(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-08
(54)【発明の名称】コーティング媒体を塗布する方法、コーティングされた物体、制御システム、およびコーティングシステム
(51)【国際特許分類】
B05D 3/00 20060101AFI20241001BHJP
B05D 1/26 20060101ALI20241001BHJP
B41M 5/00 20060101ALI20241001BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20241001BHJP
B41J 2/205 20060101ALI20241001BHJP
【FI】
B05D3/00 F
B05D1/26 Z
B41M5/00 100
B41J2/01 201
B41J2/205
B41J2/01 109
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024515442
(86)(22)【出願日】2021-09-16
(85)【翻訳文提出日】2024-04-15
(86)【国際出願番号】 EP2021075482
(87)【国際公開番号】W WO2023041161
(87)【国際公開日】2023-03-23
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】505056845
【氏名又は名称】アーベーベー・シュバイツ・アーゲー
【氏名又は名称原語表記】ABB Schweiz AG
【住所又は居所原語表記】Bruggerstrasse 66, 5400 Baden, Switzerland
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】フィネスタッド、イングベ
(72)【発明者】
【氏名】多和田 孝達
【テーマコード(参考)】
2C056
2C057
2H186
4D075
【Fターム(参考)】
2C056EA04
2C056EC69
2C056FA09
2C056FB09
2C057AF21
2C057AN10
2C057CA05
2H186AA02
2H186AA17
4D075AC06
4D075AC07
4D075CB33
4D075CB37
4D075DC11
4D075EA05
(57)【要約】
物体(12)の表面(24)にコーティング媒体(26)を塗布する方法であって、方法は、内側領域上のコーティング媒体が内側厚さ(66)を有するように表面の内側領域(58)にコーティング媒体を塗布することと、内側領域とは反対側の外側領域の側部にコーティング媒体の縁部(62)を形成し、外側領域上のコーティング媒体が外側厚さ(68)を有するように内側領域に隣接する表面の外側領域(60)にコーティング媒体を塗布することとを含み、ここで、外側厚さの最小値は、内側厚さの30%から80%であり、外側厚さの最大値は、内側厚さ以下である。コーティング媒体の塗布を制御するための制御システム(16)と、コーティング媒体を塗布するためのコーティングシステム(10)も提供される。
【選択図】
図4b
【特許請求の範囲】
【請求項1】
物体(12)の表面(24)にコーティング媒体(26)を塗布する方法であって、
内側領域(58)上のコーティング媒体(26)が内側厚さ(66)を有するように、前記表面(24)の内側領域(58)にコーティング媒体(26)を塗布することと、
前記内側領域(58)とは反対側の外側領域(60)の側に前記コーティング媒体(26)の縁部(62)を形成し、前記外側領域(60)上の前記コーティング媒体(26)が外側厚さ(68)を有するように、前記内側領域(58)に隣接する前記表面(24)の外側領域(60)にコーティング媒体(26)を塗布することとを備え、ここで、前記外側厚さ(68)の最小値は前記内側厚さ(66)の30%から80%であり、ここで、前記外側厚さ(68)の最大値は前記内側厚さ(66)以下である、方法。
【請求項2】
前記外側厚さ(68)の最小値は、前記内側厚さ(66)の少なくとも40%、例えば少なくとも50%である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記外側厚さ(68)は、前記内側領域(58)から前記縁部(62)に向かって減少する、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
