(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-08
(54)【発明の名称】MAGL阻害剤
(51)【国際特許分類】
C07D 405/14 20060101AFI20241001BHJP
A61K 31/496 20060101ALI20241001BHJP
A61P 1/04 20060101ALI20241001BHJP
A61P 25/08 20060101ALI20241001BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20241001BHJP
A61P 25/24 20060101ALI20241001BHJP
A61P 25/28 20060101ALI20241001BHJP
A61P 25/18 20060101ALI20241001BHJP
A61P 25/16 20060101ALI20241001BHJP
A61P 25/06 20060101ALI20241001BHJP
A61P 21/00 20060101ALI20241001BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20241001BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20241001BHJP
A61K 51/04 20060101ALI20241001BHJP
G01T 1/161 20060101ALI20241001BHJP
A61K 101/02 20060101ALN20241001BHJP
A61K 101/00 20060101ALN20241001BHJP
【FI】
C07D405/14
A61K31/496
A61P1/04
A61P25/08
A61P25/00
A61P25/24
A61P25/28
A61P25/18
A61P25/16
A61P25/06
A61P21/00
A61P35/00
A61P43/00 111
A61K51/04 200
G01T1/161 Z
A61K101:02
A61K101:00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024513990
(86)(22)【出願日】2022-09-01
(85)【翻訳文提出日】2024-04-12
(86)【国際出願番号】 EP2022074263
(87)【国際公開番号】W WO2023031311
(87)【国際公開日】2023-03-09
(32)【優先日】2021-09-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】591003013
【氏名又は名称】エフ. ホフマン-ラ ロシュ アーゲー
【氏名又は名称原語表記】F. HOFFMANN-LA ROCHE AKTIENGESELLSCHAFT
(71)【出願人】
【識別番号】508139000
【氏名又は名称】エーテーハー・チューリッヒ
【氏名又は名称原語表記】ETH Zurich
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】弁理士法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】ゴッビ,ルカ・クラウディオ
(72)【発明者】
【氏名】グレター,ウーヴェ・ミヒャエル
(72)【発明者】
【氏名】ヘ,インファン
(72)【発明者】
【氏名】クーン,ベルント
(72)【発明者】
【氏名】ムゥ,リンジン
【テーマコード(参考)】
4C085
4C086
4C188
【Fターム(参考)】
4C085HH03
4C085KA29
4C085KB07
4C085KB18
4C085KB56
4C085LL13
4C085LL18
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086BC50
4C086GA02
4C086GA07
4C086GA12
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZA02
4C086ZA06
4C086ZA12
4C086ZA16
4C086ZA18
4C086ZA66
4C086ZA94
4C086ZB26
4C086ZC20
4C188EE02
4C188FF07
(57)【要約】
本発明は、モノアシルグリセロールリパーゼ(MAGL)に関連する疾患又は症状の処置又は予防に有用な新たな可逆的MAGL阻害剤を提供する。本発明による可逆的MAGL阻害剤はまた、放射性同位元素で標識されてもよく、したがって、陽電子放射断層撮影法(PET)及び/又はオートラジオグラフィーなどの医用画像化に有用である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
【化1】
からなる群から選択される化合物又はその薬学的に許容され得る塩であって、前記化合物が任意に放射性標識を含む、化合物又はその薬学的に許容され得る塩。
【請求項2】
前記放射性標識が、
11C及び
18Fから選択される、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
【化2】
からなる群から選択される請求項2に記載の化合物又はその薬学的に許容され得る塩。
【請求項4】
【化3】
である請求項2に記載の化合物又はその薬学的に許容され得る塩。
【請求項5】
【化4】
である請求項2に記載の化合物又はその薬学的に許容され得る塩。
【請求項6】
【化5】
である請求項2に記載の化合物又はその薬学的に許容され得る塩。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載の化合物又はその薬学的に許容され得る塩と、薬学的に許容され得る添加物とを含む、医薬組成物。
【請求項8】
治療活性物質としての使用のための、請求項1に記載の化合物。
【請求項9】
哺乳動物の脳におけるモノアシルグリセロールリパーゼ(MAGL)の画像診断方法であって、
(a)検出可能な量の請求項1~6のいずれか一項に記載の放射性標識化合物若しくはその薬学的に許容され得る塩又は検出可能な量の請求項7に記載の医薬組成物を前記哺乳動物に投与することと、
(b)MAGLと会合している場合、前記放射性標識化合物を検出することと
を含む、方法。
【請求項10】
モノアシルグリセロールリパーゼ(MAGL)占有率試験における使用のための、請求項1~6のいずれか一項に記載の放射性標識化合物若しくはその薬学的に許容され得る塩又は請求項7に記載の医薬組成物。
【請求項11】
請求項9に記載の方法における使用のための、請求項1~6のいずれか一項に記載の放射性標識化合物若しくはその薬学的に許容され得る塩又は請求項7に記載の医薬組成物。
【請求項12】
請求項9に記載の方法における、請求項1~6のいずれか一項に記載の放射性標識化合物若しくはその薬学的に許容され得る塩又は請求項7に記載の医薬組成物の使用。
【請求項13】
哺乳動物の脳におけるモノアシルグリセロールリパーゼ(MAGL)の画像診断用の医薬の調製のための、請求項1~6のいずれか一項に記載の放射性標識化合物又はその薬学的に許容され得る塩の使用。
【請求項14】
神経炎症、神経変性疾患、疼痛、がん、精神障害、多発性硬化症、アルツハイマー病、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症、外傷性脳損傷、神経毒性、脳卒中、てんかん、不安症、片頭痛、鬱病、炎症性腸疾患、腹痛、過敏性腸症候群に伴う腹痛、及び/又は内臓痛の処置又は予防における使用のための、請求項1に記載の化合物。
【請求項15】
