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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-08
(54)【発明の名称】リフト装置および制御方法
(51)【国際特許分類】
   B66F 9/22 20060101AFI20241001BHJP
   B60K 7/00 20060101ALI20241001BHJP
   B66F 11/04 20060101ALI20241001BHJP
   B60L 7/00 20060101ALI20241001BHJP
   B60L 50/60 20190101ALI20241001BHJP
   B60L 58/12 20190101ALI20241001BHJP
   B60L 58/24 20190101ALI20241001BHJP
【FI】
B66F9/22 X
B60K7/00
B66F11/04
B60L7/00 C
B60L50/60
B60L58/12
B60L58/24
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024516680
(86)(22)【出願日】2021-12-08
(85)【翻訳文提出日】2024-03-14
(86)【国際出願番号】 US2021062316
(87)【国際公開番号】W WO2023043469
(87)【国際公開日】2023-03-23
(31)【優先権主張番号】17/475,626
(32)【優先日】2021-09-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】512301190
【氏名又は名称】テレックス サウスダコタ,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100176072
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 功
(72)【発明者】
【氏名】クラーク ブライアン エム
【テーマコード(参考)】
3D235
3F333
5H125
【Fターム(参考)】
3D235AA18
3D235BB32
3D235CC42
3D235FF44
3D235GB42
3D235HH36
3F333AA08
3F333AB02
3F333AB03
3F333AC02
3F333BD02
3F333DB07
3F333FA21
3F333FB06
3F333FD06
3F333FH08
5H125AA20
5H125AB01
5H125AC12
5H125BA07
5H125BC11
5H125BC19
5H125EE03
5H125EE23
5H125EE25
5H125EE41
(57)【要約】
【解決手段】リフト装置およびリフト装置を制御する方法が提供される。リフト装置は、牽引装置と駆動結合されている電気モータと、トラクションバッテリとを備える。油圧回路は、ポンプモータを有するポンプと、バルブとを含む。電気モータが制動トルクを出力しており、かつ、バッテリに電力を提供している間に、電圧が閾値電圧を上回るのに応じて、ポンプの流量を増加させること、ならびに、バルブの開度を減少させて圧力ギャレ内の圧力を上昇させるようにバルブを制御することによって、トラクションバッテリへの電力を減少させる。したがって、制動力出力が閾値を上回るのに応じて、ポンプの流量およびバルブポジションが制御されることで、制動力出力を油圧回路に放散し、残りの制動力出力を用いてトラクションバッテリを充電する。
【選択図】図3

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リフト装置であって、
シャーシと、
基礎をなす面の上で前記シャーシを支持するための複数の牽引装置と、
前記複数の牽引装置のうち少なくとも1つに駆動結合されている電気モータと、
前記電気モータと電気的に連通しているモータ制御部と、
前記モータ制御部を介して前記電気モータと電気的に連通しているトラクションバッテリと、
ポンプと、圧力ギャレと、戻り路と、バルブであって、前記圧力ギャレ内の圧力を制御しており、かつ、前記圧力ギャレを前記戻り路に流体接続しているバルブとを含む油圧回路と、
前記ポンプに駆動接続されており、かつ、前記トラクションバッテリと電気的に連通しているポンプモータと、
前記リフト装置の速度を制御するためのユーザ入力部と、
制御部であって、前記電気モータが制動トルクを出力しており、かつ、前記バッテリに電力を提供している間に、電圧が閾値電圧を上回るのに応じて、前記ポンプの流量を増加させること、ならびに、前記バルブの開度を減少させる、および/または、前記圧力ギャレ内の圧力を上昇させるように前記バルブを制御することによって、前記トラクションバッテリへの電力を減少させるように構成される制御部と
を備えるリフト装置。
【請求項2】
請求項1に記載のリフト装置であって、
前記制御部は、前記ポンプの流量が所定の閾値を下回る場合に前記流量を増加させ、前記ポンプの流量が前記所定の閾値に届くのに応じて、前記バルブ開度を減少させて前記圧力ギャレ内の圧力を上昇させるよう前記バルブを制御することによって、前記バッテリを放電するようにさらに構成される、リフト装置。
【請求項3】
請求項1に記載のリフト装置であって、
前記制御部は、前記圧力ギャレ内の圧力が所定の圧力閾値を下回る場合に、前記バルブ開度を減少させて前記圧力ギャレ内の圧力を上昇させるよう前記バルブを制御しながら、前記ポンプの流量が所定の閾値を下回る場合に、前記流量を増加させることによって、前記バッテリを放電するようにさらに構成される、リフト装置。
【請求項4】
請求項1に記載のリフト装置であって、
前記制御部は、前記圧力ギャレ内の圧力が所定の圧力閾値に届くまで、前記バルブ開度を減少させて前記圧力ギャレ内の圧力を上昇させるよう前記バルブを制御することによって前記バッテリを放電し、前記圧力ギャレ内の圧力が前記所定の圧力閾値に届くのに応じて、前記ポンプの流量を増加させることによって前記バッテリを放電するようにさらに構成される、リフト装置。
【請求項5】
請求項1に記載のリフト装置であって、
前記シャーシに対してリフトプラットフォームを支持しているリフト機構をさらに含み、
前記油圧回路は、アクチュエータであって、前記圧力ギャレと前記戻り路とを流動接続するように配置され、前記リフト機構に結合されているアクチュエータを含む、リフト装置。
【請求項6】
請求項1に記載のリフト装置であって、
前記制御部と連通しているジョイスティックをさらに含み、前記ジョイスティックは、前記複数の牽引装置の速度制御のためのユーザ入力部を前記リフト装置に提供する、リフト装置。
【請求項7】
請求項1に記載のリフト装置であって、
前記制御部は、前記リフト装置の速度を下げる旨の前記ユーザ入力部からの信号を受けて、前記制動トルクを出力するように前記電気モータに指令を与えるようにさらに構成される、リフト装置。
【請求項8】
請求項1に記載のリフト装置であって、
前記ポンプの流量は、前記電圧および前記閾値電圧に依存する、リフト装置。
【請求項9】
請求項1に記載のリフト装置であって、
