(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-08
(54)【発明の名称】ナノジルコニア分散液、その調製方法及び得られるモノマー分散液及び光学フィルム
(51)【国際特許分類】
C01G 25/02 20060101AFI20241001BHJP
C09C 1/00 20060101ALI20241001BHJP
C09C 3/08 20060101ALI20241001BHJP
C09D 17/00 20060101ALI20241001BHJP
G02B 1/04 20060101ALI20241001BHJP
B82Y 20/00 20110101ALI20241001BHJP
B82Y 40/00 20110101ALI20241001BHJP
【FI】
C01G25/02
C09C1/00
C09C3/08
C09D17/00
G02B1/04
B82Y20/00
B82Y40/00
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024515833
(86)(22)【出願日】2022-08-04
(85)【翻訳文提出日】2024-03-12
(86)【国際出願番号】 CN2022110129
(87)【国際公開番号】W WO2023035821
(87)【国際公開日】2023-03-16
(31)【優先権主張番号】202111067304.6
(32)【優先日】2021-09-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519094927
【氏名又は名称】山東国瓷功能材料股▲分▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】SHANDONG SINOCERA FUNCTIONAL MATERIAL CO., LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】100146374
【氏名又は名称】有馬 百子
(72)【発明者】
【氏名】宋 錫濱
(72)【発明者】
【氏名】馬 海洋
(72)【発明者】
【氏名】張 棟
(72)【発明者】
【氏名】張 偉
(72)【発明者】
【氏名】奚 洪亮
(72)【発明者】
【氏名】艾 遼東
(72)【発明者】
【氏名】趙 建濱
【テーマコード(参考)】
4G048
4J037
【Fターム(参考)】
4G048AA02
4G048AB04
4G048AC08
4G048AD03
4G048AE05
4J037AA08
4J037CB08
4J037CB09
4J037CB23
4J037EE02
4J037EE08
4J037FF02
(57)【要約】
本願は、ファインケミカル分野に属するナノジルコニア分散液、その調製方法、及び得られるモノマー分散液と光学フィルムを提供する。本願で提供されるナノジルコニア分散液は、45~75wt%の量のナノジルコニア粒子を含み、屈折率が1.420~1.565である。ここで、ナノジルコニア粒子を赤外線スペクトルで特性評価したところ、その表面に以下のピークアウト区間の官能基:ヒドロキシ基:3200cm
-1~3600cm
-1、Zr-O-Zr:480cm
-1~850cm
-1、飽和炭素-水素結合:2850cm
-1~2960cm
-1、エステルカルボニル基:1700cm
-1~1750cm
-1、非局在化共役エステル基:1460cm
-1~1580cm
-1、Si-O-Zr:800cm
-1~1200cm
-1及びC-Oエーテル結合:1000cm
-1~1200cm
-1がグラフトされていることが見出された。本願で提供されるナノジルコニア分散液は高い分散含有量を有し、それに基づいて得られるナノジルコニア・モノマー分散液の分散含有量は55~85wt%に達することができ、屈折率は1.620~1.720に達することができ、その後、例えば、輝度向上フィルムまたは反射防止フィルムを製造する過程において、高い屈折コーティング層の屈折率を大幅に向上させることができ、それによって、フィルムの性能を向上させることができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナノジルコニア分散液であって、
前記ナノジルコニア分散液に含まれるナノジルコニア粒子の量が45~75wt%であり、前記ナノジルコニア分散液の屈折率が1.420~1.565であり、ここで、ナノジルコニア粒子を赤外線スペクトルで特性評価したところ、その表面に以下のピークアウト区間の官能基:
ヒドロキシ基:3200cm
-1~3600cm
-1、Zr-O-Zr:480cm
-1~850cm
-1、飽和炭素-水素結合:2850cm
-1~2960cm
-1、エステルカルボニル基:1700cm
-1~1750cm
-1、非局在化共役エステル基:1460cm
-1~1580cm
-1、Si-O-Zr:800cm
-1~1200cm
-1及びC-Oエーテル結合:1000cm
-1~1200cm
-1がグラフトされていることが見出されたことを特徴とする、ナノジルコニア分散液。
【請求項2】
前記ナノジルコニア分散液の屈折率は、ジルコニアの含有量が45%~65%の場合1.420~1.535であり、ジルコニアの含有量が65%~75%の場合1.498~1.565であることを特徴とする、請求項1に記載のナノジルコニア分散液。
【請求項3】
前記ナノジルコニア分散液におけるナノジルコニア粒子の屈折率は2.20~2.60であり、前記ナノジルコニア粒子における正方相晶粒構造の割合は60~95%であることを特徴とする、請求項1または2に記載のナノジルコニア分散液。
【請求項4】
請求項1に記載のナノジルコニア分散液の調製方法であって、
前記調製方法は、
ジルコニア水溶液に有機溶媒を添加し、均一に混合した後、系に有機酸及び改質剤を添加してジルコニア粒子を改質し、次いで油性分散助剤を添加し、回転蒸発により水を除去してナノジルコニア分散液を得るステップを含み、
ここで、有機酸はナノジルコニアの含有量に対して3~20wt%添加され、改質剤はナノジルコニアの含有量に対して5~20wt%添加され、油性分散助剤はナノジルコニアの含有量に対して5~20wt%添加されることを特徴とする、調製方法。
【請求項5】
系に有機酸及び改質剤を添加してジルコニア粒子を改質することは、具体的に:
大気圧、50~150℃の条件下で、有機酸及び改質剤を系に添加してジルコニア粒子を改質するか、または
有機酸及び改質剤を前記有機溶媒に溶解させて、大気圧、50~150℃の条件下で、ジルコニア水溶液及び有機溶媒を混合した分散液に添加して、ジルコニア粒子を改質することを特徴とする、請求項4に記載の調製方法。
【請求項6】
前記有機溶媒は、ブタノン、メチルイソブチルケトン、プロピレングリコール・メチルエーテル及びエチレングリコール・メチルエーテルのうちの少なくとも1つであり、添加される有機溶媒とジルコニア水溶液の体積比は(3-5):1であることを特徴とする、請求項4に記載の調製方法。
【請求項7】
前記有機酸は、飽和または不飽和のモノカルボン酸、ポリカルボン酸及びヒドロキシカルボン酸のうちの少なくとも1つから選択されることを特徴とする、請求項4に記載の調製方法。
【請求項8】
前記モノカルボン酸は、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、イソオクタン酸、アクリル酸、メタクリル酸のうちの少なくとも1つから酸選択され、前記ポリカルボン酸は、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、フタル酸、フマル酸、マレイン酸のうちの少なくとも1つから選択され、前記ヒドロキシカルボン酸は、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸のうちの少なくとも1つから選択されることを特徴とする、請求項7に記載の調製方法。
