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特表2024-536716PD-L1、CD137及び/又はTGFβへの二重特異性及び三重特異性結合タンパク質ならびにそれらの使用
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-08
(54)【発明の名称】PD-L1、CD137及び/又はTGFβへの二重特異性及び三重特異性結合タンパク質ならびにそれらの使用
(51)【国際特許分類】
   C07K 19/00 20060101AFI20241001BHJP
   C07K 16/46 20060101ALI20241001BHJP
   C07K 16/28 20060101ALI20241001BHJP
   C12N 15/13 20060101ALI20241001BHJP
   C12N 15/62 20060101ALI20241001BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20241001BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20241001BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20241001BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20241001BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20241001BHJP
   C12P 21/08 20060101ALI20241001BHJP
   C07K 14/71 20060101ALI20241001BHJP
   C12N 15/12 20060101ALI20241001BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20241001BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20241001BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20241001BHJP
   C12P 21/02 20060101ALN20241001BHJP
【FI】
C07K19/00
C07K16/46 ZNA
C07K16/28
C12N15/13
C12N15/62 Z
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12P21/08
C07K14/71
C12N15/12
A61P35/00
A61K48/00
A61K39/395 D
A61K39/395 E
A61K39/395 N
A61K39/395 T
C12P21/02 C
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024513935
(86)(22)【出願日】2022-09-01
(85)【翻訳文提出日】2024-04-24
(86)【国際出願番号】 US2022075847
(87)【国際公開番号】W WO2023034923
(87)【国際公開日】2023-03-09
(31)【優先権主張番号】63/240,404
(32)【優先日】2021-09-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】521339223
【氏名又は名称】ノヴァロック バイオセラピューティクス, リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100103182
【弁理士】
【氏名又は名称】日野 真美
(74)【代理人】
【識別番号】100217663
【弁理士】
【氏名又は名称】末広 尚也
(72)【発明者】
【氏名】ペイ,イ
(72)【発明者】
【氏名】ファン,ハイチュン
(72)【発明者】
【氏名】ロイ,イック
(72)【発明者】
【氏名】チェン,チャン フン
(72)【発明者】
【氏名】リ,ハン
(72)【発明者】
【氏名】シェン,ディ
(72)【発明者】
【氏名】レイ,ミン
【テーマコード(参考)】
4B064
4B065
4C084
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4B064AG20
4B064AG27
4B064CA19
4B064CC24
4B064DA05
4B065AA01X
4B065AA57X
4B065AA72X
4B065AA87X
4B065AA92Y
4B065AA94Y
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065CA25
4B065CA44
4C084AA13
4C084MA55
4C084MA66
4C084NA14
4C084ZB261
4C084ZB262
4C085AA13
4C085AA14
4C085BB36
4C085CC22
4C085CC23
4C085DD62
4C085EE01
4C085GG01
4C085GG02
4C085GG03
4C085GG04
4H045AA11
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA41
4H045CA42
4H045DA50
4H045DA76
4H045EA28
4H045FA74
(57)【要約】
本開示は、PD-L1及びCD137に結合する結合タンパク質(PD-L1/CD137二重特異性体)、PD-L1及びTGFβに結合する結合タンパク質(PD-L1/TGFβ二重特異性体)、PD-L1、TGFβ、及びCD137に結合する結合タンパク質(PD-L1/TGFβ/CD137三重特異性体)、ならびにCD137、TGFβ、及びPD-L1に結合する結合タンパク質(CD137/TGFβ/PD-L1三重特異性体)を提供する。本開示はまた、これらの結合タンパク質を含む医薬組成物、ならびに癌を治療及び/又は予防するためのそれらの使用の方法を提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
PD-L1及びTGFβ又はPD-L1及びCD137に結合する結合タンパク質であって、
(a)PD-L1に結合する第一の抗原結合部位及びPD-L1に結合する第二の抗原結合部位を含む抗体足場モジュール;
(b)TGFβ又はCD137に結合する第三の抗原結合部位を含む、少なくとも一つの第一の結合モジュールを含む、結合タンパク質。
【請求項2】
前記第一の抗原結合部位及び前記第二の抗原結合部位が、
(i)CDR1:配列番号5、CDR2:配列番号6、及びCDR3:配列番号7を含む重鎖可変領域配列;ならびにCDR1:配列番号8、CDR2:配列番号9、及びCDR3:配列番号10を含む軽鎖可変領域配列;又は
(ii)CDR1:配列番号11、CDR2:配列番号12、及びCDR3:配列番号13を含む重鎖可変領域配列;ならびにCDR1:配列番号14、CDR2:配列番号9、及びCDR3:配列番号15を含む軽鎖可変領域配列を含む、請求項1に記載の結合タンパク質。
【請求項3】
前記抗体足場モジュールが、
配列番号1又は配列番号3において示される重鎖可変領域配列;及び配列番号2又は配列番号4において示される軽鎖可変領域配列を含む、請求項1に記載の結合タンパク質。
【請求項4】
前記抗体足場モジュールが、
(i)配列番号1において示される重鎖可変領域配列及び配列番号2において示される軽鎖可変領域配列;又は
(ii)配列番号3において示される重鎖可変領域配列及び配列番号4において示される軽鎖可変領域配列を含む、請求項1に記載の結合タンパク質。
【請求項5】
前記抗体足場モジュールが、
(i)配列番号1において示される重鎖可変領域配列、
配列番号60、配列番号61、配列番号62、配列番号63、又は配列番号64において示される重鎖定常領域配列、
配列番号2において示される軽鎖可変領域配列、及び
配列番号65もしくは配列番号66において示される軽鎖定常領域配列;又は
(ii)配列番号3において示される重鎖可変領域配列、
配列番号60、配列番号61、配列番号62、配列番号63、又は配列番号64において示される重鎖定常領域配列、
配列番号4において示される軽鎖可変領域配列、及び
配列番号65又は配列番号66において示される軽鎖定常領域配列を含む、請求項1に記載の結合タンパク質。
【請求項6】
前記抗体足場モジュールが、
配列番号45において示される重鎖配列及び配列番号40において示される軽鎖配列を含む、請求項1に記載の結合タンパク質。
【請求項7】
一つの第一の結合モジュールを有する、請求項1~6に記載の結合タンパク質。
【請求項8】
二つの第一の結合モジュールを有する、請求項1~6に記載の結合タンパク質。
【請求項9】
前記抗体足場モジュールが、C末端及びN末端を含む重鎖配列を含み、前記抗体足場モジュールが、C末端及びN末端を含む軽鎖配列を含み、前記第一の結合モジュールが、前記抗体足場モジュール重鎖配列の前記C末端、前記抗体足場モジュール軽鎖配列の前記C末端、前記抗体足場モジュール重鎖配列の前記N末端、前記抗体足場モジュール軽鎖配列の前記N末端、又はそれらの組み合わせに共有結合的に付着されており、前記第一の結合モジュール及び前記抗体足場モジュールが、直接的に又はインターリンカーを介して互いに共有結合的に付着されている、先行請求項に記載の結合タンパク質。
【請求項10】
前記第一の結合モジュール及び前記抗体足場モジュールが、配列番号58又は配列番号59において示される配列を有するインターリンカーを通じて互いに共有結合的に付着されている、請求項9に記載の結合タンパク質。
【請求項11】
前記第一の結合モジュールが、前記抗体足場モジュール重鎖配列の前記C末端に共有結合的に付着されている、請求項9に記載の結合タンパク質。
【請求項12】
前記第一の結合モジュールが、前記抗体足場モジュール軽鎖配列の前記C末端に共有結合的に付着されている、請求項9に記載の結合タンパク質。
【請求項13】
一つを上回る第一の結合モジュールがある場合、各々が、異なる抗体足場モジュール配列に又は前記抗体足場モジュール配列の異なる末端に共有結合的に付着されている、請求項1~6及び8~12のいずれか一項に記載の結合タンパク質。
【請求項14】
前記第三の抗原結合部位がTGFβに結合する、先行請求項に記載の結合タンパク質。
【請求項15】
前記第一の結合モジュールが、TGFβRIIの細胞外ドメインを含む、請求項14に記載の結合タンパク質。
【請求項16】
TGFβRIIの前記細胞外ドメインが、配列番号67において示される配列を含む、請求項15に記載の結合タンパク質。
【請求項17】
二つの第一の結合モジュールを有する、請求項14~16に記載の結合タンパク質。
【請求項18】
前記抗体足場モジュール及び前記第一の結合モジュールの前記重鎖配列が、配列番号51において示される配列を含み;ならびに前記抗体足場モジュールの前記軽鎖配列が、配列番号40において示される配列を含む、請求項17に記載の結合タンパク質。
【請求項19】
前記第三の抗原結合部位がCD137に結合する、請求項1~13のいずれか一項に記載の結合タンパク質。
【請求項20】
前記第一の結合モジュールがscFvであり、それは、重鎖可変領域配列及び軽鎖可変配列を含み、前記配列が、直接的に又はscFv融合リンカーを通じて互いに共有結合的に付着されている、請求項19に記載の結合タンパク質。
【請求項21】
前記第一の結合モジュールが、配列番号53、配列番号54、配列番号55、又は配列番号56において示される配列を含む、請求項19に記載の結合タンパク質。
【請求項22】
前記第一の結合モジュールが、N末端からC末端に、
(1)CDR1:配列番号5、CDR2:配列番号22、及びCDR3:配列番号23を含む重鎖可変領域配列;ならびにCDR1:配列番号24、CDR2:配列番号25、及びCDR3:配列番号26を含む軽鎖可変領域配列;
(2)CDR1:配列番号27、CDR2:配列番号28、及びCDR3:配列番号29を含む重鎖可変領域配列;ならびにCDR1:配列番号30、CDR2:配列番号9、及びCDR3:配列番号31を含む軽鎖可変領域配列;又は
(3)CDR1:配列番号32、CDR2:配列番号33、及びCDR3:配列番号34を含む重鎖可変領域配列;ならびにCDR1:配列番号35、CDR2:配列番号36、及びCDR3:配列番号37を含む軽鎖可変領域配列を含む、請求項19に記載の結合タンパク質。
【請求項23】
前記第一の結合モジュールが、N末端からC末端に、
(1)配列番号16において示される重鎖可変領域配列及び配列番号17において示される軽鎖可変領域配列;
(2)配列番号18において示される重鎖可変領域配列及び配列番号19において示される軽鎖可変領域配列;又は
(3)配列番号20において示される重鎖可変領域配列及び配列番号21において示される軽鎖可変領域配列を含む、請求項19に記載の結合タンパク質。
【請求項24】
二つの第一の結合モジュールを有する、請求項19~23に記載の結合タンパク質。
【請求項25】
(1)前記抗体足場モジュール及び前記第一の結合モジュールの前記重鎖配列が、配列番号38において示される配列を含み;ならびに前記抗体足場モジュールの前記軽鎖配列が、配列番号40において示される配列を含み;
(2)前記抗体足場モジュール及び前記第一の結合モジュールの前記重鎖配列が、配列番号44において示される配列を含み;ならびに前記抗体足場モジュールの前記軽鎖配列が、配列番号40において示される配列を含み;
(3)前記抗体足場モジュールの前記重鎖配列が、配列番号45において示される配列を含み;ならびに前記抗体足場モジュール及び前記第一の結合モジュールの前記軽鎖配列が、配列番号46において示される配列を含み;
(4)前記抗体足場モジュール及び前記第一の結合モジュールの前記重鎖配列が、配列番号47において示される配列を含み;ならびに前記抗体足場モジュールの前記軽鎖配列が、配列番号40において示される配列を含み;
(5)前記抗体足場モジュール及び前記第一の結合モジュールの前記重鎖配列が、配列番号50において示される配列を含み;ならびに前記抗体足場モジュールの前記軽鎖配列が、配列番号40において示される配列を含む、請求項24に記載の結合タンパク質。
【請求項26】
PD-L1、TGFβ、及びCD137に結合する結合タンパク質であって、
(a)PD-L1に結合する第一の抗原結合部位及びPD-L1に結合する第二の抗原結合部位を含む抗体足場モジュール;
(b)TGFβに結合する第三の抗原結合部位を含む少なくとも一つの第一の結合モジュール;ならびに
(c)CD137に結合する第四の抗原結合部位を含む少なくとも一つの第二の結合モジュールを含む、結合タンパク質。
【請求項27】
前記第一の抗原結合部位及び前記第二の抗原結合部位が、
(i)CDR1:配列番号5、CDR2:配列番号6、及びCDR3:配列番号7を含む重鎖可変領域配列;ならびにCDR1:配列番号8、CDR2:配列番号9、及びCDR3:配列番号10を含む軽鎖可変領域配列;又は
(ii)CDR1:配列番号11、CDR2:配列番号12、及びCDR3:配列番号13を含む重鎖可変領域配列;ならびにCDR1:配列番号14、CDR2:配列番号9、及びCDR3:配列番号15を含む軽鎖可変領域配列を含む、請求項26に記載の結合タンパク質。
【請求項28】
前記抗体足場モジュールが、
配列番号1又は配列番号3において示される重鎖可変領域配列;及び配列番号2又は配列番号4において示される軽鎖可変領域配列を含む、請求項26に記載の結合タンパク質。
【請求項29】
前記抗体足場モジュールが、
(i)配列番号1において示される重鎖可変領域配列及び配列番号2において示される軽鎖可変領域配列;
(ii)配列番号3において示される重鎖可変領域配列及び配列番号4において示される軽鎖可変領域配列を含む、請求項26に記載の結合タンパク質。
【請求項30】
前記抗体足場モジュールが、
(i)配列番号1において示される重鎖可変領域配列、
配列番号60、配列番号61、配列番号62、配列番号63、又は配列番号64において示される重鎖定常領域配列、
配列番号2において示される軽鎖可変領域配列、及び
配列番号65もしくは配列番号66において示される軽鎖定常領域配列;又は
(ii)配列番号3において示される重鎖可変領域配列、
配列番号60、配列番号61、配列番号62、配列番号63、又は配列番号64において示される重鎖定常領域配列、
配列番号4において示される軽鎖可変領域配列、及び
配列番号65又は配列番号66において示される軽鎖定常領域配列を含む、請求項26に記載の結合タンパク質。
【請求項31】
前記抗体足場モジュールが、
配列番号45において示される重鎖配列及び配列番号40において示される軽鎖配列を含む、請求項26に記載の結合タンパク質。
【請求項32】
一つの第一の結合モジュールを有する、請求項26~31に記載の結合タンパク質。
【請求項33】
二つの第一の結合モジュールを有する、請求項26~31に記載の結合タンパク質。
【請求項34】
前記抗体足場モジュールが、C末端及びN末端を含む重鎖配列を含み、前記抗体足場モジュールが、C末端及びN末端を含む軽鎖配列を含み、前記第一の結合モジュールが、前記抗体足場モジュール重鎖配列の前記C末端、前記抗体足場モジュール軽鎖配列の前記C末端、前記抗体足場モジュール重鎖配列の前記N末端、前記抗体足場モジュール軽鎖配列の前記N末端、又はそれらの組み合わせに共有結合的に付着されており、前記第一の結合モジュール及び前記抗体足場モジュールが、直接的に又は第一の結合モジュールインターリンカーを介して互いに共有結合的に付着されている、請求項32~33に記載の結合タンパク質。
【請求項35】
前記第一の結合モジュール及び前記抗体足場モジュールが、第一の結合モジュールインターリンカーを通じて互いに共有結合的に付着され、前記第一の結合モジュールインターリンカーが、配列番号58又は配列番号59において示される配列を含む、請求項34に記載の結合タンパク質。
【請求項36】
前記第一の結合モジュールが、前記抗体足場モジュール重鎖配列の前記C末端に共有結合的に付着されている、請求項34に記載の結合タンパク質。
【請求項37】
前記第一の結合モジュールが、前記抗体足場モジュール軽鎖配列の前記C末端に共有結合的に付着されている、請求項34に記載の結合タンパク質。
【請求項38】
一つを上回る第一の結合モジュールがある場合、各々が、異なる抗体足場モジュール配列に又は前記抗体足場モジュール配列の異なる末端に共有結合的に付着されている、請求項26~31及び33~37のいずれか一項に記載の結合タンパク質。
【請求項39】
前記第一の結合モジュールが、TGFβRIIの細胞外ドメインを含む、請求項26~38に記載の結合タンパク質。
【請求項40】
TGFβRIIの前記細胞外ドメインが、配列番号67において示される配列を含む、請求項39に記載の結合タンパク質。
【請求項41】
一つの第二の結合モジュールを有する、請求項26~40に記載の結合タンパク質。
【請求項42】
二つの第二の結合モジュールを有する、請求項26~40に記載の結合タンパク質。
【請求項43】
前記抗体足場モジュールが、C末端及びN末端を含む重鎖配列を含み、前記抗体足場モジュールが、C末端及びN末端を含む軽鎖配列を含み、前記第二の結合モジュールが、前記抗体足場モジュール重鎖配列の前記C末端、前記抗体足場モジュール軽鎖配列の前記C末端、前記抗体足場モジュール重鎖配列の前記N末端、前記抗体足場モジュール軽鎖配列の前記N末端、又はそれらの組み合わせに共有結合的に付着されており、前記第二の結合モジュール及び前記抗体足場モジュールが、直接的に又は第二の結合モジュールインターリンカーを介して互いに共有結合的に付着されている、請求項41~42に記載の結合タンパク質。
【請求項44】
前記第二の結合モジュール及び前記抗体足場モジュールが、第二の結合モジュールインターリンカーを通じて互いに共有結合的に付着され、前記第二の結合モジュールインターリンカーが、配列番号58又は配列番号59において示される配列を含む、請求項43に記載の結合タンパク質。
【請求項45】
前記第二の結合モジュールが、前記抗体足場モジュール重鎖配列の前記C末端に共有結合的に付着されている、請求項43に記載の結合タンパク質。
【請求項46】
前記第一の結合モジュールが、前記抗体足場モジュール軽鎖配列の前記C末端に共有結合的に付着されている、請求項45に記載の結合タンパク質。
【請求項47】
前記第二の結合モジュールが、前記抗体足場モジュール軽鎖配列の前記C末端に共有結合的に付着されている、請求項43に記載の結合タンパク質。
【請求項48】
前記第一の結合モジュールが、前記抗体足場モジュール重鎖配列の前記C末端に共有結合的に付着されている、請求項47に記載の結合タンパク質。
【請求項49】
一つを上回る第二の結合モジュールがある場合、各々が、異なる抗体足場モジュール配列に又は前記抗体足場モジュール配列の異なる末端に共有結合的に付着されている、請求項25~40及び42~44のいずれか一項に記載の結合タンパク質。
【請求項50】
一つの第二の結合モジュールを有し、前記一つの第二の結合モジュールが、前記抗体足場モジュール重鎖配列の前記C末端に共有結合的に付着されている、請求項41に記載の結合タンパク質。
【請求項51】
一つの第二の結合モジュールを有し、前記一つの第二の結合モジュールが、前記抗体足場モジュール軽鎖配列の前記C末端に共有結合的に付着されている、請求項41に記載の結合タンパク質。
【請求項52】
二つの第二の結合モジュールを有し、一方の第二の結合モジュールが、前記抗体足場モジュール重鎖配列の前記C末端に共有結合的に付着され、他方の第二の結合モジュールが、前記抗体足場モジュール軽鎖配列の前記C末端に共有結合的に付着されている、請求項42に記載の結合タンパク質。
【請求項53】
前記第二の結合モジュールがscFvである、請求項25~52のいずれか一項に記載の結合タンパク質。
【請求項54】
前記第二の結合モジュールが、N末端からC末端に、
(1)CDR1:配列番号5、CDR2:配列番号22、及びCDR3:配列番号23を含む重鎖可変領域配列;ならびにCDR1:配列番号24、CDR2:配列番号25、及びCDR3:配列番号26を含む軽鎖可変領域配列;
(2)CDR1:配列番号27、CDR2:配列番号28、及びCDR3:配列番号29を含む重鎖可変領域配列;ならびにCDR1:配列番号30、CDR2:配列番号9、及びCDR3:配列番号31を含む軽鎖可変領域配列;又は
(3)CDR1:配列番号32、CDR2:配列番号33、及びCDR3:配列番号34を含む重鎖可変領域配列;ならびにCDR1:配列番号35、CDR2:配列番号36、及びCDR3:配列番号37を含む軽鎖可変領域配列を含む、請求項26~53のいずれか一項に記載の結合タンパク質。
【請求項55】
前記第二の結合モジュールが、N末端からC末端に、
(1)配列番号16において示される重鎖可変領域配列及び配列番号17において示される軽鎖可変領域配列;
(2)配列番号18において示される重鎖可変領域配列及び配列番号19において示される軽鎖可変領域配列;又は
(3)配列番号20において示される重鎖可変領域配列及び配列番号21において示される軽鎖可変領域配列を含む、請求項54に記載の結合タンパク質。
【請求項56】
前記第二の結合モジュールが、配列番号53、配列番号54、配列番号55、又は配列番号56において示される配列を含む、請求項54に記載の結合タンパク質。
【請求項57】
二つの第一の結合モジュール及び二つの第二の結合モジュールを有する、請求項26~31に記載の結合タンパク質。
【請求項58】
(1)前記抗体足場モジュール及び前記第二の結合モジュールの前記重鎖配列が、配列番号38において示される配列を含み;ならびに前記抗体足場モジュール及び前記第一の結合モジュールの前記軽鎖配列が、配列番号39において示される配列を含み;
(2)前記抗体足場モジュール及び前記第二の結合モジュールの前記重鎖配列が、配列番号50において示される配列を含み;ならびに前記抗体足場モジュール及び前記第一の結合モジュールの前記軽鎖配列が、配列番号39において示される配列を含み;又は
(3)前記抗体足場モジュール及び前記第一の結合モジュールの前記重鎖配列が、配列番号51において示される配列を含み;ならびに前記抗体足場モジュール及び前記第二の結合モジュールの前記軽鎖配列が、配列番号52において示される配列を含む、請求項57に記載の結合タンパク質。
【請求項59】
二つの第一の結合モジュール及び一つの第二の結合モジュールを有する、請求項26~31に記載の結合タンパク質。
【請求項60】
(1)前記抗体足場モジュール及び前記第二の結合モジュールの前記重鎖配列が、配列番号41において示される配列を含み;
前記抗体足場モジュール及び前記第一の結合モジュールの前記軽鎖配列が、配列番号39において示される配列を含み;
前記抗体足場モジュールの前記重鎖配列が、配列番号42において示される配列を含み;
前記抗体足場モジュール及び前記第一の結合モジュールの前記軽鎖配列が、配列番号39において示される配列を含み;又は
(2)前記抗体足場モジュール及び前記第二の結合モジュールの前記重鎖配列が、配列番号43において示される配列を含み;
前記抗体足場モジュール及び前記第一の結合モジュールの前記軽鎖配列が、配列番号39において示される配列を含み;
前記抗体足場モジュールの前記重鎖配列が、配列番号42において示される配列を含み;
前記抗体足場モジュール及び前記第一の結合モジュールの前記軽鎖配列が、配列番号39において示される配列を含む、請求項59に記載の結合タンパク質。
【請求項61】
CD137、TGFβ、及びPD-L1に結合する結合タンパク質であって、
(a)CD137に結合する第一の抗原結合部位及びCD137に結合する第二の抗原結合部位を含む抗体足場モジュール;
(b)TGFβに結合する第三の抗原結合部位を含む少なくとも一つの第一の結合モジュール;ならびに
(c)PD-L1に結合する第四の抗原結合部位を含む少なくとも一つの第二の結合モジュールを含む、結合タンパク質。
【請求項62】
前記第一の抗原結合部位及び前記第二の抗原結合部位が、
(i)CDR1:配列番号5、CDR2:配列番号22、及びCDR3:配列番号23を含む重鎖可変領域配列;ならびにCDR1:配列番号24、CDR2:配列番号25、及びCDR3:配列番号26を含む軽鎖可変領域配列;
(ii)CDR1:配列番号27、CDR2:配列番号28、及びCDR3:配列番号29を含む重鎖可変領域配列;ならびにCDR1:配列番号30、CDR2:配列番号9、及びCDR3:配列番号31を含む軽鎖可変領域配列;又は
(iii)CDR1:配列番号32、CDR2:配列番号33、及びCDR3:配列番号34を含む重鎖可変領域配列;ならびにCDR1:配列番号35、CDR2:配列番号36、及びCDR3:配列番号37を含む軽鎖可変領域配列を含む、請求項61に記載の結合タンパク質。
【請求項63】
前記抗体足場モジュールが、
配列番号16、配列番号18、もしくは配列番号20において示される重鎖可変領域配列;又は
配列番号17、配列番号19、もしくは配列番号21において示される軽鎖可変領域配列を含む、請求項61に記載の結合タンパク質。
【請求項64】
前記抗体足場モジュールが、
(i)配列番号16において示される重鎖可変領域配列及び配列番号17において示される軽鎖可変領域配列;
(ii)配列番号18において示される重鎖可変領域配列及び配列番号19において示される軽鎖可変領域配列;又は
(ii)配列番号20において示される重鎖可変領域配列及び配列番号21において示される軽鎖可変領域配列を含む、請求項61に記載の結合タンパク質。
【請求項65】
前記抗体足場モジュールが、
(i)配列番号16において示される重鎖可変領域配列、
配列番号60、配列番号61、配列番号62、配列番号63、又は配列番号64において示される重鎖定常領域配列、
配列番号17において示される軽鎖可変領域配列、
配列番号65もしくは配列番号66において示される軽鎖定常領域配列;
(ii)配列番号18において示される重鎖可変領域配列、
配列番号60、配列番号61、配列番号62、配列番号63、又は配列番号64において示される重鎖定常領域配列、
配列番号19において示される軽鎖可変領域配列、
配列番号65もしくは配列番号66において示される軽鎖定常領域配列;又は
(iii)配列番号20において示される重鎖可変領域配列、
配列番号60、配列番号61、配列番号62、配列番号63、又は配列番号64において示される重鎖定常領域配列、
配列番号21において示される軽鎖可変領域配列、
配列番号65又は配列番号66において示される軽鎖定常領域配列を含む、請求項61に記載の結合タンパク質。
【請求項66】
前記抗体足場モジュールが、
配列番号75において示される重鎖配列及び配列番号76において示される軽鎖配列を含む、請求項61に記載の結合タンパク質。
【請求項67】
一つの第一の結合モジュールを有する、請求項61~66に記載の結合タンパク質。
【請求項68】
二つの第一の結合モジュールを有する、請求項61~66に記載の結合タンパク質。
【請求項69】
前記抗体足場モジュールが、C末端及びN末端を含む重鎖配列を含み、前記抗体足場モジュールが、C末端及びN末端を含む軽鎖配列を含み、前記第一の結合モジュールが、前記抗体足場モジュール重鎖配列の前記C末端、前記抗体足場モジュール軽鎖配列の前記C末端、前記抗体足場モジュール重鎖配列の前記N末端、前記抗体足場モジュール軽鎖配列の前記N末端、又はそれらの組み合わせに共有結合的に付着されており、前記第一の結合モジュール及び前記抗体足場モジュールが、直接的に又は第一の結合モジュールインターリンカーを介して互いに共有結合的に付着されている、請求項67~68に記載の結合タンパク質。
【請求項70】
前記第一の結合モジュール及び前記抗体足場モジュールが、第一の結合モジュールインターリンカーを通じて互いに共有結合的に付着され、前記第一の結合モジュールインターリンカーが、配列番号58又は配列番号59において示される配列を含む、請求項69に記載の結合タンパク質。
【請求項71】
前記第一の結合モジュールが、前記抗体足場モジュール重鎖配列の前記C末端に共有結合的に付着されている、請求項69に記載の結合タンパク質。
【請求項72】
前記第一の結合モジュールが、前記抗体足場モジュール軽鎖配列の前記C末端に共有結合的に付着されている、請求項69に記載の結合タンパク質。
【請求項73】
一つを上回る第一の結合モジュールがある場合、各々が、異なる抗体足場モジュール配列に又は前記抗体足場モジュールの異なる末端に共有結合的に付着されている、請求項61~66及び68~72のいずれか一項に記載の結合タンパク質。
【請求項74】
前記第一の結合モジュールが、TGFβRIIの細胞外ドメインを含む、請求項61~73のいずれか一項に記載の結合タンパク質。
【請求項75】
TGFβRIIの前記細胞外ドメインが、配列番号67において示される配列を含む、請求項74に記載の結合タンパク質。
【請求項76】
一つの第二の結合モジュールを有する、請求項61~75に記載の結合タンパク質。
【請求項77】
二つの第二の結合モジュールを有する、請求項61~75に記載の結合タンパク質。
【請求項78】
前記抗体足場モジュールが、C末端及びN末端を含む重鎖配列を含み、前記抗体足場モジュールが、C末端及びN末端を含む軽鎖配列を含み、前記第二の結合モジュールが、前記抗体足場モジュール重鎖配列の前記C末端、前記抗体足場モジュール軽鎖配列の前記C末端、前記抗体足場モジュール重鎖配列の前記N末端、前記抗体足場モジュール軽鎖配列の前記N末端、又はそれらの組み合わせに共有結合的に付着されており、前記第二の結合モジュール及び前記抗体足場モジュールが、直接的に又は第二の結合モジュールインターリンカーを介して互いに共有結合的に付着されている、請求項76~77に記載の結合タンパク質。
【請求項79】
前記第二の結合モジュール及び前記抗体足場モジュールが、第二の結合モジュールインターリンカーを通じて互いに共有結合的に付着され、前記第二の結合モジュールインターリンカーが、配列番号58又は配列番号59において示される配列を含む、請求項78に記載の結合タンパク質。
【請求項80】
前記第二の結合モジュールが、前記抗体足場モジュール重鎖配列の前記C末端に共有結合的に付着されている、請求項78に記載の結合タンパク質。
【請求項81】
前記第一の結合モジュールが、前記抗体足場モジュール軽鎖配列の前記C末端に共有結合的に付着されている、請求項80に記載の結合タンパク質。
【請求項82】
前記第二の結合モジュールが、前記抗体足場モジュール軽鎖配列の前記C末端に共有結合的に付着されている、請求項78に記載の結合タンパク質。
【請求項83】
前記第一の結合モジュールが、前記抗体足場モジュール重鎖配列の前記C末端に共有結合的に付着されている、請求項82に記載の結合タンパク質。
【請求項84】
一つを上回る第二の結合モジュールがある場合、各々が、異なる抗体足場モジュール配列に又は前記抗体足場モジュール配列の異なる末端に共有結合的に付着されている、請求項61~75及び77~83のいずれか一項に記載の結合タンパク質。
【請求項85】
一つの第二の結合モジュールを有し、前記一つの第二の結合モジュールが、前記抗体足場モジュール重鎖配列の前記C末端に共有結合的に付着されている、請求項76に記載の結合タンパク質。
【請求項86】
一つの第二の結合モジュールを有し、前記一つの第二の結合モジュールが、前記抗体足場モジュール軽鎖配列の前記C末端に共有結合的に付着されている、請求項76に記載の結合タンパク質。
【請求項87】
二つの第二の結合モジュールを有し、一方の第二の結合モジュールが、前記抗体足場モジュール重鎖配列の前記C末端に共有結合的に付着され、他方の第二の結合モジュールが、前記抗体足場モジュール軽鎖配列の前記C末端に共有結合的に付着されている、請求項77に記載の結合タンパク質。
【請求項88】
前記第二の結合モジュールがscFvである、先行請求項に記載の結合タンパク質。
【請求項89】
前記第二の結合モジュールが、N末端からC末端に、
(a)CDR1:配列番号5、CDR2:配列番号6、及びCDR3:配列番号7を含む重鎖可変領域配列;ならびにCDR1:配列番号8、CDR2:配列番号9、及びCDR3:配列番号10を含む軽鎖可変領域配列;又は
(b)CDR1:配列番号11、CDR2:配列番号12、及びCDR3:配列番号13を含む重鎖可変領域配列;ならびにCDR1:配列番号14、CDR2:配列番号9、及びCDR3:配列番号15を含む軽鎖可変領域配列を含む、請求項61~88のいずれか一項に記載の結合タンパク質。
【請求項90】
前記第二の結合モジュールが、N末端からC末端に、
(1)配列番号1において示される重鎖可変領域配列及び配列番号2において示される軽鎖可変領域配列;又は
(2)配列番号3において示される重鎖可変領域配列及び配列番号4において示される軽鎖可変領域配列を含む、請求項89に記載の結合タンパク質。
【請求項91】
前記第二の結合モジュールが、配列番号57において示される配列を含む、請求項61~88のいずれか一項に記載の結合タンパク質。
【請求項92】
二つの第一の結合モジュール及び二つの第二の結合モジュールを有する、請求項61~66のいずれか一項に記載の結合タンパク質。
【請求項93】
前記抗体足場モジュール及び前記第二の結合モジュールの前記重鎖配列が、配列番号48において示される配列を含み;ならびに前記抗体足場モジュール及び前記第一の結合モジュールの前記軽鎖配列が、配列番号49において示される配列を含む、請求項92に記載の結合タンパク質。
【請求項94】
前記抗体足場モジュールが定常領域をさらに含む、先行請求項に記載の結合タンパク質。
【請求項95】
前記定常領域がFcサイレンシング変異を含む、請求項94に記載の結合タンパク質。
【請求項96】
前記Fcサイレンシング変異がLALA又はN297Aである、請求項95に記載の結合タンパク質。
【請求項97】
前記定常領域がノブ・イン・ホール(KiH)変異を含む、請求項94~96のいずれかに記載の結合タンパク質。
【請求項98】
前記定常領域が、配列番号60、配列番号61、配列番号62、配列番号63、又は配列番号64を含む、請求項94に記載の結合タンパク質。
【請求項99】
先行請求項に記載の結合タンパク質及び医薬的に許容可能な担体を含む、医薬組成物。
【請求項100】
先行請求項に記載の結合タンパク質を、それを必要とする患者に投与することを含む、癌を治療又は予防する方法。
【請求項101】
先行請求項に記載の結合タンパク質をコードする配列を含む、単離ポリヌクレオチド。
【請求項102】
請求項1~101のいずれか一項に記載の配列をコードする、請求項101に記載の単離ポリヌクレオチド。
【請求項103】
請求項101に記載のポリヌクレオチドを含むベクター。
【請求項104】
請求項102に記載のポリヌクレオチド、及び/又は請求項103に記載のベクターを含む、細胞。
【請求項105】
請求項104に記載の細胞を培養することを含む、先行請求項に記載の結合タンパク質の産生のための方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本国際特許出願は、2021年9月3日に出願された米国仮特許出願第63/240,404号の利益を主張するものであり、その内容全体は、参照により本明細書中に組み入れられる。
【0002】
配列表に関する記述
本出願に関連付けられる配列表は、紙のコピーの代わりにXMLフォーマットにおいて提供され、本明細書により、参照により本明細書中に組み入れられる。配列表を含むXLMファイルの名前は、122863-5008_Sequence_Listing_ST.26.kmである。テキストファイルは約108000バイトであり、2022年8月28日頃に作成され、EFS-Webを介して電子的に提出されている。
【0003】
本開示は免疫療法の分野にあり、PD-L1及びCD137に結合する結合タンパク質(PD-L1/CD137二重特異性)、PD-L1及びTGFβに結合する結合タンパク質(PD-L1/TGFβ二重特異性)、ならびにPD-L1、TGFβ、及びCD137に結合する結合タンパク質(PD-L1/TGFβ/CD137三重特異性)に関する。本開示はまた、CD137、TGFβ、及びPD-L1(CD137/TGFβ/PD-L1三重特異性体)に結合する結合タンパク質に関する。本開示はまた、これらの結合タンパク質をコードするポリヌクレオチド配列及びそれらを産生する細胞に向けられる。本開示は、これらの結合タンパク質を含む医薬組成物に、ならびに免疫療法のためにPD-1/PD-L1軸及び/又はCD137軸を調節するためのそれらの使用の方法にさらに関する。
【背景技術】
【0004】
免疫チェックポイントは、自己寛容を維持しながら免疫応答の持続性を調節及び制御するために免疫細胞が持つ阻害経路のセットを指す。腫瘍微小環境における免疫チェックポイント分子(例、PD-1、PD-L1、CTLA-4、TIM-3、Lag-3、VISTA、B7-H3、TIGIT、CD73、LAIR1)の上方調節は、エフェクターT細胞の抗腫瘍活性を限定する重要な機構として認識されている。
【0005】
プログラム細胞死-1(PD-1)は、癌免疫療法のために標的化する主な免疫T細胞受容体チェックポイント受容体の一つである。PD-1及びそのリガンドプログラム死リガンド-1及びプログラム死リガンド-2(それぞれPD-L1及びPD-L2)は、T細胞活性化、寛容、及び免疫病理の間のバランスを調節する共阻害因子として作用する。癌も非存在において、PD-1/PD-L1軸は、正常組織における過剰な炎症を防止するように機能し、自己抗原に対する免疫寛容を維持するのに役立つ。癌の存在において、PD-1経路を破壊させて、腫瘍及び末梢組織の両方において腫瘍免疫耐性の主な機構を提供する。この軸は、腫瘍細胞の生存を増強することにより、癌の発生及び進行を促すために別の目的で使われる。
【0006】
PD-lリガンド、PD-L1(また、分化のクラスター274(CD274)として公知である)又はB7ホモログ1(B7-H1)、及びPD-L2(また、B7-DC又はCD273として公知である)は、樹状細胞又はマクロファージの表面上に通常発現される。PD-L1はまた、腫瘍細胞上で又は腫瘍微小環境(TME)における非形質転換細胞上に過剰発現される。PD-1とPD-L1の相互作用は、T細胞受容体(TCR)シグナル伝達の阻害及びCD28共刺激に導き、究極的にはT細胞不活性化及び増殖能力の喪失に導く。腫瘍微小環境におけるPD-L1発現によって、癌細胞は、患者の抗原特異的T細胞免疫応答を防止又は避けるための回避機構としてPD-1/PD-L1チェックポイント経路を利用することが可能になる。
【0007】
抗体を用いたPD-1受容体又はそのリガンドの遮断によって、癌細胞からそれらの回避戦略を奪い、抗腫瘍免疫応答を増強する又は促す。今日まで、六つのPD-1/PD-L1免疫チェックポイント阻害剤(ICI)が、米国食品医薬品局(FDA)の承認を受けている:三つのPD-1阻害剤(ニボルマブ、ペムブロリズマブ、及びセミプリマブ)、及び三つのPD-L1阻害剤(アテゾリズマブ、デュルバルマブ、及びアベルマブ)。
【0008】
免疫応答のPD-1/PD-L1チェックポイント阻害を無効にする治療用モノクローナル抗体を用いた癌免疫療法は、多種多様な悪性腫瘍の治療に変革をもたらしてきた。しかし、一部の初期レスポンダーは、最終的に単独療法に対する後天的抵抗性を発生し、再発性疾患を経験し、有意な数の患者が、一次抵抗性を実証し、PD-1/PD-L1免疫チェックポイント阻害に応答しない。チェックポイント阻害剤治療抵抗性の報告された有病率に照らして、難治性又は再発性癌患者のための追加の治療薬についてのアンメットニーズがある。
【0009】
CD137(4-1BB又はTNFRSF9)は、TNF受容体スーパーファミリーのメンバーである。CD137は、自然免疫細胞及び適応免疫細胞の両方に発現する。それは、腫瘍微小環境(TME)において多面的な役割を果たす。それは、TMEにおいてT細胞上で優位に上方調節され、CD8及びCD4 T細胞の活性化、増殖、及び生存に共刺激を提供する。それはまた、TMEにおける他の細胞機能、例えばNK細胞がCD8 T細胞と相互作用するように促すこと、DC細胞上の腫瘍抗原提示を増強すること、などを調節する。CD137アゴニストは、抗腫瘍免疫応答を増強することができ、PD1/PD-L1遮断抗体を含む、他の抗腫瘍薬剤と相乗的に作用することができる。
【0010】
TGFβの分泌は、免疫回避及び腫瘍進行への別の主要な寄与因子である。TGFβは、T細胞増殖を防止し、T細胞及びNK細胞の両方のエフェクター機能を減少させることにより、腫瘍進行及び免疫抑制を促す。それはまた、T調節細胞の機能を増強し、上皮間葉移行(EMT)を誘導する。
【0011】
PD1、CD137、及びTGFβは、独立した免疫抑制又は免疫刺激経路を調節するため、PD1及びCD137、PD1及びTGFを標的化することβ、又はPD1、CD137及びTGFβを標的化することによって、特に免疫除外腫瘍及び免疫不活性腫瘍について、抗腫瘍有効性を増加させることが可能性である。
【発明の概要】
【0012】
本開示は、例えば、PD-L1及びCD137に結合する結合タンパク質(PD-L1/CD137二重特異性)、PD-L1及びTGFβに結合する結合タンパク質(PD-L1/TGFβ二重特異性)、ならびにPD-L1、TGFβ、及びCD137に結合する結合タンパク質(PD-L1/TGFβ/CD137三重特異性)を含む多重特異性結合タンパク質を提供することにより、上の必要性に対処する。例示的な実施形態では、PD-L1/CD137二重特異性体は、PD-L1及びCD137に結合する結合タンパク質であり、(a)PD-L1に結合する第一の抗原結合部位及びPD-L1に結合する第二の抗原結合部位を含むIgGフォーマット(例、二つの重鎖及び二つの軽鎖を含むY字形状の対称又は非対称の抗体)における抗体足場モジュール;(b)CD137に結合する第三の抗原結合部位を含む少なくとも一つの第一の結合モジュールを含む。例示的な実施形態では、PD-L1/TGFβ二重特異性体は、PD-L1及びTGFβに結合する結合タンパク質であり、(a)PD-L1に結合する第一の抗原結合部位及びPD-L1に結合する第二の抗原結合部位を含むIgGフォーマットにおける抗体足場モジュール;(b)TGFβに結合する第三の抗原結合部位を含む少なくとも一つの第一の結合モジュールを含む。例示的な実施形態では、PD-L1/TGFβ/CD137三重特異性体は、(a)PD-L1に結合する第一の抗原結合部位及びPD-L1に結合する第二の抗原結合部位を含むIgGフォーマットにおける抗体足場モジュール;(b)TGFβに結合する第三の抗原結合部位を含む少なくとも一つの第一の結合モジュール;ならびに(c)CD137に結合する第四の抗原結合部位を含む少なくとも一つの第二の結合モジュールを含む結合タンパク質である。
【0013】
本開示はまた、CD137、TGFβ、及びPD-L1に結合する結合タンパク質(CD137/TGFβ/PD-L1三重特異性)を含む、ヒトCD137に結合する結合タンパク質に関する。より具体的には、本開示は、CD137に結合する結合タンパク質に、ならびにCD137を刺激するための、及び持続的な抗腫瘍免疫応答を促すためのそれらの使用に関する。例示的な実施形態では、結合タンパク質は、CD137に結合してもよく、CD137に結合する第一の抗原結合部位及びCD137に結合する第二の抗原結合部位を含むIgGフォーマットにおける抗体足場モジュールを含む。例示的な実施形態では、CD137/TGFβ/PD-L1三重特異性体は、(a)CD137に結合する第一の抗原結合部位及びCD137に結合する第二の抗原結合部位を含むIgGフォーマットにおける抗体足場モジュール;(b)TGFβに結合する第三の抗原結合部位を含む少なくとも一つの第一の結合モジュール;ならびに(c)PD-L1に結合する第四の抗原結合部位を含む少なくとも一つの第二の結合モジュールを含む結合タンパク質である。
【0014】
PD-1/PD-L1遮断剤の使用に起因する、免疫療法における進歩にもかかわらず、PD-L1及びT細胞上の共刺激標的への両方に結合する、ならびに/あるいはTGFβを中和することにより腫瘍微小環境における免疫抑制を逆転させることができる結合タンパク質ついてのニーズがある。三つのTGFβアイソフォームであるTGFβ1、TGFβ2、及びTGFβ3は、多くの腫瘍において高度に発現され、それは、主に自然免疫系及び適応免疫系の両方を抑制することにより癌進行を促す。及び、それらの血清濃度は予後不良と相関する。腫瘍微小環境では、TGFβは、間質修飾、血管新生、及び上皮間葉移行(EMT)の誘導により腫瘍進行を促す。TGFβシグナル伝達は、Treg細胞の分化を誘導し、骨髄細胞を通じた転移を駆動する。さらに、TGFβ1は、T細胞及びNK細胞機能を直接的に阻害することができる。
【0015】