前記制御部は、前記モータ制御部の電圧と前記閾値電圧との差に比例して前記ポンプの流量を制御するようにさらに構成される、リフト装置。
【請求項10】
請求項1に記載のリフト装置であって、
前記制御部は、前記電圧および前記閾値電圧に依存して前記バルブ開度を制御するようにさらに構成される、リフト装置。
【請求項11】
請求項1に記載のリフト装置であって、
制御部は、前記モータ制御部の電圧と前記閾値電圧との差に比例して前記バルブ開度を制御するようにさらに構成される、リフト装置。
【請求項12】
請求項1に記載のリフト装置であって、
前記閾値電圧は第1閾値電圧であり、
前記制御部は、前記電圧が第2閾値電圧を上回るのに応じて、前記電気モータからの前記制動トルク出力を減少させるようにさらに構成され、前記第2閾値電圧は、前記第1閾値電圧よりも大きい、リフト装置。
【請求項13】
請求項12に記載のリフト装置であって、
前記複数の牽引装置のうち少なくとも1つと関連づけられたパーキングブレーキをさらに含み、
前記制御部は、前記電圧が前記第2閾値電圧を上回るのに応じて、かつ、前記リフト装置の速度が増加している場合に、係合して前記リフト装置を停止するよう前記パーキングブレーキに指令を与えるように構成される、リフト装置。
【請求項14】
請求項1に記載のリフト装置であって、
一方向クラッチを介して前記ポンプモータに駆動接続されている内燃エンジンをさらに備える、リフト装置。
【請求項15】
請求項14に記載のリフト装置であって、
前記制御部は、前記エンジンが動作しており、かつ、前記電気モータが前記制動トルクを出力しているときに、前記電圧が前記閾値電圧を上回るのに応じて、前記ポンプモータの速度が前記エンジンの速度より高くなるよう制御するようにさらに構成される、リフト装置。
【請求項16】
請求項1に記載のリフト装置であって、
前記制御部は、前記トラクションバッテリの温度が所定範囲外であることに応じて、前記ポンプの流量を増加させること、および/または、前記バルブを制御して前記バルブ開度を減少させることによって前記バッテリの充電を制限するようにさらに構成される、リフト装置。
【請求項17】
請求項1に記載のリフト装置であって、
前記制御部は、前記トラクションバッテリの電圧が所定のバッテリ閾値を上回ることに応じて、前記ポンプの流量を増加させること、および/または、前記バルブを制御して前記バルブ開度を減少させることによって前記バッテリの充電を制限するようにさらに構成される、リフト装置。
【請求項18】
請求項1に記載のリフト装置であって、
前記トラクションバッテリは、前記電圧が前記閾値電圧を上回り、かつ、前記電気モータが前記制動トルクを出力している間、前記モータ制御部からの電力を介して充電される、リフト装置。
【請求項19】
請求項1に記載のリフト装置であって、
前記油圧回路は、第2ポンプと、前記第1ポンプを前記圧力ギャレに流動接続している第1ポンプバルブと、前記第2ポンプを前記圧力ギャレに流動接続している第2ポンプバルブとを含み、前記ポンプモータは前記第2ポンプに駆動接続され、
前記制御部は、前記電気モータが前記制動トルクを出力しており、かつ、前記バッテリに電力を提供している間に、前記電圧が前記閾値電圧を上回るのに応じて、前記第1ポンプおよび前記第2ポンプの少なくとも一方の流量を増加させること、ならびに、前記バルブの開度を減少させて前記圧力ギャレ内の圧力を増加させるよう前記バルブを制御することによって、前記トラクションバッテリを放電するようにさらに構成される、リフト装置。
【請求項20】
請求項19に記載のリフト装置であって、
前記制御部は、前記速度が第1速度を下回るのに応じて、前記第1ポンプバルブを閉弁する、および、前記第2ポンプバルブを開弁することと、前記速度が前記第1速度を上回り、かつ、第2速度を下回るのに応じて、前記第1ポンプバルブを開弁する、および、前記第2ポンプバルブを閉弁することと、前記速度が前記第2速度を上回るのに応じて、前記第1および第2ポンプからの流れが前記圧力ギャレに向かうように前記第1および第2ポンプバルブを閉弁することと、前記第1および第2ポンプバルブが開弁状態で、かつ、前記速度が所定のポンプ速度を下回る場合に、前記ポンプモータを増加させることとによって、前記第1ポンプおよび前記第2ポンプの少なくとも一方の前記流量を増加させて、前記バッテリを放電するようにさらに構成される、リフト装置。
【請求項21】
請求項1に記載のリフト装置であって、
前記複数の牽引装置はサービスブレーキシステムを有さない、リフト装置。
【請求項22】
リフト装置を制御する方法であって、
車輪に接続されている少なくとも1つの電気モータを介して前記リフト装置を推進することであって、前記少なくとも1つの電気モータは、モータ制御部を介してトラクションバッテリに電気的に接続されていることと、
圧力ギャレに流れを提供しているポンプと、前記圧力ギャレを戻り路に流体接続しているバルブと、前記圧力ギャレおよび前記戻り路と流体連通しているアクチュエータとを油圧回路に提供することと、
前記トラクションバッテリに電気的に接続されているポンプモータを用いて前記ポンプを駆動することと、
前記リフト装置の実際の速度および前記電気モータへの負荷に基づいて、指令された速度に前記リフト装置を制御するために、前記少なくとも1つの電気モータにおける制動力出力を決定することと、
前記制動力出力が閾値を上回るのに応じて、前記ポンプの流量を増加させること、および、前記バルブを制御して前記バルブの開弁度を減少させることによって、前記閾値を超過する分の制動力出力を油圧回路に放散し、残りの制動力出力を用いて前記トラクションバッテリを充電することと
を含む方法。
【請求項23】
請求項22に記載の方法であって、
前記閾値は、トラクションバッテリおよび/または前記モータ制御部に関連付けられる、方法。
【請求項24】
推進装置であって、
少なくとも1つの車輪に駆動結合される電気モータと、
前記電気モータと電気的に連通しているモータ制御部と、
前記モータ制御部を介して前記電気モータと電気的に連通しているトラクションバッテリと、
ポンプと、圧力ギャレと、戻り路と、バルブであって、前記圧力ギャレ内の圧力を制御しており、かつ、前記圧力ギャレを前記戻り路に流体接続しているバルブとを含む油圧回路と、
前記ポンプに駆動接続されており、かつ、前記トラクションバッテリと電気的に連通しているポンプモータと、
前記少なくとも1つの車輪の速度を制御するためのユーザ入力部と、
制御部であって、前記電気モータが制動トルクを出力しており、かつ、前記バッテリに電力を提供している間に、電圧が閾値電圧を上回るのに応じて、前記ポンプの流量を増加させること、および/または、前記バルブの開度を減少させて前記圧力ギャレ内の圧力を上昇させるように前記バルブを制御することによって、前記トラクションバッテリへの電力を減少させるように構成される制御部と
を備える推進装置。

【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本出願は、2021年9月15日に出願された米国出願第17/475,626号の優先権の利益を主張し、上記の開示は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【技術分野】