突出壁(78)が前記縁部(62)に形成されるように、前記外側領域(60)にコーティング媒体(26)を塗布することをさらに備える、請求項1から3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記コーティング媒体(26)は、ノイズパターン(72)を使用することによって前記外側領域(60)に塗布される、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記ノイズパターン(72)は、ブルーノイズを備える、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記ノイズパターン(72)は、前記内側領域(58)から前記縁部(62)に向かって徐々に減少する密度を有する、請求項5または6に記載の方法。
【請求項8】
前記コーティング媒体(26)は、インクジェットプリンタ(18)によって塗布される、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記コーティング媒体(26)は、プリントヘッド(18)の単一ストローク(70)で前記内側領域(58)および前記外側領域(60)に塗布される、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか一項に記載の方法によってコーティング媒体(26)が塗布される表面(24)を有する物体(12)。
【請求項11】
物体(12)の表面(24)にコーティング媒体(26)の塗布を制御するための制御システム(16)であって、前記制御システム(16)は、少なくとも1つのデータ処理デバイス(32)と、少なくとも1つのコンピュータプログラムを記憶した少なくとも1つのメモリ(34)とを備え、前記少なくとも1つのコンピュータプログラムは、プログラムコードを備え、前記プログラムコードは、前記少なくとも1つのデータ処理デバイス(32)によって実行されるとき、前記少なくとも1つのデータ処理デバイス(32)に、
内側領域(58)上のコーティング媒体(26)が内側厚さ(66)を有するように、前記表面(24)の前記内側領域(58)への前記コーティング媒体(26)の塗布を命令するステップと、
内側領域(58)とは反対側の外側領域(60)の側に前記コーティング媒体(26)の縁部(62)を形成し、前記外側領域(60)上の前記コーティング媒体(26)が外側厚さ(68)を有するように、前記内側領域(58)に隣接する前記表面(24)の外側領域(60)にコーティング媒体(26)を塗布するステップとを実行させ、ここで、前記外側厚さ(68)の最小値は前記内側厚さ(66)の30%から80%であり、ここで、前記外側厚さ(68)の最大値は前記内側厚さ(66)以下である、制御システム(16)。
【請求項12】
物体(12)の表面(24)にコーティング媒体(26)を塗布するためのコーティングシステム(10)であって、請求項11に記載の制御システム(16)と、プリントヘッド(18)とを備え、前記制御システム(16)は、前記プリントヘッド(18)を制御するように構成される、コーティングシステム(10)。
【請求項13】
前記プリントヘッド(18)は、インクジェットプリンタを備える、請求項12に記載のコーティングシステム(10)。
【請求項14】
前記プリントヘッド(18)を担持するマニピュレータ(22)をさらに備える、請求項12または13に記載のコーティングシステム(10)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に、物体のコーティングに関する。特に、物体の表面にコーティング媒体を塗布する方法、この方法によってコーティング媒体が塗布される表面を有する物体、物体の表面へのコーティング媒体の塗布を制御するための制御システム、および物体の表面にコーティング媒体を塗布するためのコーティングシステムが提供される。
【背景技術】
【0002】
自動車部品及び多くの他の物体は、噴霧器を使用して塗装されることができる。噴霧器は、塗料が物体の広い領域にわたって均一に分配されるように、塗料粒子の雲を生成する。インクジェット塗装は、自動車塗装に対する新しいアプローチである。噴霧器を使用して物体上に塗料の雲を分散させる代わりに、ノズルのアレイを使用して、制御されたプロセスで塗料を塗布する。
【0003】
