(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-08
(54)【発明の名称】組織評価のためのシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
C12Q 1/02 20060101AFI20241001BHJP
C12M 1/00 20060101ALI20241001BHJP
C12M 1/34 20060101ALI20241001BHJP
C12M 3/00 20060101ALI20241001BHJP
【FI】
C12Q1/02
C12M1/00 A
C12M1/34 A
C12M3/00 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024516519
(86)(22)【出願日】2022-09-13
(85)【翻訳文提出日】2024-05-10
(86)【国際出願番号】 US2022043302
(87)【国際公開番号】W WO2023043717
(87)【国際公開日】2023-03-23
(32)【優先日】2021-09-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】511266520
【氏名又は名称】ユナイテッド セラピューティクス コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100138210
【氏名又は名称】池田 達則
(74)【代理人】
【識別番号】100150810
【氏名又は名称】武居 良太郎
(72)【発明者】
【氏名】トーマス ペーテルゼン
(72)【発明者】
【氏名】ジェフリー スーフー
(72)【発明者】
【氏名】ブレア ドッドソン
(72)【発明者】
【氏名】ジョーセフ パプ
(72)【発明者】
【氏名】ジョアンナ ペーターシュミット
【テーマコード(参考)】
4B029
4B063
【Fターム(参考)】
4B029AA02
4B029AA07
4B029BB11
4B063QA05
4B063QQ08
4B063QR77
4B063QS39
4B063QX10
(57)【要約】
組織を通過する流体又は気体の圧力を表す抵抗と、組織のコンプライアンスを表す容量を利用して組織を評価するシステム及び方法が提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
組織を評価する方法であって、
1つ以上のプロセッサによって、組織を通る流量又は圧力のうちの少なくとも1つを示すシグナルを受信するステップと、
1つ以上のプロセッサによって、気道コンポーネント、血管コンポーネント、及び気道コンポーネントと血管コンポーネントの間のバリアコンポーネントを含むモデルへの入力としてシグナルを適用するステップと、
1つ以上のプロセッサによって、モデルへのシグナル適用に応答して、組織の品質を示す評価スコアを生成するステップと
を含む、前記方法。
【請求項2】
気道コンポーネントは、気道抵抗パラメータ及び気道コンプライアンスパラメータを含み、バリアコンポーネントは、バリア抵抗パラメータ及びバリアコンプライアンスパラメータを含み、血管コンポーネントは、肺動脈抵抗パラメータ、肺静脈抵抗パラメータ、及び肺静脈コンプライアンスパラメータを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
シグナルは、生体外肺灌流及びバイオリアクターのうちの少なくとも1つからの組織を通る圧力又は流量のうちの少なくとも1つを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
さらに、1つ以上のプロセッサによって、少なくとも部分的にシグナルを天然肺組織データと比較することに基づいて、気道成分、血管成分、又はバリア成分のうちの少なくとも1つを決定することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
組織は、組織足場、人工組織、又は天然組織のうちの少なくとも1つである、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
評価スコアを生成することは、1つ以上のプロセッサによって、バリア成分に対応する気道バリアの完全性を表す評価スコアを決定することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
