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特表2024-536765ALS療法における使用のための血清免疫ベースのバイオマーカー
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-08
(54)【発明の名称】ALS療法における使用のための血清免疫ベースのバイオマーカー
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/68 20060101AFI20241001BHJP
   G01N 33/53 20060101ALI20241001BHJP
   A61K 35/17 20150101ALI20241001BHJP
   A61P 21/00 20060101ALI20241001BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20241001BHJP
【FI】
G01N33/68
G01N33/53 D
A61K35/17
A61P21/00
A61P25/00
G01N33/53 P
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024516755
(86)(22)【出願日】2022-09-14
(85)【翻訳文提出日】2024-05-13
(86)【国際出願番号】 US2022076412
(87)【国際公開番号】W WO2023044331
(87)【国際公開日】2023-03-23
(31)【優先権主張番号】63/244,995
(32)【優先日】2021-09-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518045694
【氏名又は名称】ザ メソディスト ホスピタル
(71)【出願人】
【識別番号】523341808
【氏名又は名称】コヤ セラピューティクス, インク.
(74)【代理人】
【識別番号】100097456
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 徹
(72)【発明者】
【氏名】スタンレー ハーシュ アペル
(72)【発明者】
【氏名】デビッド ロバート ビアーズ
(72)【発明者】
【氏名】ハワード バーマン
【テーマコード(参考)】
2G045
4C087
【Fターム(参考)】
2G045AA25
2G045CA26
2G045DA36
4C087AA01
4C087AA02
4C087BB37
4C087BB64
4C087CA04
4C087MA66
4C087NA05
4C087ZA02
4C087ZA94
4C087ZB02
4C087ZB08
4C087ZC54
(57)【要約】
本開示は、1種以上の血清免疫ベースのバイオマーカーの血清中濃度が決定される、筋萎縮性側索硬化症(ALS)と診断された患者をALS療法に選択するための方法、患者のALS療法に対する予想される反応性を評価するための方法、ALS療法でALS患者を治療するための方法、ALS療法の有効性をモニタリングするための方法、及び患者において予想されるALSの進行を評価するための方法を提供する。
【選択図】 図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者を筋萎縮性側索硬化症(ALS)療法に選択するための方法であって:
a)ALSと診断された又ALSであることが疑われる患者から採取された血清試料中のインターロイキン17F(IL-17F)の濃度を決定することであって、該血清試料中の該IL-17F濃度が、少なくとも2.0pg/mLである場合には、該患者が、該ALS療法での治療から除外され、そうでない場合には、該患者が、該ALS療法での該治療に選択される、前記決定すること;及び
b)該ALS療法を該選択された患者に実施すること
を含む、前記方法。
【請求項2】
前記ALS療法が、T制御性細胞(Treg)注入を含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記ALS療法が、複数回のTreg注入を含む、請求項2記載の方法。
【請求項4】
前記血清試料が、前記ALS療法の前に前記患者から採取される、請求項1~3のいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
前記血清試料が、Treg注入の前に前記患者から採取される、請求項1~3のいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
前記血清試料が、Treg注入が前記患者に実施された後に該患者から採取される、請求項1~3のいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
前記血清試料が、前記Treg注入の翌日に前記患者から採取される、請求項6記載の方法。
【請求項8】
筋萎縮性側索硬化症(ALS)を治療する方法であって、
ALSと診断された患者にALS療法を実施することであって、該患者から採取された血清試料が、2.0pg/mL未満のインターロイキン17F(IL-17F)濃度を有していることが決定されている、前記実施することを含む、前記方法。
【請求項9】
前記ALS療法が、Treg注入を含む、請求項8記載の方法。
【請求項10】
前記ALS療法が、複数回のTreg注入を含む、請求項9記載の方法。
【請求項11】
前記血清試料が、前記ALS療法の前に前記患者から採取されたものである、請求項8~10のいずれか1項記載の方法。
【請求項12】
前記血清試料が、Treg注入の前に前記患者から採取されたものである、請求項8~10のいずれか1項記載の方法。
【請求項13】
前記血清試料が、Treg注入が前記患者に実施された後に該患者から採取されたものである、請求項8~10のいずれか1項記載の方法。
【請求項14】
前記血清試料が、前記Treg注入の翌日に前記患者から採取されたものである、請求項13記載の方法。
【請求項15】
患者をALS療法に選択するための方法であって:
a)ALSと診断された又はALSであることが疑われる患者から採取された血清試料中の少なくとも1種の血清免疫ベースのバイオマーカーの濃度が、基準濃度未満であるか、それに等しいか、又はそれを超えているかを決定することであって、
該少なくとも1種の血清免疫ベースのバイオマーカーが、IL-17F、酸化低密度リポタンパク質受容体1(OLR1)、ニューロフィラメント軽鎖(NF-L)、酸化低密度リポタンパク質(ox-LDL)、又はインターロイキン17C(IL-17C)であり;かつ
該少なくとも1種の血清免疫ベースのバイオマーカーの該濃度が、該基準濃度を超えている場合には、該患者が、該ALS療法での治療から除外され、そうでない場合には、該患者が、該ALS療法での該治療に選択される、前記決定すること;及び
b)該ALS療法を該選択された患者に実施すること
を含む、前記方法。
【請求項16】
1種類の血清免疫ベースのバイオマーカーの濃度が、決定される、請求項15記載の方法。
【請求項17】
少なくとも2種の血清免疫ベースのバイオマーカーの濃度がそれぞれ、基準濃度未満であるか、それに等しいか、又はそれを超えていると決定され、
2種の血清免疫ベースのバイオマーカーの該濃度がそれぞれ、その基準濃度を超えていると決定される場合には、前記患者が、前記ALS療法での治療から除外され、そうでない場合には、該患者が、該ALS療法での該治療に選択される、請求項15記載の方法。
【請求項18】
少なくとも3種の血清免疫ベースのバイオマーカーの濃度がそれぞれ、基準濃度未満であるか、それに等しいか、又はそれを超えていると決定され、3種の血清免疫ベースのバイオマーカーの該濃度がそれぞれ、その基準濃度を超えていると決定される場合には、前記患者が、前記ALS療法での治療から除外され、そうでない場合には、該患者が、該ALS療法での該治療に選択される、請求項15記載の方法。
【請求項19】
少なくとも4種の血清免疫ベースのバイオマーカーの濃度がそれぞれ、基準濃度未満であるか、それに等しいか、又はそれを超えていると決定され、4種の血清免疫ベースのバイオマーカーの該濃度がそれぞれ、その基準濃度を超えていると決定される場合には、前記患者が、前記ALS療法での治療から除外され、そうでない場合には、該患者が、該ALS療法での該治療に選択される、請求項15記載の方法。
【請求項20】
少なくとも5種の血清免疫ベースのバイオマーカーの濃度がそれぞれ、基準濃度未満であるか、それに等しいか、又はそれを超えていると決定され、5種の血清免疫ベースのバイオマーカーの該濃度がそれぞれ、その基準濃度を超えていると決定される場合には、前記患者が、前記ALS療法での治療から除外され、そうでない場合には、該患者が、該ALS療法での該治療に選択される、請求項15記載の方法。
【請求項21】
前記ALS療法が、Treg注入を含む、請求項15~20のいずれか1項記載の方法。
【請求項22】
前記ALS療法が、複数回のTreg注入を含む、請求項21記載の方法。
【請求項23】
前記血清試料が、前記ALS療法の前に前記患者から採取される、請求項15~20のいずれか1項記載の方法。
【請求項24】
前記血清試料が、Treg注入の前に前記患者から採取される、請求項15~20のいずれか1項記載の方法。
【請求項25】
前記血清試料が、Treg注入が前記患者に実施された後に該患者から採取される、請求項15~20のいずれか1項記載の方法。
【請求項26】
前記血清試料が、前記Treg注入の翌日に前記患者から採取される、請求項25記載の方法。
【請求項27】
筋萎縮性側索硬化症(ALS)を治療する方法であって、
ALSと診断された患者にALS療法を実施することを含み、
該患者から採取された血清試料が、基準濃度未満又はそれと等しい濃度の少なくとも1種の血清免疫ベースのバイオマーカーを含有していることが決定されており、
該少なくとも1種の血清免疫ベースのバイオマーカーが、IL-17F、OLR1、NF-L、ox-LDL、又はIL-17Cである、前記方法。
【請求項28】
1種類の血清免疫ベースのバイオマーカーの濃度が、基準濃度未満である又はそれと等しいと決定されている、請求項27記載の方法。
【請求項29】
少なくとも2種の血清免疫ベースのバイオマーカーの濃度が、基準濃度未満である又はそれと等しいと決定されている、請求項27記載の方法。
【請求項30】
少なくとも3種の血清免疫ベースのバイオマーカーの濃度が、基準濃度未満である又はそれと等しいと決定されている、請求項27記載の方法。
【請求項31】
少なくとも4種の血清免疫ベースのバイオマーカーの濃度が、基準濃度未満である又はそれと等しいと決定されている、請求項27記載の方法。
【請求項32】
少なくとも5種の血清免疫ベースのバイオマーカーの濃度が、基準濃度未満である又はそれと等しいと決定されている、請求項27記載の方法。
【請求項33】
前記ALS療法が、Treg注入を含む、請求項27~32のいずれか1項記載の方法。
【請求項34】
前記ALS療法が、複数回のTreg注入を含む、請求項33記載の方法。
【請求項35】
前記血清試料が、前記ALS療法の前に前記患者から採取されたものである、請求項27~32のいずれか1項記載の方法。
【請求項36】
前記血清試料が、Treg注入の前に前記患者から採取されたものである、請求項27~32のいずれか1項記載の方法。
【請求項37】
前記血清試料が、Treg注入が前記患者に実施された後に該患者から採取されたものである、請求項27~32のいずれか1項記載の方法。
【請求項38】
前記血清試料が、前記Treg注入の翌日に前記患者から採取されたものである、請求項37記載の方法。
【請求項39】
前記基準濃度を、健康な個体から得る、請求項15~38のいずれか1項記載の方法。
【請求項40】
前記基準濃度が、前記患者にTreg注入が実施される前に該患者から得た血清試料中の濃度である、請求項15~38のいずれか1項記載の方法。
【請求項41】
ox-LDL、OLR1、NF-L、IL-17F、及びIL-17Cのそれぞれについての前記基準濃度が、下記:
【表1】
の通りである、請求項15~38のいずれか1項記載の方法。
【請求項42】
前記少なくとも1種の血清免疫ベースのバイオマーカーが、ox-LDLを含む、請求項15~41のいずれか1項記載の方法。
【請求項43】
前記少なくとも1種の血清免疫ベースのバイオマーカーが、OLR1を含む、請求項15~41のいずれか1項記載の方法。
【請求項44】
前記少なくとも1種の血清免疫ベースのバイオマーカーが、NF-Lを含む、請求項15~41のいずれか1項記載の方法。
【請求項45】
前記少なくとも1種の血清免疫ベースのバイオマーカーが、IL-17Fを含む、請求項15~41のいずれか1項記載の方法。
【請求項46】
前記少なくとも1種の血清免疫ベースのバイオマーカーが、IL-17Cを含む、請求項15~41のいずれか1項記載の方法。
【請求項47】
ALSを治療するTreg療法の有効性をモニタリングする方法であって:
a)ALSと診断された患者にTreg療法を実施することであって、該Treg療法が、第1のTreg注入を含む、前記実施すること;
b)該第1のTreg注入後に該患者から採取された血清試料中の少なくとも1種の血清免疫ベースのバイオマーカーの濃度が、基準濃度未満であるか、それに等しいか、又はそれを超えているかを決定することであって、該少なくとも1種の血清免疫ベースのバイオマーカーが:
酸化低密度リポタンパク質(ox-LDL)、
酸化低密度リポタンパク質受容体1(OLR1)、
可溶性CD14(sCD14)、
リポ多糖結合タンパク質(LBP)、
C反応性タンパク質(CRP)、
IL-17F、又は
IL-17C
を含む、前記決定すること;
を含み、
該少なくとも1種の血清免疫ベースのバイオマーカーの該濃度が、その基準濃度を超えている場合、該ALS療法は、有効性が不十分である、前記方法。
【請求項48】
前記少なくとも1種の血清免疫ベースのバイオマーカーの前記濃度が、工程(b)においてその基準濃度と等しいか又はそれ未満である場合に、工程(a)及び(b)の後に第2のTreg注入を含む前記Treg療法を前記患者に実施することをさらに含む、請求項47記載の方法。
【請求項49】
前記少なくとも1種の血清免疫ベースのバイオマーカーの前記濃度が、前記複数回のTreg注入の各Treg注入の後に前記患者から採取された血清試料中で、その基準濃度と等しいか又はそれ未満である場合に、複数回のTreg注入を含むTreg療法が、該患者に実施される、請求項48記載の方法。
【請求項50】
1種類の血清免疫ベースのバイオマーカーの前記濃度が、その基準濃度を超えている場合、前記ALS療法は、有効性が不十分である、請求項47~49のいずれか1項記載の方法。
【請求項51】
少なくとも2種、少なくとも3種、少なくとも4種、又は少なくとも5種の血清免疫ベースのバイオマーカーの前記濃度がそれぞれ、その基準濃度を超えている場合、前記ALS療法は、有効性が不十分である、請求項47~49のいずれか1項記載の方法。
【請求項52】
筋萎縮性側索硬化症(ALS)を治療する方法であって:
a)第1のTreg注入をALSと診断された患者に実施すること;
b)該第1のTreg注入後に該患者から得た血清試料中の少なくとも1種の血清免疫ベースのバイオマーカーの濃度を、基準濃度と比較することであって;
該少なくとも1種類の免疫ベースのバイオマーカーが、ox-LDL、OLR1、sCD14、LBP、CRP、IL-17F、又はIL-17Cを含む、前記比較すること;及び
c)該少なくとも1種の血清免疫ベースのバイオマーカーの該濃度が、該基準濃度と等しいか又はそれを下回る場合に、第2のTreg注入を含むALS療法を該患者に実施すること
を含む、前記方法。
【請求項53】
1種類の血清免疫ベースのバイオマーカーの前記濃度が、前記基準濃度と等しいか又はそれを下回る場合に、前記ALS療法が、前記患者に実施される、請求項52記載の方法。
【請求項54】
少なくとも2種、少なくとも3種、少なくとも4種、又は少なくとも5種の血清免疫ベースのバイオマーカーの前記濃度がそれぞれ、その基準濃度と等しいか又はそれを下回る場合に、前記ALS療法が、前記患者に実施される、請求項52記載の方法。
【請求項55】
前記少なくとも1種の血清免疫ベースのバイオマーカーについての前記基準濃度を、健康な個体から得る、請求項47~54のいずれか1項記載の方法。
【請求項56】
前記少なくとも1種の血清免疫ベースのバイオマーカーについての前記基準濃度が、前記患者にTreg注入が実施される前に該患者から得た血清試料中の濃度である、請求項47~54のいずれか1項記載の方法。
【請求項57】
ox-LDL、OLR1、sCD14、LBP、CRP、IL-17F、又はIL-17Cのそれぞれについての前記基準濃度が、下記:
【表2】
の通りである、請求項47~54のいずれか1項記載の方法。
【請求項58】
Treg療法で患者を治療するための方法であって、
該患者が、ALSを患っており、
a)異なる日に該患者に実施されるTreg注入を含むTreg療法を該患者に実施する工程;
b)血清試料中の少なくとも1種の血清免疫ベースのバイオマーカーの濃度を、基準濃度と比較する工程であって、
該血清試料のそれぞれが、Treg注入後に該患者から得るものであり、
該少なくとも1種の血清免疫ベースのバイオマーカーが、ox-LDL、OLR1、sCD14、LBP、CRP、IL-17F、又はIL-17Cを含む、
前記比較する工程;及び
c)該少なくとも1種の血清免疫ベースのバイオマーカーの該濃度が、血清試料のうちの少なくとも1つにおいて該基準濃度以下である場合に、工程(b)の後に該患者に対してTreg注入を実施することを含む該Treg療法を継続する工程
を含む、前記方法。
【請求項59】
前記少なくとも1種の血清免疫ベースのバイオマーカーの前記濃度が、前記血清試料のうちの全て又は少なくとも50%において前記基準濃度以下である場合に、前記患者に対して前記Treg療法が継続される、請求項58記載の方法。
【請求項60】
前記少なくとも1種の血清免疫ベースのバイオマーカーが、1種類の血清免疫ベースのバイオマーカーからなる、請求項58又は59記載の方法。
【請求項61】
前記少なくとも1種の血清免疫ベースのバイオマーカーが、少なくとも2種、少なくとも3種、少なくとも4種、又は少なくとも5種の血清免疫ベースのバイオマーカーを含む、請求項58又は59記載の方法。
【請求項62】
前記少なくとも1種の血清免疫ベースのバイオマーカーについての前記基準濃度を、健康な個体から得る、請求項58~61のいずれか1項記載の方法。
【請求項63】
前記少なくとも1種の血清免疫ベースのバイオマーカーについての前記基準濃度が、前記患者にTreg注入が実施される前に該患者から得た血清試料中の濃度である、請求項58~61のいずれか1項記載の方法。
【請求項64】
ox-LDL、OLR1、sCD14、LBP、CRP、IL-17F、又はIL-17Cのそれぞれについての前記基準濃度が、下記:
【表3】
の通りである、請求項58~61のいずれか1項記載の方法。
【請求項65】
ALSと診断された患者においてALSを治療するための方法であって:
a)ALSと診断された患者から得た血清試料中の少なくとも1種の血清免疫ベースのバイオマーカーの濃度が、(i)上昇しているか又は(ii)基準濃度以下であるかを決定することであって、
該血清試料が、Treg注入が実施された後に該患者から得るものであり、
