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特表2024-536764リチウム二次電池用新型複合材料並びにその調製方法及び応用
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  • 特表-リチウム二次電池用新型複合材料並びにその調製方法及び応用 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-08
(54)【発明の名称】リチウム二次電池用新型複合材料並びにその調製方法及び応用
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/38 20060101AFI20241001BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20241001BHJP
   C01B 33/02 20060101ALI20241001BHJP
   H01M 4/134 20100101ALI20241001BHJP
【FI】
H01M4/38 Z
H01M4/36 A
C01B33/02 Z
H01M4/134
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024516719
(86)(22)【出願日】2022-03-10
(85)【翻訳文提出日】2024-03-14
(86)【国際出願番号】 CN2022080110
(87)【国際公開番号】W WO2023050726
(87)【国際公開日】2023-04-06
(31)【優先権主張番号】202111151405.1
(32)【優先日】2021-09-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520464393
【氏名又は名称】▲リー▼陽天目先導電池材料科技有限公司
【氏名又は名称原語表記】TIANMULAKE EXCELLENT ANODE MATERIALS CO, LTD.
【住所又は居所原語表記】3/F,Office Building 15,No.87 ShangShang Road,Kunlun Street Liyang,Jiangsu 213330 China
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【弁理士】
【氏名又は名称】森川 泰司
(74)【代理人】
【識別番号】100148633
【弁理士】
【氏名又は名称】桜田 圭
(74)【代理人】
【識別番号】100147924
【弁理士】
【氏名又は名称】美恵 英樹
(72)【発明者】
【氏名】羅 飛
【テーマコード(参考)】
4G072
5H050
【Fターム(参考)】
4G072AA01
4G072AA02
4G072BB05
4G072HH04
4G072JJ47
5H050AA07
5H050BA17
5H050CB11
5H050GA02
5H050GA03
5H050HA01
5H050HA05
5H050HA14
5H050HA15
(57)【要約】
【課題】リチウム二次電池用新型複合材料並びにその調製方法及び応用を提供する。
【解決手段】前記新型複合材料は、ナノシリコンと炭素原子とを含み、前記炭素原子は、原子レベルでナノシリコン中に均一に分布し、炭素原子とケイ素原子が結合して非晶質のSi-C結合を形成し、X線回折法XRDにはSiCの結晶化ピークがなく、前記新型複合材料の固体核磁気共鳴NMR測定には、29Si NMRスペクトルでは、ケイ素のピークが-70ppm~-130ppmにある場合、20ppm~-20ppmの間にSi-Cの共鳴ピークが存在することが示され、Si-Cの共鳴ピークとケイ素のピークの面積比は、(0.1、5.0)であり、前記新型複合材料の粒子の平均粒径D50は、1nm~50μmであり、前記炭素原子の質量は新型複合材料の質量の0.5%~50%を占める。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リチウム二次電池用新型複合材料であって、
前記新型複合材料は、ナノシリコンと炭素原子とを含み、前記炭素原子は、原子レベルでナノシリコン中に均一に分布し、炭素原子とケイ素原子が結合して非晶質のSi-C結合を形成し、X線回折法XRDにはSiCの結晶化ピークがなく、
