTT':'F', 'TTA':'L', 'TTG':'L',
'TAC':'Y', 'TAT':'Y', 'TAA':'_', 'TAG':'_',
'TGC':'C', 'TGT':'C', 'TGA':'_', 'TGG':'W',
}
aa2dna = { #la
dna2aa[key]:key for key in dna2aa.keys()
}

def translate(seq):
prot=""
for i in range(0,len(seq),3):
prot=prot+dna2aa[seq[i:i+3]]
return prot

# reference sites

RBD_start = 954
RBD_start_Bloom = 954+36
RBD_end = 1623
RBD_end_Bloom = 1623-30

# `wildtype` nucleotide sequence
spike_reference_sequence="ATGTTTGTCTTCCTGGTCCTGCTGCCTCTGGTCTCCTCTCAGTGCGTGAACCTGACTACTAGAACTCAGCTGCCTCCCGCTTACACCAATAGCTTCACCAGGGGCGTGTACTATCCAGACAAGGTGTTTCGCAGCTCCGTGCTGCACTCCACACAGGATCTGTTTCTGCCCTTCTTTTCTAACGTGACCTGGTTCCACGCCATCCACGTGTCCGGCACCAATGGCACAAAGAGGTTCGACAATCCAGTGCTGCCCTTTAACGATGGCGTGTACTTCGCCTCCACCGAGAAGTCTAACATCATCCGCGGCTGGATCTTTGGCACCACACTGGACAGCAAGACACAGTCCCTGCTGATCGTGAACAATGCCACCAACGTGGTCATCAAGGTGTGCGAGTTCCAGTTTTGTAATGATCCTTTCCTGGGCGTGTACTATCACAAGAACAATAAGTCTTGGATGGAGAGCGAGTTTAGGGTGTACTCTAGCGCCAACAATTGCACATTTGAGTATGTGAGCCAGCCATTCCTGATGGACCTGGAGGGCAAGCAGGGCAATTTCAAGAACCTGCGGGAGTTCGTGTTTAAGAATATCGATGGCTACTTCAAAATCTACTCCAAGCACACCCCCATCAACCTGGTGCGGGACCTGCCACAGGGCTTCTCTGCCCTGGAGCCTCTGGTGGATCTGCCAATCGGCATCAACATCACCAGGTTTCAGACACTGCTGGCCCTGCACCGCAGCTACCTGACACCTGGCGACTCCTCTAGCGGATGGACCGCAGGAGCTGCCGCCTACTATGTGGGCTACCTGCAGCCAAGGACCTTCCTGCTGAAGTATAACGAGAATGGCACCATCACAGACGCAGTGGATTGCGCCCTGGACCCCCTGTCTGAGACAAAGTGTACACTGAAGAGCTTTACCGTGGAGAAGGGCATCTACCAGACAAGCAATTTCCGGGTGCAGCCCACCGAGTCCATCGTGAGATTTCCAAATATCACAAACCTGTGCCCCTTTGGCGAGGTGTTCAACGCCACCCGCTTCGCCAGCGTGTATGCCTGGAATAGGAAGCGCATCTCCAACTGCGTGGCCGACTATTCTGTGCTGTACAACTCCGCCTCTTTCAGCACCTTTAAGTGTTACGGCGTGAGCCCTACAAAGCTGAATGACCTGTGCTTTACCAACGTGTATGCCGATTCCTTCGTGATCAGGGGCGACGAGGTGCGCCAGATCGCACCAGGACAGACAGGCAAGATCGCCGACTACAATTATAAGCTGCCCGACGATTTCACCGGCTGCGTGATCGCCTGGAACTCTAACAATCTGGATAGCAAAGTGGGCGGCAACTACAATTATCTGTACCGGCTGTTTAGAAAGTCTAATCTGAAGCCTTTCGAGAGGGACATCTCCACAGAAATCTACCAGGCCGGCTCTACCCCATGCAATGGCGTGGAGGGCTTTAACTGTTATTTCCCCCTGCAGTCCTACGGCTTCCAGCCTACAAACGGCGTGGGCTATCAGCCATACCGCGTGGTGGTGCTGTCTTTTGAGCTGCTGCACGCACCAGCAACAGTGTGCGGACCTAAGAAGAGCACCAATCTGGTGAAGAACAAGTGCGTGAACTTCAACTTCAACGGCCTGACCGGCACAGGCGTGCTGACCGAGAGCAACAAGAAGTTCCTGCCCTTTCAGCAGTTCGGCCGGGACATCGCAGATACCACAGACGCCGTGCGGGACCCCCAGACCCTGGAGATCCTGGACATCACACCTTGCTCCTTCGGCGGCGTGTCTGTGATCACACCTGGCACCAATACATCCAACCAGGTGGCCGTGCTGTACCAGGACGTGAATTGTACCGAGGTGCCAGTGGCCATCCACGCCGATCAGCTGACCCCCACATGGAGGGTGTATAGCACCGGCTCCAACGTGTTCCAGACACGCGCCGGATGCCTGATCGGAGCAGAGCACGTGAACAATAGCTACGAGTGCGACATCCCCATCGGCGCCGGCATCTGTGCCTCCTATCAGACCCAGACAAACTCCCCTAGGAGAGCCCGGTCTGTGGCCTCCCAGTCTATCATCGCCTACACCATGAGCCTGGGCGCCGAGAACAGCGTGGCCTATTCTAACAATAGCATCGCCATCCCCACCAACTTCACAATCAGCGTGACCACAGAGATCCTGCCTGTGAGCATGACCAAGACATCCGTGGACTGCACAATGTACATCTGTGGCGATTCCACCGAGTGCTCTAACCTGCTGCTGCAGTATGGCTCCTTTTGTACCCAGCTGAATAGAGCCCTGACAGGCATCGCCGTGGAGCAGGACAAGAACACACAGGAGGTGTTCGCCCAGGTGAAGCAAATCTACAAGACCCCCCCTATCAAGGACTTTGGCGGCTTCAACTTCAGCCAGATCCTGCCCGATCCTTCCAAGCCATCTAAGCGGAGCTTTATCGAGGACCTGCTGTTCAACAAGGTGACCCTGGCCGATGCCGGCTTCATCAAGCAGTACGGCGATTGCCTGGGCGACATCGCAGCCCGGGACCTGATCTGCGCCCAGAAGTTTAATGGCCTGACCGTGCTGCCACCCCTGCTGACAGATGAGATGATCGCCCAGTATACATCTGCCCTGCTGGCCGGCACCATCACAAGCGGATGGACCTTCGGCGCAGGAGCCGCCCTGCAGATCCCCTTTGCCATGCAGATGGCCTACAGATTCAACGGCATCGGCGTGACCCAGAATGTGCTGTATGAGAACCAGAAGCTGATCGCCAATCAGTTTAACAGCGCCATCGGCAAGATCCAGGACTCTCTGTCCTCTACAGCCAGCGCCCTGGGCAAGCTGCAGGATGTGGTGAATCAGAACGCCCAGGCCCTGAATACCCTGGTGAAGCAGCTGAGCAGCAACTTCGGCGCCATCTCTAGCGTGCTGAATGACATCCTGAGCCGGCTGGACAAAGTTGAGGCAGAGGTGCAGATCGACCGGCTGATCACAGGCAGACTGCAGTCCCTGCAGACCTACGTGACACAGCAGCTGATCAGGGCAGCAGAGATCAGGGCCTCTGCCAATCTGGCCGCCACCAAGATGAGCGAGTGCGTGCTGGGCCAGTCCAAGAGAGTGGACTTTTGTGGCAAGGGCTACCACCTGATGAGCTTCCCACAGTCCGCCCCCCACGGCGTGGTGTTTCTGCACGTGACCTATGTGCCTGCCCAGGAGAAGAACTTCACCACAGCCCCAGCCATCTGCCACGATGGCAAGGCACACTTTCCCCGGGAGGGCGTGTTCGTGAGCAACGGCACCCACTGGTTTGTGACACAGAGAAATTTCTATGAGCCTCAGATCATCACCACAGACAATACCTTCGTGAGCGGCAACTGTGACGTGGTCATCGGCATCGTGAACAATACCGTGTACGATCCTCTGCAGCCAGAGCTGGACTCTTTTAAGGAGGAGCTGGATAAGTATTTCAAGAACCACACCAGCCCCGACGTGGATCTGGGCGACATCTCTGGCATCAATGCCAGCGTGGTGAACATCCAGAAGGAGATCGACAGGCTGAATGAGGTGGCCAAGAATCTGAACGAGAGCCTGATCGATCTGCAGGAGCTGGGCAAGTATGAGCAGTCCGGCCGCGAGAACCTGTACTTCCAGGGAGGAGGAGGCTCTGGATATATCCCAGAGGCACCTCGGGATGGACAGGCCTACGTGAGAAAAGACGGCGAGTGGGTCCTGCTGAGTACCTTCCTGGGGCATCATCATCATCACCATTAA"