EP3628501A1は、表面上に画像を印刷する方法を開示しており、この方法は、ロボットのアームに取り付けられたプリントヘッドを使用して、ラスター経路に沿って表面上でプリントヘッドを移動させながら表面上に新しい画像スライスを印刷することと、新しい画像スライスを印刷するときに表面上に基準線を印刷することと、新しい画像スライスを印刷しながら既存の画像スライスの基準線を基準線センサを使用して検知することと、新しい画像スライスの側縁部を既存の画像スライスの側縁部と位置合わせするように、基準線の検知された位置に基づいて新しい画像スライスの横方向位置を調整することとを含む。
【発明の概要】
【0004】
インクジェット塗装の1つの課題は、印刷パターンの縁部をどのように処理するかである。従来技術のインクジェット印刷方法は、塗装領域と非塗装領域との間に鮮明な線分離を生成する。しかしながら、縁部において100%塗料から0%塗料への急激な変化があるとき、重力は、塗料が乾燥する前に、意図された印刷パターンの境界の外側に塗料を垂下させるかもしれない。これにより、印刷パターンの鮮明度が低下する。この種の垂れは、非常に顕著であり、したがって、印刷品質に影響を及ぼす。
【0005】
本開示の1つの目的は、コーティング媒体を物体の表面に塗布する改良された方法を提供することである。
【0006】
本開示のさらなる目的は、コーティング媒体の縁部の改善を可能にする、コーティング媒体を物体の表面に塗布する方法を提供することである。
【0007】
本開示のさらなる目的は、物体の表面にコーティング媒体を塗布する方法を提供することであり、この方法は、縁部の外側でのコーティング媒体の垂れを回避する。
【0008】
本開示のなお更なる目的は、制御システムが前述の目的のうちの1つ、いくつか、または全てを解決する、物体の表面にコーディング媒体の塗布を制御するための制御システムを提供することである。
【0009】
本開示のまた更なる目的は、コーティングシステムが前述の目的のうちの1つ、いくつか、または全てを解決する、物体の表面にコーティング媒体を塗布するためのコーティングシステムを提供することである。
【0010】
第1の態様によれば、物体の表面にコーティング媒体を塗布する方法が提供され、方法は、内側領域上のコーティング媒体が内側厚さを有するように、表面の内側領域にコーティング媒体を塗布するステップと、内側領域とは反対側の外側領域の側にコーティング媒体の縁部を形成し、外側領域上のコーティング媒体が外側厚さを有するように、内側領域に隣接する表面の外側領域にコーティング媒体を塗布するステップとを含み、ここで、外側厚さの最小値が内側厚さの30%から80%であり、ここで、外側厚さの最大値が内側厚さ以下である。
【0011】
内側の厚さと比較して外側の厚さが減少することにより、外側領域には比較的少量のコーティング媒体が配置される。このようにして、コーティング媒体が縁部の外側に垂れるリスクを排除することができる。コーティング媒体が垂れる場合、垂れは内側領域から外側領域へと生じる。このようにして、縁部は、コーティング媒体が塗布された後に垂れた場合であっても、鮮明なままである。縁部は、コーティングパターンの外側輪郭を提供してもよい。
【0012】
したがって、縁部の外側領域におけるコーティング媒体の外側厚さは、内側厚さの30%から100%である。外側厚さの最小値が内側厚さの30%以上であることにより、鮮明な縁部を維持することができる。たとえ縁部が塗布直後ほど顕著でなくても、縁部はコーティング媒体の乾燥後に平滑で鮮明になる。縁部の外側厚さが約20%未満である場合、縁部は、あまり鮮明でなく、ギザギザに見える場合がある。
【0013】
本方法は、最終物体において、外側領域の外側に、コーティングされていない外部非コーティング領域を残してもよい。縁部は、最終物体においてコーティング媒体と非コーティング領域との間の移行部が存在するコーティングパターンの全ての輪郭に沿って設けられてもよい。本方法は、コーティング媒体を非コーティング領域に塗布する前に、コーティング媒体を少なくとも80%まで乾燥させることをさらに含んでもよい。
【0014】
コーティング媒体は、液体であってもよい。本開示全体を通して、洗浄媒体は、塗料であってもよい。
【0015】
外側領域の幅は、少なくとも2mmおよび/または20mm以下、例えば10mmであってもよい。外側領域の幅は、実質的に一定であってもよく、または一定であってもよい。内側領域の幅は、少なくとも20mmであってもよい。外側領域は、内側領域に直接移行してもよい。したがって、内側領域と外側領域との間に移行部を設けることができる。縁部は、移行線と実質的に平行であってもよく、または移行線と平行であってもよい。
【0016】