ここで上述したとおりの発明。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、哺乳動物における治療又は予防に有用な有機化合物、特に哺乳動物におけるMAGLに関連する疾患又は症状を処置又は予防するためのモノアシルグリセロールリパーゼ(MAGL)阻害剤に関する。本発明は更に、ポジトロン放出断層撮影(PET)及び/又はオートラジオグラフィー等の医用画像化に有用な放射性標識MAGL阻害剤に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
モノアシルグリセロールリパーゼ(MAGL)は、中枢神経系(CNS)、並びにいくつかの末梢器官で高度に発現されるセリン加水分解酵素である(Karlsson M,Contreras JA,Hellman U,Tornqvist H,Holm C.cDNA Cloning,Tissue Distribution,and Identification of the Catalytic Triad of Monoglyceride Lipase.J Biol Chem.1997;272:27218-27223;Dinh TP,Carpenter D,Leslie FM,et al.Brain monoglyceride lipase participating in endocannabinoid inactivation.Proc Natl Acad Sci.2002;99:10819-10824)。MAGLは、生理学的及び病理学的症状におけるエンドカンナビノイド及び脂質レベルの調節において基本的役割を果たす(Blankman JL,Simon GM,Cravatt BF.A Comprehensive Profile of Brain Enzymes that Hydrolyze the Endocannabinoid 2-Arachidonoylglycerol.Chem Biol.2007;14:1347-1356)。その結果、MAGL阻害剤は非常に興味深いものであり、神経変性、精神障害及びがんを含む複数の疾患に対する処置のための潜在的な治療薬となる(Gil-Ordonez A,Martin-Fontecha M,Ortega-Gutierrez S,Lopez-Rodriguez ML.Monoacylglycerol lipase(MAGL)as a promising therapeutic target.Biochem Pharmacol.2018;157:18-32)。
【0003】
ポジトロン放出断層撮影(PET)は、非侵襲的画像化技術として、薬物-標的エンゲージメント、薬物占有へのアクセス、及び処置モニタリングに関する貴重な情報を提供することによって、創薬及び開発を支援している(Hou L,Rong J,Haider A,et al.Positron Emission Tomography Imaging of the Endocannabinoid System:Opportunities and Challenges in Radiotracer Development.2020;6)。初期に開発されたMAGL放射性リガンドは、主に不可逆的なもの、例えば、[11C]MA-PB(Ahamed M,Attili B,van Veghel D,et al.Synthesis and preclinical evaluation of [11C]MA-PB-1 for in vivo imaging of brain monoacylglycerol lipase(MAGL).Eur J Med Chem.2017;136:104-113)、[11C]SAR127303(Wang L,Mori W,Cheng R,et al.Synthesis and Preclinical Evaluation of Sulfonamido-based [11C-Carbonyl]-Carbamates and Ureas for Imaging Monoacylglycerol Lipase.Theranostics.2016;6:1145-1159)、[11C]PF-06809247(Zhang L,Butler CR,Maresca KP,et al.Identification and Development of an Irreversible Monoacylglycerol Lipase(MAGL)Positron Emission Tomography(PET)Radioligand with High Specificity.J Med Chem.2019;62:8532-8543)、及び[18F]PF-06795071(Chen Z,Mori W,Fu H,et al.Design,Synthesis,and Evaluation of 18F-Labeled Monoacylglycerol Lipase Inhibitors as Novel Positron Emission Tomography Probes.J Med Chem.2019;62:8866-8872)であり、これらは、薬物動態学モデリングにおいて薬物-標的相互作用の包括的な定量化を提供することがほとんどできなかった(Hou L,Rong J,Haider A,et al.Positron Emission Tomography Imaging of the Endocannabinoid System:Opportunities and Challenges in Radiotracer Development.J Med Chem.2021;64:123-149)。
【0004】
[18F]T-401は、現在、可逆的MAGL PET放射性トレーサーとして最も代表的な場合をとなっている(Hattori Y,Aoyama K,Maeda J,et al.Design,Synthesis,and Evaluation of(4R)-1-{3-[2-(18F)Fluoro-4-methylpyridin-3-yl]phenyl}-4-[4-(1,3-thiazol-2-ylcarbonyl)piperazin-1-yl]pyrrolidin-2-one([18F] T-401)as a Novel Positron-Emission Tomography Imaging Agent for Monoacylglycerol Lipas.J Med Chem.2019;62:2362-2375)。しかしながら、[18F]T-401は、脳取り込みが低く、CNS透過放射性代謝産物が存在する。これらの特徴は、脳におけるMAGLの視覚化を妨げ、動的モデリングにおける特異的結合シグナルの定量化を複雑にする(Pike VW,PET radiotracers:crossing the blood-brain barrier and surviving metabolism.Trends Pharmacol Sci.2009;30:431-440)。適切な可逆的MAGL PETトレーサーの欠如のために、治療的介入によるMAGL占有又は病理学的症状下でのMAGL変化は、これまで前臨床段階で報告されていない。まとめると、可逆的PETトレーサーが、治療的MAGL阻害剤の標的関与を検証するために、並びに健康及び疾患条件下でMAGL発現レベルを調べるために必要とされ続けている(Hou L,Rong J,Haider A,et al.Positron Emission Tomography Imaging of the Endocannabinoid System:Opportunities and Challenges in Radiotracer Development.J Med Chem.2021;64:123-149)。
【発明の概要】
【0005】
第1の態様では、本発明は、
【化1】
からなる群から選択される化合物又はその薬学的に許容され得る塩であって、前記化合物が任意に放射性標識を含む、化合物又はその薬学的に許容され得る塩を提供する。
【0006】
更なる態様では、本発明は、治療活性物質としての使用のための、本明細書に記載の化合物を提供する。