請求項1に記載の方法であって、評価スコアを生成することは、1つ以上のプロセッサによって、組織の漏れを検出することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
漏れは、血管成分又はバリア成分の少なくとも1つに基づいて、近位血管漏れ又は遠位血管漏れの少なくとも1つを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
評価スコアを生成することは、1つ以上のプロセッサによって、組織の1つ以上の血管の開存性を決定することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
シグナルは組織への流体流の適用に応答して受信され、方法は評価スコアに応じて、1つ以上のプロセッサによって灌流装置の動作を調整することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
組織は人工組織であり、シグナルは組織への流体流の適用に応答して受信され、方法は評価スコアに応じて1つ以上のプロセッサによって組織の生成を制御することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
組織は人工組織であり、シグナルは組織への流体流の適用に応答して受信され、方法は評価スコアに応じて組織の生成の培養時間を制御することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
評価スコアに基づいて、1つ以上のプロセッサによって生体外肺灌流メトリックを決定することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
組織を通る流量又は圧力の少なくとも1つを示すシグナルを受信し;
組織の気道に対応する気道コンポーネント、組織の動脈又は静脈の少なくとも1つに対応する血管コンポーネント、及び気道コンポーネントと血管コンポーネントの間のバリアコンポーネントを含むモデルに入力としてシグナルを適用し;ならびに
モデルにシグナルを適用することに応答して、組織の品質を示す評価スコアを生成する
ように構成された1つ以上のプロセスを含むシステム。
【請求項15】
組織に流体流を適用し、シグナルを検出するように構成された灌流装置をさらに備える、請求項14に記載のシステム。
【請求項16】
1つ以上のプロセッサが、評価スコアに応じて灌流装置の動作を制御するように構成されている、請求項15に記載のシステム。
【請求項17】
組織を人工組織として生成するように構成されたバイオリアクターをさらに備え、1つ以上のプロセッサが、評価スコアに応じてバイオリアクターの動作を制御するように構成されている、請求項14に記載のシステム。
【請求項18】
1つ以上のプロセッサが、評価スコアに応じて組織の生成の培養時間を制御するように構成されている、請求項17に記載のシステム。
【請求項19】
気道コンポーネントが気道抵抗パラメータ及び気道コンプライアンスパラメータを含み、バリアコンポーネントがバリア抵抗パラメータ及びバリアコンプライアンスパラメータを含み、血管コンポーネントが肺動脈抵抗パラメータ、肺静脈抵抗パラメータ、及び肺静脈コンプライアンスパラメータを含む
【請求項20】
組織は、組織足場、人工組織、又は天然組織のうちの少なくとも1つである、請求項14に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年9月14日に出願された米国仮出願第63/243,929号の利益及び優先権を主張する。
【0002】
技術分野
本出願は、組織の抵抗及びコンプライアンスを評価するフローモデルを使用して組織を評価する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
Englerら(Biomaterials, 2019 Oct.; 217: 119313)は、平均肺胞及び毛細血管圧の直接的、非侵襲的な測定を可能にし、臓器内の流路を追跡し、微小血管障壁を含む集中内部抵抗の計算を可能にするモデルを開示する。
【0004】
移植及び改善された臓器又は臓器様材料の開発のために使用される天然又は人工組織のより正確な理解を可能にする、組織を非侵襲的に評価する方法に対する必要性が存在する。
【発明の概要】
【0005】
