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特表2024-536754交換膜燃料電池および酸捕捉デバイスを使用するためのアセンブリおよび方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-08
(54)【発明の名称】交換膜燃料電池および酸捕捉デバイスを使用するためのアセンブリおよび方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/0606 20160101AFI20241001BHJP
   H01M 8/04007 20160101ALI20241001BHJP
   H01M 8/0662 20160101ALI20241001BHJP
   B01D 53/32 20060101ALI20241001BHJP
   H01M 8/10 20160101ALN20241001BHJP
【FI】
H01M8/0606
H01M8/04007
H01M8/0662
B01D53/32
H01M8/10 101
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024516423
(86)(22)【出願日】2022-09-07
(85)【翻訳文提出日】2024-05-09
(86)【国際出願番号】 EP2022074777
(87)【国際公開番号】W WO2023046465
(87)【国際公開日】2023-03-30
(31)【優先権主張番号】2109909
(32)【優先日】2021-09-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516284345
【氏名又は名称】サフラン・パワー・ユニッツ
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】アブー,ソフヤネ
(72)【発明者】
【氏名】スコヒー,マリオン
【テーマコード(参考)】
5H126
5H127
【Fターム(参考)】
5H126BB06
5H127AA06
5H127AB04
5H127AC06
5H127BA02
5H127BA41
5H127BB02
5H127BB21
(57)【要約】
アノード入口(Ea)と、カソード入口(Ec)と、アノード出口(Sa)と、カソード出口(Sc)とを備えるプロトン交換膜燃料電池(1)を備えるアセンブリであって、前記出口(Sa、Sc)が、酸を含む排ガス(Ga、Gc)を取り除くように構成され、アセンブリは、排ガス(Ga、Gc)中に存在する酸のうちの少なくとも一部を抽出し、酸が除去された排ガス(Ga、Gc)を放出するために、出口(Sa、Sc)のうちの少なくとも1つに取り付けられた少なくとも1つの酸捕捉デバイス(2)を備える、アセンブリ。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アノード入口(Ea)と、カソード入口(Ec)と、アノード出口(Sa)と、カソード出口(Sc)とを備えるプロトン交換膜燃料電池(1)を具備するアセンブリであって、前記出口(Sa、Sc)が、酸を含む排ガス(Ga、Gc)を放出するように構成され、アセンブリは、排ガス(Ga、Gc)中の酸のうちの少なくとも一部を抽出し、酸が除去された排ガス(Ga、Gc)を放出するために、出口(Sa、Sc)のうちの少なくとも1つに取り付けられた少なくとも1つの酸捕捉デバイス(2)を具備することを特徴とする、アセンブリ。
【請求項2】
酸捕捉デバイス(2)がカソード出口(Sc)に取り付けられて、カソード排ガス(Gc)中に存在する酸のうちの少なくとも一部を抽出する、請求項1に記載のアセンブリ。
【請求項3】
アノード出口(Sa)に取り付けられた酸捕捉デバイス(2)をさらに具備する、請求項2に記載のアセンブリ。
【請求項4】
酸捕捉デバイス(2)が、排ガス(Ga、Gc)中に存在する酸を中和するように構成された少なくとも1つの塩基源(20)を備える、請求項1から3のいずれか一項に記載のアセンブリ。
【請求項5】
塩基源(20)が、固体および多孔質の形態の少なくとも1つの塩基を含む、請求項4に記載のアセンブリ。
【請求項6】
塩基源(20)が、以下の塩基、すなわち、NaOH、KOH、およびCa(OH)2のうちの1つ以上を含む、請求項4または5に記載のアセンブリ。
【請求項7】
酸捕捉デバイス(2)が、塩基源(20)の通過またはバイパスを制御するように構成された少なくとも1つの調整弁(22)を備える、請求項4から6のいずれか一項に記載のアセンブリ。