前記新型複合材料の固体核磁気共鳴NMR測定には、29Si NMRスペクトルでは、ケイ素のピークが-70ppm~-130ppmにある場合、20ppm~-20ppmの間にSi-Cの共鳴ピークが存在することが示され、Si-Cの共鳴ピークとケイ素のピークの面積比は、(0.1、5.0)であり、
前記新型複合材料の粒子の平均粒径D50は、1nm~50μmであり、前記炭素原子の質量は新型複合材料の質量の0.5%~50%を占める、
ことを特徴とするリチウム二次電池用新型複合材料。
【請求項2】
前記新型複合材料内に酸素元素がさらに含まれ、前記酸素元素は、前記ナノシリコンの材料内部又は材料表面に分散し、前記酸素元素の質量は前記新型複合材料の質量の0.1%~20%を占めることを特徴とする請求項1に記載のリチウム二次電池用新型複合材料。
【請求項3】
前記新型複合材料は、モノマー構造として存在し、又は前記新型複合材料は基材の内部或いは表面に堆積され、前記モノマー構造はナノ粒子又はナノワイヤを含むことを特徴とする請求項1に記載のリチウム二次電池用新型複合材料。
【請求項4】
上記請求項1に記載のリチウム二次電池用新型複合材料の調製方法であって、
反応容器にケイ素源、炭素源、キャリアガスを比例的に同時に吹き込み、反応容器の温度を450℃~1000℃に、反応圧力を0.1atm~10atmに制御することと、
反応終了後、温度を下げることで、前記リチウム二次電池用新型複合材料が得られ、または、反応の進行中に反応することにより生成した生成物を冷却チャンバーに導入することで、前記リチウム二次電池用新型複合材料が得られることと、
を含む、
ことを特徴とする調製方法。
【請求項5】
前記ケイ素源は、ケイ素含有蒸気であり、具体的にはモノシラン、シリコエタン、テトラフルオロシラン、ヘキサメチルジシラン、ジメチルシロキサンのうちの1種又は複数種の組み合わせを含み、
前記炭素源は、アセチレン、メタン、プロピレン、エチレン、プロパン又はエタノールのうちの1種又は複数種の組み合わせを含み、
前記キャリアガスは、水素、窒素、アルゴンのうちの1種又は複数種の組み合わせを含む、
ことを特徴とする請求項1に記載の調製方法。
【請求項6】
上記請求項1に記載のリチウム二次電池用新型複合材料を含む負極シート。
【請求項7】
上記請求項1に記載のリチウム二次電池用新型複合材料を含むリチウム電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(相互参照)
本出願は、2021年09月29日に中国特許庁に提出された、出願番号が202111151405.1であり、発明の名称が「リチウム二次電池用新型複合材料並びにその調製方法及び応用」である中国特許出願の優先権を主張する。
【0002】
(技術分野)
本発明は、材料の技術分野に関し、特に、リチウム二次電池用新型複合材料並びにその調製方法及び応用に関する。
【背景技術】
【0003】
近年、電子技術と情報産業の飛躍的な発展に伴い、リチウムイオン電池の発展の見通しはますます広がり、すでに携帯電話、ノートパソコン、デジタルカメラなどのポータブルデバイスに幅広く活用されている。電気自動車及び大型エネルギー貯蔵装置のサイクル寿命が長く、エネルギー密度が高く、レート特性に優れたリチウムイオン電池に対する益々高まるニーズを満たすために、多くの研究者が低コストで高品質な電極材料の探索に取り組んでいる。
【0004】
多くの新規負極材料の候補の中で、ケイ素はその優れた理論的な比容量(4200mAh・g-1)から大きな注目を集めている。しかしながら、ケイ素がリチウム化の過程で大きな体膨張を起こすことで、構造の破壊と不安定な固体電解質界面(SEI)被膜の形成を招いた。なお、ケイ素の真性導電率は悪く、ケイ素の電気化学性能を著しく阻害し、上記の問題はケイ素系負極の実用化を大きく阻害した。
【0005】