該少なくとも1種の血清免疫ベースのバイオマーカーが、ox-LDL、OLR1、sCD14、LBP、CRP、IL-17F、又はIL-17Cを含む、前記決定すること;及び
b)該少なくとも1種の血清免疫ベースのバイオマーカーの該濃度が、(ii)その基準濃度以下であると決定される場合に、該患者に複数回のTreg注入を含むTreg療法を実施すること
を含む、前記方法。
【請求項66】
1種類の血清免疫ベースのバイオマーカーの前記濃度が、(ii)その基準濃度以下であると決定される場合に、前記Treg療法が、前記患者に実施される、請求項65記載の方法。
【請求項67】
少なくとも2種、少なくとも3種、少なくとも4種、又は少なくとも5種の血清免疫ベースのバイオマーカーの前記濃度がそれぞれ、(ii)その基準濃度以下であると決定される場合に、前記Treg療法が、前記患者に実施される、請求項65記載の方法。
【請求項68】
前記少なくとも1種の血清免疫ベースのバイオマーカーについての前記基準濃度を、健康な個体から得る、請求項65~67のいずれか1項記載の方法。
【請求項69】
前記少なくとも1種の血清免疫ベースのバイオマーカーについての前記基準濃度が、前記患者にTreg注入が実施される前に該患者から得た血清試料中の濃度である、請求項65~67のいずれか1項記載の方法。
【請求項70】
ox-LDL、OLR1、sCD14、LBP、CRP、IL-17F、及びIL-17Cのそれぞれについての前記基準濃度が、下記:
【表4】
の通りである、請求項65~67のいずれか1項記載の方法。
【請求項71】
前記少なくとも1種の血清免疫ベースのバイオマーカーが、ox-LDL、OLR1、sCD14、又はLBPを含む、請求項47~70のいずれか1項記載の方法。
【請求項72】
前記少なくとも1種の血清免疫ベースのバイオマーカーが、ox-LDL、OLR1、IL-17C、又はIL-17Fを含む、請求項47~70のいずれか1項記載の方法。
【請求項73】
前記少なくとも1種の血清免疫ベースのバイオマーカーが、ox-LDLを含む、請求項47~72のいずれか1項記載の方法。
【請求項74】
前記少なくとも1種の血清免疫ベースのバイオマーカーが、OLR1を含む、請求項47~72のいずれか1項記載の方法。
【請求項75】
前記少なくとも1種の血清免疫ベースのバイオマーカーが、sCD14を含む、請求項47~71のいずれか1項記載の方法。
【請求項76】
前記少なくとも1種の血清免疫ベースのバイオマーカーが、IL-17Cを含む、請求項47~70のいずれか1項記載の方法。
【請求項77】
前記少なくとも1種の血清免疫ベースのバイオマーカーが、IL-17Fを含む、請求項47~70のいずれか1項記載の方法。
【請求項78】
前記少なくとも1種の血清免疫ベースのバイオマーカーの前記濃度が、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)を用いて決定される、請求項1~77のいずれか1項記載の方法。
【請求項79】
ALSと診断された患者においてALSを治療するための方法であって:
a)ALSと診断された患者から得た血清試料中の少なくとも1種の血清免疫ベースのバイオマーカーの濃度が、該少なくとも1種の血清免疫ベースのバイオマーカーの基準濃度のそれ以下であるか否かを決定することであって、
該血清試料が、第1のALS療法が実施された後に該患者から得るものであり、
該少なくとも1種の血清免疫ベースのバイオマーカーが、ox-LDL、OLR1、sCD14、LBP、CRP、4-HNE、IL-17F、又はIL-17Cを含む、前記決定すること;及び
b)該少なくとも1種の血清免疫ベースのバイオマーカーの該濃度が、その基準濃度以下であると決定される場合に、該患者に第2のALS療法を実施すること
を含む、前記方法。
【請求項80】
前記第1のALS療法が、前記第2のALS療法と同じである、請求項79記載の方法。
【請求項81】
前記第1のALS療法が、前記第2のALS療法とは異なる、請求項79記載の方法。
【請求項82】
前記第1及び/又は第2のALS療法が、1回以上のTreg注入を前記患者に実施することを含む、請求項79記載の方法。
【請求項83】
前記第1及び/又は第2のALS療法が、CTLA-4融合タンパク質及びIL-2を前記患者に投与することを含む、請求項79記載の方法。
【請求項84】
前記CTLA-4融合タンパク質が、アバタセプトである、請求項83記載の方法。
【請求項85】
前記第1及び/又は第2のALS療法が、1回以上のTreg細胞外ベシクル(EV)、例えば、エキソソーム注入を前記患者に実施することを含む、請求項79記載の方法。
【請求項86】
前記少なくとも1種の血清免疫ベースのバイオマーカーが、ox-LDL又は4-HNEを含む、請求項79記載の方法。
【請求項87】
ALSと診断された患者においてALSを治療するための方法であって、:
ALS療法を該ALS患者に実施すること;
該ALS療法に対する該ALS患者の反応性を評価すること;及び
該ALS患者が、該ALS療法に対して反応性であると評価される場合に、該ALS療法を該ALS患者に実施し続けることを含み、
該ALS療法に対する該ALS患者の該反応性が、少なくとも1種類の免疫ベースのバイオマーカーの血清中濃度を、該少なくとも1種類の免疫ベースのバイオマーカーの基準濃度と比較することを含み、かつ
該免疫ベースのバイオマーカーの該血清中濃度が、該ALS患者から採取された少なくとも1つの後続の血清試料において、低下しているか又は該基準濃度以内に留まっている場合に、該ALS患者が、該ALS療法に対して反応性であると評価される、前記方法。
【請求項88】
前記ALS患者の前記ALS療法に対する前記反応性が、免疫ベースのバイオマーカーの血清中濃度を、免疫ベースのバイオマーカーのセットについての基準濃度と比較することを含み、
該免疫ベースのバイオマーカーのセットうちの少なくとも50%の血清中濃度が、該ALS患者から採取された少なくとも1つの後続の血清試料において、低下しているか又はその基準濃度以内に留まっている場合に、該ALS患者が、該ALS療法に対して反応性であると評価される、請求項87記載の方法。
【請求項89】
前記セットが、1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10種類の免疫ベースのバイオマーカーを含む、請求項88記載の方法。
【請求項90】
前記免疫ベースのバイオマーカーの前記血清中濃度が、前記ALS患者から採取された少なくとも2、3、4、5、6、7、8、又は9つの後続の血清試料において、低下しているか又は前記基準濃度以内に留まっている場合に、該ALS患者が、前記ALS療法に対して反応性であると評価される、請求項87記載の方法。
【請求項91】
前記免疫ベースのバイオマーカーの前記血清中濃度が、前記ALS患者から採取された3つ以上の後続の血清試料の過半数において、低下しているか又は前記基準濃度以内に留まっている場合に、該ALS患者が、前記ALS療法に対して反応性であると評価される、請求項87記載の方法。
【請求項92】
前記免疫ベースのバイオマーカーが、ox-LDL、OLR1、sCD14、LBP、CRP、4-HNE、IL-17F、又はIL-17Cを含む、請求項87~91のいずれか1項記載の方法。
【請求項93】
前記ALS療法が、1回以上のTreg注入を前記患者に実施することを含む、請求項87~92のいずれか1項記載の方法。
【請求項94】
前記ALS療法が、CTLA-4融合タンパク質及びIL-2を前記患者に投与することを含む、請求項87~92のいずれか1項記載の方法。
【請求項95】
前記CTLA-4融合タンパク質が、アバタセプトである、請求項94記載の方法。
【請求項96】
前記ALS療法が、1回以上のTreg細胞外ベシクル(EV)、例えば、エキソソーム注入を前記患者に実施することを含む、請求項87~92のいずれか1項記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2021年9月16日に出願された米国仮特許出願第63/244,995号の利益を主張し、その内容は全体として本明細書に組み込まれる。
【0002】
(1. 分野)
本明細書で提供されるのは、血清免疫ベースのバイオマーカー及び筋萎縮性側索硬化症(ALS)と診断された患者をALS療法に選択するための方法におけるその使用である。ALS患者を治療するための方法及び治療の有効性をモニタリングする方法も、本明細書で提供される。
【背景技術】
【0003】
(2. 背景)
筋萎縮性側索硬化症(ALS)は、成人神経筋疾患の最もよくみられる形態であり、例外なく致命的である。ALSは、CNS及び末梢免疫系の双方が疾患の発症及び進行に重要な役割を果たす多因子性多系統疾患であると考えられている。
【0004】
ALSなどの疾患の進行への免疫系の関与を指摘する研究及び病因のメディエーターとしての免疫細胞の機能障害を指摘する研究が増加している。免疫系及びその構成要素の複雑なシグナル伝達機構及び組み込まれた冗長性が、単一薬物/単一標的抗炎症アプローチの無効性を説明するのに役立ち得る。
【0005】
ALS患者において、制御性T細胞(Treg)の数が次第に減少すること、及び制御性T細胞(Treg)の免疫抑制を促進する効果が低いことが示されている。近年、Treg細胞療法が、有望なALSの療法として明らかとなってきており、疾患の一因となる免疫系機能障害を抑制するより大局的なアプローチとなる可能性がある。例えば、ALS患者への増殖させた自己由来Tregの投与を含む臨床試験によって、Treg療法が、該疾患の初期及びその後の段階の間の進行速度を低下させること、及びTreg抑制機能が、疾患進行の減速と相関していたことが報告されている(Thonhoffらの文献、Neurol. Neuroimmunol. Neuroinflamm. 5(4):e465 (2018))。
【0006】
患者の疾患負担、進行速度、及びTreg療法などの治療に対する反応性を正確に映し出すことができるALSバイオマーカーを開発する必要がある。そのようなバイオマーカーは、臨床経過の予測、治療反応の予想、及び治療有効性の決定に臨床的に有用であろう。
【発明の概要】
【0007】
(3. 概要)
一態様において、本明細書で提供されるのは、患者を筋萎縮性側索硬化症(ALS)療法に選択するための方法である。
【0008】
いくつかの実施態様において、患者をALS療法に選択するための方法は:(a)ALSと診断された又ALSであることが疑われる患者から採取された血清試料中のインターロイキン17F(IL-17F)の濃度を決定することであって、該血清試料中の該IL-17F濃度が、少なくとも2.0pg/mLである場合には、該患者が、該ALS療法での治療から除外され、そうでない場合には、該患者が、該ALS療法での該治療に選択される、前記決定すること;及び(b)該ALS療法を該選択された患者に実施することを含む。
【0009】
ある実施態様において、前記ALS療法は、T制御性細胞(Treg)注入を含む。
【0010】
ある実施態様において、前記ALS療法は、複数回のTreg注入を含む。
【0011】
ある実施態様において、前記血清試料は、前記ALS療法の前に前記患者から採取される。
【0012】
ある実施態様において、前記血清試料は、Treg注入の前に前記患者から採取される。
【0013】
ある実施態様において、前記血清試料は、Treg注入が前記患者に実施された後に該患者から採取される。
【0014】
ある実施態様において、前記血清試料は、前記Treg注入の翌日に前記患者から採取される。
【0015】
一態様において、本明細書で提供されるのは、患者においてALSを治療する方法である。
【0016】
いくつかの実施態様において、ALSを治療する方法は:ALSと診断された患者にALS療法を実施することを含み、ここで、該患者から採取された血清試料が、2.0pg/mL未満のインターロイキン17F(IL-17F)濃度を有していることが決定されている。
【0017】
ある実施態様において、前記ALS療法は、Treg注入を含む。
【0018】
ある実施態様において、前記ALS療法は、複数回のTreg注入を含む。
【0019】
ある実施態様において、前記血清試料は、前記ALS療法の前に前記患者から採取されたものである。
【0020】
ある実施態様において、前記血清試料は、Treg注入の前に前記患者から採取されたものである。
【0021】
ある実施態様において、前記血清試料は、Treg注入が前記患者に実施された後に該患者から採取されたものである。
【0022】
ある実施態様において、前記血清試料は、前記Treg注入の翌日に前記患者から採取されたものである。
【0023】
いくつかの実施態様において、患者をALS療法に選択するための方法は:(a)ALSと診断された又ALSであることが疑われる患者から採取された血清試料中の少なくとも1種の血清免疫ベースのバイオマーカーの濃度が、基準濃度未満であるか、それに等しいか、又はそれを超えているかを決定することであって、該少なくとも1種の血清免疫ベースのバイオマーカーが、IL-17F、酸化低密度リポタンパク質受容体1(OLR1)、ニューロフィラメント軽鎖(NF-L)、酸化低密度リポタンパク質(ox-LDL)、又はインターロイキン17C(IL-17C)であり;かつ該少なくとも1種の血清免疫ベースのバイオマーカーの該濃度が、該基準濃度を超えている場合には、該患者が、該ALS療法での治療から除外され、そうでない場合には、該患者が、該ALS療法での該治療に選択される、前記決定すること;及び(b)該ALS療法を該選択された患者に実施することを含む。
【0024】
ある実施態様において、1種類の血清免疫ベースのバイオマーカーの濃度が、決定される。
【0025】
ある実施態様において、少なくとも2種の血清免疫ベースのバイオマーカーの濃度がそれぞれ、基準濃度未満であるか、それに等しいか、又はそれを超えていると決定され、2種の血清免疫ベースのバイオマーカーの該濃度がそれぞれ、その基準濃度を超えていると決定される場合には、前記患者が、前記ALS療法での治療から除外され、そうでない場合には、該患者が、該ALS療法での該治療に選択される。
【0026】
ある実施態様において、少なくとも3種の血清免疫ベースのバイオマーカーの濃度がそれぞれ、基準濃度未満であるか、それに等しいか、又はそれを超えていると決定され、3種の血清免疫ベースのバイオマーカーの該濃度がそれぞれ、その基準濃度を超えていると決定される場合には、前記患者が、前記ALS療法での治療から除外され、そうでない場合には、該患者が、該ALS療法での該治療に選択される。
【0027】
ある実施態様において、少なくとも4種の血清免疫ベースのバイオマーカーの濃度がそれぞれ、基準濃度未満であるか、それに等しいか、又はそれを超えていると決定され、4種の血清免疫ベースのバイオマーカーの該濃度がそれぞれ、その基準濃度を超えていると決定される場合には、前記患者が、前記ALS療法での治療から除外され、そうでない場合には、該患者が、該ALS療法での該治療に選択される。
【0028】
ある実施態様において、少なくとも5種の血清免疫ベースのバイオマーカーの濃度がそれぞれ、基準濃度未満であるか、それに等しいか、又はそれを超えていると決定され、5種の血清免疫ベースのバイオマーカーの該濃度がそれぞれ、その基準濃度を超えていると決定される場合には、前記患者が、前記ALS療法での治療から除外され、そうでない場合には、該患者が、該ALS療法での該治療に選択される。
【0029】
ある実施態様において、前記ALS療法は、Treg注入を含む。
【0030】
ある実施態様において、前記ALS療法は、複数回のTreg注入を含む。
【0031】
ある実施態様において、前記血清試料は、前記ALS療法の前に前記患者から採取される。
【0032】
ある実施態様において、前記血清試料は、Treg注入の前に前記患者から採取される。
【0033】
ある実施態様において、前記血清試料は、Treg注入が前記患者に実施された後に該患者から採取される。
【0034】
ある実施態様において、前記血清試料は、前記Treg注入の翌日に前記患者から採取される。
【0035】
いくつかの実施態様において、ALSを治療する方法は:ALSと診断された患者にALS療法を実施することを含み、該患者から採取された血清試料が、基準濃度未満又はそれと等しい濃度の少なくとも1種の血清免疫ベースのバイオマーカーを含有していることが決定されており、該少なくとも1種の血清免疫ベースのバイオマーカーは、IL-17F、OLR1、NF-L、ox-LDL、又はIL-17Cである。
【0036】
ある実施態様において、1種類の血清免疫ベースのバイオマーカーの濃度が、基準濃度未満である又はそれと等しいと決定されている。
【0037】
ある実施態様において、少なくとも2種の血清免疫ベースのバイオマーカーの濃度が、基準濃度未満である又はそれと等しいと決定されている。ある実施態様において、少なくとも3種の血清免疫ベースのバイオマーカーの濃度が、基準濃度未満である又はそれと等しいと決定されている。ある実施態様において、少なくとも4種の血清免疫ベースのバイオマーカーの濃度が、基準濃度未満である又はそれと等しいと決定されている。ある実施態様において、少なくとも5種の血清免疫ベースのバイオマーカーの濃度が、基準濃度未満である又はそれと等しいと決定されている。
【0038】
ある実施態様において、前記ALS療法は、Treg注入を含む。
【0039】
ある実施態様において、前記ALS療法は、複数回のTreg注入を含む。
【0040】
ある実施態様において、前記血清試料は、前記ALS療法の前に前記患者から採取されたものである。
【0041】
ある実施態様において、前記血清試料は、Treg注入の前に前記患者から採取されたものである。
【0042】
ある実施態様において、前記血清試料は、Treg注入が前記患者に実施された後に該患者から採取されたものである。
【0043】
ある実施態様において、前記血清試料は、前記Treg注入の翌日に前記患者から採取されたものである。
【0044】
ある実施態様において、前記基準濃度は、健康な個体から得る。
【0045】
ある実施態様において、前記基準濃度は、前記患者にTreg注入が実施される前に該患者から得た血清試料中の濃度である。
【0046】
本明細書で提供される方法のいくつかの実施態様において、ox-LDL、OLR1、NF-L、IL-17F、又はIL-17Cを含む前記少なくとも1種のバイオマーカーについての基準濃度は、下記:
【表1】
の通りである。
【0047】
ある実施態様において、前記少なくとも1種の血清免疫ベースのバイオマーカーは、ox-LDLを含む。
【0048】
ある実施態様において、前記少なくとも1種の血清免疫ベースのバイオマーカーは、OLR1を含む。
【0049】
ある実施態様において、前記少なくとも1種の血清免疫ベースのバイオマーカーは、NF-Lを含む。
【0050】
ある実施態様において、前記少なくとも1種の血清免疫ベースのバイオマーカーは、IL-17Fを含む。
【0051】
ある実施態様において、前記少なくとも1種の血清免疫ベースのバイオマーカーは、IL-17Cを含む。
【0052】
一態様において、本明細書で提供されるのは、ALSを治療するTreg療法の有効性をモニタリングする方法である。
【0053】