【0007】
更なる態様では、本発明は、MAGLに関連する疾患又は症状の処置又は予防における使用のための本明細書に記載の化合物を提供する。
【0008】
更なる態様では、本発明は、モノアシルグリセロールリパーゼ(MAGL)占有率試験における使用のための本明細書に記載の放射性標識化合物を提供する。
【0009】
更なる態様では、本発明は、モノアシルグリセロールリパーゼ(MAGL)の画像診断における使用のための本明細書に記載の放射性標識化合物を提供する。
【0010】
更なる態様では、本発明は、本明細書に記載の放射性標識化合物及び薬学的に許容され得る担体を含む医薬組成物を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、mouse.brain-map.org(実験:69015242)から回収されたマウス脳における[
11C]-I(Cx=皮質;Hp=海馬;Cb=小脳;St=線条体;Th=視床)及びMAGL mRNA発現のin vitroオートラジオグラムを示す。
【
図2】
図2は、MAGLノックアウト(KO)マウス及び野生型(WT)マウスの脳における9.0分から52.5分までの[
11C]-Iの平均化された代表的なPET画像を示す。
【
図3】MAGL KOマウス及びWTマウスの[
18F]-II及び[
18F]-IIIの全脳における時間活性曲線(TAC)を示す。
【
図4】
図4は、[
18F]-IIによる受容体占有率を示し、これは、1回の注射ごとにモル活性によって計算され、飽和関数に含まれた。SUV
0~90分を飽和関数にフィッティングし、データを受容体占有率に移した。○はPF-06795071を有する[
18F]-IIを意味し、●は[
18F]-II単独(ベースライン)を意味する。
【
図5】ヒトMAGLに可逆的に結合した化合物-IIのX線共結晶構造を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
発明の詳細な説明
定義
本発明の特定の態様、実施形態又は実施例に関連して記載される特徴、整数、特色、化合物、化学的部分又は基は、それらと両立しない場合を除き、本明細書に記載の任意の他の態様、実施形態又は実施例に適用可能であると理解されるべきである。本明細書(任意の添付の特許請求の範囲、要約、及び図面を含む)に開示された特徴の全て、及び/又はそのように開示された任意の方法若しくはプロセスの工程の全ては、そのような特徴及び/又は工程の少なくとも一部が相互に排他的である組合せを除き、任意の組合せで組み合わせることができる。本発明は、前述のいずれの実施形態の詳細にも限定されない。本発明は、本明細書(任意の添付の特許請求の範囲、要約及び図面を含む)に開示された特徴の任意の新規なもの若しくは任意の新規な組み合わせ、又はそのように開示された任意の方法若しくはプロセスの工程の任意の新規なもの若しくは任意の新規な組み合わせに及ぶ。
【0013】
「薬学的に許容され得る塩」という用語は、生物学的に又は別様に望ましくないものではない、遊離塩基又は遊離酸の生物学的有効性及び特性を保持する塩を指す。塩は、無機酸、例えば塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸等、特に塩酸、並びに有機酸、例えば酢酸、プロピオン酸、グリコール酸、ピルビン酸、シュウ酸、マレイン酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、ケイ皮酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、サリチル酸、N-アセチルシステイン等により形成される。また、これらの塩は、遊離酸に無機塩基や有機塩基を添加して調製してもよい。無機塩基から誘導される塩として、ナトリウム、カリウム、リチウム、アンモニウム、カルシウム及びマグネシウム塩等が含まれるが、これらに限定されない。有機塩基に由来する塩には、第一級、第二級、及び第三級アミン、天然に存在する置換アミンを含む置換アミン、環式アミン及び塩基性イオン交換樹脂、例えばイソプロピルアミン、トリメチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、エタノールアミン、リジン、アルギニン、N-エチルピペリジン、ピペリジン、ポリイミン樹脂等の塩が含まれるがこれらに限定されない。
【0014】
「MAGL」という略語は、酵素モノアシルグリセロールリパーゼを指す。「MAGL」及び「モノアシルグリセロールリパーゼ」という用語は、本明細書において互換的に使用される。
【0015】
「哺乳動物」という用語は、ヒト、非ヒト霊長類、例えばチンパンジー及び他の類人猿及びサル種、家畜、例えばウシ、ウマ、ヒツジ、ヤギ及びブタ、家畜、例えばウサギ、イヌ及びネコ、実験動物、例えばげっ歯類、例えばラット、マウス及びモルモットを含む。特定の実施形態では、哺乳動物はヒトである。哺乳動物という用語は、特定の年齢又は性別を意味しない。
【0016】
「放射性標識」及び「放射性同位元素」という用語は互換的に使用することができ、11C、13N、15O、及び18F等のPET撮像に有用な放射性核種を指す。
【0017】
「薬学的に許容され得る添加物」、及び「治療的に不活性な添加物」という用語は、互換的に使用可能であり、例えば、医薬製品を製造する際に使用される崩壊薬、結合剤、充填剤、溶媒、緩衝剤、等張化剤、安定剤、抗酸化剤、界面活性剤、担体、希釈剤又は潤滑剤といった、治療活性を有さず、投与される対象に対して非毒性である、医薬組成物中の任意の薬学的に許容される成分を指す。
【0018】
「処置」という用語は、本明細書で使用される場合、以下を含む:(1)状態、障害又は状況を抑制すること(例えば、維持処置の場合、その少なくとも1つの臨床的症状又は無症状の疾患の発症又は再発の停止、低減又は遅延させること)、及び/又は(2)状況を緩和すること(すなわち、状態、障害若しくは状況、又はその臨床的症状若しくは無症状のうちの少なくとも1つの退行を引き起こすこと)。処置される患者に対する利益は、統計的に有意であるか、又は少なくとも患者若しくは医師にとって認識可能であるかのいずれかである。しかしながら、疾患を処置するために患者に医薬が投与される場合、転帰は必ずしも有効な処置でなくともよいことが理解されるであろう。
【0019】
「予防」という用語は、本明細書で使用される場合、哺乳動物において、特に、状態、障害若しくは状況に罹患しているか又は罹患しやすいが、その状態、障害若しくは状況の臨床的症状又は無症状をまだ経験していないか又は示していないヒトにおいて発症する状態、障害又は状況の臨床的症状の出現を防止又は遅延させることを含む。
【0020】
「神経炎症」という用語は、本明細書で使用される場合、神経系の2つの部分(中枢神経系(CNS)の脳及び脊髄、及び末梢神経系(PNS)の分岐末梢神経)の主要な組織成分である神経組織の急性及び慢性炎症に関する。慢性神経炎症は、アルツハイマー病、パーキンソン病、及び多発性硬化症等の神経変性疾患と関連している。急性神経炎症は、通常、例えば外傷性脳損傷(TBI)の結果として、中枢神経系の損傷直後に起こる。
【0021】
「外傷性脳損傷」(「TBI」、「頭蓋内損傷」としても公知)という用語は、急速な加速若しくは減速、衝撃、爆風、又は発射体による貫通等の外部の機械的力に起因する、脳の損傷に関する。
【0022】
「神経変性疾患」という用語は、ニューロンの死を含む、ニューロンの構造又は機能の進行性喪失に関連する疾患に関連する。神経変性疾患の例としては、以下に限定されるものではないが、多発性硬化症、アルツハイマー病、パーキンソン病、及び筋萎縮性側索硬化症が挙げられる。
【0023】
「精神障害」(精神疾病又は精神系障害とも呼ばれる)という用語は、生活において苦痛又は機能不良を引き起こす可能性のある行動又は精神パターンに関する。このような特徴は、持続性、再発性、及び寛解性、又は単回エピソードとして生じることがある。精神障害の例としては、不安症及び鬱病が挙げられるが、これらに限定されない。