【0002】
様々な実施形態は、電気ドライブトレインおよび油圧機能マニホールドを有するリフト装置またはユーティリティビークルに関する。
【背景技術】
【0003】
電気ドライブラインを有するリフト装置は、トラクションモータからの回生制動を用いてトラクションバッテリを再充電する場合がある。モータ制御部は、トラクションモータを制御し、トラクションバッテリと連通している。制動状況下において、モータ制御部および/またはバッテリの電圧は、関連づけられた制限を超えて上昇し得る。従来、リフト装置は、関連づけられたトラクションバッテリによって発生し得る電圧よりも高い電圧閾値を有するモータ制御部、および/または、高い充電率で著しい電圧変化が生じない大型のトラクションバッテリを備えてもよい。しかしながら、これらの部品は、装置に対して費用および重量を追加する場合がある。代替的に、装置は、スイッチを介してトラクションバッテリに接続されて、電圧が高い場合に作動されることによってバッテリを放電して電圧を下げる抵抗加熱器を備えてもよい。モータ制御部および/またはバッテリの電圧が関連づけられた制限に近づく、または、届くと、モータトルク出力が減少される。しかしながら、これは制動トルクを犠牲にし、したがって、車速が指令速度を超えて上昇する、または、突然パーキングブレーキがかかる場合がある。
【発明の概要】
【0004】
一実施形態では、リフト装置は、シャーシと、基礎をなす面の上でシャーシを支持するための複数の牽引装置と、複数の牽引装置のうち少なくとも1つに駆動結合されている電気モータと、電気モータと電気的に連通しているモータ制御部と、モータ制御部を介して電気モータと電気的に連通しているトラクションバッテリとを備える。油圧回路は、ポンプと、圧力ギャレと、戻り路と、バルブであって、圧力ギャレ内の圧力を制御しており、かつ、圧力ギャレを戻り路に流体接続しているバルブとを含む。ポンプモータは、ポンプに駆動接続されており、かつ、トラクションバッテリと電気的に連通している。ユーザ入力部は、リフト装置の速度を制御するために設けられる。制御部は、電気モータが制動トルクを出力しており、かつ、バッテリに電力を提供している間に、電圧が閾値電圧を上回るのに応じて、ポンプの流量を増加させること、ならびに、バルブの開度を減少させて圧力ギャレ内の圧力を上昇させるようにバルブを制御することによって、トラクションバッテリへの電力を減少させるように構成される。
【0005】
他の実施形態では、リフト装置を制御する方法が提供される。リフト装置は、車輪に接続されている少なくとも1つの電気モータを介して推進され、その少なくとも1つの電気モータは、モータ制御部を介してトラクションバッテリに電気的に接続されている。油圧回路は、圧力ギャレに流れを提供しているポンプと、圧力ギャレを戻り路に流体接続しているバルブと、圧力ギャレおよび戻り路と流体連通しているアクチュエータとを備える。ポンプは、トラクションバッテリに電気的に接続されているポンプモータを用いて駆動される。リフト装置の実際の速度および電気モータへの負荷に基づいて、指令された速度に車両を制御するために、少なくとも1つの電気モータにおける制動力出力が決定される。制動力出力が閾値を上回るのに応じて、ポンプの流量が増加される、および、バルブが制御されてバルブの開弁度が減少することによって、閾値を超過する分の制動力出力を油圧回路に放散し、残りの制動力出力を用いてトラクションバッテリを充電する。
【0006】
他の実施形態では、推進装置は、少なくとも1つの車輪に駆動結合される電気モータと、電気モータと電気的に連通しているモータ制御部と、モータ制御部を介して電気モータと電気的に連通しているトラクションバッテリとを備える。油圧回路は、ポンプと、圧力ギャレと、戻り路と、バルブであって、圧力ギャレ内の圧力を制御しており、かつ、圧力ギャレを戻り路に流体接続しているバルブとを含む。ポンプモータは、ポンプに駆動接続されており、かつ、トラクションバッテリと電気的に連通している。ユーザ入力部は、リフト装置の速度を制御する。制御部は、電気モータが制動トルクを出力しており、かつ、バッテリに電力を提供している間に、電圧が閾値電圧を上回るのに応じて、ポンプの流量を増加させること、および/または、バルブの開度を減少させて圧力ギャレ内の圧力を上昇させるようにバルブを制御することによって、トラクションバッテリへの電力を減少させるように構成される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1は、第1実施形態に係るリフト装置の斜視図を示す。
【0008】
図2は、第2実施形態に係るリフト装置の斜視図を示す。
【0009】
図3は、図1または図2のリフト装置の概略図を示す。
【0010】
図4は、図1または図2のリフト装置の油圧概略図を示す。
【0011】
図5は、一実施形態に係り、図1または2のリフト装置を用いて使用するための方法に関するフローチャートを示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
必要に応じて、本発明の詳細な実施形態が本明細書において開示される。しかしながら、開示される実施形態は、様々な、および代替的な形態で実施され得る本発明の例示に過ぎないことを理解するべきである。図面は、必ずしも縮尺どおりではない。いくつかの特徴は、特定の構成要素の詳細を示すために誇張されるか、または最小化される場合がある。したがって、本明細書で開示される特定の構造的および機能的詳細は、限定として解釈されるべきではなく、本発明を様々に使用することを当業者に教示するための代表的な基礎としてのものである。
【0013】
図1は、第1実施形態に係り、本開示を用いて使用するためのリフト装置10またはユーティリティビークル10を示す。リフト装置またはユーティリティビークルは、商業的または工業的な環境で用いられ、可搬式マテリアルリフト、高所作業車、テレハンドラー、シザーリフト、ラフテレーンテレスコピックロードハンドラー、およびテレスコピック・多関節ブームを含むリフト設備を含んでもよい。図1において、リフト装置10は、非限定的な例に係るテレスコピック・多関節ブームとして示される。
【0014】
リフト装置10は、図3に関して後述されるように、車両を推進するように作用する電気推進システムを含む。リフト装置10は、また、リフト装置のリフトプラットフォームなどの作業機能、ならびに操舵などの他の車両システムを動作させ、図4に関して後述される、電動またはハイブリッド油圧システムを含む。
【0015】
リフト装置10は、基礎をなす地形の上方に複数の牽引装置14、例えば、4つの車輪14によって支持される基部12またはシャーシ12を含む。リフト装置10は、舗装済または未舗装の地面、道路、歩道または駐車場などの駐機場、構造物の内装または外装床、あるいは、他の表面などの、支持面16または基礎をなす地形に対して、人、工具、貨物などの積荷を持ち上げるために構成されている。
【0016】