いくつかの実施態様において、Treg療法の有効性をモニタリングする方法は:(a)ALSと診断された患者にTreg療法を実施することであって、該Treg療法が、第1のTreg注入を含む、前記実施すること;及び(b)該第1のTreg注入後に該患者から採取された血清試料中の少なくとも1種の血清免疫ベースのバイオマーカーの濃度が、基準濃度未満であるか、それに等しいか、又はそれを超えているかを決定することであって、該少なくとも1種の血清免疫ベースのバイオマーカーが:ox-LDL、OLR1、可溶性CD14(sCD14)、リポ多糖結合タンパク質(LBP)、C反応性タンパク質(CRP)、4-ヒドロキシノネナール(4-HNE)、IL-17F、又はIL-17Cを含む、前記決定することを含み;該少なくとも1種の血清免疫ベースのバイオマーカーの該濃度が、その基準濃度を超えている場合、該ALS療法は、有効性が不十分である、前記方法である。
【0054】
ある実施態様において、前記方法は、前記少なくとも1種の血清免疫ベースのバイオマーカーの前記濃度が、工程(b)においてその基準濃度と等しいか又はそれ未満である場合に、工程(a)及び(b)の後に第2のTreg注入を含む前記Treg療法を前記患者に実施することをさらに含む。
【0055】
ある実施態様において、前記少なくとも1種の血清免疫ベースのバイオマーカーの前記濃度が、前記複数回のTreg注入の各Treg注入の後に前記患者から採取された血清試料中で、その基準濃度と等しいか又はそれ未満である場合に、複数回のTreg注入を含むTreg療法が、該患者に実施される。
【0056】
ある実施態様において、1種類の血清免疫ベースのバイオマーカーの前記濃度が、その基準濃度を超えている場合、前記ALS療法は、有効性が不十分である。ある実施態様において、少なくとも2種の血清免疫ベースのバイオマーカーの前記濃度がそれぞれ、その基準濃度を超えている場合、前記ALS療法は、有効性が不十分である。ある実施態様において、少なくとも3種の血清免疫ベースのバイオマーカーの前記濃度がそれぞれ、その基準濃度を超えている場合、前記ALS療法は、有効性が不十分である。ある実施態様において、少なくとも4種の血清免疫ベースのバイオマーカーの前記濃度がそれぞれ、その基準濃度を超えている場合、前記ALS療法は、有効性が不十分である。ある実施態様において、少なくとも5種の血清免疫ベースのバイオマーカーの前記濃度がそれぞれ、その基準濃度を超えている場合、前記ALS療法は、有効性が不十分である。
【0057】
いくつかの実施態様において、ALSを治療する方法は:(a)第1のTreg注入をALSと診断された患者に実施すること;(b)該第1のTreg注入後に該患者から得た血清試料中の少なくとも1種の血清免疫ベースのバイオマーカーの濃度を、基準濃度と比較することであって、該少なくとも1種類の免疫ベースのバイオマーカーが、ox-LDL、OLR1、sCD14、LBP、CRP、4-HNE、IL-17F、又はIL-17Cを含む、前記比較すること;及び(c)該少なくとも1種の血清免疫ベースのバイオマーカーの該濃度が、該基準濃度と等しいか又はそれを下回る場合に、第2のTreg注入を含むALS療法を該患者に実施することを含む。
【0058】
ある実施態様において、1種類の血清免疫ベースのバイオマーカーの前記濃度が、前記基準濃度と等しいか又はそれを下回る場合に、前記ALS療法が、前記患者に実施される。
【0059】
ある実施態様において、少なくとも2種の血清免疫ベースのバイオマーカーの前記濃度がそれぞれ、その基準濃度と等しいか又はそれを下回る場合に、前記ALS療法が、前記患者に実施される。ある実施態様において、少なくとも3種の血清免疫ベースのバイオマーカーの前記濃度がそれぞれ、その基準濃度と等しいか又はそれを下回る場合に、前記ALS療法が、前記患者に実施される。ある実施態様において、少なくとも4種の血清免疫ベースのバイオマーカーの前記濃度がそれぞれ、その基準濃度と等しいか又はそれを下回る場合に、前記ALS療法が、前記患者に実施される。ある実施態様において、少なくとも5種の血清免疫ベースのバイオマーカーの前記濃度がそれぞれ、その基準濃度と等しいか又はそれを下回る場合に、前記ALS療法が、前記患者に実施される。
【0060】
ある実施態様において、前記少なくとも1種の血清免疫ベースのバイオマーカーについての前記基準濃度は、健康な個体から得る。
【0061】
ある実施態様において、前記少なくとも1種の血清免疫ベースのバイオマーカーについての前記基準濃度は、前記患者にTreg注入が実施される前に該患者から得た血清試料中の濃度である。
【0062】
ある実施態様において、ox-LDL、OLR1、sCD14、LBP、CRP、4-HNE、IL-17F、又はIL-17Cのそれぞれについての前記基準濃度は、下記:
【表2】
の通りである。
【0063】
いくつかの実施態様において、本明細書で提供されるのは、Treg療法で患者を治療するための方法であって、該患者が、ALSを患っている、前記方法である。
【0064】
ある実施態様において、前記方法は:(a)異なる日に前記患者に実施されるTreg注入を含むTreg療法を該患者に実施すること;(b)血清試料中の少なくとも1種の血清免疫ベースのバイオマーカーの濃度を、基準濃度と比較することであって、該血清試料のそれぞれが、Treg注入後に該患者から得るものであり、該少なくとも1種の血清免疫ベースのバイオマーカーが、ox-LDL、OLR1、sCD14、LBP、CRP、4-HNE、IL-17F、又はIL-17Cを含む、前記比較すること;及び(c)該少なくとも1種の血清免疫ベースのバイオマーカーの該濃度が、血清試料のうちの少なくとも1つにおいて該基準濃度以下である場合に、工程(b)の後に該患者に対してTreg注入を実施することを含む該Treg療法を継続することを含む。
【0065】
ある実施態様において、前記少なくとも1種の血清免疫ベースのバイオマーカーの前記濃度が、前記血清試料のうちの全て又は少なくとも50%において前記基準濃度以下である場合に、前記患者に対して前記Treg療法が継続される。
【0066】
ある実施態様において、前記少なくとも1種の血清免疫ベースのバイオマーカーは、1種類の血清免疫ベースのバイオマーカーからなる。
【0067】
ある実施態様において、前記少なくとも1種の血清免疫ベースのバイオマーカーは、少なくとも2種の血清免疫ベースのバイオマーカーを含む。ある実施態様において、前記少なくとも1種の血清免疫ベースのバイオマーカーは、少なくとも3種の血清免疫ベースのバイオマーカーを含む。ある実施態様において、前記少なくとも1種の血清免疫ベースのバイオマーカーは、少なくとも4種の血清免疫ベースのバイオマーカーを含む。ある実施態様において、前記少なくとも1種の血清免疫ベースのバイオマーカーは、少なくとも5種の血清免疫ベースのバイオマーカーを含む。
【0068】
ある実施態様において、前記少なくとも1種の血清免疫ベースのバイオマーカーについての前記基準濃度は、健康な個体から得る。
【0069】
ある実施態様において、前記少なくとも1種の血清免疫ベースのバイオマーカーについての前記基準濃度は、前記患者にTreg注入が実施される前に該患者から得た血清試料中の濃度である。
【0070】
ある実施態様において、ox-LDL、OLR1、sCD14、LBP、CRP、4-HNE、IL-17F、又はIL-17Cのそれぞれについての前記基準濃度は、下記:
【表3】
の通りである。
【0071】
いくつかの実施態様において、本明細書で提供されるのは、ALSと診断された患者においてALSを治療するための方法であって:(a)ALSと診断された患者から得た血清試料中の少なくとも1種の血清免疫ベースのバイオマーカーの前記濃度が、(i)上昇しているか又は(ii)基準濃度以下であるかを決定することであって、該血清試料が、Treg注入が実施された後に該患者から得るものであり、該少なくとも1種の血清免疫ベースのバイオマーカーが、ox-LDL、OLR1、sCD14、LBP、CRP、4-HNE、IL-17F、又はIL-17Cを含む、前記決定すること;及び(b)該少なくとも1種の血清免疫ベースのバイオマーカーの該濃度が、(ii)その基準濃度以下であると決定される場合に、該患者に複数回のTreg注入を含むTreg療法を実施することを含む、前記方法である。
【0072】
ある実施態様において、1種類の血清免疫ベースのバイオマーカーの前記濃度が、(ii)その基準濃度以下であると決定される場合に、前記Treg療法が、前記患者に実施される。
【0073】
ある実施態様において、少なくとも2種の血清免疫ベースのバイオマーカーの前記濃度がそれぞれ、(ii)その基準濃度以下であると決定される場合に、前記Treg療法が、前記患者に実施される。ある実施態様において、少なくとも3種の血清免疫ベースのバイオマーカーの前記濃度がそれぞれ、(ii)その基準濃度以下であると決定される場合に、前記Treg療法が、前記患者に実施される。ある実施態様において、少なくとも4種の血清免疫ベースのバイオマーカーの前記濃度がそれぞれ、(ii)その基準濃度以下であると決定される場合に、前記Treg療法が、前記患者に実施される。ある実施態様において、少なくとも5種の血清免疫ベースのバイオマーカーの前記濃度がそれぞれ、(ii)その基準濃度以下であると決定される場合に、前記Treg療法が、前記患者に実施される。
【0074】
提供される方法のいくつかの実施態様において、前記少なくとも1種の血清免疫ベースのバイオマーカーについての前記基準濃度は、健康な個体から得る。
【0075】
提供される方法の別の実施態様において、前記少なくとも1種の血清免疫ベースのバイオマーカーについての前記基準濃度は、前記患者にTreg注入が実施される前に該患者から得た血清試料中の濃度である。
【0076】
提供される方法のさらに別の実施態様において、ox-LDL、OLR1、sCD14、LBP、CRP、4-HNE、IL-17F、又はIL-17Cを含む前記少なくとも1種の血清免疫ベースのバイオマーカーについての前記基準濃度は、下記:
【表4】
の通りである。
【0077】
提供される方法のある実施態様において、前記少なくとも1種の血清免疫ベースのバイオマーカーは、ox-LDL、OLR1、sCD14、又はLBPを含む。ある実施態様において、前記少なくとも1種の血清免疫ベースのバイオマーカーは、ox-LDL、OLR1、IL-17C、又はIL-17Fを含む。ある実施態様において、前記少なくとも1種の血清免疫ベースのバイオマーカーは、ox-LDLを含む。ある実施態様において、前記少なくとも1種の血清免疫ベースのバイオマーカーは、OLR1を含む。ある実施態様において、前記少なくとも1種の血清免疫ベースのバイオマーカーは、sCD14を含む。ある実施態様において、前記少なくとも1種の血清免疫ベースのバイオマーカーは、IL-17Cを含む。ある実施態様において、前記少なくとも1種の血清免疫ベースのバイオマーカーは、IL-17Fを含む。
【0078】
提供される方法のいくつかの実施態様において、前記少なくとも1種の血清免疫ベースのバイオマーカーの該濃度は、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)を用いて決定される。
【0079】
一態様において、本明細書で提供されるのは、ALSと診断された患者においてALSを治療するための方法であって:(a)ALSと診断された患者から得た血清試料中の少なくとも1種の血清免疫ベースのバイオマーカーの前記濃度が、該少なくとも1種の血清免疫ベースのバイオマーカーの基準濃度のそれ以下であるか否かを決定することであって、該血清試料が、第1のALS療法が実施された後に該患者から得るものであり、該少なくとも1種の血清免疫ベースのバイオマーカーが、ox-LDL、OLR1、sCD14、LBP、CRP、4-HNE、IL-17F、又はIL-17Cを含む、前記決定すること;及び(b)該少なくとも1種の血清免疫ベースのバイオマーカーの該濃度が、その基準濃度以下であると決定される場合に、該患者に第2のALS療法を実施することを含む、前記方法である。ある実施態様において、前記第1のALS療法は、前記第2のALS療法と同じである。ある実施態様において、前記第1のALS療法は、前記第2のALS療法とは異なる。
【0080】
ある実施態様において、前記第1及び/又は第2のALS療法は、1回以上のTreg注入を前記患者に実施することを含む。
【0081】
ある実施態様において、前記第1及び/又は第2のALS療法は、CTLA-4融合タンパク質及びIL-2を前記患者に投与することを含む。いくつかの実施態様において、前記CTLA-4融合タンパク質は、アバタセプトである。ある実施態様において、前記IL-2は、アルデスロイキンである。
【0082】
ある実施態様において、前記第1及び/又は第2のALS療法は、1回以上のTreg細胞外ベシクル(EV)、例えば、エキソソーム注入を前記患者に実施することを含む。
【0083】
いくつかの実施態様において、前記少なくとも1種の血清免疫ベースのバイオマーカーは、ox-LDL又は4-HNEを含む。
【0084】
一態様において、本明細書で提供されるのは、ALSと診断された患者においてALSを治療するための方法であって:第1のALS療法を該ALS患者に実施すること;該第1のALS療法に対する該ALS患者の反応性を評価すること;及び該ALS患者が、該第1のALS療法に対して反応性であると評価される場合に、該第1のALS療法を該ALS患者に実施し続けることを含み、該ALS療法に対する該ALS患者の該反応性が、少なくとも1種類の免疫ベースのバイオマーカーの血清中濃度を、該少なくとも1種類の免疫ベースのバイオマーカーの基準濃度と比較することを含み、該免疫ベースのバイオマーカーの該血清中濃度が、該ALS患者から採取された少なくとも1つの後続の(successive)血清試料において、低下しているか又は該基準濃度以内に留まっている場合に、該ALS患者が、該第1のALS療法に対して反応性であると評価される、前記方法である。
【0085】
上記ALSを治療するための方法の特定の実施態様において、患者が、前記第1のALS療法に非反応性であると判明した場合には、該方法は、該患者に第2のALS療法を実施することをさらに含む。具体的な実施態様において、前記方法は、前記第2のALS療法を前記ALS患者に実施することの後に、該ALS患者の該第2のALS療法に対する反応性を評価すること、及び該ALS患者が、該第2のALS療法に対して反応性であると評価される場合に、該第2のALS療法を該ALS患者に実施し続けることをさらに含んでもよく、ここで、該ALS療法に対する該ALS患者の該反応性は、少なくとも1種類の免疫ベースのバイオマーカーの血清中濃度を、該少なくとも1種類の免疫ベースのバイオマーカーの基準濃度と比較することを含み、該免疫ベースのバイオマーカーの該血清中濃度が、該ALS患者から採取された少なくとも1つの後続の血清試料において、低下しているか又は該基準濃度以内に留まっている場合に、該ALS患者は、該第2のALS療法に対して反応性であると評価される。
【0086】
ある実施態様において、前記第1又は第2のALS療法は、1回以上のTreg注入を前記患者に実施することを含む。
【0087】
ある実施態様において、前記第1又は第2のALS療法は、CTLA-4融合タンパク質及びIL-2を前記患者に投与することを含む。いくつかの実施態様において、前記CTLA-4融合タンパク質は、アバタセプトである。ある実施態様において、前記IL-2は、アルデスロイキンである。
【0088】
ある実施態様において、前記第1又は第2のALS療法は、1回以上のTreg細胞外ベシクル(EV)、例えば、エキソソーム注入を前記患者に実施することを含む。
【0089】
ある実施態様において、前記ALS療法に対する前記ALS患者の前記反応性は、免疫ベースのバイオマーカーの血清中濃度を、免疫ベースのバイオマーカーのセットについての基準濃度と比較することを含み、該免疫ベースのバイオマーカーのセットうちの少なくとも50%の血清中濃度が、該ALS患者から採取された少なくとも1つの後続の血清試料において、低下しているか又はその基準濃度以内に留まっている場合に、該ALS患者は、前記ALS療法に対して反応性であると評価される。いくつかの実施態様において、前記免疫ベースのバイオマーカーのセットは、1種類の免疫ベースのバイオマーカーを含む。ある実施態様において、前記免疫ベースのバイオマーカーのセットは、2種類のバイオマーカーを含む。ある実施態様において、前記免疫ベースのバイオマーカーのセットは、3種類のバイオマーカーを含む。ある実施態様において、前記免疫ベースのバイオマーカーのセットは、4種類のバイオマーカーを含む。ある実施態様において、前記免疫ベースのバイオマーカーのセットは、5種類のバイオマーカーを含む。ある実施態様において、前記免疫ベースのバイオマーカーのセットは、6種類のバイオマーカーを含む。ある実施態様において、前記免疫ベースのバイオマーカーのセットは、7種類のバイオマーカーを含む。ある実施態様において、前記免疫ベースのバイオマーカーのセットは、8種類のバイオマーカーを含む。ある実施態様において、前記免疫ベースのバイオマーカーのセットは、9種類のバイオマーカーを含む。ある実施態様において、前記免疫ベースのバイオマーカーのセットは、10種類のバイオマーカーを含む。
【0090】
ある実施態様において、前記免疫ベースのバイオマーカーの前記血清中濃度が、前記ALS患者から採取された少なくとも2つの後続の血清試料において、低下しているか又は前記基準濃度以内に留まっている場合に、該ALS患者は、前記ALS療法に対して反応性であると評価される。ある実施態様において、前記免疫ベースのバイオマーカーの前記血清中濃度が、前記ALS患者から採取された少なくとも3つの後続の血清試料において、低下しているか又は前記基準濃度以内に留まっている場合に、該ALS患者は、前記ALS療法に対して反応性であると評価される。ある実施態様において、前記免疫ベースのバイオマーカーの前記血清中濃度が、前記ALS患者から採取された少なくとも4つの後続の血清試料において、低下しているか又は前記基準濃度以内に留まっている場合に、該ALS患者は、前記ALS療法に対して反応性であると評価される。ある実施態様において、前記免疫ベースのバイオマーカーの前記血清中濃度が、前記ALS患者から採取された少なくとも5つの後続の血清試料において、低下しているか又は前記基準濃度以内に留まっている場合に、該ALS患者は、前記ALS療法に対して反応性であると評価される。ある実施態様において、前記免疫ベースのバイオマーカーの前記血清中濃度が、前記ALS患者から採取された少なくとも6つの後続の血清試料において、低下しているか又は前記基準濃度以内に留まっている場合に、該ALS患者は、前記ALS療法に対して反応性であると評価される。ある実施態様において、前記免疫ベースのバイオマーカーの前記血清中濃度が、前記ALS患者から採取された少なくとも7つの後続の血清試料において、低下しているか又は前記基準濃度以内に留まっている場合に、該ALS患者は、前記ALS療法に対して反応性であると評価される。ある実施態様において、前記免疫ベースのバイオマーカーの前記血清中濃度が、前記ALS患者から採取された少なくとも8つの後続の血清試料において、低下しているか又は前記基準濃度以内に留まっている場合に、該ALS患者は、前記ALS療法に対して反応性であると評価される。ある実施態様において、前記免疫ベースのバイオマーカーの前記血清中濃度が、前記ALS患者から採取された少なくとも9つの後続の血清試料において、低下しているか又は前記基準濃度以内に留まっている場合に、該ALS患者は、前記ALS療法に対して反応性であると評価される。
【0091】
ある実施態様において、前記免疫ベースのバイオマーカーの前記血清中濃度が、前記ALS患者から採取された3つ以上の後続の血清試料の過半数において、低下しているか又は前記基準濃度以内に留まっている場合に、該ALS患者は、前記ALS療法に対して反応性であると評価される。