# `2-P variant` nucleotide sequence
spike_reference_sequence_2p="ATGTTTGTCTTCCTGGTCCTGCTGCCTCTGGTCTCCTCTCAGTGCGTGAACCTGACTACTAGAACTCAGCTGCCTCCCGCTTACACCAATAGCTTCACCAGGGGCGTGTACTATCCAGACAAGGTGTTTCGCAGCTCCGTGCTGCACTCCACACAGGATCTGTTTCTGCCCTTCTTTTCTAACGTGACCTGGTTCCACGCCATCCACGTGTCCGGCACCAATGGCACAAAGAGGTTCGACAATCCAGTGCTGCCCTTTAACGATGGCGTGTACTTCGCCTCCACCGAGAAGTCTAACATCATCCGCGGCTGGATCTTTGGCACCACACTGGACAGCAAGACACAGTCCCTGCTGATCGTGAACAATGCCACCAACGTGGTCATCAAGGTGTGCGAGTTCCAGTTTTGTAATGATCCTTTCCTGGGCGTGTACTATCACAAGAACAATAAGTCTTGGATGGAGAGCGAGTTTAGGGTGTACTCTAGCGCCAACAATTGCACATTTGAGTATGTGAGCCAGCCATTCCTGATGGACCTGGAGGGCAAGCAGGGCAATTTCAAGAACCTGCGGGAGTTCGTGTTTAAGAATATCGATGGCTACTTCAAAATCTACTCCAAGCACACCCCCATCAACCTGGTGCGGGACCTGCCACAGGGCTTCTCTGCCCTGGAGCCTCTGGTGGATCTGCCAATCGGCATCAACATCACCAGGTTTCAGACACTGCTGGCCCTGCACCGCAGCTACCTGACACCTGGCGACTCCTCTAGCGGATGGACCGCAGGAGCTGCCGCCTACTATGTGGGCTACCTGCAGCCAAGGACCTTCCTGCTGAAGTATAACGAGAATGGCACCATCACAGACGCAGTGGATTGCGCCCTGGACCCCCTGTCTGAGACAAAGTGTACACTGAAGAGCTTTACCGTGGAGAAGGGCATCTACCAGACAAGCAATTTCCGGGTGCAGCCCACCGAGTCCATCGTGAGATTTCCAAATATCACAAACCTGTGCCCCTTTGGCGAGGTGTTCAACGCCACCCGCTTCGCCAGCGTGTATGCCTGGAATAGGAAGCGCATCTCCAACTGCGTGGCCGACTATTCTGTGCTGTACAACTCCGCCTCTTTCAGCACCTTTAAGTGTTACGGCGTGAGCCCTACAAAGCTGAATGACCTGTGCTTTACCAACGTGTATGCCGATTCCTTCGTGATCAGGGGCGACGAGGTGCGCCAGATCGCACCAGGACAGACAGGCAAGATCGCCGACTACAATTATAAGCTGCCCGACGATTTCACCGGCTGCGTGATCGCCTGGAACTCTAACAATCTGGATAGCAAAGTGGGCGGCAACTACAATTATCTGTACCGGCTGTTTAGAAAGTCTAATCTGAAGCCTTTCGAGAGGGACATCTCCACAGAAATCTACCAGGCCGGCTCTACCCCATGCAATGGCGTGGAGGGCTTTAACTGTTATTTCCCCCTGCAGTCCTACGGCTTCCAGCCTACAAACGGCGTGGGCTATCAGCCATACCGCGTGGTGGTGCTGTCTTTTGAGCTGCTGCACGCACCAGCAACAGTGTGCGGACCTAAGAAGAGCACCAATCTGGTGAAGAACAAGTGCGTGAACTTCAACTTCAACGGCCTGACCGGCACAGGCGTGCTGACCGAGAGCAACAAGAAGTTCCTGCCCTTTCAGCAGTTCGGCCGGGACATCGCAGATACCACAGACGCCGTGCGGGACCCCCAGACCCTGGAGATCCTGGACATCACACCTTGCTCCTTCGGCGGCGTGTCTGTGATCACACCTGGCACCAATACATCCAACCAGGTGGCCGTGCTGTACCAGGACGTGAATTGTACCGAGGTGCCAGTGGCCATCCACGCCGATCAGCTGACCCCCACATGGAGGGTGTATAGCACCGGCTCCAACGTGTTCCAGACACGCGCCGGATGCCTGATCGGAGCAGAGCACGTGAACAATAGCTACGAGTGCGACATCCCCATCGGCGCCGGCATCTGTGCCTCCTATCAGACCCAGACAAACTCCCCTAGGAGAGCCCGGTCTGTGGCCTCCCAGTCTATCATCGCCTACACCATGAGCCTGGGCGCCGAGAACAGCGTGGCCTATTCTAACAATAGCATCGCCATCCCCACCAACTTCACAATCAGCGTGACCACAGAGATCCTGCCTGTGAGCATGACCAAGACATCCGTGGACTGCACAATGTACATCTGTGGCGATTCCACCGAGTGCTCTAACCTGCTGCTGCAGTATGGCTCCTTTTGTACCCAGCTGAATAGAGCCCTGACAGGCATCGCCGTGGAGCAGGACAAGAACACACAGGAGGTGTTCGCCCAGGTGAAGCAAATCTACAAGACCCCCCCTATCAAGGACTTTGGCGGCTTCAACTTCAGCCAGATCCTGCCCGATCCTTCCAAGCCATCTAAGCGGAGCTTTATCGAGGACCTGCTGTTCAACAAGGTGACCCTGGCCGATGCCGGCTTCATCAAGCAGTACGGCGATTGCCTGGGCGACATCGCAGCCCGGGACCTGATCTGCGCCCAGAAGTTTAATGGCCTGACCGTGCTGCCACCCCTGCTGACAGATGAGATGATCGCCCAGTATACATCTGCCCTGCTGGCCGGCACCATCACAAGCGGATGGACCTTCGGCGCAGGAGCCGCCCTGCAGATCCCCTTTGCCATGCAGATGGCCTACAGATTCAACGGCATCGGCGTGACCCAGAATGTGCTGTATGAGAACCAGAAGCTGATCGCCAATCAGTTTAACAGCGCCATCGGCAAGATCCAGGACTCTCTGTCCTCTACAGCCAGCGCCCTGGGCAAGCTGCAGGATGTGGTGAATCAGAACGCCCAGGCCCTGAATACCCTGGTGAAGCAGCTGAGCAGCAACTTCGGCGCCATCTCTAGCGTGCTGAATGACATCCTGAGCCGGCTGGACCCCCCAGAGGCAGAGGTGCAGATCGACCGGCTGATCACAGGCAGACTGCAGTCCCTGCAGACCTACGTGACACAGCAGCTGATCAGGGCAGCAGAGATCAGGGCCTCTGCCAATCTGGCCGCCACCAAGATGAGCGAGTGCGTGCTGGGCCAGTCCAAGAGAGTGGACTTTTGTGGCAAGGGCTACCACCTGATGAGCTTCCCACAGTCCGCCCCCCACGGCGTGGTGTTTCTGCACGTGACCTATGTGCCTGCCCAGGAGAAGAACTTCACCACAGCCCCAGCCATCTGCCACGATGGCAAGGCACACTTTCCCCGGGAGGGCGTGTTCGTGAGCAACGGCACCCACTGGTTTGTGACACAGAGAAATTTCTATGAGCCTCAGATCATCACCACAGACAATACCTTCGTGAGCGGCAACTGTGACGTGGTCATCGGCATCGTGAACAATACCGTGTACGATCCTCTGCAGCCAGAGCTGGACTCTTTTAAGGAGGAGCTGGATAAGTATTTCAAGAACCACACCAGCCCCGACGTGGATCTGGGCGACATCTCTGGCATCAATGCCAGCGTGGTGAACATCCAGAAGGAGATCGACAGGCTGAATGAGGTGGCCAAGAATCTGAACGAGAGCCTGATCGATCTGCAGGAGCTGGGCAAGTATGAGCAGTCCGGCCGCGAGAACCTGTACTTCCAGGGAGGAGGAGGCTCTGGATATATCCCAGAGGCACCTCGGGATGGACAGGCCTACGTGAGAAAAGACGGCGAGTGGGTCCTGCTGAGTACCTTCCTGGGGCATCATCATCATCACCATTAA"
# Default output:
# 1. Nucleotide sequence RBD
# 2. Nucleotide sequence full spike (with 2-P mutation)
# 3. Aminoacid sequence RBD
# 4. Aminoacid sequence full spike (with 2-P mutation)
#
# return 2 dna seqs, 2 prot seqs
#

def build_sequences(wt_dna_full_spike, wt_dna_full_spike_2p, rbd_variant):
#parse mutation