【0024】
「疼痛」という用語は、実際の又は潜在的な組織損傷に関連する不快な感覚的及び感情的経験に関する。疼痛の例としては、侵害受容性疼痛、慢性疼痛(特発性疼痛を含む)、化学療法誘発性神経障害を含む神経障害性疼痛、幻肢痛、及び心因性疼痛が挙げられるが、これらに限定されない。疼痛の特定の例は、神経障害性疼痛であり、これは、身体的感情(すなわち、体性感覚系)に関与する神経系のいずれかの部分に影響を及ぼす損傷又は疾患によって引き起こされる。一実施形態では、「疼痛」は、切断術又は開胸術から生じる神経障害性疼痛である。一実施形態では、「疼痛」は、化学療法誘発性神経障害である。
【0025】
「神経毒性」という用語は、神経系における毒性に関連する。これは、天然又は人工の毒性物質(神経毒)に曝されると、神経系の正常な活動が変化して、神経組織に損傷が生じることで発生する。神経毒性の例としては、化学療法、放射線処置、薬物療法、薬物乱用、及び臓器移植に使用される物質への曝露、並びに重金属、ある特定の食品及び食品添加物、農薬、工業用及び/又は洗浄用溶媒、化粧品、及びいくつかの天然に存在する物質への曝露から生じる神経毒性が挙げられるが、これらに限定されない。
【0026】
「がん」という用語は、新生物又は腫瘍の存在を特徴とする疾患であって、細胞の異常で制御不能な増殖に起因する疾患を指す(そのような細胞は「がん細胞」である)。本明細書で使用される場合、がんという用語は、明示的に、肝細胞癌腫、結腸発癌、及び卵巣がんを含むが、これらに限定されない。
【0027】
本発明の化合物
一態様において、本発明は、
【化2】
からなる群から選択される化合物又はその薬学的に許容され得る塩であって、前記化合物が任意に放射性標識を含む、化合物又はその薬学的に許容され得る塩を提供する。
【0028】
一実施形態では、前記放射性標識は、11C、13N、15O、及び18Fから選択される。
【0029】
好ましい実施形態では、前記放射性標識は11C及び18Fから選択される。
【0030】
好ましい実施形態では、本発明は、
【化3】
からなる群から選択される放射性標識化合物又はその薬学的に許容され得る塩を提供する。
【0031】
一実施形態では、本発明による放射性標識化合物は、
【化4】
又はその薬学的に許容され得る塩である。
【0032】
一実施形態では、本発明による放射性標識化合物は、
【化5】
又はその薬学的に許容され得る塩である。
【0033】
一実施形態では、本発明による放射性標識化合物は、
【化6】
又はその薬学的に許容され得る塩である。
【0034】
本発明の化合物の使用
本発明の化合物は、MAGLに関連する疾患又は症状の処置又は予防のために使用され得る強力な可逆的MAGL阻害剤である。MAGLに関連し得る例示的な疾患又は症状は、神経炎症、神経変性疾患、疼痛、がん、精神障害、多発性硬化症、アルツハイマー病、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症、外傷性脳損傷、神経毒性、脳卒中、てんかん、不安症、片頭痛、鬱病、炎症性腸疾患、腹痛、過敏性腸症候群に伴う腹痛、及び/又は内臓痛である。
【0035】
したがって、一態様では、本発明は、哺乳動物における神経炎症、神経変性疾患、疼痛、がん、精神障害、多発性硬化症、アルツハイマー病、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症、外傷性脳損傷、神経毒性、脳卒中、てんかん、不安症、片頭痛、鬱病、炎症性腸疾患、腹痛、過敏性腸症候群に伴う腹痛、及び/又は内臓痛を処置又は予防の方法を提供し、前記方法は、治療有効量の式I、II若しくはIIIの化合物又はその薬学的に許容され得る塩を前記哺乳動物に投与することを含む。
【0036】
更なる態様では、本発明は、本明細書に記載の処置又は予防の方法における使用のための式I、II若しくはIIIの化合物又はその薬学的に許容され得る塩を提供する。
【0037】
更なる態様では、本発明は、本明細書に記載の処置又は予防の方法における式I、II若しくはIIIの化合物又はその薬学的に許容され得る塩の使用を提供する。
【0038】
更なる態様では、本発明は、神経炎症、神経変性疾患、疼痛、がん、精神障害、多発性硬化症、アルツハイマー病、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症、外傷性脳損傷、神経毒性、脳卒中、てんかん、不安症、片頭痛、鬱病、炎症性腸疾患、腹痛、過敏性腸症候群に伴う腹痛、及び/又は内臓痛を処置又は予防するための医薬を製造するための式I、II若しくはIIIの化合物又はその薬学的に許容され得る塩の使用を提供する。
【0039】
本発明の化合物を放射性標識し、例えば、非共有結合性可逆的PETトレーサーとして使用して、治療的MAGL阻害剤の標的関与を検証し、並びに正常及び疾患条件下でMAGLレベルを調べることができる。
【0040】
したがって、一態様では、本発明は、哺乳動物の脳におけるモノアシルグリセロールリパーゼ(MAGL)の画像診断方法であって、
(a)検出可能な量の本明細書に記載の放射性標識化合物又は検出可能な量の本明細書に記載の放射性標識化合物を含む医薬組成物を哺乳動物に投与することと、
(b)MAGLと会合している場合、放射性標識化合物を検出することと
を含む、方法を提供する。
【0041】
更なる態様では、本発明は、モノアシルグリセロールリパーゼ(MAGL)占有率試験における使用のための、本明細書に記載の放射性標識化合物若しくはその薬学的に許容され得る塩又は本明細書に記載の放射性標識化合物を含む医薬組成物を提供する。
【0042】
一実施形態では、前記モノアシルグリセロールリパーゼ(MAGL)占有率試験は、MAGLを本明細書に開示される放射性標識化合物又はその薬学的に許容され得る塩と接触させることを含む。
【0043】
更なる態様では、本発明は、哺乳動物の脳におけるモノアシルグリセロールリパーゼ(MAGL)の画像診断方法における使用のための、本明細書に記載の放射性標識化合物若しくはその薬学的に許容され得る塩又は本明細書に記載の放射性標識化合物を含む医薬組成物を提供する。
【0044】
更なる態様では、本発明は、哺乳動物の脳におけるモノアシルグリセロールリパーゼ(MAGL)の画像診断方法における、本明細書に記載の放射性標識化合物若しくはその薬学的に許容され得る塩又は本明細書に記載の放射性標識化合物を含む医薬組成物の使用を提供する。
【0045】
更なる態様では、本発明は、哺乳動物の脳におけるモノアシルグリセロールリパーゼ(MAGL)の画像診断のための医薬を調製するための、本明細書に記載の放射性標識化合物又はその薬学的に許容され得る塩の使用を提供する。
【0046】
一実施形態では、前記画像診断は、陽電子放射断層撮影法(PET)である。
【0047】
一実施形態では、哺乳動物の脳内のモノアシルグリセロールリパーゼ(MAGL)の前記画像診断は、モノアシルグリセロールリパーゼ(MAGL)を本明細書に開示される放射性標識化合物又はその薬学的に許容され得る塩と接触させることを含む。
【実施例】
【0048】
【0049】
スキーム1.中間体2-4の合成.a)トリエチルアミン、ヨウ化テトラブチルアンモニウム、3-ヨードアニリン、CH3CN/トルエン、50℃、一晩、24%;b)濃度ヒドロクロリド酸、CH3CN、50℃、4~5時間、85%;c)シアノ水素化ホウ素ナトリウム、フラン-2-イル(ピペラジン-1-イル)メタノン、酢酸、無水THF、室温、一晩、49%。
【0050】
工程a- 1-(4-ヨードフェニル)-4-メトキシ-1,5-ジヒドロ-2H-ピロール-2-オン(2)の合成。
【0051】