【請求項9】
前記改質剤は、3-(メタクリロイル・オキシ)プロピル・トリメトキシ・シラン、3-グリシジルエーテル・オキシプロピル・トリメトキシ・シランのうちの少なくとも1つであることを特徴とする、請求項4に記載の調製方法。
【請求項10】
前記油性分散助剤は、アニオン性分散剤、カチオン性分散剤、非イオン性分散剤及びポリマー性分散剤のうちの少なくとも1つから選択されることを特徴とする、請求項4に記載の調製方法。
【請求項11】
前記油性分散助剤は、BYK-9076またはBYK-9077から選択されることを特徴とする、請求項4に記載の調製方法。
【請求項12】
ナノジルコニア・モノマー分散液であって、
請求項1から3のいずれか1項に記載のナノジルコニア分散液に光硬化性樹脂を添加し、減圧蒸留して分散液の有機溶媒を除去することにより調製して得られることを特徴とする、ナノジルコニア・モノマー分散液。
【請求項13】
前記ナノジルコニア・モノマー分散液において、ナノジルコニアの含有量は55~85wt%であり、前記ナノジルコニア・モノマー分散液の屈折率は1.620~1.720であることを特徴とする、請求項12に記載のナノジルコニア・モノマー分散液。
【請求項14】
前記光硬化性樹脂は、エステル、ウレタン、エーテル、シリコン、ハロゲン及び/またはリン含有基からなるアクリル酸系またはメタクリル酸系のモノマーまたはそのオリゴマーから選択され、前記光硬化性樹脂は、ジルコニアと光硬化性樹脂の合計質量に対して15~45wt%の量で添加されることを特徴とする、請求項12に記載のナノジルコニア・モノマー分散液。
【請求項15】
前記光硬化性樹脂は、フェノキシベンジル・アクリル酸エステル、メチルアクリレート、メチルメタクリレートのうちの少なくとも1つであることを特徴とする、請求項14に記載のナノジルコニア・モノマー分散液。
【請求項16】
光学フィルムであって、
請求項1~3のいずれか1項に記載のナノジルコニア分散液、または請求項12~15のいずれか1項に記載のナノジルコニア・モノマー分散液を使用して調製して得られることを特徴とする、光学フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
<関連出願>
本願は、2021年09月13日に中国特許庁に提出され、出願番号が202111067304.6で、出願名称が「ナノジルコニア分散液、その調製方法、及び得られるモノマー分散液及び光学フィルム」である中国特許出願の優先権を主張し、そのすべての内容が参照により本願に組み込まれる。
【0002】
本願は、ファインケミカルの分野に属し、特に、ナノジルコニア分散液、その調製方法及び得られるモノマー分散液及び光学フィルムに関する。
【背景技術】
【0003】
近年、ジルコニア粒子分散液は、その高い屈折率を活かして透明樹脂や薄膜と結合することにより、光学分野での利用が進んでいる。例えば、屈折率が高いジルコニア分散液は、輝度向上フィルムや反射防止フィルムなどの光学フィルムの製造に使用され、LCDディスプレイの画面の輝度や鮮明度を高めることができ、また、LED封止樹脂の屈折率を向上させ、LEDの輝度をさらに向上させることもできる。結論として、その高屈折特性は屈折率が高いコーティング層に利用でき、様々な分野で応用されている。
【0004】
従来、上記のようなジルコニア粒子分散体は、分散媒が水である分散体を使用しており、光学用薄膜の製造など数多くの光学材料の用途では、水分散体と樹脂組成物とを混合して使用するのが一般的であったが、水分散体は非水溶性の樹脂組成物との混練性が特に悪いため、近年、分散媒が有機溶媒である分散体が強く求められている。ジルコニア粒子は通常、水性溶媒にほぼ良好に分散するが、有機溶媒に対する分散性が通常低い。
【0005】
ジルコニア分散液の性能の高低は、系におけるナノジルコニアの結晶構造、粒子の分散状態及び分散液の調製プロセスと密接に関係している。CN107001066Bには、高分散ジルコニアナノ粒子及びその透明分散体の調製方法が開示されている。その調製方法では、ジルコニウム塩を170℃の条件下でアルカリと反応させることによりジルコニア粒子を直接調製し、その後、ジルコニア粒子の水分散体の分散媒の水をメタノール及びエタノールから選択される少なくとも1種のアルコール溶媒で置換し、その後、アルコール分散体におけるジルコニア粒子をシランカップリング剤と12-ヒドロキシステアリン酸表面処理剤で表面処理し、最後に蒸留置換法または限外濾過濃縮置換法により、上記ジルコニア粒子のアルコール分散体のアルコール溶媒を目的とする有機溶媒に置換する。この方法で調製されたジルコニア分散液の有機溶媒分散体は、400nm波長での透過率が10%以上で、800nm波長での透過率が80%以上で、25℃で、調製直後の粘度が10mPa・s以下である。しかし、このプロセスでは、目的相の分散体を得るために中間相としてアルコール溶媒を必要とするため、調製工程が複雑で、コストが高く、また、アルコール溶媒の沸点が低いため、改質温度に制限があり、改質が不十分になるという問題を引き起こす。
【0006】
したがって、系が安定し、分散が均一で、屈折率が高いジルコニア分散液をいかに調製するかは、透明な有機-無機複合物の性能ニーズをよりよく満たすために特に重要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本願は、ナノジルコニア分散液、その調製方法及び得られるモノマー分散液及び光学フィルムを提供し、得られるナノジルコニア分散液は、良好な分散均一性及び屈折率が高い等の特徴を有する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、本願は以下の技術的解決策を採用する。
本願の実施例の第1の態様は、ナノジルコニア分散液を提供し、前記ナノジルコニア分散液に含まれるナノジルコニア粒子の量が45~75wt%であり、前記ナノジルコニア分散液の屈折率が1.420~1.565であり、ここで、ナノジルコニア粒子を赤外線スペクトルで特性評価したところ、その表面に以下のピークアウト区間の官能基:
ヒドロキシ基:3200cm-1~3600cm-1、Zr-O-Zr:480cm-1~850cm-1、飽和炭素-水素結合:2850cm-1~2960cm-1、エステルカルボニル基:1700cm-1~1750cm-1、非局在化共役エステル基:1460cm-1~1580cm-1、Si-O-Zr:800cm-1~1200cm-1及びC-Oエーテル結合:1000cm-1~1200cm-1がグラフトされていることが見出された。
【0009】
本願のいくつかの実施例において、前記ナノジルコニア分散液の屈折率は、ジルコニアの含有量が45%~65%の場合1.420~1.535であり、ジルコニアの含有量が65%~75%の場合1.498~1.565である。
【0010】
本願のいくつかの実施例において、前記ナノジルコニア分散液におけるナノジルコニア粒子の屈折率は2.20~2.60であり、前記ナノジルコニア粒子における正方相晶粒構造の割合は60~95%である。
【0011】
本願の実施例の第2の態様は、ナノジルコニア分散液の調製方法を提供し、前記調製方法は、
ジルコニア水溶液に有機溶媒を添加し、均一に混合した後、系に有機酸及び改質剤を添加してジルコニア粒子を改質し、次いで油性分散助剤を添加し、回転蒸発により水を除去してナノジルコニア分散液を得るステップを含み、
ここで、有機酸はナノジルコニアの含有量に対して3~20wt%添加され、改質剤はナノジルコニアの含有量に対して5~20wt%添加され、油性分散助剤はナノジルコニアの含有量に対して5~20wt%添加される。
【0012】
本願のいくつかの実施例において、系に有機酸及び改質剤を添加してジルコニア粒子を改質することは、具体的に:
大気圧、50~150℃の条件下で、有機酸及び改質剤を系に添加してジルコニア粒子を改質するか、または
有機酸及び改質剤を前記有機溶媒に溶解させて、大気圧、50~150℃の条件下で、ジルコニア水溶液及び有機溶媒を混合した分散液に添加して、ジルコニア粒子を改質する。
