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特表2024-536735溶融金属試料に対してレーザ誘起ブレークダウン分光法計測を実行するためのシステムおよび方法
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  • 特表-溶融金属試料に対してレーザ誘起ブレークダウン分光法計測を実行するためのシステムおよび方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-08
(54)【発明の名称】溶融金属試料に対してレーザ誘起ブレークダウン分光法計測を実行するためのシステムおよび方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/71 20060101AFI20241001BHJP
   G01N 33/205 20190101ALI20241001BHJP
【FI】
G01N21/71
G01N33/205
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2024515088
(86)(22)【出願日】2022-09-07
(85)【翻訳文提出日】2024-04-24
(86)【国際出願番号】 IS2022050007
(87)【国際公開番号】W WO2023037392
(87)【国際公開日】2023-03-16
(31)【優先権主張番号】63/260,992
(32)【優先日】2021-09-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521523198
【氏名又は名称】ディーティーイー イーエイチエフ
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100144451
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 博子
(72)【発明者】
【氏名】グドムンドソン スヴェイン ヒンリク
(72)【発明者】
【氏名】レオッソン クリスチャン
【テーマコード(参考)】
2G043
2G055
【Fターム(参考)】
2G043AA01
2G043BA03
2G043CA05
2G043EA10
2G043KA08
2G043KA09
2G043LA02
2G043NA13
2G055AA22
2G055AA23
2G055BA01
2G055EA05
2G055FA02
(57)【要約】
るつぼ(20)内の溶融金属試料(10)の冷却中に溶融金属試料の温度を監視することと、溶融金属試料の温度が計測温度判断基準を満たした後にLIBS計測を開始することとを行うように構成されたLIBS計測システムが開示される。本システムはまた、空のるつぼの温度を監視して、るつぼ温度が、(i)溶融金属試料がるつぼに供給され、計測温度判断基準を満たすために冷えた後に、溶融金属試料の十分に低い冷却速度がLIBS計測中に発生することを確実にする程度に高い、(ii)任意で、計測温度判断基準を満たすことおよびLIBS計測の開始前の溶融金属試料の不必要に長い冷却時間を回避する程度に低いことを確実にする際に支援し得る。本LIBS計測システムは、可動性かつ電池動力式でもよく、一体化した較正部(500)を含み得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶融試料の冷却中に前記溶融試料に対してレーザ誘起ブレークダウン分光法(LIBS)を実行する方法であって、
るつぼ内での前記溶融試料の冷却中に前記溶融試料の温度を監視して、前記溶融試料の前記温度を計測温度判断基準と比較することと、
前記溶融試料の前記温度が前記計測温度判断基準を満たすことを判定して、前記溶融試料に対するLIBS計測を開始することと
を含む、方法。
【請求項2】
前記溶融試料の導入前に、
1つまたは複数の回数だけ、前記るつぼが事前に加熱された状態にあり、前記溶融試料が不在である状態で、前記るつぼの温度を計測し、前記るつぼの前記温度をるつぼ温度判断基準と比較することと、
前記るつぼの前記温度が前記るつぼ温度判断基準を満たすと判定して、前記るつぼが前記溶融試料を受け取る準備ができている標示を提供することとをさらに含み、
前記るつぼ温度判断基準が、前記溶融試料が前記LIBS計測中に50℃未満だけ冷えるように構成されている、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記るつぼ温度判断基準が、前記最小るつぼ温度が超過されたときに前記るつぼ温度判断基準が満たされるような最小るつぼ温度を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記最小るつぼ温度が、摂氏度において、100℃と、前記溶融試料の前記融解点温度の60%との間にある、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記最小るつぼ温度が、摂氏度において、前記溶融試料の前記融解点温度の15%と、前記融解点温度の60%との間にある、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記るつぼの前記温度がるつぼ温度範囲内にあるときに、前記るつぼ温度判断基準が満たされる、請求項2に記載の方法。
【請求項7】
前記るつぼの前記温度が前記最大るつぼ温度と等しく、かつ前記溶融試料が前記るつぼに追加されたときに、前記溶融試料の前記温度が、1分以内に前記計測温度判断基準を満たすように、前記るつぼ温度範囲の最大るつぼ温度が定義される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記るつぼの前記温度が前記最大るつぼ温度と等しく、かつ前記溶融試料が前記るつぼに追加されたときに、前記溶融試料の前記温度が、30秒以内に前記計測温度判断基準を満たすように、前記るつぼ温度範囲の最大るつぼ温度が定義される、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記最大るつぼ温度が、摂氏度において、前記溶融試料の前記融解点温度の50%と、前記融解点温度の90%との間にある、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記LIBS計測が事前に選択された計測温度範囲内で実行されるように、前記計測温度判断基準が選択される、請求項1~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記計測温度判断基準が、事前に選択された計測温度を含み、前記LIBS計測が、(i)前記溶融試料の前記温度が前記事前に選択された計測温度と等しいことを判定し、かつ(ii)LIBS計測ヘッドを前記るつぼ上に位置決めした直後に開始される、請求項1~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記計測温度判断基準が、事前に選択された計測温度を含み、前記LIBS計測が、前記溶融試料の前記温度が前記事前に選択された計測温度と等しいことを判定した後に実行される、請求項1~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記事前に選択された計測温度が、前記溶融試料の前記融解点温度を、摂氏度において前記融解点温度の5%~25%の範囲の量だけ超過する、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記計測温度判断基準が、事前に選択された計測温度範囲を含み、前記LIBS計測が、前記溶融試料の前記温度が前記事前に選択された計測温度範囲内にある間に実行される、請求項1~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記計測温度判断基準が、前記るつぼ温度判断基準が満たされたときに、前記LIBS計測中の前記溶融試料の前記温度が前記るつぼの前記温度を超過するように構成されている、請求項2~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記るつぼが、事前に計測された溶融試料によって事前に加熱され、前記事前に計測された溶融試料が、前記るつぼの前記温度を計測する前に廃棄される、請求項2~15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記溶融試料がアルミニウムを含み、前記るつぼが、還元セルの上部に形成された氷晶石のクラストとの接触によって事前に加熱される、請求項2~15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
前記るつぼの前記温度および前記溶融試料の前記温度が、共通の温度センサを使用して計測される、請求項2~17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
前記るつぼの前記温度および前記溶融試料の前記温度が、接触しないで計測される、請求項2~18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
前記るつぼが、LIBS計測中にるつぼ支持体によって支持されている、請求項2~19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
LIBS計測が、LIBSサブシステムによって実行され、前記LIBSサブシステムの計測ヘッドが、停止位置から、前記計測ヘッドが前記るつぼ支持体の上方に存在する動作位置へ移動可能であり、遮熱材が、前記計測ヘッドが前記停止位置に存在するとき、前記るつぼから放出された熱から前記計測ヘッドを遮熱するように位置決めされている、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記るつぼが、金属製るつぼである、請求項2~21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
前記るつぼが、構造鋼から形成されている、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記るつぼの熱容量が、400J/Kと500J/Kとの間にある、請求項2~21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
前記るつぼの熱伝導率が、40W/m-Kと50W/m-Kとの間にある、請求項2~21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
前記るつぼが第1のるつぼであり、前記溶融試料が第1の溶融試料であり、前記方法が、
前記第1の溶融試料を、前記第1のるつぼから廃棄することと、
前記第1のるつぼの温度を計測することと、
前記第1のるつぼの前記温度が、過度に高い温度に起因して、前記るつぼ温度判断基準を満たさないことを判定することと、
前記第1のるつぼを、前記第1のるつぼの温度未満の温度を有する第2のるつぼと交換することと、
前記第1のるつぼを冷却しながら、前記第2のるつぼを用いて、LIBS計測を第2の溶融試料に対して実行することとをさらに含む、請求項6~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
前記第1のるつぼが、前記第1の溶融試料に対して実行される前記LIBS計測中に、一次るつぼ支持体によって支持され、
前記第1のるつぼを前記第2のるつぼと交換した後に、前記第1のるつぼが、冷却のために二次るつぼ支持体上に配置される、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記第1のるつぼを前記第2のるつぼと交換する前に、
前記第2のるつぼを事前に加熱することと、
前記第2のるつぼの温度を監視することと、
前記第2のるつぼが前記るつぼ温度判断基準を満たしたときを表示することと
をさらに含む、請求項26に記載の方法。
【請求項29】
任意で、前記第2のるつぼを用いて、1つまたは複数の追加の溶融試料に対してLIBS計測を実行することと、
前記第2のるつぼを空にすることと、
前記第2のるつぼの温度を計測することと、
前記第2のるつぼの前記温度が、過度に高い温度に起因して、前記るつぼ温度判断基準を満たさないことを判定することと、
前記第2のるつぼを、
前記第1のるつぼ、および
第3のるつぼのうちから選択されたるつぼと交換することと、
前記選択されたるつぼを用いて、別の追加の溶融試料に対してLIBS計測を実行することと
をさらに含む、請求項26~28のいずれか1項に記載の方法。
【請求項30】
前記LIBS計測が、持ち運び可能な支持構造上に存在するLIBSシステムによって実行され、前記LIBSシステムが、電池によって動力が供給されている、請求項1~29のいずれか1項に記載の方法。
【請求項31】
溶融試料の冷却中に前記溶融試料に対してレーザ誘起ブレークダウン分光法(LIBS)を実行する方法であって、
るつぼを事前に加熱することと、
溶融試料を前記るつぼに導入することと、
前記るつぼ内での前記溶融試料の冷却中に前記溶融試料の温度を監視して、前記溶融試料の前記温度を計測温度判断基準と比較することと、
前記溶融試料の前記温度が前記計測温度判断基準を満たすことを判定して、前記溶融試料に対するLIBS計測を開始することとを含む、方法。
【請求項32】
前記るつぼを事前に加熱した後、かつ前記溶融試料を前記るつぼに導入する前に、
1つまたは複数の回数だけ、前記るつぼの温度を計測して、前記るつぼの前記温度をるつぼ温度判断基準と比較することと、
前記るつぼの温度が前記るつぼ温度判断基準を満たすと判定して、前記溶融試料を前記るつぼに提供することとをさらに含み、