コーティング媒体の塗布は、本開示によるプリントヘッドによって行われてもよい。本方法は、コーティング媒体を塗布しながら、マニピュレータによってプリントヘッドを移動させることをさらに含むことができる。
【0017】
物体の表面は、例えば、平坦であっても湾曲していてもよい。厚さ方向は、表面の法線であってもよい。表面は、コーティング媒体を塗布するときに、実質的に水平に配向されてもよく、または水平に配向されてもよい。物体は、例えば、車両の屋根のような車体部分であってもよい。
【0018】
外側厚さの最小値は、内側厚さの少なくとも40%、例えば少なくとも50%であってもよい。すなわち、外側厚さの最小値は、内側厚さの40%から80%、例えば50%から80%であってもよい。
【0019】
内側厚さは、実質的に一定であってもよく、または一定であってもよい。内側の厚さは、例えば、少なくとも1μm、例えば少なくとも2μm、例えば3μmであってもよい。代替的に、または追加的に、内側厚さは、例えば、150μm未満、例えば50μm未満、例えば35μm未満であってもよい。代替的に、または追加的に、内側厚さは、例えば、1μmから150μm、例えば2μmから50μm、例えば3μmから35μmであってもよい。
【0020】
外側厚さは、内側領域から縁部に向かって減少してもよい。外側厚さは、縁部に向かって勾配を備えてもよい。勾配は、コーティング媒体の粘度に基づいて決定されてもよい。比較的高い粘度に対しては比較的急な勾配が設定され、その逆も同様である。代替的に、または追加的に、外側領域の幅は、コーティング媒体の粘度に基づいて決定されてもよい。比較的低い粘度に対しては比較的大きな幅を設定することができ、その逆も可能である。外側領域の幅は、遷移線から縁部までであってもよい。
【0021】
本方法は、突出壁が縁部に形成されるように、コーティング媒体を外側領域に塗布するステップをさらに含むことができる。このようにして、縁部の外側の垂れを回避しながら、縁部をさらに鮮明にすることができる。突出壁の厚さは、内側厚さの50%未満、例えば20%未満、例えば10%未満、例えば5%未満だけ異なってもよい。突出壁は、コーティングパターンの外側輪郭に沿って延びてもよい。突出壁は、厚さ方向に、例えば表面に対して垂直に突出してもよい。
【0022】
ノイズパターンを使用することによって、コーティング媒体を外側領域に塗布することができる。ノイズパターンは、コーティング媒体が塗布されるべきコーティングピクセルと、コーティング媒体が塗布されるべきでない非コーティングピクセルとの分布を含むことができる。分布はランダム分布であってもよい。結果として得られる厚さは、コーティングピクセルと非コーティングピクセルとの間の比の関数である。
【0023】
ノイズパターンの各画素に対して塗布媒体が等量塗布されていれば、塗布されたコーディング媒体の厚さは100%であると言える。これに対応して、ノイズパターンの画素の50%に等しい量でコーティング媒体が塗布される場合、塗布されたコーティング媒体の厚さは50%であると言える。
【0024】
ノイズパターンは、ブルーノイズを含んでもよい。ブルーノイズでは、コーティングピクセルは、例えばバイナリホワイトノイズよりも均一に分布される。したがって、ブルーノイズ内には、コーティングピクセルの大きな可視グループは存在しない。これにより、固有のランダム性の問題を回避することができる。ブルーノイズは、灰色をシミュレートするためにコンピュータグラフィックスでしばしば使用される。
【0025】
ノイズパターンは、内部領域から縁部に向かって徐々に減少する密度を有してもよい。
【0026】
コーティング媒体は、インクジェットプリンタによって塗布されてもよい。インクジェットプリンタは、本開示によるプリントヘッドの一例である。インクジェットプリンタは、ノズルのアレイを備えてもよい。各ノズルは、コーティング媒体の単一の液滴を吐出するように構成されてもよい。各液滴中のコーティング媒体の量は、実質的に等しいか、または等しくてもよい。このようにして、コーティング媒体の厚さは、液滴間隔によって制御することができる。コーティング媒体の塗布中、ノズルは、表面から1mmから10mmの距離を置いて配置されてもよい。
【0027】
ノズルはバイナリであってもよい。すなわち、各塗布の瞬間に、各ノズルは、所定の体積のコーティング媒体を塗布するか、またはコーティング媒体を塗布しない。バイナリノズルを備えるインクジェットプリンタは、デジタルインクジェットプリンタと呼ばれることがある。あるいは、各ノズルは、可変量のコーティング媒体を吐出するように制御されてもよい。しかしながら、バイナリノズルは、画素パターンでのコーティング媒体の塗布を簡単にする。
