(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-08
(54)【発明の名称】積層真空絶縁グレージングユニットを含む複層グレージング
(51)【国際特許分類】
C03C 27/06 20060101AFI20241001BHJP
C03C 27/12 20060101ALI20241001BHJP
E06B 3/67 20060101ALI20241001BHJP
【FI】
C03C27/06 101Z
C03C27/06 101E
C03C27/12 Z
E06B3/67 A
E06B3/67 B
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024514480
(86)(22)【出願日】2022-09-12
(85)【翻訳文提出日】2024-03-04
(86)【国際出願番号】 EP2022075216
(87)【国際公開番号】W WO2023041460
(87)【国際公開日】2023-03-23
(32)【優先日】2021-09-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】510191919
【氏名又は名称】エージーシー グラス ユーロップ
【氏名又は名称原語表記】AGC GLASS EUROPE
【住所又は居所原語表記】Avenue Jean Monnet 4, 1348 Louvain-la-Neuve, Belgique
(74)【代理人】
【識別番号】100103816
【氏名又は名称】風早 信昭
(74)【代理人】
【識別番号】100120927
【氏名又は名称】浅野 典子
(72)【発明者】
【氏名】ジャンフィル, ジュリアン
(72)【発明者】
【氏名】ブーズナール, オリヴィエ
【テーマコード(参考)】
2E016
4G061
【Fターム(参考)】
2E016AA01
2E016BA01
2E016BA02
2E016CA01
2E016CB01
2E016CC03
2E016EA01
4G061AA04
4G061AA06
4G061AA11
4G061BA01
4G061BA02
4G061BA03
4G061CB02
4G061CB16
4G061CD18
4G061CD21
4G061CD22
4G061CD23
4G061CD25
4G061DA24
4G061DA29
4G061DA30
4G061DA38
(57)【要約】
本発明は、複層グレージング(10)であって、少なくとも、a.真空絶縁グレージングユニットであって、i.厚さZ1を有し、且つ内側ペイン面(11)及び外側ペイン面(12)を有する第1のガラスペインGP1、並びに厚さZ2を有し、且つ内側ペイン面(21)及び外側ペイン面(22)を有する第2のガラスペインGP2、ii.第1のガラスペインと第2のガラスペインとの間に位置付けられ、第1のガラスペインと第2のガラスペインとの間の距離を維持する離散スペーサ(3)の組、iii.第1のガラスペインと第2のガラスペインとの間の距離をその周囲にわたって封止する密封接着シール(4)、iv.第1及び第2のガラスペイン並びに離散スペーサの組によって画定され、且つ密封接着シールによって閉鎖された内容積Vであって、0.1mbar未満の圧力を有する真空が存在し、内側ペイン面が、内容積Vに面する、内容積Vを含む真空絶縁グレージングユニットと、b.内側ペイン面(31)及び外側ペイン面(32)を有する第3のガラスペインGP3と、c.第2のガラスペイン(GP2)の外側ペイン面(22)と、第3のガラスペイン(GP3)の内側ペイン面(31)との間にその周囲にわたって位置付けられ、且つその間の距離を維持する周囲スペーサ(6)、外側ペイン面(22)及び内側ペイン面(32)は、内部空間Spを画定する、周囲スペーサ(6)とを含む複層グレージング(10)に関する。第1のガラスペインの厚さZ1は、第2のガラスペインの厚さZ2に等しい(Z1=Z2)。第1のガラスペインGP1の外側ペイン面(12)は、中間層ポリマーを介して、それぞれシート厚さZfmを有するm枚のガラスシートを含む第1のパネルP1に積層され、及び/又は第2のガラスペインGP2の外側ペイン面(22)は、中間層ポリマーを介して、それぞれシート厚さZsnを有するn枚のガラスシートを含む第2のパネルP2に積層される。mは、0以上の正の整数であり(m≧0)、nは、0以上の正の整数であり(n≧0)、且つm及びnの整数の和は、1以上である(m+n≧1)。ガラスシートの厚さは、第1のパネルのm枚のガラスシート及び/又は第2のパネルのn枚のガラスシートの厚さの三乗の和の立方根が、第1のガラスペイン及び第2のガラスペインの厚さの和の126.7%以下である
【数1】
(Z1+Z2))であるようなものである。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向軸X及び垂直軸Yによって画定された平面Pに沿って延在する複層グレージング(10)であって、前記複層グレージング(10)は、少なくとも、
a.真空絶縁グレージングユニットであって、
i.厚さZ1を有し、且つ内側ペイン面(11)及び外側ペイン面(12)を有する第1のガラスペインGP1、並びに厚さZ2を有し、且つ内側ペイン面(21)及び外側ペイン面(22)を有する第2のガラスペインGP2、但し前記厚さは、前記平面Pに垂直な方向に測定される、
ii.前記第1のガラスペインと前記第2のガラスペインとの間に位置付けられ、前記第1のガラスペインと前記第2のガラスペインとの間の距離を維持する離散スペーサ(3)の組、
iii.前記第1のガラスペインと前記第2のガラスペインとの間の距離をその周囲にわたって封止する密封接着シール(4)、
iv.前記第1及び第2のガラスペイン並びに前記離散スペーサの組によって画定され、且つ前記密封接着シールによって閉鎖された内容積Vであって、0.1mbar未満の圧力を有する真空が存在し、前記内側ペイン面が、前記内容積Vに面する、内容積V、
を含む真空絶縁グレージングユニットと、
b.内側ペイン面(31)及び外側ペイン面(32)を有する第3のガラスペインGP3と、
c.前記第2のガラスペインGP2の外側ペイン面(22)と、前記第3のガラスペインGP3の内側ペイン面(31)との間にその周囲にわたって位置付けられ、且つその間の距離を維持する周囲スペーサ(6)であって、前記周囲スペーサ(6)、外側ペイン面(22)、及び内側ペイン面(32)は、内部空間Spを画定する、周囲スペーサ(6)と
を含み、
前記第1のガラスペインの厚さZ1は、前記第2のガラスペインの厚さZ2に等しく(Z1=Z2)、
前記第1のガラスペインGP1の外側ペイン面(12)は、中間層ポリマーを介して、それぞれシート厚さZfmを有するm枚のガラスシートを含む第1のパネルP1に積層され、及び/又は前記第2のガラスペインGP2の外側ペイン面(22)は、中間層ポリマーを介して、それぞれシート厚さZsnを有するn枚のガラスシートを含む第2のパネルP2に積層され、厚さZfm及びZsnは、平面Pに垂直な方向に測定され、mは、0以上の正の整数であり(m≧0)、nは、0以上の正の整数であり(n≧0)、且つm及びnの整数の和は、1以上であり(m+n≧1)、
前記第1のパネルのm枚のガラスシート及び/又は前記第2のパネルのn枚のガラスシートの厚さの三乗の和の立方根は、前記第1のガラスペイン及び前記第2のガラスペインの厚さの和の126.7%以下である
【数1】
、複層グレージング(10)。
【請求項2】
前記第1のガラスペインGP1の外側ペイン面(12)は、中間層ポリマーを介して、それぞれシート厚さZfmを有するm枚のガラスシートを含む第1のパネルP1に積層され、及び前記第2のガラスペインGP2の外側ペイン面(22)は、中間層ポリマーを介して、それぞれシート厚さZsnを有するn枚のガラスシートを含む第2のパネルP2に積層される、請求項1に記載の複層グレージング。
【請求項3】
前記第1のパネルのm枚のガラスシートの和の立方根は、前記第2のパネルのn枚のガラスシートの立方根に等しい
【数2】
、請求項2に記載の複層グレージング。
【請求項4】
前記第1のパネルのm枚のガラスシート及び/又は前記第2のパネルのn枚のガラスシートの厚さの三乗の和の立方根は、前記第1のガラスペイン及び前記第2のガラスペインの厚さの和の114.0%以下であり
【数3】
、好ましくは前記第1のガラスペイン及び前記第2のガラスペインの厚さの和の101.4%以下であり
【数4】
、より好ましくは前記第1のガラスペイン及び前記第2のガラスペインの厚さの和の88.7%以下であり
【数5】
、更により好ましくは前記第1のガラスペイン及び前記第2のガラスペインの厚さの和の76.6%以下である
【数6】
、請求項1~3のいずれか一項に記載の複層グレージング。
【請求項5】
前記第1のパネルのm枚のガラスシート及び前記第2のパネルのn枚のガラスシートの厚さの三乗の和の立方根は、前記第1のガラスペイン及び前記第2のガラスペインの厚さの和の24%以上であり
【数7】