前記るつぼ温度判断基準が、溶融試料が前記LIBS計測中に50℃未満だけ冷えるように構成されている、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
レーザ誘起ブレークダウン分光法(LIBS)を実行するためのシステムであって、前記システムが、
温度センサと、
レーザ誘起ブレークダウン分光法(LIBS)サブシステムと、
前記温度センサおよび前記LIBSサブシステムに動作可能に結合された処理回路であって、前記処理回路が、少なくとも1つのプロセッサと、関連付けられたメモリとを備えており、前記メモリが、動作を実行するために、前記プロセッサによって実行可能な命令を含み、前記動作は、
前記温度センサを用いて、るつぼ内の前記溶融試料の冷却中の溶融試料の温度を監視することと、
前記溶融試料が計測温度判断基準を満たすことを判定して、前記溶融試料に対するLIBS計測を開始するように前記LIBSサブシステムを制御することと
を含む、処理回路とを備える、システム。
【請求項34】
前記溶融試料を前記るつぼに導入する前に、前記処理回路が、
前記温度センサを用いて前記るつぼの温度を計測することであって、前記るつぼが事前に加熱されている、計測することと、
前記るつぼの前記温度がるつぼ温度判断基準を満たすと判定した後に、前記るつぼが前記溶融試料を受け取る準備ができている標示を提供することとを含む動作を実行するようにさらに構成され、
前記るつぼ温度判断基準が、溶融試料が前記LIBS計測中に50℃未満だけ冷えるように構成されている、請求項33に記載のシステム。
【請求項35】
レーザ誘起ブレークダウン分光法(LIBS)を実行するための持ち運び可能システムであって、前記持ち運び可能システムが、
計測ヘッドを備えるレーザ誘起ブレークダウン分光法(LIBS)サブシステムであって、前記LIBSサブシステムが電池に接続可能である、LIBSサブシステムと、
一次るつぼ支持体であって、前記LIBSサブシステムの前記計測ヘッドが、停止位置から動作位置へ移動可能であり、前記動作位置において、前記一次るつぼ支持体によって支持されたるつぼ内に存在する溶融試料に対してLIBS計測を実行するために前記計測ヘッドが前記一次るつぼ支持体上に存在する、一次るつぼ支持体と、
追加のるつぼを支持および冷却できる二次るつぼ支持体と、
前記LIBSサブシステム、前記一次るつぼ支持体、および前記二次るつぼ支持体を支持するように構成された可動性支持構造と
を備える、持ち運び可能システム。
【請求項36】
前記計測ヘッドが前記停止位置にあるときに、前記一次るつぼ支持体内に存在する前記るつぼの温度を監視するように構成された温度センサと、
前記温度センサに動作可能に結合された処理回路であって、前記処理回路が、少なくとも1つのプロセッサと、関連付けられたメモリとを備えており、前記メモリが、動作を実行するために、前記プロセッサによって実行可能な命令を含み、前記動作が、
前記温度センサを用いて、前記一次るつぼ支持体によって支持された前記るつぼの温度を計測することと、
前記るつぼの前記温度が、過度に高い温度に起因して、るつぼ温度判断基準を満たしていないことを判定した後に、前記るつぼが、使用前に、前記二次るつぼ支持体内で冷却されるべきであるという標示を提供することとを含む、処理回路と
をさらに備える、請求項35に記載の持ち運び可能システム。
【請求項37】
前記るつぼおよび前記追加のるつぼをさらに備えており、前記るつぼおよび前記追加のるつぼが、金属製である、請求項35または36に記載の持ち運び可能システム。
【請求項38】
前記るつぼおよび前記追加のるつぼが、構造鋼から形成されている、請求項37に記載の持ち運び可能システム。
【請求項39】
前記るつぼおよび前記追加のるつぼをさらに備えており、前記るつぼおよび前記追加のるつぼの熱容量が、400J/Kと500J/Kとの間にある、請求項35または36に記載の持ち運び可能システム。
【請求項40】
前記るつぼおよび前記追加のるつぼをさらに備えており、前記るつぼおよび前記追加のるつぼの熱伝導率が、40W/m-Kと50W/m-Kとの間にある、請求項35または36に記載の持ち運び可能システム。
【請求項41】
レーザ誘起ブレークダウン分光法(LIBS)を実行するための持ち運び可能システムであって、前記持ち運び可能システムが、
計測ヘッドを備えるレーザ誘起ブレークダウン分光法(LIBS)サブシステムであって、前記LIBSサブシステムが電池に接続可能である、LIBSサブシステムと、
一体型較正装置と、
前記LIBSサブシステムおよび前記一体型較正装置を支持するように構成された可動性支持構造とを備えており、
前記LIBSサブシステムの前記計測ヘッドが、前記計測ヘッドが、前記るつぼ内に存在する溶融試料に対してLIBS計測を実行するために、るつぼ支持体の上方に存在する動作位置から、前記LIBSサブシステムの少なくとも1つのパラメータを較正するのに好適な較正計測を実行するために好適な較正位置へ移動可能である、持ち運び可能システム。
【請求項42】
前記一体型較正装置が、前記計測ヘッドが前記較正位置にあるときに、前記LIBSサブシステムの信号を較正するのに好適なLIBS較正基準物質を含む、請求項41に記載の持ち運び可能システム。
【請求項43】
前記一体型較正装置が、支持フレームを備えており、後続の較正計測を実行するために、前記計測ヘッドが前記較正位置に再度位置決めされたときに、前記LIBS較正基準物質の異なる領域が前記計測ヘッドによって光学的にインテロゲートされることができ、それにより、複数の較正計測中の前記LIBS較正基準物質の再利用を容易にするように、前記LIBS較正基準物質が、前記支持フレームに対して移動可能である、請求項42に記載の持ち運び可能システム。
【請求項44】
前記計測ヘッドが、距離センサを備えており、前記一体型較正装置が、一体型距離センサ較正装置であり、前記一体型距離センサ較正装置が、接触場所および目標場所を含み、前記計測ヘッドが前記較正位置にあり、かつ前記計測ヘッドの光軸に平行な方向に沿って前記計測ヘッドを下降させた後に前記接触場所と接触しているときに、既知の空間的オフセットが前記距離センサと前記目標場所との間にあり、それにより、前記距離センサの較正を容易にするように、前記接触場所が、前記一体型較正装置上に位置している、請求項41に記載の持ち運び可能システム。
【請求項45】
前記接触場所と接触した後に、前記計測ヘッドが前記方向に沿って移動されたときに、前記既知の空間的オフセットが維持されるように、前記一体型距離センサ較正装置が、弾性付勢されている、請求項44に記載の持ち運び可能システム。
【請求項46】
前記LIBS計測をしている間に前記るつぼを支持するための一次るつぼ支持体と、
追加のるつぼを支持および冷却できる二次るつぼ支持体とをさらに備える、請求項41~45のいずれか1項に記載の持ち運び可能システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、液体金属および合金の化学分析に関する。より具体的には、本開示は、液体金属および合金の化学組成分析のためのレーザ誘起ブレークダウン分光法の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
金属の生産において、生産された金属の化学組成を監視することは、非常に重要である。例えば、ホールエルー法による連続的電気分解を使用したアルミニウムの一次生産において、個々の還元セルからの金属の試料は、化学分析のために定期的に収集される。これは、各セルの動作条件のインジケータとしての役割も果たす金属における不純物のレベルを監視するために行われる。
【0003】
典型的な一次アルミニウム精錬所は、数百の還元セルを含み、正常な動作中では、それらのセルから試料が常に(最大で毎日)収集される。現在の標準的な実施は、液体金属からなる試料を還元セルから抽出することと、例えばASTM標準E716に準拠した標準的な試料鋳型を使用して、固体試料を鋳造することとを含む。固体試料は、その後、その化学組成を判定するために分析される。
【0004】
数十年間、アルミニウム業界における固体試料の分析の標準的な方法は、例えばASTM標準E1251に準拠したスパーク原子発光分光法(スパーク発光分光法もしくはスパークOESとしても知られている)であった。スパークOES分析を実行する前に、試料は、例えば、鋳造試料内の特定の深さまで機械的に圧延することによって適宜調製される必要がある。試料調製のステップの全てが、正確な分析結果を確実にするために重要である。
【発明の概要】
【0005】
るつぼ内の溶融金属試料の冷却中に溶融金属試料の温度を監視することと、溶融金属試料の温度が計測温度判断基準を満たした後にLIBS計測を開始することとを行うように構成されたLIBS計測システムが開示される。本システムはまた、空のるつぼの温度を監視して、るつぼ温度が、(i)溶融金属試料がるつぼに供給され、計測温度判断基準を満たすために冷えた後に、溶融金属試料の十分に低い冷却速度がLIBS計測中に発生することを確実にする程度に高い、(ii)任意で、計測温度判断基準を満たすことおよびLIBS計測の開始前の溶融金属試料の不必要に長い冷却時間を回避する程度に低いことを確実にする際に支援し得る。本LIBS計測システムは、可動性かつ電池動力式でもよく、一体化した較正部を含み得る。
【0006】
したがって、一態様では、溶融試料の冷却中に溶融試料に対してレーザ誘起ブレークダウン分光法(LIBS)を実行する方法であって、
るつぼ内での溶融試料の冷却中に溶融試料の温度を監視して、溶融試料の温度を計測温度判断基準と比較することと、
溶融試料の温度が計測温度判断基準を満たすことを判定して、溶融試料に対するLIBS計測を開始することとを含む、方法が提供される。
【0007】
本方法は、溶融試料の導入前に、
1つまたは複数の回数だけ、るつぼが事前に加熱された状態にあり、溶融試料が不在である状態で、るつぼの温度を計測し、るつぼの温度をるつぼ温度判断基準と比較することと、
るつぼの温度がるつぼ温度判断基準を満たすと判定して、るつぼが溶融試料を受け取る準備ができている標示を提供することとをさらに含み得、
るつぼ温度判断基準が、溶融試料がLIBS計測中に50℃未満だけ冷えるように構成されている。
【0008】
本方法のいくつかの例示的な実施態様では、るつぼ温度判断基準が、最小るつぼ温度が超過されたときにるつぼ温度判断基準が満たされるような最小るつぼ温度を含む。最小るつぼ温度が、摂氏度において、100℃と、溶融試料の融解点温度の60%との間にあり得る。最小るつぼ温度が、摂氏度において、溶融試料の融解点温度の15%と、融解点温度の60%との間にあり得る。
【0009】
本方法のいくつかの例示的な実施態様では、るつぼの温度がるつぼ温度範囲内にあるときに、るつぼ温度判断基準が満たされる。るつぼの温度が最大るつぼ温度と等しく、かつ溶融試料がるつぼに追加されたときに、溶融試料の温度が、1分以内に計測温度判断基準を満たすように、るつぼ温度範囲の最大るつぼ温度が定義され得る。るつぼの温度が最大るつぼ温度と等しく、かつ溶融試料がるつぼに追加されたときに、溶融試料の温度が、30秒以内に計測温度判断基準を満たすように、るつぼ温度範囲の最大るつぼ温度が定義され得る。最大るつぼ温度が、摂氏度において、溶融試料の融解点温度の50%と、融解点温度の90%との間にあり得る。
【0010】
本方法のいくつかの例示的な実施態様では、LIBS計測が事前に選択された計測温度範囲内で実行されるように、計測温度判断基準が選択される。
【0011】
本方法のいくつかの例示的な実施態様では、計測温度判断基準が、事前に選択された計測温度を含み、LIBS計測が、(i)溶融試料の温度が事前に選択された計測温度と等しいことを判定し、かつ(ii)LIBS計測ヘッドをるつぼ上に位置決めした直後に開始される。
【0012】
本方法のいくつかの例示的な実施態様では、計測温度判断基準が、事前に選択された計測温度を含み、LIBS計測が、溶融試料の温度が事前に選択された計測温度と等しいことを判定した後に実行される。事前に選択された計測温度が、溶融試料の融解点温度を、摂氏度において融解点温度の5%~25%の範囲の量だけ超過し得る。
【0013】
本方法のいくつかの例示的な実施態様では、計測温度判断基準が、事前に選択された計測温度範囲を含み、LIBS計測が、溶融試料の温度が事前に選択された計測温度範囲内にある間に実行される。
【0014】
本方法のいくつかの例示的な実施態様では、計測温度判断基準が、るつぼ温度判断基準が満たされたときに、LIBS計測中の溶融試料の温度がるつぼの温度を超過するように構成されている。
【0015】
本方法のいくつかの例示的な実施態様では、るつぼが、事前に計測された溶融試料によって事前に加熱され、事前に計測された溶融試料が、るつぼの温度を計測する前に廃棄される。
【0016】
本方法のいくつかの例示的な実施態様では、溶融試料がアルミニウムを含み、るつぼが、還元セルの上部に形成された氷晶石のクラストとの接触によって事前に加熱される。
【0017】
本方法のいくつかの例示的な実施態様では、るつぼの温度および溶融試料の温度が、共通の温度センサを使用して計測される。
【0018】
本方法のいくつかの例示的な実施態様では、るつぼの温度および溶融試料の温度が、接触しないで計測される。
【0019】
本方法のいくつかの例示的な実施態様では、るつぼが、LIBS計測中にるつぼ支持体によって支持されている。LIBS計測が、LIBSサブシステムによって実行され、LIBSサブシステムの計測ヘッドが、停止位置から、計測ヘッドがるつぼ支持体の上方に存在する動作位置へ移動可能であり、遮熱材が、計測ヘッドが停止位置に存在するとき、るつぼから放出された熱から計測ヘッドを遮熱するように位置決めされている。
【0020】