【0013】
本願のいくつかの実施例において、前記有機溶媒は、ブタノン、メチルイソブチルケトン、プロピレングリコール・メチルエーテル及びエチレングリコール・メチルエーテルのうちの少なくとも1つであり、添加される有機溶媒とジルコニア水溶液の体積比は(3-5):1である。
【0014】
本願のいくつかの実施例において、前記有機酸は、飽和または不飽和のモノカルボン酸、ポリカルボン酸及びヒドロキシカルボン酸のうちの少なくとも1つから選択される。
【0015】
本願のいくつかの実施例において、前記モノカルボン酸は、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、イソオクタン酸、アクリル酸、メタクリル酸のうちの少なくとも1つから酸選択され、前記ポリカルボン酸は、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、フタル酸、フマル酸、マレイン酸のうちの少なくとも1つから選択され、前記ヒドロキシカルボン酸は、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸のうちの少なくとも1つから選択される。
【0016】
本願のいくつかの実施例において、前記改質剤は、3-(メタクリロイル・オキシ)プロピル・トリメトキシ・シラン、3-グリシジルエーテル・オキシプロピル・トリメトキシ・シランのうちの少なくとも1つである。
【0017】
本願のいくつかの実施例において、前記油性分散助剤は、アニオン性分散剤、カチオン性分散剤、非イオン性分散剤及びポリマー性分散剤のうちの少なくとも1つから選択される。
【0018】
本願のいくつかの実施例において、前記油性分散助剤は、BYK-9076またはBYK-9077から選択される。
【0019】
本願の実施例の第3の態様は、上記のいずれか1つに記載のナノジルコニア分散液に光硬化性樹脂を添加し、減圧蒸留して分散液の有機溶媒を除去することにより調製して得られる、ナノジルコニア・モノマー分散液を提供する。
【0020】
本願のいくつかの実施例において、前記ナノジルコニア・モノマー分散液において、ナノジルコニアの含有量は55~85wt%であり、前記ナノジルコニア・モノマー分散液の屈折率は1.620~1.720である。
【0021】
本願のいくつかの実施例において、前記光硬化性樹脂は、エステル、ウレタン、エーテル、シリコン、ハロゲン及び/またはリン含有基からなるアクリル酸系またはメタクリル酸系のモノマーまたはそのオリゴマーから選択され、前記光硬化性樹脂は、ジルコニアと光硬化性樹脂の合計質量に対して15~45wt%の量で添加される。
【0022】
本願のいくつかの実施例において、前記光硬化性樹脂は、フェノキシベンジル・アクリル酸エステル、メチルアクリレート、メチルメタクリレートのうちの少なくとも1つである。
【0023】
本願の実施例の第4の態様は、上記のいずれか1つに記載のナノジルコニア分散液、または上記のいずれか1つに記載のナノジルコニア・モノマー分散液を使用して調製して得られる光学フィルムを提供する。
【発明の効果】
【0024】
本願は、先行技術に比べて、以下の利点と積極的な効果を有する。
1、本願の少なくとも1つの実施例で提供されるナノジルコニア分散液の調製方法は、操作が簡単で、最も簡単な蒸留置換法を直接使用して、ジルコニア水分散液の転相によって有機溶媒分散液を得ることができ、有機溶媒分散液をさらに置換することによってモノマー分散液を得ることができ、その間に中間相を関与させる必要がない。
2、本願の少なくとも1つの実施例で提供されるナノジルコニア分散液の調製方法は、有機酸、改質剤及び油性分散助剤を使用して同時にジルコニア粒子に作用させ、それらの相乗効果を十分に利用して最良の分散効果を達成し、後続の有機溶媒分散液と光硬化性モノマーの相溶性を効果的に向上させることができる。
3、本願の少なくとも1つの実施例で提供されるナノジルコニア分散液の調製方法は、原料成分を添加する時、油性分散助剤を添加する前に、有機酸及び改質剤を分散液系に添加する必要があり、これにより、最良の改質効果と分散効果を達成するために、ジルコニア表面に有機酸と改質剤が相互作用するのに十分な活性サイトを確保することができる。
4、本願の少なくとも1つの実施例で提供されるナノジルコニア分散液の調製方法は、添加される有機酸、改質剤及び油性分散助剤の含有量を、本願に限定された範囲内に制御する必要があり、含有量が低すぎると期待される改質効果が得られず、含有量が高すぎると逆効果となり、不必要な経済的損失も生じる可能性がある。
5、本願の少なくとも1つの実施例で提供されるナノジルコニア分散液は、ナノジルコニア粒子の分散含有量が高くて45~75wt%に達し、屈折率が1.420~1.565に達することができ、それに基づいて得られるナノジルコニア・モノマー分散液の分散含有量が55~85wt%に達し、屈折率が1.620~1.720に達することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明の実施例1で提供されるナノジルコニア分散液の赤外線スペクトル図である。
【
図2】本発明の実施例5で提供されるナノジルコニア分散液の赤外線スペクトル図である。
【
図3】本発明の実施例6で提供されるナノジルコニア分散液の赤外線スペクトル図である。
【
図4】本発明の実施例7で提供されるナノジルコニア分散液の赤外線スペクトル図である。
【
図5】本発明の実施例で使用されるBYK-9076をジルコニアに添加した後(添加量40%)の赤外線スペクトル図である。
【
図6】本発明の実施例で使用されるBYK-9076をジルコニアに添加した後(添加量5%)の赤外線スペクトル図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本願の実施例の技術的解決策を明確かつ完全に説明するが、説明される実施例は本願の実施例の一部に過ぎず、実施例の全てではないことは明らかである。本願の実施例に基づいて、当業者が創造的な労働を行うことなく得られる他のすべての実施例は、いずれも本願の保護範囲に属する。
【0027】
本願の説明において、特に説明のない限り、単位を明確に説明していない含有量はすべて質量含有量であり、ナノジルコニア分散液を得るために、本願の原材料における上記のジルコニア水溶液は、すべてナノジルコニア水溶液を指すものと理解される。
【0028】
上記の目的を達成するために、本願はナノジルコニア分散液を提供し、前記ナノジルコニア分散液に含まれるナノジルコニア粒子の量は45~75wt%であり、ここで、ナノジルコニア粒子を赤外線スペクトルで特性評価したところ、その表面に以下のピークアウト区間の官能基:
ヒドロキシ基:3200cm-1~3600cm-1、Zr-O-Zr:480cm-1~850cm-1、飽和炭素-水素結合:2850cm-1~2960cm-1、エステルカルボニル基:1700cm-1~1750cm-1、非局在化共役エステル基:1460cm-1~1580cm-1、Si-O-Zr:800cm-1~1200cm-1及びC-Oエーテル結合:1000cm-1~1200cm-1がグラフトされていることが見出された。これらの官能基の導入に成功することで、ジルコニア粒子の親油性を大幅に向上させることができ、後続の様々な分散液やそのフィルムの製造に可能性を提供すると共に、溶媒型及びモノマー型分散液の固形分及び屈折率の改善に積極的な影響を与えることができることが理解される。
【0029】
いくつかの実施例において、前記ナノジルコニア分散液の屈折率は、ジルコニアの含有量が45%~65%の場合1.420~1.535であり、ジルコニアの含有量が65%~75%の場合1.498~1.565である。
【0030】
いくつかの実施例において、前記ナノジルコニア分散液におけるナノジルコニア粒子の屈折率は2.20~2.60である。
【0031】