リフト装置10は、プラットフォーム、基部またはシャーシ12、ならびに、プラットフォーム18および基部12を結合する支持アセンブリ20などの車両リフト部品18を含む。基部12は、車輪などの牽引装置14によって支持面16上に支持される。牽引装置14は、タイヤおよび/または無限軌道を含んでもよい。車両10は、2つの車輪14を有する第1車軸24、および、他の2つの車輪14を有する第2車軸26を含む。車軸24は前車軸であってもよく、車軸26は後車軸であってもよい。他の実施形態では、車両10は、3つ以上の車軸を含んでもよい。他の実施形態では、牽引装置14は、車両の横軸に沿って互いに並べられるが、それらの間に車軸24、26を含まなくてもよい。
【0017】
支持アセンブリ20は、後述のように、他の構造部材とともに、一つまたは複数の油圧アクチュエータを含み、プラットフォーム18におけるリフト機構を提供してもよい。
【0018】
基部12は、基部および車両の前端および後端にそれぞれ対応し、互いに対向する第1および第2側または端30、32を含む。車両10は、前進および後進の両方向に動くように構成され、例えば、車輪22の回転方向に応じて車両の長軸40に沿った両方向に動く。
【0019】
リフト装置10のオペレータは、例えば、制御盤上のオペレータ入力部またはユーザ入力部50を介して、リフト装置への指令を入力する。オペレータ入力部50は、リフト装置10における速度および方向指令を入力するためのジョイスティックを含んでもよい。例えば、ジョイスティックの、ニュートラル、中央位置に対する前方への動きは、車両への前進速度指令を与え、例えば、車両は、前方または図1における左方向へ、選択された速度で移動する。ジョイスティックの、ニュートラル中央位置に対する逆方向への動きは、車両への後進速度指令を与える。例えば、車両は、後方または逆方向、あるいは図1における右方向へ、選択された速度で移動する。速度指令の大きさは、実際のジョイスティックの位置とニュートラル中央位置との間の距離に基づく。
【0020】
制御盤50は、装置10における速度モードを選択するためのオペレータ入力部を追加で含んでもよい。1つの例では、リフト装置10は、3つの速度モードを含み、それぞれの速度モードは、リフト装置における異なる最高速度を有する。第1の速度モードは、最も高い最高速度を有し、リフトプラットフォームが収納されている場合に使用される。第2の速度モードは、より遅い最高速度を有し、やはり、リフトプラットフォームが収納されている場合に使用される。第3の速度モードは、最も遅い最高速度を有し、リフトプラットフォームが収納位置から展開される場合に使用される。ジョイスティックは、モードに基づいて再較正されてもよく、したがって、ジョイスティックの前進端位置はそのモードにおいて可能な最高速度をもたらし、後進端位置においても同様である。
【0021】
1つの例では、第1の速度モードは、各方向において、時速0から20マイルの範囲の車両10の速度を可能とし、第2の速度モードは、各方向において、時速0から5マイルの範囲の車速を可能とし、第3の速度モードは、各方向において、時速0から2マイルの範囲の車速を可能とする。他の例では、第1の速度モードは、各方向で、時速0から4マイルの範囲の車両10の速度を可能とし、第2の速度モードは、各方向で、時速0から2マイルの範囲の車速を可能とし、第3の速度モードは、各方向で、時速0から1マイル未満の範囲の車速を可能とする。
【0022】
システム制御部が動作状況に基づいて装置における速度モードを追加で選択してもよく、入力部50を介したオペレータによる選択を上書きしてもよい。
【0023】
制御盤50は、また、基部12に対するリフト部品18の位置制御など、他のオペレータ入力部を提供する。さらに、制御盤50は、表示画面、表示灯などを含み、リフト装置10についての情報をオペレータに提供してもよい。
【0024】
図2は、他の実施形態に係り、本開示とともに使用するためのリフト装置10を示す。図1に関して上述された要素と同じまたは同様の要素には、簡略化のために同じ参照番号が付される。図2では、リフト装置10は、他の非限定的な例に係るシザーリフトとして示される。
【0025】
図3は、図1または図2のリフト装置10、あるいは、フォークリフトなどの他のリフト装置の概略図を示す。図1に関して上述された要素と同じまたは同様の要素には、簡略化のために同じ参照番号が付される。
【0026】
リフト装置10は、複数の牽引装置14を含む。1つの例では、牽引装置14は車輪によって提供され、リフト装置10は、図1および2に関して先に示されたように、4つの車輪を含む。他の例では、リフト装置10は、5つ以上の車輪を含んでもよい。
【0027】
リフト装置10は、電気推進システム60を含む。電気推進システム60は、複数の牽引装置14のうち少なくとも1つに駆動接続されて、基礎をなす地形の上でリフト装置を推進する、一つまたは複数の電気モータ62を含む。1つの例では、電気モータ62は、2つ以上の車輪14のハブモータとして設けられる。さらなる例では、図示されるように、電気推進システム60は、4つの車輪14のハブモータとして設けられる4つの電気モータ62を含む。他の例では、電気モータ62は、例えば、ドライブラインの差動装置を介して複数の車輪と接続されてもよい。代替的に、一部の車輪14だけが、例えば、二輪駆動として、車両に牽引力を与える。
【0028】
各電気モータ62は、関連づけられたモータ制御部66を介してトラクションバッテリ64に接続される。モータ制御部66は、各電気モータ62の速度およびトルクを制御し、モータ62は独立して制御されてもよい。モータ制御部66は、一体化された1つの要素として図示されているが、各モータ62に対する個別の要素として設けられてもよい。モータ制御部66の電圧は、トラクションバッテリ64の電圧と同等であってもよい。モータ制御部66は、関連づけられた電圧制限を有する。各モータ制御部66は、システム制御部68と連通している。ジョイスティックなどの制御盤50およびオペレータ入力部も、システム制御部68と連通している。
【0029】
トラクションバッテリ64は、一つまたは複数の電池によって提供されてもよく、湿電池または乾電池であってもよく、鉛酸化学、リチウム系化学、または、他の化学により形成されてもよい。トラクションバッテリ64は、関連づけられた電圧制限、電流制限、充電率制限、または温度制限を有してもよい。非限定的な1つの例では、モータ制御部66は、電圧制限を有する。リチウム化学電池を備える他の例では、バッテリ64は、電圧および電流制限、ならびに、動作温度制限を有してもよい。例えば、バッテリ64は、温度範囲外にあるとき、例えば、低周囲温度でのコールドスタートの後は、充電が制限されてもよく、モータ制御部66および/またはシステム制御部68は、これらの状況では、バッテリの充電を制限してもよい。
【0030】
システム制御部68は、様々な推進および油圧部品、ならびに、センサと連通しており、装置10を制御する。制御部68は、車両システム制御部(VSC)の一部を提供するか、または、一部であってもよく、任意の数の制御部を含んでもよく、1つの制御部に一体化されるか、または、様々なモジュールを含んでもよい。一部またはすべての制御部は、コントローラエリアネットワーク(CAN)または他のシステムによって接続されてもよい。制御部は、また、ランダムアクセスメモリまたは他のデータ記憶システムに接続されてもよい。