【請求項8】
弁(22)が、特に燃料電池(1)の動作パラメータ(PAR)に従って、制御可能である、請求項7に記載のアセンブリ。
【請求項9】
酸捕捉デバイス(2)が、液体(L)を備える少なくとも1つの凝縮エンクロージャ(30)を備え、そこへ、排ガス(Ga、Gc)が、酸を凝縮し希釈するように注入される、請求項1から8のいずれか一項に記載のアセンブリ。
【請求項10】
酸捕捉デバイス(2)が、凝縮エンクロージャ(30)の液体(L)を冷却するように構成された少なくとも1つの冷却回路を備える、請求項9に記載のアセンブリ。
【請求項11】
酸捕捉デバイス(2)が、酸が除去された排ガス(Ga、Gc)を冷却するように構成された少なくとも1つの熱交換器(23)を備える、請求項1から10のいずれか一項に記載のアセンブリ。
【請求項12】
酸捕捉デバイス(2)が、排ガス(Ga、Gc)から酸および水を含む液相を回収し、酸が除去された気相を放出するように構成された少なくとも1つの相分離器(40)を備える、請求項1から11のいずれか一項に記載のアセンブリ。
【請求項13】
酸捕捉デバイス(2)が、液相を収集するように構成された少なくとも1つの酸貯蔵タンク(41)を備える、請求項12に記載のアセンブリ。
【請求項14】
アノード出口(Sa)に取り付けられた請求項4に記載の第1の酸捕捉デバイス(2)と、カソード出口(Sc)に取り付けられた請求項9に記載の第2の酸捕捉デバイス(2)とを具備する、アセンブリ。
【請求項15】
請求項1から14のいずれか一項に記載のアセンブリを使用する方法であって、
燃料電池(1)の出口(Sa、Sc)のうちの少なくとも1つから、排ガス(Ga、Gc)中に存在する酸のうちの少なくとも一部を抽出するステップと、
酸が除去された排ガス(Ga、Gc)を放出するステップと
からなるステップを含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、「Proton-Exchange Membrane Fuel Cell」の略称であるPEMFCとして知られているプロトン交換膜タイプの燃料電池の分野に関する。特に、本発明は、特に航空機の推進に関与する電気機器に電力供給するために航空機に組み込まれることが意図された燃料電池に関する。
【背景技術】
【0002】
知られているように、[図1]を参照すると、燃料電池1は、アノード入口Eaと、カソード入口Ecと、アノード出口Saと、カソード出口Scとを備える。燃料電池1の端子(図示せず)で電気を作り出すために、アノード入口Eaは例えば二水素を受け取り、カソード入口Ecは例えば二酸素を受け取る。排ガスは、アノード出口Saおよびカソード出口Scを通して放出される。
【0003】
そのような燃料電池1は、一般に、電解質として機能する固体高分子膜を備える膜電極接合体(MEA)を備える。膜のプロトン伝導度を改良するために、膜に酸、特にリン酸をドープすることが知られている。
【0004】
アノード出口Saおよびカソード出口Scを介して放出される排ガスは、主に酸素、窒素、水素、および水蒸気を含むが、微量(数ppm)の酸も含む。高温燃料電池、すなわち120°Cから200°Cの温度で動作する燃料電池の場合、排ガスは高い温度を有し、微量の酸による腐食性があり、下流に位置する機器(弁Va、Vc、センサなど)への負荷が非常に高く、それらの寿命を低減する。
【0005】
また、さらなる欠点が燃料電池1の始動/停止段階中に生じる。これらの段階中、燃料電池の温度は動作温度よりも低く、燃料電池1の排気ライン内の残留酸が結晶化して、アノード出口Saおよびカソード出口Sc、排気ラインCa、Cc、ならびに燃料電池1の下流の機器を詰まらせる可能性がある。したがって、酸の結晶化は、特定の排気パイプラインCc、Caおよび下流の機器の腐食、機能停止、または閉塞を引き起こす可能性があり、これは欠点となる。
【0006】
この欠点をなくすための即時の解決策は、酸ドーピングなしの膜を提供することである。しかしながら、そのような解決策は、プロトン伝導度を損なうので不適切である。別の即時の解決策は、より良いリン酸保持力を有する膜を使用することであるが、現時点では、成熟した効率的な技術的解決策はない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、本発明は、これらの欠点のうちの少なくともいくつかをなくすことを狙いとする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、アノード入口と、カソード入口と、アノード出口と、カソード出口とを備えるプロトン交換膜燃料電池を備えるアセンブリであって、前記出口が、酸を含む排ガスを放出するように構成された、アセンブリに関する。