結合タンパク質は、単一の抗原の二つもしくは三つのエピトープを又は一つを上回る標的抗原に同時に結合することができ、単一特異性治療用抗体又は融合タンパク質により達成することができない複数の機構的機能及び潜在的な相乗的効果を可能にする。有利には、二つもしくは三つの抗原に結合する結合タンパク質の使用は、複数の治療用薬剤の使用に関連付けられるリスクよりも低い毒性のリスクを有し得る。
【0016】
大まかに言えば、本明細書中に開示される、開示されている二重特異性体及び三重特異性体は、重鎖ヘテロ二量体化を促すための修飾を伴う又は伴わない天然IgG足場に基づいており、抗体FabもしくはscFv断片及び/又はIgG足場中のIgG重鎖もしくは軽鎖のN末端もしくはC末端に付加されたTGFβRII受容体の細胞外ドメイン(ECD)から調製された融合タンパク質から由来する抗原結合部位により寄与される二つ又は三つの結合特異性 (例、PD-L1、CD137及び/又はTGFβ)により特徴付けられる。
【0017】
一部の実施形態では、PD-L1/CD137二重特異性体、PD-L1/TGFβ二重特異性体、又はPD-L1/TGFβ/CD137三重特異性体は、単独で又は組み合わせにおいて、以下の構造的特徴の一つ又は複数を示す:
(a)scFvフォーマットにおける抗CD137を有する、
(b)scFvフォーマットにおける抗PD-L1を有する、
(c)IgG足場中の抗体軽鎖のN末端に融合されたscFvを有する、
(d)IgG足場中の抗体重鎖のN末端に融合されたscFvを有する、
(e)IgG足場中の抗体軽鎖のC末端に融合されたscFvを有する、
(f)IgG足場中の抗体重鎖のC末端に融合されたscFvを有する、
(g)一価又は二価フォーマットにおいて存在するCD137のscFvを有する、
(h)IgG足場中の軽鎖のC末端に融合されたヒトTGFβRIIを含む、又は
(i)IgG足場中の重鎖のC末端に融合されたヒトTGFβRIIを含む。
【0018】
一部の実施形態では、PD-L1/CD137二重特異性体、PD-L1/TGFβ二重特異性体、及びPD-L1/TGFβ/CD137三重特異性体は、消耗PD-1CD8 T細胞を標的化し、機能不全腫瘍浸潤リンパ球(TIL)を再活性化する免疫療法を提供する。PD-L1に結合するそのような結合タンパク質は、PD-1/PD-L1耐性に寄与する消耗TCD8細胞及び/又は調節性T細胞において富む微小環境により特徴付けられる固形腫瘍における治療薬として特に有益であり得る。実際には、PD-1/PD-L1シグナル伝達軸を遮断することによって、TMEにおいて存在する免疫抑制シグナルが低下し、抗腫瘍免疫性が増強され、それは次に、患者の生存を延長する持続的な臨床応答を産生する。
【0019】
一部の実施形態では、PD-L1に結合する、開示されている結合タンパク質は、PD-L1及びCD137又はヒトTGFβのいずれかについて特異的な二重特異性四価分子である。
【0020】
他の実施形態では、PD-L1に結合する、開示されている結合タンパク質は、PD-L1ならびにCD137及びヒトTGFβの両方について特異的な分子である。
【0021】
一部の実施形態では、開示されているCD137/TGFβ/PD-L1三重特異性体は、腫瘍微小環境においてCD137発現免疫細胞を標的化する免疫療法を提供するように設計される。CD137に結合する結合タンパク質は、固形腫瘍における治療薬として特に有益であり得る。実際には、CD137シグナル伝達軸を活性化することによって、TMEにおいて存在するTエフェクター機能が増強され、抗腫瘍免疫性が増強され、それは次に、患者の生存を延長させる持続的な臨床応答を産生し得る。
【0022】
他の実施形態では、開示されている結合タンパク質は、CD137ならびにPD-L1及びヒトTGFβの両方に結合する。
【0023】
一部の実施形態によると、PD-L1に結合する、開示されている結合タンパク質は、配列番号1及び3から選択される抗PD-L1抗体重鎖(HC)可変領域配列の三つのCDRならびに配列番号2及び4から選択される軽鎖可変領域配列の三つのCDRからなる群から選択される六つの相補性決定領域(CDR)配列のセットを含む。
【0024】
一部の実施形態では、PD-L1に結合する結合タンパク質は、CDR1:配列番号5、CDR2:配列番号6、及びCDR3:配列番号7を含む重鎖可変領域配列;ならびに/あるいはCDR1:配列番号8、CDR2:配列番号9、及びCDR3:配列番号10を含む軽鎖可変領域配列を含む。
【0025】
一部の実施形態では、PD-L1に結合する結合タンパク質は、CDR1:配列番号11、CDR2:配列番号12、及びCDR3:配列番号13を含む重鎖可変領域配列;ならびに/あるいはCDR1:配列番号14、CDR2:配列番号9、及びCDR3:配列番号15を含む軽鎖可変領域配列を含む。
【0026】
一部の実施形態では、PD-L1に結合する結合タンパク質は、配列番号1もしくは配列番号3において示される重鎖可変領域配列、又は配列番号1もしくは配列番号3と少なくとも90%の配列同一性を有するその類似体もしくは誘導体を含む。
【0027】
他の実施形態では、PD-L1に結合する結合タンパク質は、配列番号2もしくは配列番号4において示される軽鎖可変領域配列、又は配列番号2もしくは配列番号4と少なくとも90%の配列同一性を有するその類似体もしくは誘導体を含む。
【0028】
他の実施形態では、PD-L1に結合する結合タンパク質は、配列番号1もしくは配列番号3において示される重鎖可変領域配列、及び配列番号2もしくは配列番号4において示される軽鎖可変領域配列を含む。
【0029】
一部の実施形態では、PD-L1に結合する結合タンパク質は、以下の組み合わせから選択される重鎖可変領域配列及び軽鎖可変領域配列を含む:
(a)配列番号1を含む重鎖可変領域配列及び配列番号2を含む軽鎖可変領域配列;又は
(b)配列番号3を含む重鎖可変領域配列及び配列番号4を含む軽鎖可変領域配列。
【0030】
一部の実施形態では、PD-L1に結合する結合タンパク質は、
(a)CDR1:配列番号5、CDR2:配列番号6、及びCDR3:配列番号7を含む重鎖可変領域配列;ならびに/あるいはCDR1:配列番号8、CDR2:配列番号9、及びCDR3:配列番号10を含む軽鎖可変領域配列;又は
(b)CDR1:配列番号11、CDR2:配列番号12、及びCDR3:配列番号13を含む重鎖可変領域配列;ならびに/あるいはCDR1:配列番号14、CDR2:配列番号9、及びCDR3:配列番号15を含む軽鎖可変領域配列を含む。
【0031】
一部の実施形態では、PD-L1に結合する結合タンパク質が提供され、第一及び第二の抗原結合部位は、PD-L1に結合し、抗体足場モジュールは以下を含む:
(i)配列番号1において示される重鎖可変領域配列、配列番号60、配列番号61、配列番号62、配列番号63、もしくは配列番号64において示される重鎖定常領域配列、配列番号2において示される軽鎖可変領域配列、及び配列番号65もしくは配列番号66において示される軽鎖定常領域配列;又は
(ii)配列番号3において示される重鎖可変領域配列、配列番号60、配列番号61、配列番号62、配列番号63、もしくは配列番号64において示される重鎖定常領域配列、配列番号4において示される軽鎖可変領域配列、及び配列番号65もしくは配列番号66において示される軽鎖定常領域配列。
【0032】
一部の実施形態では、PD-L1に結合する結合タンパク質が提供され、第一及び第二の抗原結合部位は、PD-L1に結合し、抗体足場モジュールは以下を含む:
配列番号45において示される重鎖配列及び配列番号40において示される軽鎖配列。
【0033】
一部の実施形態では、PD-L1に結合する結合タンパク質は、表1中に開示される一つ又は複数の重鎖可変領域CDRならびに/あるいは表2中に開示される一つ又は複数の軽鎖可変領域CDRを含む。
【0034】
一部の実施形態では、PD-L1に結合する結合タンパク質は、単独で又は組み合わせにおいて、以下の構造的特徴及び機能的特徴の一つ又は複数を示す:
(a)ヒトPD-L1について特異的である、
(b)カニクイザルPD-L1と交差反応する、
(c)PD-1とPD-L1の相互作用を破壊する、又は
(d)T細胞のPD-1/PD-L1チェックポイント媒介性阻害を脱抑制する。
【0035】
一部の実施形態では、PD-L1に結合する結合タンパク質は、PD-L1の内因性レベルを発現するヒト細胞に、及びヒトPD-L1を過剰発現するように操作された宿主細胞に特異的に結合する。PD-L1に結合する結合タンパク質はまた、ナノモル以下のEC50値を伴って、ヒト又はカニクイザルPD-L1を過剰発現する細胞に結合し得る。
【0036】
一部の実施形態では、PD-L1に結合する結合タンパク質は、カニクイザルPD-L1(cynoPD-L1)と交差反応し、マウスPD-L1(mu-PD-L1)との交差反応性結合を実証しない。
【0037】
一部の実施形態では、PD-L1に結合する結合タンパク質は、ヒトPD-1/PD-L1結合相互作用を破壊する。
【0038】
一部の実施形態では、PD-L1に結合する結合タンパク質は、T細胞のPD-1/PD-L1チェックポイント媒介性阻害を脱抑制する。
【0039】
一部の実施形態では、PD-L1に結合する結合タンパク質は、Fc γRとの架橋活性を消失/最小化するように操作されたFc領域をさらに含み、それは、T細胞のFc媒介性エフェクター機能をサイレンシング又は排除する。
【0040】
本開示はまた、PD-L1に結合する上の結合タンパク質の少なくとも一つをコードする単離ポリヌクレオチド配列を提供する。
【0041】
本開示はまた、上のポリヌクレオチド配列の少なくとも一つを含むベクターを提供する。
【0042】
本開示はまた、上のポリヌクレオチド配列の一つ、又は上のベクターの一つを含む細胞を提供する。
【0043】
本開示はまた、PD-L1に結合する結合タンパク質の少なくとも一つ、ならびに、場合により、医薬的に許容可能な希釈剤、担体、媒体、及び/又は賦形剤を含む、あるいはそれらからなる医薬組成物を提供する。そのような医薬組成物は、癌の治療のために使用され得る。
【0044】
本開示はまた、患者における癌の治療のための方法に関し、PD-L1に結合する、開示されている結合タンパク質の少なくとも一つの治療有効量を、単独で、又は別の治療用薬剤との組み合わせにおいて、患者に投与することを含む。
【0045】
一部の実施形態によれば、CD137に結合する結合タンパク質は、配列番号16、18、及び20から選択される抗CD137抗体重鎖(HC)可変領域配列の三つのCDRならびに配列番号17、19、及び21から選択される軽鎖可変領域配列の三つのCDRからなる群から選択される六つの相補性決定領域(CDR)配列のセットを含む。
【0046】
一部の実施形態では、CD137に結合する結合タンパク質は、CDR1:配列番号5、CDR2:配列番号22、及びCDR3:配列番号23を含む重鎖可変領域配列;ならびに/あるいはCDR1:配列番号24、CDR2:配列番号25、及びCDR3:配列番号26を含む軽鎖可変領域配列を含む。
【0047】
一部の実施形態では、CD137に結合する結合タンパク質は、CDR1:配列番号27、CDR2:配列番号28、及びCDR3:配列番号29を含む重鎖可変領域配列;ならびに/あるいはCDR1:配列番号30、CDR2:配列番号9、及びCDR3:配列番号31を含む軽鎖可変領域配列を含む。
【0048】
一部の実施形態では、CD137に結合する結合タンパク質は、CDR1:配列番号32、CDR2:配列番号33、及びCDR3:配列番号34を含む重鎖可変領域配列;ならびに/あるいはCDR1:配列番号35、CDR2:配列番号36、及びCDR3:配列番号37を含む軽鎖可変領域配列を含む。
【0049】
一部の実施形態では、CD137に結合する結合タンパク質は、配列番号16、18、もしくは20において示される重鎖可変領域配列、又は配列番号16、18、もしくは20と少なくとも90%の配列同一性を有するその類似体もしくは誘導体を含む。
【0050】
他の実施形態では、CD137に結合する結合タンパク質は、配列番号17、19、もしくは21において示される軽鎖可変領域配列、又は配列番号17、19、もしくは21と少なくとも90%の配列同一性を有するその類似体もしくは誘導体を含む。
【0051】
他の実施形態では、CD137に結合する結合タンパク質は、配列番号16、18、又は20において示される重鎖可変領域配列及び配列番号17、19、又は21において示される軽鎖可変領域配列を含む。
【0052】
一部の実施形態では、結合する結合タンパク質は、以下の組み合わせから選択される重鎖可変領域配列及び軽鎖可変領域配列を含む:
(a)配列番号16を含む重鎖可変領域配列及び配列番号17を含む軽鎖可変領域配列;
(b)配列番号18を含む重鎖可変領域配列及び配列番号19を含む軽鎖可変領域配列;ならびに
(c)配列番号20を含む重鎖可変領域配列及び配列番号21を含む軽鎖可変領域配列。
【0053】
一部の実施形態では、CD137に結合する結合タンパク質が提供され、以下:
(a)CDR1:配列番号5、CDR2:配列番号22、及びCDR3:配列番号23を含む重鎖可変領域配列;ならびに/あるいはCDR1:配列番号24、CDR2:配列番号25、及びCDR3:配列番号26を含む軽鎖可変領域配列;
(b)CDR1:配列番号27、CDR2:配列番号28、及びCDR3:配列番号29を含む重鎖可変領域配列;ならびに/あるいはCDR1:配列番号30、CDR2:配列番号9、及びCDR3:配列番号31を含む軽鎖可変領域配列;又は
(c)CDR1:配列番号32、CDR2:配列番号33、及びCDR3:配列番号34を含む重鎖可変領域配列;ならびに/あるいはCDR1:配列番号35、CDR2:配列番号36、及びCDR3:配列番号37を含む軽鎖可変領域配列を含む。
【0054】
一部の実施形態では、CD137に結合する結合タンパク質が提供され、それにおいて、第一及び第二の抗原結合部位はCD137に結合し、それにおいて、抗体足場モジュールは以下を含む:、
(i)配列番号16において示される重鎖可変領域配列、配列番号60、配列番号61、配列番号62、配列番号63、又は配列番号64において示される重鎖定常領域配列、配列番号17において示される軽鎖可変領域配列、及び配列番号65又は配列番号66において示される軽鎖定常領域配列;
(ii)配列番号18において示される重鎖可変領域配列、配列番号60、配列番号61、配列番号62、配列番号63、もしくは配列番号64において示される重鎖定常領域配列、配列番号19において示される軽鎖可変領域配列、及び配列番号65もしくは配列番号66において示される軽鎖定常領域配列;又は
(iii)配列番号20において示される重鎖可変領域配列、配列番号60、配列番号61、配列番号62、配列番号63、もしくは配列番号64において示される重鎖定常領域配列、配列番号21において示される軽鎖可変領域配列、及び配列番号65もしくは配列番号66において示される軽鎖定常領域配列。
【0055】
一部の実施形態では、CD137に結合する結合タンパク質が提供され、それにおいて、第一及び第二の抗原結合部位はCD137に結合し、それにおいて、抗体足場モジュールは、配列番号75において示される重鎖配列及び配列番号76において示される軽鎖配列を含む。
【0056】
一部の実施形態では、抗CD137抗体は、表3中に開示される一つ又は複数の重鎖可変領域CDRならびに/あるいは表4中に開示される一つ又は複数の軽鎖可変領域CDRを含む。
【0057】
一部の実施形態では、CD137に結合する結合タンパク質は、単独で、又は組み合わせにおいて、以下の構造的及び機能的特徴の一つ又は複数を示す:
(a)ヒトCD137について特異的である、
(b)カニクイザルCD137と交差反応する、
(c)CD137に結合するヒトCD137Lを破壊(例、低下又は防止)する、
(d)CD137に対して高速オン及び高速オフ特性を示す、
(e)CD137シグナル伝達についての架橋依存的アゴニスト活性を持つ、又は
(f)架橋依存的な様式においてT細胞を活性化する。
【0058】
一部の実施形態では、CD137に結合する結合タンパク質は、CD137の内因性レベルを発現するヒト細胞に、及びヒトCD137を過剰発現するように操作された宿主細胞に特異的に結合する。一部の実施形態では、CD137に結合する結合タンパク質は、0.2~1.1nM(例、0.2nM、0.3nM、0.4nM、0.5nM、0.6nM、0.7nM、0.8nM、0.9nM、1.0nM、又は1.1nM)の範囲のEC50値を伴って、ヒト又はカニクイザルCD137を過剰発現する細胞に結合する。
【0059】
一部の実施形態では、CD137に結合する結合タンパク質は、高速オン及び高速オフの動態特性を有する。
【0060】
一部の実施形態では、CD137に結合する結合タンパク質は、カニクイザルCD137(cynoCD137)と交差反応し、マウスCD137(mu-CD137)との交差反応性結合を実証しない。
【0061】
一部の実施形態では、CD137に結合する結合タンパク質は、CD137リガンド/CD137結合相互作用を破壊する。
【0062】
一部の実施形態では、CD137に結合する結合タンパク質は、CD137シグナル伝達についての架橋依存的アゴニスト活性を持つ。
【0063】
一部の実施形態では、CD137に結合する結合タンパク質は、架橋依存的な様式においてT細胞を活性化する。
【0064】
一部の実施形態では、CD137に結合する結合タンパク質は、Fc γRとの架橋活性を消失/最小化するように操作されたFc領域をさらに含み、それは、T細胞のFc媒介性エフェクター機能をサイレンシング又は排除する。
【0065】
本開示はまた、CD137に結合する上の結合タンパク質の少なくとも一つをコードする単離ポリヌクレオチド配列を提供する。
【0066】
本開示はまた、上のポリヌクレオチド配列の少なくとも一つを含むベクターを提供する。
【0067】
本開示はまた、上のポリヌクレオチド配列の一つ、又は上のベクターの一つを含む細胞を提供する。
【0068】
本開示はまた、CD137に結合する結合タンパク質の少なくとも一つ、ならびに、場合により、医薬的に許容可能な希釈剤、担体、媒体、及び/又は賦形剤を含む、あるいはそれらからなる医薬組成物を提供する。そのような医薬組成物は、癌の治療のために使用され得る。
【0069】
本開示はまた、CD137に結合する、開示されている結合タンパク質の少なくとも一つの治療有効量を、単独で、又は別の治療用薬剤との組み合わせにおいて、患者に投与することを含む、患者における癌の治療のための方法に関する。
【0070】
例示的な実施形態では、PD-L1/CD137二重特異性体は、PD-L1及びCD137に結合する結合タンパク質であり、(a)PD-L1に結合する第一の抗原結合部位及びPD-L1に結合する第二の抗原結合部位を含むIgGフォーマットにおける抗体足場モジュール;(b)CD137に結合する第三の抗原結合部位を含む少なくとも一つの第一の結合モジュールを含む。
【0071】
例示的な実施形態では、PD-L1/CD137二重特異性体の第一の抗原結合部位及び第二の抗原結合部位は、CDR1:配列番号5、CDR2:配列番号6、及びCDR3:配列番号7を含む重鎖可変領域配列;ならびにCDR1:配列番号8、CDR2:配列番号9、及びCDR3:配列番号10を含む軽鎖可変領域配列を含む。例示的な実施形態では、PD-L1/CD137二重特異性体の第一の抗原結合部位及び第二の抗原結合部位は、CDR1:配列番号11、CDR2:配列番号12、及びCDR3:配列番号13を含む重鎖可変領域配列;ならびにCDR1:配列番号14、CDR2:配列番号9、及びCDR3:配列番号15を含む軽鎖可変領域配列を含む。
【0072】
例示的な実施形態では、PD-L1/CD137二重特異性体の抗体足場モジュールは、配列番号1又は配列番号3において示される重鎖可変領域配列;及び配列番号2又は配列番号4において示される軽鎖可変領域配列を含む。
【0073】
例示的な実施形態では、PD-L1/CD137二重特異性体の抗体足場モジュールは、配列番号1において示される重鎖可変領域配列及び配列番号2において示される軽鎖可変領域配列を含む。例示的な実施形態では、PD-L1/CD137二重特異性体の抗体足場モジュールは、配列番号3において示される重鎖可変領域配列及び配列番号4において示される軽鎖可変領域配列を含む。
【0074】
例示的な実施形態では、PD-L1/CD137二重特異性体の抗体足場モジュールは、配列番号1において示される重鎖可変領域配列、配列番号60、配列番号61、配列番号62、配列番号63、又は配列番号64において示される重鎖定常領域配列、配列番号2において示される軽鎖可変領域配列、及び配列番号65又は配列番号66において示される軽鎖定常領域配列を含む。例示的な実施形態では、PD-L1/CD137二重特異性体の抗体足場モジュールは、配列番号3において示される重鎖可変領域配列、配列番号60、配列番号61、配列番号62、配列番号63、又は配列番号64において示される重鎖定常領域配列、配列番号4において示される軽鎖可変領域配列、及び配列番号65又は配列番号66において示される軽鎖定常領域配列を含む。
【0075】
例示的な実施形態では、PD-L1/CD137二重特異性体の抗体足場モジュールは、配列番号42において示される重鎖配列及び配列番号40において示される軽鎖配列を含む。例示的な実施形態では、PD-L1/CD137二重特異性体の抗体足場モジュールは、配列番号45において示される重鎖配列及び配列番号40において示される軽鎖配列を含む。
【0076】
例示的な実施形態では、PD-L1/CD137二重特異性体は、一つの第一の結合モジュールを有する。例示的な実施形態では、PD-L1/CD137二重特異性体は、二つの第一の結合モジュールを有する。例示的な実施形態では、PD-L1/CD137二重特異性体は、C末端及びN末端を含む重鎖配列を含む抗体足場モジュールを有し、それにおいて、この抗体足場モジュールは、C末端及びN末端を含む軽鎖配列を含み、第一の結合モジュールは、抗体足場モジュール重鎖配列のC末端、抗体足場モジュール軽鎖配列のC末端、抗体足場モジュール重鎖配列のN末端、抗体足場モジュール軽鎖配列のN末端、又はそれらの組み合わせに共有結合的に付着されており、場合により、第一の結合モジュール及び抗体足場モジュールは、直接的に又はインターリンカーを通じて互いに共有結合的に付着されている。例示的な実施形態では、PD-L1/CD137二重特異性体の第一の結合モジュール及び抗体足場モジュールは、インターリンカーを通じて互いに共有結合的に付着され、インターリンカーは、配列番号58において示される、NからC末端の配列である。例示的な実施形態では、PD-L1/CD137二重特異性体の第一の結合モジュール及び抗体足場モジュールは、インターリンカーを通じて互いに共有結合的に付着され、インターリンカーは、配列番号59において示される、NからC末端の配列である。例示的な実施形態では、PD-L1/CD137二重特異性体の第一の結合モジュールは、抗体足場モジュール重鎖配列のC末端に共有結合的に付着されている。例示的な実施形態では、PD-L1/CD137二重特異性体の第一の結合モジュールは、抗体足場モジュール軽鎖配列のC末端に共有結合的に付着されている。例示的な実施形態では、PD-L1/CD137二重特異性体において一つを上回る第一の結合モジュールがある場合、各々は、異なる抗体足場モジュール配列に又は抗体足場モジュールの異なる末端に共有結合的に付着されている。
【0077】
例示的な実施形態では、PD-L1/CD137二重特異性体における第一の結合モジュールは、scFvであり、それは重鎖可変領域配列及び軽鎖可変配列を含み、それにおいて、配列は、直接的に又はscFv融合リンカーを通じて互いに共有結合的に付着されている。例示的な実施形態では、scFv融合リンカーはグリシン及びセリンを含む。例示的な実施形態では、scFv融合リンカーは配列Gly-Gly-Gly-Serを含む。例示的な実施形態では、scFv融合リンカーは、配列番号58において示される配列を含む。例示的な実施形態では、scFv融合リンカーは、配列番号58において示される配列である。例示的な実施形態では、scFv融合リンカーは、配列番号59において示される配列を含む。例示的な実施形態では、scFv融合リンカーは、配列番号59において示される配列である。例示的な実施形態では、PD-L1/CD137二重特異性体における第一の結合モジュールは、配列番号53において示される配列を含む。例示的な実施形態では、PD-L1/CD137二重特異性体における第一の結合モジュールは、配列番号54において示される配列を含む。例示的な実施形態では、PD-L1/CD137二重特異性体における第一の結合モジュールは、配列番号55において示される配列を含む。例示的な実施形態では、PD-L1/CD137二重特異性体における第一の結合モジュールは、配列番号56において示される配列を含む。
【0078】
例示的な実施形態では、PD-L1/CD137二重特異性体における第一の結合モジュールは、N末端からC末端に、CDR1:配列番号5、CDR2:配列番号22、及びCDR3:配列番号23を含む重鎖可変領域配列;ならびにCDR1:配列番号24、CDR2:配列番号25、及びCDR3:配列番号26を含む軽鎖可変領域配列を含む。例示的な実施形態では、PD-L1/CD137二重特異性体における第一の結合モジュールは、N末端からC末端に、CDR1:配列番号27、CDR2:配列番号28、及びCDR3:配列番号29を含む重鎖可変領域配列;ならびにCDR1:配列番号30、CDR2:配列番号9、及びCDR3:配列番号31を含む軽鎖可変領域配列を含む。例示的な実施形態では、PD-L1/CD137二重特異性体における第一の結合モジュールは、N末端からC末端に、CDR1:配列番号32、CDR2:配列番号33、及びCDR3:配列番号34を含む重鎖可変領域配列;ならびにCDR1:配列番号35、CDR2:配列番号36、及びCDR3:配列番号37を含む軽鎖可変領域配列を含む。
【0079】
例示的な実施形態では、PD-L1/CD137二重特異性体における第一の結合モジュールは、N末端からC末端に、配列番号16において示される重鎖可変領域配列及び配列番号17において示される軽鎖可変領域配列を含む。例示的な実施形態では、PD-L1/CD137二重特異性体における第一の結合モジュールは、N末端からC末端に、配列番号18において示される重鎖可変領域配列及び配列番号19において示される軽鎖可変領域配列を含む。例示的な実施形態では、PD-L1/CD137二重特異性体における第一の結合モジュールは、N末端からC末端に、配列番号20において示される重鎖可変領域配列及び配列番号21において示される軽鎖可変領域配列を含む。
【0080】
例示的な実施形態では、PD-L1/CD137二重特異性体は、N末端からC末端に、配列番号38において示される抗体足場モジュール及び第一の結合モジュールの重鎖配列;ならびに配列番号40において示される抗体足場モジュールの軽鎖配列を含む。例示的な実施形態では、PD-L1/CD137二重特異性体は、N末端からC末端に、配列番号44において示される抗体足場モジュール及び第一の結合モジュールの重鎖配列;ならびに配列番号40において示される抗体足場モジュールの軽鎖配列を含む。例示的な実施形態では、PD-L1/CD137二重特異性体は、N末端からC末端に、配列番号45において示される抗体足場モジュールの重鎖配列;ならびに配列番号46において示される抗体足場モジュール及び第一の結合モジュールの軽鎖配列を含む。例示的な実施形態では、PD-L1/CD137二重特異性体は、N末端からC末端に、配列番号47において示される抗体足場モジュール及び第一の結合モジュールの重鎖配列;ならびに配列番号40において示される抗体足場モジュールの軽鎖配列を含む。例示的な実施形態では、PD-L1/CD137二重特異性体は、N末端からC末端に、配列番号50において示される抗体足場モジュール及び第一の結合モジュールの重鎖配列;ならびに配列番号40において示される抗体足場モジュールの軽鎖配列を含む。
【0081】
例示的な実施形態では、PD-L1/CD137二重特異性体の抗体足場モジュールは、定常領域をさらに含む。例示的な実施形態では、PD-L1/CD137二重特異性体の抗体足場モジュールの定常領域は、少なくとも一つのFcサイレンシング変異を含む。例示的な実施形態では、PD-L1/CD137二重特異性体の抗体足場モジュールの定常領域中でのFcサイレンシング変異は、L234AL235A又はN297Aである。例示的な実施形態では、PD-L1/CD137二重特異性体の抗体足場モジュールの定常領域は、ノブ・イン・ホール(KiH)変異を含む。
【0082】
一部の実施形態によれば、PD-L1/CD137二重特異性体(例、1923Ab8、1923Ab11、1923Ab12、1923Ab13、及び1923Ab18)は、PD-L1とその受容体PD-1の間での相互作用及びCD137とそのリガンドの間での相互作用を効果的に遮断することが可能である。開示されているPD-L1/CD137二重特異性体は、PD-L1抗体足場モジュールとして本明細書中に開示される、PD-L1に結合する結合タンパク質(例、1923Ab2又は1923Ab3)の一つから由来するアミノ酸配列、及びCD137の第一の結合モジュールとして本明細書中に開示される、CD137に結合する結合タンパク質(例、1923Ab4、1923Ab5又は1923Ab6)の一つから由来するアミノ酸配列を含む。
【0083】
一部の実施形態では、PD-L1/CD137二重特異性体は、PD-L1に結合し、PD-1/PD-L1結合相互作用を破壊し、T細胞のPD-1/PD-L1チェックポイント媒介性阻害を脱抑制する結合タンパク質を含む。本明細書中に例示されるように、非限定的な例では、PD-L1に結合する抗体足場モジュールは、単鎖可変断片(例、リンカーペプチドと接続された、PD-L1に結合する、開示されている結合タンパク質の一つの重鎖(VH)鎖及び軽鎖(VL)鎖の可変領域の融合タンパク質)(scFv)を含み得る。
【0084】
一部の実施形態では、PD-L1/CD137二重特異性体は、CD137に結合する、開示されている結合タンパク質の一つから由来する断片で構成されるCD137結合モジュールを含む。一実施形態では、CD137結合モジュールは、本明細書中に開示されるCD137に結合する結合タンパク質の一つから由来する結合断片の形態であり得る。本明細書中に例示されるように、非限定的な例では、CD137結合モジュールは、一本鎖可変断片(例、リンカーペプチドと接続された、CD137に結合する、開示されている結合タンパク質の一つの重(VH)及び軽(VL)鎖の可変領域の融合タンパク質)を含み得る。あるいは、CD137結合モジュールは、IgG分子の形態であり得る。
【0085】
一部の実施形態では、PD-L1/CD137二重特異性1923Ab8は、PD-L1に結合する1923Ab3からの二つのFabを有する抗体足場モジュール、L234A L235A変異を伴う二つのFc定常鎖を含むヒトIgG1 Fc(配列番号61)、及び二つのFc定常鎖の各々のC末端に付着された1923Ab4から由来するscFv断片(VHがVLに先行する)(配列番号53)を含む。
【0086】
一部の実施形態では、PD-L1/CD137二重特異性1923Ab11は、PD-L1に結合する1923Ab3からの二つのFabを有する抗体足場モジュール、L234A L235A変異を伴う二つのFc定常鎖を含むヒトIgG1 Fc(配列番号61)、及び二つのFc定常鎖の各々のC末端に付着された1923Ab4から由来するscFv断片(VLがVHに先行する)(配列番号54)を含む。
【0087】
一部の実施形態では、PD-L1/CD137二重特異性1923Ab12は、PD-L1に結合する1923Ab3からの二つのFabを有する抗体足場モジュール、L234A L235A変異を伴う二つの定常鎖を含むヒトIgG1 Fc(配列番号61)、及びFab中の軽鎖の各々のN末端に付着された1923Ab4から由来するジスルフィド結合安定化scFv断片(VHがVLに先行する)(配列番号56)を含む。
【0088】
一部の実施形態では、PD-L1/CD137二重特異性1923Ab13は、PD-L1に結合する1923Ab3からの二つのFabを有する抗体足場モジュール、L234A L235A変異を伴う二つの定常鎖を含むヒトIgG1 Fc(配列番号61)、及びFab中の重鎖の各々のN末端に付着された1923Ab4から由来するジスルフィド結合安定化scFv断片(VHがVLに先行する)(配列番号56)を含む。
【0089】
一部の実施形態では、PD-L1/CD137二重特異性1923Ab18は、PD-L1に結合する1923Ab3からの二つのFabを有する抗体足場モジュール、L234A L235A変異を伴う二つのFc定常鎖を含むヒトIgG1 Fc(配列番号61)、及びFc定常鎖の各々のC末端に付着された1923Ab4から由来するジスルフィド結合安定化scFv断片(VHがVLに先行する)(配列番号55)を含む。
【0090】
一部の実施形態では、PD-L1/CD137二重特異性体は、以下の組み合わせから選択される可変重鎖配列及び可変軽鎖配列を含む:
(a)配列番号38を含む重鎖配列及び配列番号40を含む軽鎖配列;
(b)配列番号44を含む重鎖配列及び配列番号40を含む軽鎖配列;
(c)配列番号45を含む重鎖配列及び配列番号46を含む軽鎖配列;
(d)配列番号47を含む重鎖配列及び配列番号40を含む軽鎖配列;ならびに
(e)配列番号50を含む重鎖配列及び配列番号40を含む軽鎖配列。
【0091】
一部の実施形態では、PD-L1/CD137二重特異性体は、配列番号38、42、44、45、47、及び50からなる群から選択される重鎖配列、又は配列番号38、42、44、45、47、もしくは50と少なくとも90%の配列同一性を有するその断片を含む。
【0092】
他の実施形態では、PD-L1/CD137二重特異性体は、配列番号40及び46からなる群から選択される軽鎖配列、又は配列番号40もしくは46と少なくとも90%の配列同一性を有するその断片誘導体を含む。
【0093】
一部の実施形態では、CD137結合モジュールは、CD137/CD137リガンド相互作用を遮断し、CD137シグナル伝達及びT細胞活性化についての架橋依存的アゴニスト活性を持つscFvサブユニットである。一部の実施形態では、CD137結合モジュールは、ジスルフィド結合を伴って安定化されたscFvサブユニットである。
【0094】
一部の実施形態では、PD-L1/CD137二重特異性体は、CD137 scFv結合モジュールが抗体足場モジュールの重鎖又は軽鎖のC末端に融合されて、PD-L1/CD137二重特異性体を作るIgGフォーマットを有する抗体足場モジュールを含む。
【0095】
一部の実施形態では、開示されているPD-L1/CD137二重特異性体は、Fc γRとの架橋活性を消失/最小化するように操作されたFc領域をさらに含み、それは、T細胞のFc媒介性エフェクター機能をサイレンシング又は排除する。
【0096】
本開示はまた、本明細書中に開示されるPD-L1/CD137二重特異性体の少なくとも一つ、ならびに、場合により、医薬的に許容可能な希釈剤、担体、媒体及び/又は賦形剤を含む、あるいはそれらからなる医薬組成物を提供する。そのような医薬組成物は、癌の治療のために使用され得る。
【0097】
本開示はまた、患者における癌の治療のための方法に関し、単独で、又は別の治療用薬剤との組み合わせにおいて、開示されているPD-L1/CD137二重特異性体の少なくとも一つの治療有効量を患者に投与することを含む。
【0098】
本開示はまた、本明細書中に記載されるPD-L1/CD137二重特異性体の少なくとも一つをコードする単離ポリヌクレオチド配列を提供する。本開示はまた、本明細書中に記載されるPD-L1/CD137二重特異性配列の少なくとも一つをコードする単離ポリヌクレオチド配列を提供する。
【0099】
本開示はまた、本明細書中に記載されるPD-L1/CD137二重特異性体のポリヌクレオチドを含むベクターを提供する。
【0100】
本開示はまた、本明細書中に記載されるPD-L1/CD137二重特異性ポリヌクレオチド配列の少なくとも一つを含むベクターを提供する。
【0101】
本開示はまた、本明細書中に記載されるPD-L1/CD137二重特異性ポリヌクレオチド配列の一つ、又は上のベクターの一つを含む細胞を提供する。
【0102】
例示的な実施形態では、PD-L1/TGFβ二重特異性体は、PD-L1及びTGFβに結合する結合タンパク質であり、(a)PD-L1に結合する第一の抗原結合部位及びPD-L1に結合する第二の抗原結合部位を含むIgGフォーマットにおける抗体足場モジュール;(b)TGFβに結合する第三の抗原結合部位を含む少なくとも一つの第一の結合モジュールを含む。
【0103】
例示的な実施形態では、PD-L1/TGFβ二重特異性体の第一の抗原結合部位及び第二の抗原結合部位は、CDR1:配列番号5、CDR2:配列番号6、及びCDR3:配列番号7を含む重鎖可変領域配列;ならびにCDR1:配列番号8、CDR2:配列番号9、及びCDR3:配列番号10を含む軽鎖可変領域配列を含む。例示的な実施形態では、PD-L1/TGFβ二重特異性体の第一の抗原結合部位及び第二の抗原結合部位は、CDR1:配列番号11、CDR2:配列番号12、及びCDR3:配列番号13を含む重鎖可変領域配列;ならびにCDR1:配列番号14、CDR2:配列番号9、及びCDR3:配列番号15を含む軽鎖可変領域配列を含む。
【0104】
例示的な実施形態では、PD-L1/TGFβ二重特異性体の抗体足場モジュールは、配列番号1又は配列番号3において示される重鎖可変領域配列及び配列番号2又は配列番号4において示される軽鎖可変領域配列を含む。
【0105】
例示的な実施形態では、PD-L1/TGFβ二重特異性体の抗体足場モジュールは、配列番号1において示される重鎖可変領域配列及び配列番号2において示される軽鎖可変領域配列を含む。例示的な実施形態では、PD-L1/TGFβ二重特異性体の抗体足場モジュールは、配列番号3において示される重鎖可変領域配列及び配列番号4において示される軽鎖可変領域配列を含む。
【0106】
例示的な実施形態では、PD-L1/TGFβ二重特異性体の抗体足場モジュールは、配列番号1において示される重鎖可変領域配列、配列番号60、配列番号61、配列番号62、配列番号63、又は配列番号64において示される重鎖定常領域配列、配列番号2において示される軽鎖可変領域配列、及び配列番号65又は配列番号66において示される軽鎖定常領域配列を含む。例示的な実施形態では、PD-L1/TGFβ二重特異性体の抗体足場モジュールは、配列番号3において示される重鎖可変領域配列、配列番号60、配列番号61、配列番号62、配列番号63、又は配列番号64において示される重鎖定常領域配列、配列番号4において示される軽鎖可変領域配列、及び配列番号65又は配列番号66において示される軽鎖定常領域配列を含む。
【0107】
例示的な実施形態では、PD-L1/TGFβ二重特異性体の抗体足場モジュールは、配列番号42において示される重鎖配列及び配列番号40において示される軽鎖配列を含む。例示的な実施形態では、PD-L1/TGFβ二重特異性体の抗体足場モジュールは、配列番号45において示される重鎖配列及び配列番号40において示される軽鎖配列を含む。
【0108】
例示的な実施形態では、PD-L1/TGFβ二重特異性体は、一つの第一の結合モジュールを有する。例示的な実施形態では、PD-L1/TGFβ二重特異性体は、二つの第一の結合モジュールを有する。例示的な実施形態では、PD-L1/TGFβ二重特異性体は、C末端及びN末端を含む重鎖配列を含む抗体足場モジュールを有し、それにおいて、この抗体足場モジュールは、C末端及びN末端を含む軽鎖配列を含み、第一の結合モジュールは、抗体足場モジュール重鎖配列のC末端、抗体足場モジュール軽鎖配列のC末端、抗体足場モジュール重鎖配列のN末端、抗体足場モジュール軽鎖配列のN末端、又はそれらの組み合わせに共有結合的に付着されており、場合により、第一の結合モジュール及び抗体足場モジュールは、直接的に又はインターリンカーを通じて互いに共有結合的に付着されている。例示的な実施形態では、PD-L1/TGFβ二重特異性体の第一の結合モジュール及び抗体足場モジュールは、インターリンカーを通じて互いに共有結合的に付着され、インターリンカーは、配列番号58において示されるように、N末端からC末端への配列である。例示的な実施形態では、PD-L1/TGFβ二重特異性体の第一の結合モジュール及び抗体足場モジュールは、インターリンカーを通じて互いに共有結合的に付着され、インターリンカーは、配列番号59において示されるように、N末端からC末端への配列である。例示的な実施形態では、PD-L1/TGFβ二重特異性体の第一の結合モジュールは、抗体足場モジュール重鎖配列のC末端に共有結合的に付着されている。例示的な実施形態では、PD-L1/TGFβ二重特異性体の第一の結合モジュールは、抗体足場モジュール軽鎖配列のC末端に共有結合的に付着されている。例示的な実施形態では、PD-L1/TGFβ二重特異性体において一つを上回る第一の結合モジュールがある場合、各々は、異なる抗体足場モジュール配列又は抗体足場モジュールの異なる末端に共有結合的に付着されている。
【0109】
例示的な実施形態では、PD-L1/TGFβ二重特異性体における第一の結合モジュールは、TGFβRIIの細胞外ドメインを含む。例示的な実施形態では、TGFβRII配列の細胞外ドメインは、配列番号67において示されている。
【0110】
例示的な実施形態では、PD-L1/TGFβ二重特異性体は、二つの第一の結合モジュールを有する。例示的な実施形態では、PD-L1/TGFβ二重特異性体の抗体足場モジュール及び第一の結合モジュールの重鎖配列は、配列番号51において示される配列を含み;及びそれにおいて、PD-L1/TGFβ二重特異性体の抗体足場モジュールの軽鎖配列は、配列番号40において示されるように、配列をN末端からC末端まで含む。
【0111】
例示的な実施形態では、PD-L1/TGFβ二重特異性体の抗体足場モジュールは、定常領域をさらに含む。例示的な実施形態では、PD-L1/TGFβ二重特異性体の抗体足場モジュールの定常領域は、少なくとも一つのFcサイレンシング変異を含む。例示的な実施形態では、PD-L1/TGFβ二重特異性体の抗体足場モジュールの定常領域中のFcサイレンシング変異は、L234A L235A又はN297Aである。例示的な実施形態では、PD-L1/TGFβ二重特異性体の抗体足場モジュールの定常領域は、ノブ・イン・ホール(KiH)変異を含む。
【0112】
一部の実施形態によると、本開示は、PD-L1とその受容体PD-1の間での相互作用を効果的に遮断することが可能なPD-L1/TGFβ二重特異性体(例、1923Ab20)を提供し、TGFβを隔絶する。開示されているPD-L1/TGFβ二重特異性体は、PD-L1抗体足場モジュールとして本明細書中に開示されるPD-L1に結合する結合タンパク質の一つ(例、1923Ab2又は1923Ab3)から由来するアミノ酸配列の全て又は一部、及びTGFβRIIの全長細胞外ドメイン又はTGFβRIIの切断部(例、N末端又はC末端切断部)を含むアミノ酸配列を含むが、配列が、TGFβに結合し、その生物学的活性を中和することができることを条件とする。一部の実施形態では、PD-L1に結合する結合タンパク質に付加される第一の結合モジュールは、ヒトTNFβRII受容体のECDから由来する組換えTGFβ結合タンパク質である。
【0113】
一部の実施形態では、PD-L1/TGFβ二重特異性1923Ab20は、PD-L1に結合する1923Ab3から由来する二つのFabを有する抗体足場モジュール、L234A L235A変異を伴う二つのFc定常鎖を有するヒトIgG1 Fc(配列番号61)、及び各々がFc定常鎖の各々のC末端に付着された、TGFβRIIの細胞外ドメインをコードする二つのポリペプチド(配列番号67)を含む。
【0114】
一部の実施形態では、PD-L1/TGFβ二重特異性体は、表5中に開示される重鎖及び/又は軽鎖配列を含む。他の実施形態では、PD-L1/TGFβ二重特異性体は、表6中に開示される重鎖及び/又は軽鎖配列を含む。
【0115】
一部の実施形態では、PD-L1/TGFβ二重特異性体は、配列番号51を含む重鎖配列及び配列番号40を含む軽鎖配列を含む。
【0116】
一部の実施形態では、PD-L1/TGFβ二重特異性体は、配列番号42、45、及び51からなる群から選択される重鎖配列、又は配列番号42、45、もしくは51と少なくとも90%の配列同一性を有するその断片を含む。
【0117】
他の実施形態では、PD-L1/TGFβ二重特異性体は、配列番号39及び40からなる群から選択される軽鎖配列、又は配列番号39及び40と少なくとも90%の配列同一性を有するその断片誘導体を含む。
【0118】
一部の実施形態では、PD-L1/TGFβ二重特異性体は、単独で又は組み合わせにおいて、以下の特徴の一つ又は複数を示す:
(a)ヒトPD-L1について特異的であり、ヒトTGFβに結合する;
(b)カニクイザルPD-L1と交差反応する;
(c)PD-1及びPD-L1の相互作用を破壊する;
(d)T細胞PD-L1媒介性チェックポイント阻害シグナルを脱抑制する;又は
(e)ヒトTGFβを隔絶する;
【0119】
本開示はまた、本明細書中に開示されるPD-L1/TGFβ二重特異性体の少なくとも一つ、ならびに、場合により、医薬的に許容可能な希釈剤、担体、媒体及び/又は賦形剤を含む、あるいはそれらからなる医薬組成物を提供する。そのような医薬組成物は、癌の抗体ベースの免疫療法のために使用され得る。
【0120】
本開示はまた、患者における癌の治療のための方法に関し、単独で、又は別の治療用薬剤との組み合わせにおいて、開示されているPD-L1/TGFβ二重特異性体の少なくとも一つの治療有効量を患者に投与することを含む。
【0121】
本開示はまた、本明細書中に記載されるPD-L1/TGFβ二重特異性体の少なくとも一つをコードする単離ポリヌクレオチド配列を提供する。本開示はまた、本明細書中に記載されるPD-L1/TGFβ二重特異性配列の少なくとも一つをコードする単離ポリヌクレオチド配列を提供する。
【0122】
本開示はまた、本明細書中に記載されるPD-L1/TGFβ二重特異性体のポリヌクレオチドを含むベクターを提供する。
【0123】
本開示はまた、本明細書中に記載されるPD-L1/TGFβ二重特異性ポリヌクレオチド配列の少なくとも一つを含むベクターを提供する。
【0124】
本開示はまた、本明細書中に記載されるPD-L1/TGFβ二重特異性ポリヌクレオチド配列の一つ、又は上のベクターの一つを含む細胞を提供する。
【0125】