1つの実施態様は、組織を評価する方法である。本方法は、1つ以上のプロセッサによって、組織を通る流れ又は圧力のうちの少なくとも1つを示すシグナルを受信するステップと、1つ以上のプロセッサによって、気道構成要素、血管構成要素、及び気道構成要素と血管構成要素との間の障壁構成要素を含むモデルへの入力としてシグナルを適用するステップと、モデルへのシグナルの適用に応答して、1つ以上のプロセッサによって、組織の品質を示す評価スコアを生成するステップと、を含むことができる。
【0006】
別の実施態様はシステムである。システムは、組織を通る流れ又は圧力のうちの少なくとも1つを示すシグナルを受信し、組織の気道に対応する気道構成要素、組織の動脈又は静脈のうちの少なくとも1つに対応する血管構成要素、及び気道構成要素と血管構成要素との間のバリア構成要素を含むモデルに入力としてシグナルを適用し、モデルにシグナルを適用することに応答して、組織の品質を示す評価スコアを生成するように構成された1つ以上のプロセッサを含み得る。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、抵抗と容量の両方を含む、試験される組織を評価するための集中パラメータ肺モデルを示す。
【
図2】
図2は、組織を検査するための最適な流れ及び/又は圧力を決定することによる、
図1のモデルにおいて有用な入力シグナルを示す。発生したシグナルは、エクスビボ肺灌流(EVLP)において、及びその粘弾性の性質のために静的状態から予め動員された組織を有するバイオリアクターにおいてであった。組織は、生理的パラメータを決定するために周期的に試験される。
【
図3】
図3は、組織灌流プロセス中に回収されたデータを有する軟組織生理学に関する決定論的方程式を利用するグレーモデルの概要を示す。データは一連の方程式にあてはめて、移植前の灌流プロセス中の組織の質を決定することができる。
【
図4】
図4は、気道関門をゆっくりと侵食する0.2%トリトンの血管系への注入による気道-血管関門の破壊を示す。気道灌流は、圧力が高く、体積と流量が少ない方へ移行する。一実施形態により、このような処置による灌流臓器の変化の評価が可能になる。
【
図5】
図5は、肺動脈及び血管障壁抵抗を低減する、肺の末端に切れ目を作ることによって漏れを評価するための実施形態を示す。
【
図6】
図6は、肺動脈(PA)及び肺静脈(PV)抵抗の増加をモニタリングすることによって血管の閉塞及び進行を評価するための実施形態を示す。
【
図7】
図7は、相互作用を決定するためにモデル化される潅流装置と臓器との間の関係を示す、本発明の一実施形態における構成要素の配置を示す。
【
図8】
図8は、細胞を加え、モデリングを使用して、細胞を加えることに基づいて血管開通性に関する即座のフィードバックを可能にする、肺足場に細胞を加えるプロセス中の肺抵抗を決定した実験の結果を示す。
【
図9】
図9は、PA(青色)及びPV(赤色)における細胞播種の例を示し、ここで、肺動脈抵抗の変化は、播種の間及び播種後の培養時間を決定するために、操作された肺においてモニターされる。
【
図10】
図10は、インプロセス測定基準と、機能に対するそれらのエクスビボ灌流等価物との間の関係を示す。
【
図11】
図11は、組織の評価点数を決定するシステムの一例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0008】
別段の指定がない限り、「a」又は「an」は、「1つ以上」を意味する。
【0009】
以下の実施例により、本発明をさらに説明するが、これに限定されるものではない。
【0010】
組織移植には、ある種の生理学的基準を満たすために、ヒトドナー由来の生物学的製剤、又は遺伝子操作された組織を用いて製造された生物学的製剤が必要である。一実施形態による集中パラメータモデルは、移植のための天然組織及び/又は人工組織に対する最小潅流の要件を決定する必要性を満たす。集中パラメータモデルは、臨床疾患を測定するために伝統的に使用されるツールである。本発明者らは、ヒト移植のために組織を追跡し、適格とするために集中パラメータモデルが使用されていることを知らない。
【0011】
本出願のシステム及び方法は、天然又は人工の任意の潅注可能な軟組織材料に使用することができる。任意に、材料は、動脈、静脈、腎臓、肝臓、骨格筋などの天然組織であり得る。あるいは、この材料は、ヒドロゲル、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、又は他の超弾性の柔らかい潅水可能な材料を含み得る。