【0028】
コーティング媒体は、プリントヘッドの単一ストロークで内側領域および外側領域に塗布されてもよい。例えば、ノズルによってまたがれるノズル幅は、外側領域の幅よりも大きくてもよい。
【0029】
第2の態様によれば、第1の態様による方法によってコーティング媒体が塗布される表面を有する物体が提供される。物体は、例えば車体であってもよい。
【0030】
第3の態様によると、物体の表面にコーティング媒体の塗布を制御するための制御システムが提供され、制御システムは、少なくとも1つのデータ処理デバイスと、少なくとも1つのコンピュータプログラムを記憶した少なくとも1つのメモリとを備え、少なくとも1つのコンピュータプログラムは、プログラムコードを備え、プログラムコードは、少なくとも1つのデータ処理デバイスによって実行されるとき、少なくとも1つのデータ処理デバイスに、内側領域上のコーティング媒体が内側厚さを有するように、表面の内側領域へのコーティング媒体の塗布を命令するステップと、
内側領域とは反対側の外側領域の側にコーティング媒体の縁部を形成し、外側領域上のコーティング媒体が外側厚さを有するように、内側領域に隣接する表面の外側領域にコーティング媒体を塗布するステップとを実行させ、ここで、外側厚さの最小値は内側厚さの30%から80%であり、ここで、外側厚さの最大値は内側厚さ以下である。
【0031】
少なくとも1つのコンピュータプログラムは、プログラムコードをさらに備え、プログラムコードが少なくとも1つのデータ処理デバイスによって実行されるとき、少なくとも1つのデータ処理デバイスに、本開示による任意のステップを実行させるか、またはその実行を命令させる。少なくとも1つのコンピュータプログラムは、プログラムコードを更に備えてもよく、プログラムコードは、少なくとも1つのデータ処理デバイスによって実行されるとき、少なくとも1つのデータ処理デバイスに、本開示によるプリントヘッドおよび/またはマニピュレータを制御させる。
【0032】
第4の態様によれば、物体の表面にコーティング媒体を塗布するためのコーティングシステムが提供され、コーティングシステムは、第3の態様による制御システムと、プリントヘッドとを備え、ここで、制御システムは、プリントヘッドを制御するように構成される。
【0033】
プリントヘッドは、インクジェットプリンタを備えてもよい。インクジェットプリンタは、本明細書に説明するような任意のタイプであってもよい。
【0034】
コーティングシステムは、プリントヘッドを運ぶマニピュレータをさらに備えてもよい。マニピュレータは、6軸または7軸などの少なくとも1つの軸で移動するようにプログラム可能であってもよい。コーティングシステムは、産業用ロボットをさらに備えてもよい。産業用ロボットは、ベースと、ベースに対して移動可能なマニピュレータとを備えてもよい。コーティングシステムは、コーティング媒体をプリントヘッドに供給するための供給ユニットをさらに備えてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0035】
本開示の更なる詳細、利点及び態様が、図面と併せて以下の説明態から明らかになる。
【
図1】
図1は、コーティングシステムおよび物体を概略的に表す。
【
図2】
図2は、ヘッドの断面側面図を概略的に表す。
【
図3a】
図3aは、従来技術に従って塗布されたコーティングパターンの上面図を概略的に表す。
【
図3c】
図3cは、
図3aおよび3bのコーティングパターンの垂れの上面図を概略的に表す。
【
図4a】
図4aは、薄くされた外側領域を有するコーティング媒体の塗布の上面図を概略的に表す。
【
図4d】
図4dは、コーティング媒体を塗布するときに使用されるノイズパターンを概略的に表す。
【
図5】
図5は、薄くされた外側領域を有するコーティング媒体の塗布のさらなる例の部分断面側面図を概略的に表す。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下では、物体の表面にコーティング媒体を塗布する方法、この方法によってコーティング媒体が塗布される表面を有する物体、物体の表面へのコーティング媒体の塗布を制御するための制御システム、および物体の表面にコーティング媒体を塗布するためのコーティングシステムについて説明する。同一または類似の参照番号は、同一または類似の構造的特徴を示すために使用される。
【0037】