本開示はまた、PD-L1、TGFβ、及びCD137に結合する結合タンパク質を提供し、(a)PD-L1に結合する第一の抗原結合部位及びPD-L1に結合する第二の抗原結合部位を含むIgGフォーマットにおける抗体足場モジュール;(b)TGFβに結合する第三の抗原結合部位を含む少なくとも一つの第一の結合モジュール;ならびに(c)CD137に結合する第四の抗原結合部位を含む少なくとも一つの第二の結合モジュールを含む。例示的な実施形態では、PD-L1/TGFβ/CD137三重特異性体は、PD-L1に結合する抗体足場モジュール、ヒトTGFβに結合し、その活性を中和することが可能であるTGFβ受容体II結合タンパク質から由来するアミノ酸配列を含む第一の結合モジュール、及びCD137に結合する第二の結合モジュールを含む組換えタンパク質の形態において構築される。
【0126】
例示的な実施形態では、PD-L1/TGFβ/CD137三重特異性体の第一の抗原結合部位及び第二の抗原結合部位は、(i)CDR1:配列番号5、CDR2:配列番号6、及びCDR3:配列番号7を含む重鎖可変領域配列;ならびにCDR1:配列番号8、CDR2:配列番号9、及びCDR3:配列番号10を含む軽鎖可変領域配列を含む。例示的な実施形態では、PD-L1/TGFβ/CD137三重特異性体の第一の抗原結合部位及び第二の抗原結合部位は、CDR1:配列番号11、CDR2:配列番号12、及びCDR3:配列番号13を含む重鎖可変領域配列;ならびにCDR1:配列番号14、CDR2:配列番号9、及びCDR3:配列番号15を含む軽鎖可変領域配列を含む。
【0127】
例示的な実施形態では、PD-L1/TGFβ/CD137三重特異性体の抗体足場モジュールは、配列番号1又は配列番号3において示される重鎖可変領域配列;及び配列番号2又は配列番号4において示される軽鎖可変領域配列を含む。
【0128】
例示的な実施形態では、PD-L1/TGFβ/CD137三重特異性体の抗体足場モジュールは、配列番号1において示される重鎖可変領域配列及び配列番号2において示される軽鎖可変領域配列を含む。例示的な実施形態では、PD-L1/TGFβ/CD137三重特異性体の抗体足場モジュールは、配列番号3において示される重鎖可変領域配列及び配列番号4において示される軽鎖可変領域配列を含む。
【0129】
例示的な実施形態では、PD-L1/TGFβ/CD137三重特異性体の抗体足場モジュールは、配列番号1において示される重鎖可変領域配列、配列番号60、配列番号61、配列番号62、配列番号63、又は配列番号64において示される重鎖定常領域配列、配列番号2において示される軽鎖可変領域配列、及び配列番号65又は配列番号66において示される軽鎖定常領域配列を含む。例示的な実施形態では、PD-L1/TGFβ/CD137三重特異性体の抗体足場モジュールは、配列番号3において示される重鎖可変領域配列、配列番号60、配列番号61、配列番号62、配列番号63、又は配列番号64において示される重鎖定常領域配列、配列番号4において示される軽鎖可変領域配列、及び配列番号65又は配列番号66において示される軽鎖定常領域配列を含む。
【0130】
例示的な実施形態では、PD-L1/TGFβ/CD137三重特異性体の抗体足場モジュールは、配列番号42において示される重鎖配列及び配列番号40において示される軽鎖配列を含む。例示的な実施形態では、PD-L1/TGFβ/CD137三重特異性体の抗体足場モジュールは、配列番号45において示される重鎖配列及び配列番号40において示される軽鎖配列を含む。
【0131】
例示的な実施形態では、PD-L1/TGFβ/CD137三重特異性体は、一つの第一の結合モジュールを有する。例示的な実施形態では、PD-L1/TGFβ/CD137三重特異性体は、二つの第一の結合モジュールを有する。例示的な実施形態では、PD-L1/TGFβ/CD137三重特異性体は、C末端及びN末端を含む重鎖配列を含む抗体足場モジュールを有し、それにおいて、この抗体足場モジュールは、C末端及びN末端を含む軽鎖配列を含み、第一の結合モジュールは、抗体足場モジュール重鎖配列のC末端、抗体足場モジュール軽鎖配列のC末端、抗体足場モジュール重鎖配列のN末端、抗体足場モジュール軽鎖配列のN末端、又はそれらの組み合わせに共有結合的に付着されており、場合により、第一の結合モジュール及び抗体足場モジュールは、直接的に又は第一の結合モジュールインターリンカーを通じて互いに共有結合的に付着されている。例示的な実施形態では、PD-L1/TGFβ/CD137三重特異性体の第一の結合モジュール及び抗体足場モジュールは、第一の結合モジュールインターリンカーを通じて互いに共有結合的に付着され、第一の結合モジュールインターリンカーは、配列番号58において示されるように、N末端からC末端への配列である。例示的な実施形態では、PD-L1/TGFβ/CD137三重特異性体の第一の結合モジュール及び抗体足場モジュールは、第一の結合モジュールインターリンカーを通じて互いに共有結合的に付着され、第一の結合モジュールインターリンカーは、配列番号59において示されるように、N末端からC末端への配列である。例示的な実施形態では、PD-L1/TGFβ/CD137三重特異性体の第一の結合モジュールは、抗体足場モジュール重鎖配列のC末端に共有結合的に付着されている。例示的な実施形態では、PD-L1/TGFβ/CD137三重特異性体の第一の結合モジュールは、抗体足場モジュール軽鎖配列のC末端に共有結合的に付着されている。例示的な実施形態では、PD-L1/TGFβ/CD137三重特異性体において一つを上回る第一の結合モジュールがある場合、各々は、異なる抗体足場モジュール配列に又は抗体足場モジュールの異なる末端に共有結合的に付着されている。
【0132】
例示的な実施形態では、PD-L1/TGFβ/CD137三重特異性体における第一の結合モジュールは、TGFβRIIの細胞外ドメインを含む。例示的な実施形態では、PD-L1/TGFβ/CD137三重特異性体におけるTGFβRIIの細胞外ドメインは、配列番号67において示される配列を含む。
【0133】
例示的な実施形態では、PD-L1/TGFβ/CD137三重特異性体における第二の結合モジュールは、scFvであり、それは、重鎖可変領域配列及び軽鎖可変配列を含み、それにおいて、配列は、直接的に又はscFv融合リンカーを通じて互いに共有結合的に付着されている。例示的な実施形態では、scFv融合リンカーはグリシン及びセリンを含む。例示的な実施形態では、scFv融合リンカーは配列Gly-Gly-Gly-Serを含む。例示的な実施形態では、scFv融合リンカーは、配列番号58において示される配列を含む。例示的な実施形態では、scFv融合リンカーは、配列番号58において示される配列である。例示的な実施形態では、scFv融合リンカーは、配列番号59において示される配列を含む。例示的な実施形態では、scFv融合リンカーは、配列番号59において示される配列である。例示的な実施形態では、PD-L1/TGFβ/CD137三重特異性体における第二の結合モジュールは、配列番号53において示される配列を含む。例示的な実施形態では、PD-L1/TGFβ/CD137三重特異性体における第二の結合モジュールは、配列番号54において示される配列を含む。例示的な実施形態では、PD-L1/TGFβ/CD137三重特異性体における第二の結合モジュールは、配列番号55において示される配列を含む。例示的な実施形態では、PD-L1/TGFβ/CD137三重特異性体における第二の結合モジュールは、配列番号56において示される配列を含む。
【0134】
例示的な実施形態では、PD-L1/TGFβ/CD137三重特異性体は、一つの第二の結合モジュールを有する。例示的な実施形態では、PD-L1/TGFβ/CD137三重特異性体は、二つの第二の結合モジュールを有する。例示的な実施形態では、PD-L1/TGFβ/CD137三重特異性体は、C末端及びN末端を含む重鎖配列を含む抗体足場モジュールを有し、それにおいて、抗体足場モジュールは、C末端及びN末端を含む軽鎖配列を含み、第二の結合モジュールは、抗体足場モジュール重鎖配列のC末端、抗体足場モジュール軽鎖配列のC末端、抗体足場モジュール重鎖配列のN末端、抗体足場モジュール軽鎖配列のN末端、又はそれらの組み合わせに共有結合的に付着されており、場合により、第二の結合モジュール及び抗体足場モジュールは、直接的に又は第二の結合モジュールインターリンカーを通じて互いに共有結合的に付着されている。
【0135】
例示的な実施形態では、PD-L1/TGFβ/CD137三重特異性体の第二の結合モジュール及び抗体足場モジュールは、第二の結合モジュールインターリンカーを通じて互いに共有結合的に付着され、第二の結合モジュールインターリンカーは、配列番号58において示されている。例示的な実施形態では、PD-L1/TGFβ/CD137三重特異性体の第二の結合モジュール及び抗体足場モジュールは、第二の結合モジュールインターリンカーを通じて互いに共有結合的に付着され、第二の結合モジュールインターリンカーは、配列番号59において示されている。
【0136】
例示的な実施形態では、PD-L1/TGFβ/CD137三重特異性体の第二の結合モジュールは、抗体足場モジュール重鎖配列のC末端に共有結合的に付着されている。例示的な実施形態では、PD-L1/TGFβ/CD137三重特異性体の第一の結合モジュールは、抗体足場モジュール軽鎖配列のC末端に共有結合的に付着されている。例示的な実施形態では、PD-L1/TGFβ/CD137三重特異性体の第二の結合モジュールは、抗体足場モジュール重鎖配列のC末端に共有結合的に付着され、PD-L1/TGFβ/CD137三重特異性体の第一の結合モジュールは、抗体足場モジュール軽鎖配列のC末端に共有結合的に付着されている。
【0137】
例示的な実施形態では、PD-L1/TGFβ/CD137三重特異性体の第二の結合モジュールは、抗体足場モジュール軽鎖配列のC末端に共有結合的に付着されている。例示的な実施形態では、PD-L1/TGFβ/CD137三重特異性体の第一の結合モジュールは、抗体足場モジュール重鎖配列のC末端に共有結合的に付着されている。例示的な実施形態では、PD-L1/TGFβ/CD137三重特異性体の第二の結合モジュールは、抗体足場モジュール軽鎖配列のC末端に共有結合的に付着され、PD-L1/TGFβ/CD137三重特異性体の第一の結合モジュールは、抗体足場モジュール重鎖配列のC末端に共有結合的に付着されている。
【0138】
例示的な実施形態では、PD-L1/TGFβ/CD137三重特異性体において一つを上回る第二の結合モジュールがある場合、各々は、異なる抗体足場モジュール配列に又は抗体足場モジュールの異なる末端に共有結合的に付着されている(例、一つの結合モジュールは、抗体足場モジュール中の重鎖のC末端に付着されてもよく、他の結合モジュールは、同じ重鎖のN末端に付着されてもよい)。例示的な実施形態では、PD-L1/TGFβ/CD137三重特異性体は、一つの第二の結合モジュールを有し、それにおいて、一つの第二の結合モジュールは、抗体足場モジュール重鎖配列のC末端に共有結合的に付着されている。例示的な実施形態では、PD-L1/TGFβ/CD137三重特異性体は、一つの第二の結合モジュールを有し、それにおいて、一つの第二の結合モジュールは、抗体足場モジュール軽鎖配列のC末端に共有結合的に付着されている。例示的な実施形態では、PD-L1/TGFβ/CD137三重特異性体は、二つの第二の結合モジュールを有し、それにおいて、一つの第二の結合モジュールは、抗体足場モジュール重鎖配列のC末端に共有結合的に付着され、他の第二の結合モジュールは、抗体足場モジュール軽鎖配列のC末端に共有結合的に付着されている。例示的な実施形態では、PD-L1/TGFβ/CD137三重特異性体の第二の結合モジュールは、scFvである。
【0139】
例示的な実施形態では、PD-L1/TGFβ/CD137三重特異性体の第二の結合モジュールは、CDR1:配列番号5、CDR2:配列番号22、及びCDR3:配列番号23を含む重鎖可変領域配列;ならびにCDR1:配列番号24、CDR2:配列番号25、及びCDR3:配列番号26を含む軽鎖可変領域配列を含む。例示的な実施形態では、PD-L1/TGFβ/CD137三重特異性体の第二の結合モジュールは、CDR1:配列番号27、CDR2:配列番号28、及びCDR3:配列番号29を含む重鎖可変領域配列;ならびにCDR1:配列番号30、CDR2:配列番号9、及びCDR3:配列番号31を含む軽鎖可変領域配列を含む。例示的な実施形態では、PD-L1/TGFβ/CD137三重特異性体の第二の結合モジュールは、CDR1:配列番号32、CDR2:配列番号33、及びCDR3:配列番号34を含む重鎖可変領域配列;ならびにCDR1:配列番号35、CDR2:配列番号36、及びCDR3:配列番号37を含む軽鎖可変領域配列を含む。例示的な実施形態では、PD-L1/TGFβ/CD137三重特異性体の第二の結合モジュールは、配列番号16において示される重鎖可変領域配列及び配列番号17において示される軽鎖可変領域配列を含む。例示的な実施形態では、PD-L1/TGFβ/CD137三重特異性体の第二の結合モジュールは、配列番号18において示される重鎖可変領域配列及び配列番号19において示される軽鎖可変領域配列を含む。例示的な実施形態では、PD-L1/TGFβ/CD137三重特異性体の第二の結合モジュールは、配列番号20において示される重鎖可変領域配列及び配列番号21において示される軽鎖可変領域配列を含む。
【0140】
例示的な実施形態では、PD-L1/TGFβ/CD137三重特異性体の第二の結合モジュールは、配列番号53において示される配列を含む。例示的な実施形態では、PD-L1/TGFβ/CD137三重特異性体の第二の結合モジュールは、配列番号54において示される配列を含む。例示的な実施形態では、PD-L1/TGFβ/CD137三重特異性体の第二の結合モジュールは、配列番号55において示される配列を含む。例示的な実施形態では、PD-L1/TGFβ/CD137三重特異性体の第二の結合モジュールは、配列番号56において示される配列を含む。
【0141】
例示的な実施形態では、PD-L1/TGFβ/CD137三重特異性体は、二つの第一の結合モジュール及び二つの第二の結合モジュールを有する。例示的な実施形態では、PD-L1/TGFβ/CD137三重特異性体は、配列番号38において示される抗体足場モジュール及び第二の結合モジュールの重鎖配列;ならびに配列番号39において示される抗体足場モジュール及び第一の結合モジュールの軽鎖配列を含む。例示的な実施形態では、PD-L1/TGFβ/CD137三重特異性体は、配列番号50において示される抗体足場モジュール及び第二の結合モジュールの重鎖配列;ならびに配列番号39において示される抗体足場モジュール及び第一の結合モジュールの軽鎖配列を含む。例示的な実施形態では、PD-L1/TGFβ/CD137三重特異性体は、配列番号51において示される抗体足場モジュール及び第一の結合モジュールの重鎖配列;ならびに配列番号52において示される抗体足場モジュール及び第二の結合モジュールの軽鎖配列を含む。
【0142】
例示的な実施形態では、PD-L1/TGFβ/CD137三重特異性体は、二つの第一の結合モジュール及び一つの第二の結合モジュールを有する。例示的な実施形態では、PD-L1/TGFβ/CD137三重特異性体は、配列番号41において示される抗体足場モジュール及び第二の結合モジュールの重鎖配列;配列番号39において示される抗体足場モジュール及び第一の結合モジュールの軽鎖配列を含み、抗体足場モジュールの重鎖配列は、配列番号42において示される配列を含む;抗体足場モジュール及び第一の結合モジュールの軽鎖配列は、配列番号39において示される配列を含む。例示的な実施形態では、PD-L1/TGFβ/CD137三重特異性抗体が、N末端からC末端へ以下の構造を有する:抗体足場モジュール及び第二の結合モジュールの重鎖配列は、配列番号43において示される配列を含み;抗体足場モジュール及び第一の結合モジュールの軽鎖配列は、配列番号39において示される配列を含み、抗体足場モジュールの重鎖配列は、配列番号42において示される配列を含み;抗体足場モジュール及び第一の結合モジュールの軽鎖配列は、配列番号39において示される配列を含む。
【0143】
例示的な実施形態では、PD-L1/TGFβ/CD137三重特異性体の抗体足場モジュールは、定常領域をさらに含む。例示的な実施形態では、PD-L1/TGFβ/CD137三重特異性体の抗体足場モジュールの定常領域は、少なくとも一つのFcサイレンシング変異を含む。例示的な実施形態では、PD-L1/TGFβ/CD137三重特異性体の抗体足場モジュールの定常領域中でのFcサイレンシング変異は、L234A L235A又はN297Aである。例示的な実施形態では、PD-L1/TGFβ/CD137三重特異性体の抗体足場モジュールの定常領域は、ノブ・イン・ホール(KiH)変異を含む。
【0144】
一部の実施形態によると、本開示は、1)PD-L1とその受容体PD-1間での相互作用を遮断する;2)CD137シグナル伝達についての架橋依存的アゴニスト活性を持つ;及び/又は3)TGFβの免疫抑制活性を中和するPD-L1/TGFβ/CD137三重特異性体(例、1923Ab7、1923Ab9、1923Ab10、1923Ab17及び1923Ab19)を提供する。
【0145】
一部の実施形態では、開示されているPD-L1/TGFβ/CD137三重特異性体は、抗体足場モジュールとして、PD-L1に結合する結合タンパク質の一つ(例、1923Ab2又は1923Ab3)から由来するアミノ酸配列、及び第一の結合モジュールとして、本明細書中に開示されるヒトTGFβRII受容体のECDから由来するTGFβ結合アミノ酸配列、及びCD137の第二の結合モジュールとして、本明細書中に開示される、CD137に結合する結合タンパク質の一つ(例、1923Ab4、1923Ab5、又は1923Ab6)から由来するアミノ酸配列を含む。
【0146】
一部の実施形態では、PD-L1/TGFβ/CD137三重特異性体は、PD-1/PD-L1結合相互作用を破壊し、T細胞のPD-1/PD-L1チェックポイント媒介性阻害を脱抑制する抗体足場モジュールを含む。PD-L1抗体足場モジュールは、IgG分子(例、1923Ab7、1923Ab9、1923Ab10、1923Ab17、1923Ab19)の形態であり得る。
【0147】
一部の実施形態では、開示されているPD-L1/TGFβ/CD137三重特異性体は、CD137/CD137リガンド相互作用を遮断し、CD137シグナル伝達についてのアゴニスト活性を持つ、CD137の第二の結合モジュールをさらに含む。代替的な実施形態では、CD137の第二の結合モジュールは、scFv(例、1923Ab7、1923Ab9、1923Ab10、1923Ab17、及び1923Ab19)を含み得る。代替的な実施形態では、開示されているPD-L1/TGFβ/CD137三重特異性体は、PD-L1抗体足場モジュールの重鎖又は軽鎖のC末端に融合された第二の結合モジュール(例、CD137 scFv)を含み得る。代替的な実施形態では、開示されているPD-L1/TGFβ/CD137三重特異性体は、PD-L1抗体足場モジュールの重鎖又は軽鎖のN末端に融合された第二の結合モジュール(例、CD137 scFv)を含み得る。
【0148】
一部の実施形態では、CD137に結合する第二の結合モジュールは、CD137への一価結合に寄与する。代替的な実施形態では、CD137に結合する第二の結合モジュールは、CD137への二価結合に寄与する。
【0149】
一部の実施形態では、第二の結合モジュールは、CD137 scFvであり、ジスルフィド結合で安定化され得る。
【0150】
一部の実施形態では、PD-L1/TGFβ/CD137三重特異性体は、TGFβの第一の結合モジュールを含む。一部の実施形態では、開示されているTGFβの第一の結合モジュールは、ヒトTGFβRII受容体の細胞外ドメインを含む。TGFβの第一の結合モジュールは、腫瘍微小環境において存在するTGFβの生物学的活性を中和するように機能する。代替的な実施形態では、TGFβの第一の結合モジュールは、ヒトTGFβに結合することが可能であるヒトTNFβRII受容体の切断バージョン(例、N末端又はC末端切断)を含む。
【0151】
代替的な実施形態では、開示されているPD-L1/TGFβ/CD137三重特異性体は、TGFβの第一の結合モジュールが、リンカーを介して、PD-L1抗体足場モジュールのC末端に又は重鎖もしくは軽鎖のN末端に付着されているPD-L1抗体足場モジュールを含む。
【0152】
一部の実施形態では、開示されているPD-L1/TGFβ/CD137三重特異性体は、対称である分子設計を有する抗体足場モジュールを含む(例、1923Ab7、1923Ab17及び1923Ab19)。代替的な実施形態では、開示されているPD-L1/TGFβ/CD137三重特異性体は、非対称設計(例、1923Ab9及び1923Ab10)により特徴付けられる。非対称の、開示されているPD-L1/TGFβ/CD137三重特異性体の重鎖のヘテロ二量体化を方向付けるために、ノブ・イントゥ・ホール(KIH)技術を適用することができる。
【0153】
一部の実施形態では、PD-L1/TGFβ/CD137三重特異性1923Ab7は、1923Ab3からの二つのFabを有するPD-L1抗体足場モジュール、L234A L235A変異を伴う二つのFc定常鎖を有するヒトIgG1 Fc(配列番号61)、各々が二つのFc定常鎖の各々のC末端に別々に付着されている、1923Ab4から由来するCD137 scFv(VHがVLに先行する)の形態における二つの第二の結合モジュール(配列番号53)、及び各々がFab中の各軽鎖のC末端に別々に付着されている、TGFβRIIの細胞外ドメインをコードするポリペプチドとしての二つのTGFβの第一の結合モジュール(配列番号67)を含む。
【0154】
一部の実施形態では、PD-L1/TGFβ/CD137三重特異性1923Ab9 は、1923Ab3からの二つのFabを有するPD-L1抗体足場モジュール、L234A L235A変異及びノブ・イン・ホール(KiH)変異を伴う二つのFc定常鎖を有するヘテロ二量体ヒトIgG1 Fc(例、Fc定常鎖は配列番号62及び63において示される)、ノブFc定常鎖のC末端に付着された、1923Ab4から由来するCD137 scFv(VHがVLに先行する)の形態における一つの第二の結合モジュール(配列番号53)、ならびに各々がFab中の各軽鎖のC末端に別々に付着されている、TGFβRIIの細胞外ドメインをコードするポリペプチドとしての二つのTGFβの第一の結合モジュール(配列番号67)を含む。
【0155】
一部の実施形態では、PD-L1/TGFβ/CD137三重特異性1923Ab10 は、1923Ab3からの二つのFabを有するPD-L1抗体足場モジュール、L234A L235A変異及びノブ・イン・ホール(KiH)変異を伴う二つのFc鎖を有するヘテロ二量体ヒトIgG1 Fc(例、Fc定常鎖は配列番号62及び63において示される)、ノブFc定常鎖のC末端に付着された、1923Ab4から由来するCD137 scFv(VLがVHに先行する)の形態における一つの第二の結合モジュール(配列番号54)、ならびに各々がFab中の各軽鎖のC末端に別々に付着された、TGFβRIIの細胞外ドメインをコードするポリペプチドとしての二つのTGFβの第一の結合モジュール(配列番号67)を含む。
【0156】
一部の実施形態では、PD-L1/TGFβ/CD137三重特異性1923Ab17は、1923Ab3からの二つのFabを有するPD-L1抗体足場モジュール、L234A L235A変異を伴う二つのFc鎖を有するヒトIgG1 Fc(配列番号61)、各々がFc鎖の各々のC末端に別々に付着された、1923Ab4から由来するジスルフィド結合で安定化されたCD137 scFv(VHがVLに先行する)の形態における二つの第二の結合モジュール(配列番号55)、及び各々がFab中の各軽鎖のC末端に別々に付着された、TGFβRIIの細胞外ドメインをコードするポリペプチドとしての二つのTGFβの第一の結合モジュール(配列番号67)を含む。
【0157】
一部の実施形態では、PD-L1/TGFβ/CD137三重特異性1923Ab19は、1923Ab3からの二つのFabを有するPD-L1抗体足場モジュール、L234A L235A変異を伴う二つのFc鎖を有するヒトIgG1 Fc(配列番号61)、各々がFab中の各軽鎖のC末端に別々に付着された、TGFβRIIの細胞外ドメインをコードするポリペプチドとしての二つのTGFβの第一の結合モジュール(配列番号67)、及び各々がFc鎖の各々のC末端に別々に付着された、1923Ab4から由来する二つのCD137の第二の結合モジュールジスルフィド結合安定化scFv(VHがVLに先行する)(配列番号56)を含む。
【0158】
一部の実施形態では、PD-L1/TGFβ/CD137三重特異性体は、表7中に開示される重鎖及び/又は軽鎖配列から由来するPD-L1抗体足場モジュールを含む。代替的な実施形態では、PD-L1/TGFβ/CD137三重特異性体は、表7に従って対になった二つの重鎖及び軽鎖配列の組み合わせを含む。
【0159】
一部の実施形態では、PD-L1/TGFβ/CD137三重特異性体は、以下の組み合わせから選択される、重鎖配列及び軽鎖配列を含む:
(a)配列番号38を含む重鎖配列及び配列番号39を含む軽鎖配列;
(b)配列番号48を含む重鎖配列及び配列番号49を含む軽鎖配列;
(c)配列番号50を含む重鎖配列及び配列番号39を含む軽鎖配列;ならびに
(d)配列番号51を含む重鎖配列及び配列番号52を含む軽鎖配列。
【0160】
一部の実施形態では、PD-L1/TGFβ/CD137三重特異性体は、以下の組み合わせから選択される、二つの異なる可変重鎖配列(ノブ・イントゥ・ホールフォーマットを使用してヘテロ二量体化するように設計)及び可変軽鎖配列を含む:(a)配列番号41を含む第一の重鎖配列、配列番号42を含む第二の重鎖配列及び配列番号39を含む軽鎖配列;ならびに(b)配列番号43を含む第一の重鎖配列、配列番号42を含む第二の重鎖配列及び配列番号39を含む軽鎖配列。
【0161】
一部の実施形態では、PD-L1/TGFβ/CD137三重特異性体は、配列番号38、41、42、43、48、50及び51からなる群から選択される重鎖配列、又は配列番号38、41、42、43、48、50もしくは51と少なくとも90%の配列同一性を有するその類似体もしくは誘導体を含む。
【0162】
他の実施形態では、PD-L1/TGFβ/CD137三重特異性体は、配列番号39、49及び52からなる群から選択される軽鎖配列、又は配列番号39、49もしくは52と少なくとも90%の配列同一性を有するその類似体もしくは誘導体を含む。
【0163】
一部の実施形態では、開示されているPD-L1/TGFβ/CD137三重特異性体は、Fc γRとの架橋活性を消失/最小化するように操作されたFc領域をさらに含み、それは、T細胞のFc媒介性エフェクター機能をサイレンシング又は排除する。
【0164】
一部の実施形態では、PD-L1/TGFβ/CD137三重特異性体は、単独で、又は組み合わせにおいて、以下の機能的特徴の一つ又は複数を示す:
(a)ヒトPD-L1、CD137及びTGFβに結合することが可能である;
(b)カニクイザルPD-L1及びCD137と交差反応する;
(c)PD-1及びPD-L1の相互作用を破壊(例、低下又は防止)する;
(d)CD137に結合するヒトCD137Lを破壊する(例、低下させる又は防止する);(e)CD137に対して高速オン及び高速オフ特性を示す;
(f)T細胞PD-L1媒介性チェックポイント阻害シグナルを脱抑制する;
(g)TGFβシグナル伝達を阻害し、その生物学的活性を中和する;
(h)CD137シグナル伝達へのPD-L1依存的アゴニスト活性を持つ;
(i)PD-L1依存的な様式においてT細胞を活性化する;及び
(j)CD8 T細胞を活性化することによりPD-L1発現腫瘍細胞を死滅させる。
【0165】
本開示はまた、本明細書中に開示されるPD-L1/TGFβ/CD137三重特異性体の少なくとも一つ、ならびに、場合により、医薬的に許容可能な希釈剤、担体、媒体及び/又は賦形剤を含む、あるいはそれらからなる医薬組成物を提供する。そのような医薬組成物は、癌の治療のために使用され得る。
【0166】
本開示はまた、患者における癌の治療のための方法に関し、単独で、又は別の治療用薬剤との組み合わせにおいて、本明細書中に開示されるPD-L1/TGFβ/CD137三重特異性体の少なくとも一つの治療有効量を患者に投与することを含む。
【0167】
本開示はまた、本明細書中に記載されるPD-L1/TGFβ/CD137三重特異性体の少なくとも一つをコードする単離ポリヌクレオチド配列を提供する。本開示はまた、本明細書中に記載されるPD-L1/TGFβ/CD137三重特異性配列の少なくとも一つをコードする単離ポリヌクレオチド配列を提供する。
【0168】
本開示はまた、本明細書中に記載されるPD-L1/TGFβ/CD137三重特異性体のポリヌクレオチドを含むベクターを提供する。
【0169】
本開示はまた、本明細書中に記載されるPD-L1/TGFβ/CD137三重特異性ポリヌクレオチド配列の少なくとも一つを含むベクターを提供する。
【0170】
本開示はまた、本明細書中に記載されるPD-L1/TGFβ/CD137三重特異性ポリヌクレオチド配列の一つ、又は上のベクターの一つを含む細胞を提供する。
【0171】
本開示はまた、CD137、TGFβ、及びPD-L1に結合する結合タンパク質を提供し、以下を含む:(a)CD137に結合する第一の抗原結合部位及びCD137に結合する第二の抗原結合部位を含むIgGフォーマットにおける抗体足場モジュール;(b)TGFβに結合する第三の抗原結合部位を含む少なくとも一つの第一の結合モジュール;ならびに(c)PD-L1に結合する第四の抗原結合部位を含む少なくとも一つの第二の結合モジュール。一部の実施形態では、本開示はまた、CD137に結合する抗体足場モジュール、ヒトTGFβに結合し、その活性を中和することが可能であるTGFβ受容体II結合タンパク質から由来するアミノ酸配列を含む第一の結合モジュール、及びPD-L1に結合する第二の結合モジュールを含む組換えタンパク質の形態において構築されるCD137/TGFβ/PD-L1三重特異性体を提供する。
【0172】
例示的な実施形態では、CD137/TGFβ/PD-L1三重特異性体の第一の抗原結合部位及び第二の抗原結合部位は、CDR1:配列番号5、CDR2:配列番号22、及びCDR3:配列番号23を含む重鎖可変領域配列;ならびにCDR1:配列番号24、CDR2:配列番号25、及びCDR3:配列番号26を含む軽鎖可変領域配列を含む。例示的な実施形態では、CD137/TGFβ/PD-L1三重特異性体の第一の抗原結合部位及び第二の抗原結合部位は、CDR1:配列番号27、CDR2:配列番号28、及びCDR3:配列番号29を含む重鎖可変領域配列;ならびにCDR1:配列番号30、CDR2:配列番号9、及びCDR3:配列番号31を含む軽鎖可変領域配列を含む。例示的な実施形態では、CD137/TGFβ/PD-L1三重特異性体の第一の抗原結合部位及び第二の抗原結合部位は、CDR1:配列番号32、CDR2:配列番号33、及びCDR3:配列番号34を含む重鎖可変領域配列;ならびにCDR1:配列番号35、CDR2:配列番号36、及びCDR3:配列番号37を含む軽鎖可変領域配列を含む。
【0173】
例示的な実施形態では、CD137/TGFβ/PD-L1三重特異性体の抗体足場モジュールは、配列番号16、配列番号18、又は配列番号20において示される重鎖可変領域配列を含む。例示的な実施形態では、CD137/TGFβ/PD-L1三重特異性体の抗体足場モジュールは、配列番号17、配列番号19、又は配列番号21において示される軽鎖可変領域配列を含む。
【0174】
例示的な実施形態では、CD137/TGFβ/PD-L1三重特異性体の抗体足場モジュールは、配列番号16において示される重鎖可変領域配列及び配列番号17において示される軽鎖可変領域配列を含む。例示的な実施形態では、CD137/TGFβ/PD-L1三重特異性体の抗体足場モジュールは、配列番号18において示される重鎖可変領域配列及び配列番号19において示される軽鎖可変領域配列を含む。例示的な実施形態では、CD137/TGFβ/PD-L1三重特異性体の抗体足場モジュールは、配列番号20において示される重鎖可変領域配列及び配列番号21において示される軽鎖可変領域配列を含む。
【0175】
例示的な実施形態では、CD137/TGFβ/PD-L1三重特異性体の抗体足場モジュールは、配列番号16において示される重鎖可変領域配列、配列番号60、配列番号61、配列番号62、配列番号63、又は配列番号64において示される重鎖定常領域配列、配列番号17において示される軽鎖可変領域配列、及び配列番号65又は配列番号66において示される軽鎖定常領域配列を含む。例示的な実施形態では、CD137/TGFβ/PD-L1三重特異性体の抗体足場モジュールは、配列番号18において示される重鎖可変領域配列、配列番号60、配列番号61、配列番号62、配列番号63、又は配列番号64において示される重鎖定常領域配列、配列番号19において示される軽鎖可変領域配列、及び配列番号65又は配列番号66において示される軽鎖定常領域配列を含む。例示的な実施形態では、CD137/TGFβ/PD-L1三重特異性体の抗体足場モジュールは、配列番号20において示される重鎖可変領域配列、配列番号60、配列番号61、配列番号62、配列番号63、又は配列番号64において示される重鎖定常領域配列、配列番号21において示される軽鎖可変領域配列、及び配列番号65又は配列番号66において示される軽鎖定常領域配列を含む。
【0176】
例示的な実施形態では、CD137/TGFβ/PD-L1三重特異性体の抗体足場部分は、配列番号75において示される重鎖配列及び配列番号76において示される軽鎖配列を含む。
【0177】
例示的な実施形態では、CD137/TGFβ/PD-L1三重特異性体は、一つの第一の結合モジュールを有する。例示的な実施形態では、CD137/TGFβ/PD-L1三重特異性体は、二つの第一の結合モジュールを有する。例示的な実施形態では、CD137/TGFβ/PD-L1三重特異性体は、C末端及びN末端を含む重鎖配列を含む抗体足場モジュールを有し、それにおいて、抗体足場モジュールは、C末端及びN末端を含む軽鎖配列を含み、第一の結合モジュールは、抗体足場モジュール重鎖配列のC末端、抗体足場モジュール軽鎖配列のC末端、抗体足場モジュール重鎖配列のN末端、抗体足場モジュール軽鎖配列のN末端、又はそれらの組み合わせに共有結合的に付着されており、場合により、第一の結合モジュール及び抗体足場モジュールは、直接的に又は第一の結合モジュールインターリンカーを通じて互いに共有結合的に付着されている。例示的な実施形態では、CD137/TGFβ/PD-L1三重特異性体の第一の結合モジュール及び抗体足場モジュールは、第一の結合モジュールインターリンカーを通じて互いに共有結合的に付着され、第一の結合モジュールインターリンカーは、配列番号58において示されている。例示的な実施形態では、CD137/TGFβ/PD-L1三重特異性体の第一の結合モジュール及び抗体足場モジュールは、配列番号59において示される第一の結合モジュールインターリンカーを通じて互いに共有結合的に付着されている。
【0178】
例示的な実施形態では、CD137/TGFβ/PD-L1三重特異性体の第一の結合モジュールは、抗体足場モジュール重鎖配列のC末端に共有結合的に付着されている。例示的な実施形態では、CD137/TGFβ/PD-L1三重特異性体の第一の結合モジュールは、抗体足場モジュール軽鎖配列のC末端に共有結合的に付着されている。例示的な実施形態では、CD137/TGFβ/PD-L1三重特異性体において一つを上回る第一の結合モジュールがある場合、各々は、異なる抗体足場モジュール配列に又は抗体足場モジュール配列の異なる末端に共有結合的に付着されている。
【0179】
例示的な実施形態では、CD137/TGFβ/PD-L1三重特異性体における第一の結合モジュールは、TGFβRIIの細胞外ドメインを含む。例示的な実施形態では、CD137/TGFβ/PD-L1三重特異性体におけるTGFβRIIの細胞外ドメインは、配列番号67において示される配列を含む。
【0180】
例示的な実施形態では、CD137/TGFβ/PD-L1三重特異性体における第二の結合モジュールは、scFvであり、それは、重鎖可変領域配列及び軽鎖可変配列を含み、それにおいて、配列は、直接的に又はscFv融合リンカーを通じて互いに共有結合的に付着されている。例示的な実施形態では、scFv融合リンカーはグリシン及びセリンを含む。例示的な実施形態では、scFv融合リンカーは配列Gly-Gly-Gly-Serを含む。例示的な実施形態では、scFv融合リンカーは、配列番号58において示される配列を含む。例示的な実施形態では、scFv融合リンカーは、配列番号58において示される配列である。例示的な実施形態では、scFv融合リンカーは、配列番号59において示される配列を含む。CD137抗体が足場部分を提供する例示的なCD137/TGFβ/PD-L1三重特異性体の実施形態では、第二の結合モジュールは、配列番号57を含むPD-L1に結合するscFvである。
【0181】
例示的な実施形態では、CD137/TGFβ/PD-L1三重特異性体は、一つの第二の結合モジュールを有する。例示的な実施形態では、CD137/TGFβ/PD-L1三重特異性体は、二つの第二の結合モジュールを有する。例示的な実施形態では、CD137/TGFβ/PD-L1三重特異性体の抗体足場モジュールは、C末端及びN末端を含む重鎖配列を含み、それにおいて、抗体足場モジュールは、C末端及びN末端を含む軽鎖配列を含み、第二の結合モジュールは、抗体足場モジュール重鎖配列のC末端、抗体足場モジュール軽鎖配列のC末端、抗体足場モジュール重鎖配列のN末端、抗体足場モジュール軽鎖配列のN末端、又はそれらの組み合わせに共有結合的に付着されており、場合により、第二の結合モジュール及び抗体足場モジュールは、直接的に又は第二の結合モジュールインターリンカーを通じて互いに共有結合的に付着されている。
【0182】
例示的な実施形態では、CD137/TGFβ/PD-L1三重特異性体の第二の結合モジュール及び抗体足場モジュールは、第二の結合モジュールインターリンカー、及び配列番号58において示される第二の結合モジュールインターリンカーを通じて互いに共有結合的に付着されている。例示的な実施形態では、CD137/TGFβ/PD-L1三重特異性体の第二の結合モジュール及び抗体足場モジュールは、配列番号59において示される第二の結合モジュールインターリンカーを通じて互いに共有結合的に付着されている。
【0183】
例示的な実施形態では、CD137/TGFβ/PD-L1三重特異性体の第二の結合モジュールは、抗体足場モジュール重鎖配列のC末端に共有結合的に付着されている。例示的な実施形態では、CD137/TGFβ/PD-L1三重特異性体の第一の結合モジュールは、抗体足場モジュール軽鎖配列のC末端に共有結合的に付着されている。例示的な実施形態では、CD137/TGFβ/PD-L1三重特異性体の第二の結合モジュールは、抗体足場モジュール重鎖配列のC末端に共有結合的に付着され、CD137/TGFβ/PD-L1三重特異性体の第一の結合モジュールは、抗体足場モジュール軽鎖配列のC末端に共有結合的に付着されている。
【0184】
例示的な実施形態では、CD137/TGFβ/PD-L1三重特異性体の第二の結合モジュールは、抗体足場モジュール軽鎖配列のC末端に共有結合的に付着されている。例示的な実施形態では、CD137/TGFβ/PD-L1三重特異性体の第一の結合モジュールは、抗体足場モジュール重鎖配列のC末端に共有結合的に付着されている。例示的な実施形態では、CD137/TGFβ/PD-L1三重特異性体の第二の結合モジュールは、抗体足場モジュール軽鎖配列のC末端に共有結合的に付着され、CD137/TGFβ/PD-L1三重特異性体の第一の結合モジュールは、抗体足場モジュール重鎖配列のC末端に共有結合的に付着されている。
【0185】
例示的な実施形態では、CD137/TGFβ/PD-L1三重特異性体において一つを上回る第二の結合モジュールがある場合、各々は、異なる抗体足場モジュール配列に又は抗体足場モジュールの異なる末端に共有結合的に共有結合的に付着されている。例示的な実施形態では、CD137/TGFβ/PD-L1三重特異性体は、一つの第二の結合モジュールを有し、一つの第二の結合モジュールは、抗体足場モジュール重鎖配列のC末端に共有結合的に付着されている。
【0186】
例示的な実施形態では、CD137/TGFβ/PD-L1三重特異性体は、一つの第二の結合モジュールを有し、一つの第二の結合モジュールは、抗体足場モジュール軽鎖配列のC末端に共有結合的に付着されている。例示的な実施形態では、CD137/TGFβ/PD-L1三重特異性体は、二つの第二の結合モジュールを有し、一つの第二の結合モジュールは、抗体足場モジュール重鎖配列のC末端に共有結合的に付着され、他の第二の結合モジュールは、抗体足場モジュール軽鎖配列のC末端に共有結合的に付着されている。例示的な実施形態では、CD137/TGFβ/PD-L1三重特異性体の第二の結合モジュールは、scFvである。
【0187】
例示的な実施形態では、CD137/TGFβ/PD-L1三重特異性体の第二の結合モジュールは、N末端からC末端に、CDR1:配列番号5、CDR2:配列番号6、及びCDR3:配列番号7を含む重鎖可変領域配列;ならびにCDR1:配列番号8、CDR2:配列番号9、及びCDR3:配列番号10を含む軽鎖可変領域配列を含む。例示的な実施形態では、CD137/TGFβ/PD-L1三重特異性体の第二の結合モジュールは、N末端からC末端に、CDR1:配列番号11、CDR2:配列番号12、及びCDR3:配列番号13を含む重鎖可変領域配列;ならびにCDR1:配列番号14、CDR2:配列番号9、及びCDR3:配列番号15を含む軽鎖可変領域配列を含む。
【0188】
例示的な実施形態では、CD137/TGFβ/PD-L1三重特異性体の第二の結合モジュールは、N末端からC末端に、配列番号1において示される重鎖可変領域配列及び配列番号2において示される軽鎖可変領域配列を含む。例示的な実施形態では、CD137/TGFβ/PD-L1三重特異性体の第二の結合モジュールは、N末端からC末端に、配列番号3において示される重鎖可変領域配列及び配列番号4において示される軽鎖可変領域配列を含む。例示的な実施形態では、CD137/TGFβ/PD-L1三重特異性体の第二の結合モジュールは、配列番号57において示される配列を含む。
【0189】
例示的な実施形態では、CD137/TGFβ/PD-L1三重特異性体は、二つの第一の結合モジュール及び二つの第二の結合モジュールを有する。例示的な実施形態では、CD137/TGFβ/PD-L1三重特異性体は、抗体足場モジュール及び第二の結合モジュールの重鎖配列が配列番号48を含み;ならびに抗体足場モジュール及び第一の結合モジュールの軽鎖配列が配列番号49を含む構造を有する。
【0190】
例示的な実施形態では、CD137/TGFβ/PD-L1三重特異性体の抗体足場モジュールは、定常領域をさらに含む。例示的な実施形態では、CD137/TGFβ/PD-L1三重特異性体の抗体足場モジュールの定常領域は、少なくとも一つのFcサイレンシング変異を含む。例示的な実施形態では、CD137/TGFβ/PD-L1三重特異性体の抗体足場モジュールの定常領域中でのFcサイレンシング変異は、L234A L235A又はN297Aである。例示的な実施形態では、CD137/TGFβ/PD-L1三重特異性体の抗体足場モジュールの定常領域は、ノブ・イン・ホール(KiH)変異を含む。
【0191】
一部の実施形態によると、本開示は、1)CD137とそのリガンドの間での相互作用を遮断する;2)PD-1及びPD-L1の相互作用を破壊する(例、低下させる又は防止する);及び3)TGFβの免疫抑制活性を中和する、CD137/TGFβ/PD-L1三重特異性体(1923Ab16)を提供する。
【0192】
一部の実施形態では、開示されているCD137/TGFβ/PD-L1三重特異性体は、抗体足場モジュールとして、CD137に結合する結合タンパク質の一つ(例、1923Ab4、1923Ab5又は1923Ab6)から由来するアミノ酸配列、及び第一の結合モジュールとして、本明細書中に開示されるヒトTGFβRII受容体のECDから由来するTGFβ結合アミノ酸配列、及びPD-L1の第二の結合モジュールとして、本明細書中に開示されるPD-L1に結合する結合タンパク質の一つ(例、1923Ab2、又は1923Ab3)から由来するアミノ酸配列を含む。
【0193】
一部の実施形態では、CD137/TGFβ/PD-L1三重特異性体は、CD137/CD137リガンド相互作用を遮断し、CD137シグナル伝達についてのアゴニスト活性を持つ抗体足場モジュールを含む。CD137抗体足場モジュールは、IgG分子(例、1923Ab16)又はその結合断片の形態であり得る。
【0194】
一部の実施形態では、開示されているCD137/TGFβ/PD-L1三重特異性体は、PD-1/PD-L1結合相互作用を破壊し、T細胞のPD-1/PD-L1チェックポイント媒介性阻害を脱抑制する、PD-L1の第二の結合モジュールをさらに含む。代替的な実施形態では、PD-L1の第二の結合モジュールは、scFv(例、1923Ab16)を含み得る。代替的な実施形態では、開示されているCD137/TGFβ/PD-L1三重特異性体は、CD137抗体足場モジュールの重鎖又は軽鎖のC末端に融合されたPD-L1 scFvの第二の結合モジュールを含み得る。
【0195】
一部の実施形態では、PD-L1の第二の結合モジュールは、PD-L1への一価結合に寄与する。代替的な実施形態では、PD-L1の第二の結合モジュールは、PD-L1への二価結合に寄与する。
【0196】
一部の実施形態では、PD-L1のscFvの第二の結合モジュールは、ジスルフィド結合で安定化され得る。
【0197】
一部の実施形態では、開示されているCD137/TGFβ/PD-L1三重特異性体は、TGFβの第一の結合モジュールとして本明細書中に例示される腫瘍微小環境調節因子を含む。一部の実施形態では、開示されているTGFβの第一の結合モジュールは、ヒトTGFβRII受容体の細胞外ドメインを含む。TGFβの第一の結合モジュールは、腫瘍微小環境において存在するTGFβの生物学的活性を中和するように機能する。代替的な実施形態では、TGFβの第一の結合モジュールは、ヒトTGFβに結合することが可能であるヒトTNFβRII受容体の切断バージョン(例、N末端又はC末端切断)を含み得る。
【0198】
代替的な実施形態では、開示されているCD137/TGFβ/PD-L1三重特異性体は、CD137抗体結合モジュールを含み、それにおいて、TGFβの第一の結合モジュールは、リンカーを介して、CD137抗体結合モジュールの重鎖又は軽鎖のC末端に又はN末端に付着されている。
【0199】