【0012】
一実施例は、組織を評価するための集中パラメータアプローチを用いてシステム機能を試験するためのモデル、シグナル、及びコンピュータ解析を含む、組織移植において用いられる組織の認定のためのシステムである。組織は、組織足場(例えば、組織足場)であり得る。様々な天然又は人工材料で作られたもの)、人工組織(例えば、様々なプロセスのいずれかが適用された組織)、又は天然組織。
図1は、天然組織又は人工組織を評価するための全肺モデルを表す。モデルは3要素Windkesselモデルでよい。モデルは、気道と組織の脈管構造とを接続する肺回路を含むことができる。このモデルは、培養中の人工組織、又は移植前を含む天然組織評価をモニタリング及び評価するために使用することができる。
【0013】
このモデルは、組織の抵抗を測定するための抵抗成分と、組織コンプライアンス(例えば、組織の生理的及び/又は物質的特性を表すコンプライアンス)を表す容量性要素との両方を含む。これは、人工呼吸器のコンプライアンスと直接的に同等である工程内測定と、臨床的に肺の健康状態の予後指標であることが示されている血管コンプライアンスの尺度を提供する。肺高血圧症では、負荷後の右心室としても知られる肺血管抵抗、コンプライアンス及びインピーダンスの血管変化の疾患進行を追跡するためにモデルが使用されている。[Saouti, N., et al.「The arterial load in pulmonary hypertension.」 European Respiratory Review 19.117 (2010): 197-203.];[Thenappan, Thenappan, et al. 「The critical role of pulmonary arterial compliance in pulmonary hypertension.」 Annals of the American Thoracic Society 13.2 (2016): 276-284.]; [Chemla, Denis, et al. 「Pulmonary vascular resistance and compliance relationship in pulmonary hypertension.」 European Respiratory Journal 46.4 (2015): 1178-1189.]。疾患の進行に伴う肺高血圧症の実験動物モデルでは、血管抵抗及びコンプライアンスの変化に加えて、気道の抵抗が増大している。[Petak, Ferenc, et al. 「Effects of pulmonary vascular pressures and flow on airway and parenchymal mechanics in isolated rat lungs.」 Journal of applied physiology 92.1 (2002): 169-178.]。このモデルは、例えば、以下でより詳細に説明するように、血管及び気道機能について、天然肺及び人工肺の両方を試験するために使用することができる。モデルは、肺組織と共に使用されるのが好ましいが、圧力及び流れを経験する、天然又は人工の任意の組織又は材料に適用することができる。
【0014】
一実施例は、肺又は肺移植に使用される組織の組織品質を測定する方法に関する。この方法は、エクスビボ肺灌流システム及び人工組織が生産されるバイオリアクターの両方において組織を試験するための最小の侵入的アプローチである。評価方法のための入力シグナルは、
図2に示すようないくつかのステップを含む。この方法は、組織を検査するために一組の流れ及び/又は圧力を利用するのが好ましい。例えば、人工肺では、気道流量の初期設定は60~150ml/分、圧力は15mmHg未満、容積範囲は300~600mlである。ELNエントリー「RLAN-20200204A:STR...マグニチュード・サマリー」。組織工学肺における脈管構造の初期範囲は、60~150ml/分の流量及び20mmHg未満の圧力である.ELNエントリー「RLAN-20200220A:STR...マグニチュード・スタディ」。様々なそのような設定は、組織のサイズ測定基準に基づいてスケーリングすることができる(例えば、上記で提供される設定は、人間の肺のサイズの約半分から3分の1である120gの肺に対するものであり、したがって、質量の比に基づくなど、設定に対する人間の肺のサイズ測定基準に基づいてスケーリングすることができる)。発生したシグナルは、エクスビボ肺灌流(EVLP)及びバイオリアクターにおいてであった。組織は、組織の粘弾性の性質により、静的状態から予めリクルートされる。その後、組織は周期的に検査され、生理的パラメータが決定される。