シリコンナノ粒子を炭素材料に埋め込んでC/Si複合材料を調製することは、最も有効な方法の一つとなり、これは、Siの体膨張を軽減するだけでなく、Si(高容量)と炭素(良好な導電性及びサイクル安定性)の利点を組み合わせるからである。しかしながら、ナノ材料の比較的大きな表面エネルギーのため、それらが凝集しやすく、カーボンマトリックスにおける均一な分散を達成することが困難であり、この結果、電気化学性能の向上効果がよくない。特許文献1には、リチウムイオン電池用のケイ素-炭素複合負極材料が開示されているが、機械的混合を使用するため、ケイ素と炭素材料の混合の度合いが予想していた効果を達成できず、この結果、依然としてサイクル特性を大幅に向上させることができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】中国特許出願公開第106299277号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の実施例は、リチウム二次電池用新型複合材料並びにその調製方法及び応用を提供する。ケイ素源と炭素源を十分に混合した後に共堆積することにより、炭素原子を原子レベルでナノシリコン材料中に均一に埋め込ませる。通常のナノシリコン材料又はケイ素-炭素複合材料に比べると、当該材料は、リチウム挿入・脱離過程で構造がより安定し、体膨張が小さく、リチウム電池の負極に使用された場合、より良好なサイクル特性を持っている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の態様において、本発明の実施例は、リチウム二次電池用新型複合材料であって、前記新型複合材料は、ナノシリコンと炭素原子とを含み、前記炭素原子は、原子レベルでナノシリコン中に均一に分布し、炭素原子とケイ素原子が結合して非晶質のSi-C結合を形成し、X線回折法XRDにはSiCの結晶化ピークがなく、
前記新型複合材料の固体核磁気共鳴NMR測定には、29Si NMRスペクトルでは、ケイ素のピークが-70ppm~-130ppmにある場合、20ppm~-20ppmの間にSi-Cの共鳴ピークが存在することが示され、Si-Cの共鳴ピークとケイ素のピークの面積比は、(0.1、5.0)であり、
前記新型複合材料の粒子の平均粒径D50は、1nm~50μmであり、前記炭素原子の質量は新型複合材料の質量の0.5%~50%を占めることを特徴とする。
【0009】
好ましくは、前記新型複合材料内に酸素元素がさらに含まれ、前記酸素元素は、前記ナノシリコンの材料内部又は材料表面に分散し、前記酸素元素の質量は前記新型複合材料の質量の0.1%~20%を占める。
【0010】
好ましくは、前記新型複合材料は、モノマー構造として存在し、又は前記新型複合材料は基材の内部或いは表面に堆積され、前記モノマー構造はナノ粒子又はナノワイヤを含む。
【0011】
第2の態様において、本発明の実施例は、第1の態様に記載のリチウム二次電池用新型複合材料の調製方法であって、前記調製方法は、
反応容器にケイ素源、炭素源、キャリアガスを比例的に同時に吹き込み、反応容器の温度を450℃~1000℃に、反応圧力を0.1atm~10atmに制御することと、
反応終了後、温度を下げることで、前記リチウム二次電池用新型複合材料が得られ、または、反応の進行中に反応することにより生成した生成物を冷却チャンバーに導入することで、前記リチウム二次電池用新型複合材料が得られることと、
を含む。
【0012】
好ましくは、前記ケイ素源は、ケイ素含有蒸気であり、具体的にはモノシラン、シリコエタン、テトラフルオロシラン、ヘキサメチルジシラン、ジメチルシロキサンのうちの1種又は複数種の組み合わせを含み、
前記炭素源は、アセチレン、メタン、プロピレン、エチレン、プロパン又はエタノールのうちの1種又は複数種の組み合わせを含み、
前記キャリアガスは、水素、窒素、アルゴンのうちの1種又は複数種の組み合わせを含む。
【0013】
第3の態様において、本発明の実施例は、上記第1の態様に記載のリチウム二次電池用新型複合材料を含む負極シートに関する。
【0014】
第4の態様において、本発明の実施例は、上記第1の態様に記載のリチウム二次電池用新型複合材料を含むリチウム電池に関する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によるリチウム二次電池用新型複合材料は、ケイ素源と炭素源を十分に混合した後に共堆積することにより、炭素原子を原子レベルでナノシリコン材料中に均一に埋め込ませる。通常のナノシリコン材料又はケイ素-炭素複合材料に比べると、当該材料は、リチウム挿入・脱離過程で構造がより安定し、体膨張が小さく、リチウム電池の負極に使用された場合、より良好なサイクル特性を持っている。