一部の実施形態では、CD137/TGFβ/PD-L1三重特異性体は、対称である分子設計を有する。代替的な実施形態では、CD137/TGFβ/PD-L1三重特異性体は、非対称設計により特徴付けられる。非対称の開示されているCD137/TGFβ/PD-L1三重特異性体の重鎖のヘテロ二量体化を方向付けるために、ノブ・イントゥ・ホール(KIH)技術を適用することができる。
【0200】
一部の実施形態では、CD137/TGFβ/PD-L1三重特異性1923Ab16は、1923Ab4からの二つのFabを有するCD137抗体足場モジュール、L234A L235A変異を伴う二つのFc鎖を有するヒトIgG1 Fc(配列番号61)、各々がFc鎖の各々のC末端に別々に付着された、1923Ab3から由来する二つのPD-L1の第二の結合モジュールscFv(VHがVLに先行する)(配列番号57)、及び各々がFab中の各軽鎖のC末端に別々に付着された、TGFβRIIの細胞外ドメインをコードするポリペプチドとしての二つのTGFβの第一の結合モジュール(配列番号67)を含む。
【0201】
一部の実施形態では、開示されているCD137/TGFβ/PD-L1三重特異性体は、Fc γRとの架橋活性を消失/最小化するように操作されたFc領域をさらに含み、それは、T細胞のFc媒介性エフェクター機能をサイレンシング又は排除する。
【0202】
一部の実施形態では、CD137/TGFβ/PD-L1三重特異性体は、単独で又は組み合わせにおいて、以下の機能的特徴の一つ又は複数を示す:
(a)ヒトPD-L1、CD137及びTGFβに結合することが可能である;
(b)カニクイザルPD-L1及びCD137と交差反応する;
(c)PD-1及びPD-L1の相互作用を破壊(例、低下又は防止)する;
(d)CD137に結合するヒトCD137Lを破壊(例、低下又は防止)する;
(e)CD137に対して高速オン及び高速オフ特性を示す;
(f)T細胞PD-L1媒介性チェックポイント阻害シグナルを脱抑制する;
(g)TGFβシグナル伝達を阻害し、その生物学的活性を中和する;
(h)CD137シグナル伝達へのPD-L1依存的アゴニスト活性を持つ;
(i)PD-L1依存的な様式においてT細胞を活性化する;及び
(j)CD8 T細胞を活性化することによりPD-L1発現腫瘍細胞を死滅させる。
【0203】
本開示はまた、本明細書中に開示されるCD137/TGFβ/PD-L1三重特異性体の少なくとも一つ、ならびに、場合により、医薬的に許容可能な希釈剤、担体、媒体及び/又は賦形剤を含む、あるいはそれらからなる医薬組成物を提供する。そのような医薬組成物は、癌の抗体ベースの免疫療法のために使用され得る。
【0204】
本開示はまた、患者における癌の治療のための方法に関し、単独で、又は別の治療用薬剤との組み合わせにおいて、本明細書中に開示されるCD137/TGFβ/PD-L1三重特異性体の少なくとも一つの治療有効量を患者に投与することを含む。
【0205】
本開示はまた、本明細書中に記載されるCD137/TGFβ/PD-L1三重特異性体の少なくとも一つをコードする単離ポリヌクレオチド配列を提供する。本開示はまた、本明細書中に記載されるCD137/TGFβ/PD-L1三重特異性配列の少なくとも一つをコードする単離ポリヌクレオチド配列を提供する。
【0206】
本開示はまた、本明細書中に記載されるCD137/TGFβ/PD-L1三重特異性体のポリヌクレオチドを含むベクターを提供する。
【0207】
本開示はまた、本明細書中に記載されるCD137/TGFβ/PD-L1三重特異性ポリヌクレオチド配列の少なくとも一つを含むベクターを提供する。
【0208】
本開示はまた、本明細書中に記載されるCD137/TGFβ/PD-L1三重特異性ポリヌクレオチド配列の一つ、又は上のベクターの一つを含む細胞を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0209】
前述の概要、ならびに以下の本開示の詳細な説明は、添付図面と併せて読まれる場合に、より良く理解されるであろう。本開示を例証する目的のために、図面中に示されるのは、現在好ましい実施形態である。しかし、本開示は、示される正確な配置、実施例、及び手段に限定されないことが理解されるべきである。
【0210】
図1A図1A~Kは、PD-L1に結合する又はCD137に結合するヒト結合タンパク質のVHドメイン及びVLドメインのアミノ酸配列、PD-L1/CD137二重特異性体、PD-L1/TGFβ二重特異性体、及びPD-L1/CD137/TGFβ三重特異性体のHC配列及びLC配列、ならびに開示されている三重特異性体を調製するために使用されるscFvサブユニットを提供する。抗PD-L1及び抗CD137のCDR配列(Kabatナンバリング)は、それらのそれぞれの可変ドメイン配列において下線が引かれている。配列識別子が提供される。
図1B】同上。
図1C】同上。
図1D】同上。
図1E】同上。
図1F】同上。
図1G】同上。
図1H】同上。
図1I】同上。
図1J】同上。
図1K】同上。
【0211】
図2図2A~Bは、ELISAによる、ヒト、マウス及びカニクイザルPD-L1タンパク質に対するPD-L1単一特異性体、A)1923Ab2及びB)1923Ab3の結合活性を示す。
【0212】
図3図3は、画像結合アッセイによる、ヒトPD-L1発現HEK293TにおけるPD-L1単一特異性体の結合活性を示す。
【0213】
図4図4A~Bは、PD-1/PD-L1遮断レポーターアッセイによる、PD-L1及びPD-1の相互作用を遮断するための、PD-L1単一特異性体、A)1923Ab2及びB)1923Ab3の活性を示す。
【0214】
図5-1】図5A~Cは、画像結合アッセイによる、ヒト、マウス、及びカニクイザルCD137発現HEK293T細胞へのCD137単一特異性体の結合活性を示す。
図5-2】同上。
【0215】
図6図6は、画像結合アッセイによる、ヒトCD137発現HEK293T細胞へのCD137抗体の結合活性の比較を示す。
【0216】
図7図7は、バイオレイヤーインターフェロメトリ(BLI)による、CD137に対するCD137L結合を遮断するCD137単一特異性体の活性を示す。
【0217】
図8図8は、ヒトCD137及びNFκBルシフェラーゼレポーターを発現するHEK293T CD137レポーター細胞に対するCD137単一特異性体の架橋の効果を示す。
【0218】
図9図9は、IFNγ分泌を誘導するための抗CD3で刺激されたヒトPBMCに対するCD137単一特異性体の架橋の効果を示す。
【0219】
図10-1】図10Aは、四つのヒト/マウスハイブリッドCD137発現構築物の概略図を示す。ヒトCRD領域を、それらのマウス対応物により置換し、HEK293T細胞上で一過性に発現させた。図10B~Fは、ヒトCD137野生型(10B)及びヒト/マウスハイブリッドCD137タンパク質msCRD1(10C)、msCRD2(10D)、msCRD3(10E)及びmsCRD4(10F)に対する、ウレルマブ-NR (PC2)、ウレルマブ-NR(PC3)及び1923Ab4の結合活性を示す。
図10-2】同上。
図10-3】同上。
【0220】
図11-1】図11Aは、ヒト及びマウスCD137のCRD4ドメインの配列アライメントを示す。ヒトCD137の五つの発現構築物は、M1-M5により示されるようにヒトアミノ酸配列をマウスアミノ酸配列に変化させ、HEK293T細胞上で一過性に発現させることにより生成された。図11B~Gは、ヒトCD137 WT(11B)、ならびに五つの変異ヒトCD137タンパク質M1(11C)、M2(11D)、M3(11E)、M4(11F)及びM5(11G)に対するウレルマブ-NR(PC2)及び1923Ab4の結合活性を示す。
図11-2】同上。
図11-3】同上。
【0221】
図12図12は、HDX-MSにより同定された、ヒトCD137上の1923Ab4のエピトープ領域(影付きバーとして描写される)を示す。ボックス領域は、CD137システインリッチドメイン(CRD)領域を定義する。
【0222】
図13-1】図13A~13Lは、開示されている二重特異性体及び三重特異性体の構造的特色を例証する:1923Ab7(A);1923Ab8(B)、1923Ab9 (C)、1923Ab10(D)、1923Ab11(E)、1923Ab12(F)、1923Ab13(G)、1923Ab16(H)、1923Ab17(I)、1923Ab18(J)、1923Ab19(K)及び1923Ab20(L)。
図13-2】同上。
図13-3】同上。
【0223】
図14図14A~14Bは、開示されている二重特異性体(A)及び開示されている三重特異性体(B)を含む重鎖及び軽鎖を記載する。
【0224】
図15図15は、結合タンパク質を構築するために使用される抗体足場モジュール及び結合モジュールの構造的及び機能的サブコンポーネントの詳細な説明を提供する。
【0225】
図16図16A~16Bは、画像結合アッセイ(A)及びフローサイトメトリー(B)による、ヒトCD137発現HEK293Tにおける二重特異性抗体及び三重特異性抗体の結合活性を示す。
【0226】
図17図17A~17Bは、HEK293T CD137レポーター細胞(A)及びJurkat T CD137レポーター細胞(B)を使用した、CD137シグナル伝達に対する二重特異性体及び三重特異性体のアゴニスト活性を示す。
【0227】
図18A図18A~18Bは、標的細胞(A)の存在における又は標的細胞(B)の非存在におけるJurkat T CD137レポーター細胞を使用した二重特異性体及び三重特異性体によるCD137シグナル伝達の標的細胞依存的活性化を示す。
図18B】同上。
【0228】
図19図19A~19Bは、抗体の異なる領域でCD137のscFvを融合することにより生成された(A)三重特異性体及び(B)二重特異性体の標的細胞依存的な活性化CD137シグナル伝達を示す。CD137シグナル伝達活性を、Jurkat T細胞CD137レポーター細胞を使用して評価した。
【0229】
図20図20は、PD-1/PD-L1遮断レポーターアッセイによる、PD-L1及びPD-1の相互作用を遮断するための二重特異性体及び三重特異性体の活性を示す。
【0230】
図21図21は、TGFβ遮断レポーターアッセイによる、TGFβ誘導シグナル伝達を遮断するための三重特異性体の阻害活性を示す。
【0231】
図22図22A~22Bは、IFNγ分泌を誘導するための、抗CD3で刺激されたヒトPBMCに対する二重特異性体及び三重特異性体の効果を示す。
【0232】
図23図23A~23Bは、(A)T細胞媒介性死滅活性ならびに(B)内因性PD-L1を発現するNUGC4腫瘍細胞と共培養されたヒトCD8 T細胞上での二重特異性体及び三重特異性体のIFNγ分泌の誘導を示す。
【0233】
図24図24は、CMVリコールアッセイにおいてCMV溶解物で刺激されたヒトPBMCに対する二重特異性体及び三重特異性体の抗原特異的T細胞活性化の活性を示す。IFNγの分泌レベルを、T細胞活性化の指標として測定した。
【0234】
図25図25は、1923Ab18又は媒体対照を用いた処理時のMC38-h-PD-L1腫瘍担持hCD137及びhDP-L1二重ノックインマウスにおける腫瘍成長を示す。21日目の異なる処置群からの腫瘍サイズの一元配置分散分析をプロットした。
【0235】
図26-1】図26A~26Eは、1923Ab18又は媒体対照を用いた処理時の、MC38-h-PD-L1腫瘍担持hCD137及びhDP-L1二重ノックインマウスからの腫瘍浸潤リンパ球の分析を示す。(A)CD3+CD45+、(B)CD4+CD3+、(C)CD8+CD3+、(D)CD3+中のTreg、及び(E)CD8/Treg比率のパーセンテージを要約した。
図26-2】同上。
【発明を実施するための形態】
【0236】
PD-1及びそのリガンド、プログラム死リガンド-1及びプログラム死リガンド-2(PD-L1及びPD-L2)は、T細胞活性化、耐性、及び免疫病理の間のバランスを調節する共阻害因子として作用する。PD-1/PD-L1シグナル伝達軸を標的化することは、著しい治療探索の領域である。本開示は、癌の処置のために使用することができる、PD-L1に結合する結合タンパク質(PD-L1単一特異性体)、PD-L1及びCD137に結合する結合タンパク質(PD-L1/CD137二重特異性体)、PD-L1及びTGFβに結合する結合タンパク質(PD-L1/TGFβ二重特異性体)、ならびにPD-L1、TGFβ、及びCD137に結合する結合タンパク質(PD-L1/TGFβ/CD137三重特異性)を含む、PD-L1に結合する結合タンパク質を提供する。有利なことに、本明細書中に開示される結合タンパク質は、PD-L1の阻害を可能にし、より低い用量製剤をもたらし、より少ない頻度及び/又はより効果的な投薬をもたらし、低下したコスト及び増加した効率をもたらす。本開示がより容易に理解され得るように、特定の技術用語及び科学用語が以下に具体的に定義される。本文書中の他の箇所で具体的に定義されない限り、本明細書中で使用される他の全ての技術用語及び科学用語は、本開示が属する技術分野の当業者により一般に理解される意味を有する。
【0237】
本開示全体を通して、以下の略語が使用される:
mAb又はMab又はMAb-モノクローナル抗体。
CDR-免疫グロブリン可変領域中の相補性決定領域。
VH又はVH-免疫グロブリン重鎖可変領域。
VL又はVL-免疫グロブリン軽鎖可変領域。
Fc又はFc領域-CH2及びCH3ドメインならびにヒンジ領域の一部を含む免疫グロブリン重鎖の定常領域。
Fab又はFab断片-VH、CH1及びVL、CL領域からなる抗体の一価抗原結合断片。
FR-抗体フレームワーク領域、CDR領域を除く免疫グロブリン可変領域
【0238】
本明細書中に記載されるように、用語「PD-L1」は、バリアント、アイソフォーム、ホモログ、オルソログ、及びパラログを含む。例えば、ヒトPD-L1タンパク質について特異的な抗体は、特定の場合では、ヒト以外の種からのPD-L1タンパク質と交差反応し得る。他の実施形態では、ヒトPD-L1タンパク質について特異的な抗体は、ヒトPD-L1タンパク質について特別であり得るが、種又は他の種類の交差反応性を示してもよく、あるいは特定の他の種からのPD-L1と交差反応してもよいが、しかし、全ての他の種とはしなくてもよい(例、サルPD-L1と交差反応するが、しかし、マウスPD-L1とはしない)。用語「ヒトPD-L1」は、ヒト配列PD-L1、例えばNCBI受入番号NP_054862を有するヒトPD-L1の完全なアミノ酸配列などを指す。PD-L1は、B7タンパク質ファミリーのメンバーであり、B7.1及びB7.2と約20%のアミノ酸配列同一性を共有する。ヒトPD-L1は、それぞれ、マウス及びカニクイザルPD-L1オルソログと70%及び93%のアミノ酸配列同一性を共有する。
【0239】
本明細書中で使用される場合、用語「PD-1」、「PD1」、「プログラム細胞死タンパク質1」、「CD279」、及び「分化抗原群279」(例、Genebank受入番号NP_005009(ヒト))は、T細胞調節因子の拡張CD28/CTLA-4ファミリーのメンバーであるI型膜タンパク質を意味する。PD1は、細胞外IgVドメイン、それに続く膜貫通領域を含み、細胞内尾部PD1は、活性化T細胞、B細胞、及びマクロファージの表面上に発現される。
【0240】
用語「CD137」は、4-1BB又はTNFRSF9(TNF受容体スーパーファミリーメンバー9)を指し、TNF受容体スーパーファミリー(TNFRSF)のメンバーであり、免疫細胞、自然免疫細胞及び適応免疫細胞の両方の活性化後に発現される共刺激分子である。本明細書中で使用される場合、4-1BBは、哺乳動物、例えば、ホモサピエンス(ヒト)(NCBI受入番号NP_001552)から由来し得る。本明細書中で記載される場合、用語CD137は、バリアント、アイソフォーム、ホモログ、オルソログ、及びパラログを含む。例えば、ヒトCD137タンパク質について特異的な抗体は、特定の場合では、ヒト以外の種からのCD137タンパク質と交差反応してもよい。他の実施形態では、ヒトCD137タンパク質について特異的な抗体は、ヒトCD-137タンパク質について完全に特異的であり得るが、種又は他の種類の交差反応性を示してもよく、あるいは特定の他の種からのCD137と交差反応してもよいが、しかし、全ての他の種とはしなくてもよい(例、サルCD137と交差反応するが、しかし、マウス4-1BBとはしない)。用語「cyno CD137」は、カニクイザルCD137、例えばNCBI受入番号XP_005544945.1を有する完全アミノ酸配列などを指す。用語「マウスCD137」は、マウス配列4-1BB、例えばNCBI受入番号NP_035742.1を有するマウス4-1BBの完全アミノ酸配列などを指す。本開示中のヒトCD137配列は、例えば、保存変異又は非保存領域中の変異を有することにより、NCBI受入番号NP_001552のヒトCD137とは異なり得るが、本開示中のCD137は、NCBI受入番号NP_001552のヒトCD137と実質的に同じ生物学的機能を有する。
【0241】
本明細書中で使用される場合、用語「トランスフォーミング成長因子ベータ」、「TGF-ベータ」、又は「TGFβ」は、任意のTGF-ベータタンパク質を指し得るが、限定されないが、TGF-ベータ1、TGF-ベータ2、及びTGF-ベータ3を含み、天然TGF-ベータタンパク質及び合成タンパク質を含み、バリアント及び模倣体を含む。TGF-ベータタンパク質は、構造的に類似の調節タンパク質のスーパーファミリーのメンバーであり、限定されないが、哺乳動物TGF-β-1、2、及び3、インヒビン、アクチビンならびに骨形態形成タンパク質を含む。成熟TGF-ベータは、典型的には、ホモ二量体、例えば、二つの共有結合的に会合されたTGF-ベータ分子を含む二量体成熟TGF-ベータ分子などとして存在する。
【0242】
本明細書中で使用される場合、用語「TGFβ受容体II」(「TGFβRII」)は、野生型ヒトTGFβ受容体2型アイソフォームA配列もしくはアイソフォームB配列、又はTGFβに結合するその一部を有するポリペプチド(例、それぞれ、NCBI参照配列(RefSeq)登録番号NP_001020018もしくはNP_003233.4のアミノ酸配列)を意味し、例えば、配列番号74を含む、又は配列番号74のアミノ酸配列と実質的に同一の配列を有する。TGFβRIIは、野生型配列のTGFβ結合活性の少なくとも0.1%、0.5%、1%、5%、10%、25%、35%、50%、75%、90%、95%、又は99%を保持し得る。発現されたTGFβRIIのポリペプチドは、シグナル配列を欠く。
【0243】
本明細書中の用語「抗体」は、最も広い意味において使用され、様々な抗体構造を包含し、限定されないが、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、二重特異性抗体、及び三重特異性抗体を含む。
【0244】
本明細書中の用語「抗体足場モジュール」は、二つの重鎖及び二つの軽鎖を有するY字形状抗体を指す。二つの重鎖は、ジスルフィド結合により互いに連結され、各重鎖は、ジスルフィド結合により軽鎖に連結される。抗体足場は、その重鎖及び/又は軽鎖の一つ又は複数に付着された一つ又は複数の結合モジュールを有し得る。抗体結合足場は、二つのFab、及び二つの定常領域配列を有するFc部分を含む。
【0245】
例示的な抗体、例えばIgGなどは、二つの重鎖及び二つの軽鎖を含む。各重鎖は、重鎖可変領域(本明細書中ではVHと省略される)及び重鎖定常領域で構成される。各軽鎖は、軽鎖可変領域(本明細書中ではVLと省略される)及び軽鎖定常領域で構成される。VH及びVL領域は、フレームワーク領域(FR)と呼ばれる、より保存されている領域が点在する、相補性決定領域(CDR)と呼ばれる超可変性の領域中にさらに細分化され得る。各VH及びVLは、以下の順序においてアミノ末端からカルボキシ末端に配置された、三つのCDR及び四つのFRで構成される:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4。
【0246】
本明細書中で使用される用語「モノクローナル抗体」又は「mAb」は、実質的に均質な抗体の集団から得られた抗体を指し、例えば、集団を含む個々の抗体は、例えば、天然に生じる変異を含む、又はモノクローナル抗体調製物の産生及び/又は保存中に生じる、可能性のあるバリアント抗体を除いて、同一である、及び/又は同じエピトープに結合する。典型的には異なる決定基(エピトープ)に対して向けられる異なる抗体を含むポリクローナル抗体調製物とは対照的に、モノクローナル抗体調製物の各モノクローナル抗体は、抗原上の単一の決定基に対して向けられる。このように、修飾語「モノクローナル」は、抗体の実質的に均質な集団から得られているとして抗体の特徴を示し、任意の方法による抗体の産生を要求とすると解釈されるべきではない。例えば、本開示に従って使用されるモノクローナル抗体は、限定されないが、ハイブリドーマ方法、組換えDNA方法、ファージディスプレイ方法、及びヒト免疫グロブリン遺伝子座の全て又は一部を含むトランスジェニック動物を利用する方法を含む、様々な技術、そのような方法及び本明細書中に記載されるモノクローナル抗体を作製するための他の例示的な方法により作製されてもよい。
【0247】
用語「キメラ抗体」は、重鎖及び/又は軽鎖の一部分が、特定の種から由来する、又は特定の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体における対応する配列と同一である、又はそれと相同である組換え抗体を指す一方で、鎖の残りの部分は、別の種から由来する、又は別の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体、ならびにそのような抗体の断片における対応する配列と同一である、又はそれと相同であり、それらが所望の生物学的活性を示す限りである。また、相補性決定領域(CDR)移植を実施して、親和性又は特異性を含む、抗体分子の特定の特性を変化させてもよい。典型的には、可変ドメインは、実験動物、例えば齧歯類などからの抗体(親抗体)から得られ、定常ドメイン配列は、ヒト抗体から得られ、結果として得られたキメラ抗体は、ヒト対象においてエフェクター機能を向けることができ、それが由来する親(例、マウス)抗体よりも有害な免疫応答を誘発する可能性が低くなるようにする。
【0248】
「ヒト抗体」は、ヒトにより産生された抗体のものに対応するアミノ酸配列を持つ抗体であり、及び/又は当業者に公知のヒト抗体を作製するための技術のいずれかを使用して作製されている。ヒト抗体のこの定義は、非ヒト抗原結合残基を含むヒト化抗体を特異的に除外する。ヒト抗体は、Cole et al,Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy,Alan R.Liss,p.77(1985);Boerner et al、J.Immunol、147(I):86-95(1991)において記載される方法を含む、当技術分野において公知の様々な技術を使用して産生することができる。また、van Dijk and van de Winkel,Curr.Opin.Pharmacol,5:368-74(2001)を参照のこと。ヒト抗体は、抗原チャレンジへの応答においてそのような抗体を産生するように改変されているが、しかし、その内因性遺伝子座が無効化されているトランスジェニック動物、例えば免疫化HuMabマウス(例、HuMabマウスに関する、Nils Lonberg et al.,1994,Nature 368:856-859、WO98/24884、WO94/25585、WO93/1227、WO92/22645、WO92/03918及びWO01/09187を参照のこと)、Xenomice(例、XENOMOUSE(商標)技術に関する米国特許第6,075,181号及び第6,150,584号を参照のこと)又はTrianniマウス(例、WO2013/063391、WO2017/035252、及びWO2017/136734を参照のこと)に標的抗原を投与することにより調製することができる。
【0249】
用語「ヒト化抗体」は、重鎖及び/又は軽鎖の非ヒト(例、マウス、ラット、又はハムスター)相補性決定領域(CDR)と一緒に、可変領域中で一つ又は複数のヒトフレームワーク領域を含むように操作された抗体を指す。特定の実施形態では、ヒト化抗体は、CDR領域を除いて完全にヒトである配列を含む。ヒト化抗体は、典型的には、非ヒト化抗体に比べて、ヒトに対する免疫原性が低く、このように、特定の状況において治療的利益を提供する。当業者は、ヒト化抗体を認識し、また、それらの生成のための適切な技術を認識しているであろう。例えば、Hwang,W.Y.K.,et al.,Methods 36:35,2005;Queen et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,86:10029-10033,1989;Jones et al.,Nature,321:522-25,1986;Riechmann et al.,Nature,332:323-27,1988;Verhoeyen et al.,Science,239:1534-36,1988;Orlandi et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,86:3833-37,1989;米国特許第5,225,539号;第5,530,101号;第5,585,089号;第5,693,761号;第5,693,762号;第6,180,370号;及びSelick et al.、WO90/07861を参照のこと。それらの各々が、参照により、その全体において本明細書中に組み入れられる。
【0250】
抗体の「クラス」は、その重鎖により持たれる定常ドメイン又は定常領域の種類を指す。抗体の五つの主要なクラスがある:IgA、IgD、IgE、IgG、及びIgMであり、これらのいくつかは、サブクラス(アイソタイプ)、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、及びIgA2にさらに分割され得る。異なるクラスの免疫グロブリンに対応する重鎖定常ドメインは、それぞれα、δ、ε、γ、及びμと呼ばれる。
【0251】
抗体の抗体の用語「抗原結合ドメイン」(又は単に「結合ドメイン」)又は類似の用語は、抗原複合体に特異的に結合する能力を保持する抗体の一つ又は複数の断片を指す。抗体の用語「抗原結合部分」内に包含される結合断片の例は、(i)Fab断片、VLドメイン、VHドメイン、CLドメイン及びCH1ドメインからなる一価断片;(ii)F(ab’)2断片、ヒンジ領域でジスルフィド架橋により連結された二つのFab断片を含む二価断片;(iii)VHドメイン及びCHドメインからなるFd断片;(iv)抗体の単一アームのVLドメイン及びVHドメインからなるFv断片;(v)VHドメインからなるdAb断片(Ward et al.,(1989)Nature 341:544-546);(vi)単離された相補性決定領域(CDR)、ならびに(vii)場合により合成リンカーにより連結され得る二つ又はそれ以上の単離されたCDRの組み合わせを含む。
【0252】
「相補性決定領域」又は「CDR」は、この用語が本明細書中で使用される場合、特定の抗原認識を媒介することに主に関与している重鎖及び軽鎖ポリペプチドの両方の可変領域内の短いポリペプチド配列を指す。各VL及び各VH内に三つのCDR(CDR1、CDR2、及びCDR3と呼ばれる)がある。本明細書中で他に記載されない限り、CDR及びフレームワーク領域は、Kabatナンバリングスキームに従って注釈付けされる(Kabat E.A.,et al.,1991,Sequences of proteins of Immunological interest,In:NIH Publication No.91-3242,USDepartment of Health and Human Services,Bethesda,Md)。
【0253】
他の実施形態では、抗体のCDRは、参照により、その全体において本明細書中に組み入れられる、MacCallum RM et al、(1996)J Mol Biol 262:732-745に従って決定することができる。他の実施形態では、抗体のCDRは、AbMナンバリングスキームに従って決定することができ、それはAbM超可変領域を指し、それは、Kabat CDR及びChothia構造ループの間での妥協を表し、参照により、その全体において本明細書中に組み入れられるOxford MolecularのAbM抗体モデリングソフトウェア(Oxford Molecular Group、Inc.)により使用される。CDRはまた、Kabat et al.,1991,In:Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,Md.における配列比較により定義され得るのに対し、HVLは、Chothia and Lesk,1987,J.Mol.Biol.196:901-917により記載されるように、可変ドメインの三次元構造に従って構造的に定義される。これら二つの方法が、CDRのわずかに異なる同定をもたらす場合、構造的定義が好まれる。Kabatにより定義されるように、軽鎖可変ドメインにおいて、CDR-L1は約残基24~34に、CDR-L2は約残基50~56に、及びCDR-L3は約残基89~97に位置する;重鎖可変ドメインにおいて、CDR-H1は約残基31~35に、CDR-H2は約残基50~65に、及びCDR-H3は約残基95~102に位置する。IMGT及びNORTHは、CDRの代替的な定義を提供する(Lefranc MP.Unique database numbering system for immunogenetic analysis.Immunol Today(1997)18:509;及びNorth B,Lehmann A,Dunbrack RLJ.A new clustering of antibody CDR loop conformations.J Mol Biol.(2011)406:228-56を参照のこと)。加えて、CDRは、Chemical Computing Group(CCG)ナンバリング(Almagro et al.,Proteins 2011;79:3050-3066及びMaier et al,Proteins 2014;82:1599-1610)に従って定義され得る。CDR1、CDR2、CDR3は、従って、所与の抗体について特異的な、固有の及び機能的な特性を定義する。
【0254】
抗体の「可変ドメイン」(Vドメイン)は、結合を媒介し、特定の抗体の抗原特異性を付与する。しかし、変動性は、可変ドメインの110アミノ酸スパンにわたって均等に分布しない。代わりに、V領域は、各々9~12アミノ酸長である「超可変領域」又はCDRとして本明細書中で言及される極度の可変性のより短い領域により分離される15~30アミノ酸のフレームワーク領域(FR)と呼ばれる比較的不変のストレッチからなる。当業者により理解されるように、CDRの正確なナンバリング及び配置は、異なるナンバリングシステムの間で異なり得る。しかし、可変重鎖及び/又は可変軽鎖配列の開示は、関連付けられるCDRの開示を含むことが理解されるべきである。したがって、各可変重鎖領域の開示は、vhCDR(例、vhCDR1、vhCDR2、及びvhCDR3)の開示であり、各可変軽鎖領域の開示は、vlCDR(例、vlCDR1、vlCDR2及びvlCDR3)の開示である。
【0255】
「Fv」は、緊密な、非共有結合的な会合における一つの重鎖可変領域ドメイン及び一つの軽鎖可変領域ドメインの二量体からなる。これら二つのドメインのフォールディングから、抗原結合のためのアミノ酸残基に寄与し、抗体に抗原結合特異性を付与する、六つの超可変ループ(各々、H鎖及びL鎖からの3ループ)が発せられる。
【0256】
「単鎖可変断片」又は「scFv」は、免疫グロブリンの重鎖(V)及び軽鎖(V)の可変領域の融合タンパク質を指す。sFvの総説については、Pluckthun in The Pharmacology of Monoclonal Antibodies、vol.113,Rosenburg and Moore eds.,Springer-Verlag,New York,pp.269-315(1994)を参照のこと。一部の態様では、領域は、10~約25アミノ酸の短いリンカーペプチドと接続される。リンカーは、柔軟性のためにグリシンにおいて、ならびに溶解性のためにセリン又はスレオニンにおいて豊富であり得るが、VのN末端をVのC末端と接続する、又はその逆であり得る。このタンパク質は、定常領域の除去及びリンカーの導入にもかかわらず、本来の免疫グロブリンの特異性を保持する。ジスルフィド安定化scFvは、VH又はVL中の特定の残基を変異させることにより、対になったシステインを導入することにより操作することができる。これらの残基は、VH及びVLの界面にある。参考文献Weatherill,E.E.et al.Towards a universal disulphide stabilised single chain Fv format:importance of interchain disulphide bond location and vL-vH orientation.Protein Eng Des Sel 25,321-329を参照してください。NovaRockは実施例においてVH44-VL100を使用した。
【0257】
「フレームワーク」又は「フレームワーク領域」又は「FR」は、超可変領域(HVR)残基以外の可変ドメイン残基を指す。可変ドメインのFRは、一般的に、四つのFRドメインからなる:FR1、FR2、FR3、及びFR4。
【0258】
「ヒトコンセンサスフレームワーク」は、ヒト免疫グロブリンVL又はVHフレームワーク配列の選択において最も一般に生じるアミノ酸残基を表すフレームワークである。一般的に、ヒト免疫グロブリンVL配列又はVH配列の選択は、可変ドメイン配列のサブグループからである。一般的に、配列のサブグループは、Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,Fifth Edition,NIH Publication 91-3242,Bethesda Md.(1991),Vols.1-3におけるサブグループである。一実施形態では、VLについては、サブグループは、Kabat et al.(上記)におけるように、サブグループカッパIである。一実施形態では、VHについては、サブグループは、Kabat et al.(上記)におけるように、サブグループIIIである。
【0259】
「ヒンジ領域」は、一般的に、ヒトIgG1の216~238(EUナンバリング)又は226~251(Kabatナンバリング)のストレッチとして定義される。ヒンジは、三つの別個の領域、上部、中間(例、コア)、及び下部ヒンジ中にさらに分割することができる。
【0260】
用語「Fc領域」及び「定常領域」は、定常領域の少なくとも一部分を含む免疫グロブリン重鎖のC末端領域を定義するために本明細書中で使用される。この用語は、天然配列Fc領域及びバリアントFc領域を含む。一実施形態では、ヒトIgG重鎖Fc領域は、Cys226から、又はPro230から、重鎖のカルボキシル末端まで伸長する。しかし、Fc領域のC末端リジン(Lys447)は、存在しても又は存在しなくてもよい。本明細書中で他に指定されない限り、Fc領域又は定常領域中でのアミノ酸残基のナンバリングは、Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,Md.(1991)において記載されるように、EUインデックスとも呼ばれる、EUナンバリングシステムに従っている。
【0261】
特定のFc受容体との抗体Fc領域の相互作用から由来する用語「エフェクター機能」は、必ずしも限定されないが、Clq結合、補体依存的細胞傷害性(CDC)、FcyR媒介性エフェクター機能、例えば抗体依存的細胞傷害性(ADCC)など、抗体依存的細胞媒介性貪食(ADCP)、及び細胞表面受容体の下方調節を含む。そのようなエフェクター機能は、一般的に、抗原結合ドメイン(例、抗体可変ドメイン)と組み合わされるFc領域を要求する。
【0262】
用語「T細胞依存的細胞傷害性」(TDCC)は、分子が腫瘍細胞に同時に結合し、細胞傷害性T細胞と会合し、T細胞及び標的細胞を近接させることにより細胞溶解を向け直す場合での一連の事象を記載する。ADCC及びTDCCの活性化は、両方とも、標的細胞の死滅をもたらす。しかし、これら二つの別個の種類の細胞傷害性の間には、一部の主要な差がある。ADCC効果は、ナチュラルキラー(NK)細胞上に発現されるFcγ受容体を通じて媒介され、標的細胞の表面上に付着された抗体の定常領域に結合する。TDCC効果は、標的細胞に近接した細胞傷害性T細胞を会合させることを通じて媒介される。
【0263】
用語「Fc受容体」又は「FcR」は、Bリンパ球、ナチュラルキラー細胞、マクロファージ、好中球、及び肥満細胞を含む特定の免疫細胞の膜に位置付けられる抗原認識において含まれる免疫グロブリンのFc領域に結合する抗体受容体を記載する。IgGのFc部分を認識するFc受容体は、Fcガンマ受容体(FcγR)と呼ばれる。FcγRファミリーは、これらの受容体の対立遺伝子バリアント及び選択的スプライシング形態を含む。IgG結合のための構造、機能、及び親和性の差に基づいて、FcγRは、三つの主要な群に分類される:FcγRI、FcγRII(FcγRIIa及びFcγRIIb)及びFcγRIII(FcγRIIIa及びFcγRIIIb)。それらの間で、FcγRI(CD64)、FcγRIIa(CD32a)、及びFcγRIIIa(CD16a)は、FcγRI及びFcγRIIIaのγサブユニット中に、又はFcγRIIaの細胞質尾部中に、シグナル伝達モチーフ、免疫受容体チロシンベースの活性化モチーフ(ITAM)を含む活性化受容体である。抗原-抗体複合体の結合後、活性化Fcγ受容体(ヒト:FcγRI、FcγRIIA、FcγRIIC、FcγRIIIA、FcγRIIIB及びマウス:FcγRI、FcγRIII、FcγRIV)は、免疫エフェクター機能を誘発する。対照的に、FcγRIIb(CD32b)は阻害性受容体である。FcγRIIbの架橋は、免疫受容体チロシンベースの阻害性モチーフ(ITIM)のリン酸化及び阻害性シグナル伝達形質導入に導く(Patel et al.Front Immunol.2019;10:223.)。
【0264】
用語「Fcサイレンシング」は、Fc γR及び補体との結合活性を最小化/消失させ、Fc媒介性エフェクター機能のサイレンシング又は排除に導くように操作されているFc領域を指す。Fcを操作するための戦略は、Fcグリコシル化の修飾、IgGサブクラスのハイブリッドの使用、あるいはヒンジ及び/又はCH2領域中に一つ又は複数の変異を導入することを含む。Fcをサイレンシングするエフェクター機能及びそれぞれの変異について重要な残基は、当技術分野において公知であり、例えば、Strohl,WR and Strohl LM,“Antibody Fc engineering for optimal antibody performance”In Therapeutic Antibody Engineering,Cambridge:Woodhead Publishing(2012),pp 242、国際特許出願第WO2017008169A1号及び第WO2021055669号。
【0265】
ヒトIgG1 Fcをサイレンシングするように操作することができる部位についての具体的な、非限定的な例は、全てEUナンバリングにおいて、L234、L235、G237、D265、N297、P329、P331を含む。
【0266】
本明細書中で使用される場合、用語「T調節性細胞」又は「Treg」は、他の免疫細胞、例えばCD8陽性(CD8+)エフェクターT細胞などの増殖、活性化、及び細胞傷害能力を抑制する/阻害することにより、調節的な役割を有する免疫系の細胞を指す。調節性T細胞(Treg)は、マスター転写因子フォークヘッドボックスP3(Foxp3)の発現により特徴付けられる。Treg細胞の二つの主要なサブセットがあり、胸腺において発生する「天然」Treg(nTreg)細胞、及びCD4+Foxp3-従来のT細胞から末梢中で生じる「誘導」Treg(iTreg)細胞である。天然Tregは、CD4 T細胞共受容体、及びIL-2受容体の構成要素であるCD25の両方を発現するとして特徴付けられる。Tregは、このように、CD4+CD25+である。核転写因子フォークヘッドボックスP3(FoxP3)の発現は、天然Tregの発生及び機能を決定する定義特性である。Treg細胞は、阻害性サイトカイン(例、IL-10、TGFβ、IL-35)の分泌、樹状細胞機能/成熟の調節、免疫調節性表面分子(例、CTLA-4、LAG-3)の発現、又は細胞溶解(例、グランザイムA及び/又はB媒介性)による抑制を含む、多数の作用の様式によりそれらの抑制効果を発揮する。
【0267】
本明細書中で使用される場合、用語「二重特異性」は、抗体足場モジュール及び第一の結合モジュールを含む結合タンパク質を指し、それにおいて、モジュールは、二つの異なる抗原についての結合特異性を有する抗体及び/又は受容体タンパク質から由来する。一実施形態では、抗体足場モジュールは、PD-L1についての結合特異性を有し、第一の結合モジュールは、例えば、細胞表面タンパク質、受容体、受容体サブユニット、組織特異的抗原、腫瘍微小環境調節因子、サイトカインなどについての、任意の他の抗原についての結合特異性を有する。別の実施形態では、抗体足場モジュールは、CD137についての結合特異性を有し、第一の結合モジュールは、例えば、細胞表面タンパク質、受容体、受容体サブユニット、組織特異的抗原、腫瘍微小環境調節因子、サイトカインなどについての、任意の他の抗原についての結合特異性を有する。
【0268】
本明細書中で使用される場合、用語「三重特異性体」は、抗体足場モジュールならびに第一の結合モジュール及び第二の結合モジュールを含む結合タンパク質を指し、それにおいて、モジュールは、三つの異なる抗原についての結合特異性を有する抗体及び/又は受容体タンパク質から由来する。一実施形態では、抗体足場モジュールは、PD-L1についての結合特異性を有し、第一及び第二の結合モジュールは、任意の他の抗原(他の結合モジュールの抗原を別とする)についての、例えば、細胞表面共刺激受容体(CD137を含むが、しかし、それに限定されない)、受容体、受容体サブユニット、組織特異的抗原、腫瘍微小環境調節因子、サイトカインなどについての結合特異性を有する。一実施形態では、抗体足場モジュールは、CD137についての結合特異性を有し、第一及び第二の結合モジュールは、任意の他の抗原(他の結合モジュールの抗原を別とする)についての、例えば、細胞表面共刺激受容体(PD-L1を含むが、しかし、それに限定されない)、受容体、受容体サブユニット、組織特異的抗原、腫瘍微小環境調節因子、サイトカインなどについての結合特異性を有する。
【0269】
標的分子への抗体の結合に関して、特定のポリペプチド又は特定のポリペプチド標的上のエピトープへの用語「特異的結合」又は「それに特異的に結合する」又は「それについて特異的である」は、非特異的な相互作用とは測定可能に異なる結合を意味する。特異的結合は、例えば、対照分子の結合と比較して、分子の結合を決定することにより測定することができる。例えば、特異的結合は、標的と類似している対照分子、例えば、過剰な非標識標的との競合により決定することができる。この場合では、プローブへの標識標的の結合が、過剰な非標識標的により競合的に阻害される場合、特異的結合が示される。本明細書中で使用される、特定のポリペプチド又は特定のポリペプチド標的上のエピトープに対する用語「特異的結合(specific binding)」又は「特異的に結合する(specifically binds to)」又は「ついて特異的(specific for)」は、例えば、10-4Mもしくはそれ以下、あるいは10-5Mもしくはそれ以下、あるいは10-6Mもしくはそれ以下、あるいは10-7Mもしくはそれ以下、あるいは10-8Mもしくはそれ以下、あるいは10-9Mもしくはそれ以下、あるいは10-10Mもしくはそれ以下、あるいは10-11Mもしくはそれ以下、あるいは10-12Mもしくはそれ以下、又は10-4M~10-6Mもしくは10-6M~10-10Mもしくは10-7M~10-9Mの範囲中のKdを有する分子により示すことができる。当業者には理解されるように、親和性及びKD値は逆相関する。抗原についての高い親和性は、低いKD値により測定される。一実施形態では、用語「特異的結合」は、分子が、任意の他のポリペプチド又はポリペプチドエピトープに実質的に結合することを伴わず、特定のポリペプチド又は特定のポリペプチド上のエピトープに結合する結合を指す。本明細書中で使用される場合、用語「特異的結合」、「特異的に結合する」、及び「選択的に結合する」は、CD137、PDL1及び/又はTGFのエピトープへの抗体結合を指すb。
【0270】
用語「親和性」は、本明細書中で使用される場合、エピトープへの抗体の結合の強度を意味する。抗体の親和性は、[Ab]×[Ag]/[Ab-Ag]として定義される解離定数Kdにより与えられ、式中、[Ab-Ag]は抗体-抗原複合体のモル濃度であり、[Ab]は非結合抗体のモル濃度であり、[Ag]は非結合抗原のモル濃度である。親和性定数Kaは、1/Kdにより定義される。mAbの親和性を決定するための方法は、Harlow、et al.、Antibodies:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.,1988)、Coligan et al.,eds.,Current Protocols in Immunology,Greene Publishing Assoc.and Wiley Interscience,N.Y.,(1992,1993)、及びMuller,Meth.Enzymol.92:589-601(1983)において記載されており、それらの参照文献は、参照により本明細書中に完全に組み入れられる。mAbの親和性を決定するための当技術分野において周知の一つの標準的な方法は、表面プラズモン共鳴(SPR)スクリーニングの使用(例えばBIAcore(商標)SPR分析装置を用いた分析による、など)である。
【0271】