、好ましくは前記第1のガラスペイン及び前記第2のガラスペインの厚さの和の32%以上であり
【数8】
、好ましくは前記第1のガラスペイン及び前記第2のガラスペインの厚さの和の48%以上であり
【数9】
、好ましくは前記第1のガラスペイン及び前記第2のガラスペインの厚さの和の64%以上であり
【数10】
、より好ましくは前記第1のガラスペイン及び前記第2のガラスペインの厚さの和の80%以上である
【数11】
、請求項1~4のいずれか一項に記載の複層グレージング。
【請求項6】
前記第1のパネルのm枚のガラスシート及び/又は前記第2のパネルのn枚のガラスシートの厚さの三乗の和の立方根は、前記第1のガラスペイン及び前記第2のガラスペインの厚さの和の64%~101.4%であり
【数12】
、好ましくは前記第1のガラスペイン及び前記第2のガラスペインの厚さの和の76%~88.7%である
【数13】
、請求項1~5のいずれか一項に記載の複層グレージング。
【請求項7】
m+n≦2であり、好ましくは1に等しい、請求項1~6のいずれか一項に記載の複層グレージング。
【請求項8】
nは、0に等しい、請求項1~7のいずれか一項に記載の複層グレージング。
【請求項9】
前記第1のパネルのm枚のガラスシートの厚さZfm及び/又は前記第2のパネルのn枚のガラスシートの厚さZsnは、1mm以上(Zfm及びZsn≧1mm)、好ましくは2mm以上(Zfm及びZsn≧2mm)であり、好ましくは3mm以上(Zfm及びZsn≧3mm)であり、より好ましくは4mm以上(Zfm及びZsn≧4mm)である、請求項1~8のいずれか一項に記載の複層グレージング。
【請求項10】
前記第1のガラスペイン及び/又は前記第2のガラスペインの厚さは、1mm~10mm(1mm≦Z1、Z2≦10mm)、好ましくは2mm~8mm(2mm≦Z1、Z2≦8mm)、より好ましくは3mm~6mm(3mm≦Z1、Z2≦6mm)である、請求項1~9のいずれか一項に記載の複層グレージング。
【請求項11】
前記第3のガラスペインの厚さZ3は、1mm~12mm(1mm≦Z3≦12mm)、好ましくは3mm~8mm(3mm≦Z3≦8mm)、より好ましくは4mm~6mm(4mm≦Z3≦6mm)である、請求項1~10のいずれか一項に記載の複層グレージング。
【請求項12】
前記ポリマー中間層は、エチレン酢酸ビニル(EVA)、シクロオレフィンポリマー(COP)、オートクレーブフリーポリビニルブチラール(オートクレーブフリーPVB)、ポリウレタン(PU)、アイオノマー及びそれらの組合せからなる群から、より好ましくはエチレン酢酸ビニル(EVA)及び/又はオートクレーブフリーPVBから選択される材料を含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の複層グレージング。
【請求項13】
前記第3のガラスペインは、中間層ポリマーを介してガラスシートに積層される、請求項1~12のいずれか一項に記載の複層グレージング。
【請求項14】
前記第3のガラスペインは、4mm~8mm(4mm≦Z3≦8mm)、好ましくは4mm~6mm(4mm≦Z3≦6mm)の範囲の、前記平面Pに垂直な方向に測定された厚さZ3を有し、前記ガラスシートは、4mm~8mm(4mm≦Zs≦8mm)、好ましくは4mm~6mm(4mm≦Zs≦6mm)の範囲の、前記平面Pに垂直な方向に測定された厚さZsを有し、前記中間層ポリマーは、好ましくは、音響PVBポリマー中間層である、請求項13に記載の複層グレージング。
【請求項15】
前記複層グレージングのガラスペインの1つは、プレストレストガラスであり、好ましくは、前記第1のガラスペイン及び/又は前記第3のガラスペインは、プレストレストガラスペインであるか、又は好ましくは、前記第2のガラスペインは、プレストレストガラスである、請求項1~14のいずれか一項に記載の複層グレージング。
【請求項16】
前記第1のガラスペインは、線熱膨張係数CTE1を有し、及び前記第2のガラスペインは、線熱膨張係数CTE2を有し、CTE1とCTE2との間の絶対差は、多くとも1.2×10
-6/℃(|CTE1-CTE2|≦1.2×10
-6/℃)であり、好ましくは多くとも0.8×10
-6/℃(|CTE1-CTE2|≦0.8×10
-6/℃)、より好ましくは多くとも0.4×10
-6/℃(|CTE1-CTE2|≦0.4×10
-6/℃)、より好ましくは多くとも0.2×10
-6/℃(|CTE1-CTE2|≦0.2×10
-6/℃)であり、更により好ましくは0に等しい(|CTE1-CTE2|=0/℃)、請求項1~15のいずれか一項に記載の複層グレージング。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、断熱並びに安全、安心及び/又は音響性能を提供するために、真空絶縁グレージングユニットであって、そのガラスペインの1つ又は複数が更に積層される、真空絶縁グレージングユニットを含む複層グレージングに関する。
【背景技術】
【0002】
二重グレージング又は更に三重グレージングなどの複層グレージングは、断熱を提供するためのごく従来の解決策である。二重グレージングは、典型的には、周縁シールによって封止された内部空間を生成する、周囲スペーサによってそれらの周囲に沿って連結された2つのガラスペインを含む。前記周囲スペーサは、2つのガラスペイン間に特定の距離を維持する。概して、前記内部空間は、伝熱を更に低減し、且つ/又は音響透過を減少させるために空気及び/又は不活性ガスを充填される。
【0003】
従って、当業者は、優れた熱性能を提供するために、そのような複層グレージングのガラスペインの1つを真空絶縁グレージングユニットに置換することを検討するであろう。欧州特許出願公開第860406A号明細書は、1つ又は2つの真空絶縁グレージングユニットを含む二重グレージングを開示している。しかし、そのような構成は、他の技術的問題を生じさせる。事実、真空絶縁グレージングユニットは、真空絶縁グレージングユニットの内容積が非常に薄く、且つ両方のガラスペインが密封接着シールによって強力に連結されるため、単一のペインとして複層グレージング内で機械的に挙動するであろうと予測されていた。しかし、驚くべきことに、複層グレージング内の真空絶縁グレージングユニットは、非常に異なる機械的性能及び熱性能を示すことがわかった。
【0004】
真空絶縁グレージングユニットは、その高性能の断熱のために推奨されている。真空絶縁グレージングユニットは、典型的には、真空が生成された内容積によって分離された少なくとも2つのガラスペインから構成される。概して、高性能の断熱(熱貫流率Ugは、Ug<1.2W/m2Kである)を達成するために、グレージングユニットの内側の絶対圧力は、典型的には、0.1mbar以下であり、概して、2つのガラスペインの少なくとも1つは、低放射率層で覆われる。そのような圧力をグレージングユニットの内側で得るために、密封接着シールは、2つのガラスペインの周囲に置かれ、真空は、ポンプによってグレージングユニットの内側に発生される。グレージングユニットが(グレージングユニットの内部と外部との間の圧力差に起因する)気圧を受けて陥没することを防ぐために、離散スペーサが2つのガラスペイン間に置かれる。
【0005】
真空絶縁グレージングユニットは、異なる外部荷重に耐えるために慎重に寸法決めされる。考慮するべき主な荷重は、外部環境と内部環境との温度差によって誘発される荷重である。事実、内部環境に面するガラスペインは、内部環境の温度と同様の温度を取り込み、外部環境に面するガラスペインは、外部環境の温度と同様の温度を取り込む。最も厳しい気象条件では、内部温度と外部温度との差は、40℃以上に達する可能性がある。内部環境と外部環境との温度差は、ガラスペインの内側に応力をもたらすことがあり、深刻な場合、真空絶縁グレージングユニットが割れることがある。従って、熱誘起応力のレベルを制御することが重要である。
【0006】
更に、複層グレージングは、多くの場合、安全、安心及び/又は音響性能をもたらす必要もある。そのため、複層グレージングのガラスペインの1つ又は複数は、典型的には、積層することができる。複層グレージングユニットは、欧州規格EN12600の安全要件を満たす必要であり得る。欧州規格EN356は、保護された空間への物及び/又は人の接近を短期間遅らせることにより、力の作用に抵抗するように設計された防犯グレージングを対象とする。そのような安全及び安心性能を得るために、積層ガラスを使用することが当技術分野で周知であり、すなわち、2つ以上のガラスペインは、ガラスが物の衝突による貫通に強く抵抗することを可能にする二重プラスチック中間層によって一緒に接着される。それにもかかわらず、ガラスが割れた場合、ガラスは、その枠内に残る傾向があり、鋭利な縁及びガラス粒子の飛散又は落下から負傷する危険を最小にする。従って、積層ガラスは、爆発に対する保護、ガラスの床又は階段における強盗に対する防弾のための保護、建物面から破損したガラスの落下からの保護、耐震などの用途に通常使用される。積層は、真空絶縁グレージングユニットにも適用することができる。例えば、欧州特許出願公開第1544180号明細書は、ガラスペインの1つが、熱貫流率の低い係数を維持しながら、反射像の歪みを最小にするために、粘着層を介して板状部材に接着された外面を有する、真空絶縁グレージングユニットを開示している。