本方法のいくつかの例示的な実施態様では、るつぼが、金属製るつぼである。るつぼが、構造鋼から形成され得る。
【0021】
本方法のいくつかの例示的な実施態様では、るつぼの熱容量が、400J/Kと500J/Kとの間にある。
【0022】
本方法のいくつかの例示的な実施態様では、るつぼの熱伝導率が、40W/m-Kと50W/m-Kとの間にある。
【0023】
本方法のいくつかの例示的な実施態様では、るつぼが第1のるつぼであり、溶融試料が第1の溶融試料であり、方法が、
第1の溶融試料を、第1のるつぼから廃棄することと、
第1のるつぼの温度を計測することと、
第1のるつぼの温度が、過度に高い温度に起因して、るつぼ温度判断基準を満たさないことを判定することと、
第1のるつぼを、第1のるつぼの温度未満の温度を有する第2のるつぼと交換することと、
第1のるつぼを冷却しながら、第2のるつぼを用いて、LIBS計測を第2の溶融試料に対して実行することとをさらに含む。
【0024】
第1のるつぼが、第1の溶融試料に対して実行されるLIBS計測中に、一次るつぼ支持体によって支持されてもよく、第1のるつぼを第2のるつぼと交換した後に、第1のるつぼが、冷却のために二次るつぼ支持体上に配置される。
【0025】
いくつかの例示的な実施態様では、本方法は、第1のるつぼを第2のるつぼと交換する前に、
第2のるつぼを事前に加熱することと、
第2のるつぼの温度を監視することと、
第2のるつぼがるつぼ温度判断基準を満たしたときを表示することとをさらに含む。
【0026】
いくつかの例示的な実施態様では、本方法は、
任意で、第2のるつぼを用いて、1つまたは複数の追加の溶融試料に対してLIBS計測を実行することと、
第2のるつぼを空にすることと、
第2のるつぼの温度を計測することと、
第2のるつぼの温度が、過度に高い温度に起因して、るつぼ温度判断基準を満たさないことを判定することと、
第2のるつぼを、
第1のるつぼ、および
第3のるつぼのうちから選択されたるつぼと交換することと、
選択されたるつぼを用いて、別の追加の溶融試料に対してLIBS計測を実行することとをさらに含む。
【0027】
本方法のいくつかの例示的な実施態様では、LIBS計測が、持ち運び可能な支持構造上に存在するLIBSシステムによって実行され、LIBSシステムが、電池によって動力が供給されている。
【0028】
別の態様では、溶融試料の冷却中に溶融試料に対してレーザ誘起ブレークダウン分光法(LIBS)を実行する方法であって、
るつぼを事前に加熱することと、
溶融試料をるつぼに導入することと、
るつぼ内での溶融試料の冷却中に溶融試料の温度を監視して、溶融試料の温度を計測温度判断基準と比較することと、
溶融試料の温度が計測温度判断基準を満たすことを判定して、溶融試料に対するLIBS計測を開始することとを含む、方法が提供される。
【0029】
いくつかの例示的な実施態様では、本方法は、るつぼを事前に加熱した後、かつ溶融試料をるつぼに導入する前に、
1つまたは複数の回数だけ、るつぼの温度を計測して、るつぼの温度をるつぼ温度判断基準と比較することと、
るつぼの温度がるつぼ温度判断基準を満たすと判定して、溶融試料をるつぼに提供することとをさらに含み、
るつぼ温度判断基準が、溶融試料がLIBS計測中に50℃未満だけ冷えるように構成されている。
【0030】
別の態様では、レーザ誘起ブレークダウン分光法(LIBS)を実行するためのシステムであって、本システムが、
温度センサと、
レーザ誘起ブレークダウン分光法(LIBS)サブシステムと、
温度センサおよびLIBSサブシステムに動作可能に結合された処理回路であって、処理回路が、少なくとも1つのプロセッサと、関連付けられたメモリとを備えており、メモリが、動作を実行するために、プロセッサによって実行可能な命令を含み、動作は、
温度センサを用いて、るつぼ内の溶融試料の冷却中の溶融試料の温度を監視することと、
溶融試料が計測温度判断基準を満たすことを判定して、溶融試料に対するLIBS計測を開始するようにLIBSサブシステムを制御することとを含む、処理回路とを備える、システムが提供される。
【0031】
溶融試料をるつぼに導入する前に、処理回路が、
温度センサを用いてるつぼの温度を計測することであって、るつぼは事前に加熱され、
るつぼの温度がるつぼ温度判断基準を満たすと判定した後に、るつぼが溶融試料を受け取る準備ができている標示を提供することとを含む動作を実行するようにさらに構成され、
るつぼ温度判断基準が、溶融試料がLIBS計測中に50℃未満だけ冷えるように構成されている。
【0032】
別の態様では、レーザ誘起ブレークダウン分光法(LIBS)を実行するための持ち運び可能システムであって、持ち運び可能システムが、
計測ヘッドを備えるレーザ誘起ブレークダウン分光法(LIBS)サブシステムであって、LIBSサブシステムが電池に接続可能である、LIBSサブシステムと、
一次るつぼ支持体であって、LIBSサブシステムの計測ヘッドが、停止位置から動作位置へ移動可能であり、動作位置において、一次るつぼ支持体によって支持されたるつぼ内に存在する溶融試料に対してLIBS計測を実行するために計測ヘッドが一次るつぼ支持体上に存在する、一次るつぼ支持体と、
追加のるつぼを支持および冷却できる二次るつぼ支持体と、
LIBSサブシステム、一次るつぼ支持体、および二次るつぼ支持体を支持するように構成された可動性支持構造とを備える、持ち運び可能システムが提供される。
【0033】
いくつかの例示的な実施態様では、本システムは、
計測ヘッドが停止位置にあるときに、一次るつぼ支持体内に存在するるつぼの温度を監視するように構成された温度センサと、
温度センサに動作可能に結合された処理回路であって、処理回路が、少なくとも1つのプロセッサと、関連付けられたメモリとを備えており、メモリが、動作を実行するために、プロセッサによって実行可能な命令を含み、動作が、
温度センサを用いて、一次るつぼ支持体によって支持されたるつぼの温度を計測することと、
るつぼの温度が、過度に高い温度に起因して、るつぼ温度判断基準を満たしていないことを判定した後に、るつぼが、使用前に、二次るつぼ支持体内で冷却されるべきであるという標示を提供することとを含む、処理回路とをさらに備える。
【0034】
いくつかの例示的な実施態様では、本システムは、るつぼおよび追加のるつぼをさらに備えており、るつぼおよび追加のるつぼが、金属製である。るつぼおよび追加のるつぼが、構造鋼から形成され得る。
【0035】
いくつかの例示的な実施態様では、本システムは、るつぼおよび追加のるつぼをさらに備えており、るつぼおよび追加のるつぼの熱容量が、400J/Kと500J/Kとの間にある。
【0036】
いくつかの例示的な実施態様では、本システムは、るつぼおよび追加のるつぼをさらに備えており、るつぼおよび追加のるつぼの熱伝導率が、40W/m-Kと50W/m-Kとの間にある。
【0037】
別の態様では、レーザ誘起ブレークダウン分光法(LIBS)を実行するための持ち運び可能システムであって、持ち運び可能システムが、
計測ヘッドを備えるレーザ誘起ブレークダウン分光法(LIBS)サブシステムであって、LIBSサブシステムが電池に接続可能である、LIBSサブシステムと、
一体型較正装置と、
LIBSサブシステムおよび一体型較正装置を支持するように構成された可動性支持構造とを備えており、
LIBSサブシステムの計測ヘッドが、計測ヘッドが、るつぼ内に存在する溶融試料に対してLIBS計測を実行するために、るつぼ支持体の上方に存在する動作位置から、LIBSサブシステムの少なくとも1つのパラメータを較正するのに好適な較正計測を実行するために好適な較正位置へ移動可能である、持ち運び可能システムが提供される。
【0038】
本システムのいくつかの例示的な実施態様では、一体型較正装置が、計測ヘッドが較正位置にあるときに、LIBSサブシステムの信号を較正するのに好適なLIBS較正基準物質を含む。一体型較正装置が、支持フレームを備えてもよく、後続の較正計測を実行するために、計測ヘッドが較正位置に再度位置決めされたときに、LIBS較正基準物質の異なる領域が計測ヘッドによって光学的にインテロゲートされることができ、それにより、複数の較正計測中のLIBS較正基準物質の再利用を容易にするように、LIBS較正基準物質が、支持フレームに対して移動可能である。
【0039】
本システムのいくつかの例示的な実施態様では、計測ヘッドが、距離センサを備えており、一体型較正装置が、一体型距離センサ較正装置であり、一体型距離センサ較正装置が、接触場所および目標場所を含み、計測ヘッドが較正位置にあり、かつ計測ヘッドの光軸に平行な方向に沿って計測ヘッドを下降させた後に接触場所と接触しているときに、既知の空間的オフセットが距離センサと目標場所との間にあり、それにより、距離センサの較正を容易にするように、接触場所が、一体型較正装置上に位置している。接触場所と接触した後に、計測ヘッドが方向に沿って移動されたときに、既知の空間的オフセットが維持されるように、一体型距離センサ較正装置が、弾性付勢され得る。
【0040】
いくつかの例示的な実施態様では、本システムは、
LIBS計測をしている間にるつぼを支持するための一次るつぼ支持体と、
追加のるつぼを支持および冷却できる二次るつぼ支持体とをさらに備える。
【0041】
本開示の機能的かつ有益な態様のさらなる理解は、以下の詳細な説明および図面を参照することによって実現され得る。
【0042】
以下の図面を参照して、例示目的のみのために、実施形態を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0043】
図1】溶融金属試料に対してLIBS計測を実行するための例示的なシステムを示す図である。
図2A-2C】LIBS計測(図2A)の開始、溶融金属試料の温度が計測温度判断基準を満たすことを判定後のLIBS計測の開始(図2B)、および溶融金属試料の導入前の空のるつぼの計測前の溶融金属試料の温度の監視を示す。
図3】LIBS計測の開始前に溶融金属試料の受動的冷却および温度監視を利用して、溶融金属試料に対してLIBS計測を実行するための例示的な方法を示すフローチャートである。
図5A-5B】所与のるつぼの温度が、さらなる計測での使用には高温過ぎるとみなされたときのるつぼの交換を概略的に示す図である。
図6】LIBS計測ヘッドがるつぼ支持体の側方に停止されたときに、LIBS計測ヘッドを保護するために遮熱材が用いられる例示的な実施形態を示す図である。
図7A-7C】計測間にLIBS計測ヘッドに対する較正動作を実行するための例示的な較正サブシステムを示す図である。
図8】電池電源を含む例示的な可動性LIBS計測システムを示す図である。
図9】較正部を含む例示的な可動性LIBS計測システムを示す図である。
図10】(i)持ち運び可能LIBSシステムを使用して液体アルミニウム試料、および(ii)実験室ベースのスパークOESシステムを使用して固体アルミニウム試料に対して実行される元素不純物分析間の対応付けを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0044】
本開示の様々な実施形態および態様を、以下に説明する詳細を参照しながら説明する。以下の説明および図面は、本開示を例示するものであり、本開示を限定すると解釈されるべきではない。本開示の様々な実施形態の完全な理解を実現するために、多数の具体的な詳細が説明される。しかしながら、特定の例において、本開示の実施形態の簡潔な説明を提供するために、よく知られている詳細、または従来の詳細は、説明されない。
【0045】
本明細書で使用される場合、「備える(comprise、comprising)」という用語は、包括的かつオープンエンドで、排他的ではないと解釈されるべきである。特に、明細書および特許請求の範囲で使用される場合、「備える(comprise、comprising)」という用語およびその変形は、指定された特徴、ステップ、または構成要素が含まれることを意味する。これらの用語は、他の特徴、ステップ、または構成要素の存在を排除すると解釈されるべきではない。
【0046】
本明細書で使用される場合、「例示的な」という用語は、「一例、事例、例証としての役割を果たす」ことを意味し、本明細書で開示される他の構成よりも好ましい、または有益であると解釈されるべきではない。
【0047】
本明細書で使用される場合、「約」および「およそ」という用語は、特性、パラメータ、および寸法における変化など、値の範囲の上限および下限内に存在し得る変化を網羅することを意味している。特段の記載がない限り、「約」および「およそ」という用語は、プラスまたはマイナス25パーセント以下を意味する。
【0048】
本明細書で使用される場合、温度と関連した百分率値は、摂氏度における温度を指すことが意図される。
【0049】
特段の記載がない限り、あらゆる指定された範囲またはグループは、範囲またはグループ内の各々およびそれぞれの要素を個々に指し、ならびにそこに包含される各々およびそれぞれの可能な部分範囲または下位グループを指す簡略的な表現としてのものであり、その中の部分範囲または下位グループに関しても同様であることを理解されたい。特段の記載がない限り、本開示は、各々およびそれぞれの特定の要素および部分範囲または下位グループの組み合わせに関し、ならびにそれらが明示的に組み込まれている。
【0050】
上述したように、アルミニウム産業における化学分析の従来の手法は、固体試料に対するスパークOESの使用を採用する。残念ながら、この従来の手法は、正確な化学分析を達成する能力を妨げ得る多数の技術的問題を伴う。
【0051】
特に、試料調製プロセスは、誤差の発生をもたらし得る。例えば、誤差は、(i)試料採取が行われたときの溶融物または鋳型の温度変化、(ii)均一でない試料用型への注入、(iii)金属の冷却速度に関連した分離、(iv)試料の多孔性、割れ目、または隙間、(v)圧延後の過度な面粗さまたは平滑さ、および(vi)分析前の面の汚染を含むがこれに限定されない多数の潜在的原因に起因して、試料調製プロセス中に発生し得る。