【0015】
一実施形態は、モデル要素を測定し、それらを生理的パラメータに関連付けるための計算的アプローチを含む。シグナルは、以下のように組織機能の生理的要素測定値を決定するために、計算モデルに入力される。Matlabでは、
図3に示すように、外部潅流の際に回収されたデータを関連付けるグレイモデルアプローチを用いて、軟部組織内の流体に関する微分方程式系(付録Aに提供)を解くプログラムを作成した。このモデルは、ベンチマーク灌流プロセス(付録Bに提供される;このような値は、バイオリアクターを使用する試験に基づいて更新され得る)の間に回収されたデータを有する軟組織生理学についての決定論的方程式を利用する。データは、注入プロセスからの入力データ及び出力データを含むことができ、これらは、移植前の注入プロセス中の組織品質を決定するために、一連の式に当てはめることができる。
【0016】
別の実施形態は、肺又は他の組織における圧力と流れの関係をモデル化するための迅速な計算を生成する。本発明は、代用血管、腎臓、肝臓、肺、又は流体(液体又は気体のいずれか)の灌流を有する任意の組織を含み得る天然組織の灌流の完全性を測定するために使用され得る。
【0017】
以下の実施例により、本発明をさらに説明するが、これに限定されるものではない。
【0018】
実施例1
インビトロ拍動試験を用い、上記の集中パラメータモデルを利用して、移植前の天然組織について測定を行った。これらの検査は、以下のことを実証するために、天然豚の肺で実施された。
【0019】
(A)気道バリアの完全性を特徴付ける-自然の肺における空気灌流中の気道バリアは、安定した圧力、流量、及び体積プロファイルを有する。血管アンタゴニストで気道バリアが損なわれ、液体が気道に入り込むと、
図4に示すように流量と容量の減少に伴って圧力が上昇する。このモデルは、気道バリアの完全性の程度を決定し、損傷を受けた又は標準以下の質の組織の領域を改善するための工程内療法による治療を可能にする。
【0020】
(B)近位対遠位の血管漏出を決定する-モデリングにより、
図5に示すような別個の要素を作成することにより、漏出の位置を特定することができる。近位孔は肺動脈の抵抗を有意に低下させる。しかし、肺のより遠位の漏出は、肺動脈及びバリア抵抗の低下を特徴とする。これは、肺の動脈、静脈、バリアモデル要素を横切って連続的にモニタリングすることにより、バリア状態を決定する上で重要である。モデルをオルガン系にカスタマイズして、流れと圧力が追跡される系の異なる要素を通る漏れを決定することができる。血管漏出は、監視され、進行中の治療で処置され得る。近位肺動脈(PA)の22ゲージの穴は抵抗を減らす。遠位肺の切断により、肺動脈及び血管関門の抵抗が低下する。モデルは、臓器の構成要素がエクスビボの潅流のあいだの変化についてモニターされることを可能にする。
【0021】
(D)毛細血管の開通性の決定-詰まった毛細血管は、肺にビーズを注入してシミュレートした流れに対する動脈と静脈の抵抗成分を増やすことでモデルを変化させる。血液で灌流した臓器は閉塞しやすい。これによって、
図6に示すように、臓器内の流れの遮断を監視することができる。肺モデルを用いて、肺動脈(PA)及び肺静脈(PV)抵抗の増加をモニタリングすることにより、血管の閉塞及び進行を追跡する。モデリングにより、エクスビボでの潅流の際の血管開通性の追跡が可能になる。
【0022】
(E)臓器と潅流のセットアップとの間の相互作用を定義する-インプロセスモデリングは、
図7に示されるように、臓器モデリングに基づくポンプ、流体リザーバレベル、圧力限界、センサ構成、及びセンサ分解能の試験及び最適化を含む、特定の設計目的を達成及び実施するために、肺系相互作用を調整するために使用することができる。灌流装置と臓器との間の相互作用は、相互作用を決定するためにモデル化される。ポンプ設定とリザーバ圧力は、モデリングパラメータに基づいて最適化される。
【0023】
実施例2
人工組織の場合、このモデルは、以下を含むいくつかの重要かつユニークな用途に適用することができる。
【0024】
(A)細胞播種を調整する機能-インプロセステストとモデリングシミュレーションにより、モデルコンポーネントに基づく血管閉塞の限界に達する播種調整が可能になる。