origin_aa, site, target_aa = rbd_variant[0],int(rbd_variant[1:-1]), rbd_variant[-1]
site_to_dna = (site-1)*3
target_codon = aa2dna[target_aa]
#apply mutation
mutated_seq_ = wt_dna_full_spike[:site_to_dna]+target_codon+wt_dna_full_spike[site_to_dna+3:]
mutated_seq_2p = wt_dna_full_spike_2p[:site_to_dna]+target_codon+wt_dna_full_spike_2p[site_to_dna+3:]
#translate sequences
translated_sequence = translate(mutated_seq_[RBD_start:RBD_end])
translated_sequence_2p = translate(mutated_seq_2p)
return {"Variant_Nucleic_Acid_sequence_RBD": mutated_seq_[RBD_start:RBD_end], "Variant_Nucleic_Acid_sequence_2-P":mutated_seq_2p, "Variant_Amino_Acid_sequence_RBD":translated_sequence, "Variant_Amino_Acid_sequence_2-P":translated_sequence_2p[:-1]}

def aggregate(mut, scor, spike_reference=None, spike_reference_2p=None, thres=0):
out = {}
sequences = {}
for m, s in zip(mut, scor):
if s>thres:
if out.get(m):
out[m].append(s)
else:
out[m]=[s]
_seqs = build_sequences(spike_reference,spike_reference_2p, m)
for key in _seqs.keys():
if sequences.get(key):
sequences[key].append(_seqs[key])
else:
sequences[key]=[_seqs[key]]
for key in out.keys():
out[key] = np.round(np.mean(out[key]),3)

return {**{"mutant":list(out.keys()), "scores":[out[s] for s in out.keys()]}, **sequences}

decending_sort_tot_score = np.argsort(tot_score)[::-1]
mutants = all_mutations[constraints_fulfilled][decending_sort_tot_score]
full_ranking=pd.DataFrame(aggregate(mutants, tot_score[decending_sort_tot_score], spike_reference=spike_reference_sequence, spike_reference_2p=spike_reference_sequence_2p, thres=score_thres))
full_ranking.to_csv("top-variant-ranking_2.csv")
【0397】
例となるデータインプット
突然変異スキャニング(MS)データ(https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0092867420310035
https://science.sciencemag.org/content/sci/early/2021/01/22/science.abf9302.full.pdf)を使用してエスケープ突然変異座位を構造エピトープに相関させた。nAb:次の中和抗体のRBD-SARS-CoV-2構造による一次および二次相互作用エピトープの同定:REGN10933、REGN10987(6XDG)、C144 7K90、P2B-2F6&P2B-2F11(https://www.nature.com/articles/s41467-020-20501-9)、CC12.1 6XC2、S2H13 7JV6、完全スパイク;7JV2、CC12.3 6XC4、C105 6XCN、CV30 6XE1、S2A4 7JVA、S304 7JW0、CV07-250 6XKQ、COVA1-16Fab7JMW、COVA2-39 7JMP、COVA2-04 7JMOWNb2およびWNb10 7LX5。
【0398】
例となる結果
以下の結果は、SARS-CoV-2ウイルスのスパイクタンパク質の受容体結合ドメインについて上に概説する解析の例となるアウトカムである。閾値:アルファ=0.5、ベータ=1.0、ガンマ=0.40。
【0399】
【表6】
【0400】
【表7】
【0401】
図2は、SARS-CoV-2RBDに対する結果の視覚的解析である。公表されているSARS-CoV-2RBM突然変異体スクリーニングおよび公表されている中和抗体構造を使用する生物情報学的解析により、所望の特性のRBM突然変異体が同定されることを示す。いくつかのアミノ酸位置は、別個の残基に突然変異させて、ACE2受容体結合を最小化し、タンパク質発現を最大化し、公表されている中和抗体の結合を最小限に破壊することができる。
【0402】
図2A)別個のRBD位置(座位、点)についての、結晶構造により同定した一次および二次インターフェース(黒色および灰色の線)と比較した中和抗体(nAb)最大エスケープの図示。欠測データは薄い垂線により示す。
【0403】
図2B)発現(x軸)対ACE2結合(y軸)の散布図。すべてのデータは黒点により示す。最高スコアを有する変異体は、各上位座位について、灰点により示す。
【0404】
図2C)は、図2B)右下の灰色ボックスの拡大図である。スクリーニングにより同定された候補のアミノ酸交換を示す。
[実施例3]
【0405】
ACE2、種々のモノクローナルnAB、ならびに単一、二重、および三重のアミノ酸置換を有する種々のSARS-mRBDの結合力のELISAの使用によるインビトロでの決定 - 図4A~C、5A~D
単一、二重、および三重の別個の点突然変異をSARS-CoV-2RBDに導入した。実験は、実施例4に記載のように実施した。
【0406】
図3A)ELISAにより決定した、中和抗体S309に対する結合を保存したすべての突然変異。
【0407】
図3B)変異体の大多数が、ELISAにおいてACE2に対する結合を大いにまたは完全に抑止した。
【0408】
図3C)特異性が無関係な陰性対照抗体9B9は、非特異的結合を除いてRBD変異体によって結合しない。
【0409】
図3では、略称は次を表す。
RBD-L:RBD-L455R(配列番号55)
RBD-G4:RBD-G496R(配列番号95)
RBD-G5:RBD-G502R(配列番号15)
RBD-AG5:RBD-A475R-G502R(配列番号96)
RBD-G4G5:RBD-G496R-G502R(配列番号97)
RBD-AG4G5:RBD-A475R-G496R-G502R(配列番号98)
RBD-LAG4:RBD-L455R-A475R-G496R(配列番号99)
【0410】
この実施例は、実施例4に記載のように実施した。ただし、9B9を対照抗体として使用した。
[実施例4]
【0411】
SARS-wtRBDおよび種々のSARS-mRBDに対するACE2および種々のモノクローナルnABの結合力のELISAの使用によるインビトロでの決定 - 図4A~Fおよび図6、ならびに
SARS-wtRBDおよび種々のSARS-mRBDを考慮した種々のモノクローナルnABおよびACE2についてのEC50値の決定 - 図5
図4では、生物情報学的にスクリーニングしたRBD突然変異体L455R(配列番号55)およびG502R(配列番号15)はACE2結合を低下させるが、RBD特異的中和抗体の結合は保存されることを実験的に確認する。図6と同様に、ここで、さらなるG502突然変異体G502D(配列番号5)、G502Y(配列番号20)、G502K(配列番号9)、G502S(配列番号16)、G502P(配列番号13)、G502E(配列番号2)、G502A(配列番号3)、G502V(配列番号18)、G502N(配列番号12)、G502Q(配列番号14)、G502T(配列番号17)、G502M(配列番号11)、G502H(配列番号7)、G502L(配列番号10)およびG502F(配列番号6)を実験的にスクリーニングした。このELISAに基づくアッセイのセットアップにおいてG502RがACE2結合を完全に抑止する一方、L455RはACE2結合をそれほど良好には低下させなかった。加えて、G502R突然変異は、4つの別個のクラス、すなわち、クラスI(C12.1、P2C-1F11、REGN10933、C144)、クラスII(C144、S2H13、P2B-2F6、REGN10987)、クラスIII(S309)、およびクラスIV(EY6A)の検査したすべての中和抗体の結合を保存した。G502R突然変異体では、中和抗体の結合の低下は観察されなかった。その上、RBD突然変異体は、対照抗体VRC01(抗HIV GP140)または4A8(抗SARS-CoVスパイクN末端ドメイン)を非特異的には認識しない。RBD突然変異体であるA475R+G496R、A475R、およびF456Aは、ACE2結合を低下させるが、中和抗体の結合は、L455RおよびG502Rほど良好には保存されない。