【0031】
モータ制御部66は、オペレータからの速度入力に基づき、速度制御フィードバックループ上で電気モータ62を制御してもよい。例えば、オペレータは、ジョイスティック50を介して選択速度を入力してもよく、モータ制御部66は、電気モータ62のトルクを制御または調節して、オペレータの要求に基づく所望の速度出力を提供してもよい。したがって、トラクションモータ62の速度を下げるために、モータ制御部66は、例えば、制動トルクとして、低減されたトルクまたはモータの回転と逆方向のトルクを出力するようにトラクションモータに対して指令を与えてもよい。トラクションモータ62は、正転制動、正転力行、逆転力行、および逆転制動の間で制御可能な四象限モータとして設けられてもよい。
【0032】
加えて、トラクションバッテリ64は、例えば、充電ステーションなどの外部電源からの電気入力を通じて、外部から充電されてもよい。
【0033】
各電気モータ62は、第1方向および第2方向に回転するように制御されてもよく、加えて、速度およびトルク出力が制御される。それにより、電気モータ62は、正トルク出力によって、基礎をなす地形の上で車両を推進してもよい。電気モータ62は、加えて、発電機として作用し、車両を制動または減速するための負トルク出力を提供し、トラクションバッテリ64に電力を提供してもよい。
【0034】
図示の例では、提供されるリフト装置10は、サービスブレーキシステムを有さない。そのため、電気モータ62は、走行中に車輪14に制動力を加えて車両速度を制御する唯一の装置である。サービスブレーキシステムは、従来、例えば、車両の速度を低く落とすために、オペレータによる制御された制動入力を提供する、ドラムブレーキ、ディスクブレーキなどによって提供される。
【0035】
図示の例では、リフト装置10は、パーキングブレーキシステムを有する。パーキングブレーキシステムでは、パーキングブレーキ70が各車輪14に設けられる。非限定的な1つの例では、パーキングブレーキ70は、トラクションモータ62および車輪14の駆動アセンブリと一体化され、また、バネ作動・コイル開放ブレーキ、例えば、ディスクブレーキとして設けられてもよい。制御部68またはオペレータは、パーキングブレーキ70を作動してリフト装置10を停止させてもよく、あるいは、パーキングブレーキ70を開放して、基礎をなす地形に対してリフト装置10が移動するのを可能にしてもよい。装置10の動作中にパーキングブレーキ70が作動またはセットされると、車輪14が回転せず、リフト装置10がスリップして停止する。
【0036】
図1~3に関して上述される電気推進リフト装置10において、トラクションモータ62は、前進および後進の両方向で推進トルクおよび制動トルクの両方を与えてもよい。これらのモータ62が正トルクを用いて装置を前方に動かしているとき、トラクションバッテリ64は、放電されて電力を提供する。これらのトラクションモータ62が車両を制動して減速しているとき、バッテリの電流方向は逆向きであり、例えば、回生制動を介して、制動力によってバッテリ64が充電される。
【0037】
例えば、回生制動を介した充電は、結果としてトラクションバッテリ64の電圧を上昇させる。バッテリ64のサイズおよび化学、ならびに、加えられる制動力によっては、バッテリ64の電圧が大幅に上昇し得る。この電圧の上昇は一時的である場合もあるが、モータ制御部66、トラクションバッテリ64、および/または、他の搭載パワーエレクトロニクスデバイスは、関連づけられた電圧制限または電流制限を有してもよい。例えば、三相モータ制御部66は、関連づけられた電圧閾値を有してもよく、この閾値に届くと、制動下のモータ62のトルクが制限されてもよい。これによって、トラクションモータ62の、例えば、傾斜において車両10の速度を制動および制御する能力が制限される場合があり、その結果、装置10および/またはリフト装置の速度に関して、指令速度を上回る、下り坂での意図せぬ加速度が生じる場合がある。図5に関する後述の方法は、このようなシナリオにおけるリフト装置10の制御を提供する。
【0038】
図4は、図1または図2のリフト装置の油圧概略図を示す。油圧システム80は、クローズドループシステムまたはオープンループシステムをもつ油圧回路であってもよい。図示の例では、油圧システムは、2つのポンプ82、84を含み、第2ポンプ84は、第1ポンプ82にピギーバックされる。代替的には、1つのポンプハウジングが2つに区画されて、2つのポンプ82、84の容積を提供するように設けられてもよい。第1および第2ポンプ82、84は、ポンプモータ86によって駆動され、ポンプモータ86は、ポンプモータ制御部88を介して図3に関して上述されたトラクションバッテリ64に電気的に接続される電気モータである。ポンプモータ86の速度を制御することで、ポンプ82、84からの流量を制御してもよい。本明細書において、ポンプ82、84からの流量は、ポンプの速度、および/または、ポンプからの、または、ポンプバルブ90、92を介した吐出量を制御することによって制御されてもよい。
【0039】
代替的な例では、油圧システムは、ポンプ82などの1つのポンプを有してもよく、1つのポンプはポンプモータによって駆動される。
【0040】
ポンプ82、84は、可変容量ポンプとして設けられてもよい。代替的には、図示のように、各ポンプ82、84は、関連づけられたポンプを圧力ギャレ(galley)100、あるいは、戻り路102およびタンク104に流体接続する、関連づけられたポンプバルブ90、92を含んでもよい。したがって、油圧ギャレ100への吐出量または流量は、第1および/または第2ポンプバルブ90、92を選択的に制御して、圧力ギャレ100に流れを提供することによって制御されてもよい。油圧ギャレ100への吐出量または流量は、選択されたポジションにあるポンプバルブ90、92によって提供される範囲内において、ポンプモータ86の速度を選択的に制御することによってさらに制御されてもよい。
【0041】
様々な例では、図示されるように、油圧システム80は、オーバーランニングクラッチ112を介してポンプモータ86に接続される、例えば、ディーゼルエンジンまたはガソリンエンジンなどの内燃エンジン110を追加で含む。したがって、ポンプモータ86は、エンジン110とポンプ82、84との間に位置する。エンジン110および/またはポンプモータ86を作動することで、ポンプ82、84を駆動してもよい。オーバーランニングクラッチ112は、エンジン110の出力軸の回転速度がポンプモータ86軸の回転速度と同等か、または下回ったときに、係合して、エンジン110とポンプモータ86とを互いに機械的に連結させる。したがって、ポンプモータ速度がエンジン速度よりも高いときには、オーバーランニングクラッチ112は係合せず、ポンプモータ86は、エンジン110から独立して動作する。
【0042】
他の例では、油圧システム80は、電気的にのみ動力を与えられてもよく、したがって、エンジンまたはオーバーランニングクラッチは存在せず、ポンプモータ86のみがポンプを回転させる。
【0043】
エンジン110、ポンプモータ制御部88、および、選択されたバルブも、車両制御部68と連通している。
【0044】