化合物1(4.12g、25.0mmol)、4-ヨードアニリン(4.00g、18.3mmol)、テトラブチルアンモニウムヨージド(67.5mg、0.18mmol)及びトリエチルアミン(2.80mL、20.1mmol)をアセトニトリル(15mL)に溶解した。氷浴中で10分間撹拌した後、反応混合物を50℃で14時間加熱した。反応物を室温に冷却し、1M HClを添加してpHを3に調整した。得られた混合物を水で希釈し、酢酸エチルで抽出した。合わせた有機層をブラインで洗浄し、MgSO4で乾燥させ、減圧濃縮した。残渣に、トルエン(10mL)及び酢酸(1mL)を添加し、混合物を50℃で4時間加熱した。反応物を濃縮し、生成物をメタノール/ジイソプロピルエーテル(1:1)で結晶化させた。ジイソプロピルエーテルで洗浄後、白色粉末(1.46g、25%)として所望の生成物を得た。1H NMR(400 MHz,クロロホルム-d)δ 7.61(d,J=9.0 Hz,2H),7.42(d,J=9.0 Hz,2H),5.16(s,1H),4.21(s,2H),3.85(s,3H).C11H11INO2
+[M+H]+について計算されたHRMS(ESI)315.9829 m/z、実測値315.9828 m/z。
【0052】
工程b- 4-ヒドロキシ-1-(4-ヨードフェニル)-1,5-ジヒドロ-2H-ピロール-2-オン(3)の合成。
【0053】
化合物2(1.30g、4.14mmol)を、6mLの濃HClを含む10mLのアセトニトリルに溶解した。LC-MSによってモニターして2が消費されたら、溶媒を減圧下で除去した。得られた残渣を水で希釈し、酢酸エチルで抽出した。合わせた有機層をMgSO4で乾燥させ、濃縮した。粗生成物を更に精製することなく次の工程に直接適用した。
【0054】
工程c- 4-(4-(フラン-2-カルボニル)ピペラジン-1-イル)-1-(4-ヨードフェニル)ピロリジン-2-オン(4)の合成
【0055】
10mLの無水THF中の化合物3(570mg、1.89mmol)及びフラン-2-イル(ピペラジン-1-イル)メタオン(409mg、2.27mmol)を室温で10分間撹拌した。次いで、酢酸(217μL、3.8mmol)を、続いてシアノ水素化ホウ素ナトリウム(357mg、5.68mmol)と共に滴下した。反応混合物を窒素保護下室温で22時間撹拌した。水を添加して反応をクエンチし、得られた混合物をEtOAcで抽出し、MgSO4で乾燥させた。濾過後、溶媒を減圧下で除去した。フラッシュカラムクロマトグラフィーをEtOAcを用いて実行すると、表題化合物が白色粉末(523mg、59%)として得られた。1H NMR(400 MHz,クロロホルム-d)δ 7.65(d,J=8.9 Hz,2H),7.47(s,1H),7.36(d,J=8.9 Hz,2H),7.01(d,J=3.3 Hz,1H),6.47(dd,J=3.3,1.7 Hz,1H),3.91-3.72(m,6H),3.24(p,J=7.8 Hz,1H),2.81-2.68(m,1H),2.67-2.50(m,5H).C19H21IN3O3
+[M+H]+について計算されたHRMS(ESI)466.0622 m/z、実測値466.0628 m/z。
【0056】
実施例2- (R)-4-(4-(フラン-2-カルボニル)ピペラジン-1-イル)-1-(3’-メトキシ-[1,1’-ビフェニル]-4-イル)ピロリジン-2-オン(化合物(I))の合成
【0057】
(3-メトキシルフェニル)ボロン酸(43.0mg、0.28mmol)、化合物4(120mg、0.26mmol)、炭酸セシウム(210mg、0.65mmol)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)(23.6mg、0.03mmol)及びSphos(21.2mg、0.05mmol)を二口フラスコに加えた。次いで、系を閉じ、窒素を充填した。予め窒素をパージしたDMF 5mLをフラスコに添加し、得られた混合物を還流下で85℃で一晩加熱した。化合物4が消費されたら、反応物を室温に冷却し、フィルタにかけ、濃縮した。粗生成物を分取HPLCによって精製して、所望の生成物を無色固体として得た(87mg、76%)。超臨界流体クロマトグラフィー(SFC)を使用してキラル分離を実施して、表題化合物を単離した。1H NMR(400 MHz,クロロホルム-d)δ 7.62(s,4H),7.51(dd,J=1.8,0.8 Hz,1H),7.39-7.32(m,1H),7.18-7.13(m,2H),7.11-7.08(m,1H),6.93-6.88(m,1H),6.53(dd,J=3.5,1.8 Hz,1H),4.30(dd,J=11.1,5.1 Hz,1H),4.26-4.05(m,5H),3.98-3.89(m,1H),3.87(s,3H),3.19-3.05(m,4H),2.98(d,J=7.3 Hz,2H).C26H27N3NaO4
+[M+Na]+について計算されたHRMS(ESI)468.1894 m/z、実測値468.1894 m/z.
【0058】
実施例3- (R)-1-(3’-フルオロ-[1,1’-ビフェニル]-4-イル)-4-(4-(フラン-2-カルボニル)ピペラジン-1-イル)ピロリジン-2-オン(化合物(III))の合成。
【0059】
化合物(I)の合成について記載される手順を、3-フルオロベンゼンボロン酸(57.9mg、0.41mmol)、化合物4(175mg、0.38mmol)、炭酸セシウム(307mg、0.94mmol)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)(34.5mg、0.04mmol)及びSphos(31mg、0.08mmol)に適用して、キラル分離後に白色粉末として表題化合物を得た。1H NMR(400 MHz,クロロホルム-d)δ 7.66-7.62(m,2H),7.61-7.58(m,2H),7.52-7.50(m,1H),7.44-7.32(m,2H),7.28-7.23(m ロロホルムと重複-d,1H),7.16(dd,J=3.6,0.9 Hz,1H),7.08-7.01(m,1H),6.54(dd,J=3.5,1.8 Hz,1H),4.36(dd,J=11.2,5.0 Hz,1H),4.25-4.13(m,5H),4.08-3.97(m,1H),3.31-3.10(m,4H),3.06-3.00(m,2H).C25H24FN3NaO3
+[M+Na]+について計算されたHRMS(ESI)456.1694 m/z、実測値456.1699 m/z。
【0060】
実施例4- (R)-1-(4’-フルオロ-[1,1’-ビフェニル]-4-イル)-4-(4-(フラン-2-カルボニル)ピペラジン-1-イル)ピロリジン-2-オン(化合物(II))の合成。
【0061】
化合物(I)の合成について記載される手順を、4-フルオロベンゼンボロン酸(33.1mg、0.24mmol)、化合物4(100mg、0.22mmol)、炭酸セシウム(175mg、0.54mmol)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)(19.7mg、0.02mmol)及びSphos(17.7mg、0.04mmol)に適用して、キラル分離後に白色粉末として表題化合物を得た。1H NMR(400 MHz,クロロホルム-d)δ 7.64(d,J=8.7 Hz,2H),7.58(d,J=8.7 Hz,2H),7.55-7.51(m,3H),7.17-7.12(m,3H),6.55(dd,J=3.5,1.8 Hz,1H),4.32(dd,J=11.0,5.1 Hz,1H),4.26-4.02(m,5H),3.96(p,J=7.3 Hz,1H),3.14(br,4H),3.05-2.97(m,2H).C25H25FN3O3
+[M+H]+について計算されたHRMS(ESI)434.1874 m/z、実測値434.1875 m/z。
【0062】
【0063】
スキーム2.前駆体5及び[11C]-I.a)BBr3、無水DCM、0℃、一晩の合成;b)[11C]CH3I,Cs2CO3、5分、無水DMF、90℃。