いくつかの実施例において、前記ナノジルコニア粒子における正方相晶粒構造の割合は60~95%である。ジルコニアの結晶型は、単斜相、正方相、立方相に分けられ、本願の実施例のナノジルコニア分散液において、正方相結晶型を有するジルコニアナノ粒子は、ジルコニアの全結晶型における質量割合であることが理解される。
【0032】
本願はまた、ナノジルコニア分散液の調製方法を提供し、前記調製方法は、
ジルコニア水溶液に有機溶媒を添加し、均一に混合した後、系に有機酸及び改質剤を添加してジルコニア粒子を改質し、次いで油性分散助剤を添加し、回転蒸発により水を除去してナノジルコニア分散液を得るステップを含む。
【0033】
以上の実施例で提供されるナノジルコニア分散液の調製方法は、ジルコニア粒子の水と有機溶媒とを混合した分散液に有機酸及び改質剤を添加し、それに対して親油性改質処理を施した後、水を除去すると共に、純粋な有機溶媒相のジルコニア分散液を得た後、油性分散助剤を添加することによって、分散液の安定性と分散性を強化することができる。上記の解決策は、複雑な操作や分散装置を必要とせず、方法が簡単で、このような方法に基づいて処理すると、先行技術において分散媒の置換を行った分散液に比べて、顕著な利点がある。
【0034】
いくつかの実施例において、系に有機酸及び改質剤を添加してジルコニア粒子を改質することは、具体的に:
大気圧、50~150℃の条件下で、有機酸及び改質剤を系に添加してジルコニア粒子を改質するか、または
有機酸及び改質剤を前記有機溶媒に溶解させて、大気圧、50~150℃の条件下で、ジルコニア水溶液及び有機溶媒を混合した分散液に添加して、ジルコニア粒子を改質する。
【0035】
いくつかの実施例において、添加される有機溶媒とジルコニア水溶液の体積比は(3-5):1である。
【0036】
いくつかの実施例において、前記有機溶媒は、ブタノン、メチルイソブチルケトン、プロピレングリコール・メチルエーテル及びエチレングリコール・メチルエーテルのうちの少なくとも1つである。
【0037】
いくつかの実施例において、前記有機酸は、飽和または不飽和のモノカルボン酸、ポリカルボン酸及びヒドロキシカルボン酸のうちの少なくとも1つから選択され、有機酸はナノジルコニアの含有量に対して3~20wt%添加される。
【0038】
いくつかの実施例において、前記モノカルボン酸は、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、イソオクタン酸、アクリル酸、メタクリル酸のうちの少なくとも1つから酸選択され、前記ポリカルボン酸は、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、フタル酸、フマル酸、マレイン酸のうちの少なくとも1つから選択され、前記ヒドロキシカルボン酸は、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸のうちの少なくとも1つから選択される。
【0039】
いくつかの実施例において、前記改質剤は、3-(メタクリロイル・オキシ)プロピル・トリメトキシ・シラン、3-グリシジルエーテル・オキシプロピル・トリメトキシ・シランのうちの少なくとも1つであり、改質剤はナノジルコニアの含有量に対して5~20wt%添加される。
【0040】
本願の実施例で提供されるナノジルコニア分散液の調製方法において、ジルコニアの表面を処理するために有機酸及び改質剤を添加する。これにより、一方ではジルコニア粒子の親油性を改善し、他方ではジルコニア粒子を均一に分散させ、改質剤とジルコニアとをより十分に結合させることができる。また、有機酸の存在は改質剤の加水分解とグラフトを促進し、改質剤の存在は有機酸とジルコニアのグラフトを促進し、両者は互いに促進し合い、油性分散助剤も有機酸及び改質剤とジルコニアのグラフトを促進する積極的な効果を果たす。添加される有機酸の量は、ナノジルコニアの含有量の2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19wt%または上記範囲内の任意のポイント値であってもよく、添加される改質剤の量は、ナノジルコニアの含有量の6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19wt%または上記範囲内のポイント値であってもよい。
【0041】
いくつかの実施例において、前記油性分散助剤は、アニオン性分散剤、カチオン性分散剤、非イオン性分散剤及びポリマー性分散剤のうちの少なくとも1つから選択され、リン酸エステル系の分散助剤であることが好ましい。油性分散助剤は、ナノジルコニアの含有量に対して5~20wt%添加される。
【0042】
上記ステップにおいて、分散液の安定性と分散性をさらに向上させるために、油性分散助剤を添加することが理解される。特に、上記油性分散助剤は、有機酸及び改質剤を分散系に添加した後に添加されるべきであり、これは、ジルコニア粒子の表面に、有機酸及び改質剤が表面処理を行うために十分な活性サイトを提供することを確保する。前記油性分散助剤の添加量は、ナノジルコニア含有量の2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19wt%または上記範囲内の任意のポイント値であってもよい。
【0043】
いくつかの実施例において、前記油性分散助剤は、特にドイツBYK社製の分散剤BYK-9076及びBYK-90777から選択してもよい。
【0044】
上記の実施例において、BYK-9076は高分子量の共重合体シリルアンモニウム塩であり、
図5は、BYK-9076(40%)を添加した後のジルコニアの赤外スペクトル図である。ここで、3392cm
-2におけるヒドロキシ基ピークは、ジルコニア表面に残存するヒドロキシ基に対応し、2926cm
-2はBYK9076の飽和炭化水素ピークであり、1633cm
-2はジルコニア無機粉末に吸着された水のピークであり、1060cm
-2はBYK9076をジルコニアにグラフトして生成されたSi-O-Zrであり、565cm
-2はジルコニアのZr-O-Zrである。
図5の生成物にSi-O-Zrピークが現れていることは、BYK-9076がジルコニアにグラフトしてSi-O-Zr官能基を形成できることを説明する。
図6は、BYK-9076(5%)を添加した後のジルコニアの赤外線スペクトル図である。
図5及び
図6から、BYK9076を添加すれば、その添加量の多少にかかわらず、Si-O-Zrのピークが現れることがわかる。BYK9077は顔料親和性基を有する高分子量の共重合体である。したがって、BYK9076を油性分散助剤として使用すると、改質剤とともにSi-O-Zr官能基を提供し、調製して得られるナノジルコニア分散液中のSi-O-Zr官能基数をさらに増加させ、ナノジルコニア分散液の屈折率を向上させることができる。BYK9077の構造はBYK9076と類似しているが、立体障害が大きく、ジルコニアとのグラフト化が少ないため、その赤外スペクトルにはヒドロキシ基ピーク、水ピーク及びジルコニアのZr-O-Zrが見える。
【0045】
本願はまた、上記技術的解決策のいずれか1つに基づくナノジルコニア分散液に光硬化性樹脂を添加し、減圧蒸留して分散液における有機溶媒を除去することによって調製されるナノジルコニア・モノマー分散液を提供する。ここで、本願の前記モノマー分散液は、単一成分が添加された分散液を指し、光硬化性成分に含まれているモノマーまたはそのオリゴマーを特に指すものではないことに留意されたい。
【0046】
いくつかの実施例において、前記ナノジルコニア・モノマー分散液のナノジルコニアの含有量は55~85wt%であり、前記ナノジルコニア・モノマー分散液の屈折率は1.620~1.720である。前記モノマー型分散液のナノジルコニアの含有量はまた、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84wt%、または上記範囲内の任意のポイント値であってもよいことが理解される。
【0047】