図8は、細胞を加え、モデリングを用いて、細胞を肺足場に加えるプロセス中の肺抵抗性を決定した実験の結果を示す。モデリングアプローチは、細胞の添加に基づく血管開通性に関する即時のフィードバックを可能にし、ユニークな播種プロセスをモデルで制御することを可能にする。
【0025】
(B)製造プロセスの評価-モデリングは、エンジニアリングプロセス中に組織の特性を比較する方法を可能にする。モデリングは、最初のブタ肺から脱細胞化された細胞外マトリックス足場までの脱細胞化プロセスの間の肺を評価するために用いられる。足場の貯蔵及び再細胞化プロセスへの移行は、灌流プロセスのモデリングによって評価することができる。
【0026】
(C)提案されたベンチマークによる培養時間のモニタリング-組織の培養期間を設定するための肺血管抵抗の標的の決定。
図9は、PA(青色)及びPV(赤色)における細胞播種の例を提供し、播種間及び播種後の培養時間を決定するために、人工肺における肺動脈抵抗変化をモニタリングする。
【0027】
(D)機能的アウトカムの測定-インプロセス測定基準は、標準的なエクスビボ肺潅流の測定基準に関連付けることができる。
図10は、インプロセス測定基準と、機能に関するそれらのエクスビボ灌流等価物との間の関係を示す。
【0028】
図11は、組織の評価スコアを決定するために使用することができるシステム1100の一例を示す。システム1100は、組織の抵抗及びコンプライアンスに基づいて組織に対する評価スコアを決定するために集中パラメータモデルを使用することを含む、本明細書に記載のモデリングの様々な例の特徴を組み込むことができ、それらを実施するために使用することができる。システム1100は、灌流装置(例えば、組織に関する流れデータを監視するために組織に流体の流れを適用するため)又はバイオリアクター(例えば、評価スコアに応答して人工組織の生成を監視及び制御するため)のうちの少なくとも1つを含むか、又はそれらと通信可能に連結することができる。
【0029】
システム1100は、1つ以上のプロセッサ1104及びメモリ1108(1つ以上の処理回路を使用して実施することができる)を含むことができる。プロセッサ1104及びメモリ1108は、グラフィックスプロセッシングユニット(GPU)及び並列コンピューティングコンポーネントを含む様々なコンポーネントを含むことができる。プロセッサ1104は、汎用又は特定目的のプロセッサ、特定用途向け集積回路(ASIC)、1つ以上のフィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、一群の処理構成要素、又は他の適切な処理構成要素とすることができる。プロセッサ1104は、メモリ1108に記憶されたコンピュータコード又は命令(例えば、ファジィ論理等)を実行するか、又は他のコンピュータ可読媒体(例えば、CDROM、ネットワーク記憶装置、リモートサーバ等)から受信して、本明細書に記載するプロセスの1つ以上を実行するように構成してもよい。メモリ1108は、データ、コンピュータコード、実行可能命令、又は他の形態のコンピュータ読み取り可能情報を格納するように構成された1つ以上のデータ記憶装置(例えば、メモリユニット、メモリデバイス、コンピュータ読み取り可能記憶媒体など)を含んでもよい。メモリ1108は、ランダム・アクセス・メモリ、リード・オンリー・メモリ、ハード・ドライブ記憶、一時記憶、不揮発性メモリ、フラッシュ・メモリ、光メモリ、又はソフトウェア・オブジェクト及び/又はコンピュータ命令を記憶するための他の任意の適切なメモリを含むことができる。メモリ1108は、データベース・コンポーネント、オブジェクト・コード・コンポーネント、スクリプト・コンポーネント、又は本開示において説明される様々な活動及び情報構造をサポートするための任意の他のタイプの情報構造を含み得る。メモリ1108は、プロセッサ1104と通信可能に接続することができ、本明細書で説明するプロセスのうちの1つ以上を実行するためのコンピュータコードを含むことができる。メモリ1108は、本明細書に記載のプロセスを完了するための様々なモジュール(例えば、回路、エンジン)を含むことができる。システム1100は、遠隔データベースなどの他の装置と通信するための有線又は無線通信電子機器を含むことができる。
【0030】
システム1100はモデル1112を含むことができる。モデル1112は、
