(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-08
(54)【発明の名称】固相反応用の反応容器を備えた装置
(51)【国際特許分類】
B22F 1/14 20220101AFI20241001BHJP
B22F 1/142 20220101ALI20241001BHJP
B22F 9/22 20060101ALI20241001BHJP
【FI】
B22F1/14
B22F1/14 200
B22F1/142
B22F9/22 H
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024515156
(86)(22)【出願日】2022-10-13
(85)【翻訳文提出日】2024-03-07
(86)【国際出願番号】 EP2022078514
(87)【国際公開番号】W WO2023062128
(87)【国際公開日】2023-04-20
(32)【優先日】2021-10-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】318010867
【氏名又は名称】ハー.ツェー.スタルク タングステン ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【住所又は居所原語表記】Nymphenburger Strase 84, 80335 Munchen GERMANY
(74)【代理人】
【識別番号】110000408
【氏名又は名称】弁理士法人高橋・林アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】セウベルリッヒ,ティーノ
(72)【発明者】
【氏名】エクスナー,ユルゲン
(72)【発明者】
【氏名】ワルネッケ,ナット
(72)【発明者】
【氏名】オエルマン,ハラルド
(72)【発明者】
【氏名】メーゼ-マルクトシエフエル,ユリアネ
【テーマコード(参考)】
4K017
4K018
【Fターム(参考)】
4K017AA03
4K017BA04
4K017EH18
4K017FB06
4K018BA09
4K018BC01
4K018BC09
4K018BC18
4K018BC19
(57)【要約】
本発明は、粉末状の反応生成物を受け入れるための少なくとも1つの反応容器を備える装置に関し、当該反応容器は、フレームと、フレームに着脱可能に接続されるスクリーン生地と、を有する。本発明は、また、気相/固相反応におけるその使用に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉末状反応物を受け入れるための少なくとも1つの反応容器を有し、
前記反応容器が、
フレームと、
前記フレームに着脱可能に接続されたメッシュ生地と、を有し、
前記反応容器が、前記メッシュ生地を支持するための支持構造をさらに有することを特徴とする、装置。
【請求項2】
前記メッシュ生地が、クランプ手段によって前記フレームに接続されていることを特徴とする、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記反応容器が、少なくとも3cm、好ましくは少なくとも10cm、より好ましくは少なくとも15cmの幅を有することを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記反応容器が、少なくとも8cm、好ましくは少なくとも25cm、より好ましくは少なくとも40cmの長さを有することを特徴とする、請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の装置。
【請求項5】
前記反応容器が、矩形状を有することを特徴とする、請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の装置。
【請求項6】
前記装置が少なくとも2つの反応容器、好ましくは少なくとも3つの反応容器を含むことを特徴とする、請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載の装置。
【請求項7】
前記装置が、10個以下、好ましくは6個以下の反応容器を含むことを特徴とする、請求項1乃至請求項6のいずれか一項に記載の装置。
【請求項8】
前記反応容器は、互いに重ねて配置されていることを特徴とする、請求項6または請求項7に記載の装置。