【0007】
改良された熱性能並びに安心、安全及び/又は音響の利点を提供する複層グレージングに組み込まれたとき、真空絶縁グレージングユニットの誘発された熱応力のレベルを制御する技術的問題に対処する従来技術は存在しない。
【発明の概要】
【0008】
本発明は、長手方向軸X及び垂直軸Yによって画定された平面Pに沿って延在する複層グレージングであって、少なくとも、
a)真空絶縁グレージングユニットであって、厚さZ1を有し、且つ内側ペイン面及び外側ペイン面を有する第1のガラスペイン、並びに厚さZ2を有し、且つ内側ペイン面及び外側ペイン面を有する第2のガラスペインを含む真空絶縁グレージングユニット、但し厚さは、平面Pに垂直な方向に測定される。真空絶縁グレージングユニットは、第1のガラスペインと第2のガラスペインとの間に位置付けられ、第1のガラスペインと第2のガラスペインとの間の距離を維持する離散スペーサの組及び第1のガラスペインと第2のガラスペインとの間の距離をその周囲にわたって封止する密封接着シールを更に含む。内容積Vは、第1及び第2のガラスペイン並びに離散スペーサの組によって画定され、且つ密封接着シールによって閉鎖され、0.1mbar未満の圧力を有する真空が存在する。内側ペイン面が、内容積Vに面する。
b)内側ペイン面及び外側ペイン面を有する第3のガラスペイン、及び
c)第2のガラスペインの外側ペイン面と、第3のガラスペインの内側ペイン面との間にその周囲にわたって位置付けられ、且つその間の距離を維持する周囲スペーサ、但し外側ペイン面及び内側ペイン面は、内部空間Spを画定する、
を含む複層グレージングに関する。
【0009】
第1のガラスペインの厚さZ1は、第2のガラスペインの厚さZ2に等しい(Z1=Z2)。第1のガラスペインGP1の外側ペイン面は、中間層ポリマーを介して、それぞれシート厚さZfmを有するm枚のガラスシートを含む第1のパネルP1に積層され、及び/又は第2のガラスペインGP2の外側ペイン面は、中間層ポリマーを介して、それぞれシート厚さZsnを有するn枚のガラスシートを含む第2のパネルP2に積層される。厚さZfm及びZsnは、平面Pに垂直な方向に測定される。文字mは、0以上の正の整数である(m≧0)。文字nは、0以上の正の整数であり(n≧0)、且つm及びnの整数の和は、1以上である(m+n≧1)。
【0010】
第1のパネルのm枚のガラスシート及び/又は第2のパネルのn枚のガラスシートの厚さの三乗の和の立方根は、第1のガラスペイン及び第2のガラスペインの厚さの和の126.7%以下である。
【数1】
【0011】
好ましい実施形態では、第1のガラスペインGP1の外側ペイン面は、中間層ポリマーを介して、それぞれシート厚さZfmを有するm枚のガラスシートを含む第1のパネルP1に積層され、及び第2のガラスペインGP2の外側ペイン面(22)は、中間層ポリマーを介して、それぞれシート厚さZsnを有するn枚のガラスシートを含む第2のパネルP2に積層される。この場合、第1のパネルのm枚のガラスシートの和の立方根は、第2のパネルのn枚のガラスシートの立方根に等しいことが更に好ましい。
【数2】
【0012】
本発明は、複層グレージングであって、第1のパネルのm枚のガラスシート及び/又は第2のパネルのn枚のガラスシートの厚さの三乗の和の立方根は、第1のガラスペイン及び第2のガラスペインの厚さの和の114.0%以下であり
【数3】
、好ましくは第1のガラスペイン及び第2のガラスペインの厚さの和の101.4%以下であり
【数4】
、より好ましくは第1のガラスペイン及び第2のガラスペインの厚さの和の88.7%以下であり
【数5】
、更により好ましくは第1のガラスペイン及び第2のガラスペインの厚さの和の76.6%以下である
【数6】
、複層グレージングに更に関する。
【0013】
本発明は、複層グレージングであって、第1のパネルのm枚のガラスシート及び第2のパネルのn枚のガラスシートの厚さの三乗の和の立方根は、第1のガラスペイン及び第2のガラスペインの厚さの和の24%以上であり
【数7】
、好ましくは第1のガラスペイン及び第2のガラスペインの厚さの和の32%以上であり
【数8】
、好ましくは第1のガラスペイン及び第2のガラスペインの厚さの和の48%以上であり
【数9】
、好ましくは第1のガラスペイン及び第2のガラスペインの厚さの和の64%以上であり
【数10】
、より好ましくは第1のガラスペイン及び第2のガラスペインの厚さの和の80%以上である
【数11】
、複層グレージングに更に関する。
【0014】
好ましい実施形態では、第1のパネルのm枚のガラスシート及び/又は第2のパネルのn枚のガラスシートの厚さの三乗の和の立方根は、第1のガラスペイン及び第2のガラスペインの厚さの和の64%~101.4%であり
【数12】
、好ましくは第1のガラスペイン及び第2のガラスペインの厚さの和の76%~88.7%である。
【数13】
【0015】
好ましくは、正の整数は、m+n≦2であり、好ましくは1に等しい。好ましくは、正の整数nは、0に等しい。
【0016】
本発明の好ましい実施形態では、第1のパネルのm枚のガラスシートの厚さZfm及び/又は第2のパネルのn枚のガラスシートの厚さZsnは、1mm以上(Zfm及びZsn≧1mm)、好ましくは2mm以上(Zfm及びZsn≧2mm)であり、好ましくは3mm以上(Zfm及びZsn≧3mm)であり、より好ましくは4mm以上(Zfm及びZsn≧4mm)である。
【0017】
本発明の複層グレージング内において、第1のガラスペイン及び/又は第2のガラスペインの厚さは、好ましくは、1mm~10mm(1mm≦Z1、Z2≦10mm)、好ましくは2mm~8mm(2mm≦Z1、Z2≦8mm)、より好ましくは3mm~6mm(3mm≦Z1、Z2≦6mm)である。第3のガラスペインの厚さZ3は、好ましくは、1mm~12mm(1mm≦Z3≦12mm)、好ましくは3mm~8mm(3mm≦Z3≦8mm)、より好ましくは4mm~6mm(4mm≦Z3≦6mm)である。
【0018】
好ましくは、ポリマー中間層は、エチレン酢酸ビニル(EVA)、シクロオレフィンポリマー(COP)、オートクレーブフリーポリビニルブチラール(オートクレーブフリーPVB)、ポリウレタン(PU)、アイオノマー及びそれらの組合せからなる群から、より好ましくはエチレン酢酸ビニル(EVA)及び/又はオートクレーブフリーPVBから選択される材料を含む。
【0019】
好ましい実施形態では、複層グレージングの第3のガラスペインは、中間層ポリマーを介してガラスシートに積層される。そのような場合、好ましくは、第3のガラスペインは、4mm~8mm(4mm≦Z3≦8mm)、好ましくは4mm~6mm(4mm≦Z3≦6mm)の範囲の厚さZ3を有し、ガラスシートは、4mm~8mm(4mm≦Zs≦8mm)、好ましくは4mm~6mm(4mm≦Zs≦6mm)の範囲の厚さZsを有し、より好ましくは、中間層ポリマーは、音響PVBポリマー中間層である。厚さは、平面Pに垂直な方向に測定される。
【0020】
本発明の好ましい一実施形態では、複層グレージングの1つのガラスペインは、プレストレストガラスである。一実施形態では、第1のガラスペイン及び/又は第3のガラスペインは、プレストレストガラスであることが好ましい。別の実施形態では、第2のガラスペインは、プレストレストガラスであることが好ましい。
【0021】
好ましくは、第1のガラスペインは、線熱膨張係数CTE1を有し、及び第2のガラスペインは、線熱膨張係数CTE2を有し、CTE1とCTE2との間の絶対差は、多くとも1.2×10-6/℃(|CTE1-CTE2|≦1.2×10-6/℃)であり、好ましくは多くとも0.8×10-6/℃(|CTE1-CTE2|≦0.8×10-6/℃)、より好ましくは多くとも0.4×10-6/℃(|CTE1-CTE2|≦0.4×10-6/℃)、より好ましくは多くとも0.2×10-6/℃(|CTE1-CTE2|≦0.2×10-6/℃)であり、更により好ましくは0に等しい(|CTE1-CTE2|=0/℃)。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の一実施形態による、単一ガラスペイン及び真空絶縁グレージングユニットの外装ガラスペインが、1枚のガラスシートによって積層されている真空絶縁グレージングユニットを含む、二重グレージングアセンブリの横断面図を示す。
【0023】
【
図2】本発明の一実施形態による、単一ガラスペイン並びに単一ガラスペイン及び真空絶縁グレージングユニットの外装ガラスペインのいずれも、それぞれ1枚のガラスシートによって積層されている真空絶縁グレージングユニットを含む、二重グレージングアセンブリの横断面図を示す。
【0024】
【