【0052】
さらに、試料を鋳造し、後続の分析を実行するための従来の手法は、個々の試料間の混乱に起因して生じる誤差の可能性につながる場合がある。従来の化学分析ワークフローに関連したさらに別の問題は、鋳造試料の試験室への輸送の結果として生じる精錬所内部の交通によって引き起こされ得る安全上の問題である。液体金属を収集するステップと、固体試料を鋳造するステップと、中央分析施設へ試料を輸送するステップと、機械調製および化学分析を実行するステップとを考慮すると、金属が試料採取された時間から、分析結果をプラントのオペレータが利用可能になってプロセス上の決定を行うまで、何時間も経過し得る。
【0053】
上述した技術的課題およびワークフロー上の課題を認識し、注意深く考慮した本発明者は、化学分析に対する従来の手法と関連した問題を克服する化学分析の新しい主要を開発することに着手した。特に、本発明者は、上記の技術的問題を克服するために、堅牢で、高速、かつ正確な化学的試験を、リアルタイムかつインシチュなやり方で容易にする新しい化学分析モダリティが必要とされることを認識した。
【0054】
一次アルミニウム精錬所における還元セルのステータスをリアルタイムで監視するための異なる検出モダリティを適合するために、様々な試みがなされてきた。これらの手法のいくつかは、セル温度および浴化学的性質の分析、個々の陽極電流信号の分析、セル電圧雑音の分析、および任意で、セルの現在の効率、エネルギー消費、および稼働寿命に影響を及ぼす複数の追加のパラメータを含む。例えば、中央実験室における代替の時間がかかる試料調製およびX線分析を置き換える市販のSTARprobe(商標)(X. Wang: “Alcoa STARprobeTM - Update in further development for measuring cryolite properties,” TMS Light Metals 2016, pp. 397-402)を使用して、数分内で浴化学的性質、すなわち、浴比およびアルミナ(Al23)含有量を判定するために、示差熱分析が成功裏に適用されてきた。
【0055】
しかしながら、生産された金属中の化学的不純物のリアルタイムかつインシチュの計測は、上述したリアルタイム監視方法によって対処されていない異なる課題を提示する。レーザ誘起ブレークダウン分光法(LIBS)、すなわち液体および固体の計測に適用可能な原子発光分光法が、液体金属の化学分析のための有望な技術として出現した。特に、LIBSは、液体アルミニウムの不純物含有量を計測するために以前より適用されてきた(A.K. Rai, F.-Y. Yueh, J.P. Singh: “Laser-induced breakdown spectroscopy of molten aluminum alloy,” Appl. Opt. 42 (2003) pp. 2078-2084; J. Herbert, et al.: “The Industrial Application of Molten Metal Analysis,” TMS Light Metals 2019, pp. 945-952; S.H. Gudmundsson, et al.: “Accurate Real-Time Elemental (LIBS) Analysis of Molten Aluminum and Aluminum Alloys,” TMS Light Metals 2020, pp. 860-864)。
【0056】
工業環境におけるリアルタイムかつインシチュの試験へのLIBS適合の試みは、困難を伴っている。例えば、一次アルミニウム精錬所内部の複雑かつ危険な環境は、高温、埃、およびセルが開けられたときにセルから吐出される煙霧に起因して、LIBSシステムの使用についての多くの技術的課題を示している。加えて、強磁場が、還元セルの近傍において、動作している計測機器に対する課題を示している(例えば、Sun et al., Spectrochimica Acta Part B 142 (2018) 29-36参照)。小型の手持ち式LIBS分析器が、いくつかのベンダから利用可能となっているが、それらは、液体金属を分析するには好適ではなく、還元セルからのアルミニウムを監視するために必要な検出限界または正確性を提供しない。
【0057】
したがって、改善された化学組成分析のためのLIBSの見込みにかかわらず、溶融金属の高速かつ正確な化学分析を実現するのに十分に堅牢なリアルタイムかつインシチュの実施態様へのLIBSの適合を容易にするために、未解決の技術的課題を解決する必要が残っている。
【0058】
持ち運び可能な構成においてLIBS計測システムを適合することを試みたときに本発明者が直面した1つの問題は、LIBS計測中に溶融金属試料の温度の安定した計測を確実にする必要性である。具体的には、LIBS発光線の相対強度は、試料温度に依存する場合があり、その結果、連続したLIBS計測間における試料温度の変化は、不純物の報告濃度において顕著な誤差につながり得る。
【0059】
そのような問題は、場合によっては、LIBS計測前またはLIBS計測中に溶融金属試料の温度を能動的に制御することによって対処され得るが、そのような手法は、能動的な熱源の高電力消費に起因して持ち運び可能実施態様の場合に問題となる場合があり、電池を使用した持ち運び可能システムに動力供給する能力を妨げ得る。
【0060】
本発明者は、溶融金属試料の受動的冷却を用いるLIBSシステムを開発し、それによってLIBS計測前またはLIBS計測中の能動的加熱を回避することによって、上記の技術的問題の克服を求めていた。さらに、そのような実施態様は、溶融金属試料の冷却中に溶融金属試料の温度を監視し、監視された温度が事前に選択された計測温度判断基準を満たしたとき、またはその後にLIBS計測を開始することによって、試料温度の変化から顕著な計測誤差を発生させずに、後で計測された試料の正確かつ反復可能なLIBS計測を容易にするように適合され得ることが判定された。そのような実施態様は、LIBS計測プロセス前およびLIBS計測プロセス中の溶融金属試料の能動的加熱を必要としないことに起因して、可動性構成において特に有益であり得、システムを大幅に単純化し、電池動力式構成を容易にすることができる。さらに、この実施態様は、溶融の温度変化の影響を検出および補正するためにスペクトル分析にさらなる複雑性を発生させることを回避する。
【0061】
計測温度判断基準が満たされたときのみの溶融金属試料の温度の監視およびLIBS計測の開始は、異なる初期温度または計測用るつぼの異なる温度に起因する異なる冷却速度を有し得る異なる溶融金属試料(例えば、共通セルからの異なる試料または異なるセルからの異なる試料)に対してなされるLIBS計測が、それでもなお、LIBS計測中の共通温度において、または共通温度付近で実行されることを確実にする。それにより、そのような例示的な実施態様は、試料温度の変化に起因する計測誤差を回避、防止または軽減する。
【0062】
以下で説明するように、本例示的実施形態は、液体状態の金属を分析し、それぞれの還元セルに対する化学分析結果の非常に近い相関、直接相関および明確な相関を容易にすることによって、分析における誤差の発生源を低減することにおいて有益であり得る。本例示的システムおよび方法は、複数のポットからの試料を連続して計測するときに一貫した高速なワークフローをさらに容易にする。同様に、本例示的システムおよび方法は、単一の還元セルから抽出された一連の試料の高速計測を容易にするように、または単一の供給源または複数の供給源からの液体金属の複数の試料が高速かつ正確に分析される必要がある場合に同様のやり方で容易にするように用いられ得る。
【0063】
したがって、いくつかの例示的な実施態様では、持ち運び可能化学分析システムは、LIBS計測サブシステムと、溶融金属試料の受動的冷却中に溶融金属試料の温度を監視するように構成された温度センサとを含む。持ち運び可能計測システムは、計測された溶融金属試料の温度を比較し、事前に選択された計測温度判断基準が満たされた後にLIBS計測を開始するようにLIBS計測サブシステムを制御する。
【0064】
そのような持ち運び可能LIBSシステムの例示的な実施形態を、図1に示す。この例示的なシステムは、LIBS計測ヘッド200を含むLIBSサブシステムを含む。LIBSサブシステムは、以下でさらに詳細に説明されるように、100で示す制御および処理回路に動作可能に接続されるか、または接続可能である。LIBS計測ヘッド200は、LIBSレーザパルスを溶融金属試料10の表面上に送達させ、レーザパルスと目標材料との相互作用に応答して生成されたプラズマプルームからの発光を収集するための光ビーム送達サブシステムを含む。LIBS計測ヘッド200は、LIBSシステムの全てのサブ構成要素(LIBSレーザ源および検出器を含む)を含み得る。代替的に、LIBSシステムの構成要素のいくつか(例えば、LIBSレーザ源および/または検出器)は、LIBS計測ヘッド200と光学的および/または電気的に連通するハウジング内に提供され得る。
【0065】
溶融金属試料10は、例えば図2Aに示すように、金属溶融試料10の温度を監視しながら、LIBS計測を実行する前に、るつぼ20(例えば、レードル)内で受動的に冷却される。図1に示すように、るつぼは、るつぼ支持体30によって支持され得る。溶融金属試料の温度が事前に選択された計測温度判断基準を満たしたとき(またはその後)、LIBS計測は図2Bに示すように、開始される。
【0066】
再度図1を参照すると、本例示的なシステムは、溶融金属試料10の表面のインテロゲートを可能にするために位置決め可能な温度センサ210を含む。いくつかの例示的な実施態様では、この温度センサは、赤外線高温計または温度カメラなどであるがそれに限定されない非接触温度センサでもよい。そのようなセンサ応答は、計測されているそれぞれの材料の放射率について補正され得る。代替的に、温度センサは、熱電対または温度計などであるがそれに限定されない接触ベースの温度センサでもよい
【0067】
計測温度判断基準は、異なる溶融金属試料(例えば、共通セルからの異なる試料または異なるセルからの異なる試料)に対してなされるLIBS計測が同じ温度で、またはほぼ同じ温度で実行されることを確実にし、それにより、上述したように、試料温度の変化に起因する計測誤差を回避、防止、または低減する。例えば、LIBS計測ヘッド200は、LIBS計測が、(i)計測温度判断基準が満たされた直後、(ii)計測温度判断基準が満たされた後の固定遅延後、または(iii)計測温度判断基準が満たされた後の所定の時間間隔内に開始されるように制御され得、ここで、上記時間間隔は、観察された冷却速度に基づいて計算され得る。
【0068】
例示的な一実施態様において、計測された溶融金属試料10の温度が、計測温度、例えば、溶融試料の融解点温度を、5%、または例えば10%、または例えば15%、または例えば20%、または例えば25%だけ超過する計測温度などに到達するときに、計測温度判断基準が満たされ得る。溶融アルミニウムの例示的な場合に、750℃など、700~800℃の範囲から、計測温度が選択される。
【0069】
(例えば、非接触温度感知のための十分な視線を確保するために)溶融金属試料10の温度の監視中に、LIBS計測ヘッド200が停止位置(例えば、図1の201で示すような位置)に存在する場合に、LIBS計測の開始は、溶融金属試料10上におけるLIBS計測ヘッド200の再位置決め(例えば図1の230で示す)を含み得、任意で、溶融金属試料10の表面に対するLIBS計測ヘッド200の降下、その後の溶融金属試料10へのLIBSレーザパルスの送達を含んでもよい。代替的に、溶融金属表面の温度が溶融金属試料10の上方の計測位置に存在するLIBS計測ヘッドで計測可能な場合に、LIBS計測は、事前に選択された計測温度判断基準が、LIBS計測ヘッド200を横方向に移動させることなく、計測された溶融金属試料10の温度によって満たされた後に開始され得る。
【0070】
LIBS分析を実行前に、溶融金属試料の表面は、自動化されたスキマ(図1では図示せず)または手動のスキマでスキムされてもよい。このスキムのステップは、ドロス形成は試料表面の放射率に影響を及ぼすため、非接触温度計測の場合に、分析のために液体金属を曝露するため、ならびに液体金属の温度の適切な計測を確実にするために試料の表面からドロスまたは残りの浴材を除去するように作用する。LIBS計測を実行後、LIBS計測ヘッド200は、(例えば自動的に)後退され得、計測結果は、表示および記録(例えばデータベースへ記録)され得る。LIBS分析後、溶融金属試料は、還元セルに戻されるか、液体状態で他の場所で廃棄されるか、または固体化可能にされた後に廃棄または参照のために記憶されるかでもよい。いくつかの例示的な実施態様では、可動性分析システムは、廃棄された試料のための一体型の使い捨て容器を含み得る。
【0071】
LIBS計測中の溶融金属試料10の冷却速度がLIBS計測の正確率に影響を及ぼし得ることが、本発明者によって見出された。特に、冷却速度が十分に高い場合、LIBS計測ステップ中(例えば、およそ5秒など、数秒を含み得る)の結果として生じた温度変化は、不純物濃度の判定における不正確性をもたらし得る。さらに、LIBS計測ステップ中の温度の大きな変動によって、計測温度判断基準が満たされていることの判定の時刻を基準としたLIBS計測のタイミングが正確に制御されない場合、システムが計測誤差の影響を受けやすくする。同様に、高い冷却速度は、異なる液体金属試料の一連の計測の計測条件の一貫性に悪影響を及ぼし得る。
【0072】