【0412】
図5は、指示する中和抗体またはACE2-hFcg1について、結合の50%が達成されるμg/mlでの有効濃度(EC50)を示す。図5に示すように、EC50値が低ければ、結合親和性が高いことを示す。~は、結合が検出されなかったことを示す。
【0413】
ACE2-hFcg1は、組換えヒトACE2 Q18-V739断片をヒトIgG1-Fc部分(E99-K330部分、ここで、第1のアミノ酸は、J-CH1融合物によりコードされるGである)に融合することによりクローニングした。Wuhan SARS-CoV-2変異体(GenBank、MN908947.3)のシグナルペプチド貫通アミノ酸M1-Q14およびR319-F541を含むRBDを、Twin-Strepタグ配列(WSHPQFEKGGGSGGGSGGSAWSHPQFEK)によりC末端ヘキサヒスチジンタグの上流で補完し、pcCDNA3.1ベクターにクローニングした。アミノ酸mRBD修飾G502R、L455R、A475R、G496R、G502D、G502Y、G502K、G502S、G502P、G502E、G502V、G502N、G502Q、G502T、G502M、G502H、G502L、G502FをPCR突然変異誘発により導入して、ACE2結合が抑止されたRBD突然変異体を作出した(T. Zhou et al., 2020b)。同様に、新規のコロナウイルス変異体のRBD突然変異N501Y、K417N、E484Kを生成した。次のモノクローナル抗体の重鎖配列および軽鎖配列を、Oxford Genetics社のIgG1重鎖およびカッパまたはラムダ軽鎖の発現ベクターにクローニングした:EY6A(D. Zhou et al., 2020a)、P2B-2F6およびP2C-1F11(Ge et al., 2021)、REGN10933およびREGN10987(Hansen et al., 2020)、CC12.1(Rogers et al., 2020)、C144(Robbiani et al., 2020)、VRC01(Wu et al., 2010)、S2H13(Piccoli et al., 2020)、S309(Pinto et al., 2020)、4A8(Chi et al., 2020)。
【0414】
組換えタンパク質の生成では、プラスミドを使用してHEK293細胞をトランスフェクトし、加湿した8%CO2のインキュベーター内に37℃の培養培地中でこれを増殖させた。細胞は、1mLあたり250万細胞の密度に増殖させ、PEI(細胞懸濁液中4μg/mL)およびDNA(細胞懸濁液中1200ng/ml)を使用してトランスフェクトし、3日間培養した。上清を回収し、タンパク質をHis SpinTrapカラム(Cytiva社、95056-290)またはプロテインGカラムにより製造者の指示に従って精製した。溶出したタンパク質は、Amicon Ultra-4遠心分離フィルターユニット(Millipore社、UFC805008)を50kDaのカットオフにより使用して、緩衝液交換によりリン酸緩衝食塩水(PBS)に移した。タンパク質濃度は、Hisタグ特異的ELISAにより、マウス抗Hisタグ抗体(Abcam社、#ab18184)およびアルカリホスファターゼにコンジュゲートしたヤギ抗マウスIgG Fc抗体(Southern Biotech社、cat#SBA-1033-04)を検出試薬として使用して決定した。タンパク質の生成は、SDS-PAGEおよびウエスタンブロットにより、マウス抗His抗体(Abcam社、#ab18184)およびIRDye800CWロバ抗マウス抗体(Li-Cor Biosciences社、#925-32212)を使用して確認した。
【0415】
組換えRBDは、高結合96ウェルELISAプレート(Corning社、CLS3690)上にPBS(Sigma Aldrich社、米国、MO)中に4μg/mlで、+4℃で一晩固定化した。プレートは、PBS中1%のBSA(Thermo Fisher社、Gibco、米国、MA)により室温で1時間ブロッキングした。組換え抗体およびACE2-hFcg1を、1%BSA添加PBS中で指示する段階希釈液に希釈し、コーティングしたプレートに加え、室温で1時間インキュベートした。プレートは、抗ヒトIgGアルカリホスファターゼ(AP)共役抗体(Southern Biotech社、cat#2040-04)を1%BSA添加PBS中で1:500に希釈したものにより展開した。4-ニトロフェニルリン酸二ナトリウム塩六水和物基質(SIGMA社、Cat NoS0942-50TAB)を添加した重炭酸緩衝液を加え、405nmにおける吸光度をCytation5デバイス(BioTek社)により測定した。指示するすべてのインキュベーション工程の間に、プレートは、0.1%Tween-20添加PBSで3回洗浄した。
[実施例5]
【0416】
sACE2レベルを制御したマウスモデルを使用する、SARS-wtRBDまたは種々のSARS-mRBDのいずれかによる免疫化後のB細胞の出現頻度のインビボでの決定 - 図7
図7は、インビボでの制御マウスモデルにおいて、可溶性ACE2によるRBDのマスキングにより、免疫化中、RBD-ACE2相互作用に干渉する抗体(競合抗体、cAb)を産生するB細胞の量が減少したことを示す。その上、図7は、RBD突然変異体G502R(配列番号15)(図7ではRBD-G5と省略する)およびL455R(配列番号55)(図7ではRBD-Lと省略する)が、インビボでの免疫化中、可溶性ACE2によるRBDのマスキングを抑止可能であることを示す。したがって、導入された突然変異により、RBD-ACE2相互作用に干渉する抗体を産生するB細胞の生成が向上した。その上、図7は、2つのRBD突然変異体G502RおよびL455Rが、可溶性ACE2のマスキングを阻止するように1回の免疫化において良好に組み合わせることが可能であることを示す。その上、図7は、RBDのマスキングが、高頻度のSARS-CoV-2ワクチンの抗原であり、治療のために認可された完全スパイクによる免疫化中にも生じることを示す。
【0417】
免疫化スキーム:マウスをRBD(野生型RBD[配列番号1]、RBD突然変異体G502R[配列番号15]、およびRBD突然変異体L455R[配列番号55])単独またはRBDとsACE2とにより免疫化した。ブースター免疫化後4~21日に脾臓を解析した。単一細胞技術(DropMap)を使用して、単一B細胞により液滴中に分泌される抗体を解析した。RBDに結合するACE2と競合可能な抗体を産生するB細胞のパーセンテージを示す。各条件について、N=3匹のマウスを免疫化した。
【0418】
組換えRBDタンパク質は、図4および5に記載のように生成した(実施例4を参照)。
【0419】
組換えmhACE2は、次の突然変異を野生型S19-V739マウスACE2断片に導入することにより構築した:L20T、N24Q、N30D、N31K、Q34H、K60Q、S63N、E64N、Y73L、E74K、K78T、T79L、S82M、F83Y、T90N、P91L、I92T、I93V、S103N、H353K、N368D、R387A。N末端Hisタグを含むMuranACE2は、シグナルペプチド(SP)(MGWSCIILFLVATATGVHS)と、GSSGSSGSSリンカーを介してACE2のN末端に結合する8つのヒスチジン部分で構成される分子タグ(Hisタグ)とを含む哺乳動物発現pcDNA3.1ベクターにクローニングした。C末端Hisタグは、HEK293細胞により発現するADAM17のようなプロテアーゼにより切断される可能性が高いため、効率的なタンパク質精製には適しないことが実験的に決定された。したがって、Hisタグは、SPとACE2断片のN末端との間に導入した。
【0420】
RBDにもかかわらず、2-P突然変異(K986PおよびV987Pの置換)を含む野生型完全スパイク(配列番号259)を免疫原として使用した。pcCDNA3.1ベクターに、Wuhan SARS-CoV-2変異体(GenBank、MN908947.3)の完全長スパイクM1-Q1208のクローニング後、プロテアーゼ認識部位、GGGSリンカー、三量体形成ドメイン、およびヘキサヒスチジンタグを含むアミノ酸配列SGRENLYFQGGGGSGYIPEAPRDGQAYVRKDGEWVLLSTFLGHHHHHH*をクローニングした。
【0421】
図7では、完全スパイク、低ACE2スパイク、および高ACE2スパイクで示す右の3つの棒は、図1Gに対応し、ここで、低ACE2は、RBD結合が18%であり、高ACE2は、RBD結合が100%である。
【0422】