図3】本発明の一実施形態による、単一ガラスペイン及び真空絶縁グレージングユニットの両方のガラスペインが、それぞれ1枚のガラスシートによって積層されている真空絶縁グレージングユニットを含む、二重グレージングアセンブリの横断面図を示す。
【0025】
【
図4】本発明の一実施形態による、単一ガラスペイン及び真空絶縁グレージングユニットの内装ガラスペインが、2枚のガラスシートによって積層されている真空絶縁グレージングユニットを含む、二重グレージングアセンブリの横断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明の目的は、真空絶縁グレージングユニットの包含により非常に高い断熱を示し、安全、安心、防犯及び/又は音響の追加の利点を更に提供する複層グレージングを提供することである。
【0027】
この複層グレージング内において、積層真空絶縁グレージングユニットの応力のレベルは、積層VIGの熱誘起応力が、積層されていないときに内部環境と外部環境との温度差によって誘起された応力のそのレベルを少なくとも超えないように制御されるべきである。本発明の別の目的は、1つ又は複数の追加のガラスシートを真空絶縁グレージングユニットの第1及び/又は第2のガラスペインの外側ペイン面に積層することにより、複層グレージングに組み込まれたときに真空絶縁グレージングユニットが面する熱誘起応力のレベルを更に低減することである。
【0028】
真空絶縁グレージングユニットは、以下で「VIG」と呼ばれる。本発明は、VIG及び単一ガラスペインを含む二重グレージングアセンブリを参照して更に本明細書に記載されるが、1つ又は複数のVIG及び1つ又は複数の単一ガラスペインを含むあらゆる複層グレージングに広げることができる。別の共通の複層グレージングは、1つ又は2つのVIGを含む三重グレージングアセンブリである。二重グレージングアセンブリに関連して更に本明細書に記載された全ての技術的特徴及び好ましい技術的特徴は、三重及びあらゆる他の複層グレージングに適用することができる。
【0029】
熱誘起応力計算
熱誘起応力は、VIGのガラスペインが著しく異なる温度を有するとき、前記ガラスペイン上に誘起された応力である。熱誘起応力は、VIGの厚さにわたる剪断応力及び曲げ応力の組合せである。VIGにわたる熱誘起応力のプロファイルは、バイメタルストリップ内の応力を計算するために使用され、真空絶縁グレージングに容易に広げることができる、「Timoshenko,S.,Analysis of Bi-metal Thermostats.JOSA,1925.11(3):p.233-255」のTimoshenkoの論文にあるように当技術分野で公知である。Timoshenkoのような熱誘起応力のプロファイルは、積層VIGを考慮するために容易に更に広げることができ、すなわちポリマー中間層の剪断伝達係数が0に等しいことを前提とする。当技術分野に広く許容されているこの前提は、VIGがその環境の1日の気温差に曝されるときに観察された温度の遅い変化に基づく。従って、曲げ応力のみが、VIGのガラスペインに積層された追加のガラスシート内で考慮される。
【0030】
上記の分析的解法は、全てのVIG構成に対する熱誘起応力を計算することができる。所与の厚さZ1の第1のガラスペイン及び所与の厚さZ2の第2のガラスペインを有する非積層VIG構造に対する熱誘起応力が計算され、その外面のその最大引張応力は、対応する積層VIGが超えないように参照熱誘起応力値として考えられる。同様に、所与のVIG構造に対して、上記の分析的解法は、厚さが増加する異なる積層構成、すなわちVIG構造が、厚さの増加する1つ又は複数の追加のガラスシートに積層される場合、熱誘起応力及びVIG外面の最大引張応力の値を計算することができる。
【0031】
複層グレージング内のVIGの熱誘起応力
使用中、グレージングは、典型的には、内部空間を外部空間から分離する仕切りを閉じるために使用される。内部空間の温度は、典型的には、20~25℃であるのに対して、外部空間の温度は、冬に-20℃から夏に+35℃に及ぶ可能性がある。従って、内部空間と外部空間との温度差は、典型的には、過酷な状況では40℃超に達する可能性がある。
【0032】
本発明では、複層グレージング内のVIGは、温度TempAを特徴とする空間Aを、内部温度Tempintを特徴とする二重グレージングユニットの内部空間から分離する。VIGが、その第1のガラスペインGP1が第1の空間Aに面するように位置付けられる場合、前記第1のガラスペインの温度(T1)は、第1の空間の温度(TempA)に調整される。同様に、第3のガラスペインGP3は、温度TempBを特徴とする空間Bを内部空間から分離している。前記第3のガラスペイン(T3)の温度は、第2の空間の温度(TempB)に調整される。内部空間に面する第2のガラスペインGP2の温度(T2)は、内部空間の温度(Tempint)に調整される。
【0033】
典型的には、二重グレージングに対して、内部空間の温度(Tempint)は、太陽放射の影響をわずかに受けて、TempAとTempBとの間の平均温度に達すると予想されていた。驚くべきことに、単一ガラスペインの少なくとも1枚がVIGに置換された二重グレージングでは、内部空間の温度(Tempint)は、太陽放射の影響を強く受け、TempA及びTempBよりはるかに高い温度に達する可能性があることがわかった。
【0034】
熱誘起応力は、第1のガラスペイン(GP1及びT1)と第2のガラスペイン(GP2及びT2)との間に温度差が存在すると直ちに生じ、T1とT2との差が増加するにつれて増加する。温度差(ΔT)は、第1のガラスペインGP1に対して計算された平均温度T1と第2のガラスペインGP2に対して計算された平均温度T2との差である。ガラスペインの平均温度は、熟練者に公知の数値シミュレーションから計算される。熱誘起応力は、ガラスペイン間の温度差の絶対値(|ΔT|)が20℃に達したとき、VIGの破損の可能性まで問題になり、温度差のそのような絶対値が30℃に達したとき及び更に過酷な状況で40℃に達したときに深刻になる。
【0035】
VIGが複層グレージング中に含まれるとき、ガラスペイン間の温度差のそのような絶対値(|ΔT|)は、典型的には、単体のVIG内で達した対応する温度差より更に高い値に達する可能性があることが更にわかった。
【0036】
以下の表は、夏の温度差の絶対値(|ΔT|)が、単体のVIGに対するより複層グレージング内のVIGに対する方がはるかに高い(ミュンヘン空港の場所からの)データを示す。
【0037】
データ温度は、VIG、建物の外部に面する単一ガラスペインを含む二重グレージング構成に対して測定された。単一ガラスペインは、VIGから15mmの周囲スペーサによって分離され、内部空間はアルゴンで充填される。単一ガラスペインは、二重グレージングの内部空間に面するその表面に太陽光制御コーティングを有する。VIGは、第1のガラスペインGP1及び第2のガラスペインGP2を含み、いずれもそれぞれ4mmの厚さを有する。第2のガラスペインは、二重グレージングの内部空間に面する。第1のガラスペインは、VIGの内容積に面するその表面に低放射率コーティングを有する。
【0038】
外側温度は、建物の内側の温度20℃に対して、夏に32℃、冬に-23℃に達する可能性がある。温度差の絶対値(|ΔT|)は、従って、単体のVIGに対して夏に約11℃、冬に約39℃に及ぶであろう。VIGが二重グレージングとして構成されるとき、内部空間の温度(Tempint)は、夏に68℃、冬に-10℃に達する可能性がある。従って、複層グレージング内のVIGに面する温度差の絶対値(|ΔT|)は、夏に約31℃、冬に27℃に及ぶであろう。これらのデータから、複層グレージング内のVIGに対して、夏の温度差の絶対値(|ΔT|)は、冬の温度差の絶対値(|ΔT|)に類似することを見ることができる。これは、冬の温度差の絶対値(|ΔT|)が、夏の温度差の絶対値(|ΔT|)より高いVIG単体に対するのと対照的である。従って、当業者は、VIGにおける熱誘起応力を制御し、破損を避けるために、冬の温度差の絶対値(|ΔT|)だけでなく、夏の温度差の絶対値(|ΔT|)も考慮する必要がある。
【0039】
以下の表は、第1のガラスペインGP1に対して計算された平均温度T1と第2のガラスペインGP2に対して計算された平均温度T2との差である温度差(ΔT)を例示する。
【0040】
冬及び夏の温度差の絶対値(|ΔT|)が互いに接近しており、そのため、夏と冬との両方の状態を考慮しなければならないような場合、驚くべきことに、VIGは、複層グレージングに組み込まれたとき、第1及び第2のガラスペインの厚さが同じであり、VIGガラスペインの積層が熱誘起応力への抵抗を増加するように構成されるべきであることがわかった。VIGガラスペインの積層は、特定の点まで熱誘起応力への抵抗を増加し、積層によりVIGのガラスペインの厚さを更に増加すると、驚くべきことに、熱誘起応力への抵抗が低下することが更にわかった。
【0041】