【0009】
このアセンブリは、排ガス中に存在する酸のうちの少なくとも一部を抽出し、酸が除去された排ガスを放出するために、出口のうちの少なくとも1つに取り付けられた少なくとも1つの酸捕捉デバイスを備える点で注目に値する。
【0010】
有利には、弁やセンサなどの下流の機器への損傷を避けるために排ガスから酸を抽出するように、酸捕捉デバイスが出口のうちの少なくとも1つに取り付けられる。本発明により、有利には、燃料電池が変更されず、燃料電池の排気ラインに補助的な酸捕捉デバイスを追加するだけでよい。
【0011】
好ましくは、酸捕捉デバイスがカソード出口に取り付けられて、カソード排ガス中に存在する酸のうちの少なくとも一部を抽出する。カソード出口が酸放出の大部分を担っているため、これは有利である。
【0012】
本発明の一態様によれば、アセンブリは、アノード出口に取り付けられた酸捕捉デバイスをさらに備える。換言すると、第1の酸捕捉デバイスがアノード出口に取り付けられ、第2の酸捕捉デバイスがカソード出口に取り付けられる。したがって、すべての酸廃棄物が処理される。
【0013】
本発明の一態様によれば、酸捕捉デバイスは、排ガス中に存在する酸を中和するように構成された少なくとも1つの塩基源を備える。塩基源は、有利には、塩基源によって酸を中和することによって酸を抽出することを可能にし、塩基の付加により酸性度を補償する。
【0014】
好ましくは、塩基源は、固体および多孔質の形態の少なくとも1つの塩基を含む。そのような塩基源は実現が簡単であり、低い水蒸気含有量を有する排ガスに有利である。
【0015】
好ましくは、塩基源は、以下の塩基:NaOH、KOH、およびCa2のうちの1つ以上を含む。そのような塩基は、取扱いが簡単で便利である。
【0016】
本発明の一態様によれば、酸捕捉デバイスは、塩基源の通過またはバイパスを制御するように構成された少なくとも1つの調整弁を備える。したがって、この弁は、塩基源の消費を節約して制御することを可能にする。
【0017】
好ましくは、弁は、特に燃料電池の動作パラメータに従って、制御可能である。したがって、調整は有利には自動的である。
【0018】
本発明の別の態様によれば、酸捕捉デバイスが、液体を備える少なくとも1つの凝縮エンクロージャを備え、そこへ、排ガスが、酸を凝縮し希釈するように注入される。そのような凝縮チャンバは、排ガス中の水および酸を最適に捕捉できるようにするので有利である。さらに、そのような凝縮チャンバは、排ガスを最適に冷却できるようにし、これは高温燃料電池に有利である。
【0019】
好ましくは、酸捕捉デバイスは、経時的に最適な凝縮を実現するために、凝縮エンクロージャの液体を冷却するように構成された少なくとも1つの冷却回路を備える。
【0020】
好ましくは、酸捕捉デバイスは、凝縮エンクロージャの気相の少なくとも1つのサンプリング回路を備える。したがって、酸が除去されたガスを下流で放出することができる。
【0021】
本発明の一態様によれば、酸捕捉デバイスは、酸が除去された排ガスを冷却するように構成された少なくとも1つの熱交換器を備える。これは高温燃料電池に有利である。
【0022】
好ましくは、熱交換器を損傷する可能性のある酸の凝縮を避けるために、熱交換器は塩基源の下流に取り付けられる。
【0023】
好ましくは、酸捕捉デバイスは、排ガスから酸および水を含む液相を回収し、酸が除去された気相を放出するように構成された少なくとも1つの相分離器を備える。
【0024】
好ましくは、酸捕捉デバイスは、液相を収集するように構成された少なくとも1つの酸貯蔵タンクを備える。
【0025】
好ましくは、アセンブリは、アノード出口に取り付けられた塩基源を備える第1の酸捕捉デバイスと、カソード出口に取り付けられた凝縮タンクを備える第2の酸捕捉デバイスとを備える。2つの異なる捕捉デバイスの使用は、各燃料電池出口の仕様への適合を可能にする。
【0026】
好ましくは、燃料電池は、酸、特にリン酸をドープされた少なくとも1つの膜を備える。
【0027】
本発明はさらに、前述したアセンブリを使用する方法であって:
- 燃料電池の出口のうちの少なくとも1つから、排ガス中の酸のうちの少なくとも一部を抽出するステップと、
- 酸が除去された排ガスを放出するステップと