いくつかの実施例において、前記光硬化性樹脂は、エステル、ウレタン、エーテル、シリコン、ハロゲン及び/またはリン含有基からなるアクリル酸系またはメタクリル酸系のモノマーまたはそのオリゴマーから選択される。また、前記モノマーまたはそのオリゴマーはいずれも市販から得ることができる。
【0048】
いくつかの実施例において、前記光硬化性樹脂は、ジルコニアと光硬化性樹脂の合計質量に対して15~45wt%の量で添加される。光硬化性樹脂の含有量は、20、25、30、35wt%または上記範囲内の任意のポイント値であってもよいことが理解される。
【0049】
いくつかの実施例において、前記光硬化性樹脂はフェノキシベンジル・アクリル酸エステル、メチルアクリレート、メチルメタクリレートのうちの少なくとも1つである。
【0050】
本願はまた、上記技術的解決策のいずれか1つに基づく調製方法で調製して得られるナノジルコニア分散体、または上記技術的解決策のいずれか1つに基づくナノジルコニア・モノマー分散体を使用して調製して得られることを特徴とする光学フィルムを提供する。
【0051】
いくつかの実施例において、前記光学フィルムは輝度向上フィルム、反射防止フィルム及び屈折性が高いコーティング層を有する他の光学フィルムのうちの1つである。
【0052】
本願の実施例で提供されるナノジルコニア分散液、その調製方法及び得られるモノマー分散液をより明確且つ詳細に説明するために、以下に具体的な実施例を結合して説明する。
【0053】
実施例1
ジルコニア水溶液にプロピレングリコール・メチルエーテル(PGME)溶媒を添加し、均一に混合した後、上記の系にイソオクタン酸(添加量はジルコニウム含有量の5%)、3-(メタクリロイル・オキシ)プロピル・トリメトキシ・シラン(添加量はジルコニウム含有量の10%)を順次に添加してジルコニア粒子を改質し、次いで油性分散助剤BYK-9076(添加量は5%)を添加し、回転蒸発により水を除去し、ナノジルコニア有機PGME型分散液を得た。
【0054】
前記ナノジルコニア有機PGME型分散液において、ナノジルコニアの濃度が45wt%の場合、屈折率は1.475であり、濃度が65%の場合、屈折率は1.535であり、濃度が75wt%で、屈折率は1.565であった。
【0055】
添付の
図1は、実施例1の赤外線スペクトル図である。ここで、3418cm
-1吸収ピークは、ジルコニア粒子表面のヒドロキシ基の特性吸収ピークであり、589cm
-1及び496cm
-1はZr-O-Zrの特性吸収ピークである。また、2950cm
-1は飽和炭素-水素結合の特性ピークであり、1718cm
-1はエステルカルボニル基の特性ピークであり、1561cm
-1及び1463cm
-1は非局在化共役エステル基の特性吸収ピークであり、1170cm
-1はSi-O-Zrの特性吸収ピークであり、1025cm
-1はC-Oエーテル結合の特性吸収ピークである。これは、イソオクタン酸、3-(メタクリロイル・オキシ)プロピル・トリメトキシ・シランがジルコニア粒子の表面にグラフトすることに成功したことを示す。
実施例2
【0056】
調製方法は実施例1と同様であり、相違点は、イソオクタン酸の添加量をジルコニウム含有量の3%にし、3-グリシジルエーテル・オキシプロピル・トリメトキシ・シランの添加量をジルコニウム含有量の5%にし、油性分散助剤BYK-9076の添加量をジルコニウム含有量の10%にして、ナノジルコニア有機PGME型分散液を得たということにある。
【0057】
前記ナノジルコニア有機PGME型分散液において、ナノジルコニアの濃度が45wt%の場合、屈折率は1.470であり、濃度が65%の場合、屈折率は1.529であり、濃度が75wt%で、屈折率は1.558であった。
実施例3
【0058】
調製方法は実施例1と同様であり、相違点は、イソオクタン酸の添加量をジルコニウム含有量の12%にし、改質剤3-(メタクリロイル・オキシ)プロピル・トリメトキシ・シランの添加量をジルコニウム含有量の15%にし、油性分散助剤BYK-9077の添加量をジルコニウム含有量の15%にし、ナノジルコニア有機PGME型分散液を得たということにある。
【0059】
前記ナノジルコニア有機PGME型分散液において、ナノジルコニアの濃度が45wt%の場合、屈折率は1.461であり、濃度が65%の場合、屈折率は1.522であり、濃度が75wt%で、屈折率は1.552であった。
実施例4
【0060】
調製方法は実施例1と同様であり、相違点は、イソオクタン酸の添加量をジルコニウム含有量の20%にし、改質剤3-グリシジルエーテルオキシプロピル・トリメトキシ・シランの添加量をジルコニウム含有量の20%にし、油性分散助剤BYK-9077の添加量をジルコニウム含有量の20%にし、ナノジルコニア有機PGME型分散液を得たということにある。
【0061】
前記ナノジルコニア有機PGME型分散液において、ナノジルコニアの濃度が45wt%の場合、屈折率は1.449であり、濃度が65%の場合、屈折率は1.509であり、濃度が75wt%で、屈折率は1.540であった。
実施例5
【0062】
調製方法は実施例1と同様であり、相違点は、有機酸が12-ヒドロキシステアリン酸であり、また酸の添加量をジルコニウム含有量の5%にし、ナノジルコニア有機PGME型分散液を得たということにある。
【0063】
前記ナノジルコニア有機PGME型分散液において、ナノジルコニアの濃度が45wt%の場合、屈折率は1.467であり、濃度が65%の場合、屈折率は1.525であり、濃度が75wt%で、屈折率は1.554であった。
【0064】
添付の
図2は、実施例5の赤外線スペクトル図である。ここで、3427cm
-1の吸収ピークはジルコニア粒子の表面ヒドロキシ基の特性ピークであり、586cm
-1及び483cm
-1はZr-O-Zrの特性吸収ピークである。また、2925cm
-1は飽和炭素-水素結合の特性ピークであり、1715cm
-1はエステル・カルボニル基の特性ピークであり、1562cm
-1及び1463cm
-1は非局在化共役エステル基の特性吸収ピークであり、1169cm
-1はSi-O-Zrの特性吸収ピークであり、1032cm
-1はC-Oエーテル結合の特性吸収ピークである。これは、12-ヒドロキシ・ステアリン酸、3-(メタクリロイル・オキシ)プロピル・トリメトキシ・シランがジルコニア粒子の表面にグラフトすることに成功したことを示す。
実施例6
【0065】
調製方法は実施例1と同様であり、相違点は、添加される有機酸が酢酸であり、且つ酸の添加量をジルコニウムの含有量の5%にし、ナノジルコニア有機PGME型分散液を得たということにある。
【0066】
前記ナノジルコニア有機PGME型分散液において、ナノジルコニアの濃度が45wt%の場合、屈折率は1.420であり、濃度が65%の場合、屈折率は1.498であり、濃度が75wt%で、屈折率は1.530であった。
【0067】
添付の
図3は、実施例6の赤外線スペクトル図である。ここで、3427cm
-1吸収ピークはジルコニア粒子の表面ヒドロキシ基の特性ピークであり、589cm
-1及び496cm
-1はZr-O-Zrの特性吸収ピークである。また、2934cm
-1は飽和炭素-水素結合の特性ピークであり、1711cm
-1はエステルカルボニル基の特性ピークであり、1558cm
-1及び1465cm
-1は非局在化共役エステル基の特性吸収ピークであり、1167cm
-1はSi-O-Zrの特性吸収ピークであり、1031cm
-1はC-Oエーテル結合の特性吸収ピークである。これは、酢酸、3-(メタクリロイル・オキシ)プロピル・トリメトキシ・シランがジルコニア粒子の表面にグラフトすることに成功したことを示す。
実施例7
【0068】
調製方法は実施例1と同様であり、相違点は、添加する有機酸がプロピオン酸であり、且つ酸の添加量をジルコニウムの含有量の5%にし、ナノジルコニア有機PGME型分散液を得たということにある。
【0069】