BALB/cJRjマウス(開始時6~8週齢、すべて雌)をJanvier Labs社から購入し、実験中、スイス連邦工科大学チューリッヒ校の動物施設で飼育した。2週間の順化後、マウスは、指示する日数(一次免疫化0日目、ブースター免疫化28日目)、RBD-His6(最終量3μg/免疫化、滅菌PBSに希釈)を1:1でAlhydrogel(登録商標)アジュバント2%(vac-alu-250、InvivoGen社)に少なくとも2時間吸着させたものを使用して免疫化した。指示する場合では、muranACE2(最終量9.2、1.8または0.37μg/免疫化、滅菌PBSに希釈)、中和マウスIgG2b(最終量13.5、2.7または0.54μg/免疫化、40592-MM57、Sino Biological社、滅菌PBSに希釈)、SuperMuran ACE(最終量0.37μg/免疫化、滅菌PBSに希釈)、NoMuran ACE2(最終量9.2μg/免疫化、滅菌PBSに希釈)、または完全長スパイクタンパク質(最終量3μg/免疫化、滅菌PBSに希釈)を抗原とアジュバントとの混合物に注射直前(10分未満)に加えた。マウスに、総容量100μlの抗原/アジュバント混合物それぞれを腹腔内に免疫化した。すべての免疫化は、三つ組で実施した。ブースト後の指示する時点で、脾臓を回収し、いずれかに記載のようにIgG-SCを調製して封入した(Bounab et al., 2020)。手短に言えば、B細胞系列由来の未処理細胞を、Miltenyi社のPan B細胞精製キットIIを使用して抽出した。細胞は、実験を通じて常に氷上か4℃に維持した。並行して、全血をマウスから採取し、凝固させ、後に血清を精製し、4℃で貯蔵した後、力価を測定した。チューリッヒ州立倫理委員会により、本試験に記載のすべての実験がライセンス番号ZH215/19によって検証および認可された。
【0423】
液滴生成用ポリジメチルシロキサンマイクロ流体チップおよび2D観察チャンバーをいずれかに記載のように製作し(Bounab et al., 2020)、このアセンブリーを使用して容量およそ50pLの液滴を生成した。乳濁液を2D観察チャンバー内に直接的に誘導し、その後、倒立蛍光顕微鏡(Ti2 Eclipse、Nikon社)上に搭載されたチャンバーの充填を完了し、データを下記のように生成した。
【0424】
B細胞系列由来の精製した細胞を遠心分離により採取し(400g、5分、4℃)、再懸濁させて、染色溶液(5μMのCell Trace Violetを加えたHanksのBalanced Salt Solution、ともにThermo Fisher社)中最終濃度2×106細胞/mlとして、解析中、B細胞を含む液滴の選択を可能とした。封入直前に、細胞を採取し(400g、5分、4℃)、フェノールレッド不含のRPMI1640(cat.no.11835030、Thermo Fisher社)からなる液滴培地により1回洗浄した。液滴培地は、5%のKnockout Serum Replacement(Thermo Fisher社)、0.5%の組換えヒト血清アルブミン(cat.no.A9986、Sigma Aldrich社)、25mMの2-[4-(2-ヒドロキシエチル)ピペラジン-1-イル]エタンスルホン酸(HEPES)pH7.4、1×ペニシリン-ストレプトマイシン、および0.1%のPluronic F-127(すべてThermo Fisher社により供給)をさらに含んだ。細胞は、液滴培地中に再懸濁させて、0.2~0.4の最終封入物λ(1液滴あたりの細胞数平均値)を得た。すなわち、液滴のおよそ20~30%が1個の細胞を含む。
【0425】
常磁性ナノ粒子をこれまでに記載のように調製した(Bounab et al., 2020)。ビーズは数時間前に調製し、ナノ粒子は各測定の前にピペットで滴下することにより完全に再懸濁させた。試薬の最終液滴中濃度は、wtRBD-His6は25nM、AlexaFluor750ヒトACE2-hFc(10108-H02H、Sino Biological社、社内で標識)は25nM、AlexaFluor488標識抗His6(ab237336、Abcam社)は30nM、およびAlexaFluor647標識抗IgG Fc(315-606-046、Jackson Immuno Research社)は75nMであった。
【0426】
液滴および封入細胞の画像を、10倍対物レンズ(NA0.45、Nikon社)を使用して取得し、室温でのインキュベーションから1時間後に10×10画像のアレイを取得した。これにより、1実験あたりおよそ4~50’000液滴の画像化が可能となり、結果として10~20’000細胞が解析された。励起光は、LED源(SOLA light engine、Lumencor Inc.)により供給され、発光した蛍光は、適切なバンドパスフィルター(DAPI、FITC、Cy5、およびCy7フィルターセット、すべてSemrock社)、室温(25℃)によるカメラ設定(Orca Flash4、Hamamatsu社)、および周囲酸素濃度を使用して記録した。測定中にビーズの線を垂直に整列させるために(データ解析のため)、2つの強力なネオジム磁石(BZX082、K&J Magnetics社)を2D観察チャンバーの両側上に配置した。
【0427】
取得したデータは、カスタムメイドのMatlabスクリプト(Mathworks社、バージョンはhttps://github.com/LCMD-ESPCI/dropmap-analyzerのGitHub上に見出すことができる)を使用して解析した。詳細には、明視野画像を使用して液滴を検出および単離した。DAPI画像を使用して各液滴中の生細胞の存在を確認し、他のすべての蛍光チャネルによりビーズ線への蛍光の再配置を確認した(Bounab et al., 2020)。生じた生データは、Excel(Microsoft社)にエクスポートし、生細胞を含んだ液滴を選別した。細胞を含む液滴は、抗IgGの再配置の増加についてさらに選別した(閾値1.3、1.1nMのIgG1または2.6nMのIgG2a/bに対応)。IgG分泌細胞の存在が保証された後、同一液滴中のAlexa488(RBD、抗原)およびAlexa750(ACE2、競合物)の再配置を解析し、Alexa488/750(RBD/ACE2再配置)の比率を求め、Alexa488の再配置に対してプロットした。この段階では、各サンプルにおいて、IgG分泌細胞50~600個を選択した。競合する抗体は、RBD/ACE2再配置の比率がx?(Alexa488再配置空液滴/Alexa750再配置空液滴)+0.02よりも高いものとして同定した。この閾値を使用して、cAbによる較正サンプルはcAbとして確実に同定されたが(93±8%、N=6)、誤って同定されたcAb数は低いままであった(1.4±0.5%、N=6)。他に言及しない場合、個々のマウスの測定において同定したcAbの平均出現頻度を呈示し(N=3)、標準偏差を図7に示す。低い出現頻度では、有意差はなかったが、すべての出現頻度の測定値、特には、高nAbおよび高muranACE2では、陰性対照実験のレベルを超えた(追加RBDなし1.1±1.1%)。
[実施例6]
【0428】
N501Yの置換を含む新たに出現したSARS-CoV-2変異体についての可溶性ACE2によるエピトープマスキングのインシリコでのモデリング - 図8AおよびB
図8AおよびBは、RBDのACE2マスキングが、新たに出現したウイルス変異体について増加することを示す。
【0429】
エピトープマスキングのインシリコでのモデリングは、別個のACE2血清濃度下での%RBD結合として表された。英国および南アフリカ由来の新たに出現したSARS-CoV-2ウイルスにおいて生じたN501Y突然変異により親和性が増加し、このためACE2によるマスキングも増加した。ここでは36%のRBD結合により表されるマスキング作用は、相関性に示すように、親和性(Kd)の低下とともに増加する。
【0430】
したがって、マスキング能は、受容体に対するRBDの親和性と相関し、親和性が増加した新規の変異体により、低sACE2血清濃度でマスキングの増加が引き起こされる。
[実施例7]
【0431】
MERS-wtRBDまたは種々のMERS-mRBDのいずれかに対するDPP4および種々のモノクローナルnABの結合力のELISAの使用によるインビトロでの決定 - 図9
図9は、MERS-CoV RBD突然変異D510A(配列番号195)、E536R(配列番号198)、D537K(配列番号196)、およびD539K(配列番号197)が、DPP4受容体に対する結合を異なる程度まで抑止し、D510およびD539が最も有効な受容体結合が消失した突然変異となることを示す。その上、図9は、MERS-CoV中和抗体4C2h、D12、LCA60、およびMERS4V2の結合がD510Aにより維持され、RBD-D510Aに対してRBD-WTと比較して同様に良好に結合することを示す。D171K突然変異は、結合親和性は低いが、4つの中和抗体のうちの3つを保存した。したがって、D510AおよびD171K RBD突然変異体は、動物の免疫化用に選択された。
【0432】
ヒトDPP4およびモノクローナル抗体のクローニングでは、タンパク質N末端の前に、MGWSCIILFLVATATGVHSの配列を有するIgHシグナルペプチド(SP)配列を配置してタンパク質分泌を促進した。非抗体タンパク質は、精製目的のために8×Hisタグまたは6×HisタグのいずれかをNまたはC末端上に含んだ。Gibson Assemblyクローニングを、Gibson Assembly Master Mix(New England Biolabs社、#E2611)を製造者の指示に従って使用して実施した。プラスミドの形質転換に化学的に適格な大腸菌を社内で生成し、NEB形質転換プロトコル(New England Biolabs社、#E1601)に従って形質転換した。細菌培養物からのプラスミドの単離は、PureYield(商標)Plasmid Miniprep System(Promega社、#A1222)およびPureYield(商標)Plasmid Midiprep System(Promega社、#A2496)を製造者の指示に従って使用して行った。発現カセットの配列は、DNAシーケンシング(LGC Genomics GmbH)により検証した。