「エピトープ」は、抗体とその抗原の間での相互作用の部位又は部位を示す、当技術分野の用語である。(Janeway,C,Jr.,P.Travers,et al.(2001).Immunobiology:the immune system in health and disease.Part II,Section 3-8.New York,Garland Publishing,Inc.)により記載されるように:「抗体は一般的に、高分子、例えばタンパク質などの表面上の小さな領域のみを認識し...[特定のエピトープ〕は、タンパク質フォールディングにより一緒になった〔抗原〕ポリペプチド鎖の異なる部分からのアミノ酸で構成される可能性が高い。この種類の抗原決定基は、立体構造的又は不連続エピトープとして公知である。なぜなら、認識される構造が、抗原のアミノ酸配列において不連続であるが、しかし、三次元構造において一緒にされるタンパク質のセグメントで構成されるためである。対照的に、ポリペプチド鎖の単一セグメントで構成されるエピトープは、連続的又は直線的なエピトープと称される」(Janeway,C.Jr.,P.Travers,et al.(2001).Immunobiology:the immune system in health and disease.Part II,Section 3-8.New York,Garland Publishing,Inc.)。
【0272】
用語「KD」は、本明細書中で使用される場合、特定の抗体-抗原相互作用の解離定数を指すことが意図される。それは、以下の式により計算される:Koff/Kon=KD
【0273】
用語「IC50」は、本明細書中で使用される場合、それが結合する抗原の生物活性の50%を中和するために必要な、本明細書中に開示される結合タンパク質の有効濃度を指すことが意図される。
【0274】
薬剤及び特定の活性(例、細胞への結合、酵素活性の阻害、免疫細胞の活性化又は阻害)に関する「EC50」は、そのような活性に関するその最大応答又は効果の50%を産生する作用物質の効率的な濃度を指す。薬剤及び特定の活性に関するEC100は、そのような活性に関するその実質的に最大応答を産生する薬剤の効率的な濃度を指す。
【0275】
本明細書中で使用される場合、用語「T細胞消耗」は、免疫チェックポイント受容体、例えばPD-1、CTLA-4、T細胞Ig及びムチンドメイン含有(TIM)-3など、ならびにリンパ球活性化遺伝子3の長期の抗原刺激誘導性過剰発現により起こされる、増殖する及びサイトカインを分泌するためのT細胞の損なわれた能力として定義される。
【0276】
本明細書中で使用される場合、T細胞上の用語「共刺激受容体」は、TCRシグナル伝達及びサイトカイン刺激でT細胞を完全に活性化するためにシグナル伝達を陽性に誘導することができる細胞表面分子を指す。共シグナル伝達経路は、T細胞のプライミング及び活性化において、ならびにT細胞の分化、エフェクター機能、及び生存の調節において重大な役割を果たす。共刺激受容体は一般に、2つの群:Ig受容体スーパーファミリー(IgSF)及びTNF受容体スーパーファミリー(TNFRSF)にカテゴリー化される。
【0277】
用語「結合モジュール」は、PD-L1、CD137、TGFβ、又は任意の他の標的に結合する任意の物質を指し、それは、足場モジュール自体との比較において、本発明の結合タンパク質の特異的活性を増強し得る。結合モジュールの非限定的な例は、アンチカリン、リペボディー、モノボディ、scFv、Fab、scFab、アフィボディ、フィノマー、DARPin、ナノボディ、ペプチドアプタマー、及び核酸アプタマーを含む。
【0278】
用語「Fab」又は「抗原結合断片」は、抗体に結合特異性を付与する酵素消化により典型的には調製される、抗体の二つの同一の断片を指す。抗体のパパイン消化によって、重鎖(H)鎖(VH)の可変領域ドメイン、及び一つの重鎖(CH1)の第一の定常ドメインとともに、軽鎖(L)鎖全体からなる二つの同一のFab断片が産生される。抗体のペプシン処理は、二価抗原結合活性を有し、依然として抗原を架橋することが可能な二つのジスルフィド連結Fab断片にほぼ対応する、単一の大きなF(ab)2断片をもたらす。Fab断片は、抗体ヒンジ領域からの一つ又は複数のシステインを含むCH1ドメインのカルボキシ末端に追加のいくつかの残基を有することにより、Fab’断片とは異なる。
【0279】
用語「リンカー」は、二つの化学実体間に共有結合を形成する少なくとも一つの原子を指す。用語「リンカー」は、足場モジュールと結合モジュールへの別の共有結合の間に共有結合を形成する少なくとも一つの原子を指し得る。足場モジュール及び結合モジュールが、ペプチド結合を通じてのみ連結される場合、リンカーは「ペプチドリンカー」として言及される。そうでなければ、リンカーは、「化学リンカー」として言及される。さらに、「柔軟なペプチドリンカー」は、大部分が小さい、非極性又は極性のアミノ酸を含むのに対し、「強固なペプチドリンカー」は、アルファ-ヘリックス形成配列を含み、及び/又はプロリン残基において豊富である(Chen et al.,2013.Adv Drug Deliv Rev.65(10):1357-1369)。
【0280】
用語「足場モジュール」は、二つの抗原結合部位を含み、一つ又は複数の結合モジュールについて支持構造として作用し得るタンパク質を指す。結合モジュールは、リンカーを通じて足場モジュールに付着され得る、及び/又は結合モジュールは、足場モジュール中に存在する任意のループ領域中に組み入れられ得る。
【0281】
本明細書で、本明細書及び添付の特許請求の範囲において使用される場合、単数形態は、文脈が他に明確に指示しない限り、複数の参照を含むことに注意する。
【0282】
T細胞活性化&消耗
T細胞活性化
T細胞上のT細胞受容体(TCR)は、抗原提示細胞(APC)の表面上の、MHC複合体により提示される抗原に結合する。TCR/MHC/抗原の結合は、T細胞の初期活性化を誘発する。T細胞抗原受容体(TCR)/CD3複合体を通じたT細胞シグナル伝達は、複数のエフェクター経路を活性化するシグナルのアレイを誘発する。
【0283】
T細胞活性化は、TCR/CD3複合体が生成するシグナルならびに他の細胞表面受容体から発出する及び/又は可溶性メディエーターにより送達されるシグナルの両方により、ポジティブ及びネガティブに調節され、T細胞が適したリガンドに適当な期間にわたって応答することを確実にする。T細胞活性化の中心的な考え方は、TCRを通じたシグナル伝達のみが、アネルギーの状態(共刺激の欠如により誘導され得る、特定の抗原に対するT細胞の低応答状態)をもたらすことである。
【0284】
複数の表面受容体は、CD28、CD30、CD5、CD2、ICOS、OX40及び4-1BB(CD137)を含むT細胞について共刺激を提供することが可能であるとして記載されている。CD28は、免疫応答の誘導中に発現され、ICOS、OX40及びCD137を含むいくつかの他の共刺激分子の発現を促す。
【0285】
TCR生成調節シグナルはまた、他の共受容体、例えば細胞傷害性Tリンパ球抗原-4(CTLA-4)及びプログラム死-1(CD279としても公知のPD-1)などのライゲーションからのシグナルにより補完され、それらの両方が、TCR誘発性T細胞の増殖及び活性化を限定するように機能する。負の調節因子としてのそれらの機能に照らして、CTLA-4及びPD-1が免疫チェックポイントとして記載される。活性化T細胞上で発現されるPD-1とPD-L1リガンド(B7-H1又はCD274としても公知である)のライゲーションによって、重大な免疫チェックポイントが活性化され、T細胞寛容、機能不全及びT細胞消耗に導かれることが広く公知である。
【0286】
炎症性サイトカインの存在における腫瘍抗原ペプチド/MHCクラスI複合体への長期曝露によって、固形腫瘍中に存在するT細胞において異なる表現型が誘導され、エフェクター機能の進行性の喪失、阻害性免疫チェックポイント受容体の高い持続的な発現、不十分な増殖能力 (Pauken KE and Wherry EJ.,Trends Immunol 2015;36(4):265-276(2015),Wherry EJ and Kurachi M.,Nat Rev Immunol 2015 15(8):486-499(2015)、代謝調節不全、不十分な記憶の呼び戻し、ならびに異なる転写及びエピジェネティックプログラム(McLane,L et al.,Ann.Rev.Immunol.37:457(2019)により特徴付けられる。
【0287】
T細胞消耗
機能不全の又は慢性的に刺激されたT細胞は、癌における反復TCR刺激時に発生する、マウスモデル及びヒトにおいて見出される異なる系統である(Zajac AJ et al,J.Exp.Med 188,2205-2213(1998),Bakhli MY Cytokine,71,339-347(2011),Wherry and Kurachi Nat.Rev.Immunol 15,486-499(2015)。炎症性サイトカインの存在における腫瘍抗原ペプチド/MHCクラスI複合体への長期曝露によって、固形腫瘍中に存在するT細胞において異なる表現型が誘導され、エフェクター機能の進行性の喪失、阻害性免疫チェックポイント受容体の高い持続的な発現、不十分な増殖能力 (Pauken KE and Wherry EJ.,Trends Immunol 2015;36(4):265-276(2015),Wherry EJ and Kurachi M.,Nat Rev Immunol 2015 15(8):486-499(2015)、代謝調節不全、不十分な記憶の呼び戻し、ならびに異なる転写及びエピジェネティックプログラム (McLane,L et al.,Ann.Rev.Immunol.37:457(2019)により特徴付けられる。
【0288】
免疫抑制チェックポイントの活性化に起因して生じる負の調節シグナルは、TMEにおけるエフェクターT細胞機能不全についての主な機構であると考えられる。癌研究における腫瘍-抗原特異的応答及び同時進行疾患の存在によって、PD-1が、消耗についてのマーカーとして同定された。試験によって、チェックポイント遮断が、T細胞機能を少なくとも部分的に再活性化することができることが示されている(Fuertes Marraco SA,et al Front Immunol 6,310(2015)。PD-1/PD-L1相互作用の遮断は、T細胞機能を部分的に回復させることが示されている。
【0289】
PD-1/PD-L1経路
PD-1/PD-L1経路が、広範囲に試験されている(Salmaninejad et al.,2019;Han et al.,2020;Makuku et al.,2021)。PD-1は、IgV様細胞外ドメイン、それに続く膜貫通領域ならびにTCRシグナル伝達及び調節のための二つのリン酸化部位を伴う細胞内尾部を含む288のアミノ酸を伴う55kDa膜貫通タンパク質である(Ishida,Agata,Shibahara,&Honjo)。PD-L1は、その細胞外領域中にIg様ドメイン及びIgC様ドメインを伴う290のアミノ酸を伴う1型膜から通過する33-kDa糖タンパク質である(Freeman et al.,2000)。PD-1及びPD-L1は、免疫チェックポイントタンパク質である。
【0290】
PD-1は、様々な活性化免疫細胞、例えば活性化T細胞、B細胞及びナチュラルキラー(NK)、活性化単球、樹状細胞(DC)、マクロファージ、及び未成熟ランゲルハンス細胞などにおいて発現される。PD-1はまた、抗原に一定に曝露されたT細胞の表面上で上方調節され、消耗したT細胞のマーカーの一つである(Ahmadzadeh et al.,2009)。NFAT、NOTCH、FOXO1、及びIRF9を含む転写因子は、PD-1発現の転写を誘発する(Staron et al.,2014)。サイトカイン、例えばIL-2、IL-21、IL-15、IL-7、及び1型IFNなどは、PD-1発現を増強することができる。IL-6及びIL-12は、シグナルトランスデューサー及び転写の活性化因子3(STAT3)及びSTAT4を使用して、それぞれ、脾臓CD8 T細胞におけるPD-1発現を増加させる(Salmaninejad et al.,2019)。
【0291】
PD-L1は、特に炎症条件下で、マクロファージ、B細胞、DC、及び一部の上皮細胞のような抗原提示細胞(APC)により構成的に発現される(Sharpe et al.,2007)。末梢組織中でのPD-L1の存在が、自己免疫性損傷を防止するために必要である。また、PD-L1は、抗腫瘍応答を回避するための「適応免疫機構」として、いくつかの種類の腫瘍細胞、例えば非小細胞肺癌(NSCLC)、血液悪性腫瘍及びウイルス感染細胞などにより発現される(Ohaegbulam et al.,2015)。いくつかの転写因子が、癌細胞におけるPD-L1の転写上方調節において含まれることが明らかになっており、例えば低酸素誘導因子a(HIF-1a)、STAT3及びNF-kBなどである(Chen et al.,2015)。さらに、浸潤免疫細胞により産生されるサイトカイン、例えばIL-4、IL-10、TNFa、IFNg及び成長幹細胞因子など、ならびに細菌LPS及びVEGFは、PD-L1遺伝子の発現を上方調節する(Ji et al.,2015)。
【0292】
PD-1の生理学的役割は、機能的T細胞の阻害及びT調節性(Treg)細胞の発生である。PD-1/PD-L1のようなTreg及び共阻害性免疫チェックポイントは、免疫系の異常及び慢性活性化ならびに自己抗原に対する免疫反応性を防止するためにフェイルセーフとして作用する。しかし、PD-1/PD-L1経路は、抗腫瘍T細胞応答を避けて、腫瘍免疫回避を促す手段として、癌細胞又は腫瘍関連抗原提示細胞により共選択されることが周知である(Hargadon et al.,2018)。腫瘍は、PD-L1を発現することにより宿主免疫監視から回避することができる。PD-1とPD-L1の間での相互作用は、T細胞の下方調節ならびにそれらのアポトーシス及び腫瘍微小環境からの排除に導き、このように、癌細胞を免疫応答から回避させる(Iwai et al.,2017)。
【0293】
PD-1/PD-L1の標的化
PD-1は、共通構造を共有する受容体のB7/CD28ファミリーのメンバーである:免疫グロブリン様細胞外ドメイン、膜貫通ドメイン、ならびに免疫受容体チロシンベースの阻害モチーフ及びシグナル伝達モチーフを含む細胞内ドメイン。PD-1が、そのリガンドであるPD-L1により会合される場合、そのような相互作用は、SRC相同ホスファターゼSHP1及びSHP2の動員に導き、それによって、シグナルが細胞中に伝達される。PD-1は、主に、適応免疫応答の主要な細胞傷害性エフェクターである活性化T細胞上で発現され、それが伝達するシグナルは、T細胞媒介性免疫応答を減衰させるのに役立つ。試験は、PD-1の阻害効果を遮断することによって、腫瘍細胞に対する有効な免疫応答を誘発させることができることを示した。この相互作用を遮断するPD-1/PD-L1チェックポイント阻害剤は、免疫細胞増殖を増加させ、身体の天然抗腫瘍監視システムの有効性を増強する。免疫チェックポイントへの癌の回避の機構を理解することは、免疫療法の送達を個別化するアプローチに対して重大である。
【0294】
二つの別々のシグナルが、細胞傷害活性をチェックし続けるT細胞を完全に活性化するために要求される。第一は、T細胞受容体と、抗原提示細胞(APC)の表面上の主要組織適合性複合体提示抗原エピトープの間での相互作用から生じる。第二は、T細胞表面及びAPC表面上の共刺激受容体-リガンド対の会合から生じる。PD-1は、リガンド結合を介してT細胞活性を調節する共阻害受容体の群に属し、それによって、T細胞は、消耗として公知の状態に陥り、それにおいて、それらは増殖できない、又はそれらのエフェクター機能を実施できない。
【0295】
PD-1/PD-L1経路の遮断は、消耗した腫瘍浸潤性Tリンパ球の機能を再活性化/回復することが示されている。例えば、抗PD-1/PD-L1及び抗CTLA-4免疫チェックポイント阻害剤を用いた処理は、機能障害性TILを再活性化し、それらの抗腫瘍効果を増強することが報告されている(Wherry and Kurachi,2015;Zarour,2016;Miller et al.,2019)。
【0296】
CD137共刺激経路
CD137は、4-1BBとも呼ばれ、又はTNFRSF9(TNF受容体スーパーファミリーメンバー9)は、活性化T細胞上に発現される誘導性共刺激受容体として最初に同定されたが、腫瘍壊死因子(TNF)受容体スーパーファミリー(TNFRSF)の30kDa膜貫通糖タンパク質である。4-1BBの現在の理解は、発現が一般的に、活性化依存的であり、活性化T細胞、活性化ナチュラルキラー(NK)及びナチュラルキラーT(NKT)細胞、調節性T細胞、濾胞DCを含む樹状細胞(DC)、刺激された肥満細胞、分化骨髄細胞、単球、好中球、及び好酸球を含む広範な免疫細胞のサブセットを包含することを示す。4-1BB発現はまた、腫瘍血管系及びアテローム性硬化性内皮で実証されている。CD137(CD137L)を刺激するリガンドは、活性化抗原提示細胞(APC)、骨髄前駆細胞、及び造血幹細胞上で発現される(Wang et al.,Immunological Reviews,2009,229,192-215)。
【0297】
CD137は、ナイーブT細胞の表面上では検出不能である。刺激TCRシグナル伝達時に、CD137発現は、刺激後2~3日に誘導し及びピークになり、3日後に低下する。CD137は、活性化T細胞の細胞表面上に単量体及び二量体の両方として発現する。TNFRSFのファミリーにおける他のメンバーへの相同性に基づいて、リガンド結合は受容体三量体化を誘導し、受容体の活性化をもたらす。TNFRSFの一部のメンバーは、細胞表面からの細胞外ドメインの切断後に可溶性形態において存在し得る。可溶性4-1BB及び可溶性4-1BBLは、自己免疫疾患及び癌を伴う一部の患者の血清中で検出されている(Wang et al.,Immunological Reviews,2009,229,192-215)。
【0298】
CD137はTNF受容体(TNFR)スーパーファミリーのメンバーであり、その細胞質ドメインにおいて公知の内因性酵素活性を伴わない。それは、シグナルを細胞中に伝達するためのCD137シグナロソームを構築するために、アダプタータンパク質のTNFR関連因子(TRAF)ファミリーに頼る。CD137L三量体の結合による、又はアゴニストモノクローナル抗体との架橋によるCD137活性化時に、TRAF1、TRAF2、及びTRAF3が、恐らくは異なる配置を伴うホモ及び/又はヘテロ三量体としてCD137の細胞質ドメインに容易に動員され、CD137シグナロソームの構築を開始し、それによって、NF-κB、ならびにERK、JNK、及びp38 MAPキナーゼを含むマイトジェン活性化タンパク質 (MAP)キナーゼカスケードの下流の活性化がもたらされる(Bartkowiak et al.Clin.Cancer Res.2018,24,1138-1151)。
【0299】
CD137は、効果的なT細胞免疫応答を維持する際に、及び免疫学的記憶を生成する際に重要な役割を果たす。CD137の発現プロファイル、ならびに腫瘍免疫について関連するリンパ球の複数のサブセットにおいて頑強なエフェクター応答を増強するその固有の能力によって、CD137が免疫療法のための固有に魅力的な標的になる。
【0300】
マウス及びヒトT細胞の複数の試験は、CD137が細胞増殖、生存、及びサイトカイン産生を促すことを示す。CD137アゴニスト抗体は、細胞溶解性Tリンパ球応答を著しく増強することが示されている。単独療法として、又は他の治療、例えばチェックポイント阻害剤などとの組み合わせにおけるアゴニストCD137抗体は、予防的及び治療的設定において抗腫瘍利益のエビデンスを提供してきた。CD137の刺激は、インビボで持続的な抗腫瘍保護T細胞メモリー応答をもたらすことが示されている(Fisher et al,Cancer Immunol Immunother 2012,61,1721-1733)。より最近では、CD137アゴニスト抗体は、腫瘍血管系上の細胞接着分子ICAM-1、VCAM-1、及びE-セレクチンの発現を増加させ、腫瘍微小環境中への増加したT細胞遊走をもたらすことが示されている(Palazon et al,Cancer Research,2011,71(3),8001-811)。
【0301】
しかし、CD137-/-マウス及び不可知論CD137抗体の両方が、増強された抗腫瘍活性を示すという不可解な観察は、CD137シグナル伝達の単なる活性化が、その抗腫瘍効果を完全には説明できないことを示す。複数の試験によって、CD137Lへの結合時でのCD137シグナル伝達が報告されている。最近、CD137L/CD137相互作用が双方向シグナル伝達をもたらすことを示すエビデンスが蓄積している。CD137Lは主に、活性化APC、例えばDCなどの上で発現されるため、CD137Lからの逆シグナル伝達は、DCの発生及び機能に影響を及ぼすことが報告されている(Kwon,Immune Network,2015,15(3),121-124)。2017年に、報告知見によって、これらの逆説的結果を説明する、腫瘍における抗原提示樹状細胞(DC)におけるCD137リガンド(CD137L)による逆シグナル伝達が実証された。具体的には、CD137L逆シグナル伝達は、IL12産生CD103+DC及び1型腫瘍関連マクロファージ(TAM)の腫瘍内分化を抑制したが、それは、IFNγ産生CD8+細胞傷害性Tリンパ球を生成するために重要な役割を果たす。特に、CD137L遮断は、IL12及びIFNγのレベルを増加させたが、それは、腫瘍内のIFNγ産生CD8+T細胞、IL12産生CD103+DC、及び1型TAMの腫瘍内分化をさらに促した。従って、DCにおけるCD137L逆シグナル伝達を遮断しながらT細胞におけるCD137シグナル伝達を活性化することによって、C137経路の抗腫瘍活性が完全に惹起させるはずである(Kang et al.,Cancer Research,2017,77(21),5989-6000)。
【0302】
ナイーブマウス及び腫瘍担持マウスにおける高用量のCD137アゴニスト抗体は、肝臓へのT細胞浸潤、ならびに肝炎症又は損傷の指標であるアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)及びアラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)の上昇を誘導することが報告されている。抗CD137抗体(ウレルマブ、Bristol Myers)の有効性を評価する臨床試験に基づき、CD137活性の活性化によって、治療的抗腫瘍活性を誘発することができる。しかし、肝毒性によって、その臨床開発は限定される。第二の抗CD137(ウトミルマブ、Pfizer)の臨床的評価は、許容可能な安全性プロファイルを実証したが、しかし、臨床有効性を限定した。今日まで、CD137に対して向けられた、承認された治療用抗体はない。
【0303】
PD/PD-L1チェックポイント及びCD137を標的化する二重特異性体
共刺激受容体は、T細胞のエフェクター機能を調節する際に重要な役割を果たしているため、共刺激経路のアゴニズムによって、チェックポイント阻害有効性が改善され得る、及び持続的な抗腫瘍応答に導き得る。PD-1/PD-L1経路及びT細胞共刺激分子を標的化するように設計された二重特異性分子は、チェックポイントを脱抑制し、同時にT細胞を共刺激して、抗腫瘍免疫性の効率的な誘導を提供し得る。分子設計の態様に依存して、T細胞活性化は、トランス結合を通じて生じ、PD-L1結合に依存的であり、それにより、腫瘍微小環境への免疫活性を効果的に限定し得る。T細胞上の適切な共刺激標的は、限定されないが、CD137、OX40、CD28、CD27、CD226、GITR、ICOS、TNFRSF25、LIGHT(TNFSF14)、TIM-1、及びLFA-1を含む。
【0304】
以前の前臨床実験及び臨床データによって、共刺激経路を刺激することが、特に他の免疫活性化戦略との組み合わせにおいて使用される場合、癌におけるT細胞応答を再活性化するための強力に有効な戦略であり得ることが明らかに支持された。PD-L1及びT細胞上の共刺激分子について二重特異性である結合タンパク質は、PD-L1発現抗原提示細胞(APC)又は腫瘍細胞及び活性化T細胞への同時結合を媒介し、腫瘍特異的T細胞、例えば腫瘍浸潤性T細胞及びCD8細胞溶解性T細胞などの条件付き活性化をもたらし、アゴニスト抗CD137抗体のオンターゲットオフ腫瘍毒性を軽減するはずである。
【0305】
TGFβ
TGFβスーパーファミリーは、TGFβ、nodal、アクチビン、レフティー、骨形成タンパク質、ならびに成長及び分化因子を含む、構造的に関連したタンパク質の大きな群である。TGFβシグナル伝達は、Smad経路及び非Smad経路を通じて形質導入される。TGFβは、TMEにおける免疫抑制及び免疫監視の回避を媒介する際に決定的な機能を伴う多面的サイトカインである。TGFβは腫瘍により異常に産生され、主に自然免疫系及び適応免疫系の両方を抑制することにより癌進行を促す。抗腫瘍免疫性の負の調節因子として、TGF-βは、抗PD-1/PD-L1の有効性を損ない、薬物耐性を誘導する。
【0306】
大半の癌腫を伴う患者の約10~30%のみが、処置前の腫瘍標本がPD-L1を発現している患者のみを選択的に登録する治験においてでさえ、抗PD-1/PD-L1単独療法で処置された場合に客観的な応答を達成することが報告されている(Lipson,EJ et al,Semin.Oncol.42(4):587(2015)。この応答の欠如についての一つの可能な説明は、T細胞のプライミングを阻害する、又はエフェクターT細胞機能を抑制するように機能する免疫抑制細胞(例、調節性T細胞(Treg)及び他の因子(例、サイトカイン及び代謝経路)の存在に起因する腫瘍微小環境の免疫抑制的な性質である。抗PD-1/PD-L1治療の効果は、機能亢進性TGFβシグナル伝達により特徴付けられるTMEにおいて限定的であると報告されている(Tauriello DVF,et al,Nature,554:538-543(2018)。
【0307】
TGFβシグナル伝達の効果は、三つのTGFβリガンド(TGF-β1-3)により媒介され、それらの全てが、ホモ二量体として、TGFβ1型(TGFβR1)及び2型受容体TGFβR2を通じて存在する。腫瘍微小環境において、TGFβシグナル伝達のバランスにおいて密接に関与する多数の細胞状況依存的因子がある(Liu S,et al.,Mol Med Rep 17:699-704(2018)。TGFβは、抗腫瘍免疫応答を抑制するための重要な因子であることが示されているが、しかし、T細胞及び腫瘍由来TGF-βの正確な役割は、未だに不十分にしか理解されていない。
【0308】
Treg、単球性骨髄由来抑制細胞(MDSC)、代替的に極性化されたマクロファージ(M2表現型)、及びそれらの関連する可溶性因子は、抗腫瘍免疫性を抑制することができる、十分に認識されている阻害機構である。MDSCは、腫瘍微小環境におけるTGFβの主な供給源であることが報告されている。
【0309】
Tregは、固形腫瘍において一般に見出され、サイトカインを活性化するために、エフェクター細胞と競合すること、及び免疫抑制性サイトカインの分泌を含む、いくつかの機構により免疫抑制を促すことができる。例えば、Tregは、腫瘍微小環境における形質転換成長因子-ベータ(TGFβ)のレベルに寄与し、それは、適応免疫プライミング及びエフェクター応答の両方を破壊する免疫抑制因子である。
【0310】
腫瘍微小環境調節因子を標的化する治療薬剤の設計は、腫瘍免疫療法を最適化するために使用される、認識されている戦略である。例えば、TGFβ及び免疫細胞の相互作用は、腫瘍微小環境及び癌進行における重要な調節軸として同定されている。TGFβは、Tregの分化を誘導し、T細胞及びナチュラルキラー(NK)細胞の細胞傷害性を低下させ、免疫細胞の腫瘍浸潤を制限し、及び樹状細胞(DC)による抗原提示を抑制することにより、多数の免疫細胞の機能を調節する(Yi,M et al.J.Hematol.Oncol.14(1):27(2021)。TGF-βシグナル伝達経路の阻害のための主な戦略は、TGF-βの、その受容体への結合に干渉する、細胞内シグナル伝達を遮断する、又はアンチセンスオリゴヌクレオチドを使用して発現を破壊する治療薬剤を設計することである。
【0311】
腫瘍微小環境調節因子としてのTGFβ
抗PD-1/PD-L1免疫療法の効果は、高活性TGFβシグナル伝達により特徴付けられるTMEにおいて限定される。前臨床試験からのデータは、TGFβを遮断する又はそれと拮抗することによって、TGFβの免疫抑制効果に寄与するいくつかの因子を潜在的に破壊することができるという前提を支持する。Budhuらによる試験によって、T細胞の抗腫瘍活性が、腫瘍常在性調節性T(Treg)細胞により阻害されたこと、及び免疫抑制がTreg細胞表面上のTGFβの存在に依存的であることが見出された。TGF-βに対する遮断抗体は免疫抑制を逆転させ、抗腫瘍応答をブーストした(S.Budhu et al,Sci.Signal.10,eaak9702(2017)。他の公開されたデータは、TGFβによって、T細胞が腫瘍に浸潤することを遮断することにより、抗腫瘍免疫応答が制限されることを示唆している。尿路上皮癌のマウスモデルにおいて実施された試験によって、TGF-βシグナル伝達及びPD-L1を標的化する抗体との併用治療によって、T細胞が腫瘍に侵入する能力が増加され、腫瘍退縮を誘導し、抗腫瘍免疫応答を増強することが示された(Mariathasan,S et al,Nature 554,544-548(2018)。
【0312】
Tauriello、D.V.F.らは、結腸直腸癌に関連付けられる四つの変異を発現するマウスを試験し、マウスにおける転移が、低下したT細胞浸潤及び間質における活性TGFβにより特徴付けられることを見出した。PD-1-PD-L1免疫チェックポイントの阻害は、モデル系において限定された応答を誘発したが、しかし、TGFβの阻害は、転移を防止する強力で持続的な細胞傷害性T細胞応答を解放した。進行性肝転移性疾患を伴うマウスでは、TGFβシグナル伝達の遮断によって、腫瘍が抗PD-1/PD-L1治療に感受性になり、増加した生存に導いた(Tauriello,Nature 554,544-548(2018)。
【0313】
M7824(ビントラフスプアルファ)は、Merck KGaA、ドイツ、ダルムシュタット及びGlaxoSmithKlineにより開発下にある二官能性融合タンパク質である。M7824は、TGF-βRIIの可溶性細胞外ドメイン(136アミノ酸)のN末端に、可動性(GlySer)Glyリンカーを介して遺伝子融合されたヒト化IgG1モノクローナル抗体アベルマブから由来するVH配列及びVL配列を含む。それは、全ての三つのTGF-β(TGF-β1-3)リガンドアイソフォームについてのサイトカイントラップとして機能する。
【0314】
いくつかの前臨床試験によって、ビントラフスプアルファが、(1)ヒト癌細胞におけるTGF-β誘導性の上皮間葉転換を予防又は逆転させることが可能であり;腫瘍細胞の可塑性におけるこの変化によって、ヒト腫瘍細胞が免疫媒介性攻撃に、ならびにいくつかの化学療法剤により感受性になること;(2)ナチュラルキラー細胞及びT細胞の表現型を変化させ、このように、腫瘍細胞に対するそれらの細胞溶解能力を増強すること;(3)抗体依存的な細胞媒介性細胞傷害性機構を介して、ヒト腫瘍細胞の増強した溶解を媒介すること;(4)Treg細胞の抑制活性を低下させること;(5)多数の前臨床モデルにおいて抗腫瘍活性を媒介すること;及び(6)放射線、化学療法ならびにPD-L1経路及びTGFベータ経路を同時に遮断するように設計されたいくつかの他の免疫療法剤との組み合わせにおいて抗腫瘍活性を増強すること(Lind H,et al,J Immunother Cancer,Feb;8(1):e000433(2020)が示されている。抗PD-L1/TGFβトラップ(ビントラフスプ)を用いた処置は、単一薬剤の抗PD-L1又はTGFβトラップタンパク質のものよりも優れていると報告されている相乗的な抗腫瘍効果を誘発することが示されている(US9,676,863)。
【0315】
観察された相乗効果は、免疫細胞上のPD-1と腫瘍細胞上のPD-L1の間での相互作用の同時遮断及び腫瘍微小環境におけるTGFβの中和に起因する(US9,676,863)。相乗効果は、二つの主要な免疫回避機構の同時遮断に基づくと推定される。TGFβの枯渇は、腫瘍微小環境におけるTGFβサイトカインレベルに拮抗すること(腫瘍細胞の抗PD-L1標的化の結果として)、及びPD-L1受容体媒介性エンドサイトーシスを通じたTGFβの破壊により達成される(US9,676,863)。
【0316】
PD/PD-L1チェックポイント及びTGFβを標的化するPD-L1結合タンパク質
PD-1/PD-L1及びTGFβの二重遮断が、相乗的な抗腫瘍活性を有することが報告されている(Chen,X et al.Int.J.Cancer 143:2561(2018)及びYi,M et al.J.Hematol.Oncol.14(1):27(2021)。PD-1/PD-L1軸及びTGFβの免疫抑制効果が相補的で独立していることを考慮すると、抗PD-L1免疫療法の有効性を増強するために、TGFβシグナル伝達を遮断することが可能であるPD-L1結合タンパク質を設計することが合理的である(Yi,M et al.J.Hematol.Oncol.14(1):27(2021))。また、PD-L1に結合し、TGF-β経路アンタゴニストを含む二重又は三重特異性結合タンパク質は、PD-1/PD-L1単独療法に抵抗性の患者のための効果的な選択肢を提供し得る(Kim et al.,J Hematol Oncol,14:55(2021))。
【0317】
抗PD-L1免疫療法の有効性を増強するために、PD-1/PD-L1軸及びTGFβシグナル伝達経路を同時に遮断することができる結合タンパク質が提供される。一部の実施形態では、結合タンパク質はまた、CD137に結合し、T細胞応答性を促す共刺激シグナルを提供することができる。
【0318】
PD-L1単一特異性体
一部の実施形態では、開示されているPD-L1単一特異性体(1923Ab2及び1923Ab3)は、ヒトPD-L1について特異的である(例、特異的に結合する)。これらの結合タンパク質及びそれらの断片は、CDR配列の固有のセット、PD-L1についての特異性により特徴付けられ、PD-1/PD-L1シグナル伝達の強力な阻害活性を示す。より具体的には、一態様では、本開示は、ヒトPD-L1に結合する結合タンパク質、及び単剤療法としての、又は腫瘍微小環境に局在化された細胞のPD-L1媒介性活性を調節するための他の抗癌剤との組み合わせにおけるそれらの使用に関する。代替的な実施形態では、PD-L1に結合する、開示されている結合タンパク質はまた、PD-1/PD-L1チェックポイント阻害からエフェクターT細胞を脱抑制する/放出するように設計された二重特異性体及び三重特異性体のサブユニットとして使用することができる。
【0319】
代替的な態様では、本開示は、PD-L1に結合する二重特異性体又は三重特異性体を設計するための、PD-L1に結合する、開示されている結合タンパク質の使用、及びPD-L1/PD-L1チェックポイントを脱抑制し、T細胞活性化を促すためのそれらの使用に関する。
【0320】
例示的な実施形態では、本発明は、PD-L1に結合する結合タンパク質を提供し、以下を含む抗体足場モジュールを含む:(a)表1中の1923Ab2についてのCDR配列を含む重鎖可変領域配列;及び表2中の1923Ab2についてのCDR配列を含む軽鎖可変領域配列。
【0321】
例示的な実施形態では、本発明は、PD-L1に結合する結合タンパク質を提供し、以下を含む抗体足場モジュールを含む:(a)表1中の1923Ab3についてのCDR配列を含む重鎖可変領域配列;及び表2中の1923Ab3についてのCDR配列を含む軽鎖可変領域配列。
【表1】
【表2】
【0322】
一部の実施形態では、PD-L1に結合する結合タンパク質は、VH(例えば、配列番号1及び3)及びVL(例えば、配列番号2及び4)を含む重鎖領域配列を伴うモノクローナル、キメラ、二重特異性又は三重特異性であることができ、定常領域は、IgG1、IgG2、IgG3又はIgG4であってもよい。さらなる実施形態では、本発明の抗体は、Fcサイレンシング変異(L234A L235A又はN297A)を伴うヒトIgG1型である。
【0323】
一部の実施形態では、開示されている抗PD-L1抗体がFc操作されることが有利である。
【0324】
なおさらなる実施形態では、本発明は、重鎖配列及び軽鎖配列を含むPD-L1に結合する結合タンパク質を提供し、それにおいて、重鎖配列は、配列番号42又は45と少なくとも85%の配列同一性を有し、軽鎖配列は、配列番号40と少なくとも85%の配列同一性を有する。
【0325】
一実施形態では、開示されている抗体は、ヒト又はカニクイザルPD-L1に結合し、ヒトPD-L1とPD1受容体の間での相互作用を遮断することが可能である。
【0326】
一実施形態では、結合タンパク質は、5×10-9M又はそれ以下のKDを伴って、好ましくは2×10-9M又はそれ以下のKDを伴って、及びさらにより好ましくは1×10-9M又はそれ以下のKDを伴ってヒトPD-L1に結合する。
【0327】
さらなる実施形態では、本発明は、ヒトPD-L1、又はその断片に結合する結合タンパク質に関し、それは、本明細書中に記載される、本発明による抗体(Tecentriq)とPD-L1への結合について交差競合する。
【0328】
一部の実施形態では、PD-L1又はその断片に結合する結合タンパク質は、単独で又は組み合わせにおいて、以下の構造的及び機能的特徴の一つ又は複数を示す:(a)ヒトPD-L1について特異的である、(b)カニクイザルPD-L1と交差反応する、(c)PD-1へのPD-L1の結合を破壊する、又は(d)T細胞PD-L1媒介性チェックポイント阻害シグナルを除去する。
【0329】
PD-L1に結合する、開示されている結合タンパク質によるPD-L1/PD-1相互作用の破壊及び活性化チェックポイントの脱抑制を、複数のインビトロアッセイを使用して検討した。抗PD-L1部分の生物活性は、PD-1/PD-L1遮断アッセイを使用してTCRシグナル伝達を回復させる、PD-1とPD-L1の間での相互作用を破壊するその能力により決定された。
【0330】
CD137単一特異性体
一部の実施形態では、開示されているCD137単一特異性体(1923Ab4、1923Ab5、及び1923Ab6)は、ヒトCD137について特異的である(例、特異的に結合する)。これらの結合タンパク質及びそれらの断片は、CDR配列の固有のセット、CD137についての特異性により特徴付けられ、単独療法として又は他の抗癌剤との組み合わせにおいて癌免疫療法において有用である。本明細書中で実証されるように、CD137に結合する結合タンパク質はまた、PD1/PD-L1チェックポイント阻害から放出されたエフェクターT細胞を再活性化するように設計された二重特異性体及び三重特異性体のサブユニットとして使用することができる。より具体的には、本開示は、ヒトCD137に結合する結合タンパク質に、及び腫瘍微小環境に局在化された細胞のCD137媒介性活性を調節するためのそれらの使用に関する。
【0331】
例示的な実施形態では、本発明は、(a)CD137に結合する結合タンパク質を提供し、(a)表3中の1923Ab4についてのCDR配列を含む重鎖可変領域配列;及び表4中の1923Ab4についてのCDR配列を含む軽鎖可変領域配列を含む抗体足場モジュールを含む。
【0332】
例示的な実施形態では、本発明は、(a)CD137に結合する結合タンパク質を提供し、(a)表3中の1923Ab5についてのCDR配列を含む重鎖可変領域配列;及び表4中の1923Ab5についてのCDR配列を含む軽鎖可変領域配列を含む抗体足場モジュールを含む。
【0333】
例示的な実施形態では、本発明は、(a)CD137に結合する結合タンパク質を提供し、(a)表3中の1923Ab6についてのCDR配列を含む重鎖可変領域配列;及び表4中の1923Ab6についてのCDR配列を含む軽鎖可変領域配列を含む抗体足場モジュールを含む。
【表3】
【表4】
【0334】
一部の実施形態では、CD137に結合する結合タンパク質は、VH(例えば、配列番号16、18、及び20)及びVL(例えば、配列番号17、19、及び21)を含む重鎖領域配列を伴うモノクローナル、キメラ、二重特異性又は三重特異性であってもよく、定常領域は、IgG1、IgG2、IgG3又はIgG4であってもよい。さらなる実施形態では、本発明の抗体は、Fcサイレンシング変異(L234A L235A又はN297A)を伴うヒトIgG1型である。
【0335】
一部の実施形態では、開示されている抗CD137抗体がFc操作されることが有利である。
【0336】
なおさらなる実施形態では、本発明は、重鎖配列及び軽鎖配列を含むCD137に結合する結合タンパク質を提供し、それにおいて、重鎖配列は、重鎖配列:配列番号75と少なくとも85%の配列同一性を有する:及び軽鎖配列は、軽鎖配列:配列番号76と少なくとも85%の配列を有する。
【0337】
出願人は、より良好な免疫療法のためのオンターゲットオフ腫瘍毒性及び免疫抑制設定を克服するための所望のプロファイルを実証する、CD137に結合する結合タンパク質を発見しようと試みた。CD137に結合する、開示されている結合タンパク質は、抗PD-1/PD-L1耐性に寄与する、消耗したT細胞又は調節性T細胞において富む腫瘍微小環境について特に有益であり得る。
【0338】
一部の実施形態では、CD137に結合する結合タンパク質及びその断片は、単独で又は組み合わせにおいて、以下の構造的及び機能的特徴の一つ又は複数を示す:
(a)ヒトCD137について特異的である、
(b)カニクイザルCD137と交差反応する、
(c)CD137に結合するヒトCD137Lを破壊(例、低下又は防止)する、
(d)CD137に対して高速オン及び高速オフ特性を示す、
(e)CD137シグナル伝達に対する架橋依存的アゴニスト活性を持つ、又は
(f)架橋依存的な様式においてT細胞を活性化する。
【0339】
一実施形態では、開示されている結合タンパク質は、架橋剤の存在においてCD137シグナル伝達を活性化する。一次PBMCを使用したT細胞活性化アッセイでは、それらは、架橋依存的な様式において抗CD3刺激IFN-ガンマ放出を増強した。
【0340】
一部の実施形態では、開示されている結合タンパク質は、ヒトCD137及びカニクイザルCD137の両方に結合することが有利である。カニクイザル(例、マカカ・ファスシリカリス)において細胞上に発現されるCD137との交差反応性が有利である。なぜなら、それは、代替抗体を使用する必要を伴わずに、抗体分子の動物テストを可能にするためである。CD137、1923Ab4、1923Ab5及び1923Ab6に結合する、開示されている結合タンパク質は、全てが、著しい親和性を伴ってカニクイザルからのCD137に結合する。開示されている抗体はマウスCD137に結合しないが、ヒト化CD137マウスが利用可能であり、インビボでの前臨床マウス腫瘍モデルにおいて、開示されている抗体の有効性を試験するために使用することができる。
【0341】
開示されている抗CD137抗体によるT細胞活性化を、複数のインビトロアッセイを使用して調べた。抗CD137部分の生物活性は、CD137を過剰発現し、NFκBルシフェラーゼレポーターを保有するアッセイ細胞を使用して、架橋依存的CD137シグナル伝達を誘導するその能力により決定された。また、架橋抗CD137は、PBMCにおける抗CD3刺激IFNγ放出を増強させる。
【0342】
一部の実施形態では、本明細書中に開示される結合タンパク質は、一つ又は複数の保存的アミノ酸置換を含み得る。当業者は、保存的アミノ酸置換が、類似の構造的又は化学的特性、例えば、類似の側鎖などを有する別のアミノ酸を用いた、一つのアミノ酸の置換であることを認識するであろう。例示的な保存的置換は、当技術分野、例えば、Watson et al.,Molecular Biology of the Gene,The Benjamin/Cummings Publication Company,4th Ed.(1987)において記載されている。
【0343】
「保存的修飾」は、アミノ酸配列を含む結合タンパク質の結合特徴に有意に影響を及ぼさない、又はそれを変化させないアミノ酸修飾を指す。保存的修飾は、アミノ酸置換、付加、及び欠失を含む。保存的置換は、アミノ酸が、類似の側鎖を有するアミノ酸残基で置換されているものである。類似の側鎖を有するアミノ酸残基のファミリーが、十分に定義されており、酸性側鎖(例、アスパラギン酸、グルタミン酸)、塩基性側鎖(例、リジン、アルギニン、ヒスチジン)、非極性側鎖(例、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン)、非荷電極性側鎖(例、グリシン、アスパラギン、グルタミン、システイン、セリン、スレオニン、チロシン、トリプトファン)、芳香族側鎖(例、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン、チロシン)、脂肪族側鎖(例、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、セリン、スレオニン)、アミド(例、アスパラギン、グルタミン)、ベータ分岐側鎖(例、スレオニン、バリン、イソロイシン)、及び硫黄含有側鎖(システイン、メチオニン)を伴うアミノ酸を含む。さらに、ポリペプチド中の任意の天然残基はまた、アラニンスキャニング変異誘発について以前に記載されたように、アラニンで置換され得る(MacLennan et al.(1998)Acta Physiol Scand Suppl 643:55-67;Sasaki et al.(1998)Adv Biophys 35:1-24)。本明細書中に開示される結合タンパク質へのアミノ酸置換は、公知の方法、例えば、PCR変異誘発により作製され得る(米国特許第4,683,195号)。
【0344】
一部の実施形態では、結合タンパク質は、配列番号16、18、又は20において示されるアミノ酸配列と少なくとも約95%、約96%、約97%、約98%、又は約99%の配列同一性を伴うアミノ酸配列を含む可変重鎖配列を含む。他の実施形態では、結合タンパク質は、配列番号16、18、又は20の可変重鎖配列を含む結合タンパク質の結合及び/又は機能的活性を保持する。なおさらなる実施形態では、結合タンパク質は、配列番号16、18、又は20の可変重鎖配列を含み、重鎖可変配列において一つ又は複数の保存的アミノ酸置換、例えば、1、2、3、4、5、1~2、1~3、1~4、又は1~5の保存的アミノ酸置換を有する。なおさらなる実施形態では、一つ又は複数の保存的アミノ酸置換は、配列番号16、18、又は20の一つ又は複数のフレームワーク領域内に入る(Kabatのナンバリングシステムに基づく)。
【0345】
特定の実施形態では、結合タンパク質は、配列番号16、18、又は20において示される結合タンパク質重鎖可変領域配列と少なくとも約95%、約96%、約97%、約98%、又は約99%の配列同一性を伴う可変重鎖配列を含み、フレームワーク領域中に一つ又は複数の保存的アミノ酸置換を含み(Kabatのナンバリングシステムに基づく)、ならびに配列番号16、18、又は20において示される可変重鎖配列及び配列番号17、19、又は21において示される可変軽鎖配列を含む結合タンパク質の結合活性及び/又は機能活性を保持する。