【請求項9】
前記反応容器は、積み重ねることができることを特徴とする、請求項1乃至請求項8のいずれか一項に記載の装置。
【請求項10】
前記メッシュ生地が、25μm~5mm、好ましくは40μm~5mmのメッシュサイズを有することを特徴とする、請求項1乃至請求項9のいずれか一項に記載の装置。
【請求項11】
前記装置は、ガス流が反応容器に対して長手方向となるように配置されていることを特徴とする、請求項1乃至請求項10のいずれか一項に記載の装置。
【請求項12】
前記フレームおよび/または前記メッシュ生地は、鉄、ニッケルまたはコバルトをベースとする合金で作られていることを特徴とする、請求項1乃至請求項11のいずれか一項に記載の装置。
【請求項13】
気相/固相反応、好ましくは還元、浸炭、酸化、焼成、および/または窒化反応のための、請求項1乃至請求項12のいずれか一項に記載の装置の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉末状反応物質を受け入れるための少なくとも1つの反応容器を有し、当該反応容器が、フレームと、フレームに着脱可能に接続されたメッシュ生地と、を有する装置、および気相/固相反応におけるその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
人類にとっての金属の重要性は、とりわけ、人類の発展の全段階が青銅器時代と鉄器時代として使用された材料にちなんで指定されているという事実から見ることができる。しかしながら、自然界では純粋な形で存在する金属は非常に少ないため、金属とその選択された化合物の生成がさらに重要な役割を果たす。金属およびその炭化物などの金属化合物は、通常、固相反応を使用して対応する酸化物を還元することによって得られる。固相反応は、少なくとも1つの反応物質が固体状態にある化学反応である。金属の製造は、通常、対応する酸化物を水素などの還元剤で還元することによって、すなわち、ガス状還元剤が粉末固体中を流れる気相/固相反応で行われる。そのため、反応の結果は、一方では、使用される粉末がどれだけ効果的にガスと接触するか、他方では、反応中に生成される副生成物の除去がどれだけ速く行われるかによって決まる。
【0003】
気相/固相反応は、固体、主に粉末がガス反応物と接触することを特徴とする。粉末状固体を通るガスの輸送は、拡散、すなわち濃度勾配に基づく、および/または圧力勾配に基づく対流プロセスによって行うことができる。そのため、固相反応は、通常、いわゆるボート内で行われ、その中に固体が粉末床として配置され、その後ガス流に曝される。しかしながら、これらの従来のボートは、拡散プロセスによるガス反応生成物の除去が上方へ、すなわち重力に逆らってのみ行われるという欠点がある。これらのガス成分の除去が不十分であると、通常、反応の進行に悪影響を及ぼす。
【0004】
DE2126843には、ガス透過性の底部を備えたボートが使用される金属炭化物の製造方法が記載されている。
【0005】
GB672,423は、金属粉末を製造するための連続方法に関するものであり、この方法では、材料の全面が還元雰囲気に曝されるように配置されたふるい状の表面上に材料が広げられる。
【0006】
DE2120598は、多孔トレイ上に層状に支持された粉末状金属酸化物を還元する方法を開示しており、この方法では、ボートが垂直方向に下方に搬送され、還元性ガス流がそれらのボートを通して反対方向に上方に流れる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ガス透過性の底部を備えたボートの使用は従来技術で知られているが、金属粉末を製造するための改善された方法が引き続き必要とされている。さらに、通常の反応の範囲内で柔軟性の向上を達成することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0008】
これに関連して、本発明は、メッシュ生地を簡単な方法で交換できる、少なくとも1つの反応容器を備える装置を提供する。そのため、例えば、異なる粒径を有する粉末を使用することができ、またはガス反応生成物の除去を制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】酸化タングステンの還元の経過において、650℃までの反応経過を示す。
【
図2】酸化タングステンの還元の経過において、反応の完全な時間経過を示す。