図1は、コーティングシステム10および物体12を概略的に表す。コーティングシステム10は、産業用ロボット14、制御システム15、およびインクジェットプリンタ18を備える。インクジェットプリンタ18は、本開示によるプリントヘッドの一例である。
【0038】
この例の産業用ロボット14は、ベース20と、ベース20に対して例えば6軸または7軸で移動可能なマニピュレータ22とを備える。インクジェットプリンタ18は、マニピュレータ22によって、ここではマニピュレータ22の遠位端に担持される。
【0039】
物体12は、自動車として例示される。物体12は、ここでは車のルーフ表面として例示される表面24を含む。しかしながら、本開示による物体は、車に限定されず、本開示による表面24は、車体の表面に限定されない。
【0040】
インクジェットプリンタ18は、表面24にコーティング媒体26を塗布するように構成される。インクジェットプリンタ18は、複数のノズル28を備える。この例では、ノズル28は、行と列を含むマトリックスに配置されている。コーティングシステム10は、供給ユニット30を更に備える。供給ユニット30は、インクジェットプリンタ18にコーティング媒体26を供給するように構成される。
【0041】
コーティング媒体26は、ここでは、塗料として例示される。塗料は、溶剤系塗料または水性塗料であってもよい。
【0042】
制御システム16は、データ処理デバイス32と、メモリ34とを備える。メモリ34は、そこに記憶されたコンピュータプログラムを有する。コンピュータプログラムは、プログラムコードを備え、プログラムコードは、データ処理デバイス32によって実行されると、データ処理デバイス32に、本明細書に説明されるような様々なステップを実行させ、その実行を命令させる。この例では、制御システム16は、産業用ロボット14、供給ユニット30、およびインクジェットプリンタ18を制御する。
【0043】
図2は、インクジェットプリンタ18のノズルヘッド36の一具体例の断面側面図を概略的に表す。本例のインクジェットプリンタ18は、
図2に示すようなノズルヘッド36をノズル28毎に備えている。ノズルヘッド36は、加圧チャンバ38を備える。加圧チャンバ38には、供給経路40を介して供給ユニット30からコーティング媒体26を供給することができる。
図2は、ノズルヘッド36のノズル28がインクジェットプリンタ18の排出側42に設けられていることをさらに示す。
【0044】
ノズルヘッド36は、圧電基板44を備える。この例の圧電基板44は、2つの圧電セラミック層46a,46bと、共通電極48と、個別電極50とを備えている。ここで、共通電極48は、圧電セラミック層46aと46bとの間に位置している。ここで、第2の圧電セラミック層46bは、個別電極50と共通電極48との間に位置している。圧電セラミック層46a,46bは、ノズルヘッド36の外部から電圧を印加することにより伸縮可能である。電圧の印加は、制御システム16によって制御される。共通電極48は、インクジェットプリンタ18の他のノズルヘッド36の対応する共通電極48と電気的に接続されている。
【0045】
圧電セラミック層46a,46bは、厚み方向に分極処理されている。個別電極50に電圧が印加されるとき、圧電効果により圧電セラミック層46a,46bが歪む。したがって、個別電極50に駆動信号が印加されると、圧電セラミック層46a,46bが凸になって供給経路40が開放され、塗布媒体26が吐出される。このようにして、ノズル28は、均一な体積のコーティング媒体26の単一の液滴を塗布するためにバイナリ方式で動作することができる。
【0046】
図3aは、従来技術に従って表面24に塗布されたコーティングパターン52の上面図を概略的に表し、
図3bは、
図3aの側断面図を概略的に表す。
図3aおよび
図3bをまとめて参照すると、コーティングパターン52は、インクジェットプリンタ18からコーティング媒体26を塗布することによって表面24上に設けられる。これにより、コーティングパターン52と表面24上の非コーティング領域56との間に縁部54が設けられる。
図3bに示すように、コーティングパターン52の全体にわたって、コーティング媒体26が一定の厚さで塗布される。この厚さは、コーティング媒体26が塗布されていない非コーティング領域56における0%の厚さと比較して100%として示される。コーティングパターン52の縁部54は、非勾配縁部である。
【0047】
図3cは、
図3a及び
図3bのコーティングパターン52の更なる平面図を概略的に表し、
図3dは、
図3cの側断面図を概略的に表す。