この問題は、るつぼが溶融金属試料の高速冷却につながり得る材料から作製されるときに悪化し得る。例えば、LIBS計測後の溶融金属試料の高速除去を容易にするように、固体化された金属をるつぼから取り除くために、るつぼを衝撃面と接触させることは有用または必要であり得る。そのような場合に、破損のリスクなく衝撃に耐えられる非セラミック製るつぼを使用することは有益であり得る。好適なるつぼの一例は、構造鋼から作製されたるつぼなど、金属製るつぼである。通常、高熱容量および高熱伝導率を有するそのような金属製るつぼの場合、溶融金属試料は低温の金属るつぼ内で高速に冷え得ることになる。いくつかの例示的な実施態様では、そのようなるつぼの熱容量は、400J/Kと500J/Kとの間にあり得、るつぼ材料の熱伝導率は、40W/m-Kと50W/m-Kとの間にあり得る。
【0073】
溶融金属試料の高速冷却によって誘起された誤差を回避または低減するために、本発明者は、るつぼ20への溶融金属試料10の供給前にるつぼ20を事前に加熱することが有益であり得ることを見出した。そのような事前加熱は、溶融金属試料がるつぼ20によって受け取られた後に溶融金属試料10の冷却速度を減少させる、および/または制御する際に有益であり得る。加えて、事前加熱は、るつぼが、液体金属の導入前に水分がないことを確実にすることによって、液体金属試料採取プロセスの安全性を向上させる。
【0074】
るつぼの事前加熱は、多種多様な方法にしたがって実行され得る。いくつかの例示的な実施形態では、事前加熱は、還元セルからの利用可能な熱を利用することなどによって、持ち運び可能LIBS計測システムの外部で実行される。例えば、アルミニウム精錬所が関わる例示的な実施態様では、るつぼは、るつぼが所望の温度に達するための十分に長い期間だけ還元セルの内側に形成された氷晶石のクラストと接触させることによって、事前に加熱され得る。
【0075】
るつぼを事前に加熱した後、溶融金属試料は、るつぼ(例えば計測レードル)に供給され得る。例えば、液体溶融金属の試料は、試料採取用レードルを使用して還元セルから溶融金属を収集するなど、還元セルから金属を試料採取するために従来使用されている方法を使用して抽出される。例えば、溶融金属の試料は、例えばそのような試料採取用レードルを使用して人間のオペレータによって、試料るつぼに対して手動で導入され得る。加えて、試料は、混合炉、保持炉などの他のタイプの供給源から、手動または自動で抽出されてもよく、ここで、試料採取用レードルは、いくつかの実施形態では、計測中の試料を保持する試料るつぼとしても使用され得る。
【0076】
いくつかの例示的な実施形態では、るつぼ20が、冷却速度がLIBS計測中に過度に高速でないことを確実にするために、十分な量だけ事前に加熱されたことを確実にすることは有益であり得る。例えば、溶融金属試料10をるつぼ20に導入する前に、るつぼ20の温度が計測され、るつぼ20が溶融金属試料10を受け取る前に十分に事前に加熱されたかどうかを評価するために、るつぼ温度判断基準と比較され得る。計測温度判断基準が、るつぼ温度判断基準が満たされたときに、LIBS計測中の溶融試料の温度がるつぼの温度を超過するように構成され得る。
【0077】
いくつかの例示的な実施態様では、溶融金属試料10の温度を監視するために用いられる温度センサ210は、空のるつぼ20の温度を計測するために用いられ得る。そのような例示的な実施態様を図2Cに示す。代替的に、溶融金属試料の温度を監視するため、および溶融金属試料10の供給前のるつぼ20の温度を計測するために、別個の温度センサが用いられ得る。
【0078】
いくつかの例示的な実施形態では、るつぼ温度判断基準は、計測されたるつぼ温度が、事前に選択された最小温度値、例えば100℃~溶融金属の融解点温度の60%、または例えば融解点温度(例えばアルミニウムの場合100~400℃)の15~60%の範囲内にある最小温度を超過したときに満たされるように定義されてもよく、それにより、溶融金属試料10がるつぼ20に供給された後の溶融金属試料10の冷却速度が特定の範囲内にあることを確実にする。例えば、るつぼ温度判断基準は、溶融金属試料がLIBS計測中に50℃未満だけ冷える、または例えば、LIBS計測中に20℃未満だけ冷える、例えば、LIBS計測中に10℃未満だけ冷える、または例えば、LIBS計測中に5℃未満だけ冷えるように選択され得る。
【0079】
るつぼ20の許容初期温度に対する上限がない場合、るつぼ20は、いくつかの場合に、るつぼ温度判断基準を満たしながら、溶融金属試料10が、計測温度判断基準を満たす温度まで冷える前に過度な時間が経過する程度に非常に高い温度まで事前に加熱される場合がある。そのような場合に、後続の試料を収集および分析するために必要な時間が、対応して増加される。そのような場合は、るつぼ温度判断基準が上限温度値を超過するるつぼ温度によって満たされないようにるつぼ温度判断基準を定義することによって、回避され得る。例えば、るつぼ温度判断基準は、融解点温度の50~90%の範囲(例えば、アルミニウムの例示的な場合では、およそ330~600℃の範囲)内にあるように選択された最大るつぼ温度を含み得る。加えて、最大るつぼ温度限界は、溶融金属へのるつぼ材料の汚染度が最小限に抑えられることを確実にする。
【0080】
例えば、るつぼ温度判断基準は、るつぼ20の温度(溶融金属試料10を受け取る前)が事前に定義された温度範囲、例えば、100℃~溶融試料の融解点温度の60%の範囲、または例えば、溶融試料の融解点温度の15~60%の範囲(アルミニウムの例示的な場合では100~400℃)、または融解点温度の30~75%の範囲(アルミニウムの例示的な場合では例えば200~500℃)にあるときに満たされ得る。したがって、事前に定義された温度範囲は、溶融金属試料10が、るつぼ温度判断基準を満たするつぼに供給されたときに、(溶融金属試料の温度が計測温度判断基準を満たすとき)溶融金属が正確なLIBS計測を可能にする程度に十分にゆっくりとした速度で冷えるように、かつ溶融金属試料が十分に短い時間内で計測温度判断基準を満たす温度まで冷えるように「ゴルディロックス」範囲の特徴を有する。例えば、るつぼ計測判断基準によって許容される最大温度は、るつぼに供給された後の溶融金属試料が、1分以内、または30秒以内、または15秒以内に計測温度判断基準を満たす温度まで冷えるように、定義され得る。
【0081】
いくつかの例示的な実施態様では、空のるつぼ20の温度がるつぼ温度判断基準を満たしたときに、標示がオペレータに提供され得る。好適な標示の非限定的例としては、表示メッセージ、記号または色および可聴アラームまたはメッセージが挙げられる。標示は、オペレータに、空のるつぼ20が溶融金属試料を受け取る準備ができていることを知らせるために用いられ得る。他の例示的な実施態様では、空のるつぼ20の温度が表示されてもよい。そのような場合に、好適なるつぼ温度判断基準(例えば、最小るつぼ温度範囲または所望のるつぼ温度範囲)の知識を有するオペレータは、表示された温度が既知のるつぼ温度判断基準を満たしたときに、金属溶融試料をるつぼに供給してもよい。
【0082】
ここで図3を参照すると、図1に示したようなシステムなどのLIBS計測システムを使用して溶融試料のLIBS分析を実行する例示的な方法を示すフローチャートが提供されている。事前に加熱された空のるつぼ(溶融金属試料が入ってない)が最初に提供され、その温度が、ステップ300で計測される。るつぼ温度判断基準は、ステップ310で評価される。312で、るつぼ温度が低過ぎることに起因して、るつぼ判断基準が満たされない場合、オペレータは、314に示すようにるつぼを加熱し、300でるつぼ温度が再計測および再評価されてもよい。310に示すように、るつぼ温度が高過ぎる場合、るつぼは受動的に冷えるようにして置かれ、300で、るつぼ温度が再計測および再評価される。
【0083】
るつぼ温度判断基準が満たされると、320で、るつぼが溶融金属試料を受け取る準備ができたという標示が提供され得る。溶融金属試料がるつぼ内に受容された後、330で示すように、冷却中の溶融金属試料の温度が監視され、340で、計測温度判断基準が評価される。計測温度判断基準が満たされたときに、350で示すように、LIBS計測が開始される。
【0084】
図3を参照して上述した例示的な方法において、空のるつぼは、ステップ310でその計測温度がるつぼ温度判断基準を満たさないときに、受動的に冷却が可能になる。例えば、るつぼが複数のLIBS計測のために用いられるとき、るつぼ温度は、繰り返しの露光に起因して上昇して溶融金属試料を加熱する場合があり、前の溶融金属試料が廃棄された後のるつぼの温度は、るつぼ温度判断基準によって許容される最大温度を超過する場合がある。残念ながら、上述のように、そのような過熱したるつぼを受動的に冷却するステップは、特に、計測間で最小の可能な時間遅延で、多くの試料を連続して計測することが望ましいときに、望ましくない遅延を計測プロセスで発生させる場合がある。
【0085】
過熱したるつぼを受動的に冷却する際の遅延に関連した問題は、るつぼを、より低温になるように事前に加熱された異なるるつぼと交換することによって克服され得る。このプロセスは、図5Aに概略的に示されており、過熱したるつぼ20が第2の事前に加熱されたるつぼ22と交換されている。
【0086】
図4は、連続的な計測における計測間遅延を最小限に抑えるために、過熱したるつぼの交換を含む例示的な方法を示すフローチャートを提供する。この例示的なフローチャートは、図3のステップ316で開始し、400で示すように、空のるつぼがるつぼ温度判断基準を満たすには高温過ぎる温度を有するという判定に対応している。410で示すように、このるつぼは、第2の事前に加熱されたるつぼと交換される。第2のるつぼは、るつぼ温度判断基準を満たす温度を有してもよく(図5Aに示す通り)、またはるつぼ判断基準の最大許容温度を超過する温度であるが、それでも第1のるつぼの温度未満である温度を有してもよく、それによって、結果的に、第2のるつぼがるつぼ温度判断基準を満たす温度まで冷える前の時間遅延が短くなる。
【0087】
第1の(過熱した)るつぼは、第2のるつぼと交換された後、LIBS計測システムと一体型のるつぼ保持部(例えば共通の可動性支持体と一体になっている)上で支持されてもよい。図5Aに示すように、第1のるつぼ20は、第2のるつぼを支持するために以前に用いられていたるつぼ支持体32(例えば、レードル支持ブラケット)上に配置され得る。代替的に、第1のるつぼ20は、別個のるつぼ支持体上に配置されてもよい。るつぼ支持体32は、その効果的なサーマルマスの放熱率および取り付けられたるつぼとの熱接触度がるつぼの好適な高速冷却を促進するように構成され得る。
【0088】
次いで、図4のステップ420で示すように、第2のるつぼは、図3のステップ330~350の後に新しい溶融金属試料に対してLIBS計測を実行するように用いられる。さらに、ステップ424で示すように、このプロセスは、第2のるつぼを再利用して、異なる試料に対して1回または複数回繰り返され得る。
【0089】
第2のるつぼの使用中に、第1のるつぼは、追加のるつぼ支持体32によって支持され、その最初に過熱した状態から受動的に冷える。この場合も、図5Aに示すように、第1のるつぼがるつぼ温度判断基準を満たすときを判定するために、第1のるつぼの温度が断続的に計測されてもよい。例えば、温度センサ210がLIBS計測ヘッド200を基準として固定されている場合に、LIBS計測ヘッド200は、LIBS計測のためのLIBS計測ヘッド200の使用間にるつぼ支持体32内に存在する第1のるつぼ20のインテロゲーションを容易にするために並進される。代替の例示的な実施態様では、追加のるつぼ支持体32内に存在するるつぼの温度を監視するために、別個の温度センサが提供され得る。例えば、温度センサ(例えば、赤外線高温計またはサーモカップルセンサなどであるがそれに限定されない)は、例えば図1の222に示すように、第1のるつぼの温度を監視するために追加のるつぼ支持体32と一体化されていてもよい。この場合も、第1のるつぼがるつぼ温度計測判断基準を満たしたときの標示がオペレータに提供され得る。代替的に、第1のるつぼの温度は、オペレータが、第1のるつぼが所定のるつぼ温度判断基準を満たしたときを判定できるようにするために、表示されてもよい。
【0090】
再度図4を参照すると、第2のるつぼの繰り返しの使用後、第2のるつぼの温度はるつぼ計測判断基準を満たさなくなっており、第2のるつぼは、さらなる使用前に冷却されることが必要な場合がある。そのような場合に、その温度がるつぼ温度判断基準を満たすまで第2のるつぼが受動的に冷えるのを可能にするのではなく、第2のるつぼが、別のるつぼと交換されてもよい。
【0091】
ステップ450は、第2のるつぼが、事前に加熱された第3のるつぼと交換される例示的なシナリオを示す。代替的に、ステップ460に示すように、第1のるつぼがLIBS計測のために第2のるつぼを使用中に冷えたため、第2のるつぼが第1のるつぼと交換されてもよい。これらの選択肢が図5Bに概略的に示されており、図5Bは、第2のるつぼ22が第1のるつぼ20または第3のるつぼ24(第3のるつぼ支持体34上に存在する)のいずれかと交換されることを示している。次いで、第2のるつぼは、445で示すように、受動的に冷却される一方で、ステップ455および465でそれぞれ示すように、第1のるつぼ第3のるつぼを用いて追加の溶融金属試料に対してLIBS計測を行う。
【0092】
上記の例示的な実施態様が1つまたは2つの追加のるつぼ支持体を用いるが、るつぼの冷却のための追加の場所を提供するために、3つ以上のるつぼ支持体が含まれてもよい。必要とされるるつぼ支持体の数は、分析速度と、複数の試料採取点からの計測時の連続動作を確実にすることの必要性とに依存し得る。
【0093】