図1に関して説明したモデルの特徴を組み込むことができる。例えば、モデル1112は、組織を通る流れ抵抗に対応する抵抗パラメータ及び組織を通る流れコンプライアンスに対応する容量パラメータを含むWindkesselモデルであり得る。例えば、モデル1112は、組織の気道の気道抵抗パラメータ及び気道の気道コンプライアンスパラメータを含む気道コンポーネントと、バリア抵抗パラメータ及びバリアコンプライアンスパラメータを含むバリアコンポーネントと、肺動脈抵抗パラメータ(肺動脈の下流の動脈又は細動脈の抵抗を含むか、又はそれらに基づくことができる)などのパラメータを含む血管(例えば、1つ以上の動脈、細動脈、毛細血管、静脈、細静脈、又はそれらのネットワークを表すコンポーネント)コンポーネントとを含むことができる。肺静脈抵抗パラメータ(肺静脈上流の静脈又は細静脈の抵抗を含み、又はそれに基づいている)及び肺静脈コンプライアンスパラメータ(肺静脈上流の静脈又は細静脈の抵抗を含み、又はそれに基づいている)。
【0031】
入力シグナル1116をモデル1112に適用して、組織を通る流れの評価を表す評価スコアなどの出力1120をモデルに生成させることができる。モデル1112は、付録Aに記載されるように評価され得る。入力シグナル1116は、
図2に関して記載されるシグナルの特徴を組み込むことができる。例えば、入力シグナル1116は、組織振動シグナルであり得る。システム1100は、組織に灌流操作を行い、入力シグナル1116を検出して入力シグナル1116を1つ以上のプロセッサ1104に提供することができる灌流装置1124を含むか、又はこれと連結することができる。
【0032】
システム1100は、組織を生成する(例えば、人工組織を生成する)バイオリアクター1128を含むか、又はこれと連結することができる。1つ以上のプロセッサ1108は、評価スコアに応答してバイオリアクター1128の運転を制御することができる。例えば、1つ以上のプロセッサ108は、バイオリアクター1128に、評価スコアに応じて組織の培養時間を調整させることができる。
【0033】
ここに開示した全ての参考文献は、特に参照によりここに組み込まれる。
【0034】
好ましい実施形態を図示し説明してきたが、ここに定義したそのより広い側面において本発明から逸脱することなく、当技術分野における通常の技術に従って、その中で変更及び修正を行うことができることを理解されたい。
【0035】
付録A-導出微分方程式
7要素の状態空間表現
全肺モデル
1.導入
以下の文書は、7要素の全肺モデルのための状態空間表現の導出を概説し、これは、2つの「バリア」成分、抵抗及び容量を並列に介して既存の気道及び血管モデルを一緒にリンクするために使用される。バリア抵抗(Rb)は、2つのチャンバ間のリークを表し、バリア容量(Cb Acがそれらを結合する。
【0036】
2.概略図
【0037】
【0038】
3.一般形式-状態空間表現
状態空間モデルは以下の形式をとる。
【0039】
【0040】
3.1 入力、出力、状態
7要素WindkesselモデルはMIMOモデルで表現できる。以下を入力、出力、状態として定義する。
【0041】
【0042】
そのため、次のような形の方程式を探す。
【0043】
【0044】
4.導出
4.1 開始式
【0045】
【0046】
4.2 ノード1のKCL
【0047】
【0048】
4.3 ノード2のKCL
【0049】
【0050】
方程式を結合し、再整理する
このセクションの単純化はMatlabライブスクリプトを使用して行われ、isolate、subs、simplify及びcollectなどの関数が使用される。
【0051】
まず、上の(2)式でVc2を分離することから始める。
【0052】
【0053】
次に、Vc2を上記(1)式に代入する。
【0054】
【0055】
ここで、Vc1を(4)式で分離する。
【0056】
【0057】
ここで、上の式(5)から異なる成分を分離する。
【0058】
【0059】
【0060】
次に、(5)式からVc1を(3)式に代入する:
【0061】
【0062】
ここで、上の式(6)から異なる成分を分離する。
【0063】
【0064】
4.4 電流方程式
【0065】
【0066】
(9)式のVc2を(6)式のVc2に置き換えると、次のようになる。
【0067】
【0068】
ここで、上の式(10)から異なる成分を分離する。
【0069】
【0070】
最後に、(7)式と(8)式から係数を回収する。
【0071】
【0072】
付録B-インプロセステストのベンチマーク
【0073】
【国際調査報告】