からなるステップを含む、方法に関する。
【0028】
本発明は、一例として与えられる以下の説明を読み、非限定的な例として与えられる以下の図を参照することによって、より良く理解されよう。図中、同様の対象には同一の参照符号が付されている。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】先行技術による燃料電池の概略図である。
図2】本発明による燃料電池と2つの酸捕捉デバイスとのアセンブリの概略図である。
図3】捕捉デバイスの第1の実施形態の概略図である。
図4】捕捉デバイスの第2の実施形態の概略図である。
図5】捕捉デバイスの第3の実施形態の概略図である。
図6】捕捉デバイスの第4の実施形態の概略図である。
図7】燃料電池と2つの捕捉デバイスとの構成の概略図である。
図8】捕捉デバイスの第5の実施形態の概略図である。
図9】[図8]による燃料電池と2つの捕捉デバイスとの構成の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
図面は、本発明を実現するために本発明を詳細に表すものであり、当然、適用可能な場合には、本発明をより良く定義するために前記図面を使用することができることに留意されたい。
【0031】
本発明は、「Proton-Exchange Membrane Fuel Cell」の略称であるPEMFCとして知られているプロトン交換膜タイプの燃料電池に関する。
【0032】
本発明は、高温燃料電池、すなわち120℃から200℃の間の温度で動作する燃料電池に関して提示されるが、本発明は、40℃から100℃の間の温度で動作する低温燃料電池にも適用される。特に、本発明は、特に航空機の推進に関与する電気機器に電力供給するために前記航空機に組み込まれることが意図された燃料電池に関する。
【0033】
知られている方法では、燃料電池1は、アノード入口Eaと、カソード入口Ecと、アノード排ガスGaのアノード出口Saと、カソード排ガスGcのカソード出口Scとを備える。燃料電池1の端子(図示せず)で電気を作り出すために、アノード入口Eaは例えば二水素を受け取り、カソード入口Ecは例えば二酸素を受け取る。この例では、燃料電池1は、膜のプロトン伝導度を改良するために、酸、特にリン酸をドープされた少なくとも1つの膜、好ましくは電解質として機能する固体高分子膜を備える膜電極接合体(MEA)を備える。アノード出口Saおよびカソード出口Scを介して放出される排ガスGa、Gcは、主に酸素、窒素、水素、および水蒸気を含むが、微量(数ppm)の酸も含む。
【0034】
高温燃料電池、すなわち120℃から200℃の温度で動作する燃料電池の場合、排ガスGa、Gcは、腐食性(約1.5から2のpH)であり、高温を有する。20kWの電気出力を有する高温燃料電池に対して行われる試験中、排ガスGa、Gcで失われるリン酸の量は、動作条件によっては最大30mg/時に達することがある。興味深いことに、酸放出のほぼ90%がカソード出口Scで生じることが観察されている。そのような燃料電池1は当業者に知られており、より詳細には提示しない。
【0035】
本発明によれば、排ガスGa、Gc中に存在する酸のうちの少なくとも一部を抽出するために、燃料電池1のアノードSaおよびカソードSc出口のうちの1つ以上に少なくとも1つの酸捕捉デバイス2を取り付けることが提案される。換言すると、酸捕捉デバイス2は、入口で排ガスGa、Gcを受け取り、出口で、酸が除去された排ガスGa、Gcを排出する。
【0036】
有利には、燃料電池1は変更されず、すでに流通している燃料電池に本発明を適用することができる。
【0037】
この例では、[図2]を参照すると、アノード排気ラインCaが、アノード出口Saをアノード排気弁Vaに接続している。同様に、カソード排気ラインCcが、カソード出口Scをカソード排気弁Vcに接続しており、排気ラインCa、Ccに他の機器、例えばセンサを取り付けることができることは言うまでもない。
【0038】
この例では、[図2]を参照すると、酸捕捉デバイス2が各出口Sa、Scに取り付けられているが、1つの出口Sa、Scのみに酸捕捉デバイス2を設けることもできることは言うまでもない。好ましくは、前に説明したように、ほとんどの酸放出はカソードから生じるので、カソード出口Scがそのような酸捕捉デバイス2に接続される。
【0039】
後で詳細に提示するように、酸捕捉デバイス2は、様々な技術、特に塩基源20(図3から5)、凝縮エンクロージャ30([図6])、または相分離器41([図8])を実現することができる。様々な技術を独立して提示するが、同じ酸捕捉デバイス2内にそれらを結合することができることは言うまでもない。