上記で実証したように、複層グレージングに組み込まれたとき、VIGは、特にその使用環境及び複層グレージング構成への熱誘起応力に抵抗するように慎重に寸法決めしなければならない。従って、本発明の目的は、VIGのガラスペインの1つ又は複数の積層による安全、安心、防犯及び/又は音響などのグレージングへの追加の性能をもたらす一方、複層グレージングに組み込まれたときに熱誘起応力のレベルを維持し、且つ更に低減することである。驚くべきこと、VIGのガラスペインの一方又は両方に積層される追加のガラスシートの厚さを慎重に設計することにより、安全、安心、防犯及び/又は音響の利点は、熱誘起応力へのその機械的抵抗を損なうことなく、更に向上させて追加できることがわかった。そのような構成状況では、VIGの一方又は両方のガラスペインを積層する利点は、VIGのガラスペインが同じ厚さを有するときに更に良好に作用することが更にわかった。
【0042】
VIGに積層されるような追加のガラスシートは、以下で「パネル」と呼ばれる。このパネルは、以下で「積層VIG」と呼ばれる積層真空絶縁グレージングユニットを形成するために、中間層ポリマーを介してVIGの第1及び/又は第2のガラスペインの外側ペイン面に積層される。第1のガラスペインの外側ペイン面は、グレージングの外部に面しており、第2のガラスペインの外側ペイン面は、複層グレージングの内部空間に面している。中間層ポリマーは、積層アセンブリを形成するために、VIGの第1及び/又は第2のガラスペインの外側ペイン面と第1及び/又は第2のガラスペインのそれぞれとの間に位置付けられる。
【0043】
本発明
従って、
図1~4に例示されたように、本発明は、少なくとも真空絶縁グレージングユニットを含む、長手方向軸X及び垂直軸Yによって画定された平面Pに沿って延在する複層グレージング(10)に関する。VIGは、厚さZ1を有し、且つ内側ペイン面(11)及び外側ペイン面(12)を有する第1のガラスペインGP1並びに厚さZ2を有し、且つ内側ペイン面(21)及び外側ペイン面(22)を有する第2のガラスペインGP2を含む。厚さは、平面Pに垂直な方向に測定される。VIGは、第1のガラスペインと第2のガラスペインとの間に位置付けられた離散スペーサ(3)の組であって、第1のガラスペインと第2のガラスペインとの間の距離を維持する離散スペーサ(3)の組及び密封接着シール(4)であって、第1のガラスペインと第2のガラスペインとの間の距離をその周囲にわたって封止する密封接着シール(4)を更に含む。内容積Vは、第1及び第2のガラスペイン並びに離散スペーサの組によって画定され、且つ密封接着シールによって閉鎖され、0.1mbar未満の圧力を有する真空が存在する。VIGの内側ペイン面は、内容積Vに面する。第1のガラスペインの厚さZ1は、第2のガラスペインの厚さZ2に等しい(Z1=Z2)。
【0044】
VIG内では、第1のガラスペインGP1の外側ペイン面(12)は、中間層ポリマーを介して、それぞれのガラスシートがシート厚さZfmを有するm枚のガラスシートを含む第1のパネルP1に積層され、及び/又は第2のガラスペインGP2の外側ペイン面(22)は、中間層ポリマーを介して、それぞれのガラスシートがシート厚さZsnを有するn枚のガラスシートを含む第2のパネルP2に積層される。厚さZfm及びZsnは、平面Pに垂直な方向に測定される。文字mは、0以上の正の整数であり(m≧0)、文字nは、0以上の正の整数であり(n≧0)、且つm及びnの整数の和は、1以上である(m+n≧1)。整数m又はnが0に等しい(m=0又はn=0)とき、対応するシート厚さは、0に等しい(Zs0=0又はZf0=0)。第1のパネルは、単一ガラスシート(m=1)であり得るか、又はm-1の中間層ポリマーを介して一緒に積層されたm枚のガラスシート(m>1)を含み得る。同様に、第2のパネルは、単一ガラスシート(n=1)であり得るか、又はn-1の中間層ポリマーを介して一緒に積層されたn枚のガラスシート(n>1)を含み得る。
【0045】
本発明は、同様に複層グレージングのより厳格な熱プロファイルにおいて、熱誘起応力へのVIGの抵抗を維持し、且つ更に向上させるために、VIGのガラスペインの厚さとパネルのガラスシートの厚さとの間に重大な相関関係が存在するという驚くべき発見に基づく。驚くべきことに、特定の厚さの第1及び/又は第2のパネルを備えたVIGの第1及び/又は第2のガラスペインを積層し、且つVIGの第1及び第2のガラスペインが同じ厚さを有するようにVIGを設計することにより、複層グレージングに組み込まれたときにそのようなVIGの熱誘起応力への抵抗を維持し、更に向上させ得ることがわかった。従って、第1及び/又は第2のパネル内のガラスシートの厚さは、第1のパネルP1のm枚のガラスシート及び第2のパネルP2のn枚のガラスシートの厚さの三乗の和の立方根が、第1のガラスペイン及び第2のガラスペインの厚さの和の126.7%以下である
【数14】
ようなものであるべきことがわかった。
【0046】
本発明の複層グレージングは、内側ペイン面(31)及び外側ペイン面(32)を有する第3のガラスペインGP3並びに周囲スペーサ(6)であって、VIGの第2のガラスペインGP2の外側ペイン面(22)と、第3のガラスペインGP3の内側ペイン面(31)との間にその周囲にわたって位置付けられ、且つその間の距離を維持する周囲スペーサ(6)を更に含む。周囲スペーサ(6)、外側ペイン面(22)及び内側ペイン面(31)は、内部空間Spを画定する。
【0047】
本発明の好ましい実施形態では、第1のガラスペインGP1の外側ペイン面(12)は、中間層ポリマーを介して、それぞれのガラスシートが厚さZfmを有するm枚のガラスシートを含む第1のパネルP1に積層され、第2のガラスペインGP2の外側ペイン面(22)は、中間層ポリマーを介して、それぞれのガラスシートが厚さZsnを有するn枚のガラスシートを含む第2のパネルP2に積層される。このような場合、第1のパネルP1のm枚のガラスシートの三乗の和の立方根は、第2のパネルP2のn枚のガラスシートの三乗の立方根に等しい。
【数15】
【0048】
本発明の好ましい実施形態では、第1のパネルP1のm枚のガラスシート及び第2のパネルP2のn枚のガラスシートの厚さの三乗の和の立方根は、第1のガラスペイン及び第2のガラスペインの厚さの和の114.0%以下であり
【数16】
、好ましくは第1のガラスペイン及び第2のガラスペインの厚さの和の101.4%以下であり
【数17】
、より好ましくは第1のガラスペイン及び第2のガラスペインの厚さの和の88.7%以下であり
【数18】
、更により好ましくは第1のガラスペイン及び第2のガラスペインの厚さの和の76.6%以下である。
【数19】
【0049】
本発明の好ましい実施形態では、第1のパネルのm枚のガラスシート及び第2のパネルのn枚のガラスシートの厚さの三乗の和の立方根は、第1のガラスペイン及び第2のガラスペインの厚さの和の24%以上であり
【数20】
、好ましくは第1のガラスペイン及び第2のガラスペインの厚さの和の32%以上であり
【数21】
、好ましくは第1のガラスペイン及び第2のガラスペインの厚さの和の48%以上であり
【数22】
、好ましくは第1のガラスペイン及び第2のガラスペインの厚さの和の64%以上であり
【数23】
、より好ましくは第1のガラスペイン及び第2のガラスペインの厚さの和の80%以上である。
【数24】
【0050】
更に好ましい実施形態では、VIGの第1及び/又は第2のガラスペインに積層されるガラスシートの厚さは、第1のパネルP1のm枚のガラスシート及び第2のパネルP2のn枚のガラスシートの厚さの三乗の和の立方根が、第1のガラスペイン及び第2のガラスペインの厚さの和の64%~101.4%であり
【数25】
、より好ましくは76.6%~88.7%である
【数26】
ようなものである。シート厚さZfm及び/又はZsnは、1mm以上(Zfm及び/又はZsn≧1mm)、好ましくは2mm以上(Zfm及び/又はZsn≧2mm)、好ましくは3mm以上(Zfm及び/又はZsn≧3mm)、好ましくは4mm以上(Zfm及び/又はZsn≧4mm)であることが更に好ましい。好ましい実施形態では、シート厚さZfm及び/又はZsnは、1mm~8mm(1mm≦Zfm及び/又はZsn≦8mm)、好ましくは1mm~6mm(1mm≦Zfm及び/又はZsn≦6mm)、より好ましくは2mm~6mm(2mm≦Zfm及び/又はZsn≦4mm)であり、好ましくは4mmに等しい(Zfm及び/又はZsn=4mm)。2枚以上のガラスシートがVIGの第1及び/又は第2のガラスペインの外側ペイン面に積層されるとき、各ガラスシートの厚さは、同一であるか又は異なり得る。シート厚さは、平面Pに垂直な方向に測定される。
【0051】
本発明の好ましい一実施形態では、m及びnの整数の和は、2以下(m+n≦2)であり、好ましくは1に等しい(m+n=1)。より好ましくは、
図1に示されたように、整数mは、1に等しく(m=1)、整数nは、0に等しい(n=0)。
図1は、VIGの第1のガラスペインのみが、1枚のガラスシートを含む第1のパネルに積層される複層グレージングを例示する。第1のガラスペインGP1の外側ペイン面(12)は、第1の積層アセンブリを形成するために、1つのポリマー中間層(7)により、厚さZf