【0092】
ある実施態様において、前記免疫ベースのバイオマーカーは、ox-LDL、OLR1、sCD14、LBP、CRP、4-HNE、IL-17F、又はIL-17Cを含む。
【図面の簡単な説明】
【0093】
(4. 図面の簡単な説明)
図1図1A図1C:8名の未治療急速進行性ALS患者(「急速ALS患者」)、8名の未治療緩徐進行性ALS患者(「緩徐ALS患者」)、及び9名の年齢をマッチさせた健康な志願者(「健常者対照」)の個々の血清試料においてインターロイキン-17C(「IL-17C」)(図1A);インターロイキン-6(「IL-6」)(図1B);及び酸化低密度リポタンパク質受容体1(「OLR1」)(図1C)について決定されたバイオマーカー濃度。横のバーは、各群のミーンアベレージ(mean average)値を表す。
【0094】
図2図2A図2B:血清中の酸化低密度リポタンパク質(「ox-LDL」)濃度が、急速進行性患者(n=13)由来の血清中において、緩徐進行性患者又は健常者対照と比較して上昇したこと;ox-LDLが、緩徐進行性患者由来の血清において、健常者対照と比較して増加しなかった(図2A)ことを示す結果。Ox-LDLレベルは、アルツハイマー病(「AD」)又は軽度認知障害(「MCI」)の患者で増加した(図2B)。*<0.05、**<0.001、n.s.=非有意。
【0095】
図3図3: 30名の未治療ALS患者における、血清中の血清免疫ベースのバイオマーカーであるox-LDLの濃度に対する、筋萎縮性側索硬化症機能評価スケール(「ALSFRS」)での1か月あたりのポイント(「pts/mn」)を用いて評価されたALSの進行速度を表すグラフ。
【0096】
図4図4A図4B: 6名の患者(対象205、203、202(図4Aに示される)及び206、115、114(図4Bに示される))の、Treg注入の実施の前から6回のTreg注入(上のパネルにおいて下向きの矢印で示される)後の経時的なALSFRSスコアを提供するグラフ。ここで、該6名の患者は、該ALS療法に対して反応性である。「PRO-ACT」及び「セフトリアキソン」と標識された点線は、公表された出典からのさまざまな他の臨床試験におけるALS患者のALSFRSスコアを示す。ALSFRSスコアの低下は、疾患進行の指標となる。
【0097】
図5図5: 2名の患者(対象201及び103)の、Treg注入の実施の前から6回のTreg注入(下向きの矢印で示される)後の経時的なALSFRSスコアを提供するグラフ。ここで、該2名の患者は、ALS療法に対して反応性ではない。
【0098】
図6図6A図6C:ノンレスポンダー(図6Aに示される対象210及び103)並びにレスポンダー(図6Bに示される対象202及び114及び図6Cに示される対象206及び115)における、Treg注入の実施前(各グラフにおいて最も左側のデータポイント)及びTreg注入の実施後に採取された血清試料中のIL-17F血清中濃度(pg/mL)を示すグラフ。該グラフでは、健常者対照のミーンアベレージIL-17F血清中濃度を、該ミーンアベレージの1標準偏差上及び下を表す平行の一点鎖線の間の実線の直線として示す。
【0099】
図7図7:ノンレスポンダー及びレスポンダーのミーンアベレージIL-17F血清中濃度を表すグラフ。
【0100】
図8図8A図8B:レスポンダー(図8Aに示される対象202、203、114、及び115並びに図8Bに示される対象205及び206)のIL-17Cの血清中濃度(pg/mL)を示すグラフ。血清試料は、Treg注入の実施前(各グラフにおいて最も左側のデータポイント)及びTreg注入の実施後に採取された。該グラフでは、健常者対照のミーンアベレージIL-17C血清中濃度を、該ミーンアベレージの1標準偏差上及び下を表す一点鎖線の間の実線の直線として示す。
【0101】
図9図9:ノンレスポンダーのIL-17Cの血清中濃度(pg/mL)を示すグラフ。血清試料は、Treg注入の実施前(各グラフにおいて最も左側のデータポイント)及びTreg注入の実施後に採取された。該グラフでは、健常者対照のミーンアベレージIL-17C血清中濃度を、該ミーンアベレージの1標準偏差上及び下を表す一点鎖線の間の実線の直線として示す。
【0102】
図10図10:健常者対照における平均IL-17Cの血清中濃度と比較した、Treg注入の実施前(来院1)及びTreg注入の実施後(来院2~6)のノンレスポンダー及びレスポンダーにおけるミーンアベレージIL-17C血清中濃度(pg/mL)を表すグラフ。
【0103】
図11図11:健常者対照における平均OLR1血清中濃度と比較した、Treg注入の実施後のノンレスポンダー及びレスポンダーにおけるミーンアベレージOLR1血清中濃度(pg/mL)を表すグラフ。
【0104】
図12図12:健常者対照における平均OLR1血清中濃度と比較した、Treg注入の実施の前(来院1)及び後(来院2~11)のノンレスポンダー(対象201)及び2名のレスポンダー(対象202及び203)におけるNF-L血清中濃度(ng/mL)を表すグラフ。
【0105】
図13図13:健常者対照における平均ox-LDL血清中濃度と比較した、Treg注入の実施の前(来院1)及び後(来院2~6)のノンレスポンダー及びレスポンダーにおけるミーンアベレージox-LDL血清中濃度(U/L)を表すグラフ。
【0106】
図14図14:Treg注入(下向きの矢印によって示される)が患者に実施された週の経過(x軸)の間のALS患者におけるox-LDLの血清中濃度(上のパネル)及びALSFRSスコア(下のパネル)を表すグラフ。上のパネルにおいて、健常者対照のミーンアベレージox-LDL血清中濃度を、該ミーンアベレージの1標準偏差上及び下を表す一点鎖線の間の実線の直線として示す。
【0107】
図15図15:Treg注入(下向きの矢印によって示される)が患者に実施された週の経過(x軸)の間のALS患者におけるox-LDLの血清中濃度(上のパネル)及びALSFRSスコア(下のパネル)を表すグラフ。上のパネルにおいて、健常者対照のミーンアベレージox-LDL血清中濃度を、該ミーンアベレージの1標準偏差上及び下を表す一点鎖線の間の実線の直線として示す。
【0108】
図16図16:Treg注入(下向きの矢印によって示される)が患者に実施された週の経過(x軸)の間のALS患者におけるox-LDLの血清中濃度(上のパネル)及びAALSスコア(下のパネル)を表すグラフ。上のパネルにおいて、健常者対照のミーンアベレージox-LDL血清中濃度を、該ミーンアベレージの1標準偏差上及び下を表す一点鎖線の間の実線の直線として示す。
【0109】
図17図17A図17C:図17A:Treg注入(下向きの矢印によって示される)が患者に実施された週の経過(x軸)の間のALS患者におけるsCD14の血清中濃度(一番上のパネル)、LBP(上から2番目のパネル)、CRP(上から3番目のパネル)、及びALSFRSスコア(一番下のパネル)を表すグラフ。図17B:Treg注入(下向きの矢印によって示される)が患者に実施された週の経過(x軸)の間のALS患者におけるsCD14の血清中濃度(一番上のパネル)、LBP(上から2番目のパネル)、CRP(上から3番目のパネル)、及びALSFRSスコア(一番下のパネル)を表すグラフ。図17C:Treg注入(下向きの矢印によって示される)が患者に実施された週の経過(x軸)の間のALS患者におけるsCD14の血清中濃度(一番上のパネル)、LBP(上から2番目のパネル)、CRP(上から3番目のパネル)、及びALSFRSスコア(一番下のパネル)を表すグラフ。図17A図17Cのそれぞれにおいて:該グラフでは、健常者対照のミーンアベレージsCD14血清中濃度を、該ミーンアベレージの1標準偏差上及び下を表す平行な線の間の実線の直線として示す。
【0110】
図18図18A図18E:図18A:併用療法としてアバタセプト及びIL-2を投与された5名のALS患者のうちの一人であった対象1におけるox-LDL血清中濃度を表すグラフ。図18B:併用療法としてアバタセプト及びIL-2を投与された5名のALS患者のうちの一人であった対象2におけるox-LDL血清中濃度を表すグラフ。図18C:併用療法としてアバタセプト及びIL-2を投与された5名のALS患者のうちの一人であった対象3におけるox-LDL血清中濃度を表すグラフ。図18D:併用療法としてアバタセプト及びIL-2を投与された5名のALS患者のうちの一人であった対象4におけるox-LDL血清中濃度を表すグラフ。図18E:併用療法としてアバタセプト及びIL-2を投与された5名のALS患者のうちの一人であった対象5におけるox-LDL血清中濃度を表すグラフ。図18A図18Eのそれぞれにおいて:該グラフでは、健常者対照のミーンアベレージox-LDL血清中濃度を、該ミーンアベレージの1標準偏差上及び下を表す平行な線の間の実線の直線として示す。
【0111】
図19図19A図19E:図19A:併用療法としてアバタセプト及びIL-2を投与された5名のALS患者のうちの一人であった対象1における4-ヒドロキシノネナール(「4-HNE」)血清中濃度を表すグラフ。図19B:併用療法としてアバタセプト及びIL-2を投与された5名のALS患者のうちの一人であった対象2における4-HNE血清中濃度を表すグラフ。図19C:併用療法としてアバタセプト及びIL-2を投与された5名のALS患者のうちの一人であった対象3における4-HNE血清中濃度を表すグラフ。図19D:併用療法としてアバタセプト及びIL-2を投与された5名のALS患者のうちの一人であった対象4における4-HNE血清中濃度を表すグラフ。図19E:併用療法としてアバタセプト及びIL-2を投与された5名のALS患者のうちの一人であった対象5における4-HNE血清中濃度を表すグラフ。図19A図19Eのそれぞれにおいて:該グラフでは、健常者対照のミーンアベレージ4-HNE血清中濃度を、該ミーンアベレージの1標準偏差上及び下を表す平行な線の間の実線の直線として示す。
【発明を実施するための形態】
【0112】
(5.詳細な説明)
本明細書に示される実施例によって実証されるように、ALS患者由来の生体試料中の少なくとも1種の血清免疫ベースのバイオマーカーの濃度の上昇は、例えば、ALS患者において予想されるALSの進行、及び/又はALS療法に対するALS患者の予想される反応性、及び/又は該ALS患者に投与されているALS療法の有効性の指標となることができる。
【0113】
本明細書で提供される結果によって実証されるように、あるバイオマーカーの血清中レベルは、例えば、ALS療法、例えば、増殖させた制御性T-リンパ球(Treg)をALS患者に注入することを含むALS療法、及びCTLA-4融合タンパク質、例えば、アバタセプト、及びIL-2、例えば、アルデスロイキンをALS患者に投与することを含むALS療法の有効性及びそれに対する反応性をモニタリングするのに有用である。
【0114】
(用語)
【0115】
明記されているか又は文脈から明らかである場合を除き、本明細書で使用される場合、「1つの(a)」、「1つの(an)」、及び「前記/該(the)」という用語は、単数形又は複数形であると理解され、「1以上の」を意味する。
【0116】
「含む(include)」及び「などの(such as)」等の用語は、そうでないと具体的に示されている場合を除き、限定することなく含むことを伝えることが意図される。
【0117】
本明細書で使用される「約(about)」及び「約(approximately)」という用語は、交換可能であり、一般に、所与の数の周囲のある範囲の数、及び、記載される数の範囲内の全ての数を意味すると理解されるべきである(例えば、特に断りのない限り、「約5~15」は、「約5~約15」を意味する)。さらに、本明細書の全ての数値範囲は、該範囲内の各整数を含むよう理解されるべきである。特に、特に断りのない限り、当該用語は、所与の値又は範囲の±10%以内を意味する。整数が必要とされる場合には、当該用語は、最も近い整数に切り上げ又は切り下げされた、所与の値又は範囲の±10%以内を意味する。
【0118】
本明細書で使用される、「治療する(treat)」、「治療すること(treating)」、及び「治療(treatment)」という用語は、治療的処置(therapeutic treatment)を包含し得、ここで、目的は、疾患又は状態(例えば、ALS)に伴う望ましくない生理学的な変化を予防又は遅くする(減らす)ことである。有益な又は望まれる臨床結果としては、検出可能なものであれ検出不能なものであれ、症状の緩和、疾患又は状態(例えば、ALS)の進行の遅延化又は緩徐化、疾患又は状態(例えば、ALS)の程度の低下、疾患又は状態(例えば、ALS)の安定化(ここで、該疾患又は状態(例えば、ALS)は、悪化しない)、疾患又は状態(例えば、ALS)の改善又は緩和、及び疾患又は状態(例えば、ALS)の寛解(部分寛解であるか完全寛解であるかによらない)が挙げられるが、これらに限定されない。また、これらの用語は、治療を受けない場合の予想生存期間と比較して、生存時間を延長することを意味することもある。
【0119】
これらが用いられる具体的な文脈においてそうでないと示されている場合を除き、「個体」、「対象」、及び「患者」という用語は、本明細書で使用される場合交換可能であり、ヒトを含むが、これに限定されない。例えば、本明細書に記載される方法のある実施態様において、個体、対象、又は患者は、例えば、例えば、非ヒト霊長類、イヌ、ウサギ、ラット、マウス、又はヤギなどの哺乳動物である。ある実施態様において、個体、対象、又は患者は、ヒトである。
【0120】
(ALS患者)
【0121】
本明細書で提供される方法の実施態様において、「ALS患者」又は「ALSと診断された患者」は、筋萎縮性側索硬化症(ALS)又はALS関連疾患もしくは障害であると診断されている又はそうであると疑われている患者である。
【0122】
非限定的な例として、いくつかの実施態様において、前記ALS又はALS関連障害は、孤発性ALS、家族性ALS(FALS)、原発性側索硬化症(PLS)、手足発症型ALS(limb-onset ALS)、球麻痺発症型ALS(bulbar-onset ALS)、原発性側索硬化症、進行性筋萎縮症(PMA)、仮性球麻痺及び進行性球麻痺(PBP)、前頭側頭葉型認知症(FTD)、並びにALSプラス症候群(例えば、患者が、認知症、自律神経障害、及び感覚消失などの運動ニューロンの関与を超える追加の症状を示すもの)から選択することができる。
【0123】
いくつかの実施態様において、患者のALS(例えば、疾患状態、疾患進行、治療への反応)又はALS症状を、本明細書で開示される又は当技術分野において公知の任意の臨床基準を用いてモニタリングし得る。例えば、ミニメンタルステート検査(mini-mental state examination; MMSE)、Norrisスケール(Norris scale)、ALS重症度スケール(ALS severity scale)、Appel ALS(AALS)評価(Appel ALS (AALS) rating)、ALS機能評価スケール(ALS Functional Rating Scale; ALSFRS)、改定ALSFRS(ALSFRS-R)、正確な四肢等尺性筋力検査(Accurate Test of Limb Isometric Strength; (ATLIS);生存時間及び機能の複合評価(Combined Assessment of Survival and Function; CAFS)、電気インピーダンスミオグラフィー(EIM)、手持ち型筋力測定(Hand-Held Dynamometry; HHD)、運動単位数推定法(Motor Unit Number Estimation; MUNE);肺活量(VC)、努力性肺活量(FVC)、改訂長谷川式認知症評価スケール(Hasegawa dementia rating scale - revised; HDS-R)、前頭葉機能検査(frontal assessment battery; FAB)、モントリオール認知評価(Montreal cognitive assessment; MoCA)、ALS-前頭側頭型認知症-調査票(ALS-frontotemporal dementia-Questionnaire; ALS-FTD-Q)、病態失認スケール(anosognosia scale)、情動(うつ状態、感情鈍麻、及び認知症の行動・心理症状(BPSD)評価(affective (depression, apathy, and behavioral and psychological symptoms of dementia (BPSD) assessments)、並びに日常生活動作(ADL)評価などの、当技術分野において公知の又は本明細書で開示される任意の評価方法又は手段(例えば、臨床評定スケール)を用いて、患者のALS疾患又は症状をモニタリングし得る。認知スクリーナー、例えば、ACE-R、ALS-BCA、ALS-CBS、ECAS、FAB、MMSE、MoCA、PSSFTS、及びUCSF-SB)、並びに/又は行動スクリーナー、例えば、ALS-FTD-Q、AES、BBI、DAS、FBI、FrSBe、MiND-B、及びNPIなどのALS患者をスクリーニングするための追加のツール及び方法が、当技術分野において公知であり、それらを用いてもよい(Gosseltらの文献、Amyotroph. Lateral. Scler. Frontotemporal. Degener., 21(5-6): 324-336 (2020)を参照されたい)。
【0124】
ALSFRS-Rは、延髄(嚥下、発話)、巧緻運動及び全体運動機能、並びに呼吸を評価する。このスケールは、0から48までである。本明細書で提供される方法のある実施態様において、ALSの進行が、ALSFRS-Rによって評価され、ここで、ALSFRS-Rによって評価した場合の1か月あたり0.5ポイントを超える低下は、ALSの急速な進行であり;ALS患者の低下が、1か月あたり0.5ポイント以下である場合、該ALSは、緩徐進行性ALSである。
【0125】
ある実施態様において、ALSの進行は、FVCにより測定可能である。いくつかの実施態様において、1か月あたり3%を超える呼吸低下は、急速進行性ALSであり;3%以下の呼吸低下は、緩徐進行性ALSである。
【0126】
本明細書で提供される方法のある実施態様において、ALSの進行は、AALSによって評価することができ、例えば、ここで、急速進行性ALS患者は、1.5 AALSポイント/月以上の速度で減退し、緩徐進行性患者は、1.5 AALSポイント/月未満で進行する。
【0127】
本明細書においてALS患者を「レスポンダー」と呼ぶことは、例えば、本明細書で触れられたもの(例えば、ALSFRS/ALSFRS-R、AALS、FVCなど)のうちのいずれかなどのALSの進行を評価するための手段において改善又は少なくとも経時的に無減退によって示されるような、ALS療法、例えば、Treg注入(複数可)に対して反応性であるALS患者を意味する場合がある。ある実施態様において、「レスポンダー」は、ALS療法、例えば、Treg注入(複数可)が実施される前には急速進行性ALS(例えば、上記)であり、ALS療法、例えば、Treg注入(複数可)が実施された後には緩徐進行性ALSであるALS患者である。該ALS患者が「レスポンダー」であるために、ALS療法、例えば、Treg注入(複数可)後に「レスポンダー」において認められるALSの進行に関する任意のそのような改善又は無減退又は速度の低下が、永続的である必要はないことが理解されるであろう。