上記で説明したように、いくつかの例示的な実施態様では、LIBS計測ヘッド200は、LIBS分析を行う前に停止位置に存在する場合がある。例えば、LIBS計測ヘッドは、非接触温度感知のための視線を確保するために溶融金属試料の監視中に停止位置まで横方向に並進(例えばロボットによる並進)されてもよい。LIBS計測ヘッドはまた、以下でさらに詳細に説明されるように、1つまたは複数の較正ステップを実行するために停止位置まで並進されてもよい。
【0094】
図6は、LIBS計測ヘッド200が、温度センサ210による溶融金属試料の非接触温度感知を可能にするために、横方向の位置に停止されているシステム状態を示す。LIBS計測ヘッド200は、るつぼ20が放射する熱からLIBS計測ヘッド200を遮熱するように位置決めされた遮熱材220を含む。図6は、LIBS計測ヘッド200が停止位置に存在するときに、遮熱材220がLIBS計測ヘッド200とるつぼ20との間に存在するように、遮熱材220がLIBS計測ヘッド200に固定されている非限定的な例示的実施態様を示す。
【0095】
いくつかの例示的な実施形態では、1つまたは複数の較正デバイスが用いられて、LIBS計測ヘッド200が停止位置に存在するときにLIBS計測ヘッド200を較正してもよい。図1は、システムが、停止位置201におけるLIBS計測ヘッド200によってアクセス可能な較正部500を含む例示的な実施態様を示す。図1に示すように、較正部500は、502で示すように、処理および制御回路100とインターフェース接続されてもよい(例えば、処理および制御回路100によって制御されてもよい)。支持体50が可動性の支持体であり、可動性LIBSシステムが非実験室環境で用いられる場合に、一体型の較正部が用いられて、高温および埃などの困難な環境条件が存在したとしてもシステムの正確な動作を確実にすることができる。
【0096】
例えば、LIBS分析のいくつかの実施態様中に、液体金属面と、励起光学系および検出光学系(例えば、LIBS計測ヘッド200の遠位領域)との距離が変わらないことを確実にすることは有益であり得る。この距離は、LIBS計測ヘッド200の機械的並進機構に対してフィードバックを提供する任意の好適なタイプの距離センサを用いて制御され得る。しかしながら、計測実行中、LIBS計測ヘッドは、周囲温度の顕著な変化ならびに試料および計測用レードルからの放熱に起因する加熱の影響を受ける場合があり、この加熱は、アルミニウム精錬所のポットルームなどの非実験室環境で悪化し得る。高速かつ反復可能な計測を確実にするために、較正部は、システム(例えば、共通の可動性支持構造によってLIBSシステムを用いて支持されている)に組み込まれてもよく、それによって距離センサは、所与の計測(任意で各計測)の前に較正されることが可能になり、したがってシステムにおける熱ドリフトを少なくとも部分的に補正する。
【0097】
距離センサを較正するための較正部の例示的な実施態様を、図7Aに示す。LIBS計測ヘッド200は、距離センサ510を含み、LIBS計測サブシステムの残り(例えば電源構成要素および検出構成要素を含む)が、概略的に205で示されている。LIBS計測ヘッド200は、るつぼから遠隔の停止位置に示されており、距離センサは、距離センサ較正部520の較正基準面522上に存在する。較正基準面522は、距離センサ510を較正するために用いられ得る固定基準位置を規定する。例えば、LIBS計測ヘッド200は、LIBS計測ヘッド200が接触場所526に接触するまで(この接触は、例えば導電性または機械的接触センサなどの接触センサによって検出可能である)、LIBS計測ヘッド200の光軸に平行な方向で(手動またはロボットで)降下させ得る。LIBS計測ヘッド200の遠位端(またはLIBS計測ヘッドの遠位の領域内の別の好適な場所)と距離センサ較正部520の接触場所526との接触は、距離センサ510および基準面522が既知の距離だけ分離されることを確実にし、それによって距離センサ510による基準面のインテロゲーションを介する距離センサ510の較正を容易にする。
【0098】
図7Bは、代替の例示的な実施態様を示しており、距離センサ較正部530は、例えば1つまたは複数のばね535または他の好適な弾性変形可能な構成要素によって弾性付勢されており、1つまたは複数のばね535または他の好適な弾性変形可能な構成要素は、LIBS計測ヘッド200が接触面526と接触した後にさらに降下されるときに、別個の接触センサに依存することを必要とせずに、既知の空間的オフセットが距離センサ510と基準面522との間に維持されることを確実にするために用いられ得る。1つまたは複数のばね535はまた、接触場所526が接触面として設けられたとき、接触平面を画定する複数の接触場所として設けられたときに、LIBS計測ヘッド200に対して基準面522を正確かつ反復可能に均一の高さにすることを確実にすることができ、有益である。
【0099】
図7Cは、LIBSサブシステムの光学応答を較正するための較正部540の一例を示す。例示的な較正部540は、LIBSサブシステムの信号応答におけるドリフトを補正するために、既知の化学的濃度を有する基準物質545の入れ替え可能な固体基準試料を支持する(例えばブラケットによる)。例えば、固体基準試料の分析は、同じ基準試料の以前の分析と比較され、システムは、検出された基準物質の濃度の観察された差分を調整するように較正される。いくつかの例示的な実施態様では、較正部は、後続のドリフト補正計測が実行されたときに、基準物質が新しい場所で計測され得ることを確実にするための並進および/または回転機能を有益なことに容易にすることができる。回転および/または並進機能はまた、較正部上に取り付けられた複数の基準物質にインテロゲートするために使用され得る。較正基準部540のこの回転および/または並進は、例えば図1の502で示すように、制御および処理回路100によって自律的に制御され得る。図7Cは、モータ550が、後続の較正を実行するときにLIBSインテロゲーション場所を中心として固体基準試料を回転させるように制御される例示的な実施態様を示す。
【0100】
いくつかの例示的な実施形態では、較正部は、LIBS計測システムの応答を較正するために、距離センサの較正および1つまたは複数の基準物質の使用を含むがそれに限定されない複数の較正を容易にし得る。いくつかの例示的な実施態様では、1つまたは複数の較正ステップが、例えば、選択された数の試料が計測された後、検出周辺条件における検出された変化の後、および/または経過時間の後など、1つまたは複数の条件が満たされたときに自律的に実行され得る。
【0101】
再度図1を参照すると、LIBSサブシステムは、支持体50上に支持されている。上述したように、いくつかの例示的な実施態様では、支持体50は、可動性(持ち運び可能)支持体であり得る。例えば、支持体50は、半自律式(自動運転)車両を含む、手動で移動可能カート(手押し車)または発電機付きの乗り物(例えば、電池動力式並進を有するカート)であり得る。いくつかの例示的な実施形態では、持ち運び可能LIBSシステムが電池動力式でもよい。上述のように、LIBS計測の開始前の受動的冷却および温度監視を含む本例示的方法は、高電力要件を有する能動的加熱源がないため、電池動力式の実施態様に非常に適している。
【0102】
図8は、LIBSサブシステム(200、205)、LIBS計測を実行するための計測位置でるつぼを支持するための一次るつぼ支持体30と、LIBS計測中に使用される前の受動的冷却中に追加のるつぼを支持するための少なくとも1つの追加のるつぼ支持体(この例示的なシステムは、2つの追加のるつぼ支持体32および34を含む)と、電池電源260と、可動性支持体55とを含む可動性LIBS計測システムの一例を示す。図9は、可動性構成における較正部500の包含を示しており、較正部500、LIBSサブシステム、および1つまたは複数のるつぼ支持体(例えば、るつぼ支持体30、32および34)が可動性支持体55によって支持されている。
【0103】
本例示的実施形態の多くが持ち運び可能LIBSシステムに関するが、他の例示的な実施形態では、LIBS計測サブシステムを支持する支持体が固定支持体でもよいことを留意されたい。例えば、本例示的システムおよび方法のいずれかは、プラント/精錬所または実験室環境のいずれかにおける炉、樋、または液体金属の他の固定発生源での実施態様に好適なシステム構成などの持ち運び可能でない構成に適合され得る。そのような設定において、試料採取は、有益なことに、(例えば、ロボットアームを使用することによって)自動化され得る。
【0104】
さらに、上述の例示的な実施態様の多くが、LIBS分析前の溶融金属試料の受動的冷却および/またはさらなる使用の前の過熱したるつぼの受動的冷却を用いるが、いくつかの実施態様は、能動的加熱および/または能動的冷却を用いることができることを理解されたい。例えば、いくつかの例示的な実施態様では、るつぼ支持体上に存在する過熱した空のるつぼを冷却するために、強制空気が用いられ得る。るつぼの温度を計測している温度センサからのフィードバックは、空のるつぼを、るつぼ温度判断基準を満たす温度にするように冷却デバイスを制御するために用いられ得る。能動的加熱はまた、任意で、事前に加熱された1つまたは複数のるつぼを用いてもよい。例えば、いくつかの例示的な実施態様では、1つまたは複数のるつぼ支持体は、熱源(例えば誘導発熱体もしくは抵抗発熱体、またはガスバーナー)を含んでもよい。るつぼの温度を計測している温度センサからのフィードバックは、空のるつぼを、るつぼ温度判断基準を満たす温度にするように熱源を制御するために用いられ得る。いくつかの例示的な実施態様では、システムは、1つまたは複数のるつぼの温度を制御するために、能動的な加熱デバイスおよび冷却デバイスの両方を含んでもよい。
【0105】
他の例示的な実施態様では、LIBS計測前またはその間の溶融金属試料の温度を安定化するために、能動的加熱(誘導加熱など)および/または冷却(強制空気冷却など)が、るつぼとともに溶融金属試料の温度の監視と組み合わせて用いられてもよい。
【0106】
本開示の実施形態は、液体状態のアルミニウム、鋼、鋼合金、鉄、鉄合金、銅、亜鉛、鉛、ならびに他の金属および金属合金などであるがそれに限定されない多種多様な金属および金属合金に適用されることができ、上記で言及したような工業的環境および用途において有用であり得る。
【0107】
本開示は、任意特定の元素の分析に限定されることは意図されておらず、金属もしくは合金試料の主成分またはトレース成分の濃度の両方を判定するために使用され得ることが理解されよう。したがって、いくつかの実施形態では、本方法および/または装置は、液体金属もしくは合金試料において、アルミニウム、ケイ素、リン、硫黄、塩化物、カルシウム、マグネシウム、ナトリウム、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、ジルコニウム、ストロンチウム、ニオブ、モリブデン、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、カドミウム、錫、アンチモン、ウォルフラム、レニウム、イリジウム、白金、金、水銀、鉛、および蒼鉛から選択された1つまたは複数の元素の真バルク濃度を判定するためである。本方法はまた、水素、リチウム、ベリリウム、ホウ素、および炭素などの特定の他の分析方法を用いて検出するのが困難な非常に軽量な不純物元素を定量化するのに適している。さらに、微量不純物は、例えば試料採取用レードルおよび計測用るつぼなどの試料採取器具自体から液体金属に導入される場合があることが理解されよう。本開示は、そのような汚染物質の計測および識別に等しく適用され得る。
【0108】
再度図1を参照すると、LIBSシステムは、通常、試料から原子発光を生成して受け取るための励起および検出手段を含む。これは、従来のLIBS方法、二重共線パルスまたは非共線パルスを用いたLIBS、組み合わされたLIBS/放電方法などの使用を含むがそれに限定されない、本発明が属する分野で知られているレーザ誘起プラズマ励起方法論の全ての変形を含むがそれらに限定されない。
【0109】
いくつかの例示的な実施形態では、スペクトル分析は、LIBS方法に基づいており、連続した1つまたは複数のレーザパルスが励起光学系を介して試料表面に対して方向付けられ、試料から射出された光が受光光学系を介して受光され、検出された光のスペクトル情報を記録するために検出器に伝送される。光検出方法および後続の検出された発光の処理は、それ自体が当業者にとって知られているものである。したがって、スペクトル情報から、1つまたは複数の発光ピークが分析され、典型的に、1つまたは複数の元素の定量的判定を実現するために較正値と比較される。
【0110】
LIBS計測サブシステムの励起光学系および受光光学系は、完全に別個の光学素子でもよく、または部分的に同じ光学素子を含んでもよい。好ましい実施態様では、励起手段および受光光学系は、各個別の励起事象のために試料表面から所定の距離に正確に位置決めされ得る。機側動作中の経時的なこの位置決めの正確性は、上述したように、有益なことに、距離較正機能を使用して維持される。
【0111】
様々な例示的な実施形態で用いられるパルス状の励起レーザは、通常、現在のLIBS構成で使用されるような従来のタイプであり得る。本発明によれば、安定した励起条件は、十分に大きくかつ再生可能な量の液体金属試料が励起中に切除されるように、さらに試料の切除された部分の化学組成が試料全体の組成を表すように構成された光学励起を伴い得る。
【0112】
いくつかの実施形態では、LIBS計測中の不活性雰囲気を維持するために、アルゴン、ヘリウム、または窒素などの不活性ガス流が、LIBSシステムと同じ持ち運び可能支持体上に取り付けられた加圧キャニスタなどの発生源から、1つまたは複数のガス流路を介して試料採取点近傍まで供給される。
【0113】