【0433】
ヒトDPP4のS38-P766断片(Uniprot、P27487)を含むN末端8×Hisタグ(hDPP4-N’His)を有する組換えDPP4の遺伝子は、GenScriptにより合成し、SPを含む哺乳動物発現pSFベクター(Oxford Genetics社)にGibson Assemblyを使用してクローニングした。
【0434】
MERS-CoV RBDアミノ酸G372-L588を、Twin Strepタグ配列(WSHPQFEKGGGSGGGSGGSAWSHPQFEK)の上流のGGGSリンカーの前にクローニングし、その後、C末端8×Hisタグが続いた。これを、Wuhan SARS-CoV-2変異体(GenBank、MN908947.3)のシグナルペプチド貫通アミノ酸M1-Q14、AviTag(商標)、およびGGリンカーを含む哺乳動物発現ベクターpcDNA3.1+に導入した。4つのアミノ酸修飾、D510A、E536R、D171K、およびD539KをPCR突然変異誘発により導入して(表4を参照)、DPP4結合が抑止された6つのRBD突然変異体を、Q5Site-Directed Mutagenesis Kit(New England Biolabs社、#E0554)を製造者の指示に従って使用して作出した。
【0435】
【表8】
【0436】
モノクローナル抗体の合成V(D)J挿入断片LCA60、4C2h、D12、およびMERS-4V2は、オーバーラップPCRにより個々に生成した(表4~5を参照)。PCR産物は、ProNexビーズ(Promega社、#NG2002)を製造者の指示に従って使用して回収した。その後、Gibson Assemblyを使用して、PCR産物を、SPおよびIgカッパ定常領域R1-C107(軽鎖)またはIgG1 H定常領域A1-K330(重鎖)を含むpSF発現ベクターにクローニングした。
【0437】
【表9-1】
【表9-2】
【表9-3】
【0438】
【表10】
【0439】
濃度ELISAは、同様のサイズの購入した組換えタンパク質を陽性対照として使用して産生されたタンパク質の量の算出を目的とする。本プロジェクトに使用した3つの濃度ELISAのうちの2つは、DPP4-ELISA(すべてのヒトDPP4タンパク質を測定)およびHis-ELISA(すべてのHis含有タンパク質の濃度を測定)である(表6を参照)。
【0440】
最終的には、自製タンパク質のタンパク質濃度は、分光光度計(Biozym社、#31DS-11FXPLUS)上で測定した280nmにおける吸収を理論的消衰係数間で深く追求することにより推定した(ExpasyのProtParamツール、スイス生物情報学研究所、表7を参照)。この点を考慮して、96ウェルハーフエリアプレート(Greiner Bio-OneGmbH、#675061)を、DPP4濃度ELISA用に自製タンパク質の出発濃度1000ng/mlによる段階希釈液、またはHis濃度ELISA用に200倍希釈サンプルでコーティングした。ELISA用標準タンパク質は、表7に示すように同一プレートにコーティングした。コーティングプレートは、4℃で一晩インキュベートした。
【0441】
【表11】
【0442】
【表12】
【0443】
1%Tween添加PBS(PBS-T)により自動洗浄機(Biotek社、EL406)内でプレートを3回洗浄した。1%BSA添加PBS25μlによりRTで1時間プレートをブロッキングした。PBS-Tでプレートを3回洗浄し、一次抗体(表7)25μlを各ウェルに加えてRTで1時間インキュベートした。PBS-Tで3回プレートを洗浄し、二次抗体(表7)25μlを各ウェルに加えてRTで1時間インキュベートした。PBS-Tで3回プレートを洗浄し、4-ニトロフェニルリン酸二ナトリウム塩六水和物基質(pNPP)(Sigma社、#S0492-50TAB)50μlを加えた。pNPP追加から丁度30分後に、405nmおよび620nmにおけるウェルの吸光度を測定した(BioTek社、Cytation5)。
【0444】
陽性対照において得られた値とこれらの実際の濃度との相関性を使用して、サンプルの濃度を算出した。
【0445】
自製抗体の濃度は、ELISAを使用して決定する。ヤギ抗IgGヒト抗体(Southern Biotech社、#2040-04)を使用し、2μg/mlの25μlを使用してプレートをコーティングする。プレートは、4℃で一晩インキュベートする。
【0446】
PBS-Tで3回プレートを洗浄し、1%BSA添加PBS25μlを使用してRTで1時間ブロッキングする。PBS-Tでプレートを3回洗浄し、出発希釈がそれぞれ200倍および2μg/mlのサンプルおよび陽性対照(Southern Biotech社、#0150-01)の段階希釈液25μlを加え、RTで1時間インキュベートした。次いで、PBS-Tで3回プレートを洗浄し、ヤギ抗ヒトIgG(Southern Biotech社、#2040-04)25μlを加え、RTで1時間インキュベートした。PBS-Tで3回プレートを洗浄し、pNPP(Sigma社、#S0492-50TAB)50μlを加えた。pNPP追加から丁度30分後に、405nmおよび620nmにおけるウェルの吸光度を測定した(BioTek社、Cytation5)。
【0447】
DPP4に対するTwin Strepタグ化MERS-CoV-RBDおよびMERS-CoVスパイクの結合をELISAにより試験した。96ウェルハーフエリアプレート(Greiner Bio-One GmbH、#675061)を、4μg/mlの自製DPP4 25μlをPBS中に希釈したものを使用してコーティングし、4℃で一晩インキュベートした。
【0448】
次いで、100μl/ウェルのPBS-Tで3回プレートを洗浄した(Biotek社、EL406)。1%BSA添加PBS25μlによりRTで1時間プレートをブロッキングした。100μl/ウェルのPBS-Tで3回プレートを洗浄し、MERS-CoV-RBDまたはMERS-CoVスパイクタンパク質の段階希釈液25μlを各ウェルに加え、RTで1時間インキュベートした。段階希釈液は、出発濃度50μg/mlによる3倍希釈によって生成した。PBS-Tで3回プレートを洗浄し、2μg/mlのAP共役ストレプトアビジン(Southern Biotech社、#0150-01)25μlを各ウェルに加え、RTで1時間インキュベートした。PBS-Tで3回プレートを洗浄し、pNPP(Sigma社、#S0492-50TAB)50μLを加えた。pNPP追加から丁度30分後に、405nmおよび620nmにおけるウェルの吸光度を測定した(BioTek社、Cytation5)。
【0449】
405nmにおける吸光度の増加は、サンプルのTwin Strepタグ化タンパク質に対するDPP4結合を示した。
【0450】
HEK293を、加湿した8%CO2のインキュベーター内で37℃の懸濁液中に培養した。タンパク質の生成では、細胞を1mlあたり2×106細胞の密度に増殖させ、1mg/mlのPEI(Polysciences Inc.、#23966-1)およびプラスミドDNA38μgを使用してトランスフェクトし、3日間培養した。この後、細胞を4000gによりRTで10分間遠心分離し、上清を採取した。上清は、0.45μmのポリエーテルスルホン膜を使用して濾過した。生じた上清からタンパク質を、His Spin Trap(商標)カラムにより製造者の指示に従って精製した(Cytiva社、#95056-290)。溶出したタンパク質は、緩衝液交換によりリン酸緩衝食塩水(PBS)に移した。緩衝液交換は、RBDタンパク質またはhDPP4-N’Hisおよびモノクローナル抗体のそれぞれについて、Amicon Ultra-4遠心分離フィルターユニットを10kDaまたは50kDaのカットオフにより使用する(Millipore社、#UFC801008、#UFC805008)4000gで4~14分間の遠心分離による4℃での6回の連続的濃縮工程および希釈工程を含む。タンパク質濃度は、すべてのタンパク質についてELISAにより決定した。タンパク質の生成は、SDS-PAGEおよびウエスタンブロットにより確認した。
[実施例10]
【0451】
MERS-wtRBDまたは種々のMERS-mRBDのいずれかの使用による血清由来のヒトDPP4およびウサギDPP4のプルダウンアッセイ - 図10
図10は、MERS-CoV RBD突然変異D510A(配列番号195)、D537K(配列番号196)、およびD539K(配列番号197)が、血清由来のヒトDPP4およびウサギDPP4のプルダウンを抑止することを示す。したがって、D510A、D537、およびD539の突然変異は、血清DPP4によるMERS-CoV RBDのマスキング低下に適する。
【0452】
可溶性DPP4は、ストレプトアビジン磁気ビーズ(IBA Life Science社、#2-4090-010)と共役したMERS-RBD-TwinStrepを使用して血清200μlからプルダウンした。最初に、ストレプトアビジン磁気ビーズ120μlを1.5mlチューブに配置した。磁気ラックを使用して、ストレプトアビジン磁気ビーズを液体から分離した。液体を除去し、沈殿ビーズを1×洗浄緩衝液(IBA Life Science社、#2-1003-100)1mlで2回およびPBS1mlで2回洗浄した。洗浄後、ビーズをPBS50μl中に再懸濁させた。
【0453】