図3cおよび
図3dに示すように、縁部54の近くに塗布された大量のコーティング媒体26は、コーティング媒体26が乾燥する前に、コーティング媒体26を縁部54の外側に垂らすか、または落とす。これにより、コーティングパターン52の鮮明度が低下し、コーティングパターン52の意図された形状は、従来技術によるこのコーティング方法によっては満たされない。
【0048】
図4aは、本開示による方法による表面24へのコーティング媒体26の塗布の上面図を概略的に表し、
図4bは、
図4aの側断面図を概略的に表し、
図4cは、
図4bの拡大部分側断面図を概略的に表す。
図4aから
図4cをまとめて参照すると、コーティングパターン52は、内側領域58と外側領域60とに分割される。したがって、コーティング媒体26は、内側領域58と外側領域60の両方に塗布される。
図4aから
図4cに示される表面24は平坦であるが、代替的に湾曲していてもよい。
【0049】
外側領域60の外側境界におけるコーティング媒体26は、コーティングパターン52の縁部62を形成する。したがって、縁部62は、内側領域58とは反対側の外側領域60の側に形成される。
図4aから
図4cは、内側領域58と外側領域60との間の移行線64をさらに示す。したがって、外側領域60は、内側領域58に直接隣接して位置する。
【0050】
コーティングパターン52が円形であるこの特定の例では、外側領域60は、内側領域58の半径方向外側にある。しかしながら、コーティングパターン52は、円形である必要はない。多くの代替タイプのコーティングパターンのいくつかは、線、テキスト、およびロゴタイプを含む。多くのタイプのコーティングパターンにおいて、コーティングパターンの外側縁部だけでなく、文字「A」を塗装する場合のような内側縁部もまた、鮮明である必要がある。
【0051】
図4b及び
図4cに示すように、内側領域58上のコーティング媒体26は内側厚さ66を有し、外側領域60上のコーティング媒体26は外側厚さ68を有する。この例では、内側厚さ66は一定であり、100%として示される。内側厚さ66は、例えば、3μmから35μmであってもよい。
【0052】
この例の外側厚さ68は、移行線64における100%から縁部62における50%まで直線的に減少する。外側厚さ68は、それによって、移行線64から縁部62までの勾配を含む。したがって、外側厚さ68の最小値および最大値は、この特定の例では、それぞれ内側厚さ66の50%および100%である。外側厚さ68の最小値は、内側厚さ66の30%から80%、例えば40%から80%、例えば50%から80%であってもよい。外側厚さ68の最大値は、内側厚さ66以下であってもよい。外側領域60に塗布されるコーティング媒体26の量が減少するため、外側領域60のコーティング媒体26は薄くなる。
【0053】
外側領域60の幅は、例えば10mmであってもよい。この例では、外側領域60の幅は、内側領域58の周りで一定である。移行線64は、それによって、縁部62と平行である。
【0054】
コーティング媒体26は、マニピュレータ22の移動中にインクジェットプリンタ18によって塗布される。
図4aに示すように、コーティング媒体26は、インクジェットプリンタ18の単一ストローク70で、外側領域60の全幅にわたって、かつ内側領域58の一部にわたって塗布される。したがって、ノズル28によってまたがる幅は、外側領域60の幅よりも大きい。
【0055】
図3aから
図3dの従来技術の方法と比較して、外側領域60に塗布されるコーティング媒体26の量が減少するので、コーティング媒体26が非コーティング領域56に垂れることが回避される。これにより、コーティングパターン52の劣化が回避され、コーティングパターン52は、従来技術(
図3aから
図3d)よりも高品質である。さらに、外側厚さ68を内側厚さ66の少なくとも30%に維持することによって、縁部62は、コーティング媒体26の乾燥後もなお鮮明である。外側厚さ68が減少することにより、鮮明さがわずかに減少することがあるが、このわずかな劣化は、縁部62の外側の垂れが生じる場合と比較して無視できる。したがって、外側厚さ68が減少することにより、外側領域60と非コーティング領域56との間の移行部が改善される。この特定の例の外側領域60は、内側厚さ66の50%である最小外側厚さ68を有する。しかしながら、内側領域58と外側領域60との間のこの厚さの差は、人間には見えない。
【0056】