【0346】
一部の実施形態では、結合タンパク質は、配列番号17、19、又は21において示されるアミノ酸配列と少なくとも約95%、約96%、約97%、約98%、又は約99%の配列同一性を伴うアミノ酸配列を含む可変軽鎖配列を含む。他の実施形態では、結合タンパク質は、配列番号17、19、又は21の可変軽鎖配列を含む結合タンパク質の結合及び/又は機能的活性を保持する。なおさらなる実施形態では、結合タンパク質は、配列番号17、19、又は21の可変軽鎖配列を含み、一つ又は複数の保存的アミノ酸置換、例えば、軽鎖可変配列中の1、2、3、4、5、1~2、1~3、1~4、又は1~5の保存的アミノ酸置換を有する。なおさらなる実施形態では、一つ又は複数の保存的アミノ酸置換は、配列番号17、19、又は21の一つ又は複数のフレームワーク領域内に入る(Kabatのナンバリングシステムに基づく)。
【0347】
特定の実施形態では、結合タンパク質は、配列番号17、19、又は21において示される結合タンパク質軽鎖可変領域配列と少なくとも約95%、約96%、約97%、約98%、又は約99%の配列同一性を伴う可変軽鎖配列を含み、フレームワーク領域中に一つ又は複数の保存的アミノ酸置換を含み(Kabatのナンバリングシステムに基づく)、ならびに配列番号16、18、又は29において示される可変重鎖配列及び配列番号17、19、又は21において示される可変軽鎖配列を含む結合タンパク質の結合活性及び/又は機能活性を保持する。
【0348】
PD-L1/CD137二重特異性体
特定の実施形態では、本開示は、抗PD-L1抗体から由来するPD-L1抗体足場モジュール及び抗CD137抗体から由来するCD137の第一の結合モジュールを含むPD-L1/CD137二重特異性体を提供し、それにおいて、二重特異性体は、CD137を刺激し、PD-L1依存的な様式においてT細胞を活性化する。
【0349】
一部の実施形態では、PD-L1/CD137二重特異性体は、表5中に開示される重鎖 を含む。例えば、PD-L1/CD137二重特異性体は、1923Ab3のVHから由来するCDR配列のセットを伴うHC、及びFc受容体機能を減少又は切断するためのアミノ酸修飾を伴う又は伴わない改変ヒトIgG1 Fc領域を含み得る。一部の実施形態では、HCは、本明細書中に開示されるCD137に結合する結合タンパク質、例えば1923Ab4のVH領域及びVL領域から由来するCDR配列のセットを伴うscFvをさらに含み得る。一部の実施形態では、scFvは、HCのN又はC末端に位置付けられるリンカーによりHCに付着され得る。
【0350】
一部の実施形態では、PD-L1/CD137二重特異性体は、表5中に開示される軽鎖 を含む。例えば、PD-L1/CD137二重特異性体は、1923Ab3のVLから由来するCDR配列のセットを伴うLCを含み得る。一実施形態では、LCは、本明細書中に開示されるCD137に結合する結合タンパク質、例えば1923Ab4のVH領域及びVL領域から由来するCDR配列のセットを伴うscFvをさらに含み得る。一部の実施形態では、scFvは、LCのN又はC末端に位置付けられるリンカーによりLCに付着され得る。
【表5】
【0351】
一部の実施形態では、PD-L1/CD137二重特異性1923Ab8(図13B)は、PD-L1に結合する1923Ab3からの二つのFab、L234A L235A変異を伴うヒトIgG1 Fc、及びAb3重鎖のC末端に付着された1923Ab4から由来する二つのscFv断片(VHがVLに先行する)を含む。図14(A)は、1923Ab8の重鎖及び軽鎖の説明を提供する。図15は、開示されている結合タンパク質のサブコンポーネントのより詳細な説明を提供する。重鎖及び軽鎖のアミノ酸配列は、それぞれ配列番号38及び配列番号40において提供される。
【0352】
一部の実施形態では、PD-L1/CD137二重特異性1923Ab11(図13E)は、PD-L1に結合する1923Ab3からの二つのFab、L234A L235A変異を伴うヒトIgG1 Fc、及びAb3重鎖のC末端に付着された1923Ab4から由来する二つのscFv断片(VLがVHに先行する)を含む。図14(A)は、1923Ab11の重鎖及び軽鎖の説明を提供する。図15は、サブコンポーネントのより詳細な説明を提供する。重鎖及び軽鎖のアミノ酸配列は、それぞれ配列番号44及び配列番号40において提供される。
【0353】
一部の実施形態では、PD-L1/CD137二重特異性1923Ab12(図13F)は、PD-L1に結合する1923Ab3からの二つのFab、L234A L235A変異を伴うヒトIgG1 Fc、及びAb3軽鎖のN末端に付着された1923Ab4から由来する二つのジスルフィド結合安定化scFv断片(VHがVLに先行する)を含む。図14(A)は、1923Ab12の重鎖及び軽鎖の説明を提供する。図15は、サブコンポーネントのより詳細な説明を提供する。重鎖及び軽鎖のアミノ酸配列は、それぞれ配列番号45及び配列番号46において提供される。
【0354】
一部の実施形態では、PD-L1/CD137二重特異性1923Ab13(図13G)は、PD-L1に結合する1923Ab3からの二つのFab、L234A L235A変異を伴うヒトIgG1 Fc、及びAb3重鎖のN末端に付着された1923Ab4から由来する二つのジスルフィド結合安定化scFv断片(VHがVLに先行する)を含む。図14(A)は、1923Ab13の重鎖及び軽鎖の説明を提供する。図15は、サブコンポーネントのより詳細な説明を提供する。重鎖及び軽鎖のアミノ酸配列は、それぞれ配列番号47及び配列番号40において提供される。
【0355】
一部の実施形態では、PD-L1/CD137二重特異性1923Ab18(図13J)は、PD-L1に結合する1923Ab3からの二つのFab、L234A L235A変異を伴うヒトIgG1 Fc、及びAb3重鎖のC末端に付着された1923Ab4から由来する二つのジスルフィド結合安定化scFv断片(VHがVLに先行する)を含む。図14(A)は、1923Ab18の重鎖及び軽鎖の説明を提供する。図15は、サブコンポーネントのより詳細な説明を提供する。重鎖及び軽鎖のアミノ酸配列は、それぞれ配列番号50及び配列番号40において提供される。
【0356】
抗PD-L1部分の生物活性は、PD-1/PD-L1遮断アッセイを使用してTCRシグナル伝達を回復させる、PD-1とPD-L1の間での相互作用を破壊するその能力により決定された。抗CD137部分の生物活性は、CD137を過剰発現し、NFκBルシフェラーゼレポーターを保有するアッセイ細胞を使用して、架橋依存的CD137シグナル伝達を誘導するその能力により決定された。
【0357】
一部の実施形態では、PD-L1/CD137二重特異性体は、単独で、又は組み合わせにおいて、以下の特徴の一つ又は複数を示す:
(a)ヒトPD-L1について特異的であり、ヒトCD137に結合する;
(b)カニクイザルPD-L1及びCD137と交差反応する;
(c)PD-1及びPD-L1の相互作用を破壊する;
(d)CD137に結合するヒトCD137Lを破壊(例、低下又は防止)する;
(e)CD137に対して高速オン及び高速オフ特性を示す;
(f)T細胞PD-L1媒介性チェックポイント阻害シグナルを脱抑制する;
(g)CD137シグナル伝達に対するPD-L1依存的アゴニスト活性を持つ;
(h)PD-L1依存的な様式においてT細胞を活性化する;
(i)CD8 T細胞を活性化することによりPD-L1発現腫瘍細胞を死滅させる;
(j)MC38-hPD-L1同系腫瘍モデルを使用して、ヒトPD-L1及びCD137ノックインにおいて抗腫瘍有効性を実証する;
(k)腫瘍微小環境においてCD8+T細胞を増加させる;
(l)腫瘍微小環境においてTreg細胞のパーセンテージを減少させる;及び
(m)腫瘍微小環境の外側のオンターゲット毒性を減少させる。
【0358】
特定の実施形態では、二重特異性体は、免疫細胞増殖、生存、細胞溶解活性CD8 T細胞及びサイトカインの分泌を増強する能力を有する。特定の実施形態では、開示されているPD-L1/CD137二重特異性体は、CMVリコールアッセイにおいてヒトT細胞を活性化することが示されており、単一特異性抗体の組み合わせよりも大きな効力を伴う。
【0359】
一部の実施形態では、本明細書中に記載される結合タンパク質は、以下からなる群より選択される特徴を持つ:PD-1とPD-L1の相互作用を破壊する、T細胞PD-L1媒介性チェックポイント阻害性シグナルを除去する、CD137シグナル伝達へのPD-L1依存的アゴニスト活性を持つ、PD-L1依存的な様式においてT細胞を活性化する、CD8 T細胞を活性化することによりPD-L1発現腫瘍細胞を死滅させる、MC38-hPD-L1同系腫瘍モデルを使用してヒトPD-L1及びCD137ノックインにおいて抗腫瘍有効性を実証する、腫瘍微小環境においてCD8+/T細胞を増加させる、及び腫瘍中のTreg細胞のパーセンテージを減少させる。
【0360】
特定の実施形態では、二重特異性体は、CD137及びPD-L1発現細胞に結合する能力を有する。別の実施形態では、PD-L1への二重特異性体の結合は、PD-1とのその相互作用を破壊し、それによって、Jurkat T細胞におけるTCRシグナル伝達の回復がもたらされる。また、PD-L1結合二重特異性体はCD137シグナル伝達を活性化するのに対し、単一特異性抗PD-L1抗体単独はCD137シグナル伝達を誘導しない。さらに、それらは、PBMCにおける抗CD3刺激IFNγ放出を増強する。より具体的には、二重特異性体は、インビトロでPD-L1発現腫瘍細胞を死滅するようにCD8+を再配向する。一実施形態では、ヒトCD137及びヒトPD-L1ダブルノックインマウスにおいてヒトPD-L1発現MC38マウス腫瘍を使用して、開示されている二重特異性体は、強い抗腫瘍効力を示した。
【0361】
一部の実施形態では、結合タンパク質は、配列番号38、44、45、47、又は50において示されるアミノ酸配列と少なくとも約95%、約96%、約97%、約98%、又は約99%の配列同一性を伴うアミノ酸配列を含む可変重鎖配列を含む。他の実施形態では、結合タンパク質は、配列番号38、44、45、47、又は50の可変重鎖配列を含む結合タンパク質の結合及び/又は機能的活性を保持する。なおさらなる実施形態では、結合タンパク質は、配列番号38、44、45、47、又は50の可変重鎖配列を含み、重鎖可変配列において一つ又は複数の保存的アミノ酸置換、例えば、1、2、3、4、5、1~2、1~3、1~4、又は1~5の保存的アミノ酸置換を有する。なおさらなる実施形態では、一つ又は複数の保存的アミノ酸置換は、配列番号38、44、45、47、又は50の一つ又は複数のフレームワーク領域内に入る(Kabatのナンバリングシステムに基づく)。
【0362】
特定の実施形態では、結合タンパク質は、配列番号38、44、45、47、又は50において示される結合タンパク質重鎖可変領域配列と少なくとも約95%、約96%、約97%、約98%、又は約99%の配列同一性を伴う可変重鎖配列を含み、フレームワーク領域中に一つ又は複数の保存的アミノ酸置換を含み(Kabatのナンバリングシステムに基づく)、ならびに配列番号38、44、45、47、又は50において示される可変重鎖配列及び配列番号40又は46において示される可変軽鎖配列を含む結合タンパク質の結合活性及び/又は機能活性を保持する。
【0363】
一部の実施形態では、結合タンパク質は、配列番号40又は46において示されるアミノ酸配列と少なくとも約95%、約96%、約97%、約98%、又は約99%の配列同一性を伴うアミノ酸配列を含む可変軽鎖配列を含む。他の実施形態では、結合タンパク質は、配列番号40又は46の可変軽鎖配列を含む結合タンパク質の結合及び/又は機能的活性を保持する。なおさらなる実施形態では、結合タンパク質は、配列番号40又は46の可変軽鎖配列を含み、軽鎖可変配列において一つ又は複数の保存的アミノ酸置換、例えば、1、2、3、4、5、1~2、1~3、1~4、又は1~5の保存的アミノ酸置換を有する。なおさらなる実施形態では、一つ又は複数の保存的アミノ酸置換は、配列番号40又は46の一つ又は複数のフレームワーク領域内に入る(Kabatのナンバリングシステムに基づく)。
【0364】
特定の実施形態では、結合タンパク質は、配列番号40又は46において示される結合タンパク質軽鎖可変領域配列と少なくとも約95%、約96%、約97%、約98%、又は約99%の配列同一性を伴う可変軽鎖配列を含み、フレームワーク領域中に一つ又は複数の保存的アミノ酸置換を含み(Kabatのナンバリングシステムに基づく)、ならびに配列番号38、44、45、47、又は50において示される可変重鎖配列及び配列番号40又は46において示される可変軽鎖配列を含む結合タンパク質の結合活性及び/又は機能活性を保持する。
【0365】
PD-L1/TGFβ二重特異性体
代替的な実施形態では、本開示は、抗PD-L1抗体から由来するPD-L1抗体足場モジュール及びヒトTGFβRIIのECDから由来する腫瘍微小環境調節因子を含むPD-L1/TGFβ二重特異性体を提供し、それにおいて、二重特異性体は、PD-1/PD-L1チェックポイントを脱抑制し、腫瘍微小環境においてTGFβの免疫抑制効果を中和する。
【0366】
他の実施形態では、本開示は、抗PD-L1抗体から由来するPD-L1抗体足場モジュール及びヒトTGFβ受容体II型のECDから由来するTGFβの第一の結合モジュールを含むPD-L1/TGFβ二重特異性体を提供し、それにおいて、二重特異性体は、PD-L1及びTGFβの両方に結合し、TMEにおいてTGFβの生物学的活性を中和することができる。
【0367】
一部の実施形態では、PD-L1/TGFβ二重特異性1923Ab20(図13L)は、PD-L1に結合する1923Ab3からの二つのFab、L234A L235A変異を伴うヒトIgG1 Fc、及び1923Ab3重鎖のC末端に付着されたTGFβRIIの細胞外ドメインをコードする二つのポリペプチドを含む。図14(A)は、1923Ab20の重鎖及び軽鎖の説明を提供する。図15は、サブコンポーネントのより詳細な説明を提供する。表6は、重鎖及び軽鎖、それぞれ配列番号51及び配列番号40のアミノ酸配列を提供する。
【表6】
【0368】
抗PD-L1部分の生物活性は、PD-1/PD-L1遮断アッセイを使用してTCRシグナル伝達を回復させる、PD-1とPD-L1の間での相互作用を破壊するその能力により決定された。ヒトTGFβの生物活性を中和する、TGFβRIIの細胞外ドメイン(ECD)の能力は、SBE(SMAD結合エレメント)レポーター細胞を使用してTGFβ誘導性シグナル伝達カスケードを遮断するその能力により決定された。
【0369】
一部の実施形態では、二重特異性体は、単独で又は組み合わせにおいて、以下の特徴の一つ又は複数を示す:(a)ヒトPD-L1について特異的であり、ヒトTGFβに結合する;(b)PD-1及びPD-L1の相互作用を破壊する;(c)T細胞PD-L1媒介性チェックポイント阻害シグナルを脱抑制する;(d)ヒトTGFβに結合し、その生物学的活性を中和する;(e)腫瘍微小環境の外側での低下した毒性;(f)腫瘍微小環境においてCD8+T細胞を増加させる;又は(g)腫瘍微小環境においてTreg細胞のパーセンテージを低下させる。
【0370】
特定の実施形態では、開示されているPD-L1/TGFβ二重特異性体は、免疫細胞の増殖、生存、CD8 T細胞の細胞溶解活性、及びサイトカインの分泌を増強する能力を有する。特定の実施形態では、開示されているPD-L1/TGFβ二重特異性体は、CMVリコールアッセイにおいてヒトT細胞を活性化することが示されており、単一特異性抗体の組み合わせよりも大きな効力を伴う。
【0371】
一部の実施形態では、本明細書中に記載される結合タンパク質は、以下からなる群から選択される特徴を有する:PD-1及びPD-L1の相互作用を破壊する、T細胞PD-L1媒介性チェックポイント阻害シグナルを除去する、PD-L1依存的な様式においてT細胞を活性化する、CD8 T細胞を活性化することによりPD-L1発現腫瘍細胞を死滅させる、腫瘍微小環境においてCD8+T細胞を増加させる、及び腫瘍においてTreg細胞のパーセンテージを減少させる。
【0372】
一部の実施形態では、PD-L1/TGFβ二重特異性体は、単独で又は組み合わせにおいて、以下の機能的特徴の一つ又は複数を示す:PD-1及びPD-L1の相互作用を破壊し、T細胞PD-L1媒介性チェックポイント阻害シグナルを除去し、TGFβシグナル伝達を阻害する。
【0373】
特定の実施形態では、開示されているウレルマブ-NRと組み合わせた二重特異性体は、CMVリコールアッセイにおいてヒトT細胞を活性化することが示されている。
【0374】
一実施形態では、TGFβRIIの細胞外ドメイン(ECD)を含む、開示されている抗体は、SBEレポーター遺伝子を担持するHEK細胞においてTGFβ誘導性シグナル伝達を遮断する。
【0375】
特定の実施形態では、二重特異性体は、PD-L1発現細胞に結合する能力を有する。別の実施形態では、PD-L1への二重特異性体の結合は、PD-1とのその相互作用を破壊し、それによって、Jurkat T細胞におけるTCRシグナル伝達の回復がもたらされる。
【0376】
一部の実施形態では、結合タンパク質は、配列番号51において示されるアミノ酸配列と少なくとも約95%、約96%、約97%、約98%、又は約99%の配列同一性を伴うアミノ酸配列を含む可変重鎖配列を含む。他の実施形態では、結合タンパク質は、配列番号51の可変重鎖配列を含む結合タンパク質の結合及び/又は機能的活性を保持する。なおさらなる実施形態では、結合タンパク質は、配列番号51の可変重鎖配列を含み、一つ又は複数の保存的アミノ酸置換、例えば、重鎖可変配列における1、2、3、4、5、1~2、1~3、1~4、又は1~5の保存的アミノ酸置換を有する。なおさらなる実施形態では、一つ又は複数の保存的アミノ酸置換は、配列番号51の一つ又は複数のフレームワーク領域内に入る(Kabatのナンバリングシステムに基づく)。
【0377】
特定の実施形態では、結合タンパク質は、配列番号51において示される結合タンパク質重鎖可変領域配列と少なくとも約95%、約96%、約97%、約98%、又は約99%の配列同一性を伴う可変重鎖配列を含み、フレームワーク領域中に一つ又は複数の保存的アミノ酸置換を含み(Kabatのナンバリングシステムに基づく)、ならびに配列番号51において示される可変重鎖配列及び配列番号40において示される可変軽鎖配列を含む結合タンパク質の結合活性及び/又は機能活性を保持する。
【0378】
一部の実施形態では、結合タンパク質は、配列番号40において示されるアミノ酸配列と少なくとも約95%、約96%、約97%、約98%、又は約99%の配列同一性を伴うアミノ酸配列を含む可変軽鎖配列を含む。他の実施形態では、結合タンパク質は、配列番号40の可変軽鎖配列を含む結合タンパク質の結合及び/又は機能的活性を保持する。なおさらなる実施形態では、結合タンパク質は、配列番号40の可変軽鎖配列を含み、一つ又は複数の保存的アミノ酸置換、例えば、軽鎖可変配列における1、2、3、4、5、1~2、1~3、1~4、又は1~5の保存的アミノ酸置換を有する。なおさらなる実施形態では、一つ又は複数の保存的アミノ酸置換は、配列番号40の一つ又は複数のフレームワーク領域内に入る(Kabatのナンバリングシステムに基づく)。
【0379】
特定の実施形態では、結合タンパク質は、配列番号40において示される結合タンパク質軽鎖可変領域配列と少なくとも約95%、約96%、約97%、約98%、又は約99%の配列同一性を伴う可変軽鎖配列を含み、フレームワーク領域中に一つ又は複数の保存的アミノ酸置換を含み(Kabatのナンバリングシステムに基づく)、ならびに配列番号51において示される可変重鎖配列及び配列番号40において示される可変軽鎖配列を含む結合タンパク質の結合活性及び/又は機能活性を保持する。
【0380】
PD-L1/TGFβ/CD137三重特異性体
特定の実施形態では、本開示の結合タンパク質は、三重特異性体であり、PD-L1に結合する抗体足場モジュール(抗体から由来する)、TGFβ受容体II結合タンパク質を含む第一の結合モジュール、及びCD137に結合する第二の結合モジュール(抗体から由来する)を含む組換えタンパク質の形態において構築される。
【0381】
特定の実施形態では、本開示は、抗PD-L1抗体から由来するPD-L1に結合する抗体足場モジュール、TGFβ受容体2型のECDから由来するTGFβの第一の結合モジュール、及び抗CD137抗体から由来するCD137の第二の結合モジュールを含む三重特異性体を提供し、それにおいて、三重特異性体は、PD-L1、CD137に結合し、また、局所微小環境からTGFβを枯渇させ、それにより、PD-L1依存的な様式においてT細胞を活性化する。
【表7】
【0382】
一部の実施形態では、PD-L1/TGFβ/CD137三重特異性1923Ab7(図13A)は、PD-L1に結合する1923Ab3からの二つのFab、L234A L235A変異を伴うヒトIgG1 Fc、1923Ab3重鎖のC末端に付着している1923Ab4から由来する二つのscFv断片(VHがVLに先行する)、及び1923Ab3軽鎖のC末端に付着しているTGFβRIIの細胞外ドメインをコードする二つのポリペプチドを含む。図14(B)は、1923Ab7の重鎖及び軽鎖の説明を提供する。図15は、三重特異性体のサブコンポーネントのより詳細な説明を提供する。表7は、重鎖及び軽鎖、それぞれ配列番号38及び配列番号39のアミノ酸配列を提供する。
【0383】
一部の実施形態では、PD-L1/TGFβ/CD137三重特異性1923Ab9(図13C)は、PD-L1に結合する1923Ab3からの二つのFab、L234A L235A変異及びノブ・イン・ホール」(KiH)変異を伴うヘテロ二量体ヒトIgG1 Fc、「ノブ」重鎖のC末端に付着している1923Ab4から由来する一つのscFv断片(VHがVLに先行する)、及び1923Ab3軽鎖のC末端に付着しているTGFβRIIの細胞外ドメインをコードする二つのポリペプチドを含む。図14(B)は、1923Ab9の重鎖及び軽鎖の説明を提供する。図15は、三重特異性体のサブコンポーネントのより詳細な説明を提供する。表7は、重鎖1(ノブ)(配列番号41)、重鎖2(ホール)(配列番号42)、及び軽鎖(配列番号39)のアミノ酸配列を提供する。
【0384】
一部の実施形態では、PD-L1/TGFβ/CD137三重特異性1923Ab10(図13D)は、PD-L1に結合する1923Ab3からの二つのFab、L234A L235A変異及びノブ・イン・ホール」(KiH)変異を伴うヘテロ二量体ヒトIgG1 Fc、「ノブ」重鎖のC末端に付着している1923Ab4から由来する一つのscFv断片(VLがVHに先行する)、及びAb3軽鎖のC末端に付着しているTGFβRIIの細胞外ドメインをコードする二つのポリペプチドを含む。図14(B)は、1923Ab10の重鎖及び軽鎖の説明を提供する。図15は、三重特異性体のサブコンポーネントのより詳細な説明を提供する。表7は、重鎖1(ノブ)(配列番号43)、重鎖2(ホール)(配列番号42)、及び軽鎖(配列番号39)のアミノ酸配列を提供する。
【0385】
一部の実施形態では、PD-L1/TGFβ/CD137三重特異性1923Ab17(図13I)は、PD-L1に結合する1923Ab3からの二つのFab、L234A L235A変異を伴うヒトIgG1 Fc、Ab3重鎖のC末端に付着している1923Ab4から由来する二つのジスルフィド結合安定化scFv断片(VHがVLに先行する)、及びAb3軽鎖のC末端に付着しているTGFβRIIの細胞外ドメインをコードする二つのポリペプチドを含む。図14(B)は、1923Ab17の重鎖及び軽鎖の説明を提供する。図15は、三重特異性体のサブコンポーネントのより詳細な説明を提供する。表7は、重鎖及び軽鎖、それぞれ配列番号50及び配列番号39のアミノ酸配列を提供する。
【0386】
一部の実施形態では、PD-L1/TGFβ/CD137三重特異性1923Ab19(図13K)は、PD-L1に結合する1923Ab3からの二つのFab、L234A L235A変異を伴うヒトIgG1 Fc、1923Ab3軽鎖のC末端に付着しているTGFβRIIの細胞外ドメインをコードする2つのポリペプチド、及び1923Ab3重鎖のC末端に付着している1923Ab4から由来する二つのジスルフィド結合安定化scFv断片(VHがVLに先行する)を含む。図14(B)は、1923Ab19の重鎖及び軽鎖の説明を提供する。図15は、三重特異性体のサブコンポーネントのより詳細な説明を提供する。表7は、重鎖及び軽鎖、それぞれ配列番号51及び配列番号52のアミノ酸配列を提供する。
【0387】
天然IgG様構造足場に基づく組換え体のヘテロ二量体化を促すために、CH3ドメインを操作して、各重鎖中に「ノブ」又は「ホール」のいずれかを作製して、ヘテロ二量体化を促すことを含むノブ・イントゥ・ホール(KiH)技術が広く適用されてきた。一部の実施形態では、特に、PD-L1に結合する結合タンパク質は、非対称設計により特徴付けられる。「ノブ」変異の一例は、CH3ドメイン中にT366Wを含み、「ホール」変異の一例は、CH3ドメイン中にT366S、L368A、Y407Vを含む。一実施形態では、安定化ジスルフィド結合は、「ノブ」における追加のS354C変異、及び「ホール」における追加のY349C変異により導入され得る。全ての残基番号はEUナンバリング中にある。
【0388】
PD-L1/TGFβ/CD137三重特異性体の生物活性を、PD-L1、TGFβ又はCD137により調節される、対応するシグナル伝達事象により決定した。一部の態様では、抗PD-L1部分は、PD-1/PD-L1遮断アッセイを使用してPD-1とPD-L1の間での相互作用を破壊するその能力により決定された。抗CD137部分の生物活性は、CD137を過剰発現し、NFκBルシフェラーゼレポーターを保有するアッセイ細胞を使用して、架橋依存的CD137シグナル伝達を誘導するその能力により決定された。抗TGF-β部分の生物活性は、SBE(SMAD結合エレメント)レポーター細胞を使用してTGFβ誘導性シグナル伝達カスケードを遮断するその能力により決定された。
【0389】
一部の実施形態では、PD-L1/TGFβ/CD137三重特異性体は、単独で又は組み合わせにおいて、以下の機能的特徴の一つ又は複数を示す:
(a)ヒトPD-L1、CD137及びTGFβに結合することが可能である;
(b)カニクイザルPD-L1及びCD137と交差反応する;
(c)PD-1及びPD-L1の相互作用を破壊(例、低下又は防止)する;
(d)CD137に結合するヒトCD137Lを破壊(例、低下又は防止)する;
(e)CD137に対して高速オン及び高速オフ特性を示す;
(f)T細胞PD-L1媒介性チェックポイント阻害シグナルを脱抑制する;
(g)TGFβシグナル伝達を阻害し、その生物学的活性を中和する;
(h)CD137シグナル伝達へのPD-L1依存的アゴニスト活性を持つ;
(pi)PD-L1依存的な様式においてT細胞を活性化する;及び
(j)CD8 T細胞を活性化することによりPD-L1発現腫瘍細胞を死滅させる。
【0390】
一部の実施形態では、PD-L1/TGFβ/CD137三重特異性体は、以下の機能的特徴の一つ又は複数を、単独で又は組み合わせにおいて示す:PD-1とPD-L1の相互作用を破壊する、T細胞PD-L1媒介性チェックポイント阻害シグナルを除去する、TGFβシグナル伝達を阻害する、CD137シグナル伝達へのPD-L1依存的アゴニスト活性を持つ、PD-L1依存的な様式においてT細胞を活性化する、及びCD8 T細胞を活性化することによりPD-L1発現腫瘍細胞を死滅させる。
【0391】
特定の実施形態では、三重特異性体は、免疫細胞増殖、生存、細胞溶解活性CD8 T細胞、及びサイトカインの分泌を増強する能力を有する。特定の実施形態では、開示されている三重特異性体は、CMVリコールアッセイにおいてヒトT細胞を活性化することが示されており、単一特異性抗体の組み合わせよりも大きな効力を伴う。
【0392】
一実施形態では、三重特異性体は、SBEレポーター遺伝子を担持するHEK細胞におけるTGFβ誘導シグナル伝達を遮断する。
【0393】
特定の実施形態では、三重特異性体は、CD137及びPD-L1発現細胞に結合する能力を有する。別の実施形態では、PD-L1への三重特異性体の結合は、PD-1とのその相互作用を破壊し、それによって、Jurkat T細胞におけるTCRシグナル伝達の回復がもたらされる。また、PD-L1結合二重特異性体は、CD137シグナル伝達を活性化する。さらに、それらは、PBMCにおける抗CD3刺激IFNγ放出を増強する。より具体的には、三重特異性体は、インビトロでPD-L1発現腫瘍細胞を死滅するようにCD8+を再配向する。
【0394】
一部の実施形態では、結合タンパク質は、配列番号38、41、42、43、50、又は51において示されるアミノ酸配列と少なくとも約95%、約96%、約97%、約98%、又は約99%の配列同一性を伴うアミノ酸配列を含む可変重鎖配列を含む。他の実施形態では、結合タンパク質は、配列番号38、41、42、43、50、又は51の可変重鎖配列を含む結合タンパク質の結合及び/又は機能的活性を保持する。なおさらなる実施形態では、結合タンパク質は、配列番号38、41、42、43、50、又は51の可変重鎖配列を含み、重鎖可変配列において一つ又は複数の保存的アミノ酸置換、例えば、1、2、3、4、5、1~2、1~3、1~4、又は1~5の保存的アミノ酸置換を有する。なおさらなる実施形態では、一つ又は複数の保存的アミノ酸置換は、配列番号38、41、42、43、50、又は51の一つ又は複数のフレームワーク領域内に入る(Kabatのナンバリングシステムに基づく)。
【0395】
特定の実施形態では、結合タンパク質は、配列番号38、41、42、43、50、又は51において示される結合タンパク質重鎖可変領域配列と少なくとも約95%、約96%、約97%、約98%、又は約99%の配列同一性を伴う可変重鎖配列を含み、フレームワーク領域中に一つ又は複数の保存的アミノ酸置換を含み(Kabatのナンバリングシステムに基づく)、ならびに配列番号38、41、42、43、50、又は51において示される可変重鎖配列及び配列番号39又は52において示される可変軽鎖配列を含む結合タンパク質の結合活性及び/又は機能活性を保持する。
【0396】
一部の実施形態では、結合タンパク質は、配列番号39又は52において示されるアミノ酸配列と少なくとも約95%、約96%、約97%、約98%、又は約99%の配列同一性を伴うアミノ酸配列を含む可変軽鎖配列を含む。他の実施形態では、結合タンパク質は、配列番号39又は52の可変軽鎖配列を含む結合タンパク質の結合及び/又は機能的活性を保持する。なおさらなる実施形態では、結合タンパク質は、配列番号39又は52の可変軽鎖配列を含み、軽鎖可変配列において一つ又は複数の保存的アミノ酸置換、例えば、1、2、3、4、5、1~2、1~3、1~4、又は1~5の保存的アミノ酸置換を有する。なおさらなる実施形態では、一つ又は複数の保存的アミノ酸置換は、配列番号39又は52の一つ又は複数のフレームワーク領域内に入る(Kabatのナンバリングシステムに基づく)。
【0397】
特定の実施形態では、結合タンパク質は、配列番号39又は52において示される結合タンパク質軽鎖可変領域配列と少なくとも約95%、約96%、約97%、約98%、又は約99%の配列同一性を伴う可変軽鎖配列を含み、フレームワーク領域中に一つ又は複数の保存的アミノ酸置換を含み(Kabatのナンバリングシステムに基づく)、ならびに配列番号38、41、42、43、50、又は51において示される可変重鎖配列及び配列番号39又は52において示される可変軽鎖配列を含む結合タンパク質の結合活性及び/又は機能活性を保持する。
【0398】
CD137/TGFβ/PD-L1三重特異性体
特定の実施形態では、本開示の結合タンパク質は、三重特異性であり、CD137に結合する抗体足場モジュール(抗体から由来する)、TGFβ受容体II結合タンパク質を含む第一の結合モジュール、及びPD-L1に結合する第二の結合モジュール(抗体から由来する)を含む組換えタンパク質の形態において構築される。
【0399】
特定の実施形態では、本開示は、抗CD137抗体から由来するCD137に結合する抗体足場モジュール、TGFβ受容体2型のECDから由来するTGFβの第一の結合モジュール、及び抗PD-L1抗体から由来するPD-L1の第二の結合モジュールを含む三重特異性体を提供し、それにおいて、三重特異性体は、CD137、PD-L1に結合し、また、局所微小環境からTGFβを枯渇させ、それにより、PD-L1依存的な様式においてT細胞を活性化する。
【表8】
【0400】
一部の実施形態では、CD137/TGFβRII/PD-L1三重特異性1923Ab16(図13H)は、CD137に結合する1923Ab4からの二つのFab、L234A L235A変異を伴うヒトIgG1 Fc、1923Ab4重鎖のC末端に付着している1923Ab3から由来する二つのscFv断片(VLがVHに先行する)、及びAb4軽鎖のC末端に付着しているTGFβRIIの細胞外ドメインをコードする二つのポリペプチドを含む。図14(B)は、1923Ab16の重鎖及び軽鎖の説明を提供する。図15は、サブコンポーネントのより詳細な説明を提供する。表8は、重鎖及び軽鎖、それぞれ配列番号48及び配列番号49のアミノ酸配列を提供する。
【0401】
結合タンパク質を産生する方法
本明細書中に開示される結合タンパク質は、当技術分野において公知の任意の方法により作製され得る。例えば、レシピエントは、可溶性組換えヒトPD-L1及び/又はCD137タンパク質、又はその担体タンパク質とコンジュゲートされた断片もしくはペプチドで免疫化されてもよい。免疫化の任意の適切な方法を使用することができる。そのような方法は、アジュバント、他の免疫刺激剤、反復ブースター免疫化、及び一つ又は複数の免疫化経路の使用を含むことができる。
【0402】
ヒトPD-L1及び/又はCD137の任意の適切な供給源を、本明細書中に開示される組成物及び方法の非ヒト又はヒト抗PD-L1及び/又はCD137抗体の生成のための免疫原として使用することができる。
【0403】
PD-L1及び/又はCD137抗原の異なる形態を使用して、生物学的に活性な抗体を生成するのに十分である抗体を生成してもよい。このように、誘発性PD-L1及び/又はCD137抗原は、単一エピトープ、複数のエピトープ、あるいはタンパク質全体単独、あるいは一つ又は複数の免疫原性増強剤との組み合わせにおいてでもよい。一部の態様では、誘発性抗原は、単離された可溶性完全長タンパク質、又は完全長配列未満を含む可溶性タンパク質である(例、PD-L1及び/又はCD137の特定の部分又はエピトープを含むペプチドで免疫化している)。本明細書中で使用される場合、用語「部分」は、適している場合、目的の抗原の免疫原性エピトープを構成する最小数のアミノ酸又は核酸を指す。目的の細胞の形質転換のために適切な任意の遺伝子ベクター用いてもよく、限定されないが、アデノウイルスベクター、プラスミド、及び非ウイルスベクター、例えばカチオン性脂質などを含む。
【0404】
様々な哺乳動物宿主、例えばマウス、齧歯類、霊長類、ヒトなどからモノクローナル抗体(mAb)を調製することが望ましい。そのようなモノクローナル抗体を調製するための技術の説明は、例えば、Sties et al.(eds.)BASIC AND CLINICAL IMMUNOLOGY (4th ed.)Lance Medical Publication,Los Altos,CA,及び本明細書中に引用される参考文献;Harlow and Lane(1988)ANTIBODIES:A LABORATORY MANUAL CSH Press;Goding(1986)MONOCLONAL ANTIBODIES:PRINCIPLES AND PRACTICE (2nd ed.)Academic Press,New York,NY.において見出され得る。典型的には、所望の抗原で免疫化された動物からの脾臓細胞は、一般に骨髄腫細胞との融合により不死化される。Kohler and Milstein(196)Eur.J.Immunol.6:511-519を参照のこと。不死化の代替的な方法は、エプスタインバールウイルス、癌遺伝子、もしくはレトロウイルスでの形質転換、又は当技術分野において公知の他の方法を含む。例えば、Doyle et al.(eds.1994 and periodic supple supples)CELL and TISSUE CULTURE:LABORATORY PROCEDURES,John Wiley and Sons,New York,NY.を参照のこと。単一の不死化細胞から生じるコロニーは、抗原についての所望の特異性及び親和性の抗体の産生についてスクリーニングされ、そのような細胞により産生されるモノクローナル抗体の収率は、脊椎動物宿主の腹腔中への注射を含む様々な技術により増強され得る。あるいは、例えば、Huse et al.,(1989)Science 246:1275-1281により概説されている一般的なプロトコルに従って、ヒトB細胞からのDNAライブラリーをスクリーニングすることにより、モノクローナル抗体又はその抗原結合断片をコードするDNA配列を単離してもよい。このように、抗体は、当技術分野において熟練した研究者が精通している様々な技術により得られ得る。
【0405】
他の適切な技術は、ファージ、酵母、ウイルス又は類似のベクター中での抗体のライブラリーの選択を含む。例えば、Huse et al.(上記);Ward et al.,(1989)Nature 341:544-546を参照のこと。本明細書中に開示されるポリペプチド及び抗体は、キメラ抗体又はヒト化抗体を含む改変を伴って又は伴わずに使用され得る。頻繁に、ポリペプチド及び抗体は、共有結合的に又は非共有結合的に、検出可能なシグナルを提供する物質を連結することにより標識される。多種多様な標識及びコンジュゲーション技術が公知であり、科学文献及び特許文献の両方において広範囲に報告されている。適切な標識は、放射性核種、酵素、基質、補因子、阻害剤、蛍光部分、化学発光部分、磁性粒子、及び同様のものを含む。そのような標識の使用を教示する特許は、米国特許第3,817,837号;第3,850,752号;第3,996,345号;第4,277,437号;第4,275,149号;及び第4,366,241号を含む。また、組換え免疫グロブリンが産生されてもよい。Cabillyの米国特許第4,816,567号;及びQueen et al.(1989)Proc.Nat’l Acad.Sci.USA 86:10029-10023を参照のこと;又はトランスジェニックマウスにおいて作製され得る。Nils Lonberg et al.,(1994),Nature 368:856-859;及びMendez et al.(1997)Nature Genetics 15:146-156;TRANSGENIC ANIMALS AND METHODS OF USE (WO2012/62118),Medarex,Trianni,Abgenix,Ablexis,OminiAb,Harbour及び他の技術を参照のこと。
【0406】
一部の実施形態では、PD-L1及び/又はCD137に結合する産生抗体の能力は、標準的な結合アッセイ、例えば表面プラズモン共鳴(SPR)、ELISA、ウェスタンブロット、免疫蛍光法、フローサイトメトリー分析、走化性アッセイ、及び細胞遊走アッセイなどを使用して評価することができる。一部の態様では、産生抗体はまた、PD-L1を阻害する、ならびに/あるいはPD-L1を遮断すること及び/又はCD137受容体シグナル伝達を活性化することからCD137を活性化するその能力について評価され得る。
【0407】
細胞から調製された抗体組成物は、例えば、ヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィー、ゲル電気泳動、透析、及び親和性クロマトグラフィーを使用して精製することができ、親和性クロマトグラフィーは典型的な精製技術である。親和性リガンドとしてのプロテインAの適合性は、抗体中に存在する任意の免疫グロブリンFcドメインの種及びアイソタイプに依存する。プロテインAを使用して、ヒトγ1、γ2、又はγ4重鎖に基づく抗体を精製することができる(例、Lindmark et al.,1983 J.Immunol.Meth.62:1-13を参照のこと)。プロテインGは、全てのマウスアイソタイプについて及びヒトγ3について推奨される(例、Guss et al.、1986 EMBO J.5:1567-1575を参照のこと)。親和性リガンドが付着されるマトリックスは、最もしばしば、アガロースであるが、しかし、他のマトリックスが利用可能である。機械的に安定なマトリクス、例えば制御された細孔ガラス又はポリ(スチレンジビニル)ベンゼンなどは、アガロースを用いて達成することができるよりも速い流量及び短い処理時間を可能にする。抗体がCH3ドメインを含む場合、Bakerbond ABX(商標)樹脂(J.T.Baker、Phillipsburg、N.J.)が精製のために有用である。タンパク質精製のための他の技術、例えばイオン交換カラムでの分画、エタノール沈殿、逆相HPLC、シリカでのクロマトグラフィー、アニオン又はカチオン交換樹脂(例えばポリアスパラギン酸カラムなど)でのヘパリンSEPHAROSE(商標)クロマトグラフィーでのクロマトグラフィー、クロマトフォーカシング、SDS-PAGE、及び硫酸アンモニウム沈殿などがまた、回収される抗体に依存して利用可能である。
【0408】
任意の予備精製工程に続いて、目的の抗体及び混入物を含む混合物は、典型的には低塩濃度(例、約0~0.25M塩)で実施される、約2.5~4.5の間のpHの溶出緩衝液を使用した低pH疎水性相互作用クロマトグラフィーに供され得る。
【0409】
また、含まれるのは、本開示の抗体又は抗体断片をコードする単離ポリヌクレオチド配列により表されるヌクレオチド配列の全て又は一部(例、可変領域をコードする部分)に、本明細書中で定義されるように、低、中、及び高ストリンジェンシー条件下でハイブリダイズする核酸である。ハイブリダイズ核酸のハイブリダイズ部分は、典型的には、少なくとも15(例、20、25、30、又は50)のヌクレオチド長である。ハイブリダイズ核酸のハイブリダイズ部分は、抗PD-L1及び/又はCD137ポリペプチド(例、重鎖又は軽鎖可変領域)、あるいはその補体をコードする核酸の一部又は全ての配列と、少なくとも80%、例えば、少なくとも90%、少なくとも95%、又は少なくとも98%同一である。本明細書中に記載される種類のハイブリダイズ核酸は、例えば、クローニングプローブ、プライマー、例えば、PCRプライマー、又は診断プローブとして使用することができる。
【0410】
ポリヌクレオチド、ベクター、及び細胞
他の実施形態は、本明細書中に開示される結合タンパク質又はその断片をコードする配列を含む単離ポリヌクレオチド、ポリヌクレオチドを含むベクター及び細胞、ならびに開示されている結合タンパク質の産生のための組換え技術を包含する。単離ポリヌクレオチドは、例えば、全長モノクローナル抗体、Fab、Fab’、F(ab’)2、及びFv断片、ダイアボディ、直線状抗体、一本鎖抗体分子、ミニ抗体を含む、結合タンパク質の任意の所望の形態をコードし得る。
【0411】
一部の実施形態は、配列番号1、3、16、18、及び20のいずれかのアミノ酸配列を有する結合タンパク質又はその断片の重鎖可変領域をコードする配列を含む単離ポリヌクレオチドを含む。一部の実施形態は、配列番号2、4、17、19、及び21のいずれかのアミノ酸配列を有する結合タンパク質又はその断片の軽鎖可変領域をコードする配列を含む単離ポリヌクレオチドを含む。
【0412】
一実施形態では、単離ポリヌクレオチド配列は、以下のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を有する結合タンパク質又はその断片をコードする:(a)配列番号1を含む重鎖可変領域配列及び配列番号2を含む軽鎖可変領域配列;(b)配列番号3を含む重鎖可変領域配列及び配列番号4を含む軽鎖可変領域配列;(c)配列番号16を含む重鎖可変領域配列及び配列番号17を含む軽鎖可変領域配列;(d)配列番号18を含む重鎖可変領域配列及び配列番号19を含む軽鎖可変領域配列;又は(e)配列番号20を含む重鎖可変領域配列及び配列番号21を含む軽鎖可変領域配列。
【0413】
別の実施形態では、単離ポリヌクレオチド配列は、以下のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を有する結合タンパク質又はその断片をコードする:(a)配列番号1と90%、95%、又は99%である重鎖可変領域配列及び配列番号2と90%、95%、又は99%同一である軽鎖可変領域配列;(b)配列番号3と90%、95%、又は99%同一である重鎖可変領域配列及び配列番号4と90%、95%、又は99%同一である軽鎖可変領域配列;(c)配列番号16と90%、95%、又は99%同一である重鎖可変領域配列及び配列番号17と90%、95%、又は99%同一である軽鎖可変領域配列;(d)配列番号18と90%、95%、又は99%同一である重鎖可変領域配列及び配列番号19と90%、95%、又は99%同一である軽鎖可変領域配列;又は(e)配列番号20と90%、95%、又は99%同一である重鎖可変領域配列及び配列番号21と90%、95%、又は99%同一である軽鎖可変領域配列。
【0414】
本明細書中に開示される結合タンパク質又はその断片をコードする配列を含むポリヌクレオチドは、当技術分野において公知の一つ又は複数の調節配列又は制御配列に融合することができ、当技術分野において公知の適切な発現ベクター又は細胞中に含むことができる。重鎖又は軽鎖可変ドメインをコードするポリヌクレオチド分子の各々は、定常ドメイン、例えばヒト定常ドメインなどをコードするポリヌクレオチド配列に独立して融合することができ、インタクトな抗体の産生を可能にする。あるいは、ポリヌクレオチド、又はその一部分は、一緒に融合することができ、一本鎖抗体の産生のための鋳型を提供する。
【0415】
組換え産生のために、結合タンパク質又はその断片をコードするポリヌクレオチドは、クローニング(DNAの増幅)のために又は発現のために複製可能なベクター中に挿入される。結合タンパク質又はその断片を発現するための多くの適切なベクターが利用可能である。ベクター構成要素は一般的に、限定されないが、以下の一つ又は複数を含む:シグナル配列、複製の起点、一つ又は複数のマーカー遺伝子、エンハンサーエレメント、プロモーター、及び転写終結配列。
【0416】