【0064】
工程a- (R)-4-(4-(フラン-2-カルボニル)ピペラジン-1-イル)-1-(3’-ヒドロキシ-[1,1’-ビフェニル]-4-イル)ピロリジン-2-オン(5))の合成
【0065】
5mLの無水ジクロロメタン中の化合物(I)(107mg、0.241mmol)の溶液に、ジクロロメタン中の1M三臭化ホウ素(1.90mL、1.93mmol)を0℃で滴下した。次いで、反応混合物を試薬の消費時に室温で撹拌した。飽和NaHCO3溶液を添加して反応をクエンチし、得られた混合物をEtOAcで抽出した。合わせた有機相をMgSO4で乾燥させ、フィルタにかけ、濃縮し、フラッシュカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、EtOH/CHCl3=1/35~1/20)によって精製した。表題化合物を白色固体(54mg、75%)として得た。超臨界流体クロマトグラフィー(SFC)を使用してキラル分離を実施して、5をR-アイソフォームとして単離した。1H NMR(400 MHz,Acetone-d6)δ 7.83(d,J=8.8 Hz,2H),7.71-7.68(m,1H),7.63(d,J=8.8 Hz,2H),7.28(t,J=8.1 Hz,1H),7.15-7.10(m,2H),6.97(dd,J=3.4,0.7 Hz,1H),6.83(ddd,J=8.1,2.2,1.0 Hz,1H),6.58(dd,J=3.4,1.8 Hz,1H),4.11(dd,J=9.7,7.4 Hz,1H),3.89(dd,J=9.7,6.6 Hz,1H),3.80(br,4H),3.41-3.30(m,1H),2.76(dd,J=16.6,8.1 Hz,1H),2.70-2.55(m,5H).C25H26N3O4
+[M+H]+について計算されたHRMS(ESI)432.1918 m/z、実測値432.1920 m/z。
【0066】
工程b- (R)-4-(4-(フラン-2-カルボニル)ピペラジン-1-イル)-1-(3’-(メトキシ-11C)-[1,1’-ビフェニル]-4-イル)ピロリジン-2-オン([11C]-(I))の合成
【0067】
サイクロン18/9サイクロトロン(18 MeV;IBA,ベルギー)を使用して、0.5%酸素で強化された窒素ガスターゲットに衝撃を与えることによって、14N(p,α)11C核反応を介して[11C]CO2を生成した。その後、ニッケル触媒を介した[11C]CO2の還元によって[11C]CH4を得て、気相ヨウ素化を用いて[11C]CH3Iを生成した。得られた[11C]CH3Iを、5mgのCs2CO3及び0.5mgのフェノール前駆体(無水DMF中1mg/mL、0.5mL)を含む反応バイアルにバブリングした。次いで、混合物を90℃で3分間加熱した。1.6mLの水で希釈した後、反応混合物を精製のためにセミ分取HPLCにロードした。収集した画分を8mLのMilli-Q水で希釈し、プレコンディショニングしたC18ライトカートリッジ(Waters,WAT023501)に通し、続いて5mLのMilli-Q水で洗浄した。0.5mLのEtOHで溶出した後、最終放射性リガンドをリン酸緩衝生理食塩水(9.5mL、Gibco)と配合して中和溶液を得た。放射性トレーサーの同一性は、分析HPLCにおける化合物(I)との同時注入によって確認され、放射化学的純度は99%超であった。
【0068】
実施例6- [
18F]-II及び[
18F]-IIIの合成
【化9】
【0069】
図3。前駆体6及び7の合成、並びに[
18F]-II及び[
18F]-IIIの放射性合成。a)1,4-フェニルジボロン酸、酢酸カリウム、[1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]ジクロロパラジウム、無水DMF、80℃、4時間、6の場合、1,3-ビス(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)ベンゼン;7の場合、1,4-ビス(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)ベンゼン;b)キラル超臨界流体クロマトグラフィー分離;c)6又は7、[
18F]F
-、Kryptofix(登録商標)222、K
2C
2O
4、K
2CO
3及びCu(OTf)
2Py
4、DMA/n-BuOH=2/1、110℃、10分。
【0070】
工程a、b- (R)-4-(4-(フラン-2-カルボニル)ピペラジン-1-イル)-1-(3’-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)-[1,1’-ビフェニル]-4-イル)ピロリジン-2-オン(6)の合成。
【0071】
[1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]ジクロロパラジウム(7.9mg、0.011mmol)、酢酸カリウム(63.3mg、0.84mmol)及び1,3-ビス(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)ベンゼン(142mg、0.43mmol)を窒素保護下で二口フラスコに添加した。5mLの無水DMFに溶解した化合物4(100mg、0.22mmol)をこのフラスコに一度に添加し、得られた混合物を後で85℃で加熱した。化合物4が消費されたら、水を添加して反応をクエンチした。混合物をEtOAcで抽出し、合わせた有機層をMgSO4、で乾燥させ、フィルタにかけ、濃縮した。残渣をフラッシュカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、EtOAc)によって精製すると、表題化合物が褐色粉末(47mg、41%)として得られた。超臨界流体クロマトグラフィー(SFC)を使用してキラル分離を実施して、R-異性体として6を単離した:1H NMR(400 MHz,クロロホルム-d)δ 8.02(s,1H),7.78(d,J=7.4 Hz,1H),7.70-7.60(m,5FH),7.50-7.41(m,2H),7.07-6.99(m,1H),6.54-6.43(m,1H),4.13-3.65(m,6H),3.29(p,J=7.6 Hz,1H),2.79(dd,J=16.7,8.0 Hz,1H),2.72-2.40(m,5H),1.36(s,12H).C31H37BN3O5
+[M+H]+について計算されたHRMS(ESI)542.2826 m/z、実測値542.2828 m/z。
【0072】
工程a、b- (R)-4-(4-(フラン-2-カルボニル)ピペラジン-1-イル)-1-(4’-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)-[1,1’-ビフェニル]-4-イル)ピロリジン-2-オン(7)の合成。
【0073】
[1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]ジクロロパラジウム(10mg、0.014mmol)、酢酸カリウム(82mg、0.84mmol)及び1,4-ビス(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)ベンゼン(185mg、0.56mmol)を窒素保護下で二口フラスコに添加した。5mLの無水DMFに溶解した化合物4(130mg、0.28mmol)をこのフラスコに一度に添加し、得られた混合物を後で85℃で加熱した。化合物4が消費されたら、水を添加して反応をクエンチした。混合物をEtOAcで抽出し、合わせた有機層をMgSO4、で乾燥させ、フィルタにかけ、濃縮した。残渣をフラッシュカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、EtOAc)によって精製すると、表題化合物が褐色粉末(148mg、49%)として得られた。超臨界流体クロマトグラフィー(SFC)を使用してキラル分離を実施して、R-異性体として7を単離した:1H NMR(400 MHz,クロロホルム-d)δ 7.87(d,J=7.8 Hz,2H),7.73-7.61(m,4H),7.59(d,J=8.0 Hz,2H),7.48(s,1H),7.03(d,J=3.3 Hz,1H),6.49(dd,J=3.3,1.7 Hz,1H),4.04-3.94(m,1H),3.92-3.72(m,5H),3.30(p,J=7.5 Hz,1H),2.80(dd,J=16.7,8.1 Hz,1H),2.73-2.54(m,5H),1.36(s,12H).C31H37BN3O5