【0128】
本明細書で使用される、「ノンレスポンダー」は、ALS療法、例えば、Treg注入(複数可)に対する反応性を示さない患者であり、例えば、該Treg療法の一部としての追加のTreg注入にもかかわらず、ALSの進行を追跡する尺度(例えば、ALSFRS/ALSFRS-R、AALS、FVCなど)が低下し続けるであろう。
【0129】
ALS療法、例えば、Treg注入(複数可)が、「レスポンダー」に実施される場合には、許容し得る又は良好な有効性を有する場合があり、その一方で、同一のALS療法、例えば、Treg注入(複数可)が、「ノンレスポンダー」に実施される場合には、有効性が不十分である場合があることが理解されるであろう。
【0130】
いかなる理論や制限に束縛されるものではないが、Treg療法を受けた一部のALS患者で、少なくとも1種の血清免疫ベースバイオマーカーの血清中レベルが、上昇したままである場合があり、そのようなALS患者は、例えば、Treg療法の一部としての追加のTreg注入にもかかわらず、ALSの進行を追跡する尺度が低下し続けるであろうと考えられている。そのような患者にとって、該ALS療法は、有効性が不十分であると予測される。
【0131】
(生体試料及びバイオマーカー)
【0132】
本明細書で提供される方法の実施態様において、1種以上のバイオマーカーの濃度が、対象から採取された生体試料において決定される。
【0133】
ある実施態様において、前記生体試料は、尿、脳脊髄液、血液、又は血液成分(例えば、血清)とすることができる。
【0134】
ある実施態様において、前記生体試料は、血清である。
【0135】
バイオマーカーは、例えば、対象において、通常、例えば、神経炎症及び末梢免疫変化/炎症などを含む、該対象における炎症状態(又は炎症状態の変化)と相関する様式で変化する検出可能な濃度を有するタンパク質とすることができる。血清免疫ベースのバイオマーカーは、例えば、対象から採取された血清中で、少なくとも炎症(例えば、神経炎症、末梢免疫変化/炎症など)に関連する期間に検出可能である濃度を有するタンパク質とすることができる。
【0136】
本明細書で提供される方法のいくつかの実施態様において、少なくとも1種の血清免疫ベースの濃度は、基準濃度と比較して決定され、かつ/又は基準濃度と比較される。後述の実施例に記載されるものなどの例示的なバイオマーカーが、本明細書で開示される。本明細書で開示される任意のバイオマーカーを、提供される方法と共に用い得る。いくつかの実施態様において、前記バイオマーカーは、患者の血液中で又は血液成分(例えば、血清試料)中で検出及び/又は測定される。
【0137】
ある実施態様において、前記バイオマーカーは、酸化低密度リポタンパク質(ox-LDL)である。血漿又は血清中のox-LDLレベルの測定は、特に、それが、酸化ストレスの評価に関連するために、脂質障害(糖尿病など)、アテローム性動脈硬化症、及びさまざまな肝及び腎疾患の診断及び治療における臨床実践に組み込まれている。例えば、Nakhjavaniらの文献、「血清中酸化LDLは、最適化されたレベルのLDLコレステロールを維持することとは無関係に糖尿病の期間と関連する(Serum oxidized-LDL is associated with diabetes duration independent of maintaining optimized levels of LDL-cholesterol)」、 Lipids, 45(4):321-327 (2010);Steinbergの文献、「低密度リポタンパク質の酸化及びその病理生物学的な意義(Low density lipoprotein oxidation and its pathobiological significance)」、 J. Biol. Chem.、272(34):20963-20966 (1997)を参照されたい。血清ox-LDL試験サービス(例えば、Labcorp, Burlington NC)及びキット(例えば、酸化LDL ELISAキット (Fisher Scientific))が、商業的に利用可能である。
【0138】
ある実施態様において、前記バイオマーカーは、酸化低密度リポタンパク質受容体1(OLR1;例示的なOLR1配列については、例えば、UniProtKB/Swiss-Prot Accession P78380を参照されたい)である。また、OLR1は、当技術分野において、特に、レクチン型酸化LDL受容体1、LOX-1、LOXIN、SLOX1、スカベンジャー受容体クラスEメンバー1、SCARE1としても知られている。血清OLR1試験サービス(例えば、OLINK(登録商標)プラットフォーム(Olink, Boston MA)を用いる)及びキット(例えば、ヒトLOX-1/OLR1 DuoSet ELISA (R&D Systems))が、商業的に利用可能である。
【0139】
ある実施態様において、前記バイオマーカーは、可溶性CD14(sCD14)である。sCD14は、血液中の濃度が炎症に応答して増加するタンパク質のクラスである急性期タンパク質である。例えば、Basらの文献、「CD14は、急性期タンパク質である(CD14 is an Acute-Phase Protein)」、 J. Immunol., 172:4470-4479 (2004)を参照されたい。sCD14レベルを測定するためのヒトsCD14 ELISAキットが、商業的に利用可能である(例えば、Hycult Biotech Inc., Wayne PA;R&D Systems, Minneapolis MN))。
【0140】
ある実施態様において、前記バイオマーカーは、リポ多糖結合タンパク質(LBP;例示的なLBP配列については、例えば、UniProtKB Accession P18428 LBP_Humanを参照されたい)である。LBPレベルをアッセイするためのヒトLBP ELISAキットが、商業的に利用可能である(例えば、カタログ番号EH1560、 Wuhan Fine Biotech Co., Ltd., Wuhan, China;及びthe LBP DuoSet ELISA Kit, R&D Systems)。
【0141】
ある実施態様において、前記バイオマーカーは、ニューロフィラメント軽鎖(NF-L;例示的なNF-L配列については、例えば、UniProtKB Accession P07196 NFL_HUMANを参照されたい)である。NF-Lイムノアッセイキット及びアッセイ系が、商業的に利用可能であり(例えば、ELLA AUTOMATED IMMUNOASSAY SYSTEMにおける使用のためのSIMPLE PLEX HUMAN NF-L CARTRIDGE、 Bio-Techne, San Jose, CA)、血清試料中のNF-L を測定することができるいくつかのサービス(例えば、Labcorp, Burlington NC)も利用可能である。
【0142】
ある実施態様において、前記バイオマーカーは、C反応性タンパク質(CRP;例示的なCRP配列については、例えば、UniProtKB Accession P02741 CRP_HUMANを参照されたい)である。血清試料中のCRPレベルを測定するための商用のキット及びサービスが多数、利用可能である(例えば、CRP Quantikine ELISAキット、R&D Systems)。
【0143】
ある実施態様において、前記バイオマーカーは、4-ヒドロキシノネナール(4-HNE;CAS登録番号:75899-68-2)である。血清中の4-HNEレベルを測定するいくつかのイムノアッセイが、商業的に利用可能である。加えて、4-HNEは、通常の生理的条件において2分未満の比較的速い半減期を示すために、アッセイは、4-HNEのサロゲートとして4-HNEのタンパク質付加物のレベルを検出することができる。4-HNEのタンパク質付加物用のELISAキットが、商業的に利用可能である。血清中の4-HNE付加物のレベルを決定するためのアッセイが、例えば、Monroeらの文献、「生物学的材料中の4-ヒドロキシノネナールタンパク質付加物を決定するための高感度高再現性アッセイ(A Highly Sensitive, Reproducible Assay for Determining 4-hydroxynonenal Protein Adducts in Biological Material)」、 Bio Protoc. 9(19):e3383 (2019)に記載されている。
【0144】
ある実施態様において、前記バイオマーカーは、インターロイキン6(IL-6;例示的なIL-6配列については、例えば、UniProtKB Accession P05231 IL6_HUMANを参照されたい)である。血清中のIL-6の定量的検出を、市販の試薬、キット、及びプラットフォーム(例えば、COBAS Eイムノアッセイ分析装置での使用のためのELECSYS IL-6イムノアッセイ、Roche Diagnostics, Indianapolis IN)を用いて実施することができる。
【0145】
ある実施態様において、前記バイオマーカーは、インターロイキン17F(IL-17F;例示的な IL-17F配列については、例えば、UniProtKB Accession Q96PD4 IL17F_HUMANを参照されたい)である。血清中のIL-17Fレベルは、例えば、ALPHALISA Human IL-17F Detection Kit(Perkin Elmer, Santa Clara CA)を用いて決定することができる。
【0146】
ある実施態様において、前記バイオマーカーは、インターロイキン17C(IL-17C;例示的な IL-17C配列については、例えば、UniProtKB Accession Q9P0M4 IL17C_HUMANを参照されたい)である。血清中のIL-17Cを検出するための例示的な市販のキットは、SIMOA IL-17C Discovery Kit(Quanterix, Billerica MA)である。
【0147】
ある実施態様において、前記血清試料は、ALS療法の前に前記患者から採取される。
【0148】
ある実施態様において、前記血清試料は、Treg注入の前に前記患者から採取される。
【0149】
ある実施態様において、前記血清試料は、Treg注入が前記患者に実施された後に該患者から採取される。
【0150】
ある実施態様において、前記血清試料は、前記Treg注入の翌日に前記患者から採取される。
【0151】
本明細書で提供される方法のいくつかの実施態様において、前記少なくとも1種の血清免疫ベースのバイオマーカーは、ox-LDL、OLR1、sCD14、LBP、NF-L、CRP、4-HNE、IL-6、IL-17F、又はIL-17Cを含む。
【0152】
本明細書で提供される方法のいくつかの実施態様において、前記少なくとも1種の血清免疫ベースのバイオマーカーは、ox-LDL、OLR1、sCD14、LBP、CRP、IL-17F、又はIL-17Cを含む。
【0153】
本明細書で提供される方法のいくつかの実施態様において、前記少なくとも1種の血清免疫ベースのバイオマーカーは、ox-LDL、OLR1、sCD14、LBP、IL-17F、又はIL-17Cを含む。
【0154】
本明細書で提供される方法のいくつかの実施態様において、前記少なくとも1種の血清免疫ベースのバイオマーカーは、ox-LDL、OLR1、NF-L、IL-17F、又はIL-17Cを含む。
【0155】
本明細書で提供される方法のいくつかの実施態様において、前記少なくとも1種の血清免疫ベースのバイオマーカーは、ox-LDL、OLR1、IL-17F、又はIL-17Cを含む。
【0156】
本明細書で提供される方法のいくつかの実施態様において、前記少なくとも1種の血清免疫ベースのバイオマーカーは、ox-LDL、OLR1、sCD14、又はLBPを含む。
【0157】
ある実施態様において、前記少なくとも1種の血清免疫ベースのバイオマーカーは、ox-LDLを含む。ある実施態様において、前記少なくとも1種の血清免疫ベースのバイオマーカーは、OLR1を含む。ある実施態様において、前記少なくとも1種の血清免疫ベースのバイオマーカーは、sCD14を含む。ある実施態様において、前記少なくとも1種の血清免疫ベースのバイオマーカーは、IL-17Cを含む。ある実施態様において、前記少なくとも1種の血清免疫ベースのバイオマーカーは、IL-17Fを含む。ある実施態様において、前記少なくとも1種の血清免疫ベースのバイオマーカーは、LBPを含む。
【0158】
ある実施態様において、前記少なくとも1種の血清免疫ベースのバイオマーカーは、4-HNEを含む。
【0159】
ある実施態様において、前記少なくとも1種の血清免疫ベースのバイオマーカーは、ox-LDL、OLR1、sCD14、LBP、NF-L、IL-6、IL-17F、及びIL-17Cからなる群から選択される。ある実施態様において、前記少なくとも1種の血清免疫ベースのバイオマーカーは、ox-LDL、OLR1、sCD14、LBP、IL-17F、及びIL-17Cからなる群から選択される。ある実施態様において、前記少なくとも1種の血清免疫ベースのバイオマーカーは、ox-LDL、OLR1、sCD14、LBP、IL-6、IL-17F、及びIL-17Cからなる群から選択される。
【0160】
ある実施態様において、前記少なくとも1種の血清免疫ベースのバイオマーカーは、ox-LDL、OLR1、NF-L、IL-17F、及びIL-17Cからなる群から選択される。ある実施態様において、前記少なくとも1種の血清免疫ベースのバイオマーカーは、ox-LDL、OLR1、IL-17F、及びIL-17Cからなる群から選択される。ある実施態様において、前記少なくとも1種の血清免疫ベースのバイオマーカーは、ox-LDL、OLR1、sCD14、及びLBPからなる群から選択される。ある実施態様において、前記少なくとも1種の血清免疫ベースのバイオマーカーは、ox-LDL、OLR1、sCD14、IL-17F、及びIL-17Cからなる群から選択される。
【0161】
ある実施態様において、前記少なくとも1種の血清免疫ベースのバイオマーカーは、ox-LDL、OLR1、sCD14、LBP、NF-L、IL-6、4-HNE、IL-17F、及びIL-17Cからなる群から選択される。
【0162】
ある実施態様において、前記少なくとも1種の血清免疫ベースのバイオマーカーは、ox-LDL及びOLR1からなる群から選択される。
【0163】
ある実施態様において、前記少なくとも1種の血清免疫ベースのバイオマーカーは、ox-LDL及び4-HNEからなる群から選択される。
【0164】
提供される方法のいくつかの実施態様において、単一の血清免疫ベースのバイオマーカーの濃度が決定されかつ/又は基準濃度と比較される。ある実施態様において、少なくとも2種の血清免疫ベースのバイオマーカーの濃度がそれぞれ、決定されかつ/又は基準濃度と比較される。ある実施態様において、2種類の血清免疫ベースのバイオマーカーの濃度がそれぞれ、決定されかつ/又は基準濃度と比較される。ある実施態様において、少なくとも3種の血清免疫ベースのバイオマーカーの濃度がそれぞれ、決定されかつ/又は基準濃度と比較される。ある実施態様において、少なくとも4種の血清免疫ベースのバイオマーカーの濃度がそれぞれ、決定されかつ/又は基準濃度と比較される。ある実施態様において、少なくとも5種の血清免疫ベースのバイオマーカーの濃度がそれぞれ、決定されかつ/又は基準濃度と比較される。
【0165】
(基準濃度)
【0166】
バイオマーカーの濃度は、試料中の該バイオマーカーの濃度が、基準濃度と比較した場合に、基準濃度を超えている場合に、上昇していると決定することができる。本明細書に記載される例示的な方法において、少なくとも1種の血清免疫ベースのバイオマーカーの濃度が、決定されかつ/又は基準濃度と比較される。
【0167】
所与のバイオマーカー濃度は、該バイオマーカーに特有の基準濃度と比較されることが理解されるであろう。例えば、ox-LDL濃度は、ox-LDLについての基準濃度と比較され;IL-17F濃度は、IL-17Fについての基準濃度と比較され、任意のバイオマーカーについて同様である。
【0168】
ある実施態様において、基準濃度は、健康な個体から得る。
【0169】
ある実施態様において、基準濃度は、健康な個体のミーンアベレージ濃度である。
【0170】
いくつかの実施態様において、基準濃度は、健康な個体の群のミーンアベレージ濃度よりも1標準偏差大きい。
【0171】
いくつかの実施態様において、基準濃度は、健康な個体の群のミーンアベレージ濃度を包含するある範囲の濃度である。
【0172】
基準濃度に寄与する健康な個体の人数は、例えば、少なくとも3とすることができる。ある実施態様において、健康な個体の人数は、3から約10,000である。別の実施態様において、健康な個体の人数は、5~約1,000、又は8~40である。いくつかの実施態様において、前記基準濃度に寄与する健康な個体の人数は、少なくとも4名、少なくとも5名、少なくとも6名、少なくとも7名、少なくとも8名、少なくとも9名、少なくとも10名、少なくとも15名、少なくとも20名、少なくとも25名、少なくとも30名、少なくとも35名、少なくとも40名、少なくとも50名、少なくとも75名、少なくとも100名、少なくとも150名、少なくとも200名、少なくとも250名、少なくとも300名、少なくとも400名、少なくとも500名、少なくとも750名名、少なくとも1,000名、少なくとも2,000、又は少なくとも3,000名である。
【0173】
ある実施態様において、前記基準濃度は、前記ALS患者に年齢をマッチさせた健康な個体のものである。
【0174】
いくつかの実施態様において、基準濃度は、Treg療法に反応性のALS患者の群のミーンアベレージ濃度を包含するある範囲の濃度である。いくつかの実施態様において、基準濃度は、Treg療法に反応性のALS患者の群のミーンアベレージ濃度と該ミーンアベレージ濃度の1標準偏差上及び下を包含する濃度の範囲である。
【0175】
ある実施態様において、基準濃度が、範囲である場合、当該範囲の上限及び下限を含む当該範囲内である血清免疫ベースのバイオマーカーの濃度は、該基準濃度と同じであるか、又は、該基準濃度の1点である。
【0176】
提供される方法のある実施態様において、ox-LDL、OLR1、sCD14、LBP、NF-L、CRP、4-HNE、IL-6、IL-17F、又はIL-17Cを含む前記少なくとも1種の血清免疫ベースのバイオマーカーについての前記基準濃度は、下記:
【表5】
の通りである。
【0177】
ある実施態様において、基準濃度範囲は、以下:
【表6】
のようにすることができる。
【0178】
ある実施態様において、ox-LDLについての基準濃度は、48U/L、50U/L、52U/L、56.8U/L、60U/L、61U/L、63.8U/L、70U/L、75U/L、80U/L、90U/L、又は100U/Lとすることができる。
【0179】
ある実施態様において、OLR1についての基準濃度は、150ng/mL、160ng/mL、200pg/mL、250pg/mL、280pg/mL、290pg/mL、297pg/mL、299.6pg/mL、427.7pg/mL、430pg/mL、350pg/mL、360pg/mL、375pg/mL、400pg/mL、415pg/mL、425pg/mL、425pg/mL、又は450pg/mLとすることができる。
【0180】
ある実施態様において、sCD14についての基準濃度は、1.9ug/mL、2ug/mL、2.1ug/mL、2.25ug/mL、2.56ug/mL、2.7ug/mL、2.9ug/mL、又は3ug/mLとすることができる。