前記ナノジルコニア有機PGME型分散液において、ナノジルコニアの濃度が45wt%の場合、屈折率は1.457であり、濃度が65%の場合、屈折率は1.513であり、濃度が75wt%で、屈折率は1.548であった。
【0070】
添付の
図4は、実施例7の赤外線スペクトル図である。ここで、3434cm
-1吸収ピークはジルコニア粒子の表面ヒドロキシ基の特性ピークであり、580cm
-1及び490cm
-1はZr-O-Zrの特性吸収ピークである。また、2932cm
-1は飽和炭素-水素結合の特性ピークであり、1714cm
-1はエステルカルボニル基の特性ピークであり、1563cm
-1及び1467cm
-1は非局在化共役エステル基の特性吸収ピークであり、1109cm
-1はSi-O-Zrの特性吸収ピークであり、1027cm
-1はC-Oエーテル結合の特性吸収ピークである。これは、プロピオン酸、3-(メタクリロイル・オキシ)プロピル・トリメトキシ・シランがジルコニア粒子表面にグラフトすることに成功したことを示す。
実施例8
【0071】
実施例1で調製して得られたナノジルコニア有機PGME型分散液に、フェノキシベンジル・アクリル酸エステルを添加し、該混合液を減圧蒸留して有機溶媒を除去し、光硬化性フェノキシベンジル・アクリル酸エステルを有するナノジルコニア分散液を得た。
【0072】
前記分散液において、ナノジルコニアの含有量が55wt%の場合、屈折率は1.675であり、含有量が75wt%の場合、屈折率は1.700であり、含有量が85wt%で、屈折率は1.720であった。
実施例9
【0073】
実施例2で調製して得られたナノジルコニア有機PGME型分散液に、フェノキシベンジル・アクリル酸エステルを添加し、該混合液を減圧蒸留して有機溶媒を除去し、光硬化性フェノキシベンジル・アクリル酸エステルを有するナノジルコニア分散液を得た。
【0074】
前記分散液において、ナノジルコニアの含有量が55wt%の場合、屈折率は1.660であり、含有量が75wt%の場合、屈折率は1.687であり、含有量が85wt%で、屈折率は1.706であった。
実施例10
【0075】
実施例3で調製して得られたナノジルコニア有機PGME型分散液に、フェノキシベンジル・アクリル酸エステルを添加し、該混合液を減圧蒸留して有機溶媒を除去し、光硬化性フェノキシベンジル・アクリル酸エステルを有するナノジルコニア分散液を得た。
【0076】
前記分散液において、ナノジルコニアの含有量が55wt%の場合、屈折率は1.644であり、含有量が75wt%の場合、屈折率は1.667であり、含有量が85wt%で、屈折率は1.687であった。
実施例11
【0077】
実施例4で調製して得られたナノジルコニア有機PGME型分散液に、フェノキシベンジル・アクリル酸エステルを添加し、該混合液を減圧蒸留して有機溶媒を除去し、光硬化性フェノキシベンジル・アクリル酸エステルを有するナノジルコニア分散液を得た。
【0078】
前記分散液において、ナノジルコニアの含有量が55wt%の場合、屈折率は1.620であり、含有量が75wt%の場合、屈折率は1.643であり、含有量が85wt%で、屈折率は1.662であった。
実施例12
【0079】
実施例5で調製して得られたナノジルコニア有機PGME型分散液に、フェノキシベンジル・アクリル酸エステルを添加し、該混合液を減圧蒸留して有機溶媒を除去し、光硬化性フェノキシベンジル・アクリル酸エステルを有するナノジルコニア分散液を得た。
【0080】
前記分散液において、ナノジルコニアの含有量が55wt%の場合、屈折率は1.650であり、含有量が75wt%の場合、屈折率は1.676であり、含有量が85wt%で、屈折率は1.695であった。
実施例13
【0081】
実施例6で調製して得られたナノジルコニア有機PGME型分散液に、フェノキシベンジル・アクリル酸エステルを添加し、該混合液を減圧蒸留して有機溶媒を除去し、光硬化性フェノキシベンジル・アクリル酸エステルを有するナノジルコニア分散液を得た。
【0082】
前記分散液において、ナノジルコニアの含有量が55wt%の場合、屈折率は1.621であり、含有量が75wt%の場合、屈折率は1.641であり、含有量が85wt%で、屈折率は1.656であった。
実施例14
【0083】
実施例7で調製して得られたナノジルコニア有機PGME型分散液に、フェノキシベンジル・アクリル酸エステルを添加し、該混合液を減圧蒸留して有機溶媒を除去し、光硬化性フェノキシベンジル・アクリル酸エステルを有するナノジルコニア分散液を得た。
【0084】
前記分散液において、ナノジルコニアの含有量が55wt%の場合、屈折率は1.631であり、含有量が75wt%の場合、屈折率は1.657であり、含有量が85wt%で、屈折率は1.678であった。
比較例1
【0085】
調製方法は実施例1と同様であり、相違点は、添加するイソオクタン酸の含有量を0にし、ナノジルコニア有機PGME型分散液を得たということにある。ジルコニア粒子は、表面にヒドロキシ基、Zr-O-Zr及びSi-O-Zrを有し、エステルカルボニル基、C-Oエーテル結合、共役エステル基及び飽和炭素-水素結合基を有しなかった。
【0086】
前記ナノジルコニア有機PGME型分散液において、ナノジルコニアの濃度が45wt%の場合、屈折率は1.395であり、濃度が65%の場合、屈折率は1.434であり、濃度が75wt%で、屈折率は1.472であった。
比較例2
【0087】
比較例1で調製して得られたナノジルコニア有機PGME型分散液に、フェノキシベンジル・アクリル酸エステルを添加し、該混合液を減圧蒸留して有機溶媒を除去したところ、最終生成物であるジルコニアが析出され、光硬化性フェノキシベンジル・アクリル酸エステルを有するナノジルコニア分散液は得られなかった。
比較例3
【0088】
ジルコニア水溶液にプロピレングリコール・メチルエーテル(PGME)溶媒を添加し、均一に混合した後、上記の系に油性分散助剤BYK-9076(添加量は5%)を添加し、次いでイソオクタン酸(添加量はジルコニウム含有量の5%)、3-(メタクリロイル・オキシ)プロピル・トリメトキシ・シラン(添加量はジルコニウム含有量の10%)を添加してジルコニア粒子を改質し、回転蒸発により水を除去し、ナノジルコニア有機PGME型分散液を得た。ジルコニア粒子は、表面にヒドロキシ基、Zr-O-Zr、Si-O-Zr基、共役エステル基、エステルカルボニル基及びC-Oエーテル結合基を有し、飽和炭素-水素結合基を有しなかった。
【0089】
前記ナノジルコニア有機PGME型分散液において、ナノジルコニアの濃度が45wt%の場合、屈折率は1.398であり、濃度が65%の場合、屈折率は1.445であり、濃度が75wt%で、屈折率は1.484であった。
比較例4
【0090】
比較例3で調製して得られたナノジルコニア有機PGME型分散液に、フェノキシベンジル・アクリル酸エステルを添加し、該混合液を減圧蒸留して有機溶媒除去し、光硬化性フェノキシベンジル・アクリル酸エステルを有するナノジルコニア分散液を得た。
【0091】
前記分散液において、ナノジルコニアの含有量が55wt%の場合、屈折率は1.575であり、含有量が75wt%で、その屈折率は1.598であった。
比較例5
【0092】
調製方法は比較例3と同様であり、相違点は、系に油性分散助剤BYK-9076(添加量は5%)を添加し、次いで12-ヒドロキシステアリン酸(添加量はジルコニウム含有量の5%)及び3-(メタクリロイル・オキシ)プロピル・トリメトキシ・シラン(添加量はジルコニウム含有量の10%)を添加してジルコニア粒子を改質し、ナノジルコニア有機PGME型分散液を得るということにある。ジルコニア粒子は、表面にヒドロキシ基、Zr-O-Zr、Si-O-Zr基、共役エステル基、エステルカルボニル基及びC-Oエーテル結合基を有し、飽和炭素-水素結合基を有しなかった。
【0093】
前記ナノジルコニア有機PGME型分散液において、ナノジルコニアの濃度が45wt%の場合、屈折率は1.396であり、濃度が65%の場合、屈折率は1.442であり、濃度が75wt%で、屈折率は1.480であった。