+[M+H]+について計算されたHRMS(ESI)542.2826 m/z、実測値542.2828 m/z。
【0074】
工程c- (R)-1-(3’-(フルオロ-18F)-[1,1’-ビフェニル]-4-イル)-4-(4-(フラン-2-カルボニル)ピペラジン-1-イル)ピロリジン-2-オン([18F]-III)の合成
【0075】
[18F]フッ化物イオンは、18O(p,n)18F核反応による98%濃縮18O水の衝撃によって生成された。水溶液をサイクロトロンからホットセルに移し、QMAカートリッジ(Waters SepPak Accell QMAカートリッジカーボネート)に捕捉した。MeCN/H2O(4:1)中のKryptofix 2.2.2(6.3mg/mL)、K2C2O4(1mg/mL)、及びK2CO2(0.1mg/mL)の混合物を適用して、放射能を反応バイアルに溶出させた。MeCN(0.8mL×3)との共沸乾燥後、DMA/n-BuOH(0.3mL、v/v=2/1)に溶解した14mgのCu(OTf)2(py)4を含む2~3mgの前駆体6を残渣に添加し、反応混合物を通気針を用いて110℃で10分間加熱した。2.7mLの水で希釈した後、混合物を半分取HPLC精製に進めた。表題化合物を回収し、濃縮し、溶出し、上記と同じ手順を用いて中和した。
【0076】
工程c- (R)-1-(4’-(フルオロ-18F)-[1,1’-ビフェニル]-4-イル)-4-(4-(フラン-2-カルボニル)ピペラジン-1-イル)ピロリジン-2-オン([18F]-II)の合成
【0077】
2~3mgの前駆体7を使用して、([18F]-III)と同様の手順によって表題化合物を合成した。それらの同一性は、99%を超える放射化学純度での分析HPLCにおける対応する化合物の同時注入によって確認された。
【0078】
実施例7- MAGL阻害活性
アラキドン酸を生じる天然基質である2-アラキドノイルグリセロールの加水分解に続いて酵素活性を検出することで、MAGL阻害活性について化合物をプロファイリングし、続いて、質量分析を行ってもよい。このアッセイを、以下「2-AGアッセイ」と略記する。
【0079】
2-AGアッセイを、384ウェルのアッセイプレート(PP、Greiner、カタログ番号784201)中で、総体積20μLで実施した。化合物希釈物を、ポリプロピレンプレート中、100%DMSO(VWR Chemicals 23500.297)中にて3倍希釈ステップで作成して、アッセイにおける最終濃度範囲を12.5μM~0.8pMとした。0.25μLの化合物希釈物(100%DMSO)を、アッセイ緩衝液(50mM TRIS(GIBCO、15567-027)、1mM EDTA(Fluka、03690-100ml)、0.01%(体積/体積)Tween)中の9μLのMAGLに加えた。振盪後、プレートを室温で15分間インキュベートした。反応を開始するために、アッセイ緩衝液中の10μLの2-アラキドノイルグリセロールを添加した。アッセイにおける最終濃度は、50pM MAGL及び8μM 2-アラキドノイルグリエロール(arachidonoylglyerol)であった。振盪後、室温で30分間インキュベーションした後、4μMのd8-アラキドン酸を含有する40μLのアセトニトリルを添加して、反応をクエンチした。アラキドン酸の量を、オンラインSPEシステム(Agilent Rapidfire)をトリプル四重極質量分析計(Agilent 6460)と組み合わせて追跡した。C18 SPEカートリッジ(G9205A)を、アセトニトリル/水液体セットアップで使用した。質量分析計は、アラキドン酸について303.1→259.1、d8-アラキドン酸について311.1→267.0の質量遷移に従って、負エレクトロスプレーモードで操作した。化合物の活性は、強度比[アラキドン酸/d8-アラキドン酸]に基づいて算出した。
【0080】
【0081】
実施例8- In vitroオートラジオグラフィー
Wistar系ラット又はマウスの凍結脳組織をクライオスタット(Cryo-Star HM 560 MV;Microm、Thermo Scientific、デラウェア州ウィルミントン)で10μmの厚みに切り出し、使用前に-20℃で保存した。実験の前に、スライス片を氷上で10分間解凍し、続いて、3%の脂肪酸を含まないウシ血清アルブミン(BSA)を含有する水性50mM Tris緩衝液(pH7.4、30mM HEPES、1.2mM MgCl2、110mM NaCl、5mM KCl、2.5mM CaCl2)に0℃で10分間プレコンディショニングのため浸漬した。乾燥したら、室温で30分間、放射性トレーサーと共に加湿チャンバ内でインキュベーションを行った。遮断研究のために、10μMのSAR127303又は10μMのPF-06809247を使用した。インキュベーション後に切片をデカントし、洗浄手順を行った。スライスを乾燥させた後、蛍光体イメージャプレート(Fuji、スイス国ディールスドルフ)に取り付け、曝露を60分間続けた。フィルムを後にBAS5000リーダー(Fuji)によってスキャンし、AIDA 4.50.010ソフトウェア(Raytest Isotopenmessgeraete GmbH、ドイツ国シュトラウベンハルト)を使用してデータ分析を行った。
【0082】
結果
[
11C]-I(約1nM)とマウス又はラットの脳切片とのインキュベーションは、げっ歯類におけるMAGL発現パターンと一致する放射性シグナル蓄積の不均一な分布をもたらした(
図1)。正確には、[
11C]-Iの最も高い蓄積が、高レベルのMAGL発現が報告された皮質、海馬及び線条体において認められた(Dinh TP,Carpenter D,Leslie FM,et al.Brain monoglyceride lipase participating in endocannabinoid inactivation.Proc Natl Acad Sci.2002;99:10819-10824)。2つの不可逆的かつ強力なMAGL阻害剤、SAR127303及びPF-06809247を10μMの濃度で遮断して適用して、ラット脳切片上の[
11C]-Iと特異的結合を競合させた。放射能の実質的な減少及び均一な分布が両方の場合で観察され、MAGL KO脳切片上でプローブを単純にインキュベートした。これらの結果は、in vitroでの[
11C]-Iの高い特異性及び選択性を裏付け、in vivoでのオフターゲット結合の可能性の低減を示唆する。
【0083】
実施例9- In vivo PETスキャン
イソフルランを使用して動物を麻酔し、PET/CTスキャナ(Super Argus、Sedecal、スペイン国マドリード)に入れた。放射性トレーサーを静脈内注射し、注射の1分後にデータを取得した。動的PETスキャンは、[11C]-Iでは60分間継続したが、[18F]-II及び[18F]-IIIでは90分間に延長された。得られたデータを、0.3875×0.3875×0.775mm3のボクセルサイズを有するユーザ定義の時間フレームで再構成した。関心領域(ROI)を、PMOD v4.002(PMOD Technologies、スイス国チューリッヒ)によって提供されるMRI T2(W.Schiffer)テンプレート上に定義して、対応する時間活性曲線(TAC)を生成した。脳全体及び異なる領域における放射能蓄積は、標準化された取り込み値(SUV)として表され、これは、注入された放射能及び体重に対して正規化された減衰補正された領域放射能である。