減少した外側厚さ68は、コーティング媒体26の構造的完全性が乾燥するまでより良好に維持できる一方で、縁部62が所望のように正確に位置決めされることを可能にする。外側の厚さ68が減少することにより、コーティング媒体26に隆起またはクレーターが形成されるリスクも減少する。
【0057】
外側領域60上のコーティング媒体26の特定の勾配は、コーティング媒体26の粘度などのコーティングパターン52および/またはコーティング媒体26の特性に基づいて決定されてもよい。これに対応して、外側領域60の幅は、コーティングパターン52及び/またはコーティング媒体26の特性に基づいて決定されてもよい。
【0058】
内側領域58及び外側領域60上のコーティング媒体26が乾燥した後、更なるコーティング媒体26が、コーティングパターン52に隣接する非コーティング領域56に任意に適用されてもよい。あるいは、クリアコートをコーティング媒体26および非コーティング領域56の上に追加してもよい。あるいは、コーティングパターン52上にさらなるコーティングは提供されず、非コーティング領域56は、最終物体12に対してコーティングされないままである。
【0059】
図4dは、コーティング媒体26を塗布するときに使用されるノイズパターン72を概略的に表す。ノイズパターン72は、コーティングピクセル74と非コーティングピクセル76とを備える。この例のノイズパターン72は、50%のブルーノイズを含む。
図4dに示すように、コーティングピクセル74の大きなクラスタは存在しない。これにより、ブルーノイズは、コーティング媒体26のより滑らかで均一な混合を可能にする。結果として得られる厚さ66及び68は、コーティングピクセル74と非コーティングピクセル76との間の比の関数である。コーティング媒体26は、縁部62に向かって勾配を与えるために、徐々に密度が減少するノイズパターン72を使用することによって、外側領域60に塗布されてもよい。
【0060】
コーティングパターン52は、画像に由来してもよい。この場合、表面24上のコーティング媒体26の1つ以上の縁部62の位置は、画像処理によって決定されてもよい。画像に基づいて実行されてもよい画像処理動作の例は、画像のマスキング、輪郭分析、輪郭線膨張、ガウスぼかし、セグメンテーション、カーネル演算、グレースケールからブルーノイズへの変換、および後処理を含む。
【0061】
ガウスぼかしは、画像内のノイズおよび細部を低減するために画像処理で使用される一般的な方法である。画像をぼかすとき、細部は平滑化される。技術的には、ガウスぼかしは、ガウスカーネルおよびシグマ値を含むガウス関数を使用した画像行列の畳み込みの結果である。画像上でガウスカーネルを用いたフィルタ演算を使用することによって、ガウスカーネルは、コーティング媒体26の特性に基づいて容易に修正することができる。ガウスカーネルは、外側領域60の幅を調整するように修正することができる。勾配の傾きはシグマ値によって決定することができる。ガウスカーネル及びシグマ値を調整することによって、所望のように、縁部62に向かうコーティング媒体26の勾配を容易に生成することが可能である。
【0062】
コーティングパターン52は、表面24に塗布された処理済み画像の表現であってもよく、コーティング媒体26は、処理済み画像内の黒色領域に対応する表面24の領域に塗布され、処理済み画像内の白色領域に対応する表面24の領域にはコーティング媒体26は塗布されない。
【0063】
図5は、薄くされた外側領域60を有するコーティング媒体26の塗布のさらなる例の部分断面側面図を概略的に表す。また、この例では、外側厚さ68は、縁部62に向かって減少する。しかしながら、
図5では、コーティング媒体26は、突出壁78が縁部62に形成されるように外側領域60に塗布される。図示のように、突出壁78は、外側領域60内の隣接するコーティング媒体26の上方で厚さ方向に延びる。突出壁78は、塗布パターン52の外輪郭に沿って延びている。この特定の例では、突出壁78における外側厚さ68は、内側厚さ66と同じである。突出壁78と、外側領域60に塗布されるコーティング媒体26の量の減少とによって、コーティング媒体26が未コーティング領域56に垂れることを回避しながら、縁部62をさらにより鮮明にすることができる。
【0064】
本開示は、例示的な実施形態を参照して説明されてきたが、本発明は、上記で説明されたものに限定されないことが理解されよう。例えば、部品の寸法は、必要に応じて変更されてもよいことが理解されよう。従って、本発明は、添付の特許請求の範囲によってのみ限定されてもよいことが意図される。
【国際調査報告】