【図面の簡単な説明】
【0016】
以下、図面及び実施例を参照して本発明の実施例における技術案をより詳細に説明する。
【0017】
図1】本発明の実施例によるリチウム二次電池用新型複合材料の調製方法のフローチャートである。
図2】本発明の実施例1による新型複合材料のXRDスペクトルを示す図である。
図3】本発明の実施例1による新型複合材料の29Si NMRスペクトルを示す図である。
図4】本発明の実施例3による新型複合材料の29Si NMRスペクトルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面及び具体的な実施例を参照しながら本発明をさらに説明するが、これらの実施例は本発明をより詳細に説明するためのものにすぎず、いかなる形で本発明を制限するためのものではないと理解すべきであり、すなわち、本発明の保護範囲を制限することを意図していない。
【0019】
本発明のリチウム二次電池用新型複合材料は、ナノシリコンと炭素原子とを含み、炭素原子は、原子レベルでナノシリコン中に均一に分布し、炭素原子とケイ素原子が結合して非晶質のSi-C結合を形成し、X線回折法XRDにはSiC結晶化ピークがなく、
新型複合材料の固体核磁気共鳴NMR測定には、29Si NMRスペクトルでは、ケイ素のピークが-70ppm~-130ppmにある場合、20ppm~-20ppmの間にSi-Cの共鳴ピークが存在することが示され、Si-Cの共鳴ピークとケイ素のピークの面積比の範囲は、0.1~5.0であり、
新型複合材料の粒子の平均粒径D50は、1nm~50μmであり、炭素原子の質量は新型複合材料の質量の0.5%~50%を占める。
【0020】
選択可能な技術案として、前記新型複合材料内に酸素元素がさらに含まれ、酸素元素は、ナノシリコンの材料内部又は材料表面に分散し、酸素元素の質量は新型複合材料の質量の0.1%~20%を占める。
【0021】
本発明の新型複合材料は、モノマー構造として存在し、モノマー構造はナノ粒子又はナノワイヤを含み、または、本発明の新型複合材料は、基材の内部或いは表面に堆積される。
【0022】
本発明のリチウム二次電池用新型複合材料は、図1に示される方法におけるステップによって調製されることができ、以下のステップを含む。
【0023】
ステップ110では、反応容器にケイ素源、炭素源、キャリアガスを比例的に同時に吹き込み、反応容器の温度を450℃~1000℃に、反応圧力を0.1atm~10atmに制御する。
具体的には、ケイ素源は、ケイ素含有蒸気であり、具体的にはモノシラン、シリコエタン、テトラフルオロシラン、ヘキサメチルジシラン、ジメチルシロキサンのうちの1種又は複数種の組み合わせを含み、
炭素源は、アセチレン、メタン、プロピレン、エチレン、プロパン又はエタノールのうちの1種又は複数種の組み合わせを含み、
キャリアガスは、水素、窒素、アルゴンのうちの1種又は複数種の組み合わせを含む。
【0024】
ステップ120では、反応終了後、温度を下げることで、リチウム二次電池用新型複合材料が得られ、または、反応の進行中に反応することにより生成した生成物を冷却チャンバーに導入することで、リチウム二次電池用新型複合材料が得られる。
【0025】
具体的には、反応結果は、ガス源を除去することで、制御されることできる。
【0026】
本発明によるリチウム二次電池用新型複合材料は、ケイ素源と炭素源を十分に混合した後に共堆積することにより、炭素原子を原子レベルでナノシリコン材料中に均一に埋め込ませる。当該新型複合材料は、リチウムイオン電池、固体リチウム電池等のリチウム二次電池に用いられる負極シートの製造に用いられることができる。通常のナノシリコン材料又はケイ素-炭素複合材料に比べると、当該材料は、リチウム挿入・脱離過程で構造がより安定し、体膨張が小さく、リチウム電池の負極に使用された場合、より良好なサイクル特性を持っている。
【0027】
本発明による技術案をより良く理解するために、以下では、複数の具体的な実施例を挙げて本発明の上記実施例による方法でリチウム二次電池用新型複合材料を調製する具体的なプロセス、及び二次電池に適用する方法及び電池の特性をそれぞれ説明する。
【0028】
(実施例1)
温度700℃、圧力1atmの流動床装置の堆積チャンバーに1L/minのシラン、1L/minのメタン、1L/minのアルゴンの混合ガスを吹き込み、