1を有する1枚のガラスシートを含む第1のパネルP1に積層される。単一のガラスシートの厚さZf
1は、平面Pに垂直な方向に測定される。
【0052】
本発明の別の好ましい実施形態では、m及びnの整数の和は、2以下(m+n≦2)であり、好ましくは2に等しい(m+n=2)。より好ましくは、
図2に示されたように、整数mは、1に等しく(m=1)、整数nは、1に等しい(n=1)。
図3は、VIGの第1のガラスペインが、1枚のガラスシートを含む第1のパネルに積層され、第2のガラスペインが、1枚のガラスシートを含む第2のパネルに積層される複層グレージングを例示する。従って、第1のガラスペインGP1の外側ペイン面(12)は、第1の積層アセンブリを形成するために、1つのポリマー中間層(7)により、厚さZf
1を有する1枚のガラスシートを含む第1のパネルP1に積層される。第2のガラスペインGP2の外側ペイン面(22)は、第2の積層アセンブリを形成するために、1つのポリマー中間層(7)により、厚さZs
1を有する1枚のガラスシートを含む第2のパネルP2に積層される。第1のガラスシートの厚さZf
1及び第2のガラスシートの厚さZs
2は、平面Pに垂直な方向に測定される。
【0053】
本発明の複層グレージングのVIGが、第1のパネル及び第2のパネルに積層される本発明の実施形態では、第1のパネル内のm枚のガラスシートの厚さの和は、第2のパネル内のn枚のガラスシートの厚さの和に等しいことが更に好ましい。この実施形態では、第1のパネルのm枚のガラスシートの和の立方根は、第2のパネルのn枚のガラスシートの立方根に等しい。
【数27】
そのような積層構成は、特に第1及び第2のパネルのそれぞれの内部のガラスシートの厚さが等しいとき、VIGに非対称をもたらすことを回避するため、熱誘起応力に対する追加の抵抗をもたらすことがわかった。
【0054】
本発明の別の実施形態では、
図4に例示されたように、第2のガラスペインGP2は、中間層ポリマーを介して第2のパネルP2に積層される。第2のパネルP2は、それぞれ厚さZs
1及びZs
2を有する2枚のガラスシート(n=2)及び1つ(n-1)の中間層ポリマー(7)を含む。VIGの第2のガラスペインが中間層ポリマーを介して第2のパネルに積層されるとき、第2のパネルはより小さい寸法からなることが可能である。パネルP2及び第2のガラスペインGP2は、周縁部を含む。第2のパネルの周縁部は、第2のガラスペインの周縁部から窪む。
【0055】
中間層ポリマー
中間層ポリマーは、典型的には、エチレン酢酸ビニル(EVA)、ポリイソブチレン(PIB)、ポリビニルブチラール(PVB)、オートクレーブフリーポリビニルブチラール(オートクレーブフリーPVB)、ポリウレタン(PU)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリエステル、コポリエステル、ポリアセタール、シクロオレフィンポリマー(COP)、アイオノマー及び/又は紫外線活性化接着剤並びに合わせガラスの製造技術分野で公知の他のものなどからなる群から選択される材料を含む。強化防音は、特定のPVB(Eastman製のSaflex(登録商標)音響PVB中間層又はKuraray製のTrosifol(登録商標)音響PVB中間層)などの特定の音響性能を備えたポリマー中間層で提供することができる。好ましくは、ポリマー中間層は、エチレン酢酸ビニル(EVA)、シクロオレフィンポリマー(COP)、オートクレーブフリーポリビニルブチラール(オートクレーブフリーPVB)、ポリウレタン(PU)、SentryGlas(商標)のようなアイオノマー及びそれらの組合せからなる群から、より好ましくはEVA及び/又はオートクレーブフリーPVBから選択される。
【0056】
中間層ポリマーの厚さは、特に限定されず、例えば0.25mm~5mm、好ましくは0.3mm~5mm、好ましくは0.3~4mm、より好ましくは0.3mm~2.5mmであり得る。所望の厚さに達成するために、市販の中間層ポリマーの1つ又は複数のフィルムを使用することができる。その例は、0.38mmの市販のポリビニルブチラール(PVB)フィルムである。
【0057】
好ましい実施形態では、複層グレージングの第3のガラスペインGP3も、積層ガラスペインを形成するために、ポリマー中間層により少なくとも1枚のガラスシートに積層されることが可能である。
図2に例示されたように、第1のガラスペインは、
図1に例示されたように単一ガラスシートを含む第1のパネルに積層され、第3のガラスペインGP3の外側ペイン面(32)は、中間層ポリマー(7)を介して1枚のガラスシートGsに積層される。ガラスシートは、平面Pに垂直な方向に測定された厚さZsを有する。
【0058】
好ましい実施形態では、第3のガラスペインは、4mm~8mm(4mm≦Z3≦8mm)、好ましくは4mm~6mm(4mm≦Z3≦6mm)の範囲の、平面Pに垂直な方向に測定された厚さZ3を有し、第3のガラスペインは、4mm~8mm(4mm≦Zs≦8mm)、好ましくは4mm~6mm(4mm≦Zs≦6mm)の範囲の、厚さZsを有するガラスシートに好ましくは音響PVBポリマー中間層によって積層される。第3のガラスペインの厚さ及びガラスシートの厚さは、異なる(Z3≠Zs)ことが更に好ましい。
【0059】
典型的には、ガラスペイン及びガラスシートは、焼鈍ガラスペイン及び焼鈍ガラスシートである。しかし、より高い機械的性能を備えた複層グレージングを提供し、且つ/又は安全性を更に向上させるため、1つ又は複数のガラスペインに対して、好ましくは第1のガラスペイン及び/又は第3のガラスペインに対してプレストレストガラスを使用することを企図することができる。プレストレストガラスとは、本明細書では熱強化ガラス、熱強化安全ガラス又は化学強化ガラスを意味する。好ましい実施形態では、複層グレージングは、プレストレストガラスから作られた第3のガラスペインGP3及び第2のガラスペインGP2が1枚のシートを含む第2のパネルに積層され、第1のガラスペインGP1がプレストレスト加工されるVIGを含む。別の好ましい実施形態では、第2のガラスペインはプレストレストガラスである。
【0060】
熱強化ガラス及び熱強化安全ガラスは、ガラス面を圧縮状態にし、他方のコアを引張状態にする、制御された加熱及び冷却の方法を使用して熱処理される。熱処理方法は、ガラスに焼鈍ガラスより大きいが熱強化安全ガラスより小さい曲げ強度を送達する。熱強化安全ガラスは、衝突したとき、ギザギザの破片に割れるのではなく、小さい粒状粒子に砕ける。粒子は、居住者を負傷させ難いか又は物体を損傷し難い。ガラス物品の化学強化は、ガラスの表層のより小さいアルカリナトリウムイオンをより大きいイオン、例えばアルカリカリウムイオンに置換することに関与する、熱誘起されたイオン交換である。表面の圧縮応力の増加は、より大きいイオンが以前ナトリウムイオンに占有されていた小さい場所に「楔のように入り込む」際にガラスに生じる。そのような化学処理は、概して、温度及び時間の正確な制御で、より大きいイオンの1つ又は複数の溶融塩を含有するイオン交換溶融浴内にガラスを沈めることによって行われる。例えば、Asahi Glass Co.製の取扱製品DragonTrail(登録商標)からのもの又はCorning Inc.製の取扱製品Gorilla(登録商標)からのものなどのアルミノケイ酸塩型ガラス組成物が、化学焼戻に非常に効率的であることが公知である。
【0061】
真空絶縁グレージング
VIGは、典型的には、第1のガラスペイン及び第2のガラスペインを特定の距離、典型的には50μm~1000μm、好ましくは50μm~500μm、より好ましくは50μm~150μmの範囲で離間を維持する離散スペーサの組を用いて一緒に関連付けられる前記ガラスペイン並びに前記ガラスペイン間において、空洞内に0.1mbar未満の絶対圧力の真空が存在する、少なくとも1つの第1の空洞を含む内部空間を含む。前記空間は、前記内部空間の周りをガラスペインの周囲に置かれた周囲密封接着シールによって閉鎖される。概して、高性能の断熱(熱貫流率Ugは、Ug<1.2W/m2K、好ましくはUg<0.8W/m2Kである)を達成するために、グレージングユニットの内側の圧力は、典型的には、0.1mbar以下であり、概して、2つのガラスペインの少なくとも一方は、低放射率コーティングで覆われる。
【0062】
本発明は、少なくとも1つの真空絶縁グレージングユニット(20)、第3のガラスペインGP3及び周囲スペーサ(6)を含む複層グレージング(10)に関する。本発明の一実施形態では、複層グレージングは、上記の単一ガラスペインGP3が、単一ガラスペインGP3及び上記のVIGに類似した第2のVIGユニットを一緒に形成する追加のガラスペインGP4を含む真空絶縁ユニット内に組み込まれるように、VIGユニットのみを含むことができる。単一ガラスペインを含む二重グレージング又は複層グレージングに関して、本明細書で上に及び更に記載されている全ての技術的特徴並びに好ましい技術的特徴は、それぞれ複層グレージング構成に適用することができる。従って、この実施形態では、第3のガラスペインGP3は、第3のガラスペインと第4のガラスペインとの間に位置付けられた離散スペーサ(3)の組によって第4のガラスGP4に更に関連付けられ、それらの間の距離を維持し、密封接着シール(4)は、それらの間の距離をその周囲にわたって封止し、0.1mbar未満の圧力を有する真空が存在する内容積Vを生成する。