比較例6
【0094】
比較例5で調製して得られたナノジルコニア有機PGME型分散液に、フェノキシベンジル・アクリル酸エステルを添加し、該混合液を減圧蒸留して有機溶媒を除去し、光硬化性フェノキシベンジル・アクリル酸エステルを有するナノジルコニア分散液を得た。
【0095】
前記分散液において、ナノジルコニアの含有量が55wt%の場合、屈折率は1.570であり、含有量が75wt%で、その屈折率は1.594であった。
比較例7
【0096】
調製方法は実施例5と同様であり、相違点は、12-ヒドロキシステアリン酸、3-(メタクリロイル・オキシ)プロピル・トリメトキシ・シラン及び油性分散助剤BYK-9076の添加量を、それぞれジルコニウム含有量の25%にし、ナノジルコニア有機PGME型分散液を得たということにある。ジルコニア粒子は、表面にヒドロキシ基、Zr-O-Zr、Si-O-Zr基、C-Oエーテル結合、エステルカルボニル基及び飽和炭素-水素結合基を有し、共役エステル基を有しない。
【0097】
前記ナノジルコニア有機PGME型分散液において、ナノジルコニアの濃度が45wt%の場合、屈折率は1.398であり、濃度が65%の場合、屈折率は1.447であり、濃度が75wt%で、屈折率は1.481であった。
比較例8
【0098】
比較例7で調製して得られたナノジルコニア有機PGME型分散液に、フェノキシベンジル・アクリル酸エステルを添加し、該混合液を減圧蒸留して有機溶媒を除去し、光硬化性フェノキシベンジル・アクリル酸エステルを有するナノジルコニア分散液を得た。
【0099】
前記分散液において、ナノジルコニアの含有量が55wt%の場合、屈折率は1.567であり、含有量が75wt%で、その屈折率は1.591であった。
比較例9
【0100】
調製方法は実施例1と同様であり、相違点は、イソオクタン酸、3-グリシジルエーテルオキシプロピル・トリメトキシ・シラン及び油性分散助剤BYK-9076の添加量をジルコニウム含有量の30%にし、ナノジルコニア有機PGME型分散液を得たということにある。ジルコニア粒子は、表面にヒドロキシ基、Zr-O-Zr、Si-O-Zr基、C-Oエーテル結合、エステルカルボニル基及び飽和炭素-水素結合基を有し、共役エステル基を有しなかった。
【0101】
前記ナノジルコニア有機PGME型分散液において、ナノジルコニアの濃度が45wt%の場合、屈折率は1.389であり、濃度が65%の場合、屈折率は1.446であり、濃度が75wt%で、屈折率は1.485であった。
比較例10
【0102】
比較例9で調製して得られたナノジルコニア有機PGME型分散液に、フェノキシベンジル・アクリル酸エステルを添加し、該混合液を減圧蒸留して有機溶媒を除去し、光硬化性フェノキシベンジル・アクリル酸エステルを有するナノジルコニア分散液を得た。
【0103】
前記分散液において、ナノジルコニアの含有量が55wt%の場合、屈折率は1.557であり、含有量が75wt%で、その屈折率は1.582であった。
比較例11
【0104】
調製方法は実施例1と同様であり、相違点は、添加する3-(メタクリロイル・オキシ)プロピル・トリメトキシ・シランの含有量を0にし、ナノジルコニア有機PGME型分散液を得るということにある。ジルコニア粒子は、表面にヒドロキシ基、Zr-O-Zr及びSi-O-Zrを有し、エステルカルボニル基、C-Oエーテル結合、共役エステル基及び飽和炭素-水素結合基を有しなかった。
【0105】
前記ナノジルコニア有機PGME型分散液において、ナノジルコニアの濃度が45wt%の場合、屈折率は1.399であり、濃度が65%の場合、屈折率は1.439であり、濃度が75wt%で、屈折率は1.477であった。
比較例12
【0106】
比較例11で調製して得られたナノジルコニア有機PGME型分散液に、フェノキシベンジル・アクリル酸エステルを添加し、該混合液を減圧蒸留して有機溶媒を除去したところ、最終生成物であるジルコニアが析出され、光硬化性フェノキシベンジル・アクリル酸エステルを有するナノジルコニア分散液は得られなかった。
比較例13
【0107】
調製方法は実施例1と同様であり、相違点は、添加する油性分散助剤をDISPERBYK-111(添加量はジルコニウム含有量の5%)とし、ナノジルコニア有機PGME型分散液を得たということにある。ジルコニア粒子は、表面にヒドロキシ基、Zr-O-Zr、COOH、飽和炭素-水素結合基、エステルカルボニル基及びC-Oエーテル結合を有し、Si-O-Zr及び共役エステル基を有しなかった。
【0108】
前記ナノジルコニア有機PGME型分散液において、ナノジルコニアの濃度が45wt%の場合、屈折率は1.391であり、濃度が65%の場合、屈折率は1.443であり、濃度が75wt%で、屈折率は1.481であった。
比較例14
【0109】
比較例13で調製して得られたナノジルコニア有機PGME型分散液に、フェノキシベンジル・アクリル酸エステルを添加し、該混合液を減圧蒸留して有機溶媒を除去し、光硬化性フェノキシベンジル・アクリル酸エステルを有するナノジルコニア分散液を得た。
【0110】
前記分散液において、ナノジルコニアの含有量が55wt%の場合、屈折率は1.560であり、含有量が75wt%の場合、屈折率は1.587であった。
【0111】
表1 実施例1-14及び比較例1-14の相違点と得られた製品データのまとめ
【0112】
以下、本願の実施例と比較例に対して比較分析する。
有機酸(比較例1)または改質剤(比較例11)を添加しない場合、有機酸と改質剤の相互促進効果がないため、比較例1及び11のジルコニアは、表面に油性分散助剤によって提供されるSi-O-Zrのみがあり、その結果、比較例2及び12のモノマー型分散液の調製は失敗となった。このことは、有機酸、改質剤及び油性分散助剤のジルコニア粒子に対する作用が相互に促進され、このような促進作用の変化は、ジルコニア粒子の表面グラフト基の違いをもたらし、さらに分散液を成功的に調製するか否かに影響を与えることを説明した。
【0113】
比較例3と比較例5では、まず5%の油性分散助剤BYK9076を添加したため、ジルコニアの表面活性サイトが不足となり、炭素鎖の長いイソオクタン酸と12-ヒドロキシステアリン酸は立体障害が大きく、ジルコニア表面の少ない活性サイトにグラフトすることが困難であるため、比較例3と比較例5には飽和炭化水素が存在しない。そのモノマー型分散液におけるナノジルコニアの含有量は最大でも75wt%であり、屈折率が1.598及び1.594であり、実施例8~14における75wt%モノマー型分散液の屈折率1.641~1.700に比べてはるかに低く、実施例8~14における85wt%のより高い屈折率とは言うまでもない。本願の実施例1~7において、まず改質剤と有機酸を添加してジルコニア粒子を改質した場合、そのジルコニアは表面に有機酸及び改質剤が作用するのに充分な活性サイトが存在するため、より優れた改質効果と分散効果を得ることができる。
【0114】
比較例7と比較例9では、12-ヒドロキシステアリン酸及びイソオクタン酸が電子供与性の長い炭素鎖を有し、且つ多量(25%及び30%)に添加されるため、このような多量の電子供与基のグラフトは、ジルコニア中心の電子欠乏性を直接弱めるか消失させる。したがって、共役エステル基は現れず、そのモノマー型分散液におけるナノジルコニアの含有量が最大でも75wt%であり、その屈折率はわずか1.591及び1.582である。本願の実施例では有機酸の添加量が少なく、ジルコニア中心の電子欠乏性を相殺するには不十分であるため、共役エステル基が存在する。
【0115】