流動床装置における収集チャンバー内で本発明の新型複合材料を得る。
炭素・硫黄分析装置で測定した結果、当該新型複合材料中の炭素の含有量は、8%であり、
得られた新型複合材料に対してX線回折法XRDによる測定を行うことにより、XRDスペクトルを得て、結果は図2に示されたように、曲線中にSiCの結晶化ピークが存在せず、Si-Cが非晶質構造であることが分かった。
新型複合材料に対して29Siスペクトルの固体核磁気共鳴測定を実施することにより、29Si NMRスペクトルを得て、図3の曲線に示すように、-100ppm付近にSiの共鳴ピークが現れ、0ppm付近にSi-Cの振動ピークが現れ、炭素が原子レベルでケイ素材料中に分散していることが分かった。Si-Cの振動ピークとSiの共鳴ピークの面積比は、1.8である。
【0029】
(実施例2)
温度700℃、圧力1atmの流動床装置の堆積チャンバーに1L/minのシラン、0.2L/minのメタン、1L/minのアルゴンの混合ガスを吹き込み、
流動床装置における収集チャンバー内で本発明の新型複合材料を得る。
炭素・硫黄分析装置で測定した結果、当該新型複合材料中の炭素の含有量は、2%である。
【0030】
(実施例3)
温度700℃、圧力1atmの流動床装置の堆積チャンバーに1L/minのシラン、0.2L/minのメタン、1L/minのアルゴンの混合ガスを吹き込み、ここで、流動床において流動状態にある多孔質炭素材料があり、
流動床装置における収集チャンバー内で多孔質炭素材料の表面及び内部に堆積した新型複合材料を得る。
新型複合材料に対して29Siスペクトルの固体核磁気共鳴測定を実施することにより、29Si NMRスペクトルを得て、図4の曲線に示すように、-80ppm付近にSiの共鳴ピークが現れ、-10ppm付近にSi-Cの振動ピークが現れ、炭素が原子レベルでケイ素材料中に分散していることが分かった。Si-Cの振動ピークとSiの共鳴ピークの面積比は、0.5であり、メタンの相対濃度が低下するにつれて、ケイ素系材料内部の炭素原子の含有量が低下することが分かった。
【0031】
(実施例4)
温度700℃、圧力1atmの回転炉に1L/minのシラン、1L/minのメタン、1L/minのアルゴンの混合ガスを吹き込み、
ガスの吹き込みを停止した後、反応が終了し、温度を下げることで、本発明の新型複合材料が得られる。
炭素・硫黄分析装置で測定した結果、当該新型複合材料中の炭素の含有量は、7%である。
【0032】
(実施例5)
温度900℃、圧力1atmの回転炉に1L/minのシラン、1L/minのメタン、1L/minのアルゴンの混合ガスを吹き込み、
ガスの吹き込みを停止した後、反応が終了し、温度を下げることで、本発明の新型複合材料が得られる。
炭素・硫黄分析装置で測定した結果、当該新型複合材料中の炭素の含有量は、9%である。
【0033】
(実施例6)
温度700℃、圧力2atmの流動床装置の堆積チャンバーに1L/minのシラン、1L/minのメタン、1L/minのアルゴンの混合ガスを吹き込み、
流動床装置における収集チャンバー内で本発明の新型複合材料を得る。
炭素・硫黄分析装置で測定した結果、当該新型複合材料中の炭素の含有量は、10%である。
【0034】
(実施例7)
温度700℃、圧力1atmの流動床装置の堆積チャンバーに1L/minのシラン、1L/minのアセチレン、1L/minのアルゴンの混合ガスを吹き込み、
流動床装置における収集チャンバー内で本発明の新型複合材料を得る。
炭素・硫黄分析装置で測定した結果、当該新型複合材料中の炭素の含有量は、15%である。
【0035】
(実施例8)
温度700℃、圧力1atmの流動床装置の堆積チャンバーに1L/minのシラン、3L/minのアセチレン、1L/minのアルゴンの混合ガスを吹き込み、
流動床装置における収集チャンバー内で本発明の新型複合材料を得る。
炭素・硫黄分析装置で測定した結果、当該新型複合材料中の炭素の含有量は、35%である。
【0036】
(実施例9)
温度700℃、圧力1atmの流動床装置の堆積チャンバーに1L/minの四フッ化ケイ素、1L/minのメタン、1L/minのアルゴンの混合ガスを吹き込み、
流動床装置における収集チャンバー内で本発明の新型複合材料を得る。
炭素・硫黄分析装置で測定した結果、当該新型複合材料中の炭素の含有量は、5%である。