【0063】
VIGの第1及び/若しくは第2のガラスペインの厚さZ1、Z2並びに/又は複層グレージングの第3のガラスペインの厚さZ3は、典型的には、2mm以上(Z1、Z2、Z3≧2mm)であり、好ましくは3mm以上(Z1、Z2、Z3≧3mm)、より好ましくは4mm以上(Z1、Z2、Z3≧4mm)、より好ましくは6mm以上(Z1、Z2、Z3≧6mm)である。典型的には、第1及び/若しくは第2のガラスペインの厚さ並びに/又は第3のガラスペインの厚さZ3は、12mm以下(Z1、Z2、Z3≦12mm)、好ましくは10mm以下(Z1、Z2、Z3≦10mm)、より好ましくは8mm以下(Z1、Z2、Z3≦8mm)になる。厚さは、平面Pに垂直な方向に測定される。本発明の好ましい実施形態では、第1及び第2のガラスペインの厚さZ1及び/又はZ2は、1mm~10mm(1mm≦Z1、Z2≦10mm)、好ましくは2mm~8mm(2mm≦Z1、Z2≦8mm)、より好ましくは3mm~6mm(3mm≦Z1、Z2≦6mm)である。好ましい実施形態では、第3のガラスペインの厚さZ3は、1mm~12mm(1mm≦Z3≦12mm)、好ましくは3mm~10mm(3mm≦Z3≦10mm)、より好ましくは4mm~8mm(4mm≦Z3≦8mm)である。
【0064】
好ましくは、第1のパネルのm枚のガラスシートの厚さZfm及び/又は第2のパネルのn枚のガラスシートの厚さZsnは、1mm以上(Zfm及びZsn≧1mm)、好ましくは2mm以上(Zfm及びZsn≧2mm)、好ましくは3mm以上(Zfm及びZsn≧3mm)、より好ましくは4mm以上(Zfm及びZsn≧4mm)である。
【0065】
本発明の好ましい実施形態では、複層グレージングは、500mm以上(L≧500mm)、800mm以上(L≧800mm)、より好ましくは1200mm以上(L≧1200mm)の、垂直軸Yに沿って測定された長さLを有する。本発明の好ましい実施形態では、複層グレージングは、300mm以上(W≧300mm)、好ましくは400mm以上(W≧400mm)、より好ましくは500mm以上(W≧500mm)、より好ましくは750mm以上(W≧750mm)、より好ましくは1000mm以上(W≧1000mm)、更により好ましくは1000mm以上(W≧1000mm)の、長手方向軸Xに沿って測定された幅Wを有する。
【0066】
スペーサ
離散スペーサ(「支柱」とも呼ばれる)は、第1のガラスペインと第2のガラスペインとの間に位置付けられ、その間の距離を維持し、10mm~100mmの範囲のピッチλ(10mm≦λ≦100mm)を有する配列を形成する。ピッチとは、離散スペーサ間の間隔を意味する。好ましい実施形態では、ピッチは、15mm~80mm(15mm≦λ≦80mm)、好ましくは15mm~50mm(15mm≦λ≦50mm)、好ましくは15mm~40mm(15mm≦λ≦40mm)、より好ましくは15mm~25mm(15mm≦λ≦25mm)、更により好ましくは約20mmである。本発明内の配列は、典型的には、正三角形、正方形又は六角形図式に基づき、好ましくは正方形図式に基づく規則的配列である。離散スペーサは、円筒形、球形、糸状、砂時計形、C字形、十字形、プリズム形状などの異なる形状を有することができる。小さい支柱、すなわち概して5mm2以下、好ましくは3mm2以下、より好ましくは1mm2以下の、その外周によって画定されたガラスペインとの接触面を有する支柱を使用することが好ましい。これらの値は、審美的離散でありながら、良好な機械耐性を供給し得る。
【0067】
典型的な離散スペーサは、VIGの生産過程中に直面した圧力及び高温に持続的耐性を備え、グレージングが製造された後にいかなる気体も放出し難い材料から作成される。そのような材料は、好ましくは、金属材料、石英ガラス又はセラミック材料などの硬質材料、特に鉄、タングステン、ニッケル、クロム、チタン、モリブデン、炭素鋼、クロム鋼、ニッケル鋼、ステンレス鋼、ニッケルクロム鋼、マンガン鋼、クロムマンガン鋼、クロムモリブデン鋼、シリコン鋼、ニクロム、ジュラルミン又は同種のものなどの金属材料である。別のそのような材料は、鋼玉石、アルミナ、ムライト、マグネシア、イットリア、窒化アルミニウム、窒化ケイ素又は同種のものなどのセラミック材料であり得る。しかし、そのような材料がより高い機械抵抗を提供する場合、それらの材料は、むしろ熱伝導率の性能が劣る(熱伝導率が高い)。従って、本発明の複層グレージングのVIG要素に対して好ましい離散スペーサは、樹脂などのより低い導電率の材料から作成され、好ましくはポリイミド樹脂から作成される。この場合、スペーサの熱伝導率を最小にすることができ、熱は第1及び第2のガラスペインと接触する離散スペーサを介して伝達し難い。
【0068】
密封接着シール
VIGの内容積は、前記内部空間の周りをガラスペインの周囲に置かれた密封接着シールで閉鎖される。密封接着シールは、空気又は大気中に存在するあらゆる他の気体に不浸透性である。様々な密封接着シール技術が存在する。第1の型のシール(最も普及している)は、融点がグレージングユニットのガラスペインの融点より低いソルダーガラスに基づいたシールである。典型的には、500℃未満、好ましくは450℃未満、より好ましくは400℃未満である。例は、ビスマス系ガラスフリット、鉛系ガラスフリット、バナジウム系ガラスフリット及びそれらの混合物などの低い融点のガラスフリットである。第2の型のシールは、金属シール、例えば軟質錫合金半田などの半田付け可能な材料の層で少なくとも一部が覆われたタイ下層を用いて、グレージングユニットの周囲に半田付けされた小さい厚さ(<500μm)の金属ストリップを含む。
【0069】
内容積
0.1mbar未満、好ましくは0.01mbar未満の絶対圧力の真空が、第1及び第2のガラスペイン並びに離散スペーサの組によって画定され、且つ密封接着シールによって閉鎖された内容積V内に生成される。ゲッターは、真空絶縁グレージングユニット内に所与の真空レベルを持続的に維持するために使用することができる。概して、そのようなゲッターは、ジルコニウム、バナジウム、鉄、コバルト、アルミニウムなどからなり、薄層の形態(数ミクロンの厚さ)又はガラスペイン間に置かれたタブレットの形態で堆積される。
【0070】
ガラスペイン及びシート
VIGガラスペインGP1及びGP2並びに第3のガラスペインGP3は、フロートクリアガラス、高透過ガラス又は色ガラスの中から選択することができる。典型的には、ガラスペインは、ソーダ石灰シリカガラス、アルミノケイ酸塩ガラス又はホウケイ酸ガラス、好ましくはソーダ石灰シリカガラスである。模様を付け、構造された、プリントガラスが適切である。ガラスペインは、任意選択で、安全のためにエッジグラウンド加工であり得る。
【0071】
好ましくは、ガラスペインの組成物は、ガラスの総重量について表した、重量パーセントの以下の成分を含む(Comp.A)。より好ましくは、ガラス組成物(Comp.B)は、ガラスの総重量について表した、重量パーセントの以下の成分を含む組成物のベースガラスマトリックスを備えた、ソーダ石灰シリカ型ガラスである。
【0072】
他の好ましいガラスは、ガラスの総重量について表した、重量パーセントの以下の成分を含む。
【0073】
好ましい実施形態では、VIG内において、第1のガラスペインは、熱膨張係数CTE1を有し、及び第2のガラスペインは、熱膨張係数CTE2を有し、それにより、CTE1とCTE2との間の絶対差は、多くとも0.40×10-6/℃以下(|CTE1-CTE2|≦0.40×10-6/℃)であり、好ましくは多くとも0.30×10-6/℃(|CTE1-CTE2|≦0.30×10-6/℃)、より好ましくは多くとも0.20×10-6/℃以下(|CTE1-CTE2|≦0.20×10-6/℃)である。理想的には、第1及び第2のガラスペインは、同じ熱膨張係数を有する(|CTE1-CTE2|=0/℃)。「熱膨張係数」(CTE)は、温度の変化で物体の大きさがどのように変化するかを示す尺度である。具体的には、これは、一定の圧力において温度変化1度当たりのガラスペインの容積のわずかな変化を測定する。
【0074】
本発明の一部の実施形態では、低放射率コーティング、太陽光制御コーティング(熱線反射コーティング)、反射防止コーティング、曇り止めコーティング、好ましくは熱線反射コーティング又は低放射率コーティングなどの機能性コーティングは、複層グレージングユニットのガラスペインの少なくとも1枚の上に提供することができる。好ましくは、第1及び/若しくは第2のガラスペインの内側ペイン面、第3のガラスペインの内側ペイン面及び/若しくは外側ペイン面並びに/又はガラスシートの外側シート面は、複層グレージングのガラスペインの1つがガラスシートに更に積層されている場合、少なくとも熱線反射コーティング又は低放射率コーティングを提供される。