いくつかの例示的な実施形態では、LIBS計測ヘッドの受光光学系は、2つ以上のレンズを含んでもよく、それらのレンズは、任意で、レーザパルスおよび試料表面の接触点周辺に放射状に配置される。1つの10または複数の受光光学系によって収集された光は、光ファイバまたは他の光学伝送手段を介して同じ分光計または異なる分光計(例えば、レンズが光をそれぞれの分光計に伝送可能な場合は複数のレンズのうちの各レンズ)に伝送され得る。いくつかの実施形態では、そのような複数の分光計は、各分光計が限定された波長範囲の発光を収集するように構成されてもよく、それによって複数の分光計が共に所望の波長範囲を網羅する。いくつかの実施形態では、分光器による検出はまた、1つまたは複数の好適なバンドパスフィルタおよび光センサを使用した選択された波長帯域の検出を含み得る。
【0114】
再度図1を参照すると、制御および処理回路100が示されており、制御および処理回路100は、1つまたは複数のプロセッサ110(例えば、CPU/マイクロプロセッサ)、バス105、ランダムアクセスメモリ(RAM)および/または読み出し専用メモリ(ROM)を備え得るメモリ115、データ取得インターフェース120、ディスプレイ125、外部ストレージ130、1つ以上の通信インターフェース135、電源140、ならびに1つまたは複数の入力/出力デバイスおよび/またはインターフェース145(例えば、スピーカ、一連のプッシュボタン、ジョイスティック、キーボード、キーパッド、マウス、位置追跡スタイラス、位置追跡プローブ、フットスイッチ、および/または音声コマンドをキャプチャするための音響変換器などのユーザ入力デバイス)を含む。
【0115】
上記の例示的な方法は、制御および処理回路100のモジュール155、160および165にしたがって自律的に実施され得る。例えば、空のるつぼの温度の計測、溶融金属試料の温度の監視、ならびにるつぼ温度判断基準および計測温度判断基準の評価は、温度監視モジュール155によって実施される実行可能命令にしたがって実行され得る。LIBS計測ヘッド(任意で較正部500の1つまたは複数の構成要素)のロボット制御は、ロボット作動モジュール160にしたがって制御されてもよく、LIBS計測取得およびデータ処理は、LIBS計測モジュール165にしたがって実行されてもよい。
【0116】
図1に示す例示的なシステムは、非限定的な例示的実施形態を例証しており、示されている構成要素に限定されることは意図されないことを理解されたい。さらに、制御および処理回路100の1つまたは複数の構成要素は、処理デバイスにインターフェース接続された外部構成要素として提供されてもよい。
【0117】
例えば、制御および処理回路は、支持体50によって支持された構成要素の第1のセットを含むローカルコンピューティングサブシステムを含んでもよく、ローカルコンピューティングサブシステムは、ネットワークを介して、1つまたは複数の外部コンピューティングデバイスに接続可能である。ネットワークは、ローカルおよび/または外部のネットワークを含んでもよく、ネットワークの1つまたは複数のセグメントは無線でもよい。例えば、いくつかの実施態様では、ローカルで取得され、任意でローカルコンピューティングサブシステムによって処理されたデータは、例えば金属処理プラント内またはそこから遠隔に存在する外部制御システムまたは例えば携帯電話、ラップトップおよびタブレットコンピューティングデバイスなどの1つまたは複数の可動性コンピューティングデバイスなどの1つまたは複数の外部コンピューティングデバイスに伝送され得る。そのようなデータの例としては、生データ、分析結果、および/または機器のステータス(例えば、環境変数、エラーメッセージ、アラート、または他の手段もしくは標示を含み得る)が挙げられる。ローカルコンピューティングサブシステムと1つまたは複数の外部コンピューティングデバイスとの間の通信は単方向でもよく(例えば、リモートコンピューティングデバイスへのデータの自律的なアップロードのため)、双方向でもよい。いくつかの例示的な実施態様では、ローカルコンピューティングサブシステムは、有線または無線接続を介してデータを伝送するための「ドッキング」構成において1つまたは複数の持ち運び可能コンピューティングデバイスを受容するように構成され得る。
【0118】
各構成要素のうちの1つのみが図1に図示されているが、任意の数の各構成要素が制御および処理回路100に含まれてもよい。例えば、コンピュータは、典型的に、いくつかの異なるデータ記憶媒体を含む。さらに、バス105が構成要素の全ての間の単一接続として図示されているが、当然のことながら、バス105は、構成要素のうちの2つの以上を連結する1つまたは複数の回路、デバイス、もしくは通信チャネル(任意で、無線通信チャネルを含んでもよい)を表し得る。例えば、パーソナルコンピュータにおいて、バス105は、マザーボードを含む、またはマザーボードである。制御および処理回路100は、図示されているよりも多いまたは少ない構成要素を含み得る。
【0119】
制御および処理回路100は、より多くの通信チャネルまたはインターフェースのうちの1つを介してプロセッサ110に結合された1つまたは複数の物理的デバイスとして実施され得る。例えば、制御および処理回路100は、特定用途向け集積回路(ASIC)を使用して実施され得る。代替的に、制御および処理回路100は、回路とソフトウェアとの組み合わせとして実施されてもよく、ここで、ソフトウェアは、メモリから、またはネットワーク接続を介してプロセッサにロードされる。
【0120】
本開示のいくつかの態様は、少なくとも部分的にソフトウェアで具体化され得る。すなわち、本技術は、ROM、揮発性RAM、不揮発性メモリ、キャッシュ、磁気ディスクおよび光学ディスク、またはリモート記憶デバイスなどのメモリに含まれる命令のシーケンスを実行するマイクロプロセッサなどのそのプロセッサに応答してコンピュータシステムまたは他のデータ処理システムにおいて実行され得る。さらに、命令は、コンパイルおよびリンクされたバージョンの形態でデータネットワークを介してコンピューティングデバイスにダウンロードされ得る。代替的に、上記で説明したプロセスを実行するための論理は、大規模集積回路(LSI)、特定用途向け集積回路(ASIC)、または電気的消去可能プログラマブル読み出し専用メモリ(EEPROM)およびフィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)などのファームウェアのような離散的な回路構成要素などの追加のコンピュータおよび/または機械可読媒体において実施され得る。
【0121】
コンピュータ可読媒体は、データ処理システムによって実行されると、システムに様々な方法を実行させる、ソフトウェアおよびデータを記憶するために使用され得る。実行可能なソフトウェアおよびデータは、例えば、ROM、揮発性RAM、不揮発性メモリ、および/またはキャッシュを含む様々な場所に記憶され得る。このソフトウェアおよび/またはデータの一部分は、これらの記憶デバイスのうちの任意の1つに記憶され得る。概して、機械可読媒体は、機械(例えば、コンピュータ、ネットワークデバイス、パーソナルデジタルアシスタント、製造ツール、1つまたは複数のプロセッサのセットを有する任意のデバイスなど)によってアクセス可能な形態で情報を提供(すなわち、記憶および/または送信)する任意の機構を含む。
【0122】
コンピュータ可読媒体の例としては、とりわけ、揮発性および不揮発性メモリデバイス、読み出し専用メモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、フラッシュメモリデバイス、フロッピーおよび他の取り外し可能なディスク、磁気ディスク記憶媒体、光学記憶媒体(例えば、コンパクトディスク(CD)、デジタル多用途ディスク(DVD)など)などの記録可能および記録不可能なタイプの媒体が挙げられるがそれらに限定されない。命令は、搬送波、赤外線信号、デジタル信号など、電気、光学、音響、または他の形態の伝播信号のためのデジタルおよびアナログ通信リンクにおいて具体化され得る。本明細書で使用される場合、「コンピュータ可読物質」および「コンピュータ可読記憶媒体」という表現は、本来、一時的伝播信号を除く、全てのコンピュータ可読媒体を指す。
【実施例
【0123】
以下の実施例は、当業者が本開示の実施形態を理解することおよび実践することを可能にするために提示される。それらは、本開示の範囲に対する限定としてみなされるべきではなく、それらを例解および代表しているに過ぎないとしてみなされるべきである。
【0124】
図10は、本開示の実施形態により、受動的冷却およびLIBS計測の自動化された開始を使用して実行される、数百の還元セルからの液体アルミニウム試料の分析の結果を、従来通りに調製された固体試料の試験室のスパークOES分析からの結果と比較して示す。いくつかの一次アルミニウム精錬所からのデータが結合されている。計測は、上述したような距離較正機能および3つの入れ替え可能な計測レードルを組み込んだ電気自動車上に搭載された持ち運び可能電池動力式LIBS分析器を使用して実行された。
【0125】
溶融アルミニウム試料を計測用るつぼに導入する前に、計測用るつぼが、るつぼ温度判断基準を満たす温度まで事前に加熱された。所与の溶融アルミニウム試料を計測用るつぼに導入後、溶融アルミニウム試料の温度が、るつぼの能動的加熱または能動的冷却を実行せずに、溶融アルミニウム試料を受動的冷却しながら、非接触温度計を使用して監視された。LIBS計測は、上記で説明したような計測温度判断基準の満足時に実行された。
【0126】
図10で示すように、持ち運び可能LIBS計測からの結果と実験室基準計測からの結果との間の一致(1つの標準偏差)が、図の灰色線の幅で概略的に示すように、Feの場合に90ppmより良好であり、Siの場合に30ppmより良好であった。
【0127】
計測結果は、通常、最大50還元セルから連続して収集され、本実施例の持ち運び可能LIBSシステムの特徴は、1セル当たり約90秒の平均サイクル時間を可能にした。これは、セルからのアルミニウムを試料採取することと、計測温度判断基準を満たすためのアルミニウムの冷却と、LIBS計測を実行することと、電気自動車を使用したセル間の分析器の輸送のための時間を含んだ。
【0128】
上記で説明した特定の実施形態は一例として示されており、これらの実施形態が様々な修正および代替の形態の影響を受けやすい場合があることを理解されたい。さらに、特許請求の範囲は、開示された特定の形態に限定されることが意図されておらず、むしろ本開示の趣旨および範囲内にある全ての修正、等価物、および代替案を包含することが意図されることを理解されたい。
図1
図2A
図2B
図2C
図3
図4
図5A
図5B
図6
図7A
図7B
図7C
図8
図9
図10
【手続補正書】
【提出日】2023-12-04
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶融試料の冷却中に前記溶融試料に対してレーザ誘起ブレークダウン分光法(LIBS)を実行する方法であって、
るつぼ内での前記溶融試料の冷却中に前記溶融試料の温度を監視して、前記溶融試料の前記温度を計測温度判断基準と比較することと、
前記溶融試料の前記温度が前記計測温度判断基準を満たすことを判定して、前記溶融試料に対するLIBS計測を開始することと、
前記溶融試料の導入前に、
1つまたは複数の回数だけ、前記るつぼが事前に加熱された状態にあり、前記溶融試料が不在である状態で、前記るつぼの温度を計測し、前記るつぼの前記温度をるつぼ温度判断基準と比較することと、
前記るつぼの前記温度が前記るつぼ温度判断基準を満たすと判定して、前記るつぼが前記溶融試料を受け取る準備ができている標示を提供することとをさらに含み、
前記るつぼ温度判断基準が、前記溶融試料が前記LIBS計測中に50℃未満だけ冷えるように構成されている、ことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記るつぼ温度判断基準が、前記最小るつぼ温度が超過されたときに前記るつぼ温度判断基準が満たされるような最小るつぼ温度を含む、請求項に記載の方法。
【請求項3】
前記最小るつぼ温度が、摂氏度において、100℃と、前記溶融試料の前記融解点温度の60%との間にある、請求項に記載の方法。
【請求項4】
前記最小るつぼ温度が、摂氏度において、前記溶融試料の前記融解点温度の15%と、前記融解点温度の60%との間にある、請求項に記載の方法。
【請求項5】
前記るつぼの前記温度がるつぼ温度範囲内にあるときに、前記るつぼ温度判断基準が満たされる、請求項に記載の方法。
【請求項6】
前記るつぼの前記温度が前記最大るつぼ温度と等しく、かつ前記溶融試料が前記るつぼに追加されたときに、前記溶融試料の前記温度が、1分以内に前記計測温度判断基準を満たすように、前記るつぼ温度範囲の最大るつぼ温度が定義される、請求項に記載の方法。
【請求項7】
前記るつぼの前記温度が前記最大るつぼ温度と等しく、かつ前記溶融試料が前記るつぼに追加されたときに、前記溶融試料の前記温度が、30秒以内に前記計測温度判断基準を満たすように、前記るつぼ温度範囲の最大るつぼ温度が定義される、請求項に記載の方法。
【請求項8】
前記最大るつぼ温度が、摂氏度において、前記溶融試料の前記融解点温度の50%と、前記融解点温度の90%との間にある、請求項に記載の方法。
【請求項9】