タンパク質を含むTwinStrepをストレプトアビジン磁気ビーズと、所望のタンパク質24μgを追加し、溶液を37℃で1時間、1400rpmで振盪させながらインキュベートすることにより共役させた(Starlab社、#S8012-0000)。1時間後、ビーズをPBS1mlで3回洗浄し、磁気ラックを使用して沈殿させ、上清を交換した。ビーズのブロッキングは、ストレプトアビジン磁気ビーズの潜在的空間を占有するのに必要であった。ビーズのブロッキングは、ビーズを1%BSA-PBS1ml中にRTで1時間、1400rpmで振盪させながらインキュベートすることにより行った。
【0454】
ブロッキング工程後、ビーズをPBS1mlで3回洗浄し、最終的に、PBS120μl中に再懸濁させた。ビーズ120μlを2mlチューブに移した。血清200μlを2mlチューブに加えた。2mlチューブは、50mlチューブ内にペーパータオルとともに配置して内部に確実に安定させた。50mlチューブは、4℃で一晩、回転させながらインキュベートした。
【0455】
一晩のインキュベーション後、2mlチューブを磁気ラックに配置し、血清を採取してさらに解析する。沈殿ビーズをPBS1mlで3回洗浄し、貯蔵してさらに解析する。
【0456】
可溶性DPP4(sDPP4)の血清における酵素活性は、次のように測定した。
【0457】
第1に、96ウェルプレート(Sigma社、#M0812-100EA)に、血清サンプル10μLに、37℃に予熱したアッセイ緩衝液(50mMのTrisHCl、pH9.0を37℃で)80μlを添加した。第2に、プレートを37℃で15分間インキュベートした。第3に、基質Gly-Pro p-ニトロアニリド(Biozol社、#BAC-4025614.0250)をアッセイ緩衝液により5mMの濃度に新鮮に調製した。次いで、基質10μlを各サンプルに加え、15分毎に測定する37℃で2時間の動態測定においてサンプルを405nmの吸光度により測定した(BioTek社、Cytation5)。吸光度をp-ニトロアニリン(pNA)の生成およびその後のDPP4の濃度と関連させるために、pNA(Santa Cruz Biotechnology Inc、#sc-272000A)および組換えDPP4(Sigma-Aldrich Chemie社、#D3446)の標準をプレート上に含み、表9および10に示すように調製した。
【0458】
【表13】
【0459】
【表14】
【0460】
DPP4活性アッセイの解析は、全体的にRStudioを使用して行う。
【0461】
最初に、2つのブランク値の平均値をすべての値から時間依存的に減算する。その後、ゼロ時点での測定値をすべてのサンプルから減算して、サンプル蛍光がさらなる算出に干渉することを回避する。
【0462】
既知濃度のp-ニトロアニリン(pNA)対405nmにおける吸光度の切片なし線形回帰を実施する。本解析用に選択されたデータは、45分の時点に属するデータである。次いで、そこで得られた勾配を使用して、解析中にすべてのサンプルにより放出されたpNAの量を測定する。
【0463】
次いで、対照DPP4サンプルの活性(nmol pNA/分)を解析する。DPP4に使用した最高濃度(0.3μg/ml)により、15~60分の吸光度の線形増加が示される。したがって、45~60分に高濃度ならびに低濃度のDPP4において最適な基質の切断が生じる。後の時点は、高濃度のDPP4に最適ではない。最適基質切断とは、DPP4の濃度対活性の線形回帰のr二乗が0.96よりも高いことを意味する。しかし、少量のDPP4を含むサンプルは、後の時点で測定すべきであり、この場合、高濃度の対照DPP4サンプルは、最適基質切断が達成されるまで濾過して除外しなければならない。
【0464】
既知濃度のDPP4対最適基質切断において放出されたpNAの切片なし線形回帰を実施する。勾配を使用して、サンプルにおける活性DPP4(aDPP4)の濃度を測定する。
[実施例11]
【0465】
インシリコでのスコアリングのインビトロでの検証 - 図13
図13では、選択されたRBD変異体のACE2結合の抑止およびnAbエピトープの保存をインビトロで確認する。wtRBDおよび3つの代表的RBD変異体を、ACE2-hFcg1、クラス1およびクラス2のnAb(図13a)ならびにクラス3およびクラス4のnAb(図13b)に対する結合についてELISAにより検査した。抗スパイクNTD4A8抗体ならびに抗MERS-CoV抗体LCA60は、陰性対照として作用した。残存nAb結合数および%ACE2結合をWTと比較して呈示する。波長405nmにおける光学密度OD。
【0466】
インシリコでのスコアリングの知見をインビトロでさらに検証するために、実施例3および実施例4と同様に、再び高スコア(G502E、総スコア4.79)および中等スコア(L455R、総スコア3.05)のRBD変異体が評価されたが、無視できるほどのスコアを有する変異体も存在した(E484K、総スコア-2.93)。3つすべては、組換えにより生成して、ACE2および別個の結合クラスの中和抗体(nAb)に対する結合をELISAにより検査した。
【0467】
したがって、組換えにより発現したSARS-CoV-2RBD、完全スパイクまたはスパイクNTDを高結合96ウェルELISAプレート(Corning社、#CLS3690)上にPBS(Sigma Aldrich社、米国、MO)により10μg/mlに希釈して+4℃で一晩コーティングした。PBS/1%BSA(Thermo Fisher社、Gibco、米国、MA)により室温で1時間プレートをブロッキングした。血清およびタンパク質は、PBS/1%BSAにより支持する段階希釈液に希釈し、コーティングしたプレートに加え、室温で1時間インキュベートした。プレートは、抗ヒトIgGアルカリホスファターゼ(AP)共役抗体(Southern Biotech社、#2040-04)または抗ウサギIgG-APコンジュゲート抗体(Jackson Immuno Research社、#111-056-003)をともにPBS/1%BSAにより1:500に希釈したものを用いて展開した。4-ニトロフェニルリン酸二ナトリウム塩六水和物基質(Sigma社、#S0942-50TAB)を含む重炭酸緩衝液を加え、405nmにおける吸光度をCytation5デバイス(Agilent BioTek社)により測定した。指示するすべてのインキュベーション工程の間に、PBS/0.05%Tween-20で3回プレートを洗浄した。IgG力価(ED50)は、非線形回帰によるS字曲線のフィッティングをR(statsパッケージ)により実施することによって決定した。曲線のフィッティングでは、S309(RBD)または4A8(NTD)参照抗体の上下のプラトーは、それぞれのサンプルすべてに適用した。
【0468】
高スコアの変異体G502Eは、ACE2結合を完全に抑止し、一方、検査したすべてのnAbの結合は維持した。中等スコアの変異体L455Rは、ACE2結合を部分的に抑止したが(WTと比較して71%抑止)、6つのクラス1およびクラス2のnAbのうちの3つ、すなわち、P2C-1F1125、REGN1093326、およびC14427との相互作用も減弱させた。クラス3およびクラス4のnAbは、L455R突然変異により影響されなかった。低スコアを有する変異体E484Kは、受容体結合に著しくは影響せず、一方、6つのクラス1およびクラス2のnAbのうちの3つの結合は、低下または消失した(図13Aおよび13B)。したがって、インビトロでの結果により、インシリコでのスコアリングが確認される。
【0469】
より広範なRBD変異体のセットをインビトロでさらに検査するために、クラス1およびクラス2の選択された3つのnAb、すなわち、CC12.128、P2C-1F1125、およびREGN1093326に注目した。これらのエピトープは、ACE2結合インターフェースと重複する。この結合データは、インシリコでのランキングから得られた勾配スコアを良好に反映した(図13C)。
【0470】
実施例4、図6に加えて、顕著な数のG502アミノ酸交換がインシリコで高スコアを得たため、G502の位置におけるあり得るすべてのアミノ酸交換をインビトロで検査し、nAbまたはACE2結合がわずかに低下したG502K、G502L、およびG502Fを除く、すべての変異体が、高い能力を示した。
[実施例12]
【0471】
受容体結合の消失によりSARS-CoV-2スパイクの膜融合能が低下する - 図14A、B
受容体結合の消失が抗原の内部移行に干渉する - 図14C、D
図14は、(A)三つ組での技術的反復によるVeroE6合胞体の形成ならびに(B)二つ組での技術的反復によるHEK293T細胞間融合現象を示し、2つの位置はそれぞれ48時間後の拡大率10倍における画像により決定した。検出した合胞体数および1合胞体あたりの核の平均数は、中央値ならびに75%および25%のパーセンタイルを示すバイオリン図により表す。
【0472】
図14Cおよび図14Dは、1μMのヘパリン(D)または培地のみ(C)で指示する時間にわたって前処理したVeroE6細胞へのSARS-CoV-2スパイク内部移行動態の生細胞回転ディスク共焦点顕微鏡観察を、最大強度によるZプロジェクションの代表的画像によって示す。すべての画像では、細胞質はCellTracker(商標)CMFDAにより染色した。すなわち、細胞は緑色で標識し、図14C、Dでは灰色で示した。スパイクAF647タンパク質はマゼンタで標識し、図14C、Dでは白色で示した。HIV-1糖タンパク質gp140BG505は、対照抗原として作用した。
【0473】