【0037】
(実施例10)
温度700℃、圧力1atmの流動床装置の堆積チャンバーに1L/minのジメチルシロキサン、1L/minのメタン、1L/minのアルゴンの混合ガスを吹き込み、
流動床装置における収集チャンバー内で本発明の新型複合材料を得る。
炭素・硫黄分析装置で測定した結果、当該新型複合材料中の炭素の含有量は、4%であり、酸素の含有量は10%である。
【0038】
(実施例11)
温度700℃、圧力1atmの流動床装置の堆積チャンバーに1L/minのジメチルシロキサン、1L/minのメタン、1L/minの水素の混合ガスを吹き込み、
流動床装置における収集チャンバー内で本発明の新型複合材料を得る。
炭素・硫黄分析装置で測定した結果、当該新型複合材料中の炭素の含有量は、8%である。
【0039】
本発明で得られた新型複合材料の特性をより良く説明するために、比較例1、比較例2をもとで比較する。
【0040】
(比較例1)
温度700℃、圧力1atmの流動床装置の堆積チャンバーに1L/minのシラン、1L/minのアルゴンの混合ガスを吹き込み、
流動床装置における収集チャンバー内でケイ素系材料を得る。
炭素・硫黄分析装置で測定した結果、当該新型複合材料に炭素が存在しない。
【0041】
(比較例2)
比較例1で得られたケイ素系材料に気相炭素被覆処理を施し、炭素被覆量は、8%である。
【0042】
上記の各実施例の新型複合材料及び比較例で得られた材料をそれぞれ金属リチウムボタン電池に製造し、その容量、初回クーロン効率をテストし、結果を表1に示す。なお、上記の各実施例の新型複合材料及び比較例で得られた材料をそれぞれ市販の黒鉛と比例して450mAh/gの複合材料に複合し、コバルト酸リチウムとボタン電池に組み立てられ、1C/1Cの下でサイクルし、そのサイクル特性を評価した。データを表1に記録して比較する。
【0043】
【表1】
【0044】
比較から分かるように、本発明の各実施例の材料において、炭素原子の均一な分布により電池のサイクル特性を向上させることができ、炭素源ガスの流量が増加するにつれて、炭素の含有量が増加し、単体の容量、初回クーロン効率がやや低下したが、サイクル特性が比較例1、2と比較して明らかに向上し、実施例3のケイ素系材料が多孔質炭素中に堆積されることで、より良好なサイクル特性を持つことができ、実施例10及び実施例11の材料に酸素元素が含まれる場合、初回クーロン効率が低いが、サイクル特性が依然として比較的良好である。2つの比較例では、炭素被覆を用いることにより電池のサイクルを明らかに向上させたが、本発明の実施例における炭素が均一に分布した構造を有する材料と比較すると、やはり大きな差があった。
【0045】
上述の具体的な実施形態では、本発明の目的、技術案及び有益な効果をさらに詳細に説明し、以上は本発明の具体的な実施形態にすぎず、本発明の保護範囲を制限するためのものではなく、本発明の精神及び原則内でなされたいかなる修正、均等な置換、改良などは、本発明の保護範囲に含まれるものとする。
【0046】
(付記)
(付記1)
リチウム二次電池用新型複合材料であって、
前記新型複合材料は、ナノシリコンと炭素原子とを含み、前記炭素原子は、原子レベルでナノシリコン中に均一に分布し、炭素原子とケイ素原子が結合して非晶質のSi-C結合を形成し、X線回折法XRDにはSiCの結晶化ピークがなく、
前記新型複合材料の固体核磁気共鳴NMR測定には、29Si NMRスペクトルでは、ケイ素のピークが-70ppm~-130ppmにある場合、20ppm~-20ppmの間にSi-Cの共鳴ピークが存在することが示され、Si-Cの共鳴ピークとケイ素のピークの面積比は、(0.1、5.0)であり、
前記新型複合材料の粒子の平均粒径D50は、1nm~50μmであり、前記炭素原子の質量は新型複合材料の質量の0.5%~50%を占める、
ことを特徴とするリチウム二次電池用新型複合材料。
【0047】
(付記2)
前記新型複合材料内に酸素元素がさらに含まれ、前記酸素元素は、前記ナノシリコンの材料内部又は材料表面に分散し、前記酸素元素の質量は前記新型複合材料の質量の0.1%~20%を占めることを特徴とする付記1に記載のリチウム二次電池用新型複合材料。
【0048】
(付記3)