第1および第2ポンプ82、84は、加圧された流体の流れを圧力ギャレ100に提供する。リフト装置10の油圧機能120は、圧力ギャレ100に接続され、そこから、例えば、バルブ122を介して加圧された流体を受け取る。例えば、リフトプラットフォームの支持アセンブリ、車輪の操舵、車軸制御、および、その他の装置機能のための油圧アクチュエータ124は、圧力ギャレ100に流体連結される。油圧アクチュエータ124は、戻り路102にも接続され、戻り路102は、圧力ギャレ100およびアクチュエータ124の下流である。戻り路102は、圧力ギャレ100およびアクチュエータ124からタンク104およびポンプ82、84への流路を提供する。2つの油圧アクチュエータ124のみが図示されるが、任意の数の油圧アクチュエータが油圧システム80とともに用いられることが検討される。
【0045】
リリーフバルブなどのバルブ130が、圧力ギャレ100と戻り路102との間に配置され、圧力ギャレを戻り路に直接的に流体接続する。バルブ130は、ポジション可変バルブであってもよく、例えば、比例リリーフバルブまたは逆比例リリーフバルブとしてであってもよい。他の例では、バルブ130は、固定リリーフバルブであってもよい。バルブ130のポジションは、システム制御部68と連通するソレノイドを介して制御されてもよい。バルブ130のポジションを制御することによって、圧力ギャレ100内の圧力を制御してもよい。バルブ130が開弁されているとき、ポンプ82、84および圧力ギャレ100からの流れは、戻り路102に流れてアクチュエータ124をバイパスし、圧力ギャレ100内の圧力は最小となる。バルブ130が閉弁されているとき、全ての流れがポンプ82、84から圧力ギャレ100へ向かい、圧力ギャレ100内の圧力が最大となる。バルブ130のポジションを、開弁および閉弁ポジション、ならびに、一部開弁ポジションとの間で制御または調整することによって、圧力ギャレ100内の圧力を制御してもよい。
【0046】
油圧システム80は、他のバルブ、アクチュエータ、フィルタなどを含む図示されない他の構成要素を含んでもよい。
【0047】
リフト装置10が電動モータ62を介して制動している間に、かつ、モータ制御部66またはトラクションバッテリ64に関連づけられた電圧または他の制限が、本開示に係るそれらの閾値または制限に近づくと、油圧システム80を使用して、バッテリ64からの電力を消費してもよい。ポンプ82、84からの流れが増加する、および/または、システム80内の圧力が増加するにつれて、油圧システム80による電力消費量も増加する。例えば、高圧流体がリリーフバルブ130を通じて計測されると、電力は流体内へ熱として放散される。本開示は、ポンプ82、84の速度および/または吐出量にかかる制御、ならびに、バルブ130のポジションにかかる制御を提供するため、油圧システム80によって放散される電力量を、図5に関して後述されるように制御することによって、電気的制限内でのリフト装置10の動作、および、充電され得る程度にトラクションバッテリ64の充電を維持してもよい。
【0048】
図5は、図1~4に関して示されたリフト装置10などのリフト装置を制御する方法200を示す。様々な例において、方法200におけるステップは、異なる順番で実行されてもよく、並行または順番に実行されてもよく、および/または、追加または省略されてもよい。
【0049】
方法200の様々な実施形態は、関連づけられた、非限定的な利点を有する。例えば、方法200および装置10は、トラクションモータ62による回生制動に関連付けられたパラメータが閾値を上回るとき、エネルギを油圧システム80に放出または伝達することによって車両の速度を制御し、装置10における、特に高速時のパーキングブレーキ70の係合、および、急停止を防ぐ、または遅らせる。
【0050】
上述のように、トラクションモータ62による制動中、特に傾斜を下降しながらの制動中、電気トラクションモータ62は、発電機のように動作し、車輪のトルクおよび速度を電力に変換する。リフト装置10において、高い速度、急な傾斜、および急な減速では、トラクションモータ62によって発生する制動力は、バッテリ64、モータ制御部66、または、他の電気部品に関連付けられた閾値または制限よりも大きくなる場合がある。制動中、トラクションバッテリ64がほぼ満充電または満充電、および/または、冷たい状態にあるとき、この閾値により容易に到達し得る。回生制動を介して制動力がトラクションバッテリ64に加えられると、トラクションバッテリ64の圧力が急速に上昇し得る。モータ制御部66は、トラクションバッテリ64の電圧が閾値に近づくと、回生制動を制限することによってバッテリ64および/またはモータ制御部66を保護する場合があり、したがって、電気モータ62を介した制動は、リフト装置10における特定の条件下で制限され得る。同様に、装置10がリチウム化学トラクションバッテリ64を含む場合、バッテリは、関連づけられた電流および/または電圧閾値を含み得る。リフト装置10はサービスブレーキを有さないため、制動部68は、パーキングブレーキ70をセットする必要があり、したがって、装置の急停止を引き起こすとともに、運転のしやすさに影響を与える。油圧システム80は、本明細書中で説明されるように用いられることで、トラクションモータ62によって生成された過剰な制動力を放散し、装置10が、モータ制御部66、トラクションバッテリ64、および、他のパワーエレクトロニクス部品に関する電気的閾値に近づいたときに、より長い回生制動を可能にする。
【0051】
ステップ202、204では、方法200は、リフト装置10が動作中であるかを判断し、そうである場合に、電気モータ62が制動トルクを生成しており、かつ、トラクションバッテリ64に電力を提供しているかどうかを判断する。例えば、電気モータ62は、傾斜や坂道を下降する間、車速を下げるまたは維持する旨のオペレータからの要求に基づいて制動トルクを生成していてもよい。制御部68は、下り坂または傾斜などにおいて、リフト装置10の速度を下げる、またはリフト装置10の速度を維持する旨のユーザ入力部からの信号を受けて、制動トルクを出力するように電気モータ62に指令を与えるように構成されてもよい。
【0052】
ステップ206では、システム制御部68は、電圧を第1閾値電圧と比較する。1つの例では、システム制御部68は、モータ制御部における電圧を第1閾値電圧と比較してもよい。第1閾値電圧は、モータ制御部66に関連付けられた電圧制限よりも低く設定されてもよい。非限定的な1つの例では、モータ制御部66の電圧制限は63ボルト、第1閾値電圧は55ボルトに設定され、公称電圧は48ボルトである。他の例では、他の閾値電圧が設定されてもよく、または、システム制御部68は、装置10における他のパワーエレクトロニクスデバイスの電圧を監視してもよい。
【0053】
例えば、モータトルク出力または制動が発生し、かつ、バッテリが既に部分充電またはほぼ満充電であるとき、モータ62制御部およびバッテリ64の電圧は上昇する。制御システム68は、電圧の上昇を感知し、例えば、油圧システム80がまだ動作していない場合に、制動への応答に備えて圧力ギャレ100内の圧力を公称値に設定し、ポンプ82、84を公称流量設定に切り替える。
【0054】