【
図3】支持構造体によって支持されるメッシュ生地をクランプするためのクランプフレームを備える本発明に係る装置の概略断面図を示す。
【
図4】
図3に示した本発明に係る装置の概略上面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
したがって、本発明は、まず、粉末反応物質を受け入れるための少なくとも1つの反応容器を有する装置に関し、当該反応容器は、フレームと、フレームに着脱可能に接続されたメッシュ生地とを有し、当該反応容器は、メッシュ生地を支持するための支持構造をさらに有する。
【0011】
本発明に係る装置は、反応中に形成されるガス成分の除去が、拡散プロセスだけでなく、重力によって引き起こされる対流材料輸送プロセスによっても影響されるという利点を提供し、これにより付加的な材料輸送機構を可能となり、とりわけ、反応時間を大幅に短縮できるため、スループットを向上させることができる。フレームとメッシュ生地との間の着脱可能な接続により、メッシュ生地を簡単な方法で交換することができ、例えば、使用する粉末の異なる粒径に簡単な方法で適合させることができる。
【0012】
本発明に係る装置は、反応容器の大きさによってさらに特徴付けられ、工業規模の反応も可能であるような設計を有する。好ましい実施形態では、反応容器は少なくとも3cm、好ましくは少なくとも10cm、より好ましくは少なくとも15cmの幅を有する。反応容器の長さは、8cm以上が好ましく、25cm以上がより好ましく、40cm以上がより好ましい。これらの寸法により、このような装置は研究室や小規模なパイロットプラントでの使用を超えて使用できるようになる。
【0013】
好ましい実施形態では、反応容器内の粉末床の安定性を確保するために、反応容器には着脱可能に接続された側部が設けられてもよい。例えば、これにより、より大量の粉末を反応させることが可能になる。側部の高さは、粉末床の高さに適合することが好ましい。好ましくは、側部の上端は粉末床の上端より少なくとも1mm上にある。このようにして、粉末の体積の増加を伴う反応において、反応速度に悪影響を与えることなく、反応容器のオーバーフローを防止することができる。経済的に適切な量の固体を変換するには、少なくとも2mmの高さを有する粉末床が特に有用であることが証明されている。したがって、粉末床の高さが少なくとも2mmである実施形態が好ましい。
【0014】
好ましい実施形態によれば、反応容器は矩形状のレイアウトを有する。この形状により、反応容器を有する装置の簡単な充放電を可能にする。この目的のために、装置および反応容器は、好ましくは互いに適合するガイドレールをさらに有し、当該ガイドレールは、好ましくは反応容器の長手方向の側面に設けられる。
【0015】
本発明の範囲内で、驚くべきことに、反応の進行や生成物の品質に悪影響を与えることなく、従来のボートに比べて著しく大量の反応物を使用できることが判明した。むしろ、反応時間の短縮が観察された。より大きな負荷に対する本発明に係る装置の安定性を確保するために、反応物が支持されるメッシュ生地を安定化することができる。したがって、反応容器は、メッシュ生地を支持するための支持構造を有する。好ましくは、支持構造は、反応中に形成されるガス成分の除去を妨げないように設計される。例えば、支持構造は、穴あき金属シートまたはグリッドとして、または多孔質材料から形成することができる。
【0016】
本発明によれば、メッシュ生地が反応容器のフレームに着脱可能に接続されているので、メッシュ生地の交換が容易である。特に、クランプ手段がこれに有用であることが証明されている。したがって、好ましい実施形態では、メッシュ生地はクランプ手段によってフレームに接続される。したがって、好ましくは、メッシュ生地をフレーム内にクランプすることができるクランプボルトを備えたクランプが、反応容器の前面の少なくとも一方に設けられることが好ましい。
【0017】
本発明に係る装置は、いくつかの反応容器を同時に使用できるという点でさらに有利であり、それによって反応スループットを大幅に向上させることができ、これは特に工業規模の生産において興味深い。したがって、装置が少なくとも2つ、好ましくは少なくとも3つの反応容器を含む実施形態が好ましい。反応容器の数自体に制限はないが、反応を均一に進行させるためには、多すぎる反応容器は使用されるべきではない。したがって、装置が10個以下、好ましくは6個以下の反応容器を含む実施形態が好ましい。反応容器は有利には互いに重ねて配置される。したがって、反応容器を積み重ねることができる実施形態が好ましい。