前記新型複合材料は、モノマー構造として存在し、又は前記新型複合材料は基材の内部或いは表面に堆積され、前記モノマー構造はナノ粒子又はナノワイヤを含むことを特徴とする付記1に記載のリチウム二次電池用新型複合材料。
【0049】
(付記4)
上記付記1に記載のリチウム二次電池用新型複合材料の調製方法であって、
反応容器にケイ素源、炭素源、キャリアガスを比例的に同時に吹き込み、反応容器の温度を450℃~1000℃に、反応圧力を0.1atm~10atmに制御することと、
反応終了後、温度を下げることで、前記リチウム二次電池用新型複合材料が得られ、または、反応の進行中に反応することにより生成した生成物を冷却チャンバーに導入することで、前記リチウム二次電池用新型複合材料が得られることと、
を含む、
ことを特徴とする調製方法。
【0050】
(付記5)
前記ケイ素源は、ケイ素含有蒸気であり、具体的にはモノシラン、シリコエタン、テトラフルオロシラン、ヘキサメチルジシラン、ジメチルシロキサンのうちの1種又は複数種の組み合わせを含み、
前記炭素源は、アセチレン、メタン、プロピレン、エチレン、プロパン又はエタノールのうちの1種又は複数種の組み合わせを含み、
前記キャリアガスは、水素、窒素、アルゴンのうちの1種又は複数種の組み合わせを含む、
ことを特徴とする付記1に記載の調製方法。
【0051】
(付記6)
上記付記1に記載のリチウム二次電池用新型複合材料を含む負極シート。
【0052】
(付記7)
上記付記1に記載のリチウム二次電池用新型複合材料を含むリチウム電池。
図1
図2
図3
図4
【手続補正書】
【提出日】2024-03-14
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リチウム二次電池用新型複合材料であって、
前記新型複合材料は、ナノシリコンと炭素原子とを含み、前記炭素原子は、原子レベルでナノシリコン中に均一に分布し、炭素原子とケイ素原子が結合して非晶質のSi-C結合を形成し、X線回折法XRDにはSiCの結晶化ピークがなく、
前記新型複合材料の固体核磁気共鳴NMR測定には、29Si NMRスペクトルでは、ケイ素のピークが-70ppm~-130ppmにある場合、20ppm~-20ppmの間にSi-Cの共鳴ピークが存在することが示され、Si-Cの共鳴ピークとケイ素のピークの面積比は、(0.1、5.0)であり、
前記新型複合材料の粒子の平均粒径D50は、1nm~50μmであり、前記炭素原子の質量は新型複合材料の質量の0.5%~50%を占める、
ことを特徴とするリチウム二次電池用新型複合材料。
【請求項2】
前記新型複合材料内に酸素元素がさらに含まれ、前記酸素元素は、前記ナノシリコンの材料内部又は材料表面に分散し、前記酸素元素の質量は前記新型複合材料の質量の0.1%~20%を占めることを特徴とする請求項1に記載のリチウム二次電池用新型複合材料。
【請求項3】
前記新型複合材料は、モノマー構造として存在し、又は前記新型複合材料は基材の内部或いは表面に堆積され、前記モノマー構造はナノ粒子又はナノワイヤを含むことを特徴とする請求項1に記載のリチウム二次電池用新型複合材料。
【請求項4】
上記請求項1に記載のリチウム二次電池用新型複合材料の調製方法であって、
反応容器にケイ素源、炭素源、キャリアガスを比例的に同時に吹き込み、反応容器の温度を450℃~1000℃に、反応圧力を0.1atm~10atmに制御することと、
反応終了後、温度を下げることで、前記リチウム二次電池用新型複合材料が得られ、または、反応の進行中に反応することにより生成した生成物を冷却チャンバーに導入することで、前記リチウム二次電池用新型複合材料が得られることと、
を含む、
ことを特徴とする調製方法。
【請求項5】
前記ケイ素源は、ケイ素含有蒸気であり、具体的にはモノシラン、シリコエタン、テトラフルオロシラン、ヘキサメチルジシラン、ジメチルシロキサンのうちの1種又は複数種の組み合わせを含み、
前記炭素源は、アセチレン、メタン、プロピレン、エチレン、プロパン又はエタノールのうちの1種又は複数種の組み合わせを含み、
前記キャリアガスは、水素、窒素、アルゴンのうちの1種又は複数種の組み合わせを含む、
ことを特徴とする請求項に記載の調製方法。
【請求項6】
上記請求項1に記載のリチウム二次電池用新型複合材料を含む負極シート。
【請求項7】
上記請求項1に記載のリチウム二次電池用新型複合材料を含むリチウム電池。
【国際調査報告】