【0040】
以下、簡潔にするために、酸捕捉デバイス2の様々な実施形態をアノード出口Saに関連して提示するが、それらはいずれか一方に適用される。アノード出口Saおよび/またはカソード出口Scを有する特定の実施形態の使用に関連する利点を個別に提示する。
【0041】
図3]を参照すると、第1の実施形態によれば、酸捕捉デバイス2は、排ガスGa中に存在する酸を中和するように構成された塩基源20を備える。知られている方法では、塩基源20は、本来的に7よりも大きい、好ましくは11よりも大きいpHを有する。好ましくは、塩基源20は、以下の塩基:NaOH、KOH、およびCa(OH)2のうちの1つ以上を含む。
【0042】
好ましくは、塩基源20はエンクロージャを備え、エンクロージャ内に塩基が固体および多孔質の形態で貯蔵される。そのような多孔性により、有利には、排ガスGaの放出を妨げることなく、排ガスGaが塩基源20を通過できるようになる。塩基と接触すると、微量の酸が中和され、エンクロージャ内でトラップされる。その結果、酸が除去された排ガスGaは、より高いpH(理想的には7に近い)を有し、これは、下流の機器への損傷を防止する。
【0043】
一変形形態によれば、[図3]を参照すると、酸捕捉デバイス2は、酸が除去された排ガスGaのpHまたはpH範囲を示すように構成されたpHインディケータ21を備える。好ましくは、視覚的インディケータ、特に比色インディケータが使用される。そのようなpHインディケータ21は、塩基源20が消費され、交換されなければならないことを示すのに有利である。酸のpHに近いpHは、塩基源20に含まれている塩基を交換しなければならないことを示す。
【0044】
20kWの電気出力を有する燃料電池1の場合、排ガスGa、Gc中に放出されるリン酸の量は、最大30mg/時であり得る。したがって、この酸を中和するのに必要とされる塩基の量は、約300mg/時になる。すなわち、100時間の動作で30kgである。
【0045】
好ましい態様によれば、第2の実施形態を示す[図4]を参照すると、酸捕捉デバイス2は、前記アノード出口Saに接続された入口221と、塩基源20の入口に接続された第1の出口222と、塩基源20をバイパスするために塩基源20の出口に接続された第2の出口223と有する調整弁22を備える。第1の出口222は、塩基源20の上流でアノード排気ラインCaに接続され、第2の出口223は、塩基源20の下流でアノード排気ラインCaに接続される。
【0046】
そのような調整弁22により、塩基源20の消費を制御するためにその使用を調整することが可能になる。例として、調整弁22により、主に燃料電池1の始動/停止段階中に塩基源20を使用し、燃料電池1の公称動作段階中には塩基源20を停止させておくことが可能になる。
【0047】
好ましくは、調整弁22は、特に燃料電池1の動作パラメータPARに従って、制御可能である。例えば、燃料電池1の始動/停止段階中、動作パラメータPARは、塩基源20による酸の除去を活性化するために燃料電池1(または関連する計算機)によって発行される。逆に、燃料電池1の公称動作段階中、動作パラメータPARは、塩基源20をバイパスするために燃料電池1によって(または関連する計算機によって)発行される。したがって、塩基源20は、節約して消費される。
【0048】
塩基源20のバイパスを可能にする調整弁22の追加により、特定の動作段階中、すなわち温度降下を考慮して酸結晶化のリスクが最大であるときに、酸の中和を狙うことが可能になる。したがって、用途、所望の出力、航空機ミッションプロファイル、および質量/体積の制約に従って、塩基源20の定期的な交換作業が計画されるべきである。
【0049】
酸の中和を調整するために、捕捉デバイス2の様々な実施形態において調節弁22を使用することができることは言うまでもない。
【0050】
図5]を参照すると、第3の実施形態によれば、酸捕捉デバイス2は、酸が除去された排ガスGaを好ましくは80℃未満の温度まで冷却するように構成された熱交換器23を備え、これは下流の機器を保護する。好ましくは、熱交換器23を損傷する可能性のある酸の凝縮を避けるために、熱交換器23は塩基源20の下流に取り付けられる。それにもかかわらず、熱交換器23を塩基源20に一体化することもできることは言うまでもない。熱交換器23は、様々な冷却技術(強制対流、液体冷却など)を実現することができる。
【0051】