融合適格性抗原の表面発現によって、COVID-19による組織損傷の要因となる合胞体の形成を介して副作用が引き起こされ得る。受容体結合の抑止により融合が効率的に阻止されることを実証するために、膜貫通スパイク変異体を、後にACE2-eGFPトランスフェクトHEK293T細胞と混合するHEK293T細胞、または後にACE2を内因的に発現するVeroE6細胞のいずれかにおいて発現させた。VeroE6合胞体形成およびHEK293T細胞間融合アッセイを実施した。
【0474】
詳細には、インシリコで決定したSARS-CoV-2変異体の膜融合能を決定するために、種々のSARS-CoV-2スパイク完全長タンパク質をpMAX-GFPレポータープラスミド(カイアシ類ポテリーナ属(P.plumata)由来、A.Lanzavecchiaより寄贈)とともに1:1の比で追加したPEIを三つ組で使用して、VeroE6細胞をトランスフェクトした。SARS-CoV-1完全長スパイクタンパク質は、対照として作用した。48時間後、細胞をNucBlue(商標)LIVE/READY(商標)Hoechst 33342 Reagentで染色し、位相差、DAPI、およびCytation5デバイスのGFPチャネル/フィルターを合胞体形成観察のために使用して画像化した。拡大率10倍で撮影した写真を画像呈示ならびにImageJによる合胞体および核の計数に使用した。各複製を3回計数し、平均を取った。
【0475】
HEK293細胞を二つ組で播種し、2つの群に分けた。ドナー群は、種々のSARS-CoV-2完全長スパイクタンパク質ならびにSARS-CoV-1完全長スパイク対照タンパク質をPEIによりトランスフェクトした。アクセプター群は、ヒトACE2-eGFPプラスミドをPEIによりトランスフェクトした。翌日、両群の細胞を1:1の比率で相互に混合し、24ウェルプレートに播種した。24時間後、VeroE6細胞について記載のように、細胞を処理して解析した。
【0476】
同等レベルのスパイクタンパク質が細胞表面上に発現したが、G502EおよびG502Rは、膜融合活性を完全に抑止し、一方、変異体L455RおよびE484Kは、細胞を融合させる能力を低下させた(図14A、B)。受容体結合の抑止と同様に、プロリン2つ(2P)によりスパイクを安定化する置換によって、スパイクの膜融合活性が強力に阻止された。したがって、このデータは、受容体結合の抑止が、ワクチン誘導合胞体形成を回避するための融合前安定化に対する代替戦略となることを示唆する。
【0477】
ACE2の内部移行および消失が誘導されるACE2受容体に対するスパイク結合により、組織損傷が促進される。したがって、G502E変異体がスパイクの細胞取込みを抑止可能かどうかに、生細胞イメージングによってさらに取り組んだ。
【0478】
詳細には、SARS-CoV-2完全スパイクタンパク質およびRBDタンパク質の内部移行を可視化するために、VeroE6細胞40,000個を8ウェルのIbidiガラス底スライド(Ibidi社、#80827)のウェルに播種した。翌日、細胞をPBSで1回洗浄し、核をNucBlue(商標)LIVE/READY(商標)Hoechst 33342 Reagent(Thermo Fisher社、Life Technologies、#R37605)により製造者の指示に従って37℃で15分間染色した。もう1回PBSで洗浄した後、細胞を予熱したCellTracker(商標)Green CMFDA溶液(Invitrogen、Thermo Fisher社、#C2925、作用濃度8μM)で染色し、37℃で30分間インキュベートした。その後、CMFDA溶液を取り除き、遊離した色素を、FCS含有培地を5分間追加することによりクエンチした。もう1回のPBSによる洗浄時に、細胞をSARS-CoV-2の10μg/mlのRBD溶液または20μg/mlのスパイク溶液、ならびにSARS-CoV-2NTDまたはHIV-1 gp140 BG505単離完全スパイク対照タンパク質でそれぞれ処理した。37℃で90分間のインキュベーション後、細胞をPBSで1回洗浄し、PBS中4%PFA+20%スクロースにより4℃で20分間固定した。その後、細胞を洗浄し、PBS中に維持した。固定したサンプルの画像をZeiss Laser Scanning共焦点顕微鏡(LSM780)上で取得した。検出では、光電子増倍管を使用した。この系は、Zeiss ZEN2010ソフトウェア(Carl Zeiss Microscopy社)により制御した。固定したサンプルの単色および多色共焦点イメージングは、シーケンシャルモードで次のフルオロフォア特異的な励起(Ex.)および発光フィルター(EmF.)設定により実施した:Hoechst(Ex.:405nm、EmF.:415~480nm)、CMFDA(Ex.:488nm、EmF.:490~578nm)、Alexa Fluor647(Ex.:633nm、EmF.:638~735nm)。画像は、PL APO DIC M27 63×/1.40NA油浸対物レンズ(Carl Zeiss Microscopy社)により取得した。細胞の下から上へのz-stackを8μmにわたって0.39μmの間隔で実施した。FIJIソフトウェアを使用してコントラスト調節、zプロジェクション、および正投影図を実施した(https://imagej.net/software/fiji/)。各条件は二つ組で実施した。
【0479】
RBDおよびスパイクタンパク質の吸収のライブイメージングを、VeroE6細胞を予熱したCellTracker(商標)Green CMFDA溶液(作用濃度8μM)とともに37℃で30分間インキュベートすることにより実施した。その後、CMFDA溶液を取り除き、遊離した色素を、FCS含有培地を5分間追加することによりクエンチした。もう1回のPBSによる洗浄時に、細胞を1μMのブタヘパリン(Sigma-Aldrich社、#H3393-50KU)または培地のいずれかで1時間のみ前処理した。細胞は、10%のFCSおよび1%のペニシリン-ストレプトマイシンを加えた生細胞イメージング緩衝液Fluorobrite DMEM培地(Thermo Fisher社によるGibco、#A1896701)中で画像化した。SARS-CoV-2スパイクWTおよびG502Eの溶液をそれぞれのウェルに加えて最終濃度20μg/mlとした。SARS-CoV-2RBD WTおよびG502Eを加えて最終濃度10μg/mlとした。二色発光ライブイメージングを、Perfect Focus System、Yokogawa CSU-X-1、自動ステージ、および加熱可能な湿潤チャンバーを有するNikon TiEを備えたNikon Spinning Disk Confocal Microscopeにより実施した。この系は、Nikon NIS Elementsソフトウェア(NIS5.02.01(ビルド1270))により制御した。細胞は、OKOLAB系により37℃および5%CO2に制御して画像化した。画像取得では40×NA0.95空気対物レンズを、検出ではEMCCDカメラ(Andor AU-888)を使用した。画像は、16ビットフォーマットで、1024×1024ピクセルおよび合計サイズ163×163μmにより取得した。細胞株CMFDAは488nmのレーザー(150mW)で、AF647標識タンパク質は640nmのレーザー(100mW)で励起させた。レーザー出力および露出時間は、1回の実験を通じて同一に維持した。μ-スライド8ウェルガラス底lbidiチャンバーの各ウェルでは、5種の異なる位置を画像化した。z-stack(11スライス、0.6μmステップサイズ)をすべての位置についてNikonTiZ-Driveを使用して設定した。タイムラプスでは、第1の画像(0分)は、標識タンパク質の追加前に、第2の画像はこの追加直後に、次いで、連続的に30分毎に少なくとも12時間取得した。FIJIを使用してコントラスト調節、zプロジェクション、および時点選択を実施した(https://imagej.net/software/fiji/)。別々に処理したウェルの選択した時点を示す。各条件は、三つ組で実施した。
【0480】
蛍光標識したSARS-CoV-2スパイク2Pタンパク質は、90分以内にVeroE6細胞によって吸着させ、内部移行させた(図14C)。G502E変異体は、数時間で著しく減少し、スパイクの取込みを呈した。
【0481】
SARS-CoV-2の単量体RBDは、細胞性ヘパラン硫酸(HS)を認識する結合部位を1つ、三量体完全スパイクタンパク質は、9つ保有すると最近報告され、この結合部位は、ウイルスの取込みに寄与し得る。したがって、ヘパリン存在下でのスパイクの内部移行を評価した。実際、ヘパリン処理により、スパイクの取込みならびに蛍光する細胞数が減少した(図14D)。同様の結果は、G502Eスパイクについて観察された。したがって、G502E突然変異は、ACE2媒介による取込みを消失させ、一方、他の受容体相互作用、例えば、HSを通じてスパイクの部分的内部移行を維持する。まとめると、このデータは、本明細書に開示の方法による抗原デザインが、細胞間融合を阻止し、細胞表面から機能性受容体を除去し、ならびに抗原の取込みを減少させることにより、ワクチンの安全性および有効性に対する肯定的意義を有し得ることを示唆する。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13A
図13B
図13C
図13D
図14A
図14B
図14C
図14D
【配列表】
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【国際調査報告】