実施例1では、比較例13と異なる油性分散助剤を使用しており、比較例13ではジルコニア粒子の表面にCOOHピークが存在し、且つSi-O-Zr及び共役エステル基ピークが現れていないことから、比較例13における有機酸と改質剤は、グラフトされる方法によりジルコニアと作用するものではなく、単にジルコニアの表面に被覆されていることを説明する。さらに、比較例13において、各濃度における溶媒型分散液の屈折率は、いずれも実施例1よりも低く、同時に、比較例14のモノマー型分散液におけるナノジルコニアの含有量は最大でも75wt%で、屈折率は1.587であり、実施例8における75wt%モノマー型分散液の屈折率1.700よりもはるかに低く、実施例8における85wt%のより高い屈折率は言うまでもない。このことは、油性分散助剤BYK9076が有機酸及び改質剤とジルコニア粒子へのグラフトを促進することに重要な影響を与え、さらにジルコニア粒子表面のグラフト基の数及びタイプに影響を与え、それにより、分散液の屈折率が著しく向上されることを説明する。
【0116】
以上の内容から、本願の実施例1~7で提供される調製方法は、有機酸、改質剤及び油性分散助剤が同時にジルコニア粒子に対して相互促進する作用を利用し、また各試薬の含有量を本願の実施例で提供される範囲内に制御することによって、ナノジルコニア粒子の表面に期待する各官能基をグラフトし、最終的に分散均一性が良好で高い屈折率を有するナノジルコニア分散液を得ることができる。該ナノジルコニア分散液は、後続の輝度向上フィルムまたは反射防止フィルム等の調製において、高い屈折性コーティング層の屈折率を大幅に向上させ、それにより、フィルムの性能を向上させることができる。表1の屈折率データから、溶媒型分散液の場合、同じ75wt%の条件下で、実施例1~7の屈折率は1.530~1.565であり、比較例1、3、5、7、9、11及び13の屈折率は1.472~1.485であり、その差は0.058~0.08であることが分かる。数値的に見れば屈折率の差は大きくないが、分散液の屈折率の観点から見ると、その差は天と地の差であり、例えば、屈折率差が0.01である分散液を用いてそれぞれ輝度向上フィルムを製造してディスプレイに応用した場合、その光線透過率は89%と93%になり、これがB級スクリーンとA級スクリーンの差となる。
【手続補正書】
【提出日】2024-03-13
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナノジルコニア・モノマー分散液であって、
ナノジルコニア分散液に光硬化性樹脂を添加し、減圧蒸留して分散液の有機溶媒を除去することにより調製して得られ、前記ナノジルコニア分散液に含まれるナノジルコニア粒子の量が45~75wt%であり、前記ナノジルコニア分散液の屈折率が1.420~1.565であり、ここで、ナノジルコニア粒子を赤外線スペクトルで特性評価したところ、その表面に以下のピークアウト区間の官能基:
ヒドロキシ基:3200cm
-1~3600cm
-1、Zr-O-Zr:480cm
-1~850cm
-1、飽和炭素-水素結合:2850cm
-1~2960cm
-1、エステルカルボニル基:1700cm
-1~1750cm
-1、非局在化共役エステル基:1460cm
-1~1580cm
-1、Si-O-Zr:800cm
-1~1200cm
-1及びC-Oエーテル結合:1000cm
-1~1200cm
-1がグラフトされていることが見出されたことを特徴とする、ナノジルコニア・モノマー分散液。
【請求項2】
前記ナノジルコニア分散液の屈折率は、ジルコニアの含有量が45%~65%の場合1.420~1.535であり、ジルコニアの含有量が65%~75%の場合1.498~1.565であることを特徴とする、請求項1に記載のナノジルコニア・モノマー分散液。
【請求項3】
前記ナノジルコニア分散液におけるナノジルコニア粒子の屈折率は2.20~2.60であり、前記ナノジルコニア粒子における正方相晶粒構造の割合は60~95%であることを特徴とする、請求項1に記載のナノジルコニア・モノマー分散液。
【請求項4】
前記ナノジルコニア・モノマー分散液は下記の調製方法により得られ、前記調製方法は、
ジルコニア水溶液に有機溶媒を添加し、均一に混合した後、系に有機酸及び改質剤を添加してジルコニア粒子を改質し、次いで油性分散助剤を添加し、回転蒸発により水を除去してナノジルコニア分散液を得るステップを含み、
ここで、有機酸はナノジルコニアの含有量に対して3~20wt%添加され、改質剤はナノジルコニアの含有量に対して5~20wt%添加され、油性分散助剤はナノジルコニアの含有量に対して5~20wt%添加されることを特徴とする、請求項1に記載のナノジルコニア・モノマー分散液。
【請求項5】
系に有機酸及び改質剤を添加してジルコニア粒子を改質することは、具体的に:
大気圧、50~150℃の条件下で、有機酸及び改質剤を系に添加してジルコニア粒子を改質するか、または
有機酸及び改質剤を前記有機溶媒に溶解させて、大気圧、50~150℃の条件下で、ジルコニア水溶液及び有機溶媒を混合した分散液に添加して、ジルコニア粒子を改質することを特徴とする、請求項4に記載のナノジルコニア・モノマー分散液。
【請求項6】
前記有機溶媒は、ブタノン、メチルイソブチルケトン、プロピレングリコール・メチルエーテル及びエチレングリコール・メチルエーテルのうちの少なくとも1つであり、添加される有機溶媒とジルコニア水溶液の体積比は(3-5):1であることを特徴とする、請求項4に記載のナノジルコニア・モノマー分散液。
【請求項7】
前記有機酸は、飽和または不飽和のモノカルボン酸、ポリカルボン酸及びヒドロキシカルボン酸のうちの少なくとも1つから選択されることを特徴とする、請求項4に記載のナノジルコニア・モノマー分散液。
【請求項8】
前記モノカルボン酸は、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、イソオクタン酸、アクリル酸、メタクリル酸のうちの少なくとも1つから酸選択され、前記ポリカルボン酸は、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、フタル酸、フマル酸、マレイン酸のうちの少なくとも1つから選択され、前記ヒドロキシカルボン酸は、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸のうちの少なくとも1つから選択されることを特徴とする、請求項7に記載のナノジルコニア・モノマー分散液。
【請求項9】
前記改質剤は、3-(メタクリロイル・オキシ)プロピル・トリメトキシ・シラン、3-グリシジルエーテル・オキシプロピル・トリメトキシ・シランのうちの少なくとも1つであることを特徴とする、請求項4に記載のナノジルコニア・モノマー分散液。
【請求項10】
前記油性分散助剤は、アニオン性分散剤、カチオン性分散剤、非イオン性分散剤及びポリマー性分散剤のうちの少なくとも1つから選択されることを特徴とする、請求項4に記載のナノジルコニア・モノマー分散液。
【請求項11】
前記油性分散助剤は、BYK-9076またはBYK-9077から選択されることを特徴とする、請求項4に記載のナノジルコニア・モノマー分散液。
【請求項12】
前記ナノジルコニア・モノマー分散液において、ナノジルコニアの含有量は55~85wt%であり、前記ナノジルコニア・モノマー分散液の屈折率は1.620~1.720であることを特徴とする、請求項1~11のいずれか1項に記載のナノジルコニア・モノマー分散液。
【請求項13】
前記光硬化性樹脂は、エステル、ウレタン、エーテル、シリコン、ハロゲン及び/またはリン含有基からなるアクリル酸系またはメタクリル酸系のモノマーまたはそのオリゴマーから選択され、前記光硬化性樹脂は、ジルコニアと光硬化性樹脂の合計質量に対して15~45wt%の量で添加されることを特徴とする、請求項1~11のいずれか1項に記載のナノジルコニア・モノマー分散液。
【請求項14】
前記光硬化性樹脂は、フェノキシベンジル・アクリル酸エステル、メチルアクリレート、メチルメタクリレートのうちの少なくとも1つであることを特徴とする、請求項13に記載のナノジルコニア・モノマー分散液。
【請求項15】
光学フィルムであって、
請求項1~11のいずれか1項に記載のナノジルコニア・モノマー分散液を使用して調製して得られることを特徴とする、光学フィルム。
【国際調査報告】