本明細書中に開示される結合タンパク質又はその断片はまた、融合ポリペプチドとして産生することができ、それにおいて、結合タンパク質は、異種ポリペプチド、例えば成熟タンパク質又はポリペプチドのアミノ末端に特定の切断部位を有するシグナル配列又は他のポリペプチドなどと融合される。選択された異種シグナル配列は、典型的には、細胞により認識及び処理される(即ち、シグナルペプチダーゼにより切断される)ものである。原核細胞については、シグナル配列は、原核シグナル配列により置換することができる。シグナル配列は、例えば、アルカリホスファターゼ、ペニシリナーゼ、リポタンパク質、熱安定性エンテロトキシンIIリーダー、及び同様のものであることができる。酵母分泌については、天然シグナル配列は、例えば、酵母インベルターゼアルファ因子(サッカロミセス及びクルイベロマイセスα因子リーダーを含む)、酸ホスファターゼ、C.アルビカンスグルコアミラーゼ、又はWO90/13646において記載されるシグナルから得られたリーダー配列で置換することができる。哺乳動物細胞では、哺乳動物シグナル配列ならびにウイルス分泌リーダー、例えば、単純ヘルペスgDシグナルを使用することができる。そのような前駆体領域についてのDNAは、リーディングフレームにおいて結合タンパク質又はその断片をコードするDNAに連結される。
【0417】
発現ベクター及びクローニングベクターは、ベクターが一つ又は複数の選択された細胞中で複製することを可能にする核酸配列を含む。一般的に、クローニングベクターにおいて、この配列は、ベクターが宿主染色体DNAとは独立して複製することを可能にし、複製の起源又は自律的に複製する配列を含むものである。そのような配列は、様々な細菌、酵母、及びウイルスについて周知である。プラスミドpBR322からの複製の起点が、大半のグラム陰性細菌について適切であり、2μプラスミド起点は酵母について適切であり、様々なウイルス起点(SV40、ポリオーマ、アデノウイルス、VSV、及びBPV)が、哺乳動物細胞におけるクローニングベクターについて有用である。一般的に、複製の起点は、哺乳動物発現ベクターのために必要とされない(SV40起点が、典型的には、使用され得る。なぜなら、それは、早期プロモーターを含むからである)。
【0418】
発現ベクター及びクローニングベクターは、発現の同定を促進するために、選択マーカーをコードする遺伝子を含み得る。典型的な選択マーカー遺伝子は、抗生物質又は他の毒素、例えば、アンピシリン、ネオマイシン、メトトレキサート、もしくはテトラサイクリンに対する耐性を付与する、又は代替的に、補体栄養要求性欠損である、又は他の代替物において、複合培地中に存在しない特定の栄養素を供給するタンパク質をコードし、例えば、桿菌についてD-アラニンラセマーゼをコードする遺伝子である。
【0419】
細胞培養
本明細書中に開示される結合タンパク質又はその断片を産生するために使用される細胞は、様々な培地中で培養されてもよい。商業的に利用可能な培地、例えばハムF10(Sigma)、最小必須培地((MEM)、Sigma)、RPMI-1640(Sigma)、FreeStyle(商標)(Cibco)、及びダルベッコ改変イーグル培地((DMEM)、Sigma)などが、宿主細胞を培養するために適切である。これらの又は他の培地のいずれかが、必要な場合、ホルモン及び/又は他の成長因子(例えばインスリン、トランスフェリン、又は上皮成長因子など)、塩(例えば塩化ナトリウム、カルシウム、マグネシウム、及びリン酸塩など)、緩衝液(例えばHEPESなど)、ヌクレオチド(例えばアデノシン及びチミジンなど)、抗生物質(例えばゲンタマイシンなど)、微量元素(例えば、通常、マイクロモル又はより低い範囲において最終濃度で存在する無機化合物など)、及びグルコース又は等価のエネルギー供給源を用いて補充され得る。任意の他の必要なサプリメントがまた、当業者に公知であろう適した濃度で含まれてもよい。培養条件、例えば温度、pH、及び同様のものは、発現のために選択された細胞で以前に使用されたものを含み、当業者には明らかであろう。
【0420】
非治療的な使用
本明細書中に記載される結合タンパク質は、親和性精製薬剤として有用である。このプロセスでは、結合タンパク質は、当技術分野において周知の方法を使用して、固相、例えばプロテインA樹脂などの上に固定化される。固定化結合タンパク質を、精製されるPD-L1、TGFβ、及び/又はCD137タンパク質(又はその断片)を含むサンプルと接触させ、その後、支持体を、固定化結合タンパク質に結合される、PD-L1、TGFβ、及び/又はCD137タンパク質を除き、サンプル中の実質的に全ての物質を除去する適切な溶媒を用いて洗浄した。最後に、担体は、結合タンパク質からPD-L1、TGFβ、及び/又はCD137タンパク質を放出する別の適切な溶媒で洗浄される。
【0421】
本明細書中に開示される結合タンパク質はまた、PD-L1、TGFβ、及び/又はCD137タンパク質を検出及び/又は定量化するための診断アッセイにおいて、例えば、特定の細胞、組織、又は血清中のPD-L1、TGFβ、及び/又はCD137発現を検出するために有用である。結合タンパク質は、例えば、所与の治療及び/又は予防レジメンの有効性を決定するために、例えば、臨床検査手順の一部として疾患の発生又は進行をモニターするために診断的に使用することができる。検出は、結合タンパク質を、検出可能な物質に共役することにより促進することができる。検出可能な物質の例は、様々な酵素、補欠分子族、蛍光材料、発光材料、生物発光材料、放射性材料、様々な陽電子放出断層撮影を使用した陽電子放出金属、及び非放射性常磁性金属イオンを含む。例えば、本開示に従った診断薬としての使用のために結合タンパク質にコンジュゲートすることができる金属イオンについては、米国特許第4,741,900号を参照のこと。
【0422】
結合タンパク質は、PD-L1、TGFβ、及び/又はCD137関連障害(例、PD-L1、TGFβ、及び/又はCD137の異常発現により特徴付けられる障害)を診断するための、又は対象がPD-L1、TGFβ、及び/又はCD137関連障害を発症する増加したリスクを有するか否かを決定するための方法において使用することができる。そのような方法は、対象からの生物学的サンプルを、本明細書中に開示される結合タンパク質と接触させること、ならびにPD-L1、TGFβ、及び/又はCD137への分子の結合を検出することを含む。「生物学的サンプル」により、個体、細胞株、組織培養物、あるいはPD-L1、TGFβ、及び/又はCD137を潜在的に発現する細胞の他の供給源から得られた任意の生物学的サンプルを意図する。哺乳動物から組織生検及び体液を得るための方法は、当技術分野において周知である。
【0423】
一部の実施形態では、方法は、患者サンプル中のPD-L1、TGFβ、及び/又はCD137のレベルを、対照サンプル(例、PD-L1、TGFβ、及び/又はCD137関連障害を有さない対象)と比較して、患者がPD-L1、TGFβ、及び/又はCD137関連障害を有するか否か、あるいはPD-L1、TGFβ、及び/又はCD137関連障害を発生するリスクがあるか否かを決定することをさらに含み得る。
【0424】
一部の実施形態では、例えば、診断目的のために、結合タンパク質を検出可能な部分で標識することが有利であろう。多数の検出可能な標識が利用可能であり、放射性同位体、蛍光標識、酵素基質標識及び同様のものを含む。標識は、様々な公知の技術を使用して、結合タンパク質と間接的にコンジュゲートされてもよい。例えば、結合タンパク質は、ビオチンとコンジュゲートすることができ、上に言及する三つの広範なカテゴリーの標識のいずれかは、アビジンとコンジュゲートする、又はその逆であることができる。ビオチンは、アビジンに選択的に結合し、このように、標識は、この間接的な様式において結合タンパク質とコンジュゲートさせることができる。あるいは、結合タンパク質との標識の間接的なコンジュゲートを達成するために、結合タンパク質は、小さなハプテン(例えばジゴキシンなど)とコンジュゲートすることができ、上に言及される異なる種類の標識の一つは、抗ハプテン抗体(例、抗ジゴキシン抗体)とコンジュゲートされる。このように、結合タンパク質との標識の間接的なコンジュゲーションを達成することができる。
【0425】
例示的な放射性同位体標識は、35S、14C、125I、H、及び131Iを含む。結合タンパク質は、例えば、Current Protocols in Immunology,Volumes 1 and 2,1991,Coligen et al.,Ed.Wiley-Interscience,New York,N.Y.,Pubsにおいて記載されている技術を使用して放射性同位体で標識することができる。放射活性は、例えば、シンチレーションカウントにより測定することができる。
【0426】
例示的な蛍光標識は、希土類キレート(ユーロピウムキレート)から由来する標識を含み、又はフルオレセイン及びその誘導体、ローダミン及びその誘導体、ダンシル、リサミン、フィコエリトリン、及びテキサスレッドが利用可能である。蛍光標識は、公知の技術、例えば、Current Protocols in Immunologyにおいて開示されるものなどを介して結合タンパク質にコンジュゲートすることができる。蛍光は、蛍光計を使用して定量化することができる。
【0427】
当技術分野において公知の様々な十分に特徴付けられた酵素-基体標識がある(例、米国特許第4,275,149号を参照のこと)。酵素は一般的に、様々な技術を使用して測定することができる発色基質の化学的変化を触媒する。例えば、変化は、分光光度的に測定することができる基質における色変化であり得る。あるいは、酵素は、基質の蛍光又は化学発光を変化させ得る。蛍光における変化を定量化するための技術が、上に記載される。化学発光基質は、化学反応により電子的に励起され、次に、例えば、化学発光計を使用して測定することができる光を放射し得る、又は蛍光アクセプターにエネルギーを供与し得る。
【0428】
酵素標識の例は、ルシフェラーゼ、例えばホタルルシフェラーゼ及び細菌ルシフェラーゼなど(米国特許第4,737,456号)、ルシフェリン、2,3-ジヒドロフタラジンジオン、リンゴ酸デヒドロゲナーゼ、ウレアーゼ、ペルオキシダーゼ、例えばホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRPO)など、アルカリホスファターゼ、β-ガラクトシダーゼ、グルコアミラーゼ、リゾチーム、糖オキシダーゼ(例えばグルコースオキシダーゼ、ガラクトースオキシダーゼ、及びグルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼなど)、ヘテロサイクリックオキシダーゼ(例えばウリカーゼ及びキサンチンオキシダーゼなど)、ラクトペルオキシダーゼ、マイクロペルオキシダーゼ及び同様のものを含む。酵素を結合タンパク質にコンジュゲートするための技術は、例えば、O’Sullivan et al.,1981,Methods for the Preparation of Enzyme-Antibody Conjugates for use in Enzyme Immunoassay,in Methods in Enzym.(J.Langone&H.Van Vunakis,eds.),Academic press,N.Y.,73:147-166において記載されている。
【0429】
酵素-基体の組み合わせの例は、例えば、以下を含む:基質として水素ペルオキシダーゼを伴うホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRPO)、それにおいて、水素ペルオキシダーゼは、色素前駆体、例えばオルトフェニレンジアミン(OPD)又は3,3,5,5-テトラメチルベンジジン塩酸塩(TMB)などを酸化する;発色基質としてパラニトロフェニルリン酸を伴うアルカリホスファターゼ(AP);及び発色基質、例えばp-ニトロフェニル-β-D-ガラクトシダーゼ又は蛍光発生基質4-メチルウンベリフェリル-β-D-ガラクトシダーゼなどを伴うβ-D-ガラクトシダーゼ(β-D-Gal)。
【0430】
別の実施形態では、本明細書中に開示される結合タンパク質は、非標識で使用され、結合タンパク質に結合する標識抗体で検出される。
【0431】
本明細書中に記載される結合タンパク質は、任意の公知のアッセイ方法、例えば競合結合アッセイ、直接的及び間接的サンドイッチアッセイ、ならびに免疫沈降アッセイなどにおいて用いてもよい。例えば、Zola、Monoclonal Antibodies:A Manual of Techniques,pp.147-158(CRC Press,Inc.1987)を参照のこと。
【0432】
本明細書中に開示される結合タンパク質を使用して、PD-L1、TGFβ、及び/又はCD137の、それぞれの受容体への結合を阻害することができる。そのような方法は、本明細書中に開示される結合タンパク質を細胞(例、哺乳動物細胞)又は細胞環境に投与することを含み、それにより、受容体により媒介されるシグナル伝達が阻害される。これらの方法は、インビトロ又はインビボで実施することができる。「細胞環境」により、細胞を囲む組織、培地、又は細胞外マトリックスを意図する。
【0433】
治療の組成物及び方法
本開示はまた、例えば、本明細書中に開示される結合タンパク質を含む医薬組成物を含む組成物を提供する。そのような組成物は、疾患又は障害、例えば癌などの治療、予防、又は寛解のための多数の治療的使用を有する。
【0434】
本開示はまた、本明細書中に開示される結合タンパク質を含む組成物又は製剤、及び、場合により、別の免疫ベースの治療を、それを必要とする対象に投与することを含む、癌の治療又は予防のための方法を提供する。
【0435】
開示されている結合タンパク質はまた、単独で(例、単剤療法として)、又は他の免疫療法剤及び/又は化学療法との組み合わせにおいて、癌の治療の方法において有用である。
【0436】
結合タンパク質は、単独で、又は免疫媒介性炎症性障害もしくは自己免疫疾患を治療するために有用な他の組成物との組み合わせにおいて投与することができる。
【0437】
一部の態様では、本明細書中に開示される一つ又は複数の結合タンパク質を含む組成物、例えば、医薬組成物が提供される。医薬組成物は、従来の技術、例えばRemington:The Science and Practice of Pharmacy,19th Edition,Gennaro,Ed.,Mack Publishing Co.,Easton,Pa.,1995において開示されているものなどに従って、医薬的に許容可能な担体又は希釈剤ならびに任意の他の公知のアジュバント及び賦形剤を用いて製剤化され得る。
【0438】
典型的には、注射による投与のための組成物は、滅菌等張水性緩衝液中の溶液である。必要な場合、医薬品はまた、注射の部位での痛みを和らげるために、可溶化剤及び局所麻酔剤、例えばリグノカインなどを含むことができる。一般的に、成分は、密封容器、例えば、活性薬剤の量を示すアンプル又はサシェなどの中の乾燥凍結乾燥粉末又は無水濃縮物として、別々に又は単位投薬形態中で混合されて供給される。医薬品が注入により投与される場合、それは、滅菌医薬品グレードの水又は生理食塩水を含む注入ボトルで分注され得る。医薬品が注射により投与される場合、注射用滅菌水又は生理食塩水のアンプルが、成分を投与前に混合することができるように提供され得る。
【0439】
本明細書中で使用される場合、「医薬的に許容可能な担体」は、生理学的に適合性である、任意の及び全ての溶媒、分散媒体、コーティング、抗菌剤及び抗真菌剤、等張剤及び吸収遅延剤、ならびに同様のものを含む。好ましくは、担体は、静脈内、筋肉内、皮下、非経口、脊椎又は上皮投与(例、注射又は注入による)のために適切である。投与の経路に依存して、活性化合物、即ち、抗体、二重特異性及び多特異性分子は、化合物を不活化し得る酸及び他の天然条件の作用から化合物を保護するための材料中でコーティングされ得る。
【0440】
組成物は、当技術分野において公知の様々な方法により投与することができる。当業者により理解されるように、投与の経路及び/又は様式は、所望の結果に依存して変動する。活性化合物は、迅速放出、例えばインプラント、経皮パッチ、及びマイクロカプセル化送達システムを含む制御放出製剤などに対して化合物を保護する担体を用いて調製することができる。生分解性、生体適合性ポリマーを使用することができ、例えばエチレンビニルアセテート、ポリ無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル、及びポリ乳酸などである。そのような製剤の調製のための方法は、一般的に、当業者に公知である。例えば、Sustained and Controlled Release Drug Delivery Systems,J.R.Robinson,ed.,Marcel Dekker,Inc.,New York,1978を参照のこと。
【0441】
医薬組成物中での活性成分の投薬レベルは、対象に毒性であることを伴わず、特定の対象、組成物、及び投与の様式について所望の治療応答を達成するために有効な活性成分の量を得るように変動し得る。選択された投与量レベルは、用いられる特定の組成物の活性、投与の経路、投与の時間、用いられる特定の化合物の排泄の速度、処置の持続期間、用いられる特定の組成物との組み合わせにおいて使用される他の薬物、化合物及び/又は材料、処置されている患者の年齢、性別、体重、状態、一般的健康及び以前の病歴、ならびに医療技術分野において周知の同様の因子を含む、様々な薬物動態因子に依存するであろう。
【0442】
本明細書中に記載される医薬組成物は、有効量で投与され得る。「有効量」は、所望の反応又は所望の効果を単独で、又はさらなる用量と一緒に達成する量を指す。特定の疾患の又は特定の状態の治療の場合では、所望の反応は、好ましくは、疾患の経過の阻害に関係する。これは、疾患の進行を遅らせること、及び、特に、疾患の進行を中断又は逆転させることを含む。
【0443】
一部の態様では、本明細書中に記載される組成物は、様々な障害、例えば本明細書中に記載されるものなどを治療又は予防するために、例えば、インビボで患者に投与される。好ましい患者は、本明細書中に開示される結合タンパク質を投与することにより修正又は改善され得る障害を有するヒト患者を含む。
【0444】
一部の態様では、従来のウイルス及び非ウイルスベースの遺伝子移入方法を使用して、本明細書中に記載される抗体又はその誘導体をコードする核酸を、哺乳動物細胞又は標的組織において導入することができる。そのような方法を使用して、抗体をコードする核酸をインビトロで細胞に投与することができる。一部の実施形態では、抗体又はその誘導体をコードする核酸は、インビボ又はエクスビボ遺伝子療法の使用のために投与される。他の実施形態では、遺伝子送達技術は、細胞ベース又は動物モデルにおける抗体の活性を試験するために使用される。非ウイルスベクター送達系は、DNAプラスミド、ネイキッド核酸、及び送達媒体、例えばリポソームなどと複合体化された核酸を含む。ウイルスベクター送達系は、DNA及びRNAウイルスを含み、それらウイルスは、細胞への送達後にエピソームゲノム又は組み込みゲノムのいずれかを有する。そのような方法は、当技術分野において周知である。
【0445】
本開示の操作ポリペプチドをコードする核酸の非ウイルス送達の方法は、リポフェクション、マイクロインジェクション、バイオリスティック、ビロソーム、リポソーム、イムノリポソーム、ポリカチオン又は脂質:核酸コンジュゲート、ネイキッドDNA、人工ビリオン、及びDNAの薬剤増強取り込みを含む。リポフェクション方法及びリポフェクション試薬は、当技術分野において周知である(例、Transfectam(商標)及びLipofectin(商標))。ポリヌクレオチドの効率的な受容体認識リポフェクションのために適切であるカチオン性及び中性脂質は、Felgner、WO91/17424、WO91/16024の脂質を含む。送達は、細胞(エクスビボ投与)又は標的組織(インビボ投与)であることができる。標的化リポソーム、例えば免疫脂質複合体などを含む脂質:核酸複合体の調製は、当業者に周知である。
【0446】
本明細書中に記載される抗体をコードする核酸の送達のためのRNA又はDNAウイルスベースのシステムの使用は、ウイルスを身体中の特定の細胞に標的化し、ウイルスペイロードを核に輸送するための高度に進化したプロセスを利用する。ウイルスベクターは、患者に直接的に投与することができ(インビボ)、又はそれらは、細胞をインビトロで処理するために使用することができ、改変細胞は患者に投与される(エクスビボ)。本開示のポリペプチドの送達のための従来的なウイルスベースの系は、遺伝子移入のためのレトロウイルスベクター、レンチウイルスベクター、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ベクター及び単純ヘルペスウイルスベクターを含み得る。ウイルスベクターは、現在、標的細胞及び組織における遺伝子移入の最も効率的かつ多用途の方法である。宿主ゲノム中での組み込みは、レトロウイルス、レンチウイルス、及びアデノ随伴ウイルス遺伝子導入方法を用いて可能であり、しばしば、挿入された導入遺伝子の長期発現をもたらす。加えて、高い形質導入効率が、多くの異なる細胞型及び標的組織において観察されている。特定された全ての特許及び刊行物は、例えば、本開示との関連において使用され得るそのような刊行物において記載される方法論を記載及び開示する目的のために、参照により本明細書中に明示的に組み入れられる。これらの刊行物は、本出願の出願日前にそれらの開示のためにのみ提供される。この点において、本発明者らが、先行する発明により、又は任意の他の理由のために、そのような開示に先行する権利を有していないという許可とは解釈されるべきことは何もない。これらの文書の内容に関する日付又は表明に関する全ての記述は、申請者に利用可能な情報に基づいており、これらの文書の日付又は内容の正確性に関する任意の承認を構成しない。
【実施例
【0447】
一般的な方法
免疫沈降、クロマトグラフィー、及び電気泳動を含むタンパク質精製のための方法が記載されている。例えば、Coligan et al.(2000)Current Protocols in Protein Science,Vol.1,John Wiley and Sons,Inc.,New Yorkを参照のこと。化学分析、化学修飾、翻訳後修飾、融合タンパク質の産生、及びタンパク質のグリコシル化が記載されている。例えば、Coligan et al.(2000)Current Protocols in Protein Science,Vol.2,John Wiley and Sons,Inc.,New York;Ausubel et al.(2001)Current Protocols in Molecular Biology,Vol.3,John Wiley and Sons,Inc.,NY,N.Y.,pp.16.0.5-16.22.17;Sigma-Aldrich,Co.(2001)Products for Life Science Research,St.Louis,Mo.;pp.45-89;Amersham Pharmacia Biotech(2001)BioDirectory,Piscataway,N.J.,pp.384-391を参照のこと。ポリクローナル抗体及びモノクローナル抗体の産生、精製、及び断片化が記載されている。Coligan et al.(2001)Current Protcols in Immunology,Vol.1,John Wiley and Sons,Inc.,New York;Harlow and Lane(1999)Using Antibodies,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.;Harlow and Lane、上記。
【0448】
抗PD-L1又は抗CD137抗体を含むハイブリドーマ又は細胞培養上清を、HiTrapプロテインGカラム(GE、カタログ番号17040401)を介して、製造元の手順に従って精製した。簡単には、上清を、DPBS(Gibco、カタログ番号14190-136)を用いて5CVについて平衡化し、周囲温度及び3分の滞留時間でシリンジ/注入ポンプ(Legato 200、KDS)を介して充填した。カラムを5CVのDPBSで洗浄し、溶出を、4CVのpH2.8溶出緩衝液(Fisher Scientific、カタログ番号PI21004)で実施した。溶出物を分画し、分画を、1M Tris-HCL、pH8.5(Fisher Scientific、カタログ番号50-843-270)を用いて中和し、A280(Dropsensiti96、Trinean)によりアッセイした。ピーク画分をプールし、緩衝液をDPBS中で交換した。遠心フィルター(EMD Millipore、カタログ番号UFC803024)を、4,000×gで2分間にわたりDPBS中で平衡化した。精製サンプルを充填し、DPBSを加えて、サンプルを、全DPBS容積が≧6DVに達するまで、4,000×gで5~10分間にわたりスピンした。最終プールをA280により分析した。
【0449】
分子生物学における標準的な方法が記載されている。例えば、Maniatis et al.(1982)Molecular Cloning,A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.;Sambrook and Russell(2001)Molecular Cloning,3rd ed.,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.;Wu(1993)Recombinant DNA,Vol.217,Academic Press,San Diego,Califを参照のこと。標準的な方法はまた、Ausbel et al.(2001)Current Protocols in Molecular Biology,Vols.1-4,John Wiley and Sons,Inc.New York,N.Y.において見られ、それは、細菌細胞におけるクローニング及びDNA変異誘発(Vol.1)、哺乳動物細胞及び酵母におけるクローニング(Vol.2)、糖コンジュゲート及びタンパク質発現(Vol.3)、ならびにバイオインフォマティクス(Vol.4)を記載する。
【0450】
ヒトPD-L1及びCD137を発現する安定細胞株は、選択された宿主細胞(即ち、CHO-K1又はHEK293)を、エレクトロポレーション又は脂質ベースのトランスフェクションを使用してホモサピエンス標的タンパク質を発現するpcDNA3.1ベースのプラスミドでトランスフェクトすることにより生成された。ゲネチシン又はピューロマイシンを使用して、組み込み細胞を選択した。7~10日間の抗生物質選択後、安定クローンを、標識抗体を使用したFACS又は段階希釈により単離した。増殖後、安定クローンを、フローサイトメトリーにより標的タンパク質発現についてさらに確認した。マウス及びカニクイザルの標的は、脂質ベースのトランスフェクションを使用してHEK293T細胞においてそれぞれ一過性に発現された。
【0451】
ハイブリドーマクローンについての重鎖及び軽鎖可変領域の配列を、下に記載されるように決定した。全RNAを、QiagenからのRNeasy PlUSMini Kit(米国メリーランド州ジャーマンタウン)を使用して、1~2×10個のハイブリドーマ細胞から抽出した。CDNAは、TakaraからのSMARTer RACE 5’/3’キット(Mountainview、米国カリフォルニア州)を使用して、5’RACE反応を実施することにより生成された。PCRは、NEB(米国マサチューセッツ州イプソウィッチ)からのQ5 High-Fidelity DNA Polymeraseを使用して実施され、適した免疫グロブリンの3’マウス定常領域についての遺伝子特異的プライマーとの組み合わせにおいてTakra Universal Primer Mixを使用して重鎖及び軽鎖から可変領域を増幅した。重鎖及び軽鎖についての増幅された可変領域を、2%アガロースゲル上で泳動させ、適したバンドを切除し、次にQiagenからのMini Elute Gel Extraction Kitを使用してゲル精製した。精製されたPCR産物を、InvitrogenからのZero Blunt PCR Cloning Kit(Carlsbad、米国カリフォルニア州)を使用してクローニングし、TaroraからのStella Competent E.Coli細胞中に形質転換し、LB Agar+50ug/mlカナマイシンプレート上に播種した。直接コロニーサンガー配列決定を、GeneWiz(South Plainfield、米国ニュージャージー州)により実施した。結果として得られたポリヌクレオチド配列を、IMGT V-QUESTを使用して分析して、生産的な再構成を特定し、翻訳されたタンパク質配列を分析した。CDR決定は、Kabatナンバリングに基づいた。
【0452】
選択されたVH鎖又はVL鎖をPCR増幅し、pcDNA3.4ベースの発現ベクター中にクローニングし、それは、ヒトIgG1(Uniprot P01857)又はヒトカッパ軽鎖(UniProt P01834)からの定常領域を保持する。対になった重鎖発現プラスミド及び軽鎖発現プラスミドを、供給元のExpi293発現系プロトコルに従って、Expi293細胞(Thermo Fisher Scientific)中にトランスフェクトした。トランスフェクションの五日後に、培養上清を遠心分離により収集した。発現抗体を、プロテインAカラム及びPBS pH7.2に交換された緩衝液を使用した1工程の親和性精製により精製した。
【0453】
フローサイトメトリーのための方法が、蛍光活性化細胞ソーティング検出系(FACS(登録商標))を含め、利用可能である。例えば、Owens et al.(1994)Flow Cytometry Principles for Clinical Laboratory Practice,John Wiley and Sons,Hoboken,N.J.;Givan(2001)Flow Cytometry,2nd ed.;Wiley-Liss,Hoboken,N.J.;Shapiro(2003)Practical Flow Cytometry,John Wiley and Sons,Hoboken,N.J.を参照のこと。例えば、診断試薬としての使用のための、核酸プライマー及びプローブ、ポリペプチド、ならびに抗体を含む、核酸を修飾するために適切な蛍光試薬が利用可能である。Molecular Probes(2003)Catalogue,Molecular Probes,Inc.,Eugene,Oreg.;Sigma-Aldrich(2003)Catalogue,St.Louis,Mo.
【0454】
リガンド/受容体相互作用を特徴付けるための標準的な技術が利用可能である。例えば、Coligan et al.(2001)Current Protocols in Immunology,Vol.4,John Wiley,Inc.,New Yorkを参照のこと。特定の作用機構を伴う抗体の特徴付けのために適した抗体機能特徴付けの標準的な方法が、当業者に周知である。
【0455】
例えば、抗原断片、リーダー配列、タンパク質フォールディング、機能ドメイン、CDRアノテーション、グリコシル化部位、及び配列アライメントを決定するためのソフトウェアパッケージ及びデータベースが利用可能である。
【0456】
本明細書中で「アベルマブ-NR」(PC1)として言及される抗PD-L1抗体(アベルマブ)に基づく自家抗PD-L1抗体を、US10,759,856において公開されている、公的に利用可能な情報(その中のVH配列番号24及びVL配列番号25)に基づいて調製した。PC1抗体を使用して、本明細書中に開示される抗PD-L1特異的抗体を評価及び特徴付けるために使用される機能アッセイを確立した。
【0457】
本明細書中で「ウレルマブ-NR」(PC2)として言及される抗CD137抗体(ウレルマブ)に基づく自家抗CD137抗体を、US7,288,638において公開されている、公的に利用可能な情報(その中のVH配列番号3及びVL配列番号6)に基づいて調製した。本明細書中で「ウトミルマブ-NR」(PC3)として言及される、第二の自家CD137反応性抗体(ウトミルマブ)を、US8,337,850において公開されている、公的に利用可能な情報(その中のVH配列番号43及びVL配列番号45)に基づいて調製した。PC2抗体及びPC3抗体を使用して、実施例において使用される細胞株におけるCD137発現を確認し、本明細書中に開示される抗CD137特異的抗体を評価及び特徴付けするために使用される結合アッセイ及び機能アッセイを確立した。本出願における実施例18及び22は、開示されている二重特異性体及び三重特異性体が、ウレルマブ-NR及びウトミルマブ-NRと比較して、より強いCD137シグナル伝達及びT細胞活性化を誘導したことを例証する。
【0458】
本明細書中で利用される参照配列を表9中に例証する。
【表9】
【0459】
実施例1:PD-L1に結合する結合タンパク質の生成
完全ヒト抗ヒトPD-L1抗体は、ヒトIgトランスジェニックマウス、ヒト抗体VH及びVL遺伝子を発現するTrianniマウス(例、WO2013/063391、TRIANNI(登録商標)マウスを参照のこと)を免疫化することにより生成された。
【0460】
免疫化-上に記載されるTRIANNIマウスを、。腹腔内(IP)、皮下(SC)、尾の付け根又は足蹠注射を介した組換えヒトPD-L1タンパク質を用いた注射により免疫化した。
【0461】
免疫応答を眼窩後出血によりモニタリングした。血漿を、ELISA、フローサイトメトリー(FACS)、又は撮像(下に記載するとおり)によりスクリーニングした。十分な抗PD-L1力価を伴うマウスを、融合のために使用した。マウスを、屠殺ならびに脾臓及びリンパ節の除去前に、免疫原を用いて腹腔内に、尾の付け根、足蹠で、又は静脈内にブーストした。
【0462】
抗PD-L1抗体を産生するマウスの選択-PD-L1に結合した抗体を産生するマウスを選択するために、免疫化マウスからの血清を、ELISA、FACS、又は撮像により、ヒトPD-L1タンパク質への結合についてスクリーニングし、PD-L1タンパク質を発現する細胞(PD-L1遺伝子でトランスフェクトされたHEK293T)であり、PD-L1を発現しない対照細胞(HEK293T細胞)ではない。
【0463】
ELISAについては、簡単には組換えヒトPD-L1(AcroBiosystems、カタログ番号:PD1-H5229)でコーティングされたELISAプレートを、免疫化マウスからの血清の希釈物を用いて、室温で一時間にわたりインキュベートし、アッセイプレートを洗浄し、特異的抗体結合を、室温での一時間のインキュベーション後に、HRP標識抗マウスIgG抗体(Jackson ImmunoResearch、カタログ番号:109-035-088)を用いて検出し、洗浄し、室温で30分間にわたるABTS基質(Moss、カタログ番号:ABTS-1000)のインキュベーションが続いた。プレートを、ELISAプレートリーダー(Biotek)を使用して読み取った。
【0464】
FACSについては、簡単には、PD-L1-HEK293T細胞又は親HEK293T細胞を、免疫化マウスからの血清の希釈物を用いて、4℃で2時間にわたりインキュベートした。細胞を、2%PFA(Alfa Aesar、カタログ番号:J61899)で4℃で15分間にわたり固定し、次に洗浄した。特異的抗体結合を、4℃での一時間のインキュベーション後、Alexa 647標識ヤギ抗マウスIgG抗体(ThemoFisher Scientific、カタログ番号A-21445)を用いて検出した。フローサイトメトリー分析を、フローサイトメトリー機器(Intellicyte、IQue plus、Sartorius)上で実施した。
【0465】
また、マウス血清を撮像によりテストした。簡単には、PD-L1-HEK293T細胞を、免疫化マウスからの血清の希釈物とインキュベートした。細胞を洗浄し、パラホルムアルデヒドで固定し、洗浄し、特異的抗体結合を二次Alexa488ヤギ抗マウス抗体及びHoechst(Invitrogen)で検出した。プレートをスキャンし、撮像装置(Cytation 5、Biotek)上で分析した。
【0466】
PD-L1に対する抗体を産生するハイブリドーマの生成-本発明のヒト抗体を産生するハイブリドーマを生成するために、脾細胞及びリンパ節細胞を免疫化マウスから単離し、適した不死化細胞株、例えばマウス骨髄腫細胞株などに融合させた。結果として得られたハイブリドーマを、抗原特異的抗体の産生についてスクリーニングした。例えば、免疫化マウスからの脾細胞、リンパ節細胞の単一細胞懸濁液を、等しい数のSp2/0非分泌マウスIgG骨髄腫細胞(ATCC、CRL 1581)に電気融合により融合した。細胞を平底96ウェル組織培養プレート中に播種し、選択培地(HAT培地)中での約一週間のインキュベーションが続き、次にハイブリドーマ培養培地に切り替えた。細胞播種後の約10~14日に、個々のウェルからの上清を、上に記載されるようにELISA、撮像、又はFACSによりスクリーニングした。抗体分泌ハイブリドーマを24ウェルプレートに移し、再びスクリーニングし、抗PD-L1について依然として陽性である場合、陽性ハイブリドーマを、単一細胞ソーターを使用したソーティングによりサブクローニングした。サブクローンを、上に記載されるように、ELISA、撮像又はFACSにより再度スクリーニングした。安定なサブクローンを次に、インビトロで培養して、精製及び特徴付けのために少量の抗体を生成した。
【0467】
実施例2:PD-L1をヒト、マウス、及びカニクイザルPD-L1タンパク質に結合させるmAbの結合特異性
異なる種のPD-L1タンパク質に対する、開示されている抗PD-L1抗体(1923Ab2及び1923Ab3)の結合特異性を、ELISAにより評価した。簡単には、ヒト組換えPD-L1タンパク質(Acro Biosystems、カタログ番号:PD1-H5229)、カニクイザルPD-L1タンパク質(Acro Biosystems、カタログ番号:PD1-C52H4)、及びマウスPD-L1タンパク質(Acro Biosystems、カタログ番号:PD1-M5220)をELISAプレートに直接的にコーティングした。1923Ab2及び1923Ab3を次にプレートに加えて、ペルオキシダーゼAffiniPure F(ab’)断片ヤギ抗マウスIgG、Fcγ断片特異性体(Jackson ImmunoResearch、カタログ番号115-036-071)又はペルオキシダーゼAffiniPure F(ab’)断片ヤギ抗ヒトIgG、Fcγ断片特異性体(Jackson ImmunoResearch、カタログ番号109-036-098)による検出が続いた。ABTS基質(Moss、カタログ番号:ABTS-1000)の添加後、ELISAプレートを、Synergy Neo2マルチモードリーダー(Bioteck、SN#:180213F)を使用して読み取った。
【0468】
図2A&Bは、用量依存的な様式における、ヒト及びカニクイザルPD-L1タンパク質に対する、開示されている抗PD-L1抗体の結合活性を示すが、しかし、マウスPD-L1に対してではない;アイソタイプ対照mIgG又はhIgG1は、任意の種のPD-L1に結合しない。ヒト、カニクイザルPD-L1タンパク質に対する、開示されている抗PD-L1抗体のELISA結合EC50値を、図2A及び図2B中に提供する。
【0469】
実施例3:ヒトPD-L1への組換え抗PD-L1の結合親和性
組換え抗PD-L1抗体を、ヒトIgG1又はヒトIgG1バリアントの定常領域を用いて、Expi293から発現及び精製した。抗PD-L1抗体の結合親和性を、免疫蛍光撮像アッセイを使用して評価した。
【0470】
抗PD-L1抗体の細胞結合親和性を、HEK293T-PD-L1細胞上でテストした。細胞を、10%FBSを伴うDMEMを含む完全培地中に播種し、次に37℃で一晩インキュベートした。抗PD-L1抗体を連続希釈し、アッセイプレートに加えて、4℃で2時間にわたりインキュベートし、続いて、細胞を室温で15分間にわたり固定した。固定細胞をPBSで三回にわたり洗浄し、続いて、検出のためにAlexa Fluor(登録商標)488ヤギ抗ヒトIgG(H+L)二次抗体(Invitrogen、カタログ番号A-11013)を用いて室温で1時間にわたり染色した。結合シグナルを、細胞を撮像し、Cytation(Biotek、VT)を使用して蛍光強度を定量化することにより評価した。
【0471】
結合結果は、1923Ab3が、細胞表面上に発現されるPD-L1への強い結合を示すことを示した。1923Ab3の結合親和性は、参照抗体アテゾリズマブ(Roche)と類似している。ヒトPD-L1への1923Ab3及びアテゾリズマブの結合EC50を、それぞれ0.18nM及び0.21nMとして決定した(図3を参照のこと)。
【0472】
実施例4:PD-1/PD-L1相互作用に対するPD-L1抗体の効果
PD-L1とPD-LPD-1の相互作用に対するPD-L1抗体の効果は、Promega(米国マディソン)により開発されたPD-1/PD-L1阻害バイオアッセイにより決定された。このアッセイは、二つの遺伝子操作された細胞株からなるルシフェラーゼ細胞ベースのアッセイである。PD-1エフェクター細胞は、細胞表面上のヒトPD-1及びNFAT応答エレメント(NFAT-RE)により駆動される安定的に組み込まれたルシフェラーゼレポーターを発現するJurkat T細胞であり、ならびに人工APC細胞は、細胞表面ヒトPD-L1及び抗原非依存的な様式において同族TCRを活性化するように設計された、操作された細胞表面タンパク質を発現するCHO-K1細胞である。これらの二つの細胞型が共培養される場合、PD-1/PD-L1相互作用はTCRシグナル伝達を阻害し、発光シグナルにおける低下をもたらす。PD-1/PD-L1相互作用を遮断する抗体の添加は、阻害シグナルを除去し、TCRの活性化をもたらし、発光を増加させる。
【0473】
人工APC CHO-K1細胞(Promega、カタログ番号:J109A)を、10%熱不活化ウシ胎児血清(Sigma、カタログ番号:17H165)を含むハムF-12K培地(ThermoFisher、カタログ番号:21127022)を使用して、製造元のプロトコルに従って培養した。これらの人工APC細胞を、384ウェルの白色TC処理プレート(Corning、カタログ番号3570)中に播種した。プレートを、37℃、5%COで16時間にわたりインキュベートした。上清を除去し、連続希釈抗体を加えた。PD-1エフェクター細胞(Promega、カタログ番号:J115A)を、10%熱不活化ウシ胎児血清を含むRPMI-1640(ThermoFisher、カタログ番号:11875-085)を使用して、製造元のプロトコルに従って培養した。エフェクター細胞を、人工APC細胞及び抗体を含む白色384ウェルプレートに加えた。プレートを、37℃、5%COで6時間にわたりインキュベートした。室温まで平衡化した後、One-Gloルシフェラーゼ試薬(Promega、カタログ番号E6130)を各ウェルに加えた。プレートを次に、室温で5分間にわたりインキュベートし、発光を、Synergy Neo2プレートリーダー(Biotek)を使用して測定した。データを、GraphPad Prismソフトウェアで分析した。
【0474】
図4は、1923Ab2抗体及び1923Ab3抗体の両方が、PD1/PD-L1相互作用を効率的に阻害し、それによって、アッセイにおいて発光シグナルの回復がもたらされたことを示す。PD1/PD-L1遮断に対する1923Ab2、1923Ab3及びアテゾリズマブのIC50を、それぞれ0.90nM、0.43nM、及び0.29~0.31nMとして決定した。
【0475】
実施例5:CD137に結合する結合タンパク質の生成
完全ヒト抗ヒトCD137抗体は、ヒトIgトランスジェニックマウス、ヒト抗体VH及びVL遺伝子を発現するTrianniマウスを免疫化することにより生成された(例、WO2013/063391、TRIANNI(登録商標)マウスを参照のこと)。
【0476】
上に記載される免疫化-TRIANNIマウスを、免疫原を用いた注射により免疫化し、それは、ヒトCD137遺伝子及び組換えヒトCD137 ECDタンパク質を用いて安定的にトランスフェクトされたHEK293細胞を含んだ。TRIANIマウスを、腹腔内(IP)、皮下(SC)、尾の付け根又は足蹠注射を介して免疫化した。
【0477】
免疫応答を眼窩後出血によりモニタリングした。血漿を、ELISA、フローサイトメトリー(FACS)、又は撮像(下に記載するとおり)によりスクリーニングした。十分な抗CD137力価を伴うマウスを、融合のために使用した。マウスを、屠殺ならびに脾臓及びリンパ節の除去前に、免疫原を用いて腹腔内に、尾の付け根又は足蹠にブーストした。
【0478】
抗CD137抗体を産生するマウスの選択-CD137に結合した抗体を産生するマウスを選択するために、免疫化マウスからの血清を、ELISA、FACS、又は撮像によりヒトCD137タンパク質への結合についてスクリーニングし、CD137タンパク質を発現する細胞(CD137遺伝子でトランスフェクトされたHEK293T)であり、CD137を発現しない対照細胞(HEK293T細胞)ではない。
【0479】
ELISAについては、簡単には組換えヒトCD137(R&D、カタログ番号:9220-4B)でコーティングされたELISAプレートを、免疫化マウスからの血清の希釈物を用いて、室温で一時間にわたりインキュベートし、アッセイプレートを洗浄し、特異的抗体結合を、室温での一時間のインキュベーション後に、HRP標識抗マウスIgG抗体(Jackson ImmunoResearch、カタログ番号:109-035-088)を用いて検出し、洗浄し、室温で30分間にわたるABTS基質(Moss、カタログ番号:ABTS-1000)のインキュベーションが続いた。プレートを、ELISAプレートリーダー(Biotek)を使用して読み取った。
【0480】
FACSについては、簡単には、CD137-HEK293T細胞又は親HEK293T細胞を、免疫化マウスからの血清の希釈物を用いて、4℃で2時間にわたりインキュベートした。細胞を、2%PFA(Alfa Aesar、カタログ番号:J61899)で4℃で15分間にわたり固定し、次に洗浄した。特異的抗体結合を、4℃での一時間のインキュベーション後、Alexa 647標識ヤギ抗マウスIgG抗体(ThemoFisher Scientific、カタログ番号A-21445)を用いて検出した。フローサイトメトリー分析を、フローサイトメトリー機器(Intellicyte、IQue plus、Sartorius)上で実施した。
【0481】
また、マウス血清を撮像によりテストした。簡単には、CD137-HEK293T細胞を、免疫化マウスからの血清の希釈物とインキュベートした。細胞を洗浄し、パラホルムアルデヒドで固定し、洗浄し、特異的抗体結合を二次Alexa488ヤギ抗マウス抗体及びHoechst(Invitrogen)で検出した。プレートをスキャンし、撮像装置(Cytation 5、Biotek)上で分析した。