したがって、内燃エンジン110を備えない油圧システム80において、ポンプ82、84の速度は、その動作範囲内における低い値に設定されてもよい。
【0055】
ステップ208において、リフト装置10が油圧システム80内に内燃エンジン110を備える場合、制御部68は、エンジンが動作しており、かつ、電気モータ62が制動トルクを出力しているときに、モータ制御部66の電圧が第1閾値電圧を上回るのに応じて、ポンプモータ86の速度がエンジン110の速度より高くなるよう制御するようにさらに構成される。これによって、オーバーランニングクラッチ112は、オープンまたは非係合位置に維持され、エンジン110がポンプモータ86に負荷を与える、または、ポンプモータ86を減速させることを防ぐ。
【0056】
したがって、内燃エンジン110を備える油圧システム80において、エンジンが稼働しているとき、オーバーランニングクラッチによってポンプモータがエンジン110よりも高速で回転し、および、バッテリ64を充電するのではなく放電することが可能となるように、エンジン110の速度よりも高い値にポンプ82、84またはポンプモータ86の速度が設定される。
【0057】
ステップ210で、電圧が第1閾値を超える場合、システム制御部68は、油圧システム80内のポンプ82、84の流量を増加させる。ポンプ82、84の流量を増加させることで、ポンプモータ86は、トラクションバッテリ64からの電力を消費し、その結果、トラクションモータ62からトラクションバッテリ64への電力が減少する。したがって、電圧は減少することになる。制御部68は、ポンプ82、84の流量が所定の閾値を下回る場合に、所定の閾値に届くまで流量を増加させるようにさらに構成されてもよい。
【0058】
ステップ212で、システム制御部は、電圧を第1閾値と比較し、電圧がまだ第1閾値を上回っている場合、ステップ214へ進み、システム制御部68は、リリーフバルブ130を制御してバルブ開度を減少させ、圧力ギャレ100内の圧力を上昇させる。これも、圧力ギャレ100内により高い圧力を提供し、リリーフバルブ130を通過する熱によってもトラクションバッテリ64からの電力が消費されてエネルギが放散されるため、トラクションバッテリ64への電力を減少させる。結果として、トラクションモータ62からトラクションバッテリ64への電力を減少させる。
【0059】
なお、1つの例では、ステップ210および214は、フローチャートに示されるように順番に実行され、制御部68は、ポンプ82、84の流量が所定の閾値に届くのに応じて、バルブ130を制御してバルブ開度を減少させるように構成される。したがって、制御部68は、バルブ130を圧力閾値に制御する前に、ポンプ82、84をそれらの流量閾値に制御する。
【0060】
他の例では、ステップ210および214は、他の順序で実行される。例えば、制御部68は、圧力ギャレ100内の圧力が所定の圧力閾値を下回る場合に、バルブ開度を減少させて圧力ギャレ100内の圧力を上昇させるようバルブ130を制御しながら、ポンプ82、84の流量が所定の流量閾値を下回る場合に、ポンプ82、84の流量を増加させることによって、バッテリ64を放電するようにさらに構成される。したがって、ポンプ82、84の流量およびバルブ130のポジションは、それらの両方がそれらに関連づけられた閾値を下回っている限りは、並行して制御されてもよい。
【0061】
他の例では、制御部68は、圧力ギャレ100内の圧力が所定の圧力閾値に届くまで、バルブ開度を減少させて圧力ギャレ100内の圧力を上昇させるようバルブ130を制御することによってバッテリ64を放電し、圧力ギャレ100内の圧力が所定の圧力閾値に届くのに応じて、ポンプ82、84の流量を増加させることによって、バッテリ64を放電するようにさらに構成される。したがって、制御部68は、ポンプ82、84をそれらの流量閾値に制御する前に、バルブ130を圧力閾値に制御する。
【0062】
制御部68は、モータ制御部66の電圧および第1閾値電圧に依存する、または、それらの関数となるようにポンプ82、84の流量を制御してもよい。1つの例では、制御部68は、モータ制御部66の電圧が第1閾値を上回る場合に、モータ制御部66の電圧と第1閾値との差に比例して、ポンプ82、84の流量を制御する。電圧が第1閾値よりもますます大きくなるにつれて、ポンプ82、84の流量出力もまた増加し、したがって、モータ制御部66の電圧を第1閾値に戻そうとする、および、戻すためにより多くの電力または制動力を消費する。
【0063】
制御部68は、モータ制御部66の電圧および第1閾値電圧に依存する、または、それらの関数となるようにバルブ130の開度を制御してもよい。1つの例では、制御部68は、モータ制御部66の電圧が第1閾値を上回る場合に、モータ制御部66の電圧と第1閾値との差に比例してバルブ130の開度を制御する。電圧が第1閾値よりもますます大きくなるにつれて、バルブ130の開度もまた減少し、したがって、モータ制御部66の電圧を第1閾値に戻そうとする、および、戻すためにより多くの電力または制動力を消費する。
【0064】
代替的に、または追加で、ステップ210および214は、ステップ206において、制御部がトラクションバッテリ64の温度が所定範囲外であると判断することに応じて、および/または、トラクションバッテリ64の電圧が所定のバッテリ閾値を上回ることに応じて実行されてもよい。
【0065】
なお、ステップ210および214の間、モータ制御部66の電圧が閾値電圧を上回り、かつ、電気モータ62が制動トルクを出力している状況では、トラクションバッテリ64は、バッテリ64の最大充電率を下回る程度に、モータ制御部66からの電力を介して充電されてもよい。
【0066】
さらに、複数のポンプを備える油圧システム80において、制御部68は、一方または両方のポンプ82、84の流量出力を制御してもよい。1つの例では、制御部68は、装置速度が第1速度を下回るのに応じて、第1ポンプバルブ90を閉弁する、および、第2ポンプバルブ92を開弁することと、装置速度が第1速度を上回り、かつ、第2速度を下回るのに応じて、第1ポンプバルブ90を開弁する、および、第2ポンプバルブ92を閉弁することと、速度が第2速度を上回るのに応じて、第1および第2ポンプ82、84からの流れが圧力ギャレ100に向かうように第1および第2ポンプバルブ90、92を閉弁することと、第1および第2ポンプバルブ90、92が開弁状態で、かつ、速度が所定のポンプ速度を下回る場合に、ポンプモータ86の速度を増加させることとによって、ポンプ82、84の流量を増加させて、バッテリ64を放電するようにさらに構成される。
【0067】
したがって、油圧システム80は、トラクションモータ制御および回生制動システムと並行して動作する。システム制御部68が第1閾値より大きい電圧または電流を検知すると、システム制御部68は、バッテリから動力を得るポンプモータ86を用いてトラクションバッテリ64からの放電を開始し、制御部66で計測された過電圧または電流に比例する高流量で、作動液をリリーフバルブ130を通じて送り出す。これによって、トラクションバッテリ64からの電力消費または放電が生じ、トラクションモータ62およびモータ制御部66が継続的に制動トルクを発生させ、油圧システム80に放電する電流を補充することを可能にする。