【0018】
本発明に係る装置は、メッシュ生地を簡単に交換できるようにし、それぞれの反応要件に適合させることができる。そのため、例えば、メッシュ生地のメッシュサイズをそれに応じて適合させることができる。好ましくは、メッシュ生地のメッシュサイズは、25μm~5mmの範囲内であり、40μm~5mmの範囲内であることがより好ましい。
【0019】
本発明に係る装置は、特に高温プロセスで使用される。したがって、フレームおよび/またはメッシュ生地が、特に本発明の範囲内の高温プロセスに適した材料として有用であることが証明されている鉄、ニッケルまたはコバルトをベースとする合金で作られる実施形態が好ましい。あるいは、セラミック材料を使用することもできる。
【0020】
本発明に係る構造は、反応容器に特定の安定性を提供するため、バッチプロセスとは対照的に連続生産を可能にする連続方法での使用に特に適している。したがって、本発明に係る装置が、連続的に運転される装置、好ましくは連続運転炉、特に押し込み炉またはロータリーキルンである実施形態が好ましい。
【0021】
ガス透過性の底部を有する反応容器が使用される場合、通常、圧力を加えながらガスが下から粉末床を通過する従来の反応とは対照的に、本発明に係る装置は、好ましくは、ガス流が本発明に係る装置と平行に、すなわち、反応容器に対して長手方向に流れる配置される。とりわけ、これは、反応中に粉末が容器から排出されないという利点がある。また、粉末床を介して下から上に向かって減少する反応粉体の濃度勾配が形成されることが防止される。さらに、このようにして、圧力による勾配を不要にする均質なガス流を構築することができる。
【0022】
本発明に係る装置は、特に、金属粉末または他の粉末の製造に使用されるような気相/固相反応のために提供される。したがって、本発明はさらに、気相/固相反応、特に還元、浸炭、酸化、焼成および/または窒化反応のための本発明に係る装置の使用に関する。
【0023】
本発明に係る装置は、特に、ガス成分が副生成物または廃棄物として形成される反応に適しており、ガス成分の効果的な除去を可能にする。そのため、例えば、水素を還元剤として用いる通常の還元反応では、還元された化合物の他に、水素の酸化生成物である水蒸気が得られる。しかし、水蒸気の存在は還元反応の進行に悪影響を及ぼし、最悪の場合には還元反応が停止してしまう場合がある。これは、形成された水蒸気の迅速な除去を可能にする本発明に係る装置によって防止される。したがって、本発明に係る装置を有利に使用できる反応は、水蒸気、CO2、Ar、炭化水素ガス、CO、Cl2、NOxまたはSO2が形成または使用される反応である。
【0024】
本発明は、以下の実施例によってさらに説明されるが、これは決して本発明の概念を限定するものとして理解されるべきではない。
【実施例】
【0025】
図1および
図2は酸化タングステンの還元の経過を示しており、
図1は650℃までの反応経過を示し、
図2は反応の完全な時間経過を示す。このようにして、酸化タングステンをロータリーキルン内において、一定の水素流下で、一定の加熱速度で650℃の温度まで加熱し、その後温度が一定に保持された。水素の露点はガス出口で測定され、露点は還元中に生成される水の量の尺度である。露点は、例えば、チルドミラー露点湿度計、静電容量式プローブ、またはレーザー測定装置などの市販の測定方法を使用することによって決定することができる。測定曲線からわかるように、従来の反応容器(ボート、破線)を使用した場合、反応の進行が大幅に遅くなり、停止することさえある。また、残留する水素の露点は、従来のボートを使用した場合、本発明に係る装置の使用(実線)と比較して、著しく増加した含水量を示す。
図2が示すように、本発明に係る反応容器では反応が著しく速く進行する(実線)。
【0026】
図3は、支持構造体(3)によって支持されるメッシュ生地(2)をクランプするためのクランプフレーム(1)を備える本発明に係る装置の概略断面図を示す。クランプフレーム(1)は、クランプネジを備えたクランプ(4)によって固定することができ、したがって、メッシュ生地(2)とともに、粉末状反応物(5)を受け入れるための反応容器を形成する。
【0027】
図4は、
図3に示した本発明に係る装置の概略上面図を示す。
【国際調査報告】