【0482】
CD137に対する抗体を産生するハイブリドーマの生成-本発明のヒト抗体を産生するハイブリドーマを生成するために、脾細胞及びリンパ節細胞を免疫化マウスから単離し、適した不死化細胞株、例えばマウス骨髄腫細胞株などに融合させた。結果として得られたハイブリドーマを、抗原特異的抗体の産生についてスクリーニングした。例えば、免疫化マウスからの脾細胞、リンパ節細胞の単一細胞懸濁液を、等しい数のSp2/0非分泌マウスIgG骨髄腫細胞(ATCC、CRL 1581)に電気融合により融合した。細胞を平底96ウェル組織培養プレート中に播種し、選択培地(HAT培地)中での約一週間のインキュベーションが続き、次にハイブリドーマ培養培地に切り替えた。細胞播種後の約10~14日に、個々のウェルからの上清を、上に記載されるように撮像又はFACSによりスクリーニングした。抗体分泌ハイブリドーマを24ウェルプレートに移し、再びスクリーニングし、抗CD137について依然として陽性である場合、陽性ハイブリドーマを、単一細胞ソーターを使用したソーティングによりサブクローニングした。サブクローンを、上に記載されるように、撮像又はFACSにより再度スクリーニングした。安定なサブクローンを次に、インビトロで培養して、精製及び特徴付けのために少量の抗体を生成した。
【0483】
実施例6:ヒト、マウス及びカニクイザルCD137に対する組換え抗CD137抗体の結合親和性
免疫蛍光撮像アッセイを用いた抗CD137 mAbの結合親和性の分析を、ヒト、マウス又はカニクイザルCD137発現構築物を用いて安定的にトランスフェクトされたHEK293T細胞を使用して実施した。これらの細胞株は、細胞表面上にCD137タンパク質の種特異的形態を発現する。細胞を、10%FBSを伴うDMEMを含む完全培地中に播種し、次に37℃で一晩インキュベートした。細胞を、抗CD137の段階希釈を用いて4℃で2時間にわたり染色し、続いて、細胞を室温で15分間にわたり固定した。固定細胞をPBSで三回洗浄し、続いて、検出のためのAlexa Fluor(登録商標)488ヤギ抗ヒトIgG(H+L)二次抗体(Invitrogen、カタログ番号A-11013)を用いて、室温で1時間にわたり染色した。結合シグナルを、細胞を撮像し、Biotek Cytationを使用して蛍光強度を定量化することにより評価した。
【0484】
結果は、1923Ab4(図5A)、1923Ab5(図5B)、及び1923Ab6(図5C)抗体が、細胞表面上のヒト及びカニクイザルCD137に効率的に結合したことを示す。しかし、これらはいずれも、マウスCD137への結合を示さない。ヒトCD137への1923Ab4、1923Ab5、及び1923Ab6の結合EC50を、それぞれ0.29nM、1.62nM、及び10.5nMとして決定した。カニクイザルCD137への1923Ab4、1923Ab5、及び1923Ab6の結合EC50を、それぞれ0.22nM、2.77nM、及び4.23nMとして決定した。
【0485】
実験はまた、1923Ab4抗体、1923Ab5抗体、及び1923Ab6抗体の結合親和性を、PC2ウレルマブ-NR(BMS)及びPC3ウトミルマブ-NR(Pfizer)を含む参照抗体と比較するために実施された。1923Ab4抗体は、ヒトCD137へのウレルマブ-NR及びウトミルマブ-NRの類似の結合親和性を示した(図6)。1923Ab5抗体及び1923Ab6抗体は、参照抗体と比較し、より弱い結合を示した。
【0486】
実施例7:CD137リガンド競合
CD137へのCD137リガンド結合を遮断する、開示されている抗CD137抗体の能力を評価するために、開示されている抗体である1923Ab4、1923Ab5、及び1923Ab6、ならびに二つの参照抗体であるPC2ウレルマブ-NR及びPC3ウトミルマブ-NRを、バイオレイヤーインターフェロメトリー(Gator Bio、カリフォルニア州)によりテストした。ウレルマブ-NR及びウトミルマブ-NRは、それぞれ、非リガンド及びリガンド遮断抗体であると報告されている。
【0487】
簡単には、ストレプトアビジンプローブ(Probe Life、カタログ番号:PL168-1600002)を、最初に、アッセイ緩衝液(0.02%Tween20及び0.05%アジ化ナトリウムを含むPBS)を含む96ウェルプレート中に30秒間にわたり添加した(ベースライン工程)。プローブを次に、CD137L His-Avi-Tagタンパク質(BPS Bioscience、カタログ番号100238;10ug/ml)を含む96ウェル中に180秒間にわたり添加し(充填工程、ビオチン-CD137Lを捕捉するため)、30秒のベースライン工程が続いた。その後、CD137L添加プローブを、CD137タンパク質(R&D、カタログ番号:9220-4B、10ug/ml)に180秒間にわたり結合させ、続いて、10ug/mlの濃度で、開示されている抗体又は参照抗体と180秒間会合させた。
【0488】
データを、製造元(Gator Bio、CA)により提供されたソフトウェアを使用して処理した。1923Ab5、1923Ab6、及びウレルマブ-NRは、プローブ上に添加されたCD137/CD137Lの複合体に結合した。しかし、1923Ab4及びウトミルマブ-NRは、プローブ上に添加されたCD137/CD137Lの複合体への結合を示さなかった。これらの結果は、1923Ab4及びウトミルマブ-NRがリガンド遮断活性を有することを意味した。1923Ab5、1923Ab6、及びウレルマブ-NRは、リガンド結合部位において位置しないCD137の領域に結合した(図7)。
【0489】
実施例8:NFκBルシフェラーゼレポーターアッセイにおける抗CD137抗体の架橋依存的アゴニスト活性
抗体のアゴニスト活性を、NFκBルシフェラーゼレポーターアッセイを使用して評価した。ヒトCD137発現プラスミド及びNFκBルシフェラーゼレポータープラスミドを用いて安定的にトランスフェクトされた293T細胞を使用して、抗CD137抗体のアゴニスト活性を測定した。これらのレポーター細胞(HEK-CD137レポーター細胞)を、抗CD137抗体又はテストされた抗CD137抗体及び3:1比率の架橋抗体(抗ヒトFcγ断片特異性体(Jackson ImmunoResearch Lab、カタログ番号:109-005-098)を含む混合物のいずれかを用いて刺激し、37℃、5%COで16時間にわたりインキュベートした。ONE-Glo(商標)ルシフェラーゼ試薬(Promega、カタログ番号:E6130)を加えて、プレートを室温で10分間にわたりインキュベートした。発光シグナルをSynergy Neo2プレートリーダー(Biotek)により測定し、データをGraphPad Prismにより分析した。
【0490】
PC3ウトミルマブ-NRは、対照抗体として使用されたが、CD137シグナル伝達に対する架橋依存的アゴニスト抗体であることが報告されている。図8中に示されるように、アイソタイプ対照と比較して、全てのテストされた抗体は、架橋抗体の非存在において非常に最小限のアゴニスト活性を示した。しかし、全てのテストされた抗体は、抗ヒトFcγにより架橋されたアイソタイプ対照を除き、NFκBルシフェラーゼ遺伝子発現を強く活性化した。結果は、1923Ab4抗体、1923Ab5抗体、及び1923Ab6抗体のアゴニスト活性が架橋依存的であることを実証する。
【0491】
実施例9:ヒト初代T細胞活性化アッセイにおける抗CD137抗体の架橋依存的アゴニスト活性
抗体のアゴニスト活性は、T細胞活性化アッセイにおいてさらに確認された。ヒトPBMCを健康なドナーから調製した。これらのヒトPBMCを、10%FBS及び0.5ug/mlのマウス抗hCD3クローンOKT3(Biolegend、カタログ番号317325)を補充したRPMI1640培地中で1×10個細胞/mLの密度で培養した。抗CD137抗体、又はテストされた抗CD137抗体及び3:1比率の架橋抗体を含む混合物のいずれかを加えて、T細胞を刺激した。プレートを、37℃で、5%COで3日間にわたりインキュベートした。72時間のインキュベーション後、上清を使用して、分泌IFNγを、AlphaLISA(PerkinElmer、カタログ番号AL217C/F)により、製造元の指示に従ってプロトコルを使用して測定した。
【0492】
PC3ウトミルマブ-NRは、陽性対照抗体として使用されたが、T細胞活性化に対する架橋依存的アゴニスト抗体であることが報告されている。図9中に示すように、アイソタイプ対照と比較して、開示されている抗体で処理されたPBMCは、架橋抗体の非存在においてIFNγの産生を増加させなかった。しかし、抗ヒトFcγにより架橋された、アイソタイプ対照を除く全てのテストされた抗体が、IFNγの産生を強く刺激した。この結果は、1923Ab4抗体、1923Ab5抗体、及び1923Ab6抗体が、架橋依存的な様式においてT細胞を活性化したことを実証する。
【0493】
実施例10:ヒトCD137上の1923Ab4の結合エピトープ領域の同定
CD137の細胞外領域は、種間で保存されている四つのシステインリッチドメイン(CRD1-4)を含む。1923Ab4抗体への結合のためにどのCRDドメインが要求されるかを特定するために、ヒト/マウスハイブリッドCD137発現構築物を、個々のヒトCRDドメインをマウス対応物と交換することにより作製した(図10A)。実施例6は、1923Ab4が、細胞表面上のヒトCD137に結合しているが、しかし、マウスCD137には結合していないことを示す。
【0494】
ヒトCD137(WT)又はヒト/マウスハイブリッドCD137発現構築物(msCRD1-4)のいずれかを用いて一過的にトランスフェクトされたHEK293T細胞への抗CD137 1923Ab4の結合の分析を、フローサイトメトリーベースの結合アッセイにより実施した。細胞を、4℃で2時間にわたり1923Ab4で染色し、続いて、細胞を室温で15分間にわたり固定した。固定細胞をPBSで三回洗浄し、続いて、検出のためのAlexa Fluor(登録商標)488ヤギ抗ヒトIgG抗体(Invitrogen、カタログ番号A-11013)を用いて、室温で1時間にわたり染色した。結合シグナルを、iQue Screener PLUS(Sartorius、MI)を使用して蛍光強度を定量化することにより評価した。
【0495】
PC2ウレルマブ-NR及びPC3ウトミルマブ-NRの両方が、ヒトCD137に結合するが、しかし、マウスCD137には結合しない。ヒトCD137へのPC2及びPC3の結合は、それぞれ、CRD1ドメイン及びCRD3/4ドメインを通じていた。この結合実験では、PC2は、ヒトCRD1ドメインがマウスCRD1ドメインに交換された場合にのみCD137への結合を失ったのに対し、PC3は、ヒトCRD3又はCRD4ドメインのいずれかがマウス対応物に交換された場合にCD137への結合を失った(図10B~F)。開示されている抗体1923Ab4は、msCRD2、msCRD3、及びmsCRD4発現構築物でトランスフェクトされた細胞への低下した結合を示す(図10B~F)。この結果は、1923Ab4が、CRD2、CRD3、及びCRD4領域を通じてヒトCD137に結合することを示唆する。
【0496】
図11Aでは、ヒト及びマウスCRD4領域の配列アライメントは、5つの別個の差を明らかにした。追加の発現構築物(M1~M5)を、ヒトアミノ酸配列をマウスのものに変化させることにより作製した。例えば、M1領域中のヒト「CF」配列を、部位特異的変異誘発によりマウス「SL」配列に変異させた。
【0497】
ヒトCD137(WT)又は変異CD137発現構築物(M1~M5)のいずれかを用いて一過的にトランスフェクトされたHEK293T細胞への抗CD137 1923Ab4の結合の分析を、フローサイトメトリーベースの結合アッセイにより実施した。細胞を、4℃で2時間にわたり1923Ab4で染色し、続いて、細胞を室温で15分間にわたり固定した。固定細胞をPBSで三回洗浄し、検出のためのAlexa Fluor(登録商標)488ヤギ抗ヒトIgG抗体(Invitrogen、カタログ番号A-11013)を用いた室温で1時間にわたる染色が続いた。結合シグナルを、iQue Screener PLUS(Sartorius、MI)を使用して蛍光強度を定量化することにより評価した。
【0498】
図11Dでは、PC2ウレルマブ-NRを発現対照として使用し、その結合エピトープをCRD1ドメインにマッピングした(Chin,SM et al,Nat Commun,2018 Nov 8;9(1):4679)。CD137のCRD4ドメインのM2領域中で「KRGI」のヒトアミノ酸配列(配列番号81)を「NGTGV」のマウスアミノ酸配列(配列番号77)に変化させることによって、開示されている抗体1923Ab4へのその結合が大幅に低下した。M1、M3、M4、及びM5上の変異誘発によって、細胞表面上に発現されたCD137タンパク質への1923Ab4の結合活性は変化しなかった(図11B、11C、&11E~G)。
【0499】
実施例11:HDX質量分析を使用したヒトCD137上での1923Ab4のエピトープマッピング
ドメインスワッピング及び変異誘発試験を使用して、1923Ab4は、CRD2、CRD3及びCRD4ドメインを通じてヒトCD137に結合することが示された(実施例10)。ヒトCD137への1923Ab4の結合部位をさらに同定するために、水素重水素交換(HDX)質量分析を使用した。抗体により結合されるヒトCD137の領域は、それはエピトープとして定義され、水素/重水素交換から保護される。消化ペプチドの質量差を、LC-MSにより明らかにした。
【0500】
組換えCD137を、最初に、酸化重水素中で、単独で又は1923Ab4抗体との複合体においてインキュベートした。重水素交換を、20℃で0秒、15秒、60秒、600秒、又は3600秒にわたり行った。交換反応を低pHによりクエンチし、タンパク質をペプシン/プロリルエンドペプチダーゼ/XIIIで消化した。CD137の消化ペプチドでの重水素レベルを、LC-MS上の質量シフトからモニタリングした。
【0501】
組換えCD137は、配列AA46-51(KGVFRT;配列番号78)、AA65-90(CTPGFHCLGAGCSMCEQDCKQGQELT;配列番号79)及びAA104-107(DQKR;配列番号80)(図12中で影付きのバーとして描写される領域)での1923Ab4抗体への結合時に重水素取り込みにおける有意な低下を示した。このデータは、実施例10中に例証したドメインスワッピング実験と一致する。組換えCD137は、配列AA46-51(KGVFRT;配列番号78)、AA65-90(CTPGFHCLGAGCSMCEQDCKQGQELT;配列番号79)及びAA104-107(DQKR;配列番号80)での1923Ab4抗体への結合時に重水素取り込みにおける有意な低下を示した。影付きのバーとして描写されているエピトープマッピング結果を、図12中に要約する。このデータは、実施例10中に例証したドメインスワッピング実験と一致する。
【0502】
実施例12:PD-L1又はCD137に対して結合するscFvの調製
(N)-VL-リンカー-VH-(C)又は(N)-VH-リンカー-VL-(C)の構造を伴ってPD-L1に結合するscFvを、図1A中に示されるPD-L1に対する完全ヒトモノクローナル抗体の可変領域を使用して調製した。
【0503】
(N)-VL-リンカー-VH-(C)又は(N)-VH-リンカー-VL-(C)の構造を伴ってCD137に結合するscFvを、図1B及び1C中に示されるCD137に対する完全ヒトモノクローナル抗体の可変領域を使用して調製し、ここで、重鎖可変領域の44の位置でのアミノ酸残基「G」は「C」で置換されてもよく、及び軽鎖可変領域の100の位置でのアミノ酸残基「G」は「C」で置換されてもよい。scFv中の「G」から「C」へのそのようなアミノ酸置換は、二重特異性抗体又は三重特異性抗体の一つの標的特異的部分としてのscFvの安定性を改善することができ得る。
【0504】
実施例13:PD-L1/CD137二重特異性体の分子設計及び産生
PD-L1に結合する結合タンパク質の代表的な例として、図13及び14中に要約されるサブユニット/成分を含む、図13J中に描写される分子フォーマットにより特徴付けられる対称二重特異性体(PD-L1×CD137)を調製した:
1923Ab18
1.重鎖:成分:抗PD-L1抗体の重鎖、リンカー及び抗CD137 scFv(CCを伴うVH-VL)(N→C)を含む配列番号50;ならびに
2.軽鎖:抗PD-L1抗体軽鎖を含む配列番号40。
【0505】
1923Ab18の重鎖成分をコードするポリヌクレオチド配列を有するDNAセグメント1(配列番号50)を発現ベクター中に挿入し、1923Ab18の軽鎖をコードするポリヌクレオチド配列を有するDNAセグメント2(配列番号40)を発現ベクター中に挿入した。
【0506】
構築された発現ベクターをExpi293細胞(ThermoFisher)中で一過性に発現させ、COインキュベーター中で、37℃の条件下で5日間にわたり、Expi293発現培地中で培養した。二重特異性抗体を、組換えプロテインA親和性クロマトグラフィー(Hitrap Mabselect SuRe、GE)、及び、必要な場合、イオン交換クロマトグラフィー又はゲル濾過クロマトグラフィーによる第二工程精製により、細胞培養上清から精製した。SDS-PAGE (BiRad)、SE-HPLCカラム(TOSO、G3000SWXL)を用いたサイズ排除HPLC(Agilent、1100 シリーズ)分析及びCE-SDS(SCIEX、PA800 Plus)を実施して、二重特異性抗体のサイズ及び純度を検出及び確認した。精製タンパク質を所望の緩衝液中に緩衝液交換し、Amicon Ultra 15 30K装置を使用した限外濾過により濃縮し、タンパク質濃度をドロップセンス(Unchained Lab)を使用して推定した。一過性トランスフェクションは、2ベクター系において、又は一つの単一ベクター中に重鎖成分及び軽鎖成分の両方を含む1ベクター系を用いて使用することができ得る。あるいは、二重特異性抗体は、安定CHO発現細胞株の上清から精製することができ得る。
【0507】
実施例14:非対称PD-L1/TGFβ/CD137三重特異性体の分子設計及び産生
PD-L1に結合する非対称結合タンパク質の代表的な例として、図13及び14中に要約されるサブユニット/成分を含む、図13C中に描写される分子フォーマットにより特徴付けられる三重特異性体(PD-L1×CD137×TGFβRII)を調製した:
1923Ab9
1.重鎖(ノブ):成分:抗PD-L1抗体の重鎖、リンカー及び抗CD137 scFv(CCを伴うVH-VL)(N→C)を含む配列番号41;
2.重鎖(ホール):抗PD-L1抗体成分(N→C)の重鎖を含む配列番号42;及び
3.軽鎖:抗PD-L1抗体軽鎖を含む配列番号39。
【0508】
1923Ab9の重鎖(ノブ)成分をコードするポリヌクレオチド配列を有するDNAセグメント1(配列番号41)を発現ベクター中に挿入し、1923Ab9の重鎖(ホール)成分をコードするポリヌクレオチド配列を有するDNAセグメント2(配列番号42)を発現ベクター中に挿入し、及び1923Ab9の軽鎖をコードするポリヌクレオチド配列を有するDNAセグメント3(配列番号39)を発現ベクター中に挿入した。
【0509】
構築された発現ベクターをExpi293細胞(ThermoFisher)中で一過性に発現させ、COインキュベーター中で、37℃の条件下で5日間にわたり、Expi293発現培地中で培養した。二重特異性抗体を、組換えプロテインA親和性クロマトグラフィー(Hitrap Mabselect SuRe、GE)、及び、必要な場合、イオン交換クロマトグラフィー又はゲル濾過クロマトグラフィーによる第二工程精製により、細胞培養上清から精製した。SDS-PAGE (BioRad)、SE-HPLCカラム (TOSO、G3000SWXL)を用いたサイズ排除HPLC (Agilent、1100 シリーズ)分析及びCE-SDS (SCIEX、PA800 Plus)を実施して、三重特異性抗体のサイズ及び純度を検出及び確認した。精製タンパク質を所望の緩衝液中に緩衝液交換し、Amicon Ultra 15 30K装置を使用した限外濾過により濃縮し、タンパク質濃度をドロップセンス(Unchained Lab)を使用して推定した。一過性トランスフェクションは、3ベクター系において、又は一つの単一ベクター中に重鎖成分及び軽鎖成分の両方を含む1ベクター系を用いて使用することができ得る。あるいは、二重特異性抗体は、安定CHO発現細胞株の上清から精製することができ得る。
【0510】
実施例15:PD-L1/TGFβ/CD137三重特異性体の分子設計及び産生
PD-L1に結合する対称結合タンパク質の代表的な例として、図13及び14中に要約されるサブユニット/成分を含む、図13I中に描写される分子フォーマットにより特徴付けられる三重特異性体(PD-L1×CD137×TGFβRII、1923Ab17)を調製した:
1923Ab17
1.重鎖:成分、抗PD-L1抗体の重鎖、リンカー及び抗CD137 scFv(CCを伴うVH-VL)(N→C)を含む配列番号50;ならびに
2.軽鎖:成分、抗PD-L1抗体の軽鎖、リンカー及びTGFβRII ECDを含む配列番号39。
【0511】
1923Ab17の重鎖成分をコードするポリヌクレオチド配列を有するDNAセグメント(1)(配列番号50)を発現ベクター中に挿入し、及び1923Ab17の軽鎖成分をコードするポリヌクレオチド配列を有するDNAセグメント(2)(配列番号39)を発現ベクター中に挿入した。
【0512】
構築された発現ベクターをExpi293細胞(ThermoFisher)中で一過性に発現させ、COインキュベーター中で、37℃の条件下で5日間にわたり、Expi293発現培地中で培養した。三重特異性抗体を、組換えプロテインA親和性クロマトグラフィー(Hitrap Mabselect SuRe、GE)、及び、必要な場合、イオン交換クロマトグラフィー又はゲル濾過クロマトグラフィーによる第二工程精製により、細胞培養上清から精製した。SDS-PAGE (BioRad)、SE-HPLCカラム (TOSO、G3000SWXL)を用いたサイズ排除HPLC(Agilent、1100 シリーズ)分析及びCE-SDS(SCIEX、PA800 Plus)を実施して、三重特異性抗体のサイズ及び純度を検出及び確認した。精製タンパク質を所望の緩衝液中に緩衝液交換し、Amicon Ultra 15 30K装置を使用した限外濾過により濃縮し、タンパク質濃度をドロップセンス(Unchained Lab)を使用して推定した。一過性トランスフェクションは、2ベクター系において、又は一つの単一ベクター中に重鎖成分及び軽鎖成分の両方を含む1ベクター系を用いて使用することができ得る。あるいは、二重特異性抗体は、安定CHO発現細胞株の上清から精製することができ得る。
【0513】
実施例16:PD-L1に結合する二重特異性体及び三重特異性体の特徴付け:CD137への結合
二重特異性抗体及び三重特異性抗体を、実施例13から15までにおいて記載されるように生成、産生、及び精製した。CD137に対するこれらの抗体の結合活性を調べるために、免疫蛍光撮像アッセイを、ヒトCD137発現構築物で安定的にトランスフェクトされたHEK293T細胞を使用して実施した。この細胞株は、細胞表面上にヒトCD137タンパク質を発現した。細胞を、10%FBSを伴うDMEMを含む完全培地中に播種し、次に37℃で一晩インキュベートした。細胞を、4℃で2時間にわたりこれらの抗体で染色し、続いて、細胞を室温で15分間にわたり固定した。固定細胞をPBSで三回洗浄し、続いて、検出のためのAlexa Fluor(登録商標)488ヤギ抗ヒトIgG(H+L)二次抗体(Invitrogen、カタログ番号A-11013)を用いて、室温で1時間にわたり染色した。結合シグナルを、細胞を撮像し、Cytation 5(Biotek、VT)を使用して蛍光強度を定量化することにより評価した。
【0514】
図16Aでは、1923Ab7、1923Ab8、1923Ab9、1923Ab10及び1923Ab11を含む、開示されている全ての二重特異性抗体及び三重特異性抗体が、1923Ab4と比較して、細胞表面上のヒトCD137に類似的に結合した。この結果は、抗CD137のScFvフォーマットが、CD137への結合活性を保持したことを示す。
【0515】
本発明者らはまた、ScFvフォーマットとして1923Ab3を使用して三重特異性抗体を生成した。図16Bでは、1923Ab7及び1923Ab16の両方が、フローサイトメトリーにより測定された、細胞表面上のヒトPD-L1と類似して結合した。この結果は、1923Ab3及び1923Ab4の両方が、開示されている二重特異性抗体及び三重特異性抗体においてScFvフォーマットとして使用され得ることを示す。
【0516】
実施例17:PD-L1に結合する二重特異性体及び三重特異性体の特徴付け:CD137シグナル伝達
これらの抗体を、NFκBルシフェラーゼレポーターアッセイを使用してCD137シグナル伝達に対するアゴニスト活性を測定することによりさらに評価した。ヒトCD137発現プラスミド及びNFκBルシフェラーゼレポータープラスミドで安定的にトランスフェクトされた293T細胞を、レポーター細胞として使用した。これらのレポーター細胞を、PD-L1を発現する293T細胞と共培養し、抗体で刺激し、37℃で、5%COで16時間にわたりインキュベートした。ONE-Glo(商標)ルシフェラーゼ試薬(Promega、カタログ番号E6130)を加えて、プレートを室温で10分間にわたりインキュベートした。発光シグナルを、Synergy Neo2プレートリーダー(Biotek、バーモント州)により測定し、データをGraphPad Prismにより分析した。CD137シグナル伝達の活性化は、発光シグナルの増加をもたらした。
【0517】
図17Aでは、1923Ab7、1923Ab8、1923Ab9、1923Ab10及び1923Ab11を含む全ての開示されている抗体が、アイソタイプ対照抗体と比較して、CD137シグナル伝達を活性化した。1923Ab7、1923Ab8、及び1923Ab11は、1923Ab9及び1923Ab10と比較して、より強いアゴニスト活性を示した(図17A)。結果は、抗CD137の二価結合が、抗CD137の一価結合よりも強い抗CD137シグナル伝達を誘導したことを実証する。
【0518】
本発明者らはまた、ScFvフォーマットとして1923Ab3を使用して三重特異性抗体を生成した。CD137シグナル伝達に対するこれらの抗体のアゴニスト活性がまた、組換えCD137及びNF Bルシフェラーゼレポーターを発現するJurkat T CD137レポーター細胞を使用して比較された。簡単には、Jurkat T NFκBレポート細胞株を使用して、CD137シグナル伝達の活性を測定し、PD-L1発現HEK293T細胞を標的細胞として使用して、PD-L1を提供した。図17Bでは、1923Ab7及び1923Ab16の両方が、Jurkat T CD137レポーター細胞により測定されたCD137シグナル伝達と類似のアゴニスト活性を示した。1923Ab16は、ヒトPD-L1に効果的に結合して、CD137シグナル伝達を活性化する。
【0519】
実施例18:二重特異性体及び三重特異性体の特徴付け-CD137シグナル伝達のPD-L1依存的活性化
開示されている抗体を、PD-L1依存的CD137アゴニズムを誘導するそれらの能力について評価した。図18は、標的細胞の存在(18A)又は非存在(18B)においてJurkat T CD137レポーター細胞を使用して、CD137シグナル伝達を誘導する1923Ab7、1923Ab8、1923Ab17及び1923Ab18の能力を実証する。簡単には、CD137発現Jurkat T NFkBレポート細胞株を使用して、CD137シグナル伝達の活性を測定し、PD-L1発現HEK293T細胞を標的細胞として使用して、PD-L1を提供した。レポーター細胞を標的細胞と共培養した場合、1923Ab7、1923Ab8、1923Ab17、1923Ab18、及びウレルマブ-NRを含む、開示されている抗体は、CD137シグナル伝達の活性化を示した(図18A)。しかし、開示されている抗体のいずれも、ウレルマブ-NRを除いて、標的細胞の非存在においてCD137シグナル伝達を誘導しなかった(図18B)。ウレルマブは、Bristol Myers Squibbにより開発された架橋非依存的抗体である。この抗体は臨床的有効性を示すが、しかし、その発生は、肝毒性により限定される。図18A、1923Ab7、1923Ab8、1923Ab17及び1923Ab18は、ウレルマブと比較して、PD-L1依存的なCD137シグナル伝達のより強い誘導(Emax)を実証した。
【0520】
実施例19:二重特異性体及び三重特異性体の特徴付け-抗CD137のscFvの位置
開示されている二重特異性抗体及び三重特異性抗体における異なる位置において抗CD137のScFvを融合することによりCD137アゴニズムに対する効果を調べるために、Jurkat T CD137レポーター細胞を、PDL1発現細胞の存在又は非存在において使用した。テスト抗体の構造を図13及び14中に例証する。1923Ab19は、抗体軽鎖のC末端に融合された1923Ab4のScFvフォーマットを含む。1923Ab12及び1923Ab13は、それぞれ抗体軽鎖及び重鎖のN末端に融合された1923Ab4のScFvフォーマットを含む。1923Ab17及び1923Ab7は対照三重特異性抗体である。図19Aは、二重特異性Ab 1923Ab19が、PDL1発現細胞の存在においてのみCD137シグナル伝達を誘導することができることを実証する。類似的に、n1923Ab12及び1923Ab13はまた、PD-L1依存的な様式においてCD137シグナル伝達を誘導した(図19B)。
【0521】
実施例20:二重特異性体及び三重特異性体の特徴付け-PD-1/PD-L1相互作用の遮断
PD-1とPD-L1の間での相互作用を遮断するための二重特異性抗体及び三重特異性抗体におけるPDL1結合アームの効果を調べるために、Promega(米国マディソン)により開発されたPD-1/PD-L1阻害バイオアッセイを、実施例4において記載されるように使用した。図20は、1923Ab3、1923Ab7、1923Ab8、1923Ab17、及び1923Ab18を含む、全ての開示されている抗体が、PD-1とPD-L1の間での相互作用を効果的に遮断することを実証する。遮断活性は、臨床的に承認された抗PD-L1抗体、例えばPC1アベルマブ-NR及びアテゾリズマブなどと等価である。
【0522】
実施例21:三重特異性体の特徴付け-TGFβ活性の遮断
高レベルの形質転換成長因子ベータ(TGFβ)は、進行した悪性腫瘍における免疫回避、療法抵抗性(化学療法、放射線、チェックポイント阻害剤)、及び不良な転帰と関連付けられる。腫瘍微小環境(TME)においてTGFβを隔絶することによりTGFβシグナル伝達を阻害することによって、非免疫細胞における表現型変化及び免疫細胞の増強された活性化に導かれる。従って、TGFβの遮断は、免疫系と完全に係合するために、本発明者らの開示されている二重特異性抗体に利益を提供する。そのようにするために、本発明者らは、三重特異性抗体、例えば1923Ab7及び1923Ab17などを生成した。これらの抗体のTGFβ遮断活性を、TGF/SMADシグナル伝達経路SBEレポーター-HEK293細胞株(BPS Bioscience、カリフォルニア州)を使用して調べた。図21は、1923Ab7及び1923Ab17の両方が、それぞれ、3.6pM及び2.8pMのIC50値を伴って、TGFβ誘導シグナル伝達を効果的に遮断したことを実証する。
【0523】
実施例22:二重特異性体及び三重特異性体の特徴付け-ヒトPBMCを使用したT細胞活性化
T細胞活性化を測定するために、健康なドナーから調製されたヒトPBMCを使用した。これらのヒトPBMCを、10%FBS及び0.5ug/mlのマウス抗hCD3クローンOKT3(Biolegend、カタログ番号317325)を補充したRPMI1640培地中で1×10個細胞/mLの密度で培養した。開示されている抗体を加えて、T細胞を刺激した。プレートを、37℃で、5%COで3日間にわたりインキュベートした。72時間のインキュベーション後、上清を使用して、分泌IFNγを、AlphaLISA(PerkinElmer、カタログ番号AL217C/F)により、製造元の指示に従ってプロトコルを使用して測定した。
【0524】
図22A中に示されるように、CD3で同時処理された場合、二重特異性Ab 1923Ab8は、モノクローナル抗CD137 Ab 1923Ab4+Fc架橋剤又はPC2ウレルマブ-NR単独のいずれかで処理されたPBMCと等価の強いT細胞活性化を誘導した。実施例18における以前のデータによって、1923Ab8の活性がPDL-1依存的であることが実証された。PBMC及び活性化T細胞における抗原提示細胞上のPDL1の発現が報告されているため、このデータは、二重特異性Abが、免疫細胞上のPDL1に結合し、腫瘍微小環境、及び腫瘍抗原経験T細胞が存在する流入領域リンパ節においてT細胞を活性化することができ得ることを示唆する。
【0525】
図22Bは、三重特異性1923Ab7及び二重特異性1923Ab8の両方が、強いT細胞活性化を誘導したことを実証する。しかし、抗PDL1及びTGFbRIIを含む二重特異性Ab 1923Ab20は、T細胞活性化を示さなかった。PD1経路を遮断すること及びCD137を活性化することは両方とも、T細胞を活性化することができる。結果は、検出されたT細胞活性化が、PD-1/PD-L1相互作用の阻害よりむしろ、CD137シグナル伝達の活性化に起因することを例証する。
【0526】
実施例23:二重特異性体及び三重特異性体の特徴付け-T細胞媒介性細胞傷害性及びCD8 T細胞活性化
PD-L1を発現する腫瘍細胞に対するT細胞媒介性細胞傷害性効果を調べるために、GFPを発現するNUGC-4胃腫瘍細胞を使用した。簡単には、NUGC4 GFP細胞を、IFNγで48時間にわたり前処理して、PD-L1発現を誘導した。前処理後、細胞を洗浄し、マウス抗hCD3クローンOKT3(Biolegend、カタログ番号317325)及び開示されている二重特異性又は三重特異性抗体で刺激されたCD8 T細胞と72時間にわたり共培養した。緑色蛍光シグナルを、Cytation(Biotek、VT)を使用して測定した。死滅のパーセンテージを、以下の式により計算した:
死滅の%=(GFPシグナル抗体なし-抗体で処理されたGFPシグナル)/GFPシグナル抗体なし*100%。
【0527】
図23Aは、1923Ab17及び1923Ab18が、強いT細胞媒介性細胞傷害性を誘導したことを実証する。腫瘍細胞の約50%を、1923Ab17又は1923Ab18で刺激されたCD8 T細胞との72時間のインキュベーション時に殺した。同じ実験からの培地を使用して、T細胞活性化の指標としてIFNγの量を測定した。図23Bは、1923Ab17処理及び1923Ab18処理の両方が、アイソタイプ対照処理と比較して、強いT細胞活性化を誘導したことを実証する。これらの結果は、1923Ab17及び1923Ab18がCD8 T細胞を活性化するだけでなく、しかし、また、CD8 T細胞媒介性死滅を誘導したことを例証する。
【0528】
実施例24:二重特異性体及び三重特異性体の特徴付け-CMVリコールアッセイにおけるPBMCを使用した抗原特異的T細胞活性化
開示されている二重特異性抗体及び三重特異性抗体の抗原特異的T細胞活性化を調べるために、健康なドナーから調製されたヒトPBMCを使用した。CMV溶解物を、Microbix Biosystems(カタログ番号EL-01-02-001.0)から購入した。CMVリコールアッセイを、CMV溶解物及び抗体で刺激されたヒトPBMCを使用して5日間にわたり実施した。プレートを、5%COを伴って37℃でインキュベートした。5日間のインキュベーション後、上清を収集し、IFNγを、AlphaLISA(PerkinElmer、カタログ番号AL217C/F)により、製造元の指示に従ってプロトコルを使用して測定した。IFNγの量は、T細胞活性化に直接的に比例する。
【0529】
図24は、全ての開示されている抗体が、抗原特異的なT細胞活性化を活性化したことを実証する。とりわけ、1923Ab7及び1923Ab17は、インビトロで最も強いT細胞活性化を誘導した。この結果は、三重特異性抗体が、二重特異性抗体、又は「PC2ウレルマブ-NR+1923Ab3」もしくは「PC2ウレルマブ-NR+1923Ab20」の組み合わせ処理よりも強い抗原特異的T細胞活性化を活性化したことを示す。
【0530】
実施例25:ヒトP-L1及びヒトCD137に対する1923Ab17及び1923Ab18の結合動態
ヒトPD-L1及びCD137に結合する、1923Ab3、1923Ab4、1923Ab17及び1923Ab18を含む、開示されている抗体の能力を評価するために、結合動態実験をBiacore3000によりテストした。簡単には、CM5センサーチップ(GE Healthcare、カタログ番号BR-1000-12)を、フローセル2上のアプリケーションウィザードに従って、抗ヒトIgG抗体(GE Healthcare、カタログ番号BR-1008-39)とのアミンカップリング化学を介して固定化した。フローセル1は、体系的な機器ノイズ及びドリフトの減算のための参照セルとしての役割を果たすように、未改変のままであった。二重ブランク(Fc1及びブランク分析物緩衝液)を用いてFc2-1検出を実行し、抗体サンプルをHBS-EP(GE Healthcare、カタログ番号BR-1003-69)中で1ug/mlに希釈し、10ul/mlの流量で1分間捕捉のために注射した。HBS-EP中で1:4希釈、5ポイントでPD-L1については10nM及びCD137については80nMから0nMまで希釈された抗原ヒトPD-L1(Acro Biosystems、カタログ番号PD1-H5229)及び CD137(Sino Biological、カタログ番号10041-H08H)を、50μl/分で2分間にわたり注射し、その後6分間解離させた。
【0531】
データは、質量移動モデルを用いた1:1結合によりBIAEvalutionソフトウェアにおいて分析された。平衡解離定数(KD)が報告された。結果を表10及び11中に要約する。
【表10】
【表11】
【0532】
実施例26:MC38-hPD-L1マウス腫瘍モデルにおける抗腫瘍効果及び腫瘍浸潤リンパ球(TIL)分析
6~8週齢の、16~20gの間の体重を伴う雌B-hPD-L1/h4-1BBマウス(Biocytogen)を、試験登録前の7日間にわたり順応させた。マウスは、全試験期間の間に、オートクレーブ滅菌された乾燥顆粒食品及び水への自由なアクセスを有し、相対的湿度40~70%を伴って、20~26℃で12時間の明/暗サイクルで収容された。MC38マウス結腸癌細胞株を遺伝的に改変して、マウスPD-L1の代わりにヒトPD-L1を過剰発現させた。細胞は、10%熱不活化FBSを補充したDMEM中で、37℃で、5%の雰囲気中で、単層培養物としてインビトロで維持される。細胞を回収し、100μlのPBS中の5×10個の細胞を、腫瘍発生のために右前脇腹中に皮下移植した。7日目に、腫瘍担持マウスを、約100~150mmの平均腫瘍サイズを伴う2つの試験群中に無作為に登録する。各群は5匹のマウスからなった。腫瘍サイズは、キャリパーを使用して二次元において週に二回測定され、容積は、以下の式を使用してmm3で表現される:V=0.5a×b2、式中、a及びbはそれぞれ腫瘍の長寸法及び短寸法である。処置を、5mg/kgの1923Ab18又は陰性対照としてのPBSの腹腔内注射を用いて、7、11、14、及び18日目に開始した。試験は21日目に終了した。最終的な出血を実施して、AST測定用の血清を調製した。腫瘍を回収し、TIL分析のために組織保存緩衝液中に保存した。
【0533】
図25は、両方の処置群についての腫瘍成長曲線を示す。1923Ab18は、媒体対照と比較して腫瘍成長を有意に阻害した。それは78%の腫瘍成長阻害に達した。
【0534】
腫瘍微小環境において免疫細胞に対する1923Ab18抗体の効果を決定するために、腫瘍サンプルを、上に記載される試験において回収した。免疫細胞の全体的な浸潤を、CD3+/CD45+腫瘍浸潤リンパ球の量を測定することにより決定した。図26A中に示されるように、1923Ab18は、腫瘍微小環境中へのCD3+免疫細胞の浸潤を有意に増加させた。CD3+細胞を、CD4+又はCD8+TILにさらに分割した。図26B&Cは、1923Ab18が、CD8+細胞の浸潤を有意に誘導したが、しかし、CD4+細胞は誘導しなかったことを実証する。腫瘍微小環境におけるTreg細胞のレベルは、CD25+FOXP3+CD3+腫瘍浸潤リンパ球の量を測定することにより決定された。図26D中に示されるように、1923Ab18は、腫瘍微小環境におけるTregのレベルを有意に低下させた。従って、CD8/Treg比率は、1923Ab18で処置されたマウスの腫瘍微小環境において有意に増加した(図26E)。
【0535】
他に示されない限り、本明細書及び特許請求の範囲において使用される成分の量、特性、例えば分子量、反応条件などを表現する全ての数が、全ての例において用語「約」により修飾されるとして理解されるべきである。したがって、反対に示されない限り、本明細書及び添付の特許請求の範囲において示される数値パラメータは、本開示により得られることが求められる所望の特性に依存して変動し得る近似である。最低限、特許請求の範囲に対する均等論の適用を限定する試みとしてではなく、各数値パラメータは、少なくとも、報告された有効桁数に照らして、通常の四捨五入技術を適用することにより解釈されるべきである。
【0536】
本開示の広範な範囲を示す数値範囲及びパラメータが近似であるにもかかわらず、特定の実施例において示される数値は、可能な限り正確に報告される。任意の数値は、しかし、それらのそれぞれのテスト測定値において見出される標準偏差から必然的にもたらされる特定の誤差を本質的に含む。
【0537】
本開示を記載する文脈において使用される用語「a」、「an」、「the」、及び類似の参照対象(特に以下の特許請求の範囲の文脈において)は、本明細書中で他に示されない、又は文脈により明確に矛盾しない限り、単数及び複数の両方を網羅すると解釈されるべきである。本明細書中の値の範囲の列挙は、単に、その範囲内に入る各々の別々の値に個別に言及する簡潔な方法として役立つことが意図されている。本明細書中で他に示されない限り、各々の個々の値は、本明細書中に個別に列挙されているかのように本明細書中に組み入れられる。本明細書中に記載される全ての方法は、本明細書中で他に示されない、又は文脈により明確に矛盾しない限り、任意の適切な順序で実施することができる。本明細書中に提供される任意の及び全ての実施例、又は例示的な言語(例、「例えば、など」)の使用は、単に本開示をより良く明らかにすることを意図しており、他に特許請求される本開示の範囲に対する限定を提起しない。本明細書中のいかなる文言も、本開示の実施に必須の任意の特許請求されていない要素を示しているとして解釈されるべきではない。
【0538】
本明細書中に開示される本開示の代替的な要素又は実施形態のグループ化は、限定として解釈されるべきではない。各グループメンバーは、個別に、又は本明細書中に見出されるグループもしくは他の要素の他のメンバーとの任意の組み合わせにおいて参照及び特許請求することができる。グループの一つ又は複数のメンバーは、利便性及び/又は特許性の理由のために、グループ中に含まれる、又はそこから削除することができることが予想される。任意のそのような包含又は削除が生じた場合、本明細書は、修正された群を含むと見なされ、このように、添付の特許請求の範囲において使用される全てのマーカッシュ群の書面による説明を満たす。
【0539】
本開示の特定の実施形態は、本明細書中に記載されており、本開示を行うための、発明者らに公知の最良の様式を含む。もちろん、これらの記載された実施形態のバリエーションは、前述の説明を読む際に当業者に明らかになるであろう。本発明者らは、当業者が、そのようなバリエーションを、適する場合に用いることを期待し、本発明者らは、本開示が、本明細書中に具体的に記載されていない他の方法で実施されることを意図する。したがって、本開示は、適用法により許容されるとおり、本明細書に添付される特許請求の範囲において列挙される主題の全ての修正及び等価物を含む。さらに、その全ての可能なバリエーションにおける上に記載される要素の任意の組み合わせが、本明細書中で他に示されない、又は文脈により明確に矛盾しない限り、本開示により包含される。
【0540】
本明細書中に開示される特定の実施形態は、「からなるか」又は「本質的になる」言語を使用して、特許請求の範囲においてさらに限定されることができる。特許請求の範囲において使用される場合、修正毎に出願される又は追加される、転換語「からなる」は、特許請求の範囲において特定されていない任意の要素、工程、又は成分を除外する。転換語「から本質的になる」は、特許請求の範囲を、特定された材料又は工程ならびに基本的及び新規の特徴に実質的に影響を及ぼさないものに限定する。そのように特許請求される本開示の実施形態は、本明細書中に固有に又は明示的に記載され、有効化される。
【0541】
本明細書中に開示される本開示の実施形態は、本開示の原理の例証であることが理解されるべきである。用いられ得る他の改変は、本開示の範囲内である。このように、例として、しかし、限定ではなく、本開示の代替的な構成が、本明細書中の教示に従って利用され得る。したがって、本開示は、正確に示され、記載されるようなものに限定されない。
【0542】
本開示は、様々な特定の材料、手順、及び実施例への参照により本明細書中に記載及び例証されている一方で、本開示は、その目的のために選択された材料及び手順の特定の組み合わせに制限されないことが理解される。そのような詳細の多数のバリエーションが、当業者により理解されるように意味され得る。本明細書及び実施例は、例示のみとして考えられ、本開示の真の範囲及び精神は、以下の特許請求の範囲により示されることが意図される。本出願において言及される全ての参考文献、特許、及び特許出願は、参照により、それらの全体において本明細書中に組み入れられる。
図1A
図1B
図1C
図1D
図1E
図1F
図1G
図1H
図1I
図1J
図1K
図2
図3
図4
図5-1】
図5-2】
図6
図7
図8
図9
図10-1】
図10-2】
図10-3】
図11-1】
図11-2】
図11-3】
図12
図13-1】
図13-2】
図13-3】
図14
図15
図16
図17
図18A
図18B
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26-1】
図26-2】
【配列表】
2024536716000001.xml
【国際調査報告】