【0181】
ある実施態様において、LBPについての基準濃度は、5ug/mL、7ug/mL、9ug/mL、10ug/mL、12ug/mL、15ug/mL、17ug/mL、20ug/mL、20.18ug/mL、25ug/mL、27.66ug/mL、又は30ug/mLとすることができる。
【0182】
本明細書で提供される方法の実施態様において、NF-Lについての基準濃度は、0.3ng/mL、0.4ng/mL、0.41ng/mL、0.5ng/mL、0.6ng/mL、0.62ng/mL、0.7ng/mL、0.75ng/mL、0.79ng/mL、0.8ng/mL、0.82ng/mL、0.85ng/mL、0.88ng/mL、又は1.09ng/mLとすることができる。
【0183】
ある実施態様において、CRPについての基準濃度は、0.3ug/mL、0.5ug/mL、1ug/mL、1.08ug/mL、1.5ug/mL、1.8ug/mL、2ug/mL、又は2.12ug/mLとすることができる。
【0184】
ある実施態様において、4-HNEについての基準濃度は、0.5ug/mL、1ug/mL、1.5ug/mL、2.0ug/mL、2.5ug/mL、3.0ug/mL、3.5ug/mL、4ug/mL、4.5ug/mL、5ug/mL、5.5ug/mL、6ug/mL、6.5ug/mL、7ug/mL、7.5ug/mL、8ug/mL、8.5ug/mL、9ug/mL、9.5ug/mL、10ug/mL、10.5ug/mL、11ug/mL、11.5ug/mL、又は12ug/mLとすることができる。
【0185】
ある実施態様において、IL-6についての基準濃度は、2.46pg/mL、2.5pg/mL、2.8pg/mL、3pg/mL、3.2pg/mL、3.5pg/mL、3.7pg/mL、3.94pg/mL、4pg/mL、又は4.1pg/mLとすることができる。
【0186】
ある実施態様において、IL-17Fについての基準濃度は、0.01pg/mL、0.2pg/mL、0.27pg/mL、0.34pg/mL、0.5pg/mL、0.88pg/mL、1pg/mL、1.1pg/mL、1.5pg/mL、2pg/mL、2.45pg/mL、2.5pg/mL、3pg/mL、4pg/mL、又は4.5pg/mLとすることができる。
【0187】
ある実施態様において、IL-17Cについての基準濃度は、5pg/mL、5.5pg/mL、6pg/mL、7pg/mL、7.8pg/mL、8pg/mL、8.47pg/mL、10pg/mL、10.2pg/mL、11pg/mL、11.55pg/mL、12pg/mL、14pg/mL、15pg/mL、又は19pg/mLとすることができる。
【0188】
任意のバイオマーカーについて使用される基準濃度が、任意の他のバイオマーカーについて使用される基準濃度とは無関係であることが理解されるであろう。
【0189】
本明細書で提供される方法のある実施態様において、前記血清免疫ベースのバイオマーカーのそれぞれについての基準濃度を、以下:
【表7】
のようにすることができる。
【0190】
ある実施態様において、前記血清免疫ベースのバイオマーカーのそれぞれについての基準濃度は、以下の基準濃度セットのいずれかから選択される:
【表8】
【0191】
本明細書で提供される方法のいくつかの実施態様において、少なくとも1種のバイオマーカーの濃度が、基準濃度と比較され、ここで、該基準濃度は、ALS療法が実施される前の前記ALS患者由来の生体試料中の濃度である。ある実施態様において、前記基準濃度は、ALS療法が実施される前に前記ALS患者から採取された血清試料中の濃度である。ある実施態様において、前記基準濃度は、Treg注入が実施される前に前記ALS患者から採取された血清試料中の濃度である。
【0192】
さらに別の実施態様において、前記基準濃度は、Treg注入後に前記ALS患者から採取された血清試料中の濃度である。
【0193】
当技術分野において公知の任意の技術を採用して、生体試料中のバイオマーカー濃度を決定し得る。例として、バイオマーカーの濃度は、例えば、イムノアッセイによって決定することができる。生体試料中のバイオマーカーの濃度は、例えば、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)を用いて決定することができる。ELISAは、周知かつよく使用される分析用生化学アッセイである。バイオマーカーの濃度は、例えば、OLINKパネル(Olink Proteomics, Watertown, MA)で用いられる近接伸長アッセイ(PROXIMITY EXTENSION ASSAY;PEA)技術を用いて決定することができる。
【0194】
ある実施態様において、1リットルあたりのユニット数(U/L)で表されるox-LDL濃度の測定は、例えば、あらゆる目的のためにその全体が引用により本明細書に組み込まれるHolvoetらの文献、Clinical Chemistry、52(4):760-764 (2006)に記載されているように、モノクローナル抗体4E6を用いてなされる。4E6モノクローナル抗体に基づくキットが、Mercodia(Uppsala、スウェーデン)から市販されている。ある実施態様において、ox-LDL免疫反応性の1任意単位は、300ngと等価である。
【0195】
本明細書で提供される方法のいくつかの実施態様において、前記1種以上の血清免疫ベースのバイオマーカーの濃度は、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)を用いて決定される。
【0196】
(ALS療法)
【0197】
例えば、ALS患者をALS療法に選択する方法、ALS療法に対するALS患者の予想される反応性を予測するための方法、ALS療法の有効性をモニタリングするための方法などの、本明細書で提供される方法のある実施態様において、該ALS療法は、ALSを治療するためにALS患者に実施される任意の療法であり得る。
【0198】
本明細書で提供される方法のある実施態様において、該方法は、ALSを治療するために前記ALS療法を前記ALS患者に実施することを含むことができる。
【0199】
本明細書で提供される方法のいくつかの実施態様において、該方法は、前記ALS療法を試験する臨床試験において該ALS療法を前記ALS患者に実施することを含むことができる。
【0200】
ある実施態様において、ALS療法は、例えば、リルゾール(RILUTEK (登録商標))、TIGLUTIK (濃厚なリルゾール)、EXSERVAN (商標)(リルゾール経口フィルム)、BHV-0223(舌下リルゾール)、NUEDEXTA (登録商標)(デキストロメトルファンHBr及びキニジン硫酸塩)、ラブリズマブ-cwvz(ULTOMIRIS(登録商標))、間葉系幹細胞(MSC)-神経栄養因子(NTF)細胞(例えば、NUROWN(登録商標))、マシチニブ(経口チロシンキナーゼ阻害剤)、TOFERSEN (BIIB067、IONIS-SOD1Rx、Ionis Pharmaceuticals及びBiogen)、RADICAVA (商標)(エダラボン)、AMX0035 (Amylyx)、APB-102(Apic Bio)、H.P. ACTHAR GEL(Mallinckrodt Pharmaceuticals)、MN-166 (MediciNova)、GM-6(Genervon)、GILENYA (フィンゴリモド、ALS TDI)、ARIMOCLOMOL (Orph-001,Orphazyme)、NP001(Neuraltus)、VM202(VM Biopharma)、RELDESEMTIV (Cytokinetics)、NUROWN(BrainStorm Cell Therapeutics)、NSI-566(Neuralstem)、MEXILETINE、アカンプロセート、バクロフェン、シナカルセト、スルフイソオキサゾール、又はトラセミドとすることができる。
【0201】
本明細書で提供される方法のある実施態様において、前記ALS療法は、単独で又は第2の薬剤と組み合わせて投与することができるインターロイキン-2(「IL-2」)である。ある実施態様において、前記IL-2は、アルデスロイキンである。
【0202】
いくつかの実施態様において、前記ALS療法は、IL-2及びCTLA-4融合タンパク質、例えば、アバタセプトである。
【0203】
IL-2及びアバタセプト併用療法を実施する例示的な方法は、例えば、そのような方法のそれによる教示を目的として引用により本明細書に組み込まれる国際出願第PCT/US2022/019748号に記載されている。
【0204】
本明細書で提供される方法のある実施態様において、前記ALS療法は、Treg療法である。
【0205】
ある実施態様において、前記ALS療法は、Treg注入を含む。
【0206】
ある実施態様において、前記ALS療法は、複数回のTreg注入を含む。
【0207】
Treg療法をALS患者に実施することが、該疾患の進行速度を遅くすることが示されており、一部のALS患者におけるTreg抑制機能は、疾患進行の速度低下と相関している(Thonhoff, J.R.らの文献、2018、Neurology-Neuroimmunology Neuroinflammation 5(4):e465 (2018))。しかしながら、下記実施例において示されるように、全てのALS患者が、Treg療法に反応性であるわけではない。一態様において、Treg療法に反応性でありそうな又は反応性である患者(「レスポンダー」)、及びTreg療法に反応性ではなさそうな又は反応性ではない(「ノンレスポンダー」)患者を階層化する方法が、本明細書で提供される。
【0208】
本明細書で提供される特定の方法は、当技術分野において公知の又は本明細書で開示される任意の単離する工程、増殖させる工程、及びTreg療法を対象(例えば、ALS患者)に実施する工程を用いて実施し得る。Tregの集団を製造する、取得する、濃縮する、及びエクスビボで増殖させる例示的な方法が、特に、そのような方法のそれによる教示を目的として引用によりその全体が本明細書中に組み込まれている、国際PCT公開番号第WO2021113685A2号に記載されている。
【0209】
非限定的な例として、いくつかの実施態様において、前記ALS療法は、前記ALS患者から白血球細胞を採取すること(白血球アフェレーシス);該採取された白血球細胞由来のTregを単離し、エクスビボで増殖させること;及び該増殖させたTregを該ALS患者に静脈内投与(注入)することを含む。
【0210】
本明細書で提供される方法のある実施態様において、単回のTreg注入が、前記ALS患者に実施される。本明細書で提供される方法のいくつかの実施態様において、複数回のTreg注入が、前記ALS患者に実施される。
【0211】
特定の実施態様において、Tregは、IL-2と共に投与され得る。ある実施態様において、 IL-2が投与され、それにTreg投与が続く。いくつかの実施態様において、Treg投与(例えば、注入)は、IL-2と、例えば、皮下IL-2注射(複数可)と同時に実施することができる。
【0212】
いくつかの実施態様において、前記ALS療法は、エクスビボで増殖させたTregから誘導される抗炎症回復性細胞外ベシクル(EV)を含む。EVを調製するため及びEV療法を患者に実施するための例示的な方法が、例えば、特に、そのような組成物及び方法のそれによる教示を目的としてその全体が本明細書に組み込まれる国際出願第PCT/US2022/017990号に記載されている。
【0213】
(方法)
【0214】
一態様において、本明細書で提供されるのは、患者を筋萎縮性側索硬化症(ALS)療法に選択するための方法である。
【0215】
いくつかの実施態様において、患者をALS療法に選択するための方法は:(a)ALSと診断された又ALSであることが疑われる患者から採取された血清試料中のインターロイキン17F(IL-17F)の濃度を決定することであって、該血清試料中の該IL-17F濃度が、少なくとも2.0pg/mLである場合には、該患者が、該ALS療法での治療から除外され、そうでない場合には、該患者が、該ALS療法での該治療に選択される、前記決定すること;及び(b)該ALS療法を該選択された患者に実施することを含む。
【0216】
一態様において、本明細書で提供されるのは、患者においてALSを治療する方法である。
【0217】
いくつかの実施態様において、ALSを治療する方法は:ALSと診断された患者にALS療法を実施することを含み、ここで、該患者から採取された血清試料が、2.0pg/mL未満のIL-17F濃度を有していることが決定されている。
【0218】
いくつかの実施態様において、患者をALS療法に選択するための方法は:(a)ALSと診断された又ALSであることが疑われる患者から採取された血清試料中の少なくとも1種の血清免疫ベースのバイオマーカーの濃度が、基準濃度未満であるか、それに等しいか、又はそれを超えているかを決定することであって、該少なくとも1種の血清免疫ベースのバイオマーカーが、IL-17F、酸化低密度リポタンパク質受容体1(OLR1)、ニューロフィラメント軽鎖(NF-L)、酸化低密度リポタンパク質(ox-LDL)、又はインターロイキン17C(IL-17C)であり;かつ該少なくとも1種の血清免疫ベースのバイオマーカーの該濃度が、該基準濃度を超えている場合には、該患者が、該ALS療法での治療から除外され、そうでない場合には、該患者が、該ALS療法での該治療に選択される、前記決定すること;及び(b)該ALS療法を該選択された患者に実施することを含む。
【0219】
いくつかの実施態様において、ALSを治療する方法は:ALSと診断された患者にALS療法を実施することを含み、ここで、該患者から採取された血清試料は、基準濃度未満又はそれと等しい濃度の少なくとも1種の血清免疫ベースのバイオマーカーを含有していることが決定されており、該少なくとも1種の血清免疫ベースのバイオマーカーは、IL-17F、OLR1、NF-L、ox-LDL、又はIL-17Cである。
【0220】
本明細書で提供される方法のいくつかの実施態様において、ox-LDL、OLR1、NF-L、IL-17F、又はIL-17Cを含む前記少なくとも1種のバイオマーカーについての基準濃度は、下記:
【表9】
の通りである。
【0221】
一態様において、本明細書で提供されるのは、ALSを治療するTreg療法の有効性をモニタリングする方法である。
【0222】
いくつかの実施態様において、Treg療法の有効性をモニタリングする方法は:(a)ALSと診断された患者にTreg療法を実施することであって、該Treg療法が、1回以上のTreg注入を含む、前記実施すること;及び(b)Treg注入後に該患者から採取された血清試料中の少なくとも1種の血清免疫ベースのバイオマーカーの濃度が、基準濃度未満であるか、それに等しいか、又はそれを超えているかを決定することであって、該少なくとも1種の血清免疫ベースのバイオマーカーが:ox-LDL、OLR1、sCD14、LBP、CRP、4-HNE、IL-17F、又はIL-17Cを含む、前記決定することを含み;ここで、該少なくとも1種の血清免疫ベースのバイオマーカーの該濃度が、その基準濃度を超えている場合、該ALS療法は、有効性が不十分である。
【0223】
いくつかの実施態様において、前記少なくとも1種の血清免疫ベースのバイオマーカーの濃度が、その基準濃度よりも2倍超高い、3倍超高い、4倍超高い、5倍超高い、6倍超高い、7倍超高い、8倍超高い、9倍超高い、10倍超高い、又は20倍超高い場合、前記ALS療法は、有効性が不十分である。
【0224】
いくつかの実施態様において、ALSを治療する方法は:(a)Treg注入をALSと診断された患者に実施すること;(b)該Treg注入後に該患者から得た血清試料中の少なくとも1種の血清免疫ベースのバイオマーカーの濃度を基準濃度と比較することであって、該少なくとも1種類の免疫ベースのバイオマーカーが、ox-LDL、OLR1、sCD14、LBP、CRP、4-HNE、IL-17F、又はIL-17Cを含む、前記比較すること;及び(c)該少なくとも1種の血清免疫ベースのバイオマーカーの該濃度が、該基準濃度と等しいか又はそれを下回る場合に、複数回のTreg注入を含むALS療法を該患者に実施することを含む。
【0225】
いくつかの実施態様において、本明細書で提供されるのは、Treg療法で患者を治療するための方法であって、該患者が、ALSを患っている、前記方法である。
【0226】
ある実施態様において、前記方法は:(a)異なる日に前記患者に実施されるTreg注入を含むTreg療法を該患者に実施すること;(b)血清試料中の少なくとも1種の血清免疫ベースのバイオマーカーの濃度を、基準濃度と比較することであって、該血清試料のそれぞれが、Treg注入後に該患者から得るものであり、前記少なくとも1種の血清免疫ベースのバイオマーカーが、ox-LDL、OLR1、sCD14、LBP、CRP、4-HNE、IL-17F、又はIL-17Cを含む、前記比較すること;及び(c)該少なくとも1種の血清免疫ベースのバイオマーカーの該濃度が、前記血清試料のうちの全て又は少なくとも50%において、該基準濃度以下である場合に、工程(b)の後に該患者に対してTreg注入を実施することを含む該Treg療法を継続することを含む。
【0227】
いくつかの実施態様において、本明細書で提供されるのは、ALSと診断された患者においてALSを治療するための方法であって:(a)ALSと診断された患者から得た血清試料中の少なくとも1種の血清免疫ベースのバイオマーカーの濃度が、該少なくとも1種の血清免疫ベースのバイオマーカーの基準濃度以下であるか否かを決定することであって、該血清試料が、Treg注入が実施された後に該患者から得るものであり、該少なくとも1種の血清免疫ベースのバイオマーカーが、ox-LDL、OLR1、sCD14、LBP、CRP、4-HNE、IL-17F、又はIL-17Cを含む、前記決定すること;及び(b)該少なくとも1種の血清免疫ベースのバイオマーカーの該濃度が、その基準濃度以下であると決定される場合に、該患者に複数回のTreg注入を含むTreg療法を実施することを含む、前記方法である。
【0228】
提供される方法のいくつかの実施態様において、前記少なくとも1種の血清免疫ベースのバイオマーカーについての前記基準濃度は、健康な個体から得る。
【0229】
提供される方法の別の実施態様において、前記少なくとも1種の血清免疫ベースのバイオマーカーについての前記基準濃度は、前記患者にTreg注入が実施される前に該患者から得た血清試料中の濃度である。
【0230】
提供される方法のさらに別の実施態様において、ox-LDL、OLR1、sCD14、LBP、CRP、4-HNE、IL-17F、又はIL-17Cを含む前記少なくとも1種の血清免疫ベースのバイオマーカーについての前記基準濃度は、下記:
【表10】
の通りである。
【0231】
一態様において、本明細書で提供されるのは、患者のALS療法に対する予想される反応性を予測するための方法である。
【0232】
いくつかの実施態様において、前記方法は、(a)ALSと診断された患者から血清試料を採取すること;及び(b)少なくとも1種の血清免疫ベースのバイオマーカーの濃度を基準濃度と比較することを含み;ここで、該少なくとも1種の血清免疫ベースのバイオマーカーの該濃度が、その基準濃度を超えている場合に、該患者は、該ALS療法に対して非反応性でありそうだと予測される。
【0233】