図1~4に例示されたように、第1のガラスペインGP1の内側ペイン面(11)は、典型的には、低放射率コーティング(5)で被覆することができる。
【0075】
一実施形態では、第1のガラスペインの外側ペイン面(12)は、少なくとも1枚の破片シールドポリマーフィルム、好ましくはポリエステル破片シールドフィルムを提供されることができる。
【0076】
複層グレージング
本発明の複層グレージング内において、周囲スペーサは、第3のガラスペインとVIGの第2のガラスペインとの間に特定の距離を維持する。周囲スペーサは、グレージングの縁部に沿って延在し、第2のガラスペインGP2の外側ペイン面と、第3のガラスペインGP3の内側ペイン面との間にその周囲にわたって位置付けられ、且つその間の距離を維持し、周囲スペーサ及び前記外側ペイン面は、内部空間Spを画定する。
【0077】
典型的には、前記スペーサは乾燥剤を含み、典型的には4mm~32mm、好ましくは4~22mm、好ましくは4~16mm、より好ましくは6~12mmの範囲の厚さを有する。概して、前記第2の内容積は、空気及び/又は不活性ガスで充填される。ガスの性質及びGP2とGP3との間の距離は、熱伝達及び/又は音響透過を適切に低減させるように選択される。内部空間Spは、乾燥空気、アルゴン、キセノン、クリプトン又はそれらの混合物、好ましくはアルゴン若しくは空気とアルゴンとの混合物から選択される空気及び/又は不活性ガスで充填される。
【0078】
内部空間Spを維持するその役割では、周囲スペーサは、当然ながら適切な気密特性を提供しなければならない。周囲スペーサが内部空間Spから不活性ガスを放出することを防ぎ、且つ/又は水蒸気が入るのを防ぐことが重要である。周囲スペーサは、典型的には、細長い形状及び一定の断面の物体である。周囲スペーサは、中実又は中空要素であり得る。
【0079】
周囲スペーサの例は、金属スペーサ、セラミックスペーサ、ガラススペーサ、ポリマースペーサ及びそれらの組合せ又は合成物を含む。ポリマー周囲スペーサの例は、ポリイソブチレンブチル混合物、シリコンゴム発泡体、ポリプロピレン、PVC、スチレンアクリロニトリル若しくは生体高分子及びこれらの混合物又は組合せを含む。ポリマー周囲スペーサの更なる例は、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリアミド及び/又はポリエステルなどの透明硬質材料を含み、これらは縁部に沿って透明性を提供し得る。金属、セラミック又はガラス周囲スペーサも適切な材料である。金属の例は、亜鉛メッキ鋼、ステンレス鋼、アルミニウム合金を含む。合成物周囲スペーサの例は、ポリプロピレン/ステンレス鋼を含む。
【0080】
本発明の好ましい実施形態では、複層グレージング内の周囲スペーサは、標準アルミニウムスペーサバーより良好な熱性能を有する暖かい縁部の周囲スペーサである。熱的に改良されたスペーサは、EN10077-1 annexEによって計算された0.007W/k以下の熱伝導値を有する。
【0081】
周囲スペーサは、それに接触するガラスペイン面に直接接着するように接着特性を有し得る。例えば、ポリイソブチレンブチル混合物(熱可塑性スペーサ、すなわちTPSとしても公知である)は、押し出された形で固有の気密性及び接着特性を有する。それらは、ガラスペインに良好に接着し、これらのガラスペインの平坦性の不規則を補填することができる利点を供給し、従って良好なシールを確保する。それらは、全ての可能な形状に適合する利点も供給する。
【0082】
周囲スペーサがシリコンゴム発泡体などの接着特性を有しない他の場合、第1の周囲シールは、第3のガラスペインと周囲スペーサとの間及び第2のガラスペインと周囲スペーサとの間に必要とされる。接着剤は気密性を提供し、構造の機械的強度に貢献する。第1の周囲シール材料の例は、ポリイソブチレン、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂及びそれらの混合物又は組合せを含む。好ましい第1の周囲シール材料は、ポリイソブチレン及び/又はアクリル樹脂である。
【0083】
周囲スペーサは、典型的には、乾燥材料を提供され得る。周囲スペーサが中空枠であるとき、乾燥材料は、中空空間を少なくとも部分的に充填する。中空空間を充填できる乾燥材料の例は、シリカゲル、ゼオライト及び他の分子篩である。周囲スペーサが中実高分子枠であるとき、乾燥材料は、ポリマーマトリックスに組み込まれ得る。そのような乾燥高分子の例は、一体型分子篩を含む高分子である。
【0084】
第1の周囲シールが必要なガスの気密性及び/又は機械的強度を十分に提供しない場合、第2の周囲シールは、単一ガラスペインとVIGとの間に存在し、周囲スペーサ及び第1の周囲シールを外部に向かって覆い得る。この第2の周囲シールは、内部空間の空気の気密性及びグレージングの機械的支持に役立ち得る。第2の周囲シールは、典型的には、ガラスの接着並びに恐らく水蒸気及びガスの気密性に加えて、非常に良好な機械的強度を有する。第2の周囲シール材料の例は、ポリイソブチレン、シリコン、多硫化物、ポリウレタン又はそれらの混合物若しくは組合せを含む。好ましい第2の周囲シール材料は、シリコン、多硫化物及び/又はポリウレタンである。
【0085】
本発明の複層グレージングは、典型的には、建物内、車、電車、船舶などの輸送機関内及び冷蔵庫、保冷庫などの電気製品内の仕切り内の開口を閉じるために使用される。仕切りは、典型的には、建物又は車の内部などの内部空間から外部環境を分離する。本発明では、複層グレージングは、単一ガラスペインGP3が外部環境又は内部空間に面し、好ましくは外部環境に面するように使用することができる。
【0086】
当業者は、本発明が上記の好ましい実施形態に決して限定されないことを認識する。むしろ、多くの修正形態及び変形形態が添付の特許請求の範囲内で可能である。本発明は、本明細書に記載され、特許請求の範囲に列挙された特徴及び好ましい特徴のあらゆる可能な組合せに関することに更に留意されたい。本明細書で使用される場合、用語「1つの(a)」、「1つの(an)」又は「その」は、少なくとも「1つ」を意味し、特に明記しない限り、「1つのみ」に限定するべきではないことが当業者に十分に理解される。更に、本明細書及び特許請求の範囲における用語第1、第2及び同種のものは、類似する要素間を区別するために使用され、必ずしも時間的、空間的、等級的又はいかなる他の手法のいずれの順序を記載するために使用されるものでもない。そのように使用された用語は、適切な環境下で交換可能であり、本明細書に記載された本発明の実施形態は、本明細書に記載又は例示された以外の順序で動作し得ることを理解されたい。
【0087】
以下の例は、例示目的のために提供され、本発明の範囲を限定することを意図するものではない。
【実施例】
【0088】
熱誘起応力は、VIG及び建物の外部に面する単一ガラスペインを含む、異なる二重グレージング構成に対して計算されてきた。単一ガラスペインは、VIGから15mmの周囲スペーサによって分離され、内部空間はアルゴンで充填される。単一ガラスペインは、二重グレージングの内部空間に面するその表面に太陽光制御コーティングを有する。VIGは、第1のガラスペインGP1及び二重グレージングの内部空間に面する第2のガラスペインGP2を含む。第1のガラスペインは、VIGの内容積に面するその表面に低放射率コーティングを有する。実施例1~3は、積層VIGの異なる実施形態を含む複層グレージングを例示する。本発明の実施例1及び3は、安全及び安心要件を満たしながら、低減された熱誘起応力を実証している。熱誘起応力は、以下の条件で解析線形解法によって計算され、第1及び第2のガラスペインに対して得られた最高値である。
・温度:ΔT=-29℃。ΔTは、第1のガラスペインの平均温度T1と第2のガラスペインの平均温度T2との温度差として計算され、
・ガラスペインは、ヤング率E=72GPa及びポアソン比μ=0.21を備えたフロート焼鈍ガラスペインであり、
・非拘束縁部、すなわち窓枠内に位置付けられない。
【0089】
実施例1は、二重グレージング内のVIGの第1のガラスペインが、中間層ポリマーを介して、6mmの単一ガラスシートを含む第1のパネルに積層されているとき、第1のパネルのm枚のガラスシート及び/又は第2のパネルのn枚のガラスシートの厚さの三乗の和(6mm)の立方根が、第1のガラスペイン及び第2のガラスペインの厚さの和(10.14mm)の126.7%以下であるように、熱誘起応力を5.79MPaから0.69MPaに低減することを例示する。実施例2は、そのような厚さの関係が満たされないとき(12mm>10.14mm)、低減された熱誘起応力の技術的利点を提供しないことを例示する比較例である。実施例3は、VIGの両方のガラスペインが同じ全幅(Zf1=Zs1)のガラスシートを含むパネルで積層されたときよりも、低減された熱誘起応力の利点が更に大きいことを更に実証している。
【国際調査報告】