【0068】
システム制御部68は、ポンプ82、84の流量および/またはバルブ130の開弁ポジションを設定するために、比例積分(PI)フィードバック制御ループを適用してもよい。1つの例では、フィードバック変数は、計測されたバッテリ64の電圧である。計測された電圧は、第1閾値と比較される。計測されたバッテリ64の電圧が第1閾値よりも大きい場合、誤差は、計測されたバッテリ64から圧力閾値を引いた値と等しくなる。そして、正の誤差は、ポンプ82、84の流量(例えば、ポンプモータ86の速度および/または吐出量)、および/または、リリーフバルブ130のポジションを増加させるために、フィードバックループによって用いられる。制御フィードバックループは、リフト装置10の走行速度、および、バッテリ64の電圧を含む入力を用いてもよい。制御フィードバックループは、第1および第2ポンプバルブ90、92のバルブポジション、ポンプモータ86の速度、およびリリーフバルブ130のポジションを含む制御出力を提供してもよい。ポンプバルブ90、92およびリリーフバルブ130は、各バルブに関連付けられたコイルまたはソレノイドへの電流を制御することによって制御されてもよい。
【0069】
したがって、リフト装置10は、流量およびバルブポジションのための2つの連結されたPI制御を用いて動作する。図示の例では、流量制御が優先され、流量が最大化されるまでは、圧力制御は固定されたままとなる。他の例では、圧力制御が優先されてもよく、あるいは2つの制御が並行または同時に実行されてもよい。
【0070】
バッテリ64の電圧と第1閾値との差が大きくなると、制御部68は、制御フィードバックループを適用して、ポンプモータ86がより大きな電圧で急加速するように、PI制御によってポンプモータ86の速度および/または吐出量を増加させる。この速度および作動液流量の増加は、それに比例して、リリーフバルブ130によって放散される電力を増加させる。バッテリ64の電圧と第1閾値との間の差によってポンプモータ86の速度が流量閾値となった場合、制御部68は、ポンプモータ86の速度を流量閾値に維持し、リリーフバルブ130の開度制御を介して電圧の誤差に応じて油圧システムの圧力ギャレ100内の圧力を増加させる第2のPI制御ループを実行する。リリーフバルブ130の断面積が減少するにつれて、圧力ギャレ100内の圧力が増加する。圧力は、リリーフバルブ130によって可能とされる圧力閾値まで増加してもよい。
【0071】
このように油圧システム80を動作させることは、バッテリ64からの放電を必要とする。この放電は、回生制動中に制動モータ62により生じる充電を相殺し、その結果、制動力は、作動液内の熱に事実上変換される。充電電流は放電電流によって相殺されるため、バッテリ64の電圧は、トラクションモータにおける最大のトルク出力までモータ62が継続して制動することを可能とする、第1閾値未満へと戻される。
【0072】
電圧を制限する上での必要性に応じて、制動力の一部のみが油圧システム80内に放散されるため、残りの制動力は、バッテリ64を充電するために用いられてもよい。
【0073】
同様の制御フィードバックループがシステム制御部68によって適用されることで、バッテリ64の温度、例えば、冷たいリチウム化学バッテリ、に基づいて過電流を制御、または、充電電流を制限してもよい。
【0074】
他の例では、他のフィードバックループを用いて油圧システム80を制御してもよい。
【0075】
さらに他の例では、制御部68は、リフト装置10の速度入力に依存する、または、それらの関数となるようにポンプ82、84の流量および/またはリリーフバルブ130のポジションを代替的に制御してもよい。1つの例では、システム制御部68は、リフト装置における、ジョイスティック50による速度指令と実際の速度との間の差を用いるPIフィードバックループを適用する。実際の車両またはリフト装置の速度がユーザによって指令された速度を上回る場合、上述のように同時または順番に、油圧ポンプ82、84の流量を増加させる、および、圧力ギャレ100内の圧力を増加させることによって、流体動力が増加する。流体動力の増加量は、PIゲインによって制御される。
【0076】
ステップ210、214の後に電圧が第1閾値を超えたままである場合、方法は、ステップ216に進み、電圧を第2閾値と比較する。第2閾値電圧は第1閾値電圧よりも大きく、様々な非限定的な例では、60ボルト、または電圧制限と同じであり、例えば上述のように63ボルトである。
【0077】
ステップ218で、制御部68は、モータ制御部66の電圧が第2閾値電圧を上回るのに応じて、電気モータ62からの制動トルク出力を減少させるようにさらに構成される。システム制御部68は、電圧が第2閾値を上回る場合に、モータ制御部66に関して電圧制御フィードバックループを適用してもよい。例えば、フィードバックループは、バッテリ64の電圧を入力し、バッテリ64の電圧が第2閾値を上回っている量に基づいて過電圧数を決定し、過電圧数に基づいてモータ62の出力トルクを減少させてもよい。
【0078】
制御部は、ステップ220でモータ制御部66の電圧が第2閾値を上回るのに応じて、かつ、リフト装置10の速度が増加している場合に、ステップ222で、係合してリフト装置を停止するようパーキングブレーキ70に指令を与えるように構成させる。
【0079】
したがって、方法200は、リフト装置10の実際の速度および電気モータ62への負荷に基づいて、指令された速度に車両を制御するために、電気モータ62における制動力出力を決定する。そして、方法200は、制動力出力が閾値を上回るのに応じて、ポンプ82、84の流量を増加させること、および、バルブ130を制御して開弁度を減少させることによって、閾値を超過する分の制動力出力を油圧回路80に放散し、残りの制動力出力を用いてトラクションバッテリ64を充電する。閾値は、トラクションバッテリ64および/またはモータ制御部66に関連づけられてもよく、1つの例では、上述のように、電圧閾値または電流閾値である。
【0080】
本開示は、ポンプ82、84の流量およびリリーフバルブ130の圧力の両方を変化させることで、広い範囲の放電電力を提供し、リフト装置10における電気的制限近くでの継続的な回生制動を可能にする。なお、流体動力は、圧力および流量の関数である。油圧システム80では、流量および圧力の両方が制御されるため、流体動力は、車両10の速度または傾斜と関係なく、モータ62の電力出力およびモータ制御部66の電圧、および/または、バッテリ64の電流に基づいて制御および設定されてもよい。その場合にも、制動エネルギの一部は後で使用するためにトラクションバッテリ64に充電されてもよい。
【0081】
例示の実施形態がこれまで記述されているが、これらの実施形態は、本発明の全ての可能な形態の記述を意図していない。むしろ、明細書で使用されている語句は限定というより説明の語句であり、様々な変更が本発明の趣旨や範囲を逸脱しないで実施できることが理解されよう。加えて、各種の実施形態の特徴は、本発明の更なる実施形態を形成するために組み合わせることもできる。

図1
図2
図3
図4
図5
【国際調査報告】