ある実施態様において、前記血清試料は、Treg注入後に前記患者から採取される。
【0234】
ある実施態様において、前記方法は、前記少なくとも1種の血清免疫ベースのバイオマーカーの前記濃度が、その基準濃度と同じもしくはそれ未満であるか、又はその基準濃度範囲内であるかもしくはそれを下回る場合に、ALS療法を試験する臨床試験に前記患者を登録することをさらに含む。
【0235】
ある実施態様において、前記方法は、前記少なくとも1種の血清免疫ベースのバイオマーカーの前記濃度が、その基準濃度と同じもしくはそれ未満であるか、又はその基準濃度範囲内であるかもしくはそれを下回る場合に、前記ALS療法を前記患者に実施することをさらに含む。
【0236】
ある実施態様において、前記少なくとも1種のバイオマーカーの前記濃度が、その基準濃度を超えている場合に、前記患者は、ALS療法に対して非反応性であると予測される。いくつかの実施態様において、前記少なくとも1種のバイオマーカーの前記濃度が、その基準濃度よりも2倍超高い、3倍超高い、4倍超高い、5倍超高い、6倍超高い、7倍超高い、8倍超高い、9倍超高い、10倍超高い、又は20倍超高い場合に、前記患者は、ALS療法に対して非反応性でありそうだと予測される。
【0237】
一態様において、本明細書で提供されるのは、ALSと診断された患者において予想されるALSの進行を評価する方法である。
【0238】
いくつかの実施態様において、前記方法は、前記ALSと診断された患者から得た血清試料中の少なくとも1種の血清免疫ベースのバイオマーカーの濃度を、健康な個体から得られる基準濃度と比較すること;並びに該少なくとも1種の血清免疫ベースのバイオマーカーの該濃度が、基準濃度と比較して上昇している場合に、予想されるALSの進行を急速であると評価すること、及び該少なくとも1種の血清免疫ベースのバイオマーカーの該濃度が、その基準とされる濃度以下である場合に、予想されるALSの進行を緩徐であると評価することを含む。
【0239】
ある実施態様において、前記方法は、前記ALSが、急速に進行すると評価される場合に、前記患者にALS療法を実施する実施することをさらに含む。
【0240】
ある実施態様において、本明細書で提供されるのは、ALS患者を治療するための方法であって、該ALS患者にALS療法を実施すること;該ALS療法に対する該ALS患者の反応性を評価すること;及び(i)該ALS患者が、該ALS療法に対して反応性であると評価される場合に、該ALS療法を該ALS患者に実施することを継続すること又は(ii)該ALS患者が、該ALS療法に対して非反応性であると評価される場合に、該ALS療法を該ALS患者に実施することを中断することを含み;該ALS療法に対する該ALS患者の該反応性が、免疫ベースのバイオマーカーの血清中濃度を、基準濃度と比較することを含み、該免疫ベースのバイオマーカーの該血清中濃度が、該ALS患者から採取された後続の血清試料において低下しているか又は前記基準濃度以内に留まっている場合には、該ALS患者が、該ALS療法に対して反応性であると評価され、そうでない場合には、該ALS患者が、該ALS療法に対して非反応性であると評価される、前記方法である。
【0241】
ある実施態様において、前記ALS療法に対する前記ALS患者の前記反応性は、2種以上の免疫ベースのバイオマーカーのセットのうちの各免疫ベースのバイオマーカーについて、免疫ベースのバイオマーカーの血清中濃度を、基準濃度と比較することを含み、該2種以上の免疫ベースのバイオマーカーのセットのうちの各免疫ベースのバイオマーカーの該血清中濃度が、該ALS患者から採取された後続の血清試料において低下しているか又は前記基準濃度以内に留まっている場合には、該ALS患者は、該ALS療法に対して反応性であると評価され、そうでない場合には、該ALS患者は、該ALS療法に対して非反応性であると評価される。いくつかの実施態様において、前記2種以上の免疫ベースのバイオマーカーのセットは、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10種の免疫ベースのバイオマーカーを含む。
【0242】
ある実施態様において、前記ALS療法に対する前記ALS患者の前記反応性は、免疫ベースのバイオマーカーのセットのうちの各免疫ベースのバイオマーカーについて、免疫ベースのバイオマーカーの血清中濃度を、基準濃度と比較することを含み、該免疫ベースのバイオマーカーのセットのうちの少なくとも50%の免疫ベースのバイオマーカーの血清中濃度が、該ALS患者から採取された後続の血清試料において低下しているか又は前記基準濃度以内に留まっている場合には、該ALS患者は、該ALS療法に対して反応性であると評価され、そうでない場合には、該ALS患者は、該ALS療法に対して非反応性であると評価される。いくつかの実施態様において、前記免疫ベースのバイオマーカーのセットは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10種類の免疫ベースのバイオマーカーを含む。
【0243】
「後続の血清試料」が、異なる日に、例えば、病院、臨床診療所、又は血液試料が前記ALS患者から採取される任意の場所への異なる訪問機会に、前記ALS患者から採取される血清試料を意味することが理解されるであろう。例えば、「少なくとも1つの後続の血清試料」は、最初の又は第1の血清試料が前記ALS患者から採取された日の後の日に採取される血清試料を意味する。ある実施態様において、後続の血清試料は、少なくとも2つの血清試料を含む。ある実施態様において、後続の血清試料は、少なくとも3つの血清試料を含む。ある実施態様において、後続の血清試料は、少なくとも4つの血清試料を含む。ある実施態様において、後続の血清試料は、少なくとも5つの血清試料を含む。ある実施態様において、後続の血清試料は、少なくとも6つの血清試料を含む。ある実施態様において、後続の血清試料は、少なくとも7つの血清試料を含む。
【0244】
ある実施態様において、前記免疫ベースのバイオマーカーの血清中濃度が、前記ALS患者から採取された3つ以上の後続の血清試料の過半数において、低下しているか又は前記基準濃度以内に留まっている場合に、該ALS患者は、前記ALS療法に対して反応性であると評価される。
【0245】
ある実施態様において、前記ALS患者のALS療法に対する反応性を、後続の血清試料において1種以上の免疫ベースのバイオマーカーのそれぞれの血清中濃度を、該1種以上の免疫ベースのバイオマーカーのそれぞれについての基準濃度と比較することによって評価する場合であって、該後続の血清試料の過半数が、最初の血清試料中の濃度と比較して濃度の低下を示す場合、又は後続の血清試料の過半数が、基準濃度に留まっている場合には、該ALS患者を、該ALS療法に対して反応性であると評価することができることが理解されるであろう。
【0246】
後続の血清試料は、例えば、連続する(consecutive)ものとすることができる。いくつかの実施態様において、前記後続の血清試料は、非連続のものである。
【0247】
ある実施態様において、血清試料は、ALS療法が前記ALS患者に実施される日と同日に採取される。ある実施態様において、血清試料は、ALS療法が前記ALS患者に実施される日の1、2、3、4、5、6、又は7日後に採取される。
【0248】
ある実施態様において、ALS療法が実施された後に採取される前記最初の血清試料は、ALS療法が前記ALS患者に実施される日と同日に採取される。ある実施態様において、前記最初の血清試料は、ALS療法が実施された後に採取される血清試料は、ALS療法が前記ALS患者に実施される日の1、2、3、4、5、6、又は7日後に採取される。
【0249】
ある実施態様において、1つ以上の後続の血清試料が、1、2、3、4、5、6、又は7日間、1週間、2週間、3週間、又は4週間の間を空けて採取される。
【0250】
ある実施態様において、本明細書で提供されるのは、ALS患者を治療するための方法であって、第1のALS療法を該ALS患者に実施すること;該第1のALS療法に対する該ALS患者の反応性を評価すること;及び(i)該ALS患者が、該第1のALS療法に対して反応性であると評価される場合に、該第1のALS療法を該ALS患者に投与し続けること、又は(ii)該ALS患者が、該第1のALS療法に対して反応性ではないと評価される場合に、該第1のALS療法の該ALS患者への投与を中断すること及び第2のALS療法を該患者に実施することを含み、該第1及び第2のALS療法が、異なるALS療法であり;該第1のALS療法に対する該ALS患者の反応性が、免疫ベースのバイオマーカーの血清中濃度を、基準濃度と比較することを含み、かつ該免疫ベースのバイオマーカーの該血清中濃度が、該ALS患者から採取された後続の血清試料において低下しているか又は前記基準濃度以内に留まっている場合には、該ALS患者が、該第1のALS療法に対して反応性であると評価され、そうでない場合には、該ALS患者が、該第1のALS療法に対して非反応性であると評価される、前記方法である。
【0251】
ある実施態様において、前記第1及び/又は第2のALS療法は、1回以上のTreg注入を前記患者に実施することを含む。
【0252】
ある実施態様において、前記第1及び/又は第2のALS療法は、CTLA-4融合タンパク質及びIL-2を前記患者に投与することを含む。いくつかの実施態様において、前記CTLA-4融合タンパク質は、アバタセプトである。ある実施態様において、前記IL-2は、アルデスロイキンである。
【0253】
ある実施態様において、前記第1及び/又は第2のALS療法は、1回以上のTreg細胞外ベシクル(EV)、例えば、エキソソーム注入を前記患者に実施することを含む。
【0254】
ある実施態様において、本明細書で提供されるのは、ALSと診断された患者においてALSを治療するための方法であって:第1のALS療法を該ALS患者に実施すること;該第1のALS療法に対する該ALS患者の反応性を評価すること;及び該ALS患者が、該第1のALS療法に対して反応性であると評価される場合に、該第1のALS療法を該ALS患者に実施し続けることを含み、該ALS療法に対する該ALS患者の該反応性が、少なくとも1種類の免疫ベースのバイオマーカーの血清中濃度を、該少なくとも1種類の免疫ベースのバイオマーカーの基準濃度と比較することを含み、該免疫ベースのバイオマーカーの該血清中濃度が、該ALS患者から採取された少なくとも1つの後続の血清試料において、低下しているか又は該基準濃度以内に留まっている場合に、該ALS患者が、該第1のALS療法に対して反応性であると評価される、前記方法である。
【0255】
上記ALSを治療するための方法の特定の実施態様において、患者が、前記第1のALS療法に反応性ではないと判明した場合に、該方法は、該患者に第2のALS療法を実施することをさらに含む。具体的な実施態様において、前記方法は、前記第2のALS療法を前記ALS患者に実施することの後に、該ALS患者の該第2のALS療法に対する反応性を評価すること、及び該ALS患者が、該第2のALS療法に対して反応性であると評価される場合に、該第2のALS療法を該ALS患者に実施し続けることをさらに含んでいてもよく、ここで、該ALS療法に対する該ALS患者の該反応性は、少なくとも1種類の免疫ベースのバイオマーカーの血清中濃度を、該少なくとも1種類の免疫ベースのバイオマーカーの基準濃度と比較することを含み、該免疫ベースのバイオマーカーの該血清中濃度が、該ALS患者から採取された少なくとも1つの後続の血清試料において、低下しているか又は該基準濃度以内に留まっている場合に、該ALS患者は、該第2のALS療法に対して反応性であると評価される。
【0256】
ある実施態様において、前記第1又は第2のALS療法は、1回以上のTreg注入を前記患者に実施することを含む。
【0257】
ある実施態様において、前記第1又は第2のALS療法は、CTLA-4融合タンパク質及びIL-2を前記患者に投与することを含む。いくつかの実施態様において、前記CTLA-4融合タンパク質は、アバタセプトである。ある実施態様において、前記IL-2は、アルデスロイキンである。
【0258】
ある実施態様において、前記第1又は第2のALS療法は、1回以上のTreg細胞外ベシクル(EV)、例えば、エキソソーム注入を前記患者に実施することを含む。
【0259】
ある実施態様において、本明細書で提供されるのは、ALS患者を治療するための方法であって、ALS療法の組合せを該ALS患者に実施すること;該ALS患者の該実施されたALS療法の組合せに対する反応性を評価すること;及び該ALS患者が、該ALS療法の組合せに反応性であると評価される場合に、該ALS療法の組合せを該ALS患者に実施し続けることを含み;該ALS患者の該ALS療法の組合せに対する反応性が、1種以上の免疫ベースのバイオマーカーの血清中濃度を基準濃度と比較することを含み、該ALS患者から採取された後続の血清試料において、該1種以上の免疫ベースのバイオマーカーの該血清中濃度が、低下しているか又はそのそれぞれの基準濃度以内に留まっている場合に、該ALS患者が、該ALS療法に対して反応性であると評価される、前記方法である。
【0260】
本明細書で提供される方法のある実施態様において、前記ALS患者のALS療法に対する又はALS療法の組合せに対する反応性は、複数の免疫ベースのバイオマーカーの血清中濃度をそれらの基準濃度と比較することを含み、後続の血清試料において、該複数の免疫ベースのバイオマーカーの該血清中濃度が、低下している又はそれらそれぞれの基準濃度以内に留まっている場合に、該ALS患者は、該ALS療法又はALS療法の組合せに対して反応であると評価される。いくつかの実施態様において、前記複数の免疫ベースのバイオマーカーは、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10種のバイオマーカーを含む。免疫ベースのバイオマーカーは、例えば、本明細書に記載される血清免疫ベースのバイオマーカーのいずれかとすることができる。
【0261】
本明細書で提供されるALS患者をALS療法(例えば、Treg療法)で治療するための方法のさらに別の実施態様において、該方法は、追加の治療介入を行うことをさらに含む。追加の治療介入は、例えば、人工呼吸器の使用、車椅子の使用、呼吸ケア、理学療法(例えば、疼痛、歩行、移動能力、低衝撃運動を扱う)、作業療法、言語療法、経皮的内視鏡的胃瘻造設術(PEG)、並びに対症療法(例えば、筋けいれん、唾液分泌過多、情動調節障害、認知障害、及びうつ状態の医学的管理)とすることができる。
【0262】
いくつかの実施態様において、本明細書で提供されるのは、ALS患者を治療する方法であって、ALS療法を該患者に実施することであって、該ALS療法が、IL-2、例えば、アルデスロイキン及びCTLA-4融合タンパク質、例えば、アバタセプトを併用療法として該患者に投与することを含む、前記実施すること、該ALS療法に対する該ALS患者の反応性を評価することであって、(i)血清免疫ベースのバイオマーカーの濃度が、該ALS療法が該ALS患者に実施された2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12週、又はそれを超える期間にわたって低下する場合、又は該血清免疫ベースのバイオマーカーの濃度が、該ALS療法が該ALS患者に実施された2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12週、又はそれを超える期間にわたって基準濃度範囲内で上昇したままである場合に、該患者は、該ALS療法に対して反応性であり;(ii)該血清免疫ベースのバイオマーカーの濃度が、該ALS療法が該ALS患者に実施された2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12週、又はそれを超える期間にわたって増加する場合、又は該血清免疫ベースのバイオマーカーの濃度が、該ALS療法が該ALS患者に実施された2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12週、又はそれを超える期間にわたって基準濃度範囲を超えて上昇したままである場合に、該患者は、該ALS療法に対して非反応性である、前記評価すること;及び、任意に、該ALS患者が、該ALS療法に対して反応性であると評価される場合に、該ALS療法を該ALS患者にさらに実施することを含む、前記方法である。前記血清免疫ベースのバイオマーカーは、例えば、本明細書に記載される任意の血清免疫ベースのバイオマーカーとすることができる。ある実施態様において、前記血清免疫ベースのバイオマーカーは、ox-LDLである。ある実施態様において、前記血清免疫ベースのバイオマーカーは、4-HNEである。
【0263】
いくつかの実施態様において、本明細書で提供されるのは、ALS患者を治療する方法であって、ALS療法を該患者に実施することであって、該ALS療法が、Treg EV、例えば、Tregエキソソーム組成物を該患者に投与することを含む、前記実施すること、該ALS患者の該ALS療法に対する反応性を評価することであって、(i)血清免疫ベースのバイオマーカーの濃度が、該ALS療法が該ALS患者に実施された2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12週、又はそれを超える期間にわたって低下する場合、又は該血清免疫ベースのバイオマーカーの濃度が、該ALS療法が該ALS患者に実施された2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12週、又はそれを超える期間にわたって基準濃度範囲内で上昇したままである場合に、該患者が、該ALS療法に対して反応性であり;(ii)該血清免疫ベースのバイオマーカーの濃度が、該ALS療法が該ALS患者に実施された2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12週、又はそれを超える期間にわたって増加する場合、又は該血清免疫ベースのバイオマーカーの濃度が、該ALS療法が該ALS患者に実施された2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12週、又はそれを超える期間にわたって基準濃度範囲を超えて上昇したままである場合に、該患者が、該ALS療法に対して非反応性である、前記評価すること;及び、任意に、該ALS患者が、該ALS療法に対して反応性であると評価される場合に、該ALS療法を該ALS患者にさらに実施することを含む、前記方法である。血清免疫ベースのバイオマーカーは、例えば、本明細書に記載される任意の血清免疫ベースのバイオマーカーとすることができる。ある実施態様において、前記血清免疫ベースのバイオマーカーは、ox-LDLである。ある実施態様において、前記血清免疫ベースのバイオマーカーは、4-HNEである。
【0264】
本明細書に記載される前述の態様及び方法のいくつかの実施態様において、本明細書で開示されるバイオマーカーのほかに、1種以上の追加のバイオマーカー(血清免疫ベースのバイオマーカーなど)が採用されることが想定される。
【実施例
【0265】
(6. 実施例)
(6.1 バイオマーカー濃度の評価)