【0084】
結果
3つの放射性トレーサーは全て、血液脳関門を通過することができ、マウス脳において5分以内に最高蓄積レベルに達した。MAGL KOマウス及びWTマウスの脳における[
18F]-II及び[
18F]-IIIからの代表的な全脳TACを
図3に示す。MAGL KOマウスでは、WTマウスと比較して脳からの著しく速いクリアランスが観察され、in vivoでの特異的かつ選択的な結合を示している。[
18F]T-401(SUV
max約0.7(Hattori Y,Aoyama K,Maeda J,et al.Design,Synthesis,and Evaluation of(4R)-1-{3-[2-(
18F)Fluoro-4-methylpyridin-3-yl]phenyl}-4-[4-(1,3-thiazol-2-ylcarbonyl)piperazin-1-yl]pyrrolidin-2-one([
18F]T-401)as a Novel Positron-Emission Tomography Imaging Agent for Monoacylglycerol Lipase.J Med Chem.2019;62:2362-2375)に報告されている))と比較して、[
11C]-I(1分p.iでSUV
max約1.32)、[
18F]-II(1分p.iでSUV
max約1.56)及び[
18F]-III(1分p.iでSUV
max約1.63)によって大幅に増加した脳取り込みが達成された。in vivoでのプローブの不均一な分布は、マウス脳におけるMAGL発現レベルと高度に一致していた。そのin vitroオートラジオグラムによく似た[
11C]-Iの代表的なPET画像を
図2に示す。
【0085】
実施例10- 薬物占有率試験
[18F]-IIの有用性を調べるために、in vitro/vivo特異性を検証した後に薬物占有率試験を行った。抗炎症処置のために最初に開発された強力かつ選択的な共有結合性MAGL阻害剤PF-06795071をこの研究に適用した(McAllister LA,Butler CR,Mente S,et al.Discovery of Trifluoromethyl Glycol Carbamates as Potent and Selective Covalent Monoacylglycerol Lipase(MAGL)Inhibitors for Treatment of Neuroinflammation.J Med Chem.2018;61:3008-3026)。PF-06795071を、DMSO/Cremophor/生理食塩水(v/v/v=5/5/90)のビヒクル中の透明溶液として調製した。動物を、[18F]-II(4.15~11.13MBq、6.84~13.19nmol/kg)の投与の1時間前に漸増用量のPF-06795071(0.002、0.01、0.05、0.2及び2mg/kg)で処置した。in vivo PETスキャン及びデータ再構成を実施例9に記載のように行った。Kramer et al.によって以前に詳述されたように、受容体占有率試験においてSUV0-90分を得るために、0~90分について全脳TACからのSUVを平均した(Kramer SD,Betzel T,Mu L,et al.Evaluation of 11C-Me-NB1 as a Potential PET Radioligand for Measuring GluN2B-Containing NMDA Receptors,Drug Occupancy,and Receptor Cross Talk.J Nucl Med.2018;59:698-703)。D50値について、非線形曲線をGraphPad Prism Software(バージョン8.3.4、GraphPad Software Inc)でフィッティングした。
【0086】
結果
マウス脳における[
18F]-II蓄積の用量依存的減少が、0.002~2mg/kgの範囲のPF-06795071で観察された。次いで、脳TAC全体からの平均SUV
0-90分を標的占有率に移し、飽和方程式に当てはめて薬物-標的エンゲージメントを決定した(
図4)。PF-06795071がマウス脳内で50%MAGLを占有するために必要な用量は0.034mg/kgであった。この研究は、in vivoでの薬物-標的エンゲージメントを可視化し、非侵襲的に薬物占有率を定量化するための可逆的MAGL PETトレーサーとしての[
18F]-IIの有用性を実証した。げっ歯類における可逆的MAGL PETトレーサーによる標的占有率は前例がない。これらの知見は、[
18F]-IIが、in vivoで非侵襲的にMAGLを可視化するための非常に有望なPETプローブであり、臨床翻訳の大きな可能性を保持していることを示している。
【0087】
実施例11- MAGLに結合した化合物-IIのX線構造
変異Lys36Ala、Leu169Ser及びLeu176Serを有するヒトMAGLタンパク質を10.8mg/mlに濃縮した。結晶化試験を、21℃でのシッティングドロップ蒸気拡散設定で行った。0.1M MES pH6.5、6~13%PEG MME5K、12%イソプロパノールから2日以内に結晶が出現した。結晶を、10mMの化合物IIを補充した結晶化溶液に16時間浸漬した。データ収集のため、結晶を100Kでフラッシュ冷却し、20%エチレングリコールを凍結保護剤として浸漬溶液に添加した。X線回折データは、Swiss Light Source(スイス・ビリゲン)のビームラインX10SAにおいて、Eiger2X 16M検出器を用いて波長0.9999Åで収集した。データはXDS(Kabsch W,XDS.Acta Cryst.D66,125-132(2010))で処理され、SADABS(BRUKER)でスケーリングされている。結晶は、a=89.96Å、b=127.45Å、c=63.03Åのセル軸を有する空間群C2221に属し、1.65Åの分解能で回折する。構造を、探索モデルとしてPDBエントリー3PE6の座標を使用して(Schalk-Hihi C,Schubert C,Alexander R,Bayoumy S,Clemente JC,Deckman I,DesJarlais RL,Dzordzorme KC,Flores CM,Grasberger B,Kranz JK,Lewandowski F,Liu L,Ma H,Maguire D,Macielag MJ,McDonnell ME,Mezzasalma Haarlander T,Miller R,Milligan C,Reynolds C,Kuo LC.Crystal structure of a soluble form of human monoglyceride lipase in complex with an inhibitor at 1.35Å resolution.Protein Sci.20(4),670-83(2011))、PHASERによる分子置換(McCoy AJ,Grosse-Kunstleve RW,Adams PD,Winn MD,Storoni LC,&Read,R.J.Phaser crystallographic software.J Appl Cryst.40,658-674(2007))によって決定した。
【0088】
結果
ヒトMAGLと化合物-IIとの複合体構造により、化合物IIと酵素との可逆的結合機構が確認された(
図5)。ピロリジノン酸素は、触媒Ser122に近接して位置し、Met123及びAla51からの主鎖骨格アミドと水素結合を形成するオキシアニオンホールの方を指し示す。
【国際調査報告】