前記LIBS計測が事前に選択された計測温度範囲内で実行されるように、前記計測温度判断基準が選択される、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記計測温度判断基準が、事前に選択された計測温度を含み、前記LIBS計測が、(i)前記溶融試料の前記温度が前記事前に選択された計測温度と等しいことを判定し、かつ(ii)LIBS計測ヘッドを前記るつぼ上に位置決めした直後に開始される、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記計測温度判断基準が、事前に選択された計測温度を含み、前記LIBS計測が、前記溶融試料の前記温度が前記事前に選択された計測温度と等しいことを判定した後に実行される、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記事前に選択された計測温度が、前記溶融試料の前記融解点温度を、摂氏度において前記融解点温度の5%~25%の範囲の量だけ超過する、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記計測温度判断基準が、事前に選択された計測温度範囲を含み、前記LIBS計測が、前記溶融試料の前記温度が前記事前に選択された計測温度範囲内にある間に実行される、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記計測温度判断基準が、前記るつぼ温度判断基準が満たされたときに、前記LIBS計測中の前記溶融試料の前記温度が前記るつぼの前記温度を超過するように構成されている、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記るつぼが、事前に計測された溶融試料によって事前に加熱され、前記事前に計測された溶融試料が、前記るつぼの前記温度を計測する前に廃棄される、請求項1~14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記溶融試料がアルミニウムを含み、前記るつぼが、還元セルの上部に形成された氷晶石のクラストとの接触によって事前に加熱される、請求項1~14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記るつぼの前記温度および前記溶融試料の前記温度が、共通の温度センサを使用して計測される、請求項1~16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
前記るつぼの前記温度および前記溶融試料の前記温度が、接触しないで計測される、請求項1~17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
前記るつぼが、LIBS計測中にるつぼ支持体によって支持されている、請求項1~18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
LIBS計測が、LIBSサブシステムによって実行され、前記LIBSサブシステムの計測ヘッドが、停止位置から、前記計測ヘッドが前記るつぼ支持体の上方に存在する動作位置へ移動可能であり、遮熱材が、前記計測ヘッドが前記停止位置に存在するとき、前記るつぼから放出された熱から前記計測ヘッドを遮熱するように位置決めされている、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記るつぼが、金属製るつぼである、請求項1~20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
前記るつぼが、構造鋼から形成されている、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記るつぼの熱容量が、400J/Kと500J/Kとの間にある、請求項1~20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
前記るつぼの熱伝導率が、40W/m-Kと50W/m-Kとの間にある、請求項1~20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
前記るつぼが第1のるつぼであり、前記溶融試料が第1の溶融試料であり、前記方法が、
前記第1の溶融試料を、前記第1のるつぼから廃棄することと、
前記第1のるつぼの温度を計測することと、
前記第1のるつぼの前記温度が、過度に高い温度に起因して、前記るつぼ温度判断基準を満たさないことを判定することと、
前記第1のるつぼを、前記第1のるつぼの温度未満の温度を有する第2のるつぼと交換することと、
前記第1のるつぼを冷却しながら、前記第2のるつぼを用いて、LIBS計測を第2の溶融試料に対して実行することとをさらに含む、請求項5~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
前記第1のるつぼが、前記第1の溶融試料に対して実行される前記LIBS計測中に、一次るつぼ支持体によって支持され、
前記第1のるつぼを前記第2のるつぼと交換した後に、前記第1のるつぼが、冷却のために二次るつぼ支持体上に配置される、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記第1のるつぼを前記第2のるつぼと交換する前に、
前記第2のるつぼを事前に加熱することと、
前記第2のるつぼの温度を監視することと、
前記第2のるつぼが前記るつぼ温度判断基準を満たしたときを表示することと
をさらに含む、請求項25に記載の方法。
【請求項28】
任意で、前記第2のるつぼを用いて、1つまたは複数の追加の溶融試料に対してLIBS計測を実行することと、
前記第2のるつぼを空にすることと、
前記第2のるつぼの温度を計測することと、
前記第2のるつぼの前記温度が、過度に高い温度に起因して、前記るつぼ温度判断基準を満たさないことを判定することと、
前記第2のるつぼを、
前記第1のるつぼ、および
第3のるつぼのうちから選択されたるつぼと交換することと、
前記選択されたるつぼを用いて、別の追加の溶融試料に対してLIBS計測を実行することと
をさらに含む、請求項25~27のいずれか1項に記載の方法。
【請求項29】
前記LIBS計測が、持ち運び可能な支持構造上に存在するLIBSシステムによって実行され、前記LIBSシステムが、電池によって動力が供給されている、請求項1~28のいずれか1項に記載の方法。
【請求項30】
るつぼを事前に加熱することと、
溶融試料を前記るつぼに導入することとをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項31】
レーザ誘起ブレークダウン分光法(LIBS)を実行するためのシステムであって、前記システムが、
レーザ誘起ブレークダウン分光法(LIBS)サブシステムと、
第1のるつぼと、
計測中に前記試料を保持する前記第1のるつぼを支持するための一次るつぼ支持体と、
第2のるつぼと、
前記第2のるつぼを支持及び冷却できる二次るつぼ支持体と、
前記LIBSサブシステム、前記一次るつぼ支持体、および前記二次るつぼ支持体を支持するように構成された可動性支持構造と、
前記一次及び二次るつぼ支持体並びに前記第1及び第2のるつぼは、前記一次るつぼ支持体において前記第2のるつぼ内に存在する溶融試料に対してLIBS計測を実行するために、前記第1のるつぼを前記第2のるつぼと交換可能であり、冷却のために前記第1のるつぼを前記二次るつぼ支持体内に配置可能であるように構成される、ことを特徴とし、
温度センサと、を備え、
前記温度センサおよび前記LIBSサブシステムに動作可能に結合された処理回路であって、前記処理回路が、少なくとも1つのプロセッサと、関連付けられたメモリとを備えており、前記メモリが、動作を実行するために、前記プロセッサによって実行可能な命令を含み、前記動作は、
前記温度センサを用いて、るつぼ内の前記溶融試料の冷却中の溶融試料の温度を監視することと、
前記溶融試料の前記温度を計測温度判断基準と比較するとともに、前記溶融試料が前記計測温度判断基準を満たすことを判定して、前記溶融試料に対するLIBS計測を開始するように前記LIBSサブシステムを制御することと
を含む、処理回路とを備える、システム。
【請求項32】
前記溶融試料をるつぼに導入する前に、前記処理回路が、
前記又は別の温度センサを用いて前記るつぼの温度を計測することであって、前記るつぼが事前に加熱されている、計測することと、
前記るつぼの前記温度がるつぼ温度判断基準を満たすと判定した後に、前記るつぼが前記溶融試料を受け取る準備ができている標示を提供することとを含む動作を実行するようにさらに構成され、
前記るつぼ温度判断基準が、溶融試料が前記LIBS計測中に50℃未満だけ冷えるように構成されている、請求項31に記載のシステム。
【請求項33】
前記LIBSサブシステムは、電池に接続可能である、請求項31に記載のシステム。
【請求項34】
レーザ誘起ブレークダウン分光法(LIBS)を実行するための持ち運び可能システムであって、前記持ち運び可能システムが、
計測ヘッドを備えるレーザ誘起ブレークダウン分光法(LIBS)サブシステムであって、前記LIBSサブシステムが電池に接続可能である、LIBSサブシステムと、
第1のるつぼと、
一次るつぼ支持体であって、前記LIBSサブシステムの前記計測ヘッドが、停止位置から動作位置へ移動可能であり、前記動作位置において、前記一次るつぼ支持体によって支持された前記第1のるつぼ内に存在する溶融試料に対してLIBS計測を実行するために前記計測ヘッドが前記一次るつぼ支持体上に存在する、一次るつぼ支持体と、
第2のるつぼと、
前記第2のるつぼを支持および冷却できる二次るつぼ支持体と、
前記LIBSサブシステム、前記一次るつぼ支持体、および前記二次るつぼ支持体を支持するように構成された可動性支持構造と、を備え
前記るつぼ支持体及び前記第1及び第2のるつぼは、前記一次るつぼ支持体において前記第2のるつぼ内に存在する溶融試料に対してLIBS計測を実行するために、前記第1のるつぼを前記第2のるつぼと交換可能であり、且つ冷却のために前記第1のるつぼを前記二次るつぼ支持体内に配置可能であるように構成される、ことを特徴とし、 前記計測ヘッドが前記停止位置にあるときに、前記一次るつぼ支持体内に存在する前記るつぼの温度を監視するように構成された温度センサと、
前記温度センサに動作可能に結合された処理回路であって、前記処理回路が、少なくとも1つのプロセッサと、関連付けられたメモリとを備えており、前記メモリが、動作を実行するために、前記プロセッサによって実行可能な命令を含み、前記動作が、
前記温度センサを用いて、前記一次るつぼ支持体によって支持された前記るつぼの温度を計測することと、
前記るつぼの前記温度が、過度に高い温度に起因して、るつぼ温度判断基準を満たしていないことを判定した後に、前記るつぼが、使用前に、前記二次るつぼ支持体内で冷却されるべきであるという標示を提供することとを含む、処理回路と
をさらに備える、システム。
【請求項35】
前記第1のるつぼおよび前記第2のるつぼが、金属製である、請求項34に記載の持ち運び可能システム。
【請求項36】
前記第1のるつぼおよび前記第2のるつぼが、構造鋼から形成されている、請求項34に記載の持ち運び可能システム。
【請求項37】
前記第1のるつぼおよび前記第2のるつぼの熱容量が、400J/Kと500J/Kとの間にある、請求項34に記載の持ち運び可能システム。
【請求項38】
前記第1のるつぼおよび前記第2のるつぼの熱伝導率が、40W/m-Kと50W/m-Kとの間にある、請求項34に記載の持ち運び可能システム。
【請求項39】
レーザ誘起ブレークダウン分光法(LIBS)を実行するための持ち運び可能システムであって、前記持ち運び可能システムが、
計測ヘッドを備えるレーザ誘起ブレークダウン分光法(LIBS)サブシステムであって、前記LIBSサブシステムが電池に接続可能である、LIBSサブシステムと、
一体型較正装置と、
前記LIBSサブシステムおよび前記一体型較正装置を支持するように構成された可動性支持構造とを備えており、
前記LIBSサブシステムの前記計測ヘッドが、前記計測ヘッドが、第1のるつぼ内に存在する溶融試料に対してLIBS計測を実行するために、前記第1のるつぼの上方に存在する動作位置から、前記LIBSサブシステムの少なくとも1つのパラメータを較正するのに好適な較正計測を実行するために好適な較正位置へ移動可能である、持ち運び可能システム。
【請求項40】
前記一体型較正装置が、前記計測ヘッドが前記較正位置にあるときに、前記LIBSサブシステムの信号を較正するのに好適なLIBS較正基準物質を含む、請求項39に記載の持ち運び可能システム。
【請求項41】
前記一体型較正装置が、支持フレームを備えており、後続の較正計測を実行するために、前記計測ヘッドが前記較正位置に再度位置決めされたときに、前記LIBS較正基準物質の異なる領域が前記計測ヘッドによって光学的にインテロゲートされることができ、それにより、複数の較正計測中の前記LIBS較正基準物質の再利用を容易にするように、前記LIBS較正基準物質が、前記支持フレームに対して移動可能である、請求項40に記載の持ち運び可能システム。
【請求項42】
前記計測ヘッドが、距離センサを備えており、前記一体型較正装置が、一体型距離センサ較正装置であり、前記一体型距離センサ較正装置が、接触場所および目標場所を含み、前記計測ヘッドが前記較正位置にあり、かつ前記計測ヘッドの光軸に平行な方向に沿って前記計測ヘッドを下降させた後に前記接触場所と接触しているときに、既知の空間的オフセットが前記距離センサと前記目標場所との間にあり、それにより、前記距離センサの較正を容易にするように、前記接触場所が、前記一体型較正装置上に位置している、請求項39に記載の持ち運び可能システム。
【請求項43】
前記接触場所と接触した後に、前記計測ヘッドが前記方向に沿って移動されたときに、前記既知の空間的オフセットが維持されるように、前記一体型距離センサ較正装置が、弾性付勢されている、請求項42に記載の持ち運び可能システム。
【請求項44】
前記LIBS計測をしている間に前記第1のるつぼを支持するための一次るつぼ支持体と、
第2のるつぼを支持および冷却できる二次るつぼ支持体とをさらに備える、請求項39~43のいずれか1項に記載の持ち運び可能システム。
【国際調査報告】