最初の3つの実施形態のうちの1つによる塩基源20の使用は、電気化学反応によって作り出される水の割合を無視できるので、アノード出口Saに特に適している。単純で便利な設計の塩基源20の使用は、塩基源20をほとんど消費しない、より低減した量の液体を処理するのに有利である。
【0052】
第4の実施形態によれば、[図6]を参照すると、酸捕捉デバイス2は、液体L、特に水を含む凝縮エンクロージャ30を備え、凝縮エンクロージャ30に前記出口Saの排ガスGaが注入される。したがって、排ガスGaは、液体Lに注入されるときに冷却され、これにより、微量の酸だけでなく、水蒸気中に存在する水も凝縮させることが可能になる。微量の酸は、液体Lでの希釈によって最適に抽出することができる。
【0053】
図6]に示されるように、酸捕捉デバイス2は、凝縮エンクロージャ30の液体Lを冷却するように構成された冷却回路(太線)を備える。この例では、冷却回路は、熱交換器31およびポンプ32を備える。したがって、凝縮チャンバ30内で加熱された液体Lは、熱交換器31によって冷却され、次いでポンプ32によって凝縮チャンバ30内に注入され戻される。酸捕捉デバイス2は、酸が除去された冷却ガスGaを回収するために、凝縮チャンバ30の気相のサンプリング回路33をさらに備える。
【0054】
凝縮エンクロージャ30は、液体中に浸漬されたインジェクタを備え、このインジェクタは、好ましくは円筒形のディフューザ301を備え、例えば合金または焼結セラミックを通した、液体Lへの排ガスGaのマイクロリークによる拡散を可能にする。有利には、酸(特にリン酸)は熱水への溶解性が高く、それにより酸をトラップすることができる。マイクロリーク拡散は、交換面積を増加させ、排ガスGaの最適な冷却を可能にする。
【0055】
この実施形態は、カソード排ガスGcが大量の水蒸気を含むカソード出口Scに特に適している。水蒸気からの水は、凝縮エンクロージャ30内で凝縮され、これは、時間の経過と共に凝縮エンクロージャ30内の液体Lの量を増加させる。この目的のために、オーバーフローデバイス34、ここではパージ回路CPに接続された弁が設けられ、液位が高すぎるときに液体Lを凝縮チャンバ30から放出できるようにする。この例では、オーバーフローデバイス34も冷却回路に接続されている。冷却回路とオーバーフローデバイス34とを併用することにより、温度制御された一定の体積の水を維持することが可能となる。前述したような20kWの出力を有する燃料電池1に関して、電気化学反応によって作り出された水蒸気がすべて回収されて凝縮された場合、カソード出口Scで1時間当たり11リットルの液体水を回収することができると推定される。
【0056】
図7]を参照すると、燃料電池1の第1の構成が示されており、アノード出口Saは、塩基源20の小さいサイズおよび単純な設計から利益を得るために、塩基源20を備える酸捕捉デバイス2に関連付けられる。電気化学反応によって作り出される水の割合が低く、酸の放出量も少ないという前提の下で、そのような塩基源20が適している。したがって、塩基源20を節約して使用することができる。逆に、カソード出口Scは、電気化学反応によって作り出される水およびカソード側でのより多い酸放出を収集する凝縮エンクロージャ30の高い効率から利益を得るために、凝縮エンクロージャ30を備える酸捕捉デバイス2に関連付けられる。
【0057】
別の実施形態によれば、[図8]を参照すると、酸捕捉デバイス2は、微量の酸および水を含む液相を回収し、酸が除去された気相Gaが通過できるように構成された少なくとも1つの相分離器40を備える。好ましくは、相分離器40は凝縮器の形態である。
【0058】
好ましくは、酸捕捉デバイス2は、1つ以上の相分離器40から酸液相を収集するように構成された酸貯蔵タンク41をさらに備える。実際には、カソード出口での最も酸性のpHは4.5である。相分離器40をパージ回路に接続することもできることは言うまでもない。[図9]を参照すると、燃料電池1の第2の構成が示されており、アノード出口Saとカソード出口Scとの両方が、共通の酸貯蔵タンク41に接続された相分離器40に関連付けられている。
【0059】
本発明により、燃料電池1の動作中、放出された酸のうちの少なくとも一部を抽出するために排ガスGa、Gcが処理される。これにより、燃料電池1の下流に位置し、酸が除去された、好ましくは冷却された排ガスGa、Gcを受け取る機器を保護することが可能になる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【国際調査報告】