血清中のバイオマーカー濃度を、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)によって、又はOLINK PROTEOMICS (Watertown, MA)によって実施される分析サービス(OLINK TARGET 48)を用いて決定した。血清は、筋萎縮性側索硬化症(ALS)と診断された者、健康な志願者、及び認知症(アルツハイマー病)、前頭側頭型認知症、又はパーキンソン病と診断された者を含む者の群から得た。以下において、所与のバイオマーカー濃度が、ALS療法の前のALS患者(「未治療患者」)において決定された場合、これは、「ベースライン値」と呼ばれる。
【0266】
(6.2 ALS療法: T制御性細胞(Treg))
ALSと診断された8名の患者に、Treg注入を含むALS療法を実施した。組み入れ基準には、特に、インフォームドコンセント及びスクリーニング前の90日間での少なくとも2ポイントの又はスクリーニング前の180日間での少なくとも4ポイントのALSFRS-R総スコアの低下の書面による医療記録を含めた。Treg療法は、T制御性細胞(Treg)を前記患者から採取すること(白血球アフェレーシス)、実験室で細胞数を増加させること、及び月1回の静脈内(IV)注入において該Treg(1×106細胞/kgの用量)を同患者に戻すことと、1週間あたり3回の皮下インターロイキン-2注射とを含む。患者から、通常、Treg注入の1日後に採取された血清中のバイオマーカー濃度を決定した。患者のTreg数及び抑制機能もアッセイした。
【0267】
患者を、有害作用及び疾患進行速度の変化に関して入念にモニタリングした。治療に対する該ALS患者の反応性をモニタリングするために、筋力及び筋機能障害、日常生活動作、並びに肺機能を組み入れているALS機能評価スケール改訂版(the revised ALS Functional Rating Scale)(ALSFRS)及び/又はAppel ALS評価スケール(AALS) (Haverkampらの文献:Brain, 118(Pt 3): 707-19(1995))を、各Treg注入の直前に行い、各注入ラウンドの間は2週間毎に、及び各ラウンドの後は月1回で行った。
【0268】
(6.3 バイオマーカーパネル: ある特定のバイオマーカーは、ALSの進行と相関する)
血清を、8名の急速進行性未治療ALS患者(「急速ALS患者」)及び8名の緩徐進行性未治療ALS患者(「緩徐ALS患者」)、並びに9名の年齢をマッチさせた健常者対照(「健常者対照」)から採取した。該血清中のバイオマーカー濃度を、一連の48種のバイオマーカーに関して決定した。該バイオマーカーの一部は、血清中で検出不可能であったが、検出可能なレベルの43種のバイオマーカーが観察された。
【0269】
これらのバイオマーカーのうちのいくつかは、前記3つの群の間で差異が認められない濃度を有していたが、本明細書で提供される結果は、図1A(IL-17C)、図1B(IL-6)、及び図1C(OLR1)に示されるように、健常者対照と比較してより急速なALSの進行と相関するより高いバイオマーカー濃度が観察されたIL-17C、IL-6、及びOLR1を含む代表的なバイオマーカーを示す。
【0270】
また、13名の急速進行性ALS患者、17名の緩徐進行性ALS患者、及び10名の年齢をマッチさせた対照から採取した血清試料中の酸化LDL(ox-LDL)も測定した。図2Aに示されるように、急速進行性患者由来の血清中のox-LDLは、緩徐進行性患者(n=17、p<0.001)又はHC(p<0.001)と比較して上昇しており[F(2,37)=49.78,p<0.001];緩徐進行性患者由来の血清中のox-LDLは、HC(p=0.243)と比較して増加していなかった。また、図2Bに示されるように、血清試料を、アルツハイマー病(AD)及び軽度認知障害(MCI)の患者から採取し、ox-LDLのレベルを、健常者対照のものと比較した。比較は、3群以上の場合は分散分析、2群の場合はスチューデントのt検定を用いて行った。分散分析は、自由度、F値、及びP値を用いて表される。スチューデントのt検定は、P値を用いて表される。
【0271】
未治療ALS患者(前述のパラグラフで示した者及び/又は追加の試験の者を含む)から採取した個々の血清試料においてバイオマーカーの濃度レベルを決定する場合、疾患負荷、進行速度、及び/又は生存率と相関していると思われる血清中濃度を未治療ALS患者において有するバイオマーカーとしては、IL-17C、IL-6、OLR1、ox-LDL、sCD14、LBP、及びCRPが挙げられる。30名のALS患者のコホートでox-LDLについて得られた結果の例示的な図を、図3に示しており、これは、ALS患者由来の血清中のox-LDL濃度の、1か月あたりのALSFRSスコア(ポイント)(「pts/mn」)で測定されるALSの進行速度との相関を示している。
【0272】
図3において、SigmaStatソフトウェアのスピアマンの順位(Spearman Rank Order)を用いて相関を解析し、ロー(r)値及びP値を用いて表した。
【0273】
さらに、アルツハイマー病、前頭側頭型認知症、及びパーキンソン病の患者由来の血清中のsCD14、LBP、及びCRPも試験され、上昇は認められなかった。
【0274】
本実施例は、炎症反応に関連する全てのバイオマーカーが、ALS、例えば、ALSの進行に相関する血清中濃度を有するわけではないが、しかしながら、例えば、IL-17C、IL-6、OLR1、ox-LDL、sCD14、LBP、及びCRPなどのいくつかの血清免疫ベースのバイオマーカーとの相関が存在することを示す。
【0275】
(6.4 TregをALS患者に投与すること:「レスポンダー」と「ノンレスポンダー」とを識別すること)
ALS療法(Treg注入)を、前述の実施例6.2に記載されているように、第2a相臨床試験において8名のALS患者(「治療患者」)に実施した。各患者について、LSFRSスコアをTLS療法の開始の前後に決定した。6名の患者(対象番号.114、115、202、203、205、及び206)は、セフトリアキソンを投与されたALS患者(ALS患者に投与される場合には第3相臨床試験で失敗したALS患者、例えば、Cudkowiczらの文献、Lancet Neurol., 13(11): 1083-1091 (2014)を参照されたい)におけるスコアよりもかなり高いALSFRSスコアを有することによって、Treg注入に対して、又はPRO-ACTスコアに対して反応性(「レスポンダー」)であるとして識別された(図4A及び図4B)を参照されたい。
【0276】
2名の患者(対象201及び103)は、Treg注入に対して非反応性(「ノンレスポンダー」)であるとして識別された(図5を参照されたい)。
【0277】
(6.5 血清免疫ベースのバイオマーカーを用いるALS療法患者の階層化)
本実施例では、Treg注入前及びTreg注入療法の作用発現後に治療患者から採取された血清試料中の免疫ベースのバイオマーカー濃度が報告される。
【0278】
(IL-17F)
【0279】
図6A図6Cは、Treg注入の実施前(各グラフにおいて最も左側のデータポイント)及びTreg注入の実施後のノンレスポンダー(図6A)及びレスポンダー(図6B図6C)におけるIL-17F血清中濃度(pg/mL)の例示的なグラフを示す。健常者対照のミーンアベレージIL-17F血清中濃度を、該グラフにおいて該ミーンアベレージの1標準偏差上及び下を示す平行な線の間に実線の直線として表す。図7は、ノンレスポンダー及びレスポンダーの平均IL-17F血清中濃度を表し、健常者対照のミーンアベレージ血清中濃度が、破線として示されている。
【0280】
これらの結果は、ノンレスポンダーにおけるIL-17F血清中濃度が、健常者対照におけるIL-17F濃度と比較して及びレスポンダーにおけるそれと比較して上昇していることを示す。ノンレスポンダーにおいて、IL-17F血清中濃度が、Treg注入の作用発現前に上昇し、Treg注入後に上昇したままであることが示されている。
【0281】
さらに、これらの結果は、例えば、血清試料が、Treg療法の作用発現前にALS患者から採取される場合、又はTreg注入後に採取される場合に、血清免疫ベースのバイオマーカーであるIL-17Fの濃度の上昇が、該ALS患者が、Treg療法に対して非反応性でありそうか否かを特定するのに有用であることを示す。また、これらの結果は、IL-17Fレベルが、患者に対するTreg療法の有効性又はTreg療法に対する患者の反応性を表すことができることを示す。これは、Treg療法の実施の間ノンレスポンダーでは、その濃度が上昇したままであるためである。
【0282】
(IL-17C)
【0283】
図8A図8Bは、Treg注入の実施前(各グラフにおいて最も左側のデータポイント)及びTreg注入の実施後のレスポンダーにおけるIL-17Cの血清中濃度(pg/mL)の例示的なグラフを表す。図9は、Treg注入の実施前(各グラフにおいて最も左側のデータポイント)及びTreg注入の実施後のノンレスポンダーにおけるIL-17Cの血清中濃度(pg/mL)の例示的なグラフを表す。図8A図8B及び図9において、健常者対照のミーンアベレージIL-17C血清中濃度を、該グラフでは、該ミーンアベレージの1標準偏差上及び下を示す平行な線の間の実線の直線として示す。
【0284】
図10は、健常者対照における平均IL-17Cの血清中濃度(破線として示される)と比較した、Treg注入の実施前(来院1)及びTreg注入の実施後(来院2~6)のノンレスポンダー及びレスポンダーにおけるミーンアベレージIL-17C血清中濃度(pg/mL)の例示的なグラフを表す。
【0285】
これらの結果は、ノンレスポンダーにおけるIL-17Cの血清中濃度が、健常者対照におけるIL-17C濃度と比較して及びレスポンダーにおける該濃度と比較して上昇していることを示す。ノンレスポンダーにおいて、IL-17Cの血清中濃度が、Treg注入の作用発現前に上昇していること、及びTreg注入後に上昇したままであることが示されている。
【0286】
また、これらの結果は、IL-17Cレベルが、患者に対するTreg療法の有効性又はTreg療法に対する患者の反応性を表すことができることを示す。これは、Treg療法の実施の間ノンレスポンダーでは、その濃度が上昇したままであるためである。
【0287】
(OLR1)
【0288】
図11は、ノンレスポンダー及びレスポンダーにおけるTreg注入が行われた来院の当日に採取された血清試料(試料は、Treg注入と同日であるが該Treg注入の前に採取された;来院1は、Treg注入の前に採取された試料を表す)中のミーンアベレージOLR1血清中濃度(pg/mL)の例示的なグラフを表す。健常者対照における平均OLR1血清中濃度を、破線として示す。
【0289】
これらの結果は、ノンレスポンダーにおけるOLR1血清中濃度が、健常者対照におけるOLR1 濃度と比較して及びレスポンダーにおける濃度と比較して上昇していることを示す。ノンレスポンダーにおいては、OLR1血清中濃度がTreg注入後に上昇したままであることが示されている。
【0290】
また、これらの結果は、OLR1レベルが、患者に対するTreg療法の有効性又はTreg療法に対する患者の反応性を表すことができることを示す。これは、Treg療法の実施の間ノンレスポンダーでは、その濃度が上昇したままであるためである。
【0291】
(NF-L)
【0292】
図12は、ノンレスポンダー(対象201)及び2名のレスポンダー(対象202及び203)におけるNF-L血清中濃度(ng/mL)の例示的なグラフを表し、ここで、血清試料は、Treg注入の当日であるが該Treg注入の前に採取された(来院1は、Treg注入の前に採取された血清試料を表す)。健常者対照における平均NF-L血清中濃度を、破線として示す。
【0293】
これらの結果は、ノンレスポンダーにおけるNF-L血清中濃度が、健常者対照におけるNF-L濃度と比較して及びレスポンダーにおける濃度と比較して上昇していることを示す。ノンレスポンダーにおいては、NF-L血清中濃度がTreg注入後に上昇したままであるであることが示されている。
【0294】
また、これらの結果は、NF-Lレベルが、患者に対するTreg療法の有効性又はTreg療法に対する患者の反応性を表すことができることを示す。これは、Treg療法の実施の間ノンレスポンダーでは、その濃度が上昇したままであるためである。
【0295】
(Ox-LDL)
【0296】
図13は、健常者対照における平均ox-LDL血清中濃度(破線として示される)と比較したノンレスポンダー及びレスポンダーにおけるTreg注入の当日であるが該Treg注入の前に対象から採取された血清試料中のミーンアベレージox-LDL血清中濃度(U/L)の例示的なグラフを表す(来院1は、Treg注入の前に採取された試料を表す)。
【0297】
これらの結果は、ノンレスポンダーにおけるox-LDL血清中濃度が、健常者対照におけるox-LDL濃度と比較して及びレスポンダーにおける濃度と比較して上昇していることを示す。ノンレスポンダーにおいては、ox-LDL血清中濃度は、レスポンダーと比較しても健常者対照と比較してもTreg注入後に上昇したままであることが示されている。
【0298】
また、これらの結果は、ox-LDLレベルが、患者に対するTreg療法の有効性又はTreg療法に対する患者の反応性を表すことができることを示す。これは、Treg療法の実施の間ノンレスポンダーでは、その濃度が上昇したままであるためである。
【0299】
また、3名の患者がそれぞれ、Treg注入に加えてIL-2を受ける第1相試験が行われた。図14図15、及び図16はそれぞれ、患者1、2、及び3からそれぞれ得られた測定値を表す。図14図15、及び図16のそれぞれにおける上のパネルは、Treg注入の前及び後のox-LDL(U/L)の血清中濃度を示す(x軸は、タイムラインであり、下向きの矢印は、Treg注入の時間を示す)。図14及び図15のそれぞれの下のパネルは、試験の経過の間の患者のALSFRSスコアを表す。図16における下のパネルは、試験の経過の間の患者のALS-FRSスコア及びAALSスコアを表す。これらの結果は、Treg注入が、いずれのTreg注入の間にも上昇したレベルに戻らないox-LDL血清中濃度の低下をもたらすことを示す。Treg注入後の低下したox-LDL濃度の期間は、ALSFRSスコアのプラトー(すなわち、低下なし)と関連しており、一方で、上昇したox-LDLの期間にALSFRSスコアの低下が観察された。これらの結果は、ox-LDLの上昇したレベルを、ALSの進行と関係づけることができるという追加のサポートを提供する。
【0300】
また、血清免疫ベースのバイオマーカーであるCD14、LBP、及びCRP濃度を、それぞれ、図17A図17B、及び図17Cに示される対象1、2、及び3において前のパラグラフに記載されているようなTreg注入の間に決定した。対象1及び2において、sCD14、LBP、及びCRPは、Treg+IL-2治療とともに低下し上昇した(それぞれ、図17A及び図17B)。sCD14は、ALSの緩徐進行性対象において比較的変化せず、健常者対照ミーンアベレージ血清中濃度レベル(図17C、一番上のパネル)の1標準偏差以内にとどまった。LBP及びCRPは、Treg+IL-2治療と共に低下し上昇した(図17C、それぞれ、上から2番目及び上から3番目のパネル)。図17A図17Cにおいて、矢印は、Treg+IL-2注入時間を示す。IL-2は、試験の全期間にわたり3回/週投与された。縦の点線は、Treg+IL-2療法又はIL-2のみ区間の境界を定める。Treg「休薬(washout)」期間の間、対象は、IL-2注入を受けた。3本の横の直線は、健常者対照における各バイオマーカーレベルの平均値(中央の線)を示し、上及び下の線は、健常者対照における各バイオマーカーレベルの±1標準偏差を表す。
【0301】
この結果は、血清免疫ベースのバイオマーカー濃度が、ALS療法に対する反応性と相関していることを支持する。
【0302】
(6.6 血清免疫ベースのバイオマーカー濃度は、ALS療法に対する反応性に相関する)
本実施例では、IL-2及びアバタセプトの組合せで治療されたALS患者(5名の対象)から採取された血清試料中の免疫ベースのバイオマーカー濃度が報告される。さらに、本実施例は、ある例示的な免疫ベースのバイオマーカーの血清中濃度が、ALS患者におけるALS療法に対する反応性と相関することを示す。
【0303】
5名の対象が、アバタセプト及びインターロイキン-2(IL-2)での治療の臨床作用及び生物学的作用を評価する第1相試験に登録された。2週間毎に、対象は、アバタセプト及びIL-2の皮下注射及びそれに続く1日4回の追加のIL-2の注射を受けた。来院は、1~2週間毎に行われた。各来院時に血清試料を採取し、試料中のバイオマーカー濃度を、以下に示されるように決定した。
【0304】
(Ox-LDL)
【0305】
血清中の酸化LDL(ox-LDL)レベルをELISAによってアッセイした。対象1~5(図18A図18E)は、ベースラインにおいて一様でないレベルのox-LDLを示した。3本の横の直線は、健常者対照におけるox-LDLレベルの平均値(中央の線)及び該平均の1標準偏差上及び下(それぞれ、上及び下の線)を表す。試験の間、ox-LDLレベルは、対象1~4(図18A図18D)では下向きの傾向を示したが、該レベルは、対象5(図18E)では上向きの傾向を示した。ox-LDLレベルの軌跡は、各対象の臨床経過と一致していた。対象1から4は、ox-LDLレベルが低下するにつれて、その疾患進行の安定化を経験した。対象5は、ox-LDLレベルが増加するにつれて、急速な臨床進行を経験した。
【0306】
(4-HNE)
【0307】
血清中の4-ヒドロキシノネナール(4-HNE)のレベルをELISAによってアッセイした。対象1~5(図19A図19E)は、ベースラインにおいて一様でないレベルの4-HNE示した。3本の横の線は、健常者対照における4-HNEレベルの平均値(中央の線)及び該平均の1標準偏差上及び下(それぞれ、上及び下の線)を表す。試験の間、4-HNEレベルは、対象1及び4においては対照レベルの範囲内又はそれを下回っており、対象2及び3では下向きの傾向を示し、対象5では比較的変化しなかった。4-HNEのレベルは、各対象の臨床経過と一致していた。対象1~4は、4-HNEレベルが低下した又は対照レベルの範囲内であって(図19A図19D)、その疾患進行の安定化を経験し、対象5は、4-HNEレベルが比較的変化しないままであって(図19E)、急速な臨床進行を経験した。
【0308】
本明細書で引用される刊行物、特許、及び特許出願は全て、各個の刊行物又は特許出願が、引用により組み込まれていると具体的かつ個別に示されているかのように、引用により本明細書に組み込まれている。
【0309】
前述の発明は、理解の明確性の目的のための例示としてある程度詳細に説明されているが、本発明の教示を踏まえれば、添付の特許請求の範囲の趣旨や範囲から逸脱することなく、ある変更及び修正をそれに対してなし得ることが当業者には容易に明らかとなろう。
【0310】
本発明は、本明細書に記載される特定の実施態様によって範囲が限定されるものではない。むしろ、前述の説明及び添付の図面から、本明細書に記載されるものに加えて、本発明のさまざまな改変が、当業者には明らかとなるであろう。そのような改変は、添付の特許請求の範囲の範囲に入ることが意図される。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5
図6A
図6B
図6C
図7
図8A
図8B
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17A
図17B
図17C
図18A-C】
図18D-E】
図19A-C】
図19D-E】
【国際調査報告】